(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】シート材料
(51)【国際特許分類】
A41D 31/04 20190101AFI20221107BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20221107BHJP
D06N 7/00 20060101ALI20221107BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20221107BHJP
【FI】
A41D31/04 A
A41D31/00 503B
A41D31/00 502A
A41D31/00 502Q
A41D31/00 503F
A41D31/00 503G
D06N7/00
D04H1/492
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513624
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 GB2020052059
(87)【国際公開番号】W WO2021038233
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502435742
【氏名又は名称】イー-レザー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジエンホワ
(72)【発明者】
【氏名】クシザニアック ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン ヴェロニカ
【テーマコード(参考)】
4F055
4L047
【Fターム(参考)】
4F055AA27
4F055BA02
4F055BA12
4F055EA02
4F055EA04
4F055EA05
4F055EA13
4F055EA22
4F055EA24
4F055EA28
4F055EA36
4F055FA01
4F055FA02
4L047AA11
4L047AA21
4L047AA23
4L047AB02
4L047BA04
4L047CA04
4L047CA05
4L047CC01
(57)【要約】
シート材料を形成する方法。方法は、繊維集合体および補強構造を備える配置を前へ進めることを含み、補強構造が分割性繊維を備える。方法は、配置を連続する水流交絡ステップにさらすことをさらに含み、各かかる水流交絡ステップにおいて、配置は、配置の表面にわたって液体の高圧噴射に曝露される。配置を連続する水流交絡ステップにさらすことが繊維集合体の繊維を互いに交絡させて、繊維集合体の繊維と補強構造との間に機械的結合を形成させる。機械的結合は、少なくとも繊維集合体の繊維のいくつかが液体の高圧噴射によって補強構造におけるギャップ中に押し込まれること、補強構造の分割性繊維の少なくともいくつかが分れて、補強構造がギャップに押し込まれた繊維集合体の繊維の周りを締め付けるようにギャップ内の空間を削減する分割繊維を形成すること、および繊維集合体の繊維の少なくともいくつかが補強構造の分割繊維の少なくともいくつかおよび分割性繊維の少なくともいくつかと交絡することによってもたらされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材料を形成する方法であって、前記方法は、
繊維集合体および補強構造を備える配置を前へ進めることであって、前記補強構造が分割性繊維を備える、前記前へ進めることと、
前記配置を連続する水流交絡ステップにさらすことであって、各かかる水流交絡ステップにおいて、前記配置は、前記配置の表面にわたって液体の高圧噴射に曝露され、前記配置を連続する水流交絡ステップにさらすことが前記繊維集合体の前記繊維を互いに交絡させて、前記繊維集合体の前記繊維と前記補強構造との間に機械的結合を形成させ、前記機械的結合は、少なくとも
前記繊維集合体の前記繊維のいくつかが液体の前記高圧噴射によって前記補強構造におけるギャップ中に押し込まれること、
前記補強構造の前記分割性繊維の少なくともいくつかが分れて、前記補強構造が前記ギャップに押し込まれた前記繊維集合体の繊維の周りを締め付けるように前記ギャップ内の空間を削減する分割繊維を形成すること、および
前記繊維集合体の前記繊維の少なくともいくつが前記補強構造の前記分割繊維の少なくともいくつかおよび前記分割性繊維の少なくともいくつかと交絡すること
によってもたらされる、前記さらすこと
