(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】溶解性が向上した固体相の高分子を含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20221107BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514580
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2020011785
(87)【国際公開番号】W WO2021045504
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0109138
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0058055
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ク・チョル・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ナム・ソ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウク・パク
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC402
4C083AC432
4C083AC541
4C083AC542
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC771
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD212
4C083AD272
4C083AD332
4C083AD352
4C083BB51
4C083CC05
4C083DD06
4C083DD21
4C083DD31
4C083EE07
4C083FF01
4C083FF04
(57)【要約】
本発明は、機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の化粧料組成物に関するもので、本発明の固体相の成分は、再溶解性に優れ、再溶解以後にも化粧料の硬度及びpH変化が大きくないため、安定性に優れた化粧品を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含むことを特徴とする、固体相の化粧料組成物。
【請求項2】
前記機能性成分は、水分散性高分子及び角質ケア成分のうち一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の固体相の化粧料組成物。
【請求項3】
前記水分散性高分子は、コラーゲン、ヒアルロン酸、ハイドロライズドヒアルロン酸、βグルカン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、バイオサッカライド、セルロース、セルロースガム、アラビアガム、ゼラチン、寒天、カラギーナン、アルギン、キトサン、澱粉、ガラクトマンナン、グルコマンナン、グアガム、ローカストビーンガム、アルギネート及びジェランからなる群より選択される一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の固体相の化粧料組成物。
【請求項4】
前記塩基性アミノ酸は、アルギニン(arginine)、リシン(lysine)、アスパラギン(aspargine)、シトルリン(citrulline)、オルニチン(ornithine)、トロメタミン(tromethamine)及びシステアミン(cysteamine)からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の固体相の化粧料組成物。
【請求項5】
前記組成物は、親水性アミノ酸及び/又は酸性アミノ酸をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体相の化粧料組成物。
【請求項6】
機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物;及び
5dyne/cm
2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を含むことを特徴とする、化粧料組成物。
【請求項7】
