(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】閉塞後のボーラス低減システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20221107BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20221107BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61M5/168 516
A61M5/142 502
A61M5/172
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513306
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020070468
(87)【国際公開番号】W WO2021042126
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509280394
【氏名又は名称】スミスズ メディカル エーエスディー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】サミール パイ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ハリソン クーンズ
(72)【発明者】
【氏名】グラント アダムス
(72)【発明者】
【氏名】クィン モリスン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066FF01
4C066HH01
4C066QQ35
4C066QQ85
4C066QQ92
(57)【要約】
管理セットの最大安全圧力限界を超えないことを保証しながら、閉塞の突然の解放時に注入液の大量のボーラスの不用意な供給を最小限にするための管理セット内部の圧力の分布を調整する方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に点滴セットを介して薬剤を供給するように構成されるポンピング機構と、
前記ポンピング機構と、前記点滴セットに接続された下流の管組織の排出口との間に配置された下流圧力センサーであって、前記排出口は、前記患者に連結可能なように構成される、下流圧力センサーと
前記ポンピング機構と、前記点滴セットに接続された前記薬剤の源泉との間に配置された上流圧力センサーと、
前記ポンピング機構、前記下流圧力センサー及び前記上流圧力センサーに連結された制御装置であって、
前記患者に前記点滴セットを介して薬剤を供給するために第一の方向に前記ポンピング機構を動作させ、
第一の所定の限界を超過した下流の圧力の前記下流圧力センサーからの指示に反応して前記第一の方向に動作している前記ポンピング機構を停止し、
第二の方向に前記ポンピング機構を動作させ、前記第二の方向は、前記第一の方向と逆であり、
前記下流の圧力が安全レベルに戻ったという前記下流圧力センサーからの指示と、第二の所定の限界に到達した又は前記第二の所定の限界を超過した上流の圧力の前記上流圧力センサーからの指示とを含むグループから選ばれた事象に反応して、前記第二の方向に動作している前記ポンピング機構を停止し、
前記下流の圧力が前記安全レベルに戻ったという前記下流圧力センサーからの指示に反応して、前記第一の方向の前記ポンピング機構の動作を自動的に再開する、ように構成される、制御装置と、を備える、点滴ポンプ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第一の所定の限界と前記第二の所定の限界とを格納するメモリを更に備える、請求項1に記載の点滴ポンプ。
【請求項3】
前記上流圧力センサーは、前記ポンピング機構と前記点滴セットに接続された上流の管組織に配置された逆止弁との間に配置される、請求項1に記載の点滴ポンプ。
【請求項4】
前記安全レベルは、前記下流圧力センサーから受信したデータから計算した平均に基づく、請求項1に記載の点滴ポンプ。
【請求項5】
前記安全レベルは、オフセット係数を含む、請求項4に記載の点滴ポンプ。
【請求項6】
前記制御システムは、前記第一の所定の限界を超過した前記下流の圧力の前記下流圧力センサーからの指示に反応して警報信号を提供するように更に構成される、請求項1に記載の点滴ポンプ。
【請求項7】
前記第一の所定の限界は、前記第二の所定の限界より小さい、請求項1に記載の点滴ポンプ。
【請求項8】
閉塞後のボーラスを防ぐために点滴ポンプを動作させる方法であって、
前記点滴ポンプは、ポンピング機構、下流圧力センサー及び上流圧力センサーを含み、
前記方法は、
前記点滴ポンプによって行われ、
