(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】調節可能な制御のためのCA2-IL15融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20221102BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20221102BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221102BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20221102BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221102BHJP
C12N 9/04 20060101ALI20221102BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221102BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221102BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221102BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20221102BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221102BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221102BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20221102BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20221102BHJP
A61K 35/766 20150101ALI20221102BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221102BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221102BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/54 ZNA
C12N15/24
C12N15/53
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/86 Z
C07K19/00
C07K14/725
C07K16/28
C12N9/04 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/87 Z
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K35/766
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515112
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 US2020050273
(87)【国際公開番号】W WO2021050789
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519318535
【氏名又は名称】オブシディアン セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】クッル ゴクス エルペック
(72)【発明者】
【氏名】ドルヴァ カム セッティ
(72)【発明者】
【氏名】ミーガン シー ラングレイ
(72)【発明者】
【氏名】タッカー リード イーゼル
(72)【発明者】
【氏名】デシュー サン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー リア ゴーリ
(72)【発明者】
【氏名】ジータ ハンナ ミルヴァガナム
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル オルス
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル フルーリー
(72)【発明者】
【氏名】セレステ リチャードソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ エイ ストアラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィピン スリ
(72)【発明者】
【氏名】シャムサンダー サブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】コリーン フォーレイ
(72)【発明者】
【氏名】モリー リード パーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ヘイテム トゥチャイチャ
(72)【発明者】
【氏名】スコット フランシス ヘラー
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050CC05
4B050DD11
4B050LL01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA97Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA28
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA44
4C084CA53
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087DA32
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトインターロイキン15(IL15)ペイロードのタンパク質安定性を調節することができるヒト炭酸脱水酵素2由来の薬物応答性ドメイン、ならびにその組成物および使用方法を提供するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL15ペイロードに作動可能に連結された薬物応答性ドメイン(DRD)を含む組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、前記DRDがヒト炭酸脱水酵素II(CA2)に由来し、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して1、2、3、4以上の変異を含んで構成されている、核酸分子。
【請求項2】
DRDが、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して1、2、3または4個のアミノ酸の付加、置換および/または欠失を含んでいる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
DRDがSEQ ID NO:4のアミノ酸配列からなる、請求項2記載の核酸分子。
【請求項4】
DRDがSEQ ID NO:4のアミノ酸配列からなる、請求項3記載の核酸分子。
【請求項5】
IL15ペイロードがSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含んでいる、請求項1~4のいずれかに記載の核酸分子。
【請求項6】
IL15ペイロードがDRDのN末端である、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項7】
IL15ペイロードが膜結合型IL15ポリペプチドである、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
膜結合IL15ポリペプチドが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド成分、膜貫通ドメインおよび細胞内テールを含み、ここで膜貫通ドメインはIL15ポリペプチド成分のC末端であり、細胞内テールは膜貫通ドメインのC末端である、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
膜結合型IL15ポリペプチドが、IL15ポリペプチド成分と膜貫通ドメインとの間にリンカーをさらに含む、請求項8記載の核酸分子。
【請求項10】
IL15ペイロードが、(a)リーダーシーケンス、(b)GSリンカー、(c)ヒンジドメイン、(d)膜貫通ドメイン、および(e)細胞内尾部からなる群から選択される1つ以上の成分をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項11】
IL15ペイロードが、(a)リーダーシーケンス、(b)GSリンカー、(c)ヒンジドメイン、(d)膜貫通ドメイン、および(e)細胞内尾部をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列をコードする、請求項11に記載の核酸分子。
【請求項13】
ポリヌクレオチドがSEQ ID NO:25の核酸配列からなる、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列をコードする、請求項11に記載の核酸分子。
【請求項15】
ポリヌクレオチドがSEQ ID NO:29の核酸配列からなる、請求項14に記載の核酸分子。
【請求項16】
核酸分子が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2のポリヌクレオチドをさらに含み、ここでCARまたはTCRが、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項17】
第2のポリヌクレオチドが、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードしている、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項18】
CARが、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項20】
ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターである、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、またはピコナウイルスから得られる、ウイルス性ベクターである、請求項20に記載のベクター。
【請求項22】
ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはオンコリティカルウイルスベクターから選択される、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターから選択される、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
請求項1~15のいずれか1項に記載の核酸分子によってコードされる組換えタンパク質。
【請求項25】
請求項1~18のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項18~23のいずれか1項に記載のベクター、または請求項24に記載の組換えタンパク質を含む、細胞。
【請求項26】
細胞が細菌細胞である、請求項25に記載の細胞。
【請求項27】
細胞が哺乳類細胞である、請求項25に記載の細胞。
【請求項28】
哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
ヒト細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、請求項28に記載の細胞。
【請求項30】
細胞がCD4+またはCD8+T細胞である、請求項29に記載の細胞。
【請求項31】
細胞が単離される、請求項29に記載の細胞。
【請求項32】
ヒト細胞がT細胞またはNK細胞であり、ヒトT細胞またはヒトNK細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2のポリヌクレオチドをさらに含み、CARまたはTCRが目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでいる、請求項29に記載の細胞。
【請求項33】
第2のポリヌクレオチドが、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードしている、請求項32に記載の細胞。
【請求項34】
CARが、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項33に記載の細胞。
【請求項35】
請求項25~34のいずれか1項に記載の細胞および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項36】
細胞がヒトT細胞、ヒトNK細胞またはヒトTILである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項25~34のいずれか1項に記載の細胞におけるIL15の発現、機能、および/またはレベルを調節する方法であって、DRDが応答する刺激を細胞に投与することを含み、ここで、刺激はIL15の発現、機能および/またはレベルを調節するのに十分な量で投与される、前記方法。
【請求項38】
刺激がアセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロルフェナミドから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
刺激がアセタゾラミドである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
細胞がヒトT細胞またはヒトNK細胞であり、ヒトT細胞またはヒトNK細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2のポリヌクレオチドをさらに含み、CARまたはTCRが目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでいる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
第2のポリヌクレオチドが、関心対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
CARが、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
それを必要とする対象において、調節されたIL15に応答する疾患又は障害を治療する方法であって、(a)請求項1~18のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項19~23のいずれか1項に記載のベクター、請求項24に記載の組換えタンパク質、請求項25~34のいずれか1項に記載の細胞または請求項35~36のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療上有効量を対象に投与し、そして(b)治療上有効な量の刺激を被験体に投与する工程であって、DRDが刺激に応答し、IL15ペイロードの発現が刺激に応答して調節される、工程を含む、前記方法。
【請求項44】
刺激がアセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロルフェナミドから選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
刺激がアセタゾラミドである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
疾患または障害が癌である、請求項43~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
それを必要とする対象における悪性腫瘍を治療する方法であって、前記腫瘍が腫瘍関連抗原を発現している、(a)請求項32~34のいずれか一項に記載のヒトT細胞もしくはヒトNK細胞、またはそれらの医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、ここで、CARまたはTCRは、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでおり、そして(b)治療上有効な量の刺激を被験体に投与する工程であって、DRDが刺激に応答し、IL15ペイロードの発現が刺激に応答して調節される、工程を含む、方法。
【請求項48】
対象が、CARを含むヒトT細胞、またはその医薬組成物の治療有効量を投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項49】
刺激がアセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロルフェナミドから選択される、請求項47または48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
刺激がアセタゾラミドである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
遺伝子操作されたT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を製造する方法であって、T細胞、NK細胞またはTILに、IL15ペイロードに作動可能に連結した薬剤応答性ドメイン(DRD)を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを 導入し、ここでポリヌクレオチドがSEQ ID NOS:24 または28のアミノ酸配列をコードすることを含む、前記方法。
【請求項52】
ポリヌクレオチドがSEQ ID NOS:25または29のヌクレオチド配列からなる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ポリヌクレオチドが、レンチウイルス導入によりT細胞、NK細胞またはTILに導入される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ポリヌクレオチドが、非ウイルスベクター送達法によって T細胞、NK細胞またはTILに導入される、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2019年9月10日に出願された米国仮出願第62/898,520号の優先権の利益を主張するものである。前述の出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[シーケンスリスト等の参照]
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されたSequence Listingを含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年9月10日に作成された当該ASCIIコピーは、268052_473951_SL.txtと名付けられ、サイズは178,693バイトである。
【技術分野】
【0003】
本開示は、ヒトインターロイキン15(IL15)を含む少なくとも1つのペイロードに対するタンパク質安定性を調節することができる、ヒト炭酸脱水酵素2(CA2)由来の薬物応答性ドメイン(DRD)、その組成物及び使用方法に関するものである。本開示に提供されるのは、免疫細胞からの応答の増強に使用するための、CA2生体回路システムのポリペプチド、CA2エフェクターモジュール、刺激応答要素(SRE)、それをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを含むベクターおよび細胞である。
【背景技術】
【0004】
本明細書に記載されたDRD技術をサイトカインの機能および/または発現を調節する方法とともに利用することは、既存の免疫療法戦略の大幅な改善を意味し、これまで治療には適さないと考えられてきた用途を含め、遺伝子導入および養子T細胞移植(ACT)療法に安全かつ有効に組み込めるタンパク質治療薬の世界を拡大することができる。改良されたナチュラルキラー細胞(NK細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)およびT細胞ベースの免疫療法は、例えば、被験者への投与時に様々な免疫療法で使用するための、工学的免疫細胞の持続性および/または生存を改善することによって、治療の機能性を強化および改善することが必要である。提供されるのは、ヒトIL15に連結したCA2 DRD、そのようなDRDを含む改変細胞、組成物、およびそのような必要性を満たす方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、小分子依存的な安定性を示すヒト炭酸脱水酵素2(CA2)由来の新規なタンパク質ドメインを提供するものである。このようなタンパク質ドメインは、薬物応答性ドメイン(DRD)と呼ばれる。結合リガンドがない場合、DRDは不安定化し、DRDに作動可能に連結したペイロード(例えば、目的のタンパク質(POI))の分解を引き起こすが、結合リガンドの存在下では、DRDおよびその作動可能に連結したペイロードは安定化される。DRDとその作動可能に連結されたペイロードの安定性は、結合リガンドの用量に依存する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、刺激応答要素(SRE)を提供し、これは、全体又は部分的に、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有するヒト炭酸脱水酵素2(CA2)由来の薬剤応答性ドメイン(DRD)を含んでいてもよい。一実施形態では、DRDは、全長CA2ポリペプチド(SEQ ID NO:1)由来であってよい。いくつかの実施形態では、DRDは、ヒト炭酸脱水酵素の一部または領域に由来してもよい。CA2の部分または領域は、CA2(SEQ ID NO:2)のアミノ酸2~260から選択されてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、SREは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対してCA2において1、2、3、4またはそれ以上の変異を含んでなるDRDを含んでもよい。いくつかの実施形態において、SREは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対してCA2において1、2、3、4またはそれ以上のアミノ酸の置換を含んでなるDRDを含んでもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、SREは、CA2の一部において1、2、3、4またはそれ以上の変異を含むDRDを含んでもよい。いくつかの実施形態において、SREは、CA2またはその一部において1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含んでなるDRDを含んでよく、さらに追加のアミノ酸を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、SREは、CA2の一部において1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含んでなるDRDを含んでもよい。いくつかの実施形態では、SREは、CA2またはその一部において1、2、3、4またはそれ以上のアミノ酸置換を含んでなるDRDを含んでもよく、さらに追加のアミノ酸を含んでなってもよい。
【0009】
また、本明細書では、SEQ ID NO: 1に対する少なくとも1つの変異を含む単離ポリペプチドバリアントが提供される。SEQ ID NO: 1に対するCA2変異の非限定的な例としては、M1delおよびL156Hが挙げられる。別の態様では、DRDは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるポリペプチドであり、ここでCA2変異は、SEQ ID NO:1に対してMdel1およびL156Hからなる。別の態様では、DRDは、SEQ ID NO:1に対するアミノ酸欠失M1delおよびアミノ酸置換L156Hを含むポリペプチドであり、さらに追加のアミノ酸を含んでいてもよい。別の態様では、DRDは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0010】
また、本明細書では、少なくとも1つのエフェクターモジュールを含むバイオサーキットシステムも提供される。バイオ回路のエフェクターモジュールは、刺激応答要素(SRE)を含んでもよく、SREは、ヒト炭酸脱水酵素2(CA2;SEQ ID NO:1)またはSEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:2のアミノ酸配列に対して1、2、3、4以上のCA2の変異を含むその変異体由来のDRDを含んでもよい。いくつかの実施形態では、バイオ回路のエフェクターモジュールは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対するCA2の1つ、2つ、3つ、4つ以上のアミノ酸置換を含むDRDを含むSREを含む。バイオ回路は、SREに添付、付加または関連付けられる少なくとも1つのペイロードも含み得る。ペイロードは、(i)SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含むヒトIL15を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0011】
バイオサーキットシステムのSREは、Mdel1およびL156HなどのCA2(SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2)の1、2、3またはそれ以上の変異を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。バイオサーキットシステムのSREは、L156Hに限定されないが、そのようなCA2(SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 2)に1、2、3またはそれ以上のアミノ酸置換を含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、CA2生体回路系におけるSREは、変異M1del及びL156Hを有するCA2であってよく、ここで、番号付けは、SEQ ID NO:1(SEQ ID NO:4)のアミノ酸配列に対する相対的なものである。いくつかの実施形態では、SREは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなるポリペプチドである。いくつかの実施形態では、SREは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0013】
本明細書に記載のバイオサーキットシステムは、1つ以上の刺激に応答するSREを含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、刺激は、小分子であってもよく、小分子は、アセタゾラミド(ACZ)である。
【0015】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つのペイロードを含むエフェクターモジュールを提供する。いくつかの実施形態では、エフェクターモジュールは、IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 DRDを含むSREを含む。いくつかの実施形態では、IL15ペイロードは、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IL15ペイロードは、SEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列を含む核酸配列によって部分的にコードされてもよい。いくつかの実施形態では、IL15ペイロードはIL15の膜結合型形態である。いくつかの実施形態では、IL15ペイロードは、機能的IL15成分またはドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内テールを含むIL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態では、IL15ペイロードは、機能的IL15構成要素又はドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内テール及びリーダー配列を含むIL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態において、本開示は、膜結合型IL15ポリペプチドに作動可能に連結されたCA2 DRDを含むSREを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、膜結合IL15ポリペプチドに作動可能に連結されたCA2 DRDを含むSREを提供し、ここで、膜結合IL15ポリペプチドは、N末端からC末端まで、リーダー配列、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド、ペプチドリンカー、膜貫通領域、および細胞内テイルを含んでなる。
【0016】
別の態様において、本開示は、エフェクターモジュールをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む、改変または遺伝子操作された細胞を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、改変または遺伝子操作された細胞は、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 DRDをコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、膜結合型IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 DRDをコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター送達方法によって細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス導入によって細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、レンチウイルス導入により細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、T細胞、NK細胞、またはTILへのレンチウイルス導入によって細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、本開示は、膜結合IL15ペイロードに作動可能に連結したCA2 DRDをコードするポリヌクレオチドを、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターによってT細胞、NK細胞またはTILに導入することを含む、改変または遺伝子工学的T細胞、NK細胞またはTILを作製する方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本開示は、(a)本開示のペイロードに連結されたSREを含む組換え構築物を含む改変細胞または複数のそのような改変細胞を含む組成物を、疾患または状態を有する対象に投与することと、(b)SREが応答する刺激の治療的有効量を対象に投与することとを含む、治療方法を提供する。この態様のいくつかの実施形態において、疾患または状態は、癌、新生物または腫瘍である。いくつかの実施形態では、SREは、CA2 DRDである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、IL15または膜結合型IL15である。いくつかの実施形態では、改変細胞は、IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 SREを含んでいる。いくつかの実施形態では、修飾細胞は、膜結合IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 SREを含んでなる。いくつかの実施形態では、刺激は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、又はジクロルフェナミドである。いくつかの実施形態では、改変細胞は、膜結合IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 SREを含み、刺激はアセタゾラミドである。いくつかの関連する態様において、改変細胞は、操作された又は改変された免疫細胞であり、例えば、CA2-IL15バイオ回路及びシステムは、CD8+T細胞及びCD4+T細胞などのT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンパ球活性化キラー(LAK)細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞およびこれらの任意の組合せを含む免疫細胞と共に使用され得る。他の実施形態では、ACT用の免疫賦活細胞は、胚性幹細胞(ESC)及び人工多能性幹細胞(iPSC)から生成されてもよい。いくつかの実施形態では、自己免疫細胞又は同種免疫細胞がACTに使用される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、TILまたはNK細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、iPSC、臍帯血、または末梢血単核細胞由来のNK細胞であり、改変免疫細胞は、ペイロードに連結したSREを欠く参照細胞組成物の同じまたはほぼ同じ投与量の投与対象よりも対象において増加または長い拡大および/または持続性を示す。
【0018】
別の態様では、本開示は、対象における悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)改変T細胞、改変NK細胞または改変TILであって、T細胞、NK細胞またはTILが本開示のペイロードに連結したSREを含む組み換え構築物または複数のかかる改変細胞を含む組成物を対象に投与し、(b)SREが応答する刺激の治療上有効量を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、腫瘍は、腫瘍関連抗原を発現する。いくつかの実施形態では、修飾T細胞または修飾NK細胞は、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をさらに含む。いくつかの実施形態では、改変T細胞または改変NK細胞は、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでなるCARを含んでいる。いくつかの実施形態では、改変T細胞、改変NK細胞または改変TILは、CA2 DRDであるSREを含んでなる。いくつかの実施形態では、改変T細胞、改変NK細胞、または改変TILは、IL15または膜結合IL15であるペイロードを含んでいる。いくつかの実施形態では、改変T細胞、改変NK細胞、または改変TILは、IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 SREを含む。いくつかの実施形態では、修飾T細胞、修飾NK細胞、または修飾TILは、膜結合IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 SREを含んでなる。いくつかの実施形態では、刺激は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、又はジクロルフェナミドである。いくつかの実施形態では、改変細胞は、膜結合IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 SREを含み、刺激はアセタゾラミドである。
【0019】
別の態様において、本開示は、バイオサーキットシステムをコードするポリヌクレオチド及びベクター、並びにバイオサーキットシステム及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0020】
別の態様において、本開示は、本開示のポリヌクレオチドによってコードされる組換えタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、IL15ペイロードに作動可能に連結されたCA2 DRDを含むエフェクターモジュールを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面に示される本開示の特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本開示の様々な実施形態の原理を説明することに重点が置かれている。
【
図1】T細胞におけるACZ制御膜結合型IL15(mbIL15)発現のin vitro特性評価及び/又は検証のための代表的な手順を示す図である。
【
図2】ACZが制御するT細胞におけるmbIL15発現のin vivoでの特徴づけおよび/または検証の代表的な手順を示す図である。
【
図3】
図3A~
図3Cは、異なる濃度のACZの存在下で、構成的IL15-292およびIL15-294(
図3A)、ならびに調節されたIL15-293(
図3B)およびIL15-295(
図3C)構築物を発現するT細胞のインビトロ拡張を示す図である。外因性IL15(2ng/mL)の非存在下または存在下で培養したエンプティベクター(EV)導入細胞を、対照として使用した。
【
図4】
図4A~
図4Bは、アセタゾラミド用量反応とT細胞上のIL15発現を示す図である。細胞は、100μMで始まる異なる濃度のACZ(リガンド)で24時間処理された。グラフは、%IL15+T細胞(
図4A)及びIL15の平均蛍光強度(MFI)(
図4B)である。
【
図5】
図5A~
図5Cは、構成的及び調節されたIL15構築物を発現するT細胞のインビボ分析、及びNK細胞に対するそれらの効果を示す図である。
図5Aは、構成的IL15(IL15-292及びIL15-294)及び調節されたIL15(IL15-293及びIL15-295)構築物を発現するT細胞のインビボでの膨張を示す。
図5Bは、同じ条件下でのバイスタンダーNK細胞のインビボでの膨張を示す図である。血液中のT細胞およびNK細胞頻度は、フローサイトメトリーにより決定した。
図5Cは、フローサイトメトリーによって分析された、25日目のT細胞上のIL15の発現を示す図である。エンプティベクター(EV)導入細胞をコントロールとして使用した。
【
図6】構成的に発現するmbIL15(CD19-IL15-057)または調節されたmbIL15(CD19-IL15-058)をコードするタンデムCD19 CARおよびmbIL15構築物の模式図である。各コンストラクトは、IgKvリーダー配列(IgKv LS)、IL15ポリペプチド成分、GSリンカー、B7-1ヒンジ、膜貫通ドメイン(TM)、および尾部を含む、調節型または構成型mbIL15をコードするポリヌクレオチド配列からなる。構成的構築物は、CA2野生型配列(CA2(WT))に作動可能に連結されたmbIL15をコードする。制御された構築物は、CA2(L156H)DRDに作動可能に連結されたmbIL15をコードする。各構築物はまた、P2A配列と、CD8αリーダー配列(CD8α LS)、CD19 scFv、CD8α膜貫通ドメインおよびヒンジ、4-1BB由来のコスティミュレーションドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む抗CD19 CARをコードするポリヌクレオチド配列から構成される。
【
図7】
図7A~
図7Eは、調節されたmbIL15発現及びインビボでの抗腫瘍効果について評価した、タンデムCD19 CAR及びmbIL15構築物で形質転換したT細胞を示す図である。
図7Aは、末梢血T細胞におけるmbIL15及びCARの発現についてのフローサイトメトリー分析を示す図である。
図7Bは、CD19+ Nalm6-Luc腫瘍を移植し、構成的又は調節されたmbIL15を有する又は有しないCD19 CARを発現するレンチウイルスベクターで形質転換されたT細胞を注入した個々のマウスの腫瘍成長曲線を示す図である。
図7Cは、グループの平均値および標準誤差を有する腫瘍成長曲線を示す。
図7Dは、T細胞注入後7、14及び21日目に動物から採取した血液中のT細胞の頻度を示す図である。
図7Eは、T細胞注入後14日目に動物から採取された骨髄中のT細胞の頻度を示す図である。
【
図8】培養工程後及びmbIL15発現コンストラクトを導入した後の患者腫瘍試料からのTILの分析を示す図である。
図8Aは、新鮮な腫瘍消化物および3週間のREP前TIL培養後のCD45
+ 細胞(上)およびCD3
+ T細胞内のCD45
+ 細胞(下)の頻度を示す図である。
図8Bは、構成的又は調節されたmbIL15構築物で形質導入されたTILについてフローサイトメトリーにより決定されたmbIL15発現を示す図である。調節されたmbIL15構築物で形質導入されたTILを、10μM ACZまたはDMSOで24時間処理した。形質転換されていない細胞は、陰性対照として評価された。
【
図9】NK細胞における構成的及び制御的なmbIL15の発現を示す図である。グラフ上の各記号(四角および三角)は、3人のドナーのうちの1人を表す。エラーバーは、示された各導入/処理群について、3人のドナーの標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の添付の説明に記載されている。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の材料および方法を、本開示の実施または試験に使用することができるが、好ましい材料および方法を次に記載する。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、本明細書から明らかになるであろう。本明細書において、単数形は、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、複数形も含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾が生じた場合は、本明細書が優先される。
【0023】
がん免疫療法は、がんに対する免疫系の反応性を誘導または回復させることを目的としている。免疫療法研究の著しい進歩により、様々な戦略が開発されており、それらは大きく分けて、能動的免疫療法と受動的免疫療法に分類される。一般に、これらの戦略は、がん細胞を直接殺すため、あるいは免疫抑制的な腫瘍微小環境に対抗するために利用されることがある。能動的免疫療法は、内因性で長期間持続する腫瘍抗原特異的な免疫反応の誘導を目的としている。この反応は、サイトカインなどの免疫反応修飾因子の非特異的刺激によってさらに増強されることがある。一方、受動的免疫療法は、腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞や抗体などの免疫エフェクター分子を宿主に投与するアプローチである。このアプローチは短命であり、複数回の適用が必要である。
【0024】
T細胞の効率的な活性化には、T細胞受容体(TCR)のシグナル伝達(シグナル1)、共刺激分子による活性化(シグナル2)、免疫賦活サイトカイン(シグナル3)の3つのシグナルが必要である。これまでのところ、設計され議論されているCARベースの免疫療法の大部分は、シグナル1とシグナル2を有している。しかし、一般に恒常性サイトカインによって提供されるシグナル3は、従来のCAR T細胞には通常存在せず、腫瘍微小環境においてもあまり豊富でない。
【0025】
そのため、T細胞を最適に活性化するためのシグナル3の必要性を満たす、追加のサイトカインシグナルを供給できるT細胞(例えば、CAR T細胞を含む)を設計する必要性が存在する。T細胞の活性化に関与する主要なサイトカインは、シグナル3サイトカインを包含し、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、IL-9などのγcクラスである。これらのサイトカインは、T細胞の生存と増殖を制御し、最終的にはT細胞の持続性と有効性に重要な役割を果たす。これらのサイトカインは、現在、治療前のCAR T細胞のex vivoでの膨張に、併用または単独で使用されている。
【0026】
しかし、IL-15への継続的な曝露は、T細胞の異常増殖や毒性を引き起こす可能性があるため、IL-15の曝露によるT細胞の長寿をサポートすることは危険である。ヒトでは、IL15の産生異常、血清レベルの上昇、またはIL15シグナルの異常は、自己免疫疾患と関連しており、大顆粒リンパ球性白血病や皮膚T細胞リンパ腫の病因に関与している可能性がある。
【0027】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然リンパ系細胞の一つで、ヒトではCD3(T細胞共受容体)を持たず、表現型マーカーCD56(神経細胞接着分子)を発現していることが特徴である。NK細胞は、自然免疫系の強力なエフェクター細胞であり、事前の抗原プライミングを必要とせずに細胞傷害性攻撃を行い、癌悪性腫瘍やウイルス感染などの疾患に対する防御の第一線を形成する。
【0028】
NK細胞の養子移入は、急性骨髄性白血病などのがんに対する有望な治療アプローチであることが、いくつかの前臨床試験および臨床試験で実証されている(Ruggeri et al., Science; 2002, 295: 2097-2100、および Geller et al, Immunotherapy, 2011, 3: 1445-1459)。DAP12-Based活性化CARなどのCARを発現するNK細胞の養子移入により、腫瘍細胞の根絶が改善することが明らかになった(Topferら、J Immunol、2015;194:3201-3212)。CS-1特異的CARを発現するように操作されたNK細胞は、多発性骨髄腫における細胞溶解およびインターフェロン-γ(IFN-γ)産生の増強も示した(Chuら、Leukemia、2014、28(4):917-927)。
【0029】
NK細胞の活性化は、活性化および抑制機能を持つ受容体の配列によって特徴付けられる。NK細胞の重要な活性化受容体には、CD94/NKG2C、NKG2D(C型レクチン様受容体)、自然細胞傷害性受容体(NCR)NKp30、NKp44、NKp46があり、腫瘍細胞やウイルス感染細胞のリガンドを認識している。NK細胞の抑制は、基本的に多型の抑制性キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)がHLA分子のα1ヘリックスを介してその同族ヒト白血球抗原(HLA)リガンドと相互作用することによって媒介される。活性化受容体と抑制性受容体から発生するシグナルのバランスによって、主に細胞傷害性の即時活性化が決定される。
【0030】
NK細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)や臍帯血から分離したり、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)から誘導することができる。NK細胞は、養子免疫療法のためにさらに増殖させることができる。NK細胞の増殖に有用な戦略及びプロトコルは、インターロイキン2(IL2)刺激及び自己由来のフィーダー細胞の使用、又は遺伝子改変された同種フィーダー細胞の使用を含んでもよい。いくつかの態様において、NK細胞は、IL15、IL21、IL2、41BBL、IL12、IL18、MICA、2B4、LFA-1、及びBCM1/SLAMF2(例えば、米国特許公開番号US20150190471)を含む刺激リガンドの組み合わせで選択的に拡大することが可能である。
【0031】
NK細胞を用いた免疫療法は、NK細胞の腫瘍標的を直接溶解する能力、NK細胞駆動型抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体や分子の出現、NK細胞の炎症反応誘導能力などにより急速に発展している。NK細胞は、自家および同種のNK細胞注入戦略単独または造血幹細胞移植を用いた臨床試験で利用されている。さらに、NK細胞株やキメラ抗原受容体(CAR)を導入したNK細胞の使用など、他のNK細胞治療法も視野に入っている。また、NK細胞のin vivoでの持続性と拡大が、進行性AML患者における抗腫瘍効果と相関することを示した研究者もいる。この問題に対処するために前臨床で評価されている戦略の中で、NK細胞の持続と拡大を誘導するサイトカインの利用が、現在の臨床試験の主流となっている。IL15は、制御性T細胞を刺激することなく、NK細胞の発生と恒常性に生理的な役割を果たすことが知られているが、実験結果は、IL15を継続投与すると、NK細胞の機能変化が起こり、疲弊することを示唆している。例えば、IL15を連続投与したNK細胞は、少なくとも1つの研究において、IL15を9日間実験的に連続投与する間、最初はより良い増殖および拡大を示すが、細胞死に対してより感受性があることが実験的に示されている。さらに、細胞周期遺伝子発現データは、IL15を連続投与したNK細胞は、細胞周期チェックポイントおよびアレスト遺伝子の発現が濃縮されており、培養9日目にこれらの細胞が細胞ストレスによりアレスト状態に移行していることを示している。
【0032】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍組織に浸潤したすべてのリンパ球細胞集団から構成されている。腫瘍の細胞成分には、TIL、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、骨髄系細胞が含まれ、生産的な免疫反応が示唆されている。しかし、腫瘍の微小環境に存在する免疫細胞集団の多くは、免疫系の応答をさらに損なう表現型に変換されているため、何らかの形で機能障害を受けていると考えられる。腫瘍は、Tregリンパ球、TAM、骨髄由来抑制細胞(MDSCs)、がん関連線維芽細胞(CAFs)を動員して、免疫認識からの逃避を助けることができる。TregとMDSCはともに、TILや他の細胞による反応を制限する免疫抑制機能を持つことが示されている。CD4+トレグの枯渇は、TIL療法中に自己TILで治療された免疫再構成中の患者の臨床反応を改善する。マウスモデルでは、少量のトレグでも、効果的なCD8+ T細胞を介した養子細胞療法を阻害することができる。
【0033】
TILは、乳がんやメラノーマなど多くの固形がんで報告されており、治療効果や転帰を予測する上で重要なバイオマーカーとして注目されている。乳がんでは、TILは主に細胞障害性(CD8+)およびヘルパー(CD4+)T細胞で構成され、B-細胞およびNK細胞の割合は少ない。CD8 + T細胞の浸潤が高い、あるいはTILの密度が高い進行腫瘍の乳がん患者は、より良好な転帰をたどっている。メラノーマでは、TIL療法は、細胞注入の前にリンパ節除去準備レジメンを含めることによって改善される。メラノーマのヒトおよびマウスモデルにおける研究では、リンパ節除去は、メラノーマ患者のT細胞増殖を抑制することができる制御性T細胞(Tregs)および末梢骨髄由来抑制細胞を含む負の制御細胞を枯渇させ、その両方が養子移入Tリンパ球の増殖を助長することが示唆されている。
【0034】
TILを 用いたAdoptive Cell Therapy(ACT)は、インターロイキン-2(IL-2)単独またはIL-7、IL-15、IL-21との併用で腫瘍から拡大した自己CD4+およびCD8+Tリンパ球の注入に基づく個人化がん治療法である。TILは、個々の腫瘍ネオアンチゲンと同様に共有腫瘍関連抗原を含む腫瘍特異的抗原を認識するリンパ球に富むポリクローナル集団である。1980年に開始された米国国立癌研究所(NCI)の研究では、リンパ球活性化キラー細胞と組換えIL-2の養子移入を受けた特定の患者の腫瘍が退縮することが証明された。その後、ヒトTILの大量増殖法、TIL産生プロセスの簡略化・短縮化、患者の前処理と治療プロトコルの改善により、患者の奏効率は向上している。しかし、TIL療法の完全奏効率はまだかなり低く、改善が必要である。
【0035】
本開示は、癌免疫療法のためのIL15遺伝子の発現および機能の調整可能な制御を提供することによって、連続的に投与または発現されたIL15の問題を回避するシステム、組成物、免疫療法剤および方法を提供する。本発明はまた、バイオサーキットシステム、エフェクターモジュール、刺激応答要素(SRE)、及びIL15ペイロード、並びに前述のいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。一態様において、本発明のシステム、組成物、免疫療法剤および他の構成要素は、別途加えられる刺激によって制御することができ、これは、癌免疫療法を調節するための大きな柔軟性を提供する。
【0036】
本発明のシステムおよび組成物の調整可能な性質は、免疫療法の効力の効力および持続期間を改善する可能性を有する。本発明の組成物を用いて養子的に移入された細胞の生物学的活性を可逆的に増加、減少または沈黙させる能力は、治療を終了させる「キルスイッチ」を用いて利用できない細胞治療の可能性を最大限にすることを可能にする。特定の理論に縛られることなく、癌免疫療法を含む様々な治療で使用されるNK細胞、TIL、T細胞群にIL15を時間的に断続的に曝露することにより、増殖や活性化の異常がなく、表現型、機能、染色体異常がないT細胞の長期生着が達成されると考えられる。
【0037】
本発明は、患者への投与後に免疫療法を微調整する方法を提供する。これは、ひいては、免疫療法の安全性および有効性を改善し、免疫療法から利益を得ることができる被験者の集団を増加させる。本開示に記載され開示されるようなエフェクターモジュール(複数可)は、独立して、IL15に動作可能に連結され得る1つまたは複数の刺激応答要素(SRE)を関連付け、またはそれと一体化して、mbIL15からなるエフェクターモジュールを形成する。本開示のバイオ回路、SRE、DRDは、免疫細胞と共に採用することができ、養子移入されたNK細胞およびTILを含むT細胞が持続性を延長することを可能にする所望のシグナル伝達を提供し、それによって耐久性のある免疫監視および治療の可能性を提供することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「バイオサーキット」または「バイオサーキットシステム」は、刺激と、刺激に応答する少なくとも1つのエフェクタモジュールとを含む生体システム内の回路または生体システムに有用な回路として定義され、刺激に対する応答は、生体システム内、生体間、指標としての、または生体上に少なくとも1つの信号または結果を生じさせる。生物学的システムは、一般に、動物、植物、真菌、細菌、またはウイルスのいずれであっても、任意の細胞、組織、器官、器官系または生物であると理解される。また、生体回路は、本開示によって教示される刺激またはエフェクターモジュールを採用し、診断、レポーターシステム、デバイス、アッセイまたはキットを用いるなど、無細胞環境において信号または結果を及ぼす人工回路であってもよいことが理解される。
【0039】
本開示のバイオサーキットは、少なくとも1つのエフェクターモジュールを含む。本明細書で使用する場合、「エフェクターモジュール」は、少なくとも(a)1つ以上の刺激応答要素(SRE)及び(b)1つ以上のペイロード(例えば、関心対象のタンパク質(POI))を含む単一又は複数の構成要素の構築物又は複合体である。いくつかの実施形態では、エフェクターモジュールは、1つのSREと1つのペイロードから構成される。
【0040】
エフェクターモジュールは、1つ以上のペイロード、1つ以上のSRE、1つ以上の切断部位、1つ以上のシグナル配列、および1つ以上のリンカーの有無を含む1つ以上の追加機能を含むように設計することができる。
【0041】
一実施形態では、エフェクターモジュールは、少なくとも1つの免疫療法剤、例えば、IL15を含む。
【0042】
エフェクターモジュールは、そのSREとペイロードを含め、核酸ベース、タンパク質ベース、またはそれらの組み合わせであってもよい。それらは、DNA、RNA、mRNA、タンパク質、融合タンパク質、または前述の任意の組み合わせの形態であってもよい。一実施形態では、エフェクターモジュールは、融合タンパク質である。一実施形態では、エフェクターモジュールは、DNAなどの核酸によってコードされる。
【0043】
エフェクターモジュール(そのSREおよびペイロードを含む)は、個々に、集合的に、または独立して、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質から構成されてもよい。タンパク質レベルでは、かかるペイロードは、任意の天然もしくは人工のペプチドもしくはポリペプチドまたはその断片であってよい。ペイロードの天然ペプチドまたはポリペプチド成分は、任意の種の任意の既知のタンパク質に由来していてもよい。
【0044】
エフェクターモジュールは、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のモジュールのグループで動作するように設計されている場合がある。つ以上のエフェクターモジュールがバイオサーキットで利用される場合、そのバイオサーキットのエフェクターモジュールシステムとして知られている。
【0045】
本明細書で使用される「刺激応答要素」(SRE)は、1つまたは複数のペイロードに接合、付着、連結または関連し、場合によっては、1つまたは複数の刺激に対するエフェクターモジュールの応答性を担うエフェクターモジュールの構成要素である。本明細書で使用されるように、刺激に対するSREの「応答性」の性質は、共有結合または非共有結合の相互作用、直接的または間接的な関連、または刺激に対する構造反応または化学反応によって特徴付けられる場合がある。さらに、刺激に対する SRE の応答は、程度または種類の問題であってもよい。応答は部分的な応答であってもよい。応答は可逆的な応答であってもよい。応答は、最終的に調整された信号または出力につながるかもしれない。そのような出力信号は、刺激に対して相対的な性質のものであってよく、例えば、1%~100%の調節効果をもたらすか、または2倍、3倍、4倍、5倍、10倍またはそれ以上のような因数分解された増加もしくは減少をもたらす。いくつかの実施形態では、SREは、ポリペプチドペイロードに作動可能に連結されたポリペプチドである。いくつかの実施形態では、SREは、ポリペプチドペイロードに融合されたポリペプチドである。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示は、タンパク質の発現、機能又はレベルを調節するための方法を提供する。いくつかの態様において、タンパク質の発現、機能またはレベルの調節は、少なくとも約20%、例えば、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%,50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%によって発現、機能またはレベルを調節することを指す。
【0047】
薬物応答性ドメイン(DRD)は、目的のタンパク質に付加することができる小さなタンパク質ドメインである。いくつかの実施形態では、DRDは、目的のターゲットタンパク質に作動可能に連結される。DRDは、DRD結合リガンドが存在しない場合、付着した標的タンパク質を不安定にする。しかし、特定の低分子リガンドがリガンド結合パートナーとして目的のDRDに結合すると、不安定性が逆転し、タンパク質の機能が回復する。DRDの安定性が条件付きであるため、安定なタンパク質から不安定な分解基質への迅速かつ非摂動的な切り替えが可能である。さらに、リガンドの濃度に依存するため、分解速度を調整することも可能である。薬物応答性ドメイン(DRD)という用語は、不安定化ドメイン(DD)という用語と互換性がある。
【0048】
一実施形態では、SREは、薬物応答性ドメイン(DRD)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCA2薬物応答性ドメインは、本明細書に教示されるIL15ペイロードのいずれかと関連して、本開示のバイオサーキットシステムにおいてSREとして使用され得る。
【0049】
野生型タンパク質(例えば、CA2)の領域または部分またはドメインは、全体または一部がSRE/DRDとして利用され得る。一実施形態では、SREは、親タンパク質CA2または変異体CA2タンパク質に由来する。様々な実施形態において、DRDは、親CA2タンパク質、例えば、アミノ酸配列SEQ ID NO: 1:
MSHHWGYGKH NGPEHWHKDF PIAKGERQSP VDIDTHTAKY DPSLKPLSVS
YDQATSLRIL NNGHAFNVEF DDSQDKAVLK GGPLDGTYRL IQFHFHWGSL
DGQGSEHTVD KKKYAAELHL VHWNTKYGDF GKAVQQPDGL AVLGIFLKVG
SAKPGLQKVV DVLDSIKTKG KSADFTNFDP RGLLPESLDY WTYPGSLTTP
PLLECVTWIV LKEPISVSSE QVLKFRKLNF NGEGEPEELM VDNWRPAQPL
KNRQIKASFKまたはSEQ ID NO: 2:
SHHWGYGKH NGPEHWHKDF PIAKGERQSP VDIDTHTAKY DPSLKPLSVS
YDQATSLRIL NNGHAFNVEF DDSQDKAVLK GGPLDGTYRL IQFHFHWGSL
DGQGSEHTVD KKKYAAELHL VHWNTKYGDF GKAVQQPDGL AVLGIFLKVG
SAKPGLQKVV DVLDSIKTKG KSADFTNFDP RGLLPESLDY WTYPGSLTTP
PLLECVTWIV LKEPISVSSE QVLKFRKLNF NGEGEPEELM VDNWRPAQPL
KNRQIKASFK
を有するヒトCA2と比較して1、2、3、または4以上の変異を含んでなる。
【0050】
SEQ ID NO: 1のアミノ酸配列を有するヒトCA2は、SEQ ID NO: 3:
atgtcccatcactgggggtacggcaaacacaacggacctgagcactggcataaggacttccccattgccaagggagagcgccagtcccctgttgacatcgacactcatacagccaagtatgacccttccctgaagcccctgtctgtttcctatgatcaagcaacttccctgaggatcctcaacaatggtcatgctttcaacgtggagtttgatgactctcaggacaaagcagtgctcaagggaggacccctggatggcacttacagattgattcagtttcactttcactggggttcacttgatggacaaggttcagagcatactgtggataaaaagaaatatgctgcagaacttcacttggttcactggaacaccaaatatggggattttgggaaagctgtgcagcaacctgatggactggccgttctaggtatttttttgaaggttggcagcgctaaaccgggccttcagaaagttgttgatgtgctggattccattaaaacaaagggcaagagtgctgacttcactaacttcgatcctcgtggcctccttcctgaatccctggattactggacctacccaggctcactgaccacccctcctcttctggaatgtgtgacctggattgtgctcaaggaacccatcagcgtcagcagcgagcaggtgttgaaattccgtaaacttaacttcaatggggagggtgaacccgaagaactgatggtggacaactggcgcccagctcagccactgaagaacaggcaaatcaaagcttccttcaaa
の核酸配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる。
【0051】
本明細書において、エフェクターモジュール、SRE、ペイロードに関する「由来する」という表現は、エフェクターモジュール、SRE、ペイロードが、少なくとも部分的に、記載の親分子または配列に由来していることを意味する。例えば、SRE を設計する場合、SRE は天然に存在するタンパク質のエピトープまたは領域に由来するが、SRE の機能を最適化するために本明細書で教示する方法で改変されることがある。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示のDRDは、CA2の低分子阻害剤などのリガンドによって安定化されてもよいCA2(SEQ ID NO: 1; Uniprot ID: P00918)由来であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「CA2 WT」は、ヒト野生型CA2タンパク質配列を指し、これはGenBankアクセスNO.P00918.SEQ ID NO: 1として定義され、いくつかの態様において、DRDは、SEQ ID NO: 2のCA2由来であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、DRDは、親CA2配列のアミノ酸2~260を有するCA2から誘導されてもよい。これは、本明細書において、M1del変異と呼ばれる。M1del変異は、本明細書においてアミノ酸欠失とも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるヒトDRD構築物は、SEQ ID NO:1のN末端メチオニンに対応するN末端メチオニンを含まなくてよい。開示されるCA2 DRDにおけるN末端メチオニンの存在または不在にかかわらず、本開示は、SEQ ID NO:1の野生型ヒトCA2(Uniprot ID:P00918)に対するCA2 DRDの位置を特定し、ここで参照位置1はSEQ ID NO:1のN末端メチオニンである。例えば、G12A変異を含んでなる仮想CA2 DRDは、本明細書において、CA2 DRD構築物自体がSEQ ID NO:1のN末端メチオニンに対応するN末端メチオニンを含んでなるかどうかにかかわらず、SEQ ID NO:1の12番目のアミノ酸に対応するCA2 DRD構築物の位置でグリシン(G)がアラニン(A)に変異されるCA2 DRD構築物を意味する。このG12A変異例からなる仮想的なCA2 DRDにおいて、グリシン(G)からアラニン(A)への変化は、アミノ酸置換とも呼ばれ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、DRDは、SEQ ID NO: 1の野生型ヒトCA2配列のアミノ酸2~260を有するヒトCA2由来であってよい。これは、M1del変異と呼ばれ得、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、本開示のDRDは、SEQ ID NO:4に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0055】
表1は、CA2 DRDを提供する。表1に記載された変異したアミノ酸の位置は、SEQ ID NO: 1の全長CA2に対するものである。
【0056】
[表1]
【0057】