前記機能性成分は、水分散性高分子及び角質ケア成分のうち一つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記水分散性高分子は、コラーゲン、ヒアルロン酸、ハイドロライズドヒアルロン酸、βグルカン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、バイオサッカライド、セルロース、セルロースガム、アラビアガム、ゼラチン、寒天、カラギーナン、アルギン、キトサン、澱粉、ガラクトマンナン、グルコマンナン、グアガム、ローカストビーンガム、アルギネート及びジェランからなる群より選択される一つ以上であることを特徴とする、請求項7に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記塩基性アミノ酸は、アルギニン(arginine)、リシン(lysine)、アスパラギン(aspargine)、シトルリン(citrulline)、オルニチン(ornithine)、トロメタミン(tromethamine)及びシステアミン(cysteamine)からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記第1組成物の組成物は、親水性アミノ酸及び/又は酸性アミノ酸をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物;及び
5dyne/cm
2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を含むことを特徴とする、化粧品。
【請求項12】
機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物;及び
5dyne/cm
2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を含むことを特徴とする、化粧料の製造のためのキット。
【請求項13】
機能性成分及び塩基性アミノ酸を溶媒に溶解させて水溶液を準備すること;及び
前記水溶液を-20℃~-180℃で冷却して凍結乾燥すること;を含む機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物を製造する段階、及び
5dyne/cm
2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を製造する段階を含む二つの剤形を有することを特徴とする、化粧品の製造方法。
【請求項14】
前記機能性成分は、コラーゲン、ヒアルロン酸、ハイドロライズドヒアルロン酸、βグルカン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、バイオサッカライド、セルロース、セルロースガム、アラビアガム、ゼラチン、寒天、カラギーナン、アルギン、キトサン、澱粉、ガラクトマンナン、グルコマンナン、グアガム、ローカストビーンガム、アルギネート及びジェランからなる群より選択される一つ以上であることを特徴とする、請求項13に記載の化粧品の製造方法。
【請求項15】
前記塩基性アミノ酸は、アルギニン(arginine)、リシン(lysine)、アスパラギン(aspargine)、シトルリン(citrulline)、オルニチン(ornithine)、トロメタミン(tromethamine)及びシステアミン(cysteamine)からなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項13に記載の化粧品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性が向上した固体相の高分子を含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、化粧品でヒアルロン酸又はコラーゲンのような高分子及びビタミン、抗酸化剤のような機能性成分は、美白、シワ改善、皮膚弾力増進、保湿、皮膚再生促進、有害酸素除去などを目的に皮膚改善のための有効成分として用いられてきた。しかし、このような有効成分は、化粧品の粘度を増加させるか、他の成分と反応する可能性がある場合、又は水溶液相で存在するか水に接触する場合、光又は空気中への露出を通じて酸化により容易に破壊されるか、色又は香臭が変わるので、化粧品として使用に制限があった。このような問題点を解決し、有効成分を安定化して皮膚改善の効能を極大化するための方法として、粉末形態の固相成分に剤形化する方法が提示された(特許文献1)。粉末形態の固相成分とこれをとかすための成分の剤形を分離して化粧品を提供する場合、前記提示した長所以外に、使用者が固相粉末を直接混合して用いることによって新しい使用感を感じるという長所がある。
【0003】
しかし、粉末形態の固相成分とこれをとかすための成分の剤形を分離して提供される化粧品において、クリームのような流動性が低い液相剤形では、固体相の成分が剤形内に浸透しにくいか、剤形内の水和の限界のため、再溶解がよく行われず、上述した固相成分を含む化粧品剤形を多様化するには限界がある。
【0004】
