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特表2022-546922抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体および抗PD-1/LAG3二重特異性抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体および抗PD-1/LAG3二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221102BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221102BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221102BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221102BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221102BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221102BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K45/00
A61P35/00
A61P31/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505588
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2020043799
(87)【国際公開番号】W WO2021021767
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】62/880,158
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(72)【発明者】
【氏名】ファヤダット-ディルマン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ヴェロニカ
(72)【発明者】
【氏名】カステライン,ロバート・エー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZC412
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA29
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、腫瘍媒介性免疫抑制に対抗することにより改善される病態の治療を提供する。より詳細には、本発明は抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体、抗PD-1/LAG3二重特異性抗体、抗LAG3抗体および抗原結合性フラグメントを提供する。本発明は癌または感染症の治療におけるこれらの抗体および抗原結合性フラグメントの方法および使用も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗PD-1抗原結合性フラグメント、
(B)(i)配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号115または156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号117のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗LAG3抗原結合性フラグメント、ならびに
(C)(i)配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号160のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号161のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号163のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号164のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT抗原結合性フラグメント
を含む抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項2】
抗PD-1抗原結合性フラグメントが、
(i)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
(iv)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1記載の抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項3】
(A)抗PD-1抗原結合性フラグメントが、配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、
(B)抗LAG3抗原結合性フラグメントが、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖可変領域と、配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、および
(C)抗TIGIT抗原結合性フラグメントが、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1記載の抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項4】
抗PD-1抗原結合性フラグメントが、配列番号85に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項3記載の抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項5】
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗PD-1重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む抗PD-1軽鎖
を含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗LAG3重鎖;および(ii)配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む抗LAG3軽鎖
を含む抗LAG3/TIGIT抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項1記載の抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項6】
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗PD-1重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む抗PD-1軽鎖
を含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗LAG3重鎖;および(ii)配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む抗LAG3軽鎖
を含む抗LAG3/TIGIT抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項1記載の抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項7】
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183Lを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗PD-1重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む抗PD-1軽鎖
を含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181Kを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗LAG3重鎖;および(ii)配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む抗LAG3軽鎖
を含む抗LAG3/TIGIT抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、抗PD-1重鎖および抗LAG3重鎖のIgG1重鎖定常領域は、351Y/405A/407V、および366I/392M/394W;351Y/405A/407V、および366L/392L/394W;351Y/405A/407V、および366L/392M/394Wからなる群から選択されるCH3突然変異のペアを更に含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項1記載の抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項8】
抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のCH2領域における234Aまたは234D;235Aまたは235D;265Sまたは265A;237A;および297A、297Qまたは297D突然変異の1以上を更に含み、ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項5~7のいずれか1項記載の抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項9】
(A)配列番号154のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗PD-1重鎖と、配列番号103のアミノ酸配列を含む抗PD-1軽鎖とを含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント、および
(B)配列番号153のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗LAG3重鎖と、配列番号98のアミノ酸配列を含む抗LAG3軽鎖とを含む抗LAG/TIGIT抗原結合性フラグメント
を含む抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項10】
(A)配列番号154のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗PD-1重鎖と、配列番号103のアミノ酸配列を含む抗PD-1軽鎖とを含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント、および
(B)配列番号153のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗LAG3重鎖と、配列番号155のアミノ酸配列を含む抗LAG3軽鎖とを含む抗LAG/TIGIT抗原結合性フラグメント
を含む抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体。
【請求項11】
(i)配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号117のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗LAG3抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項12】
配列番号97のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖可変領域と、配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項11記載の抗LAG3抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項13】
(A)(i)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗PD-1抗原結合性フラグメント、ならびに
(B)(i)配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号117のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗LAG3抗原結合性フラグメント
を含む抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体。
【請求項14】
抗PD-1抗原結合性フラグメントが、
(i)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
(iv)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項13記載の抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体。
【請求項15】
(A)抗PD-1抗原結合性フラグメントが、配列番号85に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、および
(B)抗LAG3抗原結合性フラグメントが、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖可変領域と、配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項14記載の抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体。
【請求項16】
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖
を含む抗PD-1抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および(ii)配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖
を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項13記載の抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体。
【請求項17】
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖
を含む抗PD-1抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および(ii)配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖
を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項13記載の抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体。
【請求項18】
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183Lを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖
を含む抗PD-1抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181Kを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および(ii)配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖
を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、抗PD-1抗原結合性フラグメントおよび抗LAG3抗原結合性フラグメントのIgG1重鎖定常領域は、351Y/405A/407V、および366I/392M/394W;351Y/405A/407V、および366L/392L/394W;351Y/405A/407V、および366L/392M/394Wからなる群から選択されるCH3突然変異のペアを更に含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項13記載の抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体。
【請求項19】
抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のCH2領域における234Aまたは234D;235Aまたは235D;265Sまたは265A;237A;および297A、297Qまたは297D突然変異の1以上を更に含み、ここで、突然変異はEU番号付けで示されている、請求項16~18のいずれか1項記載の抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体。
【請求項20】
(A)配列番号102のアミノ酸配列を含む抗PD-1重鎖、および配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖、ならびに
(B)配列番号96のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖、および配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖
を含む抗PD-1/LAG3二重特異性抗体。
【請求項21】
抗体またはその抗原結合性フラグメントが、CHO細胞による発現に特徴的なグリコシル化パターンを含む、請求項1~20のいずれか1項記載の抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項22】
請求項1~4および13~20のいずれか1項記載の抗体をコードする、または請求項5~12のいずれか1項記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項22記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターであって、該ポリヌクレオチドが、該ベクターでトランスフェクトされる宿主細胞により認識される制御配列に機能的に連結されている、発現ベクター。
【請求項24】
請求項23記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
チャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項24記載の宿主細胞。
【請求項26】
a.請求項1~4および13~20のいずれか1項記載の抗体をコードする、または請求項5~12のいずれか1項記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、該ポリヌクレオチドの発現に好ましい条件下で培養し、
b.抗体または抗原結合性フラグメントを宿主細胞および/または培地から回収することを含む、抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法。
【請求項27】
請求項1~21のいずれか1項記載の抗体と薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物。
【請求項28】
(i)PARPインヒビター、(ii)抗VISTA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iii)抗BTLA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iv)抗TIM3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(v)抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vi)抗HVEM抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vii)抗CD70抗体またはその抗原結合性フラグメント、(viii)抗OX40抗体またはその抗原結合性フラグメント、(ix)抗CD28抗体またはその抗原結合性フラグメント、抗PDL1抗体またはその抗原結合性フラグメント、(x)抗PDL2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xi)抗GITR抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xii)抗ICOS抗体またはその抗原結合性フラグメント、抗SIRPα抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiii)抗ILT2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiv)抗ILT3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xv)抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvi)抗ILT5抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvii)抗4-1BB抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xviii)抗NK2GA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xix)抗NK2GC抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xx)抗NK2GE抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxi)抗TSLP抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxii)抗IL10抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxiii)STINGアゴニスト、(xxiv)CXCR2アンタゴニスト、(xxv)ニューカッスル病ウイルス、(xxvi)IL-12を発現するニューカッスル病ウイルス、および(xxvii)コクサッキーウイルスA21からなる群から選択される物質を更に含む、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
a.癌の治療、または
b.感染もしくは感染症の治療
における使用のための、請求項1~21のいずれか1項記載の抗体。
【請求項30】
癌の治療または感染もしくは感染症の治療のための医薬の製造のための、請求項1~21のいずれか1項記載の抗体の使用。
【請求項31】
請求項1~21のいずれか1項記載の抗体または請求項27記載の組成物の有効量を、所望により別の治療用物質または治療手技と組合せて、対象に投与することを含む、ヒト対象における癌または感染もしくは感染症の治療方法。
【請求項32】
前記の別の治療用物質が、(i)PARPインヒビター、(ii)抗VISTA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iii)抗BTLA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iv)抗TIM3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(v)抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vi)抗HVEM抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vii)抗CD70抗体またはその抗原結合性フラグメント、(viii)抗OX40抗体またはその抗原結合性フラグメント、(ix)抗CD28抗体またはその抗原結合性フラグメント、(x)抗PDL1抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xi)抗PDL2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xii)抗GITR抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiii)抗ICOS抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiv)抗SIRPα抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xv)抗ILT2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvi)抗ILT3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvii)抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xviii)抗ILT5抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xix)抗4-1BB抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xx)抗NK2GA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxi)抗NK2GC抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxii)抗NK2GE抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxiii)抗TSLP抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxiv)抗IL10抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxv)STINGアゴニスト、(xxvi)CXCR2アンタゴニスト、(xxvii)ニューカッスル病ウイルス、(xxviii)IL-12を発現するニューカッスル病ウイルス、および(xxix)コクサッキーウイルスA21からなる群から選択される、請求項31記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体および抗PD-1/LAG3二重特異性抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-1は免疫調節における及び末梢性免疫寛容の維持における重要な分子として認識されている。PD-1は、ナイーブT、BおよびNKT細胞上で中等度に発現され、リンパ球、単球および骨髄性細胞上のT/B細胞受容体シグナリングによりアップレギュレーションされる(1)。
【0003】
PD-1に対する2つの公知リガンドであるPD-L1(B7-H1)およびPD-L2(B7-DC)は、種々の組織において生じるヒトのがん(以下、がんは癌と表記される)において発現される。例えば卵巣癌、腎臓癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝臓癌および黒色腫の大きなサンプルセットにおいて、PD-L1発現は、後続治療には無関係に、予後不良および全生存期間の短縮と相関することが示された(2~13)。同様に、腫瘍浸潤性リンパ球上のPD-1発現は乳癌および黒色腫における機能不全T細胞の指標となること(14~15)、ならびに腎癌における予後不良と相関すること(16)が判明した。したがって、PD-L1を発現する腫瘍細胞は、PD-1を発現するT細胞と相互作用して、免疫監視の回避およびT細胞活性化の低減をもたらし、それにより腫瘍に対する免疫応答の低下に関与することが提示されている。
【0004】
PD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2の一方または両方との間の相互作用を抑制する幾つかのモノクローナル抗体(mAb)が癌治療のために臨床開発中である。そのような抗体の有効性は、他の承認されている又は実験的な癌療法、例えば放射線、手術、化学療法剤、標的化療法、腫瘍において脱調節される他のシグナル伝達経路を抑制する物質および他の免疫増強剤と組合せて投与されると、増強されうることが提示されている。
【0005】
LAG3(CD223)は活性化T細胞(Huardら,Immunogenetics 39:213-217,1994)、NK細胞(Triebelら,J Exp Med 171:1393-1405,1990)、B細胞(Kisielowら,Eur J Immunol 35:2081-2088,2005)および形質細胞様樹状細胞(Workmanら,J Immunol 182:1885-1891,2009)上で発現される細胞表面分子であり、これらのリンパ球サブセットの機能において重要な役割を果たしている。また、LAG3とその主要リガンドであるクラスII MHCとの間の相互作用は樹状細胞機能のモジュレーションにおいて或る役割を果たすと考えられている(Andreaeら,J Immunol 168:3874-3880,2002)。最近の前臨床研究はCD8 T細胞枯渇におけるLAG-3の役割を実証している(Blackburnら,Nat Immunol 10:29-37,2009)。慢性ウイルス感染の場合と同様に、腫瘍抗原特異的CD4およびCD8 T細胞はエフェクター機能の低下を示し、また、炎症性サイトカインの産生の低下および抗原再刺激に対する低反応性により特徴づけられる枯渇(exhausted)表現型を示す。これは、細胞外因性メカニズム、例えば調節性(制御性)T細胞(Treg)、および細胞内因性メカニズム、例えば、枯渇した腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)上でアップレギュレーションされる抑制性分子によりもたらされる。これらの抑制性メカニズムは有効な抗腫瘍免疫に対する非常に大きな障壁に相当する。
【0006】
LAG3は寛容化TIL上で発現され、このことは、それが腫瘍媒介性免疫抑制に寄与することを示唆している。LAG3の抑制は抗原特異的T細胞の活性化の増強をもたらすことが可能であり、これにより治療上の利益が得られうる。腫瘍に対する強力な免疫応答を生成させるために使用されうる、LAG3およびPD-1の活性に拮抗する高効力治療用抗体が、当技術分野において必要とされている。
【0007】
TIGIT(IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)は、主に活性化T細胞およびNK細胞上で発現される免疫調節受容体である。TIGITはVSIG9、VSTM3、WUCAMとしても公知である。その構造は1つの細胞外免疫グロブリンドメイン、1型膜貫通領域および2つのITIMモチーフを示す。TIGITは、T細胞上の陽性(CD226)および陰性(TIGIT)免疫調節受容体ならびにAPC上で発現されるリガンド(CD155およびCD112)からなる共刺激ネットワークの一部を形成する。
【0008】
TIGITの構造における重要な特徴は、免疫受容体チロシンに基づく抑制モチーフ(ITIM)がその細胞質尾部ドメインに存在することである。PD-1およびCTLA-4の場合と同様に、TIGITの細胞質領域内のITIMドメインは、チロシンホスファターゼ、例えばSHP-1およびSHP-2をリクルートし、ついでT細胞受容体(TCR)サブユニット上のITAM(免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ)内のチロシン残基を脱リン酸化すると予想される。したがって、腫瘍細胞またはTAMSにより発現される受容体-リガンドCD155およびCD112によるTIGITの結合は、有効な抗腫瘍免疫を惹起するのに必須であるT細胞活性化およびTCRシグナリングの抑制に実質的に寄与しうる。したがって、TIGITに特異的なアンタゴニスト抗体はT細胞応答のCD155およびCD112誘導性抑制を抑制し、抗腫瘍免疫を増強しうるであろう。
【発明の概要】
【0009】
発明の概括
本発明は、CDRH2領域におけるS61Nグリコシル化部位補正(correction)および/またはG56A脱アミド部位補正(連続的番号付け)の存在下または非存在下でヒト化08Aアフィニティ(親和性)成熟Fab100重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)を含む抗PD-1抗原結合性フラグメントと、CDRL1領域におけるY31W突然変異の存在下または非存在下で抗LAG3ヒト化抗体22D2 Ab6の重鎖および軽鎖CDR領域を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントと、抗TIGITヒト化抗体31C6の重鎖および軽鎖CDR領域を含む抗TIGIT抗原結合性フラグメントとを含む抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体を提供する。
【0010】
また、本発明は、CDRH2領域におけるS61Nグリコシル化部位補正および/またはG56A脱アミド部位補正(連続的番号付け)の存在下または非存在下でヒト化08Aアフィニティ成熟Fab100重鎖および軽鎖可変領域を含む抗PD-1抗原結合性フラグメントと、CDRL1領域におけるY31W突然変異の存在下または非存在下で抗LAG3ヒト化抗体22D2 Ab6の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントと、抗TIGITヒト化抗体31C6の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗TIGIT抗原結合性フラグメントとを含む抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体を提供する。
【0011】
ある実施形態においては、抗PD-1抗原結合性フラグメントは、L145E、K147T、Q175EおよびS183L(EU番号付け)におけるCH1突然変異を含むIgG1定常領域を含む重鎖と、Q124R、T178R(EU番号付け)における突然変異を含む軽鎖カッパ定常領域とを含み、抗LAG3抗原結合性フラグメントは、S181K(EU番号付け)におけるCH1突然変異を含むIgG1定常領域を含む抗LAG3重鎖と、Q124E、S131T、T178YおよびT180Eにおける突然変異を含む抗LAG3軽鎖カッパ定常領域とを含み、ここで、突然変異はEU番号付けで示されている。
【0012】
他の実施形態においては、抗PD-1および抗LAG-3抗原結合性フラグメントのIgG1重鎖定常領域は、L351Y/F405A/Y407V、およびT366I/K392M/T394W;T350V/L351Y/F405A/Y407V、およびT350V/T366L/K392L/T394W;ならびにT350V/L351Y/F405A/Y407V、およびT350V/T366L/K392M/T394Wからなる群から選択されるCH3突然変異のペアを更に含み、ここで、突然変異はEU番号付けで示されている。
【0013】
ある実施形態においては、抗LAG-3および抗PD-1重鎖のそれぞれは、L234AまたはL234D;L235AまたはL235D;D265SまたはD265A;G237A;およびN297A、N297Q、またはN297D突然変異(CH2領域におけるもの)の1以上を含み、ここで、突然変異はEU番号付けで示されている。ある実施形態においては、抗TIGIT抗原結合性フラグメントはVL-VH形態またはVH-VL形態の単鎖Fvを含み、1つのscFvは抗PD-1重鎖定常ドメインのC末端に融合しており、1つのscFvは抗LAG-3重鎖定常ドメインのC末端に融合している。
【0014】
また、本発明は、CDRH2領域におけるS61Nグリコシル化部位補正およびG56A脱アミド部位補正(連続的番号付け)の存在下または非存在下でヒト化08Aアフィニティ成熟Fab100重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)を含む抗PD-1抗原結合性フラグメントと、CDRL1領域におけるY31W突然変異の存在下で抗LAG3ヒト化抗体22D2 Ab6の重鎖および軽鎖CDR領域を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントとを含む抗PD-1/LAG3二重特異性抗体を提供する。また、本発明は、CDRL1領域におけるY31W突然変異の存在下で抗LAG3ヒト化抗体22D2 Ab6の重鎖および軽鎖CDR領域を含む抗LAG3抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。
【0015】
また、本発明は、CDRH2領域におけるS61Nグリコシル化部位補正およびG56A脱アミド部位補正(連続的番号付け)の存在下または非存在下でヒト化08Aアフィニティ成熟Fab100重鎖および軽鎖可変領域を含む抗PD-1抗原結合性フラグメントと、CDRL1領域におけるY31W突然変異の存在下で抗LAG3ヒト化抗体22D2 Ab6の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントとを含む抗PD-1/LAG3二重特異性抗体を提供する。また、本発明は、CDRL1領域におけるY31W突然変異の存在下で抗LAG3ヒト化抗体22D2 Ab6の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗LAG3抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。
【0016】
また、本発明は、本発明で提供する抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体、抗PD-1/LAG3二重特異性抗体、抗LAG3抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかをコードする単離された核酸を提供する。また、本発明は、そのような核酸を含む発現ベクターを提供する(ここで、該ポリペプチドは、所望により、リーダー配列を含んでいてもよい)。これらの単離された核酸およびそれらを含む発現ベクターは、組換え宿主細胞において該抗体またはその抗原結合性フラグメントを発現させるために使用されうる。したがって、本発明はまた、そのような単離された核酸を含む宿主細胞を提供する。1つの実施形態においては、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞である。1つの実施形態においては、宿主細胞は酵母細胞、例えばピチア(Pichia)細胞またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】抗ヒトPD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体TsAbおよびTsAb Y31Wで処理されたJY.hPD-L1/CD155で再刺激されたCD4+ T細胞クローン4-49のIFN-γ産生。
図2図2A~F:抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体TsAbの連続的抗原(PD1、LAG3、TIGIT)結合のSPRセンサーグラム。(A)PD1、LAG3、TIGIT;(B)LAG3、PD1、TIGIT;(C)TIGIT、PD1、LAG3;(D)PD1、TIGIT、LAG3;(E)LAG3、TIGIT、PD1;(F)TIGIT、LAG3、PD1。
図3図3A~C:DiscoverX PathHunter二量体化アッセイを利用した場合、抗ヒトPD1/TIGIT/LAG3 TsAbおよびTsAb Y31W(それぞれ、ロット83BCNおよび30BCM)は、PD-1およびLAG-3(A)、PD-1およびTIGIT(B)、またはLAG-3およびTIGIT(C)に、同一細胞上で同時に結合可能である。TsAbおよびTsAb Y31Wは、3つのアッセイの全てにおいて、互いに同等の結合EC50を示す。抗ヒトLAG3/TIGIT BsAb(ロット80BCK)が対照として含まれている。化学発光シグナルを相対光単位(RLU)として正規化し、GraphPad Prismソフトウェアを使用して抗体濃度に対してプロットする。
図4】3mg/kgの抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体TsAbが投与されたアカゲザルにおけるCD4+ T細胞上の全PD-1発現。
図5】3mg/kgの抗PD-1/LAG3二重特異性抗体18ASSが投与されたアカゲザルにおけるCD4+ T細胞上の全PD-1発現。
【0018】
発明の詳細な説明
用語
本発明がより容易に理解されうるように、幾つかの科学技術用語を以下に具体的に定義する。本明細書中の他の箇所で特に定義されていない限り、本明細書中で用いる他の全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。
【0019】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書において用いる単数形の語は、文脈に明らかに矛盾しない限り、その対応複数対象物を含む。
【0020】
「投与」および「治療(処理)」は、それが動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官または生物学的流体に適用される場合には、該動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官または生物学的流体との外因性医薬、治療用物質、診断剤または組成物の接触を意味する。細胞の処理は、該細胞との試薬の接触、および該細胞に接触している流体との試薬の接触を含む。「投与」および「処理(治療)」は、試薬、診断剤、結合性化合物または別の細胞による、例えば細胞の、インビトロおよびエクスビボ(ex vivo)処理をも意味する。
【0021】
「治療する」または「治療」は、本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメントのいずれかを含有する組成物のような治療用物質を、該治療用物質が治療活性を示す疾患の症状の1以上を有する又は該疾患を有する疑いのある対象または患者に内的または外的に投与することを意味する。典型的には、該物質は、いずれかの臨床的に測定可能な度合によるそのような症状の退縮の誘導またはそのような症状の進行の抑制により、治療対象または集団における1以上の疾患症状を軽減するのに有効な量で投与される。いずれかの特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療用物質の量は患者の病態、年齢および体重、ならびに対象において所望の応答を惹起する薬物の能力のような要因によって変動しうる。疾患症状が軽減したかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価するために医師または他の熟練した医療提供者によって典型的に用いられるいずれかの臨床的尺度により評価されうる。
【0022】
本明細書中で用いる「抗体」なる語は、所望の生物活性を示す任意の形態の抗体を意味する。したがって、それは最も広い意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体(2つの軽鎖と2つの重鎖とを含む完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体およびキメラ抗体を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0023】
一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の、2つの同一ペアを含み、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識をもたらす約100~110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主にもたらす定常領域を定めうる。
