(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】銀ナノ粒子を含む固定色を有する水性ゲルインクの調製のプロセス
(51)【国際特許分類】
C09D 11/00 20140101AFI20221104BHJP
C09C 3/00 20060101ALI20221104BHJP
C09D 11/16 20140101ALI20221104BHJP
【FI】
C09D11/00
C09C3/00
C09D11/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502287
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2020074154
(87)【国際公開番号】W WO2021038085
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(71)【出願人】
【識別番号】521172561
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ デ オート アルサス
(71)【出願人】
【識別番号】521174152
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ ルシェルシュ サイエンティフィーク(シー.エヌ.アール.エス.)
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルベンジ,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】メティロン,ロメイン
(72)【発明者】
【氏名】ムギン,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラル,フェリエル
(72)【発明者】
【氏名】スパンゲンベルグ,アルノー
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA04
4J037CC11
4J037DD05
4J039BA06
4J039BE16
4J039BE19
4J039BE23
4J039EA14
4J039GA26
4J039GA27
(57)【要約】
本発明は、(i)水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するステップと、(ii)銀塩を:-水、-少なくともクエン酸塩のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩の混合物、-酸化剤、好ましくは過酸化水素H2O2、-およびポリビニルピロリドンと混合することにより、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するステップと、(iii)ステップ(ii)において取得された銀ナノ粒子の水性懸濁液を、ステップ(i)において取得された水性インクのゲルベースのマトリックスに撹拌しながら添加して、内部に銀ナノ粒子が分散された状態の固定色を有する水性ゲルインクを取得するステップと、を含む、固定色を有する水性ゲルインクを調製するためのプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定色を有する水性ゲルインクを調製するためのプロセスであって、
(i)水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するステップと、
(ii)銀塩を:
-水、
-クエン酸塩の少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアルカリクエン酸塩、より好ましくはクエン酸ナトリウムと、アルカリ金属水素化物、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムNaBH
4と、の混合物、
-酸化剤、好ましくは過酸化水素H
2O
2、
-およびポリビニルピロリドン、と混合することにより、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するステップと、
(iii)ステップ(ii)において取得された前記銀ナノ粒子の水性懸濁液を、ステップ(i)において取得された前記水性インクのゲルベースのマトリックスに撹拌しながら添加して、内部に銀ナノ粒子が分散された状態の固定色を有する水性ゲルインクを取得するステップと、を含むプロセス。
【請求項2】
ステップ(ii)において添加された前記クエン酸塩の量が、前記水性懸濁液の総重量に基づいて、0.001~0.08重量%の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(ii)において添加された銀塩の総量が、前記水性懸濁液の総重量に基づいて、0.0005~0.006重量%の範囲である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(ii)において添加されたアルカリ金属水素化物の量が、前記水性懸濁液の総重量に基づいて、0.0005~0.005重量%の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(ii)において添加された酸化剤の量が、前記水性懸濁液の総重量に基づいて、0.03~0.1重量%の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(ii)において添加されたポリビニルピロリドンの量が、前記水性懸濁液の総重量に基づいて、0.05~0.1重量%の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(ii)において取得された前記銀ナノ粒子が、球形状を有する銀ナノ粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
