(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】アニオン交換-疎水性混合モードクロマトグラフィー樹脂
(51)【国際特許分類】
B01J 20/285 20060101AFI20221102BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20221102BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20221102BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20221102BHJP
B01D 15/38 20060101ALI20221102BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20221102BHJP
B01J 20/289 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B01J20/285
C07K1/16
B01J20/22 D
B01J20/34 E
B01D15/38
B01J20/30
B01J20/289
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577372
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 US2020049305
(87)【国際公開番号】W WO2021046284
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504121623
【氏名又は名称】バイオ-ラッド・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】べライル,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ホン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ユエピン
(72)【発明者】
【氏名】リアオ,ジアリ
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4H045
【Fターム(参考)】
4D017AA11
4D017BA07
4D017CA14
4D017DA03
4D017DB01
4D017EA05
4G066AB05B
4G066AB09B
4G066AB21B
4G066AC12C
4G066AC17C
4G066AC35C
4G066BA36
4G066CA54
4G066DA07
4G066EA02
4G066FA38
4G066GA11
4G066GA34
4H045AA20
4H045GA21
4H045GA23
(57)【要約】
アニオン交換-疎水性混合モードリガンドを有するクロマトグラフィー樹脂及びかかる樹脂を使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドに共有結合したクロマトグラフィーマトリックスであって、
クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R
1)-(R
2-L)
n-Ar又はそのアニオン塩
(式中、
Xは、スペーサーであり、
R
1は、水素、又は、任意で、-OHで置換されたC
1~C
6アルキルであり、
R
2は、C
2~C
6アルキル、又はC
4~C
6シクロアルキルであり、
Lは、NR
4、O、又はSであり、
n=1又は2であり、及び
Arは、6~10員環であり、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大5個の、C
1~C
3非置換アルキル、C
3~C
6分岐アルキル、非置換アリール、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大4個の非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R
1が水素である場合は、R
2はC
2アルキルであり、LはNR
4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない)
である、クロマトグラフィーマトリックス。
【請求項2】
Xは、-O-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH(CH
2-OH)-(O-CH
2-CH(OH)-CH
2)
2-、-O-CH
2-CH
2-CH(CH
2-OH)-(O-CH
2-CH
2-CH(OH)-CH
2)
2-、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH(OH)-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-O-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-及び-CO-NH-C(CH
3)
2-CO-からなる群から選択され、
R
1は、水素又はC
1~C
3アルキルであり、
R
2はC
2~C
4アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは6員環であり、そして、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大4個の、C
1~C
2非置換アルキル、C
3~C
4分岐アルキル、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個の非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R
1が水素である場合は、R
2はC
2アルキルであり、nは1であり、Arはフェニルでない、
請求項1に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【請求項3】
Xは、-O-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-及び-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-からなる群から選択され、
R
1は水素又はC
1~C
2アルキルであり、
R
2はC
2~C
3アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは、任意で、最大3個のC
1~C
2非置換アルキルで置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルであり、
ただし、R
1が水素である場合、R
2はC
2アルキルであり、nは1であり、Arはフェニルでない、
請求項2に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【請求項4】
Arは、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R
1)-(R
2-L)
n-に対して、パラ又はメタ位で、1個又は2個のC
1~C
2非置換アルキルで置換されたフェニルである、
請求項1~3のいずれか1項に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項5】
-(X)-N(R
1)-(R
2-L)
n-Arは、表1のリガンドのいずれか1つである、
請求項1~4のいずれか1項に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項6】
クロマトグラフィー樹脂であって、
クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N-[(R
2-L)
n-Ar]
2
又はそのアニオン塩
(式中、
Xは、スペーサーであり、
R
2は、C
2~C
6アルキル、又はC
4~C
6シクロアルキルであり、
Lは、NR
4、O、又はSであり、
n=1又は2であり、及び
Arは、6~10員環であり、そして、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大で5個の、C
1~C
3非置換アルキル、C
3~C
6分岐アルキル、非置換アリール、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大4個の非置換アルキル基で置換されている)
である、クロマトグラフィー樹脂。
【請求項7】
Xは、-O-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH(CH
2-OH)-(O-CH
2-CH(OH)-CH
2)
2-、-O-CH
2-CH
2-CH(CH
2-OH)-(O-CH
2-CH
2-CH(OH)-CH
2)
2-、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH(OH)-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-O-CH2-CH
