(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】加圧水冷原子炉の使用済み核燃料の輸送および保管用の容器カバー
(51)【国際特許分類】
G21F 5/008 20060101AFI20221102BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20221102BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G21F5/008
G21C19/32 060
G21F9/36 501C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020573501
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 RU2019000245
(87)【国際公開番号】W WO2020197429
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520514757
【氏名又は名称】エヌエフエス ロジスティクス,ジョイント - ストック カンパニー(エヌエフシーエル ジェイエスシー)
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルデーエフ アンドレイ ヴィクトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフ アンドレイ ヴァレレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】レペシュキン アレクセイ ユレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ エフゲニー ドミートリエヴィチ
(57)【要約】
加圧水反応器の使用済み核燃料の輸送および保管用の容器を収容するための容器カバーであって、ベースと、ベース上において高さが固定された複数のスチールディスクと、スチールディスク間に相互に等間隔に配置された複数のアルミニウムディスクと、スチールディスクとアルミニウムディスクを接続する複数の垂直固定要素と、を含み、各ディスクには、その軸に対して内側の列を構成する2つの穴と外側の列を構成する8つの穴が開けられており、各穴にチャネルが設けられ、各垂直固定要素は、各ディスクの外周に沿って配置され、容器カバーが一つのセクションで構成され、追加の複数の垂直固定要素のそれぞれが、各ディスクにおける内側の穴の列と外側の穴の列との軸線間の円周に沿って配置され、各穴と各チャネルは、丸い形状に形成され、ベースには、キャニスター用の溝とフックが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水反応器の使用済み核燃料の輸送および保管用の容器を収容するための容器カバーであって、
ベースと、
ベース上において高さが固定された複数のスチールディスクと、
スチールディスク間に相互に等間隔に配置された複数のアルミニウムディスクと、
スチールディスクとアルミニウムディスクを接続する複数の垂直固定要素と、
を含み、
それぞれのディスクには、その軸に対して2列の穴として内側の列を構成する2つの穴と外側の列を構成する8つの穴がそれぞれ開けられており、各穴にチャネルが設けられ、
各垂直固定要素は、各ディスクの外周に沿って配置され、
容器カバーが一つのセクションで構成され、
追加の複数の垂直固定要素のそれぞれが、各ディスクにおける内側の穴の列と外側の穴の列との軸線間の円周に沿って配置され、
各穴と各チャネルは、使用済み燃料アセンブリ用のキャニスターを配置する可能性を有する丸い形状に形成され、
ベースには、キャニスター用の溝とフックが設けられていること
を特徴とする容器カバー。
【請求項2】
さらに、追加のスチールディスクを備え、当該スチールディスクが前記アルミニウムディスクから等距離にあることを特徴とする請求項1に記載の容器カバー。
【請求項3】
前記アルミニウムディスクと前記スチールディスクとが前記ベース上で前記ベースから数えて次のような枚数、すなわち4-1-4-1-3-1-3-1-3-1-3-1になるように交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の容器カバー。
【請求項4】
