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特表2022-547233エレクトロポレーション装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】エレクトロポレーション装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/32 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A61N1/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539775
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2020074374
(87)【国際公開番号】W WO2021043779
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】19194958.5
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19194959.3
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20168567.4
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522082012
【氏名又は名称】ミライ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ソデン,デクラン
(72)【発明者】
【氏名】フォード,コリン
(72)【発明者】
【氏名】キンセラ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,トニー
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB34
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ05
4C053JJ13
4C053JJ14
4C053JJ32
(57)【要約】
エレクトロポレーション装置は、電極と連結するためのエレクトロポレーションプローブ(26)端子(27)を有する。泡を治療部位に注入して、血液と混合するのではなく、血液を置換し、より高い濃度の活性剤と組織との接触時間を長くして、これによって、効果を高める。泡溶液とともに、より低い濃度の薬剤を使用して、液体の対応物と同じ治療効果を得ることができ、より高い濃度に関連付けられた副作用の有病率を低減する。同等の液体溶液と比較された泡溶液は、特に、同等の液体溶液で通常観察されるような組織導電率の増加を緩和することによって、双極パルスが適用されている場合に、より効率的な細胞エレクトロポレーションを可能にする。より効率的な細胞透過化は、エレクトロポレーションが単独で、または細胞への分子の取り込みを支援するためのツールとして供給されている場合に、より良い結果をもたらすであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロポレーション装置であって、
複数のエレクトロポレーションプローブ(26)端子(27)と、
昇圧電圧を提供するための変圧器(6)と、
高電圧および低電圧または接地レベルを前記プローブ端子(26)に連結するためのスイッチ(24,25)を有するスイッチング回路(7)と、
パルスを前記プローブ端子(27)に供給するための制御スキームにしたがって前記スイッチを制御するように構成されたコントローラ(2,4,5)であって、前記パルスは、間隔を置いて配置されたプローブ電極用の少なくとも2つのプローブ電極端子からなるグループへ供給される、コントローラ(2,4,5)と
を備える、エレクトロポレーション装置。
【請求項2】
前記パルスは、一対の電極に対して双極である、請求項1に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項3】
対の各端子は、電圧振幅で順次駆動され、その対応するプローブ端子と位相がずれて接地される、請求項2に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項4】
前記コントローラは、1μsから5μsの範囲の持続時間の100Vから3000Vの範囲のプラトー(U)振幅までの、0.5μs未満のランプアップ(t)持続時間、および、0.5μs未満の前記電圧からのランプダウン(t)持続時間を、各プローブ電極端子に対して適用するように構成される、請求項1または2または3に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項5】
前記振幅は、700Vから1600Vの範囲にあり、パルスプラトー持続時間は、1μsから3μsの範囲にあり、好ましくは、パルスが供給される通電オン時間は、100μsから300μsの範囲にある、請求項3または4に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項6】
パルスは、即座に連続して供給される、請求項4または5に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項7】
双極周波数は、100kHzから500kHzの範囲にある、請求項2から6のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項8】
前記コントローラは、エレクトロポレーション操作後、ゼロ持続時間に近いプラトーを適用し、パルスにおけるランプダウン減衰を可能にするように構成され、好ましくは、減衰率は、充電されたコンデンサ全体の抵抗器の永続的または調整可能な値によって設定される、請求項1から7のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記端子(27)に接続されるプローブ端子(P1~P7)の相対的な物理的位置を画定するマッピングデータを備え、前記プローブ電極によって境界が定められた空間にわたって電圧を印加するためのパルスを向けるように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項10】
前記コントローラは、同じ電位を有する端子からなる第1のグループ(P1,P2)と、異なる電位を有する対向する第2のグループ(P3,P7)とを、前記第1および第2のマッピングされたプローブ場所によって画定される平面を横切って、およびそれらの間に、電荷を印加するために、同時に駆動するように構成される、請求項9に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項11】
前記第1のグループは高電位で駆動され、前記第2のグループは接地される、請求項10に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項12】
前記コントローラ(2,5)は、前記平面を横切る方向を即座に反転するように構成され、前記第1のグループは、前記第2のグループに以前に印加された電位を印加され、逆もまた同様であり、前記第1および第2のグループは、電荷が前記空間を横切って一方向に印加され、その後、即座に反転されるように再定義される、請求項10または11に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記平面を横切る方向を反転した後、前記平面を画定する第3および第4のグループを駆動するように構成されるが、前記第3および第4のグループ間の方向は、前記第1および第2のグループ間の方向とは異なる、請求項10から12のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項14】
前記方向は、ほぼ直交する、請求項13に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項15】
前記マッピングデータは、4つのプローブによって境界が定められた少なくとも1つの四角形によって画定される平面に関する、請求項10から14のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項16】
前記マッピングデータは、複数の5つの四角形に関する、請求項15に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項17】
前記マッピングデータは、前記四角形(P1,P2,P3,P7)を画定し、いくつかのプローブは、異なる隣接する四角形の側面を画定する役割を果たす、請求項16に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項18】
前記スイッチング回路(7)は、各端子の各電圧レベル専用のスイッチ(24,25)を備える、請求項1から17のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項19】
前記スイッチング回路(7)は、端子にパルスとして印加される高電圧レベル専用のスイッチと、前記端子の接地専用のスイッチとを備える、請求項18に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項20】
前記スイッチング回路は、各スイッチに専用のドライバ回路(20,22)を備える、請求項18または19に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項21】
各ドライバ回路(22)は、前記コントローラ(6)によって個別にアドレス指定可能である、請求項20に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項22】
各ドライバ回路(22)は、独立したフローティング電源(20)を備える、請求項20または21に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項23】
前記スイッチは、FET、および/またはGaNトランジスタ、および/またはSiCトランジスタ、および/またはIGBT(24,25)を含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項24】
前記コントローラは、プローブメモリ(40)から所望の駆動プロファイルを決定するために、最初にプローブ(26)問合せを実行するように構成され、任意選択的に、前記プローブ問合せは、前記プローブの最適なパラメータを設定するために前記コントローラによって実行される、請求項1から23のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項25】
前記コントローラは、周波数スペクトルにわたってプローブ電極にAC信号を印加することによって生物学的負荷におけるインピーダンスを測定するように構成され、任意選択的に、前記周波数スペクトルは、1kHzから100kHzの範囲にある、請求項1から24のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項26】
前記インピーダンス測定は、エレクトロポレーション駆動前に実行され、前記コントローラは、好ましくは、500mA未満の一対の電極を横切る電流を達成するために、前記測定されたインピーダンスにしたがって駆動パラメータを自動的に調整するように構成される、請求項25に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置と、前記プローブ端子に接続された複数のプローブ電極。
【請求項28】
前記プローブ電極は、中空であり、エレクトロポレーションの前、および/または間、および/または後に、組織への物質の流入のための少なくとも1つの開口部(204)を有する少なくとも1つの電極針(202)を備えるプローブヘッド(200)内にある、請求項27に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項29】
コントローラは、パルスで前記針を駆動することも含む方法において、前記1つまたは複数の針(202)への物質の流れ(201)を制御するように構成される、請求項28に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項30】
請求項27から29のいずれか一項に記載の装置の操作の方法であって、前記方法は、前記プローブ電極(P1~P7)を生物学的負荷に挿入するステップと、前記装置が前記電極およびエレクトロポレーションのための前記負荷に、双極電圧パルスを印加するステップとを含む、方法。
【請求項31】
前記コントローラは、対向するプローブ電極の前記パルスを、双極的に印加する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記パルスプラトー(U)持続時間(Δt)は、1μsから5μs、好ましくは、1μsから3μsの範囲にある、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記パルスプラトー電圧振幅(U)は、100Vから3000V、好ましくは、700Vから1600Vの範囲にある、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記プローブ電極がパルス化される能動的治療の通電オン時間持続時間は、100μsから300μsの範囲にあり、2つの連続するパルスのサイクルに基づく前記双極パルス周波数は、100kHzから500kHzの範囲にある、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記電極は、前記プローブ電極に電流が流れるように駆動され、前記生物学的負荷は、透過化される細胞へのDNAの移動のために500mA未満である、請求項30から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
