(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】エネルギー採取システムおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
F03G 7/08 20060101AFI20221102BHJP
H02N 2/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F03G7/08 Z
H02N2/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544825
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 GB2020051765
(87)【国際公開番号】W WO2021019215
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338961
【氏名又は名称】カトリック テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KATRICK TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラユサム,カーティキヤン
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681BB08
5H681DD23
(57)【要約】
振動レンズが開示されている。この振動レンズは、それぞれが近位端および遠位端を有する少なくとも2つの集束プレートを含む。少なくとも2つの集束プレートの遠位端間の間隔は、少なくとも2つの集束プレートの近位端間の間隔よりも小さい。振動レンズは、振動エネルギーを発生源から圧電結晶などのエネルギー変換手段に伝達、収束、および集中させる。振動レンズはまた、熱ゆらぎを機械的変位に変換するバイメタル構造を含み得る。振動レンズは、振動および/または熱エネルギー採取システムでの使用に適している。有利なことに、振動レンズは、例えば、内燃機関のエネルギー効率を改善しつつ、振動減衰機構および/または断熱の必要性を軽減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの集束部材を含む振動レンズであって、前記少なくとも2つの集束部材がそれぞれ、振動源に取り付けるための近位端と、遠位端とを有し、前記少なくとも2つの集束部材は、これら集束部材間の隔たりが前記近位端から遠位端に向かって減少するように構成されていることを特徴とする振動レンズ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの集束部材はそれぞれ、前記近位端と遠位端との間に位置する第1の部分を含み、前記少なくとも2つの集束部材の第1の部分は、前記少なくとも2つの集束部材が前記遠位端において収束するように、互いに対して角度付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の振動レンズ。
【請求項3】
前記少なくとも2つの集束部材がそれぞれ、前記近位端に位置する第2の部分を含み、当該少なくとも2つの集束部材の第2の部分がほぼ平行である、請求項2に記載の振動レンズ。
【請求項4】
前記振動レンズがバックプレートをさらに含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項5】
前記少なくとも2つの集束部材の第2の部分が前記バックプレートに固定されている、請求項3に従属する請求項4に記載の振動レンズ。
【請求項6】
前記少なくとも2つの集束部材がそれぞれ、前記遠位端に位置する第3の部分を含み、当該少なくとも2つの集束部材の第3の部分がほぼ平行である、請求項3乃至5のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項7】
前記少なくとも2つの集束部材の前記第3の部分は、前記振動レンズのフォーカルポイントを規定する、請求項6に記載の振動レンズ。
【請求項8】
前記少なくとも2つの集束部材が真鍮を含む、請求項1乃至7のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項9】
前記少なくとも2つの集束部材が第1の層と第2の層とを含み、前記第1の層が前記第2の層に固定されている、請求項1乃至8のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項10】
前記第1の層は、前記第2の層とは異なる熱膨張係数を有する、請求項9に記載の振動レンズ。
【請求項11】
前記第1の層が真鍮を含み、前記第2の層が鋼を含む、請求項9または10に記載の振動レンズ。
【請求項12】
前記振動レンズがさらに1つまたは複数のばねを含み、当該1つまたは複数のばねが前記少なくとも2つの集束部材を接続している、請求項1乃至11のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項13】
前記振動レンズがさらに、前記少なくとも2つの集束部材のうちの1つまたは複数に取り付けられた1つまたは複数の重りを含む、請求項1乃至12のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項14】
前記振動レンズがさらに動的制御システムを具える、請求項1乃至13のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項15】
前記振動レンズが3つの集束部材を含む、請求項1乃至14のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項16】
前記集束部材は収束プレートまたは収束ロッドである、請求項1乃至15のいずれかに記載の振動レンズ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の振動レンズと、振動源と、エネルギー変換手段とを具えることを特徴とするエネルギー採取システム。
【請求項18】
前記振動レンズの近位端が前記振動源に固定されている、請求項17に記載のエネルギー採取システム。
【請求項19】
前記振動源が内燃機関である、請求項17または18に記載のエネルギー採取システム。
【請求項20】
前記エネルギー変換手段が前記振動レンズの遠位端に配置されている、請求項17乃至19のいずれかに記載のエネルギー採取システム。
