(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】水系バリア接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20221107BHJP
C09J 201/06 20060101ALI20221107BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221107BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J201/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513905
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2020074526
(87)【国際公開番号】W WO2021043860
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】10201908115Y
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517301210
【氏名又は名称】タイ ポリエチレン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ネラノン,キットジャニット
(72)【発明者】
【氏名】サエンディー,プッチャディ
(72)【発明者】
【氏名】ポルスンソーンティー,オラタイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャルマネロジ,チャッチャイ
(72)【発明者】
【氏名】チーバスリルングルアン,ウォッチャリー
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA08
4J004AA09
4J004AA14
4J004AB01
4J004CB02
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4J040MA10
4J040NA06
4J040NA08
(57)【要約】
本発明は、ポリウレタンと、少なくとも1つの水溶性ポリマーであって、この水溶性ポリマーは少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、水と、を含む、水系バリア接着剤;それを含むバリアフィルム;その調製方法;及び食品包装におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系バリア接着剤であって、
ポリウレタンと、
少なくとも1つの水溶性ポリマーであって、前記水溶性ポリマーが少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、
水と、を含む、水系バリア接着剤。
【請求項2】
前記水系バリア接着剤が、前記水系バリア接着剤の総重量に対して1~30重量の量で前記ポリウレタンを含む、請求項1に記載の水系バリア接着剤。
【請求項3】
前記水系バリア接着剤が、前記水系バリア接着剤の総重量に対して5~60重量%の量で前記少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む、請求項1又は2に記載の水系バリア接着剤。
【請求項4】
前記水系バリア接着剤の総重量に対して好ましくは0.1~10重量%の量で少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の水系バリア接着剤。
【請求項5】
前記ポリウレタン及び前記少なくとも1つの水溶性ポリマーが、5:1~1:30の重量比で前記水系バリア接着剤中に含有されている、請求項1から4のいずれかに記載の水系バリア接着剤。
【請求項6】
前記ポリウレタンが、ポリエーテルウレタン及び脂肪族ポリエステルウレタンを含む、請求項1から5のいずれかに記載の水系バリア接着剤。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、ポリ(エチレンビニルアセテート)、セルロースアセテート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の水系バリア接着剤。
【請求項8】
前記水系バリア接着剤が水混和性溶媒をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の水系バリア接着剤。
【請求項9】
基材と、前記基材の少なくとも表面上にコーティングされたバリア接着剤層とを含むバリアフィルムであって、前記バリア接着剤層が、請求項1から8のいずれかに記載の水系バリア接着剤を含む、バリアフィルム。
【請求項10】
