(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】人間の循環系への導入向け圧力センサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0215 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A61B5/0215
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575036
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2019084447
(87)【国際公開番号】W WO2020253977
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グレイヒ ベルナルト
(72)【発明者】
【氏名】ラマー ユルゲン エルウィン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AA08
4C017AC02
4C017AC20
(57)【要約】
本発明は、人間の循環系に導入され、外側読み取りシステムによって無線で読み出されるパッシブ圧力センサ501に関するものである。このパッシブ圧力センサは、拡散阻止層を有するケーシング502であって、拡散阻止層がケーシング内で所定の圧力を維持する、ケーシング502と、永続的な磁気モーメントをもたらす磁性体であるマグネト-機械式発振子508とを有する。マグネト-機械式発振子は、外部磁気励起場又は外部電磁励起場を、磁性体の機械式振動に変換し、ケーシングの少なくとも一部が、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に変換するのを可能にするように柔軟である。このパッシブ圧力センサは、非常に小型であるにも関わらず、高品質の圧力検知をもたらすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の循環系へ導入されるための圧力センサであって、
前記圧力センサは、前記人間の外側に置かれた読み取りシステムによって無線で読み出されるパッシブセンサであり、
前記圧力センサが、拡散阻止層を有するケーシングを有し、前記拡散阻止層が、前記ケーシングの少なくとも一部を被覆し、前記ケーシング内に所定の圧力を維持し、
前記圧力センサが、マグネト-機械式発振子をさらに有し、前記マグネト-機械式発振子は、前記ケーシング内に永久磁気モーメントをもたらす磁性体を有し、また外部磁気励起場又は外部電磁励起場を前記磁性体の機械式振動に変換し、
前記ケーシングの少なくとも一部が、外圧変化を前記磁性体の前記機械式振動の変化に変換することを可能にするように柔軟である、圧力センサ。
【請求項2】
前記磁性体は、前記外部磁気励起場又は外部電磁励起場が作用すると、平衡向きから回転可能であるように前記ケーシング内に配置され、前記圧力センサは、
共振周波数による前記磁性体の前記機械式振動を可能にするために、前記外部磁気励起場又は外部電磁励起場により前記磁性体が平衡向きから回転すると、前記磁性体を前記平衡向きに戻す回復トルクを与える回復トルクユニットをさらに有し、
前記圧力センサは、前記外圧変化が前記共振周波数の変化に変換されるように構成されている、請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記圧力センサは、最大寸法が5mm以下であり、最小寸法が1mm以下である細長形状を持つ、請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記圧力センサは外部生体適合性コーティングを有する、請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記ケーシングの前記柔軟な部分が、前記外圧変化を、少なくとも、前記磁性体の前記機械式振動の振幅又は共振周波数の変化に変換するのを可能にする蛇腹を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記圧力センサが、前記蛇腹全体を覆う外カバーをさらに有する、請求項5に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記拡散阻止層が金属を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記圧力センサは、前記ケーシングの外側が血管壁に対して距離をとることができるようにする、前記ケーシングの外側に取り付けられた外側ワイヤケージを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記磁性体及び/又は空所の内面は滑りやすい非粘着性素材でコーティングされている、請求項1から8のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項10】
前記磁性体が、外部磁場における前記圧力センサの位置及び向きに関わらず、前記外部磁場と位置が揃うように、前記圧力センサが構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項11】
前記圧力センサが、前記ケーシングを囲い込む外側筐体を有し、前記ケーシングが前記外側筐体内で回転可能であり、前記囲い込み筐体の外側の外圧変化が、前記ケーシングの外部で起こる外圧変化及び前記囲い込み筐体の内部で起こる外圧変化に変換されるように、前記圧力センサが構成されている、請求項10に記載の圧力センサ。
【請求項12】
前記磁性体が、フィラメントの片端に取り付けられている磁性球であり、
前記フィラメントのもう1つの端が前記ケーシングの内側に取り付けられ、前記フィラメントが前記磁性球の直径の少なくともπ/4の長さを持つか、又は、前記フィラメントのもう1つの端が、前記フィラメントの前記長さの変更を可能にする長さ変更ユニットに取り付けられ、また前記ケーシングの内側に取り付けられている、請求項10又は11に記載の圧力センサ。
【請求項13】
前記圧力センサが前記共振周波数の温度依存を補償する、請求項1から12のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項14】
前記圧力センサは温度変化に応じて第1の周波数方向に前記共振周波数を修正する補償要素を有し、前記第1の周波数方向は、前記補償要素が前記圧力センサの一部でなかったならば、温度変化に応じて、前記圧力センサの前記共振周波数が修正されたであろう第2の周波数方向と反対である、請求項13に記載の圧力センサ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の圧力センサを有する埋め込み式医療機器であって、
肝臓シャントデバイス、脳動脈瘤を処置するワイヤ、人工心臓弁、又はステントである、埋め込み式医療機器。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の圧力センサを無線で読み出す読み取りシステムであって、
前記圧力センサの前記磁性体の機械式振動を誘起させる磁気励起場又は電磁励起場を起こす磁場発生装置と、
前記圧力センサの前記磁性体の誘起された前記機械式振動によって起こった磁場又は電磁場を電気応答信号に変換するトランスデューサと、
前記電気応答信号に基づき圧力値を決定するプロセッサと、を有する、読み取りシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、
a)前記圧力センサと前記磁場発生装置との間隔、
b)前記磁性体の機械式振動の位相、
c)前記読み取りシステムに対する前記ケーシングの向き、及び
d)前記磁性体の前記機械式振動の振幅
のうちの少なくとも1つへの前記電気応答信号の依存に合わせて前記圧力値の前記決定を訂正するために、補償アルゴリズムを適用する、請求項16に記載の読み取りシステム。
【請求項18】
前記磁場発生装置は、前記プロセッサによって制御可能である1つのコイル又は複数のコイルを有し、前記トランスデューサが、前記磁場発生装置の一部であるか又は別個のピックアップコイルである、請求項16又は17に記載の読み取りシステム。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか一項に記載の圧力センサを使用して測定を行う圧力測定方法であって、
前記圧力センサの前記磁性体の機械式振動を誘起させる磁気励起場又は電磁励起場を起こすステップと、
前記圧力センサの前記磁性体の誘起された前記機械式振動によって起こった磁場又は電磁場を電気応答信号に変換するステップと、
前記電気応答信号に基づき圧力値を決定するステップと、を有する、圧力測定方法。
【請求項20】
前記決定するステップにおいて、
a)前記圧力センサと前記磁場発生装置との間隔、
b)前記磁性体の機械式振動の位相、
c)前記読み取りシステムに対する前記ケーシングの向き、及び
d)前記磁性物の前記機械式振動の振幅
のうちの少なくとも1つについての前記電気応答信号の依存に応じて圧力値を訂正するステップをさらに含む、請求項19に記載の圧力測定方法。
【請求項21】
コンピュータプログラムが、前記読み取りシステムを制御するコンピュータ上で実行されるとき、請求項16に記載の読み取りシステムに、請求項19に記載の前記圧力測定方法のステップを実施させるプログラムコード手段を有する、当該コンピュータプログラムを含む、非一時的媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の循環系への導入向け圧力センサに関するものである。本発明は、それぞれ圧力センサを備える、ステント、肝内シャントデバイス、脳動脈瘤を処置するワイヤ、及び心臓弁にさらに関するものである。また、本発明は、圧力センサを無線で読み出す読み取りシステム、方法、及びコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
US2007/0236213A1は、取り付けられた磁化材料を持つ機械式共振子に基本的に基づく圧力検知を記載する。磁場は、磁化材料と相互作用し、機械式振動を始める。その後、振動する機械式構造体による時変磁場を記録することによって機械式振動が検出される。記録デバイスとしては、コイルなどの適切な磁気計とすることができる。このようなデバイスに掛かる外圧は、実効バネ定数を変化させ、よって、検出可能な共振周波数の変化を導く。それ故、圧力センサが形成される。
【0003】
これは、原理上、上手く行くが、いくつか欠点があり、患者の深部で十分正確に、また十分に小型のデバイスで圧力を測定するのに適していない。主要な問題は、機械式共振子の使用にある。通常、機械式共振子において実現可能な最大限のQ値は、効果的な作動にとってはかなり低い。振動における高いQ値を提供すると考えられ得る溶融シリカのような材料がいくつかある。これらの材料は、普通、極めて硬く、効果的であるほど、すなわち、相当に大きな磁場変動をもたらすほど大きな振動振幅(十分に大きな角度)を可能にしない。次の問題は、弾性パラメータしか修正されないことによる、外圧に対する共振周波数の低感度にある。低いQ値と相まったこの問題は、極めて高い信号対雑音比の必要をもたらし、この信号対雑音比が今度は、センサを大きくさせる大量の磁性材料の必要をもたらす。
【0004】
また、すでに埋め込み式圧力センサ、例えば、CadioMemsによって開発され、US7,147,604B1に開示されているセンサがある。共振LC(インダクタ-コンデンサ)デバイスが使用されるこのようなセンサは、原理上、上手く働く。圧力によって誘起される機械的動きにより、共振周波数が移行し、これにより、今度はL値又はC値(又はその両方)が変わる。このシステムは、上手く働くが、人間の循環系に導入されるのに必要な寸法に小型化することはできない。主な理由は、US7,147,604B1では、検出可能な信号が、圧力センサのコイルの半径で高くスケーリングすることにある。これは、圧力センサを小型化するのに厳しい制限を課す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、極めて小型であるにも関わらず、高品質の圧力測定を可能にする、人間の循環系への導入向け圧力センサを提供することにある。本発明は、さらに、それぞれ圧力センサを備える、ステント、肝内シャントデバイス、脳動脈瘤を処置する際のワイヤ、及び心臓弁に関するものである。また、本発明は、圧力センサを読み出す読み取りシステム、方法、及びコンピュータプログラムに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様において、人間の循環系への導入向け圧力センサを提示し、この圧力センサは、人間の外側に置かれた読み取りシステムによって無線で読み出されるように構成されているパッシブセンサであり、この圧力センサは、拡散阻止層を持つケーシングを有し、拡散阻止層は、ケーシングの少なくとも一部を被覆し、ケーシング内に所定の圧力を維持するように構成され、圧力センサは、ケーシング内に、永久磁気モーメントをもたらす磁性体によるマグネト-機械式発振子を有し、マグネト-機械式発振子が外部磁気励起場又は外部電磁励起場を磁性体の機械式振動に変換するように構成され、ケーシングの少なくとも一部が、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に変換するのを可能にするように柔軟である。
【0007】
圧力センサでは、主に、磁力を使用して振動エネルギを蓄えるマグネト-機械式発振子が使用されるので、高Q値、高振動振幅、及び外部影響に対する高感度が、人間の循環系に導入されるのに適した超小型の圧力センサと同時に実現され得る。
【0008】
主要な肺動脈の外側の循環系に導入され得るような寸法の圧力センサが好ましい。圧力センサの形状が、最大寸法が5mm以下、さらに好ましくは4mm以下であり、最小寸法が1mm以下である細長形状であるのが好ましい。これらの寸法が、圧力センサの長手方向、横方向とされるのが好ましい。それ故、長手方向では、圧力センサの寸法が、5mm以下、より好ましくは4mm以下であり、横方向では、圧力センサの寸法が、1mm以下であるのが好ましい。
【0009】
好ましい実施形態において、圧力センサは、外部生体適合性コーティングを有する。また、このケーシングの柔軟な部分が、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に変換させる蛇腹を有する。蛇腹は、例えば、拡散阻止層及び/又は生体適合性コーティングがコーティングされているとしても、圧力測定に十分である柔軟性をもたらすので、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に変換させるのに特に適している。蛇腹は、シリコンゴムのようなかなり柔軟な材料で作られているものであってもよい。
【0010】
圧力センサは、蛇腹全体にわたる外カバーをさらに有してもよい。外カバーは、血栓形成を回避するのに使用され得る。外カバーが、蛇腹を、外圧を受けて変化させるほど柔軟であるのが好ましい。
【0011】
拡散阻止層が金属を有するのが好ましい。例えば、拡散阻止層が、圧力センサのケーシング上の金属コーティングとして設けられてもよい。
【0012】
ある実施形態において、圧力センサは、さらに、ケーシングの外側が血管壁に対して距離を持つようにする、ケーシングの外側に取り付けられた外側ワイヤケージを有する。ワイヤケージは、血管への直接送達に好都合であり得、このケージは、血管内腔を塞がずに圧力センサを定着させることができる。このケージには、曲がった脚部が付き出る環形又は円盤形の中央部がある場合がある。このケージは、線材、例えば、その高い柔軟性と優れた生体適合性にニチノールから製造され得る。ステンレス鋼やポリマーのような他の材料も使用することができる。ワイヤの代用として、薄板材から切り出された構造体があり、これは、金型及び熱処理を使用して曲がった形状にされ得る。特にポリマーの場合、接合成形も上手く行きそうである。センサケーシングへの接続では、環形又は円盤形の構造体が、ケージとセンサケーシングとの境界面として働くことができる。環形構造体は、円筒形ケーシング上の切り込みであってもよく、バネ力によって且つ/又は接着又は溶接によって、定着し得る。円盤形構造体は、センサに接着又は溶接され得る。
【0013】
好ましい実施形態において、外部磁気励起場又は外部電磁励起場が磁性体に作用すると、磁性体が、平衡向きから回転できるようにケーシング内に配置され、圧力センサは、共振周波数の磁性体の機械式振動を可能にするために、外部磁気励起場又は外部電磁励起場で磁性体が平衡向きから回転する場合、磁性体を平衡向きに戻す回復トルクを与えるように適合されている回復トルクユニットをさらに有し、圧力センサは、外圧変化が共振周波数の変化に変換されるように構成されている。
【0014】
回復トルクユニットは、回復トルクを与えるような、自分の位置に磁場を起こすさらなる磁性体及び/又は回復トルクを与えるねじれバネ機構を有する。また、磁性体の他に、さらなる磁性体があれば、永久磁石であるのが好ましい。さらにまた、磁性体が磁性球であるのが好ましい。さらなる磁性体もあれば、磁性球とすることができる。但し、磁性体及びさらなる磁性体も別の形であってもよい。例えば、それらが円筒形であってもよい。磁性体がフィラメントの片端に取り付けられ、フィラメントのもう1つの端がケーシングに取り付けられているのが好ましい。さらなる磁性体もフィラメントの片端に取り付けられていてもよく、フィラメントのもう1つの端がケーシングに取り付けられていてもよい。但し、さらなる磁性体が固定されていてもよい。
【0015】
ある実施形態において、磁性体及び/又はケーシングの内部には、滑る非粘着性材がコーティングされている。滑る非粘着性材は黒鉛であるのが好ましい。さらなる磁性体にも滑る非粘着性材がコーティングされていてもよい。乾状態、すなわち、油が差されていない状態の摩擦係数が0.2を下回る、より好ましくは0.1を下回る場合、非粘着性材が「滑る」と見なされるのが好ましい。
【0016】
通常、圧力センサが人間の体内に導入されていると、その体が磁気共鳴画像(MRI)スキャナで走査される必要がある場合、圧力センサが問題になることがある。圧力センサが比較的小さく、それ故、患者に対する処置ではない、小さな力と小さなトルクしか引き起こさないことから、この問題は、体には、すなわち患者には危険ではない。同じように、MRIスキャナによって起こされるMR画像も、圧力センサが比較的小さいことから、台無しにはされない。しかし、1.5Tを超える高い磁場強度が多くの臨床MRIスキャナに使用され、強い磁場が磁性体の磁化を変えることによって、又はデバイス内の機械装置に損傷を与えることによって、圧力センサを壊す可能性がある。この理由から、ある実施形態では、磁性体が、外部磁場における圧力センサの位置及び向きに関わらず、外部磁場と位置が揃うように、圧力センサが構成されている。例えば、圧力センサが、ケーシングを囲い込む外筐体を備えていてもよく、ケーシングは、囲い込み筐体から回転可能であり、圧力センサは、囲い込み筐体の外側の外圧変化がケーシングの外部で起こる外圧変化に、また囲い込み筐体の内部で起こる外圧変化に移行するようになっている。外筐体は、球形や楕円形であってもよい。また、外筐体には流体が充填されてもよく、流体が高粘度の流体であるのが好ましい。「高粘度」という用語が、O.1Tの磁束密度において、デバイスの最高回転速度が秒当たり10000回を下回るように制限されるか、角度粘度が160 1/s以下であるような粘度のことであるのが好ましい。典型的なデバイス構成では、これは、少なくとも1~100Pasの粘度に変わる。主要な決め手は、硬い磁性体の体積分率である。また、最低限有用な粘度の約100~1000倍である最大限有用な粘度もある。
【0017】
筐体は、事実上、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に変換するために、例えば、流体が充填された非常に柔らかい筐体、又は開口のある筐体とすることができる。筐体中の圧力変化が、通常0.01~1sである予想圧力変化の時間尺度において、外側圧力から0.2mbar(20Pa)を超えて外れなければ、筐体が「非常に柔らかい」と見なされるのが好ましい。厚みが十分に薄い正しい形にされる最も硬いと分かっている基板は、「非常に柔らかい」筐体に成り得る。それにより、筐体が蛇腹として働く構造体を組み込むのが好ましい。
【0018】
磁性体が、フィラメントの片端に取り付けられている磁性球であり、フィラメントのもう1つの端がケーシングの内部に取り付けられ、ある実施形態では、フィラメントが、磁性球の直径の少なくともπ/4の長さを持つのが好ましい。さらなる磁性体も磁性球であれば、それは、別のフィラメントの片端に取り付けられ、他のフィラメントのもう1つの端がケーシングに取り付けられていてもよい。他のフィラメントも、この場合は他の磁性球の直径の少なくともπ/4の長さを持つのが好ましい。フィラメントのこれらの長さにより、磁性体の外部磁場との制限のない位置揃えが可能になる。磁性球の直径と他の磁性球の直径とが同じであるのが好ましい。
【0019】
また、ある実施形態において、磁性体は、フィラメントの片端に取り付けられている磁性球であり、フィラメントのもう1つの端が、フィラメントの長さの変化を可能にし、またケーシングの内部に取り付けられた、長さ変更ユニットに取り付けられるように構成されている。長さ変更ユニットとしては、例えば、巻き取りユニットとすることができる。巻き取りユニットは、巻き機構を備え得る。磁性球から長さ変更ユニットまでのフィラメントの長さが、事前規定の長さと等しくなるように調整可能であるように、圧力センサが適合されているのが好ましい。例えば、フィラメント及び/又は長さ変更ユニットは、磁性球から長さ変更ユニットまでのフィラメントの長さが事前規定の長さに達した場合、長さ変更ユニットは、フィラメントの長さを短くし、フィラメントのさらなる短縮化の間、止めるためのストッパを備え得る。ある実施形態において、ストッパが、磁性球から巻き取りユニットまでのフィラメントの長さが事前規定の長さに達するとフィラメントの巻き上げを止めるように配置、構成されている。
【0020】
