(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
B01D 27/08 20060101AFI20221104BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B01D27/08
B01D29/10 510C
B01D29/10 530B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515540
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2020074308
(87)【国際公開番号】W WO2021047945
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019006455.0
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511004689
【氏名又は名称】ハイダック フィルターテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト シュテーレ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ザクラシンスキー
(72)【発明者】
【氏名】フロレンティン バン ウッフェレン
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA04
4D116AA07
4D116AA11
4D116AA12
4D116BC13
4D116BC23
4D116BC27
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4D116BC47
4D116BC77
4D116DD06
4D116QA14
4D116QB03
4D116QB17
4D116QB35
4D116QB37
4D116QB40
4D116QB44
4D116UU10
4D116VV05
(57)【要約】
交換可能なフィルタ要素18が受容されているフィルタハウジング14と、フィルタハウジング14を貯蔵タンクのタンク壁10などの第3構成部材に固定するためのフィルタヘッド26とを備えたフィルタ装置において、フィルタハウジング14は1以上の自由度を提供する支持部28によってフィルタヘッド26に関節式で支持されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能なフィルタ要素(18)が受容されているフィルタハウジング(14)と、前記フィルタハウジング(14)を貯蔵タンクのタンク壁(10)などの第3構成部材に固定するためのフィルタヘッド(26)とを備えたフィルタ装置において、
前記フィルタハウジング(14)は、1以上の自由度を提供する支持部(28)によって前記フィルタヘッド(26)に関節式で支持されていることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記支持部(28)を形成するために、前記フィルタヘッド(26)は2つのヘッド部材(30、32)から形成されており、前記2つのヘッド部材(30、32)のうちの一方のヘッド部材(30)は、前記第3構成部材(10)に不動に固定され、前記2つのヘッド部材(30、32)のうちの他方のヘッド部材(32)はそれに対して揺動可能に支持されていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記支持部(28)を形成するために、前記フィルタハウジング(14)と接続された揺動ヘッド部材(32)は、不動ヘッド部材(30)の凹状に延びる支持面(36)内に案内されている凸状に延びる支持面(34)を有し、それぞれの支持面(34、36)はシェル(44、42)の構成要素であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
不動に配置された支持シェル(42)は、揺動可能な支持シェル(44)を半径方向に取り囲んでおり、好ましくはさねはぎ方式(70、72)の形態のロック装置(46)を用いて、シェル(42、44)は組み立てられた状態で嵌合接続により互いに回動しないように確保されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