前記基材上にコーティングされた前記バリア接着剤層が、0.1~10μmの厚さを有する、請求項9に記載のバリアフィルム。
【請求項11】
前記水系バリア接着剤が、0.1~5g/m
2の量で前記表面上にコーティングされている、請求項9又は10に記載のバリアフィルム。
【請求項12】
前記バリア接着層に隣接したラミネート層をさらに含み、前記バリア接着剤層が、前記ラミネート層と前記基材との間に配置されている、請求項9から11のいずれかに記載のバリアフィルム。
【請求項13】
前記基材及び/又は前記ラミネート層が、ポリエチレン、ポリプロピレン又は紙を含む、請求項9から12のいずれかに記載のバリアフィルム。
【請求項14】
請求項1~8のいずれかに記載の水系バリア接着剤を製造する方法であって、
-少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む水溶液を提供するステップと、
-前記水溶液をポリウレタンと混合するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
包装、好ましくは食品包装におけるバリア接着剤層としての前記水系バリア接着剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系バリア接着剤、その調製方法、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
バリアフィルムは、食品の保存期間を維持及び延長するための食品包装用途において重要である。各バリアフィルムは、単層又は多層であり得る。バリアの性能は、酸素透過率及び水蒸気透過率に強く依存する。フィルム材料及び構造設計は、その特定の用途及び製品タイプに対する所望のバリア性能に依存する。
【0003】
国際公開第2019/060026号は、ガスバリア特性及び防湿性を有する接着剤層を含むラミネートフィルム構造を開示している。開示されたラミネートフィルム構造は、接着剤組成物と一緒に結合されたフィルムを含み、接着剤組成物は、バリア特性を有し、例えば、酸素及び/又は水蒸気透過率を制御する。しかしながら、これらのラミネートフィルムの酸素透過率は、多様な用途には高すぎる。
【0004】
米国特許出願公開第2016/0040035号明細書は、水系コーティング剤であって、(A)酸基を有するポリウレタン樹脂及びポリアミン化合物を含有する水性ポリウレタン樹脂と、(B)水溶性ポリマーと、(C)無機層状鉱物とを主たる構成成分として含み、水系コーティング剤の全固形分中に占める水性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性ポリマー(B)、及び無機層状鉱物(C)の固形分配合比率が以下に記載の近似的範囲内である、水系コーティング剤を開示している。水性ポリウレタン樹脂(A):5~60質量%、水溶性樹脂(B):25~80質量%、無機層状化合物(C):8~20質量%。しかしながら、これらの材料は、多様な用途には高すぎる酸素透過率を示す。
【0005】
しかしながら、従来技術から公知の材料は、不十分なバリア性能、長期接着強度(接着安定性)、製品の貯蔵寿命及びリサイクル性に悩まされている。
【0006】
したがって、改善された特性を有する、特に食品包装用途に使用するためのバリアフィルム及びその調製のための組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/060026号
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0040035号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、特に酸素透過率及び水蒸気透過率に関して、従来技術の欠点を克服するバリアフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、ポリウレタンと、少なくとも1つの水溶性ポリマーであって、この水溶性ポリマーは少なくとも1つのヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、水と、を含む、水系バリア接着剤によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「水系バリア接着剤」コーティング組成物は、本明細書では、接着特性及び/又はバリア特性を提供するために基材をコーティングするためのコーティング組成物と呼ばれ得る。コーティング組成物(水系バリア接着剤)は、ポリウレタン及び1つ以上の水溶性ポリマーを含み得る。
【0011】
本明細書で使用される「バリア接着剤」という用語は、一般に、任意のバリアコーティングを包含するものとし、接着剤のみに限定されない。
【0012】