細胞切除の処理を補助するために高浸透圧溶液が部位に注入される不可逆的エレクトロポレーションがあり、前記溶液は、カルシウムを含んでもよい、請求項30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
カルシウムイオン(Ca++)は、2mMol/Lから250mMol/Lの範囲、好ましくは、50mMol/Lから150mMol/Lの範囲の濃度で腫瘍内に注入され、任意選択的に、2mMol/Lから150mMol/Lの濃度のカルシウムイオン(Ca++)を含む溶液が、500V/cmから1500V/cmの印加パルス電圧、1μsから3μsのパルスプラトー持続時間、1000から10,000の範囲のパルス数で、エレクトロポレーションによる一時的透過化のために注入される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(a)前記部位へのDNAの注入、
(b)前記プローブ電極の挿入、
(c)細胞を透過化するための前記電極へのパルスの駆動であって、前記駆動は、100kHzから500kHzの範囲の周波数の双極パルス、1μsから5μs、好ましくは、1μsから3μsの範囲のパルスプラトー持続時間、および100Vから3000Vの範囲の電圧振幅であり、および
b.10msから100msのパルス持続時間中、5V未満の電気泳動フェーズ低電圧パルスで前記DNAまたは薬剤を前記細胞に引き込む低周波数電極駆動
からなる各ステップにおいて、可逆的エレクトロポレーションで前記細胞に前記DNAを供給する、請求項30から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
可逆的エレクトロポレーションで細胞にDNAを供給し、前記装置は、
50μsから250μsのパルス持続時間を有する800V/cmから1600V/cm、好ましくは、1000V/cmから1200V/cm、および100μsから200μsのパルス持続時間の単極を供給する、および/または、
1μsから5μsの範囲のパルスプラトー持続時間と、100V/cmから3000V/cmの範囲の電圧振幅とを有する、100kHzから500kHzの範囲の周波数の双極パルスを供給する、および/または、
10msから10sのパルス持続時間を有する、1V/cmから200V/cm、好ましくは、20msから100msのパルス持続時間を有する、100V/cmから150V/cmの単極パルスを供給する
ように動作する、請求項30から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
たとえば、化学療法剤などの薬物が、前記部位に注入され、エレクトロポレーションが行われ、前記薬物が前記細胞内に移動して、細胞切除を引き起こす、請求項30から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記コントローラは、前記電極のパルス駆動後、ほぼゼロ持続時間のパルスで、蓄積された電荷を放電し、その後、指数関数的減衰が続く、請求項30から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記コントローラは、少なくとも一対の電極間の前記生物学的負荷のインピーダンスを測定し、エレクトロポレーション中の過剰な電流を回避するためにパルス電圧振幅を自動的に設定する、請求項30から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
被験体においてエレクトロポレーションを実行する方法であって、治療される細胞を取り囲む標的環境に液体を注入し、エレクトロポレーションプローブが部位にパルスを供給するステップを備える、方法。
【請求項44】
前記液体は、液体およびガスのバブルを有する泡の形態である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記泡は、液体よりも高いインピーダンス、したがって、前記液体よりも低い導電率を達成するために供給される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記泡は、前記ガスの混合を補助するための発泡剤を含む、請求項43または44に記載の方法。
【請求項47】
前記ガスは、空気および/またはCO2を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
液体に対するガスの比は、体積でおよそ1:2から1:10の範囲にある、請求項44から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記発泡剤は、アルブミンおよびヒト血清アルブミンのうちの1つまたは複数を含む、請求項46から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記発泡剤濃度は、5%から80%w/wの範囲にある、請求項46から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記発泡剤は、ポリドカノールまたはテトラデシル硫酸ナトリウム(STS)を含む、請求項46から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記液体は、活性剤治療組成物を含む、請求項43から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物は、カルシウム、カリウム、ブレオマイシン、シスプラチン、DNA、RNAから選択される1つまたは複数を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記治療組成物は、カルシウムイオン、カリウムイオン、ブレオマイシン、シスプラチン、DNA、またはRNAのうちの1つまたは複数を含む、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
前記液体は、イオンの濃度を有する、請求項43から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
2mMolから150mMolの濃度のカルシウムイオンまたはカリウムイオンを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記電気パルスは、0.05μsから5μsの範囲のパルス長を有する、請求項43から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記電気パルスは双極である、請求項43から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記電気パルスは、1KHzから1000KHzの範囲の周波数で1000回まで繰り返される1μsから1000μsの範囲のトレインごとの「オン」通電時間でトレインに供給される、請求項43から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記治療は、電気化学療法であり、前記パルス電圧は、500V/cmから1500V/cmの範囲にあり、および/または前記パルス持続時間は、50μsから100μsの範囲にあり、および/または前記パルス周波数は、1Hzから5000Hzの範囲にあり、および/または前記パルス数は、4から8の範囲にある、請求項43から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記治療は、不可逆的エレクトロポレーションであり、前記パルス電圧は、1500V/cmから3000V/cmの範囲にあり、および/または前記パルス持続時間は、70から100μsの範囲にあり、および/または前記パルス周波数は、0.5Hzから10Hzの範囲にあり、および/または前記パルス数は、90から200の範囲にある、請求項43から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記治療は、高周波数不可逆的エレクトロポレーションであり、前記パルス電圧は、2500V/cmから5000V/cmの範囲にあり、および/または前記パルス持続時間は、1μsから5μsの範囲にあり、および/または前記パルス周波数は、100kHzから500kHzの範囲にあり、および/または前記パルス数は、100を超える、請求項43から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記治療は、エレクトロポレーションおよび電気分解(E2)であり、前記パルス電圧は、100V/cmから3000V/cmの範囲にあり、および/または供給される電荷は、100μFを超え、および/または前記パルスは、指数関数的減衰波である、請求項43から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記治療は、DNAまたはRNA供給であり、前記パルス電圧は、1V/cmから1000V/cmの範囲にあり、および/またはパルスは、単極方形波である、請求項43から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記液体は、好ましくは泡の形態で、治療される前記組織への局所麻酔薬の分散を提供する、請求項43から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記局所麻酔薬は、リグノカインを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記局所麻酔薬は、アドレナリンの有無に関わらず、5から20mg/mlの割合でリグノカインを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記局所麻酔薬は、メピバカインを含む、請求項54から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記局所麻酔薬は、10から30mg/mlの割合でメピバカインを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
好ましくは泡の形態である前記液体は、カルシウムイオン、カリウムイオン、ブレオマイシン、DNAのうちのいずれか1つまたは複数などの選択された分子と組み合わせて投与される、請求項65から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
エレクトロポレーション中の細胞の透過化または切除を補助する際における使用のための泡。
【請求項72】
治療組成物を含む、請求項71に記載の泡。
【請求項73】
前記組成物は、カルシウム、カリウム、ブレオマイシン、シスプラチン、DNA、RNAから選択される1つまたは複数を含む、請求項72に記載の泡。
【請求項74】
イオンの濃度を有する、請求項71から73のいずれか一項に記載の泡。
【請求項75】
2mMolから150mMolの濃度のカルシウムイオンまたはカリウムイオンを含む、請求項74に記載の泡。
【請求項76】
前記泡を形成するために、液体内のガスの混合を補助するための発泡剤を含む、請求項71から75のいずれか一項に記載の泡。
【請求項77】
前記ガスは、空気および/またはCO2を含む、請求項76に記載の泡。
【請求項78】
前記発泡剤は、アルブミンおよびヒト血清アルブミンのうちの1つまたは複数を含む、請求項76または77に記載の泡。
【請求項79】
前記発泡剤濃度は、5%から80%w/wの範囲にある、請求項76から78のいずれか一項に記載の泡。
【請求項80】
前記発泡剤は、ポリドカノールまたはテトラデシル硫酸ナトリウム(STS)を含む、請求項76から79のいずれか一項に記載の泡。
【請求項81】
液体に対するガス(たとえば、室内空気またはCO2ガス)の比は、体積で1:2から1:10の範囲にある、請求項71から80のいずれか一項に記載の泡。
【請求項82】
局所麻酔薬を含む、請求項71から81のいずれか一項に記載の泡。
【請求項83】
前記局所麻酔薬は、リグノカインを含む、請求項82に記載の泡。
【請求項84】
前記局所麻酔薬は、アドレナリンの有無に関わらず、5から20mg/mlの割合でリグノカインを含む、請求項83に記載の泡。
【請求項85】
前記局所麻酔薬は、メピバカインを含む、請求項82から84のいずれか一項に記載の泡。
【請求項86】
前記局所麻酔薬は、10から30mg/mlの割合でメピバカインを含む、請求項85に記載の泡。
【請求項87】
カルシウムイオン、カリウムイオン、ブレオマイシン、DNAのうちのいずれか1つまたは複数などの選択された分子と組み合わされた麻酔薬を含む、請求項71から86のいずれか一項に記載の泡。
【請求項88】
中空であり、エレクトロポレーションの前、および/または間、および/または後に、組織への物質の流入のための少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの電極針を備える、エレクトロポレーションプローブヘッド。
