(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】デジタルマイクロ流体デバイスの温度制御
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221107BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20221107BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221107BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20221107BHJP
C12M 1/38 20060101ALI20221107BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20221107BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N35/08 B
G01N37/00 101
G01N35/00 B
C12M1/38 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513568
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 CN2020111570
(87)【国際公開番号】W WO2021037094
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512096768
【氏名又は名称】ビージーアイ シェンチェン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】リン,ヤン-ユウ
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,フランク
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB23
2G058BB27
2G058DA07
2G058EA14
4B029AA07
4B029AA12
4B029BB20
4B029DD02
4B029FA15
4B063QA01
4B063QS11
4B063QS39
(57)【要約】
マイクロ流体デバイスは、第1および第2の基板構造を含む。第1の基板構造は、1つ以上の液滴を受け取るように構成された第1の基板表面を有する。液滴に電界を印加するように構成された複数の電極を有する。第2の基板構造は、第1の基板表面に面し、第1の基板表面から間隔をあけて配置された第2の基板表面を有し、流体チャネルを形成する。マイクロ流体デバイスは、第1の基板構造に隣接し、第1基板表面の反対側に配置された第1の加熱素子と、第2の基板構造に隣接し、第2の基板表面の反対側に配置された第2の加熱素子とを有する。マイクロ流体デバイスは、第1の基板構造と第2の基板構造との間の流体チャネルに隣接して配置された1つまたは複数の温度センサをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスであって、
第1の基板表面を有する第1の基板構造、
第1の基板表面に面し、第1の基板表面から間隔をあけて配置される第2の基板表面を有し、第1の基板構造と第2の基板構造の間に1つまたは複数の液滴のための複数の流体チャネルを形成する第2の基板構造、および、
複数の流体チャンネルに隣接し、エレクトロウェッティングによって液滴を移動させる複数の電極、を含み、
複数の流体チャネルは、
液滴を受け取るための第1の流体チャネルを含む第1領域、
1つまたは複数の試薬を受け取るための第2の流体チャネルを含む第2領域、
第1領域および第2領域と連通する第3領域であって、液滴を1つまたは複数の試薬と混合して混合液滴を得るように構成された第3の流体チャネルを含む第3領域、および、
第3領域と連通する第4領域であって、混合液滴を処理するように構成された第4の流体チャネルを含む第4領域、を含み、
マイクロ流体デバイスは、さらに、
流体チャネルの第3領域の両側にそれぞれ配置された第1の加熱素子および第2の加熱素子、および、
流体チャネルの第4領域の両側にそれぞれ配置された第3の加熱素子および第4の加熱素子、を含むマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
マイクロ流体デバイスは、第4領域で液滴増幅を行うように構成された請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
第4領域は、疎水性表面領域によって互いに離間された複数の親水性表面領域を含み、第4領域は、液滴が親水性表面領域上を移動するときに、親水性表面領域上に液滴の一部が複数の微小液滴を形成するように、混合液滴を処理するように構成された請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
第4領域は、疎水性表面領域を含み、液滴デジタルPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)用に構成されている請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
第1の加熱素子および第3の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、および、
第2の加熱素子および第4の加熱素子は、抵抗加熱器である、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
第1の加熱素子および第3の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、および、
第2の加熱素子および第4の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである、請求項1に記載マイクロ流体デバイス。
【請求項7】
第1の加熱素子および第3の加熱素子は、抵抗加熱器であり、そして、
第2の加熱素子および第4の加熱素子は、抵抗加熱器である、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
第1の基板構造は、第1のベース基板と、第1のベース基板上に配置された第1の誘電体層とを含み、第1の基板表面は第1の誘電体層の上に重なり、および、
複数の電極は、第1の誘電体層内に配置される、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
第1の基板構造における複数の電極は、複数の作動電極を含み、および、
第2の基板構造は、第2のベース基板と共通電極とを含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
第1の基板表面に配置された1つ以上の温度センサをさらに含む請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視し、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラをさらに含む請求項10に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
コントローラは、第1の基板表面上の温度分布を決定するように構成されている請求項11に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
1つ以上の温度センサの各々は、NTC(負温度係数)サーミスタを含む請求項10に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
第2の基板表面に配置された1つまたは複数の温度センサをさらに含む請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
マイクロ流体デバイスであって、
第1の基板表面を有する第1の基板構造であって、第1の基板表面の少なくとも一部は疎水性であり、第1の基板表面は、1つ以上の液滴を受け取るように構成される第1の基板構造、
第1の基板構造に配置され、1つまたは複数の液滴に電界を印加するように構成された複数の電極、
第1の基板表面に面し、第1の基板表面から間隔をあけて配置された第2の基板表面を有し、第1の基板構造と第2の基板構造との間に流体チャネルを形成する第2の基板構造であって、第2の基板表面の少なくとも一部は疎水性である第2の基板構造、
第1の基板構造に隣接し、第1の基板表面の反対側に配置された第1の加熱素子、
第2の基板構造に隣接し、第2の基板表面の反対側に配置された第2の加熱素子、および、
第1の基板構造と第2の基板構造との間の流体流路に隣接して配置された1つ以上の温度センサ、を含むマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
第1の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、および、
第2の加熱素子は、抵抗加熱器である、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
第1の加熱素子は、第1のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、および、
第2の加熱素子は、第2のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
第1の加熱素子は、第1の抵抗加熱器であり、および、
第2の加熱素子は、第2の抵抗加熱器である、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
第1の基板構造は、第1のベース基板と、第1のベース基板上に配置された第1の誘電体層とを含み、第1の基板表面は第1の誘電体層の上に重なり、および、
複数の電極は、第1の誘電体層内に配置される、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項20】
第1の基板構造における複数の電極は、複数の作動電極を含み、および、
第2の基板構造は、第2のベース基板と共通電極とを含む、請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項21】
