IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィの特許一覧

特表2022-546788スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法
<>
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図1
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図2
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図3
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図4
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図5
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図6
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図7
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図8
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図9
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図10
  • 特表-スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-09
(54)【発明の名称】スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20221101BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20221101BHJP
   H01L 27/11521 20170101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L29/78 301X
H01L29/78 617J
H01L29/78 618C
H01L29/78 616V
H01L29/78 617T
H01L27/11521
H01L29/78 371
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555154
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 KR2021009918
(87)【国際公開番号】W WO2022030884
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0098003
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514260642
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ヤンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミョンス
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
5F110
5F140
【Fターム(参考)】
5F083EP02
5F083EP22
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER19
5F083ER21
5F083GA06
5F083GA09
5F083HA02
5F083HA06
5F083JA02
5F083JA03
5F083JA05
5F083JA06
5F083JA14
5F083JA19
5F083JA32
5F083JA35
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA60
5F101BA01
5F101BB02
5F101BC02
5F101BD30
5F110AA06
5F110AA09
5F110BB03
5F110CC01
5F110CC10
5F110DD01
5F110DD05
5F110EE05
5F110EE06
5F110EE09
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF04
5F110GG01
5F110GG02
5F110GG03
5F110GG04
5F110HJ13
5F110HJ16
5F110HK05
5F140AA02
5F140AA21
5F140AA24
5F140AC36
5F140BA01
5F140BA03
5F140BA05
5F140BA06
5F140BB05
5F140BB19
5F140BD05
5F140BD07
5F140BD09
5F140BD11
5F140BF04
5F140BF06
5F140BF08
5F140BF43
5F140BF45
5F140BJ08
5F140BK13
5F140BK15
5F140BK17
5F140BK18
(57)【要約】
スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法を提供する。本発明の一実施形態に係るスティープスロープ電界効果トランジスタは、基板上に形成されるソース、チャネル領域、ドレインと、前記チャネル領域の上部に形成されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上部に形成されるフローティングゲートと、前記フローティングゲートの上部に形成される遷移層と、前記遷移層の上部に形成されるコントロールゲートとを含み、前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、前記コントロールゲートに基準電位以上を印加することで前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されるソース、チャネル領域、ドレインと、
前記チャネル領域の上部に形成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上部に形成されるフローティングゲートと、
前記フローティングゲートの上部に形成される遷移層と、
前記遷移層の上部に形成されるコントロールゲートと
を含む、スティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、
前記コントロールゲートに基準電位以上を印加して、前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル領域は、
平面形(planar)構造、フィン(fin)構造、ナノシート(nanosheet)構造、ナノワイヤ(nanowire)構造、マルチナノワイヤ(multi-nanowire)構造を含む突出型構造と埋立型構造のうちのいずれか1つの構造で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記突出型構造のチャネル領域は、
フィンFET(finFET)、トライゲート(tri-gate)MOSFET、πゲート(π-gate)MOSFET、Ωゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、バルクフィンFET(bulk finFET)、バルクゲートオールアラウンド(bulk gate-all-around)MOSFETで使用するフィン(fin)構造、ナノシート(nanosheet)構造、ナノワイヤ(nanowire)構造、およびマルチナノワイヤ(multi-nanowire)構造のうちのいずれか1つの構造で形成されることを特徴とする、請求項3に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記埋立型構造のチャネル領域は、