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記連続する水流交絡ステップ後に前記配置の面にコーティングを塗布することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングは、ポリマーコーティングである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維集合体は、革繊維を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維集合体は、主として革繊維を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維集合体は、革繊維および分割性繊維を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記配置は、前記補強構造の1つのみの面上に繊維集合体を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記配置は、前記補強構造の各面上に繊維集合体を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記補強構造は、織布によって定められた構造を備え、前記織布が分割性繊維を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記補強構造は、不織布によって定められた構造を備え、前記不織布が分割性繊維を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記補強構造は、織布および不織布の組み合わせで定められた構造を備え、前記織布および/または前記不織布が分割性繊維を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記補強構造の前記それぞれの分割性繊維は、前記分割性繊維の断面全体にわたって別個のセグメントに配置された少なくとも2つの異なる繊維を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの異なる繊維は、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記補強構造の前記それぞれの分割性繊維は、樹脂中に配置された複数の繊維を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の繊維は、ポリアミド繊維を備え、前記樹脂は、ポリエステル樹脂を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法によって作られたシート材料。
【請求項17】
前記シート材料は、前記繊維の接着剤結合が実質的にない、請求項16に記載のシート材料。
【請求項18】
前記シート材料は、前記繊維の接着剤結合を備えない、請求項16に記載のシート材料。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか一項に記載のシート材料を備える衣類、履物類、アクセサリまたは室内装飾材料。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本開示の例は、シート材料を形成する方法、引き続いて形成されるシート材料、およびシート材料がそれから形成される配置に関する。
[背景技術]
【0002】
繊維集合体を備える配置を液体の高圧噴射にさらして交絡により繊維を一緒にインターロックすることによって水流交絡を用いてシート材料を形成することが知られている。いくつかの事例では、改善された機械的特性、例えば、より大きい引張強度をもつシート材料を提供するために、繊維集合体が、水流交絡の間、補強構造に機械的に結合されることがある。
【0003】
繊維集合体と補強構造との間の機械的結合の強度を増加させることによって、より耐久性のあるシート材料を提供する必要がある。
[発明の概要]
[課題を解決するための手段]
【0004】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、シート材料を形成する方法が提供され、方法は、
繊維集合体および補強構造を備える配置を前へ進めることであって、補強構造が分割性繊維を備える、前へ進めることと、
配置を連続する水流交絡ステップにさらすことであって、各かかる水流交絡ステップにおいて、配置は、配置の表面にわたって液体の高圧噴射に曝露され、配置を連続する水流交絡ステップにさらすことが繊維集合体の繊維を互いに交絡させて、繊維集合体の繊維と補強構造との間に機械的結合を形成させ、機械的結合は、少なくとも
繊維集合体の繊維のいくつかが液体の高圧噴射によって補強構造におけるギャップ中に押し込まれること、
補強構造の分割性繊維の少なくともいくつかが分れて、補強構造がギャップに押し込まれた繊維集合体の繊維の周りを締め付けるようにギャップ内の空間を削減する分割繊維を形成すること、および
繊維集合体の繊維の少なくともいくつかが補強構造の分割繊維の少なくともいくつかおよび分割性繊維の少なくともいくつかと交絡すること
によってもたらされる、さらすこと
を含む。
【0005】
場合によっては、方法は、配置を連続する水流交絡ステップにさらすことを含み、各かかる水流交絡ステップにおいて、配置は、配置の面のうちの1つの表面にわたって、または配置のそれぞれの面の各々の表面にわたって液体の高圧噴射に曝露される。
