(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルス(AAV)の生体内分布の変更に向けた、AAVとAAV受容体(AAVR)との間の相互作用を調節するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/35 20060101AFI20221102BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221102BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20221102BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221102BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221102BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221102BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20221102BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221102BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221102BHJP
C07K 14/015 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
C12N15/35
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61P1/16
A61P9/00
A61P21/00
A61P27/02
A61P11/00
C07K14/015
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515606
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2020050027
(87)【国際公開番号】W WO2021050614
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511140770
【氏名又は名称】マサチューセッツ アイ アンド イヤー インファーマリー
(71)【出願人】
【識別番号】516106623
【氏名又は名称】ザ スケペンス アイ リサーチ インスティテュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】ジン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ティッパー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンバーグ,リュク エイチ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
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4C087MA66
4C087NA06
4C087NA13
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA59
4C087ZA75
4C087ZA94
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA01
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、対象においてアデノ随伴ウイルス(AAV)の生体内分布を変更するための組成物および方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然に存在しない改変AAV VP1カプシドタンパク質を含むウイルスであって、
前記改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列と未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、前記未改変AAV VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列は、AAV2 VP1カプシドタンパク質(配列番号1)と前記未改変AAVカプシドタンパク質の前記アミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、配列番号1に対して番号付けされた、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706およびV708のアミノ酸の位置からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸の位置において、前記未改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列とは相違する、ウイルス。
【請求項2】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、446R、471A、および708Tからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、446R、471A、および708Tからなる群から選択される少なくとも2個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項4】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、アミノ酸残基446R、471A、および708Tを含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項5】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、446S、471S、および708Aからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項6】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、446S、471S、および708Aからなる群から選択される少なくとも2個のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項7】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、446S、471S、および708Aを含む、請求項1に記載のウイルス。
【請求項8】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、前記未改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列とは、前記未改変VP1カプシドタンパク質中の、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708のアミノ酸の位置のうちの1つまたは複数においてのみ異なり、他のアミノ酸の位置では異ならない、請求項1から7のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項9】
前記未改変VP1カプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、hu.37、LK-03、AAV5、AAV10、Hu68;Anc80;Anc81;Anc82;Anc83;Anc84;Anc94;Anc113;Anc126;Anc127;Anc80L27;Anc80L59;Anc80L60;Anc80L62;Anc80L65;Anc80L33;Anc80L36;Anc80L44;Anc80L1;Anc110;Anc80DI;AAV1 vp1;AAV2 vp1;AAV9vp1;Anc80;Anc126;Anc127;AAV3;AAV7;AAV8;rh10;hu37;およびhu.68由来のVP1カプシドタンパク質からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項10】
前記天然に存在しない改変AAV VP1カプシドタンパク質が、前記改変AAVカプシドタンパク質の前記アミノ酸配列と前記未改変AAV VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、前記未改変AAV VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項11】
VP1、VP2、およびVP3のカプシドタンパク質;ならびに
組換え核酸ベクター
を含む、アセンブリ能を有する改変組換えAAV(rAAV)であって、
前記VP1カプシドタンパク質は、請求項1から10のいずれか一項に記載の改変VP1カプシドタンパク質である、改変組換えAAV。
【請求項12】
VP1、VP2、およびVP3のカプシドタンパク質;ならびに
組換え核酸ベクター
を含む、アセンブリ能を有する改変組換えAAV(rAAV)であって、
少なくとも前記VP1カプシドタンパク質は、改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列と未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、前記未改変AAV VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む天然に存在しない改変VP1カプシドタンパク質であり、
前記改変VP1カプシドタンパク質は、第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を有する未改変rAAVの投与後の前記未改変rAAVの生体内分布と比較して、前記第1の哺乳動物対象への前記改変rAAVの投与後の前記改変rAAVの生体内分布を変更する手段を含む点で、前記未改変VP1カプシドタンパク質とは相違し、前記未改変rAAVは、前記手段を除いて、前記改変rAAVのものと同一のアミノ酸配列を有するVP1、VP2、およびVP3のカプシドタンパク質を含む、改変組換えAAV。
【請求項13】
第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む前記未改変rAAVの投与後の、肝臓細胞の形質導入と比較して、前記第1の哺乳動物対象への投与後の、肝臓細胞のより高い形質導入を達成する、請求項11または12に記載の改変rAAV。
【請求項14】
第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の、発現可能なポリペプチドの肝臓細胞における発現と比較して、前記第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、肝臓細胞におけるより高い発現を呈する、請求項11から13のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項15】
第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への、前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の肝臓細胞の形質導入と比較して、前記第1の哺乳動物対象への投与後の、肝臓細胞のより低い形質導入を達成する、請求項11または12に記載の改変rAAV。
【請求項16】
第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への、前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの肝臓細胞における発現と比較して、前記第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、肝臓細胞におけるより低い発現を呈する、請求項11、12、または15のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項17】
前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの前記第2の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAV受容体(AAVR)との相互作用と比較して、前記第1の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAVRとの変更された相互作用を有する、請求項11から16のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項18】
前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの前記第2の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAV受容体(AAVR)との相互作用と比較して、前記第1の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAVRとの増加した相互作用を有する、請求項17に記載の改変rAAV。
【請求項19】
前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの前記第2の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAV受容体(AAVR)との相互作用と比較して、前記第1の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAVRとの低下した相互作用を有する、請求項17に記載の改変rAAV。
【請求項20】
前記第1の哺乳動物対象および前記第2の哺乳動物対象が、ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)である、請求項11から19のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項21】
前記投与が、全身投与、例えば静脈内注入を含む、請求項11から20のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項22】
哺乳動物対象、例えば、ヒト対象に投与される場合、同じ投与経路によって同量で投与された前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVよりも低い肝毒性を有する、請求項11から21のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項23】
第1の哺乳動物対象への前記改変rAAVの投与後の前記改変rAAVの生体内分布を変更する手段が、AAV2 VP1カプシドタンパク質(配列番号1)と前記未改変AAVカプシドタンパク質の前記アミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、配列番号1に対して番号付けされた、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706およびV708からなる群から選択される位置で、1個または複数のアミノ酸残基に突然変異を含む、請求項11から22のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項24】
前記改変VP1カプシドタンパク質が、446R、471A、および708Tからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の改変rAAV。
【請求項25】
前記改変VP1カプシドタンパク質が、446R、471A、および708Tからなる群から選択される少なくとも2個のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の改変rAAV。
【請求項26】
前記改変VP1カプシドタンパク質が、アミノ酸残基446R、471A、および708Tを含む、請求項23に記載の改変rAAV。
【請求項27】
前記改変VP1カプシドタンパク質が、446S、471S、および708Aからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の改変rAAV。
【請求項28】
前記改変VP1カプシドタンパク質が、446S、471S、および708Aからなる群から選択される少なくとも2個のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載の改変rAAV。
【請求項29】
前記改変VP1カプシドタンパク質が、アミノ酸残基446S、471S、および708Aを含む、請求項23に記載の改変rAAV。
【請求項30】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、前記未改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列とは、前記未改変VP1カプシドタンパク質中の、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708のアミノ酸の位置のうちの1つまたは複数においてのみ異なり、他のアミノ酸の位置では異ならない、請求項23から29のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項31】
前記未改変VP1カプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、hu.37、LK-03、AAV5、AAV10、Hu68;Anc80;Anc81;Anc82;Anc83;Anc84;Anc94;Anc113;Anc126;Anc127;Anc80L27;Anc80L59;Anc80L60;Anc80L62;Anc80L65;Anc80L33;Anc80L36;Anc80L44;Anc80L1;Anc110;Anc80DI;AAV1 vp1;AAV2 vp1;AAV9vp1;Anc80;Anc126;Anc127;AAV3;AAV7;AAV8;rh10;hu37;およびhu.68由来のVP1カプシドタンパク質からなる群から選択される、請求項11から30のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項32】
