(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20221102BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20221102BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20221102BHJP
C09D 11/326 20140101ALI20221102BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20221102BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 110
C09D11/54
C09D11/322
C09D11/326
C09D11/40
B41J2/01 123
B41J2/01 501
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511364
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2020074634
(87)【国際公開番号】W WO2021043919
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506176906
【氏名又は名称】ゼイコン マニュファクチュアリング ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ゲンズ, ウォウター ジェローム マリア
(72)【発明者】
【氏名】オプ デ ベーク, ワーナー ジョセフ ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ロデ エリック ドリス
(72)【発明者】
【氏名】デ モンド, ロエル
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EE17
2C056FA04
2C056FA13
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA44
2H186AA02
2H186AB02
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2H186FB55
4J039AD03
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4J039GA24
(57)【要約】
インクジェット印刷ステップに先立って、少なくとも1種の顔料凝集剤を含むプライマー組成物をコーティング基材(120)に塗布し、このインクジェット印刷ステップ(150)を、xμmの滴径を有するインクジェット液滴を用いて行い、インクジェット液滴がyμm×zμmのセル寸法を有する矩形単位セルに相当する印刷解像度でコーティング基材に印刷される印刷方法であって、x/yの比が0.60超である、印刷方法が提供される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷ステップに先立って、少なくとも1種の顔料凝集剤を含むプライマー組成物をコーティング基材に塗布し、前記インクジェット印刷ステップを、xμmの滴径を有するインクジェット液滴を用いて行い、前記インクジェット液滴がyμm×zμmのセル寸法を有する矩形単位セルに相当する印刷解像度で前記コーティング基材に印刷される印刷方法であって、x/yの比が0.60超である、印刷方法。
【請求項2】
前記プライマー組成物が、水系プライマー組成物である、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記顔料凝集剤が、イオン性ポリマー、多価金属塩、酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
インクジェット印刷プロセスが、顔料水性インクジェットインクを使用する、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記コーティング基材が、10.0cmより大きい、好ましくは10.0cm~25.0cmの間、より好ましくは12.0cm~20.0cmの間の滴移動距離によって定義される吸収速度を有し、基準液の2mlの液滴が前記コーティング基材に配置されてから50秒経過した時点で移動した距離によって前記滴移動距離が定義され、前記コーティング基材が、水平面に対して60°の角度で配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記インクジェット液滴のインクが、前記コーティング基材に、26°未満、好ましくは23°未満、より好ましくは20°未満、特に26°~2°の間、より好ましくは5°以上の静的接触角を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記インクジェット液滴の前記インクが、種々のコーティング基材に、26°未満、好ましくは23°未満、より好ましくは20°未満の静的接触角を有する、請求項6に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記インクジェット液滴の前記インクが、32mN/m未満であり、好ましくは30~18mN/mの間の静的表面張力を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記顔料水性インクジェットインクに用いられている顔料が、カプセル化分散技術を用いて分散されている、請求項4~8のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項10】
前記顔料水性インクジェットインクに用いられている顔料が、ブロックコポリマー分散剤を用いて分散されている、請求項4~8のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項11】
y寸法が、基材搬送方向に対して垂直である、請求項1~10のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項12】
z/yの比が、0.5~2.0の間であり、好ましくは、zがyに対して直交するように配置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項13】
前記コーティング基材が、段ボールを製造するのに好適なライナーである、請求項1~12のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項14】
インク液滴が、段ボールを製造した後に印刷される、請求項13に記載の印刷方法。
【請求項15】
前記インク液滴の噴射距離が、2mm超である、請求項1~14のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項16】
前記インクジェット印刷ステップが、少なくとも0.5m/秒の基材搬送速度で実行される、請求項1~15のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項17】
前記インクジェット印刷ステップが、前記コーティング基材のシングルパスを用いて実行される、請求項1~16のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項18】
前記コーティング基材に前記インク液滴を印刷する前、印刷中又は印刷後に、前記コーティング基材の熱乾燥ステップを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項19】
前記インクジェット印刷方法が、圧電作動式プリントヘッドを使用する、請求項1~18のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項20】
前記インクジェット印刷ステップが、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを含む少なくとも4つのインクジェット印刷色を印刷することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項21】
各印刷色の後に熱乾燥ステップが行われる、請求項20に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明の分野は、印刷方法に関する。
【0002】
[背景]
インクジェット印刷方法では、非常に微細なノズルからインクの液滴を印刷基材上に直接吹き出し、印刷基材に付着させて、文字又は画像が印刷された印刷物を得ることができる。インクジェット印刷方法は、フルカラー化(full coloration)の容易さ、安価であること、多様性、印刷媒体として普通紙を使用できること、印刷される文字又は画像などに非接触であることなどの様々な利点から、一般消費者向けの印刷用途のみならず、最近では商業用及び工業用印刷用途においても今日広く採用されている。
【0003】
インク液滴は、顔料水性インクを用いて印刷されてもよい。一般に、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックなど、1種より多い種類の着色顔料水性インクが、マルチカラー画像を印刷するために使用される。この色は、基材の同一の印刷位置に、1種、2種又はそれ以上の異なる着色顔料水性インクを印刷することによって形成できる。
【0004】
一部の商業用及び工業用インクジェットプリンタは、高速印刷を実現するために、固定されたプリントヘッド及びウェブなどの移動する基材を利用する。フルカラー画像が基材に形成される間に、基材が固定されたプリントヘッドに沿って一度だけ搬送されることから、これはシングルパス印刷とも称される。
【0005】
段ボールは、少なくとも1枚の溝付き波形板と、その波形板を覆う1つ又は2つのフラットライナーとを含む材料である。これらのパッケージのいくつかを1つのスタックに組み合わせて、1つの段ボールを作製できる。これは、フルートラミネーションマシン(flute lamination machine)又はコルゲーターで作られ、ディスプレイ、(美術)品、輸送用コンテナ及び段ボール箱の製造に使用される。段ボール箱は、その強度、耐久性、軽量性、リサイクル性及び費用効果により、様々な物品の輸送に使用されている。輸送用コンテナとして使用される段ボール箱は、内容物を識別し、法規制情報を提供し、且つ配達用のバーコードを提供するために、印刷及びラベルを必要とする場合がある。マーケティング、マーチャンダイジング及び販売時点情報管理に使用されるコルゲート材製の梱包箱及び他の物体は、内容又はブランドに関連する内容物又はメッセージを伝達するのに役立つ高度なグラフィックスをしばしば有する。
【0006】
顔料水性インクをコーティング基材に印刷する場合、コーティング基材によるインク液滴の吸収が遅い場合がある。段ボールのライナーとして使用可能な多くのコーティング基材は、段ボールに耐久性(例えば、耐水性)、光沢、豪華な外観をもたらすように調整されており、顔料水性インクを吸収するように構成されていない。コーティング基材の表面にインク液滴が長時間留まると、インクの乾燥時間がより遅くなり、これにより合体又は色間のブリージングなどの画像欠陥が生じる可能性がある。
【0007】
