IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネダーランゼ・オルガニサティ・フォーア・トゥーゲパスト−ナトゥールヴェテンシャッペリーク・オンデルゾエク・ティーエヌオーの特許一覧

特表2022-547467導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタ
(51)【国際特許分類】
   F03H 1/00 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
F03H1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514256
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 NL2020050548
(87)【国際公開番号】W WO2021045623
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】19196003.8
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】508351406
【氏名又は名称】ネダーランゼ・オルガニサティ・フォーア・トゥーゲパスト-ナトゥールヴェテンシャッペリーク・オンデルゾエク・ティーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,アルフォンス アーンスト ヘンドリック ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィエリング,ウォルター ピーター ヴィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムセン,ロベルトゥス ヨハネス ゲラルドゥス
(57)【要約】
本発明の一態様では、絶縁基板を備えるプラズマスラスタデバイスが提供される。この基板は、ブリッジ構造に導電性液体を供給するための1つ以上の供給チャネルを含み、更に電気端子が設けられている。ブリッジ構造は、導電性液体が与えられた場合に電気伝導ブリッジを形成するように構成されている。ブリッジ構造は、電気端子と電気的に接触している接触エリアを形成するように構成され、これによって接触エリアを接続する。ブリッジ構造は、電気端子を介して接触エリアを接続する電流ピークフロー回路によって導電性液体が電離した場合に導電性液体のプラズマを形成するため配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ構造に導電性液体を供給するための1つ以上の供給チャネルを含むとともに電気端子が設けられた絶縁基板を備え、
前記ブリッジ構造は、前記導電性液体が与えられた場合に電気伝導ブリッジを形成するように構成され、
前記ブリッジ構造は、前記電気端子と電気的に接触している接触エリアを形成するように構成され、前記ブリッジ構造はこれによって前記接触エリアを接続し、
前記ブリッジ構造は、前記電気端子を介して前記接触エリアを接続する電流ピークフロー回路によって前記導電性液体が電離した場合に前記導電性液体のプラズマを形成するため配置されている、
プラズマスラスタデバイス。
【請求項2】
前記ブリッジ構造及び接触エリアは、前記基板に沿って延出し、そのため実質的に前記基板から離れる方向にプラズマジェットが形成される、請求項1に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項3】
前記電気端子に結合された電流ピークフロー回路を更に備え、
前記電流ピークフロー回路は、前記ブリッジ構造を電離するため前記電気端子に電流ピークフローを与えるための回路を含む、請求項1又は2に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項4】
前記電流ピークフロー回路は、1段回路である、請求項1から3の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項5】
前記1つ以上の供給チャネルは、前記ブリッジ構造を再生させるため、前記電流ピークフローを提供する前に、導電性液体を前記くぼみに繰り返し注入するために配置されている、請求項1から4の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項6】
前記1つ以上の供給チャネルは、毛細管によって提供され、
前記導電性液体は、前記供給チャネルを介して毛細管作用によって供給される、請求項1から5の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項7】
前記導電性液体は、前記供給チャネルを介して電磁ポンプによって供給される、請求項1から6の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項8】
前記導電性液体は、-50℃から+100℃の温度範囲内で液体状態を有する液体金属である、請求項1から7の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項9】
