(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-09
(54)【発明の名称】アデノシン三リン酸(ATP)を含有する組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20221101BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20221101BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20221101BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/7076
A61P3/02
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515051
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020049417
(87)【国際公開番号】W WO2021046357
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522086825
【氏名又は名称】ティーエスアイ グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ラスマチェール,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ピッチフォード,リサ
(72)【発明者】
【氏名】バイアー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】コルブ,ラリー
(72)【発明者】
【氏名】アブムラド,ナジ
(72)【発明者】
【氏名】レッゲ,マシュー
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD23
4B018MD44
4B018ME14
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZC21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZC21
(57)【要約】
本発明は、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、若しくはアミノ酸などの栄養物質、又は薬物と組み合わされた場合に吸収促進剤として作用するアデノシン又はアデノシン三リン酸(ATP)を含む組成物を提供する。栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、若しくはアミノ酸などの栄養物質、又は薬物の生体利用度を改善するためにATP又はアデノシンを投与する方法が記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養物質の胃腸吸収及び全身利用を改善するための方法であって、有効量の少なくとも1つの栄養物質、及びアデノシン三リン酸(ATP)又はアデノシンを含む吸収促進剤を提供することを含む、方法。
【請求項2】
前記栄養物質が、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、又はアミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動物における栄養物質の生体利用度を増加させるための方法であって、前記動物に、少なくとも1つの栄養物質及び吸収促進剤を投与することを含み、前記吸収促進剤は、アデノシン三リン酸(ATP)又はアデノシンである、方法。
【請求項4】
前記栄養物質が、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、又はアミノ酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヒトにおける栄養物質の吸収を改善するための方法であって、前記ヒトに、吸収促進剤及び少なくとも1つの栄養物質を投与することを含み、前記吸収促進剤は、アデノシン三リン酸(ATP)又はアデノシンである、方法。
【請求項6】
前記栄養物質が、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、又はアミノ酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記栄養物質が、アミノ酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アミノ酸が、必須アミノ酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アミノ酸が、分岐鎖アミノ酸である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月5日に出願された米国特許仮出願第62/896,335号の優先権を主張するものである2019年11月25日に出願された米国仮特許出願第62/939,986号の優先権を主張するものであり、これらの仮特許出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、アデノシン-5’-三リン酸(ATP)を、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン(ビタミンK2など)、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と組み合わせて含む組成物、並びにATPと、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物との組み合わせを用いて、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の生体利用度を向上させる方法に関する。ATPは、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と共に投与されると、吸収促進剤として作用する。
