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特表2022-547061進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)の治療のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)の治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221102BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20221102BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20221102BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20221102BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/282
A61K33/243
A61K31/7048
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022514608
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2020074714
(87)【国際公開番号】W WO2021043955
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/896,224
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ハイイー
(72)【発明者】
【氏名】フアン,イーファン
(72)【発明者】
【氏名】デニス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シャイア,ノラ
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086GA16
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086HA28
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
PD1/PD-L1活性を阻害する抗体を、エトポシド及びプラチナ系治療薬と組み合わせて、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)を治療する方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における無増悪生存期間(PFS)を延長する方法であって、
a)ヒト抗PD-L1抗体と
b)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)と
で前記患者を治療することを含む方法。
【請求項2】
前記プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、
配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ、又はアテゾリズマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内に3週間毎に(Q3W)投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
EPは、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内に投与される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
トレメリムマブは、75mgの固定用量として投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
トレメリムマブは、1mg/kgの用量として投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ヒト抗PD-1抗体で前記患者を治療することをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PFSが、EP単独での治療と比較して、少なくとも約5か月増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における全生存期間(OS)を延長する方法であって、
a)ヒト抗PD-L1抗体と
b)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)と
で前記患者を治療することを含む方法。
【請求項20】
前記プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、
配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ、又はアテゾリズマブである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
EPは、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内に投与される、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
トレメリムマブは、75mgの固定用量として投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
トレメリムマブは、1mg/kgの用量として投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む、請求項19~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ヒト抗PD-1抗体で前記患者を治療することをさらに含む、請求項19~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
OSは、EP単独での治療と比較して、少なくとも約3か月延長される、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における全奏効率(ORR)を改善する方法であって、
a)ヒト抗PD-L1抗体と
b)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)と
で前記患者を治療することを含む方法。
【請求項38】
前記プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、
配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ、又はアテゾリズマブである、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
EPは、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内に投与される、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
4サイクルの治療完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ヒト抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
トレメリムマブは、75mgの固定用量として投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
トレメリムマブは、1mg/kgの用量として投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む、請求項37~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
ヒト抗PD-1抗体で前記患者を治療することをさらに含む、請求項37~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ORRは、EP単独での治療と比較して少なくとも10%増加する、請求項37に記載の方法。
【請求項55】
ES-SCLCの治療を必要とする患者のES-SCLCを治療する方法であって、前記患者にデュルバルマブ及びEPを投与することであって、前記デュルバルマブ及びEPは一次治療として投与される、こと、並びに、任意選択で前記患者にトレメリムマブを投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、デュルバルマブとプラチナエトポシドとの組み合わせの使用に基づく、進展型SCLC患者を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、男女ともに癌による死亡の主な原因であり、癌による死亡全体の約5分の1を占めている。肺癌は非小細胞肺癌(NSCLC)と小細胞肺癌(SCLC)に大別され、後者は診断された肺癌全体の13~17%を占め、急速な増殖、高い増殖分画、及び広範な転移巣の早期発生を特徴とする(非特許文献1;非特許文献2)。診断後5年の時点で生存しているSCLC患者は7%未満である(非特許文献3;非特許文献2)。癌が肺又は身体の他の部分に広範囲に広がっている進展型SCLC(ES-SCLC)は、SCLCの全症例の約3分の2を占める(非特許文献1)。SCLCの全患者のうち診断後5年生存するのはわずか6%であるため、予後は特に不良である。
【0003】
ES-SCLCの標準治療(一次治療)は30年超にわたり、エトポシド+シスプラチン又はカルボプラチン(EP)による4~6サイクルからなり、選択肢は限られている(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。EPで治療された患者の初期奏効率は最大78%であるにもかかわらず(非特許文献8;非特許文献9)、患者の大部分は初期治療を完了してから6か月以内に再発し、全生存期間(OS)の中央値は約10か月である(非特許文献8;非特許文献10)。日本以外では、二次治療設定における現在の標準治療はトポテカン(非特許文献5;非特許文献6)であり、これは不良なアウトカム(プラチナ難治性疾患患者における5%の奏効率及び9%の1年生存率)と関連しており(非特許文献11)、一次治療改善に対し未だ満たされていない大きなニーズがあることを強調している。
【0004】
近年、プログラム細胞死1(PD-1)経路及びプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)経路を標的とした免疫療法のES-SCLC患者に対する臨床活性が、一次治療としての活性を含め、示されている(非特許文献12)。デュルバルマブは、PD-L1のPD-1及びCD80への結合を遮断する選択的高親和性ヒトIgG1モノクローナル抗体であり(非特許文献13)、プラチナ製剤をベースとした化学放射線療法後の切除不能なステージIIIの非小細胞肺癌患者の治療を適応としている(非特許文献14;非特許文献15)。早期相臨床試験では、デュルバルマブは、単独療法としても、抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)抗体のトレメリムマブと組み合わせても、再発又は難治性疾患の患者を含む前治療ES-SCLC患者において持続的な臨床活性と管理可能な安全性プロファイルを示した(非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18)。
【0005】
一次治療改善に対する満たされていない大きなニーズに対処するために、本開示は、ES-SCLC患者の一次治療に、デュルバルマブを、トレメリムマブとともに又はトレメリムマブを伴わずに、EPと組み合わせて投与することを含む方法を提供する。本明細書に開示するように、本方法は、ES-SCLC患者の一次治療に有意且つ予想外の進歩を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Oronsky et al.What’s new in SCLC?A review.Neoplasia 2017;19(10):842-847
【非特許文献2】Wang et al.Survival changes in patients with small cell lung cancer and disparities between different sexes,socioeconomic statuses and ages.Sci Rep 2017;7:1339
