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特表2022-546908KDM1A阻害剤を使用した小細胞肺がんの個別化された処置のためのバイオマーカーおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】KDM1A阻害剤を使用した小細胞肺がんの個別化された処置のためのバイオマーカーおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20221102BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 31/132 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221102BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221102BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20221102BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20221102BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
A61P35/00
A61P11/00
A61P43/00 111
A61K31/132
A61K45/00
G01N33/53 M
C12N9/99 ZNA
C12Q1/6851 Z
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500505
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2019068150
(87)【国際公開番号】W WO2021004610
(87)【国際公開日】2021-01-14
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518329480
【氏名又は名称】オリゾン・ゲノミクス・ソシエダッド・アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】シセリ,フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】サシロット,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ルナルディ,セレナ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR84
4B063QS10
4B063QS13
4B063QS14
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA592
4C084ZB262
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB26
(57)【要約】
本出願は、KDM1A阻害剤による処置に対する小細胞肺がん(SCLC)を有する患者の応答性を予測するためのバイオマーカーおよび方法、ならびに上記方法を使用して同定されたSCLC患者のサブグループを処置する方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いSCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するステップを含む方法。
【請求項2】
試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者を、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成するステップをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者を、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るSCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するステップを含む方法。
【請求項5】
試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者を、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成するステップをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者が、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
SCLCを有する患者の処置を選択する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するステップを含む方法。
【請求項8】
ASCL1レベルおよびSOX2レベルがmRNA発現レベルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
mRNA発現レベルがqRT-PCRによって測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ASCL1レベルおよびSOX2レベルがタンパク質発現レベルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質発現レベルが蛍光免疫組織化学によって測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
試料が生検である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
患者が、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を推奨するか、処方するかまたは投与するステップをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
SCLCを有する患者の処置における使用のためのKDM1A阻害剤であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者が、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を使用してKDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定されているKDM1A阻害剤。
【請求項15】
SCLCを有する患者を処置する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者が、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を使用して、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項16】
KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法におけるASCL1およびSOX2の使用。
【請求項17】
KDM1A阻害剤が(トランス)-N1-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1~13に記載の方法、請求項14に記載の使用のためのKDM1A阻害剤、請求項15に記載の処置する方法、または請求項16に記載の使用。
【請求項18】
患者がヒト患者である、請求項1~13もしくは17に記載の方法、請求項14もしくは17に記載の使用のためのKDM1A阻害剤、請求項15もしくは17に記載の処置する方法、または請求項16もしくは17に記載の使用。
【請求項19】
KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価するためのキットであって、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤、および場合により使用説明書を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、KDM1A阻害剤を使用した小細胞肺がん(SCLC)の個別化された処置のためのバイオマーカーおよび方法に関する。本発明は、KDM1A阻害剤による処置が有益であり得るSCLCを有する患者を同定する方法、およびこのような患者をKDM1A阻害剤で処置する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
リジン特異的デメチラーゼ1(LSD1、KDM1Aとしても公知である)は、ジメチルヒストン3リジン4(H3K4me2)の脱メチル化に関与するヒストン修飾酵素である(Shiら、Cell 2004年)。いくつかのヒトがんにおいて、KDM1Aの過剰発現は、疾患の進行および不良な予後と関連しており、その阻害は、がん細胞の増殖、遊走および浸潤を低減させることが示されている。したがって、KDM1Aは、がんを処置するための新薬開発の目的の標的として認識されており、いくつかのKDM1A阻害剤が現在、腫瘍学において臨床試験中である。
【0003】
特に、KDM1A阻害剤は小細胞肺がん(SCLC)の処置に有効であることが報告されている。KDM1A阻害は、インビトロでSCLC細胞株の増殖を低減させ、SCLC異種移植片担持マウスにおけるインビボでの腫瘍増殖を遅延させることが示されている(Mohammadら、2015年、Cancer Cell 28巻、57~69頁)。しかしながら、公開されたデータは、ある種のSCLCはKDM1A阻害に対して感受性が高いが、KDM1A阻害に対する感受性はSCLC細胞の広範な特徴ではないことを示す。これにより、KDM1A阻害薬によるSCLC処置を個別化する方法、特にKDM1A阻害薬による処置を受けることが有益であるかまたは最も有益である、SCLCを有する患者を同定することができる患者選択の方法を開発する必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、KDM1A阻害剤による処置に最も適したSCLCを有する患者を同定し、処置するための手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、KDM1A阻害剤を使用した小細胞肺がん(SCLC)の個別化された処置のための手段および方法を提供する。
一態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性がより高いものとして同定される。
【0006】
例えば、患者は、SCLCを有し、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルが測定された患者について試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えなかった場合と比較して、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。比較対象の患者(試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えない)は、反対に、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が低い。この例示的な説明は、KDM1A阻害剤などを含む処置に応答する可能性が高い/応答性であるSCLCを有する患者を同定することに関与するか、包含するかまたは含む、本明細書において提供されるすべての態様および使用に適用される。
【0007】
一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性がより高いものとして同定される。
【0008】
別の態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るSCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対するSCLCを有する患者の応答性を予測する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答性である可能性が高いものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答性である可能性が高いものとして同定される。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する、SCLCを有する患者の可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する患者におけるSCLCの可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、SCLCを有する患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、SCLCは、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、KDM1A阻害剤を含む処理に応答する可能性が高いものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することをさらに含み、SCLCは、試料中のスコアが閾値を超えた場合に、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者の処置を選択する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者に対して選択された処置がKDM1A阻害剤を含むという推奨を提供することを含む。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成し、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者に対して選択された処置がKDM1A阻害剤を含むという推奨を提供することをさらに含む。換言すれば、SCLCを有する患者に対して選択される処置は、例えば、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、または試料中のスコアが閾値を超えた場合に、KDM1A阻害剤を含む処置である。ASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えない場合に、またはスコアが閾値を超えない場合に、KDM1A阻害剤を含む処置以外の他の処置選択肢、例えば、KDM1A阻害剤以外の薬物/治療剤による処置が、患者に対して企図され得る。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者を処置する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者が、前述の態様のいずれかによる方法を使用して、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者を処置する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして患者を同定し、応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を投与することを含む方法を特徴とする。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者を処置する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、これらのレベルを使用して、試料についてのスコアを生成し、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定され、応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を投与することを含む方法を特徴とする。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者の処置における使用のためのKDM1A阻害剤であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者は、前述の態様のいずれかによる方法を使用して、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定されているKDM1A阻害剤を提供する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法におけるASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価する方法におけるASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法において、ASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤の使用を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価する方法において、ASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤の使用を提供する。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定するための診断薬を製造するためのASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価するための診断薬を製造するためのASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定するためのキットであって、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤、および場合により使用説明書を含むキットを提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価するためのキットであって、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤、および場合により使用説明書を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例2により詳細に記載されるように、KDM1A阻害に対すSCLC細胞株感受性(灰色の点)、部分的な感受性(空の正方形)または耐性(黒色の三角形)について、RNA-seq(Log2(RPKM)値)によって測定されたASCL1(Y軸)およびSOX2(X軸)の発現を表すドットプロットを示す図である。
図2】実施例3に記載されるように、KDM1A阻害に対するSCLC細胞株感受性(灰色の点)、部分的な感受性(空の正方形)または耐性(黒色の菱形)について、ASCL1およびSOX2のqRT-PCR(絶対Cp値)によって測定された遺伝子発現を表すドットプロットを示す図である。プロット値は、独立した実験の平均値である。括弧内の値は、SOX2の発現について40を超えるCp値を有する。
図3】実施例4に記載されるように、KDM1A阻害に対するSCLC細胞株感受性(灰色の点)、部分的な感受性(空の正方形)または耐性(黒色の三角形)の拡張パネルにおけるASCL1およびSOX2のマイクロアレイAffymetrix分析(RMA値)によって測定された遺伝子発現を表すドットプロットを示す図である。
図4A】実施例4に記載されるように、KDM1Ai感受性および耐性SCLC細胞を識別するための、ASCL1(図4A)およびSOX2(図4B)の遺伝子発現に基づくROC曲線を示す図である。所定の閾値に対するそれぞれの信頼区間の感度および特異度を各グラフの下の表に示す。
図4B】実施例4に記載されるように、KDM1Ai感受性および耐性SCLC細胞を識別するための、ASCL1(図4A)およびSOX2(図4B)の遺伝子発現に基づくROC曲線を示す図である。所定の閾値に対するそれぞれの信頼区間の感度および特異度を各グラフの下の表に示す。
図5A】実施例5.1に記載されるように、NCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446およびNCI-H526細胞株におけるASCL1およびSOX2タンパク質レベルのウエスタンブロット(WB)(図5A)および定量(図5B)を示す図である。
図5B】実施例5.1に記載されるように、NCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446およびNCI-H526細胞株におけるASCL1およびSOX2タンパク質レベルのウエスタンブロット(WB)(図5A)および定量(図5B)を示す図である。
図6A】実施例5.1に記載されるように、SOX2(図6A)およびASCL1(図6B)についてのタンパク質とmRNA(CCLE Affymetrix)レベルの相関を示す図である。
図6B】実施例5.1に記載されるように、SOX2(図6A)およびASCL1(図6B)についてのタンパク質とmRNA(CCLE Affymetrix)レベルの相関を示す図である。
図7A】実施例5.2によるSOX2(図7A)、ASCL1(図7B)および陰性対照(一次抗体なし、図7C)の蛍光免疫組織化学染色を示す図であり、NCI-H526細胞における両バイオマーカーの低レベル/検出不能レベル、NCI-H446細胞におけるASCL1の低レベル/検出不能レベル、およびNCI-H146細胞における両バイオマーカーの最高レベルを示し、それらのmRNAレベルと一致する。DAPI:DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)は、DNA中のA-Tリッチ領域に強く結合し、核を染色する蛍光色素である。二次抗体のみの陰性対照(AF546:Alexa Fluor 546)ではシグナルは検出されない。