ある実施形態において、長さ変更ユニットは、バネ力を備えるバネで構成され、バネは、圧力センサのケーシング内のフィラメントの長さを短くするために、バネ力によってフィラメントが圧力センサのケーシングから出て、また長さ変更ユニットに入るように構成され、また、磁性体に作用する力がフィラメントをバネ力に対して長さ変更ユニットから引き出す場合、圧力センサのケーシング内のフィラメントの長さが伸長可能であるようになっており、このようなバネにフィラメントが取り付けられている。長さ変更ユニットは、バネ力に対して何も力が働いていなければ、圧力センサのケーシング内のフィラメントが好ましい長さであるような、バネの緩みを制限するように構成、配置されたストッパを備え得る。
【0021】
好ましい実施形態において、圧力センサは、温度に対する共振周波数の依存を補うように構成されている。具体的には、圧力センサは、補償要素を備え、この補償要素は、補償要素が圧力センサの一部ではないとした場合に、温度変化に応じて、圧力センサの共振周波数が修正される第2の周波数方向と反対である第1の周波数方向に、温度変化に応じて共振周波数を修正するように適合されている。測定デバイスが、補償要素が圧力センサの一部ではないとした場合に、温度変化に応じて、圧力センサの共振周波数が修正される第2の周波数方向と反対である第1の周波数方向に温度変化に応じて共振周波数を修正するように適合されている補償要素を備えることから、共振周波数の温度誘起移行は、減らされるかなくされることもあり得る。それぞれ、第1の周波数方向は、より高い又はより低い周波数に向かう方向であり、反対の第2の周波数方向は、より低い又はより高い周波数に向かう方向である。
【0022】
補償要素が、その磁化、またそれにより温度に従う共振周波数を変える磁性材料を有するのが好ましく、共振周波数の修正の方向が第1の周波数方向であるような磁性材料が選ばれ、圧力センサ内に、具体的にはケーシング内に配置されているのが好ましい。補償磁性材料が、磁性体に隣接して且つ/又は備えられていればさらなる磁性体に隣接して配置されているのが好ましい。これにより、技術上比較的簡単なやり方で、ケーシング内にそれほどスペースを取らずに、望ましからざる温度依存がかなり軽減され、なくされることさえあり得る。
【0023】
ある実施形態において、磁性体は、フィラメントの片端に取り付けられている磁性球であり、フィラメントのもう1つの端は直に又は間接的にケーシングに取り付けられ、磁性球には、磁性体の重心を通る貫通孔があり、フィラメントの片端は、貫通孔に取り付けられ、固定されている。この取り付けにより、ほんのわずか磁気双極子モーメントを低減するだけなので、良好な信号を保てる。磁性体の形状は、大きくは変えられず、これは球の場合に重要である。
【0024】
また、ある実施形態において、磁性体は、フィラメントの片端に取り付けられている磁性球であり、フィラメントのもう1つの端は、直に又は間接的にケーシングに取り付けられ、フィラメントの片端は、磁性体を形成する、磁性体の2つの磁性構成要素間に挟まれている。この取り付け方法は、貫通孔取り付け方法とほぼ同等の結果をもたらすが、製造に特別な設備が何もなくて済む。
【0025】
ある実施形態において、磁性体は、フィラメントの片端に接着されている磁性球であり、フィラメントのもう1つの端は、ケーシングに直に又は間接的に取り付けられている。この方法は、技術上、極めて単純であり、磁性体をフルに使いこなす。
【0026】
また、ある実施形態において、磁性体は、非磁性体に取り付けたれた磁性球であり、非磁性体は、フィラメントの片端に留め付けられ、フィラメントのもう1つの端は、直に又は間接的にケーシングに取り付けられている。また、これにより、磁性体へのフィラメントの比較的単純な取り付けが可能になる。
【0027】
本発明のさらなる態様において、圧力センサを備えるステントを提供する。例えば、ステント内再狭窄を示す圧力センサが、ステントの遠位側に配置され得る。ある実施形態において、ステントは、例えば、ステント全体又はその一部にわたる圧力降下をステント内再狭窄用のパラメータとしてモニタするために、いくつかの圧力センサを有する。早期の検出により、薬剤の調整や時宜に適った再ステント留置が可能になり、それにより、計画外の入院を避けることができる。
【0028】
本発明のさらなる態様において、圧力センサを有する肝内シャントデバイスを提供する。例えば、圧力低減が働いているかどうか、すなわちシャントが開いているかどうかをモニタするために、シャントの近位側に圧力センサが配置され得る。また、肝内シャントデバイスは、いくつかの圧力センサ、具体的には圧力降下をモニタするいくつかの圧力センサを備え得る。また、ここでも早期検出により、薬剤の調整や時宜に適った再ステント留置が可能になり、それにより、計画外の入院を避けることができる。
【0029】
本発明のさらなる態様において、圧力センサを備えた、脳動脈瘤を処置するワイヤを提供する。このワイヤは、血液凝固が動脈瘤範囲を埋めることにつながるはずであるコイル巻きに使用される可能性がある。圧力センサは、凝固が実際に起こっているかどうか、すなわち、拍動血圧変動が低減されるかどうかを示すのに使用され得る。
【0030】
本発明のさらなる態様において、圧力センサを備える心臓弁を提供する。例えば、心拍の位相にわたる圧力降下をモニタするために、心臓弁の近位側に第1の圧力センサが置かれ得、心臓弁の遠位側に第2の圧力センサが置かれ得る。モニタした動的圧力変動から、心臓弁の機能についての情報が引き出され得る。圧力情報だけではなく、センサの空間的位置特定及び向きの確認を介した動き情報も引き渡すために、位置特定センサも、心臓弁の移動部分に直に置かれ得る。
【0031】
本発明のさらなる態様において、請求項1から15のいずれか一項に記載の圧力センサを無線で読み出す読み取りシステムを提供し、この読み取りシステムは、
-圧力センサの磁性体の機械式振動を誘起する磁気励起場又は電磁励起場を起こす磁場発生装置と、
-圧力センサの磁性体の誘起機械式振動によって起こった磁場又は電磁場を電気応答信号に変換するトランスデューサと、
-電気応答信号に基づき圧力値を確認するプロセッサと、を有する。
【0032】
磁場発生装置とトランスディーサとは、2つの別々のユニットとすることができ、又はそれらが一体化しているとすることができ、磁場発生装置とトランスデューサとが一体化している場合、磁気励起場又は電磁励起場を起こすのと、圧力センサの磁性体の誘起機械式振動を電気応答信号に変換するのとで同じコイルが使用され得る。
【0033】
好ましい実施形態において、プロセッサが、a)圧力センサと磁場発生装置との間隔、b)位相内コイル励起のうちの少なくとも1つに対する共振周波数の依存に対して圧力値確認を訂正するために、補償アルゴリズムを適用するように構成されている。
【0034】
対応するビックアップコイルを備え得るトランスデューサによってピックアップされる、より強い応答を起こすことから、磁性体の大きな磁気モーメントが望ましい。しかし、大きな磁気モーメントとは、大きな回復力を意味し、これは、結果としての振動運動に大きな振幅があることを意味する。大きな振動が起こると、大きな角変位において、回復力が低減される。それ故、このような振動では、応答周波数が、磁場発生装置のコイルと圧力センサとの間隔によって決まってくる回復力によって決まってくる。この問題を解消するために、プロセッサは、圧力センサと磁場発生装置との間隔に対する共振周波数の依存に対して圧力値確認を補正するように適合され得る。
【0035】
心臓周期時に血管内圧はばらつく。人間における普通の心拍数は、通常、考えられ得る最大で分当たり200拍の高さで、分当たり50~90拍前後である。心臓周期時の血管内圧最大及び血管内圧最小を確認するために、測定周波数は、約5Hzより小さくすべきではない。測定周波数が、10超~20Hzであるのが好ましく、最も好ましくは40Hz超である。他方で、良い信号対雑音比を得るために、発振子に対して非常に高いQ値が好ましく、高いQ値とは、ゆっくりした減衰を意味する。それ故、次の測定パルスがセンサに送られると、それまでの測定パルスからの振動が完全には消えない可能性があり、この振動が測定に影響を及ぼす。したがって、この位相内コイル励起を補うことにより、高いQ値が、心臓最小値及び心臓最大値の測定を可能にするほど大きい測定周波数と上手く組み合わせられ得る。
【0036】
本発明のさらなる態様において、請求項1から15のいずれか一項に記載の圧力センサを使用して測定を行う圧力測定方法を提示し、この圧力測定方法は、
-圧力センサの磁性体の機械式振動を誘起させる磁気励起場又は電磁励起場を起こすことと、
-圧力センサの磁性体の誘起機械式振動によって起こった磁場又は電磁場を電気応答信号に変換することと、
-電気応答信号に基づき圧力値を確認することと、を有する。
【0037】
また、本発明のさらなる態様において、コンピュータプログラムを提供し、コンピュータプログラムとしては、コンピュータプログラムが読み取りシステムを制御するコンピュータ上で進行すると、請求項20に記載の読み取りシステムに圧力読み取り方法のステップを実施させるプログラムコード手段が挙げられる。
【0038】
請求項1の圧力センサ、請求項16のステント、請求項17の肝内シャントデバイス、請求項18のワイヤ、請求項1pの心臓弁、請求項20の読み取りシステム、請求項22の圧力測定方法、及び請求項23のコンピュータプログラムには、具体的には従属請求項において定義されるのと同様の好ましい実施形態及び/又は同一の好ましい実施形態があると理解するものとする。
【0039】
本発明の好ましい実施形態が、独立請求項又はそれぞれの独立請求項による上記の実施形態の如何なる組合せであってもよいと理解するものとする。
【0040】
本発明のこれらなどの態様が、これ以降に述べる実施形態から分かるようになり、またそれを参照しながら説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下の図面において、
【
図1】第1の外圧を伴う状況における圧力センサの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図2】第2の圧力が第1の圧力より大きい状況における
図1の実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図3】蛇腹の場合の圧力センサの様々な実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図4】圧力センサのさらなる実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図5】蛇腹の場合の圧力センサのさらなる実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図6】圧力センサ付きのガイドワイヤの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図7】圧力センサ付きのガイドワイヤの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図8】圧力センサ付きステントの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図9】圧力センサ付き心臓弁の実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図10】圧力センサにより脳動脈瘤を処置するワイヤの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図11】圧力センサ付き肝内シャントの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図12】圧力センサの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図13】高外部磁場を伴う状況における
図1の実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図14】球形外筐体付き圧力センサ実施形態を示す図である。
【
図15】楕円外筐体付き圧力センサの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図16】比較的長いフィラメント付き圧力センサのさらなる実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図17】巻き取りユニット及びストッパ付き検知デバイスの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図18】巻き取りユニットの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図19】温度補償を備える圧力センサの実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図20】センサの共振周波数を読み出す検出システムを概略的且つ例示的に示す図である。
【
図21】センサの共振周波数を読み取る検出システムを概略的且つ例示的に示す図である。
【
図22】励起パルスとその結果としての誘起電圧を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図23】撮像システムの患者ベッドのマットレスに組み込まれたマルチコイルアレイを概略的且つ例示的に示す図である。
【
図24】検出システムのコイルを概略的且つ例示的に示す図である。
【
図25】共振周波数を確認するのに使用される周波数スペクトルを示す図である。
【
図26】アナログ受信フィルタを概略的且つ例示的に示す図である。
【
図27】ChebyshevII型バンドパス周波数応答を例示的に示す図である。
【
図28】圧力センサを較正する際の較正設定を概略的且つ例示的に示す図である。
【
図29】検出済みセンサ応答周波数対測定済み基準圧力を例示的に示す図である。
【
図30】i)検出済みセンサ応答周波数と測定済み基準圧力との整合、及びii)較正曲線を例示的に示す図である。
【
図31】センサ感度に対するシミュレーション結果を例示的に示す図である。
【
図32】圧力測定のノイズレベルを例示的に示す図である。
【
図33】単一送受信コイルに関して、センサ向きに対する様々な高調波における信号振幅の測定済み依存を示す図である。
【
図34】圧力センサのさらなる実施形態を概略的且つ例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、人間の循環系への導入向け圧力センサ501の実施形態を概略的且つ例示的に示す。圧力センサ501は、2つの磁気素子から成るマグネト-機械式共振子507を備える。
【0043】
磁気素子508は、フィラメント506から吊るされているので、自由に共振子主軸を中心に回転運動を行う。この実施形態では、さらなる磁性体507が固定されている。但し、別の実施形態では、さらなる磁気素子もフィラメントから吊るされることがあり、それにより自由に共振子主軸を中心に回転運動を行うことができる。
【0044】
平衡状態では、磁石507、508が、それぞれ、それらの磁化の反平行の向きと位置が揃う。共振回転振動を始めるのに外部磁場パルスが使用され得る。引力により、この振動の共振周波数が決まり、この共振周波数は、球形吊り下げ磁石の場合、以下で示される。
【数1】
ここで、M
Sは、磁性材料の飽和磁化であり、ρは、その密度であり、γは、球直径であり、βは、固定磁石によって生み出された磁場である。これは、双極子磁場として近似され得る。
【数2】
ここで、mは、磁石の磁気モーメントである。
【0045】
この振動式磁気素子によって起こる磁場変動は、圧力センサの磁性体の機械式振動によって起こった磁場又は電磁場を電気応答信号に変換するように構成されているトランスデューサの1つ又はいくつかの検出コイルにおける誘起電圧を介して検出され得る。検出信号のタイムトレース(
図13参照)をフーリエ変換すると、共振周波数の確認を可能にするスペクトル(
図16参照)を得ることができる。
【0046】
数kHzの低共振周波数に起因して、磁場が金属によって遮蔽されないので、すべての非強磁性金属が、構造材又はコーティング材として使用され得る。同じく、金属の厚さが表皮厚さをそれほど超えない限り、その工程に影響を及ぼすことなく、センサは、非強磁性金属体に入れられ得る。これらの周波数において、銅のような非常に優れた導体では、表皮厚さは、1ミリ程度であるが、ニトリルでは、表皮厚さは、約10ミリである。
【0047】
基本的なマグネト-機械式発振子には、2つの磁気素子が入っており、平衡状態では、磁気素子は、反平行磁化と位置が揃う。外部磁場パルスを使用すると、共振子の主軸を中心とした吊り下げ球の回転振動を始めることができるが、他の球、例えば、さらなる磁性体は、固定されている。別の実施形態において、他の球も自由空間中に吊るされ、回転振動を行うことができる場合、両方の球が共振対向振動を行うことができる。
【0048】
US2007/0236213 A1は、取り付けられた磁化材料を持つ機械式共振子を大筋で述べている。磁場は、磁化材料と相互作用し、機械式振動を開始させることができる。その後、機械式振動が、その振動機械式構造体による時変磁場を読み取ることによって検出される。記録デバイスとしては、コイルなどの適切な磁気計であってもよい。このようなデバイスに掛かる外圧により、実効バネ定数を変化させ、よって、検出可能な共振周波数の変化につながる。それ故、圧力センサが形成される。
【0049】
これは、原理上上手く働くが、これまでも述べたように、いくつか欠点があり、患者の深部で圧力を十分に正確に、また十分に小さなデバイスにより測定するのには適していない。主要な問題は、機械式共振子の使用にある。通常、機械式共振において実現可能な最大限のQ値は、効果的な運用にとってはかなり低い。振動における高いQ値を提供する溶融シリカのような材料がいくつかある。これらの材料は、大抵、極めて硬く、効果的であるほど、すなわち、相当に大きな磁場変動をもたらすほど大きな振動振幅(十分に大きな角度)を可能にしない。次の問題は、弾性パラメータしか修正されないことによる、外圧に対する共振周波数の低い感度にある。低Q値と相まったこの問題は、極めて高い信号対雑音比の必要をもたらし、この高い信号対雑音比が今度は、センサを大きくさせる大量の磁性材料の必要をもたらす。US2007/0236213 A1に開示のデバイスのさらなる問題は、高強度永久磁石のデバイスへの組み込みである。一番良い永久磁石は、焼結型である。これは、MEMS製造工程には適合しない。それ故、この製造は複雑になり、また劣った磁性材料を使用する必要もある。好材料としては、US2007/0236213 A1に開示のセンサの比較的高い作動頻度がある。マイナス面は、本体内の雑音も周波数に従って増大し、数百kHzを上回ると、もう利得がないことである。それ故、主張されるGHz共振周波数は助けにはならない。高い頻度の作動も送信モードから受信モードへの素早い切り替えを必要とし、これは技術上問題となる。US2007/0236213 A1のさらなる問題は、耐久性である。十分に高い振幅x周波数の積では、バネ材には相当な負担が掛かり、破損につながる可能性がある。
【0050】
これらの問題は、例えば
図1において提示された設計によって避けられる。エネルギが主に磁場に蓄えられるので、高Q値を得るのが比較的楽である。高振動振幅も簡単に起こり得る。薄いフィラメントは、激しい摩耗は受けない。互いに対する磁石の機械的動きによって磁場を変えることによって共振を簡単に変えることができる。これはまた、圧力変化にも簡単に適合し(以下に述べるような正しい適合性で正しい形の材料を使用して)、それにより、極めて高い周波数変化に達することができる。センサは、入手可能な一番良い磁性材料で、その体積分率が高い、磁性材料から作られ得る。
【0051】
これまでにも説明したが、すでに埋め込み式圧力センサがあり、例えば、CardioMemsによって開発され、US7,147,604Bに開示のセンサがある。共振LC(インダクタ-コンデンサ)デバイスが使用されるこのようなセンサは、原理上上手く働く。圧力によって誘起される機械的動きにより、共振周波数が移行し、これにより、今度はL値又はC値(又はその両方)が変わる。このシステムは、上手く働くが、想定の用途に必要とされる寸法に小型化することはできない。これは、LC発振子に固有の問題である。サイズを小さくするに従って、発振子で発生し得るパワーレベルと、そのパワーによって起こる動的双極子モーメントが衰える。これは、以下の式で分かる。共振子のQ値は、コイルのQ値より高くなり得ない。コイルのQ値に対する近似は、以下のように記述され得る。
【数3】
ここで、ωは周波数であり、μ
0は真空透磁性、ρは抵抗性、τは導体から成る半径の分率、γはコイルの半径である。コイルは、直径と高さとが一致する円筒形であると想定される。100kHzにおける1mm直径の銅コイルでは、約1のQ値が得られる。これは、明らかに上手く行かない。CaroMemsが使用する1cm(又はそれを超える)コイルでは、Q値は、100kHzで約100、1MHzで約1000である。全体積に伝導材が詰められ、近接や表皮の影響とともにコンデンサにおける損失を無視するとの前提のために、上記の式では、実際に実現可能なQ値を過大評価している。それにも関わらず、これらの値は、上手く行くシステムにつながる。US7,147,604 B1では、1~100MHzの48の測定済みQ値について述べている。LC発振子の動的双極子モーメントが、Qx外部磁場x体積であるので、信号は、γ
5に従って拡大縮小するが、機械式発振子の場合(エネルギが弾力的に蓄えられた)、信号は、γ
3に従って拡大縮小し、例えば
図1を参照しながら述べた実施形態の場合(マグネト-機械式発振子、エネルギが磁場に蓄えられた)、周波数が線形寸法に反比例するので、信号は、γ
2に従って拡大縮小する。それ故、ここに提示した提案は、センサ小型化に非常に上手く合う。
【0052】
