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特表2022-547426β-カテニン/TCF4相互作用のモジュレーターとしての複素環化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】β-カテニン/TCF4相互作用のモジュレーターとしての複素環化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4196 20060101AFI20221107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221107BHJP
   C07D 249/12 20060101ALI20221107BHJP
   C07D 405/06 20060101ALI20221107BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K31/4196
A61P35/00
A61P25/00
A61P3/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P19/00
A61P35/02
A61P43/00 105
C07D249/12 512
C07D405/06 CSP
C07D401/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513284
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 SG2020050512
(87)【国際公開番号】W WO2021045686
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】10201908175Q
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504354117
【氏名又は名称】エイジェンシー・フォー・サイエンス,テクノロジー・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】ロウ ジュー レン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー ウェイナ
(72)【発明者】
【氏名】ダスグプタ ラマヌジ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴチャ テンジン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB03
4C063BB08
4C063CC41
4C063CC75
4C063DD10
4C063DD41
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC60
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA96
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC01
4C086ZC21
(57)【要約】
本明細書では、β-カテニンを阻害すること若しくはβ-カテニンとT細胞因子4との相互作用を妨害することに有用な化合物、又はβ-カテニンを阻害するか若しくはβ-カテニンとT細胞因子4との相互作用を妨害する方法が提供され、これらは、癌、神経変性疾患、代謝性疾患、心血管疾患、線維症、及び骨疾患等の疾患又は健康状態の治療に有用である。1つの態様では、当該化合物は式1を有し、式1中、Rは-(CR XRであり、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、Rは-(CR である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-カテニン(β-Cat)を阻害することによって、又はβ-catとT細胞因子4(TCF4)との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療のための医薬の製造における化合物の使用であって、前記化合物は式1を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化1】
前記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化2】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
使用。
【請求項2】
mが1又は2であり、Xが-O-であるか、又は存在しない請求項1に記載の使用。
【請求項3】
がシクロアルキル又はアリールである請求項2に記載の使用。
【請求項4】
が、シクロアルキル、アラルキル、又はヘテロアラルキルである請求項1に記載の使用。
【請求項5】
が-(CR 10であり、pが0~4から選択される整数であり、Rが、出現ごとに、独立に、水素又はアルキルであり、R10がシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである請求項1に記載の使用。
【請求項6】
nが1又は2であり、Rが、出現ごとに、独立に、水素又はアルキルであり、Rが-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRが式2を有する部分であり、
【化3】
が、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRが、それらが結合する窒素と一緒になって、3~6員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRが、それらが結合する原子と一緒になって、5~6員のシクロアルキルを形成する
請求項1に記載の使用。
【請求項7】
が、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスが、それらが結合する窒素と一緒になって、5~6員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRが、それらが結合する原子と一緒になって、5~6員のシクロアルキルを形成する請求項6に記載の使用。
【請求項8】
化合物が式3を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化4】
前記式3中、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
は、アリール又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式4を有する部分であり、
【化5】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する窒素と一緒になって、5~6員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、5~6員のシクロアルキルを形成し、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
10は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
Xは、-O-であるか、又は存在しない
請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記化合物が、
【化6】
又はその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記疾患又は健康状態が、癌、神経変性疾患、代謝性疾患、心血管疾患、線維症、及び骨疾患からなる群から選択される請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記疾患又は健康状態が、結直腸癌、肝細胞癌、黒色腫、肝癌、乳癌、前立腺癌、及び白血病からなる群から選択される癌である請求項1の使用。
【請求項12】
β-catを阻害するか又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害する方法であって、β-catを式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩と接触させる工程を含み、
【化7】
前記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化8】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
方法。
【請求項13】
mが1又は2であり、Xが-O-であるか、又は存在しない請求項12に記載の方法。
【請求項14】
がシクロアルキル又はアリールである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
が、シクロアルキル、アラルキル又はヘテロアラルキルである請求項12に記載の方法。
【請求項16】
が-(CR 10であり、pが0~4から選択される整数であり、Rが、出現ごとに、独立に、水素又はアルキルであり、R10がシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールである請求項12に記載の方法。
【請求項17】
nが1であり、Rが、出現ごとに、独立に、水素又はアルキルであり、Rが-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRが式2を有する部分であり、
【化9】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRが、それらが結合する窒素と一緒になって、3~6員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRが、それらが結合する原子と一緒になって、5~6員のシクロアルキルを形成する
請求項12に記載の方法。
【請求項18】
が、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスが、それらが結合する窒素と一緒になって、5~6員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRが、それらが結合する原子と一緒になって、5~6員のシクロアルキルを形成する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が式3を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化10】
前記式3中、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
は、アリール又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式4を有する部分であり、
【化11】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する窒素と一緒になって、5~6員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、5~6員のシクロアルキルを形成し、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
10は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
Xは、-O-であるか、又は存在しない
請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、
【化12】
又はその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項21】
必要とする対象における、β-catを阻害することによって、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療方法であって、治療有効量の式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を投与する工程を含み、
【化13】
前記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化14】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
方法。
【請求項22】
β-catを阻害することによって、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療において使用するための化合物であって、前記化合物は、式1を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化15】
前記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化16】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員のシクロアルキル若しくは4~7員のヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
使用するための化合物。
【請求項23】
前記疾患又は健康状態が、癌、神経変性疾患、代謝性疾患、心血管疾患、線維症、及び骨疾患からなる群から選択される請求項22に記載の使用するための化合物。
【請求項24】
治療法において使用するための化合物であって、前記化合物は式1を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化17】
前記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化18】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
