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特表2022-546960DAX格子のための安定した上部ブリッジ製作
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】DAX格子のための安定した上部ブリッジ製作
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20221102BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61B 6/06 20060101ALI20221102BHJP
   G21K 1/00 20060101ALI20221102BHJP
   G21K 1/06 20060101ALI20221102BHJP
   G01N 23/041 20180101ALI20221102BHJP
【FI】
G01T7/00 B
A61B6/00 300J
A61B6/00 330Z
A61B6/06 331
G21K1/00 X
G21K1/06 B
G01N23/041
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513098
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020073041
(87)【国際公開番号】W WO2021037601
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19194586.4
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヤロシェンコ アンドリー
(72)【発明者】
【氏名】フォークトマイヤー ゲレオン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ベルンド ルディ
(72)【発明者】
【氏名】モール ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ビアーズ パウルス レネ マリア
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー パスカル
(72)【発明者】
【氏名】リヒター ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ヨアヒム
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA13
2G001SA01
2G188BB02
2G188DD17
2G188DD42
2G188DD43
2G188DD44
4C093AA07
4C093AA22
4C093CA41
4C093DA03
4C093DA06
4C093EA11
4C093EB25
(57)【要約】
X線暗視野撮像及び/又はX線位相コントラスト撮像のための、上部ブリッジを有するX線格子の機械的安定性を向上させるために、製作プロセスにおける変更によって、上部ブリッジに対する不所望の高応力を低減又は防止することが提案される。具体的には、屈曲の後に上部ブリッジを電気めっきすることが提案される。換言すれば、上部ブリッジの電気めっきは、屈曲された幾何学的形状に対して実施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線暗視野撮像用及び/又はX線位相コントラスト撮像用撮像装置のX線格子を製造するための方法であって、前記方法は、
a)平坦なサンプル上に複数の周期的に配置された格子ウェブと格子開口とを有するレジスト陰性格子を製造するステップと、
b)前記平坦なサンプル上の前記格子開口を、電気めっきによって充填するステップであって、前記格子ウェブの高さまで前記電気めっきを継続することによって格子ラメラを形成する、充填するステップと、
c)前記レジスト陰性格子の上部に、前記格子ウェブに実質的に垂直な上部ブリッジの導入を可能とするフォームを加工するステップと、
d)前記レジスト陰性格子を所望の半径まで屈曲させるステップと、
e)前記レジスト陰性格子を屈曲させた後に、前記上部ブリッジを形成するために電気めっきによって前記フォームを充填するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記電気めっきを実施した後に、前記格子ラメラの間の前記レジスト陰性格子を除去するステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)において、前記所望の半径までの前記レジスト陰性格子の正確な屈曲を可能とするフレームが提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フレームの屈曲半径は、X線チューブに近接した前記撮像装置における取り付け位置に適合している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フレームは非導電性材料であるか、又は前記フレームは非導電性材料によって完全に覆われている、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