前記改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列が、前記未改変VP1カプシドタンパク質の前記アミノ酸配列と少なくとも96%同一であり、97%同一であり、98%同一であり、または99%同一である、請求項11から31のいずれか一項に記載の改変rAAV。
【請求項33】
請求項11から32のいずれか一項に記載の改変rAAV、および
薬学的に許容される担体
を含む、医薬組成物。
【請求項34】
請求項1から10のいずれか一項に記載の改変VP1カプシドタンパク質、または請求項11から32のいずれか一項に記載の改変rAAVの前記VP1タンパク質をコードする、核酸分子。
【請求項35】
請求項34に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項36】
請求項34に記載の核酸分子または請求項35に記載のベクターを含む単離された宿主細胞。
【請求項37】
未改変VP1カプシドタンパク質を有するrAAVを使用した送達と比較して、哺乳動物対象、例えば、ヒト患者の標的臓器への発現可能なポリヌクレオチドの送達を変更する方法であって、請求項11から32のいずれか一項に記載の改変rAAVまたは請求項33に記載の医薬組成物の治療有効用量を、前記ヒト患者に投与するステップを含む、
方法。
【請求項38】
前記発現可能な核酸が、導入遺伝子である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の、発現可能なポリペプチドの前記標的臓器の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器の細胞へのより高い形質導入を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の、発現可能なポリペプチドの前記標的臓器の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器の細胞へのより低い形質導入を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項41】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器以外の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器以外の細胞へのより高い形質導入を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項42】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器以外の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器以外の細胞へのより低い形質導入を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項43】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の、発現可能なポリペプチドの前記標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器の細胞におけるより高い発現を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項44】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の、発現可能なポリペプチドの前記標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器の細胞におけるより低い発現を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項45】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の、発現可能なポリペプチドの前記標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器以外の細胞におけるより高い発現を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項46】
前記改変rAAVが、第2の対応する哺乳動物対象への前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の、発現可能なポリペプチドの前記標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、前記組換え核酸ベクターによってコードされる前記発現可能なポリペプチドの、前記標的臓器以外の細胞におけるより低い発現を呈する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項47】
前記標的臓器が、肝臓である、請求項37から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記標的臓器以外の細胞が、筋細胞である、請求項37から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記未改変AAVが、AAV1、AAV8、またはAAV9であり、送達が変更される前記標的臓器が、心臓であり;
前記未改変AAVが、AAV2であり、送達が変更される前記標的臓器が、腎臓であり;
前記未改変AAVが、AAV7、AAV8、AAV9であり、送達が変更される前記標的臓器が、肝臓であり;
前記未改変AAVが、AAV4、AAV5、AAV6、AAV9であり、送達が変更される前記標的臓器が、肺であり;
前記未改変AAVが、AAV8であり、送達が変更される前記標的臓器が、膵臓であり;
前記未改変AAVが、AAV2、AAV5、AAV8であり、送達が変更される前記標的臓器が、眼の光受容細胞であり;
前記未改変AAVが、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8であり、送達が変更される前記標的臓器が、網膜色素上皮(RPE)であり;
前記未改変AAVが、AAV1、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9であり、送達が変更される前記標的臓器が、骨格筋である、請求項37から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記改変rAAVが、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象に投与される場合、同じ投与経路によって投与される、前記未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの同じ用量よりも低い肝毒性を有する、請求項37から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記哺乳動物対象が、ヒト対象または非ヒト霊長類である、請求項37から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
請求項37から51のいずれか一項に記載の方法で使用するための、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月9日に出願された米国仮特許出願第62/897,973号明細書および2019年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/934,996号明細書の利益を主張するものであり、それぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は全体として、ウイルス、具体的にはアデノ随伴ウイルス(AAV)に関する。
【0003】
参照による組込み
本出願は、EFS-Webを介して提出された付録が含まれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年9月9日に作成されたPDFファイルはSequence Appendix.pdfと命名され、65.9キロバイトのサイズである。
【背景技術】
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損が付与された場合、治療用遺伝子導入のベクターシステムとして使用することができる。AAVは、一本鎖DNAを被包するカプシドと呼ばれるタンパク質シェルで構成されている。DNA分子が被包化を可能とする最小要件とは、DNAが一本鎖でなければならないこと、およびAAVの隣接逆位末端反復(ITR)を含む必要があること、である。カプシド構造は、正20面体アセンブリの形態で3種の60のタンパク質モノマーで構成される20の面を備える球状粒子を形成する大きな多タンパク質アセンブリである。これらのモノマーはカプシドタンパク質を形成する。VP1、VP2、およびVP3の3種のカプシドタンパク質があり、これらは重なり合う配列を有する。VP3は最短のタンパク質であり、一次粒子構造を構成する、すなわち、正20面体アセンブリを形成するのに必須な構成要素である。VP2は、そのC末端にVP3を完全に包含し、N末端に伸長するより長いタンパク質である。同様に、VP1はそのC末端にVP2およびVP3を包含する。カプシドを形成するのにVP1およびVP2は構造的に必要ではないが、両方がAAVの感染性にとって必要である。
【0005】
一般に、カプシドは、感染性、ならびに適応免疫応答、向性、特異性、効力、および生体内分布などの宿主ベクター関連特性の1次決定因子であると考えられている。実際、これらの特性のいくつかは、天然のAAV血清型と操作されたAAV血清型とバリアントとによって異なることが知られている。今日まで、しかし、カプシドに関するこういった変化によってその特性が機能的にどのように変更するのかということについての機構上の理解はなく、したがって、その特性の制御に関して任意のレベルに向けてAAVを操作する合理的基盤がない。例えば、いくつかの治療アプローチでは、全身注射を介してAAVを使用して、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの神経筋障害の全体的な筋系を標的にする。しかし、AAV9やrh74などのこれらのアプローチに現在使用されているベクターには全て、筋肉への標的指向化を確保するために高用量が必要であり、ベクターは一次標的として肝臓へと自然と向かう。しかし、肝臓組織はDMD病の病理に関与してはいない。
【0006】
2016年、Jan Caretteの研究グループは、AAVR(KIAA0319Lとしても知られる)と呼ばれるタンパク質を、多くのAAVの必須侵入因子または受容体として特定した(Pillay et al., 2016, Nature, 530(7588):108-12)。2019年に、独立した2つグループが、AAVR受容体とインターフェースで接続する、AAV粒子の部分(本明細書ではAAVRフットプリントと呼ばれる)に関する構造上の解決について報告した(Meyer et al., 2019, Elife, 8 pii: e44707; Zhang et al., 2019, Nat. Microbiol., 4(4):675-682)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、AAVRフットプリント内の特定の位置で、ある種の特定のアミノ酸への種々のAAVの結合を操作、妨害、または破壊し、その結果、例えば、対象において、肝臓細胞へのAAVの結合または肝臓もしくは他の細胞に形質導入するAAVの能力を完全に阻害することなく、肝臓細胞のAAVの形質導入を調節することによって、例えば、それらを低下させるまたは高めることによって、対象においてAAVの生体内分布を変更することができるという発見に、少なくとも部分的に、基づいている。
【0008】
一態様では、本開示は、対象内の肝臓細胞へのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生体内分布を調節する方法を提供する。かかる方法は、AAVの未改変AAVカプシドタンパク質を用意するステップ;ならびにAAVのカプシドタンパク質におけるQ263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706またはV708の各位置(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)のうちの1つまたは複数で少なくとも1個のアミノ残基を、異なるアミノ酸残基と置き換えて、肝臓細胞に形質導入するAAVの能力を完全には阻害しないがこれを変更するのに十分な様式で肝臓細胞上でのAAVカプシドタンパク質とAAV受容体(AAVR)との間の結合を改変するステップ、を含む。
【0009】
場合によっては、AAVによる肝臓細胞へのまたは肝臓細胞中での生体内分布が上昇する。別の場合では、AAVによる肝臓細胞へのまたは肝臓細胞中での生体内分布が低下する。
【0010】
一部の実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸残基を置き換えることは、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸の突然変異誘発を含む。場合によっては、置き換えるステップにより、保存的なアミノ酸置換がもたらされる。
【0011】
別の態様では、本開示は、対象内の肝臓細胞へのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生体内分布を調節する方法を提供する。かかる方法は、AAVの未改変AAVカプシドタンパク質を用意するステップ;ならびにAAVのカプシドタンパク質におけるS446、R471、またはV708の位置(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)のうちの1つまたは複数で少なくとも1個のアミノ残基を、異なるアミノ酸残基と置き換えて、肝臓細胞に形質導入するAAVの能力を完全には阻害しないがこれ変更するのに十分な様式で肝臓細胞上でのAAVカプシドタンパク質とAAV受容体(AAVR)との間の結合を改変するステップ、を含む。
【0012】
場合によっては、肝臓細胞に形質導入するAAVの能力が向上するが、一方、場合によっては、肝臓細胞に形質導入するAAVの能力は低下する。
【0013】
一部の実施形態では、置き換えられたアミノ酸残基は、S446N、S446R、R471A、R471S、V708T、またはV708A(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)のうちのいずれか1個または複数である。一部の実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸残基を置き換えることは、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸の突然変異誘発を含む。
【0014】
さらに別の態様では、本開示は、位置446、471、または708の位置(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)からなる群から選択される位置で、少なくとも1個のアミノ酸残基の点で野生型の未改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列とは相違するアミノ酸配列を有するAAVカプシドタンパク質を含む、天然に存在しないAAVカプシドタンパク質を提供し、天然に存在しないAAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列は、肝臓細胞に形質導入するAAVの能力を完全には阻害しないがこれ変更するのに十分な様式で、野生型AAV配列がもたらすよりも、肝臓細胞にAAVカプシドタンパク質の変更された結合をもたらす。
【0015】
一部の実施形態では、天然に存在しないアミノ酸配列は、S446N、S446R、R471A、R471S、V708T、またはV708A(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)のうちの少なくとも1個を含む。
【0016】
場合によっては、例えば、AAVカプシドが位置446にR、位置471にA、または位置708にTを含む場合(AAV2(配列番号1)に対して番号付けされている)、天然に存在しないAAVカプシドタンパク質の肝臓への結合は上昇する。場合によっては、例えば、AAVカプシドが位置446にS、位置471にS、または位置708にAを含む場合(AAV2(配列番号1)に対して番号付けされている)、天然に存在しないAAVカプシドタンパク質の肝臓への結合は低下する。
【0017】
さらに別の態様では、本開示は、対象においてAAVの肝臓への標的指向化を変更する方法を提供する。かかる方法は、本明細書に記載の天然に存在しないAAVカプシドタンパク質を含むAAVを対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、投与は静脈内である。一部の実施形態では、投与は複数回繰り返される。
【0018】
一態様では、本開示は、対象におけるアデノ随伴ウイルス(AAV)の生体内分布を変更するための方法を特徴とし、上記方法は、肝臓細胞上のAAV受容体(AAVR)へのAAVの結合を破壊または妨害することによって、肝臓細胞へのAAVの親和性または結合活性を調節するステップを含み、破壊することまたは妨害することには、263~265、267、268、271、382~385、446、471、502、503、528~529、589、706、および708の各位置(AAV2カプシド配列(配列番号1(
図2のいちばん上の配列))に対して)のうちの1つまたは複数で少なくとも1個のアミノ酸残基が関与する。
【0019】
一部の実装形態では、破壊することまたは妨害することは突然変異誘発を含む。ある特定の実施形態では、破壊することまたは妨害することには、AAVカプシドタンパク質の低分子結合または化学的もしくはペプチド改変が含まれる。
