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特表2022-547105オフターゲット評価に基づく遺伝子編集治療の評価方法
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  • 特表-オフターゲット評価に基づく遺伝子編集治療の評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】オフターゲット評価に基づく遺伝子編集治療の評価方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20221102BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20221102BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20221102BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20221102BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514832
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2020113562
(87)【国際公開番号】W WO2021043278
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/104303
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520042939
【氏名又は名称】博雅▲輯▼因(北京)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】EDIGENE INC.
【住所又は居所原語表記】Life Science Park,Floor 2,Building 2,22 KeXueYuan Road,Changping District,Beijing 102206 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲鵬▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】方 日国
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲鳴▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 永建
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QX01
(57)【要約】
個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法が開示されている。バイオインフォマティクス法及び潜在的なオフターゲット部位に対してのバイアスのない実験的分析法を使用して、個体に細胞治療を施す前に、個体に由来する遺伝子改変細胞の潜在的なオフターゲット部位を予測し、個体に由来する遺伝子改変細胞を個体に投与した後、潜在的なオフターゲット部位をモニタリングし、潜在的なオフターゲット部位で遺伝子編集が行われるかどうかを判断し、遺伝子編集イベントの発生に基づいて治療の適合性を評価する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、
前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していることを示す、前記方法。
【請求項2】
前記遺伝子改変細胞を投与する前に、前記遺伝子改変細胞に対して前記確定ステップを行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記遺伝子改変細胞を前記個体に投与することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子改変細胞の投与後、前記遺伝子改変細胞の後代に対して前記確定ステップを行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記確定ステップは、前記遺伝子改変細胞の投与後少なくとも約1ヶ月で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記確定及び評価ステップを1回または複数回繰り返すことをさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記確定及び評価ステップは、約月に1回から約年に1回の頻度で繰り返される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
オフターゲットマーカー部位での配列変化が0.1%未満の場合、またはオフターゲットマーカー部位での配列変化が遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較して2倍未満である場合、3~12ヶ月ごとの頻度で前記確定及び評価ステップを繰り返し、オフターゲットマーカー部位での配列変化が0.1%を超える場合、またはオフターゲットマーカー部位での配列変化が遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較して2倍を超える場合、配列変化の頻度が増加するにつれて、前記確定及び評価ステップの繰り返す頻度を増加する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記評価ステップの後に介入療法で前記個体を治療することをさらに含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記介入療法は、前記個体に投与された前記個体に由来する遺伝子改変細胞群を除去することである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記介入療法は、前記個体に由来する第2の遺伝子改変細胞群を投与することを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のオフターゲットマーカー部位は、少なくとも約10個のオフターゲットマーカー部位を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
オフターゲットマーカー部位での0.1%未満の配列変化、または、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位での2倍未満の配列変化は、前記オフターゲットマーカー部位では遺伝子編集が行われなかったことを示す、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上の有効な切断が可能である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記飽和条件により、前記ターゲット部位で100%の有効な切断が可能である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ターゲット部位は、BCL11A遺伝子座に位置する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記オフターゲットマーカー部位は、表2に示されている部位の1つ以上である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子改変細胞群またはその後代におけるオフターゲット遺伝子編集を評価する方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られ、オフターゲットマーカー部位での0.1%超の配列変化、または、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位での2倍超の配列変化は、遺伝子改変細胞群またはその後代にはオフターゲット遺伝子編集があることを示す、前記方法。
【請求項24】
前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
遺伝子改変細胞群において複数のオフターゲットマーカー部位を得る方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、オフターゲットマーカー部位の前記方法は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することを含む、前記方法。
【請求項27】
前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上の有効な切断が可能である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される、請求項23~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
遺伝子改変細胞群またはその後代のオフターゲット編集を評価するためのキットであって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記キットは、1)前記遺伝子改変細胞を生成するための、遺伝子編集システムの1つまたは複数の成分、及びb)複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅するための複数のプライマーセットを含む、前記キット。
【請求項32】
前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られる、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記遺伝子編集システムは、CRISPR/Casシステムである、請求項31または32に記載のキット。
【請求項34】
前記ターゲット部位を含む核酸を増幅するための1つまたは複数のプライマーセットをさらに含む、請求項31~33のいずれか1項に記載のキット。
【請求項35】
前記1つまたは複数のプライマーセットは、配列番号26~117のうちの1つまたは複数を含む、請求項34に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子治療の分野に属し、具体的には、本発明は、個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サラセミアは遺伝性溶血性貧血のグループであり、α型、β型、δβ型、δ型の4種類に分けられ、その中でα型とβ型サラセミアがより一般的である。
【0003】
ヒトβ-グロビン遺伝子クラスターは11番染色体上にあり、その機能遺伝子はそれぞれε、Gγ、Aγ、δ、β-グロビン遺伝子である。発生過程では遺伝子が順番に発現し、胎児期にはγ-グロビン遺伝子の発現が主であるが、このときヘモグロビンは主に胎児ヘモグロビン(HbF)で構成されている。その後、γ-グロビン遺伝子の発現が徐々を停止し、β-グロビン遺伝子の発現を開始し、ヘモグロビンは主に成人期のヘモグロビン(HbA)に転化する。β型サラセミアは、β-グロビン遺伝子の突然変異を伴う。β型サラセミアでは、突然変異は、赤血球が十分な酸素運搬ヘモグロビン(成人期のヘモグロビン)を生成するのを防ぎ、貧血を引き起こす。
【0004】
BCL11A遺伝子は胎児ヘモグロビン(HbF)の発現に関連する遺伝子であることが知られており、そのタンパク質産物はγ-グロビン遺伝子の転写を阻害するトランス作用因子である。BCL11A遺伝子発現の低下は、持続性の胎児ヘモグロビン(HbF)発現に関連している。
【0005】
研究によると、BCL11A遺伝子を不活性化すると、赤血球が出生後も胎児型のヘモグロビンを生成し続けることができ、欠陥のある成人期のヘモグロビン(HbA)を置き換えることができる。BCL11Aの遺伝子エンハンサーは、赤血球でのみ活性がある。したがって、BCL11Aエンハンサーは、ほぼすべての造血幹細胞で編集でき、BCL11A遺伝子をスプライシングして(胎児ヘモグロビンの産生を阻害)、BCL11Aの発現を低減することによって、胎児ヘモグロビンHBG遺伝子の発現を抑制する効果を解除でき、サラセミア患者の血液中のヘモグロビンの総量を増加させ、疾患を治療する目的を達成できる。
【0006】
現在、自然医学研究では、BCL11A遺伝子をCRISPR-Cas9遺伝子編集技術に基づいて編集し、細胞治療を用いてサラセミア患者を治療し、造血幹細胞を患者から取り出して編集し、編集した細胞を赤血球に分化させて機能的なヘモグロビンを生成し、編集した細胞を使って患者の元の造血幹細胞を置き換えている。
【0007】
例えば、BCL11AエンハンサーがCRISPR/Cas9遺伝子によって編集された自己CD34+細胞注入液を使用して、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術に基づいて、患者自身のCD34+造血幹細胞におけるBCL11A遺伝子の赤血球エンハンサーの特定の標的を編集することで、BCL11Aの発現を低下させ、これにより、胎児ヘモグロビンHBG遺伝子の発現を抑制する効果を解除でき、サラセミア患者の血液中のヘモグロビンの総量を増加させ、疾患を治療する目的を達成できる。
【0008】
しかしながら、CRISPR/Cas9遺伝子編集プロセスの問題の1つは、オフターゲット効果である。sgRNAがゲノムDNA配列に結合する場合、ミスマッチの可能性があり、非標的部位でのオフターゲット変異を引き起こす可能性がある。
【0009】
したがって、個体に細胞治療を施した後、潜在的なオフターゲット部位をモニタリングし、前記潜在的なオフターゲット部位で遺伝子編集が行われたかどうかを判断し、遺伝子編集イベントの発生に基づいて個体に対する治療の適合性を評価することができる方法が求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、バイオインフォマティクス予測分析法及び潜在的なオフターゲット部位のバイアスのない(unbiased)実験的分析法を使用して、個体に細胞治療を施す前に、個体に由来する遺伝子改変細胞の潜在的なオフターゲット部位を検出する。本発明の方法によって検出される潜在的なオフターゲット部位を介して、オフターゲットマーカー部位パターンを構築し、細胞治療を個体に投与した後、潜在的なオフターゲット部位を追跡及びモニタリングし、患者におけるオフターゲット効果の発生をタイムリーに理解し、個体に対する前記治療の適合性、前記遺伝子編集細胞治療の効果、及び前記細胞治療に介入が必要であるかどうかを評価し、それによって細胞治療のリスクを低減しながら、疾患の効果的な治療を部分的に達成できる。
【0011】
本発明の一態様は、個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法に係る。具体的には、本発明は、個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していることを示す。
【0012】
もう一態様では、本発明はまた、個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療が不適合であることを確定する方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれかに遺伝子編集があることは、前記細胞治療が前記個体に適していないことを示す。
