IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーアイピー モビリティー ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】車輪およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 5/02 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B60B5/02 E
B60B5/02 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504078
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020074367
(87)【国際公開番号】W WO2021047963
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019124145.6
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522027596
【氏名又は名称】シーアイピー モビリティー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CIP MOBILITY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン ティメル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ネンデル
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ シュピラー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスチャン イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】トルステン フォーゲル
(57)【要約】
本発明は、電動自転車またはカーゴバイク等のシステム重量が増加した自転車に特に適した、安定した一体型車輪と、前記車輪の製造方法とに関する。前記車輪は、環状部分(110)と、複数のスポーク(120)と、熱可塑性物質を含む繊維強化またはカーボンナノチューブの射出成形によって一体的に形成されたハブ部分(130)とを含み、複数のスポーク(120)はそれぞれ、中脚部(122)および一対の外脚部(121、123)を備える実質的にZ字形状の断面を含み、一対の外脚部のそれぞれと中脚部とによって包囲される角度(γ)が直角よりも大きく、中脚部(122)の長さが環状部分(110)からハブ部分(130)に向けて増加する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部分(110)と、複数のスポーク(120)と、熱可塑性物質を含む繊維強化またはカーボンナノチューブの射出成形により一体的に形成されたハブ部分(130)とを含む車輪であって、
前記複数のスポーク(120)はそれぞれ、中脚部(122)および一対の外脚部(121、123)を有する実質的にZ字形状の断面を含み、前記一対の外脚部(121、123)のそれぞれと前記中脚部(122)とによって包囲される角度(γ)は直角よりも大きく、前記中脚部の長さは前記環状部分から前記ハブ部分に向けて増加する、車輪。
【請求項2】
前記中脚部は、前記車輪の回転軸に対して角度(α)が付けられている、請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
前記外脚部(121、123)がそれぞれ、前記中脚部(122)に向けられた少なくとも1つの湾曲部分を含む、請求項1または2に記載の車輪。
【請求項4】
前記湾曲部分の半径(r1)が前記環状部分に向けて増加する、請求項3に記載の車輪。
【請求項5】
前記湾曲部分は3~20mmの範囲の半径(r1)を有し、各Z字形状断面は、1.5~5mm、好ましくは2.5~3mmの範囲の壁厚(S)を有する、請求項3または4に記載の車輪。
【請求項6】
Zプロファイルが前記環状部分(110)に接続されるラインを広げるために、前記外脚部(121、123)の長さが、前記環状部分に接続する領域に向けて連続的に増加する、請求項1~5のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項7】
前記スポーク(120)の各々のZ字形状の断面が、2つの隣接するスポーク(125、126)の間の断面における前記環状部分の外周に実質的に垂直に向けられる荷重を補償するためにねじり弾性を有するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項8】
前記Z形状の断面の各々の外脚部(121、123)が、曲率の方向への偏向を可能にするように構成されている、請求項3~7のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項9】
前記車輪は少なくとも4つのスポーク(120)を含み、前記スポーク(120)の各々の脚部の端部は、前記環状部分(110)と隣接する対のスポーク(125、126)との間に画定される半円形または少なくとも部分的に楕円形のウィンドウ(140)を形成するために、前記ハブで相互接続されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項10】
前記ハブ部分(130)は、射出成形により接続された、または車軸、電気モータ(160)、ハブダイナモ、内部ギアハブもしくはホイールベアリングのうちの少なくとも1つを保持するように構成された射出成形ハブ部分の残留熱を利用することによって接続された、金属インサートまたはプラスチックインサートを含み、車輪サスペンションを片側または両側に構成することができる、請求項1~9のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項11】