埋め込みゲート(buried gate)MOSFET、リセスゲート(recessed gate)MOSFET、球形リセスゲート(sphere-shaped recessed gate)MOSFET、サドル型フィンFET(saddle finFET)、グルーブゲート(groove gate)MOSFET、Vグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETで使用する埋立型チャネル構造のうちのいずれか1つの構造で形成されることを特徴とする、請求項3に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記チャネル領域、前記ソース、前記ドレインは、
シリコン(silicon)、ゲルマニウム(germanium)、シリコンゲルマニウム(silicon-germanium)、歪みシリコン(strained silicon)、歪みゲルマニウム(strained germanium)、歪みシリコンゲルマニウム(strained silicon-germanium)、およびSOI(silicon on insulator)、III-V属半導体物質のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記ソースおよび前記ドレインは、
水平型トランジスタの場合には前記チャネル領域の左右に形成され、垂直型トランジスタの場合には前記チャネル領域の上下に形成されて、n型シリコン、p型シリコン、および金属シリサイドのうちのいずれか1つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記n型シリコンまたは前記p型シリコンで形成された前記ソースおよび前記ドレインは、
拡散(diffusion)、固相拡散(solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長(epitaxial growth)、イオン注入(ion implantation)、および後続熱処理のうちの少なくとも1つ以上によって形成されることを特徴とする、請求項7に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記金属シリサイドで形成された前記ソースおよび前記ドレインは、
タングステン(W)、チタニウム(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、およびイリジウム(Ir)のうちのいずれか1つで形成された前記金属シリサイドを含み、不純物偏析(dopant segregation)を利用して接合を改善することを特徴とする、請求項7に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜は、
二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウムジルコニウム(HZO)、ハフニウム酸窒化物(HfON)のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項11】
前記フローティングゲートは、
金属、2種または3種の金属合金、n多結晶シリコン、p多結晶シリコン、ケイ化物のうちの少なくとも1つ以上の物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項12】
前記フローティングゲートは、
チャネル構造により、平面形ゲート(planar-gate)、マルチゲート(multiple-gate)、全面ゲート(gate-all-around)構造を含む突出型ゲート構造と埋立型ゲート構造のうちの少なくとも1つの構造で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項13】
前記突出型ゲート構造のフローティングゲートは、
フィンFET(finFET)、トライゲート(tri-gate)MOSFET、πゲート(π-gate)MOSFET、Ωゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、バルクフィンFET(bulk finFET)、バルクゲートオールアラウンド(bulk gate-all-around)MOSFETで使用する突出型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造で形成されることを特徴とする、請求項12に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項14】
前記埋立型ゲート構造のフローティングゲートは、
埋め込みゲート(buried gate)MOSFET、リセスゲート(recessed gate)MOSFET、球形リセスゲート(sphere-shaped recessed gate)MOSFET、サドル型フィンFET(saddle finFET)、グルーブゲート(groove gate)MOSFET、Vグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETで使用する埋立型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造で形成されることを特徴とする、請求項12に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項15】
前記遷移層は、
シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、III-V族化合物、および2-D物質(carbonna notube、MoS、およびグラフェンのうちの少なくとも1つ)、窒化ケイ素(Si)、窒化膜(nitride)、酸窒化ケイ素(SiON)、二酸化ケイ素(SiO)、固体酸化膜(oxide)、酸化アルミニウム(Al)、IGZO、および酸化ハフニウム(HfO)、転移物質、半導体物質(SrTiO、SrZrO、NiO、TiO、HfO、AlO、NiO、TiO、TaO、TaN、CuO、CuO、TiN、TaN、WO、SiN、VO、IrO、ZrO、ZnO、NbO、IGZO、HZO、HfON)、固体電解質物質(前記固体電解質物質は、硫化物界素材、酸化物界素材、イオン伝導性ポリマを含む)のうちの少なくとも1つを含んで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項16】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、
基準電圧以上の電位を前記コントロールゲートに印加して前記コントロールゲートと前記フローティングゲートの間の電位差を生成し、前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項17】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、
前記コントロールゲートに基準電圧以上の電位が印加される場合に、前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷が前記遷移層によるエネルギー障壁を通過して前記コントロールゲートに放出または搬入される状況において、前記コントロールゲートが特定の電圧領域に到達すれば、前記コントロールゲートの電圧変化に比べて前記フローティングゲートの電圧変化がより大きくなることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項18】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、
