IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コデクシス, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-54752310-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジンに対するペルオキシダーゼ活性
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジンに対するペルオキシダーゼ活性
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/53 20060101AFI20221107BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20221107BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221107BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221107BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221107BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221107BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N9/04 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515502
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020049164
(87)【国際公開番号】W WO2021050348
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,190
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502427921
【氏名又は名称】コデクシス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】デュアン, ダ
(72)【発明者】
【氏名】ソーウェル-カンツ, オーリック アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ペトコヴァ, アクシニヤ リューベノヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ネイザー, ジョヴァナ
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン, ナンディタ
(72)【発明者】
【氏名】アルビゾ, オスカー
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050KK03
4B050LL01
4B050LL05
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA28
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、操作されたペルオキシダーゼ酵素(ペルオキシダーゼ活性を有するポリペプチド)およびこれらの酵素をコードするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供する。ペルオキシダーゼ酵素の産生方法も提供する。本発明は、ペルオキシダーゼ酵素を含む組成物および操作されたペルオキシダーゼ酵素を使用する方法をさらに提供する。本発明は、薬学的化合物および他の化合物の生産において特に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4および/もしくは6、またはその機能的断片に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれを超える配列同一性を有するポリペプチド配列を含む操作されたペルオキシダーゼであって、前記操作されたペルオキシダーゼが、前記ポリペプチド配列中に少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前記ポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号4および/または6を参照して番号を付けている、操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項2】
前記ポリペプチド配列が、配列番号4に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える配列同一性を有し、前記操作されたペルオキシダーゼが、393、25/29/43、25/29/65/82/92、26/29、80/128/306、90、127/168、127/301、128/307、143、160、160/188、160/307、164、168、171/260、185、185/307、189/190/226、191、191/260、191/469、202、206、208、221、222、224、224/260、226、228、228/260、241/270/283/306、260/307、290、301、306、307、311、332、および 367から選択される前記ポリペプチド配列中の1またはそれを超える位置に少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前記ポリペプチド配列の前記アミノ酸の位置に、配列番号4を参照して番号を付けている、請求項1に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項3】
前記ポリペプチド配列が、配列番号6に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える配列同一性を有し、前記操作されたペルオキシダーゼが、393、25/29/43、25/29/65/82/92、80/128/306、90、127/301、128/307、143、160、160/188、160/307、164、168、171/260、185、185/307、191、191/260、191/469、202、206、208、221、222、224、224/260、228、228/260、241/270/283/306、260/307、301、306、307、311、332、および 367,から選択される前記ポリペプチド配列中の1またはそれを超える位置に少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前記ポリペプチド配列の前記アミノ酸の位置に、配列番号6を参照して番号を付けている、請求項1に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項4】
前記操作されたペルオキシダーゼが、表5.1および/または6.1に記載の少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼバリアントの配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるポリペプチド配列を含む、請求項1に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項5】
前記操作されたペルオキシダーゼが、配列番号4および/または6に記載の少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼバリアントの配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるポリペプチド配列を含む、請求項1に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項6】
前記操作されたペルオキシダーゼが、配列番号4および/または6に記載のバリアントの操作されたペルオキシダーゼである、請求項1に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項7】
前記操作されたペルオキシダーゼが、配列番号6~290の偶数番号
の配列に記載の少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼバリアントの配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるポリペプチド配列を含む、請求項1に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項8】
前記操作されたペルオキシダーゼが、配列番号6~290の偶数の配列に記載のポリペプチド配列を含む、請求項1に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項9】
前記操作されたペルオキシダーゼが、野生型Anabaena(Nostoc)sp.ペルオキシダーゼと比較して少なくとも1つの改善された性質を含む、請求項1~8のいずれかに記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項10】
前記改善された性質が基質に対する改善された活性を含む、請求項9に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項11】
前記基質が、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジンを含む、請求項10に記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項12】
前記操作されたペルオキシダーゼが精製されている、請求項1~11のいずれかに記載の操作されたペルオキシダーゼ。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載の操作されたペルオキシダーゼを含む組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド配列。
【請求項15】
少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド配列であって、前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号3および/または5に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える配列同一性を含み、前記操作されたペルオキシダーゼのポリヌクレオチド配列が、1またはそれを超える位置に少なくとも1つの置換を含む、ポリヌクレオチド配列。
【請求項16】
配列番号3および/もしくは5、またはその機能的断片に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれを超える配列同一性を含む少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド配列。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチド配列が調節配列に作動可能に連結されている、請求項15または16に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチド配列がコドン最適化されている、請求項15~17のいずれかに記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号5~289の奇数番号の配列を含む、請求項15~18のいずれかに記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項20】
請求項15~19のいずれかに記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載の少なくとも1つの発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
請求項15~19のいずれかに記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞。
【請求項23】
宿主細胞中で操作されたペルオキシダーゼを産生する方法であって、少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼが産生されるように、適切な条件下で請求項21および/または22に記載の宿主細胞を培養する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記培養物および/または宿主細胞から少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼを回収する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼを精製する工程をさらに含む、請求項23および/または24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月12日提出の米国仮特許出願第62/899,190号(全ての目的のためにその全体が参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、操作されたペルオキシダーゼ酵素(ペルオキシダーゼ活性を有するポリペプチド)およびこれらの酵素をコードするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供する。ペルオキシダーゼ酵素の産生方法も提供する。本発明は、ペルオキシダーゼ酵素を含む組成物および操作されたペルオキシダーゼ酵素を使用する方法をさらに提供する。本発明は、薬学的化合物および他の化合物の生産において特に使用される。
【0003】
配列表、表、またはコンピュータプログラムの参照