1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも1つを制御するように構成された温度コントローラをさらに含む請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項22】
温度コントローラは、第1の基板表面上に分布する複数の温度センサを使用して、第1の基板表面上の温度分布を決定するように構成される請求項21に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
1つ以上の温度センサの各々は、NTC(負温度係数)サーミスタを含む請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項24】
第1の基板構造と第2の基板構造との間の間隔において第2の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサをさらに含む請求項15に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項25】
マイクロ流体デバイスを制御するための方法であって、
第1の基板構造および第2の基板構造を提供し、第1の基板構造は第1の基板表面を有し、第2の基板構造は第2の基板表面を有し、第2の基板表面は第1の基板表面に面し、第1の基板表面から距離だけ離れて、1つまたは複数の液滴のための流体チャネルを形成すること、
第1の基板表面に配置された1つまたは複数の温度センサから流体チャネルの温度を決定すること、および、
流体チャネル内の流体チャネル温度に基づいて、第1の基板表面に隣接して配置された第1の加熱素子を制御し、および、流体チャネル内の流体チャネル温度に基づいて、第2の基板表面に隣接して配置された第2の加熱素子を制御することにより、流体チャネルの温度を制御すること、を含む方法。
【請求項26】
1つ以上の温度センサの各々はNTC(負温度係数)サーミスタを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第1の加熱素子はTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、および、
第2の加熱素子は、抵抗加熱器である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
第1の加熱素子は、第1のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、および、
第2の加熱素子は、第2のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
流体チャネルの温度を制御することは、
液滴増幅のために、第1の持続時間、流体チャネルを第1の温度まで加熱するように、第1の加熱素子を制御すること、
液滴アニーリングのために、第2の持続時間、第2の温度で流体チャネルを加熱するように、第1の加熱素子を制御すること、および、
第2の加熱素子を予め設定された第3の温度に設定すること、を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
1つ以上の温度センサの各々はNTC(負温度係数)サーミスタを含む請求項25に記載の方法。
【請求項31】
流体チャネル内の第2の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサを使用して、流体チャネルの温度を感知することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項32】
1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも1つを制御するように構成された温度コントローラをさらに含む請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年8月28日に出願された米国仮特許出願第62/893,091号の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態は、一般に、マイクロ流体デバイスに関し、より詳細には、マイクロ流体デバイスにおける温度制御のための方法の装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体デバイスは、毛細管貫通が物質輸送を支配する小さな、典型的にはサブミリメータースケールに幾何学的に制約された流体の挙動、精密制御、および操作を扱うものである。少量の流体は、多重化、自動化、ハイスループットスクリーニングなどを実現するために処理される。マイクロ流体デバイスは、DNAチップ、ラボオンチップ技術などに利用することができる。デジタルマイクロフルイディクスでは、エレクトロウェッティングを用いて、単体で独立に制御可能な液滴を基板上で操作する。
【0004】
エレクトロウェッティング・オン・ダイエレクトリック(EWOD)は、疎水性表面上の2つの電極間にある水性液滴の接触角を変化させる液体駆動機構である。無機基板(例えば、シリコン/ガラス基板)または有機基板(例えば、環状オレフィンポリマー/ポリカーボネート基板)などの基板上に配置された電極の配列により、体積が数マイクロリットルの大きさのバルク液滴または数ナノリットルの大きさの液滴を移動させることが可能である。
【0005】
マイクロ流体デバイスの使用が増加しているにもかかわらず、以下にさらに説明するように、従来のマイクロ流体デバイスでは満足のいく性能を提供できない。
【発明の概要】
【0006】
次世代DNAシーケンスライブラリ調製のような、多くの生物学または化学分析ワークフローにおいて、温度制御は重要なパラメータであり、結果の質と量に影響を与える可能性がある。分析に関する従来の作業の大部分では、温度制御は通常、液滴内の反応に適用される。しかし、デジタルマイクロ流体液滴の場合、液滴の体積サイズが小さすぎるため、液滴内で直接温度を検出することができず、試薬の体積が小さすぎるため、従来の方法では正確に(例えば、1℃の解像度で)温度を測定することができない。
【0007】
本開示の実施形態は、マイクロ流体デバイスの温度を制御するための装置、システム、および方法を提供する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、デジタルマイクロ流体デバイス内の流体チャネルを規定する上部および下部の基板と、目標温度制御領域の下にあるTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータと、上部基板の上にある抵抗ヒータとを備える。上部のヒータは環境温度を安定に保ち、下部のTECは分析に必要な温度まで上昇させることができる。1つ以上のNTC(負温度係数)サーミスタが加熱領域のフットプリント内のデジタルマイクロ流体デバイスの基板上の表面に取り付けられており、NTCが温度を我々のシステムにフィードバックしてTECのパワーを調整し、デバイス内の温度を正確に制御できる。例えば、いくつかの実施形態では、システムは、温度安定性を向上させることができ(<0.5°C)、リアルタイムの温度フィードバックが可能である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、第1の基板表面を有する第1の基板構造と、第1の基板表面に面し、第1の基板表面から離間して、第1の基板構造と第2の基板構造との間に1つまたは複数の液滴のための複数の流体チャネルを形成する第2の基板表面を有する第2の基板構造とを備える。マイクロ流体デバイスは、エレクトロウェッティングによって液滴を移動させるために、複数の流体チャンネルに隣接する複数の電極も含む。複数の流体チャネルは、液滴を受け取るための第1の流体チャネルを含む第1領域と、1つ以上の試薬を受け取るための第2の流体チャネルを含む第2領域と、第1領域および第2領域と連絡する第3領域であって、液滴を1つ以上の試薬と混合して混合液滴を得るように構成されている第3の流体チャネルと、第3領域と連絡し、第4領域が混合液滴を処理するように構成されている第4の流体チャネルを含む第4領域と、を含む。マイクロ流体デバイスは、流体チャネルの第3領域の両側にそれぞれ配置された第1の加熱素子および第2の加熱素子をさらに含む。マイクロ流体デバイスは、流体チャネルの第4領域の両側にそれぞれ配置された第3の加熱素子および第4の加熱素子をさらに含むことができる。
【0009】
上記マイクロ流体デバイスのいくつかの実施形態において、マイクロ流体デバイスは、第4領域において液滴増幅を行うように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、第4領域は、疎水性表面領域によって互いに間隔を置かれた複数の親水性表面領域を含み、第4領域は、液滴が親水性表面領域上を移動するときに液滴の一部が親水性表面領域上に複数のマイクロ液滴を形成するように、混合液滴を処理するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態において、第4領域は、疎水性表面領域を含み、液滴デジタルPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)用に構成される。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1の加熱素子および第3の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子および第4の加熱素子は、抵抗性ヒータである。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1の加熱素子および第3の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子および第4の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の加熱素子および第3の加熱素子は抵抗加熱器であり、第2の加熱素子および第4の加熱素子は抵抗加熱器である。