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特表2022-547133チルトロックを備えたチルト自動車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】チルトロックを備えたチルト自動車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20221102BHJP
   B60G 5/04 20060101ALI20221102BHJP
   B60G 3/20 20060101ALI20221102BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B62K5/10
B60G5/04
B60G3/20
B62K5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515016
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 IB2020058450
(87)【国際公開番号】W WO2021048800
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019000016241
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ラファエッリ アンドレア
【テーマコード(参考)】
3D011
3D301
【Fターム(参考)】
3D011AA06
3D011AD01
3D011AD06
3D301AA02
3D301AA59
3D301BA16
3D301BA17
3D301CA24
3D301CA33
3D301CA45
3D301CA47
3D301DA87
3D301DB02
3D301DB20
3D301DB21
3D301DB22
(57)【要約】
本発明は、3輪または4輪のチルト自動車両に関し、特に、2つのチルトホイール10を連結し、回転可能で互いに対向する第1の部分111および第2の部分112を備える相互連結要素110を含むチルトロックシステムに関する。部分111、112は、長手方向軸を中心に反対方向に回転するように接続される。チルトロックシステムは、相互接続要素の部分111、112を前車軸または後車軸の2つの傾斜部81、82に接続するヒンジ手段を備え、これらは両方とも車輪10の傾斜運動を受ける。チルトロックシステムは、車輪10の傾斜運動を相互接続要素110の部分111、112の回転運動に変換し、車輪10の傾斜運動の存在下で長手方向軸Xの周りで反対方向に回転させる駆動手段を備える。本発明によれば、ヒンジ手段および駆動手段はそれぞれ、第1の接続ロッド101および第2の接続ロッド201を備え、第1の接続ロッド101は、それぞれの傾斜部81、82および相互接続要素110のそれぞれの部分111、112に接続され、第2の接続ロッド201は、第1の接続ロッド101および相互接続要素110のそれぞれの部分111、112に接続され、第1の接続ロッド101の傾斜運動時に、長手方向軸Xの周りで相互接続要素110の対応する部分111、112を回転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3輪または4輪のチルト自動車両であって、
-前車軸フレーム部分または後車軸フレーム部分(16)によって担持され、前記車輪(10)が傾斜および/または操舵することを可能にするチルトリンク機構(20)によって互いにおよび前記フレーム部分(16)に運動学的に接続される少なくとも1対の車輪(10)と、
-チルトロックシステム(3)であって、
-長手方向軸(X)を識別し、互いに対向する少なくとも第1の部分(111)および第2の部分(112)を備える、相互接続要素(110)と、
-前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)を前記前車軸または後車軸の2つの傾斜部(81、82)に接続するヒンジ手段であって、これらは両方とも前記車輪(10)の傾斜運動を受ける、ヒンジ手段と、
-各部分(111、112)が前記長手方向軸(X)の周りに他方に対して自由に回転するように、および各部分(111、112)が前記長手方向軸(X)に沿って他方に対して自由に並進するように、前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)を接続する接続手段と、
-前記車輪(10)の傾斜運動を前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)の回転運動に変換するように適合された駆動手段であって、前記車輪(10)の傾斜運動の存在下で前記長手方向軸(X)の周りに反対方向に回転する、駆動手段と、
-傾斜平面に対する前記相互接続要素(110)の回転角をブロックするように適合されたブロックデバイスであって、前記ブロックデバイスは、前記長手方向軸(X)の周りの回転中に前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)が一体になり、したがって前記車輪(10)の傾斜運動を防止する第1の能動構成と、前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)が前記長手方向延長軸(X)の周りに自由に回転する第2の受動構成とをとる、ブロックデバイスと、
を備えるチルトロックシステム(3)と、
を備え、
前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)の各々について、前記ヒンジ手段は、第1の運動学的対(301)によって前記傾斜部(81、82)のそれぞれ1つに、および第2の運動学的対(302)によって前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)のそれぞれ1つに接続された第1の接続ロッド(101)を備えることを特徴とし、
また、前記相互接続要素(110)の前記部分(111、1112)の各々について、前記駆動手段は、前記第1の接続ロッド(101)との傾斜運動中に一体化されるように、第1の運動学的対(401)によって対応する前記第1の接続ロッド(101)に接続された第2の接続ロッド(102)を備え、前記第2の接続ロッド(102)は、前記第1の接続ロッド(101)の傾斜運動の際に前記相互接続要素(110)の前記対応する部分(111、112)を前記長手方向軸(X)の周りに回転させるように、第2の運動学的対(402)によって前記相互接続要素(110)のそれぞれの部分(111、112)に接続されることを特徴とする、
自動車両。
【請求項2】
前記第1の接続ロッド(101)を前記それぞれの傾斜部(81,82)に接続する前記第1の運動学的対(301)は、前記傾斜平面に入射する第1の回転軸(3010)を構成し、前記第1の回転軸(3010)は、傾斜がない場合に前記自動車両(4)の中央平面(M-M)と平行である、請求項1に記載の自動車両(4)。
【請求項3】
前記第1の運動学的対(301)は、前記第1の接続ロッド(101)のロッド状本体(300)の円筒形部分(301B)が挿入される前記それぞれの傾斜部(81、82)と一体の円筒体(301A)を備えたヒンジによって画定される、請求項2に記載の自動車両(4)。
【請求項4】
前記第1の接続ロッド(101)を前記相互接続要素(110)の前記それぞれの部分(111、112)に接続する前記第2の運動学的対(302)は、前記相互接続要素(110)の前記長手方向軸(X)と一致する少なくとも第2の回転軸(3022)、および前記第2の回転軸(3022)に直交する少なくとも第3の回転軸(3023)を構成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の自動車両(4)。
【請求項5】
