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特表2022-546985非許容性の癌に対する腫瘍溶解性ウイルスの感染を改善する方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】非許容性の癌に対する腫瘍溶解性ウイルスの感染を改善する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/768 20150101AFI20221102BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20221102BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20221102BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K35/768
A61K45/00
A61P35/00
A61K35/28
A61K35/15 Z
A61K31/366
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513552
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 US2020048932
(87)【国際公開番号】W WO2021046048
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/894,929
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/913,667
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507243142
【氏名又は名称】アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステイト・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Arizona Board of Regents on behalf of Arizona State University
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】マクファデン,ダグラス グラント
(72)【発明者】
【氏名】ラフマーン,モハメド マスムズール
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZC02
(57)【要約】
本明細書において、治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とを、癌を抱える対象に投与する工程を含む、癌を処置する方法および組成物が開示される。本明細書において、非許容癌細胞を許容癌細胞に転換する方法、および、癌細胞を治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤に接触させることにより、癌細胞を死滅させる方法が、さらに記載される。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の腫瘍溶解性ウイルス、および、
核細胞質輸送阻害剤を、対象に投与する工程を含む、癌を処置する方法。
【請求項2】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科ファミリーに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、コルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に由来する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、または、ガンマエントモポックスのウイルス属に由来する、請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、レポリポックスウイルス属に由来する、請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍溶解性ウイルスは粘液腫ウイルス(MYXV)であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属に由来する、請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスは遺伝子組み換えされていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、ラトジャドンB、ラトジャドンC、ラトジャドンD、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソールから成る群から選択される請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記核細胞質輸送阻害剤は、セリネクソールであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記癌は、固形腫瘍であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記固形腫瘍は、肉腫または細胞腫であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、シュワン腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、または、網膜芽細胞腫であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記固形腫瘍は大腸の腺癌、膵癌または黒色腫であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤は、同時に投与されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤は、連続して投与されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、前記核細胞質輸送阻害剤を投与する前に投与されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、前記核細胞質輸送阻害剤を投与した後に投与されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤とを、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも1週、少なくとも2週、少なくとも3週、少なくとも4週、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、または少なくとも1年の期間、投与する工程を含む、請求項1から19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記対象に、前記腫瘍溶解性ウイルス、前記核細胞質輸送阻害剤、またはその両方を、週に2回、週に1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、月ごとに1回、または2か月ごとに1回、投与する工程を含む、請求項1から20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、処置される癌組織に、局所的に投与されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍内の注射によって投与されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組織に対する前記腫瘍溶解性ウイルスの感染多重度(MOI)は、約0.01から約10までであることを特徴とする、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記組織に対する前記腫瘍溶解性ウイルスの感染多重度(MOI)は、約0.05から約5までであることを特徴とする、請求項22から24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
前記組織における前記核細胞質輸送阻害剤の濃度は、約0.0001μMから約100μMまでであることを特徴とする、請求項22から25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
前記組織における前記核細胞質輸送阻害剤の濃度は、約0.01μMから約1μMまでであることを特徴とする、請求項22から26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
癌細胞を死滅させる方法であって、該方法は、前記癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させ、それにより前記癌細胞を死滅させる工程を含む、方法。
【請求項29】
腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する癌細胞の感受性を増大させる方法であって、該方法は、前記癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む、方法。
【請求項30】
腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性をもつように癌細胞を誘導する方法であって、該方法は、前記癌細胞を前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む、方法。
【請求項31】
非許容癌細胞を許容癌細胞に転換する方法であって、該方法は、前記非許容癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む、方法。
【請求項32】
腫瘍溶解性ウイルスの増殖を、前記腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性がない癌細胞において、増大させる方法であって、該方法は、前記癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む、方法。
【請求項33】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科ファミリーに属するウイルスである、請求項28から32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、コルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に属するウイルスである、請求項28から33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、または、ガンマエントモポックスウイルスであるウイルス属に属する、請求項28から34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、レポリポックスウイルス属に属する、請求項28から35のいずれか1つに記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、粘液腫ウイルス(MYXV)であることを特徴とする、請求項28から36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属に属することを特徴とする、請求項28から35のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子組み換えされていることを特徴とする、請求項28から36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
前記核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、ラトジャドンB、ラトジャドンC、ラトジャドンD、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項28から39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項41】
前記核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBであることを特徴とする、請求項28から40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記核細胞質輸送阻害剤は、セリネクソールであることを特徴とする、請求項28から40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
前記癌細胞は、結腸癌細胞、膵癌細胞、黒色腫性の癌細胞であることを特徴とする、請求項28から42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
前記癌細胞は、ヒト癌細胞であることを特徴とする、請求項28から43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
前記癌細胞は、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とにインビボで接触させられることを特徴とする、請求項28から44のいずれか1つに記載の方法。
【請求項46】
前記癌細胞は、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とにエクスビボで接触させられることを特徴とする、請求項28から44のいずれか1つに記載の方法。
【請求項47】
前記方法は、前記癌細胞を、前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤とに同時に接触させる工程を含む、請求項28から46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
前記方法は、前記癌細胞を、前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤とに連続して接触させる工程を含む、請求項28から46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
前記癌細胞は、前記核細胞質輸送阻害剤に接触させられる前に前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられることを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記癌細胞は、前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる前に前記核細胞質輸送阻害剤に接触させられることを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記癌細胞は、約0.01から約10までのMOIにて前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられることを特徴とする、請求項28から50のいずれか1つに記載の方法。
【請求項52】
前記癌細胞は、約0.05から約5までのMOIにて前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられることを特徴とする、請求項28から51のいずれか1つに記載の方法。
【請求項53】
前記方法は、約0.0001μMから約100μMまでの濃度で前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地中で前記癌細胞をインキュベートする工程を含む、請求項28から52のいずれか1つに記載の方法。
【請求項54】
方法は、約0.01μMから約1μMまでの濃度で前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地中で前記癌細胞をインキュベートする工程を含む、請求項28から53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項55】
前記方法は、約0.0001μMから約100μMまでの濃度で前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地に前記癌細胞を接触させる工程を含む、請求項28から54のいずれか1つに記載の方法。
【請求項56】
前記方法は、約0.01μMから約1μMまでの濃度で前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地に前記癌細胞を接触させる工程を含む、請求項28から55のいずれか1つに記載の方法。
【請求項57】
自己由来細胞または異種由来細胞を、前記腫瘍溶解性ウイルスとエクスビボで接触させる工程をさらに含む、請求項28から56のいずれか1つに記載の方法。
【請求項58】
前記自己由来細胞または異種由来細胞は、骨髄細胞またはマクロファージ細胞であることを特徴とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記対象に、前記自己由来細胞または異種由来細胞を注入する工程をさらに含む、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
a.腫瘍溶解性ウイルス、および、
b.核細胞質輸送阻害剤を含む、医薬組成物。
【請求項61】
薬学的に許容可能な賦形剤または担体をさらに含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科ファミリーに由来する、請求項60または61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、コルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に由来する、請求項60から62のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、または、ガンマエントモポックスウイルスのウイルス属に由来する、請求項60から63のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、レポリポックスウイルス属に由来する、請求項60から64のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、粘液腫ウイルス(MYXV)であることを特徴とする、請求項60から65のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属に由来する、請求項60から64のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子組み換えされていることを特徴とする、請求項60から67のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、ラトジャドンB、ラトジャドンC、ラトジャドンD、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソールから成る群から選択される、請求項60から68のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項70】
前記核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBであることを特徴とする、請求項60から69のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項71】
前記核細胞質輸送阻害剤は、セリネクソールであることを特徴とする、請求項60から70のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項72】
前記医薬組成物は、腫瘍内または非経口投与のために適している単位用量剤形にあることを特徴とする、請求項60から71のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項73】
