(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ポリアミド-イミドポリマー、ポリマー組成物、及びそれらを含む物品、並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/14 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
C08G73/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515024
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020074992
(87)【国際公開番号】W WO2021048074
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フロレス, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PB08
4J043PB14
4J043PB15
4J043QB24
4J043QB26
4J043QB33
4J043RA05
4J043RA34
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA46
4J043TA11
4J043TA21
4J043TA31
4J043UA041
4J043UA042
4J043XA03
4J043XA12
4J043XB13
4J043XB27
4J043YA01
4J043ZA21
4J043ZA23
4J043ZA32
4J043ZA33
4J043ZA34
4J043ZA51
4J043ZB03
4J043ZB47
4J043ZB51
(57)【要約】
本発明は、カルボン酸、酸無水物、及びエステル官能基からなる群から選択される3つのカルボキシル部位を含む少なくとも1種の脂環式酸成分と、少なくとも1種のジアミン成分との溶融重合による、ポリアミド-イミド(PAI)ポリマーの調製方法に関し、前記方法は、少なくとも200℃の温度での重合中に反応混合物を均一な液体の状態に維持する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カルボン酸、酸無水物、及びエステル官能基からなる群から選択される3つのカルボキシル部位を含む少なくとも1種の脂環式酸成分と;
b)少なくとも1種のジアミン成分と;
の溶融重合による、ポリアミド-イミド(PAI)ポリマーの調製方法であって、
少なくとも200℃の温度での重合中に反応混合物を均一な液体の状態に維持する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の脂環式酸成分が、式(I)及び(II):
【化1】
(式中:
- Zは、5~50個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を有する置換又は無置換の単環式又は多環式基からなる群から選択される脂環式部位であり;
- YはOR
aであり、R
aはH又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり;
- 式(II)において、少なくとも2つのY(C=O)は、Zの2つの隣接する炭素原子に結合している)
のいずれかに従う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Zが1~4個の脂肪族環を含む脂環式部位であり、前記脂環式部位が、縮合しているか、直接又は以下:-O-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
q-(qは1~5の整数である)
の架橋によって互いに架橋されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Zが、式(III-A)~(III-D):
【化2】
(Xは、-O-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
q-であり、qは、1~5の整数である)
を有する部位からなる群から選択される三価の脂環式部位である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の脂環式酸成分が、式(Ia)及び(IIa):
【化3】
のいずれかによるものである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ジアミン成分が、少なくとも2つのアミン部位-NH
2を含み及び任意選択的に1つ又は複数のヘテロ原子を含む脂肪族、脂環式、又は芳香族成分であり、前記ヘテロ原子は、好ましくはN、S、及びOの中から選択され、好ましくは、前記ジアミン成分が、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、ドデカメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が、脂肪族、脂環式、又は芳香族であり及び任意選択的にN、S、及びOの中から好ましくは選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む少なくとも1種の二酸成分又はその誘導体を更に含み、好ましくは、前記二酸成分が、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
添加された水の非存在下で、又は前記反応混合物の総重量を基準として50重量%未満の量の添加された水の存在下で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脂環式酸成分と前記ジアミン成分のいずれかが、逐次的に、徐々に、又は連続的に前記反応混合物中に添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記重合中に生成した前記水が、例えばコンデンサーを使用する分別蒸留によって、1mbar~30barの圧力で留去される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリアミド-イミド(PAI)。
【請求項12】
ASTM D3418標準に従ってDSCによって決定されるガラス転移温度(Tg)が、
- 少なくとも100℃、好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは少なくとも140℃、更に好ましくは少なくとも150℃である、及び/又は
- 最大250℃、好ましくは最大240℃、より好ましくは最大230℃、更に好ましくは最大220℃である、
請求項11に記載のPAIポリマー。
【請求項13】
ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量(Mn)が、
- 少なくとも5,000g/mol、好ましくは少なくとも10,000g/mol、より好ましくは少なくとも15,000g/molである、及び/又は
- 最大50,000g/mol、好ましくは最大45,000g/mol、より好ましくは最大40,000g/molである、
請求項11又は12に記載のPAIポリマー。
【請求項14】
ヘキサフルオロ-2-プロパノール、o-クレゾール、98%硫酸、ジメチルホルムアミドに可溶である、請求項11~13のいずれか一項に記載のPAIポリマー。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載のPAIポリマーを含むポリマー組成物。
【請求項16】
請求項11~14のいずれか一項に記載のPAIポリマー又は請求項15に記載のポリマー組成物を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月9日に出願された米国仮特許出願第62/897,473号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ポリアミド-イミド(PAI)ポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアミド-イミド(PAI)は、非常に優れた熱的、化学的、及び機械的特性を有する高性能ポリマーであり、そのため、耐高温性、耐食性、及び耐摩耗性と組み合わされた、高い機械的強度、剛性、及び低摩擦が必要とされる要求の厳しい用途に適している。これらの理由のため、これらは航空宇宙及び自動車産業、断熱材、コーティング、耐溶剤性膜、及び電子デバイスにおいて広く使用されている。
【0004】
PAIは、主鎖にアミド官能基とイミド官能基の両方を含むポリマーである。したがって、PAIポリマーは、ポリアミドとポリイミドのハイブリッド特性を示す傾向がある。イミド基の剛性の向上は、ポリマーに加水分解、薬品、及び熱に対する優れた安定性を付与するのみならず、特に芳香族モノマーに基づくポリマーに優れた機械的特性を付与する。ほとんどの市販のPAIポリマーは実際芳香族であり、典型的にはトリメリット酸、無水トリメリット酸、又はハロゲン化トリメリット酸に基づいている。
【0005】
PAI調製プロセス中に、2つの隣接するカルボン酸基(又は酸ハロゲン化物や酸無水物やエステルなどのそれらの誘導体)と一級アミン含有分子との間の反応からイミドが形成される。最初にアミック酸が形成され、水分子が更に除去されると、これはイミド環へと閉環する。
【0006】
イミド化反応は、特に芳香族モノマーに基づくPAIポリマーでは一般的には高温を必要とする。しかしながら、高温を使用すると、架橋副反応が生じ、加工性が制限されたPAIポリマー、更には熱硬化性樹脂のような構造になる。前記PAIポリマーは化学的に安定であるものの、溶融加工中の流動性が低く、従来の加工方法での高温での取り扱いにくさ(すなわち溶融加工される能力の低さ)及び溶解度の低さのため、特定の用途では使用が制限されている。