配列表の公式の写しは、ファイル名「CX2-190USP1_ST25.txt」、作成日2019年9月11日、サイズ852キロバイトのASCII形式のテキストファイルとして明細書と共にEFS-Webを介して提出されている。EFS-Webから提出した配列表は、本明細書の一部であり、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ペルオキシダーゼ、特に、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、免疫組織化学における適用および酸化反応において広く使用されている。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)は、過酸化水素を使用して有機基質を酸化する鉄依存性酵素であり、通常のオキシダーゼ触媒サイクル中に活性部位の不活性な酸化還元状態を酸化することによってオキシダーゼ触媒活性を促進することも知られている。HRPは44kDaのタンパク質であり、ポリペプチドが33kDaを占め、残りの質量をグリコシル化部位が占めている。産業上の適用におけるHRP使用の欠点の1つは、細菌系において重度にグリコシル化されたタンパク質を効率的に発現することが困難なことである。したがって、容易に発現され、多くのオキシダーゼ反応物を得ることができるHRPの代替物が必要である。他の酸化化学における別のペルオキシダーゼ酵素も有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、操作されたDyP型ペルオキシダーゼ酵素(電子供与体として過酸化水素を使用して10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red)を酸化することができるポリペプチド)およびこれらの酵素をコードするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供する。ペルオキシダーゼ酵素の産生方法も提供する。本発明は、ペルオキシダーゼ酵素を含む組成物および操作されたペルオキシダーゼ酵素を使用する方法をさらに提供する。本発明は、薬学的化合物および他の化合物の生産において特に使用される。
【0006】
DyP型ペルオキシダーゼ(DyP)(EC番号1.11.1.19)は、染料を脱色するペルオキシダーゼ酵素のファミリーである。この酵素は、電子供与体として過酸化水素を使用したいくつかの基質の酸化を触媒するヘム含有タンパク質である。この過程で使用される操作されたDyPペルオキシダーゼは、藍色細菌Anabaena(Nostoc)sp.(PCC7120株)由来の野生型ペルオキシダーゼAlr1585の配列に由来する配列を有する。
【0007】
本発明は、配列番号4および/もしくは6、またはその機能的断片に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれを超える配列同一性を有するポリペプチド配列を含む操作されたペルオキシダーゼを提供する。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、ポリペプチド配列中に少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前述のポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号4および/または6を参照して番号を付けている。操作されたペルオキシダーゼのいくつかのさらなる実施形態では、ポリペプチド配列は、配列番号4に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、25/29/43、25/29/65/82/92、26/29、80/128/306、90、127/168、127/301、128/307、143、160、160/188、160/307、164、168、171/260、185、185/307、189/190/226、191、191/260、191/469、202、206、208、221、222、224、224/260、226、228、228/260、241/270/283/306、260/307、290、301、306、307、311、332、367、および393から選択されるポリペプチド配列中の1またはそれを超える位置に少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前述のポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号4を参照して番号を付けている。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、25A/29A/43Y、25Q/29A/65G/82K/92G、26E/29K、80K/128K/306F、90Q、90Y、127K/168S、127K/301I、128K/307N、128K/307Q、143H、143R、143S、143V、160H/188V、160M、160R、160V/307C、164D、164K、168H、168K、168M、168S、168W、171V/260R、185E/307H、185Q、185T、189W/190V/226P、191A、191D、191G、191S、191S/260R、191S/469V、202W、206L、208N、221D、221H、221L、221M、221P、221R、221S、221T、221Y、222E、222G、222S、222V、224L、224P、224R、224R/260R、224Y、226I、226V、228G、228M/260R、241K/270N/283T/306L、260R/307T、290L、301S、301V、301W、306A、306K、306V、307C、307D、307E、307G、307L、307M、307R、307S、311I、311V、332A、367G、および 393Dから選択される少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前述のポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号4を参照して番号を付けている。いくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、R25A/N29A/H43Y、R25Q/N29A/S65G/F82K/D92G、N26E/N29K、E80K/E128K/T306F、S90Q、S90Y、E127K/N168S、E127K/L301I、E128K/Y307N、E128K/Y307Q、L143H、L143R、L143S、L143V、I160H/I188V、I160M、I160R、I160V/Y307C、L164D、L164K、N168H、N168K、N168M、N168S、N168W、T171V/L260R、D185E/Y307H、D185Q、D185T、L189W/R190V/F226P、N191A、N191D、N191G、N191S、N191S/L260R、N191S/A469V、F202W、V206L、Q208N、V221D、V221H、V221L、V221M、V221P、V221R、V221S、V221T、V221Y、N222E、N222G、N222S、N222V、C224L、C224P、C224R、C224R/L260R、C224Y、F226I、F226V、K228G、K228M/L260R、E241K/D270N/N283T/T306L、L260R/Y307T、V290L、L301S、L301V、L301W、T306A、T306K、T306V、Y307C、Y307D、Y307E、Y307G、Y307L、Y307M、Y307R、Y307S、P311I、P311V、T332A、A367G、および N393D,から選択される少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前述のポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号4を参照して番号を付けている。
【0008】
いくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、配列番号6に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える配列同一性を有するポリペプチド配列を含み、前述の操作されたペルオキシダーゼは、25/29/43、25/29/65/82/92、80/128/306、90、127/301、128/307、143、160、160/188、160/307、164、168、171/260、185、185/307、191、191/260、191/469、202、206、208、221、222、224、224/260、228、228/260、241/270/283/306、260/307、301、306、307、311、332、367、および 393から選択されるポリペプチド配列中の1またはそれを超える位置に少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前述のポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号6を参照して番号を付けている。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、25A/29A/43Y、25Q/29A/65G/82K/92G、80K/128K/306F、90Y、127K/301I、128K/307N、128K/307Q、143H、143R、160H/188V、160M、160V/307C、164D、168W、171V/260R、185E/307H、185Q、185T、191D、191G、191S、191S/260R、191S/469V、202W、206L、208N、221H、221L、221M、221P、221S、221T、221Y、222E、222S、224L、224P、224R、224R/260R、224Y、228G、228M/260R、241K/270N/283T/306L、260R/307T、301S、301V、306A、306V、307C、307D、307E、307G、307L、307M、307R、307S、311V、332A、367G、および 393D,から選択される少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前述のポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号6を参照して番号を付けている。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、R25A/N29A/H43Y、R25Q/N29A/S65G/F82K/D92G、E80K/E128K/T306F、S90Y、E127K/L301I、E128K/Y307N、E128K/Y307Q、L143H、L143R、I160H/I188V、I160M、I160V/Y307C、L164D、N168W、T171V/L260R、D185E/Y307H、D185Q、D185T、N191D、N191G、N191S、N191S/L260R、N191S/A469V、F202W、V206L、Q208N、V221H、V221L、V221M、V221P、V221S、V221T、V221Y、N222E、N222S、C224L、C224P、C224R、C224R/L260R、C224Y、K228G、K228M/L260R、E241K/D270N/N283T/T306L、L260R/Y307T、L301S、L301V、T306A、T306V、Y307C、Y307D、Y307E、Y307G、Y307L、Y307M、Y307R、Y307S、P311V、T332A、A367G、およびN393Dから選択される少なくとも1つの置換または置換セットを含み、前述のポリペプチド配列のアミノ酸の位置に、配列番号6を参照して番号を付けている。
【0009】
さらにいくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、表5.1および/または6.1に記載の少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼバリアントの配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるポリペプチド配列を含む。さらにいくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、配列番号4および/または6に記載の少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼバリアントの配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、配列番号4および/または6に記載のバリアントの操作されたペルオキシダーゼである。いくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、配列番号6~290の偶数の配列に記載の少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼバリアントの配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一であるポリペプチド配列を含む。さらにいくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、配列番号6~290の偶数の配列に記載のポリペプチド配列を含む。いくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは、野生型Anabaena(Nostoc)sp.(PCC7120株)ペルオキシダーゼと比較して少なくとも1つの改善された性質を含む。いくつかの実施形態では、改善された性質は、基質に対する改善された活性を含む。いくつかのさらなる実施形態では、基質は、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red)を含む。さらにいくつかのさらなる実施形態では、操作されたペルオキシダーゼは精製されている。また、本発明は、少なくとも1つの本明細書中に提供された操作されたペルオキシダーゼを含む組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、本明細書中に提供した操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、本明細書中に提供した操作されたペルオキシダーゼのうちの1つを超えるペルオキシダーゼをコードする。また、本発明は、少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド配列であって、前述のポリヌクレオチド配列は、配列番号3および/または5に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える配列同一性を含み、前述の操作されたペルオキシダーゼのポリヌクレオチド配列は、1またはそれを超える位置に少なくとも1つの置換を含む、ポリヌクレオチド配列を提供する。いくつかのさらなる実施形態では、少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号3および/もしくは5、またはその機能的断片に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれを超える配列同一性を含む。いくつかのさらなる実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、調節配列に作動可能に連結している。いくつかのさらなる実施形態では、ポリヌクレオチド配列はコドン最適化されている。さらにいくつかのさらなる実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5~289の奇数の配列を含む。また、本発明は、本明細書中に提供した少なくとも1つのペルオキシダーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。また、本発明は、本明細書中に提供した少なくとも1つの発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。また、本発明は、本明細書中に提供した少なくとも1つのペルオキシダーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供する。
