(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】気泡検知機能付き無針注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/30 20060101AFI20221102BHJP
A61M 5/36 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61M5/30
A61M5/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514496
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 US2020049517
(87)【国際公開番号】W WO2021046428
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518155638
【氏名又は名称】ポータル インストルメンツ, インク.
【氏名又は名称原語表記】PORTAL INSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】バーキン, タイラー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ペルティエ, マーク
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066FF02
4C066HH03
4C066QQ35
4C066QQ58
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
【要約】
無針注射器は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたカートリッジと、チャンバに摺動可能に結合されると共にチャンバ内に配置されたプランジャーと、プランジャーに作動的に結合されたモーターであって、チャンバ内でプランジャーを作動させるよう動作可能なモーターと、モーターに作動的に結合されたコントローラとを含む。コントローラは、第1送達プロファイル、第2送達プロファイル、および第3送達プロファイルのいずれかに従ってプランジャーを選択的に動作させるように動作可能である。コントローラは、プランジャーによるチャンバ内の気体の圧縮に応答して、例えば、モーターに供給される測定電流のスパイクが検出された時点で、第1送達プロファイルから第2送達プロファイルに移行できる。コントローラは、測定電流とプランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して第2送達プロファイルから第3送達プロファイルに移行することができる。無針注射器を用いて注入物を送達する方法が提供される。無針注射器を用いて注入物の無針注射を容易にする方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無針注射器であって:
ハウジングと;
前記ハウジング内に配置されたカートリッジであって、出口ポートと、一定の体積の注入物を保持するためのチャンバを含むカートリッジと;
前記チャンバと摺動可能に結合されると共に前記チャンバ内に配置されたプランジャーであって、前記チャンバ内で摺動させたときに前記出口ポートを介して前記一定の体積の注入物を排出するように配置されたプランジャーと;
前記プランジャーに作動的に結合されたモーターであって、前記チャンバ内で前記プランジャーを作動させるよう動作可能なモーターと;
前記モーターに作動的に結合されたコントローラとを含み、前記コントローラは、第1送達プロファイル、第2送達プロファイル、および第3送達プロファイルのいずれかに従って前記プランジャーを選択的に動作させるように動作可能であり、前記コントローラは、前記プランジャーにより前記チャンバ内の気体の圧縮と同時に、前記モーターに供給される測定電流のスパイクを検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行するよう動作可能であり、前記コントローラは、前記測定電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行するようさらに動作可能である、無針注射器。
【請求項2】
前記第1送達プロファイルの動作中の前記プランジャーの平均速度は、前記第2送達プロファイルの動作中の前記プランジャーの平均速度より大きい、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項3】
前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターに供給される駆動電流に基づいて検出される、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項4】
前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターのロータリーエンコーダを用いて測定された前記モーターの位置に基づいて検出される、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項5】
前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターに供給される駆動電流と前記モーターのロータリーエンコーダを用いて測定される前記モーターの位置との比較に基づいて、前記第1送達プロファイルの間に前記モーターの速度を維持するために必要な力の増加に基づいて検出される、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項6】
前記注入物は、注入可能な医薬製剤または栄養補助食品製剤からなる、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項7】
前記注入可能な医薬製剤は高粘度の生物学的製剤を含む、請求項6に記載の無針注射器。
【請求項8】
前記第2送達プロファイルのプランジャー速度が、前記注入物が透過性バリアを貫通するのに十分な注入物速度を発生させる、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項9】
前記透過性バリアは、被験者の皮膚を含む、請求項8に記載の無針注射器。
【請求項10】
前記注入物速度は約150 m/sないし約250 m/sである、請求項8に記載の無針注射器。
【請求項11】
前記第1送達プロファイルは、前記プランジャーを約300 m/sないし約500 m/sの速度で動作させる、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項12】
前記第2送達プロファイルは、前記プランジャーを約60 m/sないし約150 m/sの速度で動作させる、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項13】
前記第3送達プロファイルは、前記プランジャーを約80 m/sないし約120 m/sの速度で動作させる、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項14】
無針注射器であって:
出口ポートを有するカートリッジ内の流体および気体を加圧するように配置されたプランジャーと;
前記プランジャーに作動的に結合されたモーターであって、前記プランジャーを前記カートリッジの軸に沿って直線運動で作動させ、前記カートリッジから前記流体を送出するよう動作可能な前記モーターと;
前記モーターに作動的に結合されたコントローラとを含み、前記コントローラは、注射開始信号に応答して、前記カートリッジ内の前記気体を圧縮するために前記プランジャーを第1送達プロファイルに従って動作させ、所定の閾値を超える前記カートリッジ内の前記気体の圧縮を検出したことに応答して前記プランジャーを第2送達プロファイルに従って動作させるように動作可能である、無針注射器。
【請求項15】
前記所定の閾値を超える前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、モデルによって予測されるフリーランニング駆動電流と前記モーターに供給される前記測定電流との間のモーター電流のずれを検出することを含む、請求項14に記載の無針注射器。
【請求項16】
前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、前記プランジャーの速度を前記第1送達プロファイル内に維持するための所定の閾値を超えるモーター電流の増加の検出を含む、請求項14に記載の無針注射器。
【請求項17】
前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、所定の閾値未満への前記プランジャーの速度の減少の検出を含む、請求項14に記載の無針注射器。
【請求項18】
前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、前記プランジャーの速度の減少および前記モーターへの駆動電流の増加を同時に検出することを含む、請求項14に記載の無針注射器。
【請求項19】
前記コントローラは、前記モーターに作動的に結合されたエンコーダからのフィードバックに応答して前記プランジャーを作動させる、請求項14に記載の無針注射器。
【請求項20】
前記第1送達プロファイルは、前記第2送達プロファイルの第2目標速度よりも大きい第1目標速度を有する、請求項14に記載の無針注射器。
【請求項21】
前記第2プロファイルは、穿刺位相と送達位相とを含む二位相性プロファイルである、請求項20に記載の無針注射器。
【請求項22】
前記穿刺位相でのプランジャー速度は時間の関数として減少する、請求項14に記載の無針注射器。
【請求項23】
無針注射器を用いて注入物を送達する方法であって:
無針注射器を提供する段階であって、前記無針注射器は、チャンバを保持するためのカートリッジを有するハウジングと、前記チャンバから注入物を送出するよう構成かつ配置されたプランジャーと、前記プランジャーに作動的に結合されたモーターとを含む、提供する段階と;
前記無針注射器を用いて注射を開始することに応答して、前記無針注射器に:
第1送達プロファイルに従って前記プランジャーを動作させ;
前記第1送達プロファイルの間に前記モーターに供給される電流を監視させ;
前記モーターに供給される前記電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、前記プランジャーによる前記チャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行させ;
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させ;
前記測定電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行させ;
所定量の前記注入物が前記出口ポートを介して前記チャンバから送達されるまで、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルに従って動作させる段階とを含む、方法。
【請求項24】
前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルへの移行は、前記気体の圧縮と同時に、前記モーターに供給される測定電流のスパイクを検出した時点で、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルへの移行は、前記モーターに供給される前記電流を0Aないし約10Aの範囲内まで減少させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることは、前記プランジャーに及ぼされる復元力に打ち勝って、前記注入物を前記透過性バリアを介して送達するのに十分な速度で前記プランジャーを動作させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることは、前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮を維持しながら前記プランジャーを動作させることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることにより、前記注入物の速度が透過性バリアを貫通するのに十分となる、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記透過性バリアは、被験者の皮膚を含む、請求項28に記載の無針注射器。
【請求項30】
前記プランジャーを前記第3送達プロファイルで動作させることは、前記注入物が送達される際に前記プランジャーの前記速度を調節することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記プランジャーを前記第3送達プロファイルで動作させることは、前記注入物が送達される際に前記プランジャーの前記速度を減少させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
注入物の無針注射を容易にする方法であって:
プランジャーおよびコントローラに作動的に結合されたモーターを含む無針注射器を提供する段階を含み、前記コントローラは:
第1送達プロファイルで前記プランジャーを動作させ;
前記第1送達プロファイルの間に前記モーターに供給される電流を監視し;
前記モーターに供給される前記電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、前記プランジャーによる前記チャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行し;
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルで動作させ;
前記測定電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行し;
所定量の前記注入物が前記出口ポートを介して前記チャンバから送達されるまで、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルに従って動作させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月5日に出願された「気泡検知機能付き無針注射器」と題する米国仮特許出願第62/896395号に対する優先権を合衆国法典第35巻第119条(e)に基づいて主張し、その開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
本開示は、無針経皮注射装置に関するものである。 現代医学の分野では、患者の血流に皮膚を介して薬剤がしばしば送り込まれる。従来、これは、注射のため針を目標領域に患者の皮膚を介して挿入することによって達成される。しかし、注射針の使用は、患者の恐怖や不快感、使用済み注射針の取り扱いに関する安全上の問題など、大きな欠点が存在する。
【0003】
針を使用する注射器に代わるものとして、無針経皮注射装置が開発されている。これらの装置は、典型的には、注入物(injectate)の高圧で細い噴流を用いて患者の皮膚を貫通させるので、患者の皮膚に針を刺す必要を無くすことができる。しかし、無針経皮注射装置にはなお改良の必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
無針注射器は、第1送達プロファイルによるプランジャーの動作中に注入物のカートリッジ内の一定体積の気体の圧縮を監視する。前記一定体積の気体が十分に圧縮されると(前記無針注射器のモーターに供給される測定電流のスパイクによって測定される)、前記無針注射器の動作は、第2送達プロファイルに従った動作に移行する。前記第2送達プロファイルに従った動作は、透過性バリアを貫通するのに十分な注入剤速度を発生させる。前記注入物が前記透過性バリアを貫通して、定常状態条件に達すると、前記無針注射器の動作は、前記注入物を被験者に送達するための第3送達プロファイルに従って動作するよう移行する。こうした方法で注入物の送達前に気泡の圧縮を検出することで、目標注射プロファイルをより正確に再現するよう注入物の流れを制御することができる。
【0005】
一態様によれば、無針注射器が提供される。前記無針注射器は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置されたカートリッジと、前記チャンバに摺動可能に結合されると共に前記チャンバ内に配置されたプランジャーと、