前記コントロールゲートをゲートに置いて素子を動作させるとき、前記フローティングゲートをゲートに置いて素子を動作させることに比べて閾値電圧以下勾配値がより低くなることを特徴とする、請求項1に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタ。
【請求項19】
基板上にソース、チャネル領域、ドレインを形成する段階と、
前記チャネル領域の上部にゲート絶縁膜を形成する段階と、
前記ゲート絶縁膜の上部にフローティングゲートを形成する段階と、
前記フローティングゲートの上部に遷移層を形成する段階と、
前記遷移層の上部にコントロールゲートを形成する段階と
を含む、スティープスロープ電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項20】
前記コントロールゲートを形成する段階は、
前記遷移層の上部に層間誘電体を形成する段階と、
前記層間誘電体を食刻して前記遷移層の上部の一部を露出させる段階と、
前記露出した遷移層の上部に前記コントロールゲートを形成する段階と
を含むことを特徴とする、請求項19に記載のスティープスロープ電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項21】
基板上に形成されるソース、チャネル領域、ドレインと、前記チャネル領域の上部に形成されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上部に形成されるフローティングゲートと、前記フローティングゲートの上部に形成される遷移層と、前記遷移層の上部に形成されるコントロールゲートとを含むスティープスロープ電界効果トランジスタの動作方法であって、
前記コントロールゲートと前記フローティングゲートの間に基準電圧以上の電位差が生じるように前記コントロールゲートに一定の電圧を印加する段階と、
前記コントロールゲートと前記フローティングゲートの間に生成された基準電圧以上の電位差によって前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させる段階と
を含む、スティープスロープ電界効果トランジスタの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スティープスロープ(steep-slope)動作が可能な電界効果トランジスタ(Field-Effect Transistor:FET)の構造とその製造方法に関し、より詳細には、従来のFETのゲート(gate)の上部に遷移層(transition layer)とコントロールゲート(control gate)を備えるトランジスタでスティープスロープ性能を実現することができる、スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第4次産業革命時代を迎えた現在、人工知能(AI)、自律走行車、ビックデータ、拡張現実/バーチャルリアリティ(AR/VR)、モノのインターネット(IoT)などの関連産業の需要が急激に増加している。また、このようなすべての産業の基盤となる半導体産業の重要性と市場もどんどん拡大している。従来には処理が不可能であった膨大な量のデータをモバイル機器や大型サーバなどで生産、保存、加工するためには、半導体素子の高性能化と高集積化、さらにはこれによって上昇する消費電力を削減するための低電力化が必須となる。
【0003】
半導体産業は、1960年代にシリコン(Si)および二酸化ケイ素(SiO2)を利用した金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:MOSFET)が開発されてから急発展を遂げている。このようなシリコン基盤のMOSFETの微細化工程と技術の開発は、成功的な半導体産業を牽引してきたが、シリコン半導体固有の物理的/材料的特性により、超微細工程による性能向上は限界に直面した。さらに、微細化によって派生する高い漏洩電流と相対的に高い動作電圧がもたらす高電力消費量は、シリコン基盤の半導体素子が抱える最大の問題の1つとしてその勢力を増している。
【0004】
半導体素子の消費電力は、動作消費電力、短絡(short-circuit)消費電力、および漏洩消費電力が合わさった値として定義されるが、このような総消費電力を減らすためには、トランジスタ性能指標のうちでも、オフ(off)状態の漏洩電流値と、オン(on)状態にするためにかかる駆動電圧を減らさなければならない。
【0005】
一方、従来のMOSFETの場合は、チャネル形成が熱的拡散(thermionic diffusion)によって起こるため、温度によってオンオフ(on-off)スイッチング(switching)動作速度の限界値がある。このようなスイッチング動作は、トランジスタ電気的特性の勾配値、すなわち、閾値下の振れ(subthreshold swing:SS)によって定められるが、このSS値は、常温での物理的限界値である60mV/decadeよりも低くすることができない。このような限界により、従来のMOSFETでは、駆動電圧を一定の水準以下に低めることができなかった。特に、動的状態での消費電力よりも静的状態での消費電力が増加する現時点では、静的状態の消費電力を低めることのできる新概念の半導体素子の開発が必要とされている。
【0006】
したがって、このような問題を解決して駆動電圧と漏洩電流を低くするためには、従来の熱的拡散に依存する動作起電とはまったく異なる、新たなオンオフスイッチングメカニズムの発掘が極めて必要となっている。シリコン基盤のCMOSの60mV/decの限界を克服することのできる、別名、スティープスロープ(steep-slope)という新概念の半導体素子の開発は、動作電圧を低めながら漏洩電流も減らし、従来の半導体素子の低電圧、低電力、集積度の限界を解決することができ、従来のMOSFET基盤の半導体素子の代わりを担うだけでなく、今後の4次産業革命を先導する技術になることが予想される。
【0007】
MOSFETの限界を克服するために多様なスティープスロープ電界効果トランジスタが開発されたが、従来のスティープスロープ電界効果トランジスタは、MOSFETとは異なる構造の動作原理によって動作し、オン電流(on-current)がMOSFETに比べて小さいため小型化に限界がある。さらに、スティープスロープを示すドレイン電流区間は、全体スイッチング電流区間のうちの30%水準に過ぎない。
【0008】
したがって、従来のスティープスロープ電界効果トランジスタの限界であるオン電流、制限されたスティープスロープ性能、小型化の可能性をすべて解決することのできる構造が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、従来のFETのゲート(gate)上部に遷移層(transition layer)とコントロールゲート(control gate)を備えるトランジスタでスティープスロープ性能を実現することができる、スティープスロープ電界効果トランジスタとその製造方法を提供する。
【0010】
具体的に、本発明は、従来のMOSFETの構造および動作原理を基盤としながら高いオン電流と小型化の可能性を満たすと同時に、全体スイッチング電流区間のうちの50%以上で60mV/dec以下のSS性能を発揮する、新構造スティープスロープ電界効果トランジスタの構造、動作原理、およびその製造方法を提供する。
【0011】
