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特表2022-546996ポリアルキルアクリレート・コア及び導電性ポリマー・シェルを有する導電性ナノコンポジット粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ポリアルキルアクリレート・コア及び導電性ポリマー・シェルを有する導電性ナノコンポジット粒子
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20221102BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20221102BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20221102BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20221102BHJP
   C08F 20/16 20060101ALI20221102BHJP
   C08F 20/54 20060101ALI20221102BHJP
   C08J 7/044 20200101ALI20221102BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221102BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20221102BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20221102BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20221102BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08L65/00
H01B1/12 F
H01B13/00 Z
C08G61/12
C08F20/16
C08F20/54
C08J7/044 CEY
C08J5/18 CEZ
C08L33/08
C08K5/42
C08K3/30
C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513837
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2020074462
(87)【国際公開番号】W WO2021043820
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】1909720
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521458281
【氏名又は名称】ユニベルシテ デ ポー エ デュ ペイ ド ラドゥール
(71)【出願人】
【識別番号】516086358
【氏名又は名称】サントル ナショナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】レイノー,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】マルカスザア,ピエール
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4J002
4J011
4J032
4J100
【Fターム(参考)】
4F006AA37
4F006AB24
4F006AB64
4F006AB72
4F006BA07
4F006CA08
4F006DA04
4F071AA33
4F071AA35X
4F071AA69
4F071AB17
4F071AB23
4F071AC10
4F071AC12
4F071AC14
4F071AE10
4F071AE19
4F071AF37
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH16
4F071BA05
4F071BB02
4F071BC02
4J002BG04X
4J002BG07X
4J002CE00W
4J002CH02Y
4J002DG046
4J002EC067
4J002ED067
4J002EP017
4J002EV236
4J002FD206
4J002FD317
4J002FD31Y
4J002GH01
4J002GQ02
4J002HA06
4J002HA09
4J011KA08
4J011KA12
4J011KA13
4J011KA15
4J011KA24
4J011KB08
4J011PA69
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC06
4J032BA04
4J032BB01
4J032BB03
4J032BC08
4J032BC13
4J032BD02
4J032CG01
4J100AL03P
4J100AL04P
4J100AM14Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA21
4J100HA55
4J100HC71
4J100HC72
4J100HD13
4J100HE06
4J100JA45
(57)【要約】
本発明は、ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、導電性ポリマーを含むシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、導電性ナノコンポジット粒子に関する。本発明はまた、このような粒子を調製するための方法、並びに、伸縮性のある支持体上にプリントするためのそれらの使用に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ナノコンポジット粒子であって、
ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOTの誘導体、及びポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)からなる群から選択された導電性ポリマーを含むシェルと、