2-CH
2-CH
2-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-及び-CO-NH-C(CH
3)
2-CO-からなる群から選択され、
R
2はC
2~C
4アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは6員環であり、そして、
Arがアリールの場合、アリールは、任意で、最大4個の、C
3~C
2非置換アルキル、C
3若しくはC
4分岐アルキル、又はフッ素基で置換されており、あるいは
Arがヘテロアリールの場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個の非置換アルキル基で置換されている、
請求項6に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【請求項8】
Xは、-O-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-、-O-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-及び-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-からなる群から選択され、
R
1は、水素又はC
1~C
2アルキルであり、
R
2は、C
2又はC
3アルキル、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは、任意で、最大3個のC
1~C
2非置換アルキルで置換されたフェニル、ナフチル、又はピリジルである、
請求項7に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【請求項9】
Arは、-(R
2-L)
n-に対するパラ又はメタ位で、1個又は2個のC
1~C
2非置換アルキルで置換されている、
請求項6~9のいずれか1項に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項10】
-(X)-N-[(R
2-L)
n-Ar]
2は、表2のリガンドのいずれか1つである、
請求項6~9のいずれか1項に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項11】
Arはヘテロアリールであり、ヘテロアリール中のヘテロ原子はNである、請求項1又は6に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項12】
前記アニオン塩は、塩酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩である、請求項1~11のいずれか1項に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項13】
Xは、アミン、エーテル又はアミド結合を介してクロマトグラフィーマトリックスに付加している、
請求項1~12のいずれか1項に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項14】
表1のリガンドのいずれか1つを、還元アミノ化、エポキシド化、又はアザラクトン化のいずれか1つによってクロマトグラフィーマトリックスと反応させることによって調製される、
クロマトグラフィー樹脂。
【請求項15】
前記クロマトグラフィーマトリックスは、アルデヒド基を含み、表1のリガンドのいずれか1つは、還元アミノ化によって前記クロマトグラフィーマトリックスと反応する、
請求項14に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項16】
前記クロマトグラフィーマトリックスは、エポキシド基を含み、表1のリガンドのいずれか1つは、エポキシド化によって前記クロマトグラフィーマトリックスと反応する、請求項14に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項17】
前記クロマトグラフィーマトリックスを前記リガンドと反応させる前に、前記クロマトグラフィーマトリックスを、アリルグリジシルエーテル及び臭素;1,4-ブタンジアルジグリシジル;又はエピクロロヒドリンと反応させる、請求項14~16のいずれか1項に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【請求項18】
表2のリガンドのいずれか1つを、エポキシド化によってクロマトグラフィーマトリックスと反応させることによって調製した、クロマトグラフィー樹脂。
【請求項19】
生体分子を精製する方法であって、
前記生体分子を含むサンプルを、請求項1~18のいずれか1項のクロマトグラフィー樹脂に接触させ、それによって前記生体分子を汚染物質から分離し、
精製された生体分子を収集することを含む、方法。
【請求項20】
前記精製生体分子は、タンパク質である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記接触工程は、前記タンパク質を、クロマトグラフィーマトリックスに固定化することを含み、前記収集工程は、前記クロマトグラフィーマトリックスからタンパク質を溶出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質は、前記リガンドと接触する溶液のpHを約7-9~約4-6に低下させることを含む工程によって溶出される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記接触工程は、前記タンパク質を前記クロマトグラフィーマトリックスに流すことを含み、前記収集工程は、前記流れる前記タンパク質を収集することを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2019年9月5日出願の米国仮出願第62/896,196号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
主として、哺乳動物体液又は細胞培養ハーベストである原料液からの免疫グロブリンの抽出は、診断、治療用途、及び一般的な実験室研究のために十分に濃縮又は精製された形態で免疫グロブリンを得る際に重要である。同様に、生物学的サンプルからの他の型のタンパク質及び他の分子の精製も重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,645,717号
【特許文献2】米国特許第5,647,979号
【特許文献3】米国特許第5,935,429号
【特許文献4】米国特許第6,423,666号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
アニオン交換-疎水性の混合モードリガンドに連結されたクロマトグラフィーマトリックスを含むクロマトグラフィー樹脂が提供される。いくつかの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-Ar又はそのアニオン塩である。
式中、
Xは、スペーサーであり、
R1は、水素、又は、任意で、-OHで置換されたC1~C6アルキルであり、
R2は、C2~C6アルキル、又はC4~C6シクロアルキルであり、
Lは、NR4、O、又はSであり、
n=1又は2であり、Arは、6~10員環であり、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大5個の、C1~C3非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、非置換アリール、又はフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大4個の非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない。
【0005】
クロマトグラフィー樹脂のいくつかの実施形態において、
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-及び-CO-NH-C(CH3)2-CO-からなる群から選択され、
R1は、水素又はC1~C3アルキルであり、
R2はC2~C4アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、
Arは6員環であり、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大4個の、C1~C2非置換アルキル、C3~C4分岐アルキル、又はフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個の、非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、nは1であり、Arはフェニルでない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