患者に薬剤を供給するために第一の方向に前記ポンピング機構を動作させることと、
前記下流圧力センサーで下流の圧力を監視することと、
第一の所定の限界を超過した下流の圧力の前記下流圧力センサーからの指示に反応して前記第一の方向に動作している前記ポンピング機構を停止することと、
前記患者への不用意なボーラスの供給の可能性を低減させるために第二の方向に前記ポンピング機構を動作させることであって、前記第二の方向は、前記第一の方向と逆である、ことと、
前記上流圧力センサーで上流の圧力を監視することと、
前記下流圧力センサーでの下流の圧力を所定の安全レベルと比較し、前記上流圧力センサーでの上流の圧力を第二の所定の限界と比較することと、
前記下流の圧力が前記安全レベルに戻ったという前記下流圧力センサーからの指示と、前記第二の所定の限界に到達した又は前記第二の所定の限界を超過した前記上流の圧力の前記上流圧力センサーからの指示とを含むグループから選ばれた事象に反応して、前記第二の方向の前記ポンピング機構を停止することと、
前記下流の圧力が安全レベルに戻ったという前記下流圧力センサーからの指示に反応して、前記第一の方向の前記ポンピング機構の動作を自動的に再開することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記第一の所定の限界を超過した前記下流の圧力の前記下流圧力センサーからの指示に反応して警報信号を提供することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記下流圧力センサーでの下流の圧力を所定の安全レベルと比較することは、前記下流圧力センサーでの下流の圧力を、オフセット係数を含む前記所定の安全レベルと比較することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記安全レベルは、前記点滴ポンプの動作中に前記下流圧力センサーから受信したデータから計算された平均に基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の所定の限界は、前記第二の所定の限界より小さい、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
ポンピング機構、下流圧力センサー及び上流圧力センサーを含む点滴ポンプであって、
患者に点滴セットを介して薬剤を供給するために第一の方向に前記ポンピング機構を動作させ、
第一の所定の限界を超過した下流の圧力の前記下流圧力センサーからの指示に反応して前記第一の方向に動作している前記ポンピング機構を停止し、
前記患者へのボーラスの不用意な供給の可能性を低減させるために第二の方向に前記ポンピング機構を動作させ、前記第二の方向は、前記第一の方向と逆であり、
前記下流圧力センサーでの下流の圧力を所定の安全レベルと比較し、前記上流圧力センサーでの上流の圧力を第二の所定の限界と比較し、
前記下流の圧力が前記安全レベルに戻ったという前記下流圧力センサーからの指示と、前記第二の所定の限界に到達した又は前記第二の所定の限界を超過した上流の圧力の前記上流圧力センサーからの指示とを含むグループから選ばれた事象に反応して、前記第二の方向に動作している前記ポンピング機構を停止し、
前記下流の圧力が前記安全レベルに戻ったという前記下流圧力センサーからの指示に反応して、前記第一の方向の前記ポンピング機構の動作を自動的に再開する、ように構成される、点滴ポンプ。
【請求項14】
前記安全レベルは、オフセット係数を含む、請求項13に記載の点滴ポンプ。
【請求項15】
前記安全レベルは、前記点滴ポンプの動作中に前記下流圧力センサーから受信したデータから計算された平均に基づく、請求項14に記載の点滴ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2019年8月28日に出願された米国特許出願第62/892,707号の優先権を主張し、その内容は、参照により十分に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に点滴ポンプシステム、特に、LVP(large-volume pump)及び点滴ポンプの管理セットにおける閉塞後のボーラス低減のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々なタイプの点滴ポンプは、患者への定められた量又は服用量の薬、液体、液体のような物質、又は薬剤(ここに、まとめると、“注入液”)の供給及び分配を管理するために有用である。点滴ポンプは、長期間にわたって注入液を正確に供給することによって、手動での管理に対して著しい優位性を提供する。