ステップe)は、前記電気めっきのための温度を選択するステップを更に有し、選択される前記温度は、前記X線格子の幾何学的形状変化及び/又は機械的応力が、前記撮像装置における前記X線格子の動作条件において最小であるか又は最小に近くなるように選ばれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記上部ブリッジは、前記上部ブリッジに起因する機械的応力が、前記撮像装置における前記X線格子の動作条件において最小であるか又は最小に近くなるような形状に形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記上部ブリッジ及び前記格子ラメラは、同一の材料から作成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記格子ラメラは、高X線吸収材料において電気めっきされ、
前記上部ブリッジは、低X線吸収材料において電気鋳造される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レジスト陰性格子は、前記格子ウェブを安定化させるための複数の安定化構造を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記安定化構造は、ブリッジ構造及び/又は太陽光線構造を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップd)における前記屈曲は、正屈曲又は負屈曲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法によって製造された微細構造。
【請求項14】
対象者の画像をキャプチャするための撮像装置であって、前記撮像装置は、
X線源と、
ソース格子と、
前記X線源から射出されたX線を回折させるための回折格子と、
前記回折格子によって回折された前記X線の一部を吸収するための吸収格子と、
前記吸収格子を通過した前記X線を検知するための検知器と
を備え、
前記ソース格子、前記回折格子、及び前記吸収格子のうちの少なくとも1つは、請求項13に記載の微細構造を備える、撮像装置。
【請求項15】
X線位相コントラスト撮像及び/又は暗視野撮像を実施するための方法であって、前記方法は、
請求項14に記載の撮像装置の前記ソース格子と前記回折格子との間、又は前記回折格子と前記吸収格子との間に対象者を位置付けるステップと、
前記対象者に対してX線ビームを射出するステップと、
画像データを取得するために、前記対象者並びに前記撮像装置の前記ソース格子、前記回折格子及び前記吸収格子を通過した前記X線ビームを検知するステップと
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線暗視野撮像及び/又はX線位相コントラスト撮像のための撮像装置のためのX線格子を製造するための方法に関する。本発明は、更に、この方法によって製造される微細構造、撮像装置、X線位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を実施する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
格子に基づいた位相コントラスト及び暗視野X線(DAX)撮像は、例えば、乳房X線撮影、胸部X線撮影、及びコンピュータ断層撮影(CT)の領域において、X線機器の診断品質を高めると期待できる技術である。この技術に基づいて臨床システムを構築するための最も困難な課題の1つは、格子の製作である。特には、ソース格子G0及び吸収格子G2は、X線チューブの全体的なスペクトルにわたって十分な減衰を達成するために、特に、もしもチューブが30から40keVを超えるエネルギー範囲において光子を提供する場合、金による200μmを超える高さにおいて数μmから数10μmm程度のピッチの格子構造を必要とする。
【0003】
リソグラフィ法によって作成された高分子構造(レジスト構造)が、高分子テンプレートを強X線吸収材料(例えば、金)によって充填することによって格子製作のために使用される。もしも格子がソース格子G0として使用されるならば、レジストは熱的負荷及び放射線負荷に耐え得ず、全体的な格子が不安定になることが観察された。従って、電気めっき後にレジストを剥ぎ取ることが計画される。格子ラメラの機械的安定性を保証するために、それらは、格子の上部に追加的なブリッジを電気めっきすることよって接続される必要がある。全視野にアクセスするために、ソース格子G0は屈曲される必要がある。しかしながら、屈曲された上部ブリッジは、高い機械的応力を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線暗視野撮像及び/又はX線位相コントラスト撮像のための、上部ブリッジを有するX線格子の機械的安定性を向上させる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決され、更なる実施形態は従属請求項に組み込まれる。本発明の以下に説明される態様は、X線格子を製造するための方法、微細構造、撮像装置、X線位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を実施する方法にも適用されることに留意されたい。
