(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】低比誘電率および誘電正接を有するポリマー組成物から形成された電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/75 20110101AFI20221107BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221107BHJP
C08K 7/24 20060101ALI20221107BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221107BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221107BHJP
C08K 7/28 20060101ALI20221107BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20221107BHJP
C08K 7/10 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01R12/75
C08L101/00
C08K7/24
C08K7/02
C08K3/013
C08K7/28
C08K7/14
C08K7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022513096
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 US2020046901
(87)【国際公開番号】W WO2021050220
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,シンユー
【テーマコード(参考)】
4J002
5E223
【Fターム(参考)】
4J002BB001
4J002BB021
4J002BB111
4J002CF001
4J002CF041
4J002CF181
4J002CJ001
4J002CL001
4J002CN011
4J002DE048
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4J002DE098
4J002DE108
4J002DE118
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4J002DE148
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4J002FA087
4J002FA106
4J002FA107
4J002FB086
4J002FB087
4J002FD010
4J002FD016
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4J002FD020
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD170
4J002FD180
4J002FD208
4J002GQ00
5E223AA01
5E223AB02
5E223AB58
5E223AB65
5E223AC50
5E223BA01
5E223BA07
5E223CD01
5E223DA33
5E223DB09
5E223DB22
5E223EA03
(57)【要約】
その間にコンタクトピンを受容するための通路が画定された少なくとも2つの対向壁を含む電気コネクタであって、壁が約500マイクロメートル以下の幅を有し、約30℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリマーを、組成物の30wt.%以上の量で含有するポリマーマトリックスを含むポリマー組成物から形成される、電気コネクタが開示される。ポリマー組成物は、10GHzの周波数で決定される約4以下の比誘電率および約0.02以下の誘電正接を示す。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その間にコンタクトピンを受容するための通路が画定された少なくとも2つの対向壁を含む電気コネクタであって、当該対向壁が、約500マイクロメートル以下の幅を有し、そして、当該対向壁が、ポリマー組成物であって、約30℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリマーを、当該組成物の約30wt.%以上の量で含有するポリマーマトリックスを含む当該組成物から形成されており、当該ポリマー組成物が、10GHzの周波数で決定される約4以下の比誘電率及び約0.02以下の誘電正接を示す、電気コネクタ。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、10GHzの周波数で決定される約3.5以下の比誘電率および約0.005以下の誘電正接を示す、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記対向壁が約200~約400マイクロメートルの幅を有する、請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
ポリマーが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリールケトンまたはこれらの混合物を含む、請求項1から3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項5】
ポリマーが、液晶ポリマーを含むポリエステルを含む、請求項1から4のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項6】
サーモトロピック結晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位を含有する芳香族ポリエステルである、請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
サーモトロピック液晶ポリマーが、約10mol.%以上のナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の合計量を有する、請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
サーモトロピック液晶ポリマーが、約10mol.%以上のナフタレン-2,6-ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の合計量を有する、請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約30mol.%以上の量で含有する、請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項10】
液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約50mol.%以上の量で含有する、請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項11】
サーモトロピック液晶ポリマーが約50wt.%~約85wt.%の量で存在する、請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が、100MHzの周波数で約3.0以下の比誘電率を有する少なくとも1種の中空無機充填剤をさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が、繊維状充填剤、粒子状充填剤またはこれらの混合物を含む少なくとも1種の誘電充填剤をさらに含む、請求項1から12のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項14】
前記ポリマー組成物が、100MHzの周波数で約3.0以下の比誘電率を有する少なくとも1種の中空無機充填剤および少なくとも1種の誘電充填剤をさらに含み、少なくとも1種の中空無機充填剤の少なくとも1種の誘電充填剤に対する重量比が約0.1~約10である、請求項1から13のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項15】
前記少なくとも1種のポリマーの前記少なくとも1種の中空無機充填剤に対する重量比が約0.1~約10である、請求項14に記載の電気コネクタ。
【請求項16】
前記少なくとも1種の中空無機充填剤が中空ガラス球体を含む、請求項14に記載の電気コネクタ。
【請求項17】
中空ガラス球体が約0.8~約1.2のアスペクト比を有する、請求項16に記載の電気コネクタ。
【請求項18】
中空ガラス球体が約1マイクロメートル~約150マイクロメートルの平均直径を有する、請求項16に記載の電気コネクタ。
【請求項19】
中空ガラス球体の壁の厚さが、中空ガラス球体の平均直径の約40%以下である、請求項16に記載の電気コネクタ。
【請求項20】
前記少なくとも1種の中空無機充填剤が約5wt.%~約40wt.%の量で存在する、請求項14に記載の電気コネクタ。
【請求項21】
繊維状充填剤がガラス繊維を含む、請求項13に記載の電気コネクタ。
【請求項22】
繊維状充填剤が珪灰石を含む、請求項13に記載の電気コネクタ。
【請求項23】
粒子状充填剤がマイカを含む、請求項13に記載の電気コネクタ。
【請求項24】
少なくとも1種の誘電充填剤が約3wt.%~約40wt.%の量で存在する、請求項13に記載の電気コネクタ。
【請求項25】
前記ポリマー組成物が、1,000秒
-1のせん断速度および前記少なくとも1種のポリマーの溶融温度より20℃高い温度で決定される約10~約100Pa・sの溶融粘度を有する、請求項1から24のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項26】
前記ポリマー組成物がレーザー活性化可能添加剤をさらに含む、請求項1から25のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項27】
約3GHz超で動作するように構成された無線周波数構成部品であって、コンタクトピンを含む無線周波数構成部品;および
無線周波数構成部品と結合された電気コネクタであって、電気コネクタが、その間に通路が画定された少なくとも2つの対向壁を含み、無線周波数構成部品のコンタクトピンが電気コネクタの通路内に受容され、当該対向壁が約500マイクロメートル以下の幅を有し、当該対向壁が請求項1から26のいずれかに記載のポリマー組成物から形成されている、電気コネクタ
を含む、5G無線周波数通信システム。
【請求項28】
無線周波数構成部品が28GHz超で動作するように構成される、請求項27に記載の5G無線周波数通信システム。
【請求項29】
無線周波数構成部品が、フロントエンドモジュールまたはアンテナのうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の5G無線周波数通信システム。
【請求項30】
無線周波数構成部品が、基地局、ユーザコンピューティングデバイス、中継局、リピーターまたは5Gスマートフォンのうちの少なくとも1つに含まれる、請求項27に記載の5G無線周波数通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出題の相互参照
[0001]本出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる2019年9月10日の出願日を有する米国仮特許出願第62/898,202号;2020年3月25日の出願日を有する米国仮特許出願第62/994,317号;2020年4月13日の出願日を有する米国仮特許出願第63/008,983号;2020年6月15日の出願日を有する米国仮出願第63/038,965号;および2020年7月27日の出願日を有する米国仮出願第63/056,848号の出願利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]高周波無線信号通信は、ますます多くの人気を集めている。例えば、ワイヤレススマートフォンの接続性のためのより高速のデータ送信への需要により、5Gスペクトル周波数で動作するように構成されたものを含む高周波数構成部品への需要が高まっている。アンテナ、フロントエンドモジュールなどの5G構成部品を電気的に接続するための構成部品は、一般的に小規模の特徴を必要とする。小型化に対する傾向により、小さな高周波数5Gコネクタはさらに一層望ましいものになっている。5Gコネクタは、種々の材料を利用することができる。しかし、そのような材料の特性は、小型化を制限し、かつ/または5Gコネクタによる電気的接続との干渉を望ましくなく許容する場合がある。特に、そのような材料は、比較的高い比誘電率および誘電正接(dissipation factor)を示す可能性があるため、それらを特定の用途で使用するのは困難な場合がある。またさらに、そのような材料は、誘電特性、熱的特性および機械的特性の間で所望されるバランスを示さない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]したがって、比較的低い比誘電率および比較的低い誘電正接を有するが、優れた機械的特性および加工性(例えば、低粘度)を依然として維持できるポリマー組成物から形成された電気コネクタに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態によると、その間にコンタクトピンを受容するための通路が画定された少なくとも2つの対向する壁(opposing walls、対向壁)を含む電気コネクタであって、当該対向壁が、約500マイクロメートル以下の幅を有し、当該対向壁が、ポリマー組成物であって、約30℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリマーを、当該組成物の約30wt.%以上の量で含有するポリマーマトリックスを含む当該ポリマー組成物から形成されている、電気コネクタが開示される。ポリマー組成物は、10GHzの周波数で決定される、約4以下の比誘電率および約0.02以下の誘電正接を示す。
