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特表2022-547209部位特異的タウリン酸化をベースとする診断および処置のための血液ベースアッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】部位特異的タウリン酸化をベースとする診断および処置のための血液ベースアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20221102BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20221102BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20221102BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20221102BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20221102BHJP
   A61K 51/00 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N27/62 V
C07K14/47 ZNA
C07K16/18
C12Q1/06
A61K51/00 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515666
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020050208
(87)【国際公開番号】W WO2021050733
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/898,407
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ベイトマン,ランドール
(72)【発明者】
【氏名】バルテルミー,ニコラ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4B063
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA10
2G041FA12
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR90
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX01
4C085HH03
4C085KA29
4C085LL13
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、血液試料を使用して、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症までの時間を予測するため、アルツハイマー病をステージ分類するため、処置の決定の指針とするため、対象を臨床試験に選択するため、およびある特定の治療的介入の臨床的有効性を評価するための、特定のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を定量するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性タウを濃縮するために血液試料を処理するための方法であって、
血液試料からタンパク質を、過塩素酸を使用して沈殿させ、それにより血液の酸可溶性抽出物を製造することと、
前記酸可溶性抽出物中の可溶性タウを、逆相吸着剤を使用する固相抽出および1つまたは複数のエピトープ結合剤を使用するアフィニティ精製により濃縮することと
を含み、少なくとも1つのエピトープ結合剤はタウのN末端中またはタウのmidドメイン中のエピトープに特異的に結合する、方法。
【請求項2】
前記血液試料が血漿である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液試料が血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
過塩素酸が、約1%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
過塩素酸が、約3%v/v~約15%v/vまたは約3%v/v~約10%v/vの最終濃度で添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
過塩素酸が、約3%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記逆相吸着剤が、N-ビニルピロリドンおよびジビニルベンゼンを含むポリマー、またはスチレンおよびジビニルベンゼンを含むポリマーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記逆相吸着剤が、N-ビニルピロリドンおよびジビニルベンゼンを含むポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記固相抽出が、約0.05%v/v~約1%v/v TFAを含む移動相を使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記固相抽出が、約0.05%v/v~約0.5%v/v TFAまたは約0.1%v/v TFA~約1%v/v TFAを含む移動相を使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
可溶性タウが、約20%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む移動相を使用して前記逆相吸着剤から溶出される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
可溶性タウが、約20%v/v~約40%v/vアセトニトリルまたは約30%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む移動相を使用して前記逆相吸着剤から溶出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
タウのN末端中の前記エピトープが、アミノ酸残基27~35を含み、タウのmidドメイン中の前記エピトープが、アミノ酸残基192~199を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アフィニティ精製が、タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤、およびタウのmidドメイン中に特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤を使用する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
各エピトープ結合剤が抗体である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
可溶性タウを濃縮するために血液試料を処理するための方法であって、
血液試料からタンパク質を、過塩素酸を使用して沈殿させることであって、過塩素酸が約1%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加され、それにより血液の酸可溶性抽出物が製造されることと、
前記酸可溶性抽出物中の可溶性タウを固相抽出およびアフィニティ精製により濃縮することと
を含み、
前記固相抽出工程が、(i)前記酸可溶性抽出物を、可溶性タウを逆相吸着剤に付着させるのに十分な時間、逆相吸着剤とともに混合することであって、前記逆相吸着剤は、N-ビニルピロリドンおよびジビニルベンゼンを含むポリマー、またはスチレンおよびジビニルベンゼンを含むポリマーであること、(ii)逆相吸着剤に付着したタウを、約0.05%v/v~約1%v/v TFAを含む移動相を用いて洗浄すること、および(iii)可溶性タウを、約0.05%v/v~約1%v/v TFAおよび約20%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む移動相を使用して前記逆相吸着剤から溶出することを含み、
前記アフィニティ精製工程が、タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤、およびタウのmidドメインのエピトープと特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤を含む、方法。
【請求項17】
前記移動相が、約0.05%v/v~約0.5%v/v TFAを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記移動相が、約0.1%v/v TFA~約1%v/v TFAを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
タウを溶出するのに使用される前記移動相が、約20%v/v~約40%v/vアセトニトリルを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
タウを溶出するのに使用される前記移動相が、約30%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
タウのN末端中の前記エピトープが、アミノ酸残基27~35を含み、タウのmidドメイン中の前記エピトープが、アミノ酸残基192~199を含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
各エピトープ結合剤が抗体である、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
血液試料中の可溶性タウを分析するための方法であって、請求項1から22のいずれか一項に従って血液試料を処理して可溶性タウが濃縮された試料を製造すること、および可溶性タウが濃縮された試料を質量分析により分析することを含む方法。
【請求項24】
血液試料中の総タウの量を決定するための方法であって、請求項1から22のいずれか一項に従って血液試料を処理して可溶性タウが濃縮された試料を製造すること、および可溶性タウが濃縮された試料を質量分析により分析することを含む方法。
【請求項25】
タウの1つまたは複数の残基におけるリン酸化の量を測定するための方法であって、請求項1から22のいずれか一項に従って血液試料を処理して可溶性タウが濃縮された試料を製造すること、および質量分析によりタウの1つまたは複数の残基におけるリン酸化の量を測定することを含む方法。
【請求項26】
タウのリン酸化が、T111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数の残基で測定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
タウのリン酸化が、T181、S202またはT217のうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数の残基で測定される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
タウのリン酸化が、T181、S202またはT217のうちの少なくとも1つを含む2つ以上の残基で測定される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記血液試料が、少なくとも約1mlの血漿または少なくとも2mlの全血である、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記血液試料が、少なくとも約1ml~約20mlの血漿である、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
トリプシン、Lys-N、Lys-CまたはArg-Nの存在下で実行される消化工程をさらに含み、前記消化工程が血液試料の処理の後に行われる、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
トリプシン、Lys-N、Lys-CまたはArg-Nの存在下で実行される消化工程をさらに含み、前記消化工程が、タウが少なくとも1つのエピトープ結合剤と結合している間に行われる、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記消化工程がトリプシンの存在下で行われる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記血液試料が、無症候性の対象、アルツハイマー病の徴候または症状を呈するが、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の臨床診断のための十分な認知障害も機能障害も示さない対象、ADを有すると診断された対象、神経変性疾患と診断された対象、タウオパチーと診断された対象、認知症と診断された対象、または軽度認知障害と診断された対象から得られる、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記血液試料が、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核症候群(CBS)、ダウン症候群(DS)、パーキンソン病(PD)およびレビー小体型認知症(DLB)と診断された対象から得られる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)T217またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、前記対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項37】
アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)T217またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを超え、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、前記対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項38】
アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、前記対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項39】
アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、前記対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された総タウ、およびT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項40】
それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)T217またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、前記対象に医薬組成物を投与することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項41】
それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)T217またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを超え、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、前記対象に医薬組成物を投与することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項42】
それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、前記対象に医薬組成物を投与することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項43】
それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、前記対象に医薬組成物を投与することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された総タウ、およびT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項44】
対象を臨床試験に登録するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)T217またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、前記対象を臨床試験に登録することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項45】
対象を臨床試験に登録するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)T217またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを超え、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、前記対象を臨床試験に登録することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項46】
対象を臨床試験に登録するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、前記対象を臨床試験に登録することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項47】
対象を臨床試験に登録するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、前記対象を臨床試験に登録することと
を含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された総タウ、およびT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項48】
それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、および、前記単離されたタウ試料中、T205およびT181における、T205およびT217における、またはT205、T181およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)前記工程(a)において測定されたタウリン酸化の量を低減するかまたは安定化するために、前記対象に医薬組成物を投与することと
を含み、前記対象から得られた前記単離されたタウ試料が、
(i)約1.5σ以上であるT181におけるタウリン酸化および/もしくは約1.5σ以上であるT217におけるタウリン酸化、および約1.5σを下回るT205におけるタウリン酸化、または
(ii)約1.5σ以上であるT181におけるタウリン酸化および/もしくは約1.5σ以上であるT217におけるタウリン酸化、および約1.5σ以上のT205におけるタウリン酸化
を含有し、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された残基におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項49】
それを必要とする対象を処置するための方法であって、
(a)請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により製造される、前記対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、および、前記単離されたタウ試料中、T181、T205およびT217から選択される2つ以上の残基におけるタウリン酸化を測定することと、
(b)前記工程(a)において測定されたタウリン酸化の量を低減するかまたは安定化するために、前記対象に医薬組成物を投与することと
を含み、前記対象から得られた前記単離されたタウ試料が、
(i)約1.5σ以上であるT181におけるタウリン酸化および/もしくは約1.5σ以上であるT217におけるタウリン酸化、および約1.5σを下回るT205におけるタウリン酸化、または
(ii)約1.5σ以上であるT181におけるタウリン酸化および/もしくは約1.5σ以上であるT217におけるタウリン酸化、および約1.5σ以上のT205におけるタウリン酸化、または
(iii)1.5σを下回るT181におけるタウリン酸化および/もしくは約1.5σ以上であるT217におけるタウリン酸化
を含有し、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された残基におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【請求項50】
前記タウリン酸化が質量分析により測定される、請求項1から49のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2019年9月10日に出願された米国仮出願第62/898,407号の優先権を主張するものである。
【0002】
政府支援
本発明は、National Institutes of Healthより授与されたNS095773の下で政府の資金提供を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年9月10日に生成されたASCIIコピーは、665441_ST25.txtと名付けられ、サイズは24KBバイトである。
【背景技術】
【0004】
微小管関連タンパク質タウ(MAPTまたはタウ)は、ニューロンの形態学および生理学に必須の役割を果たす。タウは、6つの異なる全長タンパク質のアイソフォームを有し、アセチル化、グリコシル化およびリン酸化を含む多数の潜在的翻訳後修飾を受ける。リン酸化は軸索の安定化におけるタウの正常機能を制御するために重要であり、80を超える異なる残基で起こり得る。しかし、過剰なタウのリン酸化は、タウが凝集し、主に高リン酸化型タウから構成される細胞内の不溶性の対らせん状細線維(PHF)および神経原線維変化(NFT)となる可能性を増大させるようである。
【0005】
タウは、アルツハイマー病(AD)タングルや神経突起の病態の主要な構成要素である。総タウ(t-タウ)および一部のリン酸化タウ(p-タウ)のアイソフォームレベルは、AD CSFにおいて有意に増大する。しかし、血漿タウとCSFタウレベルとの間の相関が良好でないことは、血漿タウをADのためのバイオマーカーとして開発することにおける課題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当該技術分野において、血液試料中のタウリン酸化を定量するための改善された方法についての必要性が、依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本開示は、対象を、アルツハイマー病(AD)に起因する軽度認知障害(MCI)への転換についての増大したリスクを有すると診断するための方法を包含する。方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象をADに起因するMCIへの転換の増大したリスクを有すると診断すること、を含む。T181、T205および/またはT217におけるタウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0008】
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病(AD)に起因する軽度認知障害(MCI)の発症前に対象をステージ分類するための方法を包含する。方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象をADに起因するMCIの発症まで数年であると診断すること、を含む。T181、T205および/またはT217におけるタウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0009】
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病(AD)症状の発症後に対象をステージ分類するための方法を包含する。方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象をADに起因するMCIの発症後数年であると診断すること、を含む。T181、T205および/またはT217におけるタウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0010】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象を処置するための方法を包含する。方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象に医薬組成物を投与すること、を含む。T181、T205および/またはT217におけるタウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0011】
別の態様では、本開示は、対象を臨床試験に登録するための方法を包含する。方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象を臨床試験に登録すること、を含む。T181、T205および/またはT217におけるタウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0012】
本発明の他の態様および反復を、以下により十分に説明する。
【0013】
出願ファイルは、少なくとも1つのカラーで作成された写真を含有する。カラー写真を有するこの特許出願公開のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて事務局が提供することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、最長のヒトタウアイソフォーム(2N4R)およびタウ抗体のエピトープの概略図である。N末端、midドメイン、MTBRおよびC末端が、このアイソフォームについて同定され、他のタウアイソフォーム(例えば2N3R、1NR4、1N3R、0N4Rおよび0N3R)については予測可能な形で変動するであろう。
【0015】
図2図2は、並列反応モニタリング実験の原理を示す概略図である。
【0016】
図3図3は、103~126(0Nアイソフォーム)における一リン酸化タウ配列のPRMスクリーニングからのデータを示す。非修飾ペプチド103~126の近くで溶出され、T111(a)、S113(b)またはT123(c)におけるリン酸化が予測されるフラグメント系列を含有する、独自のLC-MS/MSパターンが同定された。各p-タウペプチドからの仮定のyイオンフラグメントには、配列上に下線を引いた。3つの推定上の一リン酸化ペプチドの潜在的な共溶出がデコンボリューションされた。ホスフェートを有しないイオンフラグメントy15は、残基T111上でリン酸化されたペプチド(y15(a))に特異的であり、ホスフェートを有するy8フラグメントは、残基T123上のp-タウペプチド(y8(c))に特異的である。対応する抽出物イオンクロマトグラム(XIC)が、検出限界を超える低い存在量で検出され、2つの対応する一リン酸化タウペプチドの同定を支持する。対照的に、pT111およびpS113により共有されるホスフェートを有するy15フラグメント(y15(a+b))、ならびにpS113およびpT123により共有されるホスフェートを有しないy8フラグメント(y8(b+c))は、はるかにより豊富であった。これらのシグナルの差は、主なパターンの種(specie)としての残基S113(b)で一リン酸化されたタウペプチドの存在を支持する。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
【0017】
図4図4は、6つの潜在的なリン酸化部位を含有する一リン酸化タウ配列68~126(1Nアイソフォーム)のPRMスクリーニングからのデータを示す。3つのリン酸化部位は、図3(d~f)に説明されるような残基103~126を含有するペプチドにより共有される。6つのLC-MSパターンが同定された。pS68(a)またはpT69(b)により共有されるホスフェートを有するY28フラグメントは、2つのLC-MSパターン4および5において見出される。これは、2つのリン酸化ペプチドの存在を示すが、対応するLC-MSパターンは、pS68およびpT69を区別するためのイオンフラグメントy29の検出なしに、厳密に割り当てることができない。pT71(c)およびpT111(d)に対応する特異的フラグメントが、LC-MSパターン6および1でそれぞれ見出される。pS113(e)およびpT123(f)についての特異的フラグメント(ホスフェートを有するy15)が、LC-MSパターン2で見出される。このパターンは、ホスフェートを有するおよび有しない両方のy10フラグメントを含有し、これらの2つのリン酸化ペプチドの共溶出を示唆する。ホスフェートを有しないy10は、ホスフェートを有するy10と比較してメジャーなシグナルを有するため、pT123の程度は、pS113よりも低いようである。LC-MSパターン3は、非リン酸化ペプチドに見出されるように、パターン4からのリン酸化ペプチドのマイナーな配座異性体またはLCアーティファクトに起因するものである。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
【0018】
図5図5は、一リン酸化タウ配列45~67(1Nおよび2Nアイソフォーム)のPRMスクリーニングからのデータを示す。配座異性体からの強力なシグナルが、非リン酸化ペプチドLC-MSパターンの前に同定された。よって、リン酸化ペプチドについての対応するLC-MSパターンは、LCにより分離可能な配座異性体も有するであろうことが予測された。実際、PRMスキャン判読により、この配列(パターン2)上の主なリン酸化部位としてpT50(b)が検出された。類似したフラグメント化フィンガープリントを有するパターン1は、pT50の配座異性体に起因した。シグナルをpT50(b)から区別することが可能なpS46(a)は検出されず、このリン酸化が存在しないか、または低度であり、類似の非特異的フラグメントを共有する他のリン酸化ペプチドと共溶出したであろうことを示唆する。LC-MSパターン3におけるホスフェートを有しないy9、y15およびホスフェートを有するy17中の共溶出は、残基T52(c)のリン酸化を同定した。パターン4/6および5/7は、それぞれ配座異性体として対となった。よって、2つのリン酸化ペプチドは分離することができなかった。これらのパターンにおいて見出されるフラグメントは、S61(e)、T63(f)およびS64(g)残基のうちの1つのリン酸化と一致した。MS/MS強度は、部位を同定するのに不十分であったが、これらの3つの部位のうち少なくとも2つは、この配列上でリン酸化されたようであった。加えて、ホスフェートを有しないマイナーなy9フラグメントはパターン7の肩部で見出され、これは残基S56(d)におけるマイナーなリン酸化に起因するであろう。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
【0019】
図6図6は、一リン酸化タウ配列88~126(2Nアイソフォーム)のPRMスクリーニングからのデータを示す。6つの潜在的なリン酸化部位はこの配列中に位置し、6つのLC-MSパターンが同定された。パターン1および2において見出されたフラグメントは、それぞれ、残基T111(d)およびS113(e)におけるリン酸化ペプチドと一致した。残基T123(f)におけるリン酸化ペプチドからの特異的フラグメントは見出されなかった。パターン4および6は、残基T101(b)またはT102(c)上のリン酸化と合致するy29フラグメントの低いシグナルを含有したが、これらを区別することが可能な特異的フラグメントは検出されなかった。パターン3および5は、パターン4および6において見出されたフラグメントを共有したが、存在量が低く、N末端における残基G109上のリン酸化残基に位置する。これは、おそらくは残基T95(a)におけるさらなるリン酸化ペプチド、またはパターン4および6において見出されたペプチドからの配座異性体の存在を示す可能性がある。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
【0020】
図7図7は、4つの潜在的なリン酸化部位を含有する、一リン酸化タウ配列68~87のPRMスキャンを示す。3つのLC-MSパターンが検出された。パターン2および3は、残基S68(a)またはT69(b)におけるリン酸化と一致した。パターン1は、T71(c)およびT76(d)における2つの共溶出したリン酸化ペプチドの存在と適合する両方のフラグメントを含有した。パターン1におけるホスフェートを有するおよび有しないy14 XICの比較は、pT71(c)がpT76(d)よりも豊富であることを示す。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
【0021】
図8-1】図8A、8B、8C、8D、8E、8F、8G、8H、8I、8J、8K、8Lは、脳のp-タウタンパク質のmidドメインおよびC末端におけるリン酸化部位の検出を示す。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
図8-5】同上。
図8-6】同上。
図8-7】同上。
図8-8】同上。
図8-9】同上。
図8-10】同上。
図8-11】同上。
図8-12】同上。
【0022】
図9-1】図9A、9B、9C、9D、89E、9Fは、タウ配列195~209(配列番号38)および212~221(配列番号64)からのリン酸化ペプチドプロファイルが、可溶性の脳画分、正常なCSFおよびAD CSFタウタンパク質の間で可変的であることを示す。脳の可溶性タウ抽出物は、対応するCSFタウレベルとほぼ合致するように、示されるように希釈される。195~209上のリン酸化ペプチド:脳可溶化液中、2つのリン酸化ペプチドpS199およびpS202の共溶出に対応する1つのシグナルが観察される。CSF中、2つのさらなるシグナルが観察される。フラグメント分析により、左のシグナルをpT205へ割り当てることが可能となった。AD CSF中、2つのシグナルが増大し、右のシグナルをpS208に割り当てる特異的フラグメントの同定が可能となる。212~221上のリン酸化ペプチド:類似したMS強度を有する、pT217およびpS214に対応する2つのシグナルが、脳可溶化液中で同定される。CSF中、pT217に対応するシグナルは最も強く、一方でpS214は検出限界に近く、脳抽出物と比較したこれらの相対的な存在量の劇的な変化を示す。AD CSF中、特定の高リン酸化に起因して、pT217は有意に増大する。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
図9-2】同上。
図9-3】同上。
図9-4】同上。
図9-5】同上。
図9-6】同上。
【0023】
図10-1】図10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10Iは、CSF中で同定されたpT153、pT175およびpT231リン酸化ペプチドを示す。AQUA内部標準シグナルは、pT175およびpT231について示される。pT153のフラグメント化パターンは、非修飾に類似する。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
図10-4】同上。
図10-5】同上。
【0024】
図11図11は、S113リン酸化に対して、T111上のリン酸化存在量が、脳よりもCSF中で高いことを示す。脳およびCSFの両方で、タウ配列103~126のすべての一リン酸化ペプチドに一般的なMS/MSフラグメントy18が検出される。pS113(b)からのy15フラグメントの相対的な存在量は、脳抽出物と比較してCSF中で有意により低い。逆に、pT111(a)からのy15フラグメントは、CSF中で豊富であり、AD CSFタウレベルに合致するように希釈された脳可溶性抽出物中では検出不可能である。各クロマトグラムについて、x軸は保持時間(分)であり、y軸は強度である。
【0025】
図12図12は、生物学的抽出物に依存し、タンパク質配列にわたり変動する、タウリン酸化の相対的な存在量を示す。HJ8.5およびTau1を使用してイムノキャプチャーにより抽出された正常な脳可溶化液、正常なCSFおよびAD CSF中でMSにより測定された、タウリン酸化存在量の比較。円形の領域は、部位のリン酸化存在量に比例する。赤色および緑色は、それぞれ、参照として採取された脳可溶物プロファイル(青)と比較した増大および低減を示す。タウはCSF中、C末端で短縮化され、これはリン酸化部位のC末端クラスターの検出がないことを説明する。T205およびS208上のリン酸化は、CSFに特異的である(脳可溶物上の赤のX-上部)。
【0026】
図13図13は、タウリン酸化部位が、脳、正常なCSFおよびAD CSFにおいて異なって修飾されることを示す。測定は、対応する非リン酸化部位と比較したリン酸化シグナルの相対的な存在量である(HJ8.5+Tau1 IP-MS)。脳の結果は、CSFタウレベルに合致するように500×~8000×の係数で希釈された可溶化液から得られる。T205およびS208上のリン酸化は、脳組織中で検出不可能である。T111上のリン酸化は500×希釈可溶化液中で検出不可能であるが、10×希釈可溶化液中で0.02%の対応する存在量で検出された。説明文:**はp=0.01レベルにおける有意性を示し、はp=0.05レベルにおける有意性を示す。
【0027】
図14-1】図14A、14B、14C、14Dは、IP-MSによるリン酸化比測定に対する抗体の効果を示す。脳可溶化液プール、非AD(n=1)およびAD CSF(n=1)プールを、タウN末端プロジェクションドメインに対する抗体(Tau13またはHJ8.5)およびmidドメインに対する抗体(HJ8.7、Tau1またはTau5)を用いて、並行して免疫沈降した。主なCSF部位で測定されたリン酸化比のレーダープロット(log10スケール)を、脳可溶化液(図14A、左パネル)、非AD CSF(図14A、中央パネル)およびAD CSF(図14A、右パネル)において示す。(図14A)pT181/T181、pT231/T231に対するタウリン酸化比測定は、試験した抗体すべてで一致する。他の抗体と比較して、Tau1またはTau1+HJ8.5を使用することにより、PS199/S199は低減する。(図14B)Tau1またはTau1+HJ8.5 IPによるpS199の低い回収率により、試験した他の抗体と比較して、pS199/S199比測定が過小評価される。Tau13、HJ8.5およびHJ8.7抗体は、脳とCSFとの間のpS199リン酸化比の有意な変化を示さない。脳と比較して、pS202/S202 CSF高リン酸化(図14C)およびpT217/pT217高リン酸化(図14D)は、IP-MSに使用される抗体とは無関係に独立して証明される。図14B~Dについての説明は同様であり、図14Cに示す-脳(青)、非AD CSF(緑)およびAD CSF(赤)。
図14-2】同上。
図14-3】同上。
【0028】
図15図15は、CSFインキュベーションがタウに対するリン酸化率測定に影響を与えないことを示す。
【0029】
