(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20221107BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506407
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 CN2019103035
(87)【国際公開番号】W WO2021017077
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201910707421.0
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522040621
【氏名又は名称】ナショナル センター フォー ナノサイエンス アンド テクノロジー,チャイナ
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CENTER FOR NANOSCIENCE AND TECHNOLOGY, CHINA
【住所又は居所原語表記】Zhongguancun Beiyitiao 11, Haidian District,Beijing 100190,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,シャオジュン
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA53
2H199CA67
2H249AA18
2H249AA37
2H249AA39
2H249AA43
2H249AA60
2H249AA62
(57)【要約】
ナノインプリント技術による、ニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法であって、この方法は、ニアアイディスプレイの技術分野に関し、従来技術における回折格子導波路の製造が困難で収率が低く、再現性が悪く、大量生産できない問題を解決する。この製造方法は、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを製造するステップと、ナノインプリントプロセスによってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写し、回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップと、ナノインプリントプロセスによって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写し、ニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップとを含む。この製造方法は、ニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法であって、
回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを製造するステップ1と、
ナノインプリントプロセスによってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写し、回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップ2と、
ナノインプリントプロセスによって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写し、ニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップ3と、を含む、ことを特徴とするニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ1は、インプリント基板を用意し、インプリント基板にフォトレジストを均一にスピンコートするステップと、ベークしてフォトレジストにおけるフォトレジスト溶媒を除去し、露光プロセスによってフォトレジスト層をインプリント基板の表面に露光し、現像後にフォトレジストに回折格子導波路パターンを形成するステップと、エッチングプロセスによって露光後のインプリント基板をエッチングし、回折格子導波路パターンをフォトレジストからインプリント基板に転写してインプリント基板に回折格子導波路パターンを形成するステップと、フォトレジストを除去して回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、前記ナノインプリントプロセスは熱インプリント又は紫外線インプリントである、ことを特徴とする請求項1に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項4】
熱インプリント方法によってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写することは、可撓性基板を、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートの表面に置き、可撓性基板をガラス転移温度以上に加熱し、圧力を加えることで、可撓性基板を軟化させてインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンに充填させた後、冷却及び離型して回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップを含む、ことを特徴とする請求項3に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項5】