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の基板構造は、第1のベース基板と、第1のベース基板上に配置された第1の誘電体層とを含み、第1の基板表面は第1の誘電体層の上に重なっている。複数の電極は、第1の誘電体層内に配置される。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1の基板構造における複数の電極は、複数の作動電極を含み、第2の基板構造は、第2のベース基板と共通電極を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体デバイスは、第1の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体デバイスは、1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも1つを制御するように構成されたコントローラをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、1つ以上の温度センサの各々は、NTC(負温度係数)サーミスタを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、コントローラは、第1の基板表面上の温度分布を決定するように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体デバイスは、第2の基板表面上に配置された1つまたは複数の温度センサも含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、第1の基板表面を有する第1の基板構造を含み、第1の基板表面の少なくとも一部は疎水性であり、第1の基板表面は1つまたは複数の液滴を受けるように構成されている。マイクロ流体デバイスはまた、第1の基板構造に配置され、1つ以上の液滴に電界を印加するように構成された複数の電極を含む。マイクロ流体デバイスは、第1の基板表面に面し、第1の基板表面から間隔をあけて配置されて第1の基板構造と第2の基板構造との間に流体チャネルを形成する第2の基板表面を有する第2の基板構造も含み、第2の基板表面の少なくとも一部は疎水性である。マイクロ流体デバイスはまた、第1の基板構造に隣接し、第1の基板表面の反対側に配置された第1の加熱素子と、第2の基板構造に隣接し、第2の基板表面の反対側に配置された第2の加熱素子とを含む。マイクロ流体デバイスは、第1の基板構造と第2の基板構造との間の流体チャネルに隣接して配置された1つまたは複数の温度センサも含む。
【0023】
上記マイクロ流体デバイスのいくつかの実施形態において、第1の加熱素子はTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子は抵抗加熱器である。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1の加熱素子は、第1のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子は、第2のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の加熱素子は第1の抵抗加熱器であり、第2の加熱素子は第2の抵抗加熱器である。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の基板構造は、第1のベース基板と、第1のベース基板上に配置された第1の誘電体層とを含み、第1の基板表面は第1の誘電体層を覆っている。複数の電極は、第1の誘電体層内に配置される。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1の基板構造における複数の電極は、複数の作動電極を含む。第2の基板構造は、第2のベース基板および共通電極を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体デバイスは、1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも1つを制御するように構成された温度コントローラも含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、1つ以上の温度センサの各々は、NTC(負温度係数)サーミスタを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、コントローラは、第1の基板表面上に分散された複数の温度センサを使用して、第1の基板表面上の温度分布を決定するように構成される。
【0031】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体デバイスは、第1の基板構造と第2の基板構造との間の空間において第2の基板表面上に配置された1つまたは複数の温度センサも含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マイクロ流体デバイスの温度を制御する方法は、第1の基板構造および第2の基板構造を提供することを含み、第1の基板構造は第1の基板表面を有し、第2の基板構造は第2の基板表面を有し、第2の基板表面は第1の基板表面に面し、第1の基板表面から距離だけ離れて、一つ以上の液滴のための流体チャネルを形成している。本方法はまた、第1の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサから流体チャネルの温度を決定すること、および流体チャネルの温度を制御することを含む。本方法において、流体チャネルの温度を制御することは、流体チャネル内の流体チャネル温度に基づいて、第1の基板表面に隣接して配置された第1の加熱素子を制御することと、流体チャネル内の流体チャネル温度に基づいて、第2の基板表面に隣接して配置された第2の加熱素子を制御することとを含む。
【0033】
上記方法のいくつかの実施形態において、1つ以上の温度センサの各々は、NTC(native temperature coefficient:負温度係数)サーミスタを含んでいる。
【0034】
いくつかの実施形態において、第1の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子は、抵抗加熱器である。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の加熱素子は第1のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子は第2のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである。
【0036】
いくつかの実施形態において、流体チャネルの温度を制御することは、以下のことを含む。
液滴増幅のために、第1の持続時間、流体チャネルを第1の温度に加熱するように、第1の加熱素子を制御すること、
液滴アニーリングのために、第2の持続時間、第2の温度で流体チャネルを加熱するように第1の加熱素子を制御すること、および、
第2の加熱素子を予め設定された一定の第3の温度に設定すること。
【0037】
いくつかの実施形態では、1つ以上の温度センサの各々は、NTC(負温度係数)サーミスタからなる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本方法は、流体チャネル内の第2の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサを使用して、流体チャネルの温度を感知することも含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも1つを制御するように構成された温度コントローラも含む。
【0040】
以下の説明は、添付の図面と共に、請求された発明の性質および利点の更なる説明を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1A】本開示のいくつかの実施形態によるマイクロ流体デバイスを例示する概略図の簡略化した斜視図である。
【
図1B】線B-B’に沿った
図1Aに示されるマイクロ流体デバイスの簡略化された断面図である。
【
図2A】本開示の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの一部の簡略化された断面図である。
【
図2B】本開示の別の実施形態によるマイクロ流体デバイスの一部の簡略化された断面図である。
【
図2C】本開示のさらに別の実施形態によるマイクロ流体デバイスの一部の簡略化された断面図である。
【
図2D】本開示の例示的な実施形態によるマイクロ流体デバイスの簡略化された平面図である。
【
図3A】
図3A~
図3Cは、本開示の実施形態による、誘電体層の表面を横切って移動する液滴の簡略化された上面図である。
図3Aは、本開示の実施形態による電極のアレイの第1の電極上に液滴が吐出されることを示す簡略化された上面図である。
【
図3B】本開示の実施形態によるマイクロ流体デバイスによる電界の影響下で液滴が第2の(隣接する)電極に移動することを示す簡略化された上面図である。
【
図3C】本開示の実施形態による、液滴が、第2の電極上に残留物を残しながら電極のアレイから移動することを示す簡略化された上面図である。
【
図4】本開示の実施形態によるマイクロ流体デバイスの一部の簡略化された断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの一部の簡略化された断面図である。
【
図6A】本開示の実施形態による統合ラボオンチップデバイスとして構成されたマイクロ流体デバイスの簡略化された断面図である。
【
図6B】本開示の実施形態による統合ラボオンチップデバイスとして構成されたマイクロ流体デバイスの簡略化された断面上面図である。
【
図7】本開示の実施形態による、液滴から複数のサンプルを形成するための方法を示す簡略化されたフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態によるマイクロ流体デバイスおよびラボオンチップデバイスを制御するために使用することができるコンピュータシステムの簡略化された模式図である。
【0042】