【0024】
抗体に関して用いられる場合の「軽鎖」なる語は、アミノ末端部分が約100~約110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を意味する。軽鎖のおおよその長さは211~217アミノ酸である。典型的には、ヒト軽鎖はカッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖として分類される。軽鎖アミノ酸配列は当技術分野でよく知られている。軽鎖はヒト軽鎖でありうる。
【0025】
抗体に関して用いられる「重鎖」なる語は、アミノ末端部分が約120~130個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を意味する。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と称される5つの異なるタイプ(例えば、アイソタイプ)の1つでありうる。異なる重鎖はサイズにおいて異なり、α、δおよびγは約450アミノ酸を含有し、一方、μおよびεは約550アミノ酸を含有する。これらの異なるタイプの重鎖は、軽鎖と組合されると、免疫グロブリン(Ig)の5つのよく知られたクラス(例えば、アイソタイプ)、すなわち、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMを生成し、IgGの4つのサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を包含する。重鎖はヒト重鎖でありうる。
【0026】
軽鎖および重鎖においては、可変領域および定常領域は「J」領域により連結されており、重鎖は「D」領域をも含む。全般的には、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.編,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい。各軽/重鎖ペアの可変領域は抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷抗体は2つの結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体の場合を除き、それらの2つの結合部位は一般に同じである。
【0027】
「可変領域」、「可変ドメイン」、「V領域」または「Vドメイン」なる語は、軽鎖または重鎖のアミノ末端に一般に位置する抗体の軽鎖または重鎖の一部を意味し、重鎖では典型的には約112~130アミノ酸、軽鎖では典型的には約100~110アミノ酸の長さを有し、それぞれの個々の抗体の、その個々の抗原に対する結合および特異性において用いられる。重鎖の可変領域は「VH」と称されうる。軽鎖の可変領域は「VL」と称されうる。「可変」なる語は、可変領域の或るセグメントの配列が抗体間で大きく異なることを意味する。V領域は抗原結合をもたらし、個々の抗体の、その個々の抗原に対する特異性を定める。しかし、可変性は可変領域の110アミノ酸の伸長全体に均等には分布していない。そうではなく、V領域は、約15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と称される、より低い可変性(例えば、比較的に不変性)の伸長から構成され、これらは、それぞれ約6~17アミノ酸長である「超可変領域」と称される、より大きな可変性(例えば、極端な可変性)の、より短い領域によって分離されている。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、4つのFRを含み、これらは主として、ベータシート構造を連結する(幾つかの場合には、ベータシート構造の一部を形成する)ループを形成する3つの超可変領域により連結されたベータシート立体配置をとる。各鎖内の超可変領域はFRによって互いに接近して保持され、他方の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(例えば、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th ed.1991)を参照されたい)。定常領域は抗原への抗体の結合には直接的に関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)における抗体の関与を示す。可変領域は、異なる抗体間で配列において大きく異なる。特定の実施形態においては、可変領域はヒト可変領域である。
【0028】
「Kabatによる可変領域残基の番号付け」または「Kabatによるアミノ酸位置の番号付け」なる語およびその変形表現は、Kabatら(前掲)における抗体の総まとめの重鎖可変領域または軽鎖可変領域に用いられている番号付け系を意味する。この番号付け系を用いた場合、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮またはそれらへの挿入に対応する、より少ない又は追加的なアミノ酸を含有しうる。例えば、重鎖可変ドメインは残基52の後の1~3アミノ酸の挿入(例えば、Kabatに基づく残基52a、52bおよび52cなど)および残基82の後の3つの挿入残基(例えば、Kabatに基づく残基82a、82bおよび82cなど)を含みうる。残基のKabat番号付けは、抗体の配列と「標準」Kabat番号付け配列との相同性の領域におけるアラインメントにより、所与抗体に関して決定されうる。Kabat番号付け系は、一般に、可変ドメイン内の残基(軽鎖の残基約1~107および重鎖の残基1~113)に言及する場合に用いられる(例えば、Kabatら,前掲)。免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する場合には、「EU番号付け系」または「EUインデックス」が一般に用いられる(例えば、Kabatら,前掲において報告されているEUインデックス)。「KabatによるEUインデックス」はヒトIgG 1 EU抗体の残基番号付けを意味する。他の番号付け系は、例えば、AbM、Chothia、Contact、IMGTおよびAHonにより記載されている。
【0029】
典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも称される3つの超可変領域を含む。CDRは、通常、特定のエピトープへの結合が可能になるように、フレームワーク領域により整列されている。一般に、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインは、N末端からC末端方向に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の帰属は、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabatら;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothiaら(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら(1989)Nature 342:878-883の定義に基づいており、EU番号付けに関しては、Edelman,G.M.ら,Proc.Natl.Acad.USA,63,78-85(1969)を参照されたい。
【0030】
「CDR」は免疫グロブリン(Igまたは抗体)VH配列の非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2またはH3)の1つ、または抗体VL配列の非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)の1つを意味する。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は当業者によく知られており、例えば、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性の領域として、Kabatにより定義されている(Kabatら,1997,J.Biol.Chem.252:6609-16;Kabat,1978,Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(抗体のCDR領域を配列により定義している))。Chothiaは、その代わりに、構造ループの位置に言及している(例えば、ChothiaおよびLesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-17を参照されたい)。Kabat番号付け規則を用いて番号付けされた場合のChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32とH34との間で異なる(これは、Kabat番号付けスキームが該挿入をH35AおよびH35Bに配置するからである;35Aも35Bも存在しない場合には、ループは32で終了する;35Aのみが存在する場合には、ループは33で終了する;35Aと35Bとの両方が存在する場合には、ループは34で終了する)。
【0031】
CDR領域配列はAbM、ContactおよびIMGTによっても定義されている。AbM超可変領域はKabat CDRとChothia構造ループとの折衷に相当し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されている(例えば、Antibody Engineering Vol.2(Kontermann and Dubel編,2d ed.2010)を参照されたい)。「接触」超可変領域は、利用可能な複合結晶構造の分析に基づいている。カノニカル(標準)抗体可変領域内のCDRの位置は多数の構造の比較により決定されている(Al-Lazikaniら,1997,J.Mol.Biol.273:927-48;Moreaら,2000,Methods 20:267-79)。超可変領域内の残基数は抗体によって異なるため、カノニカル位置に対する追加的残基には、通常、カノニカル可変領域番号付け法における残基番号の隣にa、b、cなどの符号が付けられる(Al-Lazikaniら,前掲)。そのような命名法も同様に当業者によく知られている。
【0032】
最近、普遍的番号付け系が開発され、広く採用されている[ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)(Lafrancら,2003,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77)]。IMGTは、ヒトおよび他の脊椎動物の免疫グロブリン(IG)、T細胞受容体(TCR)および主要組織適合複合体(MHC)に特化した統合情報系である。この場合、CDRはアミノ酸配列と軽鎖または重鎖内の位置との両方に関して言及される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内のCDRの「位置」は種間で保存されており、ループと称される構造内に存在するため、可変ドメイン配列を構造的特徴に従い整列させる番号付け系を用いることにより、CDRおよびフレームワーク残基が容易に特定される。追加的な番号付け系(AHon)がHoneggerおよびPluckthun,2001,J.Mol.Biol.309:657-70により開発されている。例えばKabat番号付けおよびIMGTユニーク番号付け系を含む番号付け系の間の対応は当業者によく知られている(例えば、Kabat,前掲;ChothiaおよびLesk,前掲;Martin,前掲;Lefrancら,前掲を参照されたい)。幾つかの実施形態においては、CDRはIMGT番号付け系による定義のとおりである。他の実施形態においては、CDRはKabat番号付け系による定義のとおりである。ある実施形態においては、CDRはAbM番号付け系による定義のとおりである。他の実施形態においては、CDRはChothia系による定義のとおりである。更に他の実施形態においては、CDRはContact番号付け系による定義のとおりである。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基を以下に示す。
【表1】
【0033】
本明細書中で用いる「フレームワーク」または「FR」なる語は、CDRに隣接する可変領域残基を意味する。FR残基は、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ドメイン抗体、ジアボディ、線状抗体および二重特異性抗体に存在する。FR残基は、本明細書中でCDR残基として定義されている超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を意味する。
【0034】
「Fc」領域は、抗体のC3ドメインおよびC2ドメインを含む2つの重鎖フラグメントを含有する。それらの2つの重鎖フラグメントは、2以上のジスルフィド結合によって、そしてC3ドメインの疎水性相互作用を含む他の相互作用によって結合される。Fc領域は、例えば天然配列Fc領域、組換えFc領域および変異Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域として定義される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々でありうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、しばしば、Cys226位またはPro230のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端までの伸長として定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付け系による残基447)は、例えば、抗体の製造または精製中に、あるいは抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することにより、除去されうる。したがって、無傷抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、およびK447残基を含む抗体と含まない抗体との混合物を含有する抗体集団を含みうる。
【0035】
「定常領域」または「定常ドメイン」なる語は、抗原への抗体の結合には直接的に関与しないが、種々のエフェクター機能、例えばFc受容体との相互作用を示す、軽鎖および重鎖のカルボキシ末端部分を意味する。この用語は、抗原結合部位を含有する、免疫グロブリンの残りの部分である可変領域と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン分子の部分を意味する。定常領域は重鎖のCH1、CH2およびCH3領域と軽鎖のCL領域とを含有しうる。「IgG1定常ドメイン」には、C末端リジン(K)を含有する又は含有しない重鎖IgG1タンパク質の全アロタイプが含まれ、限定的なものではないがG1m3、G1m17,1、G1m17、G1m17,1,2、G1m(f)、G1m(z,a)およびG1m(z,a,x)が含まれる。Jefferisら,mAbs 1:4,1-7;2009の表1、ならびにLefranc GおよびLefranc MP,IMGT(登録商標),the international ImMunoGeneTics(登録商標)information system(ワールド・ワイド・ウェブ:imgt.org/textes/IMGTrepertoire/Proteins/allotypes/human/IGH/IGHC/Hu_IGHCallotypes1.html)を参照されたい。1つの実施形態においては、C末端リジンを含有しないIgG1定常ドメインは配列番号124である。
【0036】
「カッパ定常領域」には、軽鎖カッパタンパク質の全アロタイプが含まれ、限定的なものではないが、Km1、Km2およびKm3が含まれる。Jefferisら,mAbs 1:4,1-7;2009を参照されたい。1つの実施形態においては、カッパ定常ドメインは配列番号125である。
【0037】
「単鎖Fv(一本鎖Fv)」または「scFv」抗体なる語は、抗体のVドメインとVドメインとを含む抗体フラグメントを意味し、ここで、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖内に存在する。一般に、Fvポリペプチドは更に、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーを含み、これは、scFvが抗原結合のための望ましい構造を形成することを可能にする。scFvの総説として、Pluckthun(1994)The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,RosenburgおよびMoore編,Springer-Verlag,New York,pp.269-315を参照されたい。また、国際公開番号WO 88/01649ならびに米国特許第4,946,778号および第5,260,203号も参照されたい。1つの実施形態においては、scFvは、N末端からC末端の方向に、V領域、ペプチドリンカーおよびV領域を含む(VH-VL形態)。もう1つの実施形態においては、scFvは、N末端からC末端の方向に、V領域、ペプチドリンカーおよびV領域を含む(VL-VH形態)。
【0038】
本明細書中で用いる「ジアボディ」なる語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを意味し、該フラグメントは、同一ポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)(V-VまたはV-V)を含む。同一鎖上で2つのドメイン間のペア形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、それらのドメインは別の鎖の相補的ドメインとペア形成することを強要され、2つの抗原結合部位を生成する。ジアボディは、例えばEP 404,097;WO 93/11161;およびHollingerら(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444-6448に、より詳細に記載されている。操作された抗体変異体の総説としては、全般的には、HolligerおよびHudson(2005)Nat.Biotechnol.23:1126-1136を参照されたい。
【0039】
「Fab」は、重鎖のVHおよびCH1領域と、軽鎖のVLおよびCL領域とから構成され、それらは典型的にはジスルフィド結合により互いに連結され、単一の抗原結合部位を有する。Fab内のVH、CH1、VLおよびCL領域は、本開示に従い抗原結合能力を付与するために種々の様態で配置されうる。例えば、VHおよびCH1領域は1つのポリペプチド上に存在することが可能であり、VLおよびCL領域は別々のポリペプチド上に存在することが可能である。あるいは、VH、CH1、VLおよびCL領域の全てが同一ポリペプチド上に存在することが可能であり、所望に応じた種々の順序で配置されうる。
【0040】
また、本発明は抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体およびその使用方法を提供する。「抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体」は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗PD-1抗原結合性アームと、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗LAG3抗原結合性アームと、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗TIGIT抗原結合性アームとを含む。特定の実施形態においては、該三重特異性抗体は、重鎖および軽鎖を含む抗PD-1抗原結合性アームと、重鎖および軽鎖を含む抗LAG3抗原結合性アームを含むヘテロ二量体であり、ここで、重鎖のC末端のそれぞれは抗TIGIT単鎖Fvに融合している。2つの重鎖定常領域は、ヘテロ二量体形成を促進するよう、CH3領域内に突然変異を有する。
【0041】
また、本発明は抗PD-1/LAG3二重特異性抗体およびその使用方法を提供する。「抗PD-1/LAG3二重特異性抗体」は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗PD-1抗原結合性アームと、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗LAG3抗原結合性アームとを含む。特定の実施形態においては、該二重特異性抗体は、重鎖および軽鎖を含む抗PD-1抗原結合性アームと、重鎖および軽鎖を含む抗LAG3抗原結合性アームとを含むヘテロ二量体である。それらの2つの抗原結合性アームは会合して、CH3領域内に突然変異を有する2つの重鎖定常領域を介してヘテロ二量体を形成する。
【0042】
また、本発明は抗LAG3抗体またはその抗原結合性フラグメントおよびそれらの使用方法を提供する。本明細書中で用いる「抗体フラグメント」または「抗原結合性フラグメント」は、特に示されていない限り、抗体、二重特異性抗体または三重特異性抗体の抗原結合性フラグメント、すなわち、完全長抗体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保有する抗体フラグメント、例えば、1以上のCDR領域を保有するフラグメントを意味する。抗原結合性フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメント;ジアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子、例えばscFv;1つの抗原結合性アームの重鎖および軽鎖を含む半二重特異性分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
典型的には、何らかの方法で修飾された本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメントは、その活性がモル基準で表された場合、(親抗体と比較した場合に)その結合活性の少なくとも10%を保有する。ある実施形態においては、本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメントは親抗体としてのPD-1、LAG3またはTIGIT結合アフィニティの少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%または100%またはそれ以上を保有する。また、本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメントは、その生物活性を実質的に改変しない保存的または非保存的アミノ酸置換(抗体の「保存的変異体」または「機能保存変異体」と称される)を含みうると意図される。
【0044】
「単離(された)」抗体またはその抗原結合性フラグメントは、それらが産生された細胞または細胞培養からの他の生物学的分子を少なくとも部分的に含有しない。そのような生物学的分子には、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または細胞残渣および増殖培地のような他の物質が含まれる。単離された抗体または抗原結合性フラグメントは更に、宿主細胞からの又はその増殖培地の生物学的分子のような発現系成分を少なくとも部分的に含有しない。一般に、「単離(された)」なる語は、そのような生物学的分子の完全な非存在、または水、バッファーもしくは塩の非存在、または該抗体もしくはフラグメントを含む医薬製剤の成分を指すものではない。
【0045】
「単離された核酸分子」または「単離されたポリヌクレオチド」は、該単離ポリヌクレオチドが天然で見出される場合のポリヌクレオチドの全部または一部を伴っておらず、あるいはそれが天然で連結していないポリヌクレオチドに連結している、ゲノム、mRNA、cDNAもしくは合成由来またはそれらの何らかの組合せのDNAまたはRNAを意味する。本開示の目的においては、特定のヌクレオチド配列を「含む核酸分子」は無傷染色体を含まない、と理解されるべきである。特定されている核酸配列を「含む」単離された核酸分子は、特定されている配列に加えて、10個まで又は更には20個まで又はそれ以上の他のタンパク質またはその一部もしくは断片のコード配列を含むことが可能であり、あるいは、挙げられている核酸配列のコード領域の発現を制御する機能的に連結された調節配列を含むことが可能であり、および/あるいは、ベクター配列を含むことが可能である。
【0046】
「制御配列」なる語は、特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適した制御配列には、例えば、プロモーター、所望により、オペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを用いることが公知である。
【0047】
核酸またはポリヌクレオチドが「機能的に連結」されていると言えるのは、それが別の核酸配列に対して機能的な関係で配置されている場合である。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAがポリペプチドのDNAに機能的に連結されていると言えるのは、それが、該ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合であり、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列に機能的に連結されていると言えるのは、それが該配列の転写に影響を及ぼす場合であり、あるいはリボソーム結合部位がコード配列に機能的に連結されていると言えるのは、翻訳を促進するようにそれが位置している場合である。一般に(しかし常にそうである必要はないが)、「機能的に連結(されている)」は、連結されているDNA配列が連続的であり、分泌リーダーの場合には、連続的であり、かつ、リーディングフェーズにおけるものであることを意味する。しかし、エンハンサーは連続的である必要はない。連結は簡便な制限部位における連結により達成される。そのような部位が存在しない場合には、通常の慣例に従って合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが使用される。
【0048】
本明細書中で用いる「細胞」、「細胞系」および「細胞培養」なる表現は互換的に用いられ、全てのそのような表現は後代を含む。したがって、「形質転換体」および「形質転換細胞」なる語は、導入(トランスファー)の数には無関係に、初代対象細胞、およびそれに由来する培養を含む。また、意図的または偶発的な突然変異ゆえに、全ての後代が厳密に同一のDNA含量を有するわけではないと理解される。元の形質転換細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異体後代も含まれる。異なる名称が意図される場合、それは文脈から明らかであろう。
【0049】
本明細書中で用いる「生殖系列配列」は未再構成免疫グロブリンDNA配列の配列を意味する。いずれかの適切な未再構成免疫グロブリン配列源が用いられうる。ヒト生殖系列配列は、例えば、National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases of the United States National Institutes of Healthのウェブサイト上でJOINSOLVER生殖系列データベースから得られうる。マウス生殖系列配列は、例えば、Giudicelliら,(2005)Nucleic Acids Res.33:D256-D261に記載されているとおりに得られうる。
【0050】
抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体および抗原結合性フラグメント
1つの態様においては、本発明は、抗PD-1抗原結合性フラグメントと抗LAG3抗原結合性フラグメントとTIGIT抗原結合性フラグメントとを含む抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体を提供する。
【0051】
1つの実施形態においては、本発明は、
(A)(i)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(iv)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(v)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、および(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む抗PD-1抗原結合性フラグメントと、
(B)(i)配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(ii)配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(iii)配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(iv)配列番号115または156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(v)配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、および(vi)配列番号117のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントと、
(C)(i)配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(ii)配列番号160のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(iii)配列番号161のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(iv)配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(v)配列番号163のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、および(vi)配列番号164のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む抗TIGIT抗原結合性フラグメント
を含む抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体を提供する。
【0052】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1重鎖可変領域CDR2は配列番号86のアミノ酸配列を含む。
【0053】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性フラグメントは、配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、抗LAG3抗原結合性フラグメントは、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖可変領域、および配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、抗TIGIT抗原結合性フラグメントは、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0054】
更にもう1つの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性フラグメントは、配列番号85に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、抗LAG3抗原結合性フラグメントは、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖可変領域、および配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、抗TIGIT抗原結合性フラグメントは、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0055】
もう1つの態様においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体は、
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗PD-1重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む抗PD-1軽鎖
を含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗LAG3重鎖;および(ii)配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む抗LAG3軽鎖
を含む抗LAG3/TIGIT抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている。
【0056】
もう1つの態様においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体は、
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗PD-1重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む抗PD-1軽鎖
を含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗LAG3重鎖;および(ii)配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む抗LAG3軽鎖
を含む抗LAG3/TIGIT抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている。
【0057】
もう1つの態様においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体は、
(A)(i)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183Lを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗PD-1重鎖;および(ii)配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む抗PD-1軽鎖
を含む抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメント;ならびに
(B)(i)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181Kを含むIgG1定常領域(ここで、該定常領域のC末端は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗TIGIT単鎖Fvに融合している)とを含む抗LAG3重鎖;および(ii)配列番号99または165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む抗LAG3軽鎖
を含む抗LAG3/TIGIT抗原結合性フラグメントを含み、
ここで、抗PD-1重鎖および抗LAG3重鎖のIgG1重鎖定常領域は、351Y/405A/407V、および366I/392M/394W;351Y/405A/407V、および366L/392L/394W;351Y/405A/407V、および366L/392M/394Wからなる群から選択されるCH3突然変異のペアを更に含み、
ここで、突然変異はEU番号付けで示されている。
【0058】
ある実施形態においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体は、抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のCH2領域における234Aまたは234D;235Aまたは235D;265Sまたは265A;237A;および297A、297Qまたは297D突然変異の1以上を更に含み、ここで、突然変異はEU番号付けで示されている。
【0059】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体は、配列番号154のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗PD-1重鎖、および配列番号103のアミノ酸配列を含む抗PD-1軽鎖、および配列番号153のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗LAG3重鎖、および配列番号98のアミノ酸配列を含む抗LAG3軽鎖を含む。もう1つの実施形態においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体は、配列番号154のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗PD-1重鎖、および配列番号103のアミノ酸配列を含む抗PD-1軽鎖、および配列番号153のアミノ酸配列を含む抗TIGIT単鎖Fvに融合した抗LAG3重鎖、および配列番号155のアミノ酸配列を含む抗LAG3軽鎖を含む。
【0060】
もう1つの態様においては、本発明は、
(i)配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、および
(vi)配列番号117のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗LAG3抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。
【0061】
1つの実施形態においては、抗LAG3抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖可変領域と、配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。1つの実施形態においては、抗LAG3抗体または抗原結合性フラグメントは、軽鎖定常領域、例えばヒト軽鎖定常領域、例えばラムダもしくはカッパヒト軽鎖領域またはそれらの変異体を含む。例えば、限定的なものではないが、ヒト重鎖定常領域はγ4であることが可能であり、ヒト軽鎖定常領域はカッパであることが可能である。もう1つの実施形態においては、該抗体のFc領域は、Ser228Pro突然変異を有するγ4である(Schuurman,Jら,Mol.Immunol.38:1-8,2001)。幾つかの実施形態においては、種々の定常ドメインが抗LAG3抗原結合性フラグメントに連結されうる。例えば、本発明の抗体(またはフラグメント)の個々の意図される使用がエフェクター機能の改変を求めるものである場合には、ヒトIgG1以外の重鎖定常ドメインが使用可能であり、あるいはハイブリッドIgG1/IgG4が使用可能である。
【0062】
ヒトIgG1抗体は長い半減期およびエフェクター機能、例えば補体活性化および抗体依存性細胞傷害性をもたらすが、そのような活性は該抗体の全ての用途に望ましいとは限らない可能性がある。そのような場合、例えばヒトIgG4定常ドメインが使用されうる。本発明は、IgG4定常ドメインを含む抗LAG3抗体およびその抗原結合性フラグメント、例えば、アンタゴニストヒト化抗LAG3抗体およびフラグメント、ならびにそれらの使用方法を含む。1つの実施形態においては、該IgG4定常ドメインはEU系における228位およびKABAT系における241位に対応する位置において天然ヒトIgG4定常ドメイン(Swiss-Protアクセッション番号P01861.1)とは異なることが可能であり、この場合、適切な鎖内ジスルフィド結合形成を妨げうるCys106およびCys109(EU系におけるCys226およびCys229位ならびにKABAT系におけるCys239およびCys242位に対応する)間の潜在的鎖間ジスルフィド結合を妨げるために天然Ser108はProで置換される。Angalら(1993)Mol.Imunol.30:105を参照されたい。他の場合においては、半減期を増加させるために又はエフェクター機能を低減するために修飾された修飾IgG1定常ドメインが使用されうる。
【0063】
もう1つの態様においては、
(A)(i)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および
(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗PD-1抗原結合性フラグメント、ならびに
(B)(i)配列番号112のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号113のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号114のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3
を含む重鎖可変領域と、
(iv)配列番号156のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号116のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、および
(vi)配列番号117のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗LAG3抗原結合性フラグメント
を含む抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体を提供する。
【0064】
1つの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性フラグメントは、
(i)配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
(ii)配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
(iv)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
(v)配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、および
(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。
【0065】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体の場合、抗PD-1抗原結合性フラグメントは、配列番号85に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、抗LAG3抗原結合性フラグメントは、配列番号97のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖可変領域、および配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0066】
1つの実施形態においては、抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体は、(A)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖を含む抗PD-1抗原結合性フラグメント;ならびに(B)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180E(EU番号付け)を含むカッパ定常領域とを含む軽鎖を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントを含む。