【0011】
また、本発明は、宿主細胞中で操作されたペルオキシダーゼを産生する方法であって、本明細書中に提供した少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼが産生されるように、適切な条件下で宿主細胞を培養する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、培養物および/または宿主細胞から少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼを回収する工程をさらに含む。いくつかのさらなる実施形態では、方法は、本明細書中に提供した少なくとも1つの操作されたペルオキシダーゼを精製する工程をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の説明
本発明は、操作されたペルオキシダーゼ酵素(電子供与体として過酸化水素を使用して10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red)を酸化することができるポリペプチド)およびこれらの酵素をコードするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供する。ペルオキシダーゼ酵素の産生方法も提供する。本発明は、ペルオキシダーゼ酵素を含む組成物および操作されたペルオキシダーゼ酵素を使用する方法をさらに提供する。本発明は、薬学的化合物および他の化合物の生産において特に使用される。
【0013】
別段の定義が無い限り、本明細書中で使用した全ての技術用語および科学用語は、一般に、本発明に属する当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。一般に、本明細書中で使用した命名法ならびに下記の細胞培養、分子遺伝学、微生物学、有機化学、分析化学、および核酸化学の実験の手順は、当該分野で周知のものであり、一般的に使用されている。かかる技術は周知であり、当業者に周知の多くのテキストおよび参考資料に記載されている。標準的な技術またはその修正形態は、化学合成および化学分析のために使用されている。上記および下記の本明細書中に言及した全ての特許、特許出願、論文、および刊行物は、本明細書中で参考として明確に援用される。
【0014】
本明細書中に記載の方法および材料と類似するか等価な任意の適切な方法および材料を、本発明を実施する上で使用しているが、いくつかの方法および材料を本明細書中に記載する。記載の特定の方法、プロコール、および試薬は、これらが当業者によって使用される状況に依存して変動し得るので、本発明はこれらに制限されないと理解すべきである。したがって、以下に定義した用語は、本発明全体を参照してより完全に説明される。
【0015】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は共に例示および説明のみを目的とし、本発明を制限しないと理解すべきである。本明細書中で使用した節の見出しは、体系化することのみを目的とし、記載の発明の対象を制限すると解釈されないものとする。数値の範囲は、範囲を定義する数字を含む。したがって、本明細書中に開示のあらゆる数値の範囲は、より狭い数値の範囲が全て本明細書中に明示されているかのように、より広い数値の範囲に含まれるあらゆるかかるより狭い数値の範囲を含むことが意図される。本明細書中に開示のあらゆる上限(または下限)の数値が、より低い(またはより高い)数値の限度が本明細書中に明示されているかのように、あらゆるかかるより低い(またはより高い)数値の限度を含むことも意図される。
【0016】
略語
遺伝的にコードされるアミノ酸のために使用した略語は慣習的な略語であり、これらを以下に示す:アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン酸(GluまたはE)、グルタミン(GlnまたはQ)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)。
【0017】
三文字表記を使用する場合、「L」または「D」が明確に前置されないか、略語を使用した文脈から明確で無い限り、アミノ酸は、α-炭素(Cα)についてL型またはD型の立体配置のいずれかであり得る。例えば、「Ala」がα-炭素についての立体配置を特定しないでアラニンを示すのに対して、「D-Ala」および「L-Ala」は、D-アラニンおよびL-アラニンをそれぞれ示す。一文字表記を使用する場合、大文字はα-炭素についてL-立体配置のアミノ酸を示し、小文字はα-炭素についてD-立体配置のアミノ酸を示す。例えば、「A」はL-アラニンを示し、「a」はD-アラニンを示す。ポリペプチド配列を一連の一文字表記または三文字表記(またはその混合)として示す場合、配列を、慣習にしたがってアミノ(N)からカルボキシ(C)への方向で示す。
【0018】
ヌクレオシドの遺伝子符号化のために使用される略語は慣習的な略語であり、以下に示す:アデノシン(A);グアノシン(G);シチジン(C);チミジン(T);およびウリジン(U)。特に記載しない限り、省略したヌクレオチドは、リボヌクレオシドまたは2’-デオキシリボヌクレオシドのいずれかであり得る。ヌクレオシドを、個別または凝集体に基づいてリボヌクレオシドまたは2’-デオキシリボヌクレオシドのいずれかであると特定することができる。核酸配列を一連の一文字略語として示す場合、配列を、慣習にしたがって5’から3’への方向で示し、リン酸塩は示さない。
【0019】
定義
本発明に関して、本明細書中の説明で使用される技術用語および科学用語は、他で具体的に定義しない限り、当業者によって一般的に理解される意味を有するであろう。したがって、以下の用語は以下の意味を有することを意図する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上そうでないと明確に示されない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「a polypeptide」との言及には、1つを超えるポリペプチドが含まれる。
【0021】
同様に、「comprise」、「comprises」、「comprising」「include」、「includes」、および「including」は、相互に交換可能であり、本発明を制限することを意図しない。したがって、本明細書中で使用される場合、用語「comprising」およびその同語源語を、包含の意味(すなわち、用語「including」およびその対応する同語源語に対する均等物)で使用する。
【0022】
種々の実施形態の説明で用語「comprising」を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の例では、「consisting essentially of」または「consisting of」という用語を使用して実施形態を代わりに説明することができると理解することをさらに理解すべきである。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、特定の値の許容され得る誤差を意味する。いくつかの例では、「約」は、所与の値の範囲の0.05%、0.5%、1.0%、または2.0%以内を意味する。いくつかの例では、「約」は、所与の値の1、2、3、または4標準偏差以内を意味する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「EC」番号は、国際生化学・分子生物学連合の命名法委員会(NC-IUBMB)の酵素命名法を指す。IUBMB生化学分類は、酵素が触媒する化学反応に基づいた酵素についての数値による分類システムである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ATCC」は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関をいい、その生物所蔵物は遺伝子および株を含む。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「NCBI」は、米国国立生物学情報センターおよび同センターが提供する配列データベースを指す。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「セイヨウワサビペルオキシダーゼ」(HRP、EC1.11.1.7)酵素は、種々の有機基質を酸化する鉄依存性酵素である。本明細書中に含まれる説明においてHRPについて具体的に言及されているが、この酵素クラスの他のイソ型および化学試薬には類似の機能を有するものが存在するので、この言及は他を除外するものであることを意味しない。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「改良されたペルオキシダーゼ」、「操作されたペルオキシダーゼ」、「操作されたペルオキシダーゼ酵素」、「ペルオキシダーゼバリアント」、および「DyP酵素」などは、操作されたDyP型ペルオキシダーゼを指す。DyP型ペルオキシダーゼ(DyP)(EC番号1.11.1.19)は、染料を脱色するペルオキシダーゼ酵素のファミリーである。この酵素は、電子供与体として過酸化水素を使用したいくつかの基質の酸化を触媒するヘム含有タンパク質である。この過程で使用される操作されたDyPは、藍色細菌Anabaena(Nostoc)sp.(PCC7120株)由来の野生型ペルオキシダーゼAlr1585の配列に由来する配列を有する。
【0029】
「アミノ酸」を、本明細書中で、アミノ酸の一般的に知られている三文字表記またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会によって推奨されている一文字表記によって言及する。クレオチドを、同様に、その一般的に許容されている一文字コードによって言及することができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「親水性アミノ酸または残基」は、Eisenberg et al.の規格化したコンセンサス疎水性尺度(Eisenberg et al.,J.Mol.Biol.,179:125-142[1984])がゼロ未満の疎水性を示す側鎖を有するアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる親水性アミノ酸には、L-Thr(T)、L-Ser(S)、L-His(H)、L-Glu(E)、L-Asn(N)、L-Gln(Q)、L-Asp(D)、L-Lys(K)、およびL-Arg(R)が含まれる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「酸性アミノ酸または残基」は、アミノ酸がペプチドまたはポリペプチド内に含まれる場合のpKa値が約6未満の側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を指す。酸性アミノ酸は、典型的には、水素イオンの喪失に起因して生理的pHにおいて負電荷の側鎖を有する。遺伝的にコードされる酸性アミノ酸には、L-Glu(E)およびL-Asp(D)が含まれる。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「塩基性アミノ酸または残基」は、アミノ酸がペプチドまたはポリペプチド内に含まれる場合のpKa値が約6を超える側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を指す。塩基性アミノ酸は、典型的には、ヒドロニウムイオンとの会合に起因して生理的pHにおいて正電荷の側鎖を有する。遺伝的にコードされる塩基性アミノ酸には、L-Arg(R)およびL-Lys(K)が含まれる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「極性アミノ酸または残基」は、生理学的pHで無電荷であるが、2原子が共有する電子対が前述の原子のうちの1つにより近づいて保持されている少なくとも1つの結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる極性アミノ酸には、L-Asn(N)、L-Gln(Q)、L-Ser(S)、およびL-Thr(T)が含まれる。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「疎水性アミノ酸または残基」は、Eisenberg et al.の規格化したコンセンサス疎水性尺度(Eisenberg et al.,J.Mol.Biol.,179:125-142[1984])がゼロを超える疎水性を示す側鎖を有するアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる疎水性アミノ酸には、L-Pro(P)、L-Ile(I)、L-Phe(F)、L-Val(V)、L-Leu(L)、L-Trp(W)、L-Met(M)、L-Ala(A)、およびL-Tyr(Y)が含まれる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「芳香族アミノ酸または残基」は、少なくとも1つの芳香環または芳香族複素環を含む側鎖を有する疎水性または疎水性のアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸には、L-Phe(F)、L-Tyr(Y)、およびL-Trp(W)が含まれる。L-His(H)は、その芳香族複素環の窒素原子のpKaのために時折塩基性残基に分類されるか、その側鎖が芳香族複素環を含むので芳香族残基に分類されるが、ここでは、ヒスチジンを、親水性残基または「拘束残基」(以下を参照のこと)に分類する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「拘束アミノ酸または残基」は、拘束構造を有するアミノ酸または残基を指す。本明細書中では、拘束残基には、L-Pro(P)およびL-His(H)が含まれる。ヒスチジンは、比較的小型のイミダゾール環を有するので、拘束構造を有する。プロリンは、5員環も有するので、拘束構造を有する。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「非極性アミノ酸または残基」は、生理学的pHで無電荷であり、かつ2原子が共有する電子対が一般に前述の2原子の各原子によって等しく保持されている結合を有する側鎖(すなわち、側鎖が非極性である)有する疎水性アミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる非極性アミノ酸には、L-Gly(G)、L-Leu(L)、L-Val(V)、L-Ile(I)、L-Met(M)、およびL-Ala(A)が含まれる。