【非特許文献3】Byers et al.Small cell lung cancer:where do we go from here?Cancer 2015 1;121(5):664-72
【非特許文献4】Pietanza et al.Small Cell Lung Cancer:Will Recent Progress Lead to Improved Outcomes?Clin Cancer Res 2015;21:2244-55
【非特許文献5】Frueh et al.Small-cell lung cancer(SCLC):ESMO Clinical Practice Guidelines for Diagnosis,Treatment and Follow-up.Ann Oncol 2013;24(Suppl 6):vi99-105
【非特許文献6】Rudin et al.Treatment of small-cell lung cancer:American Society of Clinical Oncology endorsement of the American College of Chest Physicians guideline.J Clin Oncol 2015 8;33(34):4106-11
【非特許文献7】Japan Lung Cancer Society:Lung cancer practice guidelines 2018 version III.Small cell lung cancer(SCLC)
【非特許文献8】Farago et al.Current standards for clinical management of small cell lung cancer.Transl Lung Cancer Res 2018;7(1):69-79
【非特許文献9】Fukuoka et al.Randomized trial of cyclophosphamide,doxorubicin,and vincristine versus cisplatin and etoposide versus alternation of these regimens in small-cell lung cancer.J Natl Cancer Inst 1991;9;83(12):855-61
【非特許文献10】Rossi et al.Carboplatin- or cisplatin-based chemotherapy in first-line treatment of small-cell lung cancer:the COCIS meta-analysis of individual patient data.J Clin Oncol.2012;30:1692-98;Pietanza et al.,2015
【非特許文献11】Horita et al.Topotecan for Relapsed Small-cell Lung Cancer:Systematic Review and Meta-Analysis of 1347 Patients.Sci Rep 2015;5:15437
【非特許文献12】Horn et al.First-Line Atezolizumab plus Chemotherapy in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer.N Engl J Med 2018;379:2220-9
【非特許文献13】Stewart et al.Identification and characterization of durvalumab,an antagonistic anti-PD-L1 monoclonal antibody.Cancer Immunol Res 2015;3:1052-62
【非特許文献14】Antonia et al.Durvalumab after chemoradiotherapy in stage III non-small-cell lung cancer.N Engl J Med 2017;377:1919-1929
【非特許文献15】Antonia et al.Overall survival with durvalumab after chemoradiotherapy in Stage III NSCLC.N Engl J Med 2018;379:2342-2350
【非特許文献16】Cho et al.Safety and Clinical Activity of Durvalumab in Combination with Tremelimumab in Extensive Disease Small-Cell Lung Cancer.J Clin Oncol 2018;36(15_suppl;abstr 8517
【非特許文献17】Goldman et al.Safety and Antitumor Activity of Durvalumab Monotherapy in Patients with Pretreated Extensive Disease Small-Cell Lung Cancer.J Clin Oncol 2018;36(15_suppl;abstr 8518)
【非特許文献18】Bondarenko et al.Preliminary Efficacy of Durvalumab plus Tremelimumab in Platinum-refractory/resistant Extensive Disease-Small Cell Lung Cancer from Cohort A of the Phase 2 BALTIC Study.Ann Oncol 2018;29(suppl_8):viii596-viii602(Abstract 1665PD)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は一般に、一次治療として患者の進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)を治療する方法であって、PD1/PD-L1活性を阻害する抗体を、エトポシド及びプラチナ系治療薬、並びに任意選択によるCTLA-4を阻害する抗体と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0008】
第1の態様では、本開示は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における無増悪生存期間(PFS)を延長する方法であって、a)ヒト抗PD-L1抗体とb)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)とで患者を治療することを含む方法を提供する。第1の態様の一実施形態では、プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む。第1の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。第1の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む。第1の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ又はアテゾリズマブである。第1の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第1の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第1の態様の別の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む。第1の態様による実施形態では、EPが、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内に投与される。
【0009】
第1の態様の一実施形態では、方法は、Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む。
【0010】
第1の態様の一実施形態では、方法は、ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブである。別の実施形態では、トレメリムマブは、75mgの固定用量として、又は1mg/kgの用量として投与される。
【0011】
第1の態様の別の実施形態又は第1の態様の他の実施形態では、方法は、患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む。
【0012】
第1の態様の別の実施形態又は第1の態様の他の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-1抗体で患者を治療することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む。
【0013】
第1の態様の別の実施形態では、PFSが、EP単独での治療と比較して、少なくとも約5か月増加する。
【0014】
第2の態様では、本開示は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における全生存期間(OS)を延長する方法であって、a)ヒト抗PD-L1抗体とb)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)とで患者を治療することを含む方法を提供する。第2の態様の一実施形態では、プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む。第2の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。第2の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む。第2の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ又はアテゾリズマブである。第2の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第2の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第2の態様の別の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む。第2の態様による実施形態では、EPが、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内投与される。
【0015】
第2の態様の一実施形態では、本方法は、Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む。
【0016】
第2の態様の一実施形態では、方法は、ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブである。別の実施形態では、トレメリムマブは、75mgの固定用量として、又は1mg/kgの用量として投与される。
【0017】
第2の態様の別の実施形態又は第2の態様の他の実施形態では、方法は、患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む。
【0018】
第2の態様の別の実施形態又は第2の態様の他の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-1抗体で患者を治療することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む。
【0019】
第2の態様の別の実施形態では、OSは、EP単独での治療と比較して、少なくとも約3か月延長される。
【0020】