いくつかの実施形態では、作動可能に連結されたIL15ペイロードを調節するCA2由来の例示的なDRDは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列からなるか、またはSEQ ID NO: 5のヌクレオチド配列によりコードされる。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるIL15の調節可能な発現に有用なCA2 DRDは、Uniprot ID P00918(SEQ ID NO:1)に相対する1つまたは複数の変異を含むことができ、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列に対して(M1del、L156H)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるIL15の調節可能な発現に有用なCA2 DRDは、(SEQ ID NO:2)に対する1つの変異(L156H)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるIL15の調節されかつ調整可能な発現に有用なCA2 DRDは、(SEQ ID NO: 2)(L156H)に対して1つのアミノ酸置換を含んでもよい。いくつかの実施形態では、CA2 DRDは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、CA2 DRDは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列からなる。
【0059】
本明細書に記載のSREは、SEQ ID NO: 1のCA2 WTに対して、M1del、およびL156Hなどの1つまたは2つの変異を含むが、これらに限定されないCA2 DRDを含んでもよい。いくつかの実施形態では、CA2 DRDは、SEQ ID NO: 1に対するL156H変異を含み、さらに1つまたは複数の追加の変異を含む。いくつかの実施形態では、CA2 DRDは、SEQ ID NO: 1に対するM1delおよびL156H変異を含み、さらに1つまたは複数の追加の変異を含む。いくつかの実施形態では、CA2 DRDは、SEQ ID NO: 1に対するM1delアミノ酸欠失およびL156Hアミノ酸置換を含み、さらに、1つまたは複数の追加のアミノ酸置換を含んでいる。
【0060】
また、本明細書では、少なくとも1つのエフェクターモジュールを含むバイオサーキットシステムも提供される。バイオサーキットのエフェクターモジュールは、CA2(SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:2)由来の刺激応答要素(SRE)を含んでもよい。一実施形態では、SREは、SEQ ID NO: 4のアミノ酸配列からなるか、又はそれからなる。バイオサーキットは、SREに付着、付加、又は関連付けられる少なくとも1つのペイロードも含んでもよい。ペイロードは、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含む、ヒトIL15を含んでもよく、ペイロードは、SEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列を含む核酸配列によりコードされてもよい。
【0061】
[表2]
【0062】
いくつかの実施形態において、本開示は、安定化率及び不安定化率を測定することによって、タンパク質、発現、機能又はレベルを調節する方法を提供する。本明細書で使用される場合、安定化比は、SREに特異的な刺激がない場合の目的のタンパク質の発現、機能又はレベルに対する、刺激に応答した目的のタンパク質の発現、機能又はレベルの比として定義され得る。本明細書において、不安定化比は、構成的に発現している、SREに特異的な刺激の非存在下での対象タンパク質の発現、機能またはレベルに対する、エフェクターモジュールに特異的な刺激の非存在下での対象タンパク質の発現、機能またはレベルの比として定義することができる。本明細書で用いる「構成的」とは、SREに結合しておらず、したがって刺激の存在下および非存在下の両方で発現している対象タンパク質の発現、機能またはレベルを意味する。
【0063】
本明細書で使用する「ペイロード」または「ターゲットペイロード」または「ペイロードオブインタレスト(POI)」とは、機能が変化する任意のタンパク質として定義される。ペイロードは、任意のタンパク質またはその断片を含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、本開示のペイロードは、IL15を含む。同じ遺伝子またはタンパク質に対する特定の遺伝子および/またはタンパク質命名法は、ダッシュ「-」のような句読点またはギリシャ文字のような記号を含むまたは含まない場合があることは当技術分野で理解されている。本明細書において、これらが含まれるか除外されるかにかかわらず、当業者に理解されるように、その意味が変更されることは意図されない。例えば、IL15、IL15およびIL-15は、同じインターロイキンを指す。いくつかの実施形態では、本開示のペイロードは、特定の免疫応答を刺激するIL15インターロイキンサイトカインであってよい。
【0065】
本開示のペイロードは、ヒトIL15のアミノ酸配列、例えばUniProtKB - P40933(IL15_HUMAN)と同様のアミノ酸配列で構成されてもよい。一実施形態では、IL15ペイロードは、表2(SEQ ID NO.8)に提供されるアミノ酸配列からなる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示のペイロードは、CD8+TEM、ナチュラルキラー(NK)細胞及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの免疫細胞、並びに免疫療法に用いられるCAR T細胞の拡大、生存、持続、及び効力を改善するために利用され得る。一態様において、本開示は、サイトカイン療法に関連する毒性を最小化するためのバイオ回路及び組成物を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、エフェクターモジュールは、CA2 DRD-IL15融合ポリペプチドであってもよい。いくつかの実施形態では、本開示のIL15含有構築物は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、伸長因子1α(EF1α)プロモーター、HIV LTRプロモーターの転写制御下に置かれ得る。3-ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、Rous肉腫ウイルス長鎖反復(RSV)プロモーター、脾臓焦点形成ウイルス(SFFV)プロモーター、合成MNDプロモーター、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)プロモーター、合成RPBSAプロモーターまたはユビキチンプロモーターを含む。
【0068】
IL15を介した活性化の特徴は、IL15がIL15受容体のαサブユニット(IL15Ra)との複合体として提示され、同一細胞上または異なる細胞上の膜結合IL15β/γ受容体に結合して活性化するトランスプレゼンテーションの機構にある。様々な実施形態において、本開示のペイロードは、膜結合IL15であり、前記膜結合IL15のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列からなる。
【0069】
本開示のペイロードは、本明細書に開示されるような核酸配列を含んでいてもよいが、ペイロードは、記載されたものよりも追加のまたはより少ないヌクレオチドを含んでいてもよい。そのような核酸配列は、約1以上のヌクレオチド、約2以上のヌクレオチド、約3以上のヌクレオチド、約4以上のヌクレオチド酸、約5以上のヌクレオチド、約6以上のヌクレオチド、約7以上のヌクレオチド、約8以上のヌクレオチド、約9以上のヌクレオチド、約10以上のヌクレオチドまたは10以上のヌクレオチドから構成されても良い。
【0070】
エフェクターモジュール、そのSRE、ペイロードを含むバイオサーキットの構成要素は、核酸系であってもよい。「核酸」という用語は、その最も広い意味において、ヌクレオチドのポリマー、例えば、連結したヌクレオシドを含んでなる任意の化合物および/または物質を含む。これらのポリマーは、しばしばポリヌクレオチドと呼ばれる。本開示の例示的な核酸またはポリヌクレオチドには、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、スレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA、限定はしないがβ-D-リボ配置を有するLNA、α-L-リボ配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2′-アミノ機能化を有する2′-アミノ-LNA、2′-アミノ機能化を有する2′-アミノ-α-LNA)またはそのハイブリッドが含まれる。
【0071】
いくつかの実施形態では、核酸分子はDNAである。いくつかの実施形態では、核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。本明細書で使用する場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、目的のポリペプチドをコードし、インビトロ、インビボ、in situ又はex vivoで目的のコードされたポリペプチドを生成するために翻訳されることができる任意のポリヌクレオチドを意味する。本開示のポリヌクレオチドは、mRNAまたは任意の核酸分子であってもよく、化学的に修飾されていてもいなくてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、翻訳開始において役割を果たす5'UTR配列を保有し得る。5'UTR配列は、リボソームが遺伝子の翻訳を開始するプロセスに関与することが一般に知られているKozak配列などの特徴を含んでもよく、Kozak配列はコンセンサスXCCR(A/G)CCAUGを有し、ここでRは開始コドン(AUG)の3塩基上流のプリン(アデニンまたはグアニン)、Xは任意のヌクレオチドである。一実施形態では、Kozak配列はACCGCCである。標的細胞または組織の豊富に発現している遺伝子に典型的に見出される特徴を設計することによって、本開示のポリヌクレオチドの安定性およびタンパク質生産が増強され得る。
【0073】
一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、参照ポリペプチド配列と一定の同一性を有するバリアントポリペプチドをコードし得る。本明細書で使用される場合、「参照ポリペプチド配列」は、出発ポリペプチド配列を指す。参照配列は、野生型配列または別の配列の設計において参照される任意の配列であってよい。
【0074】
当技術分野で知られている「同一性」という用語は、配列を比較することによって決定される、2つ以上の配列間の関係を意味する。当技術分野では、同一性はまた、2つ以上の残基の文字列(アミノ酸または核酸)間の一致数によって決定される、配列間の配列関連性の程度を意味する。同一性は、特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によってaDRDressedギャップアラインメント(もしあれば)を有する2つ以上の配列間の同一の一致のパーセントを測定する。関連する配列の同一性は、既知の方法によって容易に算出することができる。このような方法としては、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988、Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994、Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987、Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991、およびCarillo et al., SIAM J. Applied Math. 48, 1073 (1988)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
いくつかの実施形態では、バリアント配列は、参照配列と同じまたは類似の活性を有することができる。あるいは、変種は、参照配列と比較して変化した活性(例えば、増加または減少)を有していてもよい。一般に、本開示の特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変種は、本明細書に記載され当業者に公知の配列アラインメントプログラムおよびパラメータによって決定される、その特定の参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%95%、96%、97%、98%、99%だが100%より少ない配列同一性を有するであろう。アラインメントのためのそのようなツールには、BLASTスイート(Stephen F. Altschul, Thomas L. MaDRDen, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997), "Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search program", Nucleic Acids Res. 25:3389-3402.)のものがある。
【0076】
本開示のエフェクターモジュールは、目的のペイロードの分布を調節するシグナル配列、エフェクターモジュール構築物からのペイロードの切断を促進する切断および/または処理機能、エフェクターモジュールの細胞局在を調節できるターゲティングおよび/または浸透シグナル、タグ、および/またはエフェクターモジュールの異なる構成要素を連結する1以上のリンカー配列からさらになる場合がある。
【0077】
SREおよびペイロード領域に加えて、本開示のエフェクターモジュールは、1つまたは複数の信号シーケンスなどの1つまたは複数の追加機能をさらに含んでもよい。
【0078】
シグナル配列(シグナルペプチド、ターゲティングシグナル、ターゲットペプチド、ローカリゼーション配列、トランジットペプチド、リーダー配列またはリーダーペプチドと呼ばれることもある)は、タンパク質(例えば、本開示のエフェクターモジュール)をその指定の細胞内および/または細胞外の位置に向ける。タンパク質シグナル配列は、ほぼ全ての分泌タンパク質および多くの膜貫通タンパク質の標的化および転位において中心的な役割を果たす。
【0079】
シグナル配列とは、新しく合成されたタンパク質のうち、特定の場所に向かうタンパク質のN末端に存在する短い(5-30アミノ酸長)ペプチドのことである。シグナル配列は、シグナル認識粒子(SRP)により認識され、タイプIおよびタイプIIシグナルペプチドペプチダーゼにより切断される。ヒトタンパク質に由来するシグナル配列は、エフェクターモジュールの制御モジュールとして組み込むことができ、エフェクターモジュールを特定の細胞内または細胞外の場所に誘導することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、シグナル配列は、必ずしもではないが、エフェクターモジュールのN末端またはC末端に位置してもよく、必ずしもではないが、所望のエフェクターモジュールから切断されて、「成熟」ペイロードを得てもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるシグナル配列は、シグナル配列のアミノ酸配列の1位のメチオニンを排除していてもよい。これは、M1del変異と呼ばれ得る。
【0082】
シグナル配列は、分泌タンパク質など天然に存在するシグナル配列のほか、タンパク質の既知のシグナル配列から改変された変異体であってもよい。
【0083】
ある実施態様では、標的細胞の表面膜に目的のペイロードを誘導するシグナル配列が使用され得る。標的細胞の表面へのペイロードの発現は、ペイロードの非標的in vivo環境への拡散を制限するのに有用であり、それによってペイロードの安全性プロファイルを潜在的に改善することができる。さらに、ペイロードの膜提示は、生理学的および定性的なシグナル伝達、ならびにより長い半減期のためのペイロードの安定化および再利用を可能にする可能性がある。膜配列は、目的のペイロードのN末端成分の内因性シグナル配列であってもよい。任意に、この配列を異なるシグナル配列に交換することが望ましい場合がある。シグナル配列は、ペイロードがT細胞の表面上に提示されるように、目的の細胞型の分泌経路との適合性に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、シグナル配列は、IgEシグナル配列、CD8aシグナル配列(CD8aリーダーとも呼ばれる)、又はIL15Raシグナル配列(IL15Raリーダーとも呼ばれる)、又はM1del CD8aシグナル配列(M1del CD8リーダー配列とも呼ばれる)であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、エフェクターモジュールは、切断及び/又は処理機能を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示のエフェクターモジュールは、少なくとも1つのタンパク質開裂シグナル/部位を含んでもよい。タンパク質切断シグナル/部位は、N末端、C末端、N末端とC末端の間の任意の空間、例えば、N末端とC末端の間の中間の位置、N末端と中間の位置、中間の位置とC末端の間、及びそれらの組み合わせに限定されないが、に配置されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、エフェクターモジュールは、リンカーを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、本開示のエフェクターモジュールは、リンカー配列をさらに含んでもよい。リンカー領域は、主に、エフェクターモジュール内の2つ以上のポリペプチドの間のスペーサーとして機能する。本明細書で使用される「リンカー」または「スペーサー」は、2つの分子、または組換えタンパク質の2つのドメインなどの分子の2つの部分を接続する分子または分子のグループを指す。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「リンカー」(L)または「リンカードメイン」または「リンカー領域」または「リンカーモジュール」または「ペプチドリンカー」は、エフェクターモジュールのドメイン/領域のいずれかを連結する、約1~100アミノ酸長のオリゴまたはポリペプチド領域(ペプチドリンカーとも呼ばれる)を意味する。
【0088】
いくつかの実施形態では、人工的に設計されたペプチドリンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに相対的に自由に動けるように、グリシン(G)やセリン(S)のような柔軟な残基のポリマーで構成されてもよい。隣接する2つのドメインが互いに干渉しないようにすることが望ましい場合には、より長いリンカーを用いることができる。特定のリンカー配列の選択は、融合構築物の生物学的活性、安定性、フォールディング、標的化および/または薬物動態学的特徴に影響を及ぼす場合に懸念され得る。
【0089】
リンカー配列は、マルチドメインタンパク質に由来する天然リンカーであってもよい。天然リンカーは、タンパク質内の2つの異なるドメインまたはモチーフを分離する短いペプチド配列である。
【0090】
一実施形態では、リンカーは、BamHI部位であってもよい。非限定的な例として、BamHI部位は、アミノ酸配列GS及び/又はDNA配列GGATCCを有する。
【0091】
本開示の生体回路は、1つ以上の刺激によってトリガーされる。いくつかの実施形態では、刺激は、小分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、細胞透過性である。いくつかの実施形態では、小分子は、FDA承認済みであり、安全であり、経口投与可能である。
【0092】
いくつかの実施形態において、リガンドは、炭酸脱水酵素に結合する。いくつかの実施形態では、リガンドは、炭酸脱水酵素に結合し、炭酸脱水酵素の機能を阻害し、本明細書では、炭酸脱水酵素阻害剤と称される。
【0093】
いくつかの実施形態では、リガンドは、炭酸脱水酵素2に結合する低分子である。一実施形態では、小分子は、CA2阻害剤である。ある実施形態では、リガンドは、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド及びジクロルフェナミドから選択される小分子である。いくつかの実施形態では、リガンドは、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、塩酸ドルゾラミド、ジクロルフェナミド、クロルタリドン、メタゾラミド、トピラマート、インダパミド、塩酸アンブロキソール、グリメピリド、塩酸テトラカイン及びセレコキシブから選択される小分子である。いくつかの実施形態では、リガンドは、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド塩酸塩、ジクロルフェナミド、クロルタリドン、メタゾラミドまたはトピラマートから選択される低分子である。いくつかの実施形態では、リガンドは、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド塩酸塩、ジクロルフェナミド又はメタゾラミドから選択されるCA2阻害剤である。いくつかの実施形態では、リガンドは、アセタゾラミド(ACZ)である。
【0094】
いくつかの実施形態では、SREの非存在下で免疫細胞、及び/又はキメラ抗原受容体の活性に影響を与えないリガンドが、好ましく選択され得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、プロモーターを含む。
【0096】
本明細書で使用するプロモーターとは、細胞の転写装置によって認識され、本開示のポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するために必要なDNA配列と定義される。ベクターは、本開示のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたネイティブまたは非ネイティブのプロモーターを含み得る。選択されたプロモーターは、強い、弱い、構成的、誘導的、組織特異的、発生段階特異的、および/または生物特異的であり得る。強い構成的プロモーター配列は、それに作動的に連結されるポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することが可能である。強力な構成的プロモーターの例としては、限定されないが、即時型サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターや伸長成長因子-1アルファ(EF-1アルファ)などがある。使用され得る他の構成的プロモーターには、限定されないが、シミアンウイルス40(SV40)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖反復(LTR)プロモーター、鳥白血病ウイルスプロモーター、脾臓焦点形成ウイルス(SFFV)プロモーター、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)プロモーター、が含まれる。エプスタイン・バー・ウイルス即時型プロモーター、ラス肉腫ウイルスプロモーター、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、ユビキチンC(Ubc)プロモーター、ヒトU6低核タンパク質プロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターなどが含まれるが、特に限定されない。合成プロモーターには、MNDプロモーターおよびRPBSAプロモーターが含まれる。ある実施態様では、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターなどの誘導性プロモーターが使用され得るが、これらに限定されるものではない。
【0097】
いくつかの実施形態では、最適なプロモーターは、リガンドの非存在下で本開示のSRE及びペイロードの最小限の発現を達成し、リガンドの存在下で検出可能な発現を達成するその能力に基づいて選択され得る。
【0098】
追加のプロモーター要素、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節するために使用されるかもしれない。このような領域は、開始部位の10-100塩基対上流または下流に位置することができる。いくつかの例では、2つ以上のプロモーターエレメントが、協調的または独立的に転写を活性化するために使用されるかもしれない。
【0099】
本開示のバイオ回路は、CA2由来の少なくとも1つのSRE(「CA2 SRE」と呼ばれる)を含んでいてもよい少なくとも1つのエフェクターモジュールを含んでいてもよく、それは少なくとも1つの関心対象のペイロードに動作可能に連結されていてもよい。これらのタイプの生体回路及びエフェクターモジュールは、「CA2生体回路」及び「CA2エフェクターモジュール」と称される。さらに、CA2エフェクターモジュールは、シグナル配列、リンカー、スペーサー、タグ、フラグ、切断部位、及びIRESを含むがこれらに限定されない追加の特徴を含んでいてもよい。本明細書で教示された、または当技術分野で既知の例示的なSRE(例えば、DRD)、関心のあるペイロード、シグナル配列、リンカー、スペーサー、ヒンジ、タグ、フラグ、開裂部位、およびIRESのいずれかを組み合わせて、本開示のCA2エフェクターモジュールを作成することができる。
【0100】
一実施形態では、CA2エフェクターモジュールは、目的のペイロードを含んでいる。目的のペイロードは、野生型配列、野生型配列の断片、及び/又は1つ以上の変異を含んでいてもよい。一実施形態では、CA2エフェクターモジュールは、調節されたインターロイキン-15(IL15)を産生する。いくつかの実施形態では、IL15ペイロードは、DRDのN末端である。CA2エフェクターモジュールは、表3のIL15関連配列のいずれかを含むか、またはそれらから誘導されてもよい。いくつかの実施形態では、CA2エフェクターモジュール内の少なくとも1つのペイロードは、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列と少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むIL15(例えばIL15ペイロード)であり、ペイロードは、SEQ ID NO: 9のヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされてもよい)。いくつかの実施形態では、ペイロードは、IL15の膜結合型である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、膜貫通ドメインと細胞内テールとを含むIL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド成分、膜貫通ドメイン及び細胞内テールを含むIL15の膜結合形態であり、膜貫通ドメインはIL15ポリペプチド成分に対してC末端であり、細胞内テールは膜貫通ドメインに対してC末端である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、膜貫通ドメイン、細胞内テールおよび1つまたは複数のリンカーを含むIL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態では、リンカーは、SREまたはDRDとペイロードとの間、またはペイロード内の異なるドメインとの間に配置され得るペプチドドメインである。いくつかの実施形態において、リンカーは、グリシンおよびセリンアミノ酸残基を含むペプチドドメインである。いくつかの実施形態では、グリシンおよびセリンアミノ酸残基を含むペプチドリンカーは、2~36アミノ酸の長さであってよい。一実施形態では、CA2エフェクターモジュールにおける少なくとも1つのペイロードは、リンカー(GS)15、B7.1ヒンジ、B7.1膜貫通ドメイン、B7.1細胞内尾部、及びリンカー(GS)をさらに含むIL15の膜結合型である。CA2エフェクターモジュールは、IL15ペイロード成分と同様に、別の親タンパク質からの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインのペイロード成分を含んでもよい。一実施形態では、CA2エフェクターモジュールの少なくとも1つのペイロードは、野生型配列と比較して、少なくとも1つの変異を含む。一実施形態では、CA2エフェクターモジュール中の少なくとも1つのペイロードは、野生型配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0101】
構築物および構築物の構成要素の非限定的な例を表 3に示す。
【0102】
[表3]
【0103】
様々な実施形態において、エフェクターモジュールは、調節された膜結合型インターロイキン-15(IL15)を産生する。いくつかの実施形態では、エフェクターモジュールは、表3に記載されているようにIL15-293またはIL15-295である。様々な実施形態において、IL15ペイロードは、IL15の膜結合型からなるCA2 DRD融合タンパク質として発現される。
【0104】
本開示のCA2バイオ回路及び/又はCA2エフェクターモジュールは、1つの(monocistronic)又は2つ以上の(multicistronic)メッセージ(例えば、関心のあるペイロード)が生成されるという意味のモノシストロン又はマルチシストロンであってもよい。つのメッセージが生成される場合、CA2バイオサーキットまたはCA2エフェクターモジュールはバイシストロンとみなされる。一実施形態では、本開示の少なくとも1つのCA2エフェクターモジュールは、モノシストロン性である。
【0105】
本開示の様々な実施形態は、記載されたポリヌクレオチドの1つまたは複数を含む核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、IL15ペイロードに作動可能に連結された薬物応答性ドメイン(DRD)を含む組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記DRDはヒト炭酸脱水酵素II(CA2)に由来し、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して1、2、3、4またはそれ以上の変異を構成する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2のポリヌクレオチドをさらに含み、CARまたはTCRは、関心対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでいる。いくつかの実施形態では、CARまたはTCRは、例えば、CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、関心のある抗原に特異的な抗原結合ドメインからなる。
【0106】
本教示は、本開示のCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール又はシステムの1つ以上、及び任意に少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は不活性成分を含む医薬組成物を更に含む。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、本明細書に記載されるCA2バイオ回路または構成要素の1つ以上、またはその薬学的に許容される塩、任意に生理学的に適切な担体および賦形剤などの他の化学成分との調製物を意味する。
【0108】
賦形剤」または「不活性成分」という用語は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性または非活性物質を指す。そのような不活性成分の非限定的な例が本明細書に開示されている。
【0109】
いくつかの実施形態において、組成物は、ヒトの患者又は被験者などのヒトに投与される。本開示の目的のために、フレーズ「有効成分」は、一般に、本明細書に記載されるように送達される任意の1つ又は複数のCA2生体回路構成要素を指す。
【0110】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトへの投与に適した医薬組成物に向けられているが、当業者には、そのような組成物は、一般に、任意の他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば、非ヒト哺乳動物への投与に適していることが理解されよう。医薬組成物の投与が企図される対象としては、牛、馬、鶏、豚などの農業動物、猫、犬などの家畜、またはマウス、ラット、ウサギ、犬、非ヒト霊長類などの研究動物などの非ヒト哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
本開示に従う医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/又は複数の単一単位用量として、調製、包装、及び/又は販売されてもよい。本明細書で使用されるように、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の離散的な量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量および/または例えばそのような投与量の2分の1もしくは3分の1のようなそのような投与量の便利な分量に等しい。
【0112】
本開示に従う医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤または不活性成分、および/または任意の追加成分の相対量は、処置される対象の身元、サイズ、および/または状態に応じて、さらに組成物が投与される経路に応じて変化するであろう。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含んでいてもよい。
【0113】
疾患の治療または改善の有効性は、例えば、疾患の進行、疾患の寛解、症状の重症度、疼痛の軽減、生活の質、治療効果を維持するために必要な薬物の用量、疾患マーカーのレベル、または治療されるまたは予防の対象となる所定の疾患に適した他の任意の測定可能なパラメータの測定により評価することができる。このようなパラメータのいずれか1つ、またはパラメータの任意の組み合わせを測定することによって、治療または予防の有効性を監視することは、当業者の能力の範囲内である。本開示の組成物の投与に関連して、例えば癌に対して「有効」とは、臨床的に適切な方法での投与が、症状の改善、治癒、疾患負荷の軽減、腫瘍質量または細胞数の減少、延命、生活の質の改善、または特定の種類の癌の治療に精通した医師によって肯定的であると一般に認識される他の効果など、患者の少なくとも統計的に有意な割合に対して有益な効果を生じることを示す。
【0114】
治療効果または予防効果は、疾患状態の1つ以上のパラメータに統計的に有意な改善が見られる場合、または他の方法で予想される場所で症状が悪化または発症しないことによって明らかになる。一例として、疾患の測定可能なパラメータにおける少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれ以上の好ましい変化は、効果的な治療を示すことができる。本開示の所定の組成物または製剤に対する有効性はまた、当該技術分野で知られているように、所定の疾患に対する実験動物モデルを用いて判定することができる。実験動物モデルを使用する場合、治療の有効性は、統計的に有意な変化が観察されたときに証明される。
【0115】
本開示の組成物は、送達に適した任意の方法で製剤化されてもよい。製剤は、ナノ粒子、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、リピド、リポプレックス、リポソーム、ポリマー、炭水化物(単糖を含む)、カチオン性脂質およびこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施形態では、医薬または他の製剤は、不活性成分である少なくとも1つの賦形剤を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「不活性成分」という用語は、製剤に含まれる1つ以上の不活性剤を指す。いくつかの実施形態では、本開示の製剤において使用され得る不活性成分のすべて、なし、又は一部は、米国食品医薬品局(FDA)により承認されてもよい。本開示の組成物は、1つ以上の経路及び様式を介して細胞又は被験体に送達されてもよい。本明細書に記載の1つ以上のCA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SRE、ペイロード及び他の構成要素を含むウイルスベクターは、細胞及び/又は被験者に送達するために使用されてもよい。他の様式もまた、mRNA、プラスミド、および組換えタンパク質として使用され得る。
【0117】
本開示の医薬組成物、CA2バイオサーキット、CA2バイオサーキット構成要素、それらのSREまたはペイロードを含むCA2エフェクターモジュールは、裸の形態で細胞、組織、器官および/または生物に送達され得る。本明細書で使用される場合、用語「裸」は、トランスフェクションまたは透過性を促進する薬剤または修飾から解放されて送達される医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、それらのSREまたはペイロードを含むCA2エフェクターモジュールを意味する。裸の医薬組成物、CA2バイオサーキット、CA2バイオサーキット構成要素、それらのSREまたはペイロードを含むCA2エフェクターモジュールは、当技術分野で知られており本明細書に記載されている投与経路を用いて細胞、組織、器官および/または生物に送達され得る。いくつかの実施形態では、裸の送達は、生理食塩水又はPBSなどの単純な緩衝液中での製剤化を含んでもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物、CA2バイオサーキット、CA2バイオサーキット構成要素、それらのSRE又はペイロードを含むCA2エフェクターモジュールは、本明細書に記載の方法を用いて、製剤化されてもよい。製剤は、医薬組成物、CA2バイオサーキット、CA2バイオサーキット構成要素、それらのSRE又はペイロードを含むCA2エフェクターモジュールを含んでよく、それらは修飾されてもよいし、修飾されなくてもよい。製剤は、細胞浸透剤、薬学的に許容される担体、送達剤、生体侵食性ポリマーまたは生体適合性ポリマー、溶媒、および/または徐放性送達デポをさらに含み得るが、これらに限定されることはない。本開示の製剤は、当該技術分野で既知であり本明細書に記載される投与経路を用いて細胞に送達され得る。
【0119】
医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路コンポーネント、それらのSREまたはペイロードを含むCA2エフェクターモジュールは、直接浸漬または入浴、カテーテル経由、ゲル、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、および/または滴下、組成物でコーティングまたは含浸された布または生分解性材料などの基体の使用などを含むがそれだけに限らない当分野におけるいくつかの方法のいずれかを用いて臓器または組織へ直接送達できるようにも処方することも可能である。
【0120】
本開示の別の態様では、CA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、関心のあるペイロード(例えば、IL15)、および本開示の組成物、ならびに前記ポリヌクレオチドを含むベクターをコードするポリヌクレオチドは、細胞に導入され得る。非限定的な例として、細胞は、エフェクター免疫細胞であってもよい。
【0121】
様々な実施形態において、本開示は、本開示の1つ以上の核酸分子、1つ以上のベクター、又は1つ以上の組換えタンパク質を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞におけるIL15ペイロードの発現、機能、および/またはレベルを調節する方法が提供され、前記方法は、DRDが応答する刺激を細胞に投与することを含み、刺激は、IL15ペイロードの発現、機能および/またはレベルを調節するのに十分な量において投与される。いくつかの実施形態では、細胞は単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、細菌細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。哺乳類細胞は、ヒト細胞であってもよい。ヒト細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であってよい。いくつかの実施形態では、細胞は、CD4+又はCD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、ヒトT細胞またはヒトNK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、ここでCARまたはTCRは、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含んでなる。
【0122】
本開示の1つの態様において、CA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、関心のあるペイロード(例えば、IL15)および本開示の組成物をコードするポリヌクレオチドは、ウイルスベクターにパッケージされ得る、またはウイルスゲノムに統合されて、そのポリヌクレオチドの一過性および安定発現を可能にすることができる。好ましいウイルスベクターは、レンチウイルスベクター及びガンマレトロウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターである。レトロウイルスベクターを構築するために、CA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、CA2 DRDまたは関心のあるペイロード(例えば、免疫療法剤)をコードするポリヌクレオチド分子を、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入し、複製不能なウイルスを生成する。この組換えウイルスベクターを、gag、pol、env遺伝子を含むがLTR(レンチウイルスベクターの場合)およびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株に導入する。組換えレトロウイルス粒子は、培養液中に分泌された後、回収され、任意で濃縮され、遺伝子導入に使用される。レンチウイルスベクターは、分裂している細胞にも非分裂の細胞にも感染することができるため、特に好ましい。
【0123】
ベクターはまた、針、エレクトロポレーション、ソノポレーション、ヒルドポレーションのような物理的方法、無機粒子(例えば、リン酸カルシウム、シリカ、金)のような化学担体および/または化学的方法によって非ウイルス法によって細胞に移されることができる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質、脂質ナノエマルジョン、ナノ粒子、ペプチドベースのベクター、またはポリマーベースのベクターなどの送達のために、合成または天然の生分解性薬剤が使用され得る。
【0124】
本開示のCA2バイオサーキットシステム、CA2エフェクターモジュール、SREおよび/またはペイロードは、1つまたは複数の様式を用いて送達され得る。本開示は、CA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、及び関心のあるIL15ペイロード、及びそれらの組み合わせをコードする本開示のポリヌクレオチドをパッケージ化したベクターも提供する。本開示のベクターはまた、パッケージ化されたポリヌクレオチドを細胞、局所組織部位または被験者に送達するために使用されてもよい。これらのベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ウイルスベクターおよび粒子を含む任意の種類のものであってよい。ウイルスベクター技術はよく知られており、Sambrookら(2001, Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)に記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、オンコルトウイルスなどがあるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、本明細書に例示されるDRD及びIL15ペイロードをコードする1つ以上の核酸分子を細胞に導入するのに有用なウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス又はピコルナウイルスから得られるものであってもよい。
【0125】
一般に、ベクターは、少なくとも1つの生物で機能する複製起点、プロモーター配列および便利な制限酵素部位、ならびに1つ以上の選択可能なマーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子)を含んでいる。
【0126】
いくつかの実施形態では、組換え発現ベクターは、ベクターが導入される宿主細胞の種類に特異的な転写及び翻訳開始及び終了コドン等の調節配列を含んでいてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、本明細書で教示される1つ以上のペイロードを含んでよく、ここで、2つ以上のペイロードは、1つのCA2エフェクターモジュールに含まれてよく、この場合、2つ以上のペイロードは、1つのCA2エフェクターモジュールに含まれる。この場合、2つ以上のペイロードは、同じ刺激によって同時にチューニングされる。他の実施形態では、本開示のベクターは、2つ以上のCA2エフェクターモジュールを含んでよく、各CA2エフェクターモジュールは、異なるペイロードを含んでいる。この場合、2つ以上のCA2エフェクターモジュール及びペイロードは、異なる刺激によって調整され、2つ以上の構成要素の別々に独立した調節を提供する。他の実施形態では、本開示のベクターは、1つ以上のCA2エフェクターモジュール及び1つ以上の非CA2エフェクターモジュールを含んでよく、各CA2エフェクターモジュールは、異なるペイロードを構成している。この場合、CA2エフェクターモジュール及びペイロードは、異なる刺激によって調整され、2つ以上の成分の別々に独立した調節を提供する。
【0128】
いくつかの実施形態では、レンチウイルスのビヒクル/粒子が送達様式として使用され得る。レンチウイルスは、レトロウイルス科のウイルスのサブグループであり、宿主ゲノムに統合する前にウイルスRNAゲノムのDNAへの逆転写が必要であることから、この名前が付けられた。そのため、レンチウイルスの最も重要な特徴は、その遺伝物質が標的/宿主細胞のゲノムに統合されることである。レンチウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルスがある。HIV-1およびHIV-2、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ビスナメディおよびカプリン関節炎脳炎ウイルス(CAEV)などがある。
【0129】
通常、遺伝子導入ビークルを構成するレンチウイルス粒子は、それ自体で複製ができない(「自己不活性化」とも呼ばれる)。レンチウイルスは、無傷の宿主核膜を介した侵入機構により、分裂中および非分裂中の細胞の両方に感染することができる(Naldini Lら, Curr. Opin. Biotechnol, 1998, 9: 457-463)。例えば、Env、Vif、Vpr、Vpu、Nef、TatといったHIVの病原性遺伝子を欠失させることにより、生物学的に安全なベクターが作製されている。また、HIV-1/HIV-2由来のレンチウイルスベクターは、非分裂性細胞への導入遺伝子の効率的な導入、統合、長期発現を可能にする。本明細書で使用する場合、「組換え」という用語は、レンチウイルス配列と非レトロウイルス配列の両方を含むベクターまたは他の核酸を指す。
【0130】
レンチウイルス粒子は、ヒトHEK293T細胞などの生産細胞にウイルスパッケージングエレメントとベクターゲノムそのものを共発現させることにより作製することができる。これらのエレメントは、通常、3つまたは4つの別々のプラスミドで提供される。生産者細胞は、ウイルスのコア(すなわち構造タンパク質)および酵素成分、ならびにエンベロープタンパク質(複数可)を含むレンチウイルス成分をコードするプラスミド(パッケージング系と呼ぶ)、ならびに外来トランスジーンを含むゲノムをコードするプラスミドを共導入し、標的細胞であるビークル自体に導入する(導入ベクターとも呼ばれる)。一般に、プラスミドまたはベクターは、生産者細胞株に含まれる。プラスミド/ベクターは、生産者細胞株へのトランスフェクション、形質導入、または感染により導入される。トランスフェクション、トランスダクションまたは感染のための方法は、当業者によってよく知られている。非限定的な例として、パッケージングおよび導入構築物は、一般にneo、DHFR、Gln合成酵素またはADAなどの優性選択マーカーとともに、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションによって生産者細胞株に導入され、その後、適切な薬剤の存在下で選択およびクローンの単離を行うことが可能である。
【0131】
プロデューサー細胞は、外来遺伝子、例えば、本開示のCA2エフェクターモジュールを含む組換えウイルス粒子を産生する。組換えウイルス粒子は、培養液から回収され、当業者によって使用される標準的な方法によって滴定される。組換えレンチウイルスビークルは、標的細胞を感染させるために使用することができる。
【0132】
高力価レンチウイルス粒子の産生に使用できる細胞としては、HEK293T細胞、293G細胞、STAR細胞(Relanderら, Mol. Ther., 2005, 11: 452-459)、FreeStyle(商標) 293 Expression System (ThermoFisher, Waltham, MA) およびその他のEK293Tベースのプロデューサー細胞株(例えば、Stewartら, Hum Gene Ther.2011, 22(3):357-369; Leeら, Biotechnol Bioeng, 2012, 10996):1551-1560;Thromら、Blood.2009, 113(21): 5104-5110、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0133】
いくつかの態様において、エンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス(VSV G)のGタンパク質またはバキュロウイルスgp64エンベロープタンパク質など、他のウイルスからの異種エンベロープタンパク質であってもよい。VSV-G糖タンパク質は、特に、ヴェシクロウイルス属:カラジャスウイルス(CJSV)、チャンディプラウイルス(CHPV)、コカルウイルス(COCV)、イスファハンウイルス(ISFV)、マラバウイルス(MARAV)、ピリーウイルス(PIRYV)、アラゴウス小水疱口炎ウイルス(VSAV)、インディアナ水泡性口内炎ウイルス(VSIV)、ニュージャージー水泡性口内炎ウイルス(VSNJV)、およびベシクロウイルス属に仮分類の汚れ、BeAn 157575 virus (BeAn 157575)、Boteke virus (BTKV)、Calchaqui virus (CQIV)、ウナギウイルス・アメリカン(EVA)、グレイロッジウイルス(GLOV)、ジュロナウイルス(JURY)、クラマスウイルス(KLAV)、クワッタウイルス(KWAV)、ラ・ジョヤウイルス(LJV)、マルパイススプリングウイルス(MSPV)、マウントエルゴンコウモリウイルス(MEBV)、ペリネットウイルス(PERV)、Pike fry rhabdovirus (PFRV)、Porton virus (PORV)、Radi virus (RADIV)、Spring viremia of carp virus (SVCV)、Tupaia virus (TUPV)、Ulcerative disease rhabdovirus (UDRV)およびYug Bogdanovac virus (YBV)に分類される種の中から選択することができる。gp64等のバキュロウイルスenvタンパク質は、Autographa californica核ポリヘドロウイルス(AcMNPV)、Anagrapha falcifera核ポリヘドロシスウイルス、Bombyx mori核ポリヘドロシスウイルス、Choristoneura fumiferana核ポリヘドロウイルス、Orgyia pseudotsugata single capsid nuclear polyhedrosis virus、Epiphyas postvittana nucleopolyhedrovirus、Hyphantria cunea nucleopolyhedrovirus、Galleria mellonella nuclear polyhedrosis virus、Dhori virus、Thogoto virusAntheraea pemyi nuclear polyhedrovirus または Batken virusから由来することが可能である。
【0134】
レンチウイルス粒子に提供される他の要素は、5'または3'末端のいずれかのレトロウイルスLTR(longerminal repeat)、レトロウイルス輸出要素、任意でレンチウイルス逆反応要素(RRE)、プロモーターまたはその活性部分、およびローカス制御領域(LCR)またはその活性部分からなる場合がある。CA2エフェクターモジュールは、ベクターに連結されている。
【0135】
組換えレンチウイルス粒子を生成する方法は、当技術分野で議論されており、例えば、U.S. Pat.NOs8, 846, 385、7,745, 179、7,629,153、7,575,924、7,179, 903および6, 808, 905、これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0136】
使用されるレンチウイルスベクターは、pLVX、pLenti、pLenti6、pLJM1、FUGW、pWPXL、pWPI、pLenti CMV puro DEST、pLJM1-EGFP、pULTRA、pInducer20、pHIV-EGFP、pCW57.1、pTRPE、pELPS、pRRLおよびpLionIIなどから選択されてもよい、それに限定されない。
【0137】
レンチウイルスベクターは、前臨床研究および臨床応用のためにT細胞(例えば、初代ヒトT細胞またはJurkat細胞)に導入遺伝子を導入するために使用され、最近、再発/難治性B細胞リンパ腫に対するTisagenlecleucel(KYMRIAH(R))などの製品が承認された。VSV-G擬似型第3世代レンチウイルスベクターは、高力価、高い導入効率と安全性を提供し、T細胞工学のためのベクターとして選択されてきた。理論に縛られることを望まないが、T細胞工学は通常、CD3/CD28抗体によるT細胞の活性化、それに続くレンチウイルス導入、そして5日から30日(例えば、9日から14日または9日から15日)続く細胞膨張を伴うものである。一般に、レンチウイルスの導入遺伝子の組み込みは、T細胞(例えば、初代ヒトT細胞またはJurkat細胞)において完全に安定化するのに7日以上かかる場合がある。
【0138】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子発現動態を決定するために、CD3/CD28活性化初代ヒトT細胞を、導入遺伝子(例えば、IL15)を有するレンチウイルスで形質転換することができる。細胞は、生存率、ウイルスゲノム統合(例えば、定量的PCRを用いる)、転写レベル(例えば、定量的RT-PCRを用いる)、および導入遺伝子の細胞表面発現について、本明細書に記載の方法および/または当該分野で周知の方法により分析することができる。細胞は、導入前及び/又は導入後、例えば、導入後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30又は30日以上後に分析することができる。非限定的な例として、細胞は、導入後3~14日の間の様々な時点(例えば、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、及び/又は14日)で分析され得る。非限定的な例として、細胞は、導入後3~15日後に分析され得る。非限定的な例として、細胞は、導入後9~15日目に分析されてもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、CD3/CD28活性化初代ヒトT細胞は、形質導入後、CD3/CD28ビーズで再活性化することができる。細胞は、導入後5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30または30日以上後に再活性化され得る。細胞は、生存率、ウイルスゲノム統合(例えば、定量的PCRを用いる)、転写レベル(例えば、定量的RT-PCRを用いる)、導入遺伝子の細胞表面発現、コピー数、及び/又はmRNAレベルについて、本明細書に記載される方法及び/又は当該技術分野において既知の方法により分析することができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子を有するレンチウイルスを導入した活性化初代ヒトT細胞の細胞生存率は、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、又は99%より大きい。非限定的な例として、細胞生存率は90%より大きい。非限定的な例として、細胞生存率は85%以上である。
【0141】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子を有するレンチウイルスを形質導入したJurkat細胞の細胞生存率は、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、又は99%より大きい。非限定的な例として、細胞生存率は90%より大きい。非限定的な例として、細胞生存率は85%以上である。
【0142】
いくつかの実施形態では、細胞のゲノムへの導入遺伝子の組み込みは、飽和点以上であってもよい。非限定的な例として、飽和点は、細胞あたり3コピーであってもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、ゲノムへの導入遺伝子の組み込みは、評価された最初のタイムポイントでは高く、その後、培養の残りの期間安定する前に低い組み込み値に低下する場合がある。非限定的な例として、導入遺伝子のゲノムへの統合は、初期のタイムポイントにおいて細胞あたり最大20コピーであり、その後細胞あたり2コピーに減少し、培養の残りの期間を通して安定である。
【0144】
いくつかの実施形態では、T細胞の能力導入が評価されてもよい。少なくとも1人のドナーからのT細胞は、飽和レベル(例えば、ポアソン分布が予想される場合、各細胞がコピーを含むべき十分なウイルス)に達すると予測される用量及び飽和を5回超える高いレンチウイルス用量で導入遺伝子を含むレンチウイルスで形質導入されてもよい。すべての細胞がトランスジーンを発現しているかどうかを判断するために、細胞あたりのコピー、細胞の割合及びMFI(又はトランスジーンの培地中の濃度)を検出することができる。非限定的な例として、2人の異なるドナーからのT細胞は、導入遺伝子を含むレンチウイルスで形質転換されてもよい。導入は飽和と5倍飽和の2つの用量で行われ、導入後5-10日で、すべてのグループが統合されたトランスジーンの予測された飽和レベルに達するかそれを超え、グループ間で同様の発現強度を示すが、すべての細胞がトランスジーンを発現しているわけではないことを示すことができる。同じドナーから採取したT細胞であっても、すべてのT細胞が同じように導入されやすいとは限らない。GFPを発現する細胞の割合(検出限界以上)は、ドナー、ロット、ウイルス量によって異なる場合がある。
【0145】
いくつかの実施形態では、培養T細胞(例えば、初代ヒトT細胞及び/又はJurkat細胞)の割合が、導入遺伝子を発現してもよい。トランスジーンを発現する培養T細胞の割合は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または99%を超える場合があるが、それだけに限定されるものではない。非限定的な例として、その割合は70%以上であってもよい。非限定的な例として、その割合は75%より大きくてもよい。非限定的な例として、その割合は80%より大きくてもよい。非限定的な例として、その割合は85%より大きくてもよい。非限定的な例として、割合は、90%より大きくてもよい。非限定的な例として、その割合は95%より大きくてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、培養物からのmRNAレベルは、研究の期間にわたって低下する可能性がある。減少は、特定のトランスジーンに限定されない場合があり、その傾向は、発現されたタンパク質の複数のクラスにわたって見られる場合がある。mRNAレベルを増加させるために、mRNAレベルが初期レベルから低下した後に、細胞を再活性化させてもよい。細胞は、導入後5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、または30日以上、再活性化されてもよい。非限定的な例として、培養物中のmRNAレベルを増加させるために、導入後13日目にCD3/CD28ビーズで細胞を再活性化させてもよい。非限定的な例として、培養物中のmRNAレベルを増加させるために、細胞は、導入の14日後にCD3/CD28ビーズで再活性化されてもよい。非限定的な例として、培養物中のmRNAレベルを増加させるために、細胞は、導入の15日後にCD3/CD28ビーズで再活性化されてもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、培養物からの表面発現は、研究の期間にわたって低下し得る。例えば、表面発現は、形質導入後3~13日目、3~14日目、または3~15日目の間に減少してもよい。表面発現を増加させるために、表面発現が初期レベルより低下した後に、細胞を再活性化させてもよい。また、導入後5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または30日以上後に細胞を活性化させることができる。非限定的な例として、培養物中の表面発現を増加させるために、導入後13日目にCD3/CD28ビーズで細胞を再活性化させてもよい。非限定的な例として、培養物中の表面発現を増加させるために、細胞は、導入の14日後にCD3/CD28ビーズで再活性化されてもよい。非限定的な例として、培養物中の表面発現を増加させるために、細胞は、導入の15日後にCD3/CD28ビーズで再活性化されてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子はIL15(例えば、表3に記載の他のエフェクターモジュール構成要素と組み合わせた場合の膜結合IL15ペイロード)である。細胞生存率は、IL15で形質導入された細胞において90%以上であってよい。細胞生存率は、IL15で形質導入された細胞において85%より大きくてもよい。細胞がIL15で形質導入された初代T細胞である場合、生存細胞数は、減少する前に最初のタイムポイントにわたって増加する可能性がある。細胞がIL15を導入したJurkat細胞である場合、生存細胞数は少なくとも10日間増加する可能性がある。IL15で形質転換された細胞の細胞あたりのコピー数は、最初のタイムポイントでは高くても、後のタイムポイントでは50%以上減少することがある。IL15を導入した初代ヒトT細胞では、培地中の可溶性IL15のレベルは、研究の経過とともに着実に低下し、再刺激群ではわずかに増加することが確認された。IL15を導入したJurkat細胞では、培地中の可溶性IL15のレベルは、培養の前半でIL15の分泌が低下し、培養時間の後半まで低いレベルを維持する可能性がある。
【0149】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるレンチウイルス的に操作された細胞は、コピー数の最初の減少後に安定化するゲノムDNA統合、時間の経過とともに減少するRNA及び表面発現レベル、並びに再刺激後のRNA及び表面発現の上昇を有する。
【0150】
いくつかの実施形態では、レンチウイルス工学的細胞は、培養中5回サンプルを収集する以下の14日間の方法を用いて評価され得る。日目-1日目に、T細胞(例えば、初代ヒトT細胞又はJurkat細胞)を解凍し、CD3/CD28ビーズを加えてもよい。0日目に、各条件のレンチウイルスを添加し(例えば、0.5e6/mLで4mLの細胞)、非導入細胞のコントロールがある。1日目に培地を8mLに倍増し、2日目には培地を16mLに倍増する。3日目に4mLを採取し、4日目に培地を24mLに倍増させる。6日目に4mLを採取してから、培地を40mLに倍増する。8 日目に細胞を分割し(例えば、14 mL 0.5e6 cells/mL)、6 日目に 4 mL を採取してから培地を 40 mL に倍増することができる。10日目に4mLを収穫してから、培地を20mLに倍加してもよい。13日目には、培地を32mLに倍増する前に4mLを収穫する。培養物を半分に分け、その半分を活性化(CD3/CD28活性化ビーズ1:1)し、一晩刺激する。14日目に、刺激された細胞、刺激されていない細胞それぞれ4mLを採取し、培養を終了する。細胞を採取してゲノムDNAを抽出し、内在性ゲノムおよび導入遺伝子配列に対する標準曲線qPCRで定量し、検出量を比率に変換することにより、細胞あたりの導入遺伝子コピー数をアッセイする。平均蛍光強度(MFI)は、各グループに適切な染色を施したAttune上のFLOによって測定される。発現率は、アチューン上でFLOを行い、閾値以上の蛍光を発する細胞の割合を定量することによっても測定可能である。可溶性ペイロードは、各ポイントで培養上清を採取して MesoScale Discovery plate assay (MSD) を実行し、細胞密度で正規化することにより定量化できる。
【0151】
いくつかの実施形態では、本開示のCA2エフェクターモジュールは、メッセンジャーRNA(mRNA)として設計されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、目的のポリペプチドをコードし、インビトロ、インビボ、in situ又はex vivoで目的のコードされたポリペプチドを生成するために翻訳されることができる任意のポリヌクレオチドを意味する。
【0152】
本開示は、CA2生体回路システムの任意の1つ以上または構成要素を、それを必要とする被験者に投与することを含む方法を提供する。これらは、疾患、障害、及び/又は状態(例えば、ワーキングメモリ障害に関する疾患、障害、及び/又は状態)を予防又は治療又は画像化するために有効な任意の量及び任意の投与経路を用いて対象に投与され得る。必要な正確な量は、被験者の種、年齢、及び一般状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて、被験者ごとに異なるであろう。
【0153】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象において、調節されたIL15に応答する疾患または障害を治療する方法を提供し、前記方法は、(a)本開示の核酸分子、ベクター、組換えタンパク質、細胞、または医薬組成物の治療有効量を対象に投与すること、および治療有効量の刺激を対象に投与することであって、DRDが刺激に応答し、IL15ペイロードの発現が刺激に応答して調節される、ことを含む。いくつかの実施形態では、刺激は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロルフェナミドから選択される。いくつかの実施形態では、刺激は、アセタゾラミドである。