【0005】
[0005]本発明の別の実施形態によると、約3GHz超で動作するように構成された無線周波数構成部品を含み、無線周波数構成部品がコンタクトピンを含む、5G無線周波数通信システムが開示される。無線周波数構成部品は、コンタクトピンおよび無線周波数構成部品と結合される電気コネクタを含んでもよく、電気コネクタは、その間に通路が画定された少なくとも2つの対向壁を含み、無線周波数構成部品のコンタクトピンは電気コネクタの通路内に受容され、当該対向壁は約500マイクロメートル以下の幅を有し、当該対向壁は上記で定義されたポリマー組成物から形成されている。
【0006】
[0006]本発明の他の特色および態様が、以下により詳細に記載される。
[0007]本発明の完全かつ実施可能な開示が、当業者に対するその最良の形態を含め、添付の図面への参照を含む本明細書の残り部分でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】[0008]本発明の態様による薄壁電気コネクタの図である。
【
図1B】[0009]
図1Aの薄壁コネクタの一部の拡大図である。
【
図2】[0010]本発明によって形成可能な薄壁コネクタおよびコネクタレセプタクルの別の実施形態の分解斜視図である。
【
図3】[0011]基地局、中継局、ユーザコンピューティングデバイス、およびWi-Fiリピーターを含む5G通信システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0012]本考察は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を制限するものではないことが当業者によって理解される。
[0013]概して、本発明は、5G用途で使用できる薄壁電気コネクタに関する。特に、薄壁電気コネクタは、約40℃以上のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリマーを含むポリマーマトリックスを含有するポリマー組成物から形成されてもよい。ポリマー組成物は、その良好な機械的特性および良好な加工性と組み合わされたその比較的低い比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)のために、そのような用途に利用することができる。
【0009】
[0014]電気コネクタは、本開示の範囲内の様々な構成を有してもよい。例として、電気コネクタは、対向壁の間に複数の通路または空間を画定してもよい。通路はコンタクトピンを収容し、多数の個別のピンとの電気的接続を促進することができる。
【0010】
[0015]電気コネクタはまた、それが形成されるポリマー組成物の結果として非常に小型であってもよい。例えば、ポリマー組成物は、本明細書に記載される電気コネクタを形成するのに必要とされる非常に小さい特徴を形成するための優れた流動特性を示すと同時に、熱への曝露時に最小限の反りを示してもよい。この点に関して、当該壁は、約500マイクロメートル以下、一部の実施形態では約400マイクロメートル以下、一部の実施形態では約25マイクロメートル~約350マイクロメートル、一部の実施形態では約50マイクロメートル~約300マイクロメートルなどの比較的薄い各幅「w」を有してもよい。
【0011】
[0016]
図1Aには、本発明の態様による1つの特に好適な電気コネクタ100が示される。
図1Bは、
図1Aの電気コネクタ100の拡大図である。図示されるように、コンタクトピンを収容し、多数の個別の電気的接続を促進できる挿入通路または空間225が対向壁224の間に画定される。電気コネクタ100は、非常に小型であってもよい。より詳細には、壁224は、上述の範囲内のものなどの比較的薄い各幅「w」を有してもよい。
【0012】
[0017]
図2には、別の実施形態である電気コネクタ200が示される。回路板Pの表面に取り付けられてもよい板側部C2。コネクタ200は、板側コネクタC2に結合されることによって個々の電線3を回路板Pに接続するように構造化された配線材側部C1も含んでもよい。板側部C2は、その中に配線材側コネクタC1が嵌合される嵌合凹部10a、および筐体10の幅方向に細長い構成を有する第1の筐体10を含んでもよい。配線材側部C1は、筐体20の幅方向に細長い第2の筐体20を同様に含んでもよい。第2の筐体20では、複数の端子受容空洞22が幅方向に平行に設けられ、上および下端子受容空洞22を含む二段アレイを作成してもよい。個々の電線3の遠位端に取り付けられる端子5は、端子受容空洞22の各々の中に受容されてもよい。所望される場合、板側コネクタC2の接続部材(図示せず)に対応する係止部28(係合部)も筐体20に設けられてもよい。
【0013】
[0018]上記で考察されたように、第1の筐体10および/または第2の筐体20の内壁は比較的薄くてもよく(例えば、比較的小さい幅寸法を有してもよい)、本発明のポリマー組成物から形成されてもよい。
【0014】
[0019]電気コネクタは、比較的低い比誘電率および誘電正接を有するポリマー組成物から形成されてもよい。そのような誘電特性を有するポリマー組成物を提供することにより、信号伝達用途、特に5G通信に関するものなどの特定の用途に利用された場合、信号損失の最小化および性能の改善を支援することができる。本明細書で使用される場合、「5G」は、概して無線周波数信号による高速データ通信を指す。5Gネットワークおよびシステムは、前世代のデータ通信規格(例えば、「4G」、「LTE」)よりはるかに高速でデータを通信することができる。5G通信の要件を定量化する種々の規格および仕様が公開されている。一例として、International Telecommunications Union(ITU)は、International Mobile Telecommunications-2020(「IMT-2020」)規格を2015年に公開している。IMT-2020規格は、5Gのための種々のデータ送信基準(例えば、ダウンリンクおよびアップリンクデータレート、待ち時間など)を定めている。IMT-2020規格は、アップリンクおよびダウンリンクピークデータレートを、5Gシステムがサポートしなければならないデータをアップロードおよびダウンロードするための最小データレートと規定している。IMT-2020規格は、ダウンリンクピークデータレート要件を20Gbit/秒、アップリンクピークデータレートを10Gbit/秒と設定している。
【0015】
[0020]別の例として、3rd Generation Partnership Project(3GPP(登録商標))は、「5G NR」と称する5G用の新規規格を近年公開した。3GPP(登録商標)は、「Phase1」を5G NRの標準化と規定する「Release 15」を2018年に発行した。3GPP(登録商標)は、5G周波数帯を、概して6GHz未満の周波数を含む「Frequency Range 1」(FR1)として、かつ「Frequency Range 2」(FR2)を20~60GHzの範囲の周波数帯として規定している。しかし、本明細書で使用される「5G周波数」は、60GHzより大きい、例えば最大80GHz、最大150GHz、および最大300GHzの範囲の周波数を利用するシステムを指す場合がある。本明細書で使用される「5G周波数」は、約2.5GHz以上、一部の実施形態では約3.0GHz以上、一部の実施形態では約3GHz~約300GHz以上、一部の実施形態では約4GHz~約80GHz、一部の実施形態では約5GHz~約80GHz、一部の実施形態では約20GHz~約80GHz、一部の実施形態では約28GHz~約60GHzの周波数を指す場合がある。
【0016】
[0021]本明細書に記載されるコネクタは、Release 15(2018)などの3GPP(登録商標)によって公開された規格および/もしくはIMT-2020規格に基づく「5G」を満たすか、または「5G」とみなされてもよい無線周波数システムで使用可能である。そのような高速データ通信を高周波数で達成するために、アンテナ素子およびアレイは、一般的に小さい特徴サイズ/間隔(例えば、ファインピッチ技術)および/またはアンテナ性能を改善することができる先進材料を利用する。例えば、特徴サイズ(アンテナ素子間の間隔、アンテナ素子の幅)などは、一般的に、その上にアンテナ素子が形成される基板の誘電体を通って伝搬する、所望の送信および/または受信無線周波数の波長(「λ」)に依存する(例えば、nλ/4であり、ここでnは整数である)。さらに、ビーム形成および/またはビームステアリングを利用し、複数の周波数範囲またはチャネルにわたって送受信を促進することができる(例えば、MIMO、大規模MIMO)。
【0017】
[0022]電気コネクタはまた、それが形成されるポリマー組成物の誘電特性のために、隣接するまたは付近のピンに送信される信号間の干渉(例えば、「クロストーク」)を低減または予防することができる。例えば、ポリマー組成物の比誘電率は、10GHzの周波数でスプリットポスト共振法によって決定して、約4以下、一部の実施形態では約3.7以下、一部の実施形態では約3.5以下、一部の実施形態では約0.5~約3.4、一部の実施形態では約1.0~約3.2であってもよい。さらに、ポリマー組成物のエネルギー損失率の測定値である誘電正接は、10GHzの周波数でスプリットポスト共振法によって決定して、約0.02以下、一部の実施形態では約0.015以下、一部の実施形態では約0.01以下、一部の実施形態では約0.001~約0.01、一部の実施形態では約0.001~約0.006であってもよい。
【0018】
[0023]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマーマトリックスの比誘電率の低減を可能にする少なくとも1種の添加剤を利用してもよい。例えば、そのような添加剤(例えば、中空無機充填剤)の利用は、ポリマーマトリックスの比誘電率を約2%以上、一部の実施形態では約3%以上、一部の実施形態では約3.5%~約50%、一部の実施形態では約4%~約30%低減させてもよい。同様に、ポリマー組成物は、ポリマーマトリックスの誘電正接の低減を可能にする少なくとも1種の添加剤を利用してもよい。例えば、そのような添加剤(例えば、中空無機充填剤)の利用は、ポリマーマトリックスの誘電正接を約2%以上、一部の実施形態では約3%以上、一部の実施形態では約3.5%~約50%、一部の実施形態では約4%~約30%低減させてもよい。
【0019】
[0024]また、従来的に、低比誘電率と低誘電正接の組合せを示すポリマー組成物は、それらの電気コネクタとしての使用を可能とするのに十分良好な熱的、機械的特性および加工容易性(すなわち、低粘度)を同時に有さないと考えられていた。しかし従来の思想とは対照的に、ポリマー組成物は、優れた熱的、機械的特性および加工性の両方を有することが見出された。
【0020】
[0025]例えば、ポリマー組成物の溶融温度は、例えば約180℃以上、一部の実施形態では約200℃、一部の実施形態では約210℃~約400℃、一部の実施形態では約220℃~約380℃であってもよい。そのような溶融温度であっても、短期的な耐熱性の測定値である荷重たわみ温度(「DTUL」)の溶融温度に対する比は、依然として比較的高いままであってもよい。例えば、比は約0.5~約1.00、一部の実施形態では約0.6~約0.95、一部の実施形態では約0.65~約0.85の範囲であってもよい。特定のDTUL値は、例えば約200℃以上、一部の実施形態では約200℃~約350℃、例えば約210℃~約320℃、例えば約230℃~約290℃であってもよい。
【0021】
[0026]ポリマー組成物はまた、成型部品を形成する際に有用でありうる優れた機械的特性を有してもよい。例えば、ポリマー組成物は、約20MPa以上、一部の実施形態では約30MPa以上、一部の実施形態では約40MPa~約300MPa、一部の実施形態では約50MPa~約100MPaの引張強度を示してもよい。引張特性は、温度23℃でISO試験No.527:2012に従って決定されてもよい。さらに、ポリマー組成物は、約20MPa以上、一部の実施形態では約50MPa以上、一部の実施形態では約60MPa~約300MPa、一部の実施形態では約80MPa~約250MPaの曲げ強度を示してもよい。曲げ特性は、温度23℃で178:2010に従って決定されてもよい。さらに、ポリマー組成物はまた、薄い基板を形成する際に有用でありうる高い衝撃強度を有してもよい。例えば、ポリマー組成物は、約3kJ/m2以上、一部の実施形態では約5kJ/m2以上、一部の実施形態では約7kJ/m2以上、一部の実施形態では約8kJ/m2~約40kJ/m2、一部の実施形態では約10kJ/m2~約25kJ/m2のノッチ付きシャルピー衝撃強度を有してもよい。衝撃強度は、温度23℃でISO試験No.ISO 179-1:2010に従って決定されてもよい。
【0022】
[0027]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に記載する。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリックス
[0028]概して、種々のポリマーのいずれかまたはポリマーの組合せがポリマーマトリックスに利用されてもよい。例えば、ポリマーは、半結晶性または結晶性の性質であってもよい。一実施形態では、ポリマーは半結晶性であってもよい。別の実施形態では、ポリマーは結晶性であってもよい。さらに、一実施形態では、ポリマーは芳香族ポリマーであってもよい。代替的に別の実施形態では、ポリマーは脂肪族ポリマーであってもよい。
【0023】
[0029]好適なポリマーは、熱可塑性ポリマーを含んでもよい。例えば、これらのポリマーとして、例えばポリオレフィン(例えば、エチレンポリマー、プロピレンポリマーなど)、ポリアミド(例えば、脂肪族、半芳香族、または芳香族ポリアミド)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー)、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(例えば、ポリオキシメチレン)、ポリフェニレンオキシド、ポリアリールケトン(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンなど)、ポリカーボネートなど、およびこれらのブレンドを挙げることができる。