紫外線インプリント方法によってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写することは、透明な可撓性基板を用意し、透明な可撓性基板のインプリントテンプレートに面する側に紫外線感受性接着剤をスピンコートするステップと、透明な可撓性基板とインプリントテンプレートを貼り合わせ、圧力を加えることで、紫外線感受性接着剤をインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンに充填させた後、紫外線感受性接着剤を硬化及び離型して回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項3に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ3において、ナノインプリントプロセスは熱インプリント又は紫外線インプリントである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項7】
紫外線インプリント方法によって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写することは、導波路基板を用意し、導波路基板の転写テンプレートに面する側に紫外線インプリント接着剤をスピンコートするステップと、転写テンプレートを紫外線インプリント接着剤でコーティングされた導波路基板に覆い、空気圧で圧力を均一に加える方法又は圧延して圧力を加える方法によって、紫外線インプリント接着剤を転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンに充填させた後、紫外線インプリント接着剤を硬化及び離型してニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ3は、硬化及び離型した後、
エッチングによって紫外線インプリント接着剤における回折格子導波路パターンを導波路基板に転写して、紫外線インプリント接着剤を除去するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項7に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項9】
前記転写テンプレートは可撓性テンプレートであり、前記導波路基板は曲面基板である、ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ3において、前記導波路基板は透明なポリマー基板であり、
前記ステップ3は、電鋳によって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを金属ニッケル板に転写するステップと、電鋳された金属ニッケル板を透明なポリマー基板に置き、熱インプリントによって透明なポリマー基板を金属ニッケル板の回折格子導波路パターンに入らせた後、冷却及び離型してニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はニアアイディスプレイ技術に関し、特にナノインプリント技術によるニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実技術(Augmented Reality、AR)は、視覚体験とヒューマンコンピュータインタラクションの革新であり、実世界の情報と仮想世界の情報を「シームレスに」統合する新しい技術である。
【0003】
ニアアイディスプレイは拡張現実技術における重要な構成要素であり、主にプリズム、自由曲面、回折格子導波路の3つの種類がある。
【0004】
そのうち、プリズムの場合、視野角が非常に狭く、厚さが大きいため、大規模な工業化のニーズを満たすことができず、自由曲面の場合、視野角が広いが、曲面の加工及び設計が難しく、体積が大きく、軽量化及び携帯性を実現することができず、回折格子導波路レンズによる表示技術の場合、格子の回折効果を利用して光線の入射、屈折及び出射を実現し、全反射原理を利用して光線伝送を実現し、マイクロディスプレイの画像を人間の目に伝送することによって、仮想画像が見えることになり、また、回折格子導波路表示技術は、光ファイバー技術と同じ全反射原理を利用しているため、回折格子導波路表示素子は、通常の眼鏡レンズと同じように軽くて薄い透明なものにすることができ、より大きな表示領域及び広い視野角を有し、統合及び小型化しやすく、軽量化しやすく、広範な利用可能性が期待できる。
【0005】
従来の格子加工技術には、主に、機械的スクライビング法、ホログラフィー干渉露光法、レーザー直接描画法、集束イオンビーム加工法及び電子ビーム露光が含まれる。
【0006】
そのうち、機械的スクライビング法では、主にダイヤモンドカッターを用いて金属基板に格子を製造し、製造された格子の周期が大きく、サブミクロン周期の格子を製造することが困難であり、また、製造された格子の粗さが大きく、ゴーストラインが発生しやすく、ニアアイディスプレイに必要なガラス基板上で製造することができず、ホログラフィー干渉露光法では、ガラス基板に大面積の格子を製造することができるが、再現性が悪く、効率が低く、レーザー直接描画法、集束イオンビーム加工法及び電子ビーム露光では、加工精度が高く、マスクなしでナノスケールの格子を直接加工することができるが、大量及び大面積の回折格子加工ができず、効率が低く、価格が高い。
【発明の概要】
【0007】
上記の分析に鑑みて、本願は、従来技術における回折格子導波路の製造が困難で収率が低く、再現性が悪く、大量生産できない問題を解決するナノインプリント技術によるニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本願の目的は、主に以下の技術的解決手段によって実現される。
【0009】
本願は、ニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法であって、
回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを製造するステップ1と、
ナノインプリントプロセスによってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写し、回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップ2と、