ただし、本発明が解決しようとする技術的課題は、上述した課題に限定されてはならず、本発明の技術的思想および領域から逸脱しない範囲内で多様な拡張が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係るスティープスロープ電界効果トランジスタは、基板上に形成されるソース、チャネル領域、ドレインと、前記チャネル領域の上部に形成されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上部に形成されるフローティングゲートと、前記フローティングゲートの上部に形成される遷移層と、前記遷移層の上部に形成されるコントロールゲートとを含む。
【0013】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、前記コントロールゲートに基準電位以上を印加して、前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させてよい。
【0014】
前記チャネル領域は、平面形(planar)構造、フィン(fin)構造、ナノシート(nanosheet)構造、ナノワイヤ(nanowire)構造、マルチナノワイヤ(multi-nanowire)構造を含む突出型構造と埋立型構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0015】
前記突出型構造のチャネル領域は、フィンFET(finFET)、トライゲート(tri-gate)MOSFET、πゲート(π-gate)MOSFET、Ωゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、バルクフィンFET(bulk finFET)、バルクゲートオールアラウンド(bulk gate-all-around)MOSFETで使用するフィン(fin)構造、ナノシート(nanosheet)構造、ナノワイヤ(nanowire)構造、およびマルチナノワイヤ(multi-nanowire)構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0016】
前記埋立型構造のチャネル領域は、埋め込みゲート(buried gate)MOSFET、リセスゲート(recessed gate)MOSFET、球形リセスゲート(sphere-shaped recessed gate)MOSFET、サドル型フィンFET(saddle finFET)、グルーブゲート(groove gate)MOSFET、Vグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETで使用する埋立型チャネル構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0017】
前記チャネル領域、前記ソース、前記ドレインは、シリコン(silicon)、ゲルマニウム(germanium)、シリコンゲルマニウム(silicon-germanium)、歪みシリコン(strained silicon)、歪みゲルマニウム(strained germanium)、歪みシリコンゲルマニウム(strained silicon-germanium)、およびSOI(silicon on insulator)、III-V属半導体物質のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0018】
前記ソースおよび前記ドレインは、水平型トランジスタの場合には前記チャネル領域の左右に形成され、垂直型トランジスタの場合には前記チャネル領域の上下に形成され、n型シリコン、p型シリコン、および金属シリサイドのうちのいずれか1つで形成されてよい。
【0019】
前記n型シリコンまたは前記p型シリコンで形成された前記ソースおよび前記ドレインは、拡散(diffusion)、固相拡散(solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長(epitaxial growth)、イオン注入(ion implantation)、および後続熱処理のうちの少なくとも1つ以上によって形成されてよい。
【0020】
前記金属シリサイドで形成された前記ソースおよび前記ドレインは、タングステン(W)、チタニウム(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、およびイリジウム(Ir)のうちの1つで形成された前記金属シリサイドを含み、不純物偏析(dopant segregation)を利用して接合を改善してよい。
【0021】
前記ゲート絶縁膜は、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウムアルミニウム(HZO)、酸窒化ハフニウム(HfON)のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0022】
前記フローティングゲートは、金属、2種または3種の金属合金、n多結晶シリコン、p多結晶シリコン、ケイ化物のうちの少なくとも1つ以上の物質を含んでよい。
【0023】
前記フローティングゲートは、チャネル構造により、平面形ゲート(planar-gate)、マルチゲート(multiple-gate)、全面ゲート(gate-all-around)構造を含む突出型ゲート構造と埋立型ゲート構造のうちの少なくとも1つの構造で形成されてよい。
【0024】
前記突出型ゲート構造のフローティングゲートは、フィンFET(finFET)、トライゲート(tri-gate)MOSFET、πゲート(π-gate)MOSFET、Ωゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、バルクフィンFET(bulk finFET)、バルクゲートオールアラウンド(bulk gate-all-around)MOSFETで使用する突出型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0025】
前記埋立型ゲート構造のフローティングゲートは、埋め込みゲート(buried gate)MOSFET、リセスゲート(recessed gate)MOSFET、球形リセスゲート(sphere-shaped recessed gate)MOSFET、サドル型フィンFET(saddle finFET)、グルーブゲート(groove gate)MOSFET、Vグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETで使用する埋立型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0026】
前記遷移層は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、III-V族化合物、および2-D物質(carbon nanotube、MoS、およびグラフェンのうちの少なくとも1つ)、窒化ケイ素(Si)、窒化膜(nitride)、酸窒化ケイ素(SiON)、二酸化ケイ素(SiO)、固体酸化膜(oxide)、酸化アルミニウム(Al)、IGZO、および酸化ハフニウム(HfO)、転移物質、半導体物質(SrTiO、SrZrO、NiO、TiO、HfO、AlO、NiO、TiO、TaO、TaN、CuO、CuO、TiN、TaN、WO、SiN、VO、IrO、ZrO、ZnO、NbO、IGZO、HZO、HfON)、固体電解質物質(前記固体電解質物質は、硫化物界素材、酸化物界素材、イオン伝導性ポリマを含む)のうちの少なくとも1つを含んで形成されてよい。
【0027】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、基準電圧以上の電位を前記コントロールゲートに印加して前記コントロールゲートと前記フローティングゲートの間の電位差を作り、前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させてよい。
