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特表2022-547430揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物を生成するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物を生成するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20221107BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G01N1/00 102D
G01N1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513427
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020048792
(87)【国際公開番号】W WO2021042052
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/894,038
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517423497
【氏名又は名称】オートモーティブ・コーリション・フォー・トラフィック・セーフティ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ダラル,ニーラジュ
(72)【発明者】
【氏名】フラット,ブライアン・イー
(72)【発明者】
【氏名】オズデミル,ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ザウク,アブドゥラティフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ストロール,クレア
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA34
2G052AA39
2G052AB13
2G052AD22
2G052AD42
2G052FD01
2G052FD17
2G052GA12
2G052HC24
2G052HC43
2G052JA09
(57)【要約】
高精度の混合ガス生成物(BGP)を生成するためのシステムは、液体形態の揮発性被分析物と、不活性キャリアガスと、少なくとも1種の希釈剤ガスと、液体形態の揮発性被分析物を受容し、揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して被分析物ガス流(AGS)を形成するための被分析物ガス化器(AG)サブシステムと、AGSを受容し、AGSを分析するためのガス分析器(GA)と、GAからAGSを受容し、少なくとも1種の希釈剤ガスを受容し、GAの結果に基づいてAGS及び少なくとも1種の希釈剤ガスを比例調節して、比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを供給するためのガスプロポーショナーと、ガスプロポーショナーから比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤を受容してBGPを生成するためのガス混合チャンバとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精度の混合ガス生成物(BGP)を生成するためのシステムであって、システムは、
液体形態の揮発性被分析物の供給物と、
不活性キャリアガスの供給物と、
少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物と、
前記液体形態の揮発性被分析物を受容し、前記揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を前記不活性キャリアガスと混合して被分析物ガス流(AGS)を形成するための被分析物ガス化器(AG)サブシステムと、
前記AGサブシステムから前記AGSを受容し、前記AGSを前記少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物と混合して前記BGPを生成するためのガス混合器(GM)サブシステムとを備え、前記GMサブシステムは、
前記AGSを受容し、前記AGSを分析するためのガス分析器(GA)と、
前記GAから前記AGSを受容し、前記少なくとも1種の希釈剤ガスを受容し、前記GAの結果に基づいて前記AGS及び前記少なくとも1種の希釈剤ガスを比例調節して、比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを供給するためのガスプロポーショナーと、
前記ガスプロポーショナーから前記比例調節したAGS及び前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤を受容して前記BGPを生成するためのガス混合チャンバとを備える、システム。
【請求項2】
温度制御チャンバをさらに備え、さらに前記ガス混合チャンバは前記温度制御チャンバ内に収容されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記揮発性被分析物はエタノールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記不活性キャリアガスはヘリウムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1種の希釈剤ガスは3種の希釈剤ガスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記3種の希釈剤ガスは、N、CO及びOを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガスプロポーショナーは、前記3種の希釈剤ガスを比例調節して複合希釈剤ガス流(CDGS)を形成する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記CDGS中の前記3種の希釈剤ガスは、ヒト呼気中における前記3種の希釈剤ガスの比率に類似した比率にある、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ガスプロポーショナーから前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを受容し、前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを前記ガス混合チャンバへ通過させる前に、前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを加湿するための加湿器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記加湿器は、前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスをヒト呼気における湿度レベルに類似した湿度レベルに加湿する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
温度制御チャンバをさらに備え、さらに前記ガス混合チャンバ及び前記加湿器は前記温度制御チャンバ内に収容されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1種の希釈剤ガスは3種の希釈剤ガスを含み、前記3種の希釈剤ガスは、N、CO及びOを含み、前記ガスプロポーショナーは、前記3種の希釈剤ガスを比例調節して複合希釈剤ガス流(CDGS)を形成し、前記CDGS中の前記3種の希釈剤ガスは、ヒト呼気中における前記3種の希釈剤ガスの比率に類似した比率にあり、前記システムは、前記ガスプロポーショナーから前記CDGSを受容し、加湿されたCDGSを前記ガス混合チャンバへ通過させる前に、前記CDGSを加湿するための加湿器をさらに備え、さらに前記加湿器は、前記CDGSをヒト呼気における湿度レベルに類似した湿度レベルに加湿する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記ガス分析器(GA)は2成分ガス分析器(BGA)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記ガス混合チャンバはガス混合管を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ガス混合チャンバから前記BGPを受容し、前記BGPを分析するためのセンサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記ガスプロポーショナーは、センサーの結果に基づいてAGS及び少なくとも1種の希釈剤ガスを比例調節するようにさらに構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