【0020】
別の態様では、本開示は、263~265、267、268、271、382~385、446、471、502、503、528~529、589、706、および708の各位置(AAV2カプシド配列(配列番号1(
図1のいちばん上の配列))に対して)からなる群から選択される位置で、少なくとも1個のアミノ酸残基の点で、野生型または未改変の配列とは相違する組換えアミノ酸配列を有するAAVカプシドを含めて、天然に存在しないAAVカプシドタンパク質を特徴とし、組換えAAVアミノ酸配列は、野生型AAV配列がもたらすよりも、肝臓細胞にカプシドタンパク質の変更された親和性または結合活性をもたらす。
【0021】
一部の実施形態では、組換えアミノ酸配列と野生型配列との間で異なる少なくとも1個のアミノ酸残基を表1に示す。
【0022】
ある特定の実施形態では、天然に存在しないAAVカプシドタンパク質の肝臓への親和性または結合活性が上昇する。一部の実装形態では、AAVカプシドは、位置446にRまたは位置708にTを含む(AAV2に対して)。
【0023】
ある特定の実施形態では、天然に存在しないAAVカプシドタンパク質の肝臓への親和性または結合活性は低下する。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、位置446にSまたは位置708にAを含む(AAV2に対して)。
【0024】
別の態様では、本開示は、対象においてAAVの肝臓への標的指向化を変更する方法を特徴とし、上記方法は、本明細書に記載の天然に存在しないAAVカプシドタンパク質を含むAAVを対象に投与するステップを含む。
【0025】
さらに別の態様では、本開示は、対象においてAAVの肝臓への標的指向化を変更する方法を特徴とし、上記方法は、本明細書に記載の天然に存在しないAAVカプシドタンパク質を含むAAVを対象に投与するステップを含む。
【0026】
一態様では、本開示は、天然に存在しない改変AAV VP1カプシドタンパク質を含むウイルスを提供する。典型的には、本明細書に記載のウイルスは、改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列と未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とのアライメントを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(basic local alignment search tool)(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、AAV2 VP1カプシドタンパク質(配列番号1)と未改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、配列番号1に対して番号付けされた、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706およびV708のアミノ酸の位置からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸の位置において、未改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とは相違する。
【0027】
一部の実施形態では、BLASTPのデフォルトパラメーターは、以下を含む:短い入力配列に対して自動的に調整されたパラメーター;期待される閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ-範囲における最大一致:0;行列:BLOSUM62;gapコスト:存在11,拡張1;組成調整(compositional adjustments):条件付き組成スコア行列調整(conditional compositional score matrix adjustment);およびフィルターまたはマスクなし。一部の実施形態では、BLASTNのデフォルトパラメーターは以下のとおりである:パラメーターは短い入力配列に対して自動的に調整;期待される閾値:10;ワードサイズ:28;クエリ-範囲における最大一致:0;マッチ/ミスマッチスコア:1,-2;gapコスト:リニア;フィルター:複雑度が低い領域;およびマスク:早見表の場合のみ。
【0028】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、446R、471A、および708Tからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基(例えば、少なくとも2個のアミノ酸残基)を含む。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、アミノ酸残基446R、471A、および708Tを含む。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、446S、471S、および708Aからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基(例えば、少なくとも2個のアミノ酸残基)を含む。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、446S、471S、および708Aを含む。
【0029】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、未改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とは、未改変VP1カプシドタンパク質中の、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708のアミノ酸の位置のうちの1つまたは複数においてのみ異なり、他のアミノ酸の位置では異ならない。
【0030】
一部の実施形態では、未改変VP1カプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、hu.37、LK-03、AAV5、AAV10、Hu68;Anc80;Anc81;Anc82;Anc83;Anc84;Anc94;Anc113;Anc126;Anc127;Anc80L27;Anc80L59;Anc80L60;Anc80L62;Anc80L65;Anc80L33;Anc80L36;Anc80L44;Anc80L1;Anc110;Anc80DI;AAV1 vp1;AAV2 vp1;AAV9vp1;Anc80;Anc126;Anc127;AAV3;AAV7;AAV8;rh10;hu37;およびhu.68由来のVP1カプシドタンパク質からなる群から選択される、
【0031】
ある特定の実施形態では、天然に存在しない改変AAV VP1カプシドタンパク質は、改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列と未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0032】
別の態様では、本開示は、アセンブリ能を有する改変組換えAAV(rAAV)を提供する。かかるAAVは、VP1、VP2、およびVP3のカプシドタンパク質、ならびに組換え核酸ベクターを含み、ここで、VP1カプシドタンパク質は、本明細書に記載の改変VP1カプシドタンパク質である。
【0033】
さらに別の態様では、本開示は、アセンブリ能を有する改変組換えAAV(rAAV)を提供する。かかるAAVは、VP1、VP2、およびVP3のカプシドタンパク質;ならびに組換え核酸ベクターを含み、ここで、少なくともVP1カプシドタンパク質は、改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列と未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、天然に存在しない改変VP1カプシドタンパク質であり、改変AAVカプシドタンパク質は、第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を有する未改変rAAVの投与後の未改変rAAVの生体内分布と比較して、第1の哺乳動物対象への改変rAAVの投与後の改変rAAVの生体内分布を変更する手段を含む点で、未改変VP1カプシドタンパク質とは相違しており、ここで、未改変rAAVは、前記手段を除いて、改変rAAVのものと同一のアミノ酸配列を有するVP1、VP2、およびVP3のカプシドタンパク質を含む。
【0034】
一部の実施形態では、改変rAAVは、第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の肝臓細胞の形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、肝臓細胞のより高い形質導入を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの肝臓細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの肝臓細胞における、より高い発現を呈する。
【0035】
一部の実施形態では、改変rAAVは、第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の肝臓細胞の形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、肝臓細胞のより低い形質導入を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、第1の哺乳動物対象と同じ種の第2の哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの肝臓細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの肝臓細胞における、より低い発現を呈する。
【0036】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの第2の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAV受容体(AAVR)との相互作用と比較して、第1の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAVRとの変更された相互作用を有する。一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの第2の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAV受容体(AAVR)との相互作用と比較して、第1の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAVRとの高まった相互作用を有する。一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの第2の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAV受容体(AAVR)との相互作用と比較して、第1の哺乳動物対象の肝臓細胞上で発現したAAVRとの低下した相互作用を有する。
【0037】
一部の実施形態では、第1の哺乳動物対象および第2の哺乳動物対象は、ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)である。一部の実施形態では、投与は、全身投与、例えば静脈内注入を含む。一部の実施形態では、改変rAAVは、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象に投与される場合、同じ投与経路によって同量で投与された未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVよりも低い肝毒性を有する。
【0038】
一部の実施形態では、第1の哺乳動物対象への改変rAAVの投与後の改変rAAVの生体内分布を変更する手段は、AAV2 VP1カプシドタンパク質(配列番号1)と未改変AAVカプシドタンパク質のアミノ酸配列とを、デフォルトのアルゴリズムパラメーターを用いた基本ローカル整列化検索ツール(BLAST)プログラムを使用してアライメントする場合、配列番号1に対して番号付けされた、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706およびV708からなる群から選択される位置で、1個または複数のアミノ酸残基に突然変異を含む。
【0039】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、446R、471A、および708Tからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基(例えば、少なくとも2個のアミノ酸残基)を含む。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、アミノ酸残基446R、471A、および708Tを含む。
【0040】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、464S、471S、および708Aからなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基(例えば、少なくとも2個のアミノ酸残基)を含む。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、アミノ酸残基446S、471S、および708Aを含む。
【0041】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、未改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列とは、未改変VP1カプシドタンパク質中の、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708のアミノ酸の位置のうちの1つまたは複数においてのみ異なり、他のアミノ酸の位置では異ならない。
【0042】
一部の実施形態では、未改変VP1カプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、hu.37、LK-03、AAV5、AAV10、Hu68;Anc80;Anc81;Anc82;Anc83;Anc84;Anc94;Anc113;Anc126;Anc127;Anc80L27;Anc80L59;Anc80L60;Anc80L62;Anc80L65;Anc80L33;Anc80L36;Anc80L44;Anc80L1;Anc110;Anc80DI;AAV1 vp1;AAV2 vp1;AAV9vp1;Anc80;Anc126;Anc127;AAV3;AAV7;AAV8;rh10;hu37;およびhu.68由来のVP1カプシドタンパク質からなる群から選択される。
【0043】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列は、未改変VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも96%同一であり、97%同一であり、98%同一であり、または99%同一である。
【0044】
さらに別の態様では、本明細書に記載の改変rAAV、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。一態様では、本明細書に記載の改変VP1カプシドタンパク質または本明細書に記載の改変rAAVのVP1タンパク質をコードする、核酸分子。
【0045】
別の態様では、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターが提供される。別の態様では、本明細書に記載の核酸分子または本明細書に記載のベクターを含む単離された宿主細胞が提供される。
【0046】
さらに別の態様では、本開示は、例えば、未改変VP1カプシドタンパク質を有するrAAVを使用した送達と比較して、哺乳動物対象、例えば、ヒト患者の標的臓器への発現可能なポリヌクレオチドの送達を変更する方法を提供する。かかる方法は、本明細書に記載の治療有効用量の改変rAAVまたは本明細書に記載の医薬組成物をヒト患者に投与するステップを含むことができる。一部の実施形態では、発現可能な核酸は導入遺伝子である。
【0047】
一部の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞への、より高い形質導入を呈する。
【0048】
ある特定の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞への、より低い形質導入を呈する。
【0049】
一部の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞への、より高い形質導入を呈する。
【0050】
一部の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞への形質導入と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞への、より低い形質導入を呈する。
【0051】
ある特定の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における、より高い発現を呈する。
【0052】
一部の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における、より低い発現を呈する。
【0053】
一部の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞における、より高い発現を呈する。
【0054】
ある特定の実施形態では、改変rAAVは、第2の対応する哺乳動物対象への未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの投与後の発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における発現と比較して、第1の哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞における、より低い発現を呈する。