使用するための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年9月4日出願のシンガポール特許出願第10201908175Q号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、全体として、Wnt/カテニン(β-cat)シグナル伝達経路の阻害方法に関する。より詳細には、本開示は、下流のWnt発現の減衰をもたらすβ-cat/T細胞因子4(TCF4)相互作用の低分子阻害剤を提供する。本明細書で提供される化合物及び方法は、β-cat及びTCF4の相互作用を阻害することによって改善される疾患、例えば、癌、神経変性疾患、代謝性疾患、心血管疾患、線維症、及び骨疾患の治療、管理又は予防に有用である。
【背景技術】
【0003】
古典的Wnt/β-catシグナル伝達経路は、胚の正常な発生及び成体組織の自己再生に必要な重要なシグナル伝達経路である。この経路の活性化は、Wntリガンドタンパク質がFrizzled及び低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6)に結合することで起こる。Wntが活性化されていない状態では、アキシン(Axin)、カゼインキナーゼ1α(CK1α)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)、大腸腺腫症(APC)を含む分解複合体が、Wntシグナル伝達の主要な核内エフェクターであるβ-catをリン酸化し、β-catをユビキチン化及びプロテアソーム分解の標的とする。Wntリガンドによって上記経路が活性化されると、分解複合体が膜に結合し(動員され)、分解複合体が不活性化される。分解複合体が阻害されると、リン酸化されていないβ-catが細胞質に蓄積され、続いて核内に移行し、そこでβ-catは、リンパ系エンハンサー因子/T細胞因子(LEF/TCF)ファミリーの転写因子や、Bcl-9及びPygopus等の多くの他の補因子と結合して、下流の標的遺伝子の発現を活性化する。
【0004】
Wnt経路が組織の恒常性の維持に重要であることに起因して、Wnt経路の異常な活性化は、とりわけ幹細胞においては、しばしば癌等の疾患の要因となる。特に、大多数の結直腸癌(CRC)では、APC腫瘍抑制遺伝子の機能低下が腫瘍形成の初期の要因となり、腺腫が形成されることが明らかになっている。加えて、Axin(アキシン)2の機能喪失型変異及びβ-catの活性化変異は、肝細胞癌(HCC)に多く見られるが、低頻度でCRCにも見られる。癌以外にも、Wnt経路の誤制御は、神経変性疾患、代謝性疾患、及び骨疾患等の疾患の発症にも関与している。そのため、低分子の阻害剤、及び抗体を用いた治療法等、Wnt経路を標的とした薬剤が長年にわたって数多く報告されている。Wntを標的とした薬剤についての数多くの有望な発見にもかかわらず、そのほとんどがヒトでの臨床試験には至っていない。低分子阻害剤で第1相試験まで進んだ個別の例はあるが、しかしながら、これまでに臨床使用が認められたものはない。これらの薬剤が治療法として開発される際に直面する課題の1つは、Wntシグナル伝達経路と、Notch及びHedgehog等の他の経路との間に大きなクロストークがあることである。これらの経路間のクロストークは、これらの薬剤の特異性を制限したり、代償的な活性化を通して治療応答におけるそれら薬剤の有効性に影響を及ぼしたりする可能性がある。加えて、Wnt経路の線形カスケード内の様々な構成要素のドライバー変異も、これらの薬剤の経路阻害効果を制限する可能性がある。
【0005】
その結果、下流のWnt標的遺伝子の発現に必要なβ-cat-TCF4相互作用を阻害することにより、Wnt経路の効果的かつ特異的な下方制御が達成できると予測されている。この戦略の利点は2つある。第一に、Wnt経路の下流の構成要素に変異があり、これにより上流の阻害剤が効きにくくなっている疾患では、β-cat-TCF4相互作用を標的とすることはより効果的である。第二に、この戦略は、β-catの転写機能を特異的に標的とし、細胞と細胞の接着結合(AJ)でのEカドヘリン(ECAD)との相互作用に影響を与えないと思われる。β-cat-ECAD結合ポケットとは異なるβ-cat-TCF4結合ポケットを選択的に標的とすることにより、特異性が得られるということが提案されている。
【0006】
β-cat-TCF4相互作用を阻害する化合物を特定した細胞ベースのRNA干渉(RNAi)を用いた化学遺伝学的スクリーニングが、これまでに報告されている。このスクリーニングから、β-catとECADとの相互作用に影響を与えることなく、β-cat-TCF4相互作用を妨害することができる3つの化合物、iCRT3、iCRT5及びiCRT14が発見された。β-catへのiCRT3のインシリコでのドッキングは、TCF4の拡張領域(残基13~25)に結合するβ-cat上の部位にiCRT3が結合することを予測した。この予測されたβ-cat上のiCRT3結合部位は、Arg469、及びTCF4のAsp16と塩橋を形成し、TCF4のβ-catへの高い親和性には欠かせないものであるLys435によって囲まれている。この結合ポケットは、β-cat-TCF4相互作用に関して重要であることから、長年にわたり、β-cat-TCF4相互作用の阻害剤を特定するためのインシリコのドッキング研究の魅力的な標的部位として機能してきた。
【0007】
従って、β-cat-TCF4相互作用を阻害し、それに伴って下流のWntシグナルを減衰させるための、上述の課題の少なくとも一部を解決又は克服する改良された方法が必要とされている。
【0008】
また、β-catを阻害することによって、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態を治療することができる治療剤が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
既存のタンパク質のX線結晶構造及び公知のβ-cat-TCF4相互作用阻害剤の生物学的活性を用いて、このタンパク質-タンパク質相互作用表面の有望な低分子阻害剤をより良く予測する計算モデルが本明細書に記載される。この計算モデル系の予測可能性を実証するために、低分子ライブラリのインシリコスクリーニングを実施し、27種の化合物をβ-catの結合剤候補として特定した。ヒットした化合物を実験的に検証して、3種類の強力なWntレポーター活性阻害剤が特定された。そのうち、化合物GB1874は、インビトロ及びインビボの表現型アッセイの両方で、強固なWnt腫瘍阻害表現型を誘発することがわかった。これらの結果、並びにさらなるインシリコでのスクリーニング及び生物学的スクリーニングに基づいて、Wntレポーター活性を強く阻害する化合物群が特定された。
【0010】
1つの態様では、本明細書で提供されるのは、β-カテニン(β-cat)を阻害することによって、又はβ-catとT細胞因子4(TCF4)との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療のための医薬の製造における化合物の使用であって、この化合物は式1を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化1】
上記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンス(登場する2つのR)は、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンス(登場する2つのR)は、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化2】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する(複数の)原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
使用である。
【0011】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、β-catを阻害するか又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害する方法であって、β-catを式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩と接触させる工程を含み、
【化3】
上記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化4】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
方法である。
【0012】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、必要とする対象における、β-catを阻害することによって、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療方法であって、治療有効量の式1の化合物又はその薬学的に許容できる塩を投与する工程を含み、
【化5】
上記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化6】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
方法である。
【0013】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、β-catを阻害することによって、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療において使用するための化合物であって、この化合物は、式1を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化7】
上記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化8】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員のシクロアルキル若しくは4~7員のヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
化合物である。
【0014】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、治療法において使用するための化合物であって、この化合物は式1を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化9】
上記式1中
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化10】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の上記の目的及び特徴並びに他の目的及び特徴は、添付の図面と併せて考慮すると、本開示の以下の説明から明らかになるであろう。
【0016】
図1図1は、リガンド発見のためのβ-カテニン構造の生成に使用されるモデリング及びドッキングプラットフォームを描く。3つの結晶構造が出発モデルとして使用された(N=3)。小分子の訓練ライブラリは、3つのβ-カテニンの公知の阻害剤を含む(M=3)。1回の反復の中で、すべてのターゲット構造は、ドッキングされた3つの公知のリガンドのそれぞれの存在下でさらに最適化される。
図2(1)】図2は、Wntシグナル伝達阻害のために予測された化合物のインシリコでの検討を描く。(a)HEK293T STF細胞における予測化合物のTOPFlashレポーター活性。細胞は10μMの化合物で処理され、同時に500ng/mLのWnt3Aで24時間刺激された後、ルシフェラーゼ活性が測定された。化合物で処理された細胞のTOPFlashレポーター活性は細胞生存率で正規化され、DMSO処理した細胞に対する倍率変化として提示された。エラーバーは4反復の標準偏差を表す。(b)iCRT3及びヒット化合物によるTOPFlashレポーター活性の二次用量反応阻害。STF細胞が異なる濃度の化合物で処理され、同時に500ng/mLのWnt3Aで24時間刺激された後、ルシフェラーゼ活性が測定された。様々な濃度の化合物で処理された細胞のルシフェラーゼ活性は、まず同じ濃度での細胞生存率で正規化され、DMSO処理された細胞に対する倍率変化として提示された。IC50値は、4パラメータの非線形回帰を用いて算出された。エラーバーは3反復の標準偏差を表す。
図2(2)】図2は、Wntシグナル伝達阻害のために予測された化合物のインシリコでの検討を描く。(c)iCRT3及び上位3つのヒット化合物の化学構造。(d)iCRT3(i)、及び本研究で発見された3つの新規ヒット化合物GB8679(ii)、GB6853(iii)、及びGB1874(iv)の、最適化された最も充実したβ-カテニン構造(部分的に透明な表面)における予測される結合様式。ドッキングされたリガンドはハイライトされ(実線の棒)、重要なβ-カテニン結合部位の残基も示されている(部分的に透明な棒)。PPIインターフェースを示すために、β-カテニン/TCF4結晶複合体構造(PDBID 1JPW)からのTCF4ペプチドフラグメント(実線)もここに示されている。
図3(1)】図3は、ヒット化合物がWntシグナル伝達経路を介してHCT116細胞に及ぼす影響を描く。(a)β-カテニンとその内因性結合パートナーの共免疫沈降。HCT116細胞が、表示濃度のヒット化合物で18時間処理された。処理された細胞のタンパク質ライセート(可溶化液)からβ-カテニンが免疫沈降され、β-カテニンに結合したTCF4及びEカドヘリンの量がウエスタンブロットにより分析された(上段)。異なる処理のもとでβ-カテニンに結合したTCF4(右下パネル)又はEカドヘリン(左下パネル)が定量され、DMSO処理細胞に対して正規化された。エラーバーは、n=4の独立した実験の標準偏差を表す。対応のある両側のスチューデント(Student)のt検定が、DMSO対照と化合物処理との間で実施された。 P<0.05、ns P>0.05。
図3(2)】図3は、ヒット化合物がWntシグナル伝達経路を介してHCT116細胞に及ぼす影響を描く。(b)HCT116細胞がDMSO又は50μMの化合物のいずれかで18時間処理された。Wnt標的タンパク質であるc-Met、サイクリンD1、及びサバイビンの発現がウエスタンブロット法により測定された。(c)HCT116細胞が、DMSO又は50μMの化合物のいずれかで18時間処理された。Wnt経路関連タンパク質であるEカドヘリン、β-カテニン、及びTCF4の発現がウエスタンブロット法により測定された。
