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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】殺微生物剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/76 20060101AFI20221104BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221104BHJP
   A01N 35/04 20060101ALI20221104BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20221104BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221104BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20221104BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221104BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221104BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A01N43/76 101
A01P3/00
A01N35/04
A01N37/10
A01N31/02
A61K8/49
A61Q17/04
A61Q19/00
A61K47/22
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/44
A61K9/107
A61K9/06
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509662
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020073788
(87)【国際公開番号】W WO2021047904
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】19196624.1
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロク-エディンガー, クリスティーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA07
4C076AA09
4C076AA17
4C076BB31
4C076DD01F
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD60
4C076EE51
4C076FF39
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB051
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB242
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC311
4C083AC312
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC512
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC902
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD202
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD662
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB48
4C083BB60
4C083CC03
4C083CC05
4C083CC17
4C083CC19
4C083DD31
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE01
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB03
4H011BB05
4H011BB06
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC18
4H011BC19
4H011DH02
4H011DH14
(57)【要約】
本発明は、抗微生物剤としての1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗微生物剤としての1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用。
【請求項2】
前記抗微生物剤は、抗真菌剤及び/又は抗細菌剤である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗真菌剤及び/又は抗細菌剤は、カンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)並びにこれらの混合物の増殖を阻害する薬剤である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
化粧用組成物、家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料の群から選択される製品におけるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
防腐力を向上させるためのものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
防臭活性化合物としての1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの非治療的使用。
【請求項7】
前記1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、微粉化された形態で使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、ヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール及び安息香酸又はその塩の群から選択される少なくとも1種の化合物と組み合わせて使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記少なくとも1種の化合物は、p-ヒドロキシアセトフェノン、安息香酸、安息香酸ナトリウム及び1,3-プロパンジオールの群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
化粧用及び/若しくは医薬用組成物、家庭用品、プラスチック、紙並びに/又は塗料の群から選択される製品の微生物による腐食及び分解を防止する方法であって、前記製品に、前記製品の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲、より好ましくは約0.25~15重量%の範囲、最も好ましくは約0.3~10重量%の範囲、例えば0.3~7.5重量%の範囲において選択される量で1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを添加することを含む方法。