【0154】
いくつかの実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における悪性腫瘍を治療する方法であって、前記腫瘍が腫瘍関連抗原を発現する、方法を提供し、前記方法は、(a)CARもしくはTCRをコードするポリヌクレオチドをさらに含む本開示のヒトT細胞もしくはヒトNK細胞、またはその医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、ここでCARもしくはTCRは、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含み、および(b)治療有効量の刺激を対象に投与し、ここでCA2 DRDは刺激に応答し、IL15ペイロードの発現が刺激に応答して調節される、ことを特徴とする、治療有効量の方法を提供する。いくつかの実施形態では、刺激は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、又はジクロルフェナミドから選択される。いくつかの実施形態では、対象に投与される刺激は、アセタゾラミドである。
【0155】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における悪性腫瘍を治療する方法を提供し、前記方法は、(a)本開示のヒトTILの治療有効量を対象に投与すること、および(b)治療有効量の刺激を対象に投与することであって、CA2 DRDが刺激に応答し、IL15ペイロードの発現が刺激に応答して調節される、ことを含む。いくつかの実施形態では、刺激は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、又はジクロルフェナミドから選択される。いくつかの実施形態では、対象に投与される刺激は、アセタゾラミドである。
【0156】
本開示に従う組成物は、典型的には、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、投与単位形態で製剤化される。しかしながら、本開示の組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されよう。任意の特定の患者に対する特定の治療上有効な、予防上有効な、または適切な画像化用量レベルは、治療される障害および障害の重症度、採用される特定の化合物の活性、採用される特定の組成物、患者の年齢、体重、一般健康、性別および食事、採用する特定の化合物の投与時間、投与経路および排泄率、治療期間、採用する特定の化合物と組み合わせてまたは偶然に用いられる薬剤、および医学技術において周知の同様の要因を含む種々の要因によって決まるであろう。
【0157】
本開示の組成物は、T細胞アレルギーを回避し、サイトカイン放出症候群を防止し、免疫療法に関連する毒性を最小限に抑えるために、様々な用量で使用され得る。例えば、本開示の組成物の低用量は、高い腫瘍負担を有する患者を初期治療するために使用されてもよく、一方、低い腫瘍負担を有する患者は、最小限の腫瘍抗原負荷の認識を確実にするために本開示の組成物の高用量及び反復投与で治療されてもよい。別の例では、本開示の組成物は、緊張性T細胞シグナル伝達を減少させ、インビボでの持続性を高めるために、脈動様式で送達されてもよい。いくつかの態様では、高用量を投与する前に、最初に本開示の組成物の低用量を使用することによって、毒性を最小化することができる。フェリチン、血清C反応性タンパク質、IL6、IFN-γ、及びTNF-αなどの血清マーカーが上昇した場合、投与量を変更してもよい。
【0158】
また、本明細書では、本開示に従うリガンドを、それを必要とする対象に投与する方法が提供される。リガンドは、本開示のCA2生体回路を調整するために有効な任意の量及び任意の投与経路を用いて、対象又は細胞に投与することができる。必要な正確な量は、被験者の種、年齢、及び一般状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて、被験者によって異なるであろう。対象は、ヒト、哺乳類、または動物であってもよい。本開示に従う組成物は、典型的には、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、単位投与形態で製剤化される。しかしながら、本開示の組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されよう。特定の実施形態では、本開示に従うリガンドは、約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kg、約10mg/kg~約100mg/kg、約50mg/kg~約500mg/kg、約100mg/kg~約1000mg/kg、対象体重の日毎、望ましい効果を得るために1日1または2回、送達するに足りる用量で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、投与量レベルは、所望の効果を得るために、1日当たり、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、170mg/kg、180mg/kg、190mg/kg又はmg/kgの対象体重の日又はそれ以上の時間、であってよい。
【0159】
本開示は、本明細書に記載のリガンドのいずれかを細胞または組織に送達するための方法を提供し、細胞または組織を前記リガンドと接触させることを含み、in vitro、ex vivo、またはin vivoで達成され得る。特定の実施形態では、本開示に従うリガンドは、約1nM~約10nM、約5nM~約50nM、約10nM~約100nM、約50nM~約500nM、約100nM~約1000nM、約1μM~約10μM約5μM~約50μM約10μM~約100μM約25μM~約250μM約50μM~約500μMの送達に必要な投与量で細胞に投与されることが可能である。いくつかの実施形態では、リガンドは、0.00064μM、0.0032μM、0.016μM、0.08μM、0.4μM、1μM 2μM、10μM、50μM、75、μM、100μM、150μM、175μM、200μM、250μMから選ばれた投与量で細胞に投与され得るがこれに限定されるわけではない。
【0160】
本開示のリガンドの所望の投与量は、1回のみ、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日おき、1週間おき、2週間おき、3週間おき、または4週間おきに送達され得る。特定の実施形態では、所望の投与量は、複数の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又はそれ以上の投与)を使用して送達されてもよい。複数の投与が採用される場合、本明細書に記載されるような分割投与レジメンが使用され得る。本明細書で使用される場合、「分割投与」は、「単一単位投与」または1日の総投与量を2つ以上の投与量に分割すること、例えば、「単一単位投与」の2つ以上の投与である。本明細書で使用される場合、「単一単位用量」は、1回の用量/1回の時間/単一経路/単一接触点、すなわち単一投与事象で投与される任意の治療薬の用量である。本開示のリガンドの所望の用量は、「パルス用量」として、又は「連続フロー」として投与されてもよい。本明細書で使用されるように、「パルス投与」は、一定期間にわたって設定された頻度で投与される任意の治療薬の一連の単一単位用量である。本明細書で使用される場合、「連続フロー」は、単一の経路/単一の接触点、すなわち連続投与イベントにおいて一定期間連続して投与される治療薬の用量である。一日の総投与量、24時間に投与または処方される量は、これらの方法のいずれかによって、またはこれらの方法の組み合わせとして、あるいは医薬投与に適した他の任意の方法によって投与され得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、免疫療法用組成物は、エクスビボで細胞に投与され、その後、被験者に投与されてもよい。免疫細胞は、当技術分野で公知の様々な方法を用いてex vivoで単離及び拡大することができる。例えば、細胞傷害性T細胞を単離する方法は、米国特許第第6,805,861号および第6,531,451号に記載され、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。NK細胞の単離は、米国特許明細書(U.S. Pat.NOs.7,435,596に記載されており、その内容は参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0162】
いくつかの実施形態では、細胞の性質に応じて、細胞は、注射、輸血、注入、局所注入又は移植を含む広範な方法で、宿主生物例えば哺乳動物に導入されてもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞は、腫瘍の部位に導入されてもよい。採用される細胞の数は、多くの状況、導入の目的、細胞の寿命、使用されるプロトコル、例えば投与回数、細胞の増殖能力などに依存することになる。細胞は、生理的に許容される培地中であってもよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細胞は、疾患又は状態を有する被験者に複数回投与されてもよい。投与は、一般に、癌又は臨床状態の1つ以上の症状の改善をもたらし、及び/又は癌又は臨床状態若しくはその症状を治療若しくは予防する。
【0164】
いくつかの実施形態において、免疫療法用組成物は、インビボで投与されてもよい。いくつかの実施形態では、CA2生体回路、CA2エフェクター分子、SRE、関心のあるペイロード(IL15)及び本開示の組成物を含む本開示のポリペプチドは、被験者にインビボで送達されてもよい。免疫療法剤のインビボ送達は、当該技術分野において十分に説明されている。例えば、サイトカインの送達方法は、EP0930892 A1に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
本開示の医薬組成物、CA2生体回路、CA2生体回路構成要素、それらのSRE(例えば、CA2 DRD)を含むCA2エフェクターモジュール、ペイロード(例えば、IL15)、ベクター及び細胞は、治療的に有効な結果を得るために任意の経路で投与されうる。
【0166】
本開示の医薬組成物、CA2バイオサーキット、CA2バイオサーキット構成要素、それらのSREを含むCA2エフェクターモジュールまたはペイロードは、治療的に有効な結果を得るために任意の経路で投与され得る。これらには、経腸(腸内へ)、胃腸、硬膜外(硬膜内へ)、経口(口による)、経皮、硬膜周囲、脳内(大脳へ)、脳室内(脳室へ)、表皮(皮膚への適用)皮内投与(皮膚そのものに)、皮下投与(皮膚の下に)、経鼻投与(鼻から)、静脈内投与(静脈に)、静脈内ボーラス、点滴、動脈内投与(動脈に)、筋肉内投与(筋肉に)、心内投与(心臓に)、骨髄内注入(骨髄へ)、髄腔内注入(脊柱管へ)、腹腔内注入、(腹膜へ注入または注射)、膀胱内注入、眼球内注入、(病巣へ)膣内注入(陰茎の基部へ)、膣内投与、子宮内投与、羊膜外投与、経皮(無傷の皮膚からの拡散による全身への分布)、経粘膜(粘膜からの拡散)、経膣、気腹(鼻腔内投与)、舌下、陰唇下、浣腸、点眼(結膜上)、点耳、耳介(耳の中または耳を通して)、頬(頬に向けて)、結膜、皮膚、歯科(歯または歯に向けて)、電気浸透、頸内、洞内、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質、腹腔内、羊膜内、関節内、胆道内、気管支内、滑液包内、軟骨内(軟骨内)、馬尾内(馬尾内)、胸骨内(小脳島内)、角膜内(角膜内)、歯科角膜内、冠動脈内(冠動脈内)、海綿体内(陰茎海綿体の拡張可能空間内)、ディスク内(ディスク内)、乳管内(腺の管内)、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、小腸内、intralesional(局所病変内または局所病変に直接導入)、intraluminal(管の内腔内)、intralymphatic(リンパ内)、intramedullary(骨の髄腔内)、intrameningeal(髄膜内)、心筋内(心筋内)、眼内(眼球内)、卵巣内(卵巣内)、心膜内(心膜内)、胸膜内(胸膜内)、前立腺内(前立腺内)、肺内(肺またはその気管支内)、鼻腔内または眼窩周囲洞)、脊椎内(椎体内)、滑液内(関節の滑液腔内)、腱内(腱内)、精巣内(精巣内)、髄腔内(脳脊髄軸の任意の高さの脳脊髄液内)、胸腔内(胸郭内)、尿細管内(臓器の尿細管内)、腫瘍内(腫瘍内)、鼓膜内(中耳内)、血管内(血管内)、脳室内(脳室内)、イオントフォレーシス(可溶性塩類のイオンが体内組織に移行する電流による)、イリゲーション(開放創や体腔を浴びる、洗い流す)、ラリンジアル(喉仏に直接)、鼻胃(鼻から胃に)、閉塞性ドレッシング法(局所投与後、その部分を閉塞するドレッシングで覆う)、眼科(外眼部)、口腔咽頭(口および咽頭へ直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、歯根膜、直腸。呼吸器(局所的または全身的な効果を得るために経口または鼻から吸入して気道内)、球後(大脳皮質の後ろまたは眼球の後ろ)、心筋内(心筋に入る)、軟組織、くも膜下、結膜下、粘膜下、局所、経胎盤(胎盤を通してまたは胎盤を通過して)、経気管(気管壁を通過)、経鼓膜(鼓膜腔を通過)、尿管(尿管へ)、尿道(尿道へ)、膣、尾部ブロック、診断、神経ブロック、胆汁灌流、心臓灌流、フォトフェレーシスまたは脊椎などがあるが、それらに限定されない。
【0167】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物、CA2バイオサーキット、CA2バイオサーキット構成要素、それらのSREを含むCA2エフェクターモジュール又はペイロードは、非経口投与され得る。経口及び非経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及び/又はエリキシルを含むが、これらに限定されるものではない。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、ごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルとこれらの混合物などを含むが、これらに限定されるものではない。。不活性な希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、および/または香料などのアジュバントを含むことができる。非経口投与のための特定の実施形態では、組成物は、CREMOPHOR(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、および/またはそれらの組み合わせなどの可溶化剤と混合される。他の実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤が含まれる。
【0168】
注射用製剤、例えば、無菌静脈内投与用製剤または注射用水性もしくは油性懸濁液は、適切な分散剤、湿潤剤および/または懸濁剤を用いて公知技術に従って製剤化することができる。無菌注射製剤は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤および/または溶媒中の無菌注射用溶液、懸濁液、および/または乳濁液であってよい。採用され得る許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.、および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。溶媒または懸濁媒体としては、従来から無菌の固定油が使用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意のブランドの固定油を採用することができる。注射剤の調製には、オレイン酸のような脂肪酸を使用することができる。
【0169】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過、および/または使用前に滅菌水または他の滅菌注射媒体に溶解または分散できる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより、滅菌してもよい。
【0170】
本開示のCA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SRE、刺激、1つ以上を含む組成物又はシステムは、治療、診断及び予後、生体工学、生体加工、生体工場、研究剤、メタボローム、遺伝子発現、酵素置換等を含むが、これらに限定されない多種類の用途で利用することができる。
【0171】
本開示によれば、CA2-IL15生体回路及びシステムは、養子細胞療法などの細胞療法の開発及び実施に使用され得る。CA2-IL15バイオ回路及びシステムは、CAR T細胞療法、T細胞受容体(TCR)細胞療法、CAR NK細胞療法、TCR NK細胞療法、TIL療法、これらのいずれも他の治療ライン(例えば、放射線、サイトカイン)との併用療法を実現するのに使用されてもよい。
【0172】
いくつかの実施形態では、CA2-IL15バイオ回路及びシステムは、CD8+ T細胞及びCD4+ T細胞などのT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、細胞障害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンパカイン活性化キラー(LAK)細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞(Tregs)、ヘルパーT細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む免疫細胞を操作するために使用されてもよい。他の実施形態では、CA2-IL15バイオ回路及びシステムは、ACTに使用され得る胚性幹細胞(ESC)及び人工多能性幹細胞(iPSC)から生成された免疫刺激性細胞を工学的に処理するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、CA2-IL15バイオ回路及びシステムは、ACTに使用され得る自己又は同種免疫細胞を設計するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、CA2-IL15バイオ回路及びシステムは、T細胞、TIL又はNK細胞を工学的に処理するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、臍帯血、iPSC、又は末梢血単核細胞から得られたNK細胞である。
【0173】
いくつかの実施形態では、ACTに使用されるCA2-IL15-改変細胞は、目的の腫瘍細胞上の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCAR又はTCRを発現するようにも操作されたT細胞であってよい。他の実施形態では、ACTに使用されるCA2-IL15-改変細胞は、関心のある腫瘍細胞上の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCAR又はTCRを発現するように操作されたNK細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、ACTに使用されるCA2-IL15-改変細胞は、T細胞及びNK細胞の混合物であってよく、そのいずれか又は両方が、CAR又はTCRを発現していてもよい。
【0174】
キメラ抗原受容体(CAR)は、免疫細胞(例えば、T細胞やNK細胞)に導入されると、CARの細胞外標的部位によって認識される分子を発現する標的(例えば、腫瘍細胞)に対して免疫細胞を再指導することができる。本明細書において、「キメラ抗原受容体(CAR)」という用語は、T細胞の表面上のTCRを模倣する合成受容体を指す。一般に、CARは、細胞外標的ドメイン、膜貫通ドメイン/領域、および細胞内シグナル伝達/活性化ドメインから構成されている。標準的なCAR受容体では、細胞外標的ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達/活性化ドメインは、単一の融合タンパク質として直鎖状に構築されている。細胞外領域は、特定の腫瘍抗原(例えば、腫瘍ネオ抗原)または他の腫瘍細胞表面分子を認識するターゲティングドメイン/モイティー(例えば、scFv)から構成される。細胞内領域は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメイン(免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ)(例えば、CD3ζのシグナル伝達領域)、及び/又はCD28、4-1BB(CD137)及びOX-40(CD134)からのものなどの1又は複数のコスト調節シグナル伝達ドメインが含まれてもよい。CARは、T細胞またはNK細胞によって発現されると、CARの細胞外標的部位によって決定される抗原特異性をT細胞またはNK細胞に付与する。
【0175】
いくつかの実施形態では、細胞外標的ドメインは、ヒンジ(スペースドメインまたはスペーサーとも呼ばれる)および膜貫通領域を介して、細胞内シグナル伝達ドメインに接合される。ヒンジは、細胞外ターゲティングドメインを、細胞膜を横断し、細胞内シグナル伝達ドメインに接続する膜貫通ドメインに接続する。ヒンジは、ターゲティング部位が結合する標的タンパク質のサイズ、およびターゲティングドメイン自体のサイズと親和性のために、がん細胞に対するCAR形質転換細胞の効力を最適化するために変化させる必要がある場合がある。標的タンパク質が標的細胞に認識され結合すると、細胞内シグナル伝達ドメインがCAR T細胞またはCAR NK細胞に活性化シグナルをもたらし、このシグナルは1つまたは複数の細胞内コスティミュレーションドメインからの「第2のシグナル」によってさらに増幅される。CAR T細胞またはCAR NK細胞は、一旦活性化されると、標的細胞を破壊することができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールを含み、キメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、免疫細胞を提供する。 CARは、DRDによって制御されてもよいし、構成的に発現されてもよい。いくつかの実施形態では、CARは、構成的に発現される。
【0177】
いくつかの実施形態では、構成的に発現又は制御されるCAR及びCA2-IL15エフェクターモジュールは、異なるベクター上にコードされる。いくつかの実施形態では、単一のベクターは、CA2-IL15エフェクターモジュール及び構成的に発現又は制御されるCARの両方を含んでおり、タンデム構築物を形成する。CA2-IL15エフェクターモジュール及びCARは、内部リボソーム進入部位(IRES)により互いに分離されてもよい。口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、豚テスコウイルス-1 2A(P2A)またはThosea asignaウイルス2A(T2A)から選ばれるリボソームスキッピング配列2Aペプチド、または他のリボソームスキッピング配列またはリボソームエントリー配列がバイシストロン構築物を生じさせる。いくつかの実施形態では、2A配列は、P2A配列である。IRES、2A配列、または他のリボソームスキッピング配列もしくはリボソームエントリー配列は、2つの独立したポリペプチドとして発現される上流および下流配列の発現をもたらす。いくつかの実施形態では、単一のベクターは、順に、CARをコードする配列、P2A配列、及びCA2-IL15エフェクターモジュールをコードする配列からなる。CARをコードする配列は、CA2-IL15エフェクターモジュールをコードする配列に対して5'又は3'のいずれであってもよい。
【0178】
T細胞受容体(TCR)は、免疫細胞(T細胞やNK細胞など)に導入されると、TCRが認識する分子を発現している標的(腫瘍細胞など)に対して免疫細胞を誘導し直すことができる。TCRは、可変α鎖およびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとも呼ばれる)または可変γ鎖およびδ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとも呼ばれる)、あるいはその抗原結合部分または断片を含む分子であり、MHC分子に結合したペプチドに特異的に結合することが可能である。いくつかの実施形態では、TCRはTCRαβである。一般に、TCRは、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原を認識する役割を担うT細胞の表面上に見出される。
【0179】
本明細書で使用する場合、TCRという用語は、完全なTCRだけでなく、その抗原結合部分または抗原結合断片を包含する。いくつかの実施形態では、TCRは、α鎖及びβ鎖の両方を含む全長TCRである。いくつかの実施形態では、TCRは、MHC分子に結合した特定のペプチドに結合する、TCRの抗原結合部分又は断片、例えばα鎖及びβ鎖の各々の部分である。いくつかの実施形態では、抗原結合部分又は断片は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するのに十分な、可変α(Vα)鎖及び可変β(Vβ)鎖などのTCRの可変ドメインから構成される。
【0180】
TCRの可変ドメインには相補性決定領域(CDR)があり、主にMHC-ペプチド抗原の認識、結合、特異性に寄与している。TCR鎖の可変領域内のCDRは、フレームワーク領域(FR)によって分離されており、これは典型的にはCDRよりも変動性を示さない。いくつかの実施形態では、TCRの1つまたは複数のCDRは、所定のTCR分子の抗原結合部位の全てまたは実質的に全てを形成する。いくつかの実施形態では、CDR3は、抗原結合または特異性、およびペプチド-MHC複合体の処理されたペプチド部分との相互作用を担う主要なCDRである。
【0181】
TCRのα鎖とβ鎖は、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、短い細胞質尾部を含むこともある。TCRの細胞質尾部は、タンパク質を細胞膜に固定し、そこでCD3複合体の不変サブユニットと会合し、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与している。
【0182】
いくつかの実施形態では、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールで「武装」したCAR T細胞又はTCR T細胞を提供し、工学的細胞の効力及び持続性を向上させる。
【0183】
いくつかの実施形態で、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールで「武装」されたCAR NK細胞又はTCR NK細胞を提供し、人工細胞の効力及び持続性を改善するか又は免疫疲弊及び老化を防止する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールで操作されたTILを提供し、操作された細胞の効力及び持続性を向上させる。
【0185】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、特定の個々の対象との関係で、自己由来、同種異系、合成、または異種異系であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、哺乳類細胞、特にヒト細胞であってもよい。本明細書に記載される細胞は、初代細胞又は不死化細胞株であってもよい。
【0186】
がん免疫療法は、がんに対する免疫系の反応性を誘導または回復させることを目的としている。養子細胞療法は、内因性で長期間持続する腫瘍抗原特異的な免疫反応の誘導を目的とした能動免疫療法の一形態である。この反応は、サイトカインなどの免疫反応修飾物質の非特異的刺激によって増強されることがあるが、サイトカイン刺激は毒性または免疫疲弊を引き起こすことがある。
【0187】
現在の免疫療法は大きな進歩を遂げているが、その効果は関連する毒性によって制限されている。このことは、免疫療法の治療域の狭さ、すなわち、臨床的に意味のある治療効果を得るためには、致命的な毒性を示す可能性のあるぎりぎりの量まで治療を進める必要があることから生じている。さらに、養子移入された免疫細胞は患者の体内で増殖し続けるため、生体内では投与量が拡大し、しばしば予測不可能な事態が生じる。
【0188】
免疫療法に伴う大きなリスクは、腫瘍関連抗原(TAA)の正常組織発現に反応してT細胞が活性化することにより、オンターゲットでありながら腫瘍外の副作用が発生することである。
【0189】
また、免疫療法は、免疫療法に反応して腫瘍細胞が死滅したときに現れるオンターゲット、オンターモードの毒性をもたらすことがある。この副作用には、腫瘍崩壊症候群、サイトカイン放出症候群、および関連するマクロファージ活性化症候群が含まれる。重要なことは、これらの副作用は腫瘍の破壊中に発生する可能性があり、したがって腫瘍上の免疫療法が成功しても毒性が生じる可能性があることである。したがって、免疫療法を調節的に制御するアプローチは、毒性を減らし、効果を最大化する可能性があるため、非常に望ましいものである。
【0190】
本開示は、癌免疫療法のためのシステム、組成物、免疫療法剤および方法を提供する。これらの組成物は、免疫療法における遺伝子発現および機能の調整可能な制御を提供する。本開示は、CA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、刺激応答要素(SRE)、及びペイロード、並びに前述のいずれかをコードするポリヌクレオチドも提供する。一態様において、本開示のシステム、組成物、免疫療法剤および他の構成要素は、別途追加される刺激によって制御することができ、これは、癌免疫療法を調節するための大きな柔軟性を提供する。さらに、本開示のシステム、組成物、および方法は、化学療法剤、低分子、遺伝子治療、および抗体などの治療剤と組み合わせることもできる。
【0191】
本開示のシステムおよび組成物の調整可能な性質は、免疫療法の効力の効力および持続期間を改善する可能性を有する。本開示の組成物を用いて養子移入された細胞の生物学的活性を可逆的にサイレンシングすることにより、回復不能に殺して治療を終了させることなく細胞治療の可能性を最大化することができる。
【0192】
本開示は、患者への投与後に免疫療法を微調整する方法を提供する。これは、ひいては、免疫療法の安全性及び有効性を改善し、免疫療法から利益を得ることができる被験者集団を増加させる。
【0193】
一実施形態では、CA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SRE、および任意の薬剤の発現レベルおよび活性を調整する構成要素は、免疫療法に使用されてもよい。非限定的な例として、本開示の構築物において使用される免疫療法剤は、細胞及び対象において免疫応答を誘導するIL15である。
【0194】
いくつかの実施形態では、免疫応答を誘導するための組成物は、CA2エフェクターモジュールを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、CA2エフェクターモジュールは、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含むヒトIL15に作動可能に連結された刺激応答要素(SRE)を含んでもよい。
【0195】
いくつかの実施形態では、本開示のCA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、及び組成物は、免疫療法剤のタンパク質(ペイロード)機能抗腫瘍免疫応答の翻訳後調節に関連する。
【0196】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのCA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、及び/又は目的のペイロード(免疫療法剤)を発現するように遺伝的に修飾された細胞が、養子細胞療法(ACT)に使用され得る。本明細書で用いられるように、養子細胞移植は、直接的な抗癌活性を有する免疫細胞(自己、同種または遺伝子組み換え宿主からの)の投与を意味する。ACTは、悪性疾患や感染症に対する臨床応用で有望視されている。
【0197】
本開示によれば、CA2バイオ回路及びシステムは、養子細胞療法などの細胞療法の開発及び実施に使用することができる。CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、及びそれらのSREとペイロードは、単独で又は他の治療ライン(例えば、放射線、サイトカイン)と組み合わせて免疫細胞療法を実施するために細胞療法で使用されてもよい。
【0198】
本明細書で提供されるのは、養子細胞療法に使用するための方法である。一実施形態では、本方法は、それを必要とする対象を事前調整すること、対象のT細胞の一部を除去すること、対象のT細胞を本開示のCA2エフェクターモジュールでエンジニアリングすること、およびCA2エフェクターモジュールを発現するエンジニアリングされたT細胞を対象に投与することを含み、ここでエンジニアリングされた細胞は対象内に正常に生着した。
【0199】
別の実施形態では、方法は、それを必要とする対象を前処理し、CA2エフェクターモジュールを発現する同種の人工T細胞を対象に投与することを含み、ここで、人工細胞は対象内で正常に生着する。
【0200】
いくつかの実施形態では、方法は、対象から悪性腫瘍を除去すること、腫瘍からTILを単離すること、TILを本開示のCA2エフェクターモジュールでエンジニアリングすること、およびエンジニアリングされたTILを対象に投与することを含み、TILは対象における任意の残存腫瘍または転移を正常に浸潤させる。
【0201】
いくつかの実施形態では、本開示のSRE、CA2生体回路及び組成物は、養子細胞療法に関連する前処理レジメンを最小化するために使用され得る。本明細書で使用される「前処理」は、養子細胞療法の結果を改善するために被験者に投与される任意の治療レジメンを指す。前処理としては、全身照射やリンパ節破壊化学療法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前処理を行わない養子縁組治療の臨床試験では、臨床的な有用性が証明されていないことから、ACTにおける前処理の重要性が示唆されている。しかし、前処理は重大な毒性を伴い、ACTに適した被験者コホートが限定される。いくつかの例では、ACTのための免疫細胞は、前処理の必要性を減らすために、本開示のSREを使用してペイロードとしてIL15などのサイトカインを発現するように操作されるかもしれない。
【0202】
いくつかの実施形態では、本発明組成物を発現するように操作されたNK細胞が、ACTに使用され得る。NK細胞の活性化は、標的細胞においてパーフォリン/グランザイム依存性アポトーシスを誘導する。NK細胞の活性化はまた、IFNγ、TNF-α、及びGM-CSFなどのサイトカインの分泌を誘導する。これらのサイトカインは、マクロファージの貪食機能や抗菌活性を高め、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞による抗原提示のアップレギュレーションを介して適応免疫応答を増大させる。
【0203】
免疫細胞は、当技術分野で知られている様々な方法を用いて生体外で分離・増殖させることができる。例えば、細胞傷害性T細胞を単離し、拡大する方法は、米国特許第6,805,861及び6,531,451;米国特許公開NO.US20160348072A1 および国際特許公開NO.WO2016168595A1;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。NK細胞の単離及び拡張は、米国特許公開NO.US20150152387A1、米国特許NO.7,435,596、及びOyer, J.L. (2016) Cytotherapy.18(5):653-63に記載され、これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。具体的には、ヒト初代NK細胞は、フィーダー細胞例えば膜結合IL15及び4-1BBLを発現するように遺伝的に改変された骨髄系細胞株の存在下で増殖させることができる。
【0204】
いくつかの実施形態では、ACTのためのT細胞の活性化及び拡張は、細胞表面上に一過性に発現したキメラ抗原受容体(CAR)の抗原刺激によって達成される。そのような活性化方法は、国際特許NO.WO2017015427に記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0205】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、抗原提示細胞(APC)に関連する抗原によって活性化されてもよい。いくつかの実施形態では、APCは、抗原特異的又は非特異的な樹状細胞、マクロファージ又はB細胞であってもよい。APCは、その器官において自己または相同であってよい。いくつかの実施形態では、APCは、細胞ベースのAAPC又はアセルスAAPCなどの人工抗原提示細胞(aAPC)であってもよい。細胞ベースのaAPCは、ヒト赤血球白血病細胞などの遺伝子改変同種細胞、又はマウス線維芽細胞及びショウジョウバエ細胞などの異種細胞のいずれかから選択されてもよい。あるいは、APCは、抗原またはコスティミュレーションドメインがラテックスビーズ、ポリスチレンビーズ、脂質ベシクルまたはエクソソームなどの合成表面上に提示された細胞性であってもよい。
【0206】
ある実施形態では、養子細胞療法は自己移入によって実施され、細胞は治療を必要とする対象から由来し、単離及び処理後の細胞は同じ対象に投与される。他の例では、ACTは、細胞が最終的に細胞療法を受ける受 容者以外のドナー被験者から単離及び/又は調製される同系統移植を含むことがある。ドナー被験者とレシピエント被験者が遺伝的に同一、もしくは類似している、あるいは同一のHLAクラスやサブタイプを発現している可能性がある。
【0207】
SRE、CA2生体回路、および本開示の組成物を用いた遺伝子調節の後、細胞は、それを必要とする対象に投与される。養子細胞療法のための細胞の投与方法は知られており、提供される方法及び組成物に関連して使用することができる。例えば、養子T細胞療法方法は、例えば、Gruenbergらに対する米国特許出願公開番号2003/0170238;Rosenbergに対する米国特許番号4,690,915;Rosenberg(2011)Nat Rev Clin Oncol.8(10):577-85).例えば、Themeliら(2013)Nat Biotechnol.31(10): 928-933; Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9; Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338に記載され、これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0208】
いくつかの実施形態では、ACT用CA2-IL15で操作された免疫細胞は、免疫細胞の活性化、浸潤、拡大、生存及び抗腫瘍機能を促進する1つ又は複数の免疫治療剤を発現するようにさらに改変されてもよい。免疫療法剤は、腫瘍細胞上の標的分子に特異的なCAR又はTCR、第2のサイトカイン又はサイトカイン受容体、抑制性シグナルを刺激性シグナルに変換するキメラ・スイッチ受容体、養子移入細胞を腫瘍組織などの標的部位に誘導するホーミング受容体、免疫細胞の代謝を最適化する薬剤、又は安全スイッチ遺伝子(例えば、免疫細胞の代謝を最適化する薬剤、養子細胞移植後に重篤な事象が観察された場合や移植された免疫細胞が不要になった場合に活性化したT細胞を死滅させる安全スイッチ遺伝子(自殺遺伝子など)などがある。
【0209】
いくつかの実施形態では、養子細胞移植に使用される免疫細胞は、がん患者の腫瘍を殺す能力をさらに改善するという全体的な目的で、その持続性、細胞毒性、腫瘍標的能力、及び生体内の疾患部位に帰巣する能力を改善するために遺伝的に操作することが可能である。一例は、IL15を含む本開示のCA2エフェクターモジュールを免疫細胞に導入して、免疫細胞の増殖および生存を促進することである。IL15の細胞への導入は、外因性サイトカインの添加なしに免疫細胞が増殖することを可能にし、サイトカインを発現するNK細胞は、腫瘍細胞傷害性が強化される可能性がある。
【0210】
いくつかの実施形態では、CA2生体回路、SRE又はCA2エフェクターモジュールは、T細胞疲弊を防止するために利用されてもよい。本明細書で使用される場合、「T細胞疲弊」は、慢性的なT細胞活性化によって引き起こされるT細胞機能の段階的かつ進行性の喪失を指す。T細胞の疲弊は、抗ウイルス剤及び抗腫瘍剤の免疫療法の効果を制限する主要な要因である。疲弊したT細胞は、増殖能やサイトカイン産生能が低く、同時にアポトーシス率が高く、複数の抑制性受容体が表面に多く発現している。疲弊に至るT細胞の活性化は、抗原の存在下でも非存在下でも起こりうる。
【0211】
いくつかの実施形態では、CA2生体回路およびその構成要素は、キメラ抗原受容体-T細胞療法(CAR-T)の文脈でT細胞の消耗を防ぐために利用され得る。この文脈において、いくつかの例における消耗は、細胞表面上のCARのscFvのオリゴマー化によって引き起こされ、CARの細胞内ドメインの連続的な活性化につながる可能性がある。非限定的な例として、本開示のCARは、オリゴマー化することができないscFvを含んでもよい。別の非限定的な例として、抗原曝露後に急速に内在化及び再発現されるCARはまた、細胞表面上の慢性的なscFvオリゴマー化を防止するために選択されてもよい。一実施形態では、scFvのフレームワーク領域は、構成的なCARシグナル伝達を防止するように改変されてもよい。
【0212】
また、本開示のチューナブルCA2生体回路は、T細胞表面におけるCARの表面発現を調節して、慢性的なT細胞の活性化を防止するために使用されてもよい。本開示のCARはまた、消耗を最小限に抑えるように設計されてもよい。非限定的な例として、4-1-BBシグナル伝達ドメインは、T細胞の消耗を改善するために、本開示の表3に例示されるCA2バイオ回路、SRE又はCA2エフェクターモジュールによって制御される膜結合IL15発現と共にCAR設計に組み込まれてもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、本開示のCA2-IL15生体回路の調整可能な性質は、トニックCARシグナル伝達で観察されるヒトT細胞の消耗を逆転させるために利用され得る。本開示の組成物を使用して養子移入された細胞の生物学的活性を可逆的にサイレンシングすることは、順々に、T細胞を再活性化し得る緊張性シグナル伝達を逆転するために使用されてもよい。疲弊の逆転は、疲弊に関連する複数の阻害性受容体のダウンレギュレーションによって測定され得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、対象におけるTIL(腫瘍浸潤リンパ球)集団を変化させるために利用され得る。一実施形態では、本明細書に記載のペイロードのいずれかが、CD4陽性細胞のCD8陽性集団に対する比率を変更するために利用されてもよい。ある実施形態では、TILは、エクスビボで選別され、本明細書に記載されるサイトカインのいずれかを発現するように操作されてもよい。本開示のペイロードは、TILのCD4及び/又はCD8集団を拡大して、TIL媒介免疫応答を強化するために利用されてもよい。
【0215】
本開示において提供されるのは、必要としている対象における腫瘍の体積または負担を軽減する方法であり、本方法は、本開示の組成物を対象に導入することを含んでいる。
【0216】
本開示はまた、対象における癌を治療するための方法であって、本開示の少なくとも1つのCA2エフェクターモジュールを発現するように遺伝的に改変されたエフェクター免疫細胞の有効量を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0217】
様々な癌は、本開示の医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路コンポーネント、それらのSREを含むCA2エフェクターモジュール、及びIL15ペイロードを用いて治療することができる。本明細書で使用される場合、用語「癌」は、周囲組織に侵入し、新しい身体部位に転移する傾向がある未分化細胞の増殖によって特徴付けられる様々な悪性新生物のいずれかを指し、また、そのような悪性新生物増殖によって特徴付けられる病理学的状態をも指す。癌は、腫瘍または血液学的悪性腫瘍であり、あらゆる種類のリンパ腫/白血病、癌腫および肉腫、例えば、肛門、膀胱、胆管、骨、脳、乳房、子宮頸部、膵臓、胆道、結腸・直腸、子宮内膜、食道、眼、胆嚢、頭頸部、肝臓、腎臓、喉頭、肺、縦隔(胸部)、口、卵巣、膵臓、陰茎、前立腺、皮膚、小腸、胃、脊椎骨、尾骨、精巣、甲状腺、子宮などに見られる癌または腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0218】
本開示の組成物で治療され得る癌腫の種類には、乳頭腫/癌腫、絨毛癌、内胚葉洞腫瘍、奇形腫、腺腫/腺癌、メラノーマ、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、横紋筋腫、中皮腫、血管腫、骨腫、軟骨腫、神経膠腫、リンパ腫/白血病、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞未分化癌、基底細胞癌、副鼻腔未分化癌などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0219】
本開示の組成物で治療され得る癌腫の種類には、限定されないが、肺胞軟部肉腫などの軟組織肉腫、血管肉腫、皮膚線維肉腫、デスモイド腫瘍、脱脂性小丸細胞腫瘍、骨外軟骨肉腫、骨外骨肉腫、線維肉腫、血管周皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、リンパ肉腫、悪性線維性組織球腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫滑膜肉腫、アスキン腫瘍、ユーイング肉腫(原始神経外胚葉性腫瘍)、悪性血管内皮腫、悪性神経鞘腫、骨肉腫、軟骨肉腫などがある。
【0220】
非限定的な例として、治療され得る癌腫は、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺癌、腺肉腫、副腎癌、副腎皮質癌肛門癌、退形成性星細胞腫、血管肉腫、付録癌、星細胞腫、基底細胞癌、B細胞リンパ腫)、胆管癌、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍。乳がん、カルチノイド腫瘍、子宮頸がん、胆管がん、軟骨肉腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、大腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚リンパ腫、皮膚黒色腫、びまん性星細胞腫、乳管がん、子宮内膜がん、上衣腫、類上皮肉腫、食道がん、ユーイング肉腫、肝外胆管がん、眼球がん、卵管がん、線維肉腫、胆嚢がん、胃がん、消化管がん、消化管カルチノイドがん、消化管間質腫瘍、一般、胚細胞腫瘍、多形性膠芽腫、神経膠腫、ヘアリーセル白血病、頭頸部がん、膵臓がん、胆嚢がんなど血管内皮細胞腫、ホジキンリンパ腫、ホジキン病、下咽頭癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、炎症性乳癌、腸管癌肝内胆管がん、浸潤性乳がん、膵島がん、顎がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、平滑筋肉腫、肺転移、白血病、唇がん、脂肪肉腫、肝臓がん、小葉がん、低悪性度星細胞腫、肺がん、リンパ節がん、リンパ腫、男性乳がん、髄様がん、髄芽腫、メラノーマ、髄膜腫、メルケル細胞がん、間葉系軟骨肉腫、膵臓がん、間葉系、中皮腫、転移性乳癌、転移性黒色腫、転移性扁平上皮癌、混合グリオーマ、口腔癌、粘液癌、粘膜黒色腫、多発性骨髄腫、鼻腔癌、上咽頭癌、頸部がん、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、麦細胞がん、眼球がん、眼球黒色腫、乏突起膠腫、口腔がん、中咽頭癌、骨原性肉腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣原発腹膜癌、卵巣性索間質腫瘍、パジェット病、膵臓癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣上皮癌、卵巣性索間質腫瘍、膵臓癌乳頭癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、骨盤癌、陰茎癌、末梢神経癌、腹膜癌、咽頭癌、褐色細胞腫、毛球性星細胞腫、松果体部腫瘍、松果体がん、下垂体がん、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、腎骨盤がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、骨肉腫、軟部組織、子宮肉腫、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、脊椎癌、脊柱癌、脊髄癌、脊椎腫瘍、扁平上皮癌。胃がん、滑膜肉腫、T細胞リンパ腫)、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫・胸腺がん、甲状腺がん、舌がん、扁桃がん、移行細胞癌、トリプルネガティブ乳癌、管癌、管状癌、尿管癌、尿道癌、子宮腺癌、子宮体癌、子宮肉腫、膣癌、外陰部癌であってもよい。
【0221】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、それらのSREを含むCA2エフェクターモジュール、またはペイロードは、1つ以上の癌を標的とする免疫系の調節または変更または利用において使用されうる。このアプローチは、他のそのような生物学的アプローチと共に考慮されてもよく、例えば、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、他のモノクローナル抗体、ワクチン、遺伝子療法、及び非特異的免疫調節剤の投与などの免疫応答調節療法も、本開示の医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路コンポーネント、それらのSREまたはペイロードを含むCA2エフェクターモジュールと組み合わせるべき抗癌治療として想定される。
【0222】
がん免疫療法は、患者自身の免疫系を誘導してがんと闘うように設計された多様な治療戦略のセットを指す。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、それらのSREを含むCA2エフェクターモジュール又はペイロードは、免疫腫瘍学治療薬として設計される。
【0223】
細胞性免疫療法には、NK細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、キメラ抗原受容体(CAR)または遺伝子組み換えTCR技術を搭載した遺伝子組み換えT細胞など、いくつかの種類がある。
【0224】
一実施形態では、本開示のCAR T細胞又はTCR T細胞は、効力及び持続性を向上させるためにCA2-IL15エフェクターモジュールで形質転換された「武装」T細胞であってもよい。
【0225】
一実施形態では、患者はまた、その免疫細胞によって提示される免疫原性ペプチドに従って層別化されてもよく、開示の組成物について治療的に利益を得ることができる適切な患者コホートを決定するためのパラメータとして利用されてもよい。
【0226】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、特定の個々の対象との関係で、自己由来、同種異系、合成、または異種異系であってもよい。
【0227】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、哺乳類細胞、特にヒト細胞であってもよい。本開示の細胞は、初代細胞又は不死化細胞株であってもよい。
【0228】
工学的免疫細胞は、CA2生体回路、CA2エフェクターモジュール、SREおよびIL15ペイロードのポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含むベクターを細胞組成物に導入することによって達成することができる。ベクターは、レンチウイルスベクターやガンマレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターであってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の免疫細胞は、刺激を用いて調整可能な本開示の少なくとも1つの免疫療法剤を発現するように遺伝的に改変される。
【0229】
定義
本明細書の様々な箇所において、本開示の組成物の特徴または機能は、グループまたは範囲において開示されている。本開示は、そのようなグループ及び範囲のメンバーの個々の下位組合せを含むことを特に意図している。以下は、用語の定義の非限定的なリストである。
【0230】
アクティビティ。本明細書で使用する場合、「活性」という用語は、物事が起こっている、または行われている状態を意味する。本開示の組成物は活性を有することができ、この活性は1つ以上の生物学的事象を含むことができる。いくつかの実施形態では、生物学的事象は、細胞シグナル伝達事象を含んでもよい。いくつかの実施形態では、生物学的事象は、1つ以上の対応するタンパク質、受容体、小分子、又は本明細書に記載される生体回路構成要素のいずれかとのタンパク質相互作用に関連する細胞シグナル伝達事象を含んでもよい。
【0231】
Adoptive Cell Therapy(ACT)。本明細書で使用する「養子細胞療法」または「養子細胞移植」という用語は、患者への細胞の移植を伴う細胞療法を指し、細胞は患者または別の個体に由来する場合があり、患者に戻す前に操作(改変)される。治療用細胞は、エフェクター免疫細胞:CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、切除した腫瘍に由来するB細胞や腫瘍浸潤リンパ球(TIL)など、免疫系に由来するものであってもよい。最も一般的に移植される細胞は、ex vivoでの膨張または操作後の自己の抗腫瘍T細胞である。例えば、自己末梢血リンパ球は、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現することにより、特定の腫瘍抗原を認識するように遺伝子工学的に操作することが可能である。
【0232】
エージェント。本明細書で使用する場合、「薬剤」という用語は、生物学的、医薬的、または化学的な化合物を指す。非限定的な例としては、単純または複雑な有機または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、受容体、および可溶性因子が挙げられる。
【0233】
抗原。本明細書で使用する「抗原」という用語は、癌の発生自体によって生じる腫瘍抗原のように、被験者に導入されるか、被験者によって産生されるときに免疫反応を引き起こす分子と定義される。この免疫応答は、抗体産生、あるいは細胞傷害性Tリンパ球やTヘルパー細胞などの特定の免疫学的コンピテント細胞の活性化のいずれか、あるいは両方を含むことがある。抗原は、生物、タンパク質/抗原のサブユニット、死滅または不活性化した全細胞またはライセートに由来することができる。本開示の文脈において、「関心のある抗原」又は「所望の抗原」という用語は、本開示の抗体及び/又は本明細書に記載のその断片、変異体、変種、及び/又は改変体と免疫特異的に結合又は相互作用する、本明細書に提供されるそれらのタンパク質及び/又は他の生体分子を意味する。いくつかの実施形態では、目的の抗原は、本明細書に記載されるポリペプチド若しくはペイロード若しくはタンパク質、又はそれらの断片若しくは部分のいずれかを含んでいてもよい。
【0234】
関連する。本明細書で使用される場合、2つ以上の部位に関して使用される場合、用語「関連する」、「共役」、「連結」、「付着」、および「テザー」は、部位が、直接または連結剤として機能する一つ以上の追加の部位を介して互いに物理的に関連または連結されて、構造が用いられる条件下、例えば生理条件において部位が物理的に関連したままになるように十分に安定な構造を形成することを意味している。結合」は、厳密には直接的な共有化学結合である必要はない。イオン結合、水素結合、または「会合した」実体が物理的に会合したままであるように十分に安定なハイブリダイゼーションに基づく結合を示唆してもよい。
【0235】
自己由来。本明細書で使用する「自己由来」という用語は、後に個体に再導入される同一個体に由来する材料を指すことを意味する。
【0236】
がん。本明細書で使用する「がん」という用語は、体内で異常な細胞が無秩序に増殖することを特徴とする様々な疾患の広いグループを指す。無秩序な細胞分裂や増殖の結果、悪性腫瘍が形成され、近隣の組織を侵し、最終的にはリンパ系や血流を介して体内の遠隔部位に転移していく。
【0237】
共刺激分子。本明細書で使用する場合、免疫T細胞活性化における意味に従って、T細胞とAPCの間に関与し、T細胞における刺激シグナルを生成する免疫細胞表面受容体/リガンドのグループを指し、APC上の抗原/MPC複合体(pMHC)のT細胞受容体(TCR)認識から生じるT細胞における刺激シグナルと結合させる。
【0238】
サイトカイン。本明細書で使用する「サイトカイン」という用語は、免疫系の機能に影響を与え、調節することができる多くの細胞型によって産生される、多面的機能を有する小さな可溶性因子のファミリーを意味する。
【0239】
送達。本明細書で使用する「送達」という用語は、化合物、物質、実体、部位、貨物またはペイロードを送達する行為または方法を意味する。送達剤」は、細胞、対象、または他の生体系細胞への1つ以上の物質(本開示の化合物および/または組成物を含むが、これらに限定されない)のin vivo送達を少なくとも部分的に促進する任意の薬剤を指す。
【0240】
不安定化したもの。本明細書で使用する場合、用語「不安定化」、「不安定化」または「不安定化領域」は、同じ領域または分子の出発形態、参照形態、野生型またはネイティブ形態よりも安定性が低い領域または分子を意味する。
【0241】
エンジニアード。本明細書で使用する場合、本開示の実施形態は、出発点、野生型またはネイティブ分子と異なる特徴または特性(構造的または化学的であるかを問わず)を有するように設計されている場合に「設計された」であるという。
【0242】
製剤化する。本明細書で使用される場合、「製剤」は、少なくとも本開示の化合物および/または組成物と、送達剤とを含む。
【0243】
フラグメント。本明細書で使用する「断片」とは、分子全体よりも小さい分子の一部を指す。例えば、タンパク質の断片は、全長タンパク質を消化して得られるポリペプチドから構成される場合がある。いくつかの実施形態では、抗体の断片は、抗体の一部を含む。
【0244】
機能的であること。本明細書で使用する場合、「機能的」な生体分子とは、それが特徴付ける特性および/または活性を示す構造および形態を有する生物学的実体のことである。
【0245】
免疫細胞。本明細書で使用する「免疫細胞」という用語は、骨髄の造血幹細胞に由来し、骨髄系前駆細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球、顆粒球などの骨髄系細胞を生み出す)およびリンパ系前駆細胞(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ系細胞を生み出す)の二つの主要系統を生み出す免疫系の細胞を意味する。例示的な免疫系細胞としては、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4- CD8- 二重陰性T細胞、Tγδ細胞、T? β細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、および樹状細胞などがある。マクロファージや樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」と呼ばれることもあり、ペプチドと複合化したAPC表面の主要組織適合性複合体(MHC)受容体がT細胞表面のTCRと相互作用すると、T細胞を活性化できる特殊な細胞である。
【0246】
免疫療法。本明細書で使用する「免疫療法」という用語は、疾患に対する免疫系の反応性を誘導または回復させることによる疾患の治療の一種を意味する。
【0247】
免疫療法剤。本明細書で使用する「免疫療法剤」という用語は、生物学的、医薬的、または化学的化合物を用いて、疾患に対する免疫系の反応性を誘導または回復させることによって疾患を治療することを指す。
【0248】
In vitro。本明細書で使用する場合、「in vitro」という用語は、生物(例えば、動物、植物、または微生物)内ではなく、人工環境、例えば、試験管または反応容器内、細胞培養、ペトリ皿内などで起こる事象を指す。
【0249】
In vivo。本明細書で使用する場合、「in vivo」という用語は、生物(例えば、動物、植物、微生物、またはその細胞や組織)内で起こる事象を指す。
【0250】
リンカー。本明細書で使用される場合、リンカーは、2つ以上のドメイン、部位または実体を接続する部位を指す。一実施形態では、リンカーは、10個以上の原子から構成されてもよい。さらなる実施形態において、リンカーは、例えば、10~1000個の原子の群から構成されてもよく、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、及びイミンなどの原子又は基から構成することができるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のヌクレオチドを含む1つまたは複数の核酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質から構成されてもよい。いくつかの実施形態では、リンカーによって結合される部分は、原子、化学基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸塩基、糖、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質複合体、ペイロード(例えば、治療薬)、またはマーカー(化学マーカー、蛍光マーカー、放射線マーカーまたは生物発光マーカーが含まれるが、これに限定されない)、を含んでも良い。リンカーは、本明細書に記載されるように、ペイロードを投与するためだけでなく、多量体またはコンジュゲートを形成するためなど、任意の有用な目的のために使用され得る。リンカーに組み込むことができる化学基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、またはヘテロシクリルなどがあるが、それだけに限らない、これらはそれぞれ、本明細書に記載のように任意に置換され得るものである。リンカーの例としては、これらに限定されないが、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレンまたはプロピレングリコールモノマー単位、例えば。ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール)、およびデキストランポリマー、他の例としては、例えば、還元剤または光分解を用いて切断できるジスルフィド結合(-S-S-)またはアゾ結合(-N=N-)などのリンカー内の切断可能部位があるが、それだけにとどまらない。選択的に開裂可能な結合の非限定的な例としては、例えばトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、または他の還元剤、および/または光分解の使用によって開裂することができるアミド結合、ならびに例えば酸性または塩基性の加水分解によって開裂することができるエステル結合が挙げられる。
【0251】
モディファイド(Modified)。本明細書で使用する場合、「修飾」という用語は、親分子または参照分子または実体と比較して、分子または実体の状態または構造が変化していることを指す。分子は、化学的、構造的、および機能的なものを含む多くの方法で修飾され得る。いくつかの実施形態では、本開示の化合物および/または組成物は、非天然アミノ酸の導入により修飾される。
【0252】
変異。本明細書で使用される場合、用語「突然変異」は、変化および/または変質を指す。いくつかの実施形態では、突然変異は、タンパク質(ペプチド及びポリペプチドを含む)及び/又は核酸(ポリ核酸を含む)に対する変化及び/又は改変であり得る。いくつかの実施形態では、突然変異は、タンパク質および/または核酸の配列に対する変化および/または改変を含む。そのような変化及び/又は改変は、1つ以上のアミノ酸(タンパク質及び/又はペプチドの場合)及び/又はヌクレオチド(核酸及び又はポリ核酸例えばポリヌクレオチドの場合)の付加、置換及び又は欠失からなる場合がある。いくつかの実施形態では、突然変異がアミノ酸および/またはヌクレオチドの付加および/または置換を含む場合、そのような付加および/または置換は、1つまたは複数のアミノ酸および/またはヌクレオチド残基からなり、修飾アミノ酸および/またはヌクレオチドが含まれていてもよい。変異、変更または改変の結果として生じる構築物、分子または配列は、本明細書において、変異体と呼ばれることがある。
【0253】
ネオアンチゲン。本明細書で使用する「ネオアンチゲン」という用語は、腫瘍細胞に存在するが正常細胞には存在せず、胸腺におけるその同族抗原特異的T細胞の欠失を誘導しない腫瘍抗原を指す(すなわち、中枢性寛容)。これらの腫瘍ネオアンチゲンは、癌免疫療法に必要な有効な免疫応答を誘導するために、病原体と同様の「外来」シグナルを提供すると考えられる。ネオアンチゲンは、特定の腫瘍に限定されることもある。ネオアンチゲンは、ミスセンス変異を有するペプチド/タンパク質(ミスセンスネオアンチゲン)、または新規オープンリーディングフレーム(neoORF)からの長く完全に新規なアミノ酸のストレッチを有する新規ペプチドである。neoORFは、アウトオブフレームの挿入または欠失(マイクロサテライト不安定性を引き起こすDNAミスマッチ修復の欠陥による)、遺伝子融合、停止コドンにおけるリードスルー変異、または不適切にスプライシングされたRNAの翻訳によって、いくつかの腫瘍において生成され得る(例えば、Saeterdalら、Proc Natl Acad Sci USA、2001、98:13255-13260)。
【0254】
オフターゲット本明細書で使用する「オフターゲット」とは、1つ以上の標的、遺伝子、細胞転写物、細胞、および/または組織に対する意図しない効果を指す。
【0255】
操作可能に連結されていること。本明細書で使用される場合、フレーズ「操作可能に連結された」は、2つ以上の分子、構築物、転写物、実体、部位などの間の機能的な接続を意味する。
【0256】
ペイロードまたはペイロードオブインタレスト(POI)。本明細書で使用する「ペイロード」および「ペイロードオブインタレスト(POI)」という用語は、互換性を持って使用されている。ペイロード・オブ・インタレスト(POI)とは、機能を変化させるべきタンパク質または化合物を指す。本開示の文脈では、POIは、自然免疫系及び適応免疫系の両方を含む免疫系における構成要素である。興味のあるペイロードは、タンパク質、融合タンパク質をコードする融合構築物、または非コード化遺伝子、またはそのバリアントおよび断片であってもよい。ペイロードは、アミノ酸ベースの場合、目的のタンパク質と呼ばれることがある。
