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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】酸素化オプションを備えた臓器容器
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A01N1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516239
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 US2020049958
(87)【国際公開番号】W WO2021050557
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/900,131
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511143737
【氏名又は名称】ライフライン サイエンティフィック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Lifeline Scientific, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ドゥ ミュルダー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド クラヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ピー スタインマン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ペティナート
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール テュニス
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AF01
4H011CA01
4H011CB05
4H011CC01
(57)【要約】
臓器又は組織を保存し、臓器又は組織の灌流及び/若しくは運搬のための装置に挿入可能な臓器容器は、臓器又は組織を保持するように構成されたボウルと灌流液浴とを含む。臓器容器はチューブも含み、このチューブは、(i)酸素源に接続可能であり、(ii)酸素がチューブから出ることができる複数の穴を含み、(iii)灌流若しくは運搬中に灌流液浴内に浸漬するようにボウル内に配置されている。ボウル内に1つ又は複数のホルダーを設け、チューブを灌流液浴の表面下に固定することができる。施術者が気泡と表面酸素化を切り替えることができるように、ボウル内に接続部を設け、酸素源に接続された酸素ラインからチューブを切り離すことができる。第1及び第2の外蓋を設け、それぞれボウル及び装置の他の構成要素を覆うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器又は組織を保存し、該臓器又は組織の灌流及び運搬の少なくとも一方のための装置に挿入されるように構成された臓器容器であって、
該臓器又は組織及び灌流液浴を保持するように構成されたボウルと、
(i)酸素源に接続可能であるチューブであって、(ii)該酸素が該チューブから出ることができる複数の穴を含み、(iii)該臓器又は組織の灌流若しくは運搬中に存在する該灌流液浴内に浸漬するように該ボウル内に配置されているチューブと、を含む、臓器容器。
【請求項2】
前記灌流液浴の表面下に前記チューブを固定するための少なくとも1つのホルダーを前記ボウル内にさらに含む、請求項1記載の臓器容器。
【請求項3】
請求項2に記載の臓器容器であって、
前記少なくとも1つのホルダーが、複数のホルダーであり、
該複数のホルダーの各々が、
(i)前記ボウルの上縁から前記ボウルの底部に向かって延在し、
(ii)前記ボウルの内壁に沿って下降し、
(iii)前記チューブが通過する穴を含む、臓器容器。
【請求項4】
前記少なくとも1つのホルダーが、使用中の前記臓器又は組織を取り囲むループにおいて前記チューブを固定する、請求項2に記載の臓器容器。
【請求項5】
前記ボウル内に接続部をさらに含む、請求項2に記載の臓器容器であって、
該接続部が、前記ボウルの外側に延在する酸素ラインと前記チューブを接続し、及び切断するように構成されている、臓器容器。
【請求項6】
前記接続部が、別のチューブとT継手によって前記チューブに接続されている、請求項5に記載の臓器容器。
【請求項7】
前記接続部がルアーロック継手である、請求項5に記載の臓器容器。
【請求項8】
前記穴が、前記チューブの長さに沿って間隔を空けて配置された複数のグループにおいて配列されている、請求項1に記載の臓器容器。
【請求項9】
前記グループの各々が、前記チューブの周縁周りに間隔を空けて配置された複数の前記穴を含む、請求項8に記載の臓器容器。
【請求項10】
請求項9に記載の臓器容器であって、
前記複数のグループの各対が、前記チューブの約34.79mmだけ間隔を空けて配置され、
前記複数の穴の各々の平均直径が、0.10mm~0.18mmである、臓器容器。
【請求項11】
臓器又は組織の灌流及び運搬の少なくとも一方のための装置であって、
請求項1に記載の臓器容器と、
酸素源から前記チューブに酸素を送るように構成された酸素ラインであって、
該酸素ラインの第一端部が、前記臓器容器のボウル内にあり、該酸素ラインの第二端部が、該ボウルの外側にある酸素ラインと、を含む、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
