(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】遺伝子操作された腫瘍溶解性ワクシニアウイルスおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/768 20150101AFI20221102BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221102BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221102BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221102BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221102BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221102BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221102BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20221102BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K35/768
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
A61P35/00
A61P35/04
A61K45/00
A61K39/395 T
C12N15/863 Z ZNA
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539991
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2020034615
(87)【国際公開番号】W WO2021040056
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】中尾 慎典
(72)【発明者】
【氏名】網野 伸明
(72)【発明者】
【氏名】荒井 幸規
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA44
4B065CA45
4C076AA11
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD50
4C076DD67
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085EE03
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA16
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物、およびがんを有する対象を処置するためにそのような薬学的組成物を使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容される担体が、トロメタミンおよびスクロースを含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬学的に許容される担体が、約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンを含む、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容される担体が、約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースを含む、請求項2または3記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物のpHが、約5.0~約8.5である、請求項1~4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが約5.0~約8.5である、薬学的組成物。
【請求項7】
B5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失が、SCRドメイン1~4における欠失を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
B5R領域のSCRドメインにおける欠失が、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~237を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
SCRドメインが欠失したB5R領域をコードする遺伝子が、B5R領域のシグナルペプチド、ストーク、膜貫通、および細胞質尾部ドメインを含有するポリペプチドをコードする遺伝子である、請求項1~8のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項10】
SCRドメインが欠失したB5R領域が、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列に対応するB5R領域のアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記ワクシニアウイルスが、ウイルスのLC16mo株である、請求項1~10のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7である、請求項1~11のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項13】
約1×10
7~約1×10
9粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
約1×10
7粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
約5×10
7粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項16】
約1×10
8粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項17】
約5×10
8粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項18】
約1×10
9粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項19】
約5×10
9粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項20】
トロメタミンの濃度が、約15 mmol/L~約45 mmol/L;20 mmol/L~約40 mmol/L;または25 mmol/L~約35 mmol/Lである、請求項2~19のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項21】
トロメタミンの濃度が、約30 mmol/Lである、請求項20記載の薬学的組成物。
【請求項22】
スクロースの濃度が、約6% w/v~約14% w/v;約7% w/v~約13% w/v;約8% w/v~約12% w/v;または約9% w/v~約11% w/vである、請求項4~21のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項23】
スクロースの濃度が、約10% w/vである、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記組成物のpHが、約6.0~約8.0;約6.5~約8.0;または約6.8~約7.8である、請求項5~23のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記組成物のpHが、約7.6である、請求項24記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記組成物が、約-70℃で保存した場合に少なくとも約6ヶ月~約2年間安定である、請求項1~25のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項記載の薬学的組成物を含む、バイアル。
【請求項28】
請求項1~26のいずれか一項記載の薬学的組成物を含む、シリンジ。
【請求項29】
がんを有する対象を処置する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する、方法。
【請求項30】
がんを有する対象を処置する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与が、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置する、方法。
【請求項31】
がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、それによってがんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する、方法。
【請求項32】
がんを有する対象を処置する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する、方法。
【請求項33】
がんを有する対象を処置する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与が、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置する、方法。
【請求項34】
がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与が、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象においてアブスコパル効果を誘導する、方法。
【請求項35】
前記アブスコパル効果が、原発性固形腫瘍に対して近位である転移性腫瘍において起こる、請求項30、31、33、および34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記アブスコパル効果が、原発性固形腫瘍に対して遠隔である転移性腫瘍において起こる、請求項30、31、33、および34のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7である、請求項29~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、約1×10
7~約1×10
9粒子形成単位(pfu)の用量を投与される、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、約1×10
7粒子形成単位(pfu)の用量を投与される、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、約5×10
7粒子形成単位(pfu)の用量を投与される、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、約1×10
8粒子形成単位(pfu)の用量を投与される、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、約5×10
8粒子形成単位(pfu)の用量を投与される、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、約1×10
9粒子形成単位(pfu)の用量を投与される、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記投与が腫瘍内投与である、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記薬学的組成物の用量が、約0.2~約0.8の注射比率(薬学的組成物の体積/腫瘍体積)を達成する体積で対象に腫瘍内投与される、請求項29~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記薬学的組成物が、1回、およそ毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、対象に投与される、請求項29~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
前記薬学的組成物が、1回、およそ2週間に1回、対象に投与される、請求項29~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
前記薬学的組成物が、ある投薬レジメンにおいて対象に投与される、請求項29~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
前記投薬レジメンが、対象に、第1の用量の薬学的組成物を1日目に、および第2の用量の薬学的組成物を15日目に投与することを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記投薬レジメンが、第1の用量の薬学的組成物の28日後に開始して反復される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記がんが、原発性腫瘍である、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
前記原発性腫瘍が、固形腫瘍である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記固形腫瘍が、進行性固形腫瘍である、請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記がんが、転移性腫瘍である、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
前記がんが、皮膚、皮下、粘膜、または粘膜下の腫瘍である、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記がんが、皮膚、皮下、粘膜、または粘膜下の場所以外の場所における原発性または転移性の固形腫瘍である、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記がんが、頭頚部扁平上皮癌、皮膚がん、鼻咽頭がん、肉腫、または尿生殖器/婦人科腫瘍である、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
前記がんが、原発性または転移性の、肝臓の腫瘍である、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
前記がんが、原発性または転移性の、胃腫瘍である、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記がんが、悪性黒色腫、肺腺癌、肺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮癌、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、乳がん、食道がん、神経膠芽腫、神経芽腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肝細胞癌、中皮腫、子宮頸がん、または胃がんである、請求項29~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記対象がヒトである、請求項29~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
前記対象が、成人対象である、請求項29~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
前記対象が、青年対象である、請求項29~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
前記対象が、小児対象である、請求項29~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
前記薬学的組成物の対象への投与が、腫瘍成長の阻害、腫瘍退縮、腫瘍のサイズの低減、腫瘍細胞数の低減、腫瘍成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移性病変の低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存期間の増加、全生存期間の増加、完全奏効、部分奏効、抗腫瘍免疫、および安定疾患からなる群より選択される少なくとも1つの効果をもたらす、請求項29~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
追加の治療剤または治療法を対象に施す工程をさらに含む、請求項29~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記追加の治療剤または治療法が、手術、放射線、化学療法剤、がんワクチン、チェックポイント阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)阻害剤、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM3)阻害剤、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、二重特異性抗CD3/抗CD20抗体、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)阻害剤、CD38阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シクロホスファミド、腫瘍特異的抗原に対する抗体、カルメット-ゲラン桿菌ワクチン、細胞毒素、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15、抗体薬物コンジュゲート、抗炎症薬、および栄養補助食品からなる群より選択される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
チェックポイント阻害剤の治療的有効量を対象に投与する工程をさらに含む、請求項30~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
前記チェックポイント阻害剤が、プログラム細胞死1(PD-1)阻害剤;プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤;T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン-3(TIM-3)阻害剤;リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤;IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤;Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)阻害剤;またはV型免疫グロブリンドメインを含有するT細胞活性化のサプレッサー(VISTA)阻害剤である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記チェックポイント阻害剤が、プログラム細胞死1(PD-1)阻害剤、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤、または細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤である、請求項69記載の方法。
【請求項71】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片;抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片;抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片;抗TIM-3抗体またはその抗原結合断片;抗LAG-3抗体またはその抗原結合断片;抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片;抗BTLA抗体またはその抗原結合断片;および抗VISTA抗体またはその抗原結合断片からなる群より選択される、請求項69記載の方法。
【請求項72】
前記チェックポイント阻害剤が、抗プログラム細胞死1(PD-1)抗体もしくはその抗原結合断片;抗プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)抗体もしくはその抗原結合断片;または抗細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)抗体もしくはその抗原結合断片である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブまたはペムブロリズマブである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブである、請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記抗CTLA-4抗体が、イピリムマブである、請求項72記載の方法。
【請求項76】
以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが約7.6である、薬学的組成物。
【請求項77】
がんを有する対象を処置する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約7.6である薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する、方法。
【請求項78】
がんを有する対象を処置する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約7.6である薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与が、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置する、方法。
【請求項79】
がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法であって、以下:
約1×10
6~約1×10
10粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約7.6である薬学的組成物の治療的有効量を該対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与が、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象においてアブスコパル効果を誘導する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年8月29日に出願された米国特許仮出願第62/893,316号に対して恩典または優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、米国特許出願公開第2017/0340687号、日本特許出願番号JP 2018 223349およびJP 2018 179632に関連し、その各々の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されておりその全体が参照により本明細書に組み入れられる配列表を含有する。2020年8月25日に作成された前記ASCIIコピーは、127206_03920_SL.txtという名称であり、サイズが4,095バイトである。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ウイルスをがん処置のために使用するための様々な技法が、近年開発されてきている。1つのそのようなウイルスは、ワクシニアウイルスであり、これは、治療用遺伝子をがん細胞に送達するためのベクターとして、がん細胞において増殖しかつがん細胞を破壊する腫瘍溶解性ウイルスとして、または腫瘍抗原もしくは免疫調節分子を発現するがんワクチンとして研究されている(Expert Opinion on Biological Therapy, 2011, vol.11, p.595-608(非特許文献1))。
【0005】
いくつかのワクシニアウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスとしての使用のために操作されている(PCT公開番号WO 2015/150809(特許文献1);およびWO 2015/076422(特許文献2))。しかし、免疫刺激分子を発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、分子によって刺激された強い免疫応答によって急速に除去され、したがって、治療的に有効ではない可能性がある。強い免疫応答は、ワクシニアウイルス媒介性のがん治療に対して敵または味方のいずれかとして働き得ることもまた考えられている(Molecular Therapy, 2005, vol. 11, No. 2, p. 180-195(非特許文献2))。
【0006】
したがって、免疫応答を刺激するが、急速に除去されず、依然として治療的に有効であるタンパク質を発現するポリヌクレオチドを含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、そのような腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物、およびがんを有する対象を処置するための、単独または別の剤もしくは治療法との組み合わせでのそのような薬学的組成物の使用方法が、当技術分野において必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2015/150809
【特許文献2】WO 2015/076422
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Expert Opinion on Biological Therapy, 2011, vol. 11, p. 595-608
【非特許文献2】Molecular Therapy, 2005, vol. 11, No. 2, p. 180-195
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも部分的に、研究中の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物の開発、およびそのような組成物が、インビトロで様々なタイプのヒトがん細胞株に対して細胞傷害性であるという発見に基づく。本発明はまた、少なくとも部分的に、そのような薬学的組成物が、インビボで抗腫瘍活性を有するという発見、特定の投薬レジメンを用いた薬学的組成物の対象への投与が、非常に効果的であるという発見(例えば、1日目および15日目での投与が、単回投与と比較してより効果的であるという発見)、薬学的組成物の対象への投与が、マウスIL-12、ヒトIL-7、およびマウスインターフェロンガンマ(IFN-γ)タンパク質の腫瘍内分泌、ならびにCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の腫瘍浸潤の増加を誘導するという発見、ならびに、チェックポイント阻害剤、すなわち、抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と組み合わせた本発明の薬学的組成物の投与が、処置のいずれか単独よりも高い抗腫瘍活性を誘導したという発見に基づく。本発明はさらに、少なくとも部分的に、本発明の薬学的組成物の投与後に完全腫瘍退縮(CR)を達成したマウスが、CRの約90日後に再チャレンジされた場合に、同じがん細胞を拒絶し、抗腫瘍免疫記憶の確立を実証したという発見に基づく。加えて、本発明は、少なくとも部分的に、本発明の薬学的組成物の投与が、両側性腫瘍モデルにおいてアブスコパル効果を有していたという発見に基づく。
【0010】
したがって、1つの局面において、本発明は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
薬学的に許容される担体と
を含む、薬学的組成物を提供する。
【0011】
1つの態様において、薬学的に許容される担体は、トロメタミンおよびスクロースを含む。
【0012】
1つの態様において、薬学的に許容される担体は、約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンを含む。
【0013】
1つの態様において、薬学的に許容される担体は、約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースを含む。
【0014】
1つの態様において、組成物のpHは、約5.0~約8.5である。
【0015】
別の局面において、本発明は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが約5.0~約8.5である、薬学的組成物
を提供する。
【0016】
1つの態様において、B5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失は、SCRドメイン1~4における欠失を含む。
【0017】
1つの態様において、B5R領域のSCRドメインにおける欠失は、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~237を含む。
【0018】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5R領域をコードする遺伝子は、B5R領域のシグナルペプチド、ストーク、膜貫通、および細胞質尾部ドメインを含有するポリペプチドをコードする遺伝子である。
【0019】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5R領域は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列に対応するB5R領域のアミノ酸配列を含む。
【0020】
1つの態様において、ワクシニアウイルスは、ウイルスのLC16mo株である。
【0021】
1つの態様において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7である。
【0022】
本発明の薬学的組成物は、約1×107~約1×109粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルス;約1×107粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルス;約5×107粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルス;約1×108粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルス;約5×108粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルス;約1×109粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルス;または約5×109粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含んでもよい。
【0023】
本発明の薬学的組成物は、約15 mmol/L~約45 mmol/L;20 mmol/L~約40 mmol/L;または25 mmol/L~約35 mmol/Lの濃度のトロメタミンを含んでもよい。1つの態様において、トロメタミンの濃度は、約30 mmol/Lである。
【0024】
本発明の薬学的組成物は、約6% w/v~約14% w/v;約7% w/v~約13% w/v;約8% w/v~約12% w/v;または約9% w/v~約11% w/vの濃度のスクロースを含んでもよい。1つの態様において、スクロースの濃度は、約10% w/vである。
【0025】
薬学的組成物のpHは、約8.0;約6.5~約8.0;または約6.8~約7.8であってもよい。1つの態様において、組成物のpHは、約7.6である。
【0026】
1つの態様において、組成物は、約-70℃で保存した場合に少なくとも約6ヶ月~約2年間安定である。
【0027】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物のいずれかを含むバイアルおよびシリンジも提供する。
【0028】
1つの局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する。
【0029】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置する。
【0030】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、それによってがんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する。
【0031】
1つの局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法である。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する。
【0032】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置する。
【0033】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象においてアブスコパル効果を誘導する。
【0034】
1つの態様において、アブスコパル効果は、原発性固形腫瘍に対して近位である転移性腫瘍において起こる。
【0035】
別の態様において、アブスコパル効果は、原発性固形腫瘍に対して遠隔である転移性腫瘍において起こる。
【0036】
1つの態様において、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7である。
【0037】
対象は、約1×107~約1×109粒子形成単位(pfu)の用量;約1×107粒子形成単位(pfu)の用量;約5×107粒子形成単位(pfu)の用量;約1×108粒子形成単位(pfu)の用量;約5×108粒子形成単位(pfu)の用量;または約1×109粒子形成単位(pfu)の用量を投与されてもよい。
【0038】
1つの態様において、投与は腫瘍内投与である。
【0039】
1つの態様において、薬学的組成物の用量は、約0.2~約0.8の注射比率(薬学的組成物の体積/腫瘍体積)を達成する体積で対象に腫瘍内投与される。
【0040】
薬学的組成物は、1回、およそ毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、対象に投与されてもよい。1つの態様において、薬学的組成物は、1回、およそ2週間に1回、対象に投与される。
【0041】
薬学的組成物は、ある投薬レジメンにおいて対象に投与されてもよい。
【0042】
1つの態様において、投薬レジメンは、対象に、第1の用量の薬学的組成物を1日目に、および第2の用量の薬学的組成物を15日目に投与することを含む。
【0043】
1つの態様において、投薬レジメンは、第1の用量の薬学的組成物の28日後に開始して反復される。
【0044】
1つの態様において、がんは、原発性腫瘍、例えば固形腫瘍である。1つの態様において、固形腫瘍は、進行性固形腫瘍である。
【0045】
1つの態様において、がんは、転移性腫瘍である。
【0046】
1つの態様において、がんは、皮膚、皮下、粘膜、または粘膜下の腫瘍である。
【0047】
1つの態様において、がんは、皮膚、皮下、粘膜、または粘膜下の場所以外の場所における原発性または転移性の固形腫瘍である。
【0048】
1つの態様において、がんは、頭頚部扁平上皮癌、皮膚がん、鼻咽頭がん、肉腫、または尿生殖器/婦人科腫瘍である。
【0049】
1つの態様において、がんは、原発性または転移性の、肝臓の腫瘍である。
【0050】
1つの態様において、がんは、原発性または転移性の、胃腫瘍である。
【0051】
1つの態様において、がんは、悪性黒色腫、肺腺癌、肺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮癌、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、乳がん、食道がん、神経膠芽腫、神経芽腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肝細胞癌、中皮腫、子宮頸がん、または胃がんである。