前記プランジャーに作動的に結合されたモーターであって、前記チャンバ内で前記プランジャーを作動させるよう動作可能なモーターとを含むことができる。前記プランジャーは、前記チャンバ内で摺動させたときに、前記出口ポートを介して前記一定の体積の注入物を排出するように位置決めできる。 前記カートリッジは、出口ポートと、一定の体積の注入物を保持するためのチャンバとを含むことができる。前記無針注射器は、前記モーターに作動的に結合されたコントローラをさらに含むことができ、前記コントローラは、第1送達プロファイル、第2送達プロファイル、および第3送達プロファイルのいずれかに従って前記プランジャーを選択的に動作させるように動作可能であり、前記コントローラは、前記プランジャーにより前記チャンバ内の気体の圧縮と同時に、前記モーターに供給される測定電流のスパイクを検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行するよう動作可能であり、前記コントローラは、前記測定電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行するようさらに動作可能である。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記第1送達プロファイルの動作中の前記プランジャーの平均速度は、前記第2送達プロファイルの動作中の前記プランジャーの平均速度より大きくしてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターに供給される駆動電流に基づいて検出される。いくつかの実施形態では、前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターのロータリーエンコーダを用いて測定された前記モーターの位置に基づいて検出される。いくつかの実施形態では、前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターに供給される駆動電流と前記モーターのロータリーエンコーダを用いて測定される前記モーターの位置との比較に基づいて、前記第1送達プロファイル中に前記モーターの速度を維持するために必要な力の増加に基づいて検出される。
【0008】
前記注入物は、注入可能な医薬製剤または栄養補助食品製剤(nutraceutical formulation)を含むことができる。例えば、前記注入可能な医薬製剤は、高粘度の生物学的製剤を含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記第2送達プロファイルのプランジャー速度が、前記注入物が透過性バリアを貫通するのに十分な注入物速度を発生させることができる。前記透過性バリアは被験者の皮膚とすることができる。特定の実施形態では、前記注入物速度は、約150 m/sから約250 m/sまでとすることができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記第1送達プロファイルは、前記プランジャーを約300 m/sないし約500 m/sの速度で動作させることができる。いくつかの実施形態では、前記第2送達プロファイルは、前記プランジャーを約60 m/sないし約150 m/sの速度で動作させることができる。いくつかの実施形態では、前記第3送達プロファイルは、前記プランジャーを約80 m/sないし約120 m/sの速度で動作させることができる。
【0011】
別の態様によれば、無針注射器が提供される。前記無針注射器は、出口ポートを有するカートリッジ内の流体および気体を加圧するように配置されたプランジャーを含むことができる。前記無針注射器は、前記プランジャーに作動的に結合されたモーターを含むことができる。前記モーターは、前記カートリッジの軸に沿って直線運動で前記プランジャーを作動させ、前記カートリッジから前記流体を送出するよう動作可能としてもよい。前記無針注射器は、前記モーターに作動的に結合されたコントローラをさらに含むことができる。前記コントローラは、注射開始信号に応答して、前記カートリッジ内の前記気体を圧縮するために第1送達プロファイルに従って前記プランジャーを動作させ、所定の閾値を超える前記カートリッジ内の前記気体の圧縮を検出したことに応答して前記プランジャーを第2送達プロファイルに従って動作させるように動作可能とすることができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記所定の閾値を超える前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、モデルによって予測されるフリーランニング駆動電流と前記モーターに供給される前記測定電流との間のモーター電流のずれの検出を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、前記プランジャーの速度を前記第1送達プロファイル内に維持するための所定の閾値を超えるモーター電流の増加の検出を含む。いくつかの実施形態では、前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、所定の閾値未満への前記プランジャーの速度の減少の検出を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記カートリッジ内の前記気体の圧縮の検出は、前記プランジャーの速度の減少および前記モーターへの駆動電流の増加を同時に検出することを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記モーターに作動的に結合されたエンコーダからのフィードバックに応答して前記プランジャーを作動させることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記第1送達プロファイルは、前記第2送達プロファイルの第2目標速度よりも大きい第1目標速度を有することができる。いくつかの実施形態では、前記第2プロファイルは、穿刺位相と送達位相とを含む二位相性プロファイルである。特定の実施形態において、前記穿刺位相におけるプランジャー速度は、時間の関数として減少させてもよい。
【0015】
別の態様に従って、無針注射器を用いて注入物を送達する方法が提供される。前記方法は、本明細書に記載されるように、無針注射器を提供する段階を含むことができる。前記無針注射器は、チャンバを保持するためのカートリッジを有するハウジングと、前記チャンバから注入物を送出するよう構成かつ配置されたプランジャーと、前記プランジャーに作動的に結合されたモーターと、を含むことができる。前記方法は、前記無針注射器を用いて注射を開始することに応答して、前記無針注射器に、第1送達プロファイルに従ってプランジャーを動作させ、前記第1送達プロファイルの間に前記モーターに供給される電流を監視させ、前記モーターに供給される前記電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、前記プランジャーによる前記チャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行させ、前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させ、前記測定された電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行させ、所定量の前記注入物が前記出口ポートを介して前記チャンバから送達されるまで、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルに従って動作させるよう動作可能としてよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルへの移行は、前記気体の圧縮と同時に、前記モーターに供給される測定電流のスパイクを検出した時点で、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルへの移行を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルへの移行は、前記モーターに供給される前記電流を0Aないし約10Aの範囲内まで減少させることを含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることは、前記プランジャーに及ぼされる復元力に打ち勝って、前記注入物を前記透過性バリアを介して送達するのに十分な速度で前記プランジャーを動作させることを含むことができる。例えば、前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることは、前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮を維持しながら前記プランジャーを動作させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、前記第2送達プロファイルに従って前記プランジャーを動作させることは、前記注入物の速度が、被験者の皮膚などの透過性バリアを貫通するのに十分であるという結果をもたらすことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルで動作させることは、前記注入物が送達される際に前記プランジャーの前記速度を調整することを含むことができる。例えば、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルで動作させることは、前記注入物が送達される際に前記プランジャーの前記速度を調節することを含むことができる。
【0019】
別の態様によれば、注入物の無針注射を容易にする方法が提供される。前記方法は、本明細書に記載されるように、無針注射器を提供する段階を含むことができる。前記無針注射器は、前記プランジャーおよびコントローラに作動的に結合されたモーターを含むことができる。この提供されたコントローラは、第1送達プロファイルでプランジャーを動作させ、前記第1送達プロファイルの間に前記モーターに供給される電流を監視し、前記モーターに供給される前記電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、前記プランジャーによる前記チャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行し、前記プランジャーを前記第2送達プロファイルで動作させ、前記測定された電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行し、所定量の前記注入物が前記出口ポートを介して前記チャンバから送達されるまで、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルに従って動作させるよう動作可能としてよい。
【0020】
さらなる実施形態において、前記方法は、前記注入物のカートリッジを前記無針注射器に装填するため指示をユーザに与える段階をさらに含んでもよい。
【0021】
さらなる実施形態において、前記方法は、前記無針注射器を動作させるため指示をユーザに与える段階をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付の図面は一定の縮尺を意図して描かれたものではない。図面において、図面中に描かれたそれぞれの同一またはほぼ同一の構成要素は、類似番号で示した。明確性のため、すべての図面ですべての構成要素には参照番号を付加していない。図面は次の通り。
【
図1】
図1は、制御可能な無針経皮注射装置の概略図である。
【
図2】
図2は、ボールねじアクチュエータの破断図である。
【
図3】
図3は、
図1の制御可能な無針経皮注射装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1の制御可能な無針経皮注射装置の詳細ブロック図である。
【
図5】
図5は、
図1の制御可能な無針経皮注射装置の電源の詳細ブロック図である。
【
図7】
図7は、
図6の目標変位プロファイルに関連した回転モータースピード・プロファイルである。
【
図8】
図8は、
図6の目標変位プロファイルに関連した注入物の噴流速度プロファイルである。
【
図9】
図9は、注射器を動作させるための方法のフローチャートである。
【
図11】
図11は、回転モーターを動力とする注射器の無負荷動作のモデルである。
【
図13】
図13は、一実施形態による、注射開始前のカートリッジおよびプランジャーの実施形態を示す図である。
【
図14】
図14は、一実施形態による、3つの送達プロファイルを有する注射のための、モーターに供給される電流、プランジャー速度、および注入物速度を、時間の関数として示す。
【
図15】
図15A-15Cは、一実施形態による、3つの送達プロファイルを有する注射のための、プランジャー速度(
図15A)と、モーターに供給される電流(
図15B)と、加えられる動力(
図15C)とを示す。
【
図16】
図16A-16Bは、一実施形態による、第3送達プロファイルに関する、注入物速度とモーターに供給される電流との関係(
図16A)、および注入物速度とプランジャー速度(
図16B)との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の文書において、単数形の項目への言及は、特に断りのない限り、あるいは文面から明らかな場合を除き、複数形の項目を含むものと理解されるべきであり、その逆もまた然りである。文法上の接続詞は、特に断りのない限り、あるいは文脈から明らかな場合を除き、結合された節、文、語、その他同種類のもののすべての離接的および接続的組み合わせを表現することを意図している。したがって、「または」という用語は、一般に「および/または」などを意味すると理解されるべきである。
【0024】
本明細書における値の範囲の記載は、限定を意図したものではなく、むしろ、特に断りのない限り、その範囲内に入るあらゆる値を個別に指し、その範囲内の各個別の値は、あたかも個別に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。「約」、「概ね」などの語が、数値または物理的特性に付随する場合は、意図された目的を満たすよう動作するために当業者によって理解されるであろう逸脱を示すものとして解釈されるものである。同様に、「概ね」や「実質的に」などの近似語は、物理的特性に関して使用される場合、対応する用途、機能、目的などを満たすよう動作するように当業者が理解する逸脱の範囲を想定していると理解されるべきである。値の範囲および/または数値は、本明細書において例としてのみ提供され、明示的に特に断りのない限り、記載された実施形態の範囲の制限を構成することはない。本明細書で提供される任意のおよび全ての例、または例示的な文言(「例えば」、「などの」またはそのようなもの)の使用は、単に実施形態をより明確にすることを意図しており、実施形態の範囲に対する制限するものでない。本明細書におけるいかなる文言も、請求項に未記載の要素が、実施形態の実施に不可欠なのものを示すものとして解釈されるべきではない。
【0025】
以下の説明において、「第1」、「第2」、「上部」、「下部」、「上」、「下」などの用語は、便宜上の言葉であり、限定的な用語として解釈されるものではないことを理解されたい。
【0026】
無針経皮注射装置
図1を参照すると、患者の皮膚を介して注入物(例えば、液体状態または粉末状態などの複数の状態のうちのいずれか1つの状態の薬剤またはワクチン)を移送するための制御可能な無針経皮注射装置100は、ハウジング102から延びる無針経皮注射器ヘッド104を含んでいる。注射器ヘッド104は、注入物を保持するためのチャンバ106と、注射器ヘッド104の遠位端110に配置されたノズル108とを含む。ノズル108は、ヘッド112と、そこから注入物の噴流がチャンバ106から放出される開口部114とを含む。動作時に、注入物が吐出される際に、開口部114は、皮膚115の近くまたは皮膚に当接して配置される。
【0027】
ノズル108の寸法は、ノズル108を出る注入物の流れの形状および圧力プロファイルを制御するように適合できる。例えば、開口部114の内径は、50μmないし300μmの範囲とすることができ、開口部に向かう長手方向軸122に沿ったテーパを用いて注入物の出て行く流れを形成してもよい。開口部114に対するチャンバ106の幾何学的形状は、チャンバ106内のプランジャー等の直線運動が、開口部114を通る注入物の出口速度又は圧力にどのように変換されるかに影響し得ることも理解されるであろう。ノズル108のヘッド112の外径は、開口部114まで狭まってもよいし、均一なままでもよいし、ノズル108のヘッド112に適切な静止面を形成するよう拡張してもよい。ノズル108は、約500 μmないし約5 mmの長手方向軸122に沿った長さを有することができる。同様に、チャンバ106は、注入物を含むために、かつ、1回以上の無針注射で開口部114を介して注入物を変位させるために長手方向軸に沿った任意の適切な長さを有することができる。
【0028】
チャンバ106は、近位端116および遠位端110を有することができる。アクチュエータ(すなわち、ピストンまたはプランジャー120)は、チャンバ106内に摺動可能に配置できる。長手方向軸122に沿ったプランジャー120のいずれかの方向への移動は、チャンバ106内の圧力に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態では、チャンバ106は、装置100と一体である。他の実施形態では、チャンバ106は、装置100に別個に取り付け可能である。
【0029】
