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  • 特表-抗菌性ワクチン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-09
(54)【発明の名称】抗菌性ワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/08 20060101AFI20221101BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20221101BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61K39/08
C08B37/08 A
A61K39/00 H
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513634
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 US2020048265
(87)【国際公開番号】W WO2021041721
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/892,400
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522172759
【氏名又は名称】アロペックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Alopexx, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】ダボラ,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ディングリー,エイミー
(72)【発明者】
【氏名】パテル,スマン
(72)【発明者】
【氏名】スウィス,ジェラルド エフ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C090
【Fターム(参考)】
4C085AA05
4C085BA12
4C085CC07
4C085CC24
4C085CC32
4C085CC33
4C085DD35
4C085DD56
4C085EE01
4C085GG03
4C090AA01
4C090AA09
4C090BA45
4C090BB02
4C090BB17
4C090BB38
4C090BB53
4C090BB69
4C090BB92
4C090BC30
4C090CA50
4C090DA23
(57)【要約】
本開示では、オリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む抗菌性ワクチンが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
(A-B)x-C I
[式中、Aは、式:
【化1】
を有する、3~12個が反復するβ-(1→6)-グルコサミン単位またはその混合物を含み;
Bは、式:
【化2】
(ここで、式の左側はCに結合し、右側はAに結合する)で示され;
Cは、少なくとも31個の反応性アミノ官能基を有する破傷風トキソイドであり;
xは、約31~約39の整数であり;
yは、1~10の整数であり;そして
Rは、水素またはアセチルであり、
但し、R基の40%以下はアセチルであり、
ここで、該破傷風トキソイドは少なくとも31個の反応性アミノ基を含み、トキソイドの数の少なくとも90%は単量体形である]
で示される化合物。
【請求項2】
Aが、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式II:
(A’-B)x-C II
[式中、A’は、
【化4】

であり;
Bは、式:
【化5】
(ここで、式の左側はCに結合し、右側はAに結合する)で示され;
Cは、少なくとも31個の反応性アミノ官能基を有する破傷風トキソイドであり;
xは、約31~約39の整数であり;
yは、1~10の整数であり;そして
Rは、水素またはアセチルであり、
但し、R基の40%以下はアセチルであり、
ここで、破傷風トキソイドは少なくとも31個の反応性アミノ基を含み、トキソイドの数の少なくとも85%は単量体形である]
で示される化合物。
【請求項4】
非単量体のトキソイドの量が約5重量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
非単量体のトキソイドの量が約0.5重量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
薬学的に許容される希釈剤および請求項1に記載の化合物の有効量を含む医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される希釈剤および請求項2に記載の化合物の有効量を含む医薬組成物であって、3重量%以下の低分子量のアミノ化合物を含む組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される希釈剤および請求項3に記載の化合物の有効量を含む医薬組成物であって、3重量%以下の低分子量のアミノ化合物を含む組成物。
【請求項9】
2重量%未満の低分子量のアミノ化合物を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
1重量%未満の低分子量のアミノ化合物を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物の有効量が、患者が少なくとも約2,000の有効白血球(WBC)数を有する場合、インビボで微生物を殺すのに十分な量である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項12】
化合物が、
【化6】
【表1】


からなる群から選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年8月27日出願の米国仮出願第62/892,400号の優先権を主張し、その全内容は引用により本明細書に包含される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、破傷風トキソイドにリンカー基を介して結合した3~12個のグルコサミン単位を有する、オリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む抗菌性ワクチン化合物および組成物であって、トキソイドが主に単量体形である化合物および組成物に関する。また、本発明は、オリゴ糖のN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン(PNAG)構造を含む細胞壁構造を有する微生物に対し、自然免疫を与えるワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
トキソイド担体に結合したオリゴ糖抗原は、特に子供や高齢者において弱い免疫応答を引き起こすことが知られている。オリゴ糖がトキソイド担体にコンジュゲートされてワクチンを形成する場合、生じる免疫応答全体を向上させるためには、できるだけ多くのオリゴ糖基を担体に結合または負荷することが望ましい。一般的には、担体に負荷されたオリゴ糖抗原をより多く含有するワクチンは、オリゴ糖抗原を少なく含有する同様のワクチンよりも高い抗体力価を与える。
【0004】
担体としてオリゴ糖の複数のコピーが結合した破傷風トキソイドを用いるワクチンは、当技術分野で知られている。従来、オリゴ糖基をトキソイドへ結合するには、トキソイド上の反応性アミノ基(例えば、リジン残基に見られる-NH2)に結合するリンカーを介して行われてきた。このような化学は充分に確立されているが、トキソイド化学を扱うには、多くの複雑さがある。
【0005】
第一に、破傷風トキソイドは、破傷風毒素を、投与されたときにそれを無毒化にするが依然として抗原性を保持させるホルムアルデヒドなどの化学物質で処理することによって調製される。ホルムアルデヒドは毒素上の反応性アミノ基と反応するが、それにより、オリゴ糖カップリングに有用であるトキソイド上の残りの反応性アミノ基の数を減少させる。さらに、処理されたトキソイド上の反応性アミノ基の数は、製造業者によってまちまちである。第二に、破傷風トキソイドの製造プロセスはまた、破傷風トキソイド組成物中に低分子量の混入物をもたらす。これらの混入物には、オリゴ糖カップリングについてトキソイドと競合する低分子量の反応性アミノ官能基が含まれる。
【0006】
これまでに、背景技術として、破傷風トキソイドに結合したペンタ-β-(1→6)-グルコサミン基を含む抗菌性ワクチンであって、これらのペンタ-β-(1→6)-グルコサミン基の結合のための負荷係数が12から20までの範囲と低いものであるワクチンが開示されている(Gening, et al., Infect. Immun., 78(2):764-772 (2010))。しかし、この負荷係数は望ましいものよりも低く、トキソイドとカップリング化学に伴う根本的な合成上の問題を踏まえるべきことは明らかである。
【0007】
従って、破傷風トキソイドにより高いレベルの負荷を与えることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、少なくとも25個、好ましくは31個の反応性アミノ官能基を有する破傷風トキソイド上に、少なくとも25、好ましくは約31から39のオリゴマーβ-(1→6)-グルコサミン結合基の負荷レベルを有するワクチン化合物が、該ワクチン化合物中のトキソイド成分が少なくとも85%の単量体形のトキソイドを含むことを条件に可能であるという発見に関する。一実施態様において、ワクチン化合物中のトキソイド成分は、少なくとも90%またはその間のいずれかの下位値もしくは下位範囲の単量体形のトキソイドを含む。いくつかの実施態様において、トキソイドは、少なくとも90%~99.9%の単量体形のトキソイド、好ましくは、少なくとも95%~99.9%またはその間のいずれかの下位値もしくは下位範囲の単量体形のトキソイドを含む。一実施態様において、低分子量の反応性アミノ化合物の量は、存在するトキソイドの重量に対して3重量%を超えない。別の実施態様において、組成物中の低分子量のアミノ化合物の量は、存在するトキソイドの重量を基準として2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは存在するトキソイドの重量を基準として0.5重量%未満である。別の好ましい実施態様において、単量体の量は、例えば、HPLCに基づいて99面積%を超える。
【0009】
したがって、一実施態様において、本発明は、リンカーを介して破傷風トキソイド担体上に少なくとも25個、好ましくは約31個~約39個のオリゴマー-β-(1→6)-グルコサミン基結合単位を含むワクチン組成物であって、該オリゴマーは、3~12個が反復するβ-(1→6)-グルコサミン単位を含み、但し、そのような単位の総数の約40数%未満はN-アセチル化されており、さらに、該破傷風トキソイドは、少なくとも25、好ましくは少なくとも31個の反応性アミノ官能基を含み、少なくとも85%のトキソイド成分は単量体形であるか、またはいくつかの実施態様において、少なくとも90%のトキソイド成分は単量体形である、ワクチン組成物を提供する。このようなワクチン組成物は、微生物がその細胞壁にオリゴマーのN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン構造を含む、該微生物の感染に対し、有効な免疫を患者に与えるものである。
【0010】
一実施態様において、本発明は、式I:
(A-B)x-C I
[式中、Aは、式:
【化1】
を有る、3~12個が反復するβ-(1→6)-グルコサミン単位またはその混合物を含み;
Bは、式:
【化2】
(ここで、式の左側はCに結合し、右側はAに結合する)で示されるものであり;
Cは、少なくとも31個の反応性アミノ官能基を有する破傷風トキソイドであり;
xは、約31~約39の整数であり;
yは、1~10の整数であり;そして
Rは、水素またはアセチルであり、但し、R基の40%以下はアセチルであり、
ここで、該破傷風トキソイドは、少なくとも31個の反応性アミノ基を含み、トキソイドの数で少なくとも90%は単量体形である]
で示される化合物を提供する。
【0011】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にオリゴマーのN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン構造を含む微生物に対して有用なワクチン組成物であって、薬学的に許容される担体、および式I:
(A-B)x-C I
[式中、Aは、式:
【化3】
を有する、3~12個が反復するβ-(1→6)-グルコサミン単位またはその混合物を含み;
Bは、式:
【化4】
(ここで、式の左側はCに結合し、右側はAに結合する)で示されるものであり; Cは、少なくとも31個の反応性アミノ官能基を有する破傷風トキソイドであり;
xは、約31~約39の整数であり;
yは、1~10の整数であり;そして
Rは、水素またはアセチルであり、但し、R基の40%以下はアセチルであり、
ここで、該破傷風トキソイドは、少なくとも31個の反応性アミノ基を含み、トキソイドの数の少なくとも90%は単量体形である]
で示される有効量のワクチン、を含むワクチン組成物を提供する。このようなワクチン組成物は、微生物がその細胞壁にオリゴマーのN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン構造を含む微生物感染に対し、有効な免疫を患者に与える。
【0012】
上記の式Iの一実施態様において、式II:
(A’-B)x-C II
[式中、A’は、式:
【化5】
のペンタ-β-(1→6)-グルコサミン(炭水化物リガンド)基であり、そして
B、Cおよびxは、上記に定義されている通りであり、但し、トキソイドの数で少なくとも85%は単量体形であるか、またはいくつかの実施態様において、少なくとも90%は単量体形である]
