(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】インサートを備えた車両用グレージングおよび関連するサーマルカメラ装置
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20221107BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20221107BHJP
C01B 19/00 20060101ALI20221107BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B60J1/00 Z
C03C27/12 N
C01B19/00 G
B60J1/00 J
B60R11/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514517
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2020074491
(87)【国際公開番号】W WO2021043838
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ウスペンスキー,ウラディミール
(72)【発明者】
【氏名】ヤヴァリ,ケイアン
【テーマコード(参考)】
3D020
4G061
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BC02
3D020BD03
4G061AA04
4G061BA02
4G061CB19
4G061CD18
(57)【要約】
本発明は、少なくとも9.5~10.5μmの赤外スペクトルにおける波長範囲Aにおいて透明な結晶構造をもつ材料製のインサート(2)を有する貫通孔を、周縁ゾーン内に有する車両用グレージング(100)に関しており、またインサートの前記材料は、500nm~600nmの基準波長の可視域において透明である。本発明はまた、前記グレージングとサーマルカメラとを用いた装置にも関している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
とりわけ自動車用または鉄道車両用の、特にフロントガラス、リヤウインド、サイドウィンドウである、所定の厚さE1の車両用グレージング(100)であって、グレージングが、外の方へ向けられた外側主面(11)と車室側の内側主面(14)とを有し、グレージングが、周縁ゾーン内に、内側面と外側面との間の貫通孔であり、グレージングの側壁(10’)によって画定される孔を有し、前記貫通孔が、2.5μmを超える赤外スペクトルにおける波長範囲Aにおいて透明な、結晶構造をもつ材料製のインサート(2)を有し、インサートが所定厚さE0である車両用グレージングであり、
範囲Aが、少なくとも9.5~10.5μmまた好ましくは8~12μmに及ぶこと、またインサートの前記材料が、500nm~600nmの基準波長の可視域において透明であることを特徴とする車両用グレージング。
【請求項2】
インサートの前記材料が、550~600nmに及ぶ範囲Bにおける可視域において透明であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用グレージング(100)。
【請求項3】
インサートの材料が、前記範囲Aにおいて少なくとも50%またより良くは少なくとも60%、65%または70%の赤外光透過率と、基準波長においてまたより良くは範囲Bにおいて少なくとも30%またより良くは少なくとも40%の光透過率とを有することを特徴とする、請求項2に記載の車両用グレージング(100)。
【請求項4】
インサートが、20MPa超の破断係数を示すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項5】
孔の相当直径が、最大5cmまたさらには最大3cmであり、また好ましくはインサートの相当直径が、最大5cmまたさらには最大3cmであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項6】
インサートの材料が、特に化学気相成長によってまた熱間等方圧加圧によって得られる、多結晶材料であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項7】
インサートの材料が、
- セレンおよび/または硫黄を含む、亜鉛の化合物または
- フッ化バリウムを含む化合物
の中から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項8】
インサートの材料が、
- xが好ましくは少なくとも0.97であるZnS
xSe
1-xのような、とりわけセレンを含み、特に熱間等方圧加圧後に得られる、マルチスペクトル硫化亜鉛を含む化合物であり、特にマルチスペクトルZnS、
- yが少なくとも0.97であるZnSe
yS
1-yのような、とりわけ硫黄を含む、セレン化亜鉛を含む化合物であり、特にZnSe、
-とりわけi+jが厳密に1未満で、iおよびjが好ましくはそれぞれ最大0.25のBa
1-i-jCa
iSr
jF
2、あるいはまたiが厳密に1未満で、また好ましくは最大0.25のBa
1-iCa
iF