【0257】
薬学的に許容される賦形剤。本明細書で使用する「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、医薬組成物に存在する活性剤(例えば、本明細書に記載)以外の任意の成分を指し、対象において実質的に非毒性かつ非炎症である特性を有する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、活性剤を懸濁及び/又は溶解させることができるビヒクルである。賦形剤には、例えば、付着防止剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮補助剤、崩壊剤、染料(色)、エモリエント剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤又はコーティング剤、香料、滑剤(流動促進剤)、潤滑剤、保存剤、印刷インク、吸着剤、懸濁剤又は分散剤、甘味料及び水和剤が含まれ得る。例示的な賦形剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ゼラチン化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、でん粉(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、キシリトールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0258】
薬学的に許容される塩。本明細書に記載される化合物の薬学的に許容される塩は、酸または塩基部分がその塩の形態(例えば、遊離塩基基を適切な有機酸と反応させることによって生成される)である、開示される化合物の形態である。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機酸塩などがあるが、これらに限定されるものではない。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンフル酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミスル酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモアット酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクレート、ピバレート、プロピオン酸塩、ステアレート、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、バレレート塩等が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の他、無毒のアンモニウム、4級アンモニウム、アミンカチオンが挙げられ、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等があるが、これらだけに限定されるものではない。薬学的に許容される塩には、従来の無毒な塩、例えば、無毒な無機酸または有機酸からの塩が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から調製される。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中または有機溶媒中、あるいはこれらの混合物中で化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水系媒体は、好ましい。適当な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p.1418, Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use, P.H. Stahl and C.G. Wermuth (eds.), Wiley-VCH, 2008、およびBerge et al., Journal of Pharmaceutical Science, 66, 1-19 (1977)に見られ、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。薬学的に許容される溶媒和物。本明細書で使用する「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、適切な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている化合物の結晶形態を指す。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、またはそれらの混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶、または沈殿によって調製することができる。好適な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物、三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMAC)である。1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジル等である。水を溶媒とする場合、溶媒和物は 「水和物」と称される。いくつかの実施形態では、溶媒和物に組み込まれる溶媒は、溶媒和物が投与される生物(例えば、医薬組成物の単位投与形態において)に対して生理学的に許容される種類またはレベルである。
【0259】
安定した。本明細書で使用する「安定な」とは、反応混合物から有用な純度まで単離するのに十分強固であり、好ましくは有効な治療薬に製剤化できる化合物または実体を意味する。
【0260】
安定化した。本明細書で使用されるように、用語「安定化」、「安定化」、「安定化領域」は、安定にすること、または安定になることを意味する。いくつかの実施形態では、安定性は、絶対値に対して測定される。いくつかの実施形態では、安定性は、二次的な状態もしくは状態、または参照化合物もしくは実体と相対的に測定される。
【0261】
標準的なCAR。本明細書で使用する場合、「標準的なCAR」という用語は、キメラ抗原受容体の標準的な設計を指す。細胞外scFv断片、膜貫通ドメインおよび1つ以上の細胞内ドメインを含むCAR融合タンパク質の構成要素は、単一の融合タンパク質として直線的に構築される。
【0262】
被験者本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、例えば、実験、診断、予防、および/または治療目的のために、本開示に従う組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳類)及び/又は植物が含まれる。
【0263】
T細胞。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を産生する免疫細胞である。T細胞には、ナイーブ(抗原に曝露されていない、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、CD45RAの発現がTCMに比べて増加し、CD45ROの発現が減少)、メモリーT細胞(TM)(抗原曝露済み、長命)、エフェクター細胞(抗原曝露済み、細胞毒性)の種類がある。TMはさらに、セントラルメモリーT細胞(TCM、ナイーブT細胞と比較してCD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO、CD95の発現が増加、CD54RAの発現が減少)とエフェクターメモリーT細胞(TEM、ナイーブT細胞またはTCMと比較してCD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現が低下、CD127の発現が上昇)のサブセットへ分割可能である。エフェクターT細胞(TE)とは、TCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28の発現が減少し、グランザイム及びパーフォリンが陽性である抗原経験型CD8+細胞傷害性Tリンパ球のことである。他の例示的なT細胞には、CD4+ CD25+ (Foxp3+) 制御性T細胞およびTreg17細胞などの制御性T細胞、ならびにTr1、Th3、CD8+CD28-、およびQa-1制限T細胞などが含まれる。
【0264】
T細胞受容体。T細胞受容体(TCR)とは、抗原結合可変領域、定常領域、膜貫通領域、短い細胞質尾部を有する免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーで、MHC受容体に結合した抗原ペプチドと特異的に結合することができるものを指す。TCRは、細胞表面や可溶性に存在し、一般にα鎖とβ鎖(それぞれTCRα、TCRβとも呼ばれる)、またはγ鎖とδ鎖(それぞれTCRγ、TCRδとも呼ばれる)を有する異種二量体で構成されている。TCR鎖の細胞外部分(例えば、α鎖、β鎖)は、2つの免疫グロブリンドメイン、N末端の可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメインまたはVα、β鎖可変ドメインまたはVβ)、細胞膜に隣接する1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインまたはCα、β鎖定常ドメインまたはCβ、)を含んでいる。免疫グロブリンと同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって分離された相補的決定領域(CDR)を含む。TCRは、通常、CD3複合体と結合してTCR複合体を形成している。本明細書で使用する場合、「TCR複合体」という用語は、CD3とTCRの会合によって形成される複合体を指す。例えば、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2本のCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモダイマー、TCRα鎖、及びTCRβ鎖で構成することができる。あるいは、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2本のCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモダイマー、TCRγ鎖、およびTCRδ鎖から構成することができる。本明細書で使用する「TCR複合体の成分」とは、TCR鎖(すなわち、TCRα、TCRβ、TCRγ又はTCRδ)、CD3鎖(すなわち、CD3γ、CD3δ、CD3ε又はCD3ζ)、又は2以上のTCR鎖若しくはCD3鎖によって形成される複合体(例えば、,TCRαとTCRβの複合体、TCRγとTCRδの複合体、CD3εとCD3δの複合体、CD3γとCD3εの複合体、またはTCRα、TCRβ、CD3γ、CD3δおよび2つのCD3ε鎖のサブTCR複合体を指す。
【0265】
治療上有効な量。本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な量」とは、感染、疾患、障害、および/または状態に罹患しているかまたは罹患しやすい対象に投与された場合に、感染、疾患、障害、および/または状態の治療、症状の改善、診断、予防、および/または発症の遅延に十分である送達すべき薬剤(例えば、核酸、薬剤、治療剤、診断剤、予防剤など)量を意味する。いくつかの実施形態では、治療上有効な量は、単回投与で提供される。いくつかの実施形態では、治療上有効な量は、複数の投与量を含む投与レジメンで投与される。当業者は、いくつかの実施形態において、単位剤形は、そのような投与レジメンの一部として投与されたときに有効である量を含む場合、特定の薬剤又は実体の治療上有効な量を含むと考えられ得ることを理解するであろう。
【0266】
治療または処置すること。本明細書で使用される場合、用語「治療」または「処置」は、有益なまたは所望の臨床結果を含み、好ましくは有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを表す。そのような有益なまたは所望の臨床結果には、癌細胞または他の病的なものの増殖を減少させる(または破壊する)、癌に見られる癌細胞の転移を減らす、腫瘍のサイズを縮小する、疾患から生じる症状を減少させる、疾患に苦しむ人々の生活の質を高める、疾患の治療に必要な他の薬物の投与量を減らす、疾患の進行を遅らせる、および/または個人の生存期間を延長するの1または2以上があるが、それだけにとどまるわけではない。
【0267】
チューニング。本明細書で使用される場合、用語「調整」は、刺激に応答して、または特定の結果に向けて、あるものを調整、バランス、または適応させることを意味する。非限定的な一例として、本開示のSREおよび/またはDRDは、特定の刺激および/または環境に応答して、それらが付着、添付または関連する組成物の機能または構造を調整、バランスまたは適合させる。
【0268】
等価物および範囲
当業者は、本明細書に記載された開示に従った特定の実施形態に対する多くの等価物を、日常的な実験以上のことを用いずに認識するか、または確認することができるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図しておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に規定される通りである。
【0269】
特許請求の範囲において、「a」、「an」、「the」などの冠詞は、反対の意味を示すか文脈から明らかでない限り、1つまたは複数を意味する場合がある。グループの1つ以上のメンバーの間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、反対に示されるか、または文脈から他に明白でない限り、グループのメンバーの1つ、2つ以上、またはすべてが所定の製品またはプロセスに存在し、採用され、または他に関連していれば満たされると見なされる。本開示は、グループのちょうど1つのメンバーが、所定の製品又はプロセスに存在する、採用される、又は他の方法で関連する、実施形態を含む。本開示は、1つより多い、又はグループのメンバー全体が、所定の製品又はプロセスに存在する、採用される、又はそうでなければ関連する、実施形態を含む。
【0270】
また、「構成する」という用語は、開放的で許可することを意図しているが、追加の要素またはステップを含めることを必要としないことに留意されたい。本明細書において用語「からなる」が使用される場合、用語「からなる」は、したがって、包含され、開示されるものでもある。
【0271】
範囲が指定されている場合は、終点が含まれる。さらに、特に示されない限り、または文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に指示しない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本開示の異なる実施形態における述べられた範囲内の任意の特定の値または下位範囲を想定できることが理解される。
【0272】
さらに、従来技術に該当する本開示の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外することができることを理解されたい。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、除外が本明細書に明示されていなくても、除外されてもよい。本開示の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療薬または活性成分、任意の製造方法、任意の使用方法など)は、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、任意の理由で、任意の1つまたは複数の請求項から除外することが可能である。
【0273】
使用されてきた言葉は、限定ではなく説明の言葉であり、その広い側面における本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく、添付の請求項の範囲内で変更がなされ得ることが理解されよう。
【0274】
本開示は、いくつかの説明された実施形態に関して、ある程度長く、いくつかの特殊性をもって説明されてきたが、そのような特殊性または実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきであるという意図はなく、先行技術に鑑みてそのような請求項の最も広い解釈を提供するように、したがって、本開示の意図する範囲を有効に包含するように添付の請求項の参照とともに解釈されるものである。本開示は、以下の非限定的な例によってさらに説明される。
【実施例】
【0275】
図1は、T細胞におけるACZが制御するmbIL15発現のin vitro特性評価及び/又は検証のための代表的な手順を示す図である。
図1に示すように、T細胞は、例えば、実施例1に記載の手順に従うことによって、mbIL15構築物で形質導入され得る。形質導入後、T細胞は、対照条件又はACZで処理し、例えば、実施例2に記載の手順に従って、in vitroでのIL15発現及び/又は抗原非依存性細胞拡張についてアッセイしてもよい。
【0276】
図2は、T細胞におけるACZが制御するmbIL15発現のin vivo特性評価及び/又は検証のための代表的な手順を示している。
図2に示すように、T細胞は、例えば、実施例1に記載の手順に従うことによって、mbIL15構築物で形質導入され得る。形質導入後、T細胞をマウス対象(例えば、NSGマウス)に注入してもよく、ビヒクルまたはACZで処理したマウスからの試料を、例えば、実施例3に記載の手順に従って、IL15発現および/または抗原非依存性細胞拡張についてアッセイしてもよい。
【0277】
(実施例1)アセタゾラミド(ACZ)制御mbIL15コンストラクトを用いたT細胞 のトランスダクション
本実施例は、ACZ制御mbIL15構築物の調製に使用され得る方法、及びACZ制御mbIL15構築物を用いたT細胞の形質導入に使用され得る方法を示すものである。
【0278】
IL15コンストラクトの組み立て
OT-IL15-292、OT-IL15-293、OT-IL15-294、およびOT-IL15-295はそれぞれ、標準的な分子生物学技術を使用してpELNSベクター(第3世代の自己不活性化レンチウイルス発現ベクター)に構築した。コドン最適化IL15、GSリンカー、B7-1ヒンジ、膜貫通ドメインおよび細胞質テールをコードする遺伝子断片(Gblocks)は、Integrated DNA Technologies, Inc.から購入した。(IDT、コーラルビル、アイオワ州)から購入した。遺伝子断片をpELNSベクターに挿入し、ギブソンアセンブリ(NEBuilder Hifi)を用いてEF1aプロモーターの制御下に置いた。組み立てたプラスミドを大腸菌(NEB stable)に形質転換し、増幅と配列確認を行った後、ウイルス生産を進めた。
【0279】
表4は、本明細書に開示される構成的IL15構築物(OT-IL15-292及びOT-IL15-294)及びACZ制御IL15構築物(OT-IL15-293及びOT-IL15-295)の構成要素の核酸配列及びアミノ酸配列を提示する。表4における太字および下線のアミノ酸は、構築物OT-IL15-292/OT-IL15-293およびOT-IL15-294/OT-IL15-295間のB7-1細胞質尾部の差異を示す。構築物OT-IL15-293およびOT-IL15-295は、表4においてCA2(M1del、L156H)として標識された不安定化ドメインを構成している。
【0280】
[表4]
【0281】
表5は、本明細書に開示される構成的IL15(IL15-292およびIL15-294)およびACZ制御IL15(IL15-293およびIL15-295)構築物の核酸配列およびアミノ酸配列を示す。
【0282】
[表5]
【0283】
レンチウイルスの作製
HEK293T細胞をコラーゲンコートした組織培養プレートに70%コンフルエントになるまで播種した。細胞を、Opti-MEM培地中でLipofectamine 3000トランスフェクション試薬を用いて、構成的(IL15-292またはIL15-294)または制御的(IL15-293またはIL15-295)IL15構築物を有するpELNS転送ベクター、ならびにパッケージングプラスミド(pRSV.REV、pMDLg/p.RREおよびpMD2.G)にトランスフェクションさせた。トランスフェクション後6-8時間後に無血清培地に交換した。ウイルスを含む上清をトランスフェクション後24時間で回収し、新鮮な培地を加え、トランスフェクション後48時間で再び上清を回収した。ウイルス上清を濾過して残渣を除去し、20%ショ糖勾配で超遠心して濃縮した。ウィルスは再懸濁し、分注し、-80℃の冷凍庫で保存した。
【0284】
pELNSトランスファーベクターOT-IL15-292、OT-IL15-293、OT-IL15-294およびOT-IL15-295の塩基配列はそれぞれSEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 36およびSEQ ID NO: 37である。
【0285】
本明細書で使用する場合、細胞を形質導入するために使用するレンチウイルスは、その構築物名(例えば、IL15-292、IL15-293、IL15-294、IL15-295、CD19-IL15-057、CD19-IL15-058またはCD19-063)またはその導入ベクター名(例えば、,OT-IL15-292、OT-IL15-293、OT-IL15-294、OT-IL15-295、OT-CD19-IL15-057、OT-CD19-IL15-058またはOT-CD19-063)が挙げられる。
【0286】
T細胞株
T細胞は、ヒト健康なドナーから採取したLeukopaksから分離した。Ficoll gradientsでPBMCを分離した後、ネガティブセレクションキット(StemCell Technologies)を用いて、メーカーのプロトコルにしたがってT細胞を単離した。T細胞は細胞凍結培地(Bambanker)に再懸濁し、分注後、液体窒素で保存した。
【0287】
レンチウイルスのT細胞への導入
T細胞を解凍し、細胞を洗浄し、計数した。T細胞をCD3/CD28ビーズ(Invitrogen cat#11141D)とビーズとT細胞の比率が3:1になるように混合した。5x105 cells/wellを500 μLの培地中で24-wellプレートに添加した。細胞は24時間活性化された。翌日、レンチウイルスを解凍し、各ウェルに異なる容量で添加した。24時間後、500μLの新しい培地を加え、細胞密度が0.5-1x106 /mLになるように2-3日おきに等量の新しい培地を加えて細胞を増殖させた。5日目または6日目にフローサイトメトリーにより細胞を解析し、発現を確認した。細胞は9-10日間増殖させた。
【0288】
(実施例2)ACZが制御するmbIL15発現およびACZが制御するT細胞拡張のin vitro解析
本実施例は、(i)ACZが制御するT細胞におけるmbIL15の発現、及び(ii)ACZが制御するmbIL15を発現するT細胞の拡張のin vitroでの検証を実証している。
【0289】
構成的なmbIL15またはACZ制御されたmbIL15を発現することができるヒト初代T細胞を、上記実施例1に記載の方法に従って調製した。
図1を参照されたい。
【0290】
T細胞導入・拡大後、CD3/CD28ビーズをマグネットで除去し、細胞を2回洗浄後、新鮮な培地に再懸濁し、計数した。細胞は、2 mL中1x10
6 で12ウェルプレートにプレーティングした。1ウェルの未導入細胞は、コントロールとして2ng/mL IL15の存在下で培養した。制御された構築物を発現するT細胞は、アセタゾラミド(ACZ、30、10、3、1、0.3μM)の非存在下または存在下で培養された。細胞数は3-4日ごとにフローサイトメトリーでモニターし、細胞は10-12日間培養された。各時点でウェルから100 μLの細胞を採取し、フローサイトメトリーで解析した。細胞は必要に応じて分割した。細胞培養は、一部を採取し、新しいプレートで培地を加えることにより、12ウェルプレートで維持した。各ウェルの容積は、細胞数評価における最終容積を計算するために、分割前と分割後に記録した。IL15またはACZは、各スプリット中に添加された新鮮な培地の最終濃度で補充された。
図1を参照。
【0291】
T細胞数はフローサイトメトリーによって決定された。エンプティベクター(EV)導入細胞数は、IL15非存在下で3~5日の間にバックグラウンドレベルまで減少し、細胞は2ng/mLの外因性IL15の存在下で11倍に拡大した(
図3A)。構成的IL15-292およびIL15-294を発現するT細胞は、10日間でそれぞれ18倍から21倍に拡大した(
図3A)。IL15-293を発現するT細胞では、最大膨張は、30、10、3μMで9.5~11倍であった(
図3B)。試験した最低濃度(0.3 μM)では、細胞は3.3倍に拡大した。これらの細胞は、薬剤処理をしていないEV細胞と比較して、より長く生存した(0.8倍)。IL15-295を発現するT細胞では、30、10、3μMで最大膨張は8.2~10倍、試験した最低濃度(0.3μM)で細胞は4.9倍膨張した(
図3C)。薬物処理なしでは、これらの細胞はEVと比較してより長く生存した(0.9倍)。
【0292】
IL15発現に対する異なる濃度のACZの効果を検証した。T細胞は100μMから始めて24時間ACZで処理し、3倍に希釈して9ポイント処理した。IL15+T細胞(
図4A)およびIL15平均蛍光強度(MFI)(
図4B)分析の両方は、OT-IL15-293およびOT-IL15-295について同様の用量カーブを示した。ACZの最高濃度と最低濃度の間で、発現(%IL15+T細胞およびIL15 MFIの両方)において4~5倍の増加があった。EC
50値は,OT-IL15-293およびOT-IL15-295の%IL15+ T Cellsに基づくEC50は0.29 μMおよび0.22 μM、IL15のMFIは0.65 μMおよび0.44 μMであった。
【0293】
(実施例3)ACZが制御するmbIL15発現およびACZが制御するT細胞拡張のインビボ解析
本実施例は、(i)ACZが制御するT細胞におけるmbIL15の発現、及び(ii)ACZが制御するmbIL15を発現するT細胞の拡張のin vivoでの検証を実証している。
【0294】
NK細胞の拡大
Leukopaksから分離したPBMCの一部は、ネガティブセレクションキット(StemCell Technologies)を用いて、製造者のプロトコルに従ってNK細胞を濃縮するために使用された。細胞は、4-1BB-Lと膜結合型IL21を発現するフィーダーK562細胞、および組換えIL2(100 U/mL)と1:1の割合で7~14日間培養された。増殖は細胞数でモニターし、純度はフローサイトメトリーで評価した。
【0295】
In vivo解析
構成的なmbIL15またはACZ制御されたmbIL15を発現することができるヒト初代T細胞を、上記実施例1に記載の方法に従って調製した。T細胞導入および拡大後、CD3/CD28ビーズを磁石を用いて除去し、細胞を2回洗浄し、新鮮な培地に再懸濁し、数を数えた。T細胞を拡張NK細胞と混合し、各動物は5x10
6 T細胞および2x10
6 拡張NK細胞を受け取った。NSGマウスに静脈内注射で細胞を注入した。制御された構築物を発現するT細胞を注入した動物に、200 mg/kgのACZまたはビヒクルをPO注射で毎日投与した。3~4日ごとに、50μLの血液を、マウスおよびヒトのCD45、CD3およびCD56に対する抗体を用いて、T細胞およびNK細胞の存在についてフローサイトメトリーで分析した。25日目のIL15発現は、IL15Ra-Fcと蛍光色素結合抗ヒトIgG抗体を用いて分析した。
図2を参照。
【0296】
構成的及び制御的IL15構築物を発現するT細胞の拡大、及びバイスタンダーNK細胞に対するそれらの効果を、NSGマウスにおいて25日間の経過でインビボで評価した(
図5A~
図5B)。エンプティベクター(EV)導入細胞数は、時間の経過とともにゆっくりと減少した。構成的IL15-292及びIL15-294を発現するT細胞は、3日目の頻度と比較して最大13倍まで拡大した。制御された構築物を発現するT細胞を注入したマウスにおいて、細胞頻度は、ビヒクル処理の存在下で減少した。ACZを毎日投与した群では、細胞は3日目の頻度と比較して7~8倍まで拡大した。バイスタンダーNK細胞は、構成的IL15構築物を発現するT細胞の存在下でも、ACZで毎日処理した制御的IL15構築物を発現するT細胞の存在下でも、生存し、拡大した。
【0297】
25日目のインビボのT細胞におけるIL15発現をフローサイトメトリーで解析した(
図5C)。構成的な構築物IL15-292およびIL15-294で形質導入されたT細胞は、高レベルのIL15を発現した(82%および61%)。IL15の発現は、EV群と同様に、ビヒクル処理したIL15-293およびIL15-295において<1.5%であった。ACZで処理したグループのIL15-293およびIL15-295で形質転換したT細胞では、IL15発現レベルは11%および9%であった。
【0298】
(実施例4)In vivo 定常型および調節型mbIL15を発現するCART細胞における有効性および増殖性の解析
本実施例は、ACZの投与と相まって制御されたmbIL15が、CD19陽性腫瘍の存在下で、抗腫瘍効果およびCD19 CART細胞の拡大を高めることを実証するものである。
【0299】
タンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトとレンチウイルスストックの作製
CD19 CARおよびmbIL15を共発現するレンチウイルスベクター構築物およびレンチウイルスストックは、本質的に実施例1に記載したように作製した。CD19 CAR配列(AA配列:SEQ ID NO: 38;NA配列:SEQ ID NO:39)を、CD8aリーダー配列(Uniprot ID P01732のaa1-21)、FMC63(抗CD19)単鎖可変フラグメント(scFv)、CD8由来のヒンジ及び膜貫通ドメイン(Uniprot ID P01732のaa138-206)、4-1BB由来のコスティミュラトリードメイン(Uniprot ID Q07011のaa214-255)及びCD3ゼタ信号ドメイン(Uniprot IDP20963のaa52-164)より構築させた。
【0300】
バイシストロニックの導入遺伝子発現カセット(5'から3'は記載の通り)は、制御型または構成型のmbIL15、P2A配列(AA配列:SEQ ID NO: 40; NA配列:SEQ ID NO: 41)、およびP2Aの下流の抗CD19 CARからなる(
図6を参照のこと)。調節された構築物(CD19-IL15-058;AA配列:SEQ ID NO:42;NA配列:SEQ ID NO:43)については、CA2(L156H)DRDに作動可能に連結したmbIL15を含むIL15-293構築物を用いた(AA配列:SEQ ID NO:24、NA配列:SEQ ID NO:25)。構成的コンストラクト(CD19-IL15-057;AA配列:SEQ ID NO:45;NA 配列:SEQ ID NO:46)については、CA2野生型配列に作動可能に連結されたmbIL15からなるコンストラクトを用いた(
図6を参照のこと)。レンチウイルスOT-CD19-IL15-058のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:44であり、レンチウイルスOT-CD19-IL15-057のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:45である。
【0301】
末梢血T細胞におけるmbIL15-CARコンストラクトの発現
末梢血T細胞を活性化し、形質導入し、10日間まで増殖させ、細胞凍結培地で凍結し、in vivoヒトNalm6-Luc異種移植腫瘍モデルに使用した。 mbIL15およびCAR発現を、それぞれ抗IL15抗体およびヒトCD19の細胞外ドメインとヒトIgG1 Fcドメインとを融合した組み換えタンパク質を用いたフローサイトメトリによって解析した。CD19 CARを導入した細胞のみ、または導入していない細胞をコントロールとして使用した。コントロールCD19 CAR構築物で形質導入された細胞の72%が、CAR+mbIL15-であった(
図7A)。構成的mbIL15およびCAR(CD19-IL15-057)を発現するレンチウイルスベクターで形質導入した細胞については、26%がCAR+であり、13%がCAR+mbIL15+の二重陽性であった。調節型mbIL15とCARを発現するベクター(CD19-IL15-058)を導入した細胞では、10μM ACZに24時間暴露した後、25%がACZ非存在下でCAR+mbIL15-、9.7%がCAR+mbIL15+の2重陽性であった。これらの結果から、CD19CARと構成的または制御されたmbIL15を組み合わせて発現するレンチウイルスベクターでT細胞を形質転換すると、CARとmbIL15の両方が発現することが確認された。
【0302】
Nalm6-Luc異種移植モデルにおけるmbIL15-CART細胞の評価
mbIL15がCART細胞の抗腫瘍活性に及ぼす影響を評価するため、CD19 CARを発現するレンチウイルスベクターに構成的または制御的にmbIL15を導入したT細胞をCD19+ Nalm6-Luc腫瘍の移植後にマウスに点滴投与した。ルシフェラーゼを発現するCD19+ Nalm6細胞(Nalm6-Luc)をNSGマウスに静脈内注射し(1x106 /mouse)、D-ルシフェリンを腹腔内注射後、生物発光イメージング測定(総フラックス単位、光子/秒(p/s))で週1~2回の腫瘍成長を測定した。6日目に、平均腫瘍サイズが約106 総p/sに達した時点で、動物を新しいケージに無作為に割り付けた(各グループN=8)。CD19 CART細胞(構成的または調節されたmbIL15を有するかまたは有しないように操作された)を、腫瘍を有するマウスに注入するために解凍した。T細胞におけるCARの発現は、解凍後および抗CD3/CD28ビーズによる24時間の再刺激後に測定された。異なるグループ間のCART細胞は、%CAR+細胞に基づいて正規化された。各マウスは0.3x106 CAR+細胞を受け取り、輸液製品中のT細胞の総数は、EV導入T細胞の添加により7x106T細胞に調整された。
【0303】
第1グループにはネガティブコントロールとしてEVで遺伝子操作したT細胞を、第2グループにはmbIL15を含まないコントロールCART細胞(CD19-063;AA Sequence:SEQ ID NO: 48; NA Sequence:SEQ ID NO: 49; ベクター配列、SEQ ID NO: 50)、第3のグループは構成的mbIL5を発現するCART細胞(CD19-IL15-057)を投与した。第4群及び第5群は、調節型mbIL15(CD19-IL15-058)を共発現するCART細胞を受け、一方の群には200mg/kg ACZを毎日PO投与したが、他方の群には試験終了まで(~50日)毎日ビヒクルで投与した。T細胞の膨張をモニターするために、各群に追加の動物を含めた(血液についてはn=4、骨髄についてはn=4)。7日目、14日目、21日目に顎下静脈から血液(50μL)を採取し、T細胞注入後14日目に骨髄(大腿骨から)を採取した。赤血球を溶解し、ヒトCD45、CD3およびマウスCD45に対する蛍光色素標識抗体で染色し、フローサイトメトリーで細胞を分析した。腫瘍増殖は腫瘍移植後55日まで測定した。エンドポイントには、1010 トータルフラックスユニットのほか、後肢麻痺や体重減少など動物の健康への影響も含まれた。
【0304】
各群の個々のマウスにおける腫瘍の成長を
図7Bに示し、群平均を
図7Cに示す。EV導入T細胞で処理したグループ2のすべての動物で急速な腫瘍成長が観察され、腫瘍成長は、完全な反応を伴わない対照CART細胞での処理時に~25日まで遅延した。制御されたmbIL15を発現するCART細胞およびビヒクル処理で処理したマウスの腫瘍成長速度は、コントロールCART群と同様であった。一方、構成型mbIL15を発現するCART細胞および制御型mbIL15を発現するCART細胞とACZを投与した群では、それぞれ8匹中5匹および6匹で腫瘍がバックグラウンドレベルまで退縮していることがわかった。T細胞数は、対照T細胞、対照CART、及び調節されたmbIL15を発現するCARTとビヒクル処理で処理したマウスからの血液において経時的に減少し(21日目に<0.2%、
図7D)、骨髄において低かった(14日目に<1% 、
図7E)。対照的に、構成的なmbIL15を発現するCARTまたは調節されたmbIL15をACZで処理したマウスでは、T細胞数は経時的に血液中で増加し(21日目に1%超、
図7D)、骨髄中で高かった(構成的な場合20%、調節された+ACZの場合10%、
図7E)。これらの結果は、ACZ処理と結合した調節されたmbIL15が、最適でないCART細胞用量の注入後に、CAR単独を発現するT細胞と比較してCART抗腫瘍応答を増強し、腫瘍クリアランス後のCAR工学的T細胞拡張を促進したことを実証する。
【0305】
(実施例5)患者腫瘍試料からのTILの単離
頭頸部腫瘍サンプルは、Cooperative Human Tissue Networkから入手した。腫瘍サンプルをハンクス平衡塩溶液(HBSS)緩衝液で1-3 mmの断片に切断し、6000 IU/mL IL2を含む2 mlの培養液(1 X Penicillin/Streptomycin, 1 mM Sodium Pyruvate, 1X HEPES, 50 μM 2-Mercaptoethanol (Invitrogen) and 10% heat-inactivated human AB serum (Valley Bio) で補充した RPMI-1640) 中に1断片/ウェルで24穴プレートに配置された。5日目から培地の半分をIL2を含む新鮮な培地に交換し、細胞がコンフルエントになった時点で複数のウェルに分割し、3週間継続した。この培養工程はpre-rapid expansion protocol (REP)と呼ばれる。他の腫瘍型からのTILも、基本的に同じプロセスを用いて単離されている。
【0306】
前REP培養前後のT細胞の頻度変化を調べるため、前REP培養前に腫瘍片の一部をコラゲナーゼとDNase Iで消化して単細胞懸濁液を作り、前REP培養後に得た細胞と比較した。T細胞の頻度は、蛍光色素を結合させた抗CD45抗体および抗CD3抗体を用いたフローサイトメトリーにより解析した。
図8Aに示すように、前培養腫瘍細胞懸濁液中の細胞のほぼ半分(44.29±21.67%)はCD45+であり、これらのうちCD3+T細胞は~39.85±23.69%のみであった。IL2存在下で3週間培養した後(pre-REP)、細胞の大部分は、造血系細胞の濃縮を示すCD45+(90.35±7.28%)とT細胞の濃縮を示すCD3+(80.64±15.19%)であった。
【0307】
メラノーマ腫瘍や乳房、肺、腎臓、子宮内膜、肝臓、膵臓、卵巣の悪性腫瘍など、他の多くのヒト腫瘍タイプからのTILも同様に分離されている。
【0308】
(実施例6)TILにおけるACZによる制御されたmbIL15発現のインビトロ解析
BaEV-擬似型レンチウイルスの作製
HEK293T細胞をコラーゲンコートした組織培養プレートに70%コンフルエントになるまで播種した。細胞を、Opti-MEM培地中でLipofectamine 3000トランスフェクション試薬を用いて、構成的(IL15-292)または調節された(IL15-293)IL15構築物を有するpELNSトランスファーベクター、ならびにパッケージングプラスミド(pRSV.REV、pMDLg/pRREおよびOT-BaEVg-002(SEQ ID NO:51))でトランスフェクトさせた。トランスフェクション後6-8時間後に培地を無血清培地に交換した。ウイルスを含む上清をトランスフェクション後24時間で採取し、新鮮な培地を加え、上清をトランスフェクション後48時間で再度採取した。ウイルス上清を濾過して残渣を除去し、低速超遠心で濃縮した。ウイルスを再懸濁し、分注し、-80℃の冷凍庫で保存した。
【0309】
レンチウイルスを用いたTILの形質転換
96ウェル非コート組織培養プレートを、PBS中35μg/mLレトロネクチン(タカラバイオ)と共に37o Cで2時間、または4o Cで一晩インキュベートした。RetroNectinを除去し、プレートをPBSで洗浄した。上記のように調製したBaEV疑似型レンチウイルスとTIL細胞培地を各ウェルに合計50μLずつ加え、プレートを低速で2時間、32℃で遠心分離した。実施例5に記載したように調製した頭頸部腫瘍試料から生成したTILを、REP前培養で3週間後に遺伝子操作した。TILを、24ウェルプレートにおいて、抗CD3/CD28ビーズを用いて、ビーズとT細胞との比率が3:1となるように24時間活性化した。活性化したTILをウイルスコートしたプレートに入れ、800gで2時間遠心分離し、37℃で4日間培養液中でインキュベートした。1ウェルの細胞は、ウイルスを添加せずに同様に処理し、陰性対照(「未導入」)として使用した。制御されたmbIL15構築物で形質導入された細胞は、10μM ACZまたはDMSOのいずれかで24時間処理した。
【0310】
ACZに応答したTILにおける制御されたmbIL15の発現
mbIL15の発現は、蛍光標識抗IL15抗体と、IL15Raの細胞外ドメインとヒトIgG1 Fcドメイン(IL15Ra-Fc)を融合した組み換えタンパク質の2種類の染色試薬を用いたフローサイトメトリーによって測定した。
図8Bに示すように、TILの45.5%が構成的mbIL15(IL15-292)を発現した。DMSOの存在下では、調節されたmbIL15(IL15-293)の発現は、低いMFIで17.1%であった。一方、ACZの存在下では、制御されたmbIL15の発現は42.5%に増加し、MFIは高かった。これらのデータは、ACZが、形質導入されたTILにおいて、CA2 DRDが制御するmbIL15を誘導することを示唆している。
【0311】
(実施例7)定常的および制御されたmbIL15を発現するTILのインビボ解析
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の抗腫瘍活性に対する調節されたmbIL15の効果を評価するために、ヒトPDX(hPDX)モデルが使用される。TILは、実施例6に記載されるように、患者の腫瘍試料、例えば頭頸部腫瘍試料から単離される。TILは、実施例6に記載のように、IL15-292構築物又はIL15-293構築物のいずれかを含むBaEV-偽タイプ化レンチウイルスベクターで、又はBaEV-偽タイプ化レンチウイルスエンプティベクター(EV)で形質導入し、そして任意選択で凍結される。腫瘍試料からのTIL-マッチド患者由来異種移植片(hPDX)を、NSGマウスの右脇腹への皮下移植を介して樹立する。腫瘍の成長は、ノギスを用いて週に1~2回測定する。試験開始時に腫瘍を測定し、全群の平均腫瘍量がほぼ同じになるようにマウスをランダム化し、新しいケージに入れる(各群N=8)。遺伝子適合TILは、必要に応じて解凍し、PMAで刺激した後、担癌マウスに注入する。各マウスは同数の人工TILを受け取る。
【0312】
グループ1にはベンチマークコントロールとして組換えヒトIL2(hIL2)を補充した非導入TILを、グループ2には構成的mbIL15(IL15-292)で形質転換されたTILを投与する。グループ3および4は、調節されたmbIL15(IL15-293)で形質転換されたTILを受ける。第3群は200mg/kgのACZで毎日PO処置し、第4群は試験終了までビヒクルで毎日処置する。TILの持続性をモニターするために、追加の動物を各群に含める(血液についてはn=4)。血液(50μL)を、予め決められた日に顎下静脈から採取した。赤血球を溶解し、ヒトCD45、CD3およびマウスCD45に対する蛍光色素標識抗体で染色し、細胞をフローサイトメトリーで分析する。腫瘍の成長は約90日まで測定される。エンドポイントには、最大口径の測定、腫瘍壊死や体重減少など動物の健康への影響などが含まれる。
【0313】
各群の個々のマウスの腫瘍の成長を追跡し、群平均を収集する。未導入のTILとhIL2で処置したグループ1の動物では、腫瘍の成長の遅れが予想される。mbIL15がTILによってほとんどまたは全く発現されないので、第4群では腫瘍成長の抑制は観察されない。対照的に、腫瘍は第2群および第3群において実質的に退縮し、場合によってはベースラインまで退縮する。これは両群ともmbIL15を発現するTILを有しており、その持続性と相関する抗腫瘍活性が強化されるからである。
【0314】
(実施例8)臍帯血からのNK細胞の単離
凍結保存された単核細胞分画臍帯血はBioBridge Global社から入手した。臍帯血をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1:1に希釈し、Ficoll-Paque+(Sigma Cat.No.GE17-1440-02)のクッションの上で遠心分離を行った。単核細胞(MNC)からなるバフィーコートを回収し、MNCを洗浄し、計数した。EasySep Human NK Cell Isolation Kit (Stemcell Technologies Cat. No. 17955)を用いてMNCからNK細胞を分離した。NK細胞は、CD56、CD16、CD3およびviability stainを用いてFACSで計数し、純度を確認した。
【0315】
(実施例9)NK細胞におけるACZによるmbIL15発現の制御のin vitro解析
【0316】
NK細胞の拡大
実施例8に記載のNK細胞単離の1日前に、フィーダー細胞(4-1BBLおよびmbIL-21を発現するK562細胞)を完全NK細胞培地(グルタミン酸入りRPMI(サーモフィッシャー)、10%熱不活性化牛胎児血清(ギブコ)、1Xペニシリン/ストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム、1X HEPES、50μM2-メルカプトエタノール)中で融解させた。NK細胞単離の当日、10 x 106 フィーダー細胞をマイトマイシンCで処理して増殖を抑制し、洗浄して過剰な薬剤を除去した。200U/mLの組換えヒトIL2(rhIL2;PeproTech)入りNK細胞培地で、エフェクターとターゲットの比率が1:2になるようにNK細胞をフィーダー細胞に添加した。NK細胞培地とrhIL2を2日おきに補充することでNK細胞培養を拡大し、FACSでNK細胞の拡大を分析した。
【0317】
レンチウイルスを用いたNK細胞の形質転換
96ウェル非コート組織培養プレートを、PBS中35μg/mLレトロネクチン(タカラバイオ)と共に37℃で2時間、または4℃で一晩インキュベートした。RetroNectinを除去し、プレートをPBSで洗浄した。実施例6に記載したように調製したBaEV-偽型化レンチウイルス、およびNK細胞培地を、各ウェルに総容量50μLで加え、プレートを低速で2時間、32o Cで遠心分離した。100μLのNK細胞導入培地(1mg/mLのSynperonic F 108(Sigma-Aldrich)および200U/mLのrhIL2を含むNK細胞培地)中の1×105NK細胞を各ウェルに加え、細胞をNK細胞培地で4日間膨張させた。
【0318】
ACZによるmbIL15コンストラクトの制御
3人の異なるドナーからのNK細胞を単離し、拡大し、IL15-292構築物またはIL15-293構築物を含むBaEV-偽型レンチウイルスを用いて形質転換した。IL15-292レンチウイルスの力価は2.38 x 108 TU/mL、一方IL15-293レンチウイルスの力価は6.51 x 108 TU/mL(Jurkat qPCR titerで測定)で、4 μLレンチウイルスと46 μLNK細胞培地を各ウェルに添加した。4日間細胞を膨張させた後、10 μM ACZまたはビヒクル(DMSO)を添加し、一晩培養した。mbIL15の発現は、翌日(導入後5日目)にFACSで解析した。
【0319】
mbIL15の発現は、2種類の染色試薬を用いたフローサイトメトリーによって決定された。mbIL15+細胞の頻度は、抗CD56抗体によって決定されたNK細胞の数に対して決定された。
図9に示すように、3人のドナーのうち2人の臍帯血由来NK細胞の40%以上がmbIL15を発現し、3人のドナーのうち1人の臍帯血由来NK細胞の約70%がmbIL15を発現していることが分かった。DMSO存在下では、ドナーに関係なくNK細胞で制御されたmbIL15の発現は10%以下であった。一方、ACZの存在下では、ドナーに関係なくNK細胞で制御されたmbIL15の発現が40%以上に増加した。これらのデータは、ACZが、形質導入されたNKにおいてCA2 DRD制御のmbIL15を誘導することを示す。
【0320】
(実施例10)定常的および制御されたmbIL15を発現するNK細胞のインビボ解析
制御されたmbIL15がNK細胞の抗腫瘍活性に及ぼす影響を評価するために、急性骨髄性白血病のHL-60動物モデルを使用する。臍帯血NK細胞は、実施例9に記載のように、IL15-292構築物又はIL15-293構築物のいずれかを含むBaEV-偽タイプ化レンチウイルスベクターで、又はBaEV-偽タイプ化レンチウイルス空ベクター(EV)で形質導入し、任意に導入後凍結させる。ルシフェラーゼを発現するHL-60細胞(HL-60-luc)をNSGマウスに静脈内注射し(1x106 /mouse)、腫瘍成長を生物発光イメージング測定(D-ルシフェリンの腹腔内注射後の光子毎秒(p/s)の総フラックス単位)により週1~2回、測定する。6日目、平均腫瘍サイズが約106 総p/sに達した時点で、動物を新しいケージに無作為に入れる(各グループにつきN=8)。人工NK細胞は、必要に応じて解凍し、HL-60腫瘍担持マウスに注入する。各マウスは同数のmbIL15+細胞を受け取り、輸液製品中のNK細胞の総数は、EV導入NK細胞の添加によって調整される。
【0321】
グループ1にはネガティブコントロールとしてEVで操作したNK細胞を、グループ2には構成的なmbIL5(コンストラクトIL15-292)で形質転換したNK細胞を投与する。グループ3および4は、調節されたmbIL15(構築物IL15-293)で形質転換されたNK細胞を受ける。群3は200mg/kgのACZで毎日PO処理し、群4は試験終了までビヒクルで毎日処理する。NKの拡大をモニターするために、追加の動物を各群に含める(血液分析のためにn=4)。血液(50μL)を、7日目、14日目、および21日目に顎下静脈から抜き取る。赤血球を溶解し、ヒトCD45、CD3およびマウスCD45に対する蛍光色素結合抗体で染色し、フローサイトメトリーで細胞を分析する。腫瘍の成長は約30日まで測定される。エンドポイントには、最大総フラックスユニット(1010)と、後肢麻痺や体重減少などの動物の健康への影響が含まれる。
【0322】
各群の個々のマウスの腫瘍の成長を測定し、群平均を収集する。EV導入NK細胞を注入したグループ1のすべての動物で、急速な腫瘍増殖が予想される。mbIL15がほとんどあるいは全く発現しないため、第4群のマウスの腫瘍成長率は、対照のEV群と同程度になるであろう。一方、2群および3群では、1群および4群のNK細胞と比較して、NK細胞にmbIL15が発現しているため、腫瘍が大幅に退縮する。 この実施例は、ACZが、形質導入されたNK細胞においてmbIL15のin vivoでの発現を誘導し、mbIL15をほとんどまたは全く発現しない形質導入されたビヒクル処理NK細胞と比較して、NK抗腫瘍反応の増強につながることを実証するであろう。
【0323】
前述の詳細な説明において、本発明は、特定の実施形態を参照して説明された。しかしながら、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることが理解されよう。
【0324】
以下の項目は、本開示の様々な実施形態を例示するものである。
【0325】
項目1.IL15ペイロードに作動可能に連結された薬物応答性ドメイン(DRD)を含む組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、前記DRDがヒト炭酸脱水酵素II(CA2)に由来し、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して1、2、3、4以上の変異を含んでなることを特徴とする核酸分子。
【0326】
項目2.DRDが、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に対して1、2、3または4個のアミノ酸の付加、置換および/または欠失を含んでなる、項目1に記載の核酸分子。
【0327】
項目3.DRDが、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含んでなる、項目2に記載の核酸分子。
【0328】
項目4.DRDが、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列からなる、項目3に記載の核酸分子。
【0329】
項目5.IL15ペイロードが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、項目1~4のいずれかに記載の核酸分子。
【0330】
項目6.IL15ペイロードが、DRDのN末端である、項目1~5のいずれか1項に記載の核酸分子。
【0331】
項目7.IL15ペイロードが、膜結合IL15ポリペプチドである、項目6に記載の核酸分子。
【0332】
項目8.膜結合IL15ポリペプチドが、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド成分、膜貫通ドメインおよび細胞内テールを含み、ここで膜貫通ドメインがIL15ポリペプチド成分のC末端であり、細胞内テールが膜貫通ドメインのC末端である、項目7に記載の核酸分子。
【0333】
項目9.膜結合IL15ポリペプチドが、IL15ポリペプチド成分と膜貫通ドメインとの間にリンカーをさらに含む、項目8に記載の核酸分子。
【0334】
項目10.IL15ペイロードが、(a)リーダー配列、(b)GSリンカー、(c)ヒンジドメイン、(d)膜貫通ドメイン、および(e)細胞内尾部からなる群から選択される1つ以上の成分をさらに含む、項目1~7のいずれか1項に記載の核酸分子。
【0335】
項目11.IL15ペイロードが、さらに(a)リーダー配列、(b)GSリンカー、(c)ヒンジドメイン、(d)膜貫通ドメイン、および(e)細胞内尾部を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の核酸分子。
【0336】
項目12.前記ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列をコードする、項目11に記載の核酸分子。
【0337】
項目13.前記ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:25の核酸配列を含んでなる、項目12に記載の核酸分子。
【0338】
項目14.前記ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列をコードしている、項目11に記載の核酸分子。
【0339】
項目15.前記ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:29の核酸配列を含んでなる、項目14に記載の核酸分子。
【0340】
項目16.項目1~15のいずれか1項に記載の核酸分子であって、該核酸分子が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2のポリヌクレオチドをさらに含み、ここで、該CARまたはTCRが、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでいる、該核酸分子。
【0341】
項目17.項目16に記載の核酸分子であって、前記第2のポリヌクレオチドが、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードしている、核酸分子。
【0342】
項目18.CARが、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含んでなる、項目17に記載の核酸分子。
【0343】
項目19.項目1~19のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【0344】
項目20.ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターである、項目19に記載のベクター。
【0345】
項目21.ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、またはピコナウイルスから得られるウイルスベクターである、項目20に記載のベクター。
【0346】
項目22.ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはオンコリティカルウイルスベクターから選択される、項目21に記載のベクター。
【0347】
項目23.ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターから選択される、項目22に記載のベクター。
【0348】
項目24.項目1~15のいずれか1項に記載の核酸分子によってコードされる組換えタンパク質。
【0349】
項目25.項目1~18のいずれか1項に記載の核酸分子、項目18~23のいずれか1項に記載のベクター、または項目24に記載の組換えタンパク質を含む、細胞。
【0350】
項目26.細胞が細菌細胞である、項目25に記載の細胞。
【0351】
項目27.細胞が哺乳動物細胞である、項目25に記載の細胞。
【0352】
項目28.哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、項目27に記載の細胞。
【0353】
項目29.前記ヒト細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、項目28に記載の細胞。
【0354】
項目30.前記細胞が、CD4+またはCD8+T細胞である、項目29に記載の細胞。
【0355】
項目31.細胞が単離される、項目29に記載の細胞。
【0356】
項目32.ヒト細胞がT細胞またはNK細胞であり、そしてヒトT細胞またはヒトNK細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2のポリヌクレオチドをさらに含み、ここでCARまたはTCRが、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでいる、項目29に記載の細胞。
【0357】
項目33.前記第2のポリヌクレオチドが、関心対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、項目32に記載の細胞。
【0358】
項目34.CARが、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目33に記載の細胞。
【0359】
項目35.項目25~34のいずれか1項に記載の細胞および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【0360】
項目36.細胞が、ヒトT細胞、ヒトNK細胞またはヒトTILである、項目35に記載の薬学的組成物。
【0361】
項目37.項目25~34のいずれか1項に記載の細胞におけるIL15の発現、機能、および/またはレベルを調節する方法であって、前記方法は、DRDが応答する刺激を細胞に投与することを含み、ここで、該刺激は、IL15の発現、機能および/またはレベルを調節するのに十分な量で投与される、方法。
【0362】
項目38.刺激が、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロルフエナミドから選択される、項目37に記載の方法。
【0363】
項目39.刺激がアセタゾラミドである、項目38に記載の方法。
【0364】
項目40.細胞がヒトT細胞またはヒトNK細胞であり、そしてヒトT細胞またはヒトNK細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2のポリヌクレオチドをさらに含み、ここでCARまたはTCRが、目的の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含んでいる、項目37に記載の方法。
【0365】
項目41.項目40に記載の方法であって、第2のポリヌクレオチドが、関心対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、方法。
【0366】
項目42.CARが、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目41に記載の方法。
【0367】
項目43.それを必要とする被験体において、調節されたIL15に応答する疾患または障害を処置する方法であって、(a)被験体に、項目1~18のいずれか1項に記載の核酸分子、項目19~23のいずれか1項に記載のベクター、項目24の組換えタンパク質、項目25~34のいずれか1項に記載の細胞または項目35~36のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療的有効量を投与し、および(b)被験体に治療的有効量の刺激を投与し、ここでDRDが刺激に応答し、IL15ペイロードの発現が刺激に応答して変調される、ことを含む、前記方法。
【0368】
項目44.刺激が、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトックスゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロルフエナミドから選択される、項目43に記載の方法。
【0369】
項目45.刺激がアセタゾラミドである、項目44に記載の方法。
【0370】
項目46.疾患または障害が癌である、項目43~45のいずれかに記載の方法。
【0371】
項目47.それを必要とする被験体における悪性腫瘍を処置する方法であって、前記腫瘍が腫瘍関連抗原を発現している、(a)被験体に、項目32~34のいずれか1項に記載のヒトT細胞もしくはヒトNK細胞、またはそれらの薬学的組成物の治療有効量を投与し、ここで、CARまたはTCRは、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含み、および(b)被験体に治療有効量の刺激を投与し、ここで、DRDは刺激に応答し、IL15ペイロードの発現は刺激に応答して調節される工程を包含する方法。
【0372】
項目48.項目48に記載の方法であって、被験体が、CARを含むヒトT細胞の治療的有効量、またはその薬学的組成物を投与される、方法。
【0373】
項目49.刺激が、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミドまたはジクロルフエナミドから選択される、項目47または48のいずれか一項に記載の方法。
【0374】
項目50.刺激がアセタゾラミドである、項目49に記載の方法。
【0375】
項目51.遺伝子操作されたT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を製造する方法であって、T細胞、NK細胞またはTILに、IL15ペイロードに作動可能に連結した薬剤応答性ドメイン(DRD)を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入することを含み、ここで該ポリヌクレオチドがSEQ ID NOS:24または28のアミノ酸配列をコードしていることを特徴とする方法。
【0376】
項目52.前記ポリヌクレオチドが、SEQ ID NOS:25または29のヌクレオチド配列を含んでなる、項目51に記載の方法。
【0377】
項目53.ポリヌクレオチドが、レンチウイルス導入によってT細胞、NK細胞またはTILに導入される、項目52に記載の方法。
【0378】
項目54.ポリヌクレオチドが、非ウイルスベクター送達方法によってT細胞、NK細胞またはTILに導入される、項目52に記載の方法。
【0379】
項目55.組換えタンパク質を含む改変細胞であって、前記組換えタンパク質は、(i)エフェクターモジュールであって、前記エフェクターモジュールは、薬物応答性ドメイン(DRD)を含む刺激応答要素(SRE)を含み、ここで、前記DRDは、ヒト炭酸脱水酵素2(CA2)(SEQ ID NO:1)のアミノ酸配列において1つまたは複数のアミノ酸変異を有する親タンパク質または変異タンパク質から得られ、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列から成り、および(ii)前記SREと連結した組み換えIL15を含む、組み換えタンパク質を含む、改変細胞。
【0380】
項目56.組換えIL15が、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含んでなる、項目55に記載の細胞。
【0381】
項目57.組換えIL15が、細胞表面上に発現され得る、項目55または56に記載の細胞。
【0382】
項目58.組換えIL15が、膜結合IL15(mbIL15)である、項目55または56に記載の細胞。
【0383】
項目59.組換えタンパク質が、SEQ ID NO: 16の全体または一部を含んでなる、項目55~58のいずれかに記載の細胞。
【0384】
項目60.組換えタンパク質が、SEQ ID NO: 18の全体または一部を含んでなる、項目55~59のいずれかに記載の細胞。
【0385】
項目61.組換えタンパク質が、(a)リーダー配列、(b)GSリンカー、(c)ヒンジドメイン、(d)膜貫通ドメイン、および(e)細胞質尾部ドメインからなる群より選択される1つまたは複数の成分をさらに含む、項目55に記載の細胞。
【0386】
項目62.前記組換えタンパク質が、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含む、項目55に記載の細胞。
【0387】
項目63.前記組換えタンパク質が、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含む、項目55に記載の細胞。
【0388】
項目64.組換えIL15が、(a)リーダー配列、(b)シグナルペプチド、(c)リンカー、(d)スペーサー、(e)切断部位、(f)タグ、(g)共刺激ドメイン、(h)蛍光タンパク質、および(i)ヒンジのうちの少なくとも1つに連結される、細胞のうちの少なくとも1つにさらに連結されている、項目55~63のいずれか1項に記載の細胞。
【0389】
項目65.SREが、アセタゾラミド(ACZ)に応答性であるか、またはそれと相互作用する、項目55~64のいずれかに記載の細胞。
【0390】
項目66.項目55に記載の細胞であって、該細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であることを特徴とする、細胞。
【0391】
項目67.任意に第1の発現カセットであって、IL15ポリペプチドに連結した刺激応答要素(SRE)を含む第1の組換えタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドであり、ここで、該SREはDRDを含み、該DRDはSEQ ID NO:4 のアミノ酸配列からなる、ポリヌクレオチドを含む、核酸分子。
【0392】
項目68.IL15が、SREの制御下にある、項目67に記載の核酸分子。
【0393】
項目69.項目67に記載の核酸分子であって、該ポリヌクレオチドが、さらに、(a)リーダー配列、(b)GSリンカー、(c)ヒンジドメイン、(d)膜貫通ドメイン、および(e)細胞質尾部ドメインをコードする、核酸分子。
【0394】
項目70.前記ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:25の核酸配列を含んでなる、項目67に記載の核酸分子。