ナノインプリントプロセスによって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写し、ニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップ3と、を含む、ニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法を提供する。
【0010】
1つの可能な設計では、ステップ1は、インプリント基板を用意し、インプリント基板にフォトレジストを均一にスピンコートするステップと、ベークしてフォトレジストにおけるフォトレジスト溶媒を除去し、露光プロセスによってフォトレジスト層をインプリント基板の表面に露光し、現像後にフォトレジストに回折格子導波路パターンを形成するステップと、エッチングプロセスによって露光後のインプリント基板をエッチングし、回折格子導波路パターンをフォトレジストからインプリント基板に転写してインプリント基板に回折格子導波路パターンを形成するステップと、フォトレジストを除去して回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを取得するステップと、を含む。
【0011】
1つの可能な設計では、ステップ2において、ナノインプリントプロセスは熱インプリント又は紫外線インプリントである。
【0012】
1つの可能な設計では、熱インプリント方法によってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写することは、可撓性基板を、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートの表面に置き、可撓性基板をガラス転移温度以上に加熱し、圧力を加えることで、可撓性基板を軟化させてインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンに充填させた後、冷却及び離型して回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップを含む。
【0013】
1つの可能な設計では、紫外線インプリント方法によってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写することは、透明な可撓性基板を用意し、透明な可撓性基板のインプリントテンプレートに面する側に紫外線感受性接着剤をスピンコートするステップと、透明な可撓性基板とインプリントテンプレートを貼り合わせ、圧力を加えることで、紫外線感受性接着剤をインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンに充填させた後、紫外線感受性接着剤を硬化及び離型して回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップと、を含む。
【0014】
1つの可能な設計では、ステップ3において、ナノインプリントプロセスは熱インプリント又は紫外線インプリントである。
【0015】
1つの可能な設計では、紫外線インプリント方法によって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写することは、導波路基板を用意し、導波路基板の転写テンプレートに面する側に紫外線インプリント接着剤をスピンコートするステップと、転写テンプレートを紫外線インプリント接着剤でコーティングされた導波路基板に覆い、空気圧で圧力を均一に加える方法又は圧延して圧力を加える方法によって、紫外線インプリント接着剤を転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンに充填させた後、紫外線インプリント接着剤を硬化及び離型してニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップと、を含む。
【0016】
1つの可能な設計では、ステップ3は、硬化及び離型した後、エッチングによって紫外線インプリント接着剤における回折格子導波路パターンを導波路基板に転写して、紫外線インプリント接着剤を除去するステップをさらに含む。
【0017】
1つの可能な設計では、転写テンプレートは可撓性テンプレートであり、導波路基板は曲面基板である。
【0018】
1つの可能な設計では、ステップ3において、導波路基板は透明なポリマー基板であり、ステップ3は、電鋳によって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを金属ニッケル板に転写するステップと、電鋳された金属ニッケル板を透明なポリマー基板に置き、熱インプリントによって透明なポリマー基板を金属ニッケル板の回折格子導波路パターンに入らせた後、冷却及び離型してニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップと、を含む。
【0019】
本願は、従来技術と比較すると、少なくとも以下の有益な効果のうちの1つを達成することができる。
【0020】
a)本願によるニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法は、ナノインプリントプロセス(熱インプリント、紫外線インプリント又はローラーインプリント)を用いる。ナノインプリント技術は、インプリントテンプレートを用いて、既にレジストが存在する基板上で熱インプリント又は紫外線インプリントによってパターンを取得する技術として、加工精度が高く、再現性がよく、コストが低く、大量に生産でき、安定性が高いなどの利点を有し、製造されたニアアイディスプレイの回折格子導波路は、優れた性能を備えており、ますます成熟して急速に発展している拡張現実(AR)分野でのニアアイディスプレイレンズのニーズを満たすことができ、軍事工業、警察用、工業、医療、教育、娯楽、観光などの分野に適用でき、市場における大きな将来性が期待できる。
【0021】