【請求項11】
前記製品は、水と、界面活性剤、乳化剤、増粘剤及び油からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤とを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記製品は、O/Wエマルション、W/Oエマルション又はゲルの形態の化粧用組成物である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
微生物細胞、特に真菌及び/又は細菌細胞を死滅させ、且つ/又はその増殖を阻害するための方法であって、前記微生物細胞を、任意選択的に、ヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール、安息香酸又はその塩の群から選択される少なくとも1種の化合物との混合物における1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと接触させることを含む方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の化合物は、存在し、且つp-ヒドロキシアセトフェノン、安息香酸、安息香酸ナトリウム及び1,3-プロパンジオールの群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
微生物は、カンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、抗微生物剤としての1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用に関する。
【0002】
化粧用若しくは医薬用組成物、家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料をカビ及び細菌から保護するために、現在市販されている殆どの製品は、防腐剤を含有する。これらの防腐剤は、細菌及び真菌に有効であるが、研究は、こうした物質の多くへの日常的な曝露を、皮膚炎、癌及び/又は内分泌系の問題のリスクの上昇と関連付けている。したがって、多くの製造業者は、防腐剤の量を低減することを可能にすると共に、健康に害を与えないと思われる代替的な抗微生物活性物質を探求している。
【0003】
更に、抗微生物活性を有する化合物は、多くの化粧品用途において重要な役割を果たす。例えば、これらは、ブドウ球菌属菌(Staphylococcus)などの細菌の増殖に起因する体臭を抑えるか、又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)及び/若しくは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などの望ましくない細菌の増殖を抑制することによって微生物叢のバランスをとるために防臭剤に添加される。
【0004】
驚くべきことに、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、幅広い種類の微生物、特にカンディダ・アルビカンス(Candida albicans(C.albicans))、大腸菌(Escherichia coli(E.coli))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa))及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis(A.brasiliensis))などに対する抗微生物活性を示すことがここで見出された。
【0005】
したがって、本発明は、抗微生物剤、即ち抗微生物活性を示す薬剤としての1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用に関する。特に、本発明は、抗真菌剤及び/又は抗細菌剤としての、より具体的にはC.アルビカンス(C.albicans)、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)及び/又はA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)などの真菌及び/又はグラム陽性細菌を死滅させ、且つ/又はその増殖を阻害するための薬剤としての1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用を対象とする。
【0006】
他の実施形態において、本発明は、微生物細胞、特に真菌及び/又は細菌細胞を死滅させ、且つ/又はその増殖を阻害するための方法に関し、前記方法は、前記微生物細胞を1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと接触させることを含む。好ましい実施形態において、微生物細胞は、真菌及び/又はグラム陽性細菌からなる群から、より好ましくはC.アルビカンス(C.albicans)、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)及び/又はA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0007】
本明細書において使用される「抗微生物活性」(又は「抗微生物効果」)という用語は、微生物細胞、特に細菌及び真菌、より具体的にはC.アルビカンス(C.albicans)、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)及びA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)並びにこれらの混合物などを死滅させ、且つ/又はその増殖を阻害する能力を意味する。
【0008】
1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン[CAS 904-39-2]は、無色~淡黄色の固体であり、例えば国際公開第200239972号パンフレットに概説されているように又は実施例に例示するように調製することができる。
【0009】
1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、溶解性が低いことから、本発明の全ての実施形態において、好ましくは微粉化された形態、即ち平均粒子径が1μm未満の固体粒子の形態で使用される。
【0010】
特に有利な実施形態において、前記微粉化された形態は、最大で300nmの平均粒子径を示す。一層好ましくは、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、50~300nmの範囲、より好ましくは100~300nmの範囲、最も好ましくは120~280nmの範囲、例えば140~240nmの範囲又は150~220nmの範囲において選択される平均粒子径を示す。
【0011】