第3の態様では、本開示は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における全奏効率(ORR)を改善する方法であって、a)ヒト抗PD-L1抗体とb)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)とで患者を治療することを含む方法を提供する。第3の態様の一実施形態では、プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む。第3の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。第3の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む。第3の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ又はアテゾリズマブである。第3の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第3の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第3の態様の別の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む。第3の態様による実施形態では、EPが、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内投与される。
【0021】
第3の態様の一実施形態では、方法は、Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む。
【0022】
第3の態様の一実施形態では、方法は、ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブである。別の実施形態では、トレメリムマブは、75mgの固定用量として、又は1mg/kgの用量として投与される。
【0023】
第3の態様の別の実施形態又は第3の態様の他の実施形態では、方法は、患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む。
【0024】
第3の態様の別の実施形態又は第3の態様の他の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-1抗体で患者を治療することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む。
【0025】
第3の態様の別の実施形態では、ORRは、EP単独での治療と比較して少なくとも10%増加する。
【0026】
第4の態様では、本開示は、ES-SCLCの治療を必要とする患者のES-SCLCを治療する方法であって、患者にデュルバルマブ及びEPを投与すること(ここで、デュルバルマブ及びEPは一次治療として投与される)、並びに、任意選択で患者にトレメリムマブを投与することを含む方法を提供する。
【0027】
上記態様のいずれかのいくつかの実施形態又は上記態様のいずれかの実施形態では、患者は、ヒト抗PD-L1抗体を含む治療に対する治療的応答に関連した遺伝子を発現し(すなわち、表現型を有し)得る。いくつかの態様では、患者はPD-L1(+)である。他の態様では、患者はPD-L1(-)である。いくつかの態様では、患者はEGFR変異(+)である。他の態様では、患者はEGFR変異(-)又は野生型である。いくつかの態様では、患者は、PD-L1及びEGFR変異表現型の任意の組み合わせを発現し得る。
【0028】
本開示によって提供される他の特徴、態様、実施形態、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本開示の研究デザインを示す。*EPは、エトポシド80~100mg/mと、カルボプラチンAUC5~6又はシスプラチン75~80mg/mとからなる。患者はEP後にトレメリムマブの追加投与を受けた。患者は、対照治療群においては追加の2サイクルのEP(全部で6サイクルまで)及びPCIを受けることができる。§患者は、病勢の進行、許容できない毒性、新たなPNSの兆候若しくは既存のPNSの悪化、妊娠又は妊娠の意図、別の治験薬を含む代替抗癌療法の開始、ノンコンプライアンス、又は同意の撤回が確認されるまで治療を継続した。RECIST v1.1によって病勢の進行が認められ(未確定及び確定)、割り付けられた治療による利益が継続し、病勢進行の状況で治療の基準を満たした全治療群の患者は、臨床的利益が得られていると判断される限り、割り付けられた治療を継続して受けることができた。これにはEPが含まれたが、EPは免疫療法群の患者では最大4サイクル、対照群の患者では最大6サイクルに制限された。AUC:曲線下面積、CT:化学療法、ES-SCLC:進展型小細胞肺癌、EP:プラチナエトポシド、PCI:予防的頭蓋照射、PD;病態進行、PNS:腫瘍随伴症候群、PS:一般状態、q3w:3週毎、q4w:4週毎、RECIST:固形癌の治療効果判定規準、WHO:世界保健機構。
図2図2は、本開示において両側5%有意水準での第一種過誤を制御するために使用されたゲートキーピング戦略による階層的多重検定手順を示す。仮説は、アルファ包括リサイクリング戦略による多重検定手順を用いて試験された(Burman et al.A recycling framework for the construction of Bonferroni-based multiple tests.Stat Med 2009;28:739-61)。この戦略を用いて、OSの2つの一次解析及びPFSの2つの二次解析を試験した。したがって、PFSは両OS主要解析で有意性が得られた場合にのみ、多重検定手順の範囲内で試験することとした。全体の5%αを以下の主要エンドポイント間で次のように分割した:デュルバルマブ+EP対EPのOSの解析にはアルファレベル4%を、デュルバルマブ+トレメリムマブ+EP対EPのOSの解析にはアルファレベル1%を割り当てた。EP:プラチナエトポシド、H:仮説、ITT:治療企図、OS:全生存期間、PFS:無増悪生存期間。
図3図3は、治療企図集団における全生存期間を示す。(3A)デュルバルマブ+トレメリムマブ+EP対EPのカプラン・マイヤーグラフ、(3B)デュルバルマブ+EP対EPのカプラン・マイヤーグラフ、(3C)デュルバルマブ+EP対EPのサブグループ解析。CI:信頼区間、EP:プラチナエトポシド、OS:全生存期間、PFS:無増悪生存期間。
図4図4は、企図集団における無憎悪生存期間及び奏効期間を示す。(4A)デュルバルマブ+トレメリムマブ+EP対EPの無増悪生存期間のカプラン・マイヤーグラフ、(4B)デュルバルマブ+EP対EPの無増悪生存期間のカプラン・マイヤーグラフ、(4C)デュルバルマブ+トレメリムマブ+EP対EPの奏効期間のカプラン・マイヤーグラフ、(4D)デュルバルマブ+EP対EPの奏効期間のカプラン・マイヤーグラフ。
図5図5は、標的病変サイズのベースラインからの最良変化率を示す。(5A)デュルバルマブ+トレメリムマブ+EP対EP。(5B)デュルバルマブ+EP対EP。
図6図6は、確認された客観的奏効を示す。図6は、RECIST v1.1による当たりの全奏効率を示す。図6Bは、奏効期間(DoR)を示す。OR:オッズ比。D+EP:デュルバルマブ及びEP(エトポシド及びカルボプラチン又はシスプラチン)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味を有する。
【0031】
以下の参考文献は、本発明で使用されている用語の多くの一般的な定義を当業者に提供するものである:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991);及びHale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用する場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、下でそれらに帰属される意味を有する。
【0032】
本開示では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有している(containing)」及び「有している(having)」などは、米国特許法においてそれらに属すると見なされている意味を有することができ、「包含する(includes)」、「包含している(including)」などを意味することができる。「~から実質的になっている(consisting essentially of)」又は「実質的になる(consists essentially)」という用語は、同様に、米国特許法においてそれらに属すると見なされている意味を有し、制約されず、言及されていることの基本的又は新規な特徴が、言及されていることを超える存在によって変化させられない限り、言及されていることを超える存在は許容されるが、先行技術の態様は除外される。
【0033】
特に明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「又は」という用語は、包括的であると理解される。特に明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語は、単数又は複数であると理解される。
【0034】
特に明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「約」という用語は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均値の2標準偏差内として理解される。「約」という用語は、表示値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内として理解することができる。文脈から明確でない限り、本明細書に提供される全数値は、用語約により修飾される。
【0035】
本明細書において変数の任意の定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一の基又は列挙した基の組み合わせとしてのその変数の定義を含む。本明細書における変数又は態様に関する態様の列挙は、任意の単一の態様、又は任意の他の態様若しくはその一部分との組み合わせとしての態様を含む。
【0036】
本明細書で提供される任意の組成物又は方法は、本明細書で提供されるその他の組成物及び方法のいずれか1つ又は複数と組み合わされ得る。
【0037】
本明細書に提供される範囲は、その範囲内の全部の値に対する省略表現であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組合せ、及び下位範囲を含むと理解される。
【0038】
「抗PD-L1抗体」とは、PD-L1ポリペプチドに選択的に結合する抗体又はその抗原結合断片を意味する。例示的な抗PD-L1抗体は、例えば、米国特許第8,779,108号明細書及び同第9,493,565号明細書に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、デュルバルマブ、アベルマブ及びアテゾリズマブは、例示的なPD-L1抗体である。さらなる態様では、デュルバルマブは例示的なPD-L1抗体である。
【0039】
「デュルバルマブ」という用語は、本明細書で使用する場合、米国特許第9,493,565号明細書(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているとおり(「2.14H9OPT」と称されている)、PD-L1に選択に結合し、PD-L1がPD-1受容体及びCD80受容体に結合するのを遮断する抗体を指す。デュルバルマブのフラグメント結晶性(Fc)ドメインは、IgG1重鎖の定常ドメイン内に、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)の媒介を担う補体成分C1q及びFcγ受容体への結合を減少させる三重変異を含有する。デュルバルマブは、インビトロでヒトT細胞活性化のPD-L1媒介による抑制を軽減することができ、異種移植モデルにおいて、腫瘍増殖をT細胞依存性の機序によって阻害する。
【0040】
「抗PD-1抗体」とは、PD-1ポリペプチドに選択的に結合する抗体又はその抗原結合断片を意味する。いくつかの態様では、ニボルマブ又はペムブロリズマブは、例示的なPD-1抗体である。
【0041】
「トレメリムマブ」という用語は、本明細書で使用する場合、米国特許第8,491,895号明細書(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているとおり(「クローン11.2.1」と呼ばれている)、CTLA-4ポリペプチドに選択的に結合する抗体を指す。トレメリムマブは、ヒトCTLA-4に対して特異的であり、関連するヒトタンパク質に対して交差反応性はない。トレメリムマブは、CTLA-4の阻害効果を遮断し、したがってT細胞活性化を増強する。トレメリムマブは、Fc受容体に対して最小の特異的結合を示し、ナチュラルキラー(NK)抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)活性を誘導せず、プレートに結合して凝集した後は阻害シグナルを送達しない。
【0042】