【0024】
[0030]それとは無関係に、ポリマーは一般的に「高性能」ポリマーとみなされてもよく、したがって比較的高いガラス転移温度および/または高い溶融温度を有してもよい。したがって、そのような高性能ポリマーは、ポリマー組成物に実質的な程度の耐熱性を付与することができる。例えば、ポリマーは、約30℃以上、一部の実施形態では約40℃以上、一部の実施形態では約50℃~約250℃、一部の実施形態では約60℃~約150℃のガラス転移温度を有してもよい。ポリマーはまた、約180℃以上、一部の実施形態では約200℃以上、一部の実施形態では約210℃~約400℃、一部の実施形態では約220℃~約380℃の溶融温度を有してもよい。ガラス転移温度および溶融温度は、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用し当技術分野で周知のように決定されてもよく、例えばISO試験No.11357-2:2013(ガラス転移温度)および11357-3:2011(溶融温度)によって決定されてもよい。
【0025】
[0031]好適な半結晶性芳香族ポリマーの一例は、例えば8~14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸と少なくとも1種のジオールとの縮合生成物である芳香族ポリエステルである。好適なジオールとして、例えばネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、および式HO(CH2)nOH(式中、nは2~10の整数である)の脂肪族グリコールを挙げることができる。好適な芳香族ジカルボン酸として、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、およびこれらの組合せを挙げることができる。1,4-、または1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸におけるように、縮合環が存在してもよい。そのような芳香族ポリエステルの特定の例として、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)ならびに上述のコポリマーおよび混合物を挙げることができる。
【0026】
[0032]1つの特定の実施形態では、ポリマーはポリブチレンテレフタレートを含んでもよい。ポリブチレンテレフタレートは、約38%以上、一部の実施形態では約40%以上、一部の実施形態では約45%以上の結晶化度を有してもよい。ポリブチレンテレフタレートポリマーの結晶化度は、概して約70%以下、一部の実施形態では約65%以下、一部の実施形態では約60%以下であってもよい。結晶化度パーセントは、示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定されてもよい。そのような分析は、PerkinElmer製Pyris 6 DSC装置を使用して行われてもよい。計算の詳細な説明は、Sichina,W. J.「DSC as problem solving tool:measurement of percent crystallinity of thermoplastics.」Thermal Analysis Application Note(2000)から入手可能である。
【0027】
[0033]さらに、ポリエチレンテレフタレートポリマーおよび/もしくはポリブチレンテレフタレートポリマーの変性物またはコポリマーも使用されてもよい。例えば、一実施形態では、変性酸または変性ジオールを使用し、変性ポリエチレンテレフタレートポリマーおよび/または変性ポリブチレンテレフタレートポリマーを生産してもよい。本明細書で使用される用語「変性酸」および「変性ジオール」は、それぞれポリエステルの酸およびジオール繰り返し単位の一部を形成することができ、かつポリエステルを変性してその結晶化度を低減させる、またはポリエステルを非晶質にすることができる化合物を定義することを意図する。当然ながら、ポリエステルは非変性であってもよく、かつ変性酸または変性ジオールを含有しない。いずれの場合でも、変性酸成分の例として、これらに限定されないが、イソフタル酸、フタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,12-ドデカン二酸などが挙げられてもよい。実際には、多くの場合、ジカルボン酸のジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルなどのこれらの官能性酸誘導体を使用することが好ましい。実用的な場合、これらの酸の無水物または酸ハロゲン化物も利用されてもよい。変性ジオール成分の例として、これらに限定されないが、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル1,3-シクロブタンジオール、Z,8-ビス(ヒドロキシメチルトリシクロ-[5.2.1.0]-デカン(ここで、Zは3、4または5を表す);1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエーテル[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールA]、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルフィド[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールS]、および鎖中に1つまたは複数の酸素原子を含有するジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどを挙げることができる。一般的に、これらのジオールは、2~18個、一部の実施形態では2~8個の炭素原子を含有する。脂環式ジオールは、それらのシスもしくはトランス立体配置で、または両方の形態の混合物として利用することができる。
【0028】
[0034]一部の実施形態では、ポリマー組成物に存在する少なくとも1種のポリエステルまたはコポリエステルは、約0.5~約0.9dL/g、例えば約0.5~約0.8dL/gの固有粘度(IV)を有してもよい。一実施形態では、例えばポリエステルの固有粘度は、約0.65~約0.8dL/gである。
【0029】
[0035]ポリアリーレンスルフィドもまた、好適な半結晶性芳香族ポリマーである。組成物に利用されるポリアリーレンスルフィドは、概して、式:
-[(Ar1)n-X]m-[(Ar2)i-Y]j-[(Ar3)k-Z]l-[(Ar4)o-W]p-
(式中、
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、独立して6~18個の炭素原子のアリーレン単位であり;
W、X、YおよびZは、独立して-SO2-、-S-、-SO-、-CO-、-O-、-C(O)O-から選択される二価の連結基、または1~6個の炭素原子のアルキレンもしくはアルキリデン基であり、ここで連結基のうちの少なくとも1つは-S-であり;
n、m、i、j、k、l、oおよびpは、それらの総計が2以上であることを前提として、独立して0、1、2、3または4である)
の繰り返し単位を有する。
【0030】
[0036]アリーレン単位Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は選択的に置換されてもよく、非置換であってもよい。有利なアリーレン単位は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセンおよびフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは、典型的に約30mol%より高い、約50mol%より高い、または約70mol%より高いアリーレンスルフィド(-S-)単位を含む。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、2つの芳香環に直接結合したスルフィド連結を少なくとも85mol%含んでもよい。1つの特定の実施形態では、ポリアリーレンスルフィドは、本明細書でその成分としてフェニレンスルフィド構造-(C6H4-S)n-(式中、nは1以上の整数である)を含有すると定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0031】
[0037]ポリアリーレンスルフィドの作製に使用されてもよい合成技術は、当技術分野で一般的に公知である。例として、ポリアリーレンスルフィドの生産方法は、ヒドロスルフィドイオンを付与する材料(例えば、アルカリ金属硫化物)を、有機アミド溶媒中でジハロ芳香族化合物と反応させることを含んでもよい。アルカリ金属硫化物は、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、またはこれらの混合物であってもよい。アルカリ金属硫化物が水和物または水性混合物である場合、アルカリ金属硫化物は、重合反応の前に脱水操作によって処理されてもよい。アルカリ金属硫化物はまた、in situで生成されてもよい。さらに、少量のアルカリ金属水酸化物を反応中に含み、アルカリ金属硫化物とともに非常に少量で存在しうるアルカリ金属多硫化物、またはチオ硫酸アルカリ金属などの不純物を除去するか、または(例えば、そのような不純物を無害の材料に変化させるために)反応させることができる。
【0032】
[0038]ジハロ芳香族化合物は、限定することなく、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ-ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンであってもよい。ジハロ芳香族化合物は、単独またはその任意の組合せのいずれかで使用することができる。特定の例示的なジハロ芳香族化合物として、限定することなく、p-ジクロロベンゼン;m-ジクロロベンゼン;o-ジクロロベンゼン;2,5-ジクロロトルエン;1,4-ジブロモベンゼン;1,4-ジクロロナフタレン;1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン;4,4’-ジクロロビフェニル;3,5-ジクロロ安息香酸;4,4’-ジクロロジフェニルエーテル;4,4’-ジクロロジフェニルスルホン;4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド;および4,4’-ジクロロジフェニルケトンを挙げることができる。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であってもよく、同じジハロ芳香族化合物中の2つのハロゲン原子は、同じまたは互いに異なってもよい。一実施形態では、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、またはこれらの2種以上の化合物の混合物がジハロ芳香族化合物として使用される。当技術分野で公知のように、ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成するか、あるいは重合反応および/またはポリアリーレンスルフィドの分子量を調節するために、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物ではない)をジハロ芳香族化合物と組み合わせて使用することもできる。
【0033】
[0039]ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的な組合せにより、2つ以上の異なる単位を含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーを生じることができる。例えば、p-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼンまたは4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用する場合、式:
【0034】
【0035】
の構造を有するセグメント、および式:
【0036】
【0037】
の構造を有するセグメント、または式:
【0038】
【0039】
の構造を有するセグメントを含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
[0040]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐、または架橋型であってもよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、典型的に80mol%以上の繰り返し単位-(Ar-S)-を含有する。そのような線状ポリマーは、少量の分岐単位または架橋単位も含んでもよいが、分岐または架橋単位の量は、典型的にポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1mol%未満である。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上述の繰り返し単位を含有するランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。半線状ポリアリーレンスルフィドは、同様に3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種または複数のモノマーがポリマー中に導入された架橋構造または分岐構造を有してもよい。例として、半線状ポリアリーレンスルフィドの形成に使用されるモノマー成分は、分岐ポリマーの調製に利用可能な、分子あたり2個以上のハロゲン置換基を有する一定量のポリハロ芳香族化合物を含んでもよい。そのようなモノマーは、式R’Xn(式中、各Xは、塩素、臭素およびヨウ素から選択され、nは3~6の整数であり、R’は、最大約4個のメチル置換基を有しうる価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の合計数は6~約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドの形成に利用可能な、分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている一部のポリハロ芳香族化合物の例として、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’-テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’-テトラ-ヨードビフェニル、2,2’,6,6’-テトラブロモ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