の化合物が提供される。
【0013】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にオリゴマーのN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン構造を含む微生物に対するワクチン組成物であって、薬学的に許容される担体、および式II:
(A’-B)x-C II
[式中、A’は、式
【化6】
を有し、そして
B、Cおよびxは、上記に定義されている通りであり、但し、トキソイド成分の数で少なくとも85%は単量体形であるか、またはいくつかの実施態様において、少なくとも90%は単量体形である]
で示される有効量のワクチン、を含むワクチン組成物を提供する。
【0014】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にオリゴマーのN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物からの有効な免疫を患者に与える方法であって、上記の式IまたはIIの化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0015】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にオリゴマーのN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物からの有効な免疫を患者に与える方法であって、上記に記載の本発明の医薬組成物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0016】
一実施態様において、本発明の化合物は、xが33~39であるものを含む。別の実施態様において、本発明の化合物は、xが35~38であるものを含む。
【0017】
本発明の代表的な化合物は、以下の表に示す:
【化7】
【表1】

【0018】
一実施態様において、本発明の組成物は、式IまたはIIの化合物の総重量を基準として約3重量%以下の低分子量のアミノ基を含む。
【0019】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物に対し、免疫を患者に与える方法であって、式I:
(A-B)x-C I
[式中、A、B、Cおよびxは、上記または本明細書の他の箇所に定義されている通りである]で示される有効量の化合物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0020】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にN-アセチルオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物に対し、免疫を患者に与える方法であって、上記または本明細書の他の箇所に定義されている式I(ここで、yは2、3または4である)で示される、有効量の化合物またはその混合物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0021】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にN-アセチルオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物に対し、免疫を患者に与える方法であって、式II:
(A’-B)x-C II
[式中、A’は、式:
【化8】
のペンタ-β-(1→6)-グルコサミン(炭水化物リガンド)基であり、そして
B、Cおよびxは、上記または本明細書の他の箇所に定義されている通りである]
で示される、有効量の化合物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0022】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にN-アセチルオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物に対し、有効な免疫を対象に与える方法であって、薬学的に許容される希釈剤、および式I:
(A-B)x-C I
[式中、A、B、Cおよびxは、上記または本明細書の他の箇所に定義されている通りである]で示される、有効量の化合物の有効量の医薬組成物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0023】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にN-アセチルオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物に対し、有効な免疫を対象に与える方法であって、薬学的に許容される希釈剤および、上記または本明細書の他の箇所に定義されている通りである式I(ここで、yは、2、3、または4である]で示される、有効量の化合物の有効量の医薬組成物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0024】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にN-アセチルオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物に対し、有効な免疫を対象に与える方法であって、薬学的に許容される希釈剤、および式II:
(A’-B)x-C II
[式中、A’は、式:
【化9】
のペンタ-β-(1→6)-グルコサミン(炭水化物リガンド)基であり、そして
B、Cおよびxは、上記または本明細書の他の箇所に定義されている通りである]で示される、有効量の化合物の有効量の医薬組成物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0025】
一実施態様において、本発明は、細胞壁にN-アセチルオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む微生物に対し、有効な免疫を対象に与える方法であって、薬学的に許容される希釈剤および有効量の化合物を含む医薬組成物として、有効量の上記の化合物を該患者に投与し、ここで、該患者は、少なくとも2,000の白血球数を有する、方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施態様において、上記の方法の一つまたはそれ以上では、医薬組成物は、、例えば、約3重量%以下の低分子量のアミノ化合物、または代替の実施態様において、1重量%未満および3重量%~0のいずれかの下位値または下位範囲、の低分子量のアミノ化合物を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、(以下に記載の)化合物17の1H NMRを示す。
【0028】
図2図2は、化合物17の13C NMRを示す。
【0029】
図3図3は、破傷風トキソイド単量体をオリゴマーおよび低分子量アミノ化合物と分離しているHPLCスペクトルを示す。
【0030】
図4図4は、ジスルフィドである化合物16から2当量のモノスルフィドである化合物17への変換のHPLCトレースを提供する。
【0031】
本発明の詳細な説明
本発明は、それぞれ3~12個のグルコサミン単位を有する少なくとも25個、好ましくは31~39個の、オリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基を含む抗菌性ワクチン化合物および組成物であって、該基はそれぞれ、リンカーを介して破傷風トキソイド蛋白質に結合しており、ここで、個々のグルコサミン単位の40%以下はN-アセチル基を有する、さらに破傷風トキソイドは少なくとも25個、好ましくは少なくとも31個の反応性アミノ基を含み、トキソイド成分の数で少なくとも85%、90%、95%、99%は単量体形、または85%~99%の範囲内のいずれかの下位値または下位範囲は単量体形である、抗菌性ワクチン化合物および組成物を提供する。
【0032】
本明細書に記載のワクチン組成物は、微生物がその細胞壁にオリゴマーのN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン構造を含む微生物感染に対し、有効な免疫を患者に与える。
【0033】
本発明をより詳細に説明する前に、まず、以下の用語を定義する。本明細書で使用される用語が定義されていない場合、それは一般に受け入れられている科学的または医学的意味を有する。
【0034】
本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的とするものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。
【0035】
「場合による」または「場合により」とは、その後に説明される事象または状況が発生し得るかまたは発生し得ないこと、およびその説明には事象または状況が発生する例と発生しない例とが含まれることを意味する。
【0036】
数値指定、例えば温度、時間、量、濃度などの前に使用される場合の用語「約」は、範囲を含めて、(+)または(-)10%、5%、1%、またはその間のいずれかの下位範囲または下位値によって変動し得る近似を示す。好ましくは、投与量に関して使用される場合の用語「約」は、用量が+/-10%変動し得ることを意味する。
【0037】
「含む(Comprising)」または「含む(comprises)」は、組成物および方法が言及された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することを意図するものである。組成物および方法を定義するために使用される場合の「本質的に...からなる」とは、述べられた目的のための組み合わせに本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本質的に本明細書に定義される要素からなる組成物は、請求される発明の基本的かつ新規な特性(複数可)に重大な影響を与えない他の材料物質または工程を除外するものではないであろう。「からなる」とは、他の成分の微量元素および実質的な方法工程を超えるものを除外することを意味するものとする。これらの遷移項のそれぞれによって定義される実施態様は、本発明の範囲内である。
【0038】
用語「β-(1→6)-グルコサミン単位」または「グルコサミン単位」とは、
【化10】
[式中、6-ヒドロキシル基は、この前のグルコサミン単位の1ヒドロキシル基と縮合し、破線は前後のグルコサミン単位への結合部位を示す]で示される個々のグルコサミン構造を意味する。別の「β-(1→6)-グルコサミン」と組み合わせると、得られる二糖は次の構造:
【化11】
を有する。
【0039】
N-アセチル基を有する「β-(1→6)-グルコサミン単位」という用語とは、構造:
【化12】
[式中、2番目の単位の6-ヒドロキシル基は、その前のグルコサミン単位の1-ヒドロキシル基と縮合する]を意味する。
【0040】
「β-(1→6)-グルコサミン基を含むオリゴ糖」という用語は、「オリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン構造」(以下に定義する)と定義される、病原性細菌の細胞壁の一部を模倣する化合物上のその基を意味する。この場合も、そのような基は、3~12個のβ-(1→6)-グルコサミン単位に限られ、ここで、該単位の最大40%はN-アセチル基を有することができる。一実施態様において、該β-(1→6)-グルコサミン単位の30%未満はN-アセチル化されている。別の実施態様において、該β-(1→6)-グルコサミン単位の20%未満はN-アセチル化されている。さらに別の実施態様において、該β-(1→6)-グルコサミン単位の10%未満はN-アセチル化されている。さらに別の実施態様において、該β-(1→6)-グルコサミン単位のいずれもN-アセチル化されていない。
【0041】
「N-アセチルβ-(1→6)-グルコサミン構造を含むオリゴ糖」または「N-アセチルβ-(1→6)-グルコサミン構造を含む多糖」という用語は、微生物の細胞壁に見られるそれらの構造を意味する。微生物の壁には、多くの微生物の系統にわたって保存されているこれらの構造が多数含まれている。これらの構造は、主にN-アセチルβ-(1→6)-グルコサミンであるが、ポリ-β-1,6-D-グルコサミン-N-デアセチラーゼなどの酵素の作用による脱アセチル化糖の領域も含む。このように、本発明のワクチンは、そのような脱アセチル化オリゴ糖領域を標的とするものを含む抗体を産生する。このような脱アセチル化糖に対する抗体は、いかなる理論にも制限されることなく、インビボでこのような微生物に対して細胞毒性を有する。
【0042】
本明細書で使用される「ワクチン組成物」という用語は、アジュバントおよび医薬担体を含む、上記の式IおよびIIの化合物を含む組成物を意味する。これらの組成物はまた、限定量の低分子量のアミノ化合物を含むことができ、該低分子量のアミノ化合物には、そのようなアミノ化合物の量が、存在するトキソイドの重量を基準として3重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であるものが含まれる。これらの組成物は、細胞壁にN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミン構造を有するオリゴ糖/多糖を含む微生物に対し、有効な免疫を与える。したがって、単一の細菌に対してワクチン接種する伝統的なワクチンとは異なり、本明細書に記載のワクチン組成物は、本明細書に記載のオリゴ糖構造を有するいずれかの微生物に対し、有効な免疫を与えることができる。このような微生物には、グラム陽性菌、グラム陰性菌、抗生物質耐性菌(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、真菌などが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される用語「有効な免疫」とは、微生物がその細胞壁にN-アセチル-β-(1→6)-グルコサミンを含むオリゴ糖/多糖を含有する微生物感染症を処置、予防、または改善するのに十分な抗体応答をインビボで産生する、規定量のワクチン組成物の能力を意味する。