前記液体金属は、ガリウム、水源、セシウム、ルビジウム、ガリンスタンの群のうちいずれかを含む、請求項1から8の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項10】
前記導電性液体を収容するため配置された供給容器を更に備え、
前記供給容器は、前記1つ以上の供給チャネルに結合され、
前記供給容器は、前記供給容器に対して前記導電性液体を注入及び排出するための液体注入及び排出機構を含む、請求項1から9の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項11】
前記導電性液体を液化するため前記くぼみ及び供給チャネルを加熱するヒータを更に備える、請求項1から10の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項12】
前記くぼみは、100ミクロン未満の伝導性液体層厚を提供する、請求項1から11の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項13】
前記ブリッジ構造は、前記接触エリアから、前記接触エリア間の最短接続経路に沿った電流の方向を規定するブリッジゾーンへ延出しているテーパ状くぼみ部によって形成され、
前記ブリッジゾーンは、前記最短接続経路に対して直角な伸長部を有する、請求項1から12の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項14】
前記ブリッジゾーンは、丸みを帯びたエッジを介して前記テーパ状くぼみ部に接続されている、請求項10に記載のプラズマスラスタデバイス。
【請求項15】
前記電気端子は、金属相互接続パッドを用いて提供される、請求項1から14の何れか一項に記載のプラズマスラスタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマスラスタデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
古典的なパルスプラズマスラスタは、例えば衛星で用いられ推進技術として知られている。パルスプラズマスラスタ(PPT:pulse plasma thruster)の推力対パワー比は限られているが、その簡潔さ、信頼性、また、多くの場合は固体(例えばPTFE)推進剤を使用することにより、小型の衛星のスラスタとして魅力的なものとなっている。これらのパルスプラズマスラスタは高周波数で動作できるので、スラスタのほぼ連続的な動作を得ることができる。このような既知のシステムは、典型的に2つの主要電気回路を有する。第1の主要電気回路は点火回路であり、例えば、電力を貯蔵するための容量性回路と、この電力を解放し電気アークを発生させるためのスイッチング回路と、を有し得る。この電気アークは、推進剤のごく一部のアブレーションと電離を引き起こして低エネルギプラズマに変える。第2の主要電気回路は、形成された低エネルギプラズマを介して放電を発生させ、これによって、磁場とプラズマを介した放電電流との相互作用によるローレンツ力を生成する。このローレンツ力はスラスタからプラズマを加速させる。PPTの1つの利点は、設計及び動作における簡潔さである。これは、PPTが極めてロバストであり、実質的に極めて小型に作製できること(これは最新の小型宇宙船にとって有利である)を意味する。1つの欠点は、古典的なPPTのスラスタ効率が非常に低く、このため推力対パワー比が比較的低いことである。更に、加速装置段のアノードプレートとカソードプレート、及び点火装置放電段の点火装置(例えばスパークプラグ)のアノードとカソードが腐食することである。
【0003】
先進パルスプラズマスラスタの概念の背景は、T. E. Markusic、Y. C. F. Thio、及びJ. T Cassibryによる「Design of a High-Energy, Two-Stage Pulsed Plasma Thruster」(38th AIAA Joint Propulsion Conference(インディアナ州インディアナポリス、2002年7月7~10日)で提出された)に記載されている。この提案された構造では、加速チャネルの一端に配置された電極間で液化リチウムがポンピングされ、リチウム液滴が大きくなって電極間の距離に完全にブリッジを形成するまでになることで、電気回路を閉じ、このため高パワーコンデンサの放電が生じ、これによってリチウム液滴を電離する。こうして得られたプラズマは加速され、加速チャネルから噴出される。リチウムは密度が低く(0.53g/cm3)、454Kの融点よりも高温に加熱することで液化される。液滴の大きさのため、発生したプラズマは低速であり、低い推進出力を有する。第2の電気加速段を用いて、電気回路によってプラズマに加速段のためのほとんどのエネルギを付与し、推力を発生させるためプラズマ速度を増大させる。このマルチステージプロセスは典型的に、反復され得る全サイクルを行うために数マイクロ秒継続する。また、この既知のスラスタでは、推進剤を電離するための電極が連続使用後に腐食するので、寿命が限られており、この既知のプラズマスラスタの構造、材料、及び幾何学的形状は、実際の使用において極めて制約されている。従って、小型で信頼性の高いスラスタデバイスの開発が望まれているが、小型化が可能となる前にシステムを改良することが必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様において、請求項1に列挙された特徴が提供される。具体的に述べると、プラズマスラスタデバイスは、ブリッジ構造に導電性液体を供給するための1つ以上の供給チャネルを含むとともに電気端子が設けられた絶縁基板を備え、