前記単位用量は、mLあたり約1x10プラーク形成単位(PFU)から約1x1010PFUまでの前記腫瘍溶解性ウイルスを含むことを特徴とする、請求項72に記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記単位用量は、mLあたり約1x10PFUから約1x1010PFUまでの前記腫瘍溶解性ウイルスを含むことを特徴とする、請求項72に記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤との間の重量比は、約1x10から約1x10-9までであることを特徴とする、請求項60から74のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2019年10月10日に出願された米国仮特許出願第62/913,667号および2019年9月2日に出願された米国仮特許出願第62/894,929号の利益を主張するものであり、上記特許出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、腫瘍溶解性ウイルスに関し、および、特に、核細胞質輸送阻害剤と組み合わせた腫瘍溶解性ウイルスの使用法に関する。
【0003】
政府の支援についての陳述
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた、許可番号R01 AI080607の下、政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有している。
【背景技術】
【0004】
ポックスウイルス科ファミリーのウイルス由来のものなどの腫瘍溶解性ウイルスは、形質転換された癌細胞に選択的に感染して死滅させるそれらの能力について、およびウイルスに対するだけでなく腫瘍抗原に対するホストの免疫系をも活性化するそれらの能力について設計および/または選択された哺乳類のウイルスである(例えば、Lichty BD, Breitbach CJ, Stojdl DF, Bell JC. 2014. Going viral with cancer immunotherapy. Nature Reviews Cancer 14:559-567を参照)。しかしながら、腫瘍溶解性ウイルスの用途は一定の腫瘍細胞では、例えば、非許容性(nonpermissive)腫瘍細胞では、制限され得る。従って、腫瘍溶解性ウイルスに基づく治療を改善するニーズは残ったままである。
【0005】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に指示される程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、いくつかの態様における、対象に治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とを投与する工程を含む、癌を処置する方法が開示される。
【0007】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、コルドポックスウイルス亜科(Chordopoxvirinae)またはエントモポックスウイルス亜科(Entomopoxvirinae)に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス(Cervidpoxvirus)、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス(Molluscipoxvirus)、ヤタポックスウイルス(Yatapoxvirus)、アルファエントモポックスウイルス(Alphaentomopoxvirus)、ベータエントモポックスウイルス(Betaentomopoxvirus)、またはガンマエントモポックスウイルス(Gammaentopoxvirus)のウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはレポリポックスウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは粘液腫ウイルス(MYXV)である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子組み換えされている。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA(Leptomycin A)、レプトマイシンB(Leptomycin B)、ラトジャドンA(Ratjadone A)、ラトジャドンB(Ratjadone B)、ラトジャドンC(Ratjadone C)、ラトジャドンD(Ratjadone D)、アンギノマイシンA(Anguinomycin A)、ゴニオタラミン(Goniothalamin)、ピペルロングミン(piperlongumine)、プルムバギン、クルクミン、バルトレート(valtrate)、アセトキシチャビコールアセテート(acetoxychavicolacetate)、プレニルクマリンオストール(prenylcoumarin osthol)、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソール(Selinexor)から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBである。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤はセリネクソールである。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は肉腫または細胞腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、または、網膜芽細胞腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は大腸の腺癌、膵癌または黒色腫である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、連続して投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、核細胞質輸送阻害剤を投与する前に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、核細胞質輸送阻害剤を投与した後に投与される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とを、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも1週、少なくとも2週、少なくとも3週、少なくとも4週、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、または少なくとも1年の期間、投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象に、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方を、週に2回、週に1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、月ごとに1回、または2か月ごとに1回、投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、処置される癌組織に、局所的に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍内の注射によって投与される。いくつかの実施形態では、組織に対する腫瘍溶解性ウイルスの感染多重度(MOI)は、約0.01から約10までである。いくつかの実施形態では、組織に対する腫瘍溶解性ウイルスの感染多重度(MOI)は、約0.05から約5までである。いくつかの実施形態では、組織における核細胞質輸送阻害剤の濃度は、約0.0001μMから約100μMまでである。いくつかの実施形態では、組織における核細胞質輸送阻害剤の濃度は、約0.01μMから約1μMまでである。
【0008】
本明細書では、いくつかの態様において、癌細胞を死滅させる方法が開示され、該方法は:癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させ、それによって癌細胞を死滅させる工程を含む。
【0009】
本明細書では、いくつかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する癌細胞の感受性を増強する方法が開示され、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。
【0010】
本明細書では、いくつかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性をもつように癌細胞を誘導する方法が開示され、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。
【0011】
本明細書では、いくつかの態様において、非許容性癌細胞を許容性(permissive)癌細胞に転換させる方法が開示され、該方法は、非許容性癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。
【0012】
本明細書では、いくつかの態様において、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対して感受性がない癌細胞において腫瘍溶解性ウイルスの増殖を増大させる方法が開示され、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科に属するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはコルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に属するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、または、ガンマエントモポックスであるウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、レポリポックスウイルス属由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、粘液腫ウイルス(MYXV)である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子組み換えされている。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、ラトジャドンB、ラトジャドンC、ラトジャドンD、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソールから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBである。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤はセリネクソールである。いくつかの実施形態では、癌細胞は、結腸癌細胞、膵癌細胞、黒色腫性の癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、ヒト癌細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とにインビボで接触させられる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とにエクスビボで接触させられる。いくつかの実施形態では、方法は、癌細胞を、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに同時に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、癌細胞を、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに連続して接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、癌細胞は、核細胞質輸送阻害剤に接触させられる前に腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる前に核細胞質輸送阻害剤に接触させられる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、約0.01から約10までのMOIにて腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、約0.05から約5までのMOIにて腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、方法は、約0.0001μMから約100μMまでの濃度で核細胞質輸送阻害剤を含む培地中で癌細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、約0.01μMから約1μMまでの濃度で核細胞質輸送阻害剤を含む培地中で癌細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、約0.0001μMから約100μMまでの濃度で核細胞質輸送阻害剤を含む培地に癌細胞を接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、約0.01μMから約1μMまでの濃度で核細胞質輸送阻害剤を含む培地に癌細胞を接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスを、自己由来細胞または異種由来細胞にエクスビボで接触させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、自己由来細胞または異種由来細胞は、骨髄細胞またはマクロファージ細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、対象に、自己由来細胞または異種由来細胞を注入する工程をさらに含む。
【0014】
本明細書では、いくつかの態様において、医薬組成物が開示され、該医薬組成物は、腫瘍溶解性ウイルス、および核細胞質輸送阻害剤を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤または担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科ファミリーに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、コルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、または、ガンマエントモポックスのウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、レポリポックスウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、粘液腫ウイルス(MYXV)である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは遺伝子組み換えされている。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、ラトジャドンB、ラトジャドンC、ラトジャドンD、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソールから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBである。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤はセリネクソールである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内または非経口投与のために適している単位用量剤形にある。いくつかの実施形態では、単位用量は、mLあたり約1x10プラーク形成単位(PFU)から約1x1010PFUまでの腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、mLあたり約1x10プラーク形成単位(PFU)から約1x1010PFUまでの腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤との間の重量比は、約1x10から約1x10-9までである。
【0016】
いくつかの実施形態は癌を処置する方法に関し、治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とを対象に投与する工程を含む。一態様では、癌細胞を死滅させる方法が本明細書に記載され、該方法は、癌細胞を治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤に接触させ、それによって前記癌細胞を死滅させる工程を含む。一態様では、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する癌細胞の感受性を増強する方法が本明細書に記載され、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。一態様では、癌細胞に、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性を持たせる方法が本明細書に記載され、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。一態様では、非許容性癌細胞を許容性癌細胞に転換する方法が本明細書に記載され、該方法は、非許容性癌細胞を前記治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤に接触させる工程を含む。一態様では、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性がない癌細胞において腫瘍溶解性ウイルスの増殖を増大させる方法が本明細書に記載され、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科に属するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはコルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に属するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、または、ガンマエントモポックスであるウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、レポリポックスウイルス属由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、粘液腫ウイルス(MYXV)である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子組み換えされている。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、ラトジャドンB、ラトジャドンC、ラトジャドンD、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソールから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBである。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤はセリネクソールである。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒトA549細胞、ヒーラー細胞、239細胞、または霊長類ベロ細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物の細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、インビボ細胞、インビトロ細胞、またはエクスビボ細胞である。