【0052】
1つの態様において、対象はヒトである。
【0053】
ヒト対象は、成人対象;青年対象;または小児対象であり得る。
【0054】
1つの態様において、薬学的組成物の対象への投与は、腫瘍成長の阻害、腫瘍退縮、腫瘍のサイズの低減、腫瘍細胞数の低減、腫瘍成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移性病変の低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存期間の増加、全生存期間の増加、完全奏効、部分奏効、抗腫瘍免疫、および安定疾患からなる群より選択される少なくとも1つの効果をもたらす。
【0055】
本発明の方法は、追加の治療剤または治療法を対象に施す工程をさらに含んでもよい。
【0056】
1つの態様において、追加の治療剤または治療法は、手術、放射線、化学療法剤、がんワクチン、チェックポイント阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)阻害剤、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM3)阻害剤、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、二重特異性抗CD3/抗CD20抗体、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)阻害剤、CD38阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シクロホスファミド、腫瘍特異的抗原に対する抗体、カルメット-ゲラン桿菌ワクチン、細胞毒素、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15、抗体薬物コンジュゲート、抗炎症薬、および栄養補助食品からなる群より選択される。
【0057】
本発明の方法は、チェックポイント阻害剤の治療的有効量を対象に投与する工程をさらに含んでもよい。
【0058】
1つの態様において、チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死1(PD-1)阻害剤;プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤;T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン-3(TIM-3)阻害剤;リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤;IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤;Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)阻害剤;またはV型免疫グロブリンドメインを含有するT細胞活性化のサプレッサー(VISTA)阻害剤である。
【0059】
1つの態様において、チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死1(PD-1)阻害剤、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤、または細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤である。
【0060】
1つの態様において、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片;抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片;抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片;抗TIM-3抗体またはその抗原結合断片;抗LAG-3抗体またはその抗原結合断片;抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片;抗BTLA抗体またはその抗原結合断片;および抗VISTA抗体またはその抗原結合断片からなる群より選択される。
【0061】
1つの態様において、チェックポイント阻害剤は、抗プログラム細胞死1(PD-1)抗体もしくはその抗原結合断片;抗プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)抗体もしくはその抗原結合断片;または抗細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)抗体もしくはその抗原結合断片である。
【0062】
1つの態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【0063】
1つの態様において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。
【0064】
1つの態様において、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブである。
【0065】
1つの局面において、本発明は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが約7.6である、薬学的組成物を提供する。
【0066】
1つの局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約7.6である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する。
【0067】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約7.6である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置する。
【0068】
1つの局面において、本発明は、がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlのLC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7と;
約30 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約10% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約7.6である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象においてアブスコパル効果を誘導する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの、ヒトがん細胞株に対する細胞傷害効果を図示する一連のグラフを示す。用いたヒト細胞株は、以下である:ヒトがん細胞株:NCI-H28(中皮腫)、U-87 MG(神経膠芽腫)、HCT 116(大腸癌)、A549(肺癌)、DMS 53(小細胞肺がん細胞)、GOTO(神経芽腫)、Kato III(胃がん細胞)、OVMANA(卵巣がん細胞)、Detroit 562(頭頸部がん細胞)、SiHa(子宮頸がん細胞)、BxPC-3(膵臓がん細胞)、MDA-MB-231(乳がん細胞)、Caki-1(腎臓がん細胞)、OE33(食道がん細胞)、RPMI 8226(骨髄腫)、JHH-4(肝細胞癌)、LNCaPクローンFGC(前立腺がん細胞)、RPMI-7951(悪性黒色腫)、JIMT-1(乳がん細胞)、HCC4006(肺腺癌)、SK-OV-3(卵巣がん細胞)、RKO(結腸がん細胞)、647-V(膀胱がん細胞)、およびNCI-H226(肺扁平上皮癌)。
【
図2】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスゲノムの、ヒトがん細胞または正常細胞における複製を図示するグラフである。値は、18sリボソームRNA遺伝子に対して正規化し、二連測定の平均値として表した。NCI-H520、HARA、LK-2、およびLUDLU-1は、ヒトがん細胞株である。
【
図3A】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスで処置された、COLO 741腫瘍細胞を有するマウスにおける腫瘍成長の変化(腫瘍体積)を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=6)。統計解析を、21日目の値について行った。COLO 741:ヒト大腸癌細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。ビヒクル処置群と比較して、** P<0.01(ダネットの多重比較検定)。
【
図3B】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスで処置された、COLO 741腫瘍細胞を有するマウスにおける体重の変化を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=6)。ビヒクル処置群と比較して、** P<0.01(ダネットの多重比較検定)。
【
図4A】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスで処置された、U-87 MGを有するマウスにおける腫瘍成長(腫瘍体積)の変化を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=6)。統計解析を、21日目の値について行った。U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。ビヒクル処置群と比較して、** P<0.01(ダネットの多重比較検定)。
【
図4B】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスで処置された、U-87 MGを有するマウスにおける体重の変化を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=6)。21日目に、ビヒクル処置群とhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス処置群との間で、いかなる有意な体重減少もなかった(ダネットの多重比較検定)。U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。
【
図5A】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、CT26.WT腫瘍細胞を有するマウスにおける腫瘍成長の変化(腫瘍体積)を図示するグラフである。各値は、平均値±SEMを表す(n=6)。ビヒクル、または、示された用量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、CT26.WT腫瘍細胞を接種したマウスに、1、3、5日目に腫瘍内注射した。統計解析を、18日目の腫瘍体積の値を用いて行った。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。ビヒクル対照群に対して、** P<0.01(ダネットの多重比較検定)。
【
図5B】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、CT26.WT腫瘍細胞を有するマウスにおける体重の変化を図示するグラフである。各値は、平均値±SEMを表す(n=6)。ビヒクル、または、示された用量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、CT26.WT腫瘍細胞を接種したマウスに、1、3、5日目に腫瘍内注射した。統計解析を、18日目の腫瘍体積の値を用いて行った。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。ビヒクル対照群に対して、** P<0.01(ダネットの多重比較検定)。
【
図6A】
図6A~6Cは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の(6A)腫瘍成長(腫瘍体積)、(6B)25日目の腫瘍成長(腫瘍体積)、および(6C)体重に対する効果を図示するグラフである。
図6Aは、CT26.WT腫瘍を有する免疫適格性マウスにおける、1日目の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の抗腫瘍効果を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=10)。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株。25日目のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート単一用量群に対して、** P<0.01、NS:有意ではない(ダネットの多重比較検定)。
【
図6B】
図6A~6Cは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の(6A)腫瘍成長(腫瘍体積)、(6B)25日目の腫瘍成長(腫瘍体積)、および(6C)体重に対する効果を図示するグラフである。
図6Bは、CT26.WT腫瘍を有する免疫適格性マウスにおける、1および8日目の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の抗腫瘍効果を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=10)。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株。25日目のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート単一用量群に対して、** P<0.01、NS:有意ではない(ダネットの多重比較検定)。
【
図6C】
図6A~6Cは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の(6A)腫瘍成長(腫瘍体積)、(6B)25日目の腫瘍成長(腫瘍体積)、および(6C)体重に対する効果を図示するグラフである。
図6Cは、CT26.WT腫瘍を有する免疫適格性マウスにおける、1および15日目の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の抗腫瘍効果を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=10)。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株。25日目のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート単一用量群に対して、** P<0.01、NS:有意ではない(ダネットの多重比較検定)。
【
図7A】腫瘍におけるヒトIL-7のレベルを図示するグラフである。Cont-VVまたはhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート。IL-7:インターロイキン-7;Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。*、** P<0.05、0.01(マン・ホイットニーのU検定)。
【
図7B】腫瘍におけるマウスIL-12のレベルを図示するグラフである。Cont-VVまたはhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート。IL-12:インターロイキン-12;Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。*、** P<0.05、0.01(マン・ホイットニーのU検定)。
【
図7C】腫瘍におけるマウスIFN-γのレベルを図示するグラフである。Cont-VVまたはhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート。IFN-γ:インターフェロンガンマ;Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。*、** P<0.05、0.01(マン・ホイットニーのU検定)。
【
図8A】腫瘍におけるマウスCD4+ T細胞を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(ビヒクルについてはn=12、Cont-VVならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートについてはn=11)。CD4:Tヘルパー細胞亜集団に特異的な表面抗原;Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。** P<0.01(マン・ホイットニーのU検定)。
【
図8B】腫瘍におけるマウスCD8
+ T細胞を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(ビヒクルについてはn=12、Cont-VVならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートについてはn=11)。CD8:細胞傷害性T細胞上に提示される表面抗原;Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。** P<0.01(マン・ホイットニーのU検定)。
【
図9】
図9A~9Cは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、CT26.WT腫瘍を有するマウス由来の腫瘍試料における、ヒトIL-7(A)、マウスIL-12(B)、およびマウスIFN-γ(C)の個々の測定値を図示するドットプロットグラフである。
図9Aは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内注射後の、CT26.WT腫瘍を有するマウスにおけるヒトIL-7の腫瘍中レベルを図示するグラフである。水平のバーは、3匹の動物の平均値を示す。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス。ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;IL-7:インターロイキン-7;MSD:Meso Scale Discovery。
図9Bは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内注射後の、CT26.WT腫瘍を有するマウスにおけるマウスIL-12の腫瘍中レベルを図示するグラフである。水平のバーは、3匹の動物の平均値を示す。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス。ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;IL-12:インターロイキン-12;MSD:Meso Scale Discovery。
図9Cは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内注射後の、CT26.WT腫瘍を有するマウスにおけるマウスIFN-γの腫瘍中レベルを図示するグラフである。水平のバーは、3匹の動物の平均値を示す。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス。ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;IFN-γ:インターフェロンガンマ;MSD:Meso Scale Discovery。
【
図10】
図10A~10Cは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、CT26.WT腫瘍を有するマウス由来の血清試料における、ヒトIL-7(A)、マウスIL-12(B)、およびマウスIFN-γ(C)の個々の測定値を図示するドットプロットグラフである。
図10Aは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内注射後の、CT26.WT腫瘍を有するマウスにおけるヒトIL-7の血清中レベルを図示するグラフである。水平のバーは、3匹の動物の平均値を示す。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス。ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;IL-7:インターロイキン-7;MSD:Meso Scale Discovery。
図10Bは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内注射後の、CT26.WT腫瘍を有するマウスにおけるマウスIL-12の血清中レベルを図示するグラフである。水平のバーは、3匹の動物の平均値を示す。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス。ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;IL-12:インターロイキン-12;MSD:Meso Scale Discovery。
図10Cは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内注射後の、CT26.WT腫瘍を有するマウスにおけるマウスIFN-γの血清中レベルを図示するグラフである。水平のバーは、3匹の動物の平均値を示す。CT26.WT:マウス大腸癌細胞株、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス。ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;IFN-γ:インターフェロンガンマ;MSD:Meso Scale Discovery。
【
図11A】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの単回腫瘍内注射後の、腫瘍および血清のヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γレベルを図示するグラフである。箱ひげ図は、中央値、四分位範囲、最大値、および最小値を表す。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;IFN-γ:インターフェロンガンマ;IL-7:インターロイキン-7;IL-12:インターロイキン-12;MSD:Meso Scale Discovery。
【
図11B】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの単回腫瘍内注射後の、腫瘍および血清のヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γレベルを図示するグラフである。箱ひげ図は、中央値、四分位範囲、最大値、および最小値を表す。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;IFN-γ:インターフェロンガンマ;IL-7:インターロイキン-7;IL-12:インターロイキン-12;MSD:Meso Scale Discovery。
【
図12】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの反復腫瘍内注射後の、腫瘍および血清のヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γレベルを図示するグラフである。箱ひげ図は、中央値、四分位範囲、最大値、および最小値を表す。有意性は、** P<0.01で判定した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート:マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;IFN-γ:インターフェロンガンマ;IL-7:インターロイキン-7;IL-12:インターロイキン-12;MSD:Meso Scale Discovery。
【
図13】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート注射の完了の90日後にCRを達成していたマウスと、同齢の対照マウスとの体重の比較を図示するグラフである。ドットプロットは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの最終注射の90日後にCRを達成していたマウスならびに同齢の対照マウスの、個々の体重を表す。各群における水平の線および垂直のバーは、それぞれ、平均値およびSEMを示す。CRを誘導していたマウスと同齢の対照マウスとの間に、いかなる有意な体重の差もなかった(独立スチューデントt検定)。CR:完全腫瘍退縮;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株。
【
図14】
図14A~14Bは、CT26.WT腫瘍細胞の接種後の、個々のマウスの腫瘍成長(腫瘍体積)を図示するグラフである。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート処置後にCT26.WT腫瘍細胞のCRを達成したマウス(以前に治癒したマウス;
図14A)ならびに同齢の対照マウス(処置未経験のマウス;
図14B)に、CT26.WT腫瘍細胞を5×105細胞/マウスで皮下接種し(n=10)、接種後28日間観察した。CR:完全腫瘍退縮;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株。
【
図15A】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、CT26.WT腫瘍細胞を有するマウスにおける腫瘍成長(腫瘍体積)を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=10)。Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。ビヒクル群に対して、* P<0.05、** P<0.01(独立スチューデントt検定)、Cont-VVに対して、# P<0.05、## P<0.01(独立スチューデントt検定)。
【
図15B】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、CT26.WT腫瘍細胞を有するマウスにおける腫瘍成長(腫瘍体積)を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=10)。Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。ビヒクル群に対して、* P<0.05、** P<0.01(独立スチューデントt検定)、Cont-VVに対して、# P<0.05、## P<0.01(独立スチューデントt検定)。
【
図15C】hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、CT26.WT腫瘍細胞を有するマウスにおける体重の変化を図示するグラフである。各点は、平均値±SEMを表す(n=10)。Cont-VV:免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。ビヒクル群に対して、* P<0.05、** P<0.01(独立スチューデントt検定)、Cont-VVに対して、# P<0.05、## P<0.01(独立スチューデントt検定)。
【
図16】抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と共に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された、両側にCT26.WT腫瘍を有するマウスにおける腫瘍成長の変化(腫瘍体積)を図示する一連のグラフを示す。個々のマウスの腫瘍体積を示す。Ab:抗体;マウスIL-12遺伝子およびヒトIL-7遺伝子を保有する組換えワクシニアウイルス;CT26.WT:マウス大腸癌細胞株;IL-7:インターロイキン7;IL-12:インターロイキン12;ビヒクル:10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HCl。
【
図17】ファースト・イン・ヒューマン(First-In-Human)(FIH)第I相試験の概要を図示する。CT:コンピュータ断層撮影;DLT:用量制限毒性;FIH:ファースト・イン・ヒューマン;HNSCC:頭頸部扁平上皮癌;MTD:最大耐用量;n:指定されたコホートにおける患者の数;RP2D:推奨される第2相用量。
1提案された用量漸増レベル。臨床データに基づいて定義される実際の用量漸増コホート。
2前のコホートについてのDLT観察期間の完了と次のコホートの開始との間には、4週間以上が経過することになる。
3群Bの用量漸増コホートにおける登録は、群AにおけるMTD/RP2D後に始まる。
【
図18】ファースト・イン・ヒューマン(FIH)第I相試験の来診の概要を図示する。DLT:用量制限毒性;EOT:処置の終わり;FIH:ファースト・イン・ヒューマン;IT:腫瘍内;Q:すべて。*サイクル1の投薬前生検は、最初の注射の、最大で28日前に行われてもよい。サイクル2の投薬前生検は、1日目の注射の、最大で5日前に採取されてもよい。
【
図19】「hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス」または「hIL12/hIL7ウイルス」とも呼ばれる、組換えワクシニアウイルス「LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7」のゲノム構造を模式的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
態様の説明
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的に、研究中の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物の開発、およびそのような組成物が、インビトロで様々なタイプのヒトがん細胞株に対して細胞傷害性であるという発見に基づく。本発明はまた、少なくとも部分的に、そのような薬学的組成物が、インビボで抗腫瘍活性を有するという発見、投薬レジメンを用いた薬学的組成物の対象への投与が、非常に効果的であるという発見(例えば、1日目および15日目での投与が、単回投与と比較してより効果的であるという発見)、薬学的組成物の対象への投与が、マウスIL-12、ヒトIL-7、およびマウスインターフェロンガンマ(IFN-γ)タンパク質の腫瘍内分泌、ならびにCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の腫瘍浸潤の増加を誘導するという発見、ならびに、チェックポイント阻害剤、すなわち、抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体と組み合わせた本発明の薬学的組成物の投与が、処置のいずれか単独よりも高い抗腫瘍活性を誘導したという発見に基づく。本発明はさらに、少なくとも部分的に、本発明の薬学的組成物の投与後に完全腫瘍退縮(CR)を達成したマウスが、CRの約90日後に再チャレンジされた場合に、同じがん細胞を拒絶し、抗腫瘍免疫記憶の確立を実証したという発見に基づく。加えて、本発明は、少なくとも部分的に、本発明の薬学的組成物の投与が、両側性腫瘍モデルにおいてアブスコパル効果を有していたという発見に基づく。
【0071】
以下の詳細な説明は、いかに本発明を作製し、使用するかを開示する。
【0072】
I. 定義
本発明がより容易に理解され得るように、ある特定の用語が最初に定義される。加えて、パラメータの値または値の範囲が列挙されるときはいつでも、列挙された値の間に入る値および範囲もまた、本発明の一部であるつもりと意図されることに留意するべきである。
【0073】
冠詞である「1つの(a)」および「1つの(an)」は、冠詞の文法的目的語の1つまたは1つよりも多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すように本明細書において用いられる。例として、「要素」は、1つの要素または1つよりも多い要素、例えば、複数の要素を意味する。
【0074】
「含む」という用語は、「含むがそれに限定されない」という句を意味するように本明細書において用いられ、かつそれと互換的に用いられる。
【0075】
「または」という用語は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、「および/または」という用語を意味するように本明細書において用いられ、かつそれと互換的に用いられる。「約」という用語は、当技術分野における典型的な許容の範囲内を意味するように本明細書において用いられる。例えば、「約」は、平均値から約2標準偏差以内であると理解することができる。ある特定の態様において、約は+10%を意味する。ある特定の態様において、約は+5%を意味する。約が一連の数字または範囲の前に存在する場合は、「約」が、一連または範囲における数字の各々を修飾できることが理解される。
【0076】
本明細書において用いられる場合、「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、非分裂細胞においては複製を有しないかまたは最小限の複製を有するが、インビトロまたはインビボのいずれかで、分裂細胞(例えば、がん細胞などの、増殖細胞)において選択的に複製して、成長を遅らせ、かつ/または分裂細胞を溶解するウイルスを指す。典型的には、腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルス粒子(またはビリオン)中にパッケージされたウイルスゲノムを含有し、かつ感染性である(すなわち、感染して、宿主細胞または対象中に侵入することができる)。本明細書において用いられる場合、この用語は、DNAおよびRNAベクター(問題のウイルスに依存する)、ならびにそれから生成されるウイルス粒子を包含する。
【0077】
本明細書において用いられる場合、ワクシニアウイルスという用語は、ポックスウイルスファミリーに属する、大きくて複雑なエンベロープウイルスを指す。ワクシニアウイルスは、およそ250の遺伝子をコードする、長さがおよそ190 kbpの直鎖状の二本鎖DNAゲノムを有する。ビリオンの寸法は、だいたい360×270×250 nmであり、質量はおよそ5~10 fgである。
【0078】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、ペプチド結合を介して結合した少なくとも9個またはそれよりも多いアミノ酸を含む、アミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状、分枝状、または環状であることができ、天然に存在するおよび/またはアミノ酸類似体を含んでもよく、それは、非アミノ酸によって中断されてもよい。アミノ酸ポリマーが50アミノ酸残基よりも大きい場合には、好ましくは、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれるのに対して、それが50アミノ酸長以下である場合には、「ペプチド」と呼ばれる。
【0079】
「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」、および「ヌクレオチド配列」という用語は、互換的に用いられ、ポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)(例えば、cDNA、ゲノムDNA、プラスミド、ベクター、ウイルスゲノム、単離されたDNA、プローブ、プライマー、およびそれらの任意の混合物)、またはポリリボヌクレオチド(例えば、mRNA、アンチセンスRNA、siRNA)、または混合ポリリボ-ポリデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのポリマーを定義する。それらは、一本鎖または二本鎖、直鎖状または環状、天然または合成、修飾または非修飾のポリヌクレオチドを包含する。さらに、ポリヌクレオチドは、天然に存在しないヌクレオチドを含んでもよく、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。
【0080】