本発明は、接着剤及び/又はバリアとして使用することができるコーティング組成物(水系バリア接着剤)を提供する。コーティング組成物は、水性組成物である。すなわち、それは水溶液の形態で基材上に適用され、続いて乾燥されて、基材の表面に付着し、同時にバリアとして作用する層を形成することができる。この層は、水又はかなりの量の水を含み得る。
【0013】
コーティング組成物は、バリアフィルム、好ましくはラミネートフィルムを形成するために使用することができる。コーティングされた組成物は、基材上にコーティングすることができ、次いで、任意選択的に、コーティング組成物が基材とラミネート層との間に配置されるように、ラミネート層で被覆されてラミネートフィルムを形成することができる。
【0014】
水系バリア接着剤は、ポリウレタンと、1つ以上の水溶性ポリマーであって、1つ以上の水溶性ポリマーは-OH(ヒドロキシル)基を含む、1つ以上の水溶性ポリマーと、水と、を含む。
【0015】
組成物は、任意選択的に、好ましくは、変形剤、分散剤、粘着付与剤、界面活性剤、可塑剤、湿潤剤、増粘剤、殺生物剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、及び接着促進剤など、又はそれらの混合物を含むものから選択される1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。組成物は、少なくとも1つの添加剤を、水系バリア接着剤の総重量に対して0.1~10重量%の量で含んでもよい。
【0016】
水系バリア接着剤は、水系バリア接着剤の総重量に対して、1~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは1~10重量%、さらにより好ましくは2~8重量%、最も好ましくは3~6重量%の量でポリウレタンを含み得る。
【0017】
水系バリア接着剤は、水系バリア接着剤の総重量に対して、5~60重量%、好ましくは5~40重量%、好ましくは5~30重量%、好ましくは5~20重量%、好ましくは5~15重量%、好ましくは7~12重量%の量で少なくとも1つの水溶性ポリマーを含み得る。
【0018】
水系バリア接着剤は、水系バリア接着剤の総重量に対して、40~94重量%、好ましくは50~94重量%、好ましくは70~94重量%、好ましくは80~95重量%、好ましくは85~95重量%、好ましくは80~90重量%の量で水を含み得る。
【0019】
水系バリア接着剤は、ポリウレタン、少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び水からなり得る。水系バリア接着剤の全構成成分の量は、合計100重量%になる。本開示全体において、「含む(comprising)」は、好ましくは「からなる(consisting of)」であり得る。
【0020】
ポリウレタン及び少なくとも1つの水溶性ポリマーは、5:1~1:30、好ましくは2:1~1:20、好ましくは1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5、好ましくは1:1~1:3の重量比で水系バリア接着剤中に含有されてもよい。
【0021】
ポリウレタンは、ポリウレタンの総重量に対して5~50重量%の水を含む固体であってもよい。ポリウレタンは、水中分散液(水性分散液、ポリウレタン分散液)中のポリウレタンであってもよい。好ましくは、ポリウレタン分散液は、分散液の総重量に対して、20~50重量%、好ましくは25~40及び好ましくは30~35重量%の範囲の固形分を有する。換言すれば、ポリウレタンは、固体の総重量に対して、20~50重量%、好ましくは25~40及び好ましくは30~35重量%の量で水中に固体として存在してよい。
【0022】
ポリウレタンは、脂肪族ポリウレタンであってもよく、好ましくは、(A)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びそれらの組み合わせ、並びに(B)脂肪族ジイソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレン(pentametylene)ジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)及びそれらの組み合わせから得られる。
【0023】
ポリウレタンは、脂肪族ポリエーテルウレタン及び/又は脂肪族ポリエステルウレタンを含んでもよい。ポリウレタンは、大部分がポリエーテルウレタンを含み、少数の部分が脂肪族ポリエステルウレタンを含むことが好ましい。脂肪族ポリエーテルと脂肪族ポリエステルウレタンとの比は、1:1~5:1、好ましくは1.2:1~3:1、より好ましくは1.5:1~2:1の範囲であってよい。
【0024】
脂肪族ポリウレタンは、約30,000~80,000g/molの数数平均分子量(Mn)、及び/又は約40,000~90,000g/molの重量平均分子量(Mw)、及び/又は約45,000~95,000g/molのZ平均分子量(Mz)を有することが好ましい。ポリウレタンは、好ましくは、約1~3、好ましくは1~2、より好ましくは1~1.25の範囲の多分散指数を有する。