2である、とりわけカルシウムおよび/またはストロンチウムを含む、フッ化バリウムを含む化合物であり、特にBaF
2、
の中から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項9】
インサート(2)が、外側面と内側面とを有し、そして外側面上にまた場合によっては内側面上に、機械的かつ/または化学的保護層(4)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項10】
機械的かつ/または化学的保護層(4)が、硫化亜鉛を含む層、ダイヤモンド層またはDLC層の中から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項11】
インサートと側壁との間に、とりわけ柔軟材料かつ/または高分子材料製の環の形状の、インサートの固定手段(5)を含み、該固定手段がとりわけ、側壁(10)に接着されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項12】
特に凸形で、とりわけフロントガラスである、積層グレージングを形成し、該積層グレージングが、F1と呼ばれる前記内側面および反対側にある面をもつ第一のガラスシート(1)と、車室の内部側のF4と呼ばれる前記外側主面をもつ第二のガラスシート(1’)とを含み、第一のガラスシートと第二のガラスシートとが、高分子材料製の遮音のかつ/または着色された、積層体の中間層(3)によって接合していることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項13】
貫通孔の縁に沿って不透明層とりわけエナメル(6)を一主面上に有する少なくとも1枚の第一のガラスシートを有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一つに記載の車両用グレージング(100)。
【請求項14】
以下を含むことを特徴とする装置、
- 請求項1から13のいずれか一つに記載の前記グレージング(100)、
- 前記インサートを通過した後の放射を受け取るように前記グレージングの後ろの車室内に配置される、サーマルカメラと呼ばれるカメラ(7)であって、サーマルカメラは、レンズと、範囲Aにおける赤外線検知システムとを含み、
- 場合によっては、とりわけ光学カメラでもあるサーマルカメラ内に組み込まれた、または前記インサート(2)を通過した後の光放射を受け取るように前記グレージングの後ろの車室内に配置される別の光学カメラと組み合わされた、基準波長におけるまたはより良くは範囲Bにおける光学センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルカメラと連携した、自動車、列車または飛行機におけるグレージング、特にフロントガラスに関する。
【0002】
本発明はまた、そのような情報可視化のために、前記グレージングと前記サーマルカメラとを組み合わせる装置も説明する。
【背景技術】
【0003】
車両用グレージングおよび関連する科学技術は、とりわけ安全性向上のために絶えず進展している。
【0004】
特に英国特許出願公開第2271139号明細書は、熱赤外線に対し透明性が高い材料、より具体的には5~15μmで少なくとも50%の透過率の硫化亜鉛(ZnS)製のインサートによって埋められる開口部が、上部長手方向縁に近いかつその中央に位置する部分にある積層グレージングを有する、フロントガラスを提案している。運転手から見える画面につながれる専用カメラは、インサートに向き合って、車室内にある。孔は円形であり、またインサートは、孔の壁に接着される円盤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許出願公開第2271139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造という観点から、孔は、フロントガラスの板ガラスのオートクレーブでの処理前に製造される。
【0007】
そのようなフロントガラスは、十分に信頼度の高いものではない。本発明は、この不都合を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より具体的には、本発明は、とりわけ自動車(乗用車、トラック、公共交通機関:バス、長距離バス等)または鉄道車両(特に最大90km/hまたは最大70km/hの最高速度の、特に地下鉄、路面電車)用の、特にフロントガラス、あるいはまたリヤウインド、サイドウィンドウである、(サブセンチメートルの、とりわけ自動車フロントガラスについては最大5mmである厚さE1の)車両用グレージング(とりわけ積層および/または凸形)に関するものであり、グレージングは、(車両の)外の方へ向けられた外側主面(F1と呼ばれる)と、車室側の(最)内側主面(F2と呼ばれるかまたは積層グレージングならばF4と呼ばれる)とを有し、
またグレージングは、周縁ゾーン内(好ましくは上部長手方向縁かつ/または中央領域内)に、内側面と外側面との間を貫通する孔であり、グレージングの側壁によって画定される孔、とりわけ周縁ノッチを形成する開通孔または閉鎖孔(壁によって囲まれている)であって、特に、とりわけ特に円形もしくは卵形もしくは楕円体あるいはまた長方形、正方形もしくは六角形の凸状の断面の、好ましくは少なくとも5mmまたより良くは最大5cmまたは3cmの相当直径(一定の相当直径または外側面におけるよりも内側面における方がより大きい相当直径)である孔を有し、孔は以下を有する(以下によって埋められる):