非イオン界面活性剤と、
を含む粒子。
【請求項2】
前記ポリC1~C6アルキルアクリレートは、ポリn-ブチルアクリレートである、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーは架橋されない、請求項1又は請求項2に記載の粒子。
【請求項4】
動的光散乱によって測定した前記粒子のコア直径は、200nm未満である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
粒子の分散液を調製するためのプロセスであって、
ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOTの誘導体、及びポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)からなる群から選択された導電性ポリマーを含むシェルと、
非イオン界面活性剤と、
を含み、
a)ラテックスの水性溶液を得るべく、非イオン界面活性剤及び分散媒中の重合触媒の存在下で、C1~C6アルキルアクリレートモノマー及び随意的にα,β-不飽和アミドモノマーを重合するステップと、
b)高分子電解質を含む水性溶液を得るべく、導電性ポリマーを安定化させる前記高分子電解質を水性溶液に溶解するステップと、
c)前記ステップ(b)で得られた高分子電解質を含む水性溶液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)モノマー、EDOTの誘導体、又は3-ヘキシルチオフェンを添加するステップと、
d)前記ステップ(c)で得られた高分子電解質及びモノマーを含む溶液に、重合開始剤と前記ステップ(a)で得られたラテックスを添加するステップと、
e)前記粒子の分散液を形成するべくモノマーを重合するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項6】
前記ステップ(b)で高分子電解質を溶解する水性溶液は、水及び硫酸を含む、請求項5に記載の粒子の分散液を調製するためのプロセス。
【請求項7】
前記ステップ(e)の後に、ドーパントを添加するステップ(f)をさらに含む、請求項5又は請求項6に記載の粒子の分散液を調製するためのプロセス。
【請求項8】
前記ドーパントは、硫酸及びパラトルエンスルホン酸(PTSA)からなる群から選択される、請求項7に記載の粒子の分散液を調製するためのプロセス。
【請求項9】
伸縮性のある支持体上にプリントするための、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の導電性ナノコンポジット粒子、又は請求項5~請求項8のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる粒子の使用。
【請求項10】
プリントされた伸縮性のある支持体であって、前記プリントは、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の少なくとも1つの粒子、又は請求項5~請求項8のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる少なくとも1つの粒子を含む、支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性のある導電性材料の技術分野に関し、特に、弾性を必要とするプリンテッドエレクトロニクスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
私たちの生活において電子装置の存在は絶えず増しており、この傾向は、モノのインターネット(loT、Internet of Things)及び次世代のあらゆる物事のインターネット(loE、Internet of Everything)の到来とともに今後数年間で指数関数的に増大すると予想される。
【0003】
IoEは、最新の技術的進歩、主にプリンテッドエレクトロニクスの世界で得られた進歩のおかげで開設することができる。プリンテッドエレクトロニクスは、特にシリカ上の従来のエレクトロニクスを補完するものとして、可撓性のコンポーネントの生産と、大きな表面上への生産を可能にする。従来の半導体技術で得られるデバイスでの主な違いは、それらの厚さ、重さ、頑健性、及びコストである。これらの特質は、新しい市場と製品の出現を可能にし、ポータブル電子装置又はスマートラベルなどの革新的な概念の発展に寄与している。この発展を持続できるようにするためには、新しい技術的手法で取り払うべき技術的障壁がいまだにある。特に、接続された衣類などの「ウェアラブル」のための、伸縮性及び可撓性のある基材への関心が今高まっている。
【0004】
今日、伸縮性のある電子装置に工業的に適用されているソリューションは、2つの手法、すなわち、1つは波形及び馬蹄形に描かれたトラックを使用する回路工学、もう1つは絶縁エラストマーマトリックスに組み込まれた導電性ナノ粒子、典型的には金属ナノ粒子のナノコンポジット又はカーボンナノチューブ、そして2つの手法の組み合わせによるものである。これらの2つの方法には顕著な性能の限界があり、これらの方法によって得られた物体の特性は機械的応力下ではほとんど保たれない。これらの材料の開発は、デバイスの製造の複雑さによってさらに制限される。第1の手法では、伸縮性のない無機材料、典型的には金属を、エラストマー基材が変形する場合に伸縮できる波状の幾何学的パターンにする。その実現可能性は実証されているが、製造の複雑さとデバイス上で集積回路が占めるスペースは顕著な制約をもたらす。第2の方法では、絶縁エラストマーマトリックスに導電性フィラーを包み込むことでナノコンポジットを得る。導電性材料として、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ、又は金属ナノ粒子などの材料が用いられる。使途の広さ及び多くの材料の選択肢があるにもかかわらず、パーコレーションに依存する導電率は、非常に電圧に敏感であり、デバイスの場合の小型化と繰返し変形下での安定性の障害となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表皮エレクトロニクス型の伸縮性のあるプリンテッドエレクトロニクスの用途のために近年行われた開発により、100%変形での、伸縮性のある導電性デバイスと湾曲面との密接な接触が可能となっている。これらのデバイスは、能動コンポーネントの剛性アイランドと伸縮性相互接続部との一体化に基づいている。しかし、変形下で導電性能を保持できる導電性材料の開発が依然として重要課題である。