【0007】
前記PAIポリマーの優れた熱的及び機械的性能を維持すると同時に、これらの特性を改善するために、特にポリマーをグラフトしたり、それらを他のタイプのポリマーとブレンドしたり、添加剤や無機繊維との複合材料を形成したりすることによって、いくつかの試みが行われてきた。
【0008】
前記PAIポリマーの溶解性及び加工性を改善するための他の試みは、それらのポリマー鎖へのフレキシブルな結合及び脂環式単位の組み込みを伴っていた。例えば、特開2017-186560号公報には、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物(CTA)(無水トリメリット酸の代わりに)とm-キシリレンジアミン(MXD)とに基づくPAIが開示されている。前記PAIを得るためのこの文献に記載されている方法は、有機溶媒中の溶液で行われる。有機溶媒の使用は大きな欠点を有している。第1に、合成後のポリマーの回収は、非溶媒からのポリマーの析出、並びにポリマーの洗浄及び乾燥などの追加の段階を要する。第2に、一部の溶媒は有毒であり、そのため人及び環境に危険である。第3に、ポリマーは、通常、残留量の溶媒を含んでおり、これは場合によってはポリマーの機械的性能又は特定の用途におけるその使用に影響を及ぼす可能性があり、他の場合には溶媒が色の問題を引き起こす可能性がある。
【0009】
米国特許出願公開第2011/160407号明細書は、カルボキシル基を有する少なくとも1種の芳香族有機化合物と、少なくとも1種のジアミン化合物と、任意選択的な少なくとも1種の二酸化合物との溶融重合によるPAIポリマーの調製方法に関する。この文献は、芳香族有機化合物としてのトリメリット酸、ピロメリット酸、それらの無水物、それらのエステル、又はそれらのアミドの使用をより正確に説明している。ただし、芳香族であるため、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの無水物、それらのエステル、又はそれらのアミドに基づくPAIのイミド結合は、ポリマーに色(黄色~橙色~赤色)を付与する。
【0010】
上記文献のいずれにも、脂環式酸成分、例えば脂環式トリカルボン酸に基づいたPAIポリマーを調製するための有機溶媒フリーの重合プロセスは記載されていない。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、本発明は、
a)カルボン酸、酸無水物、及びエステル官能基からなる群から選択される3つのカルボキシル部位を含む少なくとも1種の脂環式酸成分と;
b)少なくとも1種のジアミン成分と;
の溶融重合による、ポリアミド-イミド(PAI)ポリマーの調製方法であって、
少なくとも200℃の温度での重合中に反応混合物を均一な液体の状態に維持する工程を含む、方法に関する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、前記方法によって得られるポリアミド-イミド(PAI)ポリマーに関する。
【0013】
第3の態様では、本発明は、前記PAIポリマーを含むポリマー組成物に関する。
【0014】
第4の態様では、本発明は、前記PAIポリマー又は前記ポリマー組成物を含む物品に関する。
【0015】
出願人は、驚くべきことに、本発明によるPAIポリマーが、少ない分岐及び制御された分岐などの興味深い一連の特性を示すことを見出した。本発明によるPAIポリマーは、高いガラス転移温度(Tg)などの良好な熱的及び機械的特性を維持しながらも、強化された溶解性、溶融加工性、及び成形性を示す。特に、本発明によるPAIポリマーは、押出成形や射出成形などの従来のポリマー加工技術を使用して容易に加工することができる。更に、本発明によるPAIポリマーは、フィルム及び他の物品へと容易に変換することができる。
【0016】
出願人は、興味深いことに、本発明によるPAIポリマー又はポリマー組成物を含む物品が無色透明であり、低い黄色度指数を示すことも見出した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的は、カルボン酸、酸無水物、及びエステル官能基からなる群から選択される3つのカルボキシル部位を含む少なくとも1種の脂環式酸成分と、少なくとも1種のジアミン成分との溶融重合による、ポリアミド-イミド(PAI)ポリマーの調製方法であり、前記方法は、少なくとも200℃の温度での重合中に反応混合物を均一な液体の状態に維持する工程を含む。
【0018】
本発明は、少ない分岐と優れた機械的特性とを有する無色透明のPAIポリマーも提供する。したがって、そのようなPAIポリマーは、押出成形や射出成形などの標準的なポリマー加工技術に従って加工することができる。これは、フィルムや他の物品へと変換することができる。
【0019】
本明細書において、別段の指示がない限り、以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0020】
「脂環式部位」という用語は、少なくとも1種の脂肪族環を含み且つ芳香環を含まない有機基を意味する。脂環式部位は、1つ以上の直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシ基及び/又はハロゲン原子で置換されていてもよく、並びに/又は環の中に窒素、酸素、及び硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0021】
「アルキル」という用語、及び「アルコキシ」などの派生用語は、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖、及び環状部位を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1ジメチルエチル、及びシクロプロピルである。別段の明記がない限り、各アルキル基は、無置換であっても、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオから選択されるがそれらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよいが、ただし、置換基が立体的に適合性を有しており且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0022】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0023】
脂環式酸成分
好ましい実施形態では、脂環式酸成分は、式(I)及び(II):
【化1】
(式中:
- Zは、5~50個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を有する置換又は無置換の単環式又は多環式基からなる群から選択される脂環式部位であり;
- YはOR
aであり、R
aはH又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり;
- 式(II)において、少なくとも2つのY(C=O)は、Zの2つの隣接する炭素原子に結合しており、これは少なくとも2つのカルボキシル部位が互いに対してオルト位にあることを意味する)
のいずれかに従う。
【0024】
好ましくは、Zは、1~4個の脂肪族環を含む脂環式部位である。Zが複数の脂肪族環、すなわち2つ以上の脂肪族環を含む場合、前記脂肪族環は縮合していてもよく、或いは直接又は以下の架橋によって互いに架橋されていてもよい:-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-(CF2)q-(qは1~5の整数である)。「直接」という用語は、脂肪族環が結合を介して互いに連結されていることを意味する。
【0025】
好ましくは、Zは、式(III-A)~(III-D):
【化2】
の部位からなる群から選択される三価の脂環式部位、及び対応する置換された構造であり、Xは、-O-、-C(O)-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-(CF
2)
q-であり、qは1~5の整数である。
【0026】
好ましい実施形態では、脂環式酸成分は、式(Ia)及び(IIa):
【化3】
のいずれかに従う。
【0027】
この実施形態によれば、本発明の方法は、
- 式(Ia)による脂環式酸成分と少なくとも1種のジアミン成分との溶融重合、
- 式(IIa)による脂環式酸成分と少なくとも1種のジアミン成分の溶融重合、又は
- 式(Ia)及び(IIa)による脂環式酸成分と少なくとも1種のジアミン成分との混合物の溶融重合、
を含む。
【0028】
ジアミン成分
本発明の方法で使用されるジアミン成分は、脂肪族、脂環式、又は芳香族であってよい。ジアミン成分は、少なくとも2つのアミン部位-NH2を含み、且つ任意選択的に1つ又は複数のヘテロ原子を含み、前記ヘテロ原子は、好ましくは、N、S、及びOの中から選択される。
【0029】
ジアミン成分は、好ましくは以下の式を示す:
H2N-R-NH2(IV)
(式中、Rは二価の炭化水素ラジカル、特に二価の脂肪族、脂環式、又は芳香族の炭化水素ラジカルである)。ラジカルRは、好ましくは、4~50個の炭素原子を含む。
【0030】
ジアミン成分は、好ましくは、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、ドデカメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、p-キシリレンジアミン、及びm-キシリレンジアミンからなる群から選択される。
【0031】
ジアミン成分は、別個のジアミン、例えば2種又は3種の別個のジアミンの混合物から構成されていてもよい。
【0032】