【請求項89】
複数の針が存在する、請求項88に記載のエレクトロポレーションプローブヘッド。
【請求項90】
前記針は、0.1mmから1.8mmの範囲の最大内幅寸法および0.25mmから2.5mmの範囲の最大外幅寸法を有する、請求項88または89に記載のエレクトロポレーションプローブヘッド。
【請求項91】
前記開口部は、0.05mmから1.5mmの範囲の最大幅寸法を有する、請求項88から90のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションプローブヘッド。
【請求項92】
複数の針が存在し、前記針の間隔は、2mmから3cmの範囲にある、請求項88から91のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションプローブヘッド。
【請求項93】
前記開口部は、針の長さに沿って螺旋状または千鳥状に配置される、請求項88から92のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションプローブヘッド。
【請求項94】
前記開口部は、少なくとも1つの針が別の針に面している側に、より大きな分布を有する、請求項88から93のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションプローブヘッド。
【請求項95】
請求項88から94のいずれか一項に記載のプローブヘッドに連結されたパルス発生器を備える、エレクトロポレーション装置。
【請求項96】
前記針へのパルスの供給を制御し、所望の方法にしたがって前記針への物質の供給を制御するように適合されたコントローラをさらに備える、請求項95に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項97】
前記コントローラは、第1の物質の少なくともいくつかの針への供給、前記針のパルシング、および第2の物質の前記針への供給を順に引き起こすように構成される、請求項96に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項98】
前記第1の物質は、前記第2の物質よりも低い導電率を有する、請求項97に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項99】
前記第1の物質は、泡を含む、請求項97または98に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項100】
前記第1の物質は、泡を含み、前記第2の物質は、泡を含み、前記第1の物質の泡は、前記第2の物質の泡よりも高いガス濃度を有する、請求項99に記載のエレクトロポレーション装置。
【請求項101】
前記開口部(204)から流出するように前記針を通して物質をポンプで同時に送り、前記針にパルスを印加するステップを含む、請求項95から100のいずれか一項に記載のエレクトロポレーション装置の操作の方法。
【請求項102】
前記パルスの印加前に、前記針を通して物質を供給するステップをさらに含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記パルスの印加後に、前記針を通して物質を供給するステップをさらに含む、請求項101または102に記載の方法。
【請求項104】
エレクトロポレーションにおける使用のための溶液であって、2mMol/Lから250mMol/Lの範囲の濃度のカルシウムイオン(Ca++)を含む、溶液。
【請求項105】
前記濃度は、50mMol/Lから150mMol/Lの範囲にある、請求項104に記載の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロポレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願第2006/089674号(Waltersら)およびWO2018/200800号(bowersら)は、エレクトロポレーション(electroporation)装置を説明している。
【0003】
エレクトロポレーションは、細胞膜の透過性(permeability)を高めるために電場を細胞に印加する医学的および分子生物学的技法(medical and molecular biology technique)であり、細胞に対して以前は不浸透性(impervious)であった分子を導入可能にする。エレクトロポレーションには、多くの可能性のある応用分野があり、細胞膜への影響が可逆的および不可逆的に適用される場合に使用できる。典型的なエレクトロポレーション処理では、細胞膜を一時的に透過化するために、短く強い電気パルスを発生させる。
【0004】
たとえば、化学療法の細胞内受動拡散(intracellular passive diffusion)を可能にすることに関連して使用される場合がある可逆的エレクトロポレーションでは、電場は特定の電圧しきい値を下回り、治療後に細胞膜を修復することを可能にする。可逆的エレクトロポレーションは、薬物または遺伝子などの分子を、電場のみによる細胞死を誘発せずに通常はこの物質に対して透過性ではない細胞または分子に入れることを含んでもよい。細胞の電場しきい値は、細胞ごとに異なる。不可逆的エレクトロポレーションでは、電場はこの電圧しきい値よりも高く、細胞膜に永続的なナノポア(permanent nanopore)を生成し、細胞の恒常性を破壊し、その結果、正常な細胞機能の破壊によるアポトーシス(apoptosis)と壊死(necrosis)の組合せによって細胞が死ぬ。
【0005】
本発明は、生物学的負荷に適用された場合、理論的理想に近い高電圧の超短エレクトロポレーションパルス(好ましくはマイクロ秒範囲、場合によってはナノ秒範囲まで)を、鋭いターンオン時間およびターンオフ時間で、安定した振幅で供給するためのエレクトロポレーションプローブ駆動および装置および方法を提供することに関する。
【0006】
さらなる目的は、物理的に大きなサイズの駆動装置の必要性を回避することである。
さらなる目的は、治療される細胞を取り囲む、より推奨される治療環境を達成することに関する。
【0007】
参考文献
参考文献:B.L.Ibeyら著、Bipolar nanosecond electric pluses are less efficient at electropermeabilization and killing cells than monopolar pulses(双極ナノ秒電気パルスは、単極パルスよりも電気透過化および細胞の死滅における効率が低い)、Biochem.Biophys.Res.Commum.、第443巻、第2号、第568頁73、2014年1月、10.1016/j.bbrc.2013.12.004。
【0008】
参考文献:Polajzer T、Dermol-Cerne J、Rebersek M、O’Connor R、Miklavcic D著、Cancellation effect is present in high-frequency reversible and irreversible electroporation(相殺効果は、高周波数の可逆的および不可逆的エレクトロポレーションに存在する)、生体電気化学、2020年4月;132:107442、doi:10.1016/j.bioelechem.2019.107442.Epub 2019年12月24日、PubMed PMID:31923714。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は、請求項1から29に記載のエレクトロポレーション装置、請求項30から42に記載の装置の操作の方法、請求項43から70に記載のエレクトロポレーション方法、請求項71から94に記載のエレクトロポレーションにおける使用のための泡、請求項95から100に記載のエレクトロポレーション装置、請求項101から103に記載の装置の操作の方法、および請求項104および105に記載のエレクトロポレーションのためのカルシウムイオンを含む溶液を説明する。
【0010】
通常、エレクトロポレーション治療は、細胞死を誘発するために、パルスを単独で(不可逆的エレクトロポレーション)または化学療法と組み合わせて(電気化学療法)使用して、50~100μsの範囲のパルス長を組み込む。より最近では、より短いマイクロ秒(<10μs)の高周波数不可逆的エレクトロポレーションおよびナノ秒(<1μs)のパルスは、双極パルスを使用した場合、単極パルスと比較して、細胞透過化の程度に相殺効果が観察されることが解明された。
【0011】
本発明では、治療される細胞の周囲の改善された環境を達成するための装置および方法を提供する。これらの改善は、短いマイクロ秒範囲(<10μs)では、双極パルスを使用するときに相殺効果(細胞透過化の低下)があり、それは、細胞を取り囲む溶液の導電率によって部分的に決定されるという理解から生じる。短い双極電気パルス(<10μs)によって生成された細胞透過化(細胞膜上に細孔が生成される)の有効性は、導電率が低いほど、より効率的な電気パルス誘導細胞膜透過化が可能になる導電率の影響を受ける。細胞の周囲の導電率は、その領域の液体の量と、局所麻酔薬または他のイオン含有溶液などの溶液の局所注入によって部分的に影響を受ける。エレクトロポレーションされる細胞を取り囲む導電率の増加は、より高い電流をもたらし、これは治療に有害であり、患者の細胞透過化および痛みの感覚を低下させる。導電性の高い環境では、エレクトロポレーション治療により、治療中にガスが発生し、重度の音響症状および機械的組織損傷を伴う圧力波(放電、火花、またはアーク放電と呼ばれる)が発生する場合がある。エレクトロポレーション処理自体の間に発生する細胞溶解およびイオンの放出は、組織の導電率の増加を引き起こし、大電流および潜在的な機械の故障および不適切なパルス供給をもたらす。
【0012】
以下では、我々は、パルスを提供するための改良されたエレクトロポレーション装置、治療される細胞の周囲の環境を改善する際における使用のための物質、および、同じ針で組織に挿入される任意の所望の順序での、物質の注入と、エレクトロポレーションパルスの印加との両方のために改良されたプローブヘッドについて説明する。
【0013】
我々は、複数のエレクトロポレーションプローブ端子と、昇圧電圧を提供するための変圧器と、エレクトロポレーションのためにプローブ端子にパルスを供給するためのスイッチング回路とを備えるエレクトロポレーション装置について説明する。スイッチング回路は、好ましくは、高電圧および低電圧または接地レベルをプローブ端子に連結するためのスイッチと、パルスをプローブ端子に供給するための制御スキームにしたがって前記スイッチを制御するように構成されたコントローラとを有し、ここでは、前記パルスは、間隔を置いて配置されたプローブ電極用の少なくとも2つのプローブ電極端子からなるグループへ供給される。
【0014】
好ましくは、パルスは、一対の電極に対して双極である。好ましくは、対の各端子は、電圧振幅で順次駆動され、対応するプローブ端子と位相がずれて接地される。
好ましくは、コントローラは、各プローブ電極端子に対して、1μsから5μsの範囲の持続時間の100Vから3000Vの範囲のプラトー(U)振幅まで、0.5μs未満のランプアップ(t)持続時間、および、0.5μs未満の前記電圧からのランプダウン(t)持続時間を、適用するように構成される。
【0015】
任意選択的に、振幅は700Vから1600Vの範囲にあり、パルスプラトー持続時間は、1μsから3μsの範囲にあり、好ましくは、パルスが供給される通電オン時間は、100μsから300μsの範囲にある。好ましくは、パルスは即座に連続して供給される。好ましくは、双極周波数は100kHzから500kHzの範囲にある。
【0016】
好ましくは、コントローラは、エレクトロポレーション操作後、ゼロ持続時間に近いプラトーを適用し、パルスにおけるランプダウン減衰を可能にするように構成され、好ましくは、減衰率は、充電されたコンデンサ全体の抵抗器の永続的または調整可能な値によって設定される。
【0017】
任意選択的に、コントローラは、端子に接続されるプローブ端子の相対的な物理的位置を画定するマッピングデータを備え、プローブ電極によって境界が定められた空間にわたって電圧を印加するためのパルスを向けるように構成される。
【0018】
好ましくは、コントローラは、前記第1および第2のマッピングされたプローブ場所によって画定される平面を横切って、およびそれらの間に、電荷を印加するために、同じ電位で端子の第1のグループを、異なる電位で対向する第2のグループを同時に駆動するように構成される。
【0019】
任意選択的に、第1のグループは高電位で駆動され、第2のグループは接地される。
好ましくは、コントローラは、平面を横切る方向を即座に反転するように構成され、第1のグループは、第2のグループに以前に印加された電位を印加され、逆もまた同様であり、第1および第2のグループは、電荷が空間を横切って一方向に印加され、その後、即座に反転されるように再定義される。
【0020】
好ましくは、コントローラは、平面を横切る方向を反転した後、前記平面を画定する第3および第4のグループを駆動するように構成されるが、第3および第4のグループ間の方向は、第1および第2のグループ間の方向とは異なる。
【0021】
好ましくは、前記方向はほぼ直交する。好ましくは、マッピングデータは、4つのプローブによって境界が定められた少なくとも1つの四角形によって画定される平面に関する。好ましくは、マッピングデータは、複数の四角形に関する。