点滴ポンプは、がん、糖尿病、並びに、血管、神経性及び代謝の障害を含む、定期的に薬理的な治療介入を必要とする病気及び障害を治療するために、特に有用である。点滴ポンプは、麻酔を供給し痛みを管理する医療サービス提供者の能力をも高める。点滴ポンプは、病院、介護施設、並びに他の短期及び長期医療施設を含む様々な環境と同様に、居住介護環境でも使用される。歩行用の、大容量の、PCA(patient controlled anesthesia)の、エストラマー用の、注射器の、腸用の、及びインスリンのポンプを含む、多くのタイプの点滴ポンプが存在する。点滴ポンプは、静脈内に、腹腔内に、動脈内に、皮内に、皮下に、神経のすぐ近くに、及び、手術中の箇所の内部に、硬膜上腔に又はクモ膜下腔に、を含む、様々な供給方法を介して薬物を投与するために使用され得る。
【0004】
“蠕動”ポンプシステムと一般的に呼ばれる特定の種類の点滴ポンプシステムにおいて、患者への注入液の供給は、通常は点滴管理セットを用いて行われ、点滴管理セットは、通常は使い捨てであり、注入液の流量を制御するポンプと連携して、(静脈注射又は“IV”バッグのような)タンクから患者への注入液用の液体の通路(例えば管組織)を提供することができる。蠕動点滴ポンプは、波のような動きで管理セットの管組織の連続する区間を繰り返し及び一時的に塞ぐことによって機能することができる蠕動ポンピング機構を通常は組み込む。
【0005】
“大容量ポンプ”又は“LVP”システムは、前述の関連部品を有する一般的な蠕動ポンプである。いくつかの刊行物には、“容量測定のポンプ”という用語は、蠕動ポンプ又は大容量ポンプに言及するために様々に使用されることもある。様々なLVPが、長年、医学的環境で使用されている一方、これらの装置及びこれらの関連する蠕動制御部品は、それらの効率的な、効果的な、及び安全な使用に限界を有することがある。特に、よじれ又は別の方法で非意図的に遮断された管組織に起因するような、LVPから外への注入液の定められた流れへの望まない閉塞を検出するための何らかの対策を有することが一般的ではあるが、そのような対策は、多くの場合、閉塞の解放による注入液の大量のボーラス及び/又は最大安全管組織/部品圧力限界の超過におけるポンプ部品の液体の上流圧力の増強(buildup)を不用意に供給する意図しない影響を有する。
【0006】
本開示は、これらに関係するものを記載する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施態様は、LVP(large-volume pumps)及び点滴ポンプ管理セットにおける閉塞後のボーラス低減のためのシステム及び方法を提供する。いくつかの実施態様において、そのようなシステム及び方法は、管理セットの最大安全圧力限界を超過しないことを保証しながら、閉塞の突然の解放時に注入液の大量のボーラスの不用意な供給を最小限にするために管理セット内部の圧力分布を戦略的に調整することを規定する。その際に、本開示の実施態様は、閉塞の除去が検出できるように、下流圧力センサーによって測定された管理セット内部の液体の圧力と、最大安全管組織/部品圧力限界を超えていないことを保証するために、上流圧力センサーによって測定された管理セット内部の液体の圧力との両方を考慮する。いくつかの実施態様では、圧力の分布の調整は、蠕動駆動機構の逆向きの動作を通して実行される。一旦、閉塞が解放されたことが、例えば、下流の圧力の比較的突然の降下を通して検出されれば、正常な動作は、注入液の供給を再開させるために自動的に再起動され得る。
【0008】
一例として、本開示は、患者に点滴セットを介して薬剤を供給するように構成されるポンピング機構と、ポンピング機構と、点滴セットに接続された下流の管組織排出口との間に配置された下流圧力センサーであって、排出口は、患者に連結可能なように構成される、下流圧力センサーと、ポンピング機構と、点滴セットに接続された薬剤の源泉との間に配置された上流圧力センサーと、ポンピング機構、下流圧力センサー及び上流圧力センサーに連結された制御装置と、を含む点滴ポンプを提供する。制御装置は、患者に点滴セットを介して薬剤を供給するために第一の方向にポンピング機構を動作させ、第一の所定の限界を超過した下流の圧力の下流圧力センサーからの指示に反応して第一の方向に動作しているポンピング機構を停止し、第二の方向にポンピング機構を動作させ、第二の方向は、第一の方向と逆であり、下流の圧力が安全レベルに戻ったという下流圧力センサーからの指示と、第二の所定の限界に到達した又は第二の所定の限界を超過した上流の圧力の上流圧力センサーからの指示とを含むグループから選ばれた事象に反応して、第二の方向に動作しているポンピング機構を停止し、下流の圧力が安全レベルに戻ったという下流圧力センサーからの指示に反応して、第一の方向のポンピング機構の動作を自動的に再開するように構成されることがある。