高精度の混合ガス生成物(BGP)を生成するための方法であって、前記方法は、
液体形態の揮発性被分析物の供給物と、
不活性キャリアガスの供給物と、
少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物とを供給するステップと、
前記揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を前記不活性キャリアガスと混合して被分析物ガス流(AGS)を形成するステップと、
前記AGSを前記少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物と混合して前記BGPを生成するステップとを含み、前記混合してBGPを生成するステップは、
前記AGSを分析するステップと、
前記AGSを分析するステップの結果に基づいて前記AGS及び前記少なくとも1種の希釈剤ガスを比例調節して、比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを供給するステップと、
前記比例調節したAGS及び前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤を混合して前記BGPを生成するステップとを含む、方法。
【請求項18】
前記比例調節したAGS及び前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスは、温度制御環境において混合される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記揮発性被分析物はエタノールを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記不活性キャリアガスはヘリウムを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の希釈剤ガスは3種の希釈剤ガスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記3種の希釈剤ガスは、N、CO及びOを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記3種の希釈剤ガスは複合希釈剤ガス流(CDGS)を形成するように比例調節される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記CDGS中の前記3種の希釈剤ガスは、ヒト呼気中における前記3種の希釈剤ガスの比率に類似した比率にある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスは、前記AGSと混合される前に加湿される、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスは、ヒト呼気における湿度レベルに類似した湿度レベルに加湿される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
加湿は温度制御環境で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1種の希釈剤ガスは3種の希釈剤ガスを含み、前記3種の希釈剤ガスはN、CO及びOを含み、前記3種の希釈剤ガスは、複合希釈剤ガス流(CDGS)を形成するように比例調節され、前記CDGS中の前記3種の希釈剤ガスは、ヒト呼気中における3種の希釈剤ガスの比率に類似した比率にあり、前記CDGSは前記比例調節したAGSと混合される前に加湿され、さらに前記CDGSはヒト呼気における湿度レベルに類似した湿度レベルに加湿される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記BGPは分析される、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記AGS及び前記少なくとも1種の希釈剤ガスの比例調節は、前記BGPの分析にさらに基づく、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
液体形態の揮発性被分析物を受容し、前記揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して被分析物ガス流(AGS)を形成するための揮発器であって、前記揮発器は、
前記液体形態の揮発性被分析物を受容するように構成された第1の管であって、前記第1の管は遠位端部、近位端部、及び遠位端部と近位端部との間に延びる管腔を備えた第1の部分を有し、前記第1の管の前記第1の部分は遠位方向において内側に先細りになる外面を有する、前記第1の管と、
前記不活性キャリアガスを受容するように構成された第2の管であって、前記第2の管は遠位端部、近位端部、及び遠位端部と近位端部との間に延びる管腔を備えた第2の部分を有し、前記第2の管の前記第2の部分は大径から小径へと段状に縮小する内面を有する、前記第2の管とを備え、
前記第2の管の前記第2の部分の前記内面が前記第1の管の前記第1の部分の前記外面から離間されるように、前記第2の管の前記第2の部分は前記第1の管の前記第1の部分の上に同軸に配置されており、
前記第1の管の前記第1の部分の前記遠位端部は、前記第2の管の前記第2の部分の前記内面が大径から小径へと段状に縮小する位置に近接して配置されている、揮発器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(係属中の先行特許出願の参照)
本特許出願は、「METHOD AND APPARATUS FOR PRODUCING HUMIDIFIED, CONTROLLED VOLATILE EFFLUENTS USING REAL-TIME FEEDBACK CONTROLS」についてAutomotive Coalition For Traffic Safety,Inc.及びBrian E. Frattoらによって2019年8月30日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第62/894,038号(代理人整理番号ACTS-2 PROV)の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願はこれにより参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して、混合ガス混合物を生成するための方法及び装置に関し、より詳細には揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物を生成するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
今日、人の呼気中における特定のガス成分の濃度を測定するために様々な検出器が使用されている。
例として、しかしこれに限定されるものではないが、人の呼気中におけるアンモニアの存在が高血圧症、糖尿病及び癌などの特定の疾患と関連していることを示唆するエビデンスがあるため、ある種の検出器は人の呼気中のアンモニアの濃度を測定するように設計されている。したがって、低濃度のアンモニアを測定できる検出器は疾患の早期指摘を行うことができ、その結果、人は疾患の早期治療を受けることができる。
【0004】
さらなる例として、しかしこれに限定されるものではないが、別の種類の検出器は、人の呼気中における二酸化炭素及び酸素の濃度を測定するように設計されている。この種の検出器は、人が病気又は負傷したときに人の呼吸機能を監視するために病院で使用され得る。