いくつかの例では、注射装置100は、装置と患者の皮膚との接触を検出するためのセンサ107(例えば、機械的センサまたは静電容量センサ)を含む。いくつかの例では、センサ107は、患者の皮膚に対するカートリッジの角度を検出するように構成されている。いくつかの例では、センサ107は、患者の皮膚115または身体に対する注射開口部の位置を検出するように構成されている。いくつかの例では、センサ107は、注射コントローラ100と通信して、装置が患者の皮膚115と接触していないとき、または患者に対する装置の角度または位置が正しくないときに注射が行われるのを防ぐようにする。
【0030】
回転モーター
注射装置100は、皮膚115を介してチャンバ106内の注入物を注射するために、リンク機構130を介してプランジャー120に力を掛ける電磁回転モーター126を含むことができる。リンク機構は、ボールねじアクチュエータ130を含んでもよく、リンク機構は、回転モーター126の回転力を、チャンバ106から注入物を変位させるのに適した直線力に転換するための他の任意適切な機械的カップリングを上記に加えてまたはそれに代えて含んでもよい。例えば、リンク機構は、親ねじ、直線運動ベアリング、およびウオーム歯車装置のうちの1つ以上、または他の適切な機械部品もしくは機械部品の組合せを含んでもよい。上述したように、直線運動は、親ねじの回転などから有用に推測することができ、注射装置100は、注射中にプランジャー120の位置に関するフィードバックをコントローラに与えるために、回転を監視するように計装化できる。
【0031】
図2を参照すると、ボールねじアクチュエータ130の一例は、ねじ332とナット334(これは、
図1のハウジング102に結合されている)を含み、それぞれ一致するらせん溝336を有する。ボールねじアクチュエータ130は、溝336を介して再循環し、ナット334とねじ332との間に転がり接触をもたらす複数のミニチュアボール338または同様のベアリング等を有する再循環ボールねじを含むことができる。ナット334は、戻りシステム333と、ねじ332またはナット334が回転すると、ミニチュアボール338を戻りシステムに偏向させるデフレクタ(図示せず)とを含んでもよい。ボール338は、戻りシステムを通って、連続した経路でナット334の反対側の端部まで移動する。その後、ボール338は、ボール戻りシステムから出て溝336に入る。このようにして、ボール338は、ねじ332がナット334に対して相対的に移動する際に、閉回路内で連続的に再循環する。
【0032】
いくつかの例では、回転モーター126は、様々な回転電気モーター(例えば、ブラシレスDCモーター)から選択されるタイプのものである。回転モーター126は、ボールねじアクチュエータ130のねじ332またはナット334のいずれかにトルク(すなわち、τM)を加えることによって、ボールねじアクチュエータのねじ332を長手方向軸122に沿って前後に移動させるように構成されている。このトルクは、ねじ332またはナット334のいずれかを回転させ、これによって、モーターにより加えられるトルクに比例する入力される力FM(t)が、ねじ332に加えられることになる。
【0033】
ねじ332に加えられるトルクτ
Mは、プランジャー120への力の印加を引き起こし、その結果、長手方向軸122に沿ったプランジャー120の移動を引き起こす。力F
Pは、ボールねじアクチュエータのトルクと力との理想的な関係を表す以下の式によって決定される。
【0034】
ここで、FPはねじ332によってプランジャー120に加えられる力、τM はねじ332に加えられるトルク、ηはボールねじアクチュエータ130の効率、Pはねじ332のリードである。
【0035】
制御ループ
再び
図1を参照すると、経皮注射装置100は、変位センサ140と、注射コントローラ135と、三相モーターコントローラ141とを含むことができる。一般に、変位センサ140は、ボールねじアクチュエータ130のねじ332および/またはプランジャー120の変位x(t)を測定する。変位センサ140は、例えば、初期変位値(すなわち、x(0))を格納しかつ開始値からのずれを経時的に監視することによって、ねじ332の増分変位を測定することができる。他の例では、変位センサ140は、変位センサ140の位置または他の固定基準点に対するネジ332の絶対変位を測定する。別の態様では、変位センサ140は、直線運動を制御するボールねじのナットまたは他の構成要素に結合すればよい。この構成では、変位センサ140は、ねじすり割りの回転を測定することができ、回転運動は、装置100の動作を制御する目的で、計算により線形変位に変換してもよい。
【0036】
変位センサ140によって測定された(またはそこからのデータを使用して計算された)変位x(t)は、注射コントローラ135への入力として与えることができる。後により詳述するように、注射コントローラ135は、変位x(t)を処理して、モーター制御信号y(t)を決定する。モーター制御信号y(t)は、三相モーターコントローラ141に与えられ、このコントローラは、電源143と連携して、モーター制御信号y(t)に従って回転モーター126を駆動する。モーター126は、トルクτM(t)をねじ332に印加させる。モータートルクτM(t)は、長手方向軸122に沿った方向へのねじ332(または他の任意の適切なリニアアクチュエータ)の移動を引き起こす。
【0037】
系統図
図3を参照すると、
図1のシステムの概略図は、ステップ344において、回転モータートルクτ
Mがボールねじ130に印加されることを示している。回転モーターによる任意の時刻t
1での回転モータートルクの印加により、ステップ345に示すように、ボールねじ130のねじ332に力F
M(t
1)が印加され、これによってステップ348でねじ332が変位する。
【0038】
ボールねじ130のねじ332の変位は、変位センサ140によって測定され、注射コントローラ135にフィードバックされる。後に詳述するように、注射コントローラ135は、測定された変位を処理してセンサフィードバック348を与え、三相モーターコントローラ141に供給されるモーター制御信号y(t
1)を求める。三相モーターコントローラ141は、モーター制御信号y(t
1)に従って回転モーター126を駆動し、時刻t
2においてモーター126にトルクτ
M(t
2)をボールねじ130のねじ332に印加させる。上述したように、ねじ332に加えられるトルクτ
M によって、プランジャー120には力F
Pが加えられることになり、F
Pは、次のように求められる。
【0039】
ここで、FPはねじ332によってプランジャー120に加えられる力、τM はねじ332に加えられるトルク、ηはボールねじアクチュエータ130の効率、Pはねじ332のリードである。
【0040】
図4を参照すると、いくつかの例では、注射コントローラ135は、目標変位プロファイル450と、加算ブロック452と、モーター制御信号発生器454とを含む。ごく一般的に述べると、注射コントローラ135は、変位センサ140から時刻tにおける変位値x(t)を受信する。時刻tは、目標変位プロファイル450に与えられ、目標変位プロファイル450は、時刻tの目標変位値x
T(t)を求める。
【0041】
いくつかの例では、目標変位プロファイル450は、目標変位値と注射サイクルに関連付けられた複数の時刻(すなわち、装置のプランジャー120が移動する時間の範囲)との間のマッピングを含む。例えば、
図4に示す目標変位プロファイル450では、変位は、注射サイクルの開始時(すなわち、時刻t
0)にゼロで開始され、注射サイクルが進むにつれて時間と共に変化し(例えば、増加し)、注射サイクルの時間の各瞬間が、対応する変位値に関連付けられている。後に詳述するように、いくつかの例では、変位値の変化率は時間と共に変化し、注射サイクルの異なる時間間隔は、変位値の異なる変化率に関連付けられている。例えば目標変位プロファイル450によるプランジャー変位の制御を用いて、複雑な注射を実行できる。例えば、1つの態様において、プランジャー120は、皮膚バリアを貫通するために、最初の穿刺位相において比較的速く変位し、他の時間間隔においては、プランジャー120は、最初の穿刺位相中に形成された開口部を介して注入物を送達するために比較的ゆっくりと変位する。別の態様では、目標変位プロファイル450は複数の連続的な注射を制御でき、各注射が、穿刺位相と薬剤送達位相との二位相性プロファイルを有している。実際には、プランジャー120の実際の変位プロファイルは、システムの物理的限界および他の制約によって、理想的な目標変位プロファイルと異なる場合がある。
【0042】
測定された変位値x(t)と目標変位値xT(t)の両方は、加算ブロック452に与えられる。加算ブロック452は、目標変位値xT(t)から測定変位値x(t)を減算して、誤差信号xE(t)を得る。誤差信号xE(t)は、モーター制御信号生成部454に与えられ、この誤差信号をモーター制御信号y(t)に変換する。モーター制御信号y(t)は、三相モーターコントローラ141または他の適切な駆動システムに与えられる。するとこれが、モーター制御信号y(t)に従ってモーター126を駆動する。
【0043】
いくつかの例では、回転モーター126は、3つの巻線447と3つのホールセンサ449を有する三相モーターでよく、各ホールセンサ449は3つの巻線447の異なる1つに対応している。巻線447は、それぞれ、電流が通電されると磁極を形成するように、成層軟鉄心(図示せず)の周りに巻き付けられている。3つのホールセンサ449は、それぞれ、その対応する巻線447における磁界の存在(または欠如)に応答して、対応する出力信号456を生成する。
【0044】
三相モーターコントローラ141は、スイッチ制御モジュール445と、スイッチングモジュール448とを含む。スイッチングモジュール448は、3対のスイッチ451(合計6つのスイッチ451を有する)を含み、各対のスイッチは、回転モーター126の巻線447の異なる1つに対応し、対応する巻線447を電源143と電気接続させたり(これにより巻線は通電される)接地させたりするよう構成可能である。スイッチ制御モジュール445は、注射コントローラ135からのモーター制御信号y(t)と3つのホールセンサ出力信号456とを入力として受け取り、これら入力を処理して6つのスイッチ制御信号455を生成するが、各スイッチ制御信号455は、スイッチングモジュール448の対応するスイッチ451を開くかまたは閉じるように構成されている。
【0045】
上記の構成はフィードバック制御アプローチを実装するものであり、これによって、モーター126によるボールねじ130のねじ332に加えられる制御トルクの組み合わせにより、ねじ332が変位する際のプランジャーの変位が目標変位プロファイル450を確実に追跡することになる。
【0046】
電源
図5を参照すると、いくつかの例では、電源は、DC/DC変換機562(例えば、昇圧型コンバータ)に電圧V
1を供給するように構成されたバッテリ560(例えば、ニッケルカドミウム電池、ニッケル金属水素電池、リチウムイオン電池、アルカリ電池、または他の任意の適切な種類の電池)を含む。DC/DCコンバータ562は、バッテリ560から供給電圧V
1を入力として受け取り、V
1よりも大きい出力電圧V
2を生成する。いくつかの例では、DC/DCコンバータ562は、供給電圧を5から20の範囲の倍数で昇圧するよう構成されている。バッテリ560は充電式でもよいが、バッテリ560は、例えば、複数の交換可能な単回投与カートリッジまたは単一の多回投与カートリッジから、2回以上の1ミリリットルの注射などの複数の注射を行うのに十分なエネルギーを有用に貯蔵することも可能である。
【0047】
出力電圧V2は、ダイオード566を介して、スーパーコンデンサ564と三相モーターコントローラ141のスイッチングモジュール448とに並列に供給できる。動作時、出力電圧V2は、経皮注射装置100が非活動状態にあるときに、スーパーコンデンサ564を充電する。注射動作が開始されると、スイッチングモジュール448のスイッチ451は(スイッチ制御信号455に従って)閉じ、回転モーター126の巻線447をスーパーコンデンサ564に接続する。この結果、スーパーコンデンサ564が放電し、回転モーター126の巻線447に電流が流れ、回転モーター126の回転が引き起こされる。
【0048】
いくつかの例では、スーパーコンデンサ564は、スイッチングネットワークと一緒に結合された複数のスーパーコンデンサを含む。経皮注射装置100が非活動状態にあるとき、スイッチングネットワークは、これら複数のスーパーコンデンサが充電のために並列に接続されるように構成してもよい。注射が開始されると、複数のスーパーコンデンサが放電のために直列接続されるように、スイッチングネットワークを再構成してもよい。いくつかの例では、スーパーコンデンサ564は、回転モーター126を介してボールねじ130に200ワット以上のピーク電力を供給するように構成されている。
【0049】
一般に、このスーパーコンデンサは、電池または他の電気エネルギー源よりも迅速に電荷を受け入れて送出するのに適した任意の高容量コンデンサでもよい。多種多様なスーパーコンデンサ設計が本発明の分野で知られており、二層コンデンサ、擬似コンデンサ、およびハイブリッドコンデンサなど、本明細書で企図されるスーパーコンデンサ564としての使用に適合させることができる。同様に、スーパーコンデンサ564は、本明細書で企図されるように、注射装置100の回転モーター126を駆動するのに適した量および速度で電力を供給するのに適した任意の数および配置のスーパーコンデンサを有用に含むことができる。
【0050】
目標変位プロファイル
図6を参照すると、目標変位プロファイルの一例は、それぞれが対応する時間間隔と関連付けられた複数の注射位相を含む。第1注射位相670は、時刻t
0から時刻t
1にかけての第1時間間隔に関連付けられている。第1注射位相670において、プランジャー120の目標変位は、プランジャー120がチャンバ106内の注入物と係合する一定の初期位置P
0である。この位相において、注射装置100は、一般に、注射動作を実行するために準備が整っている。一般に、第1注射位相670に先だって、注射装置への注入物(または注入物を含むカートリッジ)の装填、必要に応じたまたは適宜の注入物からの気泡の除去、環境条件の測定、注射部位のパラメータ測定、および本明細書で企図される無針注射の実行または実行準備に役立つ他の任意のステップまたはステップの組み合わせなど、任意の数の準備ステップまたは位相を実行してもよい。
【0051】
一態様において、回転モーター126は、回転モーター126が第1注射位相670で静止している間に、ボールねじアクチュエータ130(または他の任意の適切なリニアアクチュエータ)と機械的に係合することができる。すなわち、回転モーター126は、ボールねじアクチュエータ130と予め係合しており、このシステムの機械部品のあらゆる機械的弛みを除去するために予荷重をかけることができる。この構成では、機械的スイッチなどを用いて構成要素の相対移動を防止してもよいし、かつ/または、ノズル出口にゲートまたはシールを用いて、チャンバ106からの薬剤の漏れを防止してもよい。別の態様では、回転モーター126は、ボールねじアクチュエータ130との係合状態からわずかに離間させておいてもよい。この後者の構成では、ノズルからの注入物のより大きな初速度を容易に実現するために、第1注射位相670の終わりまたは第2注射位相672の始まりに、回転モーター126を有用に(無負荷状態で)加速してボールねじアクチュエータ130と係合させてもよい。これには、例えば、ボールねじアクチュエータ130との係合からの回転モーター126の一回転、または非常に高い初期回転加速度を容易にするのに適した一回転未満のわずかな回転を含んでもよい。
【0052】
第2注射位相672は、時刻t1からt2にわたる第2時間間隔に関連付けられている。第2注射位相672では、プランジャー120の移動が開始できる。この位相において、プランジャー120の目標変位は、プランジャー120を初期位置P0から第1位置P1に移動させるために、比較的高い第1の割合で増大する。一般に、この位相におけるプランジャー120の運動は、注入物の噴流を注射器ヘッド104のチャンバ106から(開口部114を介して)少なくとも人間の組織を皮下の一定深さまで穿刺するのに十分な第1速度V1で射出させることができる。いくつかの例では、第2注射位相672は、100 ms未満の時間間隔にわたる(すなわち、t1とt2との差は、100 ms未満である)。いくつかの例では、第2注射位相672は、60 ms未満の時間間隔にわたる(すなわち、t1とt2との差は、60 ms未満である)。いくつかの例では、第2注射位相672は、10 ms未満の時間間隔にわたる(すなわち、t1とt2との差は、10 ms未満である)。
【0053】
より一般的には、この第2注射位相672において、注入物の最初の流れが実質的に瞬時に、例えば、表面における注入物の実質的な漏れまたは損失なしに穿刺速度を達成するために十分な速度で、プランジャー670が静止位置から目標速度に移行するように、注射装置100を構成してもよい。固定位置から穿刺速度までこうして加速するように上述の直線駆動システムを構成することによって、注射装置100は、注入物の損失を有利に緩和し得る。さらなる利点として、この機能を有する注射装置は、機械的蓄積エネルギーシステムのいかなる物理的再投入または再設定も必要とせずに、有用に複数の連続した注射を実行することができる。
【0054】