【0006】
場合によっては、方法は、連続する水流交絡ステップ後に配置の面にコーティングを塗布することを含む。方法は、配置の両面および/またはいずれかの面にコーティングを塗布することを含んでよい。コーティングは、ポリマーコーティングであってよい。
【0007】
繊維集合体は、合成、天然繊維、もしくは天然由来の繊維を備えてよく、もしくは合成、天然繊維および/または天然由来の繊維のブレンドを備えてもよい。繊維集合体は、革繊維を備えてよく、主として革繊維を備えてもよい。繊維集合体は、革繊維および非革繊維を備えてもよい。非革繊維は、天然または合成であってよい。
【0008】
繊維集合体が分割性繊維を備えてもよい。繊維集合体が革繊維および分割性繊維を備えてもよい。分割性繊維は、非革繊維であってよい。
【0009】
場合によっては、配置は、補強構造の1つのみの面上に繊維集合体を備える。代わりに、配置は、補強構造の各面上に繊維集合体を備えてもよい。
【0010】
場合によっては、補強構造は、織布によって定められた構造を備え、織布が分割性繊維を備える。代わりに、補強構造は、不織布によって定められた構造を備えてもよく、不織布が分割性繊維を備える。場合によっては、補強構造は、織布および不織布の組み合わせで定められた構造を備え、織布および/または不織布が分割性繊維を備える。不織布は、織布以外の任意の布地構造、例えば、編み布またはニードルパンチ構造として定義される。
【0011】
場合によっては、補強構造のそれぞれの分割性繊維が分割性繊維の断面全体にわたって別個のセグメントに配置された少なくとも2つの異なる繊維を備える。少なくとも2つの異なる繊維は、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維を備えてよい。場合によっては、少なくとも2つの異なる繊維がマイクロファイバを備える。
【0012】
場合によっては、補強構造のそれぞれの分割性繊維が樹脂中に配置された複数の繊維を備える。複数の繊維は、複数の異なる繊維を備えてよい。複数の繊維は、ポリアミド繊維を備えてよく、樹脂は、ポリエステル樹脂を備えてよい。場合によっては、複数の繊維がマイクロファイバを備える。
【0013】
配置は、補強構造のうちの少なくとも1つが分割性繊維を備えるという条件で、複数の異なるそれぞれの繊維集合体および/または複数の異なるそれぞれの補強構造を備えてよい。
【0014】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、先の段落のいずれかに記載の方法によって作られたシート材料が提供される。
【0015】
場合によっては、シート材料は、繊維の接着剤結合が実質的にない。場合によっては、シート材料は、繊維の接着剤結合を備えない。
【0016】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、配置から先の段落のいずれかに記載の方法によって作られたシート材料が提供され、配置は、
繊維集合体、および
補強構造であって、分割性繊維を備える補強構造
を備える。
【0017】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、配置が提供され、配置は、
繊維集合体、および
補強構造であって、分割性繊維を備える補強構造
を備える。
【0018】
繊維集合体は、合成、天然繊維、もしくは天然由来の繊維を備えてよく、または合成、天然繊維および/または天然由来の繊維のブレンドを備えてもよい。繊維集合体は、革繊維を備えてよく、主として革繊維を備えてもよい。繊維集合体は、革繊維および非革繊維を備えてもよい。非革繊維は、天然、天然由来または合成であってよい。
【0019】
繊維集合体が分割性繊維を備えてもよい。繊維集合体が革繊維および分割性繊維を備えてもよい。分割性繊維は、非革繊維であってよい。
【0020】
場合によっては、配置は、補強構造の1つのみの面上に繊維集合体を備える。代わりに、配置は、補強構造の各面上に繊維集合体を備えてもよい。
【0021】
場合によっては、補強構造は、織布によって定められた構造を備え、織布が分割性繊維を備える。代わりに、補強構造は、不織布によって定められた構造を備えてもよく、不織布が分割性繊維を備える。場合によっては、補強構造は、織布および不織布の組み合わせで定められた構造を備え、織布および/または不織布が分割性繊維を備える。不織布は、織布以外の任意の布地構造、例えば、編み布またはニードルパンチ構造として定義される。
【0022】
場合によっては、補強構造のそれぞれの分割性繊維が分割性繊維の断面全体にわたって別個のセグメントに配置された少なくとも2つの異なる繊維を備える。少なくとも2つの異なる繊維は、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維を備えてよい。場合によっては、少なくとも2つの異なる繊維がマイクロファイバを備える。
