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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】医用画像の強調
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221102BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221102BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20221102BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 383
A61B5/055 390
G06T7/00 350C
G06V10/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514541
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 GB2020052117
(87)【国際公開番号】W WO2021044153
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】1912701.8
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、キアン
(72)【発明者】
【氏名】ピークニク、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ、ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ポペシュ、イウリア アンドレイア
【テーマコード(参考)】
4C096
5L096
【Fターム(参考)】
4C096AA11
4C096AA18
4C096AB41
4C096AB46
4C096AC04
4C096AD14
4C096AD24
4C096DC20
4C096DC35
4C096DC40
5L096BA06
5L096BA13
5L096EA07
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
患者に造影剤を投与する必要なしにコントラスト強調画像を生成するために、磁気共鳴画像を強調するための方法及び装置。本画像処理装置は、造影剤なし磁気共鳴画像から画像を生成するために、画像プロセッサとして、トレーニングされた機械学習アルゴリズム、好ましくは、敵対的生成ネットワークを利用し、生成された画像は、同様の外観と、実際に取得されたコントラスト強調画像よりも良い画像品質と、実際に取得されたコントラスト強調画像よりも良い病理学的感度とを有し、実際に取得されたコントラスト強調画像よりも多くの病的状態を区別することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算されたコントラスト強調医用画像を生成する方法であって、前記方法は、
造影剤なし磁気共鳴撮像手順を実行することによって取得されたネイティブ定量マッピング画像を含む、被験者の画像データセットを受信することと、
前記画像データセットを画像プロセッサに入力し、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために前記画像プロセッサを用いて前記画像データセットを処理することと
を含み、
前記画像プロセッサが、画像のセットを含むトレーニング・データセット上でトレーニングされた機械学習プロセッサを備え、画像の各セットが、前記画像データセットの前記定量マッピング画像と同じ定量マッピングを有する造影剤なし定量マッピング画像と、対応する取得されたコントラスト強調医用画像とを含む、方法。
【請求項2】
前記ネイティブ定量マッピング画像がT1マッピング画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネイティブ定量マッピング画像がT2マッピング画像又はT2マッピング画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対応する取得されたコントラスト強調医用画像がコントラスト強調磁気共鳴画像である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対応する取得されたコントラスト強調医用画像が、前記画像データセットの前記定量マッピング画像と同じ定量マッピングを有するコントラスト強調定量マッピング画像である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対応する取得されたコントラスト強調医用画像が非磁気共鳴モダリティのコントラスト強調画像である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
非磁気共鳴モダリティの前記コントラスト強調画像が、コントラスト強調コンピュータ断層撮影画像、コントラスト強調PET画像、コントラスト強調SPECT画像、又は超音波画像のうちの1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被験者の前記画像データセットが前記ネイティブ定量マッピング画像のみを含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記被験者の前記画像データセットが、前記画像データセットの前記定量マッピング画像の前記定量マッピング以外の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像をさらに含み、前記トレーニング・データセットの画像の前記セットが、前記他の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像をさらに含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像が、未加工磁気共鳴画像、未加工磁気共鳴画像の融合である画像、又は未加工磁気共鳴画像の派生物である画像のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像が、T1マッピング画像、T1強調画像、T2強調画像、T2強調画像、T2マッピング画像、T2マッピング画像、又はシネCMR画像のうちの少なくとも1つを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像が、STIR画像、タグ付きCMR画像、ストレイン符号化画像、拡散強調画像、拡散テンソル画像、動脈スピン・ラベリング画像、PD強調画像、又は脂肪水分離画像のうちの少なくとも1つを含む、請求項9から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記被験者の前記画像データセットが、少なくとも1つの非磁気共鳴画像をさらに含み、前記トレーニング・データセットの画像の前記セットが、前記画像データセットの前記少なくとも1つの非磁気共鳴画像と同じタイプの少なくとも1つの非磁気共鳴画像をさらに含む、請求項1から7まで又は9から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの非磁気共鳴画像が、心エコー図、核かん流画像、CT画像、電気生理学的心臓マップ画像、又は胸部X線のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記画像データセットが、画像データでないさらなるデータを含み、前記トレーニング・データセットが、画像データでない前記さらなるデータと同じタイプの画像の各セットに関連付けられたさらなるトレーニング・データを含む、請求項1から7まで又は9から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記さらなるデータが、撮像メタデータ、画像取得パラメータ、又は非撮像診断テスト結果のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記非撮像診断テスト結果が、MRスペクトロスコピー結果、血液検査結果、心電図、前記被験者の臨床特性、又は前記被験者の照会理由のうちの少なくとも1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
同じ被験者の前の来診又は研究からすでに利用可能な少なくとも1つのCE画像を前記画像プロセッサに入力するステップをさらに含む、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記画像が心臓画像である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記画像プロセッサが、トレーニングされた変分オートエンコーダ、トレーニングされた完全畳み込みニューラル・ネットワーク、トレーニングされたUネット、トレーニングされたVネット、又は、随意に、トレーニングされた条件付き敵対的生成ネットワークである、トレーニングされた敵対的生成ネットワークのうちの1つである、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記画像プロセッサが、入力として1つ又は複数の画像モダリティを取るための1つ又は複数の畳み込みストリーム、及び/又は、入力として、関係する撮像メタデータ若しくは画像取得パラメータ若しくは非画像診断情報を取るためのストリームを含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記画像データセットが、異なる疾病感度を有する複数の計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために、前記画像プロセッサを用いて処理され、
本方法は、組み合わせられた計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために前記複数の複数の複数の計算されたコントラスト強調医用画像を組み合わせることをさらに含む、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記機械学習プロセッサが、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために、前記トレーニング・データセットの前記造影剤なし定量マッピング画像を処理することによってトレーニングされた、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記トレーニングされた機械学習アルゴリズムが、前記画像プロセッサによって生成された前記計算されたコントラスト強調医用画像と、前記対応する取得されたコントラスト強調画像との間の差を最小にするようにトレーニングされた、請求項1から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記機械学習プロセッサをトレーニングするステップをさらに含む、請求項1から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ネイティブ定量マッピング画像を含む前記画像データセットを取得するために、被験者に対して造影剤なし磁気共鳴撮像手順を実行するステップをさらに含む、請求項1から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
