IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東友ファインケム株式会社の特許一覧

特表2022-547057リチウム二次電池用電解質およびこれを含むリチウム二次電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20221102BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221102BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20221102BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20221102BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20221102BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514597
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2020011861
(87)【国際公開番号】W WO2021045530
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0109724
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0017459
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン,グァン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,キョン-ムン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン-ジン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA10
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用電解質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。本発明によるリチウム二次電池用電解質およびこれを含むリチウム二次電池は、難燃性を示すため、優れた信頼性の付与が可能という利点があり、高出力性能が発揮され、優れた寿命特性、高温安定性および高温電圧保存安定性を有することにより、電池の信頼性が高いという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるホスフェート系化合物を含むリチウム二次電池用電解質:
【化1】
前記化学式1において、
Xは、ハロゲンまたは-OMであり、
Yは、互いに独立して、ハロゲン、-OM、または-OPOZであり、
Zは、互いに独立して、ハロゲン、-OSiR、または-OMであり、
Rは、互いに独立して、C1~C6のアルキル基またはアリル基であり、
Mは、互いに独立して、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
aは、0または1であり、
nは、0~6の整数である。
【請求項2】
前記化学式1で表されるホスフェート系化合物は、下記化学式2~7のいずれか1つで表されることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項3】
前記ホスフェート系化合物は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部に対して0.01~30重量部含まれることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項4】
前記ホスフェート系化合物は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部に対して0.1~10重量部含まれることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項5】
リチウム塩;および有機溶媒;からなる群より選択される1以上をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項6】
正極;負極;および請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池。
【請求項7】
前記正極は、
コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、またはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物または複合リン酸化物からなる群より選択される1種以上の正極活物質を含むことを特徴とする、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記正極は、
リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、またはリチウム鉄リン酸化物からなる群より選択される1種以上の正極活物質を含むことを特徴とする、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用電解質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型化および軽量化が実現され、携帯用電子機器の使用が一般化されるに伴い、これらの電力源として高エネルギー密度を有する二次電池に関する研究が活発に行われている。
【0003】
前記二次電池としては、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-メタルハイドライド電池、ニッケル-水素電池、リチウム二次電池などが挙げられ、このうち、既存のアルカリ水溶液を用いる電池より2倍以上高い放電電圧を示すだけでなく、単位重量あたりのエネルギー密度が高く、急速充電が可能なリチウム二次電池に関する研究が注目されている。
【0004】
一般的に、リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入および脱離可能な物質を正極および負極として用い、正極と負極との間に非水電解質を充填させて製造し、リチウムイオンが正極および負極で挿入および脱離する時の酸化反応および還元反応によって電気的エネルギーを生成する。
【0005】
一方、リチウム二次電池の容量向上のためには内部抵抗が小さくなければならないが、電池の安全性の面では内部抵抗が大きいほど有利である。リチウム二次電池の容量および安全性は、電解質塩などの溶質と非水系有機溶媒との組み合わせからなる前記非水電解質の性質と密接に関係している。
【0006】
一般的に、リチウム二次電池用電解質の添加剤としてLiSO、LiPOのようなリチウム系添加剤を通常使用しているが、従来のリチウム系添加剤の場合、溶解性がやや低くて、電解質の製造時に過剰使用する場合、電解質から添加剤が析出する問題点がある。
【0007】
そこで、日本国公開特許第2004-031079号は、非水電解液二次電池に関し、正極、リチウムを吸蔵および放出することが可能な材料を含む負極、並びに非水溶媒とリチウム塩とを含む非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、式(1):M(PO(式中、Mは、絶対温度0度でのフッ素原子との結合解離エネルギーが560kJmol-1以下の金属原子であるか、又はN(R)(ここで、Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~12の有機基又は水素原子であり、互いに直接又は窒素原子を介して結合して環を形成してもよい)であって、Mが金属原子の場合、xは金属原子Mの価数であって1以上の整数であり、MがN(R)の場合、xは1である)で表されるジフルオロリン酸塩を含有することを特徴とする非水電解液二次電池を提案した。
【0008】
しかし、前記文献の場合、非水電解質の信頼性が低いだけでなく、これによって、リチウム二次電池への適用時、リチウム二次電池の耐久性も低くなる問題が多少発生している。