【0055】
一部の実施形態では、標的臓器は肝臓である。一部の実施形態では、標的臓器以外の細胞は筋細胞である。
【0056】
一部の実施形態では、未改変AAVはAAV1、AAV8、またはAAV9であり、それへと送達が変更される標的臓器は心臓であり;未改変AAVはAAV2であり、それへと送達が変更される標的臓器は腎臓であり;未改変AAVはAAV7、AAV8、AAV9であり、それへと送達が変更される標的臓器は肝臓であり;未改変AAVはAAV4、AAV5、AAV6、AAV9であり、それへと送達が変更される標的臓器は肺であり;未改変AAVはAAV8であり、それへと送達が変更される標的臓器は膵臓であり;未改変AAVはAAV2、AAV5、AAV8であり、それへと送達が変更される標的臓器は眼の光受容細胞であり;未改変AAVはAAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8であり、それへと送達が変更される標的臓器は網膜色素上皮(RPE)であり;未改変AAVはAAV1、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9であり、それへと送達が変更される標的臓器は骨格筋である。
【0057】
一部の実施形態では、改変rAAVは、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象に投与される場合、同じ投与経路によって投与される、未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVの同じ用量よりも低い肝毒性を有する。一部の実施形態では、哺乳動物対象はヒト対象または非ヒト霊長類である。
【0058】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかで使用するための組成物を提供する。
【0059】
一態様では、組換えAAV(rAAV)を投与するステップによって哺乳動物対象(例えば、ヒト患者)を処置する方法において、改善は、哺乳動物対象への投与後のrAAV生体内分布を変更する手段を有するカプシドを含む改変rAAVの治療有効用量を投与するステップを含む。
【0060】
一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、rAAVの肝臓クリアランスを減少させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、標的臓器の細胞の形質導入を高める。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における発現を上昇させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、標的臓器の細胞の形質導入を低下させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器の細胞における発現を低下させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、標的臓器以外の細胞の形質導入を高める。
【0061】
ある特定の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞における発現を上昇させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、標的臓器以外の細胞の形質導入を低下させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、組換え核酸ベクターによってコードされる発現可能なポリペプチドの標的臓器以外の細胞における発現を低下させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、改変rAAVと哺乳動物対象の細胞上で発現したAAVRとの相互作用を変更する。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、改変rAAVとAAVRとの相互作用を減少させる。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、改変rAAVとAAVRとの相互作用を高める。一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVよりも肝毒性が低い。
【0062】
ある特定の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓細胞への遺伝子導入の10分の1の減少を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓細胞への遺伝子導入の10倍の増加を達成する。
【0063】
一部の実施形態では、改変rAAVは、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓細胞への遺伝子導入の100倍の増加を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓細胞への遺伝子導入の100分の1の低下を達成する。
【0064】
ある特定の実施形態では、改変rAAVは、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓細胞への遺伝子導入の1000倍の増加を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓細胞への遺伝子導入の1000分の1の減少を達成する。
【0065】
「突然変異」という用語は、未処理のもしくは天然の配列における、または核酸もしくはアミノ酸における変化または変更を指す。突然変異は天然に存在する場合もあれば、突然変異が実験室で操作されている場合もある(例えば、人工の)。
【0066】
本明細書で使用される「未改変AAVカプシドタンパク質」という用語は、天然に存在するAAV血清型のVP1、VP2、またはVP3の各カプシドタンパク質、または当技術分野で利用可能なまたは既知の天然に存在しないVP1、VP2、またはVP3の各カプシドタンパク質を指す。天然に存在しないVP1、VP2、またはVP3の各カプシドタンパク質には、天然に存在するAAVカプシドタンパク質の生物学的または化学的変更または変形によって生成されたカプシドタンパク質が含まれる。したがって、未改変AAVカプシドタンパク質には、それらに限定されないが、種々のAAV血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3B、AAV5、AAV6、AAV8、およびAAV9)のカプシドタンパク質またはそのバリアントが含まれる。本明細書で使用される場合、「バリアント」とは、当技術分野で利用可能または既知の指示された血清型の天然に存在するまたは人工的に創製された類縁体を指す。天然に存在しないVP1、VP2、またはVP3の各カプシドタンパク質には、インシリコ設計または合成によって創製された人工カプシドタンパク質がさらに含まれる。人工カプシドタンパク質には、それらに限定されないが、それらが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、PCT/US2014/060163号、米国特許第9695220号明細書、PCT/US2016/044819号、PCT/US2018/032166号、PCT/US2019/031851号、およびPCT/US2019/047546号に開示のAAVカプシドタンパク質が含まれる。
【0067】
代表的な未改変AAVカプシドタンパク質は、限定されないが、AAV2(配列番号1);AAV1(配列番号4);AAV6(配列番号5);AAV3(配列番号6);AAV LK03(配列番号7);AAV7(配列番号8);AAV8(配列番号9);AAV hu.37(配列番号10);AAV rh.10(配列番号11);AAV9(配列番号12);AAV hu.68(配列番号13);AAV10(配列番号14);AAV5(配列番号15);AAV3-3(配列番号16);AAV4-4(配列番号17);AAV1-A(配列番号18);hu.46-A(配列番号19);hu.48-A(配列番号20);hu.44-A(配列番号21);hu.43-A(配列番号22)、AAV6-A(配列番号23);hu.34-B(配列番号24)、hu.47-B(配列番号25)、hu.29-B(配列番号26)、rh.63-B(配列番号27)、hu.56-B(配列番号28)、hu.45-B(配列番号29)、rh.57-B(配列番号30)、rh.35-B(配列番号31);rh.58-B(配列番号32);rh.28-B(配列番号33);rh.51-B(配列番号34);rh.19-B(配列番号35);rh.49-B(配列番号36)、rh.52-B(配列番号37);rh.13-B(配列番号38);AAV2-B(配列番号39);rh.20-B(配列番号40);rh.24-B(配列番号41);rh.64-B(配列番号42);hu.27-B(配列番号43);hu.21-B(配列番号44);hu.22-B(配列番号45);hu.23-B(配列番号46);hu.7-C(配列番号47);hu.61-C(配列番号48);rh.56-C(配列番号49);hu.9-C(配列番号59);hu.54-C(配列番号51);hu.53-C(配列番号52);hu.60-C(配列番号53);hu.55-C(配列番号54);hu.2-C(配列番号55);hu.1-C(配列番号56);hu.18-C(配列番号57);hu.3-C(配列番号58);hu.25-C(配列番号59);hu.15-C(配列番号60);hu.16-C(配列番号61);hu.11-C(配列番号62);hu.10-C(配列番号63);hu.4-C(配列番号64);rh.54-D(配列番号65);rh.48-D(配列番号66);rh.55-D(配列番号67);rh.62-D(配列番号68);AAV7-D(配列番号69);rh.52-E(配列番号70);rh.51-E(配列番号71);hu.39-E(配列番号72);rh.53-E(配列番号73);hu.37-E(配列番号74);rh.43-E(配列番号75);rh.50-E(配列番号76);rh.49-E(配列番号77);rh.61-E(配列番号78);hu.41-E(配列番号79);rh.64-E(配列番号80);hu.42-E(配列番号81);rh.57-E(配列番号82);rh.40-E(配列番号83);hu.67-E(配列番号84);hu.17-E(配列番号85);hu.6-E(配列番号86);hu.66-E(配列番号87);rh.38-E(配列番号88);hu.32-F(配列番号89);AAV9/hu(配列番号90);hu.31-F(配列番号91);Anc80(配列番号92);Anc81(配列番号93);Anc82(配列番号94);Anc83(配列番号95);Anc84(配列番号96);Anc94(配列番号97);Anc113(配列番号98);Anc126(配列番号99);Anc127(配列番号100);Anc80L27(配列番号101);Anc80L59(配列番号102);Anc80L60(配列番号103);Anc80L62(配列番号104);Anc80L65(配列番号105);Anc80L33(配列番号106);Anc80L36(配列番号107);Anc80L44(配列番号108);Anc80L1(配列番号109);Anc110(配列番号110);およびAnc80DI(配列番号111)から選択されるAAVのVP1、VP2またはVP3の各カプシドタンパク質とすることができる。
【0068】
本明細書で使用される「未改変rAAV」という用語は、未改変AAVカプシドタンパク質のみを含む組換えAAV(rAAV)を指す。
【0069】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、方法および物質の組成物が属する技術の当業者により、一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と類似または等価の方法および材料が、方法および物質の組成物の実行または試験に使用することができるが、適切な方法および材料について下に記載する。加えて、材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定することを意図しない。本明細書で述べられた全ての刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】プールされたバーコード化ライブラリー内のAAVバリアント用のライブラリー構築物の最小設計を示す概略図である。ITR、逆位末端反復;ポリA、ポリアデニル化シグナル;ORF、オープンリーディングフレーム。
【
図2】AAV2カプシドタンパク質配列(配列番号1)に対するAnc126(配列番号99)VP1およびAnc127(配列番号100)VP1のカプシドタンパク質配列のアライメントの図である。AAVRフットプリント(AAVカプシドタンパク質配列のAAVR結合ドメイン)と相互作用すると予測されるAAV2カプシド配列の残基は枠で囲まれている。
【
図3】マウスの肝臓への標的指向化に関するAnc126バリアントの相対的ランクを例示するフィンガープリントプロットの図である。各Anc126バリアントを、マルチプレックスAnc126ライブラリーのIV投与後の肝臓取込みに基づいて上位から下位までランク付けした。列は、Anc126内の多様性を構成する、バリエーションの9カ所の位置を示す。バリエーションの各位置は可能な2個の残基を有するが、ここでは黒色または白色として表されている。上位半分の順位または下位半分の順位いずれかにおけるその特定の残基(すなわち、黒)を有するバリアントのパーセントを、添付の表に指示する。
【
図4】マウスの肝臓への標的指向化に関するAnc127バリアントの相対的ランクを例示するフィンガープリントプロットの図である。各Anc127バリアントを、マルチプレックスAnc127ライブラリーのIV投与後の肝臓取込みに基づいて上位から下位までランク付けした。列は、Anc127内の多様性を構成する、バリエーションの10カ所の位置を示す。バリエーションの各位置は可能な2個の残基を有するが、ここでは黒色または白色として表されている。上位半分の順位または下位半分の順位いずれかにおけるその特定の残基(すなわち、黒)を有するバリアントのパーセントを、添付の表に指示する。
【
図5】マウスの肝臓への標的指向化に関するAnc126(5A)およびAnc127(5B)のバリアントの相対的順位を例示するフィンガープリントプロットの図である。Anc126およびAnc127の各バリアントを、マルチプレックスAnc126およびAnc127のライブラリーのIV投与後の肝臓取込みに基づいて上位から下位までランク付けした。列は、Anc126およびAnc127のライブラリー内の多様性を構成する、バリエーションの位置を示す。バリエーションの各位置は可能な2個の残基を有するが、ここでは黒色または白色として表されている。上位半分の順位または下位半分の順位いずれかにおけるその特定の残基(すなわち、黒)を有するバリアントのパーセントを、添付の表に指示する。
【
図6】異なる2匹の非ヒト霊長類に投与された、残基266にグリシン(黒)またはアラニン(白)を有するAnc80ライブラリーのフィンガープリントプロットの図である。
【
図7-1】本明細書に記載の方法で使用することができるVP1カプシドタンパク質(AAV2(配列番号1);AAV1(配列番号4);AAV6(配列番号5);AAV3(配列番号6);AAV LK03(配列番号7);AAV7(配列番号8);AAV8(配列番号9);AAV hu.37(配列番号10);AAV rh.10(配列番号11);AAV9(配列番号12);AAV hu.68(配列番号13);AAV10(配列番号14);およびAAV5(配列番号15))のアライメントを表す図である。本明細書に記載の可変トグル残基の位置は枠で囲まれている。
【
図8-1】本明細書に記載の方法で使用することができるAAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列(AAV5(配列番号15);AAV3-3(配列番号16);AAV4-4(配列番号17);AAV1-A(配列番号18);hu.46-A(配列番号19);hu.48-A(配列番号20);hu.44-A(配列番号21);hu.43-A(配列番号22)、AAV6-A(配列番号23);hu.34-B(配列番号24)、hu.47-B(配列番号25)、hu.29-B(配列番号26)、rh.63-B(配列番号27)、hu.56-B(配列番号28)、hu.45-B(配列番号29)、rh.57-B(配列番号30)、rh.35-B(配列番号31);rh.58-B(配列番号32);rh.28-B(配列番号33);rh.51-B(配列番号34);rh.19-B(配列番号35);rh.49-B(配列番号36)、rh.52-B(配列番号37);rh.13-B(配列番号38);AAV2-B(配列番号39);rh.20-B(配列番号40);rh.24-B(配列番号41);rh.64-B(配列番号42);hu.27-B(配列番号43);hu.21-B(配列番号44);hu.22-B(配列番号45);hu.23-B(配列番号46);hu.7-C(配列番号47);hu.61-C(配列番号48);rh.56-C(配列番号49);hu.9-C(配列番号59);hu.54-C(配列番号51);hu.53-C(配列番号52);hu.60-C(配列番号53);hu.55-C(配列番号54);hu.2-C(配列番号55);hu.1-C(配列番号56);hu.18-C(配列番号57);hu.3-C(配列番号58);hu.25-C(配列番号59);hu.15-C(配列番号60);hu.16-C(配列番号61);hu.11-C(配列番号62);hu.10-C(配列番号63);hu.4-C(配列番号64);rh.54-D(配列番号65);rh.48-D(配列番号66);rh.55-D(配列番号67);rh.62-D(配列番号68);AAV7-D(配列番号69);rh.52-E(配列番号70);rh.51-E(配列番号71);hu.39-E(配列番号72);rh.53-E(配列番号73);hu.37-E(配列番号74);rh.43-E(配列番号75);rh.50-E(配列番号76);rh.49-E(配列番号77);rh.61-E(配列番号78);hu.41-E(配列番号79);rh.64-E(配列番号80);hu.42-E(配列番号81);rh.57-E(配列番号82);rh.40-E(配列番号83);hu.67-E(配列番号84);hu.17-E(配列番号85);hu.6-E(配列番号86);hu.66-E(配列番号87);rh.38-E(配列番号88);hu.32-F(配列番号89);AAV9/hu(配列番号90);およびhu.31-F(配列番号91)のアライメントを表す図である。本明細書に記載の可変トグル残基の位置は枠で囲まれている。
