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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】針生検装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/02 20060101AFI20221107BHJP
   A61B 10/04 20060101ALI20221107BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61B10/02 110J
A61B10/02 110Z
A61B10/04
A61B1/018 515
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513678
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020057748
(87)【国際公開番号】W WO2021101686
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/937,949
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロール、ジェームズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイバーコスト、パトリック エイ.
(72)【発明者】
【氏名】メイヨー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ギース、トロイ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】グルフ、ジョエル エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161FF43
4C161GG15
(57)【要約】
装置は、内部を貫通して延びるルーメンを備えた中空針を含む。針は、内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状に構成される。針は、標的組織を穿刺して組織の一部をルーメン内に取り出すための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有する。装置は、針のルーメン内を貫通して延びるようなサイズおよび形状に構成されたシャフトと標的組織を穿刺するための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端とを有する円筒形スタイレットをさらに含む。スタイレットが延びるとき、スタイレットの鋭利な遠位先端部は、針の鋭利な遠位先端部を越えて所定の距離だけ遠位方向に延びる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を貫通して延びるルーメンを備えた中空針であって、内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状に構成され、前記標的組織を穿刺してその組織の一部を前記ルーメン内に取り出すための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有する、前記中空針と、
前記針の前記ルーメン内を通過して延びるようなサイズおよび形状に構成されたシャフトと、前記標的組織を穿刺するための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端とを有する円筒形のスタイレットと、
を含む装置であって、
前記スタイレットが延ばされたとき、前記スタイレットの前記鋭利な遠位先端部は、前記針の前記鋭利な遠位先端部を越えて予め定められた距離にわたって遠位側に延びる、装置。
【請求項2】
前記スタイレットの前記遠位端は、先細りしたオジーブ外形を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スタイレットが前記針の前記ルーメン内を通過して延びるとき、前記スタイレットのシャフトは該ルーメンに密嵌する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記スタイレットの前記鋭利な遠位先端部が、前記針の前記鋭利な遠位先端部を越えて遠位方向に延びる前記予め定められた距離は、前記スタイレットの先細りした前記遠位端の長さに対応する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記針の前記遠位端は、研磨した3つのノッチによって周方向に互いに間隔をあけて配置された3つの鋭利な先端部を備えたフランシーン研磨を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記針はコバルトクロム合金で形成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記スタイレットはニチノール合金で形成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
