(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ヒトサイトメガロウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20221104BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20221104BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20221104BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221104BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221104BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221104BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20221104BHJP
C07K 14/045 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P31/22
A61K9/51
A61K47/24
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/10
A61K9/10
A61K48/00
C12N15/38 ZNA
C07K14/045
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515906
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020050392
(87)【国際公開番号】W WO2021050864
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513084469
【氏名又は名称】モデルナティエックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ModernaTX,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(72)【発明者】
【氏名】シヌ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロリ・パンサー
(72)【発明者】
【氏名】タル・ザックス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA65
4C076BB15
4C076CC35
4C076DD49
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF01
4C076FF63
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA21
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BB23
4C085EE03
4C085GG03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045BA55
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示の諸態様は、脂質ナノ粒子内に製剤化されたhCMV抗原ポリペプチドgH、gL、UL128、UL130、UL131A、及びgBを含むmRNAワクチンを投与することにより、対象内でヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるための方法に関し、hCMVに対する抗原特異的免疫応答は、i)上皮細胞感染に対する少なくとも3倍の幾何平均力価、またはii)上皮細胞感染に対する9~41の幾何平均比、またはiii)線維芽細胞感染に対する4~8倍の幾何平均比を有する中和抗体をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるための方法であって、
30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)の前記mRNAポリヌクレオチドが少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、前記免疫原性組成物を、ヒト対象に投与することを含み、
それにより、前記対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、
前記免疫原性組成物の投与後、前記ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体の幾何平均力価(GMT)が、ベースラインよりも少なくとも3倍増加する、前記方法。
【請求項2】
ヒト対象におけるヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるための方法であって、
30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)の前記mRNAポリヌクレオチドが少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、前記免疫原性組成物を、ヒト対象に投与することを含み、
それにより、前記対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、
前記免疫原性組成物の投与後、前記ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体の幾何平均比(GMR)が約9~41となる、前記方法。
【請求項3】
ヒト対象におけるヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるための方法であって、
30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)の前記mRNAポリヌクレオチドが少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、前記免疫原性組成物を、ヒト対象に投与することを含み、
それにより、前記対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、
前記免疫原性組成物の投与後、前記ヒト対象内で、線維芽細胞感染に対する中和抗体の幾何平均比(GMR)が約4~8となる、前記方法。
【請求項4】
前記免疫原性組成物が30μgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫原性組成物が90μgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫原性組成物が180μgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫原性組成物が300μgの用量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫原性組成物の少なくとも2回の用量または少なくとも3回の用量が投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫原性組成物の3回の用量が投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫原性組成物の用量が、1日目と、2か月目の初め頃と、6か月目の初め頃とに投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫原性組成物の単回用量が、hCMVに対する血清中和抗体力価を引き出す、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫原性組成物の単回用量後、2回用量後、または3回用量後、前記ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTが、ベースラインよりも少なくとも3倍増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫原性組成物の2回用量後または3回用量後、前記ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTが、ベースラインよりも少なくとも3倍増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ワクチン組成物の2回用量後、前記ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTが、ベースラインよりも9~20倍増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ワクチン組成物の3回用量後、前記対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTが、ベースラインよりも20~40倍増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
30μg以上の用量の少なくとも2回の前記免疫原性組成物を投与された血清反応陽性対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMRが14~26の範囲内にある、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
30μg以上の用量の少なくとも3回の前記免疫原性組成物を投与された血清反応陽性対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMRが14~26の範囲内にある、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
30μg以上の用量の少なくとも3回の前記免疫原性組成物を投与された血清反応陽性対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMRが14~41の範囲内にある、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記GMRが30~41の範囲内にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
約180μgの用量の少なくとも3回が血清反応陽性の対象に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記脂質ナノ粒子が、イオン化可能なカチオン性脂質と、コレステロールと、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)と、1,2ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)とを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記イオン化可能なカチオン性脂質が化合物Iを含む、請求項21に記載の方法。
【化1】
【請求項23】
前記脂質ナノ粒子が、20~60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、25~55mol%のコレステロールと、5~25mol%のDSPCと、及び0.5~15mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記脂質ナノ粒子が、45~55mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、35~40mol%のコレステロールと、5~15mol%のDSPCと、1~2mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記脂質ナノ粒子が、50mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、38.5mol%のコレステロールと、10mol%のDSPCと、1.5mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ワクチン組成物中のhCMV gH、gL、UL128、UL130、UL131A、及びgBタンパク質をコードする前記mRNAの重量比が1:1:1:1:1:1である、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
hCMV gH、gL、UL128、UL130、UL131A、及びgBタンパク質をコードする前記mRNAが、1-メチルプソイドウリジン(1-methylpseudourine)化学修飾を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
hCMV gHタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号5の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
hCMV gHタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号5の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
hCMV gLタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号6の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
hCMV gLタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号6の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
hCMV UL128タンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号2の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
hCMV UL128タンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号2の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
hCMV UL130タンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号3の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
hCMV UL130タンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号3の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
hCMV UL131Aタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号4の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
hCMV UL131Aタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号4の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
hCMV gBタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号1の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
hCMV gBタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号1の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
hCMV gHタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号5の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV gLタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号6の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV UL128タンパク質をコードする前記mRNAが配列番号2の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV UL130タンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号3の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV UL131Aタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号4の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV gBタンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号1の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記hCMV gHポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号11の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、前記hCMV gLポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号12の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、前記hCMV UL128ポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号8の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、前記hCMV UL130ポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号9の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、前記hCMV UL131Aポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号10の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、及び/または前記hCMV gBポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号7の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫原性組成物が、筋肉内注射を介し投与される、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ヒト対象が、前記hCMV mRNA免疫原性組成物を投与される前はCMV血清反応陽性である、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ヒト対象が、前記hCMV mRNA免疫原性組成物を投与される前はCMV血清反応陰性である、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
hCMV pp65ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む少なくとも1つのメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドを含む第2の免疫原性組成物の5μg~100μgの用量を、ヒト対象に投与することをさらに含み、前記mRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の免疫原性組成物が10μgの用量で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の免疫原性組成物が40μgの用量で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の免疫原性組成物が80μgの用量で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
hCMV pp65タンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号21の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
hCMV pp65タンパク質をコードする前記mRNAが、配列番号21の配列のヌクレオチド配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記hCMV pp65ポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号23の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記第2のワクチン組成物が筋肉内注射を介し投与される、請求項45~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記hCMV gHポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号11を含み、前記hCMV gLポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号12を含み、前記hCMV UL128ポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号8を含み、前記hCMV UL130ポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号9を含み、前記hCMV UL131Aポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号10を含み、及び/または前記hCMV gBポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが配列番号7の配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
前記hCMV pp65ポリペプチドをコードする前記オープンリーディングフレームが、配列番号23を含む、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国特許法第119条(e)に基づき、2019年9月11日出願の米国仮出願第62/899,129号(表題「Human Cytomegalovirus Vaccine」)、2019年9月12日出願の米国仮出願第62/899,624号(表題「Human Cytomegalovirus Vaccine」)、及び2020年1月8日出願の米国仮出願第62/958,623号(表題「Human Cytomegalovirus Vaccine」)の利益を主張し、これらの各々の開示内容の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
EFSWEB経由でテキストファイルとして提出した配列表の参照
本出願は、EFS-Web経由でASCII形式で提出された配列表を含み、この配列表は、その全体が参照によって本明細書に援用される。このASCIIファイルは2020年9月4日に作成され、名称はM137870131WO00-SEQ-OMJ.txt、サイズは55キロバイトである。
【背景技術】
【0003】
サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルス科のウイルスである。CMVは、主に感染性粘膜分泌物との接触または子宮内で獲得され、一次感染後に潜伏する。米国におけるCMVの血清学的有病率は、全体では50.4%であるが、資源の乏しい地域では60%~100%の比率で報告されている。
【0004】
CMVは最も一般的な先天性ウイルス感染症であり、米国では年間30,000~40,000人の乳児(出生数の0.6%~2%)が罹患している。妊娠初期3か月での先天性CMV感染症は、最も有害な妊娠転帰に関連するが、症候性の先天性CMVは、妊娠中のいかなる時期の感染からも生じ得る。妊娠中にCMVに一次感染した母親のおよそ30%~35%がウイルスを胎児に媒介し、このような新生児のうち12%が症候性疾患を有し、およそ4%が生後1年以内に死亡する。加えて、出生時に症候性であるCMV感染乳児のおよそ半数が、知的障害、感音性難聴、及び発達遅延などの後期合併症を発症する。先天性CMV感染症が小児の健康に与える影響が重大であることから、2017年のInstitute of Medicine Reportでは、先天性CMV感染症防止のためのCMVワクチンの開発が最優先カテゴリーに位置付けられている。
【0005】
固形臓器または造血幹細胞移植後に慢性的に免疫抑制療法を受けている患者において、移植片拒絶反応または末端臓器疾患を引き起こすCMV感染症は、高い死亡率に結び付くものである。米国では、年間およそ30,000人の成人が固形臓器移植を受け、22,000人が造血細胞移植を受けている。全体的に見て、抗ウイルス薬予防投与を受ける固形臓器移植患者の8%~40%及び造血細胞移植患者の3%~6%が、CMVに起因する移植後合併症を発症する。移植患者におけるCMV感染症の主な合併症は、移植組織の急性または慢性拒絶反応、ならびに侵襲性疾患(例えば、大腸炎、肝炎、及び脳炎)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮出願第62/899,129号(表題「Human Cytomegalovirus Vaccine」)
【特許文献2】米国仮出願第62/899,624号(表題「Human Cytomegalovirus Vaccine」)
【特許文献3】米国仮出願第62/958,623号(表題「Human Cytomegalovirus Vaccine」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先天性CMV感染症を防止するための安全かつ有効な方法に対するアンメット・メディカル・ニーズは非常に高い。もう1つのアンメット・メディカル・ニーズは、固形臓器または造血幹細胞移植後に慢性的な免疫抑制療法を受けている患者におけるCMV感染症の防止である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
メッセンジャーリボ核酸(mRNA)ベースのワクチンプラットフォームは、対応するmRNAの送達及び細胞取込みによって標的ウイルス抗原がin vivoで産生されるという原理及び知見に基づいて開発された。そして、mRNAは細胞内でリボソーム翻訳を経て、ワクチンmRNAによってコードされるタンパク質抗原を内在的に発現する。このようなmRNAベースワクチンは、細胞核に侵入したりヒトゲノムと相互作用したりせず、複製せず、一過性に発現する。これにより、mRNAワクチンは、野生型ウイルス感染を模倣した方法で、構造的にインタクトなタンパク質抗原の内在的産生を刺激する機構を提供し、CMVなどの感染性病原体に対する高度に標的化された免疫応答を誘導することができる。
【0009】
いくつかの態様において、本明細書では、全長CMV糖タンパク質B(gB)をコードするmRNAと、五量体gH/gL/UL128/UL130/UL131A糖タンパク質複合体をコードするmRNAとを含む、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)ベース予防ワクチン(本明細書ではhCMV mRNAワクチンAと呼ぶ)について説明する。
【0010】
本開示のいくつかの態様は、ヒト対象内でヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるための方法を提供し、当該方法は、30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)のmRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、免疫原性組成物をヒト対象に投与することを含み、それにより、当該対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、当該ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体の幾何平均力価(GMT)は、当該免疫原性組成物の投与後、ベースラインよりも少なくとも3倍増加する。
【0011】
本開示のさらなる態様は、ヒト対象内でヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるための方法を提供し、当該方法は、30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)のmRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、免疫原性組成物をヒト対象に投与することを含み、それにより、当該対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、当該ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体の幾何平均比(GMR)は、当該免疫原性組成物の投与後、約9~41となる。
【0012】
本開示のさらなる態様は、ヒト対象内でヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるための方法を提供し、当該方法は、30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)のmRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、免疫原性組成物をヒト対象に投与することを含み、それにより、当該対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、当該ヒト対象内で、線維芽細胞感染に対する中和抗体の幾何平均比(GMR)は、当該免疫原性組成物の投与後、約4~8となる。
【0013】
本開示のさらなる態様は、ヒト対象内でヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるのに使用するための組成物を提供し、当該使用は、30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)のmRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、免疫原性組成物をヒト対象に投与することを含み、それにより、当該対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、当該ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体の幾何平均力価(GMT)は、当該免疫原性組成物の投与後、ベースラインよりも少なくとも3倍増加する。
【0014】
本開示のさらなる態様は、ヒト対象内でヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるのに使用するための組成物を提供し、当該使用は、30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)のmRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、免疫原性組成物をヒト対象に投与することを含み、それにより、当該対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、当該ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体の幾何平均比(GMR)は、当該免疫原性組成物の投与後、約9~41となる。
【0015】
本開示のさらなる態様は、ヒト対象内でヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対する抗原特異的免疫応答を生じさせるのに使用するための組成物を提供し、当該使用は、30μg~200μgの用量の免疫原性組成物であって、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含み、(a)~(f)のmRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、免疫原性組成物をヒト対象に投与することを含み、それにより、当該対象内でのhCMVに対する抗原特異的免疫応答を誘導し、当該ヒト対象内で、線維芽細胞感染に対する中和抗体の幾何平均比(GMR)は、当該免疫原性組成物の投与後、約4~8となる。
【0016】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、30μgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、90μgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、180μgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、300μgの用量で投与される。
【0017】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物の少なくとも2回用量または少なくとも3回用量が投与される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物の3回用量が投与される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物の用量は、1日目と、2か月目の初め頃と、6か月目の初め頃とに投与される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物の単回投与の投与は、hCMVに対する血清中和抗体力価を引き出す。
【0018】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物の単回用量後、2回用量後、または3回用量後、ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTは、ベースラインよりも少なくとも3倍増加する。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物の2回用量後または3回用量後、ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTは、ベースラインよりも少なくとも3倍増加する。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物の2回用量後、ヒト対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTは、ベースラインよりも9~20倍増加する。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物の3回用量後、対象内で、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMTは、ベースラインよりも20~40倍増加する。
【0019】
いくつかの実施形態において、少なくとも2回の30μg以上の用量の免疫原性組成物を投与された血清反応陽性対象において、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMRは14~26の範囲内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも3回の30μg以上の用量の免疫原性組成物を投与された血清反応陽性対象において、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMRは14~26の範囲内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも3回の30μg以上の用量の免疫原性組成物を投与された血清反応陽性対象において、上皮細胞感染に対する中和抗体のGMRは14~41の範囲内にある。いくつかの実施形態において、GMRは30~41の範囲内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも3回の約180μgの用量が血清反応陽性対象に投与される。