- 赤外線のスペクトルにおける波長範囲Aにおいて透明な材料製のインサート(平らまたは凸形であって、その外側面は外側面F1と同じ高さであるかまたは後退しており、さらには同じようにその内側面は内側面F2もしくは積層グレージングならば内側面F4からはみ出すか同じ高さであるかまたは後退している)であって、E1を超えてもよい、とりわけサブセンチメートルの、所定の厚さE0のインサート、
- および好ましくは、インサートと側壁との間の、とりわけ、例えばポリカーボネートである、柔軟材料かつ/または有機(または有機/無機ハイブリッド)高分子材料製の環の形状の、インサートの固定手段(またそのうえ好ましくは液状水さらには水蒸気に対する密閉手段でもある)。
【0009】
本発明によると、範囲Aは、9.5μm~10.5μm、好ましくは8~12μmまたは13μmに及び、この範囲Aにおいて好ましくは少なくとも50%またより良くは少なくとも60%、65%または70%の光透過率またはより正確には赤外光透過率(英語でinfrared optical transmission)を伴う。
【0010】
本発明によると、そのうえ、(ガラスとは異なる)インサートの材料は、好ましくはキュービッククリスタログラフィによる、結晶構造であり、500nm~600nmまたさらには540または550nm~600nmの基準波長の可視域において、より良くは550~600nmの範囲Bにおいて透明であり、範囲Bにおいて好ましくは少なくとも25%またより良くは少なくとも30%またはさらにより良くは40%、60%の光透過率を伴う。
【0011】
可視スペクトルにおいて不透明の従来のZnSとは違って、本発明によるインサートの材料は、可視域において透明であり、このことは以下を可能にする:
- 結晶内の欠陥を簡単に識別し、このように不良品発生率を制限すること、
- (基準波長においてまたより良くは範囲Bにおいて感知できるサーマルカメラと呼ばれるカメラとともにある)光学系に正しく事前に照準を定めること、
- またさらには、光場における物体の識別および分類を改善するために、例えば光束の分割に基づくことによってまたは(赤外線画像および可視画像を同時にキャプチャするなどして)検知を重ね合わせることによって、(範囲B内の)可視スペクトルと(範囲A内の)赤外スペクトルとにおいて感知できる単数または複数のカメラを使用すること。
【0012】
範囲Aにおける赤外線センサおよび光学センサと組み合わされたただ1つのレンズを使用してもよいし、または、基準波長またより良くは範囲Bにおける光学センサと組み合わされた第一のレンズと範囲Aにおける赤外線センサと組み合わされた第二のレンズ(ゲルマニウム製など)とを使用してもよい。
【0013】
光透過率は、Perkin Elmer Lambda-35のような分光光度計を用いて、基準波長についてまたはより良くは範囲Bについて測定される。
【0014】
光透過率は、D65光源を使用して規格ISO 9050:2003に準じて測定することができ、また、直接透過率と潜在的な拡散透過率とを同時に考慮に入れる(とりわけ、ヒトの視感度曲線によって加重され、可視領域の中に組み込まれる)全透過率であることができ、測定は例えば、積分球を備えた分光光度計を使って行われ、所定の厚さでの測定値は次に、規格ISO 9050:2003に準じた4mmの基準厚さに、必要であれば変換される。
【0015】
赤外光透過率は、BrukerVertex-70のようなフーリエ分光計によって、範囲Aについて測定される。
【0016】
有利には、インサートの材料は以下を有する:
- 範囲Aにおける少なくとも50%またより良くは少なくとも60%、65%または70%の赤外光透過率、とりわけ、範囲Aにおける最大5%または3%または2%の赤外光透過率の変化幅(平坦スペクトル)、
- および範囲Bにおける少なくとも25%またより良くは少なくとも30%あるいはまた40%、60%の光透過率、とりわけ、範囲Bにおける最大5%または2%の光透過率の変化幅(平坦スペクトル)。
【0017】
材料はさらには、範囲Bの始まりから範囲Aの終わりまで透明であることができ、またさらには好ましくは、この波長帯全体にわたる透過率の変化幅は最大8%または5%である(平坦スペクトル)。
【0018】
より一層の安全のために、好ましくは、インサートの破断係数は、20MPa超またさらには40MPa超である。
【0019】
好ましくは、孔の相当直径(厚さにおいて一定または変化する)およびインサートの相当直径(厚さにおいて一定または変化する)はそれぞれ、好ましくはとりわけ円形もしくは卵形もしくは楕円体あるいはまた長方形、正方形もしくは六角形の凸状の断面を伴う、とりわけ幾何学的形状で、最大5cmまたさらには最大3cmである。
【0020】
孔(およびインサート)の大きすぎるサイズは、グレージング(フロントガラスなど)の機械的強度を低下させ、乗客の安全に重大な影響をもたらし得る。
【0021】
またインサートの直径は、好ましくは少なくとも5mmである。
【0022】
好ましくは、インサートは、ほぼ吸湿性でないかまたは吸湿性ではなく、特にその溶解度の値は、100mlの水において20℃で最大0.2gである。
