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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】感圧接着剤物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221107BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514278
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 US2020050842
(87)【国際公開番号】W WO2021055336
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/900,710
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】プジャリ、サスワティ
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー、ジョセフ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】パチョルスキ、ミハエリーン エル.
(72)【発明者】
【氏名】キーリー、デイヴィッド アール.
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DB02
4J004FA08
4J040DF012
4J040DF031
4J040JA03
4J040JA14
4J040JB09
4J040LA01
4J040LA02
4J040PA23
(57)【要約】
(a)基材(Sa)と、(b)基材(Sa)と接触して、20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLb)を含む感圧組成物(Cb)の層(Lb)と、(c)層(Lb)と接触して、(i)20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLc1)、および(ii)-10℃以上のTgを有する1つ以上のアクリル粘着付与剤ポリマーを含む層(Lc)と、を含む、感圧接着剤物品が提供される。感圧接着剤物品を製造する方法、および感圧接着剤物品を使用することによって製造された結合物品もまた提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着剤物品であって、
(a)基材(Sa)と、
(b)前記基材(Sa)と接触して、20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLb)を含む感圧組成物(Cb)の層(Lb)と、
(c)前記層(Lb)と接触して、層(Lc)であって、前記層(Lc)の重量に基づく重量で、
(i)60%~99.5%の20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLc1)、ならびに
(ii)0.5%~40%の1つ以上のアクリルポリマー(POLc2)であって、2,000以上の数平均分子量を有し、35,000以下の数平均分子量を有し、-10℃以上のTgを有し、(POLc2)の重量に基づく重量で、
(A)50%~99.9%の(メタ)アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステル(ここで、アルキル基は、1~20個の炭素原子を有する)、
(B)0%~50%のアクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの混合物、
(C)および0%~50%の1つ以上の追加のビニルモノマーの重合単位を含む、アクリルポリマー(POLc2)を含む層(Lc)と、を含む、感圧接着剤物品。
【請求項2】
前記アクリルポリマー(POLc2)が、モノマーの総重量に基づく重量で1%~10%の量の連鎖移動剤の存在下で、1つ以上のモノマーの水性エマルジョン重合を含むプロセスによって製造された、請求項1に記載の感圧物品。
【請求項3】
前記アクリルポリマー(POLc2)が、前記アクリルポリマー(POLc2)の重量に基づく重量で、80%~99.9%の(メタ)アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルの重合単位、および0%~20%の(メタ)アクリル酸の重合単位を含む、請求項1に記載の感圧物品。
【請求項4】
請求項1に記載の感圧物品を製造する方法であって、前記方法が、
(A)第1の表面上に前記アクリルポリマー(POLb)の分散粒子を含有する水性組成物(Qb)の層を形成することと、
(B)第2の表面上に(i)前記アクリルポリマー(POLc1)および(ii)前記アクリルポリマー(POLc2)を含有する分散粒子を含有する水性組成物(Qc)の層を形成することと、
(C)前記水性組成物(Qb)の前記層を乾燥させて前記層(Lb)を形成することと、
(D)前記水性組成物(Qc)の前記層を乾燥させて前記層(Lc)を形成することと、を含む、方法。
【請求項5】
水性組成物(Qb)が、1つ以上のモノマーの水性エマルジョン重合を含むプロセスによって製造されて、前記アクリルポリマー(POLb)の分散粒子を生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基材(Sd)を請求項1に記載の物品と接触させるプロセスによって製造された結合物品であって、前記基材(Sd)が前記層(Lc)と接触する、結合物品。
【請求項7】
前記基材(Sd)が、ポリオレフィンである、請求項4に記載の結合物品

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アクリルポリマーを含有する感圧接着剤(PSA)は、多くの望ましい特徴を有する。例えば、それらは一般に、化学試薬およびUV光に対して多くの他の材料から製造されたPSAよりもより優れた耐性を有する。多くの場合、ポリオレフィンの標的基材によく結合するアクリル系PSAを提供することが望まれる。これまでには、標的基材へのPSAのタック接着力(「粘着性」または「タック」とも称される)を増加させるために、粘着付与剤化合物をPSAに添加することもあった。しかしながら、粘着付与剤を添加すると、通常、PSAのせん断抵抗の望ましくない低下をもたらす。