ブリッジ構造は、導電性液体が与えられた場合に電気伝導ブリッジを形成するように構成され、
ブリッジ構造は、電気端子と電気的に接触している接触エリアを形成するように構成され、ブリッジ構造はこれによって接触エリアを接続し、ブリッジ構造は、電気端子を介して接触エリアを接続する電流ピークフロー回路によって導電性液体が電離した場合に導電性液体のプラズマを形成するため配置されている。電離のソース材料として液体を用いることにより、電流パルス後に伝導経路を再生することが可能となる。プラズマに変化する部分に対する電気接続は、液体が供給されるラインを介して実行できる。プラズマと直接接触する電気接点は液体であり、これらは各放電の後に補充されるので、これにより電極の腐食が回避される。この特徴は、再生可能な電極及びこれらの電極間のブリッジを提供し、これに対して数kVの高い電圧を印加することができる。この電圧印加によって、数kAの鋭いピークの大きい電流がブリッジ構造を流れ、ブリッジ構造は迅速に加熱、溶融し、プラズマに変化する。プラズマは、専用の加速装置段を必要とすることなく数km/sで膨張する。この1段の導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタは、優れた推力対パワー比を有し、推進剤の電離に起因する摩耗又は故障を防止するよう再生的に使用することができる。これは高い体積密度を有し得るので、小型化し、例えばナノサットで使用することができ、いくつかの実施形態では、ローレンツ力加速装置を必要とすることなく高速(数km/s)のプラズマを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
これより、添付の概略図を参照して、一例としてのみ本発明の実施形態を記載する。図において、対応する参照符号は対応する部分を示す。
【0006】
図1】(A+B)導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタデバイスの一実施形態を示す。
図2】(A+B)本発明の一実施形態の平面図を示す。
図3】(A+B)電流ピークフロー回路の概略的なグラフを示す。
図4】(A,B,C)スラスタデバイスを再生的に動作させるための概略的なプロセススキームを示す。
図5】導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタがサブシステムである完全な推進システムのシステム分解図を示す。
図6】推進システムの電力に対して推力を表す図を示す。
図7】(A+B)電気伝導ブリッジの一実施形態を示す。
図8】(A+B)電気伝導ブリッジの代替的な構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、記載及び図面の文脈で読まれる場合、本開示が属する技術分野における通常の技術を有する人によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義されるもののような用語は、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書でそのように明示的に定義されない限り、理想的な意味又は過度に形式的な意味には解釈されないことも理解されよう。場合によっては、本システム及び方法の記載を不明瞭にしないため、周知のデバイス及び方法の詳細な記載は省略され得る。特定の実施形態を記載するために用いられる専門用語は、本発明を限定するものとは意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、文脈上明らかに他の意味を示す場合を除いて、複数形も含むことが意図される。「及び/又は」という用語は、関連した列挙項目のうち1つ以上のいずれか又は全ての組み合わせを含む。更に、「備える(comprise)」及び/又は「備えている(comprising)」という用語は、言及した特徴の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴の存在又は追加を除外するものではないことは理解されよう。本明細書で言及されている全ての公報、特許出願、特許、及び他の引用文献は、それらの全体が援用により本願に含まれる。抵触する場合、定義を含めて本明細書が支配する(control)。
【0008】
「基板」は、セラミック基板又は他のいずれかの適切な非伝導性基板、例えばシリコン又はシリコン様基板(例えばパイレックス)とすることができる。この基板は、ブリッジに対向している衛星の一部であり得る。この基板は非伝導性であり、伝導性液体と反応せず、硬質で、固く、耐腐食性である。「電流ピークフロー回路」は、プラズマスラスタデバイスを活性化すること、すなわちブリッジ回路の電離すなわちプラズマ化(plasmafication)に適した従来の回路とすることができる。図1及び図3に例が示されている。
【0009】