アニオン交換及び疎水性の混合モードクロマトグラフィーを用いて標的生体分子を精製するのに有用なクロマトグラフィー樹脂が提供される。このクロマトグラフィー樹脂によって、サンプルからの標的生体分子(例えば、組換えタンパク質)の効率的な精製が可能になる。一実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、サンプル中の1つ以上の成分(例えば、汚染物質)から標的タンパク質を分離するのに有用である。
【0007】
定義
特に断りのない限り、本明細書及び特許請求の範囲を含む、本出願において使用される用語を以下の通りに定義する。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形は、特に明確な指示のない限り、複数の指示対象を含む。標準化学用語の定義は、Carey and Sundberg(2007)「Advanced Organic Chemistry 5th Ed.」Vols.A and B、Springer Science+Business Media LLC、New Yorkをはじめとする参考文献にある。本発明の実施は、特に断わりのない限り、合成有機化学、質量分析、クロマトグラフィーの準備及び分析方法、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術及び薬理学の従来の方法を使用する。
【0008】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族ラジカルを指す。例えば、C1~C6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、及び/又はヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルは、1-2、1-3、1-4、1-5、1-6、1-7、1-8、1-9、1-10、2-3、2-4、2-5、2-6、3-4、3-5、3-6、4-5、4-6及び5-6などの任意の数の炭素を含むことができる。アルキル基は、典型的には、一価であるが、アルキル基が2つの化学基を一緒に連結する場合のように、二価であってもよい。
【0009】
本明細書中で使用される「シクロアルキル」という用語は、示される炭素原子の数を有する単環式アルキルを指す。単環としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0010】
本明細書中で使用される「アリール」という用語は、単環式又は縮合二環式芳香族環アセンブリを指す。例えば、アリールは、フェニル又はナフチルである。アリール基は、任意で、1、2、3、4、又は5個の非置換アルキル基、非置換アリール基、又はフッ素基で置換されていてもよい。
【0011】
「ヘテロ原子」という用語は、N、O及びSを指す。
【0012】
本明細書中で使用される「ヘテロアリール基」という用語は、員環として1つのヘテロ原子を含む芳香族基を指す。例としては、ピロール、フラン、チオフェン、及びピリジンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基は、任意で、1、2、3、又は4個のアルキル基で置換されていてもよい。
【0013】
「アニオン塩」は、リガンド中の塩基(例えば、アミノ又はアルキルアミノ)基で形成される。アニオン塩としては、ハロゲン化物、スルホン酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び硝酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。酸付加塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び硝酸塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書中で使用される「スペーサー」という用語は、H、C、N、O及びSから選択される1~30個の原子を有する分子を指す。スペーサーは、中性電荷を有し、環状基を含む。スペーサーは、クロマトグラフィーリガンドをクロマトグラフィーマトリックスと連結する。スペーサーをクロマトグラフィーマトリックスに連結するために使用される結合の種類には、アミド、アミン、エーテル、エステル、カルバメート、尿素、チオエーテル、チオカルバメート、チオカーボネート及びチオ尿素が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、スペーサーをクロマトグラフィーマトリックスに連結するために使用される結合は、アミン、エーテル又はアミドである。
【0015】
「生物学的サンプル」は、精製されることが望ましい生物学的起源の標的分子(「生体分子」)を含有する任意の組成物を指す。いくつかの実施形態において、精製される標的分子は、抗体又は非抗体タンパク質である。
【0016】
「抗体」は、免疫グロブリン、複合体(例えば、融合体)、又はそのフラグメント形態を指す。この用語には、ヒト化、ヒト、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、突然変異、移植、及びインビトロで生成された抗体などの天然又は遺伝的に改変された形態を含む、ヒト又は他の哺乳動物細胞株に由来する、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの部類のポリクローナル又はモノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。「抗体」にはまた、免疫グロブリン部分を含む融合タンパク質を含む複合形態も含まれるが、これに限定されない。「抗体」には、抗原結合機能を保持しているか否かにかかわらず、Fab、F(ab′)2、Fv、scFv、Fd、dAb、Fcなどの抗体フラグメントも含まれる。
【0017】
「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマー(例えば、組換えタンパク質)に適用される。
【0018】
「結合溶出モード」は、サンプルがリガンドに適用される場合に、標的分子、及び、場合により望ましくない汚染物質が、リガンドに結合するように、緩衝条件が確立される、クロマトグラフィーへの操作的接近をいう。対象の分画は、その後、対象が支持体から溶出するように条件を変化させることによって達成される。いくつかの実施形態において、汚染物質は、対象溶出後に結合したままである。いくつかの実施形態において、汚染物質は、対象の溶出前に、フロースルー又は結合され、溶出される。
【0019】
「フロースルーモード」は、精製されるべき標的分子がリガンドを含むクロマトグラフィー支持体を通って流れる一方で、少なくともいくつかのサンプル汚染物質が選択的に保持されることによって、サンプルからのそれらの除去が達成されるように、緩衝条件が確立される、クロマトグラフィーへの操作的アプローチをいう。
【0020】
クロマトグラフィーリガンド
一実施形態において、混合モードクロマトグラフィー支持体及びリガンドは、
クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-Ar又はそのアニオン塩である。
式中、
Xは、スペーサーであり、
R1は、水素、又は、任意で、-OHで置換されたC1~C6アルキルであり、
R2は、C2~C6アルキル、又はC4~C6シクロアルキルであり、
Lは、NR4、O、又はSであり、
n=1又は2であり、
Arは、6~10員環であり、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大5個の、C1~C3非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、非置換アリール、又はフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大4個の非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない。
【0021】
スペーサーに隣接する窒素の電荷はpHに依存する。従って、これらの樹脂は弱イオン交換を行う。
【0022】
第1の実施形態の第1の態様において、R1は、水素又はC1~C3アルキルである。あるいは、R1は、水素又はC1~C2アルキルである。
【0023】
第1の実施形態の第2の態様において、R2は、C2~C4アルキルである。あるいは、R2は、C2又はC3アルキルである。
【0024】
第1実施形態の第3の態様において、LはNR4又はO、又はNR4又はSである。あるいは、LはOである。
【0025】
第1の実施形態の第4の態様において、nは1である。
【0026】