したがって、化粧品剤形を多様に提供するために、多様な剤形でも溶解性が改善された固相組成物の開発のための追加的な研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、流動性が低い乳化剤形の化粧料で水分散性高分子成分の再溶解がよく行われない問題を解決するために、塩基性アミノ酸と水分散性高分子を含む組成物の凍結乾燥成分を含む化粧料組成物、化粧品又は化粧品用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、水分散性高分子及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の化粧料組成物を提供する。
【0007】
本発明の水分散性高分子と塩基性アミノ酸を共に含んで凍結乾燥された成分は、塩基性アミノ酸を共に含むことによって、凍結乾燥成分がこれをとかすための剤形と混合されるとき、前記固体成分をとかすための剤形に含まれた高分子と凍結乾燥された成分のアミノ酸が反応して水分子を分離させることによって、剤形内の凍結乾燥成分に含まれた機能性成分の再溶解がよく行われるようにすることができる。
【0008】
本発明で固体相は、固体状態を意味する。液体状態の組成物は、乾燥、結晶化、粒子化などの過程を通じて固体化されてもよく、所定の範囲のサイズを有するように粉砕などの過程を通じて再加工されたものであってもよい。
【0009】
本発明で凍結乾燥成分は、前記固体相の一例として、凍結乾燥されたもの又は凍結乾燥物が再粉砕されて粉末化されたものを全て含む意味である。
【0010】
本発明の凍結乾燥成分は、機能性成分と塩基性アミノ酸を溶媒に溶解して水溶液を製造し、前記水溶液を冷却して固体相に凝固させた後、前記凝固された固体相の試料に三重点以下の低い温度で圧力を下げる方法で製造され得る。固体相の試料を三重点以下の温度で圧力を降下させる場合、水が液相を経ずに昇華されて気相に性状が変わることになるが、このとき、機能性成分と塩基性アミノ酸は、水に溶解されている構造を維持して多孔性構造を成すことになる。このとき、多孔性構造は、微細構造として巨視的性状変化である粉砕過程で破壊されずその多孔性を維持させ得る。
【0011】
本発明の塩基性アミノ酸は、塩基性アミノ酸及びその誘導体を全て含む意味である。高硬度の液相剤形内に含まれた高分子のような成分に含まれた親水性作用基と結合できる作用基を含み、前記高分子と反応して水分子を生成することで、機能性成分の高硬度の液相剤形内の再溶解度を向上させる役目をする。一例として、クリームなど液相剤形内に含まれたポリマーに含まれたカルボキシル基(-COO-)と結合できる作用基としてアミン基(NH3
+)を含むものであってもよい。塩基性アミノ酸に含まれた作用基は、塩基性アミノ酸と乳化剤形の混合時に、液相剤形内のポリマーの親水性作用基と水のヒドロキシ基(-OH)の水素結合を弱化させて水分子を溶出させ得、前記水分子が固体相の成分と容易に結合できるようにして剤形内の固体相成分の水和を向上させ得るので、固相成分の溶解性又は再溶解性を改善し得る。
【0012】
また、前記塩基性アミノ酸は、アミン基(NH3
+)を含み、カルボキシル基又は二つ以上のヒドロキシ基を含む構造であって、一つの分子内にプロトン供与体(donor)と受容体(acceptor)として作用し得る構造を有しているので、バッファー溶液(buffer solution)として作用できる。これによって、前記塩基性アミノ酸を含む固体相の化粧料を流動性が低い化粧料と混合する場合、固体相の再溶解性が増加するにもかかわらず、剤形内のpHが大きく変化することを防止し、これによる剤形の流動性減少を防ぎ、安定性を維持させ得る。
【0013】
前記塩基性アミノ酸は、例えば、アルギニン(arginine)、リシン(lysine)、アスパラギン(aspargine)、ヒスチジン(histidin)、シトルリン(citrulline)、オルニチン(ornithine)、トロメタミン(tromethamine)及びシステアミン(cysteamine)からなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明の固体相の化粧料組成物において、前記塩基性アミノ酸は、1~90%(w/w)、具体的には、5~35%(w/w)を含むが、これに制限されるものではない。
【0015】
前記機能性成分は、化粧料で所定の目的を示すために含まれる成分であって、本発明では、流動性が低い乳化剤形の化粧料で再溶解性が低い成分であってもよい。
【0016】
前記機能性成分の種類の数には制限がなく、1種以上の高分子成分を含むことができる。前記高分子は、サイズに制限はないが、好ましくは、300kDa以下、より好ましくは、50kDa以下の高分子であってもよい。本発明の固体相の化粧料組成物で、前記機能性成分は、0.01%~90%(w/w)で含まれ得、好ましくは、10~80%(w/w)で含まれ得る。