「完全奏効」(CR)は、測定可能か否かにかかわらず、全病変の消失及び新たな病変がないことを指す。この確認は、最初の文書化の日から4週間以上の反復した連続評価を用いて得ることができる。新たな測定不能の病変は、CRを排除する。
【0043】
「部分奏効」(PR)は、ベースラインに対して2 50%の腫瘍負荷の低下を指す。この確認は、最初の文書化の日から少なくとも4週の連続反復評価を用いて得ることができる。
【0044】
「進行」(PD)は、最小記録(ナディア)に対して2 25%の腫瘍負荷の増大を指す。この確認は、最初の文書化の日から少なくとも4週の連続反復評価を用いて得ることができる。新たな測定不能の病変は、PDを定義しない。
【0045】
「安定」(SD)は、CR、PR又はPDの規準を満たさないことを指す。SDは、ベースラインに対して50%の腫瘍負荷の低下を確立できず、ナディアと比較して25%の増加を確立できないことを示す。
【0046】
本明細書で言及するように、「PD-L1」は、PD-L1配列に対して少なくとも約85%、95%又は100%の配列同一性を有するポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列、又はその断片を指し得る。PD-L1はまた、当該技術分野において、B7-H1と称される。いくつかの態様では、PD-L1ポリペプチド、又はその断片は、NCBI登録番号NP_001254635に対して少なくとも約85%、95%又は100%の配列同一性を有し、PD-1及びCD80結合活性を有する。
【0047】
PD-L1ポリペプチド配列(NCBI登録番号NP_001254635;配列番号9):
【化1】
【0048】
いくつかの態様では、「PD-L1核酸分子」は、PD-L1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。例示的PD-L1核酸分子配列は、NCBI登録番号NM_001267706で提供される。
【0049】
PD-L1核酸配列(NCBI登録番号NM_001267706mRNA;配列番号10):
【化2】
【化3】
【化4】
【0050】
プログラム死-1(「PD-1」)は、T細胞調節因子の拡張CD28/CTLA4ファミリーの約31kDのI型膜タンパク質メンバーである(Ishida,Y.et al.(1992)Induced Expression Of PD-1,A Novel Member Of The Immunoglobulin Gene Superfamily,Upon Programmed Cell Death,”EMBO J.11:3887-3895を参照)。 PD-1は、活性化T細胞、B細胞及び単球で発現し(Agata et al.(1996)“Expression Of The PD-1 Antigen On The Surface Of Stimulated Mouse T And B Lymphocytes,”Int.Immunol.8(5):765-772;Yamazaki et al.(2002)“Expression Of Programmed Death 1 Ligands By Murine T Cells And APC,”J.Immunol.169:5538-5545)、ナチュラルキラー(NK)T細胞において低レベルで発現する(Nishimura,H.et al.(2000)“Facilitation of Beta Selection and Modification of Positive Selection in the Thymus of PD-l-Deficient Mice,”J.Exp.Med.191:891-898;Martin-Orozco et al.(2007)“Inhibitory Costimulation And Anti-Tumor Immunity,”Semin.J.Biol.17(4):288-298)。PD-1は、PD-L1又はPD-L2の結合による活性化に続く免疫系のダウンレギュレーションを担う受容体であり(Martin-Orozco,N.et al.(2007)“Inhibitory Costimulation and Anti-Tumor Immunity,”Semin.Cancer Biol.17(4):288-298)、細胞死誘導物質として機能する(Ishida,Y.et al.(1992)“Induced Expression of PD-1,A Novel Member of the Immunoglobulin Gene Superfamily,Upon Programmed Cell Death,”EMBO J.11:3887-3895;Subudhi,S.K.et al.(2005)“The Balance Of Immune Responses:Costimulation Verse Coinhibition,”J.Molec.Med.83:193-202)(Lazar-Molnar,E.et al.(2008)“Crystal Structure of the Complex Between Programmed Death-1(PD-1)And Its Ligand PD-L2,”Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)105(30):10483-10488)。このプロセスは、PD-L1の過剰発現を介して多数の腫瘍において利用され、免疫応答の抑制をもたらす。
【0051】
PD-1は、腫瘍学において免疫介在性治療に関して十分検証された標的であり、なかでも黒色腫及び非小細胞肺癌(NSCLC)の治療において肯定的な臨床試験を有する。PD-1/PD-L1相互作用の拮抗阻害は、T細胞活性化を増大し、宿主免疫系による腫瘍細胞の認識及び排除を向上させる。感染症及び腫瘍を治療するための、及び適応免疫応答を上方調節するための抗PD-1抗体の使用が提案されている。
【0052】
「抗体」という用語は、本開示で使用する場合、免疫グロブリン又はその断片若しくは誘導体を指し、インビトロ又はインビボで産生されるかどうかにかかわらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。この用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異的抗体、多特異的抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異型抗体、及びグラフト抗体が含まれるが、これらに限定されない。「インタクトな抗体」のように「インタクト」という用語で特に修飾されていない場合には、本開示の目的のために、「抗体」という用語に、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAbなどの抗体断片、及び抗原結合機能、例えばPD-L1に特異的に結合する能力を保持する他の抗体断片も包含される。通常、このような断片は、抗原結合ドメインを含むであろう。
【0053】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合断片」及び「結合断片」という用語は、抗体と抗原の特異的結合に関与するアミノ酸を含む抗体分子の部分を指す。抗原が大きい場合、抗原結合ドメインは、抗原の一部にのみ結合し得る。抗原結合ドメインとの特異的相互作用を担う抗原分子の部分は、「エピトープ」又は「抗原決定基」と称される。抗原結合ドメインは、通常、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含むが、必ずしも双方を含まなくてもよい。例えば、いわゆるFd抗体断片は、VHドメインのみからなるが、インタクト抗体の一部の抗原結合機能をなお保持する。
【0054】
抗体の結合断片は、組換えDNA技術によって、又はインタクト抗体の酵素的若しくは化学的開裂によって生成される。結合断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、及び単鎖抗体が挙げられる。「二重特異的」又は「二機能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であると理解される。酵素パパインによる抗体の消化により、「Fab」断片としても知られる2つの同一の抗原結合断片、及び、抗原結合活性はないが結晶化する能力を有する「Fc」断片が生じる。酵素ペプシンによる抗体の消化により、抗体分子の2つのアームが連結されたままで、2つの抗原結合部位を備えるF(ab’)2断片が生じる。F(ab’)2断片は、抗原を架橋する能力を有する。「Fv」は、本明細書で用いられる場合、抗原認識部位及び抗原結合部位の双方を保持する抗体の最小断片を指す。「Fab」は、本明細書で用いられる場合、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖のCHIドメインを含む抗体の断片を指す。
【0055】
用語「mAb」はモノクローナル抗体を指す。本発明の抗体は、限定されるものではないが、全天然抗体、二重特異的抗体;キメラ抗体;Fab、Fab’、単鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチド、及び非慣用抗体を含む。
【0056】
「単離された」、「精製された」又は「生物学的に純粋な」という用語は、天然状態で見られる通常はそれに付随する成分を様々な程度に含まない物質を指す。「単離する」は、元の供給源又は環境からのある程度の分離を示す。「精製する」は、単離よりも高い分離度を示す。「精製された」又は「生物学的に純粋な」タンパク質は、いかなる不純物もタンパク質の生物学的特性に実質的に影響を及ぼしたり、その他の有害な帰結を引き起こしたりしないように、その他の物質を十分に含まない。
【0057】
「特異的に結合する」とは、試料、例えば生体試料において、分子(例えば、ポリペプチド)を認識し、且つ結合するが、他の分子は実質的に認識せず、且つ結合しない化合物(例えば、抗体)を意味する。例えば、特異的に結合する2つの分子は、生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成する。特異的結合は、高い親和性及び低から中程度のキャパシティを特徴とし、それは通常、低い親和性を有し、中程度から高いキャパシティを持つ非特異的結合と区別される。一般的には、結合は、親和定数Kが10-1よりも高い場合には、又はより好ましくは10-1よりも高い場合には、特異的と考えられる。必要であれば、非特異的結合は、結合条件を変動させることにより、特異的結合に実質的に影響を与えずに低下させることができる。当業者は通常の技術を使用して、適切な結合条件、例えば抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合のために許容される時間、遮断剤(例えば、血清アルブミン、乳カゼイン)の濃度などを最適化することができる。
【0058】
本明細書で一般に使用する場合、「治療する」、「治療している」、「治療」などの用語は、障害若しくは疾患、及び/又は障害若しくは疾患に関連した症状の進行を抑制し、改善し、又は遅延させることを指す。除外するものではないが、障害、疾患又は病態の治療は、障害、疾患若しくは病態、又は関連する症状を完全に排除することを要求するものではないことは認識されよう。特定の態様及びNSCLCに関連した態様では、「治療する」、「治療している」、「治療」は、一次又は二次臨床エンドポイントの任意の1つ又は組み合わせを達成することを指し得る。
【0059】
配列
デュルバルマブ軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号1として提供される。
【0060】
デュルバルマブ重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号2として提供される。
【0061】
CDR1、CDR2、及びCDR3のデュルバルマブ重鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号3(CDR1)、配列番号4(CDR2)、及び配列番号5(CDR3)として提供される。
【0062】
CDR1、CDR2、及びCDR3のデュルバルマブ軽鎖可変領域アミノ酸配列は、配列番号6(CDR1)、配列番号7(CDR2)、及び配列番号8(CDR3)として提供される。
【0063】
