(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】着色基材上に印刷するためのカラーマッチング
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20221102BHJP
G01J 3/52 20060101ALI20221102BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H04N1/60 970
H04N1/60
H04N1/60 580
G01J3/52
B41J2/525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515708
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 US2019052152
(87)【国際公開番号】W WO2021054972
(87)【国際公開日】2021-03-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】モロヴィック,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】モロヴィック,ジャン
【テーマコード(参考)】
2C262
2G020
5C079
【Fターム(参考)】
2C262AA24
2C262AB17
2C262AC03
2C262BA16
2C262BA17
2C262BA18
2C262FA13
2G020AA08
2G020DA05
2G020DA12
2G020DA14
2G020DA34
2G020DA43
2G020DA44
5C079HA19
5C079HB03
5C079HB08
5C079KA15
5C079LA02
5C079LB02
5C079MA05
5C079MA10
5C079MA13
5C079MA17
5C079NA03
5C079NA13
5C079PA03
(57)【要約】
方法およびシステムの例は、基準基材上に、及び互いと異なる色を有する少なくとも1つの追加基材上に付着された一組の色見本の測色データを測定する。測定された測色データに基づいて、推定関数が、異なった色の基材上に付着される色見本の測色データ間のマッピングのために適用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準色を有する基準基材上に付着された一組の色見本の基準測色データを測定し、
前記基準色とは異なる個々の更に別の色を有する少なくとも1つの追加基材上に付着された前記一組の色見本の追加測色データを測定し、
前記少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対して、
前記基準測色データの、個々の追加測色データへのマッピング、
前記個々の追加測色データの、前記基準測色データへのマッピング、の少なくとも1つを推定するために、個々の推定関数を適用すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記基準測色データおよび前記個々の追加測色データの少なくとも1つは、反射スペクトル、三刺激値、透過率スペクトル、相対放射照度スペクトル、及びスペクトルパワー分布の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個々の推定関数は、回帰分析および教師あり学習の少なくとも1つを適用することにより、提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基準測色データ及び前記個々の追加測色データはそれぞれ、可視範囲内の異なる波長において測定された反射強度を含み、前記方法は、
前記基準測色データ及び前記個々の追加測色データをS×R行列として提供し、第1の次元Sは色見本を表し、第2の次元Rは、前記反射強度が測定される前記異なる波長を表し、
前記基準基材および前記少なくとも1つの追加基材と関連付けられた行列間で回帰分析を行うこと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記回帰分析は、多項式回帰であり、前記基準測色データ及び前記個々の追加測色データの前記S×R行列が、非線形項およびクロスリンク項の少なくとも1つにより展開される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対して、
個々の順行列が、前記基準測色データを独立変数として及び前記個々の追加測色データを従属変数として使用する非線形回帰分析により計算され、
個々の逆行列が、前記個々の追加測色データを独立変数として及び前記基準測色データを従属変数として使用する非線形回帰分析により計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対して、前記個々の推定関数は、一連のパーセプトロンを適用することにより提供され、少なくとも2つの異なる回帰モデルが直列に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対して、前記個々の推定関数は、最小二乗アルゴリズムに従って求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの追加基材が、互いと異なる第1の色および第2の色をそれぞれ有する第1の基材および第2の基材を含み、
第1の測色データ及び第2の測色データがそれぞれ、前記第1の基材および前記第2の基材上に付着された前記一組の色見本から測定され、
第1の推定関数が、前記第1の測色データの、前記基準測色データへのマッピングを推定し、
第2の推定関数が、前記基準測色データの、前記第2の測色データへのマッピングを推定し、
前記方法は、その後、前記第1の測色データの、前記第2の測色データへのマッピングを得るために前記第1の推定関数および前記第2の推定関数を適用すること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
特定の色を有する特定の基材上に印刷されることになる有色イメージを受け取り、
前記基準測色データの、前記特定の基材と関連した測色データへのマッピングを推定する前記推定関数に従って、受け取られた有色イメージに使用される色の、前記特定の基材上に出現するための色へのマッピングを行うこと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
表示装置により、前記受け取られた有色イメージに使用される色の、前記特定の基材上に出現するための色へのマッピングに従って、前記有色イメージをレンダリングすること、
前記推定関数に従って前記特定の基材上に出現する色が、測色の観点から前記受け取られた有色イメージと一致しているか否かを判断すること、
前記推定関数に従って前記特定の基材上に出現する色が印刷装置の色域内にあるか否かを判断すること、の少なくとも1つを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基準基材は、白色の基材またはほぼ白色の基材であり、
前記少なくとも1つの追加基材のそれぞれは、赤色、緑色、青色、シアン、マゼンタ、イエロー、茶色およびオレンジ色の何れかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記色見本は、印刷装置が利用できる所定のハーフトーン色である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ほぼ白色の基準基材上に一組の色見本を付着し、