【0005】
一般に呼気分析計と呼ばれるさらに別の種類の検出器は、人の呼気中におけるアルコールの濃度を測定するように(即ち、時に「BrAC」と称される、人の呼気中アルコール含有量を測定するように)設計されている。車両に一体化されたアルコール検出システムは、ある人のBrACが法的限度より高い場合にその人が車両を運転するのを防止できることが理解されよう。この種のアルコール検出システムの一例は、安全のためのドライバーアルコール検出システム(Driver Alcohol Detection System for Safety)プログラム(www.dadss.org)であり、これは本明細書では時に「DADSSプログラム」と称される。
【0006】
したがって、人の呼気中における特定のガス成分の濃度を測定するために検出器を使用することが望ましいことがある状況が数多くあることが理解されよう。
用途によっては、検出器の正確度及び精度は重要であり得る。例として、しかしこれに限定されるものではないが、DADSSプログラムに対して、検出器は、人のBrACを高い正確度及び精度で、例えば、BrACレベルの0.0003%ほどの精度で検出できなければならない。
【0007】
そのような検出器の性能を較正及び試験するためには、各成分の濃度が十分な正確度及び精度で確立されている公知の成分のガス混合物を生成できることが必要である。加えて、ガス混合物がヒト呼気を模倣するように意図されている場合、ガス混合物は適切に加湿されなければならない。
【0008】
したがって、本明細書では時に「混合ガス生成物」又は「BGP」と称される、揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物を生成することができる装置であって、BGPの構成成分の正確で精密な濃度を長期間にわたって維持できるとともに、BGPの構成成分の濃度をオンデマンドで変化させる能力も提供する装置が必要とされている。
【0009】
また、装置が加湿されたBGPを生成できることも必要である。
また、装置が揮発性被分析物を含有するヒト呼気を模倣するBGP(例えば、人のBrACを特定するためのDADSSプログラムにおける検出器などの高性能呼気センサーの試験用)を生成できることも必要である。
【0010】
実際、このようなシステムを提供する以前の試みは、従来技術のシステムの精度及び正確度が限られていたため不十分であった。
より詳細には、商用ガス産業は、典型的には報告濃度の±2%の組成正確度でガスを提供している。これにより、商業的供給源を通じて得られる成分ガスによって生成されるガス混合物の正確度が制限される。
【0011】
加えて、商業的供給源によって供給される揮発性被分析物ガス(例えば本明細書では時に「EtOH」と称されるエタノール)は、典型的には、不活性ガス(例えばヘリウム)と混合されている揮発性被分析物ガスを含むタンクで供給されるので、ガスの物理特性により、高頻度のタンクターンオーバー(即ちタンクの取り換え)が決定づけられ、よって付加的な変動性及び高コストの可能性を生じる。より詳細には、揮発性被分析物ガスは、気相中にとどまるために、不活性ガス中で大幅に希釈されなければならない。被分析物ガス濃度におけるこの制限により、タンクが空になる速度が増大して、高頻度のタンク交換を生じ、よって高コストをもたらす。加えて、このような頻繁なタンク交換が必要なことにより、揮発性被分析物ガスの精密な流れが長期間にわたって生成されなければならない長期試験に悪影響がもたらされる。これは、そのようなタンク交換により試験中に付加的な変動性の可能性がもたらされるためである。
【0012】
上記に加えて、生成されているガス混合物がヒト呼気を模倣しなければならない場合、ガス混合物は試験に使用される前に加湿されなければならない。混和性及び溶解度の問題により、いくつかの状況では、揮発される成分(例えばエタノール)並びにその温度に依存した溶解限度に達しつつある湿度レベルの双方を含む均質化されたガス混合物を作り出すことは非常に困難である。ウェットバス(wet bath)(バブラー)システムなどの現在の技術は、揮発される有機化合物における混和性の物理的原理によって制限される。この一例はトルエンに見られ得る。トルエンが従来の水系バブラー(aqueous bubbler)において揮発されるとき、トルエンはより濃厚な水層の表面上に二分子層として存在し、したがって、均質なガス混合物を作り出す能力を阻害する。さらに、加湿が行われる手法が重要であり得る。プロセスにおいて加湿が行われるのが早過ぎる場合には、ガス混合物が損なわれることがあり、不正確な濃度の被分析物が作り出され得る。他の状況では、プロセスにおいて加湿が行われるのが遅過ぎる場合には、システムは温度変化の影響を受けやすくなる可能性があり、そのような温度変化は、有機液滴又は水性液滴のいずれかの核形成を生じる場合があり、これらの液滴が次いで溶液からの均質なガスの成分を捕捉することにより、均一で微細な霧状になった被分析物ではなく、粗いコロイド状エアロゾルを作り出す場合がある。
【0013】
前述の事柄は、揮発性被分析物を含有する加湿された高精度の混合ガス混合物の生成上の一般的な問題に当てはまる。
呼気に基づくアルコール検出器の較正及び試験に必要とされるものなどの、エタノールを含有する加湿された高精度の混合ガス混合物の生成上の問題を検討することにより、さらなる理解を得ることができる。
【0014】
より詳細には、呼気に基づくアルコール検出器を試験する場合、初期の生成装置は、市販されているエタノールガスタンクを使用して加湿された混合ガス混合物を生成するために作り出された(この初期の生成装置は時に「ウェットガス呼気アルコールシミュレータ(Wet Gas Breath Alcohol Simulator)」又は「WGBAS」と称される)。WGBASは、DADSSプログラムによって必要とされる精度の程度(例えば、目標のBrACレベルの0.0075%を超えて変動しないBrACレベル)に合致し、それを上回ることができる湿った呼気エタノール混合物を生成できることを示した。しかしながら、エタノールガス混合物をWGBAS装置で生成する方法は、長期の有用な期間にわたって精密且つ正確に維持することができないエタノールガス混合物を生じる。タンクに収容されたガス混合物中における成分ガスの濃度はタンクの充填後に増大させることができないため、WGBAS装置は高濃度エタノールタンクを用いる。このタンクからのエタノールは、次にキャリアガス(例えばヘリウム、窒素又は他の非反応性ガス)と混ぜ合わせられ、最終濃度のエタノールガス混合物を生成するためにマスフローコントローラ(MFC)が使用される。エタノールの物理的特性により、3000ppmのエタノールガス混合物は、エタノールが気体状態にとどまることを保証するためには低圧で維持されなければならない。
【0015】
この低圧は、エタノールガス混合物を収容するタンクが必然的に比較的少量のエタノールを収容することを意味し、したがって、エタノールガス混合物中に所望量のエタノールを提供するためには試験中にタンクを頻繁に交換しなければならない状況を作り出す。
【0016】
さらに、試験中におけるタンクの交換は、例えば、商用ガス産業において典型的である報告濃度の±2%の変動により、試験中に一貫性の問題を生じる。この誤差の導入により、異なる混合物を与え(よってWGBAS装置の最終ガス生産物において異なるエタノール濃度を与え)得る複数のエタノールタンクの使用によって較正又は試験サイクルが無効にされないことを保証するために、常時監視及び管理が必要となる。
【0017】