【0020】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、イオン化可能なカチオン性脂質と、コレステロールと、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)と、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)とを含む。いくつかの実施形態において、イオン化可能なカチオン性脂質は、化合物Iを含む。
【化1】
【0021】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、20~60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、25~55mol%のコレステロールと、5~25mol%のDSPCと、0.5~15mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、45~55mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、35~40mol%のコレステロールと、5~15mol%のDSPCと、1~2mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、50mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、38.5mol%のコレステロールと、10mol%のDSPCと、1.5mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、ワクチン組成物中のhCMV gH、gL、UL128、UL130、UL131A、及びgBタンパク質をコードするmRNAの重量比は、1:1:1:1:1:1である。いくつかの実施形態において、hCMV gH、gL、UL128、UL130、UL131A、及びgBタンパク質をコードするmRNAは、1-メチルプソイドウリジン(1-methylpseudourine)の化学修飾を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、hCMV gHタンパク質をコードするmRNAは、配列番号5の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gHタンパク質をコードするmRNAは、配列番号5の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、hCMV gLタンパク質をコードするmRNAは、配列番号6の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gLタンパク質をコードするmRNAは、配列番号6の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、hCMV UL128タンパク質をコードするmRNAは、配列番号2の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL128タンパク質をコードするmRNAは、配列番号2の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、hCMV UL130タンパク質をコードするmRNAは、配列番号3の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL130タンパク質をコードするmRNAは、配列番号3の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、hCMV UL131Aタンパク質をコードするmRNAは、配列番号4の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL131Aタンパク質をコードするmRNAは、配列番号4の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、hCMV gBタンパク質をコードするmRNAは、配列番号1の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gBタンパク質をコードするmRNAは、配列番号1の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、hCMV gHタンパク質をコードするmRNAは、配列番号5の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV gLタンパク質をコードするmRNAは、配列番号6の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV UL128タンパク質をコードするmRNAは、配列番号2の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV UL130タンパク質をコードするmRNAは、配列番号3の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV UL131Aタンパク質をコードするmRNAは、配列番号4の配列のヌクレオチド配列を含み、hCMV gBタンパク質をコードするmRNAは、配列番号1の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号11の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号12の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号8の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号9の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号10の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、及び/またはhCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号7の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、筋肉内注射を介し投与される。
【0032】
いくつかの実施形態において、ヒト対象は、hCMV mRNA免疫原性組成物を投与される前はCMV血清反応陽性である。いくつかの実施形態において、ヒト対象は、hCMV mRNA免疫原性組成物を投与される前はCMV血清反応陰性である。
【0033】
いくつかの実施形態において、本方法はさらに、5μg~100μgの用量の第2の免疫原性組成物であって、hCMV pp65ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む少なくとも1つのメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドを含み、当該mRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの脂質ナノ粒子内に製剤化される、第2の免疫原性組成物をヒト対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、第2の免疫原性組成物は、10μgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、第2の免疫原性組成物は、40μgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、第2の免疫原性組成物は、80μgの用量で投与される。
【0034】
いくつかの実施形態において、hCMV pp65タンパク質をコードするmRNAは、配列番号21の配列に対し少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV pp65タンパク質をコードするmRNAは、配列番号21の配列のヌクレオチド配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、hCMV pp65ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号23の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のワクチン組成物は、筋肉内注射を介し投与される。
【0036】
いくつかの実施形態において、hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号11を含み、hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号12を含み、hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号8を含み、hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号9を含み、hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号10を含み、及び/またはhCMV gBポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは配列番号7の配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV pp65ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、配列番号23を含む。
【0037】
本発明の各制限は、本発明の様々な実施形態を包含し得る。そのため、任意の1つの要素または要素の組合せを伴う本発明の各制限は、本発明の各態様に含まれ得ることが予測される。本発明は、その適用において、以下の説明で示されるまたは図面で例示される構成の詳細にも構成要素の配置にも限定されるものではない。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。
【0038】
添付の図面は、一定の縮尺で描画したわけではない。図面において、様々な図に示されている各々の同一またはほぼ同一の構成要素は、類似の数字によって表されている。分かりやすくするため、あらゆる構成要素があらゆる図面において標識されているとは限らない。図面の説明は以下の通り。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1-1】
図1。研究デザインの概要を示す。略語は以下の通り。IST:内部安全性チーム、SMC:安全性モニタリング委員会。
【
図2】用量漸増フェーズAにおける採血時点を示す。略語は以下の通り。A:抗体媒介免疫原性のための血液試料、S:安全性のための血液試料。「来院」は、病院への来院を意味する。
【
図3】用量漸増フェーズB、用量選択フェーズB、及びセンチネル拡大フェーズCの採血時点を示す。略語は以下の通り。A:抗体媒介免疫原性のための血液試料、C:細胞媒介免疫原性のための血液試料、S:安全性のための血液試料。「来院」は、病院への来院を意味する。
【
図4】用量漸増フェーズA及びBにおける順次登録及び内部安全性チームの安全性評価の概要を示す。略語は以下の通り。IST:内部安全性チーム、SMC:安全性モニタリング委員会。
【
図5】センチネル拡大フェーズCの順次登録及び安全性評価の概要を示す。略語は以下の通り。IST:内部安全性チーム、SMC:安全性モニタリング委員会。
【
図6】フェーズA及びフェーズBの血清反応陰性対象における上皮細胞感染パープロトコルセットに対する中和抗体の結果を示す。灰色の基準実線は、本試験におけるCMV血清反応陽性対象のベースラインGMTを表す。1回目投与からの日数:1日目=1回目ワクチン接種、28日目=1回目ワクチン接種から1か月後、84日目=2回目ワクチン接種の1か月後、168日目=6か月目で3回目ワクチン接種前、196日目=3回目ワクチン接種の1か月後、336日目=12か月目で3回目ワクチン接種の6か月後。
【
図7】フェーズBにおける上皮細胞感染パープロトコルセットに対する中和抗体の結果を血清状態別に示す。灰色の実線は、本試験におけるCMV血清反応陽性対象のベースラインGMTを表す。1回目投与からの日数:1日目=1回目ワクチン接種、28日目=1回目ワクチン接種の1か月後、84日目=2回目ワクチン接種の1か月後。
【
図8】フェーズA及びBの血清反応陰性対象における線維芽細胞感染パープロトコルセットに対する中和抗体の結果を示す。灰色の基準実線は、本試験におけるCMV血清反応陽性対象のベースラインGMTを表す。1回目投与からの日数:1日目=1回目ワクチン接種、28日目=1回目ワクチン接種の1か月後、84日目=2回目ワクチン接種の1か月後、168日目=6か月目で3回目ワクチン接種前、196日目=3回目ワクチン接種の1か月後、336日目=12か月目で3回目ワクチン接種の6か月後。
【
図9】フェーズBにおける線維芽細胞中和抗体の結果を血清状態パープロトコルセット別に示す。灰色の基準実線は、本試験におけるCMV血清反応陽性対象のベースラインGMTを表す。1回目投与からの日数:1日目=1回目ワクチン接種、28日目=1回目ワクチン接種の1か月後、84日目=2回目ワクチン接種の1か月後。
【
図10】上皮細胞感染に対する中和抗体応答を血清状態別に示す。
【
図11】線維芽細胞感染に対する中和抗体応答を血清状態別に示す。*CMV血清反応陰性フェーズBプラセボレシピエント1例のnAb力価は、1か月目時点と3か月目時点との間に発生した血清転換に一致するものであった。
【
図12】CMV血清反応陰性対象パープロトコルセットにおける上皮細胞芽細胞感染に対する中和抗体応答を示す。*CMV血清反応陰性フェーズBプラセボレシピエント1例のnAb力価は、1か月目時点と3か月目時点との間に発生した血清転換に一致するものであった。
【
図13】CMV血清反応陰性対象パープロトコルセットにおける線維芽細胞感染に対する中和抗体応答を示す。*CMV血清反応陰性フェーズBプラセボレシピエント1例のnAb力価は、1か月目時点と3か月目時点との間に発生した血清変換と一致するものであった。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書に示す臨床試験データの結果は、本開示のhCMV mRNAワクチン接種が、試験した全ての用量レベル(30、90、180μg、及び300μg)で、hCMV感染に対する血清中和価のブーストを引き出したことを実証するものである。血清中和抗体(nAb)の幾何平均力価(GMT)は、各ワクチン接種後に用量相関的に増加した。フェーズBの2回目ワクチン接種後、線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、90μg及び180μgの治療群において自然CMV感染ベンチマークに近づき、上皮細胞感染に対するnAb GMTは、全ての治療群において自然CMV感染ベンチマークを上回った。単回ワクチン接種後、CMV血清反応陽性対象では中和抗体GMTがブーストされ、2回目ワクチン接種後には上皮細胞感染に対するnAb GMTがさらに増加した。フェーズA及びフェーズBのCMV血清反応陰性対象において、血清応答(GMTがベースライン力価の4倍以上である対象のパーセンテージ)は2回目ワクチン接種までロバストであり、フェーズAでは12か月まで継続的にロバストであった。このことから、3回目ワクチン接種後少なくとも6か月までhCMV mRNAワクチンAに対する抗体応答が持続することを示唆するものである。
【0041】
さらに、本明細書に記載のhCMV mRNAワクチンの全体的な安全性プロファイルは、認可済みワクチン(例えば、Gardasil及びShingrix)と同様であった。
【0042】
抗原
抗原とは、免疫応答を誘導する(例えば、免疫系に抗原に対する抗体を産生させる)ことが可能なタンパク質または多糖である。本明細書では、抗原という用語の使用は、別段の明記がない限り、hCMVに対する免疫応答を誘導する(または誘導することが可能な)免疫原性タンパク質及び免疫原性フラグメントを包含する。「タンパク質」という用語がペプチドを包含し、「抗原」という用語が抗原フラグメントを包含することを理解されたい。
【0043】
HCMVは、異なる細胞タイプへのウイルスの付着及び侵入に関与するいくつかの表面糖タンパク質を含む。五量体複合体(PC)は、gH/gL/UL128/UL130/UL131Aから構成され(Hahn et al.,2004;Ryckman et al.,2008;Wang and Shenk,2005b(これらの各々が参照により本明細書に援用される)、内皮細胞、上皮細胞、及び骨髄性細胞への侵入を媒介する。
【0044】
HCMVタンパク質UL128、UL130、及びUL131Aは、gH及びgLタンパク質と集合して、HCMVの表面に見出されるgH/gL/UL128-131Aと呼ばれる異種五量体複合体を形成する。天然バリアントならびに欠失及び変異解析により、gH/gL/UL128-131A複合体のタンパク質が、ある特定の細胞タイプ(例えば、内皮細胞、上皮細胞、及び白血球を含む)に感染する能力を有することが示唆された。
【0045】
HCMVは、そのエンベロープを細胞膜(線維芽細胞)またはエンドソーム膜(上皮細胞及び内皮細胞)と融合させることにより、細胞に侵入する。HCMVは、エンベロープ糖タンパク質M(gM)またはgBを用いて細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカンに付着することにより、細胞侵入を開始する。このステップに続いて細胞表面受容体との相互作用が生じ、侵入の誘発または細胞内シグナル伝達の開始が行われる。侵入受容体機能は、gH/gL糖タンパク質複合体によって提供される。異なるgH/gL複合体が上皮細胞、内皮細胞、または線維芽細胞への侵入を促進することが知られている。例えば、線維芽細胞への侵入にはgH/gLのヘテロ二量体が必要となるが、上皮細胞及び内皮細胞への侵入には、gH/gLに加えてgH/gL/UL128/UL130/UL131の五量体複合体が必要となる。このように、異なるgH/gL複合体が、上皮/内皮細胞及び線維芽細胞上の異なる侵入受容体と結合する。受容体結合に続いて、gB及びgH/gLによって媒介されるプロセスである膜融合が行われる。初期の抗体研究から、gB及びgH/gLが共にhCMV侵入で重要な役割を有することが支持されている。gBは侵入と細胞伝播に不可欠である。gB及びgH/gLは細胞融合に必要かつ十分であり、したがってHCMVの「コア融合機構」に該当する。これは他のヘルペスウイルス間でも保存されている。このように、4つの糖タンパク質複合体は、宿主細胞へのウイルスの付着、結合、融合、及び侵入で決定的な役割を担っている。
【0046】
gH/gL/UL128-131A複合体に関する研究により、hCMVの糖タンパク質gB、gH、gL、gM、及びgN、ならびにUL128、UL130、及びUL131Aタンパク質が免疫原性を有し、様々な細胞タイプの免疫刺激応答に関与していることが示された。さらに、UL128、UL130、及びUL131A遺伝子は、hCMV分離株間で比較的保存されているため、ワクチン接種の魅力的な標的となる。さらに、最近の研究では、五量体gH/gL/UL128-131複合体内のエピトープに対する抗体が内皮、上皮、及びその他の細胞タイプへの侵入を中和して、hCMVの複数の細胞タイプに感染する能力を阻害することが示されている。
【0047】
いかなる理論にも拘束されることは望まないが、中和抗体の大部分はエンベロープ糖タンパク質を対象にしていると考えられ(Britt et al.,1990;Fouts et al.,2012;Macagno et al.,2010;Marshall et al.,1992(参照により本明細書に援用される))、一方、ロバストなT細胞応答はテグメントタンパク質pp65ならびにIE1及びIE2などの非構造タンパク質を対象にしていると考えられている(Blanco-Lobo et al.,2016;Borysiewicz et al.,1988;Kern et al.,2002(参照により本明細書に援用される))。
【0048】
HCMVエンベロープ糖タンパク質複合体(例えば、gH/gL/UL128/UL130/UL131A)は、抗ウイルス免疫応答の主要な抗原標的である。本開示の諸実施形態は、HCMV抗原、詳細には、HCMV糖タンパク質複合体の1つに由来するHCMV抗原をコードするポリヌクレオチドを含むRNA(例えば、mRNA)免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を提供する。本開示の諸実施形態は、少なくとも1つのhCMV抗原ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むRNA(例えば、mRNA)免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を提供する。本明細書で提供するHCMV RNA免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を使用して、DNAワクチン及び弱毒生ワクチンに関連するリスクの多くを伴うことなく、細胞免疫及び液性免疫を共に含む、バランスのとれた免疫応答を誘導することができる。
【0049】
国際出願第PCT/US2015/027400号(WO2015/164674)(表題「Nuclec Acid Vaccines」)、国際出願第PCT/US2016/058310号(WO2017/070613)(表題「HUMAN CYTOMEGALOVIRUS VACCINE」)、国際出願第PCT/US2017/057748号(WO2018/075980)(表題「HUMAN CYTOMEGALOVIRUS VACCINE」)、米国特許第10,064,935号(表題「HUMAN CYTOMEGALOVIRUS VACCINE」)、米国特許第10,383,937号(表題「HUMAN CYTOMEGALOVIRUS VACCINE」)、米国特許第10,064,935号(表題「HUMAN CYTOMEGALOVIRUS VACCINE」)、及び米国特許第10,716,846号(表題「HUMAN CYTOMEGALOVIRUS VACCINE」)の全体の内容が、参照により本明細書に援用される。
【0050】
本開示の免疫原性組成物(例えば、ワクチン(例えば、mRNAワクチン))のhCMV抗原を本明細書の表5に示す。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物中のhCMV gH、gL、UL128、UL130、UL131A、及びgBタンパク質をコードするmRNAの重量比は、1:1:1:1:1:1である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、ワクチン)の構成要素は、表5に示される配列を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、hCMV変異体pp65ポリペプチド(本明細書ではpp65mutと呼ぶ)をコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドを含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、(a)hCMV gHポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ポリヌクレオチドと、(b)hCMV gLポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(c)hCMV UL128ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(d)hCMV UL130ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(e)hCMV UL131Aポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(f)hCMV gBをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドと、(g)hCMV変異体pp65ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAポリヌクレオチドとを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、hCMV gHポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gLポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL128ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL130ポリペプチドは、配列番号17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL131Aポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gBポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、hCMV gHポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号11のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gLポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号12のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL128ポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号8のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL130ポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL131AポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号10のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gBポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、hCMV gHポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gLポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号6のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL128ポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号2のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL130ポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV UL131AポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV gBポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、hCMV pp65mutポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、hCMV pp65mutポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号23のヌクレオチド配列のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。いくつかの実施形態において、hCMV pp65mutポリペプチドをコードするmRNAは、配列番号21のヌクレオチド配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、前述のmRNAはさらに、5’キャップ(例えば、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、ポリAテール(例えば、約100ヌクレオチド)、または5’キャップ及びポリAテールを含み得る。
【0058】
本開示の免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)のhCMV mRNA構成要素がシグナル配列を含み得ることを理解されたい。また、本開示の免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)のhCMV mRNA構成要素が、任意の5’非翻訳領域(UTR)及び/または任意の3’UTRを含み得ることも理解されたい。例示的なUTR配列は表5に示されているが、他のUTR配列(例えば、従来技術の配列)を使用しても、本明細書に記載の任意のUTR配列と交換してもよい。また、UTRは、本明細書で提供するワクチンコンストラクトから省いてもよい。
【0059】
核酸
本開示のhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、少なくとも1つのhCMV抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つの(1つ以上の)リボ核酸(RNA)を含む。いくつかの実施形態において、RNAは、少なくとも1つのhCMV抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するメッセンジャーRNA(mRNA)である。いくつかの実施形態において、RNA(例えば、mRNA)はさらに、(少なくとも1つの)5’UTR、3’UTR、ポリAテール、及び/または5’キャップを含む。
【0060】
核酸は、ヌクレオチド(ヌクレオチド単量体)のポリマー(ポリヌクレオチドとも称される)を含む。核酸は、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA;β-D-リボ構成を有するLNA、α-L-リボ構成を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-LNA、及び2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-α-LNAを含む)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、及び/またはこれらのキメラ及び/または組合せであってもよく、これらを含んでもよい。
【0061】
「メッセンジャーRNA」(mRNA)とは、(少なくとも1つの)タンパク質(アミノ酸の天然、非天然、または修飾ポリマー)をコードする任意のリボ核酸であり、in vitro、in vivo、in situ、またはex vivoで翻訳してコードされたタンパク質を産生することができる。当業者であれば、別段の記載がある場合を除き、本出願に記載の核酸配列が代表的なDNA配列内で「T」を列挙することがあるが、配列がRNA(例えば、mRNA)に相当する場合、「T」が「U」で置き換えられることが理解されよう。したがって、本明細書で開示され、特定の配列識別番号によって識別される任意のDNAは、そのDNAに相補的な対応するRNA(例えば、mRNA)配列も開示しており、その場合、DNA配列の各「T」は「U」に置き換えられる。
【0062】
オープンリーディングフレーム(ORF)とは、開始コドン(例えば、メチオニン(ATGまたはAUG))で始まり、終止コドン(例えば、TAA、TAG、もしくはTGA、またはUAA、UAG、もしくはUGA)で終わるDNAまたはRNAの連続的な連なりである。ORFは、典型的にはタンパク質をコードする。本明細書に開示する配列はさらに、追加のエレメント(例えば、5’及び3’UTR)を含んでもよいが、これらのエレメントは、ORFとは異なり、本開示のワクチンに必ずしも存在する必要はないことが理解されよう。
【0063】
バリアント
いくつかの実施形態において、本開示のhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、hCMV抗原バリアントをコードするmRNAを含む。抗原バリアントまたは他のポリペプチドバリアントは、野生型、ネイティブ、または参照配列とはアミノ酸配列が異なる分子を指す。抗原/ポリペプチドバリアントは、ネイティブ配列または参照配列と比較してアミノ酸配列内のある特定の位置に置換、欠失、及び/または挿入を有し得る。通常、バリアントは、野生型、ネイティブ、または参照配列に対し少なくとも50%の同一性を有する。いくつかの実施形態において、バリアントは、野生型、ネイティブ、または参照配列と少なくとも80%または少なくとも90%の同一性を共有する。
【0064】
本開示の核酸によってコードされるバリアント抗原/ポリペプチドは、複数の望ましい特性、例えば、その免疫原性を強化する、その発現を強化する、及び/または対象内でのその安定性またはPK/PD特性を改善する特性のいずれかを付与するアミノ酸変化を含むことができる。バリアント抗原/ポリペプチドは、通例の変異誘発技法を用いて作製し、適宜アッセイして、所望の特性を有するかどうかを評価することができる。発現レベル及び免疫原性を評価するためのアッセイは、当技術分野で周知されている。同様に、タンパク質バリアントのPK/PD特性も、当技術分野で認識されている技法を用いて(例えば、ワクチン接種した対象内の抗原の発現を経時的に評価することにより、及び/または誘導された免疫応答の持続性を確認することにより)測定することができる。バリアント核酸によってコードされるタンパク質(複数可)の安定性は、熱安定性もしくは尿素変性時の安定性を分析することによって測定することができ、またはin silico予測を用いて測定することができる。このような実験及びin silico評価のための方法は、当技術分野で知られている。
【0065】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、本明細書で提供する配列のいずれか1つによって特定されるヌクレオチド配列を有する(例えば、表5を参照)mRNA ORF、または本明細書で提供する配列のいずれか1つによって特定されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%(これらの間の全ての値を含む)同一であるヌクレオチド配列を有するmRNA ORFを含む。
【0066】
