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特表2022-547263ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品
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  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図1
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図2
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図3
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図4A
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図4B
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図4C
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図5A
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図5B
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図6
  • 特表-ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ガラス基板と微細構造層との間の高い強度を有する微細光学部品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/32 20060101AFI20221104BHJP
   C03C 3/076 20060101ALI20221104BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20221104BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20221104BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20221104BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20221104BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20221104BHJP
   C03C 3/078 20060101ALI20221104BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20221104BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C03C17/32 D
C03C3/076
C03C3/087
C03C3/089
C03C3/091
C03C3/085
C03C3/083
C03C3/078
G02B1/00
G02B1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510187
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2019104774
(87)【国際公開番号】W WO2021042388
(87)【国際公開日】2021-03-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512139847
【氏名又は名称】ショット グラス テクノロジーズ (スゾウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT GLASS TECHNOLOGIES (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】79 Huoju Road, Science & Technology Industrial Park, Suzhou New District, Suzhou, Jiangsu 215009, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フイヤン ファン
(72)【発明者】
【氏名】イェンチュアン シャン
(72)【発明者】
【氏名】グアンジュン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイジー デン
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA11
4G059AC16
4G059FA15
4G059FA21
4G059FB08
4G062AA04
4G062BB01
4G062BB03
4G062BB05
4G062BB06
4G062CC04
4G062CC10
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DD02
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EA10
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FC02
4G062FC03
4G062FD01
4G062FE01