前記垂直固定要素が繋ぎ材の形態で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧水反応器(VVER、ロシア型加圧水型原子炉)の燃料集合体の輸送および一時的貯蔵のための容器のカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に最も近い先行技術は、ベースと、ベース上で高さ方向に固定配置される複数のスチールディスクと、互いに等距離にあるスチールディスク間に配置される熱放散ディスクと、スチールおよび熱放散ディスクをカバーセクションに接続する垂直固定要素を含む容器カバーである。各ディスクには、その軸に対して2列の穴が開けられ、その各穴にパイプが取り付けられ、ラックがディスクの外周に沿って配置される。
【0003】
既知の容器カバーでは、中央のサポートパイプがベースに溶接されている。スチールディスクと熱放散ディスクは、少なくとも2つのセクションを形成している。それぞれのセクションは、上部と下部の2つのスチールディスクで構成されている。それらは垂直固定要素、この場合は、ラックによって接続されている。スチールディスク間に、少なくとも5つの熱放散ディスクとアルミニウム合金のスペーサースリーブが取り付けられている。
【0004】
上記の各セクションは相互に、中央のサポートパイプによってベース上で高さ方向に固定されている。
【0005】
そのサポートパイプの軸に対して第1の列には6本のパイプが取り付けられ、第2の列には、12本のパイプが取り付けられている。
【0006】
容器カバーの組み立ては、次のようにして行われる。
【0007】
ベース上に、上部に溶接された中央のサポートパイプと、下部スチールディスクがインストールされる。スチールラックがこのディスクにねじ込まれ、それぞれの熱放散ディスクの間にスリーブが介在される。熱放散ディスクの六角形の穴には、六角形のパイプが取り付けられる。上部スチールディスクがアセンブリ全体を覆うようになり、カバーの一つのセクションが形成される。そのセクションのラックへの上部ディスクの締め付けは、次のセクションの下部スチールディスクにスチールラックをねじ止めすることにより行われる。このプロセスは、最上部のセクションまで繰り返される。保護ディスクは上部のスチールディスクの上に取り付けられ、最後のセクションの支柱にボルトで固定される。中央のサポートパイプには、機器を取り扱うためのヘッドが取り付けられる。
【0008】
既知のカバーは、18個の調整済み使用済み燃料アセンブリ(SFA)の輸送および保管用に設計された輸送パッケージコンテナ(TUK)で使用される。しかし、調整済みの使用済み燃料アセンブリの輸送に加えて、VVERリアクターからの標準以下の使用済み燃料アセンブリを輸送する必要もある。
【0009】
標準以下の使用済み燃料アセンブリの輸送中、より深刻な事故の結果のリスクが高まる。したがって、TUKの設計では、損傷したアセンブリの輸送の安全性を最大限に確保する必要がある。
【0010】
先進型のVVERリアクターの使用済み燃料アセンブリ用に新しいTUKを作成する必要があるのは、取扱いが難しい核、放射、および熱特性によるものである。これに関連して、標準以下の使用済み燃料アセンブリを輸送するためのそのようなTUKの容器カバーは、その変更後にのみ使用することができる。
【0011】
RF用のVVER-1000/1200タイプのTUKリアクターの寸法は、既存の循環方式によって制限されることも考慮に入れる必要がある。したがって、ある量の使用済み燃料アセンブリに対応するカバーは、既存の構成の輸送パッキングセットに適合しなければならない。 既存の寸法のカバーに可能な限り最大の使用済み核燃料を配置するには、使用済み燃料アセンブリ間の距離を短くする必要がある。
【0012】
TUKの既存の寸法を考慮して、放射線安全性を計算すると、運用担当者の放射線負荷に関して輸送される標準以下の使用済み燃料アセンブリの最大数は10であり、標準以下の使用済み燃料アセンブリの輸送に対する安全要件の増加は、プロトタイプの次の主な欠点を浮き彫りにする。
【0013】
複数のセクションが存在する場合は、セクション間を移動(ロード/アンロード)する際の係合や機械的損傷の可能性を排除するために、チャネル(パイプ)の位置合わせを確実にするためにセクションを互いに正確にドッキングする必要がある。
【0014】
