IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セレクター・バイオサイエンシズ・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-547331癌標的薬物ビヒクルとしてのリン脂質エーテルコンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】癌標的薬物ビヒクルとしてのリン脂質エーテルコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/09 20060101AFI20221104BHJP
   C07H 15/203 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221104BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20221104BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20221104BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20221104BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C07F9/09 V
C07H15/203 CSP
A61P35/00
A61P35/04
A61K47/54
A61K45/00
A61K47/65
A61K31/505
A61K38/07
A61K31/47
A61K31/343
C12N9/99
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516159
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020050459
(87)【国際公開番号】W WO2021050917
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/956,907
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/899,615
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/956,844
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/899,611
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/946,870
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/899,618
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517171163
【氏名又は名称】セレクター・バイオサイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジャロッド ロングカー
(72)【発明者】
【氏名】アナトリー ピンチュク
(72)【発明者】
【氏名】ランドル フーバー
(72)【発明者】
【氏名】チョンピン ホアン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C084
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057BB02
4C057CC01
4C057DD01
4C057JJ23
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084BA31
4C084BA44
4C084MA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC20
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA05
4C086BC28
4C086BC42
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB28
(57)【要約】
本発明では、広範囲の腫瘍細胞を標的にすることができる治療用化合物が開示される。本開示は、治療用化合物を含む組成物、治療用化合物の製造方法、および治療用化合物を投与することを含む癌治療方法をさらに対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I)の化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であって、
(式中、nは2~20であり;
1は結合または下記化学式
【化2】
であり、ここでmは0~100であり;
Lは下記化学式
【化3】
であり、ここでRxはHまたはハロゲンであり;
2は結合または自壊性(self-immolative)スペーサーであり;および
Zは抗癌剤である)、
化学式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
1が結合または下記化学式
【化4】
であり;
L-Q2が下記化学式
【化5】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Zがポロ様キナーゼ1(PLK-1)阻害剤、チューブリンポリメラーゼ阻害剤、チューブリン安定化剤、抗腫瘍薬、真核生物翻訳開始因子4(EIF4)阻害剤、コンブレタスタチンA-4アナログ、またはフラバグリンアナログである、請求項1から2のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
1が下記化学式
【化6】
であり;
L-Q2が下記化学式
【化7】
であり;
および
ZがPLK-1阻害剤、チューブリンポリメラーゼ阻害剤、チューブリン安定化剤、抗腫瘍薬、または真核生物翻訳開始因子4(EIF4)阻害剤である、化学式(I-a)の構造を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
ZがモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、およびモノメチルアウリスタチンE(MMAD)からなる群から選択されるPLK-1阻害剤または抗腫瘍薬である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
nが18であり;
1が下記化学式
【化8】
であり;
L-Q2が下記化学式
【化9】
であり;および
ZがコンブレタスタチンA-4アナログである、
化学式(I-b)の構造を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
nが18であり;
1が結合または下記化学式
【化10】
であり;
L-Q2が下記化学式
【化11】
であり;および
Zがフラバグリンアナログである、
化学式(I-c)の構造を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
下記化学式
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、およびその薬学的に許容されるキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を有効量で投与することを含む、癌治療を必要とする対象の癌治療方法。
【請求項11】
前記癌がメラノーマ、肺癌、大腸癌、乳癌、またはその組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記肺癌が小細胞肺癌、非小細胞性肺癌、またはその組み合わせを含み;
前記メラノーマが、表在拡大型(superficial spreading)メラノーマ、結節型(nodular)メラノーマ、悪性黒子型(lentigo)メラノーマ、末端黒子型(acral lentiginous)メラノーマ、無色素性(amelanotic)メラノーマ、母斑様(nevoid)メラノーマ、スピッツ(spitzoid)メラノーマ、線維形成性(desmoplastic)メラノーマ、またはその組み合わせを含み、
前記大腸癌が、腺癌を含み;または
前記乳癌が、浸潤性乳管癌、転移性乳癌、炎症性乳癌、トリプルネガティブ乳癌、非浸潤性乳管癌、またはその組み合わせを含む、
請求項10から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が癌幹細胞を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記癌が転移性癌細胞を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記癌が循環腫瘍細胞を含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記癌がメラノーマ、肺癌、大腸癌、またはその組み合わせであり、および前記化合物が化学式(I-a)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記癌が乳癌であり、ここで前記対象(1)がエストロゲン受容体陽性であり、(2)がエストロゲン受容体陰性かつプロゲステロン受容体陰性の両方であり、(3)がHER2を発現し(HER2+)、(4)がHER2を発現していない(HER2-)、またはその組み合わせである、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記癌が乳癌であり、および前記化合物が化学式(I-b)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10から15および17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が、癌がメラノーマ、肺癌、大腸癌、乳癌、またはその組み合わせであり、および前記化合物が化学式(I-c)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月12日に出願された米国仮特許出願第62/899,611号、2019年9月12日に出願された米国仮特許出願第62/899,615号、2019年9月12日に出願された米国仮特許出願第62/899,618号、2019年12月11日に出願された米国仮特許出願第62/946,870号、2020年1月3日に出願された米国仮特許出願第62/956,844号、および2020年1月3日に出願された米国仮特許出願第62/956,907号の優先権を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、広範囲の腫瘍細胞を標的にできる治療用化合物に関する。本開示は、治療用化合物を含む組成物、治療用化合物の製造方法、および治療用化合物を投与することを含む癌治療方法をさらに対象とする。
【背景技術】
【0003】
イントロダクション
2018年、世界中で1,800万人が癌と診断され、および960万人が癌で死亡した。米国では、全人口の大体40%が彼らの生涯の間に癌と診断されることになる。2018年現在、肺癌(209万例)、乳癌(209万例)、大腸癌(180万例)、前立腺癌(128万例)、皮膚癌(非メラノーマ)(104万例)、および胃癌(103万例)は最も一般的な種類の癌である。多くの利用可能な治療があるにもかかわらず、癌は依然として世界で2番目に多い死因である。
【0004】
癌は細胞分裂の結果であるが、これに限定されるものではない。健常細胞は無制限の細胞分裂を防ぐチェックポイントを有する。これらのチェックポイントのいくつかの例には、栄養素利用性(nutrient availability)、DNA損傷および接触阻害(すなわち、細胞が別の細胞と接触する)がある。さらに、ほとんどの細胞は有限の回数しか複製できないことから、特定の回数の細胞分裂後に死亡するようにプログラムされている。
【0005】
癌は、これらの固有のチェックポイントを克服し、そして制御できないほど増殖した結果の細胞である。この制御されていない増殖は、腫瘍の形成をもたらす。腫瘍には、良性および悪性の2種類がある。良性腫瘍は組織種類間の自然な境界を乗り越えることができない。一方で、悪性腫瘍は近くの組織に浸潤し、または血中に入り、異なる部位に転移することができる。悪性腫瘍のみが癌とみなされる。癌をこのような致命的な疾患にするのはこの浸潤および転移の能力である。さらに、脂質代謝は癌転移に大きな役割を担うことがある。癌細胞は根本的に変化した細胞代謝をしばしば示す。しかしながら、悪性癌の発症における脂質代謝の役割は不明なままである。
【0006】
癌に対する闘いをさらに複雑にしていることは、悪性腫瘍は性質が異なる細胞の種類を有することである。特に厄介な種類の一つが癌幹細胞(「CSC's」)である。CSC'sは、自己複製し、そして悪性腫瘍に見られる異なる種類の癌細胞に分化することができる。したがって、CSC'sは、腫瘍の転移能における主要な要因である。CSC'sは、しばしば放射線および化学療法で生き残る。放射線および化学療法後の癌の再発は、放射線および化学療法がすべてのCSC'sを殺すことができないことと、CSC'sが新しい腫瘍を形成する能力が組み合わさった結果であると仮説が立てられる。
【0007】
化学療法とは、細胞傷害性抗癌剤を使用することを含む特定の種類の癌治療を説明するために使用される用語である。化学療法中に使用される細胞傷害性薬はアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、および有糸分裂阻害剤を含むいくつかの主要なカテゴリーに分類することができる。細胞傷害性抗癌剤は、典型的には細胞分裂を停止させ、したがって健常組織ならびに癌組織にも影響を及ぼす。アルキル化剤は癌細胞のDNAを損傷することにより癌細胞の分裂を停止する。癌治療に使用されるいくつかの一般的なアルキル化剤には、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標);シトキサンはBaxter Internationalの登録商標である)、ニトロソウレア、アルキルスルホネート、トリアゼイン、およびエチレンイミンがある。シスプラチンおよびカルボプラチンなどのプラチナ薬は、アルキル化剤と同様に作用する。代謝拮抗剤はDNAおよびRNA合成を阻害することにより癌細胞の分裂を停止する。癌治療に使用されるいくつかの一般的な代謝拮抗剤には、6-メルカプトプリン、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標);ジェムザールはEliLilly and Companyの登録商標である)、メトトレキサートおよびペメトレキセド(アリムタ(登録商標);アリムタはEliLilly and Companyの登録商標である)がある。トポイソメラーゼ阻害剤には、トポイソメラーゼ酵素が複製のためにDNAを分離するのを阻害することにより、癌細胞の分裂を停止する。いくつかの一般的なトポイソメラーゼ阻害剤には、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、およびテニポシドがある。有糸分裂阻害剤は、主要な細胞分裂酵素を阻害することにより、癌細胞の分裂を停止する。いくつかの一般的な有糸分裂阻害剤には、タキサン類(例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標);タキソールはBristol-Myers Squibb Companyの登録商標である)およびドセタキセル(タキソテール(登録商標);タキソテールはAventis Pharma SAの登録商標である))、エポチロン、およびビンカアルカロイドがある。
【0008】
これらの全ての抗癌剤の欠点の一つは、それらが健常組織にも損傷を与えることである。薬物は正常細胞の機能を阻害することによって癌を治療するため、血球、粘膜表面および皮膚などの一定の細胞分裂に依存する健常組織にもまた深刻な損傷を与えることがある。この損傷は重大な病的状態をもたらし、安全に送達できる化学療法の量を制限することがある。化学療法治療中に生じる副作用の一例には、低血球数、脱毛、筋肉および関節の痛み、吐き気、嘔吐、下痢、口内炎、発熱、および悪寒を含む。この問題を克服するために、標的の増加を提供し、癌細胞でのみ生じるタンパク質および細胞機能に影響を与える、作用の独自メカニズムを持つ新規薬剤が開発され続けている。例えば、抗体薬物複合体(ADCs)は、腫瘍細胞の表面にある特異的なエピトープに結合し、関連する毒性を低減するために腫瘍細胞を標的とする代替の方法を提供するように設計されている。非常に選択的であるものの、それらはわずかな細胞内取り込み(注入された薬剤の<1%)しか達成せず、細胞死活性も限られていることから、治療上有用なADCsはほとんどない。いくつかの特定の抗癌剤には、イマチニブ(グリベック(登録商標);グリベックはNovartis AGの登録商標である)、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標)、イレッサはAstraZeneca UK Limitedの登録商標である)、スニチニブ(スーテント(登録商標)、スーテントはC.P. Pharmaceuticals,International CVの登録商標である)、およびボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標);ベルケイドはMillennium Pharmaceuticals,Inc.の登録商標である)がある。しかしながら、これらの薬剤はすべての癌種には承認されておらず、そして治療抵抗性の発現に普遍的に関連している。加えて、これらの化合物の多くは、依然として絶対的な腫瘍選択性を欠いており、オフターゲット効果のためにそれらの治療上の利用が制限され続けている。