【0067】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体は、(A)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183L、およびCH3突然変異350V、366L、392Lおよび394Wを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖を含む抗PD-1抗原結合性フラグメント;ならびに(B)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181K、およびCH3突然変異350V、351Y、405Aおよび407Vを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180E(EU番号付け)を含むカッパ定常領域とを含む軽鎖を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントを含む。
【0068】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体は、(A)配列番号92に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異145E、147T、175Eおよび183Lを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および配列番号20に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124Rおよび178Rを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖を含む抗PD-1抗原結合性フラグメント;ならびに(B)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、CH1突然変異181Kを含むIgG1定常領域とを含む重鎖;および配列番号165のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、Cκ突然変異124E、131T、178Yおよび180Eを含むカッパ定常領域とを含む軽鎖を含む抗LAG3抗原結合性フラグメントを含み、ここで、抗PD-1抗原結合性フラグメントおよび抗LAG3抗原結合性フラグメントのIgG1重鎖定常領域は、351Y/405A/407V、および366I/392M/394W;351Y/405A/407V、および366L/392L/394W;351Y/405A/407V、および366L/392M/394W(EU番号付け)からなる群から選択されるCH3突然変異のペアを更に含む。幾つかの実施形態においては、CH3突然変異のペアは351Y/405A/407V、および366I/392M/394Wである。幾つかの実施形態においては、CH3突然変異のペアは351Y/405A/407V、および366L/392L/394Wである。幾つかの実施形態においては、CH3突然変異のペアは351Y/405A/407V、および366L/392M/394Wである。
【0069】
1つの実施形態においては、CH3突然変異のペアは、350V/351Y/405A/407V、および366I/392M/394W;350V/351Y/405A/407V、および366L/392L/394W;ならびに350V/351Y/405A/407V、および366L/392M/394Wからなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、CH3突然変異のペアは350V/351Y/405A/407V、および366I/392M/394Wである。幾つかの実施形態においては、CH3突然変異のペアは350V/351Y/405A/407V、および366L/392L/394Wである。幾つかの実施形態においては、CH3突然変異のペアは350V/351Y/405A/407V、および366L/392M/394Wである。
【0070】
幾つかの特定の実施形態においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体は、配列番号102のアミノ酸配列を含む抗PD-1重鎖および配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖、ならびに配列番号96のアミノ酸配列を含む抗LAG3重鎖および配列番号155のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0071】
前記実施形態の1つの態様においては、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体または抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体は、抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のCH2領域における234Aまたは234D;235Aまたは235D;265Sまたは265A;237A;および297A、297Qまたは297D突然変異(EU番号付け)の1以上を更に含む。もう1つの実施形態においては、抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のIgG1重鎖定常領域はCH2領域におけるL234A、L235AおよびD265S突然変異(EU番号付け)を更に含む。もう1つの実施形態においては、抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のIgG1重鎖定常領域は、CH2領域におけるL234A、L235AおよびD265A突然変異(EU番号付け)を更に含む。更にもう1つの実施形態においては、抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のIgG1重鎖定常領域は、CH2領域におけるL234A、L235AおよびG237A突然変異(EU番号付け)を更に含む。もう1つの実施形態においては、抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のIgG1重鎖定常領域は突然変異N297A、N297QまたはN297D(EU番号付け)を更に含む。前記実施形態のもう1つの態様においては、抗LAG3重鎖および/または抗PD-1重鎖のIgG1定常ドメインはM252Y、S254TおよびT256E突然変異(EU番号付け)を更に含む。1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、哺乳類細胞による発現に特徴的なグリコシル化パターンを含む。
【0072】
更にもう1つの態様においては、本発明は、前記の抗体または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を提供する。1つの実施形態においては、該組成物は、(i)抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント、(ii)抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iii)抗VISTA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iv)抗BTLA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(v)抗TIM3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vi)抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vii)抗HVEM抗体またはその抗原結合性フラグメント、(viii)抗CD70抗体またはその抗原結合性フラグメント、(ix)抗OX40抗体またはその抗原結合性フラグメント、(x)抗CD28抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xi)抗PDL1抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xii)抗PDL2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiii)抗GITR抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiv)抗ICOS抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xv)抗SIRPα抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvi)抗ILT2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvii)抗ILT3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xviii)抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xix)抗ILT5抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xx)抗4-1BB抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxi)抗NK2GA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxii)抗NK2GC抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxiii)抗NK2GE抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxiv)抗TSLP抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxv)抗IL10抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxvi)STINGアゴニスト、(xxvii)CXCR2アンタゴニスト、(xxviii)PARPインヒビター、(xxix)ニューカッスル病ウイルス;(xxx)IL-12を発現するニューカッスル病ウイルス、および(xxxi)コクサッキーウイルスA21からなる群から選択される物質(因子)を更に含む。
【0073】
1つの実施形態においては、該物質は抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗TIGIT抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗VISTA抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗BTLA抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗TIM3抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗HVEM抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗CD70抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗OX40抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗CD28抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗PDL1抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗PDL2抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗GITR抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ICOS抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗SIRPα抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT2抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT3抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT5抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗4-1BB抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗NK2GA抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗NK2GE抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗IL10抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗TSLP抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質はSTINGアゴニストである。1つの実施形態においては、該物質はCXCR2アンタゴニストである。1つの実施形態においては、該物質はPARPインヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はニューカッスル病ウイルスである。1つの実施形態においては、該物質は、IL-12を発現するニューカッスル病ウイルスである。1つの実施形態においては、該物質は、IL-2を発現するニューカッスル病ウイルスである。1つの実施形態においては、該物質は、GM-CSFを発現するニューカッスル病ウイルスである。1つの実施形態においては、該物質はコクサッキーウイルスである。1つの実施形態においては、該物質はA群コクサッキーウイルスである。1つの実施形態においては、該物質はコクサッキーウイルスA21である。
【0074】
例示的な抗体の物理的および機能的特性
「保存的に修飾された変異体」または「保存的置換」は、タンパク質におけるアミノ酸が、類似特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、バックボーンコンホメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換されることを意味し、該変化は、しばしば、該タンパク質の生物活性を変化させることなく施されうる。一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変化させない、と当業者は認識している(例えば、Watsonら(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい)。また、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物活性を損なう可能性が低い。典型的な保存的置換を表1に示す。
【表2】
【0075】
本発明で提供される抗体の機能保存的変異体も想定される。本明細書中で用いる「機能保存的変異体」は、抗原アフィニティおよび/または特異性のような所望の特性を変化させることなく、1以上のアミノ酸残基が改変されている、抗体またはフラグメントを意味する。そのような変異体は、類似特性を有するアミノ酸でのアミノ酸の置換、例えば、表1の保存的アミノ酸置換を含むが、これらに限定されるものではない。また、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個まで又はそれ以上のアミノ酸置換を例えばフレームワーク領域内に有する単離された抗PD-1/LAG3/TIGIT、抗PD-1/LAG3、抗LAG3抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。
【0076】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチド
また、本発明は、本発明で提供される抗PD-1/LAG3/TIGIT、抗PD-1/LAG3、抗LAG3抗体またはその抗原結合性フラグメントのポリペプチドまたは免疫グロブリン鎖のいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0077】
1つの実施形態においては、例えば配列番号153、154、155、156または165のような、本明細書に記載されている単離された三重特異性抗体または抗原結合性フラグメントのポリペプチド鎖、可変領域、CDR領域をコードする単離されたポリヌクレオチド、例えばDNAを提供する。1つの実施形態においては、単離されたポリヌクレオチドは、本発明で提供される1つの成熟免疫グロブリン抗PD-1軽鎖と、本発明で提供される抗TIGIT scFvに融合した本発明で提供される1つの成熟免疫グロブリン抗PD-1重鎖とを含むその抗PD-1/TIGIT抗原結合性フラグメントをコードする。1つの実施形態においては、単離されたポリヌクレオチドは、本発明で提供される1つの成熟免疫グロブリン抗LAG3軽鎖と、本発明で提供される抗TIGIT scFvに融合した本発明で提供される1つの成熟免疫グロブリン抗LAG3重鎖とを含むその抗LAG3抗原結合性フラグメントを更にコードする。他の実施形態においては、抗PD-1軽鎖、抗TIGIT scFvに融合した抗PD-1重鎖、抗LAG3軽鎖、および抗TIGIT scFvに融合した抗LAG3重鎖は別々のポリヌクレオチド分子上でコードされる。もう1つの実施形態においては、ポリヌクレオチドはシグナル配列を更にコードする。
【0078】
また、本発明は、単離されたポリヌクレオチドを含むベクター、例えば発現ベクター、例えばプラスミドを提供し、ここで、該ポリヌクレオチドは、宿主細胞がベクターでトランスフェクトされた場合に宿主細胞により認識される制御配列に機能的に連結されている。また、ベクターを含む宿主細胞、および本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはポリペプチドの製造方法を提供し、該製造方法は、該抗体またはその抗原結合性フラグメントの免疫グロブリン鎖をコードする発現ベクターまたは核酸を含有する宿主細胞を培地内で培養し、該抗体またはその抗原結合性フラグメントを宿主細胞または培地から単離することを含む。
【0079】
抗体およびその抗原結合性フラグメントの製造方法
本明細書に開示されている抗体は組換え法によって(例えば、大腸菌(E.coli)/T7発現系、哺乳類細胞発現系または下等真核生物発現系において)も製造されうる。1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体分子(例えば、scFv、VまたはV)をコードする核酸をpET系プラスミド内に挿入し、大腸菌(E.coli)/T7系内で発現させることが可能である。幾つかの実施形態においては、本発明は、抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその免疫グロブリン鎖を宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)、例えば、BL21またはBL21DE3)内で発現させるための方法を提供し、該方法は、T7プロモーターに機能的に連結された免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドをも含む細胞内でT7 RNAポリメラーゼを発現させることを含む。1つの実施形態においては、細菌宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)は、lacプロモーターに機能的に連結されたT7 RNAポリメラーゼ遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、IPTG(イソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド)の存在下の該宿主細胞のインキュベーションにより該ポリメラーゼおよび該鎖の発現が誘導される。
【0080】
当技術分野で公知である組換え抗体を製造するための幾つかの方法が存在する。抗体の組換え製造のための方法の一例は米国特許第4,816,567号に開示されている。
【0081】
形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入するためのいずれかの公知方法により行われうる。哺乳類細胞内に異種ポリヌクレオチドを導入するための方法は当技術分野でよく知られており、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内へのポリヌクレオチドの封入、遺伝子銃注入および核内へのDNAの直接マイクロインジェクションを包含する。また、ウイルスベクターにより哺乳類細胞内に核酸分子を導入することが可能である。細胞を形質転換する方法は当技術分野でよく知られている。例えば、米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号および第4,959,455号を参照されたい。
【0082】
したがって、本発明はまた、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその免疫グロブリン鎖の組換え製造方法を提供し、該製造方法は、該抗体またはフラグメントの免疫グロブリン鎖(例えば、重鎖および/または軽鎖免疫グロブリン鎖、scFv)の1以上をコードするポリヌクレオチドを導入し、そのような発現に好ましい条件下で宿主細胞[例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはピチア(Pichia)またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)]を培養することを含む。ある実施形態においては、該方法は、該宿主細胞から、および/または該宿主細胞を増殖させた培地から、該抗体またはフラグメントまたは免疫グロブリン鎖を単離することを更に含む。
【0083】
本明細書に開示されている抗体またはフラグメントまたは免疫グロブリン鎖の発現のための宿主としての、哺乳類細胞を含む真核宿主細胞および原核宿主細胞は当技術分野でよく知られており、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞系を包含する。これらは、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞および多数の他の細胞系を包含する。哺乳類宿主細胞はヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、イヌ細胞、サル細胞、ブタ細胞、ヤギ細胞、ウシ細胞、ウマ細胞およびハムスター細胞を包含する。特に好ましい細胞系は、どの細胞系が高い発現レベルを有するのかを決定することにより選択される。使用されうる他の細胞系としては、昆虫細胞系、例えばSf9細胞、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞が挙げられる。真菌細胞には、例えば以下のものを含む酵母および糸状菌細胞が含まれる:ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラメ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタエア・ミヌタ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチエ(Pichia opuntiae)、ピチア・テルモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピチア・ピエペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スチプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア属種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クライベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)、クライベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ルックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)。ピチア属種(Pichia sp.)、任意のサッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、任意のクライベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、任意のアスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、トリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ルックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、任意のフザリウム属種(Fusarium sp.)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)。重鎖またはその抗原結合性部分もしくはフラグメント、軽鎖および/またはその抗原結合性フラグメント、あるいはscFvをコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞内に導入する場合、該宿主細胞における該抗体もしくはフラグメントもしくは鎖の発現、または該宿主細胞が培養される培地内への分泌を可能にするのに十分な時間にわたって該宿主細胞を培養することにより、該抗体を製造する。
【0084】
抗体およびその抗原結合性フラグメントおよび免疫グロブリン鎖は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収されうる。更に、生産細胞系からの抗体およびその抗原結合性フラグメントおよび免疫グロブリン鎖(またはそれからの他の部分)の発現は、幾つかの公知技術を用いて増強されうる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、一定条件下で発現を増強するための一般的アプローチである。GS系は欧州特許第0 216 846号、第0 256 055号および第0 323 997号ならびに欧州特許出願第89303964.4号において全体的または部分的に考察されている。したがって、1つの実施形態においては、哺乳類宿主細胞(例えば、CHO)はグルタミンシンテターゼ遺伝子を欠いており、グルタミンの非存在下の培地内で増殖されるが、この場合、該免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞における該遺伝子の欠如を相補するグルタミンシンテターゼ遺伝子を含む。
【0085】
一般に、個々の細胞系またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質は、該細胞系またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質に特徴的なグリコシル化パターンのセットを有するであろう。したがって、抗体の個々のグリコシル化パターンは、該抗体を製造するために使用される個々の細胞系またはトランスジェニック動物に左右されるであろう。しかし、抗体グリコシル化パターンには無関係に、本発明で提供されるアミノ酸配列を含む全ての抗体が想定される。同様に、特定の実施形態においては、非フコシル化N-グリカンのみを含むグリコシル化パターンを有する抗体が有利でありうる。なぜなら、これらの抗体は、インビトロおよびインビボの両方において、それらのフコシル化対応物より高い効力を典型的に示すことが示されているからである(例えば、Shinkawaら,J.Biol.Chem.278:3466-3473(2003);米国特許第6,946,292号および第7,214,775号を参照されたい)。非フコシル化N-グリカンを有するこれらの抗体が免疫原性である可能性は低い。なぜなら、それらの炭水化物構造は、ヒト血清IgGに存在する集団の正常成分であるからである。
【0086】
免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、種々のクラスに帰属されうる。幾つかの実施形態においては、異なる定常ドメインがV、VまたはV-V領域に付加されうる。免疫グロブリンの、少なくとも5つの主要クラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらの幾つかは更に、サブクラス(サブタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4;IgA1およびIgA2に分類されうる。
【0087】
1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは重鎖定常領域、例えばヒト定常領域、例えばγ1、γ2、γ3もしくはγ4ヒト重鎖定常領域またはそれらの変異体を含む。もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、軽鎖定常領域、例えばヒト軽鎖定常領域、例えばラムダもしくはカッパヒト軽鎖領域またはそれらの変異体を含む。
【0088】
1つの実施形態においては、抗PD-1/LAG3二重特異性抗体または抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体はIgG1サブタイプの重鎖定常領域を含む。もう1つの実施形態においては、抗PD-1および/または抗LAG3アームのIgG1重鎖定常領域はL234AまたはL234D;L235AまたはL235D;D265SまたはD265A;およびG237A突然変異(CH2領域におけるもの)(EU番号付け)の1以上を更に含む。もう1つの実施形態においては、抗PD-1および/または抗LAG3アームのIgG1重鎖定常領域は突然変異N297A、N297DまたはN297Q(EU番号付け)を更に含む。
【0089】
抗PD-1/LAG3二重特異性抗体または抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体の他の態様においては、抗PD-1および抗LAG3アームのIgG1重鎖定常領域は、L351Y/F405A/Y407Vの1以上の突然変異およびT366I/K392M/T394Wの1以上の突然変異;T350V/L351Y/F405A/Y407Vの1以上の突然変異およびT350V/T366L/K392L/T394Wの1以上の突然変異;ならびにT350V/L351Y/F405A/Y407Vの1以上の突然変異およびT350V/T366L/K392M/T394Wの1以上の突然変異(EU番号付け)からなる群から選択されるCH3突然変異のペアを更に含む。もう1つの実施形態においては、抗PD-1アームのIgG1重鎖定常領域はT350V/L351Y/F405A/Y407VのCH3突然変異を更に含み、抗LAG3アームのIgG1重鎖定常領域はCH3突然変異T350V/T366L/K392M/T394Wを更に含む。もう1つの実施形態においては、抗LAG3アームのIgG1重鎖定常領域はT350V/L351Y/F405A/Y407VのCH3突然変異を更に含み、抗PD-1アームのIgG1重鎖定常領域はCH3突然変異T350V/T366L/K392M/T394Wを更に含む。更にもう1つの実施形態においては、抗PD-1アームのIgG1重鎖定常領域はL351Y/F405A/Y407VのCH3突然変異を更に含み、抗LAG3アームのIgG1重鎖定常領域はCH3突然変異T366L/K392M/T394Wを更に含む。更にもう1つの実施形態においては、抗LAG3アームのIgG1重鎖定常領域はL351Y/F405A/Y407VのCH3突然変異を更に含み、抗PD-1アームのIgG1重鎖定常領域はCH3突然変異T366L/K392M/T394Wを更に含む。抗PD-1アームおよび抗LAG3アームの重鎖定常領域におけるこれらの突然変異は二重特異性抗体のヘテロ二量体形成を促進する。WO2012058768およびWO2013063702を参照されたい。二重特異性抗体のヘテロ二量体形成を促進する他のCH3突然変異には、WO2012058768、WO2013063702、US5731168、US8592562、US9828619、US9248181またはWO2012131555(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているものが含まれる。
【0090】
もう1つの実施形態においては、抗PD-1重鎖はL145E、K147T、Q175EおよびS183LにおけるCH1突然変異を更に含み、抗PD-1軽鎖はQ124R、T178RにおけるCκ突然変異を含み、抗LAG3重鎖はS181KにおけるCH1突然変異、Q124E、S131T、T178YおよびT180E(EU番号付け)における軽鎖Cκ突然変異(EU番号付け)を更に含む。もう1つの実施形態においては、抗PD-1重鎖は更に、Q39E、L145E、K147TおよびQ175EにおけるFRおよびCH1突然変異を含み、抗PD-1軽鎖はQ38R、Q124R、Q160KおよびT178RにおけるFRおよびCκ突然変異を含み、抗LAG3重鎖はQ39R、H168R、Q175KにおけるFRおよびCH1突然変異、Q38E、Q124E、Q160EおよびT180E(EU番号付け)における軽鎖FRおよびCκ突然変異を更に含む。これらの突然変異は抗PD-1重鎖および軽鎖ならびに抗LAG3重鎖および軽鎖の適切なペア形成を助ける。WO2015181805を参照されたい。適切な軽鎖および重鎖のペア形成を促進する他のCH1およびCκ突然変異には、WO2015181805、WO2016172485、WO2015173756、US20160039947、WO2014124326、US20140154254またはUS20140370020(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されているものが含まれる。
【0091】
抗体の操作
本発明で提供される配列の可変ドメイン内のフレームワーク残基に対する修飾を含むように、例えば、該抗体またはフラグメントの特性を改善するために、該抗体およびその抗原結合性タンパク質が、操作(改変)された抗体である実施形態が更に含まれる。典型的には、そのようなフレームワーク修飾は、該抗体またはフラグメントの免疫原性を低下させるために行われる。これは通常、親(例えば、げっ歯類)抗体またはフラグメントにおける可変ドメイン内の非CDR残基(すなわち、フレームワーク残基)を、該抗体が使用されることになる種の免疫レパトワからの類似残基、例えば、ヒト用治療用物質の場合にはヒト残基で置換することにより達成される。そのような抗体またはフラグメントは「ヒト化」抗体またはフラグメントと称される。1つのアプローチは、1以上のフレームワーク残基を対応ヒト生殖系列配列へと突然変異させることである。より詳しくは、体細胞突然変異を受けた抗体またはフラグメントは、該抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有しうる。そのような残基は、該抗体またはフラグメントが由来するヒト生殖系列配列と親抗体またはフラグメントのフレームワーク配列を比較することにより特定されうる。もう1つのアプローチは、該操作(例えば、ヒト化)抗体の位置の1以上において元の親(例えば、げっ歯類)残基へと復帰させること、例えば、フレームワーク残基の置換の過程において喪失した可能性がある結合アフィニティを回復させることである(例えば、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,585,089号および米国特許第5,530,101号を参照されたい)。
【0092】
ある実施形態においては、該抗体およびその抗原結合性フラグメントを、それらの特性を改善するためにフレームワークおよび/またはCDRにおける修飾を含むように、操作(例えば、ヒト化)する。そのような操作される変化は分子モデリングに基づくことが可能である。抗体の構造的特徴を理解するために、親(非ヒト)抗体配列の可変領域に関する分子モデルを構築し、それを使用して、抗原と相互作用しうる抗体上の潜在的領域を特定することが可能である。通常のCDRは免疫グロブリン配列のアライメントおよび可変領域の特定に基づく。Kabatら,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabatら;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242;Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら,(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616。Chothiaらは抗体の結晶構造におけるループのコンホメーションを注意深く調べ、超可変ループを提示した。Chothiaら,(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら,(1989)Nature 342:878-883。「CDR」および「超可変ループ」として分類されている領域の間には変異が存在する。後の研究(Raghunathanら,(2012)J.Mol Recog.25,3,103-113)は幾つかの抗体-抗原結晶複合体を分析し、抗体内の抗原結合領域が「CDR」残基または「超可変」ループに必ずしも厳密には合致しないことを観察した。抗原に潜在的に結合しうる領域の選択を導くために、非ヒト抗体の可変領域に関する分子モデルが使用されうる。実際、モデルに基づく潜在的抗原結合領域は通常の「CDR」または「超可変」ループとは異なる。市販の科学的ソフトウェア、例えばMOE(Chemical Computing Group)が分子モデリングに使用されうる。フレームワーク内とCDR内との両方の非ヒト配列との最良マッチに基づいて、ヒトフレームワークが選択されうる。VH内のFR4(フレームワーク4)に関しては、ヒト生殖系列におけるVJ領域を対応非ヒト領域と比較する。VLにおけるFR4(フレームワーク4)の場合、ヒト生殖系列配列のJ-カッパおよびJ-ラムダ領域を対応非ヒト領域と比較する。適切なヒトフレームワークが特定されたら、選択されたヒトフレームワーク内にCDRをグラフティングする。幾つかの場合には、VL-VH境界における或る残基が非ヒト(親)配列の場合と同様に保持されうる。CDRのコンホメーション、ひいては抗原への結合を潜在的に改変しうる残基を特定するためにも、分子モデルが使用されうる。幾つかの場合には、これらの残基は非ヒト(親)配列の場合と同様に保持される。望ましくない効果、例えばグリコシル化、脱アミド化および酸化をもたらしうる溶媒露出アミノ酸を特定するためにも、分子モデルが使用されうる。これらの潜在的問題を排除/最小化するために、設計段階の初期に、デベロパビリティフィルターが導入されうる。
【0093】
もう1つのタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内または更には1以上のCDR領域内の1以上の残基を突然変異させて、T細胞エピトープを除去し、それにより該抗体の潜在的免疫原性を低下させることを含む。このアプローチは「脱免疫化(deimmunization)」とも称され、米国特許第7,125,689号に更に詳細に記載されている。
【0094】
特定の実施形態においては、脱アミド化または異性化を避けるために、最終的な抗体の、より高い化学的安定性を得るために、露出側鎖を含有する或るアミノ酸を別のアミノ酸残基へと変化させることが望ましいであろう。アスパラギンおよびグルタミンの脱アミド化/異性化はDG、NG、NS、NA、NT、QGまたはQS配列上で生じ、イソアスパラギン酸残基の生成をもたらす可能性があり、該残基はポリペプチド鎖内にねじれ(キンク)を導入し、その安定性を低下させる(イソアスパラギン酸効果)。異性化はDG、DS、DAまたはDT配列において生じうる。ある実施形態においては、本開示の抗体は脱アミド化またはアスパラギン異性部位を含有しない。1つの実施形態においては、抗PD1重鎖CDRH2は、脱アミド化部位を除去するためのG56A補正を含む。
【0095】
例えば、特にCDR内の、いずれかのAsn-Gly配列におけるイソアスパルタートの形成の可能性を低減するために、アスパラギン(Asn)残基はGlnまたはAlaへと改変されうる。同様の問題はAsp-Gly配列においても生じうる。ReissnerおよびAswad(2003)Cell.Mol.Life Sci.60:1281。イソアスパルタート形成は抗体のその標的抗原への結合を減弱し、または完全に阻止しうる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731,p.734を参照されたい。1つの実施形態においては、該アスパラギンはグルタミン(Gln)へと改変される。小さなアミノ酸がアスパラギンまたはグルタミンに隣接して存在する場合にはより高い率で生じる脱アミド化の可能性を低減するために、アスパラギン(Asn)またはグルタミン(Gln)残基に隣接したアミノ酸を改変することも望ましいかもしれない。Bischoff & Kolbe(1994)J.Chromatog.662:261を参照されたい。また、抗原結合アフィニティを低減しうる、そしてまた、最終抗体調製物における分子不均一性に寄与しうるメチオニン硫黄の酸化の可能性を低減するために、CDR内のいずれかのメチオニン残基(典型的には溶媒露出Met)がLys、Leu、AlaまたはPheまたは他のアミノ酸へと改変されうる(同誌)。また、Asn-Proペプチド結合の潜在的な切断を妨げ又は最小にするために、CDRにおいて見出されるいずれかのAsn-Proの組合せをGln-Pro、Ala-ProまたはAsn-Alaへと改変することが望ましいかもしれない。ついで、そのような置換を有する抗体をスクリーニングして、該置換がTIGIT、PD-1またはLAG3に対する抗体のアフィニティもしくは特異性または他の所望の生物活性を、許容し得ないレベルに低減しないことを確認する。
【表3】
【0096】
Fc領域の抗体操作
本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメントはまた、Fc領域内の修飾を含むように、典型的には、該抗体の特性、例えば血清半減期、補体固定、Fc受容体結合および/またはエフェクター機能(例えば、抗原依存性細胞傷害性)の1以上を変化させるために操作(改変)されうる。更に、本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメントは化学的に修飾可能であり(例えば、1以上の化学的部分が該抗体に結合可能である)、あるいは、再び該抗体またはフラグメントの特性の1以上を改変するために、そのグリコシル化を改変するように修飾されうる。これらの実施形態のそれぞれは後記に更に詳細に記載されている。Fc領域内の残基の番号付けはKabatのEUインデックスのものである。
【0097】
本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメントはまた、改変されたエフェクター機能をもたらすための、修飾(または遮断)されたFc領域を有する抗体およびフラグメントをも含む。例えば、米国特許第5,624,821号;WO2003/086310;WO2005/120571;WO2006/0057702を参照されたい。そのような修飾は、診断および療法における可能な有益な効果を伴って、免疫系の種々の反応を増強または抑制するために用いられうる。Fc領域の改変には、アミノ酸変化(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル化および複数のFcの付加が含まれる。Fcに対する変化はまた、治療用抗体における抗体の半減期を改変することが可能であり、それほど頻繁でない投与ならびにそれによる便利さの向上および物資の使用の減少を可能にする。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731,p.734-35を参照されたい。
【0098】