揺動されない前記フィルタハウジング(14)の長手方向軸(48)に対して同軸方向に見て、揺動ヘッド部材(32)は、不動ヘッド部材(30)内の球冠部受け(52)内に案内されている球冠部(50)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記シェル(42、44)の湾曲と前記球冠部(50)及び前記球冠部受け(52)の湾曲は、前記フィルタハウジング(14)の角度ずれに対して、互いに当接している関連する支持面が重なり合って滑動できるように選択されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記フィルタハウジング(14)の方向に見て球冠部(50)の延長線上に、揺動ヘッド部材(32)内にバイパス弁(56)が設けられており、そのバイパス弁(56)の閉止部材(58)は、操作されていない状態で前記フィルタハウジング(14)の隣接して配置されたエンドキャップ(22)の開口部(88)を閉じることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記フィルタヘッド(26)は、フランジ付きカバー又はねじ付きカバーの形態で設計されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記フィルタハウジング(14)は、前記フィルタ要素(18)と共に構造ユニットを形成し、この構造ユニットは基本位置で揺動ヘッド部材(32)の受容装置(98)に軸方向に挿入可能であること、及びこの基本位置から回転運動が行われた後で、固定装置(96)はラッチ手段(108)によって受容装置(98)と互いにラッチ位置で係合可能であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記フィルタハウジング(14)は、半径方向に間隔を置いて前記フィルタ要素(18)を取り囲み、流体通過のためにハウジング開口部(16)を備えていること、及び前記フィルタ要素(18)はバイパス弁(56)とは反対側のエンドキャップ(24)で、そのフィルタ要素材料(20)で囲まれた内部(74)が開口部(90)を介して、好ましくはタンク(12)の内部の形態の周囲環境と流体連通していることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能なフィルタ要素が受容されているフィルタハウジングと、フィルタハウジングを貯蔵タンクのタンク壁などの第3構成部材に固定するためのフィルタヘッドとを備えたフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のフィルタ装置は、先行技術である(特許文献1(独国特許出願公開第102015007691号明細書))。このようなフィルタ装置は、油圧タンクへの取付けスペースを節約できるため、利用可能な取付けスペースが相応に小さいコンパクトな油圧駆動装置での使用に適している。タンク内に取り付けることにより、比較的薄壁の流出管から形成されたフィルタハウジングの単純な構造も可能になる。流出管は、フィルタ要素から半径方向に間隔を置いて、通常一種のカバーによって形成されるフィルタヘッドからタンク内部に、流体タンク若しくは貯蔵タンク内の作動時の液体レベルより下にある位置まで延びている。
【0003】
実際には、本来のフィルタ要素を受容するフィルタハウジングの形態の要素受容部と、タンクの入口接続部などの第3構成部材に要素受容部のために設けられた受容開口部のある壁とが互いに角度ずれを有することが起こり得、それによりフィルタ装置を上記の第3構成部材に固定することが困難か不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015007691号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、この先行技術から出発して、タンクなどの第3構成部材の製造公差を補償する働きをするフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、特許請求項1の特徴をその全体において有する装置によって解決される。
【0007】
請求項1の特徴部によれば、本発明の本質的特徴は、フィルタハウジングは1以上の自由度を提供する支持部によって、好ましくは交換可能なフィルタ要素と共に、動作状態においてフィルタヘッドに関節式で支持されていることにある。これにより、ハウジングを備えた流体貯蔵タンクなどの第3構成部材に生じ得る製造公差を補償できる可能性がある。要素受容体としてのフィルタハウジングと、例えば流体貯蔵タンクの入口接続の形態の第3構成部材に設けた受容開口部を備えた割り当て可能な壁との間に角度ずれが存在しても、フィルタハウジングが第3構成部材に固定されたフィルタヘッドに対してほぼ任意に設定可能な取付け方向に揺動できるようにフィルタヘッドに支持されていることによって容易に補償することができる。特に起こりうるミスアライメントを補償する可能性が生じるので、そうでなければ第3構成部材の製造に対して厳密に守らなければならない製造公差を低減することが可能にされており、特にこのようにして軸方向に長い構造のフィルタ要素と、それに対応して組み立てられたフィルタハウジングを有するフィルタ装置も、通常フィルタ装置が固定される相応のハウジング壁を有する第3構成部材に、信頼性が高く廉価な製造コストで固定することができる。
【0008】