本開示は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)を有する患者を治療する方法であって、エトポシド及び白金系治療薬と組み合わせてヒト抗PD-L1抗体を患者に投与することを含む方法に関する。さらに、この方法はまた、ヒト抗CTLA-4抗体の投与を含み得る。特に、本明細書に開示する臨床結果から得られるデータは、改善された治療方法を提供し、ES-SCLCのための既存の標準治療(一次治療)を実質的に再定義する。開示された治療方法は、患者の全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、又は死亡までの期間の実質的な改善を提供することができる。
【0064】
したがって、本明細書に記載する様々な態様では、開示される方法はES-SCLCを有する患者を治療するための新しい一次治療の選択肢を提供する。
【0065】
第1の態様では、本開示は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における無増悪生存期間(PFS)を延長する方法であって、a)ヒト抗PD-L1抗体とb)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)とで患者を治療することを含む方法を提供する。第1の態様の一実施形態では、プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む。第1の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。第1の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む。第1の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ又はアテゾリズマブである。第1の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第1の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第1の態様の別の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む。第1の態様による実施形態では、EPが、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内投与される。
【0066】
第1の態様の一実施形態では、方法は、Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む。
【0067】
第1の態様の一実施形態では、方法は、ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブである。別の実施形態では、トレメリムマブは、75mgの固定用量として、又は1mg/kgの用量として投与される。
【0068】
第1の態様の別の実施形態又は第1の態様の他の実施形態では、方法は、患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む。
【0069】
第1の態様の別の実施形態又は第1の態様の他の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-1抗体で患者を治療することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む。
【0070】
第1の態様の別の実施形態では、PFSが、EP単独での治療と比較して、少なくとも約5か月増加する。
【0071】
第2の態様では、本開示は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における全生存期間(OS)を延長する方法であって、a)ヒト抗PD-L1抗体とb)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)とで患者を治療することを含む方法を提供する。第2の態様の一実施形態では、プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む。第2の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。第2の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む。第2の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ又はアテゾリズマブである。第2の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第2の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第2の態様の別の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む。第2の態様による実施形態では、EPが、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内投与される。
【0072】
第2の態様の一実施形態では、方法は、Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む。
【0073】
第2の態様の一実施形態では、方法は、ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブである。別の実施形態では、トレメリムマブは、75mgの固定用量として、又は1mg/kgの用量として投与される。
【0074】
第2の態様の別の実施形態又は第2の態様の他の実施形態では、方法は、患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む。
【0075】
第2の態様の別の実施形態又は第2の態様の他の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-1抗体で患者を治療することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む。
【0076】
第2の態様の別の実施形態では、OSは、EP単独での治療と比較して、少なくとも約3か月延長される。
【0077】
第3の態様では、本開示は、進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)患者における全奏効率(ORR)を改善する方法であって、a)ヒト抗PD-L1抗体とb)エトポシド及びプラチナ系治療薬(EP)とで患者を治療することを含む方法を提供する。第3の態様の一実施形態では、プラチナ系治療薬はシスプラチン及び/又はカルボプラチンを含む。第3の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。第3の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、及び配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む。第3の態様の一実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、デュルバルマブ、アベルマブ又はアテゾリズマブである。第3の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、1500mgの固定用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第3の態様の別の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、20mg/kgの用量として、静脈内にQ3Wで投与される。第3の態様の別の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-L1抗体の4サイクルの投与を含む。第3の態様による実施形態では、EPが、ヒト抗PD-L1抗体の1用量当たり、80~100mg/mのエトポシド、及び曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又は75~80mg/mのシスプラチンを含む用量として静脈内投与される。
【0078】
第3の態様の一実施形態では、方法は、Q3Wの4サイクルの完了後に、1500mgのヒト抗PD-L1抗体を静脈内にQ4Wで投与することをさらに含む。
【0079】
第3の態様の一実施形態では、方法は、ヒト抗CTLA-4抗体を静脈内にQ3Wで投与することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブである。別の実施形態では、トレメリムマブは、75mgの固定用量として、又は1mg/kgの用量として投与される。
【0080】
第3の態様の別の実施形態又は第3の態様の他の実施形態では、方法は、患者へ予防的頭蓋照射を行うことをさらに含む。
【0081】
第3の態様の別の実施形態又は第3の態様の他の実施形態では、方法は、ヒト抗PD-1抗体で患者を治療することをさらに含む。一実施形態では、ヒト抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))又はニボルマブ(OPDIVO(登録商標))を含む。
【0082】
第3の態様の別の実施形態では、ORRは、EP単独での治療と比較して少なくとも10%増加する。
【0083】
第4の態様では、本開示は、ES-SCLCの治療を必要とする患者のES-SCLCを治療する方法であって、患者にデュルバルマブ及びEPを投与すること(ここで、デュルバルマブ及びEPは一次治療として投与される)、並びに、任意選択で患者にトレメリムマブを投与することを含む方法を提供する。
【0084】
上記態様のいずれかのいくつかの実施形態又は上記態様のいずれかの実施形態では、患者は、ヒト抗PD-L1抗体を含む治療に対する治療的応答に関連した遺伝子を発現し(すなわち、表現型を有し)得る。いくつかの態様では、患者はPD-L1(+)である。他の態様では、患者はPD-L1(-)である。いくつかの態様では、患者はEGFR変異(+)である。他の態様では、患者はEGFR変異(-)又は野生型である。いくつかの態様では、患者は、PD-L1及びEGFR変異表現型の任意の組み合わせを発現し得る。
【0085】
上記の態様に加えて、本明細書に開示される治療は、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を、2、3、又は4週間毎に1回、10mg/kg又は20mg/kgの投与量で静脈内に投与することを含み得る。
【0086】
上記の態様に加えて、本明細書中に開示される治療は、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片を、2、3、又は4週間毎に1回、200、250、500、1000、又は1500mgの固定用量で静脈内に投与することを含み得る。
【0087】
上記の態様の態様において、患者は、ヒト抗PD-L1抗体を含む治療に対する治療的応答に関連した遺伝子を発現し(すなわち、表現型を有し)得る。いくつかの態様では、患者はPD-L1(+)である。他の態様では、患者はPD-L1(-)である。試料がPD-L1膜染色で25%以上の腫瘍細胞を含む場合、試料は「PD-L1陽性」と決定された。カットオフ及び点数化アルゴリズムは、デュルバルマブについて以前に決定されている(Study CP1108;ClinicalTrials.gov number NCT01693562)。
【0088】
いくつかの態様では、患者はEGFR変異(+)である。他の態様では、患者はEGFR変異(-)又は野生型である。いくつかの態様では、患者は、PD-L1及びEGFR変異表現型の任意の組み合わせを発現し得る。
【0089】
上記の態様に加えて、本明細書に開示される治療は、約14日毎、又は3週間毎、又は4週間毎に、52週間まで又はそれ以上の間、所定用量の治療薬(抗体及び/又は化学療法剤)を投与することを含み得る。
【0090】
全生存期間(OS)は、治療の日から開始して、任意の原因による死までの期間に関する。OSは、例えば、12か月、18か月、及び24か月などの期間内の全生存率を指す場合がある。そのような期間は、例えば、24か月における全生存期間のカプラン・マイヤー推定法により、治療開始の24か月後に生存している患者の数(%)を指す「OS24」として特定することができる。
【0091】
無増悪期間(PFS)は、治療の日から開始して、客観的な病勢進行(RECIST 1.1)又は死(進行の非存在下の任意の原因による)の日までの期間に関する。いくつかの態様では、方法は、PFSの増大を提供する。いくつかの態様では、方法は、少なくとも9か月~少なくとも約24か月(例えば、少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24か月又はそれ以上、約5年まで)のPFSを提供する。