「同一性」という用語は、2つ以上のポリペプチド(例えば、抗原)またはポリヌクレオチド(核酸)の配列間の関係を指し、これらの配列を比較することにより決定される。また、同一性は、配列間の配列関連性の程度も指し、2つ以上のアミノ酸残基または核酸残基の鎖間のマッチ数により決定される。同一性は、特定の数学的モデルまたはコンピュータープログラム(例えば、「アルゴリズム」)によって処理されたギャップアラインメント(もしあれば)を有する2つ以上の配列の小さい方の間の同一なマッチのパーセントを測定するものである。関連する抗原または核酸の同一性は、既知の方法によって容易に計算することができる。ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列に適用される「同一性パーセント(%)」は、候補配列及び第2の配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大の同一性パーセントを達成した後に、アミノ酸または核酸の候補配列内で、第2の配列のアミノ酸配列または核酸配列内の残基と同一である残基(アミノ酸残基または核酸残基)のパーセンテージとして定義される。アラインメントのための方法及びコンピュータープログラムは、当技術分野では周知されている。同一性は、同一性パーセントの計算に依存するが、この計算に導入されるギャップ及びペナルティーのために値が異なる場合があることが理解されている。概して、特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチド(例えば、抗原)のバリアントは、特定の参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対し、本明細書に記載され当業者に知られている配列アラインメントプログラム及びパラメーターによる定量において、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%でありただし100%未満の配列同一性を有する。このようなアラインメント用のツールとしては、BLASTスイート(Stephen F.Altschul,et al(1997),“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402)のものが挙げられる。別のよく知られたローカルアラインメント技法は、Smith-Watermanアルゴリズム(Smith,T.F.&Waterman,M.S.(1981)“Identification of common molecular subsequences.” J.Mol.Biol.147:195-197)に基づく。動的プログラミングに基づく一般的なグローバルアラインメント技法は、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman,S.B.&Wunsch,C.D.(1970)“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins.” J.Mol.Biol.48:443-453)である。より最近では、Fast Optimal Global Sequence Alignment Algorithm(FOGSAA)が開発され、これは、Needleman-Wunschアルゴリズムを含めた他の最適グローバルアラインメント法よりも速く、ヌクレオチド及びタンパク質配列を網羅的にアラインメントするとされている。
【0067】
そのため、参照配列、とりわけ本明細書で開示するポリペプチド(例えば、抗原)配列に関する置換、挿入、及び/または付加、欠失、及び共有結合修飾を含むペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本開示の範囲内に含まれる。例えば、配列タグまたはアミノ酸(例えば、1つ以上のリジン)をペプチド配列に(例えば、そのN末端またはC末端に)付加することができる。配列タグは、ペプチドの検出、精製、または局在化に使用することができる。リジンは、ペプチド溶解性の増加、またはビオチン化のために使用することができる。代替的に、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ及びアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基を任意選択で欠失させて、切断配列をもたらすことができる。ある特定のアミノ酸(例えば、C末端またはN末端残基)は、代替的に、配列の用途に応じて欠失させることができる(例えば、溶解性であるより大きな配列の一部としてのまたは固体支持体に結合した配列の発現)。いくつかの実施形態において、シグナル配列、終結配列、膜貫通ドメイン、リンカー、多量体化ドメイン(例えば、フォールドオン領域)などのための(またはこれらをコードする)配列は、同じまたは類似の機能を達成する代替的な配列で置き換えることができる。いくつかの実施形態において、タンパク質のコア内の空洞は、例えば、より大きなアミノ酸を導入することにより、安定性を改善するために充填することができる。他の実施形態において、埋没した(buried)水素結合ネットワークは、安定性を改善するために疎水性残基で置き換えることができる。また他の実施形態において、グリコシル化部位を除去し、適切な残基で置き換えることができる。このような配列は、当業者には容易に識別可能である。また、本明細書で提供する配列のいくつかは、例えば、RNA(例えば、mRNA)ワクチンの調製で使用する前に、欠失させ得る配列タグまたは末端ペプチド配列を(例えば、N末端またはC末端に)含むことも理解されたい。
【0068】
当業者には認識されるように、タンパク質フラグメント、機能タンパク質ドメイン、及び相同タンパク質も、目的hCMV抗原の範囲内であると考えられる。例えば、本明細書では、参照タンパク質の任意のタンパク質フラグメント(参照抗原配列より少なくとも1アミノ酸残基短いがそれ以外は同一であるポリペプチド配列を意味する)であって、免疫原性であり、hCMV病原体に対する防御免疫応答を付与することを条件とする、タンパク質フラグメントを提供する。参照タンパク質と同一であるが切断されているバリアントに加えて、いくつかの実施形態において、抗原は、本明細書で提供または言及するいずれかの配列に対し2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の変異を含む。抗原/抗原ポリペプチドの長さは、約4、6、または8アミノ酸から全長タンパク質までの範囲をとり得る。
【0069】
安定化エレメント
天然の真核mRNA分子は、他の構造的特徴(例えば、5’-キャップ構造または3’-ポリ(A)テール)に加えて、安定化エレメント(限定されるものではないが、その5’末端(5’UTR)及び/またはその3’末端(3’UTR)の非翻訳領域(UTR)を含む)を含み得る。5’UTRと3’UTRはいずれも、典型的にはゲノムDNAから転写され、未成熟mRNAのエレメントである。成熟mRNAに特有の構造的特徴、例えば、5’-キャップ及び3’-ポリ(A)テールは、通常はmRNAのプロセシング中、転写された(未成熟)mRNAに付加される。
【0070】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、少なくとも1つの修飾を有する少なくとも1つの抗原ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNAポリヌクレオチド、少なくとも1つの5’末端キャップを含み、脂質ナノ粒子内で製剤化される。ポリヌクレオチドの5’-キャップは、以下の化学RNAキャップアナログ:3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G[ARCAキャップ];G(5’)ppp(5’)A;G(5’)ppp(5’)G;m7G(5’)ppp(5’)A;m7G(5’)ppp(5’)Gを用いてin vitro転写反応中に同時に完了させて、製造業者のプロトコルに従って5’-グアノシンキャップ構造を生成することができる(New England BioLabs,Ipswich,MA)。修飾RNAの5’-キャッピングは、ワクシニアウイルスキャッピング酵素を用いて転写後に完了させて、「キャップ0構造」:m7G(5’)ppp(5’)Gを生成することができる(New England BioLabs,Ipswich,MA)。キャップ1構造は、ワクシニアウイルスキャッピング酵素及び2’-Oメチルトランスフェラーゼの両方を用いて生成して、m7G(5’)ppp(5’)G-2’-O-メチルを生成することができる。キャップ2構造は、キャップ1構造から、次に2’-Oメチルトランスフェラーゼを用いて5’末端から3番目のヌクレオチドを2’-Oメチル化することにより、生成することができる。キャップ3構造は、キャップ2構造から、次に2’-Oメチルトランスフェラーゼを用いて5’末端から4番目のヌクレオチドを2’-Oメチル化することにより、生成することができる。酵素は、組換え供給源に由来してもよい。
【0071】
3’-ポリ(A)テールは、典型的には、転写されたmRNAの3’末端に付加されるアデニンヌクレオチドの連なりである。これは、場合によっては最大約400個のアデニンヌクレオチドを含むことがある。いくつかの実施形態において、3’-ポリ(A)テールの長さは、個々のmRNAの安定性に関して必須のエレメントであり得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、1つ以上の安定化エレメントを含む。安定化エレメントは、例えば、ヒストンステムループを含み得る。32kDaのステムループ結合タンパク質(SLBP)が報告されている。これは、核及び細胞質の両方におけるヒストンメッセージの3’末端にあるヒストンステムループと関連している。その発現レベルは細胞周期によって調節され、S期にピークに達し、このときヒストンmRNAレベルも上昇する。このタンパク質は、U7 snRNPによるヒストンプレmRNAの効率的な3’末端プロセシングに必須であることが示されている。SLBPはプロセシング後も引き続きステムループと会合し、次いで、細胞質中での成熟ヒストンmRNAからヒストンタンパク質への翻訳を促進する。SLBPのRNA結合ドメインは、後生動物及び原生動物の全体にわたり保存されており、ヒストンのステムループとの結合は、ループの構造に依存する。最小結合部位は、ステムループに対し少なくとも3つのヌクレオチド5’及び2つのヌクレオチド3’を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、コード領域と、少なくとも1つのヒストンステムループと、任意選択でポリ(A)配列またはポリアデニル化シグナルとを含む。ポリ(A)配列またはポリアデニル化シグナルは、概して、コードされたタンパク質の発現レベルを強化する。コードされたタンパク質は、いくつかの実施形態においては、ヒストンタンパク質、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、EGFP、β-ガラクトシダーゼ、EGFP)、またはマーカーもしくは選択タンパク質(例えば、アルファ-グロビン、ガラクトキナーゼ、及びキサンチン:グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT))ではない。
【0074】
いくつかの実施形態において、ポリ(A)配列またはポリアデニル化シグナルと少なくとも1つのヒストンステムループとの組合せは、いずれも本来は代替的機構に相当するが、相乗的に作用して、個々のエレメントのいずれかで観察されるレベルを上回ってタンパク質発現を増加させる。ポリ(A)と少なくとも1つのヒストンステムループとの組合せによる相乗効果は、エレメントの順序またはポリ(A)配列の長さには依存しない。
【0075】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、ヒストン下流エレメント(HDE)を含まない。「ヒストン下流エレメント(HDE)」は、天然ステムループの3’にある約15~20ヌクレオチドのプリンリッチなポリヌクレオチドの連なりを含み、これはヒストンプレmRNAから成熟ヒストンmRNAへのプロセシングに関与するU7 snRNAの結合部位に相当する。いくつかの実施形態において、核酸はイントロンを含まない。
【0076】
hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、エンハンサー及び/またはプロモーター配列を含んでも含まなくてもよく、これらは、修飾されても修飾されなくてもよく、活性化されても活性化されなくてもよい。いくつかの実施形態において、ヒストンステムループは、概してヒストン遺伝子に由来し、短い配列からなるスペーサーによって分離された2つの隣接する部分的または全体的に逆相補的な配列の分子内塩基対を含み、これがこの構造のループを形成する。不対ループ領域は、典型的には、ステムループエレメントのいずれとも塩基対形成することができない。これは、多くのRNA二次構造の重要な構成要素であるため、より高頻度にRNAに存在するが、一本鎖DNAにも存在し得る。ステムループ構造の安定性は、概して、長さ、ミスマッチまたはバルジの数、及び対となる領域の塩基組成に依存する。いくつかの実施形態において、ゆらぎ塩基対(非ワトソン・クリック塩基対)が結果的に生じ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのヒストンステムループ配列は、15~45ヌクレオチドの長さを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、1つ以上のAUリッチ配列が除去されている。これらの配列(AURESと称されることがある)は、3’UTRに見られる不安定化配列である。AURESはRNAワクチンから除去されてもよい。あるいは、AURESはRNAワクチン中に残存していてもよい。
【0078】
シグナルペプチド
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、hCMV抗原と融合したシグナルペプチドをコードするORFを有するmRNAを含む。シグナルペプチドは、タンパク質のN末端側の15~60アミノ酸を含み、典型的には、分泌経路上の膜を横断した転位に必要であるため、真核生物及び原核生物の両方でほとんどのタンパク質が分泌経路に侵入するのを普遍的に制御している。真核生物においては、新生前駆体タンパク質(プレタンパク質)のシグナルペプチドがリボソームを粗面小胞体(ER)膜に誘導し、プロセシングのために、成長ペプチド鎖の膜横断輸送を開始する。ERプロセシングにより成熟タンパク質が生成され、シグナルペプチドは、典型的には、宿主細胞のER常駐シグナルペプチダーゼにより、前駆体タンパク質から切断されるか、または切断されないまま保たれ、膜アンカーとして機能する。また、シグナルペプチドは、タンパク質を細胞膜に標的化するのも促進することができる。
【0079】
シグナルペプチドの長さは15~60アミノ酸とすることができる。例えば、シグナルペプチドの長さは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60アミノ酸とすることができる。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドの長さは、20~60、25~60、30~60、35~60、40~60、45~60、50~60、55~60、15~55、20~55、25~55、30~55、35~55、40~55、45~55、50~55、15~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、45~50、15~45、20~45、25~45、30~45、35~45、40~45、15~40、20~40、25~40、30~40、35~40、15~35、20~35、25~35、30~35、15~30、20~30、25~30、15~25、20~25、または15~20アミノ酸である。
【0080】
異種遺伝子由来のシグナルペプチド(事実上hCMV抗原以外の遺伝子の発現を調節する)が当技術分野で知られており、これを所望の特性について試験してから本開示の核酸に組み込むことができる。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、以下の配列のうちの1つを含み得る:MDSKGSSQKGSRLLLLLVVSNLLLPQGVVG(配列番号25);MDWTWILFLVAAATRVHS(配列番号26);METPAQLLFLLLLWLPDTTG(配列番号22);MLGSNSGQRVVFTILLLLVAPAYS(配列番号27);MKCLLYLAFLFIGVNCA(配列番号28);MWLVSLAIVTACAGA(配列番号29)。
【0081】
配列最適化
いくつかの実施形態において、本開示の抗原をコードするORFは、コドン最適化されている。コドン最適化の方法は、当技術分野で知られている。例えば、本明細書で提供する配列のいずれか1つ以上のORFがコドン最適化されてもよい。いくつかの実施形態において、コドン最適化を使用して、標的及び宿主生物におけるコドン頻度を一致させて適切な折り畳みを確保したり、GC含量にバイアスをかけてmRNAの安定性を増加するもしくは二次構造を低減したり、遺伝子構成もしくは発現を損ない得るタンデムリピートコドンもしくは塩基の連続を最小にしたり、転写及び翻訳調節領域をカスタマイズしたり、タンパク質輸送配列を挿入もしくは除去したり、コードされるタンパク質内の翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/付加したり、タンパク質ドメインを付加、除去、もしくは入れ替えたり、制限酵素認識部位を挿入もしくは欠失させたり、リボソーム結合部位及びmRNA分解部位を修飾したり、翻訳速度を調節してタンパク質の様々なドメインが適切に折り畳まれるようにしたり、またはポリヌクレオチド内の問題のある二次構造を低減するもしくは取り除くことができる。コドン最適化ツール、アルゴリズム、及びサービスは、当技術分野で知られており、非限定的な例としては、GeneArt(Life Technologies)、DNA2.0(Menlo Park CA)のサービス、及び/または独自方法が挙げられる。いくつかの実施形態において、オープンリーディングフレーム(ORF)配列は、最適化アルゴリズムを用いて最適化される。
【0082】
いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列ORF(例えば、hCMV抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し95%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、hCMV抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し90%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、hCMV抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し85%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、hCMV抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し80%未満の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、hCMV抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し75%未満の配列同一性を共有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、hCMV抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し65%~85%(例えば、約67%~約85%または約67%~約80%)の配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、天然または野生型の配列(例えば、hCMV抗原をコードする天然または野生型のmRNA配列)に対し65%~75%または約80%の配列同一性を共有する。
【0084】
いくつかの実施形態において、コドン最適化配列は、非コドン最適化配列によってコードされるhCMV抗原と免疫原性が同じか、またはそれよりも免疫原性が高い(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも200%以上高い)抗原をコードする。
【0085】
修飾mRNAは、哺乳類宿主細胞に形質移入された場合、12~18時間、または18時間超、例えば、24、36、48、60、72時間、または72時間超の安定性を有し、哺乳類宿主細胞による発現が可能である。
【0086】
いくつかの実施形態において、コドン最適化RNAは、G/Cレベルが強化されたRNAであり得る。核酸分子(例えば、mRNA)のG/C含量は、RNAの安定性に影響を及ぼし得る。グアニン(G)及び/またはシトシン(C)残基の量が増加したRNAは、大量のアデニン(A)及びチミン(T)またはウラシル(U)ヌクレオチドを含むRNAより機能的に安定していると考えられる。例として、WO02/098443は、翻訳領域内の配列修飾によって安定化されたmRNAを含む医薬組成物を開示している。遺伝暗号の縮退のため、この修飾は、既存のコドンを、得られるアミノ酸を変更することなくより高いRNA安定性を促進するコドンに置き換えることによって機能する。このアプローチは、RNAのコード領域に限定される。
【0087】
化学修飾されていないヌクレオチド
いくつかの実施形態において、本開示のhCMV mRNAワクチンの少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)は、化学的に修飾されておらず、アデノシン、グアノシン、シトシン、及びウリジンからなる標準的なリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、標準的なヌクレオシド残基(例えば、転写RNA内に存在する残基(例えば、A、G、C、またはU))を含む。いくつかの実施形態において、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、標準的なデオキシリボヌクレオシド(例えば、DNA内に存在するデオキシリボヌクレオシド(例えば、dA、dG、dC、またはdT))を含む。
【0088】
化学修飾
本開示のhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのhCMV抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つの核酸(例えば、RNA)を含み、当該核酸は、標準的(非修飾)であっても当技術分野で知られているように修飾されてもよいヌクレオチド及び/またはヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。このような修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドは、天然の修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドの場合も非天然の修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドの場合もある。このような修飾は、当技術分野で認識されているヌクレオチド及び/またはヌクレオシドの糖、骨格、または核酸塩基部分での修飾が含まれ得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、本開示の天然の修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドは、当技術分野で一般的に知られているまたは認識されているものである。このような天然の修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドの非限定的な例は、とりわけ、広く認識されているMODOMICSデータベースに見出すことができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、本開示の非天然の修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドは、当技術分野で一般的に知られているまたは認識されているものである。このような非天然の修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドの非限定的な例は、とりわけ、公開された米国特許出願第PCT/US2012/058519号、第PCT/US2013/075177号、第PCT/US2014/058897号、第PCT/US2014/058891号、第PCT/US2014/070413号、第PCT/US2015/36773号、第PCT/US2015/36759号、第PCT/US2015/36771号、または第PCT/IB2017/051367号(これらの全てが参照により本明細書に援用される)に見出すことができる。
【0091】
したがって、本開示の核酸(例えば、DNA核酸及びRNA核酸(例えば、mRNA核酸))は、標準的なヌクレオチド及びヌクレオシド、天然のヌクレオチド及びヌクレオシド、非天然のヌクレオチド及びヌクレオシド、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0092】
本開示の核酸(例えば、DNA核酸及びRNA核酸(例えば、mRNA核酸))は、いくつかの実施形態においては、様々な(複数の)異なるタイプの標準的及び/または修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、核酸の特定の領域は、1つ、2つ、またはそれ以上の(任意選択で異なる)タイプの標準的及び/または修飾ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、細胞または生物に導入された修飾RNA核酸(例えば、修飾mRNA核酸)は、標準ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む非修飾核酸に比べて、それぞれ細胞または生物内で分解が低減することが示される。
【0094】
いくつかの実施形態において、細胞または生物内に導入された修飾RNA核酸(例えば、修飾mRNA核酸)は、標準ヌクレオチド及びヌクレオシドを含む非修飾核酸に比べて、それぞれ細胞または生物内での免疫原性が低減し得る(例えば、自然応答が低減する)。
【0095】
核酸(例えば、RNA核酸(例えば、mRNA核酸))は、いくつかの実施形態においては、核酸の合成中または合成後に導入されて所望の機能または特性を達成する、非天然の修飾ヌクレオチドを含む。修飾は、ヌクレオチド間結合、プリンもしくはピリミジン塩基、または糖に存在し得る。修飾は、化学合成により、または鎖の末端もしくは鎖の他の箇所にあるポリメラーゼ酵素により、導入することができる。核酸の任意の領域を化学的に修飾することができる。
【0096】
本開示は、核酸(例えば、RNA核酸(例えば、mRNA核酸))の修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドを提供する。「ヌクレオシド」とは、糖分子(例えば、ペントースもしくはリボース)またはその誘導体と、有機塩基(例えば、プリンもしくはピリミジン)またはその誘導体(本明細書では「核酸塩基」とも称される)との組合せを含む化合物を指す。「ヌクレオチド」とは、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾ヌクレオチドは、任意の有用な方法によって(例えば、化学的に、酵素的に、または組換え的に)合成して、1つ以上の修飾または非天然ヌクレオシドを含めることができる。核酸は、結合したヌクレオシドの領域(単数または複数)を含み得る。このような領域は、可変骨格結合を有し得る。この結合は、標準的なホスホジエステル結合であり得、この場合、この核酸はヌクレオチドの領域を含む。
【0097】
修飾ヌクレオチド塩基対合は、標準的アデノシン-チミン、アデノシン-ウラシル、またはグアノシン-シトシン塩基対だけでなく、非標準的または修飾塩基を含むヌクレオチド及び/または修飾ヌクレオチド間で形成される塩基対も包含し、このとき、水素結合供与体及び水素結合受容体の配置により、例えば、少なくとも1つの化学的修飾を有する核酸内で、非標準的塩基と標準的塩基との間、または2つの相補的な非標準的塩基構造間の水素結合が可能となる。このような非標準的塩基対合の一例は、修飾ヌクレオチドイノシンとアデニン、シトシン、またはウラシルとの間の塩基対合である。塩基/糖またはリンカーの任意の組合せを本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、核酸(例えば、RNA核酸(例えば、mRNA核酸))中の修飾核酸塩基は、1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)、1-エチル-プソイドウリジン(e1ψ)、5-メトキシ-ウリジン(mo5U)、5-メチルシチジン(m5C)、及び/またはプソイドウリジン(ψ)を含む。いくつかの実施形態において、核酸(例えば、RNA核酸(例えば、mRNA核酸))中の修飾核酸塩基は、5-メトキシメチルウリジン、5-メチルチオウリジン、1-メトキシメチルプソイドウリジン、5-メチルシチジン、及び/または5-メトキシシチジンを含む。いくつかの実施形態において、ポリリボヌクレオチドは、前述の任意の修飾核酸塩基(限定されるものではないが、化学修飾を含む)のうちの少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の組合せを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置に1-メチル-プソイドウリジン(m1ψ)置換を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置に1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)置換、及び核酸の1つ以上または全てのシチジン位置に5-メチルシチジン置換を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置にプソイドウリジン(ψ)置換を含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置にプソイドウリジン(ψ)置換、及び核酸の1つ以上または全てのシチジン位置に5-メチルシチジン置換を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、本開示のmRNAは、核酸の1つ以上または全てのウリジン位置にウリジンを含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、mRNAは、特定の修飾について一様に修飾される(例えば、完全に修飾される、配列全体にわたり修飾される)。例えば、核酸は1-メチル-プソイドウリジンで一様に修飾されてもよく、これは、mRNA配列内の全てのウリジン残基が1-メチル-プソイドウリジンで置き換えられることを意味する。同様に、核酸は、修飾残基(例えば、上記の残基)で置き換えることにより、配列内に存在する任意のタイプのヌクレオシド残基について一様に修飾することができる。
【0105】
本開示の核酸は、分子の全長に沿って部分的にも完全にも修飾することができる。例えば、本開示の核酸内、またはその所定の配列領域内(例えば、ポリAテールを含むまたは除くmRNA内)で、1つ以上または全てまたは所与のタイプのヌクレオチド(例えば、プリンもしくはピリミジン、またはA、G、U、Cのいずれか1つ以上もしくは全て)を一様に修飾することができる。いくつかの実施形態において、本開示の核酸(またはその配列領域)内の全てのヌクレオチドXが修飾ヌクレオチドであり、Xは、ヌクレオチドA、G、U、Cのいずれか1つ、または以下の組合せA+G、A+U、A+C、G+U、G+C、U+C、A+G+U、A+G+C、G+U+C、もしくはA+G+Cのいずれか1つであり得る。
【0106】
核酸は、約1%~約100%の修飾ヌクレオチド(全体的なヌクレオチド含量に関して、または1つ以上のタイプのヌクレオチド(すなわち、A、G、U、もしくはCの1つ以上)に関して)、または任意の範囲のパーセンテージ(例えば、1%~20%、1%~25%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~25%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~25%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%、及び95%~100%)を含み得る。任意の残りのパーセンテージは、非修飾A、G、U、またはCの存在によって説明されることが理解されよう。
【0107】
mRNAは、1%以上100%までの修飾ヌクレオチド、または任意の範囲のパーセンテージ(例えば、少なくとも5%の修飾ヌクレオチド、少なくとも10%の修飾ヌクレオチド、少なくとも25%の修飾ヌクレオチド、少なくとも50%の修飾ヌクレオチド、少なくとも80%の修飾ヌクレオチド、もしくは少なくとも90%の修飾ヌクレオチド)を含み得る。例えば、核酸は、修飾ピリミジン(例えば、修飾ウラシルまたはシトシン)を含み得る。いくつかの実施形態において、核酸内のウラシルの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%が、修飾ウラシル(例えば、5-置換ウラシル)で置き換えられる。修飾ウラシルは、単一の固有の構造を有する化合物で置き換えることも、異なる構造(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の固有の構造)を有する複数の化合物で置き換えることもできる。いくつかの実施形態において、核酸内のシトシンの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%が、修飾シトシン(例えば、5-置換シトシン)で置き換えられる。修飾シトシンは、単一の固有の構造を有する化合物で置き換えることも、異なる構造(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の固有の構造)を有する複数の化合物で置き換えることもできる。
【0108】
非翻訳領域(UTR)
本開示のmRNAは、非翻訳領域として作用または機能する1つ以上の領域または部分を含み得る。mRNAが少なくとも1つの目的抗原をコードするように設計されている場合、核酸はこれらの非翻訳領域(UTR)のうちの1つ以上を含み得る。核酸の野生型非翻訳領域は、転写されるが翻訳はされない。mRNAでは、5’UTRは転写開始点で開始し、開始コドンまで続くが、開始コドンは含まない。一方、3’UTRは終止コドンの直後から転写終結シグナルまで続く。UTRが核酸分子の安定性及び翻訳に関して調節的役割を担っていることについてのエビデンスが増えている。UTRの調節機能は、特に分子の安定性を高めるために、本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。また、転写産物が望ましくない臓器部位に誤って向けられた場合に備え、転写産物の下方調節の制御を確保するための特定の機能も組み込むことができる。様々な5’UTR及び3’UTR配列が知られており、当技術分野で利用可能である。
【0109】
5’UTRは、mRNAの開始コドン(リボソームによって翻訳されるmRNA転写産物の最初のコドン)からすぐ上流(5’)にある領域である。5’UTRはタンパク質をコードしない(ノンコーディングである)。天然5’UTRは、翻訳開始で役割を果たす機能を有する。それらは、リボソームが多くの遺伝子の翻訳を開始するプロセスに関与することが一般的に知られているKozak配列のようなシグネチャーを有する。Kozak配列は、コンセンサスCCR(A/G)CCAUGG(配列番号30)を有し、Rは開始コドン(AUG)の3塩基上流のプリン(アデニンまたはグアニン)であり、この後に別の「G」が続く。5’UTRは、伸長因子の結合に関与する二次構造を形成することも知られている。
【0110】
本開示のいくつかの実施形態において、5’UTRは、異種UTRであり、すなわち、異なるORFに関連する自然界で見出されるUTRである。別の実施形態において、5’UTRは合成UTRであり、すなわち、自然界には存在しない。合成UTRは、その特性を改善する(例えば、遺伝子発現を増加する)ために変異させたUTRと、完全に合成のものとを含む。例示的な5’UTRとしては、Xenopusまたはヒト由来のa-グロビンまたはb-グロビン(US8278063、US9012219)、ヒトシトクロムb-245 aポリペプチド、ヒドロキシステロイド(17b)デヒドロゲナーゼ、及びタバコエッチウイルス(US8278063、9012219)が挙げられる。CMV immediate-early 1(IE1)遺伝子(US20140206753、WO2013/185069)、配列GGGAUCCUACC(配列番号31)(WO2014144196)も使用することができる。別の実施形態において、TOP遺伝子の5’UTRは、5’TOPモチーフ(オリゴピリミジントラクト)が欠如したTOP遺伝子の5’UTRであり(例えば、WO/2015101414、WO/2015101415、WO/2015/062738、WO2015024667、WO2015024667)、リボソームタンパク質Large32(L32)遺伝子に由来する5’UTRエレメント(WO/2015101414、WO2015101415、WO/2015/062738)、ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)の5’UTRに由来する5’UTRエレメント(WO2015024667)、またはATP5A1の5’UTRに由来する5’UTRエレメント(WO2015024667)が使用され得る。いくつかの実施形態において、5’UTRの代わりに内部リボソーム進入部位(IRES)が使用される。