【0023】
場合によっては、補強構造のそれぞれの分割性繊維が樹脂中に配置された複数の繊維を備える。複数の繊維は、複数の異なる繊維を備えてよい。複数の繊維は、ポリアミド繊維を備えてよく、樹脂は、ポリエステル樹脂を備えてよい。場合によっては、複数の繊維がマイクロファイバを備える。
【0024】
配置は、補強構造のうちの少なくとも1つが分割性繊維を備えるという条件で、複数の異なるそれぞれの繊維集合体および/または複数の異なるそれぞれの補強構造を備えてよい。
【0025】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、先の段落によるシート材料を備える衣類、履物類、アクセサリまたは室内装飾材料が提供される。
【0026】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、水流交絡によってウェブから形成された複合材料が提供され、ウェブは、
繊維集合体、および
補強構造であって、分割性繊維を備える補強構造
を備える。複合材料は、シート材料である。ウェブは、別に配置と呼ばれる。
【0027】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、ウェブが提供され、ウェブは、
繊維集合体、および
補強構造であって、分割性繊維を備える補強構造
を備える。ウェブは、別に配置と呼ばれる。
【0028】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、
交絡によって互いにインターロックされた繊維集合体、および
分割性繊維から形成された分割繊維を備える補強構造であって、集合体の繊維の少なくともいくつかが補強構造に機械的に結合された補強構造
を備える複合材料が提供される。複合材料は、シート材料である。
【0029】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、複合材料を形成する方法が提供され、方法は、
繊維集合体および補強構造を備えるウェブを形成することであって、補強構造が分割性繊維を備える、形成することと、
複合材料を形成するためにウェブを水流交絡ステップにさらすことであって、ウェブがウェブの表面にわたって液体の高圧噴射に曝露される、さらすことと
を備える。複合材料は、シート材料である。ウェブは、別に配置と呼ばれる。
【0030】
本開示の様々な、しかし必ずしもすべてではない、例によれば、添付の特許請求の範囲に請求されるような例が提供されてよい。
【0031】
詳細な説明を理解するのに役立つ様々な例をよりよく理解するために、次に、添付図面が例としてのみ参照される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本開示の例によらないシート材料の顕微鏡画像(×25)を示す。
【
図2】本開示の例によるシート材料の顕微鏡画像(×25)を示す。
【
図3】コーティングを備える本開示の例によらないシート材料の断面顕微鏡画像(×32)を示す。
【
図4】コーティングを備える本開示の例によるシート材料の断面顕微鏡画像(×32)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示の例では、シート材料を形成する方法が提供される。そのうえ、本開示の例は、引き続いて形成されるシート材料、およびシート材料がそれから形成される配置も提供する。
【0034】
方法は、繊維集合体および補強構造を備える配置を前へ進めることを含み、補強構造が分割性繊維を備える。
【0035】
方法は、配置を連続する水流交絡ステップにさらすことをさらに含む。
【0036】
各かかる水流交絡ステップにおいて、配置は、配置の表面にわたって液体の高圧噴射に曝露される。いくつかの例では、液体が水である。
【0037】
配置を連続する水流交絡ステップにさらすことが繊維集合体の繊維を互いに交絡させる。それに応じて、繊維集合体の繊維は、交絡によって互いにインターロックする。
【0038】
配置を連続する水流交絡ステップにさらすことが、さらに、繊維集合体の繊維と補強構造との間に機械的結合を形成させる。
【0039】
機械的結合は、少なくとも
a)繊維集合体の繊維のいくつかが液体の高圧噴射によって補強構造におけるギャップ中に押し込まれること、
b)補強構造の分割性繊維の少なくともいくつが分れて、補強構造がギャップに押し込まれた繊維集合体の繊維の周りを締め付けるようにギャップ内の空間を削減する分割繊維を形成すること、および
c)繊維集合体の繊維の少なくともいくつかが補強構造の分割繊維の少なくともいくつかおよび分割性繊維の少なくともいくつかと交絡すること
によってもたらされる。
【0040】
分割繊維は、マイクロファイバであってよい。締め付けるのは、補強構造がギャップに押し込まれた繊維集合体の繊維の周りを押し付ける、絞るまたはきつく締めるためである。