コンピュータ装置による実行が可能なコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・プログラムは、実行すると、前記コンピュータ装置に請求項1から25までのいずれか一項に記載の方法を実行させるように構成された、コンピュータ・プログラム。
【請求項28】
請求項27に記載のコンピュータ・プログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項29】
計算されたコントラスト強調医用画像を生成するように適応された画像プロセッサであって、前記画像プロセッサは、
造影剤なし磁気共鳴撮像手順を実行することによって取得された定量マッピング画像を含む、被験者の画像データセットを受信するための入力と、
計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために前記画像データセットを処理するためのデータ・プロセッサと
を備え、
前記データ・プロセッサが、画像のセットを含むトレーニング・データセット上でトレーニングされた機械学習プロセッサを備え、画像の各セットが、前記画像データセットの前記定量マッピング画像と同じ定量マッピングを有する造影剤なしネイティブ定量マッピング画像と、対応する取得されたコントラスト強調医用画像とを含む、画像プロセッサ。
【請求項30】
前記ネイティブ定量マッピング画像がT1マッピング画像である、請求項29に記載の画像プロセッサ。
【請求項31】
前記ネイティブ定量マッピング画像がT2マッピング画像又はT2マッピング画像である、請求項29に記載の画像プロセッサ。
【請求項32】
前記トレーニングされた機械学習アルゴリズムが、随意に、トレーニングされた条件付き敵対的生成ネットワークである、トレーニングされた敵対的生成ネットワーク、トレーニングされた変分オートエンコーダ、トレーニングされた完全畳み込みニューラル・ネットワーク、トレーニングされたUネット、トレーニングされたVネットのうちの1つである、請求項29から31までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項33】
前記取得されたコントラスト強調医用画像がコントラスト強調磁気共鳴画像である、請求項29から32までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項34】
前記取得されたコントラスト強調医用画像が、前記画像データセットの前記定量マッピング画像と同じ定量マッピングを有する定量マッピング画像である、請求項28に記載の画像プロセッサ。
【請求項35】
前記取得されたコントラスト強調医用画像が非磁気共鳴モダリティのコントラスト強調画像である、請求項29から34までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項36】
前記画像が心臓画像である、請求項29から35までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項37】
前記被験者の前記画像データセットが前記ネイティブ定量マッピング画像のみを含む、請求項29から36までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項38】
前記被験者の前記画像データセットが、前記画像データセットの前記定量マッピング画像の前記定量マッピング以外の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像をさらに含み、前記トレーニング・データセットの画像の前記セットが、前記他の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像をさらに含む、請求項29から36までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項39】
前記少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像が、T1マッピング画像、T1強調画像、T2強調画像、T2強調画像、T2マッピング画像、T2マッピング画像、又はシネCMR画像のうちの少なくとも1つを含む、請求項38に記載の画像プロセッサ。
【請求項40】
前記少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像が、STIR画像、タグ付きCMR画像、ストレイン符号化画像、拡散強調画像、拡散テンソル画像、動脈スピン・ラベリング画像、PD強調画像、又は脂肪水分離画像のうちの少なくとも1つを含む、請求項38又は39に記載の画像プロセッサ。
【請求項41】
前記被験者の前記画像データセットが少なくとも1つの非磁気共鳴画像をさらに含み、前記トレーニング・データセットの画像の前記セットが、前記画像データセットの前記少なくとも1つの非磁気共鳴画像と同じタイプの少なくとも1つの非磁気共鳴画像をさらに含む、請求項29から36まで又は38から40までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項42】
前記少なくとも1つの非磁気共鳴画像が、心エコー図、核かん流画像、CT画像、電気生理学的心臓マップ、又は胸部X線のうちの少なくとも1つを含む、請求項41に記載の画像プロセッサ。
【請求項43】
前記画像データセットが、画像データでないさらなるデータを含み、前記トレーニング・データセットが、画像データでない前記さらなるデータと同じタイプの画像の各セットに関連付けられたさらなるトレーニング・データを含む、請求項29から36まで又は38から42までのいずれか一項に記載の画像プロセッサ。
【請求項44】
前記さらなるデータが、撮像メタデータ、画像取得パラメータ、又は非撮像診断テストのうちの少なくとも1つを含む、請求項43に記載の画像プロセッサ。
【請求項45】
前記非撮像診断テスト結果が、MRスペクトロスコピー結果、血液検査結果、心電図、前記被験者の臨床特性、又は前記被験者の照会理由のうちの少なくとも1つである、請求項44に記載の画像プロセッサ。
【請求項46】
請求項29から45までのいずれか一項に記載のデータ・プロセッサをトレーニングする方法であって、前記方法は、
a)被験者の造影剤なしネイティブ定量マッピング画像を含む画像の対応するセットを含む、トレーニング・データセットと、前記被験者の対応する取得されたコントラスト強調画像と、随意に、前記被験者の少なくとも1つのさらなる画像、及び/又は画像でないさらなるデータとを受信するステップと、
b)前記データ・プロセッサに、各セットの前記造影剤なしネイティブ定量マッピング画像と、存在する場合、前記被験者の前記少なくとも1つのさらなる画像、及び/又は各セットの前記さらなるデータとを入力し、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために、生成的画像処理機能を使用して前記データ・プロセッサを用いてそれを処理し、前記計算されたコントラスト強調医用画像を前記セットからの前記対応する取得されたコントラスト強調画像と比較するステップと、
c)前記計算されたコントラスト強調医用画像と、前記セットからの前記対応する取得されたコントラスト強調画像との間の差を低減するように、前記データ・プロセッサによって実行される前記処理を変更するステップと、
d)前記計算されたコントラスト強調医用画像と、前記対応する取得されたコントラスト強調画像との間の前記差が所定のしきい値を下回るまで、ステップb)及びステップc)を繰り返すステップと
を含む、方法。
【請求項47】
前記生成的画像処理機能によって生成された計算されたコントラスト強調医用画像、又は取得されたコントラスト強調画像のいずれかとして各画像を分類することによって、前記生成的画像処理機能によって生成された計算されたコントラスト強調医用画像と、前記対応する取得されたコントラスト強調画像とを区別し、分類信頼度値を出力するために、弁別器を動作させることをさらに含み、
前記生成的画像プロセッサによって実行される前記処理は、前記ステップc)において、前記計算されたコントラスト強調医用画像と、前記対応する取得されたコントラスト強調画像との間の前記差を低減し、前記弁別器の分類信頼度を低減するように、前記生成的画像プロセッサをトレーニングするように変更され、前記弁別器が、それ自体の分類信頼度を高めるように同時にトレーニングされる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ネイティブ定量マッピング画像がT1マッピング画像である、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記ネイティブ定量マッピング画像がT2マッピング画像又はT2マッピング画像である、請求項46又は47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入可能な造影剤への依拠なしに、専用定量撮像データセットから改善された計算されたコントラスト強調医用画像を生成するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用撮像は、患者の解剖学的構造及び患者の身体内の生理学的過程の画像を形成することによって臨床医を支援するためのユビキタスな技法である。X線又はコンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)撮像、陽電子放出断層撮影(PET:positron-emission tomography)又は単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT:single-photon emission computerized tomography)などの核医用撮像、及び磁気共鳴(MR:magnetic resonance)撮像(MRI:magnetic resonance imaging)など、多種多様な医用撮像技法又はモダリティ(modality)がある。
【0003】
本発明はMRIに関する。一般に、MR画像は、患者の組織の複数の磁気特性の差により生じるコントラストの2次元表示である。T1強調(weighted)、T2強調、又はT2強調MRIなど、多くの異なるタイプのMRIシーケンス又は「モダリティ」がよく知られている。これらのシーケンスは、MRIスキャナにルーチン的に事前プログラムされ、静的及び振動磁場と無線周波数(RF)パルスとの異なる組合せを使用し、その効果は、得られた画像中のコントラストが所望のモダリティ(たとえばT1又はT2)及びパラメータの選択により強く依存することである。上述のMR撮像モダリティに加えて、他の知られているモダリティは、脂肪水撮像(fat-water imaging)、二重反転回復(double inversion recovery)T2強調撮像、STIR(ショート・タウ反転回復:short-tau inversion recovery)T2強調撮像、タグ付きCMR(心臓血管磁気共鳴:cardiovascular magnetic resonance)撮像、ストレイン符号化(strain-encoded)撮像、拡散強調(diffusion-weighted)撮像、拡散テンソル(diffusion tensor)撮像、及び動脈スピン・ラベリング(arterial spin labelling)撮像である。さらに、心臓MRIにおいて、心拍、血流、及び他のタイプの動きを示すビデオ画像のフレームに形成され得る、画像のスタックを生成するために、いくつかの心拍にわたって患者を撮像することによって、いわゆる「シネ画像(cine image)」が取得され得る。