【0395】
項目71.前記ポリヌクレオチドが、SEQ ID NO:29の核酸配列を含んでなる、項目67に記載の核酸分子。
【0396】
項目72.単離される、項目67~71のいずれかに記載の核酸分子。
【0397】
項目73.項目67~72のいずれか1項に記載の核酸分子によってコードされる組換えタンパク質。
【0398】
項目74.組換えタンパク質が、SEQ ID NO:24または28のアミノ酸配列を含んでなる、項目73に記載の組換えタンパク質。
【0399】
項目75.項目67~72のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【0400】
項目76.ベクターが、プラスミド、またはレンチウイルスベクターである、項目75に記載のベクター。
【0401】
項目77.インテグラーゼが欠損している項目76に記載のベクター。
【0402】
項目78.項目67~72のいずれか1項に記載の核酸分子、項目73~74に記載の組換えタンパク質、または項目75~77のいずれか1項に記載のベクターを含む、T細胞、NK細胞またはTIL。
【0403】
項目79.CD4+またはCD8+T細胞である項目78に記載のT細胞。
【0404】
項目80.ヒトT細胞である、項目79または項目42に記載のT細胞。
【0405】
項目81.単離される、項目78~80のいずれかに記載のT細胞。
【0406】
項目82.項目55~66または78~81のいずれか1項に記載の細胞、T細胞、NK細胞またはTILと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【0407】
項目83.遺伝子操作されたT細胞、NK細胞またはTILを製造する方法であって、T細胞、NK細胞またはTILに導入する工程、IL15ポリペプチドペイロードに連結したCA2 DRDを含む刺激応答要素をコードする第1のポリヌクレオチドであって、第1のポリヌクレオチドがSEQ ID NO:25 または29のヌクレオチド配列を有する工程を包含する、方法。
【0408】
項目84.前記第1のポリヌクレオチドが、前記T細胞、NK細胞、またはTILのレンチウイルストランスフェクションを介して前記T細胞、NK細胞、またはTILに導入される、項目83に記載の方法。
【0409】
本開示は、いくつかの説明された実施形態に関して、ある程度長く、いくつかの特殊性をもって説明されてきたが、そのような特殊性または実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきであるという意図はなく、先行技術に鑑みてそのような請求項の最も広い解釈を提供するように、したがって、本開示の意図する範囲を有効に包含するように添付の請求項に言及されて解釈されるものである。
【0410】
本書に記載されたすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合は、定義を含む本明細書が支配的となる。さらに、セクションの見出し、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【配列表】
【誤訳訂正書】
【提出日】2022-08-26
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2019年9月10日に出願された米国仮出願第62/898,520号の優先権の利益を主張するものである。前記出願の全内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。
【配列表の参照】
【0002】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照により、その全体を本明細書に援用する。2020年9月10日に作成された当該ASCIIコピーは、268052_473951_SL.txtという名前で、178,693バイトのサイズである。
【技術分野】
【0003】
本開示は、ヒトインターロイキン15(IL15)を含む少なくとも1つのペイロードに対するタンパク質安定性を調節できるヒト炭酸脱水酵素2(CA2)由来の薬剤応答性ドメイン(Drug responsive domain(DRD))、組成物、およびその使用方法に関する。本開示において、免疫細胞からの反応を高める際に使用する、CA2バイオ回路システム、CA2エフェクターモジュール、刺激応答要素(SRE)のポリペプチド、それらをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを含むベクターおよび細胞が提供される。
【背景技術】
【0004】
サイトカイン機能および/または発現を制御する方法と共に本明細書に記載のDRD技術を使用することにより、既存の免疫療法戦略が大幅に改善され、遺伝子導入および養子T細胞移植(ACT)療法に安全で効果的に取り込むことができるタンパク質治療の領域を拡大させることができ、それにはこれまで治療的使用に適さないと見なされてきた用途も含まれる。ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、およびT細胞ベースの免疫療法の改善は、治療の機能性を高め、改善するために必要とされるが、それは、例えば、様々な免疫療法における被験者への投与時の使用のため、操作免疫細胞の持続性および/または生存性を改善することによる。ヒトIL15に結合しているCA2 DRD、そのようなDRDを含む修飾細胞、組成物、およびそのような必要性を満たす方法が提供される。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、小分子依存の安定性を示すヒト炭酸脱水酵素2(CA2)由来の新規のタンパク質ドメインを提供する。そのようなタンパク質ドメインは、薬剤応答性ドメイン(DRD)と呼ばれる。その結合(すなわち、安定化)リガンドの非存在下においては、DRDは、不安定化し、DRDに作動可能に結合しているペイロード(例えば、対象のタンパク質(POI))の分解が生じる。一方、その結合リガンドの存在下においては、DRDおよびその作動可能に結合しているペイロードは、安定化する。DRDおよびその作動可能に結合しているペイロードの安定性は、結合リガンドの用量によって決まる。
【0006】
いくつかの実施形態においては、本開示は、全体または一部において、ヒト炭酸脱水酵素2(CA2、配列番号:1のアミノ酸配列を有する)由来の薬剤応答性ドメイン(DRD)を含みうる、刺激応答要素(SRE)を提供する。1実施形態においては、DRDは、全長CA2ポリペプチド(配列番号:1)由来であってよい。いくつかの実施形態においては、DRDは、ヒト炭酸脱水酵素の一部または領域由来であってよい。CA2の一部または領域は、CA2(配列番号:2)のアミノ酸2~260から選択されてよい。
【0007】
いくつかの実施形態においては、SREは、配列番号:1または配列番号:2に対して、CA2に1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含むDRDを含んでよい。いくつかの実施形態においては、SREは、配列番号:1または配列番号:2に対して、CA2に1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むDRDを含んでよい。
【0008】
いくつかの実施形態においては、SREは、CA2の一部に1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含むDRDを含んでよい。いくつかの実施形態においては、SREは、CA2またはその一部に1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含むDRDを含んでよく、追加的なアミノ酸を更に含んでよい。いくつかの実施形態においては、SREは、CA2の一部に1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むDRDを含んでよい。いくつかの実施形態においては、SREは、CA2またはその一部に1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むDRDを含んでよく、追加的なアミノ酸を更に含んでよい。
【0009】
本明細書において、配列番号:1に対して、少なくとも1つの変異を含む分離されたポリペプチドバリアントも提供される。配列番号:1に対するCA2変異の非限定的な例としては、M1delおよびL156Hが挙げられる。別の態様においては、DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、または配列番号:4のアミノ酸配列から成るポリペプチドであり、CA2変異は、配列番号:1に対して、Mdel1(M1del)およびL156Hを含む。別の態様においては、DRDは、配列番号:1に対して、アミノ酸欠失M1delおよびアミノ酸置換L156Hを含むポリペプチドであり、追加的なアミノ酸を更に含んでよい。別の態様においては、DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列から成るポリペプチドである。
【0010】
本明細書において、少なくとも1つのエフェクターモジュールを含むバイオ回路システムも提供される。バイオ回路のエフェクターモジュールは、刺激応答要素(SRE)を含んでよく、SREは、配列番号:1または配列番号:2のアミノ酸配列に対して、CA2の1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含む、ヒト炭酸脱水酵素2(CA2;配列番号:1)またはその変異体由来のDRDを含んでよい。いくつかの実施形態においては、バイオ回路のエフェクターモジュールは、配列番号:1または配列番号:2に対して、CA2に1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むDRDを含むSREを含む。バイオ回路は、SREに付着しうる、付加されうる、または結び付きうる少なくとも1つのペイロードを含んでもよい。ペイロードは、配列番号:8のアミノ酸配列を含む(i)ヒトIL15を含んでよいが、これに限定されない。
【0011】
バイオ回路システムのSREは、Mdel1およびL156Hなどだがこれらに限定されない、CA2(配列番号:1または配列番号:2)の1つ、2つ、3つまたはそれ以上の変異を含んでよい。バイオ回路システムのSREは、L156Hなどだがこれらに限定されない、CA2(配列番号:1または配列番号:2)に1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含んでよい。
【0012】
いくつかの実施形態においては、CA2バイオ回路システムにおけるSREは、変異M1delおよびL156Hを有するCA2であってよく、ナンバリングは、配列番号:1(配列番号:4)のアミノ酸配列に関連する。いくつかの実施形態においては、SREは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、または配列番号:4のアミノ酸配列から成るポリペプチドである。いくつかの実施形態においては、SREは、配列番号:4のアミノ酸配列から成るポリペプチドである。
【0013】
本明細書に記載のバイオ回路システムは、1つまたは複数の刺激剤に反応するSREを含んでよい。
【0014】
いくつかの実施形態においては、刺激剤は、小分子であってよく、小分子は、アセタゾラミド(ACZ)である。
【0015】
別の態様においては、本開示は、少なくとも1つのペイロードを含むエフェクターモジュールを提供する。いくつかの実施形態においては、エフェクターモジュールは、IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 DRDを含むSREを含む。いくつかの実施形態においては、IL15ペイロードは、配列番号:8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、IL15ペイロードは、配列番号:9のヌクレオチド配列を含む核酸配列により一部コードされてよい。いくつかの実施形態においては、IL15ペイロードは、IL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態においては、IL15ペイロードは、機能性IL15構成要素またはドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内尾部を含む、IL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態においては、IL15ペイロードは、機能性IL15構成要素またはドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内尾部、およびリーダー配列を含む、IL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態においては、本開示は、膜結合IL15ポリペプチドに作動可能に結合しているCA2 DRDを含むSREを提供する。いくつかの実施形態においては、本開示は、膜結合IL15ポリペプチドに作動可能に結合しているCA2 DRDを含むSREを提供し、膜結合IL15ポリペプチドは、N末端からC末端まで、リーダー配列、配列番号:8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド、ペプチドリンカー、膜貫通ドメイン、および細胞内尾部を含む。
【0016】
別の態様においては、本開示は、エフェクターモジュールをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含む、修飾または遺伝子操作細胞を作成する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、修飾または操作細胞は、免疫細胞である。いくつかの実施形態においては、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 DRDをコードする。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、膜結合IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 DRDをコードする。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター送達方法により、細胞に導入される。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入により、細胞に導入される。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、レンチウイルス形質導入により、細胞に導入される。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、T細胞、NK細胞、またはTILへのレンチウイルス形質導入により、細胞に導入される。いくつかの実施形態においては、本開示は、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターにより、膜結合IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 DRDをコードするポリヌクレオチドを、T細胞、NK細胞、またはTILに導入する工程を含む、修飾または遺伝子操作T細胞、NK細胞、またはTILを作成する方法を提供する。
【0017】
別の態様においては、本開示は、(a)本開示のペイロードに結合しているSREを含む組換えコンストラクトを含む修飾細胞、または複数のそのような修飾細胞を含む組成物を、病気または疾患を有する被験者に投与する工程と、(b)治療効果のある量の、SREが反応する刺激剤を被験者に投与する工程とを含む、治療の方法を提供する。本態様のいくつかの実施形態においては、病気または疾患は、がん、腫瘍(neoplasm)、または腫瘍(tumor)である。いくつかの実施形態においては、SREは、CA2 DRDである。いくつかの実施形態においては、ペイロードは、IL15または膜結合IL15である。いくつかの実施形態においては、修飾細胞は、IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 SREを含む。いくつかの実施形態においては、修飾細胞は、膜結合IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 SREを含む。いくつかの実施形態においては、刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドである。いくつかの実施形態においては、修飾細胞は、膜結合IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2を含み、刺激剤は、アセタゾラミドである。いくつかの関連する態様においては、修飾細胞は、操作または修飾免疫細胞であり、例えば、CA2-IL15バイオ回路およびシステムは、CD8+T細胞およびCD4+T細胞などのT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、およびその任意の組み合わせを含む免疫細胞と共に使用されてよい。他の実施形態においては、ACTに対する免疫刺激細胞は、胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)から生成されてよい。いくつかの実施形態においては、自己または同種免疫細胞は、ACTに使用される。いくつかの実施形態においては、免疫細胞は、T細胞、TIL、またはNK細胞である。いくつかの実施形態においては、免疫細胞は、iPSC、臍帯血、または末梢血単核球由来のNK細胞であり、修飾免疫細胞は、被験者において、同じまたはほぼ同じ投与量の、ペイロードに結合しているSREが欠けた参照細胞組成物を投与された被験者においてよりも、多いまたは長い増殖および/または持続性を示す。
【0018】
別の態様においては、本開示は、(a)本開示のペイロードに結合しているSREを含む組換えコンストラクトを含む、修飾T細胞、修飾NK細胞、もしくは修飾TIL、または複数のそのような修飾細胞を含む組成物を、被験者に投与する工程と、(b)被験者に治療効果のある量の、SREが反応する刺激剤を投与する工程とを含む、被験者において悪性腫瘍を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、腫瘍は、腫瘍関連抗原を発現させる。いくつかの実施形態においては、修飾T細胞または修飾NK細胞は、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を更に含む。いくつかの実施形態においては、修飾T細胞または修飾NK細胞は、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARを含む。いくつかの実施形態においては、修飾T細胞、修飾NK細胞、または修飾TILは、CA2 DRDであるSREを含む。いくつかの実施形態においては、修飾T細胞、修飾NK細胞、または修飾TILは、IL15または膜結合IL15であるペイロードを含む。いくつかの実施形態においては、修飾された修飾T細胞、修飾NK細胞、または修飾TILは、IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 SREを含む。いくつかの実施形態においては、修飾された修飾T細胞、修飾NK細胞、または修飾TILは、膜結合IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 SREを含む。いくつかの実施形態においては、刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドである。いくつかの実施形態においては、修飾細胞は、膜結合IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 SREを含み、刺激剤は、アセタゾラミドである。
【0019】
別の態様においては、本開示は、バイオ回路システムをコードするポリヌクレオチドおよびベクター、ならびにバイオ回路システムおよび薬学的に許容できる添加物を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
別の態様においては、本開示は、本開示のポリヌクレオチドによりコードされた組換えタンパク質を提供する。いくつかの実施形態においては、組換えタンパク質は、IL15ペイロードに作動可能に結合しているCA2 DRDを含むエフェクターモジュールを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面に示されるような、本開示の特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の様々な実施形態の原理を説明することに重きが置かれている。
【
図1】T細胞におけるACZにより制御された膜結合IL15(mbIL15)発現のin vitro特性化および/または検証の代表的な手順を示す。
【
図2】T細胞におけるACZにより制御されたmbIL15発現のin vivo特性化および/または検証の代表的な手順を示す。
【
図3A】異なる濃度のACZの存在下における構成的IL15-292およびIL15-294コンストラクトを発現させるT細胞のin vitro増殖を示す。外因性IL15(2ng/mL)の非存在下または存在下において培養された空ベクター(EV)形質導入細胞が対照として使用された。
【
図3B】異なる濃度のACZの存在下における制御IL15-293コンストラクトを発現させるT細胞のin vitro増殖を示す。
【
図3C】異なる濃度のACZの存在下におけるIL15-295コンストラクトを発現させるT細胞のin vitro増殖を示す。
【
図4A】T細胞におけるアセタゾラミド用量反応およびIL15発現を示す。細胞は、100μMから24時間、異なる濃度のACZ(リガンド)で処理された。グラフは、%IL15+T細胞を示す。
【
図4B】T細胞におけるアセタゾラミド用量反応およびIL15発現を示す。細胞は、100μMから24時間、異なる濃度のACZ(リガンド)で処理された。グラフは、IL15の平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図5A】構成的および制御IL15コンストラクトを発現させるT細胞のin vivo分析およびそれらのNK細胞への影響を示す。構成的IL15(IL15-292およびIL15-294)および制御IL15(IL15-293およびIL15-295)コンストラクトを発現させるT細胞のin vivo増殖を示す。空ベクター(EV)形質導入細胞は、対照として使用された。
【
図5B】構成的および制御IL15コンストラクトを発現させるT細胞のin vivo分析およびそれらのNK細胞への影響を示す。同一の条件下でのバイスタンダーNK細胞のin vivo増殖を示す。血液中のT細胞およびNK細胞の頻度は、フローサイトメトリーにより判定された。空ベクター(EV)形質導入細胞は、対照として使用された。
【
図5C】構成的および制御IL15コンストラクトを発現させるT細胞のin vivo分析およびそれらのNK細胞への影響を示す。フローサイトメトリーにより分析された、25日目のT細胞におけるIL15の発現を示す。空ベクター(EV)形質導入細胞は、対照として使用された。
【
図6】構成的に発現されたmbIL15(CD19-IL15-057)または制御mbIL15(CD19-IL15-058)をコードするタンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトの略図を示す。各コンストラクトは、IgKvリーダー配列(IgKv LS)、IL15ポリペプチド構成要素、GSリンカー、B7-1ヒンジ、膜貫通ドメイン(TM)、および尾部を含む制御または構成的mbIL15をコードするポリヌクレオチド配列を含む。構成的コンストラクトは、CA2野生型配列(CA2(WT))に作動可能に結合しているmbIL15をコードする。制御コンストラクトは、CA2(L156H)DRDに作動可能に結合しているmbIL15をコードする。各コンストラクトは、CD8αリーダー配列(CD8α LS)、CD19 scFv、CD8α膜貫通ドメインおよびヒンジ、4-1BB由来の共刺激ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む抗CD19 CARをコードするP2A配列およびポリヌクレオチド配列も含む。
【
図7】
図7Aは、voの制御mbIL15発現および抗腫瘍効果について評価されたタンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトが形質導入されたT細胞を示す。末梢血T細胞におけるmbIL15およびCARの発現についてのフローサイトメトリー分析を示す。
図7Bは、in vivoの制御mbIL15発現および抗腫瘍効果について評価されたタンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトが形質導入されたT細胞を示す。CD19+ Nalm6-Luc腫瘍が移植され、構成的または制御mbIL15を有してまたは有さずにCD19 CARを発現させるレンチウイルスベクターが形質導入されたT細胞が注入された個々のマウスの腫瘍増殖曲線を示す。
図7Cは、in vivoの制御mbIL15発現および抗腫瘍効果について評価されたタンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトが形質導入されたT細胞を示す。グループ平均および標準誤差を有する腫瘍増殖曲線を示す。
図7Dは、in vivoの制御mbIL15発現および抗腫瘍効果について評価されたタンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトが形質導入されたT細胞を示す。T細胞注入後7、14、および21日目に動物から収集された血液におけるT細胞の頻度を示す。
図7Eは、in vivoの制御mbIL15発現および抗腫瘍効果について評価されたタンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトが形質導入されたT細胞を示す。T細胞注入後14目に動物から採取された骨髄におけるT細胞の頻度を示す。
【
図8A】培養工程後およびmbIL15発現コンストラクトでの形質導入後の患者の腫瘍標本からのTILの分析を示す。新鮮な腫瘍消化物(fresh tumor digest)における、およびプレREP TIL培養の3週間後の、CD45
+細胞(上)およびCD45
+細胞内のCD3
+T細胞(下)の頻度を示す。
【
図8B】培養工程後およびmbIL15発現コンストラクトでの形質導入後の患者の腫瘍標本からのTILの分析を示す。構成的または制御mbIL15コンストラクトが形質導入されたTILに関してフローサイトメトリーにより判定されたmbIL15発現を示す。制御mbIL15コンストラクトが形質導入されたTILは、10μMのACZまたはDMSOで24時間処理された。非形質導入細胞は、陰性対照として評価された。
【
図9】NK細胞における構成的および制御mbIL15の発現を示す。グラフ上の各記号(四角および三角)は、3人のドナーの1つを表す。エラーバーは、示された形質導入/治療グループごとの3人のドナーについての標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の添付の説明に記載されている。本明細書に記載のものと同様または同等な任意の材料および方法が本開示の実施または試験で使用できるが、好適な材料および方法を以下に記載する。本開示の他の特徴、目標および利点は、本記載から明らかになるであろう。本記載において、単数形は、文脈上明らかに異なる場合を除き、複数形も含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。矛盾が生じた場合は、本記載が優先される。
【0023】
がん免疫療法は、がんに対する免疫系の反応性を誘発するまたは回復させることを目的とする。免疫療法研究の大幅な進歩により、大まかに能動免疫療法および受動免疫療法に分類されうる様々な戦略が開発されてきた。一般に、これらの戦略は、がん細胞を直接死滅させるため、または免疫抑制腫瘍微小環境に対抗するために利用されうる。能動免疫療法は、内在性で永続性の腫瘍抗原特異的免疫応答の誘発を目的とする。応答は、サイトカインなどの免疫応答修飾因子の非特異的刺激により更に高められうる。対照的に、受動免疫療法は、腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞または抗体などの免疫エフェクター分子が宿主に投与されるアプローチを含む。本アプローチは短命で、複数の処理を必要とする。
【0024】
効率的なT細胞活性化には、3つのシグナル、つまりT細胞受容体(TCR)シグナル伝達(シグナル1)、共刺激分子による活性化(シグナル2)、および免疫刺激サイトカイン(シグナル3)を必要とする。今までのところ、設計かつ議論されてきたCARベースの免疫療法の過半数は、シグナル1およびシグナル2を有している。しかしながら、通常、恒常性サイトカインにより提供される、シグナル3は、典型的に、従来のCAR T細胞には存在せず、腫瘍微小環境においても豊富ではない。
【0025】
そのため、追加的なサイトカインシグナル伝達をもたらすことができるT細胞(例えば、CAR T細胞を含む)を操作し、最適なT細胞活性化のためのシグナル3の必要性を満たす必要がある。シグナル3サイトカインを包含する、T細胞活性化に関わる主要なサイトカインは、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、およびIL-9など、γcクラスに属する。これらのサイトカインは、最終的にT細胞の持続性および有効性に重要な役割を持つ、T細胞の生存および増殖を管理する。これらのサイトカインは、現在、組み合わせのまたは単独の療法に先立つCAR T細胞のex vivo増殖で用いられている。
【0026】
しかしながら、IL15への継続的な曝露によりT細胞の寿命延長を支えることには、リスクがありうる。それは、IL-15への慢性的な高曝露が異常なT細胞増殖または毒性を引き起こす場合があるためである。ヒトにおいて、調節不全のIL15の産生、高い血清レベル、または異常なIL15のシグナル伝達は、自己免疫疾患に関連しており、大型顆粒リンパ球白血病および皮膚T細胞リンパ腫の発病に関わる場合がある。
【0027】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然リンパ系細胞ファミリーのメンバーであり、ヒトにおいては、CD3(T細胞共受容体)の非存在下における表現型マーカーCD56(神経細胞接着分子)の発現により特徴付けられる。NK細胞は、事前の抗原プライミングを必要とすることなく、細胞傷害性攻撃を調停する自然免疫系の強力なエフェクター細胞であり、がん悪性腫瘍およびウイルス感染を含む病気に対する防御の第一線を成す。
【0028】
いくつかの前臨床および臨床試験により、NK細胞の養子移植が急性骨髄性白血病などのがんに対する有望な治療法であると証明されてきた(Ruggeri他、Science;2002年、295:2097-2100;およびGeller他、Immunotherapy、2011年、3:1445-1459)。DAP12ベースの活性化CARなどのCARを発現させるNK細胞の養子移植が、腫瘍細胞の根絶を促進することが明らかになった(Topfer他、J Immunol.2015年;194:3201-3212)。CS-1特異的CARを発現させるために操作されたNK細胞が、多発性骨髄腫における細胞溶解およびインターフェロン-γ(IFN-γ)産生を促進することも示された(Chu他、Leukemia、2014年、28(4):917-927)。
【0029】
NK細胞活性化は、活性化機能および阻害機能を有する一連の受容体により特徴付けられる。NK細胞における重要な活性化受容体には、CD94/NKG2CおよびNKG2D(C型レクチン様受容体)、ならびに自然細胞傷害性受容体(NCR)NKp30、NKp44、およびNKp46が含まれ、これらは、腫瘍細胞またはウイルス感染細胞においてリガンドを認識する。NK細胞阻害は、基本的に、HLA分子のα1ヘリックスにより、多形抑制キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)とそれらの同種ヒト白血球抗原(HLA)リガンドの相互作用により調停される。活性化受容体および抑制性受容体から生成されるシグナル間のバランスは、主に、即時の細胞傷害性活性化を判定する。
【0030】
NK細胞は、末梢血単核球(PBMC)および臍帯血から分離されてもよいし、ヒト胚性幹(ES)細胞および人工多能性幹細胞(iPSC)由来であってもよい。NK細胞は、養子免疫療法に更に展開されうる。NK細胞の増殖に有用な戦略およびプロトコールには、インターロイキン2(IL2)刺激および自己支持細胞の使用、または遺伝子組み換え同種支持細胞の使用が含まれてよい。いくつかの態様においては、NK細胞は、IL15、IL21、IL2、41BBL、IL12、IL18、MICA、2B4、LFA-1、およびBCM1/SLAMF2を含む刺激性リガンドを併用して、選択的に展開されうる(例えば、米国特許公報第US20150190471号)。
【0031】
NK細胞ベースの免疫療法は、腫瘍標的を直接溶解するNK細胞の能力、NK細胞駆動型の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体および分子の出現、ならびに炎症反応を誘発するNK細胞の能力のため、急速に発展している。NK細胞は、自己および同種NK細胞注入戦略を単独でまたは造血幹細胞移植と共に使用して、臨床試験において利用されている。加えて、NK細胞株製品およびキメラ抗原受容体(CAR)が形質導入されたNK細胞の使用などの、NK細胞療法の他のモダリティにも兆しが見える。他のものは、NK細胞のin vivo持続性および増殖が、進行したAMLの患者における抗腫瘍活性と相関関係を持つことを示している。この問題に取り組むために臨床前に評価されている戦略の中で、NK細胞の持続性および増殖を誘発するサイトカインの利用が、現在の臨床試験で主流になっていると思われる。IL15は、制御性T細胞を刺激することなく、NK細胞の発生および恒常性において既知の生理学的役割を有しているが、実験的発見によれば、IL-15による継続的な治療は、結果として、消耗と一致した機能性NK細胞の変化をもたらすことが示されている。例えば、継続的にIL15で処理されたNK細胞では、9日間の実験的なIL15による継続治療中、初めはより良好な増殖および拡大を示すが、より細胞死の影響を受けやすかったことが、少なくとも1つの研究において実験的に示されている。加えて、細胞周期遺伝子発現データにより、IL15が継続的に投与されたNK細胞では、細胞周期チェックポイント遺伝子および停止遺伝子の発現が豊富であることが示され、培養の9日目に、これらの細胞は細胞ストレスのため、停止状態に移行することが示されている。
【0032】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍組織に侵入した全てのリンパ球細胞集団から成る。腫瘍の細胞構成要素には、TIL、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、および骨髄細胞系列細胞が含まれ、生産的な免疫応答が示唆されている。しかしながら、腫瘍微小環境に存在する免疫細胞のほとんどは、免疫細胞集団の多くが免疫系反応を更に損なう表現型に変換されるため、何らかの形で正常な機能は損なわれている。腫瘍は、Tregリンパ球、TAM、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、およびがん関連線維芽細胞(CAF)を補充し、それらが免疫認識から逃れる手助けをすることができる。TregおよびMDSCは、共に免疫抑制機能を示し、TILおよび他の細胞による反応を制限している。CD4+Tregの枯渇により、TIL療法中に自己TILで処理される免疫再構築中の患者の臨床反応が改善される。マウスモデルにおいて、少数のTregであっても、効果的なCD8+T細胞により媒介された養子細胞療法を抑制しうる。
【0033】
TILは、乳がんおよび黒色腫を含む、多数の固形腫瘍において見られ、治療の有効性および結果を予測する際の重要なバイオマーカーとして現れる。乳がんにおいて、TILは、主として細胞傷害性(CD8+)およびヘルパー(CD4+)T細胞に含まれており、B細胞およびNK細胞での割合は少ない。CD8+T細胞浸潤物が多いまたはTILの密度が高い進行性腫瘍の乳がん患者は、より有益な結果を有する。黒色腫において、TIL療法は、細胞注入に先立つリンパ枯渇(lymphodepleting)前処置療法を含むことにより改善される。黒色腫のヒトおよびマウスモデルにおける調査では、リンパ枯渇(lymphodepletion)が、黒色腫の患者におけるT細胞増殖を抑制でき、養子導入Tリンパ球の増殖に共に役立つ、制御性T細胞(Treg)および末梢骨髄系由来サプレッサー細胞を含む、陰性制御性細胞を枯渇させることが示唆されている。
【0034】
TILを使用した養子細胞療法(ACT)は、インターロイキン-2(IL-2)の単独での、またはIL-7、IL-15、および/またはIL-21と組み合わせての存在下において腫瘍から増殖した自己CD4+およびCD8+Tリンパ球の注入に基づいた、個別化されたがん治療である。TILは、腫瘍特異抗原を認識するリンパ球が豊富なポリクローナル集団であり、個々の腫瘍ネオ抗原だけでなく共有腫瘍関連抗原も含む。1980年に開始された国立がん研究所(NCI)における研究では、組換えIL-2と組み合わせてリンホカイン活性化キラー細胞の養子移植を受けた、選ばれた患者において、腫瘍退縮が証明された。ヒトTILの大規模増殖、TIL産生工程の簡略化および短縮化、ならびに患者へのプレコンディショニングおよび治療プロトコールの改善についての後続の方法により、結果として、患者の反応速度が高められた。しかしながら、TIL療法全体の反応速度は、なお非常に遅く、改善が必要である。
【0035】
本開示は、がん免疫療法のためのIL15遺伝子発現および機能の調節可能な制御を提供することにより、継続的に投与または発現されるIL15についての問題を回避する、システム、組成物、免疫療法薬、および方法を提供する。本発明は、バイオ回路システム、エフェクターモジュール、刺激応答要素(SRE)、およびIL15ペイロード、ならびに前述のいずれかをコードするポリヌクレオチドも提供する。1態様において、本発明のシステム、組成物、免疫療法薬、および他の構成要素は、がん免疫療法を制御するために十分な適応性を提供する、別々に追加される刺激剤により制御されうる。
【0036】
本発明のシステムおよび組成物の調節可能な性質は、免疫療法の有効性の効力および期間を改善する可能性を有する。本発明の組成物を使用して養子導入細胞の生物学的活性を可逆的に増加させる、減少させる、または静める能力は、療法を打ち切ることになる「キルスイッチ」を使用することができない細胞療法の可能性の最大化を可能にする。任意の特定の理論に制約されずに、T細胞の長期の生着は、調節不全の増殖または活性化がなく、表現型異常、機能的異常、または染色体異常がない、がん免疫療法を含む、様々な療法に使用されるNK細胞、TIL、およびT細胞群におけるIL15の一時的な間欠暴露を通して成し遂げられうると考えられている。
【0037】
本発明は、患者への投与後に免疫療法を微調整するための方法を提供する。これにより、続いて免疫療法の安全性および有効性が改善され、免疫療法から利益を得る被験者集団が増加する。本開示で説明かつ開示されたエフェクターモジュールは、IL15に作動可能に結合している1つまたは複数の刺激応答要素(SRE)と独立して結び付いて、またはそれらと一体になって、mbIL15を含むエフェクターモジュールを形成する。本開示のバイオ回路、SRE、DRDは、免疫細胞と用いることができ、TILを含む、養子導入NK細胞およびT細胞が、持続性を延ばし、それにより永続的な免疫監視および治療可能性を提供することを可能にする、所望のシグナル伝達を提供してよい。
【0038】
本明細書で使用するとき、「バイオ回路」または「バイオ回路システム」は、刺激剤および刺激剤に反応する少なくとも1つのエフェクターモジュールを含む生体系内の、または生体系で有用な、回路として定義され、刺激剤への反応は、生体系内で、生体系間で、生体系の指標として、または生体系において、少なくとも1つのシグナルまたは結果を生み出す。生体系は、動物、植物、真菌、細菌、またはウイルスに関わらず、任意の細胞、組織、臓器、臓器系、または生命体であると通常理解される。バイオ回路は、本開示により教示された刺激剤またはエフェクターモジュールを用いて、診断、レポーターシステム、デバイス、アッセイ、またはキットによってなど、無細胞環境においてシグナルまたは結果をもたらす人工回路であってよいとも理解される。
【0039】
本開示のバイオ回路は、少なくとも1つのエフェクターモジュールを含む。本明細書で使用するとき、「エフェクターモジュール」は、少なくとも(a)1つまたは複数の刺激応答要素(SRE)と、(b)1つまたは複数のペイロード(例えば、対象のタンパク質(POI))とを含む、単一もしくは多成分コンストラクトまたは複合体である。いくつかの実施形態においては、エフェクターモジュールは、1つのSREおよび1つのペイロードを含む。
【0040】
エフェクターモジュールは、1つまたは複数のペイロードと、1つまたは複数のSREと、1つまたは複数の切断部位と、1つまたは複数のシグナル配列と、1つまたは複数のリンカーの有無を含む1つまたは複数の追加的な特徴とを含むように設計されてよい。
【0041】
1実施形態においては、エフェクターモジュールは、少なくとも1つの免疫療法薬、例えば、IL15を含む。
【0042】
エフェクターモジュールは、それらのSREおよびペイロードを含み、核酸ベース、タンパク質ベース、またはその組み合わせであってよい。それらは、DNA、RNA、mRNA、タンパク質、融合タンパク質、または前述のものの任意の組み合わせの形態であってよい。1実施形態においては、エフェクターモジュールは、融合タンパク質である。1実施形態においては、エフェクターモジュールは、DNAなどの核酸によりコードされる。
【0043】
エフェクターモジュールは、それらのSREおよびペイロードを含み、個々に、集合的に、または独立して、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含んでよい。タンパク質レベルにおいて、そのようなペイロードは、任意の天然もしくは人工ペプチドまたはポリペプチドまたはそのフラグメントであってよい。ペイロードの天然ペプチドまたはポリペプチド構成要素は、任意の種の任意の既知のタンパク質由来であってよい。
【0044】
エフェクターモジュールは、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のモジュールのグループで作動するように設計されてよい。バイオ回路で2つ以上のエフェクターモジュールが利用されるとき、それは、そのバイオ回路のエフェクターモジュールシステムとして知られる。
【0045】
本明細書で使用するとき、「刺激応答要素」(SRE)は、1つまたは複数のペイロードに連結する、付着する、結合する、または結び付くエフェクターモジュールの構成要素であり、場合によっては、1つまたは複数の刺激剤へのエフェクターモジュールの応答性質の原因となる。本明細書で使用するとき、刺激剤へのSREの「応答」性質は、共有結合または非共有結合相互作用、直接もしくは間接的な結び付き、または刺激剤への構造的もしくは化学的反応により特徴付けられてよい。さらに、刺激剤への任意のSREの反応は、程度または種類の問題であってよい。反応は、部分反応であってよい。反応は、可逆反応であってよい。反応は、最終的に、制御シグナルまたは出力をもたらしてよい。そのような出力シグナルは、刺激剤への相対的な性質からであってよく、例えば、1%~100%の修飾作用または2倍、3倍、4倍、5倍、10倍もしくはそれ以上などの因数分解された増加または減少を生み出す。いくつかの実施形態においては、SREは、ポリペプチドペイロードに作動可能に結合しているポリペプチドである。いくつかの実施形態においては、SREは、ポリペプチドペイロードと融合したポリペプチドである。
【0046】
いくつかの実施形態においては、本開示は、タンパク質発現、機能、またはレベルを調節する方法を提供する。いくつかの態様においては、タンパク質発現、機能、またはレベルの調節とは、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%、または95~100%など、少なくとも約20%の発現、機能、またはレベルの調節を指す。
【0047】
薬剤応答性ドメイン(DRD)は、対象の標的タンパク質に付加できる小さなタンパク質ドメインである。いくつかの実施形態においては、DRDは、対象の標的タンパク質に作動可能に結合している。DRDは、DRD結合リガンドの非存在下において、付着した対象のタンパク質を不安定化させる。しかしながら、特定の小分子リガンドがその意図するDRDをリガンド結合パートナーとして結合させるとき、不安定性は覆され、タンパク質機能が回復する。DRD安定性の条件的な性質は、安定したタンパク質から不安定な分解基質への急速で非摂動的な切り替えを可能にする。さらに、そのリガンドの濃度への依存は、分解速度の調節可能な管理を更に提供する。薬剤応答性ドメイン(DRD)という用語は、不安定化ドメイン(DD)という用語と互換的である。
【0048】
1実施形態においては、SREは、薬剤応答性ドメイン(DRD)である。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のCA2薬剤応答性ドメインは、本明細書において教示されたIL15ペイロードのいずれかと関連して、本開示のバイオ回路システムにおいてSREとして使用されてよい。
【0049】
野生型タンパク質(例えば、CA2)の領域または一部またはドメインは、全体または一部においてSRE/DRDとして利用されてよい。1実施形態においては、SREは、親タンパク質CA2または変異体CA2タンパク質由来である。様々な実施形態において、DRDは、親CA2タンパク質と比較して1つ、2つ、3つ、または4つ以上の変異を含む、例えば、ヒトCA2の、アミノ酸配列:MSHHWGYGKH NGPEHWHKDF PIAKGERQSP VDIDTHTAKY DPSLKPLSVS YDQATSLRIL NNGHAFNVEF DDSQDKAVLK GGPLDGTYRL IQFHFHWGSL DGQGSEHTVD KKKYAAELHL VHWNTKYGDF GKAVQQPDGL AVLGIFLKVG SAKPGLQKVV DVLDSIKTKG KSADFTNFDP RGLLPESLDY WTYPGSLTTP PLLECVTWIV LKEPISVSSE QVLKFRKLNF NGEGEPEELM VDNWRPAQPL KNRQIKASFKを有する配列番号:1、またはアミノ酸配列:SHHWGYGKH NGPEHWHKDF PIAKGERQSP VDIDTHTAKY DPSLKPLSVS YDQATSLRIL NNGHAFNVEF DDSQDKAVLK GGPLDGTYRL IQFHFHWGSL DGQGSEHTVD KKKYAAELHL VHWNTKYGDF GKAVQQPDGL AVLGIFLKVG SAKPGLQKVV DVLDSIKTKG KSADFTNFDP RGLLPESLDY WTYPGSLTTP PLLECVTWIV LKEPISVSSE QVLKFRKLNF NGEGEPEELM VDNWRPAQPL KNRQIKASFKを有する配列番号:2である。
【0050】
配列番号:1のアミノ酸配列を有するヒトCA2は、配列番号:3の核酸配列:
atgtcccatcactgggggtacggcaaacacaacggacctgagcactggcataaggacttccccattgccaagggagagcgccagtcccctgttgacatcgacactcatacagccaagtatgacccttccctgaagcccctgtctgtttcctatgatcaagcaacttccctgaggatcctcaacaatggtcatgctttcaacgtggagtttgatgactctcaggacaaagcagtgctcaagggaggacccctggatggcacttacagattgattcagtttcactttcactggggttcacttgatggacaaggttcagagcatactgtggataaaaagaaatatgctgcagaacttcacttggttcactggaacaccaaatatggggattttgggaaagctgtgcagcaacctgatggactggccgttctaggtatttttttgaaggttggcagcgctaaaccgggccttcagaaagttgttgatgtgctggattccattaaaacaaagggcaagagtgctgacttcactaacttcgatcctcgtggcctccttcctgaatccctggattactggacctacccaggctcactgaccacccctcctcttctggaatgtgtgacctggattgtgctcaaggaacccatcagcgtcagcagcgagcaggtgttgaaattccgtaaacttaacttcaatggggagggtgaacccgaagaactgatggtggacaactggcgcccagctcagccactgaagaacaggcaaatcaaagcttccttcaaaを有するポリヌクレオチドによりコードされる。
【0051】
本明細書で使用するとき、「~由来の」という語句は、それがエフェクターモジュール、SRE、またはペイロードに関するとき、エフェクターモジュール、SRE、またはペイロードが、少なくとも一部、記載された親分子または配列に起源を持つことを意味する。例えば、SREを設計する際、そのようなSREは、自然発生的なタンパク質のエピトープまたは領域由来かもしれないが、その後、本明細書において教示された方法のいずれかで修飾され、SRE機能が最適化されている。
【0052】
いくつかの実施形態においては、本開示のDRDは、CA2の小分子阻害剤などのリガンドにより安定化されうるCA2(配列番号:1;Uniprot ID:P00918)由来であってよい。本明細書で使用するとき、「CA2 WT」という用語は、GenBank Access NO.P00918により配列番号:1として定義される、ヒト野生型CA2タンパク質配列を指す。いくつかの態様においては、DRDは、配列番号:2のCA2由来であってよい。
【0053】
いくつかの実施形態においては、DRDは、親CA2配列のアミノ酸2-260を有するCA2由来であってよい。これは、本明細書においてM1del変異と呼ばれる。M1del変異は、本明細書においてアミノ酸欠失と呼ばれてもよい。いくつかの実施形態においては、本明細書で開示されたヒトDRDコンストラクトは、配列番号:1のN末端メチオニンに対応するN末端メチオニンを含まなくてよい。開示されたCA2 DRDにおけるN末端メチオニンの有無にかかわらず、本開示は、配列番号:1の野生型ヒトCA2(Uniprot ID:P00918)に関連してCA2 DRDの位置を特定し、参照位置1は、配列番号:1のN末端メチオニンである。例えば、G12A変異を含む仮定のCA2 DRDは、本明細書においてCA2 DRDコンストラクトを指し、CA2 DRDコンストラクト自体が配列番号:1のN末端メチオニンに対応するN末端メチオニンを含むかどうかにかかわらず、グリシン(G)は、配列番号:1の12番目のアミノ酸に対応するCA2 DRDコンストラクトにおけるある位置において、アラニン(A)に変異させられる。このG12A変異を含む仮定のCA2 DRDの例における、グリシン(G)からアラニン(A)への変化は、アミノ酸置換とも呼ばれる。
【0054】
いくつかの実施形態においては、DRDは、配列番号:1の野生型ヒトCA2配列のアミノ酸2-260を有するヒトCA2由来であってよい。これは、M1del変異と呼ばれてよく、配列番号:2のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態においては、本開示のDRDは、配列番号:4で示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0055】
表1は、CA2 DRDを提供する。表1に記載された変異アミノ酸の位置は、配列番号:1の全長CA2に関連している。
【表1】
【0056】
いくつかの実施形態においては、作動可能に結合しているIL15ペイロードを制御するCA2由来の例示のDRDは、配列番号:4のアミノ酸配列を含むもしくは配列番号:4のアミノ酸配列からなる、または配列番号:5のヌクレオチド配列によりコードされる。
【0057】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載するようなIL15の、制御されて調節可能な発現に有用なCA2 DRDは、Uniprot ID:P00918(配列番号:1)に関連する1つまたは複数の変異を含み、配列番号:1のアミノ酸配列に関連して(M1del、L156H)を含んでよいが、これに限定されない。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載するようなIL15の、制御されて調節可能な発現に有用なCA2 DRDは、(配列番号:2)(L156H)に関連して1つの変異を含んでよい。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載するようなIL15の、制御されて調節可能な発現に有用なCA2 DRDは、(配列番号:2)(L156H)に関連して1つのアミノ酸置換を含んでよい。いくつかの実施形態においては、CA2 DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態においては、CA2 DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列から成る。
【0058】
本明細書に記載のSREは、配列番号:1のCA2 WTに対して、これらに限定されないが、M1del、およびL156Hなどの、これらに限定されないが、1つまたは2つの変異を含むCA2 DRDを含んでよい。いくつかの実施形態においては、CA2 DRDは、配列番号:1に対して、L156H変異を含み、1つまたは複数の追加的な変異を更に含む。いくつかの実施形態においては、CA2 DRDは、配列番号:1に対して、M1delおよびL156H変異を含み、1つまたは複数の追加的な変異を更に含む。いくつかの実施形態においては、CA2 DRDは、配列番号:1に対して、M1delアミノ酸欠失およびL156Hアミノ酸置換を含み、1つまたは複数の追加的なアミノ酸置換を更に含む。
【0059】
本明細書において、少なくとも1つのエフェクターモジュールを含むバイオ回路システムも提供される。バイオ回路のエフェクターモジュールは、CA2(配列番号:1または配列番号:2)由来の刺激応答要素(SRE)を含んでよい。1実施形態においては、SREは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、または配列番号:4のアミノ酸配列から成る。バイオ回路は、SREに付着しうる、付加しうる、または結び付きうる少なくとも1つのペイロードを含んでもよい。ペイロードは、配列番号:8のアミノ酸配列を含むヒトIL15を含んでよく、ペイロードは、配列番号:9のヌクレオチド配列を含む核酸配列によりコードされてよい。
【0060】
【0061】
いくつかの実施形態においては、本開示は、安定化率および不安定化率を測定することにより、タンパク質、発現、機能、またはレベルを調節する方法を提供する。本明細書で使用するとき、安定化率は、SREに特異的な刺激剤の非存在下における対象のタンパク質の発現、機能、またはレベルに対する、刺激剤に反応する対象のタンパク質の発現、機能、またはレベルの比率として定義されてよい。本明細書で使用するとき、不安定化率は、構造的に発現され、SREに特異的な刺激剤の非存在下における対象のタンパク質の発現、機能、またはレベルに対する、エフェクターモジュールに特異的な刺激剤の非存在下における対象のタンパク質の発現、機能、またはレベルの比率として定義されてよい。本明細書で使用するとき、「構造的に」は、SREに結合しておらず、そのため刺激剤の存在下かつ非存在下の両方で発現される、対象のタンパク質の発現、機能、またはレベルを指す。
【0062】
本明細書で使用するとき、「ペイロード」または「標的ペイロード」または「対象のペイロード(POI)」は、機能が変化する任意のタンパク質として定義される。ペイロードは、任意のタンパク質またはそのフラグメントを含んでよい。
【0063】
いくつかの実施形態においては、本開示のペイロードは、IL15を含む。同一の遺伝子またはタンパク質に関する、ある遺伝子および/またはタンパク質の命名法は、ダッシュ記号「-」などの句読点またはギリシャ文字などの記号を含んでも除いてもよいことが技術的に理解される。これらが本明細書に含まれるか除かれているかにかかわらず、当業者により理解されるように、その意味が変更されることを意図してはいない。例えば、IL15、IL 15、およびIL-15は、同一のインターロイキンを指す。いくつかの実施形態においては、本開示のペイロードは、ある免疫応答を刺激するIL15インターロイキンサイトカインであってよい。
【0064】
本開示のペイロードは、ヒトIL15のアミノ酸配列に類似しているアミノ酸配列、例えば、UniProtKB-P40933(IL15_HUMAN)を含んでよい。1実施形態においては、IL15ペイロードは、表2で提供されるアミノ酸配列(配列番号.8)を含む。
【0065】
いくつかの実施形態においては、本開示のペイロードは、CD8+TEM、ナチュラルキラー(NK)細胞、および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの免疫細胞、ならびに免疫療法に使用されるCAR T細胞の増殖、生存、持続性、および効力を改善するために利用されてよい。1態様において、本開示は、サイトカイン療法に関連する毒性を最小限にするバイオ回路および組成物を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態においては、エフェクターモジュールは、CA2 DRD-IL15融合ポリペプチドであってよい。いくつかの実施形態においては、本開示のIL15含有コンストラクトは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、伸長因子1α(EF1α)プロモーター、HIV LTRプロモーター、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列(RSV)プロモーター、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーター、合成MNDプロモーター、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)プロモーター、合成RPBSAプロモーター、またはユビキチンプロモーターの転写調節下に置かれてよい。
【0067】
IL15により媒介された活性化の固有の特徴は、IL15が、同一の細胞または異なる細胞のいずれかにおいて、膜結合型IL15ベータ/ガンマ受容体に結合し、活性化するIL15受容体(IL15Ra)のαサブユニットとの複合体として存在する、トランスプレゼンテーションのメカニズムである。様々な実施形態において、本開示のペイロードは、膜結合型IL15であり、前記膜結合型IL15のアミノ酸配列は、配列番号:8のアミノ酸配列を含む。
【0068】
本開示のペイロードは、本明細書で開示されるような核酸配列を含んでよいが、ペイロードは、追加的なまたは記載されたものより少ないヌクレオチドを含んでよい。そのような核酸配列は、約1より多いまたは少ないヌクレオチド、約2より多いまたは少ないヌクレオチド、約3より多いまたは少ないヌクレオチド、約4より多いまたは少ないヌクレオチド酸、約5より多いまたは少ないヌクレオチド、約6より多いまたは少ないヌクレオチド、約7より多いまたは少ないヌクレオチド、約8より多いまたは少ないヌクレオチド、約9より多いまたは少ないヌクレオチド、約10より多いまたは少ないヌクレオチド、または10より多いヌクレオチドを含んでよい。
【0069】
エフェクターモジュール、それらのSREおよびペイロードを含むバイオ回路構成要素は、核酸ベースであってよい。「核酸」という用語は、広い意味では、ヌクレオチドのポリマー、例えば、結合ヌクレオチドを含む、任意の化合物および/または物質を含む。これらのポリマーは、ポリヌクレオチドと呼ばれることが多い。本開示の例示の核酸またはポリヌクレオチドには、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA、β-D-リボ構成を有するLNA、α-L-リボ構成を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2′-アミノ官能基化を有する2′-アミノ-LNA、および2′-アミノ官能基化を有する2′-アミノ-α-LNAを含む)、またはそのハイブリッドが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施形態においては、核酸分子は、DNAである。いくつかの実施形態においては、核酸分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。本明細書で使用するとき、「メッセンジャーRNA」(mRNA)という用語は、対象のポリペプチドをコードする、かつ翻訳されてin vitro、in vivo、in situ、またはex vivoでコードされた対象のポリペプチドを生み出すことができる、任意のポリヌクレオチドを指す。本開示のポリヌクレオチドは、mRNAまたは任意の核酸分子であってよく、化学的に修飾されてもされなくてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態においては、本開示のポリヌクレオチドは、翻訳開始において役割を果たす5’UTR配列をかくまってよい。5’UTR配列は、リボソームが遺伝子の翻訳を開始する工程に関わることが広く知られているコザック配列などの特徴を含んでよく、コザック配列は、コンセンサスXCCR(A/G)CCAUGを有し、Rは、開始コドン(AUG)の3塩基上流のプリン(アデニンまたはグアニン)であり、Xは、任意のヌクレオチドである。1実施形態においては、コザック配列は、ACCGCCである。標的細胞または組織の多量に発現した遺伝子において典型的に見つかる特徴を操作することにより、本開示のポリヌクレオチドの安定性およびタンパク質産生を高めることができる。
【0072】
1実施形態においては、本開示のポリヌクレオチドは、参照ポリペプチド配列により一定のアイデンティティーを有するバリアントポリペプチドをコードしてよい。本明細書で使用するとき、「参照ポリペプチド配列」は、出発ポリペプチド配列を指す。参照配列は、別の配列の設計において参照される野生型配列または任意の配列であってよい。
【0073】
当技術分野で周知のように、「アイデンティティー」という用語は、配列を比較することにより判定されるような、2つ以上の配列の間の関係を指す。技術的に、アイデンティティーは、2つ以上の残基(アミノ酸または核酸)の文字列間の一致の数により判定されるような、配列間の配列関連性の程度も意味する。アイデンティティーは、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)により対処されるギャップアラインメント(もしあれば)により、2つ以上の配列間の完全な一致のパーセントを測定する。関連配列のアイデンティティーは、既知の方法により容易に計算されうる。そのような方法には、Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993年;Computer Analysis of Sequence Data、Part 1、Griffin,A.M.、およびGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994年;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje,G.、Academic Press、1987年;Sequence Analysis Primer、Gribskov,M.およびDevereux,J.編、M.Stockton Press、New York、1991年;およびCarillo他、SIAM J. Applied Math.48、1073(1988年))に記載されたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態においては、バリアント配列は、参照配列と同一または類似の活性を有してよい。代替的に、バリアントは、参照配列に対して、活性が変化(例えば、増加または減少)してよい。通常、本開示の特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのバリアントは、本明細書に記載され、かつ当業者に既知の配列アラインメントプログラムおよびパラメーターにより判定されるように、その特定の参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%だが、100%未満の配列アイデンティティーを有することになる。そのようなアラインメントのためのツールには、BLASTスイート(Stephen F.Altschul、Thomas L.MaDRDen、Alejandro A.Schaffer、Jinghui Zhang、Zheng Zhang、Webb Miller、およびDavid J.Lipman(1997年)、「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res. 25:3389-3402.)のものが含まれる。
【0075】
本開示のエフェクターモジュールは、対象のペイロードの分布を制御するシグナル配列、エフェクターモジュールコンストラクトからのペイロードの切断を促進する切断機構および/もしくは処理機構、エフェクターモジュールの細胞局在を制御できる標的シグナルおよび/もしくは浸透シグナル、タグ、ならびに/またはエフェクターモジュールの異なる構成要素を結び付ける1つもしくは複数のリンカー配列を更に含んでよい。
【0076】
SREおよびペイロード領域に加えて、本開示のエフェクターモジュールは、1つまたは複数のシグナル配列などの1つまたは複数の追加的な特徴を更に含んでよい。
【0077】
シグナル配列(シグナルペプチド、標的シグナル、標的ペプチド、局在配列、輸送ペプチド、リーダー配列、またはリーダーペプチドと呼ばれることもある)は、タンパク質(例えば、本開示のエフェクターモジュール)をそれらの指定された細胞部位および/または細胞外部位に誘導する。タンパク質シグナル配列は、ほぼ全ての分泌タンパク質および多くの膜内在性タンパク質の標的設定および転座において、中心的役割を果たす。
【0078】
シグナル配列は、特定の部位に向けられている新規合成タンパク質の過半数のN末端に存在する短い(5~30のアミノ酸の長さ)ペプチドである。シグナル配列は、シグナル認識粒子(SRP)により認識され、タイプIおよびタイプIIのシグナルペプチドペプチダーゼを使用して切断できる。ヒトタンパク質由来のシグナル配列は、エフェクターモジュールの調節モジュールとして取り込まれ、エフェクターモジュールを特定の細胞および/または細胞外部位に誘導することができる。
【0079】
いくつかの実施形態においては、シグナル配列は、必ずしもではないが、エフェクターモジュールのN末端またはC末端に位置してよく、必ずしもではないが、所望のエフェクターモジュールから切断され、「成熟」ペイロードを生み出してよい。