【0044】
ワクチン化合物はと、式IおよびIIの化合物を意味する。これらの化合物は溶媒和物、特に水和物として存在してもよい。水和物は、化合物または該化合物を含む組成物の製造中に形成し得るか、または、水和物は、化合物の吸湿性の性質により、経時的に形成し得る。本発明の化合物は、とりわけ、DMF、エーテル、およびアルコール溶媒和物を含む、有機溶媒和物としても存在し得る。特定の溶媒和物の同定および調製は、合成有機化学または医薬品化学の当業者の技能の範囲内である。
【0045】
用語「トキソイド」とは、単量体およびオリゴマーの破傷風トキソイドの形態を意味する。オリゴマーの破傷風トキソイド成分の存在は、オリゴマー中の各単量体のトキソイドの表面積がオリゴマー化により減少するため、露出する反応性アミノ基の平均数を減少させる。ひいては、トキソイドに結合するオリゴ糖の因子が低くなるという結果になる。
【0046】
「対象」とは、哺乳動物を意味する。哺乳動物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得るが、好ましくはヒトである。
【0047】
対象における疾患または障害の「処置(Treating)」または「処置(treatment)」とは、1)疾患または障害にかかりやすいかまたは該疾患または障害の症状をまだ示さない対象において該疾患または障害が発生するのを予防すること;2)疾患または障害を抑制するかまたはその発症を阻止すること;または3)疾患または障害を改善するかまたは軽減(regression)を生じさせることを意味する。
【0048】
「有効量」とは、対象を苦しめる疾患または障害を処置するのに、または該対象または患者にそのような疾患または障害が生じるのを予防するのに十分な、本発明のワクチン組成物の量を意味する。
【0049】
「反応性アミノ官能基」とは、破傷風トキソイドのリジンおよびグアニジンの側鎖に見られる一級アミノ基(-NH2)を意味し、破傷風トキソイドのペプチド結合またはアミド側鎖、例えばグルタミンに見られるアミド(-NHC(O)-)基を含まない。
【0050】
「低分子量のアミノ化合物」とは、トキソイドの断片、アミノ基を含有する緩衝液、反応クエンチャー、例えばリジン、硫酸アンモニウムなど、毒素無毒化剤、例えばホルマリン、および破傷風トキソイドと接触した他のアミノ含有試薬を含む、破傷風トキソイド組成物に混入物として存在するアミノ含有化合物を意味する。典型的には、このような低分子量の反応性アミノ化合物は、約10,000未満、好ましくは1,000未満の分子量を有する。一実施態様において、このような低分子量のアミノ化合物は、図3の溶出ピークにより同定される。
【0051】
一般的な合成方法
本発明の化合物は、以下の一般的な方法および操作を用いて、容易に入手可能な出発物質から調製することができる。典型的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、特に断らない限り、他のプロセス条件も使用できることが理解されるであろう。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒によって異なり得るが、そのような条件は、当業者であれば日常的な最適化操作によって決定することができる。
【0052】
さらに、当業者には明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応を起こるのを防ぐために、従来の保護基が必要であることがある。様々な官能基に適した保護基、ならびに特定の官能基を保護および脱保護するための適当な条件は、当技術分野でよく知られている。例えば、多数の保護基は、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis, Third Edition, Wiley, New York, 1999、およびそこに引用されている文献に記載されている。
【0053】
以下の反応のための出発物質は、一般的に知られている化合物であるか、または知られている操作またはその明らかな改変によって調製することができる。例えば、出発物質の多くは、SigmaAldrich(St. Louis, Missouri, USA)、Bachem(Torrance, California, USA)、Emka-Chemce(St. Louis, Missouri, USA)などの商業供給者から入手可能である。その他は、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-15 (John Wiley, and Sons, 1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5、およびSupplementals (Elsevier Science Publishers, 1989)、Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley, and Sons, 1991)、March’s Advanced Organic Chemistry, (John Wiley, and Sons, 5th Edition, 2001)、およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989)などの標準参考書に記載の操作またはその明らかな変更により調製できる。
【0054】
本発明の代表的なワクチン化合物の合成
本発明のワクチン化合物の一般的な合成は当技術分野で知られており、米国特許出願シリアル番号10/713,790、ならびに米国特許第7,786,255号および第8,492,364号(それぞれ引用によりその全体が本明細書に包含される)に開示されている。
【0055】
本明細書に記載のワクチン化合物についての一実施態様において、式I~IIIにおけるβ-(1→6)-グルコサミン基は4~6単位、好ましくは5単位に限られ、例えば、y=2~4である。
【0056】
いくつかの実施態様において、化合物は、yが1~10(1も10も含めて)から選択される単一の整数であるという点で均質である。したがって、本明細書に開示される化合物は、y=1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10で均質であるように設計され得る。いくつかの実施態様において、式Iの化合物は、y=1および2、またはy=2およびy=3、またはy=3およびy=4、またはy=4およびy=5、またはy=5およびy=6、またはy=6およびy=7、またはy=7およびy=8、またはy=8およびy=9、またはy=9およびy=10の混合物など、yが2またはそれ以上の値で異種に設計され得る。このようなyのペアリングは連続である必要はない。したがって、化合物は、y=1およびy=3、またはy=1およびy=4、またはy=2およびy=4、またはy=2およびy=5など、yの2またはそれ以上の異なる値のいずれかの組み合わせの混合物を含んでもよい。いくつかの実施態様において、化合物は、yが3もしくはそれ以上の値、またはyが4もしくはそれ以上の値、またはyが5またはそれ以上の値、最大でy全てが10の異なる値で異種であってもよい。いくつかの実施態様において、式Iの化合物におけるyの各発生は独立的である。
【0057】
いくつかの実施態様において、式Iの2つまたはそれ以上の化合物は、式Iの個々の化合物がそれぞれyにおいて均質であり、式Iの他の化合物(複数可)が異なるy値を有する医薬組成物に使用され得る。このような実施態様において、使用される均質な化合物は、定義された重量パーセントで単に一緒に混合される。例えば、医薬組成物は、式I(ここで、y=1)の化合物を、式I(ここで、yは2である)の化合物との混合物で含み得る。医薬組成物または方法が式Iの化合物の異種混合物を含む場合、その混合物は、式Iの各化合物の相対重量パーセントの観点から定義されるものである得る。例えば、混合物は、式I(ここで、yが1に等しい)の化合物50重量%および式I(ここで、yが2に等しい)の化合物50重量%を含むことができる。合計100%の化合物のいずれかの組み合わせが企図され、例えば、異なるy値を有する1、2、3 4、5またはそれ以上の化合物をそれぞれ、合計100%の知られている相対重量%で混合することができる。したがって、式Iの化合物の重量パーセントのいずれかの組み合わせは、本明細書に開示される医薬組成物および方法において使用することができる。したがって、式Iの2つの化合物の組み合わせの場合、パーセントは2つの化合物の比率として示すことができ、0.1:99.9~99.9:0.1(0.1:99.9も99.9:0.1も含めて)のいずれかの範囲、およびその間のいずれかの値、例えば1:99、5:95、10:90、15:85、20:80など99:1まで(小数値も含む)であり得る。同様に、医薬組成物中に式Iの3、4、5、またはそれ以上の化合物が使用される場合、各化合物の相対重量パーセントは0.1重量%から最大99重量%まで変動することができ、但し、式Iの異なる化合物の合計量は100%に合算される。
【0058】
リンカー基の形成は、米国特許8,492,364および下記の実施例に見られるものに例示されているがそれに限定されない技術的に認められている合成技術によって達成される。一実施態様において、式III:
【化13】
[式中、yは、1~10の整数であり、場合によりアミノ基の40%以下はN-アセチル基である]に示されるように、アグリコンの第1の部分は、還元性β-(1→6)-グルコサミン単位に結合しており、チオール(-SH)基を保有している。
【0059】
リンカーの第2の部分は、式IV:
【化14】
に示される以下の方法で破傷風トキソイドに結合する。
【0060】
この式において、破傷風トキソイドの個別の部分は、曲がりくねった線によって示されており、これは、本質的に例示に過ぎず、トキソイドの完全な構造を提供することを意図していない。いずれかのジスルフィド架橋は、各部を連結する単線で示されている。分かりやすくするために、リンカーの第2の部分はただ一つが例示されているが、トキソイド上に見られるアミノ基に共有結合しているそのような第2の部分は複数存在する。
【0061】
リンカーの第1の部分および第2の部分がカップリング条件下で組み合わされると、チオエーテル結合が形成される。反応は、不活性希釈剤中で、場合により塩基の存在下で行われるので、生成した酸を除去する。チオエーテル結合は、リンカーの第1の部分と第2の部分とを連結し、それによって、以下に例示するように、yが本明細書で定義されている通りであるワクチン化合物に、組み合わされたリンカーを介した破傷風トキソイドのオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン基への共有結合を提供する。
【化15】
[ここで、アミノ基の40%以下は、場合によりN-アセチル基であってよい]
【0062】
破傷風トキソイドに結合しているβ-(1→6)-グルコサミン基-リンカー-基の数は、そのような基の約31~約39個がトキソイドに結合することによって本発明のワクチン化合物に提供するように、化学量論的に制御されていることが理解される。
【0063】
方法、用途および医薬組成物
本発明のワクチン組成物は、細胞壁にPNAGオリゴ糖のβ-(1→6)-グルコサミン構造を有する微生物に対して有効な免疫応答を惹起することができる。患者に接種後、約4週間後に有効な免疫応答が発生する。有効な免疫応答が発生した後、患者は、問題を起こす微生物がPNAGを含む細胞壁を有する、その後の微生物感染症に対する保護を提供される。
【0064】
そのように使用される場合、本発明のワクチン組成物は、そのような微生物から生じる微生物感染症の危険性を有する患者に投与される。そのような患者には、ほんの一例として、高齢者、選挙で選ばれた手術を受ける予定の患者、微生物感染症が大流行の目的地に旅行する患者などが含まれる。本ワクチンは、典型的には、免疫能力のある患者に、免疫応答を向上させるために適当なアジュバントとともに筋肉内投与される。潜伏期間が過ぎた後、患者はそのような微生物に対する自然免疫を獲得することになる。そのような免疫能力のある患者は、抗原に対して免疫応答を引き起こすことができる有効な免疫系を有する。好ましくは、そのような患者は、少なくとも約1000WBC/マイクロリットル、好ましくは少なくとも約1500WBC/マイクロリットル、より好ましくは少なくとも約2000WBC/マイクロリットル、さらにより好ましくは約3000WBC/マイクロリットル、最も好ましくは約4000WBC/マイクロリットルの活性白血球数(WBC)を有する。
【0065】
別の実施態様において、本発明のワクチン組成物は、特に微生物感染が限局性である場合および/または命に関わらない場合に、治療的に使用することができる。そのような場合、本発明のワクチン組成物は、そのような微生物から生じる微生物感染症に罹患している患者に投与される。このワクチンは、典型的には、免疫能力のある患者に、免疫応答を向上させるために適当なアジュバントとともに筋肉内投与される。投与した結果、約4週間以内に有効な免疫が引き起こされる。患者がまだ感染症に罹患している場合は、ワクチンから生じる自然免疫は回復を促進する。
【0066】
そのように使用される場合、本発明のワクチン組成物は、同様の効用を果たす薬剤について認められている投与法のいずれかによって、治療有効量で投与される。本発明のワクチン化合物、すなわち活性成分の実際の量は、処置される疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、使用されるワクチン化合物の効力、投与の経路および形態などの多数の要因ならびに当業者に周知の他の要因に依存するであろう。
【0067】