固定球を伴う実施形態では、固定球の直径は、620μmであってもよく、一方振動式球108の直径は、500μmであってもよい。振動式球108の磁気モーメントは、m≒70μAm2であってもよく、基本周波数は、f0≒2KHzであってもよく、Q値は、大雑把にQ≒500であってもよい。SNRは、a)共振周波数を読み出すのに使用されるコイル、b)検知デバイス、またコイルパラメータパラメータによって決まる。直径10cm、200巻き、10オーム抵抗のハンドヘルドコイルでは、約30cmの間隔、0.1sのサンプリング持続時間における理論上実現可能なSNRは、大雑把に4000である。しかし、固定球の場合のデモンストレータの典型的なSNR値は、背景信号抑制に対する対策がほとんど実施されなかった場合、10~100である可能性がある。したがって、雑音は、主に、引き込み電源高調波の変動によって決まってくる。球直径の半分では、すなわち振動式球の場合の250μmでは、磁気モーメントは、m≒9μAm2になり得、基本周波数は、f0≒4kHzであり得、Q値は、不変のままであり得、理論上のSNRは、約1000に下がる可能性がある。
【0053】
糸を可動磁性体にどのように取り付けるかについて、いくつかのやり方がある。
【0054】
例えば、貫通孔取り付けが使用され得る。この場合、孔は、重心を通って、磁化にほぼ直角にドリル開けされる。磁性材料は、硬く脆いが、パルスレーザや放電加工(EDM:Electrical Discharge Machinig)のような孔をドリル開けする方法がいくつかある。糸は、孔に通され、所定位置で接着される。通しは、真空吸引工程を用いると一番上手く行われる。いくつかの種類の接着剤が使用され得る。経済的なのは、光硬化接着剤である。これは、低粘度であり、毛細管力だけで孔に糸を簡単に入れる。代替として又は追加として、機械式手段によって、例えば、糸に結び目を作ることや接着剤滴や熱によって生じた(溶融)玉のような他の何らかの厚い部分を糸に作ることによって、糸が磁性体に固定され得る。後者は、特にUHMWPE繊維では簡単にできる。この取り付け方法により、ほんの少し磁気双極子モーメントを低減するだけなので、良好な信号を保持する。磁性体の形状は、大きくは変えられず、これは球の場合に重要である。
【0055】
また、クランプ取り付けも使用され得る。この場合、磁性体は、少なくとも2つの構成要素に分けられる。仕切り平面が、磁化に直交に、糸取り付け方向に平行に起こされるのが好ましい。糸、すなわちフィラメントは、この平面に置かれる。正確な位置合わせは、必要ではない。第2の磁性部分が一番上に置かれる。磁性部分同士は、普通、磁力によって結び付いている。最後に、すべてを所定位置に固定するために接着剤が塗られる。接着剤種類が、貫通孔取り付け工程の際と同じであるのが好ましい。さらに、磁性体のうちの1つ又は両方に溝をつけて、磁性体間の隙間全体を狭めることも可能である。この方法は、貫通孔方法とほとんど同じ良い結果になり、この製造に何も特別な設備がなくて済む。通常、磁性サブ体は、1つの完全磁性体を分けることによってではなく、2つの(同一の)磁性体をつけることによって作られる。このマイナス面は、この工程が、最初に2つの磁性体が使用されるので、無駄が多くなり、また幾分手間が掛かる可能性があることである。
【0056】
一番安価な方法は、適切な接着剤を使って、糸の先端を磁性体に直に取り付けることである。この磁性体は、何らかの工具で保持され揃えられる。適切な磁場によって両方の働きが実現され得る。この工具は、糸が通り、磁性体が磁力によって漏斗開口にくっ付く漏斗形であってもよい。接着剤がこの漏斗に塗られ、硬化する。次に、この組立体が、工具から引き抜かれ、糸の不要な部分が切り取られる。この方法は、非常に安価であり、磁性体を余すところなく活かすことができる。欠点としては、かなりの材料が加えられ、共振周波数を下げ、完成デバイスにスペースを必要とすることである。
【0057】
さらなる実施形態において、取り付け対象の構造体とさらなる接着処理が使用され得る。まず糸を非磁性体に取り付け、次に、非磁性体を磁性体に接着することによって、糸を磁性体に取り付けることができる。非磁性体は、接合成形や同等の安価な工程によって製造され得る。非磁性体の形は、簡単な糸取り付けを可能にするようでなくてはならず、すなわち、それに孔又は締め付け機構があり、たぶん刻み目のように単純であってもよい。それにより、非磁性体が磁性体に接着される。代替として、非磁性体が磁性体に締め付けられてもねじ込まれてもよい。この方法は、単純且つ安価であるが、用途によっては、かなりのスペースを必要とすることがある。
【0058】
原理上、糸-磁性体取り付けで述べた方法のすべてが、糸-ケーシング取り付けに同じように当てはまる。但し、ケーシング材が通常、それでより簡単に上手く行くので、貫通孔方法が良い選択であると考えられる。締め付けもよい選択である。これは、もっと安価になるが、仕上げの密閉が難しくなる可能性がある。
【0059】
ケーシングの少なくとも一部が、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に変換させるように柔軟である。ケーシングが、
図1及び
図2に概略的且つ例示的に示すような撓み可能な部材を有するのが好ましい。撓みは、センサに及ぼされる圧力によって決まり、球間間隔を変える。間隔の狭まりは、共振周波数の上昇をもたらし、その逆も同様である。
図1及び
図2では、基本的な圧力センサの稼働原理が分かる。圧力の上昇により、膜515は撓み、球507と508との間隔が狭まり、共振周波数が上がる。
図1及び
図2では、さらに、ケーシング及びフィラメント506を示し、フィラメント506を介して、磁性球508が膜515に取り付けられている。
図1では、膜及び共振周波数に作用する圧力は、
図2の圧力よりも小さい。
【0060】
図3では、蛇腹設計、すなわち、蛇腹の場合の圧力センサのさらなる実施形態を示す。蛇腹は、センサに作用する圧力からもたらされる力に屈し、すなわち、圧力上昇が蛇腹を圧縮し、球間間隔を狭める。
図3Aでは、第1の蛇腹設計を示す。蛇腹703は、圧力上昇が蛇腹703を圧縮し、磁性球707と708との間隔を狭め、共振周波数の上昇につながる原因であるセンサ外径を大きくすることなくフィラメント706周りで使用可能なスペースを使用するように設計されている。
図3Aでは、さらに、圧力センサ701のケーシング702及び固定磁性球707を示す。圧力センサにはさらに、拡散障壁、すなわち、拡散阻止層として働く薄金属コーティング717が施されている。本発明の実施形態すべてが、分かりやすくするために必ずしもすべての図ではっきり示されているわけではないとしても、拡散阻止層が施されていることに留意すべきである。
【0061】
図3Bでは、血栓形成を避けるために追加の滑らかで柔らかいカバーが蛇腹818全体を覆っている、
図3Aに示す圧力センサと同様である、コーティングセンサ801を示す。センサ801も、圧力上昇が蛇腹803を圧縮し、磁性球807と808との間隔を狭め、共振周波数の上昇につながる原因であるセンサ外径を大きくすることなくフィラメント周りで使用可能なスペースを使用するように設計されている。圧力センサ801にはさらに、拡散障壁、すなわち、拡散阻止層として働く薄金属コーティング817が施されている。
【0062】
図3Cでは、さらに血管への直接送達に3要素ワイヤケージ920を備えた、
図3Bに示す圧力センサと同様である圧力センサ901を示す。このケージは、血管管腔を塞ぐことなくセンサを安定させる。したがって、この実施形態でも、血栓形成を避けるために滑らかで柔らかいカバー918が蛇腹903全体を覆っている、蛇腹903は、圧力上昇が蛇腹903を圧縮し、磁性球907と908との間隔を狭め、共振周波数の上昇につながる原因であるセンサ外径を大きくすることなくフィラメント周りで使用可能なスペースを使用するように設計されている。
図3Cでは、さらに、圧力センサ901のケーシング902及び固定磁性球907を示す。圧力センサ901にはさらに、拡散障壁、すなわち、拡散阻止層として働く薄金属コーティング917が施されている。
【0063】
蛇腹は、様々に作られ得る。まず、蛇腹は、シリコンゴムのようなかなり柔軟な材料から作られ得る(
図4参照)。実際には、それは、単にシリコンゴム片であることがある。
図4では、圧力センサ1001は、ゴム要素1009、1003を使用して閉じられた端を開くはずである円筒形ケーシング1002を備え、第1のゴム要素1009が、固定磁性球1007を保持し、第2のゴム要素1003がフィラメント1006を介して回転振動式磁性球1008を保持する。円筒形ゴム要素1003は、蛇腹の代わりに、膨張継手として働く。
【0064】
しかし、蛇腹に少なくとも1つの拡散高密度層を組み込んでいる場合、すなわち、例えば、
図3A~
図3Cを参照しながら上で述べたように蛇腹を拡散阻止層でコーティングしている場合、単純なチューブも通常かなりごわごわしている。それ故、実際の蛇腹構造が好ましい。蛇腹は、よく知られており、様々な形の蛇腹が考えられ得る。特に、「折り紙」型の構造が圧力センサ用途に上手く合う。蛇腹を製造するやり方がいくつかある。それは、接合成形工程で簡単に作られ得る。これには、蛇腹が1つの手順だけで筐体とともに製造され得るという利点がある。但し、膜が非常に薄くなければならないので、製造工程は、問題の多いものである。代替案は、接合成形、また旋削工程やフライス工程のような製造工程で蛇腹の内部フリースペースしか作らないことである。ポリビニルアルコールやポリスチレンのような材料は、簡単に溶けるはずである。アルミニウム、鉄や銅のようないくつかの金属も適している。この材料上に、蛇腹構造が蒸着され、内部構造が適切な溶剤及び/又は熱の印加で取り除かれる。多くの蒸着工程が蛇腹を作るのに適している。例えば、貴金属(金、プラチナなど)が電気化学的に蒸着され得る。金属、化合物、及びポリマーは、真空で熱蒸着され得る。スパッタリング工程とともに化学蒸着も適している。単純塗装のような多くの他の方法も上手く行くであろう。純金属蛇腹は上手く働くが、それがそれほどごわごわした蛇腹にはしないので、金属とポリマーとを合成するのが一番良い。また、少なくとも2つ以上の極薄金属層を統合すると効果的になる。それ故、例えば、まずゴールドパラジウム層を付着させ(スパッタリングし)、次にCVD工程を用いてパリレン-Cを付着させ、次にまた合金を一番上にスパッタリングする。これにより、すでに拡散に対して極めて耐性があるパリレン層でガスが広く拡散するはずであるので、金属層に2、3の割れ目が現れたとしても拡散障壁が働くことができる。生体適合性を高める層が一番上にさらにあってもなくてもよく、すなわち、記載の実施形態のそれぞれが1つ又はいくつかの外側生体適合性層を備えてもよい。内部金型を使用する代わりに、外部金型の使用も考えられ得る。それらは、蛇腹を外すために割る必要があるが、複数回再使用され得る。物理的な蒸着方法は、この製造工程ではそれほど上手く行かない可能性があるが、例えば、化学蒸着や電気化学蒸着が適する。一旦蛇腹(未仕上げの)が金型から外されると、これまで述べたような他の蒸着工程も使用され得る。
【0065】
上記のように、センサをコーティングするやり方が多くある。例えば、
図3A~
図3Cを参照しながら上に述べたように、もう一度金属を仕上がりセンサにコーティングすると特に役に立つ。これにより、考えられ得る接合部すべてが抗拡散になる。ここでもまた、物理蒸着や化学蒸着が役に立つ。必要であれば、パリレネ-Cのような生体適合性コーティングがこの層の上に蒸着される(又は代替物として)。それ以外では、貴金属やチタンのコーティングがすでに優れた生体適合性をもたらしている。
【0066】
図3B及び
図10Cに示すように、蛇腹の幾分尖った縁に血栓ができないように、滑らかで柔らかい上層818、918が加えられ得る。柔らかい層818と918との間の空所には流体、例えば水やシリコンオイルが充填され得る。
【0067】
図3Cには、血管内への直接送達用の3要素ワイヤケージ920を示す。このケージは、血管管腔を塞ぐことなくセンサを安定させる。このケージは、通常、曲がった脚が突き出す環形又は円盤形の中央部分から成る。これは、線材、例えば、その高柔軟性と優れた生体適合性にニトリルから製造され得る。ステンレス鋼やポリマーのような他の素材も材料も上手く行く。ワイヤの代用としては、次に金型及び熱処理を使用して曲がった形にされる、薄板材から切り出された構造体がある。特にポリマーでは、射出成型も実現可能である。センサ筐体との接続では、環形又は円盤形の構造体が、ケージとセンサ筐体との境界面としての役割を果たす。環形構造体は、円筒形筐体に切り込みを入れたものであってもよく、バネ力によって且つ/又は接着や溶接によって、安定することができる。円盤形構造体は、センサに接着又は溶接され得る。
【0068】
血管壁接触により力が生じないように、ケージ920は、センサ901の一部分にしか接続せず、他の部分周囲のスペースを保護する(
図3C参照)。ケージ920が、固定磁気素子が入っている部分に接続されても、回転式磁石を有する部分に接続されてもよい。ケージ設計には、螺旋構造体(1本のワイヤ又は複数本のワイヤ)や網状構造体も含まれ得る。これらの構造体は、圧縮される際に、例えば、細い針による経静脈投与時に最適化され得る。
【0069】
図5A~
図5Dには、圧力センサのさらなる実施形態を概略的且つ例示的に示す。ここでは、環境とのトルク結合を最小限に抑える対称センサ設計を提示する。
図5A、
図5Bでは、低圧の対称センサ(
図5A)、高圧の対称センサ(
図5B)を示す。対称センサ1101は、円筒形ケーシング(1102)を備え、このケーシング1102の対向端には、蛇腹1103、1104が位置し、すなわち、ケーシング1102の端面が蛇腹1103、1104により保持されている。端面に、それぞれのフィラメント1105、1106を介して磁性球1107、1108が取り付けられ、磁性球は、他の実施形態において見られるように、永久磁石である。ケーシング1102の外面は、拡散隔壁として働く薄金属コーティング1117が施され、すなわち、ケーシング1102の外面は、拡散阻止層1117が施されている。
図5C及び
図5Dには、実施形態1101に相当するが、血管壁から間隔を保つためにワイヤケージ取り付け1220が加わるさらなる実施形態1201を示す。仕上がり設計では、1本のワイヤが流れベースの投与時に血管構造に引っ掛からないように、開いたワイヤ端が、つながっていなければならない。したがって、この実施形態でも、環境とのトルク結合を最小限に抑えるために、対称センサ設計となっている。
図5C、
図5Dでは、低圧の対称センサ(
図5C)、高圧の対称センサ(
図5D)を示す。対称センサ1201は、円筒形ケーシング1202を備え、このケーシング1202の対向端には、蛇腹1203、1204が位置し、すなわち、ケーシング1202の端面が蛇腹1203、1204により保持されている。端面に、それぞれのフィラメントを介して磁性球1207、1208が取り付けられ、磁性球は、他の実施形態において見られるように、永久磁石である。ケーシング1102の外面には、拡散隔壁として働く薄金属コーティング1217が施され、すなわち、ケーシング1202の外面には、拡散阻止層1217が施されている。
【0070】
上記の圧力センサは、例えば、
図6及び
図7に概略的且つ例示的に示すように、ガイドワイヤ1310に組み込まれ得る。ガイドワイヤ1310の端は、固定磁性球1307と、フィラメント1306を介して膜1304に取り付けられた回転式磁性球1302とを備える圧力センサ1301のケーシング1302に溶接され得る。ケーシング1302には、圧力が測定できるように、ケーシング1302の外側との流体接続をもたらす通気ポートと見なされ得る少なくとも1つの開口1303がある。
図6及び
図7に示す寸法は、単に例示に過ぎない。この寸法が変わることもあり得る。しかし、図示の寸法は、冠血流予備量比圧力センサ用途に非常に適している。観察対象のデモンストレータSNRにスケーリング則を適用すると、示した寸法が患者に完全に貫通するほど広い間隔での遠隔操作に十分なSNR及び正確さをもたらすことが分かる。したがって、圧力センサは、ガイドワイヤに組み込まれ、それによって圧力ワイヤを生み出すことができる。
【0071】
例えばステント上の圧力降下をモニタするのに、圧力センサを他の埋め込み式デバイスに接続すると、役に立つことがあり得る(
図8参照)。これは、例えば、詰まりを検出するのに、また疾患進行をモニタするのに、ステント内やその周りの圧力プロファイルの特徴付けに役立つことがあり得る。
図8には、実際のサイズ規模(ステント長=30mm、ステント直径=4mm、ワイヤ直径=0.2mm、センサ長=1.2mm、センサ直径=0.5mm)で圧力センサ1403のステント組み込みを示し、
図8では、ステント1402上の圧力降下、それにより起こり得る詰まりをモニタするのに使用され得るステント1402の入口、出口にある2つのセンサ1403を示す。
図8Bでは、センサ1403の固定部分がワイヤ枠1402に接続される必要があることが分かる。ステントへの組み込みを良くするのに、センサをより流線形にするカバー材が加えられてもよい(図示せず)。
図8Cでは、ステン1402の中の様子が分かる。組織の異常増殖を回避するか遅らせるために、可動センサ部分が血管中にわずかに傾けられ得る。
【0072】
応用には、冠動脈ステント、動脈瘤のステント(圧力モニタリングにより、エンドリークを検出するのをやりやすくすることができる)、経頸静脈肝内門脈体循環シャント(TIPS:Transjugular Intrahepatic Portosystemic Shunt)、また末梢血管疾患に使用されるステントがある。上記のように、円形や円盤形の構造体は、これまで述べたすべての取り付け選択肢で、デバイスとセンサとの境界面として働くことができる。同様の取り付けが、他の体内デバイス、例えば、ワイヤコイル巻き、シャントグラフト、また経壁Amplatzerデバイスに適用され得る。ガイドワイヤ、FFR圧力ワイヤ、カテーテル、大型シャントグラフト、また人工心臓弁などのもっと大きなデバイスでは、センサの受け皿となる孔がデバイスにドリル開けされ得る。孔の中に、例えば、接着によって又は締め付けによって、またセンサの片側だけが取り付けられるが、もう一方は、例えば、流体中や直に血液中で自由に動く。流体は、シリコンオイルやパーフルオロポリビニルエーテルなどの非混合タイプのものでもよく、さらなる薄い柔軟な膜によって血液から分けられてもよく、その両方であってもよい。
【0073】
臨床応用では必ず、センサがパッシブ的であり、小型であるという点を活かす。センサは、人間の体内に置かれ得るが、読み取りシステムは、それを、ある程度離れて体に接触せずに無線で検出することができる。ほとんどの臨床モニタリング応用では、センサは、数カ月~数年、人間の体内で安定していなければならない。しかし、ガイドワイヤ及びカテーテルでは、数時間だけ安定していれば済む。経静脈に投入するセンサでは、新しいセンサが時折送り込まれ得るので、数週間にわたる安定性でも十分であり得る
【0074】
図9には、ステントと組み合わされた心臓弁2000の実施形態を概略的且つ例示的に示し、
図9では、ステント材は、参照符号2011で示す。心臓弁2000は、非移動パート2002と移動パート2004とから成る弁構造体2001を有する。心臓弁2000は、記載の実施形態による圧力センサを備える。第1の圧力センサ2020が心臓弁2000の非移動パート2002の低圧力側に配置されている。また、第2の圧力センサ2008が心臓弁2000の移動パート2004に配置されている。これら2つの圧力センサは、心臓弁200の外壁に取り付けられている。しかし、圧力センサは、心臓弁構造体に組み込まれてもよく、この心臓弁構造では、この場合、膜によって覆われ、流体が充填されたスペースが心臓弁構造体内にあり、それぞれの圧力センサがこのスペース内に配置されている。膜及び流体を介して、外圧は、それぞれの空所内のそれぞれの圧力センサの位置で圧力変化をもたらす。
図9では、心臓弁2000の非移動パート内の低圧側で膜2003によって覆われた空所2005内に第3の圧力センサ2007が配置されている。心臓弁2000の移動パート2004内のスペースに第4のセンサ2010が配置され、このスペースにも流体が充填され、膜2021が覆っている。高圧側の心臓弁構造体の非移動パートの空所2006内にさらなる圧力センサ2009が配置され得、この場合も、空所には流体が充填され、膜2014が覆っている。
【0075】
図10には、脳動脈瘤の処置用のワイヤの実施形態を概略的且つ例示的に示す。ワイヤ2100は、記載の実施形態による圧力センサを備える。具体的には、第1の圧力センサ2104が、その第1の端の片側がワイヤ2100の第1の端に配置され得る。また、さらなる圧力センサ2101が、ワイヤ2100の第2の端に取り付けられ得、ワイヤ2100の中間区画には、第4のセンサ2103が装着され得、ワイヤ2100には、圧力センサ2103が配置される内部キャビティがあり、この内部キャビティには、開口2012を介したワイヤ2100の外側への流体接続がある。
【0076】
図11には、ワイヤ構造体2203を有する肝内シャントデバイス2200の実施形態を概略的且つ例示的に示す。この実施形態では、ワイヤ構造体2003には、線形材で取り囲まれた第1のパート2201とむき出しの第2のパート2202とがある。この実施形態では、第1のパート2201は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を使用して裏打ちされている。また、この実施形態では。ワイヤ構造体の第1のパート2201には別個のワイヤがあるが、ワイヤ構造体2203の第2のパート2202では、ワイヤが織り合わされている。単に肝内シャントと言われてもよい肝内シャントデバイス2200は、いくつかの圧力センサを備える。例えば、第1の圧力センサ2204がPTFEチューブ内部でワイヤ構造体2203の第1のパート2201のそれぞれのワイヤの隣に配置されている。第2の圧力センサ2205がPTFEチューブ内に「インワイヤ」配置され、すなわち、圧力センサ2205がワイヤ構造2203のそれぞれのワイヤの2つの端間に配置されている。第2の圧力センサ2205が、PTEFチューブ内部で「ワイヤ内に」で配置され、すなわち、圧力センサ2205が、ワイヤ構造体2203のそれぞれのワイヤの2つ端間に配置される。第3の圧力センサ2206が、PTEFチューブ内にワイヤ構造体2203の2つの隣り合うワイヤ間に配置され、またこれらのワイヤに接続されている。ワイヤ構造体2203のワイヤの形は波状であり、さらなる圧力センサ2207がそれぞれの波形の頂点間又は窪み間に配置され、例えば、圧力センサは、それぞれの波形の2つの隣り合う頂点又は窪みに接続され得る。