典型的には、プライマーは(インクジェット)印刷に使用され、吸収が速い(非コーティング)基材でのインクジェットインクの色強度(光学濃度)、密着性及び/又は画像の鮮明さを向上させる。1種のプライマーには、多価金属塩又は酸性化合物が含まれる。その作用機構は、主に顔料粒子の不安定化及び凝集に基づく。顔料の凝集物が紙の細孔にあまり深く浸透しないため、結果として光学濃度、色強度が向上し、透明性が低下する。インク液媒体が紙にさらに容易に浸透し、カラー画像がほぼ瞬時に固定されるため、通常、ブリージング/まだらはこれらの種類の基材では問題ない。
【0008】
多孔性の低いコーティング基材の場合、インクジェットインクからの顔料が、細孔の深みに紛れるのではなく、コーティング基材の表面に既に保持されているため、そのようなプライマーは有用ではないと考えられる。さらに、様々なコーティング基材に印刷すると、インク滴の量がより少ない領域に白筋が発生し、同時にインク滴の量がより多い領域に色間のブリージングが発生する不均一な色層が形成され得ることが判明した。このプライマー組成物は、基材にインク滴の広がりを抑制又は減少させることが公知である。インクの広がりへのこの効果は、白筋を含む両方の問題の解決に矛盾する。
【0009】
第2の種類のプライマーは、吸収性基材材料の細孔を封止する結合剤を使用する。細孔を塞ぐことにより、インクジェットインクからの顔料は、紙(ボード)の深みに紛れるのではなく、表面に保持され、後者は色強度の損失を引き起こす。しかし、多孔性の損失のため、インク粒子は基材上を自由に移動することができ、脱濡れ効果又は一方で深刻なブリージング、フェザリング及び/若しくはまだら形成、色濃度の増加を伴う周辺効果を引き起こす可能性がある。さらに、細孔を塞ぐにはかなりの量の結合剤が必要であり、これは大いに画像形成プロセスの総費用の一因となる。最後に、結合剤層は基材の光沢を変化させるが、これはほとんどの場合望ましくない。
【0010】
第3の種類のプライマー又は基材紙(段ボールなど)用のプレコートは、比表面積が高く、典型的にはポリマーマトリックス(上述の第2の種類のプライマーを参照)に埋め込まれた多孔質無機粒子(例えばシリカ)を使用する。細孔サイズ及び紙表面全体への均一な分布が制御されている多孔質無機粒子を使用したこの紙用プレコートにより、インクのブリージングが低減され、色強度(光学濃度)が増強された鮮明な画像を生成することが可能となる。この技術の欠点は、そのようなコーティングの高度な複雑さ及び費用の高さである。インク液を吸収するための実用的な量の空所を有するには、湿式コーティング層は非常に厚く、インラインで塗布する場合、それらを完全に乾燥させる必要があり、特に高速印刷プロセスでは非常に高い乾燥能力が必要である。さらに、この種類のコーティングでは、高い毛管現象を達成しながらも基材への十分な接着性を達成し、ダスチング効果を回避するために、結合剤含有量と顔料濃度とのバランスを見出すことは非常に困難である。
【0011】
これらの公知のプライマーの種類を、吸収の遅いいくつかののコーティング基材に塗布しても、画質に不十分な効果しかもたらさないことが判明している。
【0012】
画像欠陥の解決のために、好適なコーティング基材を選択すること及び/又はコーティング基材のコーティングを適応させることがしばしば用いられるが、この手法は非常に時間がかかり、費用が高く、多用途ではない。色間のブリージングの問題を解決するために試みられている他のソリューションでは、ソフトウェアベースの画像調整を使用する(米国特許第6361144号)。
【0013】
これらすべての観察を考慮して、コーティング基材、特に吸収が遅いコーティング基材にインクジェット印刷を使用する、良好な画質が得られる印刷方法を提供する要求が存在する。
【0014】
[概要]
本発明の第1の態様によれば、インクジェット印刷ステップに先立って、少なくとも1種の顔料凝集剤を含むプライマー組成物をコーティング基材に塗布し、このインクジェット印刷ステップを、xμmの滴径を有するインク液滴を用いて行い、インク液滴が、yμm×zμmのセル寸法を有する矩形単位セルに相当する印刷解像度でコーティング基材上に印刷される、x/yの比が0.60超である印刷方法が提供される。
【0015】
驚くべきことに、最初にコーティング基材にプライマー組成物を塗布すること及びインクジェット印刷ステップのためのインク液滴に0.60よりも高いx/yの比を選択することにより、インク滴の量がより少ない領域の白筋及びインク滴の量がより多い領域での色間のブリージングの両方の画像欠陥を同時に解決することが判明している。コーティング基材にプライマー組成物を塗布すると、基材でのインク滴の広がりが減少することが公知であり、両方の問題を同時に解決することは期待されていなかった。滴径xμmを大きくする及び/又はセル寸法yを小さくすると、x/yの比が0.60より高くなる場合がある。
【0016】
インクジェット印刷ステップは、矩形である単位セルに相当する印刷解像度でコーティング基材にインク液滴を付着させることによって行われる。単位セルは、y寸法が、第1の方向におけるインク液滴の印刷解像度に相当し、z寸法が、第2の方向におけるインク液滴の印刷解像度に対応する、yμm×zμmのセル寸法を有する。y寸法及びZ寸法は、互いに垂直に配置され、単位セルは矩形形態を有し、好ましくは正方形形態である。
【0017】
本発明による単位セルを
図3に概略的に例示する。
図3は、矩形である単位セル2を示す。単位セルは、基材の表面の第1の方向Aに沿ってy寸法を有し、且つ基材の表面の第2の方向Bに沿ってz寸法を有する。y寸法及びz寸法は、互いに実質的に等しくてもよく又は長さが異なってもよい。
【0018】
インクジェット印刷では、単位セル2は、第1の方向A及び第2の方向Bの両方に沿って、他の単位セル2’において基材の表面で繰り返される。
図3では他の単位セル2’が3つしか例示されていないが、他の単位セル2’の数は制限されるものではない。典型的には、他の単位セル2’は、基材の印刷領域全体にわたって伸びていてもよい。他の単位セル2’は、それぞれ第1の方向Aにおけるy及び第2の方向Bにおけるzの、単位セル2と同一の寸法を有する。
【0019】
単位セルy寸法は、基材上の任意の好適な方向に選択されてもよい。特に、単位セルy寸法は、インクジェット印刷ステップ中の基材の搬送方向である、基材搬送方向に対して垂直に選択されてもよい。
【0020】
特に、シングルパスインクジェット印刷を使用する高速印刷では、基材搬送方向に対して垂直の方向に印刷解像度を選択することが、白スジ(white streak)及びブリージングの問題を同時に解決することに最も関係があり得ることが判明している。この例では、y寸法は、基材搬送方向に対して垂直に選択されている。
【0021】
単位セルの単位セルz寸法は、任意の好適な距離(μm)であってもよい。好ましくは、y寸法とz寸法の比は、1:2~2:1の間である。z寸法は、コーティング基材上の単位セルの領域を実質的に充填するために、1つのインクジェット液滴がユニットセル内のコーティング基材に配置され得るように、好適に選択され得る。
【0022】
液滴は、xμmの滴径を有する。滴径は、いくらかの液滴に対する平均滴径として決定できる。本発明による滴径は、いくらかのインク液滴を収集することによってインク液滴の平均重量を重量測定的に決定し、インク液滴のインクの公知の濃度を用いて、インク液滴の理想球形を仮定することによって滴径を計算することによって計算できる。収集するインク液滴の数は、噴射頻度及び噴射期間によって決定される。インク液滴のサイズは、波形及び噴射頻度などのプリントヘッドの設定によって制御できる。
【0023】
特定の実施形態では、x/yの比は、0.70超である。0.70より高いx/yの比は、インクの吸収速度が低いコーティング基材に対しても、ブリージングがないより低い筋レベルをさらに改善できることが判明している。
【0024】
特定の実施形態では、x/yの比は0.90超である。0.90より高いx/yの比は、コーティング基材に対する静的接触角が比較的小さいインクに対しても、ブリージングがないより低い筋レベルをさらに改善できることが判明している。
【0025】
一実施形態では、x/yの比は、0.60超~2.0未満である。好ましくは、x/yの比は、1.5未満である。さらにより好ましくは、x/yの比は、1.0未満である。
【0026】
プライマー組成物は、少なくとも1種の顔料凝集剤を含む。この顔料凝集剤は、インクジェットインクに含まれる顔料が凝集可能である限り、特に限定されるものではない。
【0027】
一実施形態では、少なくとも1種の顔料凝集剤は、イオン性ポリマー、多価金属塩、酸及びこれらの混合物からなる群から選択される。顔料凝集剤を含むプライマー組成物は、先行技術から公知であり、本発明によるプライマー組成物として使用できる。例において、イオン性ポリマーは、アニオン性ポリマーであってもよく、カチオン性ポリマーであってもよい。例において、酸は有機酸であってもよく、無機酸であってもよい。
【0028】
プライマー組成物には、1種類のみの顔料凝集剤を用いてもよく又は2種類以上の顔料凝集剤を用いてもよい。多価金属塩の例としては、塩化カルシウム、硝酸マグネシウム及び塩化アルミニウムが挙げられる。酸の例としては、マロン酸、リンゴ酸、クエン酸、リン酸及びコハク酸が挙げられる。
【0029】
プライマー組成物は、コーティング基材に任意の好適な方法で塗布できる。プライマー組成物は、コーティング基材を均一なプライマー組成物の層で完全に覆う技術を用いて塗布してもよく、プライマー組成物を像様(image wise)に塗布するために、インクジェット印刷などのデジタル印刷技術を用いて塗布してもよい。
【0030】
プライマー組成物は、水系プライマー組成物であってもよく、任意選択の共溶媒を含む好適な量の水が、少なくとも1種の顔料凝集剤のキャリア液体として使用される。少なくとも1種の顔料凝集剤は、水系プライマー組成物に溶解、乳化又は分散されていてもよい。
【0031】
コーティング基材上のプライマー組成物は、インク液滴を付着させる前に、プライマー組成物を少なくとも部分的又は完全に乾燥させるために、コーティング基材上に塗布した後に熱処理されてもよい。代替として、コーティング基材でプライマー組成物を能動的に熱乾燥させることなく、インク液滴を印刷してもよい。コーティング基材でプライマー組成物を能動的に乾燥させないことは、コーティング基材でのインクのブリージングをより良く制限するという利点を有し得ることが判明している。
【0032】
プライマー組成物は、コーティング基材にいくつかの着色インクのインク液滴を印刷する前に1度塗布してもよく、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックインクのインク液滴をコーティング基材に印刷する前に1度塗布してもよい。代替として、プライマー組成物は、コーティング基材に各着色インクのインクジェット液滴を印刷する前に、任意の時にコーティング基材に塗布してもよい。
【0033】
一実施形態では、インクジェット印刷プロセスでは、顔料水性インクを使用する。顔料水性インクは、例えば屋外での使用のために、主に耐久性のあるカラー画像を提供するために使用される。顔料水性インクは、印刷前、印刷後又は印刷中に、コーティング基材を能動的に熱的加熱することによって乾燥させることができる。顔料水性インクは、コーティング基材による吸収が遅いという欠点を有する場合がある。
【0034】