前記第2の運動学的対(302)は、前記相互接続要素(110)の前記それぞれの部分(111、112)が回転可能であるピボット(305)によって画定され、前記ピボット(305)は、前記第2の回転軸(3022)を構成し、前記ピボット(305)は、ピン(306)を通して、前記第1の接続ロッド(101)のロッド状本体(300)の対応するフォーク状端部(301C)にヒンジ接続されたブッシング状端部(305B)を備える、請求項4に記載の自動車両(4)。
【請求項6】
前記第2の運動学的対(302)は、ピストンピンの軸が前記第1の回転軸(3010)および前記第3の回転軸(3023)と一致するように構成されたユニバーサルジョイントを含む、請求項4に記載の自動車両(4)。
【請求項7】
前記第2の接続ロッド(201)の前記第1の運動学的対(401)は、前記第1の接続ロッド(101)の前記第1の運動学的対(301)によって構成される前記第1の回転軸(3010)と直交する第1の回転軸(4010)を構成する、請求項2~6のいずれか1項に記載の自動車両(4)。
【請求項8】
前記第2の接続ロッド(201)の前記第1の運動学的対(401)は、傾斜運動においてそれぞれの第1の接続ロッドの第2の端部に追従するように、それぞれの第1の接続ロッド(101)の第2の端部(301D)と一体である円筒体(401A)を備えるヒンジ継手(401A~301D)によって画定され、前記ヒンジ継手は、前記第1の接続ロッド(101)と一体の前記円筒体(401A)内に配置された前記第2の接続ロッド(201)の第1の円筒形端部(401B)を含む、請求項7に記載の自動車両(4)。
【請求項9】
前記第2の接続ロッド(201)を前記相互接続要素(110)の前記それぞれの部分(111、112)に接続する前記第2の運動学的対(402)は、第2の回転軸(4022)および第3の回転軸(4023)を構成し、前記第2の回転軸(4022)は、前記第1の接続ロッド(101)の前記第2の運動学的対(302)によって構成される前記第2の回転軸(3022)と平行であり、前記第2の接続ロッド(201)を指す前記第2の回転軸(4022)は、前記第1の接続ロッド(101)を指す前記第2の回転軸(3022)と平行である、請求項2~8のいずれか1項に記載の自動車両(4)。
【請求項10】
前記第2の運動学的対(201)は、前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)のそれぞれ1つに画定された長手方向座部に枢動可能に挿入されたピボット(405)を含み、前記ピボット(405)は、前記第2の運動学的対を指す前記第2の回転軸(4022)を画定し、前記ピン(405)は、ピン(406)を介して、前記第2の接続ロッド(201)のロッド状本体(400)の対応するフォーク状端部(401C)にヒンジ結合されたブッシュ状端部(405B)を含む、請求項9に記載の自動車両(4)。
【請求項11】
前記第2の接続ロッド(201)を指す前記第2の運動学的対(402)は、前記第2の接続ロッド(201)のロッド状本体(400)のフォーク状端部と、相互接続要素(110)のそれぞれの部分(111、112)と一体であるブラケット(111A、112A)との間に介在する機械的継手を備え、前記ブラケット(111A、112A)は、前記機械的継手が同じ長手方向軸(X)に対して偏心位置に配置されるように、長手方向軸(X)に対して偏心位置に延在し、前記機械的継手は、互いに直交する、前記第2の運動学的対(402)を指す前記第2の回転軸(4022)および前記第3の回転軸(4023)を構成する、請求項9に記載の自動車両(4)。
【請求項12】
前記第2の接続ロッド(201)の長さは、前記第1の接続ロッド(101)の長さよりも大きく、前記第1の接続ロッド(101)の前記長さは、前記第1の接続ロッド(101)の運動学的対(301、302)と、前記第2の接続ロッド(201)の前記第1の運動学的対(401)によって画定される前記第1の回転軸(4010)とによって構成される、3つの軸(3010、3022、3023)の交点間の最小距離(L1)であり、前記第2の接続ロッド(201)の長さは、前記第2の接続ロッド(201)の前記第2の運動学的対(402)と、前記第2の接続ロッド(201)の前記第1の運動学的対(401)によって画定される前記第1の回転軸(4010)とによって構成される、前記第2の回転軸(4022)と前記第3の回転軸(4023)との交点間の距離(L2)である、請求項4~11のいずれか1項に記載の自動車両(4)。
【請求項13】
前記ブロックデバイスは、前記相互接続要素(110)の前記部分(111、112)の回転をブロックしてそれらが単一体となる制動トルクを発生するように構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の自動車両(4)。
【請求項14】
前記相互接続要素(110)は、前記部分(111、112)の間に介在する中間体(115)を含み、中間体は、それぞれの第1の接続ロッド(101)およびそれぞれの第2の接続ロッド(201)を介してそれぞれの傾斜部(81、82)に接続される前記部分(111、112)のうちの1つと、接続手段を介して回転的に一体であり、前記中間体(115)は、前記部分(111、112)の前記他方に対する前記中間体(115)の相対回転を可能にし、同時に前記部分(111、112)の前記1つに対する相対並進運動において前記中間体(115)を前記部分(111、112)の前記他方と一体にする、ように構成された第2の接続手段を介して前記部分(111、112)の前記他方に接続される、請求項1~13のいずれか1項に記載の自動車両(4)。
【請求項15】
前記ブロックデバイスは、前記中間体(115)によって外部支持されるアクチュエータ(550)によって作動されるシューブレーキ(500)を備え、前記シューブレーキ(500)は、アクチュエータ(500)の作動時にブレーキ自体のシューが作用する壁上の前記部分(112)の前記他方の円筒形キャビティ(112B)内に収容され、前記ブレーキ(500)は、前記長手方向軸(X)の周りに回転中に前記中間体(115)と一体である、請求項14に記載の自動車両(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドチルトオートバイの製造の範囲内にあり、「ハイブリッド」という用語は、3輪または4輪自動車両(QUAD)に関する。特に、本発明は、前車軸および/または後車軸にチルトロック(tilt lock)を有するチルト自動車両(tilting motor vehicle)に関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイ(motorcycle)の実用性と4輪車両(four-wheel vehicle)の安定性とを兼ね備えたハイブリッド自動車両(hybrid motor vehicle)の需要が高まっている。ハイブリッド自動車両、特に、より一般的である3輪自動車両(three-wheel motor vehicle)は、前部に2つのステアリングホイールおよびチルトホイール(すなわち、チルトしても傾斜していてもよい)を備え、後部に固定軸駆動ホイール(fixed-axle drive wheel)を備える。後輪は、機械トルクを提供し、したがってトラクションを可能にする目的を有し、一方、対になった前輪は、車両の方向性を提供する目的を有する。後車軸に2つの車輪を有し、前車軸に1つの車輪を有する3輪車両は、あまり一般的ではない。
【0003】
車輪が前車軸において対にされる解決策では、車輪は、操縦し得ると同時に傾斜およびチルトし得る。この解決策のおかげで、後車軸に2つの車輪を有する3輪自動車両に対して、前車軸に2つの車輪を有する自動車両は、モーターバイク(motorbike)と同様に、自動車両がカーブに傾くことができるので、実際のモーターバイクと同等である。しかしながら、2つの車輪のみを有する自動車両に対して、前車軸において対をなす2つの車輪を有するそのような自動車両は、自動車(car)によって提供されるものと同様に、地面上での前輪の二重支持によって保証されるより高い安定性を有する。