閉じたときにボウルを覆うように構成された第一外蓋と、
第一外蓋に隣接し、閉じたときに装置の他の構成要素を覆うように構成された第二外蓋と、をさらに含み、
第一外蓋が閉じているときでも、前記酸素ラインの第二端部が露出している、装置。
【請求項13】
前記酸素ラインの第二端部に抗菌フィルタをさらに含む、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
臓器又は組織を介して灌流される灌流液を酸素化する方法であって、
前記臓器容器のボウル内に、前記ボウルの内側にある前記チューブが浸漬される灌流液浴を形成するように、該灌流液を請求項1に記載の臓器容器内に導入する工程と、
前記チューブを酸素源に接続する工程と、
該酸素源から前記チューブの穴を通って該灌流液浴内に酸素を供給して、該浴を構成する該灌流液の酸素濃度を上昇させる工程と、を含む、方法。
【請求項15】
前記酸素源から酸素を毎分約10リットルの流量で少なくとも10分間供給する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
前記酸素源からの酸素が前記灌流液浴の表面より上の前記ボウル内の空間に供給されるように、前記ボウル内の接続部によって前記酸素源から前記チューブを切り離す工程と、
該供給された酸素の流量を減少させる工程と、
前記臓器容器の前記ボウル内に臓器又は組織を導入する工程と、
該酸素が前記ボウル内及び前記灌流液浴の表面より上の空間に供給されている間に該臓器又は組織を前記灌流液で灌流する工程と、をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【継続性情報】
【0001】
本非仮特許出願は、2019年9月13日に出願された米国仮特許出願第62,900,131号の優先権を主張するものである。当該仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
関連する技術分野には、臓器又は組織の生存能力を維持及び/若しくは回復させ、診断、治療、保存及び/若しくは運搬のために臓器又は組織を保存することが可能な臓器又は組織灌流装置が含まれる。便宜上、本明細書で使用される「臓器」という用語は、特に指定しない限り、臓器及び/又は組織を意味すると理解されるべきである。
【0003】
臓器灌流装置の目的は、研究、診断、治療又は移植に使用される前に臓器が生存し続けるように、好気性代謝をサポートすることである。多くの場合、臓器は保存され、及び/又は施設間で運搬される必要がある。灌流中の臓器を維持及び回復させる目的は、虚血及び再灌流障害を軽減することである。正常又はほぼ正常な機能状態での保存期間の増加も、特定の利点をもたらす。例えば、臓器をより遠くまで運搬することができ、臓器の検査、治療及び評価のための時間が増加する。
【0004】
臓器灌流装置としては、種々のものが知られている。米国特許第9,357,767号、第9,357,766号及び第9,723,830号は、例えば、灌流中に臓器を保存することができる使い捨て灌流回路を採用した灌流装置を開示している。この回路は、臓器を置くことができる臓器クレードル及び臓器の周りに形成され得る灌流液浴のための容器として機能し得るボウルを含む。灌流中は、内蓋と外蓋を使用してボウルを閉じることができ、ボウルは冷却容器内に収まることができるため、灌流液浴と臓器の両方を低体温にすることができる。これらの先行特許の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
運搬及び灌流中に低体温を用いることで、臓器の酸素要求量と代謝活性を低下させ、臓器の保存性を大きく向上させるが、それらを完全に排除することはできない。それに伴う酸素の不足は、臓器の細胞を嫌気性活動に追いやり、乳酸の蓄積及びミトコンドリアの脱共役及びアデノシン三リン酸(「ATP」)の貯蔵量の枯渇を引き起こし、それによってラジカル酸素種、炎症性サイトカイン及び乳酸などの毒性分子の放出につながる可能性がある。これらの毒性分子及び嫌気性ミトコンドリア活性は、活性酸素分子の産生を増加させ、その結果、有害な虚血及び再灌流障害を引き起こす可能性がある。
【0006】
酸素不足が細胞を嫌気性活動に追いやり、虚血及び再灌流障害を悪化させることを考えると、例えば、灌流液に追加の酸素を導入することによって低体温灌流臓器に酸素を増やすことに関連した利点に大きな関心が寄せられてきた。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/545,514号は、例えば、好ましくはリアルタイムで酸素を生成し、灌流液を酸素化する酸素発生器又は濃縮器を開示している。
【0007】
しかし、先行する酸素化デバイス及び方法には、少なくとも2つの困難がある。第一は、灌流液に適切に酸素を送り込むのに必要な時間である。臓器移植中の時間は限られているため、酸素化デバイスは、灌流液を迅速に酸素化できなければならない。さらに、病院及び診療所は、灌流中に使用する相当量の使い捨て品を取得又は購入している可能性があり、これらの高価になりがちな使い捨て品を廃棄して灌流液を酸素化することをためらう可能性がある。したがって、既存の設備及び使い捨て品と連動して灌流液を酸素化する酸素化オプションを備えたデバイスも必要とされている。
【0008】
したがって、本明細書で開示するのは、臓器又は組織を通して灌流される灌流液を酸素化するためのものであり得る酸素化オプションを備えたデバイスである。このデバイスは、酸素供給源から酸素を受け取るように構成された注入口を含み得、また、注入口に接続されたチューブを含み得、そのチューブは、受け取った酸素がチューブから出ることができる複数の穴を含むものである。