図3(3)】図3は、ヒット化合物がWntシグナル伝達経路を介してHCT116細胞に及ぼす影響を描く。(d)表面プラズモン共鳴(SPR)法による化合物GB1874のカテニンに対する代表的な結合曲線。定常応答値が化合物GB1874のそれぞれの濃度に対してプロットされ、解離定数K(n=3)が、Hillスロープ(Hill slope)カーブフィッティング式による特異的結合を用いて算出された。(e)化合物GB1874によるβ-カテニン及びGST-TCF4の結合のSPR用量反応阻害。IC50値(n=2)は、4パラメータの非線形回帰を用いて算出された。
図4(1)】図4は、ヒット化合物による成長阻害、及びそれらがWnt駆動細胞の幹細胞性に及ぼす影響を描く。(a)10μMの化合物で毎日処理されたHCT116細胞の成長曲線。化合物処理とDMSO対照との間の有意性を判断するために、ダネット(Dunnett)の多重比較検定を用いた一元配置反復測定ANOVAが実施された。 p<0.05、*** p<0.001。(b)HCT116細胞のコロニー形成に対するヒット化合物の効果。HCT116細胞が6ウェルプレートで培養され、DMSO又は30μMの化合物で7日間処理された後、細胞は固定され、クリスタルバイオレットで染色された。得られたコロニーの数がカウントされた。両側のスチューデントのt検定が、化合物処理とDMSO対照との間で実施された。*** P<0.001。
図4(2)】図4は、ヒット化合物による成長阻害、及びそれらがWnt駆動細胞の幹細胞性に及ぼす影響を描く。(c)HCT116細胞のスフェロイド形成に対するヒット化合物の効果。HCT116細胞が超低付着性の96ウェルプレートで培養され、DMSO又は30μMの上記化合物のいずれかで14日間処理された後、200μm以上のサイズのスフェロイドの数が測定された。両側のスチューデントのt検定が、化合物処理とDMSO対照との間で実施された。*** p<0.001、** p<0.01。スケールバーは1mmを表す。(d)HCT116細胞を異種移植したNSGマウスが、ビヒクル対照(n=6)又は50mg/kgのGB1874(n=6)で1日おきに2週間、i.p.経由で処理された。腫瘍体積が経時的に追跡された。17日目に、両側のスチューデントのt検定が、対照と処理との間で実施された。 P<0.05。
図5(1)】図5は、iCRTの類似体について、インシリコで予測されたドッキングスコア及びインビトロの細胞ベースのIC50値を描く。DOCKスコアが低いほど、より良い結合が予測される。RANKスコアが低いほど、より良い結合が予測される。好ましい(1)、中立(0)、好ましくない(-1)。()が多いほど、ランキングが高い。nd=決定せず。
図5(2)】図5(1)の続きである。
図5(3)】図5(2)の続きである。
図6A図6Aは、Enamine(エナミン)薬理学的多様性化合物ライブラリから特定された上位27種の化合物のDOCKスコアを示す。
図6B(1)】図6Bは、Enamine薬理学的多様性化合物ライブラリから特定された上位27種の化合物の構造を描く。
図6B(2)】図6B(1)の続きである。
図7図7は、(a)24時間の化合物処理の後のSTF細胞の細胞生存率を描く。化合物で処理した細胞の生存率の測定値は、DMSO処理した細胞に対して正規化された。エラーバーは4反復の標準偏差を表す。(b)24時間処理後のSTF細胞の生存率に対するiCRT3及びヒット化合物の用量応答効果。化合物で処理された細胞の生存率測定値は、DMSO処理された細胞に対して正規化された。IC50値は、4パラメータの非線形回帰を用いて算出された。エラーバーは3反復の標準偏差を表す。
図8(1)】図8は、(a)β-カテニンリガンドに対する異なる濃度の分析対象化合物GB1874の結合センサグラムを描く。
図8(2)】(b)GST-TCF4リガンドに対する50nMのβ-カテニン分析対象の結合センサグラム。β-カテニンは、GST-TCF4への結合の前に、異なる濃度の化合物GB1874と15分間プレインキュベートされた。
図9(1)】図9は、(a)DLD-1及び(b)SW480細胞のスフェロイド形成に対するヒット化合物の影響を描く。この細胞は、超低付着性の96ウェルプレートで培養され、DMSO又は30μMの化合物で7日間処理された後、200μm以上のサイズのスフェロイドの数が測定された。両側のスチューデントのt検定が、化合物処理とDMSO対照との間で実施された。*** p<0.001、** p<0.01、 p<0.05。スケールバーは1mmを表す。
図9(2)】(c)HCT116細胞を異種移植したNSGマウスが、ビヒクル対照(n=6)又は50mg/kgのGB1874(n=6)で1日おきに2週間、i.p.経由で処理された。マウスの体重が経時的に追跡された。17日目に、両側のスチューデントのt検定が、対照と治療との間で実施された。ns P>0.05。
図10図10は、β-カテニン(CTNNB1)及びWnt標的遺伝子の発現に対するGB1874及びその類似体の効果を描く。
図11図11は、GB1874がWntシグナル伝達の阻害を介して、インビボでWnt駆動細胞の成長を阻害したことを描く。(a)HCT116細胞を異種移植したNSGマウスが、ビヒクル対照(n=6)又は50mg/kgのGB1874(n=6)で1日おきに2週間、i.p.経由で処理された。腫瘍体積(左パネル)が経時的に追跡された。ビヒクル対照と処理腫瘍体積との間で二元配置のANOVAが実施された。 P<0.05。エラーバーは平均±SEMを表す。処理終了時の腫瘍の画像が右パネルに示されている。スケールバーは1cmを表す。(b)Ki67及びサイクリンD1の発現に関する腫瘍の代表的なIHC染色(左パネル)。スケールバーは100μmを表す。単位腫瘍面積あたりのサイクリンD1及びKi67を発現する細胞の数の定量化(右パネル)。各マーカーについて、ビヒクル対照と処置の間で片側のスチューデントのt検定が実施された。** P<0.01、 P<0.05、ns P>0.05。エラーバーは3つの腫瘍の平均±SDを表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は、本発明の説明を理解するのに役立つと思われるいくつかの定義である。これらは、一般的な定義として意図されており、決して本発明の範囲をそれらの用語のみに限定することはないが、以下の説明をよりよく理解するために出されたものである。
【0018】
文脈と矛盾する場合を除いて、又は明確に反対に記述されない限り、単数形の整数、工程、又は要素として本明細書に記載されている本発明の整数、工程、又は要素は、記載されている整数、工程、又は要素の単数形及び複数形の両方を明らかに包含する。
【0019】
本明細書全体を通して、文脈と矛盾する場合を除いて、「comprise」という語、又は「comprises」又は「comprising」等の変化形は、記載された工程若しくは要素若しくは整数、又は工程若しくは要素若しくは整数のグループを含むことを意味するが、任意の他の工程若しくは要素若しくは整数又は要素若しくは整数のグループを除外することを意味しないと理解される。従って、本明細書の文脈では、「comprising」という用語は、「including principally,but not necessarily solely(主に含むが、必ずしも単独にではない)」ことを意味する。
【0020】
当業者であれば、本明細書に記載される本発明は、具体的に記載されたもの以外の変形及び変更が可能であることを理解するであろう。本発明は、そのようなすべての変形及び変更を含むと理解されたい。また、本発明は、本明細書で言及され又は示されているすべての工程、特徴、組成物及び化合物を、個別に又はまとめて、並びに上記工程又は特徴の任意の及びすべての組み合わせ又は任意の2つ以上を含む。
【0021】
本明細書の文脈において、用語「アミノ酸」は、少なくとも1つの第1級、第2級、第3級又は第4級のアミノ基、及び少なくとも1つの酸基を有すると定義され、この酸基は、カルボン酸、スルホン酸、若しくはホスホン酸、又はそれらの混合物であってもよい。アミノ基は、酸基(1つ以上)に関して、「α」、「β」、「γ」・・・から「ω」であってもよい。「アミノ酸」の骨格は、ハロゲン、ヒドロキシ、グアニド、複素環式基から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。従って、「アミノ酸」は、その範囲内に、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、リジン、アルギニン及びヒスチジン、タウリン、ベタイン、N-メチルアラニン等も含む。(L)体及び(D)体のアミノ酸が、本発明の範囲に含まれる。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル基」は、その意味の中に、1~10個の炭素原子、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個の炭素原子を有する一価(「アルキル」)及び二価(「アルキレン」)の直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族基を含む。例えば、用語アルキルとしては、メチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
用語「アルケニル基」は、その意味の中に、2~10個の炭素原子、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の炭素原子を有し、アルキル鎖のどこかに、該当する場合はE、Z、シス又はトランスの立体化学のいずれかの少なくとも1つの二重結合を有する一価(「アルケニル」)及び二価(「アルケニレン」)の直鎖又は分岐鎖の不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルケニル基の例としては、エテニル、ビニル、アリル、1-メチルビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタジエニル、2,4-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、2-メチルペンテニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、1-ノネニル、1-デセニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用する用語「アルキニル基」は、その意味の中に、2~10個の炭素原子を有し、炭素鎖のどこかに、少なくとも1つの三重結合を有する一価(「アルキニル」)及び二価(「アルキニレン」)の直鎖又は分岐鎖の不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルキニル基の例としては、エチニル、1-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-メチル-2-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1-ペンチニル、1-ヘキシニル、メチルペンチニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、1-ノニル、1-デシニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用する場合、「アリール」は、芳香族単環式炭化水素環系、又は2つ以上の芳香族炭化水素環が一緒に縮合している(すなわち、共通の結合を有する)か、若しくは少なくとも1つの芳香族単環式炭化水素環が1つ以上のシクロアルキル及び/若しくはシクロヘテロアルキル環に縮合している多環式環系を指す。アリール基は、その環系に6~24個の炭素原子を有することができ(例えば、C~C24アリール基)、複数の縮合環を含むことができる。特定の実施形態では、多環式アリール基は、8~24個の炭素原子を有することができる。アリール基の任意の適切な環位置は、定義された化学構造に共有結合することができる。芳香族炭素環(複数可)のみを有するアリール基の例としては、フェニル、1-ナフチル(二環式)、2-ナフチル(二環式)、アントラセニル(三環式)、フェナントレニル(三環式)、ペンタセニル(五環式)等の基が挙げられる。少なくとも1つの芳香族炭素環が1つ以上のシクロアルキル環及び/又はシクロヘテロアルキル環に縮合している多環式環系の例としては、とりわけ、シクロペンタンのベンゾ誘導体(すなわち、5,6-二環式シクロアルキル/芳香族環系であるインダニル基)、シクロヘキサンのベンゾ誘導体(すなわち、6,6-二環式シクロアルキル/芳香族環系であるテトラヒドロナフチル基)、イミダゾリンのベンゾ誘導体(5,6-二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるベンゾイミダゾリニル基)、及びピランのベンゾ誘導体(すなわち、6,6-二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるクロメニル基)が挙げられる。アリール基の他の例としては、ベンゾジオキサニル基、ベンゾジオキソリル基、クロマニル基、インドリニル基等が挙げられる。特定の実施形態では、アリール基は、任意に置換されていてもよい。特定の実施形態では、アリール基は別のアリール基で置換されており、このアリール基はビアリール基と呼ぶことができる。ビアリール基のアリール基の各々は、任意に置換されていてもよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、及びセレン(Se)から選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む芳香族単環式環系、又は、環系に存在する環の少なくとも1つが芳香族であり、少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む多環式環系を指す。多環式ヘテロアリール基は、2つ以上のヘテロアリール環が縮合したものだけでなく、1つ以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環、及び/又は非芳香族シクロヘテロアルキル環と縮合した少なくとも1つの単環式ヘテロアリール環を有するものも含む。ヘテロアリール基は、全体として、例えば、5~24個の環原子を有し、1~5個の環ヘテロ原子を含むことができる(すなわち、5~20員のヘテロアリール基)。