【請求項21】
前記エネルギー変換手段が1つまたは複数の圧電結晶である、請求項20に記載のエネルギー採取システム。
【請求項22】
前記エネルギー変換手段は、1つまたは複数の磁石および1つまたは複数のコイルである、請求項20に記載のエネルギー採取システム。
【請求項23】
前記エネルギー採取システムがさらに、1または複数のバイメタルストリップを含む、請求項17乃至22のいずれかに記載のエネルギー採取システム。
【請求項24】
前記エネルギー採取システムがさらに、1または複数の振動チャンバをさらに具える、請求項17乃至23のいずれかに記載のエネルギー採取システム。
【請求項25】
前記振動チャンバが第1の面と第2の面とを有し、前記振動チャンバは、前記バイメタルストリップが前記振動チャンバの第1の面および第2の面に当たることができるように、前記バイメタルストリップの遠位端に対して寸法形成されている、請求項24に記載のエネルギー採取システム。
【請求項26】
振動レンズの製造方法であって、
振動源に取り付けるための近位端と、遠位端とを各々が有する少なくとも2つの集束部材を提供するステップと、
前記少なくとも2つの集束部材間の隔たりが前記近位端から前記遠位端に向かって減少するように、前記少なくとも2つの集束部材を配置するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記方法が、前記振動源の特性を特定するステップをさらに含む、請求項26に記載の振動レンズの製造方法。
【請求項28】
前記振動源の特性を特定するステップは、毎分回転数、騒音レベル、エンジンガス温度、出力パワー、トルク、および周囲温度、のパラメータのいずれかを定量化するステップを含む、請求項27に記載の振動レンズの製造方法。
【請求項29】
前記方法がさらに、前記振動源と共に使用するための前記振動レンズの最適なパラメータを決定するステップをさらに含む、請求項26乃至28のいずれかに記載の振動レンズの製造方法。
【請求項30】
前記振動レンズの最適なパラメータを決定するステップは、前記少なくとも2つの集束部材の最適な長さ、幅、および/または深さ;および/または前記少なくとも2つの集束部材の近位端間の最適な隔たり;および/または前記少なくとも2つの集束部材の遠位端間の最適な隔たり;および/または前記少なくとも2つの集束部材が収束する最適な距離;および/または前記少なくとも2つの集束部材に最適な1つまたは複数の材料;および/または前記少なくとも2つの集束部材の1つまたは複数の材料の最適な熱膨張係数を決定するステップを含む。請求項29に記載の振動レンズの製造方法。
【請求項31】
前記少なくとも2つの集束部材の最適な長さを決定することは、異なる長さの真鍮ロッドを前記振動源に取り付けて、当該振動源の動作範囲にわたる共振周波数を特定するステップを含む、請求項30に記載の振動レンズの製造方法。
【請求項32】
前記方法がさらに、周期的な温度変化の特性を特定するステップを含み得る、請求項26乃至31のいずれかに記載の振動レンズの製造方法。
【請求項33】
前記最適なパラメータを決定するステップは、前記少なくとも2つの集束プレートの第1の層および第2の層の深さ;前記第1の層の材料;および前記第2の層の材料を決定するステップを含み得る、請求項26乃至32のいずれかに記載の振動レンズの製造方法。
【請求項34】
前記第1の層が、前記第2の層とは異なる熱膨張係数を有する、請求項33に記載の振動レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー採取システムおよび製造方法に関する。特に、記載されたエネルギー採取システムは、自動車の内燃機関からエネルギーを採取するのに適している。
【背景技術】
【0002】
自動車に一般的に見られる内燃機関は、燃料を燃焼させ、生じるガスの膨張および圧力上昇によってピストンを駆動することで、化学エネルギーを所望の機械的エネルギーに変換する。内燃機関の効率は100%ではなく、主に熱エネルギーと振動エネルギーの形でエネルギーが失われる。実際、従来の自動車は通常、燃料からの化学エネルギーのうち、自動車を駆動するのに用いられるのは僅か10%~16%である。エンジン自体に加えて、例えば、トランスミッション、ブレーキ、さらには自動車の転がり抵抗などでもエネルギーは失われる。とはいえ、自動車のエネルギーロスのうち、エンジンは典型的に最大の63%を占める。
【0003】
上記の内燃機関や自動車には、多くの欠点がある。例えば、燃料消費量の増加により、走査の非効率性が環境への影響を大きくしている。燃料は通常、有限の資源である化石燃料から得られるため、化石燃料の枯渇率は高くなっている。さらに、非効率的なエンジンや自動車は、1マイルあたりのコストが大きくなる。
【0004】
さらに、この無駄なエネルギーは、内燃機関のエネルギー動作に悪影響を与える可能性がある。例えば、過度の振動は、エンジンのダメージや性能への影響を抑えるために、高価な振動減衰メカニズムの設置を必要とする場合がある。また、過剰な熱エネルギーは、エンジンの過熱を防ぐために、さらに高価で重い熱対策設備を必要とする場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様の目的は、当技術分野で知られているエネルギー採取システムの前述の欠点の1つまたは複数を除去するか、少なくとも軽減するエネルギー採取システムを提供することである。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも2つの集束部材を含む振動レンズが提供され、前記少なくとも2つの集束部材がそれぞれ、振動源に取り付けるための近位端と、遠位端とを有し、前記少なくとも2つの集束部材は、これら集束部材間の隔たりが前記近位端から遠位端に向かって減少するように構成されている。
【0007】
最も好ましくは、前記少なくとも2つの集束部材はそれぞれ、前記近位端と遠位端との間に位置する第1の部分を含み、前記少なくとも2つの集束部材の第1の部分は、前記少なくとも2つの集束部材が前記遠位端において収束するように、互いに対して角度付けられている。
【0008】
好ましくは、前記少なくとも2つの集束部材がそれぞれ、前記近位端に位置する第2の部分を含む。好ましくは、当該少なくとも2つの集束部材の第2の部分はほぼ平行である。
【0009】
最も好ましくは、前記振動レンズがバックプレートをさらに含む。前記少なくとも2つの集束部材の近位端は、前記バックプレートに固定され得る。前記少なくとも2つの集束部材の第2の部分は、前記バックプレートに固定され得る。