【0009】
一例として、本開示は、閉塞後のボーラスを防ぐための点滴ポンプの操作方法を提供し、点滴ポンプは、ポンピング機構、下流圧力センサー、及び上流圧力センサーを含む。その方法は、点滴ポンプによって行われることがあり、患者に薬剤を供給するために第一の方向にポンピング機構を動作させることと、下流圧力センサーで下流の圧力を監視することと、第一の所定の限界を超過した下流の圧力の下流圧力センサーからの指示に反応して第一の方向に動作しているポンピング機構を停止することと、患者への不用意なボーラスの供給の可能性を低減させるために第二の方向にポンピング機構を動作させることであって、第二の方向は、第一の方向と逆であることと、上流圧力センサーで上流の圧力を監視することと、下流圧力センサーでの下流の圧力を所定の安全レベルと比較し、上流圧力センサーでの上流の圧力を第二の所定の限界と比較することと、下流の圧力が安全レベルに戻ったという下流圧力センサーからの指示と、第二の所定の限界に到達した又は第二の所定の限界を超過した上流の圧力の上流圧力センサーからの指示とを含むグループから選ばれた事象に反応して、第二の方向のポンピング機構を停止することと、下流の圧力が安全レベルに戻ったという下流圧力センサーからの指示に反応して、第一の方向のポンピング機構の動作を自動的に再開することと、を含む。
【0010】
一例として、本開示は、ポンピング機構、下流圧力センサー、及び上流圧力センサーを含む点滴ポンプを提供する。点滴ポンプは、患者に点滴セットを介して薬剤を供給するために第一の方向にポンピング機構を動作させ、第一の所定の限界を超過した下流の圧力の下流圧力センサーからの指示に反応して第一の方向に動作しているポンピング機構を停止し、患者へのボーラスの不用意な供給の可能性を低減させるために第二の方向にポンピング機構を動作させ、第二の方向は、第一の方向と逆であり、下流圧力センサーでの下流の圧力を所定の安全レベルと比較し、上流圧力センサーでの上流の圧力を第二の所定の限界と比較し、下流の圧力が安全レベルに戻ったという下流圧力センサーからの指示と、第二の所定の限界に到達した又は第二の所定の限界を超過した上流の圧力の上流圧力センサーからの指示とを含むグループから選ばれた事象に反応して、第二の方向に動作しているポンピング機構を停止し、下流の圧力が安全レベルに戻ったという下流圧力センサーからの指示に反応して、第一の方向のポンピング機構の動作を自動的に再開する、ように構成されることがある。
【0011】
上記の概要は、それぞれの図解付きの実施態様又は本開示のすべての実施を描写することを意図されたものではない。図面及び詳細な説明は、特に典型的な例となるこれらの実施態様に従う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示は、添付の図面と関連する、本開示の様々な実施態様の詳細な記述に従って考慮することによってより完全に理解され得る。
【0013】
【
図1】本開示の実施態様に従った、患者に使用するための蠕動点滴ポンプシステムを描写する概略斜視図である。
【
図2A】本開示の実施態様に従った、
図1の蠕動点滴ポンプの一部を描写する概略斜視図、特に、アセンブリ容器及び容器ドアを説明する。
【
図2B】本開示の実施態様に従った、
図2Aの蠕動点滴ポンプの一部を描写する概略斜視図であり、アセンブリ容器によって受けられた管理セットの一部である。
【
図3】本開示の実施態様に従った、蠕動点滴ポンプシステムの様々な部品及び電子回路を描写する概略図である。
【
図4】本開示の実施態様に従った、閉塞後のボーラス低減のための方法を描写するフローチャートである。
【
図5A】本開示の実施態様に従った、
図4において描写された方法を実行する間における上流及び下流の圧力を描写する第一の典型的なグラフの表現である。
【
図5B】本開示の実施態様に従った、
図4において描写された方法を実行する間における上流及び下流の圧力を描写する第二の典型的なグラフの表現である。
【0014】
本開示の実施態様は、様々な変更及び代替形態に従うが、図面に例として示されるその細目は、詳細に説明されるだろう。しかしながら、意図は説明された特定の実施態様に本開示を制限するものではないことを理解すべきである。反対に、意図は、特許請求の範囲によって定義された主題の精神及び範囲に入るすべての変更、均等物、及び代替物を保護することである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、患者に使用するための蠕動点滴ポンプシステム100の実施例の概略斜視図であり、それは、蠕動ポンプ102(より具体的には、LVPポンプ102)と、ポンプ102に動作可能及び取り外し可能に連結するように構築及び構成される、使い捨ての管理セット104とを含む。管理セット104は、IVバッグ106から、最終的には、患者110に注入液を供給する点滴セット又は管組織108に液体の通路を提供することを図式的に示す。