【0111】
いくつかの実施形態において、本開示の5’UTRは、配列番号13のヌクレオチド配列を含む。
【0112】
3’UTRは、終止コドン(翻訳終了をシグナル伝達するmRNA転写産物のコドン)のする下流(3’)にあるmRNAの領域である。3’UTRはタンパク質をコードしない(ノンコーディングである)。天然または野生型の3’UTRには、アデノシン及びウリジンの連なりが埋め込まれていることが知られている。これらのAUリッチシグネチャーは、高い回転率を有する遺伝子内で特に広く見られる。配列の特徴及び機能的特性に基づいて、AUリッチエレメント(ARE)は3つのクラスに分類することができ(Chen et al,1995)、クラスI AREは、Uリッチ領域内にAUUUAモチーフのいくつかの分散コピーを含む。C-Myc及びMyoDはクラスI AREを含む。クラスII AREは、2つ以上の重複するUUAUUUA(U/A)(U/A)(配列番号32)九量体を有する。このタイプのAREを含む分子としては、GM-CSF及びTNF-aが挙げられる。クラスIII AREはそれほど十分には定義されていない。これらのUリッチ領域はAUUUAモチーフを含まない。c-Jun及びMyogeninはこのクラスで十分に研究されている2つの例である。AREに結合するほとんどのタンパク質はメッセンジャーを不安定にすることが知られており、一方ELAVファミリーのメンバー、とりわけHuRはmRNAの安定性を増加させることが実証されている。HuRは、3つ全てのクラスのAREに結合する。核酸分子の3’UTR内でHuR特異的結合部位を操作することで、HuR結合、ひいてはin vivoでのメッセージの安定化につながる。
【0113】
3’UTRは、異種であっても合成であってもよい。3’UTRについては、グロビンUTR(Xenopus β-グロビンUTR及びヒトβ-グロビンUTRを含む)が当技術分野で知られている(US8278063、US9012219、US20110086907)。2つの連続したヒトβグロビン3’UTRをヘッドトゥーテールでクローニングすることにより、いくつかの細胞タイプでの安定性が強化された修飾βグロビンコンストラクトが開発されており、当技術分野で周知されている(US2012/0195936、WO2014/071963)。加えて、a2-グロビン、a1-グロビン、UTR及びこれらの変異体も当技術分野で知られている(WO2015101415、WO2015024667)。非特許文献においてmRNAコンストラクトで説明されている他の3’UTRとしては、CYBA(Ferizi et al.,2015)及びアルブミン(Thess et al.,2015)が挙げられる。他の例示的な3’UTRとしては、ウシまたはヒト成長ホルモン(野生型または修飾)(WO2013/185069、US20140206753、WO2014152774)、ウサギβグロビン及びB型肝炎ウイルス(HBV)のものが挙げられ、αグロビン3’UTR及びウイルスVEEV 3’UTR配列も当技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、配列UUUGAAUU(WO2014144196)が使用される。いくつかの実施形態において、ヒト及びマウスリボソームタンパク質の3’UTRが使用される。他の例としては、rps9 3’UTR(WO2015101414)、FIG4(WO2015101415)、及びヒトアルブミン7(WO2015101415)が挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態において、本開示の3’UTRは、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。
【0115】
当業者であれば、異種または合成の5’UTRが、任意の所望の3’UTR配列と共に使用することができることを理解するであろう。例えば、異種5’UTRを、合成3’UTRと、異種3”UTRと共に使用することができる。
【0116】
特徴の組合せをフランキング領域に含めることも、他の特徴の中に含めることもできる。例えば、ORFは、強力なKozak翻訳開始シグナルを含み得る5’UTR及び/またはポリAテールを鋳型的に付加するためのオリゴ(dT)配列を含み得る3’UTRが隣接してもよい。5’UTRは、同じ及び/または異なる遺伝子からの第1のポリヌクレオチドフラグメント及び第2のポリヌクレオチドフラグメントを含み得る(例えば、米国特許出願公開第20100293625号及びPCT/US2014/069155(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載の5’UTR)。
【0117】
RNAのin vitro転写
本明細書に記載のポリヌクレオチドをコードするcDNAは、in vitro転写(IVT)システムを用いて転写することができる。RNAのin vitro転写は当技術分野で知られており、国際公開第WO/2014/152027号(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0118】
いくつかの実施形態において、RNA転写産物は、RNA転写産物を生成するためのin vitro転写反応で、増幅されていない直鎖化されたDNA鋳型を用いて生成される。いくつかの実施形態において、鋳型DNAは単離されたDNAである。いくつかの実施形態において、鋳型DNAはcDNAである。いくつかの実施形態において、cDNAは、RNAポリヌクレオチド(例えば、限定されるものではないが、hCMV mRNA)の逆転写によって形成される。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、細菌細胞、例えば、E.coli、例えば、DH-1細胞)に、プラスミドDNA鋳型を用いて形質移入する。いくつかの実施形態において、形質移入細胞は、プラスミドDNAを複製するために培養され、次いで単離及び精製される。いくつかの実施形態において、DNA鋳型は、RNAポリメラーゼプロモーター、例えば、目的遺伝子の5’側に位置し、目的遺伝子に作用可能に結合しているT7プロモーターを含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、in vitro転写鋳型は、5’非翻訳(UTR)領域をコードし、オープンリーディングフレームを含み、3’UTR及びポリAテールをコードする。in vitro転写鋳型の特定の核酸配列組成及び長さは、鋳型によってコードされるmRNAに依存する。
【0120】
RNA転写産物が生成されている場合、5’UTRはプロモーター配列を含み得る。このようなプロモーター配列は、当技術分野で知られている。本開示のワクチンにはこのようなプロモーター配列が存在しないことを理解されたい。
【0121】
ポリAテールは、10~300個のアデノシン一リン酸を含み得る。例えば、ポリAテールは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または300個のアデノシン一リン酸を含み得る。いくつかの実施形態において、ポリAテールは、50~250個のアデノシン一リン酸を含む。関連する生物学的環境(例えば、細胞内、in vivo)において、ポリ(A)テールは、(例えば、細胞質での)酵素分解からmRNAを保護し、転写終結、及び/または核からのmRNAの輸送及び翻訳で補助するように機能する。
【0122】
いくつかの実施形態において、核酸は200~3000ヌクレオチドを含む。例えば、核酸は、200~500、200~1000、200~1500、200~3000、500~1000、500~1500、500~2000、500~3000、1000~1500、1000~2000、1000~3000、1500~3000、または2000~3000ヌクレオチドを含み得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、RNA転写産物は、酵素キャッピングを介しキャッピングされる。いくつかの実施形態において、RNAは、5’末端キャップ、例えば、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNpを含む。
【0124】
脂質ナノ粒子(LNP)
いくつかの実施形態において、本開示のhCMV免疫原性組成物(mRNAワクチン)は、1つ以上の脂質ナノ粒子(LNP)内に製剤化される。脂質ナノ粒子は、典型的には、イオン化可能なカチオン性脂質、非カチオン性脂質、ステロール、及びPEG脂質構成要素を、目的核酸カーゴと共に含む。本開示の脂質ナノ粒子は、当技術分野で一般的に知られている構成要素、組成物、及び方法(例えば、PCT/US2016/052352、PCT/US2016/068300、PCT/US2017/037551、PCT/US2015/027400、PCT/US2016/047406、PCT/US2016000129、PCT/US2016/014280、PCT/US2017/038426、PCT/US2014/027077、PCT/US2014/055394、PCT/US2016/52117、PCT/US2012/069610、PCT/US2017/027492、PCT/US2016/059575、及びPCT/US2016/069491を参照(これらは全てその全体が参照により本明細書に援用される))を用いて生成することができる。
【0125】
本開示のワクチンは、典型的には、脂質ナノ粒子内に製剤化される。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つのイオン化可能なカチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質、少なくとも1つのステロール、及び/または少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質を含む。
【0126】
本開示の脂質ナノ粒子は、脂質の混合物から構成され、その量は、脂質ナノ粒子中の各脂質構成要素のモル分率またはモルパーセントに従って測定される。モルパーセントは、モル分率に100%を掛けることによって得られる。脂質混合物が数値的に説明される場合、mRNA及び任意の水は表されない。
【0127】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、20~60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む脂質の混合物を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、モルパーセントで20~50mol%、20~40mol%、20~30mol%、30~60mol%、30~50mol%、30~40mol%、40~60mol%、40~50mol%、または50~60mol%のイオン化可能カチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、または60mol%のイオン化可能なカチオン性脂質を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、5~25mol%の非カチオン性脂質を含む脂質の混合物を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、5~20mol%、5~15mol%、5~10mol%、10~25mol%、10~20mol%、10~25mol%、15~25mol%、15~20mol%、または20~25mol%の非カチオン性脂質を含む非カチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、5mol%、10mol%、15mol%、20mol%、または25mol%の非カチオン性脂質を含む脂質の混合物を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、25~55mol%のステロールを含む脂質の混合物を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、25~50mol%、25~45mol%、25~40mol%、25~35mol%、25~30mol%、30~55mol%、30~50mol%、30~45mol%、30~40mo%、30~35mol%、35~55mol%、35~50mol%、35~45mol%、35~40mo%、40~55mol%、40~50mol%、40~45mol%、45~55mol%、45~50mol%、または50~55mol%のステロールを含むステロールを含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、モルパーセントで25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、45mol%、50mol%、または55mol%のステロールを含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、0.5~15mol%のPEG修飾脂質を含む脂質の混合物を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、モルパーセントで0.5~10mol%、0.5~5mol%、1~15mol%、1~10mol%、1~5mol%、2~15mol%、2~10mol%、2~5mol%、5~15mol%、5~10mol%、または10~15mol%のPEG修飾脂質を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、モルパーセントで0.5mol%、1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、10mol%、11mol%、12mol%、13mol%、14mol%、または15mol%のPEG修飾脂質を含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、モル比で20~60%のイオン化可能なカチオン性脂質、5~25%の非カチオン性脂質、25~55%のステロール、及び約0.5~15%のPEG修飾脂質を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、49mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、38.5mol%のコレステロールと、10mol%のDSPCと、2.5mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、48mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、38.5mol%のコレステロールと、11mol%のDSPCと、2.5mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、47mol%のイオン化可能なカチオン性脂質と、38.5mol%のコレステロールと、11.5mol%のDSPCと、3mol%のDMG-PEGとを含む脂質の混合物を含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、本開示のイオン化可能なカチオン性脂質は、以下の構造を有する化合物を含む。
【0134】
【0135】
いくつかの実施形態において、本開示のイオン化可能なカチオン性脂質は、以下の構造を有する化合物を含む。
【化3】
【0136】
いくつかの実施形態において、本開示の非カチオン性脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME16.0PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びこれらの混合物を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、本開示のPEG修飾脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びこれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、PEG修飾脂質は、DMG-PEG、PEG-c-DOMG(PEG-DOMGとも称される)、PEG-DSG、及び/またはPEG-DPGである。
【0138】
いくつかの実施形態において、本開示のステロールは、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、及びそれらの混合物を含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、化合物1のイオン化可能なカチオン性脂質を含み、このとき、非カチオン性脂質はDSPCであり、構造脂質はコレステロールであり、PEG脂質はDMG-PEGである。
【0140】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、45~55モルパーセントのイオン化可能なカチオン性脂質を含む。例えば、脂質ナノ粒子は、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または55モルパーセントのイオン化可能なカチオン性脂質を含み得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、5~15モルパーセントのDSPCを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15モルパーセントのDSPCを含み得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、35~40モルパーセントのコレステロールを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、35、36、37、38、39、または40モルパーセントのコレステロールを含み得る。
【0143】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、1~2モルパーセントのDMG-PEGを含む。例えば、脂質ナノ粒子は、1、1.5、または2モルパーセントのDMG-PEGを含み得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、50モルパーセントのイオン化可能なカチオン性脂質と、10モルパーセントのDSPCと、38.5モルパーセントのコレステロールと、1.5モル%のDMG-PEGとを含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、約2:1~約30:1のN:P比を含む。
【0146】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、約6:1のN:P比を含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、約3:1のN:P比を含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPが含むイオン化可能なカチオン性脂質構成要素:RNAのwt/wt比は約10:1~約100:1である。
【0149】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPが含むイオン化可能なカチオン性脂質構成要素:RNAのwt/wt比は約20:1である。
【0150】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPが含むイオン化可能なカチオン性脂質構成要素:RNAのwt/wt比は約10:1である。
【0151】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPの平均直径は約50nm~約150nmである。
【0152】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPの平均直径は約70nm~約120nmである。
【0153】
多価ワクチン
本明細書で提供するhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、同じまたは異なるhCMV種の2つ以上の抗原をコードするmRNAまたは複数のmRNAを含み得る。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、2つ以上の抗原をコードするRNAまたは複数のRNAを含む。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)のmRNAは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上の抗原をコードし得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(mRNAワクチン)は、hCMV gH、hCMV gL、hCMV UL128、hCMV UL130、hCMV UL131A、及びhCMV gBをコードする少なくとも1つのRNAを含む。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、hCMV pp65mutをコードする少なくとも1つのRNAを含む。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、hCMV gH、hCMV gL、hCMV UL128、hCMV UL130、hCMV UL131A、hCMV gB、及びhCMV pp65mutをコードする少なくとも1つのRNAを含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、抗原をコードする2つ以上の異なるRNA(例えば、mRNA)が、同じ脂質ナノ粒子内に製剤化されてもよい。他の実施形態において、抗原をコードする2つ以上の異なるRNAが、別々の脂質ナノ粒子内に製剤化されてもよい(例えば、各RNAが単一の脂質ナノ粒子内に製剤化される)。脂質ナノ粒子は、次に、組み合わせて単一のワクチン組成物(例えば、複数の抗原をコードする複数のRNAを含むワクチン組成物)として投与することも、別々に投与することもできる。
【0156】
医薬製剤
本明細書では、例えば、ヒト及び他の哺乳類におけるhCMVの予防または治療のための組成物(例えば、医薬組成物)、方法、キット、及び試薬を提供する。hCMV mRNAワクチンは、治療薬剤または予防薬剤として使用することができる。これらは、医学分野で感染性疾患の予防及び/または治療に使用することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のmRNAを含むhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、対象(例えば、ヒト対象などの哺乳類対象)に投与することができ、RNAポリヌクレオチドはin vivoで翻訳されて抗原ポリペプチド(抗原)が産生される。
【0158】
hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の「有効量」は、少なくとも部分的には、標的組織、標的細胞タイプ、投与手段、RNAの物理的特性(例えば、長さ、ヌクレオチド組成、及び/または修飾ヌクレオシドの程度)、ワクチンの他の構成要素、ならびに他の決定因子、例えば、対象の年齢、体重、身長、性別、及び全体的健康状態に基づく。典型的には、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の有効量は、対象の細胞内での抗原産生の関数として、誘導またはブーストされた免疫応答を提供する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの化学修飾を有するRNAポリヌクレオチドを含むhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の有効量は、同じ抗原またはペプチド抗原をコードする対応する非修飾ポリヌクレオチドを含む組成物よりも効率的である。抗原産生の増加は、細胞形質移入の増加(RNAワクチンで形質移入された細胞のパーセンテージ)、ポリヌクレオチドからのタンパク質翻訳及び/または発現の増加、核酸分解の減少(例えば、修飾ポリヌクレオチドからのタンパク質翻訳の持続時間の増加によって示される)、または宿主細胞の抗原特異的免疫応答の変化によって実証され得る。
【0159】
「医薬組成物」という用語は、組成物をin vivoまたはex vivoでの診断または治療用途に特に適したものにする、活性薬剤と不活性または活性の担体との組合せを指す。「医薬的に許容される担体」は、対象に投与した後または投与したことで、望ましくない生理学的作用を引き起こさない。医薬組成物中の担体は、有効成分に適合性であり、それを安定化させることが可能であるという意味においても「許容」されなければならない。1つ以上の可溶化剤を活性薬剤の送達のための医薬担体として利用してもよい。医薬的に許容される担体の例としては、限定されるものではないが、剤形として使用可能な組成物を達成するための生体適合性のビヒクル、アジュバント、添加剤、及び希釈剤が挙げられる。他の担体の例としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。別の好適な医薬用担体及び希釈剤、ならびにそれらを使用するための医薬的必需品については、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0160】
いくつかの実施形態において、本開示に従う免疫学的組成物(例えば、ポリヌクレオチド及びそのコードされたポリペプチドを含むRNAワクチン)は、hCMV感染症の治療または予防のために使用することができる。hCMV免疫学的組成物(例えば、mRNAワクチン)は、健康な個体または潜伏器官中の感染初期または症状発現後の活動性感染中に、積極的な免疫化スキームの一環として予防的または治療的に投与することができる。いくつかの実施形態において、細胞、組織、または対象に提供される本開示のRNAワクチンの量は、免疫予防に有効な量であり得る。
【0161】
hCMV免疫学的組成物(例えば、mRNAワクチン)は、他の予防または治療化合物と共に投与することができる。非限定的な例として、予防または治療化合物は、アジュバントまたはブースターであり得る。本明細書で使用する場合、予防組成物(例えば、ワクチン)に言及する場合、「ブースター」という用語は、予防(ワクチン)組成物の追加投与を指す。ブースター(またはブースターワクチン)は、予防組成物を先に投与した後に投与することができる。予防組成物の初回投与とブースターとの間の投与時間は、限定されるものではないが、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日、36時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、18か月、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、25年、30年、35年、40年、45年、50年、55年、60年、65年、70年、75年、80年、85年、90年、95年、または99年超であり得る。例示的な実施形態において、予防組成物の初回投与とブースターとの間の投与時間は、限定されるものではないが、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、または1年であり得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫学的組成物(例えば、mRNAワクチン)は、当技術分野で知られている不活化ワクチンの投与と同様に、筋肉内(例えば、三角筋)、経鼻、または皮内に投与することができる。
【0163】
hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、感染の有病率またはアンメット・メディカル・ニーズの程度もしくはレベルに応じて、様々な設定で利用され得る。非限定的な例として、RNAワクチンは、様々な感染性疾患を治療及び/または予防するために利用することができる。RNAワクチンは、市販のワクチンよりもはるかに大きな抗体力価、より良好な中和免疫をもたらし、より持続性のある免疫応答、及び/またはより早期の応答をもたらすという点において優れた特性を有する。
【0164】
本明細書では、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)及び/または複合体を、任意選択で1つ以上の医薬的に許容される賦形剤と組み合わせて含む、医薬的組成物を提供する。
【0165】
hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、単独で、または1つ以上の他の構成要素と組み合わせて、製剤化または投与することができる。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、他の構成要素(限定されるものではないが、アジュバントを含む)を含んでもよい。
【0166】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)はアジュバントを含まない(アジュバントフリーである)。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)はアジュバントを含む。ワクチンでの使用に適した任意の既知のアジュバントを使用することができる。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、MF59アジュバント系(例えば、O’Hagan et al.,Expert Rev Vaccines.2007 Oct;6(5):699-710(参照により本明細書に援用される)に記載の通り)を含む。
【0167】
hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤と組み合わせて製剤化または投与することができる。いくつかの実施形態において、ワクチン組成物は、少なくとも1つの追加の活性物質(例えば、治療活性物質、予防活性物質、または両方の組合せ)を含む。ワクチン組成物は、無菌、パイロジェンフリー、または無菌及びパイロジェンフリーの両方であり得る。医薬薬剤(例えば、ワクチン組成物)の製剤化及び/または製造における全般的考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005(参照によりその全体が本明細書に援用される)に見出され得る。
【0168】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、ヒト(例えば、ヒト患者または対象)に投与される。本開示の目的において、「有効成分」という表現は、概して、RNAワクチンまたはそれに含まれるポリヌクレオチド、例えば、抗原をコードするRNAポリヌクレオチド(例えば、mRNAポリヌクレオチド)を指す。
【0169】
本明細書に記載のワクチン組成物の製剤は、薬理学の分野で知られているまたは今後開発される任意の方法によって、調製することができる。概して、このような調製方法は、活性成分(例えば、mRNAポリヌクレオチド)を、賦形剤及び/または1つ以上の補助成分と会合させるステップと、次に必要に応じて及び/または所望により、生成物を所望の単回または多回用量単位に分割、成形、及び/またはパッケージングするステップとを含む。
【0170】
本開示に従う医薬組成物中の活性成分、医薬的に許容される賦形剤、及び/または任意のさらなる成分の相対量は、治療する対象の固有性、サイズ、及び/または状態に応じて、また当該組成物の投与に用いる経路に応じて変動する。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0171】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、(1)安定性を高めるために、(2)細胞形質移入を増加するために、(3)(例えば、デポ剤からの)持続放出または遅延放出を可能にするために、(4)体内分布を変化させる(例えば、特定の組織もしくは細胞タイプに標的化する)ために、(5)コードされたタンパク質のin vivoでの翻訳を増加するために、及び/または(6)in vivoでのコードされたタンパク質(抗原)の放出プロファイルを変化させるために、1つ以上の賦形剤を用いて製剤化される。従来の賦形剤(例えば、あらゆる溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤)に加えて、賦形剤には、限定されるものではないが、リピドイド(lipidoid)、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、(例えば、対象への移植用に)hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を形質移入した細胞、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、及びこれらの組合せが含まれ得る。
【0172】
投薬/投与
本明細書では、ヒト及び他の哺乳類におけるhCMV感染症の予防及び/または治療のための組成物(例えば、医薬組成物)、方法、キット、及び試薬を提供する。本発明のhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、治療または予防薬剤として使用することができる。いくつかの態様において、本開示のRNAワクチンは、hCMVからの予防的防御を提供するために使用される。いくつかの態様において、本開示のRNAワクチンは、hCMV感染症を治療するために使用される。いくつかの実施形態において、本開示のhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、免疫エフェクター細胞のプライミングで、例えば、末梢血単核球(PBMC)をex vivoで活性化し、次にこれを対象に注入(再注入)するために、使用される。
【0173】
対象は、任意の哺乳類(非ヒト霊長類及びヒトを含む)とすることができる。典型的には、対象はヒト対象である。
【0174】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、抗原特異的免疫応答を誘導するのに有効な量で対象(例えば、ヒト対象などの哺乳類対象)に投与される。hCMV抗原をコードするRNAがin vivoで発現及び翻訳されて抗原が産生され、これが対象内の免疫応答を刺激する。対象は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を投与される前に、hCMV血清反応陽性(例えば、以前に自然hCMV感染症にかかったことがある)であっても、hCMV血清反応陰性(例えば、以前に自然hCMV感染症にかかったことがない)であってもよい。
【0175】
hCMVからの予防的防御は、本開示のhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の投与の後に達成され得る。ワクチンは1回、2回、3回、4回、またはそれ以上投与することができるが、1回のワクチンの投与(任意選択でその後に1回以上のブースター)で十分な可能性がある。望ましいものではないが、ワクチンを感染した個体に投与して治療応答を達成することも可能である。それに応じて用量設定を調整する必要があり得る。
【0176】
hCMVに対する対象内の免疫応答を引き出す方法を本開示の諸態様で提供する。本方法は、少なくとも1つのhCMV抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)を含むhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を対象に投与することを含み、それにより、対象内でhCMV抗原に特異的な免疫応答を誘導し、対象内の抗抗原抗体力価は、ワクチン接種後、hCMVに対する従来のワクチンの予防有効用量をワクチン接種した対象内の抗抗原抗体力価よりも増加する。「抗抗原抗体」とは、抗原に特異的に結合する血清抗体である。
【0177】