【0004】
医用撮像における重要な進展は、患者への造影剤の投与の後に画像が取得される、コントラスト強調(CE:contrast-enhanced)撮像の導入であった。そのような画像において、画像中のコントラストは、造影剤のロケーションを反映しており、組織間の区別を強調することができる。さらに、画像中のコントラストは、造影剤のウォッシュイン(wash-in)及びウォッシュアウト(wash-out)を反映し、したがって、患者の組織の病態生理学に関する追加の薬物動態学的情報を与えることができる。造影剤はX線(CT)撮像及びMR撮像とともに使用され得、核医用撮像は、本質的に、これらの目的のために、コントラスト強調画像を生成する造影剤と見なされ得る放射性トレーサ(radiotracer)の投与を伴う。
【0005】
心臓MR撮像において、ガドリニウムベースの造影剤(GBCA:gadolinium-based contrast agent)など、常磁性造影剤が一般に使用される。GBCAの最も一般的な用途は、ファースト・パスかん流(first pass perfusion)、早期ガドリニウム強調(EGE:early gadolinium enhancement)、遅延ガドリニウム強調(LGE:late gadolinium enhancement)撮像、及び血管造影法研究を含む。特に、LGE撮像は、心筋の生存能力を評価し、虚血性(ischaemic)心臓病を非虚血性心臓病と区別するための臨床心臓学(cardiology)におけるゴールドスタンダードになった。このことは、患者が(冠状動脈中の閉塞を切開するための心臓切開手術若しくは侵襲的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI:percutaneous coronary intervention)、又はより簡単な非侵襲的治療など)侵襲的手順を受ける必要があるかどうかの臨床意思決定に影響を及ぼし得る。臨床医は、CE MR画像を解釈することに非常に精通するようになっており、したがって、様々な医学的状態を診断する際に彼らを助けるために、そのようなCE医用画像をすぐに参照することを望む。CEの結果と造影剤なし撮像とを組み合わせることにより、細胞外容積(ECV:extracellular volume)、急性心筋梗塞における救うことができる危険領域、生存可能な心筋など、関心のある他の量の計算が可能になる。
【0006】
しかしながら、CE撮像は、一般に、被験者への静脈内挿管及び造影剤の投与を必要とし、そのことは、侵襲的であるだけでなく、LGE撮像の場合、一般に45分を超えるまで走査手順をも長引かせる。長い走査手順は、良質な画像の要件である、被験者が静止したままでいることを困難にするだけでなく、スキャナ内部における患者の忍容性をも低下させる。さらに、心臓MRIなど、いくつかの適用例において、被験者の心拍と、呼吸を止める能力とにより、そのシーケンスについての臨床的に許容できる持続時間が著しく制限され得る。
【0007】
造影剤はまた、いくつかのクラスの患者(たとえば、効果的に造影剤を排泄することができず、深刻な回復不能の合併腎原性全身性線維症(complication nephrogenic systemic fibrosis)を発症し得る、重い腎機能障害をもつ患者)では禁忌であり得る。GBCAなどの造影剤は、他の者(たとえば、妊娠又は授乳している女性、及び子供)ではあまり望ましくないことがある。たとえば、最近、複数のMRI検査を受けた患者の脳中のGBCA蓄積の証拠が、これらの脳蓄積の臨床的有意性に関する明確な予測なしに公開された。多くの患者は、疾病と治療に対する反応とを監視するための連続的な検査を必要とし、したがって、合併症の潜在的な危険が実質的に高まり得る。GBCAは一実例として与えられており、MRIにおける酸化鉄、マンガン、CTにおけるヨード造影剤など、他の造影剤に関する同様の制限がある。
【0008】
これらの困難にもかかわらず、CE医用撮像は臨床診療において日常的に使用されている。たとえば、LGEは、鑑別診断のための決定的でかけがえのない情報を含んでいると旧来から考えられており、したがって、GBCAは、患者への追加のコスト、(小さいが)危険、及び負担にもかかわらず、日常的に投与されている。LGEの遍在性により、多くの臨床医は、LGE画像を認識し、観測されたパターンを具体的な症状に当てはめることができる。
【0009】
旧来、MRI画像における関心は、磁気パラメータ(T1又はT2)の絶対値ではなく、画像全体にわたるコントラストの変動に限られていたが、より最近では、可変的に強調されたMRデータセットの取得及び分析に基づいて、T1、T1-ρ、T2、T2など、物質の特定の基本的な磁気特性の定量マッピングを可能にするMRIシーケンスが使用されている。心臓MRIにおいて、(造影剤投与前(pre-contrast)T1マッピング、又は造影剤なしT1マッピングとも呼ばれる)ネイティブT1マッピング技法が、特に、心臓画像診断における有用性が高まる、心筋組織特性化のための新規の手法として出現した。それらの技法は、細胞内及び細胞外コンパートメントからの信号を反映し、心筋組成の変化を検出するために定量的なピクセルワイズ測定を提供する。T1マッピングにより、たとえば浮腫及び炎症における過剰水、タンパク質の沈着、並びに脂肪、鉄など、他のT1変換物質(Tl-altering substance)、並びに一般的に遭遇する心臓状態の範囲に関係する病理学的に重要なプロセスの検出が可能になる。T1マッピングは、T1強調画像の標準化された定量的表現を与え、心筋症の狭い正常範囲を有することと、広範囲の心筋症を区別することとを実証した。T1マッピングの利点は、定量的測定と、比較的簡単に単一の呼吸止めが得られることと、優れた再現性と、ガドリニウムベースの造影剤の回避とを含む。マッピング技法は、LGEパターンを超える、LGEパターンよりも早期の疾病への感度が観測され得ることを示している(Ferreiraら、「Native T1-mapping detects the location、extent and patterns of acute myocarditis without the need for gadolinium contrast agents」、J Cardiovasc Magn Reson 16、36(2014)、Dassら、「Myocardial Tissue Characterization Using Magnetic Resonance Noncontrast T1 Mapping in Hypertrophic and Dilated Cardiomyopathy」、Cardiovascular Imaging.2012;5:726~733頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0322713号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ferreiraら、「Native T1-mapping detects the location、extent and patterns of acute myocarditis without the need for gadolinium contrast agents」、J Cardiovasc Magn Reson 16、36(2014)
【非特許文献2】Dassら、「Myocardial Tissue Characterization Using Magnetic Resonance Noncontrast T1 Mapping in Hypertrophic and Dilated Cardiomyopathy」、Cardiovascular Imaging.2012;5:726~733頁
【非特許文献3】Abdulaら、「Synthetic late gadolinium enhancement cardiac magnetic resonance for diagnosing myocardial scar」、Scandinavian Cardiovascular Journal、52:3、127~132頁
【非特許文献4】Phillip Isolaら、「Image-to-Image translation with Conditional Adversarial Networks」、Berkeley AI Research(BAIR)Laboratory、UC Berkeley
【非特許文献5】Ting-Chun Wangら、「High-Resolution Image Synthesis and Semantic Manipulation with Conditional GANs」、NVIDIA Corporation、CVPR 2018
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、計算されたコントラスト強調医用画像を生成する方法であって、本方法は、造影剤なし磁気共鳴撮像手順を実行することによって取得されたネイティブ定量マッピング画像を含む、被験者の画像データセットを受信することと、画像データセットを画像プロセッサに入力し、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために画像プロセッサを用いて画像データセットを処理することとを含み、画像プロセッサが、画像のセットを含むトレーニング・データセット上でトレーニングされた機械学習プロセッサを備え、画像の各セットが、画像データセットの定量マッピング画像と同じ定量マッピングを有する造影剤なしネイティブ定量マッピング画像と、対応する取得されたコントラスト強調医用画像とを含む、計算されたコントラスト強調医用画像を生成する方法が提供される。
【0013】
したがって、本発明を用いると、造影剤なし定量マッピング画像から、計算されたコントラスト強調医用画像がどのようなものになるであろうかを予測するように画像プロセッサをトレーニングすることによって、被験者に造影剤を投与する必要はなくなる。コントラスト強調撮像の薬物動態学的態様はネイティブ撮像の薬物動態学的態様とは異なるので、このことは不可能であると以前は考えられていた。ここで、発明者らは、造影剤なし定量マッピングが、CE医用画像と同じ病理学的感度又はCE医用画像よりも良い病理学的感度を与えることを発見した。結果として、セットのうちの1つの画像が、造影剤なしに被験者から取得された定量マッピング画像であり、セットのうちの別の画像が、造影剤の投与の後に取得された対応する医用画像である、画像のセット上で機械学習プロセッサをトレーニングすることによって、トレーニングされた機械学習プロセッサは、造影剤なし定量マッピング画像から、計算されたCE医用画像を生成することができる。計算されたCE医用画像は、取得されたCE医用画像よりも良い画像品質を有し、場合によっては、以下で説明するように、疾病、たとえば浮腫への感度が、取得されたCE医用画像よりも良いものとして評価された。
【0014】
計算されたCE医用画像は、定量マッピング画像の標準化された提示と、トレーニング・データセット及びMRモダリティを指定することによって異なる疾病感度を達成する方法とを与える。
【0015】