4G062FE02
4G062FF01
4G062FF02
4G062FG01
4G062FG02
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062FL02
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GB02
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062GE02
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH04
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH08
4G062HH09
4G062HH10
4G062HH11
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
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4G062JJ06
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM02
4G062NN02
4G062NN30
4G062NN33
(57)【要約】
微細光学部品(1)は厚さt≦1500μm、好ましくはt≦1200μm、より好ましくはt≦1100μmを有するガラス基板(2)、および前記ガラス基板(2)上にインプリントされたポリマーから形成される微細構造層(3)を含む。前記ガラス基板(2)は接着剤接触角θg 45°未満、好ましくは40°未満、より好ましくは30°未満を示し、且つガラス基板(2)と微細構造層(3)との間の結合強度は0.5MPaより大きく、好ましくは1MPaより高く、より好ましくは1.5MPaより高い。従って、前記ガラス基板(2)と前記微細構造層(3)との間の結合力が非常に強いので、種々の環境下で長期の強い結合および安定性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さt≦1500μm、好ましくはt≦1200μm、より好ましくはt≦1100μmを有するガラス基板、
前記ガラス基板上にインプリントされたポリマーから形成される微細構造層
を含む微細光学部品であって、
微細構造とガラス基板との間の結合強度が0.5MPaより高く、好ましくは1MPaより高く、より好ましくは1.5MPaより高く、
前記ガラス基板は全体厚さばらつきTTV≦40μm、好ましくはTTV≦30μm、より好ましくはTTV≦20μm、特に好ましくはTTV≦10μm、および最も好ましくはTTV≦5μmを有し、
前記ガラス基板は厚さ許容差δ≦80μm、好ましくはδ≦50μm、より好ましくはδ≦20μm、さらに好ましくはδ≦10μm、特に好ましくはδ≦5μm、および最も好ましくはδ≦2μmを有する、前記微細光学部品。
【請求項2】
前記ガラス基板が、
特定の数の非架橋酸素NBO≧0.3、好ましくはNBO≧0.5、より好ましくはNBO≧1、特に好ましくはNBO≧1.5、および最も好ましくはNBO≧2を有し、前記NBO=(R2O+R’O)/(P25+Al23+B23+TiO2+ZrO2)であり、および/または
比X=(R2O+R’O-P25-Al23-B23)/(SiO2+P25+Al23+B23)が-0.2より大きく、好ましくは0より大きく、より好ましくは0.2より大きく、
前記式中、RはLi、Na、Kを含むアルカリ金属であり、且つR’はMg、Ca、Baを含むアルカリ土類金属であり、且つ前記ガラス基板は35°未満、好ましくは25°未満、より好ましくは15°未満の低い接着剤接触角θgを示すことを特徴とする、請求項1に記載の微細光学部品。
【請求項3】
前記ガラス基板が反り≦500μm、好ましくは≦100μm、より好ましくは≦80μm、および最も好ましくは≦50μmを示すことを特徴とする、請求項1に記載の微細光学部品。
【請求項4】
前記ガラス基板が、TTVのガラス厚さに対する割合10%未満、好ましくは8%未満、およびより好ましくは5%未満を示すことを特徴とする、請求項1に記載の微細光学部品。
【請求項5】
前記ガラス基板が、表面粗さRa≦20nm、好ましくはRa≦10nm、およびより好ましくはRa≦5nmを有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項6】
前記ガラスが、以下の組成を酸化物に基づくモル%で有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の微細光学部品:
成分 割合(モル%)
SiO2 60~83
23 0~12
Na2O 0~13
2O 0~7
MgO 0~7
CaO 0~10
BaO 0~1
TiO2 0~4
ZnO 0~6。
【請求項7】
前記ガラス基板が、1.4~2.5の範囲、好ましくは1.45~1.8の範囲、およびより好ましくは1.45~1.55の範囲、好ましくは1.41~2.1の範囲、好ましくは1.42~2.0の範囲、好ましくは1.45~1.9の範囲、好ましくは1.45~1.8の範囲、好ましくは1.45~1.7の範囲、最も好ましくは1.45~1.6の範囲の屈折率ndを有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項8】
前記ガラス基板が、透過指数T≧90%、好ましくはT≧91%を示すことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項9】