【0004】
前輪は、リンク機構によって互いに運動学的に接続され、リンク機構は、例えば、連接四角形(articulated quadrilaterals)を介在させることによって、同期的かつ鏡面的(synchronous and specular manner)に傾斜することを確実にする。そのような自動車両は、2つの独立したサスペンションをさらに備えており、2つの前輪の各々に対して1つずつが、同様に独立したショックアブソーバを備えている。したがって、3輪チルト自動車両は、2輪オートバイ(two-wheel motorcycle)の実用性と4輪自動車両(four-wheel motor vehicle)の安定性および安全性とをユーザに提供することを目的とする。
【0005】
知られているように、3輪自動車両のいくつかのモデルは、ユーザによって手動でおよび/または自動制御システムによって操作され得るチルトロックシステム(tilt locking system)を備える。これらのチルトロックシステムの目的は、特定の運転条件下で、例えば低速で、または駐車および停車中に、車両が制御されないまたは偶発的な傾斜運動で転倒することを防止することである。
【0006】
ここ数年にわたって、さまざまなチルトシステムが提案されており、その中で、車両フレームから機械的に取り外された相互接続要素の使用に基づくシステムは、傾斜運動を受ける車輪の2つの部分を直接接続することを目的としている。従来、相互接続要素は、2つのチルトホイールのスピンドルを互いに接続しており、ホイールの「スピンドル(spindle)」という用語は、ホイールの回転ピボットを支持して、それをサスペンション、ステアリング装置、および3輪オートバイ(three-wheel motorcycle)の特定の場合にはチルトリンク機構に運動学的に相互接続するように設計された機械部品を意味する。したがって、スピンドルは、ホイールピボットと共に単一部品として作られてよく、または、ホイールピボットに機械的に拘束されて単一部品を形成してもよい。代替的に、スピンドルは、ベアリングによってホイールピボットを枢動可能に支持してよく、ホイールピボットは、代わりにホイール自体と一体である。
【0007】
相互接続要素の使用に基づくチルトロックシステムは、そのような相互接続要素に排他的に作用することによって、2つのチルトホイールの非対称なばね作用によって生じる運動も含む全ての傾斜運動をブロック(block)する。
【0008】
これらのシステムの例は、特許文献1に記載されており、特許文献1では、相互接続要素がロッドであり、ロッドの両端が、ボールジョイントによって、傾斜を受ける車両の部分に接続される。ロッドは、長手方向軸に沿って互いに相互接続され、互いに独立して同じ長手方向軸を中心に回転するように構成された、第1の部分および第2の部分を備える。2つの部分の各々は、ボールジョイントが受ける傾斜運動を、それぞれのロッド部分のその長手方向軸の周りの回転に変換するように構成された機械的ギア駆動手段によって、ボールジョイントに運動学的に接続される。各ロッド部分について、第1のギアは、傾斜運動の影響を受けるように、それぞれのボールジョイントと一体であり、一方、第1のギアと噛み合う第2のギアは、それぞれのロッド部分と一体である。特に、駆動手段は、傾斜運動に続いて、第1のロッド部分が、第2のロッド部分に対して、前記長手方向軸の周りで反対方向に回転するように構成される。
【0009】
特許文献1に記載のシステムは、前記第1の部分と回転可能に一体化された第1のヘッド要素と、第2のロッド部分と回転可能に一体化された第2のヘッド要素とによって構成された傾斜ブロック装置(tilt blocking device)を備える。第2のヘッド要素は、前記第1のヘッド要素との係合および係合解除のために、それぞれ第1の位置と第2の位置との間で長手方向延在軸に沿って移動可能である。特に、2つのヘッド要素が係合されると、2つのロッド部分は、長手方向軸の周りの回転において相互にブロックされる。これは、駆動手段のブロックをもたらし、したがって傾斜運動のブロックをもたらす。逆に、ヘッド要素が係合解除されると、2つのロッド部分は、長手方向軸の周りで反対の回転方向で自由に回転してよく、したがって傾斜運動に追従する。
【0010】
2つの指示位置(第1および第2)の間の第2のヘッド要素の移動は、ロッド内に収容されたアクチュエータによって決定される。代わりに、2つのヘッド要素は、相互接続要素の制約の不均衡によって生じる起こり得るミスマッチが噛み合いを開く傾向がある場合でも、ドッグクラッチによって、すなわち、尖った歯に対してより安定した係合を保証する矩形の歯によって、その係合が生じるように構成される。この目的のために、2つのヘッド要素は、アクチュエータの作動により決定される直線運動によって第2の要素が第1の要素に係合するように構成される。
【0011】
上述の解決策は、機能的観点からは効果的であるが、いくつかの欠点を有し、そのうちの第1の欠点は、採用された技術的解決策によって決定される高い製造コストにおいて特定される。これに関して、傾斜運動を2つのロッド部分の回転に変換するためのギア、特にベベルギアの使用、および2つのヘッド要素を係合するためのフロントクラッチの使用は、コストの点で確かに不利な解決策である。
【0012】
別の欠点は、使用されるブロック装置の動作原理、すなわち、2つのロッド部分の回転をブロックするために使用される爪クラッチにも留意される。実際、アクチュエータが第2のヘッド要素を長手方向に動かすように作動されるとき、2つのヘッド要素は位置合わせされないことがあり、すなわち、爪クラッチを画定する2組の歯は、歯付き結合を可能にするように適合されていない角度位置にあることがある。したがって、いかなる状況においても係合を可能にするために、2つの歯付き要素を整列させるための適切な手段がロッドの内側に設けられなければならない。いくつかの解決策では、そのような手段は、2つの歯付き要素を「段階的に実行させる(phase)」電気モータを含む。他の解決策では、アクチュエータと歯付き要素との間にばねが含まれる。2つの歯付き要素が噛み合うまで、ばねは圧縮され、2つの要素の噛み合いが得られるときだけ、ばね自体を解放する。いずれにせよ、歯付き要素の噛み合いを確実にする手段を提供する必要性は、ロッドの複雑さの点で、したがって製造コストの点で、さらなる重要な要因である。
【0013】
上述した既知の解決策の別の欠点は、アクチュエータが内部に配置されるロッドの複雑な内部構造に見出される。アクチュエータのための収容空間を画定することに加えて、ロッドは、第2のヘッド要素の長手方向軸に沿って第1のヘッド要素に向かって摺動することを可能にする適切な手段を備えなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2018/116211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の考察に鑑みて、本発明の主な課題は、低い製造コストおよび高い信頼性を有する相互接続要素の使用を組み合わせることを可能にするチルトロックシステムを備えたチルト自動車両を提供することによって、背景技術に関して上述した欠点を克服するか、または少なくとも含むことである。この課題の範囲内で、本発明の第1の目的は、チルトロックシステムが、相互接続要素の単純化された構造を可能にする単純な製造のブロック装置を備えるチルト自動車両を提供することである。本発明のさらなる課題は、チルトロックシステムが信頼でき、競争力のあるコストで容易に製造できるチルト自動車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、傾斜を受ける(前車軸または後車軸の)それぞれの部品に相互接続ロッドの各端部を接続するヒンジ手段の構成を背景技術に対して変化させることによって、そして、傾斜運動運動を相互接続要素の2つの部品の対応する回転に変換する駆動手段の構成を変えることによって、技術的問題を克服し、上記で示された目的を達成することの全般的な考慮に基づいている。より正確には、前述の課題および目的は、