b)本願によるニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法は、インプリントテンプレートの製造プロセスが複雑で価格が高いことを考慮して、インプリントテンプレートから転写することで転写テンプレート(対応する石英テンプレート又はポリマー可撓性テンプレート)を取得するため、直接インプリントテンプレートを用いてニアアイディスプレイのインプリントを行うことを回避し、同一のインプリントテンプレートを用いて複数の転写テンプレートを製造することができ、インプリントテンプレートの耐用年数を延ばし、コストを削減する。
【0022】
本願の他の特徴及び利点については以下の明細書で詳しく説明するが、それらの一部は、明細書から明らかになるか、又は本願を実施することによって理解されるであろう。本願の目的及び他の利点は、書面による明細書及び添付の図面で特別に指摘された構造によって実現及び取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面は特定の実施形態を示す目的でのみ使用され、本願に対する限定とは見なされず、図面全体において、同じ参照記号は同じ構成要素を表す。
【
図2】本願のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法におけるインプリントテンプレートの製造フローチャートである。
【
図3】本願のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法における転写テンプレートの製造フローチャートである。
【
図4】本願のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法におけるナノインプリントに基づいて回折格子導波路を製造するための製造フローチャートである。
【
図5】本願のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法におけるナノインプリントに基づいて回折格子導波路を製造するための別の製造フローチャートである。
【
図6】本願のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法における可撓性テンプレートによって曲面基板上に回折格子導波路を製造するための製造フローチャートである。
【
図7】本願のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法における可撓性テンプレートによって曲面基板上に回折格子導波路を製造するための別の製造フローチャートである。
【
図8】本願のニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法における熱インプリントによって軽量ポリマー系回折格子導波路を製造するための製造フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照しながら本願の好ましい実施形態を詳細に説明するが、添付の図面は、本願の一部を構成し、本願の実施形態とともに本願の原理を説明するために使用される。
【0025】
以下、回折格子導波路をよりよく理解できるように、回折格子導波路について説明する。
図1を参照すると、ニアアイディスプレイの回折格子導波路には、主に入射格子と出射格子が含まれ、一部には屈折格子が含まれる場合もある。回折格子導波路パターンとは、回折格子導波路に対応する格子(入射格子及び出射格子、又は入射格子、出射格子及び屈折格子)構造を有するパターンを指す。
【0026】
本願は、ニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法を提供し、
図1~
図8を参照すると、この方法は、
回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを製造するステップ1であって、上記のインプリントテンプレートはナノスケールであってもよく、即ち、上記のインプリントテンプレートはナノインプリントテンプレートであってもよい、ステップ1と、
ナノインプリントプロセスによってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写し、回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップ2と、
ナノインプリントプロセスによって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写し、ニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップ3と、を含む。
【0027】
本願によるニアアイディスプレイの回折格子導波路の製造方法は、従来技術と比較すると、ナノインプリントプロセス(熱インプリント、紫外線インプリント又はローラーインプリント)を用いるものであり、ナノインプリント技術は、インプリントテンプレートを用いて、既にレジストが存在する基板上で熱インプリント又は紫外線インプリントによってパターンを取得する技術として、加工精度が高く、再現性がよく、コストが低く、大量に生産でき、安定性が高いなどの利点を有し、製造されたニアアイディスプレイの回折格子導波路は、優れた性能を備えており、ますます成熟して急速に発展している拡張現実(AR)分野でのニアアイディスプレイレンズのニーズを満たすことができ、軍事工業、警察用、工業、医療、教育、娯楽、観光などの分野に適用でき、市場における大きな将来性が期待できる。
【0028】
また、インプリントテンプレートの製造プロセスがより複雑で価格が高いことを考慮して、インプリントテンプレートから転写することで転写テンプレート(対応する石英テンプレート又はポリマー可撓性テンプレート)を取得するため、直接インプリントテンプレートを用いてニアアイディスプレイのインプリントを行うことを回避し、同じインプリントテンプレートを用いて複数の転写テンプレートを製造することができ、インプリントテンプレートの耐用年数を延ばし、コストを削減する。