本明細書において使用される「平均粒子径」という用語は、レーザー回折により、例えばMalvern Mastersizer 2000を用いて決定される個数基準の平均粒子径分布D50(D0.5としても知られる)(ISO 13320:2009)を指す。
【0012】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、当技術分野において知られている標準的な微粉化方法、例えば参照により本明細書に含まれる国際公開第9522959号パンフレット及び国際公開第9703643号パンフレットに概説されている方法により製造することができる。
【0013】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、粉末形態において又はその分散体として使用することができる。
【0014】
本発明による微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、更に結晶形態又は固体非晶質形態であり得る。本発明の全ての実施形態において、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、好ましくは、固体非晶質形態である。
【0015】
本明細書において使用される「固体非晶質形態」という用語は、固体が選択的に結晶の網目を形成する時間を与えず、したがって主として無秩序形態の固体(本明細書において「固体非晶質1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン」とも称する)が得られるように、溶液又は混合物状態の液相から急速に固相を形成/分離させることによって形成された固体粒子を指す。この形態は、XRPD分析により、Bruker D8 Advance粉末X線回折計を使用し、反射型(ブラッグ・ブレンターノ型)配置でLynxEye検出器及びCu Κα線を用いて測定した場合、25~28°2θ(Cu Κα線)のピークのベースライン分離ができないことによって明確に同定することができる。
【0016】
本発明による1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの固体非晶質形態は、好ましくは、(1)テレフタル酸及び2-アミノフェノールを反応させることにより、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを生成するステップと、(2)得られた1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを好ましくは(氷)水の存在下で析出させることにより、固体非晶質1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを得るステップとを包含するプロセスにより調製され、これは、その後に続くステップにおいて、当技術分野において標準的な方法に従って微粉化される。このプロセスは、任意選択的に中間精製ステップを含むことができる。代わりに、固体非晶質1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンが殆ど又は全く溶解しない溶媒、例えば、これらに限定されるものではないが、トルエン及び/又は1-ブタノールなどのアルコール等で洗浄することにより更に精製することもできる。
【0017】
本発明の全ての実施形態において、更に有利には、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、化粧用又は医薬用組成物などの望ましい製品形態に容易に混合できるため、その水性分散体の形態で使用される。
【0018】
この種の水性分散体における1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量は、水性分散体の総重量を基準として好ましくは10~90重量%、20~80重量%又は30~70重量%の範囲、より好ましくは25~60重量%の範囲、最も好ましくは25~55重量%の範囲、例えば25~50重量%の範囲、25~40重量%の範囲又は25~35重量%の範囲において選択される。
【0019】
水性分散体は、1種又は複数の添加剤を、例えば微粉化を促進し、且つ/又は水性分散体を例えば沈降に対して安定化させるために更に含有することができる。
【0020】
存在する場合、水性分散体中の1種又は複数の添加剤の(総)量は、水性分散体の総重量を基準として好ましくは0.01~25重量%の範囲、より好ましくは0.1~20重量%の範囲、最も好ましく0.5~15重量%の範囲、例えば1~10重量%の範囲において選択される。
【0021】
本発明による全ての実施形態において、少なくとも1種の添加剤は、好ましくは、界面活性成分、例えば特に非イオン性、両性及びカチオン性界面活性剤、消泡剤、塩、湿潤剤及び増粘剤並びにこれらの混合物の群から選択される。
【0022】
水性分散体中に使用するのに特に好適な界面活性成分は、一般式C2+nO(C10H(式中、nは、2~22の範囲において選択される整数であり、xは、グルコシド部分(モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-及びポリグルコシド)の平均重合度を表す)を有するアルキルポリグルコシド(APG)である。この種のアルキルポリグルコシドは、例えば、Shanghai Fine Chemicalから市販されている商品名Green APG 0810(トウモロコシ由来のグルコース並びにヤシ油及びパーム核油由来のC及びC10脂肪アルコールから製造されたC8~10アルキルポリグルコシド)又はBASFからのPlantacare 1200 UP(C12~C16脂肪アルコールポリグリコシド)である。界面活性成分は、存在する場合、水性分散体の総重量を基準として好ましくは1~20重量%の範囲、より好ましくは5~15重量%の範囲、最も好ましくは7~12.5重量%の範囲において選択される(総)量で使用される。
【0023】
水性分散体中に使用するのに特に好適な消泡剤は、シリコーン油、例えば特にポリジメチルシロキサン及び/又はケイ素消泡剤、特にパイロジェニック又は疎水化シリカのシリコーン油中の無水分散体等である。最も好ましくは、消泡剤は、シメチコンである。この種の消泡剤は、存在する場合、水性分散体の総重量を基準として好ましくは0~1重量%の範囲において選択される(総)量、より好ましくは0.01~0.2重量%の量で使用される。
【0024】
水性分散体中に使用するのに好適な塩としては、リン酸のアルカリ及びアルカリ土類塩、例えばリン酸水素二ナトリウム及び/又は水酸化ナトリウムなどが挙げられる。塩又はその混合物は、存在する場合、好ましくは水性分散体の総重量を基準として0.01~5重量%、より好ましくは0.1~4重量%、最も好ましくは0.5~2.5重量%の量(総量)で使用される。
【0025】
水性分散体中に使用するのに特に好適な増粘剤は、キサンタンガム、ジェランガム及び/又はカルボキシメチルセルロースを包含する。最も好ましくは、増粘剤は、キサンタンガム又はジェランガムである。この種の増粘剤は、存在する場合、好ましくは水性分散体の総重量を基準として0.1~1重量%の範囲の(総)量、より好ましくは0.1~0.5重量%から選択される量で使用される。
【0026】