【0006】
本発明の第1の態様は、X線暗視野撮像のための及び/又はX線位相コントラスト撮像のための撮像装置のためのX線格子を製造するための方法を提供する。方法は、
a)平坦なサンプル上に複数の周期的に配置された格子ウェブと格子開口とを有するレジスト陰性格子を製造するステップと、
b)平坦なサンプル上の格子開口を、電気めっきによって充填するステップであって、、格子ウェブの高さまで電気めっきを継続することによって格子ラメラを形成する、充填するステップと、
c)レジスト陰性格子の上部に、格子ウェブに実質的に垂直な上部ブリッジの導入を可能とするフォームを加工するステップと、
d)レジスト陰性格子を所望の半径まで屈曲させるステップと、
e)レジスト陰性格子を屈曲させた後に、上部ブリッジを形成するために電気めっきによってフォームを充填するステップと
を有する。
【0007】
換言すれば、製作プロセスにおける変更によって、上部ブリッジに対する不所望の高応力を低減又は防止することが提案される。具体的には、屈曲の後に上部ブリッジを電気めっきすることが提案される。換言すれば、上部ブリッジの電気めっきは、屈曲された幾何学的形状に対して実施される。詳細な製作プロセスは、以下において、特に図1及び図2Aから図2Gにおける例示的な実施形態に関して説明される。
【0008】
上記の動作は、適用可能な場合には、例えば上部ブリッジが電気めっきされる前に屈曲させるなど必要とされる特定の順序に従うことを条件に、任意の適切な順序で、例えば、連続して、同時に、又はこれらの組み合わせにおいて実施されてよいことが理解されよう。
【0009】
例えば、ステップb)とステップc)とを入れ替えることができる。処理は以下のようになる:
a1)平坦なサンプル上に複数の周期的に配置された格子ウェブと格子開口とを有するレジスト陰性格子を製造するステップ、すなわちステップa)、
b1)レジスト陰性格子の上部に、格子ウェブに実質的に垂直な上部ブリッジの導入を可能とするフォームを加工するステップ、すなわちステップc)、
c1)平坦なサンプル上の格子開口を、電気めっきによって、格子ラメラを形成するために格子ウェブの高さまで電気めっきを継続することによって充填するステップ、すなわちステップb)、
d1)レジスト陰性格子を所望の半径に屈曲させるステップ、すなわちステップd)、及び
e1)レジスト陰性格子を屈曲させた後に、上部ブリッジを形成するために電気めっきによってフォームを充填するステップ、すなわちステップe)。
【0010】
いくつかのステップは同時に実施されてよいことにも留意されたい。例えば、レジスト陰性格子を製作した直後に上部ブリッジのためのフォームを作成し、格子開口と上部ブリッジのフォームとの両方を1つのステップで電気めっきすることができる。処理は以下のようになる:
a2)平坦なサンプル上に複数の周期的に配置された格子ウェブと格子開口とを有するレジスト陰性格子を製造するステップ、すなわちステップa)、
b2)レジスト陰性格子の上部に、格子ウェブに実質的に垂直な上部ブリッジの導入を可能とするフォームを加工するステップ、すなわちステップc)、
c2)レジスト陰性格子を所望の半径に屈曲させるステップ、すなわちステップd)、及び
d2)平坦なサンプル上の格子開口を、電気めっきによって、格子ラメラを形成するために充填し、上部ブリッジを形成するために電気めっきを継続することによってフォームを充填するステップ、すなわちステップb)とステップe)とを1つのステップにおいて実施するステップ。
【0011】
本発明の実施形態によると、方法は、電気めっきを実施した後に、格子ラメラの間のレジスト陰性格子を除去するステップを更に有する。
【0012】
本発明の実施形態によると、ステップd)において、所望の半径へのレジスト陰性格子の正確な屈曲を可能とするフレームが提供される。
【0013】
上部ブリッジの電気めっきは、屈曲された幾何学的形状において行われなければならないので、例えばG0構造のために、最終的な半径への正確な屈曲を可能とする、X線チューブに近接した撮像装置における取り付け位置に適合したフレームを有することが有益である。
【0014】
本発明の実施形態によると、フレームの屈曲半径は、X線チューブに近接した撮像装置における取り付け位置に適合している。
【0015】
本発明の実施形態によると、フレームは非導電性材料であり、又はフレームは非導電性材料によって完全に覆われている。
【0016】
屈曲後の電気めっきは、上部ブリッジの領域に限定されなければならず、フレームの他の表面に施されてはならないので、非導電性材料などの特別な材料、又は非導電性被覆フレームが使用され、電気めっきが適用されるべきではない領域のある種の保護がなされなければならない。非導電性材料の例としては、プラスチック、ガラス、セラミックなどがある。
【0017】
本発明の実施形態によると、ステップe)は、電気めっきのための温度を選択するステップを更に有する。選択される温度は、X線格子の幾何学的形状変化及び/又は機械的応力が、撮像装置におけるX線格子の動作条件において最小であるか又は最小に近くなるように選ばれる。
【0018】