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は肉腫または細胞腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣、癌肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、シュワン腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、または、網膜芽細胞腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は大腸の腺癌、膵癌または黒色腫である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤は、同時に、または連続して投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、前記核細胞質輸送阻害剤を投与する前に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、前記核細胞質輸送阻害剤を投与した後に投与される。いくつかの実施形態では、方法は、前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤とを、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも1週、少なくとも2週、少なくとも3週、少なくとも4週、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、または少なくとも1年の期間、投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、方法は、前記対象に、前記腫瘍溶解性ウイルス、前記核細胞質輸送阻害剤、またはその両方を、週に2回、週に1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、月ごとに1回、または2か月ごとに1回、投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、処置される癌組織に、局所的に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、注射によって投与される。いくつかの実施形態では、前記組織に対する前記腫瘍溶解性ウイルスの感染多重度(MOI)は、約0.01から約10までである。いくつかの実施形態では、前記組織に対する前記腫瘍溶解性ウイルスの感染多重度(MOI)は、約0.05から約5までである。いくつかの実施形態では、前記組織における前記核細胞質輸送阻害剤の濃度は、約0.0001μMから約100μMまでである。いくつかの実施形態では、前記組織における前記核細胞質輸送阻害剤の濃度は、約0.01μMから約1μMまでである。いくつかの実施形態では、方法は、前記癌細胞を前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤とに同時にまたは連続して接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、癌細胞は、前記核細胞質輸送阻害剤に接触させられる前に前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる前に前記核細胞質輸送阻害剤に接触させられる。いくつかの実施形態では、方法は、前記癌細胞が前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる前に、前記癌細胞を前記核細胞質輸送阻害剤で前処置する工程を含む。いくつかの実施形態では、癌細胞は、約0.01から約10までのMOIにて前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、約0.05から約5までのMOIにて前記腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、方法は、約0.0001μMから約100μMまでの濃度にある前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地中で前記癌細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、約0.01μMから約1μMまでの濃度にある前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地中で前記癌細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、約0.0001μMから約100μMまでの濃度にある前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地に前記癌細胞を接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、約0.01μMから約1μMまでの濃度にある前記核細胞質輸送阻害剤を含む培地に前記癌細胞を接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、自己由来細胞または異種由来細胞を、前記腫瘍溶解性ウイルスとエクスビボで接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、自己由来細胞または異種由来細胞は、骨髄細胞またはマクロファージ細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、前記対象に前記自己由来細胞または異種由来細胞を注入する工程を含む。
【0017】
一態様では、医薬組成物が本明細書に記載され、該医薬組成物は、腫瘍溶解性ウイルス、および核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤または担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腫瘍内投与または非経口投与のために適している単位用量剤形にある。いくつかの実施形態では、単位用量は、mLあたり約1x10プラーク形成単位(PFU)から約1x1010PFUまでの腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、mLあたり約1x10プラーク形成単位(PFU)から約1x1010PFUまでの腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、前記腫瘍溶解性ウイルスと前記核細胞質輸送阻害剤との間の重量比は、約1x10から約1x10-9までである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1A図1Bは、核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBによるヒト大腸の腺癌細胞株HT29の処置がMYXVの初期(GFP)および後期(TdTomato)遺伝子発現レベルを増強させたことを例示する。HT29細胞は、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置され、および、阻害剤の存在下で、5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させられ、および、蛍光画像は、感染の24時間後(HPI)に、蛍光顕微鏡を使用して撮像された。
図1B図1A図1Bは、核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBによるヒト大腸の腺癌細胞株HT29の処置がMYXVの初期(GFP)および後期(TdTomato)遺伝子発現レベルを増強させたことを例示する。HT29細胞は、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置され、および、阻害剤の存在下で、0.5のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させられ、および、蛍光画像は、感染(HPI)の48時間後に、蛍光顕微鏡を使用して撮像された。
図2図2は、核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBが、ヒト大腸の腺癌細胞株HT29におけるMYXV複製を増強したことを例証する。HT29細胞は、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置された。その後、細胞は、1時間、0.5または0.05のMOIにてvMyx-GFP-TdTomatoに感染させられた。1時間後、吸着されていないウイルスは取り除かれ、細胞は洗浄され、阻害剤の存在下で培地を用いてインキュベートされた。感染細胞は、感染の72時間後に採取され、そして、RK13細胞への階段希釈の後、ウイルス力価が求められた。
図3A図3A図3Bは、核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBによるヒト膵癌細胞株PANC-1の処置が、MYXV遺伝子の発現と複製を増強したことを例証する。図3Aは、PANC-1細胞が、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置され、および、阻害剤の存在下で5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させられたことを示し、および、蛍光画像は、蛍光顕微鏡を使用して、感染の48時間後に撮像された。
図3B図3A図3Bは、核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBによるヒト膵癌細胞株PANC-1の処置が、MYXV遺伝子の発現と複製を増強したことを例証する。図3Bは、PANC-1細胞が、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置され、および、その後、細胞は、1時間、5.0または0.5のMOIにてvMyx-GFP-TdTomatoに感染させられたことを示す。1時間後、吸着されていないウイルスは取り除かれ、次に、細胞は洗浄され、阻害剤の存在下で培地を用いてインキュベートされた。感染細胞は、感染の48時間後または72時間後に採取され、および、RK13細胞への階段希釈の後、ウイルス力価が求められた。
図4A図4A図4Bは、核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBによるヒト黒色腫細胞株MDA-MB-435の処置が、MYXV遺伝子の発現と複製を増強したことを例証する。図4Aは、MDA-MB-435細胞が、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置され、および、阻害剤の存在下で5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させられたことを示し、および、蛍光画像は、蛍光顕微鏡を使用して、感染の48時間後に撮像された。
図4B図4A図4Bは、核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBによるヒト黒色腫細胞株細胞株MDA-MB-435の処置が、MYXV遺伝子の発現と複製を増強したことを例証する。図4Bは、MDA-MB-435細胞が、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置され、および、その後、細胞は、1時間、5.0または0.5のMOIにてvMyx-GFP-TdTomatoに感染させられたことを示す。1時間後、吸着されていないウイルスは取り除かれ、その後、細胞は洗浄され、阻害剤の存在下で培地を用いて培養された。感染細胞は、感染の48時間後または72時間後に採取され、そして、RK13細胞への階段希釈の後、ウイルス力価が求められた。
図5A図5A図5Bは、核細胞質輸送阻害剤およびその後のMYXVへの感染によるヒト癌細胞株の処置が、細胞の生存率を減少させたことを例示する。図5Aは、HT29細胞(100ul培地/ウェル中に20,000個の細胞)が、不透明壁の96ウェルプレートにおいて一晩培養されたことを示す。その後、細胞は、1時間、レプトマイシンBの様々な濃度で前処置され、および、阻害剤の存在下で5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させられた。細胞の生存率は、感染の64時間後にATPのレベルを測定することにより求められた。
図5B図5A図5Bは、核細胞質輸送阻害剤およびそれに続くMYXVによる感染によるヒト癌細胞株の処置が、細胞の生存率を減少させたことを例示する。図5Bは、PANC-1細胞(100ul培地/ウェル中に20,000細胞)が、不透明壁の96ウェルプレートにおいて一晩培養されたことを示す。その後、細胞は、1時間、レプトマイシンBの様々な濃度で前処置され、および、阻害剤の存在下で5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させられた。細胞の生存率は、感染40時間後にATPのレベルを測定することにより求められた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ウイルスは、許容性細胞を感染と複製のために自然に利用するが、すべての腫瘍細胞が腫瘍溶解性ウイルスの感染に対して許容性というわけではない。本開示は、核細胞質輸送阻害剤などの1つ以上の薬剤で非許容性癌細胞を処置することにより、非許容性細胞を許容性細胞に転換し、癌細胞における腫瘍溶解性ウイルスの複製を増進させ、それによって癌細胞の死滅を増強することができるという驚くべき発見を伴う。
【0020】
核細胞質輸送阻害剤の使用は、本明細書において実証されるとおり、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に通常では感受性のない癌細胞(すなわち、核細胞質輸送阻害剤がない状態で腫瘍溶解性ウイルス感染に感受性がない)において腫瘍溶解性ウイルスの遺伝子発現と複製を支援して増強させることができる。核細胞質輸送阻害剤の添加は、また、腫瘍溶解性ウイルス後代の産生、または感染に通常では感受性がないホスト細胞における腫瘍溶解性ウイルスの産生を増強することができる。非許容性癌細胞に対する核細胞質輸送阻害剤の驚くべき影響は、核細胞質輸送阻害剤が腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて使用されるとき、増強された癌細胞死滅効果として表れ、そのことにより、癌を処置するためのより効果的な方法を提供する。
【0021】
本開示は、腫瘍溶解性ウイルス、および核細胞質輸送阻害剤を投与することにより、癌、例えば、腫瘍溶解性ウイルス感染に対する感受性がないか、または低い感受性を有している癌を処置する方法を提供する。また、非許容性癌細胞を許容性癌細胞に転換する方法、および、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させることにより、癌細胞を死滅させる方法が、本明細書において提供される。さらに、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤を含む医薬組成物が、本明細書において提供される。
【0022】
別段の説明のない限り、本明細書で使用される技術的かつ科学的な用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者によって通常に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を、本開示の実施または試験に用いることができるが、適切な方法および材料が以下に記載される。さらに、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定を意図したものではない。
【0023】
以下の用語および方法の説明は、本発明の化合物、組成物、および方法をよりよく説明し、そして本開示の実践において当業者を導くために提供される。また、本開示で使用される用語は、特定の実施形態および例を説明することのみを目的としており、限定的であることを意図されていないことも、理解されたい。
【0024】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明確に示していない限り、同様に複数形を含むように意図される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「および/または(and/or)」という用語は、関連する列挙された項目の1以上の、任意のおよびすべての可能な組み合わせ、ならびに代替的な(「または」)で解釈される場合の組み合わせの不在を指し、および包含する。
【0026】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定されるような特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを意味し得、これは、その値がどのように測定または決定されるか、例えば、測定システムの制限に部分的に依存している。例えば、「約」とは、当該技術分野での実行につき1または1を超える標準偏差を意味し得る。代替的に、代替的に、「約」とは所定の値の最大で20%、最大で15%、最大で10%、最大で5%、または最大で1%の範囲内を意味し得る。代替的に、とりわけ生体系または生物学的プロセスに関して、この用語は1桁以内、好ましくはある値の5倍、より好ましくは2倍以内を意味することがある。
【0027】
本明細書で使用される場合、「1以上(one or more)」または少なくとも1つは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の任意の数を意味し得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。従って、「AまたはBを含む」ことはA、BまたはAを含むこととBを意味する。「含む(Comprise)」、ならびに「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised)」などの変化型は、本明細書において使用される場合、様々な付加的要素または工程が結合的に使用され得ることを意味する。
【0029】
「有効量」は、所望の効果(例えば、ポックスウイルスの産生における増加)を生むのに十分な化合物または組成物の量を指す。この例では、有効量は、細胞と投与された具体的な薬剤のタイプ、処置の継続時間、任意の併用療法の性質などの因子に応じて、当業者の知識と専門性の範囲内で変化することになる。
【0030】
本明細書に使用される用語「許容性(permissive)」は、細胞が本出願に記載されるウイルスに感染する傾向があるかどうかを指す。本明細書に使用される用語「感染に対する感受性がある」は、細胞がウイルスまたは細胞内の別の生物に感染させられる能力を指す。そのことは「許容性」感染を包含するが、この用語は、細胞が生物に感染しているが、その生物が感染した細胞から他の細胞へ必ずしも複製および/または拡散するわけではない状況を包含するというように、限定されることを意図したものではない。本明細書に使用される句「ウイルスの増殖」は、許容性細胞型から、許容性または感受性がある性質のどちらかの、さらなる細胞への、感染性のウイルスの広がりまたは経過を説明する。
【0031】
本明細書に使用される用語「宿主細胞」は、組織、器官、または単離細胞における特定の組織に関するものへのいかなる限定もなく、広く意味すると理解されるべきである。このような細胞は、固有の種類の細胞、または、培養細胞株、初代細胞、分裂中の細胞などの異なる種類の細胞群であってもよい。宿主細胞の例として、限定されないが、原核細胞、酵母などの、より下等な真核細胞、および、昆虫細胞、および哺乳類細胞(ヒト、またはヒト以外)などの他の真核細胞、ならびに、腫瘍溶解性ウイルスを産生する能力がある細胞が挙げられる。宿主細胞は、例えば、生体内の癌細胞であってもよい。