【背景技術】
【0003】
ATP
アデノシン-5’-三リン酸(ATP)は、筋肉を含む組織のための化学的エネルギー源として以前から知られてきた。細胞内ATP濃度(1~10mM)は、細胞外濃度(10~100nM)とは対照的に非常に高く、したがって、赤血球などの細胞及び筋肉からのATPの放出は、厳密に制御されている。より最近では、ほとんどの細胞型で見られるプリン受容体を通して作用するATPの細胞外作用が明らかになってきた。血管拡張機能、痛覚低減機能、及び神経伝達共存伝達物質(neurotransmission cotransmitter)としての機能を含むATPのいくつかの細胞外生理学的機能が報告されてきた。重要なことには、筋肉中の血管ATPの少量で一過性の増加が、血管拡張及び筋肉への血流の増加を引き起こし得る。したがって、ATPが、特に激しいレジスタンストレーニング時に、筋肉への血流を増加させると、基質利用度が改善されて、代謝老廃物の除去がより促進されることになる。Ellis et al.は、最近、プリン作動性シグナル伝達及び神経伝達を通しての筋肉血流の増加におけるATPの役割を裏付ける研究のレビューを報告した。
【0004】
ATPは、心筋に対するATPの変力作用を有することが示されている。ATPの全身作用を裏付ける別の研究では、ウサギに対してATPを14日間経口投与したところ、末梢血管抵抗の減少、心拍出量の改善、肺抵抗の減少、及び動脈PaO2の増加という結果が得られたことが示された。
【0005】
ATPの分解の結果として得られるアデノシンも、プリン受容体を通してシグナル伝達剤として作用し得る、又はアデノシンデアミナーゼによって分解され得る。プリン受容体を通して作用するアデノシンは、本質的にATPの作用を模倣し得る。アデノシンを筋肉に注入すると、一酸化窒素形成の増加及びATPの注入で見られたものに類似の血管作用がもたらされる。
【0006】
反復高強度運動における疲労抵抗性は、運動選手が強く追い求めている属性である。このことは、トレーニング量の増加、さらにはホッケーなどの断続的スポーツ(intermittent sports)における持久力及び瞬発力の両方に当てはまる。疲労収縮の過程では、血流の適応が即時に発生して、力発揮能力の低下が回避される。骨格筋の酸素要求量と血流の増加とは、密接に結びついている。研究によって、「酸素センサー」として作用することによってこの応答を調節しているのは、赤血球であることが示唆されている。ATPは、赤血球によって運ばれており、運動中の筋肉領域の酸素が低下すると、赤血球が変形し、その結果、ATPの放出と平滑筋の内皮細胞への結合をもたらす一連のイベントが発生する。結合の結果、平滑筋の弛緩、及び続いて血流、栄養素、及び酸素送達の増加が発生する。具体的には、細胞外ATPは、骨格筋内での一酸化窒素(NO)及びプロスタサイクリン(PGI2)の合成及び放出の増加を直接促進し、したがって組織の血管拡張及び血流に直接影響を与える。このことは、ATPの動脈内注入及び外因性投与に応答して血管拡張及び血流が増加することを示唆する研究によって裏付けられている。血流のこのような変化は、グルコース及びO2の取り込みが増加することによって、骨格筋における基質プールの増加に繋がる可能性が高い。その結果、疲労収縮下にある細胞のエネルギー状態が維持される。
【0007】
ATPの生理学的作用のために、研究者は、ATPの経口補給の効果について調べてきた。Jordan et al.は、15日間にわたる1日あたり225mgの腸溶コーティングATPによって、総ベンチプレスリフティングボリューム(bench press lifting volume)(すなわち、セット数*レップ数*重量)、さらには群内での失敗までのセット1のレップ数(within-group set-one repetitions to failure)が増加する結果となったことを示した。より最近では、Rathmacher et al.は、15日間にわたる1日あたり400mgのATP補給によって、セット2の膝伸展運動(knee extensor bout)における最小ピークトルクが増加することを見出した。考察されたこれらの結果は、集合的に、ATP補給が、高疲労条件下でのパフォーマンスを維持し、トレーニングボリュームを増加させることを示している。
【0008】
ビタミンKは、血液の凝固を補助し、過剰な出血を防止するために重要である。ヒトにおける様々な生理学的プロセスでのビタミンK2(メナキノン)の役割を裏付ける証拠があり、それは、心血管の健康状態及び運動パフォーマンスの両方に影響を与え得る。ビタミンK2はまた、骨粗しょう症及びステロイドによる骨量減少に対しても有益であり得る。
【0009】