【0092】
奏効期間(DoR)は、RECIST 1.1による完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)の最初の文書化された応答の日から、進行の最初の文書化された応答又は進行の非存在下での死までの時間を指す。態様において、方法は、少なくとも約9か月~少なくとも約36か月のDoRの増大を提供する。
【0093】
客観的奏効率(ORR)は、RECIST 1.1による完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)の少なくとも1つの訪問応答を有する患者の数(%)を指す。態様において、方法は、少なくとも約9か月~少なくとも約36か月のDoRの増大を提供する。
【0094】
開示した方法は、化学療法剤(例えば、エトポシドと白金系治療薬(例えば、シスプラチン及び/又はカルボプラチン))と組み合わせた免疫療法剤(例えば、ヒト抗PD-L1抗体又はヒト抗PD-1抗体)の投与を含む。
【0095】
上記のように、また本明細書で例示するように、これらの方法は、ES-SCLCを有する患者を治療する。
【0096】
癌ステージ分類は、一般に知られ且つ当該技術分野で認められた任意の試験を用いて行うことができる。特定の態様では、癌ステージ分類は、American Joint Committee on Cancer’s(AJCC’s)TNMシステムを含むことができる。一般に、TNMシステムは、原発腫瘍(腫瘍、T)のサイズ及び位置を決定するために、様々な試験及びスキャンの結果を提供する;癌がリンパ節に広がっているか否か、そして広がっている場合、発症したリンパ節(節、N)の位置及び数;並びに癌が身体の他の部分に広がっているか否か、そして広がっている場合、遠隔癌(転移、M)の範囲及び位置。各タイプの癌は、それ自体の特定のシステムを有し得るが、TNMステージ分類システムは、一般に、各文字に関してスケーリングされた点数化を用いる。
【0097】
腫瘍の場合、「T」は、一般的な腫瘍サイズ、位置、及びそれが近隣の組織に侵入しているか否かを記述する数字(例えば、0~4)と関連させる。より大きい又はより侵入的な腫瘍は、より大きい数が付与され、また癌に応じて、「a」、「b」又は「m」(複数の場合)などの小文字を加えて、さらなる詳細が提供され得る。
【0098】
節の場合も同様に、「N」は、癌がリンパ節で見出されたか否かを記述するための数字(例えば、0~3)と関連させ、癌を含むリンパ節の数も示すことができる。より大きい数字は、より多くのリンパ節が癌に関与している場合、割り当てられる。
【0099】
転移の場合、「M」は、癌が身体の他の部分に広がっているか否かを示し、広がっていない場合はM0、又は広がっている場合はM1と標識される。
【0100】
T、N、及びMの結果を組み合わせて癌のステージ、典型的には4ステージ:ステージI(1)~IV(4)のうちの1つを決定する。一部の癌はステージ0(ゼロ)も有する。ステージ0は、近隣の組織に全く広がっていない、元の組織に局所的に留まる上皮内癌を記述する。このステージの癌は、多くの場合、通常、手術により腫瘍全体を除去することにより、根治できる可能性が非常に高い。ステージI又は早期癌は、一般的には、近隣の組織内に深くは増殖しておらず、リンパ節又は身体の他の部分に広がっていない小さい癌又は腫瘍を記述するのに使用される。ステージII及びIIIは、近隣の組織内に深く増殖しており、リンパ節に広がっている可能性もあるが、他の組織には転移していない、大きい癌又は腫瘍を記述する。ステージIVは、身体の他の器官又は部分に広がった癌を記述し、多くの場合、進行癌又は転移性癌と特定される。
【0101】
ステージ分類は、回復及び推奨治療の機会を提供するために、任意的な予後因子の分析を含んでもよい。予後因子には、癌細胞の外観に基づく癌の類別、腫瘍マーカー発現の分析、及び腫瘍遺伝学の分析が含まれ得る。
【0102】
TNMシステムはSCLC、及びNSCLCの両方に使用し得るが、SCLCは一般的には異なるシステムを使用してステージ分類される。
【0103】
SCLCのステージ分類
SCLCには、2つのステージ:「限局型」及び「進展型」がある。限局型SCLCは、癌が胸部の片側のみに存在し、1つの照射野で治療できることを示している。一般的には、限局型SCLCには、片側の肺のみに発生し、胸部の同じ側にあるリンパ節に到達している可能性のある癌が含まれる。例外は、腫瘍が1つの肺全体に拡がっており、癌が1つの「ポート」での放射線療法で治療できるほど狭い領域に限局していないSCLCであろう。このような癌は、片側のみにあっても進展型であると考えられる。
【0104】
第2ステージのSCLC又は「進展型」SCLCは、腫瘍が片側の肺全体、反対側の肺、反対側の胸部のリンパ節、身体の他の部位、又は肺周囲の体液に拡がっている癌など、1つのポートの放射線療法治療領域を越えて拡がっているSCLC癌のである。
【0105】
抗PD-L1抗体
特異的に結合し、PD-L1活性を阻害する(例えば、PD-1及び/又はCD80に結合する)抗体は、本明細書に開示する方法に有用である。
【0106】
デュルバルマブは、PD-L1に選択的であり、PD-1及びCD80受容体へのPD-L1の結合を遮断する例示的な抗PD-L1抗体である。デュルバルマブは、インビトロでヒトT細胞活性化のPD-L1媒介による抑制を軽減することができ、異種移植モデルにおいて、腫瘍増殖をT細胞依存性の機序によって阻害する。開示した方法に有用な他の薬剤としては、PD-L1及び/又はPD-1を阻害する薬剤、例えばヒト抗PD-L1抗体のアベルマブ及びアテゾリズマブ、又はヒト抗PD-1抗体のニボルマブ及びペムブロリズマブが挙げられる。
【0107】
特定の態様では、本明細書に開示する方法に使用される抗体は、PD-1/PD-L1軸を破壊する任意の薬剤である。
【0108】
本明細書で提供される方法に使用されるデュルバルマブ(又はその断片)に関する情報は、米国特許第8,779,108号明細書及び同第9,493,565号明細書に見出すことができ、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。デュルバルマブのフラグメント結晶性(Fc)ドメインは、IgG1重鎖の定常ドメイン内に、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)の媒介を担う補体成分C1q及びFcy受容体への結合を減少させる三重変異を含有する。
【0109】
本明細書で提供される方法に使用されるデュルバルマブ及びその抗原結合断片は、重鎖及び軽鎖又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。特定の態様では、本明細書で提供される方法に使用されるデュルバルマブ又はその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。特定の態様では、本明細書で提供される方法に使用されるデュルバルマブ又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は配列番号3~5のKabatにより定義されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号6~8のKabatにより定義されるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。当業者であれば、当業者に知られるChothia定義、Abm定義又は他のCDR定義を容易に特定できるであろう。特定の態様では、本明細書で提供される方法に使用されるデュルバルマブ又はその抗原結合断片は、米国特許第8,779,108号明細書及び同第9,493,565号明細書(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている2.14H9OPT抗体の可変重鎖及び可変軽鎖のCDR配列を含む。
【0110】
本明細書に開示されるように、ES-SCLCを有する患者は、ES-SCLCの治療のために、抗PD-1抗体及び/若しくはその抗原結合断片、並びに/又は抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ)、及び/若しくはその抗原結合断片などの治療薬を、EP、並びに任意選択による抗CTLA-4抗体及び/又はその抗原結合フラグメントとともに投与され得る。これらの治療薬の一部又は全ては、2週、3週、4週、又は6週(又はそれより短く若しくはそれより長く)続くサイクルで1回投与でき、治療が患者に利益をもたらす限り、各サイクルを繰り返すことができる。さらなる態様では、患者は、これらの治療薬のいくつか又は全てを含む1つ以上のサイクルの完了後に、治療薬のサブセット(例えば、単一の治療薬のみ)とともに、後続用量をさらに投与され得る。後続用量は、患者の年齢、体重、臨床評価、腫瘍負荷及び/又は主治医の判断を含む他の因子に応じて、種々の時間間隔で投与することができる。
【0111】
特定の態様では、投与間隔は、3週間毎であり得る。特定の態様では、投与間隔は、4週間毎であり得る。さらなる態様では、投与間隔は、2か月毎(例えば、後続投与期間及び/又は維持段階の間)であり得る。
【0112】
患者に投与されるデュルバルマブ又はその抗原結合断片の量は、様々なパラメータ、例えば患者の年齢、体重、臨床評価、腫瘍負荷及び/又は主治医の判断を含む他の因子に応じて調製してもよく、またそれらに依存し得る。いくつかの態様では、用量は固定用量である。
【0113】
特定の態様では、患者は、1以上の用量のデュルバルマブを投与され、用量は約1mg/kgである。特定の態様では、患者は、1以上の用量のデュルバルマブを投与され、用量は約3mg/kgである。特定の態様では、患者は、1以上の用量のデュルバルマブを投与され、用量は約10mg/kgである。特定の態様では、患者は、1以上の用量のデュルバルマブを投与され、用量は約15mg/kgである。特定の態様では、患者は、1以上の用量のデュルバルマブを投与され、用量は約20mg/kgである。
【0114】
特定の態様では、患者は、1以上の用量のデュルバルマブを投与され、用量は1500mgの固定用量である。
【0115】
特定の態様では、患者は、1500mgのデュルバルマブを4週間毎に投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、デュルバルマブのような抗PD-L1抗体の投与は1500mgの固定用量で投与され、トレメリムマブは75mgの固定用量として投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、デュルバルマブのような抗PD-L1抗体の投与は、20mg/kgの体重ベース用量で投与され、トレメリムマブは1mg/kgの体重ベース用量として投与される。
【0118】
いくつかの実施形態では、患者は、1500mg用量のデュルバルマブ、任意選択により75mg用量のトレメリムマブ、80~100mg/mL用量のエトポシド、及び5~6mg/mL/minのAUC用量のカルボプラチン又は75~80mg/m用量のシスプラチンを、Q3Wで静脈内に投与される。
【0119】
特定の態様では、本明細書に開示される治療薬の投与は、非経口投与による。例えば、デュルバルマブ又はその抗原結合断片及びEPは、静脈内注入又は皮下注射により投与され得る。いくつかの態様では、投与は、静脈内注入による。
【0120】
特定の態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片は、本明細書に提供される方法に従って、追加の癌治療と組み合わせて又は併せて投与される。このような治療には、ベムラフェニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、エルロチニブ、若しくはペメトレキセドなどの化学療法剤、又は他の化学療法剤、及び放射線又は任意の他の抗癌治療が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