【0002】
US9,765,241は、基材、アクリルポリマーを含有する層、および1つ以上の高脂肪族ビニルモノマーの重合単位を含むアクリルポリマーを含有する層を含む感圧接着剤物品を記載している。
【0003】
アクリルポリマーを含有し、ポリオレフィンの標的基材に結合されたときに、良好なタック接着力および良好なせん断抵抗の両方を示すPSAを提供することが望まれる。加えて、最上層(すなわち、標的基材に隣接する層)が比較的高レベルの粘着付与剤を含有し、他の層が比較的低レベルの粘着付与剤を含有する層を含むPSAを提供することが望まれる。現在では、そのような多層PSAにおいて、粘着付与剤が最上層から他の層内に移動する場合に、標的基材へのタック接着力が減少すると考えられている。したがって、最上層からの粘着付与剤の移動に抵抗する多層PSAを提供することもまた望まれる。
【0004】
以下は、本発明の記述である。
【0005】
本発明の第1の態様は、
(a)基材(Sa)と、
(b)基材(Sa)と接触して、20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLb)を含む感圧組成物(Cb)の層(Lb)と、
(c)層(Lb)と接触して、層(Lc)であって、層(Lc)の重量に基づく重量で、
(i)60%~99.5%の20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLc1)、ならびに
(ii)0.5%~40%の1つ以上のアクリルポリマー(POLc2)であって、2,000以上の数平均分子量を有し、35,000以下の数平均分子量を有し、-10℃以上のTgを有し、(POLc2)の重量に基づく重量で、
(A)50%~99.9%の(メタ)アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステル(ここで、アルキル基は、1~20個の炭素原子を有する)、
(B)0%~50%のアクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの混合物、
(C)および0%~50%の1つ以上の追加のビニルモノマーの重合単位を含む、アクリルポリマー(POLc2)を含む層(Lc)と、を含む、感圧接着剤物品である。
【0006】
本発明の第2の態様は、第1の態様の感圧物品を製造する方法であって、この方法は、
(A)第1の表面にアクリルポリマー(POLb)の分散粒子を含有する水性組成物(Qb)の層を形成することと、
(B)第2の表面に(i)アクリルポリマー(POLc1)および(ii)アクリルポリマー(POLc2)を含有する分散粒子を含有する水性組成物(Qc)の層を形成することと、
(C)水性組成物(Qb)の層を乾燥させて層(Lb)を形成することと、
(D)水性組成物(Qc)の層を乾燥させて層(Lc)を形成することと、を含む。
【0007】
本発明の第3の態様は、基材(Sd)を第1の態様の物品と接触させるプロセスによって製造された結合物品であって、基材(Sd)は層(Lc)と接触する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下は、図面の簡単な説明である。
【0009】
図1】本発明の感圧接着剤物品の垂直断面図であり、基材(Sa)(1)、1つ以上のアクリルポリマー(POLb)を含有する組成物(Cb)の層(Lb)(2)、ならびにポリマー(POLc1)およびポリマー(POLc2)を含有する組成物(Cc)の層(Lc)(3)を示している。図1は、いかなる意味においても縮尺通りには描かれていない。例えば、本発明の感圧接着剤物品の図1に示す水平方向のサイズは、図1に示す垂直方向のサイズよりも1000倍以上大きくてもよい。
図2】本発明の感圧接着剤物品を使用することができる好ましい用途を示している(同様に縮尺通りには描かれていない)。図2は、追加の基材(Sd)(4)と接触する層(Lc)(3)を示している。
【0010】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0011】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈が別途明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0012】
本明細書で使用される場合、動的機械分析(DMA)は、1秒-1の周波数で線形粘弾性範囲のせん断形状で行われる測定を指す。DMAは、弾性率(G’)、損失率(G’’)、およびタンデルタを測定する。弾性率は、キロパスカル(kPa)の単位にて本明細書で報告される。
【0013】
材料のガラス転移温度(Tg)は、試験方法ASTM D7426-08(American Society of Testing and Materials、Conshohocken,Pa.,USA)に従って、中点法および1分間当たり10℃の温度走査速度を使用して示差走査熱量測定によって決定される。
【0014】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」は、より小さい化学繰り返し単位の反応生成物で構成される比較的大きな分子である。ポリマーは、直鎖状、分岐状、星型、ループ状、超分岐状、架橋状、またはそれらの組み合わせである構造を有してもよく、ポリマーは、単一タイプの反復単位(「ホモポリマー」)を有してもよく、またはそれらは2タイプ以上の繰り返し単位(「コポリマー」)を有してもよい。コポリマーは、ランダムに、順番に、ブロックで、他の配置で、またはそれらの任意の混合物もしくは組み合わせで配置された様々なタイプの繰り返し単位を有してもよい。ポリマーのサイズは、数平均分子量であるMn、または重量平均分子量であるMwによって特徴付けられ、それらは両方とも、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「ポリマーの重量」は、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0016】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書で「モノマー」として知られている。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書でモノマーの「重合単位」として知られている。