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「脂肪族アミノ酸または残基」は、脂肪族炭化水素の側鎖を有する疎水性アミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる脂肪族アミノ酸には、L-Ala(A)、L-Val(V)、L-Leu(L)、およびL-Ile(I)が含まれる。システイン(すなわち、「L-Cys」または「[C]」)は、他のL-Cys(C)アミノ酸または他のスルファニルまたはスルフヒドリルを含むアミノ酸とジスルフィド架橋を形成することができるという点で、通常とは異なることに留意すべきである。「システイン様残基」には、システインおよびジスルフィド架橋の形成に利用可能なスルフヒドリル部分を含む他のアミノ酸が含まれる。還元型遊離-SH形態または酸化型のジスルフィド架橋形態のいずれかでペプチド中にL-Cys(C)(および-SHを含む側鎖を有する他のアミノ酸)が存在することができると、L-Cys(C)がペプチドの正味の疎水性または親水性に寄与するかどうかに影響を及ぼす。L-Cys(C)はEisenbergの規格化したコンセンサス疎水性尺度(Eisenberg et al.,1984,前出)に従うと0.29の疎水性を示すが、本開示の目的のためには、L-Cys(C)のみの固有の群に分類されると理解されるべきである。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「小型のアミノ酸または残基」は、合計で3個またはそれ未満の炭素原子および/またはヘテロ原子(α-炭素および水素を除く)から構成される側鎖を有するアミノ酸または残基を指す。小型のアミノ酸または残基は、上記定義にしたがって脂肪族、非極性、極性、または酸性の小型のアミノ酸または残基としてさらに分類され得る。遺伝的にコードされる小型のアミノ酸には、L-Ala(A)、L-Val(V)、L-Cys(C)、L-Asn(N)、L-Ser(S)、L-Thr(T)、およびL-Asp(D)が含まれる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシルを含むアミノ酸または残基」は、ヒドロキシル(-OH)部分を含むアミノ酸を指す。遺伝的にコードされるヒドロキシルを含むアミノ酸には、L-Ser(S)L-Thr(T)およびL-Tyr(Y)が含まれる。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、相互に共有結合した2またはそれを超えるヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、全てがリボヌクレオチドから構成され得るか(すなわち、RNA)、全てが2’デオキシリボヌクレオチドから構成され得るか(すなわち、DNA)、リボヌクレオチドと2’デオキシリボヌクレオチドとの混合物から構成され得る。ヌクレオシドは典型的には標準的なホスホジエステル結合を介して相互に連結するのであろうが、ポリヌクレオチドは、1またはそれを超える非標準的な連結を含み得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得るか、一本鎖領域と二本鎖領域の両方を含み得る。さらに、ポリヌクレオチドは、典型的には、天然に存在するコードヌクレオベース(すなわち、アデニン、グアニン、ウラシル、チミン、およびシトシン)から構成されるであろうが、1またはそれを超える改変および/または合成のヌクレオベース(例えば、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチンなど)を含み得る。いくつかの実施形態では、かかる改変または合成のヌクレオベースは、アミノ酸配列をコードするヌクレオベースである。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「コード配列」は、タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(例えば、遺伝子)の一部を指す。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「生物触媒作用」、「生物触媒作用の」、「生体内変換」、および「生合成」は、有機化合物に対して化学反応を引き起こすための酵素の使用を指す。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「野生型」および「天然に存在する」は、天然に見い出される形態を指す。例えば、野生型のポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、天然供給源から単離することができ、且つ人による操作によって意図的に改変されていない生物中に存在する配列である。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「組換え」、「操作された」、「バリアント」、および「天然に存在しない」は、細胞、核酸、またはポリペプチドに関して使用する場合、材料、すなわち、本来は天然に存在しないと考えられる様式で改変された材料の天然または未変性の形態に対応する材料を指す。いくつかの実施形態では、細胞、核酸、またはポリペプチドは、天然に存在する細胞、核酸、またはポリペプチドと同一であるが、合成材料および/または組換え技術を使用した操作によって産生または誘導されている。非限定的な例には、とりわけ、細胞の未変性(非組換え)形態内に見い出されない遺伝子を発現するか、本来は異なるレベルで発現される未変性遺伝子を発現する組換え細胞が含まれる。
【0046】
用語「配列同一率(%)」を、ポリヌクレオチド間またはポリペプチド間の比較を指すために本明細書中で使用し、比較ウィンドウにわたる2つの最適にアラインメントした配列の比較によって決定し、ここで、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列部分またはポリペプチド配列部分は、2配列の最適なアラインメントのために基準配列と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に生じる位置の数を決定して適合した位置の数を得、適合した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で除し、結果に100を乗じて配列同一率を得ることによって百分率を計算することができる。あるいは、同一の核酸塩基もしくはアミノ酸残基のいずれかが両方の配列中に生じる位置の数を決定するか、ギャップを用いて核酸塩基もしくはアミノ酸残基をアラインメントして適合した位置の数を得、適合した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で除し、結果に100を乗じて配列同一率を得ることによって百分率を計算することができる。当業者は、2つの配列をアラインメントするために利用可能な確立されたアルゴリズムが多数存在すると認識する。比較のための配列の最適アラインメントを、任意の適切な方法(Smith and Waterman(Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482[1981])の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443[1970])の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman(Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444[1988])の類似性検索法、これらアルゴリズムのコンピュータ化された実装(例えば、GCG Wisconsin Software Package中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視検査(当該分野で公知)が含まれるが、これらに限定されない)によって行うことができる。配列同一率および配列類似率の決定に適切なアルゴリズムの例には、Altschul et al.に記載のBLASTアルゴリズムおよびBLAST2.0アルゴリズム(それぞれ、Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403-410[1990];およびAltschul et al.,Nucl.Acids Res.,3389-3402[1977]を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センターのウェブサイトから公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さのワードとアラインメントした場合にいくつかの正の値の閾値スコアTと適合するか満たすクエリー配列中の長さWのショートワードの同定による高スコア配列ペア(HSP)の第1の同定を含む。Tを、隣接ワードスコア閾値という(Altschul et al.,前出を参照のこと)。これらの最初の隣接ワードヒットは、これらのワードヒットを含むより長いHSPを見い出すための検索開始のためのシードとして働く。次いで、ワードヒットを、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方向に伸長させる。累積スコアを、ヌクレオチド配列についてはパラメーターM(適合残基対のための報酬スコア;常に0超)およびN(ミスマッチ残基のためのペナルティスコア;常に0未満)を使用して計算する。アミノ酸配列について、スコア行列を使用して、累積スコアを計算する。各方向でのワードヒットの伸長は、以下の場合に停止される:累積アラインメントスコアがその達成された最大値から量Xだけ低下した場合;1またはそれを超える負スコアの残基アラインメントの蓄積によって累積スコアが0またはそれ未満に進行した場合;またはいずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとしてワードレングス(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワードレングス(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコア行列(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915[1989]を参照のこと)を使用する。例示的な配列アラインメントおよび配列同一率の決定には、提供されたデフォルトパラメーターを使用したGCG Wisconsinソフトウェアパッケージ(Accelrys,Madison WI)中のBESTFITプログラムまたはGAPプログラムを使用することができる。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「基準配列」は、配列および/または活性の比較の基本として使用される規定の配列を指す。基準配列は、より大きな配列のサブセット(例えば、全長の遺伝子配列またはポリペプチド配列のセグメント)であり得る。一般に、基準配列は、少なくとも20ヌクレオチド長またはアミノ酸残基長、少なくとも25残基長、少なくとも50残基長、少なくとも100残基長、または核酸もしくはポリペプチドの全長である。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、それぞれ、(1)2配列間で類似する配列(すなわち、完全配列の一部)を含むことができ、(2)2配列間で異なる配列をさらに含むことができるので、2(またはそれを超える)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の配列比較を、典型的には、配列が類似する局所領域を同定および比較するための「比較ウィンドウ」にわたる2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列の比較によって行う。いくつかの実施形態では、「基準配列」は一次アミノ酸配列に基づくことができ、ここで、基準配列は一次配列中に1またはそれを超える変化を有することができる配列である。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、少なくとも約20個の連続するヌクレオチドの位置またはアミノ酸残基の概念的セグメントを指し、ここで、ある配列を少なくとも20個の連続するヌクレオチドまたはアミノ酸の基準配列と比較することができ、比較ウィンドウ中の配列の一部が2配列の最適なアラインメントのために基準配列(付加や欠失を含まない)と比較して20%またはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。比較ウィンドウは、20個の連続残基よりも長いことが可能であり、必要に応じて30、40、50、100、またはそれより長いウィンドウが含まれる。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「~に相当する」、「~に関する」、および「~に関連する」は、所与のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の付番の文脈で使用する場合、所与のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を基準配列と比較した場合に指定した基準配列の残基の付番を指す。換言すれば、所与のポリマーの残基番号または残基の位置を、所与のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列内の残基の実際の番号の位置によるよりもむしろ基準配列に関して命名する。例えば、所与のアミノ酸配列(操作されたペルオキシダーゼのアミノ酸配列など)を、2配列間の残基マッチを最適にするためのギャップの導入によって基準配列とアラインメントすることができる。これらの場合、ギャップが存在するにもかかわらず、所与のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列中の残基を、アラインメントした基準配列に関して付番する。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「実質的な同一性」は、少なくとも20残基の位置の比較ウィンドウにわたって、頻繁には、少なくとも30~50残基のウィンドウにわたって基準配列と比較して、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%同一性、少なくとも89~95%配列同一性、より通常には少なくとも99%配列同一性を有するポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を指し、ここで、配列同一率を、比較ウィンドウにわたって合計で20%またはそれ未満の基準配列が喪失または付加した配列との基準配列の比較によって計算する。