いくつかの実施形態において、予防有効用量とは、臨床的に許容されるレベルでウイルス感染を予防する有効用量である。いくつかの実施形態において、有効用量とは、ワクチンの添付文書に列記されている用量である。いくつかの実施形態において、有効量は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を投与してから1~72時間後(例えば、1~72時間後、1~60時間後、1~45時間後、1~30時間後、1~15時間後、15~72時間後、15~60時間後、15~45時間後、15~30時間後、30~72時間後、30~60時間後、30~45時間後、45~72時間後、45~60時間後、または60~72時間後)の対象の血清中の測定において、検出可能なレベルのhCMV抗原(例えば、gH、gL、UL128、UL130、UL131A、及び/またはgBポリペプチド)を産生するのに十分である。いくつかの実施形態において、有効量は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を投与してから1~72時間後(例えば、1~72時間後、1~60時間後、1~45時間後、1~30時間後、1~15時間後、15~72時間後、15~60時間後、15~45時間後、15~30時間後、30~72時間後、30~60時間後、30~45時間後、45~72時間後、45~60時間後、または60~72時間後)の対象の血清中の測定において、hCMV抗原(例えば、gH、gL、UL128、UL130、UL131A、及び/またはgBポリペプチド)に対する中和抗体によって産生される中和力価を産生するのに十分である。
【0178】
本明細書で使用する場合、従来のワクチンとは、本開示のmRNAワクチン以外のワクチンを指す。例えば、従来のワクチンとしては、限定されるものではないが、微生物生ワクチン、微生物不活化ワクチン、サブユニットワクチン、タンパク質抗原ワクチン、DNAワクチン、ウイルス様粒子(VLP)ワクチンなどが挙げられる。例示的な実施形態において、従来のワクチンは、国の薬物規制機関(例えば、米国の食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA))によって規制上の承認を達成し、及び/または登録されているワクチンである。
【0179】
いくつかの実施形態において、対象内の抗抗原抗体力価は、ワクチン接種後、hCMVに対する従来のワクチンの予防有効用量をワクチン接種した対象またはワクチン未接種の対象内の抗抗原抗体力価よりも1log~10log増加する。いくつかの実施形態において、対象内の抗抗原抗体力価は、ワクチン接種後、hCMVに対する従来のワクチンの予防有効用量をワクチン接種した対象またはワクチン未接種の対象内の抗抗原抗体力価よりも1log、2log、3log、4log、5log、または10log増加する。
【0180】
対象内のhCMVに対する免疫応答を引き出す方法は、本開示の他の態様で提供する。本方法は、少なくとも1つのhCMV抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドを含むhCMV mRNAワクチンを対象に投与することを含み、それにより、対象内でhCMV抗原に特異的な免疫応答を誘導し、対象内の免疫応答は、RNAワクチンに対し2倍~100倍の薬用量レベルでhCMVに対する従来のワクチンを接種した対象内の免疫応答と同等である。
【0181】
いくつかの実施形態において、対象内の免疫応答は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)に対し2倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象内の免疫応答と同等である。いくつかの実施形態において、対象内の免疫応答は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)に対し3倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象内の免疫応答と同等である。いくつかの実施形態において、対象内の免疫応答は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)に対し4倍、5倍、10倍、50倍、または100倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象内の免疫応答と同等である。いくつかの実施形態において、対象内の免疫応答は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)に対し10倍~1000倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象内の免疫応答と同等である。いくつかの実施形態において、対象内の免疫応答は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)に対し100倍~1000倍の薬用量レベルで従来のワクチンを接種した対象内の免疫応答と同等である。
【0182】
他の実施形態において、免疫応答は、対象内での[タンパク質]抗体力価を決定することによって評価される。他の実施形態において、免疫化された対象からの血清または抗体の能力の試験は、ウイルス取込みを中和する能力またはヒトBリンパ球のhCMV形質転換を低減する能力に対し行われる。他の実施形態において、ロバストなT細胞応答(複数可)を促進する能力は、当技術分野で認識されている技法を用いて測定される。
【0183】
本開示の他の態様は、少なくとも1つのhCMV抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドを含むhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を対象に投与して、対象内でhCMV抗原に特異的な免疫応答を誘導することにより、対象内でhCMVに対する免疫応答を引き出す方法を提供し、対象内の免疫応答は、hCMVに対する従来のワクチンの予防有効量を接種した対象内で誘導される免疫応答よりも2日~10週間早く誘導される。いくつかの実施形態において、対象内の免疫応答は、RNAワクチンに対し2倍~100倍の薬用量レベルで従来のワクチンの予防有効用量を接種した対象内で誘導される。
【0184】
いくつかの実施形態において、対象内の免疫応答は、従来のワクチンの予防有効用量でワクチン接種した対象内で誘導される免疫応答よりも2日、3日、1週間、2週間、3週間、5週間、または10週間早く誘導される。
【0185】
また、本明細書では、第1の抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)を対象に投与することにより、hCMVに対する対象内の免疫応答を引き出す方法であって、RNAポリヌクレオチドが安定化エレメントを含まず、アジュバントがワクチンと同時製剤化または同時投与されない、方法を提供する。
【0186】
hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、治療的に有効な転帰をもたらす任意の経路で投与することができる。このような経路には、限定されるものではないが、皮内、筋肉内、鼻腔内、及び/または皮下の投与が含まれる。本開示は、RNAワクチンを投与することをそれを必要とする対象に行うことを含む方法を提供する。必要とされる正確な量は、対象の人種、年齢、及び概況、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて対象ごとに異なる。hCMV mRNAワクチンは、典型的には、投与しやすさ及び薬用量の均一性のために、単位剤形で製剤化される。ただし、hCMV mRNAワクチンの1日合計使用量は妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されよう。いかなる特定の患者に対する具体的な治療有効用量レベル、予防有効用量レベル、または適切なイメージング用量レベルも、治療する障害、障害の重症度、用いる具体的化合物の活性、用いる具体的組成物、患者の年齢、体重、全体の健康状態、性別、及び食事、用いる具体的化合物の投与時間、投与経路、及び排泄率、治療の期間、用いる具体的化合物と組み合わせでまたは同時に使用する薬物、ならびに医学分野で周知されている類似の因子を含めた様々な因子に依存する。
【0187】
例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)は、約1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、21μg、22μg、23μg、24μg、25μg、26μg、27μg、28μg、29μg、30μg、31μg、32μg、33μg、34μg、35μg、36μg、37μg、38μg、39μg、40μg、41μg、42μg、43μg、44μg、45μg、46μg、47μg、48μg、49μg、50μg、51μg、52μg、53μg、54μg、55μg、56μg、57μg、58μg、59μg、60μg、61μg、62μg、63μg、64μg、65μg、66μg、67μg、68μg、69μg、70μg、71μg、72μg、73μg、74μg、75μg、76μg、77μg、78μg、79μg、80μg、81μg、82μg、83μg、84μg、85μg、86μg、87μg、88μg、89μg、90μg、95μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、または500μg(これらの間の全ての値を含む)の用量で投与される。いくつかの実施形態では1回用量のみ投与され、一方他の実施形態では複数回用量が投与される。複数回用量が投与される実施形態において、用量は、最初の用量とその後の用量との間で同じでも異なってもよい。
【0188】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供するhCMV免疫原性組成物(例えば、gH/gL/UL128/UL130/UL131A/gBをコードするmRNAを含むmRNAワクチンA)の有効量は90μgのように低くてもよく、例えば、単回用量として、または3回の30μg用量として投与される。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、25μg~500μgまたは30μg~450μgの単回用量である。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、21μg、22μg、23μg、24μg、25μg、26μg、27μg、28μg、29μg、30μg、31μg、32μg、33μg、34μg、35μg、36μg、37μg、38μg、39μg、40μg、41μg、42μg、43μg、44μg、45μg、46μg、47μg、48μg、49μg、50μg、51μg、52μg、53μg、54μg、55μg、56μg、57μg、58μg、59μg、60μg、61μg、62μg、63μg、64μg、65μg、66μg、67μg、68μg、69μg、70μg、71μg、72μg、73μg、74μg、75μg、76μg、77μg、78μg、79μg、80μg、81μg、82μg、83μg、84μg、85μg、86μg、87μg、88μg、89μg、90μg、95μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、または500μg(これらの間の全ての値を含む)の単回用量とすることができる。
【0189】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、30μg~180μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、30μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、90μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、180μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、300μg~450μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、300μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、450μgの単回用量である。
【0190】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、25μg~500μgまたは30μg~450μgの2回用量である。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、21μg、22μg、23μg、24μg、25μg、26μg、27μg、28μg、29μg、30μg、31μg、32μg、33μg、34μg、35μg、36μg、37μg、38μg、39μg、40μg、41μg、42μg、43μg、44μg、45μg、46μg、47μg、48μg、49μg、50μg、51μg、52μg、53μg、54μg、55μg、56μg、57μg、58μg、59μg、60μg、61μg、62μg、63μg、64μg、65μg、66μg、67μg、68μg、69μg、70μg、71μg、72μg、73μg、74μg、75μg、76μg、77μg、78μg、79μg、80μg、81μg、82μg、83μg、84μg、85μg、86μg、87μg、88μg、89μg、90μg、95μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、または500μg(これらの間の全ての値を含む)の2回用量とすることができる。
【0191】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、30μg~180μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、30μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、90μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、180μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、300μg~450μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、300μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、450μgの2回用量である。
【0192】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、25μg~500μgまたは30μg~450μgの3回以上の用量である。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、21μg、22μg、23μg、24μg、25μg、26μg、27μg、28μg、29μg、30μg、31μg、32μg、33μg、34μg、35μg、36μg、37μg、38μg、39μg、40μg、41μg、42μg、43μg、44μg、45μg、46μg、47μg、48μg、49μg、50μg、51μg、52μg、53μg、54μg、55μg、56μg、57μg、58μg、59μg、60μg、61μg、62μg、63μg、64μg、65μg、66μg、67μg、68μg、69μg、70μg、71μg、72μg、73μg、74μg、75μg、76μg、77μg、78μg、79μg、80μg、81μg、82μg、83μg、84μg、85μg、86μg、87μg、88μg、89μg、90μg、95μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、または500μg(これらの間の全ての値を含む)の3回用量とすることができる。
【0193】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、30μg~180μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、30μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、90μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、180μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、300μg~450μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、300μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量は、450μgの3回以上の用量である。
【0194】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供するhCMV免疫原性組成物(例えばpp65mutをコードするmRNAを含むmRNAワクチンB)の有効量は30μg前後とすることができ、例えば、単回用量として、または3回の10μg用量として投与される。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、5μg~100μgまたは10μg~80μgの単回用量である。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、または100μgの単回用量とすることができる。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、10μg~80μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、10μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、40μgの単回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、80μgの単回用量である。
【0195】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、5μg~100μgまたは10μg~80μgの2回用量である。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、または100μgの2回用量とすることができる。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、10μg~80μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、10μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、40μgの2回用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、80μgの2回用量である。
【0196】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、5μg~100μgまたは10μg~80μgの3回以上の用量である。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、または100μgの3回以上の用量であり得る。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、10μg~80μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、10μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、40μgの3回以上の用量である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量は、80μgの3回以上の用量である。
【0197】
いくつかの実施形態において、(本明細書に記載の任意の用量の)1回、2回、3回、または3回超の用量のhCMV mRNAワクチンA及び/またはhCMV mRNAワクチンBが対象に投与される。いくつかの実施形態において、(本明細書に記載の任意の用量の)1回、2回、または3回の用量のhCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBが対象に投与される。いくつかの実施形態において、用量は、1日目、2か月目の初め頃(例えば、29日目)、及び6か月目の初め頃(例えば、169日目)に投与される。
【0198】
いくつかの実施形態において、hCMV mRNAワクチンA及び/またはhCMV mRNAワクチンBの用量は、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、40日目、41日目、42日目、43日目、44日目、45日目、46日目、47日目、48日目、49日目、50日目、51日目、52日目、53日目、54日目、55日目、56日目、57日目、58日目、59日目、60日目、61日目、62日目、63日目、64日目、65日目、66日目、67日目、68日目、69日目、70日目、71日目、72日目、73日目、74日目、75日目、76日目、77日目、78日目、79日目、80日目、81日目、82日目、83日目、84日目、85日目、86日目、87日目、88日目、89日目、90日目、91日目、92日目、93日目、94日目、95日目、96日目、97日目、98日目、99日目、100日目、101日目、102日目、103日目、104日目、105日目、106日目、107日目、108日目、109日目、110日目、111日目、112日目、113日目、114日目、115日目、116日目、117日目、118日目、119日目、120日目、121日目、122日目、123日目、124日目、125日目、126日目、127日目、128日目、129日目、130日目、131日目、132日目、133日目、134日目、135日目、136日目、137日目、138日目、139日目、140日目、141日目、142日目、143日目、144日目、145日目、146日目、147日目、148日目、149日目、150日目、151日目、152日目、153日目、154日目、155日目、156日目、157日目、158日目、159日目、160日目、161日目、162日目、163日目、164日目、165日目、166日目、167日目、168日目、169日目、170日目、171日目、172日目、173日目、174日目、175日目、176日目、177日目、178日目、179日目、180日目、181日目、182日目、183日目、184日目、185日目、186日目、187日目、188日目、189日目、190日目、191日目、192日目、193日目、194日目、195日目、196日目、197日目、198日目、199日目に対象に投与される。いくつかの実施形態において、hCMV mRNAワクチンA及び/またはhCMV mRNAワクチンBの用量は、199日目以後に対象に投与される。
【0199】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の有効量は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の少なくとも1回用量(例えば、本明細書に記載の任意の薬用量レベル(例えば、30μg、90μg、または180μg)の1回、2回、3回用量)である。いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の有効量は、少なくとも1回用量(例えば、本明細書に記載の任意の薬用量レベル(例えば、10μg、40μg、または80μg)の1回、2回、3回用量)である。
【0200】
本明細書に記載のhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、本明細書に記載の剤形、例えば、鼻腔内、気管内、または注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、皮内、心臓内、腹腔内、及び皮下)の剤形で製剤化することができる。
【0201】
ワクチン効果
本開示のいくつかの態様は、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の製剤であって、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)が、対象内で抗原特異的免疫応答(例えば、抗hCMV抗原に特異的な抗体の産生)をもたらすのに有効な量で製剤化される、製剤を提供する。「有効量」とは、抗原特異的免疫応答をもたらすのに有効なhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の用量である。また、本明細書では、対象内の抗原特異的免疫応答を誘導する方法も提供する。
【0202】
本明細書で使用する場合、本開示のワクチンまたはLNPに対する免疫応答は、ワクチン中に存在する(1つ以上の)hCMVタンパク質(複数可)に対する対象内での液性及び/または細胞性免疫応答の発生を意味する。本開示の目的において、「液性」免疫応答とは、抗体分子(例えば、分泌(IgA)またはIgG分子を含む)によって媒介される免疫応答を指し、一方、「細胞性」免疫応答とは、T-リンパ球(例えば、CD4+ヘルパー及び/またはCD8+T細胞(例えば、CTL)及び/または他の白血球)によって媒介される免疫応答を指す。細胞性免疫における1つの重要な態様は、細胞溶解性T細胞(CTL)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合複合体(MHC)によってコードされたタンパク質と共に提示され細胞表面に発現するペプチド抗原に対し特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊またはこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導及び促進する一助となる。細胞性免疫のもう1つの側面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を含む。ヘルパーT細胞は、ペプチド抗原をMHC分子と共に表面に提示した細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性に焦点を合わせる一助となるように作用する。細胞性免疫応答は、活性化T細胞及び/または他の白血球(CD4+及びCD8+T細胞由来のものを含む)によって産生されるサイトカイン、ケモカイン、及び他のこのような分子の産生も引き起こす。
【0203】
いくつかの実施形態において、抗原特異的免疫応答は、本明細書で提供するhCMV mRNAワクチンを投与された対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価を測定することにより、特性評価される。抗体力価とは、対象内にある抗体(例えば、特定の抗原(例えば、抗hCMV抗原)または抗原のエピトープに特異的な抗体)の量の測定値である。抗体力価は、典型的には、陽性結果をもたらす最大希釈度の逆数として表される。例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、抗体力価を定量するための一般的なアッセイである。
【0204】
いくつかの実施形態において、抗体力価は、対象が感染症にかかったかどうかを評価するため、または免疫化が必要かどうかを判断するために使用される。いくつかの実施形態において、抗体力価は、自己免疫応答の強さを定量するため、ブースター免疫が必要かを判断するため、以前のワクチンが有効だったかを判断するため、及び最近または過去の感染を確認するために使用される。本開示によれば、抗体力価は、hCMV mRNAワクチンによって対象内で誘導された免疫応答の強さを定量するために使用することができる。
【0205】
いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも1log増加する。例えば、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3log、少なくとも4log、または少なくとも5log、またはそれ以上増加し得る。いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5log増加する。いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも1~5log増加する。例えば、対象に産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも1~1.5、1~2、1~2.5、1~3、1~4、1~5、1.5~2、1.5~2.5、1.5~3、1.5~4、1.5~5、2~2.5、2~3、2~4、2~5、2.5~3、2.5~4、2.5~5、3~4、3~5、または4~5log増加し得る。
【0206】
いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも2倍増加する。例えば、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍増加し得る。いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍増加する。いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも2~10倍増加する。例えば、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~10、6~9、6~8、6~7、7~10、7~9、7~8、8~10、8~9、または9~10倍増加し得る。
【0207】
いくつかの実施形態において、抗原特異的免疫応答は、hCMVに対する血清中和抗体力価の幾何平均力価(GMT)の比(幾何平均比(GMR)と称される)として測定される。幾何平均力価(GMT)とは、全ての値を掛け合わせ、その数値のn乗根(nは利用可能なデータを有する対象数である)をとることによって算出される、対象の群における平均抗体力価である。
【0208】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンA)の有効量またはhCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチンB)の有効量の投与は、hCMVに対する血清中和抗体力価を引き出す。いくつかの実施形態において、hCMV mRNAワクチンAの単回用量(例えば、本明細書に記載の任意の用量)もしくは複数回用量、またはhCMV mRNAワクチンBの単回用量(例えば、本明細書に記載の任意の用量)もしくは複数回用量の投与は、hCMVに対する血清中和抗体力価を引き出す。
【0209】
いくつかの実施形態において、hCMV mRNAワクチンAを投与された対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも少なくとも3倍または少なくとも4倍増加する。例えば、対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍増加し得る。いくつかの実施形態において、血清中和抗体は、上皮細胞感染に対する抗体である。他の実施形態において、血清中和抗体は、線維芽細胞感染に対する抗体である。
【0210】
いくつかの実施形態において、単回用量(例えば、30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも2倍~10倍(例えば、少なくとも3倍)増加する。いくつかの実施形態において、血清中和抗体は、上皮細胞感染に対する抗体である。他の実施形態において、血清中和抗体は、線維芽細胞感染に対する抗体である。
【0211】
いくつかの実施形態において、2回用量(例えば、30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の2回用量、または30~200μgの2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも2倍~10倍(例えば、少なくとも3倍)増加する。いくつかの実施形態において、3回用量(例えば、30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の3回用量、または30~200μgの3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも2倍~10倍増加する。いくつかの実施形態において、血清中和抗体は、上皮細胞感染に対する抗体である。他の実施形態において、血清中和抗体は、線維芽細胞感染に対する抗体である。
【0212】
いくつかの実施形態において、2回用量(例えば、30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の2回用量、または30~200μgの2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、hCMV mRNAワクチンAを投与された対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも9倍~20倍(例えば、9~20、10~20、15~20、9~15、10~15、または9~10倍)増加する。例えば、2回用量(例えば、30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の2回用量、または30~200μgの2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、または20倍増加し得る。いくつかの実施形態において、血清中和抗体は、上皮細胞感染に対する抗体である。他の実施形態において、血清中和抗体は、線維芽細胞感染に対する抗体である。
【0213】
いくつかの実施形態において、3回用量(例えば、30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の3回用量、または30~200μgの3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、hCMV mRNAワクチンAを投与された対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも最大40倍(例えば、最大40倍、最大35倍、最大30倍、最大25倍)増加する。例えば、3回用量(例えば、30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の3回用量、または30~200μgの3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも20倍~40倍(例えば、20~40倍、20~35倍、20~30倍、20~25倍、25~40倍、25~35倍、30~40倍、30~35倍、または35~40倍)増加し得る。いくつかの実施形態において、3回用量(例えば、30μg以上(例えば30μg、90μg、180μg、もしくは300μg)の3回用量、または30~200μgの3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した後、対象内で、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、ベースラインよりも20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍、31倍、32倍、33倍、34倍、35倍、36倍、37倍、38倍、39倍、または40倍増加し得る。いくつかの実施形態において、血清中和抗体は、上皮細胞感染に対する抗体である。他の実施形態において、血清中和抗体は、線維芽細胞感染に対する抗体である。