【0017】
前記機能性成分は、一例として、水分散性高分子及び角質ケア成分のうち一つ以上であってもよい。
【0018】
前記水分散性高分子は、水にとける性質を有する高分子であって、一例として、コラーゲン、ハイドロライズドヒアルロン酸、ヒアルロン酸、βグルカン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、バイオサッカライド、セルロース、セルロースガム、アラビアガム、ゼラチン、寒天、カラギーナン、アルギン、キトサン、澱粉、ガラクトマンナン、グルコマンナン、グアガム、ローカストビーンガム、アルギネート及びジェランからなる群より選択される一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
前記角質ケア成分は、アミノ酸又はヒドロキシ酸であってもよい。前記ヒドロキシ酸は、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸又はポリヒドロキシ酸であってもよい。前記角質ケア成分は、具体的な例として、セリン、システイン、トレオニン、グリシン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、カルニチン、グリコレート、ラクテート、マレート、シトレート、サリシレート及びグルコノラク酸からなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0020】
また、本発明の固体相の化粧料組成物は、機能性成分として1種以上の低分子(1kDa以下)機能性成分を追加で含むことができる。本発明の固体相の化粧料組成物で、0.01~99%(w/w)、具体的には、30~80%(w/w)、より具体的には、45~65%(w/w)で前記組成物に含まれ得る。低分子の場合、含量に制限がなく、含量が多くなる場合、再溶解性が向上するが、高分子効能成分が有する皮膚密着感、保湿力、弾力感を提供できないので、高分子の含量に合わせて含量を決めなければならない。
【0021】
本発明の固体相の化粧料組成物のpHは、その範囲に制限はないが、4.0~9.0が可能であり、6.0~8.0が好ましい。該当範囲より高いか低いpHでは有効成分の安定性が阻害されるか皮膚刺激を誘発し得る。
【0022】
本発明の固体相の化粧料組成物で機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物は、親水性アミノ酸及び/又は酸性アミノ酸をさらに含むことができる。前記親水性又は酸性アミノ酸を追加で含む場合、凍結乾燥成分が乳化剤形の化粧料に混合されたとき、塩基性アミノ酸により混合された化粧料でpHが過度に増加しないようにバッファーとしての役目をすることができる。
【0023】
前記親水性アミノ酸は、アミノ酸の誘導体を含む意味であって、一例として、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、アスパラギン及びグルタミンからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記酸性アミノ酸は、分枝鎖にCOOHを含むアミノ酸であって、アミノ酸の誘導体を含み、一例として、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、本発明は、水分散性高分子及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物;及び5dyne/cm2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を含む化粧料組成物を提供する。
【0026】
前記化粧料組成物は、第1組成物と第2組成物をそれぞれ含む2剤式の組成物であってもよい。
【0027】
また、本発明は、第1組成物と第2組成物を含む化粧品を提供する。
【0028】
前記第1組成物は、固体相であって、機能性成分及びアミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含み、第2組成物は、前記固体相の第1組成物を溶解するためのものであって、乳化剤形を有する。
【0029】
本発明の前記化粧品で、第1組成物と第2組成物は、互いに分離した形態で含まれ得る。上述した第1組成物を溶解させるための第2組成物は、乳化剤形であって、その種類に制限がない。好ましくは、本発明の第2組成物は、硬度が高く、流動性が低い乳化剤形であって、クリーム、ゲル、ローションの剤形であってもよい。第1組成物に含まれた高分子などの機能性成分は、凍結乾燥以後に再溶解するとき、十分な水分が含まれないクリームなどの剤形では、再溶解度が顕著に低くなる問題があった。本発明の化粧料は、再溶解が必要な固形の第1組成物で塩基性アミノ酸を共に凍結乾燥して含むようにして、機能性成分の低い再溶解度の問題点を解決したことに技術的特徴がある。