好ましくは、方法に関与するジアミン成分の総モル数を基準として、少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも65モル%、更に好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも95モル%のジアミン成分が脂環式である。
【0033】
好ましい実施形態によれば、ジアミン成分は、脂環式ジアミンの混合物、例えば2種又は3種の別個の脂環式ジアミンから構成される。
【0034】
別の好ましい実施形態によれば、ジアミン成分は、1種のみの脂環式ジアミンからなる。この場合、ジアミンは好ましくは1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである。
【0035】
二酸成分
一実施形態によれば、溶融重合が行われる反応混合物は、少なくとも1種の二酸成分又はその誘導体を更に含む。
【0036】
表現「その誘導体」は、重縮合条件で反応してアミド結合を生じやすいいずれの誘導体をも意味することが意図されている。アミド形成誘導体の例としては、アシル基、例えば置換若しくは無置換の脂肪族アシル及び芳香族アシル基が挙げられる。これらのアシル基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ベンゾイル、トルオイル及びキシロイルである。
【0037】
この追加の二酸成分は、脂肪族、脂環式、又は芳香族であってよい。前記二酸成分は、少なくとも2つのカルボン酸部位-COOHを含み、且つ任意選択的に1つ又は複数のヘテロ原子を含み、前記ヘテロ原子は、好ましくは、N、S、及びOの中から選択される。
【0038】
二酸成分は、好ましくは、以下の式を示す:
HOOC-R’-COOH(V)
(式中、R’は二価の炭化水素ラジカル、特に二価の脂肪族、脂環式、又は芳香族の炭化水素ラジカルである)。ラジカルRは、好ましくは4~18個の炭素原子を含む。
【0039】
二酸成分は、好ましくは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
溶融重合
本発明による方法は、上で特定された成分の溶融重合を含む。より正確には、前記方法は、少なくとも200℃の温度での重合中に反応混合物を均一な液体の状態に維持する工程を含む。
【0041】
「溶融重合」という用語は、少なくとも200℃の温度での重合の間、反応混合物が均一な液体の状態に維持されることを意味する。
【0042】
本発明との関係において、「均一な液体の状態」という用語は、反応混合物が、得られるPAIポリマーの凝固及び/又は析出なしに流動状態のままであることを意味する。
【0043】
重合中、調製中のPAIポリマーが溶融状態であるように、反応混合物は常に高温に加熱される。反応混合物を加熱すべき最低温度は、通常、調製されるPAIポリマーの融点又は軟化点に基づいて決定することができる。調製されるPAIポリマーの融点又は軟化点は、反応に関与する反応物の量、特に、例えば反応物の1つが反応混合物に徐々に添加される場合の制限反応物の量に基づいて、重合時間の間に変化し得る。この場合、調製されるPAIポリマーの融点又は軟化点は、制限反応物モノマーの完全な変換に基づいて決定することができる。制限反応物を反応混合物に逐次的に添加することができるため、本発明のPAIポリマーを調製するために、若干の温度上昇/増分が必要となる場合がある。次いで、重合プロセスの各工程は、製造されるPAIポリマーの融点又は軟化点以上の温度で行われる。
【0044】
方法は、有機溶媒の非存在下、溶融物中で行われる。言い換えると、この方法は有機溶媒を含まない。つまり、重合媒体は、有機溶媒を含まないか、反応混合物の総重量を基準として1重量%未満、0.5重量%未満、更には0.2重量%未満の量の有機溶媒を含む。ただし、本発明の方法は水を使用してもよい。
【0045】
異なる実施形態によれば、本発明の方法は、添加された水の非存在下で、又は反応混合物の総重量を基準として50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、更に好ましくは15重量%未満、最も好ましくは5重量%未満の量の添加された水の存在下で行われる。
【0046】
したがって、重合媒体は、上で特定された成分(すなわち前記少なくとも1種の脂環式酸成分、前記少なくとも1種のジアミン成分、及び任意選択的な前記少なくとも1種の二酸成分)を含む水溶液、又は前記成分を含む液体とすることができる。水は、媒体を撹拌し易くし、そのためその均一性を促進することから、好ましくは、重合媒体は、溶媒として水を含む。
【0047】
様々な実施形態によれば、脂環式酸成分とジアミン成分のいずれかは、逐次的に、徐々に、又は連続的に反応混合物中に添加される。
【0048】
好ましくは、反応混合物は、0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1、より好ましくは0.95~1.05、更に好ましくは0.97~1.03の範囲の当量比で前記脂環式酸成分及び前記ジアミン成分を含む。
【0049】
本発明の方法が二酸成分を使用する場合、二酸成分及びジアミン成分は、少なくとも部分的に、二酸及びジアミン成分の塩の形態で導入することができる。
【0050】
PAIポリマーは、通常、脂環式酸成分と、ジアミン成分と、任意選択的な二酸成分との間で重縮合を行い、脱離生成物、特には水の形成と共にポリアミド-イミド鎖を形成することによって得られる。好ましくは、プロセスの間に生成した水は、例えば、コンデンサーを使用する分別蒸留によって、1mbar~30barの圧力で留去される。
【0051】
反応混合物は、混合物が固化するのを防ぐために固相の形成を防止しながら、脱離生成物、特に水(最初に重合媒体に存在する、及び/又は重縮合中に形成される)を留去するために、少なくとも200℃、好ましくは215℃~300℃の温度での重合中、均一な液体の状態に維持される。
【0052】
本発明の方法は、方法の少なくとも一部について、加圧下で行うことができる。これらの場合、20barの最大圧力、好ましくは10barの最大圧力、より好ましくは3barの最大圧力が使用される。方法の終了は、反応を完了に向かわせ、反応中に形成された水をより除去し易くするために、いずれにせよ好ましくは低い圧力(真空又は大気圧)で行われる。
【0053】
この方法は、上で特定された成分(すなわち前記少なくとも1種の脂環式酸成分、前記少なくとも1種のジアミン成分、及び任意選択的な前記少なくとも1種の二酸成分)に対して不活性な材料から製造された装置内で行うことができる。この場合、装置は、前記成分間を十分に接触させるために、且つ揮発性反応生成物、特には水を除去することが実行可能であるように、選択される。適した装置としては、撹拌反応器、押出機、及びニーダーが挙げられる。反応容器は、好ましくは撹拌手段、例えば回転シャフトを備える。
【0054】
分子量を制御するために、鎖制限剤又はエンドキャッピング剤が反応混合物に添加されてもよい。鎖制限剤又はエンドキャッピング剤は、アミン及び/又はカルボン酸との反応部位を1つのみ有する分子である。エンドキャッピング剤の例は、ベンジルアミン及び1-ヘキサンアミンなどのモノアミン、並びに酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、又は無水物などのモノカルボン酸である。
【0055】
好ましくは、プロセス中の反応容器への成分の導入の順序は以下の通りである:最初に水が入れられ、次いでジアミン成分が入れられ、最後に脂環式酸成分が入れられ、そして任意選択的に二酸成分が添加される。
【0056】
好ましくは、容器内の雰囲気を置き換えるために、窒素ガスなどの不活性ガスが反応容器に導入される。好ましくは、反応容器は、上で特定された全ての成分を入れる前と後の両方で、前記不活性ガスでパージされる。好ましくは、不活性ガスの流れは方法の間維持される。
【0057】
ポリアミド-イミドポリマー
本発明の別の目的は、上で定義した方法によって得られるポリアミド-イミド(PAI)ポリマーである。
【0058】
好ましくは、前記PAIポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCによって決定される、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも120℃、更に好ましくは少なくとも140℃、最も好ましくは少なくとも150℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0059】
好ましくは、前記PAIポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCによって決定される、最大250℃、より好ましくは最大240℃、更に好ましくは最大230℃、最も好ましくは最大220℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0060】
好ましくは、前記PAIポリマーは、フッ素化溶媒と、2つのHFIPゲルカラムと、UV-vis/屈折率検出器とを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、少なくとも5,000g/mol、より好ましくは少なくとも10,000g/mol、更に好ましくは少なくとも15,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0061】
好ましくは、前記PAIポリマーは、フッ素化溶媒と、2つのHFIPゲルカラムと、UV-vis/屈折率検出器とを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、最大50,000g/mol、より好ましくは最大45,000g/mol、更に好ましくは最大40,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0062】