【0009】
近年、リン脂質エーテル(「PLE」)アナログが、抗癌剤送達のための効果的な分子プラットフォームであると実証された。米国特許第9,480,754号およびWeichertetalら(Sci TranslMed,2014,6(240),240ra75)を参照し、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。それに見られるように、臨床で使用される抗癌剤の大部分は、全ての増殖細胞に対するそれらの毒性および/またはすべての腫瘍細胞におけるそれらの効果を発揮できないため、有用性が限定されている。したがって、当業界では、健常細胞による薬物の実質的な取り込みを回避しながら、強力で、効果的な、広域スペクトルの抗癌剤をCSC'sを含む癌細胞に送達することができる代替の抗癌剤送達ビヒクルの必要性が依然としてある。さらに、抗癌剤送達ビヒクルは、血液脳関門(BBB)などのバリアを通過できるべきである。
【発明の概要】
【0010】
概要
一態様において、本開示は下記化学式(I)
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供し、
ここで、
nは2~20であり;
1は結合または下記化学式
【化2】
であり、ここでmは0~100であり;
Lは下記化学式
【化3】
であり、ここでRxはHまたはハロゲンであり;
2は結合または自壊性(self-immolative)スペーサーであり;および
Zは抗癌剤である。
【0011】
別の実施形態において、本開示は本明細書に記載される化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、それを必要とする対象を治療する方法を提供する。
【0012】
本開示では、次に示す詳細な説明および添付の図面に照らして明らかになることになる他の態様および実施形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な説明
図1A図1A~1Bは、腫瘍細胞株へのリン脂質薬物コンジュゲート(PDCs)の取り込みを示す。図1Aは緑色蛍光で、リン脂質エーテル(PLE)+BODIPYを示す。
図1B図1Bは、CLR1502取り込みの自家蛍光比に対するMFIの比率を示す。
【0014】
図2A図2A~2Bは、腫瘍細胞株(A375およびA549細胞株)へのPDCsの取り込みを示す。図2Aは細胞質における完全にコンジュゲートされたPLEの濃度を示す。
図2B図2Bは細胞質において放出されたペイロードの濃度を示す。
【0015】
図3図3は、それぞれ腫瘍細胞および原発腫瘍試料上の脂質ラフトを介したCLR1502およびCLR1501の取り込みを示す。CLR1502は、PLEに結合した近赤外分子であり、および白色である。青色はヘキスト核染色である。赤色はコレラ毒素サブユニットBであり、脂質ラフトを示す。
【0016】
図4図4は、メラノーマ(A375)および肺癌(A549)細胞に対するPDC-SM2のin vitro有効性を示す。
【0017】
図5図5は、in vivoで忍容されるPDCsの細胞毒性を示す。0.5mg/kgのペイロード用量で、円はマウスが死亡または犠牲になった時期を示す。矢印は、その用量が投与された時期を示す。
【0018】
図6図6は、MCF-7およびNHDF細胞株におけるCLR2000045のin vitro取り込みを示す。
【0019】
図7図7は、乳癌細胞株におけるCLR2000045のin vitro細胞毒性を示す。
【0020】
図8図8は、ニワトリ胚漿尿膜モデル(embryo chorioallantoic membrane model)(MCF-7)におけるin vivo抗腫瘍活性を示す。
【0021】
図9図9は、TNBC(HCC70)を移植された異種移植モデルにおけるin vivo抗腫瘍効果を示す。
【0022】
図10図10は、TNBC(HCC70)異種移植モデルマウスにおけるカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
【0023】
図11図11A~11Bは、治療後の(HCC70)異種移植モデルマウスの体重変化を示す。図11Aは、1mg/kgで一週間に3回投与された。図11Bは、1mg/kgで一週間に2回投与された。
【0024】
図12図12は、A549およびNHDF細胞におけるCLR180099AおよびCLR180099Bのin vitro取り込みを示す。
【0025】
図13図13は、A549(黒線)およびHCT116(灰色線)細胞におけるCLR180095のin vitro取り込みを示す。細胞は48時間にわたりインキュベートされ、初期インキュベーション濃度は100nMであった。取り込みはLC/LC/MSによって評価された。
【0026】
図14図14は、A549細胞におけるペイロードのin vitro放出性を示す。
【0027】
図15図15は、肺癌、乳癌およびメラノーマ細胞におけるCLR180099Aのin vitro細胞毒性を示す。
【0028】
図16図16は、移植された大腸癌異種移植モデルにおけるCLR180099Aのin vivo抗腫瘍効果を示す。
【0029】
図17図17は、CLR180099Aの大腸癌異種移植モデルにおけるカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
【0030】
図18図18は、CLR180099Aのin vivo忍容性を示す。
【0031】
図19A-19C】図19A~19Fは、腸腫瘍におけるCLR1502の選択的取り込みを示す。図19Aは、マウスあたり50μgのCLR1502の投与96時間後に剖検で除去された結腸全体である。図19Bは、マウスあたり50μgのCLR1502の投与96時間後に剖検で除去された小腸の末端部分である。IVIS Spectrumを使用して、シグナル強度が増加した領域を観察した。これらの領域は非侵襲的(結腸 図19C;小腸末端部分 図19F)および侵襲的(結腸 図19D;小腸末端 図19E)腫瘍である。図19C図19D図19E、および図19Fは、黒四角により示されるように拡大されている。矢印は、腸の筋肉組織内の悪性腺を指す。バー:1mm。
図19D-19E】IVIS Spectrumを使用して、シグナル強度が増加した領域を観察した。これらの領域は非侵襲的(結腸 図19C;小腸末端部分 図19F)および侵襲的(結腸 図19D;小腸末端 図19E)腫瘍である。図19C図19D図19E、および図19Fは、黒四角により示されるように拡大されている。矢印は、腸の筋肉組織内の悪性腺を指す。バー:1mm。
図19F】IVIS Spectrumを使用して、シグナル強度が増加した領域を観察した。これらの領域は非侵襲的(結腸 図19C;小腸末端部分 図19F)および侵襲的(結腸 図19D;小腸末端 図19E)腫瘍である。図19C図19D図19E、および図19Fは、黒四角により示されるように拡大されている。矢印は、腸の筋肉組織内の悪性腺を指す。バー:1mm。
【0032】
図20A図20A~20Hは、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20C図20D、および図20Eは、磁気共鳴イメージング(MRI;図20C、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20D)と共にCLR1501(図20E)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20F図20G、および図20Hは、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20Fは青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20Gは、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20Hは、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20B図20A~20Hは、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20C図20D、および図20Eは、磁気共鳴イメージング(MRI;図20C、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20D)と共にCLR1501(図20E)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20F図20G、および図20Hは、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20Fは青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20Gは、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20Hは、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20C図20A~20Hは、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20C図20D、および図20Eは、磁気共鳴イメージング(MRI;図20C、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20D)と共にCLR1501(図20E)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20F図20G、および図20Hは、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20Fは青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20Gは、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20Hは、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20D図20A~20Hは、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20C図20D、および図20Eは、磁気共鳴イメージング(MRI;図20C、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20D)と共にCLR1501(図20E)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20F図20G、および図20Hは、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20Fは青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20Gは、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20Hは、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20E図20A~20Hは、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20C図20D、および図20Eは、磁気共鳴イメージング(MRI;図20C、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20D)と共にCLR1501(図20E)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20F図20G、および図20Hは、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20Fは青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20Gは、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20Hは、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20F図20A~20Hは、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20C図20D、および図20Eは、磁気共鳴イメージング(MRI;図20C、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20D)と共にCLR1501(図20E)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20F図20G、および図20Hは、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20Fは青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20Gは、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20Hは、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
【0033】
図21A図21Aは、可視光(左)およびin vivo 22CSC由来の同所性異種移植片のCLR1502蛍光(右)を伴うin vivoにおけるCLR1502で処理された脳を示す。
【0034】
図21B図21Bは、可視光(左上)および正常な脳から優れた巨視的な腫瘍の描写を実証するex vivoにおける22CSC由来の異種移植片のCLR1502蛍光(右上)を示す。その図はまた、組織学による腫瘍(T)の検証(ヘマトキシリンおよびエオシン;左下)および組織学による正常な脳の検証(ヘマトキシリンおよびエオシン;右下)も示す。
【0035】
図22図22は、腫瘍の厚さが、腸癌で認められるシグナル強度の増加の原因とならないことを示す。図22Aは、結腸の層を示す。図22Bは、各層の総放射効率を示す。
【0036】
図23図23は、大腸癌モデルにおけるCLR1502取り込みのin vivo光学スキャニングを示す。蛍光強度(カラーバーで示される)および生体内分布は、経時的にin vivoで測定された。
【0037】
図24図24は、乳癌モデルにおけるCLR1502取り込みのin vivo光学スキャニングを示す。同所性乳癌異種移植胸腺欠損ヌードマウス(MDA-MB-231)を、Fluoptics Fluobeam(登録商標)およびIVIS(登録商標)Spectrumシステムを使用して7日間(168時間)毎日撮影した(黄色および緑色の矢印はそれぞれ、FluobeamおよびIVIS Spectrumを示す)。
【0038】
図25図25は、IVIS Spectrumを使用して画像化され、各脇腹に肺癌異種移植(H226肺)された、CLR1502を静脈内注射された胸腺欠損ヌードマウスを示す。黒矢印で示されるように、96時間で、悪性および正常組織間の放射効率の違いは、腫瘍縁の光に十分なコントラストを創る。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
本明細書で記載されることは、広範囲の腫瘍細胞を標的にできる治療用化合物である。本明細書で開示される化合物は、脂質ラフトなどの腫瘍細胞膜の特殊な構造を標的にできる。したがって、本明細書で開示される化合物は、高い特異性で腫瘍細胞を標的とすることに使用することができる。特に、本明細書で開示される化合物は、癌治療に使用することができる。
【0040】
1.定義
別段に記載されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および化学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾が生じた場合は、定義を含む本文書が優先となることになる。好ましい方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載されたものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書で説明された全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に開示された材料、方法、および実施例は、実例となるのみで、限定することを意図していない。
【0041】
本明細書で使用される「含む(複数可)(comprise(s))」、「含む(複数可)(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含む(複数可)(contain(s))」という用語およびその変形は、追加の行為または構造の可能性を排除しない、制限のない移行句、用語、または言葉であることが意図される。単数形の「a」、「および」、および「その」は、文脈上明らかな指示がない限り、複数形の参照を含む。本開示はまたは、明示されているかどうかにかかわらず、本明細書に提示される実施形態または要素を「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」および「実質的にからなる(consisting essentially of)」他の実施形態も企図する。