内部を貫通して延びるルーメンを備えた中空針であって、内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状に構成され、前記標的組織を穿刺して、その組織の一部を前記ルーメン内に取り出すための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有する、前記針と、
内部を貫通して延びるルーメンを備え、前記針の前記ルーメン内を通過して延びるようなサイズおよび形状に構成されたシャフトを有する中空円筒形の拡張器と、
前記拡張器の前記ルーメン内を通過して延びるようなサイズおよび形状に構成された、前記標的組織を穿刺するための穿刺用先端部を有するワイヤと、
を含む、装置。
【請求項9】
前記拡張器は、非外傷性遠位先端部を備えた、丸みを帯びた遠位端を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記拡張器は前記針の前記遠位端から遠位方向に延び、前記ワイヤが前記拡張器の前記遠位端から遠位方向に延ばされたとき、前記拡張器は、前記針の前記鋭利な遠位先端部を越えて第1の予め定められた距離に亘って延び、前記ワイヤは、前記拡張器の前記非外傷性遠位先端部を越えて第2の予め定められた距離延びる、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記ワイヤは、前記拡張器の前記遠位端から遠位方向に前進可能であり、前記装置のハンドル上のばね式押しボタンによって前記拡張器の中に引き込み可能である、請求項8~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記拡張器の丸みを帯びた前記遠位端は、前記拡張器のシャフトに接着される、請求項8~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記拡張器の前記丸みを帯びた遠位端はポリマーで形成されており、前記拡張器のシャフトは編組、またはコイル状にされたポリマー複合材料で形成されており、前記ワイヤはニチノールで形成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記針の前記遠位端は、研磨した3つのノッチによって周方向に互いに間隔をあけて配置された3つの鋭利な先端部を備えたフランシーン研磨を有しており、前記針は、コバルトクロム合金またはニチノール合金で形成される、請求項8~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記拡張器が前記針の前記ルーメン内を通過して延びるとき、前記拡張器のシャフトは、該ルーメンに密接に嵌合する、請求項8~14のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺の質が改善された細針生検(FNB:fine needle biopsy)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細針生検は、多くの場合、評価のためのコア組織試料(生検材料)を採取するために超音波内視鏡(EUS: ultrasound)誘導下で行われる。EUSを用いて標的の生体構造(たとえば病変)を可視化した後、シース付き細針生検(FNB)装置を標的の生体構造に進めて病変被膜を穿刺し、中空針のルーメン内に組織を捕捉する。
【0003】
様々な機械的および生物学的制約が、標的の生体構造の穿刺に困難を引き起こす場合がある。たとえば、消化管間質腫瘍(GIST:gastrointestinal stromal tumor)または膵石灰化などの標的の生体構造内またはその近傍の高密度領域または硬化領域は、穿刺の試行中に周囲の非標的組織内に針が逸れる場合がある。別の例では、標的の生体構造は、浅いアプローチ角からのみ到達可能であるため、標的構造を穿刺せずに、病変の外面に沿って針が滑る場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、内部を貫通して延びるルーメンを備えた中空針であって、内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状に構成され、標的組織を穿刺して組織の一部をルーメン内に取り出すための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有する針と、針のルーメン内を通過して延びるようなサイズおよび形状に構成されたシャフトと標的組織を穿刺するための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有する円筒形スタイレットと、を含む装置に関し、スタイレットが延伸されたとき、スタイレットの鋭利な遠位先端部は、針の鋭利な遠位先端部を越えて所定の距離遠位方向に延びる。
【0005】
一実施形態では、スタイレットの遠位端は先細りしたオジーブ外形を有する。