有利には、前記PAIポリマーは、様々な溶媒、特にヘキサフルオロ-2-プロパノール、o-クレゾール、98%硫酸、及びジメチルホルムアミドに可溶である。
【0063】
本発明の方法によって溶融形態で得られたPAIポリマーは、直接形成することができ、或いは溶融後のその後の形成のための押出成形及び射出成形などの従来のポリマー加工技術を使用して加工することができる。
【0064】
更に、本発明によるPAIポリマーは、フィルム及び他の物品へと容易に変換することができる。本発明のPAIポリマーは様々な有機溶媒に可溶であるため、フィルムは、当業者に公知の標準的なプロセスに従って、PAIポリマーを含む溶液をキャストしてから溶媒を蒸発させることにより有利に製造することができる。特に、前記フィルムは、溶液を得るためにPAIポリマーを溶媒に溶解し、その溶液を基材上にキャストし、最後に溶媒を蒸発させることによって製造することができる。
【0065】
前記PAIポリマーは、多くの用途、特に、糸、繊維若しくはフィラメント、若しくはフィルムの製造、又は射出成形、押出成形、若しくは押出/ブロー成形による物品の成形において使用することができる。これは、特にエンジニアリングプラスチック組成物において使用することができる。
【0066】
ポリマー組成物
本発明の別の目的は、本発明のPAIポリマーを含むポリマー組成物である。
【0067】
好ましくは、PAIポリマーは、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、更に好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも25重量%の量で、ポリマー組成物中に存在する。
【0068】
好ましくは、PAIポリマーは、ポリマー組成物の総重量を基準として最大99重量%、より好ましくは最大95重量%、更に好ましくは最大80重量%、最も好ましくは最大60重量%の量でポリマー組成物中に存在する。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、PAIポリマーは、ポリマー組成物の総重量を基準として10~70重量%、好ましくは20~60重量%の範囲の量でポリマー組成物中に存在する。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前記ポリマー組成物は、補強剤、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、融剤、電磁吸収剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加の添加剤を含む。
【0071】
補強充填剤又は繊維とも呼ばれる補強剤は、繊維状補強充填剤、粒子状補強充填剤、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。繊維状補強充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、繊維状補強充填剤は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の、長さと、最大の幅及び厚さとの間の平均比と定義される、アスペクト比を有する。
【0072】
繊維状補強充填剤には、ガラス繊維、炭素又はグラファイト繊維、及び炭化ケイ素、アルミナ、チタニア、ホウ素等から形成される繊維が含まれ、2種類以上のそのような繊維を含む混合物が含まれ得る。一実施形態によれば、前記繊維は平坦な繊維である。非繊維状強化充填剤には、特にタルク、マイカ、二酸化チタン、チタン酸カリウム、シリカ、カオリン、チョーク、アルミナ、鉱物充填剤などが含まれる。
【0073】
この実施形態によれば、PAIポリマーは、有利には前記少なくとも1種の追加の添加剤と混合される。好ましくは、PAIポリマーと前記少なくとも1種の追加の添加剤との混合は、乾式混合及び/又は溶融混錬によって行われる。より好ましくは、ポリアミド(PA)と前記少なくとも1種の追加の添加剤との混合は、特に連続式又はバッチ式装置において、溶融混錬によって行われる。そのような装置は、当業者に周知である。適切な連続式装置の例は、スクリュー押出機である。好ましくは、溶融混錬は、二軸押出機で実施される。
【0074】
物品
本発明は、前記PAIポリマー又は前記ポリマー組成物を含む物品にも関する。
【0075】
本発明による物品は、好ましくは成形品である。好ましくは、前記物品は、限定するものではないが、例えば射出成形、ブロー成形、回転成形、圧縮成形、又は押出成形などの方法によって、当該技術分野で周知の方法を使用して、PAIポリマー又は前記PAIポリマーを含むポリマー組成物から成形される。
【0076】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0077】
本発明はこれから以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0078】
材料
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物(CTA)、Mitsubishi Gas Chemicalsから入手可能。
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、Mitsubishi Gas Chemicalsから入手可能。
ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、Ascend Performance Materialsから入手可能。
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(PACM)、Sigma-Aldrichから入手可能。
リン酸、Sigma-Aldrichから入手可能。
【0079】
方法
熱分析
熱特性は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定した。DSC分析は、ASTMに従ってDSC Q200-5293 TA Instrumentで実施した。それぞれのDSC試験で3つの走査を用いた:20.00℃/分で300℃までの1回目の加熱サイクル;20.00℃/分で30.00℃までの1回目の冷却サイクル;20.00℃/分で300.00℃までの2回目の加熱サイクル。ガラス転移温度(Tg)は、2回目の加熱サイクル中の転移中点から決定した。
【0080】
GPC
Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0081】
溶解性
PAIポリマーの5mgのサンプルを5mlの溶媒に添加した。得られた混合物を室温で24~48時間撹拌し、サンプルの溶解又は軟化を記録した。サンプルが完全に溶解した場合に、それを可溶性であるとみなした。サンプルが48時間後に外観の変化を示さなかった場合、それを不溶性であるとみなした。ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)、o-クレゾール、98%硫酸、及びジメチルホルムアミド(DMF)への溶解度を試験した。
【0082】
黄色度試験
0.1~0.2mmの厚さを有するフィルムをホットプレス(280℃、2000lb-f)で作製した。黄色度指数は、X-Rite Ci7800分光光度計を使用して前記フィルムで測定した。
【0083】
機械的試験
以下に記載の通りに合成されたPAI1ポリマーをミルグラインダーで粉砕し、真空下で120℃で一晩乾燥した。次いで、140℃の成形温度、290℃の溶融温度、及び6barの射出圧力を使用して、これをASTM D3641に従ってタイプV引張棒へと射出成形した。機械的試験は、Instron 5569機を用いて及び54.7%湿度の23.2℃でASTM D638に準拠して0.3インチのゲージ長で射出成形試験検体に関して行った。ノッチ付きIzod衝撃強度は、射出成形試験検体を使用してASTM D256によって測定した。
【0084】
合成方法
ポリアミド-イミド1(PAI1)
CTA(53.9g)、1,3-BAC(39.1g)、リン酸(0.032g)、及び脱イオン水(42g)を300mlの反応器に入れた。その後、反応器を窒素で5分間パージし、撹拌し、2時間以内に280℃に加熱することによって重合反応を行った。発生した蒸気は、目標温度に到達後に放出した。次いで、反応器を真空にし、その後そのようにして得た溶融ポリマーをこの条件で更に1時間保持した。冷却後、ポリマーを反応器から取り出し、分析のために使用した。
【0085】
ポリアミド-イミド2(PAI2)
CTA(55.6g)、1,3-BAC(25.9g)、HMDA(11.7g)、リン酸(0.032g)、及び脱イオン水(42g)を300mlの反応器に入れた。その後、反応器を窒素で5分間パージし、撹拌し、2時間以内に280℃まで加熱して重合反応を行った。発生した蒸気は、目標温度に到達後に放出した。次いで、反応器を真空にし、その後そのようにして得た溶融ポリマーをこの条件で更に1時間保持した。冷却後、ポリマーを反応器から取り出し、分析のために使用した。
【0086】
ポリアミド-イミド3(PAI3)
CTA(50.7g)、PACM(27.1g)、HMDA(15.0g)、リン酸(0.032g)、及び脱イオン水(42g)を300mlの反応器に入れた。その後、反応器を窒素で5分間パージし、撹拌し、2時間以内に280℃まで加熱して重合反応を行った。発生した蒸気は、目標温度に到達後に放出した。次いで、反応器を真空にし、その後そのようにして得た溶融ポリマーをこの条件で更に1時間保持した。冷却後、ポリマーを反応器から取り出し、分析のために使用した。
【0087】
結果