【0042】
本明細書における数値範囲の記述について、同程度の精度でその間の各介在値が明確に考えられる。例えば、6~9の範囲では、6および9に加えて7および8の数値が考えられ、および6.0~7.0の範囲では、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0の数値が明確に考えられる。
【0043】
関心のある一つまたは複数の値に適用される本明細書で使用される「約」または「おおよそ」という用語は、記載された参照値(reference value)と同様の値、または当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内の値を指し、これは測定システムの限界など、値が測定または決定される方法に部分的に依存することになる。特定の態様において、「約」という用語は、別段の記載がない限り、またはそうでなければ文脈上から明らかな場合でない限り、記載された参照値に対して20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下のいずれかの方向(以上または以下)内に収まる値の範囲を指す(ただし、かかる数が可能値の100%を超えてしまう場合を除く)。あるいは、「約」は、当業者の慣例により、3標準偏差以内またはそれ以上を意味することができる。あるいは、生物学的システムまたは工程に関してなど、「約」という用語は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味することができる。
【0044】
特定の官能基および化学用語の定義は、より詳細に以下に記載される。本開示の目的のために、化学元素は、元素周期表(CAS version,Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed., inside cover)によって同定され、そして特定の官能基はそれに記載されているように一般的に定義される。さらに、有機化学の一般原則、ならびに特定の官能部分および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March March's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989; Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載される;これらのそれぞれの全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書で使用される「癌」という用語は、転移可能な制御されていない細胞分裂の結果として生じる任意の疾患を指す。本明細書で使用される「癌」という用語は、男性の乳癌を含む乳癌;肛門癌、虫垂癌、肝外胆管癌、消化管カルチノイド、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、消化管間質腫瘍(「gist」)、膵島細胞腫瘍、成人原発性肝癌、小児肝癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌、および胃(stomach)(胃(gastric))癌を含む消化器/胃腸癌;膵臓腺癌、副腎皮質癌、膵臓神経内分泌腫瘍、メルケル細胞癌、非小細胞性肺神経内分泌腫瘍、小細胞肺神経内分泌腫瘍、副甲状腺癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍および甲状腺癌を含む内分泌および神経内分泌癌;眼内黒色腫および網膜芽細胞腫を含む眼癌;膀胱癌、腎臓(腎細胞)癌、陰茎癌、前立腺癌、移行細胞腎盂および尿管癌、精巣癌、尿道癌、およびウィルムス腫瘍を含む泌尿生殖器癌;小児中枢神経系癌、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、および精巣癌を含む胚細胞癌;子宮頸癌、子宮内膜癌、妊娠性絨毛腫瘍、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、子宮肉腫、膣癌、および外陰癌を含む婦人科癌;下咽頭癌、喉頭癌、口唇および口腔癌、潜伏性原発を伴う転移性扁平上皮頸部癌、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、咽頭癌、唾液腺癌および咽喉癌を含む頭頸部癌;成人急性リンパ芽球性白血病、小児急性リンパ芽球性白血病、成人急性骨髄性白血病、小児急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および有毛細胞白血病を含む白血病;悪性形質細胞を含む多発性骨髄腫;AIDS関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人ホジキンリンパ腫、小児ホジキンリンパ腫、妊娠中のホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経性リンパ腫、セザリー症候群およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含むリンパ腫;ユーイング肉腫、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫、小児横紋筋肉腫および軟部肉腫を含む筋骨格系癌;成人脳腫瘍、小児脳腫瘍、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、神経芽細胞腫、原発性中枢神経系(CNS)原発悪性リンパ腫を含む神経系癌;非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫、胸腺腫および胸腺癌含む呼吸器/胸部癌;およびカポジ肉腫、メラノーマおよび扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む様々な種類の癌を指すが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本明細書で使用される「癌幹細胞」という用語は、自己複製および悪性腫瘍に見られる異なる種類の癌細胞への分化が可能な癌細胞を指す。
【0047】
「化学療法薬」、「抗癌剤」および「抗腫瘍薬」という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。
【0048】
一般に、「循環腫瘍細胞(circulating tumor cell)」への参照は、単一細胞を指すことを意図し、一方で「循環腫瘍細胞(circulating tumor cells)」または「循環腫瘍細胞のクラスター」への参照は、一つ以上の癌細胞を指すことを意図する。しかしながら、当業者は「循環腫瘍細胞(circulating tumor cells)」への参照は、一つまたは複数の循環腫瘍細胞を含む循環腫瘍細胞の集団を含むことを意図し、一方で「循環腫瘍細胞(circulating tumor cell)」への参照は、一つ以上の循環腫瘍細胞を含み得ることを理解することになる。本明細書で使用される「循環腫瘍細胞(circulating tumor cell)」または「循環腫瘍細胞(circulating tumor cells)」という用語は、対象の血液または血清試料に見られる任意の癌細胞または癌細胞のクラスターを指す。CTCsはまた、対象の血液または血清試料に見られる癌幹細胞または癌幹細胞のクラスターを含む、またはそれらから構成され得る。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「組成物」という用語は、特定の量の特定の成分を含む製品、ならびに特定の量の特定の成分の組み合わせから、直接的または間接的に、結果として生じる任意の製品を包含することを意図する。
【0050】
「コントロール」、「参照レベル(reference level)」、および「参照(reference)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。参照レベル(reference level)とは、測定結果を評価するベンチマークとして使用され、所定の値または範囲であり得る。本明細書で使用される「コントロール群」とは、コントロール対象の群を指す。所定のレベルは、コントロール群からのカットオフ値であり得る。所定のレベルとは、コントロール群からの平均であり得る。カットオフ値(または所定のカットオフ値)とは適応的指標モデル(Adaptive Index Model)(AIM)方法論により決定され得る。カットオフ値(または所定のカットオフ値)は、患者群の生物学的サンプルからの受信者動作曲線(ROC)解析により決定され得る。生物学的分野で一般的に知られているように、ROC解析は、ある状態を別の状態から区別する試験の能力の決定であり、例えば、IL-1Ra療法を受ける理想的な患者を特定する際の各マーカーのパフォーマンスを決定する。ROC解析の説明は、P.J.Heagertyetalら(Biometrics 2000,56,337-44)により提供され、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、カットオフ値は、患者群の生物学的サンプルの四分位数解析によって決定され得る。例えば、カットオフ値は、25~75パーセンタイル範囲の任意の値に対応する値、好ましくは25パーセンタイル、50パーセンタイルまたは75パーセンタイル、およびより好ましくは75パーセンタイルに対応する値を選択することによって決定され得る。このような統計解析は、当業界で知られている任意の方法を使用して実行されることができ、任意の数の市販のソフトウェアパッケージ(例えば、Analyse-it Software Ltd., Leeds, UK;StataCorp LP,College Station,TX;SAS Institute Inc., Cary,NC.から)を通して実装されることができる。標的またはタンパク質活性のための健常または正常なレベルまたは範囲は、標準的な慣行に従って定義され得る。コントロールは、本明細書に詳述されるように、腫瘍が無い対象または細胞であり得る。コントロールは、その病状が既知の対象、またはそれらからの試料であり得る。対象、またはそれからの試料は、健常である、罹患している、治療前に罹患している、治療中で罹患している、または治療後に罹患している、またはその組み合わせであり得る。
【0051】
本明細書で使用される「用量」という用語は、少なくとも単回投与で治療効果を生み出すのに十分な量を含む任意の形態の有効成分製剤または組成物を意味する。「製剤」および「化合物」は、本明細書では互換的に使用される。
【0052】
本明細書で使用される「投与量」という用語は、特定の期間にわたる用量の任意の量、数、および頻度での投与を指す。
【0053】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、治療されている疾患または状態の一つまたは複数の症状をある程度緩和することになる、投与されている任意の量の薬剤または薬学的に許容される組成物または化合物を指す。その結果は、病気の兆候、症状、または原因の減少および/または緩和、または生物学的システムの他の望ましい変化であることがある。例えば、治療用途の「有効量」は、疾患症状の臨床的に有意な減少を提供するために必要とされる、本明細書に開示される化合物を含む組成物の量である。任意の個々の症例における適切な「有効な」量は、用量漸増試験などの技術を使用して決定することができる。
【0054】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、Cl、Br、I、F、At、またはテネシン(Ts)などの合成ハロゲンを意味する。
【0055】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、炭素、窒素、硫黄、ホスフェートおよび酸素から選択される3~24個の原子(C3~C24)の環状基を指し、ここで少なくとも一つの原子が炭素である。
【0056】
本明細書で記載されるように、「異性体」という用語は、光学異性体およびアナログ、構造異性体およびアナログ、立体配座異性体およびアナログなどを含むが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、本開示は、本明細書に詳述されるように異なる光学異性体の使用を包含する。本発明において有用な抗癌化合物が少なくとも一つの不斉中心(steriogenic center)を含み得ることが当業者に理解されることになる。したがって、本発明の方法で使用される化合物は、光学活性体またはラセミ体で存在し、および単離され得る。いくつかの化合物もまた、ポリモーフィズムを示すことがある。
【0057】
「悪性腫瘍細胞」「腫瘍細胞」および「癌細胞」という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。「悪性腫瘍幹細胞」「腫瘍幹細胞」および「癌幹細胞」という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。
【0058】
本明細書で使用される「試料」または「試験試料」は、標的の存在および/またはレベルが検出または測定される任意の試料を意味することができる。試料には、液体、溶液、エマルション、または懸濁液を含み得る。試料には、医療用試料を含み得る。試料には、血液、全血、血漿および血清などの血液の画分、軟骨、靭帯、腱、筋肉、間質液、汗、唾液、尿、涙、滑液、滑膜、半月板、骨髄、脳脊髄液、鼻汁、痰、羊水、気管支肺胞洗浄液、胃洗浄、嘔吐、糞便、肺組織、末梢血単核細胞、総白血球、リンパ節細胞、脾臓細胞、扁桃腺細胞(tonsil cells)、癌細胞、腫瘍細胞、胆汁、消化液、皮膚、またはその組み合わせなどの任意の生体液または組織を含み得る。いくつかの実施形態において、試料はアリコートを含む。他の実施形態において、試料は生体液を含む。試料は、当業界で知られている任意の手段によって得ることができる。試料は、患者から得たものとして直接的に使用することができ、または本明細書で論じられるような、またはそうでなければ当業界で知られているようないくつかの方法で、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活性化、試薬の添加などによって前処理して、試料の特性を変更することもできる。
【0059】
本明細書で互換的に使用される「対象」および「患者」という言葉は、本明細書に記載の組成物または方法を欲するまたは必要としている哺乳類を含む任意の脊椎動物を指すが、これらに限定されるものではない。対象は、ヒトまたは非ヒトであり得る。対象は、脊椎動物であり得る。対象は、哺乳類であり得る。哺乳類は、霊長類または非霊長類であり得る。哺乳類は、例えば、牛、豚、ラクダ、ラマ、ハリネズミ、アリクイ、カモノハシ、ゾウ、アルパカ、馬、ヤギ、ウサギ、羊、ハムスター、モルモット、猫、犬、ラット、およびマウスなどの非霊長類であり得る。哺乳類は、ヒトなどの霊長類であり得る。哺乳類は、例えば、サル、カニクイザル(cynomolgous monkey)、アカゲザル、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルなどの非ヒト霊長類であり得る。対象は、例えば、成人、思春期、または幼児など、任意の年齢または発達段階であり得る。対象は、男性であり得る。対象は、女性であり得る。いくつかの実施形態において、対象は特定の癌を有する。対象は、他の形態の治療中でもよい。
【0060】
本明細書で使用される「治療用化合物」という用語は、癌治療を提供可能な任意の化合物を指す。
【0061】
「治療する」または「治療すること」または「治療」という用語は、疾患の悪化を抑制(suppressing)、抑制(repressing)、逆転、緩和、改善、または阻害すること、または疾患を完全に排除することを意味する。治療は、急性または慢性のいずれかの状態で実行され得る。この用語はまた、疾患またはかかる疾患に関連する症状の重症度を軽減することも指す。
【0062】
本明細書で別段に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例えば、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される任意の専門用語、およびそれらの技術は、当業界では周知であり、一般的に使用されるものである。用語の意味および範囲は明確であるべきである;ただし、任意の潜在的なあいまいさが生じたときは、本明細書で提供される定義が任意の辞書または外部の定義よりも優先される。さらに、文脈上別段の必要性がない限り、単数形には複数形が含まれ、かつ複数形には単数形が含まれるものとする。
【0063】
2.化合物
一態様において、本開示は、下記化学式(I)
【化4】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、
nは2~20であり;
1は結合または下記化学式
【化5】
であり、ここでmは0~100であり;
Lは下記化学式
【化6】
であり、ここでRxはHまたはハロゲンであり;
2は結合または自壊性(self-immolative)スペーサーであり;および
Zは抗癌剤である。
【0064】
数「n」は、2~20の任意の整数であり得る。いくつかの実施形態において、nは、2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20である。特定の実施形態において、nは18である。