【0009】
そのため、信頼性に優れかつ溶解性が良い化合物、具体的には、リチウム二次電池用電解質として用いる場合、優れた性能を示す化合物の開発が要求されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、信頼性に優れ、高出力性能の付与が可能なリチウム二次電池用電解質を提供しようとする。
【0011】
また、本発明は、常温寿命特性、高温安定性、高温電圧保存安定性のような信頼性に優れたリチウム二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記化学式1で表されるホスフェート系化合物を含むリチウム二次電池用電解質を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1において、
Xは、ハロゲンまたは-OMであり、
Yは、互いに独立して、ハロゲン、-OM、または-OPOZであり、
Zは、互いに独立して、ハロゲン、-OSiR、または-OMであり、
Rは、互いに独立して、C1~C6のアルキル基またはアリル基であり、
Mは、互いに独立して、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
aは、0または1であり、
nは、0~6の整数である。
【0015】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるリチウム二次電池用電解質およびこれを含むリチウム二次電池は、難燃性を示すため、優れた信頼性の付与が可能という利点がある。
【0017】
また、本発明によるリチウム二次電池用電解質およびこれを含むリチウム二次電池は、高出力性能が発揮され、優れた寿命特性、高温安定性および高温電圧保存安定性を有することにより、電池の信頼性が高いという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、下記化学式1で表されるホスフェート系化合物を含むリチウム二次電池用電解質および前記リチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0019】
【化2】
【0020】
前記化学式1において、
Xは、ハロゲンまたは-OMであり、
Yは、互いに独立して、ハロゲン、-OM、または-OPOZであり、
Zは、互いに独立して、ハロゲン、-OSiR、または-OMであり、
Rは、互いに独立して、C1~C6のアルキル基またはアリル基であり、
Mは、互いに独立して、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
aは、0または1であり、
nは、0~6の整数である。
【実施例
【0021】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0022】
<リチウム二次電池用電解質>
本発明は、下記化学式1で表されるホスフェート系化合物を含むリチウム二次電池用電解質を提供する。
【0023】
【化3】
【0024】
前記化学式1において、
Xは、ハロゲンまたは-OMであり、
Yは、互いに独立して、ハロゲン、-OM、または-OPOZであり、
Zは、互いに独立して、ハロゲン、-OSiR、または-OMであり、
Rは、互いに独立して、C1~C6のアルキル基またはアリル基であり、
Mは、互いに独立して、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、
aは、0または1であり、
nは、0~6の整数である。
【0025】
本発明において、前記ハロゲンは、F、Cl、Br、またはIである。
本発明において、前記アルキル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-メチルペンチルなどがあるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明において、アリル(allyl)基とは、例えば、ビニルやフェニル、ナフチルであってもよいが、これに限定されない。
【0027】
本発明において、-OPOZは、-OP(=O)Zを称する。
本発明において、前記nが2以上の整数の場合、[ ]内の構造は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
具体的には、前記化学式1において、Rは、C1~C6のアルキル基であってもよいし、この場合、前述した効果が極大化できるので好ましい。
【0029】
リチウム二次電池用電解質として従来広く使用されていたLiPOF、LiPOのようなリチウム系添加剤は、溶解度がやや低く、単独使用時に信頼性を低下させる問題がある。
【0030】
本発明の化学式1で表されるホスフェート系化合物は、分子内の最小1以上の-OSiR、例えば、トリアルキルシリルオキシド部分を含むため、電解質内に存在するフッ酸、水分を除去して信頼性が改善されるという利点があり、親油性が高くなって溶解度が改善されるという利点がある。
【0031】
また、前記ホスフェート系化合物のO=P-の構造は、電子供与体の特性を有しており、トリアルキルシリルオキシドのような他の電子供与体が同じ分子内に含まれる場合、相対的に電子求引体に電子が集中して電子供与体の特性を有する官能基が脱離しやすい。さらに、O=P-Xの構造は、電子求引体であるハロゲン、例えば、フルオルと結合して、O=P-の構造が有する電子供与体の特性が弱くなって電子供与体が容易に脱離するのを防止して、適切なエネルギーバランスを維持することができる。
【0032】
前記のような特性があるので、本発明によるホスフェート系化合物は、リチウム二次電池用電解質として含まれる場合、電解質内で副産物として生成されるHO、HF、およびPF5と優先的に反応して当該副産物の活性を低下させる作用をして、リチウム二次電池の寿命を増加させるというメリットがある。
【0033】
また、前記化学式1において、Xが-OMの場合、既存の電子供与体の性能よりも強い電子供与体が導入され、金属イオン(M)の形態で脱離しやすくて電解質内のイオン伝導度を向上させる役割をし、溶解した残りの陰イオンは溶媒内で脱離/析出せず、電解質内で抵抗として作用しない。
【0034】
特に、前記化学式1において、Xが-OMの場合、ホスフェート系化合物が塩(salt)型で存在することができ、前記性能とともに帯電防止剤としての特性も提供できるという利点がある。具体的には、リチウム二次電池用電解質内に含まれるリチウム塩化合物として広く使用される添加剤に比べて溶解性が良く、塩、特にリチウム塩物質の場合、安定性に優れ、帯電防止剤のような他の用途にも適用可能である。
【0035】
前記化学式1において、Xがハロゲンまたは-OMではない、例えば、-OSiRの場合、電子供与体であるトリアルキルシリルオキシドが過度に多くなって、電解質の副産物であるHOとHFと反応すると、トリアルキルシリルヒドロキシドあるいはトリアルキルシリルフルオライドのような気体形態の副産物が生成されることがあり、このような官能基が多数の場合、気体発生の頻度が高くなって、高温保存時、セル全体の厚さを上昇させて電池の性能を悪化させる問題が発生しうる。さらに、電極内のNiの含有量が増加するほど副産物の量が増加して電池の性能をさらに悪化させる問題が発生しうる。
【0036】
また、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、高温寿命、難燃性に優れるという利点がある。リチウム二次電池内のセルが破壊される場合、電解質の化学反応によってバッテリセルの温度が急激に上昇して火災につながることがあり、従来のリチウム二次電池用として含まれていた電解質は発火温度が低いため、電解質が漏れ出ると発火しやすい問題があった。
【0037】
しかし、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、難燃性に優れるため、リチウム二次電池用電解質として含まれる場合、難燃剤として作用することにより、セルの安定性が向上するという利点があるので好ましい。前記難燃性は、火炎試験により確認することができる。
【0038】