第1の白色でない基材上に前記一組の色見本を付着し、
第2の白色でない基材上に前記一組の色見本を付着し、
前記基準基材、前記第1の基材および前記第2の基材上に付着された前記一組の色見本の反射スペクトルを測定し、
前記第1の基材と関連した前記反射スペクトルを、前記基準基板と関連した前記反射スペクトルにマッピングするための逆関数を計算し、
前記基準基材と関連した前記反射スペクトルを、前記第2の基材と関連した前記反射スペクトルにマッピングするための順方向関数を計算し、
その後、前記第1の基材と関連した前記反射スペクトルの、前記第2の基材と関連した前記反射スペクトルへのマッピングを推定するために前記逆関数および前記順方向関数を適用すること、を含む、方法。
【請求項15】
印刷システムであって、
基準色を有する基準基材上に、及び互いと異なり且つ前記基準色と異なる色を有する追加基材上に一組の色見本を付着するための付着装置と、
前記基準基材上に及び前記追加基材上に付着された前記色見本の測色データを測定するための測定装置と、
コンピューティング装置と、を含み、前記コンピューティング装置は、前記追加基材のそれぞれに対して、
基準測色データの、個々の追加測色データへのマッピング、及び
前記個々の追加測色データの、前記基準測色データへのマッピングの少なくとも1つを推定するための個々の推定関数を提供する、印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
染色された繊維織物のような、着色された(色の付いた)印刷基材上にイメージを印刷する際、印刷出力(プリントアウト)の、人間の目により知覚されるような色(測色)とも呼ばれる)は、当該基材の色により影響を受ける場合がある。更に、所与の印刷プロセス又は印刷装置により再現できる色の全体(個々の色域とも呼ばれる)も、基材の色に依存する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図3】一例による、或る色空間において、基準基材上に、及び色が異なった追加基材上に付着された一組の色見本の測定された測色データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
好適な例の説明
以下において、任意の所与の着色された(色の付いた)基材(着色基材、色付き基材とも呼ぶ)上での様々な色の出現を予測することを可能にすることができる方法およびシステムの例が説明される。方法およびシステムの例は、少なくとも1つの色付き基材上に印刷される場合、イメージの測色を予測することを可能にすることができる。方法およびシステムの例は、入力イメージが特定の色を有する基材上に正確に印刷され得るか否か及び如何にして正確に印刷され得るかを判断することを可能にすることができる。方法およびシステムの例は、特定の色を有する基材上に入力イメージを印刷するための装置の色(カラー)設定を制御することを可能にすることができる。方法およびシステムの例は、印刷されることになるイメージの色、及びイメージが印刷されることになる個々の基材の色を考慮した色設定の管理を可能にすることができる。色設定は、個々のイメージと個々の基材の色とに従って個別的に調整され得る。これは、再現されるべき入力イメージの各色に対して最適化された適合を見出すことを容易にすることができる。本開示の主題は、着色基材を特徴付けてプロファイリングするための正確なモデルを提供することができる。これは、色が異なった基材上での印刷出力の測色を予測することを可能にすることができる。
【0004】
図1は、一例による印刷システム100の略図を示す。印刷システム100は、付着装置102、測定装置104及びコンピューティング装置106を含むことができる。印刷システム100は、単一の装置、例えば印刷装置として提供され得る。他の例において、印刷システムは、印刷装置を含み、付着装置102、測定装置104及びコンピューティング装置106の少なくとも1つは、印刷装置の一部であることができる。更に、付着装置102、測定装置104及びコンピューティング装置106の何れかは、印刷装置内に部分的に含まれ得る。特定の例において、印刷装置は、付着装置102を含む、又は付着装置102の一部であることができる。
【0005】
付着装置102は、基準色を有する基準基材上に一組の色見本を付着することができる。互いに異なり且つ基準基材の基準色と異なる色を有する追加基材(追加的な基材、更に別の基材)が提供され得る。付着装置102は更に、追加基材のそれぞれに一組の色見本を付着することができる。付着装置102は、印刷装置(図示せず)を含む、又は当該印刷装置の一部であることができる。
【0006】
測定装置104は、基準基材上に付着された色見本の測色データを測定することができる。測定装置104は、追加基材上に付着された色見本の測色データを更に測定することができる。測定装置104は、分光分析装置を含むことができる。例えば、測定装置104は、三刺激値測色、分光放射測定、分光測光法、分光比色法、濃度測定、色温度または同種のもの又はそれらの任意の組み合わせに従って、測色データの測定を行うことができる。測色データは、反射スペクトル、三刺激値、透過率スペクトル、及び相対放射照度スペクトルの何れかを含むことができる。特に、測色データは、可視波長範囲(約350nm~750nmの範囲、約400nm~700nmの範囲にわたることができる)内の異なる波長において測定された反射強度であることができる。
【0007】
コンピューティング装置106は、追加基材のそれぞれに対して、個々の追加測色データ(追加的な測色データ、更に別の測色データ)に対する基準測色データのマッピングを推定するための個々の推定関数を提供することができる。これは、本開示で説明されるように、順方向マッピング、順行列、又は順方向関数の何れかに対応することができる。更に又は代案として、コンピューティング装置106は、追加基材のそれぞれに対して、基準測色データに対する個々の追加測色データのマッピングを推定するための個々の推定関数を提供することができる。このマッピングは、本明細書で説明されるように、逆方向マッピング、逆行列、又は逆関数の何れかに対応することができる。
【0008】
コンピューティング装置106は、物理的な装置として提供され得る。更に又は代案として、コンピューティング装置106は、本明細書で説明されるような動作の何れかを実行するように、処理ユニットにより実行され得る命令を含むことができる。特に、当該命令は、本明細書で説明されるように、推定関数を導出する、計算する、求める及び適用することの少なくとも1つのために、処理ユニットにより実行可能であることができる。
【0009】
方法の例が以下で説明される。方法の例またはその変形態様は、印刷システム100により、少なくとも部分的に、例えば全面的に実行され得る。印刷システム100及びその構成要素102~106の機能の詳細は、方法の例に関連して明らかになるであろう。特に、印刷装置100に関連して使用される用語および表現は、方法の例に関連して詳細に更に説明され得る。
【0010】
幾つかの例に従って、本開示の方法およびシステムの例は、特定の着色基材の初期測定値および対応する初期特性からモデルを計算することを可能にする。特定の着色基材の特徴付け及びプロファイリングのための印刷と測定の数は、単一のサンプル(見本)基材まで低減され得る。そのため、本開示の主題は、所与の着色基材を特徴付けてプロファイリングするためのオーバーヘッドを低減することができる。