G0などのX線格子は、典型的には、(X線窓において)X線チューブに近接したホルダにおいて使用される。X線チューブは、種々の条件下において動作され、例えば室温から約70℃まで温度上昇する。一方、より広い温度範囲を有する搬送条件がある。温度変化(搬送-静的、動作-低速で動的)が、格子の変形及びブリッジの安定化に対して有する影響は最小でなければならず、理想的な状況においては、ブリッジの膨張がラメラを屈曲させてはならない。例えば、屈曲及びそれによるX線ビームの形成への影響が最小化されるように、+/-20°の変化を有する限定的な屈曲しか有さないように、40℃の温度条件において名目上「0」変形を使用することが好ましい。
【0019】
動作中のX線チューブの振動と同様に、動作中のアノードの回転周波数の範囲内にあるようなブリッジ及び格子における共鳴周波数も回避することが望ましい。
【0020】
電気めっきに関して、良好なめっき条件を可能とするように温度が選択されなければならない。しかしながら、良好なめっき条件を可能とする温度は、上部ブリッジの望ましい機械的特性を達成するためには適しておらず、というのは、電気めっきされた上部ブリッジの特性も電気めっきのための温度に依存するからである。それ故、良好なめっき条件を可能とすることと予期される応力状態を解決することとの間で全体的なトレードオフが選択される。
【0021】
例えば、残留応力、弾性係数、熱膨張などの電気めっきされた上部ブリッジの熱的及び機械的特性に対するめっき処理条件の影響は、例えば有限要素解析によってシミュレーション及び調査される。電気めっきされた上部ブリッジの熱的及び機械的特性に対するめっき処理条件の影響は、実験結果に基づいても調査される。電気めっきされた上部ブリッジの特性及びそれらの処理条件に対する関係に基づいて、予期される応力状態を解決するために、電気めっきされた上部ブリッジの所望の特性(例えば、熱的及び機械的特性)を達成する電気めっきのための温度を選択することができる。換言すれば、屈曲された構造の全体的な機械的設計に関して、温度変化及び/又は機械的振動に起因する幾何学的形状変化及び機械的応力が、撮像装置におけるX線格子の動作条件において最小であるか又は最小に近くなるように、X線格子の完全な設計を最適化することが必要とされる。
【0022】
実施例において、電気めっきのための温度は、40℃の温度条件において、+/-5°、+/-10°、+/-20°の限定的な屈曲又は他の変化だけを有するX線格子を作成するように選択される。
【0023】
実施例において、電気めっきのための温度は、作成されたX線格子に関して、ブリッジ及び格子における共鳴周波数が、動作中のアノードの回転周波数の範囲内にないように定められる。
【0024】
実施例において、電気めっきのための温度は、40℃の温度条件において、+/-5°、+/-10°、+/-20°の限定的な屈曲又は他の変化だけを有するX線格子を作成するように、及び、ブリッジ及び格子における共鳴周波数が、動作中のアノードの回転周波数の範囲内にないように選択される。
【0025】
本発明の実施形態によると、上部ブリッジは、上部ブリッジに起因する機械的応力が、撮像装置におけるX線格子の動作条件において最小であるか又は最小に近くなるような形状に形成される。
【0026】
換言すれば、上部ブリッジの形状の選択は、生成される応力に対して影響を有する。従って、屈曲された構造の全体的な機械的設計に関して、撮像システムの動作中の温度変化及び機械的振動に起因する幾何学的形状変化及び機械的応力に対して持つ影響が最小になるように上部構造の形状設計を最適化することが必要とされる。
【0027】
上部ブリッジの形状は、ブリッジ設計の剛性に依存して、温度膨張を可能とするがラメラのより小さな変形しか可能としないような厚さのばらつき及びブリッジ輪郭の最適化によって修正される。バネのように僅かに屈曲されたブリッジは、ゼロ公差距離と比べて、ラメラへの界面における応力を最小化し得る。形状は、撮像装置におけるX線格子の動作条件における機械的応力を低減するために、例えば、チューブの温度範囲、システムの振動、チューブの位置決め中のG力などに従って適合される。
【0028】
本発明の実施形態によると、上部ブリッジ及び格子ラメラは、同一の材料から作成される。
【0029】
材料の適合性のために、ブリッジも同一の材料で作成することには意味がある。故に、強X線吸収材料(例えば、金)が、上部ブリッジ及び格子ラメラの両方のために使用される。
【0030】
本発明の実施形態によると、格子ラメラは、高X線吸収材料において電気めっきされる。上部ブリッジは、低X線吸収材料において電気鋳造される。
【0031】
換言すれば、上部ブリッジの材料の選択も、生成される応力に対して影響を有する。故に、上部ブリッジの材料及び幾何学的形状の選択は、撮像特性と屈曲された幾何学的形状におけるブリッジの安定化効果のための機械的特性との間のトレードオフである。撮像特性の例としては、トレンチ及び上部ブリッジにおける低吸収性、吸収壁部に屈曲がないこと、壁部に振動がないこと、及び同一位置における寿命の安定性などがある。機械的特性の例としては、温度、振動、静的及び動的な応力、熱膨張などの影響を補償することなどがある。従って、屈曲された構造の全体的な機械的設計に関して、撮像システムの動作中の温度変化及び機械的振動に起因する幾何学的形状変化及び機械的応力に対して有する影響が最小になるように上部構造の材料の選択を最適化することが必要とされる。