一実施形態では、スタイレットが針のルーメン内を貫通して延びるとき、スタイレットのシャフトは針のルーメンに密接に嵌合する。
【0006】
一実施形態では、スタイレットの鋭利な遠位先端部が針の鋭利な遠位先端部を越えて遠位側に延びる所定の距離は、スタイレットの先細りした遠位端の長さに対応する。
一実施形態では、針の遠位端は、研磨した3つのノッチによって周方向に互いに間隔をあけて配置された3つの鋭利な先端部を備えたフランシーン(Franseen)研磨を有する。
【0007】
一実施形態では、針はコバルトクロム合金で形成される。
一実施形態では、スタイレットはニチノール合金で形成される。本発明は、また、内部を貫通して延びるルーメンを備えた中空針であって、内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状に構成され、標的組織を穿刺して組織の一部をルーメン内に取り出すための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有する中空針と、内部を貫通して延びるルーメンを備え、且つ針のルーメン内を通過して延びるようなサイズおよび形状に構成されたシャフトを有する中空円筒形拡張器と、拡張器のルーメン内を貫通して延びるようなサイズおよび形状に構成された、標的組織を穿刺するための穿刺用先端部を有するワイヤと、を含む装置に関する。
【0008】
一実施形態では、円筒形拡張器は、非外傷性遠位先端部を備えた丸みを帯びた遠位端を有する。
一実施形態では、拡張器が針の遠位端から遠位方向に延びるとともにワイヤが拡張器の遠位端から遠位方向に延びるとき、拡張器は、針の鋭利な遠位先端部を越えて第1の所定の距離延び、ワイヤは、拡張器の非外傷性遠位先端部を越えて第2の所定の距離延びる。
【0009】
一実施形態では、ワイヤは、拡張器の遠位端から遠位方向に前進可能であり、装置のハンドル上のばね式押しボタンによって拡張器の中に引き込み可能である。
一実施形態では、拡張器の丸みを帯びた遠位端は拡張器シャフトに接着される。
【0010】
一実施形態では、拡張器の丸みを帯びた遠位端はポリマーで形成され、拡張器シャフトは編組またはコイル状のポリマー複合材料で形成され、穿刺ワイヤはニチノールで形成される。
【0011】
一実施形態では、針の遠位端は、研磨した3つのノッチによって周方向に互いに間隔をおいて配置された3つの鋭利な先端部を備えたフランシーン研磨を有し、針はコバルトクロム合金またはニチノール合金から形成される。
【0012】
一実施形態では、拡張器が針のルーメン内を貫通して延びるとき、拡張器シャフトは針のルーメンに密接に嵌合する。
さらに、本発明は、中空針のルーメン内を貫通して円筒形スタイレットを延ばす工程であって、針は、内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状を備え、針は、標的組織を穿刺して組織の一部をルーメン内に取り出すための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有し、スタイレットは、針の内腔を通って延びるようなサイズおよび形状のシャフトを有し、スタイレットは、標的組織を穿刺するための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端を有し、スタイレットの鋭利な遠位先端部は、針の鋭利な遠位先端部を越えて所定の距離遠位に延びる、前記中空針のルーメン内を貫通して円筒形スタイレットを延ばす工程と、スタイレットで標的組織を穿刺してスタイレットおよび中空針を標的組織内に遠位方向に前進させる工程と、針のルーメン内を通過して近位方向にスタイレットを引き込む工程と、中空針で標的組織の試料を捕捉する工程と、を含む方法に関する。
【0013】
一実施形態では、スタイレットの遠位端は先細りしたオジーブ外形を有する。
一実施形態では、スタイレットが針のルーメン内を貫通して延びるとき、スタイレットのシャフトは針のルーメンに密接に嵌合する。
【0014】
一実施形態では、スタイレットの鋭利な遠位先端部が針の鋭利な遠位先端部を越えて遠位方向に延びる所定の距離は、スタイレットの先細りした遠位端の長さに対応する。
一実施形態では、針の遠位端は、研磨した3つのノッチによって周方向に互いに間隔をあけて配置された3つの鋭利な先端部を備えたフランシーン研磨を有し、針はコバルトクロム合金で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかるEUS‐FNB手技に使用するための生検針の例示的な実施形態を示す図。
図2】鋭利な弾頭形遠位先端部を有するスタイレットを備えた、図1の生検針を含む例示的なFNB装置を示す図。
図3図2のFNB装置を示す側面図。
図4】本発明にかかる、内部を貫通して延びる中空拡張器300を備えた、図1の生検針100を含む例示的なFNB装置を示す図。
図5図4のFNB装置を示す側断面図。
図6】中空拡張器から延びる穿刺ワイヤを備えた、図4のFNB装置を示す図。
図7図4のFNB装置を示す側面図。