【0010】
好ましくは、前記少なくとも2つの集束部材はそれぞれ、遠位端に位置する第3の部分を含む。前記少なくとも2つの集束部材の第3の部分は、実質的に平行である。前記少なくとも2つの集束部材の第3の部分は、振動レンズのフォーカルポイントを規定する。
【0011】
好ましくは、前記少なくとも2つの集束部材は真鍮を含む。
【0012】
任意選択で、前記少なくとも2つの集束部材は、2以上の層および/またはコーティングを含む。前記2つ以上の層および/またはコーティングは、異なる振動特性および/または熱特性を示し得る。前記少なくとも2つの層および/またはコーティングは、異なる寸法、材料、密度、および/または粒子構造を含み得る。
【0013】
任意選択で、前記少なくとも2つの集束部材は、第1の層および第2の層を含む。前記第1の層は前記第2の層に固定されている。前記第1の層は、前記第2の層とは異なる熱膨張係数を有する。前記第1の層は真鍮を含み得る。前記第2の層は鋼を含み得る。
【0014】
任意選択で、前記振動レンズは、1または複数のばねをさらに含む。1または複数のばねは、少なくとも2つの集束部材を接続する。
【0015】
任意選択で、前記振動レンズは、少なくとも2つの集束部材のうちの1つまたは複数に取り付けられた1つまたは複数の重りをさらに含む。
【0016】
任意選択で、前記振動レンズは、動的制御システムをさらに含む。動的制御システムは、動作中に振動レンズの振動特性を変化させる。動的制御システムは、ばねの剛性を調整してもよい。動的制御システムは、重りの位置および/または大きさを調整してもよい。
【0017】
任意選択で、前記振動レンズは、3つの集束部材を含み得る。
【0018】
最も好ましくは、前記集束部材は集束プレートである。あるいは、前記集束部材は集束ロッドである。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による振動レンズ、振動源、およびエネルギー変換手段を含むエネルギー採取システムが提供される。
【0020】
最も好ましくは、前記振動レンズの近位端は、振動源に固定されている。
【0021】
好ましくは、前記振動源は内燃機関である。
【0022】
最も好ましくは、前記エネルギー変換手段は、前記振動レンズの遠位端に配置される。好ましくは、前記エネルギー変換手段は、前記少なくとも2つの集束部材の第3の部分の間に配置される。
【0023】
好ましくは、前記エネルギー変換手段は、1つまたは複数の圧電結晶である。あるいは、前記エネルギー変換手段は、1つまたは複数の磁石および1つまたは複数のコイルである。
【0024】
任意選択で、前記エネルギー採取システムは、1つまたは複数のバイメタルストリップをさらに含み得る。
【0025】
任意選択で、前記エネルギー採取システムは、1つまたは複数の振動チャンバをさらに含み得る。
【0026】
任意選択で、前記振動チャンバは、第1の表面および第2の表面を含む。
【0027】
任意選択で、前記振動チャンバは、前記バイメタルストリップが振動チャンバの第1および第2の表面に衝突できるように、前記バイメタルストリップの遠位端に対して寸法決定される。前記振動チャンバは、前記バイメタルストリップの遠位端よりも大きい寸法である。
【0028】
本発明の第2の態様の実施形態は、本発明の第1の態様の好ましいまたは任意の特徴を実施するための特徴を含むことができ、またはその逆でもよい。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、振動レンズの製造方法であって、
振動源に取り付けるための近位端と、遠位端とを各々が有する少なくとも2つの集束部材を提供するステップと、
前記少なくとも2つの集束部材間の隔たりが前記近位端から前記遠位端に向かって減少するように、前記少なくとも2つの集束部材を配置するステップとを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0030】
最も好ましくは、この方法は、前記振動源の特性を特定するステップをさらに含む。
【0031】
好ましくは、前記振動源の特性を特定するステップは、毎分回転数、騒音レベル、エンジンガス温度、出力パワー、トルク、および周囲温度、のパラメータのいずれかを定量化するステップを含む。
【0032】
最も好ましくは、この方法は、前記振動源と共に使用するための振動レンズの最適なパラメータを決定するステップをさらに含む。
【0033】
好ましくは、前記振動レンズの最適なパラメータを決定するステップは、前記少なくとも2つの集束部材の最適な長さ、幅、および/または深さ;および/または前記少なくとも2つの集束部材の近位端間の最適な隔たり;および/または前記少なくとも2つの集束部材の遠位端間の最適な隔たり;および/または前記少なくとも2つの集束部材が収束する最適な距離;および/または前記少なくとも2つの集束部材に最適な1つまたは複数の材料;および/または前記少なくとも2つの集束部材の1つまたは複数の材料の最適な熱膨張係数を決定するステップを含む。
【0034】
任意選択で、前記少なくとも2つの集束部材の最適な長さを決定することは、異なる長さの真鍮ロッドを前記振動源に取り付けて、当該振動源の動作範囲にわたる共振周波数を特定するステップを含む。
【0035】
任意選択で、前記方法がさらに、周期的な温度変化の特性を特定するステップを含み得る。この特性は、周期的な温度変化の周期および振幅を含む。
【0036】
任意選択で、前記少なくとも2つの集束部材を提供するステップは、前記少なくとも2つの集束部材に2以上の層および/またはコーティングを提供するステップを含む。
【0037】
任意選択で、前記最適なパラメータを決定するステップはまた、2以上の層および/または少なくとも2つの集束部材のコーティングの最適な振動および/または熱特性を決定するステップを含み得る。
【0038】
任意選択で、前記最適なパラメータを決定することには、前記少なくとも2つの集束部材の2以上の層およびコーティングの寸法、および/または材料組成、および/または密度、および/または粒子構造を決定することを含み得る。
【0039】
任意選択で、前記最適なパラメータを決定することはまた、前記少なくとも2つの集束プレートの第1の層および第2の層の深さ、第1の層の材料、および第2層の材料を決定することを含み得る。
【0040】