【0022】
任意選択的に、マッピングデータは四角形を画定し、いくつかのプローブは、異なる隣接する四角形の側面を画定する役割を果たす。
好ましくは、スイッチング回路は、各端子の各電圧レベル専用のスイッチを備える。好ましくは、スイッチング回路は、端子にパルスとして印加される高電圧レベル専用のスイッチと、端子の接地専用のスイッチとを備える。
【0023】
好ましくは、スイッチング回路は、各スイッチに専用のドライバ回路を備える。好ましくは、各ドライバ回路は、コントローラによって個別にアドレス指定可能である。任意選択的に、各ドライバ回路は、独立したフローティング電源を備える。好ましくは、スイッチは、FETおよび/またはIGBTを含む。
【0024】
好ましくは、コントローラは、プローブメモリから所望の駆動プロファイルを決定するために、最初にプローブ問合せを実行するように構成される。好ましくは、プローブ問合せは、プローブの最適なパラメータを設定するためにコントローラによって実行される。
【0025】
好ましくは、コントローラは、周波数スペクトルにわたってプローブ電極にAC信号を印加することによって生物学的負荷におけるインピーダンスを測定するように構成される。好ましくは、周波数スペクトルは、1kHzから100kHzの範囲にある。好ましくは、インピーダンス測定は、エレクトロポレーション駆動前に実行され、コントローラは、好ましくは500mA未満の一対の電極を横切る電流を達成するために、前記測定されたインピーダンスにしたがって駆動パラメータを自動的に調整するように構成される。
【0026】
我々は、本明細書に記載の任意の例のエレクトロポレーション装置、および前記プローブ端子に接続された複数のプローブ電極も説明する。
1つの例では、プローブ電極は、中空であり、エレクトロポレーションの前、および/または間、および/または後に、組織への物質の流入のための少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの電極針を備えるプローブヘッド内にある。好ましくは、コントローラは、パルスで針を駆動することも含む方法において、1つまたは複数の針への物質の流れを制御するように構成される。
【0027】
我々はまた、そのような装置の操作の方法を説明し、この方法は、前記プローブ電極を生物学的負荷に挿入し、装置が、電極およびエレクトロポレーションのための負荷に、双極電圧パルスを印加するステップを含む。
【0028】
好ましくは、コントローラは、対向するプローブ電極のパルスを双極的に印加する。
好ましくは、パルスプラトー(U)持続時間(Δt)は、1μsから5μs、好ましくは1μsから3μsの範囲にある。好ましくは、パルスプラトー電圧振幅(U)は、100Vから3000V、好ましくは700Vから1600Vの範囲にある。
【0029】
好ましくは、プローブ電極がパルス化される能動的治療の通電オン時間持続時間は、100μsから300μsの範囲にあり、2つの連続するパルスのサイクルに基づく双極パルス周波数は、100kHzから500kHzの範囲にある。
【0030】
好ましくは、電極は、プローブ電極および生物学的負荷に流れる電流は、透過化される細胞へのDNAの移動のために500mA未満であるように駆動される。
好ましくは、細胞切除の処理を補助するために高浸透圧溶液が部位に注入される不可逆的エレクトロポレーションがあり、前記溶液はカルシウムを含み得る。
【0031】
好ましくは、カルシウムイオン(Ca++)は、2mMol/Lから250mMol/Lの範囲、好ましくは2mMol/Lから150mMol/Lの範囲の濃度で腫瘍内に注入される。
【0032】
好ましくは、2mMol/Lから150mMol/Lの濃度のカルシウムイオン(Ca++)を含む溶液が、500V/cmから1500V/cmの印加パルス電圧、1μsから3μsのパルスプラトー持続時間、1000から10,000の範囲のパルス数で、エレクトロポレーションによる一時的透過化のために注入される。
【0033】
他の推奨例では、カルシウムイオン(Ca++)は、2mMol/Lから250mMol/Lの範囲、好ましくは2mMol/Lから150mMol/Lの範囲の濃度で腫瘍内に注入される。
【0034】
他の推奨例では、2mMol/Lから150mMol/Lの濃度のカルシウムイオン(Ca++)を含む溶液が、500V/cmから1500V/cmの印加パルス電圧、1μsから3μsのパルスプラトー持続時間、1000から10,000の範囲のパルス数で、エレクトロポレーションによる一時的透過化のために注入される。
【0035】
1つの例では、
(a)部位へのDNAの注入、
(b)プローブ電極の挿入、
(c)細胞を透過化するための電極へのパルスの駆動であって、前記駆動は、100kHzから500kHzの範囲の周波数の双極パルス、1μsから5μs、好ましくは1μsから3μsの範囲のパルスプラトー持続時間、および100Vから3000Vの範囲の電圧振幅であり、および
(d)10msから100msのパルス持続時間中、5V未満の電気泳動フェーズ低電圧パルスでDNAまたは薬剤を細胞に引き込む低周波数電極駆動からなるステップで、可逆的エレクトロポレーションで細胞にDNAを供給する。
【0036】
1つの例では、たとえば、化学療法剤などの薬物が、その部位に注入され、エレクトロポレーションが行われ、薬物が細胞内に移動して、細胞切除を引き起こす。
1つの例では、コントローラは、電極のパルス駆動後、ほぼゼロ持続時間のパルスで、蓄積された電荷を放電し、その後、指数関数的減衰が続く。
【0037】
1つの例では、コントローラは、少なくとも一対の電極間の生物学的負荷のインピーダンスを測定し、エレクトロポレーション中の過剰な電流を回避するためにパルス電圧振幅を自動的に設定する。
【0038】
我々はまた、被験体においてエレクトロポレーションを実行する方法を説明し、この方法は、治療される細胞を取り囲む標的環境に液体を注入し、エレクトロポレーションプローブがその部位にパルスを供給するステップを備える。
【0039】
液体は、好ましくは、液体およびガスのバブルを有する泡の形態の多くの使用例である。好ましくは、泡は、液体よりも高いインピーダンス、したがって、液体よりも低い導電率を達成するために供給される。好ましくは、泡は、ガスの混合を補助するための発泡剤を含む。泡内のガスは、空気および/またはCO2を含み得る。好ましくは、液体に対するガスの比は、体積でおよそ1:2から1:10の範囲にある。好ましくは、発泡剤は、アルブミンおよびヒト血清アルブミンのうちの1つまたは複数を含む。好ましくは、発泡剤濃度は、5%から80%w/wの範囲にある。好ましくは、発泡剤は、ポリドカノールまたはテトラデシル硫酸ナトリウム(STS)を含む。
【0040】
好ましくは、液体は、活性剤治療組成物を含む。好ましくは、組成物は、カルシウム、カリウム、ブレオマイシン、シスプラチン、DNA、RNAから選択される1つまたは複数を含む。好ましくは、治療組成物は、カルシウムイオン、カリウムイオン、ブレオマイシン、シスプラチン、DNA、またはRNAのうちの1つまたは複数を含む。
【0041】
液体は、好ましくは、いくつかの用途のために、たとえば2mMolから250mMolの濃度、またはより好ましくは2mMolから150mMolの濃度のカルシウムまたはカリウムイオンである、ある濃度のイオンを有する。
【0042】
好ましくは、電気パルスは、0.05μsから5μsの範囲のパルス長を有する。
好ましくは、多くの治療において、電気パルスは双極である。
好ましくは、電気パルスは、1KHzから1000KHzの範囲の周波数で1000回まで繰り返される1μsから1000μsの範囲のトレインごとの「オン」通電時間でトレインで供給される。
【0043】
いくつかの例では、治療は電気化学療法であり、パルス電圧は、500V/cmから1500V/cmの範囲にあり、および/またはパルス持続時間は、50μsから100μsの範囲にあり、および/またはパルス周波数は、1Hzから5000Hzの範囲にあり、および/またはパルス数は、4から8の範囲にある。
【0044】
いくつかの例では、治療は、不可逆的エレクトロポレーションであり、パルス電圧は、1500V/cmから3000V/cmの範囲にあり、および/またはパルス持続時間は、70から100μsの範囲にあり、および/またはパルス周波数は、0.5Hzから10Hzの範囲にあり、および/またはパルス数は、90から200の範囲にある。
【0045】
いくつかの例では、治療は、高周波数不可逆的エレクトロポレーションであり、パルス電圧は、2500V/cmから5000V/cmの範囲にあり、および/またはパルス持続時間は、1μsから5μsの範囲にあり、および/またはパルス周波数は、100kHzから500kHzの範囲にあり、および/またはパルス数は、100を超える。
【0046】
いくつかの例では、治療は、エレクトロポレーションおよび電気分解(E2)であり、パルス電圧は、100V/cmから3000V/cmの範囲にあり、および/または供給される電荷は、100μFを超え、および/またはパルスは、指数関数的減衰波である。
【0047】
我々はまた、治療が、DNAまたはRNA供給であり、パルス電圧が、1V/cmから1000V/cmの範囲にあり、および/またはパルスが、単極方形波である方法についても説明する。
【0048】
1つの態様では、液体は、好ましくは泡の形態で、治療される組織への局所麻酔薬の分散を提供する。1つの態様では、局所麻酔薬は、リグノカイン(「リドカイン」としても知られている)を含む。1つの態様では、局所麻酔薬は、アドレナリンの有無に関わらず、5から20mg/mlの割合でリグノカインを含む。1つの態様では、局所麻酔薬は、メピバカインを含む。1つの態様では、局所麻酔薬は、10から30mg/mlの割合でメピバカインを含む。
【0049】
1つの態様では、好ましくは、泡の形態の麻酔薬を有する液体は、カルシウムイオン、カリウムイオン、ブレオマイシン、DNAのうちのいずれか1つまたは複数などの選択された分子と組み合わせて投与される。
【0050】
我々はまた、エレクトロポレーション中の細胞の透過化または切除を補助する際における使用のための泡も説明する。
好ましくは、泡は、治療組成物を含む。好ましくは、組成物は、カルシウム、カリウム、ブレオマイシン、シスプラチン、DNA、RNAから選択される1つまたは複数を含む。
【0051】
好ましくは、泡は、ある濃度のイオンを有する。好ましくは、泡は、2mMolから150mMolの濃度のカルシウムイオンを含む。
1つの推奨例では、泡は、カルシウムイオン、カリウムイオン、ブレオマイシン、DNAのうちのいずれか1つまたは複数などの選択された分子と組み合わせた麻酔薬を含む。
【0052】
我々はまた、中空であり、エレクトロポレーションの前、および/または間、および/または後に、組織への物質の流入のための少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの電極針を備えるエレクトロポレーションプローブヘッドを説明する。
【0053】
好ましくは、複数の針が存在する。針は、0.1mmから1.8mmの範囲の最大内幅寸法および0.25mmから2.5mmの範囲の最大外幅寸法を有し得、開口部は、0.05mmから1.5mmの範囲の最大幅寸法を有し得る。
【0054】
1つの例では、複数の針が存在し、針の間隔は、2mmから3cmの範囲にある。
開口部は、針の長さに沿って螺旋状または千鳥状に配置され得る。開口部は、少なくとも1つの針が別の針に面している側に、より多くの分布を有し得る。
【0055】
我々はまた、中空であり、エレクトロポレーションの前、および/または間、および/または後に、組織への物質の流入のための少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの電極針を備えるプローブヘッドに連結されたパルス発生器を備えるエレクトロポレーション装置を説明する。
【0056】
好ましくは、装置は、針へのパルスの供給を制御し、所望の方法にしたがって針への物質の供給を制御するように適合されたコントローラを備える。
好ましくは、コントローラは、第1の物質の少なくともいくつかの針への供給、前記針のパルシング、および第2の物質の前記針への供給を順に引き起こすように構成される。好ましくは、第1の物質は、第2の物質よりも低い導電率を有する。1つの例では、第1の物質は、泡を含む。1つの例では、第1の物質は、泡を含み、第2の物質は、泡を含み、第1の物質の泡は、第2の物質の泡よりも高いガス濃度を有する。
【0057】
我々はまた、開口部から流出するように針を通して物質をポンプで送り、針にパルスを印加することを含むエレクトロポレーション装置の操作の方法を説明する。この方法は、パルスの印加前および/またはパルスの印加後に、針を通して物質を供給することを含み得る。
【0058】
本発明は、以下の添付の図面を参照して例としてのみ与えられる、以下のいくつかの実施形態の以下の説明からより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】エレクトロポレーション装置の斜視図である。
図2】装置のブロック図である。
図3】変圧器を備えた高電圧発生器を示す図である。
図4】パルススイッチングおよび制御ブロックを詳細に示す図である。
図5】使用中の生物学的負荷への電力の流れを示す図である。
図6】プローブの電気的態様を示す図である。
図7】コントローラによって実施されるパルス発生器アルゴリズムのフロー図である。