【0006】
これに関連して、本質的に伸縮性のある導電性材料はまだほとんどない。このような材料は、プリント又はコーティングプロセスなどの単純な製造プロセスに利用できるであろう。しかしながら、このような材料の製造には問題が残っている。実際に、簡単な低価格での作製及び実装及び/又は変形下での特性の頑健性などの、克服するべき障害がまだいくつかある。
【0007】
溶液堆積することができ、且つ、プリントすることによりパターン形成することができる、本質的に伸縮性のある導電性材料がさらに望ましい。
【0008】
導電性ポリマーは、それらの可撓性と電気的及び機械的特性により優れた候補である。残念ながら、これまで、導電性ポリマーでは、高い導電率と高い伸縮性を同時に得ることはできなかった。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)ナトリウムは、溶液から堆積することができる高い導電率を呈する導電性ポリマーであるが、およそ5%の破断歪みを呈する。
【0009】
したがって、良好な導電特性を保持しながら、堆積された導電性ポリマーの可撓性を向上させるために、PEDOT:PSSのみを使用する代替的方策が開発されている。
【0010】
EP3221404特許は、特にPEDOTなどの導電性ポリマーと、アクリルアミドとアクリル酸のコポリマーなどのコーティングの可撓性を向上させるポリマーとを含む、導電性ポリマーコーティングを説明している。このコーティングは、可撓性表面に特に適することが示され、数回の伸長サイクル後でもコーティングの導電率を保持することができる。しかしながら、2つのポリマーは単純に混合されるため、このコーティングは、導電特性に有害な、相分離及び/又は拡散のリスクがある可能性がある。
【0011】
WO2007012736出願は、ポリn-ブチルアクリレート・コアと、ポリアニリン・シェルと、非イオン界面活性剤とを有する導電性粒子を説明している。これらの粒子は、粒子に導電特性をもたらす、エラストマーコアとシェルが組み合わされている。それにもかかわらず、WO2007012736出願は、そのような粒子の伸長時の挙動を説明しておらず、特に、伸長時の粒子が導電特性を保持するかどうかを説明していない。さらに、ポリアニリンは導電性ポリマーであるが、その導電率はPEDOT:PSSの導電率よりも顕著に低い。最後に、粒子合成プロセスはポリアニリンに固有のものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOTの誘導体、及びポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)からなる群から選択された導電性ポリマーを含むシェルと、非イオン界面活性剤とを含む、導電性ナノコンポジット粒子に関する。
【0013】
本発明はまた、粒子の分散液を調製するための方法であって、ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOTの誘導体、及びポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)からなる群から選択された導電性ポリマーを含むシェルと、非イオン界面活性剤とを含み、a)ラテックスの水性溶液を得るべく、非イオン界面活性剤及び分散媒中の重合触媒の存在下で、C1~C6アルキルアクリレートモノマー及び随意的にα,β-不飽和アミドモノマーを重合するステップと、b)高分子電解質を含む水性溶液を得るべく、導電性ポリマーを安定化させる高分子電解質を水性溶液に溶解するステップと、c)ステップ(b)で得られた高分子電解質を含む水性溶液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)モノマー、EDOTの誘導体、又は3-ヘキシルチオフェンを添加するステップと、d)ステップ(c)で得られた高分子電解質及びモノマーを含む溶液に、重合開始剤とステップ(a)で得られたラテックスを添加するステップと、e)粒子の分散液を形成するべくモノマーを重合するステップと、を含む方法に関する。
【0014】
本発明はまた、伸縮性のある支持体上にプリントを形成するための、本発明に係る導電性ナノコンポジット粒子の使用に関する。
【0015】
本発明は、最終的に、プリントは本発明に係る少なくとも1つの粒子を含む、プリントされた伸縮性のある支持体に関する。
【0016】
もちろん、本発明の異なる特徴、変形例、及び実施形態は、それらが互換性がないか又は相互に排他的でない限り、様々な組み合わせで相互に関連付けることができる。
【0017】
加えて、本発明の限定ではない実施形態を例示する図面を参照しながらなされる補足説明から本発明の他の様々な特徴が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】伸長の関数としての引張試験中のプリントされた熱可塑性ポリウレタン試験片の抵抗の推移を示すグラフである。
図2】120%伸長での引張/解放サイクル中の、プリントされた熱可塑性ポリウレタン試験片の抵抗(上部)と伸長(下部)の推移を示すグラフである。
図3】150%伸長での引張/解放サイクル中の、プリントされた熱可塑性ポリウレタン試験片の抵抗(上部)と伸長(下部)の推移を示すグラフである。
図4】伸長の関数としての引張試験中のプリントされたLycra試験片の抵抗の推移を示すグラフである。
図5】110%伸長の場合の時間の関数としての引張試験中のプリントされた伸縮性のあるヤーンの試験片の抵抗の推移を示すグラフである。
図6】125%伸長の場合の時間の関数としての引張試験中のプリントされた伸縮性のあるヤーンの試験片の抵抗の推移を示すグラフである。