【0080】
いくつかの実施形態においては、本明細書において使用されるシグナル配列は、シグナル配列のアミノ酸配列の位置1におけるメチオニンを除外してよい。これは、M1del変異と呼ばれてよい。
【0081】
分泌タンパク質からなど、自然に生じるシグナル配列に加えて、シグナル配列は、タンパク質の既知のシグナル配列から修飾されたバリアントであってよい。
【0082】
場合によっては、対象のペイロードを標的細胞の表面膜に誘導するシグナル配列が使用されてもよい。標的細胞の表面におけるペイロードの発現は、非標的in vivo環境へのペイロードの拡散を制限するのに役立ってよく、それにより、ペイロードの安全性プロフィールが改善する可能性がある。追加的に、ペイロードの膜提示は、より長い半減期のためのペイロード安定化およびリサイクリングだけでなく、生理学的かつ質的なシグナル伝達を可能にしてよい。膜配列は、対象のペイロードのN末端構成要素の内在性シグナル配列であってよい。随意に、この配列を異なるシグナル配列と交換するのが望ましい場合もある。シグナル配列は、ペイロードがT細胞の表面に存在するように、対象の細胞型の分泌経路とのそれらの互換性に基づいて選択されてよい。いくつかの実施形態においては、シグナル配列は、IgEシグナル配列、CD8aシグナル配列(CD8aリーダーとも呼ばれる)、またはIL15Raシグナル配列(IL15Raリーダーとも呼ばれる)、またはM1del CD8aシグナル配列(M1del CD8リーダー配列とも呼ばれる)であってよい。
【0083】
いくつかの実施形態においては、エフェクターモジュールは、切断機構および/または処理機構を含む。いくつかの実施形態においては、本開示のエフェクターモジュールは、少なくとも1つのタンパク質切断シグナル/部位を含んでよい。タンパク質切断シグナル/部位は、N末端、C末端に、N末端とC末端との間の中間、N末端と中間点との間、中間点とC末端との間、およびその組み合わせなどだがこれらに限定されない、N末端とC末端との間の任意の空間に位置してよい。
【0084】
いくつかの実施形態においては、エフェクターモジュールは、リンカーを含む。
【0085】
いくつかの実施形態においては、本開示のエフェクターモジュールは、リンカー配列を更に含んでよい。リンカー領域は、主として、エフェクターモジュール内の2つ以上のポリペプチド間でスペーサーとしての機能を果たす。「リンカー」または「スペーサー」は、本明細書で使用するとき、2つの分子、または組換えタンパク質の2つのドメインなどの、分子の2つの部分を接続する分子または分子のグループを指す。
【0086】
いくつかの実施形態においては、「リンカー」(L)または「リンカードメイン」または「リンカー領域」または「リンカーモジュール」または「ペプチドリンカー」は、本明細書で使用するとき、長さが約1~100のアミノ酸のオリゴまたはポリペプチド領域を指し、エフェクターモジュール(ペプチドリンカーとも呼ばれる)のドメイン/領域のいずれかを共に結び付ける。
【0087】
いくつかの実施形態においては、人工的に設計されたペプチドリンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに対して自由に動けるように、グリシン(G)およびセリン(S)などの柔軟な残基のポリマーから成ってよい。2つの隣接するドメインが互いに干渉しないことを保証することが望ましいとき、より長いリンカーが使用されてよい。特定のリンカー配列の選択は、融合コンストラクトの生物学的活性、安定性、折りたたみ、標的設定および/または薬物動態特性に影響を与える場合、関心事となりうる。
【0088】
リンカー配列は、マルチドメインタンパク質由来の天然リンカーであってよい。天然リンカーは、タンパク質内の2つの異なるドメインまたはモチーフを分離する短いペプチド配列である。
【0089】
1実施形態においては、リンカーは、BamHI部位であってよい。非限定的な例として、BamHI部位は、アミノ酸配列GSおよび/またはDNA配列GGATCCを有する。
【0090】
本開示のバイオ回路は、1つまたは複数の刺激剤により引き起こされる。いくつかの実施形態においては、刺激剤は、小分子である。いくつかの実施形態においては、小分子は、細胞透過性である。いくつかの実施形態においては、小分子は、FDAに認可され、安全で、経口で投与されるものである。
【0091】
いくつかの実施形態においては、リガンドは、炭酸脱水酵素に結合する。いくつかの実施形態においては、リガンドは、結合して炭酸脱水酵素機能を阻害し、本明細書において炭酸脱水酵素阻害剤と呼ばれる。
【0092】
いくつかの実施形態においては、リガンドは、炭酸脱水酵素2に結合する小分子である。1実施形態においては、小分子は、CA2阻害剤である。いくつかの実施形態においては、リガンドは、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、およびジクロフェナミドから選択された小分子である。いくつかの実施形態においては、リガンドは、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド塩酸塩、ジクロフェナミド、クロルタリドン、メタゾラミド、トピラマート、インダパミド、アンブロキソール塩酸塩、グリメピリド、テトラカイン塩酸塩、およびセレコキシブから選択された小分子である。いくつかの実施形態においては、リガンドは、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド塩酸塩、ジクロフェナミド、クロルタリドン、メタゾラミド、またはトピラマートから選択された小分子である。いくつかの実施形態においては、リガンドは、アセタゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミド塩酸塩、ジクロフェナミド、またはメタゾラミドから選択されたCA2阻害剤である。いくつかの実施形態においては、リガンドは、アセタゾラミド(ACZ)である。
【0093】
いくつかの実施形態においては、免疫細胞の活性に影響を与えないリガンド、および/またはキメラ抗原受容体が、SREの非存在下において、好ましく選択される。
【0094】
いくつかの実施形態においては、本開示の組成物は、プロモーターを含む。
【0095】
本明細書で使用するとき、プロモーターは、本開示のポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するのに必要な、細胞の転写装置により認識されるDNA配列として定義される。ベクターは、本開示のポリヌクレオチドに作動可能に結合している天然または非天然プロモーターを含むことできる。選択されたプロモーターは、強い、弱い、構成的、誘導性、組織特異的、開発段階特異的、および/または生物特有であってよい。強力な構成的プロモーター配列は、それに作動可能なように結合しているポリヌクレオチド配列の高レベルな発現を推進することができる。強力な構成的プロモーターの例には、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびElongation Growth Factor-1 Alpha(EF-1α)が無制限に含まれる。使用されうる他の構成的プロモーターには、サルウイルス40(SV40)、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーター、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)プロモーター、エプスタインバーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、およびホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、ユビキチンC(Ubc)プロモーター、ヒトU6核内低分子タンパク質プロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターを含むが、これらに限定されないヒト遺伝子プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。合成プロモーターには、MNDプロモーターおよびRPBSAプロモーターが含まれる。場合によっては、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターなどだがこれらに限定されない、誘導プロモーターが使用されてよい。
【0096】
いくつかの実施形態においては、最適なプロモーターは、その能力に基づいて選択され、リガンドの非存在下における本開示のSREおよびペイロードの最小限の発現、およびリガンドの存在下における検出可能な発現を成し遂げてよい。
【0097】
追加的なプロモーター要素、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を制御するのに使用されてよい。そのような領域は、開始部位の上流または下流の10~100の塩基対に位置してよい。場合によっては、2つ以上のプロモーター要素は、共同でまたは独立して転写を活性化するのに使用されてよい。
【0098】
本開示のバイオ回路は、少なくとも1つの対象のペイロードに作動可能に結合しうるCA2由来の少なくとも1つのSRE(「CA2 SRE」と呼ばれる)を含みうる少なくとも1つのエフェクターモジュールを含んでよい。これらのタイプのバイオ回路およびエフェクターモジュールは、「CA2バイオ回路」および「CA2エフェクターモジュール」と呼ばれる。追加的に、CA2エフェクターモジュールは、シグナル配列、リンカー、スペーサー、タグ、フラグ、切断部位、およびIRESを含むがこれらに限定されない、追加的な特徴を含んでよい。本明細書において教示された、または当技術分野で既知の、例示のSRE(例えば、DRD)、対象のペイロード、シグナル配列、リンカー、スペーサー、ヒンジ、タグ、フラグ、切断部位、およびIRESのいずれかが組み合わされて、本開示のCA2エフェクターモジュールが作成されてよい。
【0099】
1実施形態においては、CA2エフェクターモジュールは、対象のペイロードを含む。対象のペイロードは、野生型配列、野生型配列のフラグメントであってよい、かつ/または1つまたは複数の変異を含んでよい。1実施形態においては、CA2エフェクターモジュールは、制御インターロイキン-15(IL15)を産生する。いくつかの実施形態においては、IL15ペイロードは、DRDのN末端である。CA2エフェクターモジュールは、表3のIL15関連配列のいずれかを含んでもよいし、表3のIL15関連配列のいずれかが由来であってもよい。いくつかの実施形態においては、CA2エフェクターモジュールにおける少なくとも1つのペイロードは、配列番号:8のアミノ酸配列と少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または100%同一なアミノ酸配列を含むIL15(例えば、IL15ペイロード)であり、ペイロードは、配列番号:9のヌクレオチド配列を含む核酸配列によりコードされてよい)。いくつかの実施形態においては、ペイロードは、IL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態においては、ペイロードは、膜貫通ドメインおよび細胞内尾部を含むIL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態においては、ペイロードは、配列番号:8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド構成要素、膜貫通ドメイン、および細胞内尾部を含むIL15の膜結合形態であり、膜貫通ドメインは、IL15ポリペプチド構成要素のC末端であり、細胞内尾部は、膜貫通ドメインのC末端である。いくつかの実施形態においては、ペイロードは、膜貫通ドメイン、細胞内尾部、および1つまたは複数のリンカーを含むIL15の膜結合形態である。いくつかの実施形態においては、リンカーは、SREまたはDRDとペイロードとの間、またはペイロード内の異なるドメイン間に置かれうるペプチドドメインである。いくつかの実施形態においては、リンカーは、グリシンおよびセリンアミノ酸残基を含むペプチドドメインである。いくつかの実施形態においては、グリシンおよびセリンアミノ酸残基を含むペプチドリンカーは、長さが2~36のアミノ酸であってよい。1実施形態においては、CA2エフェクターモジュールにおける少なくとも1つのペイロードは、リンカー(GS)15、B7.1ヒンジ、B7.1膜貫通ドメイン、B7.1細胞内尾部、およびリンカー(GS)を更に含むIL15の膜結合形態である。CA2エフェクターモジュールは、IL15ペイロード構成要素だけでなく、別の親タンパク質からの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインのペイロード構成要素を含んでよい。1実施形態においては、CA2エフェクターモジュールにおける少なくとも1つのペイロードは、野生型配列と比較して、少なくとも1つの変異を含む。1実施形態においては、CA2エフェクターモジュールにおける少なくとも1つのペイロードは、野生型配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0100】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0101】
様々な実施形態において、エフェクターモジュールは、制御膜結合インターロイキン-15(IL15)を産生する。いくつかの実施形態においては、エフェクターモジュールは、表3に記載するようなIL15-293またはIL15-295である。様々な実施形態において、IL15ペイロードは、IL15の膜結合形態を含むCA2 DRD融合タンパク質として発現される。
【0102】
本開示のCA2バイオ回路および/またはCA2エフェクターモジュールは、1つ(モノシストロニック)または2つ以上(マルチシストロニック)のメッセージ(例えば、対象のペイロード)が生み出されることを意味する、モノシストロニックまたはマルチシストロニックであってよい。2つのメッセージが生み出される場合、CA2バイオ回路またはCA2エフェクターモジュールは、バイシストロニックと見なされる。1実施形態においては、本開示の少なくとも1つのCA2エフェクターモジュールは、モノシストロニックである。
【0103】
本開示の様々な実施形態は、記載されたポリヌクレオチドの1つまたは複数を含む核酸分子を提供する。いくつかの実施形態においては、核酸分子は、IL15ペイロードに作動可能に結合している薬剤応答性ドメイン(DRD)を含む組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記DRDは、ヒト炭酸脱水酵素II(CA2)由来であり、配列番号:1または配列番号:2に対して、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含む。いくつかの実施形態においては、核酸分子は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2ポリヌクレオチドを更に含み、CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態においては、CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含み、例えば、CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む。
【0104】
本教示は、本開示のCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、またはシステムの1つまたは複数を含む医薬組成物、および随意に少なくとも1つの薬学的に許容できる添加物または不活性成分を更に含む。
【0105】
本明細書で使用するとき、「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載のCA2バイオ回路もしくは構成要素の1つもしくは複数、またはその薬学的に許容できる塩の調製を指し、随意に生理学的に好適なキャリアおよび添加物などの他の化学成分を含む。
【0106】
「添加物」または「不活性成分」という用語は、医薬組成物に追加されて化合物の投与を更に促進する、不活性または不活発な物質を指す。そのような不活性成分の非限定的な例が、本明細書で開示される。
【0107】
いくつかの実施形態においては、組成物は、ヒト患者または被験者などのヒトに投与される。本開示の目的のため、「活性成分」という語句は、通常、本明細書に記載するように送達される任意の1つまたは複数のCA2バイオ回路構成要素を指す。
【0108】
本明細書において提供される医薬組成物の説明は、主にヒトへの投与に好適な医薬組成物を対象としたものだが、そのような組成物は、通常、任意の他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば、非ヒト哺乳類への投与に好適であることは当業者により理解されるであろう。医薬組成物を投与される被験者には、ウシ、ウマ、ニワトリ、およびブタなどの農耕動物、猫、犬などの飼育動物、またはマウス、ラット、ウサギ、犬、および非ヒト霊長類などの研究動物を含む非ヒト哺乳類が含まれるが、これらに限定されないと考えられる。
【0109】
本開示に従った医薬組成物は、単一単位用量として、かつ/または複数の単一単位用量として、大量に調製され、パッケージ化され、かつ/または販売されてよい。本明細書で使用するとき、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む個別量の医薬組成物である。活性成分の量は、通常、被験者に投与される活性成分の投与量、および/またはそのような投与量の例えば、半分または3分の1などの、そのような投与量の簡便な分数に等しい。
【0110】
本開示に従った医薬組成物における活性成分、薬学的に許容できる添加物もしくは不活性成分、および/または任意の付加成分の相対量は、アイデンティティー、サイズ、および/または治療を受ける被験者の状態に応じて、更に組成物が投与される経路に応じて、異なる。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含んでよい。
【0111】
病気の治療効果または寛解は、例えば、病気の進行、病気の緩解、症状の重症度、痛みの軽減、生活の質、治療有効性を維持するために必要な薬物療法の用量、疾患マーカーのレベル、または治療されるもしくは予防のために標的とされる所与の病気に適切な任意の他の測定可能なパラメーターを測定することにより評価できる。そのようなパラメーターの任意の1つ、またはパラメーターの任意の組み合わせを測定することにより、治療または予防の効果をモニタリングすることは、十分、当業者の能力の範囲内である。本開示の組成物の投与に関して、例えば、がん「に対して効果的」とは、臨床的に適切な方法での投与が、結果として、症状の改善、治癒、病気の負荷の軽減、腫瘍量もしくは細胞数の減少、寿命の延長、生活の質の改善、または通常、特定のタイプのがんの治療に精通している医師により陽性であると認識される他の影響などの、少なくとも統計的に有意な割合の患者に有益な効果をもたらすことを示す。
【0112】
治療または予防効果は、病状の1つもしくは複数のパラメーターにおける統計的に有意な改善があるとき、または症状が悪化しないまたは予測される場所で現れないことにより、明らかになる。1例として、病気の測定可能なパラメーターにおいて、少なくとも10%、および好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれ以上の好ましい変化は、効果的な治療であると示唆することができる。本開示の所与の組成物または製剤の有効性は、当技術分野で周知のような所与の病気についての実験的動物モデルを使用して判定することもできる。実験的動物モデルを使用するとき、治療効果は、統計的に有意な変化が観察されたときに証明される。
【0113】
本開示の組成物は、送達に好適な任意の方法で処方されてよい。製剤は、ナノ粒子、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)ミクロスフェア、リピドイド、リポプレックス、リポソーム、ポリマー、炭水化物(単糖を含む)、陽イオン性脂質、およびその組み合わせであってよいが、これらに限定されない。
【0114】
いくつかの実施形態においては、調剤または他の製剤は、不活性成分である少なくとも1つの添加物を含んでよい。本明細書で使用するとき、「不活性成分」という用語は、製剤に含まれる1つまたは複数の不活性剤を指す。いくつかの実施形態においては、本開示の製剤で使用されうる不活性成分の全てまたはいくつかは、米国食品医薬品局(FDA)により認可されてよいし、1つも認可されなくてもよい。本開示の組成物は、1つまたは複数の経路およびモダリティを通って細胞または被験者に送達されてよい。本明細書に記載の1つまたは複数のCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE、ペイロード、および他の構成要素を含むウイルスベクターは、細胞および/または被験者にそれらを送達するために使用されてよい。他のモダリティは、mRNA、プラスミドとして、かつ組換えタンパク質としてなど使用されてもよい。
【0115】
本開示のSREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、裸の形態で細胞、組織、臓器、および/または生命体に送達されてよい。本明細書で使用するとき、「裸の」という用語は、トランスフェクションまたは透過性を促進する薬剤または修飾を含まずに送達される、SREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールを指す。SREまたはペイロードを含む、裸の医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、当技術分野で周知の、かつ本明細書に記載の投与の経路を使用して、細胞、組織、臓器および/または生命体に送達されてよい。いくつかの実施形態においては、裸の送達は、生理食塩水またはPBSなどのシンプルなバッファーにおける製剤を含んでよい。
【0116】
いくつかの実施形態においては、本開示のSREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、本明細書に記載の方法を使用して、処方されてよい。製剤は、SREまたはペイロードを含む、修飾されたかつ/または未修飾の医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールを含んでよい。製剤には、細胞透過薬剤、薬学的に許容できるキャリア、送達剤、生体内分解性または生体適合性ポリマー、溶剤、および/または徐放性送達デポが更に含まれてよいが、これらに限定されない。本開示の製剤は、当技術分野で周知の、かつ本明細書に記載の投与の経路を使用して、細胞に送達されてよい。
【0117】
SREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、直接の浸漬または水浴、カテーテルを用いて、ゲル、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、および/またはドロップにより、組成物でコーティングされた、または組成物を含侵させた織物または生分解性材料などの基質を使用してなどを含むがこれらに限定されない、当該技術分野のいくつかの方法のいずれかでの、臓器または組織への直接送達のため、処方されてもよい。
【0118】
本開示の別の態様においては、本開示のCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、対象のペイロード(例えば、IL15)、および組成物をコードするポリヌクレオチド、ならびに前記ポリヌクレオチドを含むベクターは、細胞に導入されてよい。非限定的な例として、細胞は、エフェクター免疫細胞であってよい。
【0119】
様々な実施形態において、本開示は、本開示の1つもしくは複数の核酸分子、1つもしくは複数のベクター、または1つもしくは複数の組換えタンパク質を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態においては、細胞におけるIL15ペイロードの発現、機能、および/またはレベルを調節する方法が提供され、前記方法は、DRDが反応する刺激剤を細胞に投与する工程を含み、刺激剤は、IL15ペイロードの発現、機能および/またはレベルを調節するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態においては、細胞は、分離される。いくつかの実施形態においては、細胞は、細菌性細胞である。いくつかの実施形態においては、細胞は、哺乳類細胞である。哺乳類細胞は、ヒト細胞であってよい。ヒト細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であってよい。いくつかの実施形態においては、細胞は、CD4+またはCD8+T細胞である。いくつかの実施形態においては、ヒトT細胞またはヒトNK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードするポリヌクレオチドを更に含み、CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態においては、CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む。
【0120】
本開示の1態様において、本開示のCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、対象のペイロード(例えば、IL15)、および組成物をコードするポリヌクレオチドは、ウイルスベクターにパッケージ化されてよい、またはポリヌクレオチドの一時的もしくは安定発現を可能にするウイルスゲノムに統合されてよい。好適なウイルスベクターは、レンチウイルスベクターおよびガンマレトロウイルスベクターを含むレトロウイルスベクターである。レトロウイルスベクターを構成するために、CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、CA2 DRD、または対象のペイロード(例えば、免疫療法薬)をコードするポリヌクレオチド分子が、一定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入され、複製欠損であるウイルスを産生する。組換えウイルスベクターは、続いて、gag、pol、およびenv遺伝子を含むが、LTR(レンチウイルスベクターに対する)およびパッケージング構成要素が含まれない、パッケージング細胞株に導入される。組換えレトロウイルス粒子は、培地に分泌され、続いて収集され、随意に濃縮され、遺伝子導入に使用される。レンチウイルスベクターは、分裂および非分裂細胞の両方に影響を及ぼすことができれば、特に好適である。
【0121】
ベクターは、針、エレクトロポレーション、ソノポレーション、ハイドロポレーションなどの物理的手法;無機粒子(例えば、リン酸カルシウム、シリカ、金)などのケミカルキャリア、および/または化学的手法による非ウイルス法により、細胞に移植されてもよい。いくつかの実施形態においては、合成または天然の生分解性薬剤は、陽イオン性脂質、液体ナノエマルション、ナノ粒子、ペプチドベースのベクター、またはポリマーベースのベクターなどの送達のために使用されてよい。
【0122】
本開示のCA2バイオ回路システム、CA2エフェクターモジュール、SREおよび/またはペイロードは、1つまたは複数のモダリティを使用して送達されてよい。本開示は、CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、および対象のIL15ペイロード、およびその組み合わせをコードする本開示のポリヌクレオチドをパッケージ化するベクターも提供する。本開示のベクターは、パッケージ化されたポリヌクレオチドを細胞、局部組織部位、または被験者に送達するために使用されてもよい。これらのベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ウイルスベクターおよび粒子を含む、任意の種類であってよい。ウイルスベクター技術は、周知であり、Sambrook他(2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)に記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、腫瘍溶解性ウイルスなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、本明細書において例示されているDRDおよびIL15ペイロードをコードする1つまたは複数の核酸分子を細胞に導入するのに有用なウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、またはピコルナウイルス由来であってよい。
【0123】
一般に、ベクターは、少なくとも1つの生命体で機能する複製起点、プロモーター配列および簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、ならびに1つまたは複数の選択可能なマーカー、例えば、薬剤耐性遺伝子を含む。
【0124】
いくつかの実施形態においては、組換え発現ベクターは、ベクターが導入される宿主細胞のタイプに特異的な、転写ならびに翻訳開始および終止コドンなどの、調節配列を含んでよい。
【0125】
いくつかの実施形態においては、本開示のベクターは、本明細書において教示された1つまたは複数のペイロードを含んでよく、2つ以上のペイロードは、1つのCA2エフェクターモジュールに含まれてよい。この場合、2つ以上のペイロードは、同一の刺激剤により、同時に調整される。他の実施形態においては、本開示のベクターは、2つ以上のCA2エフェクターモジュールを含んでよく、各CA2エフェクターモジュールは、異なるペイロードを含む。この場合、2つ以上のCA2エフェクターモジュールおよびペイロードは、異なる刺激剤により調整され、2つ以上の構成要素の独立制御が別々にもたらされる。他の実施形態においては、本開示のベクターは、1つまたは複数のCA2エフェクターモジュールおよび1つまたは複数の非CA2エフェクターモジュールを含んでよく、各CA2エフェクターモジュールは、異なるペイロードを含む。この場合、CA2エフェクターモジュールおよびペイロードは、異なる刺激剤により調整され、2つ以上の構成要素の独立制御が別々にもたらされる。
【0126】
いくつかの実施形態においては、レンチウイルスビヒクル/粒子は、送達モダリティとして使用されてよい。レンチウイルスは、ウイルスのレトロウイルス科ファミリーのサブグループであり、ウイルスRNAゲノムのDNAへの逆転写が、宿主ゲノムへの統合前に必要とされるために名付けられた。従って、レンチウイルスビヒクル/粒子の最も重要な特徴は、それらの遺伝子材料の、標的/宿主細胞のゲノムへの統合である。レンチウイルスの例には、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1およびHIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジュンブラナ(Jembrana)病ウイルス(JDV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、ビスナマエディ、ならびにヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が含まれる。
【0127】
典型的に、遺伝子送達ビヒクルを作り上げるレンチウイルス粒子は、それ自体では複製できない(「自己不活型」とも呼ばれる)。レンチウイルスは、無傷の宿主核膜を通る侵入機構により、分裂および非分裂細胞の両方に影響を及ぼすことができる(Naldini L他、Curr.Opin.Biotechnol、1998年、9:457-463)。組換えレンチウイルスビヒクル/粒子は、HIV病原性遺伝子を複合的に弱毒化することにより生成されており、例えば、遺伝子Env、Vif、Vpr、Vpu、Nef、およびTatは、削除され、生物学的に安全にベクターが作成される。それに応じて、例えば、HIV-1/HIV-2由来の、レンチウイルスビヒクルは、導入遺伝子の非分裂細胞への効率的な送達、統合、および長期発現を媒介することができる。本明細書で使用するとき、「組換え」という用語は、レンチウイルス配列および非レンチウイルスレトロウイルス配列の両方を含むベクターその他の核酸を指す。
【0128】
レンチウイルス粒子は、ヒトHEK293T細胞などの産生細胞において、ウイルスパッケージング要素およびベクターゲノム自体を同時発現させることにより生成されてよい。これらの要素は、通常、3つまたは4つの分離プラスミドで提供される。産生細胞は、ウイルスのコア(すなわち構造タンパク質)および酵素構成要素、ならびにエンベロープタンパク質(パッケージングシステムと呼ばれる)を含むレンチウイルス構成要素をコードするプラスミド、ならびに外来導入遺伝子を含むゲノムをコードするプラスミドで同時にトランスフェクトされ、標的細胞、ビヒクルそれ自体(トランスファーベクターとも呼ばれる)に移される。一般に、プラスミドまたはベクターは、産生細胞株に含まれる。プラスミド/ベクターは、トランスフェクション、形質導入、または感染により、産生細胞株に導入される。トランスフェクション、形質導入、または感染の方法は、当業者に周知である。非限定的な例として、パッケージングおよびトランスファーコンストラクトは、通常、neo、DHFR、Glnシンテターゼ、またはADAなどの優勢な選択可能なマーカーと共に、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションにより産生細胞株に導入され、続いて、適切な薬物の存在下における選択、およびクローンの分離を行うことができる。
【0129】
産生細胞は、外来遺伝子、例えば、本開示のCA2エフェクターモジュールを含む組換えウイルス粒子を産生する。組換えウイルス粒子は、培地から回収され、当業者により使用される標準方法により滴定される。組換えレンチウイルスビヒクルは、標的細胞に影響を及ぼすために使用できる。
【0130】
高力価レンチウイルス粒子を産生するのに使用できる細胞には、HEK293T細胞、293G細胞、STAR細胞(Relander他、Mol.Ther.、2005年、11:452-459)、FreeStyle(登録商標)293発現システム(ThermoFisher、Waltham、MA)、および他のHEK293Tベースの産生細胞株(例えば、Stewart他、Hum Gene Ther.2011年、22(3):357-369;Lee他、Biotechnol Bioeng、2012年、10996):1551-1560;Throm他、Blood.2009年、113(21):5104-5110が含まれてよいが、これらに限定されず、その各内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する)。
【0131】
いくつかの態様においては、エンベロープタンパク質は、水疱性口内炎ウイルス(VSV G)のGタンパク質またはバキュロウイルスgp64エンベロープタンパク質などの、他のウイルスからの異種エンベロープタンパク質であってよい。VSV-G糖タンパク質は、ベジクロウイルス属:カラジャスウイルス(CJSV)、チャンディプラウイルス(CHPV)、コカルウイルス(COCV)、イスファハンウイルス(ISFV)、マラバウイルス(MARAV)、ピリーウイルス(PIRYV)、水疱性口内炎アラゴアスウイルス(VSAV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、および水胞性口内炎ニュージャージウイルス(VSNJV)に分類される種、ならびに/またはソウギョラブドウイルス、BeAn157575ウイルス(BeAn157575)、ボケテウイルス(BTKV)、カルチャキウイルス(CQIV)、ウナギラブドウイルス(EVA)、グレーロッジウイルス(GLOV)、ジュロナウイルス(JURY)、クラマスウイルス(KLAV)、クワッタウイルス(KWAV)、ラジョヤウイルス(LJV)、マルパイススプリングウイルス(MSPV)、マウントエルゴンコウモリウイルス(MEBV)、ペリネットウイルス(PERV)、パイクフライラブドウイルス(PFRV)、ポートンウイルス(PORV)、ラディウイルス(RADIV)、コイ春季ウイルス血症ウイルス(SVCV)、トゥパイアウイルス(TUPV)、潰瘍性疾患ラブドウイルス(UDRV)、およびユグボグダノヴァツウイルス(YBV)のようなベジクロウイルス属に一時的に分類される種の中から特に選択されてよい。gp64その他のバキュロウイルスenvタンパク質は、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)、Anagrapha falcifera核多角体病ウイルス、Bombyx mori核多角体病ウイルス、Choristoneura fumiferana核多角体病ウイルス、Orgyia pseudotsugataシングルカプシド核多角体病ウイルス、Epiphyas postvittana核多角体病ウイルス、アメリカシロヒトリ核多角体病ウイルス、ハチノスツヅリガ核多角体病ウイルス、ドーリウイルス、ソゴトウイルス、Antheraea pemyi核多角体病ウイルス、またはバトケンウイルス由来とすることができる。
【0132】
レンチウイルス粒子に提供される他の要素は、5’または3’末端のいずれか、レトロウイルスエクスポート要素、随意に、レンチウイルス逆応答要素(RRE)、プロモーターまたはその活性部、および遺伝子座調節領域(LCR)またはその活性部に、レトロウイルスLTR(末端反復配列)を含んでよい。CA2エフェクターモジュールは、ベクターに結合している。
【0133】
組換えレンチウイルス粒子を生成する方法は、当技術分野で、例えば、米国特許第8,846,385号、第7,745,179号、第7,629,153号、第7,575,924号、第7,179,903号、および第6,808,905号において議論されており、その各内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。
【0134】
使用されるレンチウイルスベクターは、pLVX、pLenti、pLenti6、pLJM1、FUGW、pWPXL、pWPI、pLenti CMV puro DEST、pLJM1-EGFP、pULTRA、pInducer20、pHIV-EGFP、pCW57.1、pTRPE、pELPS、pRRL、およびpLionIIから選択されてよいが、これらに限定されない。
【0135】
再発/治療抵抗性B細胞性リンパ腫のためのチサゲンレクルユーセル(KYMRIAH(登録商標))などの近年認可された製品を含むレンチウイルスベクターは、前臨床研究および臨床応用のために、導入遺伝子をT細胞(例えば、一次ヒトT細胞またはジャーカット細胞)に導入するために使用される。VSV-G偽型第3世代レンチウイルスベクターは、高力価、高い形質導入効率および安全性をもたらし、T細胞操作の第1選択ベクターとなっている。理論に縛られることを望まないが、T細胞操作には、通常、CD3/CD28抗体によるT細胞活性化、続いてレンチウイルス形質導入、さらに続いて5~30日(例えば、9~14日または9~15日)続きうる細胞増殖を伴う。一般に、レンチウイルス導入遺伝子の統合は、T細胞(例えば、一次ヒトT細胞またはジャーカット細胞)において十分安定させるために7日より長くかかる場合がある。
【0136】
いくつかの実施形態においては、導入遺伝子発現動態を判定するために、CD3/CD28活性化一次ヒトT細胞には、導入遺伝子(例えば、IL15)を保有するレンチウイルスが形質導入されうる。細胞は、生存率、ウイルスゲノム統合(例えば、定量的PCRを使用して)、転写レベル(例えば、定量的RT-PCRを使用して)、および導入遺伝子の細胞表面発現に関して、本明細書に記載の、かつ/または当技術分野で周知の方法により分析されてよい。細胞は、形質導入に先立って、かつ/または形質導入後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日または30日を超えてなど、形質導入後に分析されてよい。非限定的な例としては、細胞は、形質導入後の3~14日間の様々な時点(例えば、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、および/または14日)に分析されてよい。非限定的な例としては、細胞は、形質導入後3~15日分析されてよい。非限定的な例としては、細胞は、形質導入後9~15日分析されてよい。
【0137】
いくつかの実施形態においては、CD3/CD28活性化一次ヒトT細胞は、形質導入後、CD3/CD28ビーズにより再活性化されうる。細胞は、形質導入後5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日または30日を超えて再活性化されてよい。細胞は、生存率、ウイルスゲノム統合(例えば、定量的PCRを使用して)、転写レベル(例えば、定量的RT-PCRを使用して)、導入遺伝子の細胞表面発現、コピー数、および/またはmRNAレベルに関して、本明細書に記載の、かつ/または当技術分野で周知の方法により分析されてよい。
【0138】
いくつかの実施形態においては、導入遺伝子を保有するレンチウイルスが形質導入された活性化一次ヒトT細胞の細胞生存率は、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%より多い。非限定的な例としては、細胞生存率は、90%より多い。非限定的な例としては、細胞生存率は、85%より多い。
【0139】
いくつかの実施形態においては、導入遺伝子を保有するレンチウイルスが形質導入されたジャーカット細胞の細胞生存率は、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%より多い。非限定的な例としては、細胞生存率は、90%より多い。非限定的な例としては、細胞生存率は、85%より多い。
【0140】
いくつかの実施形態においては、細胞のゲノムへの導入遺伝子の統合は、飽和点において、または飽和点を超えてであってよい。非限定的な例としては、飽和点は、細胞あたり3コピーであってよい。
【0141】
いくつかの実施形態においては、ゲノムへの導入遺伝子の統合は、評価される初めの時点で高く、その後、残りの培養の間、安定するまで低い統合値まで低下しうる。非限定的な例としては、導入遺伝子のゲノムへの統合は、初期の時点の間、細胞あたり20コピーまで上がり、その後、細胞あたり2コピーまで低下し、残りの培養を通して安定してよい。
【0142】
いくつかの実施形態においては、T細胞の能力の形質導入は、評価されてよい。少なくとも1人のドナーからのT細胞には、飽和レベルに達すると予測される用量(例えば、ポアソン分布が予想される場合、各細胞がコピーを含有すべき十分なウイルス)および飽和を5倍超える高いレンチウイルス用量で、導入遺伝子を含むレンチウイルスが形質導入されてよい。細胞あたりのコピー、細胞のパーセンテージおよびMFI(または導入遺伝子の培地における濃度)は、全ての細胞が導入遺伝子を発現させているかを判定するために、検出されてよい。非限定的な例としては、2人の異なるドナーからのT細胞には、導入遺伝子を含むレンチウイルスが形質導入されてよい。形質導入は、飽和および5倍の飽和の2つの用量であってよく、形質導入後5~10日で、全てのグループが、統合された導入遺伝子の予測飽和レベルおよびグループを通じて同様な発現強度に達しうるまたはそれらを超えうることを示してもよいが、全ての細胞が導入遺伝子を発現させているとは限らない。同一のドナーから提供されても、全てのT細胞が等しい形質導入感受性を有するとは限らない。GFPを発現させる(検知閾値を超えて)全細胞の割合は、ドナー、ロット、および/またはウイルス用量によって異なってよい。
【0143】
いくつかの実施形態においては、一定の割合の培養されたT細胞(例えば、一次ヒトT細胞および/またはジャーカット細胞)は、導入遺伝子を発現させてよい。導入遺伝子を発現させる培養T細胞の割合は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または99%を超えてよいが、これらに限定されない。非限定的な例としては、パーセンテージは、70%を超えてよい。非限定的な例としては、パーセンテージは、75%を超えてよい。非限定的な例としては、パーセンテージは、80%を超えてよい。非限定的な例としては、パーセンテージは、85%を超えてよい。非限定的な例としては、パーセンテージは、90%を超えてよい。非限定的な例としては、パーセンテージは、95%を超えてよい。
【0144】
いくつかの実施形態においては、培養物のmRNAレベルは、研究の期間中、低下しうる。低下は、特定の導入遺伝子に限定されなくてよく、傾向は、発現したタンパク質の複数のクラスにわたって見られうる。mRNAレベルを上昇させるため、細胞は、mRNAレベルが初期レベルから低下した後に再活性化されてよい。細胞は、形質導入後、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または30日を超えて再活性化されてよい。非限定的な例としては、培養物におけるmRNAレベルを上昇させるため、細胞は、形質導入後13日間、CD3/CD28ビーズで再活性化されてよい。非限定的な例としては、培養物におけるmRNAレベルを上昇させるため、細胞は、形質導入後14日間、CD3/CD28ビーズで再活性化されてよい。非限定的な例としては、培養物におけるmRNAレベルを上昇させるため、細胞は、形質導入後15日間、CD3/CD28ビーズで再活性化されてよい。
【0145】
いくつかの実施形態においては、培養物の表面発現は、研究の期間中、低下しうる。例えば、表面発現は、形質導入後3~13日、3~14日、または3~15日の間、低下しうる。表面発現を増加させるため、細胞は、表面発現が初期レベルから減少した後、再活性化されてよい。細胞は、形質導入後、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、または30日を超えて再活性化されてよい。非限定的な例としては、培養物における表面発現を増加させるため、細胞は、形質導入後13日間、CD3/CD28ビーズで再活性化されてよい。非限定的な例としては、培養物における表面発現を増加させるため、細胞は、形質導入後14日間、CD3/CD28ビーズで再活性化されてよい。非限定的な例としては、培養物における表面発現を増加させるため、細胞は、形質導入後15日間、CD3/CD28ビーズで再活性化されてよい。
【0146】
いくつかの実施形態においては、導入遺伝子は、IL15(例えば、表3に記載の他のエフェクターモジュール構成要素と結合されたとき、膜結合型IL15ペイロード)である。細胞生存率は、IL15が形質導入された細胞において、90%を超えてよい。細胞生存率は、IL15が形質導入された細胞において、85%を超えてよい。細胞が、IL15が形質導入された一次T細胞である場合、生存細胞の数は、初めの時点にわたって増加し、その後減少してよい。細胞が、IL15が形質導入されたジャーカット細胞である場合、生存細胞の数は、少なくとも10日間増加してよい。IL15が形質導入された細胞についての細胞あたりのコピー数は、初めの時点でより高く、後の時点で50%以上減少してよい。IL15が形質導入された一次ヒトT細胞については、培地における可溶性IL15のレベルは、再刺激されたグループではわずかに増加が見られるものの、研究の時間経過とともに着実に低下しうる。IL15が形質導入されたジャーカット細胞については、培地における可溶性IL15のレベルは、培養の前半でIL15分泌が低下し、培養時間の後半を通してレベルが低いままであってよい。
【0147】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のレンチウイルス操作された細胞は、初めのコピー数の低下後に安定し、経時的にRNAおよび表面発現レベルが下がり、再刺激後、RNAおよび表面発現が増加する、ゲノムDNA統合を有する。
【0148】
いくつかの実施形態においては、レンチウイルス操作細胞は、標本が培養を通じて5倍収集される以下の14日間の方法を使用して評価されてよい。-1日目、T細胞(例えば、一次ヒトT細胞またはジャーカット細胞)は、解凍されてよく、CD3/CD28ビーズが追加される。0日目、状態の各々に対するレンチウイルスが追加され(例えば、0.5e6/mLで4mLの細胞)、対照の非形質導入細胞が存在する。1日目に培地を2倍の8mLにし、2日目に培地を2倍の16mLにする。3日目に4mLを採取し、4日目に培地を2倍の24mLにする。6日目に4mLを採取した後、培地を2倍の40mLにする。細胞は、8日目に分割でき(例えば、14mLの0.5e6細胞/mL)、続いて、6日目に4mLを採取し、培地を2倍の40mLにする。10日目に4mLを採取した後、培地は2倍の20mLにされてよい。13日目、4mLを採取した後、培地を2倍の32mLにする。培養物は、半分に分割され、培養物の半分は、一晩活性化され(CD3/CD28活性化ビーズ 1:1)、刺激される。14日目、4mLの刺激されたおよび刺激されない各細胞が採取され、培養が終了する。細胞あたりの導入遺伝子コピー数は、細胞を採取し、ゲノムDNAを抽出し、続いて、内在性ゲノムに対する、かつ導入遺伝子配列に対する標準曲線qPCRで数量化し、続いて、検出された数量を比率に換算することによりアッセイされる。平均蛍光強度(MFI)は、グループごとに適切な染色法で、AttuneにおけるFLOによりアッセイされる。発現させるパーセントも、閾値を超えて蛍光を発する細胞のパーセントを数量化するattuneにおけるFLOによりアッセイされてよい。可溶性ペイロードは、印の付いた各時点で培養上清を採取し、MesoScale Discoveryプレートアッセイ(MSD)を実行して細胞密度に関して標準化することにより数量化できる。
【0149】
いくつかの実施形態においては、本開示のCA2エフェクターモジュールは、メッセンジャーRNA(mRNA)として設計されてよい。本明細書で使用するとき、「メッセンジャーRNA」(mRNA)という用語は、対象のポリペプチドをコードする、かつ翻訳されて、コードされた対象のポリペプチドをin vitro、in vivo、in situ、またはex vivoで産生することができる任意のポリヌクレオチドを指す。
【0150】
本開示は、CA2バイオ回路システムの構成要素の任意の1つまたは複数を、それを必要としている被験者に投与する工程を含む方法を提供する。これらは、病気、不調、および/または疾患(例えば、ワーキングメモリー不足に関わる病気、不調、および/または疾患)を防止または治療するのに効果的な、任意の量および任意の経路の投与により、被験者に投与されてよい。正確な必要量は、被験者の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与モード、その活性モードなどにより、被験者によって異なる。
【0151】
いくつかの実施形態においては、本開示は、それを必要としている被験者において制御IL15に反応する病気または不調を治療する方法であって、(a)治療効果のある量の本開示の核酸分子、ベクター、組換えタンパク質、細胞、または医薬組成物を被験者に投与する工程と、治療効果のある量の刺激剤を被験者に投与する工程であって、DRDは、刺激剤に反応し、IL15ペイロードの発現は、刺激剤に反応して調節される、工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態においては、刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される。いくつかの実施形態においては、刺激剤は、アセタゾラミドである。
【0152】
いくつかの実施形態においては、本開示は、それを必要としている被験者において、腫瘍関連抗原を発現させる悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)CARもしくはTCRをコードするポリヌクレオチド、またはその医薬組成物を更に含む、治療効果のある量の本開示のヒトT細胞またはヒトNK細胞を被験者に投与する工程であって、CARまたはTCRは、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、工程と、(b)治療効果のある量の刺激剤を被験者に投与する工程であって、CA2 DRDは、刺激剤に反応し、IL15ペイロードの発現は、刺激剤に反応して調節される、工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態においては、刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される。いくつかの実施形態においては、被験者に投与される刺激剤は、アセタゾラミドである。
【0153】
いくつかの実施形態においては、本開示は、それを必要としている被験者において悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)治療効果のある量の本開示のヒトTILを被験者に投与する工程と、(b)治療効果のある量の刺激剤を被験者に投与する工程であって、CA2 DRDは、刺激剤に反応し、IL15ペイロードの発現は、刺激剤に反応して調節される、工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態においては、刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される。いくつかの実施形態においては、被験者に投与される刺激剤は、アセタゾラミドである。
【0154】
本開示に従った組成物は、典型的に、投与のしやすさ、および投与量の均一性のため、投与量単位形態で処方される。しかしながら、本開示の組成物の日々の総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医により判断されうることが理解されるであろう。任意の特定の患者に対する、特定の治療効果のある、予防に効果的な、または適切なイメージング用量のレベルは、治療されている不調およびその不調の重症度;用いられている特定の化合物の活性;用いられている特定の組成物;患者の年齢、体重、総体的な健康、性別、および食事;投与の時間、投与の経路、および用いられている特定の化合物の排せつ率;治療の期間;用いられている特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物;ならびに医療分野において周知の類似の因子を含む、様々な因子によって決まる。
【0155】
本開示の組成物は、T細胞アネルギーを避ける、サイトカイン放出症候群を防止する、かつ免疫療法に関連する毒性を最小限にするために、様々な用量で使用されてよい。例えば、低用量の本開示の組成物は、病初に、腫瘍負荷が高い患者を治療するために使用されてよい。一方、腫瘍負荷が低い患者には、高用量および連続用量の本開示の組成物による治療が施されてよく、確実に最小限の腫瘍抗原負荷が認識される。別の例では、本開示の組成物は、脈動的に送達され、緊張性T細胞シグナル伝達を減少させ、in vivoの持続性を高めてよい。いくつかの態様においては、本開示の組成物を高用量で投与するのに先立ち、初めに低用量で使用することにより、毒性を最小限に抑えてよい。投与は、フェリチン、血清C反応性タンパク質、IL6、IFN-γ、およびTNF-αなどの血清マーカーが上昇した場合、修正されうる。
【0156】
本明細書において、それを必要としている被験者に本開示に従ったリガンドを投与する方法も提供される。リガンドは、本開示のCA2バイオ回路を調整するのに効果的な、任意の量および任意の経路の投与により、被験者または細胞に投与されてよい。正確な必要量は、被験者の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与モード、その活性モードなどにより、被験者によって異なる。被験者は、ヒト、哺乳類、または動物であってよい。本開示に従った組成物は、投与のしやすさおよび投与量の均一性のため、典型的に単位投与量形態で処方される。しかしながら、本開示の組成物の日々の総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で主治医により判断されうることが理解されるであろう。ある実施形態においては、本開示に従ったリガンドは、1日当たり被験者の体重につき、1日1回または複数回、所望の効果を得るために、約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kg、約10mg/kg~約100mg/kg、約50mg/kg~約500mg/kg、約100mg/kg~約1000mg/kgを送達するのに十分な投与量レベルで投与されてよい。いくつかの実施形態においては、投与量レベルは、1日当たり被験者に体重につき、または1日1回または複数回、所望の効果を得るために、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、150mg/kg、160mg/kg、170mg/kg、180mg/kg、190mg/kgまたはmg/kgであってよい。
【0157】
本開示は、細胞または組織に本明細書に記載のリガンドのいずれかを送達する方法であって、細胞または組織を前記リガンドと接触させる工程を含み、in vitro、ex vivo、またはin vivoで遂行できる方法を提供する。ある実施形態においては、本開示に従ったリガンドは、約1nM~約10nM、約5nM~約50nM、約10nM~約100nM、約50nM~約500nM、約100nM~約1000nM、約1μM~約10μM、約5μM~約50μM、約10μM~約100μM、約25μM~約250μM、約50μM~約500μMを送達するのに十分な投与量レベルで細胞に投与されてよい。いくつかの実施形態においては、リガンドは、0.00064μM、0.0032μM、0.016μM、0.08μM、0.4μM、1μM、2μM、10μM、50μM、75μM、100μM、150μM、175μM、200μM、250μMから選択されるが、これらに限定されない用量で細胞に投与されてよい。
【0158】
所望の投与量の本開示のリガンドは、1回のみ、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日おき、毎週、2週間おき、3週間おき、または4週間おきに送達されてよい。ある実施形態においては、所望の投与量は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはより多くの投与)により送達されてよい。複数回の投与が用いられるとき、本明細書に記載するような分割投与レジメンが使用されてよい。本明細書で使用するとき、「分割用量」とは、「単一単位用量」または日々の総用量を2回以上の投与に分割すること、例えば、「単一単位用量」を2回以上で投与することである。本明細書で使用するとき、「単一単位用量」とは、1回の投与/1度に/単一の経路/単一の接点、すなわち、単一の投与事象で投与される任意の治療薬の用量である。本開示のリガンドの所望の投与量は、「パルス用量」として、または「連続フロー」として投与されてよい。本明細書で使用するとき、「パルス用量」は、一定期間にわたって設定された頻度で投与される任意の治療薬の一連の単一単位用量である。本明細書で使用するとき、「連続フロー」は、単一の経路/単一の接点で一定期間にわたって、すなわち、継続的な投与事象で、継続的に投与される治療薬の用量である。日々の総用量、24時間に与えられるまたは処方される量は、これらの方法のいずれかにより、またはこれらの方法の組み合わせとして、または薬剤投与に好適な任意の他の方法により投与されてよい。
【0159】
いくつかの実施形態においては、免疫療法のための組成物は、ex vivoで細胞に投与され、続いて被験者に投与されてよい。免疫細胞は、当技術分野で既知の様々な方法を使用して、ex vivoで分離かつ増殖させることができる。例えば、細胞傷害性T細胞を分離させる方法は、米国特許第6,805,861号および第6,531,451号に記載されており、その各内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。NK細胞の分離は、米国特許第7,435,596号に記載されており、その内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。
【0160】
いくつかの実施形態においては、細胞の性質に応じて、細胞は、注射、輸血、注入、局所滴下または移植を含む、多種多様な方法で、宿主生物、例えば、哺乳類に導入されてよい。いくつかの態様においては、本明細書に記載の細胞は、腫瘍の部位に導入されてよい。用いられる細胞の数は、多数の状況、導入の目的、細胞の寿命、使用されるプロトコール、例えば、投与の回数、細胞の増殖能力などによって決まる。細胞は、生理学的に許容できる培地にあってよい。
【0161】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の細胞は、複数回の投与で、病気または疾患を有する被験者に投与されてよい。投与は、通常、がんの1つもしくは複数の症状、または病態の改善をもたらす、かつ/または、がんもしくは病態もしくはその症状を治療または防止する。
【0162】
いくつかの実施形態においては、免疫療法のための組成物は、in vivoで投与されてよい。いくつかの実施形態においては、本開示のCA2バイオ回路、CA2エフェクター分子、SRE、対象のペイロード(IL15)、および組成物を含む本開示のポリペプチドは、in vivoで被験者に送達されてよい。免疫療法薬のin vivo送達は、技術的にきちんと説明されている。例えば、サイトカインの送達の方法は、欧州特許第EP0930892A1号に記載されており、その内容は、参照により、本明細書に援用する。
【0163】
本開示のSRE(例えば、CA2 DRD)、ペイロード(例えば、IL15)、ベクター、および細胞を含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、任意の経路により投与され、治療効果のある結果を挙げてよい。
【0164】
本開示のSREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、任意の経路により投与され、治療効果のある結果を挙げてよい。これらには、経腸(腸の中に)、胃腸、硬膜外(epidural)(硬膜の中に)、経口(口を経由して)、経皮(transdermal)、硬膜外(peridural)、脳内(大脳の中に)、脳室内(脳室の中に)、皮膚上(皮膚への塗布)、皮内、(皮膚自体の中に)、皮下(皮膚の下に)、鼻腔投与(鼻を通って)、静脈内(静脈の中に)、急速静注、点滴静注、動脈内(動脈の中に)、筋肉内(筋肉の中に)、心臓内(心臓の中に)、骨内注入(骨髄の中に)、くも膜下腔内(脊柱管の中に)、腹腔内、(腹膜の中に注入または注射)、膀胱腔内注入、硝子体内、(眼を通って)、陰茎海綿体内注入(病的腔の中に)腔内(陰茎の基部の中に)、腟内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(transdermal)(全身への分布のために傷のない皮膚を通って拡散)、経粘膜(粘膜を通って拡散)、経腟、ガス注入(鼻から吸引)、舌下、唇の下、浣腸、点眼(結膜上に)、点耳法で、耳介(耳の中または耳を経由して)、頬側(頬に向けられて)、結膜、皮膚(cutaneous)、歯(1つまたは複数の歯に)、電気浸透、子宮頸管内、洞内、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質内、腹腔内、羊膜内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、軟骨内(軟骨の内部に)、仙骨内(馬尾の内部に)、大槽内(大槽(cisterna magna cerebellomedularis)の内部に)、角膜内(角膜の内部に)、歯冠内(dental intracornal)、冠内(冠動脈の内部に)、海綿体内(陰茎の海綿体(corporus cavernosa)の膨張性空間の内部に)、椎間板内(椎間板の内部に)、導管内(腺の管の内部に)、十二指腸内(十二指腸の内部に)、硬膜内(硬膜の内部または下に)、表皮内(表皮に)、食道内(食道に)、胃内(胃の内部に)、歯肉内(歯肉の内部に)、回腸内(intraileal)(小腸の末梢部の内部に)、病巣内(局所病巣の内部または局所病巣に直接導入される)、腔内(管の管腔の内部に)、リンパ内(リンパの内部に)、髄内(骨の髄腔の内部に)、髄膜内(髄膜の内部に)、心筋内(心筋の内部に)、眼内(眼の内部に)、卵巣内(卵巣の内部に)、心膜内(心膜の内部に)、胸膜内(胸膜の内部に)、前立腺内(前立腺の内部に)、肺内(肺またはその気管支の内部に)、鼻腔内(intrasinal)(鼻または眼窩周囲洞の内部に)、脊髄内(脊柱の内部に)、関節滑液嚢内(関節の滑液腔の内部に)、腱内(腱の内部に)、精巣内(精巣の内部に)、くも膜下腔内(脳脊髄軸の任意のレベルにおける脳脊髄液の内部に)、胸腔内(胸部の内部に)、管内(臓器の細管の内部に)、腫瘍内(腫瘍の内部に)、鼓室内(中耳(aurus media)の内部に)、血管内(1つまたは複数の血管の内部に)、心室内(心室の内部に)、イオン泳動(可溶性塩のイオンが身体の組織の中に移動する電流を用いて)、灌注(開放創または体腔を浸すまたは流すこと)、喉頭(喉頭に直接)、鼻腔胃(鼻を通って胃の内部に)、密封包帯療法(局所経路投与に続いて、領域を塞ぐ包帯材により覆われる)、眼部(外眼部に)、中咽頭(口および咽頭に直接)、非経口、経皮(percutaneous)、関節周囲、硬膜外(peridural)、神経周囲、歯周、直腸、呼吸(局所的または全身的な効果のため、経口でまたは経鼻的に吸飲することにより気道の中に)、眼球後(橋の後ろまたは眼球の後ろに)、心筋内(心筋に入る)、軟部組織、くも膜下、結膜下、粘膜下、局所、経胎盤(胎盤を通ってまたは胎盤にわたって)、経気管(気管の壁を通って)、鼓膜内(鼓室にわたってまたは鼓室を通って)、尿管(尿管に)、尿道(尿道に)、腟、仙骨ブロック、診断、神経ブロック、胆管灌流、心臓灌流、フォトフェレーシス、または脊髄が含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
いくつかの実施形態においては、本開示のSREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、非経口で投与されてよい。経口および非経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容できるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、および/またはエリキシル剤が含まれるが、これらに限定されない。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水その他の溶剤;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ひまし、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの、可溶化剤および乳化剤;ならびにその混合物などの、当該技術分野でよく使用される不活性希釈剤を含んでよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味、香味、および/または芳香剤などの、アジュバントを含むことができる。非経口投与についてのある実施形態においては、組成物は、CREMOPHOR(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、および/またはその組み合わせなどの可溶化剤と混合される。他の実施形態においては、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤が含まれる。