一実施形態では、コーティング基材は、10.0cmより大きく、好ましくは10.0cm~25.0cmの間、より好ましくは12.0cm~20.0cmの間の滴移動距離によって定義される吸収速度を有し、滴移動距離は、基準液の2ml滴が、基材に配置されてから50秒で移動する距離によって定義され、基材は水平面に対して60°の角度で配置される。滴移動距離が10.0cmより大きいコーティング基材は、吸収速度が遅い。この基準液組成物は、顔料を含まないインクに類似しており、粘度が非常に低い。本発明による吸収速度試験及びその試験条件は、詳細な説明でさらに説明される。
【0035】
コーティング基材は、コーティング基材の表面の多孔性が低い及び/又はコーティング基材の疎水性が高いため、このように吸収速度が遅い場合がある。吸収速度が遅いと、インク液滴が表面にさらに広がることを可能にし、色間のブリージングが生じる場合がある。吸収速度が遅いことによる別の欠点は、インクの乾燥時間が増えることである。
【0036】
一実施形態では、インクジェット液滴のインクは、コーティング基材に26°未満、好ましくは23°未満、より好ましくは20°未満、特に26°~2°の間、より好ましくは5°以上の静的接触角を有する。コーティング基材でのインクの静的接触角がより低いことは、コーティング基材上のインクの広がりの改善及び低インク濃度の領域におけるより低いレベルの白筋に相関する。
【0037】
一実施形態では、インクジェット液滴のインクは、種々のコーティング基材に、26°未満、好ましくは23°未満、より好ましくは20°未満の静的接触角を有する。種々のコーティング基材は、インクの吸収速度及び/又は静的接触角が異なっていてもよい。インクが種々のコーティング基材にインクのより低い静的接触角を有する場合、各コーティング基材上で同一のインクを用いて良好な画像品質を得ることができる。種々のコーティング基材のそれぞれの静的接触角は、2°以上、より好ましくは5°以上である。インクの静的接触角が非常に低く、下限に近い場合でさえ、本発明の印刷方法により、ブリージングを解決できる。
【0038】
一実施形態では、インクジェット液滴のインクは、32mN/m未満、好ましくは30~18mN/mの間の静的表面張力を有する。静的表面張力は、好ましくは30~18mN/mの間である。静的表面張力を低下させるために、界面活性剤及び/又は湿潤剤を選択できる。
【0039】
一実施形態では、顔料分散体中の顔料の安定化のための分散剤として、ランダムコポリマーが使用される。
【0040】
一実施形態では、顔料粒子を分散させ、顔料分散体を作製するためにグラフトコポリマーが使用される。
【0041】
一実施形態では、インクジェットインクに使用される顔料は、カプセル化分散技術(encapsulated dispersion technology)を用いて分散される。顔料を分散させるために公知の方法を使用することができ、続けて、樹脂を顔料表面の周辺で架橋し、それによって顔料をカプセル化して、得られた分散体をさらに処理する。詳細な説明には、Fujifilm Imaging Colorants、花王株式会社、DuPont、理想科学工業株式会社、Xerox、セイコーエプソン株式会社による特許文献からの例が記載されている。
【0042】
一実施形態では、インクジェットに使用される顔料は、ブロックコポリマー分散剤を用いて分散される。高分子分散剤の特性は、モノマーの性質及びポリマー中のモノマーの分布の両方に依存する。ブロックコポリマー分散剤を使用することで、分散安定性の向上が得られる。ブロックコポリマー分散剤は、疎水性及び親水性のブロックを含むことができる。
【0043】
一実施形態では、z/yの比は、0.5~2.0の間であり、zがyに対して直交するように配置される。単位セルのz寸法及びy寸法が実質的に互いに類似しているこの比は、インクジェット液滴による単位セル領域の好適な充填を得るために好ましい。
【0044】
特定の実施形態では、z/yの比は0.6~1.5の間、より好ましくは0.8~1.2の間、さらにより好ましくは、z/yの比は0.9~1.1の間である。
【0045】
一実施形態では、コーティング基材は、段ボールを製造するのに好適なライナーである。コーティング基材は、印刷方法を行ってコーティング基材に画像を形成する前又は後に、波形板と組み合わされて段ボールを形成できる。段ボールは、波形板の片側に1枚のコーティング基材を有していてもよく又は波形板に接着され、コーティングされたライナーの間に波形板が配置されている2枚のコーティングされたライナーを有していてもよい。
【0046】
一実施形態では、印刷方法は、溝付きライナー(波形板又は別の波形媒体である)に取り付けられていないコーティングされたライナーに対して行われる。このコーティングされたライナーは、シートでもロール(ウェブ)でもよく、次いで段ボールを製造するためにさらに使用される。使用される印刷方法は、しばしばプレプリント手法と称される。
【0047】
一実施形態では、段ボールを製造した後、インク液滴がライナー表面に印刷される。これは、段ボールが既に製造されており、段ボールを製造する製造ステップによって印刷画像に損傷が生じることがないという利点を有する。
【0048】
一実施形態では、インク液滴の噴射距離は2mm超である。2mmより大きい噴射距離は、段ボールなどのより大きな製品に組み立てるために既に使用されており、コーティング基材をインクジェットプリントヘッドに沿って搬送する間、あまり平坦ではないコーティング基材への印刷に好適である。インク液滴の噴射距離が2mm超であると、白スジ及びブリージングの問題がより頻繁に発生するか又はより多くのコーティング基材で発生する可能性があることが判明している。本発明による印刷方法は、インク液滴の噴射距離が2mm超である場合であっても、この問題を解決できる。
【0049】
一実施形態では、インクジェット印刷ステップは、少なくとも0.5m/秒の基材搬送速度で実行される。この基材搬送速度は、基材がプリントヘッドステーションを一度通過して基材に画像を形成するシングルパス印刷プロセスにおいて、基材に印刷するのに特に好適である。基材は、ベルト、ウェブ又は任意の他の搬送手段を用いて搬送され得る。
【0050】
一実施形態では、インクジェット印刷ステップの後に熱乾燥ステップが続く。熱乾燥ステップは、コーティング基材をさらに処理する前に及び/又はコーティング基材に追加のインク色のインク液滴をインクジェット印刷する前に、コーティング基材及びコーティング基材上のインクが乾燥していることを確実にし得る。
【0051】
一実施形態では、インクジェット印刷方法は、圧電作動式プリントヘッドを使用する。圧電作動式プリントヘッドは、その耐久性、インク液滴サイズの制御(グレースケール能力)及びより粘度の高いインクなどの様々なインクを印刷する柔軟性という点で好ましい。プリントヘッド技術は、段ボール印刷で使用されることが公知である。サーマルプリントヘッドは、UVインクに存在する反応性モノマーを処理できないため、UVインクジェットは圧電プリントヘッドと組み合わせてのみ使用されることに留意すべきである。この実施形態では、この方法は、水系インク用のドロップオンデマンド(DOD)ピエゾヘッドを使用する。グレースケール印刷(ピエゾプリントヘッドで利用できるような、波形によって異なる滴サイズ)の欠如、コゲの問題、寿命の短さ及び工業用印刷品質における商業的利用可能性の低さ(小規模オフィス及びホームオフィスでの印刷は主にサーマルヘッドを使用するが、工業品質ではない)により、サーマルヘッドはあまり好ましくない場合がある。さらに、市販の工業用サーマルヘッドはMemjetから入手できるが、顔料インクの使用は依然として限られている。ピエゾDODプリントヘッドの場合、MEMSベース、バルクピエゾ、解像度、(非)流通技術、デジタル又はバイナリの波形のバリエーション、噴射周波数のバリエーションなど、この分野に存在する非常に多くのバリエーションがある。本発明のこの実施形態では、ピエゾの下位区分に制限はない。富士フイルム株式会社、コニカミノルタ株式会社、Xaar、京セラ株式会社、Xerox、セイコーホールディングス株式会社、株式会社リコーはすべて、この種類のプリントヘッドを提供している製造業者である。
【0052】
一実施形態では、インクジェット印刷ステップは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを含む少なくとも4色のインクジェット印刷色を印刷することを含む。
【0053】
一実施形態では、この方法は、コーティング基材にインク液滴を印刷する前、印刷中又は印刷後に、コーティング基材の熱乾燥ステップを含む。これは、インクの基材への吸収速度が遅い場合など、インクの乾燥時間が遅い場合に好ましい。
【0054】
添付の図面は、本発明の装置の、現在の好ましい非限定的で例示的な実施形態を例示するために使用される。本発明の特徴及び目的の上記及び他の利点がより明らかになり、添付の図面と共に読むと、以下の詳細な説明から本発明がよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、画質を試験するためのテストチャートの概略図である。
【
図2A】
図2A~2Eは、本発明による印刷方法を実行するための印刷システムの実施形態の概略図である。
【
図2B】
図2A~2Eは、本発明による印刷方法を実行するための印刷システムの実施形態の概略図である。
【
図2C】
図2A~2Eは、本発明による印刷方法を実行するための印刷システムの実施形態の概略図である。
【
図2D】
図2A~2Eは、本発明による印刷方法を実行するための印刷システムの実施形態の概略図である。
【
図2E】
図2A~2Eは、本発明による印刷方法を実行するための印刷システムの実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明による単位セルの概略図である。
【0056】
[詳細な説明]
本明細書では、「分散体」という用語は、1相がバルク物質全体に分布する細かく分割された粒子(しばしばコロイドサイズ範囲)からなり、この粒子が分散相又は内相であり、このバルク物質が連続相又は外相である二相系を意味する。
【0057】
本明細書では、「分散剤」という用語は、しばしばコロイドサイズの極めて微細な固体粒子の均一分離及び最大分離を促進するために、懸濁媒体に添加される界面活性剤を意味する。顔料の場合、分散剤はほとんどの場合高分子分散剤であり、分散剤及び顔料は通常、分散装置を用いて結合される。
【0058】
本明細書では、「水性」という用語は、水又は水と少なくとも1種の水溶性若しくは部分的に水溶性の有機溶媒(共溶媒)との混合物を指す。
【0059】
本明細書では、「水系プライマー組成物」という用語は、水担体又は水と少なくとも1種の水溶性又は部分的に水溶性の有機溶媒(共溶媒、湿潤剤及び/又は浸透剤)との混合物の担体を有するプライマー組成物を指す。
【0060】
本明細書では、「実質的に」という用語は、かなりの程度、ほとんどすべてであることを意味する。
【0061】
本明細書では材料、方法及び例は、明示的に記載されている場合を除き、例示的であるのみであり、限定することを意図するものではない。
【0062】
(プライマー組成物)
顔料凝集剤は、インクジェットインクに含まれる顔料が凝集可能である限り、特に限定されるものではない。一部の好適な顔料凝集剤としては、イオン性ポリマー及びコポリマー、例えばアニオン性ポリマー、アニオン性コポリマー、カチオン性ポリマー及びカチオン性コポリマー、多価金属塩並びに酸、例えば有機酸及び無機酸が挙げられる。1種類のみの顔料凝集剤を用いてもよく又は2種類以上の顔料凝集剤を組み合わせてもよい。
【0063】
顔料凝集剤を特徴付ける方法は、顔料を含有する液滴をプライマーを含有する試験管に添加し、それにより、ブラウン運動によって液体の残り全体に広げる(外観上溶解している)のではなく、沈殿/凝集/凝固させることである。