図7】150%伸長の場合の時間の関数としての引張試験中のプリントされた伸縮性のあるヤーンの試験片の抵抗の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOTの誘導体、及びポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)からなる群から選択された導電性ポリマーを含むシェルと、非イオン界面活性剤と、を含む、導電性ナノコンポジット粒子に関する。
【0020】
「ナノコンポジット」という用語は、1マイクロメートル未満のサイズのコンポジット粒子を意味する。コアのサイズ(直径)は、一般に20nm~700nmの範囲内であり、シェルのサイズ(厚さ)は、一般に数nm~100nmの範囲内である。一実施形態では、粒子コア直径は200nm未満である。より大きい粒子に比べて、コア直径が200nm未満の粒子は、加工(フィルムの形態での堆積又はより容易な含浸)、材料の節約(従来技術と同様のパーコレーション速度を達成するために必要な導電性ポリマーが少ない)、及び導電率の点で利点を有する。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、より小さな導電性粒子の使用は、フィルム内の導電性ポリマーのより緊密なネットワークの形成又は含浸による堆積を可能にし、導電を促進すると思われる。
【0021】
粒子のコア及び/又はシェルのサイズは、当該技術分野では公知の任意の適切な技術によって測定することができる。これは、特に動的光散乱によって測定することができる。
【0022】
「ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)」は、EDOT(3,4-エチレンジオキシチオフェン)モノマーの重合によって得られたポリマーを意味する。PEDOTの誘導体とは、ヒドロキシメチル-EDOT、ビニル-EDOT、EDOTのアリルエーテル、EDOT-COOH、EDOT-MeOH;EDOT-シラン、EDOT-アクリレート、EDOT-スルホネート、EDOT-アミン、及びEDOT-アミド、又はこのようなモノマーの混合物からなる群から選択されたEDOTの誘導体のモノマーの重合によって得られたポリマーを意味する。「ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)」とは、3-ヘキシルチオフェンモノマーの重合によって得られたポリマーを意味する。好ましい実施形態において、導電性ポリマーは、PEDOT又はその誘導体のうちの1つであり、特にPEDOTである。
【0023】
「導電性ポリマーを含むシェル」とは、ポリアルキルアクリレートのコアの表面に物理的に結合した(すなわち、吸着した)及び/又は化学的に結合した(すなわちグラフトした)導電性ポリマーの連続した又は不連続の堆積物を意味する。好ましくは、この堆積物は不連続である。好ましくは、シェルはコアの表面上に吸着される。有利なことに、導電性ポリマー、特にPEDOTは、少なくとも1つの安定剤及び/又は少なくとも1つのドーパントと混合することができる。特に、PEDOTは、これを安定化させるポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSS)などの高分子電解質との混合物の形態で存在することができる。このPEDOT:PSS混合物は、特に本質的に導電性ポリマーであるため、当業者によく知られている。好ましくは、PEDOT:PSS混合物におけるEDOT:PSS繰り返し単位のモル比は1:1である。
【0024】
「ポリアルキルアクリレートホモポリマー」は、いくつかの同一のアルキルアクリレートモノマー単位の連結から得られるポリマーを意味する。
【0025】
本明細書での意味の範囲内で、「ポリアルキルアクリレート」という用語は、ポリアルキルメタクリレートを包含する。ポリC1~C6アルキルアクリレートの例は、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ-n-プロピル又は-イソプロピルアクリレート、ポリ-n-プロピル又は-イソプロピルメタクリレート、ポリ-n-、sec-、又はtert-ブチルアクリレート、及びポリ-n-、sec-、又はtert-ブチルメタクリレートを含む。
【0026】
好ましくは、ポリC1~C6アルキルアクリレートは、ポリ-n-ブチルアクリレートである。これは、有利なことに、-54℃のガラス転移温度を有し、これにより、周囲温度でフィルム形成特性が得られる。
【0027】
本発明の変形例によれば、ポリアルキルアクリレートは架橋される。特に適切な架橋剤の例は、特にジアクリレート化合物、好ましくは1,6ヘキサンジオールジアクリレートである。後者は、特に、商標名SR238(R)(Cray Valley)の下で入手可能である。ポリアルキルアクリレートの架橋は、実際には、導電性コンポジットの機械的特性を変えること、特にその弾性を低減することを可能にする。架橋剤は、特に、コモノマーが一般に1官能性のときに、少なくとも2に等しい官能性を有するという点で、コモノマーとは異なる。
【0028】
本発明の別の変形例によれば、粒子のコアを構成するポリアルキルアクリレート又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーは、架橋されない又は少なくとも粒子のコアを硬化させるのに十分なほど架橋されない。架橋が存在しないことで、ポリマー鎖の移動性及びパーコレーションが維持され、一方、粒子によって形成される2つの相(コア及びシェル)は、入れ子になった2つの連続した相の形態で現れる。コアの架橋が存在しないことは、特に、本発明に係る粒子のより大きな伸縮性に寄与する。
【0029】
本発明の好ましい変形例によれば、コアは、C1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなる。
【0030】
好ましくは、ポリアルキルアクリレート/導電性ポリマー、特にPEDOTの重量比は、45/55から98/2で変化し、好ましくは50/50から95/5の間である。特に、ポリアルキルアクリレート/導電性ポリマー、特にPEDOTの重量比は、70/30から95/5で変化し、特におよそ75/25に等しく、特に75/25に等しい。
【0031】