第1の実施形態の第5の態様において、Arは6員環であり、Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大4個の、C1~C2非置換アルキル、C3~C4分岐アルキル、又はフッ素基で置換されており、又はArがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個のアルキル基で置換されており、ただし、R1 が水素である場合、R2は、C2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない。あるいは、Arは、任意で、最大3個の、C1~C2非置換アルキル又はフッ素基で置換されており、ただし、R1が水素である場合、R2はC2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない。あるいは、Arは、任意で、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換されており、ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない。あるいは、Arは、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-に対して、パラ又はメタ位で、1つのC1~C3非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、非置換アリール、又はフッ素基で置換されたフェニルである。あるいは、Arはヘテロアリールであり、ヘテロアリール中のヘテロ原子はNである。あるいは、Arは非置換ヘテロアリールである。さらに別の選択肢では、Arはピリジルである。
【0027】
第1の実施形態の第6の態様において、Xは、アミド、アミン、エーテル、エステル、カルバメート、尿素、チオエーテル、チオカルバメート、チオカーボネート及びチオ尿素から選択される結合を介してクロマトグラフィーマトリックスに付加する。あるいは、結合はアミン、エーテル又はアミドである。
【0028】
第1の実施形態の第7の態様において、Xは、
-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-及び-CO-NH-C(CH3)2-CO-からなる群から選択される。あるいは、Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-及び-O-CH2-CH(OH)-CH2-からなる群から選択される。
【0029】
第2の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-Ar又はそのアニオン塩である。
式中、
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-及び-CO-NH-C(CH3)2-CO-からなる群から選択され、
R1は、水素又はC1~C3アルキルであり、
R2は、C2~C4アルキル、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは、6員環であり、そして
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大4個の、C1~C2非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個の、非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、nは1であり、Arは非置換フェニルでない)である。
【0030】
第2の実施形態の第1の態様において、R1は水素又はC1~C2アルキルである。
【0031】
第2の実施形態の第2の態様において、R2はC2又はC3アルキルである。
【0032】
第2の実施形態の第3の態様において、Arは、任意で、最大3個のC1~C2非置換アルキル又はフッ素基で置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルであり、ただし、R1が水素である場合、R2はC2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない。あるいは、Arは、任意で、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換されたフェニルであり、ただし、R1が水素である場合、R2はC2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない。あるいは、Arは、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-に対してパラ又はメタ位で、1個のC1~C2非置換アルキルで置換されたフェニルである。あるいは、Arはヘテロアリールであり、ヘテロアリール中のヘテロ原子はNである。あるいは、Arは非置換ヘテロアリールである。さらに別の選択肢では、Arはピリジルである。
【0033】
第3の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-Ar又はそのアニオン塩である。
式中、
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-及び-O-CH2-CH(OH)-CH2-からなる群から選択され、
R1は、水素又はC1~C2アルキルであり、
R2は、C2~C3アルキル、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは、任意で、最大3個のC1~C2非置換アルキルで置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルであり、
ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、nは1であり、Arは非置換フェニルでない。
【0034】
第3の実施形態の第1の態様において、Arは、任意で、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換され、ただし、R1が水素である場合、R2はC2アルキルであり、Arはフェニルでない。あるいは、Arは、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-に対するパラ又はメタ位で、メチル基で置換されたフェニルである。あるいは、Arは、非置換フェニルであり、ただし、R1は水素でなく、R2はC2アルキルでない。
【0035】
第4の実施形態において、-(X)-N(R1)-(R2-L)n-Arは、表1のリガンドのいずか1つである。
【0036】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0037】
第5の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N-[(R2-L)n-Ar]2又はそのアニオン塩である。
式中、
Xは、スペーサーであり、
R2は、C2~C6アルキル、又はC4~C6シクロアルキルであり、
Lは、NR4、O、又はSであり、
n=1又は2であり、及び
Arは、6~10員環であり、そして、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大5個の、C1~C3非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、非置換アリール、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大4個の非置換アルキル基で置換されている。
【0038】
第5の実施形態の第1の態様において、R2は、C2~C4アルキルである。あるいは、R2はC2又はC3アルキルである。
【0039】
第5の実施形態の第2の態様において、LはNR4又はOであり、又はNR4又はSである。あるいは、LはOである。
【0040】
第5の実施形態の第3の態様において、nは1である。
【0041】
第5の実施形態の第4の態様において、Arは6員環であり、Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大4個の、C1~C2非置換アルキル、C3~C4分岐アルキル、若しくはフッ素基で置換されており、又はArがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個のアルキル基で置換されている。あるいは、Arは、任意で、最大3個のC1~C2非置換アルキル又はフッ素基で置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルである。あるいは、Arは、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換されたフェニルである。あるいは、Arは、-(R2-L)n-に対してパラ又はメタ位で、1個の、C1~C3非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、非置換アリール、又はフッ素基で置換されたフェニルである。あるいは、Arはヘテロアリールであり、ヘテロアリール中のヘテロ原子はNである。あるいは、Arは非置換ヘテロアリールである。さらに別の選択肢では、Arはピリジルである。
【0042】