【0011】
本開示において、色に関連する何らかの用語および表現は、人間の目により知覚されるような個々の色を意味することができる。人間の目による色の知覚は、測色の確立された教示に従ってパラメータ化され且つ定量化され得る。例えば、本明細書で使用されるような、色に関連する用語および表現は、CIE76、CIE94、CIEDE2000、CMC I:cなどのような、確立された測色標準の何れかに従って定義され得る。従って、互いに違う又は異なる色表現は、人間の目により区別できるこれら色を意味することができ、更に又は代案として、一般的な色彩科学に従って定義され得る。例えば、互いに違う又は異なる2つの色は、それらの間でCIEDE2000に従って、少なくとも1であるΔE値を意味することができる。
【0012】
図2は、一例による方法200の流れ図である。方法200は、
図1に関連して説明された印刷システム100により、少なくとも部分的に又は全面的に実行され得る。方法は、本明細書で色見本とも呼ばれる、一組の色見本を決定する及び提供することの少なくとも1つを含むことができる。基材上に付着する前、色見本は別個の色を意味することができる。基材上に付着後、色見本は、個々の色を有する光学的に検出可能な物理的領域を意味することができる。色見本は、基準基材(例えば、全ての3つの三刺激領域において実質的に等しい良好な反射率を呈する無彩色基材)を基準にしたそれらの色に従って定義され得る。係る基材は、人間の目により、白色またはほぼ白色として知覚され得る。例えば、色見本は、それらの色がL
*a
*b
*のような特定の色空間において無彩色の背景(例えば、白色またはほぼ白色)に対して広く均一に分布するように決定され得る。
【0013】
本開示において、簡略化のために、白色は色と呼ばれる。色の白色は、上述したような確立された標準の何れかに従って、定義され得る。他に指示がない限り、表現「白色」は、一般に理解される又は口語的に使用されるものとして、本明細書で使用され得る。そのため、白色の基材は、着色されていない(即ち、着色処理または染色されていない)無彩色基材を意味することができる。幾つかの文脈において、白色の基材は、黒色の基材と呼ばれる場合がある。本明細書で検討されるような幾つかの例において、白色は基準色(基本色)として使用され得る。本明細書で使用されるような用語「白色」は、無彩色であり且つ色相を有さない理想的な白色に制限されないが、人間の目により白色として知覚される加法混色光源により生じた白色の色調も含む。そのため、白色は、色空間内の非ゼロ領域を包含することができ、この領域内の任意の色は、白色と考えられ得る。また、理想的な白色からの係る僅かな違いは、ほぼ白色とも呼ばれ得る。用語「白色」または「ほぼ白色」は、加法色空間の原色までのほぼ同じ距離を有する色を含むことができる。
【0014】
色見本は、既知の標準に従って定義され得る。例えば、色見本は、国際照明委員会(CIE)により確立されたようなCIEDE2000に従って、互いに異なる色を含むことができる。色見本は、RGB色空間またはCMYK色空間における標準的なルックアップテーブルのターゲットに従って決定され得る。幾つかの例において、色見本は、色空間を切断することにより、例えば、一定の整数Nによる規則的な方法で、RGB色空間の赤色、緑色および青色のような、主色軸のそれぞれに沿ってサンプリングすることにより、取得されることができ、それによりN∧3個の色見本が取得される。幾つかの例において、整数Nは、RGB色空間において、17、25又は33であることができ、それによりN∧3個の色見本が取得される。更なる例において、整数Nは、CMYK色空間において、5、7又は9であることができ、それによりN∧4個の色見本が取得される。特定の例において、色見本の幾つかは、RGB色空間の主軸のそれぞれに沿って、7回サンプリングすることにより取得されることができ、7∧3=343個の色見本という結果になる。更に又は代案として、色見本を取得するために、任意の既知のチャートが適用されることができ、その一例は、欧州カラーイニシアチブ(European Color Initiative:ECI)により確立されたECI2002targetである。
【0015】
幾つかの例に従って、色見本は、印刷装置が利用できる所定のハーフトーン色である。本開示で使用されるような用語「ハーフトーン」は、一般的な印刷技術からの理解と一致することができる。そのため、ハーフトーンは、リプログラフィック技術、又はこの技術を利用することにより生成されたイメージを意味することができ、それは、ドットの使用を通じた連続階調画像をシミュレートし、サイズ又は間隔を変更し、かくして階調度のような効果を生成する。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー(黄色)及び黒色のようなスポットカラー(色)の濃度は、特定の色調を再現するためにサイズ又は間隔において変化する場合がある。スポットカラーは、個々のパターンで付着されることができ、当該スポットカラーのパターンは、互いに関連して回転することができる。表現「ハーフトーン色」は、スポットカラー、及びスポットカラーを組み合わせることにより生成できるプロセスカラー(色)の全てを含むことができる。印刷装置が利用可能であるハーフトーン色は、そのスポットカラーを用いて印刷装置により再現可能であることを意味することができる。
【0016】
更に又は代案として、色見本は、特定の印刷タスク又は特定の印刷装置の個々の要件に従って決定され得る。例えば、色見本は、様々な肌の色合いの所定の組(セット)を含むことができる。これは、例えば、人肌をイメージングするための適用性を増加させることができる。更に又は代案として、色見本は、様々な無彩色(中間色)の色調を含むことができる。
【0017】
幾つかの例において、色見本の数は、102~108であることができる。他の例において、色見本の数は、102~106、又は102~105、又は102~104、或いは500~5000のような約103であることができる。理解される点は、十分な数の色見本を提供することは、信頼できる結果を得ることを可能にすることができる。しかしながら、過剰な数の色見本を提供することは、特に計算能力およびデータ記憶容量に関して、本開示の主題を実行するための要件を必要以上に増加させる場合がある。色見本の数は、特定の印刷タスク又は特定の印刷装置の個々の要件に依存する場合がある。色見本の数は更に、本明細書で検討されるように、適用されるべき特定の推定関数に依存する場合がある。色見本の数は、少なくとも部分的に実験的に、例えば訓練(トレーニング)プロセスを考慮して、求められ(決定され)得る。
【0018】
方法は、様々な基材上に色見本を付着することを含むことができる。基材は、用紙、繊維織物、ゴム製品、ポリマー又は同種のもの、或いはそれらの組み合わせを含む又はそれらから作成され得る。色見本を付着するという表現は、色見本を印刷することを意味することができる。基材上に色見本を付着することに関与している方法および装置は、一般技術に従って様々であることができ、例えば、ハーフトーン印刷を含むことができる。特に、色見本の付着は、スポットカラー及びスポットカラーを用いることにより生じるプロセスカラーを使用することができる。表現「付着する」、「付着」および「印刷」は、本明細書において言い換え可能で使用され得る。