図8】生物学的負荷におけるプローブによる電圧の空間的印加の図解である。
図9】発生器によって供給されるエレクトロポレーションパルスの図であり、そのパラメータ値は、以下の表1に示される。
図10】CROによってキャプチャされたサンプルパルスの画像である。
図11】エレクトロポレーション前後の組織インピーダンスを示す一連のプロットである。
図12】比較目的のための4つのシナリオの腫瘍体積変化の一連のプロットである。
図13】より短い持続時間およびより高い周波数に対する利点を示す、エレクトロポレーションによる筋収縮のプロットである。
図14】1つの例のパルス波形のプロットである。
図15】エレクトロポレーションによるヨウ化プロピジウムの取り込みのプロットである。
図16】注入された泡溶液と比較した、注入された液体溶液を含む組織におけるインピーダンスと電流を示すプロットである。
図17】低導電率緩衝液と高導電率緩衝液とについての細胞透過化対電場強度のプロットである。
図18】細胞生存対電場強度低および高導電性緩衝液のプロットである。
図19】エレクトロポレーション装置の泡注入ヘッドを示す図である。
図20】様々な電圧駆動レベルでの泡の使用から生じるエレクトロポレーション電流の減少を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1および図2を参照して示すように、エレクトロポレーション装置1は、ユーザインターフェース3およびプローブ駆動回路4に連結されたメインコントローラ2を含み、これらすべてはハウジング9に取り付けられる。コントローラ2およびインターフェース3は、ユーザ側の機能を提供する一方、駆動回路4は、プローブ26にパルスを提供する。
【0061】
駆動回路4は、
高電圧が不注意に低電圧制御電子機器に伝送されるのを回避するために、光アイソレータ18によって、駆動装置4の残りの部分から分離されているパルス制御ユニット5と、
変圧器を備え、図3を参照して以下でより詳細に説明するように、コンデンサ間に最大1.5kVを提供する、高電圧発生器6と、
図4を参照してより詳細に説明するように、7つのプローブ電極26のアレイに高周波数双極パルスを供給するためのパルススイッチングコントローラ7と、
電圧設定および維持回路8とを備える。
【0062】
タッチスクリーンインターフェース3は、高電圧の発生およびパルス制御、ならびに電圧、パルス持続時間、極性、および向きを管理するコントローラ2に動作可能に結合される。このレベルの制御は、ブロック5~8における一連の制御回路を介して実現される。
【0063】
高電圧発生器6が、図3に示される。たとえば48Vの低電圧DC入力を受け取るスイッチコントローラ5。この入力レベルは、以下に説明するように、プローブ26に供給される、結果として生じるパルス強度レベルを設定する。スイッチコントローラ5は、変圧器一次側1が通電される時間を調整して、コンデンサ14の出力電圧を制御する。(医療グレードのオプトカプラデバイス18を介した適切な隔離を伴う)スイッチコントローラ5への出力からのフィードバックにより、電圧を正確に設定および維持できる。したがって、コンデンサ14の出力電圧は、広範囲(通常、100Vから約1.5KV)にわたって変化できる。
【0064】
この例では、変圧器11、12は入力電圧を1.5kVに昇圧し、これは、従来の構造の整流器13によって整流される。この高電圧レベル(現在はDC)は、プローブ電極(26)への出力として、平衡抵抗器15および1000μFのコンデンサ14の両端に現れる。この例では、4つのコンデンサ14のおのおのは、おのおの最大450Vを取り扱う。充電時間は、10秒未満である。
【0065】
ダイオード13は、全出力電圧に加えて、変圧器におけるスイッチングによって発生するピーク逆電圧に耐える。これは、通常、順方向電圧の数倍である。また、高電圧コンデンサ14は、必要な電圧における動作を可能にするために直列に配置され、コンデンサと並列の抵抗器15とともに、それらの間の電圧の平準化に役立つ。明確化のために、変圧器の出力には2つの巻線12しか示されていないが、実際には、この数はもっと多い場合がある。これら構成要素のパラメータの推奨範囲は2~10である。
【0066】
高電圧発生器6は、このレベルのDC電圧をパルススイッチングコントローラ7に提供し、次に、パルススイッチングコントローラ7は、最適なエレクトロポレーション治療のために、制御されたパターンで端子27を介してこの電圧をプローブ電極26に印加する。これは、以下でより詳細に説明される。
【0067】
図4および図5を参照して示すように、パルススイッチングコントローラ7と、電圧設定および維持回路8とがより詳細に示される。独立したフローティング電源20を備えたドライバ回路22は、コントローラ5によって個別にアドレス指定可能であり、その結果、IGBT24、25は、高電圧パルスをプローブ26端子27へ供給し、プローブに供給される電圧の極性および持続時間が最適化される。
【0068】
プローブの必要な切替を達成するために、ドライバ回路22は、各プローブ26電極を高電圧レールHVまたは接地GNDのいずれかに接続し、ピン対の電圧持続時間および極性をソフトウェアで設定できる。必要な高電圧を実現するために、絶縁ゲート双極トランジスタ(IGBT)(または他の例ではFET)が使用される。より高電圧の場合、トランジスタの数を増やすことができる。7つの回路のみが示されているが、出力数は必要に応じて増減できる。
【0069】
上記のように、パルススイッチングコントローラ7は、おのおのが電源20(主に高電圧発生器6のコンデンサ14)への専用リンクを備えた7つのトップドライバ回路および7つのロードライバ回路22を備える。一連の(この例では7つの)IGBT24/25の対が存在し、各対は1つのプローブ電極端子27用である。たとえば、第1の(図4の左端の)IGBT対24/25は、第1のプローブ電極P1を、レールHVからの高電圧または接地GNDに接続する。同時に、第2のIGBTの対であるプローブ電極P2は、反対に、接地またはHVレールに接続する。したがって、電流は、生物学的負荷を、どちらの方向にも通過する。
【0070】
いつでも、1つのプローブ電極に、高または低(+1.5kVまたは-1.5kV)があり、その反対側の電極は接地される。対の一方の電極の電圧がもう一方の電極より1.5kV低いという事実は、相対的に負のパルスを与える。したがって、対向する電極の対を見ると、電圧は双極であり、相対電圧は+1.5kVから-1.5kVに切り替わる。
【0071】
電圧設定および維持回路8は、比較デバイスと、出力電圧がパルストレイン供給のために設定電圧に維持されることを保証する絶縁制御回路とを備える。
図6を参照して示すように、プローブ26は、プローブタイプ、構成、および出力設定データを格納するメモリデバイス40を有する。メモリデバイス50への単線メモリI/Oラインが存在する。
【0072】
図7を参照して示すように、パルススイッチング制御アルゴリズム100は、パルスの発生および印加のためにコントローラ5によって実施される。プローブ26メモリデバイス40が、プローブタイプ、構成、および出力設定データについて読み取られる運転開始シーケンス50が存在する。プローブ駆動シーケンス100では、低側ドライバ22がオンになり、続いて高側ドライバ22がオンになる。コントローラは、必要なパルス幅および補償時間を待ってから、関連付けられた高側ドライバ22をオフにする。コントローラは、オフ時間および補償時間を待ち、低側ドライバ22をオフにする。その後、必要に応じて、負極性パルスを生成できる。
【0073】
コントローラは、ピンプローブ電極が個別にP1からP7にラベル付けられた図8に示すように、デュアルピンプローブ接触技法を使用して、電圧源を180°回転させるように制御パルスを管理する。
【0074】
スイッチングコントローラ5は、プローブ26に問い合わせて、それが承認されていることを最初に検証し、特定の用途を対象とした許可されたパルスプロファイルを発見する。プローブアイデンティティが評価され、適切なパルスプロファイルおよびシーケンスが定義される。プローブ26がプラグインされると、センスワイヤは、センスラインを低に引き下げることによってマイクロコントローラをアクティブにする。その後、マイクロコントローラは、メモリデバイス40と通信して、プローブパラメータを読み取ることができる。パラメータのいくつかのコピーは、正しい読み取りを検証するため、エラー検出とともにプローブメモリ40に格納される。プローブアイデンティティの読み取りシーケンスは次の通りである。
【0075】
センスプローブが取り付けられる。
メモリデバイスと通信し、パラメータの第1のセットを読み取る。
エラー検出コードを検証する。
【0076】
検証された場合、セットアップを完了する。
検証されない場合、パラメータの次のブロックを読み取る。
エラー検出コードを検証する。
【0077】
良好なパラメータセットが見つからない場合は、エラーメッセージを生成する。
ユーザへの視覚的な表示として、画面にプローブタイプを示す。
再び図8を参照して示すように、例示されるように電圧パルスを回転させると、影響を受けた組織の包括的なエレクトロポレーションとなる。このスキームでは、電極は対で通電され、操作により、制御された方式でパルスの向きを調整できる。電極P1、P2は、(上部IGBT24を介してHVに連結された)正とされ、電極P7、P3は(下部IGBT25を介してGNDに連結された)負とされ、図8において1と印されたマークされた場を与える。対の極性を逆(つまり、P1およびP2を負、P7およびP3を正)にすることで、反対の場を与える。電極P1、P7を正、電極P2、P3を負にすると、図8において5とマークされた場が、1とマークされた場を横切る。この場合も、プローブの極性を逆にすることで、反対の場を与える。他の可能性についても同様である。
【0078】
癌細胞は、特徴的なフラクタルパターンを示し、固形腫瘍は、数百万のこれらの細胞から構成される。固形腫瘍の幾何学的形状は、扁平から扁長までの範囲の楕円体としてモデル化できる。小さな腫瘍は、単一位置で1回の実行で治療できるが、そのサイズが電極間の距離よりも大きい腫瘍の場合、細胞の透過化およびその後の治療を最大化するために、腫瘍表面の周囲で電極を回転させる必要がある。ここで説明する装置は、装置によって電場が腫瘍表面の周囲を回転するため、プローブの再配置ステップの数が減少するという点で、使い易さおよび効率上の利点を与える。
【0079】
それに加えて、単一の位置から組織全体にわたる複数の方向からの均一の電場供給によって、臨床的に有効な利点があり、細胞膜ポレーションの可能性が高まり、ブレオマイシンやシスプラチンなどの化学療法薬物からの、または、カルシウム、カリウム、遺伝子治療などの他の治療と組み合わせた治療効果が最大になる。
【0080】
また、最適な治療効果を得るには、薬物動態ピーク中にパルスを供給する必要があることに注意することが重要である。この装置は、電極を再配置する必要がある回数を低減するので、腫瘍表面全体にパルスを供給する時間を短縮する。以下、図19および図20を参照してより詳細に説明するように、それに加えて、その長さに沿った細孔を通じて使用される電極を介した治療薬などの物質の直接の供給は、その正確かつ効率的な供給を最適に保証するのに役立つ。
【0081】
それに加えて、これらの場は、腫瘍表面の周囲を回転できるため、より穏やかな場条件を使用できる。
図8に示されるスキームは、四角形に配置された少なくとも4つのプローブ電極に基づいているため、それらの間の横断面における空間を画定する。四角形の一辺を画定する2つの電極(たとえばP1およびP7)は正であり、対辺を画定する2つの電極(たとえばP2およびP3)は負であり、この状態は即座に反転される。その後、これは、直交方向(たとえば、P7およびP3が正、P1およびP2が負)で実行される。同じパターンが、電極P1-P6-P5-P7によって、およびプローブP5-P7-P3-P4によって画定された他の四角形に対して繰り返される。もちろん、電極の多くは、異なる四角形の役割を果たす。
【0082】
このスキームの効果は、電極26間の組織が、四角形によって境界が定められた3つのゾーンにグループ化され、おのおのが、図8における四角形内の矢印によって示されるように、組織を通る4つのほぼ直交する電荷方向で包括的に治療されることである。
【0083】
一般的に、コントローラは、第1および第2のプローブ場所によって画定される(たとえば、直交する)平面を横切って、およびそれらの間に、電荷を印加するために、同じ電位(たとえば、1.5kV)を有するプローブ端子27の第1のグループ(たとえば、P1、P7)と、異なる電位(たとえば、接地)を有する対向する第2のグループ(たとえば、P2、P3)とを同時に駆動するように構成される。装置1は、プローブの外部セットを駆動するためのものであるため、プローブ位置の事前設定を用いて端子27を駆動するようにプログラムされる。この事前設定は、マッピングデータと呼ばれる場合があり、これは、駆動スキームの一連の命令の形態をとることができるか、または、物理的な場所を示し得る。この事前設定は、プローブの問合せから、および/またはユーザ入力から生じ得る。
【0084】
コントローラは、有利には、平面を横切る方向を即座に反転させ、第1のグループは、第2のグループに以前に印加された電位で印加され、逆もまた同様であり、第1および第2のグループは、電荷が空間を横切って一方向に印加され、その後、即座に反転されるように再定義される。また、コントローラは、平面を横切る方向を反転した後、平面を画定する第3および第4のグループ(たとえば、P1、P2とP3、P7)を駆動するが、第3および第4のグループ間の方向は、第1および第2のグループ間の方向とは異なり、1つの例では、たとえば、P1-P2-P3-P7の四角形内の矢印によって示されるように、ほぼ直交する。