前記金属インサートは、射出成形および嵌合接続のための開口部(138)を含む、請求項10に記載の車輪。
【請求項12】
前記ハブ部分(130)は、電気モータを取り付けるための半径方向内向きに延在するリムを片側に有する丸みを帯びた隅部(132)を備えた疑似五角形または疑似六角形であって、
前記隅部はそれぞれ、前記電気モータが取り付けられたときに接続要素を案内し、エアギャップを形成するための垂直に延在する一対のリブを含む、請求項11に記載の車輪。
【請求項13】
前記繊維強化熱可塑性物質が20~65重量%のガラス繊維含有量を有しており、
前記熱可塑性物質が、PA6、PA6.6またはそれらの混合物から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項14】
熱可塑性物質を含む前記ガラス繊維強化またはカーボンナノチューブが、100MPa~300MPaの引張破壊応力を有し、かつ少なくとも6000MPaの弾性率を有する、請求項13に記載の車輪。
【請求項15】
前記環状部分は、半径方向外向きに向けられた2つの分岐脚部を有する対称プロファイルを備えたリムを含み、前記端部の各々は、前記プロファイルの対称軸に向けて内向きに突出する、一体的に形成されたリムフランジを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項16】
車輪の製造方法であって、
熱可塑性物質を含む繊維強化またはカーボンナノチューブを射出成形して、環状部分、複数のスポーク、およびハブ部分を含む一体型本体を一体的に形成するステップを含み、
前記複数のスポークが、中脚部および一対の外脚部と実質的にZ字形状の断面を形成し、前記一対の外脚部のそれぞれと前記中脚部とによって包囲される角度(γ)が直角よりも大きく、
前記中脚部の長さが前記環状部分から前記ハブ部分に向けて増加している、方法。
【請求項17】
金属またはプラスチックのインサートを、前記入口の開口部を介して射出成形することによって前記ハブ部分に接続し、前記インサートの少なくとも一部を圧入および/または嵌合によりバックモールドするステップを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
射出ツール内に折り畳み可能なコアを備えた複数の放射状に配置されたスライダーを提供および引き出すことで、半径方向外向きに向けられた2つの分岐脚部を有する、対称プロファイルを有するリムを含む環状部分を形成するステップを更に含み、各端部が内向きに突出する一体的に形成されたリムフランジ(114)を有する、請求項16または17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用の車輪の分野に関し、より具体的には、一体型の熱可塑性車輪および前記車輪の製造方法に関する。前記車輪は、ハブと環状部分との間に複数のスポークを含み、電動自転車またはカーゴバイク等の大きい負荷を受ける自転車に特に適している。
【背景技術】
【0002】
都市部の人口増加を考慮すると、都市部のロジスティクスシステムを最適化する必要がある。更に、環境の観点から、二酸化炭素の生産を削減し、持続可能性に向けた輸送ソリューションを開発する必要がある。都市の機動性を改善するための1つの可能性として、サイクルシェアリング、フリートバイク、カーゴバイク、電動アシスト自転車またはe-モビリティバイクを提供することが挙げられる。特に、車輪が貨物を運搬するように構成されているか、または、例えばモータおよびバッテリによって生成された電力を使用するように構成されている場合、システムの負荷は従来の自転車に比べて増加する。
【0003】
特に自転車用の車輪は軽量でなければならないことは周知である。しかしながら、車輪に印加される力は非常に大きくなる可能性がある。従って、十分な剛性および安定性のある車輪、より具体的には自転車車輪を同時に提供する手頃な技術的解決策を提供する必要がある。一般には、材料強度を改善するには材料つまりは重量が追加される。
【0004】
自転車の車輪の場合、一般的に、スポークが環状リム部分とハブとの間に力を伝達するために使用される。通常、スポークの数が多いほど車輪の強度が高くなり、スポークの数が少ないほど車輪アセンブリが軽量になる。しかしながら、特に電動牽引付き車両または荷搬送自転車を使用する場合の高速または高負荷の観点から、破壊を防ぐために、スポーク数の少ない自転車車輪は、自転車の操作に関連する負荷をサポートするように構築される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、先行技術における前述の問題を克服し、機械的特性に優れた樹脂ホイールを提供すると同時に、軽量の製品を提供することである。本発明の別の目的は、過負荷ピークに対する機械的強度および柔軟性を改善することができるシステムを提供することである。
【0006】
更なる目的は、熱可塑性材料の緩和およびクリープの問題に対処し、かつ、ハブと他の構成要素-たとえば、車軸、電気モータ、ハブダイナモ、フリーホイールまたは内部ギアハブ等-との間に安全かつ安定した接続を提供することである。特に、モータが車輪のハブに配置されている電動自転車の車輪の場合、電子モータの熱除去または絶縁を改善することが更に望まれる。
【0007】
最後に、軽量化および補強構造における優れたセールスポイントに加えて、車輪の大量生産の可能性を保証する必要がある。この特性は、コスト削減に有利であり、かつフリートバイクの製造にも有利である。車輪は更に長寿命かつメンテナンスが容易でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、自転車、電気自転車およびカーゴバイクに特に適しており、環状部分と、複数のスポークと、熱可塑性物質を含む繊維強化またはカーボンナノチューブの射出成形によって一体的に形成されたハブ部分とを含み、複数のスポークがそれぞれ、中脚部および一対の外脚部を備えた実質的にZ字形状の断面を含み、一対の外脚部のそれぞれと中脚部とによって包囲された角度(γ)が直角よりも大きく、中脚部の長さが環状部分からハブ部分に向けて増加する、請求項1に記載の車輪によって解決される。本発明はまた、車輪の製造方法を提供する。車輪およびその製造の他の特徴および有利な実施形態は、従属請求項に明記されている。本発明は、以下の説明および添付の図面からより容易に理解されるであろう。