【0064】
プライマー組成物中のカチオン性ポリマー及びコポリマーは、反対に帯電したアニオン性顔料分散体及びアニオン性結合剤分子を基材に引き付けて固定する。このようなカチオン性樹脂は、主要なポリマー骨格又はポリマー鎖に側基として電荷基を組み込むが、概して第四級アンモニウム基を含み、したがってpHレベルに関係なく形式正電荷が存在する。第四級アンモニウム、スルホニウム又はホスホニウム基を含むカチオン性ポリマーも合成される。酸性媒体でカチオン特性を獲得し、第一級、第二級又は第三級アミノ基を含むポリアミン又はそれらの混合物をベースとする弱電解質バージョンが使用されている。調製技術は、多くの場合、単純な水溶液中だけでなく、油中水型エマルションとしての連鎖成長及び逐次成長メカニズムによる重合並びに既存のポリマーの改質も包含する。
【0065】
プライマーコーティングに使用するためのカチオン性ポリマーとしては、ジアリルジアルキアンモニウムモノマーのポリマー及びコポリマー、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド、例えばポリジアリルジメチル-アンモニウムクロリド(PDADMAC)、カチオン性アクリレート及びアクリルアミドのポリマー及びコポリマー、例えばポリアクリルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド又はポリアクリルアミドエチルジメチルアンモニウムクロリド、第四級化(quartemized)ビニルピリジンのポリマー及びコポリマー、例えばポリメチルビニルピリジンクロリド、ポリアルキルアミン及び第四級アンモニウムのポリマー及びコポリマー、直鎖及び分岐ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン並びにエピクロロヒドリン由来のポリマー及びコポリマー、例えばエピハロヒドリン-アミンポリマーを挙げることができるが、これらに限定されず、
「多価」は、2つ以上の酸化状態を示し、元素「Z」については、典型的にはZ2+、Z3+、Z4+などと記載される。簡潔にするために、本明細書では多価カチオンをZxと称する場合がある。多価カチオンは、プライマー水溶液に実質的に可溶性であり、好ましくは実質的にイオン化された状態で(溶液中に)存在する。
【0066】
Zxとしては、以下の元素の少なくとも1つの多価カチオンが挙げられるが、これらに限定されない:Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、Al、Ga、In、Sb、Bi、Ge、Sn、Pb。好ましくは、多価カチオンはカルシウムである。プライマー組成物は、好ましくは規制及び毒物学的ガイドラインで許容できるものに基づく。
【0067】
Zxは、塩の形態での添加又はアルカリ性の形態での添加によってプライマー溶液に組み込まれ、プライマー溶液のpH調整の塩基として使用できる。
【0068】
関連するアニオン性材料は、任意の一般的なアニオン性材料、特にハロゲン化物、硝酸塩及び硫酸塩から選択できる。アニオン性の形態は、多価カチオンがプライマー水溶液に可溶性になるように選択される。多価カチオン塩は、その水和形態で使用できる。1種又は複数種の多価カチオン塩を、プライマー溶液に使用できる。カルシウムの場合、好ましい多価カチオン塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム水和物及びそれらの混合物である。
【0069】
凝集剤としての酸は、インクのpHを下げ、顔料分散体及び他のインク成分を凝固させることによって、インク滴を沈殿させる。酸の具体例としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、亜リン酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸及びこれらの化合物の誘導体が挙げられる。ポリアクリル酸、クエン酸及び酢酸が特に好ましい。
【0070】
代替として、染料がカチオン性であるか又は顔料がカチオン性官能基によって主として安定化される場合、プライマーはアニオン性凝集剤で構成されてもよい。このアニオン性凝集剤は、アニオン性官能基を有する無機塩基又はポリマーであってもよい。アニオン性凝集剤の例としては、Zetag 4145(BASF)、Magnafloc LT30(BASF)、セタクア(SETAQUA)(登録商標)6407(Allnex)が挙げられる。また、プライマー組成物は、着色剤、有機溶剤、湿潤剤、結合剤、界面活性剤、殺生物剤、腐食抑制剤、粘度調整剤及びインクジェットインクについて以下に記載する他の成分も含んでもよい。
【0071】
また、市販のプライマー組成物は、顔料粒子を凝集させる限り使用できる。市販のプライマーは、例えばMichelmannからの171236PX、双方ともSiegwerkからのTP unicoat UCB及び TP WB unicoat LCとして入手可能である。
【0072】
プライマー溶液の粘度は、塗布技術に従って調整されるが、好ましくは室温で決定される1mPa.s~200.0mPa.sであり、さらにより好ましくは3.0mPa.s~50mPa.sである。
【0073】
(水性インク)
水性インクは、顔料分散インク及び染料インクに大きく分類できる。近年、発色に優れ、耐溶剤性、耐ガス性及び耐(UV-)光性などを示す顔料分散インクの需要が高まっている。一方、顔料水性分散インクの場合、顔料が水に不溶性であるため、多くの場合満足な顔料分散性が得られない。したがって、水性インク内での好ましい顔料分散性を維持するために、顔料分散樹脂を用いて、顔料の水中でのより良好な分散安定性を達成している。またこれらの顔料は、食品への移行に対してもより良好に性能を発揮すると考えられている。
【0074】
上記のようにインクに着色剤を使用することは、水系インクの最も重要な形態である。ただし、ノズルでのインクの乾燥を防ぐために、インクジェット印刷方法で使用される水性インクには、典型的には、高沸点及び水への好ましい溶解性を有する水溶性溶剤も含まれている。この種類の溶剤は、水性インク中の湿潤剤と考えられている。
【0075】
さらに、プリントヘッド内、基材などにおける水系インクの濡れ及び広がりを最小量にすることを可能にするために、インクジェット印刷方法で使用される水性インクには、典型的には1種又は複数種の界面活性剤も含まれている。
【0076】
最後に、水性インク組成物は、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、結合剤及び防腐剤などの様々な種類の添加剤も含んでもよい。これらの種類の添加剤を水性インク組成物に添加することにより、この組成物をインクジェットインクとしてより好ましく使用できる。
【0077】
(着色剤)
(染料)
インク中の着色剤は、顔料、染料又はこれらの組合せであってもよい。着色剤は、インク中に0.5重量%~20重量%の量で存在できる。
【0078】
着色剤は、染料であってもよい。染料は、非イオン性、カチオン性、アニオン性若しくは非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性染料の混合物であり得る。使用できる染料の具体例としては、Sigma-Aldrich Chemical Company(ミズーリ州St. Louis)から入手可能なスルホローダミンB、アシッドブルー113、アシッドブルー29、アシッドレッド4、ローズベンガル、アシッドイエロー17、アシッドイエロー29、アシッドイエロー42、アクリジンイエローG、アシッドイエロー23、アシッドブルー9、ニトロブルーテトラゾリウムクロリド一水和物又はニトロBT、ローダミン6G、ローダミン123、ローダミンB、ローダミンBイソシアネート、サフラニンO、アズールB及びアズールBエオシネートが挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性の水溶性染料の例としては、ダイレクトイエロー132、ダイレクトブルー199、マゼンタ377(Ilford AG、スイスから入手可能)単独又はアシッドレッド52と併用することが挙げられるが、これらに限定されない。非水溶性染料の例としては、アゾ、キサンテン、メチン、ポリメチン及びアントラキノン染料が挙げられる。非水溶性染料の具体例としては、Ciba-Geigy Corpから入手可能なオラゾール(Orasol)(登録商標)ブルーGN、オラゾール(登録商標)ピンク、オラゾール(登録商標)イエロー染料が挙げられる。ブラック染料には、ダイレクトブラック154、ダイレクトブラック168、ファストブラック2、ダイレクトブラック171、ダイレクトブラック19、アシッドブラック1、アシッドブラック191、モベイブラックSP(Mobay Black SP)、アシッドブラック2が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
(顔料)
顔料は、好ましくは優れた耐水性、耐光性、耐候性及び耐ガス性などを提供するという観点から使用される。本発明に使用できる顔料の例としては、従来の有機顔料及び無機顔料が挙げられる。
【0080】
顔料は、HERBST,Wら、Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.2nd edition.vch,1997によって開示されたものから選択できる。
【0081】
顔料インクジェットインク中の顔料粒子は、インクジェット印刷装置の中を通って、特に射出ノズルにおいて、インクが自由に流れることができるように十分に小さくすべきである。また、色強度を最大にし、沈降を遅らせるために、小さな粒子を使用することも望ましい。
【0082】
顔料インクジェットインク中の顔料の平均粒径は、0.005μm~15μmの間であるべきである。好ましくは、平均顔料粒径は、0.005μm~5μmの間、より好ましくは0.005μm~1μmの間、特に好ましくは0.005μm~0.3μmの間及び最も好ましくは0.040μm~0.150μmの間である。本発明の目的が達成される限り、より大きな顔料粒径を用いてもよい。
【0083】
顔料は、顔料インクジェットインクにおいて、顔料インクジェットインクの総重量に対して、0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%の量で使用される。
【0084】
本発明で使用できるシアン顔料の例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:6、16及び22並びにC.I.バットブルー4及び6が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメント15:3及び15:4が好ましい。これらのシアン顔料は、個別に用いてもよく又は2つ以上の顔料の組合せを用いてもよい。
【0085】
本発明で使用できるマゼンタ顔料の例としては、C.1.ピグメントレッド5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112及び122、キナクリドン固溶体146、147、150、185、238、242、254、255、266及び269並びにC.l.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、43及び50が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントレッド122、150、155、185、266及び269並びにC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される1種又は複数種の顔料の使用が好ましい。