【0032】
本発明の実施形態によると、レジスト陰性格子は、格子ウェブを安定化させるための複数の安定化構造を備える。
【0033】
上部ブリッジは、例えば、ブリッジ又は太陽光線安定化構造を有するレジスト陰性格子など、任意のタイプのレジスト陰性格子に適用される。
【0034】
本発明の実施形態によると、安定化構造は、ブリッジ構造及び/又は太陽光線構造を備える。
【0035】
本発明の実施形態によると、ステップd)における屈曲は、正屈曲又は負屈曲である。
【0036】
本発明の更なる態様は、上記及び下記に説明される方法によって製造された微細構造を提供する。
【0037】
提案される製作プロセスによって、微細構造の上部ブリッジは、高い機械的応力を受けることが少なくなる。このことは、上部ブリッジが異なる屈曲半径で延性レジームに入る機会が少なくなるので、微細構造の均一性に対するリスクを低減させ得る。換言すれば、微細構造は機械的安定性が向上している。
【0038】
本発明の更なる態様は、対象者の画像をキャプチャするための撮像装置を提供し、撮像装置は、
X線源と、
ソース格子と、
X線源から射出されたX線を回折させるための回折格子と、
回折格子によって回折されたX線の一部を吸収するための吸収格子と、
吸収格子を通過したX線を検知するための検知器と
を備え、
ソース格子、回折格子、及び吸収格子のうちの少なくとも1つは、上記及び下記に説明された例示的な実施形態及び実施例のうちの任意のものによる微細構造を備える。
【0039】
撮像装置は、医療用途又は非医療用途(例えば、非破壊試験)のために提供される。撮像装置は、平面X線のような静的な幾何学的形状及び/又は回転CTのようなシステムである。微細構造は機械的安定性が向上しているので、撮像システムによって検知される位相情報は、撮像装置の動作中に温度変化及び機械的振動を受けることが少なくなる。
【0040】
本発明の更なる態様は、X線位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を実施する方法を提供し、方法は、
上述された例示的な実施形態及び実施例のうちの任意のものによる撮像装置のソース格子と回折格子との間、又は回折格子と吸収格子との間に対象者を位置付けるステップと、
対象者に対してX線ビームを射出するステップと、
画像データを取得するために、対象者並びに撮像装置のソース格子、回折格子及び吸収格子を通過したX線ビームを検知するステップと
を有する。
【0041】
本明細書において使用されるとき、「実質的」という語は、示された状態の完全な又はほぼ完全な範囲又は程度を指す。例えば、上部ブリッジが格子ウェブに対して実質的に垂直であるという言及は、上部ブリッジが特定の機能を実行するために、すなわち、追加的な機械的安定性を提供するために実質的に垂直であることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱の許容される正確な程度は、所望の機械的安定性及び製作公差に依存する。例えば、絶対的な完全性からの±5°の逸脱は、実質的に垂直であると見なされる。いくつかの場合において、例えば、高い機械的安定性が望まれるとき、絶対的な完全性からの±0.1°の逸脱が実質的に垂直であると見なされる。
【0042】
更に、本明細書において、最小に「近い」とは、最小から好ましくは10%、より好ましくは5%、更により好ましくは1%、最も好ましくは最小から0%であることを指す。
【0043】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下において説明される実施形態から明らかになり、これらを参照して解明されるであろう。
【0044】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下における説明において添付の図面を参照して例として説明される実施形態から明らかであり、これらを参照して更に解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】X線暗視野撮像のための及び/又はX線位相コントラスト撮像のための撮像装置のためのX線格子を製造するための方法のフローチャートを図示する。
図2A-2G】本開示の例示的な実施形態によるX線格子を製造するための方法を図示する。
図3】撮像装置の構造の実施例を図示する。
図4】X線位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を実施するための方法のフローチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面は純粋に概略的なものであって、縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。図面において、既に説明された要素に対応する要素は同一の参照数字を有する。実施例、実施形態又は任意選択的な特徴は、非限定的なものであると示されていようといまいと、特許請求される発明を限定するものと理解されるべきではない。
【0047】