【
図9-1】本明細書に記載の方法で使用することができるAAV Ancカプシドタンパク質のアミノ酸配列(Anc80(配列番号92)、Anc81(配列番号93)、Anc82(配列番号94)、Anc83(配列番号95)、Anc84(配列番号96)、Anc94(配列番号97)、Anc113(配列番号98)、Anc126(配列番号99)、Anc127(配列番号100)、Anc80L27(配列番号101)、Anc80L59(配列番号102)、Anc80L60(配列番号103)、Anc80L62(配列番号104)、Anc80L65(配列番号105)、Anc80L33(配列番号106)、Anc80L36(配列番号107)、Anc80L44(配列番号108);Anc80L1(配列番号109);Anc110(配列番号110)、Anc80DI(配列番号111)のアライメントを表す図である。 配列のうち、配列番号92~100は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,695,220号明細書に開示の祖先AAVカプシドライブラリーの配列である。ライブラリーは、Anc80(配列番号92)、Anc81(配列番号93)、Anc82(配列番号94)、Anc83(配列番号95)、Anc84(配列番号96)、Anc94(配列番号97)、Anc113(配列番号98)、Anc126(配列番号99)、Anc127(配列番号100)を含む。
図9-1、9-2、9-3、および9-4は、各ライブラリーの単一メンバー配列(配列番号92~100)を使用して作成したが、ライブラリーの他のメンバーを用いて同じ解析およびアライメントを行って、可変トグル残基の位置を特定することができる。 本明細書に記載の可変トグル残基の位置は枠で囲まれている。トグル部位の1個または複数のアミノ酸を、本明細書に記載のように置換する、挿入する、および/または欠失させて、所望のAAV生体内分布を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本開示が指示するところは、AAVとAAVRとの間の相互作用に関する様々なポイントを通して、肝臓の細胞へのおよび肝臓の細胞の中へのAAVの生体内分布(例えば、ベクターの取込みおよび形質導入の量)ならびに標的細胞の導入遺伝子などの発現可能な核酸の発現を、調節する(例えば、低下または上昇させる)ことができるとともに、一方、他の臓器や筋肉などの末梢組織の細胞の形質導入を維持しまたは高めさえもすることである。本開示は、指針であって、AAVが細胞に機能的に侵入し、形質導入するように、AAVがAAV受容体と会合しこれに結合するAAVの能力を維持するが、その上で、形質導入を改変するのに十分な様式で、AAVの親和性、結合活性、結合、および解離定数、および/または受容体-リガンド動態を変化させ、その結果、in vivo投与後の体内で、肝臓およびその他の臓器および組織、例えば、筋肉組織における細胞へのAAVの生体内分布を変更する、ような形で、AAVカプシドタンパク質配列を変更してAAVR-AAV相互作用を調節する方法に関する、指針を提供する。本開示に基づいて、AAVの配列を変更して、例えば、患者または対象内で、肝臓細胞およびその他の細胞へのAAVの結合を阻害することなく、肝臓細胞のAAVによる形質導入を調節することによって、AAVの生体内分布を調節することができる。
【0072】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
実験的または治療的目的のいずれかのための遺伝子導入は、遺伝子情報を標的細胞にシャトルするのにベクターまたはベクターシステムを必要とする。ベクターまたはベクターシステムは、遺伝子導入反応の効率、特異性、宿主応答、薬理学、および寿命の主な決定要因と考えられている。現在、遺伝子導入を行うのに最も効率的かつ効果的な方法は、複製欠損とされたウイルスに基づくベクターまたはベクターシステムの使用によるものである。遺伝子治療媒体として成功を示したベクターの一部は、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づいている。
【0073】
ウイルスポリペプチドは、例えば、パッケージング宿主細胞を使用してウイルス粒子に組み立てることができる。ウイルス粒子の成分(例えば、rep配列、cap配列、逆位末端反復(ITR)配列)は、本明細書に記載の1つまたは複数のウイルスベクターを使用して、パッケージング宿主細胞に導入することができる。一度組み立てれば、肝臓を標的とするその能力についてウイルス粒子をスクリーニングすることができる。肝臓を標的とするAAVの能力を決定する方法は、本明細書に記載されている(例をあげると、実施例3を参照されたい)。
【0074】
加えて、本明細書に記載のウイルス粒子は、任意の数の他の特性または表現型(例えば、複製する能力;遺伝子導入特性;受容体結合能力;および/または集団における血清有病率)についてスクリーニングすることができる。加えて、ウイルス粒子がその受容体に結合するかどうか判定する方法は当技術分野で知られており、かかる方法は、in vitroまたはin vivoで行うことができる。
【0075】
ウイルス粒子は、所望であれば、ルーチン法を使用して精製することができる。本明細書で使用される場合、「精製された」ウイルス粒子とは、これらが作製された、それらに限定されないが、ウイルス成分(例えば、rep配列、cap配列)、パッケージング宿主細胞、および部分的または不完全に組み立てられたウイルス粒子などの混合物中の成分から取り出されるウイルス粒子を指す。
【0076】
AAV肝臓トグル
先に、当該位置で異なる2つのアミノ酸(グリシンとアラニン)の間でトグル切替え(toggled)を行うと、マウス、非ヒト霊長類、およびヒト化肝臓を有するマウス、ならびにヒト肝細胞の共培養物において、AAVを静脈内注射した後、肝臓取込みおよび発現を定量的に変更した、AAV VP1カプシドタンパク質内の特定の位置が特定された(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2019/217911号パンフレットを参照されたい)。この観察は、Anc80AAVバリアントライブラリーを使用して最初になされた;Anc80は、予測された祖先AAV足場配列である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2015/054653号パンフレットを参照されたい)。この観察は重要であるが、なぜなら、そういった特定の残基の変化(GからA、またはAからG)は、起こり得る最も保存的なアミノ酸置換のうちの1つであり、その上で、かかる保存的変化によって極めて明確な肝臓-オン/肝臓-オフのトグル切替え(toggling)がなおも付与されるからである。
【0077】
さらなる研究によって、こういった保存されたトグルの関連性が、天然のAAVバリアントであるAAV3BおよびAAV9を含めて、他のAAVウイルスにまで拡大されたが、この場合、上記の天然のバリアントはそれぞれ「肝臓-オフ」の位置または「肝臓-オン」の位置にあったのである。この研究に基づいて、指示されたアミノ酸置換を作製することにより、各肝臓の状態を逆の状態に変換することができた(例えば、国際公開第2019/217911号パンフレットを参照されたい)。加えて、Anc80およびAAV9の肝臓トグル「オフ」バリアントに関するデータが実証したところは、肝臓への標的指向化が大幅に減少する一方で、筋肉などの非肝臓組織での取込みが定量的に保たれるか、ある特定の場合では、上昇することである。
【0078】
本明細書に記載の「肝臓トグル」配列のうちの1つまたは複数を特定することおよび変化させること(例えば、AAVを肝臓-オンから肝臓-オフに、またはその逆に変化させるため)には、生成する構造的特徴の構成による場合があるが、配列の構成が保たれることが必要であることを、当業者であれば理解するであろう。少なくともこの理由のために、本明細書で言及される位置の番号付けは、配列番号1に示される、AAV2 VP1タンパク質の配列に対するものである。天然に存在する例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、hu.37、LK-03、AAV5、AAV10、およびHu68であろうと、または、改変のもしくはバリアントの、例えばAAV ShH10、およびAAV-DJであろうとも、ならびにバリアントの、例えばAnc80 AAVバリアントライブラリー(例えば、国際公開第2015/054653号パンフレットを参照されたい)Anc80;Anc81;Anc82;Anc83;Anc84;Anc94;Anc113;Anc126;Anc127;Anc80L27;Anc80L59;Anc80L60;Anc80L62;Anc80L65;Anc80L33;Anc80L36;Anc80L44;Anc80L1;Anc110;Anc80DIであろうとも、任意のAAVを未改変配列、すなわち参照配列として使用することが可能であるが、異なる参照配列が使用される場合、数値上の位置は本明細書で言及されるものから変化する場合があることが理解されよう。
【0079】
配列の構成、または他方に対する一方の配列における1個または複数のアミノ酸の位置は、典型的には、配列アライメントアルゴリズムを使用して決定される(例えば、ワールドワイドウェブ上でncbi.nlm.nih.govで利用可能なBLAST(基本ローカル整列化検索ツール)プログラムに組み込まれている、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res., 25:3389 3402)。BLASTまたは類似のアルゴリズムを使用して、2つの配列のアライメントを取り(例えば、2つの配列が例えば長さが異なっていても、「対応する」位置で残基を特定して)、その結果、モチーフまたはコンセンサス配列を特定することができ、および/または2つ以上の配列(核酸またはアミノ酸)間のパーセント配列同一性を決定することができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、2つの配列を比較する場合に使用される「デフォルトパラメーター」は、2020年9月9日にワールドワイドウェブ上でblast.ncbi.nlm.nih.govで実装されたBLASTアルゴリズム(Version BLAST+ 2.10.1)を使用するデフォルトパラメーターである。タンパク質配列のアライメントを取る場合、デフォルトのパラメーターはBLASTPである:パラメーターは短い入力配列に対して自動的に調整;予測される閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ-範囲における最大一致:0;行列:BLOSUM62;gapコスト:存在11,拡張1;組成調整(compositional adjustments):条件付き組成スコア行列調整(conditional compositional score matrix adjustment);およびフィルターまたはマスクなし。核酸配列のアライメントを取る場合、デフォルトのパラメーターはBLASTNである:パラメーターは短い入力配列に対して自動的に調整;予測される閾値:10;ワードサイズ:28;クエリ-範囲における最大一致:0;マッチ/ミスマッチスコア:1,-2;gapコスト:リニア;フィルター:複雑度が低い領域;およびマスク:早見表の場合のみ。
【0081】
例えば、いくつかの様々なAAV血清型由来のVP1カプシドタンパク質の
図7および
図8に示されるアライメント、または同様に作成されたアライメントは、「パイルアップ」と呼ばれることもあるが、例えば、AAV2またはその他の未改変AAV配列に対するアミノ酸の位置を特定するのに使用することができる、一方法である。
【0082】
AAV-AAVRの相互作用
AAV4およびrh.32.33以外のAAV血清型の大多数は、細胞の形質導入のためにAAV受容体(AAVR)を必要とし、したがってこれに依存性であることが先に示されている(Dudek et al., 2018, J. Virol., 92(7) pii: e02213-17)。本開示では、結合(例えば、親和性および/または結合活性)を変更してこの相互作用に改変された「オフ」率をもたらすことによって、AAVR-AAV相互作用を調節するために、AAVカプシドタンパク質配列に起こすことができる特定の変化について、記載する。in vivoで使用される場合、AAVカプシドタンパク質配列に対するそうした特定の変化によって、肝臓取込みの「肝臓-オン」ベクターと「肝臓-オフ」ベクターとの関係が劇的に変更されるが、このことが示唆するところは、AAVR-AAV相互作用の親和性が減少すると、血中を循環し、肝臓を通過するベクターの構成中の肝臓トグルオフベクターの結合および最終的な取込みが、制限されることである。
【0083】
本明細書に記載のデータがさらに指示するところは、非肝臓組織、特に血管系から区画化されたそうした組織(例えば、筋肉組織)において、AAVの取込みおよび形質導入は保たれており、ある特定の実施形態では、肝臓を脱標的化した(liver-de-targeted)ベクターについては高まることである。理論に拘束されることを望むものではないが、このことは、そうした非肝臓組織では、AAVR-AAV結合親和性は、血行路が存在しない場合よりも形質導入への影響力が小さいからかもしれないと思われ、したがってAAVはより長い持続期間、組織に近接して存在し、その結果、最終的な組織標的指向化に及ぼす結合動態の影響を低減させる。再び、理論に拘束されることを望むものではないが、ある特定の非肝臓組織で観察される、肝臓を脱標的化したAAVの形質導入に関するレベル上昇は、肝臓取込みによって枯渇するAAVは少ないと思われるので、生体内分布の上昇に起因すると付加的におよび/または代替的に考えられる。
【0084】
AAVRはほとんどの組織で多量に発現していると思われ、そのレベルはほとんどの組織にわたって比較的類似していると思われる。したがって、初期の予想に反して、AAVR発現が豊富であることはAAVの組織向性の直接的な予兆ではなかった。代わりに、本明細書に開示のデータに基づくと、AAV組織向性は、AAVRへの依存性を保持するAAV配列バリアントを含めて、主として変更されたAAV配列バリアントの影響を受ける。このことによって、AAVの構造がAAVRへの結合および/またはAAVRへの結合に関与する細胞補因子の会合に影響を与えることができることが示唆されている。
【0085】
AAVの生体内分布を改変する方法
AAV核酸分子に変化を導入し、その結果、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列の変化を起こすことができる。例えば、突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発、PCR媒介突然変異誘発、CRISPR/Cas9またはその他の部位特異的エンドヌクレアーゼ媒介突然変異誘発)を使用して、またはかかる変化を有する核酸分子を化学的に合成することによって、核酸コード配列に変化を導入することができる。かかる核酸の変化は、1個または複数のアミノ酸残基で保存的および/または非保存的アミノ酸置換をもたらすことができる。「保存的アミノ酸置換」とは、一アミノ酸残基が類似の側鎖を有する異なるアミノ酸残基と置き換えられているものである(例えば、アミノ酸置換に関する度数分布表を提供する、Dayhoff et al.(1978, in Atlas of Protein Sequence and Structure, 5(Suppl. 3):345-352)を参照されたい)。非保存的置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有さないアミノ酸残基と置き換えられているものである。
【0086】
本明細書に記載のように、カプシドタンパク質中の、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706またはV708の各位置(AAV2 VP1カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)は、AAVRへの結合に関与しており、これらの位置のいずれか1つまたは複数を、それらの当初のアミノ酸から、例えば、そういった位置にある野生型または天然に存在するアミノ酸から、またはバリアントAAV内のそういった位置に存在するアミノ酸から、変化させて、肝臓細胞に形質導入するAAVの能力を変更する様式で、改変AAVカプシドタンパク質と肝臓細胞上のAAV受容体(AAVR)との間の結合を改変する(しかし阻害しない)ことができ、その結果、AAVが対象または患者に投与されそしてその血行路に入ると、肝臓細胞への向性または生体内分布が変更される。したがって、改変された(例えば、天然に存在しない)AAVの向性に関して変更をもたらす様式で、示された位置で1個または複数の残基に変化を起こすが、この変化によって所与の細胞へのAAVRへのAAVの結合を阻害せず、このことによって、肝臓を脱標的化したAAVが体内の他の種類の細胞に結合し、形質導入することが可能となる。
【0087】
具体的には、AAVのVP1カプシドタンパク質内の少なくとも446、471、および/または708の位置(AAV2 VP1カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)は、それらの当初の、または野生型の配列から変化させることができる。下の実施例で実証されるように、AAVカプシドが位置446にR、位置471にA、および/または位置708にTを含有する場合、肝臓細胞への生体内分布を上昇させることができるが、一方、AAVカプシドが位置446にS、位置471にS、および/または位置708にA(AAV2(配列番号1)に対して全て番号付けされている)を含有する場合、肝臓細胞への生体内分布を低下させることができる。一部の実施形態では、VP1タンパク質は、以下の変化のうちの1個または複数を含有する:S446N、S446R、R471A、R471S、V708T、またはV708A(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)。