「単離された」核酸分子とは、核酸の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されているものである。例えば、ゲノムDNAに関して、「単離された」という用語は、ゲノムDNAが天然で会合している染色体から分離されている核酸分子を含む。好ましくは、「単離された」核酸分子は、核酸分子が由来する生物のゲノムDNAにおいて天然で核酸分子に隣接する配列(すなわち、核酸分子の5'末端および3'末端に位置する配列)を含まない。
【0081】
一般的に、「同一性」という用語は、2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の、アミノ酸対アミノ酸またはヌクレオチド5対ヌクレオチドの対応を指す。2つの配列間の同一性のパーセンテージは、最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。例えば、NCBIで利用可能なBlastプログラムまたはAtlas of Protein Sequence and Structure(Dayhoffed, 1981, Suppl., 3: 482-9)におけるALIGNなどの様々なコンピュータプログラムおよび数学的アルゴリズムが、アミノ酸配列間の同一性のパーセンテージを決定するために当技術分野において利用可能である。ヌクレオチド配列間の同一性を決定するためのプログラムもまた、特殊なデータベースにおいて利用可能である(例えば、Genbank、Wisconsin Sequence Analysis Package、BESTFIT、FASTA、およびGAPプログラム)。例証となる目的で、「少なくとも80%の同一性」とは、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%を意味する。
【0082】
「対象」という用語は、概して、本発明の任意の製品および方法が必要とされるか、または有益であり得る生物を指す。典型的には、生物は、哺乳動物、特に、家庭内動物、農場の動物、スポーツの動物、および霊長類からなる群より選択される哺乳動物である。好ましくは、対象は、がんなどの増殖性疾患を有するかまたは有するリスクがあると診断されたヒトである。「対象」および「患者」という用語は、人体に言及する場合に互換的に用いられてもよく、男性および女性を包含する。
【0083】
II. 本発明の薬学的組成物
本発明は、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物および製剤を提供する。そのような薬学的組成物は、送達の様式に基づいて製剤化される。1つの例において、組成物は、非経口送達を介した、例えば、静脈内(IV)送達による全身投与のために製剤化される。1つの態様において、組成物は、腹腔内送達のために製剤化される。別の態様において、組成物は、腫瘍内送達のために製剤化される。
【0084】
したがって、本発明は、約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/hIL7ウイルスと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物、例えば、腫瘍送達に適している薬学的組成物を提供する。
【0085】
「薬学的に許容される」という句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な有益性/リスクの比に釣り合う、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒト対象および動物対象の組織と接触する使用に適している、それらの化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0086】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」という句は、対象化合物を1つの臓器または体の一部から別の臓器または体の一部に運ぶかまたは輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒カプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、かつ処置される対象に対して有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として働くことができる材料のいくつかの例には、以下が含まれる:(1)糖、例えば、スクロース、ラクトース、またはグルコース;(2)デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;(3)セルロース、およびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)潤滑剤、例えば、マグネシウム状態、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク;(8)賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤ワックス;(9)油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、トロメタミン、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリーの水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボナート、および/またはポリ無水物;(22)増量剤、例えば、ポリペプチドおよびアミノ酸;(23)血清成分、例えば、血清アルブミン、HDL、およびLDL;ならびに(22)薬学的製剤において使用される他の非毒性適合性物質。
【0087】
本発明の薬学的組成物は、ヒトまたは動物の使用に適切である溶液中にあってもよい。溶液の溶媒または希釈剤は、等張性、低張性、または弱高張性であってもよく、比較的低いイオン強度を有する。代表的な例には、滅菌水、生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム)、リンゲル液、グルコース、トレハロース、またはサッカロース溶液、ハンクス溶液、および他の水性の生理学的に平衡の塩溶液が含まれる(例えば、Remington : The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro, Lippincott, Williams & Wilkinsの最新版を参照されたい)。
【0088】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、ヒトの使用のために緩衝化される。適している緩衝液には、非限定的に、生理学的なまたはわずかに塩基性のpH(例えば、およそpH 7~およそpH 9)を維持することができる、リン酸緩衝液(例えば、PBS)、重炭酸緩衝液、および/またはTris緩衝液、例えば、トロメタミンを含む緩衝液が含まれる。
【0089】
本発明の薬学的組成物はまた、例えば、製剤の浸透圧、粘度、透明度、色、無菌性、安定性、溶解速度を含む、望ましい薬学的または薬力学的な特性を提供するため、ヒトまたは動物対象中への放出または吸収を改変するかまたは維持するため、血液バリアを横切る輸送または特定の臓器における浸透を促進するために、他の薬学的に許容される賦形剤を含有してもよい。
【0090】
本発明の薬学的組成物はまた、アラム、フロイント完全および不完全(IFA)などのミネラルオイルエマルジョン、リポ多糖またはその誘導体(Ribi et al., 1986, Immunology and Immunopharmacology of Bacterial Endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)、QS21などのサポニン(Sumino et al., 1998, J. Virol. 72: 4931;W098/56415)、イミダゾ-キノリン化合物、例えばイミキモド(Suader, 2000, J. Am Acad Dermatol. 43:S6)、S-27609(Smorlesi, 2005, Gene Ther. 12: 1324)、およびWO2007/147529に記載されているものなどの関連化合物、CpGなどのシトシンリン酸グアノシンオリゴデオキシヌクレオチド(Chu et al., 1997, J. Exp. Med. 186: 1623;Tritel et al., 2003, J. Immunol. 171: 2358)、ならびにIC-31などのカチオン性ペプチド(Kritsch et al., 2005, J. Chromatogr Anal. Technol. Biomed. Life Sci. 822: 263-70)を非限定的に含む、例えば、TLR-7、TLR-8、およびTLR-9などのtoll様受容体(TLR)を通して、投与時に、免疫(特にT細胞媒介性免疫)を刺激するかまたは腫瘍細胞の感染を促進することができる、1つまたは複数のアジュバントを含んでもよい。
【0091】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、安定性を改善するように製剤化される。例えば、凍結(例えば、-70℃、-20℃)、冷蔵(例えば、4℃)、または周囲の温度の、製造および長期保存(すなわち、少なくとも6ヶ月~2年間)の条件下で。本発明の薬学的組成物は、液体、または、例えば、真空乾燥および凍結乾燥を含むプロセスによって得られる固体(例えば、乾燥粉末または凍結乾燥)であってもよい。
【0092】
ある特定の態様において、本発明の薬学的組成物は、インビボでの妥当な分布または遅延放出を確実にするように製剤化される。例えば、薬学的組成物は、リポソームにおいて製剤化されてもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性のポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製のための多くの方法は、例えば、"Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems", ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978においてJ. Robinsonによって記載されている。
【0093】
1つの局面において、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/hIL7ウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物が、本明細書において提供される。1つの態様において、薬学的組成物は、腫瘍内送達のためである。
【0094】
別の局面において、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/hIL7ウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが約5.0~約8.5である、薬学的組成物
が、本明細書において提供される。1つの態様において、薬学的組成物は、腫瘍内送達のためである。
【0095】
本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/hIL7ウイルスを含有する薬学的組成物は、がんを有する対象を処置するために有用である。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、約1×106~約1×1010、約1×107~約1×109、約1×107、約5×107、約1×108、約5×108、約1×109、または約5×109粒子形成単位(pfu)/mlの本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/hIL7ウイルスを含んでもよい。上記で列挙された範囲および値の間に入る値もまた、本発明の一部であるように意図される。加えて、上記で列挙された値のいずれかの組み合わせを上限および/または下限として用いる値の範囲が、含まれるように意図される。
【0097】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、トロメタミン(Tris-HCl)を含む。本発明の薬学的組成物におけるトロメタミンの濃度は、約10 mmol/L~約50 mmol/L;約15 mmol/L~約45 mmol/L;20 mmol/L~約40 mmol/L;25 mmol/L~約35 mmol/L;または約30 mmol/Lであってもよい。上記で列挙された範囲および値の間に入る値もまた、本発明の一部であるように意図される。加えて、上記で列挙された値のいずれかの組み合わせを上限および/または下限として用いる値の範囲が、含まれるように意図される。
【0098】
他の態様において、本発明の薬学的組成物は、スクロースなどの糖を含む。本発明の薬学的組成物におけるスクロースの濃度は、約5% w/v~約15% w/v、約6% w/v~約14% w/v;約7% w/v~約13% w/v;約8% w/v~約12% w/v;約9% w/v~約11% w/v;または約10% w/vのスクロースであってもよい。上記で列挙された範囲および値の間に入る値もまた、本発明の一部であるように意図される。加えて、上記で列挙された値のいずれかの組み合わせを上限および/または下限として用いる値の範囲が、含まれるように意図される。
【0099】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、保存料を含まない。本発明の別の態様において、本発明の薬学的組成物は、保存料を含む。
【0100】
本発明の薬学的組成物のpHは、約5.0~約8.5、約5.5~約8.5、約6.0~約8.5、約6.5~約8.5、約7.0~約8.5、約5.0~約8.0、約5.5~約8.0、約6.0~約8.0、約6.5~約8.0、約7.0~約8.0、約6.5~約8.5、約7.5~約8.5、約7.5~約8.0、約6.8~約7.8、または約7.6であってもよい。上記で列挙された範囲および値の間に入る範囲および値もまた、本発明の一部であるように意図される。加えて、上記で列挙された値のいずれかの組み合わせを上限および/または下限として用いる値の範囲が、含まれるように意図される。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、物理的におよび化学的に安定である。
【0102】
本明細書において用いられる場合、「安定した」という用語は、その物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持する、薬学的組成物および/またはそのような薬学的組成物内の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを指す。組成物およびその中のdsRNA剤の安定性を測定するための様々な解析技法が、当技術分野において利用可能であり、本明細書に記載されている。
【0103】
薬学的組成物は、色および/もしくは透明度の目視検査もしくはUV検査時の、または、例えばHPLC分析、例えば、変性IP RP-HPLC、非変性IP RP-HPLC、および/もしくは変性AX-HPLC分析によって測定されるような、例えば、増加した不純物のいかなる兆候も実質的に示さない場合には、「その物理的安定性を保持している」。
【0104】
腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、所与の時の化学的安定性が、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが依然としてその生物学的活性を保持しているとみなされるようである場合には、薬学的組成物において「その化学的安定性を保持している」。
【0105】
腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、組成物中の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが、その意図された目的で生物学的に活性である場合には、薬学的組成物において「その生物学的活性を保持している」。
【0106】
いくつかの態様において、本発明の組成物は、約-70℃で保存された場合、少なくとも約6ヶ月~約2年間安定である。
【0107】
III. 本発明の薬学的組成物における使用のための腫瘍溶解性ワクシニアウイルス
本発明における使用に適している腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2017/0340687号に記載されている。そのような腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチドおよびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含む。
図19は、「hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス」または「hIL12/hIL7ウイルス」とも呼ばれる、組換えワクシニアウイルス「LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7」のゲノム構造を模式的に図示する。
【0108】
本発明における使用に適しているワクシニアウイルスは、ポックスウイルス(Poxviridae)科のオルソポックスウイルス(Orthopoxvirus)属に由来する。本発明において使用されるワクシニアウイルスの株には、Lister、New York City Board of Health(NYBH)、Wyeth、Copenhagen、Western Reserve(WR)、Modified Vaccinia Ankara (MVA)、EM63、Ikeda、Dalian、Tian Tanなどの株が含まれるが、それらに限定されない。Lister株およびMVA株は、American Type Culture Collectionから入手可能である(それぞれ、ATCC VR-1549およびATCC VR-1508)。
【0109】
これらの株から樹立されたワクシニアウイルス株が、本発明において使用されてもよい。例えば、Lister株から樹立されたLC16株、LC16m8株、およびLC16mO株が、本発明において使用されてもよい。LC16mO株は、親株としてLister株を低温で継代培養することによって、LC16株を介して生成された株である。LC16m8株は、ウイルス膜タンパク質をコードする遺伝子であるB5R遺伝子中にフレームシフト変異を有し、このタンパク質の発現および機能を失うことにより弱毒化された、LC16mO株を低温でさらに継代培養することによって生成された株である(タンパクシツ カクサン コウソ(タンパク質、核酸、酵素), 2003, vol. 48, p. 1693-1700)。
【0110】
Lister株、LC16m8株、およびLC16mO株の全ゲノム配列は、公知であり、例えば、それぞれ、GenBankアクセッション番号AY678276.1、AY678275.1、およびAY678277.1において見出され得、その各々の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。したがって、LC16m8株およびLC16mO株は、相同組換えまたは部位特異的変異誘発などの公知の技法によって、Lister株から作製することができる。
【0111】
1つの態様において、本発明における使用のためのワクシニアウイルスは、LC16mO株である。
【0112】
IL-7は、IL-7受容体に対するアゴニストとして機能する分泌タンパク質である。IL-7は、T細胞、B細胞などの、生存、増殖、および分化に寄与する(Current Drug Targets, 2006, vol. 7, p. 1571-1582)。本発明において、IL-7は、天然に存在するIL-7およびその機能を有する改変型を包含する。1つの態様において、IL-7はヒトIL-7である。本発明において、ヒトIL-7は、天然に存在するヒトIL-7およびその機能を有する改変型を包含する。1つの態様において、ヒトIL-7は、以下からなる群より選択される:
アクセッション番号NP_000871.1(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
1~10個のアミノ酸が、アクセッション番号NP_000871.1(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列から欠失している、その中で置換されている、その中に挿入されている、かつ/またはそれに付加されているアミノ酸配列からなり、かつヒトIL-7の機能を有する、ポリペプチド;および
GenBankアクセッション番号NP_000871.1(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示される全アミノ酸配列に対して約85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または約100%のヌクレオチド同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつヒトIL-7の機能を有する、ポリペプチド。
【0113】
これに関して、ヒトIL-7の機能は、ヒト免疫細胞の生存、増殖、および分化に対する効果を指す。
【0114】
本発明において使用されるヒトIL-7は、好ましくは、GenBankアクセッション番号NP_000871.1(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0115】
IL-12は、IL-12サブユニットp40およびIL-12サブユニットαのヘテロ二量体である。IL-12は、T細胞およびNK細胞の分化を活性化および誘導する機能を有することが報告されている(Cancer Immunology Immunotherapy, 2014, vol. 63, p. 419-435)。本発明において、IL-12は、天然に存在するIL-12およびその機能を有する改変型を包含する。1つの態様において、IL-12はヒトIL-12である。本発明において、ヒトIL-12は、天然に存在するヒトIL-12およびその機能を有する改変型を包含する。1つの態様において、ヒトIL-12は、以下の(1~3)からなる群由来の、ヒトIL-12サブユニットp40(a)およびヒトIL-12サブユニットα(b)の組み合わせとして選択される:
(1)(a)以下を含むポリペプチド:GenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;1~10個のアミノ酸が、GenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列から欠失している、その中で置換されている、その中に挿入されている、かつ/もしくはそれに付加されているアミノ酸配列からなるポリペプチド;またはGenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示される全アミノ酸配列に対して約85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは約100%のヌクレオチド同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(1)(b)GenBankアクセッション番号NP_000873.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;1~10個のアミノ酸が、GenBankアクセッション番号NP_000873.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列から欠失している、その中で置換されている、その中に挿入されている、かつ/もしくはそれに付加されているアミノ酸配列からなるポリペプチド;またはGenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示される全アミノ酸配列に対して約85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは約100%のヌクレオチド同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつヒトIL-12の機能を有する、ポリペプチド;
(2)(a)以下を含むポリペプチド:GenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(2)(b)GenBankアクセッション番号NP_000873.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;1~10個のアミノ酸が、GenBankアクセッション番号NP_000873.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列から欠失している、その中で置換されている、その中に挿入されている、かつ/もしくはそれに付加されているアミノ酸配列からなるポリペプチド;またはGenBankアクセッション番号NP_000873.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示される全アミノ酸配列に対して約85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは約100%のヌクレオチド同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつヒトIL-12の機能を有する、ポリペプチド;ならびに
(3)(a)以下を含むポリペプチド:GenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;1~10個のアミノ酸が、GenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列から欠失している、その中で置換されている、その中に挿入されている、かつ/もしくはそれに付加されているアミノ酸配列からなるポリペプチド;またはGenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示される全アミノ酸配列に対して約85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは約100%のヌクレオチド同一性、またはそれに示されるアミノ酸配列とより高い同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(3)(b)GenBankアクセッション番号NP_000873.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列からなり、かつヒトIL-12の機能を有する、ポリペプチド。
【0116】
これに関して、ヒトIL-12の機能は、T細胞またはNK細胞に対する活性化効果および/または分化効果を指す。IL-12サブユニットp40とIL-12サブユニットαとは、直接結合によってIL-12を形成することができる。さらに、IL-12サブユニットp40とIL-12サブユニットαとは、リンカーを介してコンジュゲートさせることができる。
【0117】
本発明において使用されるヒトIL-12は、好ましくは、GenBankアクセッション番号NP_002178.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、およびGenBankアクセッション番号NP_000873.2(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、ポリペプチドである。
【0118】
本明細書において用いられる場合、「同一性」とは、デフォルトパラメータでNEEDLEプログラム(Journal of Molecular Biology, 1970, vol. 48, p. 443-453)を用いた検索によって得られる同一性の値を意味する。パラメータは、以下の通りである。
ギャップペナルティ=10
伸長(extend)ペナルティ=0.5
マトリックス=EBLOSUM62
【0119】
IL-7およびIL-12をコードするポリヌクレオチドは、当分野において公知のポリヌクレオチド合成の方法を用いて、公的に入手可能な配列情報に基づいて合成することができる。さらに、ポリヌクレオチドが得られたら、次いで、各ポリペプチドの機能を有する改変型を、部位特異的変異誘発などの当業者により知られている方法を用いて、あらかじめ決定された部位中に変異を導入することによって生成することができる(Current Protocols in Molecular Biology edition, 1987, John Wiley & Sons Sections 8.1-8.5)。
【0120】
IL-7およびIL-12を各々コードするポリヌクレオチドは、相同組換えまたは部位特異的変異誘発などの公知の技法によって、ワクシニアウイルス中に導入することができる。例えば、導入されることが望ましい部位で、ポリヌクレオチドがヌクレオチド配列中に導入されているプラスミド(トランスファーベクタープラスミドDNAとも呼ばれる)を作製して、ワクシニアウイルスに感染した細胞中に導入することができる。外来遺伝子であるIL-7およびIL-12を各々コードするポリヌクレオチドが導入される領域は、好ましくは、ワクシニアウイルスの生活環に不可欠ではない遺伝子領域である。例えば、ある特定の局面において、IL-7および/またはIL-12が導入される領域は、VGF機能が欠損したワクシニアウイルスにおけるVGF遺伝子内の領域、O1L機能が欠損したワクシニアウイルスにおけるO1L遺伝子内の領域、またはVGF機能およびO1L機能の両方が欠損したワクシニアウイルスにおけるVGF遺伝子およびO1L遺伝子のいずれかまたは両方内の1つまたは複数の領域であってもよい。上記において、外来遺伝子は、VGF遺伝子およびO1L遺伝子の方向と同じかまたは反対の方向で転写されるように導入することができる。
【0121】
トランスファーベクタープラスミドDNAを細胞中に導入するための方法は、限定されないが、用いることができる方法の例には、リン酸カルシウム法およびエレクトロポレーションが含まれる。
【0122】
外来遺伝子であるIL-7およびIL-12を各々コードするポリヌクレオチドを導入する場合、適しているプロモーターを、外来遺伝子の上流に機能的に連結することができる。このようにして、本発明によるワクシニアウイルス、組み合わせて使用されるワクシニアウイルス、または組み合わせキット用のワクシニアウイルス中の外来遺伝子を、腫瘍細胞における発現を促進することができるプロモーターに連結することができる。そのようなプロモーターの例には、PSFJ1-10、PSFJ2-16、p7.5Kプロモーター、p11Kプロモーター、T7.10プロモーター、CPXプロモーター、HFプロモーター、H6プロモーター、およびT7ハイブリッドプロモーターが含まれる。
【0123】
本発明における使用のためのワクシニアウイルスは、弱毒化されたかつ/または腫瘍選択的なワクシニアウイルスを含むことができる。
【0124】
本明細書において用いられる場合、「弱毒化された」とは、正常細胞(例えば、非腫瘍細胞)に対する低い毒性(例えば、低い細胞溶解)を意味する。
【0125】
本明細書において用いられる場合、「腫瘍選択的」とは、正常細胞(例えば、非腫瘍細胞)に対する毒性よりも高い、腫瘍細胞に対する毒性(例えば、腫瘍溶解性)を意味する。
【0126】
特定のタンパク質の機能が欠損しているように、または特定の遺伝子もしくはタンパク質の発現を抑制するように遺伝子改変されたワクシニアウイルス(Expert Opinion on Biological Therapy, 2011, vol. 11, p. 595-608)が、本発明において使用されてもよい。
【0127】
例えば、ワクシニアウイルスの腫瘍選択性を増強するために、以下を行うことができる:チミジンキナーゼ(TK)の欠失(Cancer Gene Therapy, 1999, Vol. 6, p. 409-422);改変されたTK遺伝子、改変された血球凝集素(HA)遺伝子、および改変されたF3遺伝子または中断されたF3遺伝子座の導入(国際公開第2005/047458号);TK、HA、およびF14.5Lの機能の欠失(Cancer Research, 2007, Vol. 67, p. 10038-10046);TKおよびB18Rの機能の欠失(PLoS Medicine, 2007, Vol. 4, p. e353);TKおよびリボヌクレオチドレダクターゼの機能の欠失(PLoS Pathogens, 2010, Vol. 6, p. e1000984);SPI-1およびSPI-2の機能の欠失(Cancer Research, 2005, Vol. 65, p. 9991-9998);SPI-1、SPI-2、およびTKの機能の欠失(Gene Therapy, 2007, Vol. 14, p. 638-647)、またはE3L領域およびK3L領域中への変異の導入(国際公開第2005/007824号)。さらに、A34R領域(Molecular Therapy, 2013, Vol. 21, p. 1024-1033)を、生体における抗ワクシニアウイルス抗体の中和効果によるウイルスの除去を弱めることを期待して、欠失させることができる。さらに、ワクシニアウイルスによる免疫細胞の活性化を期待して、インターロイキン-1b(IL-1b)受容体を欠失させることができる(国際公開第2005/030971号)。
【0128】
前述の外来遺伝子の挿入または遺伝子の欠失もしくは変異は、周知の相同組換え法または部位特異的変異誘発によって達成することができる。本発明のワクシニアウイルスは、前述の遺伝子改変の組み合わせを有していてもよい。
【0129】
本明細書において用いられる場合、「欠如している」という用語は、この用語によって指定される遺伝子領域が機能していないこと、またはこの用語によって指定される遺伝子領域が欠失していることを意味する。例えば、「欠如している」に関しては、指定される遺伝子領域である領域において、または指定される遺伝子領域の周囲の遺伝子領域において、欠失が起こっていてもよい。
【0130】
本発明の適している腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、B5Rをコードする遺伝子における欠失を含んでもよい。
【0131】
B5Rは、ワクシニアウイルスの1型膜タンパク質である。ウイルスが、細胞内で増殖し、近くの細胞または宿主内の他の部位に広がる時に、B5Rはその効率を増加させる。B5Rは、GenBankアクセッション番号AAA48316.1(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に示されるアミノ酸配列を有するB5Rを含む。 B5Rは、シグナルペプチド、4つのSCRドメイン(SCRドメイン1~4)と呼ばれる領域、ストークと呼ばれる領域、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を、N末端側からC末端側に向かって順に有する。
【0132】
より具体的には、B5Rにおいて、シグナルペプチドは、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列の第1アミノ酸から第19アミノ酸までに対応するB5Rの領域であり;SCRドメイン1~4は、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列の第20アミノ酸から第237アミノ酸までに対応するB5Rの領域であり;ストークは、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列の第238アミノ酸から第275アミノ酸までに対応するB5Rの領域であり;膜貫通ドメインは、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列の第276アミノ酸から第303アミノ酸までに対応するB5Rの領域であり;および細胞質尾部は、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列の第304アミノ酸から第317アミノ酸までに対応するB5Rの領域である(Journal of Virology, 2005, Vol. 79, p. 6260-6271)。
【0133】
本明細書において用いられる場合、「対応する」という用語は、タンパク質の機能、ワクシニアウイルス株の違いなどを解析するための方法により、この用語によって指定されるアミノ酸配列と完全にかつ正確に一致するアミノ酸配列を有するという概念に限定されず、この用語によって指定されるアミノ酸配列から変更されているアミノ酸配列(例えば、アミノ酸の欠失、置換、挿入、および/または付加)を有するという概念を含む。当業者は、前述のアミノ酸配列に基づいて、それらの異なるワクシニアウイルス株の各々におけるB5Rの遺伝子およびB5Rの各領域を特定することができる。B5Rが外膜上に発現される時に、シグナルペプチドは既に除去されており、SCRドメイン1~4およびストークは、EEVの外膜上に露出されている(Journal of Virology, 1998, Vol. 72, p. 294-302)。本明細書において用いられる場合、SCRドメイン1~4およびストークからなる領域は、時には「細胞外領域」と呼ばれる。