1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、重鎖定常領域のヒンジ領域内の228位に対応する位置におけるセリンからプロリンへの突然変異(S228P;EUインデックス)を含むIgG4アイソタイプ抗体またはフラグメントである。この突然変異はヒンジ領域内の重鎖間ジスルフィド架橋の不均一性を排除することが報告されている(Angalら,前掲;241位はKabat番号付け系に基づく)。
【0099】
1つの実施形態においては、ヒンジ領域は、該ヒンジ領域内のシステイン残基の数が増加または減少するように修飾される。このアプローチは米国特許第5,677,425号に更に詳細に記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の集合を促進させるために、または抗体の安定性を増強もしくは低減するために改変される。
【0100】
もう1つの実施形態においては、抗体または抗原結合性フラグメントのFcヒンジ領域は、該抗体またはフラグメントの生物学的半減期を減少させるために突然変異される。より詳細には、該抗体またはフラグメントが、天然FcヒンジドメインSpA結合と比べて低減したスタヒロコッカスプロテインA(SpA)結合を示すように、Fc-ヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン境界領域内に1以上のアミノ酸突然変異が導入される。このアプローチは米国特許第6,165,745号に更に詳細に記載されている。
【0101】
もう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントは、その生物学的半減期を増加させるために修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば、米国特許6,277,375号に記載されているとおり、以下の突然変異の1以上が導入されうる:T252L、T254S、T256F。あるいは、米国特許第5,869,046号および第6,121,022号に記載されているとおり、生物学的半減期を増加させるために、該抗体は、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取られたサルベージ(salvage)受容体結合性エピトープを含有するようにCH1またはCL領域内で改変されうる。
【0102】
更に他の実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントのエフェクター機能を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することにより、Fc領域を改変する。例えば、該抗体がエフェクターリガンドに対する改変されたアフィニティを有し、親抗体の抗原結合能を保有するように、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1以上のアミノ酸が別のアミノ酸残基で置換されうる。アフィニティが改変されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分でありうる。このアプローチは米国特許第5,624,821号および第5,648,260号に更に詳細に記載されている。
【0103】
もう1つの実施形態においては、該抗体がC1q結合の変化および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)の低減もしくは消失を示すように、アミノ酸残基329、331および332から選択される1以上のアミノ酸が別のアミノ酸残基で置換されうる。このアプローチは米国特許第6,194,551号に詳細に記載されている。
【0104】
もう1つの実施形態においては、アミノ酸231位および239位における1以上のアミノ酸残基を改変し、それにより、補体を固定する該抗体の能力を改変する。このアプローチはPCT公開WO94/29351に更に詳細に記載されている。
【0105】
更にもう1つの実施形態においては、該抗体または抗原結合性フラグメントが抗体依存性細胞傷害性(ADCC)をもたらす能力を低減するために、および/またはFcγ受容体に対する該抗体またはフラグメントのアフィニティを低減するために、以下の位置:238、239、243、248、249、252、254、255、256、258、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439位における1以上のアミノ酸を修飾することにより、Fc領域を修飾する。このアプローチはPCT公開WO 00/42072に更に詳細に記載されている。更に、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位が位置決定されており、改善した結合を示す変異体が記載されている(Shieldsら(2001)J.Biol.Chem.276:6591-6604を参照されたい)。
【0106】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体がエフェクター機能をもたらす能力を低減するために、および/または抗炎症特性を増強するために、残基243および264を修飾することにより、Fc領域を修飾する。1つの実施形態においては、243位および264位における残基をアラニンへと変化させることにより、該抗体またはフラグメントのFc領域を修飾する。1つの実施形態においては、該抗体またはフラグメントがエフェクター機能をもたらす能力を低減するために、および/または抗炎症特性を増強するために、残基243、264、267および328を修飾することにより、Fc領域を修飾する。
【0107】
エフェクター機能の調節
本明細書中で用いる「エフェクター機能」なる語は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、補体依存性細胞傷害活性(CDC)媒介性応答、Fc媒介性食作用または抗体依存性細胞食作用(ADCP)、およびFcRn受容体を介した抗体リサイクリングの1以上を意味すると意図される。
【0108】
抗原結合性タンパク質の定常領域と種々のFc受容体(FcR)[FcガンマR1(CD64)、FcガンマRII(CD32)およびFcガンマRIII(CD16)を含む]との間の相互作用が抗原結合性タンパク質のエフェクター機能、例えばADCCおよびCDCをもたらすと考えられている。Fc受容体は抗体架橋にも重要であり、これは抗腫瘍免疫に重要でありうる。
【0109】
エフェクター機能は、例えば、ADCCエフェクター機能を測定するための、ナチュラルキラー細胞へのFcガンマRIIIの結合または単球/マクロファージへのFcガンマRIの結合による方法を含む幾つかの方法で測定されうる。ある実施形態においては、本発明で提供される抗原結合性タンパク質はナチュラルキラー(NK)細胞アッセイにおいてADCCエフェクター機能に関して評価されうる。そのようなアッセイの例はShieldsら,2001 J.Biol.Chem.,Vol.276,p 6591-6604;Chappelら,1993 J.Biol.Chem.,Vol 268,p 25124-25131;Lazarら,2006 PNAS,103;4005-4010において見出されうる。
【0110】
本発明で提供される抗体のADCCもしくはCDCの特性またはそれらの架橋特性は幾つかの方法で低減されうる。残基Asn297におけるグリコシル化の改変または特異的突然変異を含有するヒトIgG1定常領域はFc受容体への結合を低減することが示されている。他の場合においては、これらの突然変異はADCCおよびCDCを増強することも示されている(Lazarら,2006,PNAS,103;4005-4010;Shieldsら,J Biol Chem 2001,276;6591-6604;Nechanskyら,2007,Mol Immunol.,44;1815-1817)。また、L234AまたはL235A、L236A、G237A突然変異はFcγRII認識の低減をもたらす。Lundら,1991,J of Immunol,147,2657-2663。1つの実施形態においては、そのような突然変異は、239、332および330位(IgG1)または他のIgGアイソタイプにおける同等位置から選択される位置の1以上に存在する。適切な突然変異の例としては、S239DおよびI332EおよびA330Lが挙げられる。1つの実施形態においては、本発明で提供される抗原結合性タンパク質は239および332位において突然変異している(例えば、S239DおよびI332E)。もう1つの実施形態においては、本発明で提供される抗原結合性タンパク質は、239および332および330から選択される3以上の位置において突然変異している(例えば、S239DおよびI332EおよびA330L(EUインデックスの番号付け))。
【0111】
修飾グリコシル化を有する抗体の製造
更にもう1つの実施形態においては、本発明で提供される二重特異性抗体または抗原結合性フラグメントは特定のグリコシル化パターンを含む。例えば、アフコシル化または非グリコシル化(アグリコシル化)(aglycosylated)抗体またはフラグメント(すなわち、該抗体は、それぞれ、フコースまたはグリコシル化を欠く)が製造されうる。抗体またはフラグメントのグリコシル化パターンは、例えば、TIGIT、PD-1またはLAG3抗原に対する該抗体またはフラグメントのアフィニティまたはアビディティを増強するために改変されうる。そのような修飾は、例えば、該抗体またはフラグメント配列内のグリコシル化部位の1以上を改変することにより達成されうる。例えば、可変領域フレームワークグリコシル化部位の1以上の除去をもたらし、それによりその部位におけるグリコシル化を排除する1以上のアミノ酸置換が施されうる。そのような非グリコシル化は抗原に対する該抗体またはフラグメントのアフィニティまたはアビディティを増強しうる。例えば、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号を参照されたい。1つの実施形態においては、抗PD-1 CDRH2領域はS61Nグリコシル化補正を有する。
【0112】
本明細書に開示されている抗体および抗原結合性フラグメントは更に、哺乳類またはヒト様グリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するように遺伝的に操作された下等真核宿主細胞、特に真菌宿主細胞、例えば酵母および糸状菌において産生されるものを含みうる(例えば、Choiら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.100:5022-5027;Hamiltonら(2003)Science 301:1244-1246;Hamiltonら(2006)Science 313:1441-1443;Nettら,Yeast 28(3):237-52(2011);Hamiltonら,Curr Opin Biotechnol.Oct;18(5):387-92(2007)を参照されたい)。現在使用されている哺乳類細胞系と比較した場合の、これらの遺伝的に修飾された宿主細胞の格別な利点は、該細胞内で産生される糖タンパク質のグリコシル化プロファイルの制御が可能なことであり、その結果、特定のN-グリカン構造が優勢な糖タンパク質の組成物が製造されうる(例えば、米国特許第7,029,872号および米国特許第7,449,308号を参照されたい)。これらの遺伝的に修飾された宿主細胞は、特定のN-グリカン構造を主に有する抗体を製造するために使用されている(例えば、Liら(2006)Nat.Biotechnol.24:210-215を参照されたい)。
【0113】
特定の実施形態においては、本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメントは更に、二分岐および多アンテナ(multiantennary)種を含むフコシル化および非フコシル化ハイブリッドおよび複合N-グリカン(例えば、GlcNAc(1-4)ManGlcNAc;Gal(1-4)GlcNAc(1-4)ManGlcNAc;NANA(1-4)Gal(1-4)GlcNAc(1-4)ManGlcNAcのようなN-グリカンを含むが、これらに限定されるものではない)を含む、下等真核宿主細胞において産生されるものを含む。
【0114】
特定の実施形態においては、本発明で提供される抗体およびその抗原結合性フラグメントは、GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;およびNANAGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択される少なくとも1つのハイブリッドN-グリカンを有する抗体またはフラグメントを含む。特定の態様においては、該ハイブリッドN-グリカンは該組成物中の主要N-グリカン種である。
【0115】
特定の実施形態においては、本発明で提供される抗体およびその抗原結合性フラグメントは、GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;NANAGalGlcNAcManGlcNAc;GlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;GalGlcNAcManGlcNAc;NANAGalGlcNAcManGlcNAc;およびNANAGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択される少なくとも1つの複合N-グリカンを有する抗体およびフラグメントを含む。特定の態様においては、該複合N-グリカンは該組成物中の主要N-グリカン種である。更に詳細な態様においては、該複合N-グリカンは、該組成物中の複合N-グリカンの約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%を構成する特定のN-グリカン種である。1つの実施形態においては、本発明で提供される二重特異性抗体およびその抗原結合性フラグメントは複合N-グリカンを含み、ここで、複合N-グリカンの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または100%は構造NANAGalGlcNAcManGlcNAcを含み、ここで、そのような構造はアフコシル化されている。そのような構造は、例えば、操作されたピチア・パストリス(Pichia pastoris)宿主細胞において産生されうる。
【0116】
特定の実施形態においては、該N-グリカンはフコシル化されている。一般に、該フコースは、該N-グリカンの還元末端におけるGlcNAcとのα1,3-結合、該N-グリカンの還元末端におけるGlcNAcとのα1,6-結合、該N-グリカンの非還元末端におけるGalとのα1,2-結合、該N-グリカンの非還元末端におけるGlcNAcとのα1,3-結合、または該N-グリカンの非還元末端におけるGlcNAcとのα1,4-結合で存在する。
【0117】
したがって、前記の糖タンパク質組成物の特定の態様においては、該グリコフォーム(glycoform)は、ManGlcNAc(Fuc)、GlcNAcManGlcNAc(Fuc)、ManGlcNAc(Fuc)、GlcNAcManGlcNAc(Fuc)、GlcNAcManGlcNAc(Fuc)、GalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)、GalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)、NANAGalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)およびNANAGalGlcNAcManGlcNAc(Fuc)からなる群から選択されるグリコフォームを与えるα1,3-結合またはα1,6-結合フコース;GlcNAc(Fuc)ManGlcNAc、GlcNAc(Fuc)ManGlcNAc、GlcNAc(Fuc1-2)ManGlcNAc、GalGlcNAc(Fuc1-2)ManGlcNAc、GalGlcNAc(Fuc1-2)Man3GlcNAc、NANAGalGlcNAc(Fuc1-2)ManGlcNAcおよびNANAGalGlcNAc(Fuc1-2)ManGlcNAcからなる群から選択されるグリコフォームを与えるα1,3-結合またはα1,4-結合フコース;あるいはGal(Fuc)GlcNAcManGlcNAc、Gal(Fuc1-2)GlcNAcManGlcNAc、NANAGal(Fuc1-2)GlcNAcManGlcNAcおよびNANAGal(Fuc1-2)GlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるグリコフォームを与えるα1,2-結合フコースで存在する。
【0118】
更に詳細な態様においては、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、ManGlcNAc、またはManGlcNAc N-グリカン構造からなるN-グリカン(これらに限定されるものではない)を含む高マンノースN-グリカンを含む。
【0119】
前記の更に詳細な態様においては、該複合N-グリカンは更に、フコシル化および非フコシル化二分岐および多アンテナ種を含む。
【0120】
本明細書中で用いる「N-グリカン」および「グリコフォーム(糖形態)」なる語は互換的に用いられ、N-結合オリゴ糖を意味し、例えば、ポリペプチドのアスパラギン残基にアスパラギン-N-アセチルグルコサミン結合により結合しているN-結合オリゴ糖を意味する。N-結合糖タンパク質は、タンパク質中のアスパラギン残基のアミド窒素に結合したN-アセチルグルコサミン残基を含有する。糖タンパク質上で見出される主な糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびシアル酸(例えば、N-アセチル-ノイラミン酸(NANA))が挙げられる。糖基のプロセシングは翻訳と同時にERの内腔において生じ、翻訳後はN-結合糖タンパク質のためにゴルジ装置において継続する。
【0121】
N-グリカンはManGlcNAcの共通の五糖コアを有する(「Man」はマンノースを意味し、「Glc」はグルコースを意味し、「NAc」はN-アセチルを意味し、GlcNAcはN-アセチルグルコサミンを意味する)。通常、N-グリカン構造は、非還元末端を左側に、そして還元末端を右側にして表される。N-グリカンの還元末端は、該タンパク質上のグリコシル化部位を含むAsn残基に結合している末端である。N-グリカンは、「トリマンノースコア」、「五糖コア」または「少(pauci)マンノースコア」とも称されるManGlcNAc(「Man3」)コア構造に付加される周辺糖(例えば、GlcNAc、ガラクトース、フコースおよびシアル酸)を含む分岐(アンテナ)の数において異なる。N-グリカンは、その分岐(分枝)構成成分に従い分類される(例えば、高マンノース、複合またはハイブリッド)。「高マンノース」型N-グリカンは5個以上のマンノース残基を有する。「複合」型N-グリカンは、典型的には、「トリマンノース」コアの1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcと、1,3マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcとを有する。複合N-グリカンは、シアル酸または誘導体(例えば、「NANA」または「NeuAc」が挙げられ、ここで、「Neu」はノイラミン酸を意味し、「Ac」はアセチルを意味する)で修飾されていてもよいガラクトース(「Gal」)またはN-アセチルガラクトサミン(「GalNAc」)残基をも有しうる。複合N-グリカンは、コアフコース(「Fuc」)および「二分岐(bisecting)」GlcNAcを含む鎖内置換をも有しうる。複合N-グリカンはまた、「トリマンノース・コア」上に複数のアンテナを有することが可能であり、これは、しばしば、「多アンテナグリカン」と称される。「ハイブリッド」N-グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端における少なくとも1つのGlcNAcと、トリマンノースコアの1,6マンノースアーム上の0個以上のマンノースとを有する。前記の種々のN-グリカンは「グリコフォーム(糖形態)」とも称される。
【0122】
複合N-グリカンに関しては、「G-2」、「G-1」、「G0」、「G1」、「G2」、「A1」および「A2」なる語は以下を意味する。「G-2」は、ManGlcNAcとして特徴づけられうるN-グリカン構造を意味し、「G-1」なる語は、GlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられうるN-グリカン構造を意味し、「G0」なる語は、GlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられうるN-グリカン構造を意味し、「G1」なる語は、GalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられうるN-グリカン構造を意味し、「G2」なる語は、GalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられうるN-グリカン構造を意味し、「A1」なる語は、NANAGalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられうるN-グリカン構造を意味し、「A2」なる語は、NANAGalGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられうるN-グリカン構造を意味する。特に示されていない限り、「G-2」、「G-1」、「G0」、「G1」、「G2」、「A1」および「A2」なる語は、N-グリカンの還元末端においてGlcNAc残基に結合したフコースを欠くN-グリカン種を意味する。該用語が「F」を含む場合、「F」は、該N-グリカン種が該N-グリカンの還元末端においてGlcNAc残基上にフコース残基を含有することを示す。例えば、G0F、G1F、G2F、A1FおよびA2Fは全て、該N-グリカンが、該N-グリカンの還元末端においてGlcNAc残基に結合したフコース残基を更に含むことを示す。酵母および糸状菌のような下等真核生物は、通常、フコースを有するN-グリカンを産生しない。
【0123】
多アンテナN-グリカンに関しては、「多アンテナN-グリカン」なる語は、該N-グリカンの1,6アームもしくは1,3アームの非還元末端を含むマンノース残基上のGlcNAc残基、または該N-グリカンの1,6アームおよび1,3アームの非還元末端を含むマンノース残基のそれぞれにおけるGlcNAc残基を更に含むN-グリカンを意味する。したがって、多アンテナN-グリカンは、式GlcNAc(2-4)ManGlcNAc、Gal(1-4)GlcNAc(2-4)ManGlcNAc、またはNANA(1-4)Gal(1-4)GlcNAc(2-4)ManGlcNAcにより特徴づけられうる。「1-4」なる語は1、2、3または4個の残基を意味する。
【0124】
二分岐N-グリカンに関しては、「二分岐N-グリカン」なる語は、GlcNAc残基が該N-グリカンの還元末端においてマンノース残基に結合している、N-グリカンを意味する。二分岐N-グリカンは式GlcNAcManGlcNAcにより特徴づけられることが可能であり、ここで、各マンノース残基はその非還元末端においてGlcNAc残基に結合している。これに対して、多アンテナN-グリカンがGlcNAcManGlcNAcとして特徴づけられる場合、該式は、2つのGlcNAc残基が、N-グリカンの、2つのアームの一方の非還元末端において、マンノース残基に結合しており、1つのGlcNAc残基が、該N-グリカンの他方のアームの非還元末端において、マンノース残基に結合していることを示す。
【0125】
抗体の物理的特性
本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメントは更に、軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域内に1以上のグリコシル化部位を含有しうる。そのようなグリコシル化部位は抗原結合の変化による該抗体のpKの変化または該抗体もしくはフラグメントの免疫原性の増強をもたらしうる(Marshallら(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702;GalaおよびMorrison(2004)J Immunol 172:5489-94;Wallickら(1988)J Exp Med 168:1099-109;Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R;Parekhら(1985)Nature 316:452-7;Mimuraら(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含有するモチーフにおいて生じることが公知である。
【0126】
各抗体または抗原結合性フラグメントは、一般には6~9.5のpH範囲内である特有の等電点(pI)を有する。IgG1抗体のpIは典型的には7~9.5のpH範囲内であり、IgG4抗体のpIは典型的には6~8のpH範囲内である。
【0127】
各抗体または抗原結合性フラグメントは特徴的な融解温度を有し、より高い融解温度は、より大きなインビボ総安定性を示す(Krishnamurthy RおよびManning MC(2002)Curr Pharm Biotechnol :361-71)。一般に、TM1(初期アンフォールディングの温度)は60℃より高い、65℃より高い、または70℃より高いことが可能である。抗体またはフラグメントの融点は、示差走査熱量測定(Chenら(2003)Pharm Res 20:1952-60;Ghirlandoら(1999)Immunol Lett 68:47-52)または円二色性(Murrayら(2002)J.Chromatogr Sci 40:343-9)を用いて測定されうる。
【0128】
もう1つの実施形態においては、急速に分解しない抗体およびその抗原結合性フラグメントを選択する。抗体またはフラグメントの分解は、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI-MS(Alexander AJおよびHughes DE(1995)Anal Chem 67:3626-32)を用いて測定されうる。
【0129】
もう1つの実施形態においては、望ましくない免疫応答の誘発および/または変化した若しくは好ましくない薬物動態特性を招きうる凝集作用が最小である抗体およびその抗原結合性フラグメントを選択する。一般に、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下の凝集を示す抗体およびフラグメントが許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および光散乱を含む幾つかの技術により測定されうる。
【0130】
抗体コンジュゲート
本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメントは化学的部分にコンジュゲート化(結合)されることも可能である。化学的部分は、とりわけ、免疫調節物質に結合する重合体、放射性核種または小分子でありうる。特定の実施形態においては、化学的部分は、対象の体内の該抗体またはフラグメントの半減期を増加させる重合体である。適切な重合体には、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDaまたは40kDaの分子量を有するPEG)、デキストランおよびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)(これらに限定されるものではない)を包含する親水性重合体が含まれるが、これらに限定されるものではない。Leeら(1999)(Bioconj.Chem.10:973-981)はPEGコンジュゲート化単鎖抗体を開示している。Wenら,(2001)(Bioconj.Chem.12:545-553)は、放射性金属キレーター(ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))に結合したPEGに対して抗体をコンジュゲート化することを開示している。
【0131】
本明細書に開示されている抗体およびその抗原結合性フラグメントはまた、例えば99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、40K、157Gd、55Mn、52Trおよび56Feのような標識に対してコンジュゲート化されうる。
【0132】
本明細書に開示されている抗体および抗原結合性フラグメントは、例えば、その生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるために、ペグ化(PEGylate)されることも可能である。抗体またはフラグメントをペグ化するためには、典型的には、1以上のPEG基が該抗体または抗体フラグメントに結合する条件下、該抗体またはフラグメントを、反応性形態のポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と反応させる。特定の実施形態においては、ペグ化は、反応性PEG分子(または類似反応性水溶性重合体)とのアルキル化反応またはアシル化反応により行われる。本明細書中で用いる「ポリエチレングリコール」なる語は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態のいずれか、例えばモノ(C1-C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドを含むと意図される。ある実施形態においては、ペグ化されるべき抗体またはフラグメントは非グリコシル化抗体またはフラグメントである。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野で公知であり、本発明で提供される抗体に適用されうる。例えば、EP0154316およびEP0401384を参照されたい。
【0133】
本明細書に開示されている抗体および抗原結合性フラグメントは、蛍光または化学発光標識、例えば発蛍光団、例えば希土類キレート、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアナート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、フルオレスカミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジミウム塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識および安定フリーラジカルに対してコンジュゲート化されることも可能である。
【0134】
該抗体およびその抗原結合性フラグメントを種々の部分にコンジュゲート化するための当技術分野で公知のいずれかの方法が利用可能であり、該方法は、Hunterら(1962)Nature 144:945;Davidら(1974)Biochemistry 13:1014;Painら(1981)J.Immunol.Meth.40:219;およびNygren,J.(1982)Histochem.and Cytochem.30:407に記載されている方法を包含する。抗体およびフラグメントをコンジュゲート化するための方法は常套手段であり、当技術分野において公知である。
【0135】
抗体の治療用途
更に、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントでの治療を要する対象(ヒト対象を含む)の治療方法を提供する。1つの実施形態においては、そのような対象は癌または感染症に罹患している。
【0136】
「対象」は哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、サル[例えば、カニクイザル、例えば、マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis)]またはウサギである。ある実施形態においては、対象はヒト対象である。
【0137】
「組合される」なる語は、本発明で提供される方法において投与される成分が、同時運搬のために単一組成物へと製剤化されることが可能であり、あるいは2以上の組成物(例えば、キット)に別々に製剤化されることが可能であることを示す。各成分は、その他の成分が投与される時点とは異なる時点で対象に投与されうる。ある実施形態においては、各投与は、ある時間にわたって、幾つかの間隔をあけて非同時(例えば、別々または連続的)に行われうる。更に、そのような別々の成分は、同じ経路または異なる経路によって対象に投与されうる。
【0138】
更に、本明細書に開示されている単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントでの治療を要する対象(ヒト対象を含む)の治療方法を提供する。1つの実施形態においては、そのような対象は感染または感染症に罹患している。幾つかの実施形態においては、本発明は癌の治療における使用のための抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。他の実施形態においては、本発明は感染または感染症の治療における使用のための抗体または抗原結合性フラグメントを提供する。幾つかの実施形態においては、本発明は、癌の治療用の医薬の製造のための、抗体または抗原結合性フラグメントの使用を提供する。他の実施形態においては、本発明は、感染または感染症の治療用の医薬の製造のための、抗体または抗原結合性フラグメントの使用を提供する。1つの実施形態においては、本発明は、本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における癌の治療方法を提供する。1つの実施形態においては、本発明は、本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメントをコードする核酸を含む発現ベクターの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における癌の治療方法を提供する。ある実施形態においては、本発明で提供される方法は更に、別の治療用物質または治療手技を含み、またはそれと組合せて使用される。
【0139】
1つの実施形態においては、前記の別の治療用物質は、(i)抗PARPインヒビター、(ii)抗VISTA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iii)抗BTLA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(iv)抗TIM3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(v)抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vi)抗HVEM抗体またはその抗原結合性フラグメント、(vii)抗CD70抗体またはその抗原結合性フラグメント、(viii)抗OX40抗体またはその抗原結合性フラグメント、(ix)抗CD28抗体またはその抗原結合性フラグメント、(x)抗PDL1抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xi)抗PDL2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xii)抗GITR抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiii)抗ICOS抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xiv)抗SIRPα抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xv)抗ILT2抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvi)抗ILT3抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xvii)抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xviii)抗ILT5抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xix)抗4-1BB抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xx)抗NK2GA抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxi)抗NK2GC抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxii)抗NK2GE抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxiii)抗TSLP抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxiv)抗IL10抗体またはその抗原結合性フラグメント、(xxv)STINGアゴニスト、および(xxvi)CXCR2アンタゴニストからなる群から選択される。
【0140】
1つの実施形態においては、該物質は抗VISTA抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗BTLA抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗TIM3抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗HVEM抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗CD70抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗OX40抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗CD28抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗PDL1抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗PDL2抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗GITR抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ICOS抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗SIRPα抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT2抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT3抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT4抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗ILT5抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗4-1BB抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗NK2GA抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗NK2GE抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗IL10抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質は抗TSLP抗体またはその抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、該物質はSTINGアゴニストである。1つの実施形態においては、該物質はCXCR2アンタゴニストである。1つの実施形態においては、該物質はPARPインヒビターである。
【0141】
もう1つの実施形態においては、対象は癌に罹患している。1つの実施形態においては、癌は骨肉腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、腎臓癌、白血病、腎移行細胞癌、膀胱癌、ウィルムス癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、骨癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、胃癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、頭頸部癌、扁平上皮癌、多発性骨髄腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、肝芽腫、肝細胞癌、黒色腫、腎臓のラブドイド腫瘍、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、脳腫瘍、神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原始神経外胚葉性腫瘍、髄芽腫、星細胞腫、退形成性星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、脈絡叢乳頭腫、真性多血症、血小板血症、特発性筋線維症、軟部組織肉腫、甲状腺癌、子宮内膜癌、カルチノイド癌または肝臓癌、乳癌または胃癌である。1つの実施形態においては、癌は、例えば前記の種々のものの、転移癌である。
【0142】
本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメント、組成物および方法により治療されうる癌には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫および奇形腫;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、尿細管腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫) 結腸直腸;尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(腺癌、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫および巨細胞腫瘍;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果腫]、多形神経膠芽腫、乏突起膠腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌腫]、顆粒膜嚢細胞腫瘍、セルトリライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌)、乳房;血液学:血液(骨髄性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、奇形腫異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽腫。したがって、本明細書に記載されている「癌細胞」なる語は、前記状態のいずれかに罹患した細胞を含む。
【0143】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメント、組成物および方法により治療されうる癌には、肺癌、膵臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、甲状腺癌、骨髄異形成症候群、膀胱癌、表皮癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、脳癌(脳腫瘍)、間葉系癌、肉腫、奇形癌、神経芽細胞腫、腎癌、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および未分化甲状腺癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0144】