【0019】
付着される場合、色見本はそれぞれ、基材の表面に沿って延びる領域を形成することができる。そのため、基材上に付着される色見本はそれぞれ、ドット、区画、領域、ゾーン、フィールド又は同種のものを形成することができる。付着された色見本は、実質的に円形、楕円形、又は多角形の形状、或いはそれらの任意の組み合わせを有することができる。また、物理的に付着される場合、色見本は、基材の表面に垂直な方向にも延びることができる。
【0020】
基材は様々な色を有する場合がある。基材は、地染めとも呼ばれ得る、少なくとも1つの染色基材を含むことができる。本開示において、表現「着色」または「染色」は、個々の基材に適用可能である場合、言い換え可能で使用され得る。基材の色に応じて、基材に付着される色見本の色は、異なるように見える場合がある、即ち人間の目により異なるように知覚される場合がある。
【0021】
基準基材は、基材に加えて提供される場合がある、又は基材の1つが基準基材として指定され得る。基準基材の色は、基準色と呼ばれる場合がある。基準色は、上述したように白色であることができる。他の例において、基準色は、例えば、赤色、緑色、青色、シアン、マゼンタ、イエロー、茶色またはオレンジ色を含むことができる。これらの例において、基準基材は、着色基材であることができ、この場合、本文脈における表現「着色(着色された)」は、個々の色が白色と見分けられることを示し、この特定の文脈において、非白色と言い換え可能で使用され得る。
【0022】
202において、基準基材上に付着された色見本の測色データが測定され得る。測色データは、人間の目により知覚されるような個々の色を定量化して物理的-数学的に記述するデータを意味することができる。本開示において、用語「色」、「測色」及び「測色データ」は、同じ概念を連想させ、簡潔さのために言い換え可能で使用され得る。測色データは、例えば任意の既知のCIE標準により確立された標準の何れかに従って、求められ得る。特に、測色データは、例えば、CIE1931XYZ色空間三刺激値の観点から、色知覚の物理的な相関であると考えられ得る。測色データは、三刺激値測色、分光放射測定、分光測光法、分光比色法、濃度測定、色温度または同種のもの、或いはそれらの任意の組み合わせのような測定技術を通じて取得され得る。測色データは、反射スペクトル、三刺激値、透過率スペクトル、及び相対放射照度スペクトルの何れかを含むことができる。幾つかの例において、測色データは、可視波長範囲(例えば、350nm~750nm、又は400nm~700nm)の異なる波長において測定された反射強度であることができる。そのため、基準測色データは、基準基材上に付着された色見本の個々の色を示すことができる。
【0023】
幾つかの例に従って、基準測色データは、反射スペクトル、三刺激値、透過率スペクトル、及び相対放射照度スペクトルの何れかを含むことができる。当該データは、特定の波長における反射強度、透過強度、放射輝度強度またはそれらの組み合わせを直接的または間接的に(例えば、逆に又は相互に、或いは任意の導出可能な方法で)含むことができる。例えば、測色データは、異なる波長において測定された反射強度値を含むことができる。測色データは、エントリとして強度値を含むデータセットとして提供され得る。測色データは、エントリとして強度値を含むデータアレイに配列され得る。例えば、測色データは、エントリとして強度値を含む、ベクトル、タプル又は同種のものとして提供され得る。用語「強度値」は、対応する強度の定量化された値を示すことができる。強度値は、物理単位において絶対値として提供され得る。更に又は代案として、強度値は、入射光強度または測定光強度のような、基準強度に対して正規化された相対値として提供され得る。簡略化のために、表現「強度値」および「強度」は、別段の指示がない限り、本明細書において、言い換え可能で使用され得る。
【0024】
幾つかの例に従って、基準測色データはそれぞれ、可視波長範囲内の異なる波長で測定された反射強度を含むことができる。係る例において、方法は更に、S×R行列として基準測色データを提供することを含むことができる。S×R行列において、Sは、行列の第1の次元を示し、色見本の数を表すことができる。例えば、第1の次元Sは、色見本のインデックス又はリストを示すことができる。そのため、第1の次元Sは、個々の色見本を識別することを可能にすることができる。Rは、第2の次元を示し、反射強度が測定される異なる波長の数を表すことができる。数Rは、3~103であることができる。幾つかの例において、数Rは、3~100、3~50、又は約20であることができる。特定の例において、数Rは、16、31又は81であることができる。異なる波長は、一定の間隔により、例えば可視波長範囲内で5nm毎に、10nm毎に、又は20nm毎にサンプリングすることにより、求められ得る。理解される点は、反射強度が現実世界のシステムで測定される波長はそれぞれ、単一の波長の値に制限されるのではなくて、特定の波長範囲を意味することができる。
【0025】
特定の例において、1000個の色見本が決定されることができ、それらは、上述されたような規則的な方法で色空間をサンプリングすることから得られた色見本、人肌の異なる色調に対応する色見本、特定の測色標準に従った特定の色を含む。色見本は、白色の基準基材上に付着され得る。当該基準基材上に付着された色見本の反射強度は、上述した任意の分光計または測色計(比色計、色度計)を用いて、可視波長範囲内の20個の異なる波長において測定され得る。従って、基準基材上に付着された色見本の基準測色データは、1000×20の強度値を含むデータセットとして取得される。
【0026】
204において、少なくとも1つの追加基材上に付着される一組の色見本の追加測色データが測定され得る。上述されたように、追加基材は、個々の色を有することができる。複数の追加基材は、互いに異なる更なる色を有することができる。少なくとも1つの追加基材の個々の色は、基準色と異なることができる。
【0027】
簡潔さと読みやすさのために、少なくとも1つの追加基材は、別段の指示がない限り、単一の追加基材を使用する場合を除外せずに追加基材とも呼ばれ得る。本開示において、表現「個々の」追加測色データは、別段の指示がない限り、複数の追加基材のそれぞれに対応する(又は関連付けられた)追加測色データを意味することができる。本開示において、基準測色データ及び追加測色データは、別段の指示がない限り、簡略化のために兼ねるように、測色データと呼ばれ得る。本開示において、基準基材の1つ及び追加基材の1つに付着される色見本の基準測色データ及び個々の追加測色データは、簡略化のために、個々の基材に対応する測色データと呼ばれ得る。
【0028】
追加測色データは、基準測色データに関連して上述されたように、求められ、測定され又は提供され得る。基準測色データに関連して上述されたことの何れかは、追加測色データの何れかにも同様に適用することができる。
【0029】
幾つかの例に従って、追加測色データの何れかは、反射スペクトル、三刺激値、透過率スペクトル、及び相対放射照度スペクトルの何れかを含むことができる。当該データは、特定の波長における反射強度、透過強度、放射輝度強度またはそれらの組み合わせを直接的または間接的に(例えば、逆に又は相互に、或いは任意の導出可能な方法で)含むことができる。例えば、測色データは、異なる波長において測定された反射強度値を含むことができる。測色データは、エントリとして強度値を含むデータセットとして提供され得る。測色データは、エントリとして強度値を含むデータアレイに配列され得る。例えば、測色データは、エントリとして強度値を含む、ベクトル、タプル又は同種のものとして提供され得る。用語「強度値」は、対応する強度の定量化された値を示すことができる。簡略化のために、表現「強度値」および「強度」は、別段の指示がない限り、本明細書において、言い換え可能で使用され得る。
