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特表2022-547507加工プログラム作成装置及び加工プログラム作成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】加工プログラム作成装置及び加工プログラム作成方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
B21D5/02 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514987
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033981
(87)【国際公開番号】W WO2021054204
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201941038166
(32)【優先日】2019-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】仙波 晃
(72)【発明者】
【氏名】トラット ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】ディヴァカラン ラジ プラシャント
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA02
4E063BA07
4E063CA07
4E063GA04
4E063KA20
(57)【要約】
トポロジーデータベース(30)は複数の部品のトポロジーデータを作成する。トポロジーデータベース(30)は、各部品の曲げ加工プログラムより、使用金型の金型名称と曲げ順とを含む加工情報を取得して、トポロジーデータと対応付けて記憶している。加工情報取得部(103)は、加工対象の部品のトポロジーデータと同一のトポロジーデータを有する類似部品を検索して、類似部品の加工情報を取得する。金型決定部(104)は、各曲げ線を加工情報に含まれる金型名称を有する金型で曲げることができ、かつ、部品と干渉しない金型長さの範囲を計算し、金型長さの範囲内の金型長さを有して、金型名称を有する金型を使用金型と決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トポロジーデータベースが、加工データ管理データベースに記憶されている複数の部品の各部品が有する面または曲げ線の幾何学的な関係を示すトポロジーデータを作成し、前記加工データ管理データベースに記憶されている前記各部品を曲げ加工するための曲げ加工プログラムより、前記各部品の複数の曲げ線における各曲げ線を曲げ加工するために使用された使用金型の金型名称と、前記複数の曲げ線を曲げ加工する曲げ順とを含む加工情報を取得して、前記各部品のトポロジーデータと対応付けて記憶しており、
前記トポロジーデータベースより加工対象の部品のトポロジーデータと同一のトポロジーデータを有する類似部品を検索して、前記類似部品の加工情報を取得する加工情報取得部と、
前記加工対象の部品の複数の曲げ線における各曲げ線を、前記加工情報取得部が取得した加工情報に含まれる金型名称を有する金型で曲げることができ、かつ、前記部品と干渉しない金型長さの範囲を計算し、前記金型長さの範囲内の金型長さを有して、前記金型名称を有する金型を使用金型と決定する金型決定部と、
前記複数の曲げ線を、前記金型決定部が決定した使用金型を用いて、前記加工情報取得部が取得した加工情報に含まれる曲げ順で曲げ加工する曲げ加工プログラムを作成する曲げ加工プログラム作成部と、
を備える加工プログラム作成装置。
【請求項2】
前記加工対象の部品を前記各曲げ線で曲げる前または曲げた後に前記部品と金型との干渉が発生するか否かを判定する干渉発生有無判定部と、
前記干渉発生有無判定部によって前記部品をいずれかの曲げ線で曲げる前または曲げた後に前記部品と金型との干渉が発生すると判定されたとき、前記部品と金型との干渉を解消するよう、前記金型決定部が決定した使用金型の表裏を反転する金型補正部と、
をさらに備え、
前記曲げ加工プログラム作成部は、反転された前記使用金型に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項1に記載の加工プログラム作成装置。
【請求項3】
前記金型補正部は、前記使用金型の表裏を反転しても前記部品と金型との干渉が解消されないと判定したとき、前記部品と金型との干渉を解消するよう、前記金型決定部が決定した使用金型以外の金型を代替金型として選択し、
前記曲げ加工プログラム作成部は、前記金型補正部が選択した代替金型に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項2に記載の加工プログラム作成装置。
【請求項4】
前記トポロジーデータベースが記憶している前記加工情報は、前記使用金型を表向きで使用するか裏向きで使用するかを指定する金型表裏情報をさらに含み、
前記金型補正部は、前記金型決定部が決定した使用金型の表裏を、前記加工情報の金型表裏情報で指定されている表裏と反転させる
請求項2または3に記載の加工プログラム作成装置。
【請求項5】
前記トポロジーデータベースが記憶している前記加工情報は、各曲げ線を曲げ加工する際にバックゲージの突き当てを前記各部品に突き当てる突き当て方向をさらに含み、
前記曲げ加工プログラム作成部は、前記加工情報に含まれる突き当て方向に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項1~4のいずれか1項に記載の加工プログラム作成装置。
【請求項6】
前記加工対象の部品の各曲げ線を曲げ加工するときにバックゲージの突き当てを前記加工対象の部品に突き当てる突き当て位置を設定する突き当て位置設定部をさらに備え、
前記曲げ加工プログラム作成部は、前記突き当て位置設定部が設定した突き当て位置に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項1~4のいずれか1項に記載の加工プログラム作成装置。