【0134】
上記に示されるように、本発明の適している腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、B5Rをコードする遺伝子における欠失を含んでもよい。1つの態様において、本発明の適している腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子を含む。
【0135】
本明細書において用いられる場合、「SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子」という用語は、SCRドメイン1~4が完全にまたは部分的に欠失しており、それによってその機能が欠如しているB5Rをコードする遺伝子を指す。
【0136】
B5Rの機能がワクシニアウイルスにおいて除去されているか否かを判定するための適している方法には、B5Rを標的とする中和抗体に対して中和を回避する能力が、そのSCRドメインが欠失していないワクシニアウイルスと比較して増加しているか否かを確認するための方法が含まれる。
【0137】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、欠失した領域以外のB5Rの細胞外領域を有する。
【0138】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、欠失した領域以外のB5Rの細胞外領域、および膜貫通ドメインを有する。
【0139】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、欠失した領域以外のB5Rの細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有する。
【0140】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストークを有する。1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを有する。
【0141】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有する。
【0142】
1つの態様において、本発明のワクシニアウイルスは、EEVの形態にある時に、ウイルスの表面上に、SCRドメイン1~4が完全にまたは部分的に欠失した細胞外領域を有するB5Rを提示することができる。
【0143】
1つの態様において、本発明のワクシニアウイルスにおける「SCRドメインが欠失したB5R」という用語は、4つのSCRドメイン(SCRドメイン1~4)が欠失しているB5Rである。
【0144】
本明細書において用いられる場合、4つのSCRドメインの文脈において記載される「SCRドメイン1~4の欠失」という用語またはそれに類似した任意の表現は、SCRドメイン1~4から構成される領域の完全なかつ正確な欠失に限定されず、前述の領域の末端の1、2、または3個のアミノ酸が、B5Rに残っているという概念を含む。本発明のワクシニアウイルスにおけるSCRドメイン1~4の欠失には、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~237に対応するB5R領域の欠失が含まれる。GenBankアクセッション番号AAA48316.1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に示される。
【0145】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、B5Rの細胞外領域を含有する。
【0146】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、B5Rの細胞外領域および膜貫通ドメインを含有する。
【0147】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、B5Rの細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含有する。
【0148】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストークを含有する。
【0149】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを含有する。
【0150】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含有する。
【0151】
1つの態様において、本発明のワクシニアウイルスは、EEVの形態にある時に、ウイルスの表面上に、SCRドメイン1~4が完全にまたは部分的に欠失した細胞外領域を有するB5Rを提示することができる。
【0152】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基238~275(SEQ ID NO: 2におけるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~59)に対応するB5Rの領域を含有する。
【0153】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基238~303(SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~87)に対応するB5Rの領域を含有する。
【0154】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基238~317(SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~101)に対応するB5Rの領域を含有する。
【0155】
1つの態様において、本発明のワクシニアウイルスにおけるSCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、B5Rのシグナルペプチドをコードする。
【0156】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、B5RのシグナルペプチドおよびB5Rの細胞外領域を含有するポリペプチドをコードする。
【0157】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、B5Rのシグナルペプチド、B5の細胞外領域、および膜貫通ドメインを含有するポリペプチドをコードする。
【0158】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、B5Rのシグナルペプチド、B5Rの細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含有するポリペプチドをコードする。
【0159】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、B5Rのシグナルペプチドおよびストークを含有するポリペプチドをコードする。
【0160】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、B5Rのシグナルペプチド、ストーク、および膜貫通ドメインを含有するポリペプチドをコードする。
【0161】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、B5Rのシグナルペプチド、B5Rの細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を実質的に含有するポリペプチドをコードする。
【0162】
1つの態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、B5Rのシグナルペプチド、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を実質的に含有するポリペプチドをコードする。
【0163】
本明細書において用いられる場合、「実質的に含有する」という用語は、この用語が、この用語によって指定される要素を含有すること、および、他の要素が含有される場合には、それらの要素が、本発明によって開示される列記された要素の活性または作用を遮断せず、かつそのような活性または作用に寄与しないことを意味する。例として、1個から数個のアミノ酸が付加されているかまたは欠失している形態は、「実質的に含有する」という用語によって指定される形態の1つである。
【0164】
B5Rのシグナルペプチドの例には、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19(SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19)に対応するB5Rの領域が含まれる。
【0165】
B5Rのストークの例には、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基238~275(SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~59)に対応するB5Rの領域が含まれる。
【0166】
B5Rの膜貫通ドメインの例には、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基276~303(SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基60~87)に対応するB5Rの領域が含まれる。
【0167】
B5Rの細胞質尾部の例には、GenBankアクセッション番号AAA48316.1に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基304~317(SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基88~101)に対応するB5Rの領域が含まれる。
【0168】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19に対応するB5Rのシグナルペプチドをコードする。
【0169】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19のアミノ酸配列を有するB5Rのシグナルペプチドをコードする。
【0170】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19に対応するB5Rのシグナルペプチド、およびSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~59に対応するB5Rのストークを含有するポリペプチドをコードする。
【0171】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19のアミノ酸配列を有するB5Rのシグナルペプチド、およびSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~59のアミノ酸配列を有するB5Rのストークを含有するポリペプチドをコードする。
【0172】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19のアミノ酸配列に対応するB5Rのシグナルペプチド、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~59のアミノ酸配列に対応するB5Rのストーク、およびSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基60~87のアミノ酸配列に対応するB5Rの膜貫通ドメインを含有するポリペプチドをコードする。
【0173】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基1~19のアミノ酸配列を有するB5Rのシグナルペプチド、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基22~59のアミノ酸配列を有するB5Rのストーク、およびSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基60~87のアミノ酸配列を有するB5Rの膜貫通ドメインを含有するポリペプチドをコードする。
【0174】
1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列に対応するB5Rのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。1つの態様において、SCRドメインが欠失したB5Rをコードする遺伝子は、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0175】
本発明のワクシニアウイルスが、完全にまたは部分的に検出されるSCRドメイン1~4を有するB5Rをコードするか否かを判定するために、周知の方法を用いることができる。例として、それは、ワクシニアウイルスの表面上に発現したB5Rに対してSCRドメイン1~4に結合する抗体を用いる免疫化学的方法によってSCRドメイン1~4の存在を確認すること、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてSCRドメイン1~4をコードする領域の存在もしくはサイズを決定することによって、判定することができる。
【0176】
本発明の適している腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、用いられ得るO1Lの機能が欠損していてもよい(Journal of Virology, 2012, vol. 86, p. 2323-2336)。
【0177】
加えて、生体中の抗ワクシニアウイルス抗体の中和効果によるウイルスのクリアランスを低減させるために、B5Rの細胞外領域が欠損したワクシニアウイルス(Virology, 2004, vol. 325, p. 425-431)またはA34R領域が欠損したワクシニアウイルス(Molecular Therapy, 2013, vol. 21, p. 1024-1033)が使用されてもよい。
【0178】
さらに、ワクシニアウイルスによって免疫細胞を活性化するために、PCT公開番号WO2005/030971(その全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているような、インターロイキン-1β(IL-1β)受容体が欠損したワクシニアウイルスが使用されてもよい。そのような外来遺伝子の挿入または遺伝子の欠失もしくは変異は、例えば、公知の相同組換えまたは部位特異的変異誘発によって行うことができる。
【0179】
さらに、そのような遺伝子改変の組み合わせを有するワクシニアウイルスが、本発明において使用されてもよい。
【0180】
本明細書において用いられる場合、「欠損している」とは、この用語によって指定される遺伝子領域が、いかなる機能も有しないことを意味し、この用語によって指定される遺伝子領域の欠失を含む意味で用いられる。例えば、「欠損している」とは、指定される遺伝子領域からなる領域における欠失、または指定される遺伝子領域を含む隣接遺伝子領域における欠失の結果であってもよい。
【0181】
1つの態様において、本発明における使用のためのワクシニアウイルスは、VGFの機能が欠損している。
【0182】
1つの態様において、本発明における使用のためのワクシニアウイルスは、O1Lの機能が欠損している。
【0183】
1つの態様において、本発明における使用のためのワクシニアウイルスは、VGFおよびO1Lの機能が欠損している。
【0184】
VGFおよび/またはO1Lの機能は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられるPCT公開番号WO 2015/076422に記載されている方法に基づいて、ワクシニアウイルスにおいて欠損させてもよい。
【0185】
VGFは、上皮成長因子(EGF)と高いアミノ酸配列相同性を有するタンパク質であり、EGFのように上皮成長因子受容体に結合し、Ras、Raf、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)/細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)キナーゼ(MAPK/ERKキナーゼ、MEK)からの、およびその後のERKまでのシグナルカスケードを活性化して、細胞分裂を促進する。
【0186】
O1Lは、ERKの活性化を維持し、VGFと共に細胞分裂に寄与する。
【0187】
「ワクシニアウイルスのVGFおよび/またはO1Lの機能が欠損している」とは、VGFをコードする遺伝子および/もしくはO1Lをコードする遺伝子の発現の喪失、または発現された場合のVGFおよび/もしくはO1Lの正常な機能の喪失を指す。ワクシニアウイルスのVGFおよび/またはO1Lの機能の欠損は、VGFをコードする遺伝子および/またはO1Lをコードする遺伝子の全部または一部の欠失によって引き起こされてもよい。さらに、正常なVGFおよび/またはO1Lの発現を阻止するように、遺伝子を、ヌクレオチドの置換、欠失、挿入、または付加によって変異させてもよい。さらに、外来遺伝子が、VGFをコードする遺伝子および/またはO1Lをコードする遺伝子に挿入されてもよい。本発明において、遺伝子の置換、欠失、挿入、または付加などの変異のために正常な遺伝子産物が発現されない場合に、それは、遺伝子の欠如と呼ばれる。
【0188】
1つの態様において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、VGFおよびO1Lの機能を欠如しているLC16mO株ワクシニアウイルスである。
【0189】
本明細書において用いられる場合、遺伝子は、遺伝子の置換、欠失、挿入、または付加などの変異によって遺伝子の正常な産物が発現されない場合に、「欠損」している。
【0190】
本発明によるワクシニアウイルスが、VGFおよび/またはO1Lの機能が欠損しているか否かは、公知の方法で、例えば、VGFおよび/もしくはO1Lの機能を評価すること、VGFに対する抗体もしくはO1Lに対する抗体を用いた免疫化学的技法によってVGFもしくはO1Lの存在について試験すること、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってVGFをコードする遺伝子もしくはO1Lをコードする遺伝子の存在を判定することによって、判定されてもよい。
【0191】
前述の外来遺伝子の挿入または遺伝子の欠失もしくは変異は、周知の相同組換え法または部位特異的変異誘発によって達成することができる。本発明において、前述の遺伝子改変の組み合わせを有するワクシニアウイルスを使用することができる。
【0192】
本発明のある特定の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能を欠如しておりかつSCRドメインが欠失しているB5Rをコードする遺伝子を含む。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストークを有してもよい。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを有してもよい。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有してもよい。
【0193】
本発明の他の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能を欠如しておりかつSCRドメイン1~4が欠失しているB5Rをコードする遺伝子を含む。この態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストークを有してもよい。この態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを有してもよい。この態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有してもよい。
【0194】
本発明の他の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、SEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列に対応する領域が欠失しているB5Rをコードする遺伝子を含む。この態様において、前述の領域が欠失しているB5Rは、ストークを有してもよい。この態様において、前述の領域が欠失しているB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを有してもよい。この態様において、前述の領域が欠失しているB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有してもよい。
【0195】
本発明のいくつかの態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能を欠如しており、B5RのSCRドメインが欠失しており、かつB5Rのシグナルペプチド、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含有するポリペプチドをコードする。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有する。
【0196】
本発明の他の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能を欠如しており、SCRドメインが欠失したB5Rは、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列に対応するB5Rのアミノ酸配列を有する。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有する。
【0197】
本発明の他の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能を欠如しておりかつSCRドメインが欠失しているB5Rをコードする遺伝子を含む。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストークを有してもよい。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを有してもよい。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有してもよい。
【0198】
本発明のいくつかの態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能を欠如しておりかつSCRドメイン1~4が欠失しているB5Rをコードする遺伝子を含む。この態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストークを有してもよい。この態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを有してもよい。この態様において、SCRドメイン1~4が欠失しているB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有してもよい。
【0199】
本発明の他の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、SEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列に対応する領域が欠失しているB5Rをコードする遺伝子を含む。この態様において、前述の領域が欠失しているB5Rは、ストークを有してもよい。この態様において、前述の領域が欠失しているB5Rは、ストークおよび膜貫通ドメインを有してもよい。この態様において、前述の領域が欠失しているB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有してもよい。
【0200】
本発明の他の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能の欠如を含み、B5RのSCRドメインが欠失しており、かつB5Rのシグナルペプチド、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を含有するポリペプチドをコードする遺伝子を有する。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有する。
【0201】
本発明の他の態様において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド;およびIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むことに加えて、VGFおよびO1Lの機能を欠如しており、SCRドメインが欠失したB5Rは、SEQ ID NO: 2のアミノ酸配列に対応するB5Rのアミノ酸配列を有する。この態様において、SCRドメインが欠失したB5Rは、ストーク、膜貫通ドメイン、および細胞質尾部を有する。
【0202】
本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、細胞内成熟ウイルス(IMV)形態であってもよく、または細胞外エンベロープウイルス(EEV)形態であってもよい。IMVは、感染性子孫ウイルスの大部分を占め、感染した細胞の溶解まで、感染した細胞の細胞質に留まる。細胞がIMVの形態で感染した時には、感染した細胞においてEEVの形態が産生され得る。EEVの形態は、生体において感染した部位から離れた細胞に遠隔感染するのに適しており、IMVを宿主細胞由来の外膜で覆う形態である(PNAS, 1998, Vol. 95, p. 7544-7549)。EEVは、ワクシニアウイルス産生ベクター、またはワクシニアウイルスに感染した細胞の培養培地の上清から取得することができる。IMVとEEVとの混合物は、ワクシニアウイルス産生ベクター、またはワクシニアウイルスに感染した細胞の培養培地の上清を含有する細胞溶解物から取得することができる。細胞溶解物は、通常の方法によって(例えば、超音波崩壊法または浸透圧ショック法を用いて細胞を破壊することによって)取得することができる。IMVの形態は、ワクシニアウイルスの主要な投与形態の1つである。
【0203】
1つの態様において、本発明のワクシニアウイルスは、SCRが欠失したB5Rの細胞外領域を発現することができる;しかし、ウイルスが常にEVV形態をとる必要はなく、すなわち、感染した細胞においてEEV形態が産生される時に、ウイルスがEEV上にSCRが欠失したB5Rの細胞外領域を発現できるのであれば、十分である。
【0204】
本発明のワクシニアウイルスは、SCRを維持する野生型B5Rをコードする遺伝子を有するワクシニアウイルスよりも高い、免疫を回避する能力を有するEEVを産生することができるため、遠隔感染血漿増強型組換えワクシニアウイルスと呼ぶことができる。
【0205】
本発明における使用に適しているワクシニアウイルスは、腫瘍溶解活性を有する。試験ウイルスが腫瘍溶解活性を有するか否かを評価するための方法の例には、ウイルスの添加によるがん細胞の生存率の低下を評価するための方法が含まれる。
【0206】
評価に用いられるがん細胞の例には、悪性黒色腫細胞RPMI-7951(例えば、ATCC HTB-66)、肺腺癌HCC4006(例えば、ATCC CRL-2871)、肺癌A549(例えば、ATCC CCL-185)、小細胞肺がん細胞DMS 53(例えば、ATCC CRL-2062)、肺扁平上皮癌NCI-H226(例えば、ATCC CRL-5826)、腎臓がん細胞Caki-1(例えば、ATCC HTB-46)、膀胱がん細胞647-V(例えば、DSMZ ACC 414)、頭頸部がん細胞Detroit 562(例えば、ATCC CCL-138)、乳がん細胞JIMT-1(例えば、DSMZ ACC 589)、乳がん細胞MDA-MB-231(例えば、ATCC HTB-26)、食道がん細胞OE33(例えば、ECACC 96070808)、神経膠芽腫U-87MG(例えば、ECACC 89081402)、神経芽腫GOTO(例えば、JCRB JCRB0612)、骨髄腫RPMI 8226(例えば、ATCC CCL-155)、卵巣がん細胞SK-OV-3(例えば、ATCC HTB-77)、卵巣がん細胞OVMANA(例えば、JCRB JCRB1045)、結腸がん細胞RKO(例えば、ATCC CRL-2577)、大腸癌HCT 116(例えば、ATCC CCL-247)、膵臓がん細胞BxPC-3(例えば、ATCC CRL-1687)、前立腺がん細胞LNCaPクローンFGC(例えば、ATCC CRL-1740)、肝細胞癌JHH-4(例えば、JCRB JCRB0435)、中皮腫NCI-H28(例えば、ATCC CRL-5820)、子宮頸がん細胞SiHa(例えば、ATCC HTB-35)、および胃がん細胞Kato III(例えば、RIKEN BRC RCB2088)が含まれる。
【0207】
1つの態様において、本発明における使用に適しているワクシニアウイルスは、薬物選択マーカー遺伝子を含まない。
【0208】
本発明における使用に適しているワクシニアウイルスは、宿主細胞にワクシニアウイルスを感染させること、および感染した宿主細胞を培養することによって、発現および/または増殖させてもよい。ワクシニアウイルスは、当分野において公知の方法によって発現および/または増殖させてもよい。本発明によるワクシニアウイルスを発現および増殖させることができる限り、本発明によるワクシニアウイルスを発現または増殖させるために用いられる宿主細胞は、特に限定されない。そのような宿主細胞の例には、BS-C-1、A549、RK13、HTK-143、Hep-2、MDCK、Vero、HeLa、CV-1、COS、BHK-21、および初代ウサギ腎臓細胞などの動物細胞が含まれる。BS-C-1(ATCC CCL-26)、A549(ATCC CCL-185)、CV-1(ATCC CCL-70)、またはRK13(ATCC CCL-37)が、好ましく用いられ得る。宿主細胞のための培養条件、例えば、温度、培地のpH、および培養時間は、適切なように選択される。
【0209】
本発明によるワクシニアウイルスを産生するための方法は、宿主細胞に本発明によるワクシニアウイルスを感染させる工程;感染した宿主細胞を培養する工程;および本発明によるワクシニアウイルスを発現させる工程;ならびに任意で、ワクシニアウイルスを収集および/または精製する工程を含んでもよい。精製に用いることができる方法には、BenzonaseでのDNA消化、スクロース勾配遠心分離、イオジキサノール密度勾配遠心分離、限外濾過、および透析濾過が含まれる。
【0210】
IV. 本発明の薬学的組成物の使用方法
本発明の薬学的組成物は、固形腫瘍などのがんを有する対象の治療的および予防的な処置に有用である。
【0211】
本明細書において用いられる場合、「処置する」または「処置」という用語は、がんに関連する1つまたは複数の症状の進行の緩徐化、軽減、改善、治癒、または制御を含むがそれらに限定されない、有益なまたは所望の結果を指す。「処置」はまた、処置の非存在下で予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味することができる。「処置」は、予防(例えば、がんを有するリスクがある対象における予防的措置)を包含する。例えば、本明細書に記載されるような薬学的組成物の投与後に、対象が臨床状態において観察可能な改善を示す場合には、対象は、がんについて処置されている。
【0212】
本発明の方法は、がんを有する対象に、本明細書に記載されるような薬学的組成物の治療的有効量を投与する工程を含む。
【0213】
薬学的組成物は、静脈内投与、腹腔内投与、または腫瘍内投与などの、当技術分野において公知の任意の適している手段によって投与することができる。ある特定の態様において、組成物は、静脈内注入または注射によって投与される。他の態様において、組成物は、腫瘍内注射によって投与される。
【0214】
本明細書において用いられる場合、「治療的有効量」とは、1つまたは複数の有益な結果を生じるのに十分である、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの量を指す。そのような治療的有効量は、様々なパラメータ、特に、投与の様式;疾患状態;対象の年齢および体重;処置に応答する対象の能力;同時処置の種類;処置の頻度;および/または予防もしくは治療の必要性、の関数として変動し得る。予防的使用が関わる場合、本発明の薬学的組成物は、特にリスクがある対象において、がんの発症および/または確立および/または再発を予防するかまたは遅延させるのに十分な用量で投与される。「治療的」使用のために、本発明の薬学的組成物は、がんを有すると診断された対象に、がんを処置するために投与される。特に、治療的有効量は、ベースライン状態を上回るかまたは処置されていない場合に予想される状態を上回る、臨床状態の観察可能な改善、例えば、腫瘍数の低減;腫瘍サイズの低減、転移の数または拡大の低減、寛解の長さの増加、疾患の状態の安定化(すなわち悪化しない)、疾患の進行または重症度の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、生存期間の延長、標準処置に対するより良好な応答、生活の質の改善、死亡率の低減などを引き起こすのに必要な量であることができる。
【0215】
治療的有効量はまた、有効な非特異的(先天的)および/または特異的な抗腫瘍免疫応答の発生を引き起こすのに必要な量であることもできる。典型的には、免疫応答、特にT細胞応答の発生は、対象から収集された生物学的試料において、インビトロで評価することができる。例えば、腫瘍の監視を行うために、実験室において日常的に用いられている技法(例えば、フローサイトメトリー、組織学)が用いられてもよい。細胞傷害性T細胞、活性化された細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、および活性化されたナチュラルキラー細胞などの、処置される対象中に存在する抗腫瘍応答に関与する異なる免疫細胞集団を特定するために、様々な利用可能な抗体を用いてもよい。臨床状態の改善は、医師または他の熟練した医療スタッフにより典型的に用いられる任意の関連した臨床的測定によって、容易に評価することができる。
【0216】
1つの局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程、例えば、対象に腫瘍内投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する。
【0217】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程、例えば、対象に腫瘍内投与する工程
を含み、それによって該対象を処置する。
【0218】
本発明のある特定の態様において、薬学的組成物の対象への投与は、腫瘍成長の阻害、腫瘍退縮、腫瘍のサイズの低減、腫瘍細胞数の低減、腫瘍成長の遅延、アブスコパル効果、腫瘍転移の阻害、経時的な転移性病変の低減、化学療法剤または細胞傷害剤の使用の低減、腫瘍負荷の低減、無増悪生存期間の増加、全生存期間の増加、完全奏効、部分奏効、抗腫瘍免疫、および安定疾患からなる群より選択される少なくとも1つの効果をもたらす。
【0219】
ある特定の態様において、本発明の薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導する。
【0220】
本明細書において用いられる場合、「アブスコパル効果」という用語は、腫瘍に局所的に投与される本発明の薬学的組成物(例えば、腫瘍内投与)の、該組成物が投与された腫瘍の収縮と同時に、処置されていない腫瘍を収縮させる能力を指す。
【0221】
したがって、1つの局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/IL7ウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程、例えば、対象に腫瘍内投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置し、それによって該対象を処置する。
【0222】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/IL7ウイルスと;
薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程、例えば、対象に腫瘍内投与する工程
を含み、それによってがんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する。
【0223】
1つの局面において、本発明は、がんを有する対象を処置する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/IL7ウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程、例えば、対象に腫瘍内投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象を処置する。
【0224】
別の局面において、本発明は、がんを有する対象においてアブスコパル効果を誘導する方法を提供する。方法は、以下:
約1×106~約1×1010粒子形成単位(pfu)/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであって、そのゲノム中にヒトインターロイキン-7をコードするポリヌクレオチドおよびヒトインターロイキン-12をコードするポリヌクレオチドを含み、機能的なウイルス増殖因子(VGF)タンパク質および機能的なO1Lタンパク質を欠如しており、かつB5R膜タンパク質細胞外領域中のSCRドメインにおける欠失を有する、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、例えば、hIL12/IL7ウイルスと;
約10 mmol/L~約50 mmol/Lの濃度のトロメタミンと;
約5% w/v~約15% w/vの濃度のスクロースと
を含み、そのpHが約5.0~約8.5である薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与する工程、例えば、対象に腫瘍内投与する工程
を含み、該薬学的組成物の対象への投与は、アブスコパル効果を誘導し、それによって該対象においてアブスコパル効果を誘導する。
【0225】
アブスコパル効果は、薬学的組成物がその中に腫瘍内投与された腫瘍、例えば原発性固形腫瘍などの、がんに対して近位である転移性腫瘍において、または、薬学的組成物がその中に腫瘍内投与された腫瘍、例えば原発性固形腫瘍などの、がんに対して遠隔である転移性腫瘍において起こり得る。
【0226】
本発明はまた、がんを有する対象に、本発明の薬学的組成物の治療的有効量を投与する工程、例えば、腫瘍内投与する工程を含む、インビボで腫瘍細胞増殖を阻害するための方法も提供する。加えて、本発明は、がんを有する対象に、本発明の薬学的組成物の治療的有効量を投与する工程、例えば、腫瘍内投与する工程を含む、がんを有する対象においてがん細胞に対する免疫応答を増強するための方法を提供する。
【0227】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物の投与は、免疫応答を惹起し、刺激し、かつ/または再配向する。特に、投与は、例えば、腫瘍溶解性ウイルスに対して、処置された宿主において保護的T細胞またはB細胞応答を誘導する。保護的T細胞応答は、CD4+細胞、またはCD8+細胞、またはCD4+細胞およびCD8+細胞両方の媒介性であることができる。対象より収集された任意の試料(例えば、血液、臓器、腫瘍など)から、B細胞応答は、ELISAによって測定することができ、T細胞応答は、従来のELISpot、ICSアッセイによって評価することができる。
【0228】
対象に投与される、例えば、対象に腫瘍内投与される薬学的組成物の用量は、約1×106~約1×1010、約1×107~約1×109、約1×107、5×107、約1×108、約5×108、約1×108、または約5×108 pfuであってもよい。上記で列挙された範囲および値の間に入る範囲および値もまた、本発明の一部であるように意図される。加えて、上記で列挙された値のいずれかの組み合わせを上限および/または下限として用いる値の範囲が、含まれるように意図される。
【0229】
対象に投与する、例えば、腫瘍内投与するのに適している、例えば、約5.0×108pfu/mlの腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む本発明の薬学的組成物の用量の体積は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または約6.0 mlであってもよい。上記で列挙された範囲および値の間に入る範囲および値もまた、本発明の一部であるように意図される。加えて、上記で列挙された値のいずれかの組み合わせを上限および/または下限として用いる値の範囲が、含まれるように意図される。
【0230】
ある特定の態様において、例えば腫瘍内に、対象に投与される薬学的組成物の用量は、約0.2~約0.8、例えば、約0.2~約0.6、約0.4~約0.8、約0.4~約0.6、または約0.6~約0.8の注射比率(薬学的組成物の体積/腫瘍体積)を達成する体積である。
【0231】
本発明の薬学的組成物は、毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、対象に投与されてもよい。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、2週間に1回、対象に投与される。
【0232】
本発明の薬学的組成物は、1回または1回よりも多く、対象に投与されてもよい。
【0233】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、投薬レジメンにおいて対象に投与される。例えば、1つの態様において、適している投薬レジメンは、対象に、第1の用量の薬学的組成物を1日目に、および第2の用量の薬学的組成物を15日目に投与することを含んでもよい。投薬レジメンは、対象に1回投与されてもよく、または反復されてもよい。例えば、1つの態様において、対象に、第1の用量の薬学的組成物を1日目に、および第2の用量の薬学的組成物を15日目に投与することを含む本発明の投薬レジメンは、第1の用量の薬学的組成物の28日後に開始して反復される。
【0234】
本発明の薬学的組成物での処置から恩恵を受けるであろうヒト対象などの対象には、がんを有する対象が含まれる。がんは、固形腫瘍、例えば進行性固形腫瘍などの原発性腫瘍、または転移性腫瘍であり得る。
【0235】
がんは、悪性黒色腫、肺腺癌、肺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮癌、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、乳がん、食道がん、神経膠芽腫、神経芽腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん、肝細胞癌、中皮腫、子宮頸がん、または胃がんであり得る。
【0236】
いくつかの態様において、がんは、皮膚、皮下、粘膜、または粘膜下の腫瘍である。
【0237】
他の態様において、がんは、皮膚、皮下、粘膜、または粘膜下の場所以外の場所における原発性または転移性の固形腫瘍である。
【0238】
さらに他の態様において、がんは、頭頚部扁平上皮癌、皮膚がん、鼻咽頭がん、肉腫、または尿生殖器/婦人科腫瘍である。
【0239】
1つの態様において、がんは、原発性または転移性の肝臓の腫瘍である。別の態様において、がんは、原発性または転移性の胃腫瘍であり得る。
【0240】
ヒト対象などの、本発明の方法から恩恵を受けるであろう適している対象は、成人対象、例えば、約18歳以上である対象;青年対象、例えば、約10~18歳である対象;または小児対象、例えば、18歳未満の対象であり得る。
【0241】
本発明の方法は、単独で、または手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法などの、追加の治療剤もしくは治療法と組み合わせて実施されてもよい。
【0242】
追加の治療剤または治療法は、本発明の薬学的組成物の投与の前、その後、またはそれと同時に、対象に投与されてもよい。
【0243】
追加の治療剤は、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物と同じ薬学的組成物中に存在してもよく、または追加の治療剤は、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物とは別の薬学的組成物中に存在してもよい。
【0244】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、マイトマイシンC、シクロホスファミド、ブスルファン、イホスファミド、イソスファミド(isosfamide)、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、クロラムブシル、またはダカルバジンなどの、アルキル化剤である。
【0245】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、ゲムシタビン、カペシタビン、5-フルオロウラシル、シタラビン、2-フルオロデオキシシチジン、メトトレキサート、イダトレキサート(idatrexate)、Tomudex、またはトリメトレキサートなどの、代謝拮抗薬である。
【0246】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、テニポシド、またはミトキサントロンなどの、トポイソメラーゼII阻害剤である。
【0247】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、イリノテカン(CPT-11)、7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN-38)、またはトポテカンなどの、トポイソメラーゼI阻害剤である。
【0248】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビノレルビンなどの、抗有糸分裂薬である。
【0249】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、スピロプラチナム(spiroplatinum)、またはカルボプラチナム(carboplatinum)などの、白金誘導体である。
【0250】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、スニチニブ(Pfizer)およびソラフェニブ(Bayer)などの、チロシンキナーゼ受容体の阻害剤である。
【0251】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、抗新生物抗体、特に、トラスツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、マツズマブ、ベバシズマブ、およびラニビズマブなどの、細胞表面受容体の調節に影響を及ぼす抗体である。
【0252】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、およびラパチニブなどの、EGFR(上皮成長因子受容体)阻害剤である。
【0253】
いくつかの態様において、追加の治療剤は、例えば、α、β、もしくはγインターフェロン、インターロイキン(特に、IL-2、IL-6、IL-10、もしくはIL-12)、または腫瘍壊死因子などの、免疫調節剤である。
【0254】
本発明の他の態様において、方法は、がんワクチン、チェックポイント阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)阻害剤、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM3)阻害剤、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、二重特異性抗CD3/抗CD20抗体、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)阻害剤、CD38阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、シクロホスファミド、腫瘍特異的抗原に対する抗体、カルメット-ゲラン桿菌ワクチン、細胞毒素、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15、抗体薬物コンジュゲート、抗炎症薬、および/または栄養補助食品などの、追加の治療剤の投与を含んでもよい。
【0255】
ある特定の態様において、追加の治療剤は、チェックポイント阻害剤である。したがって、本発明の方法は、チェックポイント阻害剤の治療的有効量を対象に投与する工程をさらに含む。
【0256】
本明細書において用いられる「チェックポイント阻害剤」または「免疫チェックポイント阻害剤」という用語は、抗原提示細胞(APC)またはがん細胞とTエフェクター細胞との間の相互作用などの、チェックポイントタンパク質の機能を阻害することができる分子を指す。「免疫チェックポイント」という用語は、通常の生理学的条件下で、制御されていない免疫反応を防止するため、したがって、自己寛容の維持および/または組織保護のために重要である、免疫経路に直接的または間接的に関与するタンパク質を指す。
【0257】
適しているチェックポイント阻害剤には、プログラム細胞死1(PD-1)阻害剤;プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤;T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン-3(TIM-3)阻害剤;リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤;IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤;Bリンパ球およびTリンパ球関連(BTLA)阻害剤;またはV型免疫グロブリンドメインを含有するT細胞活性化のサプレッサー(VISTA)阻害剤が含まれる。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、免疫抑制シグナルを阻害するように、免疫チェックポイント分子またはそのリガンドに結合し、それによって免疫チェックポイント機能を阻害することができる。例として、それは、PD-1とPD-L1またはPD-L2との間の結合を阻害し、それによってPD-1シグナルを阻害することができる。または、それは、CTLA-4とCD80またはCD86との間の結合を阻害し、それによってCTLA-4シグナルを阻害することができる(Matthieu Collin, Expert Opinion on Therapeutic Patents, 2016, Vol. 26, p. 555-564)。
【0258】
PD-1は、プログラム細胞死-1と呼ばれるタンパク質であり、PDCD-1またはCD279とも呼ばれる。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜タンパク質であり、PD-L1またはPD-L2に結合することによってT細胞の活性化を抑制する役割を果たし、自己免疫疾患の予防に寄与していると考えられている。がん細胞は、T細胞を負に制御しそれによってT細胞からの攻撃を回避するために、その表面にPD-L1を発現する。PD-1には、ヒトPD-1(例えば、Genbankのアクセッション番号NP_005009.1に登録されたアミノ酸配列を有するPD-1)が含まれる。PD-1には、アクセッション番号NP_005009.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するPD-1が含まれる。本明細書において用いられる場合、「に対応するアミノ酸配列」という用語は、オーソログおよび天然に存在するアミノ酸配列が完全に同一ではない、機能的PD-1を含むように用いられる。
【0259】
PD-L1は、PD-1のリガンドであり、B7-H1またはCD274とも呼ばれる。PD-L1には、例えば、ヒトPD-L1(例えば、Genbankのアクセッション番号NP_054862.1に登録されたアミノ酸配列を有するPD-L1)が含まれる。PD-1には、アクセッション番号NP_054862.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するPD-1が含まれる。
【0260】
PD-L2は、PD-1のリガンドであり、B7-DCまたはCD273とも呼ばれる。PD-L2には、例えば、ヒトPD-L2(例えば、Genbankのアクセッション番号AAI13681.1に登録されたアミノ酸配列を有するPD-L2)が含まれる。PD-2には、Genbankのアクセッション番号AAI13681.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するPD-2が含まれる。
【0261】
CTLA-4は、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜タンパク質であり、活性化されたT細胞において発現している。CTLA-4は、CD28に類似しており、抗原提示細胞上のCD80およびCD86に結合している。CD28はT細胞に共刺激シグナルを送るが、CTLA-4はT細胞に抑制性シグナルを送ることが知られている。CTLA-4には、例えば、ヒトCTLA-4(例えば、Genbankのアクセッション番号AAH74893.1に登録されたアミノ酸配列を有するCTLA-4)が含まれる。CTLA-4には、Genbankのアクセッション番号AAH74893.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するCTLA-4が含まれる。
【0262】
CD80およびCD86は、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜タンパク質であり、多種多様な造血細胞において発現し、上記のようなT細胞の表面上のCD28およびCTLA-4と相互作用する。CD80には、ヒトCD80(例えば、Genbankのアクセッション番号NP_005182.1に登録されたアミノ酸配列を有するCD80)が含まれる。CD80には、Genbankのアクセッション番号NP_005182.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するCD80が含まれる。CD86には、ヒトCD86(例えば、Genbankのアクセッション番号NP_787058.4に登録されたアミノ酸配列を有するCD86)が含まれる。CD86には、Genbankのアクセッション番号NP_787058.4に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するCD86が含まれる。
【0263】
本発明のある特定の態様において、適している免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1を介して送られるシグナルを遮断するチェックポイント阻害剤、またはCTLA-4を介して送られるシグナルを遮断するチェックポイント阻害剤である。免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1とPD-L1またはPD-L2との間の結合を中和することができる抗体、およびCTLA-4とCD80またはCD86との間の結合を中和することができる抗体であってもよい。PD-1とPD-L1との間の結合を中和することができる抗体には、PD-1とPD-L1との間の結合を中和することができる抗PD-1抗体、およびPD-1とPD-L1との間の結合を中和することができる抗PD-L1抗体が含まれる。PD-1とPD-L2との間の結合を中和することができる抗体には、PD-1とPD-L2との間の結合を中和することができる抗PD-1抗体および抗PD-L2抗体が含まれる。CTLA-4とCD80またはCD86との間の結合を中和することができる抗体には、CTLA-4とCD80またはCD86との間の結合を中和することができる抗CTLA-4抗体が含まれる。
【0264】
2つのタンパク質の結合を中和することができる抗体は、最初にそれらの2つのタンパク質のいずれか1つに結合することができる抗体を見出し、次いで得られた抗体を、それらの2つのタンパク質の結合を中和する能力に基づいて選別することによって、取得することができる。
【0265】
例として、PD-1とPD-L1との間の結合を中和することができる抗体は、PD-1またはPD-L1のいずれかに結合することができる抗体を見出し、次いで得られた抗体を、PD-1とPD-L1との間の結合を中和する能力に基づいて選別することによって、取得することができる。さらに、例えば、PD-1とPD-L2との間の結合を中和することができる抗体は、PD-1またはPD-L2のいずれかに結合することができる抗体を見出し、次いで得られた抗体を、PD-1とPD-L2との間の結合を中和する能力に基づいて選別することによって、取得することができる。さらに、例えば、CTLA-4とCD80またはCD86との間の結合を中和することができる抗体は、CTLA-4に結合することができる抗体を見出し、次いで得られた抗体を、CTLA-4とCD80またはCD86との間の結合を中和する能力に基づいて選別することによって、取得することができる。
【0266】
ある特定のタンパク質に結合する抗体は、当業者に周知の方法を用いて取得することができる。2つのタンパク質の結合を中和する抗体の能力は、一方のタンパク質を固定化し、液相からもう一方のタンパク質を添加し、次いで抗体がその結合量を低下させ得るか否かを検討することによって、検討してもよい。例えば、液相から添加されるタンパク質は、標識されており、抗体を添加することによって標識の量が下落した場合には、抗体がそれらの2つのタンパク質の結合を中和できると判断することができる。
【0267】
本明細書において用いられる場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン、より詳細には、ジスルフィド結合で安定化されている2本の重鎖(H鎖)および2本の軽鎖(L鎖)を含有する生物学的分子を指す。重鎖は、重鎖可変領域(VH)、重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3)、およびCH1とCH2との間に配置されたヒンジ領域からなり、軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。これらの中で、VHおよびVLからなる可変領域断片(Fv)は、抗原結合に直接関与し、それによって抗体に多様性を与える。ヒンジ領域、CH2、およびCH3からなる領域は、Fc領域と呼ばれる。
【0268】
可変領域において、抗原と直接接触する領域は、特に有意に変化しており、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。より少ない変異を有するCDR以外の部分は、フレームワーク領域と呼ばれる。3つのCDRが、軽鎖および重鎖の間で可変領域に存在し、N末端側から順に、重鎖CDR 1~3および軽鎖CDR 1~3と呼ばれる。
【0269】
抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、またはポリクローナル抗体であってもよい;しかし、モノクローナル抗体が、本発明において好ましく使用される。抗体は、アイソタイプ、すなわち、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのいずれか1つであってもよい。抗体は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、およびニワトリなどの非ヒト動物を免疫することによって調製されてもよく、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体などであってもよい。キメラ抗体とは、異なる種に由来する断片を連結することによって調製される抗体を指し、ヒト化抗体とは、非ヒト動物(例えば、非ヒト哺乳動物)の抗体のCDRを対応するヒト抗体の相補性決定領域で置き換えることによって調製される抗体を指す。ヒト化抗体は、CDRが非ヒト動物に由来し、他の部分がヒトに由来する抗体であってもよい。ヒト抗体はまた、完全ヒト抗体とも呼ばれ、抗体のすべての部分がヒト抗体遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から構成される抗体である。本発明において、1つの態様によってキメラ抗体が、別の態様によってヒト化抗体が、別の態様によってヒト抗体(完全ヒト抗体)が、使用されてもよい。
【0270】
本明細書において用いられる場合、「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合することができる抗体の断片を指す。より具体的には、抗原結合断片には、VL、VH、CL、およびCH1領域からなるFab、2つのFabがジスルフィド結合で互いに連結されているF(ab')2、VLおよびVHからなるFvなどの二重特異性抗体、VLおよびVHを人工的に作られたポリペプチドリンカーで連結することによって調製された一本鎖抗体であるscFv、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ(scDb)タイプ、タンデムscFvタイプ、およびロイシンジッパータイプ、ならびにVHH抗体などの重鎖抗体が含まれる(Ulrich Brinkmann et al., MAbs, 2017, Vol. 9, No. 2, p. 182-212)。
【0271】
本発明において使用され得る免疫チェックポイント阻害剤はまた、免疫チェックポイント分子またはそのリガンドに結合することによって免疫抑制シグナルを抑制する抗原結合断片、生体において抗原結合断片を発現するベクター、および低分子量化合物を含有する免疫チェックポイント阻害剤を含んでもよい。
【0272】
1つの態様において、本発明における使用のための免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片;抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片;抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片;抗TIM-3抗体またはその抗原結合断片;抗LAG-3抗体またはその抗原結合断片;抗TIGIT抗体またはその抗原結合断片;および抗BTLA抗体またはその抗原結合断片;および抗VISTA抗体またはその抗原結合断片;例えばJNJ-61610588(国際公開第2016/207717号)からなる群より選択される抗体である。適している抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片は、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体であり得る。
【0273】
別の態様において、本発明における使用のための免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片;抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片;および抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片からなる群から選択される抗体である。適している抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片は、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体であり得る。
【0274】
抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片は、本発明の薬学的組成物の投与の前、その後、またはそれと同時に、対象に投与されてもよい。1つの態様において、抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片は、本発明の薬学的組成物の投与の後に、対象に投与される。別の態様において、抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片は、本発明の薬学的組成物の投与の前に、対象に投与される。
【0275】
ある特定の局面において、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物および免疫チェックポイント阻害剤は、投与サイクルを含む投与スケジュールに従って、がんを有する対象に投与される。
【0276】
例えば、1つの態様では、投与スケジュールの1つまたは複数のサイクルにおいて、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物が、がんを有する対象に最初に投与されてもよく、続いて、抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片などの、免疫チェックポイント阻害剤が、対象に投与される。
【0277】
別の態様においては、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物が、がんを有する対象に最初に投与されることになる投与スケジュールの1つまたは複数のサイクルが、完了されてもよく、次いで、抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片などの、免疫チェックポイント阻害剤が、対象に投与される。
【0278】
1つの態様では、投与スケジュールの1つまたは複数のサイクルにおいて、抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片などの、免疫チェックポイント阻害剤が、がんを有する対象に最初に投与されてもよく、続いて、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物が、対象に投与される。
【0279】
別の態様においては、抗免疫チェックポイント抗体またはその抗原結合断片などの、免疫チェックポイント阻害剤が、がんを有する対象に最初に投与されることになる投与スケジュールの1つまたは複数のサイクルが、完了されてもよく、次いで、本発明の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む薬学的組成物が、対象に投与される。
【0280】
上記に示されるように、ある特定の態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗免疫チェックポイント阻害剤抗体、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびピジリズマブなどの、抗PD-1抗体;ならびにアテゾリズマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブなどの、抗PD-L1抗体;イピリムマブなどの、抗CTLA-4抗体;TSR-022(国際公開第2016/161270号)およびMBG453(国際公開第2015/117002号)などの、抗TIM-3抗体;LAG525(国際公開第2015/0259420号)などの、抗LAG-3抗体、MAB10(国際公開第2017/059095号)などの、抗TIGIT抗体;ならびにBTLA-8.2(J. Clin. Investig. 2010; 120:157-167)などの、抗BTLA抗体、ならびにJNJ-61610588(国際公開第2016/207717号)などの、抗VISTA抗体である。
【0281】
本発明は、さらなる限定として解釈されるべきではない以下の実施例によって、さらに例証される。本出願を通して引用されるすべての参考文献、係属中の特許出願、および公開された特許の内容は、これによって、参照により明白に組み入れられる。
【実施例】
【0282】
以下の実施例において、腫瘍を有する免疫不全マウスおよび非ヒト霊長類を用いて試験を実施するために用いたワクシニアウイルスは、がん細胞において選択的に複製するように設計された、インターロイキン-12(IL-12)およびインターロイキン-7(IL-7)のヒト導入遺伝子を発現する弱毒化された組換えワクシニアウイルスであり、本明細書において「LC16mO ΔSCR VGF-SP-IL12/O1L-SP-IL7」、「hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス」、ならびに「hIL12/hIL7ウイルス」と互換的に呼ばれる。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのウイルスゲノムの模式図を、
図19に図示する。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスにおいては、ウイルス増殖因子(VGF)およびO1Lの病原性遺伝子が、これら2つの遺伝子座中への、それぞれヒトIL-12およびヒトIL-7を発現する遺伝子の挿入によって機能的に不活性化されている。加えて、B5R膜タンパク質が、抗原性の低減のためにSCRドメイン1~4を欠失させることによって改変されている。
【0283】
マウスではヒトIL-12の交差反応性が欠如しているため、免疫適格性マウスにおいてhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの抗腫瘍免疫応答を試験するために、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのサロゲートである、マウスインターロイキン-12(IL-12)およびヒトインターロイキン-7(IL-7)を発現する導入遺伝子を保有するウイルス(「hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート」)を調製した(Schoenhaut et al, J Immunol. 1992;148:3433-40)。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの構造は、マウスIL-12の遺伝子が、ヒトIL-12の遺伝子の代わりにウイルス増殖因子(VGF)遺伝子座中に挿入されたことを除いて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの構造と同じである。
【0284】
下記の非臨床試験のほとんどにおいて用いた薬学的製剤は、10%スクロースを含有する30 mmol/L Tris-HClに懸濁され、タンジェンシャルフロー濾過で精製された、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス、またはhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートであった。この精製方法はまた、原薬を取得するためにも用いられる。他の非臨床試験においては、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス、またはhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、密度勾配超遠心分離によって濃縮した。
【0285】
実施例1. ヒト腫瘍細胞における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの細胞傷害効果
本研究は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが、以下のヒトがん細胞株において細胞傷害効果を示すかどうかを判定するために実施した:ヒト大腸癌(COLO 741)細胞、ヒト神経膠芽腫(U-87 MG)細胞、およびヒト胆管癌(HuCCT1)細胞。
【0286】
すべての細胞に、様々な感染多重度(MOI)(0、0.1、1、10、および100)で、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを感染させた。感染後45日目に、細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標) 2.0アッセイを用いて測定した。細胞生存率は、非感染細胞(MOI 0)および細胞を含有しない培地対照ウェルを、それぞれ100%および0%の生存に設定することによって計算した。1回の実験を行い、データは、三連の測定の平均値として表した。
【0287】
感染の4日後に、細胞生存率は、10%未満に減少した(表1)。これらの結果は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが、COLO 741、U-87 MG、およびHuCCT1細胞に対して細胞傷害性であることを示す。