ポリペプチドに適用したいくつかの特定の実施形態では、用語「実質的な同一性」は、2つのポリペプチド配列が、デフォルトギャップウェイトを使用したプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントした場合、少なくとも80%配列同一性、好ましくは少なくとも89%配列同一性、少なくとも95%配列同一性、またはそれを超える配列同一性(例えば、99%配列同一性)を共有することを意味する。いくつかの実施形態では、比較される配列中の同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「アミノ酸の相違」または「残基の相違」は、基準配列中の対応する位置のアミノ酸残基と比較したポリペプチド配列の位置のアミノ酸残基の相違を指す。ある場合には、基準配列はヒスチジンタグを有するが、ヒスチジンタグを持たない等価な基準配列と比較した付番を維持する。アミノ酸の相違の位置を、一般に、本明細書中で「Xn」といい、ここで、nは残基の相違に基づいた基準配列中の対応する位置を指す。例えば、「配列番号4と比較した場合のX93位の残基の相違」は、配列番号4の93位に対応するポリペプチドの位置でのアミノ酸残基の相違を指す。したがって、配列番号4の基準ポリペプチドが93位にセリンを有する場合、「配列番号4と比較した場合のX93位の残基の相違」は、配列番号4の93位に対応するポリペプチドの位置でのセリン以外の任意の残基のアミノ酸置換を指す。本明細書中のほとんどの例では、ある位置での特異的なアミノ酸残基の相違を「XnY」として示し、ここで、「Xn」は上記の対応する位置を指定し、「Y」は操作されたポリペプチド中に見い出されるアミノ酸(すなわち、基準ポリペプチド中の残基と異なる残基)の一文字識別子である。いくつかの例では(例えば、実施例に示した表中)、本発明はまた、従来の表示法「AnB」で示す特異的なアミノ酸の相違を提供し、ここで、Aは基準配列中の残基の一文字識別子であり、「n」は基準配列中の残基の位置の番号であり、Bは操作されたポリペプチド中の残基置換の一文字識別子である。いくつかの例では、本発明のポリペプチドは、基準配列と比較した1またはそれを超えるアミノ酸残基の相違を含むことができ、この相違は、基準配列と比較して残基の相違が存在する特定の位置のリストによって示される。いくつかの実施形態では、1つを超えるアミノ酸をポリペプチドの特定の残基の位置に使用することができる場合、使用することができる種々のアミノ酸残基を、「/」によって分割する(例えば、X307H/X307PまたはX307H/P)。スラッシュを用いて、所与のバリアント内の複数の置換を示してもよい(すなわち、所与の配列中(組み合わせたバリアント中など)に1つを超える置換が存在する)。いくつかの実施形態では、本発明は、保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換を含む1またはそれを超えるアミノ酸の相違を含む操作されたポリペプチド配列を含む。いくつかのさらなる実施形態では、本発明は、保存的アミノ酸置換および非保存的アミノ酸置換の両方を含む操作されたポリペプチド配列を提供する。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、ある残基の、類似の側鎖を有する異なる残基との置換を指し、したがって、典型的には、ポリペプチド中のアミノ酸の、同一または類似と規定のアミノ酸クラス内のアミノ酸との置換を含む。制限されない例として、いくつかの実施形態では、それぞれ、脂肪族側鎖を有するあるアミノ酸を、別の脂肪族アミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン)と置換し;ヒドロキシル側鎖を有するあるアミノ酸を、ヒドロキシル側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、セリンおよびトレオニン)と置換し;芳香族側鎖を有するあるアミノ酸を、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、およびヒスチジン)と置換し;塩基性側鎖を有するあるアミノ酸を、塩基性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、リジンおよびアルギニン)と置換し;酸性側鎖を有するあるアミノ酸を、酸性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)と置換し;そして/またはある疎水性または親水性のアミノ酸を、別の疎水性または親水性のアミノ酸と置換する。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「非保存的置換」は、ポリペプチド中のアミノ酸の、有意に性質が異なる側鎖を有するアミノ酸との置換を指す。非保存的置換は、定義した群内よりもむしろ群間のアミノ酸を使用することができ、(a)置換領域中のペプチド骨格の構造(例えば、グリシンのプロリンへの置換)、(b)電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩高さに影響を及ぼす。制限されない例として、例示的な非保存的置換は、塩基性アミノ酸または脂肪族アミノ酸に置換された酸性アミノ酸;小型のアミノ酸に置換された芳香族アミノ酸;および疎水性アミノ酸に置換された親水性アミノ酸であり得る。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「欠失」は、基準ポリペプチドからの1またはそれを超えるアミノ酸の除去によるポリペプチドの改変を指す。欠失は、操作されたペルオキシダーゼ酵素の酵素活性を保持し、そして/またはその改善された性質を保持しながら、基準酵素を構成する1またはそれを超えるアミノ酸、2またはそれを超えるアミノ酸、5またはそれを超えるアミノ酸、10またはそれを超えるアミノ酸、15またはそれを超えるアミノ酸、または20またはそれを超えるアミノ酸、全アミノ酸数の10%まで、または全アミノ酸数の20%までを除去することができる。欠失は、ポリペプチドの内部および/または末端部が対象であり得る。種々の実施形態では、欠失は、連続的なセグメントを含むことができるか、不連続であり得る。欠失を、典型的には、アミノ酸配列中「-」で示す。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「挿入」は、基準ポリペプチドに対する1またはそれを超えるアミノ酸の付加によるポリペプチドの改変を指す。ポリペプチドの内部またはカルボキシ末端もしくはアミノ末端に挿入することができる。本明細書中で使用される挿入物には、当該分野で公知の融合タンパク質が含まれる。挿入は、アミノ酸の連続セグメントであり得るか、天然に存在するポリペプチド中で1またはそれを超えるアミノ酸によって分離され得る。
【0056】
用語「アミノ酸置換セット」または「置換セット」は、基準配列と比較したポリペプチド配列中のアミノ酸置換群を指す。置換セットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれを超えるアミノ酸置換を有することができる。いくつかの実施形態では、置換セットは、実施例に提供した表中に列挙した任意のバリアントペルオキシダーゼ中に存在するアミノ酸置換セットを指す。
【0057】
「機能的断片」および「生物学的に活性な断片」は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端(単数または複数)および/または内部が欠失しているが、残りのアミノ酸配列が比較対象とされる配列(例えば、本発明の全長の操作されたペルオキシダーゼ)中の対応する位置と同一の位置にあり、前述の全長ポリペプチドの実質的に全ての活性が保持されているポリペプチドを指すために本明細書中で互換的に使用される。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「単離されたポリペプチド」は、ポリペプチドに天然に付随している他の夾雑物(例えば、タンパク質、脂質、およびポリヌクレオチド)から実質的に分離されたポリペプチドを指す。この用語は、その天然に存在する環境または発現系から(例えば、宿主細胞内またはin vitro合成を介して)除去または精製されているポリペプチドを含む。組換えペルオキシダーゼポリペプチドは、細胞内に存在することができるか、細胞培地中に存在することができるか、種々の形態(ライセートまたは単離された調製物など)で調製することができる。そのようなものとして、いくつかの実施形態では、組換えペルオキシダーゼポリペプチドは、単離されたポリペプチドであり得る。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「実質的に純粋なポリペプチド」または「精製されたタンパク質」は、ポリペプチド種が主に存在する種である(すなわち、モルベースまたは重量ベースで、組成物中の任意の他の個別の高分子種よりも豊富に存在する)組成物を指し、一般に、モルまたは重量%で存在する高分子種の少なくとも約50%を対象種が占める場合、実質的に精製された組成物である。しかしながら、いくつかの実施形態では、ペルオキシダーゼを含む組成物は、純度が50%未満(例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%)であるペルオキシダーゼを含む。一般に、実質的に純粋なペルオキシダーゼ組成物は、モルまたは重量%で組成物に存在する全高分子種の約60%またはそれを超えて、約70%またはそれを超えて、約80%またはそれを超えて、約90%またはそれを超えて、約95%またはそれを超えて、および約98%またはそれを超えたペルオキシダーゼを含む。いくつかの実施形態では、対象種を、本質的に均一(すなわち、従来の検出方法によって組成物中の夾雑種を検出できない)まで精製し、ここで、組成物は、本質的に単一の高分子種からなる。溶媒種、小分子(500ダルトン未満)、および元素イオン種は、高分子種と見なさない。いくつかの実施形態では、単離された組換えペルオキシダーゼポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチド組成物である。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「改善された酵素の性質」は、酵素の少なくとも1つの改善された性質を指す。いくつかの実施形態では、本発明は、基準ペルオキシダーゼポリペプチドおよび/もしくは野生型ペルオキシダーゼポリペプチド、ならびに/または別の操作されたペルオキシダーゼポリペプチドと比較して任意の酵素の性質が改善されている操作されたペルオキシダーゼポリペプチドを提供する。したがって、「改善」レベルを決定し、種々のペルオキシダーゼポリペプチド(野生型が含まれ、操作されたペルオキシダーゼも含まれる)の間で比較することができる。改善された性質には、タンパク質発現の増加、熱活性の増加、熱安定性の増加、pH活性の増加、安定性の増加、酵素活性の増加、基質特異性または基質親和性の増加、比活性の増加、基質または最終生成物の阻害に対する耐性の増加、化学安定性の増加、化学選択性の改善、溶媒安定性の改善、酸性pH耐性の増加、タンパク質分解活性耐性の増加(すなわち、タンパク質分解に対する感受性の低下)、凝集の減少、溶解性の増加、および温度プロフィールの変化などの性質が含まれるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、この用語は、ペルオキシダーゼ酵素の少なくとも1つの改善された性質に関して使用される。いくつかの実施形態では、本発明は、基準ペルオキシダーゼポリペプチドおよび/もしくは野生型ペルオキシダーゼポリペプチド、ならびに/または別の操作されたペルオキシダーゼポリペプチドと比較して任意の酵素の性質が改善されている操作されたペルオキシダーゼポリペプチドを提供する。したがって、「改善」レベルを決定し、種々のペルオキシダーゼポリペプチド(野生型が含まれ、操作されたペルオキシダーゼも含まれる)の間で比較することができる。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「酵素活性の増加」および「触媒活性の向上」は、操作されたポリペプチドの性質の改善を指し、基準酵素と比較した比活性(例えば、生成された生成物/時間/タンパク質重量)の増加または基質の生成物への変換率(例えば、特定の量の酵素を使用した特定の時間における出発量の基質の生成物への変換率)の増加によって示すことができる。いくつかの実施形態では、この用語は、本明細書中に提供した操作されたペルオキシダーゼポリペプチドの性質の改善を指し、基準ペルオキシダーゼ酵素と比較した比活性(例えば、生成された生成物/時間/タンパク質重量)の増加または基質の生成物への変換率(例えば、特定の量のペルオキシダーゼを使用した特定の時間における出発量の基質の生成物への変換率)の増加によって示すことができる。いくつかの実施形態では、この用語は、本明細書中に提供した改善されたペルオキシダーゼ酵素に関して使用される。本発明の操作されたペルオキシダーゼの酵素活性を決定する方法の例を、実施例に提供している。酵素活性に関する任意の性質(その変化によって酵素活性が増加し得るK、Vmax、またはkcatの古典的な酵素の性質が含まれる)が影響を受け得る。例えば、酵素活性の改善は、対応する野生型酵素の酵素活性の約1.1倍から、天然に存在するペルオキシダーゼまたは前述のペルオキシダーゼのポリペプチドが由来する別の操作されたペルオキシダーゼよりも酵素活性が2倍、5倍、10倍、20倍、25倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、またはそれを超えるまでであり得る。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「変換」は、基質(単数または複数)の対応する生成物(単数または複数)への酵素変換(または生体内変換)を指す。「変換率」は、特定の条件下で時間内に生成物に変換された基質の百分率を指す。したがって、ペルオキシダーゼポリペプチドの「酵素活性」または「活性」を、特定の期間における基質の生成物への「変換率」として示すことができる。
【0063】
「ゼネラリスト性」を有する酵素(または「ゼネラリスト酵素」)は、親配列と比較して広範囲の基質に対して改善された活性を示す酵素を指す。ゼネラリスト酵素は、必ずしもあらゆる可能性のある基質に対して改善された活性を示すわけではない。いくつかの実施形態では、本発明は、ペルオキシダーゼバリアントであって、このバリアントが広範囲の立体的および電子的に多様な基質について親遺伝子と比較して類似するか改善された活性を示すという点でゼネラリスト性を有するペルオキシダーゼバリアントを提供する。さらに、本明細書中に提供したゼネラリスト酵素を、広範囲の多様な分子にわたって代謝産物/生成物の生成が増加するように改善されるように操作した。
【0064】