1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントを使用する、対象の治療方法を提供し、ここで、対象はウイルス感染に罹患している。1つの実施形態においては、ウイルス感染は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-IIおよびCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスまたはアルボウイルス性脳炎ウイルスからなる群から選択されるウイルスによる感染である。
【0145】
1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントを使用する、対象の治療方法を提供し、ここで、対象は細菌感染に罹患している。1つの実施形態においては、細菌感染は、クラミジア(Chlamydia)、リケッチア細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌および淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ(Legionella)、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)、サルモネラ(Salmonella)、桿菌、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)、クロストリジウム・テタン(Clostridium tetan)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、バシラス・アンスリシス(Bacillus anthricis)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・レプロマトシス(Mycobacterium lepromatosis)およびボリエラ(Borriella)からなる群から選択される細菌による感染である。
【0146】
1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントを使用する、対象の治療方法を提供し、ここで、対象は真菌感染に罹患している。1つの実施形態においては、真菌感染は、カンジダ(Candida)[アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラタ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)など]、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)[フミガタス(fumigatus)、ニガー(niger)など]、ムコラーレス(Mucorales)属[ムコール(mucor)、アブシジア(absidia)、リゾプス(rhizopus)]、スポロスリクス・シェンキイ(Sporothrix schenkii)、ブラストマイセス・デルマチチディス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラシリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)およびヒストプラスマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)からなる群から選択される真菌による感染である。
【0147】
1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントを使用する、対象の治療方法を提供し、ここで、対象は寄生虫感染に罹患している。1つの実施形態においては、寄生虫感染は、エンタモエバ・ヒストリティカ(Entamoeba histolytica)、バランチジウム・コリ(Balantidium coli)、ネグレリア・フォウレリ(Naegleria fowleri)、アカンタモエバ(Acanthamoeba)、ジアルジア・ランビア(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、プラスモジウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロッティ(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルジ(Trypanosoma cruzi)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)、トキソプラスマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)およびニッポストロンジルス・ブラシリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)からなる群から選択される寄生虫による感染である。
【0148】
特定の実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントは、例えば本明細書に記載されている癌のようないずれかの疾患を予防または治療するために、そのような治療または予防を要する対象において、単独で、または他の別の治療用物質および/または治療手技と組合せて使用されうる。別の治療用物質と組合されたそのような抗体およびフラグメントを含む組成物(例えば、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物)も想定される。
【0149】
したがって、本発明は、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における癌の治療方法を提供する。ある実施形態においては、投与は別の治療用物質または治療手技と組合せて使用される。
【0150】
また、本発明は、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における感染または感染症の治療方法を提供する。ある実施形態においては、投与は別の治療用物質または治療手技と組合せて使用される。
【0151】
もう1つの実施形態においては、本発明は、別の治療用物質と組合された、癌の治療または感染もしくは感染症の治療における使用のための、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは癌の治療における使用のためのものである。1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、感染の治療における使用のためのものである。1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは感染症の治療における使用のためのものである。ある実施形態においては、治療は別の治療用物質を含む。
【0152】
もう1つの実施形態においては、別の治療用物質と組合された、癌の治療または感染もしくは感染症の治療のための医薬の製造のための、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントの使用を提供する。もう1つの実施形態においては、本発明の抗体または抗原結合性フラグメントと癌の治療または感染もしくは感染症の治療のための別の治療用物質との組合せを提供する。1つの実施形態においては、癌の治療のための医薬の製造のための、抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。1つの実施形態においては、感染の治療のための医薬の製造のための、抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。1つの実施形態においては、感染症の治療のための医薬の製造のための、抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。ある実施形態においては、医薬は別の治療用物質と共に処方(製剤化)される。
【0153】
他の実施形態においては、別の治療用物質または治療手技と所望により組合されていてもよい、本明細書に開示されている抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたは本明細書に開示されている発現ベクターもしくは宿主細胞の有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における癌の治療方法または感染もしくは感染症の治療方法を提供する。1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における癌の治療方法を提供する。もう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における感染の治療方法を提供する。更にもう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における感染症の治療方法を提供する。1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における癌の治療方法を提供する。もう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における感染の治療方法を提供する。更にもう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における感染症の治療方法を提供する。1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む宿主細胞の有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における癌の治療方法を提供する。もう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む宿主細胞の有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における感染の治療方法を提供する。更にもう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている抗体または抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む宿主細胞の有効量を対象に投与することを含む、ヒト対象における感染症の治療方法を提供する。ある実施形態においては、該方法は追加的な治療用物質の投与を更に含む。他の実施形態においては、該方法は追加的な治療手技を更に含む。
【0154】
特定の実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントは、単独で、または腫瘍ワクチンと組合せて使用されうる。腫瘍ワクチンの例には以下のものが挙げられるが、それらに限定されるものではない:ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により引き起こされる癌に対するワクチン、例えばGardasil(登録商標)、Gardasil(登録商標)およびCervarix(登録商標);B型肝炎ウイルスにより引き起こされる肝癌を予防するワクチン、例えばEngerix-B(登録商標)およびRecombivaxHB(登録商標);免疫応答を誘発する腫瘍溶解性ウイルス療法、例えばImlygic(登録商標);DNAワクチン、例えばSynchotrope MA2MプラスミドDNAワクチンおよびZYC101;マンマグロビン-a DNAワクチン(Clinical Cancer Res.2014 20(23):5964-75を参照されたい);ベクターに基づくワクチン、例えばPSA-TRICOM(プロストバック(prostvac))、PANVAC-VF、リステリア・モノシトゲネス(Listeria monocytogenes)に基づくPSAワクチン(Therapeutic Advances in Vaccines,2014,2(5)137-148を参照されたい)、リステリア-メソテリン(Listeria-mesothelin)アデノ(Adeno)-CEA;同種ワクチン、例えばGVAX、BLP-25(抗アンカラムチン1)、ベラゲンプマツセル(Belagenpumatucel)-L、TG4010、CIMAvax上皮増殖因子ワクチン、NY-ESO、GM.CD40L-CCL21;自己ワクチン、例えばアデノ(Adeno)-CD40L、BCG、INGN-225、樹状細胞ワクチン、例えばProvenge(登録商標)(シプロイセル(Sipuleucel)-T)、rF-CEA-MUC1-TRICOM(パンバック(panvac)-DC);抗原ワクチン、例えばMUC-1(スチムバックス(stimuvax))、NY-ESO-1、GP-100、MAGE-A3(黒色腫抗原コード遺伝子A3)、INGN-225(Pharmacology & Therapeutics 153(2015)1-9を参照されたい)。
【0155】
特定の実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントは、単独で、または化学療法剤と組合せて使用されうる。
【0156】
特定の実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントは、単独で、または放射線療法と組合せて使用されうる。
【0157】
特定の実施形態においては、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合性フラグメントは、単独で、または標的化療法と組合せて使用されうる。標的化療法の例には以下のものが含まれる:ホルモン療法、シグナル伝達インヒビター(例えば、EGFRインヒビター、例えば、セツキシマブ(cetuximab)(Erbitux(登録商標))およびエルロチニブ(erlotinib)(Tarceva(登録商標)));HER2インヒビター(例えば、トラスツズマブ(trastuzumab)(Herceptin(登録商標))およびペルツズマブ(pertuzumab)(Perjeta(登録商標)));BCR-ABLインヒビター(例えば、イマチニブ(imatinib)(Gleevec(登録商標))およびダサチニブ(dasatinib)(Sprycel(登録商標)));ALKインヒビター(例えば、クリゾチニブ(crizotinib)(Xalkori(登録商標))およびセリチニブ(ceritinib)(Zykadia(登録商標)));BRAFインヒビター(例えば、ベムラフェニブ(vemurafenib)(Zelboraf(登録商標))およびダブラフェニブ(dabrafenib)(Tafinlar(登録商標)))、遺伝子発現モジュレーター、アポトーシス誘導物質(例えば、ボルテゾミブ(bortezomib)(Velcade(登録商標))およびカルフィルゾミブ(carfilzomib)(Kyprolis(登録商標)))、血管新生インヒビター(例えば、ベバシズマブ(bevacizumab)(Avastin(登録商標))およびラムシルマブ(ramucirumab)(Cyramza(登録商標))、毒素に結合したモノクローナル抗体(例えば、ブレンツキシマブ・ベドチン(brentuximab vedotin)(Adcetris(登録商標))およびアド-トラスツズマブ・エムタンシン(ado-trastuzumab emtansine)(Kadcyla(登録商標)))。
【0158】
特定の実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗癌治療用物質と組合せて使用されうる。他の実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは免疫調節薬と組合せて使用されうる。幾つかの実施形態においては、免疫調節薬は免疫調節受容体インヒビターである。ある実施形態においては、免疫調節薬は、受容体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントと組合せて使用されうる。
【0159】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは以下のものの1以上と組合せて使用される:抗TIGIT抗体、抗CTLA4抗体、抗CS1抗体(例えば、エロツズマブ(elotuzumab))、抗KIR2DL1/2/3抗体(例えば、リリルマブ(lirilumab))、抗CD137抗体(例えば、ウレルマブ(urelumab))、抗GITR抗体(例えば、TRX518)、抗PD1抗体[例えば、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)、ニボルマブ(nivolumab)、ピジリズマブ(pidilizumab)(CT-011)]、抗PD-L1抗体[例えば、BMS-936559、ドゥルバルマブ(Durvalumab)、MSB0010718CまたはMPDL3280A]、抗PD-L2抗体、抗ILT1抗体、抗ILT2抗体、抗ILT3抗体、抗ILT4抗体、抗ILT5抗体、抗ILT6抗体、抗ILT7抗体、抗ILT8抗体、抗CD40抗体、抗OX40抗体、抗ICOS、抗SIRPα、抗KIR2DL1抗体、抗KIR2DL2/3抗体、抗KIR2DL4抗体、抗KIR2DL5A抗体、抗KIR2DL5B抗体、抗KIR3DL1抗体、抗KIR3DL2抗体、抗KIR3DL3抗体、抗NKG2A抗体、抗NKG2C抗体、抗NKG2E抗体、抗4-1BB抗体(例えば、PF-05082566)、抗TSLP抗体、抗IL-10抗体、IL-10またはペグ化(PEGylated)IL-10、あるいはそのような標的の任意の小さな有機分子インヒビター。
【0160】
1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗PDL1抗体[例えば、BMS-936559、ドゥルバルマブ(Durvalumab)、MSB0010718CまたはMPDL3280A]と組合せて使用される。
【0161】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗CTLA4抗体と組合せて使用される。
【0162】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗CS1抗体と組合せて使用される。
【0163】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR2DL1/2/3抗体と組合せて使用される。
【0164】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗CD137(例えば、ウレルマブ(urelumab))抗体と組合せて使用される。
【0165】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗GITR(例えば、TRX518)抗体と組合せて使用される。
【0166】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗PD-L2抗体と組合せて使用される。
【0167】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL1抗体と組合せて使用される。
【0168】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL2抗体と組合せて使用される。
【0169】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL3抗体と組合せて使用される。
【0170】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL4抗体と組合せて使用される。
【0171】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL5抗体と組合せて使用される。
【0172】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL6抗体と組合せて使用される。
【0173】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL7抗体と組合せて使用される。
【0174】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ITL8抗体と組合せて使用される。
【0175】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗CD40抗体と組合せて使用される。
【0176】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗OX40抗体と組合せて使用される。
【0177】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR2DL1抗体と組合せて使用される。
【0178】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR2DL2/3抗体と組合せて使用される。
【0179】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR2DL4抗体と組合せて使用される。
【0180】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR2DL5A抗体と組合せて使用される。
【0181】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR2DL5B抗体と組合せて使用される。
【0182】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR3DL1抗体と組合せて使用される。
【0183】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR3DL2抗体と組合せて使用される。
【0184】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗KIR3DL3抗体と組合せて使用される。
【0185】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗NKG2A抗体と組合せて使用される。
【0186】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗NKG2C抗体と組合せて使用される。
【0187】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗ICOS抗体と組合せて使用される。
【0188】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗SIRPα抗体と組合せて使用される。
【0189】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗4-1BB抗体と組合せて使用される。
【0190】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗IL-10抗体と組合せて使用される。
【0191】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは抗TSLP抗体と組合せて使用される。
【0192】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントはIL-10またはペグ化IL-10と組合せて使用される。
【0193】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは以下のものの1以上と組合せて使用される:インヒビター(例えば、小さな有機分子または抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)、例えばMTOR(ラパマイシンの哺乳類標的)インヒビター、細胞毒性物質、白金物質、EGFRインヒビター、VEGFインヒビター、微小管安定化剤、タキサン、CD20インヒビター、CD52インヒビター、CD30インヒビター、RANK(核因子カッパBの受容体アクチベーター)インヒビター、STINGアゴニスト、CXCR2アンタゴニスト、RANKL(核因子カッパBリガンドの受容体アクチベーター)インヒビター、ERKインヒビター、MAPキナーゼインヒビター、AKTインヒビター、MEKインヒビター、PARPインヒビター、PI3Kインヒビター、HER1インヒビター、HER2インヒビター、HER3インヒビター、HER4インヒビター、Bcl2インヒビター、CD22インヒビター、CD79bインヒビター、ErbB2インヒビターまたはファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター。
【0194】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは以下のものの任意の1以上と組合せて使用される:13-シス-レチノイン酸、3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリル]-キノロン、4-ヒドロキシタモキシフェン、5-デオキシウリジン、5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、7-ヒドロキシスタウロスポリン、A-443654、アビラテロンアセタート(abirateroneacetate)、アブラキサン(abraxane)、ABT-578、アコルビフェン(acolbifene)、ADS-100380、ALT-110、アルトレタミン(altretamine)、アミホスチン(amifostine)、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、アムルビシン(amrubicin)、アムサクリン(Amsacrine)、アナグレリド(anagrelide)、アナストロゾール(anastrozole)、アンジオスタチン(angiostatin)、AP-23573、ARQ-197、アルゾキシフェン(arzoxifene)、AS-252424、AS-605240、アスパラギナーゼ、AT-9263、アトラセンタン(atrasentan)、アキシチニブ(axitinib)、AZD1115、カルメットゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)(BCG)ワクチン、バタブリン(batabulin)、BC-210、ベソデュトクス(besodutox)、ベバシズマブ(bevacizumab)、ビカルタミド(bicalutamide)、Bio111、BIO140、ブレオマイシン、BMS-214662、BMS-247550、BMS-275291、BMS-310705、ボルテジミブ(bortezimib)、ブセレリン(buserelin)、ブスルファン(busulfan)、カルシトリオール(calcitriol)、カンプトテシン(camptothecin)、カネルチニブ(canertinib)、カペシタビン(capecitabine)、カルボプラチン(carboplatin)、カルムスチン(carmustine)、CC8490、セジラニブ(Cediranib)、CG-1521、CG-781、クラミドシン(chlamydocin)、クロラムブシル(chlorambucil)、クロロトキシン(chlorotoxin)、シレンジチド(cilengitide)、シミチジン(cimitidine)、シスプラチン、クラドリビン(cladribine)、クロドロナート(clodronate)、COL-3、CP-724714、シクロホスファミド、シプロテロン(cyproterone)、シプロテロンアセタート、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダカルバジン(dacarbazine)、ダシノスタット(dacinostat)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダロツズマブ(dalotuzumab)、ダヌセルチブ(danusertib)、ダサタニブ(dasatanib)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デカタニブ(decatanib)、デグエリン(deguelin)、デニロイキン(denileukin)、デオキシコホルマイシン(deoxycoformycin)、デプシペプチド(depsipeptide)、ジアリールプロピオニトリル、ジエチルスチルベストロール(diethylstilbestrol)、ジフチトックス(diftitox)、ドセタキセル(docetaxel)、ドビチニブ(dovitinib)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ドロロキシフェン(droloxifene)、エドテカリン(edotecarin)、イットリウム-90標識エドトレオチド(edotreotide)、エドトレオチド、EKB-569、EMD121974、エンドスタチン(endostatin)、エンザルタミド(enzalutamide)、エンザスタウリン(enzastaurin)、エピルビシン(epirubicin)、エピチロン(epithilone)B、ERA-923、エルビツクス(ERBITUX)、エルロチニブ(erlotinib)、エストラジオール(estradiol)、エストラムスチン(estramustine)、エトポシド(etoposide)、エベロリムス(everolimus)、エキセメスタン(exemestane)、フィクラツズマブ(ficlatuzumab)、フィナステリド(finasteride)、フラボピリドール(flavopiridol)、フロクスウリジン(floxuridine)、フルダラビン(fludarabine)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、フルオキシメステロン(fluoxymesterone)、フルタミド(flutamide)、FOLFOXレジメン、フルベストラント(Fulvestrant)、ガレテロン(galeterone)、ゲフィチニブ(gefitinib)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ギマテカン(gimatecan)、ゴセレリン(goserelin)、酢酸ゴセレリン、ゴシポール(gossypol)、GSK461364、GSK690693、HMR-3339、ヒドロキシプロゲステロンカプロアート、ヒドロキシウレア、IC87114、イダルビシン(idarubicin)、イドキシフェン(idoxyfene)、イホスファミド(ifosfamide)、IM862、イマチニブ(imatinib)、IMC-1C11、INCB24360、INO1001、インターフェロン(IFN)、インターロイキン12、イピリムマブ(ipilimumab)、イリノテカン(irinotecan)、JNJ-16241199、ケトコナゾール、KRX-0402、ラパチニブ(lapatinib)、ラソホキシフェン(lasofoxifene)、レトロゾール(letrozole)、ロイコボリン(leucovorin)、ロイプロリド(leuprolide)、酢酸ロイプロリド、レバミゾール(levamisole)、リポソーム封入パクリタキセル(paclitaxel)、ロムスチン(lomustine)、ロナファルニブ(lonafarnib)、ルカントン(lucanthone)、LY292223、LY292696、LY293646、LY293684、LY294002、LY317615、マリマスタット(marimastat)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メドロキシプロゲステロンアセタート(medroxyprogesteroneacetate)、メゲストロールアセタート(megestrolacetate)、メルファラン(melphalan)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、メスナ(mesna)、メトトレキセート(methotrexate)、ミトラマイシン(mithramycin)、マイトマイシン(mitomycin)、ミトタン(mitotane)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、トザセルチブ(tozasertib)、MLN8054、ネオバスタット(neovastat)、ネラチニブ(neratinib)、ニューラジアブ(neuradiab)、ニロチニブ(nilotinib)、ニルチミド(nilutimide)、ノラトレキセド(nolatrexed)、NVP-BEZ235、オブリメルセン(oblimersen)、オクトレオチド(octreotide)、オファツムマブ(ofatumumab)、オラパリブ(olaparib)、オレゴボマブ(oregovomab)、オルテロネル(orteronel)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、パクリタキセル(paclitaxel)、パルボシクリブ(palbociclib)、パミドロナート(pamidronate)、パニツムマブ(panitumumab)、パゾパニブ(pazopanib)、PD0325901、PD184352、PEG-インターフェロン、ペメトレキセド(pemetrexed)、ペントスタチン(pentostatin)、ペリホシン(perifosine)、フェニルアラニンマスタード(phenylalaninemustard)、PI-103、ピクチリシブ(pictilisib)、PIK-75、ピペンドキシフェン(pipendoxifene)、PKI-166、プリカマイシン(plicamycin)、ポルフィマー(porfimer)、プレドニゾン(prednisone)、プロカルバジン(procarbazine)、プロゲスチン(progestin)、PX-866、R-763、ラロキシフェン(raloxifene)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、ラゾキシン(razoxin)、リダホロリムス(ridaforolimus)、リツキシマブ(rituximab)、ロミデプシン(romidepsin)、RTA744、ルビテカン(rubitecan)、スクリプタイド(scriptaid)、Sdx102、セリシクリブ(seliciclib)、セルメチニブ(selumetinib)、セマキサニブ(semaxanib)、SF1126、シロリムス(sirolimus)、SN36093、ソラフェニブ(sorafenib)、スピロノラクトン(spironolactone)、スクアラミン(squalamine)、SR13668、ストレプトゾシン(streptozocin)、SU6668、スベロイルアナリド(suberoylanalide)ヒドロキサム酸、スニチニブ(sunitinib)、合成エストロゲン、タランパネル(talampanel)、タリモゲン ラヘルパレプベック(talimogene laherparepvec)、タモキシフェン(tamoxifen)、テモゾロミド(temozolomide)、テムシロリムス(temsirolimus)、テニポシド(teniposide)、テスミリフェン(tesmilifene)、テストステロン、テトランドリン(tetrandrine)、TGX-221、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チシリムマブ(ticilimumab)、チピファルニブ(tipifarnib)、チボザニブ(tivozanib)、TKI-258、TLK286、トポテカン(topotecan)、クエン酸トレミフェン(toremifene)、トラベクテジン(trabectedin)、トラスツズマブ(trastuzumab)、トレチノイン(tretinoin)、トリコスタチン(trichostatin)A、トリシリビンホスファート(triciribinephosphate)一水和物、トリプトレリン(triptorelin)パモアート、TSE-424、ウラシルマスタード、バルプロ酸、バルルビシン(valrubicin)、バンデタニブ(vandetanib)、バタラニブ(vatalanib)、VEGFトラップ、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビタキシン(vitaxin)、ビテスパン(vitespan)、ボリノスタット(vorinostat)、VX-745、ウォートマンニン(wortmannin)、Xr311、ザノリムマブ(zanolimumab)、ZK186619、ZK-304709、ZM336372、またはZSTK474。
【0195】
本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントと組合せて使用される適切な抗癌物質(抗癌因子)の非限定的な例には、癌および腫瘍性疾患に対する細胞増殖抑制物質、細胞毒性物質、標的化治療用物質(小分子、生物製剤、siRNAおよびマイクロRNA)が含まれる。1つの実施形態においては、該物質は代謝拮抗剤(例えば、メトクストレキサート、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、フルダラビン、カペシタビン)である。1つの実施形態においては、該物質はアルキル化剤、例えばテモゾロミドまたはシクロホスファミドである。1つの実施形態においては、該物質はDNA相互作用性またはDNA損傷性物質、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、またはドキソルビシンである。1つの実施形態においては、該因子は電離放射線、例えば放射線療法である。1つの実施形態においては、該物質はトポイソメラーゼIIインヒビター、例えばエトポシドまたはドキソルビシンである。1つの実施形態においては、該物質はトポイソメラーゼIインヒビター、例えばイリノテカンまたはトポテカンである。1つの実施形態においては、該物質はチューブリン相互作用物質、例えばパクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサナーまたはエポチロンである。1つの実施形態においては、該物質はキネシン紡錘体タンパク質インヒビターである。1つの実施形態においては、該物質は紡錘体チェックポイントインヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)インヒビター、例えばオラパリブ、ニラパリブまたはベリパリブである。1つの実施形態においては、該物質はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)インヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はプロテアーゼインヒビター、例えばカテプシンDまたはカテプシンKインヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はプロテオソームまたはユビキチン化インヒビター、例えばボルテゾミブである。1つの実施形態においては、該物質は、突然変異体p53の、その野生型p53活性を回復させるためのアクチベーターである。1つの実施形態においては、該物質はアデノウイルス-p53である。1つの実施形態においては、該物質はBcl-2インヒビター、例えばABT-263である。1つの実施形態においては、該物質は熱ショックタンパク質(HSP)モジュレーター、例えばゲルダナマイシンおよび17-AAGである。1つの実施形態においては、該物質はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター、例えばボリノスタット(SAHA)である。1つの実施形態においては、該物質は性ホルモン調節物質である。1つの実施形態においては、該物質は抗エストロゲン、例えばタモキシフェンまたはフルベストラントである。1つの実施形態においては、該物質は選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばラロキシフェンである。1つの実施形態においては、該物質は抗アンドロゲン、例えばビカルタミドまたはフルタミドである。1つの実施形態においては、該物質はLHRHアゴニスト、例えばロイプロリドである。1つの実施形態においては、該物質は5α-レダクターゼインヒビター、例えばフィナステリドである。1つの実施形態においては、該物質はチトクロームP450 C17リアーゼ(CYP450c17;17αCとも称される)である。1つの実施形態においては、該物質はアロマターゼインヒビター、例えばレトロゾール、アナストロゾールまたはエキセメスタンである。1つの実施形態においては、該物質はEGFRキナーゼインヒビター、例えばゲフチニブ、エルロチニブまたはラプチニブである。1つの実施形態においては、該物質は二重erbB1およびerbB2インヒビター、例えばラパチニブである。1つの実施形態においては、該物質は多標的化キナーゼ(セリン/スレオニンおよび/またはチロシンキナーゼ)インヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はABLキナーゼインヒビター、例えばイマチニブおよびニロチニブまたはダサチニブである。1つの実施形態においては、該物質はVEGFR-1、VEGFR-2、PDGFR、KDR、FLT、c-Kit、Tie2、Raf、MEKまたはERKインヒビター、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、PLX-4032、アキシチニブ、PTK787またはGSK-1120212である。1つの実施形態においては、該物質はポロ様キナーゼインヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はオーロラキナーゼインヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はJAKインヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はc-METキナーゼインヒビターである。1つの実施形態においては、該物質はPI3KまたはmTORインヒビター、例えばGDC-0941、BEZ-235、BKM-120またはAZD-8055である。1つの実施形態においては、該物質はラパマイシンまたはラパマイシン類似体、例えばテムシロリムス、エベロリムス、またはデフォロリムスである。1つの実施形態においては、該物質はSTING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)アゴニストである。1つの実施形態においては、該物質はCXCR(CXCケモカイン受容体)インヒビター、CXCR2アンタゴニストである。
【0196】