【0077】
図11は、PTFEチューブ内のワイヤ構造体2203のワイヤの隣のさらなる圧力センサ2208を示す。また、ワイヤ構造体2203のむき出しのパート2202にも、圧力センサを備えることができる。例えば、圧力センサ2209が2つの隣り合う、織り合わせワイヤ間に配置され、これらの隣り合う、織り合わせワイヤに接続されていてもよい。さらなる圧力センサ2210がワイヤの隣に配置されてもよく、圧力センサ2211がワイヤ構造体2203の波形のぞれぞれのワイヤの2つの頂点間又は窪み間に配置され、その頂点又は窪みに接続されていてもよい。
【0078】
図8~
図11では、圧力センサの配置は、単に例示に過ぎず、すなわち、それぞれのデバイスに又はその中に同じ位置又は他の位置で、多かれ少なかれ圧力センサが配置され得ることに留意されたい。また、それぞれのデバイスが圧力センサを1つしか備えないこともあり得る。それぞれのデバイスの1つ又はいくつかの圧力センサは、記載の実施形態のうちの少なくとも1つによる圧力センサである。
【0079】
以下では、センサ長が必ずその直径の2倍前後であると想定する。直径0.3mm以上のすべてのセンサでは、1mbarを下回る圧力精度、少なくとも400mbarの圧力範囲で、30cmよりも離れたリアルタイム圧力モニタリング(秒当たり10より多い読み取り)が可能である。これらのパラメータによって、臨床上妥当な精度で血圧の測定が可能になる。
【0080】
図6及び
図7を参照しながらこれまで説明したように、センサがガイドワイヤに組み込まれてもよい。典型的なガイドワイヤ直径は、0.33~1.0mmの範囲であり、すなわち、薄型圧力ワイヤでは、センサ直径は、約0.3mm以下であるはずである。それ故、0.25mmの球直径が実現可能であり、周波数、SNR、及びQ値に対するこれまでの推定につながる。30cm離れての理論上実現可能なSNRが~1000であれば、すべての読み取り状況で十分である。大きなワイヤ直径では、もっと大きな球が採用され得るので、最適な背景抑制の必要を減らす。それ故、0.3~1.0mmのセンサ直径がガイドワイヤ組み込みに有用である。
【0081】
センサは、カテーテルに組み込まれてもよい。ここでは、センサをカテーテル内腔に置くと、ガイドワイヤの場合と同じ要旨が当てはまる。サイズ制約を強くすることにつながる材料のカテーテル壁にセンサを置くのが望ましい。球直径が0.1mmであるセンサを作ることは上手く行きそうであるが、背景信号除去の骨折りが益々必要になり、且つ/又はそこでセンサを確実に読み出すことができる間隔が狭まることになる。その代わりに、SNR向上に向けて心拍と同期する平均化が採用され得るが、時間分解能を犠牲にすることになる。それ故、カテーテル組み込みでは、0.1~1.0mmのセンサ直径が有用である。
【0082】
センサは、ステントに置かれてもよい。ステントを流れる血流に対する影響を最小限に抑えるために、センサ直径は、ワイヤ直径を大きく上回ってはいけない。典型的なワイヤ直径は、0.2~0.5mmである。それ故、これは、センサ直径には有用な範囲である。しかし、もっと大きなセンサも、場合によっては継ぎ目なしカバーを加えて、組み込まれてもよい。
【0083】
センサを注射器で投入するのも可能であり、この場合、センサは、患者に対するリスクを伴わずに肺疾患域や肝内域にあるより小さな血管に嵌り込み得る。投入時の典型的なセンサ直径は。0.3~1.0mmである。ケージサイズは、センサが最適に置かれなければならない血管直径に合わせて調整される必要がある。ケージ直径が、1mmを上回るのが好ましく、これは、それより小さな血管では、圧力がそれより大きな送り込み血管における望ましい圧力から外れるからである。静脈系への針を通した送り込みを簡単にするには、ケージは、センサケーシングの直径まで半径方向に圧縮可能でなければならない。
【0084】
圧力センサが永久磁石のような磁性体を有することから、体がMRIスキャナで走査される必要がある場合に問題となる可能性がある。この問題は、圧力センサが小型であるために、小さな力とトルクしか引き起こされず、患者に脅威を与えないことから、体、すなわち患者には危険ではない。同じように、MRIスキャナによって起こるMR画像も、圧力センサが超小型であることから、台無しにはされない。しかし、多くの臨床MRIスキャナでは、1.5Tより高い磁場強度が使用され、強い磁場が磁性体の磁化を変えることによって、又は圧力センサ内の機械装置に損傷を与えることによって、圧力センサを壊す可能性がある。これについては、
図12及び
図13を参照しながらより詳しく述べることにする。
【0085】
図12には、MRI磁界イミュニティのない圧力センサ1を概略的且つ例示的に示す。圧力センサ1は、2つの磁性球7、8を有し、この両方は、それぞれの取り付け点3、4でケーシング2に取り付けられているそれぞれのフィラメント5、6を使用して、吊り下げられている。振動する外部磁場によって励起されると、磁性球7、8は、フィラメント軸を中心として対向回転振動を始める。この共振振動は、ある程度離れて記録され得る磁場を生み出す。外圧に応じて、2つの磁性球7と8との間隔、それにより共振周波数が変わるようなケーシング2は、部分的に柔軟である。ケーシング2の柔軟な部分は、分かりやすくするために
図12では強調表示していない。
【0086】
図13では、
図12の圧力センサ1が軸方向9の強い磁場に入れられている。これは、磁場の方向に磁性球7、8が自然に向くようにさせる。しかし、この実装形態では、フィラメント5.6が短過ぎて、磁性球7.8と完全には位置が揃わない。センサケーシング2が動くことができない場合、フィラメント5、6が切れ、又は非常に強い磁場の高磁場MRIスキャナの条件では、磁性球7、8は、それらの磁化方向が変わり、デバイス1を非稼働状態にする。
【0087】
この問題に対する解決策の1つは、磁性球が入ったケーシング全体が磁性球の磁化と外部磁場とが揃うことにより、再磁化を回避するように向き直ることができるように、圧力センサのケーシングを、例えば、高粘度の流体が充填された好ましくは球形又は楕円形の筐体である外側ケーシングケーシング10、110に置くことである。球形外側ケーシング110により、センサの勝手な向き直りが可能になり、それにより、
図14に概略的に示すように、1つの球107が固定し、もう1つの球108がフィラメント106上で振動する、より単純なセンサ設計にも球形外側ケーシング110が使用され得る。
図14では、圧力センサ111は、球形外側筐体110内に、固定球107とフィラメント106上で振動可能なもう1つの球108とを含めたケーシング102を備える、圧力センサ111が、より単純なマグネト-機械式発振子101を使用して形成されている。
図13に示す設計では、フィラメント5、6の長さに応じて、センサ1の部分的な向き直りで十分である場合があり、外側筐体10は、もっと楕円形であってよく、すなわち、圧力センサが参照符号11で示される
図15に概略的に示すように、一方向又は二方向で小さくされてもよい。
【0088】
圧力センサは、囲い込み筐体の外側の外圧変化が、ケーシングの外部にある外圧変化、また囲い込み筐体の内部にある外圧変化に変換されるように構成されている。例えば、外側筐体は、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に事実上変換するために、流体が充填された非常に柔らかい筐体であるか、開口がある筐体とすることができる。
【0089】
さらなる筐体10、110は、球磁化と外部磁場とが揃うようなケーシング2、102の向き直りを可能にし、
図14では、自由なセンサ向き直りを可能にすることにより、例えば固定磁性球の場合の設計にも適する球形筐体10を示し、
図15では、一方向又は二方向に平坦である、すなわち、
図14における球10よりも直径が小さい、ケーシング110内に必要とされる傾きが考えられ得る。楕円形ケーシング110は、特に、両方の磁性球7、8がフィラメント5、6に吊るされているセンサで有益である。
【0090】
図16では、糸205、206付き、すなわちフィラメント付きの圧力センサ210は、
図12及び
図13に示すセンサ1よりも細長いものであるが、チューブ直径は、一定に保たれている。それ故、磁性球207、208には勝手な方向の外部磁場と揃うのに十分な余裕がある。最低限の糸長さは、磁性球207、208の直径のπ/4である。起こり得る唯一の問題は、磁場が、磁性球207、208にフィラメント205、206を巻くように変えられることである。これを起こりそうではなくするために、磁性球207、208とケーシング202の内側とに黒鉛のような滑る非付着材をコーティングすることができる。フィラメント205、206が、ケーシング202の取り付け点203、204に取り付けられている。
【0091】
別の実施形態を概略的且つ例示的に示す
図17では、圧力センサ301の糸305、306、すなわちフィラメントが、それ自体では短過ぎて、デバイスMRIを耐性にすることはできない。しかし、それぞれの糸305、306に、またケーシング302に対応する巻き取りユニット314、315が取り付けられている。それぞれのフィラメント305、306に掛かる力がかなり大きくなると、このユニット314、315は、フィラメント305、306の長さを長くする。そのため、それぞれの磁性球307、308が自由に回転することができ、問題は解消される。MRI機の磁場の外側の正常な作動では、フィラメント305、306の長さは、正確に規定される必要がある。これは、糸305、306に取り付けられ得るストッパ311、312によって、又は巻き取りユニット内のある種のストッパによってなされる。
【0092】
図18は、1つの考えられ得る巻き取りユニット414を示す。これは、プーリ427及び取り付け点426によってフィラメント405を保持するバネ材422を有する。フィラメント405に掛かる力が弱いと、バネ422がいくつかのストッパ424、425によって止められる。バネ422が、ストッパ424、425を押すので、フィラメント405の長さが固定される。力が強まると、バネ材422が曲がり、ケージ420内側で使用可能な長さが増す。この構造が最高で1.5球半径のフィラメント伸長を可能にするのが好ましい。これは、ケージ420内側のフィラメント長さに関わらず、この構造で十分であることを意味する。フィラメント405は、ケージ420からケース開口421を通して検知デバイスのケーシングの中に誘導されているバネがケース420のバネ取り付け点423に取り付けられている。
【0093】
記載の圧力センサが、温度への共振周波数の依存を補うように構成されているのが好ましい。共振周波数の温度ベースの移行を補う圧力センサの構成について、以下に
図19を参照しながら述べることにする。
【0094】
図19でも、圧力センサ3001は、ケーシング3002と、磁性体3004とを備え、磁性体3004は、ケーシング3002内に配置され、外部磁気トルクが磁性体3004に作用している場合に平衡向きから回転可能であるようなものである。圧力センサ3001は、回復トルクユニット3003をさらに備え、回復トルクユニット3003は、外部磁気トルクによって励起した磁性体3004の回転振動を可能にするために、外部磁力が平衡向きから磁性体3004を回転させた場合、磁性体3004を平衡向きに戻す回復トルクを与えるように適合されている。この実施形態では、ケーシング3002は、円筒形であり、磁性体3004は、磁性体3004の中心を縦走する仮想回転軸を中心に回転可能であり、磁性体3004は、仮想回転軸に対して回転対称である。具体的には、この実施形態では、磁性体3004は、磁性球である。
【0095】
回復トルクユニット3003としては、回復トルクをもたらすさらなる磁性体3003が挙げられる。具体的には、磁性体3004は、フィラメント3007の片端に取り付けられ、フィラメント3007のもう1つの端は、ケーシング3002に取り付けられている。フィラメント3007は、磁性体3004がそれらの磁力に起因してさらなる磁性体3003に触れるのを防ぎ、また磁性体3004に回転振動させるように適合されている。この実施形態では、さらなる磁性体3003は、接着剤3009を使用してケーシング3002に固定取り付けされている。
【0096】
磁性体3004は、第1の磁気双極子を成し、さらなる磁性体3003は、第2の磁気双極子を成し、平衡向きでは、第1の双極子と第2の双極子とが対向方向を向くような、磁性体3004とさらなる磁性体3003とが配置されている。第1の磁性体3004及び第2の磁性体3003は、永久磁石であり、平衡向きでは、磁性体3004のN極がさらなる磁性体3003のS極を向き、逆もまた同様である。
【0097】
ケーシング3002は円筒形であり、円筒形ケーシング3002には2つの端面3030、3031があり、さらなる磁性体3003は、第1の端面3030に固定取り付けされ、磁性体3004に取り付けられた端と反対側にあるフィラメント3007の端は、円筒形ケーシング3002の第2の端面3031に取り付けられている。
【0098】
この実施形態では、ケーシング3002の第2の端面3031は、ケーシング3002の壁の柔軟な部分3008によって形成され、磁性体3004は、ケーシング3002の外側から柔軟な部分3008に作用する外圧が磁性物3004とさらなる磁性物3003との間隔の変化をもたらすような、フィラメント3007の柔軟な部分3008に取り付けられている。外圧によって引き起こされるこの間隔変化に起因して、磁性体3004の位置におけるさらなる磁性体3003によって起こる磁場の強度が変わり、それにより共振周波数も変わる。このように、共振周波数が外圧に従って変わり、この外圧とは、圧力センサが他の物理量としてそれを測定するのに使用されるようなものである。そのため、ケーシング3002の壁の柔軟な部分3008は、外圧に応じて共振周波数を修正するように適合されている測定要素として見なされる場合がある。
【0099】
圧力センサ3001は、さらなる磁性体3003に隣接して配置された磁性材料3005、3006をさらに備える。この磁性材料3005、3006は、さらなる磁性体3003によって起こる磁場に影響を与え、温度が変わると、磁性体3004の位置における磁場の強度を変えるために、よって共振周波数を変えるために、磁性材料3005、3006のこの影響は、温度によって決まってくる。磁性材料3005、3006は、温度が上がるにつれてその磁化が弱まるように適合されている。また、磁性体3006は、その磁化方向が、さらなる磁性体3003の磁化方向と反対であるように適合され、磁性材料3005は、その磁化方向とさらなる磁性体3003の磁化方向とが同じであるように適合されている。そのため、柔らかい磁性材料である磁性材料3005、3006は、対向する周波数方向に温度に応じて共振周波数に影響を与え、すなわち、これらの磁性材料のうちの1つが、温度が上がるのに従ってより高い周波数に向かって変わることをもたらし、これらの磁性材料のうちのもう1つが、温度が上がるに従って、より低い周波数に向かって変わることをもたらす。
【0100】
圧力センサが、共振周波数が温度によって決まらないように構成されているのが好ましい。しかし、例えば、膜によって形成されてもよいケーシングの壁の柔軟な部分3008が、共振周波数がほぼ温度によっても決まることがあるような温度依存柔軟性を有することがある。また、圧力センサのさらなる部分も温度によって決まる可能性があり、この依存性は、共振周波数にも影響する可能性がある。この望ましからざる温度依存周波数移行を補うために、磁性材料3005、3006が、温度変化に応じて、反対の周波数方向の同じ周波数移行をもたらすように仕組まれ得る。具体的には、圧力センサ3001の共振周波数の温度依存が一切なくされたような磁性材料3005が選ばれ、配置される。また、磁性材料のうちの1つだけ、すなわち、温度が上がるのにつれて共振周波数を下げる磁性材料、又は温度が上がるのにつれて共振周波数を上げる磁性材料が、圧力センサ3001の共振周波数の温度依存を抑制するか排除さえするの使用可能である。磁性材料3005、3006のうちの1つ又は両方は、共振周波数の温度誘起移行を補う要素と見なされてもよい。
【0101】
図20は、それぞれのセンサの共振周波数を検出し、それぞれのセンサを読み出す検出システム1501、すなわち、それぞれの圧力センサを無線で読み出す読み取りシステムを概略的且つ例示的に示す。
図21は、検出デバイス1501の原型を例示的に示す。検出システム1501は、基本的に、磁場の少なくとも1つの磁場発生装置及び磁場の少なくとも1つのセンサ、すなわち、圧力センサの磁性体の誘起振動によって起こった磁場又は電磁場を電気応答信号に変換するトランスデューサを備える。作動頻度帯域は、低khz範囲であり、様々な頻度で並行に働くいくつかのセンサの応答に及ぶ程度に、また場合によっては、例えばSNRを高めるセンサ共振周波数のより高い高調波にも及ぶ程度に広くなければならない。送信磁場振幅は、最大で数ミリテスラであるが、検出対象の磁場振幅は、nTの1/10~数nTである。多くの様々な磁場発生装置(振動式永久磁石、芯のあるコイル/芯のないコイル、磁歪磁場モジュレータなど)が多くの様々な磁気計(ホール効果センサ、様々な類のマグネト-抵抗センサ、マグネト-共振センサ、SQUIDSなど)と同様に上手く働くことができる。技術上最も単純なシステムは、磁場の送受信用の空芯コンダクタループである。コイルは、大抵、センサ用途には十分である。磁場を起こすコイルは、磁場を受信するのにも使用され得る。しかし、いくつかの利点を与える様々なコイルが、これらの作業に採用され得る。
図20及び
図21には、単一のチャネル送受信システムである検出システムを示し、多くのチャネルが空間情報を得るのに並行して操作され得る。
【0102】
図20では、検出システム1501は、デジタル-アナログ変換器1506(DAC:Digital-to-Analog Converter)を介してマイクロコントローラ1507に接続されている送信コイル1503と、記載の圧力センサのいずれかとすることのできる圧力センサ1520に対して外部磁気トルクを発生させる可聴増幅器1502とを備える。受信コイル1504も低雑音増幅器1505、及び共振周波数を読み出すアナログ-デジタル変換器1508(ADC:Analog-to-Digital Converter)を介してマイクロコントローラ1507に接続されている。マイクロコントローラ1507は、例えば、信号発生及び受信、周波数評価及び制御、また場合によっては基準圧力測定用に構成されている。
図21には、送信/受信デカップラも示す。
【0103】
マイクロコントローラ1507は、可聴域増幅器1502を使用して増幅され、次に励起コイルと言われることもある送信コイル1503に渡される送信パルスを発する(
図22の上部トレース1350参照)。この実装形態では、分かりやすくするために
図20には示されていない2つのさらなるデカップリング用コイル1510を使用して送信コイル1503から切り離された別個の受信コイル1504が採用されている。受信信号は、低雑音増幅器1505に送り込まれ、マイクロコントローラ1507のADC1508に渡され、ここで、通常1秒の1/20のタイムトレースが、約20kS/sのレートでサンプリングされる。
図22には、励起パルスと言われることもある送信パルス1350の他に、センサにおける球振動に起因し、それ故センサ応答にも起因する受信コイル1504における誘起電圧1351を示す。励起パルス1350の間隔空けは、マイクロコントローラ1507によって絶えず調整され得る。
【0104】
以下では、マルチ-コイルシステムの利点について述べることにする。単一のコイルシステムでは、センサとコイルとの相対向きは、コイルが磁性球振動を駆り立てることができず、起こった磁場変動をリードバックすることもできないようなものである。それ故、ユーザがセンサに対して読み取りシステムを向き直す必要を回避するには、マルチ-要素コイルシステムが望ましいことがある。コイルは、すべての状況において最適な励磁場を起こすことができる様々な空間感度分布を備える必要がある。いくつかのコイルの使用はまた、空間における振動式磁気双極子の位置及び向きの確認によってセンサの位置特定も可能にする。分かっているコイル要素感度とともに受信信号の様々な振幅は、位置パラメータ及び向きパラメータの確認に向けて双極子モデルに適合され得る。枕やマットレスにおける具体化用のマルチ-コイルシステムの例を
図23に表示する。使用可能な多くの受信コイル及びチャネルとともに、以下でさらに述べるような背景信号抑制を高めるのに追加情報も使用され得る。
【0105】
図23では、いくつかのコイル1652がC-アームシステムのようなイメージングシステム1650の患者ベッドのマットレス1651に組み込まれているマルチ-コイルアレイを成す。コイル1652が10%未満のX線吸収を有するアルミニウムコイルであるのが好ましい。したがって、コイル1652が使用されるのであれば、患者線量を増やす必要はない。
【0106】
以下では、検出システムのコイルベースの送信システムについて、より詳しく例示的に述べることにする。コイルベースの送信システムは、送信増幅器及び送信コイルを有する。場合によっては、整合回路及び「ミュート」回路も伴う。送信信号形がセンサ用途ではそれほど重要ではないので、多くの増幅器がこの作業に適している(トランジスタ、真空管、サイリスタなどのより多くの構成要素を採用するクラスA、クラスB、クラスAB、クラスDなど)。信号品質が重要ではないので、低オン-抵抗のスイッチを採用するハーフブリッジ又はフルブリッジの増幅器である、損失が最も低い増幅器トポロジが選択され得る。好ましいスイッチは、MOSFETやIGBTである。整合回路は、最も単純な場合で、インダクトと直列の単純なコンデンサである。増幅器が十分な供給電圧で働くとの条件では、このような整合コンデンサは、省かれるか、コンデンサによるコイルの共振周波数が作動頻度よりかなり低いなるほど高い静電容量が選ばれる。整合回路は、別の理由で、関心のあるものである。医療機器は、常に安全に働かなくてはならず、電圧の低減が課題である。電流が1つのコイル区画を流れ、次に整合コンデンサを流れ、その後、第2のコイル区画に流れるように、コンデンサをコイルの中央に置くことによって、ピーク電圧差が狭められ得る。それぞれが対応するコンデンサに接続されたより多くの区画にコイルが分けられると、これは、さらに一層本当になる。これは、コイルと整合回路とを組合せユニットにする。磁場振幅は、パルス幅変調によって絶えず制御され、すなわち、増幅器が周期のほんの一部でしかコイルを流れる電流を増やさない/減らさないか、電流の増加/減少を交互に素早く行う。正確な信号形がセンサ用途にはそれほど関わってこないので、これは、半波長内で2回状態を変えるだけで最高に実現される(又は、バルス長が半波長の長さと同一であるフルパワーの場合は1回)。増幅器に、電流を増やす又は減らす可能性だけではなく、電流をほぼ一定に又は整合回路が指示するレベルに保つ可能性があるのが理想的である。これは、ハーフブリッジ又はフルブリッジにおけるトランジスタの正しい切り替え順番によって実現される。通常、増幅器の供給電圧は、かなり低く、50Vを下回る範囲にあるはずである。さらに、整合回路は、如何なる2つの点においてもこの50V限度を超えないように設定されているはずである。両ケースとも24Vを超えないとなおさら良い。これは、巻き数が低く保たれているはずであることを意味する。しかし、ピーク動作電流は、10Aを超えるはずであり、100Aを超えるとなお良い。