本発明は、いくつかの実施形態において、ナノサット(nano satellite)、特にキューブサット(CubeSat)の分野に関する。衛星は典型的に、地球を周回しながら進路を維持又は変更するためプラズマスラスタを有する。宇宙推進システムは、作業質量(working mass)(推進剤)を高速に加速することによって推力を生成すると共に宇宙船の速度を変化させる原理に基づいて動作する。衛星の操縦性は通常、推進システムによって与えられる衛星の速度上昇(又はΔV)で表される。各タイプの操作には、ある特定のΔVが必要である。衛星が一連の特定の操作を実行しなければならない場合、その推進システムは、個々の操作のΔVの和である特定の合計ΔVを生成できなければならない。推進システムが提供できる合計ΔVは、搭載されている推進剤の量と、この推進剤を用いて推力を発生させる効率と、に依存する。「推進剤の効率」は通常、「比推力(specific impulse)」(Isp)で表される。これは、推進システムが、推進剤重量単位(重量比推力(gravimetric specific impulse))又は推進剤体積単位(体積比推力(volumetric specific impulse))で提供することができるトータルインパルスである。キューブサットの小さいサイズのため、利用できる推進剤貯蔵体積は限られており、従ってスラスタのトータルインパルス(又は合計ΔV性能)も限られている。本発明は、パルスプラズマスラスタの推進剤の直接プラズマ化を行い、別個の点火装置と加速装置の必要性をなくし、これによって高密度の導電性液体を推進剤として使用可能とすることに関連する。直接プラズマ化、導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタは、ナノサットにスラスタ効率向上を提供できると同時に、あまり大きい衛星の体積を占有しない。
【0010】
図1は、パルスプラズマスラスタデバイス10が電流ピークフロー回路30(C)を有する一実施形態の概略上面図(A)及び側面図(B)を示す。パルスプラズマスラスタデバイス10のブリッジ13は、ブリッジ回路12を介して短絡した場合、プラズマを形成するため電流ピークフロー回路30によって電離される。電流ピークフロー回路30はブリッジ13内へ電流を放出してこれを電離し、これにより、電熱加速によって基板11から離れる方へプラズマジェットが推進される。電流ピークフロー回路は、好ましくは1段回路である。1段回路は、例えばプラズマ化段と加速段とを識別する従来のパルスプラズマスラスタのタイプのように物理的多段プロセスを区別しない。これに対して、1段プラズマ化プロセスでは、電流ピークフローが電気端子に与えられ、これが即座にブリッジ構造を電離する。電流パルスは極めて短く、ブリッジに集中するので、推進剤の効率は極めて高く、従って推力発生のための第2段は必要なくなる。これによって複雑さが低減し、第2段の電極の腐食に伴う問題が取り除かれる。パルスの強度によって、ブリッジ材料の大部分が実質的にプラズマに変化することが保証され、エネルギ効率は上昇する。電流パルスは極めて短く、典型的に50ナノ秒未満のオーダー、より好ましくは10ナノ秒未満のオーダーであり、エネルギのごく一部のみが熱として失われる。例えば電流ピークフロー回路30は、高電圧に充電されるコンデンサと、スイッチと、スラスタデバイス10への伝送線と、を備えている。スラスタデバイス10への伝送線を介してコンデンサが放電された場合、最大で3km/sの速度で基板から離れる方へプラズマが推進される。ブリッジ13で高速プラズマが形成されるブリッジ材料12、すなわち導電性液体は、比較的低い電気抵抗を有し、電流ピークフロー回路30の全体的な動特性は、コンデンサのエネルギのほとんどがスラスタデバイスのブリッジ13に提供されるように最適化される。限定ではないが例として、いくつかの適用例では、約2Ωの抵抗がブリッジ抵抗の最大値であると考えられる。ブリッジ構造は約200×300×5マイクロメートルの小さいサイズとすることができるが、用途と使用される推進剤によっては他の寸法が適している。ブリッジにおける導電性液体の密度と体積の値を用いて、各パルスサイクル中にプラズマに変化する推進剤の質量を計算することができる。プラズマを形成するためには、まず、材料を沸点まで加熱し、蒸発させて、プラズマに変化させなければならない。比熱や蒸発のエンタルピ等の適切な値を用いて、ブリッジを蒸発させるため必要なエネルギ量を計算することができる。この蒸気を更に加熱して高温プラズマに変化させるため、追加のエネルギが必要となる。ブリッジ13の抵抗は、形状、厚さ、長さと幅の比に大きく依存するが、例えば0.1~5オームのオーダーのように、ある程度低くなければならない。
【0011】
図1bは、電気絶縁回路基板11上に提供されたブリッジ13を示す。基板11には、くぼみ境界120によって形成されて電気端子122が提供された浅いくぼみ(basin)が設けられている。例えば、くぼみは100ミクロン未満の伝導性液体層厚を提供する。くぼみ120に導電性液体12を供給するため、1つ以上の供給チャネル123が設けられている。好ましくは、ブリッジ構造に対する接続が中央のブリッジ構造から離れる方向において急激に広くなる及び/又は厚くなることで、電流密度と抵抗が充分に速く低下するので、これらの経路は加熱されずプラズマに変化しない。これを達成するため、ブリッジ13を形成しているくぼみ120は、この例ではバタフライ形である適切な形状に導電性液体12を整形し、基板11内に又は基板11上に提供された電気端子122に電気的に接続する。このように、くぼみ120は、導電性液体12が供給された場合、絶縁基板11上に提供された低抵抗電気伝導ブリッジ構造13を形成するように構成されている。