任意選択で、前記振動レンズを提供するステップは、前記少なくとも2つの集束部材に第1の層および第2の層を提供することを含む。第1の層は、第2の層とは異なる熱膨張係数を有する。第1の層は、真鍮を含み得る。第2の層は、鋼を含み得る。
【0041】
本発明の第3の態様の実施形態は、本発明の第1および/または第2の態様の好ましいまたは任意の特徴を実施するための特徴を含むことができ、またはその逆でもよい。
【0042】
本発明の第4の態様によれば、バイメタルストリップおよびエネルギー変換手段を具える熱エネルギー採取システムが提供される。
【0043】
最も好ましくは、前記エネルギー変換手段は、振動チャンバを含み得る。前記バイメタルストリップの遠位端は、前記振動チャンバ内に配置される。
【0044】
好ましくは、前記振動チャンバは、第1の表面および第2の表面を具える。
【0045】
最も好ましくは、前記振動チャンバは、前記バイメタルストリップが前記振動チャンバの第1および第2の表面に衝突できるように、前記バイメタルストリップの遠位端に対して寸法決定されている。前記振動チャンバは、前記バイメタルストリップの遠位端よりも大きく寸法決定されている。
【0046】
最も好ましくは、前記第1および/または第2の表面は、1つまたは複数の圧電結晶を含み得る。前記バイメタルストリップは、前記振動チャンバの第1および/または第2の表面に位置する1つまたは複数の圧電結晶に衝突することができる。
【0047】
あるいは、前記エネルギー変換手段は、磁石とコイルを含み得る。磁石は、金属ストリップの遠位端に配置することができる。コイルは、磁石の中心に配置することができる。コイルは、バイメタルストリップの撓みによってコイルの中心内で磁石を動かすように、磁石に対して配向され得る。
【0048】
本発明の第4の態様の実施形態は、本発明の第1、第2、または第3の態様の好ましいまたは任意の特徴を実装するための特徴を含むことができ、またはその逆でもよい。
【0049】
本発明の第5の態様によれば、バイメタルストリップの製造方法であって、
周期的な温度変化の特性を特定するステップと、
前記周期的な温度変化で使用するためのバイメタルストリップの最適なパラメータを決定するステップと、
前記最適なパラメータに従って、第1の層と第2の層を具えるバイメタルストリップを提供するステップとを含む方法が提供される。
【0050】
好ましくは、周期的な温度変化の特性を特定するステップは、周期的な温度変化の振幅および/または周期を特定することを含み得る。
【0051】
好ましくは、前記最適なパラメータを決定するステップは、前記バイメタルストリップの最適な長さ、幅、および/または深さ;および/または前記第1の層および/または第2の層の最適な深さ;および第1層および/または第2層の最適な材料を決定することを含む。
【0052】
任意選択で、前記バイメタルストリップを提供するステップは、3以上の層を提供することを含み得る。3以上の層は、それぞれ異なる材料を含み得る。
【0053】
本発明の第5の態様の実施形態は、本発明の第1、第2、第3およびまたは第4の態様の好ましいまたは任意の特徴を実施するための特徴を含むことができ、またはその逆でもよい。
【0054】
本発明の第6の態様によれば、少なくとも2つの集束部材を含む振動レンズが提供され、前記少なくとも2つの集束部材はそれぞれ近位端および遠位端を有し、前記少なくとも2つの収束部材の遠位端間の隔たりは、前記少なくとも2つの集束部材の近位端間の間隔よりも小さい。
【0055】
本発明の第6の態様の実施形態は、本発明の第1、第2、第3、第4およびまたは第5の態様の好ましいまたは任意の特徴を実施するための特徴を含むことができ、またはその逆でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
ここで、例としてのみ、図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明する。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による振動レンズの斜視図を示す。
【
図3】
図3は、
図1の振動レンズを含む振動エネルギー採取システムの斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図3の振動エネルギー採取システムの概略断面図を示している。
【
図5】
図5は、(a)
図3の振動エネルギー採取システムの圧電結晶で発生する電圧と、(b)参照圧電結晶で発生する電圧とのプロットを示す。
【
図6】
図6は、
図1の振動レンズの代替の実施形態を提示している。
【
図7】
図7は、
図1の振動レンズのさらなる代替実施形態を示す。
【
図8】
図8は、
図1の振動レンズの製造方法のフローチャートを示す。
【
図9】
図9は、
図8の製造方法で使用される装置の斜視図を示す。
【
図10】
図10は、本発明によるバイメタルストリップの断面図と、有限要素モデリングから計算された22℃から150℃への温度変化に伴うバイメタルストリップの撓みを示す。
【
図11】
図11は、時間の関数としての
図10のバイメタルストリップの温度と撓みのプロットを示す。
【
図12】
図12は、
図10のバイメタルストリップを含む熱エネルギー採取システムの概略断面図を示す。
【
図13】
図13は、
図10のバイメタルストリップを含む代替の熱エネルギー採取システムの概略断面図を示す。
【
図15】
図15は、本発明による、振動エネルギーと熱エネルギーを組み合わせたエネルギー採取システムの概略断面図を示す。
【
図16】
図16は、本発明による、振動エネルギーと熱エネルギーを組み合わせた採取システムの代替例の概略断面図を示す。
【0057】
以下の説明では、明細書および図面を通じて同じ部品には同じ参照番号が付されている。図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の実施形態の詳細および特徴をよりよく説明するために、特定の部品の比率が誇張されている。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に、本発明の説明を
図1から
図16を参照して説明する。
【0059】
振動レンズ
図1および
図2は、振動レンズ1aを示す。振動レンズ1aは、バックプレート2と、2つの集束部材とを含む。集束部材は、第1の集束プレート3と、第2の集束プレート4との形態をとる。第1および第2の集束プレート3、4はそれぞれ、近位端5および遠位端6を有する。第1および第2の集束プレート3、4はそれぞれ、近位端5にある第2の部分8と遠位端6にある第3の部分9との間に位置する、長さγを有する第1の部分7を有する。