水性分散体中に使用するのに特に好適な湿潤剤は、(ポリ)プロピレングリコール、例えば最も好ましくはプロピレングリコールである。存在する場合、この種の湿潤剤の量は、好ましくは、水性分散体の総重量を基準として0.1~1重量%の範囲、より好ましくは0.2~0.6重量%の量において選択される。
【0027】
本発明による全ての実施形態において、好ましくは、本明細書において与えられる全ての定義及び優先度を有する微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン、水及び任意選択的に少なくとも1種の添加剤から基本的になる水性分散体が使用される。
【0028】
一層有利には、水性分散体は、
(i)水性分散体の総重量を基準として25~60重量%、好ましくは25~50重量%の、本明細書において与えられる全ての定義及び優先度を有する微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと;
(ii)水性分散体の総重量を基準として5~15重量%、好ましくは7~12.5重量%のC8~16アルキルポリグルコシドと;
(iii)水性分散体の総重量を基準として0~3重量%、好ましくは0~2.5重量%の、増粘剤、湿潤剤及び/又は消泡剤の群から選択される少なくとも1種の添加剤と;
(iv)水性分散体の総重量を基準として全体が100重量%となる量の水と
から基本的になる。
【0029】
本発明に従って使用される「から基本的になる」という用語は、水(iv)の量で調整された成分(i)~(iv)の量の総和が100重量%になることを意味する。しかしながら、これは、例えば、成分の各原料を介して導入される少量の不純物又は添加剤が存在する可能性を排除しない。
【0030】
最も有利には、水性分散体は、添加剤(iii)として、プロピレングリコールと、キサンタンガム又はジェランガムから選択される1種の増粘剤と、任意選択的なシメチコンとを含む。
【0031】
1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、抗微生物活性を有することから、例えば大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び/又は緑膿菌(P.aerugionosa)などの皮膚上の微生物の過剰増殖を処理することにより、皮膚の恒常性及び/又は皮膚微生物叢のバランスを維持させるのにも適している。
【0032】
1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの抗微生物活性を利用するために、例えばそれを化粧用若しくは医薬用組成物、医薬品、家庭用品、プラスチック、プラスチゾル、紙及び/又は塗料などの多様な配合物又は用途に組み込むことができる。
【0033】
本発明に従って使用される1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの量は、好ましくは0.1~20重量%の範囲、より好ましくは約0.25~15重量%の範囲、最も好ましくは約0.5~10重量%の範囲、例えば0.3~7.5重量%の範囲(常に活性物質を基準とする)から選択される。更に好適な範囲は、0.25~10重量%、0.25~7.5重量%、0.25~5重量%、1~7.5重量%及び1~5重量%を包含する。
【0034】
特定の実施形態において、本発明は、特に、化粧用及び/若しくは医薬用組成物、家庭用品、プラスチック、紙並びに/又は塗料の群から選択される製品の、好ましくはアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)を考慮した防腐力を向上させるための、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用にも関する。
【0035】
この使用は、任意選択的に、その効果を、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを含まない各製品と比較して評価するステップを包含する。
【0036】
他の実施形態において、本発明は、化粧用及び/若しくは医薬用組成物、家庭用品、プラスチック、紙並びに/又は塗料の群から選択される製品の微生物による腐食及び分解を防止する方法に関し、前記方法は、製品に、製品の総重量を基準として0.1~20重量%の量、より好ましくは0.25~15重量%の量、最も好ましくは0.3~10重量%の量、例えば0.3~7.5重量%の量で1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを添加することを含む。特定の実施形態において、本方法は、その結果を、特に1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを含まない各製品と比較して評価するステップも包含する。更に好適な範囲は、0.25~10重量%、0.25~7.5重量%、0.25~5重量%、1~7.5重量%及び1~5重量%を包含する。
【0037】
更なる実施形態において、本発明は、化粧用及び/若しくは医薬用組成物、家庭用品、プラスチック、紙並びに/又は塗料の群から選択される製品を微生物の汚染又は増殖に対して防腐する方法に関し、前記方法は、製品に、0.1~20重量%の量、より好ましくは0.25~15重量%の量、最も好ましくは0.3~10重量%の量、例えば0.3~7.5重量%の量で1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを添加することを含む。更に好適な範囲は、0.25~10重量%、0.25~7.5重量%、0.25~5重量%、1~7.5重量%及び1~5重量%を包含する。
【0038】
特に有利な実施形態において、本発明は、水と、界面活性剤、乳化剤、増粘剤及び油からなる群から選択される少なくとも1種の更なる薬剤とを更に含む化粧用又は医薬用組成物の微生物による腐食及び分解を防止する方法に関する。これは、この種の組成物が特に微生物の増殖による影響を受けやすいためである。
【0039】
本発明は、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンが汗の分解に関与し、したがって臭気の形成に関与する細菌に対する抗微生物作用を有することから、防臭剤化合物としての1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの使用に更に関する。
【0040】
有利には、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、従来の防腐剤の防腐活性を向上させるために、従来の防腐剤との混合物として使用することもできる。
【0041】
特に好適な混合物は、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、ヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール及び安息香酸又はその塩の群から選択される少なくとも1種の化合物との組合せである。これは、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンが前記化合物の抗微生物活性を相乗的に向上させるためである。前記混合物もやはり新規である。したがって、本発明は、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、ヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール及び安息香酸又はその塩の群から選択される少なくとも1種の化合物とを含む混合物にも関する。