【0166】
注射用製剤、例えば、無菌静脈内投与製剤または注射用水性もしくは油性懸濁液は、好適な分散剤、湿潤剤、および/または懸濁剤を使用して既知の技術に従って処方されてよい。無菌注射用製剤は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒で非経口に許容できる希釈液および/または溶剤中の無菌注射用溶液、懸濁液、および/またはエマルションであってよい。用いられうる許容できるビヒクルおよび溶剤は、水、リンゲル液、U.S.P.、および等張食塩水である。無菌の固定油は、これまで溶剤または懸濁化剤として用いられている。このために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無菌性の固定油を用いることができる。オレイン酸などの脂肪酸は、注射液の調製において使用できる。
【0167】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通すろ過により、かつ/または使用に先立ち滅菌水その他の無菌注射用媒体に溶解もしくは分散させることができる無菌固体組成物の形態で滅菌剤を取り込むことにより、殺菌されてよい。
【0168】
本開示のCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE、刺激剤、組成物、または刺激剤、CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュールの1つもしくは複数を含むシステムは、治療法、診断および予後、バイオエンジニアリング、バイオプロセシング、バイオファクトリー、研究剤、メタボロミクス、遺伝子発現、酵素補充などを含むがこれらに限定されない、多種多様な用途で利用されてよい。
【0169】
本開示によれば、CA2-IL15バイオ回路およびシステムは、養子細胞療法などの細胞療法の開発および実施において使用されてよい。CA2-IL15バイオ回路およびシステムは、CAR T細胞療法、T細胞受容体(TCR)細胞療法、CAR NK細胞療法、TCR NK細胞療法、TIL療法をもたらすために使用されてよく、それらのいずれかは、他の治療ライン(例えば、放射、サイトカイン)との併用療法で使用されてよい。
【0170】
いくつかの実施形態においては、CA2-IL15バイオ回路およびシステムは、CD8+T細胞およびCD4+T細胞などのT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、ならびにその任意の組み合わせを含む免疫細胞を操作するために使用されてよい。他の実施形態においては、CA2-IL15バイオ回路およびシステムは、ACTのために使用されうる胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)から生成される免疫刺激細胞を操作するために使用されてよい。いくつかの実施形態においては、CA2-IL15バイオ回路およびシステムは、ACTのために使用されうる自己または同種免疫細胞を操作するために使用されてよい。いくつかの実施形態においては、CA2-IL15バイオ回路およびシステムは、T細胞、TIL、またはNK細胞を操作するために使用されてよい。いくつかの実施形態においては、免疫細胞は、臍帯血、iPSC、または末梢血単核球由来のNK細胞である。
【0171】
いくつかの実施形態においては、ACTのために使用されるCA2-IL15により操作された細胞は、対象の腫瘍細胞における抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARまたはTCRを発現させるために操作されてもいるT細胞であってよい。他の実施形態においては、ACTのために使用されるCA2-IL15により操作された細胞は、対象の腫瘍細胞における抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARまたはTCRを発現させるために操作されたNK細胞であってよい。いくつかの実施形態においては、ACTのために使用されるCA2-IL15により操作された細胞は、T細胞およびNK細胞の混合物であってよく、そのいずれかまたは両方がCARまたはTCRを発現させていてよい。
【0172】
キメラ抗原受容体(CAR)は、免疫細胞(例えば、T細胞およびNK細胞)に形質に導入されたとき、CARの細胞外標的部分により認識される分子を発現させる標的(例えば、腫瘍細胞)に対して免疫細胞を向け直すことができる。本明細書で使用するとき、「キメラ抗原受容体(CAR)」という用語は、T細胞の表面においてTCRを模倣する合成受容体を指す。一般に、CARは、細胞外標的ドメイン、膜貫通ドメイン/領域、および細胞内シグナル伝達/活性化ドメインから成る。標準的CAR受容体において、細胞外標的ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達/活性化ドメインは、単一融合タンパク質として直線的に構成される。細胞外領域は、特定の腫瘍抗原(例えば、腫瘍ネオ抗原)その他の腫瘍細胞表面分子を認識する標的ドメイン/部分(例えば、scFv)を含む。細胞内領域は、TCR複合体(例えば、CD3ζのシグナル伝達領域)の細胞内シグナル伝達ドメイン(免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ)、ならびに/またはCD28、4-1BB(CD137)およびOX-40(CD134)からのものなどの、1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含んでよい。CARは、T細胞またはNK細胞により発現されたとき、T細胞またはNK細胞にCARの細胞外標的部分により判定される抗原特異性を授ける。
【0173】
いくつかの実施形態においては、細胞外標的ドメインは、ヒンジ(空間領域またはスペーサーとも呼ばれる)および膜貫通領域を通って細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。ヒンジは、細胞外標的ドメインを、細胞膜を横断する膜貫通ドメインに接続し、細胞内シグナル伝達ドメインに接続される。ヒンジは、標的部分が結合する標的タンパク質のサイズ、ならびに標的ドメイン自体のサイズおよび親和性により、がん細胞へのCAR形質転換細胞の効力を最適化するように変更される必要がある場合がある。標的部分が認識されて標的細胞に結合すると、細胞内シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数の細胞内共刺激ドメインからの「第2シグナル」により更に増幅される、CAR T細胞またはCAR NK細胞に、活性化シグナルを誘導する。CAR T細胞またはCAR NK細胞は、一旦活性化されると、標的細胞を破壊することができる。
【0174】
いくつかの実施形態においては、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールを含み、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む免疫細胞を提供する。CARは、DRDにより制御されてもよいし、構成的に発現されてもよい。いくつかの実施形態においては、CARは、構成的に発現される。
【0175】
いくつかの実施形態においては、構成的に発現されたまたは制御されたCAR、およびCA2-IL15エフェクターモジュールは、異なるベクターにおいてコードされる。いくつかの実施形態においては、単一ベクターは、CA2-IL15エフェクターモジュールおよび構成的に発現されたまたは制御されたCARの両方を含み、タンデムコンストラクトを形成する。CA2-IL15エフェクターモジュールおよびCARは、内部リボソーム侵入部位(IRES);口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、ブタテッショウウイルス-1 2A(P2A)、もしくはThosea asignaウイルス2A(T2A)から選択されるリボソームスキッピング配列2Aペプチド;または他のリボソームスキッピング配列もしくはリボソームエントリー配列により互いに分離されてよく、バイシストロニックコンストラクトを生じさせる。いくつかの実施形態においては、2A配列は、P2A配列である。IRES、2A配列、または他のリボソームスキッピング配列もしくはリボソームエントリー配列は、2つの独立したポリペプチドとして発現される上流および下流の配列の発現を引き起こす。いくつかの実施形態においては、単一ベクターは、順番に、CARをコードする配列、P2A配列、およびCA2-IL15エフェクターモジュールをコードする配列を含む。CARをコードする配列は、CA2-IL15エフェクターモジュールをコードする配列の5’または3’のいずれかであってよい。
【0176】
T細胞受容体(TCR)は、免疫細胞(例えば、T細胞およびNK細胞)に形質導入されたとき、TCRにより認識される分子を発現させる標的(例えば、腫瘍細胞)に対して免疫細胞を向け直すことができる。TCRは、可変αおよびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても知られる)もしくは可変γおよびδ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとしても知られる)、またはMHC分子に結合したペプチドに特異的に結合できる抗原結合部もしくはそのフラグメントを含む分子である。いくつかの実施形態においては、TCRは、TCRαβである。一般に、TCRは、通常、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原を認識する責任を負うT細胞の表面に見られる。
【0177】
本明細書で使用するとき、TCRという用語は、抗原結合部またはその抗原結合フラグメントだけでなく、完全なTCRも包含する。いくつかの実施形態においては、TCRは、α鎖およびβ鎖の両方を含む全長TCRである。いくつかの実施形態においては、TCRは、MHC分子において結合した特定のペプチドに結合する、TCRの抗原結合部またはフラグメント、例えば、α鎖およびβ鎖の各々の一部である。いくつかの実施形態においては、抗原結合部またはフラグメントは、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するのに十分な、可変α(Vα)鎖および可変β(Vβ)鎖などの、TCRの可変ドメインを含む。
【0178】
TCRの可変ドメインは、主としてMHC-ペプチド抗原認識、結合、および特異性に寄与する、相補性決定領域(CDR)を含む。TCR鎖の可変領域内のCDRは、典型的にCDRよりも可変性が小さい、フレームワーク領域(FR)により分離される。いくつかの実施形態においては、TCRの1つまたは複数のCDRは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全てまたは実質上全てを形成する。いくつかの実施形態においては、CDR3は、抗原結合または特異性、およびペプチド-MHC複合体の処理されたペプチド部分との相互作用に責任を負う主要なCDRである。
【0179】
TCRのα-鎖およびβ-鎖は、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および短い細胞質尾部を含んでもよい。TCRの細胞質尾部は、細胞膜中のタンパク質をしっかりと固定し、そこでTCR複合体のシグナル伝達能力に関わる、CD3複合体のインバリアントサブユニットと結び付く。
【0180】
いくつかの実施形態においては、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールで「武装され」、操作された細胞の有効性および持続性を改善する、CAR T細胞またはTCR T細胞を提供する。
【0181】
いくつかの実施形態においては、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールで「武装され」、操作された細胞の有効性および持続性を改善する、または免疫の消耗および老化を防止する、CAR NK細胞またはTCR NK細胞を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態においては、本開示は、CA2-IL15エフェクターモジュールで操作され、操作された細胞の有効性および持続性を改善する、TILを提供する。
【0183】
いくつかの実施形態においては、本開示の細胞は、特定の個々の被験者との関連で自己、同種、同系、または異種であってよい。いくつかの実施形態においては、本開示の細胞は、哺乳類細胞、特にヒト細胞であってよい。本明細書に記載の細胞は、初代細胞または不死化細胞株であってよい。
【0184】
がん免疫療法は、がんへの免疫系の反応性の誘発または回復を目指す。養子細胞療法は、内在性で永続性の腫瘍抗原特異的免疫応答の誘発を目指す能動免疫療法の形式である。反応は、サイトカインなどの免疫応答修飾因子の非特異的刺激により高められうるが、サイトカイン刺激は、毒性または免疫消耗を引き起こしうる。
【0185】
大幅な進歩にもかかわらず、現在の免疫療法戦略の有効性は、関連する毒性により制限される。これらは、一つには、治療用量を潜在的に致死的な毒性のギリギリまで押し上げて、臨床的に有意義な治療有効性を得る必要性から明らかになる、免疫療法に関連する治療域の狭さにしばしば関わる。さらに、養子導入された免疫細胞が患者の体内で、しばしば予想外に、急増し続けるため、用量は、in vivoで拡大する。
【0186】
免疫療法に関わる主要なリスクは、腫瘍関連抗原(TAA)の正常組織発現に反応したT細胞活性化がもたらす、標的上だが腫瘍外への副作用である。
【0187】
免疫療法は、腫瘍細胞が免疫療法に反応して死滅するときに現れる、標的上、腫瘍上の毒性も引き起こす場合がある。有害作用には、腫瘍崩壊症候群、サイトカイン放出症候群、および関連するマクロファージ活性化症候群が含まれる。重要なことに、これらの有害作用は、腫瘍の破壊中に生じる場合があり、よって、腫瘍上の免疫療法が成功しても、毒性がもたらされる場合がある。よって、制御可能に免疫療法を管理するアプローチは、毒性を低減し、有効性を最大化する可能性を有しているため、非常に望ましい。
【0188】
本開示は、がん免疫療法のためのシステム、組成物、免疫療法薬、および方法を提供する。これらの組成物は、免疫療法における遺伝子発現および機能の調節可能な制御を提供する。本開示は、CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、刺激応答要素(SRE)、およびペイロード、ならびに前述のいずれかをコードするポリヌクレオチドも提供する。1態様において、本開示のシステム、組成物、免疫療法薬、および他の構成要素は、がん免疫療法を制御する顕著な適応性を提供する、別々に追加された刺激剤により制御できる。さらに、本開示のシステム、組成物、および方法は、化学療法薬などの治療薬、小分子、遺伝子療法、および抗体と組み合わされてもよい。
【0189】
本開示のシステムおよび組成物の調節可能な性質は、免疫療法の有効性の効力および期間を増加させる可能性を有する。本開示の組成物を使用して養子導入された細胞の生物学的活性を可逆的に静めることにより、取り返しがつかないほどに殺傷したり、療法を終了させたりすることなく、細胞療法の可能性を最大化することができる。
【0190】
本開示は、患者への投与後に免疫療法を微調整する方法を提供する。これにより、続いて免疫療法の安全性および有効性が改善され、免疫療法から恩恵を受ける被験者集団が増加する。
【0191】
1実施形態においては、発現レベルおよび任意の薬剤の活性を調整する、CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE、および構成要素は、免疫療法に使用されてよい。非限定的な例として、本開示のコンストラクトにおいて使用される免疫療法薬は、細胞および被験者において免疫応答を誘発するIL15である。
【0192】
いくつかの実施形態においては、免疫応答を誘導するための組成物は、CA2エフェクターモジュールを含んでよい。いくつかの実施形態においては、CA2エフェクターモジュールは、配列番号:8のアミノ酸配列を含むヒトIL15に作動可能に結合している刺激応答要素(SRE)を含んでよい。
【0193】
いくつかの実施形態においては、本開示のCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、および組成物は、免疫療法薬のタンパク質(ペイロード)機能の抗腫瘍免疫応答の翻訳後調節に関係する。
【0194】
いくつかの実施形態においては、遺伝子を組み換えられ、少なくとも1つのCA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE(例えば、CA2 DRD)、および/または対象のペイロード(免疫療法薬)を発現させる細胞は、養子細胞療法(ACT)に使用されてよい。本明細書で使用するとき、養子細胞移植は、直接的な抗がん活性を有する免疫細胞(自己、同種異系、または遺伝子組み換え宿主からの)の投与を指す。ACTは、悪性および感染性疾患に対する臨床応用で効果を発揮している。
【0195】
本開示によれば、CA2バイオ回路およびシステムは、養子細胞療法などの細胞療法の開発および実施において使用されてよい。CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、ならびにそれらのSREおよびペイロードは、細胞療法で使用され、免疫細胞療法を単独でまたは他の治療ライン(例えば放射、サイトカイン)との組み合わせによりもたらしてよい。
【0196】
本明細書において、養子細胞療法において使用する方法が提供される。1実施形態においては、方法は、それを必要としている被験者にプレコンディショニングを施す工程と、被験者のT細胞の一部を除去する工程と、本開示のCA2エフェクターモジュールにより被験者のT細胞を操作する工程と、CA2エフェクターモジュールを発現させる、操作されたT細胞を被験者に投与する工程であって、操作された細胞は、被験者の体内にうまく生着する、工程とを伴う。
【0197】
別の実施形態においては、方法は、それを必要としている被験者にプレコンディショニングを施す工程と、CA2エフェクターモジュールを発現させる、同種の操作されたT細胞を被験者に投与する投与する工程であって、操作された細胞は、被験者の体内にうまく生着する、工程とを伴う。
【0198】
いくつかの実施形態においては、方法は、被験者から悪性腫瘍を除去する工程と、腫瘍からTILを分離させる工程と、本開示のCA2エフェクターモジュールによりTILを操作する工程と、操作されたTILを被験者に投与する工程であって、TILは、被験者の体内の残りの腫瘍または転移にうまく浸透する、工程とを伴う。
【0199】
いくつかの実施形態においては、本開示のSRE、CA2バイオ回路、および組成物は、養子細胞療法に関連するプレコンディショニングレジメンを最小限にするために使用されてよい。本明細書で使用するとき、「プレコンディショニング」は、養子細胞療法の結果を向上させるために被験者に施される任意の治療法レジメンを指す。プレコンディショニング戦略には、全身照射および/またはリンパ枯渇化学療法が含まれるが、これらに限定されない。プレコンディショニングを行わない養子療法臨床試験は、臨床的利点を証明することができず、ACTにおけるその重要性が示された。けれども、プレコンディショニングは、有意な毒性に関連し、ACTに好適な被験者コホートを制限する。場合によっては、ACTのための免疫細胞は、本開示のSREを使用してIL15などのサイトカインをペイロードとして発現させるために操作され、プレコンディショニングの必要性を低減させてもよい。
【0200】
いくつかの実施形態においては、本組成物を発現させるために操作されたNK細胞は、ACTに使用されてよい。NK細胞活性化は、標的細胞においてパーフォリン/グランザイム依存的アポトーシスを誘発する。NK細胞活性化は、IFNγ、TNF-αおよびGM-CSFなどのサイトカイン分泌も誘発する。これらのサイトカインは、マクロファージの食細胞機能、およびそれらの抗菌活性を高め、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞による抗原提示の上方制御を用いて適応免疫応答を増加させる。
【0201】
免疫細胞は、当技術分野で周知の様々な方法を使用してex vivoで分離かつ増殖させることができる。例えば、細胞傷害性T細胞を分離かつ増殖させる方法は、米国特許第6,805,861号および第6,531,451号;米国特許公報第US20160348072A1号および国際特許公報第WO2016168595A1号に記載され、その各内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。NK細胞の分離および増殖は、米国特許公報第US20150152387A1号、米国特許第7,435,596号;およびOyer、J.L.(2016年).Cytotherapy.18(5):653-63に記載され、その各内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。特に、ヒト一次NK細胞は、支持細胞、例えば、遺伝子が組み換えられ、膜結合型IL15および4-1BBLを発現させる骨髄細胞株の存在下において増殖されうる。
【0202】
いくつかの実施形態においては、ACTのためのT細胞の活性化および増殖は、細胞表面に一時的に発現されたキメラ抗原受容体(CAR)の抗原刺激により成し遂げられる。そのような活性化方法は、国際特許番号第WO2017015427号において教示され、その内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。
【0203】
いくつかの実施形態においては、免疫細胞は、抗原提示細胞(APC)に結び付いた抗原により活性化されてよい。いくつかの実施形態においては、APCは、抗原特異的または非特異的な、樹状細胞、マクロファージ、またはB細胞であってよい。APCは、それらの臓器において自己または同族であってよい。いくつかの実施形態においては、APCは、細胞ベースのaAPCまたは無細胞aAPCなどの、人工抗原提示細胞(aAPC)であってよい。細胞ベースのaAPCは、ヒト赤白血病細胞などの遺伝子組み換え同種細胞、またはマウス線維芽細胞およびショウジョウバエ細胞などの異種細胞のいずれかから選択されてよい。代替的に、APCは、無細胞であってよく、抗原または共刺激ドメインは、ラテックスビーズ、ポリスチレンビーズ、脂質小胞、またはエキソソームなどの合成表面に提示される。
【0204】
いくつかの実施形態においては、養子細胞療法は、自家移植により実施され、細胞は、治療を必要としている被験者由来であり、細胞は、分離および処理に続いて、同一の被験者に投与される。他の例においては、ACTは、同種異系移植を伴ってよく、細胞は、最終的に細胞療法を受けるレシピエント被験者以外のドナー被験者から分離かつ/または調製される。ドナーおよびレシピエント被験者は、遺伝学的に同一であっても、類似していてもよいし、同一のHLAクラスまたはサブタイプを発現させてもよい。
【0205】
本開示のSRE、CA2バイオ回路、および組成物を使用した遺伝的修飾の後、細胞は、それを必要としている被験者に投与される。養子細胞療法のための細胞の投与方法は、既知であり、提供された方法および組成物に関連して使用されてよい。例えば、養子T細胞療法の方法については、例えば、Gruenberg他に対する米国公開特許公報第2003/0170238号;Rosenbergに対する米国特許第4,690,915号;Rosenberg(2011年)Nat Rev Clin Oncol.8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli他(2013年)Nat Biotechnol.31(10):928-933;Tsukahara他(2013年)Biochem Biophys Res Commun 438(1):84-9;Davila他(2013年)PLoS ONE 8(4):e61338が参照され、その各内容は、参照により、その全体を本明細書に援用する。
【0206】
いくつかの実施形態においては、ACTのためにCA2-IL15により操作された免疫細胞は、更に修飾され、免疫細胞活性化、浸潤、増殖、生存および抗腫瘍機能を促進する1つまたは複数の免疫療法薬を発現させてよい。免疫療法薬は、腫瘍細胞;第2サイトカインもしくはサイトカイン受容体;阻害シグナルを刺激性シグナルに変換するキメラスイッチ受容体;養子導入された細胞を腫瘍組織などの標的部位に導くホーミング受容体;免疫細胞の代謝を最適化する薬剤;または養子細胞移植後に深刻な事象が観察されたとき、もしく移植された免疫細胞がもはや不要なとき、活性化されたT細胞を死滅させる安全スイッチ遺伝子(例えば、自殺遺伝子)における、標的分子に特異的なCARまたはTCRであってよい。
【0207】
いくつかの実施形態においては、養子細胞移植に使用される免疫細胞は、がん患者において腫瘍を死滅させる能力が更に改善されることを全体目的として、遺伝子操作され、それらの持続性、細胞傷害性、腫瘍標的能力、およびin?vivoで疾患の部位に誘導する能力を改善することができる。1例は、IL15を含む本開示のCA2エフェクターモジュールを免疫細胞に導入し、免疫細胞の増殖および生存を促進させることである。細胞へのIL15の形質導入は、免疫細胞が外因性サイトカインを追加せずに繁殖することを許可し、サイトカイン発現NK細胞は、腫瘍細胞傷害性を増加させうる。
【0208】
いくつかの実施形態においては、CA2バイオ回路、SRE、またはCA2エフェクターモジュールは、T細胞消耗を防止するために利用されてよい。本明細書で使用するとき、「T細胞消耗」は、慢性T細胞活性化により生じる、T細胞機能の段階的かつ進行性消失を指す。T細胞消耗は、抗ウイルスおよび抗腫瘍免疫療法の有効性を制限する主要な要因である。消耗したT細胞では、複数の抑制性受容体のアポトーシス率が高く、表面発現が高いのと同時に、増殖性およびサイトカイン産生能力が低くなる。消耗につながるT細胞活性化は、抗原の存在下または非存在下のいずれでも生じうる。
【0209】
いくつかの実施形態においては、CA2バイオ回路およびそれらの構成要素は、キメラ抗原受容体-T細胞療法(CAR-T)という状況においてT細胞消耗を防止するために使用されてよい。これに関連して、消耗は、場合によっては、CARの細胞内ドメインの持続的活性化につながる、細胞表面におけるCARのscFvのオリゴマー形成により生じうる。非限定的な例としては、本開示のCARは、オリゴマー形成できないscFvを含んでよい。別の非限定的な例として、抗原暴露に続いて、急速に取り込まれ、再発現されたCARが、細胞表面における慢性scFvオリゴマー形成を防止するために選択されてもよい。1実施形態においては、scFvのフレームワーク領域は、構成的CARシグナル伝達を防止するために修飾されてよい。
【0210】
本開示の調節可能なCA2バイオ回路は、T細胞表面におけるCARの表面発現を制御し、慢性T細胞活性化を防止するために使用されてもよい。本開示のCARは、消耗を最小限にするために操作されてもよい。非限定的な例としては、4-1-BBシグナル伝達ドメインは、本開示の表3に例示された、CA2バイオ回路、SRE、またはCA2エフェクターモジュールにより制御された膜結合型IL15発現と共に、CAR設計に取り込まれ、T細胞消耗を改善してよい。
【0211】
いくつかの実施形態においては、本開示のCA2-IL15バイオ回路の調節可能な性質は、緊張性CARシグナル伝達で観察されたヒトT細胞消耗を逆転させるために利用されてよい。本開示の組成物を使用して、養子導入された細胞の生物学的活性を可逆的に静めることは、次にT細胞を再活性化しうる、緊張性シグナル伝達を逆転させるために利用されてよい。消耗の逆転は、消耗に関連する複数の抑制性受容体の下方制御により測定されてよい。
【0212】
いくつかの実施形態においては、本開示の組成物は、被験者におけるTIL(腫瘍浸潤リンパ球)集団を変化させるために使用されてよい。1実施形態においては、本明細書に記載のペイロードのいずれかは、CD8陽性集団に対するCD4陽性細胞の比率を変更するために使用されてよい。いくつかの実施形態においては、TILは、ex vivoでソートされ、本明細書に記載のサイトカインのいずれかを発現させるように操作されてよい。本開示のペイロードは、TILのCD4および/またはCD8集団を増殖させ、TIL媒介免疫応答を高めるために使用されてよい。
【0213】
本開示において、それを必要としている被験者において腫瘍体積または負荷を低減する方法であって、被験者の体内に本開示の組成物を導入する工程を含む工程を提供する。
【0214】
本開示は、被験者においてがんを治療する方法であって、遺伝子が組み換えられ、本開示の少なくとも1つのCA2エフェクターモジュールを発現させる、効果的な量のエフェクター免疫細胞を被験者に投与する工程を含む方法も提供する。
【0215】
様々ながんが、本開示のSREおよびIL15ペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールで治療されうる。本明細書で使用するとき、「がん」という用語は、周辺組織に侵入し、新たな身体部位に転移する傾向がある未分化細胞の増殖により特徴付けられる、様々な悪性新生物のいずれかを指し、そのような悪性新生物の成長により特徴付けられる病態も指す。がんには、腫瘍または血液学的悪性疾患であり、肛門、膀胱、胆管、骨、脳、乳房、頸部、結腸/直腸、子宮内膜、食道、眼、胆嚢、頭部および頸部、肝臓、腎臓、喉頭、肺、縦隔(胸部)、口、卵巣、膵臓、陰茎、前立腺、皮膚、小腸、胃、脊髄、尾骨、精巣、甲状腺、ならびに子宮で見つかるがんまたは腫瘍などの、全てのタイプのリンパ腫/白血病、細胞腫、ならびに肉腫が含まれてよいが、これらに限定されない。
【0216】
本開示の組成物で治療されうる細胞腫のタイプには、パピローマ/カルシノーマ、絨毛がん、内胚葉洞腫瘍、テラトーマ、アデノーマ/腺がん、黒色腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、横紋筋腫、中皮腫、血管腫、骨腫、軟骨腫、神経膠腫、リンパ腫/白血病、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞型未分化細胞腫、基底細胞がん、および副鼻腔未分化カルシノーマが含まれるが、これらに限定されない。
【0217】
本開示の組成物で治療されうる細胞腫のタイプには、胞巣状軟部肉腫などの軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)、皮膚線維肉腫、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、骨外性軟骨肉腫、骨外性骨肉腫、線維肉腫、血管周皮腫、血管肉腫(hemangiosarcoma)、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ血管肉腫、リンパ肉腫、悪性線維性組織球腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、およびアスキン腫瘍、ユーイング肉腫(原始神経外胚葉性腫瘍)、悪性血管内皮腫、悪性シュワン細胞腫、骨肉腫、および軟骨肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0218】
非限定的な例としては、治療されうるカルシノーマは、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺がん、腺肉腫、副腎がん、副腎皮質がん、肛門がん、未分化星状細胞腫、血管肉腫、虫垂がん、星細胞腫、基底細胞がん、B細胞リンパ腫)、胆管がん、膀胱がん、骨がん、腸がん、脳がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、カルチノイド腫瘍、子宮頚がん、胆管がん、軟骨肉腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、大腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚リンパ腫、皮膚黒色腫、びまん性星細胞腫、非浸潤性乳管がん、子宮内膜がん、上衣腫、類上皮肉腫、食道がん、ユーイング肉腫、肝外胆管がん、眼がん(Eye cancer)、卵管がん(Fallopian tube cancer)、線維肉腫、胆嚢がん(GallblaDRDer cancer)、胃がん、消化管がん、消化管カルチノイドがん、消化管間質腫瘍、一般的な、胚細胞腫瘍、多形性神経膠芽細胞腫、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頚部がん、血管内皮腫、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)、ホジキン病、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma)、下咽頭がん、浸潤性腺管がん、浸潤性小葉がん、炎症性乳がん、腸がん、肝内胆管がん、浸潤性(Invasive)/浸潤性(infiltrating)乳がん、島細胞がん、顎がん、カポジ肉腫、腎がん、喉頭がん、平滑筋肉腫、軟髄膜転移、白血病、口唇がん、脂肪肉腫、肝がん、非浸潤性小葉がん、低悪性度星細胞腫、肺がん、リンパ節がん、リンパ腫、男性乳がん、髄様がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞がん、間葉性軟骨肉腫、間葉(Mesenchymous)、中皮腫、転移性乳がん、転移性黒色腫、転移性頸部扁平上皮がん、混合膠腫、口腔がん(Mouth cancer)、粘液がん、粘膜黒色腫、多発性骨髄腫、鼻腔がん、上咽頭がん、頚部がん、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin lymphoma)、非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin’s lymphoma)、非小細胞肺がん、燕麦細胞がん、眼がん(Ocular cancer)、眼メラノーマ、乏突起神経膠腫、口腔がん(Oral cancer)、口腔がん(Oral cavity cancer)、中咽頭がん、骨原性肉腫、骨肉腫、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣原発性腹膜がん、卵巣性索間質腫瘍、パジェット病、膵がん、乳頭がん、副鼻腔がん(Paranasal sinus cancer)、副甲状腺がん、骨盤がん、陰茎がん、末梢神経系がん、腹膜がん、咽頭がん(Pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、毛様細胞性星細胞腫、松果体部腫瘍、松果体芽腫、下垂体がん、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、腎盂腎がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、副鼻腔がん(Sinus cancer)、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、脊椎がん、脊柱がん、脊髄がん、脊椎腫瘍、扁平上皮がん、胃がん、滑膜肉腫、T細胞リンパ腫)、精巣がん、咽頭がん(Throat cancer)、胸腺腫/胸腺がん、甲状腺がん、舌がん、扁桃がん、移行上皮がん、移行上皮がん、移行上皮がん、三種陰性乳がん、卵管がん(Tubal cancer)、管状がん、尿管がん、尿管がん、尿道がん、子宮腺がん、子宮がん、子宮肉腫、腟がん、および外陰がんであってよい。
【0219】
いくつかの実施形態においては、本開示のSREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、1つまたは複数のがんを標的にする免疫系の調節または変更または活用に使用されてよい。このアプローチは、他のそのような生物学的アプローチ、例えば、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、他のモノクローナル抗体、ワクチン、遺伝子療法、および非特異的免疫抑制薬の投与などの、免疫応答修飾療法と共に検討されてもよく、本開示のSREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールと組み合わせられる抗がん治療としても想定される。
【0220】
がん免疫療法は、患者自身の免疫系を誘発し、がんと闘うために設計された多様な治療方針を指す。いくつかの実施形態においては、本開示のSREまたはペイロードを含む、医薬組成物、CA2バイオ回路、CA2バイオ回路構成要素、CA2エフェクターモジュールは、免疫腫瘍学治療として設計される。
【0221】
NK細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、およびキメラ抗原受容体(CAR)または組換えTCR技術を有する遺伝子操作されたT細胞を含む、いくつかのタイプの細胞免疫療法がある。
【0222】
1実施形態においては、本開示のCAR T細胞またはTCR T細胞は、CA2-IL15エフェクターモジュールにより形質転換され、有効性および持続性を改善する「武装された」T細胞であってよい。
【0223】
1実施形態においては、患者は、彼らの免疫細胞により提示された抗原性ペプチドに従って階層化されてよく、パラメーターとして利用され、本開示の組成物に治療的に恩恵を受けうる好適な患者コホートが判断されてよい。
【0224】
いくつかの実施形態においては、本開示の細胞は、特定の個々の被験者との関連で、自己、同種、同系、または異種であってよい。
【0225】
いくつかの実施形態においては、本開示の細胞は、哺乳類細胞、特にヒト細胞であってよい。本開示の細胞は、初代細胞または不死化細胞株であってよい。
【0226】
操作された免疫細胞は、CA2バイオ回路、CA2エフェクターモジュール、SRE、およびIL15ペイロードのポリペプチドをコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含むベクターを、細胞組成物に形質導入することにより完成させることができる。ベクターは、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターであってよい。いくつかの実施形態においては、本開示の免疫細胞は、遺伝子が組み換えられ、刺激を使用して調節可能な本開示の少なくとも1つの免疫療法薬を発現させる。
定義
【0227】
本明細書の様々な箇所において、本開示の組成物の特徴または機能が、グループまたは範囲で開示される。特に、本開示は、そのようなグループおよび範囲のメンバーの各およびあらゆる個々の部分的組合せを含むことが意図されている。以下は、用語定義の非限定的な一覧である。
【0228】
活性:本明細書で使用するとき、「活性」という用語は、物事が起きているまたは行われている状態を指す。本開示の組成物は、活性を有してよく、この活性は、1つまたは複数の生物学的事象を伴ってよい。いくつかの実施形態においては、生物学的事象は、細胞シグナル伝達事象を含んでよい。いくつかの実施形態においては、生物学的事象は、1つまたは複数の対応するタンパク質、受容体、小分子、または本明細書に記載のバイオ回路構成要素のいずれかとのタンパク質相互作用に関連した細胞シグナル伝達事象を含んでよい。
【0229】
養子細胞療法(ACT):「養子細胞療法」または「養子細胞移植」という用語は、本明細書で使用するとき、細胞の患者への移植に関わる細胞療法を指し、細胞は、患者、または別の個人に由来していてよく、患者の体内に戻して移植される前に操作(変更)される。治療用細胞は、エフェクター免疫細胞:CD4+T細胞;CD8+T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞);ならびに切除された腫瘍由来のB細胞および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの、免疫系由来であってよい。最もよく移植される細胞は、ex vivo増殖または操作後の自己抗腫瘍T細胞である。例えば、自己末梢血リンパ球は、遺伝子操作され、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現させることにより特定の腫瘍抗原を認識することができる。
【0230】
剤(薬剤):本明細書で使用するとき、「剤(薬剤)」という用語は、生体、医薬、または化学化合物を指す。非限定的な例には、単一または複合体の有機または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、受容体、および可溶性因子が含まれる。
【0231】
抗原:「抗原」という用語は、本明細書で使用するとき、がん増殖自体により生じる腫瘍抗原など、被験者に導入された、または被験者により産生されたときに免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、または細胞傷害性Tリンパ球およびTヘルパー細胞などの特定の免疫学的に能力がある細胞の活性化のいずれか、またはその両方を伴ってよい。抗原は、生命体、タンパク質/抗原のサブユニット、死滅されたまたは不活性化された細胞全体または溶解物由来とすることができる。本開示の文脈において、「対象の抗原」または「所望の抗原」という用語は、本開示の抗体および/または本明細書に記載のフラグメント、変異体、バリアント、および/またはその変更体に、免疫特異的に結合するまたはそれらと相互作用する、本明細書において提供されるそれらのタンパク質および/または他の生体分子を指す。いくつかの実施形態においては、対象の抗原は、本明細書に記載のポリペプチドもしくはペイロードもしくはタンパク質、またはそのフラグメントもしくは一部のいずれかを含んでよい。
【0232】
~と結び付いた:本明細書で使用するとき、「~と結び付いた」、「接合した」、「結合した」、「付着した」、および「つながれている」という用語は、2つ以上の部分に対して使用されるとき、直接、または連結剤としての機能を果たす1つまたは複数の追加的な部分を介してのいずれかで、複数の部分が互いに物理的に結び付き、または接続され、十分に安定した構造を形成し、それらの複数の部分が、その構造が使用される状態、例えば、生理学的状態下で物理的に結び付いたままであるようにすることを意味する。「結び付き」は、厳密に直接的な共有化学結合によるものである必要はない。「結び付いた」実体が物理的に結び付いたままであるように、十分安定したイオンもしくは水素結合またはハイブリダイゼーションベースの接続性が提案されてもよい。
【0233】
自己:「自己」という用語は、本明細書で使用するとき、後に同一の個人に再導入される、個人由来の任意の物質を指すことが意図されている。
【0234】
がん:「がん」という用語は、本明細書で使用するとき、体内における異常細胞の無制御な増殖により特徴付けられる様々な病気の広範なグループを指す。未制御の細胞分裂および増殖は、結果として、隣接組織に侵入し、最終的に、リンパ系または血流を通って体の遠い部分まで転移する、悪性腫瘍の形成をもたらす。
【0235】
共刺激分子:本明細書で使用するとき、免疫T細胞活性化における意味に従って、T細胞とAPCとの間を結合させ、APCにおける抗原/MHC複合体(pMHC)のT細胞受容体(TCR)認識に起因するT細胞における刺激性シグナルと結合するT細胞における刺激性シグナルを生成する、免疫細胞表面受容体/リガンドのグループを指す。
【0236】
サイトカイン:「サイトカイン」という用語は、本明細書で使用するとき、免疫系の機能に影響を与え、制御することができる多くの細胞型により産生される、多面的機能を有する小さな可溶性因子のファミリーを指す。
【0237】
送達:「送達」という用語は、本明細書で使用するとき、化合物、物質、実体、部分、カーゴ、またはペイロードを送達する行為または方法を指す。「送達剤」は、少なくともある程度、1つまたは複数の物質(本開示の化合物および/または組成物を含むが、これらに限定されない)の、細胞、被験者、または他の生体系細胞へのin vivo送達を促進する任意の薬剤を指す。
【0238】
不安定化した:本明細書で使用するとき、「不安定な(destable)」、「不安定化する」、または「不安定領域」という用語は、同一の領域または分子の開始、参照、野生型または天然の形態より、不安定な領域または分子を意味する。
【0239】
操作された:本明細書で使用するとき、本開示の実施形態は、構造的または化学的のどちらかで、開始点、野生型または天然の分子とは異なる特徴または特性を有するように設計されたとき、「操作され」ている。
【0240】
製剤:本明細書で使用するとき、「製剤」は、少なくとも本開示の化合物および/または組成物、ならびに送達剤を含む。
【0241】
フラグメント:「フラグメント」は、本明細書で使用するとき、分子全体より小さい分子の一部を指す。例えば、タンパク質のフラグメントは、全長タンパク質を消化することにより得られるポリペプチドを含んでよい。いくつかの実施形態においては、抗体のフラグメントは、抗体の一部を含む。
【0242】
機能性:本明細書で使用するとき、「機能性」生体分子は、ある構造を有し、それが特徴付けられる特性および/または活性を示す形態である、生物学的実体である。
【0243】
免疫細胞:「免疫細胞」という用語は、本明細書で使用するとき、2つの主要な系譜である、骨髄系前駆細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球、および顆粒球などの骨髄系細胞を生じさせる)およびリンパ球系前駆細胞(T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球系細胞を生じさせる)を生じさせる、骨髄中の造血幹細胞に起源を持つ免疫系の任意の細胞を指す。例示の免疫系細胞には、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4-CD8-二重陰性T細胞、Tγδ細胞、Tαβ細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、および樹状細胞が含まれる。マクロファージおよび樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」と呼ばれる場合があり、ペプチドと複合したAPCの表面における主要組織適合遺伝子複合体(MHC)受容体が、T細胞の表面におけるTCRと相互作用するとき、T細胞を活性化できる特殊化した細胞である。
【0244】
免疫療法:「免疫療法」という用語は、本明細書で使用するとき、病気への免疫系の反応性の誘発または回復による、病気の治療のタイプを指す。
【0245】
免疫療法薬:「免疫療法薬」という用語は、本明細書で使用するとき、生体、医薬、または化学化合物による、病気への免疫系の反応性の誘発または回復による、病気の治療を指す。
【0246】
in vitro:本明細書で使用するとき、「in vitro」という用語は、生命体(例えば、動物、植物、または微生物)の内部ではなく、例えば、試験管または反応容器において、細胞培養において、ペトリ皿においてなど、人工環境において生じる事象を指す。
【0247】
in vivo:本明細書で使用するとき、「in vivo」という用語は、生命体(例えば、動物、植物、または微生物または細胞またはその組織)の内部で生じる事象を指す。
【0248】
リンカー:本明細書で使用するとき、リンカーは、2つ以上のドメイン、部分、または実体を接続する部分を指す。1実施形態においては、リンカーは、10以上の原子を含んでよい。更なる実施形態においては、リンカーは、原子のグループ、例えば、10~1,000の原子を含んでよく、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、イオウ、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、およびイミンなどだがこれらに限定されない原子またはグループを含みうる。いくつかの実施形態においては、リンカーは、1つまたは複数のヌクレオチドを含む1つまたは複数の核酸を含んでよい。いくつかの実施形態においては、リンカーは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含んでよい。いくつかの実施形態においては、リンカーにより結合される部分には、原子、化学基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸塩基、糖、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質複合体、ペイロード(例えば、治療薬)、またはマーカー(化学、蛍光、放射性、または生物発光マーカーを含むが、これらに限定されない)が含まれてよいが、これらに限定されない。リンカーは、本明細書に記載するようなペイロードを投与するためだけでなく、多量体または抱合体を形成するためなど、任意の有益な目的のために使用できる。リンカーに取り込まれうる化学基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、エーテル、チオエーテル、エステル、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリール、またはヘテロシクリルが含まれるが、これらに限定されず、その各々は、本明細書に記載するように、随意に置換できる。リンカーの例には、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール(例えば、エチレンまたはプロピレングリコール単量体単位、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、またはテトラエチレングリコール)、およびデキストランポリマーが含まれるが、これらに限定されない。他の例には、例えば、還元剤または光分解を使用して切断できる、ジスルフィド結合(-S-S-)またはアゾ結合(-N=N-)などの、リンカー内の切断可能な部分が含まれるが、これらに限定されない。選択的に切断可能な結合の非限定的な例には、例えば、酸または塩基性加水分解により切断されうるエステル結合だけでなく、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、または他の還元剤の使用、および/または光分解により切断されうるアミド結合が含まれる。
【0249】
修飾される:本明細書で使用するとき、「修飾される」という用語は、親または参照分子または実体と比較して、分子または実体の状態または構造が変更されることを指す。分子は、化学的に、構造的に、および機能的に、を含む多くの方法で修飾されてよい。いくつかの実施形態においては、本開示の化合物および/または組成物は、非天然アミノ酸の導入により修飾される。
【0250】
変異:本明細書で使用するとき、「変異」という用語は、変化および/または変更を指す。いくつかの実施形態においては、変異は、タンパク質(ペプチドおよびポリペプチドを含む)および/または核酸(ポリ核酸を含む)に対する変化および/または変更であってよい。いくつかの実施形態においては、変異は、タンパク質および/または核酸配列に対する変化および/または変更を含む。そのような変化および/または変更には、1つまたは複数のアミノ酸(タンパク質および/またはペプチドの場合)および/またはヌクレオチド(核酸およびまたはポリ核酸、例えば、ポリヌクレオチドの場合)の添加、置換およびまたは欠失を含んでよい。いくつかの実施形態においては、変異は、アミノ酸および/またはヌクレオチドの添加および/または置換を含み、そのような添加および/または置換は、1つまたは複数のアミノ酸および/またはヌクレオチド残基を含んでよく、修飾アミノ酸および/またはヌクレオチドを含んでよい。変異、変化、または変更の結果として生じるコンストラクト、分子、または配列は、本明細書において変異体と呼ばれてよい。
【0251】
ネオ抗原:「ネオ抗原」という用語は、本明細書で使用するとき、腫瘍細胞には存在するが、正常細胞には存在せず、胸腺(すなわち、中枢性トレランス)においてそれらの同種抗原特異的T細胞の欠失を誘発しない、腫瘍抗原を指す。これらの腫瘍ネオ抗原は、病原体に類似した、「外来」シグナルを提供し、がん免疫療法に必要な効果的な免疫応答を誘発してよい。ネオ抗原は、特定の腫瘍に限定されてよい。ネオ抗原は、ミスセンス変異(ミスセンスネオ抗原)を有するペプチド/タンパク質、または新規のオープンリーディングフレーム(neoORF)からの、長く、完全に新規のひと続きのアミノ酸を有する新しいペプチドである。neoORFは、アウトオブフレーム挿入または欠失(マイクロサテライト不安定性を生じさせるDNAミスマッチ修復の欠陥による)、遺伝子融合、終止コドンにおけるリードスルー変異、または不適切にスプライスされたRNAの翻訳によりいくつかの腫瘍において生成されうる(例えば、Saeterdal他、Proc Natl Acad Sci USA、2001年、98:13255-13260)。
【0252】
オフターゲット:本明細書で使用するとき、「オフターゲット」は、任意の1つまたは複数の標的、遺伝子、細胞転写物、細胞、および/または組織への任意の意図せぬ影響を指す。
【0253】
作動可能に結合している:本明細書で使用するとき、「作動可能に結合している」という語句は、2つ以上の分子、コンストラクト、転写物、実体、部分などの間の機能的接続を指す。
【0254】
ペイロードまたは対象のペイロード(POI):「ペイロード」および「対象のペイロード(POI)」という用語は、本明細書で使用するとき、互換的に使用される。対象のペイロード(POI)は、機能が変更される任意のタンパク質または化合物を指す。本開示の文脈において、POIは、自然免疫系および適応免疫系の両方を含む、免疫系中の構成要素である。対象のペイロードは、タンパク質、融合タンパク質をコードする融合コンストラクト、または非コード遺伝子、またはそのバリアントおよびフラグメントであってよい。対象のペイロードは、アミノ酸ベースのとき、対象のタンパク質と呼ばれてよい。
【0255】
薬学的に許容できる添加物:「薬学的に許容できる添加物」という用語は、本明細書で使用するとき、医薬組成物中に存在し、被験者において実質的に無毒で非炎症性の性質を有する、活性剤(例えば、本明細書に記載するような)以外の任意の成分を指す。いくつかの実施形態においては、薬学的に許容できる添加物は、活性剤を懸濁かつ/または溶解させることができるビヒクルである。添加物には、例えば、粘着防止剤(antiadherent)、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮補助剤(compression aid)、崩壊剤、染料(顔料)、軟化薬、乳化剤、賦形剤(希釈液)、膜形成剤またはコーティング、香料、芳香剤、流動促進剤(フローエンハンサー)、潤滑剤、防腐剤、印刷用インク、吸着剤、懸濁または分散剤、甘味料、および水和水が含まれてよい。例示の添加物には、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ショ糖、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールが含まれるが、これらに限定されない。
【0256】
薬学的に許容できる塩:本明細書に記載の化合物の薬学的に許容できる塩は、開示された化合物の形態であり、酸または塩基部分は、その塩形態(例えば、遊離塩基群を好適な有機酸で反応させることにより生成されるような)にある。薬学的に許容できる塩の例には、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などが含まれるが、これらに限定されない。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、およびアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むがこれらに限定されない、無毒アンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンが含まれる。薬学的に許容できる塩には、例えば、無毒な無機または有機酸からの、従来の無毒な塩が含まれる。いくつかの実施形態においては、薬学的に許容できる塩は、従来の化学的手法により、塩基性または酸性部分を含む親化合物から調製される。通常、そのような塩は、水中もしくは有機溶剤中、またはその2つの混合物中で、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、化学量論量の適切な塩基または酸で反応させることにより調製でき;通常、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水媒体が好適である。好適な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985年、p.1418、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection, and Use、P.H.StahlおよびC.G.Wermuth(eds.)、Wiley-VCH、2008年、およびBerge他、Journal of Pharmaceutical Science、66、1-19(1977年)に見つけられ、その各々は、参照により、その全体を本明細書に援用する。薬学的に許容できる溶媒和化合物:「薬学的に許容できる溶媒和化合物」という用語は、本明細書で使用するとき、化合物の結晶形を指し、好適な溶剤の分子は、結晶格子中に取り込まれる。例えば、溶媒和化合物は、有機溶剤、水、またはその混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶、または沈殿により調製されてよい。好適な溶剤の例は、エタノール、水(例えば、モノ、ジ、およびトリ水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジルなどがある。水が溶剤であるとき、溶媒和化合物は、「水和物」と呼ばれる。いくつかの実施形態においては、溶媒和化合物に取り込まれる溶剤は、溶媒和化合物が投与される生命体に対して生理学的に容認できるタイプまたはレベルである(例えば、医薬組成物の単位投与量形態において)。
【0257】
安定した:本明細書で使用するとき、「安定した」は、反応混合物からの有益な純度までの分離を乗り切るのに十分なほど頑強で、好ましくは効果的な治療薬へと製剤できる、化合物または実体を指す。
【0258】
安定化された:本明細書で使用するとき、「安定させる」、「安定化された」、「安定化された領域」という用語は、安定させるまたは安定化することを意味する。いくつかの実施形態においては、安定性は、絶対値と比較して測定される。いくつかの実施形態においては、安定性は、2次的な状況もしくは状態、または参照化合物もしくは実体と比較して測定される。
【0259】
標準的CAR:本明細書で使用するとき、「標準的CAR」という用語は、キメラ抗原受容体の標準設計を指す。細胞外scFvフラグメント、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の細胞内ドメインを含むCAR融合タンパク質の構成要素は、単一融合タンパク質として直線的に構成される。
【0260】
被験者:本明細書で使用するとき、「被験者」または「患者」という用語は、例えば、実験的、診断的、予防的、かつ/または治療的な目的のため、本開示に従った組成物が投与されうる任意の生命体を指す。典型的な被験者には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒトなどの哺乳類)および/または植物が含まれる。
【0261】
T細胞:T細胞は、T細胞受容体(TCR)を産生する免疫細胞である。T細胞は、ナイーブ(抗原に露出されない;CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、およびCD45RAの発現の増加;ならびにTCMと比較してCD45ROの発現の減少)、メモリーT細胞(TM)(抗原を経験および長寿命)、およびエフェクター細胞(抗原を経験した、細胞傷害性)とすることができる。TMは、セントラルメモリーT細胞(TCM;CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO、およびCD95の発現の増加;ならびにナイーブT細胞と比較してCD54RAの発現の減少)およびエフェクターメモリーT細胞(TEM;CD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現の減少;およびナイーブT細胞またはTCMと比較してCD127の発現の増加)のサブセットに更に分類できる。エフェクターT細胞(TE)は、CD62L、CCR7、CD28の発現が減少し、TCMと比較してグランザイムおよびパーフォリンに対して陽性である、抗原を経験したCD8+細胞傷害性Tリンパ球を指す。他の例示のT細胞には、Tr1、Th3、CD8+CD28-、およびQa-1制限T細胞だけでなく、CD4+CD25+(Foxp3+)制御性T細胞およびTreg17細胞などの、制御性T細胞が含まれる。
【0262】
T細胞受容体:T細胞受容体(TCR)は、可変抗原結合ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域、および短い細胞質尾部を有する免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーを指し、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合できる。TCRは、細胞の表面上または可溶性形態で見つけることができ、通常、αおよびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても知られる)、またはγおよびδ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとしても知られる)を有するヘテロ二量体を含む。TCR鎖(例えば、α-鎖、β-鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリンドメイン、N末端における可変ドメイン(例えば、α-鎖可変ドメインまたはVα、β-鎖可変ドメインまたはVβ)、および細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、α-鎖定常ドメインまたはCαおよびβ-鎖定常ドメインまたはCβ)を含む。免疫グロブリンに類似して、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)により分離される相補性決定領域(CDR)を含む。TCRは、通常、CD3複合体と結び付き、TCR複合体を形成する。本明細書で使用するとき、「TCR複合体」という用語は、CD3のTCRとの結び付きにより形成される複合体を指す。例えば、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモ二量体、TCRα鎖、およびTCRβ鎖から成ることができる。代替的に、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモ二量体、TCRγ鎖、およびTCRδ鎖から成ることができる。「TCR複合体の構成要素」は、本明細書で使用するとき、TCR鎖(すなわち、TCRα、TCRβ、TCRγ、またはTCRδ)、CD3鎖(すなわち、CD3γ、CD3δ、CD3ε、またはCD3ζ)、または2つ以上のTCR鎖またはCD3鎖により形成される複合体(例えば、TCRαおよびTCRβの複合体、TCRγおよびTCRδの複合体、CD3εおよびCD3δの複合体、CD3γおよびCD3εの複合体、またはTCRα、TCRβ、CD3γ、CD3δ、および2つのCD3ε鎖のサブTCR複合体を指す。
【0263】
治療効果のある量:本明細書で使用するとき、「治療効果のある量」という用語は、感染、病気、不調、および/または疾患を患う、またはそれらの影響を受けやすい被験者に投与されたとき、その感染、病気、不調、および/または疾患を治療する、それらの症状を改善する、診断する、予防する、かつ/またはそれらの開始を遅らせるのに十分な、送達される薬剤(例えば、核酸、薬物、治療薬、診断薬、予防薬など)の量を意味する。いくつかの実施形態においては、治療効果のある量は、単回用量で提供される。いくつかの実施形態においては、治療効果のある量は、複数回の用量を含む投与量レジメンで投与される。当業者であれば、いくつかの実施形態において、単位投与量形態は、そのような投与量レジメンの一環として投与されときに効果的な量を含む場合、治療効果のある量の特定の薬剤または実体を含むと見なされてよいことを理解するであろう。
【0264】
治療または治療すること:本明細書で使用するとき、「治療」または「治療すること」という用語は、好ましくは有益なまたは所望の臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。そのような有益なまたは所望の臨床結果には、以下の1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない:がん性細胞その他の異常細胞の増殖を低減させる(またはがん性細胞その他の異常細胞を破壊する)、がんの中に見つかるがん性細胞の転移を減少させる、腫瘍のサイズを縮小させる、病気から生じる症状を低減させる、病気を患う者の生活の質を増加させる、病気を治療するのに必要な他の薬物療法の用量を減少させる、病気の進行を遅らせる、かつ/または個々人の生存期間を延長させる。
【0265】
調節する:本明細書で使用するとき、「調節する」という用語は、刺激に反応して、または特定の結果に向けて、1つのことを調製する、バランスを取る、または適応させることを意味する。1つの非限定的な例において、本開示のSREおよび/またはDRDは、特定の刺激および/または環境に反応して、それらが付加された、付着した、または結び付いた組成物の機能または構造を調製する、バランスを取る、または適応させる。
等価物および範囲
【0266】
当業者であれば、ただ日常の実験によるだけで、本明細書に記載の本開示に従った特定の実施形態の多くの等価物を認識するであろうし、確認できるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図しているのではなく、添付された特許請求の範囲において説明されるものである。
【0267】
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、反対に示される、または文脈から明らかでない限り、1つまたは2つ以上を意味してよい。グループの1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む、特許請求の範囲または説明は、反対に示される、または文脈から明らかでない限り、グループメンバーの1つ、2つ以上、または全てが、所与の製品または工程に存在する、用いられる、または関連する場合に成り立っていると見なされる。本開示は、グループの1つのメンバーだけが、所与の製品または工程に存在する、用いられる、または関連する実施形態を含む。本開示は、2つ以上、またはグループメンバー全体が、所与の製品または工程に存在する、用いられる、または関連する実施形態を含む。
【0268】
「~を含む」という用語はオープンであることを意図しており、追加的な要素または段階の含有を許可するが、それを要求するものではないことにも留意されたい。「~を含む」という用語が本明細書において使用されるとき、「~から成る」という用語も包含かつ開示される。
【0269】
範囲が与えられるときは、端点が含まれる。さらに、別段の指示がない、または文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表されている値は、文脈上明らかにそうでない場合は除き、範囲の下限の単位の10分の1まで、本開示の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値または部分的な範囲を想定することができることが理解される。