ヘテロアリール基は、安定した構造をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子で、定義された化学構造に結合することができる。一般に、ヘテロアリール環は、O-O、S-S、又はS-O結合を含まない。しかしながら、ヘテロアリール基中の1つ以上のN原子又はS原子は、酸化されてもよい(例えば、ピリジンN-オキシド、チオフェンS-オキシド、チオフェンS,S-ジオキシド)。ヘテロアリール基の例としては、例えば、以下に示す5員又は6員の単環式及び5~6員の二環式の環系が挙げられる。ここで、Tは、O、S、NH、N-アルキル、N-アリール、N-(アリールアルキル)(例えば、N-ベンジル)、SiH、SiH(アルキル)、Si(アルキル)、SiH(アリールアルキル)、Si(アリールアルキル)、又はSi(アルキル)(アリールアルキル)である。このようなヘテロアリール環の例としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、2-メチルキノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、シンノリニル基、1H-インダゾリル基、2H-インダゾリル基、インドリジニル基、イソベンゾフリル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、プテリジニル基、プリニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピリジニル基、フロピリジニル基、チエノピリジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピリドピリダジニル基、チエノチアゾリル基、チエノオキサゾリル基、チエノイミダゾリル基等が挙げられる。ヘテロアリール基のさらなる例としては、4,5,6,7-テトラヒドロインドリル基、テトラヒドロキノリニル基、ベンゾチエノピリジニル基、ベンゾフロピリジニル基等が挙げられる。特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、任意に置換されていてもよい。
【0027】
本明細書で使用する用語「シクロアルキル」は、環状の飽和脂肪族基を指し、その意味の中に、3~10個の炭素原子、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の炭素原子を有する一価(「シクロアルキル」)及び二価(「シクロアルキレン」)の飽和、単環式、二環式、多環式、又は縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、2-メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、2-メチルシクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用する用語「シクロアルケニル」は、環状の不飽和脂肪族基を指し、その意味の中に、3~10個の炭素原子を有し、アルキル鎖のどこかに、該当する場合はE、Z、シス又はトランスの立体化学のいずれかの少なくとも1つの二重結合を有する一価(「シクロアルケニル」)及び二価(「シクロアルケニレン」)の単環式、二環式、多環式又は縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用する用語「ヘテロシクロアルキル」は、その意味の中に、3~10個の環原子を有し、1~5個の環原子がO、N、NH、又はSから選択されるヘテロ原子である一価(「ヘテロシクロアルキル」)及び二価(「ヘテロシクロアルキレン」)の飽和、単環式、二環式、多環式の又は縮合した炭化水素ラジカルを含む。例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、キヌクリジニル、アゼチジニル、モルホリニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル等が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する用語「ヘテロシクロアルケニル」は、その意味の中に、3~10個の環原子を有し、少なくとも1つの二重結合を有し、1~5個の環原子がO、N、NH又はSから選択されるヘテロ原子である一価(「ヘテロシクロアルケニル」)及び二価(「ヘテロシクロアルケニレン」)の飽和、単環式、二環式、多環式又は縮合多環式の炭化水素ラジカルを含む。
【0031】
本明細書で使用する用語「ヘテロ芳香族基」及び「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリーレン」等の変化形は、その意味の中に、6~20個の原子を有し、1~6個の原子がO、N、NH及びSから選択されるヘテロ原子である一価(「ヘテロアリール」)及び二価(「ヘテロアリーレン」)の単核の、多核の、共役した、及び縮合した芳香族ラジカルを含む。このような基の例としては、ピリジル、2,2’-ビピリジル、フェナントロリニル、キノリニル、チオフェニル等が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」又は「ハライド」若しくは「ハロ」等の変化形は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0033】
本明細書で使用する用語「ヘテロ原子」又は「ヘテロ」等の変化形は、O、N、NH及びSを指す。
【0034】
本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、直鎖又は分岐鎖のアルキルオキシ基を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用する用語「アミノ」は、-NRの形の基を指し、式中、R及びRは、水素、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、及び置換されていてもよいアリール基を含むがこれらに限定されない群から個別に選択される。
【0036】
本明細書で使用する用語「芳香族基」、又は「アリール」若しくは「アリーレン」等の変化形は、6~10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素の一価(「アリール」)及び二価(「アリーレン」)の単核の、多核の、共役した、及び縮合した残基を指す。そのような基の例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル等が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用する用語「アラルキル」は、その意味の中に、二価の飽和の、直鎖及び分岐鎖のアルキレンラジカルに結合した一価(「アリール」)及び二価(「アリーレン」)の単核の、多核の、共役した、及び縮合した芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0038】
本明細書で使用する用語「ヘテロアラルキル」は、その意味の中に、二価の飽和の、直鎖及び分岐鎖のアルキレンラジカルに結合した、一価(「ヘテロアリール」)及び二価(「ヘテロアリーレン」)の単核の、多核の、共役した、及び縮合した芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「置換されていてもよい」は、この用語が参照する基が非置換であってもよいし、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、チオアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ハロ、カルボキシル、ハロアルキル、ハロアルキニル、ヒドロキシル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケノイル、アルキノイル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクロキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクロアルキル、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アシルチオ、ホスホノ及びホスフィニル等のリン含有基、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、-C(O)NH(アルキル)、及び-C(O)N(アルキル)から選択される1つ以上の基で置換されていてもよいことを意味する。
【0040】
本発明は、本明細書に開示される化合物の、すべてのジアステレオマー異性体、ラセミ化合物及びエナンチオマーを含めてすべての異性体をその範囲内に含む。従って、式(I)及び(II)は、例えば、E体、Z体、シス体、トランス体、(R)体、(S)体、(L)体、(D)体、(+)体、及び/又は(-)体の化合物を、いずれの場合も適宜含むと理解されるべきである。
【0041】
本発明の文脈では、用語「投与すること」、及び「投与する」及び「投与」を含むその用語の変化形は、任意の適切な手段によって、本発明の化合物又は組成物を生物若しくは表面に接触させる、塗布する、送達する、又は提供することを含む。
【0042】
本明細書で使用する用語「対象」は、治療、観察、及び/又は実験の目的物となる、又はなったことのある動物、典型的には哺乳動物又はヒトを指す。この用語が化合物又は薬剤の投与と関連して使用される場合、この対象は、治療、観察、及び/又は化合物若しくは薬剤の投与の目的物となったことがある。本明細書の文脈において、用語「対象」は、ヒト及び社会的、経済的又は研究的に重要な任意の種の個体を含み、その例としては、ヒツジ属、ウシ属、ウマ属、イノシシ属、ネコ属、イヌ属、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類を含む)、げっ歯類、ネズミ属、ヤギ属、ウサギ属、及び鳥類のメンバーを含むがこれらに限定されない。特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、用語「対象」は、例えば、培養細胞株、生検、血液試料、又は細胞を含む流体試料を含む、対象に由来する細胞試料、組織試料、又は臓器試料を指すことができる。
【0043】
用語「置換された」は、「置換された」を用いた表現で示された基上の1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ、いくつかの実施形態では1つ、2つ又は3つ、他の実施形態では1つ又は2つ)の水素原子が、示された有機基若しくは無機基からの選択物、又は当業者に公知である適切な有機基若しくは無機基で置き換えられていることを示すことを意図しているが、ただし、示された原子の通常の原子価は超えられておらず、かつ置換により安定した化合物が得られることを条件としている。適切な示された有機基又は無機基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシルカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルシリル、及びシアノが挙げられる。加えて、適切な示された基としては、例えば、-X、-R、-O-、-OR、-SR、-S-、-NR、-NR、=NR、-CX、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO、=N、-N、-NRC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NR、-S(=O)O-、-S(=O)R、-OS(=O)OR、-S(=O)NR、-OP(=O)(OR)、-P(=O)(OR)、-C(=O)R、-C(=O)X、-C(S)R、-C(=O)OR、-C(=O)O-、-C(=S)OR、-C(=O)SR、-C(=S)SR、-C(=O)NR、-C(=S)NR、-C(=NR)NRを挙げることができ、式中、各Xは、独立にハロゲン(又は「ハロ」基)、F、Cl、Br、又はIであり、各Rは、独立にH、アルキル、アリール、複素環、保護基又はプロドラッグ部分である。当業者であれば容易に理解できるように、置換基がケト(すなわち、=O)又はチオキソ(すなわち、=S)等である場合、置換された原子上の2つの水素原子がその置換基で置き換えられる。
【0044】
本明細書の文脈において、用語「治療」は、疾患の状態若しくは症状を改善するか、疾患の確立を防ぐか、又は何らかの方法で疾患若しくは他の望ましくない症状の進行を防ぐか、妨げるか、遅らせるか、若しくは逆転させる任意のあらゆる使用を指す。
【0045】
本明細書の文脈において、用語「治療有効量」は、その意味の中に、所望の治療効果をもたらすのに十分な量の本発明の化合物又は組成物を含む。必要とされる正確な量は、治療される種、対象の年齢及び一般的な状態、治療される状態の重症度、投与される特定の薬剤、投与方法等の要因に応じて、対象ごとに異なる。そのため、正確な「有効量」を特定することはできない。しかしながら、任意の所与の症例について、適切な「有効量」は、当業者によって日常的な実験のみを用いて決定されてもよい。
【0046】
本開示は、β-catを阻害すること、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することに有用な化合物であって、この化合物は式1を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化11】
上記式1中、
は-(CR XRであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり、
は、-(CR であり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、水素、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員のシクロアルキルを形成し、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式2を有する部分であり、