図1において、蠕動ポンプ102の容器ドア112は、閉めた形状で示され、管理セット104は、ポンプ102に連結されないで説明される。
【0016】
ポンプ102の様々な部品をより十分に説明するために、
図2A及び
図2Bは、ポンプ102の部分的な描写を示す。特に、アセンブリ容器114及び容器ドア112に近接する、ポンプ102の一部だけを示す。管理セット104がそれによってポンプ102に動作可能に連結されるように、アセンブリ容器114は、管理セット104のアセンブリ116を受けるように構成され得る。特に、
図2Bは、
図2Aの蠕動点滴ポンプ102の一部の概略斜視図であり、アセンブリ116は、アセンブリ容器114によって受けられ又はアセンブリ容器114内に備え付けられる。容器ドア112は、アセンブリ容器114に触れることを許可又は阻止するために開閉され得る。
図2Aと
図2Bの両方において、ポンプ102の容器ドア112は、開放位置にある。
【0017】
線形蠕動ポンプ駆動機構122は、アセンブリ容器114に位置され得る。管理セット104のアセンブリ116は、蠕動駆動機構122に関係する操作において、アセンブリ116の、チューブ120の中心に位置する区間を含み、管理セット104の要素を置くために構成及び構築され得る。チューブ120の中心に位置する区間は、ポンプ102の蠕動駆動機構122による圧縮(及び圧縮からの復元)に適した弾性の物質に形成され得る。蠕動ポンプ機構122は、波のような動きで、チューブ120の中心に位置する区間を繰り返し及び一時的に圧搾又は閉塞することによって、管理セット104を介して液体を追い立て、押し、力を加え、又は他の方法で運ぶように構成された、チューブ係合部材118(“フィンガー”と呼ばれることもある)を含み得る。
【0018】
図2A及び
図2Bは、12本のチューブ係合部材118を含むポンプ102を描写し、他の実施態様では、より少ない又は追加の管組織係合部材が存在することもある。一般に、管組織係合部材118の数及び/又はサイズは、それぞれのポンプの周期に対する液体供給の量又は供給されている液体の“パケットサイズ”をある程度決定し得る。例えば、一実施態様では、液体のパケットサイズは、13μLになることができ、他のパケットサイズも企図される。
【0019】
管理セット104内部で生み出される液体の圧力は、一般に管理セット104の一部の弾性伸長又は変形を通して検出可能である。例えば、一実施態様では、管理セット104の内部、チューブ係合部材118の上流と下流、の液体の圧力は、上流圧力センサー124及び下流圧力センサー126によって検出可能である。
図2A及び
図2Bに描写されているように、上流圧力センサー124及び下流圧力センサー126は、チューブ係合部材118のそれぞれの側で、アセンブリ容器114の内部に位置され得る。センサーの他の位置、組み合わせ及び配置も企図される。
【0020】
図3は、点滴ポンプシステム100内部の様々な部品及び電子回路の概略図である。チューブ係合部材118は、蠕動駆動機構122によって制御され、蠕動駆動機構122は、メモリ129を有する制御装置128によって制御され得る。制御装置128は、キーパッド130、並びに、上流圧力センサー124又は下流圧力センサー126のような、他の入力装置、センサー及びモニターから入力を受信することができる。制御装置128は、例えば、タッチスクリーン入力及びディスプレイシステムのようなグラフィカルユーザーインターフェース132から出力を提供し、入力を受信することもできる。
【0021】
一実施態様では、制御装置128は、閉塞を監視するために、下流圧力センサー126を通して下流の圧力を継続的に感知し得る。閉塞が検出されると、制御装置128は、閉塞の解放による注入液の大量のボーラスの不用意な供給を抑制するように管理セット104の内部の注入液の圧力の増強を制御するために、蠕動駆動機構122に逆方向に動作するように指示し得る。同時に、制御装置は、蠕動駆動機構122を逆方向に動作させながら、管理セット104の上流の部分の内部の圧力が、所定の最大安全圧力限界未満のままであることを保証するために、上流圧力センサー124を通して上流の圧力を監視し得る。一旦、点滴ポンプシステム100が、例えば、下流の圧力の比較的突然の降下を通して閉塞が解放されたことを検出すれば、点滴ポンプシステム100は、注入液の供給を再開するために正常な動作を自動的に再起動し得る。
【0022】
図4を参照すると、閉塞後のボーラスを低減させるための方法200は、本開示の実施態様に従って描写される。S202では、管理セット104の内部の上流の圧力(P