上記に加えて、加湿され制御されたエタノールガス混合物(「DEPARTMENT OF TRANSPORTATION National Highway Traffic Safety Administration [Docket No. NHTSA-2007-28067] Highway Safety Programs; Model Specifications for Calibrating Units for Breath Alcohol Testers; Conforming Products List of Calibrating Units for Breath Alcohol Testers」に列挙されているようなもの)を作り出すための現在の技術は、(i)加湿されたエタノールガス混合物の最大の達成可能な正確度及び精度、並びに(ii)一定のエタノール濃度を維持できる時間の長さを含む制限を有する。より詳細には、NHTSAモデル仕様書中に列記された技術は、いわゆる「ドライガスシステム」又は「ウェットバス(「バブラー」)システム」のいずれかである。ドライガスシステムは、キャリアガス(例えば窒素)を含むエタノールガスのタンクからなる。上述したように、典型的なガスシステムは、報告濃度の±2%の分析正確度を備えている。商業的供給源によって供給される成分ガスはタンクで供給されるため、ガスの物理特性により、高頻度のタンクターンオーバー(即ちタンクの取り換え)が決定づけられ、よって(i)較正又は試験に2つ以上のタンクを使用した場合の精度の低下、及び(ii)高コストを生じる。ウェットバス(「バブラー」)システムは、不活性キャリアガスが通される標準化アルコール水溶液を収容した加熱浴からなる。この「バブリング」作用は、加湿されたエタノール及びキャリアガスの気相混合物を作り出す。ウェットバスシステムは加湿され制御された気体エタノール被分析物を提供するが、これらのシステムの正確度及び精度は制限されている。NHTSAモデル規格は、これらのシステムがBrACレベルの0.002%未満の標準誤差(「正確度」)及び2%の相対標準偏差(RSD)(「精度」)を有することのみを要求している。これらの正確度及び精度の要件は、DADSSプログラムの要件よりも一桁低い正確度及び精度である。加えて、ウェットバスシステムは、液体標準溶液中のエタノールが消費されるにつれて気相中のエタノールの濃度が低下するので、一定のエタノール濃度を維持することができないことが知られている。また、ドライガスシステム及びウェットバスシステムの双方は、オンデマンドで容易に又は正確に調整することができない。ドライガスシステムにおけるエタノール濃度は、タンクが生産された後に変更することはできず、ウェットバスシステムにおけるエタノール濃度は、オンデマンドで大まかにのみ調整することができるが、オンデマンドで正確に、精密に、且つ/又は迅速に調整することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
結果として、本明細書では時に「混合ガス生成物」又は「BGP」と称される、揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物を生成するための新規で改善された方法及び装置であって、BGPの構成成分の正確で精密な濃度を長期間にわたって維持することができるとともに、BGPの構成成分の濃度をオンデマンドで変化させる能力も提供する方法及び装置が必要とされている。
【0019】
また、加湿されたBGPを生成するための新規で改善された方法及び装置も必要とされている。
また、揮発性被分析物を含有するヒト呼気を模倣するBGP(例えば、人のBrACを特定するためのDADSSプログラムにおける検出器などの高性能呼気センサーの試験用)を生成するための新規で改善された方法及び装置も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、本明細書では時に「混合ガス生成物」又は「BGP」と称される、揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物を生成するための新規で改善された方法及び装置であって、BGPの構成成分の正確で精密な濃度を長期間にわたって維持することができるとともに、BGPの構成成分の濃度をオンデマンドで変化させる能力も提供する方法及び装置の提供及び使用を含む。
【0021】
本発明は、加湿されたBGPを生成するための新規で改善された方法及び装置も含む。
また本発明は、揮発性被分析物を含有するヒト呼気を模倣するBGP(例えば、人のBrACを特定するための検出器などの高性能呼気センサーの試験用)を生成するための新規で改善された方法及び装置も含む。
【0022】
本発明の1つの好ましい形態では、揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物(即ち「混合ガス生成物」又は「BGP」)を生成するための装置は、BGPを作り出すために2つのサブシステムの組合せ、(i)液体形態の揮発性被分析物を取り込み、揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して、時に本明細書では「AGS」と称される被分析物ガス流を生成する被分析物ガス化器(AG)サブシステムと、(ii)AGSを他のガスと混合し、またAGSに対して加湿も行って、所望濃度のBGPを高い正確度及び精度で生成するガス混合器(GM)サブシステムとを用いる。
【0023】
被分析物ガス化器(AG)サブシステムは、所望の揮発性被分析物(例えばエタノール)をその気体状態に迅速に変換するために気化の熱力学原理を用いる。この所望の被分析物蒸気(例えばエタノール蒸気)の形成は、被分析物が気体状態にとどまるのに十分なほど被分析物蒸気の濃度が低いままであることを保証するために使用される一定流量のキャリアガス(例えばヘリウム又は所望の被分析物と反応しない別のガス)の存在下で行われる。AGSは次にガス混合器(GM)サブシステムに送給される。
【0024】
ガス混合器(GM)サブシステムは、被分析物ガス化器(AG)サブシステムからAGSを受容し、AGSをガス分析器(GA)に通過させ、ガス分析器(GA)は被分析物ガス化器(AG)サブシステムから到来するAGSの濃度を監視する。ガス混合器(GM)サブシステムはまたガスプロポーショナー(gas proportioner)も備える。GAからのデータはガスプロポーショナーに報告され、ガスプロポーショナーは、このデータを使用して(i)AGSの被分析物濃度の任意の変化に基づいてAGSの流量、及び(ii)時に本明細書では混ぜ合わせられると「複合希釈剤ガス流」又は「CDGS」と称され、最終的にAGSと混ぜ合わせられることになる1種又は複数種の希釈剤ガス(例えばO、CO及びN)の流量を適切に比例調節する(proportion)。ガスプロポーショナーを退出する比例調節したCDGSは温度制御チャンバに進入し、次いで加湿されて、時に本明細書では「加湿された複合希釈剤ガス流」又は「HCDGS」と称されるガス流を生成する。次に、ガスプロポーショナーを退出する比例調節したAGS及び加湿器を退出する比例調節したHCDGSは、ガス混合管で混ぜ合わせられて、揮発性被分析物を含有する所望の高精度の混合ガス混合物(即ちBGP)を生成する。
【0025】
本発明の1つの好ましい形態では、BGPはガス混合器(GM)サブシステムを出る前にセンサーに通される。このセンサーはBGPの様々な構成物質の濃度を監視する。このセンサーからのデータはガスプロポーショナーに送り返され、ガスプロポーショナーは次に(i)AGSの変化する被分析物濃度に基づいてAGSの流量、及び(ii)時に本明細書では混ぜ合わせられると「複合希釈剤ガス流」又は「CDGS」と称され、最終的にAGSと混ぜ合わせられることになる1種又は複数種の希釈剤ガス(例えばO、CO及びN)の流量を調整して、BGPの正しい組成を保証する。したがって、本発明のこの形態では、ガス混合器(GM)サブシステムは、最終的なBGPが正確且つ精密なガスの濃度を有するように、加湿してBGPを作り出すために使用されるAGS及びCDGSの量をリアルタイムで調整して、AGによって生成されているAGSの濃度における任意の変動を補償するリアルタイムフィードバック制御を提供する。
【0026】
本発明の一形態では、ガス分析器(GA)は、キャリアガスの公知の物理定数であるキャリアガス(例えばヘリウム)を通過する音速及びAGSを通過する音速を比較することにより、被分析物ガス化器(AG)サブシステムで作り出されているAGSの濃度を監視する。これらの速度の差はAGS中の揮発性被分析物の濃度を特定するために計算され用いられる。
【0027】
ガス混合器(GM)サブシステムの生産物は様々な目的に使用され得る。例として、しかしこれに限定されるものではないが、CDGS及び湿気がヒト呼気を模倣するように配合される場合、BGPは高性能呼気センサーを試験するために使用されてもよい。さらなる例として、しかしこれに限定されるものではないが、被分析物がエタノールである場合、BGPは人のBrACを特定するための検出器を試験するために使用されてもよい。