【0012】
ブリッジ構造13は、アノードとカソードとの間の電気接続(ブリッジ)を提供し、ブリッジ構造13が電流ピークフロー回路によって電離した場合にプラズマを形成するため配置されている。電流ピークフロー回路は、例えば図1の電流ピークフロー回路30、又は、限定ではないが例えば図3に示されている代替的な回路によって提供される。好適な例において、電気端子122は、くぼみ120の接触エリア132で導電性液体12の下にある金属相互接続パッドによって提供される。電流ピークフロー回路に対する他の適切な接続も実現可能である。くぼみ120は一定の深さで図示されているが、接触エリア/側部はブリッジゾーン13に対して異なる深さを有してもよい。好ましくは、ブリッジ構造及び接触エリアは基板に沿って延出し、実質的に基板から離れる方向へプラズマジェットを形成することができる。例えば、くぼみは、ブリッジに100ミクロン未満の伝導性液体層厚を提供する。くぼみは、好ましくは層厚が10マイクロメートル未満である最適なブリッジ構造を形成するため、例えば液体の濡れ挙動を改善する局所的な粗化又は材料のような濡れ構造を設けることができる。概略的に、導電性液体を収容している容器130とくぼみ120に接続している供給部123との間に接続供給部が図示されている。電気的に相互に分離されているくぼみ120のアノード側とカソード側は、推進剤容器を有する。容器、供給チャネル、及び/又はくぼみは、例えば液体金属のような導電性液体を液化するためのヒータを含み得る。供給容器は、導電性液体を収容するために配置され、1つ以上の供給チャネルに結合されている。これは、供給容器に対して導電性液体を注入及び排出するための液体注入及び排出機構を含み得る。
【0013】
図2では、テーパ状ゾーンIIが接触エリアIからブリッジゾーンIIIへ延出することによってバタフライブリッジ構造が形成されている。ブリッジゾーンIIIは、接触エリアI間の最短接続経路iに沿った電流の方向を規定する。ブリッジゾーンIIIは好ましくは、最短接続経路iに対して直角な伸長部(elongation)を有する。すなわち、ブリッジゾーンIIIの少なくとも一部は好ましくは、対向する平行な側部間に画定された幅wを有し、これは、平行な側部の長さで画定された長さlよりも大きい。別の好適な実施形態において、ブリッジゾーンは、ブリッジゾーンIIIとテーパ状ゾーンIIとの間の中間ゾーンIIIaにおける丸みを帯びたエッジを介してテーパ状ゾーンIIに接続されて、電流を最適化すると共に、特にブリッジゾーンIIIにおけるブリッジ構造13のプラズマ形成を最適化する。
【0014】
図3は、電流ピークフロー回路30におけるプラズマスラスタデバイス10の例示的な電気的設定を示す。L及びRは性質上実質的に寄生である、すなわちできる限り小さく、スイッチSを閉じた後、エネルギはブリッジ構造13において無負荷となる(unload)。スラスタデバイスの全体的な機能にとって、ブリッジの抵抗は重要である。これは、スイッチを閉じた後のブリッジに対するコンデンサの動的な放電の一部であるためである。スラスタデバイスシステムの電気回路は、コンデンサC、スイッチS、及び伝送線から構成され、これらは全て超小型回路によって提供され得る。回路は、寄生誘導L及び抵抗/インピーダンスRを有する。電流ピークフロー回路は、ブリッジ構造13の電気端子122に結合されている。電流ピークフロー回路は、ブリッジ回路13を電離するため電気端子に電流ピークフローを与えるための回路を備えている。
【0015】
このようなシステムの電流は以下のように記述することができる。
【0016】
【数1】
【0017】
Oはコンデンサにおける電圧、
ω=円振動数√(1/LC)、
L=回路の誘導、
τ=回路の時定数(2L/R)である。
【0018】
このような放電の一例は、C=250nF、R=200mΩ、L=20nHの2kVの放電を示す図3Bで見られる。
【0019】
図4は、スラスタデバイスを再生的に動作させるための概略的なプロセススキームを示す。図4aから開始すると、プラズマスラスタデバイス10が放電前の上面図と側面図で示されている。デバイスは、電気絶縁(セラミック又は他の電気的に非伝導性の材料)基板によって提供され、浅いバタフライ形状の貯蔵部(reservoir)を備えている。貯蔵部は、伝導性液体の導体が注入され、中央に伝導性「ブリッジ」を形成している。伝導性液体は、例えば底部の小さい毛細管のような供給チャネルを介して貯蔵部に供給することができる。あるいは、同時に導電性液体を加熱できる(電磁)ポンプデバイスを用いてもよい。伝導性液体は、イオン液体、溶融塩、液体金属、又は、液状で使用することができ、充分な電気伝導率を有する他のいずれかの物質とすればよい。液体は、純粋な物質又は混合物であるか、又は懸濁固体粒子を含む流体としてもよい。理想的には、液体は蒸気圧が低いか又は負であるので、真空空間に露出した場合に単独で蒸発しない。また、ほぼ室温の融点が好適である。これは、宇宙船が一般にほぼ室温に維持され、液体をこの温度にすると、これを液体にして液体のまま保持するために必要なエネルギ量が小さいからである。最後に、宇宙での適用には高密度の液体が望ましい。これは、小型衛星における制約パラメータは通常、質量でなく体積であるからである。高密度の推進剤は高い体積比推力を可能とする。