【請求項7】
前記突き当て位置設定部は、前記加工対象の部品の辺に対する前記突き当ての突き当て位置のオフセット量を、前記類似部品の辺に対する前記突き当ての突き当て位置のオフセット量に基づいて計算するかユーザパラメータより取得し、
前記曲げ加工プログラム作成部は、前記突き当て位置設定部が計算するか取得した前記オフセット量に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項6に記載の加工プログラム作成装置。
【請求項8】
トポロジーデータベースが、加工データ管理データベースに記憶されている複数の部品の各部品が有する面または曲げ線の幾何学的な関係を示すトポロジーデータを作成し、前記加工データ管理データベースに記憶されている前記各部品を曲げ加工するための曲げ加工プログラムより、前記各部品の複数の曲げ線における各曲げ線を曲げ加工するために使用された使用金型の金型名称と、前記複数の曲げ線を曲げ加工する曲げ順とを含む加工情報を取得して、前記各部品のトポロジーデータと対応付けて記憶しており、
コンピュータ機器が、
前記トポロジーデータベースより加工対象の部品のトポロジーデータと同一のトポロジーデータを有する類似部品を検索して、前記類似部品の加工情報を取得し、
前記加工対象の部品の複数の曲げ線における各曲げ線を、前記加工情報に含まれる金型名称を有する金型で曲げることができ、かつ、前記部品と干渉しない金型長さの範囲を計算し、前記金型長さの範囲内の金型長さを有して、前記金型名称を有する金型を使用金型と決定し、
前記複数の曲げ線を、決定した使用金型を用いて、前記加工情報に含まれる曲げ順で曲げ加工する曲げ加工プログラムを作成する
加工プログラム作成方法。
【請求項9】
前記コンピュータ機器が、
前記加工対象の部品を前記各曲げ線で曲げる前または曲げた後に前記部品と金型との干渉が発生するか否かを判定し、
前記部品をいずれかの曲げ線で曲げる前または曲げた後に前記部品と金型との干渉が発生すると判定したとき、前記部品と金型との干渉を解消するよう、前記使用金型の表裏を反転し、
反転した前記使用金型に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項8に記載の加工プログラム作成方法。
【請求項10】
前記コンピュータ機器が、
前記使用金型の表裏を反転しても前記部品と金型との干渉が解消されないと判定したとき、前記部品と金型との干渉を解消するよう、決定した使用金型以外の金型を代替金型として選択し、
選択した代替金型に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項9に記載の加工プログラム作成方法。
【請求項11】
前記トポロジーデータベースが記憶している前記加工情報は、前記使用金型を表向きで使用するか裏向きで使用するかを指定する金型表裏情報をさらに含み、
前記コンピュータ機器が、決定した使用金型の表裏を、前記加工情報の金型表裏情報で指定されている表裏と反転させる
請求項9または10に記載の加工プログラム作成方法。
【請求項12】
前記トポロジーデータベースが記憶している前記加工情報は、各曲げ線を曲げ加工する際にバックゲージの突き当てを前記各部品に突き当てる突き当て方向をさらに含み、
前記コンピュータ機器が、前記加工情報に含まれる突き当て方向に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項8~11のいずれか1項に記載の加工プログラム作成方法。
【請求項13】
前記コンピュータ機器が、
前記加工対象の部品の各曲げ線を曲げ加工するときにバックゲージの突き当てを前記加工対象の部品に突き当てる突き当て位置を設定し、
設定した突き当て位置に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項8~11のいずれか1項に記載の加工プログラム作成方法。
【請求項14】
前記コンピュータ機器が、
前記加工対象の部品の辺に対する前記突き当ての突き当て位置のオフセット量を、前記類似部品の辺に対する前記突き当ての突き当て位置のオフセット量に基づいて計算するかユーザパラメータより取得し、
計算するか取得した前記オフセット量に基づいて前記曲げ加工プログラムを作成する
請求項13に記載の加工プログラム作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工プログラム作成装置及び加工プログラム作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキは、曲げ加工プログラムに基づいて板金を折り曲げて所定の部品を作製する。プレスブレーキの所有者が部品を作製するために板金を曲げ加工する際には、所有者独自のルールまたはノウハウが存在することがある。所定の部品を作製するときに、所有者独自のルールまたはノウハウを反映させるためには、所有者が過去に作製した部品の曲げ加工プログラムを参照するのがよい。
【0003】
特許文献1には、過去に作成された複数の部品のトポロジーデータに基づいて新たに作製しようとする部品と類似の部品を検索して、類似部品の曲げ加工プログラムを用いて板金を曲げ加工することによって新たな製品を作製することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5971589号明細書
【発明の概要】
【0005】
ところが、トポロジーデータに基づいて選択した類似部品の曲げ加工プログラムを用いて板金を曲げ加工して部品を作製しようとしても、実際には、部品を曲げ加工できないことがある。
【0006】