用語「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」を、本明細書中で、核酸ハイブリッドが安定な条件を指すために使用する。当業者に公知のように、ハイブリッドの安定性は、ハイブリッドの融解温度(T)を反映する。一般に、ハイブリッドの安定性は、イオン強度、温度、G/C含量、およびカオトロピック剤の存在と相関関係にある。ポリヌクレオチドのT値を、公知の融解温度の予測方法を使用して計算することができる(例えば、Baldino et al.,Meth.Enzymol.,168:761-777[1989];Bolton et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:1390[1962];Bresslauer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8893-8897[1986];Freier et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:9373-9377[1986];Kierzek et al.,Biochem.,25:7840-7846[1986];Rychlik et al.,Nucl.Acids Res.,18:6409-6412[1990](erratum,Nucl.Acids Res.,19:698[1991]);Sambrook et al.,supra);Suggs et al.,1981,in Developmental Biology Using Purified Genes,Brown et al.[eds.],pp.683-693,Academic Press,Cambridge,MA[1981];およびWetmur,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.26:227-259[1991]を参照のこと)。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書中に開示のポリペプチドをコードし、定義した条件下で(中程度にストリンジェントな条件または高ストリンジェントな条件など)、本発明の操作されたペルオキシダーゼ酵素をコードする配列の相補物とハイブリッド形成する。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「ハイブリッド形成ストリンジェンシー」は、核酸のハイブリッド形成における洗浄条件などのハイブリッド形成条件を指す。一般に、ハイブリッド形成反応を、ストリンジェンシーが低い方の条件下で実施後、多様であるが高い方のストリンジェンシーで洗浄する。用語「中程度のストリンジェントなハイブリッド形成」は、標的DNAが標的DNAに対して約60%同一、好ましくは約75%同一、約85%同一、標的ポリヌクレオチドに対して約90%を超えて同一な相補核酸に結合可能な条件を指す。例示的な中程度にストリンジェントな条件は、42℃での50%ホルムアミド、5×デンハート液、5×SSPE、0.2%SDS中でのハイブリッド形成後、42℃での0.2×SSPE、0.2%SDSでの洗浄に等価な条件である。「高ストリンジェンシーハイブリッド形成」は、一般に、規定のポリヌクレオチド配列についての溶液条件下で決定した熱融解温度Tmから約10℃またはそれ未満低い温度の条件を指す。いくつかの実施形態では、高ストリンジェンシー条件は、65℃で0.018M NaClにて安定なハイブリッドを形成する核酸配列のみがハイブリッド形成することが可能な条件を指す(すなわち、ハイブリッドが65℃の0.018M NaCl中で安定ではない場合、本明細書中で意図するように、高ストリンジェンシー条件下で安定でないであろう)。高ストリンジェンシー条件を、例えば、42℃の50%ホルムアミド、5×デンハート液、5×SSPE、0.2%SDSに等価な条件でのハイブリッド形成後、65℃で0.1×SSPE、および0.1%SDSでの洗浄によって得ることができる。別の高ストリンジェンシー条件は、65℃の0.1%(w/v)SDSを含む5×SSCでのハイブリッド形成に等価な条件でのハイブリッド形成および65℃の0.1%SDSを含む0.1×SSCでの洗浄である。他の高ストリンジェンシーハイブリッド形成条件および中程度にストリンジェントな条件は、上記で引用した文献に記載されている。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「コドン最適化された」は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドのコドンの、コードされたタンパク質が目的の生物中で効率的に発現されるように特定の生物中で優先的に使用されるコドンへの変化を指す。ほとんどのアミノ酸がいくつかのコドンによって示されるという点で遺伝暗号が縮重している(「同義語」または「同義」コドンと呼ばれる)にもかかわらず、特定の生物によるコドン使用頻度が無作為ではなく、特定のコドントリプレットに偏っていることが周知である。このコドン使用頻度の偏りは、所与の遺伝子、共通の機能または起源となる祖先の遺伝子、低コピー数タンパク質に対する高発現タンパク質、および生物のゲノムのタンパク質コード領域が集中している領域に関して高い可能性がある。いくつかの実施形態では、ペルオキシダーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを、発現のために選択された宿主生物中で最適に産生するためにコドン最適化することができる。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「好ましい」、「最適な」、および「高コドン使用頻度バイアス」コドンは、単独または組み合わせて使用される場合、同一アミノ酸をコードする他のコドンよりもタンパク質コード領域中でより高い頻度で使用されるコドンを互換的に指す。好ましいコドンを、単一の遺伝子、共通の機能または起源の遺伝子のセット、高発現遺伝子におけるコドン使用頻度、全生物のタンパク質コード領域が集中している領域におけるコドン頻度、関連する生物のタンパク質コード領域が集中している領域におけるコドン頻度、またはその組み合わせに関して決定することができる。遺伝子発現レベルに伴って頻度が増加するコドンは、典型的には、発現に最適なコドンである。特定の生物におけるコドン頻度(例えば、コドン使用頻度、相対的な同義語コドン使用頻度)およびコドン優先度(例えば、クラスター分析またはコレスポンデンス分析を使用した多変量解析が含まれる)ならびに遺伝子中で使用された有効コドン数を決定するための種々の方法が公知である(例えば、GCG CodonPreference,Genetics Computer Group Wisconsin Package;CodonW,Peden,University of Nottingham;McInerney,Bioinform.,14:372-73[1998];Stenico et al.,Nucl.Acids Res.,222437-46[1994];およびWright,Gene 87:23-29[1990]を参照のこと)。コドン使用頻度表は、多数の異なる生物に利用可能である(例えば、Wada et al.,Nucl.Acids Res.,20:2111-2118[1992];Nakamura et al.,Nucl.Acids Res.,28:292[2000];Duret,et al.,supra;Henaut and Danchin,in Escherichia coli and Salmonella,Neidhardt,et al.(eds.),ASM Press,Washington D.C.,p.2047-2066[1996]を参照のこと)。コドン使用頻度を得るためのデータソースは、タンパク質をコードすることができる任意の利用可能なヌクレオチド配列に依存し得る。これらのデータ・セットは、発現したタンパク質をコードすることが実際に公知の核酸配列(例えば、完全タンパク質コード配列-CDS)、発現配列タグ(ESTS)、またはゲノム配列の推定コード領域)を含む(例えば、Mount,Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis,Chapter 8,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.[2001];Uberbacher,Meth.Enzymol.,266:259-281[1996];およびTiwari et al.,Comput.Appl.Biosci.,13:263-270[1997]を参照のこと)。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「調節配列」は、本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現に必要であるか有利な全ての構成要素を含む。各調節配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列にとって天然または外来のものであり得る。かかる調節配列には、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター配列、シグナルペプチド配列、開始配列、および転写ターミネーターが含まれるが、これらに限定されない。最小限でも、調節配列は、プロモーター、転写停止シグナル、および翻訳停止シグナルを含む。調節配列に、ポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域との調節配列のライゲーションを容易にする特異的な制限部位を導入するためのリンカーを提供することができる。
【0069】
「作動可能に連結された」は、本明細書中で、調節配列が目的のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現を指示または制御するように目的のポリヌクレオチドに関連する位置に調節配列が適切に(すなわち、機能的関係において)配置された配置と定義する。
【0070】
「プロモーター配列」は、目的のポリヌクレオチド(コード配列など)の発現のために宿主細胞によって認識される核酸配列を指す。プロモーター配列は、目的のポリヌクレオチドの発現を媒介する転写調節配列を含む。プロモーターは、選択された宿主細胞中で転写活性を示す任意の核酸配列であってよく(変異プロモーター、短縮プロモーター、およびハイブリッドプロモーターが含まれる)、宿主細胞と相同であるか異種のいずれかの細胞外または細胞内のポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。
【0071】
句「適切な反応条件」は、本発明のペルオキシダーゼポリペプチドが基質を所望の生成化合物に変換することができる酵素変換反応溶液中の条件(例えば、酵素負荷、基質負荷、温度、pH、緩衝液、共溶媒の範囲など)を指す。いくつかの例示的な「適切な反応条件」を、本明細書中および/または実施例中に提供する。
【0072】
本明細書中で使用される場合、「化合物負荷」または「酵素負荷」などにおける「負荷」は、反応開始時の反応混合物中の成分の濃度または量を指す。
【0073】
本明細書中で使用される場合、酵素変換反応プロセスの文脈における「基質」は、本明細書中に提供した操作された酵素(例えば、操作されたペルオキシダーゼポリペプチド)が作用する化合物または分子を指す。
【0074】
本明細書中で使用される場合、反応に由来する生成物(例えば、7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オン(レゾルフィン))の収量の「増加」は、反応中に存在する特定の成分(例えば、ペルオキシダーゼ酵素)が、同一の基質および他の代替物を用いたが、目的の成分を欠く同一の条件下で行った反応と比較して、より多くの生成物を産生させる場合に起こる。
【0075】
反応の触媒に関与する他の酵素と比較したその酵素の量が約2%、約1%、または約0.1%(wt/wt)未満である場合、反応は、その特定の酵素を「実質的に含まない」と言われる。
【0076】
本明細書中で使用される場合、液体(例えば、培養ブロス)を「分画する」は、溶液中の総タンパク質に占める所望のタンパク質の百分率が最初の液体生成物中よりも高い溶液を得るために、分離プロセス(例えば、塩析、カラムクロマトグラフィ、サイズ排除、および濾過)またはかかるプロセスの組み合わせを適用することを意味する。
【0077】
本明細書中で使用される場合、「出発組成物」は、少なくとも1つの基質を含む任意の組成物を指す。いくつかの実施形態では、出発組成物は、任意の適切な基質を含む。
【0078】
本明細書中で使用される場合、酵素反応プロセスの文脈における「生成物」は、基質に対する酵素ポリペプチドの作用に起因する化合物または分子を指す。
【0079】
本明細書中で使用される場合、本明細書中で使用される「平衡」は、化学反応または酵素反応(例えば、2つの種AおよびBの相互変換(立体異性体の相互変換が含まれる))中の化学種の定常状態の濃度が得られるプロセスを指し、化学反応または酵素反応の正反応の速度定数および逆反応の速度定数によって決定される。
【0080】
本明細書中で使用される「補因子」は、反応を触媒する際に酵素と組み合わせて作用する非タンパク質化合物を指す。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「アミノ」は、-NH基を指す。
【0082】
本明細書中で使用される場合、「オキソ」は=Oを指す。
【0083】
本明細書中で使用される場合、「オキシ」は、2価の-O-基を指し、異なるオキシ基(エーテルおよびエステルが含まれる)を形成するための種々の置換基を有して良い。
【0084】
本明細書中で使用される場合、「カルボキシ」は-COOHを指す。
【0085】
本明細書中で使用される場合、「カルボニル」は-C(O)-を指し、異なるカルボニル基(酸、酸ハライド、アルデヒド、アミド、エステル、およびケトンが含まれる)を形成するための種々の置換基を有して良い。
【0086】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシ」は-OHを指す。
【0087】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロアリール」は、環内に1~10個の炭素原子(両端の数を含む)および酸素、窒素、および硫黄から選択される1~4個のヘテロ原子(両端の数を含む)を含む芳香族複素環基を指す。かかるヘテロアリール基は、単一の環(例えば、ピリジルまたはフリル)または縮合多環(例えば、インドリジニルまたはベンゾチエニル)を有することができる。
【0088】
本明細書中で使用される場合、「員環」は、任意の環状構造を含むことを意味する。用語「員」の前の数字は、環を構成する骨格原子の数を示す。したがって、例えば、シクロヘキシル、ピリジン、ピラン、およびチオピランは6員環であり、シクロペンチル、ピロール、フラン、およびチオフェンは5員環である。
【0089】
本明細書中で使用される場合、用語「培養」は、任意の適切な条件下での(例えば、液体培地、ゲル培地、または固体培地を使用した)微生物細胞集団の成長を指す。
【0090】