【0009】
車輪の特徴は、複数のスポークがそれぞれ、中脚部と一対の外側または側面脚部とを含む実質的にZ字形状の断面を含むことであり、一対の外脚部のそれぞれと中脚部とによって包囲される角度(γ)は直角よりも大きく、中脚部の長さは環状部分からハブ部分に向けて増加する。各スポークの傾斜したZプロファイルにより、スポークの軽量設計が可能になり、車輪の安定性に貢献している。
【0010】
Zプロファイルの使用により、力がハブと環状部分のリムとの間で伝達される際に通る環状部分へのスポークの接続ラインの長さを増加させることを可能にする。リムは、チューブラータイヤまたはクリンチャー等のタイヤが取り付けられている車輪の部分である。更に、ハブに向けてZプロファイルの中脚部の幅が増加すると、安定性が更に高まる。このようにして、例えば、スポークの長手方向軸と同じ方向に向けられた高い垂直方向の衝撃荷重-たとえばポットホールを通り抜けるときに経験するようなもの-許容することができる。
【0011】
使用する材料および所望の安定性に応じて、24インチホイールの重量は900g~2000gの範囲、好ましくは900gまたは1000g~最大重量1250gである。記載されている重量範囲は、金属インサート等の潜在的な追加インサートを含まない強化熱可塑性物質の重量である。
【0012】
30より多いスポークを有する一般的な金属製自転車とは対照的に、強化熱可塑性物質を使用する本発明による技術的解決策は、部品および構成要素の数を大幅に低減し、スタイリングの自由度を大きくすることができる。熱可塑性物質を使用することにより、着色のような設計特性を改善することができ、例えば、炭素またはガラス繊維強化材料に反射材料を追加することが可能である。ポリマー等の熱可塑性材料から車輪を製造することにより、射出成形プロセスを介して射出ツールに鋳造できるため、リサイクル可能な車輪を効率的に製造することができる。
【0013】
本発明の更なる態様によれば、Z断面の中脚部は、車輪の回転軸に対して角度(α)が付けられている。
【0014】
本発明の更なる態様によれば、外脚部はそれぞれ、中脚部に向けられた少なくとも1つの湾曲部分を含む。
【0015】
1つ以上の湾曲部分を有することにより、隣接するスポークの2つの外脚部の外脚部を、ハブ部分にて少なくとも部分的に互いに正弦波状に接続することができ、従って、スポーク間に滑らかな移行を提供する。更に、外脚部と中脚部との交点に湾曲部分を設けることで、丸みを帯びた隅部を形成することができる。この連続的な接合により、後の使用時に切欠き応力のような応力ピークが減少する。更に、鋭い端縁およびアンダーカットが回避される故に、射出ツールによる射出成形を使用した車輪の製造が簡素化される。
【0016】
本発明の更なる態様によれば、湾曲部分の半径は、環状部分に向けて増加する。このようにして、湾曲した脚部の曲率が平坦化する結果、前記平坦化された外脚部の端部が、環状部分の中間軸に近づくことが可能となる。従って、Z断面により、高い垂直方向への安定性だけでなく、高い横方向への安定性も提供できる。このような横力(図3bの矢印154参照)は、通常、曲がった道路を走行し、事故時のように側面から動いていないまたは動いている物体と衝突したときに、環状部分の付近またはリムの端縁にて発生する。
【0017】
シミュレーション結果は、370Nの横荷重を伴うDIN EN ISO 4210.6:2012-11として標準化された基準に従った自転車の安全要件が、本発明の車輪およびスポーク形状により満たされ得ることを示した。更に、80℃の温度でのシミュレーション結果は、両側サスペンションの自転車の最大4000Nの垂直方向への衝撃荷重を吸収可能であることを示した。従って、本発明による車輪は、高い安全要件を満たしている。
【0018】
本発明の別の態様によれば、外脚部の湾曲部分は、3~20mmの範囲の半径(r1)を有し、各Z字形状断面は、1.5~5mm、好ましくは2.5~3mmの範囲の壁厚(S)を有する。
【0019】
上記の垂直方向および横方向への優れた安定特性や、更にブレーキまたは加速によって生成されるトルクの吸収を含むことにより、上記の比較的小さい壁厚範囲のスポークを有する自転車を達成することができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、外脚部の長さは、Zプロファイルが環状部分に接続されるラインを広げるために、環状部分に接続するための領域に向けて連続的に増加する。このようにして、車輪の安定性を更に高めることができる。
【0021】
本発明の別の態様によれば、各スポークのZ字形状断面は、2つの隣接するスポーク間の断面において環状部分の外周に実質的に垂直に向けられる荷重を補償するためにねじり弾性を有するように構成される。
【0022】
通常より少ないスポーク数を有する車輪の操作で、垂直方向の荷重衝撃が発生する場合の重要な点の1つは、スポークが接続されておらず、従ってこの領域に局所的な荷重ピークが生じる環状部分の断面があるという事実にある。この問題は、力が環状部分のスポークのない部分に対して垂直に向けられたときに弾性的に応答するように構成されたZ字形状のスポークにより、本発明によって対処される。換言すると、本発明による車輪は、垂直方向への荷重衝撃によって導入されるエネルギーを環状のスポークのない部分に効率的に放散できるように、部材の弾性屈曲、即ち、隣接するZ字形状のスポークの一対の各外脚部に依存している。
【0023】
本発明の別の態様によれば、各Z断面の外脚部は、湾曲の方向への偏向を可能にするように構成される。