【0009】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、酸素化デバイスは、注入口が延在する上部も含み得、その上部の下にチューブを固定するように上部の下に延在する複数のホルダーをさらに含み得る。
【0010】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、複数のホルダーの各々はまた、(i)上部に対して実質的に垂直に延在する垂直部分と、(ii)垂直部分に対して外向きの角度で延在する角度付き部分とを含み得る。チューブは、複数のホルダーの角度付き部分によって固定され得る。
【0011】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、複数のホルダーは、使用中の臓器又は組織を取り囲むのに十分な周縁を有するループにチューブを固定することができ、このループの大部分は、上部によって形成される仮想平面と実質的に平行であり得る。
【0012】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、酸素化デバイスは、臓器灌流回路に取り付けられるように構成され得、酸素化デバイスの上部は、そこから注入口が延在しており、灌流中に臓器又は組織を保持するように構成された臓器灌流回路のボウルの蓋を構成し得る。
【0013】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、チューブは、酸素化デバイスをボウルに載せたときに、チューブ及びその中の複数の穴がボウル内の灌流液の浴に浸漬し得るように、上部の下に固定され得る。
【0014】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、チューブは、酸素化デバイスをボウルに載せたときに、チューブがボウル内に配置可能な臓器クレードルの邪魔をしないように、複数のホルダーによって所定の位置に固定され得る。
【0015】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、酸素化デバイスは、上部に疎水性ベントをさらに含み得、このベントは、酸素化デバイスがボウル上に置かれ、チューブの複数の穴から灌流液に酸素が流れるときにボウル内の圧力上昇を制限するように構成されている。
【0016】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、穴は、チューブの長さに沿って間隔を空けて配置された複数のグループにおいて配列され得る。
【0017】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、グループの各々は、チューブの周縁周りに間隔を空けて配置された複数の穴を含み得る。
【0018】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、複数のグループの各対は、チューブの34.79mmだけ間隔を空けて配置され得、複数の穴の平均直径は、0.10mm~0.18mmであり得る。
【0019】
また、本明細書では、上記の特徴のいずれかに従い、酸素化オプションを備えたデバイスを使用する方法が開示されている。この方法は、チューブ及びその穴が、ボウル内の灌流液の浴内に浸漬するように、酸素化デバイスを臓器灌流回路のボウルに載せること;酸素化デバイスの注入口を酸素供給源に接続すること;及び酸素供給源から、注入口を通して、チューブの穴を通して、灌流液浴に酸素を供給し、浴を構成する灌流液の酸素濃度を増加させることを含み得る。
【0020】
この方法はまた、酸素源から酸素を毎分約10リットルの流量で少なくとも10分間供給する工程を含み得る。
【0021】
これはさらに、載せる工程の前に、ボウルの蓋を取り外すことを含み得る。したがって、載せる工程では、ボウルの蓋を酸素化デバイスに取り替える場合がある。
【0022】
本方法はさらに、酸素供給源からの酸素の供給を中断し、その後、臓器又は組織を臓器灌流回路のボウルに入れる工程を含み得る。
【0023】
あるいは、酸素は、臓器又は組織が臓器灌流回路で灌流されている間に供給され得る。
【0024】
しかし、酸素化オプションを備えた別個のデバイスには利点があるが、臨床医はむしろ、酸素化構造を臓器容器自体のボウル内に載置することを望む場合がある。これは、酸素供給中に臓器容器のボウルの上の外蓋を閉めることができる、特に肝臓灌流中に酸素を供給することができる、といった他の利点の中で、病院又は臨床医が手元に置かなければならない使い捨て品の数を減らすことができる。
【0025】
そこでさらに、臓器又は組織を保存し、臓器又は組織の灌流及び運搬の少なくとも一方のための装置に挿入されるように構成された臓器容器が開示されている。臓器容器は、臓器又は組織及び灌流液浴を保持するように構成されたボウルを含み得、また、臓器容器はチューブも含み得、このチューブは、(i)酸素源に接続可能であり、(ii)酸素がチューブから出ることができる複数の穴を含み、(iii)臓器又は組織の灌流若しくは運搬中に存在する灌流液浴内に浸漬するようにボウル内に配置されている。
【0026】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、臓器容器はまた、灌流液浴の表面下にチューブを固定するための少なくとも1つのホルダーをボウル内に含み得る。