【0060】
第1および第2の集束プレート3、4の第2の部分8は、バックプレート2に固定されている。
図1に示すように、第2の部分8は、第2の部分8が溶接によってバックプレート2に固定されるように、バックプレート2と実質的に平行となって接触するように角度が付けられている。溶接に加えて、または溶接の代替として、固定手段は、接着剤、ナットとボルト、リベット、それらの組み合わせ、または任意の他の適切な代替の形態をとることができる。
【0061】
図2に見られるように、第1および第2の集束プレート3、4の第2の部分8は、距離aだけ離れた実質的に同じ配向でバックプレート2に固定されている。
【0062】
図2にも見られるように、第1および第2の集束プレート3、4の第1の部分7は、互いに向かって収束するように、バックプレート2に対して角度が付けられている。ここに記載の実施形態では、第1および第2の集束プレート3、4の第1の部分7は、第1および第2の集束プレート3、4の第2の部分8の中間(α/2)からバックプレート2の法線に沿った距離βに位置する点に向かって収束するように、バックプレート2に対して角度が付けられている。
【0063】
第1および第2の集束プレート3、4の遠位端6にある第3の部分9は、実質的に平行であり、好ましくはバックプレート2に垂直であるように角度が付けられ、振動レンズ1aのフォーカルポイントとして作用する。
【0064】
振動エネルギー採取システム
図3および4は、振動エネルギー採取システム10の一部としての振動レンズ1aを示している。振動エネルギー採取システムは、振動レンズ1aの他に、振動源11およびエネルギー変換手段12をさらに具える。
【0065】
図3および
図4に示すように、振動レンズ1aは、内燃機関の形態をとる振動源11に取り付けられている。振動レンズ1aのバックプレート2は、例えば、ナットとボルト、溶接、および/または他の適切な同等手段またはそれらの組み合わせによって、内燃機関11に固定されている。
【0066】
図4に明示するように、第1および第2の集束プレート3、4の第3の部分9の間には、1つまたは複数の圧電結晶の形態をとるエネルギー変換手段12が配置されている。圧電結晶12は電気部品13に接続されており、例えば、ケーブル14によって適切な電気負荷(図示せず)に導かれる。1つまたは複数の圧電結晶12は、内燃機関11から発生する振動エネルギーを有用な電気エネルギーに変換する。代替のエネルギー変換手段としては、ナノコイルと磁石の形態をとり得る。
【0067】
図5aは、振動レンズ1aの第1および第2の集束プレート3、4の第3の部分9の間に配置された圧電結晶12によって生成された、時間の関数としての電圧を示す。
図5aは、0.743Vの二乗平均平方根電圧を描いている。
図5bは、内燃エンジン11に直接取り付けられた参照圧電結晶(図示せず)によって生成された、時間の関数としての電圧を示す。
図5bは、0.003Vの二乗平均平方根電圧を描いている。第3の部分9の間の圧電結晶12は、参照圧電結晶の電圧よりも約248倍高い電圧を発生させている。
【0068】
その理由は、振動レンズ1aが、集束プレート3、4の近位端5から遠位端6に振動を伝達し、収束させ、集束させるためである。このように、各集束プレート3、4の近位端5がバックプレート2に固定され、遠位端6が自由に動いて圧電結晶12を作動させることから、集束プレート3、4はカンチレバーと同等と考えることができる。
【0069】
図1に明示されるように、集束プレート3、4は実質的に三角形である。集束プレート3、4の近位端5は三角形の底部に相当し、遠位端6は三角形の(切り欠かれた)先端に相当する。集束プレート3、4の三角形の形状により、機能性を維持しつつ、振動レンズ1aをバックプレート2から垂直距離βに収めるために必要なスペースを最小化することができる。
【0070】
図1から4に示す振動レンズ1aは真鍮から作られており、真鍮の比較的高密度によって振動レンズ1aを介した振動エネルギーの効率的な伝達が実現する。あるいは、振動レンズ1aは、振動エネルギーを伝達するのに適した他の金属、合金、またはセラミックなどの非金属材料からも作ることができる。
【0071】
追加または代替の特徴として、
図6の振動レンズ1bは、第1および第2の集束プレート3、4の間にばね15をさらに具える。振動レンズ1bは、複数のばね15を含んでもよいことが理解されよう。同様に、さらなる追加または代替の特徴として、
図7の振動レンズ1cは、第1の集束プレート3に取り付けられた重り16をさらに含む。この場合も、振動レンズ1cは、第1および第2の集束プレート3、4の両方または一方のみに配置された、等しいか等しくない重量の複数の重み16を含んでもよいことが理解されよう。さらなる代替案として、振動レンズ1は、ばね15と重り16の両方を含んでもよい。ばね15と重り16の両方が、振動レンズ1b、1cの共振周波数を減衰および/または変化させることによって振動レンズ1b、1cの振動特性を変化させ、これにより振動レンズ1b、1cの特性を最適化するメカニズムが提供される。
図6および7は、振動レンズ1b、1cがさらに、ばね15の剛性、および/または第1および/または第2の集束プレート3、4上の重り16の位置、および/または第1および/または第2の集束プレート3、4上の重量16の大きさを動的に調整するための動的制御システム17を具え得ることを示す。例えば、重り16は、動的制御システム17によってポンプで水を出し入れできる容器の形態をとることができる。動的制御システム17は、動作中に振動レンズ1b、1cの振動特性の変更を容易にする。
【0072】
さらなる代替例として、振動レンズ1a、1b、1cは、2より多いまたは少ない集束プレート3、4を含んでもよい。例えば、第1の集束プレート3のみを具える振動レンズ1a、1b、1cが、第1の集束プレート3の遠位端6に配置された圧電結晶12を、内燃機関11、より具体的には内燃機関ハウジングの突出部分に対して作動させることができる。逆に、3枚の集束プレート3、4を有する振動レンズ1a、1b、1cが2組の圧電結晶12を有し、1組が第1と第2の集束プレートの遠位端6の間に、もう1組の圧電結晶12が第2と第3の集束プレート間にあってもよい。
【0073】
さらに別の代替例として、バックプレート2を具える振動レンズ1a、1b、1cの代わりに、集束プレート3、4を振動源11に直接固定することができる。