1またはそれ以上の実施形態は、トポロジーデータに基づいて選択した類似部品の曲げ加工プログラムを参照して、実際に部品を曲げ加工することができる加工プログラム作成装置及び加工プログラム作成方法を提供することを目的とする。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、トポロジーデータベースが、加工データ管理データベースに記憶されている複数の部品の各部品が有する面または曲げ線の幾何学的な関係を示すトポロジーデータを作成し、前記加工データ管理データベースに記憶されている前記各部品を曲げ加工するための曲げ加工プログラムより、前記各部品の複数の曲げ線における各曲げ線を曲げ加工するために使用された使用金型の金型名称と、前記複数の曲げ線を曲げ加工する曲げ順とを含む加工情報を取得して、前記各部品のトポロジーデータと対応付けて記憶しており、前記トポロジーデータベースより加工対象の部品のトポロジーデータと同一のトポロジーデータを有する類似部品を検索して、前記類似部品の加工情報を取得する加工情報取得部と、前記加工対象の部品の複数の曲げ線における各曲げ線を、前記加工情報取得部が取得した加工情報に含まれる金型名称を有する金型で曲げることができ、かつ、前記部品と干渉しない金型長さの範囲を計算し、前記金型長さの範囲内の金型長さを有して、前記金型名称を有する金型を使用金型と決定する金型決定部と、前記複数の曲げ線を、前記金型決定部が決定した使用金型を用いて、前記加工情報取得部が取得した加工情報に含まれる曲げ順で曲げ加工する曲げ加工プログラムを作成する曲げ加工プログラム作成部とを備える加工プログラム作成装置が提供される。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、トポロジーデータベースが、加工データ管理データベースに記憶されている複数の部品の各部品が有する面または曲げ線の幾何学的な関係を示すトポロジーデータを作成し、前記加工データ管理データベースに記憶されている前記各部品を曲げ加工するための曲げ加工プログラムより、前記各部品の複数の曲げ線における各曲げ線を曲げ加工するために使用された使用金型の金型名称と、前記複数の曲げ線を曲げ加工する曲げ順とを含む加工情報を取得して、前記各部品のトポロジーデータと対応付けて記憶しており、コンピュータ機器が、前記トポロジーデータベース(30)より加工対象の部品のトポロジーデータと同一のトポロジーデータを有する類似部品を検索して、前記類似部品の加工情報を取得し、前記加工対象の部品の複数の曲げ線における各曲げ線を、前記加工情報に含まれる金型名称を有する金型で曲げることができ、かつ、前記部品と干渉しない金型長さの範囲を計算し、前記金型長さの範囲内の金型長さを有して、前記金型名称を有する金型を使用金型と決定し、前記複数の曲げ線を、決定した使用金型を用いて、前記加工情報に含まれる曲げ順で曲げ加工する曲げ加工プログラムを作成する加工プログラム作成方法が提供される。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置及び加工プログラム作成方法によれば、トポロジーデータに基づいて選択した類似部品の曲げ加工プログラムを参照して、実際に部品を曲げ加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置を備える加工システムを示すブロック図である。
図2A図2Aは、加工データ管理データベースに部品データ及び曲げ加工プログラムが記憶されている部品P1、及びそのトポロジーデータを示す図である。
図2B図2Bは、加工データ管理データベースに部品データ及び曲げ加工プログラムが記憶されている部品P2、及びそのトポロジーデータを示す図である。
図2C図2Cは、加工データ管理データベースに部品データ及び曲げ加工プログラムが記憶されている部品P3、及びそのトポロジーデータを示す図である。
図3A図3Aは、バックゲージの突き当てを部品P4に突き当てる第1の突き当て方向を示す平面図である。
図3B図3Bは、バックゲージの突き当てを部品P4に突き当てる第2の突き当て方向を示す平面図である。
図4図4は、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置の構成例を示すブロック図である。
図5図5は、加工対象の部品の一例である部品P5、及びそのトポロジーデータを示す図である。
図6A図6Aは、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置が実行する処理、及び、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を示す部分的なフローチャートである。
図6B図6Bは、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置が実行する処理、及び、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を示す、図6Aに続く部分的なフローチャートである。
図6C図6Cは、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置が実行する処理、及び、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を示す、図6Bに続く部分的なフローチャートである。
図6D図6Dは、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置が実行する処理、及び、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成方法を示す、図6Cに続く部分的なフローチャートである。
図7図7は、干渉領域の計算処理の基本モデルを示す斜視図である。
図8図8は、図5に示す部品P5を曲げ線BL1で曲げる際の干渉領域の計算処理を示す斜視図である。
図9図9は、部品P5の曲げ線BL1を曲げることができる最も短い金型長さを示す平面図である。
図10A図10Aは、曲げ線BL01、BL02、及びBL1を有する曲げ前の部品P6を示す平面図である。
図10B図10Bは、図10Aに示す部品P6を曲げ線BL01及びBL02で曲げた状態を示す平面図である。
図11A図11Aは、曲げ線BL0及びBL1を有する曲げ前の部品P7を示す平面図である。