有利には、支持部を形成するために、フィルタヘッドは2つのヘッド部材から形成されていて、そのうちの一方のヘッド部材は、第3構成部材に不動に固定され、他方のヘッド部材はそれに対して揺動可能に支持されているように配置構成されている。揺動ヘッド部材を不動ヘッド部材に対して位置決めできるそれぞれの自由度の範囲内で、揺動ヘッド部材と接続されたフィルタハウジングの形態の要素受容体も、不動ヘッド部材に対して設定可能な角度位置に位置決めでき、それによって特に第3構成部材における製造公差を補償することができる。特にそのような角度位置では、フィルタ要素による円滑な粒子濾過を達成するために、フィルタハウジングの垂直取付け位置を優先させる。
【0009】
別の好適な実施形態では、支持部を形成するために、フィルタハウジングと接続された揺動ヘッド部材は、不動ヘッド部材の凹状に延びる支持面内に案内されている凸状に延びる支持面を有しており、それぞれの支持面はシェルの構成要素であるようにされている。このシェル状構造により、要素受容体を備えた一方のヘッド部材が不動に配置された他方のヘッド部材に対して揺動するための一種のボールジョイントが達成される。
【0010】
ここで本発明においてシェルと言う場合、工学における定義の意味で、二重に立体的に湾曲し、特に垂直方向とそれぞれの曲面自体で荷重を吸収することができる面状支持構造として理解される。
【0011】
さらに、本発明によるシェル支持部はコンパクトに設計することができるので、本発明によるフィルタ装置は流体貯蔵タンクなどの関連する第3構成部材にわずかな取付けスペースしか必要としない。さらに、フィルタ要素を包含する長い構造のフィルタハウジングでも、角度調整装置を用いて機能的に信頼性の高い取付けを保証することもできる。
【0012】
本発明によるフィルタ装置の別の有利な実施形態では、不動に配置された支持シェルは、揺動可能な支持シェルを半径方向に取り囲み、好ましくはさねはぎ方式の形態のロック装置を用いて、シェルは組み立てられた状態で嵌合接続により互いに回動しないように確保されるようになっている。
【0013】
フィルタハウジングをフィルタ要素と組み立て、及び分解するためには、これらの構成要素をフィルタヘッドに対して回転させる必要があるが、これは上記の嵌合接続によって可能である。なぜならその場合は揺動可能なヘッド部材が不動に配置されたヘッド部材に対して意図せず一緒に回転することができないからである。むしろ揺動可能なヘッド部材は不動ヘッド部材に対して一度占めた半径方向の取付け位置に留まり、そうして嵌合接続により不動ヘッド部材に対して回動しないように確保されている。その結果、さもなければ引き続き揺動可能に保たれたヘッド部材から要素受容体を取り外し、又は再びこれと接続することが支障なく可能になる。
【0014】
本発明によるフィルタ装置のさらに別の好適な実施形態では、揺動されないフィルタハウジングの長手方向軸に対して同軸方向に見て、揺動ヘッド部材は、不動ヘッド部材内の球冠部受け内に案内されている球冠部を有するようにされている。この場合、球冠部は球穴の曲面を表すことができ、又は一種の扁平に保たれたドームとして設計することができる。ここで言う球冠部受けは、揺動されないフィルタハウジングの長手方向軸の方向に見て軸方向力を吸収する働きをするので、シェル支持部の個々のシェルの半径方向当接面若しくは接触面が互いに「楔固定」することはできない。そのため、濾過動作で発生することが珍しくない軸方向力が生じた場合でも、上記の揺動支持部は依然として機能性が維持される。濾過技術の特定の用途において、半径方向及び軸方向のシェル支持により、動作中にフィルタヘッドに対するフィルタハウジングの角度位置を調整することもできる。
【0015】
シェルの湾曲と球冠部及び球冠部受けの湾曲は、フィルタハウジングの設定可能な角度ずれに対して、互いに当接している関連する支持面が支障なく重なり合って滑動できるように選択されていることが特に有利であることが分かった。この場合、互いに当接している全ての曲面の湾曲を同じに形成し、とりわけ球形にすることが特に有利であることが分かった。
【0016】
本発明によるフィルタ装置のさらに別の好適な実施形態では、フィルタハウジングの方向に見て球冠部の延長上で、揺動ヘッド部材分内にバイパス弁が設けられており、そのバイパス弁の閉止部材は、操作されていない状態でフィルタハウジングの隣接して配置されたエンドキャップの開口部を閉じるようにされている。角度補償の可能性と併せてこのような配置構成により、フィルタハウジング若しくは要素受容体は、バイパス弁ボールに対して常に直角になるように確保でき、そうすることによってのみバイパス弁全体の密封性が保証されている。特に粒子汚染によりフィルタ要素の材料が詰まった場合、バイパス弁を介して未濾過流をフィルタ装置の清浄側に導き、接続された油圧回路の機能シーケンスを損なうことなく流体貯蔵タンクの流体側にもたらすことができる。
【0017】