【0088】
具体的には、AAVのVP1カプシドタンパク質内の少なくとも446、471、および/または708の位置(AAV2 VP1カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)は、それらの当初の、または野生型の配列から変化させることができる。下の実施例で実証されるように、AAVカプシドが位置446にR、位置471にA、および/または位置708にTを含有する場合、肝臓細胞への生体内分布を上昇させることができるが、一方、AAVカプシドが位置446にS、位置471にS、および/または位置708にA(AAV2(配列番号1)に対して全て番号付けされている)を含有する場合、肝臓細胞への生体内分布を低下させることができる。一部の実施形態では、VP1タンパク質は、以下の変化のうちの1個または複数を含有する:S446N、S446R、R471A、R471S、V708T、またはV708A(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)。
【0089】
具体的には、AAVのVP1カプシドタンパク質内の少なくとも266、271、および/または446の位置(AAV2 VP1カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)は、それらの当初の、または野生型の配列から変化させることができる。AAVカプシドが、例えば位置266にAもしくはG、位置271にHもしくはT、および/または位置446にS、NもしくはRを含有する場合(AAV2(配列番号1)に対して全て番号付けされている)、肝臓細胞への生体内分布を変更することができる。一部の実施形態では、VP1タンパク質は、以下の変化のうちの1個または複数を含有する:A266G、H271T、R446A、またはR446S(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)。
【0090】
具体的には、AAVのVP1カプシドタンパク質内の少なくとも471、589、および/または708の位置(AAV2 VP1カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)は、それらの当初の、または野生型の配列から変化させることができる。AAVカプシドが、例えば位置471にR、AもしくはS、位置589にQもしくはA、および/または位置708にV、TもしくはAを含有する場合(AAV2(配列番号1)に対して全て番号付けされている)、肝臓細胞への生体内分布を変更することができる。一部の実施形態では、VP1タンパク質は、以下の変化のうちの1個または複数を含有する:R471A、R471S、Q589A、V708T、またはV708A(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)。
【0091】
具体的には、AAVのVP1カプシドタンパク質内の少なくとも266、446、および/または589の位置(AAV2 VP1カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)は、それらの当初の、または野生型の配列から変化させることができる。下の実施例で実証されるように、AAVカプシドが位置266にAもしくはG、位置446にS、NもしくはR、および/または位置589にQもしくはAを含有する場合(AAV2(配列番号1)に対して全て番号付けされている)、肝臓細胞への生体内分布を変更することができる。一部の実施形態では、VP1タンパク質は、以下の変化のうちの1個または複数を含有する:A266G、S446N、S446R、またはQ589R(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)。
【0092】
具体的には、AAVのVP1カプシドタンパク質内の少なくとも271、446、および/または471の位置(AAV2 VP1カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)は、それらの当初の、または野生型の配列から変化させることができる。AAVカプシドが位置271にHもしくはT、位置446にS、NもしくはR、および/または位置471にR、AもしくはSを含有する場合(AAV2(配列番号1)に対して全て番号付けされている)、肝臓細胞への生体内分布を変更することができる。一部の実施形態では、VP1タンパク質は、以下の変化のうちの1個または複数を含有する:H271T、S446N、S446R、R471AまたはR471S(AAV2カプシド配列(配列番号1)に対して番号付けされている)。
【0093】
核酸は、限定されないが、化学合成、組換え核酸技術、および/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含めて、任意の数の方法を使用して入手または生成することができる。一般的なPCR技法は、例えばPCR Primer:A Laboratory Manual(Dieffenbach & Dveksler, Eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)に記載されており、組換え核酸技法は、例えば制限酵素消化およびライゲーションを含む。例えば、Sambrook et al.(1989, Molecular Cloning; a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を参照されたい。
【0094】
ポリペプチドをコードする核酸分子を含有するベクターもまた、提供される。発現ベクターを含めて、ベクターは、市販されており、または、組換え技術に生成することができる。核酸分子を含有するベクターは、かかる核酸分子に作動可能に連結された、発現用の1個または複数のエレメントを有することができるとともに、さらに、選択可能マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)をコードするもの、および/またはポリペプチドの精製において使用することができるもの(例えば、6xHisタグ)などの配列を含むことができる。発現用のエレメントは、核酸がコードする配列の発現を方向付け調節する核酸配列を含む。発現エレメントの一例は、プロモーター配列である(例えば、CMVまたは限定されないが、p5、pl9、およびp40などの他の適切なウイルスプロモーター)。発現エレメントはまた、核酸分子の発現を調節する、イントロン、エンハンサー配列、応答エレメント、または誘導性エレメントのうちの1つまたは複数を含むことができる。発現エレメントは、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物、またはウイルスの起源のものとすることができ、ベクターは、様々な起源由来の発現エレメントの組合せを含有することができる。本明細書で使用される場合、作動可能に連結されるとは、発現用のエレメントが、コード配列の発現を方向付けるまたは調節するように、ベクター中にコード配列に対して配置されていることを意味する。
【0095】
核酸分子、例えば、ベクター(例えば、発現ベクター、ウイルスベクター)の核酸分子を、宿主細胞中に導入することができる。「宿主細胞」という用語は、核酸分子がその中に導入されている特定の細胞を指すだけではなく、かかる細胞の子孫または潜在的な子孫をも指す。適切な多くの宿主細胞が、当業者に知られており;宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(E. coli))であっても、真核細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞)であってもよい。代表的な宿主細胞には、限定されないが、A549、WEHI、3T3、10T1/2、BHK、MDCK、COS 1、COS 7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、WI38、HeLa、293細胞、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、ならびに、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、およびハムスターを含めて、哺乳動物に由来する初代線維芽細胞、肝細胞、および筋芽細胞が含まれ得る。核酸分子を宿主細胞中に導入する方法は、当技術分野において良く知られており、限定されないが、それには、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクション、およびウイルス媒介性核酸導入(例えば、形質導入)が含まれる。
【0096】
トグル部位
本開示では、rAAVが哺乳動物対象に投与される場合、in vivoで標的指向化を変化させるように改変することができる、AAVカプシドタンパク質の特定の残基が提供される。特定の残基の改変によって、標的細胞の形質導入および/または標的細胞における導入遺伝子の発現を変更することができる。特定の残基はトグル部位と呼ばれる。
【0097】
トグル部位は、具体的には、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706およびV708で、AAVカプシドタンパク質とAAVRとの間の相互作用に関与するアミノ酸残基を含み、ここで、アミノ酸の位置は、配列番号1(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。
図7-1~7-3、
図8-1~8-31および
図9-1~9-4に、種々の未改変AAV VP1カプシドタンパク質のアミノ酸配列上で強調されているそれぞれのトグル部位を示す。
【0098】
AAVの標的特異的向性は、トグル部位で1個または複数のアミノ酸を変化させることによって変更することできる。本明細書で提供の改変カプシドタンパク質(例えば、改変VP1カプシド)は、未改変のカプシドタンパク質と比較して、トグル部位、すなわちQ263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708に、1個または複数のアミノ酸の相違を含む。
【0099】
一部の実施形態では、改変は、S446、R471およびV708からなる選択されたトグル部位で導入される。一部の実施形態では、改変はA266にはない。
【0100】
トグル部位の改変によって、改変rAAVの生体内分布を変更することができる。一部の実施形態では、改変によって、未改変rAAVと比較して、標的細胞の形質導入が高まる。一部の実施形態では、改変によって、標的細胞において、未改変rAAVと比較して、改変rAAVにより送達される発現可能なポリヌクレオチドの発現が上昇する。一部の実施形態では、改変によって、未改変rAAVと比較して、標的細胞の形質導入が低下する。一部の実施形態では、改変によって、標的細胞において、未改変rAAVと比較して、改変rAAVにより送達される発現可能なポリヌクレオチドの発現が低下する。一部の実施形態では、標的は肝臓であり、標的細胞は肝細胞である。一部の実施形態では、標的は肝臓ではない。
【0101】
改変AAVカプシドタンパク質
本開示の改変カプシドタンパク質は、未改変rAAVの生体内分布と比較して、哺乳動物対象への投与後のrAAV生体内分布を変更する手段を含み、未改変rAAVは、前記手段を除いて、改変rAAVのものと同一のアミノ酸配列を有するVP1、VP2、およびVP3のカプシドタンパク質を含む。改変カプシドタンパク質を含むrAAVは、改変rAAVと呼ばれる。
【0102】
本発明の手段は、局所的または全身的に投与される場合、生体内分布を変更することができる。一部の実施形態では、手段は、静脈内注入される場合に生体内分布を変更する。
【0103】
一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、哺乳動物対象の細胞上で発現される、改変rAAVとAAVRとの相互作用を変化させる。例えば、rAAV生体内分布を変更する手段は、改変rAAVとAAVRとの相互作用を減少または上昇させる。一部の実施形態では、手段は、未改変AAVカプシドタンパク質とAAVRと比較して、改変AAVカプシドタンパク質とAAVRとの間の結合親和性または結合安定性を変化させる。一部の実施形態では、手段は、AAVカプシドタンパク質(VP1、VP2、またはVP3の各カプシドタンパク質)とAAVRとの間の相互作用インターフェースの変化を含む。
【0104】
一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708からなる群から選択される1つまたは複数の位置で、ある特定のアミノ酸残基の存否を含み、ここで、アミノ酸の位置は、配列番号1(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。一部の実施形態では、2個以上のアミノ酸を、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708からなる群から選択される1つまたは複数の位置で、置換する、挿入する、および/または欠失させて、rAAV生体内分布を変更する手段を導入することができる。
【0105】
一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、トグル部位、すなわちQ263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708のうちの1つまたは複数で、1個または複数のアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を含む。アミノ酸の置換、挿入および/または欠失によって、表1A、1B、1Cおよび表2に提供するように、異なるAAVカプシドの同じトグル部位に存在する1個または複数の様々なアミノ酸残基に、1個または複数の当初のアミノ酸残基をトグル部位で、変化させることができる。例えば、Q263トグル部位(AAV2に対して)を、Qから、A、E、T、またはGのうちのいずれかに変化させることできる。AAV1のQ264トグル部位を、SからG、T、AまたはVのうちのいずれかに変化させることできる。
図7-1~7-3および
図8-1~8-31では、1個または複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を導入することができるトグル部位を枠でもって強調してある。
【0106】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、配列番号112~137に示す配列を有する。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、配列番号112~137に示す配列のうちの1つと少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または95.5%の同一性を有する配列を有する。
【0107】
一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、トグル部位、すなわちQ263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708のうちの1つに1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を備える配列番号1~100に示す配列のうちの1つを有し、ここで、アミノ酸の位置は、配列番号1(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、選択されたトグル部位、すなわちS446、R471およびV708のうちの1つに1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を備える配列番号1~100に示す配列のうちの1つを有し、ここで、アミノ酸の位置は、配列番号1(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、トグル部位のうちの2カ所以上で1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含む。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、トグル部位のうちの2カ所で1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含む。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、トグル部位のうちの3カ所で1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含む。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、トグル部位のうちの4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20カ所で、1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含む。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、A266で1個または複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失、ならびにその他のトグル部位、すなわちQ263、S264、G265、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708に、1個または複数のさらなるアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含む。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、A266でアミノ酸置換を含まない。
【0112】