第3注射位相674は、時刻t2からt3にわたる第3時間間隔に関連付けられている。第3注射位相674では、プランジャーの目標変位は、プランジャー120を第1位置P1から第2位置P2へ移動させるために第1の割合と実質的に同じ割合で増加する。この第3注射位相674では、注入物の噴流を第1速度V1と同じかそれより大きい第2速度V2で注射器ヘッド104のチャンバ106から射出させる速度で、プランジャー120を移動させることができる。プランジャー120の移動速度および注入物の流れの速度は、この第3注射位相674において、例えば、制御精度、物理的システム構成要素などに関する制限に従って変化し得るが、プランジャー120は、一般に、注入物を所望の深さまで送達できるよう目標部位の組織を穿刺するのに適した最小速度で駆動すべきである。注入物の噴流はまた、過貫通または他の望ましくない組織損傷を避けるために選択された最大速度を有することができる。
【0055】
第4注射位相676は、時刻t3から時刻t4にわたる第4時間間隔に関連付けられている。第4注射位相676において、プランジャー120の目標変位は、第1の割合より相対的に遅い第3の割合で増加して、プランジャー120を第3位置P3から第4位置P4へ移動させる。この第4注射位相676において、注射装置100は、一般に、注入物の噴流を、注射器ヘッド104のチャンバ106から、第1速度V1よりも低い第3速度V3で射出させるためにプランジャー120を減速してもよく、これは一般に、目標組織内における注入物流動の現在の深さで、追加注入物を非穿刺送達するのに相応しい任意の速度とすればよい。
【0056】
第5注射位相678は、時刻t4からt5に至る第5時間間隔に関連する。第5注射位相678において、プランジャー120の目標変位は、プランジャー120を第4位置P4から第5位置p5まで移動させるために第3の割合で増加し続ける。第5注射位相678において、注射装置100は、一般に、注入物(典型的には、チャンバ106内の注入物の大部分)を、以前の穿刺位相の間に達成された皮下深さで送達してもよい。移動速度は、一般に一定でよく、あるいは、組織をさらに穿刺することなく皮下薬剤送達を維持できるように変化してもよい。
【0057】
第5注射位相678の間に、穿刺がある程度継続してもよいことは理解されよう。もし付加的な穿刺が、治療用投与量の損失または誤送をもたらしかねない目標組織内の皮下深さより下方に経路を作らないのならば、この付加的な穿刺は、経皮薬剤送達の効力に影響しないはずである。また、プランジャー120の全変位は、注射の過程で送達される薬剤の量を制御し、第5注射位相678の持続時間は、それに対応して、意図された投与量に従って選択され得ることが理解されるであろう。
【0058】
最後に、第6注射位相は時刻t5以降に発生する。第6注射位相で、プランジャー120の目標変位は増加が止まり、プランジャー120を第6位置p6で実質的に停止させる。第6注射位相は、注射動作の完了に関連付けられている。上述のように、この位置から、追加の注射サイクルを開始することができるが、もちろん、付加的な注射を完了するために十分な付加的な薬剤が注射装置100内に残っていることが条件である。
【0059】
穿刺速度へ迅速に到達し、注射部位の表面における薬剤の損失を回避するために、第2注射位相672(ここでは注入物が加速される)は、穿刺速度が達成された後に維持される穿刺位相と比べて短くてもよい。したがって、いくつかの例では、第3注射位相674に関連付けられた時間間隔は、第2注射位相672に関連付けられた時間間隔の2倍から20倍の範囲である。いくつかの例では、第2注射位相672に関連付けられた時間間隔は、30ミリ秒と100ミリ秒の間の持続時間を有し、第3注射位相674に関連付けられた時間間隔は、100ミリ秒と1000ミリ秒の間の持続時間を有している。
【0060】
より一般的には、各位相の持続時間は、注入物の流れの直径、注入物の特質、注射部位の組織の特性などに依存し得る。したがって、注射プロファイルは、注入物の実質的な損失を避けるために十分に急速に穿刺速度まで加速し、目標深さ(例えば、皮下深さ)が達成されるまで穿刺速度を維持し、その後、目標深さで全用量を送達するために非穿刺速度を維持するのに適した任意の継続時間を有用に採用できる。
【0061】
また、単一の注射サイクルが図示されているが、本明細書で企図される注射装置100は、複数の連続的な注射を行うため有用に構成され得ることが理解されるであろう。このように、任意の回数の注射サイクルが有用に実行可能であり、そのような任意の複数回注射用途は、この記載によって明示的に企図されている。
【0062】
回転モータースピード
図7を参照すると、第1注射位相670において、注射コントローラ135は、プランジャー120が初期位置P
0に確実に静止したままとするために、回転モーター126を制御してその速度を実質的に0回転/分(RPM)に維持する。これは、回転モーター126を固定位置に積極的に維持することを含むことができ、これは、例えば、位置を監視し、検出された動きまたはドリフトに反応して回転モーター126を作動させることにより、またはプランジャー120を初期位置P
0で確実に係合する磁気、機械、または電気機械ロックを制御することによって行われる。別の態様では、これは、回転モーター126からの制御信号または駆動信号を与えないでおくことによって回転モーター126を定位置に消極的に維持することを含むこともできる。また、上記を組み合わせたものを有利に採用できることも理解されるであろう。例えば、プランジャー120は、保管中またはそれ以外の理由で使用しない間、機械的ロックで固定しておいてもよく、その後、回転モーター126は、機械的ロックが注射に備えて解除されたときにプランジャー120の位置を電気機械的かつ積極的に固定するために使用できる。このようにして、長期保管中は電力が節約できる一方で、位置は、例えば、注入物の漏れを防止するために、注射直前の期間では回転モーター126を使用して確実かつ制御可能に固定できる。
【0063】
第2注射位相672において、注射コントローラ135は、回転モーターを制御して、0 RPMから第1回転モータースピードS1 (例えば、33,000 RPM)、プランジャー120を初期位置P0から第1位置P1に移動させる。第3注射位相674において、注射コントローラ135は、回転モーター126を制御して第1回転モータースピードS1以上の速度を維持して、プランジャー120を第1位置P1から第2位置P2に移動させることができる。第4注射位相676において、注射コントローラ135は、回転モーター126を制御して第1回転モーター速度S1より小さい第2回転モーター速度S2 (例えば、11,000 RPM)まで減速させ、プランジャー120を第2位置P2から第3位置P3へ移動させることができる。第5注射位相678では、注射コントローラ135は、第2回転モータースピードS2を維持するように回転モーター126を制御することができ、注射のための目標深さで注入物を送達するために、実質的に一貫した速度でプランジャー120を第3位置P3から第4位置P4に移動させる。
【0064】
第6注射位相において、注射コントローラ135は、回転モーター126を制御して、その速度を第2回転モータースピードS2から0 RPMに減速させ、プランジャー120の動きを第4位置P4で実質的に停止させることができる。上述の電源143内のスーパーコンデンサ564は注入物送達のいずれの部分においても使用され得るが、スーパーコンデンサ564は高い機械的負荷が予想される局面、例えば、最初の加速位相および穿刺位相の間、ならびに、例えば、第4位置P4においてなど、プランジャー120を迅速に減速または停止するために必要または有用な局面で特に有利となりうる。したがって、スーパーコンデンサ564は、第2注射位相672や第3注射位相674で特に使用されること加えて、オプションだが、注入物を薬剤送達速度まで減速する間にも目標速度を維持するために高い電力が必要な場合、かつ/またはプランジャー120をすばやく減速もしくは停止させるために高い電力が必要な場合、第4注射位相676中に特に使用してもよい。
【0065】
注入物速度
図8を参照すると、第1注射位相670では、チャンバ106から注入物が射出されない(すなわち、初期の注入物速度V
0は0 m/sである)。第2注射位相672において、注入物速度は、0 m/sから、少なくとも人間の組織を穿刺するのに十分な第1速度V
1まで増加する。いくつかの例では、第1速度V
1は、少なくとも200 m/sである。穿刺が迅速に開始されない場合、薬剤のかなりの損失または漏れが生じる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、回転モーター126は静止した出発点から、例えば2回転未満または1回転未満などの3回転以下の回転で、注射のための第1速度V
1に達するように有用に構成できる。
【0066】
第3注射位相674において、目標部位の組織を穿刺し続けるために、注入物速度を第1速度V1と同じかそれより大きい第2速度V2に維持することができる。第1速度V1が組織を穿刺するための最小速度である場合、第2速度V2は、第3注射位相674全体にわたって穿刺を継続するために、第1速度V1を上回る速度に維持されることが好ましい。しかしながら、第1速度V1は、その代わりに、穿刺を開始するための最小速度または最適速度であってもよく、その場合、第2速度V2は、有利なことに、所望の目標深さまで組織を穿刺し続けるのに適した、第1速度V1より大きい、それと同じ、またはより小さい任意の速度でよい。同様に、第2速度V2は、第2速度V2が有用な穿刺速度の範囲内に留まることを条件として、第3注射位相674の持続時間において変化してもよい。
【0067】
第4注射位相676において、注入物速度は、チャンバ106内の注入物の大部分を一定の皮下深さで送達するのに十分な第3速度V3(最大の第3速度V3Maxと最小の第3速度V3Minの間の範囲内)まで減少させることができる。第5注射位相678において、チャンバ106内の注入物の大部分が第3注射位相674の間に形成されたチャネルを通って皮下深さに送達される間、注入物速度は第3速度V3に実質的に維持してもよい。第5注射位相678の過程において、第3速度V3は、目標深さでの注入物の送達をもたらすことができる任意の複数値(典型的にはゼロより大きく、穿刺速度より小さい)の間で変化させてもよいことは理解されるはずである。最後に、第6注射位相680において、注入物の速度は、注射動作が完了する際には0 m/sまで減少できる。
【0068】
注入物
いくつかの例では、チャンバ内の注入物の体積は少なくとも1ミリリットルである。したがって、1つの態様において、注射装置100は、1ミリリットルの薬剤を単回投与で、またはある期間にわたって、例えば異なる位置に、または長期間の投与スケジュールにわたって、複数の連続投与として皮下に送達するように構成できる。多数の連続投与を意図している場合や、より大用量の単回投与を意図している場合(例えば、1ミリリットルを上回る量)、有利なことにこのチャンバは大きな容積を有することができる。多回投与用途の場合、チャンバ106の内容物は、本明細書で企図されるような回転モーターおよび直線駆動システムを用いて、別々に投与して便利に分散使用できる。いくつかの例では、チャンバ内の注入物の体積は、約0.5ミリリットル以下である。いくつかの例では、チャンバ内の注入物の体積は、約0.3ミリリットル以下である。いくつかの例では、チャンバ内のこの注入物は、治療量の注入物である。
【0069】
いくつかの例では、注入物は生物学的薬剤を含む。いくつかの例では、注入物は、摂氏2度から20度の間の温度で少なくとも3センチポイズの粘度を有する。いくつかの例では、注入物は、摂氏2度から20度の間の温度で約3センチポイズから約200センチポイズの粘度を有する。したがって、本明細書に記載のシステムは、比較的高い粘度を有する大分子治療薬または他の薬剤と共に有用に使用できる。
【0070】
その他
一態様では、注射コントローラは、無針経皮注射装置100に、複数の連続的な注射動作を互いに時間的に近接して行わせるように構成できる。注射装置100は、注射装置100の動きを感知し、触覚、可視、可聴、または他のフィードバックを提供して、複数回注射の手順を注意深く実行するにあたりユーザを支援することによって、この動作をサポートするように有用に計装化できる。
【0071】
別の態様では、回転モーターの動きを反転させることなく(すなわち、プランジャーを引き込むことなく)、複数の連続的な注射動作を実行することができる。したがって、注射サイクルの終了時に、注射装置100内に付加的な投与に十分な付加的な注入物が残っていれば、回転モーター126は静止させたままとして、2回目の完全な注射サイクルをこの新たな開始位置から始めてもよい。この文脈において、回転モーター126は、治療用製品の漏れまたは他の損失を防止するために、手動で固定してもよいし、電磁気的に固定位置で維持してもよい。
【0072】
いくつかの例では、リンク機構(例えば、ボールねじリンク機構)は、例えば、プランジャーを出口ノズルに向かって移動させて内容物を射出することによって、またはプランジャーを出口ノズルから遠ざかるように移動させて付加的な薬剤を注射装置100に装填することによって、チャンバ内の内容物の双方向変位が可能となるように、回転モーターおよびプランジャーに双方向に結合される。
【0073】
いくつかの例では、この経皮注射装置は、この装置が注射動作を行うために適切に位置決めされたときを検出するためのセンサシステムを含む。いくつかの例では、この装置が適切に位置決めされると、注入コントローラは、観察可能な待ち時間なしに注射動作を開始するように構成されている。すなわち、センサシステムは、注射装置100を監視し、注射装置100が適切に位置決めされて静止しているときを判定し、その後、注入を開始することができる。注射の持続時間および感触に応じて、有用には、注射が行われようとしていることをユーザに警告する電子ブザー音、振動、または他の人間が知覚できる信号が、注射に先行するようにしてもよい。
【0074】
いくつかの例では、スーパーコンデンサの代わりに、またはそれに加えて、1つまたは複数の従来のコンデンサ(例えば、電解コンデンサ)を使用することができる。
【0075】
いくつかの例では、注射コントローラは、所定の最小注射サイクル時間内に2回以上の注入動作を行わないように構成されている。したがって、例えば、投与処方計画が注射前の最小時間を指定する場合、または注射が、同一ではないが隣接する場所に一連の注射として実行される場合、注射コントローラは、対応する注射プロトコルのすべての規則が確実に遵守されるように注射装置100の起動を監視できる。
【0076】
いくつかの例では、無針経皮注射器ヘッドは、注入物を収容するための取り外し可能なカートリッジとして形成される。取り外し可能なカートリッジは、注入物を所定の形状を有する流れで射出するための所定の形状を有する開口部を有する。いくつかの例では、無針経皮注射器は、可動式カートリッジドア機構を含む。ユーザは、可動カートリッジドア機構を操作して(interact with)、カートリッジを無針経皮注射器に装填し、カートリッジを無針経皮注射器から取り外すことができる。
【0077】
上記の説明は、主に、皮下深さまでヒト組織を介して治療薬を注入するための方法および装置に関するものであるが、いくつかの例において、上記の方法および装置は、他のより浅いまたはより深い深さまでヒト組織を介して治療薬を注射するために使用されることに留意されたい。例えば、これらの方法および装置は、真皮に治療薬を浅く注射するために、または皮下層の脂肪および結合組織を経て患者の筋組織までより深く注射するために使用してもよい。
【0078】
1つの態様において、本明細書で企図されるような注射器は、注射前の位相におけるプランジャーの動作中に、注入物のカートリッジ内の気泡の圧縮を監視することによって改良することができる。治療薬などの液体注入物のカートリッジが、法的な規制要件または製造上の人為産物のいずれかとして気泡を含む場合、これがなければ一般に非圧縮性の注入物体積に圧縮性領域が導入されてしまうことにより、注射の正確な制御がより困難となることがある。気泡が高度に圧縮可能である(例えば、圧縮されている間)の注入の位相を、気泡が比較的非圧縮性である注入の位相から分離することによって、制御システムを改善させることができる。一般に、気泡が十分に圧縮されると(例えば、穿刺位相中の平衡圧力またはその付近で)、無針注射器のプランジャーの速度が、標的への注入物の送達のための穿刺速度に変更される。こうした方法で注入物の送達前に気泡の圧縮を検出することで、目標注射プロファイルをより正確に再現するよう注入物の流れを制御することができる。例えば、注射器制御モデルの積分器誤差を軽減し、流れを最適化/最大化し、注射器の応答(例えば、流れの速度やプランジャーの動き)のオーバーシュートを最小にすることができる。
【0079】
1つの態様では、注入物の負荷がない場合の注射器ハードウェアの挙動をモデル化するオープンまたはフリーランニングモデルが作成される。このモデルは注射用の流体を射出することなくプランジャーを直線的に移動させるように動作しているシステムのプランジャースピードやプランジャー位置などのフリーラン特性の推定値を提供するものである。このフリーラン状態はその性質が一般的に線形であるため、医療機器用のマイクロコントローラなどの計算プラットフォームに展開できる分析解が容易になる。