【0065】
数「m」は、0~100の任意の整数であり得る。いくつかの実施形態において、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの実施形態において、mは10~20の整数、10~40の整数、10~60の整数、または10~80の整数である。いくつかの実施形態において、mは0であり、およびQ1は結合または下記化学式
【化7】
である。
【0066】
2は、例えば、パラ-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)を含む、任意の既知の自壊性(self-immolative)スペーサーであってよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、RxはHである。いくつかの実施形態において、RxはClである。
【0068】
いくつかの実施形態において、nは2~20であり、Q1は結合または下記化学式
【化8】
であり、およびL-Q2部分は
【化9】
であり、RxはHまたはハロゲンであり、およびZは抗癌剤である。
【0069】
Zは様々な既知の化学療法薬を含む、任意の抗癌剤であってよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、Zはポロ様キナーゼ1(PLK-1)阻害剤である。適切なPLK-1阻害剤は、例えば、BI2536、BI6727(ボラセルチブ)、DAP-81およびDAP-83などのジアミノピリミジン(DAP)誘導体、ならびにKumarら(Biomed Res Int. 2015, 2015: 705745)およびPetersら(Nat Chem Biol. 2006, 2(11):618-26)に開示された化合物を含み、その内容はそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0071】
いくつかの実施形態において、Zはノコダゾールなどのチューブリンポリメラーゼ阻害剤である。
【0072】
いくつかの実施形態において、Zはタッカノライド(taccalonolides)などのチューブリン安定化剤である。
【0073】
いくつかの実施形態において、ZはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンD(MMAD)などの抗腫瘍薬である。
【0074】
いくつかの実施形態において、Zは、EIF4AおよびEIF4E阻害剤などの真核生物翻訳開始因子4(EIF4)阻害剤である。いくつかの実施形態において、ZはEIF4E阻害剤である。適切なEIF4阻害剤には、例えば、リバビリンおよびD'Abronzoら(Neoplasia、2018、20(6)、563-573)により開示されている化合物、および米国特許第10,577,378号を含み、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
いくつかの実施形態において、ZはコンブレタスタチンA-4ホスフェートまたはオンブラブリンなどのコンブレタスタチンA-4アナログである。適切なコンブレタスタチンA-4アナログはまた、例えば、Beilinaら(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2006, 16(22), 5757-5762)により開示されている化合物も含み、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
いくつかの実施形態において、Zはフラバグリンアナログである。適切なフラバグリンアナログは、例えば米国特許出願公開US 2018/0086729に開示されている化合物を含み、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
特定の実施形態において、Zは例えば、(i)アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、抗有糸分裂剤などの他の抗増殖性/抗腫瘍薬;およびトポイソメラーゼ阻害剤;(ii)抗エストロゲン剤、抗アンドロゲン剤、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト、プロゲストゲン、およびアロマターゼ阻害剤などの細胞分裂阻害剤;(iii)抗浸潤剤(例えば、c-Srcキナーゼファミリー阻害剤);(iv)チロシンキナーゼ阻害剤などの成長因子機能阻害剤;(v)抗血管新生剤;(vi)血管損傷剤;および(vii)エンドセリン受容体アンタゴニストを含む、他の既知の抗癌剤一つである。
【0078】
適切な抗癌剤の例には、パクリタキセル、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、シスプラチン、ゲルダナマイシン、メルタンシン、アビラテロン、アファチニブ、アミノレブリン酸、アプレピタント、アキシチニブ、アザシチジン、ベリノスタット、ベンダムスチン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロファラビン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デノスマブ、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドラスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンE)、ドキソルビシン、エンザルタミド、エピルビシン、エリブリンメシレート、エルロチニブ、エトポシド、エベロリムス、フロクスウリジン、フルダラビンホスフェート、フルオロウラシル、ガネテスピブ、ゲフィチニブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、イピリムマブ、イクサベピロン、ラパチニブ、ロイコボリンカルシウム、ロムスチン、メイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ネルフィナビル、ニロチニブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマセタキシンメペスクシネート、オキサリプラチン、パニツムマブ、パゾパニブ、ペグアスパラガーゼ、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペルツズマブ、プリカマイシン(plicanycin)、ポマリドミド、ポナチニブヒドロクロリド、プララトレキサート、プロカルバジン、ラジウム223ジクロリド、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、レタスピマイシン、ルキソリチニブ、セムスチン、シルツキシマブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブマレート、タネスピマイシン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレミフェン、トラメチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビスモデギブ、ボリノスタット、およびジブ-アフリベルセプトを含むが、これらに限定されるものではない。
【0079】
いくつかの実施形態において、化学式(I)の化合物は、化学式(I-a)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでQ1は下記化学式
【化10】
であり、
L-Q2は下記化学式
【化11】
であり、およびZはPLK-1阻害剤、チューブリンポリメラーゼ阻害剤、チューブリン安定化剤、抗腫瘍薬、または真核生物翻訳開始因子4(EIF4)阻害剤である。具体的には、化学式(I-a)は下記化学式
【化12】
またはその薬学的に許容される塩であり、ここでnは2~20であり、およびZはPLK-1阻害剤、チューブリンポリメラーゼ阻害剤、チューブリン安定化剤、抗腫瘍薬、または真核生物翻訳開始因子4(EIF4)阻害剤である。
【0080】
いくつかの実施形態において、化合物は、化学式(I-a)の構造を有し、ここでnは18である。いくつかの実施形態において、化合物は化学式(I-a)の構造を有し、ここでZはPLK-1阻害剤または抗腫瘍薬である。いくつかの実施形態において、化合物は化学式(I-a-1)、(I-a-2)、または(I-a-3)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでZはPLK-1阻害剤である。例えば、Zは、下記化学式
【化13】
であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、化合物は、化学式(I-a-1)、(I-a-2)、または(I-a-3)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでZはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、およびモノメチルアウリスタチンE(MMAD)からなる群から選択される抗腫瘍薬である。いくつかの実施形態において、化合物は化学式(l-a-3)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでZは(下記に示す)MMAE、MMAF、またはMMAD
【化14】
である。
【0082】
いくつかの実施形態において、化学式(I)の化合物は、化学式(I-b)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでnは18であり、Q1は下記化学式
【化15】
であり、L-Q2は下記化学式
【化16】
であり、およびZはコンブレタスタチンA-4アナログである。具体的に、化学式(I-b)は、下記化学式
【化17】
またはその薬学的に許容される塩であってよく、ここでZはコンブレタスタチンA-4アナログである。
【0083】
いくつかの実施形態において、化合物は化学式(I-b-l)、(I-b-2)、または(I-b-3)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでZは、下記化学式
【化18】
などの、コンブレタスタチンA-4アナログである。
【0084】
いくつかの実施形態において、化学式(I)の化合物は化学式(I-c)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでnは18であり、Q1は結合または下記化学式
【化19】
であり、L-Q2は下記化学式
【化20】
であり、およびZはフラバグリンアナログである。
具体的に、化学式(I-c)は、下記化学式
【化21】
またはその薬学的に許容される塩であってよく、ここでZはフラバグリンアナログである。
【0085】
いくつかの実施形態において、化合物は化学式(I-c-1)、(I-c-2)、または(I-c-3)の構造、またはその薬学的に許容される塩を有し、ここでZは下記化学式
【化22】
などのフラバグリンアナログである。
【0086】
本明細書で開示される適切な化合物には、下記化学式:
【化23-1】
【化23-2】
またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0087】
開示される化合物は、薬学的に許容される塩として存在し得る。「薬学的に許容される塩」という用語は、水溶性または油溶性または分散性であり、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応が無い障害の治療に適し、合理的な利益/リスク比に見合った、意図された用途に効果的な化合物の塩または双性イオンを指す。代表的な塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、亜硫酸水素塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、イセチオン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、およびリン酸塩などを含む。化合物のアミノ基はまた、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルなどの塩化、臭化、およびヨウ化アルキルにより四級化してもよい。
【0088】
カルボキシル基と、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、またはアルミニウムなどの金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、または炭酸水素塩などの適切な塩基、または第一級、第二級、または第三級の有機アミンとの反応により、開示された化合物の最終的な単離および精製中に、塩基性付加塩を調製してもよい。第四級アミン塩は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、Nメチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,Nジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミンおよびN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、およびピペラジンに由来するものなどの第四級アミン塩を調製することができる。
【0089】
化合物は、不斉またはキラル中心が存在する立体異性体として存在し得る。立体異性体は、キラル炭素原子の周りの置換基の配置に応じて「R」または「S」である。本明細書で使用される「R」および「S」という用語は、lUPAC 1974 Recommendations for Section E, Fundamental Stereochemistry, in Pure Appl. Chem., 1976, 45: 13-30に記載されている配置である。本開示は、様々な立体異性体およびその混合物を企図しており、そしてこれらは本開示の範囲内に具体的に含まれる。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマー、およびエナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物を含む。化合物の個々の立体異性体は、不斉またはキラル中心を含む市販の出発物質から合成的に、またはラセミ混合物の調製とそれに続く当業者に周知の分離方法によって調製することができる。これらの分離方法は、(1)Furniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, “Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry,” 5th edition (1989), Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載されているようにエナンチオマーの混合物をキラル補助剤に結合し、得られたジアステレオマーの混合物を再結晶またはクロマトグラフィーによって分離し、補助剤から光学的に純粋な生成物を任意に遊離、または(2)キラルクロマトグラフィーカラムにおいて光学エナンチオマーの混合物の直接的な分離、または(3)分画再結晶法、が例示される。化合物は、互変異性型、ならびに幾何異性体を有していてもよく、そしてこれらはまた本開示の態様を構成する。
【0090】
本開示はまた、一つまたは複数の原子が自然界で通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置換されているという点を除いて、化学式(I)に記載されたものと同一である、同位体標識化合物を含む。開示の化合物への包含に適切な同位体の例として、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、180、170、31P、32P、35S、18F、および36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、および塩素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。重水素、すなわち2Hなどのより重い同位体による置換は、例えばin vivoでの半減期の延長または必要投与量の低減などのより高い代謝安定性に起因する特定の治療上の優位性を提供することができ、したがって、いくつかの状況では好ましいことがある。化合物は、受容体の分布を測定するための医用イメージングおよび陽電子放出断層撮影(PET)研究用の陽電子放出同位体を組み込んでいてもよい。化学式(I)の化合物に組み込むことができる適切な陽電子放出同位体は、11C、13N、15O、および18Fである。化学式(I)の同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られている従来の技術によって、または非同位体標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、添付の実施例に記載されるものと類似の工程によって調製することができる。
【0091】