図16-1】図16A図16B図16C図16D図16E図16Fおよび図16Gは、タウ高リン酸化と強く相関しているが、リン酸化の部位により異なるアミロイドプラークを示す。図16A 参加者をAβ PiB-PET(1.25のSUVRカットオフ)に基づいてAβ病変を有すると分類する際における、総タウ(青色線、AUC=0.62)、および部位特異的リン酸化比に対する受信者動作の特徴であり、p-T217(黄色線)は、Aβ病変とのほぼ完全な関連性(AUC=0.97)を実証し、p-T181(AUC=0.89)およびp-T205(AUC=0.74)がそれに続く。標準化された(z-スコア)リン酸化比は、Aβ PiB-PETレベルが増加したリン酸化の部位特異的な差を強調する突然変異保持者(mutation carrier)のAβ PiB-PET四分位(n=45、47、28、30)により、p-T217(図16B)、p-T181(図16C)、p-S202(図16D)、p-T205(図16E)および総タウ(図16F)レベルについて示されており、p-T217およびp-T181は、Aβ PiB-PET量の最初の増加と共に最大に増加し、Aβ PiB-PETの最高レベルと共に遅くなる一方、p-T205および総タウは、継続した増加を実証する。p-S202では、最高Aβ PiB-PET四分位で、最低のものと比べて、Wilcoxon二標本検定(Wilcoxon two sample test)に基づきリン酸化の有意な低下;*** - p-値<0.001、** - p-値<0.01が認められ、中心線は、中央値、ならびに上方および下方ノッチ=中央値+/-1.58四分位範囲/平方根(n-観測値(observation))、上方および下方ウィスカー=上方/下方ヒンジ+1.58IQR以上/以下の最大観測値を表す。図16G 無症状突然変異保持者(n=139)での、皮質および皮質下のAβ PiB-PET SUVRと部位特異的リン酸化との間の二変量相関(Bivariate correlations between cortical and sub-cortical Aβ PiB-PET SUVR and site-specific phosphorylation)。色は、正の相関(黄色~赤色)および負の相関(青色)との相関を表し、すべての相関は、偽発見率(p<0.05)を乗り越え統計的に有意な値を表し、相関の強さによって上から順に配置される。
図16-2】同上。
図16-3】同上。
図16-4】同上。
【0030】
図17-1】図17A図17B図17C図17D図17Eおよび図17Fは、異なるリン酸化タウ部位の長期的な変化が、疾患特異的なステージおよびAD進行と反対方向の変化であることを示す。症状発症までの推定年数(EYO)にわたる、突然変異保持者[黒色=無症状突然変異保持者(n=152)、赤色=有症状突然変異保持者(77)]および非保持者[青色(n=141)]での、(図17A)p-T217、(図17B)p-T181、(図17C)総タウ、(図17D)p-T205および(図17E)p-S202のリン酸化の比における個別のz-変換した長期的な変化。垂直破線は、予想される症状発症点であり、緑色線は、突然変異保持者で、非保持者と比較して各p-タウアイソフォームの変化率が大きくなるモデル推定時間を表す。(図17F)非保持者の率に標準化され、アミロイドPET(赤色)および認知低下(黄色)を伴うEYOにわたりプロットされた、リン酸化の各部位での、モデル推定長期的変化率。黒丸は、突然変異保持者での各変数の変化率が、非保持者と比較して最初に異なる時点を表す。これは、ADスペクトルの間のp-タウアイソフォームの変化パターン、および、アミロイドプラークの成長とp-T217における増加との間の密接な関連を強調し、プラークは、-21EYOで増加し始め、p-T217(黒色)の高リン酸化は、-21EYOで始まり、これらの2つの部位のリン酸化率低下は、認知の低下(黄色線)を伴う。対照的に、p-T205(紫色)は、疾患進行を通じて増加し続け、総タウレベル(灰色)は、症状発症時付近において増加した速度で上昇する。
図17-2】同上。
図17-3】同上。
【0031】
図18-1】図18Aおよび図18Bは、リン酸化タウ部位が脳の代謝低下および萎縮に示差的に関連することを示す。図18A.無症状の突然変異保持者(n=152)における、皮質および皮質下の萎縮と部位特異的リン酸化比との間の二変量相関は、p-T205およびp-T217のリン酸化の増加を実証し、p-T181での関連はより少ない。総タウレベルは、複数の皮質および皮質下領域におけるより大幅な萎縮に関連する。図18B.無症状の突然変異保持者(n=143)における、FDG-PETにより測定される皮質および皮質下の脳代謝と部位特異的リン酸化比との間の二変量相関は、p-T205のリン酸化の増加を実証し、この増加は大半の皮質および皮質下領域における減少に関連するが、他のp-タウ部位またはタウでは関連しない。
図18-2】同上。
【0032】
図19-1】図19A図19B図19Cおよび図19Dは、p-T217、p-T181およびp-T205におけるリン酸化の減少が認知症および認知低下に関連することを示す。突然変異保持者での、p-タウアイソフォームおよび総タウの個別の推定年次変化率(Individual estimated annualized rates of change)(y-軸)は、全般的な認知機能における年次変化と相関しており、線は、単純線形回帰を表し、斜線部分は、95%信頼区間を表す。各点は、測定間の個別レベルの相関を表す。線形回帰は、認知症がないもの(黒色、n=47)および認知症のもの(赤、n=25)に当てはめた。p-T217(図19A)、r=0.43(p=0.02)、p-T181(図19B)、r=0.72(p<.001)およびp-T205(図19C)、r=0.41(p=0.03)におけるリン酸化率の低下は、症状発症後の認知低下(赤色)に関連していた。総タウでは、認知との逆相関を示唆する傾向が認められた(図19D)が、これは有意ではなかった。
図19-2】同上。
【0033】
図20図20は、DIAD突然変異保持者における、タウPETが症状発症近辺で増加することを示す。タウ-PET時間に先行して長期的なCSF評価を行った参加者での、症状発症までの推定年数(EYO)、x-軸にわたる、突然変異保持者(赤色、n=12)および非保持者(青色、n=9)での平均の皮質標準化単位値比(SUVR)、y-軸。プロットは、突然変異保持者では、推定症状発症点(EYO=0)までに、タウ-PETにおける上昇はほとんど認めらなかったことを示す。この図は、AV-1451により検出される神経原線維変化(NFT)病変が、複数の可溶性ホスホタウ部位における増加よりはるかに後で発生することを示し、これにより、これらのタウの可溶性マーカーは、NFT病変のマーカーである可能性があるが、むしろAD病変の特徴である高リン酸化不溶性タウ沈着の発症の素因になり得ることが示唆される。
【0034】
図21-1】図21A図21B図21C図21Dおよび図21Eは、タウおよびタウリン酸化部位における長期的変化が優性遺伝ADにおける神経原線維のタウ(タウ-PET)に示差的に関連することを示す。タウ-PETスキャン(x-軸)の時間までに達するリン酸化および総タウの個別推定変化率(y-軸)。垂直線は、1.22のSUVRであり、NFTタウ-PET(複数の皮質および辺縁領域の複合)が、非保持者と比較して増加したと考えられる時点の控えめな推定(conservative estimate)を表す。可溶性タウおよびp-T205の増加を示唆するプロットは、より高いレベルの凝集タウに関連する一方、p-T217およびp-T181におけるリン酸化率は、凝集タウレベルが上昇するにつれて低下する。これらの知見から、タウレベルの上昇と異なる部位でのリン酸化との間に差が認められることが示唆され、いくつかの例では、可溶性p-タウは、タウ病変の拡大と共に高リン酸化凝集物の負担(burden)が増加するにつれ、隔絶されることを示し得る。これらは、凝集タウにおける増加と共に、凝集タウ病変の負担がより大きい受動的または能動的放出を表し得る可溶性タウレベルにおける上昇が認められることも示唆する。
図21-2】同上。
図21-3】同上。
【0035】
図22図22は、タウ病変が、アルツハイマー病において、別個のフェーズを通して発展することを示す例証である。決定的なアルツハイマー病突然変異を有する参加者群において、4種の異なる可溶性タウ種および不溶性タウを測定し、発明者らは、35年間(x-軸)にわたってタウ関連変化が展開し(y-軸)、疾患のステージおよび他の測定可能なバイオマーカーに基づいて異なることを示す。A.217位(紫色)および181位(青色)において、原繊維性アミロイド病変のリン酸化の発生でスタートし、増加し始める。B.神経細胞(neuronal)機能不全(代謝変化に基づく)の増加と共に、可溶性タウ(橙色)と一緒に205位(緑色)でのリン酸化が増加し始める。C.最後に、神経変性(脳萎縮および認知低下に基づく)の発症と共に、タウPETタングル(赤色)が発生し始める一方、217および181のリン酸化が減少し始める。まとめると、これは、疾患の間の、可溶性および凝集タウの動的かつ多岐のパターン、ならびにアミロイド病変との密接な関係を強調する。
【0036】
図23-1】図23A図23Bおよび図23Cは、CSF中のリン酸化タウアイソフォームの定量を示す。CSF中のタウリン酸化ペプチドおよび対応する未修飾ペプチドの並列反応モニタリング(Parallel Reaction Monitoring)(PRM)分析から抽出されたイオンクロマトグラムの総計。図23A、microLCシステムを使用したT181モニタリング。図23B、nanoLCシステムを使用したS199、S202、T205(枠内シグナルにおける共溶出)およびT217モニタリング。内在シグナル(青色実線)、15N標識ペプチド(赤色点線)、AQUAペプチド(緑色点線)。図23Cは、ペプチドフラグメント化のためのBiemann命名法による特異的PRMトランジションを示し、これにより、pS199、pS202またはpT205を保有する3種の共溶出される一リン酸化ペプチドの同定が可能になった。Cps=1秒当たりのカウント。
図23-2】同上。
図23-3】同上。
【0037】
図24-1】図24A図24B図24C図24Dおよび図24Eは、T217でのCSFタウリン酸化が、アミロイドーシス状態に関連することを示す。図24A:T217 リン酸化は、アミロイドーシスを有する参加者において(PiB-PETおよびCSF Aβ42/40比が陽性)、認知低下がない、または軽度なアミロイド陰性対照と比較して有意に増加する。図24B:MSによるT217、T181、およびELISAによるT181のリン酸化率を使用して、アミロイド陰性の参加者からアミロイド陽性を診断するためのROC曲線。図24C:pT217/T217比の比較から、アミロイドーシスを有する参加者におけるT217での特異的リン酸化が実証される。図24D~E:T217リン酸化と、MSにより測定されるCSF Aβ42/40変化、およびPiB-PETにより測定されるアミロイドプラーク沈着との比較。図24D:T217高リン酸化の程度は、Aβ40に対するCSF Aβ42の減少と相関していない。5件の不一致なケース(橙色三角形、PiB-PETおよびT217高リン酸化で陽性だが、CSF Aβで陰性)はすべて、アミロイド状態を定義するように選択された閾値0.12をわずかに上回り、これにより、これらは、CSFアミロイドアッセイの不十分な感度に起因し得ることが示唆される。図24E:PiB-PET負荷(FBP全皮質平均)は、アミロイド陽性の参加者におけるT217リン酸化状態と相関している。PiBによりアミロイド陽性をアミロイド陰性と区別するカットオフ値は、0.18である。
図24-2】同上。
図24-3】同上。
【0038】
図25図25は、T217でのCSFタウリン酸化が、認知の状態と無関係であり、前臨床ADにおいて有意に修飾されていることを示す。左パネル:T217リン酸化と臨床認知症評価ボックス合計(CDR-SB)により測定される認知プロファイルとの間に相関が存在しない。右パネル:認知低下がない参加者(CDR-SB=0)のうち、T217は、アミロイド陽性群において、既に有意に高リン酸化されている。
【0039】
図26-1】図26Aおよび図26Bは、化学抽出および免疫精製後の血漿タウ短縮化プロファイルを例証する。図26Aは、全コホートからの結果を描写する。図26Bは、コホートからの平均タウプロファイルを描写する。a、b、cおよびdと同定された減少は、以下のように記載されている。a:2Nおよび1N+2Nのペプチド存在量の減少は、血漿タウにおける5/5/1 0N/1N/2Nの寄与と一致する。b:減少は、およそ10%の181位におけるリン酸化の存在と一致する。T181におけるリン酸化は、残基180と181との間にトリプシン切断欠如を誘導する。これは、T181におけるリン酸化の程度に比例した、175~180および181~190のペプチド存在量の減少に寄与する。c:減少は、残基221と226との間のタウ短縮化と一致する。Cigognola et al.は、CSFタウが、残基224で発生する主要な切断であると報告している。d:減少は、残基224から上流領域である微小管結合領域への血漿タウのC末端での進行性分解と一致する。
図26-2】同上。
【0040】
図27-1】図27A図27B図27C図27D図27Eおよび図27Fは、血漿タウおよび血漿リン酸化タウの群間変化を例証するグラフである。図2A7は、血漿およびCSF中のpT217/T217比の測定が、全コホートおよびCSF pT217陽性サブグループの両方で高度に相関することを示す。Spearman相関および関連p-値が示されている。CSF測定と一致して、血漿pT217/T217比(図27B)およびpT217レベル(図27C)は、認知の状態に関係なく、アミロイド陽性群からアミロイド陰性を識別する。CSF pT217が高いアミロイド陰性も、他のアミロイド陰性群から分離した。図27Dは、血漿タウレベルが、アミロイド状態およびAD認知症のバイオマーカーではないことを示す。血漿pT181/T181比(図27E)およびpT181レベル(図27F)は、アミロイド陽性群において上昇するが、異常タウリン酸化を検出するにはpT217の測定より正確ではない。群間の分離は、受信者動作曲線下面積(AUROC)を使用して計算される。
図27-2】同上。
図27-3】同上。
図27-4】同上。
図27-5】同上。
図27-6】同上。
【発明を実施するための形態】
【0041】
中枢神経系中の神経原線維変化中へのタウタンパク質凝集は、アルツハイマー病(AD)を含むある特定の神経変性障害の病因となる。タウ不安定化の機構はなお完全に理解されていないが、タウタンパク質はタウ凝集体中で高リン酸化されることが判明した。出願人らは、特定のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を定量するある特定の方法を、ADの過程を、その前臨床の無症状ステージから症状ステージまでにわたって追跡するために使用することができることを発見した。図22は、出願人の方法により生成された、ADに起因するMCIの発症までの年数に関する、およびある特定の病態生理の変化の発生に関する、T181、T205およびT217で測定可能なタウリン酸化の動的パターンを例示する。本開示は、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症までの時間を予測するため、処置の決定の指針とするため、対象を臨床試験に選択するため、およびある特定の治療的介入の臨床的有効性を評価するための、特定のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を定量するための方法の使用を包含する。本発明の他の態様および反復を、以下により十分に説明する。
【0042】
I.定義
本発明がより容易に理解されるように、ある特定の用語を最初に定義する。別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の実施形態が関係する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において記載されているものと類似するか、それを修正するか、またはそれと等価な多数の方法および材料を、本発明の実施形態の実践において不必要な実験を伴うことなく使用することができ、好ましい材料および方法は本明細書において記載されている。本発明の実施形態を説明し特許請求するにあたって、下記に記載する定義に従って以下の用語を使用する。
【0043】
「約」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば典型的な測定技術および器具を通して発生することのある、限定されるものではないが質量、容量、時間、距離および量を含む任意の定量可能な変数に関する数量の変動を指す。さらに、実際に使用される固体および液体の操作手順を考慮すると、組成物を作製するかまたは方法を実行するため等に使用される成分の製造、供給源または純度の差異を通して起こる可能性のある、一定数の不慮の誤差および変動が存在する。「約」という用語は、最大±5%であり得るが、±4%、3%、2%、1%等でもあり得る、これらの変動も包含する。「約」という用語による修飾の有無を問わず、特許請求の範囲は量についての等価物を含む。
【0044】
本明細書において使用される場合、抗体は、当該技術分野において理解されるような完全な抗体、すなわち2つの重鎖および2つの軽鎖からなるものであり得るか、または抗原結合領域を有し、限定されるものではないが、フラグメント、例えばFab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、Fvおよび一本鎖抗体Fvを含む、任意の抗体様の分子であり得る。抗体という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体も指す。様々な抗体ベースのコンストラクトおよびフラグメントを調製および使用するための技術は、当該技術分野において公知である。抗体を調製および特徴付けるための手段も、当該技術分野において公知である(例えばAntibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0045】
本明細書において使用される場合、「アプタマー」という用語は、生化学的活性、分子の認識または結合特性に関して有用な生物学的活性を有するポリヌクレオチド、一般的にはRNAまたはDNAを指す。通常、アプタマーは分子活性を有し、例えば特定のエピトープ(領域)における標的分子へ結合する。アプタマーはポリペプチドと結合する点で特異的であり、インビトロ進化法(in vitro evolution method)により、合成および/または同定できることが一般的に認められている。アプタマーを調製および特徴付ける手段は、インビトロ進化法を含め、当該技術分野において公知である。例えば、その全体を参照により本明細書に組み込まれる、US7,939,313を参照されたい。
【0046】
「Aβ」という用語は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれるより大きなタンパク質のカルボキシ末端中の領域に由来するペプチドを指す。APPをコードする遺伝子は、第21染色体に位置する。毒性を有し得る異なる多数の形態のAβが存在し、Aβペプチドは典型的に37~43アミノ酸配列長であるが、これらは全体のサイズを変化させる短縮化および修飾を有し得る。これらは、可溶性および不溶性の区画中、モノマー、オリゴマーおよび凝集体形態で、細胞内または細胞外で見出すことができ、他のタンパク質または分子と複合体形成し得る。Aβの有害効果または毒性効果は、上記の形態のいずれかまたはすべて、ならびに具体的に記載されていないその他の点に起因し得る。例えば、2つのそのようなAβアイソフォームにはAβ40およびAβ42が挙げられ、Aβ42アイソフォームは特に原線維形成的または不溶性であり、疾患状態に関連する。「Aβ」という用語は、典型的に、個別のAβ種間の区別なしに、複数のAβ種を指す。特定のAβ種は、ペプチドのサイズにより、例えばAβ42、Aβ40、Aβ38等と同定される。
【0047】
本明細書において使用される場合、「Aβ42/Aβ40値」という用語は、対象から得られた試料中のAβ42の濃度の、同じ試料中のAβ40の濃度と比較した比を意味する。
【0048】
「Aβアミロイドーシス」は、脳内のAβ沈着のエビデンスとして臨床的に定義される。Aβアミロイドーシスを有すると臨床に決定される対象は、本明細書において「アミロイド陽性」と称され、一方でAβアミロイドーシスを有しないと臨床的に決定される対象は、本明細書において「アミロイド陰性」と称される。Aβアミロイドーシスは、現行の技術により検出可能となる前に存在するようである。それでもなお、Aβアミロイドーシスの承認済みの指標が当該技術分野において存在する。本開示の時点では、Aβアミロイドーシスは、典型的に、アミロイド画像化(例えばPiB PET、fluorbetapirまたは当該技術分野において公知の他の画像化方法)により、または脳脊髄液(CSF)Aβ42の低減もしくはCSF Aβ42/40比の低減により、同定される。平均皮質結合能(mean cortical binding potential)スコア>0.18を有する[11C]PIB-PET画像は、Aβアミロイドーシスの指標であり、免疫沈降および質量分析(IP/MS)による約1ng/mlの脳脊髄液(CSF)Aβ42濃度も同様である。これらのような、または当該技術分野において公知の他の値は、Aβアミロイドーシスを臨床的に確認するために、単独でまたは組合せで使用することができる。例えば、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Klunk W E et al. Ann Neurol 55(3) 2004, Fagan A M et al. Ann Neurol, 2006, 59(3), Patterson et. al, Annals of Neurology, 2015, 78(3): 439-453、またはJohnson et al., J. Nuc. Med., 2013, 54(7): 1011-1013を参照されたい。Aβアミロイドーシスを有する対象は、症候性であることもあればそうでないこともあり、症候性の対象は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患についての臨床基準を満たすこともあれば満たさないこともある。Aβアミロイドーシスに関連する症状の非限定的な例には、認知機能障害、挙動変化、言語機能異常、情動調節不全、発作、認知症および神経系構造または機能の障害を挙げることができる。Aβアミロイドーシスに関連する疾患には、限定されるものではないが、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症、レビー小体型認知症および封入体筋炎が挙げられる。Aβアミロイドーシスを有する対象は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患を発症する増大したリスクを有する。
【0049】
「Aβアミロイドーシスの臨床徴候」は、当該技術分野において公知のAβ沈着の尺度を指す。Aβアミロイドーシスの臨床徴候には、限定されるものではないが、アミロイド画像化(例えばPiB PET、fluorbetapirまたは当該技術分野において公知の他の画像化方法)により、または脳脊髄液(CSF)Aβ42もしくはAβ42/40比の低減により同定される、Aβ沈着を挙げることができる。例えば、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Klunk WE et al. Ann Neurol 55(3) 2004、およびFagan AM et al. Ann Neurol 59(3) 2006を参照されたい。各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第14/366,831号、第14/523,148号および第14/747,453号に記載されているように、Aβアミロイドーシスの臨床徴候には、Aβの代謝の測定、特に、単独での、または他のAβ突然変異体(例えばAβ37、Aβ38、Aβ39、Aβ40および/または総Aβ)の代謝の測定と比較した、Aβ42代謝の測定も挙げることができる。さらなる方法は、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Albert et al. Alzheimer’s & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 170-179; McKhann et al., Alzheimer’s & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 263-269;およびSperling et al. Alzheimer’s & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 280-292に記載されている。重要なことに、Aβアミロイドーシスの臨床徴候を有する対象は、Aβ沈着に関連する症状を有することもあれば有しないこともある。また、Aβアミロイドーシスの臨床徴候を有する対象には、Aβアミロイドーシスに関連する疾患を発症する増大したリスクがある。
【0050】
「アミロイド画像化の候補」は、臨床医によりアミロイド画像化が臨床的に保証される個体として特定された対象を指す。非限定的な例として、アミロイド画像化の候補は、1つもしくは複数のAβアミロイドーシスの臨床徴候、1つもしくは複数のAβプラークに関連する症状、1つもしくは複数のCAAに関連する症状、またはそれらの組合せを有する対象であり得る。非限定的な例として、アミロイド画像化の候補は、Aβアミロイドーシスについて遺伝的素因を有する対象であり得る。臨床医は、彼らの臨床的ケアを指示するために、そのような対象についてのアミロイド画像化を推奨してもよい。別の非限定的な例として、アミロイド画像化の候補は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患についての臨床試験における潜在的な参加者(対照対象または試験対象のいずれか)であり得る。
【0051】
「Aβプラークに関連する症状」または「CAAに関連する症状」は、それぞれ、アミロイド線維と呼ばれる規則的に配列された線維の凝集体から構成されるアミロイドプラークまたはCAAの形成により引き起こされるかまたはそれに関連する、任意の症状を指す。代表的なAβプラークに関連する症状には、限定されるものではないが、ニューロン変性、認知機能障害、記憶障害、挙動変化、情動調節不全、発作、神経系構造または機能の障害、およびアルツハイマー病またはCAAの発症または悪化の増大したリスクを挙げることができる。ニューロン変性には、ニューロンの構造の変化(分子の変化、例えば毒性タンパク質の細胞内蓄積、タンパク質凝集等、およびマクロレベルの変化、例えば軸索または樹状突起の形状または長さの変化、ミエリン鞘組成の変化、ミエリン鞘の喪失等を含む)、ニューロンの機能の変化、ニューロンの機能の喪失、ニューロン死、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。認知機能障害には、限定されるものではないが、記憶、注意、集中、言語、論理的思考、創造性、実行機能、計画および系統化の困難さを挙げることができる。挙動変化には、限定されるものではないが、身体的または言語的な攻撃、衝動性、抑制の低下、無感動、自発性の低下、人格の変化、アルコール、タバコまたは薬物の乱用、および他の依存症関連の行動を挙げることができる。情動調節不全には、限定されるものではないが、うつ病、不安、躁病、興奮性および情動失禁を挙げることができる。発作には、限定されるものではないが、全身性強直性間代性発作、複雑部分発作、および非てんかん性の心因性発作を挙げることができる。神経系構造または機能の障害には、限定されるものではないが、水頭症、パーキンソニズム、睡眠障害、精神病、姿勢および共調運動の障害を挙げることができる。これには、運動障害、例えば単不全麻痺、片側不全麻痺、四肢不全麻痺、運動失調、バリスムスおよび振戦を挙げることができる。これには、嗅覚、触覚、味覚、視覚、聴覚を含む感覚喪失または機能障害も挙げることができる。さらに、これには、自律神経系障害、例えば腸および膀胱の機能障害、性機能障害、血圧および体温の調節不全を挙げることができる。最後に、これには、視床下部および下垂体の機能障害に起因するホルモン障害、例えば成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、プロラクチンおよび無数の他のホルモンおよび調節因子の欠乏および調節不全を挙げることができる。
【0052】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。哺乳動物には、限定されるものではないが、ヒト、霊長類、家畜、げっ歯類および愛玩動物が挙げられる。対象は、医学的ケアもしくは処置の待機中であってもよく、医学的ケアもしくは処置を受けていてもよく、または医学的ケアもしくは処置を受けたことがあってもよい。
【0053】
本明細書において使用される場合、「健康な対照群」「正常群」という用語、または「健康な」対象からの試料は、内科医により、質的または定量的な試験結果に基づき、AβアミロイドーシスにもAβアミロイドーシスに関連する臨床的疾患(限定されるものではないが、アルツハイマー病を含む)にも罹患していないと診断される対象、または群の対象を意味する。「正常な」対象は、通常、評価される個体とほぼ同じ年齢であり、限定されるものではないが、同じ年齢の対象および5~10年の範囲内の対象を含む。
【0054】
本明細書において使用される場合、「血液試料」という用語は、血液、好ましくは末梢(または循環)血に由来する生物学的試料を指す。血液試料は全血、血漿または血清であることができるが、血漿が典型的に好ましい。
【0055】
「アイソフォーム」という用語は、本明細書において使用される場合、タンパク質をコードするmRNAの選択的スプライシング、タンパク質の翻訳後修飾、タンパク質のタンパク分解処理、遺伝的変異および体細胞組換えに起因して生じる、同じタンパク質突然変異体のいくつかの異なる形態のいずれかを指す。「アイソフォーム」および「突然変異体」という用語は、互換的に使用される。
【0056】
本明細書において特に指示の無い限り、「タウタンパク質」または「タウ」という用語は、全長であるか、短縮化されたか、または翻訳後修飾された、すべてのタウアイソフォームを包含する。限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、魚類、ウシ、カエル、ヤギおよびニワトリを含む多数の動物では、タウは遺伝子MAPTによりコードされる。ヒトでは、MAPTのエクソン2、3および10の選択的スプライシングにより生成される、タウの6つのアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームは、352~441アミノ酸長の範囲にわたる。エクソン2および3は、N末端に各々29個のアミノ酸インサートをコードし(Nと呼ばれる)、全長ヒトタウアイソフォームは、両方のインサート(2N)、1つのインサート(1N)を有するか、またはインサートを有しない(0N)ことがある。すべての全長ヒトタウアイソフォームは、微小管結合ドメイン(Rと呼ばれる)の3つの繰り返しも有する。C末端のエクソン10を含むことで、エクソン10によりコードされる第4の微小管結合ドメインを含むこととなる。したがって、全長ヒトタウアイソフォームは、微小管結合ドメインの4つの繰り返し(4R)(エクソン10を含む)、または微小管結合ドメインの3つの繰り返し(3R)(エクソン10を除く)から構成され得る。ヒトタウは、翻訳後修飾されることもあればされないこともある。例えば、タウがリン酸化、ユビキチン化、グリコシル化および糖化されることがあることは、当該技術分野において公知である。したがって、「ヒトタウ」という用語は、(2N、3R)、(2N、4R)、(1N、3R)、(1N、4R)、(0N、3R)および(0N、4R)アイソフォーム、それらのNおよび/またはC末端で短縮化された種類のアイソフォーム、ならびにすべての翻訳後修飾されたアイソフォームを包含する。タウをコードする遺伝子の選択的スプライシングは、他の動物において同様に発生する。遺伝子がMAPTとして同定されていない動物では、ホモログが当該技術分野において公知の方法で同定され得る。
【0057】
脳内のタウ沈着に関連する疾患は、「タウオパチー」と称され得る。当該技術分野において公知のタウオパチーには、限定されるものではないが、進行性核上性麻痺、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、第17番染色体に関連する前頭側頭型認知症およびパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病、グアムのパーキンソン病認知症、神経原線維変化型老年期認知症、神経節腫および神経細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラフォルデン-シュパッツ病、リポフスチン症、ピック病、皮質基底核変性症、嗜銀顆粒症(argyrophilic grain disease)(AGD)、前頭側頭葉変性症、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症が挙げられる。
【0058】
タウオパチーの臨床徴候は、限定されるものではないが神経原線維変化を含む、脳内のタウの凝集体であり得る。脳内のタウ凝集体を検出および定量するための方法は、当該技術分野において公知である(例えばタウ特異的リガンド、例えば[18F]THK5317、[18F]THK5351、[18F]AV1451、[11C]PBB3、[18F]MK-6240、[18F]RO-948、[18F]PI-2620、[18F]GTP1、[18F]PM-PBB3および[18F]JNJ64349311、[18F]JNJ-067)等を使用するタウPET)。
【0059】
「タウ画像化の候補」は、臨床医によりタウ画像化が臨床的に保証される個体として特定された対象を指す。非限定的な例として、タウ画像化の候補は、1つもしくは複数のAβアミロイドーシスの臨床徴候、1つもしくは複数のAβプラークに関連する症状、1つもしくは複数のタウオパチーの症状、またはそれらの組合せを有する対象であり得る。非限定的な例として、タウ画像化の候補は、Aβアミロイドーシスまたはタウオパチーについて遺伝的素因を有する対象であり得る。臨床医は、彼らの臨床的ケアを指示するために、そのような対象についてのタウ画像化を推奨してもよい。別の非限定的な例として、タウ画像化の候補は、タウオパチーについての臨床試験の潜在的な参加者(対照対象または試験対象のいずれか)であり得る。
【0060】
「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値を指す。
【0061】
「特異的に結合する」という用語は、エピトープ結合剤に関して本明細書において使用される場合、目的のタンパク質(例えばタウ)または一般に他のタンパク質上の他のエピトープと有意な程度に交差反応しない、エピトープ結合剤を意味する。
【0062】
「Aβおよびタウ治療」という句は、集合的に、AβアミロイドーシスもしくはADを発症するリスクのある対象、Aβアミロイドーシスを有すると診断された対象、タウオパチーを有すると診断された対象、またはADを有すると診断された対象に対して企図される、または彼らと共に使用する、任意の造影剤または治療剤を指す。
【0063】
II.可溶性タウを濃縮するために血液試料を処理するための方法
一態様では、本開示は、可溶性タウを濃縮するために血液試料を処理するための方法を提供する。血液中のタウの濃度が低いと、MS技術を使用する測定が困難である。例えば、イムノアッセイにより報告されるように、総タウ(t-タウ)の血漿濃度は1~20pg/mLであり、一方でp-タウ181は、サブpg/mL濃度で存在する。サブpg/mL範囲は、近年アッセイされた血漿Aβ42ペプチドを含む、現在モニタリングされる血漿バイオマーカーの濃度をはるかに下回る。本開示のMS方法は、単離されたタウ試料を使用することにより、これらの制限を克服する。本明細書において使用される場合、「単離されたタウ試料」は、タウを含む組成物であって、タウが対象から得られた血液試料から精製されている組成物を指す。
【0064】
一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数の血液試料を対象から得る、第1のステップを含んでもよい。対象は、本明細書において使用される場合、哺乳動物、好ましくはヒトである。血液は、静脈内カテーテルの有無を問わない静脈穿刺によるか、またはフィンガースティック(またはその等価物)により収集してもよい。対象から同時に収集された複数の血液試料は、プールされてもよい。収集し、適宜プールしたら、血液試料を、当該技術分野において公知の方法(例えば、全細胞および細胞残屑を除去するための遠心分離、分析試験の前に標本を安定化および保存するためのプロテアーゼ阻害剤の使用等)に従って処理してもよい。血液試料は、即時に使用されてもよく、または冷凍し無期限に保管されてもよい。
【0065】
別の実施形態では、方法は、以前に対象から得られた血液試料を使用してもよい。対象から以前収集された複数の血液試料は、プールされてもよい。以前に得られた血液試料が全血である場合、方法は、典型的に、1つまたは複数の血液試料を処理して血漿試料または血清試料を得るステップを含む。好ましくは、以前に対象から得られた血液試料は、血漿試料または血清試料である。
【0066】
すべての実施形態では、血漿試料または血清試料は、次に、単離されたタウ試料を製造するために処理される。この処理は、タンパク質を血液試料またはプールされた血液試料から沈殿させ、それにより血液の酸可溶性抽出物を製造すること、固相抽出(SPE)、およびタウと特異的に結合する1つまたは複数のエピトープ結合剤を使用するアフィニティ精製により、酸可溶性抽出物中の可溶性タウを濃縮することを含む。ある特定の実施形態では、アフィニティ精製は固相抽出の前に行われてもよい。
【0067】
出発材料(すなわち血液試料)の量は、下流の使用に依存して変動してもよい。一部の実施形態では、約0.5ml~約50mlの血漿(または対応する量の全血もしくは血清)を使用してもよい。一部の実施形態では、約1ml~約20mlの血漿(または対応する量の全血もしくは血清)を使用してもよい。一部の実施形態では、約10ml~約20mlの血漿(または対応する量の全血もしくは血清)を使用してもよい。一部の実施形態では、約1ml~約10mlの血漿(または対応する量の全血もしくは血清)を使用してもよい。一部の実施形態では、約1ml~約5mlの血漿(または対応する量の全血もしくは血清)を使用してもよい。
【0068】
血漿タンパク質は、1つまたは複数の以前に得られた血液試料から、過塩素酸を使用して沈殿させることができる。本明細書において使用される場合、「過塩素酸」は、70%過塩素酸を指す。一部の実施形態では、過塩素酸は、約1%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約1%v/v~約10%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約1%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3%v/v~約10%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、3.5%v/v~約15%v/v、3.5%v/v~約10%v/v、または3.5%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3.5%v/vの最終濃度で添加される。過塩素酸の添加に続けて、試料は十分に混合され(例えばボルテックスミキサーにより)、沈殿を促進するために、低温で典型的に約10分またはそれよりも長く保持される。例えば、試料は、約10分~約60分、約20分~約60分、または約30分~約60分保持されてもよい。他の例では、試料は、約15分~約45分、または約30分~約45分保持されてもよい。他の例では、試料は、約15分~約30分、または約20分~約40分保持されてもよい。他の例では、試料は、約30分保持される。試料は次に、沈殿したタンパク質をペレットにするために低温で遠心分離にかけられ、可溶性タウを含む上清(すなわち、酸可溶性画分)は、新たな容器に移される。上記の文脈において使用される場合、「低温」は10℃以下の温度を指す。例えば、低温は約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃または約10℃であってもよい。一部の実施形態では、より狭い温度範囲、例えば約3℃~約5℃、またさらには約4℃が好ましいものであり得る。ある特定の実施形態では、低温は、試料を氷上に置くことにより達成されてもよい。