【0024】
隣接するスポークのそれぞれに同じ距離で力が導入される、2つのスポーク間の垂直方向の衝撃の場合、互いに向き合う外脚部はそれぞれ、トーションバーと同様に偏向し、垂直方向の衝撃の荷重を両スポークに同等に分散する。
【0025】
本発明の別の態様によれば、車輪は少なくとも4つのスポークを含み、各スポークの脚部の端部は、環状部分と隣接するスポークの対との間に画定される半円形または少なくとも部分的に楕円形のウィンドウを形成するためにハブで相互接続される。
【0026】
車輪は少なくとも4つのスポーク、好ましくは6つのスポークで構成されるようにする。このようにして、2つのスポーク間のウィンドウの形状は、切欠き応力を回避できるように、半円形または少なくとも部分的に楕円形である。特に、電気モータのようなより大きな構成要素を受け入れることができるようにハブ部分の形状が構成されている場合、ウィンドウは、環状部分の頂点を通る接線に平行な長手方向軸を有する略楕円形になり得る。
【0027】
本発明の別の態様によれば、ハブ部分は、射出成形により接続された、または車軸、電気モータ、ハブダイナモ、内部ギアハブ、フリーホイールまたはホイールベアリングのうちの少なくとも1つを保持するように構成された射出成形ハブ部分の残留熱を利用することによって接続された、金属インサートまたはプラスチックインサートを含み、ホイールサスペンションは片側または両側に構成可能である。
【0028】
このようにして、車輪を様々な構成要素へ安定的に接続することができる。インサートを有する車輪がそれでもなお軽量であることに留意されたい。24インチタイヤ用の車輪の場合、金属インサートを有する車輪の重量は、1200g~1450gである。金属としては、例えば鋼を使用することができる。
【0029】
本発明の別の態様によれば、金属インサートは、射出成形および嵌合接続のための開口部を含む。
【0030】
このようにして、金属インサートの接続が改善される。これらの開口部は、液滴形状等の様々な形状をとることができる。
【0031】
本発明の別の態様によれば、ハブ部分は、電気モータを取り付けるための半径方向内方に延在するリムまたはフランジを片側に有する丸みを帯びた隅部を有する疑似五角形または疑似六角形であり、前記隅部はそれぞれ、電気モータを取り付けたときに、接続要素を案内し、エアギャップを形成するための垂直に延在する一対のリブを含む。
【0032】
エアギャップを提供することにより、取り付けられた電気モータによって生成される可能性のある熱に対する隔離が提供される。
【0033】
本発明の別の態様によれば、繊維強化熱可塑性物質は、20~65重量%のガラス繊維含有量を有し、前記熱可塑性物質は、PA6、PA6.6またはそれらの混合物から選択される。
【0034】
前記ポリマーおよびPA6とPA6.6との混合物は、良好な流動挙動を示し、車輪等の応力がかかる機能部品に適切に適用され得るように、簡単に処理することができる。製造された車輪の材料は、-20℃~80℃の温度範囲内で安定する。本発明者らは、研究を実施し、実験により、特に30%のガラス繊維を含むPA6とPA6.6とのブレンドが車輪に適していることを発見した。適切なガラス繊維強化熱可塑性物質は、例えば、EMS-Grivory、EMS Chemie AG(スイス)からの商品名Grivory(登録商標)で市販されている。
【0035】
Grilon TSG-30(TS=PA66+PA6;G=ガラス繊維強化)の下でEMS-Grivory(登録商標)によって提供されるような、30%ガラス繊維を含むPA6とPA6.6との混合物を有する車輪の挙動のシミュレーションは、EN ISO 4210-6;2012-11に従って、材料温度が80℃で、垂直方向の衝撃が4000N、ブレーキトルクが305N、および横方向の荷重が370Nのいずれかを含むと推定される導入力がある場合でさえ、材料の恒久的な変形が生じなかった。車輪の何らかの観測された僅かな変形は、材料の弾性限界内で発生した。
【0036】
本発明の別の態様によれば、熱可塑性物質を含む好ましいガラス繊維強化またはカーボンナノチューブは、引張破壊応力が100MPa~300MPaであり、弾性率が少なくとも6000MPa~最大30Gpaまで、好ましくは15GPa~25GPaである。引張強度および弾性率は、EN規格EN ISO 527に準拠している。
【0037】
別の態様によれば、環状部分は、対称プロファイルを有するリムを含み、これは、半径方向外向きに向けられた2つの分岐脚部を有し、各端部は、プロファイルの対称軸に向けて内向きに突出する一体的に形成されたリムフランジを有する。
【0038】
このリム設計に基づいて、リムは半径方向外向きに開口した中空プロファイルを形成し、これは、各脚部にて複数の湾曲部分を有するV字型、U字型、台形型、または湾曲した形状として構成することができる。突出したリムフランジによって、クリンチャータイヤを保持することができる。これらのタイヤは、リムのフランジと連結するワイヤーまたはアラミド繊維ビードを有する。
【0039】
本発明の別の態様によれば、車輪の製造方法が提供され、この方法は、熱可塑性物質を含む繊維強化またはカーボンナノチューブを射出成形して、環状部分、複数のスポークおよびハブ部分を含む一体型本体を一体的に形成するステップを含み、ここで、複数のスポークは、中脚部および一対の外脚部と実質的にZ字形状の断面を形成し、一対の外脚部のそれぞれと中脚部とによって包囲される角度(γ)は直角よりも大きく、中脚部の長さは、環状部分からハブ部分に向けて増加している。
【0040】
本発明の別の態様によれば、この方法は、更に、金属またはプラスチックのインサートを、前記入口の開口部を介して射出成形することによってハブ部分に接続し、インサートの少なくとも一部を圧入および/または嵌合によりバックモールドするステップを含む。
【0041】
このようにして、インサートをハブ部分にしっかりと固定することができる。
【0042】