【0028】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、前記コントロールゲートに基準電圧以上の電位が印加される場合に、前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷が前記遷移層によるエネルギー障壁を通過して前記コントロールゲートに放出または搬入される状況において、前記コントロールゲートが特定の電圧領域に到達すれば、前記コントロールゲートの電圧変化に比べて前記フローティングゲートの電圧変化がより大きくなるようにしてよい。
【0029】
前記スティープスロープ電界効果トランジスタは、前記コントロールゲートをゲートに置いて素子を動作させるとき、前記フローティングゲートをゲートに置いて素子を動作させることに比べて閾値電圧以下の勾配値がより低くなってよい。
【0030】
本発明の一実施形態に係るスティープスロープ電界効果トランジスタ製造方法は、基板上にソース、チャネル領域、ドレインを形成する段階と、前記チャネル領域の上部にゲート絶縁膜を形成する段階と、前記ゲート絶縁膜の上部にフローティングゲートを形成する段階と、前記フローティングゲートの上部に遷移層を形成する段階と、前記遷移層上部にコントロールゲートを形成する段階とを含む。
【0031】
前記コントロールゲートを形成する段階は、前記遷移層の上部に層間誘電体を形成する段階と、前記層間誘電体を食刻して前記遷移層の上部の一部を露出させる段階と、前記露出した遷移層の上部に前記コントロールゲートを形成する段階を含んでよい。
【0032】
本発明の一実施形態に係るスティープスロープ電界効果トランジスタ動作方法は、基板上に形成されるソース、チャネル領域、ドレインと、前記チャネル領域の上部に形成されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上部に形成されるフローティングゲートと、前記フローティングゲートの上部に形成される遷移層と、前記遷移層の上部に形成されるコントロールゲートとを含むスティープスロープ電界効果トランジスタ動作方法において、前記コントロールゲートと前記フローティングゲートの間に基準電圧以上の電位差が生じるように前記コントロールゲートに一定の電圧を印加する段階、および前記コントロールゲートと前記フローティングゲートの間に生成された基準電圧以上の電位差によって前記フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させる段階を含む。
【発明の効果】
【0033】
本発明の実施形態によると、従来のFETのゲート(gate)の上部に遷移層(transition layer)とコントロールゲート(control gate)を備えるトランジスタでスティープスロープ性能を実現することができる。
【0034】
このような本発明は、従来のMOSFETの構造および動作原理を基盤としながら高いオン電流と小型化の可能性を満たすと同時に、全体スイッチング電流区間のうちの50%以上で60mV/dec以下のSS性能を発揮することができる。該当の構造および方法により、従来のMOSFETの高いオン電流と小型化の可能性はそのまま確保しながらスティープスロープ性能を備える半導体素子を実現することができ、これによって半導体素子の低電力動作が可能となる。
【0035】
このように、本発明は、ロジック素子を含む多様な装置およびシステムに適用に適用することができる。したがって、本発明は、携帯電話、スマートフォン、PDA、PMP、デジタルカメラ、カムコーダ、PC、サーバコンピュータ、ワークステーション、ノート型PC、デジタルTV、セットトップボックス、音楽再生機、携帯用ゲームコンソール、ナビゲーション機器、ウェアラブル機器、IoT機器、VR機器、AR機器などのような多様な電子機器に有効に活用することができる。
【0036】
ただし、本発明の効果は、上述した効果に限定されてはならず、本発明の技術的思想および領域から逸脱しない範囲内で多様な拡張が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係る、スティープスロープ電界効果トランジスタ、Γ-FETを示した斜視図である。
図2図1のスティープスロープ電界効果トランジスタを示した平面図である。
図3図2のI-I’ラインに沿って切断した断面図である。
図4】Γ-FETで、遷移層下の下部MOSFETとして使用することができる多様な突出型ゲートFET構造を示した図である。
図5】Γ-FETで、遷移層下の下部MOSFETとして使用することができる多様な埋立型ゲートFET構造を示した図である。
図6】本発明の実施形態に係る、スティープスロープ電界効果トランジスタの製造過程を示した図である。
図7】本発明の実施形態によって製造された素子の透過電子顕微鏡写真である。
図8】本発明の実施形態に係る、スティープスロープ電界効果トランジスタの測定環境を簡単に表現した図である。
図9】本発明の実施形態によって製造されたスティープスロープ電界効果トランジスタの実際の測定結果値である。
図10】本発明の実施形態に係る、スティープスロープ電界効果トランジスタの実際の測定結果値から抽出した2次データである。
図11】フローティングゲート電圧モデリング数式の誘導過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の利点および特徴、またはこれらを達成するための方法は、添付の図面とともに、詳細に記載されている以下の実施形態を参照すれば明らかになるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されてはならず、互いに異なる多様な形態で実現されてもよい。本実施形態は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものに過ぎず、本発明は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0039】
本明細書で使用する用語は、実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限しようとするためのものではない。本明細書において、単数形は、文章で特別に記載されない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」は、記載された構成要素、段階、動作、および/または素子において、1つ以上の他の構成要素、段階、動作、および/または素子が存在したり追加したりすることを排除しない。
【0040】
他の定義が記載されていない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解することのできる意味として使用される。また、一般的に使用される、事前に定義されている用語は、明らかに特別に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されてはならない。
【0041】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態についてより詳しく説明する。図面における同一の構成要素に対しては同一の参照符号を使用し、同一の構成要素の重複する説明は省略する。
【0042】
本発明の一実施形態は、従来のFETのゲート(gate)の上部に遷移層(transition layer)とコントロールゲート(control gate)を有するトランジスタでスティープスロープ性能を実現することをその要旨とする。
【0043】
本発明に係る半導体素子は、電流-電圧の特性曲線でスティープスロープを備え、これが外観的にギリシア文字「Γ」(gamma)形態に見えることから、以下ではΓ-FETと呼ぶことにする。
【0044】
Γ-FETは、従来のMOSFETの長所である高いオン電流と小型化の可能性を維持したままでスティープスロープ性能を実現することができ、これにより、素子の低電力動作を可能にする。