[0041]好適な半結晶性ポリマーの別の例は、ポリアミドである。例えば、ポリアミドは、一実施形態では芳香族ポリアミドであってもよい。この点に関して、芳香族ポリアミドは、比較的高い溶融温度、例えばISO試験No.11357に従い示差走査熱量測定を使用して決定して、約200℃以上、一部の実施形態では約220℃以上、一部の実施形態では約240℃~約320℃を有してもよい。芳香族ポリアミドのガラス転移温度は、同様に、概して約110℃~約160℃である。別の実施形態では、芳香族ポリアミドは脂肪族ポリアミドであってもよい。この点に関して、脂肪族ポリアミドも比較的高い溶融温度、例えばISO試験No.11357に従い示差走査熱量測定を使用して決定して、約180℃以上、一部の実施形態では約200℃以上、一部の実施形態では約210℃~約320℃を有してもよい。脂肪族ポリアミドのガラス転移温度は、同様に、概して約30℃~約170℃である。
【0041】
[0042]芳香族ポリアミドは、典型的にアミド連結(NH-CO)によって互いに保持された繰り返し単位を含有し、ジカルボン酸(例えば、芳香族ジカルボン酸)、ジアミン(例えば、脂肪族ジアミン)などの重縮合によって合成される。例えば、芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシ-二酢酸、1,3-フェニレンジオキシ-二酢酸、ジフェン酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸など、およびこれらの組合せに由来する芳香族繰り返し単位を含有してもよい。テレフタル酸が特に好適である。当然ながら、脂肪族ジカルボン酸単位、多官能性カルボン酸単位などの他の種類の酸単位も利用されてもよいことが理解されるべきである。
【0042】
[0043]脂肪族ポリアミドも、典型的にアミド連結(NH-CO)によって互いに保持された繰り返し単位を含有する。これらのポリアミドは種々の技術によって合成されてもよい。例えばポリアミドは、開環重合、例えばカプロラクタムの開環重合によって形成されてもよい。これらのポリアミドはまた、ジカルボン酸(例えば、脂肪族ジカルボン酸)、ジアミンなどの重縮合によって合成されてもよい。例えば、芳香族ポリアミドは、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、ダイマー酸、シス-および/またはトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シス-および/またはトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、ならびにこれらの組合せに由来する脂肪族繰り返し単位を含有してもよい。アジピン酸が特に好適である。
【0043】
[0044]ポリアミドはまた、典型的に4~14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンに由来する脂肪族繰り返し単位を含有してもよい。そのようなジアミンの例として、線状脂肪族アルキレンジアミン、例えば1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなど;分岐脂肪族アルキレンジアミン、例えば2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミンなど;およびこれらの組合せが挙げられる。1,9-ノナンジアミンおよび/または2-メチル-1,8-オクタンジアミンに由来する繰り返し単位が特に好適である。当然ながら、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンなどの他のジアミン単位も利用することができる。
【0044】
[0045]特に好適な芳香族ポリアミドとして、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(PA9T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド)(PA9T/910)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド)(PA9T/912)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド(PA9T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA9T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/46)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA10T/6)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド)(poly(dodecamethylene Ierephthalamide/dodecamelhylene dodecanediarnide))(PA12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA12T/6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド(PA12T/66)、ポリフタルアミド(PPA)などを挙げることができる。特に好適な脂肪族ポリアミドとして、ポリアミド4,6、ポリアミド5,10、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12などが挙げられてもよい。好適な芳香族ポリアミドのさらに他の例は、Harderらの米国特許第8,324,307号に記載されている。
【0045】
[0046]本発明で利用されてもよい別の好適な半結晶性芳香族ポリマーは、ポリアリールエーテルケトンである。ポリアリールエーテルケトンは、約300℃~約400℃、一部の実施形態では約310℃~約390℃、一部の実施形態では約330℃~約380℃などの比較的高い溶融温度を有する半結晶性ポリマーである。ガラス転移温度は、同様に約110℃~約200℃であってもよい。特に好適なポリアリールエーテルケトンは、主にフェニル部分をケトンおよび/またはエーテル部分と組み合わせて含むものである。そのようなポリマーの例として、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリエーテルケトン(「PEK」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(「PEKEKK」)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(「PEEKK」)、ポリエーテル-ジフェニル-エーテル-エーテル-ジフェニル-エーテル-フェニル-ケトン-フェニルなど、ならびにこれらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0046】
[0047]上記で言及されたポリマーに加え、結晶性ポリマーもポリマー組成物に利用されてもよい。特に好適なものは、金型の小さな空間を有効に充填することを可能にする高い結晶化度を有する液晶ポリマーである。液晶ポリマーは、一般的に棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限り、「サーモトロピック」と分類される。これらのポリマーは、一般的にポリエステルと称される場合もある。ポリマーは、約250℃~約400℃、一部の実施形態では約280℃~約390℃、一部の実施形態では約300℃~約380℃などの比較的高い溶融温度を有する。そのようなポリマーは、当技術分野で公知のように1つまたは複数の種類の繰り返し単位から形成されてもよい。液晶ポリマーは、例えば、典型的にポリマーの約60mol.%~約99.9mol.%、一部の実施形態では約70mol.%~約99.5mol.%、一部の実施形態では約80mol.%~約99mol.%の量の1つまたは複数の芳香族エステル繰り返し単位を含有してもよい。芳香族エステル繰り返し単位は、一般的に、以下の式(I):
【0047】
【0048】
(式中、
環Bは、置換または非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換または非置換の5または6員アリール基に縮合した置換または非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、あるいは置換または非置換の5または6員アリール基に連結した置換または非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
Y1およびY2は、独立してO、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である)
によって表すことができる。
【0049】
[0048]典型的に、Y1およびY2の少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル繰り返し単位の例として、例えば芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式I中Y1およびY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式I中Y1はOであり、Y2はC(O)である)、ならびにこれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0050】
[0049]例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、およびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族ジカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、および/またはNDA)に由来する繰り返し単位は、それぞれ典型的にポリマーの約1mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%を構成する。
【0051】
[0050]また、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、およびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)である。利用される場合、ヒドロキシカルボン酸(例えばHBAおよび/またはHNA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約20mol.%以上、一部の実施形態では約25mol.%以上、一部の実施形態では約30mol.%以上、一部の実施形態では約40mol.%以上、一部の実施形態では約50モル%以上、一部の実施形態では約55mol.%~100mol.%、一部の実施形態では約60mol.%~約95mol.%を構成する。
【0052】
[0051]他の繰り返し単位もポリマーに利用することができる。例えば、特定の実施形態では、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジオールとして、例えばヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約50mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約35mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%を構成する。また、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(「APAP」))、および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)に由来するものなどの繰り返し単位が利用されてもよい。利用される場合、芳香族アミド(例えば、APAP)および/または芳香族アミン(例えば、AP)に由来する繰り返し単位は、典型的に、ポリマーの約0.1mol.%~約20mol.%、一部の実施形態では約0.5mol.%~約15mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約10mol.%を構成する。また、ポリマーに種々の他のモノマー繰り返し単位が導入されてもよいことが理解されるべきである。例えば、特定の実施形態では、ポリマーは、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどの非芳香族モノマーに由来する1つまたは複数の繰り返し単位を含有してもよい。当然ながら、他の実施形態では、ポリマーは非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーに由来する繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってもよい。
【0053】