【0042】
好ましくは、前記混合物は、本明細書に定義する任意の製品に、その微生物に対する耐性を向上させるために添加することができる抗微生物剤混合物として使用される。この混合物は、各製品に予混合物として添加することができるが、代わりに、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン並びにヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール及び安息香酸又はその塩の群から選択される少なくとも1種の化合物を各製品に別々に添加することもできることが十分に理解される。
【0043】
特に好ましくは、前記混合物又は前記混合物を含む製品は、超分岐コポリマー、特に式
【化1】

の末端基を有する、ドデセニルコハク酸無水物、ジイソプロパノールアミン、ビスジメチルアミノプロピルアミンのモノマーの超分岐などを含まない。
【0044】
1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、ヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール及び安息香酸又はその塩の群から選択される少なくとも1種の化合物との重量比は、好ましくは、40:1~1:40の範囲、より好ましくは30:1~1:30の範囲、一層好ましくは20:1~1:20の範囲、例えば15:1~1:15又は15:1~1:10の範囲において選択される。
【0045】
最も好ましくは、ヒドロキシアセトフェノンの場合、重量比は、30:1~1:2の範囲、例えば25:1~1:1の範囲において選択される。
【0046】
最も好ましくは、アルカンジオールの場合、重量比は、15対1~1対5、例えば10:1~1対1:3の範囲において選択される。
【0047】
最も好ましくは、安息香酸又はその塩の場合、重量比は、30:1~1:1の範囲、より好ましくは25:1~1:1の範囲において選択される。
【0048】
全ての実施形態において、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼン対ヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール及び安息香酸又はその塩の群から選択される少なくとも1種の化合物の比は、好ましくは、≧0.5、より好ましくは≧0.75、最も好ましくは≧1である。
【0049】
ヒドロキシアセトフェノンという用語は、o-、m-又はp-ヒドロキシアセトフェノンを指す。本発明の全ての実施形態において、1-(4-ヒドロキシフェニル)-エタノンとも称され、例えばSymriseからSymSave(登録商標)Hとして市販されているp-ヒドロキシアセトフェノン[CAS 99-93-4]が特に好ましい。
【0050】
本発明の全ての実施形態において、使用されるヒドロキシアセトフェノンの量は、製品の総重量を基準として0.001~5重量%の範囲、より好ましくは0.01~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される。更に好ましい範囲は、製品の総重量を基準として0.005~4.5重量%、0.05~4重量%及び0.25~3重量%である。
【0051】
アルカンジオール、特に直鎖及び分岐のC1~10アルカンジオールなどは、化粧用途に用いるための防腐力増強剤としてよく知られている。本発明による特に好適なアルカンジオールは、約2~約10個の炭素原子、例えば約3~約8個の炭素原子又は約3~約7個の炭素原子を含む直鎖1,2-、1,3-又は1,4-アルカンジオール、特に1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール及び1,2-デカンジオールなどを包含する。本発明の全ての実施形態において、最も好ましいアルカンジオールは、1,3-プロパンジオール[CAS 504-63-2]であり、これは、例えば、DuPont Tate&Lyle BioproductsからZemea(商標)Propandiolの商品名で市販されている。
【0052】
本発明の全ての実施形態において、使用されるアルカンジオールの量は、好ましくは、製品の総重量を基準として0.01~6重量%の範囲、より好ましくは0.1~5重量%の範囲、最も好ましくは0.5~4重量%の範囲において選択される。更に好適な範囲は、製品の総重量を基準として0.5~3.5重量%又は0.5~3重量%である。
【0053】
安息香酸及びその塩は、食品、医薬品及び化粧品に慣用されているよく知られている防腐剤である。好ましい塩は、カリウム又はナトリウム塩であり、最も好ましくはナトリウム塩である。本発明の全ての実施形態において、特に好ましくは、安息香酸[CAS 65-85-0]及び/又は安息香酸ナトリウム[CAS 532-32-1]が使用され、最も好ましくは、例えばEmerald Kalama ChemicalsからPurox(登録商標)S Grainsの商品名で市販されている安息香酸ナトリウムが使用される。
【0054】
本発明の全ての実施形態において、使用される安息香酸又はその塩の量は、製品の総重量を基準として0.001~6重量%の範囲、より好ましくは0.01~4重量%の範囲、最も好ましくは0.1~3重量%の範囲において選択される。更に好適な範囲は、製品の総重量を基準として0.1~1重量%及び0.1~0.8重量%を包含する。
【0055】
本発明による、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの、ヒドロキシアセトフェノン、アルカンジオール及び安息香酸又はその塩の群から選択される化合物との組合せとしての使用は、化粧品的な意味及び医薬品的な意味の両方で行うことができる。しかしながら、本発明の全ての実施形態において、この使用は、好ましくは、化粧品的(非治療的)使用である。
【0056】
特に、本発明による化粧用又は医薬用組成物は、特にヒトの皮膚又はヒトの頭皮及び毛髪などに局所的に適用することが意図された組成物である。
【0057】
本出願において使用される「化粧用組成物」という用語は、Roempp Lexikon Chemie,10th edition 1997,Georg Thieme Verlag Stuttgart,New Yorkの表題「Kosmetika」で定義された化粧用組成物及びA.Domsch,“Cosmetic Compositions”,Verlag fuer chemische Industrie(ed.H.Ziolkowsky),4th edition,1992に開示されている化粧用組成物を指す。
【0058】