【0080】
フリーランシステムモデルは、二階線形常微分方程式(「ODE」という)で表すことができる。
【0081】
【0082】
ここで、
C
1は、アクチュエータから見たシステム全体の慣性を
で表したものであり、
C
2は、アクチュエータから見たシステム全体の減衰を
で表したものであり、
θ'(t)は
で表した回転速度であり、
θ''(t)は
で表した回転加速度であり、
τは
で表したモーターにより印加されるトルクである。
【0083】
二階非同次線形方程式の一般解は次の通り。
【0084】
【0085】
ここで、θ
cは余解、θ
pは特殊解である。ODEを余解について解くために、式1を0に等しくし、以下の形式の一般解を仮定する。
【0086】
特性多項式は次の通り。
【0087】
【0088】
特性根について解くと次が得られる。
= (0, -
)
【0089】
この解には2つの異なる実根があり、次の2つの解を与える。
および
【0090】
余解は次の形式である。
【0091】
【0092】
特殊解は、非同次方程式を満たす任意の関数が必要である。方程式1については、未定係数法を用いて形式を決定し、ここで、
である。
【0093】
【0094】
【0095】
すると次の特殊解が得られる。
【0096】
【0097】
一般解は、θc(式4で表される)とθp(式5で表される)を式2にあてはめることで得られる。
【0098】
【0099】
定数k
1とk
2の解は、初期条件を次のように仮定して求めることができる。
および
【0100】
この結果、方程式6から次のように一組の方程式が得られる。
【0101】
【0102】
最終的に、k1とk2、を式6に代入することで解を得ることができる。
【0103】
【0104】
この解は、初期位置θ0、初期回転速度θ’0、モータートルクτ、時間ステップtが与えられたときの注射装置のフリーランプランジャー位置を推定するのに使用できる。方程式7で位置を時間微分すると、速度の方程式が得られる。
【0105】
【0106】
システム慣性C1は物理システムから導かれる。モデルが物理システムを正確にシミュレートするためには、慣性による負荷を考慮する必要がある。慣性は、アクチュエータアセンブリのすべての可動部品によって与えられ、それらは次を含む。
【0107】
モーター(Im): Maxon ECX 16の内部可動部分の慣性。この値はモーターのデータシートに記載されている。ECX16に付いて、データシートにはローター慣性は1.2 g ・cm2または1.2e - 7 kg・cm2と明記されている。
【0108】
ギア1 (IG1): これは、モーター出力軸に取り付けられている第1の歯車である。慣性は、ギアの寸法と材質が与えられれば、Solidworksや他の適切なモデリング環境で求めることができる。これをSolidworksで計算し、8.9e - 10 kg・cm2が得られた。
【0109】
ギア2 (I
G2): これは、モーター出力軸に取り付ける第2歯車である。ギヤの寸法と材質からSolidworksで慣性を求めた。その回転速度は、モーター軸の回転速度とは異なるため、ドライブチェーンを介して反映される慣性を計算することになる。慣性は、ドライブトレインを介して変換される前に、5.862e - 7 kg・cm
2であると計算された。
【0110】
親ねじ(I
LS): 親ねじについては、線形に移動する質量の慣性がモーターの回転慣性にどのように影響するかを特定する必要がある。
【0111】
この慣性は歯車列にも作用するので、歯車2と同様に変換する。
【0112】
モーターでの回転慣性負荷の総和は、上記の各部分を合計することで得られる。
【0113】
システムの減衰定数C2は、注射時に物理的装置からデータを取得し、モデル誤差を最小にするC2の値を選択することで推論した。一般的に上記で記述した回転モーターによって駆動される無針注射器の1つの物理的な例では、計算値は15.0 e-7 (N・m・s)/radであった。
【0114】
上述の手法により、プランジャー速度の推定値が実際の速度から50 mm/s以内で、注射器が気泡圧縮位相にある定常フリーラン時には実際の(測定)速度から25 mm/s以内に収束するモデルが作成された。実際の誤差は、装置によって異なる場合があり、注入速度、流体粘度、温度などの他の状況に依存する場合があることは理解されよう。フリーランニングまたは無負荷プランジャー速度を推定するための他の技術も、上記に加えてまたはそれに代えて採用してもよく、本明細書で企図されるような制御システムでの使用に適した推定値を提供する任意の技術も、上記に加えてまたはそれに代えて、本開示の範囲から逸脱せずに速度推定値を与えるために使用してよいことが理解されよう。また、注入物を含むプラスチックカートリッジの変形などの特定の他の物理的特性を考慮してもよいことに留意されたい。システムのこの物理的特性および他の物理的特性を考慮することなく満足のいくモデルが作成されたが、これらの側面も、例えば、ルックアップテーブル、較正、付加的なモデル化、またはこれらのいくつかの組み合わせを使用してモデル化できる。これらの他の物理的側面を考慮しない場合、特に大きな変化のある期間(例えば、高加速時)には、物理的応答がモデル応答に遅れることが観察されている。このため、特定の条件下、特に気泡の圧縮が予想される時間では、予想以上の測定誤差が生じることがある。これを考慮するために、常時または推定速度が大きく変化する時に、気泡圧縮の誤検出を緩和するため、より大きな閾値を使用して推定速度と実際の速度との間の誤差を評価してもよい。
【0115】
一般に、注射中では、このモデル(モーターコントローラ出力などの制御入力に応答するフリーランニング・プランジャー速度の推定)は、注射器からのリアルタイム測定値の収集と同時に実行することができる。気泡の圧縮位相では、このモデルは、一般に測定された挙動と一致するはずである。しかし、気泡が完全な圧縮状態に近づくと、カートリッジから注入物を押し出すプランジャーの負荷動作は、フリーランニングモデルから大きく逸脱することになる。この誤差を利用して、気泡が実質的に完全に圧縮されたことを検出し、その時点でコントローラは気泡圧縮スピードから、注射プロファイルに従って注射器から注入物を押し出すことを意図した流体射出スピードに変更することができる。
【0116】
この文脈での「完全圧縮」または「実質的に完全圧縮」は、様々な物理的状態を指す可能性があることを理解すべきである。一般に、空気などの気体(または、注入物とともにカートリッジに含まれる他の不活性、無菌、または他の気体)の圧縮性は、圧縮または加圧によって変化する。したがって、本明細書で言う「完全圧縮」の状態は、特定の物理的な圧縮の程度を指す必要はなく、代わりに、残りの注入物を、例えば、圧縮性の気体の存在がない非圧縮性流体または実質的に非圧縮性の流体として制御して、所望の注入速度プロファイルを達成できる状態を一般的に指すことができる。実際上の問題として、この完全圧縮の状態は、定常状態の注射動作中の圧縮量に実質的に等しい気体の圧縮を指すことができ、または、これは、圧縮性が所定の閾値未満に低下した圧縮、または、物理動作とフリーランニングモデルとの間で意味のある誤差信号が検出できる気体の圧縮、または本書で企図するような注射器の動作を制御するのに有用な他の定量的、物理的、もしくは他の圧縮状態を指すことができる。
【0117】
図9は、注射器を動作させるための方法のフローチャートである。より具体的には、方法900を用いて、注入物と気泡を含むチャンバから注入物の流れを噴出させるために無針注射器を動作させることができる。一般に、上述のモデルは、制御信号に対するプランジャーの応答、例えば、特定の制御信号または入力信号に対してプランジャーが移動すべき速度を推定するために使用できる。動作時には、実際の速度も測定して、モデルから推定された速度と比較することができる。実際の速度が推定速度から所定の閾値だけずれたとき、例えば、誤差がある最小量を超えたとき、注射器のコントローラは、カートリッジ内の気泡を圧縮するように選択された気泡圧縮速度から、流体を無針注射器の穿刺速度でカートリッジから射出するように選択された注入速度に変更可能である。
【0118】
方法900は、本明細書に記載された任意の注射器などの注射器を準備することから始めることができる。これは、コントローラと、注入物および気泡を含むカートリッジと、プランジャーと、ノズルまたは他の注入オリフィスと、コントローラからの制御信号に応答してプランジャーを駆動する駆動システムとを有する無針注射器を含むことができる。注射器は、注射の開始を制御し、動作中に注射器の動作を監視するための任意の数のセンサなどを含むこともできる。
【0119】
ステップ902に示すように、方法900は、制御入力に対する注射器のフリーランニング応答の特徴を示す、上述したモデルのいずれかのようなモデルを与える段階を含んでもよい。例えば、これは、カートリッジ内に注入物が入っていないチャンバへのプランジャーの駆動システムの動作に対する無針注射器の応答をモデル化できる。上述のように、このモデルは、制御信号またはモーター駆動信号などの入力を推定回転速度または直線速度に関連付ける解析的に開発されたODEモデルなどの任意の適切な制御モデルを含んでもよい。また、このモデルは、カートリッジの変形、モーターの始動、または制御入力に対する応答に影響を与える可能性のあるシステムの他の物理的側面を考慮するために、上述のように改良してもよい。一般に、このモデルは、注射の間にリアルタイムでの実行および使用に適した任意の方式で、注射器のコントローラのメモリに格納することができる。
【0120】
別の態様では、このモデルは、装置のモデル化されたフリーランニング応答または経験的に観察された挙動に基づく一般化を含んでもよい。例えば、このモデルは、それを上回れば十分な気体圧縮が推測される駆動電流閾値を与えるように簡略化してもよい。このような閾値は、プランジャーの初期加速時に、例えば、高い加速率を達成するために圧縮のかなり前に電流スパイクがあるときには、一般に適用されないことは留意されるはずである。実際には、この電流閾値は、定常速度(プランジャー、またはプランジャーを駆動するモーターのいずれか)が維持されている段階において適用される。一般に、定常状態では、駆動電流も同様に定常状態を維持することが予想される。しかし、システムが、例えば、非圧縮気体がプランジャーの前進に応答して圧縮されているが、流体が注射器から吐出されていないときなどの無負荷状態から負荷状態または圧縮状態に移行すると、一定の速度を維持するために必要な駆動電流の量が増加することになる。本明細書では閾値を超えるスパイクというが、本開示の目的では、「スパイク」は、フリーランニングレベルと負荷レベルとの間のレベルへの駆動電流の任意の増加を含み得ることは理解されるであろう。上述のように、この閾値の下限として使用されるフリーランニングレベルは、モデル化または予測された電流、過去の挙動に基づく制御パラメータとして与えられた閾値、または現在の注入時、例えば、初期電流ピークおよび関連する加速の後に取り込まれた測定値でもよい。負荷レベルの上限は、典型的には、注射時に流体を射出している間に、モーターを駆動するのに必要な程度の電流になるはずである。圧縮状態から注射状態へ移行するための閾値は、これらの上限と下限との間の任意の値でよく、駆動電流(または対応する制御信号)の数値または比(例えば、圧縮位相中に定常状態の速度に達すると観測される実際の定常状態駆動電流に対するもの)であってよい。
【0121】
一般に、チャンバは、例えば、上述したような無針注射器用の取り外し可能かつ交換可能なカートリッジでよい。注入物は、注射可能な薬剤を含むことができる。
【0122】
ステップ904に示すように、方法900は、注射器のプランジャーを動作させる段階を含むことができる。例えば、これは、駆動システムを用いてプランジャーを第1速度で動作させ、チャンバからノズルを介して注入物を変位させる方向にプランジャーを移動させる段階を含んでもよい。一般に、第1速度は、穿刺速度とは異なっていてもよく、有用には、穿刺速度よりも大きくてもよい。より高いスピードで動作させることにより、注入物が首尾一貫した流れまたは平行流として注射器から放出開始する前の短い期間で、最大量の気泡の圧縮が可能になる。一態様では、第1速度は、駆動システムによって達成可能な最大速度、穿刺速度より実質的に大きい速度、または閉じ込められた気泡を比較的非圧縮性の状態まで容易に急速圧縮する穿刺速度より大きい他の速度でもよい。
【0123】
ステップ906に示すように、方法900は、例えば、注射器への入力を示す制御信号または他のデータを、この入力に対する注射器の応答を推定するモデルに適用することにより、注射器の応答を推定する段階を含むことができる。本明細書に記載される無針注射器の1つなどの注射器の場合、これは、駆動システムの動作中に無針注射器の応答をモデルで推定し、それによって推定応答を与える段階を含んでもよい。上述のように、この推定応答は、より具体的には、例えば、ノズルから注入物を押し出すことなくプランジャーを移動させている間の、フリーランニングまたは無負荷応答でよい。この応答は、より具体的には、線速度(例えば、プランジャーの)、回転速度(例えば、駆動モーターの)、またはモデル化できる一方で、他方では注射器の動作中に物理的に測定できる他の任意の応答を含んでもよい。
【0124】
ステップ908に示すように、方法900は、入力に対する無針注射器の応答を測定する段階を含んでもよい。例えば、これは、駆動システムの動作中にセンサで応答を測定し、それによって、測定された応答を与える段階を含んでもよい。これは、モデルによって与えられる推定値と比較するのに適した任意の応答を測定する段階を含んでもよい。これは、例えば、モデルおよびセンサが共に線速度を与えるような直接的な比較を含んでもよい。また、間接的な比較、例えば、モデルが線速度を与え、センサが直線位置、回転位置、回転速度、またはモデル出力に対応する特性を計算または測定するために使用できる他の任意の測定基準を与える場合、これは、上記に加えてまたはその代わりに間接的な比較を含むことができる。
【0125】
ステップ910に示すように、本方法は、(モデルからの)推定された応答と(センサからの)実際の応答との比較に基づいて、注射器を制御する段階を含んでもよい。特に、これは、測定された応答が推定された応答の所定の閾値内にある間は、気泡の非圧縮状態を推測し、プランジャーの動作を概ね第1速度に維持し、測定された応答が推定された応答から所定の閾値を超えたとき、気泡が圧縮された状態を推測し、プランジャーの速度を穿刺速度に変更することを含んでもよい。
【0126】
第1速度は、例えば、穿刺速度より大きくてもよく、および/または、所定の範囲内で制御される可変速度であってもよい。別の態様では、これは、プランジャーの最大達成可能速度を含むか、できるだけ迅速に穿刺/注射位相に移行するように選択される穿刺速度よりも大きい他の閾値を含んでもよい。別の態様では、穿刺速度は、無針注射器から注射を受ける患者の皮膚を穿刺するのに十分な速度でチャンバから注入物を吐出するために使用される速度とすればよい。
【0127】
穿刺位相への移行に関する誤差の所定の閾値は、例えば、物理的な注射を観察することによって得られる経験的な閾値、流体力学、注射器の動力学、気体圧縮などに基づいて決定される分析的閾値、または本明細書に記載する注射器の動作を制御するための任意の他の適切な閾値を含む注射器の推定される応答と実際の応答との間の物理的に意味のあるずれを検出するための任意の適切な閾値でよい。同様に、圧縮状態の気泡は、本明細書に記載されるような注射器の動作を制御する目的で、複数の方法でその特徴を示すことができる。例えば、圧縮状態は、気泡が、所定の期間に穿刺速度でプランジャーを動作させたときに少なくともチャンバに及ぼされる圧力まで圧縮された状態でもよい。また、この圧縮状態には、他の任意の分析代用(analytic proxy)を付加的に、またはそれに代えて用いてもよい。例えば、圧縮状態は、気体状態の現在の圧縮性(例えば、残りの注射プロセスの文脈において気泡が実質的に非圧縮性となった)、気泡の体積の変化、プランジャーの動きに対する気泡の応答の弾性、または注射の気泡圧縮段階から注射の液体射出段階へ変化する時期を決定するために有用な他の任意の適切な測定値またはその代用に関して測定することができる。これには、明確に定義された物理的意義のない測定値を付加的にまたは上記の代わりに含むこともできるが、穿刺速度に切り替える際の制御エラーまたは変動性を低減または排除するために気泡が十分に圧縮された時を特定するために、その測定値を一貫して適用できることが条件となる。
【0128】
一態様では、方法900は、測定された応答が所定の閾値を超えるとき、注射器・カートリッジ相互作用を含む無針注射器の負荷動作に関する第2モデルに切り替える段階をさらに含んでもよい。この時点で、気泡は効果的に圧縮されており、注射器は、カートリッジまたは注射器のノズルから注入物の穿刺流を発生するように動作させることができる。この第2位相の動作は、例えば、決定論的制御信号に基づく注射器の開ループ制御によって、決定論的に制御してもよく、したがって、第2モデルは、所望の注射プロファイルの開ループ制御モデルを含んでもよい。別の態様では、これは制御モデルを含んでもよく、例えば、このモデルでは、例えば注射サイクル全体を通して、リアルタイムで制御注射プロファイルを実現するために、位置または他のパラメータが測定され、注射プロファイルの目標パラメータと比較される。