【0025】
ポリウレタン分散液は、1~300mPas、好ましくは20~500mPas、好ましくは30~500mPas、好ましくは30~200mPas、より好ましくは50~200mPasの範囲の溶液粘度を有し得る。
【0026】
平均粒径(=水性分散液中のポリウレタン粒子の粒径)は、10nm~500nm、好ましくは20~250nm、好ましくは50~200nm、好ましくは100nm~200nmの範囲である。
【0027】
水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、ポリ(エチレンビニルアセテート)、セルロースアセテート、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0028】
水溶性ポリマーは、水溶性ポリマー中の加水分解性基の総数に対して70~100%の加水分解度を有し得る。
【0029】
水溶性ポリマーは、500~50,000g/mol、好ましくは20,000~40,000g/molの重量平均分子量を有し得る。
【0030】
水系バリア接着剤は、水混和性溶媒をさらに含んでもよい。水系バリア接着剤は、水系バリア接着剤の総重量に対して、0.1~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは10~20重量%の量で水混和性溶媒を含み得る。水混和性溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0031】
本目的は、基材と、基材の少なくとも表面上にコーティングされたバリア接着剤層とを含むバリアフィルムであって、バリア接着剤は、本明細書で定義される水系バリア接着剤を含む、バリアフィルムによってさらに達成される。一実施形態によれば、基材と、基材の少なくとも表面上にコーティングされたバリア接着剤層とを含むバリアフィルムであって、バリア接着剤は、定義される水系バリア接着剤からなる、バリアフィルムが提供される。一実施形態によれば、基材と、基材の少なくとも表面上にコーティングされたバリア接着剤層とを含むバリアフィルムであって、バリア接着剤層は、基材上に水系バリア接着剤をコーティングすることによって得ることができる、バリアフィルムが提供される。水系バリア接着剤は、基材の表面上にコーティングされて、表面に接着されたバリア層を形成する。バリア接着剤層は、水系バリア接着剤を基材の表面上に1回又は複数回コーティングすることによって得ることができる(それぞれ、上記のコーティングで得られたコーティング層)。
【0032】
基材上にコーティングされたバリア接着剤層は、0.1~10μm(例えば、1~10μm、1~5μm、1~2μm)の厚さを有する。
【0033】
水系バリア接着剤は、0.1~5g/m2、好ましくは1~3g/m2、より好ましくは1.5-2.5g/m2の量で表面上にコーティングされてもよい。
【0034】
バリアフィルムは、バリア接着剤層に隣接したラミネート層をさらに含んでもよく、バリア接着剤層は、ラミネート層と基材との間に配置される。
【0035】
基材は、ポリマー、例えば、ポリオレフィン、PET、ナイロン又は紙ベースの基材であってもよい。好ましくは、基材はポリオレフィン、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンベースの基材である。基材は、機械方向配向又は二軸配向ポリオレフィンであってもよい。基材は、金属酸化物層、例えば、酸化アルミニウム又は酸化シリコーンでコーティングされてもよい。基材は、バリア接着剤又はコーティングの適用前に基材の親水性を高めるためにコロナで処理されてもよい。基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン又は紙を含んでもよく、好ましくはこれらからなってもよい。
【0036】
ラミネート層は、ポリエチレン、ポリプロピレン又は紙ベースを含んでもよく、好ましくはこれらからなってもよい。
【0037】
本目的は、本明細書で定義される水系バリア接着剤を製造する方法であって、少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む水溶液を提供するステップと、この水溶液をポリウレタンと混合するステップと、を含む、方法によってさらに達成される。
【0038】
水溶液を提供するステップは、水溶性ポリマーを水に溶解させることを含み得る。水溶性ポリマーの水への溶解は、50℃~150℃の範囲の温度で実施することができる。水溶性ポリマーは、水溶液の総量に対して1重量%~30重量%の量で水に溶解してもよい。この方法は、1つ以上の水溶性ポリマーを水に溶解させた後に水溶液の温度を冷却することをさらに含んでもよい。