[0052]必ずしも必要ではないが、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)またはこれらの組合せなどの、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボキシ酸に由来する繰り返し単位を比較的高い含有量で含有する限り、「高ナフテン」ポリマーであってもよい。つまり、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNAまたはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、ポリマーの約10mol.%以上、一部の実施形態では約12mol.%以上、一部の実施形態では約15mol.%以上、一部の実施形態では約18mol.%以上、一部の実施形態では約30mol.%以上、一部の実施形態では約40mol.%以上、一部の実施形態では約45mol.%以上、一部の実施形態では50mol.%以上、一部の実施形態では約55mol.%以上、一部の実施形態では約55mol.%~約95mol.%であってもよい。理論によって制限されるものではないが、そのような「高ナフテン」ポリマーは、ポリマー組成物の吸水傾向を低減させることができ、それにより高周波数範囲での比誘電率および誘電正接の安定化を促進することができると考えられる。すなわち、そのような高ナフテンポリマーは、ISO62-1:2008に従って水中に24時間浸漬された後、典型的に約0.015%以下、一部の実施形態では約0.01%以下、一部の実施形態では約0.0001%~約0.008%の吸水性を有する。高ナフテンポリマーはまた、ISO62-4:2008に従って23℃の温度で多湿雰囲気(相対湿度50%)に曝露された後、約0.01%以下、一部の実施形態では約0.008%以下、一部の実施形態では約0.0001%~約0.006%の吸湿性を有してもよい。
【0054】
[0053]一実施形態では、例えばHNAに由来する繰り返し単位は、ポリマーの30mol.%以上、一部の実施形態では約40mol.%以上、一部の実施形態では約45mol.%以上、一部の実施形態では50mol.%以上、一部の実施形態では約55mol.%以上、一部の実施形態では約55mol.%~約95mol.%を構成してもよい。そのような実施形態では、液晶ポリマーは、種々の他のモノマー、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えばHBA)を約1mol.%~約50mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約20mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約10mol.%の量、芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/もしくはTA)を約1mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%の量、ならびに/または芳香族ジオール(例えば、BPおよび/もしくはHQ)を約1mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%の量で含有してもよい。別の実施形態では、NDAに由来する繰り返し単位は、ポリマーの10mol.%以上、一部の実施形態では約12mol.%以上、一部の実施形態では約15mol.%以上、一部の実施形態では約18mol.%~約95mol.%を構成してもよい。そのような実施形態では、液晶ポリマーはさらに種々の他のモノマー、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えばHBA)を約20mol.%~約60mol.%、一部の実施形態では約30mol.%~約50mol.%の量、芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/もしくはTA)を約2mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%の量、ならびに/または芳香族ジオール(例えば、BPおよび/もしくはHQ)を約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約35mol.%の量で含有してもよい。
【0055】
[0054]さらに、必ずしも必要ではないが、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)またはこれらの組合せなどのナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボキシ酸に由来する繰り返し単位を最小限の含有量で含有する限り、「低ナフテン」ポリマーであってもよい。つまり、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNAまたはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、典型的にポリマーの10mol.%以下、一部の実施形態では約15mol.%以下、一部の実施形態では約8mol.%以下、一部の実施形態では約6mol.%以下、一部の実施形態では1mol.%~約5mol.%(例えば、0mol.%)である。1つの特定の実施形態では、液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)、ならびにテレフタル酸(「TA」)および/またはイソフタル酸(「IA」)、ならびに種々の他の任意選択の構成要素に由来する繰り返し単位から形成されてもよい。4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)に由来する繰り返し単位は、ポリマーの約10mol.%~約80mol.%、一部の実施形態では約30mol.%~約75mol.%、一部の実施形態では約45mol.%~約70%を構成してもよい。同様に、テレフタル酸(「TA」)および/またはイソフタル酸(「IA」)に由来する繰り返し単位は、ポリマーの約5mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約10mol.%~約35mol.%、一部の実施形態では約15mol.%~約35%を構成してもよい。また、ポリマーの約1mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約25mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約20mol.%の量の4,4’-ビフェノール(「BP」)および/またはヒドロキノン(「HQ」)に由来する繰り返し単位が利用されてもよい。他の可能な繰り返し単位として、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)、および/またはアセトアミノフェン(「APAP」)に由来するものを挙げることができる。例えば特定の実施形態では、HNA、NDAおよび/またはAPAPに由来する繰り返し単位は、利用される場合それぞれ約1mol.%~約35mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約3mol.%~約25mol.%を構成してもよい。
【0056】
[0055]特定の実施形態では、ポリマー組成物に利用される液晶ポリマーのすべてが上述のものなどの「高ナフテン」ポリマーである。しかし、他の実施形態では、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNAまたはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量がポリマーの10mol.%未満、一部の実施形態では約8mol.%以下、一部の実施形態では約6mol.%以下、一部の実施形態では約1mol.%~約5mol.%である「低ナフテン」液晶ポリマーが当該組成物に利用されてもよい。利用される場合、そのような低ナフテンポリマーは、比較的低量のみで存在することが一般的に所望される。例えば、利用される場合、低ナフテン液晶ポリマーは、典型的に当該組成物中の液晶ポリマーの合計量の約1wt.%~約50wt.%、一部の実施形態では約2wt.%~約40wt.%、一部の実施形態では約5wt.%~約30wt.%、及び組成物全体の約0.5wt.%~約45wt.%、一部の実施形態では約2wt.%~約35wt.%、一部の実施形態では約5wt.%~約25wt.%を構成する。対照的に、高ナフテン液晶ポリマーは、典型的に当該組成物中の液晶ポリマーの合計量の約50wt.%~約99wt.%、一部の実施形態では約60wt.%~約98wt.%、一部の実施形態では約70wt.%~約95wt.%、及び組成物全体の約55wt.%~約99.5wt.%、一部の実施形態では約65wt.%~約98wt.%、一部の実施形態では約75wt.%~約95wt.%を構成する。
【0057】
[0056]特定の実施形態では、ポリマーマトリックス中にポリマーのブレンドを利用することが望ましい場合がある。例えば、ポリマーマトリックスは、第2のポリマーより速い結晶化速度を有する第1のポリマーを含有してもよい。一実施形態では、第1のポリマーはポリエチレンテレフタレートを含んでもよく、第2のポリマーはポリブチレンテレフタレートポリマーを含んでもよい。異なる結晶化速度を有するポリマーを組み合わせることにより、種々の利点および利益をもたらすことができる。例えば、より遅く結晶化するポリマー(例えば、ポリブチレンテレフタレート)は、部品の表面に移動する傾向があり、良好な表面光沢および審美性をもたらすことができ、一方でより速く結晶化するポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート)は、機械的特性を増強させることができる。そのようなブレンドが利用される場合、第1のポリマーは、第2のポリマーより多い量で存在することが典型的に所望される。例えば、第1のポリマーの第2のポリマーに対する重量比は、約1~約20、一部の実施形態では約2~約15、一部の実施形態では約3~約10であってもよい。例えば、第1のポリマーは、ポリマー組成物の約10wt.%~約40wt.%、一部の実施形態では約15wt.%~約35wt.%、一部の実施形態では約20wt.%~約30wt.%を構成してもよく、一方で第2のポリマーは、約1wt.%~約10wt.%、一部の実施形態では約2wt.%~約9wt.%、一部の実施形態では約3wt.%~約8wt.%を構成してもよい。
【0058】
[0057]ポリマーマトリックス中のポリマーは、ポリマー組成物の約30wt.%以上、一部の実施形態では約40wt.%以上、一部の実施形態では約40wt.%~約99.5wt.%、一部の実施形態では約50wt.%~約95wt.%、一部の実施形態では約60wt.%~約90wt.%、一部の実施形態では約60wt.%~約85wt.%の量で存在してもよい。
【0059】
B.中空無機充填剤
[0058]所望の誘電特性の達成を促すために、ポリマー組成物は中空無機充填剤を含んでもよい。例えば、これらの充填剤は、100MHzで約3.0以下、一部の実施形態では約2.5以下、一部の実施形態では約1.1~約2.3、一部の実施形態では約1.2~約2.0の比誘電率を有してもよい。加えて、中空無機充填剤は、特定のサイズを有してもよく、ポリマー組成物の強度に寄与することができ、さらに中空の性質のために、ポリマー組成物が低減された重量および/または密度を有することを可能にしうる。
【0060】
[0059]一般に、中空無機充填剤は、内部の中空空間または空洞を有し、当技術分野で公知の技術を使用して合成されてもよい。中空無機充填剤は、従来の材料から作製されてもよい。例えば、中空無機充填剤として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、ガラス、フライアッシュ、ホウ酸塩,リン酸塩、セラミックなどが挙げられてもよい。一実施形態では、中空無機充填剤として、中空ガラス充填剤、中空セラミック充填剤およびこれらの混合物が挙げられてもよい。一実施形態では、中空無機充填剤は中空ガラス充填剤を含む。
【0061】
[0060]中空ガラス充填剤は、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、ケイ酸ナトリウムガラスまたはアルミノケイ酸ガラスから作製されてもよい。この点に関して、一実施形態では、ガラスの組成は、限定されないが少なくとも約65重量%のSiO2、3~15重量%のNa2O、8~15重量%のCaO、0.1~5重量%のMgO、0.01~3重量%のAl2O3、0.01~1重量%のK2O、および任意選択で他の酸化物(例えば、Li2O、Fe2O3、TiO2、B2O3)であってもよい。別の実施形態では、組成は、約50~58重量%のSiO2、25~30重量%のAl2O3、6~10重量%のCaO、1~4重量%のNa2O/K2O、および1~5重量%の他の酸化物であってもよい。さらに、一実施形態では、中空ガラス充填剤は、アルカリ金属酸化物より多くのアルカリ土類金属酸化物を含んでもよい。例えば、アルカリ土類金属酸化物のアルカリ金属酸化物に対する重量比は、1より大きい、一部の実施形態では約1.1以上、一部の実施形態では約1.2~約4、一部の実施形態では約1.5~約3であってもよい。上記にかかわらず、ガラスの組成は利用されるガラスの種類に応じて異なってもよく、かつ本発明によって所望される利益を依然としてもたらすことが理解されるべきである。
【0062】
[0061]中空無機充填剤は、約1マイクロメートル以上、一部の実施形態では約5マイクロメートル以上、一部の実施形態では約8マイクロメートル以上、一部の実施形態では約1マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約10マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約12マイクロメートル~約50マイクロメートルの平均値を有する少なくとも1つの寸法を有してもよい。一実施形態では、そのような平均値は、d50値と称する場合がある。
【0063】
[0062]さらに、中空無機充填剤は、約3マイクロメートル以上、一部の実施形態では約4マイクロメートル以上、一部の実施形態では約5マイクロメートル~約20マイクロメートル、一部の実施形態では約6マイクロメートル~約15マイクロメートルのD10を有してもよい。中空無機充填剤は、約10マイクロメートル以上、一部の実施形態では約15マイクロメートル以上、一部の実施形態では約20マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約22マイクロメートル~約50マイクロメートルのD90を有してもよい。