【0027】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのホルダーは、複数のホルダーであり得、複数のホルダーの各々は、(i)ボウルの上縁からボウルの底部に向かって延在し、(ii)ボウルの内壁に沿って下降し、(iii)チューブが通過する穴を含み得る。
【0028】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、少なくとも1つのホルダーは、使用中の臓器又は組織を取り囲むループにおいてチューブを固定し得る。
【0029】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、臓器容器はまた、ボウル内に接続部を含み得、接続部は、ボウルの外側に延在する酸素ラインとチューブを接続し、及び切断するように構成され得る。
【0030】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、接続部は、別のチューブとT継手によってチューブに接続され得る。
【0031】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、接続部をルアーロック継手とすることもできる。
【0032】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、チューブの穴は、チューブの長さに沿って間隔を空けて配置された複数のグループにおいて配列され得る。
【0033】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、グループは、チューブの周縁周りに間隔を空けて配置された複数の穴を含み得る。
【0034】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、複数のグループの各対は、チューブの約34.79mmだけ間隔を空けて配置され得、複数の穴の各々の平均直径は、0.10mm~0.18mmであり得る。
【0035】
そして、上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、酸素化デバイスは、ボウルの各蓋に疎水性ベントをさらに含み得、使用中のベントは、ボウル内の圧力上昇を制限する。
【0036】
また、臓器又は組織の灌流及び運搬の少なくとも一方のための装置も開示され、この装置は、上述した臓器容器を含み得、酸素源からチューブに酸素を送るように構成された酸素ラインを含み得る。酸素ラインの第一端部は、臓器容器のボウル内にあり得、酸素ラインの第二端部は、ボウルの外側にあり得る。
【0037】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、装置は、閉じたときにボウルを覆うように構成された第一外蓋と、第一外蓋に隣接し、閉じたときに装置の他の構成要素を覆うように構成された第二外蓋とをさらに含み得る。第一外蓋が閉じているときでも、酸素ラインの第二端部は露出している場合がある。
【0038】
上記又は下記の特徴のいずれかの組み合わせにおいて、装置は、酸素ラインの第二端部に抗菌フィルタをさらに含み得る。
【0039】
そしてまた、本明細書には、臓器又は組織を介して灌流される灌流液を酸素化する方法が開示されている。この方法は、臓器容器のボウル内に、ボウルの内側にあるチューブが浸漬される灌流液浴を形成するように、灌流液を上記臓器容器内に導入する工程を含み得る。この方法はまた、チューブを酸素源に接続し、酸素源からチューブの穴を通って灌流液浴内に酸素を供給して、浴を構成する灌流液の酸素濃度を上昇させる工程を含み得る。
【0040】
本方法は、酸素源から酸素を毎分約10リットルの流量で少なくとも10分間供給する工程をさらに含み得る。
【0041】
そして、本方法はさらに、酸素が灌流液浴の表面より上のボウル内の空間に供給されるように、ボウル内の接続部によって酸素からチューブを切り離す工程と、供給された酸素の流量を減少させる工程と、臓器容器のボウル内に臓器又は組織を導入する工程と、酸素がボウル内及び灌流液浴の表面より上の空間に供給されている間に臓器又は組織を灌流液で灌流する工程と、を含み得る。
【0042】
本開示のこれら及び他の態様は、添付の図面及び以下の詳細な説明を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本開示の1つ又は複数の実施形態による臓器灌流装置の断面図である。
図2図1の臓器灌流装置の冷却容器、ボウル及びクレードルを組み合わせたものの断面図である。
図3】本開示の1つ又は複数の実施形態による酸素化オプションを備えたデバイスの上面透視図である。
図4図3の酸素化デバイスの底面透視図である。
図5図3の酸素化デバイスの上面図である。
図6図3の酸素化デバイスの底面図である。
図7図3の酸素化デバイスの側面図である。
図8図3の酸素化デバイスの他の側面図である。
図9図8に示すチューブの一部IXの拡大図である。
図10図9の線X-Xに沿ってとらえたチューブの断面図である。
図11図3の酸素化デバイスを使用するプロセスを示す図である。
図12】臓器灌流回路のボウルに載せた図3の酸素化デバイスの断面図である。
図13】本開示の1つ又は複数の実施形態による臓器容器のボウルの上面図である。
図14図13の臓器容器を受け入れるように構成された臓器灌流デバイスの上面図である。
図15図14の臓器灌流デバイスの他の上面図である。