【0028】
本発明の一形態では、高精度の混合ガス生成物(BGP)を生成するためのシステムであって、システムは、
液体形態の揮発性被分析物の供給物と、
不活性キャリアガスの供給物と、
少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物と、
液体形態の揮発性被分析物を受容し、揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して被分析物ガス流(AGS)を形成するための被分析物ガス化器(AG)サブシステムと、
AGサブシステムからAGSを受容し、AGSを少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物と混合してBGPを生成するためのガス混合器(GM)サブシステムとを備え、GMサブシステムは、
AGSを受容し、AGSを分析するためのガス分析器(GA)と、
GAからAGSを受容し、少なくとも1種の希釈剤ガスを受容し、GAの結果に基づいてAGS及び少なくとも1種の希釈剤ガスを比例調節して、比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを供給するためのガスプロポーショナーと、
ガスプロポーショナーから比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤を受容してBGPを生成するためのガス混合チャンバとを備える、システムが提供される。
【0029】
本発明の別の形態では、高精度の混合ガス生成物(BGP)を生成するための方法であって、方法は、
液体形態の揮発性被分析物の供給物と、
不活性キャリアガスの供給物と、
少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物とを供給するステップと、
揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して被分析物ガス流(AGS)を形成するステップと、
AGSを少なくとも1種の希釈剤ガスの供給物と混合してBGPを生成するステップとを含み、混合してBGPを生成するステップは、
AGSを分析するステップと、
AGSを分析するステップの結果に基づいてAGS及び少なくとも1種の希釈剤ガスを比例調節して、比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤ガスを供給するステップと、
比例調節したAGS及び比例調節した少なくとも1種の希釈剤を混合してBGPを生成するステップとを含む、方法が提供される。
【0030】
本発明の別の形態では、液体形態の揮発性被分析物を受容し、揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して被分析物ガス流(AGS)を形成するための揮発器であって、揮発器は、
液体形態の揮発性被分析物を受容するように構成された第1の管であって、第1の管は遠位端部、近位端部、及び遠位端部と近位端部との間に延びる管腔を備えた第1の部分を有し、第1の管の第1の部分は遠位方向において内側に先細りになる外面を有する、第1の管と、
不活性キャリアガスを受容するように構成された第2の管であって、第2の管は遠位端部、近位端部、及び遠位端部と近位端部との間に延びる管腔を備えた第2の部分を有し、第2の管の第2の部分は大径から小径へと段状に縮小する(step down)内面を有する、第2の管とを備え、
第2の管の第2の部分の内面が第1の管の第1の部分の外面から離間されるように、第2の管の第2の部分は第1の管の第1の部分の上に同軸に配置されており、
第1の管の第1の部分の遠位端部は、第2の管の第2の部分の内面が大径から小径へと段状に縮小する位置に近接して配置されている、揮発器が提供される。
【0031】
本発明のこれら及び他の目的及び特徴は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明によって、より完全に開示されるか、又は明らかにされるであろう。詳細な説明は添付図面と共に検討されるべきであり、添付図面では同様の番号は同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本明細書では時に「混合ガス生成物」又は「BGP」と称される、揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物を生成するための新規な装置を示す概略図であり、新規な装置は2つのサブシステム、(i)液体形態の揮発性被分析物を取り込み、揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった被分析物を不活性キャリアガスと混合して、時に本明細書では「AGS」と称される被分析物ガス流を生成する被分析物ガス化器(AG)サブシステムと、(ii)AGSを他のガスと混合し、またAGSに対して加湿も行って、所望濃度のBGPを高い正確度及び精度で生成するガス混合器(GM)サブシステムとを備える。
図2】BGPを生成するための新規な装置を示す概略図であり、被分析物ガス化器(AG)サブシステムは分解立体図で示されており、またガス混合器(GM)サブシステムから分解立体図で示されたガス分析器(GA)も示している。
図3】被分析物ガス化器(AG)サブシステムをより詳細に示す概略図であり、被分析物ガス化器(AG)サブシステムは、通常、(a)試薬及び温度調節器モジュールと、(b)ポンプモジュールと、(c)揮発及び膨張チャンバモジュールとを備え、さらにガス混合器(GM)サブシステムのガス分析器(GA)を示している。
図4】試薬及び温度調節器モジュールのさらなる詳細を示す概略図である。
図5】ポンプモジュールのさらなる詳細を示す概略図である。
図6】揮発及び膨張チャンバモジュールのさらなる詳細を示す概略図であり、揮発及び膨張チャンバモジュールは噴霧器を備える。
図7】揮発及び膨張チャンバモジュールの噴霧器のさらなる詳細を示す概略図である。
図8】揮発及び膨張チャンバモジュールの噴霧器のさらなる詳細を示す概略図である。
図9】揮発及び膨張チャンバモジュールの噴霧器のさらなる詳細を示す概略図である。
図10】GAモジュールのさらなる詳細並びに付属装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
最初に図1及び図2を見ると、揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物(即ち「混合ガス生成物」又は「BGP」)を生成するための新規な装置5が示されており、BGPは様々な目的に使用され得る。例として、しかしこれに限定されるものではないが、ヒト呼気を模倣するために希釈剤ガス及び湿気が配合される場合、BGPは高性能呼気センサーを試験するために使用されてもよい。さらなる例として、しかしこれに限定されるものではないが、被分析物がエタノールである場合、BGPは人のBrACを特定するための検出器を試験するために使用されてもよい。
【0034】
理解を深めるために、装置5は、時に、例えばDADSSプログラムによって提供されるアルコール検出器などの呼気に基づくアルコール検出器の較正及び試験に必要とされるBGPなどの、ヒト呼気を模倣し、被分析物がエタノールである、加湿されたBGPを生成するためのその使用の状況において後述される。しかしながら、装置5のそのような用途は、単なる例示あることが意図され、ヒト呼気を模倣し、且つ/又は被分析物がエタノールであるBGPの生成に本発明を限定するように解釈されるべきではない。本発明は、様々な組成であり、様々な揮発性被分析物を含有する広範囲のBGPを生成することができる。
【0035】
新規な装置5は、通常、2つのサブシステム、(i)液体形態の揮発性被分析物を取り込み、揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して、時に本明細書では「AGS」と称される被分析物ガス流を生成する被分析物ガス化器(AG)サブシステム10と、(ii)AGSを他のガスと混合し、またAGSに対して加湿も行って、所望濃度のBGPを高い正確度及び精度で生成するガス混合器(GM)サブシステム15とを備える。
【0036】
被分析物ガス化器(AG)サブシステム10