表1は、本発明に従って調製されたPAI1、PAI2及びPAI3ポリマーのガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、黄色度指数、及び溶解度の結果を示している。
【0088】
表2は、PAI1の機械的特性を示している。
【0089】
【0090】
【0091】
上の表1で証明されるように、CTAと、異なるジアミン(1,3-BAC、HMDA、及びPACM)とに基づく高分子量PAIポリマーの調製に成功した。前記PAIポリマーは、150~176℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を示す。Tgは、ジアミン成分の性質と量を変えることで簡単に調整することができた。
【0092】
前記PAIポリマーは、非常に低い黄色度指数も示す。
【0093】
更に、これらのPAIポリマーは、複数の有機溶媒に可溶であることが明らかになった。このことは、これらの分岐が少なく且つ制御されていることを示している。
【0094】
表2に示されているように、PAI1は溶融加工され、パーツは射出成形によって製造された。このことは、PAI1も溶融加工性及び成形性を示すことを示している。PAI1は優れた機械的特性も示し、高い引張弾性率及び強度の組み合わせを有する。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カルボン酸、酸無水物、及びエステル官能基からなる群から選択される3つのカルボキシル部位を含む少なくとも1種の脂環式酸成分と、
b)少なくとも1種のジアミン成分と、
を含む反応混合物の溶融重合による、ポリアミド-イミド(PAI)ポリマーの調製方法であって、
重合中、前記反応混合物を、液体状態及び少なくとも200℃の温度に維持することを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の脂環式酸成分が、式(I)及び/又は(II):
【化1】
(式中:
Zは、5~50個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を有する置換又は無置換の単環式又は多環式基からなる群から選択される脂環式部位であり、
YはOR
aであり、R
aはH又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
式IIにおいて、少なくとも2つのY(C=O)部位は、互いに対してオルト位にある)
に従う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Zが1~4個の脂肪族環を含む脂環式部位であり、前記脂肪族環が、縮合しているか、直接又は以下:
-O-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、又は-(CF
2)
q-(qは1~5の整数である)
の架橋によって互いに架橋されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Zが、式(III-A)、(III-B)、(III-C)、及び(III-D):
【化2】
(式中、Xは、-O-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、又は-(CF
2)
q-であり、qは1~5の整数である)
を有する部位からなる群から選択される三価の脂環式部位である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の脂環式酸成分が、式(Ia)及び/又は(IIa):
【化3】
によるものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ジアミン成分が、脂肪族、脂環式、又は芳香族であり、少なくとも2つのアミン部位を含み、並びに任意選択的にN、S、及びOからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、前記ジアミン成分が、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、ドデカメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、及びこれらの混合物からなる群から好ましくは選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が、N、S、及びOからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択的に含む少なくとも1種の脂肪族、脂環式、又は芳香族の二酸成分又はその誘導体を更に含み、前記二酸成分が、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
有機溶媒の非存在下で、及び前記反応混合物の総重量を基準として50重量%未満の量の添加された水の存在下で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脂環式酸成分と前記ジアミン成分のいずれかが、逐次的に、徐々に、又は連続的に前記反応混合物中に添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記重合中に生成した前記水が、例えばコンデンサーを使用する分別蒸留によって、1mbar~30barの圧力で留去される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリアミド-イミド(PAI)ポリマー。
【請求項12】
ASTM D3418標準に従ってDSCによって決定されるガラス転移温度が、
- 少なくとも100℃、好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは少なくとも140℃、更に好ましくは少なくとも150℃である、及び/又は
- 最大250℃、好ましくは最大240℃、より好ましくは最大230℃、更に好ましくは最大220℃である、
請求項11に記載のPAIポリマー。
【請求項13】
フッ素化溶媒と、2本のHFIPゲルカラムと、UV-vis/屈折率検出器とを使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される数平均分子量(Mn)が、
- 少なくとも5,000g/mol、好ましくは少なくとも10,000g/mol、より好ましくは少なくとも15,000g/molである、及び/又は
- 最大50,000g/mol、好ましくは最大45,000g/mol、より好ましくは最大40,000g/molである、
請求項11又は12に記載のPAIポリマー。
【請求項14】
ヘキサフルオロ-2-プロパノール、o-クレゾール、98%硫酸、及び/又はジメチルホルムアミドに可溶である、請求項11~13のいずれか一項に記載のPAIポリマー。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載のPAIポリマーを含むポリマー組成物。
【請求項16】
請求項11~14のいずれか一項に記載のPAIポリマー又は請求項15に記載のポリマー組成物を含む物品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月9日出願の米国仮特許出願第62/897,473号に基づく優先権を主張する、2020年9月8日に出願された国際出願第PCT/EP2020/074992号の国内段階移行であり、これらそれぞれの出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ポリアミド-イミド(PAI)ポリマー、それを含むポリマー組成物、これらの製造方法、及びこれらを含む物品が提供される。
【背景技術】
【0003】
ポリアミド-イミド(PAI)は、非常に優れた熱的、化学的、及び機械的特性を有する高性能ポリマーであり、そのため、耐高温性、耐食性、及び耐摩耗性と組み合わされた、高い機械的強度、剛性、及び低摩擦が必要とされる要求の厳しい用途に適している。これらの理由のため、これらは航空宇宙及び自動車産業において、及び断熱材、コーティング、耐溶剤性膜として、及び電子デバイスにおいて、広く使用されている。
【0004】
PAIは、主鎖にアミド官能基とイミド官能基の両方を含むポリマーである。したがって、PAIポリマーは、ポリアミドとポリイミドのハイブリッド特性を示す傾向がある。イミド基の剛性の向上は、ポリマーに加水分解、薬品、及び熱に対する優れた安定性を付与するのみならず、特に芳香族モノマーに基づくポリマーに優れた機械的特性を付与する。ほとんどの市販のPAIポリマーは実際芳香族であり、典型的にはトリメリット酸、無水トリメリット酸、又はハロゲン化トリメリット酸に基づいている。
【0005】
PAI調製プロセス中に、2つの隣接するカルボン酸基(又は酸ハロゲン化物、酸無水物及びエステルなどのそれらの誘導体)と一級アミン含有分子との間の反応からイミドが形成される。最初にアミック酸が形成され、水分子が更に除去されると、これはイミド環へと閉環する。
【0006】
イミド化反応は、特に芳香族モノマーに基づくPAIポリマーでは一般的には高温を必要とする。しかしながら、高温を使用すると、架橋副反応が生じ、加工性が制限されたPAIポリマー、更には熱硬化性樹脂のような構造になる。前記PAIポリマーは化学的に安定であるものの、溶融加工中の流動性が低く、従来の加工方法での高温での取り扱いにくさ(すなわち溶融加工される能力の低さ)及び溶解度の低さのため、特定の用途では使用が制限されている。
【0007】
前記PAIポリマーの優れた熱的及び機械的性能を維持すると同時に、これらの特性を改善するために、特にポリマーをグラフトしたり、それらを他のタイプのポリマーとブレンドしたり、及び/又は添加剤や無機繊維との複合材料を形成したりすることによって、いくつかの試みが行われてきた。
【0008】