【0030】
幾つかの例に従って、追加測色データの何れかはそれぞれ、可視波長範囲内の異なる波長で測定された反射強度を含むことができる。係る例において、方法は更に、S×R行列として追加測色データの何れかを提供することを含むことができる。S×R行列において、Sは、行列の第1の次元を示し、色見本を表すことができ、Rは、第2の次元を示し、反射強度が測定される異なる波長を表すことができる。特に、追加測色データの何れかは、上述されたような基準測色データと同じ次元(単数または複数)を有することができる。
【0031】
上述された特定の例を参照すると、1000個の色見本が、追加基材の何れかに付着され得る。追加基材の何れかに付着された色見本の反射強度が、上述されたような可視波長範囲内の20個の異なる波長において測定され得る。従って、追加基材の何れかに付着された色見本の追加測色データは、それぞれが1000×20の強度値を含むデータセットとして取得される。係る例において、追加測色データはそれぞれ、上述されたような基準測色データと同じ次元(単数または複数)を有する。
【0032】
任意の他の構成が、基準測色データ及び追加測色データの何れかに関して企図される。例えば、次元は、逆にされることができ、S×R行列の代わりにR×S行列という結果になる。他の例において、基準測色データ及び追加測色データの何れかは、単一の列または単一の行に配列されることができ、S×Rベクトル(ベクター)という結果になる。測色データの構造は、特定のタスク又は特定のシステムの個々の要件に従って変更または改変され得る。基準測色データ及び追加測色データの双方の次元(単数または複数)を一元化することは、基準測色データ及び追加測色データの更なる処理を容易にすることができる。
【0033】
上述されたように、追加基材上に付着された色見本の測色は、基準基材上に付着された色見本の測色とは異なる場合がある。例えば、白色またはほぼ白色の基準基材上に付着されたイエロー(黄色)及び黄色っぽい色の見本はそれぞれ、イエロー(黄色)及び黄色っぽい色に見えることができるが、青色の基材または赤色の基材上に付着された場合には、それらの色は歪む場合がある。一般に、色見本の測色は、色見本が付着される基材の個々の色の方へ移行する場合がある。
【0034】
図3は、L
*a
*b
*色空間において、白色の基準基材上に及び異なった色の追加基材上に付着された一組の所定の色見本の測定された測色データを示し、この場合、軸a
*及び軸b
*が示される。
図3の中央にあるダイアグラム302は、白色の基準基材上に付着された一組の所定の色見本の測定された測色データを示す。ダイアグラム304、306、308、310、312、314、316及び318はそれぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、茶色(ブラウン)、オレンジ色、赤色、緑色および青色の基材上に付着された同じ一組の所定の色見本の測定された測色データを示す。
【0035】
図3のダイアグラム302~318の各ドットは、(L
*)a
*b
*色空間における単一の色見本の色を表す。a
*軸は、緑色(負)から赤色(正)までの色勾配を表す。b
*軸は、青色(負)から黄色(正)までの色勾配を表す。L
*軸は、黒色(ゼロ)から白色(100)までの明度を表す。
図3のダイアグラム302~318は、a
*-b
*平面上への色空間の二次元投影を示す。
図3のドットは、それらの位置の視覚化のために任意に拡大されており、色空間の内側のそれぞれの個々の色スペクトルを表していない場合がある。
【0036】
図3は、白色の基材上に付着された際の色空間内の比較的広い分散と比較して、着色基材上に付着された際の色見本の分散が圧縮されていることを示す。ダイアグラム302の白色の基準基材と比べて、色見本の測色が圧縮され且つ基材の個々の色の方へ移行していることが明らかになる。例えば、ダイアグラム316において緑色の基材上に付着された色見本は、a
*軸の負の側(緑色に対応する)で圧縮されている(密度が高い)。同様に、ダイアグラム306及び310において、黄色およびオレンジ色の基材上に付着された色見本は、b
*軸の正の側(黄色に対応する)で圧縮されている。
【0037】
従って、色見本が付着される基材の色に応じて、色見本の測色が変化することが実証された。
図3の色見本は知覚できる色空間内の広い領域を網羅するために選択されているので、測色の係る歪みは、着色基材上に色付きのイメージ(有色イメージ)を印刷する際にも生じる場合がある。従って、所与の色付きのイメージに使用される測色を、ターゲット(対象の)基材の測色にマッピングすることは、印刷プロセスの精度を上げることができる。本開示において、ターゲット基材は、入力イメージが印刷されることになる基材を意味することができ、この場合、入力イメージは、色付きのイメージであり、ターゲット基材は着色基材(色付きの基材)である。
【0038】
図2に戻って参照すると、方法200は、206において、基準測色データを個々の追加測色データにマッピングするために、少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対して個々の推定関数を適用する。係る推定関数は、順方向マッピングと呼ばれる場合がある。更に又は代案として、個々の推定関数は、個々の追加測色データを基準測色データにマッピングするために、少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対して適用される。係る推定関数は、逆方向マッピングと呼ばれる場合がある。
【0039】
本開示において、一方の測色データを他方の測色データにマッピングすることに関する表現は、それらの間の関係を決定することを意味することができる。マッピングは、異なった色の基材において色見本のそれぞれの再現を確立することを含むことができる。マッピングは、論理結合、数学的関係、ルックアップテーブル、実験に基づく結合、又はそれらの任意の組み合わせの何れかを含むことができる。
【0040】
本明細書で使用されるような推定関数は、基準測色データと個々の追加測色データとの間の関係を求めるための一組の再現可能な規則を意味することができる。推定関数は、論理結合、数学的関係、ルックアップテーブル、実験に基づく結合、又はそれらの任意の組み合わせの何れかを含むことができる。
【0041】
幾つかの例に従って、推定関数は、回帰分析および教師あり学習の少なくとも1つを適用することにより、提供され得る。本開示において、回帰分析は、変数間の関係を推定する(例えば、当該関係をモデル化および分析することにより)ための一組の統計的処理を意味することができる。開始パラメータは、独立変数(又は「予測因子」)として求められる(決定される)ことができ、標的パラメータは、従属変数(又は「基準変数」)として求められる(決定される)ことができ、回帰分析は、それらの間の関係を確立するために適用され得る。そのため、回帰分析は、従属変数の値が独立変数の変化に応じて如何にして変化するかを推定するための規則または関数を確立することができる。回帰分析または教師あり学習は、各色見本に対して、その基準測色データをその個々の追加測色データにマッピングする(及び逆もまた同じ)ために実行され得る。