一般的な慣例に従って、記載された特徴および要素は縮尺通りに描かれていないが、本開示に関連する特徴および要素を強調するために描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1Aは、本開示のいくつかの実施形態によるマイクロ流体デバイス10の一部を例示する概略図の斜視図である。マイクロ流体デバイス10は、基板12と、基板上の絶縁層13と、絶縁層内または絶縁層の下の電極のアレイ14とを有する基板構造11を含む。電極のアレイ14は、互いに平行に配置され、第1の方向に互いに間隔を空けて配置された第1の電極のセット14aと、互いに平行に配置され、第1の方向に実質的に垂直な第2の方向に互いに間隔を空けて配置された第2の電極のセット14bとを含む。第1および第2のセットの電極は絶縁層13内で互いに間隔を空けて配置され、絶縁層13は同じ材料または異なる材料の複数の誘電体層を含んでもよい。マイクロ流体デバイスはまた、基板内にあり、電極のアレイ14に時間的に変化する電圧波形を有する制御電圧を提供するために、外部制御回路とインタフェイスするように動作する入力-出力回路15を含む。
【0044】
図1Aを参照すると、液滴16が絶縁層13の表面上に配置され、液滴の下の電極および隣接する電極で制御電圧をオフ/オフすることによって、ある方向に沿って移動させることができる。
【0045】
図1Bは、
図1Aに示したマイクロ流体デバイス10を切断線B-B’に沿った断面図である。第2のセットの電極14bの断面図が、
図1Bに示されている。電極の第1のセット14a(図示せず)は、電極の第2のセット14bの上または下に配置され、1つまたは複数の誘電体層によって電極の第2のセットから間隔を空けて配置されてもよい。
【0046】
図2Aは、本開示の一実施形態によるマイクロ流体デバイス20Aの一部の簡略化された断面図である。
図2Aを参照すると、マイクロ流体デバイス20Aは、第1の基板22と、基板21上の誘電体層23と、誘電体層23内の一組の作動電極24(例えば、24a、24b、24c)と、第2の基板28に取り付けられ作動電極24に面している共通電極27と、を含む。共通電極27は、接地されていてもよいし、別の共通電圧を有していてもよい。誘電体層23と共通電極27は、スペーサ29によって互いに間隔をあけて配置されている。
図2Aを参照すると、液滴26は、作動電極24と共通電極27との間に配置され、共通電極に対して作動電極に印加される電圧レベルを変更または変化させる手段によって、誘電体層23の表面を横方向に沿って移動している。実施形態において、マイクロ流体デバイス20Aは、共通電極および作動電極に制御電圧を供給するように構成された制御回路(図示せず)をさらに含んでもよい。作動電極に印加される電圧をオンおよびオフすることによって、制御回路は、液滴26を誘電体層23の表面を横切って横方向に移動させることができる。例えば、液滴26の下方の作動電極24aに第1の電圧を、隣接する作動電極24bに第2の電圧を印加して電界を発生させ、発生した電界により液滴26を作動電極24bに向かって移動させる。液滴26の移動速度は、隣接する作動電極間の電圧差の大きさによって制御することができる。実施形態において、液滴26の形状は、液滴26がその間に配置される作動電極24と共通電極27との間の電圧差を変化させることによって変化させることができる。作動電極のセットにおける作動電極の数は、任意の整数であることができることが理解される。
図2Aに示される例では、3つの作動電極が作動電極のセットで使用される。しかし、その数は例示的な実施形態を説明するために任意に選ばれたものであり、限定されるものではないことが理解される。
【0047】
図2Aを参照すると、2つの基板構造は別々に形成されてもよい。例えば、基板22、誘電体層23、および誘電体層23内の作動電極24を含む第1の基板構造21が形成されてもよい。基板22は、従来の薄膜トランジスタの製造工程によって形成された薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板であってもよい。第2の基板構造25は、基板28と、基板28上の共通電極層27とを含んでもよい。共通電極の下には、液滴と接触するための誘電体層(図示せず)が存在してもよい。スペーサ29は、第1の基板構造または第2の基板構造のいずれかに形成されてもよい。特定の実施形態では、スペーサ29は、数マイクロメートルから数ミリメートルの間の範囲の高さを有する。一般に、スペーサ29の高さは、誘電体層23上に配置された液滴が第2の基板構造と物理的に接触するように、液滴の直径より小さい。そして、第1および第2の基板構造を接合して、マイクロ流体デバイス20Aを形成する。すなわち、第1の基板構造と第2の基板構造との間の空間または空隙は、スペーサ29の高さまたは厚さによって決定される。空間または空隙は、液滴のための流体チャネル261を形成する。
【0048】
図2Aに示す実施形態では、共通電極27および作動電極24のセット(例えば、24a、24b、24c)は、
図1Aに示す入力-出力回路15を介して制御回路(図示せず)から供給される電圧に接続される。いくつかの実施形態では、共通電極は、接地電位または安定したDC電圧に接続されてもよい。制御回路は、入力-出力回路を通して時間的に変化する電圧を、それぞれの電子スイッチ(例えば、基板内またはオフチップ内の薄膜トランジスタまたはMOS回路であり得る)を介して作動電極のセットに適用し、液滴を経路に沿って動かすために液滴全体に電界を発生させる。いくつかの実施形態では、共通電極27の表面は、疎水性材料から作られた絶縁層によって覆われている。他の実施形態では、誘電体層23の表面は、サブミクロンの厚さを有する薄い疎水性フィルムで覆われている。
【0049】
図2Bは、本開示の他の実施形態によるマイクロ流体デバイス20Bの一部を示す簡略化された断面図である。
図2Bを参照すると、マイクロ流体デバイス20Bは、基板22bと、基板21b上の誘電体層23bと、誘電体層23b内の作動電極24(24a、24b、24c)のセットと、誘電体層23bを覆う共通電極27(例えば、27a、27b、27c)のセットとを含む。共通電極27bと作動電極は、誘電体層の一部によって互いに間隔を空けて配置される。
図2Aと同様に、液滴26は、液滴26の下の作動電極(例えば、24a)で第1の電圧を印加し、隣接する作動電極(例えば、24b)で第2の電圧を印加することによって、誘電体層23bの表面を横方向に経路に沿って移動させることができる。したがって、液滴26の移動および方向は、一組の電子スイッチ(基板22b内のMOS回路、図示せず)を介して特定の作動電極に電圧を印加する制御回路(図示せず)により制御される。
図2Aに示すマイクロ流体デバイス20Aと異なり、マイクロ流体デバイス20Bは、共通電極27aが作動電極24に近く、液滴26は共通電極27と作動電極24の間に挟まれない。また、マイクロ流体デバイス20Bは、スペーサ29を有していない点でも、マイクロ流体20Aと異なっている。
【0050】
図2Bを参照すると、作動電極24のセットと共通電極27のセットは、基板上の異なる平面上で互いに交差するストリップ電極の2つの層であってもよい。作動電極24および共通電極27は、液滴26を誘電体層23bの表面にわたって移動させるように動作可能である。いくつかの実施形態では、共通電極27bは、疎水性材料から作られた絶縁層によって覆われる表面を有する。他の実施形態では、誘電体層23の表面は、サブミクロンの厚さを有する薄い疎水性フィルムで覆われている。
【0051】
図2Cは、本開示のさらに別の実施形態によるマイクロ流体デバイス20Cの一部を示す断面図である。
図2Cを参照すると、マイクロ流体デバイス20Cは、基板22c、基板22c上の誘電体層23c、および誘電体層23c内の作動電極24(例えば、24a、24b、および24c)のセットを含む基板構造21cを含んでいる。一組の共通電極27(例えば、27a、27b、27c)は、誘電体層23cの上に形成されている。共通電極27cおよび作動電極は、誘電体層の一部によって互いに間隔を空けて配置されている。いくつかの実施形態では、共通電極27aは、誘電体層23の表面に、疎水性材料からなる絶縁層またはサブミクロンの疎水性コーティングの薄膜によって覆われる表面を有する。マイクロ流体デバイス20cは、スペーサ29cを介して基板構造21cから離間された第2の基板28cをさらに含んでもよい。
図2Aと同様に、液滴26は、誘電体層の表面と第2の基板28cとの間の空間または空隙によって形成されるチャネル内の経路に沿って移動させることができる。液滴の移動は、制御回路(図示せず)により電子スイッチを介して電極に印加される電圧によって制御される。
【0052】
図2Dは、本開示の例示的な実施形態によるマイクロ流体20Dの簡略化された平面図である。
図2Dを参照すると、作動電極24は、制御回路281から作動電極24および共通電極27cに電気信号をルーティングするためのルーティングチャネルを有するアレイに配置されている。スペーサ29cは、円形の断面を有するように示されているが、円形の断面形状は限定的ではなく、正方形、長方形、楕円形、および他の形状など、任意の他の断面形状が同様に好適である。同様に、作動電極は正方形の形状を有するように示されているが、正方形の形状は限定的ではなく、他の形状も、長方形、円形、楕円形、および他の形状など、同様に好適である。一実施形態では、スペーサ29cは、液滴の自由な移動を可能にするために十分な空間を残すように間隔を空けて配置される。言い換えれば、スペーサ29cは、誘電体層の表面を横切る液滴の動きを妨げないように寸法決めされ、間隔をあけて配置される。ルーティングチャネルは、電極のアレイとコプレーナとして示されているが、当業者であれば、ルーティングチャネルおよび制御回路は、基板内および誘電体層の異なる層に配置され得ることが理解されよう。また、作動電極24と共通電極27cは、それらの相対的な位置が転置され得ること、すなわち、共通電極は作動電極の下に配置され得ることも理解されよう。
【0053】
別の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、電極の単一アレイを有することができる。すなわち、共通電極および作動電極はコプレーナであり、すなわち、共通電極および作動電極は誘電体層内の同一平面上に配置される。例えば、複数の作動電極と複数の共通電極とが交互に隣接して配置され、制御回路は、作動電極および共通電極に、DC電圧またはAC電圧および接地電位を順次印加して液滴の移動を制御してもよい。さらに別の実施形態では、電極のアレイ内の各電極は、各電極が第1の時間帯に作動電極となり、第2の時間帯に共通電極となり得るように、1組の電子スイッチを介して制御回路によって個別に制御される。