上に述べられたように、もしも格子がソース格子G0として使用されるならば、レジストは熱的負荷及び放射線負荷に耐え得ず、全体的な格子が不安定になることが観察された。従って、格子の上部に追加的なブリッジを電気めっきすることによって格子ラメラの機械的安定性を保証するために、電気めっき後にレジストを剥ぎ取ることが計画される。実際に、有限要素法(FEM)を使用したシミュレーションは、小さな屈曲半径に関して、上部ブリッジの材料が弾性レジームを離れ、延性レジームに入るというリスクさえも存在することを示している。これは、格子の均一性に関する特定のリスクであり、というのは、ブリッジの厚さにはばらつきが常に存在し、これはブリッジが異なる屈曲半径において延性レジームに入ることを暗示するからである。加えて、上部ブリッジに起因する応力が存在し、これは格子ラメラの許容しがたい傾斜につながる。
【0048】
作成されたX線格子の機械的安定性を高めるために、図1は、X線暗視野撮像のための及び/又はX線位相コントラスト撮像のための撮像装置のためのX線格子を製造するための方法100のフローチャートを図示する。以下のステップは、図2A図2Gにおける例示的な実施形態を参照しても説明されている。
【0049】
ステップ110、すなわちステップa)において、平坦なサンプル上に複数の周期的に配置された格子ウェブと格子開口とを有するレジスト陰性格子が製造される。図2Aはレジスト陰性格子10の実施例の斜視図を示し、図2BはXZ平面におけるレジスト陰性格子10の正面図を示す。レジスト陰性格子10は、シリコン基板などの平坦なサンプル16上に複数の周期的に配置された格子ウェブ12と格子開口14とを有する。格子ウェブ12は、レジストラメラとも称される。格子ウェブ12はレジスト構造を形成し、これは高分子構造である。周期的に配置された格子ウェブ12の形状、サイズ、及び/又はパターンは、所望のX線格子の構造に基づいて決定される。図2Aの実施例において、レジスト陰性格子10は、1次元的格子を製作するためのレジスト構造を有する。別の実施例(不図示)において、パターンは、正方形パターンの周期的な構造によって構成され、その周期はおよそ1μmから10μmであり、その高さはおよそ200μmよりも大きい。レジスト陰性格子10は、レジストを安定化させるための安定化構造も有する(不図示)。安定化構造の一例はブリッジ構造である。安定化構造の別の例は太陽光線構造である。
【0050】
ステップ120、すなわちステップb)において、平坦なサンプル上の格子開口は、電気めっきによって、格子ラメラを形成するために格子ウェブの高さまで電気めっきを継続することによって充填される。図2Cにおいて示されるように、格子ラメラ18、すなわち金属微細構造は、レジスト陰性格子10を型枠として使用しつつ、平坦なサンプル16の表面20から金属によってレジスト陰性格子10の格子開口14を電解めっきすることによって形成される。結果として、レジスト陰性格子10の格子開口14内、すなわち凹部内に精細な金属微細構造が製作され得る。金属は、具体的にはAg又はMoなどのX線吸収金属であり、好ましくは、Pb、Bi又はWなどの高吸収係数を有する金属である。X線吸収金属は、電解めっきによる微細構造の形成も可能とすることが好ましい。しかしながら、異なる材料の電気めっき性能は、非常に異なっている。従って、金属選択は、X線吸収性能と電気めっき性能との間のトレードオフになる。
【0051】
ステップ130、すなわちステップc)において、レジスト陰性格子の上部にフォームが加工される。フォームは、格子ウェブに実質的に垂直な上部ブリッジの導入を可能とする。例えば、図2Dは、YZ平面におけるレジスト陰性格子10の側面図を示す。フォーム26はレジスト陰性格子10の上部22に加工される。フォーム26は、上部ブリッジの幅の矩形状の又は任意の他の適切な形状の1つ又は複数の小さなトレンチ又は開口を有する。これはレーザーによって加工される。他の選択肢としては、マスクと特有のエッチングとの組み合わせがある。フォームは、更に、機械的安定化のための及び既存の格子ウェブ12の界面を上部ブリッジへと電気めっきすることを可能とするような汚れのない界面のための最適化された機能を達成するように加工される。フォーム26が作られると、格子ラメラ18はトレンチ又は開口によって接続され、これは、上部ブリッジを形成するために充填され得る。
【0052】
ステップ140、すなわちステップd)において、レジスト陰性格子は所望の半径に屈曲される。屈曲されたレジスト陰性格子10の実施例が図2Eに図示されており、これもXZ平面におけるレジスト陰性格子10の前面図を示す。屈曲は、正屈曲(不図示)、すなわち、レジスト陰性格子の上側辺が圧縮され、下側辺が延伸する屈曲であってよく、又は、図2Eにおいて示されているような負屈曲、すなわち、レジスト陰性格子の上側辺が延伸し、下側辺が圧縮される屈曲であってよいことにも留意されたい。
【0053】