【0129】
別の態様では、方法900は、所定の間隔の後に、プランジャーの速度を穿刺速度から薬剤送達速度に減速することなどにより、二位相性注射プロファイルを実現することを含んでもよい。第2モデルと同様に、これは、注射プロファイルの開ループ制御、注射プロファイルのフィードバック制御、またはこれらの何らかの組合せを含んでもよい。それに加えまたはその代わりに、流体送達の過程おける送達量の低速かつ一様な低下や、例えば、ウィンドウ内におけるおよび/または注射器の制御限界による概ね定常的な送達速度など、他の注射プロファイルを使用してもよい。
【0130】
別の態様において、本明細書では、チャンバから無針注射を行うための方法が開示されており、チャンバはプランジャーと注射開口部を有し、チャンバは注入物と気泡を含む。本方法は、チャンバのプランジャーを第1速度で動作させることによって第1注射位相を開始する段階と、第1注射位相の間に気泡の圧縮を監視する段階と、気泡が所定の圧縮状態に達すると、プランジャーを減速して、目標表面を穿刺するために選択された概ね所定の注入物速度で注入物を開口部を介して押し出すのに十分な第2速度に至らせる段階と、プランジャーを第2速度で第1時間にわたり動作させる段階と、第1時間の後、所定の量の注入物が注射開口部を介してチャンバから吐出されるまで、プランジャーを第2速度より小さい第3速度で動作させる段階と、を含むことができる。
【0131】
第1速度でプランジャーを動作させる段階は、注射器がオリフィスから注入物を吐出させ始める前に気泡が可能な限り迅速にまたは実用的に圧縮され得るように、プランジャーを最大速度で動作させるか、または、所定の圧縮速度に達するまでプランジャーを最大加速度で動作させる段階を含んでもよい。圧縮を監視する段階は、例えば、一般に上述したような制御モデルからのずれを監視する段階を含んでもよい。監視する段階は、上記に加えてまたはそれに代えて、圧縮を直接的にまたはプランジャーバックフォースのような代用を通して監視するための他の技術を含んでもよい。一態様では、気泡の圧縮を監視する段階は、プランジャーのバックフォースを監視する段階を含んでもよい。別の態様では、気泡の圧縮を監視する段階は、注射器からの注入物の流れを監視する段階を含んでもよい。別の態様では、気泡の圧縮を監視する段階は、気泡の所定の圧縮状態を達成するための第1注射位相の圧縮時間間隔を推定する段階と、第2速度に切り替える前に圧縮時間間隔にわたり第1速度で動作させる段階とを含んでもよい。例えば、これは、気泡の画像を取り込み、圧縮時間間隔を計算または他の方法で推定するために気泡の体積を計算することにより、圧縮時間間隔を推定する段階を含んでもよい。別の態様では、ビデオデータを取得して実際の圧縮状態を図形で監視し、これを用いてプランジャーの動作を穿刺速度に変更する時を決定してもよい。
【0132】
別の態様において、本明細書で企図される注入物送達のための装置は:一定の体積の注入物を含むチャンバおよび出口ポートを有するカートリッジと;プランジャーに結合され、プランジャーによってカートリッジの出口ポートからの注入物を送達するために構成されたリニアアクチュエータであって、リンク機構を含むリニアアクチュエータと;リンク機構に機械的に結合された回転モーターと;プランジャーによってカートリッジに加えられる圧力を監視するセンサと;回転モーターに結合されたコントローラとを含み、当該コントローラは、上記装置の動作を制御して、上記装置に:チャンバのプランジャーを第1速度で動作させることによって第1注射位相を開始する段階と;第1注射位相の間にセンサで気泡の圧縮を監視する段階と;気泡が所定の圧縮状態に達すると、プランジャーの速度を、注入物を概ね所定の注入物速度で開口部を介して押し出すように選択された第2速度に変更する段階と;プランジャーを第2速度で第1時間にわたり動作させる段階と;第1時間の後、所定の量の注入物が注射開口部を介してチャンバから吐出されるまで、プランジャーを第2速度より小さい第3速度で動作させる段階と、を実行させるよう構成されている。
【0133】
上記装置は、無針注射器とすることができる。センサは、力覚センサを含んでもよい。また、センサは、上記に加えてまたはそれに代えて、チャンバ用の圧力センサを含んでもよい。また、センサは、上記に加えてまたはそれに代えて、回転モーター用のトルクセンサを含んでもよい。別の態様では、センサは、リニアアクチュエータ用の瞬間接触力センサを含んでもよい。
【0134】
別の態様では、本明細書で企図される無針注射器は、一定の体積の注入物を含むチャンバおよび出口ポートを有するカートリッジと;チャンバに摺動可能に結合されたプランジャーであって、一定の体積の注入物をチャンバ内に保持するように位置決めされたプランジャーと;プランジャーに結合された駆動システムであって、プランジャーをチャンバ内に駆動して、それによって注入物を出口ポートから押し出すように動作可能な駆動システムと;プランジャーによってカートリッジに加えられる圧力を監視するセンサと;カートリッジ内に注入物がない状態で駆動システムおよびプランジャーの動作に対する無針注射器の応答の特徴を示すモデルを格納するメモリ;駆動システムに結合されたコントローラとを含み、当該コントローラは、無針注射器の動作を制御して、無針注射器に:駆動システムによりプランジャーを第1速度で動作させる段階であって、第1速度は注入物の穿刺速度とは異なる第1速度で動作させる段階と;駆動システムの動作中にモデルを用いて無針注射器の応答を推定し、それによって推定された応答を与える段階と;駆動システムの動作中にセンサで無針注射器の応答を測定し、それによって測定された応答を与える段階と;測定された応答が推定された応答から所定の閾値内にある間は、気泡の非圧縮状態を推測し、プランジャーの動作を概ね第1速度に維持する段階と;測定された応答が推定された応答からの所定の閾値を超えたとき、気泡の圧縮状態を推測してプランジャーの速度を穿刺速度に変更する段階と、を実行させるよう構成されている。
【0135】
図10は、2つの制御技法の比較を示す。一般に、1つの方法は気泡検出を用いず、もう1つ方法は本明細書に記載されるように気泡検出を用いる。
図10において、気泡検出方法は、一般に、積分器ワインドアップ誤差および流体射出のための目標速度に到達する時間を長くする関連するアンダーシュートおよびオーバーシュートを回避することが分かる。
【0136】
図11は、回転モーターを動力とする注射器の無負荷動作のモデルである。一般に、このモデルは物理的な装置と並行して、例えば装置のプロセッサ上で実行され、注射器の予想される動作を推定する。
【0137】
図12は、
図11のシステムの動作を推定する時間連続方程式(time continuous equation)である。流体の物理的射出のような負荷が注射器に課されると、実際のシステムの挙動は、センサで(例えば、プランジャー速度、プランジャー力、回転モータースピード、または他の任意の検出可能な変数について)検出できると共に一定の体積の射出物内の気泡が圧縮状態になった時を判断するために使用できる様態で、この連続推定からずれることになる。
【0138】
前述の技法は、無針注射器などの制御を改善するために有利に用いられうるが、この分析的アプローチからの洞察(特に、量または速度を制御する前に、注射器のチャンバ内の閉じ込められた気泡または一定体積の他の気体は、プランジャーの直線運動が、注入物の装置からの変位に直接かつ機械的に変換されるように十分に圧縮されるべきであること)は、無針注射器の制御を改善するために他の方法でも使用できることが理解されるであろう。
【0139】
例えば、1つの態様では、注射器の出口オリフィスで、チャンバから流体を変位させるのに十分な気体圧縮を示す量の流体が検出されるまで、注射器はより大きい注射前速度で動作することができる。別の態様では、例えば、上記量の気体がチャンバ内の既知の位置で明確な(discrete)可視気泡を形成する場合、未圧縮の気泡の画像を用いて、気泡体積を推定し、気泡圧縮のための初期高速動作の適切な推定期間を計算できる。別の態様では、プランジャーのバックフォースは、気泡が圧縮されるときに増加することが予想される。このバックフォースは、直接測定してもよいし、プランジャー速度の低下(または目標速度を維持するために必要な駆動電流の増加)などの代用を介して測定し、例えば、プランジャー速度が適切な圧縮状態を示す所定の絶対もしくは相対量または閾値だけ低下したときに、気体圧縮速度から穿刺速度へ低下させるのに適した時を検出するために使用することができる。この閾値は、経験的に導き出してもよいし、または注射中に検出するための目標値を提供するために、注射前に他の方法で推定、計算、または測定してもよい。これらの技法は、例えば、注入物の粘度、注入オリフィスの直径、または穿刺速度への移行に適した気泡圧縮量に影響を与える可能性のある他の要因に従って変化させてもよいことが理解されよう。
【0140】
1つ以上の実施形態によれば、無針注射器が提供される。この無針注射器は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたカートリッジと、チャンバに摺動可能に結合されると共にチャンバ内に配置されたプランジャーと、チャンバ内でプランジャーを作動させるようにプランジャーに作動的に結合されたモーターとを含みうる。
【0141】
カートリッジは、出口ポートと、一定の体積の注入物を保持するためのチャンバとを含むことができる。プランジャーは、チャンバ内で摺動させたときに、出口ポートを介して上記一定の体積の注入物を排出するように位置決めできる。無針注射器は、モーターに作動的に結合されたコントローラをさらに含んでもよい。コントローラは、第1送達プロファイル、第2送達プロファイル、および第3送達プロファイルのいずれかに従ってプランジャーを選択的に動作させるように動作可能としてもよい。
【0142】
図13に、無針注射器の一実施形態を示す。
図13を参照すると、部分的には
図1の番号付け規則を用いて、無針注射器100は、破線矢印として図示されたチャンバを通る流れの軸101を有する出口ポートまたはノズル108をその一端に有するチャンバ106を含む。チャンバ106は、本明細書に記載されるような注入物150と、一定の体積の気体151とを含む。一定の体積の気体151は、注入物150内にまたはそれに隣接して気泡を形成することがあり、または任意の数のより小さい気泡として注入物150全体に分布するか、もしくは注入物150内に溶解していることがあり、これらのうちのいずれも、より具体的な意味が明示的に記載されるかまたは他の文脈から明らかでない限り、ここでは一定の体積の気体または気泡として同義に言及される。上記一定の体積の気体151は、チャンバ106内に注入物150を封入するために使用される製造工程で導入されることがある。これは、例えば、製造工程の人為産物や、無針注射器100の規制要件または動作要件によって指定された意図的に含まれる一定体積の気体でありうる。無針注射器100が、上記一定の体積の気体151が注入物150の上部に上昇し、プランジャー120に隣接するように配向されると、上記一定の体積の気体151は、注入物150の上にヘッドスペースを形成できる。
【0143】
無針注射器100は、上記一定の体積の気体151の前にチャンバ106内に配置されたプランジャー120をさらに含む。無針注射器100は、モーターに作動的に結合された先端(nib)121を使用するモーター(図示せず)をさらに含む。先端121は、プランジャー120に隣接して配置され、モーターが作動したときに流れ軸101に沿って移動するように構成されている。
【0144】
図13を引き続き参照すると、注射に先だって、プランジャー120は、隙間121aによって先端121から離間されてもよい。プランジャー120と先端121との間の隙間121aの存在により、モーターが作動したときに先端121が高速に加速することができ、プランジャー120の移動が開始される前に先端121がより高速に達することを潜在的に可能にし、プランジャー120をチャンバ106内の流れ軸101に沿って移動させることが可能になる。先端121がプランジャー120に衝突した後(または、隙間121aのないプランジャー120の場合、作動時に直ちに)、プランジャー120およびチャンバ106内の上記一定の体積の気体151は圧縮され、したがってカートリッジ106内の注入物150が加圧される。これらの条件下では、プランジャー120の速度により、カートリッジ106内の注入物150および上記一定の体積の気体151の圧縮が急速に発生する可能性がある。
【0145】
プランジャー速度およびプランジャー120および/またはモーターへの負荷を測定するために、様々な技術が使用され得ることは理解されるであろう。例えば、モーターは、モーターの角度位置に対応する信号を与えるロータリエンコーダを含んでもよい。これは、角度位置の変化を示すコントローラへの入力として与えることができ、このコントローラが、次にプランジャーの直線位置の変化を計算できる。同時に、コントローラは、例えば、注射器の駆動プロファイルに従って、モーターに駆動電流を供給できる。コントローラによって(またはコントローラからの制御信号に応答して)供給される駆動電流を使用して、モーターの負荷を推定できる。エンコーダ位置および駆動電流は有用で容易に利用できる制御信号であるが、本明細書に記載されるように位置および負荷を測定するための他の様々なセンサおよび/または技術が使用できることが理解されよう。例えば、位置は、光学的、電子的、音響的な方法などにより測定することができる。同様に、プランジャーへの負荷は、装置内に配置された力覚センサを使用して、または(コントローラがモーターに供給しようと試みる駆動電流と区別して)モーターに実際に出力される駆動電流を測定することによって、測定してもよい。
【0146】
例えば、流体(および気体)のカートリッジが注射器に挿入され、モーターに結合された先端121が移動されてプランジャー120と係合する、様々な注射前の制御プロファイルが使用されうることも理解されるであろう。一態様において、注射が開始される前に、先端121をプランジャー120と係合させてもよい。別の態様では、先端121は、プランジャー120の近くに配置されるが、プランジャー120と機械的に係合しない。例えば、いくつかの実施形態では、先端121とプランジャー120との間の距離121aは、約1 mmないし約10 mmで、例えば、約2 mmないし約8 mm、約3 mmないし約7 mm、または約5 mmで、例えば、約1 mm、約2 mm、約3 mm、約4 mm、約5 mm、約6 mm、約7 mm、約8 mm、約9 mm、または約10 mmとしてもよい。
【0147】
本明細書に開示されるように、1つの態様において、無針注射器は、注射送達工程の複数の位相に対応する次の3つ以上の別々の送達プロファイルに従って動作してもよい:例えば、プランジャー120に係合する前にモーターを加速させ、カートリッジ内の気体の初期圧縮を検出することによって注射を開始する第1送達プロファイル(例えば、気体圧縮プロファイル)と、注入物が透過性バリアを貫通するのに十分な速度でカートリッジから吐出される間に初期注射速度に急速に移動する第2送達プロファイル(例えば、穿刺プロファイル)と、注入物を被験者に送達するのに十分な注入物速度を維持する第3送達プロファイル(例えば、送達プロファイル)である。3つのプロファイルの各々の間の移行は、無針注射器のコントローラを用いて実行できる。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3送達プロファイルの各々の間の移行は、モーターおよび/またはプランジャーへの負荷の関数としてもよい。いくつかの例では、負荷は、例えば、モーターに供給される電流を測定する回路から信号を受信することによって、測定してもよい。別の態様では、例えば、コントローラがモーターのために要求または出力する駆動電流に基づいて、負荷を推測してもよい。
【0148】
第1送達プロファイルでは、プランジャーは最初にゼロから第1速度(必ずしも穿刺プロファイル内の目標速度より大きい高速度、例えばモーターの最大(回転)速度または最大速度に近い速度ではないが)まで加速される。この最初の加速は、典型的には、モーターに供給される電流の最初のスパイクを伴うはずである。第1速度に達すると、駆動電流は、プランジャーを第1速度で駆動するために必要な定常状態の電流程度まで減少する。この位相の間は、モーターに結合された先端は、上述のようにプランジャーと係合し、プランジャーのチャンバ内での前進を開始できる。しかし、チャンバ内の気体がより圧縮されると、プランジャーの速度を維持するために必要な駆動電流は増加する。例えば、チャンバ内の気体が(例えば、注射中に気体がそれ以上圧縮されない状態まで、または気体の圧縮性が流体とほぼ等しい状態まで)圧縮されるとすぐに、モーターへの負荷は、注射のための開口部を介して流体を駆動することによって加えられる負荷とほぼ等しくなる。チャンバの内容物がこの状態に近づいていることを示す(例えば、所定の閾値を超える気体の圧縮を示す)駆動電流のスパイクが発生するとすぐに(プランジャーの速度を維持しながら)、コントローラは、注射器から流体を射出するための第2送達プロファイルに移行してもよい。
【0149】