【0029】
回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを製造するステップ1について、
図2を参照すると、インプリント基板を用意し、インプリント基板にPMMAフォトレジスト又はZEP520フォトレジストなどのフォトレジストを均一にスピンコートするステップと、ベークしてフォトレジストにおけるフォトレジスト溶媒を除去し、露光プロセスによってフォトレジスト層をインプリント基板の表面に露光し、現像後にフォトレジストに回折格子導波路パターンを形成するステップと、エッチングプロセスによって露光後のインプリント基板をエッチングし、回折格子導波路パターンをフォトレジストからインプリント基板に転写してインプリント基板に回折格子導波路パターンを形成するステップと、フォトレジストを除去して回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを取得するステップと、を含むことができる。
【0030】
上記の露光プロセスでは、電子ビーム露光法、レーザー直接描画法又はホログラフィー露光法などの方法を選択してもよい。効率を向上させ、コストを削減するために、上記の方法を組み合わせてインプリントテンプレートを製造することもできる。例えば、レーザー直接描画法又はホログラフィー露光法は、生産効率が高いが、大サイズの格子の製造にのみ適していることを考慮すると、500nm周期以上の回折格子導波路パターンの場合、レーザー直接描画法又はホログラフィー露光法を用いてインプリントテンプレートを製造することができ、周期が500nm未満の回折格子導波路パターンの場合、生産効率が低いが小サイズの格子の製造に適する電子ビーム露光法を選択することができる。
【0031】
例えば、電子ビーム露光法を用いて露光及び現像を行う具体的なプロセスは、以下のとおりである。インプリント基板を用意し、RCA標準洗浄法でシリコンウェハを洗浄し、洗浄後のインプリント基板を100~115℃で1~3minベークし、耐エッチングで解像度の高いZEP520露光用接着剤を選択し、145~153nmのスピンコート厚さとなるように、ベーキング後のインプリント基板にフォトレジストをスピンコートした後、175~182℃で1~2minベークしてフォトレジスト層におけるフォトレジスト溶媒を除去し、286~310μC/cm
2の露光量、0.8~1.2nmの電子ビームのビームスポット直径、18~21nAのビーム電流で、電子ビーム直接描画露光機でフォトレジスト層を露光して
図1に示される回折格子導波路パターンを描画し、露光済みの基板を、メチルエチルケトン体積百分率が1.5%の酢酸n-アミル溶液で1.3~1.8min現像した後、イソプロパノールで1.4~1.7min定着し、窒素で基板を乾燥させ、現像後にフォトレジスト層上に回折格子導波路パターンを形成する。
【0032】
ここで、入射格子周期は200~280nmであり、屈折格子周期は220~246nmであり、出射格子周期は236~260nmである。
【0033】
上記のインプリントテンプレートの製造適応性を向上させるために、インプリントテンプレート(即ち、インプリント基板)の材料としては、単結晶シリコン、石英又はガラスなどのシリコン材料を選択することができる。これは、シリコン基板が上記のインプリントテンプレート加工技術における共通材料として、適用性が強く、上記のいくつかの加工技術を組み合わせることにより便利に加工できるため、シリコンはインプリントテンプレートの基板材料として使用される。
【0034】
なお、通常、回折格子導波路の入射格子、屈折格子及び出射格子はいずれも2次元長方形格子であるが、より良い視覚体験を達成するために、入射格子はブレーズド格子又は傾斜格子である場合もある。
【0035】
例示として、回折格子導波路の入射格子が2次元長方形格子又は傾斜格子であり、屈折格子及び出射格子が2次元長方形格子である場合、誘導結合プラズマエッチングプロセスによってエッチングすることができ、具体的なエッチングプロセス条件は、基板温度が0~2℃で、ICPプラズマの上限電力が130~155Wで下限電力RFが18~23Wで、圧力が0.9~1.2Paで、SF6流量が26~33sccmで、O2流量が4~7sccmで、Ar流量が6~9sccmで、エッチング時間が12~17sである。エッチング後の基板をメチルエチルケトンで8~10min超音波処理し、ZEP520接着剤残留物を除去し、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを取得する。
【0036】
回折格子導波路の入射格子がブレーズド格子であり、屈折格子及び出射格子が2次元長方形格子である場合、まずイオンビームエッチングプロセスによってブレーズド格子を取得した後、誘導結合プラズマエッチングプロセスによって2次元長方形格子又は傾斜格子を取得することで、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを取得することができる。
【0037】
イオンビームエッチングのプロセス条件として、露光後の基板上に212~230nmのZAP520A露光用接着剤層をスピンコートし、ベーキング温度が175~186℃であり、ベーキング時間が1.5~2minであり、露光後に現像し、周期が220~239nmのブレーズド格子パターンを有する露光用接着剤層を取得した後、30~35mAのイオンビーム電流、28~33sccmのアルゴン流量、580~623eVのイオンビームエネルギー、40~42°のイオンビームエッチング傾斜角、2.5~3.0hのエッチング時間でイオンビームエッチングを行い、エッチング終了後に残りの露光用接着剤層を除去して、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートを取得する。
【0038】