【0054】
図3A~
図3Cは、本開示の一実施形態による、誘電体層の表面を順次移動する液滴の上面図である。
図3Aを参照すると、液滴26は、マイクロ流体デバイス20A、20B、および20Cのいずれかにおいて上述のようなマイクロ流体デバイス上に配置される。マイクロ流体デバイスは、薄膜トランジスタまたはMOS回路のアレイを有する基板と、基板上の誘電体層と、誘電体層内の作動電極(および/または共通電極)のアレイとを含み、作動電極および共通電極は、配線チャネル内の導電性配線を介して制御回路に接続され、薄膜トランジスタを介して制御回路から制御信号を受信する。液滴26は、第1の作動電極34aの上方の誘電体層の表面に配置されている。液滴の下にある第1の作動電極をオフ(またはフローティング)にして、その隣の作動電極をオンにすることによって、液滴を次の電極に向かって移動させることができる。一実施形態では、作動電極のアレイの上の誘電体層の表面部分は、疎水性表面よりも液体(例えば、液滴)に対してより多くの引力を有する、例えば、特徴を囲む、予め定められた特徴で修正され得る。特徴は、マイクロリットルおよびナノリットルの体積にそれぞれ対応するマイクロメートルからナノメートルの範囲の寸法を有していてもよい。特徴35は、現在利用可能なサブミクロン半導体製造プロセスを用いて、誘電体層上で数千回または百万回正確に製造されてもよい。
【0055】
本明細書で使用されるように、作動電極をオフにすることは、その作動電極の電圧を、共通電極に印加される共通電圧と同じレベルまで下げることを意味する。逆に、作動電極をオンにすることは、その作動電極の電圧を共通電圧より高いレベルまで上昇させることを意味する。マイクロ流体デバイスは、電極間の電位が液滴を移動させるための電場を形成するDC電圧レベルである限り、DC(DC electrowetting)電圧またはAC(AC electrowetting)電圧で動作することが可能である。特定の実施形態では、隣接する電極が完全にまたは部分的にオンになると、それに隣接して配置された液滴は、そのオンになった電極上に移動し、オンになった電極上に配置された特徴を濡らすことになる。本明細書で使用する場合、「特徴(feature)」という用語は、液体材料(例えば、液滴)が堆積または形成される領域または構造を指す。制御回路から供給される時間的に変化する電圧波形を用いて、液滴を次のオンになった電極に移動させることにより、液滴は電極から電極へと移動し、それによって特徴の中または上に残留微小滴(非常に小さな滴または微小液滴)26aが残されることになる。残留微小滴の体積は、環境(例えば、空気または油)における表面上の液体液滴の接触角と同様に、特徴の寸法(サイズ)によって完全に決定される。
【0056】
図3Bは、液滴26が、本開示の実施形態による9つの特徴35を有する第1の電極34aから第2の電極34bへ移動していることを示す上面図である。
【0057】
図3Cは、本開示の実施形態による、残りの液滴26bが第2の電極から第3の電極34cに移動し、それによって、特徴内または特部上に残留微小滴(微小液滴)26aが残っていることを示す上面図である。空気中の微小液滴の蒸発を防ぐために、液滴は、シリコーンオイルのような他の非混和性液体によって囲まれ得る。電極上の特徴の数は、任意の整数であり得ることが理解される。
図3A~
図3Cに示す例では、9つの特徴が第2の電極に使用されている。しかし、その数は例示的な実施形態を説明するために任意に選ばれたものであり、限定されるべきものではないことが理解される。また、各電極(例えば、第1、第2、第3の電極)は、同じ数の特徴を有していてもよく、または、異なる数の特徴を有していてもよいことが理解されよう。
図3A~
図3Cを参照すると、特徴は正方形の形状を有するように示されているが、示された形状は限定的ではなく、円形、長方形、楕円形、多角形、および他の形状などの任意の他の形状が同様に適切であることが理解されよう。
【0058】
本開示の実施形態による電極は、様々な構成で配置することができ、電極は多くの形状を有することができることに留意されたい。例えば、電極は、多角形(例えば、正方形、長方形、三角形など)、円形、楕円形などを有することができる。また、チェッカーボード型などの幾何学的な構成とすることもできる。
【0059】
本開示によれば、均一なサイズを有する多数の微小液滴を使用して、マイクロ流体チップ上で液滴デジタルPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を実行することができる。各サンプルの体積が小さく、ポアソン分布の要件を満たす一定のDNA濃度以下であれば、液滴(微小液滴)の各サンプルは、1つのDNA分子を有するかまたはDNA分子を有さないかのいずれかになる。この試料(微小液滴)を通常のPCRで熱サイクルさせるか、等温PCRで一定温度下で培養することにより、環境中の各試料(例えば、油)で標的領域内の単一のDNA分子を増幅させることができる。最終的な液滴のDNA濃度を光学検出や集積型オンチップイオンセンシティブ電界効果トランジスタ(ISFET)によるpH測定で読み取った後、サンプル(微小流体)のアレイ中の標的DNAの絶対数を定量化し、その絶対DNA定量値を用いてバルク液滴中のDNA濃度を計算することができる。用語「サンプル」、「残留小液滴」、「液滴の小部分」、および「マイクロ液滴」は、本明細書において互換的に用いられ、本開示の実施形態に従ってバルク液滴から形成される小液滴を意味する。
【0060】
本開示に従って、複数の異なるDNA標的を含む液滴を単一のマイクロ流体チップの領域上に分注することができ、液滴は次にエレクトロウェットによって次の領域へ移動され、これにより液滴から多数のサンプル(DNA標的のコピー)を生成し、サンプルを検出または測定することができる。さらなる詳細は、2019年8月1日に出願されたPCT特許出願番号PCT/IB2019/056588に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
本発明の実施形態は、デジタルマイクロ流体カートリッジなどのマイクロ流体デバイスの内部の温度を制御および測定する新規な方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、疎水性表面の上板および下板を有し、それらの間に液滴が挟まれる。
【0062】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、温度感知および制御のためのマイクロ流体デバイスの一部を示す簡略化された断面図である。
図4に示すように、マイクロ流体デバイス40は、第1の基板構造410および第2の基板構造420を含む。第1の基板構造410は、第1の基板表面411を有する。いくつかの実施形態では、第1の基板表面の少なくとも一部は疎水性である。第1の基板表面411は、1つまたは複数の液滴430を受け取るように構成されている。複数の電極413は、第1の基板構造410に配置され、1つまたは複数の液滴に電界を印加するように構成されている。第2の基板構造420は、第1の基板表面411に面し、第1の基板表面411から距離「d」だけ離れて、第1の基板構造410と第2の基板構造420の間の空間に流体チャネル432を画定する第2の基板表面421を有する。距離「d」は、空間内に配置された1つまたは複数の液滴を必要に応じて収容するように構成される。いくつかの実施形態では、第2の基板表面421の少なくとも一部は、疎水性である。
【0063】
マイクロ流体デバイス40はまた、第1の基板構造410に隣接し、第1の基板表面411の反対側に配置された第1の加熱素子440を含む。マイクロ流体デバイス40はまた、第2の基板構造420に隣接し、第2の基板表面421の反対側に配置された第2の加熱素子450を含む。マイクロ流体デバイス40は、第1の基板構造410と第2の基板構造420との間の空間における流体チャネル432内の第1の基板表面411上に配置された1つまたは複数の温度センサ460を備えることもできる。マイクロ流体デバイス40は、流体チャネルの温度を制御するように構成された温度コントローラ470も含むことができる。
【0064】
図5は、本発明のいくつかの実施形態による温度感知および制御のためのマイクロ流体デバイスの一部を例示する簡略化された断面図である。
図5に示すように、マイクロ流体デバイス50は、
図4のマイクロ流体デバイス40と類似している。共通の構成要素は、同じ参照数字で指定されている。一つの違いは、マイクロ流体デバイス50が、第1の基板表面411上に配置され、第1の基板表面411上に分布する複数の温度センサ460(例えば、460a、460b、460c、460d、および460eなど)を有することである。
【0065】
図5に示すように、マイクロ流体デバイス50は、第1基板構造410と第2の基板構造420とを含む。第1の基板構造410は、第1の基板表面411を有する。いくつかの実施形態では、第1の基板表面の少なくとも一部は疎水性である。第1の基板表面411は、1つまたは複数の液滴(図示せず)を受け取るように構成されている。複数の電極413は、第1の基板構造410に配置され、1つまたは複数の液滴に電界を印加するように構成される。第2の基板構造420は、第1の基板表面411に面し、第1の基板表面411から距離「d」だけ離れて、第1の基板構造410と第2の基板構造420の間の空間に流体チャネル432を画定する第2の基板表面421を有する。距離「d」は、流体チャネル432に配置された1つまたは複数の液滴を含むように構成される。いくつかの実施形態では、第2の基板表面421の少なくとも一部は、疎水性である。
【0066】
マイクロ流体デバイス50はまた、第1の基板構造410に隣接し、第1の基板表面411の反対側に配置された第1の加熱素子440を含む。マイクロ流体デバイス40はまた、第2の基板構造420に隣接し、第2の基板表面421の反対側に配置された第2の加熱素子450を含む。
【0067】
上述のように、マイクロ流体デバイス50は、第1の基板構造410と第2の基板構造420との間の空間において第1の基板表面411上に配置された複数の温度センサ460a、460b、460c、460d、460e等を有することもできる。