本発明のワクチン化合物の有効量または治療有効量とは、対象の症状を改善するかまたは生存時間を延長するような十分な抗体の力価をもたらす、ワクチン化合物の量を意味する。このようなワクチン化合物およびワクチン組成物の毒性および治療効果は、細胞培養物または実験動物における標準的な製薬操作によって決定され得る。
【0068】
本明細書に記載のワクチン組成物は、典型的には、ほんの一例として、アジュバント、安定剤、防腐剤などを含む当技術分野で周知の一つまたはそれ以上の従来の成分を含む注射可能な無菌水性組成物として投与される。
【0069】
組み合わせ
本発明のワクチン化合物および組成物は、主治臨床医が適当と考える他の治療用化合物または他の適切な薬剤と併せて使用することができる。選択される場合において、本発明のワクチン化合物は、細菌感染を処置するための抗生物質、ならびにワクチン化合物および/または組成物によって誘導される免疫応答を向上させる薬剤と同時に投与することができる。抗生物質の場合、適切な抗生物質または抗生物質のカクテルおよび患者に投与される量の選択は、原因菌の種類、細菌感染の程度、患者の年齢、体重やその他の相対健康状態に基づき、主治医の技量の範囲内である。適切であれば、免疫増進薬またはアジュバントを、主治医は本明細書に記載のワクチンと組み合わせて同時投与してもよい。
【0070】
本発明のワクチン組成物は、患者における抗原に対する免疫応答を増強するアジュバントとともに投与してもよい。アジュバントとしては、アルミニウム化合物、例えばゲル、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、およびフロイントの完全または不完全アジュバント(例えば、パラフィン油中安定化水エマルジョンの水相に抗原が取り込まれている)が挙げられるが、これらに限定されない。明らかなように、パラフィンオイルは、スクワレンまたはピーナッツオイルなど、他の種類の油に置き換えることができる。アジュバント性質を有する他の材料物質としては、BCG(弱毒化結核菌)リン酸カルシウム、レバミソール、イソプリノシン、ポリアニオン(例えば、ポリA:U)、レンチナン、百日咳毒素、リピドA、サポニン、QS-21およびペプチド、例えば、ムラミルジペプチド、および免疫賦活性オリゴヌクレオチド、例えばCpGオリゴヌクレオチドが挙げられる。希土類塩、例えば、ランタンおよびセリウムも、アジュバントとして使用され得る。使用されるアジュバントの量は、処置される対象および使用される特定の抗原に依存し、当業者によって容易に決定され得る。
【実施例
【0071】
本発明は、本発明の純粋な例示を意図する以下の実施例を参照することによってさらに理解される。本発明は、例示された実施態様によって範囲が限定されるものではなく、本発明の単一の態様の例示としてのみ意図されるものである。機能的に同等であるいずれかの方法は、本発明の範囲内にある。本明細書に記載のものに加えて、本発明の様々な変更は、前述の説明および添付の図から当業者には明らかになるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれる。
【0072】
本明細書では、以下の用語が使用され、以下の意味を有する。定義されていない場合、略語はその慣習的に認識されている定義を有する。
【表2】
【0073】
実施例1-破傷風トキソイドの調製
少なくとも25個、好ましくは少なくとも31個の遊離アミノ基を含む単量体のトキソイドを含む粗破傷風トキソイドの試料を濃縮し、二つの異なる負荷-0.6%および1.2%のカラム床体積を用いてSuperdex(登録商標)200サイズ排除カラムでクロマトグラフィーにかけた(St. Louis Missouri, USAのSigmaAldrichから市販されている)。溶出プロファイルはA280の吸光度によりモニターした。図3に示すように、6つの異なるピーク(プール1~5および単量体のプール)が観察され、単量体の画分が最大のピーク面積を示している。プールは、個々の画分の分析用SEC HPLC分析に基づいて作成した。粗破傷風トキソイドおよび個々のプールそれぞれをSEC HPLCにより分析し、結果を表1および図1にまとめる。
【表3】

【0074】
単量体のプールでは、単量体のTT(99.9面積%)と一致する溶出体積を有する単一の対称的なピークを示し、追加のピークは検出されなかった。カラム負荷量には58.8面積%の単量体が含まれており、このデータによりこれらの条件下での分取用Superdex精製プロトコルの有効性を確認した。Superdex 200カラムからの残りの画分は、SEC HPLCによりモニターした場合、TT単量体と比較して、主に高分子量の物質(プール1および2)または低分子量種(プール3~5)を含んでいた。操作全体のマスバランスは、タンパク質回収(BCA)により評価し、その結果を表2にまとめた。
【表4】


他のサイズ排除クロマトグラフ法を使用して、同じ結果を達成できることが理解される。
【0075】
スピン濃縮段階からのタンパク質回収は83%であり、主に、濾液を介した低分子量のタンパク質/ペプチド汚染物質の除去による損失があった(データは示さない)。分取用Superdex 200クロマトグラフィーによる精製後、TT単量体の収率は51%であり、残りのタンパク質は高分子量/凝集体および低分子量の画分に回収された。最後に、TT単量体は、反応緩衝液への緩衝液交換後、87%の収率で回収された。この例では、粗破傷風トキソイドから精製化/製剤化TT単量体への全体的な操作の回収は、タンパク質回収に基づいて35%であった。
【0076】
精製されたTT単量体の安定性は、pH9.0(4°または-70℃)またはpH7.5(-70℃)で最大4週間貯蔵した後に評価した。具体的には、単量体含有量(SEC HPLC)およびタンパク質濃度を1週間間隔でモニターした。TT単量体は、4℃(pH9.0)でまたは-70℃(pH7.5または9.0)で凍結された状態で4週間にわたってSECフィンガープリントまたはタンパク質濃度に有意な変化を示さなかった。この研究では、安定性を示す方法が限られていたため、各生産キャンペーンに先立ってTT単量体を精製し、精製したTTを4℃で反応緩衝液(50mM HEPES、pH8.0)中に貯蔵し、これを生成の7日以内に使用することを決定した。
【0077】
実施例2-SBAPのTT単量体への結合
工程1:N-BABAの調製:
【化16】
市販のβ-アラニンである化合物1を、少なくとも化学量論的量の市販のブロモアセチルブロマイドとの反応により、N-BABA(ブロモアセチル-β-アラニン)である化合物2に変換させる。第一の容器では、β-アラニンを水中で重炭酸ナトリウムまたは他の適当な塩基と一緒にして、反応中に生成される酸を除去する。水溶液を約20±5℃で溶液が得られるまで攪拌する。次に、この溶液を約5±5℃に維持させる。別の容器に、必要量のブロモアセチルブロマイドを加え、次にジクロロメタンを加える。両方の容器の内容物を一緒にする。反応完了後、6N HClを添加し、pHが約2になるまで混合する。得られたN-BABAを酢酸エチルなどの適当な溶媒で溶液から抽出する。有機相を従来の条件下、例えば真空下、60℃のような高温で濃縮する。次に、ヘプタンを添加してN-BABAを沈殿させ、次にこれをフィルターに集め、40℃の真空オーブンで乾燥させる。この生成物をそのまま次の工程で使用する。
【0078】
工程2:SBAPの調製:
【化17】
N-BABAである化合物2を、当技術分野でよく知られている従来の条件下でN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と反応させて、SBAPである化合物3を生成させる。具体的には、N-BABAを、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの適当な不活性溶媒中で少なくとも化学量論量のNHSと一緒にする。得られた溶液を約20±5℃で透明な溶液が得られるまで攪拌する。次に、N-ジイソプロピルカルボジイミドを反応混合物に添加し、個体生成物と混合する。次に、このシステムを0±5℃に冷却し、得られたSBAPを濾過することによって得る。さらなる精製は、イソプロパノールおよびヘプタンの混合物を予め冷却し、フィルターケーキを洗浄した後に、湿潤ケーキを約30℃の真空オーブン中で乾燥させることを必要とする。得られたSBAPは、そのままTT単量体とのカップリング反応に使用する。
【0079】
あるいは、SBAPは、米国特許5,286,846(この特許は、引用によりその全体が本明細書に包含される)に記載の方法で調製することができる。具体的には、そこに記載されている方法は、以下の合成スキームによって提供される:
【化18】
【0080】
工程3-コンジュゲーション
精製TT単量体は、上記のように、遊離アミンアッセイによって定量される43個のリジン残基/モルを含む。TT単量体の0から170モル当量まで増加する濃度のSBAPとの反応により、SBAPの15~110モル当量の範囲にわたって遊離アミン含有量の対応する減少をもたらす。定常状態の変換は、SBAP電荷>110当量で達成した。遊離アミンの損失がSBAPリンカーの負荷に正比例すると仮定すると、飽和時のリンカー密度は43モルのSBAP/TT単量体であると推定された。また、各滴定点でのリンカーTT/単量体中間体の単量体/凝集体含有量およびタンパク質濃度も評価した。リンカー添加前の単量体含量は99.7%であり、SBAPリンカーの添加量を増加させても、単量体レベルに有意な変化はなかった(凝集体は検出されていない)。また、滴定工程にわたってタンパク質の回収も同様であった。この集合的なデータに基づいて、環境温度で1時間の110モル当量のSBAPの値を、その後のすべての合成に適切な反応条件として選択した。
【0081】
実施例3-オリゴ糖の合成
構成要素の合成
以下の反応スキームは、以下で詳述する化合物3、5および8を調製するために使用する合成工程について例示している。
【化19】
【0082】
化合物Dの合成
市販の1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-デオキシ-2-N-フタルイミド-β-D-グルコピラノシドである化合物C(120.6g、252.6mmol)およびトルエン(200mL)を1LBuchi製フラスコに投入し、40℃で溶解するまで(<5分)回転させた。溶媒を蒸発させ、泡を提供した。トルエン(200mL)をフラスコに投入し、40℃で溶解するまで(<5分間)回転させた。溶媒を乾燥するまで再度蒸発させた。結晶性固体が形成され、壁に付着した。ジクロロメタン(800mL)をフラスコに投入し、アンビエントで溶解するまで回転させ;得られた暗褐色の溶液を5Lジャケット付き反応器に投入し、フラスコを追加のジクロロメタン(200mL)で反応液にすすぎ入れた。加熱/冷却ジャケットを20℃に設定し、反応器の内容物を機械的に攪拌した。エタンチオール(40mL、540mmol)を50mLのジクロロメタンに溶解し、容器に加え、フラスコを50mlのジクロロメタンで容器にすすぎ入れた。三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(50mL、390.1mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解し、反応器に加え、ジクロロメタン(50mL)ですすぎ、容器に加えた。混合物を20℃で2時間攪拌した。反応は残留CのTLCによりチェックした。移動相はトルエン:酢酸エチル(3:1、v/v)、生成物Rf~0.45、C Rf~0.3、UV可視化であった。相当量のCが存在する場合、反応時間を延長する必要があった。
【0083】
撹拌を高速に設定し、4M aq.酢酸ナトリウム(1.25L、5100mmol)を添加した。この相を30分間充分に混合した。水相のpHをディップスティックでチェックし、pH=約7であることを確認した。攪拌を止め、反応混合物を70分間静置させた。
【0084】
この相を分離して集めた。反応器に有機相(下層、1.2L)およびエタノール(840mL、14400mmol)を投入した。ジャケットを60℃に設定し、大気圧下(ジクロロメタンbp40℃およびエタンチオールbp35℃、氷浴中のレシーバーフラスコ)で溶媒を蒸留させた。蒸留が遅くなると、ジャケット温度を70℃に上昇させた。1300mLの蒸留液を集めた後、容器の内容物の試料を取り、1H-NMRによりジクロロメタン対エタノールの比率を測定し、ジクロロメタンが10mol%未満であることを確認した。より多くのジクロロメタンが存在する場合は、さらに蒸留させる必要がある。追加のエタノール(400mL)を添加した後に、Dの種結晶を添加した。ジャケットを30分かけて5℃に冷却した。結晶スラリーを5℃で3日間撹拌した。固体を焼結漏斗に集め、石油エーテル(60~80℃)で洗浄した:1x500mLスラリー、1x300mLプラグ。個体を500mL RBFに移し、回転蒸発装置(浴温45℃)で一定重量(約4時間超)まで乾燥させて、灰白色の個体を得た。予想収量:約86g(Cから71%)。
【0085】
化合物1の合成
50mL丸底フラスコに無水メタノール(33mL)を投入した。メタノール中のナトリウムメトキシド(30%溶液、25μL、0.135mmol)を添加し、得られた溶液を環境温度で5分攪拌した。エチル 3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-デオキシ-2-N-フタルイミド-β-チオ-D-グルコピラノシド(化合物D)(3.09g、6.44mmol)を部分的に(約200mg)10分かけて、添加中に個体を溶解させる速度で添加した。反応物を環境温度で2.5時間撹拌した。TLC(EtOAc)は、化合物D(Rf=0.9)の完全な消費と、1つのより極性の高いスポット(Rf=0.5)の形成を示した。試料を取り、HPLC(0.8mLのアセトニトリルおよび0.2mLの水中、2.5μLの反応混合物)によるIPCで反応を完了させ、合格条件はNMT 1.00面積%の化合物Dであった。酢酸(8μL、0.1397mmol)を添加した。ディップスティックでpHをチェックし、約pH5~6であることを確認した。混合物を回転蒸発装置(50℃)でほぼ乾燥状態まで濃縮した。EtOAc(15mL)を添加し、その大部分を蒸発させた。残留物を15mLのEtOAcに溶解/スラリー化し、回転蒸発装置から除去した。石油エーテル2mLを添加し、環境温度で混合物を攪拌した。結晶スラリーを一晩攪拌した。個体を焼結漏斗に集め、ガソリン(2×10mL)で洗浄し、回転蒸発装置(45℃浴温)で乾燥させ、一定重量にした。予想収量:1.94g(化合物Dから85%)。