銀ナノ粒子およびポリビニルピロリドンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスによって取得可能な固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液。
【請求項9】
銀ナノ粒子およびポリビニルピロリドンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスによって取得可能な固定色を有する水性ゲルインク。
【請求項10】
アルカリ金属塩をさらに含み、具体的には、アルカリ金属塩の量が、前記水性ゲルインクまたは前記水性懸濁液の総重量に基づいて、少なくとも0.0003重量%、特に0.0003~0.01重量%の範囲である、請求項9に記載の水性ゲルインクまたは請求項8に記載の水性懸濁液。
【請求項11】
前記銀ナノ粒子が、1~100nm、具体的には、10~50nmの範囲の平均粒子サイズを有する、請求項9もしくは10に記載の水性ゲルインクまたは請求項8もしくは10に記載の水性懸濁液。
【請求項12】
銀ナノ粒子の量が、前記水性ゲルインクまたは前記水性懸濁液の総重量に対して、0.0005~5重量%、具体的には0.0005~3重量%、より具体的には0.0005~0.005重量%の範囲である、請求項9~11のいずれか一項に記載の水性ゲルインクまたは請求項8もしくは10~11のいずれか一項に記載の水性懸濁液。
【請求項13】
水の量が、前記水性ゲルインクまたは前記水性懸濁液の総重量に対して、50~95重量%の範囲である、請求項9~12のいずれか一項に記載の水性ゲルインクまたは請求項8もしくは10~12のいずれか一項に記載の水性懸濁液。
【請求項14】
-具体的には、前記水性ゲルインクの総重量に対して、5~35重量%の範囲の量の助溶剤、および/または
-具体的には、前記水性ゲルインクの総重量に対して、0.01~0.5重量%の範囲の量の抗菌剤、および/または
-具体的には、前記水性ゲルインクの総重量に対して、0.05~1重量%の範囲の量の腐食防止剤、および/または
-具体的には、前記水性ゲルインクの総重量に対して、0.05~1重量%の範囲の量の消泡剤、および/または
-具体的には、前記水性ゲルインクの総重量に対して、0.08~2重量%の範囲の量のレオロジー改質剤をさらに含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項15】
筆記具であって、
-請求項9~14のいずれか一項に記載の固定色を有する水性ゲルインクを含有する軸方向バレルと、
-前記軸方向バレル内に貯蔵された請求項9~14のいずれか一項に記載の水性ゲルインクを送出するペン本体と、を含み、
より具体的には、前記筆記具が、ゲルペン、フェルトペン、修正液、マーカ、および具体的にはゲルペンからなる群から選択される、筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定色を有する水性ゲルインクを調製するためのプロセス、ならびに本発明のプロセスに従って取得可能なポリビニルピロリドンによって安定化された銀ナノ粒子を含み、いかなる染料および顔料も含まない固定色を有する水性ゲルインクに関する。本発明はまた、本発明による固定色を有する水性ゲルインクを含む筆記具に関する。
【0002】
本発明の主な目的のうちの1つは、高価であり、かつ高い製造コストを引き起こすという欠点を有する、水性ゲルインク中に通常存在するすべてのタイプの染料および顔料を置き換えることである。
【0003】
本発明の別の目的は、例えば、皮膚および眼などの生体膜を刺激し、アレルギーを引き起こす可能性があるという欠点を有する、水性ゲルインク中に通常存在するすべてのタイプの染料および顔料を置き換えることである。
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、ナノ粒子ベースを含有する新しい水性インクはまた、UV光に耐性があり、それにより、経時的な光安定性を改善することを見出した。
【0005】
さらに、銀ナノ粒子は、抗菌性を有し、したがって、他の抗菌剤の量が低下され得る。
【0006】
この目的のために、本発明者らは、染料および顔料を含有する従来の水性ゲルインクを、ナノ粒子ベースの新しいものと置き換えることにより、筆記時に固定色を有する新しい水性インクを取得することが可能である具体的なプロセスを開発した。本発明の枠組み内で開発されたプロセスはまた、水性媒体中で実施されるという利点を示し、したがって「環境に優しいプロセス」である。さらに、本発明のプロセスは、低温範囲で実施され、生態学的に実行可能な方法で機能し、また生態学的要件も考慮に入れる。
【0007】
本発明は、固定色を有する水性ゲルインクを調製するためのプロセスに関し、
(i)水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するステップと、
(ii)銀塩を:
-水、
-クエン酸塩の少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアルカリクエン酸塩と、アルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4と、の混合物、
-酸化剤、好ましくは過酸化水素H2O2、
-およびポリビニルピロリドン、と混合することにより、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するステップと、