第5の実施形態の第5の態様において、Xは、アミド、アミン、エーテル、エステル、カルバメート、尿素、チオエーテル、チオカルバメート、チオカーボネート及びチオ尿素から選択される結合を介してクロマトグラフィーマトリックスに付加している。あるいは、結合はアミン、エーテル又はアミドである。
【0043】
第5の実施形態の第6の態様において、Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-及び-CO-NH-C(CH3)2-CO-からなる群から選択される。あるいは、Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-及び-O-CH2-CH(OH)-CH2-からなる群から選択される。
【0044】
第6の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N-[(R2-L)n-Ar]]2又はそのアニオン塩である。
式中、
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-及び-CO-NH-C(CH3)2-CO-からなる群から選択され、
R2はC2~C4アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは6員環であり、そして、
Arがアリールの場合、アリールは、任意で、最大4個の、C3~C2非置換アルキル、C3又はC4分岐アルキル若しくはフッ素基で置換されており、又は
Arがヘテロアリールの場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個の、非置換アルキル基で置換されている。
【0045】
第6の実施形態の第1の態様において、R2は、C2又はC3アルキルである。
【0046】
第6の実施形態の第2の態様において、Arは、任意で、最大3個の、C1~C2非置換アルキル若しくはフッ素基で置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルである。あるいは、Arは、任意で、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換されたフェニルである。あるいは、Arは、-(R2-L)n-に対してパラ又はメタ位で、1個のC1又はC2非置換アルキルで置換されたフェニルである。あるいは、Arは、ヘテロアリールであり、ヘテロアリール中のヘテロ原子はNである。あるいは、Arは非置換ヘテロアリールである。さらに別の選択肢では、Arはピリジルである。
【0047】
第7の実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N-[(R2-L)n-Ar]2又はそのアニオン塩である。
式中、
Xは、O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-及び-O-CH2-CH(OH)-CH2-からなる群から選択され、
R1は、水素、C1、又はC2アルキルであり、
R2はC2又はC3アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは、任意で、最大3個のC1~C2非置換アルキルで置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルである。
【0048】
第7の実施形態の第1の態様において、Arは、任意で、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換されたフェニルである。あるいは、Arは、-(R2-L)n-に対してパラ又はメタ位で、メチル基で置換されたフェニルである。あるいは、Arは非置換フェニルである。
【0049】
第8の実施形態において、-(X)-N-[(R2-L)n-Ar]2は、表2のリガンドのいずれか1つである。
【0050】
【0051】
いくつかの実施形態において、アニオン塩は、塩酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩である。
【0052】
クロマトグラフィーマトリックスは、スペーサーXで結合を形成できるように官能化されたポリマーである。ポリマーは、親水性ポリマーであることが好ましい。ポリマーは、水に不溶性である。好適なポリマーは、例えば、アガロース、デキストラン、セルロース、澱粉、プルランなどの多糖類をベースとするポリヒドロキシポリマー;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(ヒドロキシアルキルビニルエーテル)、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)及びポリメタクリレート(例えば、ポリグリシジルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、スチレンやジビニルベンゼンをベースとするポリマーなどの完全合成ポリマー;ならびに上記ポリマーに対応するモノマーの2つ以上が含まれるコポリマーである。好適な合成ポリマーとしては、限定されるものではないが、Sigma-Millipore-EMD-Merck製のFractogel及びEshmuno(登録商標)ベースビーズ、Tosoh Bioscience製のToyoparl AF-Eposy-650M及びToyopearl AF-Tresyl-650M、ThermoFisher Scientific製のPOROS培地、Bio-Rad製のBio-Gel P及びMacro Prep、TESSEK製のHEMA及びSeparon、GE Healthcare Life Sciences製の活性化Sepharose 6B、活性化Sepharose 4B、活性化Sepharose 4 Fast Flow、ならびにPall製のHyper D及びTrisacryl培地が挙げられる。水に可溶性であるポリマーは、例えば、吸着又は共有結合を介して不溶物体に、架橋することによって、及びカップリングすることによって、不溶物になるように誘導体化される。親水性基は、疎水性ポリマー上(例えば、モノビニル及びジビニルベンゼンの共重合体上)に、OHに変換される基を示すモノマーの重合によって、又は、例えば、親水性ポリマーなどの好適な化合物の吸着によって、最終ポリマーの親水性化によって導入される。有用なマトリックスを得るために重合されるモノマーの例は、場合によっては官能基を有する酢酸ビニル、ビニルプロピルアミン、アクリル酸、メタクリレート、ブチルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピロリドン(ビニルピロリジノン)である。架橋剤もまた、多くの実施形態において有用であり、存在する場合、いくつかの実施形態において、全モノマーに対して約0.1~約0.7のモル比を構成する。架橋剤の例としては、ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド、ジアリルタルタルジアミド、トリアリルクエン酸トリアミド、エチレンジアクリレート、ビスアクリルシスタミン、N,N′-メチレンビスアクリルアミド、及びピペラジンジアクリルアミドが挙げられる。いくつかの実施態様において、マトリックスは、水溶性親水性モノマーから製造されるポリマーでUNOsphere(登録商標)(Bio-Rad、Hercules、Calif.)基質である。
【0053】
クロマトグラフィーマトリックスは、粒子、チップ、膜、又はモノリス、すなわち、材料の単一ブロック、ペレット、又はスラブの形成である。好ましくは、クロマトグラフィーマトリックスは多孔質である。粒子は、マトリックスとして使用される場合、球体又はビーズであり、滑らかな表面であるか、粗いもしくはテクスチャーのある表面を有するかのいずれかである。場合によっては、気孔のいくつかは貫通孔であり、粒子を通って延びて、流体力学的な流れ又は気孔を通る迅速な拡散を可能にするのに十分な大きさのチャネルとして働く。球体又はビーズの形態である場合、メジアン粒径(「粒径」という用語は、粒子の最も長い外部寸法をいう)は約25ミクロン~約150ミクロンである。例示的なマトリックス及びそれらを生成する方法の開示は、特許文献1~4にある。
【0054】
リガンドは、スペーサーXを介してクロマトグラフィーマトリックスに連結される。クロマトグラフィーマトリックスへの連結は、使用される特定のクロマトグラフィーマトリックス及びクロマトグラフィーマトリックスに連結される化学基に依る。リガンドは、クロマトグラフィーマトリックス上でリガンドと官能基の間の反応を実行することにより、クロマトグラフィーマトリックスと連結させることができる。好適な官能基を持たないクロマトグラフィーマトリックスについては、クロマトグラフィーマトリックスを好適な活性化試薬と反応させて、リガンドを付加させることができる好適な官能基を生成する。還元アミノ化、エポキシド化、又はアザラクトン化は、それぞれアルデヒド、エポキシド、又はアザラクトン官能基に作用する化学作用の例である。
【0055】
いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーマトリックスは、例えば、NaIO4による変換によってアルデヒドに変換されるジオールを含む。リガンドの第一級又は第二級アミンは、以下のスキームによる還元アミノ化反応によってクロマトグラフィーマトリックス上のアルデヒドに結合される。このスキームでは、スペーサーXは-O-CH2-CH2-CH2-である。本開示におけるこの合成スキーム及び他の合成スキームにおいて、正方形はマトリックスを表し、全てのカップリング化は個別に示される。
【0056】
【0057】
いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーマトリックスは、エポキシド基を含み、リガンド中の第一級又は第二級アミンは、以下のスキームによってエポキシド化を介してエポキシド基に連結される。このスキームでは、スペーサーXは、-O-CH2-CH(OH)-CH2-である。
【0058】
【0059】
いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーマトリックスは、アズラクトン環を含み、リガンド中の第一級又は第二級アミンは、以下のスキームによってアズラクトン環に連結される。このスキームでは、スペーサーXは、-CO-NH-C(CH3)2-CO-である。
【0060】
【0061】
いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーマトリックスは、ジオールを含み、第一級又は第二級アミンは、以下のスキームによって、2つの活性化試薬、アリルグリジシルエーテル(AGE)及び臭素で樹脂を活性化することによって、-OH基に連結される。このスキームでは、スペーサーXは、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-である。
【0062】
【0063】
特定の実施形態において、クロマトグラフィーマトリックスは、-OH基を含み、第1級又は第2級アミンは以下のスキームによって樹脂をエピクロロヒドリンで活性化することによって、-OH基に連結される。このスキームでは、スペーサーXは-O-CH2-CH(OH)-CH2-である。
【0064】
【0065】
いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーマトリックスは、-OH基を含み、第1級又は第2級アミンは、以下のスキームによって樹脂を1,4ブタンジオールジグリシジルエーテルで活性化することによって、-OH基に連結される。このスキームでは、スペーサーXは、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-である。
【0066】
【0067】
他の活性化試薬としては、エピブロモヒドリン(クロマトグラフィーマトリックス上の-OH官能基と反応してエポキシド基を生成する)、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(クロマトグラフィーマトリックス上の-OH官能基と反応してエポキシド基を生成する)、ジクロロプロパノール等のハロゲン置換脂肪族物質(クロマトグラフィーマトリックス上の-OH官能基と反応してエポキシド基を生成する)、ジビニルスルホン(クロマトグラフィーマトリックス上のジオール官能基と反応してビニル基を生成する)、及び塩化トシルや塩化トレシル等の塩化スルホニル(クロマトグラフィーマトリックス上の-OH官能基と反応してスルホネートエステルを生成する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
他のスペーサーとしては、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-及び-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
クロマトグラフィーマトリックスは、充填カラム及び流動床又は膨張床カラム、モノリス又は多孔質膜を含む任意の従来の構成で、及びローディング、洗浄、及び溶出のためのバッチモード、ならびに連続又はフロースルーモードを含む任意の従来の方法によって利用することができる。いくつかの実施形態において、カラムの直径は、1cm~1mの範囲であり、高さは、1cm~30cm以上の範囲である。
【0070】
方法
標的生体分子を精製する方法も提供される。一実施形態において、本方法は、生体分子を含むサンプルをクロマトグラフィー樹脂に接触させ、それによって生体分子を汚染物質から分離することを含む。続いて、得られた精製生体分子を回収する。いくつかの実施形態において、標的生体分子は標的タンパク質であり、方法は、汚染物質から標的タンパク質を精製することを含む。いくつかの実施形態において、標的生体分子はモノマー抗体であり、方法は、サンプル中の凝集抗体からモノマー抗体を精製することを含む。
【0071】
クロマトグラフィーリガンドは、アニオン交換(すなわち、リガンドが正に荷電している場合)及び疎水性の混合モードクロマトグラフィーを使用して標的分子を精製するのに有用である。条件は、クロマトグラフィーを結合溶出モード又はフロースルーモードで実行するように調整することができる。
【0072】
本方法が適用されるタンパク質調製物は、天然、合成、又は組換え供給源由来のタンパク質を含む。非精製タンパク質調製物は、例えば、血漿、プラズマ、腹水液、乳、植物抽出物、細菌溶解物、酵母溶解物、又はならし細胞培養培地を含むが、これらに限定されない種々の供給源に由来する。部分的に精製されたタンパク質調製物は、少なくとも1つのクロマトグラフィー、沈殿、他の分画工程、又は上記の任意の組み合わせによって処理された未精製調製物に由来する。いくつかの実施形態において、クロマトグラフィー工程は、サイズ排除、親和性、アニオン交換、カチオン交換、タンパク質A親和性、疎水性相互作用、固定化金属親和性クロマトグラフィー、又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない任意の方法を使用する。析出工程には、塩又はポリエチレングリコール(PEG)析出、有機酸、有機塩基又は他の薬剤による析出が含まれる。他の分別工程は、結晶化、液体:液体分配、又は膜濾過を含むが、これらに限定されない。
【0073】
当技術分野で理解されるように、混合モードクロマトグラフィーで使用されるロード、洗浄及び溶出条件は、使用される特定のクロマトグラフィー培地/リガンドに依存する。
【0074】
いくつかの結合-溶出モードの実施形態において、ローディング(すなわち、標的タンパク質をマトリックスに結合すること)、及び、任意で、洗浄は、6.5を超えるpH、例えば、6.5~8、7~9などで行われる。いくつかの例示的な結合培地-溶出条件は次の通りである。結合条件:適切な緩衝液(例えば、トリス、ビス-トリス、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又は酢酸ナトリウム)中の0~1000mM NaCl又は0~400mM NaCl、pH6.5~8.5又は7~9。溶出条件:リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アルギニン、又はグリシンを有する適切な緩衝液を使用した、10~1000mM NaCl又は20~500mM NaCl、pH3~8.5又は4~6。
【0075】
任意で、マトリックスは、サンプルのいくつかの成分がクロマトグラフィーマトリックスから除去されるが、標的生体分子がマトリックス上に固定されたままであるような条件下で洗浄することができる。いくつかの実施形態において、標的生体分子は、続いて、塩濃度を低下させる、及び/又はマトリックスと接触する溶液のpHを低下させることによって溶出される。
【0076】
あるいは、サンプルのいくつかの成分がマトリックスに固定化されるが、標的生体分子はクロマトグラフィーマトリックスを通って流れ(すなわち、フローパスされる)フロースルーモードで、サンプルは適用されて収集される。いくつかの例示的なフロースルー条件は、0~150mM NaCl、pH4.0~8.5であり、適切な緩衝液としては、例えば、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビス-トリス、酢酸ナトリウム又はクエン酸-リン酸塩が挙げられる。
【0077】
実施例
以下の実施例は、例示であって、限定されるものではない。当業者であれば、本質的に同じ又は類似の結果をもたらすように変更又は修正することができる様々な重要でないパラメータを容易に認識できるはずである。
実施例1-表2のリガンドを有するクロマトグラフィー樹脂の生成
【0078】
表3の一次アミンリガンド5、6、11、及び16
表3の第一級アミンリガンド5、6、11、及び16のそれぞれについて、N,N′-メチレンビスアクリルアミドで架橋され、ジオール密度が200~300μmol/mLである3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールとビニルピロリジノンとの共重合体であるUNOsphereジオール(20mL)を、球状ビーズの形態で使用した。ビーズを、20mLの0.1M酢酸ナトリウム又は水のいずれかに懸濁させた。過ヨウ素酸ナトリウムを、50~100mMの範囲内の濃度で添加し、得られた混合物を室温(約70°F(21℃))で3~24時間インキュベートした。反応は、150~250μmol/mLのジオール基のアルデヒド基への変換をもたらした。得られたアルデヒド官能化樹脂を20mLカラムに移し、そこで水100mLで洗浄した。