【0032】
「核細胞質輸送阻害剤」とは、核細胞質輸送経路を介した分子の輸送を阻害する薬剤のことである。用語「核細胞質輸送阻害剤」は、「核外移行阻害剤」と交換可能に使用される。核細胞質輸送阻害剤の例は、限定されないが、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、ラトジャドンB、ラトジャドンC、ラトジャドンD、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、KOS 2464、PKF050-638、CBS9106、および、セリネクソールを含む。
【0033】
「ウイルス」とは、生きた細胞の中で繁殖する微小な感染性生物である。ウイルスは、タンパク膜に囲まれた単一の核酸の核から本質的に成り得、および、生きた細胞の内部でのみ複製する能力を有している。「ウイルス複製」は、少なくとも1つのウイルス生命サイクルが起きることによる、さらなるウイルスの産生である。ウイルスは、宿主細胞の正常な機能を破壊し、細胞をウイルスによって決定された方法で行動させることがある。例えば、ウイルス感染の結果、細胞は、感染していない細胞は通常行わないサイトカインを産生したり、サイトカインへの応答を生じたりすることがある。本明細書で使用する「自律増殖性の(replication-competent)」という用語は、特定の宿主細胞内に感染して複製することが可能なウイルスを指す。
【0034】
「ポックスウイルス」は、ポックスウイルス科ファミリーに属するウイルスである。ポックスウイルスは、脊椎動物および無脊椎動物の両方を感染させることができる二本鎖DNAウイルスである。ポックスウイルスは、例えば、オルソモポックスウイルス属、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属、モルシポックスウイルス属、および、ヤタポックスウイルス属などの、コルドポックスウイルス亜科サブファミリー、ならびに、アルファエントモポックスウイルス属、ベータエントモポックスウイルス属、およびガンマエントモポックスウイルス属を含む、エントモポックスウイルス亜科サブファミリーの、一部として分類されるウイルスの種と属とを含む。
【0035】
「接触()」とは、直接物理的に関連する場所に配置することを意味する。接触は、阻害剤と細胞などの、分子間の接触を含み、例えば、細胞を有する培養株におけるような細胞に直接物理的に関連に薬剤を配置することによる。いくつかの実施形態では、薬剤を細胞に対してと接触または暴露させることは、細胞の成長培地中に薬剤を配置することを含む。
【0036】
「阻害する」は、例えば、測定可能な程度になるまで核外移行経路における輸送を抑制することを意味する。「阻害剤」は、例えば、核輸出経路における輸送をある測定可能な程度まで阻害することができる物質である。
【0037】
用語「処置する(treat)」、「処置された(treated)」、「処置すること(treating)」、「処置(treatment)」などは、予防(例えば、処置されるべき病理学的疾病を有するリスクにある対象における予防的対策)および/または治療(例えば、病理学的疾病を有していると診断された対象における)を包含する意味である。処置の結果は、障害および/またはそれに関連する症状を遅らせる、治す、減らす、制御する、または改善することである。「処置すること」は、「緩和させること」の概念を含み、それは、障害および/または副作用に関連するあらゆる症状および病気の影響の、発生または再発の頻度、あるいは重症度を軽減することを指す。用語「処置すること」は、また、「管理すること(managing)」の概念を包含し、それは患者において特定の疾患または障害の重症度を低下させるか、またはその再発を遅らせることを指し、例えば、その病気に患った患者において寛解の期間を延長することを指す。「処置すること(treating)」という用語は、これまで述べたのと同様に、「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」、「予防(prevention)」の概念をさらに包含する。障害または疾病を処置することは、障害、疾病、またはそれらに関連する症状を完全に除去することを、除外はしないが、必須ともしないことが理解される。
【0038】
「薬学的に許容可能な賦形剤または希釈剤」とは、薬剤と共に対象に投与可能であり、およびその薬理活性を破壊せず、かつ、治療量の薬剤を送達するのに十分な投与量で投与される際に無毒である、賦形剤、担体、または希釈剤を指す。
【0039】
本開示の実施または試験のための適切な方法と材料が以下に記載される。このような方法と材料は、単に例証的であり、および限定するようには意図されない。本明細書に記載されたものと同様または等価である他の方法と材料が使用され得る。例えば、本開示が関係する技術において周知の従来の方法は、様々な一般的で、より具体的な参考文献に記載されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Press, 2001; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, 1992 (and Supplements to 2000); Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, 4th ed., Wiley & Sons, 1999; Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990、および Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999が挙げられる。さらに、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定を意図したものではない。
【0040】
腫瘍溶解性ウイルス
本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルスは、分裂する細胞(例えば、癌細胞などの増殖性細胞)において選択的に複製することができるウイルスを包含し、ここでは、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて、前記分裂する細胞の増殖を遅くし、および/または、前記分裂する細胞を溶解し、一方で、非分裂細胞における複製を全くあるいは最小限にしか示さないという目標を有する。典型的には、腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルス粒子またはビリオンへとパッケージ化されたウイルス-ゲノムを含有しており、および、感染性である(すなわち、宿主細胞または対象に感染して中へと進入することができる)。本明細書で使用される場合、この用語は、DNAまたはRNAベクター(ウイルスのタイプに依存して)、ならびにそれらで生成されたウイルス粒子を含意する。
【0041】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、トランスフェクトされた癌細胞を選択的に感染して死滅させるそれらの能力について、および、ウイルスに対するだけでなく腫瘍抗原に対する宿主免疫系をも活性化するそれらの能力について、選択および/または設計された、哺乳類ウイルスである。
【0042】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科ファミリーに属するウイルス、またはポックスウイルス科ファミリーに由来するウイルスである。ウイルスのポックスウイルス科ファミリーのメンバーは、感染細胞の細胞質中で複製することができる、大きく、複雑な、二本鎖DNAウイルスの多様な群である。ほとんどのポックスウイルスのゲノムは、長さが約150,000~300,000塩基対で、およそ150~300のタンパク質をコードする。これらのウイルスタンパク質の約半分は、様々なポックスウイルスのメンバー間で高度に保存され、細胞への結合と侵入、ゲノムの複製、転写、および、ビリオンの組み立てなどの必須機能を実行する。その他のウイルスタンパク質は、多くの宿主防御機能の回避に関与する。ポックスウイルスの遺伝子は、異なる相で発現し得る。例えば、初期の遺伝子産物には、ウイルスのDNA複製に必須のタンパク質が含まれ得、および、DNAが複製される前に、発現される。一方、DNA複写中、またはDNA複写後に発現される中間/後期遺伝子産物は、ビリオン成熟のために必要な構造タンパク質を含み得る。この複雑なウイルス複製プロセスのすべての階段(ゲノムを脱コードすることから始まり、初期遺伝子発現、DNA複写、後期遺伝子発現、および、さらにより複雑なビリオン成熟の過程)は、感染細胞の細胞質中だけで生じることができる。
【0043】
ポックスウイルスは、感染細胞の細胞質内だけで複製することができる、大きなDNAウイルスである。それらは、DNAおよびmRNA合成のために必要なタンパク質をすべてコードすることができる。ポックスウイルスの複製に関与するウイルスタンパク質とは別に、ポックスウイルスゲノムの約半分が、細胞質と核において機能する多様な細胞内の抗ウイルスのシグナル経路の阻害または操作のために必要であると示されるタンパク質をコードする。しかしながら、細胞質区画および核区画由来の宿主細胞タンパク質が、ポックスウイルスの複製の少なくともいくつかのステップに関与しているという証拠がある。多くの多様な細胞タンパク質およびシグナル経路が、ポックスウイルスの感染および複製から細胞を守ることに密接に結び付けられてきた。ゲノムにコードされたポックスウイルスのタンパク質の半分以上が、これらの宿主の抗ウイルス経路の特異的な阻害または調節に関与するのは、このためである。場合によっては、ウイルスにコードされたタンパク質は、宿主特異的に機能し、および、所与のポックスウイルスが特定の種の宿主において成功裡に感染および複製することができるかどうかを決定する。ポックスウイルスのメンバー、例えば、粘液腫ウイルス(MYXV)、レポリポックスウイルス、およびワクシニアウイルス(VACV)、オルソポックスウイルスは、ヒト癌の処置のために腫瘍溶解性ウイルスとして開発され得る。
【0044】
ある実施形態では、目的のポックスウイルスは遺伝子組み換えされている。例えば、目的のポックスウイルスは、治療効果のある遺伝子などの、他の遺伝子も運ぶように、および/または、1つ以上の内部成長的なウイルス遺伝子を削除または妨害するように、改変することができる。癌を処置するために改変されるウイルスの場合、遺伝子は、典型的に、処置の抗癌効果を増強するために選択されることになる。そのような遺伝子は、アポトーシスを引き起こすことに関与する遺伝子、または感染細胞を免疫破壊のための標的とすることに関与する遺伝子であり得、インターフェロンに対する反応の欠乏を修復する遺伝子、または、細菌細胞表面抗原などの抗体産生応答を刺激する細胞表面マーカーの発現を生じさせる遺伝子などが挙げられる。ウイルスはまた、腫瘍形成細胞または癌細胞の増殖および成長を止めることに関与する遺伝子を発現するように改変され、それによって細胞が分裂するのを予防する場合がある。さらに、ウイルスは、化学療法剤の合成に関与する遺伝子などの、治療効果のある遺伝子を含めるように改変される場合もあり、または、例えば、ヒト細胞など、阻害されるか死滅させられる細胞が由来する特定の種の細胞における複製のレベルを増加させるように改変される場合もある。
【0045】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、コルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に属するウイルスであるか、または、コルドポックスウイルス亜科またはエントモポックスウイルス亜科に由来するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、またはガンマエントモポックスウイルスである属のウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス、セルビドポックスウイルス、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス、モルシポックスウイルス、ヤタポックスウイルス、アルファエントモポックスウイルス、ベータエントモポックスウイルス、またはガンマエントモポックスウイルスであるウイルス属に由来するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、オルソポックスウイルス属に属するか、またはオルソポックスウイルス属のウイルスに由来するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルスか、またはワクシニアウイルスに由来するウイルスである。いくつかの実施形態では、ワクシニアウイルスは、Lister、Wyeth、Western Reserve、Modified Vaccinia virus Ankara、および、LC16mシリーズから成る群から選択されるワクシニアウイルス株である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ラクーンポックス(Raccoonpox)ウイルスか、またはラクーンポックスウイルスに由来するウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、セルビドポックスウイルス属に属するか、またはセルビドポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、羊痘ウイルスか、または羊痘ウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、パラポックスウイルス属に属するか、またはパラポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、アビポックスウイルス属に属するか、またはアビポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、カプリポックスウイルス属に属するか、またはカプリポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、スイポックスウイルス属に属するか、またはスイポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、モルシポックスウイルス属に属するか、またはモルシポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ヤタポックスウイルス属に属するか、またはヤタポックスポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、アルファエントモポックスウイルス属に属するか、またはアルファエントモポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ベータエントモポックスウイルス属に属するか、またはベータエントモポックス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ガンマエントモポックスウイルス属に属するか、またはガンマエントモポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、レポリポックスウイルス属に属するか、またはレポリポックスウイルス属のウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、粘液腫ウイルス(MYXV)か、またはMYXVに由来する。
【0046】
MYXVは、その固有の生物学のために、骨肉腫などの固形癌に対する治療効果があるウイルスとして潜在的によく適している。MYXVは、ポックスウイルス科ファミリーのメンバーであり、およびレポリポックスウイルス属のメンバーである。従って、ある実施形態では、目的のポックスウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの候補である。ある実施形態では、目的のポックスウイルスは、粘液腫ウイルスなどのレポリポックスウイルスである。ある実施形態では、目的のポックスウイルスは、Lister、Wyeth、Western Reserve(WR)、Modified Vaccinia virus Ankara(MVA)、およびLC16mシリーズなどの、ワクシニアウイルスの様々な菌株を含むワクシニアウイルスなどの、オルソポックスウイルスであり、およびラクーンポックスウイルス(RCNV)である。ある実施形態では、目的のポックスウイルスは、タナポックスウイルス(Tanapoxvirus)(TPV)またはヤバ様疾患ウイルス(Yaba-like disease virus)(YLDV)などの、ヤタポックスウイルスである。ある実施形態では、目的のポックスウイルスは、羊痘ウイルスなどの、カプリポックスウイルスである。
【0047】
MYXVは、ラビットに特異的な病原体である。MYXVは、ポックスウイルスのレポリポックスウイルス種に属するあらゆる自律増殖性のウイルスであり得る。いくつかの実施形態では、MYXVは、MYXVの野生型菌株か、またはMYXVの野生型菌株に由来する。いくつかの実施形態では、MYXVは、MYXVの遺伝子組み換えの株か、またはMYXVの遺伝子組み換えの株に由来する。いくつかの例では、MYXVは、ローザンヌ株であるか、またはローザンヌ株に由来する。いくつかの例では、MYXVは、モリウサギ(Sylvilagus brasiliensis)において循環する南アメリカのMYXV株であり、または、モリウサギにおいて循環する南アメリカのMYXV株に由来する。いくつかの例では、MYXVは、ブラシウサギ(Sylvilagus bachmani)において循環するカリフォルニアのMYXV株であり、または、ブラシウサギにおいて循環するカリフォルニアのMYXV株に由来する。いくつかの例では、MYXVは、遺伝子M009L、M036L、M135R、およびM148Rにおける改変を含む弱毒化されたスペインの野外株(2019年7月27日、GenBankによって提供され、参照によって組込まれる、GenBank Accession number EU552530)である6918であり、または、6918に由来する。いくつかの例では、MYXVは、6918VP60-T2(2019年7月27日、GenBankによって提供され、参照によって組込まれる、GenBank Accession number EU552531)であるか、または、6918VP60-T2に由来する。いくつかの例では、MYXVは、標準的実験室株(Standard laboratory Strain)(SLS)と名付けられた株か、またはSLSに由来する。
【0048】
いくつかの例では、MYXVは、Cameron, et al., “The complete DNA sequence of Myxoma Virus,” Virology 264: 298-318 (1999)に開示される配列(その全体が引用によって本明細書に組み込まれる)に対して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を含む、95%と98%との間、95%と99%との間などの、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の、配列同一性を含む。場合によっては、MYXVは、Cameron, et al.,“The complete DNA sequence of Myxoma Virus,”Virology 264:298-318(1999)において開示された配列を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、MYXVは、ヒト(例えば、免疫適格のヒト)において非病原性であるが、様々な組織に由来する広範囲のヒト癌細胞に感染して死滅させる能力がある。正常な初代ヒト細胞において、MYXVの複製は、例えば、細胞結合決定因子、細胞内の抗ウイルスのシグナル経路、およびI型IFNおよび/他のサイトカイン媒介の細胞抗ウイルス状態などの、複数の因子によって制限され得る。ヒト癌細胞において、これらの自衛細胞経路は、共通して欠陥がある。いくつかのヒト癌細胞におけるMYXV複製は、細胞のRNAヘリカーゼファミリータンパク質に依存し得る。理論によって束縛されることを望まないが、細胞の核区画と細胞質区画の間で行き来するRNAヘリカーゼは、ウイルスに感染した細胞におけるMYXV複製に影響を及ぼす場合がある。RNAヘリカーゼ以外にも、他の核タンパク質は、MYXVおよび他のポックスウイルスの複製サイクルに寄与する場合がある。例えば、核タンパク質は、形質転換されたヒト宿主細胞株において、ポックスウイルスの複製効率に影響する場合がある。