【0041】
配置は、補強構造のうちの少なくとも1つが分割性繊維を備えるという条件で、複数の異なるそれぞれの繊維集合体および/または複数の異なるそれぞれの補強構造を備えてよい。
【0042】
かかる配置において、それぞれの繊維集合体は、異なる構成を有してよく、例えば、異なる繊維を備えてもよい。かかる配置において、各補強構造は、異なる構造および/または構成を有してよく、例えば、織布および/または不織布によって定められた構造を備えてもよく、および/または異なる繊維を備えてもよい。かかる配置において、すべての補強構造が分割性繊維を備える必要はない。
【0043】
シート材料は、複合材料、すなわち、複合シート材料である。配置に含まれる繊維集合体は、ウェブである。繊維集合体についてのインプロセス強度は、本開示の例による方法から生じるシート材料の強度よりもはるかに低いことが理解されるべきである。
【0044】
配置は、従来の手段によって、例えば、繊維集合体を設けるために支持体上に繊維を敷き、続いて繊維集合体上に補強構造を敷くことによって形成されてよい。
【0045】
繊維集合体は、不織ウェブであってもよく、エアレイドウェブ、ウェットレイドウェブ、ニードルパンチウェッブ、またはカード式ウェッブでもあってよい。
【0046】
配置は、装置中で連続する水流交絡ステップにさらされる。いくつかの例では、装置中で、配置は、その上に配置が形成された支持体であってもよい、多孔質コンベヤ上に支持されて、1つ以上の処理ステーションを通して前へ進められる。他の例では、装置中で、配置は、その上に配置が形成された支持体であってもよい、多孔質ドラム上に支持されて、1つ以上の処理ステーションを通して前へ進められる。1つ以上の処理ステーションが、配置をかかる液体の高圧噴射にさらすための液体出口を備える。
【0047】
いくつかの例では、方法は、配置を連続する水流交絡ステップにさらすことを含み、各かかる水流交絡ステップにおいて、配置は、配置の面のうちの1つの表面にわたって液体の高圧噴射に曝露される。他の例では、方法は、配置を連続する水流交絡ステップにさらすことを含み、各かかる水流交絡ステップにおいて、配置は、それぞれの面の各々の表面にわたって液体の高圧噴射に曝露される。配置の1つのまたは各面上の連続する水流交絡ステップの各々が装置中の異なる処理ステーションで実行されてよい。かかる例では、コンベヤもしくはドラムがそれぞれの処理ステーションの各々を通して配置を支持して前へ進めるように配置される。
【0048】
繊維集合体は、合成、天然繊維、または天然由来の繊維を備えてよい。天然繊維の例の非網羅的なリストは、羊毛、綿および亜麻を含む。天然由来の繊維の例の非網羅的なリストは、革、大豆、ビスコースおよび竹繊維を含む。合成繊維の例の非網羅的なリストは、ナイロン、ポリエステル、アクリルを含む。合成繊維は、バイコンポジット繊維であってもよい。いくつかの例では、繊維集合体が合成および天然繊維を組み合わせて備えてもよい。
【0049】
繊維集合体は、天然由来または合成であってよい、分割性繊維も備えてよい。かかる例では、配置を連続する水流交絡ステップにさらすことがそれらの分割性繊維の少なくともいくつかも分割して、それらを交絡させる。
【0050】
以下に記載される図示例のような、繊維集合体が革繊維を備える、例では、革繊維が廃棄革由来であってもよい。繊維集合体を備え、繊維集合体が革繊維を備える、配置から形成されたシート材料は、エンジニアードレザー製品であってもよく、またはエンジニアードレザー製品を形成するために用いられてもよい。
【0051】
廃棄革由来の革繊維のような、比較的短くて細い繊維の集合体を備える配置から形成された従来のシート材料では、集合体の繊維と補強構造との間の機械的結合の強度が、例として、衣類、履物類、アクセサリまたは室内装飾材料用途における、シート材料の特定の使用には不十分なことがある。
【0052】
例示のみを目的として、布地再生装置において廃棄革の崩壊から生じる繊維の長さは、1mm未満から時折発生する繊維で20mmまでに及ぶ。崩壊前の天然革の繊維構造は、密に織り合わされたコラーゲン繊維のバンドルからなり、次にはコラーゲン繊維がさらにより細い小線維からなり、それらの多くが機械的作用の間に分離される。これは、バンドルについて約100ミクロンから、個々の小線維について1ミクロン未満の非常に細い繊維までの繊維直径の範囲をもたらす。
【0053】
理論によって束縛されるものではないが、かかる比較的短くて細い繊維は、補強構造に十分には固定されず、それゆえにそれから容易に分離しかねない。
【0054】
上記のように、本開示の例において、補強構造は、分割性繊維を備える。
【0055】
いくつかの例では、補強構造の分割性繊維が分割性繊維の断面全体にわたって別個のセグメントに配置された少なくとも2つの異なる繊維を備える。例えば、少なくとも2つの異なる繊維は、マイクロファイバであってよい、ポリエステル繊維およびポリアミド繊維を備えてよい。
【0056】