予想外なことに、及び驚くべきことに、ATPが、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の吸収促進剤として作用することが見出された。ATPは、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の生体利用度を増加させる。栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の吸収を高め、及び/又は生体利用度を増加させる組成物並びに方法が求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの目的は、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の生体利用度を増加させるのに用いるための組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の吸収促進剤として用いるための組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の生体利用度を増加させるための組成物を投与する方法を提供することである。
【0013】
本発明のこれらの及び他の目的は、当業者であれば、以下の明細書、図面、及び特許請求の範囲を参照することで明らかとなるであろう。
本発明は、これまでに直面してきた課題を克服することを意図している。その目的のために、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と共にATPを含む組成物が提供される。組成物は、それを必要とする動物に投与される。すべての方法は、ATP又はアデノシンなどの吸収促進剤を、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸などの栄養物質、及び/又は薬物と合わせて動物に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、全アミノ酸の吸収を示すグラフである。
【
図2】
図2は、必須アミノ酸の吸収を示すグラフである。
【
図3】
図3は、分岐鎖アミノ酸の吸収を示すグラフである。
【
図4】
図4は、ロイシンの吸収を示すグラフである。
【
図5】
図5は、イソロイシンの吸収を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ヒスチジンの吸収を示すグラフである。
【
図9】
図9は、メチオニンの吸収を示すグラフである。
【
図10】
図10は、フェニルアラニンの吸収を示すグラフである。
【
図12】
図12は、トリプトファンの吸収を示すグラフである。
【
図16】
図16は、アスパラギン酸の吸収を示すグラフである。
【
図26】
図26は、ATPあり及びなしでの血漿中K2濃度を示す。
【
図27】
図27は、ATPあり及びなしでの血漿中K2濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
驚くべきことに、及び予想外なことに、ATPが、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の生体利用度を増加させる吸収促進剤として作用することが見出された。本発明は、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と組み合わせたATPの組成物を含む。
【0016】
この組み合わせは、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の生体利用度の改善を求めるすべての年齢群に対して用いられ得る。
【0017】
上記に照らして、1つの実施形態では、本発明は、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と共に含まれる吸収促進剤、典型的にはATPを含む組成物を提供する。栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と共にATPを含めることによって、ATPなしで投与される栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と比較して、Cmax、Tmax、及び/又はAUCレベルの上昇が得られる。栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と共に吸収促進剤としてATPを含めることは、栄養素、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物の生体利用度を高めるのに有効である。ATPと、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物とを共投与することによって、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物をATPなしで投与した場合と比較して、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、及び/又は薬物のAUCの増加が引き起こされる。栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物と共にATPを投与すると、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物をATPなしで投与する場合と比較して、改善された薬物動態プロファイルが得られる結果となる。
【0018】
改善された生体利用度はまた、改善された生体利用度を呈する物質の効果も改善し得る。栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、及び/又は薬物の吸収を高めると、これらの物質の組織への利用度が改善され、したがって、これらの物質を組織へ届けるためのより素早く効率的な方法が得られる。
【0019】