【0107】
以下では、送信/受信分離について述べることにする。送信システムが送信モードではない、すなわち、励磁場が起こっていない間、送信システムから、すなわち磁場発生装置からの雑音が受信システムに、すなわち圧力センサの磁性体の誘起機械式振動によって起こった磁場又は電磁場を電気応答信号に変換するトランスデューサに、それほど多く入り込まないのが不可欠である。さらに、送信増幅器が受信信号を出し惜しみすべきではなく、部分的にでもそれを減らすべきではない。これを実現する可能性がいくつかある。様々な送信コイル及び受信コイルを持っている場合、2つのコイルを幾何学上、切り離すことができる(
図24参照)。
【0108】
図24は、受信パスにおける送信及び背景信号の抑制に対する幾何学的受信コイル設計の具体例を示す。ここでは、上部コイルの約30cm上の間隔までセンサを読み出すことを可能にさせる大きなコイル1452が選ばれている。幾何学的設計では、幾何学的デカップリング方法を使用し、この方法では、送信コイルループ1451が平行磁場を生み出すように接続されている一方、受信コイルループ1450は、磁場勾配を受信し、均一磁場を抑制するように接続されている。この送受信システムは、平行送信ループ及び反平行受信ループを使用して、本質的な幾何学的デカップリングをもたらし、これは、磁場勾配計構成と言われてもよい。これは、本質的な幾何学的結合をもたらす。空芯コイルを備えるこのシステムは、高度に線形である。
図24にはまた、可聴増幅器1454を備えるDCブロック1455及びローパス送信フィルタ1453を示す。
図24の下部は、受信コイル1450の外巻き及び送信コイル1451の内巻きの良い例となるものである。
【0109】
具体的には、
図24では、左下の画像は、上部コイル組立体の中央部分の大写しである。左下画像では、実際には、底面から覗く送信コイル1451の一巻きしか分からない。残りは、もっと薄いワイヤが巻かれた受信コイルに隠れている。可聴増幅器に対する信号が単純なPWM出力によって発せられるので、DC遮断回路1455は、可聴増幅器の正面にある信号調節に過ぎない。ローパスフィルタ1553は、可聴増幅器1454の出力と送信コイル1451との間にあるフィルタである。このフィルタには2つの目的がある。1番目は、高周波数雑音の導入を回避することであり、2番目は、可聴増幅器の出力チャネルを組み合わせて1つにするためにそこにあることである。
【0110】
幾何学的デカップリングは、特に、一連の送り手及び受け手が使用される場合には必ずしも可能ではない。この場合、トランスが、送信回路に、また受信回路に接続された端末で導入され得る。このトランスは、送信システムと受信システムとの切り離しをもたらす。このトランスソリューションは、組合せ送信/受信コイルが使用される場合でも使用され得る。トランスの代わりに、組合せ送信/受信コイル及び別個の送信/受信コイルの両方を備えた容量性(又は抵抗性でも)デカップリングネットワークを使用することができる。補償方法の欠点は、かなりのスペースを必要とし、雑音を加え、また容量性デカップリングの場合、検出システムの周波数使用範囲を狭めることである。より強固で安価な解決策は、受信時間時に送信増幅器を完全にミュートにする回路を加えることである。このため、増幅器の出力にクロスダイオードを加えることができる。特に、PINダイオードのようなゼロ電圧で低容量のダイオードが役に立つ。これは、電流が何も流れていない場合に高インピーダンスをもたらす。これをさらに増強させるために、受信している間にすべての残留雑音信号を出し惜しみする電子スイッチを増幅器の出力に置くことができる。ダイオードは、依然として望ましい高インピーダンスをもたらす。働いていないときに雑音を完全になくし、高インピーダンスをもたらす特別な増幅器を作ることも可能である。ハーフブリッジ設計及びフルブリッジ設計では、これは、受信時に如何なる構成要素においても絶対に切り替え操作をしないこと、低出力容量トランジスタの使用、入受信モードにおける出力に供給電圧の半分程度を備えること、入力コネクタから雑音を何も出させないこと(光絶縁)、また高度フィルタリング供給電圧を備えること(何回もフィルタリングするか、受信工程時に電力供給切り替えを何も行わない)、によって実現され得る。
【0111】
以下では、検出システムのコイルベースの受信システムについて述べることにする。受信増幅器は、低雑音型のものである必要がある。但し、要件は、稀な受信トランジスタが使用される必要があるほど高くはない。標準低雑音双極子やJFETシリコントランジスタで、普通は十分である。唯一の特別な特徴は、増幅器が送信パルスをやり過ごし、送信パルスの後すぐに作動を開始する必要があることである。この目標に達する道がいくつかある。デカップルド送信/受信システム(デカップリングネットワークとの組合せ送信/受信コイルを含む)の場合、受信増幅器には、この目標に達するのに特別な特徴は何も必要ない。デカップリングが何もない場合、増幅器は、送信パルスに対して堅牢にされ得る。これは、増幅器の入力に適切なコンデンサを、また第2の端末にクロスダイオードを加えることによってなされ得る。これは、送信の場合には適切な高インピーダンスをもたらし、増幅器に無害のレベルまで、すべてを高電圧に出し惜しみする。当然、加えられたコンデンサは、最大送信電圧に格付けされる必要がある。容量値は、増幅器にある信号が受信の場合にそれほど減らされない程度に高くなる必要がある。JFETベースの増幅器では、これは、通常、重大な問題ではない。クロスダイオードがMOSFET出力のオプトカプラのような適切な電子スイッチによって増強されても、置換えられてもよい。これは、入力電圧をさらに減らすという利点がある。適切に行われれば、受信増幅器は、飽和状態にはならずに、送信信号が充分に減った直後に、正しく働く。
【0112】
以下では、デジタルシステムとのインターフェースについて、より詳しく述べ、まず、デジタル信号出力とその処理について述べる。アナログタイマシステムが出力信号を発することができるが、普通は、DSPやFPGAのようなデジタルシステムが使用される。出力増幅器の型式ごとに、異なる出力が使用される。アナログ増幅器では、ある種のADCが使用される。出力信号品質がそれほど重要ではないので、単純なPWV型のアナログ出力で十分である。デジタル増幅器は、デジタル出力ラインを使用して一番良くインターフェースされる。しかし、それらにアナログ出力を使用して、増幅器に切り替えパターン発生装置を実装することも可能である。最も良い整合増幅器、ハーフブリッジ、又はフルブリッジの場合、デジタルシステムに直に切り替えパターンを作り出すのが最も適している。さらに、受信増幅器入力保護及び送信増幅器出力雑音除去用の切り替えバターンもデジタルシステムによって直ぐに生成される。すべての出力選択肢に共通の特徴は、それらが、1つのセンサ又は様々なセンサ間の様々な励磁にわたって位相をしっかり保つほど素早いことを必要とすることである。それ故、この出力には、フル周期時間の1/10よりも細かいラスタ上、フル周期時間の1/100よりも細かければもっと良いラスタ上で切り替え更新する可能性がなければならない。例えば2kHzセンサでは、これは、220kHzよりも細かい、200kHzならもっと良いラスタ上での更新を意味する。これは、ラスタポイントで毎回、切り替え状態変更が可能でなければならないことを意味するものではない。それ故、例えば、同じシリアルインターフェースにわたる一定の時間にこの変更を実行するように、増幅器及びプトロコルに新しい切り替え状態を伝達する、シリアルインターフェースを各増幅器に対して備えることが可能である。これは、特に、受信段階時に本質的にサイレントになる型式の増幅器に役立つ。このために、増幅器にオプトカプラが1つだけで事足りる1ビットシリアルインターフェースが具体化され得る。これにより、1つのオプトカプラにおける浮遊容量が非常に低い可能性があるので、デジタル送信側からの雑音耐性に達するのが容易になる。
【0113】
以下では、アナログ-デジタル間インターフェースについて述べることにする。アナログ-デジタル変換は、至って標準的である。信号が低帯域幅であるので、少なくとも1つのセンサしか使用されない場合は、信号をDC近くまでミックスダウンして、この信号をサンプリングすることが可能である。しかし、センサ信号の周波数は、幾分低く、通常10kHzを下回る。今日、これを直にサンプリングする多くの適切なADCチップがある。特に、デジタル信号処理がアナログフィルタに比べて取るに足りないことなので、ADCにかなりのオーバーサンプリングを使用するのが一番良い。少なくとも信号周波数の10倍が使用されるべきであり、100倍又は1000倍も有効な選択肢である。かなりのオーバーサンプリングにより、センサ信号の周波数を通す一方、ナイキスト周波数を上回る信号を通さなければよいので、ADC入力フィルタの設計が楽に、安価になる。但し、いつもの高バックグラウンド信号がそこにないようにするのに、センサ周波数を下回るフィルタリングも役立つ。高バックグラウンド信号は、ADCノイズを高めるADC前のあり得る増幅を減らす。ADCノイズ(有効なビット数)及びサンプルは、必要なダイナミックレンジとノイズ予想とを適合させる必要がある。これは、最大限期待される信号及びすべてのノイズ成分がある間は、ADCが飽和状態であってはならないことを意味する。同時に、ADCの量子化ノイズは、ノイズ全体が上げられない程度に低くなくてはならない。ここで、ノイズとは、コイル抵抗や受信増幅器挙動のような実際のノイズ源に起因する記録信号における望ましからざる成分すべてを意味する。これには、適切なフィルタリング及びバックグラウンド信号減算によっては除くことのできない干渉成分も含まれる。普通、最近のADCチップでは、この要件は、例えば、2MS/s18Bit ADCにより満たすことができる。費用節約のために、低い仕様で利得制御を加えるADCを採用することが有益であり、良好な全体的なパフォーマンスになおも達することできる。
【0114】
以下では、データ処理について述べることにする。データ評価の前に、生のADCデータが処理される必要がある。かなりのオーバーサンプリングが望ましいので、最初の処理段階は、デシメーション段階である。これは、データサイズを小さくすることによって、さらなる段階に対して必要な計算能力を減らすという主な利点がある。場合によっては、デシメーション段階には、他のフィルタ、すなわち期待信号周波数付近のバンドパスフィルタを含んでもよい。これは、さらなる処理段階を簡単にし、信号のダイナミックレンジを狭めることができ、これにより今度は計算能力(ビットが少ない変数)を節約することができる。さらなる任意選択のデータ処理段階は、受信システムの非線形性を弱めるのに逆非線形フィルタリングを行うことである。これは、全体の受信システムの非線形性が測定され、非線形性の効果を相殺する計算フィルタが構築されることを意味する。これは、低価格構成要素が使用される場合、このような構成要素にはより非線形挙動になる傾向があるので、特に助けとなる。この非線形フィルタは、代わりに第1の処理段階として使用することができる。1つより多い信号が使用される場合、信号処理段階がさらにある。少なくとも1つの受信チャネルがセンサ信号を検出しておらず、それにより、一定のバックグラウンド信号をもたらす場合、これ(及び他のすべてのこのような信号)は、受信信号と相関し、相関成分が、信号を帯びるチャネルから差し引かれる。この引き算は、時間ドメイン又は周波数ドメイン又はその両方の混合で行うことができる。センサ信号を伴わないチャネルが何もない場合、「仮想磁場勾配計」と呼ばれることもあるデータ処理方策が使用され得る。これは、センサによって発せられない信号の干渉を最小限に抑えるように、物理チャネルの線形組合せである仮想チャネル内の多数のチャネルを分解する。線形組合せに対する係数は、センサの信号帯域を除くチャネルの信号を相関させることによって確認することができる。
【0115】
またさらに、以下では、データ評価について説明することにする。センサにおける圧力変化により、磁性球間の間隔が変わり、それによりマグネト-機械式発振子の共振周波数も変わるので、周波数は、取得したセンサ信号から引き出される主要なパラメータである。共振子の高Q値(秒までの時定数)に起因して、後続の励起パルスは、通常、振動が完全に減衰する前に尽き(
図22参照)、それ故、起こっている振動を増幅する正しい段階及びタイミングを持つ必要がある。これは、後続の励起間の頻度のリアルタイム引き出しを必要とする。この頻度は、測定済み信号と周波数レンジに跨る事前計算の時間トレースとの位相差を最小限に抑える比較アルゴリズムを使用しても、好ましい方法であるフーリエ解析によっても引き出され得る。高分解能頻度情報は、時間ドメインゼロパディングや周波数ドメイン補間、またピーク検出を使用しても曲線当てはめ手順を使用してもよい、後続のスペクトルにおける共振ピークの位置特定によって得られ得る。頻度確認の正確さ及び確実性のさらなる向上に向けて、検出共振信号のより高い高調波が、例えば、いくつかの高調波に基づく重み付き頻度推定を使用して又はいくつかの高調波間の頻度確認の一貫性を確認することによって、この評価に組み込まれ得る(
図25の右上のスペクトル参照)。
【0116】
図25で触れる例では、第2の高調波の信号は、基本周波数信号よりも一桁小さい。それ故、より良いフィルタリングが必要になる。DCブロックやローパスのようなアナログ励起フィルタ、バンドパスフィルタのようなアナログ受信フィルタ、またリアルタイム処理用のITR共振フィルタのようなデジタル受信フィルタ(6次チェビチェフ型II)のような様々なフィルタ段を使用して、共振周波数における信号を最適化し、またそれより高いその高調波を最適化することができる。
図25では、f0共振ピークの中央位置が、フィルタリングスペクトルにおける最も大きなピークから確認されている。f0から、次の位相内励起パルスのタイミングが計算されている。システムの繰り返し周波数は、5~30Hzであり、周波数応答のリアルタイムトレースをもたらす(
図32参照)。
【0117】
図25では、信号スペクトルを、デジタルバンドパスフィルタリングがありとなしとで表示している(1051対1050)。点線は、評価対象に選択された範囲である。様々なドット記号は、実際には、目立った違いを示さないので、無視することができる型式の様々なフィルタに相当する。
図26では、バンドパス1054は、市販の低雑音可聴範囲増幅器1053に取り付けられ、この増幅器の型式は、FEMTO Messtechnik GmbHのDLPVA-100-BUN-Sである。
図27では、デジタルフィルタの実際の40dB抑制スペクトルは、選択した帯域の範囲になぞられている。2つの実装形態には目立った違いはない。表示のフィルタは、
図25に示すデータに掛けられ、1050と1051との違いをもたらす。
【0118】
受信信号の確認済みの周波数と分かっているタイムスタンプから、次の励起パルスブロックに対して、正しいタイミングが計算され得る。励起パルスの個数及び幅は、十分に高い振幅の振動を起こして、受信コイルに十分な信号を作り出すように適合されている。
【0119】
圧力センサを較正する際、センサに作用する多くの上手く規定された圧力に対して、周波数応答を得る必要がある。このためには、高品質の圧力センサが、このセンサが入る圧力チェンバに接続され得る(
図28及び
図29参照)。該当する圧力範囲にわたる1回又は複数回の掃引から(安全に血圧範囲に及ぶ周囲圧力を上回る400mbarまで)、周波数対圧力の較正曲線が
図30に示すように定められ得る。センサの性質に応じて、較正曲線への単純な当てはめで十分である場合がある。但し、実際のセンサは、ヒステリシス挙動、膜などの機械式センサ要素のダイナミックレスポンス挙動や温度依存を呈する場合がある。したがって、物理センサパラメータに基づくモデルを測定済み較正データに合わせて、センサの高度に正確な較正に達することが望ましい。
【0120】
図28は、圧力センサを較正する際の較正仕組みを概略的且つ例示的に示し、較正仕組みには、圧着アプリケータ1070、圧力チェンバ1071、市販の圧力センサであってもよい基準圧力センサ1072、及びデータロギング・表示ユニット1073が含まれる。この較正手順時に、実際の圧力値に割り当てることができるような共振周波数が測定されている間に、圧着アプリケータ1070が、基準圧力センサ1072によって測定された際の一定の圧力を掛ける。
図29は、測定済み基準圧力991及び測定済みセンサ共振周波数990を表す、データロギング・表示ユニット1073を概略的に示し、すなわち、
図29では、市販の基準圧力センサを使用して、検出したセンサ応答周波数対圧力測定のリアルタイム表示を示す。
図30では、その下部に、対応する較正曲線890、またその上部に、上手く整合している、基準圧力892と共振周波数891との比較を示す。この例示的な較正曲線の感度は、約20mHzの周波数ソリューションを前提とすると、約0.1mmHgの圧力分解能に対応するO.17Hz/mbarである。
【0121】
センサの感度は、圧力変動当たりの周波数変動の大きさによって決まってくる。これは、センサ設計、膜剛性、磁気素子のサイズ、及び磁気素子の間隔など、いくつかのパラメータによって決まってくる。所与の設計及びセンササイズでは、シミュレーションにより、磁気素子間の最適な間隔、また最適な間隔対掛けられた圧力に必要な膜性質を見付けることができる。
図31には、2つのセンササイズに関わる周波数レンジのセンサ感度を描写するシミュレーション例を示す。この図では、曲線437は、デモンストレータに相当し、曲線438は、心筋血流予備量比(FFR:Fractional Flow Reserve)適用の際の上記の対象となるサイズに対応する。
【0122】
上で決められた相対センサ感度の他に、絶対感度や圧力分解能は、周波数確認における雑音レベルによって決まってくる。
図32に示す例では、雑音レベルは、約0.2Hzであり、約1mbarまでにセンサ分解能を限っており、曲線141は、センサ周波数応答を示し、曲線442は、測定済み基準圧力を示す。
図32では、圧力分解能を約1mbarまでに限る初期デモンストレータにおける雑音レベルに触れている。ほとんどの医療アプリケーションにはすでにこれで十分である。バックグラウンドノイズ除去の方策向上により、分解能を高めることができる。
【0123】
それぞれの圧力センサを無線で読み出す読み取りシステムのプロセッサは、a)圧力センサと磁場発生装置との間隔、及びb)位相内コイル励起のうちの少なくとも1つに対する共振周波数の依存に合わせて圧力値確認を補正するために、補償アルゴリズムを適用するように構成され得る。この補償については、以下により詳しく説明することにする。
【0124】
ここでは、位置及びパラメータ、すなわち圧力に対して、マグネト-機械式発振子における周波数に及ぼす間隔及びまた向きの影響を補う方法を紹介する。この補償は、圧力のような物理パラメータが検知され、その情報が発振子周波数で符号化される場合しか必要ではない。以下でさらに説明する発振子の位置特定では、周波数影響は、どうでもよく(感度符号化については以下でさらに述べる)、無視できるもの(勾配磁場符号化についても以下でさらに述べる)でもある。センサ周波数にも作用する勾配磁場法を使用する位置特定では、1秒未満の時間周期にわたる周波数変化だけ見極めれば済むので、これらの補償は、必要ではない。この変化は、振動振幅にそれほど左右されない。
【0125】
マグネト-機械式発振子の信号は、位置γ
0における吊り下げ磁性球の磁気モーメントm(t)の振動運動に起因した磁場変動の結果として、コイルi内で誘起した電圧u
i(t)で検出される。
【数4】
ここで、B
S、i(γ)は、経時でほぼ一定である、位置γにおける検出コイルiのコイル感度である。最後の段階では、以下を使用して、磁気モーメントが置き換えられている。
【数5】
ここで、
【数6】
は、磁化の空間向きを記述する単位ベクトルであり、M
satは、使用される材料の飽和磁化(通常、1.30~1.45T/μ
0、NdFeBの場合)であり、V
sphereは、磁性体の体積である。
【0126】
(4)から、大きな動的磁気モーメントが受信コイルに高電圧を誘起するのが望ましいということになる。磁性球の体積がほとんどの応用で小さくなくてはならないので、大きな
【数7】
をもたらす大きな振動振幅を使用して信号が増やされ得る。しかし、回復トルクは、固定球によってもたらされる回復磁場B
restと振動式球の磁化mとの間の角度φ(すなわち、振動の振幅)で、線形に上がらない。
|T(φ)|=|mxB
rest|=mB
restsinφ #(6)
【0127】
質量m
s、半径r
sの球の角加速度に必要な減衰係数C及びトルクの場合の摩擦
【数8】
に起因するトルク
【数9】
を考えてみると、以下の運動方程式を立ち上げることができる。
【数10】
【0128】
小さな角度近似sinφ≒φ、及び置換m=M
satV
shereは、以下に導く。
【数11】
【0129】
このシステムの高Q値により、さらなる近似C≒0が可能になり、以下のような角度応答周波数の計算が可能になる。
【数12】
【0130】