図11B図11Bは、図11Aに示す部品P7を曲げ線BL0で曲げた状態を示す平面図である。
図12図12は、図6Dに示すステップS16の具体的な処理の一例を示すフローチャートである。
図13A図13Aは、類似部品P1の突き当て位置のオフセット量を加工対象の部品P5の突き当て位置に反映させた状態を示す平面図である。
図13B図13Bは、類似部品P1の突き当て位置のオフセット量を示す平面図である。
図14A図14Aは、図5に示す部品P5を曲げ線BL1で曲げた状態を示す斜視図である。
図14B図14Bは、図14Aに示す部品P5を曲げ線BL2で曲げる際の金型長さを示す断面図である。
図15A図15Aは、図5に示す部品P5を曲げ線BL1~BL3で曲げた状態を示す斜視図である。
図15B図15Bは、図15Aに示す部品P5を曲げ線BL4で曲げる際の金型長さを示す断面図である。
図16A図16Aは、部品P8の曲げ加工を開始した後に部品P8に形成したフランジが金型と干渉することを示す概念図である。
図16B図16Bは、図16Aにおいて金型の表裏を反転することによってフランジと金型との干渉を解消して部品P8を曲げ加工した状態を示す部分的な側面図である。
図17A図17Aは、フランジを有する部品P9を曲げる前の状態を示す部分的な側面図である。
図17B図17Bは、図17Aに示す部品P9の曲げ加工を開始した後にフランジが金型と干渉し、金型の表裏を反転してもフランジと金型との干渉を解消されないことを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置及び加工プログラム作成方法について、添付図面を参照して説明する。図1は、1またはそれ以上の実施形態の加工プログラム作成装置10を備えて構成される加工システムを示す。図1において、加工プログラム作成装置10には、表示部11及び操作部12が接続されている。加工プログラム作成装置10は、コンピュータ支援製造(CAM)機能を有するコンピュータ機器によって構成することができる。
【0012】
加工プログラム作成装置10には、加工データ管理データベース20、トポロジーデータベース30、部品管理データベース40、金型管理データベース50が接続されている。加工データ管理データベース20には、例えば、図2A図2Cに示す部品P1~P3の各部品データに対応付けて、部品P1~P3を作製するための曲げ加工プログラムが記憶されている。
【0013】
プレスブレーキ61~63または図示されていない他のプレスブレーキは、加工データ管理データベース20に記憶されている曲げ加工プログラムを用いて板金を曲げ加工して部品を作製する。
【0014】
トポロジーデータベース30は、加工データ管理データベース20に記憶されている複数の部品の部品データに基づいて、各部品のトポロジーデータを作成する。トポロジーデータとは、各部品が有する面または曲げ線の幾何学的な関係を示すデータである。図2A図2Cに示す例では、部品P1~P3は一点鎖線で示す曲げ線BL1~BL6を有する。トポロジーデータベース30は、図2A図2Cに示す部品P1~P3の右隣に示すように、曲げ線BL1~BL6の幾何学的な関係を示すトポロジーデータを作成する。
【0015】
トポロジーデータベース30は、さらに、各部品の曲げ加工プログラムより、各曲げ線を曲げるために使用した金型(使用金型)の金型名称、金型表裏情報、複数の曲げ線の曲げ順、各曲げ線を曲げるときの突き当て方向の各情報を加工情報として取得する。トポロジーデータベース30には、各部品の部品名に対応付けてトポロジーデータ及び加工情報が記憶されている。
【0016】
使用金型とはパンチとダイの組であり、パンチ及びダイが金型名称で特定される。金型名称とは、金型の断面形状が同一で長さの異なる複数の金型をまとめて管理する名称である。金型名称は複数桁の数字で表現されていてもよいし、数字とアルファベットとの組み合わせで表現されていてもよいし、複数のアルファベットで表現されていてもよい。
【0017】
なお、金型の長さとは、金型をプレスブレーキに装着したときの左右方向の幅である。同一の金型名称に含まれる個々の長さの金型には固有の金型番号が付されている。パンチには、標準パンチ、グースネックパンチ、サッシ用パンチ、直剣パンチ等の金型種別が存在する。ダイには、サッシ1V、厚板1V、2V等の金型種別が存在する。金型表裏情報とは、使用金型を表向きで使用するか裏向きで使用するかを指定する情報である。
【0018】
突き当て方向とは、各曲げ線を曲げ加工する際にバックゲージの突き当てを各部品に突き当てる方向であり、換言すれば、突き当てを突き当てる部品の辺を示す。図3A及び図3Bは、部品P4の曲げ線BLを曲げるときの2つの突き当て方向を示している。部品P4はダイTd上に載置されており、図示していないパンチの先端を曲げ線BLに押し当てて、パンチをダイTdに向けて押し込むことにより、部品P4は曲げ線BLで曲げられる。このとき、部品P4の奥側の端部には、バックゲージの突き当て601が突き当てられている。
【0019】
図3Aは、曲げ線BLに近い側の辺をプレスブレーキの奥側に位置させて突き当て601を突き当てている第1の突き当て方向を示す。図3Bは、曲げ線BLと遠い側の辺をプレスブレーキの奥側に位置させて突き当て601を突き当てている第2の突き当て方向を示す。
【0020】
トポロジーデータベース30は、使用金型の金型名称と複数の曲げ線の曲げ順のみを加工情報として取得してもよい。この場合、トポロジーデータベース30には、各部品の部品名に対応付けてトポロジーデータ及び金型名称及び曲げ順よりなる加工情報が記憶される。
【0021】
部品管理データベース40には、加工プログラム作成装置10によって作成される曲げ加工プログラムによって曲げ加工される各種の部品の部品データが記憶されている。金型管理データベース50には、板金を曲げ加工する際に用いられる各種の金型情報が記憶されている。金型情報は、金型番号、パンチとダイとの区別、金型名称、金型種別、金型の長さ、金型の高さ、パンチの先端の角度、ダイのV字状の溝の幅(V幅)等の情報を含む。