本明細書で用いられる場合、「生体利用度」の用語は、一般に、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物が吸収されて、作用部位で利用可能となる速度及び程度を意味する。経口剤形の場合、生体利用度は、活性成分(すなわち、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物)が経口剤形から放出されて作用部位へ移動するプロセスに関連する。一般に、生体利用度は、経時で全身的に利用可能な栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、及び/又は薬物の量(すなわち、血中/血漿中レベル)である。
【0020】
本明細書で用いられる場合、Tmaxは、最大濃度までの時間であり、Cmaxは、観察された最大濃度である。曲線下面積(AUC)とは、血漿中濃度-時間曲線下の平均面積を意味し、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、及び/又は薬物の生体利用度の直接の尺度であると考えられる。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「吸収促進剤」とは、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物などの剤の粘膜を通しての吸収を、そのような吸収促進剤なしでの吸収に対して増加させるのに有効であるいずれの物質をも意味するものとする。
【0022】
ATP又はアデノシンは、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物を含む巨大分子の身体への吸収のための促進剤として作用する。アデニンヌクレオチド又はアデノシン及び無機リン酸塩は、本発明の範囲を含んでおり、アデノシン-5’-一リン酸、アデノシン-5’-二リン酸、アデノシン-5’-三リン酸、及びこれらの混合物、これらの医薬的に許容される塩、又はこれらのキレート、又はこれらの金属複合体、又はこれらのリポソームを含む。
【0023】
アデノシン-5’-三リン酸(ATP)
ATPの経口投与は、通常、アデノシン-5’-三リン酸二ナトリウムの形態である。本発明では、アデノシン-5’-三リン酸二ナトリウム又は経口投与に適するATP若しくはアデノシンのいずれかの形態が、顆粒形態に腸溶性を付与するのに適するいずれかの既知のコーティングと組み合わされ得る。
【0024】
当業者であれば、ATPが、約10mg~約80グラムの典型的な用量範囲が得られるように、送達及び/又は投与の形態に組み込まれてよいが、用途及び他の成分によっては、これよりも多い又は少ない量が望ましい場合もあることは認識される。
【0025】
ATPと、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、及び/又は薬物との組成物は、適切ないずれかの方法で動物に投与される。許容される形態としては、限定されないが、錠剤又はカプセルなどの固体、経腸溶液などの液体が挙げられる。また、組成物は、いずれかの医薬的に許容されるキャリアを用いて投与されてもよい。医薬的に許容されるキャリアは、本技術分野において公知であり、そのようなキャリアの例としては、様々なデンプン及び生理食塩水溶液が挙げられる。好ましい実施形態では、組成物は、食用形態で投与される。加えて、有効用量範囲は、1日に2~3回など、分割された用量として投与されてもよい。
【0026】
本発明は、栄養素及び医薬を送達する経腸栄養管と共に用いられてもよい。そのような栄養管は、胃、小腸、及び空腸領域に栄養素及び医薬を送達するために用いられ得る。栄養管は、経鼻栄養管、口から挿入される栄養管、又は経皮栄養管であってよい。経腸栄養は、連続、サイクル、ボーラス、及び断続的などの様々な方法によって投与されてよい。
【0027】
本発明は、Ensure、IsoPure、Boost、Glucema、Jevity、Osmolite、又は他の栄養補助液体などの、栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、及び/又はアミノ酸を含有する経口栄養製品と共に用いることができる。
【0028】
ATPは、任意の形態で組成物中に存在する。本発明におけるATPの範囲は、約10ミリグラム~約80グラムの量のATPを含む。好ましい実施形態では、ATPの範囲は、約100ミリグラム~約1.6グラムである。
【0029】
組成物が食用形態で経口投与される場合、組成物は、好ましくは、栄養補助食品、食料品、又は医薬媒体の形態であり、より好ましくは、栄養補助食品又は食料品の形態である。組成物を含む適切ないかなる栄養補助食品又は食料品が、本発明の文脈の範囲内で用いられてもよい。当業者であれば、組成物は、その形態(栄養補助食品、食料品、又は医薬媒体など)にかかわらず、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂肪、糖、ビタミン、ファイトケミカル、ミネラル、及び/又は微量元素を含み得ることは理解される。
【0030】
組成物を栄養補助食品又は食料品として調製するために、組成物は、通常、栄養補助食品又は食料品中に組成物が実質的に均一に分布されるように組み合わされる又は混合される。別の選択肢として、組成物は、水などの液体中に溶解されてもよく、又は液体中に乳化されてもよい。
【0031】
栄養補助食品の組成物は、粉末、ジェル、液体であってよく、又は錠剤若しくはカプセルとされてもよい。
組成物を含む適切ないかなる医薬媒体が、本発明の文脈の範囲内で用いられてもよいが、好ましくは、組成物は、デキストロース又はスクロースなどの適切な医薬キャリアと組み合わされる。