【0068】
マイクロ流体デバイス40、50のいくつかの実施形態では、第1の加熱素子440は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータとすることができ、第2の加熱素子450は、抵抗加熱器とすることができる。熱電冷却は、ペルチェ効果を利用して、2つの異なる種類の材料の接合部に熱流束を生じさせるものである。ペルチェ冷却器、ヒータ、または熱電ヒートポンプは、電流の方向に応じて電気エネルギーの消費を伴う、デバイスの一方の側から他方の側へ熱を転送する固体アクティブヒートポンプである。デバイスには2つの面があり、直流電流が流れると、一方の面からもう一方の面に熱をもたらし、一方の面は冷たくなり、もう一方の面は熱くなる。「熱い」側はヒートシンクに取り付けて常温に保ち、「冷たい」側は常温以下になるようにする。用途によっては、複数の冷却器をカスケード接続することで、より低温にすることができる。このような機器は、ペルチェ素子、ペルチェヒートポンプ、固体冷凍機、あるいは熱電冷却器(TEC)とも呼ばれる。加熱にも冷却にも使用できる。また、加熱または冷却のいずれかを行う温度調節器として使用することも可能である。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1の加熱素子440および第2の加熱素子450の両方は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり得る。これらの実施形態において、第1の加熱素子440は、第1のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであることができ、第2の加熱素子450は、第2のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであることができる。いくつかの実施形態では、第1の加熱素子440および第2の加熱素子450の両方は、抵抗性ヒータであり得る。この場合、第1の加熱素子440は第1の抵抗性ヒータとすることができ、第2の加熱素子は第2の抵抗性ヒータとすることができる。
【0070】
抵抗加熱器は、金属またはポリシリコン線、金属またはポリシリコン層、制御回路68から受け取った信号の電気エネルギーを熱エネルギーに変換することができるポリシリコン層で形成されている加熱素子を有することができる。これらの抵抗加熱素子は、標準的な集積回路処理技術を使用して、基板構造内に作製することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、デジタルマイクロ流体デバイスは、上部基板および下部基板と、目標温度制御領域の下にあるTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータと、上部基板の上にある抵抗ヒータとを備えることができる。上部のヒータは環境温度を安定させ、下部のTECは分析に必要な温度まで上昇させることができる。NTC(負温度係数)サーミスタは、加熱領域のフットプリント内のデジタルマイクロ流体デバイスの基板上の表面に取り付けられ、NTCが温度をコントローラにフィードバックしてTECの電力を調整し、デバイス内部の温度を正確に制御できるようにする。
【0072】
いくつかの実施形態では、
図1A~1Bおよび
図2A~2Cに関連して上述したマイクロ流体デバイスと同様に、マイクロ流体デバイス40、50において、第1の基板構造410は、第1のベース基板と、第1のベース基板上に配置された第1の誘電体層とを有し、第1の基板表面が第1の誘電体層の上にあり、複数の電極は第1の誘電体層中に配置されてもよい。図面を簡略化するために、
図4および
図5には、第1のベース基板および第1の誘電体層は示されていない。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1の基材構造410における複数の電極413は、液滴を操作するための複数の作動電極を含むことができる。さらに、
図1A~1Bおよび
図2A~2Cに関連して上述したマイクロ流体デバイスと同様に、マイクロ流体デバイス40、50では、第2の基板構造420は、第2のベース基板と共通電極(
図4、5には示されていない)を含むことができる。さらに、共通電極は、第1の基板構造410上または第1の基板構造410内に配置される。本明細書に記載された例では、作動電極は、液滴の下方に配置される。しかしながら、いくつかの実施形態では、作動電極は、液滴の上方に配置されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイス40、50は、1つ以上の温度センサ460(または460a~460eなど)によって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子440および第2の加熱素子450の少なくとも1つを制御するように構成された温度コントローラ470を含むこともできる。いくつかの実施形態では、コントローラ470は、第1の基板表面上に分布する複数の温度センサ、460a~460eなどを用いて、第1の基板表面411上の温度分布を決定するように構成されている。
【0075】
マイクロ流体デバイス40、50は、第1の基板の表面上の温度センサを示す。他の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、第1の基板構造と第2の基板構造との間の空間において、第2の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサを有することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、1つ以上の温度センサ460(または460a~460eなど)の各々は、NTC(負温度係数)サーミスタとすることができる。NTCサーミスタは、負の温度係数を有する抵抗器であり、これは、温度の上昇に伴って抵抗値が減少することを意味する。温度感応係数は、シリコン温度センサ(シリスタ)の約5倍、抵抗温度センサー(RTD)の約10倍である。NTCセンサは、通常-55℃から200℃の範囲で使用される。NTCサーミスタの材質は、一般にセラミックスやポリマである。使用する材料が異なると、温度応答やその他の特性も異なる。例えば、NTCサーミスタの多くは、金属酸化物焼結体などの半導体材料をプレス加工したディスク、ロッド、プレート、ビーズ、鋳造チップで作られている。半導体の温度を上げると、伝導帯の活性電荷キャリアの数が増加するため、これらは機能する。
【0077】
いくつかの実施形態では、市販のNTCサーミスタをマイクロ流体デバイスに配置することができる。あるいは、薄膜NTCサーミスタは、マイクロ流体デバイス内の基板構造上に作製することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、複数のNTCサーミスタまたは抵抗ヒータが、加熱領域内の表面上に配置されて、温度分布が流体チャネルにわたって均一とし、加熱領域で読み出された1つのNTCが領域全体を代表することができるようにされる。
【0079】
図6Aは、本開示の一実施形態による統合ラボオンチップ装置として構成されたマイクロ流体装置の簡略化した断面図である。
図6Aに示すように、マイクロ流体デバイス60Aは、
図5のマイクロ流体デバイス50と類似である。マイクロ流体デバイス60Aは、第1の基板構造610および第2の基板構造620を含む。第1の基板構造610は、第1の基板表面611を有する。いくつかの実施形態では、第1の基板表面の少なくとも一部は疎水性である。第1の基板表面611は、1つまたは複数の液滴(図示せず)を受け取るように構成される。第2の基板構造620は、第1の基板表面611に面し、第1の基板表面611から間隔をあけて配置され、第1の基板構造610と第2の基板構造620の間の空間内に1つ以上の流体チャネル632を画定する第2の基板表面621を有する。1つまたは複数の流体チャネル632は、1つまたは複数の液滴を含むように構成される。いくつかの実施形態では、第2の基板表面621の少なくとも一部は、疎水性である。複数の作動電極613は、1つ以上の流体チャネル632に隣接して第1の基板構造610に配置され、エレクトロウェッティングによって1つ以上の液滴を移動させるための電界を印加するように構成される。簡略化のため、
図6Aでは共通電極は省略されている。
図6Aの例では、作動電極613は、流体チャネル632の下にある第1の基板構造610にあるように示されている。代替的に、作動電極は、流体チャネル内の第1の基板表面上に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、作動電極は、流体チャネルの上方に配置されてもよい。例えば、
図6Bにおいて、作動電極613は、第2の基板620内または第2の基板表面621上に配置することができる。
【0080】
マイクロ流体デバイス60Aはまた、第1の基板構造610に隣接し、第1の基板表面611の反対側に配置された第1の加熱素子640を含む。マイクロ流体デバイス60はまた、第2の基板構造620に隣接し、第2の基板表面621の反対側に配置された第2の加熱素子650を含む。
【0081】
上述したように、マイクロ流体デバイス60Aは、第1の基板構造610と第2の基板構造620との間の空間において、第1の基板表面611上に配置された複数の温度センサ660を備えてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイス60Aは、液滴処理のための異なる領域を含む統合ラボオンチップデバイスとして構成されてもうよい。統合ラボオンチップデバイスの一例が
図6Bに示されており、これは、
図6Aの1つ以上の流体チャネル632における切断線A~A’における平面に沿ったマイクロ流体デバイスの上面図を示している。
【0083】
図6Bは、本開示の実施形態による統合ラボオンチップデバイスとして構成されたマイクロ流体デバイスの簡略化された断面の上面図である。
図6Bを参照すると、統合ラボオンチップ装置60Bは、1つ以上の液滴26を受け取るように構成された液滴受け取り領域61、1つ以上の試薬63を受け取るように構成された1つ以上の試薬受け取り領域62、液滴26を1つ以上の試薬63と混合して混合液滴263を得るように構成された混合領域64、液滴、例えば(混合または非混合)液滴を複数のマイクロ液滴に分割しマイクロ液滴を増幅等処理するよう構成された処理領域65を含んでいる。