一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、選択されたトグル部位、すなわちS446、R471およびV708に、1個または複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、rAAV生体内分布を変更する手段は、選択されたトグル部位で2個のアミノ酸置換または3個のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、446R、471Aおよび708Tからなる群から選択される1個、2個、または3個のアミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、改変VP1カプシドタンパク質は、446S、471Sおよび708Aからなる群から選択される1個、2個、または3個のアミノ酸残基を含む。
【0113】
一部の実施形態では、改変AAVカプシドタンパク質は、デフォルトのパラメーターを使用してアライメントする場合、改変AAVカプシドタンパク質VP1タンパク質と最大の配列同一性を有する未改変AAVカプシドタンパク質とは相違する。一部の実施形態では、改変AAVカプシドタンパク質は、トグル部位、Q263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706、およびV708でのみ、最大の配列同一性を備える未改変AAVカプシドタンパク質とは相違しており、ここで、アミノ酸の位置は、配列番号1(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。一部の実施形態では、改変AAVカプシドタンパク質は、選択されたトグル部位、S446、R471、およびV708でのみ、最大の配列同一性を備える未改変AAVカプシドタンパク質とは相違しており、ここでアミノ酸の位置は、配列番号1(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。
【0114】
一部の実施形態では、改変AAVカプシドタンパク質は、トグル部位およびトグル部位以外で、最大の配列同一性を備える未改変のrAAVカプシドタンパク質とは相違する。一部の実施形態では、改変AAVカプシドタンパク質は、最大の配列同一性を備える未改変AAVカプシドタンパク質と95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の配列同一性を有する。
【0115】
一態様では、本開示では、改変AAVカプシドタンパク質をコードする改変ポリヌクレオチドが提供される。改変AAVカプシドタンパク質をコードする改変ポリヌクレオチドは、未改変AAVカプシドをコード未改変ポリヌクレオチドと比較して、(787~789)、(790~792)、(793~795)、(796~798)、(799~801)、(802~804)、(811~813)、(1144~1146)、(1150~1152)、(1153~1155)、(1336~1338)、(1411~1413)、(1504~1506)、(1507~1509)、(1582~1584)、(1585~1587)、(1765~1767)、(2116~2118)、または(2122~2124)からなる群から選択される1つまたは複数の位置で、1個または複数のヌクレオチド置換、挿入または欠失を有することができ、ここで、ヌクレオチドの位置は、配列番号141(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。ヌクレオチドの置換、挿入または欠失によってポリヌクレオチドによってコードされるカプシドタンパク質に、トグル部位、すなわちQ263、S264、G265、A266、S267、N268、H271、N382、G383、S384、Q385、S446、R471、W502、T503、D528、D529、Q589、K706およびV708、のうちの1つおよび複数で、1個または複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を導入することができる。
【0116】
一部の実施形態では、改変ポリヌクレオチドは、(787~789)、(790~792)、(793~795)、(796~798)、(799~801)、(802~804)、(811~813)、(1144~1146)、(1150~1152)、(1153~1155)、(1336~1338)、(1411~1413)、(1504~1506)、(1507~1509)、(1582~1584)、(1585~1587)、(1765~1767)、(2116~2118)、または(2122~2124)からなる群から選択される1つまたは複数の位置で1個または複数のヌクレオチド置換、挿入または欠失を備える、配列番号136~141に示す配列のうちの1つを含み、ここで、ヌクレオチドの位置は、配列番号141(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。
【0117】
一態様では、本開示では、改変AAVカプシドタンパク質をコードする改変ポリヌクレオチドが提供される。改変AAVカプシドタンパク質をコードする改変ポリヌクレオチドは、未改変AAVカプシドをコードする未改変のポリヌクレオチドと比較して、(1336~1338)、(1411~1413)または(2122~2124)からなる群から選択される1つまたは複数の位置で1個または複数のヌクレオチド置換、挿入または欠失を有することができ、ここで、ヌクレオチドの位置は、配列番号141(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。ヌクレオチドの置換、挿入または欠失によってポリヌクレオチドによってコードされるカプシドタンパク質に、選択されたトグル部位、すなわちS446、R471およびV708のうちの1つおよび複数で、1個または複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を導入することができる。ヌクレオチドの置換、挿入または欠失によって選択されたトグル部位、すなわちA266、S446、R471およびV708のうちの1つおよび複数で、1個または複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を導入することができる。
【0118】
一部の実施形態では、改変ポリヌクレオチドは、(1336~1338)、(1411~1413)または(2122~2124)からなる群から選択される1つまたは複数の位置で1個または複数のヌクレオチド置換、挿入または欠失を備える、配列番号147~151に示す配列のうちの1つを含み、ここで、ヌクレオチドの位置は、配列番号141(AAV2 VP1)に対して番号付けされている。
【0119】
別の態様では、本開示では、本明細書に記載の改変AAVカプシドタンパク質をコードする改変ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。一部の実施形態では、ベクターはプラスミドである。
【0120】
改変組換えAAV(改変rAAV)
本開示ではさらに、本明細書に開示の改変AAVカプシドタンパク質(VP1、VP2またはVP3の各カプシドタンパク質)および組換え核酸ベクターを含む改変rAAVが提供される。
【0121】
一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への投与後の肝臓のより高い形質導入を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有するVP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVで投与される発現可能なポリヌクレオチドの発現と比較して、哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ゲノム内の発現可能なポリヌクレオチドの肝臓における、より高い発現を達成する。
【0122】
一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有するVP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への投与後の肝臓のより低い形質導入を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有するVP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVで投与される発現可能なポリヌクレオチドと比較して、哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ゲノム内の発現可能なポリヌクレオチドの肝臓における、より低い発現を達成する。
【0123】
一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への投与後の肝臓以外の臓器のより高い形質導入を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVで送達される発現可能なポリヌクレオチドと比較して、組換え核酸ゲノム内の発現可能なポリヌクレオチドの肝臓以外の臓器における、より高い発現を達成する。
【0124】
一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVで送達される発現可能なポリヌクレオチドと比較して、組換え核酸ゲノム内の発現可能なポリヌクレオチドの肝臓以外の臓器のより低い形質導入を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有するVP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVで投与される発現可能なポリヌクレオチドと比較して、哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ゲノム内の発現可能なポリヌクレオチドの肝臓以外の臓器における、より低い発現を達成する。
【0125】
一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象の細胞上で発現される、AAVRとの相互作用を減少させた。一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によって送達される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象の細胞上で発現される、AAVRとのより大きな相互作用を有する。
【0126】
一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によっておよび同じ用量で投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVよりも肝毒性が低い。
【0127】
改変rAAVを含む医薬組成物
一態様では、本開示は、本開示の改変rAAVおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。改変rAAVは、本明細書に記載の改変AAVカプシドタンパク質、および発現可能なポリヌクレオチドを含有する組換え核酸ベクターを含む。
【0128】
本医薬組成物を使用して、組換え核酸ベクターを哺乳動物対象内の標的に送達することができる。医薬組成物が投与される場合、改変rAAVは、同じ投与経路によっておよび同じ用量で投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有する未改変VP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への投与後の、標的細胞のより高い形質導入を達成することができる。一部の実施形態では、改変rAAVは、同じ投与経路によっておよび同じ用量で投与される、改変VP1と最大の配列同一性を有するVP1カプシドタンパク質を含む未改変rAAVで投与される発現可能なポリヌクレオチドと比較して、哺乳動物対象への投与後の、組換え核酸ゲノム内の発現可能なポリヌクレオチドの標的細胞における、より高い発現を達成する。
【0129】
改変rAAVの標的指向化は、rAAVの形質導入または発現可能なポリヌクレオチドの発現を測定することにより、実験動物で試験することができる。一部の実施形態では、標的指向化は、非ヒト霊長類(NHP)、マウス、ラット、トリ、ウサギ、モルモット、ハムスター、家畜(ブタおよびヒツジを含めて)、イヌ、またはネコにおいて測定される。
【0130】
改変rAAVの標的指向化は、rAAVの全身投与または局所投与後に測定することができる。一部の実施形態では、改変rAAVの標的指向化は、rAAVの静脈内注入後に測定される。
【0131】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変のrAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に、肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、100分の1、200分の1、500分の1、750分の1、1000分の1、または2500分の1の減少を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に、肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、100分の1、200分の1、500分の1、750分の1、1000分の1、または2500分の1の減少を達成する。
【0132】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも10倍の上昇を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも10倍の上昇を達成する。
【0133】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において10分の1以下の減少を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において10分の1以下の減少を達成する。
【0134】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも10倍の上昇を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも10倍の上昇を達成する。
【0135】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において100分の1以下の減少を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において100分の1以下の減少を達成する。
【0136】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも100倍の上昇を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも100倍の上昇を達成する。
【0137】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において1000分の1以下の減少を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において1000分の1以下の減少を達成する。
【0138】
一部の実施形態では、改変rAAVは、未改変rAAVと比較して、哺乳動物対象への第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも1000倍の上昇を達成する。一部の実施形態では、改変rAAVは、アカゲザルへの第1の投与後に肝臓への遺伝子導入においてまたは肝臓細胞のウイルス感染もしくは導入遺伝子発現において少なくとも1000倍の上昇を達成する。
【0139】
肝臓-トグル切替えウイルスの使用方法
本明細書に記載の天然に存在しない改変AAVウイルス(例えば、この場合、VP1カプシドタンパク質配列が変化されてまたは操作されて、所望の生体内分布(例えば、肝臓-オンまたは肝臓オフ)を呈する)を、いくつかの研究応用および/または治療応用において使用することができる。例えば、肝臓-オンまたは肝臓-オフのウイルスを、遺伝子治療向けに(例えば、遺伝子導入用のベクターまたはベクターシステムにおいて)またはワクチン接種向けに(例えば、抗原提示向け)ヒトまたは動物の医薬において使用することができる。より具体的には、肝臓-オンまたは肝臓-オフのウイルスを、肝臓細胞または非肝臓細胞の、遺伝子付加、遺伝子増強、ポリペプチド治療薬の遺伝子送達、遺伝子ワクチン接種、遺伝子サイレンシング、ゲノム編集、遺伝子治療、RNAi送達、cDNA送達、mRNA送達、miRNA送達、miRNAスポンジング、遺伝子免疫、光遺伝学的遺伝子療法、遺伝子組換え、DNAワクチン接種、またはDNA免疫に使用することができる。
【0140】
カプシドタンパク質の配列が変化されてAAVの生体内分布(例えば、肝臓生体内分布)を変更している天然に存在しない改変AAVに、導入遺伝子(その他のウイルス配列とシスまたはトランス配置で)を含めることができる。導入遺伝子は、例えば、レポーター遺伝子(例えば、ベータ-ラクタマーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光ポリペプチド(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、またはルシフェラーゼ、または、血球凝集素やMycなどの抗原タグドメインを含む融合ポリペプチド)、または治療遺伝子(例えば、ホルモンもしくはその受容体、増殖因子もしくはその受容体、分化因子もしくはその受容体、免疫系調節因子(例えば、サイトカインおよびインターロイキン)もしくはその受容体、酵素、RNA(例えば、阻害性RNAもしくは触媒RNA)、または標的抗原(例えば、発癌性抗原、自己免疫性抗原)をコードする遺伝子)とすることができる。
【0141】