【0085】
エレクトロポレーションスキームの別の有利な態様は、一対のプローブへパルスを駆動するために、ランプアップ、プラトー、およびランプダウンのシーケンスがあることである。ランプ持続時間のおのおのは、使用されるスイッチの短いターンオン時間と、おのおのが個々のスイッチに専用の個々のドライバ回路22によって駆動され、おのおのがコントローラによって個別にアドレス指定可能であるという事実とのために、0.5μs未満であり、通常は0.25μs未満である。したがって、治療目的で各パルスに必要な最小持続時間が、たとえば2μsである場合、必要な全体の持続時間はわずか2.5μsであり、その時点で方向が即座に反転される。したがって、組織を通る1つの軸の全体的な期間では、180°で両方向に合計5μsの持続時間がある。方向を直ちに180°切り替えることにより、筋肉の収縮によって引き起こされる患者の不快感を最小化した最適な治療が可能になる。これにより、多くの場合、たとえば皮膚癌の治療のための全身麻酔薬の必要性を回避する。結果を改善するために、直交してパルスは組織を横切って両方向に生成することもでき、これも5μsの持続時間である。
【0086】
図9を参照して示すように、駆動パルスの主なパラメータが示される。これらの例では、これらのパラメータの値は以下の通りである。
表1
【0087】
【表1】
【0088】
上記の表では、例1が推奨される。例2および例3は、表に概説されているように、異なる深さおよび分離間隔距離を有する、異なる電極構成の例である。電極構成のこれらの違いにより、ランプ持続時間が長くなる。極端な場合に上記されるように、ランプダウン値は1μsに近づく可能性があり、これは一般的には推奨されないが、ランプ持続時間は0.5μs未満であることが推奨される。
【0089】
図10を参照して示すように、表1に含まれる実験中に得られた一対の対向する電極の代表的なパルスの画像キャプチャである1000V、2μsの双極パルスである。ΔUは、電極の位置と、ジャガイモ組織のインピーダンスとのため、この画像には表示されない。他のトランジスタ対がオンになる前に、1つのトランジスタ対がオフになるための不感時間のために、1μs未満のわずかな遅延がある(システムを介した直接短絡を防ぐ)。回路設計は、この不感時間を最小化するように設計される。オシロスコープは、立ち上がり時間と立ち下がり時間が鋭く、エレクトロポレーションパルスの振幅がパルス持続時間の間、期待されるレベルに留まる双極パルス(+1000V、-1000V)を示す。図9の特徴(U、tr、tf、U/2)は、この画像で識別できる。
【0090】
多段変圧器アプローチおよび出力スイッチングは、コンパクトなハウジング内で高電圧/大電流および柔軟な極性制御を供給することが理解されよう。また、プローブ検出および自動パラメータ設定が統合されているため、用途固有の用量の安全な供給を保証する。
【0091】
スイッチモード変圧器11/12は、低電圧で効率的に動作するが、高電圧印加では設計上のトレードオフが発生する傾向がある。この問題は、特に以下の理由により、本発明において回避される。
【0092】
- 幅広い動作条件と部品間の変動にわたって不感時間損失を低く抑えるように設計された変圧器駆動回路の使用。
- 事前定義された電圧Voutを、モジュラ回路Vmodによって供給するため、直列のn個の二次巻線の使用であって、ここで、Vout=Vmod*nである。
【0093】
- 変圧器のコア材料および巻線材料の選択。
- この電圧を監視および維持するためのフィードバック回路(8)の使用。
装置は、パルスプロファイル、すなわち、時間、持続時間、極性、および向きの、正確で信頼できる制御により、安全で効果的な高電圧パルスを発生させることが理解されよう。これは、灼熱感や望ましくないレベルの麻酔薬を必要とせずに効果的な治療を確実に行うのに特に有利である。制御のレベルは、接続プローブを検知して、許可された動作パラメータと発生器パラメータの構成とを自動的に確認することによっても提供される。装置が、プローブの機械開始問合せを実行して互換性を検証し、内部ルックアップテーブルから適切なパルス発生プロファイルを選択することは特に有利である。
【0094】
また、他の例では、コントローラ2は、制御された状況下で利用可能とされる、より多くのパルス構成設定オプションへのアクセスを提供する研究インターフェース画面を発生させ得る。これにより、研究者は、最適なパラメータを調査するために、プローブのために許可されている最大値までパルスパラメータを変更できる。
【0095】
装置の使用例
上記の装置は、不可逆的エレクトロポレーションまたは可逆的エレクトロポレーションのいずれかの様々な治療方法のために使用され得る。これらの方法のいくつかは、示された電気的パラメータを提供できるという条件で、この分野で知られている他のエレクトロポレーション装置を用いて実行され得る。
【0096】
本明細書の初めに冒頭で述べたように、エレクトロポレーションは、細胞膜の透過性を高め、化学物質、薬物、またはDNAが細胞に導入されることを可能にするために、細胞または分子に電場を印加する医学的および分子生物学的な技法である。エレクトロポレーションは、適用可能な多くの医療分野があり、可逆的および不可逆的の両方で使用できる。典型的なエレクトロポレーション処理では、細胞膜を一時的に透過化するために、短くて強い電気パルスが発生される。
【0097】
たとえば、化学療法に関連して使用され得る可逆的エレクトロポレーションでは、電場は、電場しきい値を下回り、治療後に細胞膜を修復することを可能にする。可逆的エレクトロポレーションは、薬物または遺伝子などの分子を、細胞死を誘発することなく、通常はこの物質に対して透過性ではない細胞または分子に入れることを可能にすることを含み得る。細胞の電場しきい値は、細胞ごとに異なる。
【0098】
(細胞切除のための)不可逆的エレクトロポレーションでは、電場は、特定の電場しきい値よりも高く、これは、細胞膜に永続的なナノポアを生成し、細胞の恒常性を破壊し、その結果、細胞を、アポトーシスや壊死メカニズムのような不可逆的な細胞死経路へ強制的に入れる。
【0099】
我々は、プローブ電極を生物学的負荷に挿入し、電極と、エレクトロポレーション用の負荷とに電圧パルスを印加し、好ましくは、コントローラが、対向するプローブ電極のパルスを双極的に印加するステップを含む、エレクトロポレーションの方法を説明する。
【0100】
好ましくは、パルスプラトー(U)持続時間(Δt)は、1μsから5μs、好ましくは1μsから3μsの範囲にある。好ましくは、パルスプラトー電圧振幅(U)は、100V/cmから3000V/cm、好ましくは500V/cmから2000V/cmの範囲にある。あるいは、個々のパルス長は、1μs未満であり得、0.03~0.99μsの範囲にあり得、パルスプラトー電圧振幅(U)は、5KV/cmから50KV/cm、好ましくは10KV/cmから20KV/cmの範囲にある。
【0101】
好ましくは、プローブ電極がパルス化される能動的治療の通電オン時間持続時間は、100μsから300μsの範囲にあり、2つの連続するパルスのサイクルに基づく双極パルス周波数は、100kHzから500kHzの範囲にある。
【0102】
電極は、プローブ電極内で電流が流れ、生物学的負荷が、透過化される細胞へのDNAの移動のために500mA未満になるように駆動され得る。
いくつかの例では、細胞切除の処理を補助するために、高浸透圧溶液などの液体溶液などの物質が、部位に注入される不可逆的エレクトロポレーションがあり、前記溶液はカルシウムまたはカリウムを含み得る。好ましくは、カルシウムイオン(Ca++)は、2mMol/Lから250mMol/Lの範囲、好ましくは2mMol/Lから150mMol/Lの範囲の濃度で組織に直接注入される。
【0103】
物質の組成は、電極に隣接して、および電極間に所望のレベルの組織伝導性を引き起こすように、少なくとも部分的に選択され得る。たとえば、この物質は、導電率を低下させるために脱イオン水を含み得る。代替的または追加的に、図15から図18を参照して、以下により詳細に説明されるように、この物質は、より導電性の高い液体溶液とは対照的に、組織環境内の抵抗(オーム)を優先的に高める泡溶液を含み得る。その結果、エレクトロポレーションパルスの供給中に発生される電流(アンペア)は、泡溶液が注入された組織で減少し、より安全でより効果的な治療を達成することができる。
【0104】
物質の注入
800V/cmおよび2000V/cmの印加パルス電圧、1μsから3μsのパルスプラトー持続時間、および1000から10,000の範囲のパルス数で、エレクトロポレーションによる一時的な透過化のために、2mMol/Lから150mMol/Lの濃度のカルシウムイオン(Ca++)を含む溶液が注入され得る。カルシウムイオンを含む溶液は、ほんの一例である。他の例は、以下で与えられる。
【0105】
1つの例では、
(a)部位へのDNAの注入、
(b)プローブ電極の挿入、
(c)細胞を透過化するための電極へのパルスの駆動であって、前記駆動は、たとえば、100kHzおよび500kHzの範囲の周波数の双極パルス、1μsから5μs、好ましくは1μsから3μsの範囲のパルスプラトー持続時間、および、100V/cmから3000V/cmの範囲の電圧振幅であり、
(d)10msから100msのパルス持続時間中、5V未満の電気泳動フェーズ低電圧パルスでDNAまたは薬剤を細胞に引き込む低周波数電極駆動からなる各ステップにおいて、可逆的エレクトロポレーションで細胞にDNAを供給する。
【0106】
DNA供給の1つの例には、
部位へのDNAの注入、および/または、
1つまたは複数の単極800V/cmから1600V/cmパルスの供給、その後、
たとえば、100kHzから500kHzの範囲の周波数の双極HF、1μsから5μs、好ましくは1μsから3μsの範囲のパルスプラトー持続時間、および100V/cmから3000V/cmの範囲の電圧振幅を用いた治療、および/または、
1つまたは複数の1V/cmから200V/cmの単極パルスの供給がある。
【0107】
800Vから1600Vのより高電圧の単極パルスは、50μsから250μsの範囲、好ましくは100μsから200μsの範囲のパルス持続時間を有し得る。電圧は、より好ましくは、1000V/cmから1200V/cmの範囲にある。
【0108】
1V/cmから200V/cmのより低電圧での単極パルスは、10msから10s、好ましくは20msから100msのパルス持続時間を有し得る。この電圧は、好ましくは100V/cmから150V/cmの範囲にある。
【0109】
第2の単極パルスは、好ましくは、第1の単極パルスの1s以内に供給される。
1つの例では、薬物がその部位に注入され、エレクトロポレーションが行われ、たとえば化学療法剤である薬物が細胞内に移動して、細胞切除を引き起こす。
【0110】
1つの例では、コントローラは、電極のパルス駆動後、ほぼゼロ持続時間のパルスで、蓄積された電荷を放電し、その後、指数関数的減衰が続く。
対向する電極は、1mmから30mm、より好ましくは1mmから10mm、より好ましくは2mmから8mmの間隔で生物学的負荷に挿入される。プローブ電極は針電極であってもよいが、必ずしもその必要はない。
【0111】
使用されるエレクトロポレーション装置のコントローラは、以下の範囲の高周波数動作パラメータを提供するようにプログラムされる。
対向するプローブまたは電極のパルスは、好ましくは双極である。
【0112】
周波数(双極周波数、正パルスと負パルスとの両方であるサイクル)は、好ましくは100kHzから500kHzの範囲にある。本明細書では、これは「高周波数」と呼ばれる。これは、約1μsから5μsのパルス長(プラトー)に対応するが、多くの用途では、この範囲は、より好ましくは1μsから3μsの範囲にあり、より好ましくは約2μsである。
【0113】
電圧振幅は、100V/cmから3000V/cm、好ましくは約800V/cmから2000V/cmの範囲にある。エレクトロポレーションパルスは、以下に詳述するように、高浸透圧溶液または発泡剤が存在する場合に効果的である可能性がある。
【0114】
プローブ電極がパルス化される能動的治療の持続時間は、好ましくは0.1msから1sの範囲にあり、より好ましくは0.2msから10msである。
パルスは、この持続時間内に100μsから300μsの範囲の持続時間のバースト(1回通電)で供給される。たとえば、パルス長が2μsの場合、通電オン時間のために約25から75パルスサイクルになる。
【0115】
プローブの電流は、1A未満、好ましくは500mA未満である。しかしながら、電流は、生物学的負荷に応じて導出された値である。細胞へのDNAの移動には、約500mA未満であることがより推奨されるが、他の方法ではそれほど重要ではない。いくつかの例では、高周波数パルスを供給するときの電流は、5Aから40Aの範囲にあり得る。DNA供給の場合、印加電圧は、好ましくは5V未満であり、電流は1A未満である。
【0116】
部位に薬剤が提供される場合、それは任意のよく知られた注入技法による。
液体注入:細胞切除のための高浸透圧治療
標的組織に局所的に注入された液体溶液は、不可逆的エレクトロポレーションおよび細胞死を支援し、上記で概説された高周波数駆動において、より低電圧のパルスを有効にする。そのような溶液は、たとえば、細胞死を誘発するためのカルシウムイオンを含み得る。