【0074】
さらなる代替例として、集束プレート3、4を有する振動レンズ1a、1b、1cの代わりに、集束部材は、集束ロッドの形態をとることができる。有利なことに、
図9に示されているような集束ロッドは、集束プレート3、4よりも占めるスペースが小さい。
【0075】
別の追加または代替の特徴として、集束部材は、複数の層および/またはコーティングを含み得る。異なる層および/またはコーティングは、例えば、異なる寸法、材料、密度、および/または粒子構造を有するために、異なる振動特性および/または熱特性を示し得る。
【0076】
例えば、
図15は、第1の外側層20dと第2の内側層21dとを有する集束プレート3、4を示している。第2の内側層21dは、第1の外側層20dよりも低密度であり得る。この構成は、振動レンズ1を通る振動の伝達が改善されることが見出されている。別の例として、第1の外側層20dの粒子構造は、第2の内側層21dの粒子構造と比較して、より整列していてもよい。この場合も、この構成によって、振動レンズ1を通る振動の伝達が改善される。さらなる例として、第1の外側層20dは、第2の内側層21dと比較して異なる熱膨張係数を有してもよく、言い換えれば、第1の層20dは真鍮から作られ、第2の層21dは鋼から作られる。この構成によって振動が誘発され、以下に詳述するように、バイメタルストリップの熱特性を模倣する。
図15に示すように、集束プレート3、4の平らな層20d、21dは、集束ロッドの同心層やコーティングに相当する。
【0077】
さらに、第1の外側層20dおよび第2の内側層21dの相対的な物理的特性は、例えば、第2の内側層21dが第1の外側層20dよりも密度が高くなるように逆転してもよいことにさらに留意されたい。さらなる代替例では、第1の外側層20dの粒子構造が、第2の内側層21dの粒子構造と比較して整列されていなくてもよい。様々な層の寸法、材料、密度、および/または粒子構造などの物理的特性は、最終的に振動源11の周波数特性に依存する所望の振動特性および/または熱特性に従って最適化される。
【0078】
振動レンズの製造方法
次に、
図8、9を参照して、振動レンズ1a、1b、1cの製造方法について説明する。
【0079】
図8は、振動レンズ1a、1b、1cの製造方法のフローチャートを示す。振動レンズ1a、1b、1cは、内燃機関11などの特定の振動源に最適化されるように製造されている。最初に、内燃機関11の特性を特定する(S1001)。例えば、表Iは、エンジン速度が1260から3200rpmに上昇したときの、内燃機関11の騒音レベル、エンジンガス温度、出力パワー、トルク、および周囲温度の変化を示す。
【0080】
【0081】
具体的には、最低回転数から最高回転数にかけて騒音レベルは約20dB増加しており、これは内燃機関11が最高回転数で約4倍うるさくなっていることに対応し、また内燃機関11内の振動エネルギー損失が回転数とともに増加していることを示す。同様に、排気ガスの温度は最低回転数から最高回転数まで127から208℃に上昇しており、内燃機関からの熱損失が増加していることを示す。
【0082】
この製造方法は、以前に述べたように、内燃機関11などの振動源から振動エネルギーを採取するための振動レンズ1a、1b、1cの最適パラメータを決定するステップをさらに含む(S1002)。これは、振動レンズ1a、1b、1cの形状および寸法、例えば距離α、β、γを決定することを含む。より具体的には、最適化は、内燃機関の動作範囲(1260~3444rpm)にわたる平均共振周波数に一致するように、集束プレート3、4の長さγの寸法を決定することを含み得る。
図9は、内燃機関11に取り付けられた様々な長さの真鍮ロッド18を示している。内燃機関11を作動させ、エンジン速度(rpm)の範囲にわたってどのロッド18の撓みおよび/または共振が最も大きくなるかを監視することで、γの最適なバルブを示すことができる。上述したように、集束部材は、集束プレート3、4の代わりに、またはそれに加えて、真鍮ロッド18の形態であってもよい。
【0083】
製造方法はまた、最適なパラメータに従って振動レンズ1a、1b、1cを提供するステップを含む(S1003)。具体的には、振動レンズ1a、1b、1cの集束プレート3、4は、真鍮プレートをウォータージェット必要な寸法に切断し、集束プレート3、4に適切な曲げを導入することによって提供される。集束プレート3、4は、バックプレート2に溶接される。
【0084】
この製造方法は、集束プレート3、4の遠位端6に配置されたエネルギー変換手段の種類、振動レンズ1a、1b、1cが具える集束プレート3、4の数、振動レンズ1a、1b、1cを収容するために利用可能なスペース、より一般的には運用上の制約や所望の性能特性などの要因に応じて、振動レンズ1a、1b、1cのパラメータをさらに最適化する任意の追加ステップを含み得る。例えば、第1および第2の集束プレート3、4の第1の部分7は、第1および第2の集束プレート3、4の第2の部分8の中間で収束するものに限定されない。換言すれば、集束プレート3、4の第1の部分7は、振動レンズ1a、1b、1cを収容するために利用可能なスペース内に収まるように、および/または振動レンズ1a、1b、1cの所望の性能のために、バックプレート2に対して非対称に角度付けられてもよい。
【0085】
バイメタルストリップ
図10は、第1の層20と第2の層21とを含むバイメタルストリップ19を示す。第1の層20と第2の層21は、溶接、接着剤、ナットとボルト、リベット、それらの組み合わせ、または他の任意の適切な代替手段によって、バイメタルストリップ19の長さと幅に沿って一緒に固定される。第1の層20は真鍮製であり、第2の層21は鋼製である。
【0086】
真鍮は鋼と比較して熱膨張係数(CTE)が異なるため、第1の層20と第2の層21は、温度変化に応じて異なる速度で膨張または収縮する。真鍮のCTEは22℃で1.9×10
-5℃
-1であり、鋼のCTEは22℃で1.01×10
-5℃
-1である。第1の層20と第2の層21の間の伸縮の差は、バイメタルストリップ19の最大直線寸法の軸に沿って、すなわちバイメタルストリップ19の長さに対応する
図10のz軸に沿って、最も顕著である。しかしながら、2つの層20、21は一緒に固定されているので、2つの層20、21の間の長さの違いが出る代わりに、バイメタルストリップ19は、温度変化に応じて曲がる。
【0087】