【0042】
回帰分析は、統計学の教示から任意の既知の回帰技術を含むことができる。回帰技術の例は、個々の基礎的前提を有する線形または非線形回帰モデル;回帰診断;誤差推定;線形最小二乗法、非線形最小二乗法および加重最小二乗法の少なくとも1つの計算を含むことができる。更に又は代案として、回帰分析は、ベイズ法、パーセント回帰(percentage regression)、最小絶対偏差、ノンパラメトリック回帰、シナリオ最適化、区間予測モデル、距離メトリック学習などを使用することができる。
【0043】
回帰分析は、統計学の教示から任意の既知の回帰モデルを使用することができる。回帰モデルの例は、単純回帰、多項式回帰、一般線形モデル、二項回帰、バイナリ回帰、ロジスティック回帰、離散選択、多項式ロジット、ミックスト・ロジット、プロビット、多項プロビット、順序ロジット、順序プロビット、ポアソン・マルチレベル・モデル、母数効果、変量効果、混合モデル、ノンパラメトリック・モデル、セミパラメトリック・モデル、ロバスト・モデル、分位点モデル、アイソトニック・モデル、主成分モデル、ローカル・モバイル、セグメント化モデル、変数の誤差モバイルなどを含むことができる。
【0044】
回帰分析は、統計学の教示から任意の既知の推定方法を使用することができる。推定方法の例は、最小二乗法、通常推定、加重(重み付き)推定、一般化推定、部分的推定、合計推定、非負推定、リッジ回帰、正規化最小絶対偏差、反復再加重推定、ベイズ法、ベイズ多変量法などを含むことができる。
【0045】
上述されたように、基準測色データ及び個々の追加測色データがS×R行列として提供される例において、方法は、基準基材および少なくとも1つの追加基材と関連付けられた行列間で回帰分析を行うことを更に含むことができる。例えば、個々のマッピング行列は、基準測色データを個々の追加測色データにマッピングする(逆もまた同じ)ための個々の回帰分析から計算され得る。回帰分析は、上述されたような、統計学の教示に従って実行され得る。マッピング行列は、基準測色データから開始する場合、順行列と呼ばれ得る。マッピング行列は、追加測色データの何れかから開始する場合、逆行列と呼ばれ得る。
【0046】
幾つかの例に従って、個々の順行列は、非線形回帰分析により、少なくとも1つの追加基材のそれぞれに関して計算され得る。非線形回帰分析は、基準測色データを独立変数として、及び個々の追加測色データを従属変数として使用することができる。同様に、個々の逆行列は、非線形回帰分析により、少なくとも1つの追加基材のそれぞれに関して計算されることができ、この場合、個々の追加測色データ及び基準測色データはそれぞれ、独立変数として及び従属変数として使用される。非線形回帰分析は、上述されたような既知の技術の何れかを用いて、統計学の教示に従って実行され得る。
【0047】
基準測色データ及び個々の追加測色データがS×R行列として使用される例において、多項式回帰が実行されることができ、この場合、基準測色データ及び個々の追加測色データのS×R行列は、非線形項およびクロスリンク項の少なくとも1つにより、展開される。例えば、二次の多項式回帰が実行されることができ、この場合、強度値のそれぞれの平方が、非線形項として使用される。更に又は代案として、クロスリンク項は、1つの同じ色見本と関連付けられた強度値の任意の2つを掛け合わせることにより、取得され得る。
【0048】
1000個の色見本が使用され且つ反射スペクトルが20個の異なる波長において測定される特定の例において、測定された測色データは、上述された1000×20の行列として提供され得る。係る例において、非線形項およびクロスリンク項による展開は、追加の20個の二乗項、及び色見本のそれぞれに対して、20個の中から2個を選ぶ場合の組み合わせの数(又は20C2)に対応する追加の190個のクロスリンク項という結果になることができる。これは、展開の実行後、1000×230の行列という結果になる。測色データの任意の適切な展開は、推定関数を求めることの代わりに、又は更に推定関数を求めるために実行され得る。
【0049】
幾つかの例に従って、少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対する個々の推定関数は、最小二乗アルゴリズムに従って求められ得る。例えば、基準測色データ及び個々の追加測色データの展開項の差分が計算され得る。次いで、この差分の最小二乗が計算されることができ、それは、上述されたような個々の順行列を含むことができる個々の順方向マッピングを決定するための要件または境界条件と考えられ得る。更に又は代案として、任意の既知の技術を用いて、前記差分を最小化することができる(例えば、最小絶対偏差回帰に従ってノルムを適用することにより)。更に、最小二乗コスト関数のペナルティバージョンの極小値が、推定関数を得るために計算され得る。これは、L2ノルム・ペナルティを使用するリッジ回帰およびL1ノルム・ペナルティを使用する投げ縄ツールの少なくとも1つに従って実行され得る。
【0050】
幾つかの例において、順行列Fは、以下の式を解くことによって得られることができ、即ち
min||[g(W)*F]-C||
この場合、min||…||は最小二乗を示し、W(上記で明確に使用されていない)は、行列としての基準測色データを示し、Cは行列としての個々の追加測色データを示し、g(…)はWに対する演算を示す。ここで、記号||…||は、L2ノルムを意味することができ、別段の指示がない限り、||…||2に対応する。演算g(…)は、展開演算、変換演算、組合わせ演算、解析演算、又は代数演算または同種のもの、或いはそれらの任意の組合わせの少なくとも1つを含むことができる。
【0051】
特定の例において、順行列Fを求めるための回帰分析は、以下の式を解くことによって実行されることができ、即ち、
min||[P*F]-C||
この場合、Pは、展開演算後のWを示す。例えば、展開演算は、本明細書で説明されるような、二次(非線形)項およびクロスリンク項の少なくとも1つを含む、二次の多項式展開であることができる。
【0052】
ムーア・ペンローズ逆行列または擬似逆行列に従って、順行列Fの自明な解は、
F=(PT*P)-1*PT*C
であることができ、この場合、PTは、Pの転置行列を示し、(…)-1は、(…)の逆行列を示す。代案として又は更に、SVDのような行列分解を含む既知のアルゴリズムを用いる解法が使用され得る。更に又は代案として、正則化技術を用いて、所与の回帰問題を解くことができる。係る例において、例えば、階数項を含む、付加制約が解法に課せられる場合がある。例えば、チホノフ正則化技術を使用することができ、この場合、重み付き単位行列を含む付加項が、回帰問題を解くために導入される。
【0053】
本開示において、教師あり学習は、例示的な入力-出力対に基づいて、入力を出力にマッピングする関数の機械学習を意味することができ、この場合、入力および出力は、個々のマッピングタスクに応じて、基準測色データ及び追加測色データの何れかを意味することができる。教師あり学習は、一組の訓練(トレーニング)例からなるアルゴリズム分析訓練データを含むことができる。当該アルゴリズムは、訓練データから推定関数を生成することができる。推定関数は、新たなデータをマッピングするために使用され得る。
【0054】