前記ガラス基板が、熱膨張係数CTE20~300℃≦15×10-6/K、好ましくはCTE20~300℃≦10×10-6/Kを示すことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項10】
前記ガラス基板が、CTEガラスと微細構造層のCTEポリマーとの比率CTEポリマー/CTEガラス≦100、好ましくはCTEポリマー/CTEガラス≦80を示すことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項11】
前記ガラス基板と前記微細構造層との間の屈折率ndの差Δnd≦0.5であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項12】
前記ガラス基板が、シリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、アルミニウムホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、およびリチウムアルミニウムシリケートガラスからなる群から選択されるガラス製であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項13】
前記微細構造層が、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂のポリマーからなることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の微細光学部品。
【請求項14】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の微細光学部品の製造方法であって、以下の段階:
・ 厚さt≦1500μm、好ましくはt≦1200μm、より好ましくはt≦1100μm、全体表面粗さTTV≦40μm、好ましくはTTV≦30μm、より好ましくはTTV≦20μm、特に好ましくはTTV≦10μm、および最も好ましくはTTV≦5μm、厚さ許容差δ≦80μm、好ましくはδ≦50μm、より好ましくはδ≦20μm、さらに好ましくはδ≦10μm、特に好ましくはδ≦5μm、および最も好ましくはδ≦2μm有するガラス基板を準備する段階、および
・ 微細構造化されたポリマー層を前記ガラス基板に施与して、微細構造層を形成する段階
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項15】
前記微細構造化されたポリマー層が、スピンコーティング、噴霧コーティングまたは堆積によって均質に施与され得ることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記微細構造化されたポリマー層の前記ガラス基板への施与が、以下の段階:
(a) ポリマーを基板上に堆積し、UV透過性のテンプレートを上に配置する段階、
(b) 前記テンプレートを前記ポリマーの層に押し付けて硬化させる段階、
(c) 前記テンプレートを、インプリントされた造形を有する硬化ポリマーから剥離して微細構造層を形成する段階
を含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記微細構造層が、UVまたは加熱によって硬化され得ることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記微細構造層が、前記ガラス基板の2つの側の表面上に施与され得ることを特徴とする、請求項14から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
回折光学部品、屈折レンズ、ミラー、プリズム、GRINレンズ、ハイブリッド部品、3Dイメージング/センサにおけるディフューザー、拡張現実、仮想現実、カメラ、自動化製造システム、移動通信手段としての、請求項1から13までのいずれか1項に記載の微細光学部品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dイメージングおよびセンシング分野における微細光学部品、特にウェハレベル光学素子に関する。特に、本発明は、互いに結合されたガラス基板と微細構造層とを有し、且つガラス基板と微細構造層との間の緊密な結合に起因して高い安定性を有する微細光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板と微細構造層とを有する微細光学部品について、ガラス基板と微細構造層との間の結合強度は重要な要件であり、なぜなら、ガラス基板からの微細構造層の剥離は常に問題であり且つ懸念されるからである。
【0003】
ガラス基板と微細構造層との間の強い結合強度を有する結合表面を確実に達成するために、Kojiらは欧州特許出願公開第3093139号明細書(EP3093139 A1)において、アクリルブロックコポリマー(A)およびアクリル樹脂(B)を含む熱可塑性ポリマー組成物製のフレネルレンズを提案しており、ここで、前記アクリルブロックコポリマー(A)は、その分子内で主にメタクリル酸エステル単位で構成されるポリマーブロック(a2)が主にアクリル酸エステル単位で構成されるポリマーブロック(a1)の各々の末端に結合されている少なくとも1つの構造を含むアクリルブロックポリマーである。前記熱可塑性ポリマー組成物は、ガラス基板に施与されたシランカップリング剤を用いて確実に結合され得る。しかしながら、アクリルブロックコポリマー(A)の合成は時間および労力がかかり、製造コストも高く、経済的ではない。
【0004】