【0064】
[0063]この点に関して、中空無機充填剤は、ガウスサイズ分布、正規サイズ分布または非正規サイズ分布でありうるサイズ分布で存在してもよい。一実施形態では、中空無機充填剤は、ガウスサイズ分布を有してもよい。別の実施形態では、中空無機充填剤は、正規サイズ分布を有してもよい。さらなる実施形態では、中空無機充填剤は、非正規サイズ分布を有してもよい。非正規サイズ分布の例として、単峰性および多峰性(例えば、二峰性)サイズ分布を挙げることができる。
【0065】
[0064]上記の寸法に言及する場合、そのような寸法は任意の寸法であってもよい。しかし、一実施形態では、そのような寸法は直径を指す。例えば、寸法に対するそのような値は、球体の平均直径を指す。平均直径などの寸法は、3M QCM 193.0に従って決定されてもよい。この点に関して、一実施形態では、中空無機充填剤は、中空ガラス球体などの中空球体を指す場合がある。例えば、中空無機充填剤は、およそ1の平均アスペクト比を有してもよい。概して、平均アスペクト比は約0.8以上、一部の実施形態では約0.85以上、一部の実施形態では約0.9~約1.3、一部の実施形態では約0.95~約1.05であってもよい。
【0066】
[0065]さらに、中空無機充填剤は、ポリマー組成物の誘電特性および重量の低減を支援するために比較的薄い壁を有してもよい。当該壁の厚さは、中空無機充填剤の平均寸法、例えば平均直径の約50%以下、一部の実施形態では約40%以下、一部の実施形態では約1%~約30%、一部の実施形態では約2%~約25%であってもよい。
【0067】
[0066]さらに、中空無機充填剤は、容易な取扱いを可能にし、重量が低減したポリマー組成物を提供することができる特定の真密度を有してもよい。概して、真密度は、中空充填剤試料の質量を中空充填剤の質量の真体積で除すことによって得られる商を指し、真体積は中空充填剤の総体積と称される。この点に関して、中空無機充填剤の真密度は、約0.1g/cm3以上、一部の実施形態では約0.2g/cm3以上、一部の実施形態では約0.3g/cm3以上~約1.2g/cm3、一部の実施形態では約0.4g/cm3以上~約0.9g/cm3であってもよい。真密度は、3M QCM 14.24.1に従って決定されてもよい。
【0068】
[0067]充填剤が中空である場合でも、充填剤は、それらの構造の一体性の維持を可能にし、充填剤が加工および/または使用中に破損する可能性を低減させる機械的強度を有してもよい。この点に関して、中空無機充填剤のアイソタクチック耐圧壊性(すなわち、中空充填剤の少なくとも80vol.%、例えば少なくとも90vol.%が生存する)は、約20MPa以上、一部の実施形態では約100MPa以上、一部の実施形態では約150MPa~約500MPa、一部の実施形態では約200MPa~約350MPaであってもよい。アイソタクチック耐圧壊性は、3M QCM 14.1.8に従って決定されてもよい。
【0069】
[0068]中空無機充填剤のアルカリ度は、約1.0meq/g以下、一部の実施形態では約0.9meq/g以下、一部の実施形態では約0.1meq/g~約0.8meq/g、一部の実施形態では約0.2meq/g~約0.7meq/gであってもよい。アルカリ度は、3M QCM 55.19に従って決定されてもよい。比較的低いアルカリ度をもたらすために、中空無機充填剤は、リン酸などの好適な酸で処理されてもよい。
【0070】
[0069]さらに、中空無機充填剤はまた、ポリマーおよび/またはポリマー組成物中の他の成分とのより良好な適合性をもたらすのを支援するための表面処理を含んでもよい。例として、表面処理はシラン化であってもよい。特に、表面処理剤として、これらに限定されないがアミノシラン、エポキシシランなどを挙げることができる。
【0071】
[0070]中空無機充填剤は、例えば、ポリマー組成物の約1wt.%以上、一部の実施形態では約4wt.%以上、一部の実施形態では約5wt.%~約40wt.%、一部の実施形態では約10wt.%~約30wt.%を構成してもよい。さらに、有益な特性を提供するために、ポリマーの中空無機充填剤に対する重量比は、約0.1以上、一部の実施形態では約1以上、一部の実施形態では約1.5以上、一部の実施形態では約0.1~約10、一部の実施形態では約1~約10、一部の実施形態では約2~約10、一部の実施形態では約2~約6、一部の実施形態では約2~約5であってもよい。
【0072】
C.誘電充填剤
[0071]さらに、ポリマー組成物の特性を改善させるために、誘電充填剤もポリマー組成物に利用されてもよい。例えば、誘電充填剤はまた、ポリマー組成物の比誘電率を低減することができるものであってもよい。さらに、誘電充填剤はまた、ポリマー組成物の他の特性の改善に寄与することができる。例えば、誘電充填剤はまた、ポリマー組成物の熱的および機械的特性を改善することができる。これらの誘電充填剤は、誘電無機充填剤、誘電有機充填剤またはそれらの混合物であってもよい。一実施形態では、誘電充填剤は無機誘電充填剤であってもよい。別の実施形態では、誘電充填剤は有機誘電充填剤であってもよい。さらなる実施形態では、誘電充填剤は、無機誘電充填剤と有機誘電充填剤の混合物であってもよい。さらに、一実施形態では、これらの誘電充填剤は、内部空洞を有さないような固体充填剤であってもよい。これらの誘電充填剤は、ポリマー組成物の約1wt.%以上、一部の実施形態では約2wt.%以上、一部の実施形態では約3wt.%~約40wt.%、一部の実施形態では約5wt.%~約25wt.%を構成してもよい。さらに、中空無機充填剤および誘電充填剤は、それぞれ独自の性質を有するため、それらを特定の比の範囲内で組み合わせて利用することにより、誘電、熱的および/または機械的特性の間の所望のバランスなどの有益な特性を有するポリマー組成物を提供することができる。この点に関して、中空無機充填剤の誘電充填剤に対する重量比は、約0.1以上、一部の実施形態では約0.1~約10、一部の実施形態では約0.1~約5、一部の実施形態では約0.5~約4、一部の実施形態では約1~約2であってもよい。
【0073】
[0072]誘電充填剤の特定の性質は、所望される通り異なってもよい。例えば、一実施形態では、誘電充填剤は繊維状充填剤であってもよい。繊維状充填剤は、典型的に、それらの質量に対して高度な引張強度を有する充填剤を含む。例えば、繊維の最大引張強度(ASTM D2101に従って決定される)は、典型的に約1,000~約15,000メガパスカル(「MPa」)、一部の実施形態では約2,000MPa~約10,000MPa、一部の実施形態では約3,000MPa~約6,000MPaである。所望の誘電特性の維持を促すために、そのような高強度繊維は、一般的に絶縁性の性質の材料、例えばガラス、セラミックまたは鉱物(例えば、アルミナまたはシリカ)、アラミド(例えば、E.I.duPont de Nemours、Wilmington、デラウェア州によって販売されるKevlar(登録商標))、鉱物、ポリオレフィン、ポリエステルなどから形成されてもよい。一実施形態では、繊維状充填剤として、ガラス繊維、鉱物繊維またはこれらの混合物が挙げられてもよい。例えば、一実施形態では、繊維状充填剤はガラス繊維を含んでもよい。特に好適なガラス繊維は、E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラスなどを含んでもよい。別の実施形態では、繊維状充填剤は鉱物繊維を含んでもよい。鉱物繊維として、シリケート、例えばネオシリケート、ソロシリケート、イノシリケート(例えば、珪灰石などのカルシウムイノシリケート;トレモライトなどのカルシウムマグネシウムイノシリケート;アクチノライトなどのカルシウムマグネシウム鉄イノシリケート;アントフィライトなどのマグネシウム鉄イノシリケートなど)、フィロシリケート(例えば、パリゴルスカイトなどのアルミニウムフィロシリケート)、テクトシリケートなど;硫酸カルシウムなどの硫酸塩(例えば、脱水または無水石膏);ミネラルウール(例えば、ロックまたはスラグウール)などに由来するものが挙げられてもよい。商品名NYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4WまたはNYGLOS(登録商標)8)でNyco Mineralsから入手可能な珪灰石繊維などのイノシリケートが特に好適である。
【0074】
[0073]さらに、繊維状充填剤は、様々な異なるサイズを有してもよいが、特定のアスペクト比を有する繊維がポリマー組成物の機械的特性の改善を促す場合がある。すなわち、約2以上、一部の実施形態では約4以上、一部の実施形態では約5~約50、一部の実施形態では約8~約40のアスペクト比(平均長を公称直径で除したもの)を有する繊維状充填剤が特に有益でありうる。そのような繊維状充填剤は、例えば約10マイクロメートル以上、一部の実施形態では約25マイクロメートル以上、一部の実施形態では約50マイクロメートル以上~約800マイクロメートル以下、一部の実施形態では約60マイクロメートル~約500マイクロメートルの重量平均長を有してもよい。また、そのような繊維状充填剤は、例えば約10マイクロメートル以上、一部の実施形態では約25マイクロメートル以上、一部の実施形態では約50マイクロメートル以上~約800マイクロメートル以下、一部の実施形態では約60マイクロメートル~約500マイクロメートルの体積平均長を有してもよい。繊維状充填剤は、同様に約5マイクロメートル以上、一部の実施形態では約6マイクロメートル以上、一部の実施形態では約8マイクロメートル~約40マイクロメートル、一部の実施形態では約9マイクロメートル~約20マイクロメートルの公称直径を有してもよい。繊維状充填剤の相対量もまた、ポリマー組成物の他の特性、例えばその流動性および誘電特性などに悪影響を及ぼさずに所望の機械的および熱的特性を達成することを促すために、選択的に制御されてもよい。この点について、繊維状充填剤は、1GHzの周波数で約6以下、一部の実施形態では約5.5以下、一部の実施形態では約1.1~約5、一部の実施形態では約2~約4.8の比誘電率を有してもよい。
【0075】
[0074]繊維状充填剤は、改質または非改質形態であってもよく、例えばプラスチックへの接着を改善するためにサイジングまたは化学的処理が施されてもよい。一部の例では、ガラス繊維を保護するためのサイジングをガラス繊維に施し、繊維を平滑にするだけでなく、繊維とマトリックス材料との間の接着を改善してもよい。存在する場合、サイジングは、シラン、膜形成剤、滑剤、湿潤剤、接着剤、任意選択で帯電防止剤および可塑剤、乳化剤、ならびに任意選択でさらなる添加剤を含んでもよい。1つの特定の実施形態では、サイジングはシランを含んでもよい。シランの特定の例は、アミノシラン、例えば3-トリメトキシシリルプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリメトキシシシラニルプロピル)エタン-1,2-ジアミン、3-(2-アミノエチル-アミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタン-ジアミンである。
【0076】
[0075]所望される場合、誘電充填剤は粒子状充填剤も含んでもよい。粒子状充填剤はまた、所望の特性および/または色の達成を促すための誘電充填剤としてポリマー組成物中に利用されてもよい。粒子状物質粘土鉱物が、本発明で使用するために特に好適でありうる。そのような粘土鉱物の例として、例えばタルク(Mg3Si4O10(OH2)、ハロイサイト(Al2Si2O5(OH)4)、カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)、イライト((K,H3O)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10[(OH)2,(H2O)])、モンモリロナイト(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2.nH2O)、バーミキュライト((MgFe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2.4H2O)、パリゴルスカイト((Mg,Al)2Si4O10(OH).4(H2O))、パイロフィライト(Al2Si4O10(OH)2)など、およびこれらの組合せが挙げられる。粘土鉱物の代わりに、またはそれに加えて、さらに他の粒子状充填剤も利用することができる。例えば、マイカ、珪藻土などの他の好適な粒子状物質ケイ酸塩充填剤も利用することができる。例えば、マイカが本発明で使用するために特に好適な鉱物でありうる。本明細書で使用される場合、用語「マイカ」は、白雲母(KAl2(AlSi3)O10(OH)2)、黒雲母(K(Mg,Fe)3(AlSi3)O10(OH)2)、金雲母(KMg3(AlSi3)O10(OH)2)、紅雲母(K(Li,Al)2-3(AlSi3)O10(OH)2)、海緑石(K,Na)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10(OH)2)などの種のいずれか、およびこれらの組合せを一般に含むことを意図する。シリカ、アルミナなどの他の種類の鉱物粒子状充填剤も利用することができる。
【0077】