代わりに、他の例では、補強構造のそれぞれの分割性繊維が樹脂中に配置された複数の繊維、すなわち、海における島を備えてよい。複数の繊維は、マイクロファイバであってよい、複数の異なる繊維を備えてよい。場合によっては、複数の繊維は、ポリアミド繊維を備え、樹脂は、ポリエステル樹脂を備える。
【0057】
補強構造は、分割性繊維を備える織布、または分割性繊維を備える不織布によって定められた構造を備えてよい。代わりに、補強構造は、織布および不織布の組み合わせによって定められた構造を備えてもよく、織布および/または不織布が分割性繊維を備える。構造が織布、不織布またはそれらの組み合わせによって定められるかどうかにかかわらず、構造は、分割性繊維の間にギャップを備える。それに応じて、補強構造にはギャップがある。以下により詳細に記載されるように、織布では、ギャップは、少なくとも、織布の規則的なメッシュ中の開口部によって定められる。不織布では、ギャップは、少なくとも、不織布中にランダムまたは不規則に配置された個別の分割性繊維間または分割性繊維の個別のバンドル間の空隙によって定められる。
【0058】
織布および不織布は、分割性繊維から形成される。それに応じて、方法は、織布および/または不織布を分割性繊維から形成することを含んでよい。
【0059】
連続する水流交絡ステップのプロセス中に、上記のように、繊維集合体の繊維の少なくともいくつかが液体の高圧噴射によって補強構造におけるギャップ中に押し込まれる。そのうえ、分割性繊維の少なくともいくつかが分れて、分割繊維を形成する。それに応じて、理論によって束縛されるものではないが、分割性繊維が分割繊維に分れるにつれて補強構造におけるギャップのサイズが減少し、従って、補強構造は、補強構造におけるギャップ中におよび/またはギャップを通して延びる、集合体の繊維の周りを締め付けて、よりしっかりとそれらを保持する。集合体における繊維は、補強構造における分割繊維の少なくともいくつかおよび分割性繊維の少なくともいくつかとも交絡する。結果として、もたらされたシート材料において、集合体の繊維は、以下の表1における剥離強度試験データによって示されるように、従来のシート材料におけるよりもしっかりと補強構造に機械的に保持される。
【0060】
【0061】
上の表1において、比較例は、革繊維を備える240GSMの繊維集合体と、例として非分割性ポリエステル繊維を備える、85GSMの非分割性繊維織布を備える補強構造とを備える配置から形成されたシート材料である。
【0062】
例1は、革繊維を備える240GSMの繊維集合体と、85GSMの分割性繊維織布を備える補強構造とを備える配置から形成されたシート材料である。
【0063】
例2は、革繊維を備える140GSMの繊維集合体と、200GSMの分割性繊維不織布を備える補強構造とを備える配置から形成されたシート材料である。
【0064】
上の例1および例2では、補強構造の分割性繊維が分割性繊維の断面全体にわたって別個のセグメントに配置されたポリエステル繊維およびポリアミド繊維を備える。
【0065】
それぞれの場合に、採用された水流交絡方法は同じであり、配置は、配置の各面上で連続した水流交絡ステップにさらされる。液体の噴射の圧力、およびさらに液体の噴射への曝露の時間は、液体が集合体の繊維を補強構造中に送り込むために十分深く浸入し、さらに補強構造の分割性繊維の少なくともいくつかを分割するように選択される。
【0066】
それに応じて、配置から形成されて、配置が織布によって定められた構造を有する補強構造を備え、織布が分割性繊維を備える、シート材料は、織布が分割性繊維を備えない対応する比較例よりも約10%大きい剥離強度を有する。補強構造が、分割性繊維を備える織布ではなく分割性繊維を備える不織布を備えるならば、さらにより大きい剥離強度の増加(約102%)が見出される。そのうえ、かかる例では、不織布は、補強構造が織布を備えるシート材料と比較して形成されたシート材料により大きい弾性を付与する。
【0067】
上の表1において、剥離強度は、交絡された繊維集合体を補強構造から引き離すために必要とされる力の尺度である。
【0068】
例1および例2、ならびに比較例のシート材料は、補強構造の1つのみの面上に繊維集合体を備える配置から形成される。上記のように、かかる配置は、従来の手段によって、例えば、繊維集合体を設けるために支持体上に繊維を敷き、続いて繊維集合体上に補強構造を敷くことによって形成されてよい。連続する水流交絡ステップ後に引き続いて形成されるシート材料において、補強構造は、それゆえに補強裏打ちとしての役割を果たす。かかる例では、補強裏打ちがシート材料の頂面もしくは底面を定めてよい。
【0069】
他の例では、配置が補強構造の各面上に繊維集合体、すなわち、サンドイッチ・タイプ構造を備えてよい。かかる例では、配置は、従来の手段によって、例えば、繊維集合体を設けるために支持体上に繊維を敷き、続いて繊維集合体上に補強構造を敷き、その後に続いて第2の繊維集合体を設けるために保護構造上にさらなる繊維を敷くことによって形成されてよい。引き続いて形成されるシート材料において、補強構造は、それゆえに補強コアとしての役割を果たす。