【0013】
本発明の一態様は、個体を治療する方法に係る。具体的には、本発明は、1)個体に対する細胞治療の適合性を確定するステップ、及び2)細胞治療に適した個体に、前記個体に由来する遺伝子改変細胞群を投与するステップを含む細胞治療を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記個体に対する細胞治療の適合性を確定するステップは、
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記治療の適合性を評価すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していることを示す。
【0014】
本発明の一態様は、個体の遺伝子編集細胞治療に伴うオフターゲットがあるかどうかを診断するための方法を提供し、前記方法は、a)前記個体に由来する、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変された遺伝子改変細胞群を、前記個体に投与すること、及び
b)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療ではオフターゲットがないことを示す。
【0015】
本発明の一態様は、遺伝子編集細胞治療の効果をモニタリングする方法を提供し、前記方法は、a)個体に由来する、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変された遺伝子改変細胞群を、前記個体に投与すること、及び
b)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記個体に対する前記細胞治療の治療効果がよいことを示す。
【0016】
本発明の一態様は、ある個体に由来する遺伝子改変細胞製品の質をモニタリングする方法を提供し、前記方法は、a)前記遺伝子改変細胞において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、
前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞製品が前記個体の細胞治療に適していることを示す。
【0017】
本発明の一態様は、遺伝子編集細胞治療の個体に介入療法を施す必要があるかどうかを判断する方法を提供し、前記方法は、a)前記個体に由来する、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変された遺伝子改変細胞群を、前記個体に投与すること、及び
b)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれかに遺伝子編集があることは、遺伝子編集細胞治療の前記個体に介入療法を施す必要があることを示す。
【0018】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変細胞を前記個体に投与する前に、前記遺伝子改変細胞に対して前記確定ステップを行うことを含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変細胞を前記個体に投与することをさらに含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変細胞の投与後、前記遺伝子改変細胞の後代に対して前記確定ステップを行うことを含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記確定ステップは、前記遺伝子改変細胞の投与後少なくとも約1ヶ月、例えば、少なくとも30日、40日、50日、60日で行われる。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記確定及び評価ステップを1回または複数回、例えば、2、3、4、5回以上、例えば、約毎月、約2ヶ月ごと、約3ヶ月ごと、約4ヶ月ごと、約5ヶ月ごと、約6ヶ月ごとに繰り返すことをさらに含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記確定及び評価ステップは、約月に1回から約年に1回の頻度で繰り返される。
【0019】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記評価ステップの後に介入療法で前記個体を治療することをさらに含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記介入療法は化学療法である。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記介入療法は、投与された遺伝子改変細胞群を除去することである。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記介入療法は、前記個体に由来する第2の遺伝子改変細胞群を投与することである。
【0020】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、少なくとも約10個(例えば、10~50個、10~45個、10~40個、10~35個、10~30個、10~25個、10~20個、10~15個)のオフターゲットマーカー部位を含む。
【0021】
上記の方法のいくつかの実施形態では、フターゲットマーカー部位での遺伝子編集効率が0.1%未満の場合、または遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較して、オフターゲットマーカー部位での前記遺伝子改変細胞の遺伝子編集効率が、オフターゲットマーカー部位での対照群の遺伝子編集効率の2倍未満である場合、前記オフターゲットマーカー部位では遺伝子編集が行われなかったことが示される。
【0022】
本発明の一態様は、遺伝子改変細胞群またはその後代におけるオフターゲット遺伝子編集を評価する方法に係り、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られる。
【0023】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われる。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む。
【0024】
本発明は、遺伝子改変細胞群において複数のオフターゲットマーカー部位を得る方法に係り、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することを含む。
【0025】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記インビトロ試験法は、任意のゲノムワイドなバイアスのないオフターゲット分析方法(genome-wide unbiased off-target analysis)を含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記インビトロ試験法は、Digenome-seqを含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記インビトロ試験法は、細胞群のゲノムを抽出し、飽和条件下で遺伝子編集を行う。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記飽和条件により、前記細胞群のゲノム中の前記ターゲット部位で少なくとも90%以上の有効な切断が可能であり、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の有効な切断が可能である。
【0026】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記ターゲット部位は、BCL11A遺伝子座に位置する。
【0027】
本発明は、遺伝子改変細胞群またはその後代のオフターゲット編集を評価するためのキットに係り、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記キットは、1)前記遺伝子改変細胞を生成するための、遺伝子編集システムの1つまたは複数の成分、及びb)複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅するための複数のプライマーセットを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られる。いくつかの実施形態では、前記遺伝子編集システムは、CRISPR/Casシステムである。いくつかの実施形態では、前記遺伝子改変細胞群またはその後代のオフターゲット編集を評価するためのキットは、前記ターゲット部位を含む核酸を増幅するための1つまたは複数のプライマーセットをさらに含む。
【0029】
上記の方法及びキットのいくつかの実施形態では、前記遺伝子編集方法またはシステムは、ZFN、TALEN、CRISPR、または他の遺伝子編集方法もしくはシステムから選択される。上記の方法及びキットのいくつかの実施形態では、前記遺伝子編集方法またはシステムは、CRISPR遺伝子編集方法またはシステムである。上記の方法及びキットのいくつかの実施形態において、前記ターゲット部位は、CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞におけるBCL11A遺伝子座である。上記の方法及びキットのいくつかの実施形態において、前記ターゲット部位は、BCL11Aエンハンサー遺伝子のエクソン2とエクソン3との間のヌクレオチド配列に位置し、例えば、hg38に記録されている+55:Chr2:60497676-60498941;+58:Chr2:60494251-60495546;+62:Chr2:60490409-60491734の部位に位置するか、または対応する。上記のキットのいくつかの実施形態において、キットは、上記のターゲット部位を標的とするsgRNA、または前記sgRNAを含むヌクレオチド配列、または前記sgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。上記のキットのいくつかの実施形態では、前記キットは、配列番号3~25から選択されるいずれか1つまたは複数のsgRNAを含む。上記のキットのいくつかの実施形態では、前記キットは、Cas9タンパク質、または前記Cas9タンパク質をコードする発現ベクターもしくはヌクレオチド配列を含む。上記のキットのいくつかの実施形態において、前記1つまたは複数のプライマーセットは、配列番号26~117のうちの1つまたは複数の配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】BCL11A赤血球エンハンサーに対するsgRNAの潜在的なオフターゲット部位の分析を示す図である。横軸は各部位、縦軸は遺伝子編集効率(インデル)である。すべての結果は1)ターゲット部位群、すなわち横軸がオンターゲットである群;2)編集群、遺伝子編集効率が0.1%を超えているが、対照群(Mock)との有意差がない群(Mock群の2倍以下)、例えば、POT-1、POT-7、POT-9、POT-43;及び3)編集群、遺伝子編集効率が0.1%未満の群、すなわち群1)及び群2)に含まれるオフターゲット部位以外の横軸部位、の3つの群に分けることができる。インデル(Indel, insertion and deletion、挿入及び欠失)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一態様は、個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法に係る。具体的には、本発明は、個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していることを示す。
【0032】
もう一態様では、本発明はまた、個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療が不適合であることを確定する方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれかに遺伝子編集があることは、前記細胞治療が前記個体に適していないことを示す。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変された細胞である。いくつかの実施形態では、前記遺伝子改変細胞は、CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞である。いくつかの実施形態では、前記ターゲット部位は、BCL11A遺伝子座に位置する。いくつかの実施形態では、前記ターゲット部位は、CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞のBCL11A遺伝子座に位置する。
【0034】
本明細書で使用される「細胞療法」という用語は、健康な生細胞や改変された生細胞などの生細胞を個体に移植して、罹患細胞を補充、枯渇、置換または修復し、それによって細胞及び組織の構造及び機能を改善する治療法を指す。
【0035】
遺伝子「改変」細胞(genetically modified cell)とは、遺伝子レベルで変化された細胞を指す。例えば、遺伝子編集法により分子レベルで細胞を改変することによって、細胞が遺伝子レベルで変化することができる。遺伝子改変された細胞は、タンパク質発現の向上または抑制、細胞機能の向上または減少など、細胞レベルで変化することもある。例えば、遺伝子編集法によってBCL11A赤血球エンハンサーを遺伝子編集し、BCL11A遺伝子の発現をダウンレギュレートすることにより、γ-グロビン及びHbFの発現に対するBCL11A遺伝子の阻害を解除し、赤血球中のγ-グロビン及びHbFの発現を増加させ、β-サラセミアと鎌状赤血球貧血を治療することができる。特定の実施形態において、単離されたCD34陽性造血幹細胞/前駆細胞(「CD34陽性HSPC」)を遺伝子編集方法によって、例えば、ZFN、TALEN、またはCRISPRから選択される遺伝子編集技術によってBCL11A遺伝子を破壊してBCL11A機能が低下した遺伝子改変細胞を生成することができる。
【0036】
遺伝子改変は、例えば、DNAレベルでの遺伝子編集または調節によって達成することができる。例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)技術のいずれか1つまたはそれらの組み合わせによって細胞を遺伝子改変することができる。
【0037】