本化合物は、本明細書で詳述される合成スキームによって調製されることができる。化合物および中間体は、有機合成の当業者に周知の方法によって単離および精製されることができる。化合物を単離および精製するための従来の方法の例としては、例えば、「Vogel's Textbook of Practical Organic Chemistry」5th edition (1989), Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, England に記載されているように、シリカゲル、アルミナ、またはアルキルシラン基で誘導体化したシリカなどの固体支持体上でのクロマトグラフィー、活性炭による任意の前処理を伴う高温または低温での再結晶化、薄層クロマトグラフィー、様々な圧力での蒸留、真空下の昇華、および粉砕などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
それぞれの個々の工程の反応条件および反応時間は、使用する特定の反応物および使用する反応物に存在する置換基によって異なることがある。具体的な手順は、実施例の項に提供される。反応は、従来の方法で、例えば、残留物から溶媒を除去することによってワークアップすることができ、結晶化、蒸留、抽出、粉砕およびクロマトグラフィーなどの当業界で一般に知られている方法論に従ってさらに精製することができるが、これらに限定されるものではない。別段の記載がない限り、出発物質および試薬は、市販されているか、または化学文献に記載されている方法を用いて市販の材料から当業者によって調製することができる。出発材料は、市販されていない場合、標準的な有機化学技術、既知の構造的に類似した化合物の合成に類似した技術、または上述のスキームまたは合成の実施例の項に記載される手順に類似した技術から選択される手順によって調製されることができる。
【0093】
反応条件、試薬および合成経路の順序の適切な操作、反応条件に適合できない任意の化学的官能基の保護、および方法の反応順序の適切な点での脱保護を含む日常的な実験は、本発明の範囲に含まれる。適切な保護基およびそのような適切な保護基を使用して異なる置換基を保護および脱保護する方法は、当業者に周知である;その例は、PGM Wuts and TW Greene, in Greene’s book titled Protective Groups in Organic Synthesis (4thed.), John Wiley & Sons, NY (2006)で見つけることができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の化合物の合成は、合成スキームおよび特定の実施例に記載される方法に類似する方法によって達成されることができる。
【0094】
3.医薬組成物
別の態様において、本開示は、本明細書に開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物を提供する。
【0095】
本医薬組成物は、当業界で知られている工程、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造(dragee-making)、微細化(levigating)、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥工程によって製造することができる。
【0096】
本明細書に記載されるように、薬学的に許容されるキャリアは、所望の特定の投与形態に適した、任意のおよびすべての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを含む。薬学的に許容される組成物の製剤化に使用される様々なキャリアおよびその調製技術は、当業界で既知である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E.W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980))。
【0097】
薬学的に許容されるキャリアは、ビヒクル、アジュバント、または希釈剤などの機能性分子であり得る。薬学的に許容されるキャリアは、任意のタイプの非毒性で不活性な固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または製剤補助剤であり得る。薬学的に許容されるキャリアには、例えば、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、香料、甘味料、酸化防止剤、保存剤、滑沢剤、溶媒、懸濁化剤、湿潤剤、界面活性剤、軟化剤、噴射剤(propellants)、保湿剤、粉末、pH調整剤、およびその組み合わせを含む。
【0098】
薬学的に許容されるキャリアとして機能し得る材料のいくつかの例には、これらに限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸塩など)、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など)、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ロウ類、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖(ラクトース、グルコース、およびスクロースなど)、スターチ(コムスターチ(com starch)およびジャガイモでんぷんなど)、セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど)、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(ココアバターおよび座剤ワックス(suppository waxes)など)、油(ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油など)、グリコール類(プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)、エステル(オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなど)、寒天、無毒性適合滑沢剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、着色剤、放出剤、コーティング剤、乳化剤、甘味料、香料、保存料、酸化防止剤を含み、処方者の判断により、組成物に存在させることもできる。
【0099】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は実質的に、本明細書に開示されるような治療有効量の化合物、またはその薬学的に許容される塩からなる。
【0100】
液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含むが、これらに限定されるものではない。固形製剤には、カプセル、錠剤、ピル、粉末、セメント、パテ、および顆粒を含むが、これらに限定されるものではない。本化合物の局所または経皮投与のための剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチを含むが、これらに限定されるものではない。
【0101】
液体キャリアまたはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒性のグリセリルエステル、およびその適切な混合物を含む溶媒または液体の分散媒であり得る。
【0102】
医薬組成物は、無菌の注射用または注入用の溶液または分散液の用事調製に適合した有効成分(複数可)を含む無菌の水溶液または分散液または無菌の粉末などの、注射または注入に適した剤形であり得る。最終的な剤形は、無菌で、流動性があり、および製造および保存条件下で安定であるべきである。無菌注射溶液は、少なくとも本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩を、必要に応じて他の様々な成分とともに適切な溶媒中に必要量取り込み、任意にその後フィルター滅菌を行うことにより調製することができる。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術を含んでもよく、活性成分(複数可)+無菌溶液中に存在する任意の追加の所望の成分の粉末を得ることができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、組成物は、注入または注射による投与に適した溶液などの溶液である。溶液は、無毒の界面活性剤と任意に混合し、水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびその混合物、および油中で調製することもできる。これらの製剤には、微生物の増殖を防ぐための防腐剤が含まれていることがある。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。
【0104】
注射製剤は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーにおいて、本明細書に開示の化合物(複数可)、またはその薬学的に許容される塩のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより製造することができる。化合物とポリマーの比率および特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。注射剤はまた、体内組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション内に薬物を封入することにより調製される。
【0105】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載された少なくとも一つの化合物および、少なくとも一つの追加の抗癌剤を含んでよい。本開示で有用な抗癌剤には、パクリタキセル、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、シスプラチン、ゲルダナマイシン、メルタンシン、アビラテロン、アファチニブ、アミノレブリン酸、アプレピタント、アキシチニブ、アザシチジン、ベリノスタット、ベンダムスチン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、カーフィルゾミブ、カルムスチン、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロファラビン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デノスマブ、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドラスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンE)、ドキソルビシン、エンザルタミド、エピルビシン、エリブリンメシレート、エルロチニブ、エトポシド、エベロリムス、フロクスリジン、フルダラビンホスフェート、フルオロウラシル、ガネテスピブ、ゲフィチニブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、イピリムマブ、イクサベピロン、ラパチニブ、ロイコボリンカルシウム、ロムスチン、メイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ネルフィナビル、ニロチニブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマセタキシンメペスクシナート、オキサリプラチン、パニツムマブ、パゾパニブ、ペグアスパラガーゼ、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペルツズマブ、プリカマイシン(plicanycin)、ポマリドミド、ポナチニブヒドロクロリド、プララトレキサート、プロカルバジン、ラジウム223ジクロリド、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、レタスピマイシン、ルキソリチニブ、セムスチン、シルツキシマブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブマレート、タネスピマイシン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレミフェン、トラメチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビスモデギブ、ボリノスタット、およびジブ-アフリベルセプトを含むが、これらに限定されるものではない。現在、抗癌剤として知られている、または作用することが可能な任意の化合物もまた、本開示に有用である。
【0106】
4.方法
本明細書に詳述される化合物の選択的腫瘍ターゲティングの基礎は、ほとんどの正常細胞のものと比較した癌細胞の細胞膜間の違いにある。リン脂質エーテル(PLE)分子は、腫瘍細胞が急速な細胞分裂に必要なエネルギーを生成するために受ける代謝シフトを利用する。腫瘍は、長鎖脂肪酸(LCFA)をエネルギーに変換するためのベータ酸化経路の利用を促進する。LCFAの取り込みを増加させるために、腫瘍細胞は「脂質ラフト」として知られる特殊なマイクロドメインを形成して、細胞膜を変化させる。脂質ラフトは、代謝シフトおよびリン脂質の必要性のために形成される。腫瘍細胞内では、これらの領域が過剰になり、安定化して、潜在的な腫瘍特異的ターゲットとなることができる。特に、癌細胞膜は脂質ラフトに非常に富む。正常組織では、脂質ラフトの存在は制限されており、一時的である(~2ナノ秒)。腫瘍では、脂質ラフトの存在が増加し、安定化する(最大10日)。癌細胞は、正常細胞よりも5~10倍多くの脂質ラフトを有する。さらに、脂質ラフトは、ほぼすべての腫瘍種で非常に豊富であり、試験された個々の癌細胞の100%であることが実証されている。脂質ラフトは、高度に組織化され、およびリン脂質膜二重層の特殊な領域であり、様々なシグナル伝達分子、スフィンゴ脂質、グリコスフィンゴ脂質およびコレステロールを高濃度で含み、そして細胞表面および細胞内シグナル伝達分子(例えば、成長因子およびサイトカイン受容体、ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3K)/Akt生存経路)を組織化する働きをする。データは、脂質ラフトがリン脂質エーテル(PLEs)の入り口として機能することを示唆する。癌細胞対非癌細胞のためのこれらの化合物の顕著な選択性は、コレステロールに対するPLEsの高い親和性および癌細胞におけるコレステロールに富む脂質ラフトの豊富さに起因する。脂質ラフトが果たす極めて重要な役割は、脂質ラフトの構造の破壊が癌細胞へのPLEsの取り込みを抑制するという事実によって強調される。脂質ラフトの形成が阻止される場合、PLEsの取り込みが60%減少することが示されている。リン脂質薬物コンジュゲートの迅速な内在化を提供する脂質ラフトと組み合わされたこれらの機能は、それらを理想的な標的にする。
【0107】
PLEアナログなどの本明細書で記載される化合物は、LCFA模倣物であり得る。本明細書に開示される分子は、腫瘍細胞上の脂質ラフトを標的とすることに関連する広範な構造活性相関(SAR)解析を受けており、これらの領域に特異的に結合することが示されている。本明細書に開示される分子は、細胞質への直接的な侵入を提供し、細胞質内のゴルジ装置ネットワークに沿って小胞体およびミトコンドリアに移動する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるリン脂質薬物コンジュゲート(PDCs)は、切断可能なリンカーを介して新規コンブレタスタチンA(CBA)アナログにコンジュゲートされた独自に設計されたリン脂質エーテルを含む。CBAsは強力な細胞毒素であり、腫瘍細胞内のチューブリン重合の阻害、ならびに腫瘍の周囲/内の局所血管系を破壊する能力が実証されている。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物は、切断可能なリンカーを介してフラバグリン(FLV)アナログにコンジュゲートされた独自に設計されたリン脂質エーテルを含む。FLVsは、翻訳、細胞周期の進行を阻害し、アポトーシスを誘導する強力な細胞毒素である。
【0108】
本明細書に詳述される化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に詳述される化合物を含む組成物は、癌を治療するために使用することができる。一態様において、本開示は、本明細書に詳述される化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に詳述される化合物を含む組成物を有効量で投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0109】
別の態様において、本開示はそれを必要とする対象における癌治療に使用するための、本明細書で開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0110】
別の態様において、本開示はそれを必要とする対象における癌治療のための薬剤を製造するための、本明細書で開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0111】