前記PAIポリマーの溶解性及び加工性を改善するための他の試みは、PAIポリマー鎖へのフレキシブルな結合及び脂環式単位の組み込みを伴う。例えば、特開2017-186560号公報には、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物(CTA)(無水トリメリット酸の代わりに)とm-キシリレンジアミン(MXD)とに基づくPAIが開示されている。この文献に記載されている方法は、有機溶媒中の溶液で行われる。有機溶媒の使用は大きな欠点を有している。第1に、合成後のポリマーの回収は、非溶媒からのポリマーの析出、並びにポリマーの洗浄及び乾燥などの追加の段階を要する。第2に、一部の溶媒は有毒である。第3に、ポリマーは、通常、残留量の溶媒を含んでおり、これはポリマーの機械的性能又は特定の用途におけるその使用に影響を及ぼす可能性がある。他の場合には、溶媒が色の問題を引き起こす可能性がある。
【0009】
米国特許出願公開第2011/160407号明細書は、カルボキシル基を有する少なくとも1種の芳香族有機化合物と、少なくとも1種のジアミン化合物と、任意選択的な少なくとも1種の二酸化合物との溶融重合によるPAIポリマーの調製方法に関する。この文献は、芳香族有機化合物としてのトリメリット酸、ピロメリット酸、又はこれらの無水物、エステル、若しくはアミドの使用を、より正確に説明している。ただし、これらの反応物質の芳香族性は、ポリマーに色(黄色~橙色~赤色)を付与する。
【0010】
上記文献のいずれにも、PAIポリマーを調製するための有機溶媒フリーの重合プロセスは記載されておらず、当該技術分野はこれから大きな恩恵を受けることになるであろう。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、ポリアミド-イミド(PAI)の調製方法が提供される。方法は、
a)カルボン酸、酸無水物、及びエステル官能基からなる群から選択される3つのカルボキシル部位を含む少なくとも1種の脂環式酸成分と、
b)少なくとも1種のジアミン成分と、
を含有する反応混合物を溶融重合することを含む。反応混合物は、重合中に液体状態及び少なくとも200℃の温度に維持される。
【0012】
第2の態様では、前記方法によって得られるポリアミド-イミド(PAI)ポリマーが提供される。
【0013】
第3の態様では、前記PAIポリマーを含むポリマー組成物が提供される。
【0014】
第4の態様では、前記PAIポリマー又は前記ポリマー組成物を含む物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリアミド-イミド(PAI)ポリマーの調製方法が提供される。方法は、少なくとも1種の脂環式酸成分と、少なくとも1種のジアミン成分とを溶融重合することを含む。脂環式酸成分は、カルボン酸、酸無水物、及びエステル官能基からなる群から選択される3つのカルボキシル部位を含む。方法は、少なくとも200℃の温度での重合中に反応混合物を液体状態に維持することを更に含む。
【0016】
少ない分岐と優れた機械的特性とを有する無色透明のPAIポリマーも提供される。したがって、そのようなPAIポリマーは、押出成形や射出成形などの標準的なポリマー加工技術を使用して、フィルムや他の物品へと加工することができる。
【0017】
PAIポリマーは、少ない制御された分岐を示し、これは、PAIポリマーによって示される最適化された特性、例えば高いガラス転移温度(Tg)などの良好な熱的及び機械的特性と組み合わされた、強化された溶解性、溶融加工性、及び成形性の組み合わせに寄与する。特に、PAIポリマーは、押出成形及び射出成形などの従来のポリマー加工技術を使用して容易に加工することができる。更に、PAIポリマーは、フィルム及び他の物品へと容易に変換することができる。PAIポリマー又はPAIポリマーを含有するポリマー組成物を含む物品は、無色透明であり、低い黄色度指数を有する。
【0018】
本明細書において、別段の指示がない限り、以下の用語は以下の通りに解釈するものとする。
【0019】
「脂環式部位」という用語は、少なくとも1種の脂肪族環を含み且つ芳香環を含まない有機基を意味する。脂環式部位は、1つ以上の直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシ基及び/又はハロゲン原子で置換されていてもよく、並びに/又は環の中に窒素、酸素、及び硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0020】
「アルキル」という用語、及び「アルコキシ」などの派生用語は、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖、及び環状部位を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1ジメチルエチル、及びシクロプロピルである。別段の明記がない限り、各アルキル基は、無置換であっても、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、及びC1~C6アルキルチオが挙げられるがそれらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよいが、ただし、置換基が立体的に適合性を有しており且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0021】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0022】
脂環式酸成分
PAIポリマーは、脂環式酸成分と、ジアミン成分と、任意選択的な二酸成分とを含む反応混合物から調製される。好ましい実施形態では、脂環式酸成分は、式(I)及び/又は(II):
【化1】
(式中:
- Zは、5~50個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を有する置換又は無置換の単環式又は多環式基からなる群から選択される脂環式部位であり、
- YはORaであり、RaはH又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- 式(II)において、少なくとも2つのY(C=O)は、Zの2つの隣接する炭素原子に結合しており、これは少なくとも2つのカルボキシル部位が互いに対してオルト位にあることを意味する)
に従う。
【0023】
好ましくは、Zは、1~4個の脂肪族環を含む脂環式部位である。Zが複数の脂肪族環、すなわち2つ以上の脂肪族環を含む場合、前記脂肪族環は縮合していてもよく、或いは直接又は以下の架橋によって互いに架橋されていてもよい:-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、又は-(CF2)q-(式中、qは1~5の整数である)。「直接」という用語は、脂肪族環が結合を介して互いに連結されていることを意味する。
【0024】
好ましくは、Zは、式(III-A)、(III-B)、(III-C)及び(III-D):
【化2】
の部位からなる群から選択される三価の脂環式部位、及び対応する置換された構造であり、式中、Xは、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、又は-(CF2)q-であり、qは1~5の整数である。
【0025】
好ましい実施形態では、脂環式酸成分は、式(Ia)及び/又は(IIa):
【化3】
に従う。
【0026】
この実施形態によれば、方法は、
- 式(Ia)による脂環式酸成分と少なくとも1種のジアミン成分との溶融重合、
- 式(IIa)による脂環式酸成分と少なくとも1種のジアミン成分の溶融重合、又は
- 式(Ia)及び(IIa)による脂環式酸成分と少なくとも1種のジアミン成分との混合物の溶融重合、
を含む。
【0027】
ジアミン成分
溶融重合が行われる反応混合物は、少なくとも1種の二酸成分を更に含む。方法で使用されるジアミン成分は、脂肪族、脂環式、又は芳香族であってよい。ジアミン成分は、少なくとも2つのアミン部位(-NH2)を含み、及び任意選択的に少なくとも1つのヘテロ原子を含み、前記ヘテロ原子は、好ましくは、N、S、及びOからなる群から選択される。
【0028】
ジアミン成分は、好ましくは以下の式で表される:
H2N-R-NH2 (IV)
(式中、RはC4~C50の二価の炭化水素ラジカル、特に二価の脂肪族、脂環式、又は芳香族の炭化水素ラジカルである)。
【0029】
ジアミン成分は、好ましくは、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、ドデカメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
ジアミン成分は、別個のジアミン、例えば2種又は3種の別個のジアミンの混合物からなってもよい。
【0031】
好ましくは、ジアミン成分中のジアミンの総モル数を基準として、少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも65モル%、更に好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも95モル%のジアミン成分が、脂環式である。
【0032】
実施形態によれば、ジアミン成分は、脂環式ジアミンの混合物、例えば2種又は3種の別個の脂環式ジアミンからなる。
【0033】
別の実施形態によれば、ジアミン成分は、1種のみの脂環式ジアミンからなる。そのような実施形態において、ジアミンは好ましくは1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである。
【0034】
二酸成分
溶融重合が行われる反応混合物は、任意選択的に、少なくとも1種の二酸成分又はその誘導体を更に含む。