従って、微細光学素子の分野において、ガラス基板と微細構造層との間で微細光学部品を、少ない労力並びに充分に低いコストで提供するためのいくつかの要件がまだある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3093139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の課題は、互いに結合されたガラス基板と微細構造層とを有し、且つガラス基板と微細構造層との間の緊密な結合に起因して高い安定性を有する微細光学部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項において特許請求される特定のガラス組成および最適化された幾何学的表面特性を有するガラス基板によって解決される。高い非架橋酸素(NBO)または活性酸素を有するガラス組成物はOH-を生成でき、それが微細構造層との結合強度を高めることができる。ガラス基板は適した全体厚さばらつき(TTV)、厚さ許容差、および反りを有し、それは一貫した微細構造層との高い結合強度を得るために有益である。高いTTVおよび反りは、微細構造化されたポリマー層の安定な製造工程を得るために有益ではなく、なぜならポリマーの厚さがガラスのTTVおよび反りによって影響されるからである。他方で、微細構造層はスピンコーティング、噴霧コーティング、堆積またはインプリント工程の間にガラスの粗さによって影響されることもある。低いガラスの粗さはガラス上にポリマーを塗布するために有益であり、それは一貫した微細構造層を形成するために好適である。
【0008】
本発明の1つの態様によれば、微細光学部品はガラス基板と微細構造層とを含む。前記ガラス基板は厚さt≦1500μm、好ましくはt≦1200μm、より好ましくはt≦1100μmを有し、他の厚さ≦900μm、800μm、700μm、500μm、400μm、300μm、200μm、100μmも使用できる。しかし、本特許におけるガラスの厚さは上述の厚さ内に限定されない。ポリマーから形成される微細構造層がガラス基板上にインプリントされる。前記微細構造は光学設計による光学機能を有する。前記微細構造は、光学設計による光学素子において屈折効果または回折効果を生じ得る任意の構造(例えば半球、多段階、円、四角形)であってよい。前記ガラス基板は、接着剤接触角θg 35°未満、好ましくは25°未満、より好ましくは15°未満を示す。結合強度Pは、微細構造層をガラス基板から分離できる最小圧力と定義される。ガラス基板と微細構造層との間の結合強度は、0.5MPaより大きく、好ましくは1MPaより高く、より好ましくは1.5MPaより高い。結合強度の退化は、温度85℃且つ湿度85%で1000回のサイクル後に60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満である。
【0009】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板は1.4~2.5の範囲、好ましくは1.41~2.1の範囲、好ましくは1.42~2.0の範囲、好ましくは1.45~1.9の範囲、特に好ましくは1.45~1.8の範囲、より好ましくは1.45~1.7の範囲、最も好ましくは1.45~1.6の範囲の屈折率ndを有する。この場合、ガラス基板を光学素子における用途のために採用できる。1つの実施態様において、ガラス基板と微細構造層との間の屈折率ndの差Δndは<0.5である。
【0010】
好ましい実施態様において、前記ガラス基板は非架橋酸素の数NBO>0.3、好ましくはNBO>0.5、より好ましくはNBO>1、特に好ましくはNBO>1.5、および最も好ましくはNBO>2を有し、ここでNBO=(R2O+R’O)/(P25+Al23+B23+TiO2+ZrO2)である。比X=(R2O+R’O-P25-Al23-B23)/(SiO2+P25+Al23+B23)は-0.2より大きく、好ましくは0より大きく、およびより好ましくは0.2より大きい。本発明において、RはLi、Na、Kを含むアルカリ金属であり、且つR’はMg、Ca、Baを含むアルカリ土類金属である。
【0011】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラスは以下の組成を酸化物に基づくモル%で有する:
成分 割合(モル%)
SiO2 60~83
23 0~12
Na2O 0~13
2O 0~7
MgO 0~7
CaO 0~10
BaO 0~1
TiO2 0~4
ZnO 0~6。
【0012】
好ましい実施態様において、前記ガラス基板は1300℃で表面張力σ≧100dyn/cm、特に好ましくは1300℃でσ≧120dyn/cm、より好ましくは1300℃でσ≧140dyn/cmを有する。表面張力が高いほど水/接着剤の接触角は小さくなり、それがガラスと微細構造層との間の結合強度を高める。
【0013】
全体厚さばらつき(TTV)は、ガラスにわたる厚さの最小値と最大値との間の差である。TTVはスキャンパターンにおいて、またはガラス上の一連のポイント測定を行うことによって同定される。さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板は全体厚さばらつき(TTV)TTV≦40μm、好ましくはTTV≦30μm、より好ましくはTTV≦20μm、特に好ましくはTTV≦10μm、および最も好ましくはTTV≦5μmを有する。この場合、低いTTVに起因して、ガラス表面と微細構造層との間の結合強度は均質であり且つ改善される。