【0079】
次に、各第一アミンリガンドについて、20ミリリットルのUNOsphereアルデヒド樹脂を、0.6gのリガンドを含有する0.20Mリン酸ナトリウム20ml中にpH7.0で懸濁させた。これらの混合物を室温で15分間インキュベート(振とう、200rpm)した後、200mgのNaBH3CNを、それぞれの混合物に添加し、3~20時間反応を継続させた。各反応におけるリガンド濃度は、25~200mMの範囲にあった。反応の終わりに、樹脂を各々20mlのカラムに移し、3CVの水、続いて1~2CVの0.1N HClで洗浄し、次いで5 CVの水で洗浄した。各樹脂のリガンド密度は、25~100μmol/mlの範囲であった。
【0080】
UNOsphereアルデヒド樹脂に付加したリガンド5、6、11、及び16の構造及び密度を表3に示す。
【0081】
【0082】
表4の二次アミンリガンド32、34、39及び44
表4の第二級アミンリガンド32、34、39、及び44の各々について、UNOsphereジオール(100mL)を球状ビーズの形態で使用した。ビーズを、30mLの水、30mLの10N NaOH及び16gのNa2SO4に50℃で250rpmのシェイカー中で10分間懸濁させた。アリルグリジシルエーテル(AGE)100mlを加え、同じシェイカー中50℃で一晩保持した。得られたAGE変性樹脂を、3×2カラム容量(CV)のイソプロピルアルコール(IPA)及び30CVの水で洗浄した。AGE変性樹脂を100mLの水及び3.4gのNaOACと混合した。オレンジ色が残るまで(二重結合と臭素の反応の完了を示す)、臭素液体をスラリーに滴下した。その後、オレンジ色が消えるまでNa2SO3を追加した(過剰な臭素を臭化物に還元)。得られたUNOsphereジオール臭化物樹脂を30CVの水で洗浄し、リガンドカップリングの用意ができた。各第二級アミンリガンドについて、100mLのUNOsphereジオール臭化樹脂を50mLの水及び50mLのIPAと混合した。次に、12.5gのリガンドを添加した。各混合物を250rpmのシェイカー中50℃で一晩インキュベートした。反応終了時に、各樹脂を2CV IPA、2CV水、2CV 1N HCl、2CV水、2CV 1N NaOH、次いで30CV水で洗浄し、3級アミン樹脂を得た。
【0083】
UNOsphereジオールブロミド樹脂に付加したリガンド32、34、39、及び44の数、構造、及び密度を表4に示す。
【0084】
【0085】
実施例2-酸性タンパク質及び結合-溶出モードを用いた表3及び4からのアミン樹脂の評価
2つのモデル酸性タンパク質、CDP-D-グルコース4,6-デヒドラターゼ及びヒト血清アルブミンの静的結合能、回収率及び純度を、種々の結合及び溶出条件を用いて、表3及び4からの樹脂について求めた。
【0086】
材料:
1.表3及び4からの樹脂
2.使い捨てスピンカラム(Bio-Radカタログ番号732-6207)
3.CDP-D-グルコース4,6-デヒドラターゼ(「Eod」)(pIは約6であり、pH6未満では安定ではない)を含有する粗大腸菌溶解物
4.ヒト血清アルブミン(「HSA」)(分率V、Sigmaカタログ番号A1653、pIは約4.7である)
5.Eodの結合/洗浄緩衝液
a.pH6.5、7.5、又は約8.5での25mM リン酸ナトリウム緩衝液
b.0、25又は約50mM NaCl
6.HSAのための結合/洗浄緩衝液
a.pH4、6又は約8での25mM リン酸ナトリウム又は酢酸ナトリウム緩衝液
b.0、200又は約400mM NaCl
7.Eod用溶出緩衝液
a.pH6.5、7.5、又は約8.5での25mM リン酸ナトリウム緩衝液
b.10、500又は約1000mM NaCl
8.HSA用溶出緩衝液
a.pH4、6、又は約8での25mM リン酸ナトリウム又は酢酸ナトリウム緩衝液
b.20、500、又は約1000mM NaCl
【0087】
方法
静的結合能(SBC)測定:試験した各樹脂及び標的タンパク質(すなわち、Eod及び/又はHSA)について、0.1mlの樹脂を含有するスピンカラムを、適切な結合緩衝液(標的タンパク質に依存する)で予備平衡化し、次いで、Eod含有溶解物又はHSA溶液で5分間インキュベートした。各樹脂及び標的タンパク質について、3つの異なるpH値(例えば、EodについてはpH 6.5、7.5、8.5)での結合/洗浄緩衝液を、3つの異なるNaCl濃度(例えば、Eodについては0、25、50mM NaCl)と組み合わせて、3つの溶出緩衝液pH及びNaCl濃度の組み合わせのそれぞれで試験した。このように、各樹脂及び標的タンパク質を、9つの結合/洗浄緩衝液の組み合わせで試験し、結合/洗浄緩衝液の組み合わせの各々を、9つの溶出緩衝液の組み合わせで試験した。
カラムを1分間1000xgで遠心分離し、未結合タンパク質/不純物を除去し、5カラム容量の適切な結合/洗浄バッファで1回洗浄した後、5CVの適切な溶出バッファでインキュベートし(標的タンパク質に応じて)、結合標的タンパク質を回収した。カラムを、再び1分間1000xgで遠心分離し、280nmでのカラム排水吸光度を、スピンカラムに充填した元のタンパク質溶液の280nmでの吸光度と共に求めた。静的結合能は、SBC=(充填した合計タンパク質-フロースルー画分中のタンパク質)/樹脂の体積によって求めた。
標的タンパク質回収:各樹脂について、溶出液中に回収されたタンパク質を、280nmでの吸光度、Eodについて1の吸光係数、及びHSA(標的タンパク質の1mg/mL溶液)について0.534の吸光係数によって、回収率(%)=(溶出液中の総タンパク質/総荷重タンパク質)×100で定量した。
標的タンパク質純度:各樹脂についての標的タンパク質の純度を、SDS-PAGE及びBio-RadのImageLabソフトウェアによって評価した。
最適な結合及び溶出条件:JMPソフトウェア(SAS Institute)を使用して、各標的タンパク質及び樹脂を用いて最適な精製条件を求めた。
【0088】
結果:SBCの結果、樹脂の回収率を表5(第二級アミン樹脂5、6、11、及び16)及び表6(第三級アミン樹脂32、34、39、及び44)に示す。表5及び6はまた、各樹脂についての最適な結合及び溶出条件を列挙する。表5において、「-」は「約」を表し、両方の表において、「NaCl」はNaCl濃度を表す。
【0089】
【0090】
【0091】
表5及び6からのデータは、標的タンパク質及び樹脂に応じた最適な結合及び溶出条件の範囲を示す。例えば、標的タンパク質としてのEodについて、最適な結合条件は、樹脂5で試験した場合、pH6.5/NaClなしであり、一方、樹脂16について、最適な結合条件は、pH8.5/50mM NaClであった。同様に、標的タンパク質としてのHSAについて、最適な結合条件は、樹脂6で、pH8.0/400mM NaClであり、一方、樹脂34について、最適な結合条件は、pH4.0/NaClなしであった。
【0092】
標的タンパク質としてEodを用いて試験した樹脂5、11、及び16の最適溶出条件は、高pH(8~8.5)及び高NaCl濃度(1000mM)であった。しかしながら、HSAで試験した樹脂44については、最適溶出条件は、低pH(4)及び低NaCl濃度(20mM)であった。
【0093】
表5及び6からのデータによれば、広範囲のpH値及びNaCl濃度で樹脂を使用できること、所与の用途のための樹脂の選択は、目的の標的タンパク質に応じることが分かる。
【0094】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び他の公開された参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
追加の開示及び請求主題事項
【0095】
項目1
リガンドに共有結合したクロマトグラフィーマトリックスであって、
クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-Ar又はそのアニオン塩
(式中、
Xは、スペーサーであり、
R1は、水素、又は、任意で、-OHで置換されたC1~C6アルキルであり、
R2は、C2~C6アルキル、又はC4~C6シクロアルキルであり、
Lは、NR4、O、又はSであり、
n=1又は2であり、及び
Arは、6~10員環であり、そして
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大5個の、C1~C3非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、非置換アリール、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大4個の非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、LはNR4又はOであり、nは1であり、Arはフェニルでない)