【0069】
可溶性タウは、逆相吸着剤を使用した固相抽出により濃縮される。簡潔には、可溶性タウを含む上清は、逆相吸着剤に適用され、好適な移動相を用いて洗浄され、次に溶出される。好適な逆相材料は当該技術分野において公知であり、限定されるものではないが、アルキル結合シリカ、アリール結合シリカ、スチレン/ジビニルベンゼン(divynlbenzene)材料、N-ビニルピロリドン/ジビニルベンゼン材料が挙げられる。例示的な実施形態では、逆相材料は、N-ビニルピロリドンおよびジビニルベンゼンを含むポリマー、またはスチレンおよびジビニルベンゼンを含むポリマーである。可溶性タウを含む上清と接触させる前に、逆相吸着剤は製造元の使用説明書にしたがって、または当該技術分野において公知のように、予め調整される(例えば、水混和性有機溶媒、および次に移動相を含む緩衝液を用いる)。加えて、一部の逆相材料は他のものよりも強くイオン化された分析物を保持するため、上清を酸性化してもよい。移動相中の、および溶出のための揮発性成分の使用は、試料の乾燥を促進するため、好ましい。例示的な実施形態では、タウは、約0.05%v/vトリフルオロ酢酸(TFA)~約1%v/v TFAを含む液体相、またはその等価物を用いて洗浄されてもよい。一部の例では、洗浄は、約0.05%v/v~約0.5%v/v TFAまたは約0.05%v/v~約0.1%v/v TFAを含む液体相を用いてもよい。一部の例では、洗浄は、約0.1%v/v~約1.0%v/v TFAまたは約0.1%v/v~約0.5%v/v TFAを含む液体相を用いてもよい。結合したタウは、次に約20%v/v~約50%v/vアセトニトリル(ACN)を含む液体相、またはその等価物を用いて溶出される。一部の例では、タウは約20%v/v~約40%v/v ACNまたは約20%v/v~約30%v/v ACNを含む液体相を用いて溶出されてもよい。一部の例では、タウは約30%v/v~約50%v/v ACNまたは約30%v/v~約40%v/v ACNを含む液体相を用いて溶出されてもよい。溶出液は、当該技術分野において公知の方法(例えば真空乾燥(例えばspeed-vac)、凍結乾燥、窒素気流下での蒸発等)により乾燥されてもよい。
【0070】
可溶性タウは、タウに特異的に結合する1つまたは複数のエピトープ結合剤を使用して、アフィニティ精製される。典型的に、1つまたは複数のエピトープ結合は、固定される、すなわち固体支持体、例えばビーズ、樹脂、組織培養プレート等に接着する。好ましいエピトープ結合剤は、リン酸化されたタウおよびリン酸化されていないタウの両方に、特異的に結合する。一例では、好適なエピトープ結合剤は、タウのmidドメイン中のエピトープと結合してもよい。別の例では、好適なエピトープ結合剤は、タウのN末端中、好ましくはタウのアミノ酸1~35中のエピトープと結合してもよい。別の例では、好適なエピトープ結合剤は、タウのMTBR中のエピトープと結合してもよい。別の例では、好適なエピトープ結合剤は、タウのC末端中のエピトープと結合してもよい。なおさらなる実施形態では、2つ以上のエピトープ結合剤が使用されてもよい。一例では、第1のエピトープ結合剤は、タウのN末端中のエピトープと結合してもよく、第2のエピトープ結合剤は、タウのmidドメイン中のエピトープと結合してもよい。別の例では、第1のエピトープ結合剤は、タウのMTBR中のエピトープと結合してもよく、第2のエピトープ結合剤は、タウのmidドメイン中のエピトープと結合してもよい。別の例では、第1のエピトープ結合剤は、タウのC末端中のエピトープと結合してもよく、第2のエピトープ結合剤は、タウのmidドメイン中のエピトープと結合してもよい。別の例では、第1のエピトープ結合剤は、タウのC末端中のエピトープと結合してもよく、第2のエピトープ結合剤は、タウのN末端中のエピトープと結合してもよい。別の例では、第1のエピトープ結合剤は、タウのMTBR中のエピトープと結合してもよく、第2のエピトープ結合剤は、タウのN末端中のエピトープと結合してもよい。別の例では、第1のエピトープ結合剤は、タウのMTBR中のエピトープと結合してもよく、第2のエピトープ結合剤は、タウのC末端中のエピトープと結合してもよい。上記の実施形態の各々では、リガンドは、抗体またはアプタマーであってもよい。好適な抗体の非限定的な例を、図1に示す。
【0071】
さらなる一実施形態では、1つまたは複数のさらなる血漿タンパク質は、追加の血漿タンパク質と特異的に結合する1つまたは複数の追加のエピトープ結合剤を使用して、同時にまたは順次にアフィニティ精製されてもよい。タウと同時にまたは順次にアフィニティ精製され得るさらなる血漿タンパク質の非限定的な例は、Aβ、ApoE、アルファシヌクレイン、可溶性アミロイド前駆体タンパク質、アルファ-2マクログロブリン、S100B、ミエリン塩基性タンパク質、インターロイキンおよびTNFである。例示的な実施形態では、ApoE、アルファシヌクレインまたはそれらの任意の組合せもアフィニティ精製され、したがって単離されたタウ試料中に存在する。
【0072】
単離されたタウ試料は、即時に使用されてもよく、または当該技術分野において公知の方法により無期限に保管されてもよい。
【0073】
本明細書において記載されているように調製された単離されたタウ試料は、限定されるものではないが、イムノアッセイ、xMAPアッセイおよび質量分析を含む任意の数の下流の用途で使用されてもよい。アッセイは、タウの総量、ホスホ-タウの総量、特定のアミノ酸残基におけるリン酸化、および/または他の翻訳後修飾を分析することができる。
【0074】
III.単離されたタウ試料中のタウリン酸化の測定
タウ中の特定のアミノ酸(すなわち、「部位」および「残基」)のリン酸化は、結果としてリン酸化タウ(p-タウ)アイソフォームを生じる。別の態様では、本開示は、タウの1つまたは複数の特定のアミノ酸残基におけるリン酸化を測定するための方法であって、(a)単離されたタウ試料を用意すること、および(b)タウのさらに1つの残基におけるリン酸化を定量することとを含む方法を提供する。タウの2つ以上の残基におけるリン酸化が測定される場合、方法は、値の間の比または別の数学的関係を算出することをさらに含んでもよい。
【0075】
一部の実施形態では、タウのリン酸化は、T111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数の残基において測定される。一部の実施形態では、タウのリン酸化は、T111、T181、T205、S208、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数の残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T181、S214、およびT217から選択される1つまたは複数の残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T181、T205、およびT217から選択される1つまたは複数の残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、S199および適宜1つまたは複数のさらなる残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、S202および適宜1つまたは複数のさらなる残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T181および適宜1つまたは複数のさらなる残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T205および適宜1つまたは複数のさらなる残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T217および適宜1つまたは複数のさらなる残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T153およびT175を含む2つ以上の残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T181、T205、およびT217から選択される2つ以上の残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T181、T205、およびT217を含む3つ以上の残基において測定される。別の実施形態では、タウのリン酸化は、T181およびT217を含む2つ以上の残基において測定される。
【0076】
単離されたタウ試料を調製するための方法を、第II節に詳細に説明する。一部の実施形態では、対象は、神経変性疾患の診断を有する。一部の実施形態では、対象は、タウオパチーの診断を有する。一部の実施形態では、対象は、タウオパチーの診断を有するが、Aβアミロイドーシスを有しない。一部の実施形態では、対象は、ADの診断を有する。一部の実施形態では、対象は、CAAの診断を有する。一部の実施形態では、対象は、MCIまたは認知症の診断を有する。一部の実施形態では、対象は、神経変性疾患の臨床徴候を有しない。
【0077】
実施例は、タウリン酸化部位を発見し、単離されたタウタンパク質中のリン酸化部位の存在量を最初に定量するための、並列反応モニタリング(PRM)を使用した、高度に感受性かつ特異的な質量分析(MS)法を開示する。しかし、本開示は、タウの部位特異的リン酸化を定量的に評価するための任意の1つの特定の方法に限定されない。好適な方法は、単一のアミノ酸のリン酸化状態のみが異なるタウアイソフォームを区別し、異なるアミノ酸でリン酸化されたp-タウアイソフォームを区別し、総タウの全体的変化から独立して特定の部位で起こるリン酸化の変化を定量するべきである。総タウの全体的変化から独立して特定の部位で起こるリン酸化化学量の変化を定量するための3つの手法を、実施例において詳述する:1)同じ配列を共有する各リン酸化ペプチドの相対的存在量を推定するために使用することのできる、リン酸化ペプチド異性体間の相対的比較、2)参照としてのタウタンパク質からの任意のペプチドを用いた、リン酸化ペプチドの標準化、および3)標識した合成内部標準(internal synthetic labeled standards)を使用した、各リン酸化および非リン酸化ペプチドについての絶対量定量、ここで各リン酸化ペプチドについての絶対量定量値は、タウタンパク質からの任意のペプチドについて得られた任意の絶対量定量値を用いて標準化される。すべての3つの手法は、各部位についての相対的なリン酸化の変化の比較のために、内部標準化を使用する。当該技術分野において公知の他の方法も使用してもよい。絶対量定量のために標識した合成内部標準を使用する場合、標識された標準は、好ましくは、可溶性タウを濃縮するための試料の処理前に、血液試料中にスパイクされる。したがって、第II節の方法は、沈殿の前、典型的には直前に、標識された内部標準を血液試料に添加する、さらなるステップを含む。
【0078】
例示的な実施形態では、タウの部位特異的リン酸化は、高分解能質量分析により測定される。好適な種類の質量分析が当該技術分野において公知である。これらには、限定されるものではないが、四重極型、飛行時間型、イオントラップおよびOrbitrap、ならびに異なる種類の質量分析計を1つの構成に組み合わせたハイブリッド型質量分析計(例えばThermoFisher ScientificからのOrbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計)が挙げられる。単離されたタウ試料のさらなる処理は、MS分析の前位に行ってもよい。例えば、単離されたタウ試料は、1種または複数のさらなる血漿タンパク質を並行して定量することができるように、複数の試料に分けられてもよい。別の実施例として、タウは典型的に、MS分析の前にタンパク分解により消化される。好適なプロテアーゼには、限定されるものではないが、トリプシン、Lys-N、Lys-CおよびArg-Nが挙げられる。消化は、免疫精製の後(例えばエピトープ結合剤からのタウの溶出の後)、またはアフィニティ精製の間(例えば、タウがエピトープ結合剤に結合している間)に行ってもよい。アフィニティ精製を、第II節に詳細に説明する。1つまたは複数の浄化ステップに続き、消化されたタウペプチドは、高分解能質量分析計と適合する液体クロマトグラフィーシステムにより分離されてもよい。クロマトグラフィーシステムは、所望のLC-MSパターンを生成するために、慣習的な実験により最適化すれてもよい。多様なLC-MS技術を、部位特異的タウリン酸化を定量的に分析するために使用してもよい。非限定的な例には、選択反応モニタリング、並列反応モニタリング、選択イオンモニタリングおよびデータ非依存型解析法(data-independent acquisition)が挙げられる。上記で述べたように、部位特異的タウリン酸化のすべての定量分析は、総タウの全体的変化を考慮するべきである。例示的な実施形態では、実施例において概説される質量分析プロトコールが使用される。
【0079】
さらなる実施形態では、方法は、対象から得られた血液試料中の総タウを測定すること、対象から得られた血液試料中のさらに1つのさらなる血漿タンパク質を測定すること、および/またはApoE状態を決定することをさらに含み、単一の単離されたタウ試料は、すべての測定に使用されてもよい。総タウを測定するための方法を、第IV節に説明する。ApoE状態を決定することは、核酸レベル(例えばシークエンシング、核酸ベースアレイ(nucleic acid based arrays)等による)またはタンパク質レベル(例えば、質量分析、イムノアッセイ等による)のいずれかで、対象のApoE変異体(すなわち、ApoE2、ApoE3またはApoE4)を決定することを意味する。1つまたは複数のさらなる血漿タンパク質を測定するための方法も、当該技術分野において公知である。例えば、質量分析、イムノアッセイ、xMAP(登録商標)アッセイ等は、様々な血漿タンパク質を測定するために、当該技術分野において使用される。タウと組み合わせて測定され得るさらなる血漿タンパク質の非限定的な例には、アミロイドベータ(Aβ)、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質J、アルファシヌクレイン、可溶性アミロイド前駆体タンパク質、アルファ-2マクログロブリン、S100B、ミエリン塩基性タンパク質、インターロイキンおよびTNFが挙げられる。一部の例では、1つまたは複数のAβペプチドが測定される。例えば、Aβ38、Aβ40および/またはAβ42が測定されてもよい。上記の実施形態では、方法は、1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化とさらなる測定(例えばさらなる血漿タンパク質の総量、ApoE状態等)との間の比または別の数学的関係を算出することをさらに含んでもよい。
【0080】
上記の実施形態の各々では、方法は、対象にさらなる診断試験を行うこと、または測定されたリン酸化レベルが対照集団における平均から有意に逸脱する場合に対象に治療剤を投与することをさらに含んでもよい。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を指す。さらなる診断試験は、PET画像化(例えばアミロイド画像化、タウ画像化等)、対象から得られたCSF試料中のさらに1つのタンパク質の定量測定等であってもよい。治療剤は、抗炎症剤、血管新生阻害剤、ベータセクレターゼ阻害剤、ガンマセクレターゼ阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、抗ApoE抗体、アミロイド沈着の増大を予防するために設計された薬剤、対象の既存のプラーク負荷を減少させるために設計された薬剤、タウ凝集を防止するための薬剤、NFTを標的とする薬剤等であってもよい。
【0081】
IV.単離されたタウ試料中の総タウの測定
別の態様では、本開示は、総タウを測定するための方法であって、(a)単離されたタウ試料を用意すること、および(b)総タウを定量することとを含む方法を提供する。「総タウ」は、本明細書において使用される場合、所与の試料中のすべてのタウアイソフォームを指す。タウは、可溶性および不溶性の区画中、モノマーおよび凝集体形態で、規則的なまたは不規則な構造で、細胞内または細胞外で見出され、他のタンパク質または分子と複合体形成し得る。したがって、生物学的試料の供給源(例えば脳組織、CSF、血液等)および生物学的試料の任意の下流処理は、所与の試料中のタウアイソフォームの全体量に影響を与えることとなる。
【0082】
タウペプチド測定は質量分析により行うことができ、測定の精度は、標識された内部標準を参照として使用することにより改善することができる。あるいは、総タウは、イムノアッセイまたはタウ濃度を定量する他の方法により測定することができる。
【0083】
総タウは、未修飾のタウペプチドの存在量をモニタリングすることにより測定されてもよい。タウリン酸化も測定される実施形態では、各リン酸化タウ部位について、目的のリン酸化ペプチドと一般的なアミノ酸配列を共有するタウペプチドは、総タウレベルを測定するために優先的に使用されてもよい。あるいは、タウ配列からの任意のペプチドを使用することができる。特定の実施形態では、総タウは、質量分析によりTPSLトリプシンペプチド(すなわちTPSLPTPPTR)を定量することにより、測定されてもよい。
【0084】
V.対象のADのステージを診断するための、ADに起因するMCIの発症の前に対象を診断するための方法
本開示の別の態様は、対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の高いリスクを有すると診断するための方法、および適宜、ADに起因するMCIの発症までの年数に関して対象をステージ分類するかまたは分類するための方法を包含する。アルツハイマー病(AD)に起因する軽度認知障害(MCI)は、ADの症候性の認知症前の段階を指す。この認知障害の程度は年齢に対して正常なものではなく、よって、年齢に関連する記憶障害および年齢に関連する認知の低下のようなコンストラクトは当てはまらない。ADに起因するMCIは臨床診断であり、ADに起因するMCIの診断についての臨床基準は当該技術分野において公知である。例えば、Albert et al. Alzheimer’s & Dementia, 2011, 7(3): 270-279を参照されたい。認知試験は、対象についての認知障害の程度を客観的に評価するために最適である。MCIを有する対象についての認知試験のスコアは、典型的に、文化的に適切な規範データ上で(すなわち、利用可能な場合、障害のあるドメインについて)、彼らの年齢および教育について合致する同等者についての平均から1~1.5標準偏差下回る。MCIの指定は、多くの場合、臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating)(CDR)スケール上での0.5の包括的尺度により支持される。CDRは、認知症の症状の重症度を定量するために使用される数値上のスケールである。他の好適な認知試験は、当該技術分野において公知である。認知障害の重症度を評価するのに好適な試験は存在するが、ADに起因するMCIの発症の数年前であると確信される対象を特定するための試験が、当該技術分野において必要とされている。
【0085】
一実施形態では、対象をADに起因するMCIへの転換の高いリスクを有すると診断するための方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象をADに起因するMCIへの転換の高いリスクを有すると診断すること、を含んでもよい。別の実施形態では、対象をADに起因するMCIへの転換の高いリスクを有すると診断するための方法は、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意すること、ならびに各単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)算出された変化が、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象をADに起因するMCIへの転換の高いリスクを有すると診断すること、を含んでもよい。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を指す。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。単離されたタウ試料は、無症候性であり得るかまたはそうではあり得ない対象から得ることができる。「無症候性の対象」は、ADのいかなる徴候も症状も示さない対象を指す。しかし、対象は、ADの徴候または症状(例えば記憶喪失、物を置き忘れること、気分または挙動の変化等)を呈し得るが、軽度認知障害の臨床診断についての十分な認知障害も機能障害も示さない。さらなる一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異のうちの1つを有し得る。代わりの一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有し得ない。特定の家族的な関連を有しないアルツハイマー病は、散発性アルツハイマー病と称される。
【0086】
本開示の別の態様は、対象のアルツハイマー病のステージを診断するための方法を包含する。様々な実施形態では、「ADのステージ」は、ADに起因するMCIの発症から経過した時間の量(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月等)として定義されてもよい。ADの臨床診断についての基準は存在するが、臨床現場では、所与の対象についての症状発症の時期が不明であるか、またはMCIもしくはADのいずれかの診断が疑わしいことが多い。そのため、対象のADのステージを客観的に診断する試験が、当該技術分野において必要とされている。
【0087】
一実施形態では、対象のADのステージを診断するための方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象のADのステージを診断すること、を含んでもよい。別の実施形態では、ADに起因するMCIの発症の前に対象を診断するための方法は、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意すること、ならびに各単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)算出された変化が、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象をADに起因するMCIの発症まで数年であると診断すること、を含んでもよい。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、またはより好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を含む。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。単離されたタウ試料は、ADに起因するMCI、認知症またはADの臨床診断を有し得るかまたは有し得ない対象から得ることができる。さらなる一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異のうちの1つを有し得る。代わりの一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有し得ない。
【0088】
部位特異的タウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、上記の実施形態のいずれかでは、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。両方の手法を、実施例において詳述する。比以外の数学演算も使用してもよい。例えば、実施例では、様々な統計学的モデル(例えば線形回帰、LME曲線、LOESS曲線等)における部位特異的タウリン酸化値を、他の公知のバイオマーカー(例えばAPOEε4状態、年齢、性別、認知試験スコア、機能試験スコア等)と併せて使用する。測定の選択および数学演算の選択は、方法の特異性を最大化するために最適化されてもよい。例えば、診断の精度は、ROC曲線下面積により評価されてもよく、一部の実施形態では、0.7以上のROC AUC値(例えば0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95等)が閾値として設定される。
【0089】
ヒトにおける脳のアミロイドプラークは、慣習的に、アミロイド陽電子放射断層撮影(PET)により測定される。例えば、皮質Aβプラークの11C-Pittsburgh化合物B(PiB)PET画像化は、Aβプラーク病態を検出するために一般的に使用される。皮質PiB-PETの標準取込値比(standard uptake value ratio)(SUVR)は、有意な皮質Aβプラークを確実に同定し、対象を PIB陽性(SUVR≧1.25)または陰性(SUVR<1.25)と分類するために使用される。したがって、上記の実施形態では、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団は、皮質PiB-PET SUVR<1.25を有する対象の集団を指すことがある。PiB結合の他の値(例えば平均皮質結合能)または皮質領域以外の目的の領域の分析も、対象をPIB陽性または陰性と分類するために使用されてもよい。他のPET造影剤も使用されてもよい。
【0090】
CSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団は、Patterson et al, Annals of Neurology, 2015に記載されるように、質量分析により測定される場合、<0.12のAβ42/40測定を有する対象の集団を指すことがある。
【0091】
例示的な実施形態では、対象をADに起因するMCIへの転換の高いリスクを有すると診断する、または対象のADのステージを診断するための方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象を、ADに起因するMCIへの転換の高いリスクを有すると診断すること、またはADに起因するMCIの発症まで数年であると診断すること、または対象のADをステージ分類することとを含んでもよい。図22は、ADに起因するMCIの発症までの年数に関して、単離されたタウ試料中のT181、T205およびT217で測定可能なタウリン酸化の動的パターンを例示する。平均から有意に逸脱するT217におけるリン酸化レベルは、ADに起因するMCIの発症まで約21年で最初に起こり、平均から有意に逸脱するT181におけるリン酸化レベルは、ADに起因するMCIの発症まで約19年で最初に起こり、平均から有意に逸脱する総タウの増大は、ADに起因するMCIの発症まで約17年で最初に起こり、平均から有意に逸脱するT205におけるリン酸化レベルは、ADに起因するMCIの発症まで約13年で最初に起こる。症状を(例えばADに起因するMCI)発症すると、T217およびT181におけるリン酸化レベルはプラトーとなり、次に低減する。
【0092】
上述のように、限定されるものではないが、測定されたリン酸化レベルの間の比、および測定されたリン酸化と総タウとの間の比を含むさらなる数学演算を、T181、T205および/またはT217におけるリン酸化の測定とともに行うことができる。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。
【0093】
一例では、本開示の方法は、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217および/またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、対象を、ADに起因するMCIの発症まで約10~約25年、または約10~約20年であると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。様々な実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。上記の実施形態の各々では、T205におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.51σ、約1.55σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2.0σであるか、または2.0σを下回ってもよい。あるいは、T205におけるリン酸化は、約2.0σ、約2.05σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを下回ってもよい。さらなる例では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約2σ以上であってもよく、T205におけるタウリン酸化は、約2σ以下であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。なおさらなる実施形態では、T205における、ならびにT181および/またはT217におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0094】
別の例では、本開示の方法は、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウ、および(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比、および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以下である場合に、対象を、ADに起因するMCIの発症まで約10~約25年、または約10~約20年であると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。様々な実施形態では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。上記の実施形態の各々では、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.50σ、約1.55σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2.0σであるか、または2σを下回ってもよい。あるいは、T205におけるリン酸化の総タウに対する比は、約2.0σ、約2.05σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを下回ってもよい。さらなる例では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以上であってもよく、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以下であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。
【0095】
別の例では、本開示の方法は、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、対象をADに起因するMCIの発症まで約15年以下、または約10年以下であると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。様々な実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。さらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約2σ以上であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0096】
別の例では、本開示の方法は、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウ、および(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、対象をADに起因するMCIの発症まで約15年以下、または約10年以下であると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。様々な実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。さらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以上であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を診断するために使用してもよい。
【0097】
別の例では、本開示の方法は、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意することであって、「第1の」および「第2の」は、試料が収集された順序を指すこと、ならびに(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205、または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)T181および/またはT217におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、T205におけるリン酸化レベルおよび適宜総タウが増大する場合、対象のADのステージを診断することとを含む。第1のおよび第2の単離されたタウ試料は、数日、数週または数ヶ月の間隔で収集されてもよい。典型的に、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化も、両方の試料について約1.5σ以上となり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0098】
別の例では、本開示の方法は、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意することであって、「第1の」および「第2の」は、試料が収集された順序を指すこと、ならびに総タウ、および(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205、または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および総タウの変化を算出することと、(c)T181および/またはT217におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、T205におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、総タウが増大する場合、対象のADのステージを診断することとを含む。第1のおよび第2の単離されたタウ試料は、数日、数週または数ヶ月の間隔で収集されてもよい。典型的に、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化も、両方の試料について約1.5σ以上となり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0099】
タウリン酸化および総タウを測定するための方法を、第III節および第IV節に説明し、この節に参照により組み込む。例えば、実施例5-9について詳述したプロトコールを使用すると、PET画像化により測定される場合、CSFから精製された単離されたタウ試料中で測定される場合、脳アミロイドプラークを有しない対照集団中、pタウ/タウ比のパーセンテージとして示されるT181、T205およびT217におけるタウリン酸化は、それぞれ21.7±2.3、0.34±0.13および1.2±0.66である(表3、突然変異非保有者の列を参照されたい)。したがって、突然変異非保持者集団について見出されたp-T181/T181、p-T205/T205およびp-T217/T217についての平均を上回る標準偏差の2倍(すなわち2σ)は、それぞれ43.4、0.68および2.4である。しかし、当業者は、絶対値が、絶対量定量に使用されるプロトコールおよび内部標準の供給源/規格に依存して変動し得ることを諒解するであろう。
【0100】
好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により精製されたタウを含み、タウリン酸化は、質量分析により測定される。別の好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により、タウのmidドメイン中のエピトープと特異的に結合するリガンドを使用して、および適宜タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する第2のリガンドを用いて精製されたタウを含み、タウリン酸化は、高分解能質量分析により測定される。別の好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により、タウのmidドメイン中のエピトープと特異的に結合するリガンドを使用して、および適宜タウのMTBRまたはC末端のエピトープと特異的に結合する第2のリガンドを用いて精製されたタウを含み、タウリン酸化は、高分解能質量分析により測定される。例示的な実施形態では、実施例において概説される質量分析プロトコールが使用される。
【0101】
VI.処置の方法
本開示の別の態様は、それを必要とする対象を処置するための方法である。「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、訓練を受け免許を受けた専門家による、それを必要とする対象への医学的ケアの提供を指す。医学的ケアは、診断試験、治療処置、および/または予防もしくは防止手段であってもよい。さらなる診断試験は、本明細書において開示されている方法により得られたタウリン酸化の測定に基づいて示され得る。例えば、本明細書において開示されているタウリン酸化を測定するための方法は、臨床家が、さらなる、および多くの場合より高価な診断試験についての必要性を決定することを支援するために、Aβアミロイドーシスの最初のスクリーニングとして使用することができる。治療および予防的処置の目的は、所望されない生理学的変化または疾患/障害を防止するかまたは緩慢化する(和らげる)ことである。治療または予防的処置の有益なまたは所望の臨床結果には、限定されるものではないが、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化しない)病態、疾患進行の遅延または緩慢化、病態の改善または軽減、および寛解(部分または完全のいずれか)が挙げられる。「処置」は、処置を受けない場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長することも意味することができる。処置を必要とする者には、疾患、状態もしくは障害を既に有する者、ならびに疾患、状態もしくは障害を有する傾向にある者、または疾患、状態もしくは障害を防止する予定の者が挙げられる。一部の実施形態では、処置を受けている対象は無症候性である。「無症候性の対象」は、本明細書において使用される場合、ADのいかなる徴候も症状も示さない対象を指す。別の実施形態では、対象は、ADの徴候または症状(例えば記憶喪失、物を置き忘れること、気分または挙動の変化等)を呈し得るが、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の臨床診断についての十分な認知障害も機能障害も示さない。「アルツハイマー病に起因する軽度認知障害」という句を、第V節において定義する。症候性または無症候性の対象はAβアミロイドーシスを有し得るが、Aβアミロイドーシスの事前知識は、処置のための必要条件ではない。なおさらなる実施形態では、対象はADを有すると診断されてもよい。上述の実施形態のいずれかでは、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異のうちの1つを有し得る。代わりの一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有し得ない。