本発明に係る粒子は、界面活性剤の存在により安定化されたポリアルキルアクリレートの分散液中でのPEDOTの重合によって得ることができる。界面活性剤は、非イオン又はイオン、特に陽イオンとすることができる。イオン界面活性剤は重合反応に、特にPEDOTの重合中に望ましくない干渉をすることがあるので、非イオンが好ましい。
【0032】
「非イオン界面活性剤」とは、動作条件下で帯電しない界面活性剤を意味する。非イオン界面活性剤は、ポリアルキルアクリレート粒子の表面に物理的に吸着する(すなわち、物理的に結合する)か又はポリアルキルアクリレートに組み込まれる(すなわち、化学的に結合する)ことができる。好ましくは、非イオン界面活性剤は、ポリアルキルアクリレートに物理的に結合される。これは、非イオン界面活性剤の存在下でポリアルキルアクリレートの重合を行うことによって得ることができる。
【0033】
非イオン界面活性剤は、特にアルキルフェノールアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、アルキルアルコキシレート、アミンアルコキシレート、アルキルアミンオキシドを含む多様な化合物から、特に、アルキルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレート、アルキルエトキシレート、又はEO/PO(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロックコポリマー、アミンエトキシレート、又はポリエトキシレートから選択することができる。
【0034】
非イオン界面活性剤は、好ましくは、端点を含む12から20の間、特に17から19の間の親水性/親油性バランス(HLB)を有する。特に、化学式IのBrij(商標)S100という名称で知られる界面活性剤であり得る:
【化1】
【0035】
使用する非イオン界面活性剤の量は重要ではなく、大幅に変えることができる。したがって、小さな粒子の分散液は、一般に、大きな粒子の分散液よりも安定化させるのに大量の界面活性剤を必要とする。しかしながら、この量は、ポリアルキルアクリレート粒子を安定化させるのに十分なものでなければならず、且つ、粒子の機械的特性及び導電特性を変えるほど大きすぎてはならない。本発明に係る粒子中に存在する非イオン界面活性剤は、一般に、重量の1%~20%、より好ましくは重量の1~10%であり、重量による値は、シェルとコアの総乾燥重量に対して表される。
【0036】
本発明の特に好ましい変形例によれば、粒子はまた、コンポジットの導電率を向上させることができる化学的機能を有する第2の非イオン界面活性剤をさらに含む。例として、化学式IIの化合物などの少なくとも1つのアミド官能基を有する非イオン界面活性剤が挙げられる:
【化2】
【0037】
化学式IIにおいて、Alkは、C1~C20、好ましくはC1~C15のアルキル基を表し、mは、1~100の整数を表す。好ましい変形例によれば、化学式IIに対応する化合物が用いられ、ここで、AlkはC11アルキル基であり、mは、平均数6を表す。これは、Ninol(登録商標)(Stepan)という名称で市販されている。したがって、理論に限定されることを望まないが、コアの表面に存在するアミド官能基は、コア粒子のより良好なカバレッジを得ることを可能にし、導電性ポリマー、特にPEDOTとの水素結合の確立も可能にすることが実証されている。したがって、これらの特性により、導電率を向上させることができる。
【0038】
好ましくは、この第2の非イオン界面活性剤は、シェルとコアの乾燥重量に対して重量の1%~20%である。
【0039】
本発明に従って用いられる粒子は、代替的に、導電性ポリマーと第2のイオン界面活性剤との間に電荷不適合性を生じないように、第2のイオン界面活性剤、特に第2の陽イオン界面活性剤を含み得る。例えば、陽イオン界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウムのファミリー、特にC4~C20アルキルトリメチルアンモニウムの界面活性剤から選択することができる。特に、これはドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)であり得る。
【0040】
好ましくは、この第2のイオン界面活性剤は、シェルとコアの乾燥重量に対して重量の1%~20%である。
【0041】
粒子が第1の非イオン界面活性剤と第2の非イオン又はイオン界面活性剤を含む場合、第1の非イオン界面活性剤と第2の非イオン又はイオン界面活性剤との重量比は、好ましくは、端点を含む50/50から30/70の間である。
【0042】
本発明はまた、粒子の分散液を調製するための方法であって、ポリC1~C6アルキルアクリレートのホモポリマー又はC1~C6アルキルアクリレートとα,β-不飽和アミドコモノマーのコポリマーからなるコアと、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOTの誘導体、及びポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)からなる群から選択された導電性ポリマーを含むシェルと、非イオン界面活性剤と、を含み、a)ラテックスの水性溶液を得るべく、非イオン界面活性剤及び分散媒中の重合触媒の存在下で、C1~C6アルキルアクリレートモノマー及び随意的にα,β-不飽和アミドモノマーを重合するステップと、b)高分子電解質を含む水性溶液を得るべく、導電性ポリマーを安定化させる高分子電解質、特にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を水性溶液に溶解するステップと、c)ステップ(b)で得られた高分子電解質を含む水性溶液に、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)モノマー、EDOTの誘導体、又は3-ヘキシルチオフェンを添加するステップと、d)ステップ(c)で得られた高分子電解質及びモノマーを含む溶液に、重合開始剤とステップ(a)で得られたラテックスを添加するステップと、e)粒子の分散液を形成するべくモノマーを重合するステップとを含む、方法に関する。
【0043】
アルキルアクリレートモノマーを重合するステップ(a)は、当業者が利用可能な任意の適切な技術によって実施することができる。特に、このステップは、WO2007012736出願に記載の方法によって実施することができる。