-前車軸フレーム部分または後車軸フレーム部分によって担持され、チルトリンク機構によって互いにおよび前記フレーム部分に運動学的に接続され、チルトリンク機構を介して同期的かつ鏡面的に回転する、少なくとも1対の車輪と、
-チルトロックシステムであって、
-長手方向軸を識別し、互いに対向する少なくとも第1の部分および第2の部分を備える、相互接続要素と、
-前記相互接続要素の前記部分を前記前車軸または後車軸の2つの傾斜部に接続するヒンジ手段であって、これら傾斜部は両方とも前記車輪の傾斜運動を受ける、ヒンジ手段と、
-各部分が前記長手方向軸の周りに他方に対して自由に回転するように、および各部分が前記長手方向軸に沿って他方に対して自由に並進するように、前記相互接続要素の前記部分を接続する接続手段と、
-前記車輪の傾斜運動を前記相互接続要素の前記部分の回転運動に変換するように適合された駆動手段であって、前記車輪の傾斜運動の存在下で前記長手方向軸の周りに反対方向に回転する、駆動手段と、
-傾斜平面に対する前記相互接続要素の回転角をブロックするように適合されたブロックデバイスであって、前記ブロックデバイスは、前記相互接続要素の前記部分が前記長手方向軸の周りで回転的に一体になり、したがって前記車輪の傾斜運動を防止する第1の能動構成と、前記相互接続要素の前記部分が前記長手方向延長軸の周りで自由に回転する第2の受動構成とをとる、ブロックデバイスと、
を備えるチルトロックシステムと、
を含むオートバイの前車軸によって達成される。
【0017】
自動車両、特にチルトロックシステムは、相互接続要素の前記部分の各々について、ヒンジ手段は、前記傾斜部のそれぞれ1つと一体の第1の接続ロッドを備え、前記第1の接続ロッドは、第1の運動学的対によって前記傾斜部のそれぞれ1つに、および第2の運動学的対によって前記相互接続要素の前記部分のそれぞれ1つに接続されることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明によれば、相互接続要素の部分の各々について、駆動手段は、第1の接続ロッド自体と傾斜運動中に一体化されるように、第1の運動学的対によって対応する第1の接続ロッドに連結された第2の接続ロッドを備え、前記第2の接続ロッドは、前記第1の接続ロッドの傾斜運動運動の際に前記相互接続要素の対応する部分を前記長手方向軸の周りで回転させるように、第2の運動学的対によって前記相互接続要素のそれぞれの部分に接続される。
【0019】
したがって、チルトロックシステムは、2対の接続ロッドの使用に基づいており、各対は、相互接続要素を対応する傾斜部に接続し、傾斜運動を相互接続要素自体のそれぞれの回転部分の回転運動に変換する。接続ロッドの使用は、それが構造的に相互接続要素の接続を単純化すると同時にコストの低減および信頼性の増加につながるので、極めて有利である。
【0020】
可能な実施形態によれば、第1の接続ロッドをそれぞれの傾斜部に接続する第1の運動学的対は、傾斜平面に入射する(incident)第1の回転軸を構成し、傾斜がない場合、第1の回転軸は自動車両の中央平面と平行である。好ましくは、そのような第1の運動学的対は、前記第1の接続ロッドのロッド状本体(rod-shaped body)の円筒形部分が挿入される前記それぞれの傾斜部と一体の円筒体を備えるヒンジによって画定される。
【0021】
可能な実施形態によれば、第1の接続ロッドを相互接続要素のそれぞれの部分に接続する第2の運動学的対は、相互接続要素の長手方向軸と一致する少なくとも1つの第2の回転軸と、第2の回転軸に直交する少なくとも1つの第3の回転軸とを構成する。好ましくは、第2の運動学的対は、相互接続要素のそれぞれの部分が回転可能であるピボットによって画定される。そのようなピボットは、第2の回転軸を構成し、ピンを通して、前記第1の接続ロッドのロッド状本体の対応するフォーク状端部にヒンジ接続されるブッシュ状端部を備える。
【0022】
代替実施形態によれば、第2の運動学的対は、ピストンピンの軸が前記第1の回転軸および前記第3の回転軸と一致するように構成されたユニバーサルジョイントを備える。
【0023】
可能な実施形態によれば、前記第2の接続ロッドの第1の運動学的対は、前記第1の接続ロッドの前記第1の運動学的対によって構成される前記第1の回転軸に直交する第1の回転軸を構成する。好ましくは、前記第2の接続ロッドの前記第1の運動学的対は、傾斜運動においてそれぞれの第1の接続ロッドの第2の端部に追従するように、それぞれの第1の接続ロッドの第2の端部と一体の円筒体を備えるヒンジ継手によって画定される。このようなヒンジ継手は、第1の接続ロッドと一体の円筒体の内側に位置する第2の接続ロッドの第1の円筒形端部を備える。
【0024】
可能な実施形態によれば、前記第2の接続ロッドを前記相互接続要素の前記それぞれの部分に接続する第2の運動学的対は、第2の回転軸および第3の回転軸を構成する。第2の回転軸は、第1の接続ロッドの第2の運動学的対によって構成される第2の回転軸と平行である。第2の接続ロッドを指す(referring to)第2の回転軸は、第1の接続ロッドを指す(referring to)第2の回転軸と平行である。好ましくは、第2の運動学的対は、相互接続要素の前記部分のそれぞれ1つに画定された長手方向座部に枢動可能に挿入されたピボットを備える。このようなピボットは、第2の運動学的対を指す第2の回転軸を画定し、ピンを介して第2の接続ロッドのロッド状本体の対応するフォーク状端部にヒンジ結合されるブッシュ状端部を備える。
【0025】
代替実施形態では、第2の接続ロッドを指す第2の運動学的対は、第2の接続ロッドのロッド状本体のフォーク状端部と、相互接続要素のそれぞれの部分と一体のブラケットとの間に介在する機械的継手を備える。そのようなブラケットは、機械的継手が長手方向軸自体に対して偏心位置に置かれるように、長手方向軸に対して偏心位置に展開し、このような機械的継手は、第2の運動学的対を指す第2の回転軸および第3の回転軸を構成する。
【0026】
可能な実施形態によれば、ブロックデバイスは、相互接続要素の部分の回転をブロックしてそれらが単一体になるようにする制動トルクを生成するように構成される。
【0027】
相互接続要素の好ましい実施形態によれば、相互接続要素は、互いに対向する2つの部分の間に介在する中間体(middle body)を備え、中間体は、それぞれの第1の接続ロッドおよびそれぞれの第2の接続ロッドを介してそれぞれの傾斜部に接続される互いに対向する前記部分のうちの一方と、第1の接続手段を介して回転可能に一体化され、前記中間体はまた、前記部分のうちの他方の部分に対する前記中間体の相対回転を可能にし、同時に前記部分のうちの前記一方の部分に対する相対並進運動において前記中間体を前記部分のうちの他方の部分と一体にする、ように構成された第2の接続手段を介して前記部分のうちの他方の部分に接続される。
【0028】
可能な実施形態では、ブロック装置は、中間体によって外部に支持されたアクチュエータによって作動されるジョーブレーキを備える。このようなジョーブレーキは、アクチュエータの作動に続いてブレーキのジョー自体が作用する壁上の前記部分の他方の円筒形キャビティ内に収容され、そのようなブレーキは、その長手方向軸の周りの回転において中間体と一体である。
【0029】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として開示されるオートバイのいくつかの好ましいが排他的ではない実施形態の以下の詳細な説明の考察からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明による自動車両の前車軸の第1の可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図を示す。