【0017】
ビニルモノマーは、次の構造を有する
【化1】
式中、R、R、R、およびRのそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基など)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、別の置換もしくは非置換有機基、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0018】
アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0019】
いくつかの好適なビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、他のアルケン、ジエン、エチレン誘導体、およびそれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体としては、例えば、以下の非置換または置換バージョンが挙げられる:置換または非置換アルカン酸のエテニルエステル(例えば、酢酸ビニルおよびネオデカン酸ビニルを含む)、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン、およびそれらの混合物。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、およびそれらの組み合わせなどの少なくとも1つの付着した化学基を有することを意味する。いくつかの実施形態では、置換されたモノマーとしては、例えば、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、他の官能基を有するモノマー、および官能基の組み合わせを有するモノマーが挙げられる。(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸の置換および非置換のエステルまたはアミドである。
【0020】
本明細書で使用される場合、アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル、脂肪族基に1つ以上の置換基を有する(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物から選択されるモノマーである。
【0021】
本明細書で使用される場合、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ-アルキルスチレン、他の置換スチレン、およびそれらの混合物から選択されるモノマーである。
【0022】
本明細書で使用される場合、「アクリル」ポリマーは、重合単位の50%以上がアクリルモノマーであり、また重合単位の70%以上がアクリルモノマーまたはビニル芳香族モノマーのいずれかであるポリマーである。パーセンテージは、ポリマーの重量に基づく重量によるものである。
【0023】
本明細書で使用される場合、連鎖移動剤は、フリーラジカルビニル重合中に作用して、ラジカルを成長中のポリマー鎖から非ラジカル分子に移動させる物質である。ラジカルを受け取る分子は、連鎖移動剤そのものであってもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、粘着付与剤は、500~50,000の分子量を有し、-10℃以上のガラス転移温度を有する有機化合物である。
【0025】
感圧接着剤(PSA)は、接着剤および基材を接触させるために圧力が加えられるとき、基材と結合を形成する接着剤である。結合は、さらなる材料を追加すること、または熱を加えることなく形成される。本明細書で使用される場合、感圧接着剤物品は、感圧接着剤が第1の基材に接着され、PSAの表面(「利用可能な表面」)が第2の基材と接触するために利用可能である物品である。PSAの利用可能な表面は、剥離材料と接触してもよいし、または接触しなくてもよい。剥離材料は、PSAと弱い結合を形成する材料であり、利用可能な表面が露出するように容易に取り外すことができる。
【0026】
組成物が、組成物の重量に基づく重量で25%以上の量の水を含有する場合に、組成物は、本明細書では「水性」であるとみなされる。
【0027】
粒子が液体媒質全体に分布している場合、粒子は本明細書では液体媒質中に分散されたといわれ、分散粒子は、エマルジョン、ラテックス、分散液、スラリー、または粒子が液体媒質中に分散されたいくつかの他の組成物を形成し得る。水が液体媒質の50重量%以上を形成する場合(分散粒子の重量を無視する)、液体媒質は本明細書では水性媒質であるとみなされる。
【0028】
本明細書において水性組成物を乾燥させると述べるとき、それは、組成物を、周囲条件下で乾燥させるか、あるいは熱の適用、移動ガス(加熱されてもされなくてもよい)への曝露、またはそれらの組み合わせによって乾燥させるかのいずれかであることを意味する。
【0029】
本明細書に提示される比率は、以下のように特徴付けられる。例えば、比率が3:1以上であるといわれる場合、その比率は、3:1、または5:1、または100:1であり得るが、2:1にはなり得ない。この特徴付けは、以下のように一般用語で記載され得る。本明細書において比率がX:1以上であるといわれる場合、その比率がY:1であることを意味し、式中、YはX以上である。別の例では、比率が15:1以下であるといわれる場合、その比率は、15:1、または10:1、または0.1:1であり得るが、20:1にはなり得ない。概括的に、本明細書において比率がW:1以下であるといわれる場合、その比率がZ:1であることを意味し、式中、ZはW以下である。
【0030】
本発明は、本明細書で基材(Sa)とラベルされる基材の使用を含む。基材(Sa)は、任意の材料であってもよい。好ましいのは、紙、ポリマーフィルム、および金属箔である。ポリマーフィルムの中でも、好ましいのはポリエステルフィルムである。ポリマーフィルムの中でも、好ましいのは、少なくとも1つの側面がコロナ放電によって処理されているものである。
【0031】