計算されたCE医用画像は、一般的なCEアーテファクト(たとえばLGEアーテファクト)がなく、(限局性線維症、及び脳中の血液脳関門の破壊に関することが知られている)CEよりも(浮腫、及びびまん性病理における細胞内基質の全体的な拡大を含む)病理学的変化に敏感である。したがって、CE(たとえばLGE)と同様の外観を示す計算されたCE医用画像は、実際のCE(たとえばLGE)よりも良い画像品質を有しており、実際のCE(たとえばLGE)よりも広範囲の病理を検出することができる。このことは、CE画像と同様の外観をもつそれらを提示するために機械学習を使用しながら、同時に、ネイティブ定量マッピング中の情報を活用することから生じると考えられる。このことは、被験者に造影剤を投与する必要、及び関係する冗長な走査手順なしに達成される。
【0016】
機械学習プロセッサは、造影剤なし定量マッピング画像を処理し、たとえば、差を最小にすること(又は、差を所定のしきい値未満に低減させること)によって、ターゲット又は「グランドトゥルース」としての対応する取得されたコントラスト強調医用画像と所定の程度まで一致するように、計算されたCE医用画像を生成するようにトレーニングされ、そのことは、計算されたCE医用画像を、同時にトレーニングされた機械学習分類器によって対応する実際に取得されたCE医用画像と区別がつかないようにすることを目的とする。取得されたCE医用画像は、機械学習においてターゲット又はグランドトゥルース画像として使用されるので、計算されたCE医用画像は、取得されたCE医用画像と事実上同じタイプの画像である。
【0017】
よく知られているように、機械学習プロセッサは、入力データからターゲット出力データを生成するためにデータ処理アルゴリズムを使用し、そのアルゴリズムは、(それのためのターゲット・データが知られている)トレーニング・データセットからの入力データが機械学習プロセッサによって処理され、出力がターゲット・データと比較され、アルゴリズムが(たとえば、ディープ・ラーニングにおけるバックプロパゲーションによって)調整される、反復的なトレーニング・プロセスにおいて改良され、このプロセスは、出力がターゲットに十分に近づくまで反復され、そうすると、機械学習プロセッサは、トレーニングされたものと見なされ、新しい入力データを処理するために使用され得る。
【0018】
造影剤なし定量マッピング画像は、たとえば、T1-ρマッピング、又はストレスT1マッピングを含む、T1マッピング画像であり得る。造影剤なし定量マッピング画像は、代替的に、T1マッピング以外の定量マッピング画像、たとえば、T2マッピング、又はT2マッピングを有し得る。
【0019】
画像プロセッサはまた、追加の1つ又は複数の造影剤なしMR画像中の情報を利用し得る。したがって、本方法は、複数の異なる造影剤なしシーケンスから被験者の磁気共鳴画像を取得することと、複数の画像を画像プロセッサに入力することと、前記マッピング技法の外観を標準化するために、強調された(計算されたCE)画像を生成するためにそれらの画像を処理することとを含み得る。
【0020】
対応する取得されたCE医用画像は(したがって、事実上、計算されたCE医用画像も)LGE画像などのCE磁気共鳴画像であり得る。
【0021】
一実例では、対応する取得されたCE医用画像は、それ自体、即時の臨床診断のためのT1マッピングの外観の標準化のために有用である、画像データセットの定量マッピング画像と同じ又は異なる定量マッピングを有する定量マッピング画像であり得る。
【0022】
トレーニングにおいて、合成LGE画像(Abdulaら、「Synthetic late gadolinium enhancement cardiac magnetic resonance for diagnosing myocardial scar」、Scandinavian Cardiovascular Journal、52:3、127~132頁)、及びセグメント化された病変マスク(Ferreiraら、「Native T1-mapping detects the location、extent and patterns of acute myocarditis without the need for gadolinium contrast agents」、J Cardiovasc Magn Reson 16、36(2014)、)、又はそのような導出された画像とコントラスト強調画像との組合せを使用することが予見できる。
【0023】
しかしながら、代替実施例では、対応する取得されたCE医用画像は、(したがって、事実上、計算されたCE医用画像も)、たとえば、遅延ヨード・コントラスト強調(late iodinated-contrast enhancement)CT画像などのコントラスト強調CT画像、コントラスト強調PET画像、コントラスト強調SPECT画像、又はコントラスト強調超音波画像など、非MRモダリティの計算されたコントラスト強調画像であり得る。一般に、それは、造影剤の投与、又は、特に、医用的適用例における標準としてすでに受け入れられている任意の形態で、追加の強調を生成するために生理学上のストレスを導入することを採用する、任意のタイプの撮像であり得る。
【0024】
1つのタイプの実施例では、被験者の画像データセットはネイティブ定量定量マッピング画像のみを含み得る。このことは、本方法が定量マッピングを標準化するために適用される場合に有用であり得る。別のタイプの実施例では、被験者の画像データセットは、その被験者の他の画像、及び/又は画像データでないさらなるデータをさらに含み得る。したがって、画像プロセッサは、入力として1つ又は複数の画像モダリティを取るための1つ又は複数の畳み込みストリーム、及び/又は入力としてMRメタデータ若しくは非画像診断情報を取るためのストリームを含み得る。次に、任意の組合せで使用され得るいくつかの非限定的な実例について説明する。
【0025】
被験者の画像データセットは、画像データセットの定量マッピング画像の定量マッピング以外の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像をさらに含み得る。その場合、トレーニング・データセットの画像のセットは、当該他の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像をさらに含む。
【0026】
いくつかの実例では、少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像は、未加工磁気共鳴画像、未加工磁気共鳴画像の融合である画像、又は未加工磁気共鳴画像の派生物である画像のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0027】
いくつかの実例では、少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像は、T1マッピング画像、(T1反転回復強調画像を含む)T1強調画像、T2強調画像、T2強調画像、T2マッピング画像、T2マッピング画像、又はシネCMR画像のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0028】
いくつかの実例では、少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像は、STIR画像、タグ付きCMR画像、ストレイン符号化画像、拡散強調画像、拡散テンソル画像、動脈スピン・ラベリング画像、PD強調画像、又は脂肪水分離画像のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
被験者の画像データセットは、少なくとも1つの造影剤なし非MR画像をさらに含み得る。この場合、トレーニング・データセットの画像のセットは、画像データセットの少なくとも1つの非磁気共鳴画像と同じタイプの少なくとも1つの非磁気共鳴画像をさらに含む。
【0030】
いくつかの実例では、少なくとも1つの非磁気共鳴画像は、心エコー図、核かん流画像、CT画像、電気生理学的心臓マップ画像、又は胸部X線のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0031】
少なくとも1つの非磁気共鳴画像は、ネイティブ・ベースライン、ストレス又は薬理学的誘導状態にあり得る。
【0032】
本方法は、同じ被験者の前の来診又は研究からすでに利用可能な少なくとも1つの取得されたCE医用画像を画像プロセッサに入力するステップをさらに含み得る。
【0033】
CE医用画像は、CE医用画像、又は画像の他の臨床的に実行可能な人間セグメンテーションに基づく、導出されたセグメント化されたマスクによって代用され得る。そのような処理されたマスクは、(浮腫、線維症、梗塞、微小血管障害、又は同様の疾患の病理レベルを示すなど)臨床的に有意味なパラメータのために、そのような画像から導出され得る。
【0034】
画像データセットは、画像データでないさらなるデータを含み得る。一般に、さらなるデータは、被験者に関係するデータ、及び/又は入力された画像に関係するデータであり得る。
【0035】
いくつかの実例では、さらなるデータは、画像取得パラメータなどの撮像メタデータ、又は少なくとも1つの非撮像診断テスト結果のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0036】
撮像メタデータは、MR装置製造業者モデル名称又は呼称、磁界強度、ソフトウェア・バージョン、反転時間などのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0037】
非撮像診断テスト結果は、MRスペクトロスコピー結果、血液検査結果、心電図、被験者の臨床特性(たとえば、医学的状態、投薬、症状、被験者の危険因子、被験者の履歴、理学的検査所見)、又は被験者の照会理由のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0038】
画像プロセッサは、たとえば、トレーニングされた敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative Adversarial Network)、トレーニングされた条件付きGAN、トレーニングされた完全畳み込みニューラル・ネットワーク(Fully Convolutional Neural Network)、トレーニングされた変分オートエンコーダ(variational autoencoder)、トレーニングされたUネット、トレーニングされたVネットのうちの1つであり得る、トレーニングされた機械学習アルゴリズム、プロセス、又はプロセッサを含む。画像プロセッサは、入力されたモダリティの数と一致すべき複数の入力されたストリーム、及び/又は入力として非画像情報を取るための非畳み込みストリームを有し得る。
【0039】
計算されたCE医用画像は、定量マッピング画像の標準化された提示と、トレーニング・データセット及びCMRモダリティを指定することによって異なる疾病感度を達成する方法とを与える。
【0040】
本技法はデータ駆動型であり、造影剤なしマッピングから情報を継承し、そのことは、機械学習プロセッサが、異なる特性をもつ(たとえば、浮腫があり、心筋浮腫、心筋炎、急性心筋梗塞、及び/又は慢性心筋梗塞がない)複数の対応する取得されたCE医用画像のトレーニング・データセット上でトレーニングされ得ることを意味する。その場合、画像データセットは、計算されたコントラスト強調医用画像が、(たとえば、慢性のMI瘢痕(scar)のみを検出する、又は慢性のMI瘢痕及び浮腫を検出する)異なる感度を有するように、複数の計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために、画像プロセッサを用いて処理され得る。