図7B】実施例5.2によるSOX2(図7A)、ASCL1(図7B)および陰性対照(一次抗体なし、図7C)の蛍光免疫組織化学染色を示す図であり、NCI-H526細胞における両バイオマーカーの低レベル/検出不能レベル、NCI-H446細胞におけるASCL1の低レベル/検出不能レベル、およびNCI-H146細胞における両バイオマーカーの最高レベルを示し、それらのmRNAレベルと一致する。DAPI:DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)は、DNA中のA-Tリッチ領域に強く結合し、核を染色する蛍光色素である。二次抗体のみの陰性対照(AF546:Alexa Fluor 546)ではシグナルは検出されない。
図7C】実施例5.2によるSOX2(図7A)、ASCL1(図7B)および陰性対照(一次抗体なし、図7C)の蛍光免疫組織化学染色を示す図であり、NCI-H526細胞における両バイオマーカーの低レベル/検出不能レベル、NCI-H446細胞におけるASCL1の低レベル/検出不能レベル、およびNCI-H146細胞における両バイオマーカーの最高レベルを示し、それらのmRNAレベルと一致する。DAPI:DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)は、DNA中のA-Tリッチ領域に強く結合し、核を染色する蛍光色素である。二次抗体のみの陰性対照(AF546:Alexa Fluor 546)ではシグナルは検出されない。
図8A】実施例5.2により詳細に記載されるように、SOX2(図8A)およびASCL1(図8B)のタンパク質およびmRNA(CCLE Affymetrix)レベルの相関を示す図である。
図8B】実施例5.2により詳細に記載されるように、SOX2(図8A)およびASCL1(図8B)のタンパク質およびmRNA(CCLE Affymetrix)レベルの相関を示す図である。
図9】SCLC PDX TMAからの代表的なASCL1、SOX2、およびそれらの対応するDAPI蛍光免疫組織化学画像は、実施例5.3に記載されるように、各染色分類レベル0、1、2および3について示される。
図10A】95%信頼区間を有する、SOX2(図10Aおよび10B)およびASCL1(図10Cおよび10D)についてのRNASeq(LogFPKM)とIF(視覚スコア)データセット間の両側スピアマン相関検定が、実施例5.3に記載されるように、2つの独立した実験(各グラフの下部に係数を特定する)について示される図である。
図10B】95%信頼区間を有する、SOX2(図10Aおよび10B)およびASCL1(図10Cおよび10D)についてのRNASeq(LogFPKM)とIF(視覚スコア)データセット間の両側スピアマン相関検定が、実施例5.3に記載されるように、2つの独立した実験(各グラフの下部に係数を特定する)について示される図である。
図10C】95%信頼区間を有する、SOX2(図10Aおよび10B)およびASCL1(図10Cおよび10D)についてのRNASeq(LogFPKM)とIF(視覚スコア)データセット間の両側スピアマン相関検定が、実施例5.3に記載されるように、2つの独立した実験(各グラフの下部に係数を特定する)について示される図である。
図10D】95%信頼区間を有する、SOX2(図10Aおよび10B)およびASCL1(図10Cおよび10D)についてのRNASeq(LogFPKM)とIF(視覚スコア)データセット間の両側スピアマン相関検定が、実施例5.3に記載されるように、2つの独立した実験(各グラフの下部に係数を特定する)について示される図である。
図11】実施例6によるエキソソーム画分中のASCL1およびSOX2についてのWBおよびポンソー染色を示す図である。mRNA発現と一致して、ASCL1は、NCI-H446およびNCI-H526由来のエキソソームには検出されず、SOX2は、NCI-H526由来のエキソソームには存在しなかった。
図12】実施例6による、エキソソームと対応する親細胞の両方におけるASCL1、SOX2およびCD151(肺がん特異的エキソソームマーカー)についてのWB(左)およびポンソー染色(右)を示す図である。ASCL1、SOX2およびCD151シグナルは、5μMのGW4869(エキソソーム産生阻害剤)で48時間のNCI-H510A細胞の処理後、エキソソーム画分において有意に低減または除去され、一方、細胞におけるこれらのタンパク質の発現は影響を受けず、ASCL1、SOX2およびCD151の検出はエキソソーム特異的である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。
【0027】
本明細書に言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本出願において使用される命名法は、特に断らない限り、IUPAC系統命名法に基づく。
【0028】
本明細書における構造中の炭素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子上に現れる任意の開いた原子価は、特に断らない限り、水素の存在を示す。
本明細書において使用される立体化学的定義および慣例は、一般に、S.P.Parker、編集、McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984年)McGraw-Hill Book Company、New York;Eliel,E.およびWilen,S.、「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley & Sons,Inc.、New York、1994年に従う。光学活性化合物の記載では、接頭辞DおよびL、またはRおよびSを使用して、そのキラル中心(複数可)についての分子の絶対的立体配置を示す。考慮中のキラル中心に結合した置換基は、Cahn、IngoldおよびPrelog(Cahnら、Angew.Chem.Inter.編集、1966年、5巻、385頁;errata 511)の配列規則に従ってランク付けされる。接頭辞DおよびLまたは(+)および(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために使用され、(-)またはLは化合物が左旋性であることを示す。(+)またはDを接頭語とする化合物は右旋性である。
【0029】
用語「場合による」または「場合により」は、続いて記載される事象または状況が起こり得るが、起こり得る必要はないこと、および、説明には、事象または状況が起こる事例および起こらない事例が含まれることを示す。
【0030】
用語「薬学的に許容される塩」は、生物学的にも、また他の点でも望ましくないことはない塩を示す。薬学的に許容される塩は、酸と塩基の付加塩の両方を含む。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知である。
【0031】
「薬学的に許容される酸付加塩」という用語は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、ならびに有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロニン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびサリチル酸の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、複素環式、カルボン酸、およびスルホン酸のクラスから選択される有機酸で形成されるそれらの薬学的に許容される塩を指す。
【0032】
用語「薬学的に許容される塩基付加塩」は、有機塩基または無機塩基で形成された薬学的に許容される塩を示す。許容される無機塩基の例としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、およびアルミニウム塩が挙げられる。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、第一級、第二級および第三級アミンの塩、置換アミン、例えば、天然に存在する置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換レジン、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカフェイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルコサミン、テオブロミン、プリン、ピペリジン(piperizine)、ピペリジン、N-エチルピペリジン、およびポリアミンレジンが含まれる。
【0033】
用語「KDM1A阻害剤」または「KDM1Ai」は、互換的に使用され、本明細書で使用される場合、KDM1A活性を阻害することができる任意の化合物を意味する。KDM1A阻害活性を決定する方法は当該技術分野において周知である。好ましい実施形態では、KDM1A阻害剤は小分子である。KDM1A阻害剤の例は、本明細書の他の箇所に詳細に記載される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「小分子」とは、900ダルトン以下、好ましくは500ダルトン以下の分子量を有する有機化合物を指す。分子量は分子の質量であり、各構成元素の原子重量に、分子式内のその元素の原子数を掛けたものの合計として計算される。
【0035】
「KDM1A阻害剤を含む処置」とは、KDM1A阻害剤を組み込んだ治療または処置レジメンを意味し、単独の活性な医薬品成分(API)としてであるか、または他の抗がん剤と同様に1つ以上の追加のAPIと組み合わせているかを問わない。KDM1A阻害剤を含む上記処理は、典型的には、医薬組成物の形態である。KDM1A阻害剤を含む処理が、KDM1A阻害剤に加えて1つ以上のAPIを含む場合、それらは、すべてのAPIを組み込んだ単一の医薬組成物の形態で投与することができ、または他には、同じ経路もしくは異なる経路(例えば、一方が経口投与され得、他方が非経口投与され得る)によって投与することができ、同時にまたは連続的に投与することができる、各API(すなわち、KDM1A阻害剤および1つ以上の追加のAPI)のための個々の医薬組成物の形態で投与することができる。
【0036】
用語「医薬組成物」および「医薬製剤」は、互換的に使用され、哺乳動物、例えば、それを必要とするヒトに投与される1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに、治療有効量の活性な薬学的成分(例えば、KDM1A阻害剤)を含む組成物(例えば、混合物または溶液)を示す。
【0037】
「薬学的に許容される」という用語は、一般に安全であり、毒性がなく、生物学的または他の方法で望ましくないことはなく、獣医およびヒトの医薬使用に許容される医薬組成物の調製に有用な材料の属性を意味する。
【0038】
用語「薬学的に許容される賦形剤」、「薬学的に許容される担体」および「治療的に不活性な賦形剤」は、互換的に使用することができ、治療活性がなく、医薬製品の製剤化に使用される崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝剤、浸透圧剤、安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、担体、希釈剤または滑沢剤などの、投与される対象に対して無毒性である医薬組成物中の薬学的に許容される任意の成分を示す。
【0039】
用語「治療有効量」(または「有効量」)は、患者に投与された場合、(i)特定の疾患を処置もしくは予防し、(ii)疾患の1つ以上の症状を軽減し、改善し、もしくは除去し、または(iii)疾患の1つ以上の症状の発症を予防しもしくは遅延させる、本発明の化合物の量を示す。治療有効量は、化合物、処置される病状況、処置される疾患の重症度、患者の年齢および相対的な健康、投与経路および投与形態、担当医または獣医の判断、および他の要因に依存して変化する。
【0040】
疾患(例えば、SCLS)「を処置すること」またはその「処置」という用語は、疾患またはその1つ以上の症状の進行を逆転、軽減、または抑制することが含まれる。
「患者」または「対象」は、互換的に使用することができ、処置を必要とする哺乳動物を意味する。哺乳動物には、限定されないが、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)および実験動物(マウス、ラット、モルモットなど)が含まれる。好ましい実施形態では、患者はヒトである。患者として組み込まれることが意図されるのは、臨床研究試験に参加する任意の対象である。患者は、例えば、他の薬物および/または任意のKDM1A阻害剤で以前に処置されていている場合がある。一態様では、患者は、いずれのKDM1A阻害剤でも以前に処置されたことがない。患者は、他の薬物で、特に試料を得る時に処置され得るが、本発明の方法において使用するための試料を得る時には、いずれのKDM1A阻害剤でも処置されてはならない(すなわち、患者は、試料を得る時にKDM1A阻害剤と同時に処置されてはならない)。あるいは、バイオマーカーレベルが(残りの)KDM1A阻害剤によって、その期間内に調節され得る場合(例えば、バイオマーカーレベルがKDM1A阻害剤による以前の処置(またはKDM1A阻害剤の投与)の前のレベルに戻っていない場合)、患者は、試料を得る前の期間内に、いずれのKDM1A阻害剤でも処置されてはならない。例えば、患者は、試料を得る前に、2週間以内、より好ましくは1カ月以内に、いずれのKDM1A阻害剤でも処置されてはならない。後者は、バイオマーカーレベルが(残りの)KDM1A阻害剤によって依然として調節され得ることを回避することである。
【0041】
用語「バイオマーカー」または「マーカー」とは、本明細書で使用される場合、タンパク質またはポリヌクレオチドを指し、その発現または存在は、哺乳動物の組織もしくは細胞の内または上で、標準的な方法(または本明細書に開示される方法)によって検出することができ、KDM1A阻害剤を含む処置に対する哺乳動物の細胞または組織の感受性と関連する。本発明によるバイオマーカーは、ASCL1およびSOX2である。
【0042】
バイオマーカーのレベルを「測定する」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書中の他の箇所に記載されるような適切な検出の方法を使用して、試料中のバイオマーカーの量を実験的に決定することを指す。
【0043】
用語「閾値」とは、本明細書で使用される場合、KDM1A阻害剤処置に応答する可能性が高いSCLC患者対KDM1A阻害剤処置に応答しにくいSCLC患者などの、集団の2つのカテゴリー/サブセット間のフロンティアを定義する所定の値、直線またはより複雑なn次元の関数を指す。本発明による方法において、異なる閾値は、個々のバイオマーカーレベル(すなわち、各バイオマーカー、ASCL1およびSOX2は、それぞれの閾値を有する)に、または本明細書の他の箇所に記載されるような分類アルゴリズムの適用によって、バイオマーカーのレベルから導かれるスコアに適用することができる。当業者が理解するように、閾値は、異なるカテゴリーの試料間を最適に区別するために確立される。閾値は、当該技術分野において公知である方法に従って確立することができる。典型的には、閾値は、KDM1A阻害剤による処置に対して既知の感受性または耐性を有する試料の訓練セットを使用して、実験的または理論的に決定することができる。訓練試料は、例えば、SCLC細胞株、患者由来の異種移植片(PDX)、またはKDM1A阻害剤による処置に対して既知の感受性もしくは耐性を有するヒト臨床試料であり得る。閾値はまた、当業者によって認識されるように、既存の実験的および/または臨床的および/または規制的な要件に基づいて任意に選択することができる。優先的には、試験の機能およびベネフィット/リスクバランス(偽陽性および偽陰性の臨床的結果)に従って最適な感度および特異度を得るために、閾値が確立される。典型的には、添付の実施例に示されるように、最適な感度および特異度(したがって、閾値)は、実験データに基づく受信者動作特性(ROC)曲線を使用して決定することができる。一部の実施態様では、閾値(threshold)は、閾値(threshold value)である。一部の実施形態では、バイオマーカーの閾値は、KDM1A阻害剤を含む処置に対して感受性であるかまたは耐性である患者由来のSCLC細胞のうちの1つ以上の試料において測定されたASCL1およびSOX2レベルから誘導される。一部の実施形態では、閾値は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答したかまたは応答しなかった(ヒト)患者の1つ以上の試料において測定されたASCL1およびSOX2レベルに誘導される。一部の実施形態では、閾値は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答したかまたは応答しなかった患者由来の異種移植片モデルから得られた1つ以上の試料において測定されたASCL1およびSOX2レベルから誘導される。一部の実施形態では、閾値は、バイオマーカーのmRNAレベルから得られる。一部の実施形態では、閾値は、バイオマーカーのタンパク質レベルから得られる。
【0044】
用語「スコア」とは、本明細書で使用される場合、分類アルゴリズムによって試料中で測定されたバイオマーカーレベルから計算された出力を指す。スコアは、閾値と比較され、試料が由来する患者がKDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いかまたは低いかを決定するために使用される。例えば、スコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定され/患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される。
【0045】
「分類アルゴリズム」は、本明細書で使用される場合、試料についてのスコアを計算し、試料がどのカテゴリーに属するかを評価する(「分類する」)ために使用される、すなわち、閾値を超えた場合に使用される数学的関数である。分類アルゴリズムは、当該技術分野において周知である。分類アルゴリズムの例としては、線形分類器、Fisher線形判別、線形Boolean分類、ロジスティック回帰、ナイーブベイズ分類器、パーセプトロン、サポートベクトルマシン、最小二乗サポートベクトルマシン、二次分類器、カーネル推定、k-近傍、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、学習ベクトル量子化が挙げられる。1つまたは複数の分類アルゴリズムを組み込んだソフトウェアパッケージは、オンラインでの使用またはダウンロードのために容易に利用可能であり、例えば、DTREG、XLSTat、http://www.support-vector-machines.org/SVM_soft.htmlなどを含む。一部の実施形態では、分類アルゴリズムは、Boolean関数(真理関数)である。
【0046】
試料は、Boolean統合関数A AND Bを使用して分類することができ、AおよびBは、試料中の各バイオマーカー(ASCL1およびSOX2)のレベルが、そのバイオマーカーのそれぞれの閾値を超えるかどうかを評価する。Boolean統合関数は、典型的には、すべての基準が満たされる場合(例えば、試料中の各バイオマーカー(ASCL1およびSOX2)のレベルがバイオマーカーのそれぞれの閾値(複数可)を上回る/超える場合)、1(真)によって表され、または基準のうちの1つ(または両方)が満たされない場合(例えば、試料中の各バイオマーカー(ASCL1およびSOX2)の1つのレベルだけがバイオマーカーのそれぞれの閾値(複数可)を上回る/超えるか、またはバイオマーカーのいずれのレベルも上回らない/超えない場合)0(偽)によって表されるスコアを生じる。試料を分類するためにBooleanアルゴリズムによって生成されたスコアに適用される閾値は0であり、すなわち、この閾値を超える(すなわち、スコア>0である)試料は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する/KDM1A阻害剤を含む処置が有益である可能性が高いものとして分類される。
【0047】
一部の実施形態では、分類アルゴリズムは、サポートベクターマシン(SVM)である。SVMを使用して、空間における訓練データセットをマッピングし、試料データを2つのカテゴリー(例えば、KDM1Aiに対する感受性および耐性)に最適に分離し、したがって、閾値関数として作用するN次元超平面を構築することによって分類を行う。線形分類を行うことに加えて、SVMはカーネルトリックを使用して非線形分類を行うことができ、試料データを高次元特徴空間にマッピングする。次に、訓練されたSVMのスコアリング関数を使用して、新しいデータがその同じ空間にマッピングされ、超平面のどの側にそれらが降下するのかに基づいてカテゴリーに属することが予測される。分類アルゴリズム(含まれる閾値)の性能は、アルゴリズムによって予測された分類を実験値と比較し、真の陽性、偽陽性、真の陰性、および偽陰性、ならびに感度、特異度などを計算することによってさらに評価することができ、場合により、モデルパラメータを調整しおよび/または性能を最適化するために、KDM1Aiに対する公知の応答性/耐性の訓練試料を使用して、複数回の訓練に供することができる。