本明細書に提供される方法は、例えば腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の遅延、又は定常状態の維持を含む、データにより特に特定され且つ示されるものを超えるさらなる臨床的利益を提供することができる。特定の態様では、腫瘍サイズの縮小は、適切な統計分析に基づいて有意であり得る。腫瘍サイズの縮小は、ベースラインにおける患者の腫瘍サイズとの比較、予想される腫瘍サイズに対する比較、大きい患者集団に基づく予想される腫瘍サイズに対する比較、又は対照集団の腫瘍サイズに対する比較によって測定され得る。本明細書に提供される特定の態様では、エトポシド並びにシスプラチン及び/又はカルボプラチンとともに、デュルバルマブを投与することにより、腫瘍サイズを少なくとも25%、少なくとも50%、又は少なくとも75%縮小させることができる。
【0122】
本明細書に提供される方法は、腫瘍増殖を低下又は遅延させることができる。いくつかの態様では、低下又は遅延は、統計的に有意であり得る。腫瘍増殖の低下は、ベースラインにおける患者の腫瘍増殖との比較、予想される腫瘍増殖に対する比較、大きい患者集団に基づく予想される腫瘍増殖に対する比較、又は対照集団の腫瘍増殖に対する比較によって測定され得る。
【0123】
本明細書で提供される方法によれば、PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ)又はその抗原結合断片の投与は、望ましい薬物動態学的パラメータをもたらし得る。総薬物暴露は、「曲線下面積」(AUC)を使用して推定することができる。「AUC(tau)」は、投与期間の終わりまでのAUCを指し、一方、「AUC(inf)」は、無限時間までのAUCを指す。投与は、約100~約2,500d 1-g/mLのAUC(tau)を生じ得る。投与は、約15~約350 1-g/mLの最大観測濃度(Cmax)を生じ得る。デュルバルマブ又はその抗原結合断片の半減期は、約5~約25日であり得る。さらに、デュルバルマブ又はその抗原結合断片のクリアランスは、約1~10mLl/日/kgであり得る。
【0124】
本明細書に提供されるように、デュルバルマブ又はその抗原結合断片はまた、遊離PD-L1レベルを低下させることができる。遊離PD-L1は、(例えば、デュルバルマブにより)結合されていないPD-L1を指す。いくつかの態様では、PD-L1レベルは少なくとも80%低下する。いくつかの態様では、PD-L1レベルは少なくとも90%低下する。いくつかの態様では、PD-L1レベルは少なくとも95%低下する。いくつかの態様では、PD-L1レベルは少なくとも99%低下する。いくつかの態様では、PD-L1レベルは、デュルバルマブ又はその抗原結合断片の投与後に除去される。いくつかの態様では、デュルバルマブ又はその抗原結合断片の投与は、例えば、デュルバルマブ又はその抗原結合断片の投与前のPD-L1レベルの増加率と比較して、PD-L1レベルの増加率を低下させる。
【0125】
本明細書に開示する方法の実践は、特に示さない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を使用するが、それらは十分に当業者の範囲内である。このような技術は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984);“Animal Cell Culture”(Freshney,1987);“Methods in Enzymology”“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(Miller and Calos,1987);“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994);“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)」などの文献に十分に説明されている。
【0126】
以下の実施例は、態様のいくつか及び上述した態様の実例を提供するものであり、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0127】
実施例1:ES-SCLC患者の一次治療として、トレメリムマブを併用する場合と併用しない場合の、EPと組み合わせたデュルバルマブの臨床評価
SCLC患者の殆どは診断時に進展型(ES)病態を有し、予後は不良である。最近、免疫療法がES-SCLCにおいて臨床活性を示している。この実施例では、ES-SCLC患者の一次治療として、トレメリムマブを併用する場合と併用しない場合の、EPと組み合わせたデュルバルマブの有効性及び安全性を評価した第3相無作為化非盲検試験依頼者盲検試験(CASPIAN、Clinical Trials.gov番号NCT03043872)の結果を示す。
【0128】
患者
適格な患者には、組織学的又は細胞学的にES-SCLCが確認された治療歴のない成人が含まれた。患者はまた、世界保健機構(WHO)のパフォーマンスステイタススコアが0又は1で、RECIST v1.1による測定可能な疾患、及び試験開始からの平均余命が12週間以上であった。脳転移を有する患者は、試験登録前の少なくとも1か月間、症状がないか又はステロイド及び抗痙攣薬で治療され安定していれば、適格とした。
【0129】
主要な除外基準には、胸部に対する放射線療法の既往歴又は計画された統合胸部放射線療法;活動性又は過去の自己免疫疾患又は炎症性疾患;全身治療を必要とする自己免疫性の腫瘍随伴症候群;活動性原発性免疫不全の既往歴;コントロール不良の併発疾患又は活動性感染症が含まれた。
【0130】
デザイン及び治療
患者を1:1:1の比率で無作為に割り付け、デュルバルマブ1500mg+EP、デュルバルマブ1500mg+トレメリムマブ75mg+EP、又はEPを投与した(図1)。3つの試験群全てで、化学療法は、エトポシド80~100mg/m(各サイクルの1~3日目に投与)と、曲線下面積5~6mg/mL/minのカルボプラチン又はシスプラチン75~80mg/m(各サイクルの1日目に投与)とで構成した。無作為化は、計画されたプラチナ薬剤により階層化した。免疫療法群の患者には、EP+デュルバルマブを3週間毎(q3w)に最大で4サイクル投与した後、デュルバルマブ1500mgを4週間毎(q4w)に維持投与した。EP群の患者は、追加の2サイクルのEP(合計6サイクルまで)及び予防的頭蓋照射(PCI)を受けることができた。患者は、固形癌の治療効果判定規準バージョン1.1(RECIST v1.1)で定義された病勢進行、許容できない毒性、又はその他の中止基準を満たすまで、治療を継続した。臨床的有益性のエビデンスが認められた場合、病勢進行後の試験治療の継続が認められた(図1)。EP群から免疫療法+EP群への試験中のクロスオーバーは認められなかった。一般的な投薬スキームを表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
エンドポイント及び評価
腫瘍イメージングを、最初の12週間は6週間毎に、その後は8週間毎に、客観的な病勢進行が確認されるまで実施した。治療中止後2か月毎に生存率を評価した。有害事象(AE)を、アメリカ国立癌研究所(National Cancer Institute)の有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events version4.03)に従ってグレード付けした。
【0133】
主要エンドポイントはOS(無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間)とした。副次的エンドポイントには、無増悪生存期間(PFS;無作為化から客観的な病勢進行が認められた日又は進行が認められないなかでの原因を問わない死亡の日までの期間)、客観的奏効率(ORR)、18か月及び24か月時点のOS、6か月及び12か月時点のPFS、並びに安全性が含まれた。PFS及びORRは、RECIST v1.1に従って評価した。
【0134】
統計分析
本試験は、デュルバルマブ+EP又はデュルバルマブ+トレメリムマブ+EPのOSがEP単独よりも有意に長い場合に陽性とみなすこととした。第一種過誤を5%(両側)に制御するために、主要OS分析及び副次的PFS分析にわたって、ゲートキーピング戦略による階層的多重検定手順を使用した(図2)。デュルバルマブ+EPとEPとを比較したOSの主要エンドポイント、及びデュルバルマブ+トレメリムマブ+EPとEPとを比較したOSの主要エンドポイントに、それぞれ4%及び1%αを割り付けた。PFSは、OS主要解析が両方とも有意であった場合にのみ、多重検定手順の範囲内で正式に検定することとした。
【0135】
OSの最終解析のため、デュルバルマブ+EP群及びEP群全体で425の事象、並びにデュルバルマブ+トレメリムマブ+EP群及びEP群全体で425の事象(80%の成熟度)を得るために、約795人の患者を1:1:1に無作為化する必要があった。サンプルサイズの仮定を表2に詳述する。
【0136】
【表2】
【0137】
有効性データは、実際に治療を受けたかどうかにかかわらず、ランダム化された全患者を含む治療企図ベースで解析した。安全性解析には、試験薬を少なくとも1用量投与された全患者を対象とした。OS及びPFSは、層別ログランク検定を用い、計画されたプラチナ薬剤(カルボプラチン又はシスプラチン)について調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて推定したHR及び95%信頼区間(CI)を用いて解析した。カプラン・マイヤー法を用いて、OS及びPFSの生存曲線を推定した。OSの感度解析には、減少バイアスを除外するために、打ち切りパターンの検討が含まれた。PFSの感度解析には、減少バイアス及び評価時間バイアスの評価が含まれた。治療群間のORRを比較するためのオッズ比及び95%CIを、ロジスティック回帰モデルを用いて算出し、計画されたプラチナ薬剤について調整した。
【0138】
結果
患者及び治療
試験期間中、972人の患者をスクリーニングし、そのうち167人を除外し、805人をD+T+EP(n=268)、D+EP(n=268)、及びEP単独(n=269)に無作為に割り当てた。ベースラインの人口統計は概ね、群の間で十分にバランスが取れていた(表3)。全群にわたって、年齢中央値は63歳(IQR 57-68)であり、殆どの患者は男性(805例中576例[72%])で、現在又は以前の喫煙者(753例[94%])であり、且つ診断時に病態はステージIV(735例[91%])であった。数値的には、D+T+EP群では、D+EP群及びEP群と比較して、ベースライン時にWHOパフォーマンスステイタススコアが0で、男性、脳又はCNS転移があり、且つ肝転移があった患者が多かった。
【0139】
【表3】
【0140】
化学療法を受けた795人の患者のうち、618人(78%)がカルボプラチン、198人(25%)がシスプラチンを投与された。化学療法による全治療期間の中央値(IQR)は、D+T+EP群、D+EP群、及びEP群において、それぞれ12.3(12.0-13.5)週、12.1(12.0-13.1)週、及び19.0(12.6-20.3)週であった(表4)。各治療群で80%を超える患者が少なくとも4サイクルの化学療法を受けた。D+T+EP群の患者は、D+EP群の患者と比較してデュルバルマブへの暴露が少なかった(表4)。デュルバルマブによる全治療期間の中央値(IQR)は、D+T+EP群で23.1(14.1-38.3)週、D+EP群で28.0(20.0-43.9)週であった。デュルバルマブの投与回数の中央値(IQR)は、D+T+EP群で6(4-10)週、D+EP群で7(6-11)週であった。D+T+EP群の治療患者266人中161人(61%)に、計画された5回のトレメリムマブ投与が行われた(表4)。
【0141】
【表4】
【0142】
有効性
中間解析では、確認されたORRは、デュルバルマブ+EPでEPよりも高かった(67.9%対57.6%;オッズ比、1.56;95%CI、1.095-2.218)(図6及び表5)。デュルバリュマブ+EPで治療された6人(2.2%)の患者とEPで治療された2人(0.7%)の患者は、確定完全奏効を達成した。奏効期間の中央値は、デュルバルマブ+EP及びEPで治療された患者でいずれも5.1か月であった。奏効が得られた患者のうち、12か月時点で奏効が持続していた割合は、デュルバルマブ+EPの方がEPよりも高かった(22.7%対6.3%)。
【0143】
【表5】
【0144】
データカットオフ時点で、打ち切り患者におけるOSの追跡期間中央値は25.1か月(IQR 22.3-27.9)で、D+T+EP群の患者268人中30人(11%)、D+EP群の患者268人中32人(12%)がデュルバルマブ治療を継続していた。D+T+EP群の患者268人中117人(44%)、D+EP群の患者268人中123人(46%)、EP群の患者269人中125人(46%)がその後少なくとも1回の全身抗癌療法を受け、ほぼ全患者が化学療法を受けていた(表6)。以下の通り、少数の患者がその後免疫療法を受けていた:D+T+EP群で3人(1%)、D+EP群で6人(2%)、及びEP群で17人(6%)。その後の2以上の選択全身抗癌療法の使用は、D+T+EP群(31人[12%]の患者)が、D+EP群(51人[19%])及びEP群(49人[18%])と比較して、数値的に低かった。EP群の患者269人中22人(8%)は、化学療法後にPCIを受けた。さらに、D+T+EP群の患者268人中7人(3%)で試験薬投与中止後のPCI使用が報告された。