本発明の目的に適した界面活性剤、乳化剤、増粘剤及び油は、いずれも化粧用途に慣用されているものであり、例えばオンラインのINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)から閲覧可能なパーソナルケア製品協議会(Personal Care Product Council)による国際化粧品成分辞書・ハンドブック(International Cosmetic Ingredient Dictionary&Handbook)(http://www.personalcarecouncil.org/)に掲載されている界面活性剤、乳化剤、増粘剤及び油であるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明による組成物は、一般に、組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲、より好ましくは約0.25~15重量%の範囲、最も好ましくは約0.3~10重量%の範囲、例えば0.3~7.5重量%の範囲において選択される量(1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを基準とする)の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンを、好ましくは本明細書において定義される水性分散体の形態で好適な担体と混合することにより調製される。更に好適な範囲は、0.25~10重量%、0.25~7.5重量%、0.25~5重量%、1~7.5重量%及び1~5重量%を包含する。
【0060】
本発明による化粧用又は医薬用組成物は、好ましくは、生理学的に許容される媒体、即ち皮膚、粘膜及びケラチン繊維などのケラチン物質と適合性である媒体を更に含む。特に、生理学的に許容される媒体は、化粧的又は医薬的に許容される担体である。
【0061】
化粧的又は医薬的に許容される担体という用語は、化粧用組成物又は医薬用組成物に従来使用されているあらゆる担体、及び/又は賦形剤、及び/又は希釈剤を指す。
【0062】
好ましくは、本発明による化粧用又は医薬用組成物は、溶媒若しくは脂肪物質中の懸濁液若しくは分散液の形態であるか、或いはエマルション若しくはマイクロエマルション(特にO/W若しくはW/O型)、PIT-エマルション、ナノエマルション、多重エマルション(例えば、O/W/O若しくはW/O/W型)、ピッカリングエマルション、ヒドロゲル、リポゲル、単相若しくは多相溶液又は小胞分散液の形態である。
【0063】
本発明による化粧用又は医薬用組成物は、液体、ローション、増粘されたローション、ゲル、クリーム、乳液、軟膏又はペーストの形態であり得る。
【0064】
本発明による化粧用又は医薬用組成物は、3~10の範囲、好ましくは3~8のpHの範囲、最も好ましくはpH3.5~7.5の範囲のpHを有する。pHは、当業者に公知の方法により、例えばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸を含むヒドロキシ酸などの酸或いは水酸化ナトリウム若しくはカリウム又は水酸化アンモニウム及びこれらの混合物などの塩基を使用することによって調整される。
【0065】
好ましくは、本発明による組成物において、酸又は塩基(存在する場合)は、少なくとも0.0001重量%の量、例えば0.01~1重量%の量、特に0.01~0.5重量%などの量で使用される。
【0066】
本発明による化粧用組成物は、特に、スキンケア製剤、機能性製剤及び/又はヘアケア製剤、より具体的にはスキンケア又はヘアケア製剤などである。
【0067】
スキンケア製剤の例は、特に、遮光製剤(日焼け止め製剤)、老化防止製剤、光老化治療用製剤、ボディオイル、ボディローション、ボディジェル、トリートメントクリーム、皮膚保護軟膏、保湿ジェル又は保湿スプレーなどの保湿製剤、顔及び/又は身体用保湿剤並びに皮膚美白用製剤である。
【0068】
機能性製剤の例は、ホルモン製剤、ビタミン製剤、野菜抽出物製剤、老化防止製剤及び/又は抗微生物(抗細菌又は抗真菌)製剤などの有効成分を含有する化粧用組成物であるが、これらに限定されない。
【0069】
本発明に従う好適なヘアケア製剤の例としては、シャンプー、ヘアコンディショナー(ヘアリンスとも称される)、毛髪仕上げ用組成物、ヘアトニック、毛髪再生組成物、ヘアローション、ウォーターウェーブローション、ヘアスプレー、ヘアクリーム、ヘアジェル、ヘアオイル、ヘアポマード又はヘアブリリアンティーンを挙げることができる。したがって、これらは、常に、それらが使用される実際の目的に応じてより短い時間又はより長い時間にわたり毛髪及び頭皮に適用される製剤である。
【0070】
好ましくは、本発明の全ての実施形態において、スキンケア製剤は、日焼け防止製剤である。
【0071】
前記日焼け防止製剤が少なくとも1種のUVフィルターを含むことが好ましい。UVフィルターは、液体又は固体UVフィルターであり得る。UVフィルターは、UV-A又はUV-Bフィルターであり得る。
【0072】
適切な液体UVフィルターは、UVB(280~315nm)及び/又はUVA(315~400nm)の範囲の光を吸収し、且つ周囲温度(即ち25℃)において液体である。そのような液体UVフィルターは、当業者に周知であり、特にシンナメート、例えばオクチルメトキシシンナメート(PARSOL(登録商標)MCX)及びイソアミルメトキシシンナメート(Neo Heliopan(登録商標)E 1000)など、サリチレート、例えばホモサレート(3,3,5トリメチルシクロヘキシル2-ヒドロキシベンゾエート、PARSOL(登録商標)HMS)及びエチルヘキシルサリチレート(別名エチルヘキシルサリチレート、2エチルヘキシル2-ヒドロキシベンゾエート、PARSOL(登録商標)EHS)など、アクリレート、例えばオクトクリレン(2エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、PARSOL(登録商標)340)及びエチル2-シアノ-3,3ジフェニルアクリレートなど、ベンザルマロン酸のエステル、特にジアルキルベンザルマロネート、例えばジ(2-エチルヘキシル)4-メトキシベンザルマロネート及びポリシリコーン15(PARSOL(登録商標)SLX)など、ナフタレートのジアルキルエステル、例えばジエトキシヘキシル2,6-ナフタレート(Corapan(登録商標)TQ)など、シリンギリデンマロネート、例えばジエチルヘキシルシリンギリデンマロネート(Oxynex(登録商標)ST液体)など、並びにベンゾトリアゾリルドデシルp-クレゾール(Tinoguard(登録商標)TL)、並びにベンゾフェノン-3及びドロメトリゾールトリシロキサンを包含する。
【0073】
特に有利な液体UVフィルターは、オクチルメトキシシンナメート、ホモサレート、エチルヘキシルサリチレート、オクトクリレン、ジエチルヘキシル2,6-ナフタレート、ジエチルヘキシルシリンギリデンマロネート、ベンゾトリアゾリルドデシルp-クレゾール、ベンゾ-フェノン-3、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15及びその混合物である。
【0074】
適切な固体UVフィルターは、UVB及び/又はUVA範囲の光を吸収し、周囲温度(即ち25℃)において固体であるものである。これらは、特に、固体有機UVフィルターである。特に適切な固体UVフィルターは、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン及び4-メチルベンジリデンカンファーからなる群のものである。