【0102】
一実施形態では、上記のような対象を処置するための方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象に医薬組成物を投与すること、を含んでもよい。別の実施形態では、上記のような対象を処置するための方法は、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意すること、ならびに各単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)算出された変化が、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象に医薬組成物を投与すること、を含んでもよい。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を指す。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を処置するための基準として使用してもよい。
【0103】
部位特異的タウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、上記の実施形態のいずれかでは、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。例えば、実施例では、様々な統計学的モデル(例えば線形回帰、LME曲線、LOESS曲線等)における部位特異的タウリン酸化値を、他の公知のバイオマーカー(例えばAPOEε4状態、年齢、性別、認知試験スコア、機能試験スコア等)と併せて使用する。血漿Aβ40、Aβ42またはAβ42/Aβ40比と組み合わせた部位特異的タウリン酸化値を使用してもよい。
【0104】
AβアミロイドーシスもしくはADを発症するリスクのある対象、Aβアミロイドーシスを有すると診断された対象、タウオパチーを有すると診断された対象、またはADを有すると診断された対象に対して企図される、または彼らと共に使用される多数の造影剤および治療剤は、特定の病態生理の変化を標的とする。例えば、Aβ標的療法は、一般的に、Aβ産生を低減するか、Aβ凝集に拮抗するか、または脳のAβクリアランスを増大させるように設計され、タウ標的療法は、一般的にタウリン酸化パターンを変化させるか、タウ凝集に拮抗するか、またはNFTクリアランスを増大させるように設計され、様々な療法は、CNS炎症または脳のインスリン耐性を減少するように設計される、等である。これらの様々な薬剤の有効性は、本明細書において開示されている方法により測定される場合、T111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231におけるある特定のタウリン酸化レベルを有する対象に薬剤を投与することにより、改善することができる。
【0105】
例示的な実施形態では、AβアミロイドーシスもしくはADを発症するリスクのある対象、Aβアミロイドーシスを有すると診断された対象、タウオパチーを有すると診断された対象、またはADを有すると診断された対象に対して企図される、または彼らと共に使用される造影剤および治療剤(集合的に、本明細書において「Aβおよびタウ療法」と称する)の有効性は、本明細書において開示され、例えば図22において例示される方法により測定される場合、T181、T205および/またはT217におけるある特定のタウリン酸化レベルを有する対象にAβまたはタウ療法を投与することにより、改善することができる。例えば、T217におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T181およびT205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合、好ましい治療剤には、対象がアミロイド陽性となるのを防止するように設計されたもの(例えばAβ産生を低減する、Aβ凝集に拮抗するように設計されたアミロイド標的療法等)を挙げることができる。別の例として、T217および/またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合、好ましい治療剤には、アミロイド沈着が増大するのを防止するか、または対象の既存のプラーク負荷を減少するように設計されたものを挙げることができる。別の例では、T217、T181およびT205におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合、好ましい治療剤には、アミロイド沈着が増大するのを防止するか、対象の既存のプラーク負荷を減少するか、タウ凝集を防止するか、またはNFTを標的とするように設計されたものを挙げることができる。別の例として、T217、T181およびT205におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T217またはT181におけるタウリン酸化がプラトーとなるかまたは低減し、総タウおよび/またはT205におけるタウリン酸化が増大している場合、好ましい治療剤には、アミロイド沈着が増大するのを防止するか、対象の既存のプラーク負荷を減少するか、タウ凝集を防止するか、またはNFTを標的とするように設計されたもの、ならびにADを有する対象に特異的なものを挙げることができる。本明細書において開示されている詳細は、限定されるものではないが、以下の段落において特定されるものを含む、他の標的(例えばCNS炎症、ApoE等)のために設計された治療剤を投与するために、同様に使用することができる。
【0106】
一例では、本開示は、ADに起因するMCIへの転換の増大したリスクを有する対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217および/またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。上記の実施形態の各々では、T205におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.51σ、約1.55σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2.0σであるか、または2.0σを下回ってもよい。あるいは、T205におけるリン酸化は、約2.0σ、約2.05σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを下回ってもよい。さらなる例では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約2σ以上であってもよく、T205におけるタウリン酸化は、約2σ以下であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を処置するための基準として使用してもよい。なおさらなる実施形態では、T205における、ならびにT181および/またはT217におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0107】
別の例では、本開示は、ADに起因するMCIへの転換の増大したリスクを有する対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウ、および(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比、および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以下である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。上記の実施形態の各々では、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.50σ、約1.55σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2.0σであるか、または2σを下回ってもよい。あるいは、T205におけるリン酸化の総タウに対する比は、約2.0σ、約2.05σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを下回ってもよい。さらなる例では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以上であってもよく、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以下であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を処置するための基準として使用してもよい。
【0108】
別の例では、本開示は、ADに起因するMCIへの転換の増大したリスクを有する対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。さらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約2σ以上であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を処置するための基準として使用してもよい。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0109】
別の例では、本開示は、ADに起因するMCIへの転換の増大したリスクを有する対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウ、および(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。さらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以上であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を処置するための基準として使用してもよい。
【0110】
別の例では、本開示は、ADの症状を有する対象を処置するための方法であって、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意することであって、「第1の」および「第2の」は、試料が収集された順序を指すこと、ならびに(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205、または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)T181および/またはT217におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、T205におけるリン酸化レベルおよび適宜総タウが増大する場合、対象に医薬組成物を投与することとを含む方法を提供する。第1のおよび第2の単離されたタウ試料は、数日、数週または数ヶ月の間隔で収集されてもよい。典型的に、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化も、両方の試料について約1.5σ以上となり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0111】
別の例では、本開示は、ADの症状を有する対象を処置するための方法であって、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意することであって、「第1の」および「第2の」は、試料が収集された順序を指すこと、ならびに総タウ、および(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205、または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および総タウの変化を算出することと、(c)T181および/またはT217におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、T205におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、総タウが増大する場合、対象に医薬組成物を投与することとを含む方法を提供する。第1のおよび第2の単離されたタウ試料は、数日、数週または数ヶ月の間隔で収集されてもよい。典型的に、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化も、両方の試料について約1.5σ以上となり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0112】
上記の実施形態の各々では、医薬組成物は、造影剤を含んでもよい。造影剤の非限定的な例には、機能的造影剤(functional imaging agent)(例えば、フルオロデオキシグルコース等)および分子造影剤(例えばPittsburgh化合物B、フロルベタベン、フロルベタピル、フルテメタモル、放射性核種標識抗体等)が挙げられる。
【0113】
あるいは、医薬組成物は、医薬品有効成分を含んでもよい。医薬品有効成分の非限定的な例には、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニミウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤(neurotrophic agent)、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0114】
別の代替では、医薬組成物は、キナーゼ阻害剤を含んでもよい。好適なキナーゼ阻害剤は、thousand-and-oneアミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3β、MARK、CDK5、Fyn、5’アデノシン一リン酸活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)、カルシウム-カルモジュリンキナーゼII、サイクリン依存性キナーゼ-5(cdk5)、カゼインキナーゼ1(CK1)、カゼインキナーゼ2(CK2)、環状AMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)、二重特異性チロシンリン酸化調節キナーゼ1A(DYRK1A)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(GSK-3)、JNK、LRRK2、微小管親和性調節キナーゼ(MARK)、MSK1、p35/41、p42/p44分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(ERKs1/2)、p38分裂促進因子活性化キナーゼ(p38MAPK)、p70S6キナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、PKB/AKT、タンパク質キナーゼC(PKC)、タンパク質キナーゼN(PKN)、前立腺由来sterile20様キナーゼ1アルファ/ベータ、90kDaリボソームS6キナーゼ(RSK1/2)(PSK1/TAOK2)、前立腺由来sterile20様キナーゼ2(PSK2/TAOK1)、ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)1ガンマ、SAPK2a、SAPK2b、SAPK3、SAPK4、SGK1、SRPK2またはタウ-チューブリンキナーゼ1/2(TTBK1/2)を阻害し得る。
【0115】
なお別の代替では、医薬組成物は、ホスファターゼ活性化剤を含んでもよい。非限定的な例として、ホスファターゼ活性化剤は、プロテインホスファターゼ1、2A、2Bまたは5の活性を増大させ得る。
【0116】
タウリン酸化および総タウを測定するための方法を、第III節および第IV節に説明し、この節に参照により組み込む。好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により精製されたタウを含み、タウリン酸化は、質量分析により測定される。別の好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により、タウのmidドメイン中のエピトープと特異的に結合するリガンドを使用して、および適宜タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する第2のリガンドを用いて精製されたタウを含み、タウリン酸化は、高分解能質量分析により測定される。別の好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により、タウのmidドメイン中のエピトープと特異的に結合するリガンドを使用して、および適宜タウのMTBRまたはC末端のエピトープと特異的に結合する第2のリガンドを用いて精製されたタウを含み、タウリン酸化は、高分解能質量分析により測定される。例示的な実施形態では、実施例において概説される質量分析プロトコールが使用される。
【0117】
VII.臨床試験
本開示の別の態様は、臨床試験についてのすべての他の基準に合致することを条件として、対象を臨床試験、特にAβまたはタウ療法のための臨床試験に登録するための方法である。一実施形態では、対象を臨床試験に登録するための方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象を臨床試験に登録すること、を含んでもよい。別の実施形態では、対象を臨床試験に登録するための方法は、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意すること、ならびに各単離されたタウ試料中でT111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)算出された変化が、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象を臨床試験に登録すること、を含んでもよい。「PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団」という句を、第V節において定義する。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を指す。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を登録するための基準として使用してもよい。
【0118】
部位特異的タウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、適宜総タウの測定を用いて、上記の実施形態のいずれかでは、測定されたリン酸化レベルから算出された比、または測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比を使用してもよい。測定されたリン酸化レベルから算出された比は、p-T181とp-T205との間、p-T217とp-T205との間、またはp-T181とp-T217との間の比であってもよい。測定されたリン酸化レベルおよび総タウから算出された比は、p-T181と総タウとの間、p-T205と総タウとの間、またはp-T217と総タウとの間の比であってもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。例えば、実施例では、様々な統計学的モデル(例えば線形回帰、LME曲線、LOESS曲線等)における部位特異的タウリン酸化値を、他の公知のバイオマーカー(例えばAPOEε4状態、年齢、性別、認知試験スコア、機能試験スコア等)と併せて使用する。
【0119】
Aβおよびタウ治療についての臨床試験の設計は、本明細書において開示されている方法により大いに支援することができる。多数の臨床試験は、AD症状の発症の前に起こる特異的な病態生理の変化を標的とする造影剤または治療剤の有効性を試験するために設計される。第VI節において上記で議論されたように、これらの様々な薬剤の有効性は、本明細書において開示および例示されている方法により測定される場合、ある特定の部位特異的タウリン酸化レベルを有する対象に薬剤を投与することにより、改善することができる。同様に、ADの症状を有する(例えばADに起因するMCIの発症後の)対象を登録する臨床試験は、有効性が特定のADのステージに関連するか決定するために登録者のAD状態を正確にステージ分類することが可能であることからも、利益を得られるであろう。したがって、対象を臨床試験、特に臨床試験の処置群に登録する前に、本明細書において記載されているようにタウリン酸化レベルを測定することは、より小規模な試験および/または改善された転帰をもたらし得る。一部の場合では、本明細書において記載されている方法は、治療剤についてのコンパニオン診断として展開および使用されてもよい。
【0120】
例示的な実施形態では、対象を臨床試験に登録するための方法は、(a)対象から得た単離されたタウ試料を用意すること、ならびに単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定されたリン酸化レベルが、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象を臨床試験に登録すること、を含んでもよい。別の例示的な実施形態では、対象を臨床試験に登録するための方法は、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意すること、ならびに各単離されたタウ試料中でT181、T205およびT217から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基におけるタウリン酸化を測定すること、ならびに適宜総タウを測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)算出された変化が、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団における平均から有意に逸脱する場合に、対象を臨床試験に登録すること、を含んでもよい。「PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団」という句を、第V節において定義する。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を指す。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を登録するための基準として使用してもよい。
【0121】
一例では、本開示は、対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217および/またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。上記の実施形態の各々では、T205におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.51σ、約1.55σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2.0σであるか、または2.0σを下回ってもよい。あるいは、T205におけるリン酸化は、約2.0σ、約2.05σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを下回ってもよい。さらなる例では、T217におけるタウリン酸化および/またはT181におけるタウリン酸化は、約2σ以上であってもよく、T205におけるタウリン酸化は、約2σ以下であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を登録するための基準として使用してもよい。なおさらなる実施形態では、T205における、ならびにT181および/またはT217におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0122】
別の例では、本開示は、対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウ、および(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比、および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以下である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。上記の実施形態の各々では、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.50σ、約1.55σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2.0σであるか、または2σを下回ってもよい。あるいは、T205におけるリン酸化の総タウに対する比は、約2.0σ、約2.05σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを下回ってもよい。さらなる例では、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比および/またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以上であってもよく、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以下であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を登録するための基準として使用してもよい。
【0123】
別の例では、本開示は、対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。さらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化は、約2σ以上であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を登録するための基準として使用してもよい。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0124】
別の例では、本開示は、対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウ、および(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法を提供する。様々な実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σであるか、または2σを上回ってもよい。他の実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σであるか、または2.5σを上回ってもよい。さらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の総タウに対する比は、約2σ以上であってもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を登録するための基準として使用してもよい。
【0125】
別の例では、本開示は、対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意することであって、「第1の」および「第2の」は、試料が収集された順序を指すこと、ならびに(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205、または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および適宜総タウの変化を算出することと、(c)T181および/またはT217におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、T205におけるリン酸化レベルおよび適宜総タウが増大する場合、対象を臨床試験に登録することとを含む方法を提供する。第1のおよび第2の単離されたタウ試料は、数日、数週または数ヶ月の間隔で収集されてもよい。典型的に、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化も、両方の試料について約1.5σ以上となり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0126】
別の例では、本開示は、対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得た第1のおよび第2の単離されたタウ試料を用意することであって、「第1の」および「第2の」は、試料が収集された順序を指すこと、ならびに総タウ、および(i)T181およびT205、(ii)T217およびT205、または(iii)T181、T217およびT205におけるタウリン酸化を測定することと、(b)測定された各残基における部位特異的タウリン酸化の変化、および総タウの変化を算出することと、(c)T181および/またはT217におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、T205におけるリン酸化レベルが低減するかまたは同じままであり、総タウが増大する場合、対象を臨床試験に登録することとを含む方法を提供する。第1のおよび第2の単離されたタウ試料は、数日、数週または数ヶ月の間隔で収集されてもよい。典型的に、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化も、両方の試料について約1.5σ以上となり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。なおさらなる実施形態では、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化の測定されたレベルは、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
【0127】
タウリン酸化および総タウを測定するための方法を、第III節および第IV節に説明し、この節に参照により組み込む。例えば、実施例5-9について詳述したプロトコールを使用すると、PET画像化により測定される場合、CSFから精製された単離されたタウ試料中で測定される場合、脳アミロイドプラークを有しない対照集団中、T181、T205およびT217におけるタウリン酸化は、それぞれ21.7±2.3、0.34±0.13および1.2±0.66である(表3、突然変異非保有者の列を参照されたい)。したがって、突然変異非保持者集団について見出されたp-T181、p-T205およびp-T217についての平均を上回る標準偏差の2倍(すなわち2σ)は、それぞれ43.4、0.68および2.4である。しかし、当業者は、絶対値が、プロトコールに依存して変動し得ることを諒解するであろう。
【0128】
好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により精製されたタウを含み、タウリン酸化は、質量分析により測定される。別の好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により、タウのmidドメイン中のエピトープと特異的に結合するリガンドを使用して、および適宜タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する第2のリガンドを用いて精製されたタウを含み、タウリン酸化は、高分解能質量分析により測定される。別の好ましい一実施形態では、単離されたタウ試料は、血液からアフィニティ精製により、タウのmidドメイン中のエピトープと特異的に結合するリガンドを使用して、および適宜タウのMTBRまたはC末端のエピトープと特異的に結合する第2のリガンドを用いて精製されたタウを含み、タウリン酸化は、高分解能質量分析により測定される。例示的な実施形態では、実施例において概説される質量分析プロトコールが使用される。
【0129】
上記の実施形態の各々では、対象は、臨床試験の処置群に登録されてもよい。「処置」を、第VI節において定義する。臨床試験の処置群に登録された対象は、医薬組成物を投与されてもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、造影剤を含んでもよい。造影剤の非限定的な例には、機能的造影剤(例えば、フルオロデオキシグルコース等)および分子造影剤(例えばPittsburgh化合物B、フロルベタベン、フロルベタピル、フルテメタモル、放射性核種標識抗体等)が挙げられる。あるいは、医薬組成物は、医薬品有効成分を含んでもよい。医薬品有効成分の非限定的な例には、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38αMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニニウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミン-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。例示的な実施形態では、医薬組成物は、キナーゼ阻害剤を含んでもよい。好適なキナーゼ阻害剤は、thousand-and-oneアミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3β、MARK、CDK5またはFynを阻害し得る。別の例示的な実施形態では、医薬組成物は、ホスファターゼ活性化剤を含んでもよい。非限定的な例として、ホスファターゼ活性化剤は、プロテインホスファターゼ2Aの活性を増大させ得る。
【0130】
上記の実施形態の各々では、対象は、症候性であることもあればそうでないこともある。「無症候性の対象」は、本明細書において使用される場合、ADのいかなる徴候も症状も示さない対象を指す。あるいは、対象は、ADの徴候または症状(例えば記憶喪失、物を置き忘れること、気分または挙動の変化等)を呈し得るが、軽度認知障害の臨床診断についての十分な認知障害も機能障害も示さない。症候性または無症候性の対象はAβアミロイドーシスを有し得るが、Aβアミロイドーシスの事前知識は、処置のための必要条件ではない。なおさらなる実施形態では、対象はADを有してもよい。上述の実施形態のいずれかでは、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異のうちの1つを有し得る。代わりの一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有し得ない。
【0131】
以下の例を、好ましい本発明の実施形態を表すために含める。以下の例において開示されている技術は、本発明の実践において良好に機能するために発明者らにより発見された技術を表すことが、当業者により理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態における変更を行うことができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様の又は類似した結果をなお得られることを理解するべきである。したがって、添付の図面において記載されるかまたは示されるすべての事柄は、例示的なものとして解釈されることとなり、意味を限定するものではない。
【0132】
VIII.番号付き実施形態
実施形態1:可溶性タウを濃縮するために血液試料を処理するための方法であって、血液試料からのタンパク質を、過塩素酸を使用して沈殿させ、それにより血液の酸可溶性抽出物を製造することと、酸可溶性抽出物中の可溶性タウを、逆相吸着剤を使用する固相抽出および1つまたは複数のエピトープ結合剤を使用するアフィニティ精製により濃縮することとを含み、少なくとも1つのエピトープ結合剤はタウのN末端中またはタウのmidドメイン中のエピトープに特異的に結合する、方法。
【0133】
実施形態2:血液試料が血漿である、実施形態1の方法。
【0134】
実施形態3:血液試料が血清である、実施形態1の方法。
【0135】
実施形態4:過塩素酸が、約1%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加される、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0136】
実施形態5:過塩素酸が、約3%v/v~約15%v/vまたは約3%v/v~約10%v/vの最終濃度で添加される、実施形態4に記載の方法。
【0137】
実施形態6:過塩素酸が、約3%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される、実施形態4の方法。
【0138】
実施形態7:逆相吸着剤が、N-ビニルピロリドンとジビニルベンゼンとを含むポリマー、またはスチレンとジビニルベンゼンとを含むポリマーである、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0139】
実施形態8:逆相吸着剤が、N-ビニルピロリドンとジビニルベンゼンとを含むポリマーである、実施形態7の方法。
【0140】
実施形態9:固相抽出が、約0.05%v/v~約1%v/vTFAを含む移動相を使用する、実施形態7の方法。
【0141】
実施形態10:固相抽出が、約0.05%v/v~約0.5%v/v TFAまたは約0.1%v/v TFA~約1%v/v TFAを含む移動相を使用する、実施形態9の方法。
【0142】
実施形態11:可溶性タウが、約20%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む移動相を使用して逆相吸着剤から溶出される、実施形態7の方法。
【0143】
実施形態12:可溶性タウが、約20%v/v~約40%v/vアセトニトリルまたは約30%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む移動相を使用して逆相吸着剤から溶出される、実施形態11の方法。
【0144】
実施形態13:タウのN末端中のエピトープが、アミノ酸残基27~35を含み、タウのmidドメイン中のエピトープが、アミノ酸残基192~199を含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0145】
実施形態14:アフィニティ精製が、タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤、およびタウのmidドメイン中に特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤を使用する、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0146】
実施形態15:各エピトープ結合剤が抗体である、実施形態13または14の方法。
【0147】