具体的には、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、化学式1で表されるホスフェート系化合物を含むことにより、難燃性に優れるため、リチウム二次電池に起因する発火およびエネルギー貯蔵装置(ESS)の爆発などの事故に対して自己消火が可能で被害を最小化できるという利点がある。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表されるホスフェート系化合物は、下記化学式2~7のいずれか1つで表されてもよい。
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、前記化学式2~7のいずれか1つで表されるホスフェート系化合物を含むことにより、電解質内のフッ酸を除去して信頼性を改善するという利点がある。特に、正極表面に安定した無機被膜を形成させて電池の高出力を可能にし、従来のリチウム系添加剤を代替しながらも優れた耐久性および難燃性の付与が可能という利点がある。
【0047】
前記化学式2~7のいずれか1つで表されるホスフェート系化合物は、分子内の最小1以上の-OSiR、例えば、トリアルキルシリルオキシド部分を含むため、親油性が高くて非水性溶媒に対する溶解度に優れるという利点があり、また、本発明によるホスフェート系化合物は、常温寿命特性、高温安定性などのような信頼性に優れるという利点がある。
【0048】
また、前記ホスフェート系化合物は、電子求引体であるハロゲンと結合するO=P-Xの構造を含むことにより、O=P-の構造が有する電子供与体の特性が弱くなって電子供与体が容易に脱離するのを防止して、適切なエネルギーバランスを維持することができ、リチウム二次電池用電解質内で副産物として生成されるHO、HF、およびPF5などと優先的に反応して前記副産物の活性を低下させる作用をして、リチウム二次電池の寿命を増加させるというメリットがある。
【0049】
さらに、前記化学式2~7において、Xが-OMの場合、既存の電子供与体の性能よりも強い電子供与体が導入され、金属イオン(M)の形態で脱離しやすくて電解質内のイオン伝導度を向上させる役割をし、溶解した残りの陰イオンは溶媒内で脱離/析出せず、電解質内で抵抗として作用しない。
【0050】
特に、前記化学式2~7において、Xが-OMの場合、ホスフェート系化合物が塩(salt)型で存在することができ、前記性能とともに帯電防止剤としての特性も提供できるという利点がある。具体的には、ホスフェート末端基がイオン化されて帯電防止性能を改善できる添加剤としても使用できる。
【0051】
本発明によるホスフェート系化合物は、リチウム二次電池用電解質全体100重量部に対して0.01~30重量部含まれ、好ましくは0.1~10重量部含まれ、さらに好ましくは0.2~10重量部含まれる。
【0052】
前記ホスフェート系化合物が前記範囲内に含まれる場合、信頼性改善効果、特に常温寿命特性、高温安定性、高温寿命特性、高温電圧保存安定性などの効果が極大化されるので好ましい。
【0053】
本発明の他の実施形態において、前記リチウム二次電池用電解質は、リチウム塩;および有機溶媒;からなる群より選択される1以上をさらに含むことができる。
【0054】
リチウム塩
前記リチウム塩は、リチウム二次電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進させて基本的なリチウム電池の作動を可能にする。
【0055】
前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M、好ましくは0.5~1.5Mであってもよいが、これに限定されない。ただし、前記リチウム塩の濃度が前記範囲内の場合、電解質の伝導度および粘度が適当であり、電解質の伝導度が低くなって電解質の性能が低下する現象を抑制することができ、電解質の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少する現象を抑制できるので好ましい。要するに、前記リチウム塩の濃度が前記範囲内の場合、伝導度に優れて電解質の性能に優れ、電解質の粘度が適当でリチウムイオンの移動性に優れるという利点があるが、前記リチウム塩の濃度が前記範囲内に限定されるものではなく、必要に応じて適宜加減して使用可能である。
【0056】
前記リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、Li(CFSON、LiN(SO、LiB(C、LiN(SO、Li(CFSO)、LiC(SOCF、LiN(SOCF、LiCSO、LiAlO、LiAlO、LiB(C、LiAlCl、Li(CHCO)、Li(FSON、Li(CFSOC、LiCl、LiBr、およびLiIからなる群より選択される1種または2種以上を混合して使用することができるが、これに限定されない。ただし、この場合、リチウムイオン性の移動性が非常に優れ、伝導度に優れて電解質の性能に優れるという利点があるので好ましい。
【0057】
有機溶媒
前記有機溶媒は、非水溶媒であってもよいし、前記非水溶媒は、リチウム二次電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たすことができる。
【0058】
前記非水溶媒としては、特別な制限なく、当該分野にて通常用いられるものを使用することができる。例えば、前記非水溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、またはその他の非プロトン性溶媒などを使用することができる。これらは、単独でまたは2以上を組み合わせて使用可能である。
【0059】
前記カーボネート系溶媒としては、鎖状カーボネート系溶媒、環状カーボネート系溶媒、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0060】
前記鎖状カーボネート系溶媒は、例えば、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)、エチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、またはこれらの組み合わせが挙げられ、前記環状カーボネート系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate、BC)、ビニルエチレンカーボネート(vinylethylene carbonate、VEC)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ペンチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ブチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)、メチルホルメート(methyl formate)、エチルホルメート(ethyl formate)、プロピルホルメート(propyl formate)などが使用できる。
【0062】
前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用できる。
【0063】
前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用できる。
前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用できる。
【0064】
前記その他の非プロトン性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリジノン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどが使用できる。
【0065】
あるいは、前記有機溶媒は、高誘電率溶媒および低沸点溶媒からなる群より選択される1以上の溶媒を含むことができる。
【0066】
具体的には、前記高誘電率溶媒は、当業界にて通常使用するものであれば特に制限せず、例えば、フッ化エチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1-フッ化エチレンカーボネートのような環状型カーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、および/またはこれらの混合物などが使用できる。