【0045】
図1は、本発明の実施形態に係る、スティープスロープ電界効果トランジスタ、Γ-FET100を示す斜視図であり、図2は、これを上部から見た平面図であり、図3は、図2のI-I’ラインに沿って切断した断面図である。また、図4図5は、Γ-FETにおいて、遷移層下の下部MOSFETとして使用することのできる多様な突出型ゲートFETおよび埋立型ゲートFET構造を示した図である。
【0046】
Γ-FETは、従来のMOSFETのゲートに遷移層102とコントロールゲート101を形成した構造であって、現業で用いられる多様な構造のMOSFETを下部MOSFETとして使用してよい。図1図2図3に示した平板MOSFETの他にも、図4図5に一部が示された、突出型/埋立型構造MOSFETを下部MOSFETとしてΓ-FETを製造してもよい。
【0047】
図1~3を参照すると、Γ-FET100は、基板108、チャネル領域106、ゲート絶縁膜104、フローティングゲート103、遷移層102、コントロールゲート101、ソース105、およびドレイン107を含む。
【0048】
前記基板108は、シリコン(silicon)、ゲルマニウム(germanium)、シリコンゲルマニウム(silicon-germanium)、歪みシリコン(strained silicon)、歪みゲルマニウム(strained germanium)、歪みシリコンゲルマニウム(strained silicon-germanium)、およびSOI(silicon on insulator)、III-V属半導体物質のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0049】
前記ソース105およびドレイン107は、水平型トランジスタの場合には前記チャネル領域106の左右に形成され、垂直型トランジスタの場合には前記チャネル領域106の上下に形成されて、n型シリコン、p型シリコン、および金属シリサイドのうちのいずれか1つで形成されてよい。
【0050】
前記n型シリコンまたは前記p型シリコンで形成された前記ソース105およびドレイン106は、拡散(diffusion)、固相拡散(solid-phase diffusion)、エピタキシャル成長(epitaxial growth)、選択的エピタキシャル成長(epitaxial growth)、イオン注入(ion implantation)、および後続熱処理のうちの少なくとも1つ以上によって形成されてよい。
【0051】
前記金属シリサイドで形成された前記ソースおよびドレインは、タングステン(W)、チタニウム(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、白金(Pt)、鉛(Pb)、およびイリジウム(Ir)のうちのいずれか1つで形成された前記金属シリサイドを含み、不純物偏析(dopantse gregation)を利用して接合を改善してよい。
【0052】
前記チャネル領域106は、平面形(planar)構造はもちろん、図4に一部が示された、フィン(fin)構造、チャネル領域の縦横比(高さ/幅)が0.5以下の形態であるナノシート(nanosheet)構造、チャネル領域の縦横比(高さ/幅)が0.5以上の形態であるナノワイヤ(nanowire)構造、マルチナノワイヤ(multi-nanowire)構造などの突出型構造、または図5に一部が示された、埋立型構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0053】
ここで、前記埋立型構造のチャネル領域は、埋め込みゲート(buried gate)MOSFET、リセスゲート(recessed gate)MOSFET、球形リセスゲート(sphere-shaped recessed gate)MOSFET、サドル型フィンFET(saddle finFET)、グルーブゲート(groove gate)MOSFET、Vグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETで使用する埋立型チャネル構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0054】
ゲート絶縁膜104は、チャネル領域106の上部に形成される。ゲート絶縁膜104は、フローティングゲート103とチャネル領域106を絶縁させてよい。例えば、ゲート絶縁膜104は、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウムジルコニウム(HZO)、ハフニウム酸窒化物(HfON)のうちの少なくとも1つを含んで形成されてよい。また、ゲート絶縁膜104は、メモリ特性のない任意の絶縁物質のうちの少なくとも1つを含んで形成されてよい。
【0055】
前記フローティングゲート103は、前記ゲート絶縁膜104の上部に形成される。例えば、フローティングゲート103は、金属、2種または3種の金属合金、n多結晶シリコン、p多結晶シリコン、ケイ化物(例えば、ケイ化タングステン(WSi)、ケイ化チタニウム(TiSi)、ケイ化コバルト(CoSi)、ケイ化ニッケル(NiSi)など)のうちの少なくとも1つ以上によって形成されてよい。フローティングゲート103は、コントロールゲートとチャネル領域(または、チャネル)との間に位置することから、内部ゲート(internal gate)と呼ばれてよい。
【0056】
前記フローティングゲート103は、チャネル構造により、平面形ゲート(planar-gate)構造はもちろん、図4に一部が示されたマルチゲート(multiple-gate)構造、全面ゲート(gate-all-around)構造などの突出型ゲート構造、あるいは図5に一部が示された埋立型ゲート構造のうちの少なくとも1つの構造で形成されてよい。
【0057】
このとき、突出型ゲート構造のフローティングゲートは、フィンFET(finFET)、トライゲート(tri-gate)MOSFET、πゲート(π-gate)MOSFET、Ωゲート(Ω-gate)MOSFET、ゲートオールアラウンド(gate-all-around)MOSFET、バルクフィンFET(bulk finFET)、バルクゲートオールアラウンド(bulk gate-all-around)MOSFETで用いられる(または、使用する)突出型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0058】
このとき、埋立型ゲート構造のフローティングゲートは、埋め込みゲート(buried gate)MOSFET、リセスゲート(recessed gate)MOSFET、球形リセスゲート(sphere-shaped recessed gate)MOSFET、サドル型フィンFET(saddle finFET)、グルーブゲート(groove gate)MOSFET、Vグルーブゲート(V-groove gate)MOSFETで用いられる埋立型ゲート構造のうちのいずれか1つの構造で形成されてよい。
【0059】