図8図1の針に図4の拡張器を取り付けて穿刺ワイヤを作動させるための例示的なエンクロージャを示す図。
図9】改変したフランシーン研磨を備えた、遠位先端部を有する例示的な生検針を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、同様の要素に同一の参照番号が付されている以下の説明および添付の図面を参照することによってさらに理解できる。例示的な実施形態は、改善された穿刺性能を有する細針生検(FNB)針を説明する。いくつかの実施形態では、針を生体構造内に進め、生体構造から組織を捕捉するのに先立ち、針のルーメンから遠位方向に延びる鋭利な穿刺要素を用いて標的の生体構造を穿刺する。鋭利な穿刺要素は、さらに、下記のように、組織の捕捉に先立ち、生体構造内への針の挿入を容易にするために拡張作用を有していてもよい。細針生検では、組織を病変の外側または被膜部位だけから捕捉するのではなく病変のコアから捕捉するのが一般的な方法である。したがって、各装置は、非標的組織の取得を防止し且つ標的構造内の所望の穿刺深度まで針を進め終わるまで標的構造からの組織の捕捉を防止するための手段を有する。
【0017】
図1は、超音波内視鏡細針生検(EUS‐FNB:endoscopic ultrasound fine needle biopsy)手技に使用するための生検針100の遠位端を示す。針100は、たとえば可撓性内視鏡などの挿入装置によって標的の生体構造に導入されたときに、標的の生体構造(たとえば病変)を穿刺してそこから組織を回収するための鋭利な遠位先端部を備えた遠位端104を有する中空シャフト102を含む。本実施形態では、針100はコバルトクロム(CoCr:cobalt‐chromium)合金で形成される。CoCrは、高い強度を有し、CoCrで作られた針先端部が穿刺時の曲げに耐えることを可能にする。しかしながら、針100のために、ニチノールまたはステンレス鋼などの他の材料を使用してもよい。たとえば、キンクを防止するために、より大きなゲージ針にニチノールを使用してもよい。本実施形態では、遠位端104は、研磨した3つのノッチによって周方向に互いに間隔をあけて配置された3つの鋭利な先端部を備えた王冠形状をなすフランシーン研磨を有する。しかしながら、面取り端、すなわち任意の数の鋭利な先端部などの、別の形状を遠位端104に使用してもよい。
【0018】
図2図3に示すように、図1の生検針100を含むFNB装置は、円筒形シャフト206から延びる鋭利な組織穿刺用遠位先端部204を備えた弾頭形遠位端202を有するスタイレット200を含み、スタイレット200は、最も遠位側の位置において、スタイレット200の先端部204が針100の遠位端104から出て遠位方向に延びるように、中空シャフト102のルーメン内を貫通して延びるようなサイズおよび形状を備える。遠位端202は、オジーブとみなされ得る側断面形状を備えたテーパ付きの断面を有する。換言すると、本実施形態の「弾頭形」とは、図3に見られるように、1つのポイント、すなわち遠位先端部204で接する湾曲部(たとえば円部)の2つの対称セグメントによって形成される側断面を有する。この場合、針200の半径は、対称セグメントを形成する湾曲部のそれぞれの曲率半径よりも小さいため、先端部202は、針200と同じ直径を有する半球よりも鈍くない(より先細りである)。
【0019】
遠位端202の湾曲部は、その近位端においてシャフト206の円筒形状に徐々になめらかに移行する。湾曲したセグメントの側断面の半曲率径は異なっていてもよい。たとえば、オジーブ遠位端202は、より大きな曲率半径の湾曲部のより短い弧長またはより小さい半径の円のより長い弧長に合わせた外形を有していてもよい。他の実施形態において、遠位端202は、厳密にはオジーブではないが、その近位基部において、シャフト206に接したままであり、径方向内方に湾曲するが、遠位先端部204に接近する円錐テーパにより酷似している同様なテーパを有していてもよい。さらに他の実施形態において、湾曲部のセグメントは楕円形であってもよい。
【0020】
本実施形態では、スタイレット200は、塑性変形することなく小さな旋回半径を介して標的組織への通路に沿って蛇行した経路をナビゲートするスタイレット/針の組み合わせを可能にする、超弾性ニチノール合金で形成される。当業者には理解されるように、他の可撓性合金も使用してもよい。図3に示すように、スタイレット200の長さは、針100内の最も遠位の位置に挿入されたとき、先細りした遠位端202の遠位先端部204が、針100の遠位端104から外方に遠位側に所望の所定の距離208(「セットバック」)延びるように選択される。FNB装置は、セットバック208が、遠位先端部204からスタイレット200のシャフト206の平坦部までの距離に対応するように構成されていてもよい。換言すると、セットバック208は、針100のゲージに基づいて異なる場合がある、弾頭遠位先端部202の長さに対応してもよい。セットバック208は針100の直径に依存し、セットバック208の範囲は、おおよそ2.03~15.24ミリメートル(0.08インチ~0.6インチ)である。一実施形態では、スタイレット200のセットバック208は、おおよそ~2.54ミリメートル(0.1インチ)である。代替実施形態において、異なる形状の先端部(たとえば面取り先端部)を有する針が用いられる場合、セットバック208用の同様な構成を用いることができる。スタイレット200は、浅いアプローチ角であっても、遠位先端部204が標的組織に留まるように形成される。たとえば、スタイレット200の遠位先端部204は、5°またはそれ以上の角度で組織を効果的に穿刺し得る。