【0039】
この方法で使用される水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、ポリ(エチレンビニルアセテート)、セルロースアセテート、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。この方法で使用される水溶性ポリマーは、水溶性ポリマー中の加水分解性基の総数に対して70~100%の加水分解度を有し得る。この方法で使用される水溶性ポリマーは、500~50,000g/mol、好ましくは20,000~40,000g/molの重量平均分子量を有し得る。
【0040】
水系バリア接着剤は、水混和性溶媒をさらに含んでもよい。水系バリア接着剤は、水系バリア接着剤の総重量に対して、0.1~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは10~20重量%の量で水混和性溶媒を含み得る。水混和性溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0041】
本発明の方法では、水溶液をポリウレタンと混合するステップは、少なくとも5分間にわたってポリウレタンを水溶液に添加することを含み得る。
【0042】
ポリウレタンを水溶液に添加することは、25℃~40℃の範囲の温度で実施することができる。
【0043】
ポリウレタンと水溶性ポリマーとの重量比は、5:1~1:30であってもよい。
【0044】
最後に、本目的は、食品包装におけるバリア接着剤層としての水系バリア接着剤の使用であり達成される。
【0045】
有利な効果
驚くべきことに、本開示による水系バリア接着剤は、特に食品包装においてバリア接着剤として使用することができ、これに関して、特に酸素透過率(OTR)及び水蒸気透過率(WVTR)に関してバリア特性を改善するのに役立つことが本発明者らによって見出された。
【0046】
本発明者らは、上記のバリア特性の利点が、良好なフィルム外観及び接着特性と組み合わされることをさらに見出した。
【0047】
別の利点は、本発明の水系バリア接着剤が、改善されたバリア性能とリサイクル性とを組み合わせることである。
【0048】
最近、リサイクル可能な傾向として、リサイクル不可能な組成物の総フィルム厚さ及びコーティング重量又はコーティング厚さの設計に応じて、特にフレキシブルな包装、例えば少なくとも約70%の単材料(すなわち、リサイクル可能部分)を含む包装用の多層フィルム、少なくとも90%の単材料(すなわち、リサイクル可能部分))を好む包装用の単材料を開発する試みがある。本発明の水系バリア接着剤は、良好なバリア特性を有する>95%の単材料(すなわち、リサイクル可能部分)を含むラミネートフィルムの調製を可能にする。
【0049】
材料
ポリウレタン分散液(PUD)は、32~35重量%の固形分を有する。ポリウレタンは、約40,000~90,000g/molの重量分子量を有する脂肪族ポリエーテルウレタン及び脂肪族ポリエステルウレタンからなる。以下の実施例で使用されるそれぞれの材料は、NEOREZ(商標)の商品名でDSM Coating Resinsから、LOCTITE(商標)の商品名でHenkel Companyから購入した。
【0050】
ポリビニルアルコール(PVA)は、20,000~40,000g/molの重量平均分子量及び96の加水分解度を有する。以下の実施例で使用されるそれぞれの材料は、FujiFilm Wako(商標)の商品名でFUJIFILM Wako Pure Chemical Corporationから、Poval(商標)の商品名でKuraray Companyから、GOHSENOLの商品名でMitsubishi Chemical Corporationから、及びDENKA POVALの商品名でDENKA Companyから購入した。
【0051】
ポリ(アクリル酸)(PAA)は、300,000~500,000ダルトンの粘度平均分子量(Mv)、100~3,000cPのブルックフィールド粘度及び100~110℃のガラス転移温度を有する。以下の実施例で使用されるそれぞれの材料は、Sigma Aldrich companyから購入した。
【0052】
測定方法
粒径
粒径(=粒子直径)及び比表面積は、Zetasizer Nanoseries model S4700(Malvern Instrument、英国)によって、濃度約0.001~0.003重量%、分散剤屈折率1.33及び粒子屈折率1.56で、脱イオン水中に希釈した試料を用いて測定した。
【0053】
粘度
溶液粘度は、25℃でNO.18のニードルを用い、90%を超えるトルク値及び14~30rpmの速度でブルックフィールド粘度計によって測定した。
【0054】
分子量