基材(Sa)と接触するのは、本明細書において組成物(Cb)と称される組成物の層である。組成物(Cb)は、本明細書においてポリマー(POLb)と称される1つ以上のポリマーを含有する。ポリマー(POLb)は、20℃以下、好ましくは10℃以下のTgを有する。好ましくは、ポリマー(POLb)は、-100℃以上のTgを有する。
【0032】
好ましくは、組成物(Cb)は、粘着付与剤をほとんどまたは全く有しない。すなわち、組成物(Cb)中の粘着付与剤の量は、組成物(Cb)の乾燥重量に基づく重量で、10%未満、より好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくはゼロである。
【0033】
好ましくは、ポリマー(POLb)はアクリルポリマーである。好ましくは、ポリマー(POLb)中のアクリルモノマーの重合単位の量は、ポリマー(POLb)の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。好ましくは、ポリマー(POLb)は、10,000以上、より好ましくは50,000以上のMwを有する。
【0034】
好ましくは、ポリマー(POLb)は、n-ブチルアクリレート(n-BA)、エチルアクリレート(EA)、イソオクチルアクリレート(i-OA)、またはそれらの混合物のうちの1つ以上の重合単位を含有する。本明細書で使用される場合、「イソオクチル」は、分岐状構成中に正確に8個の炭素原子を含有する非置換アルキル基である。「イソオクチル」という用語は、8個の炭素アルキル基のすべての分岐状異性体、およびそのような異性体のすべての混合物を含み、例えば、2-エチルヘキシル基、ジメチル-ヘキシル基、メチル-ヘプチル基、トリメチル-ペンチル、およびそれらの混合物を含む。好ましくは、ポリマー(POLb)中のn-BAの重合単位、EAの重合単位、およびi-OAの重合単位の量の合計は、ポリマー(POLb)の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上である。
【0035】
好ましくは、10,000以上のMwを有する組成物(Cb)中のすべてのポリマーは、アクリルポリマーである。
【0036】
好ましくは、組成物(Cb)中のポリマー(POLb)の量は、組成物(Cb)の乾燥重量に基づく重量で、80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0037】
好ましくは、組成物(Cb)は、PSAの特性を有する。好ましくは、組成物(Cb)は、10℃~40℃の範囲を含む温度範囲にわたって20kPa以上の弾性率(G’)を有する。好ましくは、組成物(Cb)は、10℃~40℃の範囲を含む温度範囲にわたって1000kPa以下、より好ましくは500kPa以下の弾性率(G’)を有する。
【0038】
好ましくは、組成物(Cb)は、コロナ放電によって処理されている基材(Sa)の表面と接触する。
【0039】
組成物(Cc)の層(Lc)は、組成物(Cb)の層(Lb)と接触する。組成物(Cc)は、1つ以上のポリマー(POLc1)を含有する。ポリマー(POLc1)の必須かつ好ましい特徴は、ポリマー(POLb)に関して上で説明したものと同じである。ポリマー(POLb)および(POLc1)は、互いに同じでも異なってもよい。好ましくは、組成物(Cc)中の(POLc1)の量は、組成物(Cc)の重量に基づく重量で、70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。好ましくは、組成物(Cc)中の(POLc1)の量は、組成物(Cc)の重量に基づく重量で、99.5%以下、より好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、より好ましくは91%以下である。
【0040】
加えて、組成物(Cc)は、アクリルポリマー(POLc2)を含有する。アクリルポリマー(POLc2)は、2,000以上の数平均分子量(Mn)を有する。アクリルポリマー(POLc2)は、35,000以下のMnを有する。アクリルポリマー(POLc2)は、-10℃以上、より好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上のTgを有する。好ましくは、アクリルポリマー(POLc2)のTgは、アクリルポリマー(POLc1)のTgよりも高い。好ましくは、アクリルポリマー(POLc2)のTgとアクリルポリマー(POLc1)のTgとの間の差は、10℃以上、より好ましくは20℃以上、より好ましくは50℃以上である。
【0041】
アクリルポリマー(POLc2)は、本明細書でモノマー(MON-A)とラベルされる1つ以上のアクリルモノマーの重合単位を含有する。モノマー(MON-A)は、(メタ)アクリル酸の非置換アルキルエステルである。モノマー(MON-A)におけるアルキルエステル基の炭素原子数は、1個以上、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上である。モノマー(MON-A)におけるアルキルエステル基の炭素原子数は、20個以下、より好ましくは10個以下、より好ましくは8個以下である。アクリルポリマー(POLc2)中のモノマー(MON-A)の重合単位の量は、アクリルポリマー(POLc2)の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。アクリルポリマー(POLc2)中のモノマー(MON-A)の重合単位の量は、アクリルポリマー(POLc2)の重量に基づく重量で、99.9%以下、好ましくは99.8%以下、より好ましくは99.6%以下である。
【0042】
アクリルポリマー(POLc2)は、任意選択的に、本明細書でモノマー(MON-B)とラベルされる1つ以上のアクリルモノマーの重合単位を含有する。モノマー(MON-B)は、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物から選択される。存在する場合、アクリルポリマー(POLc2)中のモノマー(MON-B)の重合単位の量は、アクリルポリマー(POLc2)の重量に基づく重量で、0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.4%以上である。アクリルポリマー(POLc2)中のモノマー(MON-A)の重合単位の量は、アクリルポリマー(POLc2)の重量に基づく重量で、50%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。