【0021】
組織を穿刺した後、スタイレット200をさらに用いて標的被膜を拡張し得る。スタイレット200の遠位端202の弾頭形状(すなわち、その遠位先端部204での最小値から近位方向へ移動することによる遠位端202の直径の漸増)は、スタイレット200の後ろの病変に針100がよりなめらかに挿入され得るように、スタイレット200が組織内に遠位方向に前進されるのに伴って組織を拡張させることに役立つ。すでに指摘したように、いくつかのEUS‐FNB手技は、病変コアから組織を捕捉するために用いられる。
【0022】
これらの手技に関して、所望の深度まで針100が病変を貫通し終わるまで、組織の捕捉を開始しないことが望ましい。この目的のために、スタイレットシャフト206は、シャフト内で摺動可能に維持しつつ、スタイレット200と中空シャフト102の内径との間の隙間(すなわち環状の隙間)を最小限に抑えるサイズに構成されており、スタイレット200が、中空シャフト102の遠位開口部を覆うその最も遠位の位置に維持された際、病変の穿刺中に組織は針に侵入しない。十分な深度まで病変内に針100を挿入した後、スタイレット200を針100から近位方向に引き抜き、針100を病変内に遠位方向にさらに進めて、コア組織試料を捕捉する。複数の試料を採取する場合は、針100の中を通過してスタイレット200を再度挿入し、同様に操作してもよい。さらに、針100の先端部104のプロングを任意の事前の組織捕捉で曲げられた場合、針100の内径(ID:inner diameter)に密接に嵌合しているスタイレット200は、次に遠位端104内を通過して進むとき、その曲がりを真っ直ぐにするであろう。
【0023】
以下に説明する他の実施形態において、針ハンドルからの制御された作動によって標的組織の最初の穿刺を容易にするために、ワイヤは、中空拡張器300の遠位端から外方に遠位方向に進められる。ワイヤはばね式または非ばね式であってもよく、押しボタン、スライダ、トリガ、または他のアクチュエータによって作動させ得る。
【0024】
図4図7に示すように、さらなる実施形態にかかるFNB装置は、生検針100のルーメン内に収容された拡張器300を備えた、図1に関して上記した生検針100を含む。拡張器300は、内部を貫通して延びるルーメンを備えたシャフト302を含む。拡張器300は、その中を通過して穿刺ワイヤ306を拡張器ルーメンの外方に前進させて拡張器300の遠位端から遠位側に突出させ得る遠位開口部を備えた丸みをおびた遠位先端部304まで延びる。図4図5は、ルーメン内に引き込まれた穿刺ワイヤ306を備えた(すなわち作動前状態にある)拡張器300を示し、一方、図6図7は、拡張用先端部304から外方に遠位方向に延びた(すなわち作動状態にある)穿刺ワイヤ306を示す。当業者には理解されるように、拡張器シャフト302は、たとえば、ニチノールチューブまたはポリマー複合材料シース付きコイルまたは編組などの超弾性材料から形成されてもよく、一方、拡張用先端部304は、適切な生体適合性金属(ニチノールなど)、ポリマー(PEEK、ポリカーボネートなど)、ガラスなどであってもよい。拡張用先端部304の材料は、その後方のシャフト302によく付着するように選択し得る。
【0025】
穿刺ワイヤ306は、たとえばニチノールなどの超弾性材料で形成され得る。拡張器300のルーメンの直径および、穿刺ワイヤ306の対応する直径は、十分に小型に選択されているため、たとえ遠位先端部の鋭さを高めるために遠位先端部が別々に機械加工されなくても、ワイヤ306が標的病変を穿刺することが可能である。たとえば、直径は0.15ミリメートル(0.006インチ)であり得る。ワイヤ306の遠位先端部は、先端が鋭利な、またはくさび形のトロカール先端部を有し得る。拡張用先端部304と針の遠位端104との間のセットバック312は、スタイレット200に関して上記したものと同様に構成されていてもよく、すなわち、拡張器300の遠位先端部304の最も遠位の部位から拡張器シャフト302の平坦部までの距離に対応する。ワイヤ306と拡張用先端部304との間のセットバック314は可変長である。
【0026】
たとえば、ワイヤ306は、ワイヤ306が延びたとき、スタイレット200の弾頭形遠位端202と同様に機能する、より短いセットバックを有していてもよい。このように考えれば、拡張器300とワイヤ306との組み合わせは、操作をする医師がワイヤ306を作動させるまで、丸みをおびた(すなわち非外傷性の)先端部を有するスタイレット200の代替物を形成する。別の実施形態において、ワイヤ306は、拡張用先端部304に対して、より長いセットバックを有していてもよい。本実施形態では、非常に浅いアプローチ角であっても、ワイヤ306を使用して病変に到達して係合し得る。たとえば、ワイヤ306は、最初に浅いアプローチ角で病変に係合し、わずかに曲げて、装置の残りの部分(拡張器300、針100)が病変内に進むことを容易にし得る。