【0050】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、レオウイルス科、パラミクソウイルス科、レトロウイルス科、アデノウイルス科、ラブドウイルス科、ピコルナウイルス科、パルボウイルス科、およびピコルナウイルス科から成るウイルスファミリーに属するか、または、ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、レオウイルス科、パラミクソウイルス科、レトロウイルス科、アデノウイルス科、ラブドウイルス科、ピコルナウイルス科、パルボウイルス科、およびピコルナウイルス科から成るウイルスのファミリーに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ヘルペスウイルス科ファミリーに属するか、またはヘルペスウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、レオウイルス科ファミリーに属するか、またはレオウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、パラミクソウイルス科ファミリーに属するか、またはパラミクソウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、レトロウイルス科ファミリーに属するか、またはレトロウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス科ファミリーに属するか、またはアデノウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ラブドウイルス科ファミリーに属するか、またはラブドウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ピコルナウイルス科ファミリーに属するか、またはピコルナウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、パルボウイルス科ファミリーに属するか、またはパルボウイルス科ファミリー由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ピコルナウイルス科ファミリーに属する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、シンプレックスウイルス属、ルブラウイルス属、またはセネカウイルス(Senecavirus)属に属するか、または、シンプレックスウイルス属、ルブラウイルス属、またはセネカウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、シンプレックスウイルス属に属するか、またはシンプレックスウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ルブラウイルス属に属するか、またはルブラウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、セネカウイルス属に属するか、またはセネカウイルス属に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、はしか、鶏痘(Fowlpox)、および水胞性口炎(Vesicular Stomatitis)ウイルス、ムンプスルブラウイルス(Mumps rubulavirus)、コクサッキーウイルス、およびワクシニアであるウイルスの種に属するウイルス、または、はしか、鶏痘、水胞性口炎ウイルス、およびムンプスルブラウイルス、コクサッキーウイルス、およびワクシニアであるウイルスの種に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、はしかウイルスか、または、はしかウイルス由来である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、鶏痘ウイルスか、または鶏痘ウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、水胞性口炎ウイルスか、または水胞性口炎ウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ムンプスルブラウイルスか、またはムンプスルブラウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、コクサッキーウイルスか、またはコクサッキーウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルスか、またはワクシニアウイルスに由来する。
【0051】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、自律増殖性である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは野生型菌株に属するか、または野生型菌株に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子組み換え株に属するか、または遺伝子組み換え株に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、遺伝子組み換えされている。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ヒトにおいて非病原性であるが、様々な組織に由来する広範囲のヒト癌細胞に感染し、および死滅させる能力がある。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの核酸配列は、野生型ウイルス配列の核酸配列に対して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を含む、95%と98%との間、95%と99%との間などの、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の、配列同一性を含む。
【0052】
核細胞質輸送阻害剤
本明細書に開示されるとおり、核細胞質輸送阻害剤は、ウイルスの複製を増強することができ、および、非許容性癌細胞などの、癌細胞について細胞の生存率を抑制することができる。ある実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、選択的阻害剤である。ある実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、選択的ではない。いくつかの実施形態では、記載された核細胞質輸送阻害剤は、核細胞質輸送に干渉することができる薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、輸送タンパク質に干渉することにより、核細胞質輸送を阻害する。いくつかの実施形態では、薬剤は、塩酸トリフルオペラジン、W13、ETP-45648、Vinblastine、Akt阻害剤X、INCA、SMIP001/004、Resveratrol、Elliticine、WGA、cSN50ペプチド、bimax1/2ペプチド、レプトマイシンB、アンギノマイシン、ゴニオタラミン、ラトジャドン、Valtrate、アセトキシキャビコールアセテート、15d-PGJ2、Peumusolide A、PKF050-638、KOS 2464、CBS9106、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、小分子化合物を含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ラトジャドン、バルトレート、およびアセトキシチャビコールアセテートなどの、天然の化合物を含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、核外移行(SINE)の選択的阻害薬を含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、CBS9106などの、可逆的な核外移行阻害剤を含む。
【0053】
ある実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンA、レプトマイシンB、ラトジャドンA、B、C、アンギノマイシンA、ゴニオタラミン、ピペルロングミン、プルムバギン、クルクミン、バルトレート、アセトキシチャビコールアセテート、プレニルクマリンオストール、またはKOS 2464、PKF050-638(N-azolylacrylateアナログ、CBS9106、セリネクソールなどの合成核細胞質輸送阻害剤、および、参照により本明細書に組み込まれるMathew and Ghildyal, CRM1 inhibitors for antiviral therapy, Frontiers in Microbiology 2017, Vol 8, article 1171に記されるものの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンAを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ラトジャドンAを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ラトジャドンBを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ラトジャドンCを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ラトジャドンDを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、アンギノマイシンAを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ゴニオタラミンを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ピペルロングミンを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、プルムバギンを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、クルクミンを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、バルトレートを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、アセトキシチャビコールアセテートを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、プレニルクマリンオストールを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、KOS 2464を含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、PKF050-638を含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、CBS9106を含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、セリネクソールを含む。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、レプトマイシンBである。
【0054】
処置の方法
核細胞質輸送阻害剤の使用は、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、MYXV)による感染に対する感受性のない癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性がある癌細胞に変換するのを目ざましく支援し、すなわち、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する癌細胞の感受性を誘導する。核細胞質輸送阻害剤の添加は、癌細胞の腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性を増加させる。核細胞質輸送阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する低い感受性を有する癌細胞を、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する高い感受性を有する癌細胞へと作り変えるために、使用することができる。従って、癌を処置し、および腫瘍細胞を死滅させることにおいて腫瘍溶解性ウイルスの有効性を改善するために、核細胞質輸送阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて投与することができる。
【0055】
本明細書において、腫瘍溶解性ウイルスと、腫瘍溶解性ウイルスを含む組成物とを使用する方法が開示される。本明細書では、ある実施形態において、治療有効量の腫瘍溶解性ウイルス(例えば、MYXVまたはVACV)と核細胞質輸送阻害剤とを対象に投与することにより、癌を処置する方法が開示される。一態様では、非許容性細胞を許容性細胞に転換する方法が本明細書に開示され、該方法は、腫瘍溶解性ウイルスに対して非許容な癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスおよび核細胞質輸送阻害剤に接触させ、それによって前記癌細胞を変換する工程を含む。他の態様では、癌細胞を死滅させる方法が本明細書に開示され、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させ、それによって前記癌細胞を死滅させる工程を含む。それに応じて、いくつかの実施形態では、本開示は、核細胞質輸送阻害剤で非許容性細胞を処置することによって、非許容性癌細胞におけるウイルス複製を増加させる方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態は、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する癌細胞の感受性を増強する方法に関し、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態は、癌細胞に、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性をもたせる方法に関連し、前記癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに接触させる工程を含む。
【0057】
いくつかの実施形態は、腫瘍溶解性ウイルスによる感染に対する感受性がない癌細胞において腫瘍溶解性ウイルスの増殖を増大させる方法に関し、該方法は、癌細胞を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤に接触させる工程を含む。
【0058】
腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、一緒に、または別々に投与され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、一緒に投与され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、別々に投与され得る。腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤が別々に投与されるとき、腫瘍溶解性ウイルスは核細胞質輸送阻害剤に先立って投与され得る。腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤が別々に投与されるとき、腫瘍溶解性ウイルスは核細胞質輸送阻害剤の後に投与され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、癌細胞、例えば、非許容性癌細胞は、哺乳動物細胞などの動物細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞、例えば、非許容性癌細胞は、ヒト細胞である。ある実施形態では、細胞は、不死化されたヒト細胞または霊長類細胞である。ある実施形態では、細胞は、癌細胞株に属する。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒトA549細胞、ヒーラー細胞、239細胞、または霊長類ベロ細胞である。癌細胞は、インビボ細胞、インビトロ細胞、またはエクスビボ細胞であり得る。いくつかの実施形態では、癌細胞は、処置される対象の癌組織の細胞である。
【0060】
癌は、固形腫瘍または血腫であり得る。いくつかの実施形態では、癌は、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、または固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は肉腫または癌腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣、癌肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、シュワン腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、または、網膜芽細胞腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は大腸の腺癌、膵癌または黒色腫である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、および骨肉腫などの、骨癌である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は骨肉腫である。
【0061】
腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、癌を抱える被験者に同時にまたは連続して投与することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、対象に同時に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、対象への投与の前に予め混合される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤は、対象に別々に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、核細胞質輸送阻害剤の前に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、核細胞質輸送阻害剤の後に投与される。いくつかの実施形態では、方法は、癌細胞または癌組織を腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤に、同時にまたは連続して接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織は、核細胞質輸送阻害剤に接触させられる前に腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織は、腫瘍溶解性ウイルスに接触させられる前に核細胞質輸送阻害剤に接触させられる。いくつかの実施形態では、方法は、癌細胞または癌組織を事前に混合された腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤に接触させることを含む。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織は、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤とに別々に接触させられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、方法は、核細胞質輸送阻害剤で癌細胞または癌組織を前処置する工程を含む。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織は、細胞または組織を腫瘍溶解性ウイルスに接触させる前に、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、または少なくとも1週間、核細胞質輸送阻害剤で前処置される。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織は、細胞または組織を腫瘍溶解性ウイルスに接触させる前に、最大1分間、最大2分間、最大5分間、最大10分間、最大30分間、最大1時間、最大2時間、最大6時間、最大12時間、最大24時間、または最大1週間、核細胞質輸送阻害剤で前処置される。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織は、細胞または組織を腫瘍溶解性ウイルスに接触させる前に、約1分から約1日までの、約5分から約12時間までの、約10分から約2時間までの、または約30分から約90分までの期間、核細胞質輸送阻害剤で前処置される。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織は、細胞または組織を腫瘍溶解性ウイルスに接触させる前に、約1時間、核細胞質輸送阻害剤で前処置される。