【0043】
アクリルポリマー(POLc2)は、任意選択的に、本明細書でモノマー(MON-C)とラベルされる1つ以上のアクリルモノマーの重合単位を含有する。モノマー(MON-C)は、モノマー(MON-C)がモノマー(MON-A)および(MON-B)の両方と異なることを除いて、任意のビニルモノマーである。アクリルポリマー(POLc2)中のモノマー(MON-A)の重合単位の量は、アクリルポリマー(POLc2)の重量に基づく重量で、50%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは2%以下である。アクリルポリマー(POLc2)中のモノマー(MON-A)の重合単位の量は、ゼロであってもよい。
【0044】
アクリルポリマー(POLc2)は、任意の方法によって製造することができる。好ましい方法では、アクリルポリマー(POLc2)を形成するための重合は、1つ以上の連鎖移動剤の存在下で実施される。好ましくは、連鎖移動剤の量は、アクリルポリマー(POLc2)の形成に使用されるモノマーの総重量に基づく重量で、1%以上、より好ましくは2%以上、より好ましくは4%以上である。好ましくは、連鎖移動剤の量は、アクリルポリマー(POLc2)の形成に使用されるモノマーの総重量に基づく重量で、10%以下、より好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。好ましい連鎖移動剤は、1つ以上の付着した-SH基を有する。好ましい連鎖移動剤はまた、n個の隣接する炭素原子の直鎖を有し、ここで、nは2以上、より好ましくは4以上、より好ましくは6以上である。
【0045】
好ましくは、組成物(Cc)中のアクリルポリマー(POLc2)の量は、組成物(Cc)の重量に基づく重量で、30%以下、より好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。好ましくは、組成物(Cc)中のアクリルポリマー(POLc2)の量は、組成物(Cc)の重量に基づく重量で、0.5%以上、より好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、より好ましくは9%以上である。
【0046】
好ましくは、組成物(Cc)は、PSAの特性を有する。好ましくは、組成物(Cc)は、10℃~40℃の範囲を含む温度範囲にわたって5kPa以上、より好ましくは10kPa以上、より好ましくは20kPa以上の弾性率(G’)を有する。好ましくは、組成物(Cc)は、10℃~40℃の範囲を含む温度範囲にわたって1000kPa以下、より好ましくは500kPa以下の弾性率(G’)を有する。
【0047】
好ましくは、組成物(Cc)は、アクリルポリマーではない粘着付与剤をほとんどまたは全く含有しない。すなわち、好ましくは、組成物(Cc)中のアクリルポリマーではない粘着付与剤の量は、組成物(Cc)の乾燥重量に基づく重量で、10%未満、より好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくはゼロである。
【0048】
ポリマー(POLc1)の重量およびポリマー(POLc2)の重量の合計として本明細書で定義される量(SUMc)を考慮することは有用である。好ましくは、組成物(Cc)の総重量に対する量(SUMc)の比率は、0.6:1以上、より好ましくは0.8:1以上、より好ましくは0.9:1以上である。
【0049】
層(Lb)の厚さと層(Lc)の厚さの合計である全厚(TOT)を特徴付けることは有用である。好ましくは、全厚(TOT)は、1マイクロメートル以上、より好ましくは2マイクロメートル以上、より好ましくは5マイクロメートル以上である。好ましくは、全厚(TOT)は、50マイクロメートル以下、より好ましくは40マイクロメートル以下である。
【0050】
層(Lb)および(Lc)は、単位面積当たりの乾燥材料の重量であるコーティング重量によって特徴付けることができる。好ましくは、層(Lc)のコーティング重量に対する層(Lb)のコーティング重量の比率は、0.1:1以上、より好ましくは0.25:1以上、より好ましくは0.67:1以上である。好ましくは、層(Lc)のコーティング重量に対する層(Lb)のコーティング重量の比率は、9:1以下、より好ましくは4:1以下、より好ましくは1.5:1以下である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の感圧物品は、層(Lc)と接触する剥離ライナーを有する。剥離ライナーは、例えばシリコーンコーティングなどの低エネルギー密度の表面を有し、そこへは通常、PSAが十分に接着しない。存在する場合、剥離ライナーは、本発明の感圧物品を目的の基材(すなわち、基材(Sd))に接着することによって本発明の感圧物品を使用することが所望されるまで、本発明の感圧物品の層(Lc)を保護する。剥離ライナーは、本発明の感圧物品から容易に取り外すことができ、その後、基材(Sd)と接触させることができる。
【0052】
本発明の感圧物品は、任意の方法によって製造することができる。好ましい方法では、層(Lb)および(Lc)のそれぞれは、水性組成物の層を形成し、次いでその水性組成物の層を乾燥させることによって構築される。
【0053】
好ましくは、層(Lb)は、アクリルポリマー(POLb)の分散粒子を含有する水性組成物(AQb)を最初に提供することによって形成される。水性組成物(AQb)は、水およびアクリルポリマー(POLb)に加えて追加の化合物を含有してもよい。水性組成物(AQb)を作製する好ましい方法は、水性エマルジョン重合を実施して、ポリマーラテックスの形態で水性ポリマー(POLb)の分散粒子を形成させることであり、これが次に水性組成物(AQb)として機能し得る。好ましくは、水性組成物(AQb)中に分散されたポリマー粒子は、50~750ナノメートルの体積平均直径を有する。好ましくは、水性組成物(AQb)中に存在するアクリルポリマー(POLb)の量は、水性組成物(AQb)の総重量に基づく重量で、20%~55%である。