【0086】
本発明で使用できるイエロー顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー10、11、12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、166、168、180、185及び213が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントイエロー13、14、74、150、155及び185からなる群から選択される1種又は複数種の顔料の使用が好ましい。
【0087】
本発明で使用できるブラック顔料としては、アニリンブラック、Lumogen black及びアゾメチンブラックなどの有機顔料並びにカーボンブラック及び酸化鉄などの無機顔料が挙げられる。さらに、上述のイエロー顔料、マゼンタ顔料及びシアン顔料などの複数のカラー顔料を混合してブラック顔料として使用してもよい。
【0088】
本発明で使用できる無機顔料には、特に制限はない。前述のカーボンブラック及び酸化鉄以外の無機顔料の例としては、酸化チタンが挙げられる。
【0089】
本発明で用いることができるカーボンブラック顔料の例としては、ファーネス法又はチャンネル法を用いて製造されるカーボンブラックが挙げられる。
【0090】
市販品の例を以下に列挙しており、これらのうちいずれの製品も好ましく使用できる。
【0091】
具体例としては、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8及びMCF88(すべて三菱ケミカル株式会社製)、RAVEN 1255(Columbian Chemicals Co.,Inc.製)、REGAL 330R、400R及び660R及びMOGUL L(すべてCabot Corporation製)、並びにNipex 1601Q、Nipex 1701Q、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35及びPrintex U(すべてOrion Engineered Carbons LLC製)が挙げられる。
【0092】
本発明のこの実施形態では、顔料は上記の顔料に限定されず、オレンジ顔料及びグリーン顔料などの他の特殊な色を使用することもできる。さらに、複数の顔料を組み合わせてもよい。さらに、別の実施形態では、本発明のこの実施形態の水性インク組成物は、顔料を含まないクリアインクと組み合わせて、インクセットとして使用してもよい。
【0093】
インクの色を変更するのに有用である、任意の他の顔料及び/又は染料を使用できる。さらに、着色剤は、二酸化チタンなどのホワイト顔料又は酸化亜鉛及び酸化鉄などの他の無機顔料を含むことができる。
【0094】
(顔料分散樹脂)
上記の顔料を水性インク組成物で使用することを可能にするためには、顔料を水中に安定して分散させ、次いで分散体内に安定して保持することができなければならない。顔料を分散するためには、公知の方法を使用できる。第1の例は、分散樹脂を用いて分散が達成される方法を含む。樹脂は、顔料表面の周辺で架橋され、それによってカプセル化顔料(欧州特許第2896666号(理想科学工業株式会社)、欧州特許第1838427号(FFIC)、欧州特許出願公開第3275949号(花王株式会社)、米国特許出願公開第20140011941号(DuPont)、米国特許第9267044号(FFIC)、(セイコーエプソン株式会社)、欧州特許第2252664号(Xerox))がもたらされる。分散樹脂又は分散剤は、分散媒体中の顔料粒子の分散の形成と安定化を促進する物質である。分散剤は概して、アニオン性、カチオン性又は非イオン性構造を有する界面活性材料である。分散剤の存在により、必要な分散エネルギーが実質的に減少する。分散顔料粒子は、相互吸引力により、分散操作後に再凝集する傾向を有する場合がある。分散剤の使用はまた、顔料粒子のこの再凝集傾向を打ち消す。
【0095】
高分子分散剤は、分散される顔料に吸着する、いわゆるアンカー基を分子の一部に含んでいる。分子の空間的に分離した部分では、高分子分散剤が突き出ているポリマー鎖を有し、それによって顔料粒子が分散媒体に適合される、すなわち安定化される。
【0096】
ポリマー分散剤の例としては、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー及びそれらの塩などが挙げられる。ポリマー分散剤は、2種類以上のモノマー、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸及びフマル酸誘導体に由来する構造を有していてもよい。ポリマー分散剤は、1種類のみ用いてもよく又は2種類以上のポリマー分散剤を用いてもよい。
【0097】
高分子分散剤の特性は、モノマーの性質及びポリマー中のモノマーの分布の両方に依存する。モノマーをランダムに重合させる(例えばABBAABABに重合したモノマーA及びB)か又は交互のモノマーを重合すること(例えばABABABABに重合したモノマーA及びB)によって得られる高分子分散剤は、概して不十分な分散安定性をもたらす。分散安定性の向上は、グラフトコポリマー及びブロックコポリマー分散剤を使用することで得られた。グラフトコポリマー分散剤は、側鎖が骨格に付いたポリマー骨格で構成されている。CA2157361(DU PONT)は、疎水性ポリマー骨格及び親水性側鎖を有するグラフトコポリマー分散剤を用いて作製された顔料分散体を開示している。
【0098】
他のグラフトコポリマー分散剤は、米国特許第6652634号(LEXMARK)、米国特許第6521715号(DU PONT)及び米国特許出願公開第2004102541号(LEXMARK)に開示されている。
【0099】
疎水性及び親水性ブロックを含むブロックコポリマー分散剤は、多くのインクジェットインク特許で開示されている。
【0100】
米国特許第5859113号(DU PONT)は、芳香族又は脂肪族カルボン酸と反応した重合グリシジル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーAセグメント及びアルキル基に1~12個の炭素原子を有する重合アルキル(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーBセグメントを有するABブロックコポリマー分散剤を開示している。
【0101】
米国特許第6413306号(DU PONT)は、アルキル基に1~12個の炭素原子を有する重合アルキル(メタ)アクリレートモノマー、アリール(メタ)アクリレートモノマー、シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーAセグメント、第四級アルキル基を有する重合アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーBセグメント及び重合ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーCセグメントを有するABCブロックコポリマー分散剤を開示している。
【0102】
インクジェットインク用の高分子分散剤の設計は、SPINELLI、Harry J..Polymeric Dispersants in Ink Jet Technology.Advanced Materials.1998,vol.10,no.15,p.1215~1218で議論されている。
【0103】
代替として、水溶性界面活性剤及び/又は水分散性界面活性剤などの界面活性剤を用いて分散を達成する方法がある。他の方法には、親水性官能基を化学的及び/又は物理的に顔料粒子の表面に導入し、分散剤又は界面活性剤を使用せずに顔料が水に分散及び/又は溶解できるようにする方法が含まれる。本発明の実施形態では、以下に記載する特定の顔料分散樹脂は、顔料分散樹脂を用いて顔料を分散させる方法として用いられる。
【0104】
顔料分散樹脂を使用する場合、顔料及び顔料分散樹脂は、好ましくは顔料及び顔料分散樹脂を分散させることによって得られる顔料分散体の形態で使用される。顔料分散体の製造に使用される方法に特に制限はないが、1つの例示的な方法を以下に記載する。まず、顔料分散樹脂及び水を混合することによって調製した水性媒体に顔料を添加し、次いで混合及び撹拌を行う。次いで得られた混合物を、分散装置を用いて分散処理することにより、顔料分散体を得ることができる。その後、必要に応じて、遠心分離処理又はろ過処理を行ってもよい。任意の湿式分散装置を分散装置として使用することができ、様々な装置の中でもビーズミルを使用することが好ましい。
【0105】
(界面活性剤)
本発明によるインクジェットインクは、少なくとも1種の界面活性剤を含んでいてもよい。(1種又は複数種の)界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は双性イオン性であり得、通常、顔料インクジェットインクの総重量に対して10重量%未満の総量で添加され、特に、顔料インクジェットインクの総重量に対して合計5重量%未満で添加される。
【0106】
本発明によるインクジェットインクに好適な界面活性剤には、シリコン系、アクリル系及びフッ素系界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩及び高級アルコールのリン酸エステル塩、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物並びにアセチレングリコール及びそれらのエチレンオキシド付加物が含まれる。市販例としては、Byk-348、Byk-347、Byk 3450、Dynwet 800(Byk Chemie Gmbh)、Surfynol 104、Surfynol 465、Metolat 364、Dynol 800、Dynol 960、(Evonik Industries)、KF-640、KF-642(信越化学工業株式会社)、ID-40、ID-70(三洋化成工業株式会社)などが挙げられる。
【0107】
(湿潤剤)
本発明の効果を得ることができる限りにおいて、有機溶媒の種類は特に限定されるものではない。有機溶媒は、水に対する相溶性を高めるという観点から、水溶性であることが好ましい。水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類、多価アルコール類、アミン類、アミド類、グリコールエーテル類、1,2-アルカンジオール類などが挙げられる。1種類のみの有機溶媒を用いてもよく又は2種類以上の有機溶媒を用いてもよい。......ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、1,2-ヘキサンジオールなどの一部の湿潤剤はまた、それによりインクの表面張力を低下させる表面張力活性特性を有することに留意すべきである。
【0108】
上記のアルコール類の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二級ブタノール、第三級ブタノールなどが挙げられる。
【0109】