ステップ150、すなわちステップe)において、レジスト陰性格子を屈曲させた後に、レジスト陰性格子を屈曲させた後に上部ブリッジを形成するために電気めっきによってフォームが充填される。図2Fは、YZ平面におけるレジスト陰性格子の側面図を示す。上部ブリッジ24は、レジスト陰性格子10の上部22に形成される。上部ブリッジ24の電気めっきは、屈曲された幾何学的形状において行われなければならないので、G0構造のために、一方において、最終的な半径への正確な屈曲を可能とし、X線チューブに近接した撮像装置における取り付け位置に適合したフレーム(不図示)が必要とされる。他方において、屈曲後の電気めっきは、上部ブリッジの領域に限定されなければならず、フレームの他の表面に施されてはならない。電気めっきが適用されるべきではない領域を保護するために、プラスチック、ガラス、又はセラミックのような非導電性材料などの特別な材料が使用される。代替的に、電気めっきが適用されるべきではない領域を保護するために、非導電性被覆フレームが使用される。換言すれば、露出した表面は、レジスト陰性格子10の上部22の上部ブリッジの領域に限定され、レジスト陰性格子の裏面を含む他の部分は全て非導電性材料によって又は非導電性被覆フレームによって覆われる。従って、電解めっきにおいて、金属は露出した表面、すなわち上部ブリッジの領域からだけ蒸着され得る。
【0054】
オプションとして、格子ラメラ18の間のレジスト陰性格子10は、電気めっきを実施した後、すなわちステップ150の後に除去される。
【0055】
図2Gは、レジストを剥がした後に上記及び下記に説明された方法によって製造されたX線格子30の実施例を図示する。例示的な目的のために、図2Gにおいては屈曲は外向きに図示されているが、所望の屈曲方向は内向きである。複数の上部ブリッジ24が、格子ラメラ18の上部に導入される。機械的安定性を保証するために、上部ブリッジ24は、格子ラメラ18に対して実質的に垂直である。上部ブリッジ24の形状、サイズ、及び/又はパターンは、撮像装置におけるX線格子の動作条件において達成されるべき所望の機械的安定性に基づいて決定される。前述されたように、上部ブリッジは、撮像装置におけるX線格子の動作条件における機械的応力を低減するように適合された形状を有する。上部ブリッジの材料も、生成される応力に対して影響を有するように選択される。上部ブリッジの所望の形状及び/又は材料を見つけるためにFEMシミュレーションが有用である。
【0056】
このようにして、上部ブリッジに対する不所望の高い応力が、製作プロセスにおける変更、特には、屈曲後に上部ブリッジに電気めっきすることによって防止され得る。上記の方法によって製造される微細構造では、上部ブリッジに対する応力がより小さくなる。故に、大きな屈曲半径に関して、上部ブリッジの材料が弾性レジームを離れ、延性レジームに入るというリスクの存在が小さくなる。これは、格子の均一性のために特に有益であり、というのは、上部ブリッジの厚さにはばらつきが常に存在するからである。換言すれば、微細構造の均一性は、撮像システムの動作中に温度変化及び機械的振動を受けることが少なくなる。故に、微細構造の機械的安定性が向上される。
【0057】
上記の動作は、適用可能な場合には、例えば上部ブリッジが電気めっきされる前に屈曲させるなど必要とされる特定の順序に従うことを条件に、任意の適切な順序で、例えば、連続して、同時に、又はこれらの組み合わせにおいて実施されてよいことが理解されよう。
【0058】
故に、処理ステップのうちのいくつかを交換することができる。例えば、ステップb)とステップc)とを入れ替えることもできる。処理は以下のようになる:a)→c)→b)→d)→e)。別の実施例において、レジスト陰性格子をより早期に屈曲させること、すなわち、屈曲の後に格子ラメラの電気めっきも行うこともできる。処理は以下のようになる:a)→c)→d)→b)とe)との組み合わせ。つまり、上部ブリッジが電気めっきされる前にレジスト陰性格子を屈曲させるという基本的なアイディアは維持されている。
【0059】
X線格子の動作条件において上部ブリッジの機械的安定性を最適化するために更なる手法が使用される。
【0060】
例として、一般的に、電気めっきに関して、良好なめっき条件を可能とするように温度が選択されなければならない。しかしながら、ステップ150における電気めっきのための温度は、X線格子の幾何学的形状変化及び/又は機械的応力が、撮像装置におけるX線格子の動作条件において最小であるか又は最小に近くなるように選択される。例えば、撮像装置におけるX線格子の動作条件における温度変化及び/又は機械的振動に起因して幾何学的形状変化及び機械的応力に対して有する影響がより小さくなるようにX線格子の完全な設計を最適化することが考慮される。最適化は、電気めっきされた上部ブリッジの特性及びそれらの処理条件に対する関係に基づいて実行される。例えば、電気めっきのための温度は、予期される応力状態を解決するために、電気めっきされた上部ブリッジの所望の機械的特性を達成するように選択される。
【0061】
しかしながら、良好なめっき条件を可能とするための最適な電気めっき温度と電気めっきされた上部ブリッジの所望の機械的特性を達成するための最適な電気めっき温度とは異なる。従って、良好なめっき条件を可能とすることと予期される応力状態を解決することとの間で全体的なトレードオフが選択される。
【0062】