【0023】
より高い透明度のために、インサートの厚さE0は、10mm以下であり得る。
【0024】
インサートの材料は好ましくは、範囲Aにおいて最大10-5cm-1の吸収係数、またさらには範囲Aにおいて最大10-3cm-1の吸収係数を有する。
【0025】
好ましくは、インサートの材料は、少なくとも99.99%あるいはまた少なくとも99.995%またさらにより良くは99.999%の(重量による)純度を有し、かつ/または20μm超またはさらには12もしくは10μm超の大きさの不純物(および/または結晶欠陥)がない。
【0026】
インサートは、例えば無色であるかまたは(透明のままでありながら)とりわけ黄色、オレンジ色に着色される。
【0027】
インサートは、凸形であり得る。
【0028】
インサートの材料は、仕上げ研磨され得る(外側面および内側面)。
【0029】
インサートの材料は、好ましくはキュービッククリスタログラフィによるものである。
【0030】
有利には、本発明によるインサートの材料は、単結晶よりも製造が容易な多結晶材料である。
【0031】
有利には、本発明によるインサートの材料は、特に化学気相成長によって得られる、以下のような材料(好ましくは多結晶材料)の中から選択される:
- セレンおよび/または硫黄を含む、亜鉛の化合物または
- フッ化バリウムを含む化合物
- さらにKRS-5(Thallium Bromide-Iodide)タイプの化合物のような、臭ヨウ化タリウムを含有する化合物。
【0032】
またインサートの材料は、特に以下の中から選択される:
- xが好ましくは少なくとも0.97、より良くは少なくとも0.99、またさらにより良くは少なくとも0.998であるZnSxSe1-xのような、とりわけセレンを含み、特に熱間等方圧加圧(好ましくは少なくとも800℃の温度下での等方圧プレス機による処理)後に得られる、マルチスペクトル硫化亜鉛を含む化合物、
-yが少なくとも0.97、より良くは少なくとも0.99、またyがさらにより良くは少なくとも0.998であるZnSeyS1-yのような、とりわけ硫黄を含む、セレン化亜鉛を含む化合物であり、特にZnSe、
- とりわけi+jが厳密に1未満で、iおよびjが好ましくはそれぞれ最大0.25、より良くは最大0.03、またはさらにより良くは最大0.005のBa1-i-jCaiSrjF2、あるいはまたiが厳密に1未満で、また好ましくは最大0.25、より良くは最大0.03、またはさらにより良くは最大0.005のBa1-iCaiF2である、とりわけカルシウムおよび/またはストロンチウムを含む、フッ化バリウムを含む化合物であり、特にBaF2。
【0033】
マルチスペクトル(MS)グレードをもつ硫化亜鉛は、最新の材料である。それは多結晶であることができ、また(とりわけ亜鉛蒸気およびH2Sガスからの化学気相成長CVDによる形成後に)熱間等方圧加圧(英語でHIP)を実施することによって得ることができる。このことにより、結晶格子における欠陥が取り除かれ、とりわけ六方晶相の晶子を立方体の主相に変換することによってそれらが除去され、細孔容積が減少しそして化学量論量が均一化され、このように可視域における透明度に達すると思われる。その構造は、概して10~50μmの結晶粒を有する微小(多)結晶である。
【0034】
論文“Recrystallization Behavior of Zinc Chalcogenides during Hot Isostatic Pressing”E.M.Gavrishchukら,Inorganics Materials,Vol 50,No.3 2014年において示されているように、HIPは、1~22hの継続時間にわたって89~200MPaの圧力下で810℃と1200℃との間のアルゴン雰囲気下であることができる。
【0035】
マルチスペクトル硫化亜鉛の透過率は、平坦スペクトルをもつ広域スペクトルであり得る。透過率は特に、0.5μm~10μmで60%超である。
【0036】
マルチスペクトル硫化亜鉛は、化学的に不活性で、(ほぼ)非吸湿性であり、その溶解度の値は、100mlの水において20℃で0.005g未満である。
【0037】
マルチスペクトルZnSの屈折率は、例えば範囲Aにおいて2.1~2.3、また可視域において2.3~2.6である。
【0038】
(とりわけ多結晶の)マルチスペクトル硫化亜鉛は、確かに概して(モノスペクトルの)従来の硫化亜鉛よりも硬度が低いが、しかしこのことは上述の光学的利点を考えると許容範囲にとどまる。
【0039】
マルチスペクトル硫化亜鉛のインサートの破断係数は、60または65MPa超であることができる。
【0040】
マルチスペクトル硫化亜鉛は、概してセレン化亜鉛より耐久性がある(また従来の硫化亜鉛より耐久性が低い)。
【0041】
(とりわけ高温加圧下でのブリッジマン法の再結晶化によって得られる)単結晶のマルチスペクトル硫化亜鉛は存在するが、しかし合成するのがより難しい。単結晶のマルチスペクトル硫化亜鉛の一製造例が、刊行物Gavrishukら J.Crystal Growth 457,2017年,pp.275-281で示されている。
【0042】
好ましくは多結晶の、マルチスペクトル硫化亜鉛は、光学的性質、機械的性質および耐化学性のその組み合わせのために有利である。