(iii)ステップ(ii)において取得された銀ナノ粒子の水性懸濁液を、ステップ(i)において取得された水性インクのゲルベースのマトリックスに撹拌しながら添加して、内部に銀ナノ粒子が分散された状態の固定色を有する水性ゲルインクを取得するステップと、を含む。
【0008】
本発明はまた、ステップ(i)における水性インクのマトリックスを調製する、水性インクを調製するためのプロセスに関する。本発明はまた、かかるプロセスを通じて取得可能な水性インクに関する。水性ゲルインクの調製のプロセスおよびこのプロセスを通じて取得することができる水性ゲルインクに関して以下に記載される様々な実施形態は、水性インクの調製のプロセス、ならびにこうして取得された水性インク、特に、成分の性質および/または含有量に関しても同様に考慮することができる。水性インク、その調製のプロセス、および水性インクのマトリックスに関するこれらの実施形態もまた、本発明の一部である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、固定色を有する水性ゲルインクを調製するためのプロセスは、
(i)水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するステップと、
(ii)銀塩を:
-水、
-少なくともクエン酸ナトリウムと、水素化ホウ素ナトリウムNaBH4と、の混合物、
-過酸化水素H2O2、
-およびポリビニルピロリドン、と混合することにより、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するステップと、
(iii)ステップ(ii)において取得された銀ナノ粒子の水性懸濁液を、ステップ(i)において取得された水性インクのゲルベースのマトリックスに撹拌しながら添加して、内部に銀ナノ粒子が分散された状態の固定色を有する水性ゲルインクを取得するステップと、を含む。
【0010】
本発明によるプロセスは、プラズモン効果(プラズモニック効果とも呼ばれる)を呈する、水性インク組成物を取得することが可能である。したがって、異なるプラズモニック色の組成物が、使用される成分の含有量に応じて取得され得る。
【0011】
本発明の目的のために、「インク」という用語は、筆記具、特にペンで使用されることを意図された「筆記用インク」を意味することを意図している。筆記用インクは、印刷機で使用され、同じ技術的制約、したがって同じ仕様を有しない「印刷用インク」と混同してはならない。実際、筆記用インクは、筆記具のチャネルよりも大きいサイズの固体粒子を含んではならず、これは、必然的に不可逆的に筆記が停止されることになる、筆記具の詰まりを回避するためである。加えて、使用される筆記具に好適なインク流量、特に100~500mg/200mの筆記流量、具体的には、150~400mg/200mの筆記流量を可能にしなければならない。また、筆記媒体を汚すことを回避するために、十分に急速に乾く必要がある。また、経時的な移染(出液)の問題を回避する必要がある。したがって、本発明によるインクは、それが意図される筆記具、特にペンに好適であろう。
【0012】
さらに、「筆記用インク」は、筆記中の漏出を回避するために、流動性が高すぎてはならない。しかしながら、筆記動作の流れを容易にするために、十分に流動的である必要がある。
【0013】
本発明の特定の場合では、筆記用インクは、より具体的に「ゲルインク」(したがってチキソトロピー性インクに相当する)であり得、特に20℃で、静止状態(0.01s-1のせん断速度)で測定された粘度は、例えば、60mmの円錐および1°の角度を有するMalvern KINEXUSなどのコーンプレート型レオメータなどの同じレオメータを使用して、20℃で100s-1のせん断速度で測定された粘度とは異なり、特により高くなる。特定の実施形態では、これらの条件下で測定されたゲルインクの粘度は、1s-1のせん断速度で、1,000~7,000mPa.s、具体的には2,000~5,000mPa.s、より具体的には2,500~3,500mPa.s、および5,000s-1のせん断速度で、具体的には5~50mPa.s、より具体的には7~40mPa.s、さらにより具体的には10~20mPa.sの範囲である。具体的には、かかる粘度は、40℃および20%の相対湿度で少なくとも3ヶ月の貯蔵中安定しており、特に、粘度は、50%超の減少を有することはない。より具体的には、筆記後数分での静的漏出を回避するために、せん断後の静止状態における粘度への復帰は、非常に迅速であり、具体的には、最大で数分である。
【0014】
本発明の意味において、「固定色」という用語は、目視観察による水性ゲルインクの色が、具体的には紙、段ボールまたは織物の吸収性支持体上への塗布前、および吸収性支持体上への塗布後と、7暦日(1週間)以内同じであることを意味することを意図する。
【0015】
特にいくつかの成分の含有量、特に水性インクの調製のプロセス中に添加された水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、クエン酸ナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドンの含有量に応じて、組成物の色は、プラズモニック効果に起因して変化し、特に、組成物の色は、銀ナノ粒子による光吸収およびインク組成物への銀ナノ粒の間の空間に応じて変化することができる。
【0016】
実際、プラズモニック色は、銀ナノ粒子による光吸収および/または材料中の銀ナノ粒子の間の間隔に起因する。
【0017】