【0044】
電解質を水性溶液に溶解するステップ(b)は、当業者が利用可能な任意の適切な技術によって実施することができる。水性溶液中の高分子電解質の濃度は、高分子電解質の性質及びその後に添加されるEDOTモノマー、EDOT誘導体、又は3-ヘキシルチオフェンの量に応じて当業者が適合させることができる。例えば、高分子電解質の濃度は、高分子電解質:EDOT、EDOT誘導体、又は3-ヘキシルチオフェンのモノマーの繰り返し単位のモル比が1:2から2:1の間、好ましくはほぼ1:1に等しいようなものであり得る。
【0045】
好ましくは、水性溶液中の導電性ポリマーを安定化させる高分子電解質は、導電性ポリマーがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)であるとき、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSS)である。
【0046】
一実施形態では、ステップ(b)で高分子電解質を溶解する水性溶液は、水及び硫酸を含む。予想外に、このプロセスでの硫酸の存在は、同時に、モノマー、特にEDOTモノマーを水に混和させ、得られたポリマー(ドーパント)の導電率を高めることができる。実際、硫酸は、EDOTの溶解度パラメータに近い溶解度パラメータを有し、これはおそらく水へのEDOTモノマー又はEDOT誘導体の混和に有利に働く。水中の硫酸:EDOTの重量比は、好ましくは2:1から1:2の間であり、特に約1:1である。
【0047】
好ましくは、ステップ(b)で得られた高分子電解質を含む水性溶液は、エタノール、メタノール、又はクロロホルムのいずれも含まない。好ましくは、ステップ(b)で得られた高分子電解質を含む水性溶液は、唯一の溶媒として水、又は随意的に、水とジメチルスルホキシド(DMSO)の混合物を含む。
【0048】
モノマーを添加するステップ(c)は、溶液にモノマーを単に添加することによって実施することができる。代替的に、モノマーは、溶媒、例えば、水、DMSO、又は水とDMSOの混合物に添加することができる。添加は、攪拌しながら行うことができる。
【0049】
重合開始剤とラテックスを添加するステップ(d)は、開始剤とラテックスを同時に添加することによって実施することができる。代替的に、最初に重合開始剤を添加し、次いで、ラテックスを添加することができる。開始剤は、当業者に公知の従来の重合開始剤から選択することができる。これらは、過硫酸アンモニウム(APS)を含み得る。添加は、攪拌しながら行うことができる。
【0050】
モノマーの重合のステップ(e)は、前記モノマーを重合するための当業者に公知の従来の条件下で実施することができる。
【0051】
一実施形態では、ステップ(e)でのモノマー、特にEDOTモノマーの重合は、共溶媒の存在下で実施される。好ましくは、共溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。予想外に、試験した他の共溶媒とは異なり、DMSOは懸濁液を不安定にしない。DMSOは、特にステップ(c)中に添加することができ、モノマーの添加は、DMSOを含む溶媒へのモノマー溶液の添加の形態で行われる。DMSOは、水と混和性があり、モノマー、特にEDOTモノマーを可溶化することができる。
【0052】
好ましくは、ステップ(e)でのモノマーの重合は、唯一の溶媒として水、又は水とジメチルスルホキシドの混合物を含む、水性媒体中で実施される。特に、ステップ(e)が実施される水性媒体は、メタノール、エタノール、又はクロロホルムを含まない。
【0053】
一実施形態では、本発明に係る方法は、ステップ(e)の後に、ドーパントを添加するステップ(f)をさらに含む。導電性ポリマー、又は導電性ポリマーとPEDOT:PSS混合物などの導電性ポリマーを安定化させる高分子電解質との混合物の導電率を増加させるのに適した任意のドーパントを用いることができる。例えば、ドーパントは、硫酸及びパラトルエンスルホン酸(PTSA)からなる群から選択することができる。
【0054】
本発明に係るプロセスは、水性分散媒体中で実施されるので、粒子の表面上でモノマーを重合するステップ(e)を実施する前に粒子のコアを架橋することは有用ではない。実際、有機共溶媒の存在下でシェルを合成する場合、粒子のコアを溶媒に溶解しないように架橋する必要がある。これに対して、本発明に係るプロセスでは、架橋する必要はない。粒子のコアの架橋が存在しないことで、ポリマー鎖の移動性を維持することができ、2つの相は互いに浸透することができ、これは粒子のより良好な伸縮性及びより良好な導電率に寄与する。
【0055】
本発明はまた、伸縮性のある支持体上にプリントを形成するための本発明に係る又は本発明に係るプロセスによって得られる導電性ナノコンポジット粒子の使用に関する。
【0056】
粒子は、分散液、特に水性媒体、特に水での分散液の形態で用いることができる。粒子分散液の固形分は、一般に、分散液の重量の1から60%の間、好ましくは重量の10~40%である。
【0057】
「伸縮性のある支持体」という用語は、破断せずに少なくとも1つの方向に少なくとも120%の伸長に耐えることができ、本発明に係るナノコンポジット粒子、又はこのような粒子から形成されたフィルムをプリントすることができる材料を意味する。好ましくは、伸縮性のある材料は、少なくとも1つの方向に少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、又は少なくとも500%の伸長に耐えることができる。いくつかの実施形態では、伸縮性のある支持体は、同一平面の第2の方向よりも第1の方向に高度な伸縮性を有し得る。
【0058】
本発明に従って用いることができる伸縮性のある支持体の例としては、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、又はポリエチレンなどの熱可塑性ポリマーが挙げられる。エラストマーファイバ及びこのようなファイバを含むファブリックも挙げられる。エラストマーファイバは、少なくとも400%伸長することができ、その後、元の形状に戻ることができることが知られている。エラストマーファイバの例としては、エラスタンファイバ(例えばLycra)、天然又は合成ゴムファイバ、オレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、又はそれらの組み合わせ、特に、エラスタンとポリエステルを含む弾性糸が挙げられる。上記の支持体の例のうちの少なくとも1つを含む伸縮性のある支持体は、これらから構成されていなくても、本発明に従って用いることができる。