教師あり学習は、人工の神経(ニューラル)ネットワークの概念に従った手法の範囲内にあることができる。従って、人工の神経ネットワークは、基準測色データを個々の追加測色データにマッピングする目的に適用され得る。本開示において、人工の神経ネットワークは、一般にタスクに特有の規則でプログラミングされずに、例を考察することによりタスクを実行するように学習するために構成されたコンピューティングシステム又はプロセスを意味することができる。例えば、人工の神経ネットワークは、処理される(訓練)例から特徴の識別(identifying characteristics)を自動的に生成することができる。
【0055】
幾つかの例に従って、少なくとも1つの追加基材のそれぞれに関して、個々の推定関数が、一連のパーセプトロンを適用することにより、提供されることができ、この場合、少なくとも2つの異なる回帰モデルが直列に使用される。例えば、先行する推定または回帰の出力は、後続の推定または回帰の入力として使用され得る。
【0056】
例えば、教師あり学習において、基準測色データは入力として受け取られることができ、追加測色データは、基準測色データの非線形関数に従った出力として算出され得る。非線形関数は、複数の層へ集約されるされることができ、この場合、異なる層は、それらの個々の入力に異なる変換を実行することができる。対応するマッピングの間、入力データは、第1の層(即ち、入力層)から中間層を介して、最後の層(即ち、出力層)に転換(変換)され得る。各層は、上述された回帰分析と関連付けられ得る。特定の例において、第1の層および最後の層はそれぞれ、線形回帰分析を実行することができるが、中間層は、様々な非線形回帰分析を実行する。
【0057】
上述されたように、基準基材上に付着される色見本の色、測色、又は測色データは、個々の順方向マッピングに従って、個々の追加基材上に付着される色見本の対応するものにマッピングされ得る。同様に、追加基材の何れかの上に付着される色見本の色、測色、又は測色データは、個々の順方向マッピングに従って、基準基材上に付着される色見本の対応するものにマッピングされ得る。また、マッピングは、個々の基材の特徴付け又はプロファイリングを含む、又は当該特徴付け又はプロファイリングを意味することができる。そのため、色が異なった追加基材上での異なる色の出現(即ち、測色データ)を特徴付ける特性記述チャートが、提供され得る。
【0058】
測色データが行列として提供される特定の例において、順方向マッピング及び逆方向マッピングはそれぞれ、順行列および逆行列を適用することを含むことができる。ひとたびマッピング用の推定関数が得られたならば、異なった色の基材と関連した測色データ間のマッピングは、行列の乗算により実行され得る。例えば、基準基材と関連した測色データから始まる場合、選択された推定関数(例えば、順行列F)を適用することは、対応する特定の着色基材と関連した測色データの予測を可能にすることができる。着色されたスタート基材と関連した測色データから始まる場合、基準基材と関連した測色データにマッピングするための第1の推定関数、及び当該測色データを色付きのターゲット基材と関連した測色データにマッピングするための第2の推定関数が、スタート基材と関連した測色データをターゲット基材と関連した測色データにマッピングすることを行うように順次に実行され得る。
【0059】
色見本の色と異なる色は、補間を用いて所与のターゲット基材にマッピングされ得る。当該補間は、統計学の教示に従って実行され得る。更に又は代案として、色見本と異なる色のマッピングは、既知の推定技術に従って推定され得る。特に、補間は、測色データ間のマッピングがルックアップテーブルを用いて実行される場合に、実行され得る。理解される点は、補間を実行することは、単なる任意選択であり、上述されたような幾つかの例において、本明細書で開示された方法およびシステムは、補間を用いずに、異なった色の基材と関連した測色データをマッピングすることを可能にすることができる。更に又は代案として、測色データのマッピングは、訓練データとして使用されることになる利用可能な装置空間のサブサンプリングを使用する訓練プロセスにより、支援され得る。
【0060】
更に、異なる色を有する任意の追加ターゲット基材に関した色のマッピングは、補間を用いて求められ得る。更に又は代案として、追加ターゲット基材に関した色のマッピングは、統計学の教示から知られているような推定技術を用いて推定され得る。
【0061】
順方向マッピング及び逆方向マッピングを使用することは、追加基材の1つに対応する測色データが追加基材の別の1つに対応する測色データにマッピングされることを可能にすることができる。
【0062】
幾つかの例に従って、少なくとも1つの追加基材は、第1の色を有する第1の基材、及び第2の色を有する第2の基材を含むことができる。第1及び第2の色は互いに異なることができる。一組の色見本は、第1の基材および第2の基材の双方に付着され得る。第1の測色データ及び第2の測色データがそれぞれ、第1の基材および第2の基材上に付着された一組の色見本から測定され得る。
【0063】
上述されたような少なくとも1つの追加基材のそれぞれに対する個々の推定関数に加えて、第1の推定関数は、第1の測色データを基準測色データにマッピングすることを推定するために使用され得る。第2の推定関数は、基準測色データを第2の測色データにマッピングすることを推定するために使用され得る。
【0064】
係る例に従って、方法は、その後、第2の測色データに対する第1の測色データのマッピングを得るために、第1の推定関数および第2の推定関数を適用することを更に含むことができる。従って、第1の基材に対応する測色データは、第2の基材に対応する測色データにマッピングされ得る。この点で、第1の基材および第2の基材はそれぞれ、スタート基材およびターゲット基材とも呼ばれ得る。これは、色が異なった基材上の所与のイメージの色を予測する(例えば、視覚化する)ために使用され得る。
【0065】
幾つかの例に従って、特定の色を有する特定の基材上に印刷されることになる有色入力イメージが、受け取られ得る。当該特定の色は、上述されたように白色でない又は有色あることができる。当該特定の基材は、少なくとも1つの追加基材の1つであることができ、特定の色を有することができる。受け取られた有色イメージに使用される色は、上述されたように推定関数に従って、特定の基材上に現われる色にマッピングされる。推定関数は、上述された方法の何れかで求められることができ、特定の基材と関連する測色データに対する基準測色データのマッピングを推定するために使用され得る。
【0066】
マッピングは、特定の印刷タスク、例えば色付きのターゲット基材上に入力有色イメージを印刷するための色設定を適合させるために使用され得る。色設定の適合は、順方向マッピング及び逆方向マッピングの少なくとも1つを含む推定関数に従って、実行され得る。本開示において、色設定は、人間の目により知覚される際に、有色入力イメージを再現するための特定の装置の内部設定を意味することができる。例えば、係る装置は、スポットカラー及びプロセスカラーを使用する印刷装置であることができ、係る印刷装置の色(カラー)設定は、有色入力イメージ(即ち、入力色)の色を再現するためにスポットカラーのインクの付着を制御するために使用され得る。
【0067】