被分析物ガス化器(AG)サブシステム10は、液体形態の揮発性被分析物を取り込み、揮発性被分析物を霧状にし、霧状になった揮発性被分析物を不活性キャリアガスと混合して、時に本明細書では「AGS」と称される被分析物ガス流を生成する。被分析物ガス化器(AG)サブシステム10によるAGS生産物は、所望のBGPを生成するためにガス混合器(GM)サブシステム15に送給される。
【0037】
ここで図1図3を見ると、被分析物ガス化器(AG)サブシステム10は、通常、(a)試薬及び温度調節器モジュール20と、(b)ポンプモジュール25と、(c)揮発及び膨張チャンバモジュール30とを備える。
【0038】
後述されるように、試薬及び温度調節器モジュール20は、(i)ポンプモジュール25に揮発及び膨張チャンバモジュール30内で霧状にされる被分析物(例えばエタノール)を供給し、(ii)シール洗浄液をポンプモジュール25(下記参照)に供給し、(iii)揮発及び膨張チャンバモジュール30の揮発チャンバ(下記参照)の温度を調節するために使用される。ポンプモジュール25は被分析物(例えばエタノール)を揮発及び膨張チャンバモジュール30に供給する。温度制御された揮発及び膨張チャンバモジュール30は、液体形態の被分析物(例えばエタノール)を受容し、被分析物(例えばエタノール)を霧状にし、この被分析物を不活性キャリアガス(例えばヘリウム)と混合して、時に本明細書では「AGS」と称される被分析物ガス流を生成する。
【0039】
(a)試薬及び温度調節器モジュール20
試薬及び温度調節器モジュール20は、被分析物(例えばエタノール)及びシール洗浄液をポンプモジュール25に供給するために使用され、試薬及び温度調節器モジュール20は、揮発及び膨張チャンバモジュール30の揮発チャンバ(下記参照)の温度を制御するために使用される。
【0040】
試薬及び温度調節器モジュール20は、図4にさらに詳細に示されている。試薬及び温度調節器モジュール20は、通常、シール洗浄液供給部40と、被分析物(例えばエタノール)溶液供給部45と、揮発及び膨張チャンバモジュール30の揮発チャンバ(下記参照)の温度を制御するための温度調節器50とを備える。シール洗浄液供給部40の送給管路55、被分析物(例えばエタノール)溶液供給部45の送給管路57、及びシール洗浄液供給部40の戻り管路60は、ポンプモジュール25に接続される。送給管路55はシール洗浄液をポンプモジュール25に提供し、送給管路57は被分析物(例えばエタノール)をポンプモジュール25に提供する。ポンプモジュール25から戻ってくる任意のシール洗浄液は、戻り管路60を通ってシール洗浄液供給部40に流れ込む。
【0041】
温度調節器50(好ましくは揮発及び膨張チャンバモジュール30内の熱電対65に接続される、図6参照)は、揮発及び膨張チャンバモジュール30の揮発チャンバ(下記参照)の温度を1つ又は複数の所定の設定温度で維持するために使用される。
【0042】
(b)ポンプモジュール25
ポンプモジュール25は、被分析物(例えばエタノール)を温度制御された揮発及び膨張チャンバモジュール30に供給するために使用される。ポンプモジュール25は、図5にさらに詳細に示されている。本発明の1つの好ましい実施形態において、ポンプモジュール25は高性能液体ポンプである。より詳細には、ポンプモジュール25で使用されるポンプは、好ましくは超高圧デュアルピストンポンプである。超高圧デュアルピストンポンプは、脈動を低減し、安定した流動が揮発及び膨張チャンバモジュール30に提供されることを保証するように、デュアルヘッド型のものである。ポンプモジュール25は、制御部70と、高性能液体ポンプをプライミングするためのノブ75とを備える。
【0043】
ポンプの汚染及びシール不良を防止するためには、ポンプヘッドの後部を洗い流すためにシール洗浄液が使用される。シール洗浄液は、プロパノール、別の有機シール洗浄液又は非有機シール洗浄液であり得る。シール洗浄液は(試薬及び温度調節器モジュール20の送給管路55を経て)管路80でポンプモジュール25に進入し、管路85でポンプモジュール25を退出する(そして試薬及び温度調節器モジュール20の戻り管路60を経てシール洗浄液供給部40に戻る)。被分析物(例えばエタノール)がポンプヘッドの内部構造と非反応性であるためにポンプヘッドの後部を洗い流すことが必要とされない場合があるが、この予防措置は信頼できる作動システムを保証するためのよい習慣であると考えられる。加えて、ポンプヘッドの後方に液体(即ちシール洗浄液)が存在することは、振動を隔離し、ポンプヘッド内の内部作動圧力の平衡を保つのに役立つ。
【0044】
試薬及び温度調節器モジュール20からの被分析物(例えばエタノール)は、(試薬及び温度調節器モジュール20の送給管路57を経て)管路90でポンプモジュール25に進入し、管路95でポンプモジュール25を退出し、ここで被分析物は揮発及び膨張チャンバモジュール30に圧送される。
【0045】
(c)揮発及び膨張チャンバモジュール30
揮発及び膨張チャンバモジュール30は、液体形態の被分析物(例えばエタノール)を受容し、被分析物(例えばエタノール)を霧状にし、この被分析物を不活性キャリアガス(例えばヘリウム)と混合して、時に本明細書では「AGS」と称される被分析物ガス流を生成する温度制御されたユニットである。揮発及び膨張チャンバモジュール30は、図6図9に詳細に示されている。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態では、揮発及び膨張チャンバモジュール30は、噴霧器100と、膨張チャンバ105と、揮発チャンバ110とを備える。揮発及び膨張チャンバモジュール30は、調整弁115及び圧力解放機構120も備え得る。調整弁115は、揮発及び膨張チャンバモジュール30を退出して、ガス混合器(GM)サブシステム15に進むAGSの流量を制御する。管路95はポンプモジュール25から流入する被分析物(例えばエタノール)を取り込み、それを噴霧器100の第1の入口125に運ぶ。キャリアガス(例えばヘリウム)は、キャリアガス供給部130(図1参照)から、キャリアガス管路141を経て、噴霧器100の第2の入口140に通じる接続具135に導入される。管路95及びキャリアガス管路141は「T」結合を形成するように噴霧器100に進入する。噴霧器100において、噴霧器100の第2の入口140を通って導入されたキャリアガス(例えばヘリウム)は、噴霧器100の第1の入口125を通って導入された液体被分析物(例えばエタノール)へ流れることにより、被分析物(例えばエタノール)を、接続具142を通って揮発チャンバ110内に導入する。
【0047】
より詳細には、次に揮発及び膨張チャンバモジュール30の噴霧器100の拡大図を示す図7図9を見ると、噴霧器100は、液体被分析物(例えばエタノール)の流れを、流れているキャリアガス流(例えばヘリウム)に注入するために使用され、2つの流れの混合物は、その後、温度制御された揮発チャンバ110内に進む。2つの流れの混合は、被分析物(例えばエタノール)及びキャリアガス(例えばヘリウム)の均質化された混合物を該混合物が揮発チャンバ110に進入する前に作り出すことによって、被分析物(例えばエタノール)濃度における変動性を低減することを理解されたい。噴霧器100内における管路95の先端部は、低角度の円錐尖端143に研がれて、液体被分析物(例えばエタノール)がキャリアガス(例えばヘリウム)に遭遇する尖端での表面積の量を大幅に減少させる。この表面積の低減により、管路95(PEEKチューブ又は別の材料から形成されたチューブを備え得る)に対する液体被分析物(例えばエタノール)の毛細管付着(capillary attachment)が低減される。この円錐形状を管路95のチューブの円錐先端部143上における加速されたキャリアガス(例えばヘリウム)の流動と組み合わせることにより、液体被分析物(例えばエタノール)液滴のキャリアガス(例えばヘリウム)中への完全なウィッキングが保証される。
【0048】