【0117】
1つの例では、カルシウムイオン(Ca++)は、2mMol/Lから150mMol/Lの範囲の濃度で、好ましくは、上記で概説された高周波数駆動のために、この範囲の下端で腫瘍内に注入される。
【0118】
液体注入:DNA供給(可逆的エレクトロポレーション)
可逆的エレクトロポレーションには、次のものがある。
(a)部位へのDNAの注入。
(b)プローブの挿入。
(c)細胞を透過化するための、上記の高周波数パラメータにしたがう高周波数治療。これはエレクトロポレーションフェーズと呼ばれる。
(d)DNAを細胞に引き込むための低周波数治療。これは電気泳動フェーズと呼ばれる。このフェーズでは、10msから100msのパルス持続時間中、5V未満の低周波数低電圧パルスが存在する。これにより、主にDNAの負電荷により、細胞へのDNAの効果的な取り込みが実現する。
【0119】
液体注入:薬物供給
薬物がその部位に注入され、エレクトロポレーションが行われ、薬物の細胞内受動拡散が可能になる。1つの例では、薬物は、たとえば、化学療法剤のように、細胞死(切除)を引き起こすように選択される。化学療法剤の受動拡散は、高周波数エレクトロポレーションの効果によって可能になり、細胞死に至る。たとえば、薬物は、ブレオマイシンまたはシスプラチンであり得る。
【0120】
一般的に、薬物供給の場合、DNA供給の場合とは異なり、低周波数段階(上記(d))はない。
図11から図13を参照して示すように、これらの図は、
ジャガイモ細胞に対する高周波数対標準低周波数エレクトロポレーションパルスの影響、
薬物と組み合わせた場合のマウス腫瘍モデルにおける高周波数エレクトロポレーション対標準低周波数(パルス長約100μs)の影響、および
高周波数エレクトロポレーションによる筋収縮の減少を示す。
図11から図13のデータは、薬物、イオン、およびDNAの吸収を可能にする、臨床的に管理可能な電圧(<1500V)において有効な結果を明確に示す。
【0121】
図11
健康な生体組織は、異常な前癌組織とは異なる電気的インピーダンスを示し、すなわち、電流は、異常な前癌組織を横切って流れやすく、そのため、測定されたインピーダンスは健康な生体組織よりも低くなる。
【0122】
組織インピーダンスおよび組織インピーダンスの変化は、いくつかの例では、周波数スペクトルにわたって装置によって測定され得る。これにより、コントローラは、その操作を自動的に変更し、たとえば、異常な前癌組織と健康な組織とを区別するユーザ情報を発生させる。これは、パルスが供給される前およびパルスが供給された後の治療中に行われ、診断機能を提供し、治療された領域、および治療される予定の領域に関する実施可能なフィードバックを、治療する医療専門家に提供できる。また、コントローラが電圧レベルを自動的に調整して、電流が過大にならないことを保証することで、大幅に低下したインピーダンスによる悪影響を自動的に回避できる。
【0123】
コントローラは、通常は1kHzから100kHzである適切な周波数スペクトルで、組織にAC信号を印加することにより、インピーダンスを測定する。これは、高周波数エレクトロポレーション駆動の直前および/または直後に行われる。
【0124】
図11は、ジャガイモ組織に対する高周波数(2μs双極(約217KHz)対低周波数(100μs単極(1Hz)、70μs単極(1Hz)エレクトロポレーションパルスの効果を示す。これは、ジャガイモ組織モデルを使って測定される組織インピーダンスを示す。一対のプローブ針電極を0.4cm離して挿入し、エレクトロポレーション供給前後の組織インピーダンスが測定された(実験は、3回実施された)。
【0125】
インピーダンス変化は、以下のパラメータを使用して監視された。
- 1000V/cmで50回供給された200μs(50対)の通電時間の2μsの双極(約217KHz)、
- 1000V/cmで8回供給された100μsの単極(1Hz)、
- 1500V/cmで90回供給された70μsの単極(1Hz)。
【0126】
組織インピーダンスにおける変化は、エレクトロポレーションパルス後のイオンゲートの開放と周囲の組織への電解質の放出によって引き起こされる。これは、エレクトロポレーションの程度を示す。最大の差分変化は、グループC(右側のプロット)の不可逆的エレクトロポレーションパラメータで130の変化で発生し、続いてグループA(左側のプロット)で118の変化で発生した。薬物供給の対照としての標準的なエレクトロポレーションパラメータ(グループB)(中央のプロット)は、72の正味の変化を提供した。データは、高周波数供給および筋収縮の減少の観察にも関わらず、発生する双極高周波数パラメータで達成された組織エレクトロポレーションの程度を示す。このデータは細胞透過化を示し、左側のプロットは、装置の高周波数動作が、高周波数動作による患者の不快感のリスクを回避しながら、良好な透過化を達成することを示す。
【0127】
図12
図12は、薬物と組み合わせた場合のマウス腫瘍モデルにおける高周波数(217KHz、2μsパルスプラトー)エレクトロポレーション対低周波数(1Hz)の効果を示す。
【0128】
マウス腫瘍結腸直腸モデルを使用して装置1で実施された前臨床試験が示される。腫瘍は、マウスで0.1cmまで成長し、その後治療された。4つのグループが、各グループにおいて、6匹のマウスで研究された。
A)対照群、治療なし。
B)ECT(電気化学療法)対照。
C)ブレオマイシンを含むePORE(装置1)、および、
D)カルシウムを含むePORE(装置1)。
【0129】
ECT対照(B):ブレオマイシン(250IU)が直接注入され、1000V/cmの印加電場で、1Hzで合計8,100μsの極性パルスを使用する標準的なエレクトロポレーションパラメータ。
【0130】
ePOREブレオマイシン(C):217KHzの周波数で双極パルスとして供給されるパルス。ブレオマイシン(250IU)が直接注入された。
ePOREカルシウム(D):ePOREブレオマイシンについては上記と同じであるが、9mg/mlの濃度で腫瘍内に注入されたカルシウムと、217KHzの周波数で双極パルスとして供給されたパルスとを使用する。
【0131】
短いランプ時間(1000Vまで<0.25μs)により、細胞膜を通過するより均一な電場浸透が可能になるより高い周波数で、細胞膜を直接通過する大きな高分子およびイオン(Ca++を含む)をより効率的に取り込むことが可能になる。
【0132】
1つの例では、低電流(<1Amp)パルスと組み合わせた高周波数(>200KHz)バーストを利用して、細胞膜を通過するDNAの取り込みが達成された。1~2μsの長さの双極×50の双極方形波高電圧高周波バースト(100~200μsの通電オン時間)の後、1分以内に、1~10mの持続時間の5V未満<250μAmpの単極方形波低電圧低電流パルスが続いた。
【0133】
この装置により、DNAエンドサイトーシスおよび取り込みが強化され、細胞のトランスフェクションおよびDNA発現が改善される。
別の例では、細胞死は、高浸透圧溶液に供給されたときに高周波数電気パルス(>200kHz)の供給によって達成される。そのような溶液は、125から300mMol/Lの濃度で、スクロース、グリセロール、キシロース、マンニトール、またはフルクトースから調製できる。そのような溶液は、最大99mMol/LのCa2+またはMg2+またはK+も含む可能性がある。
【0134】
別の例では、少なくとも2mMol/Lの濃度のカルシウムイオン(Ca++)を含む溶液で、500~1500V/cm、パルス長0.1μs~3μs、パルス数1000~10,000、およびパルス周波数200kHz~500kHzのエレクトロポレーションによって一時的な透過化が行われる。
【0135】
図13
この図は、装置1による高周波数エレクトロポレーションによる筋収縮の減少を示す。加速度計のデータは、エレクトロポレーションが結腸直腸組織に供給されたときのブタ組織(porcine tissue)から計算された。筋収縮は、各パルス間に0.5μs未満のギャップがある1000Vの2μsの双極パルス(約217kHz)を使用したとき、各パルス間に2μsのギャップがある1000Vの2μsの双極パルス(125KHz)を使用したとき、1000Vで100μsの単極パルス(1Hz)を使用したとき、および、1500Vで100μsの単極パルス(1Hz)を使用したときに観察された。観測されたピーク加速度は、217kHzのとき0.04gであり、125Hzのとき0.08gであり、1000Vで100μsのとき0.75gであり、1500Vで100μsのとき0.83gであった。
【0136】
図14
上記のように、装置は、ランプアップ、プラトー、およびランプダウンシーケンスでプローブ電極の一対にパルスを駆動する。ランプ持続時間のおのおのは、使用されるスイッチの短いターンオン時間およびそれらが個々のドライバ回路22によって駆動されるという事実のために、0.5μs未満、または好ましくは0.25μs未満である。
【0137】
変形例では、コントローラは、上記のようにランプアップで少なくともいくつかのパルスを駆動するが、スイッチをオフにしてパルスを達成する前にプラトーが0に設定され、それによって指数関数的減衰パルスを達成する。コンデンサは通常通り充電され、その後、パルスがアクティブ化され、自由に放電する。図14に示される減衰率は、平衡抵抗器15とコンデンサ14との値によって制御される。それにより、コントローラは、電極をUmaxの振幅に駆動し、パルスをオフにする。すなわち、パルス持続時間を0に設定する。したがって、治療時間の一部のために、エレクトロポレーション装置は、指数関数的に減衰する形状で、パルスを駆動する。
この操作は、高周波数操作後に役立つ場合がある。これは、コンデンサを効果的に放電する。
【0138】
図15
ヨウ化プロピジウムマーカを使用したフローサイトメトリ(flow cytometry)を使用して、エレクトロポレーションの有効性/細胞透過化と、細胞の緩衝液として使用される媒体との関係が判定された。
【0139】
我々は、標準的な等張緩衝液(isotonic buffer)(~270mOsm/l)と、マンニトールまたはスクロースを含む高浸透圧緩衝液(hyperosmotic buffer)(~600mOsm/l)とを用いて、電場強度(V/cm)の範囲にわたる細胞透過化を引き起こす超短双極パルス長(2μs)を用いたエレクトロポレーションの使用を評価した。
【0140】
電場強度(V/cm、電極の間隔である距離)は、100V間隔で500V/cmから1400V/cmに調整され、PIの取り込みと、その結果としての細胞透過化との程度とが判定された。
【0141】
超短パルスを使用して試験管内で細胞に供給されるエレクトロポレーションの有効性を評価するために、我々は、フローサイトメータ(FacsCalibur(商標)、Becton Dickinson、米国)と、一度DNAに結合されるときのみ蛍光を発する蛍光色素、ヨウ化プロピジウム(PI)とを利用した。そのサイズのために、生細胞膜は、ヨウ化プロピジウムに対して不浸透性であり、したがって、エレクトロポレーションされた細胞へのその侵入、および核内のDNAに結合する際のその後の蛍光を検出できる。FacsCalibur(商標)装置は、エレクトロポレーションの有効性(すなわち、エレクトロポレーションによって細胞膜に開いている細孔の数。細孔により細胞核へのPIの侵入が可能となり、細胞からの蛍光が検出可能となる)に応じて変化する個々の細胞の蛍光を定量化する能力を有する。
【0142】
細胞サイズと蛍光の分析には、CELLQUEST(商標)ソフトウェアを備えたFACSCalibur(商標)フローサイトメータが使用された。エレクトロポレーション実験の完了中に細胞サンプルが取得された。簡単に言えば、測定された、エレクトロポレーションされていない細胞に対するエレクトロポレーションされた細胞の比は、以下のように計算された。「収集基準」は、獲得および保存ダイアログボックスの「イベント数または時間」の位置に設定され、獲得時間が選択された。細胞が確実に検出されるように、流量が設定され、「電圧」、「振幅利得」、およびしきい値が調整された。前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)は、線形モードで収集され、FL2(PI蛍光)は、対数モードで設定された。サンプル電圧が安定するまで、データの獲得を開始できなかった。データポイントごとに合計10,000個のサンプルポイント(細胞)が収集された。ネガティブな対照(エレクトロポレーションされていない細胞)のFSC対FL2-H輪郭プロットは、無傷の細胞、細胞膜透過化細胞、および核膜透過化細胞を表す次の3つの領域を画定するのに役立った。低チャネル数での残りのイベントは、破片として記録された。
【0143】
泡注入
この物質は、ガスの非常に小さいを含む液体である、泡の形態であり得る。エレクトロポレーションの透過化効果を高めるために泡を使用することができ、高周波数エレクトロポレーション(100KHz以上)に特に有益な結果が得られる。泡の使用は、以下で詳しく説明される。本明細書では、泡内の液体とガスの相対濃度は、空気と液体が充填されたときの注入器内のように、大気圧での体積で表される。
【0144】
泡は、任意の適切な手段によって形成され得、実際、それは、注入器内で臨床医によって手動で行われ得る。
エレクトロポレーションされる標的組織への直接注入に泡を利用する主な利点は、泡は、選択した分子に必要な場合に担体として機能できる一方、液体に比べて、組織の導電率への影響が、導電率の増加を最小化するという点で優れていることである。泡バブルの空気またはガス成分は、液体に比べて導電率が最小であり、特に高周波数(>100kHz)パルスの場合に、より推奨される環境を可能にし、供給される電流を最小化し、細胞の透過化を高める。