図2図2は、本発明による自動車両の前車軸の第1の可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図を示す。
図3図3は、本発明による自動車両の前車軸の第1の可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図を示す。
図4図4は、本発明による自動車両の前車軸の第1の可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図を示す。
図5図5は、本発明による前車軸のチルトロックシステムの可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図である。
図6図6は、本発明による前車軸のチルトロックシステムの可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図である。
図7図7は、図6の切断面VII-VIIによる図を示す。
図8図8は、本発明による前車軸のチルトロックシステムのさらなる可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図を示す。
図9図9は、本発明による前車軸のチルトロックシステムのさらなる可能な実施形態を異なる観察点から見た概略図を示す。
図10図10は、図9の切断面X-Xによる図を示す。
図11図11は、図5の切断面XI-XIによる図を示す。
図12図12は、図8および図9のチルトロックシステムの分解図を示す。
図13図13は、本発明による前車軸のチルトロックシステムのさらなる可能な実施形態の図を示す。
図14図14は、本発明による前車軸のチルトロックシステムのさらなる可能な実施形態の図を示す。
図15図15は、本発明による前車軸の可能な実施形態の図を示す。
図16図16は、本発明による前車軸の可能な実施形態の図を示す。
図17図17は、本発明による前車軸の可能な実施形態の図を示す。
図18図18は、異なる構成における図5および図6に示すチルトロックシステムの観察点から見た図を示す。
図19図19は、異なる構成における図5および図6に示すチルトロックシステムの観察点から見た図を示す。
図20図20は、図19の切断面XX-XXによる図を示す。
図21図21は、さらなる構成における図5および図6に示すチルトロックシステムの観察点から見た図を示す。
図22図22は、さらなる構成における図5および図6に示すチルトロックシステムの観察点から見た図を示す。
図23図23は、図22の切断面XXIII-XXIIIによる図を示す。
【0031】
図面における同じ参照番号および文字は、同じ要素または構成要素を識別する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
したがって、前述の図を参照すると、本発明は、背景技術に対して改良されたチルトロックシステム(tilt locking system)を備えた自動車両(motor vehicle)に関する。本発明の目的のために、用語「自動車両(motor vehicle)」は、広義の意味で考慮されなければならず、少なくとも3つの車輪、特に傾斜を受ける一対の前輪または後輪を有する任意のオートバイ(motorcycle)を含む。したがって、前車軸に2輪、後車軸に2輪のいわゆる4輪オートバイ(quadricycle)もオートバイ(motorcycle)の定義に含まれる。説明の続きおよび図面において、2つの前輪および1つの後輪を有する3輪オートバイ(three-wheel motorcycle)が参照される。しかし、以下の考察は、変更すべきところは変更して、前車軸に1つの車輪および後車軸に2つの車輪を有する3輪車両、ならびに4輪車両(QUAD)についても依然として有効である。
【0033】
図1~4は、概して8によって示される本発明による前車軸を含む自動車両4の第1の可能な実施形態を示す。前車軸8は、少なくとも1対の前輪10を支持し、自動車両4の後車軸12は、少なくとも1つの後輪14を支持する。より正確には、前車軸8は、チルトリンク機構20によって互いにかつフレーム16自体に接続された2つの前輪10’、10’’を支持するフレーム16を備える。チルトリンク機構20は、車輪10が同期的かつ鏡面的(synchronous and specular manner)に傾斜(tilt)することを可能にする。本発明の目的のために、自動車両4のフレーム16は、任意の形状(例えば、トレリスタイプ(the trellis type)のもの、ロックバウンサータイプ(the rock bouncer type)のもの、シングルクレードルまたはダブルクレードル(single or double cradle)を有するものなどである。)をとり得、単一部品またはいくつかの部品で作製され得る。
【0034】
前車軸8は、概して参照番号3によって示されるチルトロックシステムを備え、チルトロックシステムは、長手方向延長軸X(または長手方向軸X)を識別する相互接続要素110を含む。要素110は、互いに対向する第1の部分111および第2の部分112を含む。2つの部分111、112は、それらの各々が長手方向軸Xの周りで他方に対して反対方向に回転することができるように接続される。2つの部分111、112はさらに、各部分が長手方向軸Xに沿って他方に対して相互に平行移動できるように互いに接続される。
【0035】
前車軸8は、要素110の部分111、112の各々を、前輪10の傾斜運動(tilting movement)を受ける前車軸8の対応する部分81、82に接続するヒンジ手段をさらに備える。したがって、そのような手段によって、前記要素110の第1の部分111は、傾斜を受ける前車軸8の第1の部分81に接続され、前記要素110の第2の部分112は、傾斜を受ける前車軸8の第2の部分82に接続される。前車軸8のこれらの2つの部分は、以下では傾斜部81、82とも呼ばれる。
【0036】
以下により良く示されるように、車両の構成に応じて、要素110の2つの回転部分111、112が接続され得る傾斜部81、82は、車輪10’のサスペンションのケースおよび/または構成に応じて変化し得る。以下で説明される図15および図16は、例えば、同じサスペンションについて、2つの異なる部分(スピンドルおよびクランク)にどのように介在して、それぞれの回転部分111、112との接続を作り出すことが可能であるかを示す。
【0037】
実際、本発明による前車軸8のチルトロックシステム3は、サスペンションまたはチルトリンク機構の可能な構成に依存せず、前車軸8の2つの部分81、82が正確に「傾斜(tilting)」していること、すなわち、それぞれの車輪10、10’が受ける傾斜運動を受けることのみを必要とする。これに関して、本発明の目的のために、「傾斜平面(tilting plane)」という表現は、自動車両の長手方向Yを横断する平面を意味し、したがって、自動車両の中央平面(midplane)M-Mに直交する平面を意味する(図3および図4に示す)。本発明の目的のためだけに、中央平面(midplane)M-Mと基準平面(reference plane)T-Tとの間の傾斜は、「傾斜角(tilt angle)」によって示され、これは傾斜中も車輪10の平面に常に平行である。したがって、図1のように2つの車輪10が平行かつ垂直である場合(傾斜なし)、平面M-Mは基準平面T-Tと一致する。
【0038】
チルトロックシステム3は、前輪10の傾斜運動を要素8の2つの部分111、112の回転運動に変換するように、すなわち、傾斜運動が生じたときに同じ部分が長手方向延長軸Xの周りで互いに反対方向に回転するように構成される駆動手段を備える。すでに上述したように、要素8は、いずれの場合も、前輪の操舵運動に追従するように、すなわち、中央平面M-Mおよび傾斜平面に直交する操舵平面上で、2つの部分111、112の相互軸方向運動を可能にするように構成される。
【0039】