他の抗癌物質(抗腫瘍物質としても公知である)には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:アラ(ara)-C、アドリアマイシン、サイトキサン、カルボプラチン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イフォスフミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸塩、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ナベルビン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、テニポシド、シタラビン、ペメトレキセド、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、テニポシド、エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、テストラクトン、メゲストロールアセタート、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、フルタミド メドロキシプロゲステロンアセタート、トレミフェン、ゴセレリン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミゾール、ドロロキサフィン、ヘキサメチルメラミン、Bexxar(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Trisenox(登録商標)、プロファイマー、チオテパ、アルトレタミン、ドキシル、オンタク、デポサイト、アラネスプ、Neupogen(登録商標)、Neulasta(登録商標)またはKepivance(登録商標)。1つの実施形態においては、該物質はファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター、例えばSARASAR(商標)(4-[2-[4-[(11R)-3,10-ジブロモ-8-クロロ-6,11-ジヒドロ-5H-ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2-b]ピリジン-11-イル-]-1-ピペリジニル]-2-オキソエチル]-ピペリジンカルボキサミド、チピファルニブである。1つの実施形態においては、該物質はインターフェロン、例えばイントロン(Intron)Aまたはペグ-イントロン(Peg-Intron)である。1つの実施形態においては、該物質は抗erbB1抗体、例えばセツキシマブまたはパニツムマブである。1つの実施形態においては、該物質は抗erbB2抗体、例えばトラスツズマブである。1つの実施形態においては、該物質はCD52抗体、例えばアレムツズマブである。1つの実施形態においては、該物質は抗CD20抗体、例えばリツキシマブである。1つの実施形態においては、該物質は抗CD33抗体、例えばゲムツズマブ オゾガマイシンである。1つの実施形態においては、該物質は抗VEGF抗体、例えばAVASTINである。1つの実施形態においては、該物質はTRIALリガンド、例えばレキサツムマブ、マパツムマブまたはAMG-655である。1つの実施形態においては、該物質は抗CTLA-4抗体、例えばイピリムマブである。1つの実施形態においては、該物質はCTA1、CEA、CD5、CD19、CD22、CD30、CD44、CD44V6、CD55、CD56、EpCAM、FAP、MHCII、HGF、IL-6、MUC1、PSMA、TAL6、TAG-72、TRAILR、VEGFR、IGF-2またはFGFのいずれかに対する抗体である。1つの実施形態においては、該物質は抗IGF-1R抗体、例えばダロツズマブ(MK-0646)またはロバツムマブ(SCH717454)である。
【0197】
「エストロゲン受容体モジュレーター」は、メカニズムには無関係に、受容体へのエストロゲンの結合を阻害または抑制する化合物を意味する。エストロゲン受容体モジュレーターの例には、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、ヨードキシフェン(idoxifene)、LY353381、LY117081、トレミフェン(toremifene)、フルベストラント(fulvestrant)、4-[7-(2,2-ジメチル-1-オキソプロポキシ-4-メチル-2-[4-[2-(1-ピペリジニル)エトキシ]フェニル]-2H-1-ベンゾピラン-3-イル]-フェニル-2,2-ジメチルプロパノアート、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン-2,4-ジニトロフェニル-ヒドラゾンおよびSH646が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
「アンドロゲン受容体モジュレータ」は、メカニズムには無関係に、受容体へのアンドロゲンの結合を阻害または抑制する化合物を意味する。アンドロゲン受容体モジュレーターの例には、フィナステリド(finasteride)および他の5α-レダクターゼインヒビター、ニルタミド(nilutamide)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、リアロゾール(liarozole)および酢酸アビラテロン(abiraterone)が含まれる。
【0199】
「レチノイド受容体モジュレーター」は、メカニズムには無関係に、受容体へのレチノイドの結合を阻害または抑制する化合物を意味する。そのようなレチノイド受容体モジュレーターの例には、ベキサロテン(bexarotene)、トレチノイン(tretinoin)、13-シス-レチノイン酸、9-シス-レチノイン酸、α-ジフルオロメチルオルニチン、ILX23-7553、トランス-N-(4’-ヒドロキシフェニル)レチナミドおよびN-4-カルボキシフェニルレチナミドが含まれる。
【0200】
「細胞毒性/細胞増殖抑制物質」なる語は、主に細胞の機能を直接的に阻害することにより細胞死を引き起こす若しくは細胞増殖を抑制する又は細胞有糸分裂を抑制もしくは阻害する化合物を意味し、例えばアルキル化物質、腫瘍壊死因子、インターカレーター、低酸素活性化可能化合物、微小管インヒビター/微小管安定化物質、有糸分裂キネシンのインヒビター、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、有糸分裂進行に関与するキナーゼのインヒビター、増殖因子およびサイトカインシグナル伝達経路に関与するキナーゼのインヒビター、代謝拮抗物質、生体応答調節物質、ホルモン/抗ホルモン治療用物質、造血成長因子、モノクローナル抗体標的化治療用物質、トポイソメラーゼインヒビター、プロテアソームインヒビター、ユビキチンリガーゼインヒビターおよびオーロラキナーゼインヒビターを包含する。
【0201】
細胞毒性/細胞増殖抑制物質の例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:白金配位化合物、セルテネフ(sertenef)、カケクチン(cachectin)、イホスファミド(ifosfamide)、タソネルミン(tasonermin)、ロニダミン(lonidamine)、カルボプラチン(carboplatin)、アルトレタミン(altretamine)、プレドニムスチン(prednimustine)、ジブロモズルシトール(dibromodulcitol)、ラニムスチン(ranimustine)、ホテムスチン(fotemustine)、ネダプラチン(nedaplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、テモゾロミド(temozolomide)、ヘプタプラチン(heptaplatin)、エストラムスチン(estramustine)、トシル酸イムプロスルファン(improsulfan)、トロホスファミド(trofosfamide)、ニムスチン(nimustine)、塩化ジブロスピジウム(dibrospidium)、プミテパ(pumitepa)、ロバプラチン(lobaplatin)、サトラプラチン(satraplatin)、プロフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン(cisplatin)、イロフルベン(irofulven)、デキシホスファミド(dexifosfamide)、シス-アミンジクロロ(2-メチル-ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルホスファミド(glufosfamide)、GPX100、(トランス,トランス,トランス)-ビス-ミュー-(ヘキサン-1,6-ジアミン)-ミュー-[ジアミン-白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン(diarizidinylspermine)、三酸化ヒ素、1-(11-ドデシルアミノ-10-ヒドロキシウンデシル)-3,7-ジメチルキサンチン、ゾルビシン(zorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ビサントレン(bisantrene)、ミトザントロン(mitoxantrone)、ピラルビシン(pirarubicin)、ピナフィド(pinafide)、バルルビシン(valrubicin)、アムルビシン(amrubicin)、アンチネオプラストン(antineoplaston)、3’-デアミノ-3’-モルホリノ-13-デオキソ-10-ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン(annamycin)、ガラルビシン(galarubicin)、エリナフィド(elinafide)、MEN10755、4-デメトキシ-3-デアミノ-3-アジリジニル-4-メチルスルホニル-ダウノルビシン(WO 00/50032を参照されたい)。
【0202】
低酸素活性化可能化合物の一例としては、チラパザミン(tirapazamine)が挙げられる。
【0203】
プロテアソームインヒビターの例には、ラクタシスチン(lactacystin)およびMLN-341(Velcade)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0204】
微小管インヒビター/微小管安定化物質の例には一般にタキサンが含まれる。具体的な化合物には以下のものが含まれる:パクリタクセル(paclitaxel)(Taxol(登録商標))、硫酸ビンデシン(vindesine)、3’,4’-ジデヒドロ-4’-デオキシ-8’-ノルビンカロイコブラスチン(norvincaleukoblastine)、ドセタキソール(docetaxol)(Taxotere(登録商標))、リゾキシン(rhizoxin)、ドラスタチン(dolastatin)、ミボブリン(mivobulin)イセチオナート、オーリスタチン(auristatin)、セマドチン(cemadotin)、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン(vinflunine)、クリプトフィシン(cryptophycin)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-N-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン(anhydrovinblastine)、N,N-ジメチル-L-バリル-L-バリル-N-メチル-L-バリル-L-プロリル-L-プロリン-t-ブチルアミド(配列番号128として開示されている「L-バリル-L-バリル-N-メチル-L-バリル-L-プロリル-L-プロリン」)、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6,284,781号および第6,288,237号を参照されたい)およびBMS188797。
【0205】
トポイソメラーゼインヒビターの幾つかの例としては、以下のものが挙げられる:トポテカン(topotecan)、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン(irinotecan)、ルビテカン(rubitecan)、6-エトキシプロピオニル-3’,4’-O-エキソ-ベンジリデン-シャールトルーシン(chartreusin)、9-メトキシ-N,N-ジメチル-5-ニトロピラゾロ[3,4,5-kl]アクリジン-2-(6H)プロパンアミン、1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:b,7]-インドリジノール[1,2b]キノリン-10,13(9H,15H)ジオン,ルルトテカン(lurtotecan)、7-[2-(N-イソプロピルアミノ)エチル]-(20S)カンプトテシン(camptothecin)、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、ソブゾキサン(sobuzoxane)、2’-ジメチルアミノ-2’-デオキシ-エトポシド(etoposide)、GL331、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-9-ヒドロキシ-5,6-ジメチル-6H-ピリド[4,3-b]カルバゾール-1-カルボキサミド、アスラクリン(asulacrine)、(5a,5aB,8aa,9b)-9-[2-[N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N-メチルアミノ]エチル]-5-[4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル]-5,5a,6,8,8a,9-ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3-d)-1,3-ジオキソール-6-オン、2,3-(メチレンジオキシ)-5-メチル-7-ヒドロキシ-8-メトキシベンゾ[c]-フェナントリジニウム、6,9-ビス[(2-アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソグイノリン-5,10-ジオン、5-(3-アミノプロピルアミノ)-7,10-ジヒドロキシ-2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-6H-ピラゾロ[4,5,1-デ]アクリジン-6-オン、N-[1-[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]-7-メトキシ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イルメチル]ホルムアミド、N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン-4-カルボキサミド、6-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]-3-ヒドロキシ-7H-インデノ[2,1-c]キノリン-7-オンおよびジメスナ(dimesna)。
【0206】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPのインヒビターの例は刊行物WO03/039460、WO03/050064、WO03/050122、WO03/049527、WO03/049679、WO03/049678、WO04/039774、WO03/079973、WO03/099211、WO03/105855、WO03/106417、WO04/037171、WO04/058148、WO04/058700、WO04/126699、WO05/018638、WO05/019206、WO05/019205、WO05/018547、WO05/017190、US2005/0176776に記載されている。1つの実施形態においては、有糸分裂キネシンのインヒビターには、KSPのインヒビター、MKLP1のインヒビター、CENP-Eのインヒビター、MCAKのインヒビターおよびRab6-KIFLのインヒビターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0207】
「ヒストンデアセチラーゼインヒビター」の例には、SAHA、TSA、オキサムフラチン(oxamflatin)、PXD101、MG98およびスクリプタイド(scriptaid)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他のヒストンデアセチラーゼインヒビターに対する更なる言及は以下の文書:Miller,T.A.ら,J.Med.Chem.46(24):5097-5116(2003)に見出されうる。
【0208】
「有糸分裂の進行に関与するキナーゼのインヒビター」には、オーロラキナーゼのインヒビター、Polo様キナーゼ(PLK)のインヒビター(特にPLK-1のインヒビター)、bub-1のインヒビターおよびbub-R1のインヒビターが含まれるが、これらに限定されるものではない。「オーロラキナーゼインヒビター」の一例はVX-680である。
【0209】
「抗増殖性物質」には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド、例えばG3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231およびINX3001、ならびに抗代謝拮抗物質、例えばエノシタビン(enocitabine)、カルモフル(carmofur)、テガフル(tegafur)、ペントスタチン(pentostatin)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、トリメトレキセート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、ガロシタビン(galocitabine)、シタラビンオクホスファート(cytarabine ocfosfate)、ホステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド(raltitrexed)、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフル(emitefur)、チアゾフリン(tiazofurin)、デシタビン(decitabine)、ノラトレキセド(nolatrexed)、ペメトレキセド(pemetrexed)、ネルザラビン(nelzarabine)、2’-デオキシ-2’-メチリデンシチジン、2’-フルオロメチレン-2’-デオキシシチジン、N-[5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾフリル)スルホニル]-N’-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、N6-[4-デオキシ-4-[N2-[2(E),4(E)-テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]-L-グリセロ-B-L-マンノ-ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン(aplidine)、エクテイナスシジン(ecteinascidin)、トロキサシタビン(troxacitabine)、4-[2-アミノ-4-オキソ-4,6,7,8-テトラヒドロ-3H-ピリミジノ[5,4-b][1,4]チアジン-6-イル-(S)-エチル]-2,5-チエノイル-L-グルタミン酸、アミノプテリン(aminopterin)、5-フルオロウラシル、アラノシン(alanosine)、11-アセチル-8-(カルバモイルオキシメチル)-4-ホルミル-6-メトキシ-14-オキサ-1,11-ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)-テトラデカ-2,4,6-トリエン-9-イル酢酸エステル、スワインソニン(swainsonine)、ロメトレキソール(lometrexol)、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、メチオニナーゼ(methioninase)、2’-シアノ-2’-デオキシ-N4-パルミトイル-1-B-D-アラビノフラノシルシトシン、3-アミノピリジン-2-カルボキサルデヒドチオセミカルバゾンおよびトラスツズマブ。
【0210】
モノクローナル抗体標的化治療用物質の例には、癌細胞特異的または標的細胞特異的モノクローナル抗体に細胞毒性物質または放射性同位体が結合している治療用物質が含まれる。具体例にはBexxarが含まれる。
【0211】
「プレニル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビター」は、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ(FPTアーゼ)、ゲラニルゲラニル-タンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTアーゼ-I)およびゲラニルゲラニル-タンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTアーゼ-II;Rab GGPTアーゼとも称される)を含むプレニル-タンパク質トランスフェラーゼ酵素の任意の1つ又は任意の組合せを阻害する化合物を意味する。
【0212】
プレニル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビターの例には、以下の刊行物および特許において見出されうるものが含まれる:WO 96/30343、WO 97/18813、WO 97/21701、WO 97/23478、WO 97/38665、WO 98/28980、WO 98/29119、WO 95/32987、米国特許第5,420,245号,米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510号、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号、欧州特許公開番号0 618 221、欧州特許公開番号0 675 112、欧州特許公開番号0 604 181、欧州特許公開番号0 696 593、WO 94/19357、WO 95/08542、WO 95/11917、WO 95/12612、WO 95/12572、WO 95/10514、米国特許第5,661,152号、WO 95/10515、WO 95/10516、WO 95/24612、WO 95/34535、WO 95/25086、WO 96/05529、WO 96/06138、WO 96/06193、WO 96/16443、WO 96/21701、WO 96/21456、WO 96/22278、WO 96/24611、WO 96/24612、WO 96/05168、WO 96/05169、WO 96/00736、米国特許第5,571,792号、WO 96/17861、WO 96/33159、WO 96/34850、WO 96/34851、WO 96/30017、WO 96/30018、WO 96/30362、WO 96/30363、WO 96/31111、WO 96/31477、WO 96/31478、WO 96/31501、WO 97/00252、WO 97/03047、WO 97/03050、WO 97/04785、WO 97/02920、WO 97/17070、WO 97/23478、WO 97/26246、WO 97/30053、WO 97/44350、WO 98/02436および米国特許第5,532,359号。血管新生に対するプレニル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビターの役割の一例に関しては、European J.of Cancer,Vol.35,No.9,pp.1394-1401(1999)を参照されたい。
【0213】
「血管新生インヒビター」は、メカニズムには無関係に、新たな血管の形成を阻害する化合物を意味する。血管新生インヒビターの例には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:チロシンキナーゼインヒビター、例えば、チロシンキナーゼ受容体Flt-1(VEGFR1)およびFlk-1/KDR(VEGFR2)のインヒビター、上皮由来、線維芽細胞由来または血小板由来増殖因子のインヒビター、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)インヒビター、インテグリンブロッカー、インターフェロンα、インターロイキン-12、ペントサンポリスルファート、シクロオキシゲナーゼインヒビター、例えば非ステロイド抗炎症物質(NSAID)、例えばアスピリンおよびイブプロフェン、ならびに選択的シクロオキシゲナーゼ2インヒビター、例えばセレコキシブ(celecoxib)およびロフェコキシブ(rofecoxib)(PNAS,Vol.89,p.7384(1992);JNCI,Vol.69,p.475(1982);Arch.Opthalmol,Vol.108,p.573(1990);Anat.Rec,Vol.238,p.68(1994);FEBS Letters,Vol.372,p.83(1995);Clin,Orthop.Vol.313,p.76(1995);J.Mol.Endocrinol.,Vol.16,p.107(1996);Jpn.J.Pharmacol.,Vol.75,p.105(1997);Cancer Res.,Vol.57,p.1625(1997);Cell,Vol.93,p.705(1998);Intl.J.Mol.Med.,Vol.2,p.715(1998);J.Biol.Chem.,Vol.274,p.9116(1999))、ステロイド抗炎症物質(例えば、コルチコステロイド、ミネラルコルチコステロイド、デキサメタゾン(dexamethasone)、プレドニゾン(prednisone)、プレドニゾロン(prednisolone)、メチルプレド(methylpred)、ベタメタゾン(betamethasone))、カルボキシアミドトリアゾール、コムブレタスタチン(combretastatin)A-4、スクアラミン(squalamine)、6-O-クロロアセチル-カルボニル)-フマギロール(fumagillol)、サリドマイド(thalidomide)、アンジオスタチン(angiostatin)、トロポニン-1、アンジオテンシンIIアンタゴニスト(Fernandezら,J.Lab.Clin.Med.105:141-145(1985)を参照されたい)、およびVEGFに対する抗体(Nature Biotechnology,Vol.17,pp.963-968(October 1999);Kimら,Nature,362,841-844(1993);WO00/44777;およびWO00/61186を参照されたい)。
【0214】
血管新生インヒビターの他の例には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:エンドスタチン(endostatin)、ウクライン(ukrain)、ランピルナーゼ(ranpirnase)、IM862、5-メトキシ-4-[2-メチル-3-(3-メチル-2-ブテニル)オキシラニル]-1-オキサスピロ[2,5]オクタ-6-イル(クロロアセチル)カルバマート、アセチルジナナリン(acetyldinanaline)、5-アミノ-1-[[3,5-ジクロロ-4-(4-クロロベンゾイル)-フェニル]メチル]-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド、CM101、スクアラミン(squalamine)、コムブレタスタチン(combretastatin)、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペントースホスファート、7,7-(カルボニル-ビス[イミノ-N-メチル-4,2-ピロロカルボニルイミノ[N-メチル-4,2-ピロール]-カルボニルイミノ]-ビス-(1,3-ナフタレンジスルホナート)、および3-[(2,4-ジメチルピロール-5-イル)メチレン]-2-インドリノン(SU5416)。
【0215】
血管新生をモジュレーションまたは抑制し、本発明で提供される化合物と組合せて使用されることも可能である他の治療用物質には、凝固および線維素溶解系をモジュレーションまたは抑制する物質が含まれる(Clin.Chem.La.Med.38:679-692(2000)における総説を参照されたい)。凝固および線維素溶解経路をモジュレーションまたは抑制するそのような物質の例には、ヘパリン(Thromb.Haemost.80:10-23(1998)を参照されたい)、低分子量ヘパリンおよびカルボキシペプチダーゼUインヒビター(活性トロンビン活性化可能線維素溶解インヒビター(TAFIa)のインヒビターとしても公知である)(Thrombosis Res.101:329-354(2001)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。TAFIaインヒビターは米国特許出願(U.S.Ser.)番号60/310,927(2001年8月8日付け出願)および60/349,925(2002年1月18日付け出願)に記載されている。
【0216】
「受容体チロシンキナーゼ(RTK)を阻害する物質」は、RTKを阻害する、したがって、発癌および腫瘍進行に関与するメカニズムを阻害する化合物を意味する。そのような物質には、c-Kit、Eph、PDGF、Flt3およびc-Metのインヒビターが含まれる。他の物質には、Bume-JensenおよびHunter,Nature,411:355-365,2001に記載されているRTKのインヒビターが含まれる。
【0217】
「細胞増殖および生存シグナル伝達経路のインヒビター」は、細胞表面受容体の下流のシグナル伝達カスケードを阻害する化合物を意味する。そのような物質には以下のものが含まれる:セリン/トレオニンキナーゼのインヒビター(限定的なものではないが、例えばWO 02/083064、WO 02/083139、WO 02/083140、US 2004-0116432、WO 02/083138、US 2004-0102360、WO 03/086404、WO 03/086279、WO 03/086394、WO 03/084473、WO 03/086403、WO 2004/041162、WO 2004/096131、WO 2004/096129、WO 2004/096135、WO 2004/096130、WO 2005/100356、WO 2005/100344、US 2005/029941、US 2005/44294、US 2005/43361、60/734188、60/652737、60/670469に記載されているもののようなAktのインヒビターを含む)、Rafキナーゼのインヒビター(例えば、PLX-4032)、MEKのインヒビター(例えば、Arry-162、RO-4987655およびGSK-1120212)、mTORのインヒビター(例えば、AZD-8055、BEZ-235およびエベロリムス)およびPI3Kのインヒビター(例えば、GDC-0941、BKM-120)。
【0218】
前記で用いた「インテグリンブロッカー」は、αvβ3インテグリンへの生理学的リガンドの結合を選択的に拮抗、阻害または相殺する化合物、αvβ5インテグリンへの生理学的リガンドの結合を選択的に拮抗、阻害または相殺する化合物、αvβ3インテグリンとαvβ5インテグリンとの両方への生理学的リガンドの結合を拮抗、阻害または相殺する化合物、ならびに毛細血管内皮細胞上で発現される個々のインテグリンの活性を拮抗、阻害または相殺する化合物を意味する。この語は、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンのアンタゴニストをも意味する。この語はまた、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、α1β1、α2β1、α5β1、α6β1およびα6β4インテグリンの任意の組合せのアンタゴニストをも意味する。
【0219】
チロシンキナーゼインヒビターの幾つかの具体例には以下のものが含まれる:N-(トリフルオロメチルフェニル)-5-メチルイソオキサゾール-4-カルボキサミド、3-[(2,4-ジメチルピロール-5-イル)メチリデニル)インドリン-2-オン、17-(アリルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン(demethoxygeldanamycin)、4-(3-クロロ-4-フルオロフェニルアミノ)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12-ヘキサヒドロ-10-(ヒドロキシメチル)-10-ヒドロキシ-9-メチル-9,12-エポキシ-1H-ジインドロ[1,2,3-fg:3’,2’,1’-kl]ピロロ[3,4-i][1,6]ベンゾジアゾシン-1-オン、SH268、ゲニステイン(genistein)、STI571、CEP2563、4-(3-クロロフェニルアミノ)-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンメタンスルホナート、4-(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン、4-(4’-ヒドロキシフェニル)アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N-4-クロロフェニル-4-(4-ピリジルメチル)-1-フタラジンアミンおよびEMD121974。
【0220】
本発明の抗体または抗原結合性フラグメントとPPAR-γ(すなわち、PPAR-ガンマ)アゴニストおよびPPAR-δ(すなわち、PPAR-デルタ)アゴニストとの組合せは或る悪性疾患の治療に有用でありうる。PPAR-γおよびPPAR-δは核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γおよびδである。内皮細胞上のPPAR-γの発現および血管新生におけるその関与が文献において報告されている(J.Cardiovasc.Pharmacol.1998,31:909-913;J.Biol.Chem.1999,274:9116-9121;Invest.Ophthalmol Vis.Sci.2000,41:2309-2317を参照されたい)。より最近になって、PPAR-γアゴニストはインビトロにおけるVEGFに対する血管新生応答を抑制することが示されており、トログリタゾン(troglitazone)およびマレイン酸ロシグリタゾン(rosiglitazone)の両方がマウスにおける網膜血管新生の発生を抑制する(Arch.Ophthamol.2001;119:709-717)。PPAR-γアゴニストおよびPPAR-γ/αアゴニストの例には、以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:Lynparza(登録商標)、Rucaparib(登録商標)、Talazoparib(登録商標)、ニラパリブ(niraparib)、Veliparib(登録商標)、チアゾリジンジオン[例えば、DRF2725、CS-011、トログリタゾン(troglitazone)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)およびピオグリタゾン(pioglitazone)]、フェノフィブレート(fenofibrate)、ジェムフィブロジル(gemfibrozil)、クロフィブレート(clofibrate)、GW2570、SB219994、AR-H039242、JTT-501、MCC-555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2-[(5,7-ジプロピル-3-トリフルオロメチル-1,2-ベンゾイソオキサゾール-6-イル)オキシ]-2-メチルプロピオン酸および2(R)-7-(3-(2-クロロ-4-(4-フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)-2-エチルクロマン-2-カルボン酸。
【0221】
本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、アロマターゼインヒビターと組合せて、乳癌を治療または予防するのにも有用でありうる。アロマターゼインヒビターの例には、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0222】
本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下の化学療法剤と組合せて癌を治療するのにも有用でありうる:アバレリックス(abarelix)(Plenaxis depot(登録商標));アルデスロイキン(aldesleukin)(Prokine(登録商標));アルデスロイキン(Aldesleukin)(Proleukin(登録商標));アレムツズマブ(Alemtuzumabb)(Campath(登録商標));アリトレチノイン(alitretinoin)(Panretin(登録商標));アロプリノール(allopurinol)(Zyloprim(登録商標));アルトレタミン(altretamine)(Hexalen(登録商標));アミホスチン(amifostine)(Ethyol(登録商標));アナストロゾール(anastrozole)(Arimidex(登録商標));三酸化ヒ素(Trisenox(登録商標));アスパラギナーゼ(asparaginase)(Elspar(登録商標));アザシチジン(azacitidine)(Vidaza(登録商標));塩酸ベンダムスチン(bendamustine)(Treanda(登録商標));ベバクジマブ(bevacuzimab)(Avastin(登録商標));ベキサロテン(bexarotene)カプセル(Targretin(登録商標));ベキサロテン(bexarotene)ゲル(Targretin(登録商標));ブレオマイシン(bleomycin)(Blenoxane(登録商標));ボルテゾミブ(bortezomib)(Velcade(登録商標));ブレフェルジン(brefeldin)A;静脈内ブスルファン(busulfan)(Busulfex(登録商標));経口ブスルファン(busulfan)(Myleran(登録商標));カルステロン(calusterone)(Methosarb(登録商標));カペシタビン(capecitabine)(Xeloda(登録商標));カルボプラチン(carboplatin)(Paraplatin(登録商標));カルムスチン(carmustine)(BCNU(登録商標),BiCNU(登録商標));カルムスチン(carmustine)(Gliadel(登録商標));ポリフェプロサン(Polifeprosan)20インプラントと組合されたカルムスチン(carmustine)(Gliadel Wafer(登録商標));セレコキシブ(celecoxib)(Celebrex(登録商標));セツキシマブ(cetuximab)(Erbitux(登録商標));クロラムブシル(chlorambucil)(Leukeran(登録商標));シスプラチン(cisplatin)(Platinol(登録商標));クラドリビン(cladribine)(Leustatin(登録商標)、2-CdA(登録商標));クロファラビン(clofarabine)(Clolar(登録商標));シクロホスファミド(cyclophosphamide)(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標));シクロホスファミド(cyclophosphamide)(Cytoxan Injection(登録商標));シクロホスファミド(cyclophosphamide)(Cytoxan Tablet(登録商標));シタラビン(cytarabine)(Cytosar-U(登録商標));シタラビン(cytarabine)リポソーム(DepoCyt(登録商標));ダカルバジン(dacarbazine)(DTIC-Dome(登録商標));ダクチノマイシン(dactinomycin)、アクチノマイシン(actinomycin)D(Cosmegen(登録商標));ダルテパリン(dalteparin)ナトリウム注射用(Fragmin(登録商標));ダルベポエチンアルファ(Darbepoetin alfa)(Aranesp(登録商標));ダサチニブ(dasatinib)(Sprycel(登録商標));ダウノルビシン(daunorubicin)リポソーム(DanuoXome(登録商標));ダウノルビシン,ダウノマイシン(daunomycin)(Daunorubicin(登録商標));ダウノルビシン,ダウノマイシン(Cerubidine(登録商標));デガレリックス(degarelix)(Firmagon(登録商標));デニロイキン・ジフチトックス(Denileukin diftitox)(Ontak(登録商標));デクスラゾキサン(dexrazoxane)(Zinecard(登録商標));塩酸デクスラゾキサン(Totect(登録商標));ジデムニン(didemnin)B;17-DMAG;ドセタキセル(docetaxel)(Taxotere(登録商標));ドキソルビシン(doxorubicin)(Adriamycin PFS(登録商標));ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標),Rubex(登録商標));ドキソルビシン(Adriamycin PFS Injection(登録商標));ドキソルビシンリポソーム(Doxil(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone)(Dromostanolone(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(Masterone Injection(登録商標));エクリズマブ注射用(eculizumab injection)(Soliris(登録商標));エリオットB(Elliott’s B)溶液(Elliott’s B Solution(登録商標));エルトロンボパッグ(eltrombopag)(Promacta(登録商標));エピルビシン(epirubicin)(Ellence(登録商標));エポエチン(Epoetin)アルファ(epogen(登録商標));エルロチニブ(erlotinib)(Tarceva(登録商標));エストラムスチン(estramustine)(Emcyt(登録商標));エチニルエストラジオール;リン酸エトポシド(etoposide)(Etopophos(登録商標));エトポシド,VP-16(Vepesid(登録商標));エベロリムス(everolimus)錠剤(Afinitor(登録商標));エキセメスタン(exemestane)(Aromasin(登録商標));フェルモキシトール(ferumoxytol)(Feraheme Injection(登録商標));フィルグラスチム(Filgrastim)(Neupogen(登録商標));フロクスウリジン(floxuridine)(動脈内)(FUDR(登録商標));フルダラビン(fludarabine)(Fludara(登録商標));フルオロウラシル(fluorouracil),5-FU(Adrucil(登録商標));フルベストラント(fulvestrant)(Faslodex(登録商標));ゲフィニチブ(gefitinib)(Iressa(登録商標));ゲルダナマイシン(geldanamycin);ゲムシタビン(gemcitabine)(Gemzar(登録商標));ゲムツズマブ・オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)(Mylotarg(登録商標));酢酸ゴセレリン(goserelin)(Zoladex Implant(登録商標));酢酸ゴセレリン(Zoladex(登録商標));酢酸ヒストレリン(histrelin)(Histrelin implant(登録商標));ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標));イブリツモマブ・チウキセタン(Ibritumomab Tiuxetan)(Zevalin(登録商標));イダルビシン(idarubicin)(Idamycin(登録商標));イホスファミド(ifosfamide)(IFEX(登録商標));メシル酸イマチニブ(imatinib)(Gleevec(登録商標));インターフェロンアルファ2a(Roferon A(登録商標));インターフェロンアルファ2b(Intron A(登録商標));イオベングアン(iobenguane)I 123注射用(AdreView(登録商標));イリノテカン(irinotecan)(Camptosar(登録商標));イキサベピロン(ixabepilone)(Ixempra(登録商標));イアパチニブ(Iapatinib)錠剤(Tykerb(登録商標));レナリドミド(lenalidomide)(Revlimid(登録商標));レトロゾール(letrozole)(Femara(登録商標));ロイコボリン(leucovorin)(Wellcovorin(登録商標),Leucovorin(登録商標));酢酸ロイプロイド(Leuprolide)(Eligard(登録商標));レバミソール(levamisole)(Ergamisol(登録商標));ロムスチン(lomustine),CCNU(CeeBU(登録商標));メクロレタミン(meclorethamine),ナイトロジェンマスタード(Mustargen(登録商標));酢酸メゲストロール(megestrol)(Megace(登録商標));メルファラン(melphalan),L-PAM(Alkeran(登録商標));メルカプトプリン,6-MP(Purinethol(登録商標));メスナ(mesna)(Mesnex(登録商標));メスナ(Mesnex tabs(登録商標));メトトレキセート(methotrexate)(Methotrexate(登録商標));メトクスサレン(methoxsalen)(Uvadex(登録商標));8-メトキシソラレン;マイトマイシン(mitomycin)C(Mutamycin(登録商標));ミトタン(mitotane)(Lysodren(登録商標));ミトザントロン(mitoxantrone)(Novantrone(登録商標));ミトラマイシン(mitramycin);フェンプロピオン酸ナンドロロン(nandrolone)(Durabolin-50(登録商標));ネララビン(nelarabine)(Arranon(登録商標));ニロチニブ(nilotinib)(Tasigna(登録商標));ノフェツモマブ(Nofetumomab)(Verluma(登録商標));オファツムマブ(ofatumumab)(Arzerra(登録商標));オプレルベキン(Oprelvekin)(Neumega(登録商標));オキサリプラチン(oxaliplatin)(Eloxatin(登録商標));パクリタクセル(paclitaxel)(Paxene(登録商標));パクリタクセル(Taxol(登録商標));パクリタクセルタンパク質結合粒子(Abraxane(登録商標));パリフェルミン(palifermin)(Kepivance(登録商標));パミドロナート(pamidronate)(Aredia(登録商標));パニツムマブ(panitumumab)(Vectibix(登録商標));パゾパニブ(pazopanib)錠剤(Votrienttm(登録商標));ペガデマーゼ(pegademase)(Adagen(Pegademase Bovine)(登録商標));ペガスパルガーゼ(pegaspargase)(Oncaspar(登録商標));ペグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)(Neulasta(登録商標));ペメトレキセド(pemetrexed)二ナトリウム(Alimta(登録商標));ペントスタチン(pentostatin)(Nipent(登録商標));ピポブロマン(pipobroman)(Vercyte(登録商標));プレリキサホル(plerixafor)(Mozobil(登録商標));プリカマイシン(plicamycin),ミトラマイシン(mithramycin)(Mithracin(登録商標));ポルフィメル(porfimer)ナトリウム(Ph