【0022】
図4は、加工プログラム作成装置10の機能的な内部構成例を示す。加工プログラム作成装置10は、部品データ取得部101、トポロジーデータ作成部102、加工情報取得部103、金型決定部104、干渉発生有無判定部105、金型補正部106、突き当て位置設定部107、曲げ加工プログラム作成部108を有する。図4に示す加工プログラム作成装置10の機能的な構成は、コンピュータ装置がCAMプログラムを実行することによって構成することができる。
【0023】
図6A図6Dに示すフローチャートを用いて、加工プログラム作成装置10が曲げ加工プログラムを作成する手順を説明する。図6Aにおいて、部品データ取得部101は、ステップS1にて、部品管理データベース40より加工対象の部品の部品データを取得する。一例として、図5に示す部品P5を加工対象の部品とする。加工対象の部品P5は操作部12によって指示される。トポロジーデータ作成部102は、ステップS2にて、部品P5のトポロジーデータを作成して、加工情報取得部103に供給する。図5において、部品P5の右隣に示すトポロジーデータが作成される。
【0024】
加工情報取得部103は、ステップS2にて、入力されたトポロジーデータと同一のトポロジーデータを有する類似部品をトポロジーデータベース30より検索する。図5に示す部品P5のトポロジーデータは、図2Aに示す部品P1のトポロジーデータと一致する。そこで、加工情報取得部103は、ステップS2にて、トポロジーデータベース30に記憶されている部品P1を類似部品として抽出する。
【0025】
加工情報取得部103は、ステップS3にて、類似部品である部品P1の加工情報である使用金型の金型名称、金型表裏情報、曲げ順、突き当て方向を取得する。上記のように、加工情報取得部103は、ステップS3にて、部品P1の加工情報として使用金型の金型名称及び曲げ順のみを取得してもよい。加工情報取得部103は、ステップS4にて、加工対象の部品P5に対して金型名称、金型表裏情報、曲げ順、突き当て方向を設定する。加工情報取得部103は、ステップS4にて、加工対象の部品P5に対して金型名称及び曲げ順のみを設定してもよい。金型決定部104は、ステップS5にて、曲げ順に従って1つの曲げ線を選択する。
【0026】
金型決定部104は、図6BのステップS6にて、設定された金型名称の金型の無限長さの金型モデルを用いて、干渉領域の計算処理を実行する。このとき、金型決定部104は部品データ取得部101が取得した部品データを用いて干渉領域の計算処理を実行する。ここでは無限長さの金型モデルを用いているが、干渉領域の計算処理においては部品の大きさを超える長さの金型を用いて部品を曲げることを考えればよい。
【0027】
図7を用いて、干渉領域の計算処理の基本モデルを説明する。図7に示す基本モデルの部品Pxを曲げ領域Ax1の曲げ線BLxを曲げる場合を考える。曲げ線BLxを、設定された金型名称の金型の無限長さの金型モデルであるパンチTpx及びダイTdxで曲げるとする。このとき、部品Pxを曲げ線BLxで曲げると領域Ax2及びAx3がダイTdxと干渉するから領域Ax2及びAx3は干渉領域Ax2及びAx3となる。曲げ領域Ax1と干渉領域Ax2及びAx3との間は、非干渉領域Ax12及びAx13となる。
【0028】
図8は、図5に示す部品P5の曲げ線BL1を曲げる際の干渉領域の計算処理を示す。設定された金型名称の金型の無限長さの金型モデルをパンチTp及びダイTdとする。図8においては、曲げ線BL1の長さの範囲が曲げ領域Ax1となるものの、干渉領域Ax2及びAx3及び非干渉領域Ax12及びAx13に相当する領域は存在しない。該当する領域が存在しないときに長さを例えば“00000”と表現するとする。図8において曲げ線BL1の長さが例えば100mmであるとき、曲げ領域Ax1、干渉領域Ax2及びAx3、非干渉領域Ax12及びAx13それぞれの長さは、100、00000、00000、00000、00000、00000と表現できる。
【0029】
干渉発生有無判定部105は、ステップS7にて、無限長さの金型モデルで加工対象の部品を選択した曲げ線で曲げる前または曲げた後に干渉が発生するか否かを判定する。図9において、曲げ線BL1を曲げるとき、曲げ線BL1の長さ以上の金型で曲げることが好ましい。しなしながら、実際には、曲げ線BL1の長さよりわずかに短くても曲げ線BL1を曲げることができる。図9において、長さをL1の曲げ線BL1の両端部において許容長さLaだけ短い金型であっても曲げ線BL1を曲げることができる。よって、曲げ線BL1を曲げることができる最も短い金型長さは長さL1aとなる。
【0030】
干渉発生有無判定部105は、ステップS7にて、長さL1aの範囲内に、曲げ線BL1を曲げる前に形成されたフランジ等が存在して、金型と干渉するか否かを判定する。図8においては、曲げ線BL1を曲げる前に形成されたフランジ等は存在せず干渉は発生しないため、干渉は発生しない(NO)と判定され、処理はステップS8に移行される。なお、干渉が発生するか否かの判定においては、部品を曲げる角度の情報が必要である。部品を曲げる角度の情報は、部品データより得ることができる。部品を曲げる角度の情報を、トポロジーデータの曲げ線の属性値より得てもよい。
【0031】
ここで、図10A及び図10Bに示す部品P6と、図11A及び図11Bに示す部品P7を用いてステップS7における干渉の発生の有無の判定についてさらに説明する。図10Aにおいて、部品P6は、左右の突出部610及び620が曲げ線BL01及びBL02で90度に曲げられた後に、長さL1の曲げ線BL1が曲げられるとする。図10Bは、突出部610及び620を曲げ線BL01及びBL02で90度に曲げた状態を示している。突出部610及び620にはそれぞれ曲げ線BL01及びBL02で曲げられたフランジ61F及び62Fが形成される。
【0032】