本発明の別の態様によれば、この方法は、更に、射出ツール内に折り畳み可能なコアを備えた複数の放射状に配置されたスライダーを提供および引き出すことで、半径方向外向きに向けられた2つの分岐脚を有する、対称プロファイルを有するリムを含む環状部分を形成するステップを含み、ここで、各端部は、内向きに突出する一体的に形成されたリムフランジを有する。
【0043】
本発明による車輪の製造方法の更なる利点は、製造が、例えば、ETRTO(European Tire and Rim Technical Organization)によって指定されるように、自転車およびカーゴバイクの任意の従来の寸法およびリム寸法にスケーラブルな点である。好ましい公称車輪直径は、16~28インチ、より好ましくは18~26インチ、更に好ましくは20~26インチ、最も好ましくは20または24インチのタイヤ寸法に適したものである。リム幅(中空プロファイルの幅)は、好ましくは14~35mm、より好ましくは25~32mmである。クリンチャータイヤの場合、タイヤの外側幅は、好ましくは2.3インチであり、例えば24インチのタイヤの外径と組み合わせることができる。
【0044】
添付の図面は、本開示の例示的な実施形態を示しており、例示として本開示の原理を説明するのに役立ち、また縮尺通りに描かれることを意図していない。図面は、様々な態様および実施形態の説明および更なる理解を提供するために含まれているが、開示を図面に示されている実施形態に限定することを意図するものではなく、必ずしも縮尺通りではない。図面または詳細な説明における技術的特徴の後に参照符号が続く場合、参照符号は、図面および説明の理解度を高めることのみを目的として含まれている。明白にするために、全ての構成要素が全図面においてラベル付けされているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1a】本発明の実施形態による車輪の平面図である。
図1b】車輪のスポークの断面図である。
図1c】単一のスポークの概略図である。
図2a】車輪の別の図である。
図2b図2aの詳細図である。
図2c図2aに示されるようなスポークの4つの断面図である。
図2d】スポークの2つの断面の詳細図である。
図3a】スポークに沿ったホイールディスクに垂直な断面図である。
図3b】車輪に印加される力の概略図である。
図4a】2つのスポーク間に印加される垂直方向の力の概略図である。
図4b】スポークのZ字形状断面のねじれの概略図である。
図5a】環状部分の製造の概略図である。
図5b図5aに示される環状部分の2つの断面図である。
図5c】リムの中空プロファイルにタイヤを挿入した環状部分の図である。
図6a】リムの中空プロファイルの平面図およびバルブアダプタの詳細図である。
図6b】リムの中空プロファイルの平面図およびバルブアダプタの詳細図である。
図6c】リムの中空プロファイルの平面図およびバルブアダプタの詳細図である。
図7】ハブ部分に挿入されるハウジングを備えた車軸の概略図である。
図8】車輪の斜視図である。
図9a】インサートを含む車輪およびハブ部分の断面図および詳細図である。
図9b】インサートを含む車輪およびハブ部分の断面図および詳細図である。
図9c】インサートを含む車輪およびハブ部分の断面図および詳細図である。
図9d】インサートを含む車輪およびハブ部分の断面図および詳細図である。
図10a】インサートの平面図および側面図である。
図10b】インサートの平面図および側面図である。
図11a】概略斜視図および分解図である。
図11b】概略斜視図および分解図である。
図12a】ハブ部分の断面図である。
図12b】ハブ部分の断面図である。
図12c】ハブ部分の断面図である。
図13a】回転している車輪の空気力学的流れの概略図である。
図13b】回転している車輪の空気力学的流れの概略図である。
図14a】片側および両側のサスペンションを示す図である。
図14b】片側および両側のサスペンションを示す図である。
図14c】片側および両側のサスペンションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明の実施形態による車輪100の平面図を示している。車輪は、3つの主要部分、即ち、環状部分110、複数のスポーク120およびハブ部分130に細分可能な1つの部品のみで構成されている。
【0047】
図1aに示される車輪の図は、側面図を示しており、ハブ部分130が車軸(図示せず)と、任意に、電気モータ、ハブダイナモ、内部ギアハブ、フリーホイールまたはホイールベアリング等の他の構成要素160とを受け入れるように構成されている。従って、車両は、車輪の中心に配置された電気モータを有する自転車、及び積み荷を運搬する二輪車または三輪車等の別個の目的に使用することができる。
【0048】
車輪の1つの特徴は、複数のスポークの各々が、中脚部122および一対の外脚部121および123を備える実質的にZ字形状の断面を備えることである。更に、中脚部122の幅は、環状部からハブ部分130に向けて増加する。このようにして、スポークは、環状部分またはリムの方向に先細になる。この形状は、図1bに一点鎖曲線で示されており、これは、車輪100のスポーク120の断面を示している。更に、図1cの白い一点鎖線は、スポーク120のZプロファイルによって実現される延長された断面を示しており、これにより、スポークは、リム110からハブ130に、またはその逆に高負荷を伝達することができる。
【0049】
図2aは、車輪100の図1aに示される図に対する反対側の図を示している。隣接するスポークの各対125、126、および各スポークとリムとの交点の間に延在する環状部分110の各断面(参照番号128および116参照)は、ウィンドウ140を画定する。前記ウィンドウは、図2bに示されるように、長さb3および幅h3を有する楕円を実質的に形成する。このウィンドウ140はまた、隣接するスポーク125、126の対の外脚部123、121によって画定される半径r3によって示される略半円形の断面を形成する。
【0050】