【0070】
他の例では、配置および引き続いて形成されるシート材料が上記のように異なる数の補強構造および繊維集合体を備えてよい。
【0071】
図1および
図2は、それぞれ、比較例および例1のシート材料の面の顕微鏡(×25)画像を示す。顕微鏡画像では、補強構造10が繊維集合体の上にある。各図には、補強構造10の織布のメッシュ構造12(インターレース糸14から形成される、すなわち、直角をなすヤーン)が見える。メッシュ12中に複数のギャップ、すなわち、開口部16が定められ、開口部16を通して、革繊維18を見ることができて、それらのいくつかが開口部16中におよび/または開口部16を通して延びる。
【0072】
図1と
図2との比較から、明らかなのは、平均して、
図2の補強構造10におけるギャップ16(すなわち、メッシュ中の開口部)が
図1の補強構造10におけるギャップ16(すなわち、メッシュ中の開口部)より小さく、輪郭があまりはっきりしないことである。先に考察されたように、連続する水流交絡ステップの間に、分割性繊維の少なくともいくつかが分れて、ギャップ、すなわち、開口部のサイズを減少させる分割繊維になる。理論によって束縛されるものではないが、分割性繊維が分れるにつれて、インターレース糸が広がってより多くの空間を占め、それによって、ギャップ、すなわち、開口部16をある程度塞ぎ、従って、それらのサイズを平均して減少させると思われる。それに応じて、ギャップ内の空間が削減され、従って、補強構造がギャップに押し込まれた繊維集合体の繊維の周りを締め付ける。
【0073】
同様に、例2の不織布では個別の分割性繊維間または分割性繊維の個別のバンドル間に定められた(図示されないが)ギャップ、すなわち、空隙は、先に考察された同じ理由付けで、分割性繊維が水流交絡の間に分れる結果としてサイズが減少する。
【0074】
それに応じて、集合体の繊維は、水流交絡の間の加圧水噴射によって補強構造におけるギャップ中に押し込まれて、削減されたギャップのサイズゆえに、比較例におけるよりもしっかりと補強構造に保持される。集合体の繊維は、補強構造の分割繊維および分割性繊維の少なくともいくつかとも交絡する。そのうえ、補強構造における分割性繊維の分割によって、補強構造に追加のより小さいギャップが形成されることもある。それに応じて、集合体の繊維は、水流交絡の間の加圧水噴射によって補強構造におけるこれらのより小さいギャップ中にも押し込まれて、交絡および/または補強構造の締め付けによってその中に固定されることもある。
【0075】
結果として、もたらされたシート材料において、集合体の繊維は、従来の材料におけるよりもしっかりと補強構造に機械的に保持される。これが上記の剥離強度データに反映される。
【0076】
水流交絡後(すなわち、水流交絡の下流)のいくつかの例では、配置は、シート材料を軟化、硬化させるか、またはその取り扱いを改善するために(以下に記載されるように)コーティングを塗布する前に、含浸のような、従来の処理を受けてもよい。いくつかの事例では、このプロセスが繊維を軽く結合させることもある。しかしながら、かかる結合が全体的な強度にほとんど寄与することはなく、製品の完全性は、主として交絡に依存する。
【0077】
前述のありうる含浸仕上げ処理を除いて、繊維を構造的に結合させるために接着剤は必要ない。従って、シート材料は、繊維の接着剤結合が実質的になくてもよく、繊維の機械的インターロックが構造の完全性を達成して維持する唯一のまたは主たる手段である。
【0078】
他の例では、水流交絡後に、配置は、コーティングを塗布する前に、含浸のような、従来の処理を受けない。それに応じて、かかる例では、シート材料が繊維の接着剤結合を備えない。
【0079】
いくつかの例では、シート材料は、コーティング、例えば、ポリマーコーティングを備える。それに応じて、方法は、連続する水流交絡ステップ後に、配置にかかるコーティングを塗布することを含んでよい。
【0080】
図3および4は、それぞれ、比較例および例1から形成された、ポリマーコーティング22を備えるシート材料の断面拡大図(×32)を示す。
【0081】
各図には、補強構造10の織布のインターレース糸14から形成された規則的なメッシュ12が見える。交絡された革繊維18がギャップ、すなわち、開口部16中におよび/または開口部16を通して延びるのが見える。とりわけ、
図4に示されるシート材料では
図3の比較例におけるよりもポリマーコーティング22の下にあるギャップ20が少なくて、より小さい。理論によって束縛されるものではないが、この理由は、分割繊維および分割性繊維によって保持された、交絡された革繊維18が開口部を埋めて、その結果、平坦な表面を作り出し、かつ補強構造の糸14中の分割性繊維が水流交絡の間にある程度分れて、ポリマーコーティング22への結合に利用可能なより大きい表面積を提供し、すなわち、より多くの接触または固定点を提供したためである。それに応じて、以下の表2に提供される剥離強度データに反映される、より良好な結合がポリマーコーティング22に対して形成される。