【0075】
個々の有機UVフィルターの量は、好ましくは、日焼け防止製剤の総重量を基準として0.1~約10重量%の範囲、好ましくは0.5~7.55重量%の範囲、最も好ましくは1~5重量%の範囲である。
【0076】
日焼け防止組成物の場合、有機UVフィルターの総量は、前記組成物が目標とするUV防御力に大きく依存し、典型的には前記組成物の総重量を基準として1~50重量%の範囲、好ましくは5~40重量%の範囲である。
【0077】
SPF15(SPF=紫外線防御指数)の日焼け防止製剤は、例えば、有機UVフィルターを、前記日焼け防止製剤の総重量を基準として好ましくは4~20重量%、より好ましくは7~15重量%の総量で含む。
【0078】
例えば、SPF30の日焼け防止製剤は、有機UVフィルターを、前記日焼け防止製剤の総重量を基準として好ましくは10~40重量%、より好ましくは15~25重量%の総量で含む。
【0079】
例えば、SPF50の日焼け防止製剤は、有機UVフィルターを、前記日焼け防止製剤の総重量を基準として好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~40重量%の総量で含む。
【0080】
好ましい実施形態において、本発明による化粧用組成物は、エマルション及び/又はゲルである。一層好ましくは、化粧用組成物は、特に、O/W、W/O、Si/W、W/Si、O/W/O、W/O/W多重又はピッカリングエマルションなど、油性相及び水性相を含むエマルションである。
【0081】
この種のエマルション中に存在する油性相の量(即ち極性油を含む全ての油脂を含む相)は、局所用組成物の総重量を基準として好ましくは少なくとも10重量%、例えば10~60重量%の範囲、好ましくは15~50重量%、最も好ましくは15~40重量%の範囲である。
【0082】
そのようなエマルション中に存在する水性相の量は、局所用組成物の総重量を基準として好ましくは少なくとも20重量%、例えば20~90重量%の範囲、好ましくは30~80重量%の範囲、最も好ましくは30~70重量%の範囲である。
【0083】
本発明によるO/Wエマルションは、有利には、(i)組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲、より好ましくは約0.25~15重量%の範囲、最も好ましくは約0.3~10重量%の範囲、例えば0.3~7.5重量%の範囲において選択される量の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、(ii)水と、(iii)クエン酸ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(自己乳化性)、ステアリン酸、ステアリン酸の塩、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、セテアレス-20、ステアレス-2、ステアレス-12、ステアリン酸PEG-40、リン酸エステル及びその塩、例えばリン酸セチル(Amphisol(登録商標)A)、セチルリン酸ジエタノールアミン(Amphisol(登録商標)DEA)、セチルリン酸カリウム(Amphisol(登録商標)K)など、セテアリル硫酸ナトリウム、オレイン酸グリセリルリン酸エステルナトリウム、水素化植物性グリセリドホスフェート、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ラウリルグルコシド、デシルグルコシド、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ポリステアリン酸スクロース及び水和ポリイソブテン並びにこれらの混合物のリストから選択される少なくとも1種のO/W-又はSi/W-乳化剤とを含む。また、1種又は複数の合成ポリマー、例えばPVPエイコセンコポリマー、アクリレート/C10-3oアルキルアクリレートクロスポリマー、アクリレート/ステアレス-20メタクリレートコポリマー、PEG-22/ドデシルグリコールコポリマー、PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー及びこれらの混合物などを乳化剤として使用することができる。特に好ましい実施形態において、O/W乳化剤は、リン酸セチル、特にセチルリン酸カリウム(Amphisol(登録商標)Kとして市販)など、ステアリン酸グリセリル(及び)ステアリン酸PEG-100(Arlacel(登録商標)165として市販)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリロイルジメチルタウリンナトリウム、デシルグルコシド、セテラルグルコシド、カプリリル/カプリルグルコシド、オリーブ油脂肪酸ソルビタン、オリーブ油脂肪酸ポリグリセリル-4、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、ポリソルベート20、ポリソルベート60及び/又はポリアルキレングリコールエーテル、特にラウレス-35(35EO単位を含むラウリルアルコール;Brij(登録商標)35として市販)などの群から選択される。少なくとも1種のO/W乳化剤は、組成物の総重量を基準として好ましくは約0.001~10重量%の量、より好ましくは0.1~7重量%の量で使用される。更に、O/Wエマルションの形態の化粧用組成物は、有利には、これらに限定されるものではないが、セチルアルコール(Lorol C16、Lanette 16)、セテアリルアルコール(Lanette(登録商標)O)、ステアリルアルコール(Lanette(登録商標)18)、ベヘニルアルコール(Lanette(登録商標)22)、モノステアリン酸グリセロール、ミリスチン酸グリセリル(Estol(登録商標)3650)、水添ココグリセリル(Lipocire Na10)及びこれらの混合物などのアルキルアルコールのリストから選択される少なくとも1種の共乳化剤を含有する。
【0084】
本発明によるW/Oエマルションは、有利には、(i)組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲、より好ましくは約0.25~15重量%の範囲、最も好ましくは約0.3~10重量%の範囲、例えば0.3~7.5重量%の範囲において選択される量の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、(ii)水と、(iii)ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、セチルジメチコンコポリオール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、オレイン酸/イソステアリン酸のポリグリセロールエステル、ポリグリセリル-6ヘキサリシノレート、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-4/ヤシ油脂肪酸PEG-8プロピレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、リシノール酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、牛脂脂肪酸ナトリウム、ヒマシ油脂肪酸カリウム、オレイン酸ナトリウム及びこれらの混合物のリストから選択される少なくとも1種のW/O-又はW/Si-乳化剤とを含む。更に適切なW/Si乳化剤は、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、及び/又はPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、及び/又はセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及び/又はPEG-12ジメチコンクロスポリマー、及び/又はPEG/PPG-18/18ジメチコンである。少なくとも1種のW/O乳化剤は、組成物の総重量に対して好ましくは約0.001~10重量%の量、より好ましくは0.2~7重量%の量で使用される。