本出願で使用されたように、「CRISPR」または「CRISPR/Cas」技術は遺伝子編集技術であり、例えば、CRISPR/Cas9システムのような、自然に存在するまたは人工的に設計された様々なCRISPR/Casシステムを含むが、これらに限られていない。自然に存在するCRISPR/Casシステム(Naturally occurring CRISPR/Cas system)は、細菌と古細菌が長期的な進化中に形成した適応性免疫防御であり、侵入するウイルス及び外因性DNAと対抗することができる。例えば、CRISPR/Cas9の作動原理は、crRNA(CRISPR-derived RNA)が塩基対を通してtracrRNA(trans-activating RNA)と結合してtracrRNA/crRNA複合体を形成し、この複合体は、ヌクレアーゼCas9タンパク質が、crRNAとペアになっている配列標的部位で二本鎖DNAを切断することをガイドする。tracrRNAとcrRNAを人工的に設計することにより、ガイド作用を有するsgRNA(single guide RNA、単一ガイドRNA、あるいはガイドRNAという)を改変形成し、Cas9がDNAを部位特異的に切断することをガイドするようにすることができる。RNA指向性dsDNA結合タンパク質として、Cas9エフェクターヌクレアーゼは、RNA、DNA、及びタンパク質に共局在化することができるため、巨大な改変可能性を有する。CRISPR/Casシステムには、クラス1、クラス2、またはクラス3のCasタンパク質が使用可能である。本発明の一部の実施形態では、前記方法にはCas9が使用される。その他の適用されるCRISPR/Casシステムは、WO2013176772、WO2014065596、WO2014018423、US8,697,359、PCT/CN2018/112068、PCT/CN2018/112027に記載されているシステムと方法を含むが、これらに限られていない。
【0038】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、細胞を遺伝子改変することを含む。上記の方法のいくつかの実施形態において、前記遺伝子改変は、「CRISPR」または「CRISPR/Cas」遺伝子編集技術を含む。
【0039】
本出願における「個体」という用語は、遺伝子編集された自己細胞による治療を計画している、または治療中である、または治療された患者もしくは被験者を指し、前記患者または被験者には、βサラセミア患者、鎌状赤血球貧血患者などが含まれる。
【0040】
本出願において、「オフターゲット」または「オフターゲット効果」とは、所定のターゲット部位から逸脱して改変する現象を指す。CRISPR/Cas遺伝子編集法では、CRISPRシステムがsgRNAと染色体との間の相補的な塩基対形成によって識別しているため、非ターゲット部位とターゲット部位の配列類似性が高いほど、オフターゲットの可能性が高いと考えられる。がんの発症など、遺伝子治療/細胞治療の考えられる副作用は、編集されるべきではない遺伝子部位を編集するオフターゲット効果に大きく関係していると広く信じられている。したがって、遺伝子治療/細胞治療のリスクを減らすには、遺伝子編集のオフターゲット部位を予測し、それらをモニタリングすることが極めて重要である。
【0041】
本出願における「ターゲット部位」とは、遺伝子編集法などの遺伝子改変に関連する方法を使用して改変される所定の配列を指す。例えば、CRISPRを使用した遺伝子編集法では、sgRNAは相補的な塩基対形成によって前記ターゲット部位に結合し、Casタンパク質を誘導して前記ターゲット部位を遺伝子改変することができる。本出願における「非ターゲット部位」とは、ターゲット部位が位置するゲノム中のターゲット部位以外の他の配列セグメントを指す。本出願における「オフターゲット部位」とは、遺伝子編集法の使用により遺伝子改変が発生した非ターゲット部位を指す。本出願における「オフターゲットマーカー部位」は、ゲノム内にオフターゲットのリスクがある非ターゲット部位であり、オフターゲットマーカー部位とターゲット部位は配列では非常に類似しており、この類似性により、ターゲット部位の遺伝子改変プロセス中にオフターゲットマーカー部位の核酸配列が容易に改変されるため、オフターゲット効果がオフターゲットマーカー部位で起こり、オフターゲット部位を形成する。本出願に記載される「オフターゲットマーカー部位」は、第1の複数のオフターゲットマーカー部位及び第2の複数のオフターゲットマーカー部位を含む。特に明記しない限り、本出願では、「オフターゲットマーカー部位」と「潜在的なオフターゲット部位」を置き換えて使用できる。
【0042】
ここで、「第1の複数のオフターゲットマーカー部位」とは、ターゲット部位との配列類似性に基づいてバイオインフォマティクス法によって同定されたオフターゲットマーカー部位のグループを指す。本出願のいくつかの実施形態において、第1の複数のオフターゲットマーカー部位は、配列類似性によって同定され得る。例えば、CRISPR/Cas遺伝子編集法では、CRISPRシステムがsgRNAと染色体との間の相補的な塩基対形成によって識別しているため、配列類似性が高いほど、オフターゲットの可能性が高いと考えられる。CRISPRシステムでは、ターゲット部位は通常、sgRNAに結合する領域(通常は19~21bp、例えば20bp)とPAM領域で構成される。いくつかの実施形態において、ターゲット部位と80%以上(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列類似性(または配列同一性)を有する部位は、オフターゲットマーカー部位と同定される。「配列類似性」または配列同一性とは、2つのヌクレオチド配列間の類似性の程度を意味する。配列類似性は、標的ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との間の同一のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義することができる。ヌクレオチド配列類似性の測定は、本分野で知られている様々な方法を使用して、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegaline(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメーターを確定することができる。
【0043】
本出願において、「第2の複数のオフターゲットマーカー部位」は、インビトロ試験法を介して、実際の編集後に生じる改変を同定することによって確定されたオフターゲットマーカー部位の群を指す。いくつかの実施形態において、前記インビトロ試験法は、任意のゲノムワイドなバイアスのないオフターゲット分析法(genome-wide unbiased off-target analysis)を含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのいずれか1つまたは複数を含む。その中で、BLESSとは、二本鎖切断の末端をビオチンによってライゲーションしてから、ストレプトアビジン(streptavidin)によってそれを濃縮、シーケンシング、及び分析することを指す[Yan WX,Mirzazadeh R,Garnerone S,Scott D,Schneider MW,et al. 2017. BLISS is a versatile and quantitative method for genome-wide profiling of DNA double-strand breaks. Nat. Commun. 8:150583]。GUIDE-seqとは、DNA二本鎖の切断領域にdsODN(double-stranded oligodeoxynucleotide)を挿入することでDSBを標識し、シーケンシング及び分析することを指す[Tsai SQ,Zheng Z,Nguyen NT,Liebers M,Topkar VV,et al. 2015. GUIDE-seq enables genome-wide profiling of off-target cleavage by CRISPR-Cas nucleases. Nat. Biotechnol. 33:187-97]。HTGTSとは、2つの二本鎖切断領域をライゲーションすることにより、転位(translocation)によって標識し、シーケンシング及び分析することを指す[Frock RL,Hu J,Meyers RM,Ho YJ,Kii E,Alt FW. 2015. Genome-wide detection of DNA double stranded breaks induced by engineered nucleases. Nat. Biotechnol. 33:179-86]。Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqとは、切断部位をインビトロで標識し、シーケンシング及び分析することを指す[6. Tsai SQ,Nguyen NT,Malagon-Lopez J,Topkar VV,Aryee MJ,Joung JK. 2017. CIRCLE-seq: a highly sensitive in vitro screen for genome-wide CRISPR-Cas9 nuclease off-targets. Nat. Methods 14:607-14 ;Cameron P,Fuller CK,Donohoue PD,Jones BN,Thompson MS,et al. 2017. Mapping the genomic landscape of CRISPR-Cas9 cleavage. Nat. Methods 14:600-6;Kim D,Bae S,Park J,Kim E,Kim S,et al. 2015. Digenome-seq: genome-wide profiling of CRISPRCas9 off-target effects in human cells. Nat. Methods 12:237-43]。これらの方法は、ハイスループットシーケンシングを直接使用して、Casタンパク質による切断によって生成されたDNA二本鎖切断を検出することによってオフターゲット部位を見つけ、低頻度のオフターゲット部位を効果的に見つけることができる。
【0044】
本出願では、「第1の複数のオフターゲットマーカー部位」及び「第2の複数のオフターゲットマーカー部位」は、交差していても交差していなくてもよい。
【0045】
本出願における「遺伝子編集の発生」とは、遺伝子編集法の使用により、ターゲット部位またはオフターゲットマーカー部位で特異的または非特異的な遺伝子改変が起こる現象を指す。
【0046】
本出願は、遺伝子改変細胞群またはその後代におけるオフターゲット効果を評価する方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られる。いくつかの実施形態では、前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われる。いくつかの実施形態では、前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む。本発明はまた、遺伝子改変細胞群において複数のオフターゲットマーカー部位を得る方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することを含む。いくつかの実施形態において、前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる。「飽和条件」という用語は、インビトロでターゲット部位で90%を超える有効な切断を可能にする条件を指す。いくつかの実施形態では、前記インビトロ試験法は、細胞群のゲノムを抽出し、飽和条件下で遺伝子編集を行う。いくつかの実施形態では、前記飽和条件により、前記細胞群のゲノム中のターゲット部位で少なくとも90%以上の有効な切断が可能であり、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の有効な切断が可能である。
【0048】
シーケンシングプロセス中、例えばディープシーケンシングプロセスでは、一定の割合のエラー(PCRプロセスで生成されたエラーなど)が発生し、このエラーは部位に関連している(例えば、一部の部位はPCRに不利であり、PCRプロセス中に多くのエラーが発生する)。一般的に、ディープシーケンシング検出法の検出限界は、ほとんどの部位で約0.1%である(Nat Rev Genet. 2018 May; 19(5): 269-285,Next Gener Seq Appl. 2014; 1: 1000106)。つまり、遺伝子改変細胞群の約0.1%以下の細胞だけが特定の部位で遺伝子編集されている場合、既存のディープシーケンシング検出法では、当該部位の実際の遺伝子改変率を正確に測定することができない。言い換えれば、既存のディープシーケンシングプロセスに固有のエラーのため、遺伝子改変がまったく起こっていない細胞の場合でも、既存のディープシーケンシング検出方法で検出される遺伝子改変細胞の割合も同じく0~0.1%の値である。既存のディープシーケンシング検出法では、遺伝子改変がないことと、遺伝子改変率が約0.1%以下であることとを区別できない。したがって、遺伝子編集効率の検出値が約0.1%未満の場合は、通常、検出方法のバックグラウンドと見なされる。基礎変異値が高い部位など、一部の特殊な部位では、検出バックグラウンド値が高いため、通常、有意差があるかどうかで、オフターゲット効果があるかどうかを説明する。例えば、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位では2倍未満の配列変化があること(検出すると、遺伝子改変細胞群中の細胞の前記オフターゲットマーカー部位で遺伝子配列変化が発生した割合と、遺伝子編集改変されていない対照細胞の前記オフターゲットマーカー部位で遺伝子配列変化が発生した割合との比率は2未満である)は、当該部位では遺伝子編集が行われなかったことと認定できる。同様に、2倍以上(2倍を含む)の配列変化は、当該部位では遺伝子編集が行われたことと判定できる。これについて、Maeder,Morgan L.,et al. ”Development of a gene-editing approach
to restore vision loss in Leber congenital amaurosis type 10.” Nature medicine
25.2 (2019): 229を参照されたい。
【0049】
遺伝子編集の分野では、遺伝子編集効率は通常、すべての酵素作用部位におけるインデル(挿入/欠失)の比率として定義される。例えば、10,000個の細胞の20,000セットの染色体の特定の部位に対して、ディープシーケンシングが200,000回実行され、インデルが検出された回数が100回の場合、遺伝子編集効率は100/200,000=0.05%になる。
【0050】
本出願の上記の方法のいくつかの実施形態において、前記遺伝子改変細胞は、CD34陽性造血幹/前駆細胞であり、前記細胞のBCL11A遺伝子は、CRISPR/Casシステムを介して遺伝子編集改変されている。本発明のいくつかの実施形態において、BCL11Aエンハンサー(例えば、BCL11Aの発現または機能を増強するなど、影響を与える核酸配列)は、CRISPR/Cas」遺伝子編集法によって破壊される。前記BCL11Aエンハンサーについては、例えば、Bauer et.al.,Science [Science],Vol.342,2013,pp.253-257に記載されている内容を参照されたい。前記BCL11Aエンハンサーの例の1つは、BCL11A遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の核酸配列である(例えば、hg38に記録された位置+55:Chr2:60497676-60498941;+58:Chr2:60494251-60495546;+62:Chr2:60490409-60491734に位置するか対応する核酸)。前記BCL11Aエンハンサーの例の1つは、BCL11A遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の核酸配列の+62領域である。前記BCL11Aエンハンサーの例の1つは、BCL11A遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の核酸配列の+58領域である(BCL11A遺伝子58K部位150bp配列:ctgccagtcctcttctaccccacccacgcccccaccctaatcagaggccaaacccttcctggagcctgtgataaaagcaactgttagcttgcactagactagcttcaaagttgtattgaccctggtgtgttatgtctaagagtagatgcc)(配列番号2)。いくつかの実施形態において、BCL11Aエンハンサーは、BCL11A遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の核酸配列の+55領域である。