【0084】
図6Aのマイクロ流体デバイス60Aと同様に、
図6Bの統合ラボオンチップデバイス60Bは、第1の基板表面を有する第1の基板構造と、第2の基板表面を有する第2の基板構造とを含む。これらの特徴は、図面を簡略化するために、
図6Bには示されていない。第2の基板表面は、第1の基板表面に面し、第1の基板表面から間隔をあけて、第1の基板構造と第2の基板構造との間に1つ以上の液滴のための複数の流体チャネルを形成する。流体チャネルは、各領域に関連付けることができる。例えば、液滴受取領域61は第1領域とも呼ばれ、第1の流体チャネル61’を含み、試薬受取領域62は第2領域とも呼ばれ、第2の流体チャネル62’を含み、混合領域64は第3領域とも呼ばれ、第3の流体チャネル64’を含み、処理領域65は第4領域とも呼ばれ、第4の流体チャネル65’を含んでいる。
図6Bの上面図において、流体チャネル61’、62’、64’、および65’は、それぞれ領域61、62、64、および65に配置される。しかし、チャネル61’、62’、64’、および65’は、図面を単純化するために
図6Bに記載されていない。
【0085】
図6Bにおいて、マイクロ流体デバイスは、複数の領域および複数の流体チャネルを含む。液滴を受け取るための第1の流体チャネルを含む第1領域と、1つまたは複数の試薬を受け取るための第2の流体チャネルを含む第2領域と、第1領域および第2領域と連通している第3領域とを備える。第3領域は、液滴を1つ以上の試薬と混合して混合液滴を得るための第3の流体チャネルを含むように構成される。さらに、第4領域は、第3領域と連通しており、第4の流体チャネルを含み、混合された液滴を処理するように構成されている。いくつかの実施形態では、第4領域は、疎水性表面領域によって互いに間隔を置かれた複数の親水性表面領域を含んでもよく、液滴の一部は、液滴が親水性表面領域上を移動するとき、親水性表面領域上に複数の微小液滴を形成する。いくつかの実施形態では、第4領域は、疎水性表面領域を含むことができ、ここでは、液滴デジタルPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)などの液滴処理が行われ得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、処理領域66は、微小液滴の増幅のために微小液滴を第1の持続時間の間、第1の温度に加熱するように構成された第1の加熱素子と、増幅された微小液滴をアニールするために第2の持続時間の間、第2の温度に加熱するように構成された第2の加熱素子とを備えることができる。いくつかの態様において、第2の加熱素子は、予め設定された一定の第3の温度に設定されてもよい。一実施形態において、ラボオンチップデバイス60は、温度センサのアレイをさらに含んでもよい。
【0087】
一実施形態において、液滴受取領域61は、
図1Aおよび
図1Bに示されるデバイス構造を有していてもよい。一実施形態において、試薬受取領域62は、
図1Aおよび
図1Bに示されるデバイス構造を有していてもよい。言い換えれば、統合ラボオンチップ装置60Bは、1つ以上の液滴および1つ以上の試薬を混合領域64に向かって移動させ、ユーザが提供するソフトウェアプログラムに従って液滴と試薬の混合を制御するように動作可能であってよい。一実施形態では、処理領域66は、規則的なパターンで配置された複数のマイクロ流体デバイスを含んでもよく、マイクロ流体デバイスの各々は、
図2A~
図2Cに示すデバイス構造と類似の構造または同じ構造を有していてもよい。統合ラボオンチップ装置60Bは、処理領域において微小液滴が形成された後の液滴の残留部分および/または処理および測定された後の微小液滴を回収するための、廃棄物回収領域とも呼ばれる廃棄領域66を更に含んでもよい。
図6Bに示す例では、液滴受取領域61に2つの電極69が用いられ、試薬受取領域62の上部には8つの電極が用いられ、試薬受取領域62の下部には8つの電極が用いられ、混合領域64には8つの電極が用いられている。しかし、これらの数は、例示的な実施形態を説明するために任意に選択されたものであり、限定されるべきものではないことが理解される。
【0088】
いくつかの実施形態では、統合ラボオンチップ装置60Bは、処理領域のアレイを通過した後の液滴61、試薬63、混合液滴263、分割液滴(すなわち、微小液滴)、および液滴の残余部分を移動するための制御信号を液滴受取領域61、試薬受取領域62、混合領域64、処理領域65、および廃棄領域66に与えるように構成された制御回路67を含むこともある。実施形態では、統合ラボオンチップデバイス60Bは、ホスト690とインタフェイスするように構成された入力/出力(IO)ポート68を含んでもよい。一実施形態では、ホストは、統合ラボオンチップ装置60に制御信号を提供するように構成された別個のまたは外部のプロセッサであってもよい。別の実施形態では、ホストは、統合型ラボオンチップデバイス60と同じパッケージで統合されてもよい。当業者であれば、多くの変形、修正、および代替案を認識するであろう。さらに
図6Bを参照すると、制御回路67は、統合ラボオンチップ装置60Bから遠隔に配置されてもよく、入出力ポートまたはシリアルインタフェイスポートを介して統合型ラボオンチップ装置60Bと通信を行う。
【0089】
一実施形態では、統合型ラボオンチップ装置60Bは、混合液滴263の培養温度を維持および/または変化させるために、混合領域64の表面下の基板構造内に形成された第1の加熱ブロック「ヒータ1」を含んでもよい。一実施形態では、統合ラボオンチップ装置60Bは、微小液滴に対する培養温度を維持および/または変化させるために、処理領域65の表面の下の基板構造内に形成された第2の加熱ブロック「ヒータ2」をさらに含んでもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1の加熱ブロック「ヒータ1」は、流体チャネルの第2領域(混合領域64)の両側にそれぞれ配置された第1の加熱素子および第2の加熱素子を含むことができる。第1の加熱素子および第2の加熱素子は、
図6Aに図示された加熱素子640、650と同様であり、断面図において第2領域の上および下に配置されることになるが、図面を簡略化するため、
図6Bには示されていない。同様に、第2の加熱ブロック「ヒータ2」は、流体流路の第4領域(処理領域65)の両側にそれぞれ配置された第3の加熱素子および第4の加熱素子を含むことができる。第3の加熱素子および第4の加熱素子は、
図6Aに図示された加熱素子640、650と同様であり、断面図において第4領域の上および下に配置されることになるが、図面を簡略化するために
図6Bには図示されていない。
【0091】
いくつかの実施形態では、第4領域は、上記のように流体チャネルを挟む2つの加熱素子を有してもよい。しかし、第2領域は、流体チャネルの下方に配置された1つの加熱素子のみを有することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、第1の加熱素子および第3の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子および第4の加熱素子は、抵抗加熱器である。
【0093】
いくつかの実施形態において、第1の加熱素子および第3の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子および第4の加熱素子は、TEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである。
【0094】
いくつかの実施形態では、第1の加熱素子および第3の加熱素子は抵抗加熱器であり、第2の加熱素子および第4の加熱素子は抵抗加熱器である。
【0095】
いくつかの実施形態では、統合ラボオンチップデバイス60Bとして構成されたマイクロ流体デバイスは、流体チャネル内の第1の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサ661を有してもよい。マイクロ流体デバイスはまた、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも一方を制御するために、1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視するように構成されたコントローラ67を有することができる。コントローラ67は、流体チャネル内の第1の基板表面上に分散された複数のセンサから、第1の基板表面上の温度分布を決定することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の温度センサ661の各々は、NTC(負温度係数)サーミスタを含むことができる。いくつかの実施形態では、流体チャネル内の第2の基板表面上に配置された1つまたは複数の温度センサが存在してもよい。
【0096】
あるいは、第1、第2、第3、および第4の加熱素子は、金属またはポリシリコン線、金属またはポリシリコン層、制御回路68から受け取った信号の電気エネルギーを熱エネルギーに変換できるポリシリコン層で形成することができる。
【0097】
上述した実施形態では、第1の加熱ブロックおよび第2の加熱クロックの各々は、流体チャネルの上方と下方の2つの加熱素子を有する。いくつかの実施形態では、混合領域用の第1の加熱ブロックは、底部ヒータのみを有してよく、処理領域用の第2の加熱ブロックは、上部ヒータおよび底部ヒータの両方を有してよい。
【0098】
図7は、本開示の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの温度を制御するための方法を示す簡略化されたフローチャートである。
図7に示すように、方法700は、710において、第1の基板構造および第2の基板構造を有するマイクロ流体デバイスを提供すること、第1の基板構造は第1の基板表面を有し、第2の基板構造は第2の基板表面を有し、第2の基板表面は第1の基板表面に面し、第1の基板表面から距離だけ離れて、一つ以上の液滴のための流体チャネルを形成する、ことを含む。マイクロ流体デバイスの例は、
図4、
図5、および
図6A~6Bに関連して上述されている。
【0099】