バイメタルストリップ19は、近位端22と遠位端23とを有する。近位端22は固定されており、遠位端23は、カンチレバーと同様に自由に動くことができる。
図10に示すように、バイメタルプレート19が加熱されると、第1の層20のCTEが大きいため、第2の層21に比べて長さが大きく拡張し、負のy方向に曲がり、したがって第1の層20は湾曲の外側に位置する。逆に、バイメタルプレート19が冷却されると、正のy方向に曲がる。要するに、バイメタルストリップ19は、温度の変化を機械的変位に変換している。
【0088】
より具体的には、
図10は、22℃から150℃への温度変化を受けたバイメタルストリップ19の熱膨張の有限要素モデリングの結果を示す。バイメタルストリップ19は、z軸に沿った長さが300mm、x軸に沿った幅が10mm、y軸に沿った総深さが5mmである。第1および第2の層20、21の各層は、2.5mmの深さを有する。
図10は、バイメタルストリップ19の遠位端23の最大撓みが15mmであることを示す。
【0089】
図10の有限要素モデリングの延長として、
図11は、温度が145℃と155℃の間でサイクルするときの、時間の関数としてのバイメタルストリップ19の遠位端23の撓みの変化を示す。撓みは、約14.8~15.9mmの間で周期的に変化する。
図11は、周期的な温度変化を周期的な機械的撓みに変換できることを示している。
【0090】
熱エネルギー採取システム
図12は、上記のバイメタルストリップ19と、振動チャンバ25の形態をとるエネルギー変換手段とを具える熱エネルギー採取システム24aを示す。バイメタルストリップ19の遠位端23は、振動チャンバ25内に配置される。振動チャンバ25は、バイメタルストリップ19の遠位端23が、例えば14.8~15.9mmの撓みの間を周期的にサイクルする際に、遠位端23が振動チャンバ25の第1の表面26および第2の表面27に当たるように寸法決定される。第1の表面26と第2の表面27は、バイメタルストリップ19の機械的な動きが電気エネルギーに変換されるように、圧電結晶12を具える。
前と同じように、圧電結晶12は電気部品13に接続され、ケーブル14によって適切な電気負荷(図示せず)に導かれる。要約すると、熱エネルギー採取システム24は、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換し、それがさらに電気エネルギーに変換される。
【0091】
熱エネルギー採取システム24bの代替の実施形態では、エネルギー採取手段は、磁石28とコイル29の形態をとり得る。例えば、
図13に示すように、磁石28は、金属ストリップ19の遠位端23に配置され、y軸に沿って撓みの方向に突出している。コイル29は、バイメタルストリップ19の撓みによって磁石28がコイル29の中心内を周期的に移動し、その結果磁束が変化してコイル29に電流が誘導されるように、磁石28に対して配置されている。
【0092】
バイメタルストリップの製造方法
図14は、バイメタルストリップ19の製造方法を説明するフローチャートを示す。
【0093】
バイメタルストリップ19は、内燃機関11内のシリンダにかかる周期的温度変化などの特定の周期的温度変化に対して最適化されるように製造されている。シリンダは、当該シリンダ内に収容されたピストンを駆動するために燃料の周期的な燃焼を経験する。本製造方法は、最初に、周期的な温度変化を特徴づけるステップを含む(S2001)。例えば、有限要素モデリングの文脈で想定されるように、温度は145~155℃の間でサイクルする。
【0094】
バイメタルストリップ19がこの周期的な温度変化に敏感に反応して振動するように、この方法はさらに、バイメタルストリップ19の最適なパラメータを決定するステップをさらに含む(S2002)。バイメタルストリップ19のx、y、z寸法と、第1および第2の層20、21の材料とは、重要なパラメータである。例えば、バイメタルストリップが小さな温度変化に対して大きな温度変化と同様の撓みを示すためには、バイメタルストリップの寸法を長くして、CTE間の不一致が大きくなるように材料を選択する必要がある。パラメータを最適化する際に考慮すべきもう1つの要素は、選択した材料の熱伝導率である。具体的には、周期的な温度変化の最大周期は、バイメタルストリップ19が温度変化に応答して撓みを示すのに必要な最小時間によって制限される。
【0095】
さらに、この方法は、最適なパラメータ(S2002)に従ってバイメタルストリップ19を提供するステップを含む(S2003)。
【0096】
振動・熱エネルギー複合採取システム
図15は、エネルギー採取システム、より具体的には、上記の
図3および4の振動エネルギー採取システム10と同じか類似の特徴を含む、振動・熱エネルギー複合採取システム30を示す。振動・熱複合エネルギー採取システム30は、内燃機関などの振動および熱エネルギー源11に取り付けられた振動レンズ1dと、圧電結晶の形態をとり得るエネルギー変換手段12とを具える。
【0097】
図15に示される振動レンズ1dは、上記の振動レンズ1a、1b、1cとは異なり、第1の集束プレート3dと第2の集束プレート4dが両方とも第1の層20dと第2の層21dをさらに具える。集束プレート3、4が単一の材料から作られているのではなく、集束プレート3d、4dの第1の層20dは真鍮で作られ、第2の層21dは鋼で作られており、層構造を模倣し、結果としてバイメタルストリップ19の熱特性が得られる。
【0098】
図15の振動レンズ1dは、内燃機関11から振動エネルギーと熱エネルギーの両方を採取する。例えば、内燃機関11内のピストンからの周期的な温度変化は、バイメタル構造によって、振動レンズ1dにおける周期的な撓みに変換される。振動レンズ1dは、周期的な温度変化によって引き起こされる周期的な機械的撓みと、内燃機関11から直接発生する振動の両方を伝達し、収束させ、集束させる。振動レンズ1dは、振動エネルギーと熱エネルギーの両方を有用な電気に変換する圧電結晶12を作動させる。
【0099】
バイメタル構造の振動レンズの製造方法
振動・熱エネルギー複合エネルギー採取システム用の振動レンズ1dの製造方法は、
図8および14のステップの組み合わせを含む。
【0100】
この方法は、最初に、振動・熱エネルギー源の振動特性と熱特性の両方を特徴付けるステップを含む(S1001、S2001)。これには、エネルギー源の動作範囲全体にわたる共振周波数だけでなく、周期的な温度変化の周期と振幅の定量化することが含まれる。
【0101】