【0014】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板は厚さ許容差δ≦80μm、好ましくはδ≦50μm、より好ましくはδ≦20μm、さらに好ましくはδ≦10μm、特に好ましくはδ≦5μm、および最も好ましくはδ≦2μmを有する。
【0015】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板は、反り≦500μm、好ましくは≦100μm、より好ましくは≦80μm、および最も好ましくは≦50μmを示す。この場合、ガラス基板は微細構造層に対して実質的に平行であることができ、それはガラス基板と微細構造層との間の均質な結合強度を改善し得る。
【0016】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板はTTV(Total Thickness Variation)の厚さに対する割合10%未満、好ましくは8%未満、およびより好ましくは5%未満を示す。
【0017】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板は表面粗さRa≦20nm、好ましくはRa≦10nm、およびより好ましくはRa≦5nmを有する。この場合、低い表面粗さに起因して、ガラス基板と微細構造層との間の空の付着層を回避でき、且つ付着層の均質な厚さが達成される。低いガラスの粗さはガラス上にポリマーを塗布するために有益であり、それは一貫した微細構造層を形成するために好適である。他方で、高い粗さによって光学特性が低下することがある。
【0018】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板は400~1500nmの範囲の光波長で透過指数T≧90%、好ましくはT≧91%、より好ましくはT≧92%を示す。ガラス基板はその上にコーティングを有することができる。コーティング、例えば反射防止コーティングによって、透過率はT≧95%、およびより好ましくはT≧99%であることができる。
【0019】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板は熱膨張係数CTE20~300℃≦15×10-6/K、好ましくはCTE20~300℃≦10×10-6/Kを示す。さらには、前記ガラス基板は、CTEガラスと微細構造層のCTEポリマーとの比率CTEポリマー/CTEガラス≦100、好ましくはCTEポリマー/CTEガラス≦80を示す。
【0020】
さらに好ましい実施態様において、ガラス基板と微細構造層との間の屈折率ndの差Δndは≦0.5である。
【0021】
この実施態様において、回折光学部品DOEは、レーザーおよび高出力レーザーを用いる用途のために設計された。ビーム整形におけるマルチスポットビームスプリッタ、およびビームプロファイル修正として使用する場合、そのような部品は種々の用途分野において無限の可能性を提供する。DOEは光学素子、特に回折光学部品または反射光学部品における用途のために採用でき、全てのそれらの光学部品は3Dイメージングおよびセンシング分野、または深さの検出または認識の機能を必要とする分野、例えばエンターテイメント、姿勢認識、手の関節の追跡、および顔認識システム、拡張現実、仮想現実であることができる。
【0022】
さらに好ましい実施態様において、前記ガラス基板はシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、アルミニウムホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、およびリチウムアルミニウムシリケートガラス(LAS)からなる群から選択されるガラス製である。
【0023】
さらに好ましい実施態様において、前記微細構造層はエポキシ樹脂およびアクリル樹脂からなる群から選択されるポリマーからなる。ポリマーはいくつかの無機材料、例えばSiO2を含有してポリマーの屈折率を増加させることができる。しかし、ポリマーは上述のポリマーに限定されない。所望の微細構造を形成できる任意のポリマーを使用して、微細構造を作ることができる。
【0024】
本発明の他の実施態様において、上述の微細光学部品の製造方法が提供される。前記方法は、以下の段階:
・ 厚さt≦1500μm、好ましくはt≦1200μm、より好ましくはt≦1100μmを有し、全体厚さばらつきTTV≦40μm、好ましくはTTV≦30μm、より好ましくはTTV≦20μm、特に好ましくはTTV≦10μm、および最も好ましくはTTV≦5μmを有し、厚さ許容差δ≦80μm、好ましくはδ≦50μm、より好ましくはδ≦20μ、さらに好ましくはδ≦10μm、特に好ましくはδ≦5μm、および最も好ましくはδ≦2μmを有するガラス基板を準備する段階、
・ 前記ガラス基板に微細構造化されたポリマー層を施与する段階を含み、前記微細構造プロファイルは周期的構造の角錐、円、三角、四角、ぎざぎざ、2層のレベルを有するメタサーフェスを含む回折格子、非対称の幾何学的位相光学部品、および光学設計による他の限定されない光学部品であってよい。
【0025】
微細構造化されたポリマー層のガラス基板への施与は、原型作製(origination)、複製、およびパターン転写の3つの主な工程段階からなり、つまり、
(a) ポリマーを基板上に堆積し、UV透過性のテンプレートを上に配置し、
(b) 前記テンプレートを前記ポリマーに押し付け、前記テンプレートを通じてUV光または熱を照射して前記ポリマーを硬化させ、