【0086】
化合物2の合成
化合物1(2.040g)をピリジン(28mL)に溶解し、その溶液を回転蒸発装置で40℃浴温にて約半分の体積(約14mL)に濃縮して黄色溶液を得た。さらにピリジン(14mL)を添加し、同じ方法で溶液を再び約14mLに濃縮した。この溶液をアルゴン下に置き、トリチルクロライド(2.299g、1.36eq)を添加した後、空冷式のコンデンサーを取り付け、溶液を攪拌しながら50℃に加熱した。4時間後、IPC(HPLC;800μLのMeCNに5μL、残留化合物1 NMT 3.00面積%)を実行した。IPCが満たされるとすぐに、反応物を10~15℃に冷却した。反応温度を20℃未満に維持しながら、ベンゾイルクロライド(1.60mL、2.34eq)を20分の時間にわたって滴下した。添加が完了したら、反応物を環境温度まで温め、少なくとも3時間撹拌した。この時点で、IPC(HPLC;5μLを1500μLのMeCNに、化合物1の残留モノ-Bz誘導体NMT 合計3.00面積%)を実行させた。IPCが満たされるとすぐに、反応を0℃に冷却し、メタノール(0.8 mL)をゆっくりと添加することによってクエンチし、反応温度を20℃未満に保持することを確保した。次に、クエンチされた反応を環境温度に温めた。
【0087】
生成物の混合物をトルエン(20mL)で希釈し、環境温度で1時間撹拌した後、沈殿物を焼結漏斗を介して濾過することによって除去した。次に、トルエン溶液をクエン酸(20%w/w、4×20mL)、続いて飽和NaHCO3(9%w/v、20mL)で洗浄し、これにより、存在する残留クエン酸との副次反応をもたらした。次に、トルエン(上部)相を塩水(20mL)で洗浄した後、回転蒸発装置で40℃浴温にて蒸発させ、黄色/橙色のシロップ(6.833g)を得た。このシロップをIPC(H1 NMR、合格条件 NMT 30wt%の残留トルエン)にかけた。予想収量:約6.833g(147%)。
【0088】
化合物3の合成
氷酢酸(648mL)および超純水(72mL)を一緒に混合し、90%酢酸水溶液を得た。酢酸溶液の一部(710mL)をスターラーバーとともに粗化合物2(111g)に添加した。空冷式コンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を70℃に加熱した。2の粘性の性質により、混合物は1時間20分後まで完全に溶解せず、その時点で攪拌を開始した。2時間後にIPC(HPLC;5μLを800μL MeCNに、残留化合物 2NMT 3.00面積%)を実行させた。IPCが仕様を満たすとすぐに、反応物を環境温度に冷却した。混合物を焼結漏斗に移し、沈殿したトリチルアルコール(31.09g)を、ハウスバキュームを用いて濾過した。フラスコをさらなる部分の90%酢酸(40mL)ですすぎ、洗浄液全体を混合容器に移した。トルエン(700mL)および水(700mL)を添加し、完全に混合した。水(下部)相は濁った白色の溶液であり、pHをテストした(2未満であると予想)。水(2x700mL;pHはそれぞれ約2.4および約3、無色透明の溶液)でさらに2回洗浄を繰り返した。飽和NaHCO3(9%w/v、700mL)を混合容器に加え、副次反応(ガス放出)を起こした。次に、トルエン(上部)相を塩水(700mL)で洗浄した後、回転蒸発装置で40℃浴温にて蒸発させて、黄色/橙色の固体/液体混合物(86g)を得た。この混合物を400mLのトルエン(300mL+100mLの洗浄液)に溶解し、3カラム体積(CV)の石油エーテル:トルエン(1:1、v:v)で平衡化したシリカカラム(450gのシリカ)に負荷した。カラムを段階的なグラジエント(勾配)を用いて溶出させ、1CV(790mL)の画分を集めた。使用した勾配は、
石油エーテル:トルエン中4vol%酢酸エチル(1:1 v:v、4CV)
石油エーテル:トルエン中8vol%酢酸エチル(1:1 v:v、12CV)
石油エーテル:トルエン中15vol%酢酸エチル(1:1 v:v、4CV)
石油エーテル:トルエン中20vol%酢酸エチル(1:1 v:v、(4CV)
石油エーテル:トルエン中30vol%酢酸エチル(1:1 v:v、1CV)、であった。
【0089】
生成物は、14の画分にわたって溶出させた。TLCを用いて、生成物を含む画分を特定した。すべての画分をIPC (HPLC、10.14分でのピークのNMT 1.50面積%および10.94分でのピークのNMT 1.50面積%)にかけた。IPCを満たさない画分は、化合物4への処理用に取り置いた。画分を一緒にシ、回転蒸発装置で45℃浴温にて蒸発させ、無色のシロップを得た。予想収量:約60g、(78%)。
【0090】
化合物4の合成
粗化合物3(39.54g、化合物3を約21g含有、約37mmol、3のクロマトグラフィー直前に取ったもの)をトルエン(7.2mL)に溶解し、乾燥ピリジン(14.2mL、176mmol、約4.8eq)を添加して均質な溶液を得た。無水酢酸7.2mL(76mmol、約2.1eq.)を添加し、混合物を25℃で18時間攪拌した。反応中に固体が沈殿するが、この沈殿の一部は化合物4である可能性があった。反応物から試料を採取し、IPCにかけ、検出された化合物3の量が1.00面積%超であれば、乾燥ピリジン(1.4mL、17equiv)をさらに投入し、液相中の残留化合物3≦1.00面積%になるまで反応を継続させた。
【0091】
反応物をジクロロメタン(112mL)で希釈し、水(2.8mL)およびメタノール(2.8mL)を添加した。混合物を25℃で3時間攪拌した。この攪拌期間は、過剰の無水酢酸をクエンチするのに十分であることを示している。混合物をクエン酸一水和物/水 20/80w/w(112mL)で洗浄した。水相をジクロロメタン(50mL)で逆抽出した。逆抽出に使用したジクロロメタンを取り分け、残りのクエン酸洗浄液から水相を逆抽出するために使用した。主ジクロロメタン抽出物を容器に戻し、水相のpH≦2になるまでクエン酸洗浄操作を繰り返した(一般的には、さらに2回洗浄する)。クエン酸洗浄物を一緒にし、逆抽出した。次に、逆抽出物および主ジクロロメタン抽出物を一緒にした。得られたジクロロメタン溶液を5%w/v NaHCO3(100mL)で洗浄し、ジクロロメタン相を取り、水(100mL)で洗浄した。ジクロロメタン相を蒸発容器に移し、酢酸エチル(50mL)を添加し、溶液を濃縮してシロップとした。
【0092】
酢酸エチル(150mL)を添加し、攪拌しながら55℃に加熱することにより生成物を溶解させた。石油エーテル60~80(200mL)を添加し、溶液を55℃に再加熱し、5分間保持した。溶液を45℃に冷却し、種結晶(30mg)を添加し、次に、攪拌することで3時間にわたって18℃に冷却し、18℃で少なくとも1時間保持した。結晶を濾過により集め、酢酸エチル/石油エーテル(1/2v/v、60mL)で洗浄した。減圧下で乾燥させ、化合物4(16.04g、2から77%)を得た。予想収量:16.0g(化合物2から77%)。
【0093】
化合物3.1の合成
3-アミノプロパン-1-オール(7.01g、93mmol)をDCM(70mL)に溶解し、0℃に冷却した。ベンジルクロロフォメート(5.40mL、32mmol)をDCM(20mL)に溶解し、内部反応温度を10℃未満に維持しながら滴下した。完了したら、フラスコを室温で2時間撹拌した。NMR分析(IPC:20μL+0.6mL d6-DMSO)のために取り出した試料は、ベンジルクロロフォメート試薬が消費されたことを示している。次に、生成物の混合物をクエン酸(10%w/w、2x90 mL)、水(90mL)および塩水(90mL)で洗浄した。次に、DCM(下部)相を回転蒸発装置で0℃浴温4にて蒸発させて、わずかに濁った油/液体(6.455g)を得た。この油を酢酸エチル(7mL)に溶解し、必要に応じて40℃に温めて、沈殿した固体を溶解し、次に室温まで放冷した。石油エーテル(4mL)を種結晶とともに攪拌溶液にゆっくりと添加し、その時点で生成物はゆっくりと結晶化し始めた。生成物の大部分が沈殿したら、石油エーテルの最後の一部(17mL)(添加した全溶媒:酢酸エチル:石油エーテル1:3、21mL)をゆっくりと添加した。次に、生成物を真空下で濾過し、石油エーテル(5ml)で洗浄して、生成物を微細な白色粉末(4.72g)として得た。予想収量:約4.7g(61%)。
【0094】
化合物5の合成
化合物4(1.05g、1.73mmol)を環境温度で乾燥アセトン(12mL、0.06%w/w水)および水(39μL、2.15mmol、1.3eq.)に溶解した。次に、この溶液を-10℃に冷却した。NBS(0.639g、3.59mmol、2.08eq.)を一度に添加した。+7℃のオーダーの発熱が予想され、次に、溶液を直ちに-10℃に再冷却した。NBS添加から15分後、反応混合物をIPCにかけた(HPLC、2.00面積%未満の合格条件の化合物4残存)。反応が完全でない場合、1.00eqのNBS(0.307g、1.73mmol、1.00eq.)を一度に添加し、次に、反応物をさらに15分間-10℃に保持し、さらにIPCを実施した。水性NaHCO3(5%w/v、5mL)を添加することにより反応をクエンチし、冷却を止め、次の添加の間に混合物を10~20℃まで温めた。3~5分間攪拌した後、水性NaHCO3(5%w/v、5mL)をさらに添加し、5分間攪拌を継続した。水性NaHCO3の最終の一定分量(5%w/v、10mL)を撹拌しながら添加し、続いてチオ硫酸ナトリウム(20%w/v、5mL)を添加した。混合物を10~20℃で20分間撹拌し、次に、個体を濾過により集めた。容器をNaHCO3(5%w/v、25mL)でフィルターパッドにすすぎ入れ、このすすぎ液を濾過して除去した。次に、フィルターケーキをNaHCO3(5%w/v、25mL)、次いで水(25mL)で順次すすいだ。(まだ湿っている)フィルターケーキをDCM(20mL)に溶解し、2ロットのNaHCO3(5%w/v、20mL)で洗浄し、次に水(20mL)で1回洗浄した。ジクロロメタン相を回転蒸発により乾燥させ、次に65℃で酢酸エチル(36mL)に溶解した。次に、石油エーテル60~80(10mL)を攪拌しながらゆっくりと添加シ、混合物を45℃に冷却し、45℃で30分間攪拌した。追加の石油エーテル60~80(22mL)を攪拌しながら添加し、攪拌した混合物を2時間にわたって15℃に冷却した。生成物を濾過により集め、石油エーテル/酢酸エチル2/1v/v(20mL)で洗浄し、次に真空下で乾燥させて、化合物5(0.805g、収率83%、HPLCによるαおよびβアノマー結合純度は98%であった)を得た。
【0095】
化合物7の合成
化合物4(500mg)および中間体3.1(211mg、1.2eq)を秤量し乾燥フラスコに入れ、トルエン(5mL)を添加し、回転蒸発装置(45℃浴温)で溶液を濃縮した。これをもう一回繰り返した後、出発物質を無水DCM(5mL)から濃縮した。溶媒をすべて除去したら、残留固体を真空下で10分間乾燥させた。乾燥後、出発物質をアルゴン下に置き、無水DCM(5.0mL)に溶解し、活性化4Åモレキュラー・シーブ(450mg、ペレット状)を添加した。この時点で、NIS試薬を高真空下に置き、乾燥させた。10分後、乾燥されたNIS(400mg、2.0当量)を添加し、溶液を室温で30分間攪拌した。次に、TMSOTf(8μL、5 mol%)を素早く添加し、その結果、溶液は赤色/橙色から濃い赤色/褐色に変化した。また、反応温度は22℃から27℃に上昇した。TMSOTfを添加するとすぐに、情報提供のみのためにIPC(HPLC; MeCN-H2O 1mLに10μL(8:2))を実行した。次に、ピリジン(20μL、0.245mmol)を添加することにより反応をクエンチし、環境温度で5分間攪拌した。DCM溶液を濾過してモレキュラー・シーブを除去し、次に10%Na2S2O3(3×5mL)、塩水(5mL)で洗浄し、続いて回転蒸発装置(40℃浴温)で濃縮して粗化合物7を泡状の黄色オイル(616mg)として得た。予想収量:約616mg、(99%)。
【0096】
化合物8の合成
粗化合物7(16.6g)を、トルエン(2×30mL)、次いで無水DCM(30mL)からの蒸発により乾燥させ、黄色の泡/オイルを生成させた。次に、フラスコをアルゴン雰囲気下に置いた後、無水DCM(100mL)および乾燥MeOH(260mL)を添加し、混合物を攪拌した。次に、フラスコを0℃に冷却した。内部温度を10℃未満に維持しながら、アセチルクロライド(3.30mL、2.0eq.)を滴下した。添加が完了したら、混合物を環境温度で16時間攪拌した。この時点でIPCを実行した(HPLC; MeCN 1mLに20μL、残留化合物7は3面積%以下)。次に、フラスコを0℃に冷却し、N-メチルモルホリン(合計7.0mL必要)の添加により生成物溶液のpHをpH6.5~7.5に調整した。生成物の混合物をDCM(50mL)で希釈し、H2O(2x200mL)で洗浄した。2回目のH2O洗浄では濁っており、TLCによる標的物質が含まれていたので、これをDCM (50mL)で逆抽出した。DCM相を一緒にし、次に塩水(8mL)で洗浄した後、回転蒸発装置で40℃浴温にて蒸発させ、灰白色の泡/オイル(約16.8g)を得た。この混合物を140mLのトルエン(100mL+40mLの洗浄液)に溶解し、シリカカラム(85gのシリカ)に負荷し、石油エーテル中30vol%酢酸エチルの3カラム体積(CV)で平衡させた。カラムは段階的な勾配を用いて溶出させ、1CV(140mL)の画分を集めた。使用した勾配は、
石油エーテル中30vol%酢酸エチル(3CV)
石油エーテル中35vol%酢酸エチル(4CV)
石油エーテル中40vol%酢酸エチル(9CV)
石油エーテル中50vol%酢酸エチル(4CV)
石油エーテル中60vol%酢酸エチル(3CV)、であった。
生成物は、12画分にわたって溶出させた。すべての画分をIPC(HPLC、230nmのいずれかの不純物ピークのNMT 1.50面積%)にかけた。画分を一緒にし、回転蒸発装置で40℃浴温にて蒸発させて、灰白色の泡を得て、これを固化させて、サクサクした固体として化合物8を得た(10.45g)。予想収量:10.45g(66%)。