【0051】
上記の方法のいくつかの実施形態において、ヒト2番染色体の第60495197から60495346位の領域におけるBCL11A遺伝子を改変することによってBCL11A機能を低下させる。上記の方法のいくつかの実施形態では、CD34陽性HSPC細胞をCRISPR/Cas技術によって改変することによってBCL11A機能を低下させる。上記の方法のいくつかの実施形態において、造血幹細胞における2番染色体の第60495219から60495336位までのBCL11Aゲノム領域を遺伝子編集技術によって破壊することで、BCL11A機能を低下させる。上記の方法のいくつかの実施形態において、前記BCL11Aゲノム標的ヌクレオチド配列は、配列番号3から配列番号25から選択されるいずれかの配列に相補的である。
【0052】
上記の方法のいくつかの実施形態において、配列番号3~配列番号25から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAを前記CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞に導入してBCL11A遺伝子を編集し、BCL11Aの機能を低下させる。上記の方法のいくつかの実施形態において、前記sgRNAは、2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオにより改変されたものである。上記の方法のいくつかの実施形態において、前記化学改変は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/または3つの塩基及び/または3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体による改変である。上記の方法のいくつかの実施形態において、前記sgRNAと、Cas9をコードするヌクレオチドとを一緒に前記CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞に導入する。上記の方法のいくつかの実施形態において、sgRNAと、Cas9をコードするヌクレオチドとをエレクトロポレーションによって一緒に造血幹細胞に導入する。上記の方法のいくつかの実施形態において、前記エレクトロポレーション条件は、200~600V、0.5~2msである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「BCL11A」は、Evi9と名付けられた転写因子であり、レトロウイルス結合部位としてマウスで最初に発見され、後にヒトゲノムでも発見され、2番染色体短腕2p13部位に位置する。
【0054】
改変されたBCL11Aの機能低下とは、改変による、例えば、CRISPR/Casシステム及び方法による遺伝子編集などの遺伝子改変によるBCL11A遺伝子の破壊を指す。
【0055】
上記の方法のいくつかの実施形態において、遺伝子改変ターゲット部位は、配列番号3から配列番号25から選択されるいずれかの配列に相補的であるBCL11A遺伝子内の部位である。
【0056】
表1には、配列番号3から配列番号25に示される配列のいずれかを含むsgRNAによって標的とされるヒト2番染色体上のゲノム配列位置、及び各sgRNAによって引き起こされるCas9切断部位がリストされている。
【0057】
【表1】
【0058】
配列番号3:名称がBCL11Aのエンハンサー-1であるsgRNA(エンハンサー-1と略称されることもある):cacaggctccaggaagggtt
配列番号4:名称がBCL11Aのエンハンサー-2であるsgRNA(エンハンサー-2と略称されることもある):atcagaggccaaacccttcc
配列番号5:名称がBCL11Aのエンハンサー-3であるsgRNA(エンハンサー-3と略称されることもある):Ctaacagttgcttttatcac
配列番号6:名称がBCL11Aのエンハンサー-4であるsgRNA(エンハンサー-4と略称されることもある):ttgcttttatcacaggctcc
配列番号7:名称がBCL11Aのエンハンサー-5であるsgRNA(エンハンサー-5と略称されることもある):ttttatcacaggctccagga
配列番号8:名称がBCL11Aのエンハンサー-6であるsgRNA(エンハンサー-6と略称されることもある):tttatcacaggctccaggaa
配列番号9:名称がBCL11Aのエンハンサー-7であるsgRNA(エンハンサー-7と略称されることもある):tgggtggggtagaagaggac
配列番号10:名称がBCL11Aのエンハンサー-8であるsgRNA(エンハンサー-8と略称されることもある):gggcgtgggtggggtagaag
配列番号11:名称がBCL11Aのエンハンサー-9であるsgRNA(エンハンサー-9と略称されることもある):ttagggtgggggcgtgggtg
配列番号12:名称がBCL11Aのエンハンサー-10であるsgRNA(エンハンサー-10と略称されることもある):attagggtgggggcgtgggt
配列番号13:名称がBCL11Aのエンハンサー-11であるsgRNA(エンハンサー-11と略称されることもある):gattagggtgggggcgtggg
配列番号14:名称がBCL11Aのエンハンサー-12であるsgRNA(エンハンサー-12と略称されることもある):tctgattagggtgggggcgt
配列番号15:名称がBCL11Aのエンハンサー-13であるsgRNA(エンハンサー-13と略称されることもある):ctctgattagggtgggggcg
配列番号16:名称がBCL11Aのエンハンサー-14であるsgRNA(エンハンサー-14と略称されることもある):cacgcccccaccctaatcag
配列番号17:名称がBCL11Aのエンハンサー-15であるsgRNA(エンハンサー-15と略称されることもある):ttggcctctgattagggtgg
配列番号18:名称がBCL11Aのエンハンサー-16であるsgRNA(エンハンサー-16と略称されることもある):tttggcctctgattagggtg
配列番号19:名称がBCL11Aのエンハンサー-17であるsgRNA(エンハンサー-17と略称されることもある):gtttggcctctgattagggt
配列番号20:名称がBCL11Aのエンハンサー-18であるsgRNA(エンハンサー-18と略称されることもある):ggtttggcctctgattaggg
配列番号21:名称がBCL11Aのエンハンサー-19であるsgRNA(エンハンサー-19と略称されることもある):aagggtttggcctctgatta
配列番号22:名称がBCL11Aのエンハンサー-20であるsgRNA(エンハンサー-20と略称されることもある):gaagggtttggcctctgatt
配列番号23:名称がBCL11Aのエンハンサー-21であるsgRNA(エンハンサー-21と略称されることもある):actcttagacataacacacc
配列番号24:名称がBCL11Aのエンハンサー-22であるsgRNA(エンハンサー-22と略称されることもある):cttcaaagttgtattgaccc
配列番号25:名称がBCL11Aのエンハンサー-23であるsgRNA(エンハンサー-23と略称されることもある):ctcttagacataacacacca
【0059】
上記の23個のsgRNAの切断部位を分析すると分かるように、これらのsgRNAによって引き起こされるCas9切断位置は、BCL11A遺伝子の第60495219から60495336位までのゲノム領域に集中している。
【0060】
一般に、sgRNAのガイド配列とは、標的ポリヌクレオチド配列と十分な相補性を有し、標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体と標的配列との配列特異的結合をガイドする任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、適切なアラインメントアルゴリズムを使用して最適なアラインメントを行う場合、ガイド配列及びそれに対応する標的配列間の相補程度は約80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97.5%以上、99%以上またはそれ以上である。最適なアラインメントは、配列をアラインするための任意の適切なアルゴリズムを使用して決定でき、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wimschアルゴリズム、Burrows-Wheeler Transformに基づいたアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustai X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies,ELAND(Illumina,San Diego,CA))、SOAP(sоap.genоmics.оrg.cnで入手可能)、及びMaq(maq.sourceforge.netで入手可能)が含まれる。一部の実施形態では、ガイド配列の長さは約19~21であり、例えば、19bp、20bp、21bpである。
【0061】
本発明の一態様は、個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法に係る。具体的には、本発明は、個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していることを示す。
【0062】
もう一態様では、本発明はまた、個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療が不適合であることを確定する方法を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれかに遺伝子編集があることは、前記細胞治療が前記個体に適していないことを示す。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子改変された細胞の後代は、細胞分裂による遺伝子改変細胞の娘細胞である。いくつかの実施形態において、前記遺伝子改変された細胞の後代は、遺伝子改変細胞の分化した娘細胞である。いくつかの実施形態において、前記遺伝子改変細胞は、遺伝子改変された造血幹細胞である。いくつかの実施形態において、前記遺伝子改変細胞の後代は、遺伝子改変された造血幹細胞の分化した後代である。
【0064】
「造血幹細胞」とは、強力な増殖能、多方向分化能及び自己再生能を有する細胞の集団を指す。造血幹細胞は、さまざまな血球を分化・補充するだけではなく、幹細胞の特性と数量を自己再生により維持することもできる。造血幹細胞は分化及び増殖能力が異なり、異質性である。多能性造血幹細胞は最も原始的であり、最初に定方向多能性造血幹細胞、例えば、顆粒球、赤血球、単核、及び巨核球‐血小板を生成できる骨髄造血幹細胞、及びBリンパ球とTリンパ球を生成できるリンパ幹細胞など、に分化する。この二種の幹細胞は、造血幹細胞の基本的な特徴を持っていながらわずかに分化し、それぞれ「骨髄成分」とリンパ球の発生に関与するので、定方向(指向性)多能性造血幹細胞と呼ばれる。これらはさらに造血前駆細胞に分化する。この細胞は原始的な血球でもあるが、造血幹細胞の多くの基本的な特徴を失っている。例えば、多方向分化能力を失って、1系統または密接に関連する2系統の細胞にしか分化できなくなったり、繰り返し再生する能力を失い、数量を補うために造血幹細胞の増殖分化に依存するしかなくなったり、増殖の可能性が限られており、数回しか分裂することができなくなったりする。造血前駆細胞が分化して生成できる血液細胞株の数に応じて、また単能性造血前駆細胞(1つの血液細胞株のみに分化する)とオリゴ能性造血前駆細胞(2~3つの血液細胞株に分化できる)に分けられる。本発明の「造血幹細胞/前駆細胞」及び「造血幹細胞」という用語は、置き換えて使用でき、多能性造血幹細胞、定方向多能性造血幹細胞、及び造血前駆細胞を含み、異質性の異なる造血幹細胞の総称である。
【0065】
いくつかの実施形態では、上記の方法に記載の遺伝子改変細胞は、遺伝子改変されたCD34陽性造血幹細胞/前駆細胞である。例えば、フローサイトメトリーと蛍光標識された抗CD34抗体を使用して、CD34陽性の造血幹細胞/前駆細胞を検出及びカウントできる。
【0066】
具体的な実施形態において、CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞は、造血起源の細胞を含む生物(個体)から単離されるまたは得られる。「単離」とは、元の環境から取り出すことを意味する。たとえば、細胞は、その自然な状態で通常に付随するコンポーネントの一部またはすべてから分離されている場合、その細胞は単離されている。
【0067】
造血幹細胞/前駆細胞は、大腿骨、寛骨、肋骨、胸骨及び他の骨を含む成人の未分画または分画された骨髄から取得または単離することができる。造血幹細胞及び前駆細胞は、針と注射器を使用して寛骨から直接取得または分離するか、血液から取得できる。通常、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などの造血幹細胞動員剤で前処理した後の血液から得られる。造血幹細胞及び前駆細胞の他の供給源には、臍帯血、胎盤血、及び動員された個体の末梢血が含まれる。
【0068】
個体(骨髄や末梢血など)から細胞集団を単離して取得した後、それらをさらに精製して、CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞を取得することができる。例えば、単離された細胞集団における成熟した系統(系譜)指向性細胞(mature lineage committed cells)は、免疫化によって、例えば、一連の「系統」抗原(例えば、CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123、及びCD235a)に結合した抗体を使用して固体マトリックスを標記してから、CD34陽性抗原に結合した抗体で元の造血幹細胞と前駆細胞を単離することによって除去することができる。様々な細胞源から造血幹細胞及び前駆細胞を精製するためのキットが市販されている。
【0069】
本出願のいくつかの具体的な実施形態では、前記遺伝子改変細胞は、単離されたCD34陽性造血幹細胞/前駆細胞であり、遺伝子編集方法によって、例えば、CRISPR技術によって、BCL11A遺伝子の細胞が破壊されている。