実施形態16:可溶性タウを濃縮するために血液試料を処理するための方法であって、(a)血液試料からのタンパク質を、過塩素酸を使用して沈殿させ、過塩素酸が約1%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加され、それにより血液の酸可溶性抽出物を製造することと、(b)酸可溶性抽出物中の可溶性タウを固相抽出およびアフィニティ精製により濃縮することとを含み、固相抽出工程が、(i)酸可溶性抽出物を、可溶性タウを逆相吸着剤に付着させるのに十分な時間、逆相吸着剤とともに混合することであって、逆相吸着剤は、N-ビニルピロリドンとジビニルベンゼンとを含むポリマー、またはスチレンとジビニルベンゼンとを含むポリマーであること、(ii)逆相吸着剤に付着したタウを、約0.05%v/v~約1%v/vTFAを含む移動相を用いて洗浄すること、および(iii)可溶性タウを、約0.05%v/v~約1%v/vTFAおよび約20%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む移動相を使用して逆相吸着剤から溶出することを含み、アフィニティ精製工程が、タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤、およびタウのmidドメイン中のエピトープに特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤を含む、方法。
【0148】
実施形態17:移動相が、約0.05%v/v~約0.5%v/vTFAを含む、実施形態16の方法。
【0149】
実施形態18:移動相が、約0.1%v/v TFA~約1%v/v TFAを含む、実施形態16の方法。
【0150】
実施形態19:タウを溶出するのに使用される移動相が、約20%v/v~約40%v/vアセトニトリルを含む、実施形態17または18の方法。
【0151】
実施形態20:タウを溶出するのに使用される移動相が、約30%v/v~約50%v/vアセトニトリルを含む、実施形態17または18の方法。
【0152】
実施形態21:タウのN末端中のエピトープが、アミノ酸残基27~35を含み、タウのmidドメイン中のエピトープが、アミノ酸残基192~199を含む、実施形態16から20のいずれか1つの方法。
【0153】
実施形態22:各エピトープ結合剤が抗体である、実施形態16から21のいずれか1つの方法。
【0154】
実施形態23:血液試料中の可溶性タウを分析するための方法であって、(a)実施形態1から22のいずれか1つの血液試料を処理して可溶性タウが濃縮された試料を製造することと、(b)可溶性タウが濃縮された試料を質量分析により分析することとを含む方法。
【0155】
実施形態24:血液試料中の総タウの量を決定する為の方法であって、(b)実施形態1から22のいずれか1つの血液試料を処理して可溶性タウが濃縮された試料を製造することと、(b)可溶性タウが濃縮された試料を質量分析により分析することとを含む方法。
【0156】
実施形態25:タウの1つまたは複数の残基におけるリン酸化の量を測定するための方法であって、(a)実施形態1から22のいずれか1つの血液試料を処理して可溶性タウが濃縮された試料を製造することと、(b)質量分析によりタウの1つまたは複数の残基におけるリン酸化の量を測定することとを含む方法。
【0157】
実施形態26:タウのリン酸化が、T111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217およびT231から選択される1つまたは複数の残基において測定される、実施形態25の方法。
【0158】
実施形態27:タウのリン酸化が、T181、S202またはT217のうちの少なくとも1つを含む1つまたは複数の残基において測定される、実施形態25の方法。
【0159】
実施形態28:タウのリン酸化が、T181、S202またはT217のうちの少なくとも1つを含む2つ以上の残基において測定される、実施形態25の方法。
【0160】
実施形態29:血液試料が、少なくとも約1mlの血漿または少なくとも2mlの全血である、実施形態23から28のいずれか1つの方法。
【0161】
実施形態30:血液試料が、少なくとも約1ml~約20mlの血漿である、実施形態23から28のいずれか1つの方法。
【0162】
実施形態31:トリプシン、Lys-N、Lys-CまたはArg-Nの存在下で実行される消化工程をさらに含み、消化工程が血液試料の処理の後に行われる、実施形態23から30のいずれか1つの方法。
【0163】
実施形態32:トリプシン、Lys-N、Lys-CまたはArg-Nの存在下で実行される消化工程をさらに含み、消化工程が、タウが少なくとも1つのエピトープ結合剤と結合している間に行われる、実施形態23から30のいずれか1つの方法。
【0164】
実施形態33:消化工程がトリプシンの存在下で行われる、実施形態31または32の方法。
【0165】
実施形態34:血液試料が、無症候性の対象、アルツハイマー病の徴候または症状を呈するが、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の臨床診断についての十分な認知障害も機能障害も示さない対象、ADを有すると診断された対象、神経変性疾患と診断された対象、タウオパチーと診断された対象、認知症と診断された対象、または軽度認知障害と診断された対象から得られる、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0166】
実施形態35:血液試料が進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核症候群(CBS)、ダウン症候群(DS)、パーキンソン病(PD)およびレビー小体型認知症(DLB)と診断された対象から得られる、実施形態34の方法。
【0167】
実施形態36:アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0168】
実施形態37:T217におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態26の方法。
【0169】
実施形態38:(i)T217におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T217におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態37の方法。
【0170】
実施形態39:T217におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態37の方法。
【0171】
実施形態40:T181におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態26の方法。
【0172】
実施形態41:(i)T181におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態40の方法。
【0173】
実施形態42:T181におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態40の方法。
【0174】
実施形態43:T181およびT217におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態36の方法。
【0175】
実施形態44:(i)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態43の方法。
【0176】
実施形態45:T181およびT217におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態43の方法。
【0177】
実施形態46:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約10~約25年として対象を識別することをさらに含む、実施形態36から45のいずれか1つの方法。
【0178】
実施形態47:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約10~約20年として対象を識別することをさらに含む、実施形態46の方法。
【0179】
実施形態48:アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを超え、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0180】
実施形態49:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態48の方法。
【0181】
実施形態50:(i)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化の総タウT217に対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウT205に対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態39の方法。
【0182】
実施形態51:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態39の方法。
【0183】
実施形態52:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態48の方法。
【0184】
実施形態53:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態52の方法。
【0185】
実施形態54:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態52の方法。
【0186】
実施形態55:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態48の方法。
【0187】
実施形態56:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態55の方法。
【0188】
実施形態57:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が診断される、実施形態55の方法。
【0189】
実施形態58:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約10~約25年として対象を識別することをさらに含む、実施形態48から57のいずれか1つの方法。
【0190】
実施形態59:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約10~約20年として対象を識別することをさらに含む、実施形態58の方法。
【0191】
実施形態60:アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0192】
実施形態61:T217およびT205におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態60の方法。
【0193】
実施形態62:T217およびT205におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態61の方法。
【0194】
実施形態63:T217およびT205におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態61の方法。
【0195】
実施形態64:T181およびT205におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態60の方法。
【0196】
実施形態65:T181およびT205におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態64の方法。
【0197】
実施形態66:T181およびT205におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態64の方法。
【0198】
実施形態67:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態60の方法。
【0199】
実施形態68:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態67の方法。
【0200】
実施形態69:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態67の方法。
【0201】
実施形態70:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約15年以下として対象を識別することをさらに含む、実施形態60から69のいずれか1つの方法。
【0202】
実施形態71:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約10年以下として対象を識別することをさらに含む、実施形態60の方法。
【0203】
実施形態72:アルツハイマー病の発症の前に対象を診断するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、対象を、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害への転換の増大したリスクを有すると診断することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0204】
実施形態73:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態72の方法。
【0205】
実施形態74:(i)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、(iii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態73の方法。
【0206】
実施形態75:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態73の方法。
【0207】
実施形態76:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態72の方法。
【0208】
実施形態77:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態76の方法。
【0209】
実施形態78:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態76の方法。
【0210】
実施形態79:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態72の方法。
【0211】
実施形態80:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態79の方法。
【0212】
実施形態81:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象が診断される、実施形態79の方法。
【0213】
実施形態82:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約15年以下として対象を識別することをさらに含む、実施形態72から81のいずれか1つの方法。
【0214】
実施形態83:診断が、アルツハイマー病に起因する軽度認知障害の発症まで約10年以下として対象を識別することをさらに含む、実施形態82の方法。
【0215】
実施形態84:それを必要とする対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0216】
実施形態85:T217におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態84の方法。
【0217】
実施形態86:(i)T217におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T217におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態85の方法。
【0218】
実施形態87:T217におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態85の方法。
【0219】
実施形態88:T181におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態84の方法。
【0220】
実施形態89:(i)T181におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態88の方法。
【0221】
実施形態90:T181におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態88の方法。
【0222】
実施形態91:T181およびT217におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態84の方法。
【0223】
実施形態92:(i)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態91の方法。
【0224】
実施形態93:T181およびT217におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態91の方法。
【0225】
実施形態94:それを必要とする対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを超え、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0226】
実施形態95:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態94の方法。
【0227】
実施形態96:(i)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化の総タウT217に対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウT205に対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態95の方法。
【0228】
実施形態97:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態95の方法。
【0229】
実施形態98:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態94の方法。
【0230】
実施形態99:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態98の方法。
【0231】
実施形態100:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態98の方法。
【0232】
実施形態101:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態97の方法。
【0233】
実施形態102:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態101の方法。
【0234】
実施形態103:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態101の方法。
【0235】
実施形態104:それを必要とする対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0236】
実施形態105:T217およびT205におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態104の方法。
【0237】
実施形態106:T217およびT205におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態105の方法。
【0238】
実施形態107:T217およびT205におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態105の方法。
【0239】
実施形態108:T181およびT205におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態104の方法。
【0240】
実施形態109:T181およびT205におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態108の方法。
【0241】
実施形態110:T181およびT205におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態108の方法。
【0242】
実施形態111:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態104の方法。
【0243】
実施形態112:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態112の方法。
【0244】
実施形態113:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態112の方法。
【0245】
実施形態114:それを必要とする対象を処置するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、対象に医薬組成物を投与することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0246】
実施形態115:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態114の方法。
【0247】
実施形態116:(i)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、(iii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態115の方法。
【0248】
実施形態117:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態115の方法。
【0249】
実施形態118:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態114の方法。
【0250】
実施形態119:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態118の方法。
【0251】
実施形態120:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態118の方法。
【0252】
実施形態121:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態114の方法。
【0253】
実施形態122:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態121の方法。
【0254】
実施形態123:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象に医薬組成物が投与される、実施形態121の方法。
【0255】
実施形態124:対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217またはT181におけるタウリン酸化が約1.5σ以上であり、T205におけるタウリン酸化が約1.5σ以下である場合に、対象を臨床試験に登録することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0256】
実施形態125:T217におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態124の方法。
【0257】
実施形態126:(i)T217におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T217におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態125の方法。
【0258】
実施形態127:T217におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態125の方法。
【0259】
実施形態128:T181におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態124の方法。
【0260】
実施形態129:(i)T181におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態128の方法。
【0261】
実施形態130:T181におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態128の方法。
【0262】
実施形態131:T181およびT217におけるタウリン酸化が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.5σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態124の方法。
【0263】
実施形態132:(i)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.75σを下回る場合、(ii)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.8σを下回る場合、または(iii)T181およびT217におけるタウリン酸化が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化が1.9σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態131の方法。
【0264】
実施形態133:T181およびT217におけるタウリン酸化が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態131の方法。
【0265】
実施形態134:対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)T217またはT181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを超え、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象を臨床試験に登録することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0266】
実施形態135:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態134の方法。
【0267】
実施形態136:(i)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化の総タウT217に対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウT205に対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態135の方法。
【0268】
実施形態137:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態135の方法。
【0269】
実施形態138:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態134の方法。
【0270】
実施形態139:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウTに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態138の方法。
【0271】
実施形態140:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態138の方法。
【0272】
実施形態141:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態134の方法。
【0273】
実施形態142:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを下回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを下回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態141の方法。
【0274】
実施形態143:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化が2σを下回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態141の方法。
【0275】
実施形態144:対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が約1.5σ以上である場合に、対象を臨床試験に登録することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0276】
実施形態145:T217およびT205におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態144の方法。
【0277】
実施形態146:T217およびT205におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態145の方法。
【0278】
実施形態147:T217およびT205におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態145の方法。
【0279】
実施形態148:T181およびT205におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態144の方法。
【0280】
実施形態149:T181およびT205におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態148の方法。
【0281】
実施形態150:T181およびT205におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態148の方法。
【0282】
実施形態151:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が1.5σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態144の方法。
【0283】
実施形態152:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が1.75σを上回るか、1.8σを上回るか、または1.9σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態151の方法。
【0284】
実施形態153:T181、T205およびT217におけるタウリン酸化が2σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態151の方法。
【0285】
実施形態154:対象を臨床試験に登録するための方法であって、(a)対象から得られた単離されたタウ試料を用意すること、ならびに総タウを測定すること、ならびに(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化を測定することと、(b)(i)T217およびT205、(ii)T181およびT205または(iii)T181、T205およびT217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が約1.5σ以上である場合に、対象を臨床試験に登録することとを含み、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された総タウ、ならびにT217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である、方法。
【0286】
実施形態155:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態154の方法。
【0287】
実施形態156:(i)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、(iii)T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態155の方法。
【0288】
実施形態157:T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態155の方法。
【0289】
実施形態158:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態154の方法。
【0290】
実施形態159:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態158の方法。
【0291】
実施形態160:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態158の方法。
【0292】
実施形態161:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.5σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態154の方法。
【0293】
実施形態162:(i)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.75σを上回る場合、(ii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.8σを上回る場合、または(iii)T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が1.9σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態161の方法。
【0294】
実施形態163:T181におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T205におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回り、T217におけるタウリン酸化の総タウに対する比が2σを上回る場合に、対象が臨床試験に登録される、実施形態161の方法。
【0295】
実施形態164:対象が臨床試験の処置群に登録される、実施形態124から163のいずれか1つに列挙されるような方法。
【0296】
実施形態165:臨床試験の処置群が対象に医薬組成物を投与することを含む、実施形態164の方法。
【0297】
実施形態166:医薬組成物がAβまたはタウ療法を含む、実施形態84から124または実施形態157のいずれか1つに列挙されるような方法。
【0298】
実施形態167:Aβまたはタウ療法が、アミロイドベータ標的療法、キナーゼ、キナーゼ阻害剤またはホスファターゼである、実施形態166の方法。
【0299】
実施形態168:対象が、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有する、実施形態36から167のいずれか1つに列挙されるような方法。
【0300】
実施形態169:対象が、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有しない、実施形態36から167のいずれか1つに列挙されるような方法。
【0301】
実施形態170:単離されたタウ試料が、血液またはCSFからアフィニティ精製により精製されたタウを含むか、または単離されたタウ試料が、実施形態1から35のいずれか1つに従って血液から精製されたタウを含む、実施形態36から167のいずれか1つに列挙されるような方法。
【0302】
実施形態171:単離されたタウ試料が、血液またはCSFからアフィニティ精製により、タウのmidドメイン中のエピトープと特異的に結合するリガンドを使用して、および適宜タウのN末端中のエピトープと特異的に結合する第2のリガンドを用いて精製されたタウを含む、実施形態170の方法。
【0303】
実施形態172:タウリン酸化が質量分析により測定される、実施形態1から171のいずれか1つに列挙されるような方法。
【実施例
【0304】
以下の実施例は、本発明の様々な反復を例証する。
【0305】
以下に列挙されている参考文献は、後続する実施例で引用される。
【0306】
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[実施例1]
【0388】
正常な非ADヒト脳におけるタウタンパク質でのリン酸化部位
正常な可溶性脳タウのリン酸化部位を判定するために、健常対照からの抽出物を、リン酸化および非リン酸化タウの両方を濃縮する、タウ-1およびHJ8.5タウ抗体を使用したイムノキャプチャーにより精製した。脳タウアイソフォームのトリプシン消化により、LC-MSにより検出されるのに十分なほど長く、疎水性の27種の未修飾ペプチドが生成された(Barthelemy et al., 2016)。25種のペプチドが、潜在的なリン酸化部位としてセリンおよび/またはトレオニンを含有していた。いくつかのペプチドは、複数の潜在的なリン酸化部位(4~9箇所)を含有しており、これにより発明者らは、LC分離中に一緒に、潜在的に共溶出する異なる一リン酸化ペプチドを考慮した。この後、上記のPRMスクリーニング法を、これらのペプチドに適用した。
【0389】
タウ配列におけるプロジェクションドメイン(103~126)の分析からの結果により、重なり合った複雑なLC-MS/MSパターン中に溶出する複数のp-タウペプチドが明らかになった(図3~7)。発明者らは、タウタンパク質の最短アイソフォームである0Nアイソフォームから、3つのリン酸化部位を同定した。LCシステムは、3種のリン酸化ペプチドを区別する分解能を有さなかったが、フラグメントの同定および対応する強度を使用して、残基S113における1つの主要なリン酸化部位、ならびに残基T111およびT123における2つのマイナーなリン酸化部位で構成されるシグナルをデコンボリューションした(図3)。対照的に、より長い1Nおよび2Nアイソフォームからのタウ配列をPRMスクリーニングする場合、とりわけ複数の潜在的な一リン酸化部位が、同一のペプチド配列内と予測される場合、リン酸化ペプチド溶出パターンを単純化するために、さらなるクロマトグラフィー分離が必要であった(図4~6)。LC分離により、発明者らは、リン酸化残基を示差的に含有し、共溶出される半特異的MS/MSフラグメントを同定することが可能となった。しかし、発明者らは、LCアーティファクト(LC artifact)に起因し得るいくつかのシグナルも同定し、これは、溶液中における同一ペプチドの2つの立体配座による可能性がある(図5)。この効果は、未修飾およびリン酸化ペプチドの両方で、アミノ酸残基45~67(0Nアイソフォームにおける)を含有するペプチド配列に重要であり(図5)、配列68~126(1N)および88~126(2N)ではそれほど優勢ではなかった(図4および6)。
【0390】