図2aに示される実施形態は、6つのスポークと、車輪の回転軸137から疑似六角形の丸みを帯びた隅部132の外縁まで延在する半径131を有する疑似六角形ハブ部分130とを有する。従って、スポークは、隣接するスポークから同じ距離を有することが好ましい。3~5つのスポークを備えた代替的な設計も可能である。ハブ部分130の形状は、電気モータのようなより大きな構成要素を受け入れることができるように構成される。ハブ部分130のこの形状に基づいて、ウィンドウ140の楕円は、環状部分130の頂点を通る接線に平行な長手方向軸を有する略楕円形である。
【0051】
更に、図2aは、スポーク125の4つの断面A-A、B-B、C-CおよびD-Dを破線で示しており、これらは、例えば、互いに30mm離間し得る。前記断面を図2cおよび図2dにそれぞれ示す。これらの図面は、4つ全てのZ字形状断面が点対称であり、対称中心Pが中脚部122の垂直軸(破線)と長手方向軸との交点にあることを示している。
【0052】
各断面の破線は、車輪の回転軸に平行である。即ち、中脚部122は、車輪の回転軸に対して角度(α)が付けられている。この傾斜したZプロファイルは、回転軸137に平行に延在し、かつホイールディスクの中間平面に垂直である中脚部を備えたZプロファイルよりも、ホイールディスクの中間平面に関してより平坦なスポークを形成する。この文脈において、「ホイールディスク」とは、車軸またはハブ部分とリムとの間の支持部材を含む車輪の部分を意味する。中脚部122を傾斜させ、かつ、外脚部121、123を中脚部122に向けて湾曲させることによって、Z字形状断面を平坦化することは、限られた幅しか有しない環状部分の接続ラインにおいて特に有利である。
【0053】
外脚部121、123はそれぞれ、中脚部122に向けられた少なくとも1つの湾曲部分を含み、湾曲部分の半径(r1、図2dも参照)は、環状部分に向けて増加する。好ましくは、湾曲部分は、3~20mmの範囲の半径(r1)を有する。更に、切欠き応力を低減するために、外脚部または側面脚部から中脚部への移行は丸みを帯びている。
【0054】
断面C-CおよびB-Bは、スポーク120の中間部分を表しており、それらは、断面A-AおよびD-Dよりも短い長さのZプロファイルを有する。更に、中脚部の長さは、環状部分からハブ部分に向けて(断面D-DからA-Aまで)増加する。
【0055】
図2dは、それぞれハブ部分および環状部分に近い断面A-AおよびD-Dの詳細を示している。一対の外脚部121、123のそれぞれと、中脚部122とによって包囲される角度(γ)は直角よりも大きく、中脚部の長さは、環状部分からハブ部分に向けて増加する。
【0056】
図2dは、更に、中脚部122の壁厚Sを示している。各脚部の厚さは、スポークに沿って一定である。見て理解し得るように、Zプロファイルは稠密体のスポークを形成しており、中空スポークとして形成されていない。従って、比較的薄い壁を設けることにより、重量を節約することができる。好ましくは、各Z字形状断面は、1.5~5mm、好ましくは2.5~3mmの範囲の壁厚Sを有するようにする。
【0057】
図2dは、環状部分110に近い断面D-Dに、リム幅に平行な延長部t1と、リムの長手方向軸に平行な断面D-Dにおける各外脚部の延長部b1とを示している。ハブに近い断面A-Aではt1が著しく増加しているのに対し、ハブ部分130に近いb1は、環状部分110に近いb1よりも短い。
【0058】
スポークの各外脚部が隣接するスポークの脚部に接続されている故、ハブ部分130の外周に沿って、スポーク120の外脚部121、123は、少なくとも部分的に正弦波の接続ライン136を形成する。これにより、スポーク120間に滑らかな移行を提供し、波形形態が隣接する中脚部の間のセクションに限定される。
【0059】
図3aは、ホイールディスク平面に垂直であり、スポークに沿って、高さh1を有する、スポークの別の断面を示している。図3aは、ハブ部分への接合部における、図示されたスポークの外脚部123と隣接するスポーク(図示せず)との間の部分的な正弦波接続ライン136を示している。スポークt1の幅が図示され、ハブ部分130での最大延長部tlmaxと、環状部分110の底部113に近い最小延長部tlminとが示されており、ここで、tlmaxとtlminとの間の移行は連続的であり、結果的に半径r2(全長では図示されていない)を有する凹状の外線を備えた先細りのスポーク120になる。
【0060】
幅t1はハブ部分の幅t3よりも小さい。幅t1minは、環状部分のリムの最大幅よりも小さい。環状部分110は、半径方向外方に開口した中空プロファイルを有するリムを形成し、これは、各脚部に湾曲部分を有する脚部111および112のそれぞれに湾曲した形状を有する異形V字形状である。更に、矢印156および157は、2つの隣接するスポーク間に、図3bの矢印152で示されるように垂直力152が印加される場合に、スポークをねじることができることを示している。
【0061】
図3bは、スポークの長手方向軸に印加される垂直力(矢印151)および横力154のような更なる力を示す。横力(図3bの矢印154参照)は、環状部分の近くに、または曲がった経路を走行しているとき、事故で衝突した場合のリムの端縁に印加される。
【0062】
車輪に導入可能な更なるトルクが存在する。車輪が加速または回転されると、起動トルク、駆動トルクまたは加速トルクのうちの1つを含む力153が、リムの円周に沿って発生する。ディスクブレーキ135のようなブレーキをかけるための装置によって、矢印155の方向に更に反対のトルクが発生し得る。
【0063】
図4aおよび図4bは、垂直力F(矢印152参照)が、2つの隣接するスポーク125と126との間の断面において環状部分の外周に対して実質的に垂直に向けられる場合についてより詳細に示している。破線の楕円142および対応する矢印は、(スポーク125の)外脚部123および(スポーク126の)外脚部121の弾性応答を示しており、外脚部123および外脚部121は、互いに向き合い、少なくとも部分的にウィンドウ140を取り囲んでいる。図4bは、スポーク126の弾性ねじれを概略的に示しており、上方側脚部121は、ホイールディスク平面に対して上方にねじれている(一点鎖線129参照)。