【0070】
細胞の「分化」とは、同じ供給源からの細胞が、異なる形態学的構造及び機能的特徴を有する細胞群を徐々に生成するプロセスを指す。
【0071】
造血幹細胞から赤血球への「分化」には、造血幹細胞期、赤血球前駆細胞期、赤血球前駆細胞(原始赤血球から後期赤芽球)の増殖及び分化期、網状赤血球の増殖及び成熟過程、ならびに網状赤血球が末梢血から放出され、成熟して赤血球になる段階を含む。造血幹細胞期:造血幹細胞は主に骨髄、脾臓、肝臓、その他の造血組織に存在することが現在知られている。末梢血にも少量に循環している。赤血球前駆細胞期:赤血球前駆細胞(progenitor cell)期では、細胞は造血幹細胞と赤血球前駆細胞の間の細胞群である。造血幹細胞は、骨髄造血微小環境の影響下で赤血球前駆細胞に分化する。造血微小環境には、微小血管系、神経系、及び造血間質などの部分が含まれる。体液性因子とサイトカインは、造血幹細胞の分化に特別な効果と影響を及ぼす。原始赤血球、前期赤芽球、中期赤芽球、後期赤芽球を含む赤血球前駆細胞期、及び網状赤血球期を経て成熟した赤血球に到達する。
【0072】
細胞成熟の過程は、ヘモグロビンが増加し、細胞核の活性が減少する過程である。細胞が成熟するにつれて、有核赤血球のヘモグロビン含有量は増加し続け、RNA含有量は減少し続ける。赤血球中のヘモグロビンの増加により、細胞核は活性を失い、DNAまたはRNAを合成しなくなる。実験により、これはヘモグロビンが核膜の細孔を通って核に入り、ヌクレオヒストン(nucleohistones)に作用して染色体の不活性化と核凝縮の促進をもたらすからであることが確認されている。後期赤芽球は分裂を続ける能力を失い、その後、細胞核は濃縮されて脱出し、単核マクロファージに飲み込まれるか、脾臓に断片化して溶解し、細胞核のない網状赤血球になる。ヘモグロビンは、成熟した赤血球の段階ではもはや合成されない。細胞内ヘモグロビン濃度の上昇は細胞核の活性を失わせるという理論によれば、成熟中の赤血球の分裂数と細胞の最終的なサイズは、ヘモグロビン合成の速度と一定の関係がある。細胞が成熟するにつれて、赤血球細胞の直径は徐々に減少し、細胞の体積も徐々に減少する。これは、細胞内でヘモグロビン、基質タンパク質、及びさまざまな酵素を合成するために使用される一部の細胞小器官(ミトコンドリア、ゴルジ装置、ポリソームなど)が徐々に減少し、細胞小器官も徐々に変性して消失するからである。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞の後代は、造血幹細胞が分化した後代、例えば、分化の様々な段階での末梢血中の有核赤血球、例えば、前期赤芽球、中期赤芽球、または後期赤芽球である。
【0074】
本発明の一態様は、個体を治療する方法に係る。具体的には、本発明は、1)個体に対する細胞治療の適合性を確定するステップ、及び2)細胞治療に適した個体に、前記個体に由来する遺伝子改変細胞群を投与するステップを含む細胞治療を提供し、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記個体に対する細胞治療の適合性を判断するステップは、
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること、及び
b)前記発生に基づいて、前記治療の適合性を評価すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していることを示す。
【0075】
上記の方法のいくつかの実施形態において、遺伝子編集改変された細胞集団は、個体に投与される前に、エクスビボまたはインビトロで増殖されない。特定の実施形態において、前記遺伝子編集改変された細胞は、治療試薬を除去するために洗浄され得、そしてそれらをエクスビボで増殖させることなく患者に投与され得る。いくつかの実施形態において、遺伝子編集改変された細胞は、明らかなエクスビボ細胞分裂が起こる前、または明らかなエクスビボ細胞分裂に必要な時間の前に、患者に投与される。いくつかの実施形態において、遺伝子編集改変された細胞は、改変された後に個体に投与される前に、1日以上培養される。いくつかの実施形態において、改変された細胞は、改変されてから2、4、6、12、24、または48時間以内に患者に投与される。
【0076】
いくつかの実施形態において、改変された細胞を個体に投与する前に、改変された細胞は、少なくとも24時間、凍結条件下で保存される。いくつかの実施形態において、改変された細胞は、凍結条件下で保存する前に、1日以上培養される。改変された細胞は、無血清基礎培地に基づいて細胞生存率を維持するサイトカインを補充した培地で1日以上(例えば、1日から3日)培養することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記改変された細胞は、静脈内注射によって、例えば、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、月に1回、または2ヶ月に1回投与される。投与される細胞の数は、例えば、体重1キログラムあたり約2x105~2x107細胞である、
【0078】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患症状の改善または除去を達成することを含むがこれらに限定されない、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを指す。効果は予防的であり得、疾患またはその症状の完全または部分的な予防として表され、及び/または効果は治療的であり得、症状の改善または除去を達成することによって、または疾患及び/または病気副作用に対する部分的または完全な治癒を提供することとして表される。本明細書で使用される場合、「治療」には、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療が含まれ、(a)個体の発症を予防すること;(b)疾患を阻害する、すなわちその発症を阻止すること;(c)疾患、例えば、疾患の寛解、例えば、疾患の症状の完全または部分的な除去、及び(d)個人を病気前の状態に戻す、例えば、血液系を再構築することが含まれる。本願において、「治療」は、必ずしも疾患または病状もしくはその関連症状の完全な根絶または治癒を意味するものではなく、疾患または病状の1つまたは複数の測定可能な症状の最小限の改善または緩和を包含する。上記の特定の方法において、治療は、造血再構成の改善または個体の生存を含む。
【0079】
本発明の一態様は、個体の遺伝子編集細胞治療に伴うオフターゲットがあるかどうかを診断するための方法を提供し、前記方法は、a)前記個体に由来する、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変された遺伝子改変細胞群を、前記個体に投与すること、及び
b)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療ではオフターゲットがないことを示す。
【0080】
本発明の一態様は、遺伝子編集細胞治療の効果をモニタリングする方法を提供し、前記方法は、a)個体に由来する、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変された遺伝子改変細胞群を、前記個体に投与すること、及び
b)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記個体に対する前記細胞治療の治療効果がよいことを示す。
【0081】
本発明の一態様は、ある個体に由来する遺伝子改変細胞製品の質をモニタリングする方法を提供し、前記方法は、a)前記遺伝子改変細胞において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、
前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞製品が前記個体の細胞治療に適していることを示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変細胞の製品を前記個体に投与することを含む。
【0083】
本発明の一態様は、遺伝子編集細胞治療の個体に介入療法を施す必要があるかどうかを判断する方法を提供し、前記方法は、a)前記個体に由来する、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変された遺伝子改変細胞群を、前記個体に投与すること、及び
b)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定すること
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれかに遺伝子編集があることは、遺伝子編集細胞治療の前記個体に介入療法を施す必要があることを示す。
【0084】
上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変細胞を前記個体に投与する前に、前記遺伝子改変細胞に対して前記確定ステップを行うことを含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変細胞を前記個体に投与することをさらに含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変細胞の投与後、前記遺伝子改変細胞の後代に対して前記確定ステップを行うことを含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記確定ステップは、前記遺伝子改変細胞の投与後少なくとも約1ヶ月、例えば、少なくとも30日、40日、50日、60日で行われる。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記確定及び評価ステップを1回または複数回、例えば、2、3、4、5回以上繰り返すことをさらに含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記確定及び評価ステップは、約月に1回から約年に1回の頻度、例えば、約毎月、約2ヶ月ごと、約3ヶ月ごと、約4ヶ月ごと、約5ヶ月ごと、約6ヶ月ごと、約7ヶ月ごと、約8ヶ月ごと、約9ヶ月ごと、約10ヶ月ごと、約11ヶ月ごと、約12ヶ月ごとの頻度で繰り返すことをさらに含む。
【0085】
上記方法の一部の実施形態において、前記方法介入は、前記評価ステップの後に介入療法を使用して前記個体を治療することをさらに含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記介入療法は、投与された遺伝子改変細胞群を除去することであり、骨髄除去及び/またはリンパ液除去の処理を含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記介入療法は、化学療法、モノクローナル抗体療法、または全身放射線療法を含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記化学療法は、ブスルファン、シクロホスファミド、及びフルダラビンからなる群から選択される1つ以上の化学療法剤を前記個体に投与することを含む。上記の方法のいくつかの実施形態では、前記介入療法は、前記個体に由来する第2の遺伝子改変細胞群を投与することである。
【0086】
本出願の方法によってオフターゲットが発生する可能性の一番高い部位を予測し、例えば、10~50個、10~45個、10~40個、10~35個、10~30個、10~25個、10~20個、10~15個のオフターゲットマーカー部位を予測し、その後そのオフターゲット反応の発生をモニタリングする。オフターゲットの反応が発生した場合は、当該部位の編集の割合が変化しているかどうかを判断する。ある部位にオフターゲット現象があることが明らかであるが、当該部位の編集の割合が変わらないかまたは減少している場合、当該部位にはオフターゲット効果があるが、細胞増殖(癌化)のリスクがまだないことを示す。この場合、介入療法を使用しなくてもよい。ある部位にオフターゲットがあり、時間の経過とともに(継続的検出)、当該部位での編集の割合が増加していることが明らかである場合、オフターゲットが細胞増殖(癌化)を引き起こすリスクがあることを示す。その場合、このがんに対する介入療法、例えば、がんを治療するための化学療法剤の投与を検討する必要がある。がん治療のための様々な化学療法剤が本分野で知られている。
【0087】
本発明はまた、遺伝子改変細胞群またはその後代のオフターゲット編集を評価するためのキットに係り、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記キットは、1)前記遺伝子改変細胞を生成するための、遺伝子編集システムの1つまたは複数の成分、及びb)複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅するための複数のプライマーセットを含む。
【0088】
上記の方法及びキットのいくつかの実施形態では、遺伝子編集方法またはシステムは、ZFN、TALEN、CRISPR、または他の遺伝子編集方法もしくはシステムから選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子編集方法またはシステムは、CRISPR遺伝子編集方法またはシステムである。いくつかの実施形態において、前記ターゲット部位は、CD34陽性造血幹/前駆細胞におけるBCL11A遺伝子座である。上記の方法及びキットのいくつかの実施形態において、前記ターゲット部位は、BCL11Aエンハンサー遺伝子のエクソン2とエクソン3との間のヌクレオチド部位である(例えば、hg38に記録されている+55:Chr2:60497676-60498941;+58:Chr2:60494251-60495546;+62:Chr2:60490409-60491734のところに位置するか、または対応する部位)。前記ターゲット部位の例として、例えば、BCL11A遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の核酸配列の+62領域、BCL11A遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の核酸配列の+58領域、BCL11A遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の核酸配列の+55領域、次のヌクレオチド配列に示されるヌクレオチド領域(ctgccagtcctcttctaccccacccacgcccccaccctaatcagaggccaaacccttcctggagcctgtgataaaagcaactgttagcttgcactagactagcttcaaagttgtattgaccctggtgtgttatgtctaagagtagatgcc)(配列番号2)が挙げられる。