【0041】
随意に、そのような複数の計算されたコントラスト強調医用画像は、病状(たとえば、慢性のMI瘢痕と浮腫と)を区別することができる、新しい包括的な計算されたCE医用画像を生成するために、さらなる強調のための組み合わせられたコントラスト強調医用画像を生成するために組み合わせられ得る。組み合わせられたコントラスト強調医用画像は、単一の計算されたCE医用画像、又は単一の旧来のCE医用画像よりもうまく病状を区別することができる。
【0042】
計算されたCE医用画像のみを組み合わせることの代替として、組み合わせられた計算されたCE画像を生成するために、計算されたCE医用画像と取得されたCE医用画像の両方を組み合わせることだけでなく、含み得ることも可能である。
【0043】
本発明の第1の態様によれば、機械学習プロセッサは、上記で説明したようにトレーニングされている。随意に、機械学習プロセッサをトレーニングするステップは本方法の一部であり得る。
【0044】
本発明の第1の態様によれば、被験者の画像データセットが受信され、画像プロセッサに入力される。随意に、被験者の画像データセットを取得するステップは、本方法の一部、たとえば、ネイティブ定量マッピング画像を含む画像データセットを取得するために、被験者に対して造影剤なし磁気共鳴撮像手順を実行すること、及び、他の画像が使用されるときに、それらの他の画像を取得するために他の撮像手順をも実行することであり得る。
【0045】
本発明の第2の態様によれば、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するように適応された画像プロセッサであって、本画像プロセッサは、造影剤なし磁気共鳴撮像手順を実行することによって取得された定量マッピング画像を含む、被験者の画像データセットを受信するための入力と、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために、入力された画像データセットを処理するためのデータ・プロセッサとを備え、データ・プロセッサが、画像のセットを含むトレーニング・データセット上でトレーニングされた機械学習プロセッサを備え、画像の各セットが、画像データセットの定量マッピング画像と同じ定量マッピングを有する造影剤なしネイティブ定量マッピング画像と、対応する取得されたコントラスト強調医用画像とを含む、画像プロセッサが提供される。
【0046】
本発明の第2の態様の画像プロセッサは本発明の第1の態様と等価な方法を実行し、したがって、上記で説明した様々な特徴は本発明の第2の態様に等しく適用され得る。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、a)被験者の造影剤なしネイティブ定量マッピング画像を含む画像の対応するセットを含む、トレーニング・データセットと、被験者の対応する取得されたコントラスト強調画像と、随意に、被験者の少なくとも1つのさらなる画像、及び/又は画像でないさらなるデータとを受信するステップと、b)データ・プロセッサに、各セットの造影剤なしネイティブ定量マッピング画像と、存在する場合、被験者の少なくとも1つのさらなる画像、及び/又は各セットのさらなるデータとを入力し、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために、生成的画像処理機能を使用してデータ・プロセッサを用いてそれを処理し、計算されたコントラスト強調医用画像をセットからの対応する取得されたコントラスト強調画像と比較するステップと、c)計算されたコントラスト強調医用画像と、セットからの対応する取得されたコントラスト強調画像との間の差を低減するように、データ・プロセッサによって実行される処理を変更するステップと、d)計算されたコントラスト強調医用画像と、対応する取得されたコントラスト強調画像との間の差が所定のしきい値を下回るまで、ステップb)及びステップc)を繰り返すステップとを含む、上記のデータ・プロセッサをトレーニングする方法が提供される。
【0048】
本発明の第3の態様の方法は、本発明の第1及び第2の態様における画像プロセッサをトレーニングするために使用され得、したがって、上記で説明した様々な特徴は本発明の第3の態様に等しく適用され得る。
【0049】
好ましくは、本方法は、生成的画像処理機能によって生成された計算されたコントラスト強調画像、又はコントラスト強調画像のいずれかとして各画像を分類することによって、生成的画像処理機能によって生成された計算されたコントラスト強調医用画像と、対応する取得されたコントラスト強調画像とを区別するために、敵対的弁別器(adversarial discriminator)を動作させることをさらに含み、生成画像プロセッサによって実行される処理は、ステップc)において、計算されたコントラスト強調医用画像と、対応する取得されたコントラスト強調画像との間の差と、分類信頼度の両方を含むコスト関数を低減するように変更される。敵対的弁別器は、分類の別個の損失関数、たとえば交差エントロピー損失(cross-entropy loss)を低減することによって、その敵対的弁別器の分類精度を高めるように同時にトレーニングされる。
【0050】
本発明のさらなる態様によれば、コンピュータ装置による実行が可能なコンピュータ・プログラムであって、本コンピュータ・プログラムは、実行すると、コンピュータ装置に本発明の第1の態様による方法を実行させるように構成された、コンピュータ・プログラムと、そのようなコンピュータ・プログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体と、同様の方法を実行するように構成されたコンピュータ装置とが提供される。
【0051】
本発明はまた、造影剤なしMR撮像手順を実行又は制御することと、本発明の方法による、スキャナ上にインラインで強調された医用画像を与えるために、得られたMR画像を処理することとを行うように適応された磁気共鳴スキャナ・システム又はスキャナ・オペレーティング・システムを提供し得る。したがって、本発明は、オペレータのための利用可能な出力オプションのうちの1つとして、計算されたCE医用画像を与えることができるスキャナを含む。
【0052】
本発明について、添付の図面を参照しながら、例としてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1(A)】本発明の一実施例による、単一のMRネイティブ(すなわち造影剤なし)T1マップの画像を処理するための装置を概略的に示す図である。
図1(B)】本発明の第2の実施例による、追加のMRシーケンスによって補完されたMRネイティブTIマップ画像を処理するための装置を概略的に示す図である。
図2(A)】本発明の一実施例による、MRネイティブT1マップ画像を処理するための装置をトレーニングするためのプロセスを概略的に示す図である。
図2(B)】図2(A)に示されたトレーニング・プロセスに与えられるトレーニング・データセットを示す図である。
図3(A)】本発明の別の実施例による、MRネイティブT1マップ画像を処理するための装置中の生成器及び弁別器をトレーニングするステップを概略的に示す図である。
図3(B)】本発明の別の実施例による、MRネイティブT1マップ画像を処理するための装置中の生成器及び弁別器をトレーニングするステップを概略的に示す図である。
図4(A)】本発明の別の実施例による、MRネイティブT1マップ画像を処理するための装置中の生成器及び弁別器をトレーニングする例示的なステップを概略的に示す図である。
図4(B)】本発明の別の実施例による、MRネイティブT1マップ画像を処理するための装置中の生成器及び弁別器をトレーニングする例示的なステップを概略的に示す図である。
図5図4の実施例の装置において使用される生成器アーキテクチャの一実例を概略的に示す図である。
図6】入力された情報の4つのストリームを利用する代替的な生成器アーキテクチャを示す図である。
図7図4の実施例において使用される弁別器アーキテクチャを概略的に示す図である。
図8】異なる病状への感度を獲得するために異なるデータセット上で複数の画像プロセッサ・ユニットをトレーニングすることを示す図である。
図9】様々なタイプの病状を区別することができる、組み合わせられたc-CE画像を生成するために、それぞれ異なってトレーニングされた画像プロセッサ・ユニットによって生成された複数のc-CE画像を組み合わせることを示す図である。
図10(A)】従来技術による、MRI手順を概略的に示す図である。
図10(B)】本発明の一実施例による、MRI手順を概略的に示す図である。
図11(A)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図11(B)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図12】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図13】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図14】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図15】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図16(A)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図16(B)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図17】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図18(A)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図18(B)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図19(A)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図19(B)】本発明の一実施例に従って取得された、ネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図20】LGE強調の存在を検出する際の計算されたLGEとLGEとの間の整合を示すグラフである。
図21】c-CE画像と取得されたCE画像とについての画像品質のグラフである。
図22】本発明の一実施例に従って取得された、強調されたネイティブT1走査と、計算されたLGE走査と、LGE走査との比較を示す図である。
図23】正常な組織と、心筋浮腫と、心筋梗塞瘢痕(myocardial infarction scar)とを区別することができる、組み合わせられた計算されたCE画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
このテキストでは、磁気共鳴撮像又は走査「手順」を参照する。手順は、プロトコルに従って行われ、各シーケンスが、異なって重み付けされた未加工画像、並びにそれらの融合、及び定量マップなどの派生物を生成する、1つ又はいくつかの走査シーケンスを含み得、血液検査、及び造影剤投与など、非MR撮像ステップを含み得る。プロトコルはまた、休息時間、及び呼吸止め要件など、被験者に関連がある態様を設定し得る。
【0055】