【0059】
一実施形態では、プリントされた伸縮性のある支持体は、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレン、エラスタンファイバ、天然又は合成ゴムファイバ、オレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0060】
支持体上にナノコンポジットを「印刷する」とは、例えばナノコンポジットのフィルムを堆積することによって、或いは、ナノコンポジット粒子、又は溶媒中の分散ナノコンポジット粒子、好ましくはそれらの合成媒体中のナノコンポジット粒子を基材のファイバに含浸することによって、ナノコンポジットを基材に堆積することを意味する。堆積は、当業者に公知のすべての適切な技術によって実施することができる。フィルムの堆積については、特に、液滴の堆積(ドロップキャスト)、スクリーンプリンティング、又は「ドクターブレード」型の器具を用いた堆積が挙げられる。
【0061】
一実施形態では、プリンティングは、ナノコンポジット粒子をフィルムの形態で支持体上に堆積することによって、或いは、ナノコンポジット粒子と少なくとも溶媒を含む溶液又は懸濁液を支持体のファイバのすべて又は一部に含浸することによって行われる。
【0062】
出願人は、伸縮性のある支持体上にプリントを形成するために上記の粒子又はそれらを含有する分散液を使用することで、予想外に、伸縮性と導電性の両方がある、すなわち、伸縮性のある支持体が特に200%伸長まで伸長するときでもその導電特性が保持されるプリントが得られることを実証した。加えて、導電特性は、伸縮性のある支持体の非伸長状態への回復時、並びに、伸長/非伸長状態への回復の数サイクル後でも維持される。
【0063】
本発明は、最終的に、プリントは本発明に係る又は本発明に係るプロセスによって得られる少なくとも1つの粒子を含む、プリントされた伸縮性のある支持体に関する。
【0064】
本発明に係るプリントされた伸縮性のある支持体は、明らかに特徴のそれぞれを有し、伸縮性のある支持体上にプリントを形成するためのナノコンポジット粒子の使用に関するセクションで説明した好ましい実施形態をとることができる。
【0065】
本発明に係るプリントされた伸縮性のある支持体は、伸縮性のある導電性材料などとして用いることができる。場合によっては、伸縮性のある電極の形成にも用いることができる。
【0066】
本発明に係るプリントされた導電性基材は、ウェアラブル技術(英語で「ウェアラブル」という用語で表される、高度なコンピュータ及び電子要素を備える衣類又は装身具)、プリンテッドエレクトロニクスだけでなく、住宅又は造園用コーティングなどの多様な分野で用いることができる。例えば、存在検出器及び歩行センサなどのデバイスを本発明に従って得ることができるであろう。
【0067】
本発明に係るプリントされた伸縮性のある支持体は、特にLycraであるとき、本発明と同じコア及びWO2007012736出願に記載のポリアニリン・シェルを有するコア/シェル粒子を含むコンポジットでプリントされた同様の支持体で観察されるものよりも著しく大きい、特に少なくとも10倍大きい、動き又は圧力に対する感度を有する。したがって、本発明に係るプリントされた伸縮性のある支持体は、存在検出器及び歩行センサなどのデバイスを形成するのに特に適している。
【0068】
本発明の最終目的は、本発明に係るプリントされた伸縮性のある支持体を備える、動き又は圧力に敏感な検出デバイス、特に、存在検出器、動きセンサ、又は歩行センサデバイスである。
【0069】
本発明では、特に明記しない限り、「約」値v1という用語は、0.9×v1から1.1×v1の間の区間内の値、つまりv1±10%、好ましくはv1±5%、特にv1±1%を表す。
【0070】
本発明では、特に明記しない限り、値の区間は、それらの端点を含まない開区間を表す。したがって、「より大きい」及び「より小さい」という用語は、狭義の不等式を指す。
【0071】
本発明では、特に明記しない限り、動詞「備える、含む(comprise)」及びその変形は、他の構成要素又はステップの存在を排除しないものとして理解されるべきである。特定の実施形態では、これらの用語は、「本質的にからなる」又は「からなる」と解釈することができる。
【0072】
もちろん、本発明の異なる特徴、変形例、及び実施形態は、それらが互換性がないか又は相互に排他的でない限り、様々な組み合わせで相互に関連付けることができる。
【0073】
もちろん、付属の請求項の範囲内で本発明に他の様々な修正を行うことができる。
【0074】
以下に提供する実施例は、その範囲を限定することなく本発明を説明することを意図している。
【0075】
実施例
実施例1:本発明に係るナノ粒子の合成
1.1 コアの合成
最初に、界面活性剤を水に導入し、完全に溶解するまで攪拌した。溶解後に、アクリルブチレートモノマーを攪拌しながら添加し、反応系を油浴又はジャケットを使用して70℃で加熱した。エマルジョンが安定化したときに過硫酸アンモニウム開始剤を添加した。反応時間は4時間であった。
【0076】
合成は水中で行う。以下の表1は、界面活性剤の性質(TA=界面活性剤)、界面活性剤の量(TA m%=界面活性剤の重量パーセンテージ、TA1/TA2=使用した2つの界面活性剤の重量比)、固形分、及び得られた粒子(ラテックス)の直径に関して用いた種々の条件をまとめたものである。これらの粒子は、本発明に係る導電性コンポジット粒子のコアを表す。
【表1】
【0077】
表1のアッセイ1の粒子は、WO2007012736出願の条件に従って得られた。
【0078】
1.2 ポストドープによるシェルの合成
この合成は、上記の表1のアッセイ1に係るNP40及びNinol L5で安定化させた直径260nmのラテックス粒子(コア)から実施した。
【0079】