【0032】
組成物が投与される頻度を算出する方法は、本技術分野において公知であり、本発明の文脈の範囲内で、適切ないかなる投与頻度が(例:1日あたり1回の6g用量又は1日あたり2回の3g用量)、適切ないかなる継続時間にわたって用いられてもよい(例:単一の用量が、5分間の継続時間にわたって若しくは1時間の継続時間にわたって投与されてもよく、又は別の選択肢として、複数の用量が、長い継続時間にわたって投与されてもよい)。ATPと栄養物質(栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及びアミノ酸を含む)及び/又は薬物との組み合わせは、数週間、数ヶ月間、又は数年間などの長い継続時間にわたって投与されてもよい。
【0033】
当業者であれば、ATPと栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、及び/又は薬物とが、請求される方法を実施するために同じ組成物で投与される必要がないことは理解される。言い換えると、ATPと栄養素、タンパク質、ペプチド、ビタミン、アミノ酸、ファイトケミカル、ミネラル、脂肪酸、及び/又は薬物との別々のカプセル、丸剤、混合物、液体などが、請求される方法を実施するために対象に投与されてもよい。
【0034】
ATPの適切ないかなる用量が、本発明の文脈の範囲内で用いられてもよい。適切な用量を算出する方法は、本技術分野において公知である。
実験例
以下の例は、本発明をさらに詳細に例証するものである。本発明の組成物が、本明細書の例で全般的に記載し、例証するように、様々な製剤及び剤形で合成可能であることは容易に理解される。したがって、本発明の方法、製剤、及び組成物の本発明で好ましい実施形態の以下のより詳細な記述は、請求される本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、それは単に、本発明において好ましい本発明の実施形態の代表例である。
【0035】
例1
本実験の目的は、経口ATP補給が、混合タンパク質シェイクの摂取後の胃腸(GI)管からの栄養吸収に影響を与えるかどうかを特定することであった。
【0036】
方法
若年の健康な成人6人(男性3人女性3人)が、この実験に参加した。全員が、GIの疾患/症状を有さず、GIの機能又は栄養吸収を変化させることが知られているいかなる医薬又はサプリメントも摂取していなかった。
【0037】
この実験は、バランスの取れた処理順序によるプラセボ対照クロスオーバーデザインを用いた。試験は、7日間の間隔で分けた。
被験者は、一晩の絶食後の朝に研究室に到着した。ポリエチレン製カテーテルを挿入し、ベースライン血液サンプルを採取する。
【0038】
参加者は、400mgのATP又はプラセボカプセルを、4オンスの水と共に摂取した。
サプリメントカプセル摂取の10分後に、参加者は、20gのタンパク質、1.5gのHMB、及び5gのスクロースを含有する10オンスのヴィーガンタンパク質シェイクを摂取した。
【0039】
シェイクの摂取後、15、30、45、60、75、90、120、150、及び180分に、血液サンプルを採取した。
血漿を分離し、アミノ酸レベルの分析用に凍結した。
【0040】
結果
全アミノ酸を示す
図1では、ATPがC
max(5%)及びAUC(7%)を増加させていた。未調整t検定に基づいて、全アミノ酸の変化(ΔTAA)は、すべての時間点において、ATP補給を行った方が高い。
【0041】
必須アミノ酸を示す
図2では、未調整t検定に基づいて、必須アミノ酸の変化(ΔEAA)は、60分~180分の時間点において、ATP補給を行った方が高い。
分岐鎖アミノ酸を示す
図3では、未調整t検定に基づいて、分岐鎖アミノ酸の変化(ΔBCAA)は、120分において、ATP補給を行った方が高い。
【0042】
個別のアミノ酸に対するAUCについては、ATPは、以下のアミノ酸の場合にAUCを増加させた。
- グルタミン(10%、p=0.02)(
図20)
- シトルリン(13%、p=0.06)(
図17)
- アスパラギン(20%、p=0.04)(
図15)
- アラニン(19%、p=0.07)(
図13)
個別のアミノ酸
各個別のアミノ酸のプロットを、
図4~
図25に示す。これらは、ベースラインからの変化として表される(青色=プラセボ、橙色=ATP)。
【0043】
ATPは、混合タンパク質シェイクの摂取後3時間にわたって全アミノ酸の利用度を増加させた。生体利用度の増加が示された個別のアミノ酸は、グルタミン、アスパラギン、アラニン、及びシトルリンを含む。いかなる特定の理論にも制限されるものではないが、これは、ATPが選択されたアミノ酸の胃からの取り込みを高めること、及び/又はATPが選択されたアミノ酸の循環からのクリアランスを阻害することに起因して発生している可能性がある。ATPは、腸細胞中のグルタミン輸送体に影響を与えて、グルタミン、アスパラギン、アラニン、及びシトルリンの吸収増加を引き起こしている可能性がある。
【0044】
データから、ATPが、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、アラニン、及びシトルリンを含むある特定のアミノ酸の吸収促進剤として作用することが示される。ATPを、これらのアミノ酸の有益性のために投与されるいずれかの組成物に添加することで、これらのアミノ酸の生体利用度が改善される。例えば、米国特許第6,031,000号には、疾患に伴う消耗(老化に伴う筋消耗を含む)の治療、トリグリセリドの血清中レベルの低下、血清中ウイルス量の低下、及び脂肪の再分布のために、β-ヒドロキシ-β-メチルブタン酸(HMB)を、グルタミンを含む少なくとも1つのアミノ酸と共に投与することが記載されている。この特許の組成物及び組成物の使用方法にATPを加えることによって、組成物中のアミノ酸の生体利用度が改善される。Juvenは、グルアミン、アルギニン、及びHMBを含有する、創傷の治癒、並びに除脂肪体重の増加及び維持のために用いられる製品である。このタイプのアミノ酸含有製品にATPを添加することで、これらの製品中のアミノ酸の生体利用度が改善される。