上記の多価アルコール類の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、5つ以上のエチレンオキシド基数を有するポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、4つ以上のプロピレンオキシド基数を有するポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコールなどが挙げられる。
【0110】
上記のアミン類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなどが挙げられる。
【0111】
上記のアミド類の例としては、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0112】
上記のグリコールエーテル類の例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0113】
1,2-アルカンジオール類の例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオールなどが挙げられる。
【0114】
これらの中でも、有機溶媒が多価アルコール類である場合には、高速で印刷を行う際の滲みが好ましくは抑制できる。多価アルコール類の好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0115】
印刷インク中の有機溶剤の含有量は、例えば、5重量%以上60重量%以下の範囲とすることができる。
【0116】
(バインダー樹脂)
一実施形態では、本発明の水性インク組成物は、好ましくはバインダー樹脂も含む。水性インク組成物のための公知のバインダー樹脂には、水溶性樹脂及び樹脂微粒子(エマルション/ラテックス)が含まれる。樹脂微粒子として使用できる樹脂の種類の例としては、アクリル系、スチレン/アクリル系、ウレタン系、スチレン/ブタジエン系、塩化ビニル系及びポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0117】
(殺生物剤)
本発明の顔料インクジェットインクに好適な殺生物剤には、デヒドロ酢酸ナトリウム、2-フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、ピリジンチオン-1-オキシドナトリウム、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、2-メチル-1,2-チアゾール-3-オン及び1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン並びにそれらの塩が含まれる。
殺生物剤は、それぞれ顔料インクジェットインクの総重量に対して、好ましくは0.001~3重量%、より好ましくは0.01~1.00重量%の量で添加される。
【0118】
(他の成分)
インクジェット印刷用インクでは、吐出安定性、プリントヘッド又はインクカートリッジの適正性、保存安定性、画像保存性などのすべての性能を向上させる目的に応じて、必要により上記の成分に加えて様々な公知の添加剤、例えば多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防かび剤、防錆剤、pH調整剤などを好適に選択して使用することができ、公知の添加剤の例としては、油滴微粒子、例えば流動パラフィン、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレシル及びシリコンオイル、特開昭57-74193号公報、特開昭57-87988号公報及び特開昭62-261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57-74192号公報、特開昭57-87989号公報、特開昭60-72785号公報、特開昭61-146591号公報、特開平1-95091号公報、特開平3-13376号公報などに記載の退色防止剤、特開昭59-42993号公報、特開昭59-52689号公報、特開昭62-280069号公報、特開昭61-242871号公報、特開平4-219266号公報などに記載の蛍光増白剤、例えば蛍光発光剤、セキュリティ及びカウンターフィット用のトレーサー分子、乾燥又はセキュリティ目的をより高めるためのIR吸収分子を挙げることができる。
【0119】
(顔料インクジェットインクの調製)
本発明による顔料インクジェットインクは、分散剤の存在下で、分散媒体中で顔料を沈殿又は粉砕することによって又は単に自己分散性カラー顔料をインクに混合することによって(染料系インクジェットインクの調製と同様)調製できる。
【0120】
混合装置は、加圧ニーダー、オープンニーダー、プラネタリーミキサー、溶解器及びDalton Universal Mixerを含むことができる。好適な粉砕及び分散装置は、ボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、2本ローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー及び3本ローラーである。分散体は、超音波エネルギーを用いて調製することもできる。
【0121】
顔料の非常に微細な分散体の調製方法は、例えば、米国特許第5679138号(KODAK)、米国特許第5538548号(ブラザー工業株式会社)、米国特許第5443628号(VIDEOJET SYSTEMS)、米国特許第4836852号(OLIVETTI)、米国特許第5285064号(EXTREL)、米国特許第5184148号(キヤノン株式会社)及び米国特許第5223026号(XEROX)に開示されている。
【0122】
粉砕が完了した後、ろ過、メッシュスクリーンによるふるい分けなどの従来の分離技術を用いて、(乾式又は液体分散形態の)粉砕された粒子状生成物から粉砕媒体を分離する。多くの場合、例えば、ビーズミルの場合、ふるいはミルに組み込まれている。粉砕された顔料濃縮物は、好ましくはろ過によって粉砕媒体から分離される。
【0123】
概して、カラーインクを濃縮ミル粉砕物の形態で製造し、その後、インクジェット印刷システムで使用するために適切な濃度に希釈することが望ましい。この技術により、装置からより多くの量の顔料インクを調製できる。ミル粉砕物が溶媒で作製された場合は、水及び任意選択で他の溶媒によって適切な濃度に希釈される。水で作製された場合は、追加の水又は水混和性溶媒で希釈して、所望の濃度のミル粉砕物を作製する。希釈により、インクは特定の用途のための所望の粘度、色、色相、飽和密度及び印刷領域被覆率に調整される。
【0124】
インクジェットインクは、通常の混合装置を用いて分散体と成分を混合することによって調製される。撹拌混合の方法は、特に制限されるものではなく、例えば、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、超音波分散機、通常の撹拌ブレードを使用する撹拌機、マグネチックスターラー及び高速分散機を用いて、必要に応じて適切に選択できる。インクは使用前に最終的にろ過される。多くの場合、滴サイズが10pl未満で、プリントヘッドノズルが20ミクロン未満の場合、ろ過はノズルサイズの1/10(2ミクロン)未満で実施され、染料系インクの場合はこれよりも著しく小さくなる。一度の故障が多大なコストのかかるプリントヘッド全体の交換につながり得るため、微粒子がノズルに届かないようにすることが重要である。
【0125】
多種多様なインクジェットインクの化学物質が用いられており、最適な結果を得るには、いくつかの異なるろ過技術を使用する必要がある。典型的な染料系インクの場合、着色剤と担体の混合後並びに添加剤の添加及び希釈の後、多段ろ過が用いられる。その目的は、任意の不溶性元素、粒子、環境汚染物質及び生物学的材料を除去することである。特に多段ろ過が用いられる場合、フィルターの選択は決定的に重要である。顔料インクの場合、典型的には分散体の作製後並びに再度添加剤の添加及び希釈後に多段ろ過が用いられる。ここでの主な目的は、分散体からの任意の特大又は凝集した顔料の除去並びに他のプロセスからの特大の粒子及び汚染物質の除去である。
【0126】
利用可能なフィルター技術には、様々な用途、利点及び欠点がある。フィルターの例としては、メンブレン、デプス及びハイブリッドフィルター型が挙げられる。インクジェットインク用フィルターの一般的な供給者は、日本ポール株式会社、Porvair、Membrane Solutionsである。
【0127】
(プライマー溶液の調製)
プライマーは、水性媒体にすべての水溶性成分を溶解し、且つ他の成分を添加することによって、さらに必要に応じて撹拌混合することによって製造される。撹拌混合の方法は、特に制限されるものではなく、例えば、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、超音波分散機、通常の撹拌ブレードを使用する撹拌機、マグネチックスターラー及び高速分散機を用いて、必要に応じて適切に選択できる。
【0128】
(コーティング基材)
コーティング基材は、一般に、コーティングされていない紙に比べて水性インクジェットインクに対する受容性が低いことが公知である。これらのコーティング基材又はコーティング紙は、カレンダリング及び/又は1層又は複数層の疎水性コーティング層の塗布により、低い表面多孔性を有することがある。結果として生じる低い多孔性は、インクビヒクルがアクセスする流路の減少を意味し、これにより蒸発によるインク乾燥への依存度が大きくなる。さらに、コーティング層の疎水性により、印刷時の水性インクの濡れ及び広がりが減少し、これにより次いで媒体表面にインク滴のパドリング(puddling)を引き起こす可能性がある。ドットの広がりが減少すること及び乾燥が遅くなることの複合効果により、コーティング基材に水性インクを直接印刷すると、より多くの画像欠陥が生じる。
【0129】
(印刷プロセス/印刷方法)
印刷プロセスでは、プライマー塗布ステップに続いてインクジェット印刷ステップを用いる。プライマー塗布は、ローラー、フレキソ版、オフセット版、カーテンコーティングなどを用いてアナログ方式でインライン又はオフラインで行うことができるが、ピエゾ又はインクジェットのいずれか及びおそらくはValvejetから市販されているピストンベースのインクジェットのインクジェットプリントヘッドを用いて、デジタル方式で行うこともできる。インクジェットステップは、サーマル、ピエゾ、連続インクジェットなど、いずれの種類のプリントヘッドでも使用して実行できる。Valvejetのようなプリントヘッドを使用すると、イメージ生成の可能性はより低くなる。これらの(少なくとも2つの)ステップ(プライマー塗布ステップ、それに続くインクジェット印刷ステップ)の間に、1つ又は複数の乾燥ステップを組み込むことができる。プライマーステップ及びインクジェット印刷ステップの後に、直ちに別のインクジェット印刷ステップが続くことができるが、新たなプライマーステップ及びインクジェット印刷ステップを用いることもできる。本発明は、プライマー塗布ステップの後にインクジェット印刷ステップが続く限り、特定のセットアップ又は特定の乾燥手段に限定されるものではない。乾燥手段は、使用されるインクジェットインク技術又はプライマー技術に関連する任意の種類であり得る。乾燥手段は、熱ベース(熱風、赤外線、近赤外線若しくはこれらの組合せ)又は化学線ベースであり得、乾燥強度又は容量は、プライマー組成物及びインクジェットインクで同一である必要はない。印刷物は、任意の種類及び強度の追加の最終乾燥ステップを用いて乾燥させることもできる。
【0130】