マイクロ-発振子は、通常10°よりかなり大きな振幅へと駆動されるので、この近似は、大抵の場合で有効ではない。大きな角度では、回復トルクが小さくなることにより、周波数の減少が起こり、振幅依存周波数ω(φmax)=ω0k(φmax)(ここで、k(φmax)>1)をもたらす。振動中の回復トルクのバラツキはまた、スペクトルにおける基本周波数のより高い高調波の存在によって拡大される、センサ応答の非線形性を導く。
【0131】
非線形回復トルクに加えて、2つの磁性球間の力は、それらの磁化の互いの向きによって決まってくる。
【数13】
【0132】
所与のセンサ設計では、この力は、必ず2つの磁性球の接続ベクトルに沿って向くが、その大きさは、90°の振動振幅でゼロになり、より大きな角度では引きつけから反発にまでなる。球が吊るされているフィラメントは、付与された力のせいで伸長すると、高い振動振幅での平均力の低下により、球間の間隔が広くなり、Brestが下がり、よって発振周波数が下がる。フィラメントがその長さを変えるだけではなく、場合によっては、センサにおける他の構造も変えることがある。
【0133】
送信コイルによって起こった励磁場に一定の振幅がある場合、振動振幅φ
maxは、コイルとセンサとの間隔が広くなるにつれて狭まり(励磁場を縮小する)、それにより、周波数は、下がる。
図33に示すように、振幅もコイルとセンサとの相対向きにより決まってくる。
【0134】
図33は、1つの送受信コイルに対するセンサ向きに対する様々な高調波における信号振幅の測定された依存性を例示する。励磁場が磁気双極子向きと平行に揃うと、励起は起こらず、信号はゼロである。磁場と双極子とが直交すると、最も大きな振動振幅が実現される。偶数次高調波の空間パターンが奇数次高周波に直交するということに留意されたい。これは、ベース信号(第1の高調波)及び第3の高調波における最大に対応する向きでの第2の高調波振幅がゼロであることによって分かる。振幅比プロット(中央のグラフ)は、向き依存のこの違いの強調表示であり、第2の高調波対第1の高調波の比は、ゼロから最大値(又は特異点)になる一方、第3の高調波対第1の高調波の比は、フラットになる。偶数次高調波におけるダイナミックレスポンスが奇数次高調波のダイナミックレスポンスに直交して向いているという知識は、センサの第3の向き角を決定するのに使用され得る。
【0135】
そのため、単純な周波数決定は、センサの物理量だけではなく、センサの位置及び向きに依存する読み取り値をもたらす。これは、大抵、望ましくなく、それ故、この影響を軽減する機構が採用されるのが好ましい。
【0136】
この影響を和らげる方策が2つある。1つは、すべての有効な位置及び向き(すなわち、視野における)に対して振動振幅を確実に一定に保つことである。もう1つは、1つ又は多くの周波数読み取り値から仮想周波数を計算することであり、仮想読み取り値は、振動振幅とは無関係である。選んだ仮想周波数は、非常に低い振幅、すなわち、式(8)によって与えられる際のゼロ振幅周波数の共振周波数である。当然、この2つの方策の組合せが使用され得る
【0137】
以下では、位置特定から分かるような圧力センサの位置及び向きが使用される、振動振幅の制御について説明される。
【0138】
周波数偏移を補正する概念上最も単純なやり方は、送信/受信コイルアレイに対する分かっている位置及び向きを使用することである。この位置は、感度符号化又は勾配符号化又はその組合せによって得られ、以下で詳細にすべて説明される。位置及び向きが分かっている場合、絶対動的双極子モーメントを推測することが可能である。普通、動的双極子モーメントは、位置確認時にはすでにフィッティングパラメータになっている。そうでなければ、それは、相対センサ位置と相対センサ向き、また式(3)によって与えられる記録信号強度におけるコイルの分かっている感度から推測される。センサの動的双極子モーメント及び分かっている静的双極子モーメントから、振動振幅が推測され得る(センサ静的双極子モーメントが予め分かっていない場合、それは、達した又は外挿された可能な限り最大の動的双極子モーメントとして、様々な励起振幅において測定された複数の動的双極子モーメントから推測され得る)。ここで、送信磁場振幅が、予め定められた最大振動角φmaxに達するように調整され得る。わずかに単純でもありわずかに確実性も欠く方法は、センサにおける駆動磁場成分が常に一定であるような値に合わせて送信振幅を調整するだけである。普通、一方向磁場成分(センサに対して一方向の振幅)が、励起過程を支配する。コイル内の電流の振幅及び位相は、望ましい位置、望ましい向きの望ましい振幅を与えるように調整される。これをどのように行うかは、電磁気学の分野ではよく知られている。この問題や送信振幅を調整するこれまでの方法に対する解法は、一義的ではないので、現在の最適化に対して少なくとも1つの第2の基準が使用される(勾配降下又は焼き鈍しなどとして)。この点における「Not unambiguous(一義的ではない)」とは、送信コイルにおける多数の振幅位相組合せが、同じ望ましい成果を得る、と言う意味である。第2の基準は、普通、励起の望ましからざる副作用の最小化である。望ましからざる副作用の例としては、総電力散逸、1つのコイルにおける最大電力散逸、1つのコイルにおける最高温度(これも励起履歴によって決まってくる)、周囲の物体における加熱や力がある。当然、この最適化には、他の如何なる関係する基準や組合せも使用され得る。また、この最適化を使用せずに、単に、特定の最適化アルゴリズムが見付けた第1の有効な解法を使用することも(勾配降下又は焼き鈍しなどとして)有効である。
【0139】
以下では、位置特定手順から分かった圧力センサの位置及び向きが使用される、ゼロ振幅周波数の決定について、説明することにする。
【0140】
振幅が制御されないが、周波数が、例えばゼロ振幅周波数に変換される第2の手法について、コイルアレイに対する位置が分かっている場合で説明される。この手法では、センサのモデルが必要とされる。このモデルは、直に、又は周波数や動的双極子モーメント強度のようなある程度同等の形態で、周波数と振動角との関係を記述する。このモデルは、ゼロ振幅周波数マイナス振動振幅に応じた関数として表される。もっと複雑な記述は、例えば、上記の式(6)の後に導入されるk(φmax)のような補正項による乗算も生み出すことができる。周波数も振幅も、所定の積分期間又はシーケンス長にわたる平均又はカーブフィットと解釈される。位置及びコイル感度が分かっているので、振動振幅が上記のような記録済み信号から確認され得る。それ故、実際の周波数及び振幅が分かっているので、モデル関数を逆にすることによって、ゼロ振幅周波数が推測され得る。本発明は、解析的に、又はよく知られている数値法によって行われる。数学上、ゼロ振幅周波数ではなく、他の如何なる該当する数量も、例えば、10°振幅における周波数、またすべての例えば絶対球間間隔における周波数を反映しない数量も使用され得る。しかし、このような変換は、この評価工程の基本的な性質を変えるものではない。
【0141】
通常、ゼロ振幅外挿法を使用する場合でも、ほとんどの応用で、ある種の振幅制御が導入されるのが好ましい。センサがコイルアレイに近いと、センサがもっと離れている場合よりも少ないコイルを流れる電流が使用され得る。このゼロ振幅外挿法には、定振幅法の場合の所定の振動振幅がコイル電流に対する制限に起因してそれ以上維持されないほどセンサが離れている場合でも、上手く行くという利点がある。
【0142】
上記では、振動振幅がセンサの分かっている位置と向き、また受信コイル内の誘起電圧から導出され得ると想定した。しかし、振幅情報を与えることのできる他の如何なる方法も、定励起も外挿法も使用して振幅依存周波数を補うのに使用される。以下では、この振幅確認用のいくつかの代替方法を提供する。これらの方法は、使用できるコイルがわずかであり、正確な相対位置が確認できない場合に有用である。補償法自体は、以下の本文では繰り返さないことにする。
【0143】
以下では、振動振幅が基本周波数の高調波の振幅を使用してどのように確認され得るかについて述べることにする。
【0144】
振動振幅を確認する方法の1つは、コイル内の誘起信号の高調波を評価することである。非線形振動であるので、マグネト-機械式センサは、動的双極子モーメントで共振周波数の高調波を起こす。このような高調波は、受信コイルにおいてピックアップされる。サンプリング・フィルタリング段階で、これらの複数の基本周波数を抑制することのないよう注意するのが好ましい。高調波のスペクトルは、センサの詳細によって決まってくる。圧倒的に奇数次高調波(3ω0、5ω0...)を起こすセンサもあれば、偶数次奇数次高調波(2ω0、3ω0、4ω0...)を起こすセンサもある。しかし、混合型も構築され得る。奇数次高調波の動的双極子モーメントは、基本周波数の動的双極子モーメントと位置が揃う傾向にある一方、偶数次高調波は、基本周波数の動的双極子モーメントに対して直角に、また回転軸に対して直角に位置が揃う傾向にある。そのため、奇数次高調波は、概念上、使用が一番楽である。基本周波数の双極子モーメントに対する例えば第3の高調波の動的双極子モーメントの比が、1つのコイル内の記録電圧における対応する比として反映されるので、例えば、スペクトルピーク振幅と見なされるので、奇数次高調波は、概念上、使用が一番楽である。しかし、受信システムにおける振幅が周波数依存であるので、第3の高調波双極子モーメント対基本周波数双極子モーメントの本当の比を見付けるのに補正が適用される。この比は、所定の積分期間にわたって測定される。各センサに対して、振動振幅又は直接周波数シフトに対するこの比の較正が与えられ得るので、補正が適用される。偶数次高調波の場合、動的双極子モーメントの方向が基本周波数動的双極子モーメントと揃わないので、状況は、幾分複雑である。それ故、ここでは、通常、1つよりも多いコイルの採用が必要であり、センサに対するコイルの向きが他の手段で確認される必要がある。大きなコイルセット(例えば、≧6)の場合、センサの位置も向きも構成し直されることがあり、わずかなコイル(例えば、3~5個)でも、少なくとも、本明細書に記載の位置付け決定方法と同様の方法を用いて、コイルに対するセンサの向きの構成し直しを可能にしなければならない。それにより、高調波ごとの動的双極子モーメントの本当の比が、コイル感度を使用して確認され得る。向き確認の中間段階を省くことができ、コイルにおける基本周波数振幅対高調波振幅の比のダイレクトマップが線形代数法を使用して立ち上げられ得る。周波数ドメインにおけるここで述べる方法が時間ドメインのような他の基礎における方法にマッピングされ得ると理解するものとする。時間ドメインでは、周波数解析は、振動形解析にマッピングされる。これらのマッピング法は、数理文献においてよく知られている。
【0145】
以下では、時間-ドメイン包絡線関数に基づく振動振幅の確認について述べることにする。
【0146】
振動振幅を確認する別のやり方は、信号の非線形減衰挙動を活かすことである。センサの減衰は、通常、非線形である。非線形減衰とは、二重蓄積エネルギにおいて、センサの平均散逸電力が2倍にはならないが、2よりも幾分高い倍数で増えることを意味する。この理由は、上記の力変調に起因するフィラメントの伸びである場合がある。式(9)は、低振動振幅において、磁性体間の引力が、ほぼ一定であるが、それより高い振幅ではもう一定ではなくなる、ということを示す。この力変動は、放物線による余弦関数の近似に相当する、振動振幅の二乗における最初の近似によって決まってくる。この二乗依存は、散逸における非線形の理由である。磁性対間の周期的に変化する力は、フィラメントを伸ばし、これが散逸関与につながる。他の影響も、非線形挙動をもたらすことがある。総じて、これらの影響は、所与の時間にわたる減衰曲線の包絡線形が初期振幅によって決まってくるという状況をもたらす。それ故、センサの初期振動振幅が一定で、センサの間隔及び/又は向きが受信コイルに対して変わる場合、縮小版の初期減衰包絡線が見られる。しかし、センサの励起振幅が変わる場合、減衰曲線の全体的な振幅が変わるだけではなく、その形も変わる。これは、振幅影響及び間隔/向き影響から解き放たれ得、それにより、初期振動振幅が、例えば事前記録の減衰曲線のルックアップテーブルを使用して、構成し直され得る。これはまた、上記のようにゼロ振幅周波数を測定する可能性や制御式定振幅励起の可能性につながる。しかし、これも包絡線の形を変えるので、記録中にセンサの動きに幾分敏感である。例えば、センサが素早い加速を行わない、ということが分かっている場合、持続運動の前提と減衰曲線包絡線を結び付けることが役に立つ。
【0147】
励磁場における変動に対する1回の振幅応答に基づく振動振幅の確認について、以下に説明することにする。
【0148】
振動振幅を確認するまた別の方法は、励起の様々な強度に対するセンサ信号の反応を解析することである。この場合、電流パルスが体系的に変えられ、様々な励起パルスに対するセンサの応答が評価される。送信パルスの電流、持続時間、及び位相が変えられるか又はその組合せが変えられる。例えば、2回の励起パルスがあると仮定する。間隔が広く、局所磁場振幅が低い場合、1回のパルスがもたらす振幅の2倍の振幅を起こす2回のパルスが指定される。しかし、間隔が狭く、センサにおける局所磁場が大きい場合、振幅は、この振幅の2倍を下回る。これは、期待される2倍に対する受信電圧の特有の減少をもたらす。それ故、所与の励起パターンに対するセンサの受信信号(フーリエ)振幅の比は、励起振幅の尺度であり、ゼロ振幅周波数への外挿に且つ/又は定励起振幅を得るのにまた使用され得る。これに加えて、周波数や減衰時間のような他の数量も評価され得る。これらの数量の比も振動振幅に特有であり、ゼロ振幅周波数への外挿に使用され得る。
【0149】
以下では、すべての要因のフルモデルに基づく正しいパラメータの確認について述べることにする。
【0150】
上記の方法のすべては、単なる評価法に過ぎず、いくつかの方法では送信対象の磁場パルスの変更を必要とする。ハードウェアのシステムへの変更は、この評価を行うのに必要ない。したがって、これらのすべてを具体化するのが理に適っている。これは、雑音を最小限に抑えるように、すなわち、相対雑音に従って重み付き平均を行うように、この結果と並行して、また結果を結び付けて評価を進めるだけで行われる。これが、比較的容易で、具体化が楽である一方、以下でまとめる、真に統合された数学的手法を用いて、より良い結果を期待することができる。裏を返せば、数学上高度な手法は、具体化するのが相当に難しく、費用対効果の高いコンピュータハードウェア上で作動する計算リソースをかなり多く必要とする場合がある。正しい数学的手法にとっての基本は、センサ用の数理モデルである。このモデルは、励磁場、その時のセンサ状態、及び測定済みパラメータ、すなわちセンサ環境に対するセンサ応答を予測する。センサ状態は、吊り下げ球のその時の振れ角及び回転速度だけであってもよい。但し、特に圧力センサに限ったことではないが、これは、外部又は内部の変化する力で変形する可能性のある構造体の弾性状態を組み込んでもよい。それ故、膜及びフィラメントのヒステリシス用のモデルが組み込まれる必要がある。このモデルは、様々な数学的形態であり得るが、最もありふれたやり方は、このモデルを一連の微分方程式に定式化することである。それにより、フィルタ特性及び増幅器特性を含む、送信コイル及び受信コイルのモデルが生成される必要がある。送信システム及び受信システムが本来十分に線形である限り、ここではフーリエパラメータ表現が珍しいことでもないが、これは、微分方程式に定式化され得る。最後に、コイル送受信感度用のモデルが提供される必要がある。これは、単に、感度を伴う空間点集合及び点間の補間アルゴリズムであってもよい。これはまた、ビオ-サバール法則に基づくコイルのシミュレーションに基づくものであってもよい。このモデルは、ここで、励起パルス及び外部パラメータのある履歴で如何なる時点の場所及び向きにおけるセンサの電圧応答も予測することができる。それ故、手順では、記録対象信号とシミュレーションとができるだけ上手く適合するようにシミュレーションで物理パラメータに影響を及ぼす、センサの位置と向き、またセンサを変える。勾配降下やランダムウォークなどの多くのよく知られている最適化方法が使用される。この適合は、測定済み試料点とシミュレーション済み試料点との差の和の二乗平均平方根と定義することができる。この数量が最低であれば、この適合が一番良い。このベストフィットは、さらなる制約を導入して、例えば、期待される相対位置及び相対向きのモデルによって、又は例えばこれらの数量の最大変化率に対して制約を与える、最大限期待されるセンサ加速度及び/又は測定済み数量のモデルに対する制約によって、変わってくる。間隔や向きの変化に関係ない少なくとも1つの入力に対して、ハンドヘルドコイルシステムに加速度計のようなさらなるセンサ入力もまた使用される。フルモデルベースの評価工程が計算上集中的であることから、この工程は、さらなる最適化に良い開始点を与えるように、これまでのモデルのうちの1つ又はいくつかと組み合わせることができる。
【0151】
以下で説明するが、プロセッサはまた、引力作用を補償するように構成され得る。
【0152】
圧力センサでは、可動センサ切片の重さが圧力読み取りに影響することがあるので、それが固定センサ部の上面にある場合、この切片は、センサを圧縮し、それにより圧力の明らかな上昇をもたらし、それが底面にある場合には、明らかな圧力の下降をもたらす。直径0.5mmのNdFeB球の重力(重さ)は、5μN前後である。それに比べ、1mbarの圧力変化によってもたらされるセンサの円筒形裏面に掛かる力の変化は、20μN前後である(控えめに、直径が球の場合と同じであるとの前提で)。空気中のセンサの上向きと下向きとの力の差は、それにより、正確さを0.5mbarまでに制限する。この問題を和らげるには、本明細書における(位置及び)向きの回復で述べた方法のうちの1つから得られたセンサの空間向きに基づく補正を適用することができる。血液などの液体環境では、重さ作用は、センサ切片の密度を液体の密度に適合させることにより最小限に抑えられ、それにより浮力が重力を補う。
【0153】
プロセッサは、地球磁場作用や他の静電界作用も補償できる。
【0154】
静的背景磁場が固定磁性体の磁場に加わることにより、振動式磁石によって分かる回復磁場Brestを変調させる。これは、式(8)に従って共振周波数を変え、したがって、発振子の周波数が変わることにより検知時のエラー源となる。これは、発振子の位置特定には関係ない。1.3T/μ0の飽和磁化のNdFeBから作られた直径0.5mmの磁性球では、振動式球の中央にある固定球によって生み出される磁場は、それぞれ、0.75mmの中心間間隔で16.1mT、1.0mmの中心間間隔で6.8mTである。地球磁場は、25~65μTである。65μTの最大地球磁場の静磁場成分の平行整合と反平行整合との周波数差は、上記の0.75mmの間隔では5Hz前後、上記の1.0mmの間隔では9Hz前後の周波数差をもたらす。10~100mHzの典型的な周波数分解能と、温度センサでは-0.3K/Hz、圧力センサでは20mbar/Hzのプトロタイプ感度とに関して、この最悪の場合の計算は、検知値の事実上の誤りをもたらす。以下では、これに対する様々な軽減方策を紹介する。
【0155】
センサ側に対する軽減は、球が1つだけではなく、磁気双極子モーメントと慣性モーメントとが同一である(又は2つの数量の比が適切である)2つの吊り下げ球の採用である。単一周波数で対向振動が起こるので、地球磁場のような静バイアス磁場の一次作用が打ち消される。
【0156】
別の軽減方策は、検出システムにある絶対磁場センサを使用して、静背景磁場の大きさ及び向きを測定することである。本明細書で述べる方法を用いて確認されたセンサ向きに基づき、圧力、温度などのパラメータに対して、周波数又は磁場の補正値が、正しいセンサ値に達するように計算され得る。静背景磁場の検知では、検出システムに組み込まれ得る、感度及び到達範囲が十分である如何なる磁場センサも使用され得る。費用対効果選択肢の1つが、3軸ホールセンサであってもよい。代替物は、きちんと定められたゼロ磁場周波数の温度補償式超小型ロボット3軸アレイである。それらのそれぞれの周波数に対する変化から、背景磁場の大きさ及び向きが確認され得る。対象となるセンサの周波数に干渉しないようなそれらの共振周波数が選ばれるのが理想である。評価時に、周波数シフトを補正するのではなく、マルチコイル検出システムのコイルを使用して、地球磁場と他の背景磁場とを釣り合わせる小さなオフセット磁場を起こすこともできる。強磁性材料があることに起因する不均一な磁場が視野にある場合、いくつかの3軸磁場センサセットを採用して、空間磁場バラツキを特徴付けることができる。これらの測定値から導出された補間背景磁場マップに基づき、分かっている位置及び向きにおけるセンサに対して補正値が計算され得るか、それぞれの補正オフセット磁場が印加され得るか、これら2つの補正方法の混合が使用される。
【0157】
圧力センサ、またマーカも高Q値である必要があり、特定の用途に必要とされる範囲にわたって測定される数量に敏感である大きな周波数掃引を有する必要がある。高Q値は、最も高い信号が発せられる高振動振幅に特に重要である。2つの磁性体に強い引力があり、この引力が、間隔が狭まるのに従って激しく高まるにつれ(この間隔の4乗まで、式(9)参照)、両方の性質が損なわれる可能性がある。この強い力は、少なくとも1つの磁性体を保持している少なくとも1本のフィラメントにおける比較的強い引っ張りをもたらす。この引っ張りそのものが散逸路をもたらすわけではない。しかし、特に、大きな振動振幅では、磁性体間の力が弱められることにより、フィラメントに掛かる引っ張りが周期的に弱められる。これは、通常、熱発生をもたらす、フィラメントの周期的な伸び縮みの結果となる。それ故、発振子から電力が引き抜かれる。この力も、磁性体間の間隔に強く左右され、磁性体が互いに近づくと非常に大きくなる。この挙動は、圧力センサには特に問題となる。磁性体間の力は、機能上は、外圧と同等である。それ故、外圧が高まると、磁性体が近づき合い、それにより今度は、見かけの圧力を上げる。この作用は、圧力確認で測定された較正曲線を使用すると補償されるが、これは、磁性体が互いに素早く引き合い、終には接触する転換点にセンサが達する状況をもたらす可能性がある。これは、センサがもう働かなくなる状態につながる。これは、圧力センサの膜や蛇腹構造をより硬くするだけで回避することができる。しかし、これは、センサの感度、すなわち、印加圧力当たりの周波数シフトを弱める。この問題を解消するのに、力及び力の変化を弱める方法について述べる。これは、