残基S113、T111およびT123におけるリン酸化は、ペプチド配列68~126(1N)および88~126(2N)で確認された。すべてのケースにおいて、S113シグナルが3つのうち最大であり、リン酸化率は0.2~0.5%であった(図4および図6、表1)。残基T50、T52およびS56のリン酸化は、ペプチド配列45~67(1Nおよび2Nアイソフォームにより共有される)で明確に同定された。同一のペプチドにおいて、LC-MSシグナルは、3つの残基(S61、T63およびS64)のうち少なくとも2つがリン酸化されたことを示した(図5)。残基S46で潜在的なリン酸化を同定する特異的シグナルは、見出せなかった。残基S68およびT69におけるリン酸化は、配列68~126(1N)および68~87(2N)で証明されたが、それらのLC-MSパターンを区別する特異的フラグメントは検出されなかった。同一の1Nおよび2Nペプチド配列において、T71でのより低いレベルのリン酸化が検出された。T76、T101およびT102残基における2N特異的リン酸化も同定された(図8で要約されている)。
【0391】
トリプシン切断欠如の誘導も、以前に報告されているトリプシン部位の後に位置するリン酸化残基(部位T175、T181、S212、T231およびS396)(Hanger et al. 1998)をスクリーニングするために考慮された。発明者らのPRMスクリーニングは、正常な脳組織においてHanger et alにより既に記載されたリン酸化タウペプチドに対応するLC-MSパターンを検出することに成功した(T181、S199、S202およびS404。図8)。対応するLC-MSシグナルは高く、これにより、正常なヒト脳において以前に報告されているp-タウペプチドが最も多い可能性があることが示唆された。発明者らのS199およびS202リン酸化の比較により、S202におけるリン酸化の非常に優勢の存在量が示された(図8)。192~199アミノ酸配列における非リン酸化エピトープに会合する、タウ抽出のために抗タウ1抗体を使用すると、抽出物におけるS199リン酸化の回収率が低いことが説明され得る。抽出物におけるS202およびS404リン酸化の存在量を踏まえ、発明者らは、配列195~209および386~406から二リン酸化ペプチド(di-phosphorylated peptide)の存在について調査した。発明者らは、S202/S199およびS202/S198における2箇所のリン酸化に対応する特異的フラグメント有する2つのLC-MSパターン、ならびに396/404における2箇所のリン酸化に対応する1つのLC-MSパターンを検出した(図8)。
【0392】
脳抽出物における可溶性タウのさらなるスクリーニングにより、T175、S214、T217、T231およびS396におけるリン酸化残基に対応する、量がさほど多くない他の一リン酸化ペプチドが証明された。S184またはS185におけるリン酸化ペプチドに対応するフラグメントからのシグナルも、一リン酸化ペプチド配列181~190がスクリーニングされた場合、低レベルで検出された(図8)。長い配列407~438における一リン酸化の調査は、残基S409およびS416におけるリン酸化、ならびに残基S412/S413/T414の群における少なくとも1つのリン酸化と一致するパターンを発見した。
【0393】
全体として、発明者らは、PRMスクリーニング法を使用して、正常な非AD脳から抽出される可溶性タウ画分で検出可能な、最少29箇所の特有のリン酸化部位を同定した(表1)。そのうち25箇所は、特有のLC-MSシグナルに一義的に割り当てることができ、4箇所の追加のリン酸化部位は、正確なLC-MSパターンへの割り当てなしで証明された。これらの部位は、3つのクラスターに位置し、N末端プロジェクションドメインに、最少14箇所、配列の中央におけるプロリンリッチドメインに10箇所、およびC末端に6箇所のリン酸化部位が位置していた(図14)。
【表1-1】


【表1-2】


[実施例2]
【0394】
CSF中のタウタンパク質でのリン酸化部位
脳タウの消化物と比較して、タウ特異的抗体および消化を使用したCSFタウ精製は、主にタンパク質配列のmidドメイン(残基150~221)から、検出可能なペプチドを生成した。ペプチドは、低度にN末端から検出可能であり、配列は、微小管結合反復(MTBR)ドメインまたはタウのC末端から、ほぼ検出不可能であった(Barthelemy et al., 2016; Sato et al., 2018)。シグナル回収率におけるこの差は、ニューロンからの放出中のタウ短縮化に起因し得る(Sato et al., 2018)。このmidドメインのペプチド回収率は、現在のPRM法を使用して、対応するマイナーなリン酸化アイソフォームをモニターするのに十分であった。反対に、MS方法の著しい技術的進歩が、MTBRおよびC末端ドメイン中のリン酸化ペプチドを検出するのに必要とされる。
【0395】
正常な対照のCSFからのタウホスホペプチドのPRMスクリーニングにより、脳の可溶性タウと同じように、T181(示されていない)、S199、S202およびT217におけるいくつかのリン酸化部位を同定した(図9)。pS214に対応する低シグナルも検出された(図9)。CSF抽出物中のpT205に対応する特異的フラグメント化パターンを同定し、クロマトグラフィーによりpS199/pS202シグナルから分離した(図9)。
【0396】
CSFタウ中のさらなるリン酸化部位を検出する確率を上昇させるために、発明者らは、軽度から中等度の認知症を有するAD患者からのCSFプールを分析した。発明者らは、AD CSFプールが、上昇濃度のタウ、ならびに上昇レベルのリン酸化タウを含有すると予想した。正常なCSFで見出されるものと同一のリン酸化残基(T181、S199、S202、T217およびT231)を、AD CSFで検出した。さらに、脳からのタウで以前に見出されたが、正常なCSFでは見出されなかったpS113およびpT175に対応するシグナルが、AD CSFで検出された(図9図10)。S202/S199リン酸化ペプチドからの特異的フラグメントおよび固有の保持時間を含有するLC-MS/MSパターンにより、S208での新たなリン酸化ペプチドの同定が可能となった。発明者らが正常なCSF中でpS208を再検査したとき、発明者らは、対応するシグナルを少ない存在量で検出した。残基T153での新たなリン酸化ペプチドと適合するLC-MS/MSパターンを、対応する非リン酸化ペプチドのレベル付近で検出した(図10)。脳抽出物のデータを注意深く再検査すると、この部位に対応するシグナルは少ない存在量で存在することが示唆された。最終的に、発明者らは、AD CSF中の0Nアイソフォームからの103~126アミノ酸配列におけるリン酸化に対応する特異的シグナルを見出し、これは、このペプチドにおける主要なリン酸化部位としてT111を示した一方、S113はほとんどリン酸化されなかった(図11)。全体として、CSFタウ中の12箇所のリン酸化部位を検出し、そのうち2箇所は脳可溶化液中で検出不可能であった(図12)。
[実施例3]
【0397】
脳におけるp-タウ存在量と比較した差を強調するCSF p-タウ存在量の測定値
脳では、S404は、検査したリン酸化部位のうち最も高度にリン酸化された(pS404/S404=110%、すなわちS404の52%がリン酸化される)。したがって、S202およびT181における他の高度にリン酸化された部位(それぞれ9.7%および9.5%)と比較して、脳タウの半分超がS404でリン酸化された。S199の1.3%がリン酸化されたが、抽出に使用されるタウ1抗体がその対応するリン酸化エピトープに結合不能(Liu et al., 1993)なため、これは過小評価されている可能性がある。S404以外のC末端部位におけるリン酸化は、およそ1%であると見出された。N末端では、T52、S68/T69、T50およびS113も、およそ0.5%~2%の範囲の存在量でリン酸化された。他の検出された部位は、はるかに低いレベル(<0.5%)でリン酸化されていると思われる。
【0398】
脳ではなくCSFタウ中のpT205およびpS208に特有な検出に加えて、脳タウで検出されるある他のリン酸化部位の相対的リン酸化存在量は、対照のCSFタウと比較して変化した(図13)。脳と比較して、CSFタウのリン酸化は、以下の部位で有意に低かった、pS199(6分の1に低下、p=0.008)、pS202(5分の1に低下、p=0.016)およびpS214(2分の1に低下、p=0.016)。反対に、CSFタウのリン酸化は、0Nからの部位pT217(4倍上昇、p=0.016)、pT231(7倍上昇、p=0.016)およびpT111(16倍上昇)で有意に高かった。PT181の存在量は、CSFおよび脳中で類似していた(約10%)。AD CSF中で測定した場合、pT175は、低いままであった(脳における0.1%と比較して0.1~0.2%)。
【0399】
脳およびCSFタウは、異なる短縮化のパターンを有し、脳タウアイソフォームは主に完全長である一方、CSFタウアイソフォームは短縮化される。IP後に回収される脳およびCSFタウアイソフォーム、ならびに対応するペプチドは、免疫沈降に使用される抗体に依存する(Sato et al., 2018)。類似して、タウを免疫沈降させるのに使用される抗体は、タウリン酸化の回収率に影響を及ぼし得る。p-タウ回収率に対するこの影響を評価するために、発明者らは、タウ1+HJ8.5の組合せに加えて、異なる抗体(タウ13、HJ8.5、HJ8.7、タウ1およびタウ5)を使用して、リン酸化率でのIP-MSの結果を比較した(図14)。タウ1またはタウ1+HJ8.5が脳およびCSFにおいて使用された場合、pS199/S199率の有意な低下が観察された。これにより、N末端とmidドメインとの間のCSF短縮化は、脳と比較して、pS199リン酸化の測定に影響を与え得ることが示唆される。他の抗体を用いて脳およびCSF中で測定したPS199/S199率は、比較的類似しているように思われた。興味深いことに、S199リン酸化は、報告されたタウ1エピトープ(192~199)の末端に存在するが、脳抽出物におけるpS199で多少の反応性が依然として観察され、CSF中では低度であり、これにより、タウ1の非特異的結合が示唆される。
【0400】
剖検前の死後経過時間(PMI)中のホスファターゼ活性は、脳抽出物中で測定されるタウリン酸化を低下させ得るので、発明者らは、CSFおよび脳抽出物において通例見出されるPMIのリン酸化率に対する影響を調査した。PMIが5~16時間の範囲である参加者から収集された10例のタウ病変がない脳試料(中前頭回)を分析した。最初に分析された脳抽出物に、16時間超のPMIを有するものはなかった。発明者らは、T181、S199、S202、S214、T217、T231およびS404部位で測定されたPMIとリン酸化率との間に有意な関連を見出さなかった(Spearman検定、95%信頼区間、示されていない)。
[実施例4]
【0401】
CSF中のAD特異的p-タウ変化
ADにおいて通例報告されているCSF p-タウの増加は、2つの潜在的な効果:1)そのリン酸化状態に関係なくタウの全般的な増加、または2)特定部位における高リン酸化の増加の結果であり得る。非リン酸化タウを使用してp-タウシグナルまたはレベルを標準化すると、総タウの全般的変化から独立して特定部位で起こるリン酸化の化学量論の変化(すなわち正常なCSFまたは脳タウと比較した高または低リン酸化)の定量が可能となる。発明者らが最近実証したように、可溶性タウ生成物は、ADにおいて増加し、アミロイドプラークと相関する。したがって、量だけではなくリン酸化率についても制御することが理解には重要である。pT181、pT217、pT231、pT205、pS208およびpS214は、0N-特異的pT111のようにAD CSF中で高リン酸化された(図13)。pT153およびpT175は、非ADで検出されず、AD中でわずかに増加した可能性がある。非ADと比較して有意な高リン酸化を示す部位は、pT181(p=0.010)、pS214(p=0.005)およびpT217(p=0.003)であった。pT181、pS214およびpT217は、それぞれおよそ1.2倍、1.6倍および4倍のリン酸化の増加を示した。興味深いことに、モニターされた部位のすべてが高リン酸化されたわけではなく、pS199/S199は有意に変化せず、pS202/S202は有意に低く(p=0.030)、およそ1.2分の1に減少した。
【0402】
リン酸化比のロバスト性は、CSFを16時間インキュベーションすることにより評価した。インキュベーションは、非ADとAD CSFとの間で観察されたタウリン酸化比の差に有意に影響を与えなかった(図15)。さらに、インキュベーション後にCSF中でスパイクした組換え15N-タウにおいてリン酸化が検出されないことにより、CSFタウにキナーゼ活性がないことを確認した(示されていない)。
【0403】
実施例1~4の考察
p-タウ測定におけるPRMの技術進歩 - 発明者らは、正常な脳組織およびCSF中におけるp-タウの、現在までの最も包括的な定性的および定量的分析を報告する。発明者らのアプローチは、潜在的にマイナーなリン酸化部位を捕捉していなかった可能性があるタウリン酸化に対する以前のDDA研究とは対照的である。しかし、発明者らのアプローチは、高感度のPRMモードのターゲットMS(highly sensitive targeted-MS in PRM mode)を使用して、マイナーなリン酸化を検出および定量する。リン酸化部位の同定は、検査される各ホスホペプチドに対する、特異的イオンフラグメントの共溶出を同定するLC-MS/MSパターンの注意深い手動解釈に依存する。先行する研究では、脳タウリン酸化は主に、PHFからの高リン酸化タウに富んだ不溶性抽出物(insoluble extracts enriched in hyperphosphorylated tau from PHF)で調査され、これまで、最も詳述されている研究では、正常なヒトタウタンパク質における9箇所のリン酸化部位が報告されている(Hanger et al. 2007)。発明者らの掘り下げたPRMデータ分析から、29を超えるリン酸化残基が検出され、その大部分は存在量が非常に少なかった。実際に、以前に報告されている9箇所の部位は、中でもタンパク質において存在量が最も多い修飾であった。PRM分析を、脳と比較してはるかに少ない存在量で存在する正常なCSFタウに適用することにより、最初に9箇所のリン酸化部位の検出につながり、AD CSF中にさらに3箇所の部位が検出された。
【0404】
検出されたリン酸化部位数の有意な増加に加えて、発明者らは、高感度PRMスクリーニングにより、全般的なタウ濃度とは無関係に、タウリン酸化率または化学量論を定量的に評価することを可能にする方法を実証した。この概念は、見過ごされることが多いが、CSF p-タウ絶対濃度は、全般的なタウアイソフォーム濃度における上昇によってのみ上昇し、相対的なリン酸化タウ存在量の変化によっては上昇し得ない場合、ADにおける変化の評価において重大である。この研究によるリン酸化率の測定で初めて、異なる区画(細胞内脳対細胞外CSF)における、また、異なる病理学的状態(AD対非AD)における、タンパク質全体のリン酸化率の変化の度合いおよび分布の比較(高リン酸化対低リン酸化)が可能になった。
【0405】
PRMスクリーニングプロセスのいくつかの注意点は、発見のスループットが低いこと、およびp-タウ種、または研究で仮定されていない他の翻訳後修飾(PTM)を失う危険性があることである。MSデータからの同定は、より大きい検証または臨床コホートにおいてさらに使用して、スケジュール化されたLC-MS方法を設計し、多重化およびスループットを向上させることができる(Gillette and Carr, 2013)。他のプロテアーゼ、例えばAspNは、トリプシン消化物とは異なる1組のタウおよびp-タウペプチドを生じることがあり、これによりタウ、すなわちC末端ドメインのより良好な被服が可能となる(Hanger et al. 1998; Sato et al. 2018)。調査は、この研究で考慮されていないさらなる二重または三重のリン酸化タウペプチドをスクリーニングすることによりさらに精緻化することができるが、部位リン酸化の生物学的協調がない限り、存在量は最小限になり得る。
【0406】
タウプロジェクションドメインにおけるリン酸化部位のクラスターの同定 - 発明者らは、選択的スプライシング依存性ペプチドを含有するタウのN末端プロジェクションドメインにおいて、以前に記載されていないリン酸化残基のクラスターを見出した。興味深いことに、このドメインは、不溶性ヒト脳画分中のPHFにおいて広範にリン酸化されていることが以前には見出されていなかった(Funk et al., 2014; Hanger et al., 2007; Russell et al., 2016; Thomas et al., 2012)。このクラスターは、マウス脳におけるマウスタウタンパク質で行われた最近の包括的研究においても広範に特徴付けられなかった(Morris et al., 2015)。これらの食い違いは、少数の特異的MS/MSフラグメント、および/またはLCでの細かい保持時間のシフトによってのみ識別可能な、リン酸化ペプチドの複雑な混合物を特徴付けることの困難さに起因する可能性がある。例えば、S46は、正常なヒトタウ中のこのドメインで以前に報告された唯一のリン酸化部位である(Hanger et al. 1998)。しかし、発明者らは、この種に対する特異的シグナルを検出せず、この種は、調査アルゴリズムにより、近いフラグメント化パターンを共有する、隣接するT50またはT52におけるリン酸化部位と混同されている可能性がある。この点において、各リン酸化部位に対応するLC-MS/MSパターンを明確に解釈および読み解くために、手動で調べることが不可欠である。この食い違いの別の考えられる説明は、MTBRドメイン、midドメインおよびC末端と比較して、PHFにおけるN末端ドメインの存在量が比較的少ないことの可能性がある(Mair et al., 2016)。
【0407】
このN末端プロジェクションドメインは最近、隣接する微小管(MTBRドメインを経由してタウに結合する)が互いに近付くのを予防する反発バリアの主成分の一部として割り当てられている(Chung et al., 2016)。この配列は、多数の酸性残基を含有しており、リン酸化の増加は、全般的な酸度の上昇に寄与し、反発バリアを強化し得る。エクソン2~3における選択的スプライシングにより誘導される可変量のN末端伸長と共に、タウリン酸化は、タウ/タウN末端相互作用および微小管の分子間距離を調節し得る。
【0408】
脳対CSFにおける異なるp-タウプロファイルの生物学的意味合い - タウは主に、微小管の安定性において機能する細胞内タンパク質であり、旧来より神経傷害または細胞死の際にしか細胞外に放出されないと考えられていた。しかし、最近の研究から、タウは、生理学的および病理学的条件下で、調節された手段で分泌されることが示唆されている(Karch et al. 2012; Yamada et al. 2014)。可溶性脳タウおよびCSFタウプロファイル、並行して、神経細胞モデルにおける細胞内および細胞外タウプロファイルならびに代謝を比較することにより、発明者らは最近、タウ分泌が、短縮化されたタウおよびp-タウを含むタウアイソフォームの異なる代謝回転速度に関与する能動的プロセスであることを示した(Sato et al., 2018)。脳とCSF p-タウプロファイルとの間の比較を介した、この能動的分泌とタウのリン酸化との間の関連を理解することにより、AD病因への潜在的な洞察が得られる。
【0409】
発明者らは、CSF中で豊富なp-タウアイソフォームは、微小管に対する親和性が低く、分泌される可能性が高いと推測している。反対に、CSF中で欠乏するp-タウアイソフォームは、ニューロンの内部にとどまり、かつ/または切断を避ける傾向をより高く有し得る。発明者らの結果から、いくつかのリン酸化残基は、脳抽出物、例えばT217、T231、T153およびT111と比較してCSF中で有意に豊富なことが実証される。すべてがプロリン指向性部位であり、GSK-3βタンパク質キナーゼの潜在的基質であり、およびキナーゼ依存性調節を受け得る。pT217とは異なり、pS214は、脳と比較してCSF中で増加しなかった。pS214を上回るpT217のこの細胞外濃縮は、発明者らが以前にこれらのアイソフォームについて細胞内で同定した動態学的な差と合致し(Sato et al., 2018)、pT217は、非リン酸化タウおよびタウ-pS214よりも短い代謝回転速度を有する。あるいは、CSFと比較した脳抽出物中のタウ部位の一部で観察されたリン酸化の減少は、PMI中起こる部分的脱リン酸化にも起因し得る(Matsuo et al., 1994)。そのような減少は、5~16時間のPMI範囲内で観察されなかったが、死亡とこの調査された間隔との間のリン酸化比の変更は排除できない。質量分析により、脳生検によるこれらのタウ部位の脱リン酸化の動力学を評価することは、将来、CSF/脳の比較結果に対するこの現象の影響に対処する助けとなるであろう。脳タウリン酸化の測定に影響を与える潜在的な脳ホスファターゼのバイアスを考慮すると、CSFタウのリン酸化状態は、死後に収集した脳抽出物よりも、インビボ(in vivo)でのニューロンにおけるタウリン酸化状態を反映しやすいことが裏付けられる。しかし、CSF中のインビボでのタウリン酸化モニタリングは、CSFタウ短縮化のため、主にタウのmidドメインで検出された部位に限定され得る。
【0410】
反対に、pS202は、CSF中で有意に低く、pS199およびpS202はAD中で増加せず、これにより、これらのリン酸化は、ニューロン内側のタウ隔離を促し得ることが示された。T181は、CSFおよび脳中で等しくリン酸化される。pT205およびpS208はもっぱらCSFタウ中で検出され、脳における可溶性タウタンパク質中では検出されなかった。これは、S202、T205およびS208での3箇所でのリン酸化が、脳におけるタウ凝集のBraakステージ(Braak and Braak, 1995)を特徴付けるために通例使用される抗AT8抗体(Malia et al., 2016)により認識されることを考慮すると興味深い。実際に、pS208は、MSによりPHF中で検出された(Hanger et al. 1998)。pT205およびpS208は、発明者らの研究では、正常な可溶性脳タウに存在せず、正常な脳タウにおけるAT8の免疫反応性を検出する可能性はないことを確認した。さらに、最近の研究により、pT205およびpS208は、pS202と共にタウ自己凝集を導く組合せリン酸化パターンであることを示唆する(Despres et al., 2017)。ADにおいて、CSF中にpT205およびpS208が排他的に存在すること、および両方の部位でリン酸化率がさらに高まることは、細胞から、これらの病変となりやすいp-タウ種を除去する、ニューロンに対する潜在的な保護クリアランス機構を示し得る。同時に、AD CSF中のpS202が減少することは、AD脳における濃縮されたAT8-陽性のタングル(enriched AT8-positive tangle)において、pT205およびpS208と凝集する場合、関連するアイソフォームの隔離の増加にも相当し得る。あるいは、脳抽出物中のpT205およびpS208にリン酸化がないことは、PMI中に発生するホスファターゼによる、それらの特異的分解に起因し得る。脳生検から収集されたタウにおいて報告されているAT8反応性の迅速な消失(<3時間)は、この考えを裏付ける(Matsuo et al., 1994)。したがって、pT205およびpS208を効率的に標的化するそのようなホスファターゼ活性は、ニューロンにおけるAT8-陽性物質の長い半減期を予防する追加の機構としても見ることができる。AD CSF中で見出されるpT205およびpS208の増加は、次いでこの保護機構の潜在的に病理学的な低下を示し得る。最終的に、AD CSF中のpS202の同時減少は、AD脳における濃縮されたAT8-陽性のタングルにおいて、pT205およびpS208と凝集した場合、関連するアイソフォームの隔離の増加にも相当し得る。
【0411】
発明者らは、正常な脳からの可溶性画分におけるMTBRドメインからリン酸化残基を、説得力をもって検出することが不可能であった。MTBRドメインにおけるリン酸化部位は、タウの微小管への親和性を低下させるとされている(Biernat et al., 1993)。正常なタウ中におけるそのようなリン酸化がないことは、PHF中で見出されるこれらの修飾の異常を裏付け得る(Hanger et al. 2007)。CSFタウ短縮化では、MTBRドメインは、タウ短縮化後に細胞内で分解される可能性があり(Kanmert et al., 2015)、したがってこの研究で使用されるイムノキャプチャー方法により回収されないので、インビボでのリン酸化の変化の検査が限られる。
【0412】
ADバイオマーカーとしてのCSF p-タウ率 - 検出されるリン酸化部位数の有意な増加に加えて、発明者らは、全般的なタウ濃度に関係なく、タウリン酸化率または化学量論を定量することができる方法を実証した。この概念は、見過ごされることが多いが、CSF p-タウ絶対濃度が、総タウ濃度(すなわちpT181)の上昇によってのみ上昇し、相対的なリン酸化率自体の上昇では上昇し得ない場合、ADにおけるCSFタウリン酸化の変化の評価において重大である。この研究からのリン酸化率の測定により初めて、異なる区画(細胞内脳対細胞外CSF)における、また、異なる病理学的状態(AD対非AD)における、タンパク質全体の、リン酸化率の変化の度合いおよび分布の比較(高リン酸化対低リン酸化)が可能となった。この方法は、免疫化学を使用して最近行われたように(Neddens et al. 2018)、脳領域およびBraakステージ全体の多数の部位で、AD脳リン酸化の変動を調べるために将来使用され得る。
【0413】
この研究では、発明者らは、AD CSF中のタウは、非AD CSFと比較して一般的に高リン酸化されることを実証した。しかし、高リン酸化の度合いは部位依存的である。T111、T205、S208およびT217は、ADに対するp-タウバイオマーカーとして使用され、最も一般的に測定される標的であるT181よりも高リン酸化された(Fagan et al. 2009)。発明者らは、もっぱらAD CSFで見出されるT153リン酸化も同定した。興味深いことに、AD CSF中で高リン酸化されていると見出される部位は、脳と比較して、正常なCSF中で既に有意に増加した部位に相当する(すなわち、T111、T205、S208およびT217、ならびに低度でT231)。これにより、AD病変は、タウのCSF中への放出中の特異的p-タウアイソフォーム濃縮に寄与する細胞機構を悪化させることが示され得る。全体として、これらの部位で見出される大規模な変化により、発明者らはADを検出する高感度バイオマーカーとしての使用を構想する。発明者らの研究は、限定された数のCSFプールに依拠しており、将来、より大きいCSFコホートでの研究により、p-タウ変化と、疾患の間の脳アミロイドーシスおよびタウ凝集との間のより良い潜在的な関係が確立されるであろう。発明者らは、他の非ADタウオパチー、例えばPSP、CBDおよびFTDにおいて、何らかの特異的p-タウプロファイルの変化が存在するかどうかを問うこともできる。あるいは、この方法は、インビボおよびインビトロで異なるキナーゼ活性を追跡するために使用することができ、異常なタウ代謝を標的とする新たな薬物を評価する有望なツールを提供することもできる。
【0414】
実施例1~4の方法
脳の可溶性タウ抽出 - 参加者を伴う脳およびCSF研究は、Washington University Human Studies CommitteeおよびGeneral Clinical Research Centerにより承認された。すべての参加者から、研究に加わる前に書面によるインフォームドコンセントを得た。脳の可溶性タウを、以前に説明されているように抽出した(Sato et al., 2018)。簡潔には、以前に説明された(Sato et al., 2018)、アミロイドおよびタウ病変がない対照からの冷凍ヒト脳組織をWashington University School of Medicine (St. Louis, MO)のKnight Alzheimer’s Disease Research Center(ADRC)から得た。サルコシル可溶性タウを、文献(Hanger et al. 1998)で報告されている超遠心分離により、推定上の(putative)タウ凝集物から分離し、プールした。冷凍ヒト脳(200~400mg、前頭部)を、氷上においてトリス-HCl緩衝剤(25mMトリス-HCl、150mM NaCl、10mM EDTA、10mM EGTA、1mM DTT、ホスファターゼ阻害剤カクテル3、Rocheプロテアーゼ阻害剤、pH 7.4。最終的に3.25mL/mg組織)中でホモジナイズした。ホモジネートを4℃にて60分、11,000×gで遠心分離した。上澄みを1%サルコシル中で60分間可溶化し、2時間、100,000×gで遠心分離した。サルコシル可溶性画分をプールし、免疫沈降の前に50μL画分を0.5%ヒト血漿で10倍希釈した。脳/CSFの比較では、免疫精製の前に脳可溶化液プールを500~8000倍希釈して、CSFタウレベルに適合させた。
【0415】
CSFタウ抽出 - ヒトCSFを、アミロイド陰性および認知に関して正常な(CDR=0)対照(n=47、年齢60+)ならびにアミロイド陽性およびCDR>0 AD患者(n=33、年齢60+)を含む参加者80名のコホートからプールした。対照およびAD群から、それぞれ500μL CSFアリコートの5つおよび7つのプールを生成した。最初の収集時に、CSFを1,000×gで10分間スピンダウンして、細胞デブリを除去し、-80℃にて直ちに冷凍した。プロテアーゼ阻害剤カクテルを実験中に添加した。タウを、一部変更を加えて、以前に説明されているように(Sato et al., 2018)、免疫沈降させ、脱塩した。簡潔には、CNBr-活性化セファロースビーズ(GE Healthcare 17-0430-01)を、ビーズg当たり3mg抗体の濃度で、抗体タウ1およびHJ8.5に別々に架橋した。試料を、目的の各配列に対して、試料mL当たり10fmolのリン酸化および100fmolの非リン酸化タウに相当するAQUAペプチド(ThermoFisher Scientific)でスパイクする。タウおよびp-タウ濃度は、これらの内部標準を使用して計算する。可溶性タウは、洗剤(1%NP-40)、カオトロピック試薬(5mMグアニジン)およびプロテアーゼ阻害剤(Roche Complete Protease Inhibitor Cocktail)中で免疫沈降させた。セファロースビーズにコンジュゲートした抗タウ1およびHJ8.5抗体は、不活化したセファロースビーズ中でそれぞれ10倍および5倍希釈し、30μLの抗体ビーズの50%スラリーを、溶液と共に室温にて90分間回転させた。ビーズを25mM重炭酸トリエチルアンモニウム緩衝剤(TEABC、Fluka 17902)中で3回洗浄した。結合したタウを、400ng MSグレードトリプシン(Promega、V5111)を用いて、37℃にて16時間ビーズ上で消化した。消化物をTopTip C18(Glygen、TT2C18.96)上にロードし、脱塩し、製造者の使用説明書に従って溶出させた。溶出させたペプチドを真空遠心分離(CentriVap Concentrator Labconco)により乾燥させ、2%アセトニトリルおよびMSグレード水中0.1%ギ酸の25μLの溶液中で再懸濁した。
【0416】
質量分析 - ペプチド再懸濁液の5μLアリコートを、MS分析のためにnano-Acquity LCに注入した。nano-Acquity LC(Waters Corporation、Milford、MA)に、HSS T3 75μm×100μm、1.8μmカラムを取り付け、流速0.5μL/分の溶液AおよびBのグラジエントを使用して、ペプチドを分離した。溶液Aを、MSグレード水中0.1%ギ酸で構成し、溶液Bを、アセトニトリル中0.1%ギ酸で構成した。ペプチドは、2%から20%の溶液Bで28分、次いで20%から40%の溶液Bでさらに13分、その後85%の溶液Bまでさらに3分上昇させるグラジエントでカラムから溶出させて、カラムを清掃した。Orbitrap Fusion Lumosは、Nanospray Flexエレクトロスプレーイオン源(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA)を備えていた。10μm SilicaTipエミッター(New Objective、Woburn、Ma)からイオン源中へとスプレーされたペプチドイオンは、四重極子を標的化し、四重極子において単離された。次いでこれらをHCDによりフラグメント化し、Orbitrapでイオンフラグメントを検出した(分解能60,000、質量範囲150~1200m/z)。ペプチドプロファイリングのための親水性ペプチド(SSRcalc<9、すべてロイシンなし)のモニタリングを、HSS T3 300μm×100μm、1.8mmカラム、4μl/分の流速で行い、2%から12%の溶液Bのグラジエントで溶出を発生させ、スプレーを30mm SilicaTipエミッター上で作動させた。
【0417】
p-タウペプチド発見のためのPRMの原理 - タウ濃縮生物学的抽出物、例えばヒト脳可溶性画分からのタンパク質の消化により、仮定のリン酸化部位を含有するタウペプチドを生成した。これらのペプチドは、四重極子-Orbitrap機器、例えばThermo Fisher Orbitrap Lumosを使用するターゲットMS分析によりスクリーニングする。各リン酸化ペプチドに関して、ターゲットMSパラメーター、例えば前駆体質量、衝突エネルギー、または予想される保持時間の選択は、インシリコ(in silico)で行い、試料における存在量がはるかに多い対応する未修飾ペプチドで測定される生物物理学的性質を使用して精密化した。リン酸化ペプチドを検出するために、四重極子は、仮定の前駆体質量を含む質量ウィンドウを選択するように設定される。前駆体衝突後、生成されたフラグメントはすべて、クロマトグラフィーの溶出時間にわたり、Orbitrapで同時に測定される。潜在的にリン酸化されたペプチドは、生成されたデータの後分析で調査され得る。Skylineソフトウェア(MacCoss Lab、University of Washington、WA)を使用して、LC-MS/MSデータを抽出した。スクリーニングされる仮定のペプチドは、予測されるMS/MSフラグメントから抽出される質量の厳密な共溶出により構成されるLC-MS/MSフィンガープリントとして検出される(図2)。古くからのDDAまたはターゲットMS法を上回るPRM法の利点は、MS機器を考えられる最高感度の構成で使用する、および発見能力を保つ能力である。
【0418】
スクリーニング中の四重極子-Orbitrap機器の最大感度は、マイナーなイオンフラグメントを検出するのに不可欠であり、リン酸化部位の局在化と共にリン酸化ペプチドの同定を促進する。PRM測定の感度は主に、Orbitrap分析器へと移された目的の標的からのイオンの数に依存する。この数は、1つのMS/HRMSスキャンを取得するのに使用される充填時間を長くすることにより増加した。充填時間は、イオンビームからイオントラップデバイスへと、標的の前駆体質量を蓄積するために費やされる時間に相当する。蓄積した前駆体を、次いでフラグメント化し、生成フラグメントをOrbitrapに移して分析する。したがって、充填時間は、クロマトグラムシグナルを記載するのに十分なデータポイントを取得するのに十分なMSスキャン速度(すなわちクロマトグラフィーのピーク当たり8~15スキャン)の必要性により限定される最大値に設定される。調査した各リン酸化ペプチドに対するPRMスクリーニングの充填時間は、典型的には1秒に設定した。
【0419】
充填時間は、トラップが飽和する危険性によっても限定される。これは、同一のスキャン内でサンプリングされ、Orbitrapに移されるイオンが多過ぎる場合に発生し、空間電荷効果により質量測定が不正確になる。そのような飽和を避けるために、マトリックス上の標的を濃縮する適切な試料精製(免疫精製)と共に、狭い前駆体単離(0.7Da)を選択して、潜在的な近同重体干渉(near-isobaric interference)の寄与を減少させる。
【0420】
PRM発見実験の特異性は、LC-Q Orbitrapシステムの分解能力に依存する。分解能力は、様々な分析パラメーターにより改善され得、最終目標は、標的ペプチドの干渉のないLC-MS/MSフィンガープリントを得ることである。これにより、偽陽性シグナルによる曖昧なフラグメントを割り当てる危険性が限定される。p-タウを優先的に濃縮する試料精製も、マイナーなリン酸化タウペプチドの発見における特異性を改善し得る。クロマトグラフィーのピークキャパシティおよび分解能が高いと、共溶出の可能性が限定される。前駆体に対する四重極子単離ウィンドウが狭いと、MS/MSスペクトル上での干渉の確率が低下し、それと共に上記のようにトラップが飽和する危険性が限定される。Orbitrapの高い分解能および分析器の較正により、データ加工中に質量フラグメントの正確な抽出が可能となり、これにより、トランジション干渉(transitions interference)の危険性が限定される(Gallien et al., 2012; Peterson et al., 2012)。Orbitrap分解能の選択(60k)は、より多い取得時間を必要とする高い分解能と、クロマトグラフィーの取得と両立できる妥当なスキャン速度との間のバランスである。
【0421】
タウの部位特異的リン酸化率の定量的評価 - 脳およびCSFからのタウにおける特定部位のリン酸化の相対的な存在量を定量的に評価するために、発明者らは、検出された各部位でのリン酸化の程度を測定した。発明者らは、この目的のために3種の方法を使用した。1)リン酸化ペプチド異性体間の相対的比較:トランジションイオン(transition ion)からのシグナルの比較を使用して、各リン酸化部位を同定する。これは、同一の配列を共有する各リン酸化ペプチドの相対的な存在量を推定することができる。2)リン酸化ペプチドを、非リン酸化ペプチドを基準として用いて標準化する:各リン酸化ペプチドに特異的なLC-MS/MSトランジションを、非リン酸化ペプチドからの対応するトランジションと比較する。得られた各リン酸化部位の比を、タンパク質配列にわたり比較することができる。この方略は、非リン酸化ペプチドとリン酸化ペプチドとの間のフラグメント化効率における差によりバイアスがかかることがある。この方法は、リン酸化部位がトリプシン切断欠如の一部である場合、適用することができない。3)各リン酸化および非リン酸化ペプチドの標識した合成内部標準(例えばAQUA)を使用した絶対量定量:リン酸化および非リン酸化標準からのシグナルを使用して、内部比を定義する。この方略は、比較される各ペプチドのフラグメント化特異性を計算に入れるが、モニターされる各種のペプチド合成を必要とする。
【0422】
この研究では、トリプシン切断欠如を含むものを除いて、第2の方法を利用して、リン酸化率を計算した。発明者らは、合成リン酸化ペプチドが利用可能な場合、脳およびCSF抽出物の両方に見出されたリン酸化部位(すなわちT175、T181、S199、S202、T205、T217およびT231)の限定されたセット、ならびに脳にのみ見出された1つの部位(S404)に、第3の方法(AQUA標準化)も適用した(表1)。AQUA測定では、脳抽出物を、CSFタウレベルと同等になるように500~8000倍に希釈した。この希釈は、AQUA内部標準と脳対CSF中のタウペプチドレベルとの著しく異なる比に起因し得るマトリックス効果を最小化した。第1の方法は、多数のリン酸化残基を含有するp-タウ配列からの複雑なLC-MS/MSパターンを最初に解釈するのに使用した。
【0423】
統計値 - データは、特に指定がない限り平均±SDとして表す。データの正規分布を確認した後で、タウリン酸化率を比較するために、一元配置ANOVA、続いてポストホック分析(Tukey検定)を行った。GraphPad Software Inc.からのGraphPadバージョン8.0.1(244)を使用して、追加の統計分析を完了した。関連性がある群間の統計学的有意性は、両側、対応のないMann-Whitney t-検定で判定した。有意性は、0.01および0.05レベルで評価した。