【0048】
用語「超える」とは、本明細書で使用される場合、以下を意味する:試験試料のバイオマーカーレベルまたはスコア(KDM1Aiに対する未知の感受性を有する)、例えば、KDM1Aiを含む処置を受けるために考慮されているSCLC患者由来の試料は、その試験試料のレベルまたはスコア(場合による)をそれぞれの閾値と比較して、KDM1Aiに対して感受性であることが公知である試料のカテゴリーにその試料を分類する場合の閾値を超えるかまたはそれと交わる。一部の実施形態では、閾値(threshold)は閾値(threshold value)であり、バイオマーカーレベルまたはスコアがそのそれぞれの閾値を上回る場合、バイオマーカーレベルまたはスコアは閾値(threshold)(閾値(threshold value))を超える。試料中のバイオマーカーまたはスコアのレベルと、バイオマーカーまたはスコアのそれぞれの閾値との比較は、思考によって、手動で行うことができ、またはコンピュータプログラムによって自動的に行うことができる。
【0049】
用語「試料」は、本発明による方法で使用される患者試料に関して本明細書で使用される場合、腫瘍試料(例えば、原発性または転移性SCLC病変のいずれかからの生検試料などの生検試料)、体液または患者由来細胞株、PDX試料(「PDX」とは「患者由来の異種移植片」、すなわち、マウスにおいて増殖させたヒト腫瘍)またはエキソソーム(複数可)であり得る。好ましくは、試料は、腫瘍細胞について富む/濃縮される。本発明による方法を行うために使用される患者由来の試料は、KDM1A阻害剤による処置を開始する前に得られるべきである(すなわち、KDM1A阻害剤による現行の処置がない期間、および/または、例えば、バイオマーカーレベルが、その期間内に(残りの)KDM1A阻害剤によって調節され得る場合は、KDM1A阻害剤による前回の処置(KDM1A阻害剤の投与)後の期間ではない期間に得られるべきである。例えば、本発明に従う方法に従って使用される患者由来の試料は、KDM1A阻害剤による前回の処置(またはKDM1A阻害剤の投与)後、2週間以内、好ましくは1カ月以内に得られるべきではない)。生検試料は、周知の技術によって得ることができ、新鮮であり得るかまたは、回収後の分取および保存技術(例えば、凍結、固定および/または包埋、例えば、ホルマリン固定、パラフィン包埋、新鮮スナップ冷凍、固定および凍結OCT包埋など)に供することができる。体液の試料は、周知の技術によって得ることができ、血液、痰、気管支肺胞洗浄液、またはSCLC細胞を含み得る任意の他の生体の分泌物もしくはその誘導体の試料を含む。分離された細胞は、遠心分離または細胞選別などの分離技術によって、体液または組織もしくは臓器から得ることができる。当然に、細胞試料は、試料中のマーカーのレベルを評価する前に、種々の周知の収集後調製および保存技術(例えば、核酸および/またはタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離など)に供することができる。好ましくは、バイオマーカーレベルが測定される試料は、SCLC細胞の存在またはSCLC細胞由来小胞(例えば、エキソソームなど)について富む/濃縮される。例えば、SCLC細胞は、文献(Chest.1992年8月;102巻(2号):372~4頁)に記載される方法を使用して痰から単離することができる。SCLC循環腫瘍細胞(CTC)は、文献(Peetersら、Br J Cancer 2013年4月2日;108巻(6号):1358~67頁;Hodgkinsonら、Nat Med.2014年8月;20巻(8号):897~903頁;Carterら、Nat Med.2017年1月;23巻(1号):114~119頁)に記載される方法によって血液から精製することができ、SCLC由来のエキソソームは、文献(Liら、Theranostics.2017年;7巻(3号):789~804頁;Sandfeld-Paulsenら、J Thorac Oncol.2016年10月;11巻(10号):1701~10頁)に記載される種々の方法によって血液から精製することができる。バイオマーカーレベルはまた、SCLC細胞に富む試料からの空間的に定義された領域において分析することができ、例えば、この分野において使用される標準的な方法を使用して解剖病理学者によって決定することができる。
【0050】
用語「に対する応答性」、「に応答性である」、「に応答する」、「に対する感受性」、「に感受性である」および似た表現は、KDM1A阻害剤を含む処置の文脈において、SCLC(または試料、SCLC細胞株など)を有する患者がKDM1A阻害剤、すなわち、KDM1A阻害剤を含む処置に対して陽性応答を示すことを意味する。より単純化した形態では、用語「KDM1A阻害剤を含む処置に応答する」などは、「KDM1A阻害剤に応答する」、「KDM1A阻害に応答する」などと表現することができる。例えば、「KDM1A阻害剤を含む処置に対する陽性応答」または「KDM1A阻害剤を含む処置が有益である」は、疾患SCLCまたはその1つ以上の症状の進行を逆転し、軽減し、または阻害することができるかまたはそれを含むことができる。用語「応答する可能性が高い」とは、本明細書で使用される場合、「より応答性である」または単に「応答性である」を意味することができる。
【0051】
「患者を同定する」または「患者を選択する」という語句は、互換的に使用することができ、本明細書で使用される場合、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する(またはそれが有益である)可能性が高いか、または応答する(またはそれが有益である)可能性が低い患者を同定するかまたは選択するために、患者の試料中のバイオメーカレベルに関連して生成された情報またはデータを使用することを指す。使用もしくは生成される情報またはデータは、任意の形態であり、書面、口頭または電子的であり得る。本明細書に提供される方法および使用には、結果、情報またはデータを患者、および/または患者の処置に関与するかもしくは患者の処置を担当する任意の者(複数可)に通信することを含み得、処置はKDM1A阻害剤を含む。一部の実施形態では、生成された情報またはデータを使用することは、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、計算装置、分析装置ユニット、またはそれらの組み合わせによって行われる。さらなる一部の実施形態では、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、実験室または医療専門家によって行われる。一部の実施形態では、情報またはデータは、バイオマーカーレベルと閾値の比較を含む。一部の実施形態では、情報またはデータは、患者がKDM1A阻害剤を含む処置に応答する(またはそれが有益である)可能性が高いかまたは低いという指示を含む。
【0052】
「患者の応答性を予測する」という語句は、本明細書で使用される場合、患者がKDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性を評価するために、患者の試料中のバイオメーカレベルに関連して生成された情報またはデータを使用することを指す。使用もしくは生成される情報またはデータは、任意の形態、書面、口頭または電子的であり得る。一部の実施形態では、生成された情報またはデータを使用することは、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、計算装置、分析装置ユニット、またはそれらの組み合わせによって行われる。さらなる一部の実施形態では、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、実験室または医療専門家によって行われる。一部の実施形態では、情報またはデータは、バイオマーカーレベルと閾値の比較を含む。一部の実施形態では、情報またはデータは、患者がKDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いかまたは低いという指示を含む。
【0053】
「処置を選択する」という語句は、本明細書で使用される場合、患者の処置(治療)を同定するかまたは選択するために、患者の試料中のバイオマーカーレベルに関連して生成された情報またはデータを使用することを指す。一部の実施形態では、処置は、KDM1A阻害剤を含み得る。使用もしくは生成される情報またはデータは、任意の形態、書面、口頭または電子的であり得る。一部の実施形態では、生成された情報またはデータを使用することは、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、計算装置、分析装置ユニットまたはそれらの組み合わせによって行われる。さらなる一部の実施形態では、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、実験室または医療専門家によって行われる。一部の実施形態では、情報またはデータは、バイオマーカーレベルと閾値の比較を含む。一部の実施形態では、情報またはデータは、KDM1A阻害剤を含む処置が患者に適している(すなわち、患者が上記処置に応答する可能性が高い)という指示を含む。
【0054】
「処置を推奨する」という語句は、本明細書で使用される場合、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いかまたは低いものとして同定されたかまたは選択された患者のための、KDM1A阻害剤を含む処置を提案または選択するために、バイオマーカーレベルに関連して生成された情報またはデータを使用することを指す。使用もしくは生成される情報またはデータは、任意の形態、書面、口頭または電子的であり得る。一部の実施形態では、生成された情報またはデータを使用することには、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせが含まれる。一部の実施形態では、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、計算装置、分析装置ユニットまたはそれらの組み合わせによって行われる。さらなる一部の実施形態では、通信、提示、報告、保存、送信、転送、供給、伝送、分配、またはそれらの組み合わせは、実験室または医療専門家によって行われる。一部の実施形態では、情報またはデータは、バイオマーカーレベルと閾値の比較を含む。一部の実施形態では、情報またはデータは、KDM1A阻害剤を含む処置が患者に適しているという指示を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「キット」は、本明細書に記載されるように、ASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤を含む任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)であり、本発明の方法を実施するためのユニットとして、製造が促進されるか、分布されるか、または販売される。
【0056】
本明細書で使用される場合、ASCL1またはSOX2のレベルを測定するための「薬剤」には、バイオマーカーレベルを測定するための分野において典型的に使用される任意の試薬が含まれ、限定されないが、ASCL1またはSOX2タンパク質を特異的に認識する抗体、または本発明によるバイオマーカーを特異的に検出するためのASCL1またはSOX2ポリヌクレオチドとハイブリダイズするプローブおよび/もしくはプライマー、およびバイオマーカーレベルを測定するための方法に関連して本明細書の他の箇所でより詳細に記載される任意の他の試薬が含まれる。
【0057】
本発明は、KDM1A阻害剤による処置に応答する可能性が高く、したがって、KDM1A阻害剤を含む処置に最も適した、SCLCを有する患者を同定するための手段および方法、ならびにKDM1A阻害剤を用いて患者を処置するための治療方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、ASCL1およびSOX2のレベルが、KDM1A阻害剤による処置に応答する可能性を予測する方法において、バイオマーカー(例えば、予測バイオマーカー)として使用され得るという発見に基づく。本明細書および添付の実施例に記載されるように、本発明者らは、SCLC細胞株中の高レベルのASCL1とSOX2の両方が、KDM1A阻害剤療法に対するSCLCの応答性(感受性)と相関することを見出されている。実施例2、3および4、ならびに図1~3に示されるように、高レベルのASCL1とSOX2の両方を発現するSCLC細胞株は、通常、KDM1A阻害剤に対して応答性(感受性)であるが、低レベルのASCL1およびSOX2の一方または両方を示すSCLC細胞株は、通常、KDM1A阻害処理に対して耐性である。したがって、ASCL1およびSOX2レベルは、KDM1A阻害剤による処置に対してSCLC患者を層別化するために使用することができ、KDM1A阻害剤による処置に応答する可能性が高い患者と、KDM1A阻害に応答性である可能性が低い患者とを識別する。ASLC1およびSOX2を使用する本発明の方法は、添付の実施例でより詳細に示されるように、使用されるバイオマーカーの数の低減に鑑みて顕著であるように、高い感度および特異度を有する、KDM1A阻害に対するSCLCの応答性を予測することができる。本発明による方法は、SCLC細胞株またはSCLC PDX試料のような患者由来試料のいずれかを使用して、実施例5に示されるように、それらのmRNAとタンパク質発現レベルとの間に良好な相関が示されているため、mRNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれかとしてバイオマーカーを測定することができる。これは、がん患者から最も容易に入手できる試料は典型的には固定された腫瘍生検であり、標準的な生検試料固定手順がRNAを断片化し、低減させることが公知であるため、タンパク質レベル分析に適しているため、本発明による方法を臨床現場、特に病院で使用するために特に有利にする。
【0058】
前述したように、本発明の方法は、ASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む。これらのマーカー自体は、当該技術分野において公知であり、また、以下に記載される。
【0059】
ASCL1およびSOX2の公開データベースエントリー:
ヒトASCL1およびSOX2のDNAおよびタンパク質配列は、以前に報告されている。以下に列挙されるGenBank番号(NCBI-GenBank Flat File Release 225.0、2018年4月15日)およびUniProtKB/Swiss-Prot番号(Knowledgebase Release 2018_04、2018年4月25日)を参照されたい。各々は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。このような配列は、当業者に公知である方法によりASCL1およびSOX2のレベルを測定するための手順を設計するために使用することができる。
【0060】
【表1】
【0061】
ヒトASCL1およびSOX2の例示的なヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、本明細書の配列番号1~4に示される。以下の表では、マーカーおよびそれぞれの配列を割り当てる。
【0062】
【表2】
【0063】
一態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、さらに、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。したがって、一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含み、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLC患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される方法を提供する。
【0064】
別の態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得る、SCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、さらに、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される。したがって、一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得る、SCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含み、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される方法を特徴とする。一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得る、SCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される方法を特徴とする。
【0065】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答性を予測する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答性である可能性が高いものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、さらに、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答性である可能性が高いものとして同定される。したがって、一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答性を予測する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含み、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答性である可能性が高いものとして同定される方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答性を予測する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答性である可能性が高いものとして同定される方法を提供する。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する、SCLCを有する患者の可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。したがって、一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する、SCLCを有する患者の可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含み、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する、SCLCを有する患者の可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される方法を提供する。
【0067】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する患者におけるSCLCの可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、SCLCを有する患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、SCLCは、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、KDM1A阻害剤を含む処理に応答する可能性が高いものとして同定される。一部の実施形態では、本方法は、さらに、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、SCLCは、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。したがって、一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置にSCLCが応答する可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、SCLCを有する患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含み、SCLCは、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置にSCLCが応答する可能性を評価する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、SCLCを有する患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成することを含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、SCLCは、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される方法を提供する。