図1は、本発明の第1の実施例による、計算されたコントラスト強調医用画像を生成するために、造影剤なし磁気共鳴T1マッピング画像を処理するための方法を実装する装置を概略的に示す図である。
【0056】
装置1は、画像データセット100を受信する入力3を備え、画像データセット100は、この例では、造影剤なし磁気共鳴撮像手順を実行することによって前に取得された(「T1マップ画像」又は「T1マップ」とも呼ばれる)T1マッピング画像101、たとえば、T1マッピングのためのエクスペリメントを使用して取得された任意の関連付けられたメタデータ(たとえば反転時間)をもつ任意の数の未加工の入力されたT1強調画像及び位相マップであり得る、グレー・スケール又はカラー・マップにおけるMOLLI又はShMOLLI T1マッピング画像のみを含む。T1データは、T2データ、又はCE画像のターゲット・タイプを予測するのに十分な任意の他のMR画像データセットによって置き換えられ得る。
【0057】
これらの実例では、T1マッピング画像101は(トレーニングにおいて使用され、以下で説明されるT1マッピング画像21も)定量マッピングを有する画像の一実例である。T1-ρマッピング又はストレスT1マッピングを含む、任意のT1マッピングが使用され得る。より一般的には、T1マッピング画像101は(トレーニングにおいて使用され、以下で説明されるT1マッピング画像21も)、たとえば、T2マッピング画像又はT2マッピング画像である、任意の他の定量マッピングを有する画像によって置き換えられ得る。そのような定量マッピングは、可変的に強調されたMRデータセットの取得及び分析によって与えられる。結果として得られた画像は、T1、T1-ρ、T2、T2など、画像中の物質の特定の基本的な磁気特性の定量マッピングを与える。
【0058】
MR画像データセット100は、トレーニングされた機械学習(又は人工知能)プロセスを使用するデータ・プロセッサである、画像プロセッサ5に渡される。画像プロセッサ5は、被験者が造影剤の投与の後に走査された場合に取得されたであろう、取得されたコントラスト強調画像と同様の外観及び病理学的感度を有する、計算されたコントラスト強調画像6を生成するために入力画像データセット100を処理する。本明細書では、この画像を、計算されたCE医用画像(c-CE画像)6と呼ぶ。c-CE画像は、ディスプレイ7上に表示されるか、又は別段に出力され得る。
【0059】
図1(A)の実施例では、画像プロセッサ5は、画像のセットを含むトレーニング・データセット上でトレーニングされ、画像の各セットは、画像データセット100のT1マッピング画像101と同じ定量マッピングを有する造影剤なしT1マッピング画像と、対応する取得されたコントラスト強調医用画像とを含む。
【0060】
トレーニング・データセットの造影剤なしT1マッピング画像は、画像データセット100のT1マッピング画像101と同じ造影剤なし磁気共鳴撮像手順、たとえば、MOLLI又はShMOLLI取得を実行することによって取得される。
【0061】
トレーニング・データセットの対応する取得されたコントラスト強調医用画像は機械学習のためのターゲット又は「グランドトゥルース」画像である。したがって、計算されたc-CE画像6は、事実上、取得されたCE医用画像と同じタイプのものである。
【0062】
図1(B)は本発明の第2の実施例を示し、第2の実施例では、装置1は、画像データセット100が、T1マッピング画像101に加えて、さらなるデータを含むように拡張されていることを除いて、図1(A)の装置1と同じである。
【0063】
画像データセット100のさらなるデータは少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像102を含み得る。さらなる磁気共鳴画像102は、T1マッピング画像101の定量マッピング取得以外の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得される。いくつかの実例は、T2強調画像、シネMR画像、STIR、タグ付きCMR、ストレイン画像、拡散画像、PD強調画像、DTI、ASLなどである。他の実例は上記で与えられている。さらなる磁気共鳴画像102は、単一の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって、又は複数の異なる造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得され得る。
【0064】
画像データセット100は、入力3において受信され、画像プロセッサ5に渡され、画像プロセッサ5は、ディスプレイ7上に表示されるか又は別段に出力されるc-CE医用画像6を生成するために、上記で説明したように動作する。この場合、画像プロセッサ5は、トレーニング・データセットの画像のセットが、画像データセット100のさらなる磁気共鳴画像102の造影剤なし磁気共鳴モダリティに対応する、他の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像をさらに含むことを除いて、上記で説明したように、トレーニング・データセット上でトレーニングされている。
【0065】
画像データセット100のさらなるデータは少なくとも1つの非磁気共鳴画像103を含み得る。非磁気共鳴画像103は造影剤なし非磁気共鳴モダリティによって取得される。いくつかの実例が上記で与えられている。非磁気共鳴画像103は単一のモダリティによって又は複数の異なるモダリティによって取得され得る。
【0066】
画像データセット100は、入力3において受信され、画像プロセッサ5に渡され、画像プロセッサ5は、ディスプレイ7上に表示されるか又は別段に出力されるc-CE医用画像を生成するために、上記で説明したように動作する。この場合、画像プロセッサ5は、トレーニング・データセットの画像のセットが、画像データセット100の非磁気共鳴画像103のモダリティに対応する、造影剤なし非磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つの非磁気共鳴画像をさらに含むことを除いて、上記で説明したように、トレーニング・データセット上でトレーニングされている。画像データセット100のさらなるデータは、画像データでないさらなるデータ104を含み得る。さらなるデータ104は、被験者に関係するデータ、及び/又は入力された画像に関係するデータであり得る。さらなるデータ104は、画像取得パラメータなどの撮像メタデータ、又は、血液検査結果、心電図、臨床特性(たとえば、医学的状態、投薬、症状、危険因子、履歴、理学的検査所見)など、被験者についての少なくとも1つの非撮像診断検査結果、撮像についての被験者の照会理由、及び他の撮像診断検査(心エコー図、核かん流撮像、CTスキャン、電気生理学的心臓マッピング、胸部X線など)であり得る。他の実例は上記で与えられている。
【0067】
3つの異なるタイプのさらなるデータ、すなわち、さらなる磁気共鳴画像102、非磁気共鳴画像103、及びさらなるデータ104が示されているが。しかしながら、すべてのこれらのタイプのさらなるデータを使用することは必須ではなく、より一般的には、異なるタイプのさらなるデータのいずれか1つ又は任意の組合せが使用され得る。その場合、トレーニング・データセットはデータの対応する組合せを含む。
【0068】
画像データセット100は、入力3において受信され、画像プロセッサ5に渡され、画像プロセッサ5は、ディスプレイ7上に表示されるか又は別段に出力されるc-CE医用画像を生成するために、上記で説明したように動作する。この場合、画像プロセッサ5は、トレーニング・データセットが、画像データセット100のさらなるデータ104のそれに対応するさらなるデータをさらに含むことを除いて、上記で説明したように、トレーニング・データセット上でトレーニングされている。
【0069】
図1(B)を参照しながら説明した代替的なタイプのさらなるデータは任意の組合せで一緒に使用され得る。すなわち、少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像102、少なくとも1つの非磁気共鳴画像103、及びさらなるデータ104は任意の組合せで使用され得、トレーニング・データ・セットはデータの対応する組合せを含む。
【0070】
したがって、画像プロセッサ5は、造影剤の使用によって取得された対応する取得されたコントラスト強調医用画像とともに、装置1に入力された画像データセット100のデータのストリームに対応するコンテンツをもつトレーニング・データセット上でトレーニングされた、トレーニングされた機械学習プロセスである。
【0071】
取得されたCE医用画像はMR画像であり得る。この場合、取得されたCE医用画像は、定量マッピング画像でないMR画像であり得る。代替的に、取得されたCE医用画像は、随意に、画像データセット100のT1マップ画像101と同じ定量マッピングを有するか、又は異なる定量マッピングを有する、定量マッピング画像であるMR画像であり得る。この場合、それらの画像は、コントラスト強調磁気共鳴撮像手順を実行することによって取得される。
【0072】
代替的に、トレーニング・データセットの取得されたコントラスト強調医用画像は、非磁気共鳴モダリティのコントラスト強調医用画像、たとえば、(注射、経口、吸入など)造影剤の投与に基づくか、又は病態生理学的組織特性に依存する追加の強調を生成するために生理学上のストレスを導入することを用いて取得された、コントラスト強調CT画像、PET画像、若しくはSPECT画像、又は超音波画像であり得る。この場合、それらの画像は、関連がある非磁気共鳴モダリティのコントラスト強調手順を実行することによって取得される。
【0073】
画像プロセッサ5において採用され得る好適な機械学習アルゴリズムの実例は、完全畳み込みニューラル・ネットワーク、変分オートエンコーダ、Uネット、高密度Uネット、Vネット、条件付き敵対的生成ネットワーク(GAN)、サイクルGANなど、それの変形態を含むGAN、カスケード・リファインメント・ネットワークである。
【0074】
画像プロセッサ5は、トレーニングされた機械学習プロセッサを与えるために、図1(A)又は図1(B)に示された装置1によって実行される方法の実行の前にトレーニングされ得る。
【0075】
図2(A)は、画像プロセッサ5がどのようにトレーニングされるかを示す。特に、図2(A)は、以下のように、トレーニング方法を実行する機能ブロックを示す。
【0076】
図2(B)は、トレーニングにおいて使用されるトレーニング・データセット20を示す。トレーニング・データ・セット20は画像のセット25を含み、画像の各セット25は以下のデータを含む。
【0077】
上述のように、トレーニング・データセット20の画像の各セットは、画像データセット100のT1マッピング画像101と同じ定量マッピングを有する造影剤なしT1マッピング画像21と、取得されたコントラスト強調医用画像26とを含む。各セット中の造影剤なしマッピング画像21及びコントラスト強調医用画像26は、それらが同じ被験者又は患者から取得される点で互いに対応しており、たとえば、患者に造影剤が投与される前に取得された画像、及び患者への造影剤の投与の後に取得された画像である。
【0078】