順方向マッピング及び逆方向マッピングを用いて、印刷装置の色設定は、必要以上の測定、特徴付け又はプロファイリングを必要とせずに、ターゲット基材(即ち、イメージが印刷されることになる追加基材)の色に従って、変更され得る。従って、ターゲット基材上に印刷されることになるイメージの測色の満足な予測を行いながら、着色基材上にイメージを印刷するためのオーバーヘッドが低減され得る。特に、オーバーヘッドは、サンプルイメージをターゲット基材上へ印刷すること、印刷されたイメージの測色を測定すること、そのターゲット基材上の今後の印刷出力の測色を予測することの何らかの余分なステップを省略することにより、低減され得る。
【0068】
図4は、更なる例による、方法400の流れ図を示す。方法400は、
図1に関連して説明された印刷システム100により、少なくとも部分的に又は全面的に実行され得る。402において、一組の色見本が、ほぼ白色の基準基材上に、第1の白色でない基材上に、及び第2の白色でない基材上に付着される。ほぼ白色の基準基材は、上述されたように提供され得る。特に、ほぼ白色の基準基材は、ほぼ白色の繊維製品基材であることができる。白色でない第1及び第2の基材は、上述されたような且つ個々の白色でない色を有する追加基材の何れかであることができる。
【0069】
404において、基準基材および第1と第2の基材上に付着された一組の色見本の反射スペクトルが測定される。反射スペクトルの測定値は、上述されたような反射強度を含むことができる。反射スペクトルは、上述した例の何れかを用いて測定され得る。反射スペクトルは、上述されたような個々の測色データの一部であることができる。
【0070】
406において、逆関数(逆方向関数)が計算され、この場合、逆関数は、第1の基材と関連した反射スペクトルを基準基材と関連した反射スペクトルにマッピングするために使用され得る。本開示において、基材と関連している反射スペクトルの表現は、その基材上に付着された色見本の反射スペクトルを意味することができる。逆関数は、上述された逆方向マッピング及び逆行列の少なくとも1つに対応することができる。逆関数は、上述されたような回帰分析または教師あり学習の少なくとも1つにより、求められ得る。
【0071】
408において、順方向関数が計算され、この場合、順方向関数は、基準基材と関連した反射スペクトルを第2の基材と関連した反射スペクトルにマッピングするために使用され得る。順方向関数は、上述された順方向マッピング及び順行列の少なくとも1つに対応することができる。順方向関数は、上述されたような回帰分析または教師あり学習の少なくとも1つにより、求められ得る。
【0072】
410において、逆関数および順方向関数が、その後、第1の基材と関連した反射スペクトルの、第2の基材と関連した反射スペクトルへのマッピングを推定するために適用される。従って、第1の基材からの色が第2の基材上に印刷された場合に如何にして出現するかが予測される。
【0073】
幾つかの例に従って、表示(ディスプレイ)装置は、有色入力イメージからの色の、特定の基材上に出現する色への前述のマッピングに従って、有色入力イメージをレンダリングするために使用され得る。これは、当該入力イメージを実際に印刷せずに、印刷出力を予測することを可能にすることができる。
【0074】
幾つかの例に従って、推定関数に従って特定の基材上に出現する色が、測色の観点から受け取った有色イメージと一致しているか否かが判断される。上述されたように、推定関数は、入力イメージからの色の、印刷された場合に特定の基材上に出現する色へのマッピングを推定するために使用され得る。これは、追加の測定および試験により生じるオーバーヘッドを低減することができる。
【0075】
幾つかの例に従って、推定関数に従って特定の基材上に出現する色が印刷装置の色域内にあるか否かが判断される。従って、当該例は、入力イメージが満足のいく態様で再現され得るか否かの評価を容易にする。
【0076】
本明細書で説明された方法およびシステムの例は、色付きのターゲット基材上での一組の色(例えば、入力イメージの色)の出現を予測することを可能にすることができる。更に、本明細書で開示された技術は、色が異なった基材上での入力イメージの測色の変化を予測することを可能にすることができる。これは、色付きのターゲット基材上に入力イメージを印刷するための装置の色設定の管理を容易にすることができる。従って、色設定は、個々のイメージ及び個々の基材の色に従って個別に調整され得る。更に、色再現の正確な予測が行われ得る。
【0077】
更に、本明細書で開示された方法およびシステムの例は、色付きのターゲット基材上に印刷されることになる入力イメージの色が入力イメージを印刷するための装置により再現可能であるか否かを判断することを可能にすることができる。
【0078】
幾つかの例に従って、本開示の方法およびシステムの例は、特定の有色基材の最初の測定値および対応する最初の特性記述(特徴付け)からモデルを計算することを可能にする。特定の着色基材の特徴付け及びプロファイリングのための印刷と測定の数は、単一のサンプル基材まで低減され得る。そのため、本開示の主題は、所与の有色基材の特徴付け及びプロファイリングのオーバーヘッドを低減することができる。
【0079】
図5は、白色の基準基材上に及び青色の基材上に付着された一組の色見本の測色データの略図を示す。ダイアグラム502及び504は、400nm~700nmの可視波長範囲内で測定された一組の色見本の反射強度を示す。ダイアグラム502は、白色の基材上での測定結果を示す。ダイアグラム504は、青色の基材上での測定結果を示す。
【0080】
ダイアグラム502で示されているように、色見本の反射強度は、白色の基材上に付着された場合には、全可視波長範囲にわたって広く広がっている。これに対して、ダイアグラム504に示されるように、青色の基材上に付着される場合には、全体としての反射強度は低下している。更に、色見本の反射強度(即ち、色)は、青色の基材上に付着された場合には、約450nmにおける青色および青みがかった色の方へ移行して集まっている。
【0081】
ダイアグラム506は、上述されたような例によるマッピングから得られる、青色基材上の同じ色見本の推定された測色データを示す。特に、ダイアグラム506に示された推定結果は、上述されたように、二次のクロスリンク項および非線形項を含む多項式展開を実行し、最小二乗項(min||…||)を解くことにより、得られている。ダイアグラム506に示された結果は、ダイアグラム504と比較すると、本明細書で説明されたような例が、色が異なった基材間の測色データのマッピングの正確な推定を提供することを実証している。
【0082】
この成果は更に、ダイアグラム508と510に示された結果により裏付けられており、ダイアグラム508と510では、白色の基材と青色の基材との間の各色見本の色ずれが二次元L*a*色空間において示されている。ダイアグラム508と510において、各円は、単一の色見本を表し、円の直径は、白色の基材と青色の基材との間の個々の色のずれを示す。ダイアグラム508は、本開示による、マッピングを行わない場合の色ずれを示す。
【0083】
ダイアグラム510は、本開示によるマッピングに従って行われた色調整後の色ずれを示す。例えば、色調整は、上述されたような印刷装置の色設定の調整を含むことができる。ダイアグラム508の比較的大きな円と比べた際のダイアグラム510の小さい円は、異なった色の基材に印刷することからの色ずれが、本開示によるマッピングを実行することにより首尾よく低減されたことを示す。従って、本開示によるマッピングは、異なった色の基材上に印刷する際に生じる場合がある色の変化および歪み低減することを可能にする。
【国際調査報告】