揮発及び膨張チャンバモジュール30に対する液体被分析物(例えばエタノール)の導入は設計の重要な側面である。揮発チャンバ110内への液体被分析物(例えばエタノール)の滑らかで脈動のない流動なしでは、システムは必要とされる精度のレベルを実現することはできないであろう。システム5が必要とされる精度のレベルを実現できるようにするためには、揮発チャンバ110への液体被分析物(例えばエタノール)の滑らかで脈動のない流動を提供するために高精度ポンプが使用される。本発明の一形態では、高性能デュアルヘッドポンプ(dual headed pump)がポンプモジュール25で使用される。より詳細には、ポンプモジュール25で使用されるポンプは、好ましくは超高圧デュアルピストンポンプである。超高圧デュアルピストンポンプは、0.001mL/分もの低流量を±0.1%の再現性で扱うことができる。圧送の正確度は、80:20のIPA溶液を1000PSIで圧送して実施した試験によって、0.2mL/分以上において±2%で確認された。圧送された溶液の圧力も±2%であると確認された。これらの能力により、このポンプの標準機能である脈動減衰補償を提供することが可能となる。
【0049】
この種のポンプは、その2つのヘッドを通してキャンセリングパルスを用いて、非常に安定した流量をもたらす。
そのようなポンプにおける誤差は、液体被分析物(例えばエタノール)の流量及び低密度液体に見られる毛細管特性(capillary properties)に起因する。液体の表面張力は、その液体の毛細管特性と直接関係している。例として、しかしこれに限定されるものではないが、エタノールの分子間力は、摂氏25度で22×10-3J/mの表面張力をもたらす。これは水(摂氏20度で72.8×10-3J/m)よりはるかに低いが、この表面張力が、毛細管(即ちPEEKチューブ)を構成する物質に対して液体を保持する付着力と組み合わさると、濃度の一貫性を破壊し得る。
【0050】
より詳細には、1LPMのガス流量において16000ppmの流出物を±29ppmの正確度で生成する被分析物ガス化器(AG)サブシステム10に対して、エタノール流は80uL/分の割合で圧送されなければならないことが判明した。80uL/分で0.158cm(1/16インチ(”))のオリフィスを通す場合、毛細管力は圧送プロファイルを増大させるほど強く、エタノールの濃度において目に見える波及効果をもたらすことが分かった。意義深いことには、これは、エタノールをキャリアガス(例えばヘリウム)流の中央に導入するPEEKチューブの先端部を先細りにする本設計によって回避された。
【0051】
加えて、最高の精度のためには、装置は入来する被分析物(例えばエタノール)のすべてをリアルタイムで容易に霧状にできなければならない。この課題は、キャリアガス(例えばヘリウム)を揮発チャンバ110に運ぶために使用される管路の内径を変更することによって完遂される。高度に非多孔性の表面を有した一定内径管路に溶液を圧送する場合、溶液は、流量が最も遅く、且つガスの流動が最も層流であるチャンバの側面に蓄積されるおそれがある。初期の試験中、そのような異常は、長期の実行時間にわたって被分析物の濃度を観察しているときに認識できた。この効果を打ち消すために、キャリアガス管路の寸法が0.635cm(1/4インチ)内径管路から0.317cm(1/8インチ)内径管路に段状に縮小された。この0.317cm(1/8インチ)内径管路は、次に、直径2.5インチであるチャンバに退出した。毛細管の先端部は、0.635cm(1/4インチ)パイプと0.317cm(1/8インチパイプ)との間の接合部に配置されて、オリフィスプレートの通過が作り出す増大した流量及び乱流により、ガス流への任意の生じ得る液滴のウィッキングを最大化した。この増大した圧力(16倍高い)及び流量(16倍高い)は次に、AGSが加熱された揮発チャンバに進入すると、劇的に低下するであろう。極端な温度と、容積が増大すると同時に圧力が劇的に低下することとの組合せが相前後して作用して、液体被分析物(例えばエタノール)の気体状態への適切な揮発を保証する。
【0052】
より詳細には、次に図9を見ると、噴霧器100は、
(i)管路95の管腔の直径が一定なまま、管路95が遠位方向において内側に先細りになった外面を有し、
(ii)キャリア管路141が大径から小径へと段状に縮小する内面を有し、
(iii)管路95の遠位端部(即ち円錐先端部143)が、キャリア管路141の内表面が大径から小径へと段状に縮小する位置に近接して配置されるように、構成されている。
【0053】
このようにして、噴霧器100は、ポンプモジュール25から受容された液体被分析物(例えばエタノール)のすべてが霧状にされるように、キャリアガス(例えばヘリウム)中への液体被分析物(例えばエタノール)の完全なウィッキングを実現する。
【0054】
揮発チャンバ110は、被分析物の沸点より十分に高い温度に加熱される。これにより、キャリアガスに混入された液体被分析物のすべてが揮発されることが保証される。例として、しかしこれに限定されるものではないが、被分析物がエタノールであるとき、揮発チャンバ110は、好ましくは、エタノールの沸点より十分に高い摂氏約90度に加熱される。
【0055】
次に、AGSはパイプ144を経て膨張チャンバ105に流れ込み、ここでAGSは、膨張チャンバ105から流れ出て圧力調整弁115及び管145を通ってガス混合器(GM)15に流れ込む前に、均質化することができる。
【0056】
圧力解放機構120は揮発チャンバ110に接続されており、システムの圧力限度内である解放圧力に設定されている。したがって、被分析物ガス化器(AG)サブシステム10は、被分析物ガス化器(AG)サブシステム10における過度の圧力上昇の場合に安全である。
【0057】
ガス混合器(GM)サブシステム15
ガス混合器15は、被分析物ガス化器(AG)サブシステム10からAGSを受容し、AGSを他のガスと混合し、またAGSに加湿も行って、所望の濃度のBGPを高い正確度及び精度の双方で生成する。
【0058】
ガス混合器(GM)サブシステム15は、通常、
(a)被分析物ガス化器(AG)サブシステム10から到来するAGSの濃度を監視するガス分析器(GA)146と、
(b)ガス分析器(GA)146からデータを受信し、このデータを使用して(i)AGSの被分析物濃度の任意の変化に基づいてAGSの流量、及び(ii)時に本明細書では混ぜ合わせられると「複合希釈剤ガス流」又は「CDGS」と称され、最終的にはAGSと混ぜ合わせられることになる1種又は複数種の希釈剤ガス(例えばO、CO及びN)の流量を(流量制御弁を経て、図1参照)適切に比例調節するガスプロポーショナー147と、
(c)ガスプロポーショナーを退出する比例調節したCDGSを加湿して、時に本明細書では「加湿された複合希釈剤ガス流」又は「HCDGS」と称されるガス流を生成するための加湿器148と、
(d)ガスプロポーショナー147からの比例調節したAGSと、加湿器148からの比例調節したHCDGSとを受容して揮発性被分析物を含有する所望の高精度の混合ガス混合物(即ちBGP)を生成するガス混合管149と、
(e)ガス混合管149からBGPを受容し、BGPの様々な構成物質の濃度を監視するセンサー150とを備える。必要に応じて、センサー150は、最終的なBGPが高度に正確且つ精密なガスの濃度を有するように、BGPを作り出すために使用されるAGS及び加湿された希釈剤ガスの量を調整して、被分析物ガス化器(AG)サブシステム10によって生成されているAGSの濃度における任意の変動を補償するリアルタイムフィードバック制御を提供してもよい。
【0059】
(a)ガス分析器(GA)146
ガス分析器(GA)146は被分析物ガス化器(GM)サブシステム10からAGSを受容し、AGS中における被分析物の濃度を監視する。環境条件及び動作条件により時にAGS中における被分析物の濃度の変動が生じ得るため、AGS中における被分析物の濃度を監視することが重要であることに留意されたい。そのような環境条件の例は、室温、大気圧等である。そのような動作条件の例は、システム温度、システム圧力等である。GA146からのデータはガスプロポーショナー180に報告され、AGSはガスプロポーショナー180に送られる。ガス分析器(GA)146は、図10にさらに詳細に示されている。
【0060】