【0214】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの1回、2回、もしくは3回用量、または30~200μgの1回、2回、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは0.6~11の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの1、2、もしくは3回用量、または30~200μgの1、2、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約0.6、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11であり得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの1回、2回、もしくは3回用量、または30~200μgの1回、2回、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは30~180の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの1、2、もしくは3回用量、または30~200μgの1、2、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、または180であり得る。いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μg用量の1回、2回、もしくは3回用量、または30~200μgの1回、2回、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対する平均GMRは約120である。
【0216】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは30~40(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40)である。いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約38.15である。いくつかの実施形態において、90μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは130~150(例えば、130、135、140、145、または150)である。いくつかの実施形態において、90μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約142.57である。いくつかの実施形態において、180μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは140~160(例えば、140、145、150、155、または160)である。いくつかの実施形態において、180μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約157.96である。
【0217】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの1回、2回、もしくは3回用量、または30~200μgの1回、2回、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは380~4000の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの1、2、もしくは3回用量、または30~200μgの1、2、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約380、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000であり得る。いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの1回、2回、もしくは3回用量、または30~200μgの1回、2回、もしくは3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対する平均GMRは約2100である。
【0218】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは380~420(例えば、380、390、400、410、または420)である。いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約407.86である。いくつかの実施形態において、90μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは1800~2100(例えば、1800、1900、2000、または2100)である。いくつかの実施形態において、90μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約1913.17である。いくつかの実施形態において、180μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは3600~4100(例えば、3600、3700、3800、3900、4000、または4100)である。いくつかの実施形態において、180μg以上の少なくとも1回(例えば、1回または2回)用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陰性対象)内で、hCMVに対するGMRは約3842.87である。
【0219】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは9~41の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または41であり得る。いくつかの実施形態において、GMRは、上皮細胞感染に対する中和抗体のものである。
【0220】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは4~8の範囲内にある。例えば、少なくとも1回用量の30μg以上(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約4、5、6、7、8、9、または10であり得る。いくつかの実施形態において、GMRは、線維芽細胞感染に対する中和抗体のものである。
【0221】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは2~3の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与した対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3であり得る。いくつかの実施形態において、30μgの少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対する平均GMRは約2.7である。
【0222】
いくつかの実施形態において、30μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは2.3~2.5(例えば、2.3、2.4、または2.5)である。いくつかの実施形態において、30μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約2.43である。いくつかの実施形態において、90μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは2.5~2.8(例えば、2.5、2.6、2.7、または2.8)である。いくつかの実施形態において、90μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約2.66である。いくつかの実施形態において、180μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは2.6~3(例えば、2.6、2.7、2.8、2.9、または3)である。いくつかの実施形態において、180μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約2.83である。
【0223】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは6~10の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10であり得る。いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも1回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対する平均GMRは約7.7である。
【0224】
いくつかの実施形態において、30μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは6~7(例えば、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7)である。いくつかの実施形態において、30μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約6.85である。いくつかの実施形態において、90μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVのGMRは6~7(例えば、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7)である。いくつかの実施形態において、90μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約6.93である。いくつかの実施形態において、180μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは9~10(例えば、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、または10)である。いくつかの実施形態において、180μg以上の単回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約9.26である。
【0225】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは2~5の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5であり得る。いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、もしくは180μgの単回用量、または30~200μgの単回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対する平均GMRは約3.2である。
【0226】
いくつかの実施形態において、30μg以上の2回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは12~14(例えば、12、12.5、13、13.5、または14)である。いくつかの実施形態において、30μg以上の2回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約13.15である。いくつかの実施形態において、90μg以上の2回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVのGMRは8~10(例えば、8、8.5、9、9.5、または10)である。いくつかの実施形態において、90μg以上の2回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約9.91である。いくつかの実施形態において、180μg以上の2回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは18~20(例えば、18、18.5、19、19.5、または20)である。いくつかの実施形態において、180μg以上の2回用量のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約19.36である。
【0227】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの少なくとも2回用量、または30~200μgの少なくとも2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは10~20の範囲内にある。例えば、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの少なくとも2回用量、または30~200μgの少なくとも2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり得る。いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの少なくとも2回用量、または30~200μgの少なくとも2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対する平均GMRは約14.2である。
【0228】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの少なくとも2回用量、または30~200μgの少なくとも2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは、ベースラインよりも少なくとも2.5倍(例えば、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍)増加する。例えば、30μg以上の少なくとも2回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの少なくとも2回用量、または30~200μgの少なくとも2回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは、ベースラインよりも2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、または3.8倍増加し得る。
【0229】
いくつかの実施形態において、30μg以上の少なくとも3回用量(例えば30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの少なくとも3回用量、または30~200μgの少なくとも3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは、ベースラインよりも少なくとも3.9倍(例えば、少なくとも3.9倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍)増加する。例えば、30μg以上の少なくとも3回用量(例えば、30μg、90μg、180μg、もしくは300μgの少なくとも3回用量、または30~200μgの少なくとも3回用量)のhCMV mRNAワクチンAを投与された対象(例えば、血清反応陽性対象)内で、hCMVに対するGMRは、ベースラインよりも3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、または5倍増加し得る。
【0230】
対照/ベースラインは、いくつかの実施形態においては、hCMV mRNAワクチンを投与されていない対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価である。いくつかの実施形態において、対照/ベースラインは、自然hCMV感染を有する対象(すなわち、hCMV mRNAワクチンを投与される前にhCMV血清反応陽性の対象)内で産生される抗hCMV抗原抗体力価である。いくつかの実施形態において、対照/ベースラインは、hCMV mRNAワクチンを投与される前はhCMV血清反応陰性の対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価である。いくつかの実施形態において、hCMVに対する血清中和抗体のGMTは、用量依存的に増加する。
【0231】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)が有効となる能力は、マウスモデルで測定される。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)は、マウスモデルに投与することができ、マウスモデルを中和抗体力価の誘導について評価する。また、ウイルスチャレンジ試験も、本開示のワクチンの効果を評価するために使用することができる。例えば、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)をマウスモデルに投与し、マウスモデルをhCMVで攻撃し、マウスモデルを生存及び/または免疫応答(例えば、中和抗体応答、T細胞応答(例えば、サイトカイン応答))について評価することができる。
【0232】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の有効量は、組換えhCMVタンパク質ワクチンの標準治療用量と比較して低減された用量である。本明細書で使用する「標準治療」とは、医学的または心理学的な治療ガイドラインを指し、一般的な場合も特定的な場合もある。「標準治療」は、科学的根拠に基づいた適切な治療及び所与の条件の治療に関与する医療従事者間の協力を規定する。それは、医師/臨床医がある特定のタイプの患者、病気、及び臨床状況に対し従うべき診断及び治療のプロセスである。本明細書で使用する「標準治療用量」とは、医師/臨床医または他の医療専門家が、hCMV、またはhCMVに関連する状態を治療または予防するための標準治療ガイドラインに従いながら、hCMV、またはhCMVに関連する状態を治療または予防するために対象に投与すると考えられる組換えもしくは精製hCMVタンパク質ワクチン、弱毒生もしくは不活化hCMV mRNAワクチン、またはhCMV VLPワクチンの用量を指す。
【0233】
いくつかの実施形態において、hCMV免疫原性組成物(例えば、mRNAワクチン)の有効量を投与された対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、組換えもしくは精製hCMVタンパク質ワクチン、または弱毒生もしくは不活化hCMV mRNAワクチン、またはhCMV VLPワクチンの標準治療用量を投与された対照対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価と同等である。
【0234】
ワクチン効果は、標準的な解析を用いて評価することができる(例えば、Weinberg et al.,J Infect Dis.2010 Jun 1;201(11):1607-10を参照)。例えば、ワクチン効果は、二重盲検ランダム化対照臨床試験で測定することができる。ワクチン効果は、ワクチン非接種試験コホートの罹患率(ARU)とワクチン接種試験コホートの罹患率(ARV)との間の疾患罹患率(AR)の比例的減少として表すことができ、以下の式を用いてワクチン接種群の疾患の相対リスク(RR)から算出することができる。
【数1】
【0235】
同様に、ワクチン有効性は標準的解析を用いて評価することができる(例えば、Weinberg et al.,J Infect Dis.2010 Jun 1;201(11):1607-10を参照)。ワクチンの有効性とは、ワクチン(高いワクチン効果を有することが既に判明している場合もある)が集団の中でどのように疾患を低減するかを評価するものである。この尺度は、対照臨床試験ではなく自然のフィールド条件下で、ワクチン自体にとどまらず、ワクチン接種プログラムの利益及び有害作用の本質的なバランスを評価することができる。ワクチン有効性はワクチンの効果(効力)に比例するが、集団内の標的群がどの程度免疫化しているか、及び「実世界」の転帰に影響を及ぼすワクチンとは無関係な要因(例えば、入院、外来受診、または費用)による影響も受ける。例えば、後ろ向きケースコントロール解析を使用して、感染症例のセット及び適切な対照におけるワクチン接種率を比較することができる。ワクチン有効性は、ワクチン接種したにもかかわらず感染症を発症したオッズ比(OR)の使用により、割合の差として表すことができる。
【数2】
【0236】
いくつかの実施形態において、hCMV mRNAワクチンの効果は、ワクチン未接種対照対象に対し少なくとも60%である。例えば、hCMV mRNAワクチンの効果は、ワクチン未接種対照対象に対し少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%であり得る。
【0237】
殺菌免疫。殺菌免疫とは、宿主への有効な病原体感染を防止する固有の免疫状態を指す。いくつかの実施形態において、本開示のhCMV mRNAワクチンの有効量は、少なくとも1年間、対象内の殺菌免疫をもたらすのに十分である。例えば、本開示のhCMV mRNAワクチンの有効量は、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、または少なくとも5年間、対象内の殺菌免疫をもたらすのに十分であり得る。いくつかの実施形態において、本開示のhCMV mRNAワクチンの有効量は、対照よりも少なくとも5倍低い用量で対象内の殺菌免疫をもたらすのに十分である。例えば、有効量は、対照よりも少なくとも10倍、15倍、または20倍低い用量で対象内の殺菌免疫をもたらすのに十分であり得る。
【0238】
検出可能な抗原。いくつかの実施形態において、本開示のhCMV mRNAワクチンの有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、検出可能なレベルのhCMV抗原を産生するのに十分である。
【0239】
力価。抗体力価とは、対象内の抗体(例えば、特定の抗原(例えば、抗hCMV抗原)に特異的な抗体)の量の測定値である。抗体力価は、典型的には、陽性結果をもたらす最大希釈度の逆数として表される。例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、抗体力価を定量するための一般的なアッセイである。
【0240】
いくつかの実施形態において、本開示のhCMV mRNAワクチンの有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、hCMV抗原に対する中和抗体によって産生される1,000~10,000の中和抗体力価を産生するのに十分である。いくつかの実施形態において、有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、hCMV抗原に対する中和抗体によって産生される1,000~5,000の中和抗体力価を産生するのに十分である。いくつかの実施形態において、有効量は、投与してから1~72時間後の対象の血清中の測定において、hCMV抗原に対する中和抗体によって産生される5,000~10,000の中和抗体力価を産生するのに十分である。
【0241】
いくつかの実施形態において、中和抗体力価は、少なくとも100NT50である。例えば、中和抗体力価は、少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、または1000NT50であり得る。いくつかの実施形態において、中和抗体力価は、少なくとも10,000NT50である。
【0242】
いくつかの実施形態において、中和抗体力価は、少なくとも100中和単位/ミリリットル(NU/mL)である。例えば、中和抗体力価は、少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、または1000NU/mLであり得る。いくつかの実施形態において、中和抗体力価は、少なくとも10,000NU/mLである。
【0243】
いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも1log増加する。例えば、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10log増加し得る。
【0244】
いくつかの実施形態において、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも2倍増加する。例えば、対象内で産生される抗hCMV抗原抗体力価は、対照よりも少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10倍増加する。
【0245】
いくつかの実施形態において、n個の数の積のn乗根である幾何平均は、比例成長を説明するために一般的に使用される。幾何平均は、いくつかの実施形態においては、対象内で産生される抗体力価を特性評価するために使用される。
【実施例】
【0246】
本明細書に記載の発明をより十分に理解できるようにするため、以下の実施例を示す。本出願に記載の実施例は、本出願で提供するシステム及び方法を例示するために提供されるものであり、いかなる形においてもそれらの範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0247】
実施例1.サイトメガロウイルスワクチンhCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBを健康な成人に投与したときの安全性、反応原性、及び免疫原性を評価するためのフェーズIランダム化観察者盲検プラセボ対照用量設定試験
このフェーズI試験は、hCMV mRNAワクチンAの安全性、反応原性、及び免疫原性、ならびにhCMV mRNAワクチンBの安全性及び反応原性を評価することを目的とした。
【0248】
hCMV mRNAワクチンAは、全長CMV糖タンパク質B(gB)及び五量体のgH/gL/UL128/UL130/UL131A糖タンパク質複合体(五量体)をコードする配列を有する別々のmRNA分子からなる。hCMV mRNAワクチンBは、pp65タンパク質のリン酸化変異体(アミノ酸435~438欠損)をコードする配列を有するmRNA分子からなり、T細胞応答を引き出すことを目的としている。リン酸化部位は、野生型pp65タンパク質を発現するあらゆる理論上の安全性の懸念を軽減するため、欠失させている。
【0249】
hCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBはいずれも、非臨床的な安全性及び免疫原性が確認されており、そのためヒトのCMV一次感染及びCMV陽性個体のCMV再感染/再活性化を防止する潜在的可能性を有する。
【0250】
試験集団の選択
血清反応陰性である対象の治験CMVワクチンに対する免疫応答は、血清反応陽性である対象の応答とは異なる可能性がある。安全性及び免疫原性の潜在的な違いを調べるため、本試験では、本試験の用量選択フェーズB及びセンチネル拡大フェーズCの拡大コホートに、ほぼ同数のCMV血清反応陰性の健康な対象及びCMV血清反応陽性の健康な対象を登録した。
【0251】
レジメン及び用量
このフェーズI試験では、hCMV mRNAワクチンAの5つの用量レベル(30μg、90μg、180μg、300μg、及び240μgまたは450μgのいずれか[フェーズC第1群の安全性審査に応じて決定])と、hCMV mRNAワクチンBの3つの用量レベル(10μg、40μg、及び80μg)とを試験する。
【0252】
双方の化合物の初期用量は、非臨床の安全性及び免疫原性のデータが評価された範囲内である。毒性作用は認められなかったが、いくつかの軽度及び予想される局所性炎症反応が認められた。また、最大180μgの用量レベルは、フェーズ1/2 mRNAワクチン試験で良好な安全性プロファイルを有し免疫応答を誘導した用量範囲内にもある(Bahl et al 2017)。
【0253】
他の治験用CMVワクチンによるこれまでの知見から、ロバストで持続的な免疫応答を誘導するには、2回用量または3回用量のワクチン接種シリーズの必要性が示された(Pass et al 2009;Bernstein et al 2016)。したがって、本臨床試験では3回接種シリーズを評価した。
【0254】
計画された用量スケジュール(1日目、2か月目、及び6か月目)は、組換えタンパク質ワクチンの最適なワクチン接種スケジュールであることが予め分かっていた。また、このスケジュールであれば、標的集団にヒトパピローマウイルス(HPV;Gardasil 2015)またはB型肝炎ウイルス(HBV;Engerix-B 2016)のワクチンを同時接種することも可能であった。免疫応答の評価を、各治験ワクチン接種後に加えて、2回目ワクチン接種の4か月後及び3回目ワクチン接種の6か月後に行った。
【0255】
安全性モニタリング計画
hCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBは、初めてヒトに投与するため、順次登録、用量漸増、及び継続的な安全性評価などの安全性の考慮を施す。治験ワクチンは、最初は少数の対象に投与し、許容できる忍容性を確認した後、その後登録を拡大する。試験休止のルールが定義され、本試験の安全性評価は、内部安全性チーム(IST)及び非盲検下の独立した安全性モニタリング委員会(SMC)が監督する。本試験は、後述のように複数のフェーズで行う。
【0256】
プラセボの使用
現時点では認可済みCMVワクチンが存在しないため、安全性、反応原性、及び免疫原性の評価のためにプラセボ群を対照として使用した。
【0257】
試験の盲検化
プラセボの物理的外観はhCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBと異なるため、またhCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBは投与前に希釈が必要となるため、本試験は観察者盲検法で行った。バイアスを最小限に抑えるため、非盲検の医療担当者が、対象及び盲検下の現場担当者の両方から見えないようにして用量を投与した。非盲検の医療担当者は、いかなるパープロトコルの臨床評価にも参加しなかった。
【0258】
リスク/ベネフィット評価
本試験では、対象およそ170例をhCMV mRNAワクチンAまたはhCMV mRNAワクチンBに曝露し、対象およそ46例にプラセボを投与した。
【0259】
試験目的
主要目的
本試験の主要目的は、hCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBを3回用量ワクチン接種スケジュールに従って異なる用量で投与し、これらの安全性及び反応原性を評価することであった。
【0260】
副次的目的
本試験の副次的目的は以下の通り。
1.異なる用量のhCMV mRNAワクチンAを接種した後の上皮細胞及び線維芽細胞の感染に対する抗CMV中和抗体応答を評価すること。
2.酵素結合免疫吸着法(ELISA)による測定において、異なる用量のhCMV mRNAワクチンAを接種した後のgB及び五量体に対する抗原特異的抗体応答を評価すること。
3.異なる用量のhCMV mRNAワクチンAによって2回目及び3回目のワクチン接種後に引き出される抗体媒介免疫応答を比較して、さらなる評価のためにこのワクチンの最適な用量レベルの選択の情報を提供すること。
4.hCMV mRNAワクチンAによって2回目ワクチン接種の4か月後及び3回目ワクチン接種の6か月後に引き出される抗体媒介免疫応答を比較すること。
5.ベースラインのCMV血清状態によってhCMV mRNAワクチンAの免疫原性を評価すること。
【0261】
探索的目的
本試験の探索的目的は以下の通り。
1.異なる用量のhCMV mRNAワクチンAを接種した後の抗体応答の質を調べること。
2.酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイによる定量において、異なる用量のhCMV mRNAワクチンAに対する抗原特異的T細胞応答を評価すること。
3.ELISPOTアッセイによる検出において、異なる用量のhCMV mRNAワクチンAに対する抗原特異的メモリーB細胞応答を評価すること。
4.フローサイトメトリーによる測定において、異なる用量のhCMV mRNAワクチンAを接種した後のgB特異的及び五量体特異的な形質芽球を評価すること。
5.細胞内サイトカイン染色解析による定量において、異なる用量のhCMV mRNAワクチンAに対する抗原特異的T細胞応答を評価すること。
6.ELISAによる測定において、異なる用量のhCMV mRNAワクチンAの抗gB及び抗五量体アビディティー指数を評価すること。
【0262】
試験方法
実験設計:
本試験は、健康な成人に投与したhCMV mRNAワクチンAの安全性、反応原性、及び免疫原性ならびにhCMV mRNAワクチンBの安全性及び反応原性を評価するためのランダム化観察者盲検プラセボ対照用量設定ヒト初回投与試験であった。
【0263】
本試験の期間
本試験の期間は、各対象ごとにおよそ18ヵ月であった。
【0264】
試験のフェーズ
hCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBをヒトに投与するのは本試験が初めてとなるため、3つの低用量レベルについては用量漸増及び用量選択フェーズへの登録、他の2つの用量レベルについてはセンチネル拡大コホートへの登録を利用することにより、安全性を考慮した。
【0265】
用量漸増フェーズA:CMV血清反応陰性対象27例を、3つの低用量レベルの治験ワクチンまたはプラセボに順次登録。各用量レベル当たり9例の対象を、hCMV mRNAワクチンA(30、90、180μg)、hCMV mRNAワクチンB(10、40、80μg)、またはプラセボの投与に4:4:1の比でランダムに割り当てた。内部安全性チーム(IST)の安全性審査により、各用量レベル内での用量継続及び次の用量レベルへの用量漸増が許可された。安全性モニタリング委員会(SMC)は、hCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBの63日目(180μg/80μg用量レベルにおける2回目ワクチン接種の6日後)までの全ての安全性及び反応原性データを審査し、本試験の用量選択フェーズBで評価したhCMV mRNAワクチンA用量レベルを確認し、63日目までの用量漸増フェーズBのSMC安全性審査を保留した。また、SMCは、hCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBの175日目(180μg/80μg用量レベルにおける3回目ワクチン接種の6日後)までの全ての利用可能な安全性データも審査して、用量選択フェーズBでのhCMV mRNAワクチンAの3回目ワクチン接種の投与を許可する。
【0266】
用量漸増フェーズB:hCMV mRNAワクチンAを用量選択フェーズBで実施するため、CMV血清反応陰性対象15例を、hCMV mRNAワクチンAの3つの低用量レベルまたはプラセボに順次登録した。各用量レベル当たり5例の対象を、hCMV mRNAワクチンAまたはプラセボに4:1の比でランダムに割り当てた。ISTによる安全性審査により、各用量レベル内での用量継続及び次の用量への漸増が許可される。SMCは、hCMV mRNAワクチンAの63日目(180μgの用量レベルにおける2回目ワクチン接種の6日後)までの全ての用量レベルの安全性及び反応原性データを審査し、次に、本試験の用量選択フェーズBで評価するhCMV mRNAワクチンAの用量レベルを確認する。また、SMCは、hCMV mRNAワクチンAの175日目(180μg用量レベルにおける3回目ワクチン接種の6日後)までの全ての利用可能な安全性データも審査して、用量選択フェーズBでの3回目ワクチン接種の投与を許可する。
【0267】
用量選択フェーズB:hCMV mRNAワクチンAの3つの低用量レベルまたはプラセボにおよそ104例(試験群ごとに26例)の対象を並行登録する。対象を1:1:1:1の比でランダムに割り付けて、30、90、及び180μgのhCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与した。各用量レベルに、ほぼ同数のCMV血清反応陰性及びCMV血清反応陽性の対象を登録した。安全性及び反応原性は、非盲検下のSMCによって定期的に審査を受ける。
【0268】
センチネル拡大フェーズC:用量、忍容性、及び免疫原性の関係をより十分に理解するため、このフェーズでは、最大70例の対象(最大2群、各群35例)を、hCMV mRNAワクチンAの2つの他の用量レベルまたはプラセボに登録する。各群について、登録をセンチネルコホート(CMV血清反応陰性対象5例を4:1の比でランダムに割り付け、hCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与)及び拡張コホート(最大30例を4:1の比でランダムに割り付け、hCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与)に分け、CMV血清反応陰性対象及びCMV血清反応陽性対象をほぼ同じ数にする。
【0269】
第1群:センチネル対象は、用量漸増フェーズBからの63日目(2回目ワクチン接種の6日後)までの安全性データに基づき、hCMV mRNAワクチンA 300μgまたはプラセボの投与にランダムに割り付ける。SMCは、第1群センチネルコホートの7日目(1回目ワクチン接種の6日後)までの全ての安全性及び反応原性データを審査して、第1群拡大コホートの登録を許可する。次に、SMCは、全ての第1群の対象からの7日目までの安全性及び反応原性のデータを審査して、第2群への登録を許可する。