【0043】
最も知られている多結晶マルチスペクトル硫化亜鉛は、Cleartran(登録商標)である。
【0044】
II-VI社またはCrystaltechno Ltd.によって販売されるマルチスペクトルZnS製品を挙げることができる。
【0045】
好ましくは多結晶の、マルチスペクトル硫化亜鉛(ZnSeまたより広くはZnSxSe1-x)は好ましくは、少なくとも99.99%、あるいはまた少なくとも99.995%、またさらにより良くは99.999%の(重量による)純度を有し、かつ/または20μm超またはさらには12もしくは10μm超の大きさの不純物(および/または結晶欠陥)がない。
【0046】
セレン化亜鉛は、範囲Bにおいてマルチスペクトル硫化亜鉛よりも吸収性が低い。多結晶セレン化亜鉛もまた、亜鉛蒸気およびH2SeガスからのCVDによって得ることができる。(とりわけ高圧下でのブリッジマン法によって得られる)セレン化亜鉛単結晶は存在するが、しかし合成するのがより難しい。
【0047】
セレン化亜鉛は、化学的に不活性で、(ほぼ)非吸湿性であり、とりわけその溶解度の値は100mlの水において20℃で0.005g未満である。
【0048】
(とりわけ多結晶の)セレン化亜鉛の透過率は、広域スペクトルであり、またスペクトルは際立って平らである。(とりわけ多結晶の)セレン化亜鉛の透過率は、0.5μm~10μmで70%超であることができる。
【0049】
(とりわけ多結晶の)セレン化亜鉛のインサートの破断係数は、50または55MPa超である。
【0050】
多結晶セレン化亜鉛の結晶粒の大きさは、50~70μmであり得る。
【0051】
多結晶セレン化亜鉛の販売業者として、Hellma社、II-VI社またはCrystaltechno Ltdを挙げることができる。
【0052】
主にセレン化亜鉛から成る単結晶ZnSeyS1-yの一例が、刊行物Kozielskiら Journal of Crystal growth 30,1975年,pp.86-92の中で記述されている。
【0053】
好ましくは多結晶の、セレン化亜鉛(ZnSeyS1-yでとりわけZnSe)は好ましくは、少なくとも99.99%、あるいはまた少なくとも99.995%、またさらにより良くは99.999%の(重量による)純度を有し、かつ/または20μm超またはさらには12もしくは10μm超の大きさの不純物(および/または結晶欠陥)がない。
【0054】
フッ化バリウムは、例えばブリッジマン-ストックバーガー法によって得られる単結晶であり得る。
【0055】
有利には、フッ化バリウムは、フッ化バリウム単結晶からの合成法を用いて得られる、多結晶(セラミックス)であることができ、このことは機械的耐性を向上させること(劈開ゆえの単結晶のひび割れを制限すること)を可能にする。セラミックスのフッ化バリウムの一製造例が、刊行物Fedorovら Inorganic Materials 50,2014年,pp.738-744で示されている。
【0056】
フッ化バリウムは、わずかに吸湿性であり、とりわけその溶解度の値は100mlの水において20℃で0.2g未満である。念のため、その相当直径が最大1cmであることが好まれる。フッ化バリウムのインサートの破断係数は、25MPa超であり得る。
【0057】
フッ化バリウムの透過率は、平坦スペクトルをもつ、広域スペクトルであり得る。フッ化バリウムの透過率は、0.5μm~10μmで80%超であり得る。
【0058】
フッ化バリウム単結晶として、Hellma社またはCrystaltechno Ltdによって販売される製品を挙げることができる。
【0059】
好ましくは多結晶の、フッ化バリウム(Ba1-i-jCaiSrjF2あるいはまたBaCaiF2でとりわけBaF2)は好ましくは、少なくとも99.99%、あるいはまた少なくとも99.995%、またさらにより良くは99.999%の(重量による)純度を有し、かつ/または20μm超またはさらには12もしくは10μm超の大きさの不純物(および/または結晶欠陥)がない。
【0060】
好ましくは、より一層の安定のために、刊行物Duvelら Solid State Sciences 83,2018年,pp 188-191の中で記述されているように、iおよびjはわずかであり、特にiは最大0.03、またjは最大0.03であり、またより良くは、iは最大0.005、jは最大0.005である。
【0061】
有利には機械的強度を向上させるために、外側面と内側面とを含むインサートは、外側面上にまた場合によっては内側面上に、機械的かつ/または化学的保護層を有する。
【0062】
機械的かつ/または化学的保護層(好ましくは単層または多層のコーティング)は、以下の層のうちの少なくとも1つの中から選択されることができる:
- 機械的保護のための、特に、とりわけZnSeであるZnSxSe1-xのインサート上の、(とりわけZnSである)硫化亜鉛を含む層、
- インサートの結晶への粘着特性のために好ましくはアモルファスであり、とりわけ少なくとも10nmまたは20nm、好ましくは50nm~300nm、さらには最大100nmの厚さの、ダイヤモンド層、
- 好ましくはアモルファスであり、とりわけ少なくとも10nmまたは20nm、好ましくは50nm~300nm、さらには最大100nmの厚さの、DLC(英語で「diamond like carbon」)層、すなわちダイヤモンドタイプの炭素ベース層。