(c) 前記テンプレートを、インプリントされた造形を有する硬化ポリマーから剥離して微細構造層を形成し、ここで前記テンプレートは金属、石英または他の適した材料製であってよく、且つ前記ポリマーは熱、UVフラッシュまたは他の適した方法によって硬化され得る。
【0026】
さらに好ましい実施態様において、前記微細構造層は代替的に、インプリント、スピンコーティング、噴霧コーティングまたは堆積によって施与されることができ、方法は限定されない。
【0027】
さらに好ましい実施態様において、前記微細構造層は代替的に加熱または同様の方法によって硬化され得る。
【0028】
さらに好ましい実施態様において、前記微細構造層は、ガラス基板の2つの側の表面上に施与され得る。
【0029】
本発明において、ガラスは高いNBO数を示し、従って前記ガラスは負の電荷を伴うより多くの酸素(いわゆる「活性酸素」)を有する。より高いNBO数またはより多くの活性酸素は、ガラス表面の濡れ性を高めることができ且つ水/接着剤の接触角を下げることができる高活性なガラス表面を生成できることが判明した。ガラス表面の良好な濡れ性および水/接着剤の低い接触角は、ガラスおよび接着剤、つまり付着層の結合強度にとって好適であり、安定性を高める。
【0030】
本発明による微細光学部品は、回折光学部品、屈折レンズ、ミラー、プリズム、GRINレンズ、ハイブリッド部品、3Dイメージング/センサにおけるディフューザー、拡張現実、仮想現実、カメラ、自動化製造システム、移動通信手段に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ガラス基板と微細構造層とを有する微細光学部品の簡略図
図2】接触角とNBO値との間の関係のサンプル曲線
図3】接触角とX値との間の関係のサンプル曲線
図4図4A図4C 本発明によるガラスの接着剤の接触角
図5図5A~5B 従来技術および本発明によるガラス表面上の結合の模式図
図6】本発明による活性化されたガラスおよび微細構造層との化学結合の模式図
図7】接触角に対する結合強度の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の好ましい実施態様
本発明の対象、特徴および利点を、添付の図面を参照して以下に記載される実施例および実施態様によってより詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明による、直接的に一緒に結合されたガラス基板2と微細構造層3とを有する微細光学部品1の簡略図を示す。微細構造層3はガラス基板2の上にインプリントされており、光学構造、例えばこの実施態様においてはレンズ4を上に有する。本発明において、光学構造はレンズ4に限定されず、他の光学部品、例えばセンサを含み得る。微細構造層3について、それは一般にエポキシ樹脂、例えばDELO(登録商標) KATIOBOND(登録商標) OM 614(接着剤の一種、UV硬化インプリント材料として)、およびアクリル樹脂を含むポリマー製である。しかしながら、ポリマーはエポキシ樹脂およびアクリル樹脂に限定されるだけでなく、接着剤の特性を有する他のポリマーも含む。
【0034】
ガラス基板2はシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、アルミニウムホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、およびリチウムアルミニウムシリケートガラス(LAS)からなる群から選択される超薄ガラス製である。本発明による超薄ガラスは、例えばダウンドロー、アップドロー、フローティングまたはオーバフローフュージョンの方法によって製造され得る。
【0035】
ガラス基板2は厚さt≦800μm、好ましくはt≦500μm、より好ましくはt≦100μmを有する。ガラス基板2は、接着剤接触角θg 5°未満、好ましくは40°未満、好ましくは30°未満、より好ましくは15°未満を示す。この場合、ガラス基板2の低い接着剤接触角θgに起因して、ガラス基板と微細構造層3との結合強度にとって良好であり、信頼性と安定性が高まる。
【0036】
ガラス基板の接着剤接触角θgは、ガラスの特定のパラメータによって決定されることが判明した。簡単に言えば、上述のとおり、高い非架橋酸素(NBO)は負の電荷を有する酸素(「活性酸素」)をより多く生成でき、且つ高いNBOまたはより多くの活性酸素は高活性のガラス表面を生成でき、それがガラス表面の濡れ性を高め且つ水/接着剤の接触角を減少させることができる。ガラス表面の良好な濡れ性および水/接着剤の低い接触角は、ガラスと接着剤、例えばこの場合は微細構造層3との結合強度にとって好適であり、安定性を高める。本発明において、NBOは以下の式(1)によって定義される:
NBO=(R2O+R’O)/(P25+Al23+B23+TiO2+ZrO2) (1)
前記式中、RはLi、Na、Kを含むアルカリ金属であり、且つR’はMg、Ca、Baを含むアルカリ土類金属である。
【0037】
本発明において、ガラス基板は特定の数のNBOを有する。大きな数のNBOは、性能、信頼性、およびガラス基板2と微細構造層3との間の結合強度を高めることができる。NBOが大きいほどガラス表面上でより多くのOHを引きつけることができ、ガラス表面上のOHが多いほどより良好な液体の濡れ性をもたらすことができるので、ガラス基板2と微細構造層3との間の結合強度が高まる。さらに、大きな数のNBOは水/接着剤の接触角を下げることができ、より低い接触角はより良好な結合強度をもたらす。NBOの値が1を超える場合、それはガラス基板にNBOをもたらす充分な改質剤があり、ガラスの構造が緩んでいることを意味することが判明した。NBOの値が1以下である場合、それはガラス基板に充分なガラス改質剤がなく、且つガラス構造が緻密であることを意味する。本発明において、前記ガラス基板は0.3より大きい、好ましくは0.5より大きい、より好ましくは1より大きい、特に好ましくは1.5より大きい、および最も好ましくは2より大きいNBO値を有する。