本明細書に詳述される化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書で詳述される化合物を含む組成物で治療することができる癌は:男性の乳癌を含む乳癌;肛門癌、虫垂癌、肝外胆管癌、消化管カルチノイド、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、消化管間質腫瘍(「gist」)、膵島細胞腫瘍、成人原発性肝癌、小児肝癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌、および胃(stomach)(胃(gastric))癌を含む消化器/胃腸癌;膵臓腺癌、副腎皮質癌、膵臓神経内分泌腫瘍、メルケル細胞癌、非小細胞性肺神経内分泌腫瘍、小細胞肺神経内分泌腫瘍、副甲状腺癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍および甲状腺癌を含む内分泌および神経内分泌癌;眼内黒色腫および網膜芽細胞腫を含む眼癌;膀胱癌、腎臓(腎細胞)癌、陰茎癌、前立腺癌、移行細胞腎盂および尿管癌、精巣癌、尿道癌、およびウィルムス腫瘍を含む泌尿生殖器癌;小児中枢神経系癌、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、および精巣癌を含む胚細胞癌;子宮頸癌、子宮内膜癌、妊娠性絨毛腫瘍、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、子宮肉腫、膣癌、および外陰癌を含む婦人科癌;下咽頭癌、喉頭癌、口唇および口腔癌、潜伏性原発を伴う転移性扁平上皮頸部癌、口腔癌、上咽頭癌、中咽頭癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、咽頭癌、唾液腺癌および咽喉癌を含む頭頸部癌;成人急性リンパ芽球性白血病、小児急性リンパ芽球性白血病、成人急性骨髄性白血病、小児急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および有毛細胞白血病を含む白血病;AIDS関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人ホジキンリンパ腫、小児ホジキンリンパ腫、妊娠中のホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経性リンパ腫、セザリー症候群およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含むリンパ腫;ユーイング肉腫、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫、小児横紋筋肉腫および軟部肉腫を含む筋骨格系癌;成人脳腫瘍、小児脳腫瘍、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、神経芽細胞腫、原発性中枢神経系(CNS)原発悪性リンパ腫を含む神経系癌;非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫、胸腺腫および胸腺癌含む呼吸器/胸部癌;およびカポジ肉腫、メラノーマおよび扁平上皮癌を含む皮膚癌を含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態において、がんはメラノーマ、肺癌、大腸がん、乳癌、またはその組み合わせであり得る。
【0112】
別の実施形態において、癌は一つまたは複数のCTCsを含み得る。一つまたは複数のCTCsは乳癌、肺癌、甲状腺癌、子宮頸癌、メラノーマ、扁平上皮癌、前立腺癌、膵臓癌、大腸癌、および癌幹細胞、および悪性形質細胞からなる群から選択され得る。
【0113】
別の実施形態において、癌は転移性であり得る。特定の実施形態において、転移性癌は乳癌、肺癌、メラノーマ、および大腸癌からなる群から選択され得る。
【0114】
別の実施形態において、癌は癌幹細胞であり得る。特定の実施形態において、癌幹細胞は乳癌、肺癌、メラノーマ、および大腸癌からなる群に由来し得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞性肺癌、またはその組み合わせを含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、メラノーマは、表在拡大型(superficial spreading)メラノーマ、結節型(nodular)メラノーマ、悪性黒子型(lentigo)メラノーマ、末端黒子型(acral lentiginous)メラノーマ、無色素性(amelanotic)メラノーマ、母斑様(nevoid)メラノーマ、スピッツ(spitzoid)メラノーマ、線維形成性(desmoplastic)メラノーマ、またはその組み合わせを含み得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、大腸癌は腺癌を含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される化学式(I-a)、(I-a-1)、(I-a-2)、または(I-a-3)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に詳述される化合物を含む組成物は、メラノーマ、肺癌、大腸癌、またはその組み合わせを治療するために使用することができる。
【0119】
いくつかの実施形態において、乳癌は、浸潤性乳管癌、転移性乳癌、炎症性乳癌、トリプルネガティブ乳癌、非浸潤性乳管癌、またはその組み合わせを含み得る。さらなる実施形態において、癌は乳癌であり、対象は、エストロゲン受容体陽性、エストロゲン受容体陰性およびプロゲステロン受容体陰性の両方、HER2発現(HER2+)、HER2発現無し(HER2-)、またはその組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される化学式(I-b)、(I-b-1)、(I-b-2)、または(l-b-3)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に詳述される化合物を含む組成物は、乳癌を治療することに使用することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される化学式(I-c)、(I-c-1)、(I-c-2)、または(I-c-3)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に詳述される化合物を含む組成物は、メラノーマ、肺癌、大腸癌、乳癌、またはその組み合わせを治療するために使用することができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、対象は、成人および幼児などのヒトである。いくつかの実施形態において、その対象は、哺乳類などの動物である。
【0122】
方法は、本明細書に詳述される化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に詳述される量で本明細書に詳述される化合物を含む組成物を投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、その方法は、本明細書に詳述されるように約0.0001~約1000mg/kgの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0123】
組成物中の化合物(複数可)の有用な投与量は、その動物モデルにおけるそれらのin vitro活性およびin vivo活性を比較することにより決定することができる。げっ歯動物、ブタ、および他の動物におけるヒトへの有効な投与量の推定方法は、当業界で知られており;例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0124】
本明細書で詳述される治療用組成物における化合物の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物および投与様式に対する所望の治療応答を達成するのに有用な化合物(複数可)の量を得るように変更することができる。治療に用いるための、選択された投与量レベルおよび本化合物、またはその薬学的に許容される塩の量は、選択された特定の化合物または塩、投与経路、治療される疾患または状態、治療される対象の年齢および状態、治療される状態の重症度、および治療される患者の状態および以前の病歴によって変化し得る。薬学的に許容される塩を投与する場合、投与量は遊離塩基として計算することができる。しかし、所望の治療効果を得るために求められるものよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることは当業者の技術範囲内である。特定の状況において、開示された化合物は、特に積極的な疾患または状態を効果的かつ積極的に治療するために、本明細書に記載される投与量範囲を超える量で投与されることがある。
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、または医薬組成物は、経口投与または静脈内投与により投与されることができる。しかしながら、一般に、適切な用量は、しばしば、約0.001mg/kg~約10.0mg/kgなどの、約0.0001mg/kg~約1000mg/kgの範囲であることになる。例えば、適切な容量は、一日当たりレシピエントの約0.01mg/kg~約1.0mg/kg体重、一日当たりレシピエントの約0.01mg/kg~約3.0mg/kg体重、一日当たりレシピエントの約0.1mg/kg~約5.0mg/kg体重、一日当たりレシピエントの約0.2mg/kg~4.0mg/kgなどの、一日当たり約0.001mg/kg~約5.0mg/kg体重の範囲であってよい。化合物は、単位剤形で投与することができ;例えば、単位剤形あたり有効成分の1~100mg、10~100mg、または5~50mgを含む。
【0126】
所望の用量は、好都合には、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば、一日当たり2、3、4つ、またはそれ以上のサブ用量として提示され得る。サブ用量自体は、例えば、多くの個別のゆるい間隔の投与にさらに分割することができる。
【0127】
投与される特定のin vivo投与量および特定の投与様式は、治療される年齢、体重、苦痛の重症度、および哺乳動物種、特定の適用される化合物、およびこれらの化合物に適用される特定の用途に応じて変化し得る。所望の結果を達成するための有効な投与量レベルの決定は、既知の方法、例えば、ヒトの臨床試験、in vivo研究またはin vitro研究によって成し遂げることができる。例えば、本明細書で開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効投与量は、動物モデルのin vitro活性、およびin vivo活性を比較することにより決定することができる。かかる比較は、確立された薬物に対して比較することにより行われてもよい。
【0128】
投与量および間隔は、調節効果(modulating effects)を維持するのに十分な活性部分の血漿レベル、または最小有効濃度(MEC)を提供するように個別に調整されることができる。MECは化合物ごとに異なることになるが、in vivoおよび/またはin vitroのデータから推定されることができる。MECを達成するために必要な投与量は、個々の特性および投与経路に依存することになる。しかしながら、血漿濃度の測定のためにはFIPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用することができる。投与間隔はまた、MEC値を使用して決定することもできる。組成物は、血漿レベルが10~90%の時間、好ましくは30~90%、および最も好ましくは50~90%の間、好ましくは30~90%間およびより好ましくは50~90%の間、MEC値を超えて維持されるレジメンを使用して投与されるべきである。局所投与または選択的取り込みの場合、薬物の有効局所濃度は血漿濃度と関連がないこともある。
【0129】
本明細書で開示される化合物、塩、および組成物は、既知の方法を使用して有効性および毒性を評価することができる。例えば、特定の化合物、または特定の化学部位を共有するその化合物のサブセットの毒性は、哺乳類、および好ましくはヒト、細胞株などの細胞株に対するin vitro毒性を測定することより確立することができる。かかる研究の結果は、哺乳類、またはより具体的には、ヒトなどの動物における毒性をしばしば予測するものである。あるいは、マウス、ラット、ウサギ、イヌまたはサルなどの動物モデルにおける特定の化合物の毒性は、既知の方法によって測定することができる。特定の化合物の有効性は、in vitroの方法、動物モデル、またはヒト臨床試験などのいくつかの認識された方法を使用して確立することができる。有効性を測定するモデルを選択するには、当業者は、適切なモデル、用量、投与経路および/または体制(regime)を選択するために、当業者の状態によって誘導されることができる。
【0130】
本明細書で詳述される化合物(複数可)、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に詳述される化合物(複数可)を含む組成物は、経口、直腸、非経口、大槽内(intracisternally)、膣内、経皮(例えば、パッチを使用)、経粘膜、舌下、肺、腹腔内、局所(粉末、軟膏または点滴剤(drops)による)、バッカルまたは口腔または鼻腔スプレーとして、様々な既知の経路によってヒトおよび他の哺乳動物に投与することができるが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用される「非経口の(parenteral)」または「非経口で(parenterally)」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および注入を含む投与様式を指す。
【0131】
本明細書に記載される組成物は、組成物の安定性、送達性、および/または活性を延長するために追加の組成物とともに投与するか、または追加の治療薬と組み合わせて、または追加の治療薬の投与の前または後に提供することができる。併用療法は、本明細書に記載される一つまたは複数の化合物および一つまたは複数の追加の医薬品を含む単一の医薬剤形の投与、ならびにそれ自体の別個の医薬剤形における化合物および各追加の医薬品の投与を含む。 例えば、本明細書に詳述される化合物は、本明細書に詳述される追加の抗癌剤と共に対象に投与され得る。
【0132】
本明細書に詳述される化合物、またはその薬学的に許容される塩はまた、リポソームの形態で投与されることもできる。当業界で既知のように、リポソームは一般的にリン脂質または他の脂質物質に由来される。リポソームは、水性媒体において分散される単層または多重層の水和液晶により形成される。任意に、リポソームを形成することができる生理学的に許容かつ代謝される脂質を使用することができる。リポソーム形態の本組成物は、本明細書に記載の化合物に加えて、抗癌剤、安定化剤、保存剤、添加剤などを含むことができる。好ましい脂質には、別々にまたは一緒に使用される天然および合成リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)がある。リポソームを形成する方法は、当業界において既知である。例えば、Prescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y.(1976), p.33および以下の頁を参照されたい。かかる組成物は、物理的状態、溶解性、安定性、in vivo放出速度、およびin vivoクリアランスの速度に影響を与えることになる。
【0133】
本開示の一つの方法において、薬学的に許容される組成物は、放出制御システムにおいて送達されることができる。例えば、薬剤は、静脈内注入、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を使用して投与されることができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer, supra; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201(1987); Buchwaldら, Surgery 88:507 (1980); Saudekら, N. Engl. J. Med. 321:574(1989) 参照) 。別の実施形態において、高分子材料を使用することができる。さらに別の実施形態において、放出制御システムは、治療標的、例えば肝臓の近傍に配置されることができ、したがって全身用量の一部分しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984) 参照)。他の放出制御システムは、Langerによる総説論文(Science 249:1527-1533 (1990))において議論されている。
【実施例
【0134】
5.実施例
上記は、例示の目的で提示され、本発明の範囲を限定することを意図されていない以下の実施例を参照することによってよりよく理解され得る。本開示は、添付の非限定的な実施例によって説明される、複数の態様および実施形態を有する。
【0135】
実施例1.材料および方法
CLR2000045のin vitro取り込みは、MCF-7乳癌細胞および正常ヒト皮膚線維芽(NHDF)細胞を使用して評価し、LC/MS/MSを介して測定した。乳癌細胞は、10%FBSを添加した最小必須培地で維持した。すべての細胞は37℃および5%CO2で維持した。細胞を1μMの薬物でインキュベートし、報告値は3回の評価の平均であった。In vitro細胞毒性は、MCF-7乳癌細胞およびHs578Tトリプルネガティブ乳癌細胞を使用して、Cell Titer-Glo(登録商標)アッセイにより測定した。