【0063】
ZnSeへのZnSの十分に薄い層の付加は、透過率を低下させずに、塊状ZnSに類似した耐浸食性を保証する。製品例の1つは、Rohm & Haas社のTUFTRAN(登録商標)である。
【0064】
例えばZnSxSe1-x(ZnSを含んでいる)のような材料は、酸および、メタノールなどの他の特定溶剤から保護されるために、ZnS層によって覆われることができる。
【0065】
ZnSの代わりに、したがってダイヤモンド層(またはDLC層)を、透過率を低下させずまたさらにより高い耐浸食性を保証しながら、例えば化学気相成長(とりわけPECVD)または物理気相成長(PVD)によって、被着することができる。一製造例が、刊行物Osipkovら IOP conf.Ser.Material Science and Engineering 74(2015年)012013で記述されている。
【0066】
本発明によるグレージングは、特に凸形で、とりわけ車両(道路車両、特に自動車)用フロントガラスである、積層グレージングであることができ、該積層グレージングは、F1と呼ばれる前記内側主面および(F2と呼ばれる)反対側にある主面をもつ第一のガラスシートと、車室の内部側のF4と呼ばれる前記外側主面(および反対側にある主面F3)をもつ第二のガラスシートとを含み、第一のガラスシートと第二のガラスシートは、(とりわけ熱可塑性の)とりわけ有機の高分子材料製の、とりわけ遮音のかつ/または着色された、積層体の中間層によって接合している。
【0067】
特に積層グレージングは、以下を有する:
- 自動車の場合、好ましくは最大2.5mm、さらには最大2mm-とりわけ1.9mm、1.8mm、1.6mmそして1.4mm-またはさらには最大1.3mmもしくは最大1mmの厚さで、それぞれF1面と呼ばれる第一の主面とF2面と呼ばれる第二の主面とをもち、外側グレージングを形成し、好ましくは凸形で、場合によってはクリア、エクストラクリア、またはとりわけ灰色または緑色に着色された、第一のガラスシート、
- とりわけ第一のグレージングの端面から最大2mm後退しまた第二のグレージングの端面から最大2mm後退していて、自動車の場合好ましくは最大1.8mm、より良くは最大1.2mmまたさらには最大0.9mm(またより良くは少なくとも0.3mmまたさらには少なくとも0.6mm)の厚さで、好ましくは熱可塑性の高分子材料製またさらにより良くはポリビニルブチラール(PVB)製の、場合によってはクリア、エクストラクリア、またはとりわけ灰色または緑色に着色された、積層体の中間層であって、積層体の中間層は場合によっては、積層グレージング(特にフロントガラス)の上から下の方へくさび形に減少する横断面を有する、
- 自動車の場合、好ましくは第一のグレージングの厚さよりも薄く、さらには最大2mmとりわけ1.9mm、1.8mm、1.6mmそして1.4mm、またはさらには最大1.3mmもしくは最大1mmの厚さで、第三の主面と第四の主面とをもち、内側グレージングを形成し、好ましくはクリア、エクストラクリアさらには着色され、好ましくは凸形の、無機ガラス製の第二のグレージングであって、第一のグレージングと第二のグレージングとの厚さは、好ましくは厳密に4mm未満、さらには3.7mm未満である。
【0068】
内側ガラスおよび/または外側ガラスは、ニュートラル(無着色)であってもよいし、またはSaint-Gobain Glass社のTSAガラスのように、とりわけ灰色または緑色に(軽度に)着色されてもよい。内側ガラスおよび/または外側ガラスは、(とりわけより優れた機械的強度のために)硬化、焼きなましもしくは強化処理タイプの化学的もしくは熱的処理を受けているか、または半強化処理されていることができる。
【0069】
本発明の範囲から逸脱することなく、中間層は当然、例えば米国特許第6132882号明細書中に記述されているように、性質の違う、例えば遮音機能を保証するために硬度の異なる、複数の熱可塑性材料製シート、とりわけ硬度の異なるPVBシートのセットを含むことができる。同様に、ガラスシートのうちの1つは、従来利用されている厚さと比べて薄くすることができる。
【0070】
中間層は、本発明によると、とりわけHUD(ヘッドアップディスプレイを表わすHead Up Display)適用のために、くさび形を呈することができる。同様に、中間層のシートのうちの1つは、全体として着色されることができる。
【0071】
PVB以外によく使われる積層体中間層として、柔軟に使用されるポリウレタンPU、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーのような可塑剤を使用しない熱可塑性樹脂、アイオノマー樹脂を挙げることができる。これらのプラスチックは、例えば0.2mm~1.1mm、とりわけ0.3~0.7mmの厚さを有する。
【0072】
積層体中間層は、例えば伝導性のアサーマル層を担持するポリ(エチレンテレフタラート)PET製フィルムである、(透明、クリアまたは着色された)別の機能性プラスチックフィルムなどを含むことができ、例えばF2面とF3面との間にPVB/機能性フィルム/PVBがある。
【0073】