それらのサイズ、形状、および距離に応じて、ナノ粒子の分散体の色、ならびにその特性は変化する可能性がある。これはプラズモン共鳴によるものである。銀ナノ粒子を特定の周波数の波にさらすと、電子が特定の場所に集まり、銀ナノ粒子のサイズおよび形状に応じて変化する。この電子の凝集は、ナノ粒子の異方性を引き起こし、それが次いで光の吸収と散乱の変化につながり、特定の色をもたらす。プラズモン共鳴はまた、該銀ナノ粒子の結合に起因する銀ナノ粒子間の距離により影響を受ける。実際、銀ナノ粒子が近ければ近いほど、さらにそれらは互いに相互作用し、プラズモン効果とも呼ばれる、それらの結合効果を増加させる。同様に、形状はプラズモン共鳴に影響を与える。特に、かかるプラズモニック効果は、UV(紫外線)-可視-NIR(近赤外)吸収分光法によって特徴付けることができる。
【0018】
本発明はまた、本発明のプロセスによって取得可能な固定色を有する水性インクに関し、該水性インクは、銀ナノ粒子およびポリビニルピロリドンを含む。
【0019】
本発明では、ステップ(i)において調製された水性インクのゲルベースのマトリックスは、50~95重量%、具体的には60~90重量%、より具体的には70~85重量%の水を含み得る。
【0020】
ステップ(i)において調製された水性インクのゲルベースのマトリックスはまた、助溶剤、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、レオロジー改質剤などの古典的なゲルインク原料を含み得る。ステップ(i)の水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するために使用されるゲルインク原料は、本発明の固定色を有する水性ゲルインクの主題に関連して、以下に大部分説明される。
【0021】
水性インクのゲルベースのマトリックスは、その原料の単純な混合によるなど、当業者によく既知の方法によって調製される。
【0022】
具体的な実施形態では、水性インクのゲルベースのマトリックスは、着色剤を含有しない。したがって、いかなる染料または顔料も含有しない。この場合、水性インクのゲルベースのマトリックスは、透明である。
【0023】
別の具体的な実施形態では、水性インクのゲルベースのマトリックスは、いかなる還元剤またはいかなる酸化剤も含有しない。
【0024】
本発明では、銀塩は、具体的には、AgNO3、AgClO4、Ag2SO4、AgCl、AgBr、AgOH、Ag2O、AgBF4、AgIO3、AgPF6およびそれらの混合物などの銀(I)塩であり、より具体的には、硝酸銀AgNO3である。特に、銀塩は、硝酸銀の水溶液の形態である。
【0025】
具体的な実施形態では、ステップ(ii)において添加される銀塩の総量は、水性懸濁液の総重量に基づいて、0.0005~0.006重量%、具体的には0.001~0.005重量%の範囲である。
【0026】
銀ナノ粒子は、銀塩を還元剤および酸化剤と接触させるときに形成される。
【0027】
本発明では、クエン酸塩の少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアルカリクエン酸塩と、アルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4との混合物が、ステップ(ii)の色に関与する。
【0028】
本発明では、クエン酸塩のアルカリ金属は、クエン酸リチウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ルビジウム、クエン酸セシウム、およびクエン酸フランシウム、好ましくはクエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム、より好ましくはクエン酸ナトリウムから選択される。
【0029】
本発明の具体的な実施形態では、クエン酸塩のアルカリ金属塩は、クエン酸ナトリウムである。
【0030】
本発明では、クエン酸塩のアルカリ土類金属塩は、クエン酸ベリリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸ストロンチウム、クエン酸バリウム、およびクエン酸ラジウム、好ましくはクエン酸マグネシウム、またはクエン酸カルシウム、より好ましくはクエン酸カルシウムから選択される。
【0031】
本発明の具体的な実施形態では、アルカリ土類金属塩は、クエン酸カルシウムである。
【0032】
本発明では、アルカリ金属水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(NaHB(OAc)3)、水素化トリ-sec-ブチルホウ素ナトリウム、水素化トリ-sec-ブチルホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ-sec-ブチルホウ素リチウム、水素化ホウ素ニッケル、アルミン酸水素化リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシアルミニウムナトリウムの中から選択される。
【0033】
本発明の具体的な実施形態では、アルカリ金属水素化物は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、クエン酸ナトリウムと、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)と、の混合物は、着色ステップ(ii)に関与している。
【0035】
特に、アルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4の比率は、組成物、より具体的には、異なる量のアルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4において特定の色を取得することを可能にする。特に、これは、組成物によって呈されるプラズモニック効果に起因する。例えば、色は、アルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4の量が多いほど、赤からピンク、紫、青に変化することができる。