図34に示すように、磁性体の一部が、もう1つの磁性体の次に反対方向に磁化されることだけで成る。
【0158】
図34では、圧力センサ4001は、ケーシング4002の柔軟な部分4010から、高強度ワイヤであるのが好ましいフィラメント4006を介して吊るされた永久磁石である磁性体4008を備える。柔軟な部分4010がラテックス膜であってもよい膜であるのが好ましい。ケーシング4002のそれ以外の部分は、金属製であってもポリマー製であってもよい。ケーシング4002にはガスが充填されていてもよく、真空空間を設けていてもよく、
図34では、その内部空間には参照符号4009が付いている。もう1つの磁性体4007が、ケーシング4002の内側端面に接着剤4011によって固定されている。2つの磁性体4007、4008は、通常、対向方向に磁化されている。しかし、固定磁性体4007には、逆磁化向き4012の部分もある。
【0159】
それ故、2つの磁性球が関わる場合、この例では、少なくとも1つの磁性体が対向方向に磁化されたキャップを得る。キャップは、もう1つの磁性球の隣に位置する。1つの磁性球が固定していて、もう1つの磁性球が振動している場合、固定球にキャップが付いているのが一番良い。このようにして、センサの動的双極子モーメントが弱められる。周波数は、わずかしか下がらない。しかし、球の役割を逆にすることも可能である。対向して磁化される部分は非常に小さいので、すべての使用可能な間隔で、磁性体間の正味の力は依然として引き付ける。逆に磁化された部分が十分に小さい場合、磁性体の接触の直前まで、引き付け条件を満たすことができる。逆磁化キャップを作るやり方がいくつかある。1つは、少なくとも1つの磁性体の上面に、ある磁性材料を加えるだけで済む。磁性材料は、磁気的に柔らかくても、磁気的に硬くてもよい。これは、個体の途切れのない磁性体や磁性塗料、また何らかの中間物とすることができる。磁性材料は、自然に対向磁化を成すように位置が揃う傾向にある、さらに、磁性体にくっ付く傾向もある。それにも関わらず、この追加材は、特に2つの主要な磁性体が時折接触する可能性がある場合、磁性体に接着される必要がある。元の望ましい形を保つには、例えば研磨によって、変える対象の磁性体からある材料を取り除くことができる。逆磁化ゾーンを形成する代替のやり方がある。これは、磁性体の近くの導体を流れる電流の強いパルスによって実現され得る。しかし、これは、過剰に熱するせいでそれほど実際的ではない。これは、キュリー温度近く又はそれを超えるまで磁性体の影響を受ける部分を熱するだけでより容易に実現され得る。これは、磁化の反転の結果となる。この効果は、反対方向にパルス磁場又は定磁場を印加することによって増強され得る。磁場は、影響を受けるゾーンの近くに、ある程度硬い又は柔らかい磁性材料を使用することによって強い勾配を組み込むこともできる。加熱がかなり局所的にならざるを得ないため、磁性体に蓄積される総エネルギが低く、全体としてキュリー温度に近づかないように、温度上昇は非常に素早くなくてはならない。適切な加熱源は、レーザとすることができる。抵抗加熱法や誘導加熱法も上手く行くであろう。
【0160】
以下では、圧力センサがどのように位置特定されるかを説明することにする。
【0161】
追跡システムでは、マグネト-機械式発振子も備え得るマーカの向き及び3D位置が確認される必要があるが、純粋な検知システムでも、上に述べたように、センサ読み取り値の正確さを向上させるために、発振子の向き及び位置が確認される必要がある。位置特定には、2つの互いに無関係の位置特定方策が使用され得る。正確さを高めるのに、また2つの方法間の矛盾する結果につながる系統的誤差(例えば、作業場の強い強磁性)を特定するのに、1つの方策で十分な状況もあれば、両方の方法の組合せが有用である状況もある。
【0162】
コイル感度に基づく位置特定による方策がある。この手法は、コイルアレイ内のコイルiごとに、その位置及び向きに基づく異なる空間感度プロファイルB
S,i(γ)であるという点を活かす。それにより、式(3)に従って、1つの発振子が、B
S,i(γ)に対して発振子の動的双極子モーメント
【数14】
の相対向きによって決まってくる、各コイルに特有の振幅により応答をもたらす。センサの位置及び向きの構成し直しでは、式(4)によって与えられる一連の順関数を定める必要がある。このためには、すべての受信チャネルに対して、6つのマーカの位置及び向きの座標と、基準周波数又はもっと高い高調波における電圧振幅とのマッピングが望ましい。以下の式では、振幅を考慮するだけで済むように、式(4)においてどのように時間依存から逃れるかを記述する。すべての論拠を含めることで始め、すなわち、位置ベクトルγ=(x、y、z)
γ、向きベクトルφ=(φ、Θ、Ψ)
T:
【数15】
【0163】
必要なコイル感度プロファイルは、分かっているコイル形状から計算され、規定の位置で測定され、次に補間されてもよく、両方の混合で、すなわち、十分に合ったパラメータによる実験結果に適合することのできるモデルにおいて確認されてもよい。磁化の振動では、マーカのフレームにおける、周波数ω及び振幅α
0に関する明確な記述は、以下の通りである。
【数16】
ここで、’は、局所マーカフレームを示し、低振動振幅α
0の場合の三角関数の展開が使用されている。時間的変動は、以下の通りである。
【数17】
ここで、最初の項は、基本周波数応答を特徴付けするものであり、2番目の項は、第2の高調波周波数応答を特徴付けするものである。回転行列R(φ)を使用すると、空間中の全体的な向きに対して磁化が計算され得、すなわち
【数18】
である。したがって、(11)から始まり、基本周波数と第2の高調波周波数とに対する電圧振幅は、それぞれ、以下として定められ得る。
【数19】
、
【数20】
したがって、コイルiの場合の総電圧は、以下の通りである。
υi(γ、φ、t)=υ
1,i(γ、φ)cosωt+u
2,i(γ、φ)sin2ωt、#(16)
【0164】
順関数集合(14)、(15)及び測定済み応答振幅から、マーカの位置及び向きが、標準数理方法である非線形ソルバを用いて、連立方程式を解くことにより計算され得る。解法の正確さは、受信コイルの個数に従って、またそれらのそれぞれのコイル感度間の直交性(すなわち、差の大きさ)に従って高まる。6個の未知数とそれより多い(又は少ない)受信チャネルとの不整合が、最小二乗の意味合いで連立方程式を解くことにより考量され得る。
【0165】
位置特定は、勾配磁場符号化に基づき行われ得る。コイル感度位置特定は、コイルアレイによってピックアップされた振幅分布に基づいているが、他と無関係の位置情報を与えるために、マーカの周波数が巧みに扱われ得る。このため、作用域にわたる定磁場勾配があるのが理想である非一様な磁場が、例えば、コイルアレイの選択コイルに低周波電流を印加することによって起こされる。このさらなる磁場は、振動式球に作用する回復磁場Brestを変えることによりその周波数も変える(式9)。磁場の非一様な性質に起因して、磁場変化は、マーカの位置及び向きによって決まってくる。いくつかの符号化磁場(例えば、6つの異なる向きで印加された磁場勾配)の順次印加によって、マーカの全3つの位置及び3つの向きパラメータのうちの2つが確認され得る。その他の切り口は、外部磁場に対するセンサの高次応答から繰り延べられ得るが、より強い磁場強度を犠牲にして、十分に高次の関与をもたらすことが求められる。この基本的な符号化の発想は、MRIにおける勾配符号化に関係しているため、周波数符号化も位相符号化も行うことができる。
【0166】
周波数符号化では、信号読み出し時に非一様な磁場を印加して、望ましい周波数オフセットをもたらす。望ましい空間分解能では、印加された符号化磁場強度がマーカの周波数感度及びシステムがもたらす周波数分解能に適合される必要がある。Δγ=1mmの空間分解能及びΔf=10mHzの想定の周波数分解能の場合で、球直径が0.5mmである場合のNdFeBマーカの周波数感度を
【数21】
とすると、大雑把に以下の磁場勾配が必要とされる。
【数22】
この勾配強度は、典型的なMRIシステムの勾配の100倍前後を下回る。そのため、専用の水冷式勾配コイルがなくても済むが、送受信アレイのコイルが磁場起こしに使用され得る。
【0167】
位相符号化では、1回の読み出しの前に非一様の符号化磁場が印加され、すなわち、位置依存信号位相ずれが生じる短い機会にしか非一様の符号化磁場が印加されない。位相分解能が、正確な位置特定には十分ではない場合、位相符号化パルスの持続時間及び/又は振幅が、位相発生における曖昧さを見定めることができるように、順次励起で変えられ得る。そのため、完全空間情報が何回かの読み出しの過程にわたって得られる。1つの非一様の磁場パターンによる位相符号化(例えば、1つの空間軸を符号化する)では、有効な位置特定に向けて、別の非一様の磁場パターンと周波数符号化とを組み合わせることができる(例えば、直交空間軸を符号化する)。大雑把なマーカ位置が感度-符号化手法(その並行性質に起因してより素早い)によりすでに分かっている場合、数回の位相-符号化段階を使用して、欠落している高分解能(高空間周波数)をもたらすだけで十分である。
【0168】
この発明を実施するための形態で述べるように、勾配符号化対感度符号化により得られた位置特定結果の比較は、例えば背景磁場からもたらされた系統的誤差を特定するのに使用され得る。また、2つの吊り下がり球を採用するセンサの低周波数外部磁場に対する線形応答が抑制される場合があることに留意すべきであり、この場合、周波数のより高次の応答が位置特定やサニティーチェックに使用され得る。しかし、これらの発振子の磁場感度は、より高い勾配磁場が勾配磁場符号化に必要とされるほどに低い。
【0169】
以下では、パラメータ確認及び位置確認について、密接にセンサに結び付けて述べることにする。
【0170】
使用するコイルがわずかであれば、位置(3つの位置及び3つの向きパラメータを意味する)を確認し、パラメータ(圧力や温度のような)を測定するのが特に難しくなる。しかし、数個のコイルしか使用しないことは、費用効率が良く、また用途によってはスペース上の制限に起因して好ましいものである。そのため、数個のコイルだけでも上手く行くように検出手順及びハードウェアを修正することが望ましい。これを行う1つのやり方は、いくつかのマーカ及び/又はセンサを結合状態で使用することである。結合とは、ここでは、それぞれが別々の分かっている周波数で稼働する、いくつかのセンサ/マーカが、一定の相対向きで組み合わされ、1つの組立体になることを意味する。通常、センサは、剛性枠に取り付けられるが、技術上、センサ/マーカの相対位置だけ、評価時点で分かっていれば事足りる。センサが十分あれば、2個のコイルだけで位置を確認することができる。これは、従来の電磁ナビゲーションシステムと比べるともっとよく分かる。これらは、典型的には、いくつか、普通7個以上の送信コイルと1個の受信コイルとから構成され、この受信コイルは位置決めされ、その向きが評価されている。しかし、その軸(動的双極子モーメントの軸)を中心とするコイルの回転は、コイルの回転対称に起因して検出することができない。この比較では、一連のしっかりと結び付いたセンサは、送信アレイとして見ることができ、1つの送信コイルはマーカとして見ることができる。それにより、送信コイルの動的双極子軸を中心とする環のどこかでセンサ/マーカアレイを見付けることが可能である。コイルが丸くなければ、環が空間的に完全な円にならないが、これによりこの道理が変わることはない、ということに留意されたい。それ故、1個のコイルでは位置を確認することができないが、2個のコイル(動的双極子モーメントが非平行である)では、対称が崩れ、センサ/マーカアレイの位置及び向きが確認され得る。様々なセンサ信号の評価は、本明細書の他の個所で述べている完全モデル手法で、一番上手くなされる。手短に言えば、それぞれのアレイ状のセンサ/マーカのモデルは、例えば、様々な式の形式で起こされる。このモデルは、所与の励起に対してセンサ応答を予測する。送信/受信システムモデル(増幅器、フィルタ、及びコイルを含む)とともに、アレイの総応答が予測され得る。過去の励起パルスが分かっていると(普通、数回の減衰時間時のパルスだけ分かっていればよい)、センサ位置及びパラメータ値に対して予測される受信対象信号がコンピュータで計算され得る。ここで、センサの位置/向きとともに、コンピュータで計算する信号と実際に受信する信号との差を最小限に抑えるためのセンサが測定する物理パラメータが最適化される。予め分かっていることをこの手順、すなわち、コイルに対するセンサの最大変位速度しか可能にしないこと、に組み込むことも可能である。ここでは、これまで述べた方法との唯一の違いは、この工程が、1つのセンサに対して行われるのではなく、アレイ状の一連の結び付きセンサに対して、又はいくつかのアレイに対して同時に行われることにある。センサアレイでは、使用可能な一連の予め分かっていることがあり、すなわち、アレイ状のセンサ/マーカの相対位置及び相対向きが分かっている。これは、多くのセンサのすべてに望ましい振幅で同時に稼働させるのが難しいので、フルパラメトリック法や少なくともゼロ振幅周波数外挿法を採用すると特に助けとなる。しかし、フルモデル手法は、幾分計算上集中的である。必要な計算能力を減らすには、まず、すでに説明した1つのセンサ/マーカ評価手法を別々に使用して、それらの結果を、最終のフルモデルベースの位置及び値の構成し直しに向けての開始値として使用すると都合が良い。
【0171】
以下では、いくつかの較正態様について説明し、最初に、伝導性で柔らかい強磁性材料がある場合の較正について触れる。
【0172】
伝導性で特別に柔らかい強磁性材料があると、マーカやセンサの振動式磁石によって生み出される磁場を歪ませることによって且つ/又は送信コイルによって起こされた磁場を歪ませることによって、位置特定を妨げる可能性がある。特に、振幅作用に対する補償の正確さが下がる可能性があることから、程度が低くなるまで、センサ読み取り値も、変わる可能性がある。そのため、磁場に対する較正手順が望ましい。さらに、磁場撹乱が目下起こっているかを見極める尺度を設けることも好ましい。それ故、まず、撹乱問題を検出する方法について述べる。通常、位置特定システムでは、送信/受信コイルアレイを使用する。コイルは、別々の送信専用コイル及び受信専用コイルであってもよく、両方の機能で同じコイルを使用してもよい。いずれにせよ、この構成では、1つのコイルが送信することができ、その他のすべてのコイルが送信信号を直に受信する。受信信号は、格納された基準値と比較される。実際の受信信号が格納値から大きく外れていると、不正確に対する警告、自己較正工程の引き起こし、若しくはユーザインタラクションを伴う較正工程、又はこれらの事項の組合せのような何らかの行為が引き起こされる。いくつかのコイルにより、同時に送信することも可能である。送信パルスには複数の周波数が含まれている必要がある。これは、パルスを発することによって、また本明細書ではよく分かっている、周波数掃引又はいくつかの媒介物を使用することによって、実現され得る。導電性構造体を走る渦電流が主に周波数によって決まってくるので、周波数解析は、重要である。それ故、目立った変化は、2つの異なる周波数における受信対象信号の比がある限度を超えることである。少なくとも1つのスペクトル成分が規定値だけ変わると、それも意味のあることである。しかし、スペクトル全体の一様の変化は、例えば受信振幅における利得変化を原因とするものである。それ故、例えば、受信振幅が、利得変化が起こり得るように構成されている場合、この影響を使用して、この利得変化を補う新しい利得値をソフトウェアに設定することができる。利得変化が送信振幅で起こるが受信パスでは起こらないと予想される場合、この道理は、同様に当てはまる。ここで、訂正として、送信振幅は、計算モデルでは変更される(センサの振動振幅の変更などにつながる)。1つのコイルのインピーダンスを測定し、これの変化を渦電流環境における変化に対するしるしとして使用することも理論上可能である。しかし、インピーダンスを測定する能力は、必然的に、電子機器を備えておらず、特別な機器が必要となる。コイルの結合だけではなく、運用範囲におけるセンサ/マーカの分かっている性質も使用して、渦電流における環境変化を検出することができる。特別に、センサを送信/受信コイルアレイそのものに組み込むことが可能である。センサ/マーカが1つだけでも役に立つ。例えば、マーカが1つだけシステムに組み込まれていると、コイルに対して一定の位置では、マーカの応答の変化が、渦電流環境変化のしるしとなる。低周波磁場に敏感であるが、素早く変わる可能性のある他の物性にはそれほど敏感ではないセンサ/マーカを組み込むのがより一層好ましい。このマーカは、静磁場のしるしだけではなく、強磁性材料があるというしるしでもある。強磁性材料を検出する際、コイルには、センサ/マーカ振動の周波数の電流だけではなく、それより低い周波数の電流も充填される。電流充填は、コイルごとに、又はいくつかのコイルを使用して行われ得る。測定済みセンサ応答(すなわち、印加低周波磁場に起因した周波数変化)が格納予測と同じでなければ、強磁性材料が磁場を歪ませることがあり得る。システムにコイルが十分あれば、分かっている位置に磁場依存センサ/マーカを備える必要すらない。コイルが十分あれば、マーカ位置が、センサ/マーカ周波数におけるコイルの感度を使用して、またそれと無関係に近DC磁場(勾配磁場符号化)に対するセンサ/マーカの感度を使用して、確認され得る。2つの方法によって得られた位置が異なる場合、渦電流(又は強磁性)環境が変化している。しかし、不明の位置よりも分かっている位置にそれらがあるのも良い。位置情報を何も持たないのではなく、位置のいくつかの性質だけ知っているのも役に立つ。部分的に知ることの実際的なやり方は、互いに対する分かっている経時安定の位置及び向きを確保する剛性構造体にセンサ/マーカを置くことである。センサ/マーカによるこのような較正「フレーム」は、永続的に又は時折、位置特定システムの演算量に入れられる。位置特定システムが、予測から外れる相対位置及び相対向きを見付けると、このシステムは、渦電流又は強磁性材料によって妨げられている。また、センサ/マーカが近DC磁場にも敏感であり、コイルアレイに十分なコイルがあると、センサ/マーカの相対位置は、強磁性材料のみが磁場を撹乱させる超低周波で、また強磁性も渦電流も磁場歪みをもたらすセンサ/マーカ共振周波数で、それぞれ無関係に確認され得る。それ故、例えば、強磁性材料がこの撹乱に関与している場合、撹乱させる物の性質についての情報が生成され得る。また、撹乱を検出する一番良い手法は、送信/受信振幅、コイル、及びマーカ/センサのフル数理モデルである。このモデルは、相対、絶対両方の分かっている位置及び向きも含む。第1の段階では、すべての位置/向き及び物理パラメータが、誤差を最小限に抑えるように最適化される。この段階には、例えば、コイルアレイに取り付けられた固定位置マーカ及び電位差フレームにおける相対位置について予め分かっていることも含まれる。余談であるが、「フレーム」は、較正に多少なりとも導入される必要はなく、多くの発振子から成るマーカが、自然にフレームとして働くことができる。第2の段階では、期待信号と配信信号との総重み付き誤差がコンピュータで計算される。誤差が一定の閾値を超えると、ある材料が磁場を撹乱させていると結論付けられる。誤差の性質から(すなわち、誤差がAC感度成分又はDC感度成分で起こった場合)、撹乱させる材料の性質が推測され得る。
【0173】
磁場撹乱の存在を確認する最新の方法は、磁場撹乱の影響を補う方法にとっても良いスタートポイントである。この方法は、渦電流を引き起こす導電性材があるが、強磁性材料はないとの想定の下で一番簡単に説明することができる。上記のモデルを適用すると、近-DC依存信号の評価から正しい位置を得るが(勾配磁場符号化)、センサ振幅及びその高調波では間違った位置及び局所磁場振幅を得る(コイル感度符号化)。そのため、この予測に適合させるようにより高い周波数の磁場を崩すことができる。撹乱が印加された後、すべての位置及びセンサ読み取り値が改善される。AC感度符号化がかなり素早いので、DCに近い磁場に基づく位置評価だけに頼らないのが有益である。この補償方法にとって最も重要な部分は、AC磁場の歪みに対して正しいモデルを定めることである。単純な解決策は、例えば単純な3D多項式を用いて、磁場偏移関数をパラメータ化することである。これは、実際の位置の磁場値は使用されずに、3D多項式により変換された位置の磁場値が使用されることを意味する。これは、計算上、効率的であるが、物理的洞察力を欠き、例えば、コイル結合の測定がどのようにこの構想に組み込まれるかが明らかにならない。それ故、物理的現実により近いモデルを使用するともっと良い。例えば、望ましい磁場撹乱を誘起する磁場モデルの伝導性板をコイルシステムの近くに使用するともっと良い。それ故、いくつかの仮想板の基本的な位置、角度厚み、及びサイズが、モデル予測と測定済みデータとが一致するまで変えられる。このような伝導性板をどのようにモデル化するかは、電磁シミュレーション文献においてよく知られている。この種のモデル化には、これが特定の環境では起こりがちである形の物体を容易に組み込むという利点がさらにある。それ故、例えば、X線C-アームと言った空間デバイスが視野に近くなると、このデバイスが分かり、正確な向き及び位置しかシステムソフトウェアによって最適化されないようになる前にモデル化され得る。さらなる利点は、想定の撹乱させる物体の位置がシステムによって表示され得るか、又はデータが表示タスクを行う第2のシステムに送信される、ということである。このようにして、ユーザに、測定を乱す物体を具体的に指し示すことができ、ユーザは、その物体を動かすか取り除きたいと思うであろう。この工程時、コイルの結合データは、基本的に金属検出装置アレイとして働く。強磁性材料の組み込みは、概念上は、渦電流を生み出す導電性材と同じである。しかし、強磁性材料シミュレーションは、計算上、若干集中的であり、専用マーカによって規定される確かな基準位置を欠く可能性があるので、正確な位置をもたらさない可能性がある。繰り返しになるが、薄板や棒のような強磁性材料集合をモデル化して、シミュレーションでそれをコイルアレイを中心として変形させるのが一番良い。ここでは、相応しい強磁性体のデータベースが提供されれば、モデルには非常に都合がよい。さらに、相互結合測定の工程を、コイル環境における高調波発生の測定によって増補してもよい。高調波の存在は、柔らかい強磁性材料に対する強いしるしであり、測定済み信号が、その強磁性材料のサイズ及び位置に対して有益な入力を与える。