透明なプラスチックフィルムは、10~100μmの厚さであり得る。透明なプラスチックフィルムはより広くは、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン(PE:ポリエチレン、PP:ポリプロピレン)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)であり得る。クリアなフィルムとりわけPETが好ましい。
【0074】
例えばEastman社のXIRであるコーティングされたPETクリアフィルム、例えばSRF 3M(登録商標)タイプのPET-PMMA製の複合押出成形フィルムを例えば使用することができるように、また、可能な限り視覚的に透明で、表面および粘性に関してオートクレーブ内で変性しない、(例えばPC、PE、PEN、PMMA、PVC製の)多数の他のフィルムも使用することができる。
【0075】
車室内の温度上昇を制限するためまたはエアコンの使用を制限するために、少なくともガラスシートのうちの1枚(好ましくは外側ガラス)は着色され、また積層グレージングは、好ましくはF4面にまたはF2もしくはF3面に太陽放射を反射または吸収する層、特にTCO層と呼ばれる透明導電性酸化物層(F4面上)もしくはさらには少なくとも1つのTCO層を含む薄層の積み重ね、または少なくとも1つの銀層を含む薄層の積み重ね(F2もしくはF3上)も有することができ、この銀層または各銀層は、誘電層間に配置される。
【0076】
F2面および/またはF3面上の(銀含有)層とF4面上のTCO層とを併せ持つことができる。
【0077】
TCO(透明導電性酸化物)層は、好ましくはフッ素ドープ酸化スズ(SnO2:F)層または酸化インジウムスズ(ITO)層である。
【0078】
やはり、最も求められる適用は、グレージングが道路車両(自動車)またはさらには(低速度の)鉄道車両のフロントガラスであることである。
【0079】
本発明によるグレージングは、(例えば単数または複数のカメラを覆い隠すように)貫通孔の縁に沿って(マスキング用)不透明層とりわけエナメル(黒色等)を一主面上に有する少なくとも1枚の第一のガラスシートを有することができる。
【0080】
本発明による積層グレージングは、(例えば単数または複数のカメラを覆い隠すように)貫通孔の縁に沿って(マスキング用)不透明層とりわけエナメル(黒色等)を主面(例えばF2面)上に有する第一のガラスシート、および/または、(例えば単数または複数のカメラを覆い隠すように)貫通孔の縁に沿って(マスキング用)不透明層とりわけエナメル(黒色等)を主面(例えばF3面またはF4面)上に有する第二のガラスシートを有することができる。
【0081】
とりわけPVBである積層体中間層の主面のうちの少なくとも1つの上にマスキング層を準備することもできる。
【0082】
本発明はまた、以下を含む装置にも関する:
- 先に記述されたようなグレージング、
- 前記インサートを通過した後の放射を受け取るように前記グレージングの後ろの車室内に配置される、(範囲Aにおいて感知できる)サーマルカメラと呼ばれるカメラであって、サーマルカメラは、レンズと、例えばとりわけ極低温冷却なしのマイクロボロメータによる、範囲Aにおける赤外線検知システムとを含み、前記カメラは、場合によってはそのうえ光学カメラでもあり、(範囲Bにおける)別のセンサシステムを含む、
- 場合によっては、とりわけ光学カメラでもあるサーマルカメラ内に組み込まれた、または前記インサートを通過した後の光放射を受け取るように前記グレージングの後ろの車室内に配置される別の光学カメラと組み合わされた、基準波長におけるまたはより良くは範囲Bにおける光学センサ(CCDまたはCMOSなど)。
【0083】
範囲Aにおいて感度が最大であり、しかも15または14μm以上また7または6μm以下の低い感度を伴う、赤外線検知が好まれる。
サーマルカメラの例として、Lynred USA社の製品Atom(登録商標)1024を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】フロントガラスの上部中央部分に位置するゾーンに直面してフロントガラスの後ろに置かれるサーマルカメラのついた、本発明によるフロントガラスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
有利ではあるが非限定的な、本発明の特定実施形態が以下に記述されており、それらは当然必要であれば互いに組み合わされることができる。
【0086】
図1は、フロントガラスの上部中央部分に好ましくは位置するゾーンに直面してフロントガラスの後ろに置かれるサーマルカメラ7のついた、本発明によるフロントガラス100を断面図で示している。このゾーンにおいて、カメラは、フロントガラスの表面(F4面)に対して特定の角度をもって方向づけられる。特に、レンズおよび赤外線センサは、地面に対する平行線に近い方向に沿って、すなわち道路の方へただわずかに傾斜しているだけの方向に沿って、画像収集ゾーンの方に直接に方向づけられる。換言すれば、カメラ7は、その機能を果たすために適合した視野70を伴うわずかな角度に沿って道路の方へ方向づけられる。
【0087】
フロントガラスは、以下を含む従来の積層グレージングである:
- 外側面F1および内側面F2をもち、2.1mmの厚さで、例えばTSAガラス製の、好ましくは着色された外側ガラスシート1、