チルトロックシステムは、傾斜平面に対する相互接続要素110の回転角度をブロックするように適合されたブロックデバイス(500~550)を備える。そのようなブロックデバイスは、要素110の部分が長手方向軸の周りで回転的に一体になる第1の能動構成をとる。これにより、車輪10の傾斜運動が防止される。装置はまた、第2の受動的構成をとるように構成され、この受動的構成では、相互接続要素110の部分は、駆動中にオートバイの傾斜運動に適応するように、長手方向軸の周りに自由に回転する。
【0040】
本発明によれば、要素110の2つの回転部分111、112の各々について、ヒンジ手段は、前車軸8の傾斜部81、82のそれぞれと一体のそれぞれの接続ロッド101(以下、第1の接続ロッド101と呼ぶ)を備える。特に、第1の接続ロッド101は、ロッド状本体(rod-shaped body)300と、第1の運動学的対(kinematic pair)301によってロッド状本体300をそれぞれの傾斜部81、82に接続し、第2の運動学的対(kinematic pair)302によって要素110のそれぞれの回転部111、112に接続する第1の運動学的対301とを備える。
【0041】
第1の運動学的対301は、対応する傾斜部81、82の傾斜運動に追従するように、ヒンジ継手である。「ヒンジ(hinge)」は、第1の接続ロッド101が傾斜部81、82に対して回転することを可能にする回転軸を構成しながら、第1の接続ロッド101をそれぞれの傾斜部81、82と並進的に一体にする。第2の運動学的対302は、好ましくは円筒形であるが、球形であってもよい。
【0042】
再び本発明によれば、要素110の2つの回転部分111、112の各々について、駆動手段(傾斜が生じたときに部分111、112を回転させる目的を有する)は、別の接続ロッド201(以下、第2の接続ロッド201と呼ぶ)を備える。これは、第1の運動学的対401によってヒンジ手段のそれぞれの第1の接続ロッド101に接続されたロッド形状の本体400を含む。特に、第1の運動学的対401は、第2の接続ロッド201がそれぞれの第1の接続ロッド101が受ける傾斜運動の影響を受けるように構成される。
【0043】
第2の接続ロッド201は、第2の運動学的対402をさらに含み、この対は、第2の接続ロッドを要素110のそれぞれの部分111、112に接続し、その結果、それぞれの第1の接続ロッド101が受ける傾斜運動に続いて、第2の接続ロッド201の移動は、長手方向軸Xの周りの要素110のそれぞれの部分111、112の回転を引き起こす。
【0044】
本発明の目的のために、「接続ロッド(connecting rod)」という表現は、概して、その端部に2つの運動学的対を有するロッド(任意の直線または湾曲形状を有する)のような形状の任意の部材または本体を指し、この部材または本体は、第1の本体および第2の本体にそれぞれ接続されることを可能にし、この接続によって、2つの本体の一方の移動は、他方の本体の移動を引き起こす。
【0045】
図に示す本発明の好ましい実施形態によれば、回転部分111、112の各々について、第1の接続ロッド101をそれぞれの傾斜部81、82に接続する第1の運動学的対301は、傾斜平面に入射し(incident)、上で定義した基準平面T-Tに平行な第1の回転軸3010を構成する。したがって、車輪が垂直であり、したがって傾斜がない図1図4に示す条件下では、第1の回転軸3010は、中央平面M-Mと平行である。
【0046】
図に示す(特に図12の分解図に見られる)実施形態では、第1の運動学的対301は、それぞれの傾斜部81、82と一体の円筒体301Aを備えるヒンジによって画定され、それに第1の接続ロッド101のロッド状本体300の円筒形部分301Bが挿入される。
【0047】
第1の接続ロッド101を要素110のそれぞれの部分111、112に接続する第2の運動学的対302は、代わりに、要素110の長手方向軸Xと一致する少なくとも1つの第2の回転軸3022と、前記第2の回転軸3022に直交する少なくとも1つの第3の回転軸3023とを構成する。実際、第2の運動学的対302は、一方では、長手方向軸Xの周りでの要素110のそれぞれの部分111、112の回転を可能にする。同時に、第2の運動学的対302は、第3の回転軸3023を構成することによって、傾斜平面に実質的に平行な、要素110自体の回転平行移動(roto-transiation)を可能にする。
【0048】
図(特に、図12の分解図に見られる)に示される実施形態では、第2の運動学的対302は、要素110の対応する部分111、112が回転可能であるピボット305によって画定される。ピボット305は、第2の回転軸3022を構成する。その第1のブッシュ形状端部305Bは、ピボット306を介して、第1の接続ロッド101のロッド状本体300の対応するフォーク形状端部301Cにヒンジ接続される。このヒンジ接続は、上述した第3の回転軸3023を構成する。ピボット305は、第2の回転軸3022が長手方向軸Xと一致するように、要素110のそれぞれの部分111、112に対して正確に同軸である。
【0049】
この場合も、第2の運動学的対302は異なる構成をとり得る。可能な実施形態では、第2の運動学的対は、ピストンピンの軸が第1の回転軸3010および第3の回転軸3023と一致するように構成されるユニバーサルジョイント(90°で配置される)を備えてもよい。あるいは、ボールの追加の自由度(ユニバーサルジョイントによって与えられる2つの代わりに3回転)がピボット305(ピボット305とそれぞれの回転部分111、112との間の相対軸受)の採用を回避するので、ボールジョイントが使用されてもよい。しかしながら、ボールジョイントの使用は、運動学的に可能であっても、ユニバーサルジョイントの使用および図面に示される好ましい解決策に関して、構造的により困難であるように思われる。
【0050】
図に示す可能な実施形態によれば、要素110の部分111、112の各々について、第2の接続ロッド201の第1の運動学的対401は、第1の接続ロッド101の第1の運動学的対301によって構成される第1の回転軸3010に直交する第1の回転軸4010を構成する。
【0051】
図(特に、図12の分解図に見られる)に示すように、第1の運動学的対401は、それぞれの第1の接続ロッド101の第2の端部301Dと一体の円筒体401Aを備えるヒンジ継手(401A~301D)によって画定されてよく、それにより、傾斜運動において第1の接続ロッドに追従する。ヒンジ継手は、第1の接続ロッド101と一体の円筒体401A内に位置する第2の接続ロッド201の第1の円筒形端部401Bによって完成される。
【0052】
可能な実施形態によれば、要素110の部分111、112の各々について、第2の接続ロッド201を要素110のそれぞれの部分111、112に接続する第2の運動学的対402は、第2の回転軸4022および第3の回転軸4023を構成し、ここで、前記第2の回転軸4022は、第1の接続ロッド101の第2の運動学的対302によって構成される第2の回転軸3022と平行である。特に、第2の接続ロッド201を指す(referring to)そのような第2の回転軸4020は、第1の接続ロッド101を指す(referring to)第2の回転軸3022に対して平行であるが離間している。第2の接続ロッド201を指す(referring to)第3の回転軸4023は、代わりに、第2の接続ロッド201自体を指す(referring to)第2の回転軸4022に対して直交する。
【0053】
図6または図12の分解図から分かるように、第2の接続ロッド201を指す第2の運動学的対402は、第1の接続ロッド101を指す第2の運動学的対301と同様に作られてよい。特に、好ましくは、ピボット405が設けられ、要素110のそれぞれの回転部分111、112上に画定された長手方向座部(seat)に枢動可能に挿入される。ピボット405は、第2の接続ロッド201を基準とする第2の回転軸4022を規定する。ピボット405は、ピボット406を介して、第2の接続ロッド201のロッド状本体400の対応するフォーク状端部401Cにヒンジ接続されるブッシング状端部405Bを含む。