【0063】
一態様では、癌細胞を抱える被験者にとって自己由来、同種異系、または異種由来の細胞に腫瘍溶解性ウイルスを投与する工程を含む方法が、本明細書に記載される。腫瘍溶解性ウイルスは、インビボまたはエクスビボで投与され得る。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスを、自己由来の細胞にエクスビボで投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスを、同種異系の細胞にエクスビボで投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスを、異種由来の細胞にエクスビボで投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、自己由来細胞、同種異系、または異種由来の細胞は、骨髄細胞またはマクロファージ細胞である。いくつかの実施形態では、自己由来、同種異系、または異種由来の細胞は、幹細胞である。いくつかの実施形態では、自己由来、同種異系、または異種由来の細胞は、腫瘍溶解性ウイルスに対して非許容性の、任意の細胞である。いくつかの実施形態では、自己由来、同種異系、または異種由来の細胞は、腫瘍溶解性ウイルスに対して許容性の、任意の細胞である。いくつかの実施形態では、自己由来、同種異系、または異種由来の細胞は、健康な細胞である。いくつかの実施形態では、投与する工程は、腫瘍溶解性ウイルスを、自己由来、同種異系、または異種由来の細胞に接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記自己由来、同種異系、または異種由来の細胞を対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、前記前記自己由来、同種異系、または異種由来の細胞を対象に注入する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、自己由来、同種異系、または異種由来の細胞の投与に先立って、核細胞質輸送阻害剤を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、自己由来、同種異系、または異種由来の細胞の投与の後に、核細胞質輸送阻害剤を投与する工程を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方を期間にわたり投与することを含む。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも1週、少なくとも2週、少なくとも3週、少なくとも4週、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、または少なくとも1年である。いくつかの実施形態では、期間は、最大1日、最大2日、最大3日、最大1週、最大2週、最大3週、最大4週、最大1か月、最大3か月、最大6か月、最大1年、または最大10年である。いくつかの実施形態では、期間は、約1日から約1年まで、約1か月から約12か月まで、または約1か月から約6か月までである。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方を、週に2回、週に1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、月に1回、または2か月ごとに1回、対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方は、1週から4週まで間をあけて、例えば、約1週間あけて、約2週間あけて、または約3週間あけて対象に投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方を、初回量スケジュールおよびその後の投与量スケジュールに従って投与することを含む。いくつかの実施形態では、初回量スケジュールは、その後の投与量スケジュールとは異なる投与スケジュールを含む。いくつかの実施形態では、初回量スケジュールは、その後の投与量スケジュールよりも頻繁ではない投与を含む。いくつかの実施形態では、初回量スケジュールは、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方の、1~4処置または2~3処置などの、1~10処置を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方の各処置は、初回量スケジュールに従って、1週間から約6週間あけて投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方の各処置は、初回量スケジュールに従って、約1週間あけて、約2週間あけて、約3週間あけて、または約4週間あけて、投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方の各処置は、その後の投与量スケジュールに従って、1週間から約6週間あけて投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方の各処置は、その後の投与量スケジュールに従って、約1週間あけて、約2週間あけて、約3週あけて、または約4週間あけて投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方は、初回量スケジュールにおいて3週間あけて投与され、およびその後の投与量スケジュールにおいて約2週間あけて投与される。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法は、処置される癌組織に対する局所投与を含む。例えば、いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方は、処置される癌組織に、局所的に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは局所的に投与され、および、核細胞質輸送阻害剤は局所的に投与されるのではない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤、または両方は、注射によって投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方は、皮膚の注射、皮下注射、または結節性病変への注射によって投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、またはその両方は、癌組織または癌組織を含有する癌臓器への注射によって投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、方法は、癌組織に、または癌組織の近くに、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、癌細胞または癌組織を、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤を含む培地に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤を含む培地で癌細胞または癌組織をインキュベートする工程を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤は、所与の癌細胞または癌組織について求められる(例えば、所与の阻害剤、ウイルス株、および宿主細胞株)。核細胞質輸送阻害剤の有効量は、例えば、本明細書に開示されるとおり、阻害剤の量を滴定すること、および、ウイルスの後代の複製および/または細胞の生存率を定量することにより、求められ得る。いくつかの実施形態では、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.000001μMから約100μMまでの、約0.000001μmから約10μmまでの、約0.00001μmから約1μmまでの、約0.01μmから約1μmまでの、約0.00001μmから約0.1μmまでの、約0.00005μmから約0.05μmまでの、または、約0.00005μmから約0.005μmまでの、濃度を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.01μMから約1μMまでの濃度を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.000001μm超、約0.000005μm超、約0.00001μm超、約0.00005μm超、約0.0001超、0.0005μm超、約0.001μm超、約0.005μm超、約0.01μm超、約0.05μm超、または、約0.1μm超の、濃度を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.0005μM未満、約0.001μM未満、約0.0015μM未満、約0.002μM未満、約0.0025μM未満、約0.003μM未満、約0.0035μM未満、約0.004μM未満、約0.0045μM未満、約0.005μM未満、約0.01μM未満、約0.015μM未満、約0.02μM未満、約0.025μM未満、約0.03μM未満、約0.035μM未満、約0.04μM未満、約0.045μM未満、約0.05μM未満、約0.1μM未満、約0.2μM未満、約0.25μM未満、約0.3μM未満、約0.4μM未満、約0.5μM未満、約0.75μM未満、約0.9μM未満、約1μM未満、約1.25μM未満、約1.5μM未満、約1.75μM未満、約2μM未満、約3μM未満、約4μM未満、約5μM未満、約6μM、約7μM、約8μM、約9μM、または約10μM未満の濃度を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.000001μMと約10μMの間にあり、約0.0005μM、約0.001μM、約0.0015μM、約0.002μM、約0.0025μM、約0.003μM、約0.0035μM、約0.004μM、約0.0045μM、約0.005μM、約0.01μM、約0.015μM、約0.02μM、約0.025μM、約0.03μM、約0.035μM、約0.04μM、約0.045μM、約0.05μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.5μM、約0.6μM、約0.7μM、約0.8μM、約0.9μM、約1.0μM、約1.1μM、約1.2μM、約1.3μM、約1.4μM、約1.5μM、約1.6μM、約1.7μM、約1.8μM、約1.9μM、約2.0μM、約3.0μM、約4.0μM、および、約5.0μMなどである。
【0069】
いくつかの実施形態では、方法は、癌組織に、または癌組織の近くに治療有効量の腫瘍溶解性ウイルス(例えば、MYXVまたはVACV)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスに癌細胞または癌組織を感染させることを含む。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織が有効な感染多重度(MOI)にて感染させられるとき、治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスが存在する。いくつかの実施形態では、方法は、癌細胞または癌組織を、腫瘍溶解性ウイルスに、本明細書に記載されるMOIで接触させることを含む。MOIは、例えば、ウイルスの細胞または組織に対する比を滴定すること、ならびに、本明細書に開示されるとおり、ウイルスの子孫の複製および/または細胞の生存率を定量することによって、所与の細胞または組織について決定することができる。いくつかの実施形態では、有効なMOIは、ウイルスの複製を増強し、および減力の癌細胞生存率を低下させながら、薬物に特異的な細胞の毒性を最小限にすることができる。いくつかの実施形態では、癌細胞は、目的のウイルスが細胞の表面に吸着することが可能であるように、ある期間にわたり、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、MYXVまたはVACV)とともにインキュベートされ、前記期間は、約20分から約5時間などであり、例えば、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約65分、約70分、約75分、約80分、約85分、約90分、約95分、約100分、約105分、約110分、約115分、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、12時間、18時間、20時間、24時間、30時間、36時間であり、またはそれ以上である。
【0070】
ある実施形態では、癌細胞または癌組織に対する腫瘍溶解性ウイルスのMOIは、約0.001と2.0との間、または約0.01と1.0との間にあり、約0.001、約0.005、0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.45、約0.5、約0.55、約0.6、約0.65、約0.7、約0.75、約0.8、約0.85、約0.9、約0.95、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2.0などである。ある実施形態では、癌細胞または癌組織に対する腫瘍溶解性ウイルスのMOIは、約0.01から約10まで、約0.05から約5まで、および/またはその間の範囲である。ある実施形態では、癌細胞または癌組織に対する腫瘍溶解性ウイルスのMOIは、約0.05、約0.5、または約5である。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織に対する腫瘍溶解性ウイルスのMOIは、少なくとも約0.001、少なくとも約0.005、少なくとも約0.01、少なくとも約0.02、少なくとも約0.03、少なくとも約0.04、少なくとも約0.05、少なくとも約0.06、少なくとも約0.07、少なくとも約0.08、少なくとも約0.09、少なくとも約0.1、少なくとも約0.15、少なくとも約0.2、少なくとも約0.25、少なくとも約0.3、少なくとも約0.35、少なくとも約0.4、少なくとも約0.45、少なくとも約0.5、少なくとも約0.55、少なくとも約0.6、少なくとも約0.65、少なくとも約0.7、少なくとも約0.75、少なくとも約0.8、少なくとも約0.85、少なくとも約0.9、少なくとも約0.95、少なくとも約1.0、少なくとも約1.1、少なくとも約1.2、少なくとも約1.3、少なくとも約1.4、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、少なくとも約2.0、少なくとも約2.5、少なくとも約3.0、少なくとも約4.0、少なくとも約5.0、少なくとも約6.0である。いくつかの実施形態では、癌細胞または癌組織に対する腫瘍溶解性ウイルスのMOIは、最大0.01、最大0.02、最大0.03、最大0.04、最大0.05、最大0.06、最大0.07、最大0.08、最大0.09、最大0.1、最大0.15、最大0.2、最大0.25、最大0.3、最大0.35、最大0.4、最大0.45、最大0.5、最大0.55、最大0.6、最大0.65、最大0.7、最大0.75、最大0.8、最大0.85、最大0.9、最大0.95、最大1.0、最大1.1、最大1.2、最大1.3、最大1.4、最大1.5、最大1.6、最大1.7、最大1.8、最大1.9、最大2.0、最大2.5、最大3.0、最大4.0、最大5.0、最大6.0、または、最大10である。
【0071】
いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤の使用は、癌細胞または癌組織において腫瘍溶解性ウイルス(例えばMYXVまたはVACV)の複製を増加させる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、核細胞質輸送阻害剤がない状態における複製速度よりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%速い速度で複製される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、核細胞質輸送阻害剤がない状態における複製速度よりも少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍速い速度で複製される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、癌細胞または癌組織における腫瘍溶解性ウイルスの複製を、感染から24時間後、少なくとも30%、50%、70%、90%、2倍、3倍、5倍、7倍、9倍、10倍、12倍、または15倍だけ、増加させる。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、癌細胞または癌組織における腫瘍溶解性ウイルスの複製を、感染から24時間後、最大5倍、10倍、12倍、15倍、20倍、30倍、50倍、70倍、または100倍だけ、増加させる。
【0072】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせての核細胞質輸送阻害剤の使用は、核細胞質輸送阻害剤がない状態における腫瘍溶解性ウイルスの使用に比較して、癌細胞または癌組織の生存率を低下させる。いくつかの実施形態では、細胞の生存率は、核細胞質輸送阻害剤がない状態において腫瘍溶解性ウイルスを使用する時の細胞の生存率と比較して、癌細胞の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%で低下される。
【0073】
送達戦略がさらに開示され、ここで、治療のMYXVウイルスは、癌を抱える対象の中へと細胞を導入する前に、最初にエクスビボで骨髄または末梢血単核細胞のいずれかに由来する混合白血球とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、白血球とMYXVは、エクスビボで、核細胞質輸送阻害剤と一緒にインキュベートされる。この戦略では、MYXVは、エクスビボでウイルスに事前感染した白血球の遊走を介して、癌部位に送達され得る。この全身送達方法は、ウイルスが患者への注入前に、単離された白血球にまず送達されるので、「エクスビボウイルス療法」、またはEVV(aka EV2)と呼ばれることがある。MYXV構築物およびこの送達戦略は、必要とする対象において、全身腫瘍組織量を著しく低下させ、および生存を拡大させ得る。いくつかの実施形態では、BMまたはPBMCの細胞は、エクスビボで1時間、MYXV構築物とともにインキュベートされ、その後、MYXVをもつ白血球が、レシピエントに注入される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤とのインキュベーションは、白血球によるMYXVの取込みを増加させ、および/または、MYXVの腫瘍部位への送達を増加させる。