トレーニング・データセット20の画像のそれぞれのセット25の取得されたCE医用画像及び造影剤なしT1マッピング画像は、画像が、一致する病理学的構成を含んでいるように、被験者に対して同じ位置において取得された画像を用いて、同じMR走査手順において取得され得る。しかしながら、それらの画像は、代替的に、異なる時間に異なる手順から取得され得る。それらの画像は、たとえば、(1つの手順が、たとえば、別の手順とは異なるプロトコル又はスキャナ構成を必要とする場合)異なるスキャナを使用して取得され得る。上述のように、取得されたCE医用画像はT1マッピング画像であり得るが、取得されたCE医用画像は、代替的に、(限定はしないが、定量マッピング画像を含む)T1マッピングとは異なるモダリティのものであるMR画像であり得るか、又は非磁気共鳴モダリティによって生成されたコントラスト強調医用画像であり得る。それらの画像は、同じ又は異なる撮像技法の異なる手順、同じ又は異なる患者位置の異なる手順、たとえば、与えられた画像位置及び配向情報を用いて短軸LGEを予測するために、短軸CMR画像と長軸CMR画像とを組み合わせること、及び/又は同じ若しくは異なる時間の異なる手順、たとえば、同じ患者の前の来診からの手順からのものであり得る。
【0079】
一般に、トレーニング・データセット20の画像のセット25(トレーニングされたプロセッサを使用する状況では、入力されたデータ)は、同じ患者とともに登録されたデータである。
【0080】
画像の複数のセット25が使用される。原則として、任意の数の画像のセット25が使用され得るが、トレーニングは、画像のセット25の数と、画像のセット25中の変動とを増加させることによって改善される。好ましくは、トレーニング・セットは、異なる臨床状態をもつ多くの異なる患者からの画像のペア25ペアを含み、好適なトレーニング・セットは、たとえば、品質管理された強調前コントラストCMR画像と、対応するLGE(遅延ガドリニウム強調)画像との4000組を超える好適なペアを有する肥大型心筋症レジストリ(Hypertrophic Cardiomyopathy Registry)から取得され得る。
【0081】
図1(A)の装置を使用する場合、トレーニング・データセット20の画像のセット25は、T1マッピング画像21と、取得されたコントラスト強調医用画像26とのみを含み、以下で説明するさらなるデータを含まない。この場合、画像の「セット」25は画像のペアである。しかしながら、トレーニング・データセット20は、以下のように、さらなるデータを含み得る。
【0082】
図1(B)の装置を使用する場合、さらなるデータは以下のように使用される。
【0083】
画像データセット100が少なくとも1つのさらなるMR画像102を含む場合、トレーニング・データセット20の画像のセット25は、画像データセット100のさらなる磁気共鳴画像102の造影剤なし磁気共鳴モダリティに対応する、他の造影剤なし磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像22をさらに含む。
【0084】
画像データセット100が少なくとも1つの非MR画像103を含む場合、トレーニング・データセット20の画像のセット25は、画像データセット100の非磁気共鳴画像103のモダリティに対応する、造影剤なし非磁気共鳴モダリティによって取得された少なくとも1つの非磁気共鳴画像23をさらに含む。
【0085】
画像データセット100がさらなるデータ104を含む場合、トレーニング・データセット20の画像のセット25は、画像データセット100のさらなるデータ104のそれに対応するさらなるデータ24をさらに含む。
【0086】
トレーニングは、以下のように、機械学習の技術分野で知られている技法を使用して実行される。トレーニング・データセット20はトレーニング・プロセッサ35への入力30において受信され、トレーニング・プロセッサ35は、同じ患者の計算されたCE画像31を生成するために、画像25の各セットの造影剤なしT1マッピング画像21を(使用される場合、少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像22、少なくとも1つの非磁気共鳴画像23、及び/又はさらなるデータ24をも)処理する機械学習アルゴリズム32を含む。
【0087】
計算されたCE画像31は、トレーニング・データセット20中の対応する実際のCE画像26と比較され、コスト関数計算器33はそれらの差の測度を計算する。機械学習アルゴリズム32は、次いで、たとえばバックプロパゲーションによって、計算されたCE画像31と実際のCE画像26との間の差を低減させるために繰り返し修正される。トレーニング・データセット20のデータは、学習プロセスのロバストネスを改善するために、回転、変換、反射、スケーリング、変形、ノイズを追加することなどによって増補され得る。
【0088】
計算されたCE画像31が実際のCE画像26に十分に近いと判定されると、機械学習アルゴリズム32はトレーニングされたものと見なされ、機械学習アルゴリズム32は、その場合、計算されたCE医用画像6を生成するために装置1において新しい造影剤なしMR画像を処理するために使用され得る。
【0089】
図3(A)及び図3(B)は、機械学習アルゴリズム32の特定の実例、すなわち条件付き敵対的生成ネットワーク(条件付きGAN)のためのトレーニング・プロセスを示す。条件付きGANは、たとえば、Phillip Isolaら、「Image-to-Image translation with Conditional Adversarial Networks」、Berkeley AI Research(BAIR) Laboratory、UC Berkeley、及びTing-Chun Wangら、「High-Resolution Image Synthesis and Semantic Manipulation with Conditional GANs」、、NVIDIA Corporation、CVPR 2018に記載されている(それらの教示は本明細書で適用され得る)。
【0090】
この場合、機械学習アルゴリズム32は、トレーニング方法を実行する以下の機能ブロックを備える。特に、機械学習アルゴリズム32は生成器51と弁別器52とを備える。図3(A)は生成器51のトレーニング・ステップを示す。生成器51は、a)取得されたCE画像26との最小ピクセルワイズ差を有し、b)弁別器52にとって、取得されたCE画像26と区別がつかない、計算されたCE画像31を生成するために、画像の各セット25の造影剤なしT1マッピング画像21を(使用される場合、少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像22、少なくとも1つの非磁気共鳴画像23、及び/又はさらなるデータ24をも)処理するようにトレーニングされる。
【0091】
図3(B)は、分類損失値(classification loss value)55のバックプロパゲーションを使用する弁別器52のトレーニング・ステップを示す。弁別器52は、トレーニング・データセット20からの取得されたCE医用画像26と、生成器51によって生成された計算されたCE医用画像31とを区別するようにトレーニングされる。弁別器52は、どの計算されたCE画像31がどの取得されたCE画像26に対応するかを示す情報を供給されず、2つのタイプの画像を区別し、弁別器52がその区別についてどのくらい確信しているかの指示を与えるようにトレーニングされるのみである。
【0092】
差ブロック53は、計算されたCE画像31と取得されたCE画像26との間の差を導出し、その差は、弁別器52の分類損失値55と一緒に、生成器損失関数ブロック54に供給される。生成器損失関数ブロック54は、計算されたCE医用画像31と対応する取得されたCE医用画像26との間の差を最小にし、弁別器52の分類損失値55を増加させるように、生成器51の処理を繰り返し修正するために、生成損失のバックプロパゲーションを使用することによって生成器51をトレーニングする。
【0093】
計算されたCE医用画像31がトレーニング・データセット中の実際のCE画像に十分に近くなると、生成器51は、図1に示されている装置の一実施例において新しい造影剤なしMR画像を処理するために使用され得る。弁別器52は、図1の画像プロセッサ5において使用される必要がない。
【0094】
図4(A)は、条件付きGAN方法と、T1マッピング画像21と、トレーニングのためのグランドトゥルースとしての、この実例ではLGE MR画像である、取得されたコントラスト強調医用画像26とを使用する、機械学習画像プロセッサのトレーニングの具体例を示す。T1マッピング画像21はグレー・スケール又はカラー・マップにおけるものであり得る。T1カラー・マップは、米国特許出願公開第2013/0322713号において説明されているものなど、所定のマッピングに従って、T1値が画像中の色にマッピングされる、T1マッピング画像である。
【0095】
図3を参照しながら上記で説明したように、生成器51は、計算されたCE画像31、この事例では計算されたLGE画像を生成し、計算されたCE画像31は、生成器51が、計算されたCE医用画像31と取得されたCE医用画像26との対応するペア間のL1距離損失(L1 distance loss)を最小にするようにトレーニングされ得るように、トレーニング・データセット20からの実際に取得されたCE画像26、この事例ではLGE画像と比較され、計算されたCE画像31はまた、生成器51が、弁別器52によって判定される分類損失値55を最大にするようにトレーニングされ得るように、弁別器52に与えられる。
【0096】
図4(B)は、分類損失値55を最小にすることによって、計算されたCE画像31と取得されたCE画像26とを識別するように機械学習弁別器52を同時にトレーニングすることの具体例を示す。
【0097】
図5は、標準的なUネット構造である生成器51のために使用される生成器アーキテクチャの一実例を示し、トレーニング・セット20から生成器51への入力はT1マッピング画像21であり、T1マッピング画像21は、畳み込みニューラル・ネットワーク・レイヤによって処理され、Uネットのための入力として連接される。
【0098】
図6は、生成器51のための修正されたアーキテクチャを示し、トレーニング・データセット20から生成器51への入力は、T1マッピング画像21であり、少なくとも1つのさらなる磁気共鳴画像22と、少なくとも1つの非磁気共鳴画像23と、さらなるデータ24とでもある。
【0099】
図7は、図4の実施例における弁別器52のために使用される弁別器アーキテクチャを示す。計算されたCE医用画像31及び取得されたCE医用画像26は、信頼度スコアを用いて現実の又は計算されたCE画像を区別するラベルを生成するために、畳み込みレイヤ及び完全接続レイヤによって処理される。
【0100】
図8は、異なる病状への感度を獲得するために、異なるトレーニング・データセットを用いて画像プロセッサ5をトレーニングすることを示す。この実例では、画像プロセッサ5は、(たとえば、浮腫があり、心筋浮腫、心筋炎、急性心筋梗塞、及び/又は慢性心筋梗塞がない)異なる病状への異なる感度など、異なる特性をもつそれぞれのトレーニング・データセット20-1、20-2などの上でトレーニングされた複数のユニット5-1、5-2などを含む。複数のユニット5-1、5-2などは、次いで、同様に、異なる疾病への異なる感度を有するc-CE画像6-1、6-2などを生成するために画像データセット100を処理する。
【0101】
そのようなc-CE医用画像6-1、6-2などは、さらなる強調のために組み合わせられたコントラスト強調医用画像を生成するために組み合わせられ得る。図9は、画像プロセッサ5において実装され得る、組み合わせられたc-CE画像6-Cを生成することの具体例を示す。図示のように、T1マッピング画像101は、2つのそれぞれのc-CE画像6-1、6-2を生成するために画像プロセッサ5の2つのユニット5-1、5-2によって処理される。図9は、第1のc-CE画像6-1が浮腫に敏感であり、第2のc-CE画像6-2が浮腫に敏感でない、一実例を示す。