【0020】
一般に、金属は充分な伝導性と高い密度を有するので、意図される宇宙での適用には液体金属が好適である。推進剤として使用可能である純金属の例には、ガリウム、インジウム、スズ、カドミウム、鉛、ビスマス、リチウム、ナトリウム、カリウム、及び水銀が含まれる。これら及び他の金属の合金も興味深い。これら全ての例は、密度、伝導性、反応性、毒性、蒸気圧、融点、分子量、比熱、表面張力、表面濡れ特性、他の材料との化学的適合性、及びその他の考えられる特性等といった固有の特性のため、用途に対する適合性は様々に異なる。ガリウム-インジウム共晶混合物及びガリウム-インジウム-スズ(「GalInStan」)等、ガリウム及びその低融点合金が適切である。各放電後のブリッジへの伝導性液体の供給は、いくつかの方法で実行することができる。これらには、1)回転ポンプもしくは容積型ポンプ等の「通常の」機械的ポンピングシステム、2)システムの推進剤タンクを何らかのガスで加圧することによる圧力供給ポンピング、3)電磁ポンピング、4)電磁石もしくは永久磁石の移動によって加えられる磁力(液体が充分な磁化率もしくは充分な強磁性を有する場合(例えば液体中の懸濁鉄粒子のため))、又は、5)毛細管作用(システムの表面に対する液体の固有の親和性、もしくは誘電体上エレクトロウェッティング(EWOD:electrowetting on a dielectric))が含まれる。
【0021】
一実施形態において、ブリッジ材料は液体ガリウムとすることができる。この材料は比較的無毒であり、融点が低く(30℃)、密度が高く(5900kgm-3)、良好な電気特性を有する。更に、ガリウムの蒸気圧は無視できる程度であるので、真空空間に露出した場合の蒸発が防止される。
【0022】
図4Bは、電流ピークフロー回路(図示せず)から電流ピークフローが放出された場合の、放電中のスラスタデバイス10を示す。電気エネルギの迅速な散逸によって、ブリッジ13の爆発的電離が発生する。膨張プラズマが放出され、これにより反対方向に小さい力(推力)を発生させる。
【0023】
図4Cは、図4Bの放電後の再生モードのブリッジを概略的に示す。最初に、左と右の伝導性液体貯蔵部間に、電気回路30(図1を参照のこと)を中断させる隙間15が存在する。ブリッジ構造12を再生させるため、電流ピークフローを提供する前に、導電性液体をくぼみに繰り返し注入するための1つ以上の供給チャネルが配置されている。次いで、貯蔵部から中央へ伝導性液体が流れ、これにより貯蔵部16間の隙間を閉じる。このプロセスの間、供給チャネルから貯蔵部に導電性液体が再供給される。このプロセスの終了時、ブリッジは完全に回復され、図4Aに戻って別の放電を行う準備ができている。
【0024】
図5は、先に詳述した原理に従ったプラズマ推進デバイスで使用され得るアーキテクチャの概略システム図を示す。推進システムは、以下のようなサブシステムを更に含み得る。
【0025】
・推力発生システム(TGS:Thrust Generation System)
このサブシステムは、ブリッジ構造を再生する原理を用いて、小さい推力を発生させるように配置された、上記で開示されたプラズマスラスタデバイスを含む。このデバイスは、1以上の再生ブリッジ構造(例えばアレイ状)と、1又は複数のスイッチ及び1又は複数のコンデンサを含む電気回路(スイッチコンデンサアレイすなわちSCA)と、を含み得る。更に、液体金属推進剤を液相に保つためヒータが必要であり得る。
【0026】
・推進剤供給システム(PFS:Propellant Feed System)
このサブシステムは、例えば図1に示されているように伝導性液体推進剤を貯蔵して、これを融点より高い温度に保ち(ガリウムでは30℃、ガリンスタンでは10℃)、TGSに供給する。PFSは、推進剤貯蔵タンク(PST)、伝導性液体推進剤(PROP)、推進剤注入及び排出アセンブリ(FDA)、断熱システム(TIS)、毛細管供給アセンブリ(CFA)、更に、任意選択的にタンクヒータ(TH)を含み得る。
【0027】
・電力制御システム(PCS:Power Control System)
このサブシステムは、様々なサブシステム及びサブセンブリに対して電力を分配するため、並びに、電流ピークフロー回路のコンデンサを充電する高電圧を発生するためのパワーエレクトロニクスを含む。PCSは、高電圧電力供給(HVPS)、低電圧電力制御システム(LVPC)、及びデジタル制御ユニット(DCU)で構成され得る。
【0028】
本明細書で開示されているような導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタは、絶縁固体推進剤でなく、伝導性液体推進剤(液体ガリウム等)を使用する。
【0029】
推進剤はすでに伝導性であるので、導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタデバイスは点火装置を必要としない。従って、導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタデバイスは、(「点火」放電と「主」放電でなく)パルスごとに1回の放電を発生させる。
【0030】