【0068】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者の処置を選択する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者に対して選択された処置がKDM1A阻害剤を含むという推奨を提供することを含む。一部の実施形態では、本方法は、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成し、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者に対して選択された処置がKDM1A阻害剤を含むという推奨を提供することをさらに含む。したがって、一部の実施形態では、本発明は、さらに、SCLCを有する患者の処置を選択する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者に対して選択された処置がKDM1A阻害剤を含むという推奨を提供することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、さらに、SCLCを有する患者の処置を選択する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成し、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者に対して選択された処置がKDM1A阻害剤を含むという推奨を提供することを含む方法を提供する。
【0069】
本発明による上述の方法はすべて、試料中の本発明のバイオマーカー(ASCL1およびSOX2)のレベルを測定し、上記バイオマーカーレベルまたは誘導されたスコア(上記レベルに基づく)対閾値を評価することを含む。典型的には、各バイオマーカー(すなわち、ASCL1およびSOX2)は、その閾値(本明細書の他の箇所に記載されるように確立され得る)を有し、ASCL1およびSOX2の(測定された)レベルは、各々、そのそれぞれの閾値に対して評価され、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルがその閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤(または、該当する場合、患者は、KDM1A阻害剤などを含む処置が有益であり得るものとして同定される)を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される。あるいは、試料中のASCL1およびSOX2の(測定された)レベルを用いて、分類アルゴリズムを使用して、試料についてのスコアを生成することができる;このような場合、スコアの閾値が適用され(本明細書の他の箇所に記載されるように確立され得る)、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される(または、該当する場合、患者は、KDM1A阻害剤などを含む処置が有益であり得るものとして同定される)。
【0070】
前述の態様のいずれかの一部の実施形態では、本方法は、患者由来の試料を得るかまたは提供する工程をさらに含む。得る/提供する工程は、バイオマーカーのレベルの測定の前(および試料が得られる/提供される患者へのKDM1A阻害剤を含む任意の処置の投与の前)である。
【0071】
前述の態様のいずれかの一部の実施形態では、本方法は、患者がKDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を推奨するか、処方するかまたは投与することをさらに含む。
【0072】
前述の態様のいずれかの一部の実施形態では、本方法は、患者がKDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が低いものとして同定された場合に、患者がKDM1A阻害剤で処置されないことを推奨することを場合によりさらに含むことができる。
【0073】
本発明による方法では、ASCL1およびSOX2のレベルは、mRNAレベルまたはタンパク質レベルのいずれかとして、本明細書に記載される方法を含む、mRNAまたはタンパク質レベルを測定するための当該技術分野において公知である任意の方法を用いて決定することができる。
【0074】
本発明による方法において、試料由来のmRNAは、バイオマーカーのレベルを決定するために直接使用することができる。本発明による方法では、レベルはハイブリダイゼーションによって決定することができる。本発明による方法において、当該技術分野において公知である方法を用いて、RNAをcDNA(相補性DNA)コピーに形質転換することができる。検出方法としては、限定されないが、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)、遺伝子発現分析、RNA配列決定、ナノ細孔配列決定、マイクロアレイ分析、遺伝子発現チップ分析、(インサイチュ)ハイブリダイゼーション技術、RNAスコープ、およびクロマトグラフィー、ならびに当該技術分野において公知である任意の他の技術、例えば、Ralph Rapley、「The Nucleic Acid Protocols Handbook」、2000年公開、ISBN:978-0-89603-459-4に記載されるものが含まれ得る。RNAを検出する方法としては、限定されないが、PCR、リアルタイムPCR、デジタルPCR、ハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析、および当該技術分野において公知である任意の他の技術、例えば、Lelandら、「Handbook of Molecular and cellular Methods in Biology and Medicine」、2011年公開、ISBN 9781420069389に記載されるものが含まれ得る。
【0075】
本発明による方法において、本方法は、バイオマーカーのタンパク質発現レベルを検出することを含むことができる。タンパク質の検出、量子化および比較のための任意の適切な方法、例えば、John M.Walker、「The Protein Protocols Handbook」、2009年公開、ISBN 978-1-59745-198-7に記載されるものを使用してもよい。バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、限定されないが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射定量測定法、インサイチュイムノアッセイ、アルファLISAイムノアッセイ、タンパク質近接アッセイ、近接ライゲーション技術(例えば、タンパク質qPCR)、ウエスタンブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫蛍光アッセイ、フローサイトメトリー、免疫組織化学(IHC)、免疫電気泳動、タンパク質免疫染色、共焦点顕微鏡法を含む抗体または抗体断片によるタンパク質またはタンパク質複合体の認識を含むイムノアッセイによって;あるいは抗体もしくは抗体断片が、特定の方法で、化学プローブ、アプタマー、受容体、相互作用するタンパク質、またはバイオマーカータンパク質を認識する他のいずれかの生体分子によって置換される同様の方法によって;あるいはフェルスター/蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、示差走査蛍光分析(DSF)、マイクロ流体、分光分析、質量分析、酵素アッセイ、表面プラズモン共鳴、またはそれらの組み合わせによって決定することができる。イムノアッセイは、均一アッセイまたは不均一アッセイであり得る。均一アッセイでは、免疫学的反応は、通常、特異的抗体、標識された分析物、および目的の試料を伴う。標識から生じるシグナルは、標識された分析物への抗体の結合に際して、直接的または間接的に修飾される。免疫学的反応とその程度の検出の両方を均一な溶液中で行うことができる。使用され得る免疫化学的標識は、フリーラジカル、放射性同位元素、蛍光色素、酵素、バクテリオファージ、または補酵素を含み得る。不均一アッセイアプローチでは、試薬は、通常、試料、抗体、および検出可能なシグナルを生成する手段である。抗体は、ビーズ、プレートまたはスライドなどの支持体上に固定され得、液相中に抗原を含有する疑いのある検体と接触され得る。次に、支持体は、液相から分離され、支持相または液相のいずれかが、このようなシグナルを生成するための手段を使用する検出可能なシグナルについて調べられる。シグナルは、試料中の分析物の存在に関連する。検出可能なシグナルを生成する手段には、放射性標識、蛍光標識、または酵素標識の使用が含まれる。
【0076】
本発明による方法において、目的の対象のバイオマーカーに対する抗体を使用することができる。本発明による方法において、検出するためのキットを使用することができる。このような抗体およびキットは、EMD Millipore、生化学的アッセイについてはR&D Systems、Thermo Scientific Pierce Antibody、Novus Biologicals、Aviva Systems Biology、Abnova Corporation、AbD Serotecまたは他社の商業的供給源から入手可能である。あるいは、抗体はまた、任意の公知の方法によって合成することができる。用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体およびキメラ抗体を含むことが意図される。抗体は、受動結合などの公知の技術に従って、適切な固体支持体(例えば、プロテインAまたはタンパク質Gアガロースなどのビーズ、ラテックスもしくはポリスチレンなどの材料から形成されるミクロスフェア、プレート、スライドまたはウェル)にコンジュゲートされ得る。本明細書に記載される抗体は、同様に、放射性標識(例えば、35S)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、Alexa、緑色蛍光タンパク質、ローダミン)、680nMでの照射後に一重項酸素を放出し、その後にユーロピウムまたはセリビウムを含むアクセプタービーズによる光の吸収後に発光を誘発することができるビーズを含むフタロシアニン、およびオリゴヌクレオチド標識などのシグナルを作り出すことができる検出可能な標識または基にコンジュゲートされ得る。標識は、直接的または間接的にシグナルを生成することができる。生成されたシグナルは、公知の技術に従って、例えば、蛍光、放射活性、または発光を含むことができる。
【0077】
抗体は、分析されるタンパク質バイオマーカー、例えば、アプタマー、アフィマー、またはケモプローブに対して高い親和性および選択性を有する代替のタンパク質捕捉剤によって置換され得る。
【0078】
一部の実施形態では、バイオマーカータンパク質レベルを測定する場合、バイオマーカーのレベルは、SCLC腫瘍細胞の一部、例えば、生検の免疫蛍光分析において、腫瘍細胞の核内で評価することができる。
【0079】
バイオマーカーのレベルは、この分野において使用される任意の形態のmRNA発現またはタンパク質発現測定で表すことができ、生データまたは処理されたデータ、すなわち、バックグラウンド減算、正規化もしくは他の修正、または他の数学的操作、もしくはこの分野において典型的に使用される変換に供される生データであることができる。例えば、マイクロアレイハイブリダイゼーションによって測定される場合、バイオマーカーレベルは、試料のハイブリダイゼーションシグナル強度値、Log2(試料のハイブリダイゼーション強度値)、またはLog2(試料のハイブリダイゼーションシグナル強度値/参照試料のハイブリダイゼーションシグナル強度値)によって表すことができる。適切な参照試料の例は、異種移植片またはPDXモデルから得られたASCL1およびSOX2の高発現レベルを有する患者由来の腫瘍試料、またはSCLC細胞ペレットである。ハイブリダイゼーションシグナル値は、単一色または2色ハイブリダイゼーションを使用して得ることができる。例えば、qRT-PCRによって測定される場合、バイオマーカーレベルは、交点PCR-サイクル(Cp)値(増幅関連蛍光が特異的な検出の閾値レベルに到達するのに必要なサイクル数を表す)によって、ΔC=C-Cp,reference geneによって、2-Cp値または2-ΔCp値によって表すことができる。例えば、RNA配列決定によって測定される場合、バイオマーカーレベルは、RPM(Reads Per Million)、RPKM(Reads Per Kilobase Million)、FPKM(Fragments Per Kilobase Million)、またはTPM(Transcripts Per Million)値によって表すことができる。例えば、ウエスタンブロットによって測定される場合、バイオマーカーレベルは、画像分析後に対応するバンドの積分密度(A.U)として、生の積分密度としてまたはタンパク質含有量により正規化された、および/または参照試料に対する比として表すことができる。例えば、免疫染色によって測定される場合、バイオマーカーレベルは、画像分析後の核シグナルの積分密度(A.U)として、生の積分密度(A.U)/面積単位(画素またはμm)、または積分密度/核として、または参照試料に対する比として表すことができる。例えば、ELISAにより測定される場合、バイオマーカーレベルは、R.L.U(相対光量単位)または吸光度単位として、生もしくはバックグラウンドで補正されるか、または総タンパク質含量により正規化されるか、および/または参照試料に対する比として表すことができる。
【0080】
本発明による方法のいずれかの一部の実施形態では、バイオマーカーレベル(すなわち、ASCL1レベルおよびSOX2レベル)はmRNA発現レベルである。好ましくは、mRNA発現レベルはqRT-PCRによって測定される。
【0081】
本発明による方法のいずれかの一部の実施形態では、バイオマーカーレベルはタンパク質発現レベルである。好ましくは、タンパク質発現レベルは蛍光免疫組織化学法によって測定される。
【0082】
一部の実施形態では、免疫蛍光染色におけるバイオマーカー発現レベルは、染色強度レベルに基づいて、それぞれ3、2、1および0の値で高、中、低または検出不能として視覚的に分類される。中レベルおよび高レベル(値2および3)の試料は「陽性」とみなされ(すなわち、それぞれのバイオマーカーの閾値を超えている)、一方、検出不能なレベルまたは低レベル(値0および1)の試料は「陰性」とみなされる(すなわち、それぞれのバイオマーカーの閾値を超えていない)。試料が両方のバイオマーカーに対して「陽性」であるとみなされる場合(すなわち、試料中のASCL1とSOX2の両方のレベルは、各々、レベル2または3として分類される場合)に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される/患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される。
【0083】
あるいは、一部の実施形態では、免疫蛍光染色画像におけるバイオマーカー発現レベルを定量化することができる。DNA色素、例えば、DAPI染色は、蛍光定量を用いて核を局在化するために使用することができる。核におけるSOX2およびASCL1の発現は、免疫蛍光定量を用いて分析することができる。バイオマーカーおよびDAPI染色からの個々の画像は、画像ソフトウェア、例えば、ImageJを用いて分析することができる。シグナルは、バックグラウンド減算によって得ることができ、参照(キャリブレータ)試料に対して正規化され得る。適切なキャリブレータ試料は、両方のバイオマーカー、例えば、NCI-H1417由来の異種移植片試料の高い均一な核発現を有する試料である。正規化された定量値は、キャリブレータ試料に対する%または比として表すことができる。各バイオマーカーの閾値は、キャリブレータ試料のシグナルの画分として確立することができ、使用した陰性対照試料(複数可)(例えば、正常な肺生検、または両方のバイオマーカーの発現が低いかもしくは検出不能である異種移植片試料であり得る)の(平均)シグナルよりも高いように選択される。好ましくは、閾値は、少なくとも陰性対照試料の平均シグナルに1SD、2SDまたは3SDを加えたものであり、SDは標準偏差を意味する。
【0084】
本発明による方法および使用の一部の実施形態では、「試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合」などの用語は、「試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが対照と比較して増加した場合」を意味し得る。この文脈において、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが対照と比較して増加した場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される/患者は、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される。用語「対照」または「参照」は、本明細書において互換的に使用される。「対照」(例えば、「対照値」)または「参照」(例えば、「参照値」)の非限定的な例は、1つ以上の健常な個体(複数可)/対象(複数可)由来の試料または試料プールにおける、それぞれASCL1およびSOX2のレベルであり得る。健康な個体/対象は、例えば、本明細書に定義されるSCLCに罹患していない個体/対象、特に、個体/対象から試料を得る時点でSCLCに罹患していない者であり得る。あるいは、健康な個体/対象は、例えば、ASCL1およびSOX2の各レベルの増加に関連する疾患または障害に罹患していない個体/対象であり得る。好ましくは、健康な個体/対象はヒトである。「対照」(例えば、「対照値」)または「参照」(例えば、「参照値」)の別の非限定的な例は、「非応答者」由来の試料または試料プールにおける、それぞれASCL1およびSOX2のレベルであり得、例えば、SCLCに罹患し、KDM1A阻害剤に応答しないことが公知である1つ以上の患者であり得る。「非応答者」対照の別の例は、(a)細胞株(複数可)/細胞(複数可)/組織(複数可)であり、インビトロ、エクスビボまたは(患者由来)異種移植片試験においてKDM1A阻害剤に対して応答を示さない。「対照」の別の非限定的な例は、「内部標準」であり、例えば、精製または合成により生成されたタンパク質および/またはペプチド、またはそれらの混合物、または対応する核酸であり、各タンパク質/ペプチド(または対応する核酸)の量は、上記される「非応答者」対照を用いることによって測定される。特に、この「内部標準」は、本明細書に記載および定義されるように、タンパク質(複数可)(または対応する核酸)ASCL1およびSOX2を含有することができる。「対照」(例えば、「対照値」)または「参照」(例えば、「参照値」)の非限定的な例は、例えば、試料が、患者がSCLCに罹患する前に、患者がSCLCがんに罹患する傾向がある(またはそのリスクがある)前に得られた場合、または試料が、患者が以前のSCLCから(完全に)回復していた場合に得られた場合に、本明細書において同定されるべき患者由来の試料中のそれぞれASCL1およびSOX2のレベルであり得る。
【0085】
前述の態様のいずれかの一部の実施形態では、試料は、SCLC生検、好ましくは、SCLC細胞に富むSCLC生検である。
好ましくは、本発明の方法のいずれにおいても、患者はヒト患者である
本明細書において、上記(診断)方法がインビトロ方法であることが好ましい。「インビトロ」とは、本明細書で使用される場合、KDM1A阻害剤などを含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法などの、上記される本発明の方法が、インビボではなく、すなわち、直接的に患者上ではないが、生きているヒト(または他の哺乳動物)の外部で、患者から得られ、患者から分離/単離された(すなわち、インビボでの位置から除去された)試料上で行われることを意味する。
【0086】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法におけるASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0087】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価する方法におけるASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0088】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法において、ASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤の使用を提供する。
【0089】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対するSCLCを有する患者の応答の可能性を評価する方法において、ASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤の使用を提供する。
【0090】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定するための診断薬の製造のためのASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0091】
さらなる態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価するための診断薬の製造のためのASCL1およびSOX2の使用を提供する。
【0092】