【化12】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルからなる群から選択されるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成し、
mは、0~4から選択される整数であり、
nは、0~4から選択される整数であり、
Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない
化合物を提供する。
【0047】
特定の実施形態では、式Iの化合物は、下記化合物を含まない。
【化13】
【0048】
特定の実施形態では、Xは、-O-、-S-であるか、又は存在しない。Xが存在しない例では、Rは、構造-(CR を有することができ、この式中、m、R、及びRは、本明細書に記載される任意の実施形態(複数可)で定義されているとおりである。
【0049】
特定の実施形態では、mは、0~3、0~2、0~1、又は1~2である。特定の実施形態では、XはO又はSであり、mは1である。特定の実施形態では、Xは存在せず、mは1又は2である。
【0050】
特定の実施形態では、mは0~3、0~2、0~1、又は1~2である。
【0051】
特定の実施形態では、nは、0~3、0~2、0~1、又は1~2である。
【0052】
特定の実施形態では、Rは、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、又は-(CR 10であり、この式中、pは、0~4から選択される整数であり、Rは、出現ごとに、独立に、水素又はアルキルであり、R10は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、又はヘテロアラルキルである。特定の実施形態では、R10は、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいフラン、置換されていてもよいチオフェン、置換されていてもよいピロール、置換されていてもよいイミダゾール、置換されていてもよいオキサゾール、置換されていてもよいイソオキサゾール、置換されていてもよいチアゾール、置換されていてもよいピリジン、置換されていてもよいピラジン、又は置換されていてもよいトリアジンである。
【0053】
が-(CR 10である例では、Pは、0~3、0~2、0~1、又は1~2であることができる。特定の実施形態では、Rは、出現ごとに、独立に、水素又はアルキルである。特定の実施形態では、Rは-(CH)R10又は-(CHMe)R10であり、R10は本明細書で定義されるとおりである。
【0054】
特定の実施形態では、Rは、出現ごとに、水素又はアルキルであるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する1つ以上の炭素と一緒になって、3~7員又は3~6員のシクロアルキルを形成する。特定の実施形態では、Rは水素である。
【0055】
特定の実施形態では、Rは、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、又はヘテロアリールである。特定の実施形態では、Rは、アリール、又はヘテロアリールである。特定の実施形態では、Rは、置換されていてもよいフェニルである。
【0056】
特定の実施形態では、Rは、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリールであるか、又は2つのRは、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル若しくは4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成する。
【0057】
2つのRが、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成する例では、この3~7員のヘテロシクロアルキルは、その環系において、酸素、硫黄及び窒素から選択される1つ又は2つのヘテロ原子を含むことができる。
【0058】
及びRが、それらが結合する原子と一緒になって、4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成する例では、当該化合物は、式5を有することができ、又はその薬学的に許容できる塩であることができ、
【化14】
上記式5中、R、R、R及びRの各々は、独立に、本明細書で定義されているとおりであり、mは0~4であり、Aは、環系に酸素、硫黄及び窒素から選択される1つ若しくは2つのヘテロ原子を含む4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル又は4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを表し、Yは、-O-、-N(R)-であるか、又は存在せず、あるいは、当該化合物は、式6を有することができ、又はその薬学的に許容できる塩であることができ、
【化15】
上記式6中、R、R、R、及びRの各々は、独立に、本明細書で定義されているとおりであり、mは0~3であり、Aは、環系に酸素、硫黄及び窒素から選択される1つ若しくは2つのヘテロ原子を含む4~7員の置換されていてもよいシクロアルキル又は4~7員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを表し、Yは、-O-、-N(R)-であるか、又は存在しない。
【0059】
特定の実施形態では、Rは、C~C10アルキル、C~Cシクロアルキル、ビアリール、若しくは多環式炭化水素であるか、又は2つのRが、それらが結合する窒素と一緒になって、3~7員、4~7員、5~7員、又は5~6員の置換されていてもよいヘテロシクロアルキルを形成するか、又は当該化合物は、Aが5~6員の置換されていてもよいシクロアルキルである式6を有する。
【0060】
が式2を有する部位である例では、当該化合物は式7によって表すことができ、又はその薬学的に許容できる塩であることができ、
【化16】
上記式中、各R、R、R、及びmは、それぞれ独立に、本明細書で定義されたとおりである。
【0061】
特定の実施形態では、当該化合物は、式3を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化17】
上記式3中、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
は、アリール又はヘテロアリールであり、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
は、-(C=O)R、-(C=O)OR、若しくは-(C=O)N(Rであるか、又はRは、式4を有する部分であり、
【化18】
は、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスは、それらが結合する窒素と一緒になって、5~6員のヘテロシクロアルキルを形成するか、又はR及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、5~6員のシクロアルキルを形成し、
は、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、
10は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、
Xは、-O-であるか、又は存在しない。
【0062】
特定の実施形態では、当該化合物は、Rが水素であり、Rがアリールであり、Rが、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、R10がアリールであり、Rが、出現ごとに、独立に、水素及びアルキルからなる群から選択され、Rが-(C=O)OR又は-(C=O)N(Rであり、Rが、出現ごとに、独立に、アルキル、シクロアルキル、及びアリールからなる群から選択されるか、又はRの2つのインスタンスが、それらが結合する窒素と一緒になって、5~6員のヘテロシクロアルキルを形成する式3を有する。
【0063】
特定の実施形態では、当該化合物は、式8を有するか、又はその薬学的に許容できる塩であり、
【化19】
上記式8中、
qは、0~2から選択される整数であり、
tは、1又は2であり、
は、置換されていてもよいフェニルであり、
は、水素又はアルキルであり、
10は、置換されていてもよいフェニルであり、
11は、出現ごとに、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、-SR、-OR、-O(C=O)R、-O(C=O)OR、-O(C=O)N(R)、-NR、又は-N(R)(C=O)N(R)からなる群から選択され、式中、Rは、出現ごとに、独立に、水素、アルキル、アリール、若しくはヘテロアリールであるか、又は2つのRは、それらが結合する1つ以上の窒素と一緒になって、3~7員のヘテロシクロアルキルを形成する。
【0064】
特定の実施形態では、当該化合物は、qが0又は1であり、tが1であり、Rが水素又はC~Cアルキルであり、R11がアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、又はヘテロアラルキルである式8を有する。
【0065】
特定の実施形態では、当該化合物は、
【化20】
又はその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。
【0066】
本明細書に記載される化合物の薬学的に許容できる塩は、例えば、非毒性の有機酸又は無機酸からの、当該化合物の従来の非毒性の塩又は第4級アンモニウム塩を含むことができる。例えば、そのような従来の非毒性の塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸から誘導される塩、及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸等の有機酸から調製される塩等が挙げられる。
【0067】
他の場合では、本明細書に記載される化合物は、1つ以上の酸性官能基を含んでもよく、従って、薬学的に許容できる塩基と薬学的に許容できる塩を形成することができる。これらの例における用語「薬学的に許容できる塩」は、本明細書に記載される化合物の比較的非毒性の無機及び有機の塩基付加塩を指すことができる。これらの塩は、同様に、投与ビヒクル若しくは剤形製造プロセスにおいてその場で調製することができ、又は、遊離酸形態にある精製された化合物を、適切な塩基、例えば、薬学的に許容できる金属カチオンの水酸化物、炭酸塩若しくは炭酸水素塩と、アンモニアと、又は薬学的に許容できる有機の第一級、第二級若しくは第三級のアミンと別途反応させることによって調製することができる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等が挙げられる。
【0068】
β-catの阻害又はβ-catとTCF4との相互作用の妨害は、インビトロ、インビボ、又はエキソビボで実施されてもよい。
【0069】
β-catの阻害又はβ-catとTCF4との相互作用の妨害は、本明細書に記載される化合物の1つ以上を、β-cat及びβ-cat-TCF4複合体の少なくとも一方と接触させることによって実施されてもよい。
【0070】
β-cat又はβ-cat-TCF4複合体を式1の化合物と接触させると、β-catの機能の阻害、β-catとTCF4との相互作用の阻害、及びβ-cat/TCF4複合体の妨害のうちの1つ以上をもたらすことができ、さらにWntシグナル伝達の減衰をもたらすことができる。
【0071】
従って、β-catを阻害するか又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害する方法は、β-catの阻害、β-cat/TCF4複合体の妨害、及び/又はWntシグナル伝達経路の減衰が、疾患又は健康状態の改善をもたらす疾患を治療するために使用することができる。
【0072】
β-catとTCF4との相互作用を妨害するとは、β-catとTCF4の会合を阻害すること、又はβ-cat-TCF4複合体の解離を誘導してβ-cat及びTCF4を形成することの一方又は両方を指すことができる。
【0073】
投与するために必要な式1の化合物の量又は濃度は、当業者であれば、周知の方法及び本明細書で提供される開示を用いて容易に決定することができる。
【0074】
本明細書で提供されるのは、必要とする対象における、β-catとTCF4との相互作用を阻害することによって改善される疾患又は健康状態の治療方法であって、治療有効量の本明細書に記載される化合物を投与する工程を含む方法である。特定の実施形態では、この対象はヒトである。
【0075】
本開示は、β-catを阻害することによって、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療に使用するための本明細書に記載される化合物も提供する。
【0076】
本開示はさらに、β-catを阻害することによって、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害することによって改善される疾患又は健康状態の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載される化合物の使用を提供する。
【0077】
上記疾患又は健康状態は、癌、神経変性疾患、代謝性疾患(代謝病)、心血管疾患、線維症、又は骨疾患であることができる。
【0078】
特定の実施形態では、上記疾患又は健康状態は、Wntシグナル伝達経路、Mycシグナル伝達経路及びHippoシグナル伝達経路のうちの1つ以上の異常な活性化を特徴とする癌である。
【0079】
特定の実施形態では、上記疾患又は健康状態は、Wnt/β-catシグナル伝達経路の異常な活性化を特徴とする癌である。
【0080】
異常なWnt/β-cat経路のシグナル伝達は、多くの異なる癌に関与するとされており、この経路における多くの遺伝子異常は、腫瘍の促進及び進行に寄与している可能性がある。Wnt/β-cat経路の活性化は、結腸直腸癌(大腸癌)、黒色腫、肝芽腫、髄芽腫、前立腺癌、並びに子宮及び卵巣の類内膜腺癌7~10等、いくつかのヒトの癌において最も頻繁に見られるシグナル伝達異常の1つである。Wnt/β-cat経路の活性化は乳房の化生癌でもよく見られる11
【0081】