導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタデバイスは、スイッチを用いて電気回路を閉じると共に放電をトリガする。
【0031】
導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタデバイスにおける放電は、従来のパルスプラズマスラスタデバイスよりも一桁短い(すなわち、~10μsでなく、~0.5μs)ので、放電電流が大きくなり、推進剤とのエネルギ結合を改善することができる。
【0032】
導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタデバイスは、放電を発生させる物理的電極を持たない。推進剤くぼみが電極として機能し、放電後に再生する。従って、導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタデバイスは、電極腐食の影響を受けない。
【0033】
重量比推力は推進システムの排気速度に直接関連する。
【0034】
【数2】
【0035】
この式において、Isp_gravは重量比推力[s]であり、Ueffは実効排気速度[ms-1]であり、g0は海面位の重力加速度[ms-2]である。この式は、大きい重量比推力(高い質量効率)を得るためには、推進システムは推進剤を高速に加速できなければならないことを示している。電気又は熱電プラズマ推進システムにおいて、電力消費、比推力、及び推力レベル間の関係は、以下の式によって与えられる。
【0036】
【数3】
【0037】
この式において、Pは電力消費[W]であり、Ispは重量比推力[s]であり、g0は海面位の重力加速度[ms-2]であり、ηtは推力効率[-]であり、これは排気プルームの運動ジェットパワー(kinetic jet power)と推進システムに対する電気入力パワーとの比である。推力効率は、推進システムにおける様々なエネルギ変換ステップの損失を考慮に入れたいくつかのサブ効率(sub-efficiency)の積である。実験データに基づいて、推力効率の控えめな推定値である少なくともηt=0.25の値を仮定することができる。ナノサットでは、推進システムの占有体積ができる限り小さいことが重要であるので、最大体積比推力に対してナノサット推進システムを最適化すればよい。最大体積比推力は単に重量比推力と推進剤密度との積である。
【0038】
【数4】
【0039】
この式において、Ivolは体積比推力[kgsm-3]であり、ρpは推進剤の密度[kgm-3]である。従って、大きい体積比推力を得るため、推進システムは、大きい重量比推力で動作する及び/又は高密度の推進剤を使用することが好ましい。開示されているプラズマスラスタは、推進剤として、例えばガリウム又はガリンスタン等の液体金属のような導電性液体を使用する。これは、推進剤として固体PTFEを用いる従来のプラズマスラスタで用いられる固体推進剤の2.7倍の密度を有する(すなわち、2200kgm-3に対して5900kgm-3)。推進システムの重量比推力は、式1によって計算することができ、4000m/sのプラズマ速度で408sに等しい可能性がある。これは控えめな推定値であるので、これより著しく大きい場合もある。推進システムの体積比推力は、式2によって計算することができ、重量比推力と推進剤密度との積である。重量比推力が408sであり、推進剤密度が5907kgm-3である(1気圧及び298.15Kにおけるガリウムの密度)場合、体積比推力は約2.4×10^6kgsm-3以上となり得る。これは、導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタが、従来のプラズマスラスタに比べ、同じ体積比推力及び著しく高い推力対パワー比を持ちながら、2.7分の1の重量比推力で動作できることを意味する。推力対パワー比は重量比推力に反比例するので、結果として、2.7倍の推力対パワー比が得られる。導電性液体推進剤パルスプラズマスラスタの概念は、従来のプラズマスラスタに比べ、同じ体積比推力で著しく高い推力対パワー比を達成するか、又は同じ推力対パワー比で著しく高い体積比推力を達成する可能性を有する。図6は、推進システムの電力に対して推力(単位はmN)を表す図を示す。推進システムに利用できる電力の量は、衛星の大きさ(すなわちそのソーラーパネルの面積)に大きく依存する。ナノサットでは、推進に利用できる電力は10Wから15Wまでの間であり得る。10Wの電力予算を仮定すると、推進システムは約0.75mNの推力を生成することができる。推進システムによって供給できる合計ΔVは、搭載されている推進剤の量と推進システムの比推力とに依存する。この関係はツィオルコフスキーのロケット方程式によって与えられる。
【0040】
【数5】
【0041】
この式において、m0は推進剤を含む初期衛星質量[kg]であり、mpは推進剤質量[kg]である。合計推進剤質量(mp)は、推進システムに割り当てられている体積と、推進システムの体積負荷率(すなわち、推進システム体積のうち推進剤で占有される割合)とに依存する。以下の質量及び体積分布を有する仮想ナノサットについて検討する。
【0042】
推進剤なしの衛星質量:5kg。合計衛星体積(推進システム(PS)を含む):6L。PSに割り当てられた体積:1L。推進システムの推進剤負荷率が75%である場合、合計推進剤質量は4.4kgであり、初期衛星質量(推進剤を含む)は9.4kgである。これらの値を式4に代入すると、合計ΔVは2300ms-1となる。