[0076]粒子状充填剤は、改質または非改質形態であってもよく、例えば特性を改善するための処理が施されてもよい。一部の例では、粒子状充填剤は、例えばコーティングとしてフッ素化されてもよい。例えば、より良好な金型充填、内部潤滑、離型などをもたらすことによってポリマー組成物の加工を改善するために、フッ素化添加剤が利用されてもよい。特定の実施形態では、フッ素化添加剤として、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換される炭化水素骨格ポリマーを含有するフルオロポリマーが挙げられてもよい。骨格ポリマーは、ポリオレフィン系であってもよく、かつフッ素で置換された不飽和オレフィンモノマーから形成されてもよい。フルオロポリマーは、そのようなフッ素置換モノマーのホモポリマーまたはフッ素置換モノマーのコポリマー、またはフッ素置換モノマーと非フッ素置換モノマーの混合物であってもよい。フッ素原子とともに、フルオロポリマーは塩素および臭素原子などの他のハロゲン原子で置換されてもよい。本発明で使用されるフルオロポリマーを形成するのに好適な代表的なモノマーは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテルなど、およびこれらの混合物である。好適なフルオロポリマーの特定の例は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキルビニルエーテル)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ポリビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど、およびこれらの混合物を含む。フッ素化添加剤は、フルオロポリマーのみを含有してもよく、またはポリマー組成物中に均一に分散されるその能力を支援するものなどの他の成分を含んでもよい。例えば、一実施形態では、フッ素化添加剤は、複数の担体粒子との組合せのフルオロポリマーを含んでもよい。例えば、そのような実施形態では、フルオロポリマーは、上述の粒子状充填剤などの担体粒子にコーティングされてもよい。
【0078】
D.官能性化合物
[0077]所望される場合、とりわけポリマー組成物の溶融粘度の低減を促すために、官能性化合物もポリマー組成物中に利用することができる。例えば、官能性化合物は、官能性芳香族化合物、非芳香族官能性化合物、またはこれらの混合物であってもよい。例えば、一実施形態では、ポリマー組成物は非芳香族官能性化合物を含んでもよい。そのような化合物は、溶融粘度の低減などの種々の目的を果たすことができる。1つのそのような非芳香族官能性化合物は、水である。所望される場合、水は、プロセス条件下で水を生成する形態で添加されてもよい。例えば、水は、プロセス条件(例えば高温)下で有効に水を「失う」水和物として添加されてもよい。そのような水和物として、アルミナ三水和物、硫酸銅五水和物、塩化バリウム二水和物、硫酸カルシウム無水物(dehydrate)など、およびこれらの組合せが挙げられる。1つの特定の実施形態では、水和物はアルミナ三水和物を含んでもよい。利用される場合、水和物などの官能性化合物は、ポリマー組成物の約0.001wt.%以上、一部の実施形態では約0.005wt.%以上、一部の実施形態では約0.005wt.%~約2wt.%、一部の実施形態では約0.01wt.%~約1wt.%を構成してもよい。
【0079】
E.レーザー活性化可能添加剤
[0078]ポリマー組成物は、レーザー直接構造化(「LDS」)プロセスによって活性化できる添加剤を含有するという意味で「レーザー活性化可能」であってもよい。そのようなプロセスでは、添加剤は金属の遊離を引き起こすレーザーに曝露される。それにより、レーザーはその部分に導電素子のパターンを描き、埋め込まれた金属粒子を含有する粗面化表面を残留させる。これらの粒子は、後後のメッキプロセス(例えば、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ、銀メッキ、亜鉛メッキ、スズメッキなど)の間に、結晶成長のための核として作用する。
【0080】
[0079]レーザー活性化可能添加剤は、一般的にスピネル結晶を含み、これは画定可能な結晶形成内に2つ以上の金属酸化物クラスター構成を含むことができる。例えば、全結晶形成は、以下の一般式:
AB2O4
(式中、
Aは2の価数を有する金属カチオン、例えばカドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズ、チタンなど、およびこれらの組合せであり;
Bは3の価数を有する金属カチオン、例えばクロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズなど、およびこれらの組合せである)
を有してもよい。
【0081】
[0080]典型的に、上記式中のAは第1の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与え、Bは第2の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与える。これらの酸化物クラスターは、同じまたは異なる構造を有してもよい。例えば、一実施形態では、第1の金属酸化物クラスターは四面体構造を有し、第2の金属酸化物クラスターは八面体クラスターを有する。それにもかかわらず、クラスターは一緒になり、電磁放射線に対して増大した感度を有する単一の特定可能な結晶型構造を与えることができる。好適なスピネル結晶の例として、例えばMgAl2O4、ZnAl2O4、FeAl2O4、CuFe2O4、CuCr2O4、MnFe2O4、NiFe2O4、TiFe2O4、FeCr2O4、MgCr2O4などが挙げられる。銅酸化クロム(CuCr2O4)が本発明で使用するのに特に好適であり、Shepherd Color Co.から「Shepherd Black 1GM」の名称で入手可能である。
【0082】
[0081]レーザー活性化可能添加剤は、ポリマー組成物の約0.1wt.%~約30wt.%、一部の実施形態では約0.5wt.%~約20wt.%、一部の実施形態では約1wt.%~約10wt.%を構成してもよい。
【0083】
F.他の添加剤
[0082]滑剤、熱伝導性充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止添加剤、核形成剤(例えば、窒化ホウ素)、流動改質剤、カップリング剤、抗菌剤、顔料または他の着色剤、衝撃改質剤、ならびに特性および加工性を向上させるために添加される他の材料などの、多種多様なさらなる添加剤もポリマー組成物に含まれてもよい。そのような任意選択の材料は、従来の量で、かつ従来の加工技術に従ってポリマー組成物中に利用されてもよい。利用される場合、例えばそのような添加剤は、典型的にポリマー組成物の約0.05wt.%~約5wt.%、一部の実施形態では約0.1wt.%~約1wt.%を構成する。
【0084】
[0083]一実施形態では、ポリマー組成物は滑剤を含んでもよい。例えば、滑剤は、ポリオレフィンワックス(例えばポリエチレンワックス)、アミドワックス、脂肪酸エステルワックスなどを含んでもよい。一実施形態では、滑剤は、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックスを含んでもよい。滑剤はまた、脂肪酸エステルワックスであってもよい。脂肪酸エステルワックスは、例えば粗天然ワックスを酸化漂白し、続いて脂肪酸をアルコールでエステル化することによって得ることができる。アルコールは、一部の場合では1~4個のヒドロキシル基および2~20個の炭素原子を有してもよい。アルコールが多官能性(例えば2~4個のヒドロキシル基)である場合、2~8の炭素原子数が特に所望される。特に好適な多官能性アルコールとして、二価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,4-シクロヘキサンジオール)、三価アルコール(例えば、グリセロールおよびトリメチロールプロパン)、四価アルコール(例えば、ペンタエリスリトールおよびエリスリトール)などを挙げることができる。また、o-、m-、およびp-トリルカルビノール、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、2,4-ジメチルベンジルアルコール、3,5-ジメチルベンジルアルコール、2,3,5-クモベンジルアルコール、3,4,5-トリメチルベンジルアルコール、p-クミニルアルコール、1,2-フタリルアルコール、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、プソイドクメニルグリコール、メシチレングリコール、およびメシチレングリセロールなどの芳香族アルコールも好適でありうる。本発明で使用するのに特に好適な脂肪酸エステルは、モンタンワックスに由来する。例えば、Licowax(登録商標)OP(Clariant)は、ブチレングリコールで部分的にエステル化されたモンタン酸、および水酸化カルシウムで部分的にケン化されたモンタン酸を含有する。したがって、Licowax(登録商標)OPは、モンタン酸エステルとモンタン酸カルシウムの混合物を含有する。利用されてもよい他のモンタン酸エステルとして、例えばLicowax(登録商標)E、Licowax(登録商標)OP、およびLicolub(登録商標)WE 4(すべてClariant製)が挙げられ、これらは原料モンタンワックスの酸化精製からの二次生成物として得られるモンタン酸エステルである。Licowax(登録商標)EおよびLicolub(登録商標)WE 4は、エチレングリコールまたはグリセリンでエステル化されたモンタン酸を含有する。
【0085】
[0084]一実施形態では、ポリマー組成物は黒色顔料を含んでもよい。黒色顔料は、一般的に、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ランプブラックなどの複数のカーボンブラック粒子を含む。カーボンブラック粒子は、顆粒状、フレーク(鱗片状)などの任意の所望の形状を有してもよい。粒子の平均サイズ(例えば、直径)は、例えば約1~約200ナノメートル、一部の実施形態では約5~約150ナノメートル、一部の実施形態では約10~約100ナノメートルの範囲であってもよい。また、カーボンブラック粒子は、多環芳香族炭化水素(例えば、ベンゾ[a]ピレン、ナフタレンなど)を約1百万分率(「ppm」)以下、一部の実施形態では約0.5ppm以下の量で含有するなど、比較的純粋であることが典型的に所望される。例えば、黒色顔料は、ベンゾ[a]ピレンを約10十億分率(「ppb」)以下、一部の実施形態では約5ppb以下の量で含有してもよい。
【0086】
[0085]所望される場合、黒色顔料は、カーボンブラック粒子を封入できる担体樹脂を含んでもよく、それによって種々の利益をもたらす。例えば、担体樹脂は、粒子が取り扱われ、ベースポリマー組成物へと組み込まれる能力を向上させることができる。任意の公知の担体樹脂がこの目的に利用されてもよいが、特定の実施形態では、担体樹脂は、ポリマー組成物のポリマーマトリックスに利用されるポリマーと同じであってもよい。所望される場合、担体樹脂をカーボンブラック粒子と予備ブレンドして顔料マスターバッチを形成してもよく、その後これをポリマーと組み合わせてもよい。利用される場合、担体樹脂は、典型的にマスターバッチの約50wt.%~約95wt.%、一部の実施形態では約60wt.%~約90wt.%、一部の実施形態では約70wt.%~約85wt.%を構成し、カーボンブラック粒子は、典型的にマスターバッチの約5wt.%~約50wt.%、一部の実施形態では約10wt.%~約40wt.%、一部の実施形態では約15wt.%~約30wt.%を構成する。当然ながら、他の成分もマスターバッチに組み込まれてもよい。
【0087】
II.形成
[0086]ポリマー組成物を形成するために使用される成分は、当技術分野で公知の種々の異なる技術のいずれかを使用して一緒に組み合わされてもよい。例えば、1つの特定の実施形態では、ポリマー、任意選択で中空無機充填剤および/または誘電充填剤、ならびに他の任意選択の添加剤を押出機内で混合物として溶融加工し、ポリマー組成物を形成する。混合物は、一軸または多軸押出機で約250℃~約450℃の温度で溶融混錬されてもよい。一実施形態では、混合物は、複数の温度ゾーンを含む押出機で溶融加工することができる。個々のゾーンの温度は、典型的にポリマーの溶融温度に対して約-60℃~約25℃内に設定される。例として、混合物は、Leistritz 18mm共回転完全噛み合い二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融加工することができる。混合物を溶融加工するために、汎用スクリュー設計を使用することができる。一実施形態では、成分をすべて含む混合物を、定量フィード機によって第一のバレルのフィード口にフィードすることができる。別の実施形態では、公知のように、押出機の別の添加点で異なる成分を添加することができる。例えば、ポリマーをフィード口に適用し、それより下流に位置する同じまたは異なる温度ゾーンで、特定の添加剤(例えば、中空無機充填剤、誘電充填剤、および/または他の任意選択の添加剤)を供給することができる。いずれにせよ、得られた混合物を溶融し、混合し、次いでダイを通して押し出すことができる。次に、押し出されたポリマー組成物を水浴中でクエンチして固化し、ペレタイザーで造粒し、その後乾燥してもよい。
【0088】
[0087]ポリマー組成物の溶融粘度は、概して金型の空洞に容易に流動し、小サイズの回路基板を形成できるように十分に低い。例えば、1つの特定の実施形態では、ポリマー組成物は、1,000秒-1のせん断速度でポリマーの溶融温度より20℃高い温度で決定される、約5Pa・s以上、一部の実施形態では約10Pa・s以上、一部の実施形態では約10Pa・s~約500Pa・s、一部の実施形態では約5Pa・s~約150Pa・s、一部の実施形態では約5Pa・s~約100Pa・s、一部の実施形態では約10Pa・s~約100Pa・s、一部の実施形態では約15~約90Pa・s、一部の実施形態では約20Pa・s~約60Pa・sの溶融粘度を有してもよい。溶融粘度は、11443:2005に従って決定されてもよい。
【0089】
[0088]また、ポリマー組成物は、比較的低い密度を有してもよい。例えば、密度は約3g/cm3以下、一部の実施形態では約2.5g/cm3以下、一部の実施形態では約0.1g/cm3~約2g/cm3、一部の実施形態では約0.5g/cm3~約1.6g/cm3であってもよい。密度は、ISO 1183に従って決定されてもよい。
【0090】
[0089]さらに、ポリマー組成物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,495,616号に記載され、以下の式:
X=100×[(100/ρ0+α/ρ1+β/ρ3)-(100+α+β)/ρ](α/ρ1-α/ρ2)
(式中、αは中空無機充填剤の量を表し(ポリマー100重量部に基づく重量部)、βは誘電(例えば、繊維状)充填剤の量を表し(ポリマー100重量部に基づく重量部)、ρ0はポリマーの比重を表し、ρ1は中空無機充填剤の真比重を表し、ρ2は中空無機充填剤の材料比重を表し、ρ3は誘電(例えば、繊維状)充填剤の比重を表し、ρは前記ポリマー組成物の射出成型によって得られるASTM No.4ダンベル(厚さ2.5mmを有する)の比重を表す)