【0054】
同様に、層(Lc)を作製する好ましい方法は、層(Lb)に塗布され、次いで乾燥される適切な水性組成物(AQc)を提供することである。好ましくは、水性組成物(AQc)は、分散されたポリマー粒子を含有する。いくつかの実施形態では、分散されたポリマー粒子は、アクリルポリマー(POLc1)およびアクリルポリマー(POLc2)の両方を含有する。好ましい実施形態では、水性組成物(AQc)は、アクリルポリマー(POLc1)の分散粒子を含有し、アクリルポリマー(POLc2)の別個の分散粒子も含有する。
【0055】
水性分散液(AQc)は、任意の方法によって製造することができる。好ましい方法では、水性エマルジョン重合を実施して、水性媒質中に分散されたアクリルポリマー(POLc1)の粒子のラテックス(本明細書では(AQc1)とラベルされる)を生成する。水性組成物(AQc1)の必要かつ好ましい特徴は、水性組成物(AQb)について上で説明したものと同じである。いくつかの実施形態では、水性媒質中に分散されたポリマー(POLc2)の粒子を含有する別個の水性組成物(本明細書では(AQc2)とラベルされる)が提供され、水性組成物(AQc1)および(AQc2)は一緒に混合されて水性組成物(AQc)を形成する。好ましい実施形態(「その場の」実施形態)では、アクリルポリマー(POLc2)は、(AQc1)中の1つ以上のモノマーの水性エマルジョン重合によって形成される。その場の実施形態では、形成されるポリマー(POLc2)は、ポリマー(POLc1)の粒子上に形成され得る。好ましいその場の実施形態では、ポリマー(POLc1)の粒子とは別個のポリマー(POLc2)の粒子が形成される。その場の実施形態では、1つ以上の任意選択的な追加の成分を、ポリマー(POLc1)の存在下でポリマー(POLc2)を形成する結果に加えることができ、その結果を水性組成物(AQc)として使用する。
【0056】
本発明の感圧物品は、任意の方法によって製造することができる。好ましくは、物品は、
(A)第1の表面にアクリルポリマー(POLb)の分散粒子を含有する水性組成物(Qb)の層を形成するステップと、
(B)第2の表面に(i)アクリルポリマー(POLc1)および(ii)アクリルポリマー(POLc2)を含有する分散粒子を含有する水性組成物(Qc)の層を形成するステップと、
(C)水性組成物(Qb)の層を乾燥させて層(Lb)を形成するステップと、
(D)水性組成物(Qc)の層を乾燥させて層(Lc)を形成するステップと、を含む、方法によって製造される。
【0057】
いくつかの実施形態では、ステップ(A)および(B)の両方が実施され、次に、ステップ(C)および(D)が同時に実施される。そのような実施形態では、水性組成物(Cb1)の層(Lb1)を基材(Sa)(第1の表面)に塗布し、水性組成物(Cb1)の層(Lb1)がまだ湿っている間に、水性組成物(Cb1)の層(Lb1)(第2の表面)の上に水性組成物(Cc1)の層(Lc1)を塗布し、次にアンサンブル全体を乾燥させる。そのような実施形態の中で、ステップ(A)および(B)が同時に実施されることが好ましい。すなわち、基材(Sa)に水性組成物(Cb1)の層(Lb1)を塗布するのと同時に、水性組成物(Cb1)の層(Lb1)上に水性組成物(Cc1)の層(Lc1)も塗布する多層コーティング装置を使用し、次にアンサンブル全体を乾燥させる。1つの好適なコーティング装置は、スライドコーターである。スライドコーターは、水性組成物(Ca)の層(Lc1)の下に水性組成物(Cb1)の層(Lb1)がある液体複合体を形成し、スライドコーターは、これらの層を無傷に保ちながら、層(Lb1)を基材(Sa)と接触させ、層(Lc1)を空気と接触させたままにする方法で、基材(Sa)上に複合体全体の層を塗布し、次に、物品全体を乾燥させて、水性組成物から水を除去する。
【0058】
感圧物品が、転写コーティング法、例えば、剥離ライナー上に組成物(Cc)のコーティング層(第2の表面)を作製し、次に組成物(Cb)の層の上に組成物(Cb)のコーティング層(第1の表面)を作製し、次に組成物(Cb)の層を基材(Sa)と(好ましくは圧力下で)接触させ、次に剥離ライナーを取り外すことを含む方法によって作製される実施形態もまた考えられる。そのような実施形態では、ステップ(B)は、ステップ(A)の前に実施される。
【0059】
本発明の感圧接着剤物品は、標的基材である追加の基材(Sd)と接触させることによって利用されることが考えられる。圧力を、組成物(Cc)および基材(Sd)を密接に接触させるために加え、次いで解放させることが考えられている。その結果、感圧接着剤物品は無傷のままであり、組成物(Cc)が基材(Sd)と結合される結合物品になると考えられる。基材(Sd)は、任意の基材であってもよい。好ましくは、基質(Sd)はポリオレフィンである。
【0060】
本発明は、いかなる特定のメカニズムにも限定されない。タックは、本発明の感圧接着剤物品の層(Lc)と基材(Sd)(すなわち、標的基材)の表面との間の相互作用により生じると考えられる。本発明の感圧物品は、アクリルポリマー(POLc2)が、基材(Sd)と接触する層(Lc)内の粘着付与剤として機能すると考えられるので、許容できるタックを有すると考えられる。アクリルポリマー(POLc2)は、層(Lc)から層(Lb)への移動に抵抗し、それによって、(基材(Sd)と接触する)層(Lc)内のアクリルポリマー(POLc2)の濃度を高く維持し、したがって、基材(Sd)に対して比較的高いタック接着力を発揮する能力を維持すると考えられる。
【0061】
本発明とは対照的に、比較物品において、アクリルポリマー(POLc2)が、例えば、ロジンエステルなどのアクリルポリマーではない従来知られている粘着付与剤によって置き換えられることを除いて、本発明の感圧物品と同様に、比較の感圧物品を作製することができると考えられる。ロジンエステルは、最上層(層(Lc)に類似)から他の層(層(Lb)に類似)に自由に移動すると予想される。したがって、移動により最上層のロジンエステルの濃度が低下するため、期待され得るタック性能の完全な改善は達成されない。
【0062】
以下は、本発明の実施例である。特に記載のない限り、室温(約23℃)で操作を実行した。
【0063】
調製実施例1(PE1).