otofrin(登録商標));プララトレキサート(pralatrexate)注射用(Folotyn(登録商標));プロカルバジン(procarbazine)(Matulane(登録商標));キナクリン(quinacrine)(Atabrine(登録商標));ラパマイシン(rapamycin);ラスブリカーゼ(Rasburicase)(Elitek(登録商標));塩酸ラロキシフェン(raloxifene)(Evista(登録商標));リツキシマブ(Rituximab)(Rituxan(登録商標));ロミデプシン(romidepsin)(Istodax(登録商標));ロミプロスチム(romiplostim)(Nplate(登録商標));サルグラモスチム(sargramostim)(Leukine(登録商標));サルグラモスチム(Sargramostim)(Prokine(登録商標));ソラフェニブ(sorafenib)(Nexavar(登録商標));ストレプトゾシン(streptozocin)(Zanosar(登録商標));マレイン酸スニチニブ(sunitinib)(Sutent(登録商標));タルク(Sclerosol(登録商標));タモキシフェン(tamoxifen)(Nolvadex(登録商標));テモゾロミド(temozolomide)(Temodar(登録商標));テムシロリムス(temsirolimus)(Torisel(登録商標));テニポシド(teniposide),VM-26(Vumon(登録商標));テストラクトン(testolactone)(Teslac(登録商標));チオグアニン,6-TG(Thioguanine(登録商標));チオプリン;チオテパ(Thioplex(登録商標));トポテカン(topotecan)(Hycamtin(登録商標));トレミフェン(toremifene)(Fareston(登録商標));トシツモマブ(Tositumomab)(Bexxar(登録商標));トシツモマブ/I-131トシツモマブ(Bexxar(登録商標));トランス-レチノイン酸;トラスツズマブ(Trastuzumab)(Herceptin(登録商標));トレチノイン(tretinoin),ATRA(Vesanoid(登録商標));トリエチレンメラミン(triethylenemelamine);ウラシルマスタード(Uracil Mustard)(Uracil Mustard Capsules(登録商標));バルルビシン(valrubicin)(Valstar(登録商標));ビンブラスチン(vinblastine)(Velban(登録商標));ビンクリスチン(vincristine)(Oncovin(登録商標));ビノレルビン(vinorelbine)(Navelbine(登録商標));ボリノスタット(vorinostat)(Zolinza(登録商標));ウォルトマンニン(wortmannin);およびゾレドロナート(zoledronate)(Zometa(登録商標))。
【0223】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下のもの(それらに限定されるものではない)を含む1以上の抗嘔吐物質と組合せて使用される:カソピタント(casopitant)(Glaxo SmithKline)、ネツピタント(Netupitant)(MGI-Helsinn)および他のNK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン(palonosetron)(MGI PharmaによりAloxiとして販売されている)、アプレピタント(aprepitant)(Merck and Co.;Rahway,NJによりEmendとして販売されている)、ジフェンヒドラミン(Pfizer;New York,NYによりBenadryl(登録商標)として販売されている)、ヒドロキシジン(Pfizer;New York,NYによりAtarax(登録商標)として販売されている)、メトクロプラミド(metoclopramide)(AH Robins Co,;Richmond,VAによりReglan(登録商標)として販売されている)、ロラゼパム(lorazepam)(Wyeth;Madison,NJによりAtivan(登録商標)として販売されている)、アルプラゾラム(alprazolam)(Pfizer;New York,NYによりXanax(登録商標)として販売されている)、ハロペリドール(Ortho-McNeil;Raritan,NJによりHaldol(登録商標)として販売されている)、ドロペリドール(droperidol)(Inapsine(登録商標))、ドロナビノール(dronabinol)(Solvay Pharmaceuticals,Inc.;Marietta,GAによりMarinol(登録商標)として販売されている)、デキサメタゾン(Merck and Co.;Rahway,NJによりDecadron(登録商標)として販売されている)、メチルプレドニゾロン(Pfizer;New York,NYによりMedrol(登録商標)として販売されている)、プロクロルペラジン(Glaxosmithkline;Research Triangle Park,NCによりCompazine(登録商標)として販売されている)、グラニセトロン(granisetron)(Hoffmann-La Roche Inc.;Nutley,NJによりKytril(登録商標)として販売されている)、オンダンセトロン(ondansetron)(Glaxosmithkline;Research Triangle Park,NCによりZofran(登録商標)として販売されている)、ドラセトロン(dolasetron)(Sanofi-Aventis;New York,NYによりAnzemet(登録商標)として販売されている)、トロピセトロン(tropisetron)(Novartis;East Hanover,NJによりNavoban(登録商標)として販売されている)。
【0224】
癌治療の他の副作用には、赤血球および白血球の欠乏症が含まれる。したがって、1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、そのような欠乏症を治療または予防する物質、例えばフィルグラスチム(filgrastim)、PEG-フィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファまたはダルベポエチンアルファと組合される。
【0225】
1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体または抗原結合性フラグメントは抗癌放射線療法と組合せて投与される。例えば、1つの実施形態においては、放射線療法は外部ビーム療法(体外照射療法)(EBT)であり、これは、腫瘍の位置に高エネルギーX線のビームを照射するための方法である。該ビームは患者の外部で(例えば、線形加速装置により)生成され、腫瘍部位を標的化する。これらのX線は癌細胞を破壊することが可能であり、注意深い治療計画は周辺の正常組織が損なわれないことを可能にする。患者の体内には放射能源は配置されない。1つの実施形態においては、放射線療法は、X線ではなく陽子を罹患組織に照射する原体(conformal)療法の一種である陽子線療法である。1つの実施形態においては、放射線療法は原体外部ビーム放射線療法であり、これは、放射線療法を個々の身体構造に適合させる先進技術を用いる方法である。1つの実施形態においては、放射線療法は密封小線源治療であり、この場合、放射線の余分の線量、つまりブーストを或る領域に与えるために通常使用される放射性物質が体内に一時的に配置される。
【0226】
1つの実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントと組合されて適用される外科手技は外科的腫瘍摘出である。
【0227】
医薬組成物および投与
本発明で提供される抗体および抗原結合性フラグメントの医薬組成物または無菌組成物を製造するために、該抗体またはその抗原結合性フラグメントは、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合されうる。例えば、Remington’s Pharmaceutical SciencesおよびU.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照されたい。
【0228】
治療用および診断用物質の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水性の溶液または懸濁液の形態で、許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することにより製造されうる(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,WilliamsおよびWilkins,New York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照されたい)。
【0229】
単独で又は別の治療用物質と組合せて投与される、本発明で提供される抗体またはフラグメント組成物の毒性および治療効力は、例えばLD50(集団の50%に致死的である用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効である用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法により決定されうる。毒性効果と治療効果との用量比は治療係数(LD50/ED50)である。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量の範囲の決定において使用されうる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内である。該投与量は、使用される剤形および投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。
【0230】
もう1つの実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントと組合せて、別の治療用物質を、Physicians’Desk Reference 2003(Thomson Healthcare;57th edition(2002年11月1日))に従い、対象に投与する。
【0231】
投与様式は様々でありうる。投与経路には、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、吹送、局所、皮膚、経皮または動脈内が含まれる。
【0232】
特定の実施形態においては、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、侵襲的経路、例えば注射により投与されうる。更に詳細な実施形態においては、抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物は静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、腫瘍内に、または吸入、エアゾール運搬により投与される。非侵襲的経路(例えば、経口的、例えば、丸剤、カプセル剤または錠剤)による投与も想定される。
【0233】
また、本発明は、本発明で提供される抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物のいずれかを含む容器(例えば、プラスチックまたはガラスバイアル、例えば、キャップまたはクロマトグラフィーカラム、中空穿孔針またはシリンジシリンダーを有するもの)を提供する。また、本発明は、本発明で提供される抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物のいずれかを含む注射装置を提供する。注射装置は、非経口経路、例えば筋肉内、皮下または静脈内経路により患者の体内に物質を導入する装置である。例えば、注射装置はシリンジ(例えば、医薬組成物が予め充填されたもの、例えば、自動注入装置)であることが可能であり、これは、例えば、注射すべき流体(例えば、抗体もしくはフラグメントまたはその医薬組成物)を保持するためのシリンダーまたは筒状物、該流体の注射のために皮膚および/または血管を穿刺するための針、ならびに該シリンダーから及び針穿孔を介して該流体を押出すプランジャーを含む。1つの実施形態においては、本発明で提供される二重特異性抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物を含む注射装置は静脈内(IV)注射装置である。そのような装置は、カニューレまたはトロカール/針を介して患者の体内に導入される流体(例えば、生理食塩水;またはNaCl、乳酸ナトリウム、KCl、CaClを含み、所望によりグルコースを含む乳酸リンゲル液)を保持するためのバッグ(袋)またはリザーバ(貯蔵容器)に接続されうるチューブに接続されうるカニューレまたはトロカール/針の中に該抗体もしくはフラグメントまたはその医薬組成物を含む。幾つかの実施形態においては、トロカールおよびカニューレが対象の静脈内に挿入され、挿入カニューレからトロカールが取り外されたら、該抗体もしくはフラグメントまたはその医薬組成物が装置内に導入される。IV装置は、例えば、(例えば、手または腕における)末梢静脈内;上大静脈または下大静脈、または心臓の右心房(例えば、中央IV)内;あるいは鎖骨下、内頚、または大腿静脈に挿入されることが可能であり、例えば、それが上大静脈または右心房(例えば、中心静脈線)に達するまで、心臓に向けて進入可能である。1つの実施形態においては、注射装置は自動注入装置、ジェットインジェクターまたは外部注入ポンプである。ジェットインジェクターは、該抗体もしくはフラグメントまたはその医薬組成物を患者の体内へ導入するために、表皮に浸透する液体の高圧ナロー(narrow)ジェットを使用する。外部注入ポンプは、制御された量の該抗体もしくはフラグメントまたはその医薬組成物を患者の体内に運搬(送達)する医療装置である。外部注入ポンプは電気的または機械的に駆動されうる。ポンプは、ポンプによって異なる様態で作動する。例えば、シリンジポンプはシリンジのリザーバ内に流体を保持し、可動式ピストンが流体運搬を制御し、弾性(elastomeric)ポンプは伸縮性バルーンリザーバ内に流体を保持し、バルーンの弾性壁からの圧力が流体運搬を駆動する。蠕動ポンプにおいては、1組のローラーが可撓性チューブの或る長さを絞り込んで、流体を前方へ押出す。マルチチャネルポンプにおいては、流体は複数のリザーバから複数の速度で運搬されうる。
【0234】
本明細書に開示されている医薬組成物は、例えば米国特許第6,620,135号、第6,096,002号、第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号または第4,596,556号に開示されている装置のような無針(needleless)皮下注射装置によっても投与されうる。医薬組成物を含むそのような無針装置も想定される。本明細書に開示されている医薬組成物は注入によっても投与されうる。医薬組成物を投与するための良く知られたインプラントおよびモジュールの例には、米国特許第4,487,603号(これは、制御された速度で医薬を分注するための移植可能な微量注入ポンプを開示している)、米国特許第4,447,233号(これは、正確な注入速度で医薬を運搬するための医薬注入ポンプを開示している)、米国特許第4,447,224号(これは、連続的薬物運搬のための可変流量移植可能注入装置を開示している)、米国特許第4,439,196号(これは、マルチチャンバ・コンパートメントを有する浸透性薬物運搬系を開示している)に開示されているものが含まれる。多数の他のそのようなインプラント、運搬系およびモジュールは当業者によく知られており、本発明で提供される医薬組成物を含むものも想定される。
【0235】
投与レジメンは、治療用抗体または抗原結合性フラグメントの血清または組織代謝回転速度、症状の程度、治療用抗体の免疫原性、および生物学的マトリックスにおける標的細胞の接近可能性を含む幾つかの要因に左右される。好ましくは、投与レジメンは、望ましくない副作用を最小にすると同時に標的罹患状態の改善をもたらす十分な治療用抗体またはフラグメントを運搬する。したがって、運搬される生物学的物質の量は、部分的には、個々の治療用抗体および治療される状態の重症度に左右される。治療用抗体またはフラグメントの適切な用量を選択する際の指針が利用可能である(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(編)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(編)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966-1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594-1602を参照されたい)。
【0236】
適切な用量の決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことが当技術分野で知られている又は疑われているパラメータまたは因子を用いて、臨床家によりなされる。一般に、用量は最適用量より幾分少ない量から開始し、ついで、負の副作用と比較して所望または最適効果が得られるまで、それを少しずつ増量する。重要な診断尺度には、例えば炎症の症状の尺度、または産生される炎症性サイトカインのレベルが含まれる。一般に、使用される生物学的物質は、治療のために標的化される動物と同じ種から誘導され、それにより薬剤に対する免疫応答を最小化することが望ましい。ヒト対象の場合には、例えば、ヒト化抗体および完全ヒト抗体が望ましい可能性がある。
【0237】
本明細書中で用いる「有効量」なる語は、単独で又は追加的な治療用物質と共に細胞、組織または対象に投与された場合に、疾患の症状の1以上における測定可能な改善を引き起こすのに有効である、本発明で提供される二重特異性抗体またはその抗原結合性フラグメントの量を意味する。有効量は、単独で投与される個々の有効成分に適用される場合には、その成分のみに関するものである。有効量は、組合せ体に適用される場合には、連続投与または同時投与のいずれで組合せ投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす、有効成分の組合された量を意味する。治療用物質の有効量は、少なくとも10%、通常は少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の、診断尺度またはパラメータの改善をもたらす。有効量はまた、疾患の重症度を評価するために主観的尺度が用いられる場合には、主観的尺度における改善をもたらしうる。
【0238】
キット
更に、本明細書に記載されている治療用物質および/または薬学的に許容される担体(これらに限定されるものではない)を含む1以上の追加的成分と共に、抗LAG3抗体または抗原結合性フラグメント、抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体または抗原結合性フラグメント、抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体または抗原結合性フラグメント(これらに限定されるものではない)を含む1以上の成分を含むキットを提供する。該抗体もしくはフラグメントおよび/または該治療用物質は、純粋な組成物として、または医薬組成物において薬学的に許容される担体と組合せて製剤化(処方)されうる。
【0239】
1つの実施形態においては、キットは、本発明で提供される抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたはその医薬組成物を1つの容器(例えば、無菌ガラスまたはプラスチックバイアル)内に、そしてその医薬組成物および/または治療用物質を別の容器(例えば、無菌ガラスまたはプラスチックバイアル)内に含む。
【0240】
もう1つの実施形態においては、キットは、単一の共通の容器内に、所望により医薬組成物において、一緒に製剤化された1以上の治療用物質と所望により組合されていてもよい、本発明で提供される抗体またはその抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される担体とを含む組合せを含む。
【0241】
キットが対象への非経口投与のための医薬組成物を含む場合、キットは、そのような投与を行うための装置を含みうる。例えば、キットは前記の1以上の皮下針または他の注射装置を含みうる。
【0242】
キットは、キットにおける医薬組成物および剤形に関する情報を含む添付文書を含みうる。一般に、そのような情報は、封入されている医薬組成物および剤形を有効かつ安全に使用することにおいて患者および医師を補助する。例えば、本発明で提供される物質の組合せに関する以下の情報が添付文書(インサート)において供給されうる:薬物動態、薬力学、臨床試験、有効性パラメータ、適応症および用法、禁忌、警告、予防策、有害反応、過剰投薬、適切な投与量および投与、供給方法、適切な保存条件、参考資料、製造業者/流通業者情報ならびに特許情報。
【0243】
便宜上、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、キットにおいて、すなわち、診断用または検出用アッセイを行うための説明を伴う所定量の試薬のパッケージ化された組合せにおいて提供されうる。抗体またはフラグメントが酵素で標識されている場合には、キットは、酵素により要求される基質および補因子(例えば、検出可能な発色団または発蛍光団を与える基質前駆体)を含みうる。また、他の添加物、例えば安定剤、バッファー(例えば、ブロッキングバッファーまたは細胞溶解バッファー)などが含まれうる。種々の試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度をもたらすように大きく変動しうる。特に、試薬は、適切な濃度を有する試薬溶液を溶解時に与える賦形剤を含む乾燥粉末、通常は凍結乾燥粉末として提供されうる。
【0244】
また、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)(サンドイッチ型または競合形態)のようなイムノアッセイを含む種々の検出アッセイにおいて使用される1以上のそのような試薬を含む診断用または検出用試薬およびキットを提供する。キットの成分は固体支持体に予め結合していることが可能であり、あるいはキットが使用される際に固体支持体の表面に適用されることが可能である。幾つかの実施形態においては、シグナル生成手段は、本発明で提供される抗体またはフラグメントが予め結合した状態で提供されることが可能であり、あるいは使用前に1以上の成分、例えばバッファー、抗体-酵素コンジュゲート、酵素基質などと一緒にすることを要しうる。キットはまた、追加的な試薬、例えば、固相表面への非特異的結合を低減するためのブロッキング試薬、洗浄試薬、酵素基質などを含みうる。固相表面はチューブ、ビーズ、マイクロタイタープレート、ミクロスフェア、またはタンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドを固定化するのに適した他の材料の形態でありうる。特定の態様においては、化学発光性もしくは発色性産物の形成または化学発光性もしくは発色性基質の還元を触媒する酵素がシグナル生成手段の成分の1つである。そのような酵素は当技術分野でよく知られている。キットは、本明細書に記載されている捕捉剤および検出試薬のいずれかを含みうる。所望により、キットは、本発明で提供される方法を実施するための説明をも含みうる。
【0245】
また、容器、例えばバイアルまたはボトル内にパッケージングされた抗体またはその抗原結合性フラグメントを含み、更に、該容器に貼付またはパッケージングされたラベルを含むキットを提供し、ラベルは容器の内容物を記載し、本明細書に記載されている1以上の病態を治療するための、容器の内容物の使用に関する指示および/または説明を提供する。
【0246】
併用(組合せ)療法の節において前記したとおり、2つの治療用物質の同時投与は、それらの物質がそれらの治療効果を奏する期間の重複が存在する限り、それらの物質が同時に又は同じ経路によって投与されることを要しない。異なる日または週の投与と同様に、同時または連続投与が想定される。
【0247】
本明細書に開示されている抗体、ペプチド、抗原結合性フラグメントまたはポリヌクレオチドの少なくとも1つと、検出試薬または治療用物質として該組成物を使用するための説明とを含む、本明細書に開示されている治療用キットおよび検出用キットも製造されうる。そのようなキットにおいて使用される容器は、検出用および/または治療用組成物の1以上が配置されうる、そして好ましくは、適切にアリコート化されうる、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の適切な容器を含みうる。第2の治療用物質も提供される場合には、キットは、この第2の検出用および/または治療用組成物が配置されうる第2の異なる容器をも含有しうる。あるいは複数の化合物が単一医薬組成物において調製可能であり、単一収容手段、例えばバイアル、フラスコ、シリンジ、ボトルまたは他の適切な単一容器内にパッケージングされうる。本明細書に開示されているキットはまた、典型的には、商業的販売のために密封された、バイアルを収容するための手段、例えば、所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形プラスチック容器を含む。放射能標識、発色性、蛍光性または他のタイプの検出可能な標識または検出手段がキット内に含まれる場合、標識剤は検出用または治療用組成物自体と同じ容器において提供されることが可能であり、あるいは、この第2の組成物が配置されうる、そして適切にはアリコート化されうる第2の異なる収容手段内に配置されうる。あるいは検出試薬および標識は単一収容手段において調製されることが可能であり、ほとんどの場合、キットは、典型的には、商業的販売および/または簡便な包装および運搬のために密封してバイアルを収容するための手段をも含む。
【0248】
本明細書に記載されている検出またはモニタリング方法を実施するための装置または器具をも提供する。そのような装置は、サンプルが入れられうるチャンバーまたはチューブ、サンプルの流れを装置に通すためのバルブまたはポンプを所望により含んでいてもよい流体処理系、血液から血漿または血清を分離するための所望により含まれていてもよいフィルター、捕捉剤または検出試薬の添加のための混合チャンバー、および捕捉剤免疫複合体に結合した検出可能な標識の量を検出するための所望により含まれていてもよい検出装置を含みうる。サンプルの流れは受動的(例えば、サンプルが適用されたら該装置の更なる操作を要しない毛管力、流体静力または他の力)または能動的(例えば、機械ポンプ、電気浸透ポンプ、遠心力または空気圧の増加により生じる力の適用によるもの)、または能動的力と受動的力との組合せでありうる。
【0249】
他の実施形態においては、プロセッサ、コンピュータ可読メモリおよびルーチンをも提供し、これは、該コンピュータ可読メモリ上で保存され、本明細書に記載されている方法のいずれかを実施するために該プロセッサ上で実行されるように適合化される。適切なコンピューティングシステム、環境および/または設定の例には、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースシステム、セットトップボックス、プログラマブルコンシューマエレクトロニクス、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、前記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境、あるいは当技術分野で公知のいずれかの他のシステムが含まれる。
【0250】
一般的方法
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook,FritschおよびManiatis(1982 & 1989 2nd Edition,2001 3rd Edition)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,3rded,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA.に記載されている。標準的な方法は、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,VoIs.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにも記載されており、これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳類細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質およびタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載している。
【0251】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を含むタンパク質精製のための方法が記載されている(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の製造、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照されたい)。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の製造、精製およびフラグメント化が記載されている(Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;HarlowおよびLane,前掲)。リガンド/受容体相互作用を特徴づけるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照されたい)。
【0252】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびヒト化抗体は製造可能である(例えば、SheperdおよびDean(編)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;KontermannおよびDubel(編)(2001)Antibody Engineering,Springer-Verlag,New York;HarlowおよびLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139-243;Carpenterら(2000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immunol.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27371-27378;Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684;Chothiaら(1989)Nature 342:877-883;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487-499;米国特許第6,329,511号を参照されたい)。
【0253】
単鎖抗体およびジアボディが記載されている(例えば、Maleckiら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:213-218;Conrathら(2001)J.Biol.Chem.276:7346-7350;Desmyterら(2001)J.Biol.Chem.276:26285-26290;HudsonおよびKortt(1999)J.Immunol.Methods 231:177-189;ならびに米国特許第4,946,778号を参照されたい)。二官能性抗体が提供される(例えば、Mackら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7021-7025;Carter(2001)J.Immunol.Methods 248:7-15;Volkelら(2001)Protein Engineering 14:815-823;Segalら(2001)J.Immunol.Methods 248:1-6;Brennanら(1985)Science 229:81-83;Rasoら(1997)J.Biol.Chem.272:27623;Morrison(1985)Science 229:1202-1207;Trauneckerら(1991)EMBO J.10:3655-3659;ならびに米国特許第5,932,448号、第5,532,210号および第6,129,914号を参照されたい)。
【0254】
二重特異性抗体も提供される(例えば、Azzoniら(1998)J.Immunol.161:3493;Kitaら(1999)J.Immunol.162:6901;Merchantら(2000)J.Biol.Chem.74:9115;Pandeyら(2000)J.Biol.Chem.275:38633;Zhengら(2001)J.Biol Chem.276:12999;Propstら(2000)J.Immunol.165:2214;Long(1999)Ann.Rev.Immunol.17:875を参照されたい)。
【0255】
抗原の精製は抗体の製造に必要ではない。関心のある抗原を含有する細胞で動物を免疫化することが可能である。ついで免疫化動物から脾細胞を単離し、脾細胞を骨髄腫細胞系と融合させてハイブリドーマを得ることが可能である(例えば、Meyaardら(1997)Immunity 7:283-290;Wrightら(2000)Immunity 13:233-242;Prestonら,前掲;Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157-5164を参照されたい)。
【0256】
抗体は例えば小薬物分子、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲート化されうる。抗体は治療、診断、キットまたは他の目的に有用であり、例えば色素、放射性同位体、酵素または金属、例えばコロイド金に結合した抗体を包含する(例えば、Le Doussalら(1991)J.Immunol.146:169-175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891-3898;HsingおよびBishop(1999)J.Immunol.162:2804-2811;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883-889を参照されたい)。
【0257】
蛍光標識細胞分取検出系(FACS)を含むフローサイトメトリーのための方法が利用可能である(例えば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照されたい)。例えば診断試薬としての使用のための、核酸プライマーおよびプローブを含む核酸、ポリペプチドならびに抗体を修飾するのに適した蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma-Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MO)。
【0258】
免疫系の標準的な組織学的方法が記載されている(例えば、Muller-Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw-Hill,New York,NYを参照されたい)。
【0259】
例えば抗原フラグメント、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能的ドメイン、グリコシル化部位および配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741-742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741-742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177-181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17-21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683-4690を参照されたい)。
【0260】
実施例
この節における実施例は、限定的なものとしてではなく、例示として記載されている。
【0261】
実施例1:ヒト化08A抗体のアフィニティ成熟および結合アフィニティの研究
単一CDRコドンベース突然変異誘発ライブラリーによる08Aのアフィニティ成熟
ヒト化08A(S61Nグリコシル化部位補正を含有する;配列番号に従う配列の番号付け)Fab001(配列番号1および2)のCDRH3、CDRL1およびCDRL3をコドンベース突然変異誘発のために標的化した。H3、L1およびL3ライブラリーを、それぞれH95~H100B位、L27B~L32位およびL90~L97位においてランダム化した。各ライブラリーからの代表的な個々のコロニーの配列決定は標的化残基の予想CDRにおけるランダム化を証明した。各ライブラリーは10個を超えるコロニーを生成し、このことは、ライブラリーのサイズが標的領域内の全ての可能なアミノ酸の組合せを示すのに十分であることを示唆している。
【0262】
ライブラリーを、各ラウンドで抗原の濃度を減少させながら、4ラウンドのアフィニティベース液相ファージ提示選択に付した。比較的高い抗原濃度(20nM)を第1ラウンドに用いた。高アフィニティ変異体を選択するために、後続の3ラウンドのそれぞれで、抗原濃度を10倍減少させた。第4ラウンドからの個々の変異体を、ELISAスクリーニングにより、抗原への陽性結合に関して試験した。
【0263】
野生型より低いKDを有する変異体scFvを特定するために、細菌PPEにおける未精製天然scFvにおいて、OCTET RED96(Fortebio,USA)により、見掛けKoffを測定した。4ラウンドの選択からの合計156個のscFvをkoffによりランク付けした。koffの改善を示す20個のクローンをFab変換のために選択した。konおよびkoffをBIACOREにより測定し、BIACORE T200評価ソフトウェアを使用してKDを計算した。ただ1つのFab、すなわちFab 004、または3G9が、08Aと比較してKDにおける2倍の改善を示した。
【0264】
ランダム突然変異誘発ライブラリーおよびVH/VLコンビナトリアルライブラリーによる08Aのアフィニティ成熟
H3、L1およびL3に焦点を合わせるのではなくKDの改善を達成するために、本発明者らは、VHおよびVLコンビナトリアル突然変異誘発ライブラリーを構築するために、ランダム化突然変異誘発のために08AからのCDR3のVHおよびVL領域の6つ全てを標的化した。該配列は、野生型配列と比較して大きな多様性を有するが、減少させた抗原濃度を用いるパンニングは、結合を保持する、より高いアフィニティのクローンの富化をもたらすはずである。パンニング用の以下の3つのVH/VLコンビナトリアルライブラリを作製した:(1)08A VH +コンビナトリアルVLライブラリーを使用する軽鎖シャッフリング、(2)Fab 004 VH +コンビナトリアルVLライブラリーを使用する軽鎖シャッフリング、および(3)VH+VLコンビナトリアルライブラリー。
【0265】
VHおよびVLにおける6つ全てのCDRにわたる多様性を増大させるために、本発明者らはランダム突然変異誘発法を用いた。具体的には、6つのCDRを20アミノ酸のいずれかに変化させるために、NNKコドンランダム化を用いて突然変異誘発を行った。CDRループ内の各残基にランダム突然変異を含有する配列ライブラリーを得るために、合計12個のライブラリーを構築した。6つのVHライブラリを、それぞれ、H31~H35位(H1ライブラリ)、H51~H54位(H2Aライブラリ)、H55~H59位(H2Bライブラリ)、H60~H64位(H2Cライブラリ)、H96~H100位(H3Aライブラリ)およびH96A~H102位(H3Bライブラリ)においてランダム化した。6つのVLライブラリーを、それぞれ、L21~L27A位(L1Aライブラリー)、L27B~L29位(L1Bライブラリー)、L30~L34位(L1Cライブラリー)、L51~L55位(L2ライブラリー)、L89~L93位(L3Aライブラリー)およびL93~L97位(L3Bライブラリ)においてランダム化した。各ライブラリーからの代表的な個々のコロニーの配列決定は標的化残基の予想CDRにおけるランダム化を証明した。各ライブラリーは10個を超えるコロニーを生成し、このことは、ライブラリーのサイズが標的領域内の全ての可能なアミノ酸の組合せを示すのに十分であることを示唆している。
【0266】
12個全てのライブラリーを3ラウンドのパンニングに付した。第3ラウンド生成プラスミドDNAを調製し、突然変異CDRフラグメントを増幅するための鋳型として使用した。コンビナトリアルVH突然変異誘発scFvを2工程オーバーラップPCRにより作製して、3つのCDRを互いに合体させた。コンビナトリアルVL突然変異誘発scFvを同様にして作製した。重鎖および軽鎖コンビナトリアルライブラリーを、前記のとおりファージミドベクター内にscFvをクローニングすることにより作製した。
【0267】