例えば、
図5に示すように、マイクロ流体デバイス50は、第1の基板構造410および第2の基板構造420を含む。第1基板構造410は、第1の基板表面411を有する。いくつかの実施形態では、第1の基板表面の少なくとも一部は疎水性である。第1の基板表面411は、1つまたは複数の液滴(図示せず)を受け取るように構成されている。複数の電極413は、第1の基板構造410に配置され、1つまたは複数の液滴に電界を印加するように構成される。第2の基板構造420は、第1の基板表面411に面し、第1の基板表面411から距離「d」だけ離間して、第1の基板構造410と第2の基板構造420との間の空間に流体チャネル432を画定する第2の基板表面421を有する。距離「d」は、流体チャネル432に配置された1つまたは複数の液滴を含むように構成される。いくつかの実施形態では、第2の基板表面421の少なくとも一部は、疎水性である。
【0100】
マイクロ流体デバイス50はまた、第1の基板構造410に隣接し、第1の基板表面411の反対側に配置された第1の加熱素子440を含む。マイクロ流体デバイス40はまた、第2の基板構造420に隣接し、第2の基板表面421の反対側に配置された第2の加熱素子450を含む。
【0101】
720において、方法700は、第1の基板表面上に配置された1つまたは複数の温度センサから流体チャネル温度を決定することを含む。
図5に示すように、マイクロ流体デバイス50は、第1の基板構造410と第2の基板構造420との間の空間において第1の基板表面411上に配置された複数の温度センサ460a、460b、460c、460d、460eなどを備えることもできる。複数の温度センサは、流体流路の温度を決定するために使用することができる。
【0102】
730において、本方法は、流体チャネル内の流体チャネル温度に基づいて、第1の基板表面に隣接して配置された第1の加熱素子を制御することによって、流体チャネルの温度を制御することを含む。
図5に示すように、マイクロ流体デバイス50は、第1の基板構造410に隣接し、第1の基板表面411の反対側に配置された第1の加熱素子440も含む。流体チャネルの温度は、第1の加熱素子における設定を変化させることによって制御される。
【0103】
740において、本方法は、流体チャネル内の流体チャネル温度に基づいて、第2の基板表面に隣接して配置された第2の加熱素子を制御することによって、流体チャネルの温度を制御することを含む。
図5に示すように、マイクロ流体デバイス40は、第2の基板構造420に隣接し、第2の基板表面421の反対側に配置された第2の加熱素子450も含む。流体チャネルの温度は、第2の加熱素子における設定を変化させることによって制御される。いくつかの実施形態では、上部ヒータは一定の温度に維持される。他の実施形態では、上部ヒータは、下部ヒータと連動して変化させられ、流体チャネルの温度を制御することができる。
【0104】
750において、方法700は、フィードバック制御によって流体チャネルの温度の監視を継続することを含む。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイス50は、1つ以上の温度センサ460(または460a~460eなど)によって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子440および第2の加熱素子450の少なくとも1つを制御するように構成された温度コントローラ470を含むこともできる。いくつかの実施形態では、コントローラ470は、第1の基板表面上に分布する複数の温度センサ460a~460eなどを用いて、第1の基板表面411上の温度分布を決定するように構成されている。
【0105】
上記方法のいくつかの実施形態において、1つ以上の温度センサの各々は、NTC(負温度係数)サーミスタを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、第1の加熱素子はTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子は抵抗加熱器である。
【0107】
いくつかの実施形態では、第1の加熱素子は第1のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータであり、第2の加熱素子は第2のTEC(熱電冷却器)ペルチェヒータである。
【0108】
いくつかの実施形態において、流体チャネルの温度を制御することは、以下を含む。
液滴増幅のための第1の持続時間、流体チャネルを第1の温度に加熱するように、第1の加熱素子を制御すること、
液滴アニーリングのために、第2の持続時間、第2の温度で流体チャネルを加熱するように、第1の加熱素子を制御すること、および、
第2の加熱素子を予め設定された一定の第3の温度に設定すること。
【0109】
いくつかの実施形態では、1つ以上の温度センサの各々は、NTC(負温度係数)サーミスタからなる。
【0110】
いくつかの実施形態において、本方法は、流体チャネル内の第2の基板表面上に配置された1つ以上の温度センサを使用して、流体チャネルの温度を感知することも含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上の温度センサによって提供される温度測定値を監視して、第1の加熱素子および第2の加熱素子の少なくとも1つを制御するように構成された温度コントローラも含む。
【0112】
図8は、本開示の一実施形態によるマイクロ流体デバイスおよびラボオンチップデバイスを制御するために使用することができるモバイルコンピューティングデバイス80の簡略化された概略図である。
図8を参照すると、モバイルコンピューティングデバイス80は、モニタ810、コンピューティング電子機器820、ユーザ出力デバイス830、ユーザ入力デバイス840、通信インタフェイス850などを含むことができる。
【0113】
コンピューティング電子機器820は、バスサブシステム890を介して多数の周辺機器と通信する1つ以上のプロセッサ860を含んでもよい。これらの周辺装置は、ユーザ出力デバイス830、ユーザ入力装デバイス840、通信インタフェイス850、およびランダムアクセスメモリ(RAM)870、およびディスクドライブ880などのストレージサブシステムを含んでもよい。
【0114】
ユーザ入力デバイス830は、コンピュータデバイス820に情報を入力するための任意のタイプのデバイスおよびインタフェイス、例えばキーボード、キーパッド、タッチスクリーン、マウス、トラックボール、トラックパッド、ジョイスティック、および他のタイプの入力デバイスを含んでもよい。
【0115】
ユーザ出力装置840は、コンピューティング電子機器820から情報を出力するための任意のタイプの装置、例えばディスプレイ(例えば、モニタ810)を含んでもよい。
【0116】
通信インタフェイス850は、他の通信ネットワークおよびデバイスへのインタフェイスを提供する。通信インタフェイス850は、他のシステムからデータを受信し、他のシステムにデータを送信するためのインタフェイスとして機能し得る。例えば、通信インタフェイス850は、マイクロ流体デバイスまたはラボオンチップデバイスと通信するためのUSBインタフェイスを含んでもよい。
【0117】
RAM870およびディスクドライブ880は、実行可能なコンピュータコード、人間可読コードなどを含む、本開示の実施形態などのデータを格納するように構成された有形媒体の一例である。他の種類の有形媒体は、フロッピディスク、リムーバブルハードディスク、CD-ROMS、DVD、バーコードなどの光学記憶媒体、フラッシュメモリ、非一時的リードオンリーメモリ(ROMS)などの半導体メモリ、バッテリバックアップされた揮発性メモリ、ネットワーク型ストレージデバイスなどを含む。RAM870とディスクドライブ880は、本発明の機能を提供する基本的なプログラミングとデータ構成を格納するように構成されてもよい。
【0118】
本開示の機能を提供するソフトウェアコードモジュールおよび命令は、RAM870およびディスクドライブ880に格納されてもよい。これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサ860によって実行されてもよい。
【0119】
図8をなお参照すると、マイクロ流体デバイス81およびラボオンチップデバイス82の各々は、モバイルコンピューティングデバイス80との通信を提供するように構成されたインタフェイスポート84を含んでもよい。いくつかの実施形態では、モバイルコンピューティングデバイス80は、マイクロ流体デバイス81およびラボオンチップデバイス82内の電極の信号レベルを制御するために、インタフェイスポート84を介して指示および制御信号を提供してもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイス81は、
図2A~2C、
図3A~3C、
図4A~4E、
図5、および
図6A~6Bのうちの1つに記載されたような基板構造を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイス81は、ラボオンチップデバイス82の一部であってもよい。
【0120】
本明細書に記載された例および実施形態は、例示のみを目的としており、それを考慮した様々な修正または変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲並びに添付の請求項の範囲に含まれるものと理解される。本明細書で引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
前述の開示は、本開示の例示的な側面を示しているが、添付の請求項によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正が本明細書で行われ得ることに留意されたい。本明細書に記載された本開示の態様に従った方法請求項の機能、工程、および/または動作は、特定の順序で実行される必要はない。さらに、本開示の要素は単数形で記載または請求されることがあるが、単数形への限定が明示されていない限り、複数形も考慮される。
【0122】
本明細書における全てのフローチャートについて、工程の多くは、機能に影響を与えることなく、組み合わせたり、並行して実行したり、異なる順序で実行したりできることが理解されよう。
【国際調査報告】