従って、提供される方法は、結直腸癌(大腸癌)、肝細胞癌、黒色腫、肝臓癌、乳癌、前立腺癌、白血病、甲状腺癌、脳癌、髄芽腫、肝芽腫、類腱腫、骨腫、頭頸部癌、並びに子宮及び卵巣の類内膜腺癌からなる群から選択される癌の治療に用いることができる。
【0082】
特定の実施形態では、上記癌は、Wnt/β-catシグナル伝達経路の異常な活性化を特徴とする結直腸癌である。
【実施例
【0083】
仮想化学ライブラリの生成
訓練ライブラリは、iCRT3、iCRT5、及びiCRT1412を含む3つの公知のβ-cat-TCF4複合体の阻害剤、並びに陰性対照としてDUD-Eアプローチ14によりZINCデータベース13から選択された150種の特性適合計算デコイとから構成される。検証用ライブラリは、DasGupta研究室で合成された63種のiCRT3類似体から構成される。バーチャルスクリーニングライブラリは、Enamine(https://enamine.net/)から購入した10240種の化合物で構成される。
【0084】
分子ドッキングスクリーン
ドッキングの前に球及びグリッドを生成した。リガンド由来の球体を受容体由来の球体で補強することにより、データベース化合物をサイト内に配向させるのに役立つ45個のマッチング球体を生成した。リガンド由来の球体は、最初はTCF4ペプチド断片の結晶構造の非水素原子の位置で表され、以降のラウンドではiCRTリガンドのドッキングポーズに置き換えた。受容体由来の球体は、SPHGEN15というプログラムを用いて、結合部位の分子表面から算出した。ドッキングスクリーンは、DOCKバージョン3.616を用いて行った。ドッキングした化合物は、van der Waals項、Poisson-Boltzmann静電項、及びリガンド脱溶媒ペナルティ項の合計であるドッキングエネルギーによってランク付けした。
【0085】
ドッキング性能評価
リガンド予測における構造モデルの精度は、上位スコアの化合物における公知のリガンドに対する改善度(充実度、enrichment)により評価し、この改善度は、初期改善係数EF1と、受信者動作特性(ROC)の)曲線下面積(AUC)に類似しているが初期の改善をより重視する16、17総合改善度logAUCとによって測定した。
【0086】
細胞株
Wnt STFレポーター細胞(TOPFlashレポーターを安定的にトランスフェクトしたHEK 293細胞)及びSTF3Aレポーター細胞(Wnt3Aを構成的に分泌するSTF細胞)は、David Virshup(Duke-NUS Graduate Medical School(デューク-シンガポール国立大学医学部)、シンガポール)からの親切な贈り物であった。HCT116、DLD-1、及びSW480の細胞株はATCCから入手した。Hippo経路TEADレポーター(カタログ番号60618)及びMycシグナル経路レポーター(カタログ番号60520)の細胞株は、BPS Bioscience,Inc.(ビーピーエス・バイオサイエンス)から購入した。
【0087】
培養培地
STF細胞、STF3A細胞、及びDLD-1細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS、Hyclone(ハイクローン)、カタログ番号SV30160.03)及び100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco(ギブコ)、カタログ番号15140122)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Gibcoカタログ番号11965084)で培養した。HCT116、SW480、及びMycのシグナル伝達経路レポーター細胞は、10%FBS及び100U/mLペニシリン-ストレプトマイシンを添加したマッコイの5A培地(Gibco、カタログ番号16600108)で培養した。Mycシグナル伝達経路レポーター細胞用の培地には、さらに400μg/mLのG-418硫酸塩(Gold Biotechnology(ゴールド・バイオテクノロジー)、カタログ番号G-418-5)を添加した。Hippo経路TEADレポーター細胞は、10%FBS、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン、1%MEM非必須アミノ酸(NEAA、Gibco、カタログ番号11140050)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco、カタログ番号11360070)、400μg/mL G-418硫酸塩、及び10μg/mL インスリン(Sigma Aldrich(シグマ・アルドリッチ)、カタログ番号I1882-100MG)を添加したEarle(アール)平衡塩溶液(Earle’s balanced salts、EBSS)(Hyclone、カタログ番号SH30024.01)を含む最小必須培地(MEM)で培養した。スフェロイド形成用の培地は、B27(Gibco、カタログ番号12587010)、100U/mL ペニシリン-ストレプトマイシン、20ng/mL EGF(Gibco、カタログ番号PHG0313)、20ng/mL bFGF(Gibco、カタログ番号PHG0023)、及び3% マトリゲル(matrigel)(Corning(コーニング)、カタログ番号354234)を添加したDMEM/F-12(Gibco、カタログ番号11320082)であった。
【0088】
TOPFlash(Wntシグナル伝達)レポータースクリーン
STF細胞を、96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903及び3904)に1ウェルあたり100μLの培養培地に20,000細胞として播種した。翌日、DMSO中の候補化合物を10μM、1%DMSOの最終濃度で細胞に添加した。また、Wnt3A馴化培地で細胞を刺激した。24時間のインキュベーションの後、製造者のプロトコルに従い、PrestoBlue細胞生存率試薬(Invitrogen(インビトロジェン)、カタログ番号A13262)を用いて細胞の生存率を測定し、一方、TOPFlashレポーター活性はSteady-Gloルシフェラーゼ試薬(Promega(プロメガ)、カタログ番号E2550)を用いて測定した。
【0089】
レポーター株の用量反応
Wntシグナル伝達レポーター
Wnt STFレポーター細胞を、96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903、Falcon(ファルコン)、カタログ番号353072)に、1ウェルあたり100μLの培養培地に20,000細胞として播種した。翌日、DMSOで5倍に希釈した化合物を1%DMSOの最終濃度で細胞に添加した。また、500ng/mLの組み換えヒトWnt3A(RnD systems(アールアンドディ・システムズ)、カタログ番号5036-WN-010)で細胞を刺激した。24時間のインキュベーションの後、製造者のプロトコルに従い、細胞計数キット-8(CCK-8、Dojindo(同仁化学研究所) カタログ番号CK04)細胞生存率試薬を用いて細胞の生存率を測定し、一方、TOPFlashレポーター活性はSteady-Gloルシフェラーゼ試薬を用いて測定した。
【0090】
Wnt STF3Aレポーター細胞を、96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903、Falcon、カタログ番号353072)に1ウェルあたり100μLの培養培地に20,000細胞として播種した。翌日、DMSOで5倍に希釈した化合物を1%DMSOの最終濃度で細胞に添加した。24時間のインキュベーションの後、製造者のプロトコルに従い、細胞計数キット-8(CCK-8、Dojindoカタログ番号CK04)細胞生存率試薬を用いて細胞の生存率を測定し、一方、TOPFlashレポーター活性はSteady-Gloルシフェラーゼ試薬を用いて測定した。
【0091】
Mycシグナル伝達レポーター
Mycレポーター(Luc)-HCT116細胞を、96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903、Falcon、カタログ番号353072)に、1ウェルあたり100μLのアッセイ培地に25,000細胞として播種した。アッセイ培地は、G-418を含まない成長培地からなる。翌日、DMSOで4倍に希釈した化合物を1%DMSOの最終濃度で細胞に添加した。24時間のインキュベーションの後、PrestoBlue細胞生存率試薬を用いて細胞の生存率を測定し、一方、Steady-Gloルシフェラーゼ試薬を用いてルシフェラーゼレポーター活性を測定した。
【0092】
Hippoシグナル伝達レポーター
Hippo TEADレポーター細胞を、96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903、Falcon、カタログ番号353072)に、1ウェルあたり100μLのアッセイ培地に100,000細胞として播種した。アッセイ培地はG-418を含まない成長培地からなる。翌日、DMSOで5倍に希釈した化合物を1%DMSOの最終濃度で細胞に添加した。24時間のインキュベーションの後、CCK-8細胞生存率試薬を用いて細胞の生存率を測定し、一方、Steady-Gloルシフェラーゼ試薬を用いてルシフェラーゼレポーター活性を測定した。
【0093】
CRC細胞株を用いた用量反応試験
HCT116細胞、DLD-1細胞、及びSW480細胞を、96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903)に1ウェルあたり100μLの成長培地に5,000細胞として播種した。翌日、DMSOで5倍に希釈した化合物を、1%のDMSOの最終濃度で細胞に添加した。24時間のインキュベーションの後、製造者のプロトコルに従ってCellTiter-Glo発光細胞生存率試薬(Promega、カタログ番号G7573)を用いて細胞の生存率を測定した。
【0094】
用量反応試験のデータ解析
各プレートについて、DMSO処理したウェルからの平均シグナルを算出し、各処理ウェルからのシグナルを、それぞれのプレートからの平均DMSOシグナルに対して正規化した。正規化した値をGraphPad(グラフパッド) Prism 5を用いて試験した濃度に対してプロットし、3パラメータ又は4パラメータの非線形回帰によりEC50値を決定した。
【0095】
増殖アッセイ
HCT116細胞を、96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3903)に1ウェルあたり100μLの成長培地に3,000細胞として播種し、一晩付着させた。その後、細胞を、10μM、0.1%DMSOの最終濃度の化合物で4日間連続処理し、毎日培地交換を行った。毎日の細胞増殖は、製造者のプロトコルに従ってCellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイ(Promega、カタログ番号G7573)を用いて測定した。
【0096】
スフェロイド形成アッセイ
HCT116細胞、DLD-1細胞、及びSW480細胞を、96ウェル超低付着性プレート(Corning、カタログ番号3474)に1ウェルあたり200μLのスフェロイド培地に150細胞として播種した。上記化合物は、30μM、0.5%DMSOの最終濃度で、細胞播種の日に添加した。細胞を37℃、5%COで培養し、細胞播種後7日目及び10日目に、形成されたスフェロイドの画像を、Operetta CLSシステム(Perkin Elmer(パーキン・エルマー))を用いて取得した。
【0097】
ウエスタンブロット法
HCT116細胞を、50μM、1%DMSOの最終濃度で、化合物で18時間処理した。細胞を、cOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche(ロシュ)、カタログ番号11697498001)及びPhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche、カタログ番号04906837001)を含むRIPAバッファ(Thermo(サーモ)、カタログ番号89900)中で氷上で溶解した。試料あたり30μgの全細胞タンパク質をSDS-PAGEで分離し、PVDF膜(Millipore(ミリポア)、カタログ番号IPVH00010)にブロッティングした。一次抗体を4℃で一晩インキュベートし、ブロットをIRDye 800CWヤギ抗ウサギ抗体(LI-COR、カタログ番号926-32211)又はIRDye 680RDヤギ抗マウス抗体(LI-COR、カタログ番号926-68070)のいずれかで1:5000の希釈で検出した。シグナルはLI-COR Odyssey CLxイメージングシステムで可視化し、バンドはLI-COR Image Studioデータ解析ソフトウェアを用いて数値化した。使用した一次抗体は、Met(Cell Signalling Technology(セル・シグナリング・テクノロジー)、カタログ番号8198、1:1000)、サイクリンD1(Cell Signalling Technology、カタログ番号2978、1:1000)、サバイビン(Santa Cruz(サンタクルーズ)、カタログ番号sc-10811、1:500)、ECAD(Cell Signalling Technology、カタログ番号3195、1:1000)、TCF4/TCF7L2(Cell Signalling Technology、カタログ番号2569、1:1000)、β-cat(Cell Signalling Technology、カタログ番号8480、1:1000)、β-アクチン(Abcam(アブカム)、カタログ番号ab8226、1:3000)であった。
【0098】
共免疫沈降法