インプリントテンプレートの表面エネルギーを低減させ、後続のインプリントプロセスの離型を容易にするために、上記のステップ1では、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートに不動態化処理を行う必要もある。不動態化処理は、インプリントテンプレートを洗浄し、洗浄後のインプリントテンプレートを78~85℃で8~11mim加熱し、その後シリコンテンプレートを真空乾燥機に入れ、50マイクロリットルのペロクチルフルオロシランをシリコンテンプレートの隣のスライドガラスに滴下し、その後30Paまで真空排気し、圧力を5h保持し、不動態化されたシリコンテンプレートを取り出すステップを含む。
【0039】
例示として、ステップ2において、上記の転写テンプレートは石英テンプレート又は可撓性テンプレートであってもよく、異なる曲げ曲率を有するニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するために、上記の転写テンプレートは可撓性テンプレート、例えば、PETテンプレート、PDMSテンプレート又はフッ素プラスチックテンプレートであってもよく、このようなソフトテンプレートを使用することで、平坦な基板だけでなく、湾曲した曲面上にインプリントすることもでき、それによって異なる曲げ曲率を有するニアアイディスプレイが得られ、人間工学に基づいた回折格子導波路レンズがより容易に得られる。
【0040】
ステップ2について、熱インプリント又は紫外線インプリント方法によってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写することができる。
【0041】
図3を参照すると、熱インプリント方法によってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写することは、可撓性基板(例えば、熱可塑性高分子ポリマー基板)を、回折格子導波路パターンを有するインプリントテンプレートの表面に置き、可撓性基板をガラス転移温度以上に加熱し、圧力を加えることで、可撓性基板を軟化させてインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンに充填させた後、冷却及び離型して、回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップを含むことができる。
【0042】
例示として、フッ素樹脂基板をインプリントテンプレート上に置き、90~98℃に加熱し、26~33barの圧力を加え、圧力を12~19min保持し、その後、離型して対応する転写テンプレートを取得する。
【0043】
紫外線インプリント方法によってインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンを転写テンプレートに転写することは、透明な可撓性基板を用意し、透明な可撓性基板のインプリントテンプレートに面する側に紫外線感受性接着剤をスピンコートするステップと、透明な可撓性基板とインプリントテンプレートを貼り合わせ、圧力を加えることで、紫外線感受性接着剤をインプリントテンプレートの回折格子導波路パターンに充填させた後、紫外線感受性接着剤を紫外線照射によって硬化及び離型して、回折格子導波路パターンのミラーパターンを有する転写テンプレートを取得するステップと、を含むことができる。
【0044】
同様に、ステップ3について、熱インプリント又は紫外線インプリント方法によって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写することができる。
【0045】
なお、紫外線インプリントは、熱インプリントと比較すると、より小さな圧力を加えることができ、複製速度が速く、また、ロールプレート(roll-plate)によるインプリント方法を用いて、回折格子導波路を有するニアアイディスプレイの大量生産を実現し、格子の大面積高速複製を実現することができる。
【0046】
図4を参照すると、紫外線インプリント方法によって転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを導波路基板に転写することは、導波路基板を用意し、導波路基板の転写テンプレートに面する側に紫外線インプリント接着剤をスピンコートするステップと、転写テンプレートを紫外線インプリント接着剤でコーティングされた導波路基板に覆い、空気圧で圧力を均一に加える方法又は圧延して圧力を加える方法によって、紫外線インプリント接着剤を転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンに充填させた後、紫外線インプリント接着剤を紫外線照射によって硬化及び離型して、ニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するステップと、を含む。
【0047】
具体的なインプリントプロセス及びパラメータは以下のとおりである。きれいに洗浄された導波路基板(例えば、ガラス板)上に、厚さが1.2~1.6μmである紫外線インプリント接着剤をスピンコートし、インプリントテンプレートを、スピンコートされた導波路基板上に覆い、ローラーインプリントによって0.6~0.9MPaである圧力を加えることで、紫外線インプリント接着剤が転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンを充填すると、UV照射によって紫外線インプリント接着剤を硬化させ、UV硬化時間は22~28sであり、硬化が完了した後、離型してニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得する。
【0048】
図5を参照すると、表示効果をより向上させるために、硬化及び離型後に、エッチングによって紫外線インプリント接着剤における回折格子導波路パターンを導波路基板に転写して、紫外線インプリント接着剤を除去するステップをさらに含むことができる。これによってより良い表示効果を有するニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得することができ、回折格子導波路の温度範囲、視野角、解像度及び鮮明度をより向上させる。具体的なエッチングのプロセス条件は、圧力が0.3~0.5Paで、エッチングICP電力が380~410wで、バイアス電力が45~56wで、CFH