さらに、計算によると、選択した容器カバー内の使用済み燃料アセンブリからのエネルギー放出は不均一に分布しており、中央が最大で周辺が最小になっている。したがって、設計された既知のセクションを上下に配置して使用しても、カバーの高さ全体に沿って使用済み燃料アセンブリから均一に熱が除去されることは保証されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の技術的問題は、原子炉からの標準以下の使用済み燃料アセンブリの最大数(10個)の輸送および貯蔵である。より具体的には、VVER-1000/1200タイプの容器カバーにおいて、TUKの寸法に適合し、輸送の安全パラメーター、特に放射線安全性、核安全性、使用済み燃料アセンブリからの熱除去を保証することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって本発明は、加圧水反応器の使用済み核燃料の輸送および保管用の容器を収容するための容器カバーであって、ベースと、ベース上において高さが固定された複数のスチールディスクと、スチールディスク間に相互に等間隔に配置された複数のアルミニウムディスクと、スチールディスクとアルミニウムディスクを接続する複数の垂直固定要素と、を含み、それぞれのディスクには、その軸に対して2列の穴として内側の列を構成する2つの穴と外側の列を構成する8つの穴がそれぞれ開けられており、各穴にチャネルが設けられ、各垂直固定要素は、各ディスクの外周に沿って配置され、容器カバーが一つのセクションで構成され、追加の複数の垂直固定要素のそれぞれが、各ディスクにおける内側の穴の列と外側の穴の列との軸線間の円周に沿って配置され、各穴と各チャネルは、使用済み燃料アセンブリ用のキャニスターを配置する可能性を有する丸い形状に形成され、ベースには、キャニスター用の溝とフックが設けられていることを特徴とする。
【0018】
さらに、追加のスチールディスクを備え、当該スチールディスクが前記アルミニウムディスクから等距離にあるとしても良い。
【0019】
また、前記アルミニウムディスクと前記スチールディスクとが前記ベース上で前記ベースから数えて次のような枚数、すなわち4-1-4-1-3-1-3-1-3-1-3-1になるように交互に配置されているとしても良い。
【0020】
さらに、前記垂直固定要素が繋ぎ材の形態で形成されているとしても良い。
【0021】
上記の構成において技術的な結果としては、標準以下の燃料を輸送する際のVVERリアクターの輸送パッケージングセットの既存のカバーの寸法を維持し、輸送の安全パラメーター、特に放射線、核の安全性、使用済み燃料アセンブリからTUK壁への熱除去を確保し、容器カバーの保守性を向上させることができる。
【0022】
そして、使用済み核燃料アセンブリ用の密閉キャニスター(従来の技術で知られている)を容器カバーのチャネルに設置する機能により、放射性物質が環境に拡散することなく、標準以下の使用済み燃料アセンブリをTUKに輸送できる。これにより、使用済み核燃料の輸送と保管の安全要件が保証される。
【0023】
また、容器カバーの底にある、キャニスターのための丸い形状のチャネル、溝、フックにより、キャニスターを容器カバーに設置することができる。
【0024】
さらに、一つのセクションで構成された容器カバーは、設計を簡素化し、チャネルの穴の位置合わせを確実にし、高さに沿ってスチールディスクと熱放散ディスクが均一に分布するため、使用済み燃料アセンブリからの熱除去が改善される。
【0025】
また、垂直固定要素の追加の列が中央パイプに置き換わり、最適な数の標準以下の使用済み燃料アセンブリをそれらの間の距離を縮めて配置できるようになり、既存のTUKの寸法を維持し、操作中および緊急時に容器カバーに必要な強度特性を提供する。
【0026】
また、各ディスクを繋ぎ材の形で互いに固定するための垂直要素の実装は、垂直圧縮力のためにカバーセクションをその高さ位置でより固定させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は図面によって説明される。
【0029】
容器カバーは、ベース(支持ディスク)1、熱放散アルミニウムディスク2、中間ディスク3、密閉キャニスター用のチャネル4、垂直固定要素、ここでは繋ぎ材5および6で構成される金属構造である。
【0030】
ベース1は、耐食鋼製の溶接構造を有し、容器カバーの支持要素として作用する。ベース1上にはキャニスターを取り付けるための溝7とフック8が設けられている。フック8は、例えば、キャニスターにあるキーが嵌合する穴の形で溝7内に形成され、その溝の中心からオフセットされている。