別の態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定するためのキットであって、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤、および場合により使用説明書を含むキットを提供する。
【0093】
別の態様では、本発明は、KDM1A阻害剤を含む処置に対するSCLCを有する患者の応答の可能性を評価するためのキットであって、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤、および場合により使用説明書を含むキットを提供する。
【0094】
上記の方法を用いることにより、応答の機会が高い、すなわち、KDM1Aiを含む処置に応答する可能性が高いかまたはそれが有益である可能性が高い、SCLCを有する患者のサブグループを同定することが可能である。本発明はまた、そのように同定されたSCLC患者を処置するための治療方法に関する。
【0095】
したがって、さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者を処置する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者が、前述の態様のいずれかによる方法を使用して、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0096】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者を処置する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして患者を同定し、応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を投与することを含む方法を特徴とする。
【0097】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者を処置する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定し、これらのレベルを使用して、試料についてのスコアを生成し、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者は、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定され、応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を投与することを含む方法を特徴とする。
【0098】
さらなる態様では、本発明は、SCLCを有する患者の処置における使用のためのKDM1A阻害剤であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者は、前述の態様のいずれかによる方法を使用して、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定されているKDM1A阻害剤を提供する。
【0099】
前述の態様のいずれかの一部の実施形態では、方法は、患者由来の試料を得るかまたは提供する工程をさらに含む。
好ましくは、本発明による治療方法および使用のいずれにおいても、患者はヒト患者である。
【0100】
バイオマーカーレベル、試料タイプなどを測定する方法に関する他の箇所の開示も、同様に、上記の処置方法および関連する治療用途に適用可能である。
本発明に従って使用することができるKDM1A阻害剤は、当該技術分野において現在公知であるか、または将来報告され得る任意のKDM1A阻害剤を含む。好ましくは、KDM1A阻害剤は小分子である。不可逆性と可逆性KDM1A阻害薬の両方が報告されている。不可逆性KDM1A阻害剤は、KDM1A活性部位内のFAD補因子に共有結合することによりそれらの阻害活性を発揮し、典型的には、2-(ヘテロ)アリールシクロプロピルアミノ部分などの2-シクリル-シクロプロピルアミノ部分に基づく。KDM1Aの可逆性阻害剤はまた開示されている。好ましくは、KDM1A阻害剤は、細胞において活性であるべきである。KDM1A阻害剤の細胞活性は、例えば、SCLC細胞生存性アッセイ(例えば、本明細書の実施例1に記載されるアッセイ、またはMohammadら、2015年、前掲に記載されるアッセイ)または急性骨髄性白血病細胞株分化アッセイ(例えば、Lynchら、Anal Biochem.2013年11月1日:442巻(1号):104~6頁.doi:10.1016/j.ab.2013.07.032に記載されるアッセイ)のようなKDM1A阻害剤のための十分に確立されたインビトロ細胞アッセイを用いて決定することができる。
【0101】
本発明に従って使用することができるKDM1A阻害剤の例としては、限定されないが、国際公開第2010/043721号、国際公開第2010/084160号、国際公開第2011/035941号、国際公開第2011/042217号、国際公開第2011/131697号、国際公開第2012/013727号、国際公開第2012/013728号、国際公開第2012/045883号、国際公開第2013/057320号、国際公開第2013/057322号、国際公開第2010/143582号、国際公開第2011/022489号、国際公開第2011/131576号、国際公開第2012/034116号、国際公開第2012/135113号、国際公開第2013/022047号、国際公開第2013/025805号、国際公開第2014/058071号、国際公開第2014/084298号、国際公開第2014/086790号、国際公開第2014/164867号、国際公開第2014/205213号、国際公開第2015/021128号、国際公開第2015/031564号、国際公開第2007/021839号、国際公開第2008/127734号、国際公開第2014/164867号、国際公開第2015/089192号、国際公開第2015/123408号、国際公開第2015/123424号、国際公開第2015/123437号、国際公開第2015/123465号、国際公開第2015/156417号、国際公開第2015/181380号、国際公開第2016/123387号、国際公開第2016/130952号、国際公開第2016/172496号、国際公開第2016/177656号、国際公開第2017/027678号、国際公開第2012/071469号、国際公開第2013/033688号、国際公開第2014/085613号、国際公開第2015/120281号、国際公開第2015/134973号、国際公開第2015/168466号、国際公開第2015/200843号、国際公開第2016/003917号、国際公開第2016/004105号、国際公開第2016/007722号、国際公開第2016/007727号、国際公開第2016/007731号、国際公開第2016/007736号、国際公開第2016/034946号、国際公開第2016/037005号、国際公開第2016/161282号、国際公開第2016172496号、国際公開第2017/004519号、国際公開第2017/027678号、国際公開第2017/079476号、国際公開第2017/079670号、国際公開第2017/090756号、国際公開第2017/109061号、国際公開第2017/116558号、国際公開第2017/114497号、国際公開第2017/149463号、国際公開第2017/157322号、国際公開第2017/195216号、国際公開第2017/198780号、国際公開第2017/215464号、国際公開第2018/081342号、国際公開第2018/081343号、米国特許出願公開第2010-0324147号、米国特許出願公開第2015-0065434号、米国特許出願公開第2017-0283397号、中国特許出願公開第106045862号、中国特許出願公開第104119280号、中国特許出願公開第103961340号、中国特許出願公開第103893163号、中国特許出願公開第103319466号、中国特許出願公開第103054869号、中国特許出願公開第105985265号、中国特許出願公開第106432248号、中国特許出願公開第106478639号、中国特許出願公開第106831489号、中国特許出願公開第106928235号、中国特許出願公開第107033148号、中国特許出願公開第107174584号、中国特許出願公開第107176927号、中国特許出願公開第107474011号、中国特許出願公開第107501169号、および中国特許出願公開第107936022号に開示されるもの、ならびに以下のものの任意の光学活性立体異性体、またはその任意の薬学的に許容される塩を含む、
【0102】
【化1-1】
【0103】
【化1-2】
【0104】
【化1-3】
【0105】
が挙げられる。
特に好ましいKDM1A阻害剤は、(トランス)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン[CAS登録番号1431304-21-0]またはその薬学的に許容される塩、より好ましくは、(トランス)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンビス-塩酸塩[CAS登録番号1431303-72-8]である。化合物(トランス)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンは、(1r,4S)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンとしても命名することができ、ORY-1001またはIadademstatとして公知であり、下記に示される化学構造を有する。
【0106】
【化2】
【0107】
ORY-1001は、例えば、国際公開第2013/057322号に開示されており、その中の実施例5を参照されたい。患者への投与のためのORY-1001を含む医薬製剤は、当業者に公知である方法、例えば、国際公開第2013/057322号に記載される方法に従って調製することができる。
【0108】
KDM1A阻害剤は、単独のAPIとして、すなわち、単剤療法として投与することができ、またはSCLCの処置に使用される他の抗がん剤などの1つ以上の追加のAPIの組み合わせで投与することができる。
【0109】
KDM1A阻害剤(またはKDM1A阻害剤を含む処置)は、このように直接的な治療に使用するために投与することができるが、典型的には、活性医薬成分としての化合物を1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体とともに含む医薬組成物の形態で投与される。本明細書におけるKDM1A阻害剤への任意の言及は、このような化合物、すなわち、非塩形態(例えば、遊離塩基として)またはそのいずれかの薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の形態での対応する化合物への言及、ならびに上記化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤もしくは担体を含む医薬組成物への言及を含む。
【0110】
KDM1A阻害剤は、意図された目的を達成する任意の手段によって投与することができる。例としては、経口または非経口(例えば、静脈内または皮下)経路による投与が挙げられる。
【0111】
経口送達のために、化合物は、結合剤(例えば、ゼラチン、セルロース、トラガカントゴム)、賦形剤(例えば、デンプン、ラクトース)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素)、崩壊剤(例えば、アルギン酸塩、プリモゲル、およびトウモロコシデンプン)、および甘味剤または香味剤(例えば、グルコース、スクロース、サッカリン、サリチル酸メチル、およびペパーミント)などの薬学的に許容される担体を含む製剤中に組み込むことができる。製剤は、例えば、封入ゼラチンカプセル剤または圧縮錠剤の形態で経口的に送達することができる。カプセル剤および錠剤は、任意の従来技術によって調製することができる。カプセル剤および錠剤はまた、カプセル剤および錠剤の香味、味、色、および形状を修飾るために、当該技術分野において公知である種々の被覆剤で被覆することができる。さらに、脂肪油などの液体担体はまたカプセルに含めることができる。
【0112】
適切な経口製剤は、懸濁剤、シロップ剤、ガム剤、ウエハー(wafwer)、エリキシル剤などの形態であり得る。所望であれば、特殊な形態の風味、味、色、および形状を修飾するための従来の薬剤も含めることができる。さらに、飲み込むことができない患者における経腸栄養チューブによる便利な投与のために、活性化合物は、オリーブ油、コーン油およびベニバナ油などの許容可能な脂溶性植物油ビヒクルに溶解することができる。
【0113】
化合物はまた、液剤もしくは懸濁剤の形態で、または使用前に、液剤もしくは懸濁剤の形態に変換可能である凍結乾燥形態で非経口的に投与することができる。このような製剤では、無菌の水および生理食塩水緩衝液などの希釈剤または薬学的に許容される担体を使用することができる。他の従来の溶媒、pH緩衝液、安定剤、抗菌剤、界面活性剤、および抗酸化剤をすべて含めることができる。例えば、有用な成分としては、塩化ナトリウム、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩緩衝液、グリセリン、デキストロース、固定油、メチルパラベン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、重硫酸ナトリウム、ベンジルアルコール、アスコルビン酸などが挙げられる。非経口製剤は、バイアルおよびアンプルなどの任意の従来の容器に保存することができる。
【0114】
経口組成物および非経口組成物のような医薬組成物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、単位投薬形態に製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「単位投薬形態」とは、対象への投与のための単位投薬量として適切な物理的に離散した単位を指し、各単位は、1つ以上の適切な薬学的担体と関連して、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性成分を含有する。
【0115】
治療用途において、医薬組成物は、医学分野における当業者によって決定されるように、処置される疾患に適した方法で投与されるべきである。適切な用量ならびに適切な投与期間および頻度は、とりわけ、患者の状態、疾患の重症度、投与される特定のKDM1A阻害剤、投与方法、および主治医の判断などの要因によって決定される。一般に、適切な用量および投与レジメンは、治療有益性、例えば、より頻繁な完全寛解もしくは部分寛解、またはより長い無病生存および/または全生存、または症状の重症度の軽減、または臨床医が指摘するような、他の任意の明白に識別可能な改善などの改善された臨床転帰を提供するのに十分な量の医薬組成物を提供する。有効用量は、一般に、インビトロでまたは動物モデル試験系に由来する用量-応答曲線のような実験モデルを用いて評価または外挿することができる。当業者は、上記の要因に基づいて、適切な用法および処置レジメンを決定できることができる。
【0116】
本発明の医薬組成物は、投与のための説明書とともに、容器、パックまたはディスペンサ中に含まれ得る。
【実施例
【0117】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供される。それらは、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単にそれらを代表するものとみなされるべきである。
【0118】
実施例1:KDM1A阻害剤に対する感受性および耐性の細胞株の分類
バイオマーカー同定のために、7つのSCLC細胞株を、KDM1A阻害剤ORY-1001(本明細書の他の箇所に記載される)での4日間または10日間のいずれか処置後に行われた生存性アッセイの結果に基づいて、KDM1A阻害剤処理に対するそれらの応答について分類した。4日間の生存性アッセイのために、SCLC細胞株は、ORY-1001(最大濃度:50μM;18連続の1:2希釈を試験した)を補足した、各細胞株の提供者により推奨された最適化培地の最終体積40μL中で384ウェルプレートに播種された。37℃で5%CO調節された雰囲気中で4日間インキュベートした後、製造業者プロトコール(Promega)に従って、CellTiterGlo(登録商標)アッセイを用いて細胞生存性を評価した。EC50値は、Microsoft Excelソフトウェアを用いて算出され、未処理細胞(100%増殖)およびCellTiterGlo(登録商標)試薬なし(100%増殖阻害)に対して正規化した。ORY-1001に10日間曝露した後の生存性の定量は、96ウェルプレートフォーマット(NCI-H187細胞株については最大濃度1μM、100nM)で行われた。細胞は、最初に、100μLの培地(RPMI-1640 10%FBS 2mMグルタミン、ただし、HITES培地中で培養したNCI-H1876細胞株を除き、4.5mMグルタミン、0.005mg/mLインスリン、0.01mg/mLトランスフェリン、30nMセレン酸ナトリウム、10nMヒドロコルチゾン、10nMベータ-エストラジオールをDMEM:F12 5%FBSに加えて調製した)に播種され、5%CO調節された雰囲気中で37℃でインキュベートした。6日目に、さらに100μLのORY-1001含有培地を添加した。さらに4日後、Alamar Blue(登録商標)アッセイ(Thermo Fisher Scientific)を用いて残存生存率を測定した。バックグラウンド減算後、ビヒクル処理された細胞に対して正規化を行った。GraphPad Prismソフトウェアを用いて非線形モデルを適合させた後、EC50値を算出した。
【0119】
ORY-1001による処理後の増殖阻害が25%以上であり、EC50が10nM未満である場合、細胞株はKDM1A阻害に感受性であるものとして分類された。ここで試験された条件下では感受性ではないが、他のアッセイではORY-1001に感受性があることが報告されているため、SHP77を部分的に感受性であるものとして分類した。得られた結果を以下の表1に示す。表で報告されているのは、50%の増殖低減を達成した濃度(EC50)、および試験された最高用量で達成された増殖抑制の最大パーセンテージ(最大応答%)である。
【0120】
【表3】
【0121】
実施例2.KDM1A阻害剤に対する応答性のバイオマーカーとしてのASCL1およびSOX2の同定
KDM1A阻害剤処理に感受性および耐性であるSCLC細胞株を識別できる遺伝子を同定するために、KDM1Ai感受性、1つのKDM1Ai部分的感受性、および2つのKDM1Ai耐性であるものとして同定された4つのSCLC細胞株について、RNASeq分析を行った。KDM1Aiに対するそれらの応答性および分類に関する詳細は、上記の実施例1において提供される。
【0122】
遺伝子発現分析用の細胞ペレット
細胞をフラスコ内で連続6日間増殖させた。アッセイの最終日に、細胞をFalconチューブに回収し、計数し、次に4分間、1200rpmで遠心分離した。上清を捨て、1mLのPBSに細胞を懸濁し、エッペンドルフに試料に移し、4℃にてエッペンドルフ遠心分離機で5分間、3000rpmで遠心分離した。最後に上清を捨て、ペレットを-80℃で凍結させた。
【0123】
RNA配列決定
QIAGEN miRNeasyミニキットを用いて検体から総RNAを単離した。RNA分離は、QIAgen RNeasyミニキットを用いて行われた。RNeasyミニキットは、シリカゲル系メンブランの選択的結合特性とマイクロスピン技術の速度を組み合わせている。簡単に説明すると、組織をホモジナイズし、Lysing Matrix Dチューブ(MP Biomedicals LLC)またはボルテックスを用いて、RLT緩衝液(ベータ-メルカプトエタノールを含む)中で溶解した。エタノールをホモジネートに添加して、200ヌクレオチド(nt)より長いすべての総RNA分子について適切な結合条件を提供した。試料をRNeasyミニカラムに適用し、総RNAをメンブランに結合させ、汚染物質を効率的に洗い流した。次に、高品質RNAを、ヌクレアーゼを含まない水で溶出させた。得られたRNAを定量し、Agilent Bioanalyzerを用いて完全性を評価した。
【0124】
ライブラリー生成はIllumina TruSeq Stranded mRNAライブラリー調製を用いて行われた。ライブラリーのクラスター生成および配列決定はIllumina HiSeq上で行われた。総RNA試料は、TruSeq Stranded mRNA試料調製キット(Illumina)を用いてcDNAライブラリーに変換された。100ngの総RNAから開始して、ポリアデニル化RNA(主にmRNA)を選択し、オリゴdT結合磁性ビーズを用いて精製した。このmRNAを化学的に断片化し、逆転写酵素およびランダム六量体プライマーを用いて一本鎖cDNAに変換し、アクチノマイシンDを加えて第二鎖のDNA依存性合成を抑制した。二本鎖cDNAは、RNA鋳型を除去し、dTTPの代わりにdUTPの存在下で第二鎖を合成することによって作製された。単一のA塩基を3’末端に加えて、単一のT塩基オーバーハングを含む配列決定アダプターの連結を容易にした。アダプター連結されたcDNAをポリメラーゼ連鎖反応により増幅し、配列調製ライブラリー(sequence-ready library)の量を増加させた。この増幅の間に、ポリメラーゼはU塩基に遭遇した場合に停止し、第二鎖を不十分な鋳型にする。したがって、増幅された材料は、鋳型として第一鎖を使用し、それによって鎖情報を保存した。最終cDNAライブラリーをサイズ分布について分析し、Agilent Bioanalyzer(DNA 1000キット)を用いて、qPCR(KAPA Library Quant Kit)により定量し、次に、配列決定の準備のために2nMに正規化した。標準クラスター生成キットv5は、cDNAライブラリーをフローセル表面に結合させた。cBotは付着したcDNA構築物を等温増幅し、それぞれ約1000コピーのクローンクラスターを作製した。DNA配列は、TruSeq SBS Kitを介した合成による配列決定技術を用いて直接決定した。