遷移層102は、フローティングゲート103の上部に形成されてよい。遷移層102は、フローティングゲート103とコントロールゲート101(または、コントロールゲート構造物)を絶縁させてよい。例えば、遷移層102は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、III-V族化合物、および2-D物質(carbonna notube、MoS、およびグラフェンのうちの少なくとも1つ)、窒化ケイ素(Si)、窒化膜(nitride)、酸窒化ケイ素(SiON)、二酸化ケイ素(SiO)、固体酸化膜(oxide)、酸化アルミニウム(Al)、IGZO、および酸化ハフニウム(HfO)、またはその他の多様な転移物質、半導体物質(SrTiO、SrZrO、NiO、TiO、HfO、AlO、NiO、TiO、TaO、TaN、CuO、CuO、TiN、TaN、WO、SiN、VO、IrO、ZrO、ZnO、NbO、IGZO、HZO、HfON)、または固体電解質物質(硫化物界素材(例えば、Li10GeP12、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、argyrodite、LPS(lithium phosphorus sulfide)、LPS+LiC)、酸化物界素材(例えば、perovskite、NASICON(Na1+xZrSi3x12、0<x<3)、LISICON(Li2+2xZn1xGeO)、LiPON(LiPO)、garnet)、イオン伝導性ポリマ(例えば、PEO(polyethylene oxide)、PEG(polyethylene glycol)、PEGDMA(polyethylene glycol dimethacrylate)、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PEEK(polyether ether ketone)、nafion(CHF13S・C)))のうちの少なくとも1つを含んで形成されてよい。
【0060】
このような遷移層102は、単一物質あるいは複数の物質で構成されてよい。
【0061】
一実施形態において、遷移層102あるいはコントロールゲート101が接触するフローティングゲート103の面積は、フローティングゲートの全体面積よりも小さくてよい。すなわち、遷移層102とコントロールゲート101は、フローティングゲート103上部の少なくとも一部の領域に形成されてよい。
【0062】
コントロールゲート101は、遷移層102の上部に形成され、フローティングゲート103との電位差を生成する。例えば、コントロールゲート101は、フローティングゲート103に電流を流すことができるようにフローティングゲート103に隣接して形成されてよい。
【0063】
一実施形態において、コントロールゲート101は、金属、2種または3種の金属合金、n多結晶シリコン、p多結晶シリコン、ケイ化物(例えば、ケイ化タングステン(WSi)、ケイ化チタニウム(TiSi)、ケイ化コバルト(CoSi)、ケイ化ニッケル(NiSi)など)のうちの1つ以上で形成されてよい。
【0064】
前記遷移層102は、コントロールゲート101に電圧信号が印加されれば、両端のゲートの電圧差、すなわち、フローティングゲート103とコントロールゲート101の電圧差によってフローティングゲート103に電流を流してよい。
【0065】
本発明において、チャネル領域106、ソース105、およびドレイン107はすべて、基板108上に形成されてよい。例えば、チャネル領域106は、ナノワイヤ(nanowire)構造で形成されてよい。この場合、図3に示すように、ゲート絶縁膜104、フローティングゲート103、遷移層102、およびコントロールゲート101は、チャネル領域106の一部分を順に囲むように形成されてよく、チャネル領域106の残りの部分(例えば、前記一部分を除いた残りの部分)と基板108との間には空間が存在してよい。言い換えれば、チャネル領域106は、構成要素104、103、102、101によって支えられ、基板108上に橋脚(Bridge)のように浮いた状態であってよい。
【0066】
このような構造である本発明のΓ-FET100は、基準電圧以上の電位をコントロールゲート101に印加してコントロールゲート101とフローティングゲート103の電位差を作ることにより、フローティングゲート103に保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させてよい。
【0067】
このとき、Γ-FET100は、コントロールゲート101に基準電圧以上の電位が印加される場合に、フローティングゲート103に保存された少なくとも1つの電荷が遷移層102によるエネルギー障壁を通過してコントロールゲート101に放出/搬入される状況でコントロールゲート101が特定の電圧領域に到達すれば、コントロールゲート101の電圧変化に比べてフローティングゲート103の電圧変化がさらに大きくなる。
【0068】
このとき、Γ-FET100は、コントロールゲート電極をゲートに置いて素子を動作させるとき、フローティングゲート電極をゲートに置いて素子を動作させることに比べて閾値電圧以下勾配(SS)値をより低めることができる。
【0069】
図6は、Γ-FET100の製造過程を示した図である。
【0070】
図6を参照すると、本発明のΓ-FETは、基板上にチャネル領域、ソース、ドレインを形成し、チャネル領域の上部にゲート絶縁膜を形成した後、ゲート絶縁膜の上部にフローティングゲートを形成する過程により、従来のMOSFET構造(内部 MOSFET)を形成する。
【0071】
この後、フローティングゲートの上部に遷移層(TL)と層間誘電体(ILD:inter-layer dielectric)を順に形成し、フローティングゲートの一部が露出するように遷移層と層間誘電体の一部を食刻する。遷移層と層間誘電体の一部を食刻した後、フローティングゲートパターンを形成し、遷移層の一部が露出するように層間誘電体の一部を食刻した後、コントロールゲートパターンを形成することにより、本発明のΓ-FETが製造されてよい。
【0072】
図7は、本発明の実施形態によって製造された素子、すなわち、Γ-FET100の透過電子顕微鏡写真であり、図8は、Γ-FET100の測定環境を簡単に表現した図である。Γ-FET100の電気的特性は、コントロールゲート101に電圧を印加して確保してよい。また、この比較対象である下部MOSFETの特性を確認するためにフローティングゲート103に意図的に電圧を印加したが、実際の素子動作ではフローティングゲートに電圧を印加する必要はない。
【0073】
図9は、Γ-FET100および下部MOSFETの実際の測定結果値であり、図10は、これから抽出された2次データである。Γ-FET100が下部MOSFETに比べてスイッチング動作のためにより少ない電圧を使用するが、すなわち、これは、閾値電圧以下勾配(subthreshold slope:SS)の差として現れる。下部MOSFETの場合、周知のように、SS値が60mV/dec以上を示した反面、その上部に遷移層102とコントロールゲート101を追加して製造されたΓ-FET100のSSは、60mV/decの限界を超え、26mV/decまで低下したことが分かる。スティープスロープが実現される原因は、コントロールゲート101の電圧変化量が極めて大きいフローティングゲート103の電圧変化量として現れるためである。
【0074】
具体的なスティープスロープ実現の原理は、以下の数式(1)によって説明される。本発明の素子は、その形態上、従来の平面形フローティングゲート103メモリで用いられる数式を満たさなければならない。フローティングゲート103メモリにおいて、フローティングゲート103電圧は、容量性カップリング(capacitance coupling)およびフローティングゲート103内部の電荷を考慮した上で、一般的に数式(1)のように与えられる。
【0075】
【数1】

【0076】
図11は、前記フローティングゲート103電圧数式の誘導過程を説明するための図である。Q、Q、Q、Q、Qは、各地点、すなわち、コントロールゲート101、フローティングゲート103、ソース105、チャネル106表面、ドレイン107の電荷を意味するものであり、VCG、VFG、V

、Vは、各地点、すなわち、コントロールゲート101、フローティングゲート103、ソース105、チャネル106表面、ドレイン107の電圧を意味するものである。各地点間のキャパシタンス(capacitance)およびフラットバンド電圧(flat-band voltage)は、図9に示すように、それぞれローマ字Cと下付き文字、またはローマ字Wと下付き文字で表現されてよい。この他にも、フローティングゲート103が感じる全体キャパシタンスの合計がCで表現されてもよい。図9に示すように、前記フローティングゲート103電圧数式は、基本的なC-V数式を用いながら他の過程なく誘導される。