フィルタヘッドがフランジ付きカバー又はねじ付きカバーの形態で設計されていることが好ましい。フランジ付きカバーは外側から貯蔵タンクのタンク壁に固定ねじで固定できる一方、ねじ付きカバーは貯蔵タンクにおける対応する挿入フランジのねじ山部にねじ込むことができるため、本発明によるフィルタ装置は関連する第3構成部材への多数の取付け方法に適合させることができる。
【0018】
本発明によるフィルタ装置のさらに別の好適な実施形態では、フィルタハウジングはフィルタ要素と共に構造ユニットを形成し、この構造ユニットは基本位置で揺動ヘッド部材の受容装置に軸方向に挿入可能であり、この基本位置から回転運動が行われた後で、固定装置はラッチ手段によって受容装置と互いにラッチ位置で再び解除できるように係合可能であるようにされている。ラッチ位置で作用するラッチ手段は、固定・受容装置を互いに関連する当接面の嵌合接続作用の回転位置に固定するので、装置の動作中でも要素受容体が意図せずにフィルタヘッドから分離することはない。
【0019】
本発明によるフィルタ装置のさらに別の好適な実施形態では、フィルタハウジングは半径方向に間隔を置いてフィルタ要素を取り囲み、流体通過のためにハウジング開口部を備えており、フィルタ要素はバイパス弁とは反対側のエンドキャップで、そのフィルタ要素材料によって囲まれた内部が開口部を介して、好ましくはタンク内部の形態の周囲環境と流体連通しているようにされている。このようにしてフィルタ装置は、リターンフィルタとして液体貯蔵タンクに取付けするように設計することができる。流体中に存在する空気は、ハウジング開口部によって流体から排出することができる。
【0020】
以下に、本発明によるフィルタ装置を、図面に係る実施形態に基づいて詳細に説明する。図面は原理図であり、縮尺通りに表現されていない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明によるフィルタ装置を詳細に図示しない流体貯蔵タンクのタンク壁に取り付けた状態の縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1で壁に固定されたフィルタヘッドの縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1でフィルタヘッドと接続された、フィルタ要素が挿入されたフィルタハウジングの縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すフィルタヘッド若しくはこれをフランジ付きカバーとして形成したフィルタヘッドを下から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すフィルタヘッド若しくはこれをねじ付きカバーとして形成したフィルタヘッドを下から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、角度ずれのない
図1によるフィルタ装置の図である。
【
図7】
図7は、角度ずれのある
図1によるフィルタ装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
個々の図を参照して、本発明によるフィルタ装置を、タンク(図示せず)内に取り付けるために設けられているフィルタ、特にリターンフィルタの例で説明する。ここで、図示されていない油圧供給回路のための流体貯蔵タンクとして使用されるタンクは、上側タンク壁10と、関連するタンク12の内部が示されている。フィルタ装置は、流体通過箇所16(
図3を参照)を備えたフィルタハウジング14を有する。フィルタハウジング14の内部には交換可能なフィルタ要素18が受容されており、その要素材料は上側エンドキャップ22と下側エンドキャップ24との間に延びている。流出管として働くフィルタハウジング14は薄壁の中空シリンダの形態で設計されて、設定可能な半径方向間隔を置いてフィルタ要素18の要素材料20を取り囲んでいる。
【0023】
フィルタハウジング14は、
図2の断面図に拡大して再現されているように、フィルタヘッド26に取り外し可能に当て付けられている。
図2に示されるフィルタヘッド26は、フィルタハウジング14を1以上の自由度を提供する支持部28によって関節式で揺動可能に支持することを可能にする。支持部28を形成するために、フィルタヘッド26は2つのヘッド部材30、32を有し、そのうち一方のヘッド部材30はタンク壁10の形態の第3構成部材に不動に固定され、これに対して他方のヘッド部材32は不動ヘッド部材30に揺動可能に固定されている。このために揺動ヘッド部材32は外周側に凸状に延びる支持面34を有しており、これは不動ヘッド部材30の対応する凹状に延びる支持面36内で案内されている。不動と呼ばれる支持面36もまた周面として、不動ヘッド部材30の内側に連続的に配置されている。この実施形態では軸方向に見て不動支持面36は凸状の可動支持面34を覆うように把持しており、その結果として角度ずれを補償するために図示の面で垂直な揺動軸38を中心に揺動運動する際に、支持面34、36はいかなる場合も互いに係合したままである。