【0270】
加えて、先行技術の範囲に入る、本開示の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1つまたは複数から明確に除外されうることが理解される。そのような実施形態は当業者に既知であると見なされるため、それらは、本明細書において除外が明確に説明されなくても、除外されうる。本開示の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗菌物質、治療または活性成分;任意の産生方法;任意の使用方法など)は、先行技術の存在に関係するかどうかにかかわりなく、任意の理由で、任意の1つまたは複数の請求項から除外できる。
【0271】
使用されている言葉は、制限ではなく説明の言葉であること、かつそのより広い態様において、本開示の真の範囲および主旨から逸脱することなく、添付された特許請求の範囲の範囲内で変更が成されうることが理解される。
【0272】
本開示は、いくつかの記載された実施形態に関して、かなり詳しく、いくらか特別に説明されているが、任意のそのような事項もしくは実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきであることを意図してはおらず、先行技術を考慮して、そのような特許請求の範囲の最も広い解釈を提供できるように、従って、本開示の意図された範囲を効果的に包含するように、添付された特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。本開示は、以下の非限定的な例により更に説明される。
【実施例】
【0273】
図1は、T細胞におけるACZにより制御されたmbIL15の発現のin vitro特性化および/または検証の代表的な手順を示す。
図1に示すように、例えば、実施例1に記載の手順に従って、T細胞には、mbIL15コンストラクトが形質導入されてよい。形質導入後、例えば、実施例2に記載の手順に従って、T細胞は、対照条件またはACZで処理され、in vitroでIL15発現および/または抗原非依存性細胞増殖についてアッセイされてよい。
【0274】
図2は、T細胞におけるACZにより制御されたmbIL15の発現のin vivo特性化および/または検証の代表的な手順を示す。
図2に示すように、例えば、実施例1に記載の手順に従って、T細胞には、mbIL15コンストラクトが形質導入されてよい。形質導入後、T細胞は、例えば、実施例3に記載の手順に従って、マウス被験者(例えば、NSGマウス)に注入され、ビヒクルまたはACZで処理されたマウスの標本は、IL15発現および/または抗原非依存性細胞増殖についてアッセイされてよい。
実施例1.アセタゾラミド(ACZ)により制御されたmbIL15コンストラクトによるT細胞形質導入
【0275】
本実施例はACZにより制御されたmbIL15コンストラクトを調製するのに使用されうる方法、およびACZにより制御されたmbIL15コンストラクトによるT細胞の形質導入に使用されうる方法を示す。
IL15コンストラクトアセンブリー
【0276】
OT-IL15-292、OT-IL15-293、OT-IL15-294、およびOT-IL15-295は、それぞれ、標準的な分子生物学的手法を使用して、pELNSベクター(第3世代自己不活型レンチウイルス発現ベクター)において構成された。コドン最適化IL15、GSリンカー、B7-1ヒンジ、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部をコードする遺伝子フラグメント(Gblocks)は、Integrated DNA Technologies,Inc.(IDT、Coralville、Iowa)から購入された。遺伝子フラグメントは、pELNSベクターに挿入され、Gibsonアセンブリー(NEBuilder Hifi)を使用してEF1aプロモーターの制御下に置かれた。集められたプラスミドは、ウイルス産生を続ける前に確認された増幅および配列に関して、大腸菌(NEB stable)に形質転換された。
【0277】
表4は、本明細書で開示された構成的IL15コンストラクト(OT-IL15-292およびOT-IL15-294)およびACZにより制御されたIL15コンストラクト(OT-IL15-293およびOT-IL15-295)の構成要素についての核酸およびアミノ酸配列を提示する。表4において太字で下線が引かれたアミノ酸は、コンストラクトOT-IL15-292/OT-IL15-293とOT-IL15-294/OT-IL15-295との間のB7-1細胞質尾部における差を示す。コンストラクトOT-IL15-293およびOT-IL15-295は、表4においてCA2(M1del、L156H)に分類された不安定化ドメインを含む。
【0278】
【0279】
表5は、本明細書で開示された構成的IL15(IL15-292およびIL15-294)およびACZにより制御されたIL15(IL15-293およびIL15-295コンストラクトの核酸およびアミノ酸配列を提示する。
【0280】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
レンチウイルス産生
【0281】
HEK293T細胞は、コラーゲンがコーティングされた組織培養プレート上に、70%コンフルエントになるまで播種された。細胞は、Opti-MEM培地において、リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬を使用して、構成的(IL15-292またはIL15-294)または制御(IL15-293またはIL15-295)IL15コンストラクト、およびパッケージングプラスミド(pRSV.REV、pMDLg/p.RRE、およびpMD2.G)を保有するpELNS移植ベクターによりトランスフェクトされた。培地は、トランスフェクション後6~8時間後に、無血清培地に取り換えられた。ウイルスを含む上清は、トランスフェクション後24時間後に採取され、新鮮培地が追加され、上清は、トランスフェクション後48時間後に再び採取された。ウイルス上清は、フィルタリングされてデブリが除去され、20%ショ糖密度勾配で超遠心分離法により濃縮された。ウイルスは、再懸濁され、分割され、-80Cのフリーザーで保存された。
【0282】
pELNS移植ベクターOT-IL15-292、OT-IL15-293、OT-IL15-294、およびOT-IL15-295のヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、および配列番号:37である。
【0283】
本明細書で使用するとき、細胞に形質導入するのに使用されるレンチウイルスは、それらのコンストラクト名(例えば、IL15-292、IL15-293、IL15-294、IL15-295、CD19-IL15-057、CD19-IL15-058、またはCD19-063)またはそれらの移植ベクター名(例えば、OT-IL15-292、OT-IL15-293、OT-IL15-294、OT-IL15-295、OT-CD19-IL15-057、OT-CD19-IL15-058、またはOT-CD19-063)で呼ばれる。
T細胞ストック
【0284】
T細胞は、ヒト健常ドナーから収集されたLeukopakから分離された。フィコール密度勾配によるPBMC分離後、T細胞は、製造者のプロトコールに従って、陰性選択キット(StemCell Technologies)を使用して分離された。T細胞は、細胞凍結培地(Bambanker)で再懸濁され、分割され、液体窒素中に保存された。
T細胞のレンチウイルス形質導入
【0285】
T細胞は解凍され、細胞は洗浄され、カウントされた。T細胞は、ビーズ対T細胞比が3:1で、CD3/CD28ビーズ(インビトロゲンcat#11141D)と混合された。5×105細胞/ウェルが、500μLの培地中の24ウェルプレートに追加された。細胞は、24時間活性化された。翌日、レンチウイルスは、解凍され、異なる容積で各ウェルに追加された。24時間後、500μLの新鮮培地がウェルに追加され、細胞は、2~3日おきに等しい容積の新鮮培地を追加することにより、増殖され、0.5-1×106/mLの細胞密度が維持された。細胞は、フローサイトメトリーにより分析され、5または6日目に発現が確認された。細胞は、9~10日間増殖された。
実施例2.ACZにより制御されたmbIL15発現およびACZにより制御されたT細胞増殖のin vitro分析
【0286】
本実施例は、(i)T細胞におけるACZにより制御されたmbIL15発現、および(ii)ACZにより制御されたmbIL15を発現させるT細胞のACZにより制御された増殖のin vitro検証を示す。
【0287】
構成的mbIL15またはACZにより制御されたmbIL15を発現させることができるヒト一次T細胞は、上の実施例1に記載の方法に従って調製された。
図1参照。
【0288】
T細胞の形質導入および増殖後、CD3/CD28ビーズは、磁石を使用して除去され、細胞は、2回洗浄され、新鮮培地で再懸濁され、カウントされた。細胞は、2mL中1×10
6で12ウェルプレート内に置かれた。1つのウェルの非形質導入細胞が、対照として2ng/mLのIL15の存在下において培養された。制御コンストラクトを発現させるT細胞は、アセタゾラミド(ACZ、30、10、3、1、0.3μM)の非存在下または存在下において培養された。細胞数は、3~4日おきにフローサイトメトリーによりモニタリングされ、細胞は、10~12日間培養された。各時点において、100μLの細胞が、ウェルから収集され、フローサイトメトリーにより分析された。細胞は、必要に応じて分割された。細胞培養は、一部を取り、新しいプレートに培地を追加することにより、12ウェルプレート内で維持された。各ウェルの容積は、分割の前後に記録され、細胞数アセスメントにおける最終容積が計算された。IL15またはACZは、各分割中に追加された新鮮培地の最終濃度において補充された。
図1参照。
【0289】
T細胞の数は、フローサイトメトリーにより判定された。空ベクター(EV)で形質導入された細胞の数は、IL15の非存在下において3~5日間でバックグラウンドレベルまで減少し、細胞は、2ng/mLの外因性IL15の存在下において、11倍に増殖した(
図3A)。構成的IL15-292およびIL15-294を発現させるT細胞は、10日でそれぞれ、18~21倍に増殖した(
図3A)。IL15-293を発現させるT細胞において、最大の増殖は、30、10、3μMで、9.5~11倍であった(
図3B)。検査された最低濃度(0.3μM)において、細胞は、3.3倍増殖した。これらの細胞は、薬物治療をしないEV細胞(0.8倍)と比較して、より長く(0.8倍)生き延びた。IL15-295を発現させるT細胞において、最大の増殖は、30、10、3μMで、8.2~10倍であり、細胞は、検査された最低濃度(0.3μM)で4.9倍増殖した(
図3C)。薬物治療なしでは、これらの細胞は、EVと比較して、より長く(0.9倍)生き延びた。
【0290】
IL15発現への異なる濃度のACZの影響が検査された。T細胞は、100μMで開始し、24時間ACZで処理され、9ポイントの間、3倍に希釈された。%IL15+T細胞(
図4A)およびIL15平均蛍光強度(MFI)(
図4B)分析は、両方、OT-IL15-293およびOT-IL15-295について、類似した用量曲線を示した。ACZの最高および最低濃度の間で、発現が4~5倍増加した(%IL15+T細胞およびIL15 MFIの両方)。EC
50値は、OT-IL15-293およびOT-IL15-295について、それぞれ、%IL15+T細胞に基づいて0.29μMおよび0.22μMのEC50、IL15のMFIに基づいて0.65μMおよび0.44μMであった。
実施例3.ACZにより制御されたmbIL15発現およびACZにより制御されたT細胞増殖のin vivo分析
【0291】
本実施例は、(i)T細胞におけるACZにより制御されたmbIL15発現、および(ii)ACZにより制御されたmbIL15を発現させるT細胞のACZにより制御された増殖のin vivo検証を示す。
NK細胞増殖
【0292】
Leukopakから分離されたPBMCの一部は、製造者のプロトコールに従って、陰性選択キット(StemCell Technologies)を使用してNK細胞を増やすために使用された。細胞は、4-1BB-Lおよび膜結合IL21を発現させるフィーダーK562細胞、ならびに組換えIL2(100U/mL)が1:1の比率で、7~14日間培養された。増殖は、細胞カウントによりモニタリングされ、純度は、フローサイトメトリーにより評価された。
in vivo分析
【0293】
構成的mbIL15またはACZにより制御されたmbIL15を発現させることができるヒト一次T細胞は、上の実施例1に記載の方法に従って調製された。T細胞の形質導入および増殖後、CD3/CD28ビーズは、磁石を使用して除去され、細胞は、2回洗浄され、新鮮培地で再懸濁され、カウントされた。T細胞は、増殖されたNK細胞と混合され、各動物は、5×10
6のT細胞および2×10
6の増殖されたNK細胞を受け取った。細胞は、静脈内注射によりNSGマウスに注入された。制御コンストラクトを発現させるT細胞が注入された動物は、PO注射により毎日200mg/kgのACZまたはビヒクルを投与された。3~4日おきに、50μLの血液が、マウスおよびヒトCD45、CD3、およびCD56に対する抗体を使用して、T細胞およびNK細胞の存在について、フローサイトメトリーにより分析された。25日目のIL15発現が、IL15Ra-Fcおよび蛍光色素が接合した抗ヒトIgG抗体を使用して分析された。
図2参照。
【0294】
構成的および制御IL15コンストラクトを発現させるT細胞の増殖、およびそれらのバイスタンダーNK細胞への影響が、25日間、NSGマウスにおいてin vivoで評価された(
図5A~
図5B)。空ベクター(EV)が形質導入された細胞の数は、経時的にゆっくり減少した。構成的IL15-292およびIL15-294を発現させるT細胞は、3日目の頻度と比較して13倍まで増殖した。制御コンストラクトを発現させるT細胞が注入されたマウスにおいて、細胞の頻度は、ビヒクル治療の存在下において減少した。毎日ACZで処理されたグループにおいて、細胞は、3日目の頻度と比較して7~8倍まで増殖した。バイスタンダーNK細胞は、構成的IL15コンストラクトを発現させるT細胞の存在下において、または毎日ACZで処理された制御IL15コンストラクトを発現させるT細胞の存在下において、生き延び、増殖した。
【0295】
25日目のin vivoでのT細胞におけるIL15発現が、フローサイトメトリーにより分析された(
図5C)。構成的コンストラクトIL15-292およびIL15-294が形質導入されたT細胞は、IL15を高レベルで(82%および61%)発現した。IL15発現は、EVグループだけでなく、ビヒクル処理されたIL15-293およびIL15-295において、<1.5%であった。IL15発現レベルは、ACZで処理されたグループにおける、IL15-293およびIL15-295が形質導入されたT細胞において、11%および9%であった。
実施例4:構成的および制御mbIL15を発現させるCART細胞における有効性および増殖のin vivo分析
【0296】
本実施例は、ACZ投与と共役する制御mbIL15が、CD19-陽性腫瘍の存在下において、CD19 CART細胞の抗腫瘍有効性および増殖を強化させることを示す。
タンデムCD19 CARおよびmbIL15コンストラクトの生成およびレンチウイルスストック
【0297】
CD19 CARおよびmbIL15を同時発現させる、レンチウイルスベクターコンストラクトおよびレンチウイルスストックは、基本的に、実施例1に記載されるように生成された。CD19 CAR配列(AA配列:配列番号:38;NA配列:配列番号:39)は、CD8aリーダー配列(Uniprot ID P01732中のaa1-21)、FMC63(抗CD19)単鎖可変フラグメント(scFv)、CD8由来のヒンジおよび膜貫通ドメイン(Uniprot ID P01732中のaa138-206)、4-1BB由来の共刺激ドメイン(Uniprot ID Q07011中のaa214-255)、およびCD3zetaシグナル伝達ドメイン(Uniprot IDP20963中のaa52-164)から構成された。
【0298】
バイシストロニック導入遺伝子発現カセット(説明されているように、5’から3’)は、制御または構成的mbIL15、P2A配列(AA配列:配列番号:40;NA配列:配列番号:41)、およびP2Aの下流の抗CD19 CARを含んだ(
図6参照)。制御コンストラクト(CD19-IL15-058;AA配列:配列番号:42;NA配列:配列番号:43)については、CA2(L156H)DRDに作動可能に結合しているmbIL15を含むIL15-293コンストラクトが使用された(AA配列:配列番号:24、NA配列:配列番号:25)。構成的コンストラクト(CD19-IL15-057;AA配列:配列番号:45;NA配列:配列番号:46)については、CA2野生型配列に作動可能に結合しているmbIL15を含むコンストラクトが使用された(
図6参照)。レンチウイルスOT-CD19-IL15-058のヌクレオチド配列は、配列番号:44であり、レンチウイルスOT-CD19-IL15-057のヌクレオチド配列は、配列番号:45である。
末梢血T細胞におけるmbIL15-CARコンストラクトの発現
【0299】
末梢血T細胞は、10日目までの間、活性化され、形質導入され、増殖され、その後、基本的に実施例1に記載するように細胞凍結培地で凍結され、in vivoヒトNalm6-Luc異種移植腫瘍モデルで使用された。mbIL15およびCAR発現は、それぞれ、抗IL15抗体、およびヒトIgG1 Fcドメイン(CD19-Fc)と融合したヒトCD19の細胞外ドメインを含む組換えタンパク質を使用してフローサイトメトリーにより分析された。CD19 CARのみが形質導入された細胞または非形質導入細胞が、対照として使用された。対照CD19 CARコンストラクトが形質導入された細胞の72%が、CAR+mbIL15-であった(
図7A)。構成的mbIL15およびCAR(CD19-IL15-057)を発現させるレンチウイルスベクターが形質導入された細胞については、細胞の26%が、CAR+であり、13%が、CAR+mbIL15+に対して二重陽性であった。制御mbIL15およびCAR(CD19-IL15-058)を発現させるベクターが形質導入された細胞については、25%が、ACZの非存在下においてCAR+mbIL15-であり、9.7%が、10μMのACZへの24時間の曝露後に、CAR+mbIL15+二重陽性であった。これらの結果により、構成的または制御mbIL15と組み合わせてCD19CARを発現させるレンチウイルスベクターによるT細胞の形質導入後に、CARおよびmbIL15の両方の発現が確認された。
Nalm6-Luc異種移植モデルにおけるmbIL15-CART細胞の評価
【0300】
CART細胞の抗腫瘍活性へのmbIL15の影響を評価するため、構成的または制御mbIL15を有してまたは有さずにCD19 CARを発現させるレンチウイルスベクターが形質導入されたT細胞が、CD19+Nalm6-Luc腫瘍の移植後、マウスに注入された。ルシフェラーゼを発現させるCD19+Nalm6細胞(Nalm6-Luc)は、静脈内経路(1×106/マウス)を通って、NSGマウスに注射され、腫瘍増殖は、D-ルシフェリンの腹腔内注射後、生物発光イメージング測定(光子/秒(p/s)の総流束単位)により週に1回または2回測定された。6日目、平均腫瘍サイズがおおよそ106総p/sに達したとき、動物は、新しいケージへと無作為抽出された(各グループN=8)。CD19 CART細胞(構成的または制御mbIL15を有してまたは有さずに操作された)は、腫瘍を持ったマウスに注入するため、解凍された。T細胞におけるCAR発現は、解凍後、および抗CD3/CD28ビーズによる24時間の再刺激後、判定された。異なるグループにわたるCART細胞は、%CAR+細胞に基づいて正規化された。各マウスは、0.3×106のCAR+細胞を受け取り、注入製品中のT細胞の総数は、EVが形質導入されたT細胞の追加により、7×106のT細胞になるように調整された。
【0301】
第1グループは、陰性対照としてEVで操作されたT細胞を受け取り、第2グループは、mbIL15(CD19-063;AA配列:配列番号:48;NA配列:配列番号:49;ベクター配列:配列番号:50)を有さない対照CART細胞を受け取り、第3グループは、構成的mbIL5(CD19-IL15-057)を発現させるCART細胞を受け取った。グループ4および5は、制御mbIL15(CD19-IL15-058)を同時発現したCART細胞を受け取り、1つのグループは、200mg/kgのACZを毎日PO投与される一方、他のグループは、研究の終了まで(~50日)ビヒクルで毎日処理された。T細胞増殖をモニタリングするため、各グループに動物が追加された(血液についてn=4、および骨髄についてn=4)。血液(50μL)は、7、14、および21日目に顎下の静脈から取り出され、骨髄(大腿骨から)は、T細胞注入後、14日目に採取された。赤血球は、溶解され、ヒトCD45、CD3およびマウスCD45に対する蛍光色素結合抗体により着色され、細胞は、フローサイトメトリーにより分析された。腫瘍増殖は、腫瘍移植後、55日まで測定され、評価項目には、後肢まひおよび体重の減少などの、動物の健康への影響だけでなく、1010の総流束単位を含んだ。
【0302】
各グループの個々のマウスにおける腫瘍増殖は、
図7Bに示し、グループ平均は、
図7Cに示す。EVが形質導入されたT細胞で処理されたグループ2の全ての動物で、急速な腫瘍増殖が観察され、完全寛解していない対照CART細胞による治療では、腫瘍増殖は、25日まで遅延した。制御mbIL15を発現させるCART細胞およびビヒクル治療で処理されたマウスにおける腫瘍増殖率は、対照CARTグループに類似していた。対照的に、腫瘍は、構成的mbIL15を発現させるCART細胞、および制御mbIL15を発現させるCART細胞に加えてACZで処理されたグループにおいて、それぞれ、8匹の動物のうち5匹および6匹で、バックグラウンドレベルに退行した。T細胞の数は、対照T細胞、対照CART、およびビヒクル治療により制御mbIL15を発現させるCARTで処理されたマウスの血液において経時的に減少し(21日目に<0.2%、
図7D)、骨髄において少なかった(14日目に<1%、
図7E)。対照的に、構成的mbIL15またはACZにより制御mbIL15を発現させるCARTで処理されたマウスにおいて、T細胞の数は、血液において経時的に増加し(21日目に>1%、
図7D)、骨髄において多かった(構成的については20%、制御プラスACZについては10%、
図7E)。これらの結果により、ACZ治療と共役する制御mbIL15が、準最適CART細胞用量の注入後、CARのみを発現させるT細胞と比較して、CART抗腫瘍反応を高め、腫瘍クリアランス後にCARにより操作されたT細胞の増殖を促進したことが証明される。
実施例5:患者腫瘍標本からのTILの分離
【0303】
頭部および頸部の腫瘍標本が、Cooperative Human Tissue Networkから入手された。腫瘍標本は、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)バッファー中で1~3mmのフラグメントに切断され、フラグメントは、6000IU/mLのIL2を含む2mLの培地(1X ペニシリン/ストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1X HEPES、50μMの2-メルカプトエタノール(インビトロゲン)、および10%熱失活ヒトAB血清(Valley Bio)で補充されたRPMI-1640)中に1フラグメント/ウェルで24ウェルプレート内に置かれた。培地の半分は、開始から5日目にIL2を含む新鮮培地と交換され、細胞は、3週間、コンフルエントになるように、複数のウェルに分割された。この培養工程は、プレ急速増殖プロトコル(REP)と呼ばれる。他の腫瘍タイプのTILは、基本的に同一の工程を使用して分離されている。
【0304】
プレREP培養前後のT細胞の頻度の変化を判定するため、腫瘍フラグメントの一部は、プレREP培養に先立って、コラゲナーゼおよびデオキシリボヌクレアーゼIで消化され、単一細胞懸濁液が生成され、プレREP培養後に得られる細胞と比較された。T細胞の頻度は、蛍光色素が接合した抗CD45および抗CD3抗体を使用して、フローサイトメトリーにより分析された。
図8Aに示すように、プレ培養腫瘍細胞懸濁液中の細胞のほぼ半数(44.29±21.67%)がCD45+であり、これらの内、~39.85±23.69%のみが、CD3+T細胞であった。IL2の存在下における培養(プレREP)の3週間後、細胞の過半数が、造血細胞の増加を示すCD45+(90.35±7.28%)、およびT細胞の増加を示すCD3+(80.64±15.19%)であった。
【0305】
乳房、肺、腎臓、子宮内膜、肝臓、膵臓、および卵巣の黒色腫瘍および悪性腫瘍を含む、多数の他のヒト腫瘍タイプのTILが、同一の方法で分離されている。
実施例6.TILにおけるACZによる制御mbIL15発現のin vitro分析
BaEV偽型レンチウイルス産生
【0306】
HEK293T細胞は、コラーゲンがコーティングされた組織培養プレート上に、70%コンフルエントになるまで播種された。細胞は、Opti-MEM培地において、リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬を使用して、構成的(IL15-292)または制御(IL15-293)IL15コンストラクト、およびパッケージングプラスミド(pRSV.REV、pMDLg/pRRE、およびOT-BaEVg-002(配列番号:51))を保有するpELNS移植ベクターによりトランスフェクトされた。培地は、トランスフェクション後6~8時間後に、無血清培地に取り換えられた。ウイルスを含む上清は、トランスフェクション後24時間後に採取され、新鮮培地が追加され、上清は、トランスフェクション後48時間後に再び採取された。ウイルス上清は、フィルタリングされてデブリが除去され、低速超遠心分離法により濃縮された。ウイルスは、再懸濁され、分割され、-80Cのフリーザーで保存された。
レンチウイルスによるTILの形質導入
【0307】
96ウェルの非コーティング組織培養プレートが、37℃で2時間または4℃で一晩、PBS中の35μg/mLのRetroNectin(Takara Bio)で培養された。RetroNectinは、除去され、プレートは、PBSで洗浄された。上述のように調製されたBaEV偽型レンチウイルス、およびTIL細胞培地は、50μL/ウェルの総容積で、各ウェルに追加され、プレートは、32℃で2時間、低速で遠心分離された。実施例5に記載したように調製された頭部および頸部の腫瘍標本から生成されたTILは、3週間後、プレREP培養において操作された。TILは、ビーズ対T細胞比が3:1で、抗CD3/CD28ビーズにより、24ウェルプレートで24時間活性化された。活性化されたTILは、ウイルスがコーティングされたプレートに置かれ、800gで2時間遠心分離され、37℃で4日間、培地で培養された。1つのウェルの細胞は、ウイルスを追加せずに同様に処理され、陰性対照(「非形質導入」)として使用された。制御mbIL15コンストラクトが形質導入された細胞は、10μMのACZまたはDMSOのいずれかで、24時間処理された。
ACZに反応したTILにおける制御mbIL15の発現
【0308】
mbIL15発現は、2つの染色試薬:蛍光色素結合抗IL15抗体、およびヒトIgG1 Fcドメイン(IL15Ra-Fc)と融合したIL15Raの細胞外ドメインを含む組換えタンパク質を使用して、フローサイトメトリーにより判定された。mbIL15+細胞の頻度は、抗IL15およびIL15Ra-Fc(IL15+IL15Ra-Fc+二重陽性集団として特定される)との共染色に基づいて判定された。
図8Bに示すように、45.5%のTILは、構成的mbIL15(IL15-292)を発現した。DMSOの存在下において、制御mbIL15(IL15-293)発現は、低MFIで17.1%であった。対照的に、ACZの存在下において、制御mbIL15発現は、高MFIで42.5%まで増加した。これらのデータにより、ACZは、形質導入されたTILにおいて、CA2 DRDにより制御されたmbIL15を誘発することが示される。
実施例7:構成的および制御mbIL15を発現させるTILのin vivo分析
【0309】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の抗腫瘍活性への制御mbIL15の影響を評価するため、ヒトPDX(hPDX)モデルが使用される。TILは、患者腫瘍標本、例えば、実施例6に記載したように、頭部および頸部の腫瘍標本から分離される。TILには、実施例6に記載したように、IL15-292コンストラクトもしくはIL15-293コンストラクトのいずれかを含むBaEV偽型レンチウイルスベクター、またはBaEV偽型レンチウイルス空ベクター(EV)が形質導入され、続いて、随意に凍結される。腫瘍標本からのTILを適合させた患者由来の異種移植(hPDX)は、NSGマウスの右脇腹への皮下埋め込みにより成される。腫瘍増殖は、キャリパーを使用して、週に1回または2回測定される。研究開始時に、腫瘍が測定され、マウスは、無作為抽出され、全てのグループにわたって平均腫瘍体積が同様であることに基づいて、新しいケージにコホートで置かれる(各グループN=8)。操作されて適合されたTILは、必要に応じて解凍され、PMAで刺激され、続いて、腫瘍を持ったマウスの中に注入される。各マウスは、等しい数の操作されたTILを受け取る。
【0310】
グループ1は、ベンチマーク対照として、組換えヒトIL2(hIL2)が補充された、非形質導入TILを受け取り、グループ2は、構成的mbIL15(IL15-292)が形質導入されたTILを受け取る。グループ3および4は、制御mbIL15(IL15-293)が形質導入されたTILを受け取る。グループ3は、200mg/kgのACZを毎日PO投与され、グループ4は、研究の終了までビヒクルで毎日処理される。TIL持続性をモニタリングするため、各グループに動物が追加される(血液についてn=4)。血液(50μL)は、プレ判定され日に、顎下の静脈から取り出された。赤血球は、溶解され、ヒトCD45、CD3およびマウスCD45に対する蛍光色素結合抗体で着色され、細胞は、フローサイトメトリーにより分析される。腫瘍増殖は、おおよそ90日まで測定され、評価項目には、腫瘍の壊死および体重の減少などの、動物の健康への影響だけでなく、最大キャリパー測定も含まれる。
【0311】
各グループの個々のマウスにおける腫瘍増殖が続けられ、グループ平均が収集される。非形質導入TILに加えてhIL2で処理されたグループ1の動物において、腫瘍増殖の遅延が予想される。TILによりほとんどmbIL15が発現されないため、グループ4では腫瘍増殖阻害が観察されない。対照的に、グループ2および3においては、両グループとも、それらの持続性および相関性がある抗腫瘍活性を高める、mbIL15を発現させるTILを有しているため、腫瘍は、実質的に、場合によってはベースラインまで、退行するであろう。
実施例8:臍帯血からのNK細胞の分離
【0312】
凍結保存された単核細胞分画臍帯血ユニットが、BioBridge Globalから入手された。臍帯血は、リン酸緩衝食塩水(PBS)と1:1で希釈され、Ficoll-Paque+(Sigma Cat.No.GE17-1440-02)のクッション上で遠心分離された。単核細胞(MNC)を含む軟膜が収集され、MNCは、洗浄され、カウントされた。NK細胞は、EasySep Human NK Cell Isolation Kit(Stemcell Technologies Cat.No.17955)を使用して、MNCから分離された。NK細胞は、カウントされ、CD56、CD16、CD3、および生存率染色を使用してFACSにより純度をチェックされた。
実施例9:NK細胞におけるACZによる制御mbIL15発現のin vitro分析
NK細胞増殖
【0313】
実施例8に記載したようなNK細胞分離の1日前、支持細胞(4-1BBLおよびmbIL-21を発現させるK562細胞)が、完全NK細胞培地(GlutamaxによるRPMI(ThermoFisher)、10%熱失活ウシ胎仔血清(Gibco)、1X ペニシリン/ストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1X HEPES、50μMの2-メルカプトエタノール)で解凍された。NK細胞分離の当日、10×106の支持細胞が、マイトマイシンCで処理されてそれらの増殖が阻害され、洗浄されて余剰の薬物が除去された。NK細胞は、200U/mLの組換えヒトIL2(rhIL2;PeproTech)によるNK細胞培地において、1:2のエフェクター対標的比で支持細胞に追加された。NK細胞培養液は、2日おきに細胞培養液にNK細胞培地およびrhIL2を補充することにより増加され、NK細胞増殖についてFACSにより分析された。
レンチウイルスによるNK細胞の形質導入
【0314】
96ウェルの非コーティング組織培養プレートは、37℃で2時間または4℃で一晩、PBS中の35μg/mLのRetroNectin(Takara Bio)で培養された。RetroNectinは、除去され、プレートは、PBSで洗浄された。実施例6に記載したように調製されたBaEV偽型レンチウイルス、およびNK細胞培地は、50μL/ウェルの総容積で、各ウェルに追加され、プレートは、32℃で2時間、低速で遠心分離された。100μLのNK細胞形質導入培地(1mg/mLのSynperonic F 108(Sigma-Aldrich)および200U/mLのrhIL2によるNK細胞培地)中の1×105のNK細胞が、各ウェルに追加され、細胞は、NK細胞培地で4日間増殖された。
ACZによるmbIL15コンストラクトの制御
【0315】
3人の異なるドナーからのNK細胞が、分離され、増殖され、IL15-292コンストラクトまたはIL15-293コンストラクトのいずれかを含むBaEV偽型レンチウイルスで形質導入された。IL15-292レンチウイルスの力価が2.38×108TU/mLであった一方、IL15-293レンチウイルスの力価は、6.51×108TU/mLであり(Jurkat qPCR力価により測定されたとき)、4μLのレンチウイルスおよび46μLのNK細胞培地が、各ウェルに追加された。細胞が4日間増殖された後、10μMのACZまたはビヒクル(DMSO)が追加され、細胞は、一晩培養された。mbIL15の発現は、翌日(形質導入後5日)、FACSを用いて分析された。
【0316】
mbIL15発現は、2つの染色試薬:IL15Ra-Fcおよび抗CD56抗体を使用して、フローサイトメトリーにより判定された。mbIL15+細胞の頻度は、抗CD56抗体により判定されるような、NK細胞の数に関連して判定された。
図9に示すように、3人のドナーの内2人の臍帯血由来のNK細胞の40%より多くが、mbIL15を発現し、3人のドナーの内1人の臍帯血由来のNK細胞のおおよそ70%が、mbIL15を発現した。DMSOの存在下において、制御mbIL15発現は、ドナーにかかわらず、NK細胞において10%以下であった。対照的に、ACZの存在下において、制御mbIL15発現は、ドナーにかかわらず、NK細胞において40%より多く増加した。これらのデータにより、ACZは、形質導入されたNKにおいてCA2 DRDにより制御されたmbIL15を誘発することが示される。
実施例10:構成的および制御mbIL15を発現させるNK細胞のin vivo分析
【0317】
NK細胞の抗腫瘍活性への制御mbIL15の影響を評価するため、急性骨髄性白血病のHL-60動物モデルが使用される。臍帯血NK細胞は、実施例9で記載したような、IL15-292コンストラクトもしくはIL15-293コンストラクトのいずれかを含むBaEV偽型レンチウイルスベクター、またはBaEV偽型レンチウイルス空ベクター(EV)で形質導入され、形質導入後、随意に凍結される。ルシフェラーゼを発現させるHL-60細胞(HL-60-luc)は、NSGマウスに静脈注射され(1×106/マウス)、腫瘍増殖は、生物発光イメージング測定(D-ルシフェリンの腹腔内注射後の、光子/秒(p/s)の総流束単位)により、週に1回または2回測定される。6日目、平均腫瘍サイズがおおよそ106総p/sに達したとき、動物は、新しいケージへと無作為抽出される(各グループN=8)。操作されたNK細胞は、必要に応じて解凍され、HL-60腫瘍を持つマウスに注入される。各マウスは、等しい数のmbIL15+細胞を受け取り、注入製品中のNK細胞の総数は、EVが形質導入されたNK細胞の追加により調整される。
【0318】
グループ1は、陰性対照として、EVで操作されたNK細胞を受け取り、グループ2は、構成的mbIL5(コンストラクトIL15-292)が形質導入されたNK細胞を受け取る。グループ3および4は、制御mbIL15(コンストラクトIL15-293)が形質導入されたNK細胞を受け取る。グループ3は、200mg/kgのACZを毎日PO投与され、グループ4は、研究の終了までビヒクルで毎日処理される。NK増殖をモニタリングするため、各グループに動物が追加される(血液分析についてn=4)。血液(50μL)は、7、14、および21日目に顎下の静脈から取り出される。赤血球は、溶解され、ヒトCD45、CD3、およびマウスCD45に対する蛍光色素結合抗体で着色され、細胞は、フローサイトメトリーにより分析される。腫瘍増殖は、おおよそ30日まで測定され、評価項目には、後肢まひおよび体重の減少などの、動物の健康への影響だけでなく、最大総流束単位(1010)が含まれる。
各グループの個々のマウスにおける腫瘍増殖が測定され、グループ平均が収集される。EVが形質導入されたNK細胞が注入されたグループ1の全ての動物において、急速な腫瘍増殖が予想される。グループ4のマウスにおける腫瘍増殖率は、ほとんどmbIL15が発現されないため、対照EVグループに類似するだろう。対照的に、グループ2および3においては、両グループのマウスがNK細胞においてmbIL15を発現させ、これらの細胞がグループ1および4のNK細胞と比較して高い増殖および持続性を示すため、腫瘍は、実質的に退行するであろう。この例により、ACZは、形質導入されたNK細胞においてmbIL15のin vivo発現を誘発でき、mbIL15をほとんど発現さない、形質導入されてビヒクルで処理されたNK細胞と比較して、高いNK抗腫瘍反応をもたらすことが証明されるであろう。
【0319】
上述の詳細な説明において、本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、添付された特許請求の範囲において説明するような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が成されうることが認められるであろう。
【0320】
以下の項目は、本開示の様々な実施形態の例示である。
【0321】
項目1. IL15ペイロードに作動可能に結合している薬剤応答性ドメイン(DRD)を含む組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、前記DRDは、ヒト炭酸脱水酵素II(CA2)由来であり、配列番号:1または配列番号:2に対して、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含む、核酸分子。
【0322】
項目2. DRDは、配列番号:1または配列番号:2に対して、1つ、2つ、3つまたは4つのアミノ酸添加、置換、および/または欠失を含む、項目1の核酸分子。
【0323】
項目3. DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、項目2の核酸分子。
【0324】
項目4. DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列から成る、項目3の核酸分子。
【0325】
項目5. IL15ペイロードは、配列番号:8のアミノ酸配列を含む、項目1~4のいずれかの核酸分子。
【0326】
項目6. IL15ペイロードは、DRDのN末端である、項目1~5のいずれか1つの核酸分子。
【0327】
項目7. IL15ペイロードは、膜結合IL15ポリペプチドである、項目6の核酸分子。
【0328】
項目8. 膜結合IL15ポリペプチドは、配列番号:8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド構成要素、膜貫通ドメイン、および細胞内尾部を含み、膜貫通ドメインは、IL15ポリペプチド構成要素のC末端であり、細胞内尾部は、膜貫通ドメインのC末端である、項目7の核酸分子。
【0329】
項目9. 膜結合IL15ポリペプチドは、IL15ポリペプチド構成要素と膜貫通ドメインとの間にリンカーを更に含む、項目8の核酸分子。
【0330】
項目10. IL15ペイロードは、以下から成る群から選択される1つまたは複数の構成要素を更に含む、項目1~7のいずれか1つの核酸分子:(a)リーダー配列;(b)GSリンカー;(c)ヒンジドメイン;(d)膜貫通ドメイン;および(e)細胞内尾部。
【0331】
項目11. IL15ペイロードは、以下を更に含む、項目1~7のいずれか1つの核酸分子:(a)リーダー配列;(b)GSリンカー;(c)ヒンジドメイン;(d)膜貫通ドメイン;および(e)細胞内尾部。
【0332】
項目12. ポリヌクレオチドは、配列番号:24のアミノ酸配列をコードする、項目11の核酸分子。
【0333】
項目13. ポリヌクレオチドは、配列番号:25の核酸配列を含む、項目12の核酸分子。
【0334】
項目14. ポリヌクレオチドは、配列番号:28のアミノ酸配列をコードする、項目11の核酸分子。
【0335】
項目15. ポリヌクレオチドは、配列番号:29の核酸配列を含む、項目14の核酸分子。
【0336】
項目16. キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2ポリヌクレオチドを更に含む核酸分子であって、CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目1~15のいずれか1つの核酸分子。
【0337】
項目17. 第2ポリヌクレオチドは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、項目16の核酸分子。
【0338】
項目18. CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目17の核酸分子。
【0339】
項目19. 項目1~18のいずれか1つの核酸分子を含むベクター。
【0340】
項目20. プラスミドまたはウイルスベクターである、項目19のベクター。
【0341】
項目21. アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、またはピコルナウイルス由来のウイルスベクターである、項目20のベクター。
【0342】
項目22. ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、または腫瘍溶解性ウイルスベクターから選択される、項目21のベクター。
【0343】
項目23. ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターから選択される、項目22のベクター。
【0344】
項目24. 項目1~15のいずれか1つの核酸分子によりコードされる組換えタンパク質。
【0345】
項目25. 項目1~18のいずれか1つの核酸分子、項目18~23のいずれか1つのベクター、または項目24の組換えタンパク質を含む細胞。
【0346】
項目26. 細菌性細胞である、項目25の細胞。
【0347】
項目27. 哺乳類細胞である、項目25の細胞。
【0348】
項目28. 哺乳類細胞は、ヒト細胞である、項目27の細胞。
【0349】
項目29. ヒト細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、項目28の細胞。
【0350】
項目30. CD4+またはCD8+T細胞である、項目29の細胞。
【0351】
項目31. 分離される、項目29の細胞。
【0352】
項目32. ヒト細胞は、T細胞またはNK細胞であり、ヒトT細胞またはヒトNK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2ポリヌクレオチドを更に含み、CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目29の細胞。
【0353】
項目33. 第2ポリヌクレオチドは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、項目32の細胞。
【0354】
項目34. CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目33の細胞。
【0355】
項目35. 項目25~34のいずれか1つの細胞と、薬学的に許容できるキャリアとを含む医薬組成物。
【0356】
項目36. 細胞は、ヒトT細胞、ヒトNK細胞、またはヒトTILである、項目35の医薬組成物。
【0357】
項目37. 項目25~34のいずれか1つの細胞における、IL15の発現、機能、および/またはレベルを調節する方法であって、DRDが反応する刺激剤を細胞に投与する工程であって、刺激剤は、IL15の発現、機能、および/またはレベルを調節するのに十分な量で投与される、工程を含む方法。
【0358】
項目38. 刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される、項目37の方法。
【0359】
項目39. 刺激剤は、アセタゾラミドである、項目38の方法。
【0360】
項目40. 細胞は、ヒトT細胞またはヒトNK細胞であり、ヒトT細胞またはヒトNK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2ポリヌクレオチドを更に含み、CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目37の方法。
【0361】
項目41. 第2ポリヌクレオチドは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、項目40の方法。
【0362】
項目42. CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、項目41の方法。
【0363】
項目43. 必要としている被験者において、制御IL15に反応する病気または不調を治療する方法であって:(a)治療効果のある量の、項目1~18のいずれか1つの核酸分子、項目19~23のいずれか1つのベクター、項目24の組換えタンパク質、項目25~34のいずれか1つの細胞、または項目35~36のいずれか1つの医薬組成物を被験者に投与する工程と、(b)治療効果のある量の刺激剤を被験者に投与する工程であって、DRDは、刺激剤に反応し、IL15ペイロードの発現は、刺激剤に反応して調節される、工程とを含む方法。
【0364】
項目44. 刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される、項目43の方法。
【0365】
項目45. 刺激剤は、アセタゾラミドである、項目44の方法。
【0366】
項目46. 病気または不調は、がんである、項目43~45のいずれかの方法。
【0367】
項目47. 必要としている被験者において、腫瘍関連抗原を発現させる悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)治療効果のある量の、項目32~34のいずれか1つのヒトT細胞もしくはヒトNK細胞、またはその医薬組成物を被験者に投与する工程であって、CARまたはTCRは、腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、工程と、(b)治療効果のある量の刺激剤を被験者に投与する工程であって、DRDは、刺激剤に反応し、IL15ペイロードの発現は、刺激剤に反応して調節される、工程とを含む方法。
【0368】
項目48. 被験者には、治療効果のある量の、CARを含むヒトT細胞、またはその医薬組成物が投与される、項目47の方法。
【0369】
項目49. 刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される、項目47または48のいずれかの方法。
【0370】
項目50. 刺激剤は、アセタゾラミドである、項目49の方法。
【0371】
項目51. 遺伝子操作されたT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を産生する方法であって、T細胞、NK細胞、またはTILに、IL15ペイロードに作動可能に結合している薬剤応答性ドメイン(DRD)を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入する工程であって、ポリヌクレオチドは、配列番号:24または28のアミノ酸配列をコードする、工程を含む方法。
【0372】
項目52. ポリヌクレオチドは、配列番号:25または29のヌクレオチド配列を含む、項目51の方法。
【0373】
項目53. ポリヌクレオチドは、レンチウイルス形質導入により、T細胞、NK細胞、またはTILに導入される、項目52の方法。
【0374】
項目54. ポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター送達方法により、T細胞、NK細胞、またはTILに導入される、項目52の方法。
【0375】
項目55. 組換えタンパク質を含む修飾細胞であって、前記組換えタンパク質は、(i)薬剤応答性ドメイン(DRD)を含む刺激応答要素(SRE)を含むエフェクターモジュールであって、前記DRDは、親タンパク質、またはヒト炭酸脱水酵素2(CA2)のアミノ酸配列(配列番号:1)において1つまたは複数のアミノ酸変異を有する変異体タンパク質由来であり、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、エフェクターモジュールと、(ii)SREに結合している組換えIL15とを含む、修飾細胞。
【0376】
項目56. 組換えIL15は、配列番号:8のアミノ酸配列を含む、項目55の細胞。
【0377】
項目57. 組換えIL15は、細胞表面上で発現されうる、項目55または56の細胞。
【0378】
項目58. 組換えIL15は、膜結合型IL15(mbIL15)である、項目55または56の細胞。
【0379】
項目59. 組換えタンパク質は、配列番号:16の全てまたは一部を含む、項目55~58のいずれかの細胞。
【0380】
項目60. 組換えタンパク質は、配列番号:18の全てまたは一部を含む、項目55~59のいずれかの細胞。
【0381】
項目61. 組換えタンパク質は、(a)リーダー配列;(b)GSリンカー;(c)ヒンジドメイン;(d)膜貫通ドメイン;および(e)細胞質尾部ドメインから成る群から選択される1つまたは複数の構成要素を更に含む、項目55の細胞。
【0382】
項目62. 組換えタンパク質は、配列番号:24のアミノ酸配列を含む、項目55の細胞。
【0383】
項目63. 組換えタンパク質は、配列番号:28のアミノ酸配列を含む、項目55の細胞。
【0384】
項目64. 組換えIL15は、(a)リーダー配列;(b)シグナルペプチド;(c)リンカー;(d)スペーサー;(e)切断部位;(f)タグ;(g)共刺激ドメイン;(h)蛍光タンパク質;および(i)ヒンジの少なくとも1つに更に結合している、項目55~63のいずれか1つの細胞。
【0385】
項目65. SREは、アセタゾラミド(ACZ)に反応する、またはアセタゾラミド(ACZ)と相互作用する、項目55~64のいずれかの細胞。
【0386】
項目66. 細胞は、T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、項目55の細胞。
【0387】
項目67. IL15ポリペプチドに結合している刺激応答要素(SRE)を含む第1組換えタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド、随意に第1発現カセットを含む核酸分子であって、SREは、DRDを含み、前記DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、核酸分子。
【0388】
項目68. IL15は、SREの支配下にある、項目67の核酸分子。
【0389】
項目69. ポリヌクレオチドは、(a)リーダー配列;(b)GSリンカー;(c)ヒンジドメイン;(d)膜貫通ドメイン;および(e)細胞質尾部ドメインを更にコードする、項目67の核酸分子。
【0390】
項目70. ポリヌクレオチドは、配列番号:25の核酸配列を含む、項目67の核酸分子。
【0391】
項目71. ポリヌクレオチドは、配列番号:29の核酸配列を含む、項目67の核酸分子。
【0392】
項目72. 分離される、項目67~71のいずれかの核酸分子。
【0393】
項目73. 項目67~72のいずれか1つの核酸分子によりコードされる組換えタンパク質。
【0394】
項目74. 配列番号:24または28のアミノ酸配列を含む、項目73の組換えタンパク質。
【0395】
項目75. 項目67~72のいずれか1つの核酸分子を含むベクター。
【0396】
項目76. プラスミドまたはレンチウイルスベクターである、項目75のベクター。
【0397】
項目77. インテグラーゼが欠損している、項目76のベクター。
【0398】
項目78. 項目67~72のいずれか1つの核酸分子、項目73~74の組換えタンパク質、または項目75~77のいずれか1つのベクターを含む、T細胞、NK細胞、またはTIL。
【0399】
項目79. CD4+またはCD8+T細胞である、項目78のT細胞。
【0400】
項目80. ヒトT細胞である、項目79または項目42のT細胞。
【0401】
項目81. 分離される、項目78~80のいずれかのT細胞。
【0402】
項目82. 項目55~66または78~81のいずれか1つの細胞、T細胞、NK細胞、またはTILと、薬学的に許容できるキャリアとを含む医薬組成物。
【0403】
項目83. 遺伝子操作されたT細胞、NK細胞、またはTILを産生する方法であって、T細胞、NK細胞、またはTILに、IL15ポリペプチドペイロードに結合しているCA2 DRDを含む刺激応答要素をコードする第1ポリヌクレオチドを導入する工程であって、第1ポリヌクレオチドは、配列番号:25または29のヌクレオチド配列を有する、工程を含む方法。
【0404】
項目84. 第1ポリヌクレオチドは、T細胞、NK細胞、またはTILに、前記T細胞、NK細胞、またはTILのレンチウイルスウイルストランスフェクションにより導入される、項目83の方法。
【0405】
本開示は、いくつかの記載された実施形態に関して、かなり詳しく、いくらか特別に説明されているが、任意のそのような事項もしくは実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきであることを意図してはおらず、先行技術を考慮して、そのような特許請求の範囲の最も広い解釈を提供できるように、従って、本開示の意図された範囲を効果的に包含するように、添付された特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
【0406】
本明細書において言及された全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により、その全体を援用する。矛盾が生じた場合、定義を含み、本明細書が優先される。加えて、セクションの見出し、材料、方法、および実施例は例示のみであり、限定を意図するものではない。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL15ペイロードに作動可能に結合している薬剤応答性ドメイン(DRD)を含む組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、前記DRDは、ヒト炭酸脱水酵素II(CA2)由来であり、配列番号:1または配列番号:2に対して、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の変異を含む、核酸分子。
【請求項2】
前記DRDは、配列番号:1または配列番号:2に対して、1つ、2つ、3つまたは4つのアミノ酸添加、置換、および/または欠失を含む、請求項1の核酸分子。
【請求項3】
前記DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、請求項2の核酸分子。
【請求項4】
前記DRDは、配列番号:4のアミノ酸配列から成る、請求項3の核酸分子。
【請求項5】
前記IL15ペイロードは、配列番号:8のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項の核酸分子。
【請求項6】
前記IL15ペイロードは、前記DRDのN末端である、請求項1~5のいずれか一項の核酸分子。
【請求項7】
前記IL15ペイロードは、膜結合IL15ポリペプチドである、請求項6の核酸分子。
【請求項8】
前記膜結合IL15ポリペプチドは、配列番号:8のアミノ酸配列を含むIL15ポリペプチド構成要素、膜貫通ドメイン、および細胞内尾部を含み、前記膜貫通ドメインは、前記IL15ポリペプチド構成要素のC末端であり、前記細胞内尾部は、前記膜貫通ドメインのC末端である、請求項7の核酸分子。
【請求項9】
前記膜結合IL15ポリペプチドは、前記IL15ポリペプチド構成要素と前記膜貫通ドメインとの間にリンカーを更に含む、請求項8の核酸分子。
【請求項10】
前記IL15ペイロードは、以下から成る群から選択される1つまたは複数の構成要素を更に含む、請求項1~7のいずれか一項の核酸分子:
(a)リーダー配列;
(b)GSリンカー;
(c)ヒンジドメイン;
(d)膜貫通ドメイン;および
(e)細胞内尾部。
【請求項11】
前記IL15ペイロードは、以下を更に含む、請求項1~7のいずれか一項の核酸分子:
(a)リーダー配列;
(b)GSリンカー;
(c)ヒンジドメイン;
(d)膜貫通ドメイン;および
(e)細胞内尾部。
【請求項12】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号:24のアミノ酸配列をコードする、請求項11の核酸分子。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号:25の核酸配列を含む、請求項12の核酸分子。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号:28のアミノ酸配列をコードする、請求項11の核酸分子。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号:29の核酸配列を含む、請求項14の核酸分子。
【請求項16】
キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2ポリヌクレオチドを更に含む核酸分子であって、前記CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項1~15のいずれか一項の核酸分子。
【請求項17】
前記第2ポリヌクレオチドは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、請求項16の核酸分子。
【請求項18】
前記CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項17の核酸分子。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項の核酸分子を含むベクター。
【請求項20】
プラスミドまたはウイルスベクターである、請求項19のベクター。
【請求項21】
アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、またはピコルナウイルス由来のウイルスベクターである、請求項20のベクター。
【請求項22】
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、または腫瘍溶解性ウイルスベクターから選択される、請求項21のベクター。
【請求項23】
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターから選択される、請求項22のベクター。
【請求項24】
請求項1~15のいずれか一項の核酸分子によりコードされる組換えタンパク質。
【請求項25】
請求項1~18のいずれか一項の核酸分子、請求項18~23のいずれか一項のベクター、または請求項24の組換えタンパク質を含む細胞。
【請求項26】
細菌性細胞である、請求項25の細胞。
【請求項27】
哺乳類細胞である、請求項25の細胞。
【請求項28】
前記哺乳類細胞は、ヒト細胞である、請求項27の細胞。
【請求項29】
前記ヒト細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、請求項28の細胞。
【請求項30】
CD4+またはCD8+T細胞である、請求項29の細胞。
【請求項31】
分離される、請求項29の細胞。
【請求項32】
前記ヒト細胞は、T細胞またはNK細胞であり、前記ヒトT細胞または前記ヒトNK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2ポリヌクレオチドを更に含み、前記CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項29の細胞。
【請求項33】
前記第2ポリヌクレオチドは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、請求項32の細胞。
【請求項34】
前記CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項33の細胞。
【請求項35】
請求項25~34のいずれか一項の細胞と、薬学的に許容できるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項36】
前記細胞は、ヒトT細胞、ヒトNK細胞、またはヒトTILである、請求項35の医薬組成物。
【請求項37】
請求項25~34のいずれか一項の細胞における、IL15の発現、機能、および/またはレベルを調節する方法であって、前記DRDが反応する刺激剤を前記細胞に投与する工程であって、前記刺激剤は、IL15の発現、機能、および/またはレベルを調節するのに十分な量で投与される、工程を含む方法。
【請求項38】
前記刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される、請求項37の方法。
【請求項39】
前記刺激剤は、アセタゾラミドである、請求項38の方法。
【請求項40】
前記細胞は、ヒトT細胞またはヒトNK細胞であり、前記ヒトT細胞または前記ヒトNK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードする第2ポリヌクレオチドを更に含み、前記CARまたはTCRは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項37の方法。
【請求項41】
前記第2ポリヌクレオチドは、対象の抗原に特異的な抗原結合ドメインを含むCARをコードする、請求項40の方法。
【請求項42】
前記CARは、CD19に特異的な抗原結合ドメインを含む、請求項41の方法。
【請求項43】
必要としている被験者において、制御IL15に反応する病気または不調を治療する方法であって:
(a)治療効果のある量の、請求項1~18のいずれか一項の核酸分子、請求項19~23のいずれか一項のベクター、請求項24の組換えタンパク質、請求項25~34のいずれか一項の細胞、または請求項35~36のいずれか一項の医薬組成物を前記被験者に投与する工程と、
(b)治療効果のある量の刺激剤を前記被験者に投与する工程であって、前記DRDは、前記刺激剤に反応し、前記IL15ペイロードの発現は、前記刺激剤に反応して調節される、工程と
を含む方法。
【請求項44】
前記刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される、請求項43の方法。
【請求項45】
前記刺激剤は、アセタゾラミドである、請求項44の方法。
【請求項46】
前記病気または不調は、がんである、請求項43~45のいずれか一項の方法。
【請求項47】
必要としている被験者において、腫瘍関連抗原を発現させる悪性腫瘍を治療する方法であって、
(a)治療効果のある量の、請求項32~34のいずれか一項のヒトT細胞もしくはヒトNK細胞、またはその医薬組成物を前記被験者に投与する工程であって、前記CARまたはTCRは、前記腫瘍関連抗原に特異的な抗原結合ドメインを含む、工程と、
(b)治療効果のある量の刺激剤を前記被験者に投与する工程であって、前記DRDは、前記刺激剤に反応し、前記IL15ペイロードの発現は、前記刺激剤に反応して調節される、工程と
を含む方法。
【請求項48】
前記被験者には、治療効果のある量の、CARを含む前記ヒトT細胞、またはその医薬組成物が投与される、請求項47の方法。
【請求項49】
前記刺激剤は、アセタゾラミド、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、メタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、ジクロフェナミド、エトキシゾラミド、ゾニサミド、ダンシルアミド、またはジクロフェナミドから選択される、請求項47または48のいずれか一項の方法。
【請求項50】
前記刺激剤は、アセタゾラミドである、請求項49の方法。
【請求項51】
遺伝子操作されたT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を産生する方法であって、前記T細胞、NK細胞、またはTILに、IL15ペイロードに作動可能に結合している薬剤応答性ドメイン(DRD)を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入する工程であって、前記ポリヌクレオチドは、配列番号:24または28のアミノ酸配列をコードする、工程を含む方法。
【請求項52】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号:25または29のヌクレオチド配列を含む、請求項51の方法。
【請求項53】
前記ポリヌクレオチドは、レンチウイルス形質導入により、前記T細胞、NK細胞、またはTILに導入される、請求項52の方法。
【請求項54】
前記ポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター送達方法により、前記T細胞、NK細胞、またはTILに導入される、請求項52の方法。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正5】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正6】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正7】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正8】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正9】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正10】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【国際調査報告】