図9と同様に、長さL1の両端部から許容長さLaだけ短くした長さL1aを、曲げ線BL1を曲げることができる最も短い金型長さとすることができる。この場合、長さL1aの範囲が曲げ領域Ax1となる。部品P6を曲げ線BL1で曲げると、フランジ61F及び62Fは無限長さの金型モデルに干渉するから、フランジ61F及び62Fの板厚に相当する距離の範囲が干渉領域Ax2及びAx3となる。曲げ領域Ax1と干渉領域Ax2及びAx3との間は、非干渉領域Ax12及びAx13となる。
【0033】
図10Bにおいては、金型長さを長さL1a以上で、最大でも長さL1aに非干渉領域Ax12及びAx13の長さを加えた長さ未満とすれば、フランジ61F及び62Fに干渉することなく、曲げ線BL1を曲げることができる。よって、加工対象の部品が部品P6であって、選択した曲げ線が図10Bに示す曲げ線BL1であるとき、ステップS7で干渉は発生しないと判定される。
【0034】
図11Aにおいて、部品P7には切り欠き70cが形成されている。切り欠き70cで囲まれた切り起こし片70が根元の曲げ線BL0で90度に曲げられた後に、長さL1の曲げ線BL1が曲げられるとする。図11Bは、切り起こし片70を曲げ線BL0で90度に曲げた状態を示している。切り起こし片70を曲げ線BL0で90度に曲げることによってフランジ70Fが形成される。
【0035】
図11Bにおいても、長さL1の両端部から許容長さLaだけ短くした長さL1aを、曲げ線BL1を曲げることができる最も短い金型長さとすることができる。この場合、長さL1aの範囲が曲げ領域Ax1となる。図11Bにおいて、部品P7を曲げ線BL1で曲げると、フランジ70Fは曲げ領域Ax1内に存在するから、ステップS7で干渉が発生する(YES)と判定される。ステップS7で干渉が発生すると判定されと、処理は図6CのステップS10に移行される。
【0036】
図6Bに戻り、金型決定部104は、ステップS8にて、干渉領域情報に基づいて、選択した曲げ線を曲げることができ、かつ、部品(曲げ線以外の領域)と干渉しない金型長さの範囲を計算する。図8に示す例では、金型決定部104は、長さL1a以上の金型長さを、曲げ線BL1を曲げることができる金型長さとすることができる。図8においては金型長さを長くしても干渉が発生しない。よって、最も短い金型長さL1a以上を、選択した曲げ線を曲げることができ、かつ、部品と干渉しない金型長さの範囲とする。
【0037】
また、金型決定部104は、ステップS8にて、計算された金型長さの範囲内の金型長さを有する、設定された金型名称の金型を使用金型と決定する。このとき、金型決定部104は、金型管理データベース50が管理している金型のうち、計算した金型長さの範囲内の金型長さを有する金型を選択する。図8の例では、金型決定部104は、金型長さL1a以上の金型を選択する。なお、金型長さの範囲内の金型長さを有する金型が複数存在する場合、金型決定部104は最も短い金型を選択する。
【0038】
干渉発生有無判定部105は、ステップS9にて、決定した使用金型を金型表裏情報で指定された表向きまたは裏向きで用いて、加工対象の部品を選択した曲げ線で曲げたときに部品と金型とが干渉するか否かを判定する。通常、金型は表向きが優先的に使用される。加工情報取得部103が金型表裏情報を取得しなかった場合には、干渉発生有無判定部105は、使用金型を表向きで用いて干渉するか否かを判定すればよい。
【0039】
図8において、無限長さのパンチTp及びダイTdに代えて、上記のように選択した使用金型のパンチTp及びダイTdで曲げ線BL1を曲げたときに、部品と金型とが干渉するか否かが判定される。ここでは、部品とパンチTpまたはダイTdとは干渉しない(NO)と判定される。よって、金型補正部106は加工情報における使用金型の金型名称及び金型表裏情報を補正せず、処理を図6DのステップS16に移行させる。
【0040】
突き当て位置設定部107は、ステップS16にて、選択した曲げ線に対して突き当て位置を設定する。突き当て位置設定部107は、一対の突き当て601を突き当てる辺の長さまたは辺の形状に応じて突き当て位置を自動的に設定することができる。突き当て位置設定部107は、突き当て位置として類似部品の加工情報の設定値を用いてもよい。突き当て位置設定部107が突き当て位置を自動的に設定する代わりに、オペレータが突き当て位置を設定してもよい。
【0041】
ステップS16を、図12に示すステップS161及びS162で構成してもよい。この場合、突き当て位置設定部107は、ステップS161にて、類似部品の辺に対する突き当て位置のオフセット量を計算し、ステップS162にて、オフセット量を加工対象の部品に反映させて突き当て位置を設定する。ステップS16をステップS161及びS162で構成する場合、加工情報に、一対の突き当て601をプレスブレーキの幅方向のどこに位置させるかを示す位置情報を含ませる必要がある。
【0042】
図13Aにおいて、部品P5の曲げ線BL1を曲げるときに突き当て601を突き当てる辺は、図13Bにおいて、部品P1の曲げ線BL2(またはBL4)を曲げるときに突き当て601を突き当てる辺に相当する。部品P1の辺に対する突き当て位置のオフセット量Doffsetが図13Bに示す距離であるとする。オフセット量Doffsetは、一対の突き当て601の内側の端部から辺の端部までの距離である。
【0043】
図13Aに示すように、突き当て位置設定部107は、部品P5の曲げ線BL1を曲げるときにも、一対の突き当て601をオフセット量Doffsetだけオフセットさせた位置に突き当て位置を設定する。なお、突き当て位置設定部107は、オフセット量Doffsetをオペレータが設定した設定値(ユーザパラメータ)より取得してもよい。
【0044】
図6Dに戻り、金型決定部104は、ステップS17にて、全ての曲げ線を選択したか否かを判定する。全ての曲げ線を選択していなければ(NO)、金型決定部104は処理をステップS5に戻す。
【0045】
加工プログラム作成装置10は、曲げ線BL2以降も同様に、各曲げ線を曲げることができ、かつ、部品と干渉しない金型長さの範囲を計算して、計算した金型長さの範囲内の金型長さを有する金型を使用金型と決定する。
【0046】