実際には、第1送達プロファイルは、モーターの最大速度またはその付近の目標速度を使用するか、または最大加速度でプランジャーを動作させることができる。第1送達プロファイルにおいて、上記一定の体積の気体が十分に圧縮されると、無針注射器のプランジャーの速度は、目標への注入物の送達のために第2送達プロファイルに従って調節してもよい。すなわち、実質的に一定の駆動電流が供給されている間(例えば、定速動作中)、モーターに供給される測定された電流のスパイクおよび/または速度の低下によって示される気体の圧縮の検出時に、プランジャーの動作を、第1送達プロファイルから第2送達プロファイルに移行させてもよい。
【0150】
大きな利点として、圧縮状態を測定し、注射プロファイルの実行を開始する前に十分な圧縮を待つことで、圧縮状態の変化が、注射時の注入物速度の制御に干渉することを防ぐことができる。注入物の送達前に上記一定の体積の気体の圧縮をこうした方法で検出することで、目標注射プロファイルをより忠実に再現するように注入流を制御することができ、さらに積分器ワインドアップやオーバーシュートなどの人為産物を緩和することができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、第1送達プロファイルに従って動作することにより、プランジャーを約300 m/sないし約500 m/sの速度で動作させることができる。例えば、第1送達プロファイルは、プランジャーを、約300 m/sないし約500 m/s、約320 m/sないし約480 m/s、約340 m/sないし約460 m/s、約360 m/sないし約440 m/s、約380 m/sないし約420 m/sで、または約400 m/s、例えば、約300 m/s、約310 m/s、約320 m/s、約330 m/s、約340 m/s、約350 m/s、約360 m/s、約370 m/s、約380 m/s、約390 m/s、約400 m/s、約410 m/s、約420 m/s、約430 m/s、約440 m/s、約450 m/s、約460 m/s、約470 m/s、約480 m/s、約490 m/s、約500 m/s、もしくは500 m/sより速い速度で動作させてもよい。
【0152】
本明細書に記載されるように検出可能な方法でプランジャーによって上記一定の体積の気体が圧縮されると、注射器は、注入物の高速の流れを発生するために第2送達プロファイルに移行することができる。本明細書に記載されているように、第2送達プロファイルは、被験者の皮膚などの透過性バリアを貫通可能な注入物速度を発生させるのに十分な、短い持続時間の高い注入物速度を目標とする。これは、例えば、穿刺に適した速度まで急速に加速することを含むことができる。上記の一例は、
図14に示されており、高プランジャー速度が短い持続時間にわたって維持され、その後、注入物が透過性バリアを貫通すると減少し、プランジャー速度の減少が、注入物または流れ速度の上昇を生じさせる。
図14において、駆動電流は、目標注射速度まで加速する前に、ほぼゼロまで、ゼロまで、または負まで(プランジャーにブレーキまたは反対の力をかけるために)瞬間的に減少してもよいことことに留意されたい。これは、有利なことに、初期目標速度のオーバーシュートを軽減し、装置から射出される流体の速度の大きな初期の揺れを防止することができる。
【0153】
この第2位相における初期目標速度および速度範囲は、第1位相の間よりも相当に小さくてもよいことに留意されたい。例えば、第2送達プロファイルに従った動作中に発生される注入物速度は、約150 m/sないし約250 m/s、例えば、約150 m/sないし約250 m/s、約160 m/sないし約240 m/s、約170 m/sないし約230 m/s、約180 m/sないし約220 m/s、約190 m/sないし約210 m/s、または約200 m/s、例えば、約150 m/s、約160 m/s、約170 m/s、約180 m/s、約190 m/s、約200 m/s、約210 m/s、約220 m/s、約230 m/s、約240 m/s、約250 m/s、もしくは約250 m/sを上回る値である。より一般的には、無針注射における注入物の送達に適した任意の速度または速度の組み合わせを、第2および第3プロファイルにおいて使用してよい。
【0154】
第1送達プロファイルによる動作から第2送達プロファイルによる動作への移行の一部としては、考慮すべき1つの事項には、透過性バリアを介した注入物の過貫通を避けるためにモーターへ供給される電流の制御がある。第2位相の間に、特に流体が組織を穿刺している注射の初期に、速度をよりよく制御するために、第2送達プロファイルは、モーターにほとんどまたは全く電流を供給させずに開始してもよい。
図14に示すように(x軸に沿って約5ミリ秒の時点で)、流れの速度は、駆動電流のこの瞬間的な減少があっても上昇し続けることができ、プランジャー速度が第2段階の目標初期速度に向かって急速に減少すると、流れの速度の加速は滑らかに加速し続けることができる。この構成では、チャンバ内の上記一定の体積の気体の圧縮から受ける背圧により、プランジャーの速度が遅くなることがある。
【0155】
このような条件下では、プランジャーの速度とモーターに供給される電流の両方が定常状態条件(steady state condition)になるまで、モーターに供給される電流、ひいてはプランジャーにかかる力は、プランジャーの速度の低下とは逆に増加するはずである。すなわち、動力制御モード(
図15Cに図示されており、プランジャー速度と電流の積がプランジャーに供給される機械動力の代用として使用される)で電流とプランジャー速度を一緒に制御すると、第2送達プロファイルが、プランジャー速度と、モーターに印加される電流と、無針注射器に供給される動力とが注射の持続時間において比較的安定している定常状態条件に到達するまで、無針注射器への動力制御が可能になる。例えば、この装置は、注入物が装置から物理的に送達される際に、ゆっくりと単調に減少する注射速度を採用できる。
【0156】
上記は、
図14および15A-15Cに示されており、送達プロファイルが第1送達プロファイルから第2送達プロファイルに、さらに、測定された電流とプランジャーの速度との間の定常状態条件を検出した後に第3送達プロファイルに変化する際の、プランジャー速度(
図15A)、測定されたモーター電流(
図15B)、およびプランジャー速度と測定されたモーター電流(
図15C)との積として測定された動力の変化を示している。
【0157】
いくつかの実施形態において、第1送達プロファイルによる動作中のプランジャーの平均速度は、第2送達プロファイルによる動作中のプランジャーの平均速度より大きい。この一例は、
図14に示されている。
図14を参照すると、点線で表されるプランジャーの速度は、第1送達プロファイルにおいて最も高く、第2送達プロファイルにおけるプランジャーとの衝突したすぐ後に、第3送達プロファイルの間に定常状態のプランジャー速度に到達するまで低下する。
【0158】
いくつかの実施形態では、第2送達プロファイルに従って動作することにより、プランジャーを約60 m/sないし約150 m/sの速度で動作させることができる。例えば、第2送達プロファイルは、プランジャーを、約60 m/sないし約150 m/s、約70 m/sないし約140 m/s、約80 m/sないし約130 m/s、約90 m/sないし約120 m/sの速度で、または約110 m/sで、例えば約60 m/s、約70 m/s、約80 m/s、約90 m/s、約100 m/s、約100 m/s、約120 m/s、約130 m/s、約140 m/s、150 m/s、若しくは150 m/sより高い速度で作動させることができる。
【0159】
第2送達プロファイルから第3送達プロファイルへの移行は、所定の量の注入物が出口ポートを介してチャンバから送達されるまでの、測定された電流とプランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して起こりうる。この移行に関して考察すべき1つの事項は、注入物速度が速度の下限の上方に存在し続ける間の、等減速での減少である。すなわち、第2送達プロファイルによる動作中に透過性バリアを貫通した後、プランジャーの速度、したがって注入物の速度は、第3送達プロファイルによる動作中には維持して、被験者の組織への適切な体積の注入物の効率的かつ完全な送達を実現する必要がある。注入物速度の制御および維持を達成するために、第3送達プロファイルは、プランジャー速度の制御、したがって、モーターに加えられる電流を減少させることによるプランジャーの減速の制御を含むことができる。この減速をゆっくりと単調に減少するパターンで行うことにより、流れの目標速度は、供給される制御電流に正比例して維持され得る。プランジャーのこの制御のグラフ表示を
図16Aおよび
図16Bに示す。
【0160】
いくつかの実施形態では、第3送達プロファイルに従って動作することにより、プランジャーを約80 m/sないし約120 m/sの速度で動作させることができる。例えば、第2送達プロファイルは、プランジャーを、約80 m/sないし約120 m/s、約85m/sないし約115m/s、約90 m/sないし約110 m/s、約90 m/sないし約104m/sの速度で、または約100 m/sで、例えば約80 m/s、約85m/s、約90 m/s、約95m/s、約100 m/s、約105m/s、約110 m/s、約115m/s、もしくは約120 m/sの速度で作動させることができる。一実施形態では、第2送達プロファイルは、(注入物またはプランジャーのいずれかの)一定速度を目標とし、第3送達プロファイルは、ゆっくりと単調に減少する速度を目標とする。別の態様において、第2送達プロファイルは、減少する速度(例えば、ゆっくりと単調に減少する速度)を目標とし、第3送達プロファイルは使用されない。
【0161】
1つ以上の実施形態によれば、無針注射器が提供される。この無針注射器は、出口ポートを有するカートリッジ内の流体および気体を加圧するように配置されたプランジャーと、プランジャーに作動的に結合されたモーターとを含むことができる。本明細書で説明するように、プランジャーは、チャンバ内で気体と接触するように配置でき、モーターは、カートリッジの軸に沿って直線運動でプランジャーを作動させて、カートリッジの出口ポートから流体を送り出すように動作可能とすることができる。第1送達プロファイルにおけるモーターの作動によって、プランジャーにチャンバ内の気体を圧縮させ、チャンバ内の注入物を加圧させることができる。所定の閾値を超えるカートリッジ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、無針注射器は、穿刺位相と送達位相とを含む二位相性プロファイルなどの第2送達プロファイルで動作することができる。本明細書に記載されるように、穿刺位相は、透過性バリアを穿刺するのに十分な注入物速度を生じさせることができるが、注入物が被験者の組織内に必要とされるより深く送達されないように制御される。送達位相は、一定の体積の注入物を被験者に送達するのに十分な注入物速度を生じさせることができる。送達位相は、例えば、無針注射器のモーターに供給される電流を制御することによってさらに制御され、被験者の組織内への適切な体積の注入物の完全な送達を実現する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるように、穿刺位相におけるプランジャー速度は、時間の関数として減少する。プランジャー速度のこの減少は、結果として生じる注入物速度を、被験者への注入物の過貫通をもたらす可能性が低い大きさまで減少させる。
【0162】
無針注射器は、注射開始信号に応答して、カートリッジ内の気体を圧縮するために第1送達プロファイルに従ってプランジャーを動作させ、所定の閾値を超えるカートリッジ内の気体の圧縮を検出したことに応答して第2送達プロファイルに従ってプランジャーを動作させるように動作可能とすることができる、モーターに作動的に結合されたコントローラをさらに含むことができる。
【0163】
いくつかの実施形態において、所定の閾値を超えるカートリッジ内の気体の圧縮の検出は、モデルによって予測されるフリーランニング駆動電流とモーターに供給される測定電流との間のモーター電流のずれの検出を含む。いくつかの実施形態では、カートリッジ内の気体の圧縮の検出は、プランジャーの速度を第1送達プロファイル内に維持するための所定の閾値を超えるモーター電流の増加の検出を含む。いくつかの実施形態では、カートリッジ内の気体の圧縮の検出は、所定の閾値未満へのプランジャーの速度の減少を検出することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジ内の気体の圧縮の検出は、プランジャーの速度の減少およびモーターへの駆動電流の増加を同時に検出することを含む。例えば、モーターに供給される測定電流は、モーターの回転位置を指示するモーターに作動的に結合されたエンコーダによって測定してもよく、エンコーダからのフィードバックは、プランジャーを作動させるためにコントローラが使用できる。
【0164】
1つ以上の実施形態に従って、無針注射器を用いて注入物を送達する方法が提供される。本方法は、本明細書に記載されるように、無針注射器を提供する段階を含み得る。無針注射器は、チャンバを保持するためのカートリッジを有するハウジングと、チャンバから注入物を送出するよう構成かつ配置されたプランジャーと、プランジャーに作動的に結合されたモーターと、を含むことができる。本方法は、無針注射器を用いて注射を開始することに応答して、無針注射器に、第1送達プロファイルに従ってプランジャーを動作させ、第1送達プロファイルの間にモーターに供給される電流を監視させ、モーターに供給される電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、プランジャーによるチャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、第1送達プロファイルから第2送達プロファイルに移行させ、プランジャーを第2送達プロファイルに従って動作させ、測定された電流とプランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して第2送達プロファイルから第3送達プロファイルに移行させ、所定量の注入物が出口ポートを介してチャンバから送達されるまで、プランジャーを第3送達プロファイルに従って動作させる段階を含む。
【0165】
注入物を送達する本方法のいくつかの実施形態において、第1送達プロファイルから第2送達プロファイルへの移行は、気体の圧縮と同時に、モーターに供給される測定電流のスパイクを検出した時点で、第1送達プロファイルから第2送達プロファイルに移行することを含んでもよい。注入物を送達する本方法のいくつかの実施形態では、第1送達プロファイルから第2送達プロファイルへの移行は、モーターに供給される電流を0Aないし約10Aの範囲内まで減少させることを含んでもよい。
【0166】
注入物を送達する本方法のいくつかの実施形態において、プランジャーを第2送達プロファイルに従って動作させることは、チャンバ内の気体の圧縮を維持しながらプランジャーを動作させることを含んでもよい。注入物を送達する本方法のいくつかの実施形態では、第2送達プロファイルに従ってプランジャーを動作させることは、注入物の速度が透過性バリアを貫通するのに十分であるという結果をもたらすことができる。例えば、本明細書に記載されるように、透過性バリアは、被験者の皮膚とすることができる。
【0167】
注入物を送達する本方法のいくつかの実施形態では、第3送達プロファイルでプランジャーを動作させることは、注入物が送達される際にプランジャーの速度を調節することを含んでもよい。例えば、注入物の送達中、第3送達プロファイルは、注入物の速度を減少させるためにプランジャーの速度を減少させるように構成してもよい。
【0168】
1つまたは複数の実施形態によれば、注入物の無針注射を容易にする方法が提供される。本方法は、プランジャーとコントローラに作動的に結合されたモーターを含む無針注射器など、本明細書に記載される無針注射器を提供することを含むことができる。無針注射器と共に提供されるコントローラは、本明細書に記載のコントローラでよく、このコントローラは、第1送達プロファイルでプランジャーを動作させ、第1送達プロファイルの間にモーターに供給される電流を監視し、モーターに供給される電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、プランジャーによるチャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、第1送達プロファイルから第2送達プロファイルに移行させ、プランジャーを第2送達プロファイルで動作させ、測定された電流とプランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して第2送達プロファイルから第3送達プロファイルに移行し、所定量の注入物が出口ポートを介してチャンバから送達されるまで、プランジャーを第3送達プロファイルに従って動作させることができる。
【0169】
容易にする本方法のいくつかの実施形態において、本方法は、注入物のカートリッジを無針注射器に装填するため指示をユーザに与える段階をさらに含んでもよい。容易にする本方法のいくつかの実施形態において、本方法は、無針注射器を動作させるための指示をユーザに与える段階をさらに含んでもよい。