【0288】
(表1)hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの細胞傷害効果
COLO 741:ヒト大腸癌細胞株;HuCCT1:ヒト胆管癌細胞株;MOI:感染多重度;U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株。
【0289】
実施例2. 様々なヒトがん細胞株に対するhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの細胞傷害活性
本研究は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが、24種類のヒトがん細胞株に対して細胞傷害効果を示すかどうかをさらに検討するために実施した。
【0290】
細胞に、様々な感染多重度(MOI)で、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを感染させた。感染の5日後に、細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assayを用いて測定した。細胞生存率は、非感染細胞(MOI 0)および細胞を含有しない培地対照ウェルを、それぞれ100%および0%の生存に設定することによって計算した。1回の実験を行い、データは、三連の測定の平均値として表した。
【0291】
図1に図示されるように、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、1.0、10、または100のMOIでの感染後5日目に、検討したすべてのヒトがん細胞に対して細胞傷害性である。
【0292】
実施例3. ヒトがん細胞または正常細胞における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの複製
本研究は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが、正常細胞を上回ってヒトがん細胞において選択的に複製するかどうかを検討するために実施した。
【0293】
ヒトがん細胞(NCI-H520、HARA、LK-2、およびLUDLU 1)または正常ヒト気管支上皮細胞(HBEpC)に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを1のMOIで、またはビヒクル(MOI 0)を感染させた。細胞を、感染の6時間後または24時間後に採集し、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのDNAの量を、ワクシニアウイルス血球凝集素(HA)J7R遺伝子を増幅するように設計されたプライマーを用いる標準的な定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって測定した。値を、18sリボソームRNA遺伝子に対して正規化し、二連の測定の平均値として表した。
【0294】
図2に図示されるように、より多い量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのゲノムDNAが、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの感染の24時間後に、正常細胞であるHBEpCにおいてよりも、ヒトがん細胞のすべてにおいて検出されたが、感染の6時間後には、すべての試験された細胞の間で、いかなる明らかな違いも観察されなかった。
【0295】
この結果は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが、正常細胞においてよりもヒトがん細胞において、より選択的に複製することを実証する。
【0296】
実施例4. hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスに感染したヒト腫瘍細胞からの導入遺伝子産物の分泌
本研究は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの感染後に、ヒトがん細胞COLO 741、U-87 MG、およびHuCCT1から導入遺伝子産物が分泌されるかどうかを検討するために実施した。
【0297】
すべてのがん細胞に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを0または1のMOIで感染させ、2日間培養した。次いで、細胞培養上清を収集し、分泌されたヒトIL-12タンパク質を、ヒトIL-12 p70 DuoSet(登録商標) ELISAを用いて検出し、または、分泌されたヒトIL-7タンパク質を、ヒトIL-7 ELISAキットを用いて検出した。3回の独立した実験を三連で行い、データを、3回の実験の平均値(±SEM)として示す。
【0298】
表2および3に示されるように、ヒトIL-12およびヒトIL-7タンパク質が、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを1のMOIで感染させた細胞の培養上清すべてにおいて検出されたが、非感染細胞の培養上清においては検出されなかった。
【0299】
結論として、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスに感染したすべての試験された細胞株の細胞培養上清において、導入遺伝子産物の分泌が確認された。
【0300】
(表2)分泌されたヒトIL-12タンパク質の量
COLO 741:ヒト大腸癌細胞株;ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;HuCCT1:ヒト胆管癌細胞株;IL-12:インターロイキン-12;MOI:感染多重度;不検出:用いたELISAキットの定量限界未満(<0.3125 ng/mL);U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株。
【0301】
(表3)分泌されたヒトIL-7タンパク質の量
COLO 741:ヒト大腸癌細胞株;ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;HuCCT1:ヒト胆管癌細胞株;IL-7:インターロイキン-7;MOI:感染多重度;不検出:用いたELISAキットの定量限界未満(<0.04115 ng/mL);U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株。
【0302】
実施例5. ヒト腫瘍細胞における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの細胞傷害効果
本研究は、マウスIL-12およびヒトIL-7を保有する、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートが、ヒトがん細胞株COLO 741、U-87 MG、およびHuCCT1において細胞傷害効果を示すかどうかを検討するために実施した。
【0303】
すべてのがん細胞株に、0~100の範囲の様々なMOIで、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを感染させた。感染の4日後に、細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assayを用いて測定した。細胞生存率は、非感染細胞(MOI 0)および細胞を含有しない培地対照ウェルを、それぞれ100%および0%の生存に設定することによって計算した。3回の独立した実験を三連のウェルにおいて行い、データを、3回の実験の平均値(±SEM)として示す。
【0304】
表4に示されるように、感染の4日後に、細胞生存率は、11、33、および100のMOIで20%未満に減少した。
【0305】
したがって、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスと同様に、ヒトがん細胞(COLO 741、U-87 MG、およびHuCCT1細胞)に対して細胞傷害効果を示した。
【0306】
(表4)ヒトがん細胞株に対するhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの細胞傷害効果
COLO 741:ヒト大腸癌細胞株;HuCCT1:ヒト胆管癌細胞株;MOI:感染多重度;U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株。
【0307】
実施例6. hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートに感染したヒト腫瘍細胞からの導入遺伝子産物の分泌
本研究は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの感染後に、ヒトがん細胞COLO 741、U-87 MG、およびHuCCT1から導入遺伝子産物が分泌されるかどうかを検討するために実施した。
【0308】
すべてのがん細胞に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを0または1のMOIで感染させ、2日間培養した。感染の2日後に、細胞培養上清を収集し、分泌されたマウスIL-12タンパク質を、マウスIL-12 p70 DuoSet(登録商標) ELISAを用いて検出し、または、分泌されたヒトIL-7タンパク質を、ヒトIL-7 ELISAキットを用いて検出した。3回の独立した実験を三連で行い、データを、3回の実験の平均値(±SEM)として示す。
【0309】
表5および6に示されるように、マウスIL-12およびヒトIL-7タンパク質が、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートに感染した細胞の培養上清すべてにおいて検出されたが、非感染細胞の培養上清においては検出されなかった。
【0310】
結論として、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートに感染したすべての試験された細胞株の細胞培養上清において、導入遺伝子産物の分泌が確認された。
【0311】
(表5)分泌されたマウスIL-12タンパク質の量
COLO 741:ヒト大腸癌細胞株;ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;HuCCT1:ヒト胆管癌細胞株;IL-12:インターロイキン-12;MOI:感染多重度;不検出:用いたELISAキットの定量限界未満;U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株。
【0312】
(表6)分泌されたヒトIL-7タンパク質の量
COLO 741:ヒト大腸癌細胞株;ELISA:酵素結合免疫吸着検定法;HuCCT1:ヒト胆管癌細胞株;IL-7:インターロイキン-7;MOI:感染多重度;不検出:用いたELISAキットの定量限界未満;U-87 MG:ヒト神経膠芽腫細胞株。
【0313】
実施例7. ヒト大腸癌細胞または神経膠芽腫細胞が皮下に異種移植された免疫低下マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの腫瘍内投与の抗腫瘍活性
本研究は、COLO 741またはU-87 MGが皮下に接種されたヌードマウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの抗腫瘍効果を調べるために実施した。腫瘍の確立後に、2×103~2×107 pfu/マウスの用量範囲のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、1日目に、腫瘍を有するマウスに腫瘍内注射した。統計解析を、21日目の値について行った。
【0314】
COLO 741異種移植モデルにおいて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、2×10
5 pfu/マウス以上の用量で腫瘍成長を有意に阻害し、21日目に2×10
7 pfu/マウスで、腫瘍退縮を誘導した(
図3A)。このモデルにおいて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、対照群と比較して体重減少を誘導しなかった(
図3B)。U-87 MG異種移植モデルにおいて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスはまた、2×10
3 pfu/マウス以上の用量で腫瘍成長を有意に阻害し、2×10
7 pfu/マウスで、腫瘍退縮を誘導した(
図4A)。このモデルにおいて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、対照群と比較して体重減少を誘導しなかった(
図4B)。
【0315】
結論として、本研究により、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが、免疫低下マウスにおいて体重を低減させずに、COLO 741およびU-87 MGの異種移植片に対して抗腫瘍活性を示すことが示される。
【0316】
実施例8. CT26.WT腫瘍細胞が皮下に接種された免疫適格性マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の抗腫瘍活性
本研究は、マウス大腸癌(CT26.WT)腫瘍細胞が接種された免疫適格性マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの抗腫瘍効果を調べるために実施した。CT26.WT腫瘍の確立後に、2×104~2×107 pfu/マウスの用量範囲のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、1、3、および5日目に、腫瘍を有するマウスに腫瘍内注射した。
【0317】
18日目に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、2×10
5 pfu/マウス以上の用量で腫瘍成長阻害を誘導し;さらに、2×10
7 pfu/マウスの、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、74.1%の腫瘍退縮を誘導した(
図5A)。28日目までに、2×10
6 pfu/マウスおよび2×10
7 pfu/マウスの、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートで処置された群において、それぞれ、6匹のうち3匹および5匹のマウスが、CRを達成した。研究期間中に、ビヒクル対照群とhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート群との間に、いかなる明らかな体重の差もなかった(
図5B)。
【0318】
要約すると、本研究により、免疫適格性マウスにおけるCT26.WT細胞に対する、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの抗腫瘍効果が実証される。
【0319】
実施例9. CT26.WT腫瘍細胞を有する免疫適格性マウスにおける、1日目および8日目、または、1日目および15日目の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の抗腫瘍効果
本研究は、同系マウスモデルにおけるCT26.WT 腫瘍に対する、1日目および8日目、または、1日目および15日目に投与されたhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの抗腫瘍効果を評価するために実施した。
【0320】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート(2×107 pfu/40μL/マウス)またはビヒクルを、1日目、1日目および8日目、または、1日目および15日目に、CT26.WT腫瘍を有するマウス中に腫瘍内注射した。群1)1日目にビヒクル単一用量、群2)1日目にhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート単一用量、群3)合計で2用量(1日目および8日目に1回)のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート、ならびに群4)合計で2用量(1日目および15日目に1回)のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート。群1における平均腫瘍体積が2000 mm3を超えたため、この群のマウスを安楽死させた。
【0321】
図6Aは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートが、試験された群すべてにおいて腫瘍成長を阻害したことを実証する。
図6Bは、1日目および15日目のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの投与後の抗腫瘍効力が、1日目の単回投与のものよりも有意に大きかったことを実証する。25日目に、ビヒクル対照群とhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート群との間に、いかなる有意な体重の差もなかった(
図6C)。
【0322】
これらのデータにより、CT26.WT腫瘍細胞が接種されたマウスにおいて、1日目および15日目のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの投与が、単回投与と比較して、より良好な抗腫瘍効果を実証することが示される。
【0323】
実施例10. 腫瘍を有する免疫適格性マウスにおける、免疫応答に対するhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与の効果
本研究は、CT26.WT細胞が皮下に接種された免疫適格性マウスにおける、免疫応答に対するhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの効果を調べるために実施した。
【0324】
腫瘍の確立後に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート、免疫導入遺伝子を保有しない組換えワクシニアウイルス(Cont-VV)、またはビヒクルを、1日目に2×107 pfu/マウスの用量で腫瘍内注射した。投与の翌日に、腫瘍におけるヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γのレベルを測定した。加えて、1,3、および5日目のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート、Cont-VV、またはビヒクルの複数回腫瘍内投与後20日目に、腫瘍浸潤リンパ球を解析した。
【0325】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、単一用量の翌日に、腫瘍におけるサイトカインであるヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γのレベルを、ビヒクルまたはCont-VVで処置されたものと比較して有意に増加させた(
図7)。加えて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、3用量後20日目に、ビヒクルまたはCont-VVで処置されたものと比較して有意により高い割合の、腫瘍における腫瘍浸潤リンパ球であるCD4+ T細胞、およびCD8+ T細胞を誘導した(
図8)。
【0326】
これらの結果は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与が、CT26.WT細胞が接種された免疫適格性マウスにおいて免疫応答を活性化することを示す。
【0327】
実施例11. CT26.WT腫瘍細胞が皮下に接種された免疫適格性マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート処置後の腫瘍および血清のサイトカインレベルの時間経過解析
本研究は、CT26.WT腫瘍細胞が皮下に接種された免疫適格性マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートでの腫瘍内処置後の、腫瘍および血清の、ヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γレベルの時間経過変化を調べるために設計した。
【0328】
CT26.WT腫瘍を有するマウスを、2×107 pfu/マウスの、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの投薬で処置し、0時間(注射前)、ならびに注射の0.5時間、1時間、3時間、6時間、1日、2日、3日、7日、および14日後に、腫瘍試料および血清試料を収集した。定量限界よりも下の値は、濃度が0とみなした。各サイトカインの腫瘍中濃度を、総タンパク質濃度を用いて正規化し、ng/g総タンパク質濃度として表した。ヒトIL-7(A)の濃度は、ELISAによって決定し、マウスIL-12(B)およびマウスIFN-γ(C)は、MSDサイトカインパネルによって決定した。
【0329】
図9Aおよび9Bに示されるように、ヒトIL 7およびマウスIL-12の腫瘍中レベルは、処置後0.5時間以内に急速に増加し、2日間上昇したままであり、その後レベルが下落し始めた。
図9Cは、腫瘍におけるマウスIFN-γの産生が、処置の6時間後に上がり始め、ヒトIL-7およびマウスIL-12の増加がそれに続いたことを実証する。マウスIFN-γのレベルは、処置の3日後まで上昇したままであり、その後下落した(
図9C)。
図10Aは、ヒトIL-7の血清中濃度が、処置の6時間後の急速な上昇を除いて、測定されたすべての時点について定量限界よりも下(BLQ)であったことを示す。血清におけるマウスIL-12の濃度は、処置の最初の2日中にゆっくりと増加し、処置後6時間~2日の間、ピークに達した(
図10B)。血清中のマウスIFN-γの濃度は、6時間で開始して急速に増加し、処置後1~2日でピークに達した(
図10C)。
【0330】
これらの結果は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート処置が、CT26.WT腫瘍を有するマウスの腫瘍および血清において、ヒトIL-7およびマウスIL-12の一過性増加、ならびにそれに続くマウスIFN-γ産生をもたらすことを示す。
【0331】
実施例12. CT26.WT腫瘍細胞が皮下に接種された免疫適格性マウスにおける、単一および/または反復のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート処置後の腫瘍および血清のサイトカインレベルの解析
本研究は、腫瘍および血清のヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γのレベルが、CT26.WT腫瘍細胞が皮下に接種された免疫適格性マウスにおいて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの単一または反復の処置後に増加するかどうかを判定するために設計した。
【0332】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、以下のレジメンのうちの1つで、CT26.WT腫瘍を有するマウス中に注射した:(1)2×104、2×105、2×106、もしくは2×107 pfu/マウスの単一用量、または(2)1日目および15日目の2×107 pfu/マウスの反復投薬。血清試料を、0時間(注射前)、ならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート処置の0.5時間、1時間、3時間、6時間、1日、2日、3日、7日、および14日後に、CT26.WT腫瘍を有するマウスから収集した。定量限界よりも下の値は、濃度が0とみなした。ヒトIL-7(A)の濃度は、ELISAによって決定し、マウスIL-12(B)およびマウスIFN-γ(C)は、MSDサイトカインパネルによって測定した。腫瘍試料および血清試料を、2 回目の投薬前(0時間)、ならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの2回目の投薬の6時間後および2日後(2d)に、CT26.WT腫瘍を有するマウスから収集した。ヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γの濃度を、MSD V-plexサイトカインパネルによって決定した。マン・ホイットニー検定を用いて、2回目の腫瘍内注射の前(0時間)と6時間後との間で比較した。6時間後の血清におけるマウスIFN-γの濃度は、10の試料のうち2つの試料において検出範囲を超えており、濃度の検出上限を割り当てた。
【0333】
単一用量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの6時間後に、ヒトIL-7およびマウスIL-12の腫瘍中濃度は、2×10
6および2×10
7 pfu/マウスで有意に増加し、マウスIFN-γの産生もまた、2×10
7 pfu/マウスで有意に上昇した(
図11A)。同様に、血清におけるヒトIL-7およびマウスIL-12の濃度は、2×107 pfu/マウスで有意に上昇し、マウスIFN-γの産生は、2×106 pfu/マウスで開始して有意に増加した(
図11A)。処置の2日後に、ヒトIL-7の腫瘍中レベルおよび血清中のマウスIFN-γは、2×10
7 pfu/マウスで、ベースラインよりも有意に高いままであった(
図11B)。腫瘍におけるマウスIL-12およびマウスIFN-γならびに血清におけるマウスIL-12のレベルもまた、最高用量で維持されていたが、結果は、統計的に有意ではなかった(
図11B)。しかし、血清におけるヒトIL-7濃度は、処置の2日後にBLQに戻った(
図11B)。さらに、2×10
7 pfu/マウスでのhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの反復投薬は、腫瘍および血清の両方において、2回目の処置の6時間後に、ヒトIL-7、マウスIL-12、およびマウスIFN-γのレベルを有意に上昇させた(
図12)。
【0334】
実施例13. 免疫適格性マウスにおけるCT26.WT腫瘍細胞での再チャレンジ後の、腫瘍移植に対するhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの効果
本研究は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートでの処置が、CT26.WT細胞が皮下に接種されたマウスにおいて長続きする免疫記憶を誘導するかどうかを検討するために実施した。
【0335】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、1、3、および5日目に、CT26.WT腫瘍を有するマウスに、2×107 pfu/マウスで、腫瘍内注射した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートでの処置の完了の23日後まで、30匹のうち26匹のマウスにおいてCRを誘導した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内注射の完了の90日後に、CRを達成していたマウスに、5×105細胞/マウス(n=10)でCT26.WT細胞を皮下に再チャレンジし、接種後28日間にわたって観察した。
【0336】
再チャレンジの時に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート処置に関連して以前にCRであった26匹のマウスはすべて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの最終注射の90日後まで生存しており、同齢の対照マウスと比較していかなる有意な体重の差もなかった(
図13)。CT26.WT細胞での再チャレンジ後に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートでCRを達成していた10匹のうち9匹のマウスは、腫瘍がないままであったが、処置未経験のマウスはすべて、28日以内に腫瘍を発症した(
図14)。
【0337】
結論として、これらの結果は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートでCRを経験した免疫適格性マウスが、CT26.WT腫瘍細胞に対して長期の抗腫瘍免疫記憶を発生させたことを示唆する。
【0338】
実施例14. CT26.WT腫瘍細胞が両側に接種された免疫適格性マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの腫瘍内投与のアブスコパル抗腫瘍効果
本研究は、CT26.WT腫瘍細胞が両側に接種された免疫適格性マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートのアブスコパル抗腫瘍効果を調べるために実施した。
【0339】
CT26.WT腫瘍細胞を、マウスの左右両方の側腹部中に皮下接種した。マウスの両側で腫瘍が確立された後に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート、Cont-VV、またはビヒクルを、1、3、および5日目に片側の腫瘍中に注射した。統計解析を、17日目の腫瘍体積(A:注射された腫瘍、B:注射されていない腫瘍)または体重(C)の値を用いて行った。
【0340】
17日目に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、注射された腫瘍および反対側の注射されていない腫瘍において、それぞれ96%および64%、腫瘍成長を阻害した(
図15Aおよび15B)。Cont-VVは、注射された腫瘍において70%、腫瘍成長を阻害した;しかし、注射されていない腫瘍に対しては抗腫瘍効果を示さなかった。28日目までに、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート処置群において、10匹のうち8匹のマウスが、注射された腫瘍についてCRを達成し、10匹のうち1匹のマウスが、注射されていない腫瘍についてCRを達成した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート群におけるマウスの平均体重は、研究期間中に徐々に増加したが、体重は、17日目のビヒクル処置マウスのものよりも有意に低く、これは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの投与後の腫瘍のサイズの減少によると考えられる(
図15C)。
【0341】
結論として、この研究は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートが、CT26.WT腫瘍細胞が接種されたマウスにおける注射されていない腫瘍に対してアブスコパル抗腫瘍効果を有することを示す。
【0342】
実施例15. CT26.WT腫瘍細胞が両側に接種された免疫適格性マウスにおける、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの抗腫瘍効果
本研究は、CT26.WT腫瘍細胞が両側に接種された免疫適格性マウスにおける、免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1 Abまたは抗CTLA4 Abと組み合わせた、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの抗腫瘍効果を調べるために実施した。
【0343】
腫瘍の確立後に、ビヒクル溶液、または、2×107 pfu/マウスの、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、1、3、および6日目に片側の腫瘍中に注射した。6日目に、リン酸緩衝生理食塩水または抗PD-1抗体(100μg/マウス)または抗CTLA4抗体(200μg/マウス)を、週に2回、腹腔内投与した。ビヒクル、抗PD-1抗体単剤療法、および抗CTLA-4 Ab単剤療法の群におけるマウスは、群における腫瘍体積の平均値が、両方の側腹部で2000 mm3を超えたため、24日目に安楽死させた。
【0344】
モデルにおいて、抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体の単剤療法は、注射された腫瘍および注射されていない腫瘍において有意な抗腫瘍活性を示さなかった。ウイルスが注射された腫瘍部位では、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート単独、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートと抗PD-1抗体との組み合わせ、ならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートと抗CTLA4 Abとの組み合わせは、37日目に、それぞれ10匹のうち9匹、10匹のうち10匹、10匹のうち9匹のマウスにおいてCRを誘導した。注射されていない腫瘍では、10匹のうち6匹および10匹のうち4匹のマウスが、それぞれ、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートと抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体との組み合わせで処置された群においてCRを達成したが、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート単独で処置された群においては、10匹のうち1匹のマウスのみがCRを達成した(
図16)。
【0345】
結論として、この結果により、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートと抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体のいずれかとの組み合わせは、単剤療法として投与されたこれら3つの剤のいずれよりも高い抗腫瘍効力を実証することが示される。
【0346】
実施例1~15の要約
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、ヒトIL-12およびIL-7の導入遺伝子を組み込んだ複製可能なワクシニアウイルスである。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、それぞれヒトIL-12およびヒトIL-7の挿入による、VGFおよびO1Lの機能的欠失、ならびにB5Rの改変からなるさらなる改変を伴う、ワクシニア株LC16mOに基づいて設計された(その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2017/0340687号)。
【0347】