組換えポリペプチドを、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して産生することができる。目的の野生型ポリペプチドをコードする遺伝子を、プラスミドなどのベクター内でクローン化し、大腸菌などの所望の宿主内で発現させることができる。組換えポリペプチドのバリアントを、当該分野で公知の種々の方法によって生成することができる。実際に、当業者に周知の多種多様な異なる変異誘発技術が存在する。さらに、変異誘発キットはまた、分子生物学分野の多数の販売者から入手可能である。規定のアミノ酸での特異的置換(部位特異的)、遺伝子の局在化領域内での特異的もしくは無作為の変異(位置特異的)、または全遺伝子にわたるランダム変異誘発(例えば、飽和変異誘発)を行うための方法が利用可能である。酵素バリアントを生成するための多数の適切な方法(PCRを使用した一本鎖DNAまたは二本鎖DNAの部位特異的変異誘発、カセット式変異誘発、遺伝子合成、誤りがちのPCR、シャフリング、および化学飽和変異誘発、または当該分野で公知の任意の他の適切な方法が含まれるが、これらに限定されない)が当業者に公知である。発現、スクリーニング、およびアッセイすることができるバリアントライブラリーを生成するために、酵素をコードするポリヌクレオチドに変異誘発法および定向進化法を容易に適用することができる。任意の適切な変異誘発法および定向進化法を本発明で使用し、これらの方法は当該分野で周知である(例えば、US Patent Nos. 5,605,793、5,811,238、5,830,721、5,834,252、5,837,458、5,928,905、6,096,548、6,117,679、6,132,970、6,165,793、6,180,406、6,251,674、6,265,201、6,277,638、6,287,861、6,287,862、6,291,242、6,297,053、6,303,344、6,309,883、6,319,713、6,319,714、6,323,030、6,326,204、6,335,160、6,335,198、6,344,356、6,352,859、6,355,484、6,358,740、6,358,742、6,365,377、6,365,408、6,368,861、6,372,497、6,337,186、6,376,246、6,379,964、6,387,702、6,391,552、6,391,640、6,395,547、6,406,855、6,406,910、6,413,745、6,413,774、6,420,175、6,423,542、6,426,224、6,436,675、6,444,468、6,455,253、6,479,652、6,482,647、6,483,011、6,484,105、6,489,146、6,500,617、6,500,639、6,506,602、6,506,603、6,518,065、6,519,065、6,521,453、6,528,311、6,537,746、6,573,098、6,576,467、6,579,678、6,586,182、6,602,986、6,605,430、6,613,514、6,653,072、6,686,515、6,703,240、6,716,631、6,825,001、6,902,922、6,917,882、6,946,296、6,961,664、6,995,017、7,024,312、7,058,515、7,105,297、7,148,054、7,220,566、7,288,375、7,384,387、7,421,347、7,430,477、7,462,469、7,534,564、7,620,500、7,620,502、7,629,170、7,702,464、7,747,391、7,747,393、7,751,986、7,776,598、7,783,428、7,795,030、7,853,410、7,868,138、7,783,428、7,873,477、7,873,499、7,904,249、7,957,912、7,981,614、8,014,961、8,029,988、8,048,674、8,058,001、8,076,138、8,108,150、8,170,806、8,224,580、8,377,681、8,383,346、8,457,903、8,504,498、8,589,085、8,762,066、8,768,871、9,593,326、ならびに全ての関連する米国特許、およびPCTおよび米国でない等価物;Ling et al.,Anal.Biochem.,254(2):157-78[1997];Dale et al.,Meth.Mol.Biol.,57:369-74[1996];Smith,Ann.Rev.Genet.,19:423-462[1985];Botstein et al.,Science,229:1193-1201[1985];Carter,Biochem.J.,237:1-7[1986];Kramer et al.,Cell,38:879-887[1984];Wells et al.,Gene,34:315-323[1985];Minshull et al.,Curr.Op.Chem.Biol.,3:284-290[1999];Christians et al.,Nat.Biotechnol.,17:259-264[1999];Crameri et al.,Nature,391:288-291[1998];Crameri,et al.,Nat.Biotechnol.,15:436-438[1997];Zhang et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.,94:4504-4509[1997];Crameri et al.,Nat.Biotechnol.,14:315-319[1996];Stemmer,Nature,370:389-391[1994];Stemmer,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,91:10747-10751[1994];WO95/22625号;WO97/0078号;WO97/35966号;WO98/27230号;WO00/42651号;WO01/75767号;およびWO2009/152336号(これらの全てが本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0091】
いくつかの実施形態では、変異誘発処理後に得られる酵素クローンを、酵素調製物を規定温度(または他のアッセイ条件)に供し、熱処理または他のアッセイ条件後の酵素活性の残存量を測定することによってスクリーニングする。次いで、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むクローンを遺伝子から単離し、配列決定してヌクレオチド配列の変化(存在する場合)を同定し、宿主細胞内で酵素を発現させるために使用する。発現ライブラリー由来の酵素活性を、当該分野で公知の任意の適切な方法(例えば、HPLC分析などの標準的な生化学技術)を使用して測定することができる。
【0092】
バリアントが産生された後、これらを任意の所望の性質(例えば、高活性もしくは活性の増加、または低活性もしくは活性の低下、熱活性の増加、熱安定性の増加、および/または酸性pH安定性など)についてスクリーニングすることができる。いくつかの実施形態では、「組換えペルオキシダーゼポリペプチド」(本明細書中で、「操作されたペルオキシダーゼポリペプチド」、「バリアントペルオキシダーゼ酵素」、「ペルオキシダーゼバリアント」、および「ペルオキシダーゼコンビナトリアルバリアント」とも呼ばれる)を使用する。いくつかの実施形態では、「組換えペルオキシダーゼポリペプチド」(「操作されたペルオキシダーゼポリペプチド」、「バリアントペルオキシダーゼ酵素」、「ペルオキシダーゼバリアント」、および「ペルオキシダーゼコンビナトリアルバリアント」とも呼ばれる)を使用する。
【0093】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、細胞内にDNA配列を導入するためのDNA構築物である。いくつかの実施形態では、ベクターは、DNA配列にコードされたポリペプチドを適切な宿主内で発現させることができる適切な調節配列に作動可能に連結された発現ベクターである。いくつかの実施形態では、「発現ベクター」は、宿主細胞内での発現を駆動するためのDNA配列(例えば、導入遺伝子)に作動可能に連結されたプロモーター配列を有し、いくつかの実施形態では、転写ターミネーター配列も含む。
【0094】
本明細書中で使用される場合、用語「発現」には、ポリペプチド産生に関与する任意の工程(転写、転写後修飾、翻訳、および翻訳後修飾が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。いくつかの実施形態では、この用語はまた、細胞からのポリペプチドの分泌を含む。
【0095】
本明細書中で使用される場合、用語「産生する」は、細胞によるタンパク質および/または他の化合物の産生を指す。この用語は、ポリペプチド産生に関与する任意の工程(転写、転写後修飾、翻訳、および翻訳後修飾が含まれるが、これらに限定されない)を含むことが意図される。いくつかの実施形態では、この用語はまた、細胞からのポリペプチドの分泌を含む。
【0096】
本明細書中で使用される場合、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列(例えば、プロモーター配列、シグナルペプチド、ターミネーター配列など)は、前述の配列および別の配列の2つが自然界では関連しない場合に、作動可能に連結された前述の別の配列に対して「異種である」。例えば、「異種ポリヌクレオチド」は、実験技術によって宿主細胞に導入された任意のポリヌクレオチドであり、宿主細胞から取り出し、実験操作に供し、次いで、宿主細胞に再導入されるポリヌクレオチドが含まれる。
【0097】
本明細書中で使用される場合、用語「宿主細胞」および「宿主株」は、本明細書中に提供したDNA(例えば、ペルオキシダーゼバリアントをコードするポリヌクレオチド)を含む発現ベクターに適切な宿主を指す。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、当該分野で公知の組換えDNA技術を使用して構築されたベクターを使用して形質転換されているかトランスフェクトされている原核細胞または真核細胞である。
【0098】
用語「アナログ」は、基準ポリペプチドと70%超であるが100%未満の配列同一性(例えば、75%、78%、80%、83%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を超える配列同一性)を有するポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、アナログは、1またはそれを超える天然に存在しないアミノ酸残基(ホモアルギニン、オルニチン、およびノルバリンが含まれるが、これらに限定されない)および天然に存在するアミノ酸を含むポリペプチドを意味する。いくつかの実施形態では、アナログはまた、1またはそれを超えるD-アミノ酸残基および2つまたはそれを超えるアミノ酸残基の間の非ペプチド結合を含む。
【0099】
用語「有効量」は、所望の結果を得るために十分な量を意味する。当業者は、日常的な実験を使用することによって有効量を決定することができる。
【0100】
用語「単離された」および「精製された」を、自然界で関連している少なくとも1つの他の成分から取り出された分子(例えば、単離された核酸、単離されたポリペプチドなど)または他の成分を指すために使用する。用語「精製された」は、完全に純粋である必要はなく、むしろ、相対的な定義であることが意図される。
【0101】
本明細書中で使用される場合、「立体選択性」は、化学反応または酵素反応における、一方の立体異性体の他方の立体異性体を超える優先的形成を指す。立体選択性は、一方の立体異性体の形成が他方よりも好まれる場合は部分的であり得、一方の立体異性体のみが形成される場合は完全であり得る。立体異性体が鏡像異性体である場合、立体選択性は、エナンチオ選択性(両方の合計中の1つの鏡像異性体の分率(典型的には、百分率として報告される))と呼ばれる。エナンチオ選択性は、代わりとして、式[主な鏡像異性体-少数の鏡像異性体]/[主な鏡像異性体+少数の鏡像異性体]にしたがって鏡像異性体から計算した鏡像体過剰率(e.e.)として(典型的には百分率として)当該分野で一般的に報告されている。立体異性体がジアステレオ異性体である場合、立体選択性はジアステレオ選択性(2つのジアステレオマーの混合物のうちの一方のジアステレオマーの分率(典型的には、百分率として報告される))と呼ばれ、一般に、代わりとして、ジアステレオマー過剰率(d.e.)として報告される。鏡像体過剰率およびジアステレオマー過剰率は、立体異性体過剰率の一形態である。
【0102】
本明細書中で使用される場合、用語「位置選択性」および「位置選択的反応」は、結合の1つの作製方向または破壊方向が全ての他の可能性のある方向より優先されて起こる反応を指す。反応は、この区別が完全である場合は完全に(100%)位置選択性であり得るか、一方の部位での反応生成物が他方の部位での反応生成物より優位である場合に実質的に位置選択性(少なくとも75%)であり得るか、部分的に位置選択性(x%、百分率は目的の反応に応じて設定される)であり得る。
【0103】
本明細書中で使用される場合、「化学選択性」は、化学反応または酵素反応における、一方の生成物の他方の生成物を超える優先的形成を指す。
【0104】
本明細書中で使用される場合、「pH安定性の」は、未処理の酵素と比較して一定期間(例えば、0.5~24時間)高pHまたは低pH(例えば、pH4.5~6または8~12)に曝露後に類似の活性(例えば、60%~80%を超える)を維持するペルオキシダーゼポリペプチドを指す。
【0105】
本明細書中で使用される場合、「熱安定性の」は、一定期間(例えば、0.5~24時間)高温(例えば、40~80℃)に曝露後に、同一の高温に曝露した野生型酵素と比較して類似の活性(例えば、60%~80%を超える)を維持するペルオキシダーゼポリペプチドを指す。
【0106】
本明細書中で使用される場合、「溶媒安定性の」は、一定期間(例えば、0.5~24時間)種々の濃度(例えば、5~99%)の溶媒(エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド[DMSO]、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、酢酸ブチル、メチルtert-ブチルエーテルなど)に曝露後に、同一濃度の同一溶媒に曝露した野生型酵素と比較して類似の活性(例えば、60%~80%を超える)を維持するペルオキシダーゼポリペプチドを指す。
【0107】
本明細書中で使用される場合、「熱および溶媒安定性の」は、熱安定性および溶媒安定性の両方を示すペルオキシダーゼポリペプチドを指す。
【0108】
本明細書中で使用される場合、「必要に応じた」および「必要に応じて」は、その後に記載する事象または環境が起こっても起こらなくてもよく、この記載には事象または環境が起こる例および起こらない例が含まれることを意味する。当業者は、1またはそれを超える必要に応じた置換基を含む記載の任意の分子に関して、立体的に現実的なおよび/または合成が実現可能な化合物のみが含まれることを意味すると理解するであろう。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「必要に応じて置換された」は、その後に来る1つの用語または一連の化学基に対する全ての修飾語を指す。例えば、用語「必要に応じて置換されたアリールアルキル」では、分子の「アルキル」部分および「アリール」部分を置換しても置換しなくてもよく、一連の用語「必要に応じて置換されたアルキル、シクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール」については、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基を、他の基から独立して、置換しても置換しなくてもよい。