図2の方向で見て不動ヘッド部材30の内側に、揺動運動の周方向限界が停止面40として設けられている。このようにして両ヘッド部材30、32により、内側のヘッド部材32に対して設定可能な揺動運動をする一種のボールジョイントが提供されている。
【0024】
上記の支持面34及び36は、それぞれシェル若しくはシェル本体42又は44の構成要素である。好ましくは両ヘッド部材30、32は、ポリアミドPA6又はポリアミドPA66などのプラスチック材料でできている。両ヘッド部材30、32は、好ましくは射出成形法により各プラスチック材料からそれぞれ一体的に得られる。しかしまた、シェルを個々のセグメントから製造し、接着又は溶接によって垂直構造(図示せず)で互いに接続する可能性もある。不動に配置された支持シェル42は、揺動可能な支持シェル44を半径方向に取り囲み、シェル42、44は組み立てた状態で、好ましくはさねはぎ方式の形態のロック装置46により、嵌合接続によって互いに半径方向に回動しないように確保されている。
【0025】
さらに、揺動ヘッド部材32はその上側に、揺動していない状態でフィルタ装置の長手方向軸48に対して同軸方向に球冠部50を有しており、これは不動ヘッド部材30内の球冠部受け52内に間隔を置かずに案内されている。球欠の曲面若しくは扁平なドームとして形成された球冠部50は、基部側で揺動ヘッド部材32の上面54につながり、
図2の視線方向で長手方向軸48から外側へ下降し、縁部側で凸状に形成された支持面34に移行している。このように形成された縁部は、周方向停止面40の対応物をなしている。好ましくはシェル42及び44の湾曲と、球冠部50及び球冠部受け52の湾曲は同じに形成されているため、割り当て可能な支持面は揺動軸38を中心に揺動する際に支障なく互いに重なって滑動できる。
【0026】
フィルタハウジング14の方向で球冠部50の延長線上に、揺動ヘッド部材内にバイパス弁が配置されており、その板状の閉止部材58は、圧縮ばね60の作用下で閉鎖位置に保持される。さらに、不動ヘッド部材30は突出した当接縁部62を有し、この当接縁部62はタンク壁10の上側に載置されて(
図1を参照)フィルタヘッド26をタンク壁10の上側に固定することを可能にする。その際に、詳細に図示されていない固定ねじが設定可能な貫通箇所64で当接縁部62を貫通し、このようにしてねじ接続の固定を可能にする。さらに、不動ヘッド部材30の上面54には、特に
図7に示されているように、揺動可能な操作ブラケット66が枢着されていて、フィルタ装置を特に流体貯蔵タンクの形態の第3構成要素から取り外すことを可能にする。
図7で起こされている操作ブラケット66は、使用しないときは揺動して戻すことができ、次いでフィルタヘッド26の上面54に平らに置いて不使用位置にもたらすことができる。さらに
図4及び
図5に示すように、不動ヘッド部材30の外周側には直径方向に対向する2つの挿入スロット68が設けられており、これらは揺動ヘッド部材32が不動ヘッド部材30に突入係止するのを容易にする働きをする。
【0027】
さらに
図4及び
図5に示すように、不動ヘッド部材30はその内側に長手方向軸48に対して直径方向に対向する4箇所に突出した二重ウェブ70を有しており、これらはシェル本体44の下側でその壁の連続性を中断する割り当て可能な溝72に、いわゆる「さね」として突入係合する。その際にさねはぎ方式のさねとして設計された二重ウェブ70が、それぞれの溝に正確にフィットして係合する。このようにして両シェル本体42、44は、
図4の表現に従い組み立てた状態で嵌合接続により半径方向に回動しないように確保されている。
【0028】
特に
図3に示されているフィルタ要素18を備えたフィルタハウジング14は、フィルタ要素18のために、中空円筒状に形成されてその内側でフィルタキャビティ74を取り囲むプリーツ要素材料20を示す。さらに、フィルタ媒体若しくは要素材料20はその外側で、互いに接続された個々の管セグメント78から構成された支持管76によって支持されている。支持管76は要素材料20を外側に向けて安定化させ、個々の管セグメント78に対する流体透過性格子構造から構成されている。個々の管セグメント78はそれらの互いに隣接する端部で、半径方向に突出するウェブ82を有するクリップ接続若しくはスナップ接続80を介して互いに接続されており、これらのウェブ82にフィルタハウジング11若しくは流出管はその内側で圧力安定に支持され得る。さらに、支持管76の空いている上端部とその下端部は、それぞれ1個のクリップ接続若しくはスナップ接続84を介して、上側エンドキャップ22若しくは下側エンドキャップ24と接続されているため、互いに隣接して対向する両エンドキャップ22、24は、支持管76を介して互いに所定の距離を置いて保持されて、互いに堅固な全体構造を形成する。両エンドキャップ22、24は、それぞれ1個の溝状の周縁部86を有し、その中に薄肉のフィルタハウジング14の端部側が、上側エンドキャップ22に対して軸方向の遊びを伴って挿入されており、そのようにして同様に支持管76に固定されている。さらに、上側エンドキャップ22も下側エンドキャップ24も、貫通孔88若しくは90の形態の通路を有しており、上側貫通孔88は通常の濾過動作中はバイパス弁56の閉止部材58によって閉じられている。他方、下側貫通孔90は、タンク内の装着ソケット(図示せず)に被せられ、これにより、フィルタキャビティ74とタンク12の内部との間に流体連通が作られている。