インビトロ研究において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、肺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、食道がん、胃がん、結腸がん、大腸がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、前立腺がん、および子宮頸がん、ならびに神経膠芽腫、神経芽腫、骨髄腫、および黒色腫を含む、様々なタイプのヒトがん細胞において細胞傷害性を実証した。インビボ研究において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、免疫低下マウスにおいて腫瘍内注射後に、ヒト大腸癌および神経膠芽腫に対して腫瘍退縮を誘導した。これらの結果は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのヒトがん細胞に対する広い範囲の直接腫瘍溶解活性を実証する。加えて、ヒトIL-12およびヒトIL-7タンパク質の分泌が、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスで処置されたいくつかのタイプのヒトがん細胞において確認された。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのウイルスゲノムにおいては、VGFおよびO1Lが機能的に欠失している。VGFおよびO1Lは、Raf/MEK/ERKシグナル伝達経路の持続的活性化に関与して、感染した細胞のウイルス毒性を促進する、病原性因子である(Schweneker et al, J Virol. 2012;86:2323-36)。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスゲノムの複製は、正常細胞においてよりもヒトがん細胞においてより選択的であり、この選択性は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスにおけるVGFおよびO1Lの機能的欠失によることが示唆される。ヒトIL-12は、マウス免疫細胞において交差反応性ではないことが知られているため、免疫適格性マウスを用いた研究においては、ヒトIL-12の代わりにマウスIL-12を保有する、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを用いて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの免疫活性化プロファイルを推定した(Schweneker et al、上記)。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの構造は、IL-12導入遺伝子の種由来を除いて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのものと同じである。マウスIL-12およびヒトIL-7がVGFおよびO1Lを挿入的に不活性化する、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートもまた、正常細胞においてよりも、より選択的に、がん細胞において複製すると考えられる。加えて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスと同様に、ヒトがん細胞に対して細胞傷害活性を示し、かつ感染したがん細胞からマウスIL-12およびヒトIL-7タンパク質の分泌を誘導することが確認され、これは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートが、サロゲートウイルスとしてhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの抗腫瘍活性を推定できることを示す。
【0348】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの反復腫瘍内注射は、免疫適格性マウスモデルにおいて有意な抗腫瘍活性を示した。同じモデルにおいて、1日目および15日目の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの投与は、単回投与と比較して優れた効力を示し、これは、反復投与ががん患者において効果的であり得ることを示唆する。IL-12は、部分的にはナチュラルキラー細胞、CD8+ T細胞、およびCD4+ T細胞からのIFN-γ分泌のために、自然免疫および獲得免疫の両方を活性化することが知られている。IL-7は、T細胞の恒常性に重要であり、IL-12と組み合わせた場合にT細胞に対して相乗的な刺激活性を示すことが知られている(Mehrotra et al, J Immunol. 1995;154:5093-102)。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、マウスIL-12、ヒトIL-7、およびIFN-γタンパク質の腫瘍内分泌を誘導し、かつCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の腫瘍浸潤を増加させ、これは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによって媒介されるIL-12およびIL-7の腫瘍内発現が、腫瘍微小環境において免疫応答を上方制御する機能を有し、抗腫瘍効力を結果としてもたらすことを示唆する。時間経過実験において、すべての観察された腫瘍および血清のサイトカインレベルの一過性増加は、処置後3日目および14日目に観察されたように、基底レベルに近づくように下落した。加えて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、両側性腫瘍モデルにおいてアブスコパル効果を示し、そこでは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの片側の腫瘍中への処置が、注射された腫瘍および反対側の注射されていない腫瘍の両方において有意な抗腫瘍効果をもたらし、ウイルスが注射された腫瘍における局所免疫活性化が、注射されていない遠方の腫瘍に影響を及ぼしたことを示す。さらに、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートによってCRを達成していたマウスは、CRの約90日後に再チャレンジした後、同じがん細胞を上手く拒絶し、これは、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートによる抗腫瘍免疫記憶の確立を示唆する。この両側性腫瘍モデルにおいて、抗PD-1 Ab処置または抗CTLA4 Ab処置の前のhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの投与は、単独で投与されたこれら3つの剤のいずれよりも優れた効力を実証し、これは、固形腫瘍を有する患者において併用処置が有効であり得ること示唆する。
【0349】
これらの研究において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの投与後に明らかな体重変化が無いことは、いかなる明白な自己免疫の兆候も示さないが、自己免疫反応の潜在的なリスクは、臨床の環境において綿密にモニターされるべきである。
【0350】
まとめると、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、腫瘍組織において選択的に複製して、腫瘍破壊、ならびに、腫瘍微小環境における免疫活性化をもたらす、および全身の抗腫瘍活性を潜在的に誘導する、免疫調節剤の発現を結果としてもたらすように意図される。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、多様な腫瘍タイプにおいて、腫瘍細胞の直接的な細胞溶解を介して、および免疫媒介性のがん細胞破壊を介して、抗がん活性を示し得る。
【0351】
実施例16~19
以下の方法を、実施例16~19に提供される生体内分布および排出の研究において用いた。
【0352】
マウスおよびカニクイザルにおける、生体内分布および排出の研究を実施した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス、ならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、qPCRによって解析した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス、ならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの両方は、共通のDNA配列を共有している。共通のDNA配列の検出に特異的なプライマーペアおよびプローブを、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス、ならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートのウイルスのゲノム数の定量化に用いた。検量線の範囲は、マウスにおいて100~1×107ウイルスゲノム(vg)/μg DNA、カニクイザルにおいて125~2.5×107 vg/μg DNAであった。検出限界は、マウスにおいて50 vg/μg DNA、カニクイザルにおいて31.25 vg/μg DNAであった。解析方法は、十分な特異性、ならびにラン内およびラン間の正確さおよび精度を有する。
【0353】
実施例16. 正常マウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの生体内分布および排出
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、8.5×109 pfu/kgで雄および雌のCD-1マウスに、単一静脈内用量として投与した。表7に示されるように、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、投与後少なくとも28日間、血中で検出され、投与の84日後には、いずれの動物においても検出されなかった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、脳を除く検討したすべての組織において検出された。組織における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、組織において時間依存的に減少し、投与の14日後にはBLQであった。最高レベルのhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAを示す組織は、肝臓、肺、および脾臓であった。研究中に尿または糞便に排泄された、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、BLQであった。いかなる顕著な性差も観察されなかった。
【0354】
実施例17. 腫瘍を有するマウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの生体内分布および排出
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、2×107 pfu/マウスで、腫瘍を有する雄および雌のBALB/cマウスに、単回腫瘍内注射として投与した。表8に示されるように、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、腫瘍において検出され、時間依存的に減少した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、5匹のうち1匹の動物を除いて、投与の14日後には腫瘍においてBLQであった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、血液、脳、心臓、腎臓、肺、糞便、卵巣、および尿においてBLQであった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、以下の組織:腸骨リンパ節、脾臓、精巣、および子宮において、各組織について5匹のうち1匹の動物で、投与の4時間後に検出され;投与の1日後に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、5匹のうち1匹の動物の肝臓組織において検出された。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、より後の時点(投与の1日後または3~14日後)ではこれらの組織において検出されなかった。いかなる顕著な性差も観察されなかった。
【0355】
腫瘍および腸骨リンパ節を除いて、ヒトIL-7およびマウスIL-12を、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAが検出された動物由来の組織において測定した。ヒトIL-7およびマウスIL-12は、検討した組織においてBLQであった。
【0356】
実施例18. 腫瘍を有するマウスの皮膚スワブにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの決定
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、2×107 pfu/マウスで、腫瘍を有する雄および雌のBALB/cマウスに1回、腫瘍内投与した。表9に示されるように、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、投与の直後(2分以内)に注射部位の皮膚スワブにおいて検出された。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、時間依存的に減少し、投与の3日後に、および21日までのより後の時点でBLQであった。いかなる顕著な性差も観察されなかった。
【0357】
実施例19. カニクイザルにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの生体内分布および排出
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、3.4×108および3.4×109 pfu/kgで週に1回、4週間、雄および雌のカニクイザルに静脈内投与した。
【0358】
表10に示されるように、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、血中で検出され、時間依存的に減少した。3.4×108 pfu/kgで、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、投与の3日後またはより後の時点で、血液においてBLQであった。3.4×109 pfu/kgで、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、投与後7日間、検出された。血中の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、用量の増加とともに増加した。
【0359】
組織において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、4回目の投与の7日後の脾臓においてのみ検出された。
【0360】
3.4×108 pfu/kgで、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、研究中の口腔スワブ試料、涙スワブ試料、尿、または糞便においてBLQであった。3.4×109 pfu/kgで、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、投与の4時間および1日後の口腔スワブ試料、ならびに投与の3日後の糞便において検出された。口腔スワブ試料および糞便における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、1回目または2回目の投与の7日後には検出されなかった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、研究中の涙スワブ試料または尿においてBLQであった。
【0361】
全体的に、いかなる顕著な性差も、カニクイザルにおける生体内分布および排出において観察されなかった。
【0362】
(表7)正常マウスにおける単一静脈内用量後の生体内分布および排出(qPCR)
数値データは、別段の指定がない限り、幾何平均値として表す。
BLQ:定量限界よりも下(<100 vg/μg DNA);F:雌;M:雄;NA:不適用;qPCR:定量ポリメラーゼ連鎖反応。
a各々の収容群由来の尿および糞便を、それぞれプールして解析した。
†1匹の動物における数値データ、4匹の動物においてはBLQ。
‡2匹の動物における数値データ、3匹の動物においてはBLQ。
§3匹の動物における数値データ、2匹の動物においてはBLQ。
¶4匹の動物における数値データ、1匹の動物においてはBLQ。
【0363】
(表8)腫瘍を有するマウスにおける単一腫瘍内用量後の生体内分布および排出(qPCR)
数値データは、別段の指定がない限り、幾何平均値として表す。
BLQ:定量限界よりも下(<100 vg/μg DNA);F:雌;IL-7:インターロイキン-7;IL-12:インターロイキン-12;M:雄;NA:不適用;qPCR:定量ポリメラーゼ連鎖反応。
* 4匹の動物においてBLQ、1匹の動物においては反復後にデータが再現不可能であった。
** 1μg未満のDNAを解析した。
脚注は次のページに続く。
†1匹の動物における数値データ、4匹の動物においてはBLQ。
‡4匹の動物における数値データ、1匹の動物においてはBLQ。
§1匹の動物における腫瘍が、試料採取の時に視覚的に見出されなかったため、4匹の動物の数字(1匹の動物における数値データ、3匹の動物においてはBLQ)。
¶1匹の動物における腫瘍が、試料採取の時に視覚的に見出されなかったため、4匹の動物の数字。
【0364】
(表9)腫瘍を有するマウスへの、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの単回腫瘍内投与後の、皮膚スワブにおけるウイルスゲノムの平均数
数値データは、別段の指定がない限り、幾何平均値として表す。
BLQ:定量限界よりも下(<100 vg/μg DNA);F:雌;M:雄;qPCR:定量ポリメラーゼ連鎖反応。
†2匹の動物における数値データ、3匹の動物においてはBLQ。
‡3匹の動物における数値データ、2匹の動物においてはBLQ。
§4匹の動物における数値データ、1匹の動物においてはBLQ。
【0365】
(表10)カニクイザルにおける反復静脈内用量後の生体内分布および排出(qPCR)
数値データは、別段の指定がない限り、幾何平均値として表す。
BLQ:定量限界よりも下(<125 vg/μg DNA);F:雌;M:雄;NA:不適用;qPCR:定量ポリメラーゼ連鎖反応。
a1つの試料が欠落していた。
b最初の投与の45時間後に試料採取した。
c指定された試料採取時点の前に、1匹の動物を屠殺した。
d1つの試料が失われた。
e最初の投与の96時間後の1つの試料を含む。
fn=1。
g群4の動物については屠殺時。
§群2の動物すべてにおいてデータはBLQ。
†1匹の動物における数値データ、2匹の動物においてはBLQ。
‡2匹の動物における数値データ、1匹の動物においてはBLQ。
【0366】
実施例16~19の要約
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、8.5×109 pfu/kgで、マウスに単一静脈内用量として投与した場合、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、投与後少なくとも28日間、血中で検出され、投与の84日後には、いずれの動物においても検出されなかった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、脳を除く検討したすべての組織において検出された。組織における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、時間依存的に減少し、投与の14日後にはBLQであった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、尿または糞便においてBLQであった。いかなる顕著な性差も観察されなかった。
【0367】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、2×107 pfu/マウスで、腫瘍を有するマウスに、単回腫瘍内注射として投与した場合、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、腫瘍組織において検出され、時間依存的に減少した。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、5匹のうち1匹の動物を除いて、投与の14日後には腫瘍組織においてBLQであった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、血液、脳、心臓、腎臓、肺、糞便、卵巣、および尿においてBLQであった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、以下の組織:腸骨リンパ節、脾臓、精巣、および子宮において、各組織について5匹のうち1匹の動物で、投与の4時間後に検出され;投与の1日後に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、5匹のうち1匹の動物の肝臓組織において検出された。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAは、より後の時点(投与の1日後または3~14日後)ではこれらの組織において検出されなかった。尿または糞便における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAの排泄は、検出されなかった。いかなる顕著な性差も観察されなかった。腫瘍および腸骨リンパ節を除いて、ヒトIL-7およびマウスIL-12を、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートDNAが検出された動物由来の組織において測定した。ヒトIL-7およびマウスIL-12は、検討した組織においてBLQであった。
【0368】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、2×107 pfu/マウスで、腫瘍を有する雄および雌のBALB/cマウスに1回、腫瘍内投与した場合、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、投与の直後(2分以内)に注射部位の皮膚スワブにおいて検出された。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートは、時間依存的に減少し、投与の3日後に、および21日までのより後の時点でBLQであった。いかなる顕著な性差も観察されなかった。
【0369】
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、3.4×108および3.4×109 pfu/kgで週に1回、4週間、カニクイザルに静脈内投与した場合、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、血中で検出され、時間依存的に減少した。3.4×109 pfu/kgで、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、投与後7日間、血中で検出された。血中の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、用量の増加とともに増加した。組織において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、4回目の投与の7日後の脾臓においてのみ検出された。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、3.4×109 pfu/kgで、投与の4時間および1日後の口腔スワブ試料、ならびに投与の3日後の糞便において検出された。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、より後の時点では、口腔スワブ試料または糞便において検出されなかった。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスDNAは、研究中の涙スワブ試料または尿においてBLQであった。全体的に、いかなる顕著な性差も、カニクイザルにおける生体内分布および排出において観察されなかった。
【0370】
実施例20. カニクイザルにおける単一静脈内用量の毒性試験
目的
この非GLP試験は、カニクイザルにおける単回静脈内注射後の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの潜在的な毒性を評価するために実施した。加えて、組織および血液における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの生体内分布を評価し、選択されたサイトカインレベルを測定した。
【0371】
試験デザイン
単一静脈内用量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、0(ビヒクル:30 mmol/L Tris-HCl、10%スクロース、pH 7.6)、2.9×107、または2.9×108 pfu/kgの用量レベルで、群あたり2匹の雄および2匹の雌のカニクイザルに投与した。被験物質群は、5分にわたる緩徐なボーラス注射として5 mL/kgの一定の投与体積を受けた。1匹の動物/性別/群を、投与の2日後に屠殺した。残りの動物は、投与の14日後に屠殺した。
【0372】
死亡率、罹患率、および臨床徴候を、予定された屠殺まで少なくとも1日1回、チェックして記録した。体重および直腸温を、処置前、ならびに1日目(投薬の日)、ならびに処置後2、4、8、および15日目に記録した。心電図(ECG)、血圧、および眼科学を、処置前に1回、および生存している動物において8日目に評価した。摂食量は、毎日チェックした。
【0373】
血漿におけるサイトカインおよびウイルスDNAのレベルの決定のための血液試料を、処置前期間中ならびに1、2、3(ウイルスDNAレベルについてのみ)、4、8、および15日目に、すべての生存している動物から収集した。
【0374】
血液学、凝固、および血液生化学の調査を、処置前ならびに処置後2、4、8、および15日目に、すべての生存している動物に対して行った。尿検査は、処置前ならびに処置後2、8、および15日目に行った。
【0375】
予定された屠殺時に、完全な肉眼による死後検査を行った。指定された臓器および組織を、生体内分布のための顕微鏡検査および定量ポリメラーゼ連鎖反応調査のために、秤量して保存した。顕微鏡検査を、すべての動物由来の選択された組織に対して行った。
【0376】
結果
試験中に早期死亡は発生せず、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスでの処置に関連したいかなる毒物学的に関連性のある臨床徴候も観察されなかった。
【0377】
体重または摂食量に対する影響は、いずれの用量レベルでも認められなかった。一過性の高体温が、2日目に、高用量群中の1匹の動物において認められた。いかなる他の、処置に関連した直腸温の変化も、認められなかった。いずれの用量レベルでも、心血管パラメータ(ECGおよび血圧)に対する影響はなく、眼科的所見はなかった。
【0378】
サイトカインレベルの決定では、ヒトIL-7およびIL-12 p70の血清中レベルと導入遺伝子の発現との間の関係は確認されなかった。用量に関連したサルインターフェロンガンマ(IFN-γ)濃度の増加が、2日目に認められた。腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)濃度の変化は、いずれの用量レベルでも認められなかった。
【0379】
ウイルスDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応検出法を用いて、生体内分布段階におけるいずれの時点でも、肝臓、脳、心臓、腎臓、肺、精巣、卵巣、または子宮の試料において検出されなかった。
【0380】
ウイルスDNAは、2.9×107 pfu/kg以上で、脾臓試料において3日目に定量化されたが、より後の時点では定量限界よりも下(BLQ)であった。ウイルスDNAはまた、2.9×107 pfu/kgの血液試料において1日目に、ならびに2.9×108 pfu/kgの血液試料において1、2、および3日目に一過性に定量化され、4日目からはいかなる血液試料もウイルスDNAが陽性ではなかったため、急速なクリアランスを有していた。
【0381】
血液学において、高用量動物はすべて、2日目に、中程度に増加した白血球数(×1.6~×2.5)および好中球数(×3.0~×4.3)、ならびに、わずか~著しく減少した好酸球数(完全な消失~×0.8)およびリンパ球数(×0.3~×0.6)を示した。8日目に、生存している雄および雌における軽度のリンパ球増加、ならびに雄のみにおける血小板数の増加が続いた。この同じ雄においては、フィブリノーゲン濃度のわずかな増加もまた、2日目および4日目に見られた。血小板数は、他の高用量の雄においては2日目に減少した。15日目にはいかなる変化も認められなかった。これらの血液学的変化は、この群における炎症状態を示していた。それらは、その可逆性のためおよび関連する臨床徴候がないことのために、被験物質に関連しているが有害ではないとみなされた。
【0382】
被験物質のいかなる効果も、血液生化学または尿検査において認められなかった。
【0383】
3日目または15日目に屠殺した動物において、被験物質の投与に関連していた、臓器重量の違い、肉眼的所見、または顕微鏡的所見はなかった。
【0384】
結論
この試験の実験条件下で、2.9×108 pfu/kgまでの、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの単回静脈内注射は、カニクイザルにおいて十分に耐容性を示した。
【0385】
ウイルスDNAは、2.9×107 pfu/kgで1日目に、ならびに2.9×108 pfu/kgで1、2、および3日目に血液試料において定量化され、4日目からはいかなる血液試料もウイルスDNAが陽性ではなかったため、急速なクリアランスを有していた。
【0386】
ウイルスDNAは、どの時点でも、肝臓、脳、心臓、腎臓、肺、精巣、卵巣、および子宮の試料において検出されなかった。ウイルスDNAは、2.9×107 pfu/kg以上で、脾臓試料においてのみ3日目に定量化されたが、15日目にはBLQであった。
【0387】
実施例21. マウスにおける4週間反復静脈内用量の毒性試験
目的
このGLP試験の目的は、マウスに4週間投与される毎週の静脈内注射中の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの毒性を評価することであった。処置期間の完了時に、任意の所見の可逆性を評価するために、指定された動物を、4週の非処置期間にわたって保持した。
【0388】
試験デザイン
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、0(ビヒクル:30 mmol/L Tris-HCl、10%スクロース、pH 7.6)、8.5×107、8.5×108、および8.5×109 pfu/kgの用量レベルで、週に1回、4週間、群あたり10匹の雄および10匹の雌のCD-1マウスに静脈内投与した。高用量レベルは、試験品濃度(1.7×109 pfu/mL)およびマウスに静脈内注射可能な最高体積(5 mL/kg、反復用量)に基づく、投与可能な最大用量(MFD)であった。6匹の追加の雄および6匹の追加の雌を両方とも、対照群および高用量群に含め、4週の非処置期間にわたって保った。加えて、可能性のあるウイルス血症、免疫原性、およびサイトカイン測定のみのために、6匹の付随の雄および6匹の付随の雌を、各群に含めた。
【0389】
動物の死亡率を、1日2回チェックした。臨床徴候を、1日1回記録した。体重および摂食量を、処置前期間中に少なくとも1回、処置の日に、および試験の終わりまで少なくとも週に1回、記録した。体重はまた、1回目および4回目の投与後3日間にわたって毎日記録した。眼科検査を、処置前期間中および処置期間の終わりに行った。
【0390】
血液学および血液生化学の調査のための血液試料を、処置期間および非処置期間の終わりに収集した。血液試料を、ウイルス血症の決定のために最初の投与の2日後に、ならびに可能性のあるサイトカイン測定および免疫原性の決定のために処置期間の終わりに、付随の動物から採取した。
【0391】
処置期間または非処置期間の終わりに、動物を安楽死させ、完全な肉眼による死後検査を行った。指定された臓器および組織を、秤量して保存した。顕微鏡検査を、選択された組織に対して行った。
【0392】
結果
静脈内経路による4週間の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの毎週の投与は、いかなる死亡も結果としてもたらさなかった。いかなる処置に関連した変化も、体重、摂食量、眼科学、または血液学において、いずれの用量レベルでも観察されなかった。
【0393】
8.5×107 pfu/kg以上の用量では、わずかにより低いA/G比が観察され、これは、ビヒクル対照と比較した、より高いグロブリン濃度を示唆した。増加した脾臓重量および脾臓における胚中心の細胞充実性もまた、認められた。これらの所見は、被験物質に関連しているとみなされた。
【0394】
8.5×108 pfu/kg以上の用量では、肥大した脾臓が認められた(雄および/または雌)。これらの所見は、被験物質に関連しているとみなされた。
【0395】
8.5×109 pfu/kgの用量では、3回目および4回目の投与後に急性の重度の臨床徴候、例えば、体を丸めた姿勢、立毛、活動低下、曲がった頭、握り反射の減少、平衡の喪失、呼吸困難、半分閉じた目、よろめき歩行、および/または円形のランニングが認められた。これらの臨床徴候のすべては、投与後15~30分以内に観察され、概して翌日には観察されなかった。これらの臨床徴候は、即時型過敏反応を示唆していた。しかし、それらは、一過性であり、動物の全体的な状態に対していかなる影響も有しなかった。肥大した腸骨リンパ節および鼠径リンパ節(雌)、増加した腸骨リンパ節、鼠径リンパ節、および下顎リンパ節における胚中心の細胞充実性(雄および雌)、ならびに注射部位での最小限の血管周囲炎の発生率の増加(雄および雌)が認められた。
【0396】
4週の非処置期間後に、脾臓およびリンパ節は、雄において完全に回復し、雌においては部分的に回復した。注射部位では、所見の完全な回復があった。
【0397】
3日目に、8.5×107 pfu/kg用量群におけるウイルスDNAが、6匹のうち3匹の雌の血液において定量化され(幾何平均:4.18×102 vg/μg DNA)、雄においては定量化されなかった。8.5×108 pfu/kg用量群では、ウイルスDNAは、1匹の雄以外のすべての動物において同様の量で定量化された(雄については2.29×102 vg/μg DNA、雌については5.05×102 vg/μg DNA)。8.5×109 pfu/kg用量群では、ウイルスDNAは、すべての動物において、より多い量で定量化された(雄については3.38×103 vg/μg DNA、および雌については8.92×103 vg/μg DNA)。
【0398】
結論
8.5×109 pfu/kgの用量レベルは、3回目および4回目の投与後に、有害な急性の重度の臨床徴候を結果としてもたらした。
【0399】
8.5×107 pfu/kgおよび8.5×108 pfu/kgの用量レベルで、被験物質の効果は、ビヒクル対照と比較して、より高い血中グロブリン濃度および脾臓における胚中心の細胞充実性の、有害ではない増加を含んでいた。
【0400】
結果的に、この試験の実験条件下では、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスについてのNOAEL(無毒性量)は、8.5×108 pfu/kgであった。
【0401】
実施例22. カニクイザルにおける4週間反復静脈内用量の毒性および生体内分布の試験
目的
このGLP試験は、カニクイザルに4週間投与される毎週の静脈内注射中の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの潜在的な毒性を評価するために実施した。処置期間の完了時に、任意の所見の可逆性を評価するために、指定された動物を、4週の非処置期間にわたって保持した。加えて、生体内分布を、試験期間を通して評価した。
【0402】
試験デザイン
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを、0(ビヒクル:30 mmol/L Tris-HCl、10%スクロース、pH 7.6)、3.4×107、3.4×108、および3.4×109 pfu/kgの用量レベルで、週に1回、4週間、群あたり3匹の雄および3匹の雌のカニクイザルに静脈内投与した(1、8、15、および22日目に投与)。3.4×109 pfu/kgの動物を、生体内分布および排出を評価するための付随の動物として割り当てた。高用量レベルは、試験品濃度(1.7×109 pfu/mL)およびカニクイザルに静脈内注射可能な最高体積(2 mL/kg、反復用量)に基づく、MFDであった。3.4×109 pfu/kgの付随の動物は、この用量レベルでの2回目の投与後に認められた所見のために、15日目に終了した。したがって、3.4×108 pfu/kg群において生体内分布および排出を評価するために、3匹の雄および3匹の雌を、付随の動物として追加的に割り当てた。
【0403】
投薬期間中に観察された毒性所見の可逆性を評価するために、2匹の雄および2匹の雌を、対照群および3.4×108 pfu/kg群に加えた。
【0404】
すべての動物について、死亡率、罹患率、および臨床徴候を、試験中に少なくとも1日2回、チェックして記録した。体重を、処置前に、処置の日に、および試験の終わりまで少なくとも週に1回、記録した。摂食量は、毎日チェックした。抗薬物抗体の可能性のある決定のために、血液試料を収集した。
【0405】