アクリルポリマー(POLc2)として適合するアクリルポリマーを作製するための手順は以下の通りであった。3リットルの4つ口丸底フラスコに、610グラムの水、およびモノマーに基づいて1.5重量%のレベルの過硫酸アンモニウム(APS)を充填した。次に、280グラムの水、100グラムのアニオン性サルフェート化界面活性剤、1000グラムのモノマー、およびn-ドデシルメルカプタン(n-DDM)(モノマーに基づいて5重量%)で構成されるモノマーエマルジョンの供給物を、84℃の重合温度を維持しながら3時間にわたってフラスコに均一に添加した。モノマーエマルジョンの供給物と同時に、45グラムの水中の、モノマーに基づいて0.5重量%のレベルのAPSを添加した。モノマー添加後、バッチを84℃で30分間保持し、次に70℃まで冷却し、1グラムの28%アンモニア水を添加した。バッチをさらに室温まで冷却し、次に濾過し、ポリマー生成物を回収した。
【0064】
モノマー組成物は、99.5重量%のn-ブチルメタクリレートおよび0.5重量%のメタクリル酸であった。
【0065】
感圧接着剤組成物を以下の通りに作製した。すべてのサンプルを、別途記載のない限り、実験室のドローダウンのために湿潤性を改善するため、全エマルジョンに基づいて、Air Productsから入手した0.3%~0.5%(重量で、湿潤/湿潤)のSurfynol(商標)440湿潤剤(「440」)、およびSolvayからの0.3%~0.5%(重量で、湿潤/湿潤)のAerosol OT-75などの湿潤剤と軽く配合した。次に、The Dow Chemical Company、Midland,MichiganからのACRYSOL(商標)ファミリーの増粘剤を使用して、粘度を約1000mPa*s(1000cps)(Brookfield、RVDV、30rpm、63#)に調節した。
【0066】
図1に示すような多層物品を形成するための実験室のドローダウンを、以下の通りに作製した。層(Lb)(2)を、第1のシリコーンコーティング紙またはフィルム剥離ライナー上にコーティングし、次に2~50マイクロメートルの湿潤コーティング厚にて80℃で5分間乾燥させた。別個に、層(Lc)(3)を第2の剥離ライナー上にコーティングし、同様に2~50マイクロメートルの湿潤コーティング厚にて80℃で5分間乾燥させた。次に、PPフィルム(基材(Sa)(1))と接着剤コーティングされた第1の剥離ライナーとをラミネートすることによって、コロナ処理されたポリプロピレン(「PP」)フィルム(厚さ60マイクロメートル)上に、非粘着付与の層(すなわち、層(Lb))を移動させた。次に、第1の剥離ライナーを取り外して、非粘着付与の接着剤層(Lb)を露出させた。次に、この層(Lb)を層(Lc)(現在、第2の剥離ライナー上にコーティングされている)と接触させて、ラミネートを形成した。次に、第2の剥離ライナーを取り外し、その結果、図1に示す多層構造となった。
【0067】
ループタック(PSTC試験方法16)(Pressure Sensitive Tape Council、One Parkview Plaza,Suite 800,Oakbrook Terrace,IL 60101,USA)を以下の通りに実施した。ループタック試験では、接着剤が基材(Sd)(4)に接触したときの初期接着力を測定する。接着剤ラミネートを、制御された環境(22.2~23.3℃(72~74°F)、相対湿度50%)にて少なくとも1日間コンディショニングした後に、試験を行った。幅2.54cm(1インチ)のストリップを切断し、折り返してループを形成し、接着面を露出させた。次に、それをInstron(商標)引張試験機のジョーの間に取り付け、下のジョーを基材に対して12インチ/分の速度で下げ、2.54cm×2.54cm(1インチ×1インチ)の接着剤の正方形領域が基材(Sd)(4)に1秒間接触するようにした。次に、接着剤を引き離し、接着剤を基材から引き離すピーク力を記録した。基材(Sd)(4)は、低密度ポリエチレンであった。
【0068】
また、感圧接着剤物品を、深さプロファイリングモードにてガスクラスターイオンビームエッチングによる二次イオン質量分析法(SIMS)の分析を使用して分析した。これにより、深さの関数として特定の官能基および分子フラグメントの相対濃度が明らかになる。ロジンエステルを含有するサンプルに関して、研究された官能基はロジン酸官能基であり、アクリルポリマーPE1を含有するサンプルに関して、研究された官能基はブチルアルコールであった。
【0069】
これらの実施例において使用された材料は以下の通りであった:
【表1】
【0070】
ループタック試験の結果は以下の通りであった。「タック」は、上記のピーク力であり、ニュートン(N)で報告されている。「Ex」は「実施例」を意味する。「C」で終わる実施例番号は、比較である。「Comp」は「組成物」を意味する。「Coat-Wt」は「コーティング重量」を意味し、1平方メートル当たりの乾燥コーティングのグラム(gsm)で報告されている。「粘着付与剤」は、(比較例における)ロジンエステル粘着付与剤、または実施例におけるアクリルポリマー(POLc2)のいずれかを意味する。「粘着付与剤%」は、粘着付与された層の総乾燥重量に基づく粘着付与剤の重量パーセントである。