【0029】
さらに、上側エンドキャップ22は、円周上に若干数の流体通路92を有し、これによりバイパス弁56の閉止部材58が操作されて圧縮ばね60の作用に抗して持ち上げられると、流体通路92を介してフィルタキャビティ74をフィルタハウジング14の内部94と直接接続することができる。これらの流体通路92は、フィルタハウジング14と要素材料20を伴う支持管76の半径方向の間隔から生じる流体スペースを形成する。上側要素22は、フィルタ要素18を伴うフィルタハウジング14の位置を取り付けられた機能位置に維持する目的で、フィルタヘッド26の内部スペース100にある受容装置98と協働する固定装置96を有している。固定装置96は、特に3個の固定ウェブ102を有しており、それらのうち2個だけが
図3に示されているが、互いに120°ずれて、包囲スペース86を外側に向けて限定している周縁部の近傍で、
図3の方向で見て円板状の上側エンドキャップ22から上方に向かって延びている。その限りで固定装置96は、上側エンドキャップ22の一体的な構成要素である。固定ウェブ102に対応する配置で、受容装置98は固定ウェブ102のための案内軌道を備えた相応のガイド部材104を有している。そのようなガイド部材104は、好ましくは揺動ヘッド部材32の一体的な構成要素であり、その内側に配置されている(
図2を参照)。
【0030】
フィルタハウジング14の取付け工程のシーケンスは段階的に行われ、第1段階では上側エンドキャップ22が軸方向の動きで内部スペース100に挿入される。この挿入は、内部スペース100における空きスペース(
図4を参照)として互いに120度ずれた固定ウェブ102がそれぞれ空き取付けスペース106に位置合わせされているフィルタハウジング14の回転位置で行われる。次に、フィルタハウジング14は、取付けスペース106からラッチ位置に到達するまでさらに2段階で回転され、この回転運動中に個々の固定ウェブ102は、案内軌道によりカバー26内のガイド部材104に沿って案内されている。この軸方向挿入運動とその後の回転運動は、バイパス弁56の圧縮ばね60のばね力に抗して行われることができ、そのようにしてラッチ位置でのプリテンションが達成される。最後に、このラッチ位置において固定ウェブ102の端部にばね弾性的に配置された突起状のラッチ部材108は、それぞれカバー側に配置されたガイド部材104の割り当て可能な拘束されていない閉鎖端部を覆うように把持して、交換可能なフィルタ要素18を備えたフィルタハウジング14を軸方向と半径方向でフィルタヘッド26に固定できる。これに関する解決策の複雑さに関して、上述したラッチ機構の設計の詳細に関する限り、その後公開された独国特許出願DE102019005323.0号を参照されたい。
【0031】
図5に係る実施形態は、
図4による解決策に対して、フランジプレートの代わりに、関連するフィルタヘッド26がねじ付きカバー部材として設計され、フィルタ装置をタンク壁10などの第3構成部材に固定できるように変更されているにすぎず、タンク壁10は詳細に図示されないフランジを介して雌ねじを備えていて、
図5によるフィルタヘッド26をその雄ねじ110によってねじ込むことを可能にする。それ以外の点では
図4による解決策の構成と同じであり、したがってこれまでの説明は
図5によるカバーの解決策にも適用される。
【0032】
特に
図6及び
図7に示すように、一方は角度ずれのない取付け状況に関し、他方は角度ずれのある取付け状況に関するものであるが、タンク壁形態が等しくない取付け状況に関係なく、フィルタ要素18を備えたフィルタハウジング14は、フィルタヘッド26内の揺動支持部を介してバイパス弁56に対して軸方向に整列して保持できるので、全体としてフィルタ装置の機能的に信頼できる使用が常に確保されている。上記の揺動支持部は3つの空間方向全てにおいて揺動運動を許容するが、
図7の表現が示すように、それ以上の揺動運動の制限は上側エンドキャップ22の下側周縁部112によっても形成されており、最大揺動変位において不動に配置されたヘッド部材30の凸状に成形されたシェル42の下面に突き当たる。この限りでフィルタハウジング14の可能な揺動運動に対して、一種の揺動円錐が設定されており、その最大開口円錐は両ヘッド部材30、32の間の、及び/又はフィルタハウジング14と不動ヘッド部材30との間の停止限界によって規定されている。
【国際調査報告】