【0030】
本願発明で乳化剤形の流動性は、硬度で定義され得、5dyne/cm2以上、又は5~100dyne/cm2、又は10~50dyne/cm2、又は25~35dyne/cm2の硬度を有するものであってもよい。
【0031】
また、上述した乳化剤形の第2組成物は、第1組成物と混合され場合、30%以上の硬度減少が起きないもの、又は15%以下の硬度減少を示すものであってもよい。この場合、二つの剤形を混合して使用するとき、乳化剤形の第2組成物の経時安定性に影響を与えないと共に消費者に差別化された効能及び使用感を提供することができる。
【0032】
本発明の化粧料組成物のpHは、その範囲に制限はないが、4.0~9.0が可能であり、6.0~8.0が好ましい。該当範囲より高いか低いpHでは、有効成分の安定性が阻害されるか皮膚刺激を誘発し得る。
【0033】
前記化粧品は、第1組成物と第2組成物をそれぞれ含む2剤式の化粧品であってもよい。
【0034】
また、本発明は、前記水分酸性高分子及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物;及び5dyne/cm2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を含む化粧料の製造のためのキットを提供する。
【0035】
また、本発明は、前記水分酸性高分子及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物;及び5dyne/cm2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を含む化粧料キットを提供する。
【0036】
本発明の前記キットで、第1組成物と第2組成物は、互いに分離された形態で含まれ得る。すなわち、前記化粧料キットは、第1組成物と第2組成物をそれぞれ含む2剤式の化粧料キットであってもよい。
【0037】
重複された記載を避けるために、上述した化粧料組成物及び化粧品に対する記載は、化粧料の製造のためのキットに対してそのまま準用され得る。
【0038】
また、本発明は、機能性成分及び塩基性アミノ酸を溶媒に溶解させて水溶液を準備すること;及び前記水溶液を-20℃~-180℃で冷却して凍結乾燥すること;を含む機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の第1組成物を製造する段階、及び
【0039】
5dyne/cm2以上の硬度を有する乳化剤形の第2組成物を製造する段階を含む二つの剤形を有する化粧品の製造方法を提供する。
【0040】
前記化粧品の製造方法は、再溶解性が向上した凍結乾燥された固体成分を含む二つの剤形を有する化粧品の製造方法であってもよい。本発明の第1組成物に含まれる固体相の凍結乾燥成分は、機能性成分と塩基性アミノ酸を共に含むことによって、凍結乾燥以後に再び溶解される場合にも溶解剤形内で優れた溶解性を有することができる。
【0041】
前記凍結乾燥は、機能性成分及び塩基性アミノ酸が溶解された水溶液を冷却して固体相に凝固させること、及び凝固された固体相の試料に三重点以下の低い温度で圧力を降下させることを含んで行われ得る。
【0042】
前記凍結乾燥は、-20~-180℃で冷却することができ、又は-100℃~-170℃、又は-120℃~-170℃で行われ得る。本発明の請求範囲の温度で冷却する場合、凍結乾燥物の品質を一層向上させ得るので、化粧料として用いるのに有利な効果を有する。
【0043】
また、前記凍結乾燥は、凍結乾燥された固体相の凍結乾燥物を粉砕することを追加で含むことができる。前記凝固された固体相の試料を三重点以下の温度で圧力を降下させる場合、水が液相を経ずに昇華されて気相に性状が変わることになるが、前記機能性成分と塩基性アミノ酸は、溶解されている構造を維持して多孔性構造を成すことになる。上述した多孔性構造は、微細構造として巨視的性状変化である粉砕過程で破壊されずその多孔性が維持される。
【0044】
前記溶媒は、化粧料又は化粧品の製造において一般的に用いられる溶媒であってもよく、好ましい一例として、精製水を含む水であってもよい。
【0045】
前記機能性成分は、コラーゲン、ヒアルロン酸、ハイドロライズドヒアルロン酸、βグルカン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、バイオサッカライド、セルロース、セルロースガム、アラビアガム、ゼラチン、寒天、カラギーナン、アルギン、キトサン、澱粉、ガラクトマンナン、グルコマンナン、グアガム、ローカストビーンガム、アルギネート及びジェランからなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0046】