別の例として、上部ブリッジの特別な形状が動作条件における応力を最小化し、電気めっき条件の経時変化など、上部壁部界面領域を前処理するように、及び/又は後処理によって準備される。上部ブリッジの形状(又は幾何学的形状)は、ブリッジ設計の剛性に依存して、温度膨張を可能とするがラメラのより小さな変形しか可能としないような厚さのばらつき及びブリッジ輪郭の最適化によって最適化される。バネのように僅かに屈曲されたブリッジは、ゼロ公差距離と比べて、ラメラへの界面における応力を最小化し得る。形状は、撮像装置におけるX線格子の動作条件における機械的応力を低減するために、例えば、チューブの温度範囲、システムの振動、チューブの位置決め中のG力などに従って適合される。
【0063】
更なる例として、格子ウェブは、通常、Auなどの高X線吸収材料において作成される。材料の適合性のために、ブリッジも同一の材料で作成することには意味がある。これは、上部ブリッジに起因する吸収が撮像性能に影響を有するという問題を生じる。従って、例えばニッケルのようなより吸収の小さい材料において上部ブリッジを電気鋳造することが有益である。上部ブリッジの材料の選択も、生成される応力に対して影響を有する。従って、材料の選択は、撮像特性と屈曲された幾何学的形状におけるブリッジの安定化効果のための機械的特性との間のトレードオフである。
【0064】
以下において、X線タルボット干渉法を利用する撮像装置が、図3を参照して説明される。図3は、ソース格子G0、回折格子G1、及び吸収格子G2のうちの少なくとも1つとして、上述された例示的な実施形態又は実施例において製作された微細構造を使用する撮像装置200の構成を概略的に示す。
【0065】
この例示的な実施形態による撮像装置200は、ソース格子G0の補助によって空間的に干渉性のX線を射出するためのX線源210と、X線の位相を周期的に変調するための回折格子G1と、X線吸収部分(シールド部分)及び透過部分が配置された吸収格子G2と、X線を検知するための検知器220とを含む。ソース格子G0、回折格子G1、及び吸収格子G2のうちの任意のものは、上述された例示的な実施形態又は実施例によって製作された微細構造を備える。好ましくは、少なくともソース格子G0は微細構造を備え、このことは、ソース格子G0の機械的安定性を向上させ得、故に、画像品質を向上させ得る。
【0066】
撮像装置は、医療用又は非医療用撮像装置である。撮像装置は、平面X線のような静的な幾何学的形状及び/又は回転CTのようなシステムである。
【0067】
前述されたように、微細構造の均一性は、撮像装置の動作中に温度変化及び機械的振動を受けることが少なくなる。故に、撮像装置によって検知される位相情報は、撮像装置の動作中に温度変化及び機械的振動を受けることが少なくなる。換言すれば、撮像装置の動作中の位相検知における不確かさが低減され、画像品質が向上される。
【0068】
図4は、X線位相コントラスト及び/又は暗視野撮像を実施するための方法300のフローチャートを示す。以下のステップは、図4における例示的な撮像装置200を参照しても説明されている。
【0069】
ステップ310において、ソース格子G0と回折格子G1との間に対象者50が位置付けられる。代替的に、回折格子G1と吸収格子G2との間に対象者50が位置付けられる。
【0070】
ステップ320において、対象者50に対してX線ビーム52が射出される。
【0071】
ステップ330において、対象者50に起因するX線位相シフトに関する情報がモアレパターンとして検知器220によって検知される。換言すれば、この撮像装置は、対象者50の位相情報を保持するモアレパターンを撮像することによって対象者50の画像をキャプチャする。この検知結果に基づくフーリエ変換などの位相回復処理の実行は、対象者の位相画像の取得を可能とする。位相検知のための追加的な処理が、知られた位相コントラスト検知技術に従って行われる。
【0072】
本発明の実施形態は、異なる主題に関して説明されていることが留意されなければならない。特には、いくつかの実施形態は方法タイプの請求項に関して説明されている一方、他の実施形態はデバイスタイプの請求項に関して説明されている。しかしながら、当業者は、上記及び下記の説明から、そうでないと通知されていない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴の間の任意の組み合わせも、本出願によって開示されると見なされることを理解されよう。しかしながら、全ての特徴は、特徴を単に加え合わせたよりも多くの相乗効果を提供するように組み合わされ得る。
【0073】
図面及び前述の説明において、本発明は詳細に図示及び説明されたが、このような図示及び説明は、解説的又は例示的なものであって、限定するためのものではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変形例が、特許請求された発明を実践するにあたり、図面、本開示及び従属請求項を検討することによって、当業者によって理解され得、実施され得る。
【0074】
特許請求の範囲において、「備える、有する」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数性を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載されたいくつかのアイテムの機能を果たし得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
【国際調査報告】