【0136】
CLR180099のin vitro取り込みおよび放出性を、A549腫瘍細胞、HCT116腫瘍細胞、および正常ヒト皮膚線維芽(NHDF)細胞を使用して評価し、LC/MS/MSを介して測定した。細胞を1μMの薬物でインキュベートし、そして報告値は3回の評価の平均であった。In vitro細胞毒性は、Cell Titer-Glo(登録商標)アッセイにより測定した。
【0137】
ニワトリ胚を使用するin vivo有効性スクリーニングモデルにおいて、72μMのCLR2000045を投与してMCF-7腫瘍に対する有効性を測定し、そして50μMでのビヒクルコントロールおよびパクリタキセルポジティブコントロールと比較した。CLR2000045は胚のケーシングに局所的に適用した。白色レグホンの受精卵を37.5℃、相対湿度50%で9日間培養した。その瞬間(E9)、卵殻に小さな穴を開けて気嚢に絨毛尿膜(CAM)を落とし、CAM上の卵殻に1cm2の窓を開けた。各群には、少なくとも20個の卵(9日間の発生後の胚の生存率に応じて、群あたり20個以上の卵が存在し得る)を使用した。いくつかの胚死は腫瘍移植後に発生するか、または腫瘍移植の欠陥に関連し得ることから、データは群あたり20個未満の卵(群あたり最低15個の卵)で収集され得る。腫瘍細胞は、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEMで培養した。E9日目にトリプシンで細胞を剥離し、完全培地で洗浄した後、移植用培地に懸濁した。3×106個の細胞の接種物を群ごとに各卵(E10)のCAM上に適宜添加し、その後卵を無作為に群に分けた。
【0138】
胚の生存率は毎日確認した。E18に死亡した胚の数を、最終的な目に見える肉眼的異常の観察と併せて数え、治療によって誘発された胚の毒性を評価した。最終的な死亡率およびカプラン-マイヤー曲線を全群について算出した。観察された任意の目に見える異常も認められた。E18日目に、腫瘍を有するすべての生存胚からCAMの上部(腫瘍を有する)を除去し、PBS緩衝液で洗浄した後、直接PFAに移した(48時間固定)。その後、腫瘍を正常なCAM組織から注意深く切り離し、重量を測定した。
【0139】
In vivo有効性は、HCC70トリプルネガティブ乳癌(TNBC)異種移植R2G2マウスでさらに評価した。CLR2000045を2週間にわたり週に1回、2回、または3回投与する3用量(1mg/kg)で評価した。CLR2000045は尾静脈注射により全身投与された。各群には10匹のマウスが含まれた。有効性評価のために腫瘍体積、忍容性評価のために体重を記録した。生存率もまた記録した。
【0140】
CLR180099を健常C57BL/6マウスに静脈内投与(IV)して、FLV分子単独と比較した最大耐用量(MTD)を測定した。この場合、CLR180099を投与するために使用されたビヒクルはPBSであったが、任意の薬学的に適切なビヒクルを使用することができる。各群には5匹のマウスが含まれた。In vivo有効性は、HCT116異種移植胸腺欠損ヌードマウスで評価した。マウスは、5mlの1.2%メチルセルロースに再懸濁された約1×106個の細胞をマウスの後部脇腹に注射することによって開発された側面モデルであった。試験は、群の平均腫瘍体積が約120mm3に達したときに開始された。腫瘍体積はノギスを使用して測定し、腫瘍の長さ、幅、および深さの測定値は腫瘍体積を算出するために使用した。CLR180099の2用量(2mg/kgを2回投与または2mg/kgを3回投与)を評価した。各群には10匹のマウスが含まれた。有効性評価のために腫瘍体積、忍容性評価のために体重を記録した。すべてコンジュゲートされたCLR180099および遊離FLVを質量分析により測定した。
【0141】
実施例2.リン脂質脂質(Phospholipid lipid)エーテル送達ビヒクルは、広範囲の腫瘍細胞に対して特異性を示す
様々な腫瘍細胞株におけるPDCsの取り込みを実証するために、MCT-116、MeS SA/Dx5、MIa PaCa-2、Ovcar-3およびU-87MGなどの様々な腫瘍細胞株を完全培地中で37℃で24時間、5μMのCLR1501(PLE+BODIPY蛍光ペイロード)でインキュベートした。各細胞株は、増殖を最適化するためにわずかに異なる媒体を有することができ、当業界で知られている任意の適切な媒体を各細胞株に使用することができる。すべての細胞は、10%FBSおよび5%CO2を添加した適切な培地で37℃に維持した。CLR1501は励起され、その後Alexa-Fluor488フィルターで検出された。CLR1501は、すべての異なる腫瘍細胞株において高度に局在していた(図1Aおよび図1B)。これは、MM.IS、MM.IR、RPM18226、U266、およびNCIH929、Panc-1、A375、PC-3、Caki-2、HCT-116、A549、転移性PC-3、MDA-MB-231、HT-29、SV-40、CNS-1、BxPC3、MCF-7、Lucap、LNCap、MES SA/Dx5、Capanl、HTB-77、Lan5、CHLA-20、NB1691、およびSK-N-ASなどの100を超える腫瘍細胞株で同様の結果が報告されている。CLR1501をin vitroにおいて異なる癌細胞株および正常ヒト皮膚線維芽細胞株に投与した。24時間後、in vitroにおけるこれらの癌細胞株において、CLR1501は正常線維芽細胞と比較して5~9倍優先的に取り込まれることが示された。保持されたCLR1501は、血漿およびオルガネラ膜に関連していた。
【0142】
細胞毒性ペイロードのin vitro取り込みおよび放出は、A375およびA549細胞株において、半安定リンカー(CLR2208、「PDC-SM1」)を持つ2μMの細胞毒性小分子PDCと37℃で48時間完全培地中でインキュベートすることにより測定した。PDC-SM1の取り込みは、LC/MS/MSで測定した。PDC-SM1は、30分以内に取り込みが開始することを実証した。細胞に晒したコンジュゲートの20~40%は24時間以内に腫瘍細胞の細胞質において測定した(図2A)。その後、CLR2206(「PDC-SM2」、切断可能なリンカーを除いたPDC-SM1と同様)を利用して、腫瘍細胞内のペイロードの放出を測定した。CLR2200(「PDC-SM3」)も研究した。小分子ペイロードの測定可能な放出は、インキュベーション後1~2時間の間に生じた(図2B)。ペイロードのわずかな放出が培地中で生じた(<1nM)。これらの結果は、リン脂質エーテル分子が広範囲の腫瘍を標的とする能力を有し、PDCsが腫瘍細胞株への晒した薬物の20~40%の取り込みを達成する能力を有することを示した。
【0143】
腫瘍細胞上の脂質ラフトを介した取り込みを測定するために、多発性骨髄腫細胞をCLR1502(PLEに結合した近赤外分子)で37℃で24時間インキュベートした。翌日、細胞を洗浄し、核染色(ヘキスト33342)で共染色した。コレラ毒素サブユニットBを使用して、脂質ラフトの存在のためにさらに染色した。細胞をコレラ毒素サブユニットBで24時間インキュベートした。さらに、原発腫瘍試料の脂質ラフトを介した取り込みを測定するために、患者由来の多発性骨髄腫細胞をヘキスト33342で染色し、CLR1501と共にインキュベートした(図3)。これらの結果は、PDCの取り込みが細胞株および原発腫瘍試料の両方の腫瘍細胞膜上の脂質ラフトに関連していることを実証する。
【0144】
細胞毒性ペイロードによるin vitro有効性を測定した。PDC-SM2は、メラノーマ(A375)および肺癌(A549)細胞に対して、サブマイクロモルの活性(細胞上でインキュベートした完全なコンジュゲート濃度に基づいて測定された濃度)を実証した。PDC-SM2は、肺癌よりもメラノーマに対してより低い活性を示したが(IC50 0.131対0.016)、より強力であった(0%対12%の生細胞が残存、図4)。PDC-SM2はまた、大腸癌(HCT-116)細胞に対して、正常な線維芽細胞に対して活性のない肺癌と同様の活性および効力を示した。したがって、PDCsはペイロードの放出および腫瘍細胞に対する強力なナノモル活性を示した。
【0145】
PDCsの細胞毒性をin vivoにおいて忍容されるかどうかを測定するために、C57BL/6マウスに次の方法で投与した:PDC-SM2を0、3、および7日目に0.5mg/kg、1.0mg/kg、または2.0mgの用量レベルで投与した;ペイロード単独を0日目に0.25mg/kg、0.4mg/kg、または0.5mg/kgでのみ投与した;ビヒクルは、0、3、および7日目に投与した。PDCsおよびビヒクルコントロールは、体重の変化(体重減少なし)によって測定されるように、反復投与中に毒性または有害事象を示さなかった。0.25および0.4mg/kgのペイロード用量では忍容されたが、マウスの皮膚および外皮はいくつかの毒性が認められた。0.5mg/kgのペイロード用量は忍容されず、2匹のマウスは単回注入後4日目までに死亡し、すべてのマウスは5日目に犠牲になった(図5)。これらのPDCsは、ヒト血漿中で良好な血漿安定性を示した。血漿安定性は、Cyprotexの血漿安定性アッセイを使用して測定した。試料は1μMの濃度で、0、15、30、60および120分でインキュベートした。血漿中で分解を受けるポジティブコントロール化合物を使用した。各インキュベーション時点で残っている化合物のパーセントを測定した。PDC-SM2は、マウス血漿にいくつかの不安定性を示し、いくつかの毒性を引き起こすことがある(表1)。本PDCsはin vivoで十分に忍容される。全体的には、PDCsは、小分子を腫瘍細胞に標的化するための新規かつ独創的なアプローチを提供する。
【0146】
【表1】
【0147】
CLR1502の選択的取り込みはまた、腸腫瘍においてin vivoで測定した。50μgのCLR1502の投与96時間後の剖検で、結腸全体および小腸の末端部分を除去した(図19Aおよび図19B)。CLR1502を尾静脈注射により投与した。シグナル強度が増加した領域は、動物の皮膚を通してCLR1502を直接視覚化できるIVIS Spectrumを使用して観察した。次に、動物を安楽死させた後、顕微解剖によってIVISシステムで同定された組織を切除し、組織学を行って、腫瘍組織対非腫瘍組織、および近赤外線標識が生じた場所を確認した。これらの領域は、非侵襲的(結腸 図19C;小腸末端 図19F)および侵襲的(結腸 図19D;小腸末端 図19E)な腫瘍を示した。
【0148】
他の研究において、CLR1502は転移巣および所属リンパ節に蓄積する。腸を除去した後に、腸間膜脂肪、膵臓、および脾臓をまとめて単離した。一つの例では、腸間膜内にサイズが~4mmの2つの転移性腫瘍沈着物が認められた。これらの病変では、Fluobeam近赤外線イメージング装置で簡単に可視化した。これらの病変は、H&Eで転移性の悪性病変であることを確認した。局所リンパ節腫脹はまた、Fluobeamを使用してCLR1502を蓄積することも示した。これらの過形成リンパ節内に悪性細胞は観察されなかった。
【0149】
腫瘍の厚さは、腸癌において認められるシグナル強度の増加の原因にはならない(図22Aおよび図22B)。部検は、マウスあたり50μgのCLR1502を注射した96時間後のマウスで実施した。組織の厚さの効果を調べるために、正常に見える結腸の切片をお互いに重ね合わせた。放射効率を測定して、正常な結腸および腸腫瘍の1、2、および3層間のシグナル強度を比較した。正常の結腸の一層はおおよそ1mmの厚さであることが認められた。組織の厚さは、腺腫でみられる強度の増加の原因となり得るが、腺癌でみられる違いの原因とはならない。
【0150】
大腸癌モデルにおけるCLR1502取り込みのinvivo光学スキャニングは、正常組織と比較して悪性の優先的な保持を実証した。大腸癌(HCT-116)異種移植片を有する胸腺欠損ヌードマウスに1mgのCLR1502を静脈内注射し、Li-COR Pearl(登録商標)インパルスシステムを使用して画像化した(図23)。蛍光強度(カラーバーで示される)および生体内分布は、経時的にin vivoで測定した。
【0151】
乳癌モデルマウスにおけるCLR1502の取り込みのin vivo光学スキャニングは、正常組織と比較して悪性の優先的な保持を実証した。同所性乳癌異種移植片(MDA-MB-231)を有する胸腺欠損ヌードマウスにおおよそ80μgのCLR1502を静脈内注射し、Fluoptics Fluobeam(登録商標)およびIVIS(登録商標)Spectrumシステムを使用して、in vivoで7日間(168時間)毎日画像化した(図24)。研究結果は、腫瘍内での選択的な取り込みと長期の保持(それぞれFluobeamおよびIVIS Spectrumの黄色および緑色の矢印)、および時間の経過に伴う正常組織からのクリアランスの相対的な増加を示した。
【0152】
各脇腹に肺癌異種移植片(H226肺)を有する胸腺欠損ヌードマウスにおおよそ50μgのCLR1502を静脈内注射し、IVIS Spectrumを使用して落射蛍光モードで画像化した(図25)。黒矢印で示されるように、96時間では、悪性および正常組織の放射効率の違いにより、腫瘍の縁の光に十分なコントラストが創られることに留意されたい。
【0153】
実施例3.コンブレタスタチンA-4アナログを伴うCLR2000045は乳癌治療を改善する
CLR2000045は、正常組織への取り込みは最小限で、腫瘍細胞への有意な取り込みを示した。薬剤の放出は、各時点でおおよそ50%の放出を示した。24時間から48時間の間に、薬剤の取り込みおよび放出との間の定常状態を達成した(図6)。CLR2000045は、2つの乳癌細胞株(MCF-7およびHs578T)に対して優れた活性および効力を示し、IC50はそれぞれ76nMおよび51nMであった(図7)。その分子はまた、肺癌、メラノーマおよび大腸癌を含む、いくつかの他の固形腫瘍に対しても活性を実証した。半数最大阻害濃度(IC50)は、その細胞株において測定した(表2)。CLR2000045の血漿安定性もまた測定した(表3)。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
白色レグホン鶏の受精卵(20個/投与群)を9日間37.5℃でインキュベートした。MCF-7細胞を移植前に標準的な条件下で培養した。10日目に3×106個のMCF-7の接種物を絨毛膜に添加した。その後、卵を無作為に処理群に分けて、次の条件で4回(11、13、15および17日目)処理した;ビヒクル、用量あたり50μMのパクリタキセル、および用量あたり72μMのCLR2000045。CLR2000045は、本スクリーニングモデルにおいてパクリタキセルと同様の活性を示した(図8)。
【0157】
本研究は、群の平均腫瘍体積が~200mm3(4日目)に達したときに開始した。CLR2000045を、次に示す用量でIV投与した:5日目および12日目または5、8、12日目および15日目、または5、7、9、12、14、および16日目のいずれかで1mg/kg。CLR2000045は、用量群1から用量群3への腫瘍体積の用量反応減少を実証し(週に3回、2週間)、試験した最高用量は腫瘍のほぼ100%の根絶を示した。2つの最高用量群は、ビヒクルコントトールと比較して、統計的に有意な腫瘍体積の減少を示した(それぞれ、p≦0.05およびp≦0.01)(図9)。カプラン-マイヤー曲線は、CLR2000045を1mg/kgで週3回、2週間の治療が、ビヒクルおよび週1回の投与と比較して生存率の有意な増加をもたらしたことを示す(それぞれp≦0.001、p≦0.05)。1mg/kgを週に2回、2週間、ビヒクルと比較して有意な増加をもたらした(p≦0.05;図10)。治療後の体重の変化を(HCC70)マウス異種移植モデルで測定した(図11Aおよび図11B)。
【0158】
CLR2000045は、正常細胞への取り込みは最小限である一方で、腫瘍細胞株における有意なペイロードの取り込みおよび放出(晒した薬物の20~40%)を実証した。CLR200045は、複数の乳癌細胞株に対して強力なin vitro活性を示す。CLR2000045は、トリプルネガティブ乳癌モデル(HCC70)および転移性腺癌乳癌モデル(MCF-7)に対して強力なin vivo活性を実証した。CLR200045は、TNBC(HCC70)モデルにおいて有意な延命効果を提供し、体重減少によって測定されるように二つの最高用量でも十分に忍容することを示した。これらのデータをまとめると、様々な乳癌細胞株および動物モデルに対するCLR200045の強力なin vitroおよびin vivo活性を実証し、この継続的なPDCの開発を保証する。
【0159】
実施例4.CLR180099は大腸腫瘍に対する抗腫瘍薬の安全性および有効性を改善する
CLR180099は、乳癌および肺癌に対して優れた活性および効力を示し、IC50はそれぞれ0.024および0.011であった(図12)。化合物はまた、メラノーマおよび大腸癌を含む、いくつかの他の固形腫瘍に対しても活性を実証した。CLR1800095、CLR180099A、およびCLR180099Bの血漿安定性を、マウスおよびヒトにおいて測定した(表4)。CLR1800095は、マウス血漿においていくつかの不安定性を示し、いくつかの毒性を引き起こすことがある。
【0160】
【表4】
【0161】