【0036】
具体的な実施形態では、ステップ(ii)において添加される該クエン酸塩の量は、水性懸濁液の総重量に基づいて、0.001~0.08重量%、具体的には0.002~0.005重量%の範囲である。
【0037】
具体的な実施形態では、ステップ(ii)において添加されるアルカリ金属水素化物の量は、水性懸濁液の総重量に基づいて、0.0005~0.005重量%、具体的には0.0006~0.003重量%の範囲である。
【0038】
銀イオンの還元からのコロイド溶液の形成のメカニズムは、核形成および成長の2つのステップからなる。核形成ステップは、高い活性化エネルギーを必要とし、一方で成長ステップは、低い活性化エネルギーを必要とする。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するためのプロセス(ii)は、例えば、該アルカリ金属水素化物を添加するとき、追加の加熱ステップを含む。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するためのプロセス(ii)は、
-最初に銀塩を水、および少なくともクエン酸塩のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアルカリクエン酸塩とNaBH4などのアルカリ金属水素化物との混合物、および酸化剤、好ましくは過酸化水素H2O2、およびポリビニルピロリドンを混合するステップ(ステップ:核形成)と、
-任意選択的な加熱ステップと、
-前の組成物を銀塩およびアルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4と混合するステップ(ステップ:成長)と、を含む。
【0041】
具体的な実施形態では、銀塩と、少なくともクエン酸塩のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアルカリクエン酸塩とアルカリ金属水素化物NaBH4との混合物との間のモル比は、0.02:1~0.10:1、好ましくは0.03:1~0.06:1の範囲である。
【0042】
本発明によれば、酸化剤は、C1-C8アルキルペルオキシ酸、例えば、過酢酸、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルネオデカノエート、tert-ブチルペルネオデカノエート、tert-ブチルペルピバレート、tert-アミルペルピバレート、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジコハク酸ペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、ビス(4-クロロベンゾイル)-ペルオキシド、tert-ブチルペリソブチレート、tert-ブチルパーマレイネート、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペリソノナオエート、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジベンゾエート、tert-ブチルペルアセテート、tert-アミルペルベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2ビス(tert-ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、3-tert-ブチルペルオキシ3-フェニルフタリド、ジ-tert-アミルペルオキシド、α,α’-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,5-ジメチル1,2-ジオキソラン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキシン-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシド、および3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、過酸化水素H2O2、およびそれらの混合物の中から選択される。
【0043】
過酸化水素(H2O2)は、その分解が最終的に水および酸素の形成につながるという点で、「グリーン」試薬と見なされ得る。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、酸化剤は、過酸化水素H2O2である。
【0045】
具体的な実施形態では、ステップ(ii)において添加される酸化剤の量は、水性懸濁液の総重量に基づいて、0.03~0.1重量%、具体的には0.04~0.08重量%の範囲である。
【0046】
ステップ(ii)の水性懸濁液はまた、ポリビニルピロリドンを含有する。実際、懸濁液中の銀ナノ粒子を安定化させ、したがって、いかなる凝集も回避する。
【0047】
具体的な実施形態では、ステップ(ii)において添加されるポリビニルピロリドンの量は、水性懸濁液の総重量に基づいて、0.05~0.1重量%、具体的には0.07~0.09重量%の範囲である。
【0048】
ステップ(ii)において取得された銀ナノ粒子の水性懸濁液は、固定色を有する。その色は、アルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4の割合に依存する。例えば、色は、アルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4の量が多いほど、赤からピンク、紫、青に変化することができる。
【0049】
具体的な実施形態では、ステップ(ii)において取得された銀ナノ粒子は、球の形状を有する。
【0050】