【0074】
ある実施形態では、単核の末梢血液細胞および/または骨髄細胞は、例えば、自己由来の細胞として、対象から得られる。いくつかの実施形態では、単核の末梢血液細胞および/または骨髄細胞は、1以上の同種異系ドナーから得られ、例えば、ドナーは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8のHLA対立遺伝子について、レシピエントに一致する(HLA-A、HLA-B対立遺伝子の1つまたは両方のコピー、HLA-A、および/またはHLA-DR対立遺伝子など)。HLA対立遺伝子は、例えば、DNAに基づいた方法を使用して、タイプ分けすることができる。いくつかの実施形態では、単核の末梢血液細胞および/または骨髄細胞は、1以上の異種ドナーから得られる。
【0075】
ウイルス収率を増加させる方法
本明細書では、一態様において、ポックスウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスを複製する方法が開示され、該方法は、腫瘍溶解性ウイルスが宿主細胞の表面に吸着されることが可能となる条件下で、宿主細胞を有効量の核細胞質輸送阻害剤および腫瘍溶解性ウイルスに暴露する工程、および、腫瘍溶解性ウイルスを複製させるために、培養培地中で感染させられた宿主細胞をインキュベートする工程を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、MYXVである。
【0076】
いくつかの実施形態では、方法は、宿主細胞において産生されたポックスウイルスを採取する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、宿主細胞をポックスウイルスに感染させるに先立ち、宿主細胞を核細胞質輸送阻害剤に接触させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、宿主細胞をポックスウイルスに感染させた後で、核細胞質輸送阻害剤に宿主細胞を接触させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、宿主細胞を核細胞質輸送阻害剤とポックスウイルスとに同時に暴露することをさらに含む。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスは、核細胞質輸送阻害剤がない状態における複製速度よりも、少なくとも30%速い速度で複製される。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、ポックスウイルスの複製を、感染から24時間後、少なくとも3倍だけ増加させる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、2.0未満の感染多重度(MOI)でポックスウイルスに接触させられる。いくつかの実施形態では、有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.5μMから約0.0005μMの範囲にある。いくつかの実施形態では、培養培地は、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、不死化ヒト細胞または霊長類細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポックスウイルス製造のための優良製造規範(GMP)において使用される細胞株に属する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ヒトA549細胞、ヒーラー細胞、239細胞、または霊長類ベロ細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、吸着されていないポックスウイルスを除去する工程をさらに含む。
【0077】
本明細書では、いくつかの態様において、細胞内で、増加された成長速度および/または力価で腫瘍溶解性ウイルスを産生する方法が開示され、該方法は:有効量の核細胞質輸送阻害剤に宿主細胞を接触させる工程、目的の腫瘍溶解性ウイルスが宿主細胞の表面に吸着することが可能な条件下で目的の腫瘍溶解性ウイルスに宿主細胞を接触させる工程、および、目的の腫瘍溶解性ウイルスの後代を産生するために宿主細胞を培養する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、目的の腫瘍溶解性ウイルスの後代を採取する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、MYXVである。
【0078】
本明細書では、ある実施形態において、核細胞質輸送経路の薬物阻害剤を使用して腫瘍溶解性ウイルスの遺伝子発現および子孫ウイルス形成を増加または増強する方法が開示される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスのGMP製造のために一般に使用される不死化ヒト細胞における核外移行経路の阻害は、これらの細胞からのウイルス収量を増加させるために使用され得る。従って、本開示は、潜在的に治療効果のある腫瘍溶解性ウイルスを製造する強健な方法を提供し、いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはMYXVなどである。
【0079】
いくつかの実施形態では、この増強されたウイルス複製は、例えば、第1のウイルス吸着の時間の直前に始めて、細胞が有効量の阻害剤で処置されるとき、最も強力である。いくつかの実施形態では、阻害剤の有効量は、所与の細胞培養システム(例えば、所与の阻害剤、ウイルス株、および宿主細胞株)について決定される。阻害剤の有効量は、本明細書に開示されるとおり、例えば、細胞培養システムにおける阻害剤の量を滴定すること、およびウイルスの後代の収を定量することによって、決定され得る。いくつかの実施形態では、ウイルスの後代の収率を増加させる一方で、有効量の阻害剤は、薬物に特異的な細胞の毒性を最小限にすることができる。いくつかの実施形態では、有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.000001μMから約1μM、約0.000001μMから約0.1μM、約0.00001μMから約0.1μM、約0.00005μMから約0.05μM、または、約0.00005μMから約0.005μMである。いくつかの実施形態では、有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.000001μM超、約0.000005μM超、約0.00001μM超、約0.00005μM超、約0.0001、約0.0005μM超、約0.001μM超、約0.005μM超、約0.01μM超、約0.05μM超、または約0.1μM超である。いくつかの実施形態では、有効量の核細胞質輸送阻害剤は、最大、約0.0005μM、約0.001μM、約0.0015μM、約0.002μM、約0.0025μM、約0.003μM、約0.0035μM、約0.004μM、約0.0045μM、約0.005μM、約0.01μM、約0.015μM、約0.02μM、約0.025μM、約0.03μM、約0.035μM、約0.04μM、約0.045μM、約0.05μM、約0.1μM、約0.2μM、約0.25μM、約0.3μM、約0.4μM、約0.5μM、約0.75μM、約0.9μM、約1μM、約1.25μM、約1.5μM、約1.75μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約8μM、約9μM、または約10μMである。
【0080】
いくつかの実施形態では、増強されたウイルス複製は、細胞が有効な感染多重度(MOI)で感染させられ、および、その後、例えば、核細胞質輸送阻害剤の持続的な存在の中に維持されたときに、生じる。MOIは、所与の細胞培養システム(例えば、所与の阻害剤、ウイルス株、および宿主細胞株)について、例えば、細胞培養システムにおける、ウイルスの宿主細胞に対する比を滴定すること、およびウイルスの後代の収率を定量することによって、決定され得る。いくつかの実施形態では、有効なMOIは、薬物に特異的な細胞の毒性を最小限にすることができ、一方で、ウイルスの複製を増強し、ウイルスの後代の収率を増加させる。
【0081】
宿主細胞は、目的のポックスウイルスが宿主細胞の表面に吸着ことが可能となる条件下で、目的のポックスウイルス(例えば、MYXV)に接触され得る。ある実施形態では、細胞は、約0.001から2.0の間、または約0.01と1.0との間の感染多重度(MOI)で、目的のポックスウイルスに接触され、約0.001MOI、約0.005MOI、0.01MOI、約0.02MOI、約0.03MOI、約0.04MOI、約0.05MOI、約0.06MOI、約0.07MOI、約0.08MOI、約0.09MOI、約0.1MOI、約0.15MOI、約0.2MOI、約0.25MOI、約0.3MOI、約0.35MOI、約0.4MOI、約0.45MOI、約0.5MOI、約0.55MOI、約0.6MOI、約0.65MOI、約0.7MOI、約0.75MOI、約0.8MOI、約0.85MOI、約0.9MOI、約0.95MOI、約1.0MOI、約1.1MOI、約1.2MOI、約1.3MOI、約1.4MOI、約1.5MOI、約1.6MOI、約1.7MOI、約1.8MOI、約1.9MOI、または約2.0MOIなどである。いくつかの実施形態では、吸着されていない目的のポックスウイルスは、例えば、細胞を洗浄することにより、細胞を培養する前に除去される。核細胞質輸送阻害剤による処置の後、宿主細胞は、目的のポックスウイルスの後代を産生するために、薬物の存在下で培養される。適切な培養条件は、具体的なの細胞型に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、目的のポックスウイルスが宿主細胞の表面に吸着するように、目的のポックスウイルスと一定期間、約20分~約5時間など、例えば、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、約65分、約70分、約75分、約80分、約85分、約90分、約95分、約100分、約105分、約110分、約115分、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、12時間、18時間、20時間、24時間、30時間、36時間、またはさらに長い時間、インキュベートされる。ある実施形態では、宿主細胞は、有効量の核細胞質輸送阻害剤、例えば、上記の濃度の存在下で培養される。宿主細胞は、子孫ウイルスが収穫される前に、約1日から数日、例えば3日から5日程度培養することができる。いくつかの実施形態では、方法は、目的のポックスウイルスの後代を採取する工程を含む。
【0082】
本明細書に開示されるとおり、核細胞質輸送阻害剤は、このような細胞における、ウイルス複製および子孫ウイルス収率を増強することができる。この薬剤増強法は、MYXVやVACVなどのポックスウイルスの収率を上げるための実用的な方法を提供し、これらのウイルスの大規模GMP産生および臨床用途に利用され得る。いくつかの実施形態では、本開示は、核細胞質輸送阻害剤が、不死化ヒト細胞または霊長類細胞におけるポックスウイルスGMP製造に適用された時、ワクシニアウイルス(VACV)および粘液腫ウイルス(MYXV)などの腫瘍溶解性ウイルス候補を含むポックスウイルスの収率を増加させるために使用され得ることを実証する。
【0083】
本開示は、形質転換されたヒトおよび霊長類細胞、例えば、腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスのGMP製造のために一般に使用されるものにおける、ポックスウイルス産生収率を増加させる方法を提供する。腫瘍溶解性ウイルス候補として提唱されている他のウイルスと比較して、MYXVやVACVなどのポックスウイルスは、大規模な製造や精製において、いくつかの固有の課題を提示する。サイズが大きいことが原因で、ワクシニアウイルスは、濾過によって滅菌することができず、このため、いずれの製造工程も典型的に密閉される。宿主細胞細胞質内に生じるその生命サイクル全体では、感染性粒子の大部分は細胞の媒質へ放出されないが、感染細胞内に保持され、従って、精製には、感染細胞の溶解、および細胞デブリからのウイルス粒子の精製が必要である。
【0084】
本明細書では、ある実施形態において、例えば、ウイルス吸着の時間の直前に添加されたときに、核外移行経路を阻害する小分子などの薬剤により不死化ヒト細胞株を処置する方法が開示される。例えば、後の感染サイクルの全体にわたる、薬剤の存在下における細胞の培養は、感染性のポックスウイルス全体にわたって複製および最終収率を増加させることができる。従って、開示される方法は、ウイルスGMP製造のために使用される形質転換されたヒトおよび霊長類細胞において、粘液腫ウイルス(MYXV)およびワクシニアウイルス(VACV)などの、ポックスウイルスの全収率を増加させる、洗練された方法を提供する。
【0085】
核細胞質輸送阻害剤の使用は、ポックスウイルスの複製を増加させる。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスは、核細胞質輸送阻害剤がない状態における複製よりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%速い速度で複製される。いくつかの実施形態では、ポックスウイルスは、核細胞質輸送阻害剤がない状態における複製速度よりも少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍速い速度で複製される。
【0086】
いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、癌組織におけるポックスウイルスの複製を、感染から24時間後、少なくとも30%、50%、70%、90%、2倍、3倍、5倍、7倍、9倍、10倍、12倍、または15倍だけ、増加させる。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、癌組織におけるポックスウイルスの複製を、感染から24時間後、最大5倍、10倍、12倍、15倍、20倍、30倍、50倍、70倍、または100倍だけ、増加させる。
【0087】
本開示の態様は、細胞における増加された成長速度および/または力価のポックスウイルスなどを産生する方法に関係する。いくつかの実施形態では、方法は、有効量の核細胞質輸送阻害剤(それはまた、核外移行経路阻害剤と呼ばれる場合がある)に宿主細胞を接触させることを含む。阻害剤の濃度は、細胞毒性または抗ウイルスの効果のいずれかを通常引き起こすもの未満に選択され得るが、それでも、目的のポックスウイルスの産生における増加結果としてもたらすのに十分である。いくつかの実施形態では、治療有効量の核細胞質輸送阻害剤は、約0.000001μMと約0.1μMの間にあり、約0.000001μM、約0.00001μM、約0.0001μM、約0.0005μM、および約0.05μMなどの間であり、約0.0005μM、約0.001μM、約0.0015μM、約0.002μM、約0.0025μM、約0.003μM、約0.0035μM、約0.004μM、約0.0045μM、約0.005μM、約0.01μM、約0.015μM、約0.02μM、約0.025μM、約0.03μM、約0.035μM、約0.04μM、約0.045μM、および約0.05μMなどである。
【0088】
医薬組成物
一態様では、腫瘍溶解性ウイルス、核細胞質輸送阻害剤、薬学的に許容可能な賦形剤または担体、あるいはそれらの組み合わせを含む、医薬組成物が、本明細書において開示される。組み合わせとして投与される時、治療剤(すなわち、腫瘍溶解性ウイルスと核細胞質輸送阻害剤)は、同時または異なる時間に与えられる別個の組成物として製剤化され得、あるいは、治療剤は、単一組成物として与えられ得る。
【0089】
組成物は、毎日1回、毎日2回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回、7日ごとに1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、2か月ごとに1回、6か月ごとに1回、または1年につき1回、投与され得る。投与間隔は、個々の対象のニーズに従って調節することができる。ある実施形態では、開示の治療剤は、2週超、3週超、1か月超、2か月超、3か月超、4か月超、5か月超、6か月超、1年超、2年超、3年超、4年超、または5年超、10年超、または15年超の期間にわたり投与され、あるいは、例えば、14日と15年の間の任意の時限を範囲の下限とし、および、15日と20年の間の任意の時限を範囲の上限とする、数日、数か月、または年の任意の時限範囲にわたり、投与される。場合によっては、治療剤が患者の余生にわたって投与されることは有利な場合がある。いくつかの実施形態では、患者は、疾患または障害の進行をチェックするために監視され、および、それに従って投与量は調節される。いくつかの実施形態では、本発明による処置は、少なくとも2週、3週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、1年、2年、3年、4年、または5年、10年、15年、20年、または対象の余生にわたって有効である。
【0090】