前記塩基性アミノ酸は、例えば、アルギニン(arginine)、リシン(lysine)、アスパラギン(aspargine)、シトルリン(citrulline)、オルニチン(ornithine)、トロメタミン(tromethamine)及びシステアミン(cysteamine)からなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0047】
重複された記載を避けるために、上述した化粧料組成物及び化粧品に対する記載は、化粧品の製造方法によってそのまま準用され得る。
【発明の効果】
【0048】
本発明は、機能性成分及び塩基性アミノ酸を含む組成物の凍結乾燥成分を含む固体相の化粧料組成物に関するもので、本発明の固体相の成分は、再溶解性に優れ、再溶解以後にも化粧料の硬度及びpH変化が大きくないため、安定性に優れた化粧品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本発明の固相組成物が液相剤形で溶解される機序を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例による固相組成物を液相剤形に混合した場合、時間による剤形の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
次の実施例は、本発明の理解を助けるためのものであって、これによって本発明の範囲が限定されるものと理解していけない。
【実施例】
【0051】
<実験例1.固相剤形とクリーム剤形の製造>
【0052】
表1の組成によって、アミノ酸としてアルギニン及び機能性高分子としてハイドロライズドヒアルロン酸(0.5-10kDa、SKバイオランド、大韓韓国)又はヒアルロン酸(10kDa以上、SKバイオランド、大韓民国)を含む固体相の化粧料組成物を製造した。
【0053】
【0054】
具体的に、表1の組成を過量の精製水に溶解させて水溶液を製造し、製造された水溶液を-150℃で急速に冷凍させて固相に凝固させた後、凍結乾燥を進行した。凍結乾燥した固相を使いやすいように粉砕して本発明の粉末形態の固相組成物を準備した。固体相の試料を三重点以下の温度で圧力を降下させる場合、水が液相を経ずに昇華されて気相に性状が変わることになるが、このとき、残っている表1の成分は、水に溶解されている構造を維持して多孔性構造を成すことになる。このとき、多孔性構造は、微細構造として巨視的性状変化である粉砕過程で破壊されずその多孔性を維持させ得る。
【0055】
前記固体相の化粧料組成物を溶解させるための化粧料の第2組成物は、表2の組成によって製造した。
【0056】
【0057】
固相を溶解させて用いられる製剤として、表2の組成によって流動性が低いクリーム剤形の化粧料を製造した。製剤のpHは、7.15、硬度は、製造直後に硬度計を用いて30dyne/cm2であることを確認した。硬度の測定は、一般的に最も広く行われている押し込み硬度試験法を用いた。押し込み硬度試験は、押えを一定の試験荷重で化粧料に一定の時間の間押した後に押し込み程度を数値で示す試験法であって、硬度計は、FUDOH RHEOMETER(Rheo Tech co.、ltd、、日本)を用いて測定した。
【0058】
<試験例1.組成物の物理的性質変化の確認>
【0059】
実施例1と実施例2及び比較例1を通じて製造された固相化粧料を実験例1で製造した30dyne/cm
2のクリーム製剤に混合する場合、固相製剤の再溶解度、再溶解時間及び組成物のpH及び硬度変化を確認した。実施例1、実施例2及び比較例1の固相成分それぞれをスパチュラあるいは手で取り、クリーム製剤を手で混合して再溶解されることを確認した(
図2)。
【0060】
【0061】
(◎:非常に良い、パウダー同士固まりがなく、再溶解された後に剤形の表面が非常に均一である。○:良い、パウダー間の固まりがほとんどなく、再溶解後の表面が均一である。△:多少不良、再溶解後に表面が多少不均一であり、固まりが発生、X:非常に不良、再溶解がよく行われない。固まりがひどい)
【0062】
表3に示したように、超低分子ハイドロライズドヒアルロン酸を含む組成物で塩基性アミノ酸を含む実施例1と実施例2の固相組成物の場合、
図1に示したメカニズムによって速い速度で固体相の成分が流動性の低いクリームに再溶解されることが確認できる。しかし、塩基性アミノ酸なしに機能性高分子のみからなる比較例1の固相成分は、目に見えず、触感的に異物感が感じられない均一に混合された状態までの時間を測定した再溶解時間が、実施例1及び2の場合と比較して2倍以上所要されることを確認した。分子量が大きいヒアルロン酸を含む組成物の場合、比較例2のように、固相成分の固まりがひどく、再溶解が行われないことを確認した。実施例3と実施例4でのように、塩基性アミノ酸を用いる場合、本発明で提示する再溶解性が向上することを確認することができるが、化粧品の優れた品質のためには、ハイドロライズドヒアルロン酸が一層選好される。