【0085】
本発明によるジェル製剤は、有利には、(i)組成物の総重量を基準として0.1~20重量%の範囲、より好ましくは約0.25~15重量%の範囲、最も好ましくは約0.3~10重量%の範囲、例えば0.3~7.5重量%の範囲において選択される量の1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンと、(ii)水と、(iii)少なくとも1種の水溶性増粘剤とを含む。
【0086】
この種の水溶性増粘剤は、当業者に周知であり、例えばRobert L.Davidsonによる“Handbook of Water soluble gums and resins”(Mc Graw Hill Book Company(1980))に列挙されている。特に好適な水溶性増粘剤は、ポリアクリル酸(例えば、商品名Carbomer若しくはCarbopol(登録商標)として市販)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のホモポリマー(例えば、Rheothik(登録商標)11-80として市販)、アクリレートコポリマー(例えば、商品名Pemulen(登録商標)若しくはAculyn(登録商標)33として市販)、分岐ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(INCI名ポリクオタニウム-37(Polyquaternium-37))、非変性グアーガム(例えば、商品名Jaguarとして市販)、デンプン若しくはその誘導体及び/又はヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選択される。好ましくは、水溶性増粘剤は、組成物の総重量を基準として約0.001~10重量%の量、より好ましくは0.1~7重量%の量で使用される。
【0087】
以下の実施例は、本発明の組成物及び効果を更に例示するために提供するものである。これらの例は、例示に過ぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0088】
[実施例]
[1.1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの調製:]
ポリリン酸702g及びメタンスルホン酸4.28mlの混合物を90℃に加熱した。テレフタル酸65g及び2-アミノフェノール107gを加えた。この混合物を不活性雰囲気下において180℃で8時間撹拌した後、氷水に移した。析出物を濾過し、水及び酢酸で洗浄した。析出物を水中に分散させ、pHを水酸化ナトリウムで8.0に調整し、濾過して水で洗浄した。粗生成物をトルエン及び1-ブタノールの3.3:1混合物中に懸濁させ、85℃で1時間撹拌し、濾過してジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させることにより、固体非晶質1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの粗い粒子を得た(以下、DBOと称する)。
【0089】
[2.1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30重量%水性分散体の調製:]
次いで、175gの粗い粒子、324gの水及び65gのGreen APG 0810の懸濁液を調製し、この懸濁液を、LabStar実験室用粉砕機でイットリウム安定化酸化ジルコニウム粉砕用ビーズ(0.3mm、東ソー・セラミックス株式会社(Tosoh Ceramic)、日本)を使用して2時間粉砕し、粉砕チャンバ内で冷却した(-12℃の飽和食塩水)。粉砕ビーズを除去することにより、微粉化された1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンの30%水性分散体(以下、DBO aq.と称する)を得、これを以下に概説する抗微生物試験及び処方に使用した。
【0090】
[3.抗微生物活性]
抗微生物効果を、規制に従う保存効力試験方法(NF EN ISO11930)に類似した方法で評価した。したがって、以下に概説する各活性物質及びNaCl濃度0.85重量%の生理食塩水の混合物を無菌条件下で調製する。対照も同様に無菌条件下で調製した。次いで、対照及び混合物を96ディープウェルプレート(1.6ml/well)に排除した。以下に概説するように、ウェルを各細菌又は真菌株で、細菌の場合には2.5×10~5.6×10cfu/mlになるように、真菌の場合には1×10~2.5×10cfu/mlになるように汚染することにより初期汚染を行った。汚染後、各ウェルを十分に混合して、微生物を確実に均一に分布させた。次いで、各プレートを22℃で24時間インキュベートした。汚染から24時間後に(生残)菌数の測定を行う。次いで、平均対数減少値を求める[-log10{(接種菌数)/(サンプルの菌数)}]。これらを表1~5に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
上の表から分かるように、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、幅広い範囲の微生物に対して抗微生物効果を示し、したがって防腐力増強剤として使用することができる。製品の水性相は、通常、微生物増殖の影響を最も受けやすいことが知られている。したがって、1,4-ジ(ベンゾオキサゾール-2’-イル)ベンゼンは、例えば、O/W又はW/Oエマルションの形態の化粧用組成物などの水性相を含む製品を微生物による腐食及び分解に対して保護するのに特に適しており、したがってその防腐力を向上させるのに適している。
【0094】
【表3】
【0095】
表2から読み取れるように、DBOは、p-ヒドロキシアセトフェノンの抗微生物活性を相乗的に向上させる。
【0096】
【表4】
【0097】
表3から読み取れるように、DBO及び安息香酸ナトリウムの組合せは、相乗的な抗微生物活性を示す。
【0098】
【表5】
【0099】
表4から読み取れるように、DBO及び1,3-プロパンジオールの組合せは、相乗的な抗微生物活性を示す。
【0100】
[4.処方例]
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
【表9】
【0105】
【表10】
【0106】
【表11】
【国際調査報告】