である、クロマトグラフィーマトリックス。
【0096】
項目2
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-及び-CO-NH-C(CH3)2-CO-からなる群から選択され、
R1は、水素又はC1~C3アルキルであり、
R2はC2~C4アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、
Arは6員環であり、及び
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大4個の、C1~C2非置換アルキル、C3~C4分岐アルキル、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大3個の非置換アルキル基で置換されており、
ただし、R1が水素である場合は、R2はC2アルキルであり、nは1であり、Arはフェニルでない、
項目1に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【0097】
項目3
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-及び-O-CH2-CH(OH)-CH2-からなる群から選択され、
R1は水素又はC1~C2アルキルであり、
R2はC2~C3アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは、任意で、最大3個のC1~C2非置換アルキルで置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルであり、
ただし、R1が水素である場合、R2はC2アルキルであり、nは1であり、Arはフェニルでない、
項目2に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【0098】
項目4
Arは、クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N(R1)-(R2-L)n-に対して、パラ又はメタ位で、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換されたフェニルである、
項目1~3のいずれか1つに記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0099】
項目5
-(X)-N(R1)-(R2-L)n-Arは、表1のリガンドのいずか1つである、
項目1~4のいずれか1つに記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0100】
項目6
クロマトグラフィー樹脂であって、
クロマトグラフィーマトリックス-(X)-N-[(R2-L)n-Ar]2又はそのアニオン塩
(式中、
Xは、スペーサーであり、
R2は、C2~C6アルキル、又はC4~C6シクロアルキルであり、
Lは、NR4、O、又はSであり、
n=1又は2であり、及び
Arは、6~10員環であり、
Arがアリールである場合、アリールは、任意で、最大5個の、C1~C3非置換アルキル、C3~C6分岐アルキル、非置換アリール、若しくはフッ素基で置換されており、又は、
Arがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、任意で、最大4個の非置換アルキル基で置換されている)、
である、クロマトグラフィー樹脂。
【0101】
項目7
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH2-CH(CH2-OH)-(O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2)2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-O-CH2-CH2-CH(OH)-CH2-CH2-、-O-CH2-CH(OH)-CH2-O-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-及び-CO-NH-C(CH3)2-CO-からなる群から選択され、
R2はC2~C4アルキルであり、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは6員環であり、
Arがアリールの場合、アリールは、任意で、最大4個までのC3~C2非置換アルキル、C3又はC4分岐アルキル又はフッ素基で置換されており、又は
Arがヘテロアリールの場合、ヘテロアリールは、任意で、3個までの非置換アルキル基で置換されている、項目6に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【0102】
項目8
Xは、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-CH2-及び-O-CH2-CH(OH)-CH2-からなる群から選択され、
R1は、水素又はC1~C2アルキルであり、
R2は、C2又はC3アルキル、
LはOであり、
n=1であり、及び
Arは、任意で、最大3個のC1~C2非置換アルキルで置換された、フェニル、ナフチル、又はピリジルである、
項目7に記載のクロマトグラフィーマトリックス。
【0103】
項目9
Arは、-(R2-L)n-に対するパラ又はメタ位で、1個又は2個のC1~C2非置換アルキルで置換されている、項目6~9のいずれか1つに記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0104】
項目10
-(X)-N-[(R2-L)n-Ar]2は、表2のリガンドのいずれか1つである、項目6~9のいずれか1つに記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0105】
項目11
Arはヘテロアリールであり、ヘテロアリール中のヘテロ原子はNである、項目1又は6に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0106】
項目12
前記アニオン塩は、塩酸塩、リン酸塩、又は硫酸塩である、項目1~11のいずれか1つに記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0107】
項目13
Xは、アミン、エーテル又はアミド結合を介してクロマトグラフィーマトリックスに付加している、項目1~12のいずれか1つに記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0108】
項目14
表1のリガンドのいずれか1つを、還元アミノ化、エポキシド化、又はアザラクトン化のいずれか1つによってクロマトグラフィーマトリックスと反応させることによって調製されるクロマトグラフィー樹脂。
【0109】
項目15
前記クロマトグラフィーマトリックスは、アルデヒド基を含み、表1のリガンドのいずれか1つは、還元アミノ化によって前記クロマトグラフィーマトリックスと反応する、項目14に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0110】
項目16
前記クロマトグラフィーマトリックスは、エポキシド基を含み、表1のリガンドのいずれか1つは、エポキシド化によって前記クロマトグラフィーマトリックスと反応する、項目14に記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0111】
項目17
前記クロマトグラフィーマトリックスを前記リガンドと反応させる前に、前記クロマトグラフィーマトリックスを、アリルグリジシルエーテル及び臭素、1,4-ブタンジアルジグリシジル又はエピクロロヒドリンと反応させる、項目14~16のいずれか1つに記載のクロマトグラフィー樹脂。
【0112】
項目18
表2のリガンドのいずれか1つを、エポキシド化によってクロマトグラフィーマトリックスと反応させることによって調製したクロマトグラフィー樹脂。
【0113】
項目19
生体分子を精製する方法であって、
前記生体分子を含むサンプルを、項目1~18のいずれか1つのクロマトグラフィー樹脂に接触させ、それによって前記生体分子を汚染物質から分離し、
精製された生体分子を収集することを含む、方法。
【0114】
項目20
前記精製生体分子は、タンパク質である、項目19に記載の方法。
【0115】
項目21
前記接触工程は、前記タンパク質を、クロマトグラフィーマトリックスに固定化することを含み、前記収集工程は、前記クロマトグラフィーマトリックスからタンパク質を溶出することを含む、項目20に記載の方法。
【0116】
項目22
前記タンパク質は、前記リガンドと接触する溶液のpHを約7-9~約4-6に低下させることを含む工程によって溶出される、項目21に記載の方法。
【0117】
項目23
前記接触工程は、前記タンパク質を前記クロマトグラフィーマトリックスに流すことを含み、前記収集工程は、前記流れる前記タンパク質を収集することを含む、項目20に記載の方法。
【国際調査報告】