図2A~2Eは、印刷方法に関するいくつかのオプションを示しているが、本発明はこれらのオプションに限定されるものではない。
【0131】
図2Aは、コーティング基材200を移動させるための搬送ベルト100、プライマー塗布ステーション120、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260を備える第1の実施形態による印刷装置の概略図である。搬送ベルト100は、プライマー塗布ステーション120、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260に沿ってコーティング基材200を連続的に移動させるように構成されている。プライマー塗布ステーション120は、コーティング基材200にプライマー組成物を塗布する。プライマー組成物は、コーティング基材200が第1のプリントヘッドステーション150に到着する際、乾燥していてもよく又はまだ濡れていてもよい。第1のプリントヘッドステーション150は、第1のインクのインクジェット液滴を、本発明による印刷解像度及び液滴サイズで基材に付着させる。第1の乾燥ステーション160は、第1のインクを含むコーティング基材を乾燥させる。第2のプリントヘッドステーション250は、第2のインクのインクジェット液滴を、本発明による印刷解像度及び液滴サイズで基材に付着させる。第2の乾燥ステーション260は、第1のインク及び第2のインクの画像を含むコーティング基材を乾燥させる。
【0132】
任意選択で、コーティング基材は、プライマー塗布ステップに先立って、インライン又はオフライン法で予熱される。
【0133】
任意選択で、第1のプリントヘッドステーション150は、シアン及びマゼンタなどの第1のインク及び第2のインクのインクジェット液滴を、本発明による印刷解像度及び液滴サイズで基材に付着させることができ、第2のプリントヘッドステーション250は、イエロー及びブラックなどの第3のインク及び第4のインクのインクジェット液滴を、本発明による印刷解像度及び液滴サイズで基材に付着させることができる。
【0134】
さらに、印刷装置は、コーティング基材200にさらなるインクを印刷するための追加のプリントヘッドステーションと、コーティング基材200上の追加のインクを乾燥させるための乾燥ステーションとを備えることができる。好ましい例では、
図2Aに示すようなセットアップは、第3のプリントヘッドステーション及び乾燥ステーション並びに第4のプリントヘッドステーション及び乾燥ステーションをさらに保持する。より好ましい例では、各プリントヘッドステーションは、同一の色を印刷する複数のプリントヘッドを保持する(シームレスなスティッチングを可能にするために、最終的には千鳥状に構成される)。最も好ましい例では、プライマー塗布後のインクジェットインクのカラー印刷順序は、イエロー、次にシアン、次にマゼンタ、次にブラックである。
【0135】
図2Bは、コーティング基材200を移動させるための搬送ベルト100、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプライマー乾燥ステーション130、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプライマー乾燥ステーション230、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260を備える第2の実施形態による印刷装置の概略図である。搬送ベルト100は、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプライマー乾燥ステーション130、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプライマー乾燥ステーション230、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260に沿ってコーティング基材200を連続的に移動させるように構成されている。第1のプライマー塗布ステーション120及び第2のプライマー塗布ステーション220は、ローラーアセンブリの形態である。この実施形態では、第1のプライマー塗布ステーション120は、第1のプリントヘッドステーション150の上流側で、コーティング基材にプライマー組成物を塗布する。次のステップでは、プライマー組成物は、プライマー乾燥ステーション130によって、コーティング基材上で乾燥される。第2のプライマー塗布ステーション220は、第2のプリントヘッドステーション250の上流側で、コーティング基材に新しいプライマー組成物を塗布する。次のステップでは、プライマー組成物は、第2のプライマー乾燥ステーション230によって、コーティング基材上で乾燥される。プライマー塗布ステーション120、220によって塗布されるプライマー組成物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0136】
図2Cは、コーティング基材200を移動させるための搬送ベルト100、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプライマー乾燥ステーション130、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプライマー乾燥ステーション230、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260を備える第3の実施形態による印刷装置の概略図である。搬送ベルト100は、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプライマー乾燥ステーション130、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプライマー乾燥ステーション230、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260に沿ってコーティング基材200を連続的に移動させるように構成されている。第1のプライマー塗布ステーション120は、ピストンベースのインクジェットプリントヘッドなどのプリントヘッドの形態である。第2のプライマー塗布ステーション220は、ローラーアセンブリの形態である。プライマー塗布ステーション120、220によって塗布されるプライマー組成物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。一例では、第1の塗布ステーション120により塗布されたプライマー組成物は、第2の塗布ステーション120により塗布されたプライマー組成物よりも粘度が低くてもよい。さらに、プリントヘッド120は、コーティング基材にプライマー組成物を均一に塗布してもよく又は例えばデジタル画像に従って、プライマー組成物を基材に局所的に塗布してもよい。
【0137】
図2Dは、コーティング基材200を移動させるためのベルト100、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプライマー乾燥ステーション130、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプライマー乾燥ステーション230、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260を備える第4の実施形態による印刷装置の概略図である。搬送ベルト100は、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプライマー乾燥ステーション130、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプライマー乾燥ステーション230、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260に沿ってコーティング基材200を連続的に移動させるように構成されている。第1のプライマー塗布ステーション120及び第2のプライマー塗布ステーション220は、それぞれ、ピストンベースのインクジェットプリントヘッドなどのプリントヘッドの形態である。プリントヘッド120、220は、プライマー組成物をコーティング基材に均一に塗布してもよく又は例えばデジタル画像に従って、プライマー組成物を基材に局所的に塗布してもよい。この実施形態では、プライマー組成物を塗布するステップと、インクジェット液滴を堆積させるステップとの間に、コーティング基材上でのプライマー組成物の能動的乾燥が行われる。
【0138】
図2Eは、コーティング基材200を移動させるためのベルト100、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260を備える第5の実施形態による印刷装置の概略図である。搬送ベルト100は、第1のプライマー塗布ステーション120、第1のプリントヘッドステーション150、第1の乾燥ステーション160、第2のプライマー塗布ステーション220、第2のプリントヘッドステーション250及び第2の乾燥ステーション260に沿ってコーティング基材200を連続的に移動させるように構成されている。第1のプライマー塗布ステーション120及び第2のプライマー塗布ステーション220は、それぞれ、ピストンベースのインクジェットプリントヘッドなどのプリントヘッドの形態である。この実施形態では、プライマー組成物を塗布するステップと、インクジェット液滴を堆積させるステップとの間に、コーティング基材上でのプライマー組成物の能動的乾燥は行われない。
【0139】
プリントステーションは、基材搬送方向に対して垂直な「プリントヘッド解像度」を有し得る。プリントステーションは、少なくとも前記所望の印刷範囲の幅の長さを有する単一のプリントヘッドを備えてもよい。プリントステーションはまた、個々のインクジェットヘッドの組み合わされた長さが印刷範囲の幅全体を覆うように、2つ以上のインクジェットヘッドを組み合わせることによって構成されてもよい。さらに又は代替として、プリントヘッドは、第1の列のプリントヘッドと、第1の列のプリントヘッドに対して千鳥状に配置された第2の列のプリントヘッドとを有する千鳥状配置で配置することもできる。このようなプリントヘッドの千鳥状配置は、当技術分野で一般に公知である。千鳥状配置は、プリントヘッドステーションの長さ方向(基材搬送方向Tに対して垂直)に実質的に等距離にある、ノズルのページ幅アレイを提供する。千鳥状配置は、第1の列及び第2の列のインクジェットヘッドが重なる領域において、ノズルの冗長性を提供することができる。さらに千鳥配置は、例えば、第2の列のインクジェットヘッドのノズルの位置が、インクジェットマーキング装置の長さ方向に、ノズルピッチ(ノズルピッチは、インクジェットヘッド内の隣接するノズル間の距離である)の半分だけずれるように、第2の列のインクジェットヘッドを配置することによって、プリントステーションの長さ方向におけるノズルピッチを減少させる(したがって「プリントヘッド解像度」を増加させる)ために使用されてもよく、プリントステーションの「プリントヘッド解像度」は、各列のノズルの位置が、他のすべての列のノズルの位置に対して長さ方向にずれるように配置されたインクジェットヘッドのより多くの列を使用することによって、さらに増加させることができる。
【0140】
(測定方法)
(液体吸収)