【0145】
【表6】
【0146】
最終解析データカットオフ時に、D+T+EP群及びEP群で438人の死亡(81.6%の成熟度)が認められ、D+T+EP群で患者207人(77%)が、またEP群で患者231人(86%)が死亡した。データカットオフ時に観察された事象の数に基づいて、D+T+EP対EPについてのOSの最終分析で消費された多重度調整された両側αは4.18%であった(すなわち、0.0418未満のp値は、統計的に有意であると考えられた)。EPに対しD+T+EPでOSの数値的改善が認められた;HR0.82(95%CI 0.68-1.00;p=0.0451;図3A)。OS中央値は、D+T+EPで10.4か月(95%CI 9.6-12.0)、それに対しEPで10.5か月(9.3-11.2)であり、18か月OS率は、D+T+EPで30.7%(25.2-36.4)、それに対しEPで24.8%(19.7-30.1)、24か月OS率は、D+T+EPで23.4%(18.4-28.8)、それに対しEPで14.4%(10.3-19.2)であった。
【0147】
データカットオフ時点では、D+T+EP群の患者268人中229人(85%)と、EP群の患者269人中236人(88%)に、病勢進行又は死亡が認められた。EPに対するD+T+EPについて、PFSのHRは0.84であった(95%CI 0・70-1・01;図4A)。PFS中央値は、D+T+EP群では4.9か月(95%CI 4.7-5.9)、それに対しEP群では5.4か月(4.8-6.2)であり、12か月PFS率は、D+T+EP群では16.9%(12.6-21.7)、それに対しEP群では5.3%(2.9-8.8)であり、24か月PFS率は、D+T+EP群では11.5%(7.9-15.8)、それに対しEP群では2.9%(1.2-5.8)であった。
【0148】
治験責任医師が判定した客観的奏効が未確定の患者の割合は、D+T+EP(患者267人中198人[74%])とEP(患者269人中190人[71%])とで、同程度であった;オッズ比[OR]1.19(95%CI 0.82-1.75;表7)。D+T+EP群における客観的奏効が確定した患者の割合(事後解析)(患者267人中156例[58%])は、EP群(患者269人中156例[58%])と同じであった;OR1.02(0.72-1.44)。標的病変サイズのベースラインからの最良縮小の中央値(IQR)は、D+T+EP群では-59.3%(-73.6、-40.0)であったのに対し、EP群では-55.9%(-71.3、-35.8)であった。奏効の深さを図5Aに示す。確定奏効を有する患者の奏効期間の中央値は、D+T+EP群(5.2か月[95%CI 4.9-5.6])及びEP群(5.1か月[4.8-5・3])群において同様であった(図4C)。奏効が持続した患者の推定割合は、D+T+EPの方がEPよりも、12か月時(24.9%[18.4-3.0]対7.3%[3.8-12.4])及び24か月時(17.2%[11.4-24.0]対3.9%[1.4-8.4])の両方で高かった。
【0149】
最終解析データカットオフ時に、D+EP群及びEP群で441人の死亡(82.1%の成熟度)が認められ、D+EP群で患者210人(78%)が、またEP群で患者231人(86%)が死亡した。EPと比較したD+EPの中間解析で観察されたOSの有益性は、追跡期間をさらに11か月間延長することで持続した;この最新の解析ではOSのHRは0.75(95%CI 0.62-0.91;名目p=0.0032;図3B)であった。OS中央値は、D+EPで12.9か月(95%CI 11.3-14.7)であり、24か月OS率は22.2%(17.3-27.5)であった。OSのHRは、中間解析で観察されたように、予め特定された全ての患者サブグループ、並びにベースラインでの肝転移によって定義された事後サブグループで、D+EPが一貫してEPより有利であった(図3C)。
【0150】
データカットオフ時点で、D+EP群の患者268人中234人(87%)に病勢進行又は死亡が認められた。PFSはD+EPがEPに対して有利であり、HRは0.80(95%CI 0.66-0.96;図4B)であった。PFS中央値は、D+EPで5.1か月(95%CI4.7-6.2)、12か月及び24か月のPFS率は17.9%(13.5-22.8)及び11.0%(7.5-15.2)であった。
【0151】
客観的奏効が確定した患者の比率は、EP(58%)よりもD+EP(268例中182例[68%])の方が高かった;OR 1.53(95%CI 1.08-2.18;表6)。標的病変サイズのベースラインからの最良縮小率の中央値(IQR)は、D+EP群で-60.4%(-72.9、-44.3)であった。奏効の深さを図5Bに示す。確定した奏効を有する患者の間で、奏効期間の中央値は、D+EP群とEP群で同じであった(図4D)。D+EPの12か月及び24か月時に奏効が持続している患者の割合(23.2%[95%CI 17.3-29.7]及び13.5%[8.7-19.3])は、いずれの時点でもEP群(7.3%及び3.9%;上記を参照)よりも高かった。
【0152】
【表7】
【0153】
安全性
治療関連のAE、重篤なAE及び中止に至ったAEを表8に記載する。
【0154】
【表8】
【0155】
【表9】
【0156】
考察
CASPIANは、エトポシド及びカルボプラチン又はシスプラチンによる化学療法を組み合わせたPD-1/PD-L1の遮断により有意な生存便益を実証した最初の主要試験である。これは、近年(2014~2016年)、シスプラチンを含む化学療法が世界の様々な地域でES-SCLCの一次治療の27~42%の患者に使用されたことを考えると、重要な治療上の進歩を示している。(DiBonaventura MD、Shah-Manek B、Higginbottom K、Penrod JR、Yuan Y.Adherence to recommended clinical guidelines in extensive disease small-cell lung cancer across the US,Europe,and Japan.Ther Clin Risk Manag 2019;15:355-66)。
【0157】
D+EPは、計画された中間解析において、EP単独と比較して生存改善の主要エンドポイントを満たした(Paz-Ares L,Dvorkin M,Chen Y,et al.Durvalumab plus platinum-etoposide versus platinum-etoposide in first-line treatment of extensive-stage small-cell lung cancer(CASPIAN):a randomised,controlled,open-label,phase 3trial.Lancet 2019;394:1929-39)。追跡期間中央値が2年を超えるこの最新の分析では、D+EPによるOSの持続的改善が示された。生存患者の割合は、全てのランドマーク時点で、EPに比べD+EPで数値的に高く、24か月OS率はD+EPで22.2%、それに対してEPでは14.4%であり、カプラン・マイヤー曲線の分離は追跡終了まで維持された。EPとの比較によるD+EPのOSの便益は、ベースライン時にシスプラチンで治療された患者及び脳転移を有する患者を含む全ての患者サブグループで一貫して実証された。最新の解析では、PFSはEPと比較してD+EPが良好であり、HRは0.80(95%CI 0.66-0.96)であった。PFS率は、12か月(17.9%対5.3%)及び24か月(11.0%対2.9%)時点でD+EPがEPより数値的に高かった。未確定客観的奏効率と確定客観的奏効率の両方が、中間解析と一致して、D+EPでEPより約10%高かった。さらに、12か月(23.2%対7.3%)及び24か月(13.5%対3.9%)のいずれにおいても、D+EPのほうがEPよりも奏効したままの患者の割合が高かった。さらに1年間の追跡後も、D+EPは管理可能な安全性プロファイルを継続して示し、これは中間解析及び個々の薬剤の確立された安全性プロファイルと一致した。
【0158】
両免疫療法群のOSのカプラン・マイヤー曲線の尾部は類似しており、各群で20%を超える患者が24か月時点で生存していた。このことは、ES-SCLC患者では、EPにデュルバルマブを加え、その後、簡便な4週間毎の投与でデュルバルマブを維持することにより、一貫した持続的な利益が得られることを示唆している。利益の持続は、歴史的に長期生存利益を示すことが困難であったこの侵攻性疾患において特に注目に値する。また、PFSのカプラン・マイヤー曲線の尾部にも免疫療法群間の類似性が認められた。両デュルバルマブ群では、(EP群の5%と比較して)12か月時点でほぼ20%の患者が無増悪であり、これらの患者の多くが24か月時点でも無増悪のままであったという観察結果は、D+EPにより長期の臨床利益が得られるES-SCLC患者がある割合存在することを示唆している。
【0159】
これはまた、ES-SCLCにおける、化学療法と組み合わせたデュアル免疫チェックポイント遮断を評価した第3相試験の最初の報告でもある。D+T+EPのOSの中央値はEPと類似していたが、D+T+EP群のカプラン・マイヤー曲線は10か月後にEP曲線から分離し始め、特に24か月OS率は、D+T+EP群で23.4%であり、それに対してEP群では14.4%であった。PFSのHRはD+T+EP対EPで0.84であり、関連する95%CIは1をクロスした(0.70-1.01)。OSと同様に、カプラン・マイヤー曲線の分離は遅く、12か月及び24か月のPFS率は、D+T+EPがEPに対して数値的に高かった(それぞれ、16.9%対5.3%及び11.5%対2.9%)。確定客観的奏効率又は奏効期間中央値においては、D+T+EP群とEP群との間に類似性が認められた。しかし、12か月及び24か月の両時点での奏効を持続した患者の割合は、D+T+EPがEPよりも高かった。
【0160】
結論として、この無作為化非盲検第3相試験の結果は、ES-SCLC患者において、EPにデュルバルマブを追加することにより、ロバストな対照群と比較して持続的なOSの利益が得られることを示した。全群の安全性所見は、個々の薬剤の既知の安全性プロファイルと一致していた。これらの結果は、ES-SCLCの一次治療の新しい標準治療としてD+EPを用いることを支持しており、プラチナ薬剤の選択肢の自由度、並びに患者及び医師の治療選択肢を拡大する4週間毎の維持投与スケジュールを提供している。
【0161】
他の態様
前述の説明から、本明細書に記載される本発明を様々な用途及び条件に適合させるために、本発明にバリエーション及び修正を加えてもよいことは明らかであろう。そのような態様も、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【0162】
本明細書の変数の任意の定義における要素のリストの引用は、挙げられた要素の任意の単一の要素又は組み合わせ(又は下位の組み合わせ)としての変数の定義を含む。本明細書における態様の引用は、任意の単一の態様としてのその態様、又は任意の別の態様若しくはその一部との組み合わせでの態様を含む。
【0163】
本明細書に記載されている特許及び刊行物は全て、それぞれ独立した特許及び刊行物が、参照により援用されるように明確に個々に指示されているかのような場合と同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
配列表
配列番号1-
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIK
配列番号2-
【化5】
配列番号:3-VH CDR1-GFTFSRYWMS
配列番号:4-VH CDR2-NIKQDGSEKYYVDSVKG
配列番号:5-VH CDR3-EGGWFGELAFDY
配列番号:6-VL CDR1-RASQRVSSSYLA
配列番号:7-VL CDR2-DASSRAT
配列番号:8-VL CDR3-QQYGSLPWT
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5
図6
【配列表】
2022547061000001.app
【国際調査報告】