【0097】
実施例4-ジスルフィド(化合物17)の合成
【化20】
化合物17の合成のための全体的な合成操作を以下の合成スキームに記載する。
【化21】
【0098】
化合物9の合成
化合物5(1620g、1.18eq.)およびトルエン(18kg)をこの順序で50LBuchi製ボウルに投入した。このボウルを、50±10℃に設定した水浴中で30分間温めた。真空下、50±10℃水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。水浴を20±10℃に冷却した。トリクロロアセトニトリル(7.1kg、21equiv.)および乾燥DCM(6.5kg)を、窒素雰囲気下でボウルに投入した。乾燥DCM(250g)中の水素化ナトリウム(5.6g、0.060equiv.)の懸濁液を、窒素雰囲気下でボウルに投入した。ボウルの内容物を、20±10℃の水浴温度で1~2時間、回転させながら混合した。化合物5を反応中に溶解させた。ボウルの内容物から試料を採取し、反応完了IPCにかけた(H1 NMR、6.35ppmの三重項(出発物質)に対する6.42ppmの三重項ピーク(生成物)を積分;合格条件≦5%の残留出発物質)。化合物3(1360g、2.35mol)、乾燥DCM(12.3kg)および粉末状モレキュラー・シーブ4Å(136g)をこの順で50L反応器に投入した。反応器の内容物を24時間混合した。反応器の内容物をシリンジフィルターを介してサンプリングし、カールフィッシャー(AM-GEN-011、合格条件≦0.03%w/w)により分析した。水分閾値(約24時間)に達した後、反応器の内容物を0±5℃に調整した。Buchi製ボウルの内容物を、体積が許す限りリ反応器ヘッダーに移した。乾燥DCM(1250g)中のトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(100g、0.18eq.)の溶液を、窒素雰囲気下で反応器に投入した。添加中ずっと、反応器の内容物を0±10℃に維持しながら、ヘッダーの内容物を反応器に排出させた。添加には15~20分かかった。乾燥DCM(1250g)をBuchi製ボウルに投入し、次に反応器ヘッダーに移した。添加中ずっと、反応器の内容物を0±10℃に維持しながら、ヘッダーの内容物を反応器に排出させた。反応器の内容物を0±5℃で60分間撹拌した。反応器の内容物から試料を採取し、IPC(HPLC、合格基準≦5%の出発物質)を用いて反応を完了させた。N-メチルモルホリン(85g、0.36eq.)を反応器に投入することにより反応をクエンチした。反応器の内容物から試料を採取し、IPC(湿潤pH紙、合格基準≧pH7)を用いてクエンチさせた。シリカゲル(4.9kg)をBuchi製ボウルに投入した。反応器の内容物をBuchi製ボウルに移した。真空下で40±10℃の水浴温度を用いて溶媒が蒸留されなくなるまで、蒸発を実行させた。シリカゲル(1.4kg)をBuchi製ボウルに投入し、続いてジクロロメタン(7.0kg)を用いて反応器をすすいだ。ボウルの内容物を回転させて、個体がボウルの表面に付着しないように確保した。真空下で40±10℃水浴温度を用いて溶媒が蒸留されなくなるまで、蒸発を実行させた。ボウルの内容物を3つの部分に分けて、シリカゲルクロマトグラフィーにかけた。150L KP-SILカートリッジをBiotageシステムに取り付けた。酢酸エチル(7.8kg)および石油エーテル(22kg)を、シリカゲルに吸着された反応混合物の1/3とともに50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、カラムを調整した。溶出液を20Lジェリー缶に集め、廃棄した。カラムを3つのバッチで実行させ、それぞれを以下の記載のように酢酸エチル/石油エーテルで溶出させた:
a. 酢酸エチル(1.6kg)および石油エーテル(4.4 kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、完全に混合し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
b. 酢酸エチル(25kg)および石油エーテル(26kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
c. 酢酸エチル(31kg)および石油エーテル(22kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5Lガラス製ラボボトルに集めた。
d. 酢酸エチル(16kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
e. 上記のようにカラムを繰り返し、乾燥負荷シリカの残りの2つの部分を調製した。
【0099】
生成物の純度のためにカラム分画(TLC[トルエン中10%アセトン、Rf0.5]から試料を採取して、生成物で画分を同定した。認められたカラム分画を一緒にし、100L Buchi製ボウルに入れた。トルエンを用いて、認められた画分容器からボウルに結晶性物質をすすぎ入れた。真空下で40±10℃水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。トルエン(1.7kg)をボウルに投入し、個体が溶解するまで内容物を回転させた。t-ブチルメチルエーテル(4.4kg)をボウルに20~40分間にわたって投入した。ボウルの内容物を20±5℃の温度で12~24時間回転させた。ボウルの内容物を6L Nutscheフィルターに移し、真空濾過により溶媒を除去した。t-ブチルメチルエーテル(620g)をボウルに投入し、Nutscheフィルターに移し、フィルターケーキに通過させた。フィルターケーキをフィルター内で風乾させ、次に真空オーブンに移し、真空下、設定温度30℃で乾燥させて、残留溶媒を除去した。固体を、分析および保持のためにサンプリングした。固体をねじ蓋付きのNalgene容器に移し、≦-15℃で貯蔵した。予想収量:1.68~1.94kgの化合物9(65~75%)。
【0100】
化合物10の合成
試薬は、以下のように調製した:N-ヨードスクシンイミド(241g、2.20eq)を、真空下で30℃に設定した真空オーブンで24時間乾燥させた。水(3000g)中の塩化ナトリウム(300g)の溶液を5Lラボボトル中で調製した。水(6000g)中のチオ硫酸ナトリウム(1100g)の溶液を50L反応器中で調製し、2つの部分に分配した。
【0101】
化合物8(355g、0.486mol)および化合物9(634g、1.10eq.)を20L Buchi製ボウルに投入し、続いてトルエン(1500g)を投入し、40±5℃で溶解するまで加熱した。真空下、35±10℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。トルエン(1500g)を該Buchi製ボウルに投入した。真空下、35±10℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。乾燥ジクロロメタン(4000g)を該Buchi製ボウルに投入した。ボウルを個体が溶解するまで回転させ、溶液をジャケット温度が20℃±5℃である5L反応器に移した。乾燥ジクロロメタン(710g)を該Buchi製ボウルに投入した。該ボウルを回転させて、ボウルの表面をすすぎ、溶液を5L反応器に移した。反応器の内容物から試料を採取し、試薬比IPC(H1 NMR)にかけた。乾燥N-ヨードスクシンイミドを窒素雰囲気下で反応器に投入し、反応器を5~15分間攪拌した。反応器の内容物を20℃±3℃に調整した。乾燥DCM(60 g)中のトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(5.94g、0.055eq.)を、内容物の温度を20℃±3℃に維持しながら5~15分間にわたって反応器に投与した。。反応混合物を20℃±3℃で20±3分間攪拌した。反応器の内容物から試料を採取して反応を完了させた(HPLC)。N-メチルモルホリン(98g、2equiv.)を反応器に投入し、完全に混合した。上記で調整したチオ硫酸ナトリウム溶液の一部を50L反応器に投入した。該5L反応器の内容物を、チオ硫酸ナトリウム溶液の入った50L反応器に移し、完全に混合した。下層は、HDPEジェリー缶に排出した。
【0102】
DCM(570g)を該50L反応器からの上層と共に該5L反応器に投入し、完全に混合した。下層を、HDPEジェリー缶中の前の下層と一緒にした。上層を別のHDPEジェリー缶に移し、収量が確認されるまで保持した。有機相(下層)を一緒にし、該50L反応器に投入し、続いてチオ硫酸ナトリウムの別の部分を投入し、完全に混合した。下層は、HDPEジェリー缶に排出した。収量が確認されるまで、上層をHDPEジェリー缶に保持させた。塩化ナトリウム溶液を有機相(下層)と共に50L反応器に投入し、完全に混合した。シリカゲル(1300g)をBuchi製ボウルに投入し、回転蒸発装置を取り付けた。反応器中の下層をBuchi製ボウルに投入した。ボウルの内容物を回転させて、ボウルへの吸着を防ぎ、真空下、40±5℃の水浴温度を用いて、固体が蒸留されなくなるまで蒸発させた。ボウルの内容物を2等分にした。シリカゲル(200g)をBuchi製ボウルに投入し、続いてジクロロメタン(700g)を投入した。ボウルの内容物を回転させ、ボウルの表面に個体が付着していないことを確保した。真空下、40℃±10℃の水浴温度で、溶媒が蒸留されなくなるまで、ボウルを蒸発させた。ボウルの内容物を2つの部分に分け、1つを前のシリカゲル試料にそれぞれ添加した。
【0103】
各部分を以下の操作を用いてシリカゲルで独立に精製した(精製を待つ間、試料を≦15℃で貯蔵した):150L KP-SILカートリッジをBiotageシステムに取り付けた。酢酸エチル(15.5kg)および石油エーテル(16.5kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次に2つのBiotage溶媒リザーバーに移した。溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、カラムを条件調整した。溶出液を20Lジェリー缶に集め、廃棄した。上記の乾燥負荷シリカの一部をBiotageサンプルインジェクションモジュール(SIM)に投入し、以下のように酢酸エチル/石油エーテルで溶出させた:
a. 酢酸エチル(6.2kg)および石油エーテル(6.6kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
b. 酢酸エチル(19.5kg)および石油エーテル(19.2kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
c. 酢酸エチル(13.6kg)および石油エーテル(12.3kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
d. 酢酸エチル(14.2kg)および石油エーテル(11.9kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
e. 酢酸エチル(29.7kg)および石油エーテル(22.9kg)をBiotage溶媒タンクに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、分画11まで20Lジェリー缶に集め、次に5L HDPEジェリー缶に集めた。
f. 酢酸エチル(15.5kg)および石油エーテル(11.0kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5L HDPEジェリー缶に集めた。
g. 酢酸エチル(29.7kg)および石油エーテル(13.2kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5L HDPEジェリー缶に集めた。
h. 酢酸エチル(15.5kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、カラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5L HDPEジェリー缶に集めた。
【0104】
生成物の純度のためにカラム画分から試料を採取した(生成物を含む画分を同定するためのTLC)。最初の2つのカラムからの75~95%面積の化合物10である画分を、シリカゲル(400g)を投入したBuchi製ボウル中で一緒にし、真空下、40±10℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。ボウルの内容物を次のように精製した:150L KP-SILカートリッジをBiotageシステムに取り付けた。酢酸エチル(15.5kg)および石油エーテル(16.5kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次に2つのBiotage溶媒リザーバーに移した。溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、カラムを調整した。溶出液を20Lジェリカンに集め、廃棄した。ボウルの内容物をBiotageサンプルインジェクションモジュール(SIM)に投入し、次に以下のように酢酸エチル/石油エーテルで溶出させた:
a. 酢酸エチル(6.2 kg)および石油エーテル(6.6kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
b. 酢酸エチル(19.5kg)および石油エーテル(19.2kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
c. 酢酸エチル(13.6kg)および石油エーテル(12.3kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通した溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