コーティング基材の吸収速度は、水平面に対して60°の角度で配置された基材に基準液の2mlの液滴を配置することによって測定される。吸収速度の測定は、20℃~25℃の間及び30~50%の相対湿度の温度で行われる。この基準液組成物は、顔料を含まないインクに類似しており、粘度が非常に低い(グリセロール20重量%/1,2-プロパンジオール10重量%/ジエチレングリコールモノブチルエーテル3重量%/Surfynol 104 H0.13重量%、残りは水である)。重力下では、液滴は紙を流れ落ちるが、その間に液体が吸収され、一定の距離を移動する時間が記録される。移動距離が長いほど、基材へのインクの吸収は少なくなる。液滴移動距離は、液滴を配置した位置と一定時間後の位置との間で決定され、cm単位で測定される。測定時間は、典型的には液滴の配置後50秒である。
【0141】
(接触角測定)
接触角測定により、基材でのインクの濡れ性を測定できる。接触角測定は、20℃~25℃の間及び30%~50%の相対湿度の温度で行った。接触角は、3μlの液体インク液滴を基材に配置して測定した。液滴は、マイクロシリンジを使用して基材に配置され、高速解像度カメラが、広がった液滴の輪郭を記録する(OCA 25、DataPhysics Instruments GmbH、Filderstadt GE)。接触角は、液滴がシリンジから放出されて最初に基材に接触してから2秒後に定常値に達する。3つの測定値から平均接触角を計算した。
【0142】
(表面張力)
表面張力とは、表面張力計SITA Pro Line T15(SITA Messtechnik Co.、独国Dresden)を用いた気泡圧力法により、23.0℃~26.0℃の間の温度で測定した値である。使用される気泡の寿命は10秒であり、これは新しい気液界面(インク液に浸された毛管の先端)が生成されてから最大気泡圧力に達するまでの時間である。測定された最大圧力は、蒸留水での装置のキャリブレーション後、液体の表面張力値(mN/m)に自動的に再計算される。
【0143】
(画質評価)
図1は、画質を試験するためのテストチャートの概略図である。テストチャートは、2つのイエロー領域110及び130を備える。イエロー領域100、110は矩形であり、基材搬送方向Tに沿って最長の寸法を有する。テストチャートは、3つのシアン領域210、220、230を備える。シアン領域210、220、230は矩形であり、基材搬送方向Tに垂直な最長寸法を有する。オーバーレイ領域300では、イエロー領域及びシアンが重なり合っている。
【0144】
図1の画像を印刷した後、シアン及びイエローのオーバーレイ領域300は、目視検査によりブリージングを評価された。
1:目に見えるブリージングがないかほとんどない
2:許容できるブリージング
3:許容できないブリージング
【0145】
(筋の評価)
図1の画像を印刷した後、(オーバーレイ領域300の外側の)シアン領域210、220、230は、目視検査により筋を評価された。
1 目に見える筋がないかほとんどない
2:許容できるレベルの筋
3:許容できないレベルの筋
4:非常に支障をきたすレベルの筋
【0146】
[実施例]
水系インクC1~C5を、表1に記載の成分を30分間混合して調製した。表1の量は、水系インクの総重量の重量%である。合計で100重量となるような量の水を添加する。その後、インクを1μmのフィルターでろ過した。インクの粘度は約6mPa.sであり、これは京セラ株式会社のKJ4BYH 600dpi及びFujiのSamba G3L 1200dpiヘッドの仕様内である。
【0147】
【0148】
APD1000:富士フイルム株式会社から入手可能な顔料濃度14%の顔料分散体、
Evonik Industriesから入手可能なSurfynol 104(アセチレンジオール系界面活性剤)、
Evonik Industriesから入手可能なSurfynol 465、
Byk additivesから入手可能なByk 348(ポリエーテル変性ポリシロキサン界面活性剤)、
Munzingから入手可能なMetoloat 364(非イオン性界面活性剤)、
Evonik Industriesから入手可能なDynol 960、
BASFから入手可能なJoncryl J8050E、
イエローインクY1、Y2、Y3、Y4、Y5は、対応するC1、C2、C3、C4及びC5インクと同一の組成で調製したが、富士フイルム株式会社からのAPD1000イエロー分散体を用いて調製した。
【0149】
インクの物性を表2にまとめる。
【0150】
【0151】
基材1:MetsaboardからのMetsaboard pro WKL 135gsmコーティング基材
基材2:SappiからのSappi Fusion 135gsmコーティング基材
【0152】
表から、基材1及び2の両方の接触角が、C1~C3で改善されていることが明らかである。同時に、静的表面張力は、基材の接触角と相関する明確な傾向を示していない。インクC5は、基材1及び基材2の両方において小さい接触角を有し、インクC1~C4に比べてはるかに小さい。これは、インクC5が高い濡れ挙動を有することを実証している。
【0153】
両方の基材の吸収特性を、液滴移動距離試験によって試験した。両方の基材の吸収特性を、表3に記載する。
【0154】
【0155】
基材3;MetsaboardからのMetsaboard bright 135gsm非コーティング基材
【0156】
表3から、非コーティング基材が基準液をはるかに速く吸収することが明らかである。
【0157】
インクを、基材を搬送するベルトを備えたインクジェットテストリグで評価した。
【0158】
ベルト、したがって印刷速度を、1m/秒に設定した。インクを、京セラ株式会社から入手可能な600dpiのKyocera KJ4B YHプリントヘッドに装填し、不良ノズルがなくなるまでパージ及びワイプした。
図1を印刷距離2.5mmで印刷し、ブリージング及び筋について評価した。
基材1
基材2
プライマーを有する基材1
プライマーを有する基材2
【0159】
プライマー溶液を表4に従って調製し、プライマー溶液P1の場合、クエン酸が活性凝固剤であり、下記の表に列挙する他の成分と共に使用する。プライマー溶液P2の場合、多価金属イオン化合物であるジアルミニウムクロリドペンタヒドロキシドが活性凝固剤であり、下記の表に列挙する他の成分と共に使用する。プライマー溶液P3の場合、Mw100.000g/molを有するカチオン性ポリマーポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)が活性凝固剤であり、下記の表に列挙する他の成分と共に使用する。
【0160】
さらに、蒸留水を添加して100重量%に到達させ、最後に溶液を室温条件で少なくとも30分間撹拌する。
【0161】
【0162】
典型的には波形板の製造に使用されるトップライナー紙シートを、自動ワイヤーバー塗布装置を用いてプライマー溶液で処理した。ワイヤーバーの種類(Elcometer 4360/4361型)及びコーティング速度を選択し、ウェットコーティング重量10μmを達成した。その後、コーティングされたシートを100℃で2分間ベント付きオーブンで乾燥させ、すべての水分が確実に蒸発するようにした。最後に、処理したライナーを、インクジェット印刷の前に最低10分間順化させる。
【0163】
この手順を、Fujifilm Dimatixから入手可能な1200dpiのSamba G3Lプリントヘッドで繰り返した。
【0164】
基材搬送方向に対して垂直方向の印刷解像度は、この方向のプリントヘッドのノズル間の距離によって決定する。基材搬送方向の印刷解像度は、基材搬送方向に対して垂直な方向におけるプリントヘッドの印刷解像度と等しくなるように選択される。
【0165】
試験の条件及び結果を表5にまとめる。
【0166】
【0167】
実験1~13及び比較実験(比較実験1~6)では、プライマー実験に使用したプライマー組成物は、P1(表4に示す組成物)である。
【0168】
実験14~15及び18では、プライマー実験に使用したプライマー組成物は、P2(表4に示す組成物)である。
【0169】
実験16~17では、プライマー実験に使用したプライマー組成物は、P3(表4に示す組成物)である。
【0170】
この表の比Rは、滴サイズ(ミクロン)(x)/プリントヘッド解像度(ミクロン)(y)で定義される。
【0171】
表から、比Rが低すぎると筋が発生することが明らかである(比較実験1~比較実験4)。インクが濡れ特性を高めるように構成されている場合でも(C3/Y3を有する比較実験1及び比較実験2を参照)、より小さい接触角を有する基材(比較実験3及び比較実験2)を選択した場合でも、筋が発生する。
【0172】
比較実験5から、濡れ特性の低いインクを使用する場合、プライマーを塗布すると筋レベルがさらに増加することが明らかである。
【0173】
実験1~実験6は、比Rを増やすことで筋レベルが改善するが、同時にブリージングが発生することを例示している。特に、実験1及び実験7及び実験9は、白筋及びブリージングが同時に発生することを示している。
【0174】
実験1~実験6は、高い比のRと基材にプライマー(P1)を塗布することとを組み合わせると、白筋の問題が再び発生することなくブリージングを低減できることをさらに例示している。
【0175】
実験7~実験11は、濡れ特性が低いインクの場合、R>0.6の比で既にいくつかのブリージングが認められれば、筋レベルが許容できることを示している。ブリージングは、プライマー(P1)を塗布することで克服できる。
【0176】
実験12及び13は、高湿潤性インクC5でも、より高い比R(>0.60)と基材にプライマー(P1)を塗布することとを組み合わせることにより、プライマー(P1)を使用することで、白筋の問題が再び発生することなくブリージングを低減できることを実証している。同時に比較例6は、プライマーを使用していても(インクC5が、高い濡れ特性を有するように構成されており、接触角の小さい基材2を選択した場合でも)、0.60未満の比Rが筋をもたらすことを示している。
【0177】
したがって、x/y>0.60の比の有益な結果は、実験1~4、実験7~9及び実験12~13によって、インクの組成及びインクの濡れ挙動に実質的に依存しないことを示している。
【0178】
実験1~実験4は、実験7~実験9と比較して、濡れ特性が改善されたインク(C3/Y3)の場合、筋レベルが0.7超の比でさらに改善されることを示している。
【0179】
実験14及び15は、プライマー組成物P2(凝固剤として多価金属イオン化合物を有する)を使用した場合も、プライマー組成物P1の場合の実験12及び13に示した有益な結果が得られることを実証している。さらに、実験16及び17は、プライマー組成物P3(凝固剤としてカチオン性ポリマー化合物を有する)を使用した場合も、有益な結果が得られることを実証している。
【0180】
その上、実験18は、プライマー組成物P1の代わりにプライマー組成物P2(凝固剤として多価イオン化合物を有する)を使用した場合も、実験2に示した有益な結果が得られることを実証している。
【0181】
したがって、x/y>0.60の比の有益な結果は、プライマー組成物及び特に凝固剤に依存しないことが、これらの実験12~18によって示されている。
【0182】
当業者は、本明細書中の任意のブロック図が、本発明の原理を具体化する例示的なユニット又はモジュールの概念図を表していることを理解すべきである。
【0183】
本発明の原則は、特定の実施形態に関連して上述されているが、この記述は単に例示としてなされたものであり、添付の特許請求の範囲によって決定される保護範囲を限定するものとしてではないことを理解すべきである。
【国際調査報告】