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びZ平均分子量(Mz)は、THF系、流量1.00mL/分、注入値100μL、検出器温度35℃、カラム温度35℃、及び試料濃度1.999、4.001、5.999mg/mLを使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって評価した。
【0055】
酸素透過率
酸素透過率(OTR)(cc/m2/日)は、ASTM D3985に従って、酸素透過率分析計(OX-TRAN(登録商標)、2/21MT)を使用して23℃の温度及び0%相対湿度(%RH)で測定した。
【0056】
水蒸気透過率
水蒸気透過率(WVTR)(g/m2/日)は、ASTM F1249に従って、水蒸気透過率分析計(Systech Illinois、7002)を使用して38℃の温度及び90%RHで測定した。
【0057】
テープによる初期粘着性
初期粘着性は、ASTM F 2296に従って、テープ試験によって決定した。簡潔には、透明テープをコーティングフィルム上に置いた。テープとコーティングフィルムとの間の良好な接触を確保した後、テープを手で迅速に除去した。次いで、除去したテープ及びコーティングフィルムを目視で検査した。
【0058】
接着強度
接着強度(N/15mm)は、万能試験機(UTM)を用いて、100Nの負荷荷重及び254mm/分の剥離速度で測定した。試料幅は15mmで一定に固定した。
【0059】
フィルム外観
フィルムの外観を目視で観察し、走査型電子顕微鏡(SEM)下でも分析した。
【0060】
水系バリア接着剤の調製
比較例1
PVA溶液は、90~95℃の温度でPVAを水に溶解させることによって調製した。次いで、周囲雰囲気下で約1~2時間、約300~800rpmの撹拌速度で周囲温度まで冷却した。
【0061】
比較例2
PAA溶液は、90~95℃の温度でPAAを水に溶解させることによって調製した。次いで、周囲雰囲気下で約1~2時間、約300~800rpmの撹拌速度で周囲温度まで冷却した。
【0062】
比較例3
比較例1及び2で調製したPVA溶液及びPAA溶液を、表1に示す部比率(part ratio)で混合した。
【0063】
実施例4、5、6及び7
PVA溶液は、90~95℃の温度でPVAを水又は水-メタノール混合物に溶解させることによって調製した。次いで、周囲雰囲気下で約1~2時間、約300~800rpmの撹拌速度で周囲温度まで冷却した。
【0064】
PUDをPVAに約10~30分間ゆっくり添加し、次いで、均一なPUD-PVA溶液が得られるまで3~5時間連続的に撹拌し続けた。
【0065】
PVA及びPUDの比率を、部比率として表1に示す。
【0066】
フィルム調製
試料1a~7a
約20μmの厚さで市販されている二軸配向ポリプロピレン(BOPP)を、汎用コーティング機(VCML、RK Printcoat Instruments)を使用して3.0gsm未満のコーティング重量又は約1~2μmの厚さで前述のように調製したバリア接着剤でコーティングした。
【0067】
比較試料1a、2a、3a、4a、5a、6a及び7aを、それぞれ比較試料1、2、3、4、5、6及び7を使用して調製する。
【0068】
試料5b、5c及び5d
次いで、試料5aに、厚さ40μmを有する無延伸ポリプロピリン(cPP)フィルム、80μmの厚さを有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は厚さ20 80μmを有するBOPPフィルムを積層した。接着剤硬化は、ラミネートフィルムを50℃の温度に少なくとも24時間維持することによって行った。
【0069】
表1から、試料4~7は、すべての比較例1~3よりもはるかに良好なOTR値を示すことが分かる。さらに、PVA含有量がPU含有量の減少と比較して増加すると、試料4及び5に示すように、OTR値は明らかに増加する傾向がある。しかしながら、PVA含有量の増加が多すぎると、試料5及び6に示すように、そのコーティングしたフィルム基材上のバリア接着剤又はコーティングの初期粘着性及び接着強度の低下をもたらす。さらに、半水系バリア接着剤の接着剤組成物及びバリアフィルム性能を試料7に示し、これは、元の水系バリア接着剤と比較してバリア特性を維持しながら、バリアフィルム上の積層又はコーティングプロセス中の接着剤溶液及び残留キャリア溶媒の乾燥性能を改善するように設計されている。
【0070】
【0071】
【0072】
表2は、ラミネートフィルム試料5b、5c及び5dが優れたOTR及びWVTR値を提供することを示す。さらに、これらの構造は、リサイクル性を提供し、材料を包装、特に食品包装に適したものにする、90%を超えるポリオレフィンを含む。
【0073】
前述の説明及び従属請求項に開示されている特徴は、別個に及びそれらの任意の組み合わせの両方で、独立請求項でなされた開示の態様をその多様な形態で実現するための材料となり得る。
【国際調査報告】