具体的には、本発明の銀ナノ粒子は、1~100nm、より具体的には10~50nmの範囲の平均粒子サイズを有する。この平均粒径は、規格ISO9001:2015に従って、2D画像(顕微鏡:JEOL ARM 200)の分析によって測定される。
【0051】
一態様では、本発明はまた、ステップ(ii)に従って固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するためのプロセス、およびステップ(ii)に従って取得可能な水性懸濁液に関する。
【0052】
本発明はまた、本発明のプロセスによって取得可能な固定色を有する水性ゲルインクに関し、該水性ゲルインクは、銀ナノ粒子およびポリビニルピロリドンを含み、特に、該水性インクは、ポリビニルピロリドンによって安定化された銀ナノ粒子を含む。
【0053】
特に、本発明による組成物は、プラズモニック効果を呈する。
【0054】
具体的な実施形態では、ポリビニルピロリドンの量は、本発明のプロセスによって取得可能な固定色を有する水性ゲルインクの総重量に基づいて、0.05~0.1重量%、具体的には0.05~0.08重量%の範囲である。
【0055】
本発明の固定色を有する水性ゲルインクでは、銀ナノ粒子は、具体的には、球の形状を有する。
【0056】
本発明の固定色を有する水性ゲルインクでは、本発明の銀ナノ粒子は、具体的には1~100nm、およびより具体的には10~50nmの範囲の平均粒子サイズを有する。この平均粒径は、規格ISO9001:2015に従って、2D画像(顕微鏡:JEOL ARM 200)の分析によって測定される。
【0057】
好ましい実施形態によれば、本発明の水性ゲルインク内の銀ナノ粒子間の距離は、100nmよりも低く、具体的には10~50nmで変化し、より具体的には15~30nmで変化する。
【0058】
本発明の水性ゲルインクの固定色は、ステップ(ii)において取得された銀ナノ粒子の水性懸濁液の固定色と同じである。したがって、具体的には、銀ナノ粒子は、本発明の水性ゲルインクの唯一の着色剤である。この場合、本発明による水性ゲルインクは、銀ナノ粒子以外のいかなる他の着色剤も含有しない。
【0059】
本発明の固定色を有する水性インク、より具体的には、水性ゲルインクでは、銀ナノ粒子の量は、具体的には、水性インクの総重量に対して、0.0005~5重量%、より具体的には0.0007~3重量%の範囲である。
【0060】
本発明の固定色を有する水性ゲルインクでは、銀ナノ粒子の量は、具体的には、水性ゲルインクの総重量に対して、0.0005~0.005重量%、より具体的には0.0007~0.002重量%の範囲である。
【0061】
本発明の固定色を有する水性ゲルインクでは、水の量は、具体的には、水性ゲルインクの総重量に対して、50~95重量%、より具体的には60~90重量%、さらにより具体的には70~85重量%の範囲である。
【0062】
本開示の固定色を有する水性インクおよびステップ(ii)において取得可能な水性懸濁液は、特にアルカリ金属塩、より具体的にはナトリウム塩を含む。実際、この組成物は、少なくともアルカリ金属水素化物を使用し、クエン酸塩のアルカリ金属塩を使用することもできる上記のプロセスによって取得されるものとする。上記のプロセスがクエン酸塩のアルカリ土類金属塩を使用するとき、得られる水性インク組成物およびステップ(ii)において取得可能な水性懸濁液は、アルカリ金属塩に加えてアルカリ土類金属塩を含む。
【0063】
特に、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩の量は、水性インクの総重量に基づいて、および/または水性懸濁液の総重量に基づいて、少なくとも0.0003重量%であり、特に、0.0003~0.01重量%の範囲である。
【0064】
特に、存在するとき、アルカリ土類金属の量は、水性インクの総重量に基づいて、および/または水性懸濁液の総重量に基づいて、少なくとも0.00009重量%であり、より具体的には、0.00009重量%~0.007重量%の範囲である。
【0065】
本発明の固定色を有する水性ゲルインクはまた、以下に記載されるように、助溶剤、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、レオロジー改質剤などの古典的なゲルインク原料を含み得る。これらのゲルインク成分は、本発明のプロセスのステップ(i)において、水性インクのゲルベースのマトリックスに添加される。
【0066】
本発明の水性ゲルインクは、助溶剤を含み得る。使用することができる助溶剤の中で、以下の
-トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレン-グリコール-モノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノールなどのグリコールエーテル、
-アルコール:イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのC1-C15の直鎖または分枝鎖アルコール、
-酢酸エチルまたは酢酸プロピルなどのエステル、
-炭酸プロピレンまたは炭酸エチレンなどの炭酸エステル、
-メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン、および
-それらの混合物などの水に混和性の極性溶剤が挙げられる。
【0067】
具体的な実施形態では、助溶剤は、グリコールエーテルからなる群から選択され、より具体的には、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレン-グリコール-モノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。さらに具体的な実施形態では、助溶剤は、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0068】