【0064】
導入されたエネルギー(F、152)は、関連するスポーク部材を屈曲およびねじることによって効率的に放散することができる。即ち、各Z断面の外脚部は、高荷重を吸収するために曲率の方向に偏向し得るように構成される。これにより、互いに向き合う外脚部がそれぞれ、トーションバーと同様に偏向し、垂直方向の衝撃の荷重を両スポークに均等に分散する。高さh、長さlおよび幅bの板ばねの曲げ応力δb(トルクM/仕事W)が以下のように計算可能であることは周知である。
【0065】
δ=M/W=(6l)/(b
【0066】
このような一般的な式およびそこから導き出される式は、最大許容応力δbmaxを推定するために使用可能であり、ここで、トーションバーと同様に、ばねの長さlは、Zプロファイルの曲げ部材の長さに対応している。
【0067】
図5bは、環状部分110の製造を概略的に示す。図5aは、環状部分が、半径方向外側に向けられた2つの分岐脚部111および112を備えた中空プロファイルを含み、前記プロファイルが対称であることを示す。分岐脚部111、112の各端部は、プロファイルの対称軸に向けて内向きに突出する一体的に形成されたリムフランジ114を有する。突出したリムフランジ114によって、例えば、クリンチャータイヤ119を保持することができる(図5c参照)。
【0068】
更に、前記中空プロファイルは、前記中空プロファイルを複数のセグメントに分割する横リブ115を含む。図5aの車輪の環状部分は、12個のセグメントに分割され(破線の曲線部分参照)、各セグメントは、各セグメントの中間で半径方向外向きの軸と同じ向きを有する複数のリブ115を含む。
【0069】
この複雑なリブ115およびリムフランジ114構造を製造するには、折り畳み可能なコアを備えた放射状に配置されたスライダー(矢印118参照)を使用する必要がある。
【0070】
図6a~図6cは、複数のリブ115を備えた中空プロファイルの平面図およびバルブアダプタ117の詳細図を示す。バルブアダプタ117は、リブ構造によって形成された3つの隣接するチャンバに適合するように構成される。バルブアダプタ117の底部形状は、間に1つのチャンバを有する2つのチャンバに適合するように構成される。中間にある前記中間チャンバは、その底部に、バルブを導入するための貫通孔を有する。
【0071】
図7は、少なくとも車軸と、任意に、フリーホイール機構、ギア、ホイールハブモータおよび周囲のハウジングとを含むリアハブまたはフロントハブのシェルに挿入される構成要素160の概略断面図を示す。あるいは、示された実施形態に対して、ハブ部分130が取り付け可能な構成要素のハウジングとして少なくとも部分的に機能するように構成された場合、ハブ部分130によって受容可能なホイールハブモータ、ギアまたは任意の他の構成要素を、ハウジングなしで少なくとも部分的に挿入することができる。好ましくは、後輪ハブを駆動する電動ホイールハブモータ160は、例えば約140mmの取り付け幅Eを有する。
【0072】
更に、参照符号Fは、スルーアクスル直径(フロント/リア)の延長を示す。フロントスルーアクスルの直径は、9~20mmの範囲を含むことができ、好ましくは10mm、12mmまたは15mmを含む。リアアクスルの直径は、通常、10または12mmである。スルーアクスルは、例えばマウンテンバイクにより公知である。前記スルーアクスルは、ディスクブレーキサイクルと組み合わせることもでき、マウンテンバイクだけでなく、ロードバイクや電動バイクにも適している。
【0073】
図8は、電動ホイールハブモータ160を受け入れるように構成されたキャビティを包囲する、側面の車輪およびハブ部分130の斜視図を示す。ハブ部分は、最も広い内径DHUBを備えた疑似六角形である。疑似六角形の丸みを帯びた隅部にはそれぞれ、一対のリブ134が設けられている。前記リブ134は、ハブシェルを補強し、電気モータをハブ部分130に固定するためのねじ(図11aまたは図12aの参照符号161参照)等の接続要素を案内するために使用することができる。
【0074】
図9a~図9dは、インサート139を含む車輪およびハブ部分130の断面図、並びに断面図M-MおよびN-Nを示す。インサート139は、ハブ部分130、より具体的には、車輪の疑似六角形ハブ部分130から半径方向内向きに延在するフランジ133の頂部に固定されている。金属インサートは、少なくとも車輪軸を含む取り付け可能な構成要素を保持するのに役立つ。本例示的な実施形態では、回転軸(一点鎖線)に平行に延在するハブ部分130の壁は、インサート139と接触している(図9b参照)。
【0075】
金属インサート139の側面図および平面図を図10aおよび図10bに示す。前記金属インサート139は、インサート139をフランジ133により良く固定するために、疑似六角形の丸みを帯びた隅部132の両側に開口部138を有する。開口部は、ねじ穴166から離間する方向に先細りになり、実質的に液滴形状を形成する。インサート139は、開口部138を介して射出成形し(断面M-Mの開口部138の影付き領域を参照)、かつ、圧入および嵌合を達成するためにインサート139の少なくとも一部をバックモールドすること(参照番号163および断面N-Nの影付き領域を参照)によってハブ部分130に接続される。
【0076】
図11a~図11bは、複数の車輪構成要素の概略斜視図および分解図を示している。ディスクブレーキ135を取り付けるために設けられたねじ161のような取り付け手段が存在する。電動ホイールハブモータを含む挿入可能な構成要素160を取り付けるために、更なるねじ161を設ける。
【0077】
車輪の環状部分110に関して、図11aは、クリンチャータイヤがリムに取り付けられている場合に特に有用であるリムテープ165を示している。リムテープは、好ましくは、中空プロファイルの横リブ115上に載置され、タイヤ圧に対してインナーチューブ(図示せず)を支持するようにする。タイヤを膨張させるために、バルブアダプタ117を設ける(図6bおよび図6cも参照)。