【0082】
表2は、それぞれのシート材料の残される部分からのポリマーコーティングの引っ張りに関する剥離強度試験データを提供する。
【0083】
【0084】
比較例、ならびに例1および例2では、コーティングが補強構造の上の層として塗布された。
【0085】
本開示の例によるシート材料(コーティング有りまたは無し)は、例えば、衣類、履物類、アクセサリおよび室内装飾材料用途に適した材料、例えば、革様材料を製造するために従来の手順によって処理されてよい。典型的な手順は、着色、軟化油を用いた処理、乾燥、バフィングおよび表面仕上げを含む。
【0086】
本開示の例によるシート材料においては、繊維集合体と補強構造との間の機械的結合の強度増加、およびさらに存在するならば、コーティングへのより良好な束縛の結果として、かかる材料、例えば、衣類、履物類、アクセサリおよび室内装飾材料用途のための革様材料にはより耐久性がある。
【0087】
このように、先に詳述された多くの利点をもつシート材料を形成する方法、引き続いて形成されるシート材料およびシート材料がそれから形成される配置が記載される。そのうえ、本開示の例において、シート材料は、繊維、例えば、補強構造への繊維集合体の繊維、もしくは繊維集合体の繊維のいずれかの接着剤結合を備えないか、または実質的に備えない。機械的インターロックは、シート材料の完全性を達成して維持する唯一のまたは主たる手段である。これは、環境によりよいのみでなく、材料の完全性を達成して維持するために接着剤を用いて形成される材料よりも柔軟で展性のあるシート材料をもたらす。
【0088】
本発明の実施形態が様々な例を参照して先の段落に記載されたが、当然のことながら、請求される本発明の範囲から逸脱することなく、与えられた例に変更を行うことができる。例えば、異なる特性を提供するため、例として、太さおよび密度を増加または減少させるために、織布中のヤーンサイズを選択できるであろう。そのうえ、シート材料の特性を調整するために、織布および不織布の両方の組み合わせから形成された補強構造を設けることもできて、各それぞれの布が異なるタイプの分割性繊維を備えてよく、おそらく補強構造の一部に非分割性繊維も備えてよい。
【0089】
例えば、配置の少なくとも1つの面に、その面の水流交絡より前に、組織層が付けられてもよい。
【0090】
先の説明に記載された特徴は、明示的に記載された組み合わせ以外の組み合わせで用いられてもよい。
【0091】
一定の特徴を参照して機能が記載されたが、記載されるか否かにかかわらず、それらの機能を他の特徴によって実行できてもよい。
【0092】
一定の実施形態を参照して特徴が記載されたが、記載されるか否かにかかわらず、それらの特徴が他の実施形態にも存在してよい。
【0093】
用語「備える(含む)(comprise)」は、本文書では包括的で、排他的ではない意味で用いられる。すなわち、Yを備えるXへのいずれかの言及は、Xが1つのみのYを備えてもよく、または1つより多いYを備えてもよいことを示す。「備える」を排他的意味で用いることが意図されるならば、そのときには「1つのみの---を備える(comprising only one ---)」に言及することによって、または「なる(consisting)」を用いることによって文脈においてそれが明確にされるであろう。
【0094】
本記載において、様々な例が参照された。例に関する特徴または機能の記載は、それらの特徴または機能がその例に存在することを示す。本文中の用語「例(example)」もしくは「例えば(for example)」または「してよい(may)」の使用は、明示的に述べられるか否かにかかわらず、かかる特徴または機能が、例として記載されるか否かにかかわらず、少なくともその記載される例に存在すること、およびそれらが、必ずしもではないが、いくつかまたはすべての他の例にも存在しうることを示す。従って、「例」、「例えば」または「してよい」は、例のある1つのクラスにおける特定の事例を指す。事例の特性は、その事例のみの特性、もしくはそのクラスの特性、またはそのクラスにおける事例のすべてではないがいくつかを含む、そのクラスのある1つのサブクラスの特性とすることができる。それゆえに、1つの例を参照するが別の例を参照しないで記載される特徴は、可能なところでは、その他の例にそれを用いることができるが、その他の例に用いることが必ずしも必要なわけではないことが暗黙的に開示される。
【0095】
特に重要と思われる本発明のそれらの特徴に注意を向けるために上述の明細書に尽力する一方で、本出願人が、図面で先に言及され、および/または示されたいずれかの特許性のある特徴もしくは特徴の組み合わせについて、それらに特に重点が置かれたか否かにかかわらず、保護を求めることが理解されるべきである。
【国際調査報告】