具体的には、助溶剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して、5~35重量%、より具体的には9~30重量%、さらにより具体的には11~25重量%の範囲の量で存在する。
【0069】
本発明の水性ゲルインクは、イソチアゾリノン(Thor製のACTICIDE(登録商標))などの、具体的には、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、およびそれらの混合物からなる群から選択される抗菌剤を含み得る。
【0070】
具体的には、抗菌剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して、0.01~0.5重量%、より具体的には0.1~0.2重量%の範囲の量で存在する。
【0071】
本発明の水性ゲルインクは、具体的には、トリトリアゾール、ベンゾトリアゾール、およびそれらの混合物からなる群から選択される腐食防止剤を含み得る。
【0072】
具体的には、腐食防止剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して、0.05~1重量%、より具体的には0.07~0.5重量%、さらにより好ましくは0.08~0.15重量%の範囲の量で存在する。
【0073】
本発明の水性ゲルインクは、消泡剤、具体的にはポリシロキサン系消泡剤、より好ましくは変性ポリシロキサンの水性エマルジョン(Synthron製のMOUSSEX(登録商標)、Evonik製のTEGO(登録商標)Foamexなど)を含み得る。
【0074】
具体的には、消泡剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して、0.05~1重量%、より具体的には0.1~0.5重量%、さらにより具体的には0.2~0.4重量%の範囲の量で存在する。
【0075】
本発明の水性ゲルインクは、特に、粘度がせん断速度の時間に依存するチキソトロピー現象を生成することが可能であり、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、およびそれらの混合物などの多糖類からなる群から選択される、ゲル化効果を生成することが可能なレオロジー改質剤を含み得る。
【0076】
具体的には、レオロジー改質剤は、水性ゲルインクの総重量に対して、0.08~2重量%、より具体的には0.2~0.8重量%、さらにより具体的には0.3~0.6重量%の範囲の量で存在する。
【0077】
本発明の固定色を有する水性ゲルインクはまた、
-水酸化ナトリウムおよびトリエタノールアミンなどのpH調整剤、
-潤滑剤、
-合体剤、
-架橋剤、
-湿潤剤、
-可塑剤、
-酸化防止剤、および
-UV安定剤などの他の添加剤を含み得る。
【0078】
存在する場合、これらの添加剤は、本発明のプロセスのステップ(i)において、水性インクのゲルベースのマトリックスに添加される。
【0079】
一態様では、本発明は、固定色を有する水性インクを調製するためのプロセスに関し、
(i)水性インクのマトリックスを調製するステップと、
(ii)銀塩を:
-水、
-少なくともクエン酸塩のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアルカリクエン酸塩とアルカリ金属水素化物、好ましくはNaBH4との混合物、
-酸化剤、好ましくは過酸化水素H2O2、
-およびポリビニルピロリドン、と混合することにより、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製するステップと、
(iii)ステップ(ii)において取得された銀ナノ粒子の水性懸濁液を、ステップ(i)において取得された水性インクのマトリックスに撹拌しながら添加して、内部に銀ナノ粒子が分散された固定色を有する水性インクを取得するステップと、を含む。
【0080】
一態様では、本発明は、本発明のプロセスによって取得可能な固定色を有する水性インクに関し、該水性インクは、銀ナノ粒子およびポリビニルピロリドン、特に、特に本開示において定義されるようにアルカリ金属塩(ナトリウム塩など)を含む。それはまた、アルカリ土類金属塩を含み得る。
【0081】
本発明の固定色を有する水性インクはまた、前述のように、助溶剤、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、レオロジー改質剤などの古典的なインク原料を含み得る。これらの原料は、本発明のプロセスのステップ(i)において、水性インクのマトリックスに添加される。
【0082】
一態様では、本発明は、吸収性支持体に書き込むための、上記で定義された、固定色の、水性インク、より具体的には水性ゲルインクの使用に関する。一実施形態では、吸収性支持体は、多孔質基材、具体的には、紙、段ボール、または織物である。
【0083】
本発明はまた、固定色の、水性インク、より具体的には水性ゲルインクで書き込む方法に関し、本発明による固定色を有する水性インクで、紙、段ボール、または織物などの多孔質基材を含む吸収性支持体上に書き込むステップを含む。
【0084】
本発明の固定色の、水性インク、より具体的には水性ゲルインクで吸収性支持体上に書き込んだ後、吸収性支持体上に塗布された水性インク、より具体的には水性ゲルインク内の銀ナノ粒子間の距離は、4μmより低く、具体的には50nm~3μmで変化し、より具体的には500~1μmで変化する。
【0085】
最後に、本発明は、筆記具に関し、この筆記具は、