【0067】
前記低沸点溶媒は、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートのような鎖状カーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、脂肪酸エステル誘導体、および/またはこれらの混合物などが使用できるが、これらに限定されない。
【0068】
前記有機溶媒は、前記リチウム二次電池用電解質全体100重量部を満たすように残部として含まれ、この場合、前述したリチウム塩および化合物が目的とする効果に優れるので好ましい。
【0069】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、前記化学式1で表されるホスフェート系化合物以外の添加剤をさらに含むことができる。
【0070】
前記添加剤がさらに含まれる場合、前記化学式1で表される化合物の効果がさらに極大化されるという利点がある。
【0071】
前記添加剤は、例えば、フルオロカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、オキサリルテトラフルオロホスフェートリチウム塩、ビス(オキサリル)ジフルオロホスフェートリチウム塩、トリスオキサリルホスフェートリチウム塩、およびLiPOからなる群より選択される1以上であってもよい。
【0072】
前記添加剤は、前記リチウム二次電池用電解質添加剤全体100重量部に対して0.5~10重量部、具体的には1~3重量部含まれ、この場合、リチウム二次電池の信頼性をさらに高められるという利点があるので好ましい。
【0073】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、具体的には、非水用電解質であってもよいし、本発明の化合物は、具体的には、非水系電解質用添加剤として活用することができる。
【0074】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、溶解性に優れ、正極表面に被膜を形成する効果に優れ、これによって、寿命特性、高温安定性などの信頼性を改善する効果に優れる。
【0075】
<リチウム二次電池>
本発明の他の態様は、前述したリチウム二次電池用電解質を含むリチウム二次電池に関する。
【0076】
本発明によるリチウム二次電池は、前記リチウム二次電池用電解質を、正極、負極、および正極と負極との間に介在したセパレータからなる電極構造体に注入して製造することができる。電極構造体をなす正極、負極、およびセパレータは、リチウム二次電池の製造に通常用いられていたものがすべて使用可能である。
【0077】
前記正極および負極は、正極活物質スラリーと負極活物質スラリーを各電極集電体に塗布して製造される。
【0078】
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成される正極活物質層とを含み、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に形成される負極活物質層とを含む。
【0079】
前記正極集電体としては、リチウム二次電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限なく使用可能である。具体的には、前記正極集電体としては、アルミニウム、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用可能であり、特にアルミニウムが使用可能である。
【0080】
前記正極集電体は、箔、網、多孔質体などの多様な形態を有することができ、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化させることができるが、これに限定されない。
【0081】
前記正極集電体の厚さは、3~500μmであってもよい。
前記正極活物質としては、当分野にて知られたリチウムイオンを挿入および脱離可能な正極活物質が特別な制限なく使用できる。具体的には、前記正極活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケル、アルミニウム、鉄、またはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物または複合リン酸化物のうちの1つ以上を使用することができ、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、またはリチウム鉄リン酸化物などを使用することができる。その代表例としては、下記に記載のリチウム含有化合物が使用できる。
【0082】
LiMn1-y (1)
LiMn1-y2-z (2)
LiMn4-z (3)
LiMn2-yM’ (4)
LiCo1-y (5)
LiCo1-y2-z (6)
LiNi1-y (7)
LiNi1-y2-z (8)
LiNi1-yCo2-z (9)
LiNi1-y-zCoα (10)
LiNi1-y-zCo2-αα (11)
LiNi1-y-zMnα (12)
LiNi1-y-zMn2-αα (13)
上記式中、0.9≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MとM’は、同一または異なり、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、V、および希土類元素からなる群より選択され、Aは、O、F、S、およびPからなる群より選択され、Xは、F、S、およびPからなる群より選択される。
【0083】
好ましくは、前記正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、またはリチウム鉄リン酸化物などを使用することができ、下記に記載のリチウム含有化合物を使用することができる。
【0084】
LiCo1-y (1)
LiCo1-y2-z (2)
LiNi1-y (3)
LiNi1-y2-z (4)
LiNi1-yCo2-z (5)
LiNi1-y-zCoα (6)
LiNi1-y-zCo2-αα (7)
LiNi1-y-zMnα (8)
LiNi1-y-zMn2-αα (9)
上記式中、0.9≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MとM’は、同一または異なり、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、V、および希土類元素からなる群より選択され、Aは、O、F、S、およびPからなる群より選択され、Xは、F、S、およびPからなる群より選択される。
【0085】
さらに好ましくは、前記正極活物質は、リチウムおよびニッケルを含む正極活物質であってもよいし、前記リチウムおよびニッケルを含む正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物などを使用することができ、下記式で表されるリチウムニッケル系金属酸化物であってもよい。
【0086】
LiNi1-y (1)
上記式(1)中、Mは、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、Sn、V、Ge、Ga、B、As、Zr、Mn、Cr、Fe、Sr、V、希土類元素からなる群、またはこれらの組み合わせであり、0.9≦x≦1.1、0≦y<0.7の範囲を有することができる。
【0087】
前記範囲でニッケルを含むリチウムニッケル系金属酸化物の場合、高容量の特性を維持しながらも寿命特性が向上した電池を提供することができ、高温サイクル寿命特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【0088】
具体的には、ハイニッケル(high Ni)系リチウム金属酸化物は、Niの酸化数変化によって焼成過程中に結晶性の低下が発生して、初期効率の減少、寿命特性の低下および表面残留リチウムの増加、電解質との副反応による熱安定性の低下、高温ガスの発生などのデメリットを有している。本発明によるホスフェート系化合物は、リチウム二次電池用電解質として含まれる場合、副産物の活性を低下させる作用をしてリチウム二次電池の寿命を増加させ、難燃性を示すため、高出力性能が発揮され、優れた寿命特性、高温安定性および高温電圧保存安定性を有することにより、電池の信頼性が高いという利点がある。