【0174】
以下では、励起パルス発生について説明される。
【0175】
システムとしては、励起パルスのタイミング及び形状を生成するソフトウェアを有するのが好ましい。この励起パルス発生装置には、ハードウェアの能力が分かっているのが好ましい。様々な型式の増幅器及びフィルタリングがあり得る。ある型式の増幅器は、幾分勝手なパスに緊密に従う電流波形を起こすことができる。これは、ここでは「アナログ増幅器」とする。その他の増幅器は、所定の割合で電流を増やし、同様の割合で電流を減らし、電流をほぼ一定にさせることしかできない。基本的には、これらの増幅器は、正符号又は負符号の電圧をコイルに印加するか、短絡として働く。これらは、ここでは「デジタル増幅器」とする。デジタル増幅器は、切り替え速さを変えることができ、すなわち、単位時間当たり何回かの状態変更が許される。切り替え速さが振動速さよりもかなり高くなると、デジタル増幅器もアナログ増幅器のように働く。それ故、この型式の増幅器は、概念上、アナログ増幅器として扱われ得る。切り替え速さがマーカ/センサ周波数とほぼ同じに留まるのであれば、少し違う扱いをする必要がある。しかし、これは、一層難しい状況であるので、すべてこの点に的を絞って説明することにする。この型式の増幅器には、アナログ増幅器を凌ぐ幾つかの利点がある。主な利点は、この増幅器の効率が、普通、非常に高く、98%効率がすぐに実現される、という点である。さらなる利点は、コンピューティングシステムとのインターフェースによる接続が非常に楽である、という点である。増幅器とコイルとの間に、整合回路があってもよい。最も単純な整合回路は、単に、コイルに直列のコンデンサである。整合回路を使用すると、所与の増幅器供給電圧でコイルを流れる最大電流が上がる。しかし、このような整合回路には、ブロッキング低周波が起こるという欠点がある。いくつかの連続工程には低周波電流が必要である。この問題に対する解決策は、2つの事項から成る。第1に、高周波数及び低周波数で電磁波を通す整合回路が提供され得る。このような回路の例には、第1の整合コンデンサに並列であるコイル又はコイルコンデンサ直列回路がある。他のやり方は、整合回路をバイパスするスイッチを備えることであり、DCに近い電流が必要になれば、このスイッチが閉じられる。パイパス路では、共振周波数が十分に低ければ、コンデンサも一体化され得る。同様に、一通りの様々な整合周波数が複数のスイッチ及びコンデンサを使用して与えられ得る。また、回路がDC近くに調整されたとしても、マーカ/センサ共振周波数におけるある程度の電流がまだ使用可能である、ということに留意されたい。読み出し時にDC回路を必ずしも使用できるわけではない、ということに留意するものとする。この能力を与える2つの主要な要素がある。第1に、DC回路に読み取りとインターフェースで接続させなくすることである。主に、送信コイルと受信コイルとが結び合わされている場合、問題がある。DC源は、信号への短絡路をもたらす可能性がある。これは、回避されるはずであり、正しい整合回路がこれを回避する。整合回路は、コイルとDC源との間に十分に高いインピーダンスを導入するはずである。これは、誘導性が送信/受信コイル誘導性と類似するさらなる直列コイルによって実現され得る。誘導性は、誘導性が必要でない場合に短絡させる並列スイッチを持ってもよい。使用可能なソリューションが他にも多くある。第2の条件は、DC源が、あまり多くの雑音を持ち込まないことであり、すなわち、電流源雑音がマーカ/センサの正確な測定を妨げないことである。これは、DC送信の場合では適切なアナログフィルタによって実現され得る。このフィルタは、適切なスイッチ(例えば、MOSEFTオプトカプラ)によるAC送信パルス時にバイパスされる。信号受信中にDC源における切り替え行為を一切回避し、コイル内のゆっくり減衰する電流しか使用しないことも実現可能である。受信中には数回しか切り替え行為を行わず、受信対象データが間違っている場合のみ、それを退けることも実現可能である。DC磁場源は、完全に別個のコイルであってもよく、磁場発生装置が(動く)永久磁石であってもよい。これによりほとんどの問題が回避される。信号受信時のDC電流の存在による別の問題は、コイルがセンサに様々な環境を与えることである。これは、例えば、いくつかのコイルがAC電流に対して短絡され得、AC磁場がコイルを透過しなくなり、付近のコイルにおける磁場値を変える、ということを意味する。位置及びセンサ値をコンピュータで計算する際、この影響を考慮する必要がある。2つの主要な磁場要素は、センサ/マーカと相互に作用する。1つの要素は、電流の近DC振幅、すなわち、0.1秒程度(約0.01秒~約1秒)の時間にわたって平均された電流値である。もう1つの要素は、センサ/マーカの共振周波数におけるフーリエ振幅である(位相が重要であるので、複合値として)。そのため、最初の作業は、2つの値を数列の発生にマッピングすることである。
【0176】
以下では、望ましい場合のフーリエ振幅及び電流の特定の時間-ドメインパルスパターンへのマッピングについて述べることにする。
【0177】
これは、正にこの種のマッピングを行うソフトウェアサブシステム、すなわち、望ましいDCに近い電流及び望ましいフーリエ振幅(及び周波数)を入力として得て、また時間-ドメインパルス数列を起こす、ソフトウェア製品を起こすのにも役立つ。このソフトウェアが、コイルの最大電流若しくは最大加熱又は規制限度、例えば、患者加熱や末梢神経刺激のような、ハードウェアによって課された限度内に望ましい値が達したかどうかという情報を返すことも望ましい。単なるはい/いいえ情報ではなく、望ましからざる副作用の深刻度についての情報が提供される。この情報は、個々の送信チャネルごとに(送信コイルごとに)提供される。さらなる返し値は、実際の最も良く合った出力DC電流及びフーリエ振幅である。入力は、ある周波数とフーリエ振動との組合せだけではなく、様々な周波数における様々なフーリエ振幅でもある。パルス数列の最大長は、この関数に対する入力であるパラメータでもある。その内部の働きは、以下の通りである。アナログ振幅の場合、最初の結果が、望ましい送信時間で望ましいフーリエ振幅(及びDC値)の逆フーリエ変換を行うだけで出される。この工程は、いくつかの制限に起因して実現することのできない波形をもたらす場合、これは、報告が返され、恐らく縮小版を起こす計画が組まれる。考えられ得るフィルタ特性が該当する畳み込みによって説明される。いくつかの切り替わりフィルタ状態がある場合、すべて検査され、振幅に対して最低限の要求であるものが選ばれる。ほとんどの場合で、すべてのフィルタ状態を評価しなくても済むように、使用可能なヒステリシスがいくつかある、ということ留意されたい。例えば、もっと良いフィルタが使用可能であれば、共振周波数が大きく外れたフィルタを省くことが可能である。デジタル増幅器では、逆フーリエ変換(フィルタ作用を含む)は、最適化に良いスタートポイントを与える。この最初の近似段階では、時間スペクトルにおける結果としてのピークが、2つ(せいぜい数個)の傾斜及びその間の平坦領域で近似される。それ故、例えば、ゼロで始まりゼロで終わる正弦波の半周期が、まず平坦(ゼロ)部分、次に立ち上がり、次に平坦部分、次に立ち下がり、そして最後に平坦(ゼロ)領域で近似される。様々な部分のタイミングは、ほぼ同じ域に達するように整えられる。この最初の近似後、2番目の段階では、傾斜始まり及び平坦部始まりの位置が、望ましいフーリエ値とのベストフィットに達するようにずらされる。このベストフィットは、少なくとも、望ましい実現されたフーリエ成分の様々な(複合)値の最小平方和である。勾配降下のような通常の最適化アルゴリズムのすべてが使用され得る。
【0178】
以下では、センサ/マーカにおける望ましいフーリエ値のコイル内の電流へのマッピングについて述べることにする。
【0179】
パルス発生プログラムの次のより高い抽象化レベルは、入力として、具体的な位置における具体的な磁場フーリア値及び方向を求め、それらをコイルにおける電流に対する要求に変換する、ソフトウェア製品である。評価アルゴリズムは、通常、センサ/マーカの位置及び向きの何らかの尺度を与える。位置は、3D空間における位置ではなく、またその必要もない。しかし、3D位置は、理想的な場合である。例えば、コイルが1つしかなければ、センサにおける敏感な方向の磁場値を確認することしかできない。それにも関わらず、これは、3D空間における何らかの仮想位置及び仮想向きに転換する。そのため、このような状況は、ソフトウェアにおける特別な扱いを必要としない。それにより、コイル電流の要求への変換は、最適化工程の結果となる。具体的な空間位置にあるフーリエ磁場成分をコイルにおける電流からコンピュータで計算するモデルがある。これは、最適化にとっては基礎であり、そこでは、コイル電流フーリエ成分が望ましい磁場成分を生じさせるように最適化される。通常、コイル電流から望ましい磁場成分を形成する明確なやり方はない。望ましい電流が、ハードウェアシステムにおける制約に適合しない場合もある。下位レベルのソフトウェアは、悪影響を記述する値を返し、このソフトウェアは、この情報を用いて電流を最適化する。最適化の目標は、センサ/マーカで得られた磁場フーリエ成分と悪影響との良い歩み寄りを得ることである。これは、望ましい磁場からのずれと副作用とが組み合わされてある数字になり、この数字に対して、標準最適化アルゴリズムを使用して最大や最小が見付けられる。数字の組合せは、重み付き平方和である。当然、このエンティティでは、膨大な数の実務数学組合せが確認され得る。最後に、プログラムのこのパートが、それが最適化を行う対象の位置及びQ値において実現された磁場を呼び出しプログラム(上位レベル)で返す。
【0180】
以下では、マーカ/センサに対する望ましい磁場フーリエ値の生成について述べることにする。
【0181】
このレベルの抽象化では、ソフトウェアシステムは、実際に、行われる必要のある測定に取り組む。それ故、このプログラムへの入力は、何をどの程度正確に、どの程度素早く測定するかのその時の要求である。この要件は、センサ/マーカが使用される実際の用途によって決まるので、本明細書の一部ではない。この要件は、非常に様々であり得る。例えば、関わるセンサが1つだけの場合、要件は、例えば、ただ1つの数量をできるだけ正確に、例えば0.1秒ごとに測定することである。アプリケーションが複数の結合マーカの追跡ソリューションである場合、望ましい成果は、マーカ組立体におけるマーカ/センサのいずれが信号に関与しているかどうか、また勾配法を用いて1秒ごとの他と無関係の位置確認が要求されること関係なく、マーカ組立体全体に対して、例えば0.1秒ごとに位置更新がなされる(コイル感度に基づき)ことである。このプログラムはまた、センサ/マーカのその時の状態(位置/振動パラメータなど)、また本明細書の他の個所に記載のシミュレーションモデルにアクセスする。これから、センサ/マーカごとに、方向を含む最適な励磁場フーリエ値がコンピュータで計算され得る。これらのパラメータを、上記の下位ソフトウェアレベルに渡たし(これ以降のどこかで実行が望まれる)、最終的に電流を起こすことができる。センサが1つだけの場合、これは、すぐに上手く行き、この計画は、ハードウェア出力バッファに書き込まれ得る。しかし、例えばマーカ組立体の追跡では、すべての個々のセンサ/マーカを完全に励起させるパルス形状がありそうにない。特に、この段階は、個々のセンサ/マーカすべてには適していない。そのため、ソフトウェアは、目下のセンサ/マーカの一部だけに最適な励起を集中しようとする必要があり、使えるパルス数列を与えるソリューションを見付けようとする必要がある。これは、このソフトウェアの最適化の全般的に使える原理である。この原理では、まだ望ましい成果を得るように、様々なセンサの望ましい励起を変え、またわずかに的を絞ろうとする。概念上最も簡単な手法は、すべての考えられ得るセンサ/マーカの一部を経て、励起の一部が望ましいパラメータに関する一番良い情報を与えるかどうかを確認することである。考えられ得る一部が多くあるので、プログラムは、複雑さを軽減するためにいくつかの発見的方法を加える必要がある。例えば、所与のマーカ/センサが励起し、必ずグループにまとまることができる場合、まず、他のどのセンサ/マーカが励起しているかも観察することができる。適切な解決策が見つかると、それは出力バッファに書き込まれ得る。近DC磁場の内包では、ハードウェア実装形態に応じて論理回路をさらに必要とする。信号が記録されている間にハードウェアがDC磁場を印加することができる場合、ソフトウェアは、読み出し時に1つ又はいくつかの勾配を印加することを除いて、非常に特別な何かを行う必要はない。しかし、DC勾配と読み出しとが不適合であれば、励起パルス間のある時点で正しいDC磁場又はDC勾配を生み出す最適化段階がさらに必要になる。最適化の背後の論理は、同じままである。シミュレーションで、印加で十分に良い測定値を予測するまで、パラメータが変えられる。
【0182】
以下では、スタートアップシーケンス生成について述べることにする。
【0183】
アルゴリズムでは、大抵、このシーケンスを最適化するのに活かせるセンサについてのかなりの程度の知識がすでにあると想定する。普通、シーケンスの開始時、これは完全には活かすことができない。例えば、その適用から、適用時にどれくらいのセンサ/マーカがなければならないか、また頻度はどのような範囲かを知ることができる。しかし、正確な位置や頻度は、分からない。そのため、すべての考えられ得る位置ですべてのあり得るセンサを見付けようとする空間スタートアップシーケンスが必要になる。最も単純と考えられ得るスタートアップシーケンスは、以下の通りである。使用できるボリュームが、空間3Dグリッドすなわち抽象グリッドに分けられる。抽象グリッドは、フル3D符号化を行うだけコイルがない場合に使用するグリッドである。各空間点は、様々な方向に分けられる。プログラムでは、各位置及びその位置の各角度を経て、最も高い送信電力を所与の頻度、事前設定の送信時間で印加する。それにより、システムは、センサ/マーカから起こり得る信号を記録する。普通、1回の送信パルスでは、1つのマーカだけではなく多くの他のマーカも同時に励起する。しかし、この手順では、最も弱いと考えられ得る信号を有するセンサ/マーカでさえも確実に検出されるようになる。任意選択の次の段階では、各センサを個々に様々な振幅で励起させる。これから、非線形性が引き出され得る。さらなる任意選択の段階では、センサ/マーカをDC磁場の存在下で励起させるか、又はDC磁場後に信号位相を測定して(ここでも様々な方向で)、DC磁場に対するセンサ/マーカの感度を確認する。これらの基本的な手順は、システムについての何らかの知識を用いることにより、大いにスピードアップさせることができる。例えば、センサ/マーカに対して、遠くのボリュームがすでに調べられている場合、多くの又はすべてのそれより近いボリュームが、少なくともいくつかの観点から最も大きいと考えられ得る振幅を受け取ったと考えられ得る。そのため、それより近いボリュームに対して適用される残りのパラメータがわずかで事足りる。同じ論理が、センサ/マーカの非線形特性やDC磁場に対するそれらの応答を見極めるのに使用され得る。
【0184】
以下では、高時間分解能測定時の方策について説明することにする。
【0185】
多くの用途で、高時間分解能を備えるのが望ましい。1つの例には、人間において、周波数が200拍/分にまで達することができる、心臓周期によって変調される血管内圧の測定がある。心臓周期時の最小限、最大限の圧力を確認するためには、5Hz程度、好ましくは10~20Hz超、最も好ましくは40Hz超の最低限の測定頻度が必要とされる。他方、良い信号対雑音を得るためには、発振子のQ値が非常に高くなくてはいけない。高Q値とは、ゆっくりの減衰を意味する。そのため、次の測定パルスがセンサに送られるときには、前の測定パルスからの振動が完全には消滅しておらず、この振動が測定に影響する。
【0186】
それ故、位置特定でもパラメータ確認でも、マグネト-機械式振動により高時間分解能に達する方策が望ましい。高時間分解能用の最も単純な手法は、繰り返し時間を短くするだけである。繰り返し時間とは、後続の励起パルス間の時間周期を意味する。本明細書の他の個所に記載の通り、励起バルスが起こるたびに、それから物理値及び位置をコンピュータで計算することができる、頻度及び振幅が確認される。しかし、センサ/マーカのQ値は、比較的高くなる傾向にあり、振動振幅は、次の励起パルス時にはそれほど狭まらない。必ず望ましいセンサ/マーカ励起を手に入れるには、次の励起の位相を考える必要がある。普通、「同相励起」、すなわち、センサ/マーカが励起パルスの開始直後にエネルギを得るような励起を望む。タイミングがどのように最適化されるかは、他の個所に述べている。同相励起は、送りエネルギを最小限に抑え、それにより、励起パルス長が、最低限に保たれ得る。これは、全体的な信号対雑音比を上げる。
【0187】
高い繰り返し率にはいくつか欠点がある。第1に、励起パルス時やその直後には、システムが、通常、値を受信することができないので、信号対雑音比が最適ではなくなることである。第2に、各送信パルスが、センサの振動の位相についての何らかの知識を台無しにすることである。励起パルス及びセンサ向きがしっかり歯止めが利く状態に保たれ、それらが正確に分かっている場合のみ、位相情報は、ある程度、持ちこたえることができるが、これは、技術上、課題の多いものである。長期間にわたる位相情報は、役に立つが、それは、その期間に、平均頻度(よって平均物理量)についての情報が符号化されるからである。平均物理量の測定は、前半と後半との評価を互いに無関係に行い、その2つの結果を平均するよりも、2倍の長さの区間を評価すると、相当に正確になる。そのため、励起パルスを測定と同じ回数にするのではなく、1つよりも多い測定値を1回の信号パルスから引き出す方が価値がある。これは、信号をいくつかの小区分に分け、各小区分を互いに関係なく評価するだけで行うことができる。この単純な手法では、より長いデータ集合が使用される場合、測定が良くなることを考慮に入れない。これを組み込む際、データ集合を部分集合階層に分けることができ、階層ごとで部分集合ごとに評価され、平均値が、より長いデータ集合に適合するようにスケーリングされる。それ故、例えば、まず、データ集合(1つの非摂動減衰信号)が全体として評価される。次に、そのデータ集合が2つに分けられ、2つの分割データ集合が、別々に評価される。次に、各結果に対して、それらの平均値が完全集合の平均値に一致するように、同じ数が加えられる。この工程は、最後に4個、8個などの部分集合になるまで繰り返され得る。この手法には、フルモデルベースの評価まで、数学上、磨きをかけることができる。このため、物理パラメータの進化のモデルが起こされる(また場合によっては、センサの空間移動も含む)。このモデルは、ある次数などの適切な数学関数の多項式である。この関数は、使用するパラメータが少なくて済むように測定済み数量の物性を表すものでなくてはならない。それ故、例えば、パラメータが血圧であれば、このパラメータが多項式よりも良い心拍の圧力波形を表すことから、モデルは、フーリエ級数を良くすることができる。最後に離散測定点が必要である場合、この離散測定点は、ある時点でモデルの出力を使用するだけでコンピュータで計算され得る。
【0188】
記載の実施形態がすべて、分かりやすいように拡散阻止層がすべての図に示されているわけではないにしても、ケーシングの少なくとも一部を覆い、ケーシング内で所定の圧力を維持するように構成されている拡散阻止層を備える、ということに留意すべきである。また、共振周波数の圧力補償がもたらされるような圧力センサの構成が記載の如何なる実施形態にも適用され得る。
【0189】
図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求対象の本発明を実施する際、当業者であれば、本開示の実施形態に対する他の変形形態が分かり、それをもたらすことができる。
【0190】
特許請求の範囲において、「有する」という語は、他の要素やステップを除外するものではなく、単数形は、複数形を除外するものではない。
【0191】
ユニットやデバイス1つだけで、特許請求の範囲で挙げられるいくつかの項目の機能を果たすことができる。いくつかの手段が互いに異なる従属項に挙げられているという単なる事実によって、これらの手段の組合せを都合よく使用することができないということが示されるわけではない。
【0192】
誘起信号に基づく共振周波数の確認、共振周波数に基づく圧力の確認、1つ又はいくつかのユニット又はデバイスによって行われる較正曲線などの確認などの確認は、いくつでもよいユニットやデバイスによって行われてもよい。検出システムの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として且つ/又は専用ハードウェアとして、具体化され得る。
【0193】
他のハードウェアとともに又はその一部として提供された、コンピュータプログラムは、光記憶媒体若しくはソリッドステート媒体など、適切な媒体に格納/配信され得るが、インターネットなどの有線若しくは無線の電気通信システムを介してなど、他の形態でも配信され得る。
【0194】
特許請求の範囲の如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0195】
本発明は、人間の循環系に導入され、外側読み取りシステムによって無線で読み出されるパッシブ圧力センサに関するものである。パッシブ圧力センサは、拡散阻止層を有するケーシングであって、拡散阻止層がそのケーシング内で所定の圧力を維持する、ケーシングと、永続的な磁気モーメントをもたらす磁性体であるマグネト-機械式発振子とを有する。マグネト-機械式発振子は、外部磁気励起場又は外部電磁励起場を、磁性体の機械式振動に変換し、ケーシングの少なくとも一部が、外圧変化を磁性体の機械式振動の変化に変換するのを可能にするように柔軟である。このパッシブ圧力センサは、非常に小型であるにも関わらず、高品質の圧力検知をもたらすことができる。
【国際調査報告】