本開示に従って医薬組成物を調製するために、1つ以上の治療剤の治療有効量は、一投与量を産生する従来の薬学の配合技術に従って、薬学的に許容可能な担体と密接に混合することができる。担体は、投与のための所望の調製形態よって種々様々の形態をとる場合があり、例えば、眼、経口、局所的または非経口の形態があり、他の数多のものと共に、ゲル剤、クリーム剤軟膏、ローション、および時間放出される移植可能な製剤を含む。ある実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、水溶媒であり、すなわち、水と、随意には付加的な共溶媒とを含む。典型的な薬学的に許容可能な担体は、水、水中の緩衝溶液(燐酸塩緩衝食塩水(PBS)など)および、ソルビトールなどの糖アルコールを含む。非経口投与に適した組成物は、ガラスまたはプラスチックで作られたアンプル、使い捨て注射器、または複数投与量バイアルに包まれる場合がある。いくつかの実施形態では、 非経口投与に適した製剤は、製剤を、対象とするレシピエントの血液と等張にする、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬および溶質を含有し得る水性および非水性の滅菌した注入液;および、懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌の懸濁液を含む。製剤は、単ー用量または複数用量の容器、例えば、密閉されたアンプルおよびバイアルにおいて与えられ得、および、使用の直前に、無菌の液体担体、例えば、無菌の液体担体、例えば、注入のための水の付加のみを必要とする、粉末形態または冷凍乾燥(凍結乾燥)された状態で貯蔵され得る。即時の注射液および懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製されてよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤は、薬学的に許容可能な塩、複合体、またはプロドラッグとして投与される。薬学的に許容可能な塩または複合体は、本開示による活性化合物の適切な塩または複合体のことを指し、それらは親化合物の所望の生物活性を保持し、および、正常細胞に限られた毒物学上の効果を示す。そのような塩の非限定的な例は、(a)無機酸を有して形成される酸付加塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)、および、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸などの、有機酸を有して形成される塩、(b)亜鉛、カルシウム、ナトリウム、カリウムなどの他種々の金属カチオンを有して成形される塩基付加塩が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単位剤形にある。いくつかの実施形態では、単位剤形は、腫瘍内にまたは非経口的に、例えば、静脈内で、投与されることに適している。単位投与量製剤は、投与される成分の、一日量または単位、毎日のサブ投与量、週投与量または単位、またはそれらの適切な画分を含有している製剤でありえる。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.1mLから約100mLまでの、および/またはその間の範囲の送達可能体積を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は約0.5mLから約5mLまでの、約0.75mLから約2.5mLまでの、約1.1mLから約0.9mLまでの、送達可能体積を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.5mL、約1mL、約1.5mL、または2 mLの送達可能体積を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、mLあたり、約1x10プラーク形成単位(PFU)から約1x1010PFUまでの、および/またはその間の範囲の腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、mLあたり、約約1x10PFUから約1x10PFUまでの、または、約1x10PFUから約1x10PFUまでの、および/またはその間の範囲の、腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、mLあたり、約1x10PFUから約1x1010PFUまでの、約1x10PFUから約1x1010PFUまでの、約1x10PFUから約1x1011PFUまでの、約1x10PFUから約1x10PFUまでの、約1x10PFUから約1x10PFUまでの、または、約1x10PFUから約1x10PFUまでの、および/またはその間の範囲の、腫瘍溶解性ウイルスを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、単位投与量は、約1ピコグラムから約1000マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、腫瘍溶解性ウイルス含む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、単位投与量は、約10ピコグラムから約100マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、腫瘍溶解性ウイルス含む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、単位投与量は、約10ピコグラムから約100マイクログラムまでの、および/またはその間の、範囲の腫瘍溶解性ウイルス含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約10ピコグラムから約10マイクログラムまでの、約10ピコグラムから約1マイクログラムまでの、約10ピコグラムから約100マイクログラムまでの、約100ピコグラムから約100マイクログラムまでの、約1000ピコグラムから約100マイクログラムまでの、約10000ピコグラムから約100マイクログラムまでの、約100ピコグラムから約10マイクログラムまでの、または、約100ピコグラムから約1マイクログラムまでの、および/または、その間の範囲の、腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約1ピコグラムの、約10ピコグラムの、約100ピコグラムの、約1ナノグラムの、約10ナノグラムの、約100ナノグラムの、約1マイクログラムの、約10マイクログラムの、約100マイクログラムの、または、約1000マイクログラムの、腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.01ピコグラムから約500マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、腫瘍溶解性含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.05のピコグラムから約50マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.1ピコグラムから、約1ピコグラムから、約10ピコグラムから、約100ピコグラムから、または、約1ピコグラムから、約0.1マイクログラムまでの、約1マイクログラムまでの、約10マイクログラムまでの、または、約50マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約10ピコグラムから約10マイクログラムまでの、約10ピコグラムから約1マイクログラムまでの、約100ピコグラムから約50マイクログラムまでの、約1000ピコグラムから約50マイクログラムまでの、約10000ピコグラムから約50マイクログラムまでの、約100ピコグラムから約5マイクログラムまでの、または、約100ピコグラムから約1マイクログラムの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.05ピコグラム、約0.5のピコグラム、約5ピコグラム、約50ピコグラム、約500ピコグラム、約5ナノグラム、約50ナノグラム、約500ナノグラム、約5マイクログラム、約50マイクログラム、または約500マイクログラムの、腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.05ピコグラムから約50マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.01ピコグラムから約100マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.05ピコグラムから約100マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.01ピコグラムから約90マイクログラムまでの、約0.01ピコグラムから約80マイクログラムまでの、約0.01ピコグラムから約60マイクログラムまでの、約0.01ピコグラムから約50マイクログラムまでの、約0.05ピコグラムから約80マイクログラムまでの、約0.05ピコグラムから約40マイクログラムまでの、約0.1ピコグラムから約50マイクログラムまでの、または、約0.1ピコグラムから約30マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.01ピコグラムの、約0.05ピコグラムの、約0.075ピコグラムの、約0.1ピコグラムの、約0.5ピコグラムの、約1ピコグラムの、約5ピコグラムの、約10ピコグラムの、約100ピコグラムの、約500ピコグラムの、約1ナノグラムの、約10ナノグラムの、約100ナノグラムの、約1マイクログラムの、約10マイクログラムまでの、または、約100マイクログラムの、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.01ピコグラムから約500マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.05ピコグラムから約50マイクログラムまでの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、核細胞質輸送阻害剤を、約0.1のピコグラムから、約1ピコグラムから、約10ピコグラムから、約100ピコグラムから、または、約1ピコグラムから、約0.1マイクログラムまでの、約1マイクログラムまでの、約10マイクログラムまでの、または、約50マイクログラムまでの範囲で、および/またはその間の範囲で含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約10ピコグラムから約10マイクログラムまでの、約10ピコグラムから約1マイクログラムまでの、約100ピコグラムから約50マイクログラムまでの、約1000ピコグラムから約50マイクログラムまでの、約10000ピコグラムから約50マイクログラムまでの、約100ピコグラムから約5マイクログラムまでの、または、約100ピコグラムから約1マイクログラムの、および/またはその間の範囲の、核細胞質輸送阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、単位投与量は、約0.05ピコグラムの、約0.5ピコグラムの、約5ピコグラムの、約50ピコグラムの、約500ピコグラムの、約5ナノグラムの、約50ナノグラムの、約500ナノグラムの、約5マイクログラムの、約50マイクログラムの、または約500マイクログラムの、核細胞質輸送阻害剤を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤から腫瘍溶解性ウイルスの重量比は、約1x10から約1x10-9まで、および/またはその間の任意の範囲である。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤に対する腫瘍溶解性ウイルスの重量比は、約1x10から約1x10-8まで、約1x10から約1x10-7まで、約1x10から約1x10-6まで、約1x10から約1x10-5まで、約1x10から約1x10-3まで、約1x10から約1x10-2まで、または、約10から約0.1までである。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤に対する腫瘍溶解性ウイルスの重量比は、約1から約1x10-9まで、約1から約1x10-8まで、約1から約1x10-7まで、約1から約1x10-6まで、約1から約1x10-5まで、約1から約1x10-4まで、約1から約1x10-3まで、約1から約1x10-2まで、または、約1から約0.1までである。いくつかの実施形態では、核細胞質輸送阻害剤に対する腫瘍溶解性ウイルスの重量比は、約1x10-9から約1まで、約1x10-8から約1まで、約1x10-7から約1まで、約1x10-6から約1まで、約1x10-5から約1まで、約1x10-4から約1まで、約1x10-3から約1まで、約1x10-2から約1まで、または、約0.1から約1までである。
【実施例
【0095】
実施例1:核細胞質輸送阻害薬剤は、非許容性のヒト癌細胞株において、MYXV遺伝子の発現を増強する
あるヒト癌細胞株では、特に、後期遺伝子発現において、MYXV遺伝子の発現は制限される。MYXV遺伝子の発現の阻害は、ウイルス複製が制限される一因となり得る。しかしながら、どの経路および細胞タンパク質がこれらの非許容性のヒト癌細胞株においてMYXV複製を制限するかは、明確に文書化されていない。例えば、大腸腺癌細胞株HT29、膵癌細胞株PANC-1、および黒色腫細胞株MDA-MB-435などの、一般にMYXV遺伝子発現および複製を制限するヒト癌細胞株において、核細胞質輸送阻害剤を試験した。
【0096】
代表的な核細胞質輸送阻害剤として、レプトマイシンBを試験した。ヒトHT29細胞(図1Aおよび図1B)、PANC-1細胞(図3A)およびMDA-MB-435細胞(図4A)を、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、模擬処置または前処置した。その後、細胞をvMyx-GFP-TdTomato(ポックスウイルスの合成初期/後期プロモーター下で、GFPを発現し、および、ポックスウイルスp11後期プロモーター下でTdTomatoを発現する、野生型MYXV)に、5.0または0.5の感染多重度(MOI)で感染させた。
【0097】
HT29細胞を様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置し、阻害剤の存在下において5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させ、および、感染後の24時間後(図1A)または48時間後(図1B)に、蛍光顕微鏡を使用して蛍光画像を撮像した。
【0098】
PANC-1細胞を、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置し、阻害剤の存在下において5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させ、および、感染の48時間後に蛍光画像を撮像した(図3A)。
【0099】
MDA-MB-435細胞を、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置し、阻害剤の存在下において5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させ、および、感染の48時間後に蛍光画像を撮像した(図4A)。
【0100】
ウイルス感染の進行を示す発現であるGFPとTdTomatoの発現を監視するために、細胞を蛍光顕微鏡下で観察した。レプトマイシンBの存在下で(例えば、1uM、0.1uM、および0.01uM)、すべての試験されたヒト癌細胞株において、増強されたGFP発現(初期/後期)およびTdTomato発現(後期)が観察された(図1A図1B図3A図4A)。核細胞質輸送阻害剤による処置は、また、これらの制限されたヒト癌細胞株において小さな病巣の形成を可能にした。
【0101】
これらの結果は、核細胞質輸送阻害剤による処置が、感染細胞における粘液腫ウイルスの遺伝子発現を増強することを示す。これらの結果は、また、一定の核タンパク質がこれらのヒト癌細胞株におけるMYXV複製を直接または間接的に制限することを示唆する。
【0102】
実施例2:核細胞質輸送阻害薬物の処置は、非許容性のヒト癌細胞株において、MYXV子孫ウイルスの産生を増強する。
ウイルス遺伝子発現に対する核細胞質輸送阻害剤レプトマイシンBの観察された影響が、子孫ウイルス形成に反映され得るかどうかを定量的に評価するために、量的ウイルス滴定分析を行なった。HT29(図2)、PANC-1(図3B)およびMDA-MB-435(図4B)ヒト癌細胞株を、異なる濃度のレプトマイシンBで模擬処置または前処置した。
【0103】
HT29細胞を、1時間、レプトマイシンBの様々な濃度で前処置した。その後、細胞を、1時間、0.05または0.5のMOIにてvMyx-GFP-TdTomatoに感染させた。1時間後、吸着されていないウイルスは取り除かれ、その後、細胞は洗浄され、阻害剤の存在下で培地を用いて培養された。感染細胞を、感染の72時間後に採取し、そして、RK13細胞への階段希釈の後、ウイルス力価を求めた。レプトマイシンB処置は、ウイルス複製を増強した(図2)。
【0104】
PANC-1細胞を、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置した。その後、細胞を、1時間、5.0または0.5のMOIにてvMyx-GFP-TdTomatoに感染させた。1時間後、吸着されていないウイルスは取り除かれ、次に、細胞は洗浄され、阻害剤の存在下で培地を用いてインキュベートされた。感染細胞を、感染の48時間後または72時間後に採取し、そして、RK13細胞への階段希釈の後、ウイルス力価を求めた。レプトマイシンB処置は、すべての条件において、少なくとも10倍だけウイルス複製を増強した(図3B)。
【0105】
MDA-MB-435細胞を、様々な濃度のレプトマイシンBで1時間、前処置し、その後、細胞を、1時間、5.0または0.5のMOIにてvMyx-GFP-TdTomatoに感染させた。1時間後、吸着されていないウイルスを取り除き、その後、細胞を洗浄し、阻害剤の存在下で培地を用いて培養した。感染細胞を、感染の48時間後または72時間後に採取し、そして、RK13細胞への階段希釈の後、ウイルス力価を求めた。レプトマイシンB処置は、すべての条件において、少なくとも10倍だけウイルス複製を増強した(図4B)。
【0106】
すべての試験された細胞株において、レプトマイシンB処置は、MOI5.0または0.5で感染させたとき、子孫MYXV形成を、少なくとも10~20倍、著しく増強した(図2図3B図4B)。これに対して、許容性のA549細胞株では、レプトマイシンBは、MOIが0.1またはそれ以下のときだけウイルス複製を増加させた。
【0107】
これらの結果は、核細胞質輸送阻害剤を使用して核外移行経路を遮断することは、非許容性のヒト癌細胞株におけるMYXVの複製を著しく増強することができることを示す。
【0108】
実施例3:核細胞質輸送阻害剤でのヒト癌細胞株の前処理は、MYXVを媒介とした癌細胞の死滅を増強する。
核細胞質輸送阻害剤で増強されたMYXV複製もまた癌細胞の死滅を増強したかどうかを試験するために、ATPの測定により感染細胞の生存率を試験した。この場合、HT29細胞およびPANC-1細胞を試験した。
【0109】
HT29細胞およびPANC-1細胞を、100ul培地/ウェル中に20,000個の細胞を有する不透明壁の96ウェルプレートに接種し、そして、一晩培養した。その後、細胞を、1時間、レプトマイシンBの様々な濃度で前処置し、そして、阻害剤の存在下で5.0のMOIにてvMyx-GFP-Tdtomatoに感染させた。その後、ATP含有量に基づいて、細胞の生存率を測定した。感染の64時間後(HT-29細胞、図5A)または40時間後(PANC-1細胞、図5B)に、100ul CellTiter-Glo(r)試薬(Promega)を添加し、およびプレートリーダを使用して発光を記録することによって、ATP含有量を測定した。示されたデータは、平均+/-SD(n=3または4)を表わす。
【0110】
結果は、表示された時点において、HT29細胞とPANC-1細胞の両方は、レプトマイシンB処置にだけ感受性があることを示した。レプトマイシンBの濃度を増加させると、細胞の生存率は減少した。これらの時点(HT29については感染の64時間後およびPANC-1については感染の40時間後)では、また、MYXVだけが、40~50%まで細胞の生存率を減少させた。しかしながら、レプトマイシンBによるHT29細胞とPANC-1細胞の両方の前処理は、これらのヒト癌細胞株の生存率をさらに低下させた。興味深いことに、HT29細胞株において、最小の細胞の生存率に影響したレプトマイシンBの最低の濃度は、MYXVで組み合わせた後、MYXVの細胞死滅能力をさらに増強した。総合するとこれらの結果は、核細胞質輸送阻害剤は、非許容性のヒト癌細胞株において、MYXV複製を増強するだけでなく、相乗的にMYXVの細胞死滅能力を増強することを示す。
【0111】
実施例4:粘液腫ウイルス(MYXV)と核細胞質輸送阻害剤による腫瘍崩壊のウイルス療法
対象は、癌(例えば、非許容性の血液の癌または固形腫瘍)を有していると確認される。
【0112】
本明細書に開示されるとおり、ヒト癌患者での使用について承認された核細胞質輸送阻害剤であるセリネクソールと組み合わせて、MYXVを対象に投与した(例えば、注射または点滴を介して投与)。MYXVは、対象における癌細胞に感染し、癌細胞死と抗腫瘍免疫応答の増加に帰結した。核細胞質輸送阻害剤を投与することは、粘液腫ウイルスの癌治療活性を増強し、全身腫瘍組織量の減少とより長い生存に帰結した。
【0113】
本開示は、特定の実施形態に重点をおいて記載されているが、特定の実施形態の変種が使用されてもよいことは当該技術分野における普通の技術者にとって明白であり、および、特に本明細書に記載されたとおり以外でも、開示が実行され得ることが意図される。特定の態様、実施形態、または実施例とともに記載される本発明の特徴、性質、組成物、または例は、本発明の他の態様、実施形態、または例に適用可能であると理解されるべきである。従って、本開示は、以下の請求項によって定義されるような趣旨と開示の範囲内に包含される改変をすべて含む。従って、本発明はすべて、これらの請求項の範囲および趣旨内にあることを主張する。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】