【0089】
前記負極集電体としては、リチウム二次電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限なく使用可能である。例えば、前記負極集電体としては、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用可能であり、特に銅が使用可能である。
【0090】
前記負極集電体は、箔、網、多孔質体などの多様な形態を有することができ、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできるが、これに限定されない。
【0091】
前記負極集電体の厚さは、3~500μmであってもよい。
前記負極活物質としては、当分野にて知られたリチウムイオンを挿入および脱離可能な負極活物質が特別な制限なく使用可能であり、このような前記負極活物質としては、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素繊維などの炭素材物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープ(dope)および脱ドープ可能な物質、遷移金属酸化物などが使用できる。
【0092】
前記非晶質炭素としては、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、1500℃以下で焼成したメソカーボンマイクロビーズ(mesocarbonmicrobead:MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch-basedcarbon fiber:MPCF)などがある。結晶質炭素としては、黒鉛系材料があり、無定形、板状、フレーク状(flake)、球状または繊維状の黒鉛が挙げられ、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化コークス、黒鉛化MCMB、黒鉛化MPCFなどがある。
【0093】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群より選択される金属との合金が使用できる。
【0094】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、Si-C複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-R合金(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらの少なくとも1つとSiOとを混合して使用してもよい。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0095】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物、またはリチウムチタン酸化物などが挙げられる。
【0096】
前記炭素材物質は、d002層間距離(interplanar distance)が3.35~3.38Å、X線回折(X-ray diffraction)によるLc(crystallite size)が少なくとも20nm以上の物質が好ましい。リチウム合金としては、リチウムと、アルミニウム、亜鉛、ビズマス、カドミウム、アンチモン、シリコン、鉛、スズ、ガリウム、またはインジウムとの合金が使用できる。
【0097】
前記正極活物質および前記負極活物質は、それぞれバインダーおよび溶媒と混合されて正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーに製造される。
【0098】
前記バインダーとしては、活物質のペースト化、活物質の相互接着、集電体との接着、活物質の膨張および収縮に対する緩衝効果などの役割をする物質であって、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン-ポリビニリデンフルオライドの共重合体(P(VdF/HFP))、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムなどがある。前記バインダーの含有量は、電極活物質全体100重量部に対して0.1~30重量部、好ましくは1~10重量部である。前記バインダーの含有量が少なすぎると、電極活物質と集電体との接着力が不十分であり、バインダーの含有量が多すぎると、接着力は良くなるが、電極活物質の含有量がそれだけ減少して電池容量を高容量化するのに不利である。
【0099】
前記活物質スラリーの溶媒としては、通常、非水系溶媒または水系溶媒が使用できる。非水系溶媒としては、例えば、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどを使用することができ、水系溶媒としては、水、イソプロピルアルコールなどが使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
前記電極活物質スラリーには、必要に応じて、導電材、増粘剤などが追加的にさらに含まれる。
【0101】
前記導電材は、電子伝導性を向上させる物質であって、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば制限なく使用可能である。具体的には、黒鉛系導電材、カーボンブラック系導電材、金属または金属化合物系導電材からなる群より選択される少なくとも1つを使用することができる。前記黒鉛系導電材の例としては、人造黒鉛、天然黒鉛などがあり、カーボンブラック系導電材の例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(ketjen black)、デンカブラック(denka black)、サーマルブラック(thermal black)、チャンネルブラック(channel black)、炭素繊維などがあり、金属系または金属化合物系導電材の例としては、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、スズ、酸化スズ、リン酸スズ(SnPO)、酸化チタン、チタン酸カリウム、LaSrCoO、LaSrMnOのようなペロブスカイト(perovskite)物質があり、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマーなどを使用することができるが、前記挙げられた導電材に限定されるものではない。
【0102】
前記導電材の含有量は、電極活物質全体100重量部に対して0.1~10重量部であることが好ましい。導電材の含有量が0.1重量部より少ない場合には、電気化学的特性が低下することがあり、10重量部を超える場合には、重量あたりのエネルギー密度が減少することがある。
【0103】
前記増粘剤は、活物質スラリーの粘度調節の役割を果たすものであれば特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどが使用できる。
【0104】
このように製造された正極および負極活物質スラリーは、電極集電体に塗布されて正極および負極に製造される。
【0105】
負極集電体としては、銅または銅合金などを使用することができる。前記正極集電体および負極集電体の形態には、箔、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡体などが挙げられる。
【0106】
前記正極および負極は、セパレータによって分離可能である。具体的には、製造された正極と負極は、その間にセパレータを介在させた電極構造体に製造された後、電池ケースに収納し、これに電解質を注入してリチウム二次電池に製造される。セパレータとしては、当該分野にて通常用いられるものであれば特に制限なく使用可能である。特に電解質内のイオンの移動に対して低抵抗かつ電解質の含湿能力に優れているものが好適である。従来、セパレータとして用いられた通常の多孔性高分子フィルム、または多孔性不織布であってもよいし、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/メタクリレート共重合体、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン、高融点のガラス繊維およびポリエチレンテレフタレートから選択される材質であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0107】