【0054】
図8図10は、第2の接続ロッド201を指す第2の運動学的対402の異なる構成に関して図5図7に示されるものとは異なるロックシステム(locking system)3の代替実施形態を示す。特に、この場合、第2の接続ロッド201のロッド状本体400は、Uniball(登録商標)として市販されているタイプの機械的継手を介して要素110の対応する部分111、112に接続される。特に図10の断面図を参照すると、継手は、第2の接続ロッド201のロッド状本体400のフォーク状端部と、要素110のそれぞれの部分111、112と一体のブラケット111A、112Aとの間に介在する。特に、ブラケット111A、112Aは、長手方向軸Xに対して偏心した位置で、すなわち、機械的継手が長手方向軸X自体に対して偏心した位置に配置されるように展開する。しかしながら、機械的ジョイントは、互いに対して直交する2つの相互回転軸4022、4023を構成し、これは、第2の接続ロッド201が、その移動中に要素110のそれぞれの部分111、112に対して振動することを可能にする。
【0055】
図に示す好ましい実施形態によれば、要素110の部分111、112の各々について、第2の接続ロッド201の長さは、それぞれの第1の接続ロッド101の長さよりも大きい。「第1の接続ロッド101の長さ(length of the first connecting rod 101)」とは、第1の接続ロッド101、102自体の2つの運動学的対301、302によって構成される3つの軸3010、3022、3023の交点(図5および図9においてAで示す)と、第2の接続ロッド201の第1の運動学的対401によって画定される第1の回転軸4010との間の最小距離L1を意味する。「最小距離(minimum distance)」という表現は、点Aと、第1の接続ロッド201を指す第1の回転軸3010上の、第2の接続ロッド102を指す第1の回転軸4010の突起との間の距離を意味する。
【0056】
代わりに、「第2の接続ロッド201の長さ(length of the second connecting rod 201)」という表現は、第2の接続ロッド201の第2の運動学的対402によって構成される第2の回転軸4020と第3の回転軸4030との交点(図5および図9においてBで示される)と、第2の接続ロッド201自体を指す第1の運動学的対401によって画定される第1の回転軸4010との間の距離L2を意味する。図9に示す実施形態の場合、交点Bは、機械的継手の中心と実質的に一致する。
【0057】
2つの接続ロッド101、201の異なる長さは、長手方向軸X(すなわち、第1の回転軸3010に関して、第1の接続ロッド1901の第2の運動学的対302によって構成される)に対して第2の回転軸4020が位置する偏心位置(フォーク接続によって、または機械的ジョイントによって構成される)と組み合わされて、傾斜運動に続く要素110のそれぞれの部分111、112の回転を決定する。
【0058】
図に示す好ましい実施形態によれば、チルトロックシステム3のブロック装置は、2つの部分111、112の回転をブロックしてそれらが単一体になるようにする制動トルクを生成するように構成される。
【0059】
これに関して、図11および図12は、要素110、したがってそれに関連するブロックデバイスの可能な実施形態を観察することを可能にする。特に、この実施形態では、要素110の2つの回転部分111、112は、有利には、同じ構成を有する。中間体(middle body)115は、2つの回転部分111、112の間に配置される。後者は、上記の目的にしたがって、第1の接続手段を介して、一対のレバー(第1の接続ロッド101および第2の接続ロッド201)を介してそれぞれの傾斜部81に接続された第1の部分111に回転可能に一体化される。中央本体(central body)115はまた、第2の接続手段によって要素8の第2の部分112に接続される。後者は、代わりに、第2の部分112に対する中央本体115の相対回転を可能にし、同時に、第1の回転部分111に対する(長手方向軸Xに沿った)相対並進運動において中間体115を第2の回転部分112と一体にするように構成される。
【0060】
したがって、第1の連結手段の作用により、中間体115は、第1の回転部111とともに回転するが、例えば操舵工程中は、第1の回転部111自体に対して第2の回転部112とともに自由に移動することができる。
【0061】
再び図11および図12を参照すると、中間体115と第2の部分112との間にジョーブレーキ500が配置され、これは中央本体115(アクチュエータ550は、図1図4には示されていない)によって外部支持されたアクチュエータ550によって作動される。特に、ブレーキ500は、第2の部分112の円筒形キャビティ112B内に収容され、その壁には、アクチュエータ500の作動に続いて、ブレーキのジョー自体が作用する。ブレーキ500は、いずれにせよ、中間体115と一体であり、すなわち、第1の部分111と共に回転する。
【0062】
第2の接続手段によって、ブレーキ500は、円筒形キャビティに対して常に同じ軸方向位置を維持するように、円筒形キャビティ112Bに対して長手方向軸Xに沿って常に同じ位置を維持する。これにより、制動トルクをいつでも起動させ得る。反対に、自動車両4の駆動中、中間体115は、第1の部分111との接続の効果により、長手方向軸Xの周りで自由に回転する。中間体115はまた、ブレーキ500およびそのアクチュエータ550を回転させ、その相互位置を変化させない。
【0063】
図11および図12に示す可能な実施形態によれば、第1の接続手段は、第1の回転部分111と一体で、好ましくは長手方向軸の周りに120度で配置された3つのピン1150を備える。3つのピン1150は、中央本体115に沿って画定され、かつ長手方向軸Xに平行な軸を有する、対応する長手方向キャビティ115B内で摺動する。第1の接続手段はまた、好ましくはブッシング(bushing)またはティルタベアリング(tilter bearing)の形態の支持体1155を備え、これは、中央本体115との第1の部分111の同軸回転を可能にする。そのような支持体1155は、対応するキャビティ内でピン1150に対して許容されるのと同じ軸方向摺動を許容するように構成される。これに関して、摩擦防止ブッシングの使用は、この目的のために特に有利であると思われる。
【0064】
図11を参照すると、可能な実施形態によれば、第2の接続手段は、長手方向軸Xの周りの回転中に2つの部分(115~112)を独立させるように、中間体115と第2の部分112との間に介在する支持体1125、1126(例えば、ボールベアリング)を備える。特に、中間体115の第1の支持体1125は、第1の接続ロッド101の第2の運動学的対302のピボット305とブレーキ500との間に配置される。第2の支持体1126は、代わりに、ピボット305自体と要素110の第2の部分112との間に配置される。中央ピボット305は、第2の部分112に対して軸方向に拘束されたままであり、第2の部分112自体に対するブレーキ500の軸方向位置をブロックする。したがって、中央ピボット305は、いかなる手段によっても、上述した第2の接続手段の一部である。
【0065】
図11の断面図は、要素110の2つの部分111、112の長手方向回転軸Xが、それぞれの第1の接続ロッド101の第2の運動学的対302に対するピボット305の位置合わせによってどのように画定されるかを理解することを可能にする。
【0066】
再び図11を参照すると、好ましい実施形態によれば、第2の接続ロッド201を参照すると、第3の回転軸3023を画定する第2の運動学的対302のブッシュ305Bは、第2の回転軸3022を画定するピボット305の端部にねじ留めされることが分かる。これにより、第2の部分112に対するピボット305の、したがってブレーキ500の軸方向位置が確立される。
【0067】