up)及び下流の圧力(P
down)は、例えば、上流圧力センサー122及び下流圧力センサー126を通して監視され得る。圧力センサー124/126は、管理セット104の内部の液体の圧力の増加に反応して、管理セット104の柔軟な管組織の拡張によってもたらされる力に反応する。P
up及び、P
downに代表される上流及び下流圧力センサー124/126によって測定されたデータは、評価のために、制御装置128に送られ得る。制御装置128は、上方最大所定閉塞圧力限界(P
occ)についての情報を格納したメモリ129を含む。
【0023】
S204では、Pdownは、Poccと比較される。PdownがPoccよりも小さい場合、閉塞は、検出されておらず、点滴ポンプシステム100は、正常な注入液の供給を続ける。しかしながら、PdownがPoccより大きい又は等しい場合、点滴ポンプシステム100は、障害が管理セット104において起こっていると推測し、障害は、蠕動駆動機構122から下流の注入液の通路の閉塞によって通常引き起こされる。下流圧力センサー126は、それによって閉塞探知器として動作する。
【0024】
閉塞が検出される場合、制御装置128は、管理セット104における更なる有害な圧力の増強を緩和する又は止めるために、蠕動駆動機構122による順方向への駆動を停止し得る。最も一般的には、そのような閉塞は、点滴ライン内のよじれによって、潜在的には、点滴ラインを介した液体の流れを抑制するような方法で、無意識のうちに一時的に点滴ラインの上に転がる又は他の方法で点滴ラインを折り曲げる患者によって、引き起こされる。従って、よじれ又は閉塞の上流の管理セット104の内部の圧力は、蠕動駆動機構122が順方向に動作を続ける限り上昇するだろう。閉塞が検出され、駆動機構122が停止した後でさえ、閉塞と駆動機構122との間の管理セット104内部の圧力は、高まった圧力のままだろう(例えば、駆動機構122が停止した時の圧力)。突然の閉塞の解放(例えば、点滴ラインのよじれの突然の解消)は、加圧された液体を注入液の大量のボーラスとして患者に供給することを引き起こす可能性があり、いくつかのタイプの注入液では、危険となり得る。
【0025】
閉塞の突然の解放後に注入液の大量のボーラスが不用意に供給される可能性を低減させるために、一旦、閉塞が検出されれば、本開示の実施態様は、閉塞とチューブ係合部材118との間の管理セット104内の圧力を低減させる目的で、蠕動駆動機構122を逆方向に動かし得る。しかしながら、管理セット104は、管理セット104を介しIVバッグ106の中への注入液の逆流を抑制するために、しばしば上流逆止弁134(
図1に描写)を含むため、閉塞した管理セット104内の増強した圧力は、閉塞が取り除かれるまで逆止弁134の下流に通常は解放され得ない。
【0026】
従って、本開示の実施態様は、閉塞と逆止弁134との間の管理セット104内部の圧力の分布を再調整しようとする。そうすることで、本開示の実施態様は、閉塞の除去を検出し得るための、下流圧力センサー126によって測定された液体の圧力と、最大安全管組織/部品圧力限界を超過していないことを保証するための、上流圧力センサー124によって測定された液体の圧力との両方を考慮する。いくつかの実施態様では、これは、
図4に記載されているように二段階の決定の工程を介して行われる。
【0027】
特に、S212では、Pdownは、計算された平均の下流の圧力(Pave)プラスオフセット係数と比較され、それは、一実施態様では、割合にすることもできる(例えば、閉塞の境界値の約5~10%の間)。Paveは、制御装置128のメモリ129において集められた下流圧力センサー126からのデータに基づいてS210で計算される。Pdownがオフセットを加えたPaveよりも小さい場合、方法200は、下流圧力センサー126を通して下流の圧力を監視するためにS202に移る。Pdownがオフセットを加えたPaveよりも大きい又は等しい場合、方法200は、S214に移り、S214で上流の圧力は評価される。
【0028】
S214では、上流の圧力(Pup)は、例えば、上流圧力センサー124によって測定され、最大安全管組織/部品圧力限界(Plimit)と比較される。PupがPlimitよりも小さい場合、方法200は、圧力センサー124/126を通して上流及び下流の圧力を監視するためにS202に移る。しかし、PupがPlimitよりも大きい又は等しい場合、S215で、制御装置128は、警報音及び/又はグラフィカルユーザーインターフェース132上の警告指示のような警報信号を提供し得る。S216で、制御装置128は、蠕動駆動機構122を逆方向に駆動し、それによって閉塞とチューブ係合部材118との間にある管理セット104の一部の内部の液体を、チューブ係合部材118と逆止弁134との間にある管理セット104の一部へ上流に移動させる。方法200によれば、この処理は、(1)PdownがPaveプラスオフセット係数に到達するか、(2)PupがPlimitに到達するまで続けられる。