上記のキットのいくつかの実施形態において、キットは、上記のターゲット部位を標的とするsgRNA、または当該sgRNAを含むヌクレオチド配列、または当該sgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、上記のキットは、配列番号2に示される配列を標的とするsgRNA、または当該sgRNAを含むヌクレオチド配列、または当該sgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、上記のキットは、ヒト2番染色体の第60495197から60495346位の領域におけるBCL11A遺伝子を標的とするsgRNA、または当該sgRNAを含むヌクレオチド配列、または当該sgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、上記のキットは、ヒト造血幹細胞の2番染色体の第60495219から60495336位におけるBCL11A遺伝子領域を標的とするsgRNA、または当該sgRNAを含むヌクレオチド配列、または当該sgRNAをコードするヌクレオチド配列を含み、前記sgRNAのヌクレオチド配列は、配列番号3~配列番号25から選択されるいずれか1つまたは複数の配列である。いくつかの実施形態では、前記キットは、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)、またはCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)をコードする発現ベクター、またはCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)をコードまたは発現するヌクレオチド配列(mRNA配列など)も含む。上記のキットのいくつかの実施形態において、前記キットは、以下に示されるCas9核酸配列を含む。gacaagaagtacagcatcggcctggacatcggcaccaactctgtgggctgggccgtgatcaccgacgagtacaaggtgcccagcaagaaattcaaggtgctgggcaacaccgaccggcacagcatcaagaagaacctgatcggagccctgctgttcgacagcggcgaaacagccgaggccacccggctgaagagaaccgccagaagaagatacaccagacggaagaaccggatctgctatctgcaagagatcttcagcaacgagatggccaaggtggacgacagcttcttccacagactggaagagtccttcctggtggaagaggataagaagcacgagcggcaccccatcttcggcaacatcgtggacgaggtggcctaccacgagaagtaccccaccatctaccacctgagaaagaaactggtggacagcaccgacaaggccgacctgcggctgatctatctggccctggcccacatgatcaagttccggggccacttcctgatcgagggcgacctgaaccccgacaacagcgacgtggacaagctgttcatccagctggtgcagacctacaaccagctgttcgaggaaaaccccatcaacgccagcggcgtggacgccaaggccatcctgtctgccagactgagcaagagcagacggctggaaaatctgatcgcccagctgcccggcgagaagaagaatggcctgttcggcaacctgattgccctgagcctgggcctgacccccaacttcaagagcaacttcgacctggccgaggatgccaaactgcagctgagcaaggacacctacgacgacgacctggacaacctgctggcccagatcggcgaccagtacgccgacctgtttctggccgccaagaacctgtccgacgccatcctgctgagcgacatcctgagagtgaacaccgagatcaccaaggcccccctgagcgcctctatgatcaagagatacgacgagcaccaccaggacctgaccctgctgaaagctctcgtgcggcagcagctgcctgagaagtacaaagagattttcttcgaccagagcaagaacggctacgccggctacattgacggcggagccagccaggaagagttctacaagttcatcaagcccatcctggaaaagatggacggcaccgaggaactgctcgtgaagctgaacagagaggacctgctgcggaagcagcggaccttcgacaacggcagcatcccccaccagatccacctgggagagctgcacgccattctgcggcggcaggaagatttttacccattcctgaaggacaaccgggaaaagatcgagaagatcctgaccttccgcatcccctactacgtgggccctctggccaggggaaacagcagattcgcctggatgaccagaaagagcgaggaaaccatcaccccctggaacttcgaggaagtggtggacaagggcgcttccgcccagagcttcatcgagcggatgaccaacttcgataagaacctgcccaacgagaaggtgctgcccaagcacagcctgctgtacgagtacttcaccgtgtataacgagctgaccaaagtgaaatacgtgaccgagggaatgagaaagcccgccttcctgagcggcgagcagaaaaaggccatcgtggacctgctgttcaagaccaaccggaaagtgaccgtgaagcagctgaaagaggactacttcaagaaaatcgagtgcttcgactccgtggaaatctccggcgtggaagatcggttcaacgcctccctgggcacataccacgatctgctgaaaattatcaaggacaaggacttcctggacaatgaggaaaacgaggacattctggaagatatcgtgctgaccctgacactgtttgaggacagagagatgatcgaggaacggctgaaaacctatgcccacctgttcgacgacaaagtgatgaagcagctgaagcggcggagatacaccggctggggcaggctgagccggaagctgatcaacggcatccgggacaagcagtccggcaagacaatcctggatttcctgaagtccgacggcttcgccaacagaaacttcatgcagctgatccacgacgacagcctgacctttaaagaggacatccagaaagcccaggtgtccggccagggcgatagcctgcacgagcacattgccaatctggccggcagccccgccattaagaagggcatcctgcagacagtgaaggtggtggacgagctcgtgaaagtgatgggccggcacaagcccgagaacatcgtgatcgaaatggccagagagaaccagaccacccagaagggacagaagaacagccgcgagagaatgaagcggatcgaagagggcatcaaagagctgggcagccagatcctgaaagaacaccccgtggaaaacacccagctgcagaacgagaagctgtacctgtactacctgcagaatgggcgggatatgtacgtggaccaggaactggacatcaaccggctgtccgactacgatgtggaccatatcgtgcctcagagctttctgaaggacgactccatcgacaacaaggtgctgaccagaagcgacaagaaccggggcaagagcgacaacgtgccctccgaagaggtcgtgaagaagatgaagaactactggcggcagctgctgaacgccaagctgattacccagagaaagttcgacaatctgaccaaggccgagagaggcggcctgagcgaactggataaggccggcttcatcaagagacagctggtggaaacccggcagatcacaaagcacgtggcacagatcctggactcccggatgaacactaagtacgacgagaatgacaagctgatccgggaagtgaaagtgatcaccctgaagtccaagctggtgtccgatttccggaaggatttccagttttacaaagtgcgcgagatcaacaactaccaccacgcccacgacgcctacctgaacgccgtcgtgggaaccgccctgatcaaaaagtaccctaagctggaaagcgagttcgtgtacggcgactacaaggtgtacgacgtgcggaagatgatcgccaagagcgagcaggaaatcggcaaggctaccgccaagtacttcttctacagcaacatcatgaactttttcaagaccgagattaccctggccaacggcgagatccggaagcggcctctgatcgagacaaacggcgaaaccggggagatcgtgtgggataagggccgggattttgccaccgtgcggaaagtgctgagcatgccccaagtgaatatcgtgaaaaagaccgaggtgcagacaggcggcttcagcaaagagtctatcctgcccaagaggaacagcgataagctgatcgccagaaagaaggactgggaccctaagaagtacggcggcttcgacagccccaccgtggcctattctgtgctggtggtggccaaagtggaaaagggcaagtccaagaaactgaagagtgtgaaagagctgctggggatcaccatcatggaaagaagcagcttcgagaagaatcccatcgactttctggaagccaagggctacaaagaagtgaaaaaggacctgatcatcaagctgcctaagtactccctgttcgagctggaaaacggccggaagagaatgctggcctctgccggcgaactgcagaagggaaacgaactggccctgccctccaaatatgtgaacttcctgtacctggccagccactatgagaagctgaagggctcccccgaggataatgagcagaaacagctgtttgtggaacagcacaagcactacctggacgagatcatcgagcagatcagcgagttctccaagagagtgatcctggccgacgctaatctggacaaagtgctgtccgcctacaacaagcaccgggataagcccatcagagagcaggccgagaatatcatccacctgtttaccctgaccaatctgggagcccctgccgccttcaagtactttgacaccaccatcgaccggaagaggtacaccagcaccaaagaggtgctggacgccaccctgatccaccagagcatcaccggcctgtacgagacacggatcgacctgtctcagctgggaggcgac(配列番号1)。
【0090】
上記の方法のいくつかの実施形態において、配列番号3~配列番号25から選択されるいずれかの配列を含むsgRNAを前記CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞に導入してBCL11A遺伝子を編集し、BCL11Aの機能を除去または低下させる。上記のキットのいくつかの実施形態において、前記sgRNAは、2’-O-メチル類縁体及び/またはヌクレオチド間3’チオにより改変されたものである。上記のキットのいくつかの実施形態において、前記化学改変は、前記sgRNAの5’末端の最初の1つ、2つ、及び/または3つの塩基及び/または3’末端の最後の1つの塩基の2’-O-メチル類縁体による改変である。上記のキットのいくつかの実施形態において、前記sgRNAと、Cas9をコードするヌクレオチドとを一緒に前記CD34陽性造血幹細胞/前駆細胞に導入する。
【0091】
上記のキットのいくつかの実施形態において、前記キットは、複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅するための複数のプライマーセットを含む。上記のキットのいくつかの実施形態では、前記プライマーセットは表3から選択される。配列番号は配列番号26~117である。
【0092】
上記の方法及びキットの実施形態では、前記オフターゲットマーカー部位は、表2から選択される1つまたは複数である。
【0093】
次は実施例により本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例における詳細な条件のない実験方法は、一般に、従来の条件に記載されている条件に従うか、または製造業者によって提案された条件に従う。以下の実施例で使用される実験材料及び試薬は、特に明記しない限り、市販供給源から入手することができる。
【0094】
本出願は下記の実施形態に係る。
1、個体に由来する遺伝子改変細胞群を前記個体に投与することを含む、前記個体に対する細胞治療の適合性を確定する方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、
前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していることを示す、前記方法。
2、前記遺伝子改変細胞を投与する前に、前記遺伝子改変細胞に対して前記確定ステップを行う、実施形態1に記載の方法。
3、前記方法は、前記遺伝子改変細胞を前記個体に投与することをさらに含む、実施形態2に記載の方法。
4、前記遺伝子改変細胞の投与後、前記遺伝子改変細胞の後代に対して前記確定ステップを行う、実施形態1に記載の方法。
5、前記確定ステップは、前記遺伝子改変細胞の投与後少なくとも約1ヶ月、例えば、前記遺伝子改変細胞の投与後1ヶ月、1.5か月、2ヶ月、2.5ヶ月で行われる、実施形態4に記載の方法。
6、前記確定及び評価ステップを1回または複数回繰り返すことをさらに含む、実施形態4または5に記載の方法。
7、前記確定及び評価ステップは、約月に1回から約年に1回の頻度で繰り返され、例えば、約毎月、約2ヶ月ごと、約3ヶ月ごと、約4ヶ月ごと、約5ヶ月ごと、約6ヶ月ごと、約7ヶ月ごと、約8ヶ月ごと、約9ヶ月ごと、約10ヶ月ごと、約11ヶ月ごと、約12ヶ月ごとの頻度で繰り返される、実施形態6に記載の方法。
8、フターゲットマーカー部位での配列変化が0.1%未満の場合、またはオフターゲットマーカー部位での配列変化が遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較して2倍未満である場合、3~12ヶ月ごとの頻度で前記確定及び評価ステップを繰り返し(例えば、約3ヶ月ごと、約4ヶ月ごと、約5ヶ月ごと、約6ヶ月ごと、約7ヶ月ごと、約8ヶ月ごと、約9ヶ月ごと、約10ヶ月ごと、約11ヶ月ごと、約12ヶ月ごとの頻度で繰り返し)、オフターゲットマーカー部位での配列変化が0.1%超、0.2%超、0.3%超、0.4%超、0.5%超、0.6%超、0.7%超、0.8%超、0.9%超、もしくは1%超の場合、またはオフターゲットマーカー部位での配列変化が遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較して2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、9倍超、もしくは10倍超の場合、配列変化の頻度が増加するにつれて、前記確定及び評価ステップの繰り返す頻度を増加する(例えば、3ヶ月ごとに1回から2ヶ月ごとに1回または月に1回、または半月に1回に増加)することで、オフターゲットマーカー部位の遺伝子編集の頻度及び癌化のリスクをモニタリングする、実施形態7に記載の方法。オフターゲットマーカー部位の遺伝子編集の頻度が大きいほど、癌化のリスクが高い。いくつかの実施形態では、オフターゲットマーカー部位の遺伝子編集の頻度をモニタリングすると同時に、その他の臨床的な検査手段を組み合わせて癌化の発生をモニタリングし、介入治療をタイムリーに行う。