【0045】
グルタミンは、代謝ストレスの場合、重篤な外傷、下痢、炎症性腸疾患、及び外科手術に起因する胃腸機能障害、化学療法若しくは放射線に起因する重篤な火傷又は傷害、吸収不全状態の場合(クローン病など)、急性外傷及び創傷治癒に用いられることが示されてきた。ATPなどの吸収促進剤をグルタミン含有組成物に添加することで、グルタミンの生体利用度の改善、及びグルタミンの全身利用の改善が得られる結果となる。
【0046】
アルギニンは、鎌状赤血球症での肺高血圧症の影響の治療若しくは軽減、創傷治癒、腎機能の改善、免疫及びホルモン機能の維持、動脈の拡張及び緩和、心臓動脈の血流改善、動脈閉塞、胸部痛、及び冠動脈疾患の症状改善、勃起不全の改善、血圧の低下、並びに高血圧の改善に有用であることが示されてきた。ATPなどの吸収促進剤をアルギニン含有組成物に添加することで、グルタミンの生体利用度の改善、及びアルギニンの全身利用の改善が得られる結果となる。
【0047】
例2
本実験の目的は、ATP及びK2補給の、個々の及び組み合わせての効果を評価することであった。
【0048】
方法
合計で11人の被験者(男性6人女性5人;年齢20~30歳)が、全実験期間を完了した。処理剤を、ラテン方格の順序デザインによる二重盲検、クロスオーバーデザインで投与して、処理順序による交絡因子の影響を最小限に抑えた。参加者を、半無作為に処理順序に割り当て、少なくとも1人の男性参加者と1人の女性参加者を各順序に割り当てて、性別によるいかなる交絡因子の影響をも最小限に抑えた。
【0049】
各実験期間の過程で、参加者は、15日間にわたり、4つのサプリメントのうちの1つを摂取した。
- ATP(400mg/日)
- K2(200μg/日)、メナキノン-7として(NOW(登録商標)MK-7、MenaQ7(登録商標)含有)
- ATP(400mg/日)+K2(200μg/日)
- プラセボ
各補給期間の前後で、血清中K2濃度、カルボキシル化/低カルボキシル化オステオカルシン比(K2機能のマーカー)、並びに臨床的化学及び血液学の測定のために、血液サンプルを採取した。
【0050】
結果
【0051】
【0052】
サプリメントのコンプライアンスは、94±2%であった。全参加者は、すべての期間にわたって提供された用量の≧73%を摂取した。
血液サンプルを、K2レベルについて分析した。平均血清中K2レベルは、15日間のK2補給後で、1.08±0.25ng/mLであり、15日間のK2+ATP補給後で、2.29±0.49ng/mLであった(p<0.05)。2人の参加者は、いずれの処理期間の過程でも、K2の血清中での蓄積を見せなかった。ATP及びK2を一緒に摂取することで、K2の生体利用度が向上する。
【0053】
安全性の分析のために、血液サンプルを、臨床的化学及び血液学について分析した。いくつかの小さい差異は見られたものの、すべて小さいものであり、臨床的に関連性のあるものはなかった。サプリメントのいずれについても、有害な影響は見られなかった。
【0054】
補給後の値を
図26~27に示す。
図26では、メナキノン-7(K
2 MK-7)としてのビタミンK
2の血漿中レベルを、400mg/日のATPあり又はなしでの200μg/日のK
2 MK-7による15日間の補給前後で、LC/MS/MSによって測定した(n=9)。15日間の補給後、平均血漿中K
2 MK-7レベルは、ATP+K2補給後の場合、K
2補給単独に対して113%高かった。データは、平均+SEとして示し、*は、K2とATP+K2との間での統計的有意差ありを示す(p<0.05)。
【0055】
図27では、メナキノン-7(K
2 MK-7)としてのビタミンK
2の血漿中レベルを、400mg/日のATPあり又はなしでの200μg/日のK
2 MK-7による15日間の補給前後で、LC/MS/MSによって測定した(n=9、線は個々の被験者を表す)。15日間の補給後、メナキノン-7(K
2 MK-7)としてのビタミンK
2の血漿中レベルは、ATP+K2補給後の場合、8/9の被験者でK
2補給単独に対して高かった。
【0056】
ビタミンK2サプリメントを400mg/日のATPと共に摂取した場合に、ビタミンK2サプリメントをプラセボカプセルと共に摂取した場合と比較して、平均ビタミンK2レベルがほぼ2倍高かったことから、ATP+ビタミンK2の組み合わせは、K2の生体利用度を改善する。
【0057】
上記の記述内容及び図面は、本発明の例示的な実施形態を含む。本明細書で述べる上記の実施形態及び方法は、当業者の能力、経験、及び好みに基づいて、変動してもよい。方法の工程の特定の順序での単なる列挙は、方法の工程の順序に対するいかなる制限も構成するものではない。上記の記述内容及び図面は、単に本発明を説明し、例証するものであり、本発明は、請求項がそのように限定されない限りにおいて、それに限定されない。本開示内容を前にした当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本開示に改変及び変更を成すことができるであろう。被験者及び動物の用語は、本出願全体を通して交換可能に用いられ、一方の用語又は他方の用語に限定されるものではまったくない。
【国際調査報告】