図16図13の臓器容器を使用するプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1及び図2は、例示的な臓器用灌流装置10を示す。臓器は、好ましくは肝臓、腎臓、心臓、肺又は腸であり得るが、任意のヒトの若しくは動物の、天然の若しくは人工の、健康な、損傷した若しくは病気の臓器又は組織であり得る。装置10は、外蓋20と、22と、臓器を載せることができるボウル30(図2を参照)を含む臓器容器とを含み得る。ボウル30は、取り外し可能なクレードル60を保持し得、このクレードルは、好ましくは、臓器が装置10内にあるときに臓器を置くことができる表面60aを含み得る。ボウル30及び/又はクレードル60は、好ましくは、VASOSOL(登録商標)などの灌流液の灌流液浴を臓器の周囲に収容できるように構成され得る。
【0045】
好ましくは、ボウル30を、氷、氷水、ブラインなどの冷却材料を収容することができる断熱性冷却容器50内に置くことができる。冷却容器50は、装置10に恒久的に又は取り外し可能に取り付けられるものであり得、又は装置10の一体を成すモノリシック部分であり得る。したがって、使用時には、図2に示すように、臓器をクレードル60内に置くことができ、クレードル60をボウル30内に置くことができ、ボウル30を冷却材容器50内に置くことができる。冷却容器50、ボウル30及びクレードル60の配置は、好ましくは、冷却容器50の内容物が臓器又はクレードル60に接触することなく臓器を冷却を提供する構成を提供する。冷却容器50は、本明細書では、氷又は氷水を含むものとして説明されているが、任意の適切な冷却媒体を使用することができる。
【0046】
さらに図2に示すように、ボウル30の上面には、内蓋66及び外蓋67が設けられ得る。内蓋66を、クレードル60の周囲上面に近接するような大きさにして、運搬中の機械的衝突及び衝撃の際に臓器の安定性を維持するのに役立てることができる。より具体的には、内蓋66は、クレードル60の周囲突起部60bの周縁形状に一致し、周囲突起部60bに接触してクレードル60を所定の位置に保持するのを助けるように構成された下向きに突出した延在部66aを有し得る。蓋66及び67は、ボウル30と実質的に液密封止を形成し得、汚染を防止することができる。蓋66及び67はまた、蓋66又は67のいずれかによる封止が失敗した場合に、冗長性のある気密封止を提供し得る。内蓋66及び外蓋67の両方は、好ましくは、圧力平衡を維持するために気体の移動を可能にするエアベント、例えば、多孔質疎水性膜を含み得る。
【0047】
好ましくは、灌流液及び/又は臓器と接触する装置10のすべての構成要素は、使い捨て及び/又は容易に交換可能である。これらの構成要素は、ボウル30、臓器クレードル60並びに蓋66及び67を含み得、これらは、使い捨て臓器灌流回路の一部を構成し得る。使用時、この使い捨て臓器灌流回路を、装置10の非使い捨て部分内に載せることができ、臓器を、ボウル30内の臓器クレードル60上に載せることができる。冷却容器50が存在するため、ボウル30内の臓器及び灌流液浴の両方が低体温にさらされる。その後、灌流液は、使い捨て灌流回路及び臓器を通って循環し得る。
【0048】
図3及び4は、本開示の1つ又は複数の態様による酸素化オプションを備えたデバイス100を示している。デバイス100は、灌流装置10と連動して、ボウル30内の灌流液浴の酸素濃度を増加させるように設計され得る。このデバイス100は、一般に、本体110及び酸素化コンポーネント150によって構成され得る。そして、本体110は、図5に示すように、半径方向内側及び外側部分122及び124を含む上部120を含み得る。本体110はまた、図6に示すように、上部120から下向きに突出した底部130を含み得る。本体110は、例えば、透明なポリカーボネートプラスチック樹脂から形成され得る。
【0049】
上部120の大きさを、内蓋66と同様に、ボウル30に一致させることができる。より具体的には、上部120の半径方向外側部分124の下縁126(図4を参照)を、ボウル30の上面の凹み36(図2を参照)によって受け入れられるような大きさにし、それによって酸素化デバイス100が内蓋66の代わりにそのボウルの蓋を構成することができるようにしてもよい。ボウル30のラッチ(図示せず)を使用して、酸素化デバイス100をボウル30に対して所定の位置に固定することができる。図7及び8に示すように、上部120は、実質的に平面であり得る。すなわち、半径方向内側及び外側部分122及び124の少なくとも一方の表面はわずかに傾斜し得るが、上部120の全体的な形状は、図7及び8のページに突出する仮想的な平面を形成する。例えば、外側部分124は平坦であり得るが、内側部分122は外側に凸状であり得る。また、上部120内に、ベント128を設けることができる(図5及び6を参照)。蓋66及び67のエアベントと同様に、ベント128は多孔質疎水性膜を含み得、これは圧力平衡を維持するためのガス移動を可能にする。より具体的には、ベント128の膜は、疎水性及び疎油性にするように処理されたアクリル共重合体であり得、膜は、不織布ナイロン基材に取り付けられ、結合され得る。膜自体の平均空隙率は0.45ミクロンであり、油、水、有機溶媒をはじき、それらに耐性を示し、ほとんどの低表面張力の液体に対して非ぬれ性を示し得る。これは、例えば、親水性膜がそのような液体と混合し、それらにぬれ性を示す傾向があるのとは対照的である。ベント128の周囲には、ベント128を上部120の残りの部分に固定するための接着剤が施され、それによって確実にベント128が上部120に密封して取り付けられたままであることができる。
【0050】