【0077】
コントロールゲート101電圧変化によって値が変わる変数は、コントロールゲート101電圧(VCG)、フローティングゲート103電圧(VFG)、フローティングゲート103の内部電荷(Q)、または下部MOSFETチャネル106の表面電位(

)である。
【0078】
伝統的なフローティングゲート103メモリの場合、フローティングゲート103の内部電荷が一定しているため変数でないが、本発明のΓ-FET100では、遷移層102を経てコントロールゲート101からフローティングゲート103に電荷が供給されるため、フローティングゲート103の電荷も変数となる。
【0079】
数式(1)をコントロールゲート101電圧によって微分すれば、コントロールゲート101の電圧変化によるフローティングゲート103の電圧変化値が分かる。この後、変化のない常数はなくなり、コントロールゲート101電圧によって変化する変数だけが残る。これを表現すれば、数式(2)のとおりとなる。
【0080】
【数2】

【0081】
数式(2)を整理すれば、数式(3)のように変換されてよい。
【0082】
【数3】

【0083】
ここで、tは時間を意味してよい。数式(3)の左項は、コントロールゲート電圧変化と比較したフローティングゲート103電圧変化であり、この値が1よりも大きくなればスティープスロープが可能となる。
【0084】
時間によるフローティングゲート103の電荷変化量は、遷移層102を経て流れる電流であってよい。また、遷移層102を経て流れる電流(=dQ/dt)は、遷移層102両端にかかる電圧、すなわち、コントロールゲート101の電圧とフローティングゲート103の電圧の差の関数である。したがって、数式(3)は、数式(4)のように変化させてよい。
【0085】
【数4】

【0086】
ここで、fは、遷移層を経て流れる電流を意味するものであって、以下では転移電流関数と呼ぶことにする。
【0087】
転移電流関数は、両端にかかる電圧によって変化する。転移電流関数の開形および大きさは、遷移層102の特性はもちろん、コントロールゲート101、遷移層102、フローティングゲート103の構成および形態によって変化してよい。このうち、下部MOSFETの表面電位は、フローティングゲート103の電圧と深い関連がある。これに合わせて数式(4)を再配列すれば、数式(5)のように表現してよい。
【0088】
【数5】

【0089】
数式(5)の左項に、コントロールゲート101の電圧変化に比べてフローティングゲート103の電圧変化だけが残るように整理すれば、数式(6)のように表現してよい。
【0090】
【数6】

【0091】
ここで注目すべき点は4つある。1つ目に、伝統的なフローティングゲート103メモリでは、右項にある分子の2番目の項が存在しない。なぜなら、コントロールゲート101からフローティングゲート103に流れる電流は、読み取り動作中に発生しないためである。この反面、本発明のΓ-FET100では、電流項が存在するため、フローティングゲート103の電圧変化量を従来よりも遥かに引き上げることができる。2つ目に、上述した電流項によって右項の分子が十分に大きく調節される状況で分母が1よりも小さくなれば、フローティングゲート103の電圧変化が極めて大きくなり、スティープスロープ実現が可能となる。3つ目に、右項の分母が小さくなる状況は、フローティングゲート103の電圧に比べて下部MOSFETの表面電位変化量が十分大きくなる状況である。4つ目に、その状況は、下部MOSFETのON/OFFが分けられる弱反転(weak inversion)領域で起こる。
【0092】
結論的に、本発明のΓ-FET100は、遷移層102を経て流れる電流量を調節して数式(6)の右項の分子を大きくした状況でコントロールゲート101電圧をスウィープ(sweep)すれば、下部MOSFETのON/OFFが分けられる領域で右項の分母値が小さくなり、結果的に、コントロールゲートの電圧変化に比べてフローティングゲート103の電圧変化量が極めて上昇してスティープスロープが実現されるようになる。
【0093】
上述したように、スティープスロープ動作は、転移電流関数f、すなわち、遷移層を経て流れる電流関数の影響を大きく受ける。転移電流関数値が遷移層の両端にかかった電圧の大きさに関係なく、さらに周辺項(CCF/C)に比べて極めて小さければ、電流が流れないフローティングゲートメモリのように動作し、むしろスロープが大きくなる。この反面、転移電流関数値が極めて大きくて遷移層が金属のように動作する場合、コントロールゲートとフローティングゲートの間の電圧差が発生しなくなり、フローティングゲートの電圧変化量はコントロールゲートの電圧変化量と常に同じようになるためスティープスロープが実現されない。スティープスロープ動作のためには、転移電流関数が両端にかかった電圧が小さい場合は周辺項(CCF/C)に比べて小さくなければならず、両端の電圧が大きい場合は周辺項(CCF/C)に比べて大きくなければならない。すなわち、転移電流関数値は、両端にかかった電圧に応じて、周辺項(CCF/C)に比べて大きくなったり小さくなったりしながら変動しなければならない。
【0094】
このように、本発明の実施形態に係るスティープスロープFETは、従来のFETのゲート(gate)の上部に遷移層(transition layer)とコントロールゲート(control gate)を備えたトランジスタでスティープスロープ性能を実現することができる。
【0095】
このような本発明は、従来のMOSFETの構造および動作原理を基盤としながら高いオン電流と小型化の可能性を満たすことができると同時に、全体スイッチング電流区間の50%以上で60mV/dec以下のSS性能を発揮することができる。該当の構造および方法により、従来のMOSFETの高いオン電流と小型化の可能性はそのまま確保しながらスティープスロープ性能を備えた半導体素子を実現することができ、これにより、半導体素子の低電力動作を可能にすることができる。
【0096】
さらに、本発明のスティープスロープFETは、コントロールゲートとフローティングゲートの間に基準電圧以上の電位差が生じるようにコントロールゲートに一定の電圧を印加することにより、フローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させる動作を実現することができる。すなわち、本発明の実施形態に係るスティープスロープFETの動作方法は、コントロールゲートとフローティングゲートの間に基準電圧以上の電位差が生じるようにコントロールゲートに一定の電圧を印加する段階、およびコントロールゲートとフローティングゲートの間に生成された基準電圧以上の電位差によってフローティングゲートに保存された少なくとも1つの電荷を放出または搬入させる段階を含んでよい。
【0097】
以上のように、実施形態を、限定された実施形態および図面に基づいて説明したが、当業者であれば、上述した記載から多様な修正および変形が可能であろう。例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行されたり、かつ/あるいは、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合されたりまたは組み合わされたり、他の構成要素または均等物によって対置されたり置換されたとしても、適切な結果を達成することができる。
【0098】
したがって、異なる実施形態であっても、特許請求の範囲と均等なものであれば、添付される特許請求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】