前記セパレータは、気孔径が0.01~10μmであり、厚さが3~100μmであってもよいが、これに限定されず、単一膜または多層膜であってもよい。
【0108】
前記リチウム二次電池は、当業界にて通常知られている製造方法により製造できる。例えば、前記リチウム二次電池は、正極と負極との間にセパレータを介在して積層体を得た後、前記積層体をワインディングしたり折り畳んでリチウム二次電池容器に収容させ、前記リチウム二次電池容器内に電解質を注入し、封入部材で封止して製造することができる。
【0109】
本発明のリチウム二次電池の外形は特別な制限はないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)型、薄膜型、またはコイン(coin)型などになってもよい。
【0110】
本発明によるリチウム二次電池は、前記化学式1で表されるホスフェート系化合物を含むため、寿命特性、高温安定性、高温寿命特性、高温電圧保存安定性などの信頼性に優れるという利点がある。
【0111】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書による実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に詳述する実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。また、以下、含有量を示す「%」および「部」は、特に言及しない限り、重量基準である。
【0112】
合成例1
ジメチルホルムアミド溶剤にソジウムモノフルオロホスフェート1当量を溶かした後、0℃の条件でトリメチルシリルクロライド2当量を滴下し、常温で2時間反応を進行させた。反応後、ジエチルエーテルを入れて抽出過程を進行させ、ジエチルエーテル層の溶剤を除去および真空乾燥により残存の揮発性物質を除去して、化学式2で表される化合物を合成した。
【0113】
【化10】
【0114】
合成された化合物は、1H NMR CDCl3 δ0.3ppm, P-NMR CDCl3 δ -26ppm, F-NMR CDCl3δ-72ppmを示した。
【0115】
合成例2
化学式2で表される化合物1当量をジメチルカーボネートに溶かした後、リチウムヒドロキシドを1当量入れた後、24時間反応させて、化学式3で表される化合物を合成した。
【0116】
【化11】
【0117】
合成された化合物は、1H NMR CDCl3 δ0.3ppm, P-NMR CDCl3 δ -26ppm, F-NMR CDCl3 δ-72ppm, ICP-MS Li:P:Siの比率が1:0.9:0.9(計算値1:1:1)を示した。
【0118】
合成例3
ホスホラスペンタクロライド0.6当量に化学式2で表される化合物1当量を滴下した後、PClがすべて溶けた時、揮発性物質を真空ポンプで除去した後、蒸留精製により化学式4で表される化合物を合成した。
【0119】
【化12】
【0120】
合成された化合物は、1H NMR CDCl3 δ0.3ppm, P-NMR CDCl3 δ -32ppm, F-NMR CDCl3 δ-71ppmを示した。
【0121】
合成例4
化学式4で表される化合物1当量をジメチルカーボネートに溶かした後、リチウムヒドロキシドを1当量入れた後、24時間反応させて、化学式5で表される化合物を合成した。
【0122】
【化13】
【0123】
合成された化合物は、1H NMR CDCl3 δ0.3ppm, P-NMR CDCl3 δ -27pm, F-NMR CDCl3 δ-71ppm, ICP-MS Li:P:Siの比率が1:1.9:1.9(計算値1:2:2)を示した。
【0124】
合成例5
ジメチルホルムアミド溶剤にソジウムジフルオロハイパーホスフェート1当量を溶かした後、0℃の条件でトリメチルシリルクロライド2当量を滴下し、常温で2時間反応を進行させた。反応後、ジエチルエーテルを入れて抽出過程を進行させ、ジエチルエーテル層の溶剤を除去および真空乾燥により残存の揮発性物質を除去して、化学式6で表される化合物を合成した。
【0125】
【化14】
【0126】
合成された化合物は、1H NMR CDCl3 δ0.3ppm, P-NMR CDCl3 δ -28ppm, F-NMR CDCl3δ-69ppmを示した。
【0127】
合成例6
塩化ホスホニル1当量に化学式2で表される化合物3当量を滴下して4時間反応後、揮発性物質を真空ポンプで除去、および蒸留精製により化学式7で表される化合物を合成した。
【0128】
【化15】
【0129】
合成された化合物は、1H NMR CDCl3 δ0.3ppm, P-NMR CDCl3 δ -28ppm, F-NMR CDCl3 δ-72ppmを示した。
【0130】
合成例7
ホスホラスペンタクロライド0.6当量に化学式4で表される化合物1当量を滴下した後、PClがすべて溶けた時、揮発性物質を真空ポンプで除去した後、蒸留精製で化合物を合成した。このような方法で化合物1の当量を調節すれば、モノフルオロホスフェートの長さを調節することができる。
【0131】
【化16】
【0132】
実施例1
(1)正極および負極の製造
正極活物質としてLiCoO 97.3重量部、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド1.4重量部、導電材としてケッチェンブラック1.3重量部を混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム箔に塗布して乾燥した後、これを圧延して正極を製造した。
【0133】
また、負極活物質のグラファイト98重量部、バインダーのポリビニリデンフルオライド1重量部、導電材としてカーボンブラック1重量部を混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて、負極活物質層組成物を製造し、銅箔に塗布して乾燥した後、これを圧延して負極を製造した。
【0134】
(2)リチウム二次電池用電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):エチルプロピオネート(EP)の体積比が40:40:20の混合溶液に0.95MのLiPFを添加して、非水性混合溶液を製造した。
【0135】
前記混合溶液を基準として、下記化学式2で表される化合物3.0重量部を添加して、リチウム二次電池用電解質を製造した。
【0136】
【化17】
【0137】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)により製造された正極および負極、(2)により製造されたリチウム二次電池用電解質を用いて、リチウム二次電池を製造した。
【0138】
実施例2
リチウム二次電池用電解質の製造時、化学式2で表される化合物の代わりに化学式3で表される化合物を添加したことを除けば、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0139】
【化18】
【0140】
実施例3
リチウム二次電池用電解質の製造時、化学式2で表される化合物の代わりに化学式4で表される化合物を添加したことを除けば、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0141】
【化19】
【0142】
実施例4
リチウム二次電池用電解質の製造時、化学式2で表される化合物の代わりに化学式5で表される化合物を添加したことを除けば、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0143】
【化20】
【0144】
実施例5
リチウム二次電池用電解質の製造時、化学式2で表される化合物の代わりに化学式6で表される化合物を添加したことを除けば、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0145】
【化21】
【0146】