ガス分析器(GA)146は、管145において揮発及び膨張チャンバモジュール30を出るAGSの濃度を分析する。AGSのこの測定は非侵襲的であり、正確度は数パーツ・パー・ミリオン(ppm)以内であり、例えば被分析物がエタノールである場合には30~300ppmであり得る。本発明の好ましい形態において、ガス分析器(GA)は、2成分ガス分析器を備え、2つの異なるガスの比率を測定する能力を有する。例として、しかしこれに限定されるものではないが、ガス分析器146は、エタノールガス対ヘリウムガスの比率を測定し得る。ガス分析器146は、分光法、クロマトグラフ法、又は赤外スペクトル若しくは当業者に公知の他の電磁スペクトルバンドにおける他の方法を用い得る。本発明の好ましい形態において、ガス分析器146は、ガス濃度を測定するために示強的性質及び/又は示量的性質を用いる。例えば、ガス分析器146は、ガス濃度を特定するために、温度、圧力、熱伝導度、流量及び/又は音速の測定値を含むが、これらに限定されない物理的性質を用い得る。
【0061】
図10に示すように、システム5は、キャリアガス供給部130からの不純物又は微粒子を除去するためのフィルター155及びガス流量を特定するための流量計160も備え得る。この流量計160は、ガス分析器(GA)146からの測定値を用いるフィードバックシステムの一部として使用される機械流量計、絞り弁又はマスフローコントローラであってもよいが、これらに限定されるものではない。システム5がフィルター155を備える場合、キャリアガス(例えばヘリウム)は、キャリアガスが接続具135を経て揮発及び膨張チャンバモジュール30に入る(図6参照)前に、流入路165を通ってフィルター155に進入し、流出路170を通ってフィルター155を退出する。
【0062】
(b)ガスプロポーショナー147
ガスプロポーショナー147は、ガス分析器(GA)146からのデータを使用して(i)AGSの被分析物濃度の任意の変化に基づいてAGSの流量、及び(ii)時に本明細書では混ぜ合わせられると「複合希釈剤ガス流」又は「CDGS」と称される1種又は複数種の希釈剤ガス(例えばO、CO及びN)の流量を適切に比例調節する。
【0063】
本発明の1つの好ましい形態において、ガスプロポーショナー147は、希釈剤ガス1(例えばN)の供給源195、希釈剤ガス2(例えばCO)の供給源200及び希釈剤ガス3(例えばO)の供給源205の流量を比例調節する。より詳細には、ガスプロポーショナー147は、ガス分析器(GA)146から受信したデータを使用して、最終的に所望の混合ガス生成物(BGP)を生成するように必要に応じて希釈剤ガスの流量を比例調節する。ガスプロポーショナー147はまた、1種又は複数種の比例調節した希釈剤ガス(例えばO、CO及びN)を混ぜ合わせて「複合希釈剤ガス流」又は「CDGS」にする。ガスプロポーショナー147からの比例調節したCDGSは、次に供給管路207を経て加湿器148に送られる。
【0064】
同時に、比例調節したAGSは、(供給管路208を経て)ガス混合管149(下記参照)に流される。
図1に見られるように、ガスプロポーショナー147は、AGS、希釈剤ガス1、希釈剤ガス2、希釈剤ガス3等、及びCDGSの割合を調整するために様々な流量制御弁を使用する。本発明の一形態では、ガスプロポーショナー147はマスフローコントローラ(MFC)を備える。
【0065】
(c)加湿器148
加湿器148はガスプロポーショナー147から比例調節したCDGSを受容し、比例調節したCDGSを加湿して、時に本明細書では「加湿された複合希釈剤ガス流」又は「HCDGS」と称されるガス流を提供する。この目的のために、加湿器148は湿気供給源210から水蒸気を受容する。加湿器148からのHCDGSは、次に、供給管路220を経てガス混合管149へ送られる。好ましくは、加湿器148、湿気供給源210及びガス混合管149は、温度制御チャンバ225に収容されている。
【0066】
(d)ガス混合管149
ガス混合管149はガスプロポーショナー147から比例調節したAGSを受容し、加湿器148から比例調節したHCDGSを受容する。様々な成分がガス混合管149の内部で混合されると、結果として揮発性被分析物を含有する高精度の混合ガス混合物(即ちBGP)が得られる。BGPは次に温度制御された供給管路230を経てセンサー150に送られる。
【0067】
(e)センサー150
センサー150はガス混合管149からBGPを受容し、BGPを分析する、即ち、センサー150はBGPの様々な構成物質の濃度を監視する。また、必要に応じて、センサー150からのデータはガスプロポーショナー147に送り返され、ガスプロポーショナー147は、次に(i)AGSの流量及び(ii)1種又は複数種の希釈剤ガス(例えばO、CO及びN)の流量を調整して、BGPの正しい組成を保証する。したがって、本発明のこの形態では、ガス混合器(GM)サブシステム15は、最終的なBGPが正確且つ精密なガスの濃度を有するように、BGPを作り出すために使用されるAGS及びCDGSの量をリアルタイムで調整して、被分析物ガス化器(AG)サブシステム10によって生成されているAGSの濃度における任意の変動を補償するリアルタイムフィードバック制御を提供する。例として、しかしこれに限定されるものではないが、BGPがヒト呼気を模倣すべき場合、センサー150は、最終的なBGPがヒト呼気を模倣するガスの濃度を有するように、BGPを作り出すために使用されるAGS及びCDGSの量をリアルタイムで調整して、所望の加湿されたBGPを較正及び試験すべき検出器(例えば呼気に基づくアルコール検出器)に提供する。
【0068】
装置の最終的なフィードバックは、センサー150のための複数のガスに基づく研究室グレードの機器のうちのいずれかとの装置の統合によって見出されることを理解されたい。ガスプロポーショナー147の付加的なチューニングのためにガスに基づく研究室グレードの機器を用いることにより、システムにおけるあらゆる誤差が必要に応じて考慮され管理され得ることを保証することができる。
【0069】
本発明のいくつかの利点
本発明は、従来技術に対して多くの利点を与える。特に、本発明は、
・加湿された有機ガス被分析物を低濃度、例えば300ppmもの低い濃度で作り出すためのシステムを提供する、
・被分析物の較正標準を使用する(例えばキャリアガスに入った被分析物の事前充填タンクを使用する場合などの)代わりに、物理定数(即ちガスを通過する音速)を用いて、被分析物濃度の正確度及び精度を特定することができる(例えば2成分ガス分析器などのガス分析器)、
・内部容積及び毛細管サイズの比率が加熱チャンバの前に有機物を霧状にするように設計されているため、被分析物の完全な揮発を保証する、
・被分析物をさらに均質化して液滴形成及び内部流動力学からの変動が軽減されることを保証するための内蔵サンプを有し得る、
・ガス混合器(GM)サブシステムが必要に応じて異なる量の被分析物を吸い上げることを可能にする連続ブリード弁(continuous bleed valve)を用いて、
・異なる濃度の被分析物(例えばエタノール)ガス(0.00%BrAC~0.325%BrAC)を生成し、
・これらの被分析物(例えばエタノール)濃度を異なる流量(5.0LPM~35.0LPM)で生成し、
・マスフローコントローラ(MFC)の位置に起因する(つまりガスプロポーショナーにおける)圧力差が、揮発並びに全体的な正確度及び精度に影響を与える圧力差を生じないことを保証する、
・ヒト呼気又は目的の特定ガス混合物を模倣するために、比例調節したAGS及び比例調節したHCDGSを精密に配合することができるガス混合管を使用する、
・被分析物ガス流(例えばヘリウムにおいてエタノール)における変動を考慮するために、ガス分析器及びガスプロポーショナーを使用してガスの比率を調整する、
・混合の後及びAGSの導入の前に比例調節したCDGSを加湿し、これにより、
・被分析物(例えばエタノール)の濃度に悪影響を与えることなく、加湿された呼気が得られ、
・通常では得ることが非常に困難である精度と加湿との双方が実現される、
・加湿器及びガス混合管を所望温度(例えば摂氏34度)に加熱すること、並びに加熱された管路を通してガス混合物を運ぶことによって、ガス混合物を安定した状態に保ち、水が被分析物(例えばエタノール)を気相から引き出すのを阻止する、
・装置5の生産物をセンサーに通して送給して、ガス混合物の組成を確認し、必要に応じて調整を可能にする。
【0070】
好ましい実施形態の変更
本発明の性質を説明するために本明細書に記載され例示された詳細、材料、ステップ及び部品の配置における多くの付加的な変更が当業者によってなされ得るが、これらの変更は依然として本発明の原理及び範囲内にあることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】