【0035】
表現「その誘導体」は、重縮合条件下で反応してアミド結合を生じやすい誘導体を表す。アミド結合を形成する二酸誘導体の例としては、アシル基、例えば置換若しくは無置換の脂肪族アシル基及び芳香族アシル基が挙げられる。アシル基の例としては、限定するものではないが、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ベンゾイル、トルオイル、及びキシロイルが挙げられる。
【0036】
二酸成分は、脂肪族、脂環式、又は芳香族であってよく、またN、S、及びOからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択的に含む。
【0037】
二酸成分は、好ましくは以下の式で表される:
HOOC-R’-COOH(V)
(式中、R’は、C4~C18の二価の炭化水素ラジカル、特に二価の脂肪族、脂環式、又は芳香族の炭化水素ラジカルである)。
【0038】
二酸成分は、好ましくは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
溶融重合
PAIポリマーは、上で特定された成分の溶融重合を含む方法によって提供される。より正確には、前記方法は、脂環式酸成分と、ジアミン成分と、任意選択的な二酸成分とを組み合わせて反応混合物を得ること、及び少なくとも200℃の温度での重合中に反応混合物を液体状態に維持すること、を含む。「溶融重合」という用語は、少なくとも200℃の温度での重合の間、反応混合物が液体状態に維持されることを意味する。
【0040】
本発明との関係において、「液体状態に維持される」という句は、反応混合物が、得られるPAIポリマーの凝固及び/又は析出なしに、液体状態のままであることを意味する。
【0041】
重合中、調製中のPAIポリマーが溶融状態であるように、反応混合物は常に高温に加熱される。反応混合物を加熱すべき最低温度は、通常、調製されるPAIポリマーの融点又は軟化点に基づいて決定することができる。調製されるPAIポリマーの融点又は軟化点は、反応に関与する反応物の量、特に、例えば反応物の1つが反応混合物に徐々に添加される場合の制限反応物の量に基づいて、重合時間の間に変化し得る。この場合、調製されるPAIポリマーの融点又は軟化点は、制限反応物モノマーの完全な変換に基づいて決定することができる。制限反応物を反応混合物に逐次的に添加することができるため、本発明のPAIポリマーを調製するために、若干の温度上昇/増分が必要となる場合がある。次いで、重合プロセスの各工程は、製造されるPAIポリマーの融点又は軟化点以上の温度で行われる。
【0042】
方法は、有機溶媒の非存在下で行われる。言い換えると、この方法は有機溶媒を含まない。つまり、反応混合物は、有機溶媒を含まないか、反応混合物の総重量を基準として1重量%未満、0.5重量%未満、更には0.2重量%未満の量の有機溶媒を含む。方法は、溶媒として水を含んでもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、方法は、添加された水の非存在下で、又は反応混合物の総重量を基準として50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、更に好ましくは15重量%未満、最も好ましくは5重量%未満の量の添加された水の存在下で行われる。
【0044】
したがって、反応混合物は、上で特定された成分(すなわち、少なくとも1種の脂環式酸成分、少なくとも1種のジアミン成分、及び任意選択的に少なくとも1種の二酸成分)を含む水溶液とすることができる。水は反応混合物を撹拌し易くし、そのためその均一性を促進することから、好ましくは、反応混合物は溶媒として水を含む。
【0045】
様々な実施形態によれば、脂環式酸成分とジアミン成分のいずれかは、逐次的に、徐々に、又は連続的に、反応混合物中に添加される。
【0046】
好ましくは、反応混合物は、前記脂環式酸成分(「CAC」)及び前記ジアミン成分(「DC」)を、0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1、より好ましくは0.95~1.05、更に好ましくは0.97~1.03の範囲の比(CAC:DC)で含む。
【0047】
本発明の方法が二酸成分を使用する場合、二酸成分及び/又はジアミン成分は、少なくとも部分的に、二酸及び/又はジアミン成分の塩の形態で導入することができる。
【0048】
PAIポリマーは、通常、脂環式酸成分と、ジアミン成分と、任意選択的な二酸成分との間で重縮合を行い、脱離生成物、特には水の形成と共にポリアミド-イミド鎖を形成することによって得られる。好ましくは、プロセスの間に生成した水は、例えば、コンデンサーを使用する分別蒸留によって、1mbar~30barの圧力で留去される。
【0049】
反応混合物は、混合物が固化するのを防ぐために固相の形成を防止しながら、水(最初に反応混合物中に存在する、及び/又は重縮合中に形成される)を留去するために、少なくとも200℃、好ましくは215℃~300℃の温度での重合中、液体状態に維持される。
【0050】
方法は、方法の少なくとも一部について、加圧下で行うことができる。これらの場合、20barの最大圧力、好ましくは10barの最大圧力、より好ましくは3barの最大圧力が使用される。方法の終了は、反応を完了に向かわせ、方法の間に形成された水をより除去し易くするために、好ましくは低い圧力(真空又は大気圧)で行われる。
【0051】
この方法は、上で特定された成分(すなわち、脂環式酸成分、ジアミン成分、及び任意選択的な二酸成分)に不活性な材料から製造された装置内で行うことができる。この場合、装置は、前記成分間を十分に接触させるために、且つ揮発性反応生成物、特には水を除去することが実行可能であるように、選択される。適した装置としては、撹拌反応器、押出機、及びニーダーが挙げられる。反応容器は、好ましくは撹拌手段、例えば回転シャフトを備える。
【0052】
得られるPAIポリマーの分子量を制御するために、鎖制限剤又はエンドキャッピング剤が反応混合物に添加されてもよい。鎖制限剤又はエンドキャッピング剤は、アミン及び/又はカルボン酸との反応部位を1つのみ有する分子である。エンドキャッピング剤の例は、ベンジルアミン及び1-ヘキサンアミンなどのモノアミン、並びに酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、又は無水物などのモノカルボン酸である。
【0053】
好ましくは、プロセス中の反応容器への成分の導入の順序は以下の通りである:最初に水が入れられ、次いでジアミン成分が入れられ、最後に脂環式酸成分が入れられ、そして任意選択的に二酸成分が添加される。
【0054】
好ましくは、容器内の雰囲気を置き換えるために、窒素ガスなどの不活性ガスが反応容器に導入される。好ましくは、反応容器は、上で特定された全ての成分を入れる前と後の両方で、前記不活性ガスでパージされる。好ましくは、不活性ガスの流れは、方法の間維持される。
【0055】
ポリアミド-イミドポリマー
上で定義した方法によって得られるポリアミド-イミド(PAI)ポリマーも提供される。
【0056】
好ましくは、前記PAIポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCによって決定される、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも120℃、更に好ましくは少なくとも140℃、最も好ましくは少なくとも150℃のTgを有する。
【0057】
好ましくは、前記PAIポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCによって決定される、最大250℃、より好ましくは最大240℃、更に好ましくは最大230℃、最も好ましくは最大220℃のTgを有する。
【0058】
好ましくは、前記PAIポリマーは、フッ素化溶媒と、2つのHFIPゲルカラムと、UV-vis/屈折率検出器とを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、少なくとも5,000g/mol、より好ましくは少なくとも10,000g/mol、更に好ましくは少なくとも15,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0059】
好ましくは、前記PAIポリマーは、フッ素化溶媒と、2つのHFIPゲルカラムと、UV-vis/屈折率検出器とを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、最大50,000g/mol、より好ましくは最大45,000g/mol、更に好ましくは最大40,000g/molのMnを有する。
【0060】
有利には、前記PAIポリマーは、様々な溶媒、特にヘキサフルオロ-2-プロパノール、o-クレゾール、98%硫酸、及びジメチルホルムアミドに可溶である。
【0061】
方法によって得られたPAIポリマーは溶融形態であり、したがって直接形成することができ、或いは溶融後のその後の形成のための押出成形及び射出成形などの従来のポリマー加工技術を使用して加工することができる。
【0062】
更に、本発明によるPAIポリマーは、フィルム及び他の物品へと容易に変換することができる。本発明のPAIポリマーは様々な有機溶媒に可溶であるため、フィルムは、当業者に公知の標準的なプロセスに従って、PAIポリマーを含む溶液をキャストしてから溶媒を蒸発させることにより有利に製造することができる。特に、前記フィルムは、溶液を得るためにPAIポリマーを溶媒に溶解し、その溶液を基材上にキャストし、最後に溶媒を蒸発させることによって製造することができる。
【0063】