【0029】
蠕動駆動機構122が逆方向に動作している間、S202で、システム100は、下流圧力センサー126を通して下流の圧力を監視し続ける。S204で下流の圧力の比較的突然の降下が検出された場合、閉塞の解放を示し、警報を停止することができ、S218で、制御装置128は、注入液の供給を再開するために正常な操作を自動的に再起動し得る。
【0030】
本開示の方法において使用された個々の段階は、本開示が動作可能なままである限り、任意に及び/又は同時に行われることがあると理解されるべきである。更に、本開示のシステム及び方法は、本開示が動作可能なままである限り、記載された実施態様のいくつか又はすべてを含み得ると理解されるべきである。
【0031】
図5Aは、閉塞が検出された期間にわたる下流の圧力(P
down)と上流の圧力(P
up)の典型的なグラフの表現を描写し、管理セット104内部の圧力は、閉塞の解放に続いて、管理セット104の最大安全圧力制限を超過していないことを保証しながら、閉塞の突然の解放における注入液の大量のボーラスの不用意な供給を抑制するように調整される。この例に示し得るように、上流の圧力は、P
limitに近づくが実際に到達することはなく、それによって、オフセットを加えたP
aveに下流の圧力が到達するまで、逆方向の蠕動駆動機構122の動作が許可される。閉塞の解放は、上流の圧力がやや突然に降下した時に観測される。その後は、蠕動駆動機構122の正常な順方向の動作は、自動的に再開され、P
upは、次第に低減する。
【0032】
図5Bは、P
limitに到達され、逆方向の蠕動駆動機構122の制御が停止されている、ある期間にわたっての下流の圧力(P
down)と上流の圧力(P
up)の第2の典型的なグラフの表現を描写する。従って、この実施態様において、P
downは、オフセットを加えたP
aveを超過し続け、閉塞の解放により不用意に供給されるボーラスの大きさは、管理セット104の最大安全管組織/部品圧力限界の内部で可能な限り最小化されることを示している。
【0033】
システム、装置及び方法の様々な実施態様は、ここに描写された。これらの実施態様は、一例としてのみ与えられ、主題の特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。それ以上に、描写された実施態様の様々な特徴は、多くの追加の実施態様を作るための様々な方法で組み合わせられることがあると認められるべきである。それ以上に、様々な物質、寸法、形状、輪郭及び位置等は、開示された実施態様に使用するために描写されながら、開示されたそれら以外の他のものは、特許請求の範囲に記載された主題を超過することなしに活用されることがある。
【0034】
従当業者は、ここの主題が上述の個々の実施態様に示されたよりもより少ない特徴を含むことがあると認めるだろう。ここに記載された実施態様は、ここの主題の様々な特徴が組み合わせられた方法の余すところのない提示を意味するものではない。従って、実施態様は、特徴の組み合わせを互いに除外するものではなく、むしろ、様々な実施態様は、当業者によって理解されるものとして、異なる個々の実施態様から選択された異なる個々の特徴の組み合わせを含み得る。それ以上に、一実施態様との関連で描写された構成要素は、特に断りがない限り、そのような実施態様で描写されていない時でさえ他の実施態様で実行され得る。
【0035】
しかしながら、従属項は、その請求項の中で一つ又は複数の他の請求項との特別な組み合わせを述べているかもしれないが、他の実施態様もまた、従属項とそれぞれの他の従属項の主題との組み合わせ、又は、一つ若しくは複数の特徴と他の従属項若しくは独立項との組み合わせを含み得る。そのような組み合わせは、特別な組み合わせが意図されていないことを述べていない限り、ここで提案される。
【0036】
上記の書類の参照によるいかなる組み込みも、この中の明確な開示に反する主題が組み込まれないように制限される。上記の書類の参照によるいかなる組み込みも、その書類に含まれる請求項がここに参照によって組み込まれないように更に制限される。上記の書類の参照によるいかなる組み込みも、ここに明示的に含まれない限り、その書類で提供されるいかなる定義もここに参照によって組み込まれないように、その上更に制限される。
【0037】
請求項の解釈の目的のために、35U.S.C.§ 112(f)の規定は、“means for(手段)”又は“step for(段階)”の特別な用語が請求項に記載される場合を除いて行使されないことを、明確に意図する。
【国際調査報告】