[実施例5]
【0424】
大脳のアミロイド病変は、タウ高リン酸化における部位特異的な差に関連する
皮質PiB-PETの標準取込値比(SUVR)は、有意な皮質Aβ-プラークを確実に同定し、対象をPIB陽性(アミロイド+、SUVR≧1.25)または陰性(アミロイド-、SUVR<1.25)として分類するために使用される。アミロイドプラークおよび可溶性タウ種の関係を探査するために、発明者らは、皮質PiB-PETのSUVRを、CSF総タウ、および複数の部位におけるCSFタウのリン酸化(すなわちタウの、リン酸化部位の非リン酸化部位に対する比)と比較した。(図16A)突然変異保持者(MC)を皮質Aβ-プラーク(すなわち、アミロイド+)を有するものと分類するための、Thr217におけるタウのリン酸化(p-T217)は、曲線下面積(AUC)、97.2%[0.94、0.99の95%信頼区間(CI)]]を有し、Thr181におけるタウのリン酸化(p-T181)は、AUC 89.1%(CI 0.83、0.94)を有し、Thr205におけるタウのリン酸化(p-T205)は、AUC 74.5%(CI 0.69、0.82)を有し、総タウは、AUC 72%(CI 0.65、0.79)を有した。これらのデータから、有意な原線維性Aβ陽性プラークの早期ステージにおいて、その時間内にこれらの2つのプロセスを結び付ける特定部位におけるリン酸化の増加が既に始まっていることが示される。これらのデータから、T217の非リン酸化に対するリン酸化の比の上昇は、原線維性Aβプラーク病変に対する高感度の診断マーカーとしての役割を果たし得ることも実証される。
【0425】
発明者らは、次いで、PiB-PET SUVR四分位による4箇所のリン酸化部位の平均標準化リン酸化比および総タウレベルを比較して、Aβ-プラーク総負荷とリン酸化との間の関係を探査した、図16B。Ser202(p-S202)を除くすべてのリン酸化部位から、より大きいAβ-プラーク病変を伴うリン酸化の増加が実証された。他の3箇所の部位の間の差も発見された。p-T217およびp-T181は、プラークがスタートすると最大の増加を示した(四分位2~3)が、これらの増加の規模は、プラーク負担が大きくなるにつれて低下し、対照的に、p-T205におけるリン酸化の増加および総タウレベルの上昇がAβプラークと共に高まり続けた。これらの結果から、ADにおいて最初にタウリン酸化の増加を引き起こす事象は、潜在的に、リン酸化部位に特異的な固有のキナーゼおよびホスファターゼの調節を通して、Aβ-プラーク病変に関連している可能性があることが示唆される。さらに、データから、p-T217は、原線維性Aβ-プラーク病変の代理のバイオマーカーとしての役割を果たし得ることが示唆され、Aβ-関連タウ処理の潜在的に特有のシグネチャーが同定される。重要なことに、突然変異非保持者(NC)のうち、T217におけるリン酸化の増加を示した参加者のみが、PiB+(SUVR>1.25、n=4)である者であった。
【0426】
発明者らは次に、PiB-PET SUVRにより測定した特異的タウリン酸化部位と、アミロイドプラーク沈着の皮質および皮質下領域との間の相関を探査することにより、部位特異的なタウリン酸化が、大脳のAβ-プラーク病変の解剖学的分布に関連していたかどうかを評価した、図16C。T217、T181およびT205におけるリン酸化は、脳全体にわたってAβ-プラークと正に相関していたが、S202におけるリン酸化は、負に相関していた。早期のアミロイドプラーク沈着の領域である楔前部では、タウアイソフォームとの相関を、年齢、性および症状発症までの推定年数(EYO)について制御する二変量回帰の強度に基づいて比較し、多重比較に調整した。発明者らは、p-T217(β=0.68、p<10-30)、p-T181(β=0.46、p<10-6)、p-T205(β=0.41、p<10-5)および総タウ(β=0.35、p<0.001)であり、Aβ-プラークと正の相関である相関の順位を見出した。対照的に、p-S202は、逆相関(β=-0.47、p<10-7)を有し、これにより、この部位におけるリン酸化は、Aβ病変の増大に伴って減少することが示唆された。これらの関係は、神経変性の証拠がほとんどない場合、発症前(pre-symptomatic)のMCに存在しており、これにより、CSF中のリン酸化タウにおける増加は、死にかけているニューロンからの受動放出の結果ではなく、Aβ-プラーク病変22の存在に関連した能動的プロセスの可能性が高いことが示唆された。
[実施例6]
【0427】
疾患ステージおよび進行は、タウ高リン酸化および長期的な変化率における部位特異的な差に関連する
DIADの疾患発症の確実性および症状発症の予測可能性により、EYO(すなわち、評価時の個人の、突然変異を有する他者の発症年齢と比べた年齢)に基づいて個人のステージ分類が可能になる9、10、30。発明者らは次に、CSFタウのリン酸化パターンに時間差が存在するかどうかを判定した。これは、EYOに基づいてMCとNCとの間の経時的なリン酸化の量および変化率における差を推定することにより行われた。2つの重要な知見が存在した。第一に、総タウおよび特定部位におけるリン酸化の増加は、慎重な(discreet)順序で起こる証拠が存在していた。T217のリン酸化は、-21EYO付近で起こり、-19EYO付近でT181のリン酸化、次いで-17EYO付近で総タウの増加、次いで-13EYO付近でT205のリン酸化が続いた(図17A~F)。T217における最初のリン酸化の増加、およびそれより低度のT181における増加は、Aβ-プラークが増加し始めたときと同様の時間(-19EYO)に発生した。第二に、T217およびT181のリン酸化の比は、症状発症時付近で有意に低下し始めた一方、T205におけるリン酸化は増加したままであり、総タウレベルは上昇し続けた。注目すべきは、すべての非リン酸化ペプチドの濃度が疾患進行に伴って上昇し(データは示さず)、これにより、T217およびT181でのリン酸化比の低下が、これらの部位を特異的に含む非リン酸化ペプチドの不均衡な増加の結果ではないことが示唆された。S202では、疾患の間にリン酸化の有意な変化は認められなかった、図17E。これらの結果から、タウのリン酸化は、各部位で示差的に起こり、疾患ステージにより特定部位で増加または減少することが示される。これらの部位特異的変化から、以前に認識委されたものよりも動的な、可溶性タウの変化が連鎖すること、また、タウは、リン酸化状態または比が単調に増加しないことが示唆される。Aβアミロイドプラークの出現および臨床的悪化の発症は、間が20年離れており、可溶性タウリン酸化が変化するステージの2つの重要な分界をマークしている。
[実施例7]
【0428】
疾患進行の神経画像化マーカーは、タウ高リン酸化における部位特異的な差に関連する
家族歴を使用した症状発症の推定(EYO)に加えて、疾患進行の様々な要素、例えば脳萎縮および代謝低下を追跡する神経画像化測定値を使用してDIADにおける疾患進行も推定することができる。これらの測定値は、症状発症前の異なる期間に変化することが示されており、大脳代謝の低下([F18]フルオロデオキシグルコース[FDG]-PETにより測定された)は、症状発症前18年までに発生し、脳萎縮(MRIにより判定された)は、症状発症前13年までに発生した28、31~33。これにより、これらのバイオマーカーが同じく特定部位においてタウリン酸化と相関しているかどうかという疑問が生じる。これを検査するために、発明者らは、性、年齢およびEYOについて制御する34箇所の皮質脳領域および6箇所の皮質下脳領域からの画像化測定値を用いて、リン酸化部位と総タウとの間の二変量横断的相関付け(cross-sectional correlation)を行った。発明者らは、疾患進行の最も早いステージにおける何らかの関連を同定するために、分析の焦点を無症状MCに合わせた。S202におけるタウのリン酸化状態は、疾患進行にわたり変化がないことを踏まえこれらの分析に含めなかった。
【0429】
MRI - 高リン酸化は、無症状MCにおける皮質の厚さと逆相関していた。p-T205は、脳全体で皮質および皮質下の厚さの減少と最も強く関連していた、図18A、一方、p-T217および総タウレベルは、乏しい領域的関連(redional association)および弱い相関を示した。p-T181における高リン酸化は、皮質萎縮と最も低い包括的相関を有し、頭頂葉内側および頭頂葉外側ならびに背内側核-内側前頭葉(medial dorsal-medial frontal lobes)に限られた。これにより、-13EYOでのp-T205の初期上昇は、発明者らが楔前部においておよそ-13EYOで始まることを以前に示した28、皮質萎縮の根底にある病因に関連し得ることが示唆される。
【0430】
FDG PET - 皮質萎縮に加えて、ニューロンおよびグリアにおけるグルコース代謝の低下は、ADにおける疾患進行に関連する。したがって発明者らは、皮質または皮質下の代謝障害とタウリン酸化の間に固有の関連が認められるかどうかをテストした。無症状MCでは、T205におけるリン酸化は、FDG-PETにより測定される皮質および皮質下領域全体にわたるグルコース代謝低下と相関していた、図18B。無症状MCにおける他のp-タウ部位または総タウレベルについて同定された最小限の関連が認められた。
【0431】
まとめると、これらの結果から、神経画像化により測定された、無症状の疾患進行中に、神経細胞障害および神経変性を引き起こす根底にあるプロセスが示され、これが、p-T205と最も密接に関連している。最近の研究は、fyn-キナーゼ経路を通した、Aβ-誘導シナプス後細胞毒性34に応答する、シナプス後終末におけるp-T205に対する保護的役割を同定した。シナプス機能が低下している場合、ここで見出される関連は、T205におけるリン酸化の増加を生じさせる保護プロセスを表し得る可能性がある。しかし高リン酸化は、経時的にタウが凝集する素因になり得る。一方、T181およびT217におけるリン酸化は、皮質のAβ-プラーク病変の存在により強く関連すると思われ、潜在的には、T205の高リン酸化および可溶性非リン酸化タウレベルの上昇の上流で発生する。
[実施例8]
【0432】
認知低下は、タウ高リン酸化における部位特異的な差に特異的かつ示差的に関連する
先行する研究から、AD認知症は、新皮質Aβ病変よりも新皮質NFT病変に密接に関連することが示されているが35、可溶性タウと認知との間の関係は依然不確定なままである。したがって、発明者らは、臨床転帰を比較して、可溶性タウのリン酸化比および総タウレベルにおける長期的な変化を経時的に評価した36。発明者らは、転帰として神経心理学的複合(neuropsychological composit)に対する長期的な認知パフォーマンス(longitudinal cognitive performance)、ならびに予測因子としてCSFタウの測定値における変化(個別の線形混合効果モデルに由来する)、時間およびそれらの相互作用を伴う混合効果モデルを行い、年齢、性、教育および家族関係について調整した。発明者らは、この分析のためにすべてのMC(有症状および無症状)をテストし、リン酸化部位と臨床的悪化および認知低下との間の示差的効果を見出した。非リン酸化タウは、認知の悪化に伴って単調に増加し、T217およびT181におけるリン酸化は、認知の悪化に伴って減少したが、pT205は、認知低下と比べて変化を実証しなかった。
【0433】
T217およびT181のリン酸化比が減少するにつれて、認知低下が加速した(t値2.35、p=0.02および2.11、p=0.04)、表3および図19。これにより、可溶性タウの増加よりも大きいT217およびT181のリン酸化の減少は、認知低下の重要なマーカーとなることが示唆される。
【0434】
これらの知見は、CSF p-タウにおける連続した上昇が、認知機能不全に関連する現在のパラダイムに異を唱えている。この研究では、発明者らは2つの一般的なパターンを明らかにした。一部の部位で、認知の低下が始まるとリン酸化は有意に減少する一方、他の部位では、疾患進行に伴って連続した増加が示されたか、または変化がなかった(図19における増加率対減少率を参照されたい)。さらに、発明者らが同定した、他の疾患進行のマーカー(Aβ-プラーク、脳萎縮および代謝)と、総タウレベルおよび異なる部位におけるリン酸化との間の関連により、ADにおけるタウリン酸化を引き起こすプロセスは、多因子性の可能性があり、等価ではないことがさらに強調される。
[実施例9]
【0435】
非リン酸化タウの増加は、タウPETによる皮質NFTと相関しているが、古典的なリン酸化-タウ種(phospho-tau species)とは関連しない
DIAD参加者での最近のタウ-PET(18F AV-1451またはフロルタウシピル(flortaucipir))研究により、NFTの増加は、臨床症状の発症後にのみ発生することが示唆されている37、38。発明者らは、可溶性p-タウがNFT病変のマーカーである一方、可溶性非リン酸化タウは、神経変性の指標として、死にかけているニューロンから受動放出される14という仮説をテストした。発明者らは、タウ-PETが行われた時間にまでつながるCSFタウとp-タウアイソフォームとの間の長期的な変化の関係を探査した。限定された数の参加者(MC10名およびNC4名)で、単回のタウ-PETスキャンをCSF試料が得られた72時間以内に行った。これらの個人では、CSF試料は、以前の訪問(1~3年以内)でも得られており、これにより発明者らは、可溶性タウ測定値における長期的な変化がタウ-PETレベルを予測する能力を評価することが可能となった。
【0436】
第一に、発明者らは、MCにおける皮質NFTレベルは、症状発症時付近のみで上昇することを確認し、図20、これにより、DIAD MCにおいて、タウ凝集物が増加し始めると、臨床的悪化が始まることが示唆された。第二に、発明者らは、CSFの非リン酸化タウにおける長期的な増加は、皮質タウ-PET(p=0.03)値の上昇に関連することを見出した、表4。T205のリン酸化の増加は、より高いレベルのタウ-PETに関連し、反対に、T217、T181およびS202のリン酸化の減少は、タウ-PETのレベルの上昇に関連する傾向が認められた、図21。まとめると、これらの知見から、p-タウではなくCSF中の非リン酸化タウの増加は、NFT病変の広がりに、より密接に結び付くことが示唆される。対照的に、凝集タウが増加していると可溶性p-タウ種は減少し、これは、高リン酸化された凝集物による隔離プロセスを表し得る。
【表2】


【表3】


【表4】

【0437】
実施例5~9の考察
タウは、AD病変の特質を構成し、凝集形態または可溶性形態で測定され得るが、この重大な神経細胞タンパク質の翻訳後修飾が、ヒトにおけるNFTおよび神経変性の発症にどのようにつながるかについての我々の理解には、大きなギャップが残っている。発明者らはここで、AD進行の間、CSF中のタウのリン酸化パターンがどのように変動するかを実証する。発明者らは、DIADにおいて、タウリン酸化および中枢神経系中への放出プロセスは、1)Aβ-プラーク負担(PiB-PETにより測定される)が確立される(発症の数十年前)と始まり、続いてほぼ20年の期間にわたり展開し、その間、タウタンパク質の異なるリン酸化部位は、疾患進行の異なるマーカーを伴う別個の相でリン酸化され;また、2)認知低下および凝集タウの増加(タウ-PETにより測定される)の時間付近で部位依存的な手段で有意に減少する、能動的プロセスであるという実証を既存の臨床文献に追加する。まとめると、これらの結果から、可溶性リン酸化/非リン酸化タウペプチドを定量するこの方法は、前臨床ステージから症状ステージ(symptomatic stage)にわたるADプロセスを追跡し、この疾患におけるリン酸化-タウ病変のシグネチャーを得ることができることが示される。さらに、これらは、DIADおよび場合によりAD全般におけるタウ/p-タウの役割とされているものに異を唱え、Aβ病変をタウ高リン酸化21、23、25、39、および死にかけているニューロンの放出の結果ではなく能動的な細胞の放出に結び付ける動物研究からのそのような知見をヒトにおいて再現する。
【0438】
因果関係は将来の研究で検討する必要があるが、p-T217、p-T181およびPiB-PETが同時に増加することにより、ADにおけるタウの広範なリン酸化のレベルは、Aβ病変に密接に結び付くことが示唆される。この仮説は、最近のADトランスジェニックマウスにおける研究20、21、23、34、40および安定同位体標識動力学(SILK)における研究と一致し、これにより、p-タウアイソフォームは、Aβ-プラークの存在下で増加する能動的プロセスにおいて細胞から放出されることが実証される22。発明者らの結果は、Aβ病変を、可溶性タウペプチド濃度およびリン酸化パターンにおける固有の変化に結び付け、ADにおいてp-タウの有意な上昇が発生するが、他の神経変性のタウオパチーにおいては発生しない現象16、17を解明する。これらの知見から、臨床症状の発症前に早期AD病変の潜在的な治療標的、ならびにバイオマーカーへの重要な洞察も得られる。
【0439】
最近の研究は、体細胞NFTが確立されるかなり前に発生するAβトランスジェニックマウスにおけるAD脳からのNFT単離物により誘導される神経突起タウ凝集物(変性神経突起中の対になったらせん状フィラメント)の増加および広がりを示している20。p-T217およびp-T181における非常に初期の増加は、Aβ-プラークに応答したこの「初期」のタウ凝集を反映し得、PiB PETと、発明者らが同定したこれらのアイソフォームの全般的な関連を説明し得る可能性がある。さらに、これにより、有意な神経変性の何年も前に発生することから、p-タウにおけるこの初期上昇中に見られる臨床症状の欠如がより良く説明され得る。この研究は、p-T217を、アミロイドを標的とする治療法において治療応答の指標として有望な用途を有する非常に初期のバイオマーカーとしても提案する。これは、有効な治療法を同定するために疾患進行の代理マーカーが必須な予防研究において特に重要であり得る。
【0440】
可溶性タウおよびp-タウの診断の役割に関するいくつかの一般的な仮定は、ここで疑問視されている。具体的には、ADにおける現在の診断の枠組みは、ADに特異的および非特異的な病変を表すバイオマーカー(例えばAβ、p-タウおよびタウ)の存在を強調する14。この診断の枠組み内では、可溶性p-タウおよび非リン酸化タウは、変性するニューロンから受動的に放出されると推測されることが多く、p-タウは、凝集NFTに関連し、非リン酸化タウは、軸索変性に関連する。あるいは、発明者らのDIADにおける結果から、ADタウオパチーは、可溶性タウリン酸化状態(リン酸化比)の変動と定義され得ることが示唆される。さらに、特異的リン酸化部位における状態変化のタイミング(推定される症状発症の21~13年前)を考慮すると、これにより、リン酸化の増加は、病変のマーカーであるが、必ずしもタウ関連毒性または細胞体NFTのマーカーではないことも示唆される。実際に、発明者らの結果から、NFT病変が急速に増加しているとき、pT217およびpT181では、リン酸化は、増加し続けるのではなく37、その劇的な減少が認められることが示される。これについての考えられる説明の1つは、可溶性/凝集Aβで観察されたものと同様であり41、凝集タウの劇的な増加によって、リン酸化タウが脳に隔離され42、CSFレベルが低下する。しかし、タンパク質恒常性機構を通したタウの減少は排除することができない。いずれのケースでも、T217またはT181のリン酸化比と長期的な認知低下との間における負の相関の発明者らの知見は、疾患進行におけるこの事象の重要性を強調する。この低下の原因を解明することは、可溶性タウと神経細胞機能不全との間の結び付き、ならびにAD予後判定におけるCSF p-タウ/タウの使用のより良い理解につながり得る。
【0441】
タウのリン酸化におけるキナーゼの役割を踏まえると、この酵素群は現在AD治療の潜在的な標的とみなされている43。発明者らは、p-タウのすべての形態が疾患進行のマーカーに関連しているわけではなく、実際に一部はそれに反して作用し(work against it)得ることをここで実証したので、p-タウ変化を生じるあるキナーゼ/ホスファターゼ活性は、少なくとも疾患プロセスの初期に有害ではないことがある。
【0442】
要約すれば、発明者らは、常染色体優性突然変異に関連するADにおいて、CSFタウ高リン酸化は、非常に初期に起こり、疾患の異なるステージで部位特異的変化のパターンを示すことをここで実証している。これらの知見の背後の根本的な機構は、疾患の理解およびADのためのタウ指向性治療法に重要な意味合いを有するであろう。
【0443】
実施例5~9の材料および方法
参加者 - PSEN1、PSEN2またはAPPに遺伝的突然変異が確認された家族からのDIAD突然変異を継承する危険性が少なくとも50%の参加者が、Dominantly Inherited Alzheimer Network研究(DIAN, NIA U19 AG032438)(dian.wustl.edu;clinicaltrials.gov number NCT00869817)に登録された44。すべての手順は、Washington Universityの治験審査委員会(IRB)により承認され、研究が行われている地域のIRBおよび倫理委員会に従った。DIAD突然変異の有無は、適切なエクソンのPCRに基づく増幅、続いてSanger配列決定法を使用して判定した。各研究訪問で、参加者は包括的な臨床評価、認知テスト、神経画像化およびCSF研究を受けた。しかし、各訪問で、各参加者はすべての研究手順を完了しないことがあった。研究構造および評価の詳細は、既刊行物10、44で見出され得る。フォローアップの間隔は、各参加者の臨床状態(正常または損なわれた)により、および症状発症までの推定年数(EYO)により判定され、1年に1回~3年に1回の範囲であった。データは、品質管理されたデータ(2009年1月26日~2017年6月30日の不規則な結果および欠落データの年毎の品質評価)から得、参加者370名(長期的なCSF評価n=150、訪問間の時間中央値2.8年)を含んでいた。
【0444】
症状発症までの推定年数(EYO) - 優性遺伝ADでは、ほぼ100%の浸透率であり、突然変異保持者における症状発症時の年齢は、各突然変異で、また各家族内で比較的一貫している。これにより、症状発症までの推定年数(EYO)を指定することが可能となる。EYOは、以下のように定義した。最も早い症状発症時の親の年齢を、半構造化された問診により各参加者で確定した。次いで、各突然変異に対する発症時の親の年齢を、DIANおよびDIADコホートによる既刊行物からの組み合わせた症状発症の値からなるデータベースに入れた。これらを使用して、各突然変異に特異的な発症平均年齢を計算した29。突然変異に特異的な発症年齢を、臨床評価の時間における各参加者の年齢から引いて、個人のEYOを定義した。特異的な突然変異の発症平均年齢が不明な場合は、親または代理の発症年齢を使用してEYOを定義した29。CDR>0により評価されるベースラインで有症状であった参加者では、報告されている実際の症状発症年齢を、各臨床評価の年齢から引いて、EYOを定義した。
【0445】
臨床評価 - 研究パートナーの使用を含む標準化された臨床評価を各参加者に行った。臨床的認知症尺度(CDR)を使用して、認知症のステージを示した。参加者は、認知に関して正常な(CDR=0)、または非常に軽度の認知症(CDR=0・5)、軽度の認知症(CDR=1)もしくは中等度の認知症(CDR=2)を有すると査定した45。評価する臨床医は、遺伝的状態を盲検化された。一般的な認知機能、記憶、注意力、実行機能、視空間機能および言語を評価する包括的な神経心理学的バッテリーを各訪問で行った46。これらのテストから、発明者らは、EYOおよびCDRの範囲にわたる悪化を、確実に検出する認知複合を開発した47。複合は、エピソード記憶、複雑性注意および処理速度、ならびに一般的認知のスクリーニングを含むテスト(ミニメンタルステート検査)からのzスコアの平均を表す。
【0446】
CSFタウ分析 - CSFは、非外傷性Sprotte脊髄針(22Ga)を使用する標準的な腰椎穿刺手順(L4/L5)により、2本の13mlポリプロピレン管中に収集した。CSFを、ドライアイス上で直立させて瞬間凍結した。米国で収集した試料は、ドライアイス上で、Washington University、St.Louis、MO、USAのDIANのバイオマーカー中核研究室(biomarker core laboratory)へと終夜輸送した一方、各国の拠点(international site)で収集した試料は、-80℃にて保存し、年4回ドライアイス上で輸送した。到着すると、各試料を続いて解凍し、単一のポリプロピレン管中に組み合わせ、ポリプロピレン微量遠心分離管(#05-538-69C、Corning Life Science、Corning、NY、USA)中にアリコートし(各500μl)、その後これらをドライアイス上で再度瞬間凍結し、-80℃にて保存した。
【0447】
解凍した各CSF試料を、15N-441タウ内部標準(試料ごとに2.5ng)、50mMグアニジン、10% NP-40および10×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含有する25μlの溶液と混合した。タウは、タウ1(タウエピトープ192~199)およびHJ8.5(タウエピトープ27~35)抗体に架橋させた20μlのセファロースビーズと共に、室温にて2時間、回転下でのインキュベーションを使用するイムノキャプチャーにより抽出した。ビーズを遠心分離によりスピンさせ、次いで1mlの25mM TEABCで3回すすいだ。試料を400ngのtrypsin Gold(Promega、Madison、WI)で、37℃にて終夜消化した。AQUAペプチド(Life Technologies、Carlsbad、CA)をスパイクして、各試料中の標識リン酸化ペプチド当たり5fmolおよび標識未修飾ペプチド当たり50fmolの量を得た。ペプチド混合物をTopTip C18チップにロードし、0.1%ギ酸(FA)溶液で洗浄し、60%ACN 0.1%FA溶液で溶出した。Speedvacを使用して溶出液を乾燥させ、乾燥試料を-80℃にて保存した後分析した。試料を25μlの2%ACN 0.1%FA中で再懸濁した。抽出物は、HCDフラグメント化を使用する並列反応モニタリングを使用するnanoLC-MS/HRMSにより分析した。Fusion Tribrid質量分析計(Thermo Scientific、San Jose、California)に連結したnanoAcquity UPLCシステム(Waters、Mildford、Massachusetts)を使用してNanoLC-MS/MS実験を行った。5μlを各試料に注入した。ペプチド分離は、Waters HSS T3カラム(75μm×100mm、1.8μm)上で60℃にて24分で達成した。移動相は、(A)水中0.1%ギ酸および(B)アセトニトリル中0.1%ギ酸であった。使用したグラジエントは、0分~0.5%B;7.5分~5%B;22分~18%Bであり、次いでカラムを95%Bで2分すすいだ。流速を7.5分間、700nl/分、次いで残りの分析を400nl/分に設定した。データを、2200Vのスプレー電圧(Nanospray Flex Ion Source、Thermo Scientific)、および270℃に設定したイオントランスファーチューブ(ion transfer tube)で、陽イオンモードで取得した。S-レンズRF電圧は60Vに設定した。MS/HRMSトランジション(MS/HRMS transition)は、Skylineソフトウェア(MacCoss lab、University of Washington)を使用して抽出した。CSFタウリン酸化レベルは、内在非リン酸化ペプチドとタンパク質内部標準からの15N標識ペプチドのMS/HRMSトランジション間で測定した比を使用して計算した。T181、S202、T205およびT217でのリン酸化の比は、リン酸化ペプチドと対応する非リン酸化ペプチドからのMS/HRMSトランジションの比を使用して測定した。内在する各リン酸化/非リン酸化ペプチドの比は、対応するAQUAリン酸化/非リン酸化ペプチド内部標準のMS/HRMSトランジション上で測定した比を使用して標準化した。
【0448】
脳の画像化 - アミロイド沈着、グルコース代謝、タウ(NFT)PETおよび皮質の厚さ/皮質下の容量はそれぞれ、11C-PiB-PET、18F-FDG-PET、18F-AV-1451(別名フロルタウシピル)、および容量測定T1-強調MRIスキャンを使用して評価した。標準手順を使用して、すべてのDIAN部位のデータ収集における整合性を確実にした28。11C-PiB-PETスキャンは、約13mCiのPiBをボーラス注射した後の70分のダイナミックスキャンからなっており、40~70分時間枠の領域標準取込値比(SUVR)を判定した。18F-FDG-PETスキャンは、約5mCiのボーラス注射の30分後にスタートし、30分続けた。18F-AV-1451データは、ボーラス注射後の80~100分のウィンドウから取得し、SUVRに変換した。T1 MR配列は、3Tスキャナー(パラメーター:TR=23000、TE=2.95および1.0×1.0×1.2mm3の分解能)で取得した、加速された、磁化準備型グラジエントエコーによる迅速取得(accelerated magnetization-prepared rapid acquisition with gradient echo)(MPRAGE)であった。
【0449】
FreeSurferソフトウェア(surfer.nmr.mgh.harvard.edu/)を使用して、目的の34箇所の皮質および6箇所の皮質下領域(ROI)からPIBおよびFDG SUVRを得た。SUVRは、参照領域として小脳の灰白質(grey cerebellum)で処理し、ROI データは、幾何伝達マトリックスフレームワーク(geometric transfer matrix framework)で領域の点広がり関数(RSF)48を使用して部分的容量効果に関して補正した。
【0450】
統計分析 - 参加者のベースラインの特徴は、連続変数については平均±SDとして、およびカテゴリー変数についてはn(列パーセント)と要約した。ベースラインで定義されている無症状MC、有症状MCおよびNCの間の差を比較するためのP-値は、連続変数についての一般的な線形混合効果モデル(LME)およびカテゴリー変数についてのロジスティックリンクを備えた一般化線形混合効果モデルを使用して得られる。すべてのモデルは、同一の家族内の参加者の間における転帰の測定値の相関を明らかにするために、ランダムな家族効果を組み込んだ。ベースラインの皮質PiB PET SUVRのカットポイントは、MCとNCとの間の、皮質PiB PETの長期的な変化率における差が最初に0とは有意に異なり始めるように選択される。
【0451】
すべての無症状MC(CDR=0、n=152)において、各ROIに対して二変量LMEを使用して、様々なタウリン酸化部位と、PiB、FDGおよび皮質の厚さ/皮質下の容量との横断関係を評価した。モデルは、家族レベルでのEYO、教育、性別およびランダムインターセプトの固定効果を含んでいた。単純相関の推定方法(PearsonまたはSpearman相関)と比較して、二変量LMEは、共変量、例えばEYOに調整することができ、また、家族クラスター内の相関を説明する(accounting for)ことができる49、50。相関をテストするためのP-値は、Benjamini Hochberg法を使用して補正して51、多重検定による偽発見率を制御した。
【0452】
長期的なフォローアップにわたる個人内の年次変化率に関して、LMEを使用して各バイオマーカーに対する最良線形不偏予測量を推定し、次いでこれを、ベースラインEYOに対してプロットして、バイオマーカーの軌跡を検査した。適切な場合は、線形または線形スプライン混合効果モデルを次いで使用して、MCがNCと、ベースラインレベルおよび各バイオマーカーに対する変化率に関して有意に異なるようになるベースラインEYOポイントを判定した。線形スプライン混合効果モデルの詳細は、最近の刊行物で見出すことができる9。線形または線形スプライン混合効果モデルは、突然変異群(MCまたはNC)、ベースラインEYO、ベースラインからの時間およびそれらのうち考えられるすべての二元配置または三元配置交互作用(two-way or three-way interaction)の固定効果を含んでいた。性別、教育年数およびAPOE ε4の状態を共変量と考えたが、有意な効果のみをモデルに保った。モデルに含まれるランダム効果は、繰り返し測定による対象内相関を明らかにするための、家族クラスターのランダムインターセプト、個人のランダムインターセプト、および構造化されていない共分散マトリックスでのランダム勾配であった。ベースラインにおける平均レベルでの調整された差、およびMCとNCとの間の変化率における差は、次いで、モデルに由来する近似t-検定を使用してテストして、差が有意になる第1のEYOポイントを判定した。
【0453】
EYOの範囲にわたる総タウ、タウリン酸化部位、皮質PiBおよび全般的な認知のうち、変化率における差を視覚化するために、最初に、NCの平均および標準偏差を使用してMCの測定値を標準化した。次いで、LMEを使用して各MCに対する各測定値の変化率を計算し、LOESS曲線を当てはめて(LOESS curves were fitted)、EYOに対する標準化された変化率の軌跡を視覚的に表した。
【0454】
長期的な認知低下の予測におけるベースラインの総タウおよびp-タウの有用性は、LMEを使用して評価した。モデルにおける固定効果は、突然変異群、ベースライン年齢、性別、APOE ε4状態、時間およびそれらのうち考えられるすべての二元配置または三元配置交互作用を含んでいた。モデルにおけるランダム効果は、家族クラスターのランダムインターセプト、個人のランダムインターセプト、および構造化されていない共分散マトリックスでのランダム勾配を含んでいた。
【0455】
線形回帰を使用して、タウPETが行われた時点までにつながる、およびその時点を含むMCおよびNCでのタウおよびリン酸化-タウ位置の年次変化率が、年齢の効果について制御して、タウPET SUVRを予測することができるかどうかを検査した。参加者の数が限定されていたため、家族クラスターは含まれなかった。
【0456】
すべての分析は、SAS 9.4(SAS Institute Inc.、Cary、NC)を使用して実施した。p-値<0.05は、統計的に有意と考えられた。
[実施例10]
【0457】
アルツハイマー病(AD)は、世界的に認知症の主因である。その診断および処置は、特定かつ初期のバイオマーカーが存在しないと、依然としてきわめて難易度が高い。最近の脳脊髄液(CSF)バイオマーカーおよび脳陽電子放射断層撮影(PET)画像化の開発により、アミロイド-Aβプラークおよび神経原線維高リン酸化タウのタングルの特徴的なAD脳病変を検出する価値あるツールが得られた。現在、AD患者のCSFプロファイルは、アミロイド-ベータ42(Aβ42)の減少、ならびに、標準的なイムノアッセイで測定される総タウおよびリン酸化タウ(p-タウ181)の増加により特徴付けられる。このプロファイルにより、AD対非ADの病変の弁別、および認知症状または病訴の何年も前にADプロセスの検出が可能となる。しかし、CSFタウおよびp-タウの変化は、ADに特異的ではない。p-タウ181の増加は、タングルが形成されることによる高リン酸化の結果と解釈されているが、CSF p-タウは、総タウに付随して増加する。脳研究は、多数の部位におけるタウリン酸化を示すが、CSFにおけるこれらのさらなるリン酸化部位の診断における妥当性(diagnostic relevance)は、完全に検討されていない。質量分析(MS)に基づく方法は、リン酸化ペプチドのおよびそれらの対応する未修飾対応物の独立した定量が可能になるため、特定部位のリン酸化レベルにおける変化を、総タウレベルから独立して評価するのにイムノアッセイよりも適当である。したがって、ホスホペプチド勾配と非リン酸化ペプチド勾配との間の相関を比較して、リン酸化率を評価することができる。CSF中のリン酸化タウアイソフォームを定量するために、発明者らは、タンパク質配列のmidドメイン中のタウリン酸化ペプチドを標的とする、革新的なターゲット高分解能MS(HRMS)方法を使用し、midドメインは、CSF中で最も存在量が多いドメインであり、脳タウおよびADタウ凝集物中において多数の部位でリン酸化される。
【0458】
発明者らは、認知に関して正常な個人、ならびに、CSF Aβ42/40比およびPET-PIB画像化に基づいてアミロイド状態により層別化された軽度認知障害を有する患者を含むコホートを使用して、CSF中のT181、S199、S202、T205およびT217におけるタウリン酸化を分析した。この検証により、発明者らは、AD診断のためにCSF pT217の可能性を強調すること、およびpT217と、疾患の早期ステージにおいてタウ修飾の根底にあるアミロイドーシスとの間に相関を確立することが可能となった。
【0459】
参加者 - Patterson et al. 2015により以前に報告されており、CSFおよびアミロイド PiB-PETデータを利用できるWashington University、Saint Louis ADRC研究から、認知に関して正常な(CDR=0)、または軽度認知障害を有する参加者86名を募集した。このコホートは、PiB-PET(カットオフとして使用した0.18超で陽性とみなした)およびMSにより測定されるCSF Aβ42/Aβ40比(カットオフとして使用した0.12未満で病変とみなした)の結果によれば、アミロイド陽性29名およびアミロイド陰性47名の参加者、ならびにPET-PIBとCSFプロファイルとの間の結果と不一致の10例(5例のPiB-PET(+)/CSF(-)および5例のPiB-PET(-)/CSF(+)アミロイドーシスプロファイル)を含んでいた。7種のCSF試料を二連で、1種を三連で抽出して、ばらつきを評価した。
【0460】
免疫沈降を使用したCSFタウ精製 - Aβ免疫沈降および-80Cでの保存後に得た800μlのCSF上澄みをタウ分析に使用した。解凍した上澄みに15Nタウ内部標準(試料当たり5ng)をスパイクし、タウ1免疫沈降を使用して抽出した。5mMグアニジン、1% NP-40およびプロテアーゼ阻害剤カクテルを試料に添加し、次いで試料を、タウ1抗体に架橋させた20μlのセファロースビーズと共に、室温にて3時間混合した。ビーズを沈殿させ、次いで0.5MグアニジンおよびTEABC 25mMですすいだ。試料を400ngのトリプシンで消化した。AQUAペプチド(Life Technologies、Carlsbad、California)をスパイクして、試料当たりの標識ホスホペプチド当たり10fmolおよび標識ペプチド当たり100fmolの個別量を達成した。AQUA TPSLPpTPPTR(pT217)は、発見コホートに使用した切断欠如バージョンを置き換えた。トリプシンペプチドは、TopTip C18チップにロードし、0.1%FA溶液で洗浄し、60%ACN 0.1%FA溶液で溶出した。溶出液をspeedvacで乾燥させた。試料を-80Cにて保存した。LC-MS分析の前に、試料を25μl 2%ACN 0.1%FA中に再懸濁した。抽出物をnanoLC-MS/HRMSにより分析した。
【0461】
タウペプチドおよびリン酸化ペプチド定量(検証)- 15N標識ペプチドを使用する安定な同位体希釈MS定量を使用して、未修飾ペプチドの絶対レベルを計算した。各部位に対するリン酸化率は、AQUA非リン酸化およびリン酸化ペプチド対応物で得られた面積比と、対応する内因性ペプチドで測定した面積比を比較する単一点較正により計算した。リン酸化ペプチドレベルは、未修飾ペプチドレベルの対応物および対応する部位のリン酸化率を組み合わせることにより計算した。
【0462】
統計値 - 回帰直線の勾配の比較を含む統計的分析は、GraphPad Prismソフトウェア(7.0)を使用して行った。調査した群にわたって得られた値の間の統計学的有意性は、ノンパラメトリックMann-Whitney検定を使用して計算した。ノンパラメトリックSpearman順位相関係数rho(Non-parametric Spearman’s rho rank correlation coefficient)を使用して、2つの一連の値間の相関を評価した。統計学的有意性を、p<0.05により定義した。