実施例6
リチウム二次電池用電解質の製造時、化学式2で表される化合物の代わりに化学式7で表される化合物を添加したことを除けば、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0147】
【化22】
【0148】
比較例1
(1)正極および負極の製造
実施例1と同様の方法で正極および負極を製造した。
【0149】
(2)リチウム二次電池用電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):エチルプロピオネート(EP)の体積比が40:40:20の混合溶液に0.95MのLiPFを添加して、非水性混合溶液を製造した。
【0150】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)により製造された正極および負極、(2)により製造されたリチウム二次電池用電解質を用いて、リチウム二次電池を製造した。
【0151】
比較例2
化学式2で表される化合物の代わりにリチウムトリオキサリルホスフェート(WCA3(LiP(C))を用いたことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0152】
比較例3
化学式2で表される化合物の代わりにビス(オキサリル)ジフルオロホスフェートリチウム塩(LiFOB(LiB(C))を用いたことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0153】
比較例4
化学式2で表される化合物の代わりに下記化学式Aで表されるトリメチルシリルホスフェートを用いたことを除き、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0154】
【化23】
【0155】
実験例(1)~(3)
実施例1~6および比較例1~4により製造された二次電池を、25℃、0.2Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流で充電し、次いで、電圧が2.5Vに達するまで0.2Cの定電流で放電した。次いで、0.5Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで0.5Cの定電流で放電した(化成ステップ)。
【0156】
(1)常温寿命特性
前記化成ステップを経た二次電池を、25℃、1.0Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを300回繰り返した。
【0157】
それぞれの二次電池の300回目サイクルでの容量維持率(capacity retention ratio、%)を下記数式1で計算して、その結果を下記表1に示した。
【0158】
【数1】
【0159】
(2)高温電圧保存安定性
前記化成ステップを経た二次電池を、25℃、1.0Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、充電された二次電池を60℃で保管しながら24時間ごとにマルチメータ(multi-meter)を用いて電圧を測定し、充電状態のセルの高温で残留電圧を測定して高温電圧保存安定性を測定した。
【0160】
それぞれの二次電池の15日目の測定時の電圧維持率(Voltage retention、%)を下記数式2で計算して、その結果を下記表1に示した。
【0161】
【数2】
【0162】
(3)内部抵抗増加率
実施例および比較例について電池の内部抵抗を測定した。内部抵抗の測定は、電池容量の50%(SOC=50%)に調整した後に、0.5A、1A、2A、3A、5Aの電流を流し、10秒後の電池電圧を測定した。測定した電流と電圧を直線近似してその傾きで内部抵抗を求めた。このような方法で繰り返した充放電において内部抵抗の増加した比率を示す抵抗増加率を評価した。
【0163】
抵抗増加率は、充放電サイクル試験において1サイクル目の内部抵抗を初期内部抵抗R1(Ω)とし、300cycleの内部抵抗をサイクル後の内部抵抗R300(Ω)として下記数式3で算出して、その結果を下記表1に示した。
【0164】
【数3】
【0165】
【表1】
【0166】
前記表1を参照すれば、本発明によるホスフェート系化合物を含むリチウム二次電池用電解質を含む実施例の場合、常温寿命特性、高温電圧保存安定性および内部抵抗増加率が少なく、リチウム二次電池が優れた性能を示すことが分かる。
【0167】
しかし、比較例1~4のように本発明によるホスフェート系化合物を含まない場合、常温寿命特性、高温電圧保存安定性および内部抵抗増加率が全体的に実施例に比べて良くないことを確認することができる。
【0168】
実施例7
(1)正極および負極の製造
正極活物質としてNCM622 97.3重量部、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド1.4重量部、導電材としてケッチェンブラック1.3重量部を混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム箔に塗布して乾燥した後、これを圧延して正極を製造した。
【0169】
また、負極活物質のグラファイト98重量部、バインダーのポリビニリデンフルオライド1重量部、導電材としてカーボンブラック1重量部を混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて負極活物質層組成物を製造し、銅箔に塗布して乾燥した後、これを圧延して負極を製造した。
【0170】
(2)リチウム二次電池用電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)を2:4:4の体積比で混合した混合溶媒にLiPFを1.0Mとなるように添加して、非水性混合溶液を製造した。
【0171】
前記混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部と化学式2で表される化合物を0.5重量部の量で添加して、リチウム二次電池用電解質を製造した。
【0172】
【化24】
【0173】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)により製造された正極および負極、(2)により製造されたリチウム二次電池用電解質を用いて、リチウム二次電池を製造した。
【0174】
実施例8
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部と化学式2で表される化合物を1.0重量部の量で添加したことを除けば、実施例7と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0175】
実施例9
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部と化学式2で表される化合物を1.5重量部の量で添加したことを除けば、実施例7と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0176】
実施例10
混合溶液を基準として、フルオロエチレンカーボネート3重量部と化学式2で表される化合物を0.5重量部の量で添加したことを除けば、実施例7と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0177】
実施例11
混合溶液を基準として、フルオロエチレンカーボネート3重量部と化学式2で表される化合物を1.0重量部の量で添加したことを除けば、実施例7と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0178】
実施例12
混合溶液を基準として、フルオロエチレンカーボネート3重量部と化学式2で表される化合物を1.5重量部の量で添加したことを除けば、実施例7と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0179】
実施例13
(1)正極および負極の製造
正極活物質としてNCM811 97.3重量部、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド1.4重量部、導電材としてケッチェンブラック1.3重量部を混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム箔に塗布して乾燥した後、これを圧延して正極を製造した。