【0063】
<実験例2.多様な高分子機能成分を含む固体相の組成物の製造>
【0064】
実施例1及び2のハイドロライズドヒアルロン酸以外に多様な高分子機能成分に対して本発明の組成物の再溶解性の改善程度を確認するために、表4の組成によって固体相の化粧料組成物を製造した。
【0065】
【0066】
<試験例2:多様な高分子機能成分を含む固相組成物の再溶解性の確認>
【0067】
前記実験例2で製造された実施例5~7と比較例3~5の固相組成物の再溶解性を確認するために、実験例1で製造された表2の30dyne/cm2のクリーム製剤に混合する場合、固相製剤の再溶解度、再溶解速度の改善率(%)及び組成物のpH及び硬度変化を確認した。
【0068】
具体的に、再溶解速度の改善率は、同一の高分子で塩基性アミノ酸を含まない場合(比較例3又は5)の再溶解速度(1/再溶解時間)に対して塩基性アミノ酸を含む実験群(実施例5~7)の再溶解速度の改善程度を確認した。また、固相組成物と混合する前のクリーム製剤の初期硬度(30dyne/cm2)に対する固相組成物と混合直後のクリーム製剤の硬度を通じて硬度変化率を確認した。
【0069】
【0070】
(◎:非常に良い、パウダー同士固まりがなく、再溶解された後に剤形の表面が非常に均一である。○:良い、パウダー間の固まりがほとんどなく、再溶解後の表面が均一である。△:多少不良、再溶解後に表面が多少不均一であり、固まりが発生、X:非常に不良、再溶解がよく行われない。固まりがひどい)
【0071】
【0072】
<試験例3.多様な製剤での再溶解性の確認>
【0073】
本発明の固相組成物が多様な製剤でも再溶解度が改善されかを確認するために、実施例1の固相組成物を表2のクリーム製剤(30dyne/cm2)以外にエッセンス(8100cps)、可溶化トナー(3800cps)と混合するとき、比較例1のアミノ酸を含まない固相組成物と混合した場合と比較して再溶解性が改善されるかを確認した。前記エッセンスは、表7、トナーは、表8の組成によって製造して評価した。前記エッセンスの粘度は、Brookfield viscometer(Brookfield LV、Brookfield Engineering Laboratories、Inc.、MA、USA)を用いて測定し、30rpmで60秒間測定した。気泡の影響を減らすために製造時に脱泡して測定した。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
(◎:非常に良い、パウダー同士固まりがなく、再溶解された後に剤形の表面が非常に均一である。○:良い、パウダー間の固まりがほとんどなく、再溶解後の表面が均一である。△:多少不良、再溶解後に表面が多少不均一であり、固まりが発生、X:非常に不良、再溶解がよく行われない。固まりがひどい)
【0078】
前記表9に示したように、機能性高分子と塩基性アミノ酸を共に凍結乾燥した固相組成物の場合、クリーム、エッセンス及びトナーのいずれの剤形においても各剤形に前記比較例1を混合したものと比較して再溶解速度が改善され、特に、剤形自体の粘度/硬度が低く凍結乾燥高分子の再溶解問題が大きくない可溶化トナーに比べて、クリーム剤形で再溶解速度の改善程度が高いことを確認した。
【0079】
<試験例4.アミノ酸の種類による再溶解改善効果の確認>
【0080】
本発明の塩基性アミノ酸以外に、中性又は酸性アミノ酸でも凍結乾燥高分子の再溶解改善効果が得られるかを確認するために、表10の組成によって酸性アミノ酸としてグルタミン酸、中性アミノ酸としてセリン、そして塩基性アミノ酸としてアルギニンを機能性高分子とともに凍結乾燥した後、表2のクリーム製剤での再溶解性及び硬度変化を確認した。
【0081】
【0082】
【0083】
(◎:非常に良い、パウダー同士固まりがなく、再溶解された後に剤形の表面が非常に均一である。○:良い、パウダー間の固まりがほとんどなく、再溶解後の表面が均一である。△:多少不良、再溶解後に表面が多少不均一であり、固まりが発生、X:非常に不良、再溶解がよく行われない。固まりがひどい)
【0084】
前記表10に示したように、中性アミノ酸の場合、再溶解度の改善効果を全く示すことができず、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸で再溶解度及び時間を改善する効果があることを確認した。しかし、酸性アミノ酸で現われる酸性アミノ酸により剤形の硬度が低くなって現われる高分子(carbomer)成分の再溶解性が高くなったことが確認され、このような効果は、塩基性アミノ酸を用いる場合、固体相のポリマーと水の結合力を弱化させて再溶解性を増加させる効果に比べて改善程度が顕著に低いことが分かる。
【国際調査報告】