【0463】
CSFタウリン酸化ペプチドの定量(結果) - ADにおけるT217でのタウのリン酸化の増加は、Washington University、Saint LouisのKnight AD Research Center(ADRC)からの、認知の病訴がないか、または軽度認知障害を有する参加者86名を含むコホートで検出された。PiB-PETおよびMSにより測定されるCSF Aβ42/Aβ40比の結果と一致して、参加者をアミロイド陽性29名、アミロイド陰性47名の参加者、ならびにPET-PIBとCSFプロファイルの間の結果と不一致の10例に層別化した。アッセイ感度を改善するために、タウ1抗体での免疫精製を行った。リン酸化および非リン酸化ペプチドの両方の同位体標識バージョンを使用して、部位のリン酸化比を測定した。タウ1抗体により回収されないペプチドを含有するpS199を除いて、すべての試料で、標的化されたすべてのリン酸化ペプチドを検出した。このコホートでは、発明者らは、疾患の早期ステージでのpT217バイオマーカーの陽性診断における妥当性を確認した。pT217/T217比により、アミロイド陽性および陰性群が明確に分離された(図24Bおよび図24C、AUC 0.999)。さらに、pT181/T181比の測定により、アミロイド陽性およびアミロイド陰性群(図24B、AUC0.956)が弁別された。T217およびT181リン酸化比も相関しており(r=0.524、p=0.0002)、これにより、これらの部位のリン酸化は、共通の経路に起因し得ることが示唆された。しかし、pT181の診断感度は、pT217のものよりも低かった。両方のリン酸化比は、ELISAにより測定されるp-タウ(181)およびt-タウレベルよりも優れた弁別因子(discriminator)であった(それぞれAUC0.874および0.932)。
【0464】
T217高リン酸化、アミロイド病変および認知の状態の間の相関(結果) - 発明者らは次に、この新たなバイオマーカーとアミロイドプロセスとの間の相関を判定した。ADRCコホートからの結果から、T217高リン酸化とアミロイド状態との間に強い関係が示唆された。重要なことには、T217リン酸化率は、FBP Total Cortical Meanにより測定されるPiB-PETの程度と有意に関連していた(図24E、r=0.60、p=0.001)。さらに、PiB-PET(+)/CSF(-)アミロイドーシスプロファイルを有する5例の不一致ケースはすべて、T217で高リン酸化されていた(図24D、E)。対照的に、T217リン酸化とCSF Aβ42/Aβ40比との間に有意な相関は見出されなかった。PiB-PETとCSF Aβ42/Aβ40との間の食い違いは、対応するCSF Aβ42/Aβ40MS比が、定量の閾値に近かった(0.12±0.02、図24E)ので、CSFアミロイドアッセイの不十分な感度に起因し得る。逆のPiB-PET(-)/CSF(+)アミロイドーシスを有する参加者5名のうち、2名は、高リン酸化T217を示した(図24D、E)。これにより、高いタウ高リン酸化により強調されるこれらのケースは、アミロイドプラーク沈着の検出前に、有意なCSF Aβ変化を有し得ることが示唆される。CSF Aβ42/Aβ40比とT217リン酸化率の組合せにより、PiB-PETデータがなく、CSF Aβ42/Aβ40比の値が閾値をわずかに超える(0.12±20%)中間の範囲であっても、アミロイド陽性参加者が確実に同定される。認知の病訴がない参加者(CDR-SB=0)のうち、T217リン酸化により、アミロイド陽性参加者(n=9)とアミロイド陰性参加者(n=26、AUC1.00、図25)を完全に識別することができ、このマーカーが前臨床AD参加者を確実に同定する能力がさらに裏付けられた。しかし、この集団において、CDR-SBで測定される全般的な認知性能とT217リン酸化比との間に相関は観察されなかった(図25)。
【0465】
考察 - 存在量が少ないリン酸化タウペプチド、およびCSF中の未修飾の対応物を同時に測定する革新的なターゲットHRMS法を使用して、発明者らは、アミロイド変化と同時に起こり、CSFタウ濃度の上昇と異なるCSFタウリン酸化率における変化の直接的な証拠を初めて提供する。このアプローチにより、根底にある異常な代謝を示す高リン酸化および低リン酸化を評価する、AD特異的タウリン酸化率の研究が可能となる。
【0466】
現在の研究の最も顕著な結果は、2つの独立し、十分に特徴付けられたコホートで調査した、前臨床、軽度および中等度AD参加者からのCSFタウにおけるT217の高度に特異的な高リン酸化である。ADタウオパチーの前に発生する可能性があるアミロイド病変と、T217におけるタウ高リン酸化は、疾患ステージ全体を通して強く関連していた。これにより、アミロイドーシスは、タウリン酸化の変化に関連し得るという仮説が裏付けられる。この研究においてAβ-アミロイドーシスおよび正常なT217リン酸化を有する参加者がいないことから、このタウリン酸化部位は、アミロイドプロセスに後続し得ることが示唆される。T217の高リン酸化は、AD病態生理学プロセスにおける中心的存在であり得、その役割は、他のタウバイオマーカーと異なる。発明者らのコホートでは、ELISAにより評価されたCSFタウまたはp-タウレベルの上昇は、pT217/T217比よりもアミロイドーシス状態の同定に有効ではなかった。これらのADタウバイオマーカーの特異性は、最終的に臨床的ADへと進行する個人における認知低下の危険性の予測を改善し得る。したがって、アミロイドーシスバイオマーカーとpT217/T217比の測定を組み合わせて、ADを検出することにより、前臨床ADの診断が劇的に改善されるはずである。T217高リン酸化は、PiB-PET負荷で測定されるアミロイドプラークに、CSF中のアミロイドマーカーよりも高度に相関するが、タウ修飾は、原線維プラークの存在によってのみ引き起こされるわけではない可能性がある。T217高リン酸化、および少ないCSF Aβ 42/40を有し、脳アミロイド負荷がない参加者2名(図24E)に関しては、PiB-PETによっては検出されないが、CSF Aβ42レベルの低下に寄与するびまん性プラークまたはAβオリゴマー形成のみのケースであり得る。
【0467】
診療所においてpT181がADマーカーとして広範に使用されるのは、必ずしも高い特異性ではなく高いレベルの検出性による可能性がある。pT181の測定は、非AD認知症と比較してADにおけるリン酸化の化学量論のわずかな変化を強調する。T181のリン酸化率の上昇は、検証コホートで調査された十分に特徴付けられたアミロイド陽性群でより一層明らかとなった。両方の研究で、ELISAのt-タウおよびp-タウ181を組み合わせた比では、T181で起こるリン酸化比の変化を実証することができず、ELISAでこれらの変化を正確にモニターすることの限界が強調された。したがって、pT181の増加は、AD CSFにおいて広く報告されており、これは、T181リン酸化の化学量論の有意な変化ではなく同時に起こるタウアイソフォームレベルの上昇に主に由来する。アミロイド-Aβ病変は、T181における高リン酸化を誘導するが、生じた変動は、T217で観察される相対的な増加と比較して、さほど特異的ではないか、または有意ではないと思われる。
【0468】
AD CSFにおけるS199、S202およびT205で観察されるリン酸化の化学量論の変動は、AD脳で以前に観察されたタウリン酸化における特異的変化を反映する可能性がある。実際に、pS202およびpT205は、AT8抗体により認識される二重リン酸化エピトープの一部である。AT8は、AD脳の解剖で見出されるタウ凝集物に結合し、AT8-免疫反応性凝集物の程度は、タウオパチーの重症度(Braakステージ)と相関する。AT8は、正常なタウまたはCSFで測定されたADに関連するタウに対して反応性を有さない。さらに、S199を含有する非リン酸化エピトープで正常なタウに結合するタウ1抗体は、ADタウ凝集物に対して親和性を有さない。まとめると、これらの知見は、AD脳からのタウ凝集物において、同時に起こり、および存在量が多いS199、S202およびT205の高リン酸化を裏付ける。しかし、ADにおけるタウ凝集を促す、そのようなリン酸化タウアイソフォームの固有の性質については議論が存在する。軽度および中等度AD CSFで観察されるS199およびS202のリン酸化の量の減少は、凝集物における対応するリン酸化タウアイソフォームの蓄積と一致する。さらに、主に中等度AD CSF中のT205リン酸化の検出から、アミロイド関連タウオパチーの根底にある病理学的機構におけるこの部位の重要な役割が示唆される。S202/T205リン酸化の変動は、前臨床および軽度のAD参加者で構成される第2のコホートで検出されず(データは示さず)、疾患の間の特定部位におけるタウリン酸化の動的プロセスが示唆された。
【0469】
本知見は、ADアミロイドーシスと、T217、および低度のT181におけるタウの高リン酸化との間の相互作用を示唆し得る。これらの部位はいずれも、プロリン指向性のセリン/トレオニンキナーゼGSK-3の基質であり、AβオリゴマーによるGSK-3の活性化は、アミロイドペプチドとタウリン酸化との間の相互作用として提唱されている。アミロイドーシスを有する患者におけるこれらの2つGSK-3部位での一般的および比較的相関が高い高リン酸化は、そのような機構と一致し得る。タウPETにより測定されるタウ凝集物を含むCSFおよび脳におけるタウリン酸化率を比較するように設計されたさらなる研究により、AD病態生理学に新規な洞察をもたらす可能性があり、新規な治療手段を同定し得る。これらの知見は、ADにおけるアミロイドプラークとタウオパチーとの間の特定の結び付きを指摘し、ADを生じる分子の事象の連鎖における潜在的な結び付きをもたらす。したがって、ADプロセス内のpT217の特異性を踏まえると、これは、将来の治療的開発のための重要な標的、およびこの異常なタウ代謝を限定する抗アミロイド薬物の潜在的な効果を追う興味深いツールを表し得る。
[実施例11]
【0470】
1mLの血漿アリコートを4℃にて終夜解凍した。およそ20mL血漿試料(およそ40mL全血に相当する)は、同一の参加者からの1mL血漿アリコートを、50mL Falcon管中で組み合わせることによりプールした。16,000gで遠心分離した30分後、20mLを新たな管に移し、容量を測定し、試料を1ngの15N-標識組換え2N4Rタウでスパイクした。タウおよびp-タウ濃度は、これらの内部標準を使用して計算した。
【0471】
血漿タンパク質を過塩素酸(3.5%v/v、最終)と共に沈殿させ、試料をボルテックスにより混合し、氷上に30分間置いた。試料を16.000gで4℃にて30分間遠心分離した。可溶性タウを含有する上澄みを、新たな管に移した。
【0472】
上澄みを次いでTFAで1%の最終濃度にスパイクした。試料をOasis HLB VAC RC 30mg抽出カートリッジ(Waters、Milford、MA)にロードし、1mL MeOHおよび1mL 0.1%TFAであらかじめ条件付けした。ロードした後で、試料を1mL 0.1%TFAで脱塩し、次いで700μl 27.5% ACN 0.1%TFAで溶出した。溶出液を、speed-vacにより凍結乾燥させ、2×-PBS中に再懸濁した。
【0473】
タウは、いくつかの変更を加えて、以前に記載されているように免疫沈降させた(Ref.14およびRef.18)。簡潔には、CNBr-活性化セファロースビーズ(GE Healthcare 17-0430-01)を抗体タウ1およびHJ8.5に、ビーズg当たり3mg抗体の濃度で別々に架橋した。セファロースビーズにコンジュゲートした抗タウ1およびHJ8.5抗体を、復元された溶出液と室温にて90分間混合した。ビーズを25mM 重炭酸トリエチルアンモニウム緩衝剤(TEABC、Fluka 17902)中で3回洗浄した。結合したタウを、400ng MSグレードトリプシン(Promega、V5111)でビーズ上において37℃にて16時間消化した。消化物をTopTip C18(Glygen、TT2C18.96)にロードし、脱塩し、製造者の使用説明書に従って溶出した。溶出したペプチドを真空遠心分離(CentriVap Concentrator Labconco)により乾燥させ、2%アセトニトリルおよびMSグレード水中の0.1%ギ酸の25μLの溶液中で再懸濁した。
【0474】
LC-MSも、以前に記載されているように行った(Ref.14およびRef.18)。ペプチド再懸濁液の5μLアリコートを、MS分析のためにnano-Acquity LC中に注入した。nano-Acquity LC(Waters Corporation、Milford、MA、USA)に、HSS T3 75μm×100μm、1.8μmカラムを取り付け、流速0.5μL/分の溶液AおよびBのグラジエントを使用して、ペプチドを分離した。溶液Aを、MSグレード水中0.1%ギ酸で構成し、溶液Bを、アセトニトリル中0.1%ギ酸で構成した。ペプチドは、2%~20%の溶液Bで28分間、次いで20%~40%の溶液Bでさらに13分間、その後85%の溶液Bまでさらに3分間上昇させるグラジエントでカラムから溶出させて、カラムを清掃した。Orbitrap Fusion Lumosは、Nanospray Flexエレクトロスプレーイオン源(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA、USA)を備えていた。10μm SilicaTipエミッター(New Objective、Woburn、Ma、USA)からイオン源中へとスプレーされたペプチドイオンは、四重極子を標的化し、四重極子において単離された。次いでこれらをHCDによりフラグメント化し、Orbitrapでイオンフラグメントを検出した(分解能60,000、質量範囲150~1,200m/z)。ペプチドプロファイリングのための親水性ペプチド(SSRcalc<9、すべてロイシンなし)のモニタリングを、HSS T3 300μm×100μm、1.8mmカラム、4μl/分の流速で行い、2%~12%の溶液Bのグラジエントで溶出を発生させ、スプレーを30mm SilicaTipエミッター上で作動させた。
[実施例12]
【0475】
この実施例は、濃縮プロトコールおよび質量分析を使用して、血漿中の非常に低い濃度のタウアイソフォームを測定する実行可能性を実証する。データは、異なるリン酸化状態を有するが、CNSで生成されたタウと比較して類似した短縮化プロファイルを有する末梢で生成されたタウを示す。末梢p-タウとCNS p-タウとの間の差にもかかわらず、記載されている方法を実証するこの実施例を使用して、アミロイドーシスを示すCSFにおける高度に特異的な変動を映し出す血漿p-タウ、とりわけp-タウ217およびp-タウ181における変化を測定することができる。
【0476】
参加者、試料収集、試料選択:タウの安定同位体標識動力学(SILK)研究に登録された参加者58名で、初期参加者プールを形成した18。タウSILK研究中、参加者は、標識13Cロイシン注入を16時間、続いて5回の腰椎穿刺(LP)を4ヶ月にわたり受けた18。およそ10mLの血漿を、12の時点でそれぞれ19.5時間かけて注入手順中に、およびロイシン濃縮をモニターするために各LPで収集した30。
【0477】
参加者58名からのCSFを、報告されているようにCSF42/40およびタウアイソフォームについてMSにより分析した14、31。これらの参加者のうち11名は、アミロイドAV45 PET(カットオフ1.3)を使用してアミロイド陽性と同定され、この血漿研究に含まれた。アミロイドPETデータがないさらなるアミロイド陽性参加者4名は、CSF42/40比(カットオフ0.086)により同定され、含まれた。すべてのアミロイド陽性参加者は、CSF pT217/T217比(カットオフ4.6%)が異常であった。アミロイド陽性参加者15名は、様々な臨床的認知症評価(CDR)、0(参加者5名)、0.5(参加者7名)および1(参加者2名)を有していた。すべての前臨床AD参加者(アミロイド陽性、CDR=0)は、陰性タウPET AV-1451スキャン(表5)を受けた。正常なCSF42/40を有するがpT217/T217が異常な参加者2名が含まれた。残りの参加者41名は、利用できる場合はAV45により、またはCSF42/40によりアミロイド陰性であり、pT217/217について陰性であった。そのうち17名は、対照として選択された(若年対照9名および高齢対照8名)。最終的に、参加者3名が軽度の認知障害[MCI、大脳皮質基底核症候群(CBS)を有する参加者1名、および判定されていない認知症を有する2名を含む」と確認され、参加者38名の血漿コホートを完了した。
【0478】
血漿およびCSFタウIP-LC-MS分析:血漿試料を、実施例11に記載されているように処理した。CSF試料を、Ref14およびRef18に記載されているように処理した。LC-MSプロトコールは、Ref14およびRef18に記載されているものと同一であった。
【0479】
統計値:一元配置ANOVAおよびポストホック分析(Kruskal- Wallis検定)を、ADおよび対照のサブグループ全体のp-タウ比の比較に使用した。Pearson相関を使用して、血漿とCSFタウとの間の相関を分析した。データは、特に指定がない限り平均±SDとして表す。
【0480】
血漿タウは、CSF中のように短縮化する:調査したすべての試料のうち、0N、1N、2Nおよび3Rの特異的ペプチドを含む残基6~254の15種のタウペプチドを検出した。0N/1N/2Nペプチドの推測される存在量から、脳およびCSFで以前に報告されているものと同様の寄与が示された(それぞれおよそ5/5/1)。とりわけ、残基254後のペプチド(2N4R-タウにおける306~317残基に等価の、低存在量の残基で見出される3Rペプチドを除く)は検出されず、これにより、血漿抽出物にアイソフォームを含有する検出可能な全長のタウまたは微小管結合領域がないことが示唆された。血漿タウペプチドの存在量は、CSF中で、以前に報告されているように、残基221(図26)後に有意に低下し18、20、21、これにより、神経細胞と同様に18、末梢細胞は、短縮化されたタウを放出し得ることが示唆された。しかし、血漿プロテアーゼによるタウのさらなる分解は、タウC末端で優先的に排除され得ない。
【0481】
血漿抽出物中のタウリン酸化ペプチドの検出:タウmidドメインからのT181、S202およびT217におけるリン酸化ペプチドは、すべての血漿抽出物で定量し、これにより、これらの低存在量のペプチドのMS測定の実行可能性が実証された。コホートにおける最低存在量の試料での、pT181、pS202およびpT217リン酸化ペプチドで得られたLC-MSシグナルはそれぞれ、定量下限(LLOQ)のおよそ7、3および2倍超であった。とりわけ、pT217レベルは、0.13pg/mL(28amol/mL)の平均濃度で対照において定量した(表5)。発明者らの知る限り、ヒト血漿中のタンパク質マーカーについて質量分析により測定された中でも、これは最低濃度である。T205におけるリン酸化ペプチドは、LLOQ未満の試料38例のうち19例で一貫性なく検出され、さらなる分析に含まれなかった。T231、T175、S214、S199、T153またはS208においてCSF14で報告されている他の存在量が少ないリン酸化部位は、抽出物中で検出されなかった。
【0482】
CSFと血漿タウアイソフォームとの間の関連:イムノアッセイにより以前に報告されているように、CSFと血漿t-タウレベルとの間で相関は見出されなかった9、10。しかし、高い相関は、CSFと血漿pタウ217測定値との間で見出された(図27A、表6、pT217レベルおよびpT217/T217比、それぞれSpearman rho 0.79および0.79、すべてのコホートで)。また、pタウ181測定値についてCSFと血漿との間で、より低度で有意な相関が見出された(表6、pT181レベルおよびpT181/T181比、それぞれSpearman rho 0.69および0.59、すべてのコホートで)。CSFとpS202の血漿測定値との間で相関は見出されなかった。すべての有意なCSF/血漿の相関は、アミロイド陰性/p-タウ陰性群(示されていない)に相関は見出されなかったので、主にアミロイド陽性/リン酸化-タウ陽性参加者の値により推進される。一貫して、血漿pタウ-217およびpタウ-181の測定値から、認知の状態に関係ないアミロイド陽性参加者と陰性参加者との間の、CSFで得られた隔たりが再現された(図26、表6、それぞれのCSFおよび血漿中AUC:pT217/T217で1.00および0.98;pT181/T181で0.95および0.98)。これにより、血漿pタウ-217およびpタウ-181は、CNS可溶性タウの変化の代理として作用し得るので、有用なバイオマーカーとしての役割を果たすことが示唆される。
【0483】
AD CSFおよび血漿中のp-タウ181よりも劇的なP-タウ217の変化:対照と異なるアミロイド臨床群のと間の変化の規模を計算した(表6)。CSF中で、アミロイド陽性と対照との間の振幅における最大差は、pT217レベル(+800%)群で、続いてpT181レベル(+250%)群で見出された。しかし、これらの変化は、部分的には、t-タウ(+190%)で測定されるように、CSFタウアイソフォーム増加の同時に起こる寄与の結果であった。pタウ/タウ比を使用してタウ変形形態から標準化された場合、pT217/T217は、pT181/T181(+220%対+25%)よりも大きい変化を実証した。血漿中において、アミロイド陽性群におけるpT217レベルでの高度な上昇は、臨床群のすべてにおいてpT181測定値よりも高いままであった(pT217/T217で+280%~+350%、およびpT181/T181で+60~+80%)。重要なことには、CSFおよび血漿pT217(図27B~C)の測定により、対照からアミロイド陽性、タウPET陰性参加者を同定した。これにより、検出可能なタウ凝集前にリン酸化-タウバイオマーカーが変化すること、および、脳Aβ病変に付随して発生する異常な可溶性タウ代謝を反映することが示唆される。
【0484】
末梢タウリン酸化状態は正常およびAD CNSタウとは異なる:血漿t-タウの主要な起源は、CNSではなく末梢からの可能性がある。これは、CSFと血漿t-タウレベルとの間に相関が存在しないことにより裏付けられる(表2)。血漿t-タウレベルは、急性卒中、脳傷害患者22~25名、脳転移患者26名でのみCNSタウ変化を反映すると思われ、また、多くのCNS t-タウ放出があるAD患者でも可能性がある12、27。したがって、その寄与が末梢タウ寄与よりもはるかに高くなる場合にのみ、CNS中に放出されたタウは、有意な血漿t-タウ増加に寄与し得る。
【0485】
血漿中の、CNSタウを上回る末梢タウのより高い寄与は、CSFと血漿との間のp-タウ/タウ比で観察される差によっても裏付けられる(表2)。pT217/T217およびpT181/T181比のいずれも血漿中で有意に低下し、これにより、はるかに少ないpT217、およびわずかに少ないpT181存在量を有する末梢タウにおける、CNSタウの希釈が裏付けられる(表6、アミロイド陰性対照中のCSFに対してそれぞれ4.5および1.8分の1に低下した)。pS202では、血漿中のpS202/S202比の有意な上昇(1.7倍)により、末梢タウは、この部位でCSF中よりもリン酸化することが裏付けられる。一貫して、正常なCSFと比較して末梢タウにおいてリン酸化された部位が少ないほど、CNSタウ変化は、対応するタウアイソフォームの血漿レベルに大きな影響を及ぼし得る。これは、CSFおよび血漿pT217レベルが、pT181レベルよりも良好に相関し、pS202で見出される相関がない理由を説明し得る。
【0486】
最終的に、末梢のタウは、有意量のpT217を含有しないという仮説を立てることにより、発明者らは、対照において最大血漿タウレベル全体のおよそ20%に、CNSタウが寄与する可能性が高いと推定した。ADにおいてCNSタウ放出は3倍まで増加させることができると仮定すれば28,29、より高いCNS ADタウ寄与が、AD血漿タウレベルを40%超上昇させる可能性は低い。さらに、末梢のタウレベルは、血漿中の変化に対するCNSタウ寄与を潜在的に妨げる、異なる生物学的要因により影響を受け得る。
【0487】
まとめると、これらの知見は、末梢タウの寄与を克服し、血漿中のCNSタウがモニターするための、t-タウまたはpS202に勝るより特異的なCNSタウアイソフォーム、例えばpT217およびpT181の使用を支持する。最終的に、結果から、CSF中のように、血漿中のp-タウ217は、異常なCNSタウ代謝の検出について、p-タウ181より優れている可能性があることが示唆される。
【表5-1】


【表5-2】


【表6】

【0488】
実施例11および12の参考文献
参考文献1: Roberts KF, Elbert DL, Kasten TP, et al. Amyloid-3 efflux from the central nervous system into the plasma. Ann Neurol. 2014;76(6):837-844; doi:10.1002/ana.24270.
【0489】
参考文献2: Ovod V, Ramsey KN, Mawuenyega KG, et al. Amyloid 3 concentrations and stable isotope labeling kinetics of human plasma specific to central nervous system amyloidosis. Alzheimers Dement. 2017; 13(8):841-849; doi:10.1016/j.jalz.2017.06.2266.
【0490】
参考文献3: Nakamura A, Kaneko N, Villemagne VL, et al. High performance plasma amyloid-3 biomarkers for Alzheimer’s disease. Nature. 2018; 554(7691):249-254; doi:10.1038/nature25456.
【0491】
参考文献4: Schindler SE, Bollinger JG, Ovod V, et al. High-precision plasma 3-amyloid 42/40 predicts current and future brain amyloidosis. Neurology. August 2019:10.1212/WNL.0000000000008081. doi:10.1212/WNL.0000000000008081
【0492】
参考文献5: Bacioglu M, Maia LF, Preische O, et al. Neurofilament Light Chain in Blood and CSF as Marker of Disease Progression in Mouse Models and in Neurodegenerative Diseases. Neuron. 2016; 91(1):56-66; doi:10.1016/j.neuron.2016.05.018.
【0493】
参考文献6: Preische O, Schultz SA, Apel A, et al. Serum neurofilament dynamics predicts neurodegeneration and clinical progression in presymptomatic Alzheimer’s disease. Nat Med. 2019;25(2):277-283; doi:10.1038/s41591-018-0304-3.
【0494】
参考文献7: Bateman RJ, Xiong C, Benzinger TLS, et al. Clinical and Biomarker Changes in Dominantly Inherited Alzheimer’s Disease. N Engl J Med. 2012;367(9):795-804; doi:10.1056/NEJMoa1202753.
【0495】
参考文献8: Fagan AM, Xiong C, Jasielec MS, et al. Longitudinal Change in CSF Biomarkers in Autosomal-Dominant Alzheimer’s Disease. Sci Transl Med. 2014;6(226):226ra30-226ra30; doi:10.1126/scitranslmed.3007901.
【0496】
参考文献9: Zetterberg H, Wilson D, Andreasson U, et al. Plasma tau levels in Alzheimer’s disease. Alzheimers Res Ther. 2013;5(2):9; doi:10.1186/alzrt163.
【0497】
参考文献10: Mattsson N, Zetterberg H, Janelidze S, et al. Plasma tau in Alzheimer disease. Neurology. 2016;87(17):1827-1835; dx.doi.org/10.1212/WNL.0000000000003246.
【0498】
参考文献11: Mielke MM, Hagen CE, Wennberg AMV, et al. Association of Plasma Total Tau Level With Cognitive Decline and Risk of Mild Cognitive Impairment or Dementia in the Mayo Clinic Study on Aging. JAMA Neurol. 2017;74(9):1073-1080; doi:10.1001/jamaneurol.2017.1359.
【0499】
参考文献12: Mielke MM, Hagen CE, Xu J, et al. Plasma phospho-tau181 increases with Alzheimer’s disease clinical severity and is associated with tau- and amyloid-positron emission tomography. Alzheimers Dement. 2018; 14(8):989-997; doi:10.1016/j.jalz.2018.02.013.
【0500】
参考文献13: Tatebe H, Kasai T, Ohmichi T, et al. Quantification of plasma phosphorylated tau to use as a biomarker for brain Alzheimer pathology: pilot case-control studies including patients with Alzheimer’s disease and down syndrome. Mol Neurodegener. 2017; 12(1):63; doi:10.1186/s13024-017-0206-8.
【0501】
参考文献14: Barthelemy NR, Mallipeddi N, Moiseyev P, Sato C, Bateman RJ. Tau Phosphorylation Rates Measured by Mass Spectrometry Differ in the Intracellular Brain vs. Extracellular Cerebrospinal Fluid Compartments and Are Differentially Affected by Alzheimer’s Disease. Front Aging Neurosci. 2019; 11; doi:10.3389/fnagi.2019.00121.
【0502】
参考文献15: Barthelemy N, Hirtz C, Schraen S, et al. Mass spectrometry follow-up of t181, s199, s202, t205, and T217 tau phosphorylation in cerebrospinal fluid from patients revealed a specific Alzheimer’s disease pattern. Alzheimers Dement J Alzheimers Assoc. 2015; 11(7):P870; doi:10.1016/j.jalz.2015.08.063.
【0503】
参考文献16: Barthelemy NR, Bateman RJ, Marin P, et al. Tau hyperphosphorylation on T217 in cerebrospinal fluid is specifically associated to amyloid-3 pathology. bioRxiv. November 2017:226977; doi:10.1101/226977.
【0504】
参考文献17: Barthelemy NR, Li Y, Wang G, et al. MASS SPECTROMETRY-BASED MEASUREMENT OF LONGITUDINAL CSF TAU IDENTIFIES DIFFERENT PHOSPHORYLATED SITES THAT TRACK DISTINCT STAGES OF PRESYMPTOMATIC DOMINANTLY INHERITED AD. Alzheimers Dement J Alzheimers Assoc. 2018; 14(7):P273-P274; doi:10.1016/j.jalz.2018.06.024.
【0505】
参考文献18: Sato C, Barthelemy NR, Mawuenyega KG, et al. Tau Kinetics in Neurons and the Human Central Nervous System. Neuron. 2018; 97(6):1284-1298.e7; doi:10.1016/j.neuron.2018.02.015.
【0506】
参考文献19: Geyer PE, Holdt LM, Teupser D, Mann M. Revisiting biomarker discovery by plasma proteomics. Mol Syst Biol. 2017; doi.org/10.15252/msb.20156297.
【0507】
参考文献20: Barthelemy NR, Fenaille F, Hirtz C, et al. Tau Protein Quantification in Human Cerebrospinal Fluid by Targeted Mass Spectrometry at High Sequence Coverage Provides Insights into Its Primary Structure Heterogeneity. J Proteome Res. 2016; 15(2):667-676; doi:10.1021/acs.jproteome.5b01001.
【0508】
参考文献21: Cicognola C, Brinkmalm G, Wahlgren J, et al. Novel tau fragments in cerebrospinal fluid: relation to tangle pathology and cognitive decline in Alzheimer’s disease. Acta Neuropathol (Berl). 2019; 137(2):279-296; doi:10.1007/s00401-018-1948-2.
【0509】
参考文献22: Neselius S, Zetterberg H, Blennow K, et al. Olympic boxing is associated with elevated levels of the neuronal protein tau in plasma. Brain Inj. 2013; 27(4):425-433; doi:10.3109/02699052.2012.750752.
【0510】
参考文献23: Bogoslovsky T, Wilson D, Chen Y, et al. Increases of Plasma Levels of Glial Fibrillary Acidic Protein, Tau, and Amyloid 3 up to 90 Days after Traumatic Brain Injury. J Neurotrauma. 2016; 34(1):66-73; doi:10.1089/neu.2015.4333.
【0511】
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【0512】
参考文献25: Rubenstein R, Chang B, Yue JK, et al. Comparing Plasma Phospho Tau, Total Tau, and Phospho Tau-Total Tau Ratio as Acute and Chronic Traumatic Brain Injury Biomarkers. JAMA Neurol. 2017; 74(9):1063-1072; doi:10.1001/jamaneurol.2017.0655.
【0513】
参考文献26: Darlix A, Hirtz C, Thezenas S, et al. The prognostic value of the Tau protein serum level in metastatic breast cancer patients and its correlation with brain metastases. BMC Cancer. 2019; 19(1):110; doi:10.1186/s12885-019-5287-z
【0514】
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【0515】
参考文献28: Fagan AM, Roe CM, Xiong C, Mintun MA, Morris JC, Holtzman DM. Cerebrospinal Fluid tau/3-Amyloid42 Ratio as a Prediction of Cognitive Decline in Nondemented Older Adults. Arch Neurol. 2007; 64(3):343-349; doi:10.1001/archneur.64.3.noc60123.
【0516】
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【0517】
参考文献30: Potter R, Patterson BW, Elbert DL, et al. Increased in Vivo Amyloid-342 Production, Exchange, and Loss in Presenilin Mutation Carriers. Sci Transl Med. 2013; 5(189):189ra77-189ra77; doi:10.1126/scitranslmed.3005615.
【0518】
参考文献31: Patterson BW, Elbert DL, Mawuenyega KG, et al. Age and amyloid effects on human central nervous system amyloid-beta kinetics. Ann Neurol. 2015; 78(3):439-453; doi:10.1002/ana.24454.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8-1】
図8-2】
図8-3】
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【配列表】
2022547209000001.app
【国際調査報告】