【0027】
図8に示すように、穿刺ワイヤ306を含む拡張器300は、エンクロージャ308から延びる。エンクロージャ308は、たとえば、針ハンドルのルアーにねじ込まれてもよく、本実施形態では、ワイヤ306を配備するための、すなわち作動前状態から作動状態までワイヤ306を延ばすための、押しボタン310を有する。しかしながら、押しボタン310以外のアクチュエータを使用してもよい。ワイヤ306の配備は素早くてもよいし、またはゆっくりであってもよい。たとえば、ワイヤ306が作動前状態にあるとき、ばねは圧縮されていてもよいため、アクチュエータが操作されると、ばねが解放され、拡張器300の遠位端から外方に遠位方向に素早くワイヤ306を駆動して標的組織を貫通する。すなわち、標的の生体構造を貫通するのが望ましい場合、拡張器300の遠位端を所望の穿刺部位に隣接して配置して、標的組織内に拡張器300から外方に遠位方向にワイヤ306を駆動するようにアクチュエータを操作する。
【0028】
代替実施形態では、ワイヤ306は、任意の速度(速いまたは遅い)で進め、次いでワイヤ306の先端部を、穿刺するために組織に隣接させる。次いで、使用者は、拡張器300および針100を、ワイヤ306上を遠位方向に標的組織塊中に進め得る。標的組織塊中に所望の深度まで針を進めた後に、ワイヤ306および拡張器300を近位方向に引き抜いて(針100内の所望の距離まで近位方向に引き込むか、またはそこから完全に引き抜く)、そして、針100を標的組織塊中にさらに進めて、針100内に組織試料を捕捉し得る。
【0029】
上記のように、EUS‐FNB手技時に、エンクロージャ308は上記のように針100に連結され、拡張用先端部304は、標的生体構造に隣接する所望の部位に配置される。次いで、押しボタン310を作動させ、拡張用先端部304の遠位端から外方に遠位方向に穿刺ワイヤ306の先端部を延ばして、ワイヤ306が標的組織を穿刺する。次いで、使用者は、図2に関して拡張用スタイレット200について説明した場合と同様の方法で、その遠位端において拡張器300の直径を最小値から漸増させて、拡張器300および針100を標的組織内に遠位方向に進め、標的組織塊中への針100の滑らかな進入を容易にするためにワイヤ306によって形成された開口部を徐々に拡張する。標的組織塊中に所望の深度まで針を進めた後、拡張器300を近位に引き抜き、そして、針100を遠位方向に進めてコア組織を捕捉する。
【0030】
図9は、スタイレット200または中空拡張器300のいずれかとワイヤ306とともに、上記と同様に針100の代わりに使用してもよい、改変されたフランシーン研磨を備えた遠位先端部402を有する生検針400を示す。図1で示した針100に関して示した3つの同じサイズの穿刺用プロングの代わりに、生検針400は、他の2つのプロングよりも長い軸方向リーチに延びる(すなわち、さらに遠位方向に延びる)プロング404を有する。長いプロング404は、他のプロング406の遠位端を越えて遠位方向に延び、針400に、標的組織塊における最初の固定を達成させ、先端部402の残りが病変内に前進する際に安定性を付与する。必要に応じて、針400は、最初の穿刺を行い、針400とともにスタイレットを使用しなくてもよいし、または鋭利でないスタイレットを使用してもよい。鋭利でないスタイレットは、針400が蛇行した経路を辿るときに、針400の前進時にフランシーン研磨の先端部を保護するだけでなく、内径支持も設ける。さらに、鋭利でないスタイレットは、針400がその内部を通過して遠位方向に進む際に、遠位先端部402が内視鏡を損傷することを防止し得る。しかしながら、先端部402が内視鏡の遠位端を越えて前進したら、鋭利でないスタイレットを引き抜いてもよい。
【0031】
当業者には、発明概念から逸脱することなく上記の実施形態に変更を加えてもよいことは理解されるであろう。実施形態の1つに関連する構造的特徴および方法を他の実施形態に組み込むことができることもさらに理解されるべきである。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、むしろ、変更も、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲に含まれることは理解される。特に、様々な特徴を様々な組み合わせでそれぞれが有する様々な実施形態を本願は説明しているが、当業者は、一実施形態の特徴は、いずれも、具体的に否定されていないかまたは開示された実施形態の装置の操作もしくは記載された機能と機能的もしくは論理的に矛盾しない任意の方法で他の実施形態の特徴と組み合わされてもよいことを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】