HCT116細胞を指示濃度の化合物で18時間処理した。20mM HEPES、pH7.5、137mM NaCl、1.5mM MgCl、1mM EGTA、1mM ジチオトレイトール(DTT)、1% Triton X-100、10%グリセロール、cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、カタログ番号11697498001)、及び1mM NaVOを含む溶解バッファを用いて、氷上で細胞を溶解した。清澄にしたタンパク質ライセートの各試料を、4μgの抗β-cat抗体(Sigma(シグマ)、カタログ番号C7207)と4℃で一晩インキュベートし、続いて50μLのスラリー状のDynabeads Protein G(Invitrogen、カタログ番号10004D)と4℃で1時間インキュベートした。その後、ビーズを4℃の溶解バッファで3回洗浄し、ビーズを30μL(1試料あたり)のSDS試料バッファと一緒に95℃で7分間加熱することにより、結合したタンパク質を溶出させた。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜(Millipore、カタログ番号IPVH00010)にブロッティングした。一次抗体を4℃で一晩インキュベートし、ブロットをIRDye 800CWヤギ抗ウサギ抗体(LI-COR、カタログ番号926-32211)又はIRDye 680RDヤギ抗マウス抗体(LI-COR、カタログ番号926-68070)のいずれかで1:5000の希釈で検出した。シグナルはLI-COR Odyssey CLxイメージングシステムで可視化し、バンドはLI-COR Image Studioデータ解析ソフトウェアを用いて数値化した。使用した一次抗体は、E-カドヘリン(Abcam、カタログ番号ab15148、1:1000)、TCF4/TCF7L2(Cell Signalling Technology、カタログ番号2569、1:1000)、β-cat(Cell Signalling Technology、カタログ番号8480、1:1000)であった。
【0099】
タンパク質の発現及び精製
Hisタグ付きヒトβ-cat(134-668)のpET-28β-cat発現ベクターを保有するBL21(DE3)細胞を37℃で、OD600=0.6~0.8になるまで培養した。その後、この細胞を、500μMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて23℃で6~8時間誘導した。細胞を、20mM Tris(トリス)(pH 8.8)、250mM NaCl、2mM DTT、5%グリセロール、0.1% Triton X-100、及びcOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル(EDTAなし、Roche、カタログ番号11873580001)を含む溶解バッファに、超音波処理によって溶解した。ライセートをNi-NTAアガロースビーズ(Qiagen(キアゲン)、カタログ番号30210)と4℃で1時間インキュベートした後、ビーズを20mMイミダゾールを含む溶解バッファで洗浄した。結合したタンパク質は、20mM Tris(pH8.8)、250mM NaCl、0.5mM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、5%グリセロール、及び250mMイミダゾールを含むバッファで溶出した。
【0100】
GSTタグ付きTCF4 N末端ドメインを、BL21(DE3)細胞で同様に発現させ、IPTGを用いて23℃で2~4時間誘導した後、20mM Tris(pH8.8)、250mM NaCl、0.5mM TCEP、5%グリセロール、及び10mM還元型グルタチオンを含むバッファを用いてグルタチオンアガロースビーズ(Pierce(ピアース)、カタログ番号16100)から精製した。
【0101】
表面プラズモン共鳴(SPR)による研究
β-catへの結合
表面プラズモン共鳴実験は、BIACORE T100(GE Healthcare(ジーイー・ヘルスケア))を用いてCM5シリーズSセンサチップ(GE Healthcare、カタログ番号BR-1005-30)上で行った。ヒスタグ付きのβ-cat(60kDa、SDS-PAGEによる純度90%超)をアミンカップリング化学で固定化した。フローセル1及び2の表面を、0.1M NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)及び0.1M EDC(3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル-N-エチルカルボジイミド)の1:1混合物で5μL/分の流量で活性化した。フローセル2には、PBS、pH6.0中の1μMの濃度のリガンドを8000RUの密度で固定化し、フローセル1は基準面として機能するようにブランクのままとした。どちらの表面も1Mエタノールアミン(pH8.0)でブロッキングした。結合データを収集するために、5%のDMSOを含むPBS(pH7.5)中の化合物GB1874を、125μM、100μM、80μM、60μM、40μM及び20μMの濃度で、30μL/分の流量及び25℃の温度で2つのフローセル上に注入した。複合体はそれぞれ120秒及び600秒の間、会合及び解離をさせた。50mMのNaOHを30秒間注入して表面を再生した。RU反応を収集し、GraphPad Prism 5を用いて、試験したGB1874の濃度に対してプロットした。解離定数Kは、Hillスロープカーブフィッティング機能を用いた非線形特異的結合により得た。
【0102】
β-cat-TCF4相互作用の阻害
GSTタグTCF4 N末端ドメイン(31kDa、SDS-PAGEによる純度90%超)をアミンカップリング化学を用いてCM5シリーズSセンサチップに固定化した。10mmクエン酸バッファ、pH4.0、中の0.5μMの濃度のリガンドを400RUの密度でフローセル4に固定し、フローセル3は基準面として機能するようにブランクのままとした。阻害試験では、50nMのHisタグ付きβ-catを、5%DMSOを含むPBS中で異なる濃度の化合物GB1874と室温で15分間プレインキュベートした。この混合物を30μL/分の流量で、25℃の温度で上記2つのフローセル上に注入した。複合体をそれぞれ60秒間、会合及び解離をさせ、50mMのNaOHを30秒間注入して表面を再生した。RU反応を収集し、GraphPad Prism 5を用いて、試験したGB1874の濃度に対してプロットした。化合物GB1874の阻害性IC50値は、4パラメータの非線形回帰により得た。
【0103】
マウス異種移植及び化合物処理
HCT116細胞(1部位あたり1×10細胞)を、5~7週齢のNSG(NOD scid gamma)マウス(Jackson Laboratory(ジャクソン・ラボラトリー)、ストック番号005557)の右脇腹に皮下移植した。腫瘍体積が60~100mmに達した時点で、動物を処置群又は対照群のいずれかに無作為に割り付けた。処置群のマウスには、50mg/kgの化合物GB1874を1日おきに腹腔内注射で投与した。同時に、対照群のマウスには、化合物を含まない希釈液を投与した。化合物GB1874は、60mg/mLの濃度になるようにDMSOに溶解し、最終濃度が3mg/mL、5%DMSOになるように生理食塩水中の5%PEG300、5%Tween-80で希釈して調製した。2日に1回、ノギスを用いて腫瘍の長さと幅を測定した。腫瘍体積は、以下の修正楕円体式を用いて推定した:腫瘍体積=1/2(長さ×幅)。対照群の腫瘍が2000mmに達した時点でマウスを安楽死させた。
【0104】
結果
β-cat構造モデルの生成
将来のリガンド予測に用いるβ-catの最終的な構造モデルは、β-cat-Tcf3複合体、β-cat-TCF4複合体、及びβ-cat-BCL9-TCF4複合体(PDBコード:それぞれ、1G3J18、1JPW19、及び2GL720)を含めた3つのβ-cat結晶構造から、1)最適化(訓練)、2)EF1及びlogAUCで測定したリガンドの改善度に基づくブラインドテスト(検証)の2つの段階を経て得た。最適化は、組織内の自動モデリング・ドッキングプラットフォーム(図1)によって達成した。第一に、MetaPocket21によりβ-catの結晶構造(PDBコード:1JPW)において推定リガンド結合部位を予測した。この部位は、β-catのアルマジロリピート4-9によって形成される荷電溝と重なっており、この荷電溝はβ-cat-TCF4相互作用界面と重なっている。それゆえ、今回の研究では、この部位に注目した。第二に、β-catの3つの結晶構造にSCWRL22による側鎖サンプリングを行い、別の3つの構造を導入した。この6つのβ-cat構造のセットが、訓練の出発点となった。第三に、β-catのコンフォメーション空間をより広く探索するために、訓練ライブラリ(153種の化合物)を上記6つのβ-cat構造すべてにドッキングし、リガンドの改善度でドッキング性能を評価し、ドッキングした各リガンド(iCRT3、iCRT5、iCRT14)の存在下でPLOP(Protein Local Optimization Program)23を用いて結合部位の側鎖を最適化した。この工程は、いくつかの最適化された構造が、任意の閾値(logAUC≧40及びEF1≧30)よりも優れたリガンド改善性能を示すまで繰り返し行った。
【0105】
β-cat-TCF4相互作用の低分子阻害剤の予測
訓練段階での最良のβ-cat構造は、訓練ライブラリの総合的なリガンド改善度logAUC=44.2、及び初期リガンド改善度EF1=33.3を示した。訓練ライブラリの153種の化合物の中では、最も強力な公知の阻害剤であるiCRT3が最も優れていると評価された。ドッキングで生成した複合体構造におけるβ-catとiCRT3との相互作用を解析した。iCRT3のオキサゾール基は、R469と水素結合を、β-cat-TCF4結晶構造においてTCF4のE17と塩橋を形成するK508とカチオン-π相互作用を形成していた(図2D)。一方、iCRT3のフェニル基は、TCF4のI19及びF21と相互作用することが示されているR386、N426及びP463が囲むポケットに詰め込まれている。加えて、オキサゾール基及びフェニル基をつなぐiCRT3のアミド基は、β-catのE462との別の水素結合によって安定化されており、iCRT3のエチルフェニル基は、K508、V511及びR515が囲むポケットを満たしていた。
【0106】
この最も改善(充実)したβ-cat構造を、63種のiCRT3類似化合物を含む検証用ライブラリを用いてブラインドテストに供した(図5)。DOCKエネルギースコアによるドッキングランクと、人間の介入によるドッキングポーズの両方を考慮して、バーチャルスクリーニングから19種のリガンド候補を選択した(図5)。一方、63種の化合物すべてを、HEK 293細胞にTOPFlashレポーター(STF細胞)を安定的にトランスフェクトしたWntレポーターアッセイで、単濃度で試験したところ、12種の化合物が活性を示した(データは示さず)。これらの12種の化合物をさらにSTF細胞に対して様々な濃度で試験したところ、5種の化合物が公知の阻害剤であるiCRT3と同等かそれ以下のIC50値を示した(図5)。実際、これら5つの強力な阻害剤はすべて、ドッキングによって最上位のリガンド候補として優先的に順位付けされた。これは、訓練によって生成された最も改善された構造が、新規リガンドを予測できることを示唆している。
【0107】
新規リガンド予測のための方法論を機能的に検証した後、10240種の小分子のライブラリ(Enamineから購入)を、最も改善されたβ-catの構造に対して計算によりスクリーニングした。スクリーニングしたライブラリの4.0%にあたる500種の上位スコアのヒット化合物を手動で分析した。27種の化合物(図6)を、(1)β-cat-TCF4相互作用の妨害、(2)水素結合等のβ-cat残基との好ましい相互作用の形成、及び(3)足場(スカフォールド)の化学的新規性、という3つの基準に基づいて実験的なテストのために選択した。
【0108】
TOPFlash/Wnt-レポーターアッセイを用いた予測阻害剤の機能検証
ドッキング研究から特定された27種の化合物を、まず、STF-レポーター細胞におけるWntシグナルを阻害する能力について、10μMでスクリーニングした(図2A)。このスクリーニングから、3つの化合物を特定した。これらの化合物は、Wntシグナル伝達を、DMSO対照と比較して平均して50%を超えて阻害する一方で、細胞に対する毒性は25%未満であった(図7A)。STFレポーターに対する3種のヒット化合物の用量反応研究では、これらの化合物がマイクロモルの低いIC50値でWntシグナル伝達経路を阻害することが明らかになった(図2B)。これらの化合物はレポーター細胞の生存率にも影響を与えるが、細胞生存率のEC50値はレポーターのIC50値よりも少なくとも4倍大きかった(図7B)。心強いことに、3種のヒット化合物は、本発明者らが以前に報告した化合物であるiCRT3と比較して、約2~5倍強力なWnt経路の阻害剤であった。興味深いことに、3種のヒット化合物の化学構造は異なっていた(図2C)。
【0109】
阻害剤候補の特異性
ヒット候補化合物の作用機序をさらに理解するために、レポーター細胞株を用いて、他のシグナル伝達経路活性に対するこれらの低分子の効果を検討した。最初のスクリーニング及び用量反応試験は、外因性のWnt3Aを加えてWntシグナルを活性化しなければならないSTFレポーター株で実施した。内因的にWnt3Aを発現しているSTFレポーター細胞株であるSTF3Aレポーター細胞株への影響も調べた。その結果、STF3Aレポーター細胞株ではWntシグナルが構成的に活性化される。得られたIC50値に基づき、iCRT3及び化合物GB1874はともに、初期の活性化状態にかかわらず、Wnt経路の強力な阻害剤であると判定した(表1)。しかしながら、化合物GB6853及びGB8679は、Wnt経路の活性化を強力に阻害できるが(STF IC50値はそれぞれ4.8μM及び7.0μM)、それらは、Wnt経路がすでに活性化されている場合には効果がない(100μMを超えるSTF3A IC50値)。これは、これらの化合物が、既存の(例えばSTF3A細胞)β-cat-TCF4複合体と、新たに形成された(例えばSTF細胞)β-cat-TCF4複合体とに対して、それらを破壊する能力が異なることに起因すると考えられる。
【0110】
ルシフェラーゼ遺伝子の発現がMyc応答配列の制御下にあるMycレポーター細胞株に対する上記化合物の効果も調べた。Wnt標的遺伝子の1つがMycであることから、Wntシグナルを阻害すれば、Mycシグナル伝達も阻害されることになる。Mycレポーターに対する化合物の有効性は、STF3Aレポーターの有効性を反映しており、STF3AレポーターにおけるWnt経路の強力な阻害剤は、Mycレポーターの強力な阻害剤でもあった(表1)。