【0078】
図11bは、取り付けられた状態の車輪を示しており、リムテープ165およびバルブアダプタ117は、環状部分110またはリムの中空プロファイルに挿入されている。ハブ部分130には、車軸および電動ホイールハブモータを含む構成要素160が挿入され、車輪の反対側には、ディスクブレーキ135が取り付けられている。
【0079】
図12a~図12cは、車輪100の取り付けまたは組み立て状態におけるハブ部分130の断面を示す。丸みを帯びた隅部132(図12c参照)のそれぞれに、ねじまたは他の取り付け手段161を導入して、構成要素160とハブ部分130との間に剛性接続を形成することができる。インサートの穴166およびハブ部分130の対応する穴を通して、ねじ161を軸方向にねじることにより、各ねじ161を金属インサート139に押し付けることができる。それによって、軸方向へのねじのプレテンションを恒久的に維持することができる。金属インサート139に接続することによって、緩和およびクリープのような熱可塑性材料の欠点を回避することができ、ハブと、車軸、電気モータ、ハブダイナモ、内部ギアハブ等の別の構成要素との間に長期的かつ安定した接続を提供することができる点が特に有利である。
【0080】
更に、内側ハブ部分130の設計、および特にリブ134の使用により、ハブシェルを補強するだけでなく、挿入可能な構成要素160の突出する相手127を取り付け位置に案内することもできる。更に、前記リブ134は、疑似六角形ハブ部分(断面B-B参照)の丸みを帯びた隅部132間に、構成要素160の外側ハウジングとハブ部分130の内壁との間にエアギャップ164を提供することを可能にする。これは、構成要素160が電気モータのような熱源を含む場合に、この空気量が分離として機能し得る故に特に有利である。
【0081】
図13aおよび図13bは、作動中の車輪の空気力学的流れを概略的に示している。車輪の回転運動を矢印167で示す。Z字形状のスポークを備えた車輪が回転すると、空気流168が始動する。例えば、加熱されたブレーキディスクまたは電気モータを通過する空気流168が存在する。従って、車輪の中心にあるハブモータのような熱源によって生成され得る熱は、熱源から空気を換気することによって効率的に低減することができる。
【0082】
図13bは、例示的なスポーク120のZ字形状断面に沿った回転している車輪(矢印149によって示される軸の周りの回転方向を参照)の場合の空気流を破線の矢印によって示す。このようにして、電気モータのような熱源の熱放射169(白色の矢印で示す)を熱源から離れるように輸送することができる。
【0083】
図14a~図14cは、片側サスペンション171および172並びに両側サスペンション170を示す。図14aに示すような両側サスペンションは、例えば、自転車のような車輪の使用を可能にする。前記両側サスペンション170が、図14bおよび図14cの片側サスペンションと組み合わされる場合、三輪車を形成することができる。更に、片側サスペンションは、例えば、任意にハブモータを1つ、2つ、または各車輪ハブに設けることができる四輪駆動車両を提供することを可能にする。従って、本発明の車輪は、複数の車両と組み合わせることができる。本発明による車輪を使用するそのような車両は、それぞれの必要性に応じて、ミッドエンジンまたはハブエンジンによって動力を供給することができる。
【0084】
結論として、本発明による車輪は、優れた安定特性を有し、カーゴサイクルおよび電動アシスト自転車やe-バイク等の電動自転車を含む幅広い用途において使用することができる。本発明による車輪は高い安全要件を満たしている故、自転車をロードサイクルとして使用することができる。特に、車輪は、1つのプロセスステップで迅速に大量生産可能であり、動作中のメンテナンスが容易である故に、フリートバイクに使用するのに適している。
【符号の説明】
【0085】
100 車輪
110 環状部分
111 リムの中空プロファイルの脚部
112 脚部111に面する脚部
113 環状部分の中空プロファイルの底部
114 内向きに突出するリムフランジ
115 リブ
116 スポーク126とリムとの交点
117 バルブアダプタ
118 スライダー
119 クリンチャータイヤ
120 スポーク
121 外脚部
122 中脚部
123 対向する外脚部
125 別のスポーク
126 隣接するスポーク
127 リブ134のための突出要素
128 スポーク125とリムとの交点
129 ホイールディスクの中間に沿った平面
130 ハブ部分
131 疑似六角形の最大半径
132 丸みを帯びた隅部
133 フランジ
134 対のリブ
135 ディスクブレーキ
136 スポークとハブ部分との間の部分的に正弦波の接続ライン
137 回転軸
138 開口部
139 金属インサート
140 ホイールディスクのウィンドウ
142 楕円
143 フランジ133の穴
149 回転軸
151 スポーク軸に印加される垂直力
152 スポーク間に印加される垂直力
153 起動トルク、駆動トルクおよび加速トルク
154 横力
155 ブレーキトルク
156 外脚部のねじれ
157 対向する外脚部のねじれ
160 例えば車軸を有する電気モータのような、挿入可能な構成要素
161 ねじ
163 インサート139の周りに部分的に成形された円周部分
164 エアギャップ
165 リムテープ
166 インサートの穴
167 回転運動
168 バルブアダプタ
169 熱放射
170 両側サスペンション
171 右側の片側サスペンション
172 左側の片側サスペンション
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a-4b】
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図14a
図14b
図14c
【国際調査報告】