- および、外側面F3および車室側の内側面F4をもち、厚さが2.1mmあるいはさらに1.6mmあるいはさらに薄い、例えばTSAガラス(またはクリアガラスまたはエクストラクリアガラス)製の、内側ガラスシート1’、
- 例えば、およそ0.76mmの厚さのPVB(SolutiaまたはEastmanのRC41)または必要であれば変形例として例えばおよそ0.81mmの厚さの遮音のPVB(3層または4層)例えば3枚のPVBシートでできた中間層である積層グレージングの上から下の方へくさび形に減少する横断面を場合によっては有する、サブミリメートルの厚さで、好ましくはクリアな、たいていの場合ポリビニルブチラール(PVB)製の熱可塑性材料製中間層3によって互いに接合している、2枚のガラスシート。
【0088】
よく知られている従来の仕方で、フロントガラスは、構成要素1、2および3の熱ラミネート加工によって得られる。
【0089】
フロントガラス100は、例えば外側面11上に(または好ましくはF2および/またはF3もしくはF4面に)、サーマルカメラを組み入れる装置とそのケース8(プラスチック、金属など)の正面に配置されるグレージングの表面の全体にわたって(つまり孔の全周囲にわたって)、それを隠すために、黒いラッカー層またはエナメル層のような、例えば黒色の不透明のコーティング6を好ましくは有する。ケース8は、接着剤80によってF4面に、またルーフ9に接着されることができる。
【0090】
不透明の層6は、インサートのあるゾーンを越えて広がることができる。場合によっては、フロントガラスが上部長手方向縁に沿った(黒色の)不透明なバンドを得るようにさらには周縁全体にわたる(黒色の)不透明のフレームを得るように、貫通孔の上部縁に沿ったバンドを形成する不透明の層の(横方向の)延長がある。
【0091】
本発明によると、カメラと向かい合った周縁ゾーンにおいて、フロントガラスは、内側面と外側面との間を貫通する孔であり、積層グレージング(ガラス1/PVB3/ガラス1’)の側壁10によって画定される孔を有し、前記貫通孔は以下を有する:
- 少なくとも9.5~10.5μmまた好ましくは8~12μmに及ぶ赤外線における波長範囲Aにおいて、透明な結晶構造をもつ材料製のインサート2であって、インサートは、好ましくは10mm以下の所定厚さE0であり、
- インサートと側壁との間の、とりわけ柔軟材料、高分子材料製の環5の形状の、インサートの固定手段であって、固定手段はとりわけ、側壁10に接着される。
【0092】
インサート2の材料はまた、500nmと600nmとの間に含まれる基準波長での可視域においても透明であり、またより良くは550~600nmに及ぶ少なくとも範囲Bにおける可視域において透明である。
【0093】
インサート2の材料は、前記範囲Aにおいて少なくとも50%またより良くは少なくとも65%の赤外(光)透過率を有し、また基準波長においてまたより良くは範囲Bにおいて少なくとも30%またより良くは少なくとも40%の光透過率を有する。
【0094】
インサートは、20MPa超の破断係数を有する。
【0095】
孔の相当直径は、最大5cmまたさらには最大3cmであり、インサートの相当直径は、最大5cmまたさらには最大3cmである。
【0096】
好ましくは多結晶のインサート2の材料は、以下の中から選択される:
- セレンおよび/または硫黄を含む、亜鉛の化合物または、
- フッ化バリウムを含む化合物。
【0097】
特に以下が選択される:
- xが好ましくは少なくとも0.97であるZnSxSe1-xのような、とりわけセレンを含み、特に熱間等方圧加圧後に得られる、マルチスペクトル硫化亜鉛を含む化合物であり、特にマルチスペクトルZnS、
- または、yが少なくとも0.97であるZnSeyS1-yのような、とりわけ硫黄を含む、セレン化亜鉛を含む化合物であり、特にZnSe、
- とりわけiおよびjが好ましくは最大0.25のBa1-i-jCajSriF2あるいはまた、好ましくはiが最大0.25のBa1-iCaiF2である、とりわけカルシウムおよび/またはストロンチウムを含む、フッ化バリウムを含む化合物であり、特にBaF2。
【0098】
インサート2は、外側面と内側面とを有し、そしてこの例では好ましくは、外側面上にまた場合によっては内側面上に、機械的かつ/または化学的保護層4を有する。それは、硫化亜鉛を含む層、ダイヤモンド層またはDLC層の中から選択されるコーティングである。
【0099】
好ましくは、むき出しのもしくは硫化亜鉛の保護層で覆われるマルチスペクトルZnSまたは硫化亜鉛の保護層で覆われるZnSeを選ぶことができる。
【0100】
インサート2を通過した後の光放射を回収する光学カメラである別のカメラを付け加えることもできるし、または単純に範囲Bにおける光学センサを付け加えてもよい。
【0101】
貫通孔は選択的に、ノッチ、つまり、好ましくはルーフ側に開通する貫通孔であることができる。
【0102】
貫通孔(およびインサート)は、フロントガラスの別の領域内にあることもできるし、またはさらには車両の別のグレージング内にあることもできる。
【0103】
車両のグレージングは、モノリシックであり得る。
【符号の説明】
【0104】
1 第一のガラスシート
1’ 第二のガラスシート
2 インサート
3 中間層
4 保護層
6 不透明層
7 サーマルカメラ
8 ケース
70 視野
80 接着剤
【国際調査報告】