この方法はさらに、振動・熱エネルギー源に用いるための一体型バイメタル構造を具える振動レンズ1dの最適なパラメータを決定するステップをさらに含む(S1002、S2002)。これは、パラメータα、β、γを含む集束プレート3d、4dの寸法、ならびに第1および第2の層20d、21dの深さ、および材料組成を決定することを含む。最適なパラメータを決定するステップは、競合する要因間のバランスを含む場合があり、これは反復プロセスとなり得ることが想定される。
【0102】
この製造方法は、最適なパラメータに従って振動レンズ1dを提供するステップを含む(S1003、S2003)。
【0103】
代替の振動・熱エネルギー複合エネルギー採取システム
図16は、
図3および4の振動エネルギー採取システム10と同じか類似の特徴とともに、
図12の熱エネルギー採取システムと同じか類似の特徴を含む、代替の振動・熱エネルギー複合採取システム31を示す。
【0104】
振動・熱エネルギー複合採取システム31は、振動レンズ1a、1b、1c、1d、バイメタルストリップ19、および振動チャンバ25を具える。
図12と同様に、バイメタルストリップ19は、周期的な温度変化を示す振動・熱エネルギー源11に取り付けられる。周期的な温度変化に応答して、バイメタルストリップ19は、当該バイメタルストリップ19が振動チャンバ25の第1および第2の表面26、27に当たるように周期的な撓みを示す。
図12とは対照的に、この振動・熱エネルギー複合採取システム31では、バイメタルストリップ19が、発生源11による振動を増強するため、振動チャンバ25自体はエネルギー変換手段を含まない。振動レンズ1a、1b、1c、1dは、当該レンズ1a、1b、1c、1dが、発生源11から直接発生する振動と、熱的に誘起される振動の両方を伝達、収束、および集束するように、振動チャンバ25に取り付けられている。振動レンズ1a、1b、1c、1dの遠位端6に位置するエネルギー変換手段12が、振動エネルギーを有用な電気に変換する。
【0105】
一例として、内燃機関は、1つまたは複数のバイメタルストリップと、1つまたは複数の振動チャンバを具えて、内燃機関のシリンダが示す熱変化を振動エネルギーに変換することができる。エンジンの振動エネルギーと誘発された振動エネルギーは、振動レンズによって電気に変換される。
【0106】
代替例として、振動レンズ1a、1b、1c、1dを振動・熱エネルギー源11に直接取り付けることができると想定されている。
【0107】
さらなる代替例として、バイメタルストリップ19の動きだけで発生源11が示す振動を増大させるのに十分であるため、振動・熱エネルギー複合採取システム31は、上記のような振動チャンバ25を含まなくてもよいことが想定される。
【0108】
振動・熱エネルギー複合採取システム31のための振動レンズ1a、1b、1c、1dおよびバイメタルストリップ19の製造方法は、それぞれ
図8および14のステップを含み、上記の通りである。システム31の文脈におけるさらなる考慮事項は、振動レンズ1a、1b、1c、1dおよびバイメタルストリップ19の両方の最適なパラメータを決定するときに(S1002、S2002)、バイメタルストリップ19によって誘発される振動が振動レンズ1a、1b、1c、1dと共振し、一致し、および/または相関しているような追加の考慮事項が与えられ得るということである。これには、振動レンズ1a、1b、1c、1dおよび/またはバイメタルストリップ19の寸法およびパラメータのさらなる反復的な最適化が含まれ得る。
【0109】
無駄となっている振動エネルギーや熱エネルギーを回収して再利用することにより、内燃機関や自動車の効率を向上させことには、多くの利点がある。一般に化石燃料に由来する燃料を燃やすことによる環境への影響が軽減し、有限の資源である化石燃料が枯渇する速度も軽減する。さらに、効率の向上により、自動車の1マイルあたりのコストも削減される。
【0110】
内燃機関内の振動と熱損失は、一般に、性能の非効率性、動作の制限(過熱など)、部品の機械的故障の増加、エンジンの寿命の短縮、さらには自動車内の快適性の低下に関連する。内燃機関内の振動エネルギーや熱エネルギーは通常浪費されるため、例えば、減衰機構および/または断熱材を導入することによって、これらの損失を最小限に抑えることが一般的である。この現状認識とは対照的に、本発明は、振動および/または熱損失を最小化するのではなく、振動・熱エネルギーを回収する。これにより、内燃機関のエネルギー効率が向上すると同時に、これらの損失を最小限に抑えるメカニズムの必要性が軽減され、さらには不要になる。これにより、内燃機関に高価な減衰機構を設置する必要がなくなり、コスト削減につながる。
【0111】
振動レンズが開示されている。振動レンズは、それぞれが近位端および遠位端を有する少なくとも2枚の集束プレートを含む。少なくとも2枚の集束プレートの遠位端間の間隔は、少なくとも2枚の集束プレートの近位端間の間隔よりも小さい。振動レンズは、振動エネルギーを発生源から圧電結晶などのエネルギー変換手段に伝達、収束、集束させる。振動レンズはまた、熱ゆらぎを機械的な変位に変換するためのバイメタル構造を含み得る。振動レンズは、振動エネルギーおよび/または熱エネルギー採取システムでの使用に適している。有利なことに、振動レンズは、例えば、内燃機関のエネルギー効率を改善する一方で、振動減衰機構および/または断熱材の必要性を軽減する。
【0112】
明細書全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「具える」や「含む」という用語、または「具えている」または「含んでいる」などの変化形は、記載された整数または整数群を含むことを意味し、他の整数または整数群を除外するものではないと理解されたい。さらに、文脈上明確に別段の定めがない限り、「または」という用語は、排他的ではなく包括的であると解釈される。
【0113】
上記した本発明の説明は、例示および説明の目的で提示されたものであり、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。記載された実施形態は、本発明の原理およびその実用化を最もよく説明するために選択および記載されたものであり、それにより、当業者が様々な実施形態において、企図される特定の使用に適した様々な変更を加えて本発明を最もよく利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、さらなる変更や改善を組み込むことができる。
【国際調査報告】