底部130は、上部120の半径方向内側及び外側部分122と124との間の空間に形成され得、その断面が実質的に三角形の形状を有し得る。より具体的には、底部130の半径方向外側壁132(図4を参照)は、上部120の仮想平面に対して実質的に垂直に下向きに延在し得、底部130の半径方向内側壁134は、外側壁132に対して傾斜した角度で上部120から下向きに延在し得る。壁132及び134は、頂点136で合流し、それによって確実に本体110とボウル30は実質的に液密封止を形成することができ、それによって汚染を防止することができる。最後に、底部130(及び特に頂点136)は、内蓋66の下向きに突出した延在部66aと同様に、クレードル60の周囲突起部60bの周縁形状とも一致し得、したがって、同様に、その周囲突起部と接触してクレードル60及びその上の臓器を所定の位置に保持するのを助けるよう構成され得る。
【0051】
そして、酸素化コンポーネント150は、図7に示すように、酸素注入口160、T継手162、ホルダー170及びチューブ180を含み得る。酸素注入口160は、上部120の半径方向内側及び外側部分122及び124を接続する架橋部分129(図5を参照)から突出する酸素バーブであり得る。酸素注入口160は、上部120の仮想平面に対して実質的に垂直に角度付けされ、使い易さが向上し、及び酸素を注入口に供給するチューブのねじれのリスクが低減し得る。そして、T継手162は、酸素注入口160に流体接続され得、架橋部分129の下で、底部130に形成された隙間138に形成され得る。
【0052】
チューブ180は、T継手162に流体接続され得、複数のホルダー170によって所定の位置に固定され得る。図8に示すように、これらのホルダー170の各々は、本体110の底部130に固定され、上部120から上部120の仮想垂直面に対して実質的に垂直な方向に突出した上垂直部分172を含み得る。ホルダー170は、チューブ180を底部130の下に固定することができ、ホルダー170の各々は、垂直部分172に対して外向きに角度を付けられた角度付き部分174も含み得る。角度付き部分174は、他の角度も可能であるが、垂直部分172に対して、例えば、2.5度だけ角度が付いていてもよい。各ホルダー170の角度付き部分174は、チューブ180を通すことができる穴を含み得る。後述するように、垂直部分172に対する角度付き部分174の角度付けは、ホルダー170もチューブ180も、使用中に臓器クレードル60、その上の臓器若しくは血管系又はボウル30内に置かれ得るカニューレの邪魔をしないことを確実にするのに役立ち得る。穴が位置する角度付き部分174の丸みを帯びた端部も、使用中にボウル30との衝突又は妨害がないことを確実にし得る。
【0053】
チューブ180は、芳香族ポリエーテル系ポリウレタンで形成され得、酸素化デバイス100がボウル30の蓋として機能する場合、底部130を取り囲み、したがって灌流臓器を取り囲むのに十分な長さであり得る。好ましくは、チューブ180の全長は、他の長さも可能であるが、1,054.10mmに等しい、又は約1,054.10mmであってもよい。図9は、図8に示すチューブ180の部分IXの拡大図であり、この図に示すように、チューブ180は、チューブ180の長さに沿って距離186だけ間隔を空けて配置され得る穴184の複数のグループ182を含み得る。好ましくは、距離186は、他の距離も可能であるが、34.79mmに等しい、又は約34.79mmであってもよい。24個のグループ182がチューブ180に形成され得、グループ182の1つにおけるチューブ180の断面を示す図10に示すように、各グループは、チューブ180の周縁周りに等間隔に配置された5個の穴184を含み得る。従って、チューブ180は、合計120個の穴184を含み得る。穴184の各々は、レーザーアブレーションによってチューブ180に形成され得る。そして、各穴184は、0.10mm~0.18mmの直径を有し得、これは、レーザーアブレーションプロセスの能力の範囲内であり、再現可能であることが十分に示されている。チューブ180の代わりに中空糸フィルタを使用して、灌流液に酸素を供給することができる。中空糸フィルタは、酸素化プロセス中の灌流液の泡立ちを防ぐことができる。しかし、灌流液が全血でない場合、この潜在的な差は、チューブ180と比較して中空糸フィルタのコストの大幅な増加を正当化するには不十分である可能性がある。
【0054】
穴184の上述の配置、特にその数及び直径は、十分に短い時間で「泡立て」、したがって適切なコストを維持しながら灌流液浴の灌流液を酸素で飽和させる。好ましくは、例えば毎分10リットルの酸素流量において、穴184は、浴の灌流液が10~15分の時間枠内で飽和することを確実にし、これは、同時に行われる外科処置がかなり長くかかる場合があるため、ほとんどの診療所で許容されるものである。穴184の他の数及びそれらの穴の他の大きさも可能であるが、様々な考慮事項を検討する必要がある。例えば、同じ直径の穴184を多くすると、灌流液を完全に飽和させるのに必要な時間を短縮することができる。しかし、チューブ180のコストは穴184の数に正比例するため、その数を増やすとチューブのコストが増える可能性がある。一方、穴184の数が実質的に少ないと、浴の灌流液を飽和させるために必要な時間が増加してしまう可能性がある。
【0055】
穴184の他の配置も可能である。それらは、例えば、チューブ180の長さに沿って直線的に配置され得る。しかし、グループ182の上述の配置は、5つの穴184がチューブ180の周縁周りに間隔を置いて配置され、穴184の少なくともほとんどが使用中の灌流液の表面下に配置されることを確実にするのに役立つ。チューブ182の長さにわたって距離186だけグループ182を等間隔に配置することも、灌流液の大部分が酸素ガスに均等にさらされることを確実にし、それによって、ある領域の濃度が不十分になることを防ぐのに役立ち得る。