【0270】
第2群:第1群からの7日目(1回目ワクチン接種の6日後)までの安全性及び忍容性のデータに基づき、対象をhCMV mRNAワクチンAまたはプラセボにランダムに割り付ける。第2群におけるhCMV mRNAワクチンAの用量レベルは、以下の方法で決定する。
【0271】
7日目までの全ての第1群の対象に対するSMC審査で安全性の懸念が生じなければ、第2群の対象をhCMV mRNAワクチンA 450μgの用量レベルまたはプラセボにランダムに割り付ける。
【0272】
第1群の登録中、または7日目までの全ての第1群の対象に対するSMC審査後に生じた安全性の懸念のため、第2群の対象は、hCMV mRNAワクチンA 240μgの用量レベルまたはプラセボを投与するようにランダムに割り付ける。
【0273】
ISTは、第2群センチネルコホートの7日目(1回目ワクチン接種の6日後)までの全ての安全性及び反応原性データを審査して、第2群拡大コホートの登録を許可する。
【0274】
ワクチン接種スケジュール:1日目、2か月目、及び6か月目に3回注射(1か月=28日)
対照:食塩水プラセボ
試験群:
用量漸増フェーズA(CMV血清反応陰性対象):
●4:4:1の比でランダムに割り付けた9例の対象に、30μg hCMV mRNAワクチンA、10μg hCMV mRNAワクチンB、またはプラセボを投与した
●4:4:1の比でランダムに割り付けた対象9例に、90μg hCMV mRNAワクチンA、40μg hCMV mRNAワクチンB、またはプラセボを投与した
●4:4:1の比でランダムに割り付けた対象9例に、180μg hCMV mRNAワクチンA、80μg hCMV mRNAワクチンB、またはプラセボを投与した
用量漸増フェーズB(CMV血清反応陰性対象):
●30μg用量レベル:4:1の比でランダムに割り付けた5例の対象に、30μg hCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与
●90μg用量レベル:4:1の比でランダムに割り付けた5例の対象に、90μg hCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与
●180μg用量レベル:4:1の比でランダムに割り付けた5例の対象に、180μg hCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与
用量選択フェーズB:
CMV血清反応陽性対象及びCMV血清反応陰性対象がほぼ同数となるように1:1:1:1の比でランダムに割り付けた104例の対象を各用量レベルに登録した。
●およそ26例の対象に30μg hCMV mRNAワクチンAを投与
●およそ26例の対象に90μg hCMV mRNAワクチンAを投与
●およそ26例の対象に180μg hCMV mRNAワクチンAを投与
●およそ26例の対象にプラセボを投与
【0275】
本試験の用量選択フェーズBで評価したhCMV mRNAワクチンA用量レベルは、SMCにより、用量漸増フェーズBからの安全性及び反応原性データを審査した後に確認された。
【0276】
センチネル拡大フェーズC:
最大70例の対象(最大2群、群当たり対象35例)をセンチネル拡大法で登録し、4:1の比でランダムに割り付けて、hCMV mRNAワクチンAの他の2つの用量レベルまたはプラセボを投与するようにする。センチネルコホートはCMV血清反応陰性対象を登録し、拡張コホートはCMV血清反応陰性対象及びCMV血清反応陽性対象をほぼ同数登録する。
●第1群:4:1の比でランダムに割り付けたおよそ35例の対象に、300μgのhCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与する。
●第2群:4:1の比でランダムに割り付けたおよそ35例の対象に、(フェーズC第1群の安全性審査に応じて)240μgもしくは450μgのhCMV mRNAワクチンAまたはプラセボを投与する。第2群の用量レベルは、全ての第1群の対象の7日目までの安全性データに基づいている。
【0277】
ランダム化
本試験では、双方向応答技術を使用した。用量選択フェーズBの群数及びランダム化比は、用量漸増フェーズからの安全性及び反応原性データの審査に基づき、SMCの勧告に従って調整した。
【0278】
盲検化
本試験は観察者盲検試験であった。
【0279】
血液試料スケジュール
スクリーニング臨床検査用の血液試料をスクリーニング来院時に採取した。安全性の臨床検査値評価に用いる血液試料を1日目、7日目、1か月目、2か月目、63日目、3か月目、6か月目、175日目、及び7か月目の来院時に採取する。抗体媒介免疫原性に用いる血液試料を1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時に採取する。細胞媒介免疫原性の評価に用いる血液試料を1日目、7日目、2か月目、63日目、6か月目、175日目、及び12か月目の来院時に用量漸増フェーズB、用量選択フェーズB、及びセンチネル拡大フェーズCの対象から採取する。
【0280】
データ収集:電子症例報告書(eCRF)。
【0281】
試験来院
スクリーニング、1日目、7日目、1か月目、2か月目、63日目、3か月目、6か月目、175日目、7か月目、及び12か月目の11回の病院への来院。
【0282】
安全性に関する電話連絡
用量漸増フェーズA及びBの全ての対象ならびにセンチネル拡大フェーズCのセンチネルコホートにおいて、各治験ワクチン接種(2、3、58、59、170、及び171日目)のおよそ24時間後及び48時間後に、安全性に関する電話連絡を6回行い、非自発有害事象(AE)及びその他の安全性情報を収集する。加えて、本試験の全ての対象に対して安全性に関する電話連絡を7回(4及び5か月目、8~11か月目、18か月目)行い、全ての診療を要した有害事象(AE)、試験中止に至ったAE、重篤なAE(SAE)、特記されるAE(AESI)、これらの事象に関連する併用薬の情報、及び任意のワクチン接種について収集する。
【0283】
非自発AE
全ての対象について、各治験ワクチン接種時からその後の6日間に発生した局所性(注射部位の痛み、紅斑、及び腫脹)ならびに全身性(頭痛、疲労、筋肉痛(全身に及ぶ筋肉の痛み)、関節痛(数箇所の関節の痛み)、悪心、発疹、発熱、及び悪寒)の非自発AEを、日誌を用いて毎日記録する。
【0284】
自発AE
各治験ワクチン接種の28日後までに発生し、プロトコルで定義された非自発AEの一部に含まれなかった観察または報告された全てのAEを、全ての対象について日誌を用いて記録する。加えて、各ワクチン接種のおよそ28日後(1か月目、3か月目、及び7か月目の来院時)に、施設の有資格担当者が対象にインタビューを行って任意の自発AEの発生を評価する。
【0285】
診療を要したAE、試験中止に至ったAE、AESI、及びSAE
診療を要したAE及び試験中止に至ったAEは1日目から収集し、AESI及びSAEはインフォームドコンセントフォームに署名した時点から収集する。これらのデータを、日誌、来院時及び安全性に関する電話連絡時の対象へのインタビュー、ならびに入手可能な医療記録の審査によって取り込む。
【0286】
書面によるインフォームドコンセント
試験に関わる全ての手順を行う前に、書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0287】
予定対象数
本試験には合計でおよそ216例を登録し、用量漸増フェーズAに27例、用量漸増フェーズBに15例、用量選択フェーズBに104例、センチネル拡大フェーズCに最大70例とする。全てのスクリーニング手順が完了したら、治験責任医師は各対象について選択/除外基準を検討して試験への登録に適格か判断する。対象のスクリーニング情報は、適切なeCRFのページに記録する。
【0288】
治験責任医師がそうする理由があると考える場合、以下に規定する臨床検査パラメーターを除き、いくつかのスクリーニング手順を一度繰り返す。
【0289】
適格な対象の再スクリーニングは、当初予定されていた用量レベルが終了し、別の用量レベルが開始する前に28日間のスクリーニングウインドウを過ぎた場合に許可される。対象には新たなスクリーニング番号が割り当てられ、全てのスクリーニング手順が繰り返される。最初のスクリーニングで全ての登録基準を満たさなかった対象は、再スクリーニング不可とする。
【0290】
スクリーニング不合格は、同意書に署名したものの、その後、試験介入にランダムに割り付けられなかったか、または試験に登録されなかった対象として定義した。全てのスクリーニング不合格の対象について、適格性、人口統計、SAE、及びインフォームドコンセントに関する情報を収集した。
【0291】
対象の特徴ならびに主な対象基準及び除外基準
身体検査及び病歴による判断において健康状態が良好であり、全ての指定された適格基準を満たす場合に、対象を本試験に含めた。以下に選択基準及び除外基準を示す。
【0292】
選択基準
スクリーニング時の病歴、臨床検査値、バイタルサイン測定値、及び身体検査所見による判断において、1回目ワクチン接種時に治験責任医師が健康状態良好と判断した成人対象(18歳~49歳)。全ての試験来院が可能で、書面によるインフォームドコンセントを提供した対象。BMIが18~35kg/m2の対象。試験手順を理解し、遵守に同意し、書面によるインフォームドコンセントを提供した対象。プロトコルの要件(例えば、日誌記入、追跡調査のための再来院、安全性に関する電話連絡に対応可能)を遵守することができ、かつ遵守する見込みがあると治験責任医師が判断した。
【0293】
妊娠不可能な女性対象は試験に登録することができる。妊娠不可能とは、スクリーニングの1年超前の両側卵管結紮、両側卵巣摘出、子宮摘出、閉経として定義される(用語集を参照)。閉経状態を確認するため、治験責任医師の自由裁量で卵胞刺激ホルモンレベルを測定する場合がある。妊娠可能な女性は、スクリーニング時及びワクチン接種日に妊娠検査結果が陰性でなければならず、1回目ワクチン接種の30日前から妥当な避妊を実行するか、または妊娠につながる全ての活動を控えなければならず、最後のワクチン接種から3か月後まで妥当な避妊を継続することに同意していなければならない。男性対象は、1回目ワクチン接種の30日前から最終ワクチン接種の3か月後まで、妥当な避妊を行うことに同意しなければならない。
【0294】
除外基準:
治験責任医師が臨床的に重要であると判断した任意の急性または慢性の疾患(免疫媒介疾患または免疫抑制状態を含む)。無症候性の状態または所見(例えば、軽度の高血圧、脂質異常症)は、適切に管理され、臨床的に安定しており、試験期間内に進行する可能性が低いと治験責任医師が判断した場合は除外しないこととした。過去10年以内に悪性腫瘍の診断を受けたことがある(非黒色腫皮膚癌を除く)。妊娠可能な女性が、妊娠中もしくは授乳中だった、試験参加の少なくとも30日前から妥当な避妊法を遵守していなかった、または最終ワクチン接種後少なくとも3か月間そうする予定ではなかった。妊娠可能な女性が、妊娠中もしくは授乳中だった、試験参加の少なくとも30日前から妥当な避妊法を遵守していなかった、または最終ワクチン接種後少なくとも3か月間そうする予定ではなかった。スクリーニング血液検査値が異常(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、もしくはアルカリホスファターゼとして定義される肝機能検査値の上昇、またはクレアチニンの上昇もしくは血小板の減少を含む)であり、スクリーニング時の毒性スコアがグレード1以上である。これらのパラメーターの再検査は不可とした。スクリーニング時の安全性試験(血液学、化学、及び凝固)の毒性スコアがグレード2以上である。臨床的に重要でない(NCS)グレード1の臨床検査値異常を有する対象の組み入れは、治験責任医師の判断に基づき許可された。治験ワクチンの1回目投与の30日前以降に、治験ワクチン以外の治験薬もしくは非登録薬(薬物またはワクチン)を投与された、または試験期間中に投与の予定があった。過去に脂質ナノ粒子(LNP)に関する研究試験に参加した。スクリーニング時にB型肝炎表面抗原、C型肝炎ウイルス抗体、またはヒト免疫不全ウイルス1型もしくは2型抗体の検査結果が陽性であった。スクリーニング時に以下の非処方薬物乱用のいずれかの尿中薬物スクリーニングが陽性であった:アンフェタミン、ベンゾジアゼピン、コカイン、メタドン、アヘン、及びフェンシクリジン。他の任意の薬物の検査結果が陽性であった場合は、対象を組み入れる前に治験責任医師の承認を必要とした。アンフェタミン、ベンゾジアゼピン、またはアヘンの尿中薬物スクリーニングが陽性であっても、その陽性結果が処方された併用薬に起因すると治験責任医師が判断した場合は除外されない。肝毒性を有する潜在可能性がある薬物を慢性的に投与していた(1回目ワクチン接種前の3か月以内の14日超の投与として定義される)、または肝臓に影響を及ぼす他の医学的状態(例えば、アルコール乱用)を有した。特発性蕁麻疹の既往歴があった。各治験ワクチン接種の30日前から30日後までの間に、試験プロトコルが予見していないワクチンを投与する予定があった、または投与された。ただし、治験ワクチン接種の15日以上前または後に投与された任意の認可済みインフルエンザワクチンは除く。1回目ワクチン投与前の6か月以内に免疫抑制剤または免疫修飾薬を慢性的に投与していた(合計14日超として定義される)(副腎皮質ホルモンの場合、プレドニゾン20mg/日以上または同等のものは不可とする)。吸入ステロイド、点鼻ステロイド、及び外用ステロイドは可とする。1回目治験ワクチン投与の3か月前以降に免疫グロブリン及び/または血液製剤を投与された、あるいは試験期間中に投与する予定があった。過去のワクチン接種で過敏性または重篤な反応(例えば、アナフィラキシー、蕁麻疹、医療介入を要する他の重大な反応)の既往歴があった。IM注射または静脈切開の禁忌とみなされる出血系障害を有した。スクリーニング来院時に急性の病気または発熱があった。発熱は、経口、腋窩、または鼓室経路による38.0℃/100.4°F以上の体温として定義される。この基準に適合する対象は、スクリーニングを後日に再スケジュールすることができる。軽症の病気を有する無熱の対象は、治験責任医師の自由裁量で登録することができる。試験への参加により対象にさらなるリスクをもたらし得る、または治験ワクチンの評価もしくは試験結果の解釈を妨げ得ると治験責任医師が判断する任意の医学的、精神医学的、または業務上の状態。スクリーニング時にCMV血清反応陽性であった対象は、用量漸増フェーズA及びB、ならびにセンチネル拡大フェーズCのセンチネルコホートから除外する。試験担当者の直系家族または世帯員であった。投薬の30日以内に450mL超の全血または血液製剤を提供した。現在抗痙攣薬が処方されている発作障害の既往歴がある。以下の項目は除外理由としなかった:発作障害の既往歴があるが、過去5年以内に発作がなく、かつ抗痙攣薬が処方されていない場合、及び小児期の熱性発作の既往歴の場合。
【0295】
治験ワクチン
hCMV mRNAワクチンAは、脂質ナノ粒子(LNP)製剤に含まれる6つのmRNA薬物物質からなる。hCMV mRNAワクチンBは、LNP製剤に含まれる1つのmRNA薬物物質からなる。
【0296】
各ワクチンのLNP製剤は、4つの脂質賦形剤、すなわちイオン化可能なアミノ脂質と、市販の脂質であるコレステロールと、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンと、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコールとを含む。
【0297】
hCMV mRNAワクチンA及びhCMV mRNAワクチンBの各々は、93mMトリス緩衝液、7%プロピレングリコール、及び1mM DTPA中、それぞれ1.0及び2.0mg/mLの濃度で注射用無菌液体として提供する。プラセボは0.9%塩化ナトリウムとする。
【0298】
治験ワクチンは、三角筋(好ましくは利き腕でない方)に筋肉内投与した。
【0299】
評価基準
主要安全性及び反応原性評価項目:
1.各ワクチン接種後7日間の経過観察中(すなわち、ワクチン接種日及びその後の6日間)における各非自発局所性及び全身性AEの発生。
2.各治験ワクチン接種後29日間の経過観察期間中(すなわち、ワクチン接種日及びその後の28日間)における任意の自発AEの発生。
3.1日目、7日目、1か月目、2か月目、63日目、3か月目、6か月目、175日目、及び7か月目の来院時の任意の臨床検査値異常の発生。
4.1日目から18か月目までの任意の診療を要したAEの発生。
5.1日目から18か月目までの任意のAESIの発生。
6.1日目から18か月目までの任意のSAEの発生。
【0300】
副次免疫原性評価項目:
1.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時の上皮細胞感染に対する中和抗CMV抗体の幾何平均力価(GMT)。
2.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時の線維芽細胞感染に対する中和抗CMV抗体の幾何平均力価。
3.1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時に上皮細胞感染に対する血清中和抗CMV抗体が1日目に比べて2倍以上、3倍以上、及び4倍以上増加した対象の割合。
4.1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時に線維芽細胞感染に対する血清中和抗CMV抗体が1日目に比べて2倍以上、3倍以上、及び4倍以上増加した対象の割合。
5.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時に、上皮細胞感染に対する血清中和抗CMV抗体力価がカットオフレベル(すなわち、自然CMV感染に関連する中和抗体力価)を上回った対象の割合。
6.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時に、線維芽細胞感染に対する血清中和抗CMV抗体力価がカットオフレベル(すなわち、自然CMV感染に関連する中和抗体力価)を上回った対象の割合。
7.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時の上皮細胞及び線維芽細胞感染に対する血清中和抗体力価の逆累積分布。
8.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時にELISAによって測定した抗gB免疫グロブリンG(IgG)の幾何平均力価。
9.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時にELISAによって測定した抗五量体IgGの幾何平均力価。
【0301】
探索的免疫原性評価項目
1.1日目、1か月目、3か月目、6か月目、7か月目、及び12か月目の来院時にELISAによって測定した抗gB及び抗五量体のアビディティー指数。
2.1日目、7日目、2か月目、63日目、6か月目、175日目、及び12か月目の来院時にELISPOTによって定量したIFN-γを分泌するgB特異的及び五量体特異的CD4及びCD8 T細胞の頻度。
3.1日目、7日目、2か月目、63日目、6か月目、175日目、及び12か月目の来院時にELISPOTによって測定したgB特異的及び五量体特異的IgGメモリーB細胞の応答。
4.1日目、7日目、2か月目、63日目、6か月目、175日目、及び12か月目にフローサイトメトリーによって測定したgB特異的及び五量体特異的な形質芽球。
5.1日目、7日目、2か月目、63日目、6か月目、175日目、及び12か月目の来院時に細胞内サイトカイン染色によって定量したIFN-γ、IL-2、及び/またはTNF-αを分泌するgB特異的及び五量体特異的CD4及びCD8 T細胞の頻度。
【0302】
サンプルサイズの正当性:
過去の臨床試験データが利用不可能であり、臨床的に意味のある群間差が確立されていないため、サンプルサイズは、正式な仮説検定のための統計的仮定によって決定されたものではない。加えて、現時点では防御の相関のための数は不明である。しかし、ヒト血清の中和アッセイからのいくつかのデータが利用可能である。提唱された対象数は、用量漸増フェーズAにおけるhCMV mRNAワクチンAの安全性及び免疫原性の記述要約ならびにhCMV mRNAワクチンBの安全性の記述要約を提供するのに十分であった。
【0303】
対象のおよそ10%が評価不能(すなわち、追跡調査不能、サンプル数不足、臨床検査結果の不備など)となることを予想して、およそ194例の評価可能な対象を得るためにおよそ216例の対象を登録する。CMV血清反応陽性の対象及びCMV血清反応陰性の対象をほぼ同数で用量選択フェーズB及びセンチネル拡大フェーズCの拡大コホートに登録する。
【0304】
統計的解析:
各アッセイの定量下限値(LLOQ)未満の値をLLOQの50%に設定する。GMT抗体力価は対数変換(底10)する。各試験群について、血清中和抗体のGMTはその関連する95%CIと共に、対応する対数変換済み平均値及び95%CIをべき乗により算出する。
【0305】
上昇倍率:それぞれのワクチン抗原に対する血清中和抗体力価(ELISA抗体濃度)がベースラインから2倍以上、3倍以上、及び4倍以上上昇した対象の割合を、各試験群について、その両側95%クロッパー・ピアソンCIと共に評価した。
【0306】
GMTの統計解析は、用量レベルを固定効果とし、ベースライン抗体レベルを共変量とした共分散モデルの解析を用いて行う。
【0307】
主要な免疫原性解析は、パープロトコルセットに基づく。最大の解析対象集団(FAS)及びパープロトコルセットの対象数の相違(差をPPセットの対象総数で割ったものとして定義される)が10%超の場合、FASについても一次免疫原性解析を行う。
【0308】
計画された解析:統計解析は以下のように実施する。
1.来院1日目から3か月目までに収集した安全性、反応原性、及び免疫原性のデータの3か月中間解析が各試験フェーズにつき実施され得る。この解析は、フェーズCの第1群及び第2群について別々に実施され得る。解析はクリーニング済みデータで行い、治療群レベルで報告する。7か月目及び/または12か月目までの利用可能な安全性及び免疫原性のデータも、これらの中間解析の一部としてまとめることができる。
2.フェーズA、フェーズB、ならびにフェーズCの第1群及び第2群については、1日目から7か月目までに収集した安全性、反応原性、及び免疫原性のデータの7か月中間解析が別々に実施され得る。解析はクリーニング済みデータで行い、治療群レベルで報告する。12か月目までの利用可能な安全性または免疫原性のデータも、これらの中間解析の一環としてまとめられている。個々の治療割り当てへのアクセスが事前に特定した治験依頼者試験チームメンバーに制限されているため、これらは部分的に非盲検化した解析とする。治験責任医師及び現場担当者は盲検化されたままであった。
3.1日目の来院から試験終了までに収集した安全性、反応原性、及び免疫原性のデータの最終的な非盲検解析は、データベースをクリーニング及びロックした時に行う。
【0309】
ワクチン応答を調べるために、免疫原性データの追加解析を実施する場合がある。
【0310】
試験安全性監督:IST及び独立したSMCを含む2つの安全性モニタリング委員会が、本試験の安全性を監視するために組織される。
【0311】
結果
3か月中間解析の重要な結果について以下で詳述する。
【0312】
フェーズA(n=27)
●全ての用量レベルにおける試験終了(3回目ワクチン接種の12か月後)までの全ての対象に対するhCMV mRNAワクチンBの安全性ならびにhCMV mRNAワクチンAの安全性及び免疫原性
用量漸増フェーズB(n=15)
●30μg、90μg、及び180μg用量レベルにおける7か月目(3回目ワクチン接種の1か月後)までの全ての対象に関する安全性
●30μg、90μg、及び180μg用量レベルにおける3か月目(2回目ワクチン接種の1か月後)までの全ての対象に関する免疫原性
用量選択フェーズB(n=104)
●3か月目(2回目ワクチン接種の1か月後)までの全ての対象に対する安全性及び免疫原性
【0313】
このフェーズIヒト初回投与ランダム化観察者盲検プラセボ対照用量設定試験の目的は、18~49歳の健康な成人におけるhCMV mRNAワクチンAの安全性及び免疫原性、ならびにhCMV mRNAワクチンBの安全性を評価することである。
【0314】
フェーズA及び用量漸増第フェーズBの全ての対象が登録時にCMV血清反応陰性であり、用量選択フェーズBでは、ほぼ同数の対象が登録時にCMV血清反応陰性またはCMV血清反応陽性であった。別段の明記がない限り、データは各フェーズごとにまとめている。フェーズAについては、人口統計学及び安全性のデータをhCMV mRNAワクチンBまたはhCMV mRNAワクチンAの投与ごとに別々に提示する。フェーズBについては、人口統計データを用量漸増対象及び用量選択対象ごとに別々に提示する。フェーズBの安全性及び免疫原性データは、用量漸増対象及び用量選択対象を合わせたものによって提示され、CMV血清ステータス別及び全体でまとめている。
【0315】
結果の概要
人口統計
人口統計及びベースラインの特徴は、治療群ならびにフェーズA及びフェーズBの全体において概ね均衡していた。女性:男性の比は、フェーズAとフェーズBとの間で一貫しており、およそ3:2であった。
【0316】
安全性
非自発安全性データは、各ワクチン接種の7日後まで収集した。これは非自発安全性セットに基づいている。自発事象は、各ワクチン接種の28日後まで収集した。これは曝露セットに基づいている。
【0317】
全体的結果
フェーズAでは、hCMV mRNAワクチンB及びhCMV mRNAワクチンAは、対象数が少ないものの概ね忍容性が良好で、フェーズBのhCMV mRNAワクチンAは、2つの低用量レベルで概ね忍容性が良好であった。
【0318】
非自発局所性有害事象
フェーズA
フェーズAでは、3回の各ワクチン接種後、hCMV mRNAワクチンB及びhCMV mRNAワクチンAのレシピエントの最大100%で、注射部位の痛みが最も一般的な局所症状として報告された。これは概して用量相関的であり、全てグレード1~2であった。
【0319】
フェーズB(用量漸増及び用量選択の統合データ)
フェーズB試験でも、注射部位の痛みが最も一般的な局所症状であり、1回目ワクチン接種後に対象の76.7~100%、2回目ワクチン接種後に対象の74.1~84.6%で報告され、概して用量相関的であった。1回目ワクチン接種後にグレード3の注射部位の痛みを報告した5例のうち4例がCMV血清反応陽性であり、2回目ワクチン接種後にグレード3の注射部位の痛みを報告した8例は、CMV血清反応陰性参加者とCMV血清反応陽性参加者との間で等しく分布していた。注射部位の紅斑は、1回目ワクチン接種後に最大15.4%の参加者、2回目ワクチン接種後に最大21.4%の参加者で報告され、CMV血清反応陰性及びCMV血清反応陽性のいずれの参加者でも180μg治療群により高い割合で発生した。グレード3の注射部位の紅斑の報告が1件、180μg治療群のCMV血清反応陽性の参加者で2回目ワクチン接種後に発生した。注射部位の腫脹の割合は低く、1回目ワクチン接種後に対象3例、2回目ワクチン接種後に対象1例から報告され、全ての参加者がCMV血清反応陽性であった。
【0320】
フェーズBにおける3回目ワクチン接種後の非自発局所性AEデータは、用量漸増コホートに限定する。注射部位の痛みが唯一報告されたAEであり、全ての用量レベルでCMV血清反応陰性対象のみに発生し、全てがグレード1~2であった。
【0321】
非自発全身性有害事象
フェーズA
頭痛、疲労、筋肉痛、及び関節痛が最も一般的な非自発全身性AEであった。hCMV mRNAワクチンBのレシピエントにおいて、hCMV mRNAワクチンBを投与した対象の非自発全身性AEの割合は、概して用量相関的ではないように思われた。hCMV mRNAワクチンAを投与した対象において、非自発全身性AEの割合は、1回目及び2回目ワクチン接種後、90μg及び180μgの用量レベルで概して高かった。1回目ワクチン接種後、非自発全身性AEの全体的な割合は、hCMV mRNAワクチンB及びhCMV mRNAワクチンAのレシピエント間でほぼ同じであった。2回目ワクチン接種後の頭痛、疲労、筋肉痛、及び関節痛の割合は、hCMV mRNAワクチンBレシピエント(50~75%)でhCMV mRNAワクチンA(16.7~33.3%)に比べて高かった。3回目ワクチン接種後、これらのAEの割合は、hCMV mRNAワクチンBレシピエント(36.4~54.5%)とhCMV mRNAワクチンAレシピエント(36.4~54.5%)との間でほぼ同じであった。発熱が報告されたのは、ワクチン接種全体でhCMV mRNAワクチンAレシピエント1例のみであった。hCMV mRNAワクチンBレシピエントでは、発熱は2回目及び3回目のワクチン接種後にのみそれぞれ50%と27.3%に発生し、用量相関的ではないように思われた。また、フェーズAにおけるグレード3非自発AEの17件全てが全身性AEであり、hCMV mRNAワクチンBを投与した対象で2回目または3回目ワクチン接種後に報告された。
【0322】
注目すべきことに、悪寒については、フェーズAでは非自発全身性AEとして報告されなかったが、フェーズBでは非自発AEとして報告された。
【0323】
フェーズB(用量漸増及び用量選択)
頭痛、疲労、筋肉痛、及び悪寒が最も一般的な非自発全身性AEであり、これらは1回目ワクチン接種(30.3~48.7%)に比べて2回目ワクチン接種後に多く(51.3~64.7%)、用量相関的に発生し、CMV血清反応陽性対象ではCMV血清反応陰性対象に比べてやや高い割合で発生した。
【0324】
CMV血清反応陰性の参加者においては、非自発全身性AEの割合は、1回目ワクチン接種後に比べて2回目ワクチン接種後の方が概して高かった。発熱の割合は用量相関的であり、2回目ワクチン接種後で高くなった。1回目ワクチン接種後は、CMV血清反応陰性参加者の2%、CMV血清反応陽性参加者の33.3%で報告され、2回目ワクチン接種後は、CMV血清反応陰性参加者の23.9%、CMV血清反応陽性参加者の41.2%で報告された。1回目ワクチン接種後に報告されたグレード3の発熱の3例全て、ならびに2回目ワクチン接種後に報告されたグレード3の発熱の6例中5例が、CMV血清反応陽性参加者で報告された。フェーズBにおけるグレード3非自発全身性AE56件のうち、19件が1回目ワクチン接種後、36件が2回目ワクチン接種後であった。1回目ワクチン接種後のグレード3の事象19件のうちCMV血清反応陰性参加者で発生したのは1件のみであったが、2回目ワクチン接種後の事象56件のうち35件はCMV血清反応陰性参加者で発生した。CMV血清状態に関連する2回目ワクチン接種後と比べた1回目ワクチン接種後のグレード3非自発全身性AEの割合は、CMV血清反応陽性参加者では1回目ワクチン接種で即時「ブースト」があったのに対し、CMV血清反応陰性参加者では1回目ワクチン接種に「プライム」があった後に2回目ワクチン接種の「ブースト」があったことを反映している可能性がある。
【0325】
フェーズBにおける3回目ワクチン接種後の非自発全身性AEデータは、用量漸増コホートに限定する。1回目及び2回目のワクチン接種後と同様に、3回目ワクチン接種後でも、頭痛、疲労、筋肉痛、及び悪寒が最も高頻度に報告された非自発全身性AEであった。全てのAEはグレード1~2であり、概して用量相関的に発生し、もっぱらCMV血清反応陰性参加者で報告された。
【0326】
対象2例が発疹を報告し(1例がCMV血清反応陰性、1例がCMV血清反応陽性)、いずれの対象も用量選択フェーズBの180μg治療群に属した。対象のうち1例は誤って発疹を日誌に報告し、もう1例は大豆アレルギーが原因の発疹が発生し、これは治験ワクチンと無関係であるとみなした。
【0327】
この中間解析のデータカットオフ時点では、登録した対象およそ181例のうち、26例がさらなるワクチン接種を中止した。治験ワクチン接種(複数可)後に発生したAEが原因で中止した対象9例のうち、1例を除く全員をフェーズB試験に登録した。そのほとんどが2回目ワクチン接種後に中止しており、およそ2/3がCMV血清反応陽性であった。対象13例は、AE以外の理由でさらなるワクチン接種を中止し、対象4例は追跡調査不能となった。
【0328】
自発有害事象
各ワクチン接種の28日後までの自発AE
フェーズAでワクチン治療群にランダム化した対象24例のうち、18例が自発AEを報告した。hCMV mRNAワクチンB群では、対象9例が自発AEを25件報告し、このうち対象8例が報告した自発AE23件を治験薬に関連するものとみなした。hCMV mRNAワクチンA群では、対象9例が自発AEを12件報告し、このうち対象6例が報告した自発AE5件を治験薬に関連するものとみなした。hCMV mRNAワクチンBのレシピエント2例及びhCMV mRNAワクチンAのレシピエント1例がグレード3自発AEを報告し、これらの全てを治験薬に関連するものとみなした。試験中止に至るAEが発生した対象は認められなかった。最も一般的な自発AEは悪寒であり、参加者12例(7例はhCMV mRNAワクチンBにランダム化、5例はhCMV mRNAワクチンAにランダム化)で報告され、各治療群で1例以上の参加者に認められ、これらの全てを治験薬に関連するものとみなした。合計5例の対象が診療を要したAEを報告し(3例がhCMV mRNAワクチンBにランダム化、2例がhCMV mRNA ワクチンAにランダム化)、治験薬に関連するものとみなした診療を要したAE2件は、hCMV mRNAワクチンBにランダム化した参加者で発生した。プラセボにランダム化した参加者1例が、診療を要した自発AEを1件報告し、これは治験薬とは無関係であった。
【0329】
ワクチン治療群にランダム化したフェーズB参加者89例のうち、38例(42.7%)が自発有害事象を99件報告し、そのうち22例(24.7%)が報告した事象68件を治験薬に関連するものとみなした。グレード3自発AEを報告した参加者12例(13.5%)のうち、7例(7.9%)が報告した事象を治験薬に関連するものとみなした。CMV血清反応陰性対象とCMV血清反応陽性対象との間でAEカテゴリーの分布にパターンまたは差は認められなかった。
【0330】
試験中止に至るAEが発生した対象は認められなかった。
【0331】
最も頻度の高い自発AE(疲労、関節痛、悪寒、筋肉痛、発熱)は、非自発AEとして収集する基本語カテゴリーに該当するが、日誌収集ツール以外で最初に報告されたため、自発AEに分類した。次に頻度の高い治験薬関連の自発AEは、リンパ節症であった。自発AEを報告したプラセボレシピエント7例のうち、2例がCMV血清反応陰性、5例がCMV血清反応陽性であり、CMV血清反応陽性群のプラセボレシピエント1例が報告したAE1件を治験薬に関連するものとみなした。診療を要したAEを報告した対象8例中6例が、CMV血清反応陽性であり、180μg治療群のCMV血清反応陽性対象1例が報告した事象1件を、治験薬に関連するものとみなした。プラセボ群にランダム化した対象2例が診療を要した事象を報告したが、いずれもCMV血清反応陽性群の対象であり、これらの事象は治験薬とは無関係であった。
【0332】
全体では対象9例がリンパ節症状を報告した(フェーズAで4例、フェーズBで5例)。これらの全てを治験薬に関連するものとみなした。フェーズAの対象4例は、hCMV mRNAワクチンBの40μgまたは80μgいずれかの治療群にランダム化された。フェーズBでは、CMV血清反応陰性参加者2例(90μg及び180μg治療群でそれぞれ1例)ならびに180μg治療群のCMV血清反応陽性参加者3例がリンパ節症を報告した。
【0333】
本試験ではSAE及び特記されるAE(AESI)は発生していない。
【0334】
免疫原性
免疫原性データは、パープロトコル(PP)免疫原性セットに基づき、線維芽細胞感染に対する中和抗体(nAb)及び上皮細胞感染に対するnAbとして報告する。
【0335】
全体的結果
1回目及び2回目のワクチン接種後の血清nAb応答は用量相関的であり、hCMV mRNAワクチンAを投与したフェーズA対象とhCMV mRNAワクチンAを投与したフェーズB CMV血清反応陰性対象との間で同等の大きさであった。CMV血清反応陽性対象のnAbは単回のワクチン接種によってブーストされた。
【0336】
ベースライン中和抗体
フェーズAの全ての治療群及びフェーズBのCMV血清反応陰性対象の全ての治療群における線維芽細胞感染及び上皮細胞感染に対するベースラインnAb GMTはLLOQ未満(8、0.5×LLOQとして報告)であり、免疫化前の自然CMV感染がないことが示された。
【0337】