d. 酢酸エチル(14.2kg)および石油エーテル(11.9kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
e. 酢酸エチル(29.7kg)および石油エーテル(22.9kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に画分11まで集め、次に5L HDPEジェリー缶に集めた。
f. 酢酸エチル(15.5kg)および石油エーテル(11.0kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5L HDPEジェリー缶に集めた。
g. 酢酸エチル(29.7kg)および石油エーテル(13.2kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5L HDPEジェリー缶に集めた。
h. 酢酸エチル(15.5kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5L HDPEジェリー缶に集めた。
【0105】
3つのカラムすべてからの認められたカラム画分をBuchi製ボウル中で一緒にし、真空下、40℃±10℃の温度の水浴を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。ボウルの内容物から試料を採取して、分析し保持した。ボウルを密封し、≦-15℃の貯蔵所に移した。予想収量:440~540kg(52~64%収率)。
【0106】
化合物11の合成
化合物10(635g、0.345mol)(PN0699)が入ったBuchi製ボウルにジクロロメタンを投入し、30±10℃で溶解するまで加熱した。メタノール(3.2kg)をボウルに投入した。ボウルの内容物を0±3℃に調整した。ジクロロメタン(660g)中のアセチルクロライド(54.1g、2当量)を、内容物の温度を0±10℃に維持しながらボウルに投入した。ボウル内容物を20±3℃に調整し、混合物を40~48時間撹拌した。ボウルの内容物から試料を採取し、IPC(HPLC、合格)で反応を完了させた。ボウルの内容物を0±3℃に調整した。N-メチルモルホリン(139g、4equiv.)をボウルに投入し、完全に混合した。ボウルの内容物から試料を採取して、IPC(pH紙、合格≦pH7)でクエンチさせた。ボウルの内容物を、真空下、35±10℃水浴で濃縮した。酢酸エチル(4.8kg)および水(5.5kg)をBuchi製ボウルに投入し、回転させて、ボウルの内容物を溶解させた。ボウルの内容物を50L反応器に移し、完全に混合した。下層をHDPEジェリー缶に排出させた。上層を、回転蒸発装置を取り付けられたBuchi製ボウルに移し、内容物を真空下、35±10℃水浴で濃縮した。HDPEジェリー缶からの下層を、酢酸エチル(1.5kg)とともに50L反応器に投入し、完全に混合した。下層をHDPEジェリー缶に排出させ、収量が確認されるまで保持した。上層を、回転蒸発装置を取り付けられたBuchi製ボウルに移し、内容物を真空下、35±10℃水浴で濃縮した。ボウルの内容物から試料を採取し、分析し保持した。ボウルを密封し、≦-15℃の貯蔵所に移した。予想収量:518~633kg(90~110%収量)。
【0107】
化合物12の合成
試薬を以下のように調製した:N-ヨードスクシンイミドの2つの部分(143g、3.90eq.)を、真空下で30℃に設定した真空オーブン中で24時間乾燥させた。水(1850g)中の塩化ナトリウム(450g)の溶液を、5Lラボボトル中で調製し、2つのほぼ等しい部分に分配した。水(2080g)中のチオ硫酸ナトリウム(230g)の溶液を、5Lラボボトル中で調製し、4つのほぼ等しい部分に分配した。
化合物11(607g、0.327mol)が入った50L Buchi製ボウルに化合物9(504g、1.30eq.)を投入し、続いてトルエン(1500g)を投入し、40±5℃で溶解するまで加熱した。真空下、35±℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。トルエン(1500 g)をBuchi製ボウルに投入した。真空下、35±10℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。乾燥DCM(2400g)をBuchi製ボウルに投入した。個体が溶解するまでボウルを回転させ、溶液の半分をジャケット温度が20℃±5℃である5Lリアクターに移した。溶液の残りの半分を5Lラボボトルに移した。乾燥DCM(710g)をBuchi製ボウルに投入した。ボウルを回転させてボウルの表面をすすぎ、溶液の半分を5L反応器に移した。残りの半分は、上記の5Lラボボトルに投入し、窒素下で貯蔵して第2バッチで使用した。乾燥N-ヨードスクシンイミドの一部を、窒素雰囲気下で反応器に投入した。反応器の内容物を-40℃±3℃に調整した。乾燥ジクロロメタン(90g)中のトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(9.09g、0.25有効equiv.)を、内容物の温度を-40℃±5℃に維持しながら15分間にわたって反応器に投入した。反応混合物を-40℃±3℃で30±5分間攪拌し、次に-30℃±3℃に調整し、150分間攪拌した。反応器の内容物から試料を採取して、反応を完了させた。N-メチルモルホリン(33.1g、2有効eq.)を反応器に投入し、完全に混合した。上記で調製したチオ硫酸ナトリウム溶液の一部を5L反応器に投入し、完全に混合した。下層を5Lラボボトルに排出させた。DCM(400g)を5L反応器に投入し、完全に混合した。下層を5Lラボボトル中で前の下層と一緒にした。有機相を一緒にし、5L反応器に投入し、続いてチオ硫酸ナトリウムの別の部分を投入し、完全に混合した。下層を5Lラボボトルに排出させた。上記からの塩化ナトリウム溶液の一部を反応器に投入し、続いて前のラボボトルの内容物を投入した。反応器中の下層をBuchi製に投入し、真空下、40±10℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発させた。反応器を洗浄し乾燥させた。
【0108】
化合物9の第2部分および化合物11を反応器に投入し、第1バッチと同様に処理した。第2バッチの有機抽出の後、反応混合物を反応器中で一緒にした。塩化ナトリウム溶液の一部を反応器に投入し、完全に混合した。シリカゲル(1700g)をBuchi製ボウルに投入し、ロータベーパー(rotavapor)に取り付けた。反応器中の下層をBuchi製に投入し、真空下、40±10℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発させた。ボウルの内容物を2つの部分に分け、シリカゲルで独立して精製した。150L KP-SILカートリッジを
Biotageシステム(Biotage、a division of Dyax Corporation、Charlottesville、Virginia、USAから市販されている)に取り付けた。酢酸エチル(7.7kg)および石油エーテル(22.0kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次に2つのBiotage溶媒リザーバーに移した。溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、カラムを調整した。溶出液は、20Lジェリー缶に集め、廃棄した。上記からの乾燥負荷シリカの一部をBiotageサンプルインジェクションモジュール(SIM)に投入し、次のように酢酸エチル/石油エーテルで溶出させた:
a. 酢酸エチル(1.5kg)および石油エーテル(4.4kg)をHDPEジェリー缶に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
b. 酢酸エチル(18.6kg)および石油エーテル(8.8kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
c. 酢酸エチル(19.2kg)および石油エーテル(8.4kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
d. 酢酸エチル(29.7kg)および石油エーテル(11.9kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
e. 酢酸エチル(15.5kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5Lガラス製ラボボトルに集めた。
【0109】
生成物を精製するため、カラム画分から試料を採取した(生成物を含む画分を同定するためのTLC)。最初の2つのカラムからの75~95%面積の化合物12である画分を、シリカゲル(400g)を投入したBuchi製ボウル中で一緒にし、真空下、40±10℃の水浴温度を用いて、溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。酢酸エチル(7.7kg)および石油エーテル(22.0kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次に2つのBiotage溶媒リザーバーに移した。溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、カラムを条件調整した。溶出液は、20Lジェリカンに集め、廃棄した。不純な生成物が入った乾燥負荷シリカをBiotageサンプルインジェクションモジュール(SIM)に投入し、以下に詳述するように溶出させた:
a. 酢酸エチル(1.5kg)および石油エーテル(4.4kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
b. 酢酸エチル(19.2kg)および石油エーテル(8.4kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
c. 酢酸エチル(18.6kg)および石油エーテル(8.8kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
d. 酢酸エチル(29.7kg)および石油エーテル(11.9kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、2つのBiotage溶媒リザーバーに移し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、20Lジェリー缶に集めた。
e. 酢酸エチル(15.5kg)をBiotage溶媒リザーバーに投入し、次にカラムを通して溶出させた。カラムの流出液は、5Lガラス製ラボボトルに集めた。
【0110】
生成物を精製するため、カラム画分から試料を採取した(生成物を含む画分を同定するためのTLC、HPLC合格基準≧95%の化合物12、2.5%を超える単一の不純物なし)。3つのカラムすべてからの認められたカラム画分をBuchi製ボウル中で一緒にし、真空下、40±10℃の水浴温度を用いて。溶媒が蒸留されなくなるまで蒸発を実行させた。ボウルの内容物から試料を採取して、分析し保持した。ボウルを密封し、≦-15℃の貯蔵所に移した。予想収量:494~584kg(52~64%収率)。
【0111】
化合物13の合成
氷酢酸(7.5kg)および酢酸エチル(6.5kg)を適当な容器中で一緒にし、「GAA/EA溶液」とラベル付けた。重炭酸ナトリウム(0.5kg)をRO水(10kg)に溶解し、「5%w/w重炭酸ナトリウム溶液」とラベル付けた。活性炭上のパラジウム(100g、具体的にはJohnson Matthey, Aliso Viejo, California, USA, Product No. A402028-10)およびGAA/EA溶液(335g)をこの順序で反応容器に投入した。化合物12(270g)をGAA/EA溶液(1840g)に溶解し、50L反応容器に移した。窒素で10barまで加圧することにより溶液から酸素をパージし、続いて放出させた。これをさらに2回繰り返した。反応器の内容物を水素下で10barまで加圧し、続いて放出させた。反応混合物を20barのH2で1.5日間水素化した。次に、圧力を解放し、窒素で10barまで加圧することにより、溶液から水素をパージし、続いて放出させた。これを1回繰り返した。反応混合物をセライトのパッド(300g)で濾過した。セライトケーキをGAA/EA溶液(2x5.5kg)で洗浄した。濾液を一緒にし、真空下で蒸発させた(浴温40±5℃)。残留物を酢酸エチル(2.3kg)と2回に分けて共蒸発させた。粗生成物の予想重量は316gであった。Biotageシステムに、5Lサンプルインジェクションモジュール(SIM)を備えた150M KP-SILカートリッジを取り付けた。酢酸エチル(10.6kg)および氷酢酸(1.4kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、カラムを調整した。溶出液は廃棄した。粗生成物を酢酸エチル(422g)および氷酢酸(55g)に溶解した。得られた溶液をSIMに投入し、カラムに通過させた。反応混合物を以下のようにクロマトグラフにかけた:
a. 酢酸エチル(13.8kg)および氷酢酸(1.8kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。
b.溶媒リザーバーの内容物を、カラム上のSIMを通して溶出させ、溶出液は、20Lジェリー缶に集めた。
c. 酢酸エチル(10.3kg)、氷酢酸(1.3kg)およびメタノール(206g)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに集めた。
d.溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、溶出液は、5Lジェリー缶に集めた。
e. 酢酸エチル(6.6kg)、氷酢酸(0.9kg)およびメタノール(340g)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。