【0056】
図11は、酸素化オプションを備えたデバイス100を、灌流装置、例えば灌流装置10と共に使用して、灌流液浴を構成する灌流液中の溶存酸素量を増加させることができる方法を示している。第一工程210において、酸素化デバイス100を、ボウル30上に置くことができる。この配置は、図12の断面図で示されている。この図に示すように、酸素化デバイス100の下縁126の大きさを、ボウル30の上面の凹み36に一致させることができる。ホルダー170はまた、チューブ180及びその穴184を、灌流液浴内に浸漬するのに十分低い位置でボウル30内に固定することができ、その可能な基準位置は、図12の190で示されている。そしてまた、ホルダー170の角度付き部分174によって、チューブ180は、臓器クレードル60、その上の臓器若しくは血管系又は図12に示す組み立てられた位置のカニューレの邪魔をしないように、外側に配置され得る。酸素化デバイス100は、前述のラッチによってボウル30に固定され得る。
【0057】
次の工程220では、酸素化デバイス100は、外部酸素源に接続され得る。調節された医療グレードの酸素を提供することが好ましいことを除いて、酸素源は特に限定されない。それは、例えば、病院又は診療所にある酸素ボンベ又は壁弁であり得る。酸素化デバイス100と酸素源とを接続するために、デバイス100の使用者(単数又は複数)は、延長チューブの一端を酸素注入口160に取り付け、そのチューブの他端を酸素源に取り付けることができる。
【0058】
工程220に続いて、工程230で酸素が供給され得る。好ましくは、酸素は、少なくとも10分間、より好ましくは少なくとも15分間、さらに好ましくは少なくとも20分間、毎分10リットル又は約10リットルの流量で酸素源から供給され得る。しかしながら、他の酸素流量も可能である。例えば、酸素源から毎分1、2又は3リットルの流量で酸素を供給することが可能である。しかし、これは、灌流液浴の灌流液を完全に飽和させるために必要な期間を許容できないほど長くする可能性がある。一方、毎分20リットル以上までの酸素流量が考えられる。しかし、毎分20リットルを超える流量は、チューブ180とT継手162との接続部に高い背圧がかかり、高圧によるリークで灌流液浴が酸素で完全に飽和されないリスクを引き起こし得る。好ましい持続時間の間、上記の好ましい流量で酸素を供給すると、灌流液内の溶存酸素レベルが600~800mmHgとなり得、これは臓器の灌流に望ましいと考えられている。チューブ180及びその穴184を介してボウル30内に導入される追加の酸素にもかかわらず、ベント128は、導入された酸素の大部分を大気に放出することによって、ボウル30内及び灌流液浴の上の雰囲気の圧力の実質的な上昇を防ぐことができる。実際、ボウル30内の大気圧の上昇は、5mmHg未満であり得る。酸素の供給が中断されると、ベント128により、ボウル30内の圧力は、外部大気の圧力と平衡を保つことができる。
【0059】
望ましい酸素化レベルに達したら、酸素供給を中断し、酸素化デバイス100をボウル30から取り出すことができる。酸素化された灌流液はその後大気に開放されるため、内蓋66をその後、好ましくはできるだけ早くボウル30上に載せることができる。その後、臓器をボウル30内に置き、酸素化された灌流液で灌流することができる。また、一旦酸素の供給を中断すると、臓器をボウル30内に置いて灌流を開始するのに多少の遅れが生じることが想定される。したがって、望ましい酸素化レベルを維持できるように、一定時間後に灌流液を再び酸素化することが必要であろう。この再供給は、ボウルから一旦取り外すとデバイスの無菌性が損なわれることがあるため、酸素化デバイス100をボウル30から取り外す前に行われるのが好ましい。
【0060】
したがって、図11に示すプロセス200は、灌流回路内への臓器の載置及びその臓器のその後の灌流に先立って、灌流液を酸素で予備充填する手段を提供する。しかしながら、様々な変更が想定される。例えば、酸素化デバイス100は、予備充填が完了してもボウル30から取り外されない場合があり、したがって、臓器の灌流中にボウルの蓋として機能することができる。酸素化デバイス100はまた、臓器の灌流及び/又は運搬の間、灌流液を酸素化し続けることも可能である。灌流中のこの酸素化は、運搬中、灌流液中の酸素レベルの上昇を維持するのに役立ち得る。もちろん、携帯型酸素源は、この変更に有益であると思われる。プロセス200の工程210はまた、工程205及び207に先行し得る。工程205において、灌流回路のプライミング及び冷却に続いて、灌流回路の内蓋66は、酸素化デバイス100のためのスペースを作るために取り外されてもよい。そして、工程207では、灌流液は、灌流液浴を形成するように、ボウル30にデカントされ得る。
【0061】
したがって、以上説明したように、酸素化オプションを備えたデバイス100は、灌流液を迅速に酸素化する機構を提供し、それによって、移植プロセスの遅延に伴う危険を回避しながら、酸素の上述の利点を提供することができる。これはまた、既存の灌流回路と連携し、診療所又は病院がこれらの高価な使い捨て品を交換する必要なしに、酸素化の利点を得ることを確実にする。
【0062】
図3図8に示すように、酸素化コンポーネント150は、別個の酸素化デバイス100の一部を構成し得る。しかし、これはそうである必要はない。代わりに、そして図13に示すように、酸素化コンポーネント350の一部又は全部を、臓器容器と一体化させることができる。例えば、前述のチューブ180の実施形態のいずれかと同一であり得るチューブ380を、ボウル30の内側に組み込むことができる。このチューブ380は、ボウルに載せた臓器又は組織を取り囲むように、全体的にボウルの内壁32に沿って延びることができる。ホルダー370は、ボウル30の縁34から延在し、臓器の灌流中にチューブ380をボウル内の灌流液浴内に浸漬させるように保持することができる。これらのホルダー370は、全体的にボウル30の内壁32に沿って下降し、ホルダー170と同様に、それらはチューブ380が通過することができる穴をそれぞれ含み得る。