【0102】
c-CE画像6-1、6-2は浮腫関心領域(ROI:oedema region of interest)生成器61に供給され、ROI生成器61は、(浮腫に敏感である)第1のc-CE画像6-1において(浮腫に敏感でない)第2のc-CE画像6-2におけるよりも高い信号強度を有する心筋領域として浮腫関心領域(ROI)62を生成する。浮腫ROI61はカラー符号化されている。浮腫ROI61と、c-CE画像6-1、6-2(第2のc-CE画像6-2は図9中に一実例として示されている)の一方又は両方とが画像組合せユニット63に供給され、画像組合せユニット63は、組み合わせられたc-CE画像6-Cを生成するためにそれらを組み合わせる。図9に示されているように、組み合わせられたc-CE画像6-Cは、単一の計算されたLGE画像(c-LGE画像)中の正常な心筋(黒)、浮腫(ピンク)、心筋梗塞瘢痕(白)を検出し、区別し、従来のLGE画像はそのことを達成することが不可能である。
【0103】
したがって、定量T1マッピングをLGE様の画像に変換することにより、標準化された提示が得られ、さらに、包括的な組み合わせられたc-LGE画像6-Cを導出するために、複数のモダリティと、トレーニングされたc-LGE画像6-1、6-2などとを直接組み合わせることが可能になる。造影剤投与を必要としない組み合わせられたcLGE6-Cは、造影剤投与を必要とする従来のCE画像よりも多くの病状を区別することができる。例として、図23は、T1マッピング画像101と、浮腫に敏感であるc-LGE画像6-1と、浮腫に敏感でないc-LGE画像6-2と、図23中の矢印によってポイントされている、正常な心筋(黒)、浮腫関心領域(ピンク)、及び心筋梗塞瘢痕(白)を検出し、区別する、組み合わせられたc-LGE画像6-Cとの2つの実例を示す。
【0104】
図10(A)及び図10(B)は、それぞれ、(従来技術)心臓血管磁気共鳴(CMR)組織特徴づけプロトコル撮像手順の一般的な実例と、本発明の一実施例による非侵襲的な造影剤なし手順とを示す。
【0105】
図10(A)に示されているように、従来技術撮像手順は、様々なモダリティMR画像を生成するために長い一連の異なる撮像シーケンスを含み得る。図示されている手順は、(1)パイロット及びプランニング(3分)、(2)シネ(HLA、VLA、LVOT長軸)(5分)、(3)ネイティブT1マップ(5分)、(4)ネイティブT2マップ(5分)、(5)T2マップ(3分)、(6)GBCAの投与(1分)、(7)シネ(短軸スタック)(5分)、(8)GBCAの投与の10分後におけるポストGBCA-遅延ガドリニウム強調(LGE)(5分)、(9)投与の15分後におけるポストコントラストT1マップ(5分)を含む。このタイプの手順は、たとえば45分前後持続し得、一部の被験者にとって長すぎるか、又はいくつかの患者グループ(たとえば、急性の又は不安定な患者)にとって不適切であり得る。
【0106】
図10(B)は、本発明の一実施例による、修正されたプロトコルを示す。本質的に、本手順は造影剤の投与前に中止することができ、本発明の画像プロセッサは、計算されたCE画像、この事例では計算されたLGE画像、したがって物理的に取得される必要がないLGE画像を生成するためにネイティブT1マッピングを利用する。これにより、手順の長さは約25分まで低減され得る。
【0107】
本発明の一実施例は、その実施例を、図10(B)に示されている手順など、手順のステップ4からのCEなしMR T1マッピング画像に適用し、そのような手順のステップ7からの得られた計算されたCE画像(この事例では計算されたLGE)を現実のCE画像(この事例ではLGE)と比較することによってテストされた。本発明のこの実施例は、入力されたネイティブT1マッピング画像として使用され、画像プロセッサとして図5に示されている生成器は、図4に示されている条件付きGAN方法を用いてトレーニングされる。
【0108】
図11図19は、比較目的のために、ネイティブT1マッピング画像と、実際のLGE画像と、取得された計算されたLGE画像とを示す。図11図19の各々において、左側の画像は、(図面の白黒版では色が視認できないが)元の画像ではカラー・マップであるT1画像であり、中央の画像は、本発明の実施例によって生成された計算されたLGE画像であり、右側の画像は、造影剤の投与後の被験者からの実際のLGE画像である。
【0109】
図11(A)及び図11(B)は、計算されたLGE画像が、生存可能な(生きている)心筋を示す有意なLGEがない、個人における様々な病理についてのLGE画像と極めて類似していることを示している。
【0110】
図12は、(矢印が付けられた)ファジーLGEによって示されている肥大型心筋症における拡散線維症をもつ個人についての比較画像を示す。
【0111】
図13は、(矢印が付けられた)右心室と左心室との間の下挿入点(inferior insertion point)におけるフォーカルLGEを示す。
【0112】
図14は、(矢印が付けられた)基部前壁(basal anterior wall)における斑状LGEの大きい領域を示し、図15は、(矢印が付けられた)基部下側壁(basal inferolateral wall)における拡散線維症を示す。
【0113】
コントラスト強調撮像において、LGE画像は、異常心筋強調をあらわにするために、反転回復(IR:inversion recovery)技法又は位相敏感反転回復(PSIR:phase-sensitive inversion recovery)技法を用いて取得される。正常な心筋組織を「ヌル化」し、LGE画像中でそれを黒色で表現するために、適切な反転時間(TI:inversion time)が選択されなければならない。走査オペレータが、間違ったTIを選択することによる誤りを犯した場合、LGE画像は、不十分な品質又は低下した診断値を有することになる。最適なTIは、GBCAが組織からウォッシュ・アウトするにつれて変化し、そのことはまた、LGE画像の再現性が低下することを意味する。図19(A)及び図19(B)は、準最適なTIと、心筋組織の間違ったヌル化とを用いて現実のLGE画像が取得された事例を示す。計算されたCEは、比較すると、オペレータが正しいTIを選択することに敏感であるべき機構を有さず、画像はすべて適切にヌル化された(黒い)心筋をもつように見える。
【0114】
計算されたCE手順は実際のCE走査手順よりもはるかに短いので、その技法は、たとえば、患者の疲労、又は患者がスキャナ内にとどまることに耐えられないことによって生じるアーテファクトに対して潜在的によりロバストである。
【0115】
図17は、45分の走査手順の最後にLGE画像が取得された、比較画像を示す。多くの患者は、走査の終了までに疲れてしまい、もはや自分の呼吸を止めることができず、それにより、LGE画像上に(矢印が付けられた)呼吸アーテファクトが着実に生じるであろう。計算されたCE画像がそれに基づいているネイティブT1マッピング画像は、呼吸止め時間が短く(スライス当たり10秒未満)、走査手順の最初に実行される。心臓の左心室全体は、8~10個のスライス(すなわち、説明時間と、患者が呼吸することを可能にするスライス間の時間を含めて5分以内)でカバーされ、それにより、動きアーテファクト又は患者の不耐性が生じる可能性が小さくなり得る。
【0116】
実際のCE画像よりも良い画像品質と少ないノイズとを実証する計算されたCE画像の他の実例が図18(A)及び図18(B)に示されている。
【0117】
図21は、人間観測者によって評価された、計算されたLGE(仮想LGE)画像と現実のLGE画像との平均品質スコアを示す。これは、計算されたLGEが、旧来に取得されたLGEよりも著しく良い画像品質を有することを示している。
【0118】
T1マッピングなどの造影剤なしMRIモダリティは、豊富な情報を伝え、いくつかの病理、たとえば、びまん性変化(diffuse change)及び浮腫に対して、LGE画像よりも良い感度を有する。
【0119】
図16(A)及び図16(B)は、計算されたLGE画像が異常肥大の(hypertrophic)(肥厚した)中隔(septum)における病理を示すが、(矢印が付けられた)実際のLGE画像は何も示していない事例を示す。
【0120】
図20は、計算されたLGEが、LGE強調の存在を検出し、LGE強調のパーセンテージを計算する際に、取得されたLGEとの概して良好な一致を示し、潜在的に診断上有意な差が生じやすいことを示す。
【0121】
図22は、計算されたLGE画像が浮腫を検出する事例を示す。比較すると、実際のLGEは何も示していないか、又は検出する浮腫の範囲がより小さい。このことは、計算されたLGEが、(矢印によってハイライトされた)浮腫を検出する際により良い感度を示すことを示す。
【0122】
図23は、図9中の方法を使用して複数の計算されたLGE画像を組み合わせることによって生成された計算されたLGE画像が、複数の状態、たとえば、(矢印によってハイライトされた)浮腫、慢性心筋梗塞瘢痕を検出し、区別することを示す。このことは、計算されたLGE画像が、旧来に取得されたLGE画像よりも多くの情報を含んでおり、多くの病状を検出することが可能であることを示す。
【0123】
上記の実例は、ネイティブT1マッピング画像101に適用されたT1マッピングの実例に適用されたときの本方法の効果を実証する。それらの利益は定量マッピングの使用から生じることが理解されており、したがって、たとえば、T1-ρマッピング又はストレスT1マッピングを含む、T1マッピングの他の変形態について、及び実際には、T1マッピング以外の他の造影剤なし定量マッピング、たとえば、T2マッピング、又はT2マッピングについて、同様の効果が予想される。
【0124】
図8及び図9を参照しながら説明した組合せをも実行し得る、図1(A)及び図1(B)に示された装置1は、本方法のステップを実装するコンピュータ装置であり得る。同様に、トレーニングのために使用され、図2図4(A)に示された機能ブロックも、本方法のステップを実装するコンピュータ装置であり得る。このことを達成するために、コンピュータ装置による実行が可能なコンピュータ・プログラムが提供され得る。本コンピュータ・プログラムは、実行すると、それが本コンピュータ装置に本方法の関連があるステップを実行させるように構成される。
【0125】
本コンピュータ装置は、使用される場合、任意のタイプのコンピュータ・システムであり得るが、一般に従来の構成のコンピュータ・システムである。本コンピュータ・プログラムは任意の好適なプログラミング言語で書かれ得る。本コンピュータ・プログラムは、任意のタイプのコンピュータ可読記憶媒体、たとえば、計算システムのドライブに挿入可能であり、磁気的に、光学的に又は光磁気的に情報を記憶し得る記録媒体、ハード・ドライブなど、コンピュータ・システムの固定式記録媒体、又はコンピュータ・メモリであり得る、コンピュータ可読記憶媒体上に記憶され得る。
【0126】
MR画像データセット100は本方法の一部として取得され得る。MR画像データセット100は、T1マッピング画像を与えるための造影剤なし撮像磁気共鳴手順を実行することによって取得され、他の画像が使用される場合、それらの他の画像を与えるための好適な造影剤なし撮像手順を実行することによって取得される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】