PSSを水に溶解し、次いで、得られた懸濁液にEDOTモノマーを攪拌しながら添加した。EDOT:PSSの繰り返し単位のモル比は1:1である。最後に、上記の表1のアッセイ1に従って得られたポリアルキルブチレートラテックスと、過硫酸アンモニウム開始剤を添加した。ポリアルキルブチレートラテックス:EDOTの重量比は70:30である。0.001S/cm未満の導電率を有する安定した分散液が得られる。
【0080】
得られた粒子に10重量%の硫酸又はパラトルエンスルホン酸を添加することによってポストドープを実施する。得られる導電率は、硫酸では8S/cmであり、パラトルエンスルホン酸では2S/cmである。
【0081】
1.3 硫酸の存在下でのバルク合成
最初にPSSを水/硫酸混合物に溶解し、次いで、この溶液にEDOTを添加する。安定化後に、表1の試験4に係るDTAB及びBrijS100で安定化させた直径120nmのポリアルキルブチレートラテックスを攪拌しながら添加する。最後に、反応系に過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を導入し、室温で3日間、重合し続ける。用いるEDOT:PSS:硫酸のモル比は1:1:1である。4つの異なるラテックスポリアルキルブチレート:EDOTの比70:30、75:25、80:20、及び85:15で合成を実施した。導電率は、それぞれ、9S/cm、20S/cm、3S/cm、及び0.5S/cmである。
【0082】
1.4 DMSO共溶媒の存在下でのシェルの合成
この合成は、表1の試験4に係るDTAB及びBrijS100で安定化させた直径120nmのポリアルキルブチレートのラテックスに添加する前に、EDOTモノマーをDMSOに溶解することを追加して、パラグラフ1.3で前述したように実施する。DMSOは、水の総量の5%に等しい量で添加される。ポリアルキルブチレートラテックス:EDOTのモル比は75:25である。この試験で得られる導電率は12S/cmである。
【0083】
実施例2:コンポジットフィルム及びコンポジットが堆積される基材の伸長に対する抵抗の測定
2.1 熱可塑性ポリウレタン基材への堆積
伸長による抵抗の変化を評価するために、熱可塑性ポリウレタン(TPU)で最初の一連の試験を実施した。75:25のPBuA:PEDOT比、表1のアッセイ4に係るDTAB及びBrijS100により安定化されたおよそ120nmのコア直径、及び20S/cmの導電率を有する本発明に係る粒子コンポジットフィルムをドロップキャスト法によりポリウレタン基材上に堆積させた。伸長時の抵抗を測定するために、試験片をVersatest(商標)電動ベンチの2つのジョーの間に配置する。下側のジョーは固定され、上側のジョーは可動である。ケースレーで抵抗の測定を行っている間、ジョーの内側でフィルムと接触している金の針により電気的接触がもたらされる。牽引アームとケースレーは、伸長の制御を可能にする収集ソフトウェアに接続される。したがって、抵抗を測定しながら引張サイクルを実行することができる。
【0084】
伸長試験プロトコル
この試験は、伸長した状態での抵抗の値を求めることで構成される。2つのフェーズの伸長を検討する。1つは牽引アームが動いているとき(50mm/分)の伸長中であり、もう1つは試験片を伸長しきったときである。サンプルの抵抗は、試験片の長さ(電極間の距離)とその断面(幅と厚さの積)の比に比例する。伸長時に、長さは増加し、断面は縮小し、これは抵抗値の増加につながる。次いで、伸長してから緩和し、これは抵抗値の減少につながる。
【0085】
コンポジットフィルムが堆積されるTPU基材の最初の200%伸長では、抵抗値は4倍に増加した。図1は、コンポジットが堆積される基材の伸長に応じた抵抗の推移を示す。次いで、120及び150%伸長で伸長サイクルを実施した。これらの2つの試験での時間の経過に伴う抵抗及び伸長の推移を示すグラフをそれぞれ図2及び図3に示す。伸長中に抵抗の増加が観察され、緩和中に抵抗の減少が観察される。試験片に適用される伸長に関係なく、電気的連続性が保たれ、基材が緩和するとき、抵抗の値は最初の値に戻る。
【0086】
伸長/緩和サイクル中に抵抗を測定できることで、伸長時に材料が導電率を保持していることが確認される。実際、そうでなかった場合、電気的連続性が壊れて、抵抗を測定することができなくなる。したがって、基材上に堆積されたコンポジットフィルムは伸縮性があり、劣化を起こすことはなく、その導電率は数回の伸長/緩和サイクル後でも維持される。
【0087】
2.2 Lycra基材への堆積
75:25のPBuA:PEDOT比、表1のアッセイ4に係るDTAB及びBrijS100により安定化されたおよそ120nmのコア直径、及び20S/cmの導電率を有する本発明に係る粒子コンポジットを、ファイバの良好な含浸を可能にする伸長されたLycra基材上に堆積させた。材料が動かされるとき、抵抗の値は非常に急速に変化する。それにもかかわらず、安定化後に抵抗を測定することができる。図4に示すように、抵抗値は、伸長と共に増加する。このコンポジット/Lycraの組み合わせの動きに対する高い感度により、タッチセンサ又は存在センサなどの高い感度から恩恵を受けるすべての用途の良好な候補となる。伸長の緩和後に、抵抗はその最初の値に戻る。
【0088】
2.3 弾性糸への堆積
上記の導電性コンポジットを、60%スパンデックス及び40%ポリエステルで構成された弾性ヤーンにコーティングした。これを行うために、そして可能な限りすべての空気とワイヤの境界面に湿潤するために、ワイヤを最初に最大限に伸長し、次いで、導電性コンポジットで被覆し、乾燥中も伸長した状態に保つ。乾燥後に、熱可塑性ポリウレタンフィルム又はテキスタイルで実施した試験と同様の試験、すなわち、伸長に応じた抵抗の監視を行った。観察された挙動は前に観察された挙動と同じであり、抵抗は、伸長中に増加し、緩和中に減少する。したがって、サイクルを異なる伸長率で実行した。図5図7は、伸長のサイクルによって試験片が損傷したり劣化したりすることはなく、伸長及び緩和中に導電率が保持されることを示す。結果は、110%(図5)、125%(図6)、及び150%(図7)の伸長で得られた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】