によって定義される特定のX値を有してもよい。一実施形態では、Xは10~50であってもよい。別の実施形態では、Xは10未満または50より大きくてもよい。例えば、一実施形態では、Xは10未満であってもよい。別の実施形態では、Xは50より大きくてもよい。
【0091】
III.成型部品
[0090]形成後、ポリマー組成物を、特定の用途のために所望される形状へと成型することができる。典型的に、成形部品は、乾燥および予熱されたプラスチック顆粒が金型に射出される一成分射出成型プロセスを使用して成型される。一実施形態では、成型部品または形状は、上述の電気コネクタであってもよい。電気コネクタは、特に5G無線周波数システムに利用することができる。
【0092】
[0091]
図3を参照すると、例えば5G通信システム100の一実施形態は、基地局302、1つもしくは複数の中継局304、1つもしくは複数のユーザコンピューティングデバイス306、1つもしくは複数のWi-Fiリピーター308(例えば、「フェムトセル」)および/または5Gアンテナシステム100の他の好適なアンテナ構成部品を含んでもよい。中継局304は、基地局302とユーザコンピューティングデバイス306および/または中継局304との間の信号を中継するまたは「反復する」ことにより、ユーザコンピューティングデバイス306および/または他の中継局304による基地局302との通信を促進するように構成されてもよい。基地局302は、中継局304、Wi-Fiリピーター308と、および/または直接的にユーザコンピューティングデバイス306と無線周波数信号312を受信および/または送信するように構成されたMIMOアンテナアレイ310を含んでもよい。ユーザコンピューティングデバイス306は、必ずしも本発明によって制限されず、5Gスマートフォンなどのデバイスを含む。
【0093】
[0092]MIMOアンテナアレイ310は、ビームステアリングを利用して、無線周波数信号312を中継局304に対して集中させるまたは方向付けてもよい。例えば、MIMOアンテナアレイ310は、仰角314を、X-Y面および/またはZ-Y面に画定されるヘディング角316に対して、ならびにZ方向に対して調整するように構成されてもよい。
【0094】
[0093]同様に、中継局304、ユーザコンピューティングデバイス306、Wi-Fiリピーター108のうちの1つまたは複数は、ビームステアリングを利用し、基地局302のMIMOアンテナアレイ310に対するデバイス304、306、308の感度および/または送電を方向的に同調させることにより(例えば、それぞれのデバイスの相対仰角および/または相対方位角のうちの1つまたは両方を調整することにより)、MIMOアンテナアレイ310に対する受信および/または送信能力を改善することができる。
【0095】
[0094]電気コネクタを利用して、基地局302、中継局304および/またはユーザコンピューティングデバイス306の種々の素子を通信可能に結合することができる。例えば、基地局302、中継局304および/またはユーザコンピューティングデバイス306である。そのようなアンテナおよび/またはアンテナアレイは、1つまたは複数の集積回路、プロセッサ、メモリなどと通信可能に結合されてもよい。例えば、フロントエンドモジュールを使用して、アンテナおよび/またはアンテナアレイを使用する無線周波数信号の送信および/または受信を制御してもよい。電気コネクタは、上記デバイスのいずれかを通信可能に結合することができる。
【0096】
[0095]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
【実施例】
【0097】
試験方法
[0096]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、Dynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して、せん断速度1,000s-1および溶融温度を15℃超える温度(例えば、約350℃)でISO試験No.11443:2005に従って決定されてもよい。レオメーターオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および入口角180°を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mm、ロッド長さは233.4mmであった。
【0098】
[0097]溶融温度:溶融温度(「Tm」)は、当技術分野で公知のように示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定されてもよい。溶融温度は、ISO試験No.11357-2:2013によって決定される示差走査熱量測定(DSC)のピーク溶融温度である。DSC手順に基づき、TA Q2000装置上で行うDSC測定を使用し、ISO標準10350に記述されるように、試料を1分あたり20℃で加熱および冷却した。
【0099】
[0098]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重たわみ温度は、ISO試験No.75-2:2013(技術的にASTM D648-07と同等である)に従って決定されてもよい。より詳細には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片試料を、指定の荷重(最大外部繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ三点屈曲試験に供してもよい。検体をシリコーン油浴中に下げ、検体が0.25mm(ISO試験No.75-2:2013では0.32mm)たわむまで温度を1分あたり2℃で上昇させる。
【0100】
[0099]引張弾性率、引張応力および引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(技術的にASTM D638-14と同等である)に従って試験されてもよい。弾性率および強度の測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの同じ試験片試料で行われてもよい。試験温度は約23℃であってもよく、試験速度は1または5mm/分であってもよい。
【0101】
[00100]曲げ弾性率、曲げ応力および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(技術的にASTM D790-10と同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、64mmの支持スパン上で実施されてもよい。試験は、切断されていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部で行われてもよい。試験温度は約23℃であってもよく、試験速度は2mm/分であってもよい。
【0102】
[00101]ノッチなしおよびノッチ付きシャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1:2010(技術的にASTM D256-10、方法Bと同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1検体サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を使用して行われてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(0.25mmベース半径)であってもよい。検体は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出してもよい。試験温度は約23℃であってもよい。
【0103】
[00102]比誘電率(「Dk」)および誘電正接(「Df」):比誘電率(または相対静的誘電率)および誘電正接は、Baker-Jarvisら、IEEE Trans. on Dielectric and Electrical Insulation、5(4)、571頁(1998年)およびKrupkaら、Proc. 7th International Conference on Dielectric Materials:Measurements and Applications、IEEE Conference Publication No.430(1996年9月)に記載されるものなどの公知のスプリット-ポスト誘電共振法を使用して決定される。より詳細には、サイズ80mm×80mm×1mmの板状試料を2つの固定された誘電共振器の間に挿入した。共振器により、検体の面における誘電率成分を測定した。5つの試料を試験し、平均値を記録する。スプリット-ポスト共振器を使用し、低ギガヘルツ領域、例えば1GHz、2GHzまたは10GHzで誘電測定を行うことができる。
【0104】
実施例1
[00103]試料1~5を、液晶ポリマー(LCP1またはLCP2)、中空ガラス球体、ならびにマイカ、珪灰石、ガラス粉末および/またはガラス繊維から形成する。LCP1は、43%HBA、9%TA、29%HQおよび20%NDAから形成される。LCP2は、48%HNA、2%HBA、25%BPおよび25%TAから形成される。中空ガラス球体は、18マイクロメートルの平均直径を有していた。ガラス粉末は、1GHzの周波数で決定される4.8の比誘電率を有していた。さらに、利用されたガラス繊維は、3mmまたは4mmのいずれかの初期長さを有していた。ポリマー組成物は、ポリエチレン滑剤、アルミナ三水和物、顔料および/または種々の他の微量の添加剤も含んでもよい。配合は、25mmの単軸押出機を使用して実施した。
【0105】
【0106】
[00104]次いで、試料を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表2に記載する。
【0107】
【0108】
実施例2
[00105]試料7は、62%HNA、2%HBA、18%TAおよび18%BPから形成される、コネクタに使用するためのLCP3を100wt.%含有する。試料を射出成型して板(60mm×60mm)にし、熱的および機械的特性について試験した。結果を以下に記載する。
【0109】
【0110】
実施例3
[00106]試料8~15を、液晶ポリマー(LCP2)、ミルドおよび/または扁平チョップドガラス繊維ストランド(アスペクト比=4)、マイカ(MICA1およびMICA2)ならびにシリカの種々の組合せから形成する。MICA1は、平均粒径25マイクロメートルを有し、MICA2は平均粒径60マイクロメートルを有していた。配合は、18mmの単軸押出機を使用して実施した。部品を射出成型し、試料を板(60mm×60mm)にする。
【0111】
【0112】
[00107]試料8~15を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表に記載する。
【0113】
【0114】
実施例4
[00108]試料16を、液晶ポリマー(LCP2およびLCP4)、中空ガラス球体、ガラス粉末、ガラス繊維およびアルミナ三水和物から形成する。LCP4は、60%HBA、4%HNA、18%TAおよび18%BPから形成される。ガラス粉末は、1GHzの周波数で決定される4.8の比誘電率を有していた。配合は、25mmの単軸押出機を使用して実施した。
【0115】
【0116】
[00109]次いで、試料を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表7に記載する。
【0117】
【0118】
[00110]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって実施可能である。さらに、種々の実施形態の態様は、全体的または部分的の両方で相互交換可能であることが理解されるべきである。さらに、当業者は、上述の記載が単なる例示であり、したがって添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を制限するものではないことを理解する。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
[0091]
図3を参照すると、例えば5G通信システム
300の一実施形態は、基地局302、1つもしくは複数の中継局304、1つもしくは複数のユーザコンピューティングデバイス306、1つもしくは複数のWi-Fiリピーター308(例えば、「フェムトセル」)および/または5Gアンテナシステム
300の他の好適なアンテナ構成部品を含んでもよい。中継局304は、基地局302とユーザコンピューティングデバイス306および/または中継局304との間の信号を中継するまたは「反復する」ことにより、ユーザコンピューティングデバイス306および/または他の中継局304による基地局302との通信を促進するように構成されてもよい。基地局302は、中継局304、Wi-Fiリピーター308と、および/または直接的にユーザコンピューティングデバイス306と無線周波数信号312を受信および/または送信するように構成されたMIMOアンテナアレイ310を含んでもよい。ユーザコンピューティングデバイス306は、必ずしも本発明によって制限されず、5Gスマートフォンなどのデバイスを含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
[0093]同様に、中継局304、ユーザコンピューティングデバイス306、Wi-Fiリピーター308のうちの1つまたは複数は、ビームステアリングを利用し、基地局302のMIMOアンテナアレイ310に対するデバイス304、306、308の感度および/または送電を方向的に同調させることにより(例えば、それぞれのデバイスの相対仰角および/または相対方位角のうちの1つまたは両方を調整することにより)、MIMOアンテナアレイ310に対する受信および/または送信能力を改善することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】