【0145】
高周波数(>100kHz)双極電気パルスの使用は、分子の受動拡散のための直接的な細胞切除または細胞透過化に有利である。いくつかの例において、泡との組合せは、(同等の液体溶液を使用することと比較して)手順の有効性に利点を与える。
【0146】
図16は、泡に対して液体を使用したインピーダンスと電流の比較を示す。液体は、インピーダンスが低く(導電率が高く)、供給される電流(A)が高くなる。一方、泡はインピーダンス/抵抗が高く、導電率が低いため、供給される電流(A)が低くなる。泡が使用される場合、パルス幅は上記よりも広範囲にある場合があり、場合によっては0.05μsの範囲にあり、電圧が10KV/cmを超える場合がある。
【0147】
一例として、図17は、印加される電場(V/cm)を増加させたとき、0%から100%までの細胞透過化を示す。低導電率緩衝液を使用すると、細胞は、高導電率緩衝液と比較して、より低い電場強度で透過化される。対応する液体溶液が使用された場合よりも、泡は、細胞の周囲に低い導電率を生成することが我々の理解である。
【0148】
図18は、増加する電場(V/cm)に対する予想される細胞生存率を示す。導電率が低いと、導電率の高い緩衝液と比較して低い電場強度で細胞死に至る。
注入されたときの非発泡液体は、循環している血液量によって急速に希釈される。血液との相互作用は、血漿タンパク質との結合により、最終的に活性分子の数を減らすため、液体溶液の有効性を低下させる。一方、泡は、血液と混合するのではなく、血液を置換できるため、高濃度の活性剤と、組織との接触時間が長くなり、その結果、より高い効果が得られる。泡とともに、低濃度の薬剤を使用して、液体の対応物と同じ治療効果を得ることができ、高濃度に関連付けられた副作用の有病率を低減する。
【0149】
空気などのガスのバブルが存在するため、泡は、対応する液体溶液よりも導電性が低く、その結果、患者の電流が低下し、細胞透過化が高くなり、痛みの感覚が減る。
泡は、いくつかの例では、たとえば、体積で1:4:1の比で、アルブミン、ガス、および液体溶液を混合することによって生成され得る。好ましくは、液体に対するガス(たとえば、室内空気またはCO2ガス)の比は、体積で1:2から1:10の範囲にある。
【0150】
好ましくは、使用される泡は、
アルブミン、ヒト血清アルブミン(human serum albumin);濃度は体積で10~50%、好ましくは15~30%、ポリドカノール(体積で0.5~5%)またはテトラデシル硫酸ナトリウム(STS)(体積で0.5~5%)のうちの1つまたは複数を含む。STSおよびポリドカノールは個々に硬化剤であるが、アルブミンはそうではないが、ポリドカノールは、局所麻酔薬でもある。
【0151】
アルブミンは単独で発泡剤であるが、ポリドカノールおよびSTSは、発泡剤で硬化剤でもある(これらは刺激性があり、細胞死を直接誘発する)。
溶液中の活性剤(導入される分子)は、
カルシウムイオン、Ca++(2mMolから150mMol)、カリウム(2mMolから100mMol)、ブレオマイシン、シスプラチン、DNA、および/またはRNAのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0152】
好ましくは、エレクトロポレーションパルスは、有利には、
1kHzから1000KHzの周波数で1000回まで繰り返される0.1μsから1000μsのトレイン(train)ごとに「オン」通電時間を有するトレインで供給された0.05μsから5μsのパルス長の双極パルスのようなパラメータを有する。
【0153】
同じ活性剤を含む液体のみの物質ではなく、細胞を取り囲む環境に泡を直接注入すると、低導電性環境になり、エレクトロポレーションベースの治療の有効性を支援する、より効率的な細胞透過化が可能になる。
【0154】
短い双極電気パルス(<50μs)によって生成された細胞透過化(細胞膜上に生成された細孔)の有効性は、細胞の導電率によって影響を受ける。細胞を取り囲む液体溶液の導電率が高いと、電流が高くなり、治療に悪影響を及ぼし、細胞の透過化が低下し、患者は痛みを感じるようになる。
【0155】
細胞の周囲の導電率の増加は、その領域の液体の量と、選択した治療分子(カルシウム、カリウム、ブレオマイシン、シスプラチンなど)および高濃度のイオンを含み得るエレクトロポレーション溶液の局所注入によって部分的に引き起こされる。
【0156】
発泡剤を利用して治療薬を供給すると、細胞を透過化するエレクトロポレーションパルスの有効性に対する高導電率の影響が減少する。
主にガスまたは空気でできている泡は、対応する液体溶液よりも導電性が低く、その結果、電流が低くなり、細胞の透過化が高くなり、患者の痛みが減る。
【0157】
エレクトロポレーションされる環境に注入された泡の使用は、同等の液体溶液の程度まで導電率を増加させないことによって、治療および細胞透過化の程度を有益に促進するであろう。以下の表は、泡が注入されるいくつかの推奨されるパラメータ範囲を示すが、これらの範囲は、液体注入に有利に適用される。
【0158】
【表2】
【0159】
治療される組織への局所麻酔薬の分散を促進するために、泡を利用することもできる。局所麻酔薬は、アドレナリンの有無に関わらず、リグノカイン(lignocaine)5~20mg/mlとできる。メピバカイン(mepivacaine)10~30mg/mlは、使用できる局所麻酔薬の別の例である。泡および局所麻酔薬は、たとえば、カルシウムまたはカリウムイオン、ブレオマイシン、DNAのような選択した分子と組み合わせて投与できるか、または、単独で提供することもできる。
【0160】
物質を注入するための装置(液体のみまたは泡)
図19を参照して示すように、注入装置は、針電極を介して物質を標的組織に供給するために使用され、これはまた、その導電長さに沿った「細孔」または開口部を介して注入された物質の均一な分布を容易にできる。1つの例では、装置200は、リザーバ201と、壁203および細孔204を備えた針202のアレイとを備える。リザーバ201は、蠕動ポンプ(peristaltic pump)または注入器などの任意の所望のタイプのポンプを備える。針ゲージのサイズは、好ましくは14GAから30GAの範囲(外径0.3mmから2.1mm、内径0.15mmから1.8mm)である。より一般的には、針は、0.1mmから1.8mmの範囲の最大内幅寸法と、0.25mmから2.5mmの範囲の最大外幅寸法を有することが推奨される。90、好ましくは、開口部は、0.05mmから1.5mmの範囲の最大幅寸法を有し、好ましくは、最も近い針への針の間隔は、2mmから3cmの範囲にある。
【0161】
他の例では、開口部は、注入された物質の所望の流れおよび分布を達成するために、任意の所望の形状のスロットまたは穴の形態であり得る。針は、開口部を覆うための、および/または、電圧が患者の組織に印加されない場所で電気的に絶縁するための絶縁スリーブを有し得る。絶縁されているか否かに関係なく、スリーブは、物質の供給後、パルシング前に、取り外され得る。開口部のパターンは、図19に示すように、螺旋状(千鳥状)であることが推奨される。開口部の数は不均一に分散され、他の針/電極に面する針側に向かってより重み付けられ、体積の大部分が、電極間の空間に分散されるようにする。深さインジケータは、組織の深さに対して開口部の深さを伝えるために使用され得る。
【0162】
プローブヘッド200は、上記のようなパルス発生器とともに、または知られているサードパーティのエレクトロポレーション発生器とともに使用され得る。
針は、すべて同じポンプまたはリザーバに接続され得るか、または、異なる物質が異なる針を通して供給されるようにするために、独立したポンプまたはバルブ構成を有し得る。1つまたは複数の針は、独自の固体トロカールチップを有し得る。
【0163】
注入される物質は泡であってもよいが、代わりに、たとえば脱イオン水などの非導電性物質のような液体のみの物質であり得る。
試験データは、我々が、実行可能な試験細胞(動物の肝臓)で、電圧を上げながらエレクトロポレーションパルスの供給中に発生した電流を評価したことを示す。パルスの合計通電「オン時間」は、6msであった。パルシングの直前に泡が組織に注入された場合、供給されるパルスごとに発生する電流の減少は約40%であった。図20は、試験において、与えられたパルス電圧振幅に対してエレクトロポレーション電流が大幅に減少することを示す。このプロットでは、電流の単位はアンペアである。
【0164】
図19のプローブを使用することにより、電極は、電気パルスを供給し、また、細孔204を介して物質(液体のみまたは泡)を組織に供給する。これにより、電極の周辺の環境に、物質をより均一に供給できる。また、それは、針への物質供給のために、パルス発生器およびポンプおよび/または弁に指示する電子コントローラによって最適な方式で制御され得る協調された物質供給およびパルシング方法の適用を可能にする。たとえば、1つのプログラムされた方法では、所望のレベルの導電性を提供するための注入、その後のパルシング、そしてその後、ポレーションされた細胞へのアクセスのための注入がある。第1の物質は、比較的高レベルのガスバブルを有する泡であり得、そしてパルシング後の溶液は、カルシウム、カリウム、ブレオマイシンまたはシスプラチンまたはDNAまたはRNAなどの治療薬を含み得る。
【0165】
細孔204は、泡、または、たとえば脱イオン水である非導電性溶液などの他の物質を、エレクトロポレーションパルス供給の直前に、組織に直接供給し、そうすることで、そうしない場合に発生する電流を低減する。手順中に発生する高電流は、組織をポレーションするエレクトロポレーションパルスの有効性に悪影響を及ぼす。大電流の発生はまた、患者および発生器を保護するために、電流の「アーク放電」、組織燃焼、およびパルス終了前手順完了などの技術的および安全上の課題を提示する。
【0166】
細孔204を有する針電極202を使用して、電気パルスの供給の直前に非導電性溶液を供給でき、それに加えて、電気パルスが供給されると、同じ電極を使用して、直ちに治療溶液を投与できる。実際には、たとえば、針電極は、標的組織に配置され、部分的にインピーダンスフィードバックに基づいて、針電極における細孔を介して泡(または他の溶液)を標的組織に直接注入する。これに続いて、同じ針電極を介して、電気パルスの供給が行われ、針電極を介して直接、たとえば、カルシウムまたは化学療法溶液などの治療物質のエレクトロポレーション後の注入があり得る。
【0167】
これは、エレクトロポレーションパルスの効果を最適化すると同時に、標的組織への治療物質の直接供給を可能にする。
図19の例では、正と負の2つの電極がある。他の例では、負極性と正極性が同じ電極上に供給される双極単一電極があり得る。あるいは、図8を参照して上記のようにアレイ内に2つよりも多くの電極が存在し得る。
【0168】
利点
一般的に、本発明は、患者の不快感のリスクを最小化して、非常に効果的なエレクトロポレーションを達成することが理解されよう。以下に、利点のいくつかを要約する。
【0169】
特に、最初の高周波数高電圧パルス(100kHz~500kHz;800V/cm~1600V/cm双極)に続いて、上記のように低周波数および低電圧パルスを使用すると、DNAの取り込みが改善される。高電圧パルスの高周波数特性のために、それが患者にとって無痛であることが特に有利である。この装置は、細胞膜および内臓の透過化を目的として高周波数パルスを提供し、単独で、または局所的に注入された薬剤/分子と組み合わせてアブレーションを引き起こす。我々は、液体または泡として2~150mMol/Lの範囲で注入された低濃度のカルシウムを用いて、好ましくは、この範囲の下限を目指してカルシウムを取り込むことを説明した。また、高周波数パルスは、治療される環境で泡を利用することによって、低減された電流を発生させる。
【0170】
この装置は、スイッチモード変圧器の設計に固有の非効率性を打ち消しながら、人間または動物の被験体への高電圧の超短パルス(0.1μsから5.0μsの範囲)の安全な供給を達成することが理解されよう。
【0171】
この装置はまた、超短パルス(μ秒)を、高浸透圧溶液に供給し、より効率的な細胞エレクトロポレーションを可能にする。
さらに、この装置は、超短パルス(μ秒)と、鋭いターンオンおよびターンオフ時間との組合せを可能にし、結果として得られる10~500μFの範囲の静電容量放電との相乗効果を最大化して、局所的な細胞死を誘発する。プラトーが、顕著であるが1μsから3μsの短い持続時間の間、安定していることは特に有益であり、それによって、短い通電オン時間に、非常に効果的な治療を達成する。
【0172】
また、装置および方法は、十分に大きな電場で組織の正確なカバーを達成し、その不均一性に起因する腫瘍細胞における不均一な電場分布の問題を回避する。
脱イオン液体および/または泡など、組織に注入された適切な物質を使用することにより、より低い導電率が達成される。組織内の電場の分布は、組織を通る電流の流れによって決定されるため、導電率が低いほど、電場は強くなり、したがって、上記の方法および装置は、より均一な電場を生成するのに役立ち、より一貫性のある結果をもたらす。
【0173】
本発明は、説明された実施形態に限定されず、構造および詳細が変更され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】