【0125】
以下の品質管理指標を適用した:ライブラリー調製を進めるために、試料は、入力RNAが100ngであり、RIN値が7.0以上である。各試料ごとに、少なくとも3000万の50bpの対合末端リードが生成された。リボソームRNA、phiX、ホモポリマーリピート、およびグロビンRNAなど種々のオフターゲット配列を減算した後、少なくとも2,850万のリードが送達された。
【0126】
Illumina Hiseqソフトウェアは、各レーンに装填されたクラスター(DNA断片)の総数、通過するシークエンシング品質フィルターの(過負荷およびシークエンシングケミストリーによるエラーを識別する)パーセント、各配列リードの各塩基のphred品質スコア、各配列決定サイクルの全体的な平均phredスコア、および全体的なエラーパーセント(参照ゲノムへのアラインメントに基づく)を報告する。各RNA-seq試料について、ミトコンドリアRNAおよびリボソームRNAを含むリードのパーセンテージを計算する。FASTQCパッケージは、追加のQCメトリック(塩基分布、配列の重複、過剰に表された配列、および濃縮されたkmer)およびグラフィカルな要約を提供するために使用される。GSNAP、およびRNASeqデータの推奨オプションを用いて、生のリードをヒトゲノム(hg19)に対して整列させた。ゲノム配列に加えて、GSNAPは、Ensembl v73に基づくヒトスプライスジャンクションおよび転写物のデータベースを与えられる。次に、結果のSAMファイルは、Samtoolsを使用して選別されたBAMファイルに変換される。遺伝子発現値は、Mortazaviら(Nat Methods(2008年)5巻(7号):621~8頁)に従ってRPKM値として、およびリードカウントして計算した。正規化されたリードカウントは、RパッケージDESeq2を用いて得られた。データは3つの独立した実験のLog2(RPKM)の平均として報告される。RPKMは、キロベースパーミリオンあたりのリード値を表す。
【0127】
結果
RNASeqにより測定したSCLC細胞株におけるASCL1およびSOX2の遺伝子発現を下記の表2に示す。表は、Log2(RPKM)の平均値(Av.)と標準偏差(SD)を示す。示されたカラーコードは、遺伝子発現レベルに基づいており、色が濃いほど、バイオマーカーの発現が高い。比較のために、GAPDH発現は、この参照遺伝子の試料にわたって安定な発現を示すために並行して報告される。
【0128】
【表4】
【0129】
これらの結果は、図1においてグラフで表され、KDM1A阻害に対して感受性であるか、部分的に感受性であるかまたは耐性であるSCLC細胞株について上記されるように、RNA-seqによって測定されたASCL1(Y軸)およびSOX2(X軸)の発現を表すドットプロットである。
【0130】
これらの細胞株について生成されたRNASeqデータに基づいて、すべてのORY-1001感受性および部分的に感受性の細胞株が高レベルのASCL1および中~高レベルのSOX2を発現することが同定されたが、ORY-1001処理に耐性のSCLC細胞株においては、表2および図1に示されるように、ASCL1またはSOX2のいずれかが非常に低いレベル(Log2(RPKM)≦0)で検出された。したがって、ASCL1およびSOX2は、ORY-1001などのKDM1A阻害剤による処置に感受性(すなわち応答性)であるか、または感受性(応答性)である可能性が高いSCLC細胞、またはSCLCを有する対象を同定するためのバイオマーカーとして使用され得る。
【0131】
実施例3.qRT-PCRを用いたASCL1およびSOX2の検証
次に、実施例2において同定されたKDM1A阻害剤に対して応答性のバイオマーカーASCL1およびSOX2は、実施例1および2に記載されたSCLC細胞株の同じパネル上でTaqman qRT-PCT分析により検証され、1つがKDM1Ai処理に対して感受性であるものとして同定され(DMS53)、1つが部分的に感受性であるものとして同定された(NCIH526)、2つの追加のSCLC細胞株を含む。
【0132】
qRT-PCRによる遺伝子発現分析
RNeasyミニキットを用いて総RNAを抽出し、High Capacity RNA-cDNA Master Mix(ThermoFisher Scientific #4390779)を用いて、標準手順に従ってcDNAを得た。qRT-PCRは、LightCycler 480 Probes Master(PNT-L-034;Roche #04887301001)を用い、ThermoFisher Scientificからの予め設計され、予め最適化されたTaqMan遺伝子発現アッセイを用いて行われた。qRT-PCRは、Lightcycler 480 Instrument II(Roche;PNT-L-035)を用いて3重にして行われた。qRT-PCRによるCp値の分析は、以下のTaqmanプライマー/プローブセットを用いて3重にして行われた:
-ASCL1:Hs04187546_g1(Life Technologies;アンプリコン長81bp、エクソン1-2境界を標的とする、RefSeq NM_004316.3、配列番号1を参照されたい)
-SOX2:Hs01053049_s1(Life Technologies;アンプリコン長91 bp、エクソン1-1境界を標的とする、RefSeq NM_003106.3、配列番号3を参照されたい)
-GAPDH:Hs02758991_g1(Life Technologies;アンプリコン長93bp、エクソン6-7境界を標的とする、RefSeq NM_001256799.2)
結果
qRT-PCRにより測定されたSCLC細胞株のこのパネルにおけるASCL1およびSOX2遺伝子発現を表3に示す。表はCp値を報告する。Exp.R:実験複製;Av:平均;n.d.:検出されない。各実験の複製値は、3回の技術的複製の平均値である。試料あたりの同じRNA量をqRT-PCRにより分析した。比較として、GAPDH参照遺伝子の平均Cp発現が報告され、それらは全試料の間で23~26Cpの範囲であった(表3を参照されたい)。
【0133】
【表5】
【0134】
表4は、qRT-PCRにより測定したSCLC細胞株におけるASCL1およびSOX2についてのすべての実験的複製の平均Cp値を示す。示されたカラーコードは、遺伝子発現レベルに基づいており、色が濃いほど、バイオマーカーの発現が高い。
【0135】
【表6】
【0136】
表3および表4に示されるように、KDM1Ai耐性細胞におけるASCL1またはSOX2の発現は、全く検出されなかったか(Cp値>40)、または35を超える絶対Cp値を有し、非常に低い発現を示した。他方、すべてのKDM1Ai感受性SCLC細胞株はASCL1とSOX2の両方を発現し、したがって、実施例2に記載されるRNASeqデータを用いて所見を確認した。部分的に感受性である細胞株のうち、一方はASCL1とSOX2の両方の高レベルを発現することが確認されたが、他方はASCL1およびSOX2の発現が非常に低かった。
【0137】
これらの結果はまた、図2においてグラフで示されており、KDM1A阻害に対して感受性であるか、部分的に感受性であるかまたは耐性である、上記で同定されたSCLC細胞株について、qRT-PCRによって測定されたASCL1(Y軸)およびSOX2(X軸)の遺伝子発現(絶対Cp値)を表すドットプロットである。プロット値は、表3に示されるように、独立した実験の平均である。細胞株の1つはSOX2の発現について40を超えるCp値を示し、これは図2中、括弧でドットを示すことによって示される。
【0138】
したがって、本明細書に記載される結果は、KDM1A阻害剤処理に感受性であるSCLCが、ASCL1とSOX2の両方の全体的な高発現を示す一方で、耐性SCLCは、ASCL1およびSOX2の一方または両方の低発現を有することをさらに確認する。したがって、ASCL1およびSOX2レベルは、KDM1A阻害剤療法に応答する可能性が増加している、SCLC細胞またはSCLCを有する対象を同定するための予測バイオマーカーとして用いることができる。
【0139】
実施例4.SCLC細胞株の拡大パネルにおけるKDM1A阻害剤に対する応答の予測されるバイオマーカーの評価
KDM1A阻害に対する応答性のバイオマーカーとしてのASCL1およびSOX2のさらなるバイオマーカー検証のために、より大きなデータセットを構築し、分析した。ORY-1001を用いて得られたSCLC生存性アッセイデータは、Mohammadら、Cancer Cell 2015年、28巻:57~69頁(具体的には、参照により本明細書に組み込まれる図S2A-Bを参照されたい)に記載されるように、2つの追加のKDM1A阻害剤GSK2879552およびGSK-LSD1に対するSCLC細胞株の応答に関する公衆に入手可能なデータと統合され、次に、より大きなセットのSCLC細胞株を、KDM1A阻害剤による処理に対して感受性または耐性であるものとして分類するために使用された。このSCLC細胞株の拡大パネルを下記の表5に示す。GSK2879552およびGSK-LSD1の化学構造は文献に提供されている。
【0140】
【表7】
【0141】
KDM1A阻害に対するこれらの細胞株の感受性はアッセイに依存し、他のアッセイ条件では異なる結果が得られていることから、ある種の細胞株を部分的に感受性であるものとして分類した。ここで試験された条件下では感受性であるが、他のアッセイではORY-1001に耐性であることが報告されているため、NCIH526細胞株を部分的に感受性であるものとして分類した。ORY-1001に対する一部の応答がインビトロで観察されたが、最大増殖阻害は非常に低かった(10%)ため、NCIH2081を部分的に感受性であるものとして分類した。
【0142】
次に、ASCL1およびSOX2の発現は、Broad Institute(Cancer Cell Line Encyclopedia;https://portals.broadinstitute.org/ccle;CCLE_Expression_Entrez_2012-09-29.gct.txt)によって監修された細胞株トランスクリプトームデータセットを用いて、これらのKDM1Ai感受性および耐性の細胞において評価された。CCLEデータベース(Affymetrixマイクロアレイデータ;RMA値)におけるような上記SCLC細胞株におけるASCL1、SOX2、およびGAPDHの遺伝子発現を下記の表6に示す。両側ステューデントt検定のp値は、Microsoft Office Excelを用いて算出した。
【0143】
【表8】
【0144】
ASCL1およびSOX2は、KDM1Aiによる処理に対して感受性および耐性である細胞株間で差次的に発現された(表6)。詳細には、ASCL1の平均発現は、感受性および耐性の細胞株についてそれぞれ12.25および7.19の正規化プローブ強度単位であった(p値=3.0E-05)。同じ細胞株において、平均正規化プローブ強度値は、SOX2について8.96(感受性群)および5.75(耐性群)(p値=2.0E-03)であった。GAPDH参照遺伝子の発現は、全試料で類似していた(感受性細胞株について14.60平均正規化プローブ強度単位、耐性細胞株について14.56平均正規化プローブ強度単位、p値=6.1E-01)。
【0145】
実施例2および3に記載された結果と一致して、KDM1Aiに対して感受性であるの8つのSCLC細胞株のうち7つは、ASCL1とSOX2の両方を高度に発現し、一方、ほとんどすべての耐性SCLC細胞株は、ASCL1およびSOX2の一方または両方について低レベルを発現していた。これは、図3においてさらに強調され、KDM1A阻害に対して感受性であるか、部分的に感受性であるか、または耐性であるSCLC細胞株のこの拡大パネルにおいて、ASCL1およびSOX2のマイクロアレイAffymetrix分析(RMA値)によって測定された遺伝子発現を表すドットプロットを示す。図3に示されるように、KDM1A阻害剤に感受性である細胞株において、ASCL1とSOX2の両方の高レベルを有する細胞株の間で明瞭な富化が観察され(およびその反対)、KDM1A阻害剤に耐性である細胞株における明瞭な富化が、ASCL1およびSOX2の一方または両方の低発現を有する細胞株の間で存在する。
【0146】
したがって、本明細書の実施例4に記載された結果は、ORY-1001のようなKDM1A阻害剤による処置に応答性である可能性が高い対象を同定/選択するために、これら2つのバイオマーカーを組み合わせて使用することをさらに支持する。
【0147】
感受性および耐性の細胞株の遺伝子発現値を、GraphPad Prism 5.01ソフトウェア(分析から除外された「部分的な感受性」細胞株)により、受信者動作特性曲線(ROC曲線)を用いて、選択された各バイオマーカーについて分析した。ROC曲線は、様々な閾値設定で偽陽性率(FPR)に対して真陽性率(TPR)をプロットすることによって作成される。図4は、KDM1A阻害剤に対して感受性および耐性のSCLC細胞を識別するためのASCL1(図4A)およびSOX2(図4B)の発現に関するROC曲線を示す。各バイオマーカーのROC曲線に基づき、選択性と特異性(最尤比)の間の最良のトレードオフについてそれぞれの閾値レベルが報告される。表6の発現データセットに対して閾値レベル≧8.935を有するASCL1バイオマーカーのみを用いると、KDM1A感受性および耐性の細胞株は、感度68.42%、特異度100%で識別することができる。所定の発現データセットの閾値レベルが≧8.030であるSOX2バイオマーカーのみを用いると、KDM1A感受性および耐性の細胞株を感度84.21%および特異度87.50%で識別することができる。
【0148】
次に、異なるアルゴリズムを用いて、表6に記載されるSCLC細胞株(分析から除外された「部分的に感受性の」細胞株)のパネル上でASCL1およびSOX2の組み合わせに基づいて、KDM1A阻害に対する応答に関する予測を行った。
【0149】
第一に、上記で示されたASCL1およびSOX2についての個々の閾値を超えるバイオマーカーの同時コンプライアンスに基づいて、Boolean統合モデル分類アルゴリズムを構築した(図4AおよびB);アルゴリズムが下記の表7の第1行に示された条件を満たす場合、スコア「1」が得られ、そうでなければスコア「0」が得られた。次に、細胞株は、スコアが閾値を超えた場合、すなわち、>0(この場合、1に等しい)であった場合は、KDM1Aiに応答する可能性が高いものとして分類され、スコアが0に等しかった場合は、KDM1Aiに応答する可能性が低いものとして分類された(以下の表7参照)。最後に、Boolean統合分類アルゴリズムの性能を評価した。感度(真陽性率;TPRとも呼ばれる)、特異度(真陰性率;TNRとも呼ばれる)、陽性予測値(PPV、精度とも呼ばれる)、陰性予測値(NPV)は、TPRとTNR、およびPPVとNPVの幾何平均とともに計算された。感度は、真陽性と陽性の総数の間の比として計算された。同様に、特異度は、真陰性の数と陰性の総数間の比として得られた。陽性予測値(PPV;精度とも呼ばれる)および陰性予測値(NPV)は、以下の式:
PPV=TP/(TP+FP)
NPV=TN/(TN+FN)
TPは真の陽性数、TNは真の陰性数、FPは偽陽性数、FNは偽陰性数を表す
を用いて計算された。
【0150】
【表9】
【0151】
ASCL1/SOX2シグネチャは、高い感度(88%)、特異度(100%)、精度(100%)および陰性予測値(95%)を示す。
あるいは、DTREG予測モデリングソフトウェアのサポートベクターマシン(SVM)モデリングを用いて、バイオマーカーを使用して試料を分類するために使用できるアルゴリズムを開発した。特に、KDM1A阻害剤に対する応答性の予測バイオマーカーとしてのASCL1とSOX2の組み合わせを評価するために、表8の上段に反映された異なるカーネル関数、多項式および放射基底関数(RBF)とそれぞれのパラメータ(C:コストパラメータ;ガンマ:カーネル係数)を有する2つの異なるアルゴリズムを用いた。これらのアルゴリズムによって決定されたスコアおよび閾値(関数)を用いて、細胞株を、示されたように、KDM1Aiに応答する可能性が高いかまたは応答する可能性が低いものとして分類し、試料を分類するためのSVMモデルの性能を表8の下部に示し、これは、ASCL1およびSOX2発現の組み合わせを用いて感受性および耐性を予測するために生成されたSVMモデルについての特異度、感度および混同行列を反映している。
【0152】
【表10】
【0153】
このアルゴリズムを使用すると、ASCL1/SOX2組み合わせを採用するSVMアルゴリズムは、多項式とRBFフィッティングの両方を使用して高い感度(88%)と高い特異度(≧95%)を有する。
【0154】
あるいは、DTREG予測モデリングソフトウェアの線形回帰を用いて、表6のデータセット上の選択されたバイオマーカーの組み合わせの関数において、KDM1Aiに応答する可能性が高いかまたは可能性が低い試料を分類するアルゴリズムを開発した(表9)。このアルゴリズムは、各試料についてのスコアを計算し、各試料についてのスコアを閾値と比較することによって、KDM1Aiに対する感受性または耐性として細胞株を分類する。ASCL1/SOX2バイオマーカーの組み合わせに基づいて作製された線形回帰モデルの性能は、KDM1Aiに対する感受性を予測する感度が87.5%であり、特異度が94.74%である(表9)。
【0155】
下記の表9は、ASCL1およびSOX2発現の組み合わせを用いて感受性および耐性を予測するために生成された線形回帰モデルのパラメータ、特異度、感度および混同行列を示す。C:Costパラメータ、ガンマ:それぞれの関数のカーネル係数。
【0156】
【表11】
【0157】
全体として、ASCL1およびSOX2発現レベルを組み合わせた異なる分類アルゴリズム(Boolean統合モデル、SVMモデルおよび線形モデル)の使用は、この2マーカーシグネチャがKDM1A阻害剤に対するSCLC応答を予測する際に最適な性能を有することを確認する。
【0158】
実施例5.ウエスタンブロット(WB)および蛍光免疫組織化学(IF)によるASCL1およびSOX2 mRNAならびにタンパク質発現レベルの相関
バイオマーカーmRNAとタンパク質レベルとの相関を試験するために、ASCL1およびSOX2は、これらのバイオマーカーの高、中または低/検出不可能な発現のいずれかを有するSCLC細胞株、ならびに同じ切片化されたSCLC細胞ペレットおよび公知のmRNAレベルを有するSCLC患者由来異種移植片(PDX)の蛍光免疫組織化学によってWBにより分析された。
【0159】
5.1 WBによるSCLC細胞株におけるSOX2およびASCL1分析
ヒト小細胞肺がん(SCLC)細胞株NCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446、NCI-H526を、2mMグルタミンと10%FBS(Sigma)を補足したRPMI培地(Sigma)中で、湿った雰囲気において37℃および5%COで増殖させた。500万個の指数増殖細胞のペレットを生成し、プロテアーゼ阻害剤(Sigma)を補足したRIPA緩衝液(Sigma)中の総タンパク質抽出に使用し、続いて12%PAGE(Life Technologies)中のWBによるASCL1(Abcam、ab213151)およびSOX2(Abcam、ab97959)レベルを決定した。タンパク質をiBlot System(Life Technologies)を用いて転写し、二次抗体インキュベーションおよび洗浄後、ECL Prime(Amersham)を用いてブロットを発色させ、G:BOX Chemi XRQ(Syngene)で撮影した。転写ブロットのポンソーS染色を装填対照として用いた。WBシグナルの定量は、Image Jを用いて行った。各WBバンドの積分密度は、ポンソー染色からの対応する全タンパク質積分密度によって正規化し、NCI-H146シグナルに対して作製した。
【0160】
結果
ASCL1およびSOX2タンパク質レベルは、qRT-PCR(実施例3)により決定されたように、これらのバイオマーカーの高、中または低/検出不可能な発現のいずれかを有するSCLC細胞株においてWBにより分析され、Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)(実施例4を参照されたい)からの公衆に利用可能なAffymetrix mRNA発現データにより確認された。得られたWBを図5Aに示し、NCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446およびNCI-H526細胞株におけるASCL1およびSOX2タンパク質レベルの対応する定量化を図5Bに示す。NCI-H446ではASCL1が検出されず、NCI-H526細胞ではASCL1およびSOX2のいずれも検出されなかったが、NCI-H146細胞ではそれらの発現が最も高く、使用された抗体のmRNA発現レベルと特異性の両方が確認されたことから、ASCL1およびSOX2のWBによるタンパク質発現レベルは、それらのそれぞれのmRNAレベルと相関していた。SOX2およびASCL1のタンパク質とmRNA(CCLE Affymetrix)レベル間の相関をそれぞれ図6Aおよび6Bにプロットした;良好な相関が観察され、R値はSOX2では0.8957であり、ASCL1では0.9910であった。