【0180】
また、負極活物質のグラファイト98重量部、バインダーのポリビニリデンフルオライド1重量部、導電材としてカーボンブラック1重量部を混合した後、N-メチルピロリドンに分散させて負極活物質層組成物を製造し、銅箔に塗布して乾燥した後、これを圧延して負極を製造した。
【0181】
(2)リチウム二次電池用電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)を2:4:4の体積比で混合した混合溶媒にLiPFを1.0Mとなるように添加して、非水性混合溶液を製造した。
【0182】
前記混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部と化学式2で表される化合物を0.5重量部の量で添加して、リチウム二次電池用電解質を製造した。
【0183】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)により製造された正極および負極、(2)により製造されたリチウム二次電池用電解質を用いて、リチウム二次電池を製造した。
【0184】
実施例14
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部と化学式2で表される化合物を1.0重量部の量で添加したことを除けば、実施例13と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0185】
実施例15
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部と化学式2で表される化合物を1.5重量部の量で添加したことを除けば、実施例13と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0186】
比較例5
(1)正極および負極の製造
実施例7と同様の方法で正極および負極を製造した。
【0187】
(2)リチウム二次電池用電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)を2:4:4の体積比で混合した混合溶媒にLiPFを1.0Mとなるように添加して、非水性混合溶液を製造した。
【0188】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)により製造された正極および負極、(2)により製造されたリチウム二次電池用電解質を用いて、リチウム二次電池を製造した。
【0189】
比較例6
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部の量で添加したことを除けば、比較例5と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0190】
比較例7
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部とLiPO 1重量部を添加したことを除けば、比較例5と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0191】
比較例8
混合溶液を基準として、フルオロエチレンカーボネート3重量部の量で添加したことを除けば、比較例5と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0192】
比較例9
混合溶液を基準として、フルオロエチレンカーボネート3重量部とLiPO 1重量部を添加したことを除けば、比較例5と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0193】
比較例10
(1)正極および負極の製造
実施例13と同様の方法で正極および負極を製造した。
【0194】
(2)リチウム二次電池用電解質の製造
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)を2:4:4の体積比で混合した混合溶媒にLiPFを1.0Mとなるように添加して、非水性混合溶液を製造した。
【0195】
(3)リチウム二次電池の製造
前記(1)により製造された正極および負極、(2)により製造されたリチウム二次電池用電解質を用いて、リチウム二次電池を製造した。
【0196】
比較例11
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部の量で添加したことを除けば、比較例10と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0197】
比較例12
混合溶液を基準として、ビニレンカーボネート1重量部とLiPO 1重量部を添加したことを除けば、比較例10と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0198】
実験例(4)~(7)
実施例7~15および比較例5~12により製造された二次電池を、25℃、0.2Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流で充電し、次いで、電圧が2.5Vに達するまで0.2Cの定電流で放電した。次いで、0.5Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで0.5Cの定電流で放電した(化成ステップ)。
【0199】
(4)高温寿命特性
前記化成ステップを経た二次電池を、45℃、1.0Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを300回繰り返した。
【0200】
それぞれの二次電池の300回目サイクルでの容量維持率(capacity retention ratio、%)を下記数式4で計算して、その結果を下記表2に示した。
【0201】
【数4】
【0202】
(5)高温電圧保存安定性
前記化成ステップを経た二次電池を、25℃、1.0Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、充電された二次電池を60℃で保管しながら24時間ごとにマルチメータを用いて電圧を測定し、充電状態のセルの高温で残留電圧を測定して高温電圧保存安定性を測定した。
【0203】
それぞれの二次電池の30日目の測定時の電圧維持率(Voltage retention、%)を下記数式5で計算した。
【0204】
【数5】
【0205】
(6)常温寿命特性
前記化成ステップを経た二次電池を、25℃、1.0Cの電流密度で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを300回繰り返した。
【0206】
それぞれの二次電池の300回目サイクルでの容量維持率(capacity retention ratio、%)を下記数式6で計算して、その結果を下記表2に示した。
【0207】
【数6】
【0208】
(7)燃焼試験評価
実施例および比較例で製造された電解質を大気中にて試験炎に露出した後に、試験炎を遠く離し、引火炎の様子を目視によって観察し、消火するまでの時間を測定した。消火時間が10秒未満の場合を難燃性とし、10秒以上の場合を燃焼性とした。その結果を下記表2に示した。
【0209】
<評価基準>
難燃性:10秒未満消火
燃焼性:10秒以上消火
【0210】
【表2】
【0211】
表2を参照すれば、本発明によるホスフェート系化合物を含むリチウム二次電池用電解質を含む実施例の場合、常温および高温寿命特性、高温電圧保存安定性が高く、燃焼試験評価の結果、難燃性を示して高温安定性が高いことを確認することができる。また、リチウムおよびニッケルを含む正極を含む実施例の場合、常温および高温寿命特性、高温電圧保存安定性特性がさらに優れていることを確認することができる。
【0212】
しかし、本発明によるホスフェート系化合物を含むリチウム二次電池用電解質を含まない比較例の場合、常温および高温寿命特性、高温電圧保存安定性、または燃焼試験評価の結果、1つ以上の特性が非常に不良であることを確認することができる。
【国際調査報告】