前記PAIポリマーは、多くの用途、特に、糸、繊維若しくはフィラメント、若しくはフィルムの製造、又は射出成形、押出成形、若しくは押出/ブロー成形による物品の成形において使用することができる。これは、特にエンジニアリングプラスチック組成物において使用することができる。
【0064】
ポリマー組成物
PAIポリマーを含むポリマー組成物も提供される。
【0065】
好ましくは、PAIポリマーは、ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、更に好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも25重量%の量で、ポリマー組成物中に存在する。
【0066】
好ましくは、PAIポリマーは、ポリマー組成物の総重量を基準として最大99重量%、より好ましくは最大95重量%、更に好ましくは最大80重量%、最も好ましくは最大60重量%の量でポリマー組成物中に存在する。
【0067】
一実施形態によれば、PAIポリマーは、ポリマー組成物の総重量を基準として10~70重量%、好ましくは20~60重量%の範囲の量でポリマー組成物中に存在する。
【0068】
一実施形態によれば、前記ポリマー組成物は、補強剤、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、融剤、電磁吸収剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加の添加剤を含む。
【0069】
補強充填剤又は繊維とも呼ばれる補強剤は、繊維状補強充填剤、粒子状補強充填剤、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。繊維状補強充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、繊維状補強充填剤は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の、長さと、最大の幅及び厚さとの間の平均比と定義される、アスペクト比を有する。
【0070】
繊維状補強充填剤には、ガラス繊維、炭素又はグラファイト繊維、及び炭化ケイ素、アルミナ、チタニア、ホウ素等から形成される繊維が含まれ、2種類以上のそのような繊維を含む混合物が含まれ得る。一実施形態によれば、前記繊維は平坦な繊維である。非繊維状強化充填剤には、特にタルク、マイカ、二酸化チタン、チタン酸カリウム、シリカ、カオリン、チョーク、アルミナ、鉱物充填剤などが含まれる。
【0071】
ポリマー組成物を提供する方法も提供され、これは、PAIポリマーを前記少なくとも1種の追加的な添加剤と混合することを含む。好ましくは、PAIポリマーと前記少なくとも1種の追加の添加剤との混合は、乾式混合及び/又は溶融混錬によって行われる。より好ましくは、PAIポリマーと前記少なくとも1種の追加の添加剤との混合は、特に連続式又はバッチ式装置において、溶融混錬によって行われる。そのような装置は、当業者に周知である。適切な連続式装置の例は、スクリュー押出機である。好ましくは、溶融混錬は、二軸押出機で実施される。
【0072】
物品
前記PAIポリマー又は前記ポリマー組成物を含む物品も提供される。
【0073】
物品は、好ましくは成形品である。好ましくは、前記物品は、限定するものではないが、例えば射出成形、ブロー成形、回転成形、圧縮成形、又は押出成形などの方法によって、当該技術分野で周知の方法を使用して、PAIポリマー又は前記PAIポリマーを含むポリマー組成物から成形される。
【0074】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0075】
本発明は、これから以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は例示的であるにすぎず、特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0076】
材料
シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物(CTA)、Mitsubishi Gas Chemicalsから入手可能。
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、Mitsubishi Gas Chemicalsから入手可能。
ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、Ascend Performance Materialsから入手可能。
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(PACM)、Sigma-Aldrichから入手可能。
リン酸、Sigma-Aldrichから入手可能。
【0077】
方法
熱分析
熱特性は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定した。DSC分析は、ASTM D3418に従ってDSC Q200-5293 TA Instrumentで実施した。それぞれのDSC試験で3つの走査を用いた:20.00℃/分で300℃までの1回目の加熱サイクル、20.00℃/分で30.00℃までの1回目の冷却サイクル、20.00℃/分で300.00℃までの2回目の加熱サイクル。Tgは、2回目の加熱サイクル中の転移中点から決定した。
【0078】
GPC
Mnは、フッ素化溶媒と、2本のHFIPゲルカラムと、UV-vis/屈折率検出器とを使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0079】
溶解性
PAIポリマーの5mgのサンプルを5mlの溶媒に添加した。得られた混合物を室温で24~48時間撹拌し、サンプルの溶解又は軟化を記録した。サンプルが完全に溶解した場合に、それを可溶性であるとみなした。サンプルが48時間後に外観の変化を示さなかった場合、それを不溶性であるとみなした。ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)、o-クレゾール、98%硫酸、及びジメチルホルムアミド(DMF)への溶解度を試験した。
【0080】
黄色度試験
0.1~0.2mmの厚さを有するフィルムをホットプレス(280℃、2000lb-f)で作製した。黄色度指数は、X-Rite Ci7800分光光度計を使用して前記フィルムで測定した。
【0081】
機械的試験
以下に記載の通りに合成されたPAI1ポリマーをミルグラインダーで粉砕し、真空下で120℃で一晩乾燥した。得られた材料を、140℃の成形温度、290℃の溶融温度、及び6barの射出圧力を使用して、これをASTM D3641に従ってタイプV引張棒へと射出成形した。機械的試験は、Instron 5569機を用いて及び54.7%湿度の23.2℃でASTM D638に準拠して0.3インチのゲージ長で射出成形試験検体に関して行った。ノッチ付きIzod衝撃強度は、射出成形試験検体を使用してASTM D256によって測定した。
【0082】
合成方法
ポリアミド-イミド1(PAI1)
CTA(53.9g)、1,3-BAC(39.1g)、リン酸(0.032g)、及び脱イオン水(42g)を300mlの反応器に入れた。その後、反応器を窒素で5分間パージし、撹拌し、2時間以内に280℃に加熱することによって重合反応を行った。発生した蒸気は、目標温度に到達後に放出した。次いで、反応器を真空にし、その後そのようにして得た溶融ポリマーをこの条件で更に1時間保持した。冷却後、ポリマーを反応器から取り出し、分析のために使用した。
【0083】
ポリアミド-イミド2(PAI2)
CTA(55.6g)、1,3-BAC(25.9g)、HMDA(11.7g)、リン酸(0.032g)、及び脱イオン水(42g)を300mlの反応器に入れた。その後、反応器を窒素で5分間パージし、撹拌し、2時間以内に280℃まで加熱して重合反応を行った。発生した蒸気は、目標温度に到達後に放出した。次いで、反応器を真空にし、その後そのようにして得た溶融ポリマーをこの条件で更に1時間保持した。冷却後、ポリマーを反応器から取り出し、分析のために使用した。
【0084】
ポリアミド-イミド3(PAI3)
CTA(50.7g)、PACM(27.1g)、HMDA(15.0g)、リン酸(0.032g)、及び脱イオン水(42g)を300mlの反応器に入れた。その後、反応器を窒素で5分間パージし、撹拌し、2時間以内に280℃まで加熱して重合反応を行った。発生した蒸気は、目標温度に到達後に放出した。次いで、反応器を真空にし、その後そのようにして得た溶融ポリマーをこの条件で更に1時間保持した。冷却後、ポリマーを反応器から取り出し、分析のために使用した。
【0085】
結果
表1は、調製されたPAI1、PAI2及びPAI3ポリマーのTg、Mn、黄色度指数、及び溶解度の結果を示している。
【0086】
表2は、PAI1の機械的特性を示している。
【0087】
【0088】
【0089】
上の表1で証明されるように、CTAと、異なるジアミン(1,3-BAC、HMDA、及びPACM)とに基づくPAIポリマーの調製に成功した。前記PAIポリマーは、19000g/モルより大きい数平均分子量を有し、且つ150~176℃の範囲のTgを示す。Tgは、ジアミン成分の性質と量を変えることで簡単に調整することができた。
【0090】
前記PAIポリマーは、非常に低い黄色度指数も示す。
【0091】
更に、これらのPAIポリマーは、複数の有機溶媒に可溶であることが明らかになった。このことは、これらの分岐が少なく且つ制御されていることを示している。
【0092】
表2に示されているように、PAI1は溶融加工され、パーツは射出成形によって製造された。このことは、PAI1も溶融加工性及び成形性を示すことを示している。PAI1は優れた機械的特性も示し、高い引張弾性率及び強度の組み合わせを有する。
【国際調査報告】