-本発明による水性インク、より具体的には水性ゲルインクを含有する軸方向バレルと、
-軸方向バレル内に貯蔵された水性インクを送出するペン本体と、を含む。
【0086】
本発明の筆記具は、ゲルペン、フェルトペン、修正液、マーカ、および具体的にはゲルペンからなる群から選択され得る。
【0087】
本発明は、非限定的な方法で与えられる実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【0088】
実施例1:本発明のプロセスによる、固定色を有する水性ゲルインクの調製
水性インクのゲルベースのマトリックスを調製する(ステップ(i))
第1のステップ(i)において、水性インクのゲルベースのマトリックスを、15gのトリエチレングリコール(助溶剤)、4gのポリエチレングリコール(助溶剤)、0.19gのActicide(登録商標)MBS(抗菌剤)、および0.1gのAdditin(登録商標)RC8221(腐食防止剤)を混合することにより調製した。混合物をホモジナイザミキサで15m.s-1の速度で15分間均質化し、35℃の温度で加熱した。次いで、0.4gのキサンタンガム(レオロジー改質剤)を混合物に添加した。混合物をホモジナイザミキサで15m.s-1の速度で、35℃の温度において15分間均質化した。80.01gの脱イオン水を、混合物にゆっくりと添加した。混合物を2時間30分静置した。次いで、0.3gのMoussex(登録商標)S 9092(消泡剤)を添加した。混合物をホモジナイザミキサで15m.s-1の速度で、35℃の温度において30分間均質化した。取得された水性インクのゲルベースのマトリックスを室温(25℃)で冷却した。
【0089】
赤色の銀ナノ粒子の水性懸濁液を調製する(ステップ(ii))
第2のステップ(ii)において、固定色を有する銀ナノ粒子の水性懸濁液が、42.527mLの蒸留水、0.473mLの硝酸銀溶液(10mM)(9370.1 Cark Roth)、3.68mLのクエン酸三ナトリウム(30mM)(S1804-500G Sigma Aldrich)、3.68mLのポリビニルピロリドン2%(PVP40-100G Sigma Aldrich)、および120μLの過酸化水素0%(412071 Carlo Erba)、100μLの水素化ホウ素ナトリウムNaBH4(100mM)(71321-25G Fluka Analytical)を混合することにより、調製される。
【0090】
混合物をホモジナイザミキサで400rpmの速度で、15~30分間均質化した。
【0091】
次いで、840μLのAgNO3(10mM)を、ホモジナイザミキサで400rpmの速度で10分間、混合物に添加した。
【0092】
混合物を100℃で加熱し、次いで350μLのNaBH4(10mM)を添加した。
【0093】
NaBH4を混合物に添加するとき、得られる溶液は、即座に透明から着色に変化した。この色は、プラズモニック効果に起因する。
【0094】
予想した赤色が取得されるときに、混合を停止する。
【0095】
銀ナノ粒子の水性懸濁液の色は、還元剤NaBH4の比率に依存することに留意されたい。得られる組成物は、プラズモニック効果を呈し、これは、その色が、プラズモン効果に起因する、すなわちナノ粒子分散による光吸収に起因することを意味する。
【0096】
例えば:
上記の混合物における200μLのNaBH4の添加は、銀ナノ粒子のピンクの懸濁液を確実とする(試験1)。
上記の混合物における250μLのNaBH4の添加は、銀ナノ粒子の明るい紫の懸濁液を確実とする(試験2)。
上記の混合物における300μLのNaBH4の添加は、銀ナノ粒子の紫の懸濁液を確実とする(試験3)。
上記の混合物における600μLのNaBH4の添加は、銀ナノ粒子の青の懸濁液を確実とする(試験4)。
上記の混合物における970μLのNaBH4の添加は、銀ナノ粒子の赤の懸濁液を確実とする(試験5)。
【0097】
固定色を有する水性ゲルインクを調製する(ステップ(iii))
第3のステップ(iii)において、ステップ(ii)において取得された1mLの銀ナノ粒子の水性懸濁液を、ステップ(i)において取得された1mLの水性インクのゲルベースのマトリックスに添加して、内部で銀ナノ粒子が分散し、0.07%のポリビニルピロリドンによって安定化された状態の固定色(赤色)を有する水性ゲルインクを取得する。
【0098】
試験1:水性インクのゲルベースのマトリックスへの添加後、初期のピンクが、即座にピンクで現れる。
試験2:水性インクのゲルベースのマトリックスへの添加後、初期の明るい紫が、即座に明るい紫で現れる。
試験3:水性インクのゲルベースのマトリックスへの添加後、初期の紫が、即座に紫で現れる。
試験4:水性インクのゲルベースのマトリックスへの添加後、初期の青が、即座に青で現れる。
試験5:水性インクのゲルベースのマトリックスへの添加後、初期の青が、即座に赤で現れる。
【0099】
試験1:取得された固定色を有する水性ゲルインクをセルロース紙に書き込んだとき、色は、即座にピンクで現れ、結局変化しなかった。
試験2:取得された固定色を有する水性ゲルインクをセルロース紙に書き込んだとき、色は、即座に明るい紫で現れ、結局変化しなかった。
試験3:取得された固定色を有する水性ゲルインクをセルロース紙に書き込んだとき、色は、即座に紫で現れ、結局変化しなかった。
試験4:取得された固定色を有する水性ゲルインクをセルロース紙に書き込んだとき、色は、即座に青で現れ、結局変化しなかった。
試験5:取得された固定色を有する水性ゲルインクをセルロース紙に書き込んだとき、色は、即座に赤で現れ、結局変化しなかった。さらに、この水性ゲルインクの色の視覚的評価が、経時的に実現された(試験1、2、3、4、5)
【0100】
表1から見られ得るように、水性ゲルインクの色は、経時的に変化しなかった。
【表1】
【国際調査報告】