【0038】
さらには、ガラス中の活性酸素の割合を評価するために、特定の比X=(R2O+R’O-P25-Al23-B23)/(SiO2+P25+Al23+B23)が定義される。活性酸素はX値の増加に伴って増加することが示される。つまり、Xが大きくなると、より多くの活性酸素があることを意味する。X>0の場合、ガラス基板に充分な活性酸素があり、ガラス基板、特にガラス表面が活性であることを意味する。簡単に言うと、X>0の場合、ガラス表面上に充分な非架橋酸素イオンがあり、活性酸素が空気中の湿分と容易に反応して[OH-]基を形成する。活性な[OH-]基は、ガラス基板2と微細構造層3、例えばポリマーとの間の濡れ性を高め、且つ前記ガラス基板2と前記微細構造層3との間の接触角を減少させるために有益である。ガラス基板の表面付着性を、活性酸素および活性な[OH-]基によって改善できる。
【0039】
実験から、ガラスが低いX値、例えばX≦-0.2を有する場合、それは全ての酸素がガラス形成剤カチオン(例えばSi、Al、B、P)と結合しており、ガラスが不活性であることを意味することが判明した。この場合、ガラス表面上に形成され得る充分な[OH-]がない。さらに、ガラスが高いX値、例えばX≧-0.2を有する場合、ガラス表面上で充分な活性[OH]基およびガラス基板上で接着剤とのより小さな接触角がもたらされる。この特別な特性は、ウェハレベル光学素子および回折光学部品におけるガラスの用途に有益である。本発明によれば、前記ガラス基板は比X≧-0.2、好ましくは≧0、およびより好ましくは≧0.2を有する。
【0040】
より高い値のNBOをもたらすために、本発明において、前記ガラスは以下の組成を酸化物に対するモル%で有する:
成分 割合(モル%)
SiO2 60~83
23 0~12
Na2O 0~13
2O 0~7
MgO 0~7
CaO 0~10
BaO 0~1
TiO2 0~4
ZnO 0~6。
【0041】
本発明において使用されるガラス、特に上述のガラスも改質され得る。例えば、遷移金属イオン、希土類イオン、例えばNd23、Fe23、CoO、NiO、V25、MnO2、TiO2、CuO、CeO2、Cr23、および0~2質量%のAs23、Sb23、SnO2、SO3、Cl、Fおよび/またはCeO2をガラス組成物中に添加することによって色を改質できる。
【0042】
前記ガラス物品を、抗菌機能、またはK+、Na+、Ag+含有塩浴またはCu2+含有塩浴中でのガラス物品のイオン交換を適用することによる化学強化を備えて提供することもできる。イオン交換後、Ag+またはCu2+の濃度は1ppmより高く、好ましくは100ppmより高く、且つより好ましくは1000ppmより高い。
【0043】
微細光学部品1は、その性能の要件に起因して、高い信頼性と高い光学効率を必要とする。それらの要件を満たすために、ガラス基板2と微細構造層3との間の高い結合を達成することが必要である。この点を確実にするために、ガラス基板2は特定の幾何学的特性、例えば表面粗さ、全体厚さばらつき(TTV)、および反り、並びに熱膨張係数(CTE)を有するべきである。それらの特性は、ガラス基板と微細構造層との間の結合の信頼性に影響を及ぼし得る。
【0044】
本発明において、ガラス基板2は全体厚さばらつきTTV≦40μm、好ましくはTTV≦30μm、より好ましくはTTV≦20μm、および最も好ましくはTTV≦10μmを有する。この場合、低いTTVに起因して、微細構造層3はガラス基板2の表面に均質に接触し、微細構造層3とガラス基板2との間の結合が高まる。
【0045】
さらに、ガラス基板と微細構造層との間の結合強度を改善するために、ガラス基板は局所厚さばらつきLTV≦5μm、好ましくはLTV≦1μm、より好ましくはLTV≦0.5μm、および最も好ましくはLTV≦0.1μmを25mm2で有し、なぜならLTVはTTVと同様に、ガラス基板と微細構造層との間の結合強度に影響するからである。
【0046】
さらに、前記ガラス基板は厚さ許容差δ≦80μm、好ましくはδ≦50μm、より好ましくはδ≦20μmを有する。1つの実施態様において、前記ガラス基板は許容差の厚さに対する割合10%未満、好ましくは8%未満、およびより好ましくは5%未満を示す。厚さ許容差δおよび許容差の厚さに対する割合が非常に低いので、微細光学部品上に入射する光はガラス基板を均質に透過することができ、ひいてはイメージング品質が改善される。
【0047】
ガラス基板と微細構造との間の結合強度をさらに改善するために、前記ガラス基板は反り≦200μm、好ましくは,≦100μm、より好ましくは≦80μm、および最も好ましくは≦50μmを示す。この場合、ガラス基板は微細構造層に対して実質的に平行であることができ、それはガラス基板2と微細構造層3との間の均質な結合強度を改善し得る。さらにこれは光の透過率および反射率における微細光学部品の品質を必要に応じて改善することもできる。
【0048】
ガラス基板と微細構造層との間の結合強度をさらに改善するために、本発明によるガラス基板2は表面粗さRa≦20nm、好ましくはRa≦10nm、およびより好ましくはRa≦5nmを有する。
【0049】