f.溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、溶出液は、5Lジェリー缶中で約2.5Lの画分に集めた。
g. 酢酸エチル(31.4kg)、氷酢酸(4.1kg)およびメタノール(3.4 kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した。
h. 溶媒リザーバーの内容物を、カラムを通して溶出させ、溶出液は、5Lジェリー缶に集めた。
【0112】
化合物13を含む分画を一緒にし、真空下で蒸発させた(40±5℃浴温)。残留物を酢酸エチル(3.1kg)に溶解し、5%w/w重炭酸ナトリウム溶液(9.3kg)で洗浄し、水性媒体のpHが≧8であることを確保した。酢酸エチル相を真空下で蒸発させた(浴温40±5℃)。ボウルの内容物から試料を採取して、分析し保持した。予想収量:182~207g(71~81%)。
【0113】
化合物16の合成
化合物13(211g、76.5mmol、1.00eq.)が入ったBuchi製ボウルに乾燥ジクロロメタン(2.5kg)を投入し、加熱せずに溶解するまで回転させた。乾燥ジクロロメタン(200g)中の(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)4-アセチルスルファニルブタノエート(25.8g、99.4mmol、1.30equiv)の溶液をBuchi製ボウルに加えた。ボウルを環境温度で1時間回転させ、続いて真空下、40±5℃の水浴温度で濃縮した。トルエン(0.8 kg)をボウルに加え、真空下、40±5℃の水浴温度で2回除去した。トルエン(0.8kg)を残留物に加えてそれを溶解させた。シリカゲル(557g)を反応容器に入れ、真空下、40±5℃の水浴温度で溶媒を除去した。Biotageシステムには、5Lサンプルインジェクションモジュール(SIM)を備えた150M KP-SILカートリッジを取り付けた。トルエン(10.1kg)およびアセトン(1.0kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバー(溶媒A)に移した。反応混合物を以下のように精製した:
a. 溶媒Aを、カラムを通して溶出させ、カラムを条件調整した。溶出液は廃棄した。
b. 乾燥負荷シリカゲルをSIMに移した。
c. トルエン(9.6kg)およびアセトン(1.5kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した(溶媒B)。
d. 溶媒Bを、カラムを通して溶出させ、溶出液は、5Lジェリー缶に集めた。
e. トルエン(53.6 kg)およびアセトン(12.2kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した(溶媒C)。
f. 溶媒Cを、カラムを通して溶出させ、溶出液は、5Lジェリー缶に集めた。
g. トルエン(8.4kg)およびアセトン(2.6kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した(溶媒D)。
h. 溶媒Dを、カラムを通して溶出させ、溶出液は、5Lジェリー缶に集めた。
i. トルエン(23.4kg)およびアセトン(9.2kg)を50L反応器に投入し、完全に混合し、次にBiotage溶媒リザーバーに移した(溶媒E)。
j. 溶媒Eを、カラムを通して溶出させ、溶出液は、5Lジェリー缶に集めた。
化合物16(合格基準≧90%の化合物16、2.5%を超える単一の不純物なし)を含む画分を一緒にし、真空下で(40±5℃浴温)蒸発させた。残留物をテトラヒドロフラン(4.4kg)に溶解し、真空下、40±5℃の水浴温度で濃縮した。ボウルの内容物から試料を採取して、分析し保持した。予想収量:169~192g(76~86%)。
【0114】
化合物17の合成
反応器を、開始する前に2.5L、3.5Lおよび3.9Lのレベルでマークを付け、真空コントローラを取り付けた。ジクロロメタンを、化合物16が140g入ったBuchi製ボウルに投入し、ReactorReady容器に移した。DCM(333g)を2回すすぐことにより、Buchi製ボウルの内容物をReactorReady容器に移した。エタノール(2.50kg)をReactorReadyに加えた。反応混合物を2.5Lマークまで濃縮した(標的真空250 mbar)。エタノール(1.58kg)をReactorReadyに加え、3.5Lマークまで濃縮した。反応物をエタノールで3.9Lマークまで希釈した。反応器の内容物を、部分真空を適用し、窒素で放出することにより、不活性ガス下に置いた。反応中、窒素の緩やかな還流を維持した。ヒドラジン一水和物(1.13kg、1.11L)を窒素雰囲気下、5L Reactor Ready容器に投入した。温度ランプを、初期温度20℃、最終温度60℃、50分間にかけて直線温度ランプ(0.8deg/min)、および、反応器の内容物に対する能動的制御に設定した。容器温度を60℃で45分間保持した。冷却ランプ温度を、-2deg/min、最終温度20℃に設定した。内容物を適当なHDPEジャグに排出させ、重量を測定した。等しい量を、FEP封入シール付きポリプロピレン遠心分離機容器8個に移した。各遠心分離機容器にエタノール(750g)を投入し、アンビエントで30分間攪拌した。容器を遠心分離した(5300RCF、15℃、30分)。容器の外側に残留するヒドラジンを、ドラフトから取り出す前に、アセトン、続いて水で容器の外側を洗浄することにより除去した。遠心分離容器内の上清をデカントし、残留ペレットを低エンドトキシン水(LE水)(1960g)に溶解し、5L Reactor Ready容器に移した。内容物を、1.5時間ごとに約15~20分間、分散チューブを用いて溶液を介して空気をバブリングしながら中速で攪拌した。次に、密閉容器内で20℃にて一晩攪拌した。IPCが、遊離五量体組成が3%(報告された全体の面積%)未満であることを示したら、反応は完了したと見なした。反応混合物に不溶性物質が存在する場合は、濾過(P3焼結ガラス製漏斗および5Lブフナーフラスコを使用)が必要であった。反応器の内容物は、2つのLyoguardトレイで凍結乾燥させた。棚温度を-0.5℃で16~20時間に設定し、次に乾燥するまで20℃に設定した。凍結乾燥された生成物をLE水(840g)に溶解し、6本の遠心分離ボトルに均等に分けた。アセトン(630g)を15分間撹拌した各容器に加えた。各容器にイソプロパノール(容器あたり630g)を加え、20分間撹拌を続けた。内容物を5300RCF、15℃で1時間遠心分離した。上清を廃棄し、各容器にLE水(140g)を加え、次にペレットが溶解するまでオービタルシェーカーを用いてアンビエントで混合物撹拌することにより、各ペレットを水に溶解させた。アセトン(630g)を各容器に加え、15分間攪拌した。イソプロパノール(容器あたり630g)を各容器に加え、20分間撹拌を継続した。内容物を5300RCF、15℃で1時間遠心分離した。上清を廃棄し、LE水(100g)を加え、次にアンビエントで攪拌することにより、各ペレットを水に溶解させた。溶液をLyoguardトレイに移し、ボトルをより多いLE水(それぞれ66g)ですすぎ、すすぎ液を同じトレイに移した。棚温度を-0.5℃で16~20時間設定し、次に乾燥するまで20℃で設定することにより生成物を凍結乾燥させた。凍結乾燥された生成物から試料を採取して、分析し保持した。Lyoguardトレイを二重に袋に入れ、ラベルを付け、冷凍庫(≦-15℃)に貯蔵した。凍結乾燥された生成物の効力は、qHNMRを用いて決定した。この操作により、粗ペンタ二量体17を得た。予想収量:26.1~35.5g(61~83%)。
【0115】
化合物17のアイデンティティーは、500MHzの装置を用いて1Hおよび13C NMRにより決定した。t-ブタノールの標準溶液をD2O中で25mg/mLで調製した。試料は、D2O中13mg/mLで調製し、基準溶液を試料に添加する。最終的な試験試料の組成は、10mg/mLのペンタ二量体および5mg/mLのt-ブタノールであった。1Hおよび13Cスペクトルを取得し、積分した。得られた化学シフトを理論上のシフトと比較して割り当てた。1H NMRおよび13C NMRスペクトルをそれぞれ図1および図2に示す。
【0116】
実施例5-粗ペンタ二量体の遊離塩基形態への変換
大型カラムにAmberlite FPA91(1.46kg;40g/gの粗ペンタ二量体-効力について補正されたもの)を投入した。10L Schottボトル中のLE水(8.00kg)にNaOH(320g)を添加することにより、1.0M NaOHの溶液8Lを調製した。この溶液を1時間にわたってAmberlite樹脂に通過させた。LE水(40.0kg)をAmberlite樹脂に通過させた。該樹脂を、フロースルーで<8.0のpHを達成するまで、追加のLE水(約10kgの一定分量)で流し出した。Lyoguardトレイに貯蔵した粗ペンタ二量体(49g、PN0704)を環境温度まで温めた。LE水(400g)を、粗ペンタ二量体(49g)を含むLyoguardトレイに加え、完全に溶解した後、1L Schottボトルに移した。トレイをさらにLE水(200g)を投入してすすぎ、これらの洗浄液をSchottボトルの内容物に添加した。粗ペンタ二量体溶液を樹脂の上部に注意深く注いだ。1L SchottボトルをLE水(200g)ですすぎ、これを樹脂に負荷した。Amberliteタップを開いて、粗ペンタ二量体溶液を約5分間にわたってゆっくりと樹脂に移させた。タップを停止し、材料物質を樹脂上に約10分間置いた。LE水を樹脂の上部に注いた。タップを開き、LE水で溶出させ、500mLの約16画分を集めた。各画分をTLC炭化(EtOH中の10%H2SO4)により分析した。すべての炭水化物含有画分を一緒にし、0.2μmナイロンフィルター膜を用いたミリポアフィルターで濾過した。溶液を、5~6個のLyoguardトレイに均等に分けた。濾過容器をLE水(100g)ですすぎ、トレイに分けた。材料物質をトレイの中で凍結乾燥させた。棚温度を-10℃で16~20時間設定し、次に材料が乾燥するまで+10℃に設定した。LE水(150g)を、1つを除くすべてのLyoguardトレイに投入し、これを乾燥された材料物質が入っている残りの1つのトレイに移した。空のトレイのそれぞれをさらなるLE水(100g)を投入してすすぎ、このすすぎ容量を最終的なLyoguardトレイに加えた。最終的なLyoguardトレイを凍結乾燥させた。棚温度を-10℃で16~20時間設定し、次に材料が乾燥するまで+10℃に設定した。生成物から試料を採取して、分析し保持した。乾燥された材料をHDPEまたはPP容器に移し、-15℃以下で貯蔵した。予想収量:31~34g(86~94%)。
【0117】
二量体におけるジスルフィド結合のTCEP還元は、迅速であり、ほぼ化学量論的である。TCEPによる化学量論的還元の使用により、約2当量のグルコサミン五糖単量体を得た。具体的には、五糖二量体を、1モル当量のTCEPを含む反応緩衝液(50mM HEPES緩衝液(pH8.0))に溶解した。環境温度で1時間後、CAD検出を備えたHPLCによって反応を分析した。これらの条件下で、ペンタグルコサミン単量体への変換(約10分でのピーク)はほぼ完了した(約11.5分でのペンタグルコサミン二量体のピーク)-図4を参照すること。残りの未注釈のピークは、試料マトリックスに由来するものである。平衡化学式に基づき、添加されたTCEPは大部分がTCEP酸化物に変換され、残留TCEPは、コンジュゲーション反応への添加前の、二量体に戻る空気酸化を抑制した。簡単のために、入力二量体に基づき、これらの条件下で単量体への95%超の変換を仮定してグルコサミン五糖を添加することができる。
【0118】
ペンタ二量体のアイデンティティーは、500MHzの装置を用いて1Hおよび13C NMRにより決定した。t-ブタノールの基準溶液をD2O中で25mg/mLで調製した。試料をD2O中で13mg/mLで調製し、基準溶液を該試料に添加した。最終的な試験試料の組成は、10mg/mLのペンタ二量体および5mg/mLのt-ブタノールであった。1Hおよび13Cスペクトルを取得し、積分した。得られた化学シフトを、理論シフトとの比較によって割り当てた。1Hおよび13C NMRスペクトルをそれぞれ図1および図2に示す。
【0119】
実施例5-本発明のワクチン(化合物18)のために提供される実施例2のTTリンカーによる実施例4の五糖単量体への変換
実施例2のTT単量体リンカー中間体を、環境温度で4時間、増加する濃度の4~70五量体グルコサミンモル当量(2~35の五糖二量体モル当量)と反応させた。各滴定点からの粗コンジュゲートを、30kDa MWCO膜を通して分配することにより精製した。精製した各コンジュゲート試料を、タンパク質含有量、SEC-MALSによるペイロード密度、およびSECHPLCによる単量体/凝集体含有量について分析した。データは、50以上の五量体グルコサミン当量でのペイロード密度の飽和を示した。SEC HPLC分析に基づくと、五糖単量体の電荷が増加するにつれて凝集体含有量が増加し、30の五量体グルコサミン当量から開始して約4%の増加の定常状態レベルに達すると見えた。これらの結果に基づき、次にのコンジュゲーション反応のために選択された五糖二量体の電荷は、五量体グルコサミンの理論的電荷の50モル当量に対応する25モル当量であった。
【0120】
上記のようにして、化合物18のGMP合成に続く一連の試行合成3つを調製した。得られた生成物のそれぞれを、効力(ELISAアッセイによる)およびペイロード密度(五量体グルコサミン対破傷風トキソイドのモル比)について評価した。
【0121】
以下の表は、結果を提供するものである。
【表5】

【0122】
前述の説明は、単に本発明を説明するために記載されており、限定することを意味するものではない。本発明の精神および実体を組み込んだ記載された実施形態の改変は、当業者に起こり得るので、本発明は、特許請求の範囲およびその同等物の範囲内のすべての変形を含むと広く解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】