主動物および回復動物について、直腸温を、処置前期間に1回、各投与の2時間後、各投与の1日後、ならびに1回目および4回目の投与の3日後に記録した。ECG、血圧、および眼科検査は、処置前および処置期間の終わりに行った。血液学、凝固、および血液生化学の調査のための試料、ならびに尿検査のための試料を、処置期間の終わりに収集した。1回目および4回目の投与後の規則的な時点で、サイトカインレベルの可能性のある決定およびウイルス血症解析のために、血液試料を収集した。処置期間または非処置期間の終わりに、動物を屠殺し、完全な肉眼による死後検査を行った。指定された臓器および組織を、秤量して保存した。顕微鏡検査を、選択された組織に対して行った。
【0406】
群3の付随の動物(3.4×108 pfu/kg)について、生体内分布および排出を決定するために、試験全体を通して規則的な時点で、口腔スワブおよび涙スワブ、ならびに血液、尿、および糞便の試料を収集した。群4の付随の動物(3.4×109 pfu /kg)については、血液学および生化学のための血液、ならびに追加調査のための血清を、9日目および15日目(剖検前)に収集した。
【0407】
処置期間の終わりに、指定された組織を、生体内分布を評価するために、群3の付随の動物から収集した。15日目に、群4の付随の動物を屠殺し、完全な肉眼による死後検査を行った。指定された臓器および組織を、秤量して保存した。顕微鏡検査を、選択された組織に対して行った。
【0408】
結果
いかなる処置に関連した変化も、摂食量、ECG、血圧、眼科学、または尿検査において、いずれの用量レベルでも観察されなかった。
【0409】
3.4×107 pfu/kg以上の用量では、脾臓重量の増加(雄:3.4×107 pfu/kg以上、雌:3.4×108 pfu/kg以上)、および脾臓における胚中心の細胞充実性の、処置に関連した有害ではない増加(雄および雌)が認められた。これらの変化は、4週の非処置期間後に、3.4×108 pfu/kgでは認められなかった。
【0410】
赤血球数、ヘモグロビン濃度、およびヘマトクリットなどの成熟赤血球量の、軽度から中程度の減少が認められた(雄:3.4×108 pfu/kg以上、雌:3.4×107 pfu/kgおよび3.4×108 pfu/kg)。対照動物においては、成熟赤血球量の軽度の減少が認められた。それらの幅に照らして、これらの血液学的変化は、有害であるとはみなされなかった。
【0411】
3.4×108 pfu/kg以上の用量では、肥大した脾臓が認められた(雄および/または雌)。3.4×108 pfu/kgの用量で、1匹の雄が、22日目に、4回目の投与の4時間後に活動低下を示し、これは、24時間未満続いた。低い重症度のために、有害であるとはみなされなかった。雄においては、2日目の直腸温が、処置前の値と比較した時に上がった(それぞれ、40.3℃対39.5℃)。直腸温は、4日目に処置前の温度に戻った。この変化は、一過性であり、かつ変化の大きさが最小限であったため、有害であるとはみなされなかった。
【0412】
8日目に、付随の動物における3.4×109 pfu/kgの2回目の投与後に、1匹の雄が、嘔吐して、活動低下および衰弱を示し、腹部横臥しかつ固まった凝視に進んだ。この動物は、瀕死とみなされ、人道的な理由で早期に安楽死させた。組織病理学的検査において、瀕死の原因は、胸部および腹部の臓器の表面に主に影響を及ぼす、多臓器全身性炎症反応であるとみなされた。他の動物は、2回目の投与の4時間後に活動低下を示し、これは、24時間~48時間続いた。1匹の雄は、2回目の投与の4時間後に衰弱を示した。生存している動物においては、体重が減少した。8日目の第2の用量後の重度の反応を考慮して、5匹の他の動物の処置を中断し、15日目に動物を屠殺した。
【0413】
血液学的変化は、成熟赤血球量の、軽度から中程度の減少、血小板数の変化、ならびに/または桿状(band)好中球、リンパ球、単球、大型非染色細胞、および/もしくは網状赤血球数の、軽度から中程度の増加からなった。生化学的変化には、ナトリウム、クロリド、リン、アルブミン、および総タンパク質濃度の、軽度から中程度の減少、尿素、クレアチニン、およびトリグリセリド濃度の、軽度から中程度の増加、グルコース濃度の、軽度から中程度の変化、ならびにアルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、クレアチニンキナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびγ-グルタミルトランスフェラーゼ活性の、軽度から中程度の増加が含まれた。これらは、出血または赤血球寿命の減少による赤血球代謝回転の増加、炎症性および免疫学的反応、腎機能障害、胆汁うっ滞、ならびに肝胆道および骨格筋細胞の損傷を示していた。悪化した全身状態を伴う多臓器全身性炎症反応は、記載された変化の最も可能性の高い根底にある原因とみなされた。
【0414】
組織病理学的検査において、炎症性浸潤物の小さな増加が、様々な臓器(心臓、肝臓、肺、および体腔/腸間膜脂肪)において認められ、瀕死の動物における所見と一致していた。両側性精巣管(testicular tubular)変性が、15日目に屠殺した1匹の雄に存在した。精巣上体における二次病変は、およそ1週間前(すなわち、8日目の処置)の毒性作用と一致していた。類似しているが、より低い重症度の片側性病変が、3.4×108 pfu/kgの用量の、2匹の回復動物の精巣に存在した。精巣における所見は、被験物質の直接の効果である可能性は低い。しかし、精巣所見の正確なメカニズムを決定することはできなかった。
【0415】
3.4×107 pfu/kg群では、ウイルスDNAは、いずれの血液試料においてもBLQであった。3.4×108 pfu/kg群では、ウイルスDNAは、2日目に5匹のうち3匹の雄(幾何平均:4.26×102 vg/μg DNA)および5匹のうち4匹の雌(3.78×102 vg/μg DNA)において、3日目に5匹のうち2匹の雄(2.34×102 vg/μg DNA)および5匹のうち1匹の雌(1.42×102 vg/μg DNA)において定量化された。ウイルスDNAは、4日目または5日目にBLQであった。ウイルスDNAは、23日目に5匹のうち3匹の雄(1.8×102 vg/μg DNA)および5匹のうち4匹の雌(2.09×103 vg/μg DNA)において、24日目に5匹のうち0匹の雄および5匹のうち1匹の雌(4.03×102 vg/μg DNA)において定量化された。ウイルスDNAは、25日目には検出されなかった。
【0416】
結論
3.4×107 pfu/kgおよび3.4×108 pfu/kgでの投与は、存命中または組織病理学的検査中に認められたように、完全な回復を伴う有害ではない所見を結果としてもたらした。わずかな片側性精巣変性が、2匹の回復屠殺の動物に存在した。これは、病変の低い重症度のために、有害ではないとみなされた。3.4×109 pfu/kgの高用量では、処置に関連した有害な所見があった。具体的には、1匹の雄を、胸部および腹部の臓器の表面に主に影響を及ぼす多臓器全身性炎症反応によると考えられる臨床状態の重度の悪化のために、安楽死させた。加えて、両側性精巣変性が、1匹の雄に存在した。これは、処置の直接の効果とはみなされなかったが、発熱および精巣における体温調節の干渉を結果としてもたらす、炎症性変化に続発する可能性があった。
【0417】
結果的に、この試験の実験条件下では、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスについてのNOAEL(無毒性量)は、3.4×108 pfu/kgであると推定された。
【0418】
実施例23. 腫瘍を有するマウスにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートの5日間反復腫瘍内用量の毒性試験
目的
腫瘍を有するマウスにおける毒性試験を、臨床的な投与の経路である腫瘍内注射として投与された時の、ウイルスの潜在的な毒性を評価するために実施した。
【0419】
試験デザイン
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、導入遺伝子であるヒトIL-12およびヒトIL-7を保有する組換えワクシニアウイルスである。ヒトIL-12は、マウスにおいて交差反応性ではないため、この試験においては、マウスIL-12およびヒトIL-7を保有する、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを用いた。CT26.WT腫瘍細胞を、3×105細胞/50μL/マウスで、BALB/cマウスの右側腹部中に皮下注射した。腫瘍の確立後に(平均腫瘍体積:75~81 mm3)、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートを、0(ビヒクル対照:30 mmol/L Tris-HCl、10%スクロース、pH 7.6)、2×105、2×106、および2×107 pfu/マウス/日の用量レベルで、5日間の隔日投与(1、3、および5日目)によって、群あたり10匹の雄および10匹の雌のマウスに腫瘍内投与した。30μL/マウスの投薬体積を、すべての群に用いた。動物を、15日目に屠殺した。試験パラメータには、臨床観察、体重、摂食量、腫瘍体積、臓器重量、剖検、および組織病理学が含まれた。加えて、血清におけるヒトIL-7、マウスIL-12、マウスTNF-α、およびマウスIFN-γの濃度を、付随の動物(3匹の動物/物品/性別/群)において、6日目(3回目の投与の24時間後)に評価した。
【0420】
結果
2×105 pfu/マウス以上の用量では、注射部位での腫瘍サイズの減少が、雄において観察され、注射部位での腫瘍における巣状壊死の増加が、雄において観察された(2×106 pfu/マウスを除く)。
【0421】
2×106 pfu/マウス以上の用量では、腫瘍におけるリンパ系浸潤の増加、ならびに真皮における線維症の重症度および注射部位での腫瘍におけるマクロファージ浸潤の重症度の増加が、雄および雌において観察された。脾臓におけるリンパ組織過形成が、雄において観察された。腫瘍サイズの減少が、雌において観察された。
【0422】
2×107 pfu/マウスの用量では、注射部位での腫瘍における好中球浸潤の増加、ならびに脾臓における髄外造血の重症度および発生率の減少、および脾臓重量の減少が、雄において観察された。脾臓におけるリンパ組織過形成が、雌において観察された。
【0423】
サイトカインについて、マウスIL-12およびヒトIL-7の血清中レベルは、増加したマウスIL-12の濃度が観察された2×106 pfu/マウスの用量の1匹の雄を除いて、いずれの用量群のどちらの性別においても増加しなかった。マウスIFN-γの濃度は、2×106および2×107 pfu/マウスで、雄および雌において増加した。マウスTNF-αの濃度は、すべての用量群中の雄および雌において増加した。
【0424】
結論
組織病理学的変化は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートによる活性化された免疫系、または減少した腫瘍サイズに関連する二次的変化の結果を示すとみなされ、かつしたがって、有害であるとはみなされなかったため、この試験におけるNOAEL(無毒性量)は、両方の性別について2×107 pfu/マウスであると推定された。
【0425】
実施例20~23の要約
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスで4週間、静脈内処置されたマウスにおける大きな変化は、脾臓(リンパ球の数の増加による脾臓リンパ濾胞の胚中心の肥大を特徴とする、増加した胚中心の細胞充実性)ならびにリンパ節(腸骨、鼠径、および下顎)において観察された。リンパ節における形態学的変化は、脾臓のものに類似しているようであった。カニクイザルにおいては、4週間静脈内用量後の大きな臓器変化が、脾臓において認められた(増加した胚中心の細胞充実性)。これらの変化は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスに対する活性化された免疫系および免疫応答を示し、これらの変化は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの薬理学的効果に合致し、かつ可逆的であったため、有害ではないとみなされた。
【0426】
しかし、投与可能な最大用量(MFD)では、活性化された免疫系または免疫応答に恐らく関連した重度の臨床徴候が、反復静脈内投薬後のマウスおよびカニクイザルにおいて認められた。マウスにおいては、体を丸めた姿勢、立毛、活動低下、曲がった頭、よろめき歩行、握り反射の減少、平衡の喪失、および呼吸困難などの急性症状が、15日目および22日目に、第3および第4の用量後にマウスにおいて認められた。これらの臨床徴候のすべては、投与後15~30分以内に観察され、概して翌日には観察されなかった。これらの一過性臨床徴候は、動物の全体的な状態に対してはいかなる影響も有さず、即時型過敏反応を示唆していた。カニクイザルにおいては、最高用量の1匹の雄が、8日目に、2回目の投与後に嘔吐して、活動低下および衰弱を示し、腹部横臥しかつ固まった凝視に進んだ。この動物は、瀕死とみなされ、人道的な理由で早期に安楽死させた。他の動物は、2回目の投与の4時間後に活動低下を示し、これは、24時間~48時間続いた。1匹の雄は、2回目の投与の4時間後に衰弱を示した。組織病理学的検査において、瀕死の原因は、胸部および腹部の臓器の表面に主に影響を及ぼす、多臓器全身性炎症反応であるとみなされた。
【0427】
これらの変化は、人道的な観点から原薬および動物についてのMFD体積の協調に基づいて各試験においてMFDとして設定された、高用量でのみ認められた。腫瘍を有するマウスにおいては、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートによる活性化された免疫系を示す、類似した組織病理学的変化が認められたが、いかなる有害な所見も、いずれの測定においても認められなかった。
【0428】
カニクイザルにおいて、最高用量の1匹の雄が、両側性精細管変性を示した。精巣所見は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス曝露の間接的な効果を表すとみなされた。しかし、精巣所見の正確な病因を決定することはできなかった。
【0429】
マウスおよびカニクイザルにおける反復用量毒性試験において認められた処置に関連した毒性所見ならびにNOAELを、(表11)にまとめる。
【0430】
(表11)マウスおよびカニクイザルにおける4週間静脈内用量の毒性試験における処置に関連した毒性所見
NA:不適用;NOAEL:無毒性量。
†精巣所見は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス曝露の間接的な効果を表すとみなされた。
【0431】
実施例24. hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのファースト・イン・ヒューマン(FIH)第I相非盲検用量漸増および用量拡大試験
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの第I相非盲検用量漸増および用量拡大試験を、米国において実施する。
【0432】
概要
試験には、治癒の意図での外科的または医学的処置に不適格であり、かつ利用可能な標準治療時に進行しているか、またはそれに不適格である、進行性または転移性の固形腫瘍を有する患者が含まれる。
●群A:腫瘍内注射がアクセス可能な皮膚または皮下腫瘍。
●群B:超音波またはコンピュータ断層撮影(CT)ガイダンスを伴う腫瘍内注射がアクセス可能な内臓病変。内視鏡的にアクセス可能な病変が、考慮されてもよい。
【0433】
登録に適格であるために、患者は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス0または1、および測定可能な疾患を有する。
【0434】
試験デザインには、用量漸増段階およびRP2D拡大段階が含まれる(
図17)。計画される登録は、およそ105人の患者(用量漸増段階において21~30人、および用量拡大段階においておよそ75人)である。最初に用量拡大段階において、60人の患者が、拡大コホート中に登録される。拡大コホートにおいて観察された応答に基づいて、特定の腫瘍タイプを有する最大で15人の追加の患者が、その腫瘍タイプにおける抗腫瘍活性をさらに特徴決定するために加えられてもよい。1つよりも多いコホートが、追加の患者を含むように拡大されてもよい。拡大コホートにおける患者の総数は、観察された抗腫瘍活性およびバイオマーカー免疫応答に依存することになる。
【0435】
用量漸増段階において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの提案される用量レベルは、1×107 pfu/mL、1×108 pfu/mL、および5×108 pfu/mLである。各患者は、最初の2サイクル(28日サイクル)の1日目および15日目に、同じ腫瘍中への腫瘍内注射を介して、割り当てられた用量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス単剤療法を受ける。各用量レベルでの最初の患者の処置と、そのレベルでの任意のその後の患者の処置の間には、少なくとも7日が経過しなければならない。
【0436】
患者を、最初の28日間(サイクル1)中に用量制限毒性(DLT)について評価する。安全性および耐容性を、FDAのフィードバックと一致して、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの最後の用量後1日目から16週間を通して、継続的に評価する(
図18)。
【0437】
各用量レベルについて、計画された数の評価可能な患者(少なくとも3人の患者)がDLT観察期間を完了した後、その用量レベルの安全性を評価する。用量の漸増または漸減は、DLTの発生に基づく、ベイズ最適間隔(BOIN)設計([Liu & Yuan, 2015])に従って導かれることになる。
【0438】
次の用量濃度レベルを開始する前に、潜在的な遅延反応について追加の観察時間を与えるために、所与の用量レベルについてのDLT観察期間の完了と次の用量レベルでの最初の投与との間には、最低4週間が経過することになる。
【0439】
群Aにおけるすべてのコホートの登録およびDLT評価は、群Bにおける登録を開始する前に完了することになる。群Bの用量漸増は、群Aにおいて特定されたRP2Dよりも低い1用量レベルで始まることになる。
【0440】
主要目的は、進行性または転移性のがんを有する患者について、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの安全性および耐容性を評価すること、ならびにhIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスのMTDおよび/またはRP2Dを決定することである。副次的目的は、抗腫瘍活性(腫瘍のサイズの変化パーセントに基づく)、注射された腫瘍の客観的奏効率(ORR)、薬物動態、およびウイルス排出を評価することである。探索的評価項目は、注射されていない腫瘍の直径の合計のベースラインからの変化パーセント、注射されていない腫瘍のORR、無増悪生存期間(PFS)、進行までの時間(TTP)、奏効の持続期間(DOR)、および全生存期間(OS)を含む、抗腫瘍活性の追加の測定値、ならびに薬力学的および予測的バイオマーカーを評価することになる。
【0441】
陽性試料の追跡ウイルス感染力評価を伴うウイルス排出を、モニターする。
【0442】
投薬の根拠
FIH試験のための、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの開始用量は、非臨床試験によって支持されるように、安全であり、かつ最小限の薬理学的活性を有すると予想される。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、固定された濃度(pfu/mL)で投与され、用量の体積は、腫瘍サイズに基づいて調整されることになる。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの開始用量濃度は、1×107 pfu/mLに設定され、腫瘍内投与により、単一病変あたりおよび/または患者あたりの用量あたり、最大で6 mLが注射される。注射される、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの体積は、腫瘍細胞に対する一貫したウイルス曝露を確実にするように腫瘍サイズに依存し、これは、注射比率(注射されるウイルス体積/標的腫瘍サイズ)によって推定される。
【0443】
上記の実施例1~15において議論された非臨床薬理学データにより、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートが、30μLの体積で50 mm3の腫瘍に対して腫瘍内投与された場合(0.6の注射比率)、動物腫瘍モデルにおける、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの最小生物学的活性用量は、2×105 pfuであることが実証された。したがって、腫瘍内側(すなわち、標的注射部位)の最小生物学的活性濃度は、およそ4×106 pfu/cm3腫瘍(=2×105 pfu/50 mm3)である。類似した注射比率が、ヒト腫瘍において有効であると期待され;したがって、臨床試験における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス用量濃度は、腫瘍において最小生物学的活性濃度を達成する、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲート濃度(6.7×106 pfu/mL=2×105 pfu/30μL)に類似した目標である。結果的に、このFIH試験の初期用量濃度は、1×107 pfu/mLであると推定され、腫瘍中に注射される、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス用量の体積は、およそ0.2~0.8の注射比率の目標範囲を達成するように、腫瘍サイズ(最長寸法によって分類)に従って異なる。
【0444】
開始用量はまた、反復用量の非臨床毒性学試験の結果に従って評価した。4週間の静脈内投薬(週に1回;合計4用量)後の無毒性量(NOAEL)は、マウスにおいて8.5×108 pfu/kg、およびサルにおいて3.4×108 pfu/kgであると推定された。加えて、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス-サロゲートのマウスへの腫瘍内注射後のNOAELは、腫瘍あたり2×107 pfuであると推定された(投与可能な最大用量[MFD])。hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、腫瘍細胞において選択的に複製するように操作された腫瘍溶解性ワクシニアウイルスであり、非臨床生体内分布試験の結果は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが、腫瘍内投与後に腫瘍細胞において選択的に複製することを支持する。安全性に対する影響は、静脈内投与の毒性学試験の結果を利用することによって、全身ベースの暴露で控えめに推定された。1×107 pfu/mLの開始用量(提案されたFIH試験における用量レベル1)は、およそ1.0×106 pfu/kgであると推定される(60 kgのヒトあたり最大で6 mLの体積で、1×107 pfu/mLが投与される)。したがって、安全マージンは、最も感受性の種(カニクイザル)におけるNOAELと比較して、340倍(3.4×108/1.0×106)よりも大きい。最高計画用量(用量レベル3)は、5×108 pfu/mL(MFD)であり、これは、およそ5.0×107 pfu/kgである(60kgのヒトあたり最大で6 mLの体積で、5.0×107 pfu/mLが投与される)。したがって、最高計画用量は、カニクイザルにおけるNOAELよりも6.8倍少ない(3.4×108/5.0×107)。開始用量から10倍の増分を有する1×108 pfu/mLの中間用量レベル(用量レベル2)が、計画されている。
【0445】
非臨床薬理学試験において、単一用量と比較して優れた抗腫瘍効果が、2週間間隔での反復用量を介して実証されたため、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、FIH試験において腫瘍内注射を介して、2つの28日サイクルで2週間ごとに与えられることになる。いかなる個々の処置中止基準も満たしておらず、かつ臨床的恩恵を受けている患者は、治験責任医師によって決定されるような延長処置期間(継続した28日サイクル)を継続してもよい。
【0446】
ウイルス排出
この試験においては、ウイルス排出をモニターするために、尿および唾液を、すべての患者から収集することになる。加えて、皮膚または皮下のアクセス可能な腫瘍を有する患者(群A)については、皮膚の排出解析を行うことになる。
【0447】
ウイルス排出は、陽性試料の追跡ウイルス感染力評価を伴う、検証された定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法によるウイルスDNAの検出を介して、モニターすることになる。サイクル1および2において、尿、唾液、および皮膚(群Aのみ)の試料を、投薬前に収集し、投薬の3時間、6時間、および24時間後、投薬後4日目および8日目の任意の時間に、緻密なモニタリングを行うことになる。ウイルスの完全な除去を保証するための追跡モニタリングの一部として、まばらな試料採取を、最後の投薬サイクル後(処置の終わり[EOT])ならびにEOTの2、6、および10週間後に行うことになる。
【0448】
患者集団の特徴
治癒の意図での外科的または医学的処置に不適格であり、かつ利用可能な標準治療時に進行しているか、またはそれに不適格である、進行性または転移性の固形腫瘍を有する患者が登録される。患者は、測定可能な疾患(固形癌効果判定基準[RECIST])および0または1のECOGパフォーマンスステータスを有さなければならない。炎症性皮膚状態または重度の湿疹、炎症性腸疾患、憩室炎(憩室症を除く)、セリアック病、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス症候群、ウェゲナー症候群、グレーブス病、関節リウマチ、下垂体炎、ブドウ膜炎などを含む、全身療法を必要とする活動性または以前の自己免疫障害または炎症性障害を、過去2年以内に有する患者は除外されることになる。
【0449】
急性または慢性の感染を示す、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア免疫グロブリンMもしくは免疫グロブリンG抗体、またはC型肝炎の、既知の病歴を有する患者は、除外される。これらの患者の免疫系における変化は、免疫細胞集団に対する試験処置の効果の特徴決定に影響を及ぼす可能性がある。治験依頼者は、この試験における新生データに基づいて、この除外基準を除去するかどうかを評価することになる。
【0450】
漸増コホートには、腫瘍内注射がアクセス可能な皮膚または皮下腫瘍を有する患者(群A)、および超音波またはCTガイダンスを伴う腫瘍内注射がアクセス可能な内臓病変を有する患者(群B)が含まれることになる。内視鏡的にアクセス可能な病変が、考慮されてもよい。群A(皮膚/皮下)拡大コホートには、以下の腫瘍特異的なコホートが含まれることになる:頭頸部の扁平上皮癌、皮膚科学的、尿生殖器/婦人科、胃腸、および他の皮膚/皮下のアクセス可能な固形腫瘍。
【0451】
試験デザイン
この第I相試験は、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの安全性、耐容性、および薬物動態プロファイル、ならびにウイルス排出を評価し、進行性または転移性の固形腫瘍を有する患者におけるMTDおよび/またはRP2Dを決定することになる。加えて、試験は、注射された/注射されていない腫瘍のサイズの変化パーセント、注射された腫瘍/注射されていない腫瘍のORR、PFS、TTP、DOR、およびOSによって抗腫瘍活性を評価することになる。疾患の応答および進行は、RECIST 1.1および免疫修飾RECIST(imRECIST)基準[Hodi et al, 2018]に従って、治験責任医師によって評価されることになる。imRECISTは、免疫に関連したRECISTの改作版であり、新しい病変の出現を含む、初期の明らかなX線撮影による進行が先行し得る、潜在的な遅延応答を説明する。
【0452】
この試験において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスは、単剤療法として投与されることになる;しかし、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスを単剤として、および/または別の抗がん剤(例えば、PD-1/PD-L1阻害剤)と組み合わせてさらに評価するために、プロトコルの修正によって、追加のコホートが加えられてもよい。漸増段階における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの開始濃度は、1×107 pfu/mLである。腫瘍あたりの、注射される、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの体積は、個々の病変内での一貫した薬物曝露を確実にするために、各標的腫瘍のサイズに従って計算される。病変は、治験責任医師によって注射のために選択される。プロトコルで指定されたサイズ範囲内の最大のおよび/または最も症候性の病変が、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの注射のための選択について優先されるべきである。病変の選択は、サイクル1および2の最中には変化し得ない。同じ腫瘍が、サイクル1および2における各時点で注射されることになる。患者は、それぞれ、サイクル1および2の1日目またはその前に、ベースラインおよびオントリートメント生検を受けることになる。
【0453】
統計的考察
この試験は、およそ105人の患者を登録することになる。用量漸増段階においては、およそ21~30人の患者が登録されることになる。サンプルサイズは、統計的検出力計算に基づかない。登録される患者の数は、DLTの発生率に依存することになる。想定される患者の数は、試験の用量漸増および安全性の目的について妥当な情報を提供するべきである。
【0454】
用量漸増段階において、最初に60人の患者が、6つの腫瘍特異的な拡大コホート(コホートあたり10人の患者)に登録されることになる。注射された腫瘍における真のORRが20%であると仮定すると、10人の患者において少なくとも1人のレスポンダーを観察する予測確率は、およそ89%であるだろう。拡大コホートにおける患者の総数は、観察された抗腫瘍活性およびバイオマーカー免疫応答に依存することになる。
【0455】
拡大コホートは、すべての腫瘍にわたる(すなわち、注射された腫瘍に限定されない)ORRをより良好に評価するために、サイズが患者25人に増加してもよい。真のORRが少なくとも20%であると仮定すると、25人の患者において少なくとも5人のレスポンダーを観察する予測確率は、58%であるだろう。25人の患者のサンプルにおける割合の頻度論的推定について、20%の観察された奏効率に対する90%の両側信頼区間は、(7%, 33%)の限界を有するだろう。
【0456】
実施例25. hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの第I相非盲検単剤療法試験
治癒の意図での外科的または医学的処置に不適格であり、かつ利用可能な標準治療時に進行しているか、またはそれに不適格である、進行性または転移性の固形腫瘍を有する日本人患者における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの第1相非盲検単剤療法試験を実施する。
【0457】
試験には、超音波またはCTガイダンスを伴う腫瘍内注射によってアクセス可能な内臓病変を有する患者が含まれる。
●群V1:原発性または転移性の肝臓における腫瘍
●群V2:原発性または転移性の胃腫瘍
【0458】
試験には、用量漸増段階および用量拡大段階が含まれる。計画される登録は、用量漸増段階において最大で18人の患者(群V1)、ならびに用量拡大段階においておよそ30人の患者(群V1において20人および群V2において10人)である。まだ決定されていない追加の腫瘍タイプを評価するために、追加の10人の患者(群V3)が、用量拡大段階において加えられてもよい。
【0459】
すべての患者について、試験は、以下の期間からなることになる:スクリーニング(最大で28日)、初期処置期間(2つの28日サイクル)、任意の延長処置期間(継続した28日サイクル)、および追跡期間(安全性および生存の追跡)。
【0460】
患者は、初期処置期間において、2つの28日サイクルの各々の1日目および15日目に、同じ腫瘍中への腫瘍内注射を介して、割り当てられた用量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス単剤療法を受けることになる。サイクル2に続いて、いかなる個々の処置中止基準も満たしておらず、かつ臨床的恩恵を受けている患者は、治験責任医師によって決定されるような延長処置期間を継続してもよい。延長処置期間中に、患者は、処置中止基準が満たされるまで、各サイクルの1日目および15日目に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの腫瘍内投与を受けることになる。延長処置期間に、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの腫瘍内投与のために以前に選択されなかった腫瘍が処置されてもよい(生検のために以前に選択されたものを含む)。
【0461】
用量漸増段階は、日本人患者における、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの安全性および耐容性、ならびにMTD/RP2Dを評価することになる。用量漸増段階からの安全性の結果が出るまで、用量拡大コホートは、用量漸増段階における最後の患者がDLT評価期間を完了した少なくとも4週間後に、登録を開始することになる。
【0462】
主要目的、副次的目的、および探索的目的は、実施例24に記載される米国におけるFIH試験のものと同様である。
【0463】
実施例26. hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの第I相非盲検試験
hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの第1相非盲検試験(安全性導入段階、それに続くチェックポイント阻害剤[CPI]との、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルス併用療法)を、進行性または転移性の固形腫瘍を有する中国人患者において実施する。
【0464】
試験には、治癒的処置に不適格であり、かつ利用可能な標準治療時に進行しているか、またはそれに不適格である、進行性または転移性の固形腫瘍を有する患者が含まれることになる。
●群A:頭頚部扁平上皮癌、鼻咽頭がん、肉腫、尿生殖器/婦人科がん、または他の皮膚/皮下のアクセス可能な固形腫瘍を有する患者を含む、腫瘍内注射によってアクセス可能な皮膚または皮下腫瘍。
●群B:超音波またはCTガイダンスを伴う腫瘍内注射によってアクセス可能な肝転移(任意の原発性腫瘍タイプ)。
【0465】
試験には、安全性導入段階およびRP2D拡大段階が含まれる。計画される登録は、およそ、安全性導入段階において24人の患者、およびRP2D拡大段階において70人の患者である。
【0466】
この試験のすべてのパートにおいて、試験期間は、スクリーニング(最大で28日)、処置(2つの28日サイクル)、安全性追跡(最後の用量後16週間)、および生存追跡(死亡、同意の撤回、または試験終了までの少なくとも12週間)からなることになる。
【0467】
すべての患者は、腫瘍内注射によって、合計で4用量の、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスが投与されることになる(試験の1、15、29、および43日目)。加えて、患者の併用コホートは、現地製品ラベルに従って、サイクル1の1日目に開始して継続する、静脈内注入を介したCPI療法を受けることになる。
【0468】
主要目的は、中国人患者において、hIL12およびhIL7を保有するワクシニアウイルスの、単剤療法としておよびCPI療法との組み合わせでの、安全性および耐容性を評価すること、ならびにRP2Dを決定することである。副次的目的および探索的目的は、実施例24に記載される米国におけるFIH試験のものと同様である。
【配列表】
【国際調査報告】