図14Aは、部品P5を曲げ線BL1で曲げてフランジ51Fが形成された状態を示している。次の曲げ順の曲げ線BL2を曲げるとき、金型長さの範囲は図14Bに示すとおりとなる。図14Bは、図14Aに示す部品P5を曲げ線BL2で切断した断面図である。図14Bにおいて、曲げ線BL2の長さをL2とする。曲げられた曲げ線BL2の部分には内Rが存在する。よって、フランジ51Fの内面から内Rを避けるための距離Lsだけ離れた位置が、金型長さの範囲の最もフランジF1に近い端部となる。金型長さの範囲は、曲げ線BL2のフランジ51Fとは反対方向に制限なく伸ばすことができる。よって、範囲L2plsを金型長さの範囲とすることができる。
【0047】
図9と同様に、長さL2の両端部から許容長さLaだけ短くした長さL2aを、曲げ線BL2を曲げることができる最も短い金型長さとすることができる。
【0048】
図15Aは、部品P5を曲げ線BL1~BL3で曲げてフランジ51F、52F、及び53Fが形成された状態を示している。次の曲げ順の曲げ線BL4を曲げるとき、金型長さの範囲は図15Bに示すとおりとなる。図15Bは、図15Aに示す部品P5を曲げ線BL2と曲げ線BL4との間で切断した断面図である。フランジ51F及び53Fの各内面から距離Lsだけ短くした長さL4sを、曲げ線BL4を曲げることができる最も長い金型長さとすることができる。フランジF1及びF3の各内面から許容長さLaだけ短くした長さL4aを、曲げ線BL2を曲げることができる最も短い金型長さとすることができる。なお、図15Aに示す曲げ順は一例であって、他の例として、曲げ線BL5、BL2、BL6、BL4、BL1、BL3の曲げ順としてもよい。
【0049】
ステップS17にて全ての曲げ線を選択していれば(YES)、曲げ加工プログラム作成部108は、ステップS18にて、曲げ加工プログラムを作成して加工データ管理データベース20に保存し、処理を終了させる。曲げ加工プログラム作成部108は、金型管理データベース50より取得した金型情報と、加工情報取得部103が取得した加工情報または金型補正部106が後述するように作成した補正加工情報と、金型決定部104が決定した金型長さと、突き当て位置設定部107が設定した突き当て位置とに基づいて、曲げ加工プログラムを作成することができる。
【0050】
以上説明した部品P5とは異なる部品では、ステップS9にて部品と金型とが干渉すると判定されることがある。図6Bにおいて、ステップS9において部品と金型とが干渉する(YES)と判定されると、金型決定部104は、図6CのステップS10にて、設定された金型名称の金型の無限長さの金型モデルの表裏を反転する。ステップS7にて干渉が発生すると判定されて、ステップS10に移行した場合も同様である。
【0051】
金型決定部104は、ステップS11にて、表裏を反転した無限長さの金型モデルを用いて、干渉領域の計算処理を実行する。ステップS11での干渉領域の計算処理は、ステップS6の干渉領域の計算処理と同様である。干渉発生有無判定部105は、ステップS12にて、無限長さの金型モデルで加工対象の部品を選択した曲げ線で曲げる前または曲げた後に干渉が発生するか否かを判定する。ステップS12での判定処理はステップS7での判定処理と同様である。
【0052】
ステップS12にて干渉が発生する(YES)と判定されると、金型決定部104は、処理を図6DのステップS15に移行させる。ステップS15の処理については後述する。
【0053】
ステップS12にて干渉は発生しない(NO)と判定されると、金型決定部104は、ステップS13にて、干渉領域情報に基づいて、選択した曲げ線を曲げることができ、かつ、部品と干渉しない金型長さの範囲を計算する。また、金型決定部104は、ステップS13にて、計算された金型長さの範囲内の金型長さを有する、設定された金型名称の金型を使用金型と決定する。ステップS13での金型長さの範囲の計算処理及び使用金型の決定処理は、ステップS8での金型長さの範囲の計算処理及び使用金型の決定処理と同様である。
【0054】
ステップS10にて金型モデルの表裏を反転した後に、ステップS6~S8と同様のステップS11~S13を実行するのは、金型をプレスブレーキの前後方向に沿った面で切断したときの断面が前後方向に対称でないからである。使用金型の表裏を反転させると、部品と金型との干渉の状況が変化することがある。特に、標準パンチ及びグースネックパンチを使用金型としている場合、干渉の状況は大きく変化する。
【0055】
干渉発生有無判定部105は、図6DのステップS14にて、使用金型を反転した表裏で用いて、加工対象の部品を選択した曲げ線で曲げたときに部品と金型とが干渉するか否かを判定する。上記のように、加工情報取得部103が金型表裏情報を取得しなかった場合には、干渉発生有無判定部105はステップS9にて使用金型を表向きで用いて干渉するか否かを判定するので、ステップS14では使用金型を裏向きで用いて干渉するか否かを判定すればよい。
【0056】
図16A及び図16Bを用いて、ステップS10における金型表裏の反転のみで、部品と金型との干渉が解消される例を説明する。図16Aにおいて、パンチTpは図示していない上部テーブルに表向きに取り付けられている。部品P8はフランジ8Fを有しており、部品P8を曲げ線BL1で曲げると、フランジ8FとパンチTpとの干渉が発生する。
【0057】
図16Bに示すように、パンチTpの表裏を反転してパンチTpを上部テーブルに裏向きに取り付けると、フランジ8FとパンチTpとの干渉が発生せず、干渉が解消される。よって、図16Aの場合には、干渉発生有無判定部105は、ステップS14にて、干渉は発生しない(NO)と判定するので、パンチTpの表裏を反転した状態のパンチTpで金型長さが決定される。このとき、金型補正部106は、加工情報の金型表裏情報を、表裏を反転した金型表裏情報に置換した補正加工情報を作成する。
【0058】