9、前記方法は、前記評価ステップの後に介入療法で前記個体を治療することをさらに含み、例えば、骨髄除去及び/またはリンパ液除去の処理、化学療法(例えば、ブスルファン、シクロホスファミド、及びフルダラビンからなる群から選択される1つ以上の化学療法剤を前記個体に投与すること)、モノクローナル抗体療法、または全身放射線療法で前記個体を治療することをさらに含む、実施形態5~8のいずれか1項に記載の方法。
10、前記介入療法は、前記個体に投与された前記個体に由来する遺伝子改変細胞群を除去することである、実施形態9に記載の方法。
11、前記介入療法は、前記個体に由来する第2の遺伝子改変細胞群(投与された遺伝子改変細胞群と違う遺伝子改変細胞群)を投与することを含む、実施形態9または10に記載の方法。
12、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、少なくとも約10個のオフターゲットマーカー部位を含む、実施形態1~11のいずれか1項に記載の方法。
13、オフターゲットマーカー部位での0.1%未満の配列変化、または、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位での2倍未満の配列変化は、前記オフターゲットマーカー部位では遺伝子編集が行われなかったことを示す、実施形態1~12のいずれか1項に記載の方法。
14、前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われる、実施形態1~13のいずれか1項に記載の方法。
15、前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、実施形態14に記載の方法。
16、前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む、実施形態1~15のいずれか1項に記載の方法。
17、前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる、実施形態1~16のいずれか1項に記載の方法。
18、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上の有効な切断が可能である、実施形態1~17のいずれか1項に記載の方法。
19、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で100%の有効な切断が可能である、実施形態18に記載の方法。
20、前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される、実施形態1~19のいずれか1項に記載の方法。
21、前記ターゲット部位は、BCL11A遺伝子座に位置する、実施形態1~20のいずれか1項に記載の方法。
22、前記オフターゲットマーカー部位は、表2に示されている部位の1つ以上である、実施形態21に記載の方法。
23、遺伝子改変細胞群またはその後代におけるオフターゲット遺伝子編集を評価する方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られ、オフターゲットマーカー部位での0.1%超の配列変化、または、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位での2倍超の配列変化は、遺伝子改変細胞群またはその後代にはオフターゲット遺伝子編集があることを示す、前記方法。
24、前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われる、実施形態23に記載の方法。
25、前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、実施形態24に記載の方法。
26、遺伝子改変細胞群において複数のオフターゲットマーカー部位を得る方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、オフターゲットマーカー部位の前記方法は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することを含む、前記方法。
27、前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む、実施形態23~26のいずれか1項に記載の方法。
28、前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる、実施形態23~27のいずれか1項に記載の方法。
29、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上、例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上、または100%の有効な切断が可能である、実施形態28に記載の方法。
30、前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される、実施形態23~29のいずれか1項に記載の方法。
31、遺伝子改変細胞群またはその後代のオフターゲット編集を評価するためのキットであって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記キットは、1)前記遺伝子改変細胞を生成するための、遺伝子編集システムの1つまたは複数の成分、及びb)複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅するための複数のプライマーセットを含む、前記キット。
32、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られる、実施形態31に記載のキット。
33、前記遺伝子編集システムは、CRISPR/Casシステムである、実施形態31または32に記載のキット。
34、前記ターゲット部位を含む核酸を増幅するための1つまたは複数のプライマーセットをさらに含む、実施形態31~33のいずれか1項に記載のキット。
35、前記1つまたは複数のプライマーセットは、配列番号26~117のうちの1つまたは複数を含む、実施形態34に記載のキット。
【0095】
一方、本出願は下記の技術構成に係る。
1、遺伝子改変細胞群またはその後代におけるオフターゲット遺伝子編集を評価する方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られ、オフターゲットマーカー部位での0.1%超の配列変化、または、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位での2倍超の配列変化は、遺伝子改変細胞群またはその後代にはオフターゲット遺伝子編集があることを示す、前記方法。
2、前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われる、技術構成1に記載の方法。
3、前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、技術構成2に記載の方法。
4、前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む、技術構成1~3のいずれか1項に記載の方法。
5、前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる、技術構成1~4のいずれか1項に記載の方法。
6、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上の有効な切断が可能である、技術構成5に記載の方法。
7、前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される、技術構成1~6のいずれか1項に記載の方法。
8、前記ターゲット部位は、BCL11A遺伝子座に位置する、技術構成1~7のいずれか1項に記載の方法。
9、前記オフターゲットマーカー部位は、表2に示されている部位の1つ以上である、技術構成8に記載の方法。
10、遺伝子改変細胞群において複数のオフターゲットマーカー部位を得る方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、オフターゲットマーカー部位の前記方法は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することを含む、前記方法。
11、前記同定は、DNAシーケンシングによって行われる、技術構成10に記載の方法。
12、前記同定は、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、技術構成11に記載の方法。
13、前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含む、技術構成10~12のいずれか1項に記載の方法。
14、前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われる、技術構成10~13のいずれか1項に記載の方法。
15、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上の有効な切断が可能である、技術構成14に記載の方法。
16、前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される、技術構成10~15のいずれか1項に記載の方法。
17、遺伝子改変細胞群またはその後代のオフターゲット編集を評価するためのキットであって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記キットは、1)前記遺伝子改変細胞を生成するための、遺伝子編集システムの1つまたは複数の成分、及びb)複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅するための複数のプライマーセットを含む、前記キット。
18、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られる、技術構成17に記載のキット。
19、前記遺伝子編集システムは、CRISPR/Casシステムである、技術構成17または18に記載のキット。
20、前記ターゲット部位を含む核酸を増幅するための1つまたは複数のプライマーセットをさらに含む、技術構成17~19のいずれか1項に記載のキット。
21、前記1つまたは複数のプライマーセットは、配列番号26~117のうちの1つまたは複数を含む、技術構成20に記載のキット。
【実施例
【0096】
実施例1:BCL11Aエンハンサーを標的とするsgRNAが、ヒトゲノム全体で完全にマッチングする部位は、BCL11A遺伝子の赤血球エンハンサーターゲット部位のみであることの確認
CRISPR/Cas9システムは、sgRNAにある20塩基の結合領域配列を使用して、BCL11A遺伝子の赤血球エンハンサーの特定のターゲットをターゲットにし、Cas9タンパク質を当該標的位置に正確に誘導するように遺伝子改変した。
ブラウザを介してUCSC genome browser(https://genome.ucsc.edu/)にログインした。ウェブページの右側にあるOur toolから、BLAT(rapidly align sequences to the genome)を選択した。BLATツールは、検索される配列に完全にマッチングするヒトゲノム内のすべての領域を見つけることができる。選択したゲノムがヒトゲノム(バージョンGRCh38/hg38)であることを確認し、検索ボックスに該sgRNA結合領域配列(CTAACAGTTGCTTTTATCAC、配列番号5)、20塩基を入力した。[submit]をクリックするだけで済んだ。
UCSCで検索を行った後にリターンした。検索の結果、2番目の染色体での唯一の結果のみが返された。つまり、sgRNAには、ヒトゲノム上に完全にマッチングする部位が1つだけある。この位置は、このsgRNAターゲット部位、つまり、BCL11A遺伝子の赤血球エンハンサーの特定の標的である。このsgRNAは、ヒトゲノム全体で完全にマッチングするターゲット部位を1つだけ持っていること、つまり、BCL11A遺伝子の赤血球エンハンサーのこの特定の標的を持っていることが確認された。
【0097】
実施例2:バイオインフォマティクス予測法による遺伝子編集の潜在的なオフターゲット部位の分析方法
sgRNAがゲノムDNA配列に結合する場合、ミスマッチの可能性があり、非ターゲット部位でのオフターゲット変異を引き起こす可能性がある。この観点から、オフターゲット部位は必ずsgRNAターゲティング配列と高い類似性を持っている。したがって、この研究では、最初にCas-OFFinder(http://www.rgenome.net/cas-offinder/)ソフトウェアを使用して、sgRNAターゲット部位に類似した配列のゲノムワイドアラインメントを通じて潜在的なオフターゲット部位を探した。
ブラウザからCas-OFFinder(http://www.rgenome.net/cas-offinder/)にログインした。ウェブページの左側にある[PAM Type]オプションから、SpCas9 Streptococcus pyogenes(Streptococcus pyogenes由来SpCas9):5’-NGG-3’を選択した。Target Genome(ターゲットゲノム)オプションからHomo sapiens(GRCh38/hg38)-Human(ホモサピエンス((GRCh38/hg38)-ヒト)を選択した。ウェブページの右側にsgRNA配列:CTAACAGTTGCTTTTATCACを入力し、Mismatch Number(ミスマッチ数)に3を入力し、DNA/RNA Bulge Size(バルジサイズ)に1を入力した。
結果が返された後、まず3つのMismatchとbulgeが同時に存在する配列を除外した。次に、染色体上の返された部位の位置情報により、同じ部位の重複を削除し、最後に、ヒトゲノム内のsgRNAの潜在的なオフターゲット部位を得た。
【0098】
実施例3:Digenome-seq実験方法による遺伝子編集の潜在的なオフターゲット部位の予測及び分析
ゲノム編集中、Casタンパク質はゲノムDNAを切断して二本鎖切断(doublestrand break,DSB)を生成する。ゲノム二本鎖切断領域を特定することにより、Casタンパク質の結合部位を同定し、オフターゲット効果を検出できる。遺伝子編集のゲノムワイドなオフターゲット効果は、この原理に基づいて検出される。
さまざまな遺伝子編集オフターゲット法の特徴を詳細に理解した後、現在の遺伝子編集治療計画と比較して、本実施例では、sgRNAの潜在的なオフターゲット部位を見つけるための別の独立した方法として、感度が最も高いDigenome-seqを選択した。
【0099】
ヒトゲノムDNAはK562細胞から抽出され、BCL11A部位のプライマーはRuibo Xingke Biotechnology Co.、Ltd.から合成され、sgRNAは米国Synthego社から入手され、spCas9タンパク質と緩衝液はNEB社(M0386)から入手された。