【表2】
【0071】
実施例3CのSIMS結果:RE1の濃度は深さ全体を通して均一であった。すなわち、RE1の濃度は、層(Lc)および(Lb)の全体の深さの関数として一定であった。これは、層が作製されたときには、RE1は層(Lc)にのみ存在し、層(Lb)には存在しなかったが、サンプルを分析したときには、RE1は層(Lb)および(Lc)全体に均一に拡散していたことを強調する。
【0072】
実施例1のSIMS結果:層(Lc)は比較的高濃度のPE1を示し、位置が層(Lb)との界面に近づくにつれて濃度がわずかに低下しただけであった。層(Lb)では、位置が層(Lc)と(Lb)の間の界面から移動し、基材(Sa)に向かって移動するにつれて、PE1の濃度がより急激に低下した。要するに、層(Lb)内よりも層(Lc)内の方がPE1の濃度が著しく高かった。PE1を層(Lc)に閉じ込めることは、本発明の感圧物品において良好な耐タック性を促進すると予想される。
【0073】
SIMS結果は、タックの結果と一致している。比較例4Cと比較3Cを比較すると、粘着付与剤が(SIMSデータによって示されるように)両方の層全体にわたって自由に移動する場合、最上層の粘着付与剤濃度の低下により、タック性能が比較的大きく失われることは明らかである:9ニュートンから6.9ニュートンへの低下(23%のタック力の低下)。対照的に、比較例2Cを実施例1と比較すると、粘着付与剤の移動が著しく抑制される場合、タック性能の低下も小さいことは明らかである:5.8ニュートンから5.4ニュートンへの低下(わずか7%のタック力の低下)。すなわち、粘着付与剤が最上層から移動しない場合、比較的高いタック接着力を発揮する感圧物品の能力は維持される。

図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着剤物品であって、
(a)基材(Sa)と、
(b)前記基材(Sa)と接触して、20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLb)を含む感圧組成物(Cb)の層(Lb)と、
(c)前記層(Lb)と接触して、層(Lc)であって、前記層(Lc)の重量に基づく重量で、
(i)60%~99.5%の20℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルポリマー(POLc1)、ならびに
(ii)0.5%~40%の1つ以上のアクリルポリマー(POLc2)であって、2,000以上の数平均分子量を有し、35,000以下の数平均分子量を有し、-10℃以上のTgを有し、(POLc2)の重量に基づく重量で、
(A)50%~99.9%の(メタ)アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステル(ここで、アルキル基は、1~20個の炭素原子を有する)、
(B)0%~50%のアクリル酸、メタクリル酸、またはそれらの混合物、
(C)および0%~50%の1つ以上の追加のビニルモノマーの重合単位を含む、アクリルポリマー(POLc2)を含む層(Lc)と、を含む、感圧接着剤物品。
【請求項2】
前記アクリルポリマー(POLc2)が、モノマーの総重量に基づく重量で1%~10%の量の連鎖移動剤の存在下で、1つ以上のモノマーの水性エマルジョン重合を含むプロセスによって製造された、請求項1に記載の感圧物品。
【請求項3】
前記アクリルポリマー(POLc2)が、前記アクリルポリマー(POLc2)の重量に基づく重量で、80%~99.9%の(メタ)アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルの重合単位、および0%~20%の(メタ)アクリル酸の重合単位を含む、請求項1に記載の感圧物品。
【請求項4】
請求項1に記載の感圧物品を製造する方法であって、前記方法が、
(A)第1の表面上に前記アクリルポリマー(POLb)の分散粒子を含有する水性組成物(Qb)の層を形成することと、
(B)第2の表面上に(i)前記アクリルポリマー(POLc1)および(ii)前記アクリルポリマー(POLc2)を含有する分散粒子を含有する水性組成物(Qc)の層を形成することと、
(C)前記水性組成物(Qb)の前記層を乾燥させて前記層(Lb)を形成することと、
(D)前記水性組成物(Qc)の前記層を乾燥させて前記層(Lc)を形成することと、を含む、方法。
【請求項5】
水性組成物(Qb)が、1つ以上のモノマーの水性エマルジョン重合を含むプロセスによって製造されて、前記アクリルポリマー(POLb)の分散粒子を生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基材(Sd)を請求項1に記載の物品と接触させるプロセスによって製造された結合物品であって、前記基材(Sd)が前記層(Lc)と接触する、結合物品。
【請求項7】
前記基材(Sd)が、ポリオレフィンである、請求項4に記載の結合物品

【国際調査報告】