【0031】
容器カバーには、追加のスチールディスク3を取り付けることができる。ディスク2と3は、特定の順序で互いに等距離に配置されており、ディスク2と3には、それらの軸に対して円形の複数の穴が2列形成されている。内側の列は2つの穴があり、外側の列は8つの穴がある。各穴には、ボロン鋼製のチャネル4(パイプ)が取り付けられており、各チャネルは、使用済み燃料アセンブリが入った密閉キャニスターを配置できるようになっている。チャネル4は、密閉キャニスターを機械的損傷から保護する。
【0032】
アルミニウムディスク2は、安全性の問題を同時に解決し、使用済み燃料アセンブリからの熱除去機能を果たす。中間ディスク3は耐食鋼製である。
【0033】
スチールディスク3とアルミニウムディスク2の間に、アルミニウム合金のスリーブ9が取り付けられている。容器カバーのすべての部分を単一セクションに組み立てることは、ディスク2と3のそれぞれごとに、その周囲に沿って、および内側の穴の列と外側の穴の列との軸線(axis)間の円周に沿って配置された繋ぎ材5および6によって保証される。繋ぎ材5、6は鋲(stud)であり、下端が支持ディスク(ベース)1にねじ込まれ、上端がナット10で固定されている。
【0034】
容器カバーは、次のようにして組み立てが行われる。
【0035】
繋ぎ材5、6が容器カバーの支持要素である支持ディスク1にしっかりとねじ止めされる。さらに、スリーブ9、ディスク2および3のそれぞれが、繋ぎ材5および6に取り付けられる。スリーブ9は、容器カバーのディスク2と中間ディスク3の間に取り付けられる。ディスク2と3の交互の取り付け順は、支持ディスク1から数えて次のような枚数、すなわち4-1-4-1-3-1-3-1-3-1-3-1枚になるように交互に配置されている。ディスクのこの配置は、使用済み燃料アセンブリからの良好な熱除去を提供する。さらに、ディスク2および3の各穴に、10個の密閉キャニスター用のそれぞれのチャネル4が通されている。さらに、繋ぎ材5、6および最後のスチールディスクには、スリーブ9が取り付けられ、構造体全体がナット10で固定されることで、容器カバーの一つのセクションが形成される。
【0036】
密閉キャニスターが容器カバーに対して出し入れする操作は以下のとおりである。
【0037】
リロードマシンと特別なグリッパーの助けを借りて、標準以下の使用済み燃料アセンブリを有する密閉キャニスターが容器カバーのチャネル4内に案内され、停止するまで下降させられる。この場合、キャニスター(キー)の底部にあるロックが、ベース1の底部にある穴の形の溝に入り込む。これにより、輸送中およびリロードマシンのグリッパーで作業するときにキャニスターが軸を中心に回転しないようになる。次に、グリッパーとキャニスターを外す。他のすべてのキャニスターは、容器カバーのチャネルに一つずつ装填される。密封キャニスターの取り外しは、逆の順序で行われる。
【0038】
使用済み燃料アセンブリ用の密閉キャニスターを容器カバーのチャネル4内に取り付けることができるため、放射性物質を環境に拡散させることなく、標準以下の使用済み燃料アセンブリをTUKに輸送できる。これにより、使用済み核燃料の輸送と保管の安全要件が保証される。
【0039】
各チャネルの丸い形状、容器カバーのベースにあるキャニスター用の溝7およびフック8により、キャニスターを容器カバー内に配置し、操作中のキャニスターの損傷を排除できる。
【0040】
一つのセクションで構成された容器カバーは、設計を簡素化し、チャネル4の穴の位置合わせを確実にし、高さ方向に沿ってスチールディスクと熱放散ディスクが均一に分布するため、使用済み燃料アセンブリからの熱除去が改善される。
【0041】
繋ぎ材6の追加の列は、中央パイプの代替品であり、最適な数の標準以下の使用済み燃料アセンブリをそれらの間の距離を縮めて配置できるようにし、既存のTUKの寸法を維持し、操作中および緊急時にカバーに必要な強度特性を提供する。
【0042】
したがって、提案されたTUKは、既存のTUKの寸法に適合する容器カバーのコンテナにおいて、VVER-1000/1200リアクターからの最適な数(10個)の標準以下の使用済み燃料アセンブリの輸送と保管を保証するとともに、輸送安全パラメーター、特に放射線安全性、核安全性、およびSFAからの熱除去を保証する。
【国際調査報告】