ゲノムは10^6個のK562細胞から抽出し、切断の陽性対照としてまずプライマーを使用してこのsgRNAターゲティング領域を増幅した。実験中、1μlのCas9タンパク質(NEB M0386)、3μlのCas9バッファー、1.5μlのsgRNA、及び14.5μlの水を使用してCas9切断システム2部を調製し、25℃温浴で10分間して、Cas9をsgRNAに結合させた。K562ゲノムを加え、37℃で8時間反応させた。反応が終わった後、シーケンシング会社に送った。データ分析は文献にしたがって行われた(Kim D, Bae S, Park J, Kim E, Kim S, et al. 2015. Digenome-seq: genome-wide profiling of CRISPRCas9 off-target effects in human cells. Nat. Methods 12:237-43)。簡単に言えば、シーケンスファイルfq.gzをアンジップしてsamファイルを取得した。各samについて、染色体chr1-XYに従ってsamを抽出し、chr.sort.bamを取得した。各染色体に対応するchr.sort.samについて、対応する各chr.vcf.txtを計算した。各染色体のvcfファイルの垂直切断部位を見つけた。抽出した配列に従って、sgRNAlibと照合して、切断の原因となったsgRNAを見つけた。垂直切断部位ごとに、一致する候補sgRNAは唯一ではない可能性があり、一部の不可能なsgRNAをPAMに従ってフィルタリングして除外し、最終結果を列した。
【0100】
この研究の過程では、オフターゲット効果を最も起こしやすい実験条件を使用した。これは、実際にこのシステムを使用する造血幹細胞の遺伝子編集及び調製条件とは異なる。潜在的なオフターゲット部位は、異なる条件下で必ずしもオフターゲットがあるとは限らない。このような極端な条件を通じて、前記sgRNAがオフターゲット効果を引き起こす可能性が最も高い部位である結論を得た。
Digenome-seq実験分析から得られた遺伝子編集の潜在的なオフターゲット部位を表2に示す。実施例2の方法で予測された部位とは3つの重複部位がある。
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
Bio-infoは、バイオインフォマティクスによって予測されたことを表す。
Digenomeは、Digenome-seq法によって得られたものを表す。
Bothは、両方の方法によって同時に得られたことを表す。
【0104】
その他の5つの予測方法は、sgRNAについてその潜在的なオフターゲット部位を予測するためのものであり、これらの5つの方法はそれぞれ次の通りである。
BLESS:二本鎖切断のDNA末端をビオチンによってライゲーションしてから、ストレプトアビジン(streptavidin)によってそれを濃縮、シーケンシング、及び分析することである;
GUIDE-seq:DNA二本鎖の切断領域にdsODN(double-stranded oligodeoxynucleotide、二本鎖オリゴデオキシヌクレオチド)を挿入することでDSBを標識し、シーケンシング及び分析することである;
HTGTS:2つの二本鎖切断領域をライゲーションすることにより、転位(translocation)によって標識し、シーケンシング及び分析することである;
Circle-seq:切断部位をインビトロで標識し、シーケンシング及び分析することである;
SITE-seq:切断部位をインビトロで標識し、シーケンシング及び分析することである。
【0105】
実施例4:sgRNAの潜在的なオフターゲットに対する識別マーカーの構築
バイオインフォマティクス予測法とDiGenome-seq分析法で得られた配列を合併して重複を取り除き、sgRNAの潜在的なオフターゲットの識別マーカーを得た。表2に示すように、2つの遺伝子編集の潜在的なオフターゲット部位の分析方法から、オフターゲット現象が現れる可能性が最も高い、合計45の潜在的なオフターゲット部位を得、これらは、特定の潜在的なオフターゲット識別マーカーを構成できる。
上記の表2は、BCL11Aエンハンサーを標的とするあるsgRNAの潜在的なオフターゲット部位を示している。
【0106】
実施例5:潜在的なオフターゲットマーカーについてのサンプルのオフターゲット頻度の検出
フラグメントPCRにより、実施例4で確立された潜在的なオフターゲット識別マーカー(45の潜在的なオフターゲット部位)を特異的に増幅し、ディープシーケンシング(NGS)を使用して編集群と対照未処理群(Mock)との間のターゲット部位(BCL11Aエンハンサー)及び潜在的なオフターゲット部位の遺伝子編集効率に関する情報を比較して、サラセミア病を治療するプロセスにsgRNAを使用する過程で、これらの潜在的なオフターゲット部位にはオフターゲット効果があるかどうかを判断した。製品を検証した。
【0107】
まず、ターゲット部位と45の潜在的なオフターゲット部位に対して特異的に46ペアのPCRプライマー(表2に示す)を合成した。プライマーはRuibo Xingke Biotechnology Co.,Ltd.から合成し、Taq-Hifi DNAポリメラーゼはQuanshijin Biotechnology Co.,Ltd.(AP131)から購入し、NEBNext Ultra IIライブラリ構築キットはNEB社(E7103)から購入し、TruSeq Dual Index Sequencing Primer BoxはIllumina社(FC-121-1003)から購入した。実験で使用された造血幹細胞は、健康なドナーから得られた。同じドナーからの未処理の細胞を対照群として使用した。
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
プライマーを合成して、増幅されたフラグメントの長さを200~250bpに制御し、潜在的なオフターゲット領域を中央の位置に制御した。遺伝子編集前の造血幹細胞のサンプルを対照として使用し、生産後のサンプルを実験群として使用し、ゲノムをそれぞれ抽出して増幅した。各増幅反応には、100ngのゲノムDNA(15,000細胞)が含まれていた。得られた増幅産物を使用して、NEBNext Ultra IIキットを使用したPCR-free法でサブライブラリを構築、増幅し、PE150法に従ってIllumina HiSeq X-tenシーケンサーでシーケンシングした。オフマシンデータをFastpでフィルタリングして、低品質データ及びリンカーデータを除去し、得られたclean dataをVsearchでペアエンドデータスプライシングし、得られた高品質の配列を、元の標的配列及びsgRNA-PAM配列とそれぞれblastnローカルアラインメントによってアラインメントした。その後の分析では、標的配列との同一性が40%以上であり、完全なsgRNA-PAM領域に非編集配列としてのインデル配列が含まれておらず、不完全なsgRNA-PAMを編集配列として編集効率を算出した。NGS自体の検出精度の下限は0.1%である。シーケンシングエラーが存在し、部位によってシーケンシングエラーの程度も異なるため、オフターゲット部位は、編集群の部位編集効率が0.1%を超え、対照群との間に有意差がある(遺伝子編集効率が対照群の2倍を超える)こととして定義された。
ディープシーケンシング分析後、45の潜在的なオフターゲット部位とターゲット部位の遺伝子編集効率を図1に示す。
【0112】
実施例5では、PCR特異的なフラグメント増幅とディープシーケンシングを組み合わせて、編集群と対照群のsgRNAの潜在的なオフターゲットに対して特別に確立された識別マーカーを使用して、製品の潜在的なオフターゲット効果を検出した。ターゲット部位では、編集群は74.39%の特定の遺伝子編集効率がテストされた。これは、Mock群の0.05%よりもはるかに高かった。45の潜在的なオフターゲット部位では、編集群の編集効率はMock群の編集効率と有意差はなく、ほとんどの効率はNGS自体の検出精度の下限(0.1%)程度またはそれ以下であった。これらのデータは、sgRNAが優れた遺伝子編集特異性を持ち、オフターゲット効果が最小限に抑えられており、NGS自体の検出精度の下限よりも低いことを示している。
図1
【配列表】
2022547105000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体に対する遺伝子改変細胞群により細胞治療の適合性を確定する方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、
前記方法は、次の
a)前記遺伝子改変細胞またはその後代において、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定するステップ、及び
b)前記遺伝子編集の発生に基づいて、前記細胞治療の適合性を評価するステップ
を含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位のいずれにも遺伝子編集がないことは、前記細胞治療が前記個体に適していること示す、前記方法。
【請求項2】
記遺伝子改変細胞に対して前記a)の確定ステップを行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記a)の確定ステップ及びb)の評価ステップを1回または複数回繰り返すことをさらに含み、好ましくは、前記a)の確定ステップ及びb)の評価ステップは、約月に1回から約年に1回の頻度で繰り返される、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
オフターゲットマーカー部位での配列変化が0.1%未満の場合、またはオフターゲットマーカー部位での配列変化が遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較して2倍未満である場合、3~12ヶ月ごとの頻度で前記a)の確定ステップ及びb)の評価ステップを繰り返し、オフターゲットマーカー部位での配列変化が0.1%を超える場合、またはオフターゲットマーカー部位での配列変化が遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較して2倍を超える場合、配列変化の頻度が増加するにつれて、前記a)の確定ステップ及びb)の評価ステップの繰り返す頻度を増加する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のオフターゲットマーカー部位は、少なくとも約10個のオフターゲットマーカー部位を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
オフターゲットマーカー部位での0.1%未満の配列変化、または、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位での2倍未満の配列変化は、前記オフターゲットマーカー部位では遺伝子編集が行われなかったことを示す、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記a)の確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われ、好ましくは、前記a)の確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
記方法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含み、好ましくは、前記方法は、飽和条件下で行われ、更に好ましくは、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上の有効な切断が可能であり、更に好ましくは、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で100%の有効な切断が可能である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変され、好ましくは、前記ターゲット部位は、BCL11A遺伝子座に位置し、さらに好ましくは、前記オフターゲットマーカー部位は、表2に示されている部位の1つ以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
遺伝子改変細胞群またはその後代におけるオフターゲット遺伝子編集を評価する方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記方法は、複数のオフターゲットマーカー部位のそれぞれでの遺伝子編集の発生を確定することを含み、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られ、オフターゲットマーカー部位での0.1%超の配列変化、または、遺伝子編集改変されていない対照細胞と比較してオフターゲットマーカー部位での2倍超の配列変化は、遺伝子改変細胞群またはその後代にはオフターゲット遺伝子編集があることを示す、前記方法。
【請求項11】
前記確定ステップは、DNAシーケンシングによって行われ、好ましく、前記確定ステップは、1)複数のプライマーセットを使用することによって前記複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅すること、及び2)増幅された核酸に対してシーケンシング分析を行うことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
遺伝子改変細胞群において複数のオフターゲットマーカー部位を得る方法であって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、オフターゲットマーカー部位の前記方法は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することを含み、好ましくは、前記インビトロ試験法は、BLESS、GUIDE-seq、HIGTS、Circle-seq、SITE-seq、及びDigenome-seqのうちのいずれか1つまたは複数を含み、さらに好ましくは、前記インビトロ試験法は、飽和条件下で行われ、さらに好ましくは、前記飽和条件により、前記ターゲット部位で90%以上の有効な切断が可能である、前記方法。
【請求項13】
前記遺伝子改変細胞は、CRISPR/Casシステムによって改変される、請求項1012のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
遺伝子改変細胞群またはその後代のオフターゲット編集を評価するためのキットであって、前記遺伝子改変細胞は、ターゲット部位で遺伝子編集によって改変されたものであり、前記キットは、1)前記遺伝子改変細胞を生成するための、遺伝子編集システムの1つまたは複数の成分、及びb)複数のオフターゲットマーカー部位を含む核酸を増幅するための複数のプライマーセットを含み、好ましくは、前記複数のオフターゲットマーカー部位は、1)前記ターゲット部位との配列類似性に基づいて第1の複数のオフターゲットマーカー部位を同定すること、及び/または2)インビトロ試験法を使用して第2の複数のオフターゲットマーカー部位を同定することによって得られる、前記キット。
【請求項15】
前記遺伝子編集システムは、CRISPR/Casシステムであり、好ましくは、前記ターゲット部位を含む核酸を増幅するための1つまたは複数のプライマーセットをさらに含み、さらに好ましくは、前記1つまたは複数のプライマーセットは、配列番号26~117のうちの1つまたは複数を含む、請求項14に記載のキット。
【国際調査報告】