ちょうど説明した相互接続要素110の構造は、可能なものにすぎず、したがって、その排他的な実施形態ではない。これに関して、図13および図14は、相互接続要素110ならびにブロックデバイス500~550の他の可能な実施形態を示す。例えば、図13を参照すると、要素110の2つの部分111、112および中間体115は、ブロックデバイスとしてのアクチュエータによって操作されるドラムブレーキを維持しながら、異なる形状にされ得る。図13および図14において、2つの回転部分111、112は、図11および図12の説明において上述したものとは異なる構成をとる。いずれにしても、その構成は、本発明の原理にしたがって、それぞれの対の接続ロッド101、201へのそれらの各々の接続を可能にするようなものである。
【0068】
図14に示される実施形態では、2つの回転部分111、112および中間体115は、図13に見られるのと実質的に同じ構成を有する。反対に、ブロック装置は、2つの回転部分のうちの1つ(第1の部分111)と一体の円盤状要素600と、2つの部分111、112の回転をブロックする制動トルクを発生させるようにそのような円盤状要素600に作用する制動キャリパ630とを備える。ブレーキキャリパは、中間体115によって常に支持されるアクチュエータ650によって常に作動される。
【0069】
さらなる可能な実施形態では、相互接続要素110は、特許文献1に記載されている構成をとり得ることにも留意されたい。言い換えれば、各回転部分111、112を対応する傾斜部81、82に接続するための一対の接続ロッド101、201の使用は、ブロックデバイスの構成および要素8の内部構造とは無関係である。
【0070】
同様に、第1の接続ロッド101、102の使用は、それらが実際に接続される前車軸8の部品81、82から独立しているが、ただし、そのような部品は実際に傾いている。これに関して、図15および図16は、前車軸8の同じ構成について、それぞれの接続ロッドが連結され得る2つの異なる傾斜部を示す。特に、両方の図において、水平線でハッチングされた構成要素は、ホイールのスピンドル29であり(上記の定義による)、一方、垂直線でハッチングされた構成要素は、2つのクランク28A~28Bであり、これらは、スピンドル29と共に、それ自体が背景技術から知られている技術的解決策にしたがって四角形のサスペンションを構成する。図15に示される可能な実施形態では、下側クランク28Bは、第1の接続ロッド101の円筒形部分301Bが挿入される円筒体301Aを構成する部分を有し、それにより、上述の第1の運動学的対301を構成する。代わりに、図16に示される実施形態では、円筒体301Aは、スピンドル29の部分29Bによって画定され、一方、2つのクランク28A、28Bは、単純化された形状を有する。両方の場合において、第1の接続ロッド101は、いずれの場合も傾斜部81に接続される。したがって、問題となっている2つの図15および図16から、場合に応じて、スピンドル29またはクランク28A~28Bの形態を変化させて、第1の接続ロッド101を接続するか、またはその第1の運動学的対301を画定することが可能であることに留意されたい。これは全て、サスペンションレイアウトを修正することなく行われる。
【0071】
第1の接続ロッド101、102の使用はまた、前輪10’を連結するチルトリンク機構20とは独立しており、その傾斜運動に追従する。これに関して、図17は、本発明による前車軸の可能な実施形態を示し、チルトリンク機構20は、それ自体既知のダブル横ロッカ(double transverse rocker)を有する構成を有する。当業者にとって、このような構成は、チルトリンク機構20が一対の関節アームを備える図1図4に示される、同様に知られているものとは明らかに異なるように思われる。
【0072】
図5図7および図18図23を参照して、本発明によるチルトロックシステムの動作原理を以下に説明する。このようなシステムは、図1図4の前車軸8に示されるものに対応する。しかしながら、以下の考察は、チルトロックシステム3の1つ以上の構成要素が異なる実施形態、例えば他の添付の図面に示される実施形態を有する場合にも有効であると見なされるべきである。
【0073】
図5図7は、前輪10’が垂直である状態、すなわち傾斜がない状態に対応する第1の位置にあるロックシステムを示す。図5は、傾斜に典型的な基準平面T-Tを示す。図5および図6は、この条件下でとられた、相互接続要素110の各側について2つの接続ロッド101、201を対応する回転部分111、112に接続する運動学的対302、402の位置を示す。特に、図5は、第1の接続ロッド101に対する第2の接続ロッド201のより大きい長さを示し、図6は、第2の接続ロッド201の第2の運動学的対402によって構成される第2の回転軸4022によって占められる、長手方向軸Xに対する偏心位置を示す。
【0074】
図7の断面図は、この条件下で、第1の接続ロッド101について、第1の接続ロッド101によって構成される第1の回転軸3010が長手方向軸Xに実質的に直交する様子を観察することを可能にし、この条件は傾斜がないものに典型的である。
【0075】
代わりに、図18図20は、時計回り方向の傾斜運動に続いて、すなわち、図5図7に示す状態から開始する傾斜部の右への傾斜に続いて、チルトロックシステム3によって取られる第2の構成に関する。傾きは、図5図7に示す開始位置に対する平面T-Tによって取られた位置の間の角度αによって識別される。傾斜運動は、図20に示すように、長手方向軸Xに対する第1の接続ロッド101の第1の回転軸3010の傾斜を決定する。傾斜運動中に第1の接続ロッド101と一体であるため、第2の接続ロッド201も傾斜し、相互接続要素110のそれぞれの回転部分111、112の回転を引き起こす。これに関して、図18は、2つの部分111、112が長手方向軸Xの周りで反対方向(右にあるものは反時計回りであり、左にあるものは時計回りである)にどのように回転するかを観察することを可能にする。各部分111、112の回転は、2つの接続ロッド101、201の異なる長さと、第2の接続ロッド201とそれぞれの回転部分111、112との間の接続の偏心位置とによって決定される。
【0076】
図21図23は、図18図20の状態に典型的な角度αよりも大きい角度βによって特徴付けられる傾斜運動に続いてチルトロックシステム3によって取られる第3の構成を示す。図18図21との比較から、および図19図22との比較から、第1の接続ロッド101の傾斜角度が増加するにつれて、2つの回転部分111、112の回転角はその結果、第1の接続ロッド101が受ける傾斜運動によって駆動される第2の接続ロッド201のより大きい回転の効果に起因して(反対方向に)増加する。
【0077】
図7図20図23との比較から、傾斜運動が相互接続要素110の中間体115の回転をどのように引き起こすかを観察することが可能である。上述の原理によれば、中間体115は、実際には、上述の第1の接続手段によって一体化された第1の部分111によって回転駆動される。同時に、中間体115は、軸に沿った相対移動中に一体のままである第2の部分112に対してその軸方向位置を変化させない。
【0078】
上述の技術的解決策は、設定されたタスクおよびオブジェクトを満たすことを可能にする。特に、傾斜運動を相互接続要素の2つの部分の回転に変換するための接続ロッドの使用は、高い信頼性を依然として確保しながら、特にコストの点で非常に有利な解決策である。さらに、本発明によるチルトロックシステムの構成は、有利には、車両の傾斜角のみをブロックし、ピッチを自由に保つことを可能にする。実際、チルトロックシステムは、車両自体のサスペンションをブロックせず、単に2つの車輪のばねストロークが同じであることを課すだけである。これにより、例えば、ブレーキがかけられた場合、車両は、チルトロックが作動されたときにチルトすることなくピッチを「シンク(sink)」することができる。
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【国際調査報告】