【0170】
上述のシステム、装置、方法、工程などは、ハードウェア、ソフトウェア、又は特定用途に適したそれらの組合せで実現してよい。このハードウェアは、汎用コンピュータおよび/または専用計算装置を含みうる。これは、内部および/または外部メモリと共に、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、組み込みマイクロコントローラ、プログラム可能なデジタル信号プロセッサまたは他のプログラム可能なデバイスまたは処理回路において実施することを含む。上記に加えてまたはそれに代えて、これは、1つまたは複数の特定用途向けIC、プログラマブルゲートアレイ、プログラマブル配列論理回路、又は、電子信号を処理するよう構成できるその他の任意装置を含むことができる。上述の処理または装置の実現は、上述の装置の何れかで、或いは、プロセッサおよびプロセッサアーキテクチャの異質組合せ、または異なるハードウェアおよびソフトウェアの組合せで実行するように格納、コンパイル、または解釈可能なCなどの構造化プログラミング言語か、C++などのオブジェクト指向プログラム言語か、他の任意の高級または低級プログラミング言語(アセンブリ言語、ハードウェア記述言語、データベース・プログラミング言語および技術も含む)を用いて作成したコンピュータ実行可能コードを含んでもよいことがさらに理解されよう。別の態様では、これら方法は、その段階を実行するシステムで具現化してもよく、いくつかの方法で複数の装置間に分散されていてもよい。同時に、処理は、上述した様々なシステムなどの複数装置に分散されてもよく、または、機能のすべてが、専用のスタンドアロンデバイスまたは他のハードウェアに統合されてもよい。別の態様では、上述した処理に関連する段階を実行するための手段は、上述したハードウェアおよび/またはソフトウェアのいずれかを含んでもよい。そのようなすべての順列および組み合わせは、本開示の範囲に入ることが意図されている。
【0171】
本明細書に開示された実施形態は、1つまたは複数の計算装置上で実行されると、そのステップのいずれかおよび/またはすべてを実行するコンピュータ実行可能コードまたはコンピュータ使用可能コードを含むコンピュータプログラム製品を含んでもよい。このコードは、このプログラムが実行されるメモリ(プロセッサに関連するランダムアクセスメモリなど)、またはディスクドライブ、フラッシュメモリ、もしくは任意の他の光学、電磁気、磁気、赤外線などのデバイスもしくはデバイスの組み合わせなどの記憶装置であるコンピュータメモリに非一時的な方法で格納されていてもよい。別の態様では、上述したシステムおよび方法のいずれも、コンピュータ実行可能コードおよび/またはそれからの任意の入力または出力を搬送する任意の適切な伝送または伝搬媒体で具現化することができる。
【0172】
図中のフローチャートおよびブロック図を含め、本書で説明および図示されている要素は、要素間の論理的な境界を意味している。しかしながら、ソフトウェアまたはハードウェア工学の実施によれば、図示した要素およびその機能は、モノリシックソフトウェア構造として、スタンドアロンソフトウェアモジュールとして、または外部ルーチン、コード、サービスなどを使用するモジュールとして、またはこれらの任意の組み合わせとして、格納されたプログラム命令を実行できるプロセッサを有するマシン上でコンピュータ実行媒体を通じて実装されてもよく、そのような実装のすべてが本開示の範囲内とすることができる。このようなマシンの例としては、携帯情報端末、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、その他の手持ち形計算装置、医療機器、有線または無線通信デバイス、トランスデューサ、チップ、電卓、人工衛星、タブレットPC、電子書籍、ガジェット、電子デバイス、人工知能を有するデバイス、計算装置、ネットワーキング装置、サーバ、ルータなどが挙げられ得るが、これらに限定されるものではない。さらに、フローチャートやブロック図に示された要素、またはその他の論理的構成要素は、プログラム命令を実行可能なマシンに実装してもよい。
【0173】
したがって、前述の図面および記載には、開示されたシステムの機能的側面が示されているが、これらの機能的側面を実装するためのソフトウェアの特定の構成は、明示的に記載されているか、または文脈から明らかでない限り、これらの記載から推測すべきではない。同様に、上記で特定され、記載された様々な段階は、変更してもよく、これら段階の順序は、本明細書に開示された技術の特定の用途に適合させてもよいことが理解されよう。すべてのそのような変更および修正は、本開示の範囲内に入ることが意図されている。そのため、様々な段階の順序の図示および/または記載は、特定の用途によって必要とされない限り、または明示的に記載されるか、または文脈から明らかでない限り、これら段階の特定の実行順序が必須だと規定していると理解すべきではない。これとは反対の明示的な指示がない限り、開示された段階は、本開示の範囲から逸脱することなく、修正、補足、省略、および/または再順序付けされてもよい。
【0174】
本明細書に記載された実装の方法段階は、異なる意味が明示的に記載されるか、または文脈から明らかでない限り、以下の請求項の特許性と一致する、かかる方法段階を実行させる任意の適切な方法を含むことを意図している。したがって、例えば、Xの段階を実行することは、リモートユーザ、リモート処理リソース(例えば、サーバまたはクラウドコンピュータ)またはマシンなどの他の当事者にXの段階を実行させるための任意の適切な方法を含む。同様に、段階X、YおよびZを実行することは、そうした段階X、YおよびZの利益を得るために、かかる他の個人またはリソースの任意の組み合わせを指示または制御して段階X、YおよびZを実行させる任意の方法を含んでもよい。したがって、本明細書に記載される実装の方法段階は、異なる意味が明示的に記載されるか、または文脈から明らかでない限り1つまたは複数の他の当事者または主体にこれら段階を実行させる、以下の請求項の特許性と一致した任意の適切な方法を含むことを意図している。そのような当事者または実体は、他の当事者または実体の指示または制御下にある必要はなく、特定の法域内に位置する必要もない。
【0175】
上述した方法およびシステムは、例示であって、限定目的で記載されたものではないことが理解されよう。多数の変形、追加、省略、およびその他の修正は、当業者には明らかであろう。さらに、上記の説明および図面における方法段階の順序または提示は、特定の順序が明示的に必要とされるか、または他の文脈から明らかでない限り、記載された段階を実行するための順序を要件とすることを意図したものでない。従って、特定の実施形態を示し、説明してきたが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形式および詳細における様々な変更および修正が可能であることは当業者には明らかになるはずであり、以下の請求項により定義される本発明の一部を形成することが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無針注射器であって:
ハウジングと;
前記ハウジング内に配置されたカートリッジであって、出口ポートと、一定の体積の注入物を保持するためのチャンバを含むカートリッジと;
前記チャンバと摺動可能に結合されると共に前記チャンバ内に配置されたプランジャーであって、前記チャンバ内で摺動させたときに前記出口ポートを介して前記一定の体積の注入物を排出するように配置されたプランジャーと;
前記プランジャーに作動的に結合されたモーターであって、前記チャンバ内で前記プランジャーを作動させるよう動作可能なモーターと;
前記モーターに作動的に結合されたコントローラとを含み、前記コントローラは、第1送達プロファイル、第2送達プロファイル、および第3送達プロファイルのいずれかに従って前記プランジャーを選択的に動作させるように動作可能であり、前記コントローラは、前記プランジャーにより前記チャンバ内の気体の圧縮と同時に、前記モーターに供給される測定電流のスパイクを検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行するよう動作可能であり、前記コントローラは、前記測定電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行するようさらに動作可能である、無針注射器。
【請求項2】
前記第1送達プロファイルの動作中の前記プランジャーの平均速度は、前記第2送達プロファイルの動作中の前記プランジャーの平均速度より大きい、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項3】
前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターに供給される駆動電流に基づいて検出される、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項4】
前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターのロータリーエンコーダを用いて測定された前記モーターの位置に基づいて検出される、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項5】
前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮は、前記モーターに供給される駆動電流と前記モーターのロータリーエンコーダを用いて測定される前記モーターの位置との比較に基づいて、前記第1送達プロファイルの間に前記モーターの速度を維持するために必要な力の増加に基づいて検出される、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項6】
前記注入物は、注入可能な医薬製剤または栄養補助食品製剤からなる、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項7】
前記注入可能な医薬製剤は高粘度の生物学的製剤を含む、請求項6に記載の無針注射器。
【請求項8】
前記第2送達プロファイルのプランジャー速度が、前記注入物が透過性バリアを貫通するのに十分な注入物速度を発生させる、請求項1に記載の無針注射器。
【請求項9】
前記透過性バリアは、被験者の皮膚を含む、請求項8に記載の無針注射器。
【請求項10】
無針注射器であって:
出口ポートを有するカートリッジ内の流体および気体を加圧するように配置されたプランジャーと;
前記プランジャーに作動的に結合されたモーターであって、前記プランジャーを前記カートリッジの軸に沿って直線運動で作動させ、前記カートリッジから前記流体を送出するよう動作可能な前記モーターと;
前記モーターに作動的に結合されたコントローラとを含み、前記コントローラは、注射開始信号に応答して、前記カートリッジ内の前記気体を圧縮するために前記プランジャーを第1送達プロファイルに従って動作させ、所定の閾値を超える前記カートリッジ内の前記気体の圧縮を検出したことに応答して前記プランジャーを第2送達プロファイルに従って動作させるように動作可能である、無針注射器。
【請求項11】
前記所定の閾値を超える前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、モデルによって予測されるフリーランニング駆動電流と前記モーターに供給される前記測定電流との間のモーター電流のずれを検出することを含む、請求項10に記載の無針注射器。
【請求項12】
前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、前記プランジャーの速度を前記第1送達プロファイル内に維持するための所定の閾値を超えるモーター電流の増加の検出を含む、請求項10に記載の無針注射器。
【請求項13】
前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、所定の閾値未満への前記プランジャーの速度の減少の検出を含む、請求項10に記載の無針注射器。
【請求項14】
前記カートリッジ内の前記気体の前記圧縮の検出は、前記プランジャーの速度の減少および前記モーターへの駆動電流の増加を同時に検出することを含む、請求項10に記載の無針注射器。
【請求項15】
前記コントローラは、前記モーターに作動的に結合されたエンコーダからのフィードバックに応答して前記プランジャーを作動させる、請求項10に記載の無針注射器。
【請求項16】
前記第1送達プロファイルは、前記第2送達プロファイルの第2目標速度よりも大きい第1目標速度を有する、請求項10に記載の無針注射器。
【請求項17】
前記第2プロファイルは、穿刺位相と送達位相とを含む二位相性プロファイルである、請求項16に記載の無針注射器。
【請求項18】
前記穿刺位相でのプランジャー速度は時間の関数として減少する、請求項10に記載の無針注射器。
【請求項19】
無針注射器を用いて注入物を送達する方法であって:
無針注射器を提供する段階であって、前記無針注射器は、チャンバを保持するためのカートリッジを有するハウジングと、前記チャンバから注入物を送出するよう構成かつ配置されたプランジャーと、前記プランジャーに作動的に結合されたモーターとを含む、提供する段階と;
前記無針注射器を用いて注射を開始することに応答して、前記無針注射器に:
第1送達プロファイルに従って前記プランジャーを動作させ;
前記第1送達プロファイルの間に前記モーターに供給される電流を監視させ;
前記モーターに供給される前記電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、前記プランジャーによる前記チャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行させ;
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させ;
前記測定電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行させ;
所定量の前記注入物が前記出口ポートを介して前記チャンバから送達されるまで、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルに従って動作させる段階とを含む、方法。
【請求項20】
前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルへの移行は、前記気体の圧縮と同時に、前記モーターに供給される測定電流のスパイクを検出した時点で、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルへの移行は、前記モーターに供給される前記電流を0Aないし約10Aの範囲内まで減少させることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることは、前記プランジャーに及ぼされる復元力に打ち勝って、前記注入物を前記透過性バリアを介して送達するのに十分な速度で前記プランジャーを動作させることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることは、前記チャンバ内の前記気体の前記圧縮を維持しながら前記プランジャーを動作させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルに従って動作させることにより、前記注入物の速度が透過性バリアを貫通するのに十分となる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記透過性バリアは、被験者の皮膚を含む、請求項24に記載の無針注射器。
【請求項26】
前記プランジャーを前記第3送達プロファイルで動作させることは、前記注入物が送達される際に前記プランジャーの前記速度を調節することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記プランジャーを前記第3送達プロファイルで動作させることは、前記注入物が送達される際に前記プランジャーの前記速度を減少させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
注入物の無針注射を容易にする方法であって:
プランジャーおよびコントローラに作動的に結合されたモーターを含む無針注射器を提供する段階を含み、前記コントローラは:
第1送達プロファイルで前記プランジャーを動作させ;
前記第1送達プロファイルの間に前記モーターに供給される電流を監視し;
前記モーターに供給される前記電流のスパイクに少なくとも部分的に基づいて、前記プランジャーによる前記チャンバ内の気体の圧縮を検出したことに応答して、前記第1送達プロファイルから前記第2送達プロファイルに移行し;
前記プランジャーを前記第2送達プロファイルで動作させ;
前記測定電流と前記プランジャーの速度との間の定常状態条件の検出に応答して前記第2送達プロファイルから前記第3送達プロファイルに移行し;
所定量の前記注入物が前記出口ポートを介して前記チャンバから送達されるまで、前記プランジャーを前記第3送達プロファイルに従って動作させる、方法。
【国際調査報告】