フェーズBのCMV血清反応陽性群では、線維芽細胞感染に対するnAbのベースラインGMTは1295.07(95%CI=1022.39、1640.48)、上皮細胞感染に対するnAbのベースラインGMTは5588.47(95%CI=4252.06、7344.91)であった。これらの値は、CMV血清反応陰性群の免疫応答を比較する際の「自然CMV感染」ベンチマークに相当する。CMV陽性ベンチマークnAb GMTは、公表された報告[Wang et al,Vaccine 2011:29]の健康なCMV血清反応陽性集団と同等である。
【0338】
hCMV mRNAワクチンA中和抗体応答
フェーズA
フェーズA参加者では、線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、1回目ワクチン接種後はベースラインでとどまり、2回目ワクチン接種後は用量相関的に全ての対象でベースラインの4倍以上に増加し、3回目ワクチン接種後はベースラインの4倍以上を保ち、用量レベル間でGMTはほぼ同じであった。中和抗体力価の低下は、3回目用量後ゆっくりになった。上皮細胞感染に対する中和抗体は、全てのhCMV mRNAワクチンA治療群で3回全てのワクチン接種後にベースラインより4倍以上増加した。12か月目(3回目ワクチン接種の6か月後)には、線維芽細胞感染に対するnAb GMTが180μg治療群で自然CMV感染に近づき(30、90、及び180μg治療群でそれぞれ251.0、418.6、及び1047.3)、全ての用量レベルでGMT範囲が自然CMV感染ベンチマークと重なった。12か月目の上皮細胞感染に対するnAb GMTは、90μg及び180μgの用量レベルで自然CMV感染ベンチマークを上回った(30、90、及び180μg治療群で、それぞれ5078.8、13089.0、及び18915.9)。血清応答(GMTがベースライン力価の4倍以上である対象のパーセンテージ)は、3か月目(2回目ワクチン接種後)及び7か月目(3回目ワクチン接種後)に、線維芽細胞及び上皮細胞感染のいずれに対するnAbも共に治療群全体で100%となり、12か月目(3回目ワクチン接種の6か月後)も100%で保たれた。
【0339】
フェーズBのCMV血清反応陰性参加者
フェーズBのCMV血清反応陰性参加者では、1回目及び2回目ワクチン接種後の線維芽細胞感染及び上皮細胞感染に対するGMTは、フェーズAのものと概ね同じであるか、またはそれを上回った。フェーズBの線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、1回目ワクチン接種後に用量相関的に増加し、2回目ワクチン接種後にさらに用量相関的に増加して、90μg及び180μg治療群で自然CMV感染ベンチマークとほぼ同じレベル(それぞれ1140.6及び1263.6)となった。上皮細胞感染に対するnAb GMTも1回目ワクチン接種後に用量相関的に増加し、2回目ワクチン接種後にはさらに用量相関的に増加し、90μg治療群及び180μg治療群で自然CMV感染ベンチマークを超えるレベル(それぞれ15,305.3及び30,742.9)に達した。
【0340】
2回目ワクチン接種後、ベースラインに対するnAb GMTの増加は全ての用量レベルにわたってロバストであり、30、90、及び180μg治療群のGMRはそれぞれ、線維芽細胞感染に対するnAbが38.15、142.57、及び157.96、上皮細胞感染に対するnAbが407.86、1,913.17、及び3,842.87であった。3か月目の血清応答(GMTがベースライン力価の4倍以上である対象のパーセンテージ)もロバストであり、線維芽細胞感染に対するnAbは30、90、及び180μg治療群でそれぞれ92.9%、100%、及び100%の対象がベースラインの4倍以上のGMTを有し、全ての治療群で100%の対象が上皮細胞感染に対するnAbを有した。
【0341】
フェーズBのCMV血清反応陽性参加者
フェーズBのCMV血清反応陽性対象では、1回目ワクチン接種により、線維芽細胞感染に対するnAb及び上皮細胞感染に対するnAbが用量相関的にブーストされ、30、90、及び180μg治療群でそれぞれ、線維芽細胞感染に対するnAb GMRが2.43、2.66、及び2.83、上皮細胞感染に対するnAb GMRが6.85、6.93、及び9.26となった。2回目ワクチン接種では、線維芽細胞感染に対するnAb GMRが2つの高用量レベルでわずかに増加し、上皮細胞感染に対するGMRが全ての用量レベルで大幅に増加し、30、90、及び180μg治療群でそれぞれ、線維芽細胞感染に対するnAb GMRが2.30、3.00、及び4.08、上皮細胞感染に対するnAb GMRが13.15、9.91、及び19.36となった。これらの結果から、2回目ワクチン接種は、線維芽細胞感染に対するnAb応答にわずかに影響を及ぼし、上皮細胞感染に対するnAb応答に大幅に影響を及ぼすことが示唆された。
【0342】
結論
これらの中間データは、以下の結論を支持するものである。
【0343】
hCMV mRNAワクチンAワクチンの全体的な安全性プロファイルは、認可されたワクチンと同様であるが、180μg治療群ではグレード3非自発AEの割合がより高かった。CMV血清反応陰性対象では、恐らく2回目ワクチン接種の「ブースト」効果により、1回目ワクチン接種に比べて2回目ワクチン接種後の非自発AEの割合が高かった。CMV血清反応陽性対象における1回目ワクチン接種後の非自発AEの割合は、CMV血清反応陰性対象よりも高く、自然感染個体における1回ワクチン接種後の「ブースト」効果が示唆された。自発AEはリンパ節症/リンパ節痛であり、これはワクチン治療群にランダム化した対象でのみ報告され、事実上一過性であり、通常はワクチン接種後数日以内に発生し、ワクチン接種後の免疫活性化に関連し得るものであった。
【0344】
血清nAb GMTは、各ワクチン接種後、用量相関的に増加し、フェーズAのhCMV mRNAワクチンAを投与した対象及びフェーズBのhCMV mRNAワクチンAを投与したCMV血清反応陰性対象と数値的にほぼ同じであった。フェーズBの2回目ワクチン接種後、線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、90μg及び180μg治療群で自然CMV感染ベンチマークに近づき、上皮細胞感染に対するnAb GMTは、全ての治療群で自然CMV感染ベンチマークを上回った。CMV血清反応陽性の対象では、単回ワクチン接種後に中和抗体GMTが十分にブーストし、2回目ワクチン接種後には上皮細胞感染に対するnAb GMTがさらに増加した。フェーズA及びフェーズBのCMV血清反応陰性対象において、血清応答(GMTがベースライン力価の4倍以上である対象のパーセンテージ)は2回目ワクチン接種までロバストであり、フェーズAでは12か月まで継続的にロバストであった。このことから、3回目ワクチン接種後少なくとも6か月までhCMV mRNAワクチンAに対する抗体応答が持続することを示唆するものである。
【0345】
hCMV mRNAワクチンAの安全性及び免疫原性についての7か月中間解析
この中間解析では、以下のデータを検討及び解析した:(i)用量漸増フェーズBにおける30、90、及び180μg用量群ならびにプラセボの7か月目(3回目ワクチン接種の1か月後)までの安全性及び免疫原性(n=15)、(ii)用量選択フェーズBにおける30、90、及び180μg用量群及びプラセボの7か月目(3回目ワクチン接種の1か月後)までの安全性及び免疫原性(n=104)、(iii)センチネル拡大フェーズCにおける300μg用量群及びプラセボの3か月目(2回目ワクチン接種の1か月後)までの安全性及び免疫原性(n=35)。
【0346】
免疫原性は、フェーズB及びフェーズCの全ての対象において、上皮細胞及び線維芽細胞に対する中和抗体(nAb)として報告した。ELISpotによりIFN-γ分泌gB特異的T細胞で測定される細胞媒介免疫原性は、用量漸増フェーズBの対象13例で報告された。
【0347】
結果の概要
1.人口統計
人口統計学及びベースライン特性は、フェーズCのプラセボ群で年齢が高かった(プラセボ群42.5±6.2歳、300μg治療群33.3±8.7歳)ことを除き、フェーズB及びフェーズCの治療群で概ね均衡していた。フェーズB及びフェーズCに登録した女性の割合は、治療群間で概ね一致していた。フェーズB及びフェーズC全体で、全ての治療群の少なくとも80%が白人であった。
【0348】
2.安全性
非自発安全性データは、各ワクチン接種の7日後まで収集した。これは非自発安全性セットに基づいている。自発事象は、各ワクチン接種の28日後まで収集した。これは曝露セットに基づいている。
【0349】
全体的に見て、hCMV mRNAワクチンAは、概ね忍容性が良好であった。フェーズC(300μg)hCMV mRNAワクチンA治療群において、非自発副作用(AR)を報告した対象の割合は、CMV血清反応陰性群及びCMV血清反応陽性群のいずれも、フェーズBの180μg hCMV mRNAワクチンA治療群と同等であった。
【0350】
1.非自発局所性有害反応(AR):
1回目または2回目のワクチン接種後に最も一般的に報告された局所性ARは注射部位の痛みであり、概して、CMV血清反応陰性対象でもCMV血清反応陽性対象と同じ頻度で報告され、180μgまたは300μgのいずれのhCMV mRNAワクチンA治療群でも高い割合で報告された。対象は、hCMV mRNAワクチンA治療群全体に概ね分散していた。フェーズBの3回目ワクチン接種後の対象では、注射部位の痛みを報告した割合及び重症度が、2回目ワクチン接種後に比べて概ね減少した。注射部位の痛みは、治療群全体でプラセボレシピエントの0~14%で報告され、グレード3重症度の者は認められなかった。
【0351】
1回目または2回目のワクチン接種後に注射部位の紅斑を報告した対象の割合は概ね低く、治療群全体での割合は、CMV血清反応陰性対象では0~22%、CMV血清反応陽性対象では0~18%の範囲であった。1回目または2回目のいずれかのワクチン接種後に注射部位の紅斑を報告した対象7例全てが、180μgまたは300μgのhCMV mRNAワクチンA治療群であった。2回目ワクチン接種後、300μg治療群のCMV血清反応陰性対象1例、及び180μg治療群のCMV血清反応陽性対象1例がグレード3の注射部位の紅斑を報告した。フェーズBの3回目ワクチン接種後の対象では、3回目ワクチン接種後に注射部位の紅斑を報告した割合及び重症度は、2回目ワクチン接種に比べて大幅には増加しなかった。プラセボ群で注射部位の紅斑を報告した対象はいなかった。
【0352】
また、1回目または2回目のワクチン接種後に注射部位の腫脹を報告した対象の割合も低く、治療群全体での割合は、CMV血清反応陰性対象では0~25%、CMV血清反応陽性対象で0~14%の範囲であった。180μgまたは300μgのhCMV mRNAワクチンA治療群では、1回目または2回目ワクチン接種後に注射部位の腫脹を報告した対象がより多かった。フェーズBの3回目ワクチン接種後の対象では、注射部位の腫脹の割合は3回目ワクチン接種後も低いままであった。300μg治療群のCMV血清反応陰性対象1例が、2回目ワクチン接種後にグレード3の注射部位の腫脹を報告した。プラセボ群で注射部位の腫脹を報告した対象はいなかった。
【0353】
2.非自発全身性有害反応:
頭痛、疲労、筋肉痛、及び悪寒は、全てのワクチン接種、ならびに全てのhCMV mRNAワクチンA CMV血清反応陰性及びCMV血清反応陽性のhCMV mRNAワクチンA治療群において、最も一般的な非自発全身性ARであった。CMV血清反応陽性の対象ではより多くのグレード3のARが報告された。CMV血清反応陰性対象では、グレード3 ARの大半が2回目ワクチン接種後に発生したが、CMV血清反応陽性対象では、1回目及び2回目のワクチン接種間でより均衡がとれていた。これは、CMV血清反応陽性hCMV mRNAワクチンAレシピエントで1回目ワクチン接種後に即時「ブースト」があったのに対し、CMV血清反応陰性hCMV mRNAワクチンAレシピエントでは1回目ワクチン接種の「プライム」後に2回目ワクチン接種の免疫学的「ブースト」があったことを反映している可能性がある。(表1及び表2を参照)
【0354】
この中間解析のデータカットオフ時点では、本試験で登録した対象181例のうち10例がARのためにさらなる接種を中止し、これらの対象全員に引き続き安全性のための試験における追跡調査を行った。対象10例のうち、3例が30μg治療群(このうち2例はCMV血清反応陽性)、90μg治療群の対象はゼロ、5例が180μg治療群(このうち4例はCMV血清反応陽性)、1例が用量選択フェーズBのプラセボ群のCMV血清反応陽性対象、1例がフェーズAのhCMV mRNAワクチンB治療群のCMV血清反応陰性対象であった。この10例のうち7例は、前回の接種後にグレード3の非自発ARを2件以上報告し、残りの3例は、前回の接種後にグレード2以下のARを報告していた。10例のうち1例を除き全てフェーズBに登録し、ほとんどの対象が2回目ワクチン接種後に中止となり、大多数がCMV血清反応陽性であった。
【0355】
試験を中止した対象のうち、11例がフェーズBのmRNA治療群、6例がフェーズCのmRNA治療群、5例がフェーズBのプラセボレシピエントであった。対象の中止は治療群全体に分散しており、中止理由の大半は「追跡調査不能」または「対象による中止」であった。
【表1】
【表2】
【0356】
3.自発有害事象:
各ワクチン接種の28日後までの自発AE
フェーズCのCMV血清反応陰性プラセボレシピエント1例で、自動車事故により、7件の無関係なSAEが発生した。本試験では特記されるAE(AESI)は発生していない。
【0357】
対象7例でリンパ節の症状が報告され、このうち6例(7%)がフェーズBの対象であり、1例(3.4%)がフェーズCの対象であった。7例全ての対象がhCMV mRNAワクチンAの投与だった。7例中5例の対象が180μgまたは300μg治療群であった。対象7例中4例がCMV血清反応陰性であり、2回目または3回目のワクチン接種後に症状を報告し、7例中3例がCMV血清反応陽性であり、1回目または2回目のワクチン接種後に症状を報告した。全ての事象をワクチン接種に関連するものとして評価した。安全性の審査時には、このAEは概して軽度~中等度の重症度の一過性の腋窩腫脹±圧痛であり、常にワクチン接種した腕と同じ側に発生したものと説明された。
【0358】
臨床検査値の異常:
フェーズBでは、以下のように安全性の臨床検査パラメーターでのベースラインからグレード3へのシフトが報告された:ヘモグロビン(プラセボレシピエント2例及びhCMV mRNAワクチンAレシピエント2例)、低血糖(hCMV mRNAワクチンAレシピエント2例)、高白血球(プラセボレシピエント1例)、ならびにPTT上昇(hCMV mRNAワクチンAレシピエント1例)。フェーズCでは、以下のように安全性の臨床検査パラメーターでのベースラインからグレード3のシフトが報告された:ヘモグロビン(プラセボレシピエント1例及びhCMV mRNAワクチンAレシピエント1例)、ならびに高血糖(hCMV mRNAワクチンAレシピエント2例)。
【0359】
安全性の臨床検査パラメーターについて、ベースラインからグレード4へのシフトを報告した対象が2例認められた。すなわち、ベースラインでグレード3の低血糖を示したフェーズCのプラセボレシピエント1例での低血糖、及び中間解析で報告されたように、2回目ワクチン接種の7日後に無症候性のグレード4のPTT上昇を報告した対象が1例であった。後者は関連性があるものとみなされ、試験休止のトリガーとなった。この対象は、グレード4のPTTの前に、持続的なグレード1のPTT値上昇が指摘されていた。再検査したところ、この対象のPTT結果は正常限界内であった。安全性モニタリング委員会は、この事象を審査し、修正せずに試験を継続することを勧告した。
【0360】
3.免疫原性
上皮細胞感染及び線維芽細胞感染に対する中和抗体データは、パープロトコル(PP)免疫原性セットに基づいており、幾何平均力価(GMT)及び幾何平均比(GMR、ベースライン/ベースライン後の力価の比として定義される)として報告した。マイクロ中和アッセイでは、上皮細胞感染に対するnAb力価の測定用にはCMV単離株VR1814及びARPE-19細胞を利用し、線維芽細胞感染に対するnAb力価の測定用にはCMV単離株AD169及びHEL299細胞を利用した。
【0361】
細胞媒介免疫原性データは、細胞媒介免疫原性セットに基づき、SFC/106PBMCとして報告した。
【0362】
1.全体的結果
CMV血清反応陰性対象では、血清nAb力価は、最初の2回のワクチン接種後はhCMV mRNAワクチンAの用量と共に増加し、フェーズBの3回目ワクチン接種後も引き続き増加した。CMV血清反応陽性対象では、全てのhCMV mRNA ワクチンA治療群で単回ワクチン接種によって用量相関的にnAb力価がブーストし、フェーズBの2回目及び3回目のワクチン接種後、ならびにフェーズCの2回目ワクチン接種後にさらにブーストした。フェーズB用量漸増対象では、全ての用量レベルでワクチン接種後のgB特異的T細胞活性化が観察された。
【0363】
上皮細胞感染及び線維芽細胞感染に対する中和抗体は、CMV血清反応陰性及びCMV血清反応陽性のいずれの参加者においても、7か月目(3回目ワクチン接種から1か月後)まで、各hCMV mRNAワクチンA治療群内で用量相関的に増加し、後続のhCMV mRNAワクチンAの接種に伴って増加した。
【0364】
12か月目(3回目ワクチン接種から6か月後)のCMV血清反応陰性参加者において、上皮感染に対するnAb GMTは、自然感染ベンチマークの少なくとも3.5倍で保たれ、線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、90μg群及び180μg群で自然感染ベンチマークの値に近似していた。12か月目のCMV血清反応陽性参加者において、上皮感染に対するnAb GMRはベースラインに対し14倍~31倍、線維芽細胞感染に対してはベースラインに対し6倍~8倍であった。
【0365】
2.自然CMV感染中和抗体力価ベンチマーク:
フェーズB及びCにおける全パープロトコルCMV血清反応陽性対象のベースラインnAb GMTを、CMV血清反応陰性群の免疫応答と比較する「自然感染」ベンチマーク値として使用した。上皮細胞感染に対するベンチマークnAb GMTは5,917(95%CI 4644、7540)、線維芽細胞感染に対するベンチマークnAb GMTは1,449(95%CI 1167、1800)であった。これらの値は、健康なCMV血清反応陽性集団と同等である。(Wang et al,Vaccine 2011:29.)
【0366】
全てのCMV血清反応陰性治療群における線維芽細胞感染及び上皮細胞感染に対するベースラインnAb GMTはLLOQ未満(8、0.5×LLOQとして報告)であり、免疫化前の自然CMV感染がないことが示された。
【0367】
3.CMV血清反応陰性対象:
フェーズB及びフェーズCの全ての治療群における線維芽細胞感染及び上皮細胞感染に対するベースラインnAb GMTは定量下限値(LLOQ)を下回り、これを8(0.5×LLQQ)として報告し、登録前の自然CMV感染がないことが示された。中和抗体応答は、フェーズBでは3回のワクチン接種の各接種後、フェーズCでは最初の2回のワクチン接種後に報告された(表3、
図10、
図11)。
【0368】
上皮細胞感染に対する中和抗体GMTは、hCMV mRNAワクチンA治療群では、用量相関的に増加し、またその後の各ワクチン接種後に増加した。2回目ワクチン接種の1か月後、上皮細胞感染に対するnAb GMTは、30μg、90μg、180μg、及び300μg治療群において、それぞれ3,263、15,305、30,743、及び43,564となり、90μg、180μg、及び300μg治療群の自然感染ベンチマークを上回った。3回目ワクチン接種の1か月後、上皮細胞感染に対するnAb GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群において、それぞれ16,587、63,929、及び62,118までさらに増加し、全てのhCMV mRNAワクチンA治療群で自然感染ベンチマークを上回った。
【0369】
線維芽細胞感染に対する中和抗体は、hCMV mRNAワクチンA治療群では、概して用量相関的に増加し、またその後の各ワクチン接種後に増加した。3回目ワクチン接種の1か月後、線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群において、それぞれ1,131、1,890、及び2,029となり、90μg、180μg治療群の自然感染ベンチマークを上回った。
【0370】
2回目ワクチン接種の1か月後には、上皮細胞感染に対するnAb血清応答(nAb力価がベースライン力価の4倍以上である対象のパーセンテージ)は、フェーズB及びフェーズC全体において全ての治療群の対象で100%達成され、線維芽細胞感染に対するnAb血清応答は、30μg治療群の対象で93%、90μg、180μg、及び300μg治療群の対象で100%達成された。
【0371】
表3、
図12、及び
図13は、フェーズB治療群における12か月目までのnAbデータをまとめたものである。7か月目(3回目ワクチン接種の1か月後)には、上皮細胞感染に対するnAb GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群において、16,587(95%CI 9,186;29,952)、63,929(95%CI 38,441;106,317)、及び62,118(95%CI 33,829;114,065)となり、自然感染ベンチマークより2.8倍、10.8倍、及び10.5倍高いGMTに相当した。12か月目(3回目ワクチン接種の6か月後)には、GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群において、それぞれ6,414(95%CI 3,457;10,908)、21,211(95%CI 13,689;32,865)、及び23,020(95%CI 12,473;42,484)となり、最終ワクチン接種から6か月後の90μg及び180μg治療群の自然感染ベンチマークよりも3.6倍及び3.9倍高く維持されていることが示された(表3)。
【0372】
7か月目(3回目ワクチン接種の1か月後)には、線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群において、1,131(95%CI 531;2,408)、1,890(95%CI 918;3,890)、及び2,029(95%CI 1,042;3,953)となり、90μg及び180μg治療群においては自然感染ベンチマークを1.3倍~1.4倍上回った。12か月目(3回目ワクチン接種から6か月後)には、線維芽細胞感染に対するnAb GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群において、911(95%CI 457;1,816)、970(95%CI 516;1,823)、及び1,308(95%CI 680;2,518)となり、最終ワクチン接種の6か月後の90μg及び180μg治療群においては自然感染ベンチマークに近似していた(表3)。
【0373】
12か月目には、30μg、90μg、及び180μgのhCMV mRNAワクチンA治療群において、上皮細胞感染に対するnAb及び線維芽細胞感染に対するnAbはいずれも、ベースラインの4倍以上の個別の力価が100%の参加者で維持された。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0374】
4.CMV血清反応陽性対象:
上皮細胞感染に対するベースラインnAb GMTは、hCMV mRNAワクチンA治療群で3,614~7,179、プラセボ群で6,900~8,169であり、登録前の自然CMV感染の存在が示された。中和抗体応答は、フェーズBでは3回ワクチン接種後、フェーズCでは最初の2回のワクチン接種後にそれぞれ報告された(表4、
図10、
図11)。
【0375】
1回目ワクチン接種では、全てのhCMV mRNAワクチンA治療群で用量相関的にnAbがブーストし、30μg、90μg、180μg、及び300μg治療群でそれぞれ、上皮細胞感染に対するnAb GMTが24,752、39,020、52,775、及び84,628、線維芽細胞感染に対するnAb GMTが2,654、3,885、3,879、及び5,419となった。その後のワクチン接種によってhCMV mRNAワクチンA治療群全体でさらにnAbがブーストし、2回目ワクチン接種の1か月後には、30μg、90μg、180μg、及び300μg治療群でそれぞれ、上皮細胞感染に対するnAb GMTが49,390、62,400、119,829、及び156,583、線維芽細胞感染に対するnAb GMTが2,517、3,891、5,578、及び7,788となった。3回目ワクチン接種の1か月後には、30μg、90μg、及び180μg治療群でそれぞれ、上皮細胞感染に対するnAb GMTが76,914、141,020、及び211,503、線維芽細胞感染に対するnAb GMTが3,412、8,433、及び6,098となった。
【0376】
これに伴い、GMRも増加した。2回目ワクチン接種の1か月後には、30μg、90μg、180μg、及び300μg治療群でそれぞれ、上皮細胞感染に対するnAb GMRが14.4、9.9、19.4、及び17.3、線維芽細胞感染に対するnAb GMRが2.5、3.0、4.1、及び3.8となった。3回目ワクチン接種後には、30μg、90μg、及び180μg治療群でそれぞれ、上皮細胞感染に対するnAb GMRが26.2、22.4、及び40.8、線維芽細胞感染に対するnAb GMRが4.0、6.5、及び3.9となった。
【0377】
表4は、フェーズB治療群のCMV血清反応陽性参加者における12か月目までのnAbデータをまとめたものである。7か月目(3回目ワクチン接種の1か月後)の上皮細胞感染に対するnAbs GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群で、76,914(95%CI 49,001;120,727)、141,020(95%CI 57,649;344,960)、及び211,503(95%CI 58,207;768,525)となり、これに対応するGMRは26.2、22.4、及び40.8となった。12か月目(3回目ワクチン接種の6か月後)のGMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群でそれぞれ、44,186(95%CI 26,281;74,287)、87,999(95%CI 44,012;175,948)、及び162,749(95%CI 69,529;380,953)となり、その結果、最終接種の6か月後のGMRはそれぞれ、14.6、13.98、及び31.4となった(表4)。
【0378】
7か月目(3回目ワクチン接種の1か月後)の線維芽細胞感染に対するnAbs GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群でそれぞれ、3,412(95%CI 1,924;6,052)、8,433(95%CI 6,582;10,804)、及び6,427(95%CI 3,426;12,057)となり、その結果、7か月目の時点でのGMRは4~6.5の範囲となった。12か月目(3回目ワクチン接種から6か月後)には、GMTは、30μg、90μg、及び180μg治療群でそれぞれ、7,170(95%CI 4,052;12,686)、7,640(95%CI 4,602;12,685)、及び10,030(95%CI 7,577;13,276)となり、その結果、3回目ワクチン接種後のGMRはそれぞれ、8.1、5.9、及び6.3となった(表4)。
【0379】
全ての参加者について、12か月目のnAbデータを、それ以前の全ての時点(ベースラインから7か月目まで)のnAbデータを生成するアッセイ実行とは別のアッセイ実行で生成した。CMV血清反応陽性の4つのフェーズB治療群のうち、3つの群(30μg及び180μg hCMV mRNAワクチンAならびにプラセボ)では、12か月目の線維芽細胞感染に対するnAb GMTは7か月目に比べて高い傾向にあり、一方、上皮細胞に対するnAb GMTは低い傾向にあった(表4)。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0380】
5.細胞媒介免疫原性
hCMV mRNAワクチンAは、用量漸増フェーズBの対象13例の小さなサブセット(30μg、90μg、及び180μg治療群)において、検出可能なgB特異的T細胞応答を引き出した。2回目ワクチン接種から1週間後、hCMV mRNAワクチンA治療群全体の平均応答は、153~720SFC/106PBMCであった(ベースラインに対する平均応答146~687SFC/106PBMC)。3回目ワクチン接種から1週間後、治療群全体の平均応答は72~971SFC/106PBMCであった(ベースラインに対する平均応答65~922SFC/106PBMC)。
【0381】
結論
これらの中間データは、以下の結論を支持するものである。
【0382】
安全性の結論:
a.非自発全身性ARの全体的な割合は、概して、hCMV mRNAワクチンA用量に伴って180μgまで数値的に増加し、180μg及び300μgの治療群間では概してほぼ同じであった。
b.概して、CMV血清反応陽性対象は、CMV血清反応陰性対象に比べて非自発ARを報告する割合が高かった。
c.CMV血清反応陰性対象では、1回目ワクチン接種に比べ2回目ワクチン接種後の非自発ARの出現頻度が概ね数値的に高く、臨床的徴候として考えられるのは、1回目ワクチン接種の「プライム」後の2回目ワクチン接種による免疫学的「ブースト」効果である。
d.CMV血清反応陽性対象では、1回目ワクチン接種後に非自発ARの頻度が概ね数値的に高くなった。これは、登録前にCMV自然感染歴を有する対象で免疫学的な「ブースト」効果が臨床的に発現した可能性がある。
e.対象7例がワクチン接種を受けた腕と同側の一過性の軽度~中等度の腋窩リンパ節症状を報告したが、これはワクチンが誘導した免疫活性化の良性の臨床所見に相当する可能性がある。
f.3回目ワクチン接種後のCMV血清反応陰性参加者では、非自発局所性及び全身性ARの頻度は、300μg治療群の方が180μg治療群に比べて概して高かった。重篤な非自発ARを報告した参加者の割合は、180μg及び300μgの治療群間でほぼ同じであった。
g.3回目ワクチン接種後のCMV血清反応陽性の参加者において、非自発局所性及び全身性ARの頻度は、300μg治療群と180μg治療群とを比べて全体的な差は認められなかった。重篤な非自発ARを報告した参加者の割合は、300μg治療群の方が180μg治療群に比べて概して数値的に高かった。
【0383】
免疫原性の結論:
a.上皮細胞感染に対する中和抗体(インタクトCV五量体に対する免疫応答の尺度)及び線維芽細胞感染に対する中和抗体(CMV gB抗原に対する免疫応答の尺度)は用量相関的に応答し、各hCMV mRNAワクチンA治療群内で後続のhCMV mRNAワクチンAの接種に伴って増加した。
b.上皮細胞感染に対する中和抗体応答はロバストであった。CMV血清反応陰性対象では、2回目ワクチン接種の1か月後に90μg、180μg、及び300μg治療群で、ならびに3回目ワクチン接種後に全てのフェーズB治療群で、GMTが自然感染ベンチマークを上回った。CMV血清反応陽性対象では、hCMV mRNAワクチンAの単回接種でnAb GMTが用量相関的にブーストし、2回目ワクチン接種後には全てのhCMV mRNAワクチンA治療群にわたってGMTがベースラインの10倍~19倍、3回目ワクチン接種後にはフェーズBのhCMV mRNAワクチンA治療群でGMTがベースラインの最大40倍さらに増加した。
c.線維芽細胞感染に対する中和抗体応答は用量相関的であり、その後のワクチン接種に伴って増加した。CMV血清反応陰性対象では、nAb GMTは、90μg、180μg、及び300μg治療群で2回目ワクチン接種後に自然感染ベンチマークを概ね満たし、フェーズBの全てのhCMV mRNAワクチンA治療群で3回目ワクチン接種後に自然感染ベンチマークを概ね満たすかまたはそれを上回った。CMV血清反応陽性対象では、hCMV mRNAワクチンAの単回接種でGMTが用量相関的にブーストし、2回目ワクチン接種では、全てのhCMV mRNAワクチンA治療群にわたってGMRに対するnAb力価がベースラインより少なくとも2.5倍さらにブーストし、3回目ワクチン接種後には、フェーズBのhCMV mRNAワクチンA治療群でGMRに対し少なくとも3.9倍ブーストした。
d.ワクチン接種後のgB特異的T細胞活性化が、フェーズBの用量レベル全体で観察された。
e.フェーズBのCMV血清反応陰性参加者において、12か月目(3回目ワクチン接種の6か月後)には、上皮細胞感染に対するnAbのGMT(インタクトCMV五量体抗原に対する免疫応答の尺度)が90μg及び180μg治療群で自然感染ベンチマークよりも3.6倍及び3.9倍高く、線維芽細胞感染に対するnAbのGMT(CMV gB抗原に対する免疫応答の尺度)が90μg治療群及び180μg治療群で自然感染ベンチマークに近似していた。
f.フェーズBのCMV血清反応陽性対象の12か月目(3回目ワクチン接種の6か月後)において、上皮細胞感染に対するnAb GMRは30μg、90μg、及び180μg治療群全体で14~31の範囲、線維芽細胞感染に対するnAb GMRは6~8の範囲であった。
【0384】
配列
本明細書に記載の任意のmRNA配列が5’UTR及び/または3’UTRを含み得ることを理解されたい。UTR配列は、以下の配列から選択することができるが、その他の既知のUTR配列を使用してもよい。また、本明細書に記載の任意のmRNAコンストラクトがさらに、ポリAテール及び/またはキャップ(例えば、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)を含み得ることを理解されたい。さらに、本明細書に記載のいくつかのmRNA及びコードされた抗原配列がシグナルペプチド及び/またはペプチドタグ(例えば、C末端Hisタグ)を含み得るが、示されたシグナルペプチド及び/またはペプチドタグが、異なるシグナルペプチド及び/またはペプチドタグに置換されても、シグナルペプチド及び/またはペプチドタグが省略されてもよいことを理解されたい。
5’UTR:GGGAAAUAAGAGAGAAAAGAAGAGUAAGAAGAAAUAUAAGAGCCACC(配列番号13)
3’UTR:UGAUAAUAGGCUGGAGCCUCGGUGGCCAUGCUUCUUGCCCCUUGGGCCUCCCCCCAGCCCCUCCUCCCCUUCCUGCACCCGUACCCCCGUGGUCUUUGAAUAAAGUCUGAGUGGGCGGC(配列番号14)
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【表5-10】
【表5-11】
【表5-12】
【表5-13】
【表5-14】
【表5-15】
【表5-16】
【表5-17】
【表5-18】
【0385】
同義語
本明細書に開示する全ての参考文献、特許、及び特許出願は、各々が引用されている主題に関し、参照によって本明細書に援用され、場合によってはそれが文書全体を包含することもある。
【0386】
本明細書において、明細書中及び請求項中の「a」及び「an」という不定冠詞は、反対のことが明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解すべきである。
【0387】
また、明確に反対のことが示されない限り、本明細書で特許請求される2つ以上のステップまたは行為を含む任意の方法において、当該方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも当該方法のステップまたは行為が記載されている順序に限定されるとは限らない。
【0388】
請求項及び上記明細書において、全ての移行句、例えば、「含む(comprising)」「含む(including)」「保有する(carrying)」「有する(having)」「含有する(containing)」「伴う(involving)」「保持する(holding)」「~から構成される(composed of)」などはオープンエンドであること、すなわち後に続くものを含むがそれに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。「~からなる」「~から本質的になる」という移行句のみが、米国特許商標庁審査基準の2111.03節に記載のように、それぞれクローズドまたはセミクローズドな移行句であるものとする。
【0389】
数値の手前にある「約」及び「実質的に」という用語は、記載された数値の±10%を意味する。
【0390】
値の範囲が示される場合、範囲の上端と下端との間の各値は、本明細書において具体的に企図され記載されている。
【配列表】
【国際調査報告】