3流量が38~44sccmで、Ar流量が12~16sccmで、O
2流量が4~6sccmで、エッチング時間が160~195sである。
【0049】
広い視野(FOV)を有するニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するために、高屈折率(1.8より大きい屈折率)を有するガラス基板を導波路基板として使用することができ、また高屈折率(1.7より大きい屈折率)を有する紫外線フォトレジストを使用することができる。硬化後の紫外線フォトレジストは、より高い使用環境温度を有し、ニアアイディスプレイの回折格子導波路の異なる使用環境に対応することができる。
【0050】
なお、より人間工学に基づいたニアアイディスプレイを製造するために、転写テンプレートが可撓性テンプレートである場合、曲面基板を導波路基板として使用することができる。
【0051】
例えば、弧度のある近視レンズなどの曲面基板上でニアアイディスプレイの回折格子導波路を製造する。
【0052】
図6を参照すると、可撓性テンプレートを用いて、曲面基板上でニアアイディスプレイの回折格子導波路を製造する具体的なプロセスフローは、曲面基板を導波路基板として用意し、曲面基板の転写テンプレートに面する側に1.8~2.3μmの紫外線インプリント接着剤をスリットナイフコーティング法によって均一に覆い、転写テンプレートを紫外線インプリント接着剤でコーティングされた曲面基板上に覆い、空気圧で圧力を均一に加える方法又は圧延して圧力を加える方法によって、0.2~0.5MPaの圧力を加えることで、紫外線インプリント接着剤を転写テンプレートの回折格子導波路パターンのミラーパターンに充填させた後、紫外線インプリント接着剤を紫外線照射によって22~28s硬化させて離型し、ニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得することである。
【0053】
光学性能を確保するために、可変周期の格子構造を設計することができる。この場合、可撓性テンプレートを曲げて曲面基板と貼り合わせると、可撓性テンプレートの湾曲によって格子周期が変化し、光学性能を満たす曲面回折格子導波路を有するニアアイディスプレイが得られる。
【0054】
使用温度範囲、視野角、解像度及び鮮明度などのニアアイディスプレイの性能をより向上させるために、ステップ3は、硬化及び離型後、エッチングによって紫外線インプリント接着剤における回折格子導波路パターンを曲面基板に転写して、紫外線インプリント接着剤を除去するステップをさらに含む。
図7に示されるように、エッチングのプロセス条件は、圧力が0.5Paで、エッチングICP電力が500wで、バイアス電力が30wで、CFH
3流量が42sccmで、Ar流量が15sccmで、O
2流量が5sccmで、エッチング時間が200sである。
【0055】
軽量、耐腐食及びひび割れ防止のニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得するために、ステップ3において、高屈折率(1.75より大きい)を有する透明なポリマー基板(例えば、改質された透明な熱可塑性ポリマーPMMA、PETなど)を導波路基板として使用することができる。
【0056】
図8に示されるように、透明なポリマー基板を用いて回折格子導波路を製造するプロセスは、改質されたPMMAを導波路基板材料として使用することができ、転写テンプレートのパターンを電鋳によって金属ニッケル板に転写し、ニッケル板を用いて熱インプリントを行う。具体的には、転写テンプレート上で電子ビーム蒸着コーティングなどの技術によってニッケルシード層を堆積させ、蒸着材料は3~6Nのニッケル粒子であり、堆積チャンバの圧力は4.5~5.6×10
-4Paであり、電子ビーム電流は38~45mAであり、蒸着速度は0.1~0.4オングストローム/秒であり、厚さは85~1.5nmであり、また、原子層堆積又はマグネトロンスパッタリングによってニッケルシード層を堆積させることもできる。電鋳の場合、電鋳液としてスルファミン酸ニッケルを使用し、電鋳温度は43~46℃であり、電流密度は3.8~4.4A/dm
2であり、時間は2.5~3.7hである。
【0057】
電鋳された金属ニッケル板を導波路基板に置き、120~140℃に加熱し、インプリント圧力は5.5~6.7MPaであり、圧力保持時間は8~11minであり、その後、63~69℃まで冷却し、離型して改質PMMAに基づくニアアイディスプレイの回折格子導波路を取得する。
【0058】
上記は、本願の好ましい特定の実施形態にすぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されず、本願に開示された技術的範囲内で当業者が容易に想到できるいかなる変更又は置換も、本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
図8に示されるように、透明なポリマー基板を用いて回折格子導波路を製造するプロセスは、改質されたPMMAを導波路基板材料として使用することができ、転写テンプレートのパターンを電鋳によって金属ニッケル板に転写し、ニッケル板を用いて熱インプリントを行う。具体的には、転写テンプレート上で電子ビーム蒸着コーティングなどの技術によってニッケルシード層を堆積させ、蒸着材料は3~6Nのニッケル粒子であり、堆積チャンバの圧力は4.5~5.6×10
-4Paであり、電子ビーム電流は38~45mAであり、蒸着速度は0.1~0.4オングストローム/秒であり、厚さは85~1
50nmであり、また、原子層堆積又はマグネトロンスパッタリングによってニッケルシード層を堆積させることもできる。電鋳の場合、電鋳液としてスルファミン酸ニッケルを使用し、電鋳温度は43~46℃であり、電流密度は3.8~4.4A/dm
2であり、時間は2.5~3.7hである。
【国際調査報告】