特定の導入遺伝子は、少なくとも一部は、治療される特定の疾患または欠損症に応じて選択されることになる。単に例として、遺伝子導入または遺伝子療法は、以下の処置に適用することができる:血友病、網膜色素変性症、嚢胞性線維症、レーベル先天黒内障、リソソーム蓄積症、先天性代謝異常(例えば、フェニルケトン尿症を含めて先天性アミノ酸代謝異常、プロピオン酸血症を含めて先天性有機酸代謝異常、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD)を含めて先天性脂肪酸代謝異常)、がん、色覚異常、錐体杆体ジストロフィー、黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症)、リポポリペプチドリパーゼ欠損症、家族性高コレステロール血症、脊髄性筋萎縮症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、アルツハイマー病、パーキンソン病、肥満、炎症性腸障害、糖尿病、うっ血性心不全、高コレステロール血症、難聴、冠動脈性心疾患、家族性腎アミロイドーシス、マルファン症候群、致死性家族性不眠症、クロイツフェルト-ヤコブ病、鎌状赤血球症、ハンチントン病、前頭側頭葉変性症、アッシャー症候群、乳糖不耐症、脂質蓄積障害(例えば、ニーマン-ピック病、C型)、バッテン病、コロイデレミア、糖原病II型(ポンペ病)、毛細血管拡張性運動失調症(ルイ-バー症候群)、先天性甲状腺機能低下症、重症複合免疫不全症(SCID)、および/または筋萎縮性側索硬化症(ALS)。導入遺伝子は、例えば、対象(例えば、ヒト、動物(例えば、伴侶動物、家畜、絶滅危惧動物)を免疫するのに有用である免疫原とすることもできる。例えば、免疫原は生物(例えば、病原性生物)またはその免疫原性部分もしくは成分(例えば、毒素ポリペプチドまたはその副産物)から得ることができる。例として、免疫原性ポリペプチドを得ることができる病原性生物には、ウイルス(例えば、ピコルナウイルス、エンテロウイルス、オルソミクソウイルス、レオウイルス、レトロウイルス)、原核生物(例えば、肺炎球菌(Pneumococci)、ブドウ球菌属(Staphylococci)、リステリア属(Listeria)、シュードモナス属(Pseudomonas))、および真核生物(例えば、アメーバ症、マラリア、リーシュマニア症、線虫)が含まれる。本明細書に記載の方法およびかかる方法により精製される組成物は、いかなる特定の導入遺伝子によって限定されるものではないことが理解されよう。
【0142】
AAVの投与
肝臓-オンまたは肝臓-オフのAAVベクターは、通常には生理学的に適合する担体に懸濁されて、対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与することができる。適切な担体には、様々な緩衝溶液とともに製剤化することができる生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、および水が含まれる。ウイルスベクターは典型的には、所望の細胞に形質導入するまたは感染させるのに十分な量で、十分なレベルの遺伝子導入および発現をもたらし、その結果過度の副作用なしで治療上の効果を可能とする十分な量で投与される。従来のおよび薬学的に許容される投与経路としては、それらに限定されないが、例えば、肝臓や肺などの器官への直接送達、経口的、鼻腔内、髄腔内、気管内、吸入による、静脈内、筋肉内、眼内、皮下、皮内、経粘膜的、またはその他の投与経路によるものが挙げられる。投与経路は、所望であれば、組み合わせることができる。
【0143】
対象に投与されるウイルスベクターの用量は、主に、治療される状態、ならびに対象の年齢、体重、および健康状態などの要因次第である。例えば、ヒト対象に投与されるウイルスベクターの治療有効投薬量は、一般に、約1×101~1×1012ウイルスゲノムコピー(GC)(例えば、約1×103~1×109GC)の濃度を含有する溶液約0.1ml~約10mlの範囲にある。形質導入および/または導入遺伝子発現は、DNA、RNA、またはタンパク質のアッセイにより、投与後の種々の時点でモニタリングすることができる。一部の例では、導入遺伝子の発現レベルをモニタリングして、投薬の頻度および/または量を決定することができる。治療目的に記載のものと同様の投薬レジメンを、免疫に利用することもできる。
【0144】
本明細書で使用される第2の「対応する」対象(例えば、哺乳動物対象)とは、第1の対象と同じ種(例えば、種類、および該当する場合は、品種または系統)であり、AAV形質導入における第1の対象とは実質的に異ならない対象を指す。
【0145】
本発明にしたがって、当技術分野の技術の範囲内の、従来の分子生物学、微生物学、生化学的、および組換えのDNA技法を用いることができる。かかる技法は文献において十分に説明されている。本発明について、以下の実施例においてさらに説明するが、それらは、特許請求の範囲に記載される方法および組成物の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0146】
[実施例1]
AncAAVカプシドライブラリー
AAVカプシドのライブラリーは、祖先配列の再構築に基づいて先に生成されていたものである(Anc AAVと呼ばれる)。Anc AAVは、AAV系統発生の推定の祖先状態を近似する。この研究は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9を含めて(しかしAAV4またはAAV5は含めず)、知られている霊長類AAVの大多数の推定の系統発生に沿って祖先を再現することに基づいた。このプロセスによって、AAVカプシドタンパク質VP1に沿った各位置で20個のアミノ酸それぞれに対して確率スコア(事後確率)を推測した。このようなアプローチは、Zinn et al.(2015, Cell Reports, 12(6):1056-68)および国際公開第2015/054653号パンフレットに記載されており、そのアプローチを使用してAnc126およびAnc127と呼ばれる2つのAncライブラリーを生成した。
【0147】
これらAnc126およびAnc127のバリアントライブラリーを、プールされたフォーマットで分子クローニングおよびDNA合成を使用して構築した、すなわち、特定のライブラリーの全てのバリアントを同じ容器内で並列合成した。このライブラリープラスミドの設計は、プラスミドがAAVベクターゲノム内のウイルスカプシド配列をコードするようなものとした。加えて、これらのライブラリーの設計は、Illuminaが販売しているものなどの、ショートリードNGSプラットフォームを使用した効率的で高スループットの次世代シーケンシング(NGS)を可能にする短鎖DNA識別子またはバーコードを含む。本明細書で概説の実験では、各バーコードによって単一のAAVカプシドバリアントを特定し、各カプシドバリアントを固有のバーコードによって特定した。
【0148】
図1に、プールされたバーコード化ライブラリー内のAAVバリアント向けのライブラリー構築物の最小限の設計を例示する。AAVライブラリープラスミド構築物のエレメントは、AAV逆位末端反復(ITR)、1つまたは複数のプロモーターまたはポリアデニル化シグナル(ポリA)、これはAAV由来であってもAAVと異種であってもよいが、AAVカプシドバリアントオープンリーディングフレーム(ORF)、およびカプシド向けのバーコード識別子である。
図1に示す構築物に関するバリエーションが、例えば、発現カセットの外側であるがITR内であるバーコード、カプシド遺伝子を駆動する一方のプロモーターおよびバーコードを含む転写物を駆動する別のプロモーター、ならびに/またはプロモーターおよびポリAシグナル向けの種々のエレメント、の存在が可能であることが理解されよう。
【0149】
このプールされたプラスミドライブラリーを使用して、アデノウイルスヘルパー遺伝子プラスミド構築物およびAAVRep発現カセットを含有するプラスミドと一緒にHEK293細胞へとトランスフェクションすることによりウイルスベクターライブラリーを生成した。重要なことに、このトランスフェクションは、「自己パッケージング」、すなわちカプシド内の特定のカプシド向けのウイルスゲノムのパッケージング、の程度を最大にする、低プラスミド濃度条件下で実行された。次に、ウイルスライブラリーを、バーコード領域の集束配列決定を用いてIllumina NGSを使用して、その多様性について評価した。本データによって、ウイルスライブラリー調製物のNGS試料内で特定された各バーコードのカウントが提供され、それによって、バーコード(したがってカプシドバリアント)の多様性の相対表現が得られた。バーコードのNGS配列決定によって指示されたところは、Anc126ライブラリーとAnc127ライブラリーの両方が十分に多様性であり、配列バリエーションの関連する位置にわたって代表的であったことである。
【0150】
[実施例2]
AAVRフットプリントの全体にわたる配列多様性のまとめ
図2は、以下のパラメーター:距離測度kmer6_6、クラスタリング方法 UPGMB、ツリールーティング方法の擬似距離重みづけ(tree rooting method pseudo, distance weighting)CLUSTALW、アンカー間隔 32、オープンギャップペナルティー-1、を用いた、MUSCLEアルゴリズム(Edgar, R.C. (2004) MUSCLE: multiple sequence alignment with high accuracy and high throughput Nucleic Acids Res. 32(5):1792-1797)を使用した、AAV2 VP1キャプシドタンパク質配列(配列番号1)に対するAnc126(配列番号99)キャプシドタンパク質配列およびAnc127(配列番号100)キャプシドタンパク質配列のアライメントである。AAVRフットプリント内に位置すると予測される残基は枠で囲まれている。加えて、下の表2に、AAV2の予測AAVRフットプリント残基ならびにAnc80、Anc126、およびAnc127の対応する残基のそれぞれを提供するが、ここで、ドット(「.」)は保存されたアミノ酸を表す。選択的残基が観察された位置を表2に示すが、バリエーションに関してそういった部位はAncライブラリーにおいて多義的であったことを指示する。
【0151】
【0152】
[実施例3]
肝臓取込みに関連する配列の特定
AAV126およびAAV127のバリアントライブラリーをC57Bl/6マウスに静脈内経路を介して、合計6.2×1010GCの用量で注射して、ライブラリー内のバリアント部位が、特に、AAVRフットプリントに相当する、表2で特定されたバリアント部位が、肝臓向性に及ぼす影響について詮索した。注射の28日後に動物をと殺し、組織を採取した。組織をDNA単離に供し、その後、バーコード配列が隣接するプライマーを用いたPCRを使用してDNA試料を増幅した。PCRアンプリコンに第2の増幅を行って、Illumina NGSインデックスを組み込んだ。続いて、これらNGS試料について、Illumina NGS機器MiSeq(登録商標)またはNovaSeq(登録商標)を使用して配列決定を行った。続いて、各バリアントについてデータを解析し、その結果、肝臓のバーコードカウントと入力ウイルス調製物のバーコードカウントとの関係を使用して、入力注入ウイルスと比較した肝臓のバーコードの濃縮を表した。肝臓組織の定量的読取りを得たが、この読取りによって、それぞれのライブラリーの各メンバーの肝臓分布の程度を指示した。
【0153】
図3および
図4は、それぞれ、Anc126およびAnc127のメンバーの肝臓における相対的パフォーマンスデータを表し、
図5Aおよび5Bも同じである。ここで提供される解析は、「フィンガープリントプロット」と呼ばれるグラフの形式で、Anc126またはAnc127のベクターライブラリーの全てのメンバーのパフォーマンスを上位から下位までのランクで例示する。加えて、列はAnc126またはAnc127のライブラリー設計内のバリエーションの部位を表す。バリエーションの各部位は多義的である、すなわち、その位置でコードすることができる異なる2個の残基を有する。
【0154】
図3のデータが指示するところは、AAV2(配列番号1)の残基708に対応する位置P9は、AAVRフットプリントと重なり合い、肝臓における黒色のバリアント(708位にA)に対する白色のバリアント(位置708にT)の濃縮を実証した、本リストにおける唯一の位置であることである。黒色のバリアントは肝臓において少数しか存在せず(上位256のパフォーマンスバリアントのうちの34.8%)、このことは、Anc126の708位のTが、肝臓への標的指向化を減少させた同じ位置のAに対して、肝臓への標的指向化を増強したこと、を指示する。したがって、A708バリアントは、T708バリアントと比較して肝臓取込みの効率が低かった。
【0155】
同様に、
図4のデータが指示するところは、AAV2(配列番号1)の残基446に対応する位置P5は、AAVRフットプリントに当接しているとともに、肝臓における黒色のバリアント(S446)に対する白色のバリアント(R446)の濃縮を実証した本リストの2カ所の位置のうちの1つであることである。白色のバリアントは肝臓において少数しか存在せず(上位512のパフォーマンスバリアントのうちの23.6%)、これは、Anc127の446位のRが、肝臓への標的指向化を減少させた同じ位置のSに対して、肝臓への標的指向化を増強したこと、を指示する。
【0156】
図5のデータが指示するところは、Anc126の位置P8およびAnc127の位置P7が、その両方ともAAV2(配列番号1)の残基471とアライメントされており、位置471に変化を伴う微かな効果のみを呈するが、この場合、A471配列を有するウイルスは、S471配列を有するウイルスと比較して、肝臓を標的にする可能性がやや高いことである。白色のバリアント(A471)も黒色のバリアント(S471)もいずれも肝臓の濃縮を強力に決定することはなかったので、保存的に変更された場合、予測されたAAVRフットプリントのうち全ての残基がAAVR-AAV相互作用を有意に調節するというわけではない。加えて、AからSへの変化は比較的中程度の変化であり、これもまたわずかな影響をもたらすことができる。
【0157】
まとめると、これらのデータは、AAV-AAVR結合の調節が肝臓による取込みを、ひいてはその他の組織による取込みを変更するという発見を根拠付けている。具体的には、本解析が指示するところは、AAVRフットプリント内の446、471、および708の位置が、肝臓への、または肝臓から移行したAAVの生体内分布に関与していると思われることである。
【0158】
[実施例4]
非ヒト霊長類における例示的肝臓トグルの使用
AAVAnc80、Anc81、Anc10、およびAnc126の各バリアントライブラリーを、2匹の雌性アカゲザル(m. mulatta)の脳脊髄液に、7.75×1010GC/kgの用量で嚢内経路を介して注射して、CNS、全身逸脱、および肝臓向性に及ぼすライブラリー内のバリアント部位の影響について詮索した。注射の7日後に動物をと殺し、組織を採取した。組織をDNA単離に供し、その後、バーコード配列が隣接するプライマーを用いたPCRを使用してDNA試料を増幅した。PCRアンプリコンに第2の増幅を行って、Illumina NGSインデックスを組み込んだ。これらNGS試料について、Illumina NGS機器MiSeq(登録商標)またはNovaSeq(登録商標)を使用して配列決定を行った。続いて、各バリアントについてデータを解析して、肝臓のバーコードカウントと入力ウイルス調製物のバーコードカウントとの関係を使用して、入力注入ウイルスと比較した肝臓のバーコードの濃縮を表した。肝臓組織の定量的読取りを得たが、この読取りによって、それぞれのライブラリーの各メンバーの肝臓分布の程度を指示した。
【0159】
図6に、Anc80ライブラリーの肝臓での相対パフォーマンスデータを表す。ここで提供される解析は、「フィンガープリントプロット」と呼ばれるグラフの形式で、Anc80ベクターライブラリーの全てのメンバーのパフォーマンスを上位から下位までの順位で例示する。加えて、列は、Anc80ライブラリー設計内のバリエーションの部位を表す。バリエーションの各部位は多義的である、すなわち、その位置でコードすることができる異なる2個の残基を有する。
【0160】
図6のデータが指示するところは、AAV2(配列番号1)の残基266に対応する位置P3は、AAVRフットプリントと重なり合い、肝臓における白色のバリアント(266位にA)に対する黒色バリアント(位置266にG)の濃縮を実証した、本リストにおける唯一の位置であることである。白色のバリアントは肝臓において少数しか存在せず(上位1024のパフォーマンスバリアントのうちの6.7%)、これは、Anc80の266位のGが、肝臓への標的指向化を減少させた同じ位置のAに対して、肝臓への標的指向化を増強したこと、を指示する。したがって、A266バリアントは、G266バリアントと比較して肝臓取込みの効率が低かった。
【0161】
まとめると、これらのデータは、AAV-AAVR結合の調節が肝臓による取込みを、ひいてはその他の組織による取込みを変更するという発見を根拠付けている。具体的には、本解析が指示するところは、AAVRフットプリント内の266,446、471、および708の位置が、肝臓への、または肝臓から移行した、AAVの生体内分布に関与していると思われることである。
【0162】
他の実施形態
方法および組成物についていくつかの異なる態様と併せて本明細書に記載してきたが、様々な態様の前述の記載は例示を意図したものであり、方法および組成物の範囲を限定することを意図するものではない。その他の態様、利点および改変も、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0163】
開示されるのは、使用することができる、併せて使用することができる、調製に使用することができる方法および組成物であり、または、上記開示の方法および組成物の製品である。これらのおよびその他の材料が本明細書に開示され、これらの方法および組成物の組合せ、部分集団、相互作用、群等が開示されることが理解される。すなわち、これらの組成物および方法のそれぞれの様々な個々のおよび集合的な組合せおよび入替への具体的な参照については明示されていないかもしれないが、それぞれが本明細書で具体的に意図され記載されたものである。例えば、特定の組成物または特定の方法が開示および論議され、いくつかの組成物または方法が論議されている場合、そうでないことが具体的に示されていない限り、それらの組成物および方法のそれぞれのそしてあらゆる組合せおよび入替が具体的に想定されている。同様に、これらの任意の部分集団または組合せもまた、具体的に想定され開示されている。
【配列表】
【国際調査報告】