【0043】
別の実施形態
図7aは電気絶縁基板110の一実施形態を示す。この基板は、導電性液体が与えられた場合に電気伝導ブリッジを形成するよう構成されたブリッジ構造120に導電性液体を供給するための1つ以上の供給チャネル123.1及び123.2を含む。この例において、供給チャネルは、供給容器(図示せず)に接続する対向したオリフィスによって形成されている。図7bでは、更に、液体が供給されるブリッジ基板110の小さいオリフィス130の形態で追加の供給チャネルを提供できることが示されている。これは、ブリッジの幾何学的形状を適所に固定する利点を有し得る。これらのオリフィスは、毛細管作用を有するか、又は電気機械ポンプ(図示せず)のような能動的供給機構によって供給を受けることができる。
【0044】
図8a及び図8bは電気絶縁基板110の代替的な構造を示す。この基板は、導電性液体が与えられた場合に電気伝導ブリッジを形成するよう構成されたブリッジ構造120に導電性液体を供給するための1つ以上の供給チャネル123.1及び123.2を含む。
【0045】
図8aにおいて、ブリッジ120は、環状オリフィス123.1と中央オリフィスとの間に形成された浅いメニスカスである。これらのオリフィスは双方とも、前述したタイプの供給機構によって供給を受けることができる。図8aの基板110は、ブリッジ構造120によって発生したプラズマを中央オリフィス123.1の軸方向に基板から離れる方へ誘導するため、基板110から例えば管状に延出している拡張部(extension)115を有し得る。
【0046】
図8bは別のブリッジ構造を示す。液体供給機構により供給を受ける対向配置されたオリフィス123.1、123.2の凝集力(cohesive force)によって、液体ブリッジが形成される。ブリッジ120は自立型としてもよい。すなわち、ブリッジ120は基板110と接触している必要はない。
【0047】
1.本発明の動作原理によって高密度推進剤を使用することが可能となるので、高い体積ISPが得られる。従来のパルスプラズマスラスタは同様の重量ISPを有し得るが、本デバイスは、高密度推進剤を可能とすることによって体積ISPを改善できる。体積ISPは、重量ISPと推進剤密度との積である。これにより、例えば、体積が制限要因であるナノサットにおいて、小さい体積でデバイスを形成できる利点が得られる。
【0048】
2.従来のスラスタにおけるような電離前段と第2の加速ステップを用いない1段直接プラズマ化により、従来のパルスプラズマスラスタに比べて相当に短い時間スケールでスラスタパルスを提供する。従って、これらの短い時間スケールでの高いスラスタ効率のため、高い推力対パワー比を達成することができる。このため、より効率的なエネルギ変換という利点が得られるが、第2の加速段が存在しないので重量ISPが制限される。従って本発明のスラスタは、高質量推進剤を用いる一方で、比推力を提供するエネルギ効率が向上する。
【0049】
3.ブリッジ構造によって形成される液体ブリッジは、同時に電極の劣化を抑制する。電極は、ブリッジ構造に導電性液体を連続的に供給することによって再生できる液体金属で形成されている。
【0050】
システム及び方法のため例示的な実施形態を示したが、同様の機能及び結果を達成するため、本開示の利益を有する当業者によって代替的なやり方も予想され得る。例えば、いくつかのコンポーネントを1つ以上の代替的なコンポーネントに結合すること又は分割することが可能である。
【0051】
例えば、上記の検討は本システムの単なる例示であることが意図されており、いずれかの特定の実施形態又は実施形態のグループに添付の特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。従って、本システムについて特定の例示的な実施形態を参照して詳細に説明したが、以下の特許請求の範囲に記載されている本システム及び方法の範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の変更及び代替的な実施形態が考案され得ることも認めなければならない。従って、本明細書及び図面は例示として見なされるものとし、添付の特許請求の範囲を限定することは意図されない。
【0052】
添付の特許請求の範囲を解釈する際、「備える(comprising)」という語は、所与のクレームに列挙されたもの以外の要素又は行為の存在を排除しないことを理解するべきである。ある要素の前にある「1つの(a)」「1つの(an)」という語は、複数のそのような要素の存在を排除しない。クレームにおける参照符号は、それらの範囲を限定しない。いくつかの「手段(means)」は、同一のもしくは異なる1もしくは複数の物品(item)、又は実装された構造もしくは機能によって表すことができる。特に明記しない限り、開示されているデバイス又はその部分の任意のものは、共に結合するか又は別の部分に分離させることができる。相互に異なるクレームで特定の尺度が述べられているという事実だけで、これらの尺度の組み合わせを有利に使用できないことは示されない。
図1
図2
図3A
図3B
図4A-4C】
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
【国際調査報告】