【0111】
最後に、候補となったヒット化合物をHippo経路レポーターに対して試験した。Hippo経路レポーターでは、TEAD応答配列がルシフェラーゼの発現を促す。Hippo経路が活性化されると、TEADの転写活性化が低下するため、レポーターのシグナルを低下させる化合物は、Hippo経路を活性化させ、その逆もまた同様である。興味深いことに、iCRT3によってHippo経路が活性化できること、及び化合物GB8679がHippo経路の強力な阻害剤であることが見出された(表1)。Wnt経路はHippo経路とクロストークを起こす可能性があるため24、GB8679によるHippoシグナル伝達の阻害は、Wnt標的遺伝子の発現を低下させることにおけるその有効性に間接的に影響を与えるのではないかと考えられた。
【0112】
β-catの3つの候補低分子結合剤のインシリコで予測された異なる結合様式
2つのヒット化合物GB8679及びGB6853のβ-catに対する結合様式は、iCRT3と類似している。例えば、両化合物は、R386、N426、P463及びK508、V511、R515によってそれぞれ囲まれた2つのポケットを、その巨大な疎水性基で占めていた。一方、K508とR469との間の裂け目も、両化合物のチアゾール基が水素結合及び塩橋を形成して埋めていた(図2D)。しかしながら、第3のヒット化合物GB1874は、iCRT3及び他の2つのヒット化合物とは異なる結合様式を示した。GB1874は、K508とR469の間の裂け目にトリアゾール基を、R386、N426、P463及びK508、V511、R515で囲まれた2つのポケットに疎水基を詰め込んでいた。加えて、GB1874のエチルフェニル基は、H470、R474及びK435で囲まれたポケットに詰まっていた。際だったことは、β-cat-TCF4複合体の結晶構造におけるこのポケットはTCF4のD16残基によって占有されていることであり、このD16残基は、β-catのK435と塩橋を形成し、β-cat-TCF4間の重要な相互作用を担っている25。TCF4のD16又はβ-catのK435の一アミノ酸置換が、これらの相互作用を妨害し、下流の転写活性を著しく低下させるためには十分である25、26。総合して、GB1874のこの独特の結合様式のために、GB1874がiCRT3及び他の2つのヒット化合物と比較して、より強力にβ-cat-TCF4相互作用を妨害できるとの仮説が立てられた。
【0113】
ヒット化合物は、β-cat-TCF4相互作用を妨害し、Wnt標的遺伝子の発現を低下させる
上記化合物はβ-catタンパク質に対するインシリコでのドッキング研究によって特定されたので、生物学的に関連する細胞株において、β-cat-TCF4相互作用を妨害する他の化合物の能力を調べた。その結果、HCT116 CRC細胞において、β-catとその相互作用するパートナーの共免疫沈降(co-IP)を行った。化合物処理によってβ-catに結合したタンパク質をウエスタンブロットで分析したところ、3つのヒット化合物のうち、化合物GB1874だけがiCRT3と同程度にβ-cat-TCF4相互作用を低下させることができることが明らかになった(図3A)。興味深いことに、化合物GB1874は、β-cat-TCF4相互作用に影響を与えるものの、β-cat-ECAD相互作用にはほとんど影響を与えないことが認められた(図3A)。
【0114】
続いて、Wnt標的遺伝子の発現に対するヒット化合物の影響を検討した。HCT116細胞を50μMの化合物で処理し、c-Met、サイクリンD1及びサバイビンを含めたWnt標的遺伝子の発現をウエスタンブロット法で分析した。化合物GB1874は、これらのタンパク質の発現を低下させるのに最も効果的であった(図3B)。実際、化合物GB1874によるWnt標的タンパク質の発現低下は、iCRT3の場合と同程度であった。加えて、化合物GB1874は、Wnt標的遺伝子の発現を低下させる一方で、β-cat自体の発現、又はECAD及びTCF4等のβ-catのパートナータンパク質の発現にはほとんど影響を与えなかった(図3C)。これらの結果は、GB1874は、β-cat-TCF4相互作用を特異的に妨害することにより、β-catの核内転写機能を調節することができるが、E-cadを介した接着結合での膜機能には影響を与えないことを示唆する。
【0115】
一方、化合物GB6853及びGB8679は、検討したWnt標的遺伝子の発現にほとんど影響を与えなかった(図3B)。これらの化合物は、β-cat-TCF4の相互作用を妨害する上で、化合物GB1874ほどの効果もなかった(図3A)。これらの結果は、STF3Aレポート細胞株における阻害活性の欠如(表1)と合わせて、Wntシグナルがすでに活性化している細胞では、化合物GB6853及びGB8679はWnt経路を阻害できないことを示唆する。
【0116】
化合物GB1874はインビトロでβ-cat-TCF4相互作用を妨害する
GB1874化合物は、インシリコでのドッキング研究によりβ-catに結合することが予測されたため、GB1874化合物が、精製したβ-catとインビトロで相互作用し、β-catとTCF4との相互作用を阻害できるかどうかを調べる実験を行った。精製したβ-cat(ARMドメインリピート領域)及びβ-catと相互作用することが公知であるTCF4 N末端ドメインをコードするタンパク質を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)法を採用した。まず、精製したβ-catタンパク質をSPRセンサチップに固定化し、β-cat上に異なる濃度の化合物GB1874を注入した。センサグラム(図8A)から、β-catに対する化合物GB1874の用量依存的な結合が観察された。化合物GB1874の濃度に対する定常応答値をプロットすると、この化合物は76±13μMのKでβ-catに結合することが示された(n=3、図3D)。しかしながら、ベストフィット曲線のHillスロープは1よりも大きく、これは、化合物GB1874がβ-cat上の複数の部位に正の協同性をもって結合することを示唆した。
【0117】
化合物GB1874がインビトロでβ-catとTCF4との相互作用を直接阻害できるかどうかを確認するために、SPR競合実験を開発した。β-catの代わりに、TCF4 N末端ドメインをSPRセンサチップに固定化した。50nMのβ-catを、異なる濃度の化合物GB1874でプレインキュベートした後、TCF4 N末端ドメイン上に注入した。センサグラム(図8B)から明らかなように、化合物GB1874は25±8μM(n=2)のIC50値でβ-catとTCF4との相互作用を阻害することがわかった(図3E)。
【0118】
候補ヒット化合物は、「Wnt依存症」の癌細胞の増殖及び幹細胞性に影響を与える
β-cat-TCF4相互作用の妨害及びWnt標的遺伝子の発現の低下とは別に、ヒット化合物が生物学的に関連する癌細胞株においてWnt活性の低下を連想させる表現型を誘発するかどうかを調べるために実験を行った。まず、候補化合物GB6853、GB8679及びGB1874のHCT116結直腸癌(CRC)細胞への影響を検討した。HCT116細胞は、β-cat遺伝子にヘテロ変異があり、このため、そのタンパク質のSer45残基の欠失を生じる。Ser45は、分解複合体の主要メンバーであるCK1αによるリン酸化の起点となる部位であり、CK1αは続いてプロテアソームによる分解のためにβ-catを標的にする。それゆえ、Ser45に変異があると、変異型β-catが分解されず、Wntシグナル伝達が恒常的に活性化する。HCT116細胞でβ-catの下流にあるWntシグナル伝達を阻害すると、細胞の成長に大きな効果があるという仮説が立てられた。
【0119】
HCT116細胞を10μMの各化合物で毎日処理し、CellTiter-Glo生存率アッセイを用いて成長を追跡した。比較のために、Wntシグナル伝達カスケードに沿って異なる構成要素を標的にするIWP-2、XAV939、及びiCRT3等の化合物を含めた27図4Aに示すように、3つのヒット化合物(GB1874、GB6853及びGB8679)のいずれかで処理すると、HCT116細胞の成長が効果的に抑制された。注目すべきは、これらの化合物はすべて、成長阻害アッセイにおいてiCRT3よりも効果的であったことである。化合物IWP-2及びXAV939(それぞれPorcupine及びタンキラーゼ(Tankyrase)の阻害剤)は、β-cat-TCF4相互作用の上流でWntシグナル伝達を阻害するが、HCT116細胞の成長を阻害する効果は低かった。30μMの化合物GB8679、GB6853及びGB1874は、コロニー形成効率(図4B)、及びスフェロイド形成アッセイ(図4C)への効果からも明らかなように、HCT116集団内の癌幹様細胞の生存率を著しく低下させることができた。加えて、上記ヒット化合物は、APC変異型CRC細胞株であるDLD-1及びSW480のスフェロイド形成にも、程度の差はあるものの、影響を与えた(図9A及び図9B)。続いて、CRC細胞の生存率に対する上記化合物の効果を検討した。HCT116細胞株、DLD-1細胞株、及びSW480細胞株に対するEC50値(表2)から、化合物GB1874がCRC細胞株に対して最も強い作用を示し、次いで化合物GB8679であった。
【0120】
GB1874はマウス腫瘍異種移植片の成長を阻害する
上記の研究に基づき、化合物GB1874は、Wnt駆動のCRC細胞に対して最も強力な化合物であることが確認された。インビボでの有効性を調べるため、NSGマウスの脇腹にHCT116細胞を接種した。続いて、腫瘍保有マウスを、ビヒクル対照又は50mg/kgの化合物GB1874のいずれかで一日おきに(q.a.d.)i.p注射により処置した。化合物GB1874は、HCT116異種移植片の成長をインビボで効果的に阻害し(図4D)たが、同時にマウスに最小限の全身毒性しかもたらさなかった(図9C)。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
GB1874の構造を足場として用いて、GB1874の類似体について化学データベースを検索した。次に、これらの化合物を本発明者らのβ-カテニンのインシリコモデルにドッキングし、β-カテニンの強力な結合剤候補を予測した。この予測から、8種のGB1874の構造類似体が特定されたので、これらを試験した。
【0124】
まず、これらの化合物を、STFレポーター細胞及びSTF3Aレポーター細胞を用いて、Wntレポーター活性を阻害する能力について試験した(表3)。一般に、STF細胞に対する阻害IC50値は、STF3A細胞に対する対応する値と比較して低く、これは、これらの化合物が、構成的なWnt活性化を有する生物系に対しては活性が低いことを示していた。例外はGB1874Aであり、これはSTF細胞に比べてSTF3A細胞に対してより強力であった。
【0125】
GB1874のIC50値(STF IC50=6.8μM、STF3A IC50=27μM)をGB1874F(STF IC50=5.4μM、STF3A IC50=10μM)、GB1874G(STF IC50=3.9μM、STF3A IC50=6.7μM)、及びGB1874H(STF IC50=5.0μM、STF3A IC50=11μM)と比較すると、1,2,4-トリアゾールのC3置換基のサイズを大きくしても、STFレポーター及びSTF3Aレポーターに対する化合物の活性に影響を与えないことが認められた。GB1874の新しい類似体は、1,2,4-トリアゾールのC3置換基でほとんどが異なっていたため、他の位置の置換基を変更した場合の影響を導き出すことはできなかった。そのため、GB1874の構造活性相関をより深く理解するためには、より多くのGB1874の類似体を購入又は合成する必要があると考えられた。
【0126】
【表3(1)】
【表3(2)】
【0127】
HCT116 CRC細胞におけるWnt標的遺伝子の発現に対するGB1874類似体の効果を検証した。得られた結果(図5)から、Wnt標的遺伝子の下方制御の程度は、STFレポーターを阻害する化合物の効力と相関していることが認められた。最も強力な化合物は、iCRT3、GB1874、GB1874C、GB1874E、GB1874F、GB1874G、及びGB1874Hであった。これらの化合物は、AXIN2、BIRC5、BMP4、及びCCND1等のWnt標的遺伝子を強力に阻害する一方で、β-カテニン(CTNNB1)遺伝子の発現にはあまり影響を与えない。
【0128】
最上位のヒット化合物であるGB1874を、原発性患者由来の結直腸癌(CRC)細胞株でも試験した(表4)。GB1874は、タンキラーゼ阻害剤であるXAV939と比較して、原発性CRC細胞株に対してより強力な作用を示すことがわかった。
【0129】
【表4】
【0130】
インビボ研究で得られたHCT116異種移植片の腫瘍を分析した。図4Dに示すように、また図11Aに示すように、HCT116異種移植片を50mg/kgのGB1874で1日おき(q.a.d.)にi.p.を介して処置すると、HCT116異種移植片の成長が阻害された。免疫組織化学染色及び数値化により、腫瘍成長の阻害は、Wnt標的遺伝子であるサイクリンD1、及び増殖マーカーであるKi67の発現低下に関係していることが示された(図11B)。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本明細書に開示される化合物は、β-catを阻害するため、又はβ-catとTCF4との相互作用を妨害するために使用することができ、それゆえ、癌、神経変性疾患、代謝性疾患、心血管疾患、線維症、及び骨疾患からなる群から選択される疾患又は健康状態の治療に使用することができる。
【0132】
上述の開示を読んだ後に、本発明の様々な他の変更及び適合が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者に明らかになるであろう。そのようなすべての変更及び適合が添付の請求項の範囲内に入ることが意図される。
【0133】
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図1
図2(1)】
図2(2)】
図3(1)】
図3(2)】
図3(3)】
図4(1)】
図4(2)】
図5(1)】
図5(2)】
図5(3)】
図6A
図6B(1)】
図6B(2)】
図7
図8(1)】
図8(2)】
図9(1)】
図9(2)】
図10
図11
【国際調査報告】