図17A及び図17Bを用いて、ステップS10における金型表裏の反転のみでは、部品と金型との干渉が解消されない例を説明する。図17Aにおいて、パンチTpは図示していない上部テーブルに表向きに取り付けられている。部品P9は曲げ線BL0で曲げられることによって形成されたフランジ9Fを有している。図17Bに示すように、曲げ線BL1で部品P9を曲げると、フランジ9FとパンチTpとの干渉が発生する。
【0059】
図17A及び図17Bに示すパンチTpでは、パンチTpの表裏を反転してもフランジ9FとパンチTpとの干渉は解消されない。よって、図17Aの場合には、干渉発生有無判定部105は、ステップS14にて、干渉が発生する(YES)と判定し、処理がステップS15に移行される。金型補正部106は、ステップS15にて、金型管理データベース50で管理されている金型から干渉しない金型である代替金型を選択し、使用金型の金型名称を代替金型の金型名称に置換した補正加工情報を作成して、処理をステップS16に移行させる。ステップS12にて干渉が発生すると判定されて、ステップS15に移行した場合も同様である。
【0060】
金型補正部106は、ステップS15にて、ステップS13以前で設定した金型種別とは無関係に別の金型を選択してもよい。金型補正部106は、ダイTdの代替金型を選択するとき、部品と干渉しないV幅がより狭いダイTdまたは広いダイTdを選択してもよい。金型補正部106は、ステップS13以前で設定したダイTdのV幅とは無関係にV幅を選択してもよい。金型補正部106は、部品に設けたバーリングが金型と干渉するとき、バーリングと干渉しない金型を選択すればよい。
【0061】
以上のようにして、曲げ加工プログラム作成部108は、加工情報または補正加工情報に含まれる金型名称と、金型決定部104が決定した金型長さとに基づいて、加工対象の部品における各曲げ線を曲げ加工する際に使用する金型(使用金型)を決定する。曲げ加工プログラム作成部108は、金型管理データベース50で管理されている金型より使用金型を選択して曲げ加工プログラムを作成する。
【0062】
金型補正部106が金型表裏を反転した補正加工情報を作成した場合、曲げ加工プログラム作成部108は、使用金型の表裏を反転して曲げ加工プログラムを作成する。金型補正部106が代替金型に変更した補正加工情報を作成した場合、曲げ加工プログラム作成部108は、金型管理データベース50で管理されている金型より代替金型を選択して曲げ加工プログラムを作成する。
【0063】
金型補正部106は、パンチTpのみの表裏を反転することがあり、ダイTdのみの表裏を反転することがあり、パンチTp及びダイTdの表裏を反転することがある。金型補正部106は、パンチTpのみ代替金型を選択することがあり、ダイTdのみ代替金型を選択することがあり、パンチTp及びダイTd双方の代替金型を選択することがある。
【0064】
曲げ加工プログラムにおいて実際に使用される金型は、上記のように各曲げ線を曲げ加工する際に、部品の曲げ領域Ax1以外の領域と金型との干渉が発生しない金型である。部品の曲げ領域Ax1以外の領域とは、曲げ線の延長線上に存在する干渉領域Ax2及びAx3、または、1つ前までの曲げ順による曲げ加工によって形成されたフランジ等である。また、曲げ加工プログラムにおいて実際に使用される金型は、部品と金型との干渉が発生しないように金型表裏が設定されている。よって、加工プログラム作成装置10は、トポロジーデータに基づいて選択した類似部品の曲げ加工プログラムを参照して、実際に部品を曲げ加工することができる。
【0065】
ところで、図6AのステップS2において、加工対象の部品のトポロジーデータと同一のトポロジーデータを有する類似部品が複数存在することがある。この場合、加工プログラム作成装置10は表示部11に複数の類似部品を表示して、プレスブレーキの所有者(またはオペレータ)がいずれかの類似部品を選択してもよい。また、加工プログラム作成装置10は、最も類似度の高い類似部品を自動的に選択してもよい。
【0066】
また、同一のトポロジーデータを有する複数の部品に対して、使用金型の金型名称、金型表裏情報、曲げ順、突き当て方向のうちの少なくとも1つが異なる複数の加工情報が設定されていることがある。この場合、加工プログラム作成装置10は所定の優先順位で加工情報を選択すればよい。加工プログラム作成装置10は、加工プログラム作成装置10で選択されているプレスブレーキで曲げ加工する曲げ加工プログラムの加工情報を最優先(優先順位1)で取得するのがよい。加工プログラム作成装置10は、優先順位2として、プレスブレーキの機械名称のアルファベット順にプレスブレーキを選択して、選択したプレスブレーキで曲げ加工する曲げ加工プログラムの加工情報を取得してもよい。
【0067】
さらに、加工プログラム作成装置10は、機械名称に優先順位を設定し、優先順位に従って曲げ加工プログラムの加工情報を取得してもよい。
【0068】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。部品の形状とその曲げ方によっては、部品の曲げ加工を開始する前または開始した後に部品と金型との干渉が発生しないことがある。この場合には、金型決定部104が、各曲げ工程における曲げ線を曲げることができ、かつ、曲げ領域Ax1以外の領域と干渉しない金型長さを決定すれば十分である。金型補正部106が金型表裏を反転した補正加工情報を作成したり、代替金型の金型名称に置換した補正加工情報を作成したりする必要はない。よって、金型補正部106を設けることは必須ではない。
【0069】
金型補正部106を設ければ、部品の曲げ加工を開始する前または開始した後に部品と金型との干渉が発生する場合であっても、金型表裏を反転したり、代替金型を選択したりすることによって部品を曲げ加工することができる。よって、金型補正部106を設けることが好ましい。
【0070】
本願は、2019年9月21日に出願されたインド特許出願第201941038166号に基づく優先権を主張するものであり、その全ての開示内容は引用によりここに援用される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
【国際調査報告】