12個全てのライブラリーを別々に、各ラウンドで抗原濃度を減少させながら、3ラウンドのオフレート(off-rate)ファージ提示選択に付した。比較的高い抗原濃度(10nM)を第1ラウンドに用いた。抗原濃度を後続の2ラウンドのそれぞれで10倍減少させた。第3ラウンド生成物からのVHまたはVLプール化レパートリーを使用して、3つのCDRを互いに合体させる2工程オーバーラップPCRにより、コンビナトリアルVHまたはVL突然変異誘発ライブラリーを作製した。また、オーバーラップPCRを用いて、クローンFab 004の重鎖をコンビナトリアル軽鎖と合体させることにより、鎖シャッフリングライブラリーを作製した。これらのコンビナトリアルライブラリーを、漸減濃度(100pMおよび10am)の抗原の存在下、オフレート(off-rate)選択の更なる2つのラウンドに付した。
【0268】
Fab 004から開始することによる、アフィニティの、より大きな増加の可能性ゆえに、Fab 004 VH軽鎖シャッフリングライブラリーからのパンニングおよびスクリーニングを08A VH軽鎖シャッフリングライブラリーより優先させた。Fab 004 VH軽鎖シャッフリングコンビナトリアルライブラリーの第2ラウンド生成物からの個々の変異体を、ELISAスクリーニングにより、抗原への陽性結合に関して試験した。合計108個のscFvをkoffによりランク付けした。koffの改善を伴う7つのクローンをFab変換用に選択した。konおよびkoffをBIACOREにより測定し、KDを計算した。7つ全てのFabが、08Aと比較して、KDにおける5~10倍の改善を示した。これは、単一突然変異誘発ライブラリーを使用する従来の方法で観察されたものより大きな、KDにおける改善であった(表4)。コンビナトリアル軽鎖ライブラリーと組合された3G9重鎖の第2ラウンドの選択からFab098、Fab099、Fab100、Fab101、Fab102、Fab103およびFab104を単離した。
【0269】
VH+VLコンビナトリアル突然変異誘発ライブラリーを作製するために、VHおよびVLコンビナトリアルライブラリーの第1ラウンド生成物からのVHおよびVLプール化レパートリーを重複PCRにより組換えて、VH鎖およびVL鎖の両方に突然変異を有する組換え変異体の単一ライブラリーを作製した。VHおよびVLコンビナトリアルライブラリーを、10pMの抗原を使用するオフレート(off-rate)選択の更なる2つのラウンドに付した。コンビナトリアルライブラリーの第2ラウンド生成物からの個々の変異体を、ELISAにより、抗原への陽性結合に関して試験した。合計216個のscFvをkoffによりランク付けした。koffの改善を伴う4つのクローンをFab変換用に選択した。konおよびkoffをBIACOREにより測定し、KDを計算した。4つのFab(Fab128、Fab133、Fab138およびFab139)は、08Aと比較してKDにおける5~18倍の改善を示した(表4)。
【0270】
選択されたクローンの配列
オフレート(off-rate)改善クローン(VHおよびVL)の可変領域をPCR増幅した(プライマーはGenewiz,Suzhouにより合成された)。PCR反応は、95℃で2分、95℃30秒、52℃で1分、72℃で1分の15サイクル、72℃10分、そしてそれに続く4℃で行った。最終的なPCR産物を1% アガロースゲルにおいて確認し、Qiagen QIAQUICK精製キットを使用して精製した。
【0271】
精製したVLおよびVH PCR産物を、それぞれpCP-hCk(VL)またはpCP-hCg4(Fabベクター)内にクローニングした。ついで陽性クローンを配列決定のためにBioSune(Shanghai)に送った。MN midi-prepキット(Macherey-Nagel,USA)を使用して、プラスミドDNAを調製した。
【0272】
Fab98~104のアフィニティ成熟突然変異アラインメント(Fab001と比較した場合の突然変異が下線で示されている)を表3に示す。
【表4】
【0273】
293細胞における一過性トランスフェクション
トランスフェクションの約24時間前に、293-F細胞をOPM-293 CD03培地(OPM Biosciences,China)内で2.2×10細胞/mlで継代し、シェーカー上、120rpm/分、37℃、5% COにおいてインキュベートした。トランスフェクション当日、細胞密度は約4×10細胞/mlであった。最適なトランスフェクションを確保するには、細胞の生存率は95%を超えている必要がある。
【0274】
細胞培養100ml当たり150μgのプラスミドDNA(Fd:LC=2:3)を調製した。DNAを、トランスフェクションされる培養液の20分の1に相当する容量で、OPTI-MEM発現培地(Gibco,USA)中で希釈し、1mgのPEI(Polysciences,USA)を、該DNA溶液の場合と同等の容量で、OPTI-MEM培地中で希釈した。PEI溶液を該希釈DNA溶液に加え、DNA-PEI混合物を穏やかに混合し、トランスフェクション前に室温で15分間インキュベートした。フラスコの細胞をゆっくりと渦巻かせながら、DNA-PEI混合物を細胞培養に加え、DNA-PEI混合物を該細胞と共に4時間インキュベートした。培地容量の20分の1のペプトン(Fluka,USA)をフラスコに加えた。ついで細胞を125rpm/分、37℃および5% COにおいて培養した。
【0275】
Fabの精製
第6日の前記馴化培地を、25mM Tris、150mM NaCl(pH8.0)で平衡化された0.6mlのKAPPASELECT樹脂(GE Healthcare,USA)カラム上にローディングした。ついで、サンプルのローディングの後、カラムを平衡化バッファーでベースラインまで洗浄した。洗浄後、カラムを50mM クエン酸ナトリウム、150mM NaCl(pH3.0)で溶出し、ついで直ちに1M アルギニン、400mM コハク酸(pH9.0)を加えてpH値を5.5に調整した。最終生成物をPBS溶液に対して透析した。タンパク質純度をSDS-PAGEにより分析し、その濃度をブラッドフォード法により測定した。
【0276】
精製Fabのサイズ排除クロマトグラフィー分析
外界温度でHPLC系(E2695,Waters)を使用するSEC SIZESEP-SIHカラム(Waters,内径7.8mm、長さ30cm)で、精製抗体を分析するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。移動相として、5倍量のPBSバッファーを流速1ml/分で使用した。注入体積は20μlで、280nmで検出を行った。
【0277】
精製FabのBiacoreアッセイ
CM5チップ上への組換えヒトまたはカニクイザルPD-1の固定化: 新たに調製された1:1 50mM NHS:200mM EDCの7分間の注入(10μl/分)により、CM5センサーチップをFC2において活性化した。10mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)中の0.2μg/mlの濃度のPD-1を活性化チップ上に5μl/分で120秒間注入した(HBS-EPランニングバッファー:10mM HEPES、150mM NaCl、3.4mM EDTA、0.005% 界面活性剤P20、pH7.4)。残存活性カップリング部位を、1M エタノールアミンの10μl/分での7分間の注入によりブロッキングした。
【0278】
結合速度論測定: 会合段階において、種々の濃度のFabを30μl/分の流速で180秒間注入した。HBS-EPバッファーをチップ表面上に600秒間流すことにより、結合抗体の解離をモニターした。各サイクルの終了時に、再生バッファー(pH1.7を有する10mM グリシンバッファー)を180秒間注入することにより、センサー表面を再生させた。参照フローからのシグナルに関してセンソグラムを補正した後、BIACORE T 200評価ソフトウェアver.1.0(Biacore,GE,USA)を使用して、速度論を計算した。
【表5】
【0279】
実施例2:ヒトPD1に対するマウスおよびヒト化抗PD-1 mAbのアフィニティ
BIAcoreによる表面速度論
捕捉モードを使用する表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイを用いて、ポリヒスチジンタグ付きヒトPD-1(hPD1-His,98AFK)に対する抗PD-1抗体の結合速度論およびアフィニティを決定した。製造業者の説明に従い、アミンカップリングキット(GE Healthcare,BR100050)を使用して、シリーズSセンサーチップCM5(GE Healthcare,BR100530)を活性化させた。供給されたpH5.0の10mM 酢酸ナトリウムバッファー中で希釈されたヒト捕捉キット(抗ヒトFc、25μg/mL、GE Healthcare,BR100839)またはマウス捕捉キット(抗マウスFc、30μg/mL、GE Healthcare,BR100838)抗体を活性化表面上に7分間固定化した。固定化後、表面を1M エタノールアミン/HCl(pH8.5)で7分間不活性化した。最終的な固定化レベルは、4つのフローセルのそれぞれにおいて、マウス捕捉の場合には約8,000共鳴単位(RU)、またはヒト捕捉の場合には約12,000 RUに達した。
【0280】
HBS-EP+[0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v 界面活性剤P20]ランニングバッファー中、biacore T200で25℃で結合速度論を測定した。流速10μl/分でマウスまたはヒトFc捕捉表面上に抗体を捕捉した。フローセル2、3および4上に抗体を捕捉した。フローセル1は捕捉抗体の非存在下の参照体として使用した。20nMから開始するアナライト98AFK(hPD1-His)の6点2倍系列希釈液をランニングバッファー(HBS-EP+)中で調製した。二重参照のために2つのバッファーブランクを含めた。滴定系列物を50μl/分で3分間注入し、ついで600秒間の解離を行った。各サイクルの後、抗ヒトFcチップ上の10μl/mLでの3M MgClの30秒間の注入または抗マウスFcチップ上の10μl/分での10mM グリシン(pH1.7)の180秒間の注入により、表面を再生させた。
【0281】
センサーグラム処理およびデータ分析をBiacore T200評価ソフトウェアバージョン(Evaluation Software Version)2.0.4(GE Healthcare)で行った。参照フローセル1におけるシグナルおよびブランク注入からのシグナルの減算による二重参照の後、抗体結合を示すセンサーグラムを得た。処理された曲線を1:1結合モデルに全体的(グローバル)にフィットさせて、結合速度定数kon(M-1-1;ここで、「M」はモル濃度に相当し、「s」は秒に相当する)および解離速度定数koff(s-1)を決定した。これらの速度定数を使用して、平衡解離定数K(M)=koff/konを計算した。
【0282】
BIAcoreによる溶液アフィニティ
溶液モードを使用する、SPRに基づくアッセイを用いて、ポリヒスチジンタグ付きヒトPD-1(hPD1-His,98AFK)に対する抗PD-1ヒト化抗体の溶液アフィニティを決定した。製造業者の説明に従い、アミンカップリングキット(GE Healthcare,BR100050)を使用して、シリーズSセンサーチップCM5(GE Healthcare,BR100530)を活性化させた。ヒトPD1-His(pH5.0の10mM 酢酸ナトリウムバッファー中で希釈された40μg/mLの98AFK)を活性化表面上に7分間固定化した。固定化後、表面を1M エタノールアミン/HCl(pH8.5)で7分間不活性化した。最終的な固定化レベルはフローセルにおいて約6,000共鳴単位(RU)に達した。
【0283】
一連の滴定において抗体パラトープの未結合画分を測定することにより、溶液のアフィニティを決定し、この場合、抗体濃度を一定に保ち(500pMまたは100pM)、抗原hPD1-His(98AFK)濃度を16点滴定系列において100nMから3pMまで1:2希釈した。滴定系列物を室温で16~24時間インキュベートして平衡に到達させた。抗原が固定化されたBIAcoreチップを使用して、競合モードで未結合部位を測定した。この場合、検出されたSPRシグナルは未結合抗体に対応した。
【0284】
HBS-EP+(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v 界面活性剤P20)ランニングバッファー中、BIACORE T200において、25℃で溶液アフィニティを測定した。16時間を超えるインキュベーションの後の滴定系列物を、hPD1-His(前記)が固定化されたセンサーチップ上に注入した。10μL/分で120秒間(500pM mAb系列の場合)または400秒間(100pM mAb系列の場合)の注入の後、RUに比例するものとして、遊離未結合抗体濃度を測定した。各サイクルの後、3M MgClとpH2.0の10mM グリシンとの1:1混合物の30μL/分での30秒間の注入により、表面を再生させた。
【0285】
KINEXA Proバージョン1.02(Sapydyne)を使用して、データ分析を行った。この場合、RUを正規化し、濃度に対してプロットした。2つの滴定(100pMおよび500pMの一定の抗体濃度を使用)からの正規化データを、n-カーブ分析(Curve Analysis)バージョン1.02(Sapidyne)を使用してフィットさせて、各相互作用に関するK(M)値を得た。
【0286】
標準的な表面ベースアフィニティ測定においては、親マウス08A抗体は0.24nMのアフィニティを示した。これとは対照的に、VH CDR2における親マウス08A抗体変異体N59Q、N59EおよびN59Aは、親マウス08A抗体と比較して低下したアフィニティを示した。ヒト化08A IgG4抗体変異体は全て、親マウス08A抗体より高いアフィニティを示した。CDHR2におけるG56A、S61NおよびG56A/S61N補正を含有する後続ヒト化08A IgG4抗体変異体はアフィニティの改善への傾向を示したが、N55Eはそうではなかった。G56A補正を含有するヒト化08Aアフィニティ成熟形態Fab098 IgG4抗体はアフィニティを約3倍改善させた。S61NおよびG56A補正を含有するヒト化08Aアフィニティ成熟形態Fab100 IgG4抗体はアフィニティを約6倍改善させた(表5を参照されたい)。
【表6】
【0287】
溶液モードアフィニティの決定においては、S61NおよびG56A補正を含有するアフィニティ成熟ヒト化08A IgG4 Fab 100抗体は、S61N補正を含有するヒト化08A IgG4抗体と比較して有意なアフィニティの改善を示した(表6を参照されたい)。
【表7】
【0288】
実施例3:抗PD-1/LAG3二重特異性抗体の製造
抗PD-1/LAG-3二重特異性抗体(BsAb)18ASSは、CDRH2 S61NおよびG56A補正を有するアフィニティ成熟Fab100の重鎖可変領域と、CH1突然変異L145E、K147T、Q175EおよびS183L、CH2突然変異L234A、L235AおよびD265S、CH3突然変異T350V、L351Y、F405A、Y407Vを有するIgG1定常領域とを含有する抗PD-1重鎖(配列番号102);アフィニティ成熟Fab100の軽鎖可変領域と、Cκ突然変異Q124R、T178Rを有するカッパ定常領域とを含有する抗PD-1軽鎖(配列番号103);WO 2016028672のヒト化22D2抗体Ab6の重鎖可変領域と、CH1突然変異S181K、CH2突然変異L234A、L235AおよびD265S、CH3突然変異T350V、T366L、K392LおよびT394Wを有するIgG1定常領域とを含有する抗LAG3重鎖(配列番号96);WO 2016028672の抗体Ab6の軽鎖可変領域と、Cκ突然変異Q124E、S131T、T178YおよびT180Eを有するカッパ定常領域とを含有する抗LAG3軽鎖(配列番号98)を有する。
【0289】
抗PD-1重鎖および抗LAG3重鎖のそれぞれにおけるCH3突然変異(EU番号付け)は抗PD-1アームと抗LAG3アームとのヘテロ二量体形成を促進する。抗PD-1重鎖および軽鎖ならびに抗LAG3重鎖および軽鎖におけるCH1およびCκ突然変異(EU番号付け)は重鎖および軽鎖の適切なペア形成を促進する。CH2突然変異(EU番号付け)はエフェクター機能を低下させる。S61N補正はグリコシル化部位を除去し、G56A補正は脱アミド化部位(配列番号における連続的番号付け)を除去する。
【0290】
18ASSのトランスフェクション、発現および精製
EXPIFECTAMINEトランスフェクション試薬を使用する一過性トランスフェクションにより、チャイニーズハムスター卵巣細胞(EXPIFECTAMINE;Thermo Fisher Scientific)において18ASSを組換え発現させた。重鎖および軽鎖抗体鎖の2つのペア(18ASS:抗PD-1:配列番号102および103;抗LAG3:配列番号96および98)をコードする遺伝子を、哺乳類発現用に最適化されたコドンを使用する遺伝子合成により構築した。4つの鎖をコードする発現カセットをpTT5哺乳類発現ベクター(National Research Council,Canadaからのもの)内にクローニングした。異なるタンパク質鎖(2つの重鎖および2つの軽鎖)をコードする4つのプラスミドDNAを1:1:1:1のプラスミドDNA比でトランスフェクトし、7日間発現させた後、細胞生存率93%で回収した。構築された分泌抗体をプロテインAクロマトグラフィー樹脂(MABSELECT SURE LX;GE Healthcare)の存在下の一晩のインキュベーションにより培養上清から捕捉し、通常のタンパク質精製法によって更に精製した。キャピラリーゲル電気泳動、分析サイズ排除クロマトグラフィーおよび質量分析(無傷質量)で測定した最終的な二重特異性抗体の純度は98%を超えた。
【0291】
実施例4:抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体の製造
抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体(TsAb)(ロット83BCNまたは51AVW)は、CDRH2 S61NおよびG56A補正を有するアフィニティ成熟Fab100の重鎖可変領域と、CH1突然変異L145E、K147T、Q175EおよびS183L、CH2突然変異L234A、L235AおよびD265S、CH3突然変異T350V、L351Y、F405A、Y407Vを有するIgG1定常領域[ここで、C末端は、配列GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号166)を有する16アミノ酸のGSリンカーを介して抗TIGIT 31C6 scFvに結合しており、該scFvはVL-VH形態であり、配列GGSSRSSSSGGGGSGGGGSGS(配列番号167)を有する21アミノ酸のGSリンカーと互いに融合している]とを含有する抗PD-1重鎖(配列番号154);アフィニティ成熟Fab100の軽鎖可変領域と、Cκ変異Q124R、T178Rを有するカッパ定常領域とを含有する抗PD-1軽鎖(配列番号103);WO 2016028672のヒト化22D2抗体Ab6の重鎖可変領域と、CH1突然変異S181K、CH2突然変異L234A、L235AおよびD265S、CH3突然変異T350V、T366L、K392LおよびT394Wを有するIgG1定常領域[ここで、C末端は、配列GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号166)を有する16アミノ酸のGSリンカーを介して抗TIGIT 31C6 scFvに結合しており、該scFvはVL-VH形態であり、配列GGSSRSSSSGGGGSGGGGSGS(配列番号167)を有する21アミノ酸のGSリンカーと互いに融合している]とを含有する抗LAG3重鎖(配列番号153);WO 2016028672の抗体Ab6の軽鎖可変領域と、Cκ突然変異Q124E、S131T、T178YおよびT180Eを有するカッパ定常領域とを含有する抗LAG3軽鎖(配列番号98)を有する。抗PD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体(TsAbY31W)(ロット30BCM)は、抗LAG3 22D2軽鎖CDR1がY31W突然変異を有すること(配列番号155)を除いて、TsAbと同じ配列を有する。Y31W突然変異はチロシン硫酸化部位を除去する。
【0292】
抗PD-1重鎖および抗LAG3重鎖のそれぞれにおけるCH3突然変異(EU番号付け)は抗PD-1アームと抗LAG3アームとのヘテロ二量体形成を促進する。抗PD-1重鎖および軽鎖ならびに抗LAG3重鎖および軽鎖におけるCH1およびCκ突然変異(EU番号付け)は重鎖および軽鎖の適切なペア形成を促進する。CH2突然変異(EU番号付け)はエフェクター機能を低下させる。S61N補正はグリコシル化部位を除去し、G56A補正は脱アミド化部位(配列番号における連続的番号付け)を除去する。
【0293】
TsAbおよびTsAb Y31Wのトランスフェクション、発現および精製
ExpiFectamineトランスフェクション試薬を使用する一過性トランスフェクションにより、チャイニーズハムスター卵巣細胞(ExpiFectamine-Thermo Fisher Scientific)においてTsAbおよびTsAb Y31Wを組換え発現させた。重鎖および軽鎖抗体鎖の2つのペア(TsAb:抗PD-1/TIGIT:配列番号154および103;抗LAG3/TIGIT:配列番号153および98)(TsAb Y31W:抗PD-1/TIGIT 配列番号:154および103;抗LAG3/TIGIT:配列番号153および155)をコードする遺伝子を、哺乳類発現用に最適化されたコドンを使用する遺伝子合成により構築した。4つの鎖をコードする発現カセットをpTT5哺乳類発現ベクター(National Research Council,Canadaからのもの)内にクローニングした。異なるタンパク質鎖(LAG3 HC:PD1 HC:LAG3 LC:PD1 LC)をコードする4つのプラスミドDNAを35:35:20:10のプラスミドDNA比でトランスフェクトし、7日間発現させた後、細胞生存率93%で回収した。プロテインAカートリッジ(POROSA20カラム,Invitrogen,Grand Island,NY,Part# 2-1001-00,2.1mmD×30mmH,104μL)と共に600/717/996 HPLC系(WATERS Corporation,Milford,MA)を使用して、上清中の抗体の定量を行った。NANOSEP MF GHP 0.45μm遠心分離装置(PALL Life Sciences,Part#ODGHPC35)を使用して8000~11000gで3分間遠心分離することによりサンプルを濾過した後、PBSを使用して2mL/分の流速でカラム上に注入した。溶出を0.15M NaCl(pH2.0)で行った。EMPOWERソフトウェア(WATERS Corporation,Milford,MA)を使用して、データを処理し、線形回帰により曲線をフィットさせた。
【0294】
構築された分泌抗体をプロテインAクロマトグラフィー樹脂(MabSelect Sure LX-GE Healthcare)の存在下の一晩のインキュベーションにより培養上清から捕捉し、通常のタンパク質精製法によって更に精製した。サンプルをサンプル変性溶液(還元条件用)またはタンパク質発現サンプルバッファー(非還元条件用)のいずれかと混合し、BioRadハードシェル96ウェルプレート上にローディングした。ついでサンプルを70℃で15分間加熱し、遠心分離し、水およびゲル色素溶液と混合した後、LabChip GXII上で泳動させた。CE-SDSによる純度が95%を超える画分を一緒にプールして、最終サンプルを得た。
【0295】
キャピラリーゲル電気泳動、分析サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび質量分析(無傷質量)で測定した最終的な三重特異性抗体の純度は98%を超えた。
【0296】
実施例5:抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体の結合アフィニティ
Biacore T200またはBiacore 4000バイオセンサー(GE Healthcare,Chicago,IL)を使用して、結合アフィニティを測定した。固定化、サンプル希釈およびデータ収集のために、以下のランニングバッファーを使用した:10mM HEPES、150mM NaCl、0.05% v/v Surfactant P20、3mM EDTA(GE Healthcare,BR100669,Chicago,IL)。全ての実験は25℃で行った。抗ヒトFc抗体により捕捉された抗体への抗原結合を、シリーズSセンサーチップCM5(GE Healthcare,29149603,Chicago,IL)を使用して測定した。ヒト抗体捕捉キット(Human Antibody Capture Kit)(GE Healthcare,BR100839,Chicago,IL)およびアミンカップリングキット(Amine Coupling Kit)(GE Healthcare,BR100633,Chicago,IL)における説明に従い、抗ヒトFc抗体をチップの全表面上に固定化した。各相互作用のアフィニティを測定するために、抗体を捕捉し、4つまたは6つの濃度の各抗原を30~50μL/分の流速で3分間注入した。ヒトPD1(50AFR)の濃度は0.18nM~44nMの範囲であった。ヒトLAG-3(60AXE)の濃度は0.019nM~4.5nMの範囲であった。ヒトTIGIT(94AGV)の濃度は0.16nM~80nMの範囲であった。抗原注射後、相互作用の解離を15分間モニターした。結合サイクルの間に、3M MgClを30秒間注入して、抗体および抗原をチップから除去した。
【0297】
Biacore T200評価ソフトウェア(Evaluation Software)バージョン2.0またはBiacore 4000評価ソフトウェアバージョン1.1(GE Healthcare,Chicago,IL)を使用して、データを処理し、フィットさせた。陰性対照フローセルからの応答を差し引き、バッファー注入からの応答または2回のバッファー注入からの平均応答を差し引くことにより、データを「二重参照」した。ついでデータを「1:1結合」モデルにフィットさせて、結合速度定数k(M-1-1;ここで、「M」はモル濃度に相当し、「s」は秒に相当する)および解離速度定数k(s-1)を決定した。これらの速度定数を使用して、平衡解離定数K(M)=k/kを計算した。
【表8】
【0298】
実施例6:ヒトT細胞クローン+JY.hPD-L1/CD155アッセイ
ヒトCD4+ T細胞クローンの作製および培養
MHCクラスII同種抗原特異的CD4+ T細胞クローンBC4-49をEBV形質転換B細胞株JYとの2ラウンドの混合白血球反応により作製し、限界希釈によりクローニングした。該クローンを2週間ごとの間隔で同種特異的抗原で再刺激し、イッセル(Yssel’s)培地(IMDM,Gibco 12440-053;ヒト血清AB、Gemimi 100512;ペニシリン/ストレプトマイシン、Mediatech 30-002-CI;ヒトアルブミン、Sigma A9080;ITS-X、Gibco 51500056;トランスフェリン、Roche 10652202001;PA Bioxtra Sigma p5585;LA-OA-アルブミン、Sigma L9655)内で培養した。新鮮なPBMCを、スタンフォード血液センター(Stanford Blood Center)により提供された2つのヒトバフィーコートから単離し、1:1の細胞比でプールした。PBMCを、使用前に、ガンマ線照射装置において4000ラドの線量で照射した。野生型JY細胞を調製し、5000ラドの線量で照射した。最終濃度0.2×10/mLのCD4+ T細胞、1×10/mLの照射PBMC、0.1×10/mLの照射JYおよび100ng/mLのPHA(Sigma L9017)を使用して、T細胞クローンを、フィーダーの存在下、24ウェルプレート内で1ml/ウェルで培養した。組換えヒトIL-2(R&D Systems;202-IL/CF)を再刺激後第3日に最終濃度100ng/mLで加え、増殖中の全体にわたって3~4日ごとに補充した。細胞を0.5~1.0×10/mLの最適濃度まで継代した。再刺激後第7日に、十分なレベルのLAG-3およびTIGITならびに中程度のレベルのPD-1がT細胞表面上で発現された。
【0299】
ヒトCD4+ T細胞機能アッセイ
同種抗原特異的CD4+ T細胞を抗原再刺激後第7日の24ウェル培養プレートから採取し、ついで、2mM EDTA(Invitrogen,15575-38)を含有する20mlのPBS(Hyclone,SH3002802)で遠心分離により2回洗浄した。ペレットをイッセル培地内の単細胞懸濁液に再懸濁させた。三重特異性抗体83BCNおよびそのY31W突然変異体30BCMを、96ウェルU底培養プレート(Falcon,353077)において、100μLの容量中で合計7回の希釈で、最終最高濃度133nMから始めるイッセル培地内での5倍系列希釈により滴定した。4×10細胞/mLの密度のT細胞懸濁液50μlを、滴定抗体を含有するウェルに加えた。抗体/T細胞混合物を、5% CO、37℃のインキュベーター内で1時間プレインキュベートした。ヒトPD-L1およびヒトCD155トランスジーン発現JY細胞(JY.hPD-L1/CD155)を共培養において使用して、Lag3に対するリガンドであるMHCクラスIIを含むアロ特異的抗原を得た。T-75フラスコ(Thermo Scientific,156499)内で、10% FCSを含有するRPMI培地(Corning Cellgro,10-040-CV)内で培養されたJY.hPD-L1/CD155細胞を採集し、ガンマ線照射装置において5000ラドの線量で照射し、ついで、2mM EDTAを含有するPBSで遠心分離により2回洗浄した。ペレットをイッセル培地で再懸濁させ、プレーティング前に40μmのセルストレーナーで濾過した。2×10細胞/mLの濃度の50μl/ウェルのJY.hPD-L1/CD155懸濁液を、プレインキュベートされた抗体-T細胞混合物中に、2:1のT細胞:hPD-L1/CD155細胞の比で分注した。全ての条件を重複反復して行った。約3日間の培養の後、ウェル当たり100μlの上清をヒトIFNγの定量のために回収した。hIFNγ Quantikineキット(R&D Systems,SIF50)を使用して、重複反復物からのプール化上清におけるIFNγレベルを評価するために、ヒトIFNγELISAを行った。製造業者により提供された標準的なプロトコルに従い、アッセイを行った。GraphPadプリズムソフトウェアを使用して、EC50値を計算した。これらの実験からのデータを図1に示す。
【0300】
この実施例が実証したところによると、抗ヒトPD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体TsAb(83BCN)およびそのTsAb Y31W突然変異体(30BCM)は、T細胞クローンにより発現されたヒトPD-1、ヒトLAG-3およびヒトTIGITに結合し、PD-L1とのPD-1の相互作用を遮断し、MHCクラスIIとのLAG-3の相互作用を遮断し、CD155とのTIGITの相互作用を遮断し、それにより、三重PD-L1媒介性、MHCクラスII媒介性およびCD155媒介性抑制に基づく同種刺激に対してIFNγを用量依存的に産生するようにT細胞が応答することを可能にした。また、この実施例は、抗ヒトPD-1/LAG-3/TIGIT三重特異性抗体TsAb(83BCN)およびそのTsAb Y31W突然変異体(30BCM)がT細胞IFNγ産生の促進において同等の効力を有することを示した。アイソタイプ対照抗体は活性化T細胞クローンによるIFNγ産生を増強しなかった。
【0301】
実施例7:BIAcoreによればTsAbはヒトPD-1、LAG-3およびTIGITに同時に結合しうる
ヒトFc捕捉表面を使用するBIAcore T200装置(GE Healthcare)における表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、三重特異性抗体(TsAb)がその3つの抗原全てに同時に結合する能力を測定した。GEヒト抗体捕捉キット(Human Antibody Capture Kit)(Cat#BR100839)を製造業者の説明に従い使用して、シリーズS CM5チップ(GE Healthcare)を調製した。
【表9】
【0302】
抗PD-1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体TsAb(51AVW)を、10分間の表面安定化および捕捉減衰を可能にした後、約300RUレベルで捕捉した。3つのヒト抗原、すなわち、PD-1-His(50AFR)、LAG3-His(66AKO)およびTIGIT-His(87AGX)のそれぞれを、以下の表に示されている最終濃度の、HBS-EPランニングバッファー中の互いのプレミックス組合せ体として調製した。LAG3-His(66AKO)の濃度は、それが遥かに高いアフィニティ(~pM)を有することから、およびチップへの非特異的結合を最小化するために、より低く維持した。
【表10】
【0303】
サンプルプレミックスを、3つの抗原の6つの連続した組合せの全てをカバーするように注入した。適切な順序(例えば、プレミックス1->4->7、プレミックス2->6->7、プレミックス3->5->7)でのプレミックスの注入は、第1の注入および第2の注入からの抗原活性、ならびに顕著な解離の場合の占拠部位のほぼ飽和を維持するのに役立った。Biacore T200では、最初の2回の注入はデュアル注入モードを用いて行い、第3の注入は通常の注入モードを用いて行った(違いは、第2の注入と第3の注入との間の余剰時間である)。抗原自体が、プレミックスにおいて、自己会合する、または互いに相互作用する可能性があるが、解釈を単純にするために、それは可能性が低い、または有意ではないと仮定した。
【0304】
各注入の開始から各工程に関する最大シグナルまでの結合レベル(RU単位)を推定した。これを、分子の捕捉レベルおよび分子量に基づく理論上の最大値と比較して、以下の推定結合能(% BC)を得た。
【数1】
【0305】
ここで、結合は、各抗原注入シグナルの高さに基づく、抗原に関する推定結合レベルであり、捕捉は、捕捉されたTsAbの量であり、nはTsAb上の所与抗原に対する結合部位の数であり(すなわち、PD1およびLAG3の場合はn=1、TIGITの場合はn=2)、MWは抗原またはTsAbの分子量である。
【0306】
高濃度の抗原をほぼ飽和の各結合部位に連続的に注入することにより、各抗原に関する部位占拠を推定し、結果は、三重特異性抗体上の全ての利用可能な部位の同時占拠に合致する結合シグナルを示した。各センサーグラム(図2)において、TsAb(51AVW)は最初の抗原注入の前に約300RUで捕捉された。プレミックス注入の際のシグナルにおける各後続上方シフトは未占拠部位への抗原の結合を示す。完全占拠部位に関する典型的な%BCは、マトリックス効果、分子量変動(例えば、グリコシル化)、高速解離、非特異的結合、試薬品質(例えば、凝集)などにより、約70%~約120%の範囲となりうる。図面に示されている%BCはそれらの3つの抗原に関する良好な全体的結合能を示しており、最初の結合体に関して、幾分高い%BCを示している。抗原結合のいずれかが他の抗原の遮断もしくは置換につながる場合、または抗原結合が捕捉表面からのTsAbの遊離につながる場合、シグナル損失の幾らかの可能性があるが、注入順序に無関係に%BCが一貫していることは、そのような事象が重要でないことを示唆している。
【表11】
【0307】
実施例8:PathHunter二量体化アッセイにおける細胞上のPD-1/LAG3、PD-1/TIGITまたはLAG3/TIGITへのTsAbおよびTsAb Y31Wの結合
同一細胞上の2つのリガンドに同時に結合する三重特異性抗体の能力を、PathHunter二量体化(Dimerization)(DiscoverX)細胞ベースアッセイを用いて実証した。このアッセイは、酵素断片補完(enzyme fragment complementation)(EFC)技術を利用するものであり、この場合、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)酵素が、独立して不活性である2つの断片、すなわち、ProLink(PK)および酵素アクセプター(Enzyme Acceptor)(EA)に分割される。それらは、タンパク質間相互作用により補完されると、化学発光基質を加水分解して光を生成する活性β-gal酵素を生成する。PathHunter U2OS細胞(DiscoverX)は、PK断片上の標的タンパク質1とEA断片上の標的タンパク質2とを共発現するように操作されている:ヒトPD1/LAG3二量体細胞クローン#9(ロット56AUA)、ヒトPD1/TIGIT二量体細胞クローン#5(ロット14BAU)、およびヒトLAG3/TIGIT二量体細胞クローン#16(ロット95BCS)。96ウェル白色組織培養プレート内で、アッセイコンプリート細胞プレーティング試薬(Assay Complete Cell Plating Reagent)(DiscoverX)において、10,000細胞/100μL/ウェルで、細胞をプレーティングした。0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% v/v 界面活性剤P20中の4.5nMから開始するTsAbまたは対照抗体の16点2.25倍滴定物を10μL/ウェルで細胞に加え、37℃、5% COで16時間インキュベートした。ついで、PathHunterフラッシュ検出試薬(Flash Detection Reagent)(DiscoverX)を110μL/ウェルで加え、プレートを暗所で室温で1時間インキュベートし、ついで、それを発光プレートリーダー(Molecular Devices SpectraMax M5e)で1秒積分で読み取った。化学発光シグナルを正規化し、抗体濃度に対してプロットした。GraphPadPrismソフトウェアを使用する非線形回帰分析により、結合EC50を計算した。
【0308】
PathHunter二量体化細胞ベース近接アッセイは、TsAbおよびTsAb Y31Wが同一細胞上のPD-1およびLAG3、PD-1およびTIGIT、またはLAG3およびTIGITに同時に結合しうることを示した(図3A~Cを参照されたい)。また、TsAbおよびTsAb Y31W突然変異体は、3つの二量体化アッセイのそれぞれにおいて、類似した結合EC50を示した。
【表12】
【0309】
実施例9:アカゲザル全血における薬物治療後のPD-1発現の評価
3mg/kgの抗PD1/LAG3/TIGIT三重特異性抗体または抗PD1/LAG3二重特異性抗体18ASSが投与されたアカゲザルから、投与の前および後の複数の時点で全血を収集した。各時点からの100μLの全血を、2mLの塩化アンモニウム-カリウム細胞溶解液(Life Technologies,カタログ番号A10492-01)で室温で5分間、細胞溶解した。ついで細胞を400G、4℃で5分間の遠心分離によりペレット化した。次に、細胞を0.5μgのビオチン化キートルーダ(Keytruda)非競合性PD-1ナノボディ(Llama×[PD-1_H]VHH(F0237508C03)Flag3-His(PX),Merck,ロット番号12AMV)と共に4℃で30分間インキュベートした。サンプルをリン酸緩衝食塩水(PBS,Hyclone,カタログ番号SH30028.02)で洗浄し、PBS中の固定可能な生存性色素(eBioscience,カタログ番号65-0866-18)の0.2%溶液100μLと共に4℃で30分間インキュベートした。次にサンプルを2mLのFACSバッファー[2% ウシ胎児血清(GE Healthcare,カタログ番号SH30088.03)と2mM 二カリウム-エチレンジアミン四酢酸とを含有するPBS]で洗浄し、マウス血清の2%溶液(Jackson Immunoresearch,カタログ番号015-000-120)で4℃で10分間ブロッキングした。この後、表面マーカーに対する蛍光標識抗体(表12)とストレプトアビジンとを含有する100μLのフローサイトメトリーパネルと共に4℃で30分間インキュベートした。ついでサンプルをFACSバッファーで洗浄し、1.6% パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences,カタログ番号15710)で4℃で15分間固定した。細胞を再び洗浄し、ペレット化し、200μLのFACSバッファーに再懸濁させ、Becton Dickinson Fortessaフローサイトメーターで取得した。
【0310】
データ分析をFlow Jo V10ソフトウェアで行った。生存性色素での染色に基づいて、死細胞を分析から除外した。前方散乱および側方散乱に基づいて、末梢血単核細胞を特定した。CD14に関する細胞表面染色を用いて、リンパ球から単球を分離した。CD20、NKG2aおよびCD3抗体を使用して、リンパ球をB細胞、T細胞およびNK細胞に分割した。ついでCD3+ T細胞をCD4+ 細胞およびCD8 +細胞に更に細分した。CD4+ 細胞上の全PD-1発現を、標識ストレプトアビジンに関して陽性のサブセットをゲーティングすることにより評価し、CD4+ 細胞の陽性率として表した。PD-1発現の投与前平均を計算するために、2つの投与前時点のPD-1陽性率(%)を平均した。PD-1発現の変化率を、以下の式を用いて計算した。
【0311】
変化率=(陽性率/投与前平均)100
【表13】
【0312】
細胞表面上でPD-1受容体を発現するCD4+ T細胞の割合の減少が、三重特異性抗体抗PD1/LAG3/TIGIT TsAbが投与されたアカゲザル(n=4)において観察され、PD-1発現の最小量は投与後第3日に観察された。抗PD1/LAG3二重特異性抗体18ASSをサルに注射した場合には、同じ細胞集団においてPD-1の減少は観察されなかった(図4および5を参照されたい)。エラーバーは平均からの標準偏差を表す。
【0313】
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2019年7月30日付出願の米国仮特許出願第62/880,158号の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。本明細書中に引用されている全ての参考文献を、各個の刊行物、データベースエントリー(例えば、GenBank配列またはGeneIDエントリー)、特許出願または特許が参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別に示されている場合と同様に、参照により本明細書に組み入れることとする。参照により組み入れるというこの陳述は、そのような引用が、参照により組み入れるという宣誓陳述の直前直後にない場合であっても、37 C.F.R.§1.57(b)(1)に従い、各個の刊行物、データベースエントリー(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリー)、特許出願または特許[それらのそれぞれは37 C.F.R.§1.57(b)(2)に従い明らかに特定されるものである]に関連づけることを出願人が意図しているものである。参照により組み入れるという宣誓陳述が本明細書中に含まれている場合、それは、参照により組み入れるというこの一般的(general)陳述を何ら弱めるものではない。本明細書における参考文献の引用は、該参考文献が関連先行技術であると自認するものではなく、また、それは、これらの刊行物または文書の内容または日付に関して何ら自認するものでもない。
【0314】
本発明は、本明細書に記載されている特定の実施形態により範囲において限定されるものではない。実際、本明細書に記載されているものに加えて、本発明の種々の修飾が前記説明および添付図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような修飾は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。
【0315】
前記の明細書は、当業者が本発明を実施しうるのに十分なものであるとみなされる。本明細書に示され記載されているものに加えて、本発明の種々の修飾が前記説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【表14】
【0316】
イタリック体の突然変異(可変領域における突然変異は連続的番号付けを用いており、定常領域における突然変異はEU番号付けを用いている)、下線はCDR領域(Kabat)を示す。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図4
図5
【配列表】
2022546922000001.app
【国際調査報告】