【0063】
また、ボウル30内には、チューブ380を酸素源に流体接続するT362継手と、T362継手の上流にあり、施術者が気泡と表面酸素化を切り替えることができる接続部364とが含まれ得る。より具体的には、接続部364の上流の酸素ライン390と下流のチューブ382が接続部364で接続されると、投入酸素がチューブ380に送られ、このチューブ380は臓器の灌流中に灌流液浴の表面下に浸漬され得る。しかし、その接続が接続部364で切断されると、投入酸素は、ボウル30内であるが灌流液浴の表面より上に供給される。好ましくは、接続部364は、ルアーロック接続部又は三方活栓であり得る。
【0064】
図14は酸素ライン390を示し、この酸素ライン390は、接続部364から、ボウル30の外部に延在し得る。酸素ライン390の端部392では、酸素源(図示せず)から酸素が供給され得る。そして、投入酸素を濾過するための抗菌フィルタ394が、酸素ライン390に取り付けられ得る。例えば、図14に示すように、このフィルタ394は、ラインの端部392に取り付けられ得る。そして図15に示すように、酸素ライン390がボウル30から離れるように延在していることにより、外蓋20を閉じた状態でもそのライン390に酸素を投入することができる。
【0065】
図16には、酸素化コンポーネント350を有するボウル30を含む臓器容器を備えた灌流装置、例えば灌流装置10を使用して、灌流液浴を構成する灌流液中の溶存酸素量を増加させることができる方法400が示されている。第一工程410において、酸素ライン390は、抗菌フィルタ394を介して、酸素源、例えば、外部酸素源に接続され得る。好ましくは、この接続は、ある量、例えば、3LのVasosol溶液が、その中に灌流液浴を形成するようにボウル30に加えられ、内蓋66及び外蓋67の両方を外部環境から密閉するようにボウル30に載せた後に行われる。第二工程420では、酸素ライン390に酸素を10L/分の流量で供給することが好ましい。酸素ライン390とチューブ382は接続部364を介して接続されているため、この投入酸素は、浸漬したチューブ380を介して灌流液浴に供給される。この気泡酸素化は、少なくとも10分間、より好ましくは少なくとも20分間継続し得、この間、臨床医は、機械灌流のために臓器を準備することができる。両蓋66、67は、チューブ380による酸素の供給の間、閉じたままであってもよい。
【0066】
工程430では、ボウル30を開いた状態にするように内蓋及び外蓋66、67の両方を取り外すことができる。外蓋67を開けた後、内蓋66を開ける前に、任意選択で滅菌ドレープを適用することができる。両蓋を取り外すと、酸素ライン390及びチューブ382を、接続部364で切断することができる。酸素ライン390への酸素投入も、約2L/分に減少させることが好ましい場合があり、この減少した酸素は、次いで、開いた接続部364を介して灌流液浴の表面に供給され得る。次いで、臓器がボウル30内に導入され、その臓器の灌流が開始され得る。次いで、内蓋66を、その後できるだけ早くボウル30上に配置することができ、灌流流量が安定したら、滅菌ドレープを取り外し、外蓋67もボウル30上に配置することができる。好ましくは、外蓋20は、灌流された臓器の低体温環境を維持するのを助けるように、この表面酸素化の間、閉じられる。表面酸素化は、運搬工程440まで続けることができ、その際、酸素ライン390は、外部酸素源から切り離され得、酸素ラインの端部390を覆う外蓋22も閉じられ得る。移植センターへの到着後、工程450で表面酸素化を再開することができる。これは、外蓋22を開け、抗菌フィルタ394を介して酸素ライン390を別の酸素源に接続し、その後、臓器の移植まで、減少した流量の酸素を、好ましくは2L/分で供給することによって達成され得る。
【0067】
このように酸素化コンポーネント350をボウル30に移動させると、別個の酸素化デバイス100の一部を構成するコンポーネント150と比較して、様々な機能性の違いが得られる。例えば、気泡酸素化は、デバイス100の存在なしに達成され得る。さらに、酸素ライン390の端部392をボウル30の外に配置し、その一方で接続部364をそのボウル内に含めることは、灌流液浴と上記ガスとの間のインターフェースを介して灌流中に酸素化を継続する選択肢を可能にする。
【0068】
本明細書で説明し、及び図示したものは、いくつかの変形例を伴う本発明の実施形態である。本明細書で使用する用語、説明及び図は、例示としてのみ記載されており、限定するものとして意味されない。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲内で多くの変形が可能であることを認識するであろう。例えば、酸素ライン390のために灌流装置10に外部ポートを追加すれば、運搬中、両蓋20、22が閉じられていても、連続的な表面酸素化が可能になる。また、コンパクトな酸素発生器は、外部酸素源の必要性を省くこともできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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【国際調査報告】