【0161】
5.2 SCLC細胞ペレットに対する蛍光免疫組織化学によるSOX2およびASCL1分析
1000万個の指数増殖性細胞(NCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446およびNCI-H526)を、10%ホルマリン(Sigma)中で1時間,室温で固定し、1×PBS(Sigma)中で洗浄し、ペレット化し、1.3%アガロース(Sigma)中に含め、その後,脱水し、ミクロトーム切断のためにパラフィン中に含めた。スーパーフロストスライド上に5μm切片を置き、HistoChoice除去剤(Sigma)中で脱パラフィン化し、5分間で2回、減少エタノールシリーズ(2×100%で5分間、90%で1分間、70%で1分間、30%で1分間、2×流水)を通して水和した。次に、切片は、沸騰pH6クエン酸緩衝液1×(Sigma)中で20分間、熱誘導抗原回収に供された。室温で20分間放置した後、スライドをPBS-Triton X100 0.1%(0.1%PBS-Tx)中で洗浄し、0,1%PBS-Tx中の5%ヤギ血清中で1時間、室温にてブロックした。ブロッキング後、過剰な液体を毛細管により紙ティシュで除去し、切片を0.1%PBS-Tx中の1%ヤギ血清の希釈した一次抗体(SOX2については1:500希釈、Abcam ab 97959;ASCL1については1:100希釈、Abcam ab 213151)とともに、および対応する陰性対照(0.1%PBS-Tx中の1%ヤギ血清のみ)とともに一晩4℃でインキュベートした。0.1%PBS-Tx中で各5分間、3回洗浄した後、スライドをヤギ抗ウサギAlexa Fluor 546二次抗体(1:1500希釈、Life Technologies A11010)とともに1時間、室温にて、遮光してインキュベートした。各々5分間の0.1%PBS-Tx中で5回洗浄した後、過剰な液体を毛細管により紙ティシュで除去し、試料をDAPI(Sigma)を補足したFluoroshieldマウント培地中にマウントした。DAPIは4’、6-ジアミジノ-2-フェニルインドールであり、DNA中のA-Tに富む領域に強く結合し、核を染色するために使用される蛍光色素である。DAPI染色核からのシグナルを用いて、核特異的SOX2およびASCL1シグナルの共局在を同定および分析した(下記参照)。画像は、接続したAxioCamカメラ(Zeiss)を用いてZeiss Axio蛍光顕微鏡で撮影された。
【0162】
IF強度の定量化
IF画像を処理し、imageJソフトウェアで定量化した。SOX2およびASCL1核特異的シグナルの定量化について、核で覆われた領域を包囲するマスクをDAPI染色画像から作製し、次に対応するIF画像に転写し、それにより、積分密度を核のみによって規定される選択された領域で決定した。
【0163】
結果
蛍光免疫組織化学において使用するための抗体を検証し、ASCL1およびSOX2タンパク質とmRNAレベルとの間の相関をさらに確認するために、ホルマリン固定されたパラフィン包埋切片化されたSCLC細胞ペレット中のこれらのバイオマーカーのレベルを調べるために、WBに使用されるのと同じ抗体を蛍光免疫組織化学において試験した。SOX2、ASCL1および陰性対照の蛍光免疫組織化学を図7に示す(図7A-SOX2、図7B-ASCL1、図7C-二次抗体のみを用いた陰性対照(AF546))。以前に示されたデータと一致して、SOX2レベルはNCI-H146において高く、NCI-H510Aにおいて中程度であり、NCI-H446細胞株で低かったが、NCI-H526細胞では核特異的発現は検出されなかった。一方、ASCL1レベルはNCI-H146において高く、NCI-H510Aにおいて中程度であり、NCI-H446およびNCI-H526細胞では認められなかった/検出されなかった。発現は、二次抗体のみ(AF546:Alexa Fluor 546)の陰性対照では観察されなかった。染色強度に基づいて、以下の染色強度レベルが確立され、以下の実施例において、これから採用される:高レベルは「レベル3」、中レベルは「レベル2」、低レベルは「レベル1」、シグナルの欠如は「レベル0」として定義される。
【0164】
下記の表10は、NCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446およびNCI-H526細胞におけるCCLE Affymetrixからの対応する強度レベルおよびRMA値とともに、図7に示される免疫蛍光画像における核バイオマーカーシグナルの定量化を示す。シグナルはバックグラウンド修正され、NCI-H146シグナル(100%に相当する)に対して表された。
【0165】
【表12】
【0166】
核シグナルの定量化は、分析された細胞株について、蛍光免疫組織化学により検出されたASCL1およびSOX2タンパク質レベルと、対応するmRNAレベルとの間に非常に統計的に有意な相関があることを明らかにした(図8A-SOX2、および図8B-ASCL1を参照されたい)。対応するR値は、SOX2およびASCL1についてそれぞれ0.8710および0.9594である。
【0167】
上記の実施例5.1および5.2に示されるように、ASCL1およびSOX2 mRNAとタンパク質レベルとの間に良好な相関関係が得られたことから、ASCL1およびSOX2は、それらのmRNAまたはタンパク質レベルのいずれかを測定する、KDM1A阻害に対する応答性の予測バイオマーカーとして用いることができることが確認された。
【0168】
5.3 患者由来のSCLC異種移植片(PDX)組織マイクロアレイ(TMA)上の蛍光免疫組織化学によるSOX2およびASCL1分析
ヒト試料におけるSOX2とASCL1のmRNAとタンパク質レベルの間の相関をさらに確認するために、SOX2およびASCL1 IFを、利用可能なSOX2およびASCL1 RNASeqデータを有する患者由来のSCLC異種移植組織マイクロアレイ上で行った。
【0169】
患者由来のSCLC異種移植片の44例を含む組織マイクロアレイの切片は、Molecular Response(現在のクラウン・バイオサイエンス)およびhttps://oncoexpress.crownbio.com/OncoExpress/index.aspxからダウンロードしたそれらの対応する入手可能なRNASeqデータから購入された。
【0170】
TMAは、HistoChoice洗浄剤(Sigma)で5分間、2回脱パラフィンし、減少エタノールシリーズ(2×100%で5分間、90%で1分間、70%で1分間、30%で1分間、2×流水)で水和した。次に、切片は、沸騰pH6クエン酸緩衝液1×(Sigma)中で20分間、熱誘導抗原回収に供された。室温で20分間放置した後、スライドをPBS-Triton X100 0.1%(0.1%PBS-Tx)中で洗浄し、0,1%PBS-Tx中の5%ヤギ血清中で1時間、室温にてブロックした。ブロッキング後、過剰な液体を毛細管により紙ティシュで除去し、切片を0.1%PBS-Tx中の1%ヤギ血清の希釈した一次抗体(SOX2については1:500希釈、Abcam ab 97959;ASCL1については1:100希釈、Abcam ab 213151)とともに、および対応する陰性対照(0.1%PBS-Tx中の1%ヤギ血清のみ)とともに一晩4℃でインキュベートした。0.1%PBS-Tx中で各5分間、3回洗浄した後、スライドをヤギ抗ウサギAlexa Fluor 546二次抗体(1:1500希釈、Life Technologies A11010)とともに1時間、室温にて、遮光してインキュベートした。各々5分間の0.1%PBS-Tx中で5回洗浄した後、過剰な液体を毛細管により紙ティシュで除去し、試料をDAPI(Sigma)を補足したFluoroshieldマウント培地中にマウントした。画像は、接続したAxioCamカメラ(Zeiss)を用いてZeiss Axio蛍光顕微鏡で撮影された。
【0171】
PDX IF強度の分類
IF染色はZeiss Axio蛍光顕微鏡を用いて分析され、腫瘍領域は核形態学によって定義された。腫瘍領域内の核特異的シグナル強度は、実施例5.2に記載されるように、4つのレベルに視覚的に分類された:
レベル 強度
3 高
2 中
1 低
0 なし
SCLC細胞ペレットおよびそれらに対応する公知のmRNA発現に関して行われた蛍光免疫組織化学において得られた強度に基づいて(実施例5.2)、ASCL1とSOX2の両方について1の個々のバイオマーカー閾値を超える発現レベル(すなわち、中~高発現レベル2および3)を有する試料、または代替的に処方された、閾値を超える(>0)(すなわち、個々のバイオマーカーについての両方の条件を同時に満たす)ASCL1/SOX2 Boolean統合スコアを有する試料は、KDM1Aiに応答する可能性が高い患者に由来するものとして分類された。図9では、スコアが閾値を超えている試料は「陽性」と示され、閾値を超えていない試料は「陰性」と示される。
【0172】
統計
SOX2およびASCL1のRNASeq(LogFPKM)およびIF(視覚スコア)データセット間の95%信頼区間を有する両側スピアマン相関検定をGraphPad Prismソフトウェアを用いて行った。
【0173】
結果
SOX2およびASCL1 IFは、利用可能なSOX2およびASCL1 RNASeqデータを用いて、患者由来SCLC異種移植組織マイクロアレイ上で行われた。すべての試料を蛍光顕微鏡で視覚的に分析し、上記で説明したように、腫瘍領域内で観察された核シグナルに従って、核形態によって定義された腫瘍領域および与えられた強度レベルを分析した。SCLC PDX TMAからの代表的なASCL1およびSOX2染色を各染色強度分類レベルについて図9に示す。
【0174】
2つの連続したSCLC PDX TMA切片(それぞれ、N=35およびN=43)の2つの独立した染色では、IF視覚スコアおよびRNASeqデータは非常に統計的に有意な(P<0.0001)相関を示し、SOX2ではSpearman r値が0.7535および0.7659(図10Aおよび10B)、ASCL1では0.8803および0.8989(図10Cおよび10D)であった。
【0175】
上記の結果は、SOX2およびASCL1タンパク質ならびにmRNAレベルが患者由来の試料においても相関しており、したがって、ASCL1およびSOX2は、それらのmRNAまたはタンパク質レベルのいずれかを測定する、KDM1A阻害に対する応答性の予測バイオマーカーとして、ヒト試料において使用することができることを確認する。
【0176】
実施例6:ASCL1およびSOX2はエキソソーム中に検出することができる
エキソソームは、それらの内容物において、親細胞のプロテアソーム、ゲノムおよびトランスクリプトームを反映する体液中に存在する微小胞である。したがって、エキソソームは、定量的なバイオマーカー検出のための優れた低侵襲性ツールを構成する。したがって、本発明者らは、KDM1A阻害剤、ASCL1およびSOX2に対する応答性の予測バイオマーカーの検出が、エキソソーム含有試料を採用する方法において適切であるかどうかを試験した。
【0177】
エキソソームは、SCLC細胞株からの沈殿により単離され、SOX2およびASCL1タンパク質レベルはWBにより決定された。
エキソソームにおけるASCL1およびSOX2検出
2,000万個のNCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446およびNCI-H526 SCLC細胞を、2mMグルタミン(Sigma)および10%エキソソーム不含FBS(System Biosciences)を補足した20ml RPMI培地(Sigma)中に播種し、湿った雰囲気において37℃および5%COでT75フラスコ中でインキュベートした。48時間後、十分に再懸濁させた細胞15mlを2,000×gで30分間室温で遠心し、上清を清浄なチューブに移し、細胞ペレットを-20℃に保持した。10mlの清浄培地を用いて、製造業者の指示に正確に従って総エキソソーム単離試薬(細胞培養培地から)(Life Technologies)によりエキソソームを沈殿させた。次に、エキソソームペレットを、WB用に80μlの1×SDS装填緩衝液中に、またはタンパク質抽出用にプロテアーゼインヒビターを補足した40μlのRIPA緩衝液(Sigma)中のいずれかに再懸濁した。定量後、2体積のRIPA抽出物を1体積の3×SDS装填緩衝液と混合し、95℃で加熱し、WBで使用するまで-20℃に保持した。
【0178】
エキソソーム単離法は、5μMのエキソソーム放出阻害剤GW4869(SelleckChem)またはビヒクルの存在下で、上記の条件下でNCI-H510A細胞を増殖させ、および総エキソソーム単離試薬(細胞培養培地から)(Life Technologies)で単離したエキソソームを用いて、製造業者の指示に従って正確に検証した。
【0179】
-20℃に保持した細胞ペレットを、プロテアーゼインヒビダーを補足したRIPA緩衝液(Sigma)中でタンパク質抽出に使用した。タンパク質アッセイ色素試薬(Bio-Rad)を用いたタンパク質の定量後、1×SDS装填緩衝液中で95℃で予め加熱した7μgの総タンパク質を、ASCL1(Abcam、ab213151)、SOX2(Abcam、ab97959)および肺がんエキソソーム特異的CD151マーカー(Abcam、ab3315)抗体を用いて、15μlのエキソソームタンパク質抽出物とともに12%PAGE(Life Technologies)におけるWB用に使用した。ブロットをECL Prime(Amersham)で発色し、G:BOX Chemi XRQ(Syngene)で撮影した。転写されたブロットのポンソーS染色を装填対照として用いた。
【0180】
結果
エキソソームにおけるASCL1およびSOX2検出の可能性を調べるために、NCI-H146、NCI-H510A、NCI-H446およびNCI-H526 SCLC細胞からの微小胞画分を沈殿により単離し、ASCL1およびSOX2タンパク質レベルを実施例5.1に記載される方法を用いてWBにより分析した。得られた結果を図11に示し、ASCL1とSOX2の両方がエキソソームにおいて検出され得、それらの発現が親細胞における発現と一致することを実証する(図5を参照されたい)。ASCL1はNCI-H446由来エキソソームでもNCI-H526由来エキソソームでも検出されなかったが(図11を参照されたい)、NCI-H146細胞およびNCI-H510A細胞において高度に検出された。その代わり、SOX2はNCI-H526由来のエキソソームでは検出されず(図11)、図5において報告されたSOX2の発現とも一致していた。
【0181】
さらに、ASCL1、SOX2および肺がん特異的エキソソームマーカーCD151シグナルは、5μMのGW4869(エキソソーム放出阻害剤)で処理したNCI-H510A細胞のエキソソーム画分において、ビヒクルと比較して有意に低減または除去されたが、一方、親細胞におけるこれらのタンパク質の発現は変化しなかった(図12)。したがって、これらの結果は、エキソソーム由来のASCL1およびSOX2シグナルが、沈殿によって得られたこの微小胞画分に特異的であることを示し、採用したエキソソーム単離法を検証する。
【0182】
全体として、この実施例6の結果は、本発明の予測バイオマーカーであるASCL1およびSOX2のタンパク質レベルの測定が、出発物質/試料としてエキソソームを用いてKDM1A阻害剤に対する応答性を決定するために行うことができることを確認する。
【0183】
本発明は、以下のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を指す:
本明細書に提供される配列は、NCBIデータベースで入手可能であり、www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=geneから検索することができる;これらの配列はまた、注釈付き配列および修飾配列に関連する。本発明はまた、相同な配列、および本明細書に提供される簡潔な配列の変異体が使用される技術および方法を提供する。好ましくは、このような「変異体」は、遺伝的変異体、例えばスプライス変異体である。
【0184】
ヒトASCL1およびSOX2の例示的なアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、本明細書中の以下の配列番号1~4に示される。実施例の一部において調節遺伝子として使用されるヒトGAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)の例示的なヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、配列番号5および6に示される。
【0185】
配列番号1:Homo sapiens Achaete-ScuteファミリーbHLH転写因子1(ASCL1)、mRNAをコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NM_004316.3。コード領域は、ヌクレオチド572からヌクレオチド1282の範囲(太字で強調される)である。mRNAは、「t」(チミジン)残基が「ウラシル」(u)残基で置換されることを除いて、下記の配列に対応する(すなわち、その配列と同一である)ことが理解される。
起源
1 agcactctct cacttctggc cagggaacgt ggaaggcgca ccgacaggga tccggccagg
61 gagggcgagt gaaagaagga aatcagaaag gaagggagtt aacaaaataa taaaaacagc
121 ctgagccacg gctggagaga ccgagacccg gcgcaagaga gcgcagcctt agtaggagag
181 gaacgcgaga cgcggcagag cgcgttcagc actgactttt gctgctgctt ctgctttttt
241 ttttcttaga aacaagaagg cgccagcggc agcctcacac gcgagcgcca cgcgaggctc
301 ccgaagccaa cccgcgaagg gaggagggga gggaggagga ggcggcgtgc agggaggaga
361 aaaagcattt tcactttttt tgctcccact ctaagaagtc tcccggggat tttgtatata
421 ttttttaact tccgtcaggg ctcccgcttc atatttcctt ttctttccct ctctgttcct
481 gcacccaagt tctctctgtg tccccctcgc gggccccgca cctcgcgtcc cggatcgctc
541 tgattccgcg actccttggc cgccgctgcg catggaaagc tctgccaaga tggagagcgg
601 cggcgccggc cagcagcccc agccgcagcc ccagcagccc ttcctgccgc ccgcagcctg
661 tttctttgcc acggccgcag ccgcggcggc cgcagccgcc gcagcggcag cgcagagcgc
721 gcagcagcag cagcagcagc agcagcagca gcagcaggcg ccgcagctga gaccggcggc
781 cgacggccag ccctcagggg gcggtcacaa gtcagcgccc aagcaagtca agcgacagcg
841 ctcgtcttcg cccgaactga tgcgctgcaa acgccggctc aacttcagcg gctttggcta
901 cagcctgccg cagcagcagc cggccgccgt ggcgcgccgc aacgagcgcg agcgcaaccg
961 cgtcaagttg gtcaacctgg gctttgccac ccttcgggag cacgtcccca acggcgcggc
1021 caacaagaag atgagtaagg tggagacact gcgctcggcg gtcgagtaca tccgcgcgct
1081 gcagcagctg ctggacgagc atgacgcggt gagcgccgcc ttccaggcag gcgtcctgtc
1141 gcccaccatc tcccccaact actccaacga cttgaactcc atggccggct cgccggtctc
1201 atcctactcg tcggacgagg gctcttacga cccgctcagc cccgaggagc aggagcttct
1261 cgacttcacc aactggttct gaggggctcg gcctggtcag gccctggtgc gaatggactt
1321 tggaagcagg gtgatcgcac aacctgcatc tttagtgctt tcttgtcagt ggcgttggga
1381 gggggagaaa aggaaaagaa aaaaaaaaga agaagaagaa gaaaagagaa gaagaaaaaa
1441 acgaaaacag tcaaccaacc ccatcgccaa ctaagcgagg catgcctgag agacatggct
1501 ttcagaaaac gggaagcgct cagaacagta tctttgcact ccaatcattc acggagatat
1561 gaagagcaac tgggacctga gtcaatgcgc aaaatgcagc ttgtgtgcaa aagcagtggg