研究は、群の平均腫瘍体積が~120mm3(1日目)に到達したときに開始した。CLR180099は、1および4日目または1、3、および5日目のいずれかで2mg/kgでIV投与した。ドセタキセルは、1および4日目において10mg/kgで投与した。CLR180099は、ドセタキセルと同等またはそれ以上の腫瘍体積の減少を実証し、そして用量依存的な効果を実証した。ドセタキセル群では、18日目開始から26日目の終わりまでに、複数の死亡をもたらした(図16)。カプラン-マイヤー曲線は、CLR180099を2mg/kgで1および4日目または1、3および5日目に治療することが、ドセタキセルと比較して生存の有意な増加をもたらすことを示した(図17、ログランク検定、p≦0.001)。体重減少を測定したところ、CLR180099(両方の容量)で治療したすべてのマウスは、試験を通して正常な体重増加を実証した(図18)。各群5匹のマウスは、各用量レベルにおいて投与した。両方のPDCsは、全てのマウスが生存している状態で10mg/kgの用量で忍容し、末梢器官毒性を示さなかった(表5)。ペイロード単独では、0.5mg/kgを超える用量で忍容されなかった(すべてのマウスが0.5mg/kgで死亡した)。
【0162】
【表5】
【0163】
CLR180099は、正常細胞では最小限の取り込みである一方で、腫瘍細胞株においては有意なペイロードの取り込みおよび放出(晒した薬物の20~40%)を実証した。CLR180099は、肺癌(A549)、乳癌(MCF7)、およびメラノーマ(A375)、ならびに他の腫瘍種を含む様々な固形腫瘍に対して強力なin vitro活性を示した。CLR180099の2または3回のin vivoでの投与は、大腸癌においてドセタキセルと同等またはそれ以上の活性を示した。さらに、CLR180099は、ドセタキセルと比較して、両方の用量において延命効果を有意に改善した。忍容性評価は、CLR180099が担癌および正常動物の両方において十分な忍容性を示し、FLVペイロードは、正常および担癌マウスの両方で毒性があることを実証した。CLR180099は、FLCアナログペイロード単独と比較して毒性作用が無いことを示し、当該ペイロードはリン脂質エーテル(PLE)による標的デリバリーに有効であり得ることを示した。
【0164】
実施例5.化合物の合成
化学合成工程は以下のように実施した。HPLCなどの既知の技術を使用して生成物を単離し、そして得られた構造をNMRおよびMSにより検証した。
【0165】
CLR2208は、下記スキーム1
【化24】
により合成した。
【0166】
CLR2206はスキーム2により合成した。ヒポホスフェートクロリド1A(2.5当量)をEt3N(10当量)およびTHF中で-40℃で3時間使用し、化合物1から化合物2を調製した。化合物2をEt3N(1当量)、CDI(1.5当量)、ZnCl2(2.6当量)、およびDMF中で15℃で12時間、2A(1当量)と反応させて、化合物3を得た。ピペリジン(5当量DMF、15℃、3時間)中で化合物3を脱プロトン化し、化合物4を提供した。化合物4を、Et3N(4当量)、COMU(1.15当量)、およびCHCl3中で、4A(1当量)と15℃で2時間反応させ、CLR2206を得た。
【化25】
【0167】
CLR2200は、スキーム3により合成した。化合物5は、ピリジン(Py、20当量)、HOBt(0.5当量)、およびDMF中で室温で12時間、MMAE(0.8当量)と反応させ、化合物6を得た。化合物6を室温で12時間)、ピペリジン(10当量)およびDMF:AcN(1:1)中で脱プロトン化し、化合物7を提供した。化合物7を、7A(1当量)、TEA(4.5当量)、COMU(1.2当量)、およびCHCl3で、室温で12時間反応させ、CLR2200を得た。
【化26】
【0168】
CLR200045は、スキーム4によって、またはその代わりにスキーム5によって調製した。
【化27】
【化28】
【0169】
CLR2013は、スキーム6によって調製した。
【化29】
【0170】
CLR1800095は、スキーム7によって調製した。
【化30】
【0171】
CLR180099Bは、スキーム8によって調製した(LCMS 純度97%)。
【化31】
【0172】
CLR180099Aは、スキーム9によって調製した。
【化32】
【0173】
完全を期すために、本発明の様々な態様は、以下の番号が付けられた項目に示される。
【0174】
項目1.下記化学式(I)の化合物、
【化33】
またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、
nは2~20であり;
1は結合または下記化学式
【化34】
であり、ここでmは0~100であり;
Lは下記化学式
【化35】
であり、ここでRxはHまたはハロゲンであり;
2は結合または自壊性(self-immolative)スペーサーであり;および
Zは抗癌剤である。
【0175】
項目2.項目1の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、ここで、
1は結合または下記化学式
【化36】
であり、L-Q2
【化37】
である。
【0176】
項目3.項目1~2のいずれか一つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、ここでZはポロ様キナーゼ1(PLK-1)阻害剤、チューブリンポリメラーゼ阻害剤、チューブリン安定化剤、抗腫瘍薬、真核生物翻訳開始因子4(EIF4)阻害剤、コンブレタスタチンA-4アナログ、またはフラバグリンアナログである。
【0177】
項目4.化学式(I-a)の構造を有する項目1~3のいずれか一つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、ここで
1は下記化学式
【化38】
であり、
L-Q2は下記化学式
【化39】
であり;
および
ZはPLK-1阻害剤、チューブリンポリメラーゼ阻害剤、チューブリン安定化剤、抗腫瘍薬、または真核生物翻訳開始因子4(EIF4)阻害剤である。
【0178】
項目5.項目4に記載の化合物であり、ここでZはPLK-1阻害剤またはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、およびモノメチルアウリスタチンE(MMAD)からなる群から選択される抗腫瘍薬である。
【0179】
項目6.化学式(I-b)の構造を有する項目1~3のいずれか一つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、ここで
nは18であり;
1は下記化学式
【化40】
であり、
L-Q2は下記化学式
【化41】
であり;および
ZはコンブレタスタチンA-4アナログである。
【0180】
項目7.化学式(I-c)の構造を有する項目1~3のいずれか一つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩であり、ここで
nは18であり;
1は結合または下記化学式
【化42】
であり;
L-Q2は下記化学式
【化43】
であり;および
Zはフラバグリンアナログである。
【0181】
項目8.下記化学式
【化44-1】
【化44-2】
【化44-3】
からなる群から選択される、項目1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0182】
項目9.項目1~8のいずれか一つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【0183】
項目10.項目1~8のいずれか一つに記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を有効量で投与することを含む、それを必要とする対象における癌治療方法。
【0184】
項目11.項目10に記載の方法であり、ここでその癌はメラノーマ、肺癌、大腸癌、乳癌、またはその組み合わせである。
【0185】
項目12.項目10~11のいずれか一つに記載の方法であり、ここで
上記肺癌は、小細胞肺癌、非小細胞性肺癌、またはその組み合わせを含み;
上記メラノーマは、表在拡大型(superficial spreading)メラノーマ、結節型(nodular)メラノーマ、悪性黒子型(lentigo)メラノーマ、末端黒子型(acral lentiginous)メラノーマ、無色素性(amelanotic)メラノーマ、母斑様(nevoid)メラノーマ、スピッツ(spitzoid)メラノーマ、線維形成性(desmoplastic)メラノーマ、またはその組み合わせを含み、
上記大腸癌は腺癌を含み;または
上記乳癌は浸潤性乳管癌、転移性乳癌、炎症性乳癌、トリプルネガティブ乳癌、非浸潤性乳管癌、またはその組み合わせを含む。
【0186】
項目13.項目10~12のいずれか一つに記載の方法であり、ここでその癌が癌幹細胞を含む。
【0187】
項目14.項目10~13のいずれか一つに記載の方法であり、ここでその癌が転移性癌細胞を含む。
【0188】
項目15.項目10~14のいずれか一つに記載の方法であり、ここでその癌が循環腫瘍細胞を含む。
【0189】
項目16.項目10~15のいずれか一つに記載の方法であり、ここでその癌がメラノーマ、肺癌、大腸癌、またはその組み合わせであり、およびここでその化合物が化学式(I-a)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0190】
項目17.項目10~15のいずれか一つに記載の方法であり、ここでその癌が乳癌であり、ここで対象(1)がエストロゲン受容体陽性であり、(2)がエストロゲン受容体陰性かつプロゲステロン受容体陰性の両方であり、(3)がHER2を発現し(HER2+)、(4)がHER2を発現していない(HER2-)、またはその組み合わせである。
【0191】
項目18.項目10~15のいずれか一つに記載の方法であり、ここでその癌が乳癌であり、およびここでその化合物が化学式(I-b)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0192】
項目19.項目10~15および17のいずれか一つに記載の方法であり、ここでその癌が、癌がメラノーマ、肺癌、大腸癌、乳癌、またはその組み合わせであり、およびここでその化合物が(I-c)の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0193】
特定の態様に関する上述の説明は、本発明の一般的な性質を十分に明らかにすることから、他の人は、当業者内の知識を適用することによって、過度の実験をすることなく、本開示の一般的な概念から逸脱することなく、かかる特定の態様を容易に修正および/または様々な用途に適合させることができることになる。したがって、そのような適合および修正は、本明細書に提示された態様、および指導に基づいて、開示された態様の意味および等価物の範囲内にあることが意図される。本明細書の用語または語法は、教示およびガイダンスに照らして当業者によって解釈されるように、説明が目的であり、限定するためのものではないことを理解されたい。
【0194】
本開示の幅および範囲は、上記に記載された例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0195】
本出願で引用されたすべての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願、および/または他の文書が個別に参照により組み込まれると示された場合と同じ程度に、すべての目的のために参照によりその全体が組み込まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図20F
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
図20A図20~20は、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20図20、および図20は、磁気共鳴イメージング(MRI;図20、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20)と共にCLR1501(図20)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20図20、および図20は、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20は青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20は、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20は、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20B図20~20は、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20図20、および図20は、磁気共鳴イメージング(MRI;図20、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20)と共にCLR1501(図20)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20図20、および図20は、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20は青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20は、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20は、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20C図20~20は、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20図20、および図20は、磁気共鳴イメージング(MRI;図20、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20)と共にCLR1501(図20)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20図20、および図20は、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20は青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20は、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20は、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20D図20~20は、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20図20、および図20は、磁気共鳴イメージング(MRI;図20、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20)と共にCLR1501(図20)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20図20、および図20は、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20は青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20は、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20は、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20E図20~20は、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20図20、および図20は、磁気共鳴イメージング(MRI;図20、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20)と共にCLR1501(図20)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20図20、および図20は、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20は青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20は、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20は、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
図20F図20~20は、脳におけるCLR1501の取り込みを示す。図20図20、および図20は、磁気共鳴イメージング(MRI;図20、T2強調画像)によって検証され、ToPro3核対比染色(図20)と共にCLR1501(図20)で標識されたU251由来の同所性脳腫瘍を示す。図20図20、および図20は、CLR1501(緑色)で標識された22T多形性膠芽腫由来の同所性異種移植における脳腫瘍の境界の組織学的解析である。図20は青色DAPI核対比染色による異種移植の脳境界の落射蛍光の可視化である。図20は、CLR1501で標識された異種移植片の共焦点画像である。図20は、異種移植および隣接する正常な脳の共焦点および明視野画像である。Nは正常な脳を示し;RFUは相対蛍光単位を示し;Tは腫瘍を示す。
【国際調査報告】