光学の観点での微細光学部品の要件により、ガラス基板2は光学の観点でのいくつかの特性を示す必要がある。さらに好ましい実施態様において、ガラス基板2は1.4~2.5の範囲、好ましくは1.5~2.3の範囲、およびより好ましくは1.8~2.0の範囲の屈折率ndを有する。この場合、上記で挙げられた屈折率ndは微細構造層用に存在するポリマーと合致し、ひいては光学効率を改善するので、前記ガラス基板を光学素子における用途のために採用できる。好ましい実施態様において、ガラス基板と微細構造層との間の屈折率ndの差Δndは0.5未満である。
【0050】
光学の観点での微細光学部品の要件により、ガラス基板2は波長400~1500nmの範囲で透過指数T≧90%、好ましくはT≧91%、およびより好ましくはT≧92%を示す。この実施態様において、前記ガラス基板を光学における用途のために、特に3Dイメージングおよびセンサの分野において採用できる。
【0051】
熱衝撃を受ける際に微細構造層3がガラス基板2から剥離することを減らすために、ガラス基板の熱膨張係数CTE20~300℃(CTE)は微細構造層の熱膨張係数と大きく異なるべきではない。理想的な状態では、ガラス基板のCTEは微細構造層のCTEと実質的に等しい。この場合、微細光学部品が熱衝撃を受ける際にガラス基板と微細構造層とが同様に膨張し、その間で変位が生じない。本発明の実施態様において、ガラス基板はCTE20~300℃≦15×10-6/K、好ましくはCTE20~300℃≦12×10-6/Kを示す。
【0052】
さらに、ガラス基板と微細構造層との間の結合強度は、例えばナノインプリント技術を使用することによる微細光学部品にとって重要な要件である。剥離は常に問題であり且つ懸念される。本発明は、適した表面特性、例えば高い表面張力、ガラス基板と微細構造層との間の低い表面張力の割合、特定の数のNBOを有するガラス基板を提供し、ガラスの表面張力および表面の濡れ性を増加させ、それはガラス基板と微細構造層との間の結合強度を改善するために役立つ。表面張力が高いほど小さな水/接着剤の接触角がもたらされ、それがガラス基板の表面の付着特性を高めることが判明した。
【実施例
【0053】
表1は本発明によるガラス基板のいくつかの例を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
RはLi、Na、Kを含むアルカリ金属であり、
R’はMg、Ca、Baを含むアルカリ土類金属であり、
R’’はTi、Zrを含むが、Siは含まない。
【0056】
上記の表から、例2のガラスを例に取ると、前記ガラスは非常に大きい数のNBO、例えば1.16をもたらすので、より高い比の値X=-0.11をもたらす。この場合、それはガラス表面上でより多くのOH-を引きつけ、より良好な液体濡れ性をもたらす。
【0057】
詳細には図4A~4Cを参照し、それは例2、例5および例3についてのガラスの接着剤接触角をそれぞれ示し、それぞれ接着剤接触角10.8°、11.2°および11.3°を有する。この場合、図7と関連して、ガラス基板と微細構造層との間の結合強度は7MPa、6MPaおよび5MPaである。
【0058】
図2および3はそれぞれ、接着剤接触角およびNBOおよびX値の間の関係を示す。それら2つの図から、NBOおよびXの値が高いほど接着剤接触角は小さく、それがガラス基板2と微細構造層3との結合強度および安定性を改善することがわかる。
【0059】
図5Aおよび5Bはガラスの1つの表面上での結合のためのラジカル基の模式図を示す。図5Aは、低い値のNBOおよびガラス表面上で少ない活性酸素を有するガラスの1つの表面上での結合のためのラジカル基の模式図を示す。図5Bは、高い値のNBOおよびガラス表面上でより多くの活性酸素を有するガラスの1つの表面上での結合のためのラジカル基の模式図を示す。
【0060】
図7は微細構造層、例えばポリマーと反応するガラスの原理を示す。この図において、ガラス上の高い[OH-]含有率はガラス表面上により多くの活性酸素、およびより多くの活性なガラス表面をもたらし、ガラスと微細構造層との間のより強い結合をもたらすことも示される。
【0061】
本発明によれば、ガラス基板と微細構造層との間の結合強度は、0.5MPaより大きく、好ましくは1MPaより高く、およびより好ましくは1.5MPaより高い。
【0062】
本発明の他の態様において、上述の微細光学部品の製造方法が提供される。前記方法は、以下の段階:
(a) ポリマーを基板上に堆積し、UV透過性のテンプレートを上に配置する段階、
(b) 前記テンプレートを前記ポリマーに押し付け、前記テンプレートを通じてUV光を照射して前記ポリマーを硬化させる段階、
(c) 前記テンプレートを、インプリントされた造形を有する硬化ポリマー、つまり微細構造層から剥離する段階
を含む。
【0063】
1つの実施態様において、微細構造層3は変性エポキシ樹脂、例えばDELO(登録商標) KATIOBOND(登録商標) OM614製である。この場合、微細構造層3を段階c)で硬化させる際、波長範囲320~380nmのUV光が使用される。簡単に言うと、硬化は25mW/cm2のUV出力で300秒間行われる。硬化後、その微細光学部品を120℃で1時間、熱処理する。
【0064】
本発明によるガラスは大きな数のNBOを示すので、前記ガラスは負の電荷を有する酸素をより多く有する。より高いNBO数またはより多くの活性酸素は、ガラス表面の濡れ性を高めることができ且つ水/接着剤の接触角を下げることができる高活性なガラス表面を生成できる。ガラス表面の良好な濡れ性および水/接着剤の低い接触角は、ガラスおよび接着剤、つまり微細構造層の結合強度にとって好適である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】