1621 ctcctggcag aagggagcag cacacgcgtt atagtaactc ccatcacctc taacacgcac
1681 agctgaaagt tcttgctcgg gtcccttcac ctcctcgccc tttcttaaag tgcagttctt
1741 agccctctag aaacgagttg gtgtctttcg tctcagtagc ccccacccca ataagctgta
1801 gacattggtt tacagtgaaa ctatgctatt ctcagccctt tgaaactctg cttctcctcc
1861 agggcccgat tcccaaaccc catggcttcc ctcacactgt cttttctacc attttcatta
1921 tagaatgctt ccaatctttt gtgaattttt tattataaaa aatctatttg tatctatcct
1981 aaccagttcg gggatatatt aagatatttt tgtacataag agagaaagag agagaaaaat
2041 ttatagaagt tttgtacaaa tggtttaaaa tgtgtatatc ttgatacttt aacatgtaat
2101 gctattacct ctgcatattt tagatgtgta gttcacctta caactgcaat tttccctatg
2161 tggttttgta aagaactctc ctcataggtg agatcaagag gccaccagtt gtacttcagc
2221 accaatgtgt cttactttat agaaatgttg ttaatgtatt aatgatgtta ttaaatactg
2281 ttcaagaaga acaaagttta tgcagctact gtccaaactc aaagtggcag ccagttggtt
2341 ttgataggtt gccttttgga gatttctatt actgcctttt tttttcttac tgttttatta
2401 caaacttaca aaaatatgta taaccctgtt ttatacaaac tagtttcgta ataaaacttt
2461 ttcctttttt taaaatgaaa ataaaaaaaa//
配列番号2:Homo sapiens Achaete-ScuteファミリーbHLH転写因子1(ASCL1)タンパク質のアミノ酸配列
UniProtKB/Swiss-Prot:ASCL1_HUMAN、P50553
MESSAKMESGGAGQQPQPQPQQPFLPPAACFFATAAAAAAAAAAAAAQSAQQQQQQQQQQ
QQAPQLRPAADGQPSGGGHKSAPKQVKRQRSSSPELMRCKRRLNFSGFGYSLPQQQPAAV
ARRNERERNRVKLVNLGFATLREHVPNGAANKKMSKVETLRSAVEYIRALQQLLDEHDAV
SAAFQAGVLSPTISPNYSNDLNSMAGSPVSSYSSDEGSYDPLSPEEQELLDFTNWF
配列番号3:Homo sapiens SRYボックス2(SOX2)、mRNAをコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NM_0003106.3。コード領域はヌクレオチド438からヌクレオチド1391の範囲(太字で強調される)である。mRNAは、「t」(チミジン)残基が「ウラシル」(u)残基で置換されることを除いて、下記の配列に対応する(すなわち、その配列と同一である)ことが理解される。
起源
1 ggatggttgt ctattaactt gttcaaaaaa gtatcaggag ttgtcaaggc agagaagaga
61 gtgtttgcaa aagggggaaa gtagtttgct gcctctttaa gactaggact gagagaaaga
121 agaggagaga gaaagaaagg gagagaagtt tgagccccag gcttaagcct ttccaaaaaa
181 taataataac aatcatcggc ggcggcagga tcggccagag gaggagggaa gcgctttttt
241 tgatcctgat tccagtttgc ctctctcttt ttttccccca aattattctt cgcctgattt
301 tcctcgcgga gccctgcgct cccgacaccc ccgcccgcct cccctcctcc tctccccccg
361 cccgcgggcc ccccaaagtc ccggccgggc cgagggtcgg cggccgccgg cgggccgggc
421 ccgcgcacag cgcccgcatg tacaacatga tggagacgga gctgaagccg ccgggcccgc
481 agcaaacttc ggggggcggc ggcggcaact ccaccgcggc ggcggccggc ggcaaccaga
541 aaaacagccc ggaccgcgtc aagcggccca tgaatgcctt catggtgtgg tcccgcgggc
601 agcggcgcaa gatggcccag gagaacccca agatgcacaa ctcggagatc agcaagcgcc
661 tgggcgccga gtggaaactt ttgtcggaga cggagaagcg gccgttcatc gacgaggcta
721 agcggctgcg agcgctgcac atgaaggagc acccggatta taaataccgg ccccggcgga
781 aaaccaagac gctcatgaag aaggataagt acacgctgcc cggcgggctg ctggcccccg
841 gcggcaatag catggcgagc ggggtcgggg tgggcgccgg cctgggcgcg ggcgtgaacc
901 agcgcatgga cagttacgcg cacatgaacg gctggagcaa cggcagctac agcatgatgc
961 aggaccagct gggctacccg cagcacccgg gcctcaatgc gcacggcgca gcgcagatgc
1021 agcccatgca ccgctacgac gtgagcgccc tgcagtacaa ctccatgacc agctcgcaga
1081 cctacatgaa cggctcgccc acctacagca tgtcctactc gcagcagggc acccctggca
1141 tggctcttgg ctccatgggt tcggtggtca agtccgaggc cagctccagc ccccctgtgg
1201 ttacctcttc ctcccactcc agggcgccct gccaggccgg ggacctccgg gacatgatca
1261 gcatgtatct ccccggcgcc gaggtgccgg aacccgccgc ccccagcaga cttcacatgt
1321 cccagcacta ccagagcggc ccggtgcccg gcacggccat taacggcaca ctgcccctct
1381 cacacatgtg agggccggac agcgaactgg aggggggaga aattttcaaa gaaaaacgag
1441 ggaaatggga ggggtgcaaa agaggagagt aagaaacagc atggagaaaa cccggtacgc
1501 tcaaaaagaa aaaggaaaaa aaaaaatccc atcacccaca gcaaatgaca gctgcaaaag
1561 agaacaccaa tcccatccac actcacgcaa aaaccgcgat gccgacaaga aaacttttat
1621 gagagagatc ctggacttct ttttggggga ctatttttgt acagagaaaa cctggggagg
1681 gtggggaggg cgggggaatg gaccttgtat agatctggag gaaagaaagc tacgaaaaac
1741 tttttaaaag ttctagtggt acggtaggag ctttgcagga agtttgcaaa agtctttacc
1801 aataatattt agagctagtc tccaagcgac gaaaaaaatg ttttaatatt tgcaagcaac
1861 ttttgtacag tatttatcga gataaacatg gcaatcaaaa tgtccattgt ttataagctg
1921 agaatttgcc aatatttttc aaggagaggc ttcttgctga attttgattc tgcagctgaa
1981 atttaggaca gttgcaaacg tgaaaagaag aaaattattc aaatttggac attttaattg
2041 tttaaaaatt gtacaaaagg aaaaaattag aataagtact ggcgaaccat ctctgtggtc
2101 ttgtttaaaa agggcaaaag ttttagactg tactaaattt tataacttac tgttaaaagc
2161 aaaaatggcc atgcaggttg acaccgttgg taatttataa tagcttttgt tcgatcccaa
2221 ctttccattt tgttcagata aaaaaaacca tgaaattact gtgtttgaaa tattttctta
2281 tggtttgtaa tatttctgta aatttattgt gatattttaa ggttttcccc cctttatttt
2341 ccgtagttgt attttaaaag attcggctct gtattatttg aatcagtctg ccgagaatcc
2401 atgtatatat ttgaactaat atcatcctta taacaggtac attttcaact taagttttta
2461 ctccattatg cacagtttga gataaataaa tttttgaaat atggacactg aaaaaaaaaa//
配列番号4:Homo sapiens SRY-ボックス2(SOX2)タンパク質のアミノ酸配列
UniProtKB/Swiss-Prot:SOX2_HUMAN、P48431
MYNMMETELKPPGPQQTSGGGGGNSTAAAAGGNQKNSPDRVKRPMNAFMVWSRGQRRKMA
QENPKMHNSEISKRLGAEWKLLSETEKRPFIDEAKRLRALHMKEHPDYKYRPRRKTKTLM
KKDKYTLPGGLLAPGGNSMASGVGVGAGLGAGVNQRMDSYAHMNGWSNGSYSMMQDQLGY
PQHPGLNAHGAAQMQPMHRYDVSALQYNSMTSSQTYMNGSPTYSMSYSQQGTPGMALGSM
GSVVKSEASSSPPVVTSSSHSRAPCQAGDLRDMISMYLPGAEVPEPAAPSRLHMSQHYQS
GPVPGTAINGTLPLSHM
配列番号5:Homo sapiensグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、mRNA
NCBI参考配列:NM_002046.6。コード領域は、ヌクレオチド77からヌクレオチド1084(太字で強調される)の範囲である。mRNAは、「t」(チミジン)残基が「ウラシル」(u)残基で置換されることを除いて、下記の配列に対応する(すなわち、その配列と同一である)ことが理解される。
起源
1 gctctctgct cctcctgttc gacagtcagc cgcatcttct tttgcgtcgc cagccgagcc
61 acatcgctca gacaccatgg ggaaggtgaa ggtcggagtc aacggatttg gtcgtattgg
121 gcgcctggtc accagggctg cttttaactc tggtaaagtg gatattgttg ccatcaatga
181 ccccttcatt gacctcaact acatggttta catgttccaa tatgattcca cccatggcaa
241 attccatggc accgtcaagg ctgagaacgg gaagcttgtc atcaatggaa atcccatcac
301 catcttccag gagcgagatc cctccaaaat caagtggggc gatgctggcg ctgagtacgt
361 cgtggagtcc actggcgtct tcaccaccat ggagaaggct ggggctcatt tgcagggggg
421 agccaaaagg gtcatcatct ctgccccctc tgctgatgcc cccatgttcg tcatgggtgt
481 gaaccatgag aagtatgaca acagcctcaa gatcatcagc aatgcctcct gcaccaccaa
541 ctgcttagca cccctggcca aggtcatcca tgacaacttt ggtatcgtgg aaggactcat
601 gaccacagtc catgccatca ctgccaccca gaagactgtg gatggcccct ccgggaaact
661 gtggcgtgat ggccgcgggg ctctccagaa catcatccct gcctctactg gcgctgccaa
721 ggctgtgggc aaggtcatcc ctgagctgaa cgggaagctc actggcatgg ccttccgtgt
781 ccccactgcc aacgtgtcag tggtggacct gacctgccgt ctagaaaaac ctgccaaata
841 tgatgacatc aagaaggtgg tgaagcaggc gtcggagggc cccctcaagg gcatcctggg
901 ctacactgag caccaggtgg tctcctctga cttcaacagc gacacccact cctccacctt
961 tgacgctggg gctggcattg ccctcaacga ccactttgtc aagctcattt cctggtatga
1021 caacgaattt ggctacagca acagggtggt ggacctcatg gcccacatgg cctccaagga
1081 gtaagacccc tggaccacca gccccagcaa gagcacaaga ggaagagaga gaccctcact
1141 gctggggagt ccctgccaca ctcagtcccc caccacactg aatctcccct cctcacagtt
1201 gccatgtaga ccccttgaag aggggagggg cctagggagc cgcaccttgt catgtaccat
1261 caataaagta ccctgtgctc aaccagttaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaa//
配列番号6:Homo sapiensグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、タンパク質のアミノ酸配列 UniProtKB/Swiss-Prot:G3P_HUMAN、P04406
MGKVKVGVNGFGRIGRLVTRAAFNSGKVDIVAINDPFIDLNYMVYMFQYDSTHGKFHGTV
KAENGKLVINGNPITIFQERDPSKIKWGDAGAEYVVESTGVFTTMEKAGAHLQGGAKRVI
ISAPSADAPMFVMGVNHEKYDNSLKIISNASCTTNCLAPLAKVIHDNFGIVEGLMTTVHA
ITATQKTVDGPSGKLWRDGRGALQNIIPASTGAAKAVGKVIPELNGKLTGMAFRVPTANV
SVVDLTCRLEKPAKYDDIKKVVKQASEGPLKGILGYTEHQVVSSDFNSDTHSSTFDAGAG
IALNDHFVKLISWYDNEFGYSNRVVDLMAHMASKE
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
【配列表】
2022546908000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いSCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するステップを含む方法。
【請求項2】
試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者を、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成するステップをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者を、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るSCLCを有する患者を同定する方法であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するステップを含む方法。
【請求項5】
試料中のASCL1およびSOX2の各レベルが閾値を超えた場合に、患者を、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
試料中のASCL1およびSOX2のレベルを使用して、試料についてのスコアを生成するステップをさらに含み、試料についてのスコアが閾値を超えた場合に、患者が、KDM1A阻害剤を含む処置が有益であり得るものとして同定される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
SCLCを有する患者の処置を選択する方法であって、処置を開始する前に、患者由来の試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するステップを含む方法。
【請求項8】
ASCL1レベルおよびSOX2レベルがmRNA発現レベルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
mRNA発現レベルがqRT-PCRによって測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ASCL1レベルおよびSOX2レベルがタンパク質発現レベルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質発現レベルが蛍光免疫組織化学によって測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
試料が生検である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
患者が、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定された場合に、患者にKDM1A阻害剤を含む処置の治療有効量を推奨するか、または処方するステップをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
SCLCを有する患者の処置における使用のためのKDM1A阻害剤を含む医薬組成物であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者が、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を使用してKDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いものとして同定されている、前記医薬組成物
【請求項15】
SCLCを有する患者を処置するための医薬品の製造におけるKDM1A阻害剤の使用であって、KDM1A阻害剤を含む処置を開始する前に、患者が、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を使用して、KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高いとして同定されている、前記使用
【請求項16】
KDM1A阻害剤を含む処置に応答する可能性が高い、SCLCを有する患者を同定する方法におけるASCL1およびSOX2の使用。
【請求項17】
KDM1A阻害剤が(トランス)-N1-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法
【請求項18】
患者がヒト患者である、請求項1~13または17のいずれか一項に記載の方法
【請求項19】
KDM1A阻害剤が(トランス)-N1-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項14に記載の使用のための医薬組成物
【請求項20】
患者がヒト患者である、請求項14または19に記載の使用のための医薬組成物
【請求項21】
KDM1A阻害剤が(トランス)-N1-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項15または16に記載の使用
【請求項22】
患者がヒト患者である、請求項15、16または21のいずれか一項に記載の使用
【請求項23】
KDM1A阻害剤を含む処置に対する、SCLCを有する患者の応答の可能性を評価するためのキットであって、試料中のASCL1およびSOX2のレベルを測定するための1つ以上の薬剤、および場合により使用説明書を含むキット。
【国際調査報告】