【0110】
発明の詳細な説明
本発明は、操作されたペルオキシダーゼ酵素(ペルオキシダーゼ活性を有するポリペプチド)およびこれらの酵素をコードするポリヌクレオチド、ならびにこれらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供する。ペルオキシダーゼ酵素の産生方法も提供する。本発明は、ペルオキシダーゼ酵素を含む組成物および操作されたペルオキシダーゼ酵素を使用する方法をさらに提供する。本発明は、薬学的化合物および他の化合物の生産において特に使用される。
【0111】
DyP型ペルオキシダーゼ(DyP)(EC番号1.11.1.19)は、染料を脱色するペルオキシダーゼ酵素のファミリーである。この酵素は、電子供与体として過酸化水素を使用したいくつかの基質の酸化を触媒するヘム含有タンパク質である。この方法で使用される操作されたDyPペルオキシダーゼは、藍色細菌Anabaena(Nostoc)sp.(PCC7120株)由来の野生型ペルオキシダーゼAlr1585の配列に由来する配列を有する。DyPペルオキシダーゼは、以下のスキーム1に示した基質として10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex Red)を使用した7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オン(レゾルフィン)の産生を触媒する。
スキーム1
【化1】
操作されたペルオキシダーゼポリペプチド
【0112】
本発明は、操作されたペルオキシダーゼポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドを調製する方法、およびポリペプチドを使用する方法を提供する。記載がポリペプチドに関する場合、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも記載していると理解すべきである。いくつかの実施形態では、本発明は、野生型ペルオキシダーゼ酵素と比較して改善された性質を有する操作された天然に存在しないペルオキシダーゼ酵素を提供する。
【0113】
いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼポリペプチドを、電子供与体として過酸化水素を使用した有機基質の変換のために使用することができる。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼポリペプチドを、基質化合物(1)(10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジンまたはAmplex Red)
【化2】
化合物(1)
の生成化合物(2)(7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オンまたはレゾルフィン)
【化3】
化合物(2)
への変換のために使用することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼポリペプチドを使用して、通常のオキシダーゼサイクリング中の活性部位の不活性部位の不活性な酸化還元状態を酸化することによってオキシダーゼ触媒活性を促進することができる。
【0115】
任意の適切な反応条件を本発明で使用する。いくつかの実施形態では、操作されたポリペプチドが酸化反応を行う性質の改善を分析するための方法を使用する。いくつかの実施形態では、以下および実施例にさらに記載のように、操作されたペルオキシダーゼの濃度もしくは量、基質(単数または複数)、緩衝液(単数または複数)、溶媒(単数または複数)、補因子、pH、条件(温度および反応時間が含まれる)、および/または固体支持体上に固定された操作されたペルオキシダーゼポリペプチドを用いた条件に関して反応条件を修正する。
【0116】
いくつかの実施形態では、適切な反応条件は、以下を含む:(a)約1g/L~50g/Lの基質負荷;(b)約0.1g/L~10g/Lの操作されたポリペプチド;(c)約0.5mM~2.5mM過酸化水素;(d)約pH6~7;(e)約20℃~40℃の温度;および(h)2~30分間の反応時間。
【0117】
いくつかの実施形態では、適切な反応条件は、以下を含む:(a)約13g/Lの基質負荷;(b)約5g/Lの操作されたポリペプチド;(c)約1.3mM過酸化水素;(d)約pH6.5;(g)約23℃の温度;および(h)2分間の反応時間。
【0118】
いくつかの実施形態では、反応条件を補足するために、さらなる反応成分またはさらなる技術を利用する。いくつかの実施形態では、これらは、酵素の不活化の安定化または阻害、生成物の阻害の軽減、および/または反応平衡の所望の生成物形成へのシフトのための対策を行うことを含む。
【0119】
いくつかのさらなる実施形態では、基質化合物の生成化合物への変換のための上記の任意のプロセスは、以下から選択される1またはそれを超える工程をさらに含むことができる:生成化合物(単数または複数)の抽出、単離、精製、結晶化、濾過、および/または凍結乾燥。本明細書中に提供したプロセスによって生成された生体触媒反応混合物からの生成物(単数または複数)の抽出、単離、精製、および/または結晶化のための方法、技術、およびプロトコールは、当業者に公知であり、そして/または日常的な実験によって評価される。さらに、例示的な方法を、以下の実施例に示す。
操作されたポリペプチドをコードする操作されたペルオキシダーゼポリヌクレオチド、
発現ベクター、および宿主細胞
【0120】
本発明は、本明細書中に記載の操作された酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを、遺伝子発現を調節する1またはそれを超える異種制御配列に作動可能に連結して、ポリペプチドを発現することができる組換えポリヌクレオチドを作出する。いくつかの実施形態では、操作された酵素ポリペプチド(単数または複数)をコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含む発現構築物を適切な宿主細胞に導入して、対応する酵素ポリペプチド(単数または複数)を発現させる。
【0121】
当業者に明らかなように、タンパク質配列の利用可能性および種々のアミノ酸に対応するコドンの知識により、対象ポリペプチドをコードすることができる全てのポリヌクレオチドが説明される。同一のアミノ酸が代替コドンまたは同義語コドンによってコードされる遺伝コードの縮重により、非常に多数の核酸を作製することが可能であり、その核酸の全てが操作された酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)ポリペプチドをコードする。したがって、本発明は、可能なコドンの選択に基づいた組み合わせの選択による本明細書中に記載の酵素ポリペプチドをコードする作製可能な酵素ポリヌクレオチドのありとあらゆる可能な異形を産生するための方法および組成物を提供し、全てのかかる異形は、本明細書中に記載の任意のポリペプチド(実施例(例えば、種々の表)に示したアミノ酸配列が含まれる)について具体的に開示されると見なされるものとする。
【0122】
いくつかの実施形態では、タンパク質産生のために選択された宿主細胞によって利用されるようにコドンを最適化することが好ましい。例えば、細菌中で使用される好ましいコドンを、典型的には、細菌中での発現のために使用する。したがって、操作された酵素ポリペプチドをコードするコドン最適化ポリヌクレオチドは、全長コード配列のコドン位置の約40%、50%、60%、70%、80%、90%、または90%を超える位置で好ましいコドンを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に示した天然に存在するペルオキシダーゼポリペプチドのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3または5(各々は、それぞれ、配列番号4または6の同一のポリペプチド配列をコードする)の核酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える同一性を含む核酸配列を有する。
【0124】
いくつかの実施形態では、酵素ポリヌクレオチドは、本明細書中に開示の性質を有する酵素活性を有する操作されたポリペプチドをコードし、ここで、前述のポリペプチドは、本明細書中に提供した配列番号から選択される基準配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える同一性を有するアミノ酸配列、または任意のバリアントのアミノ酸配列(例えば、実施例中に提供したアミノ酸配列)、および基準ポリヌクレオチド(単数または複数)と比較して1またはそれを超える残基の相違、または実施例に開示の任意のバリアント(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超えるアミノ酸残基の位置)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、基準ポリペプチド配列は、配列番号4および6から選択される。
【0125】
いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3および/または5から選択される配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号5を含む。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3~289から選択される配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、操作されたペルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号5~289から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下で、本明細書中に提供した任意のポリヌクレオチド配列、もしくはその相補物、または本明細書中に提供した任意のバリアント酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列から選択される基準ポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる。いくつかの実施形態では、高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成することができるポリヌクレオチドは、基準配列と比較して1またはそれを超える残基が異なるアミノ酸配列を含む酵素ポリペプチドをコードする。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書中の任意の操作された酵素ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを、種々の方法で酵素ポリペプチドの発現を容易にするように操作する。いくつかの実施形態では、酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、酵素ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの発現を制御するための1またはそれを超える調節配列が存在する発現ベクターを含む。利用される発現ベクターに応じて、ベクターに挿入する前に単離されたポリヌクレオチドを操作することが望ましいか必要であり得る。組換えDNA法を利用したポリヌクレオチド配列および核酸配列の改変技術は、当該分野で周知である。いくつかの実施形態では、調節配列には、とりわけ、プロモーター、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、シグナルペプチド配列、および転写ターミネーターが含まれる。いくつかの実施形態では、適切なプロモーターを、選択される宿主細胞に基づいて選択する。細菌宿主細胞のために、本開示の核酸構築物の転写の指示に適切なプロモーターには、大腸菌lacオペロン、Streptomyces coelicolorアガラーゼ遺伝子(dagA)、Bacillus subtilisレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、Bacillus licheniformisα-アミラーゼ遺伝子(amyL)、Bacillus stearothermophilusマルトース生成アミラーゼ遺伝子(amyM)、Bacillus amyloliquefaciens α-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、Bacillus licheniformisペニシリナーゼ遺伝子(penP)、Bacillus subtilisのxylAおよびxylB遺伝子、および真核生物β-ラクタマーゼ遺伝子(例えば、Villa-Kamaroff et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 75:3727-3731[1978]を参照のこと)から得たプロモーター、ならびにtac プロモーター(例えば、DeBoer et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 80:21-25[1983]を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。糸状菌宿主細胞のための例示的なプロモーターには、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、Aspergillus niger中性α-アミラーゼ、Aspergillus niger酸安定性α-アミラーゼ、Aspergillus nigerまたはAspergillus awamoriのグルコアミラーゼ(glaA)、Rhizomucor mieheiリパーゼ、Aspergillus oryzaeアルカリプロテアーゼ、Aspergillus oryzaeトリオースリン酸イソメラーゼ、Aspergillus nidulansアセタミダーゼ、およびFusarium oxysporumトリプシン様プロテアーゼ(例えば、WO96/00787号を参照のこと)の遺伝子から得たプロモーター、ならびにNA2-tpiプロモーター(Aspergillus niger中性α-アミラーゼおよびAspergillus oryzaeトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子由来のプロモーターのハイブリッド)、ならびにその変異プロモーター、短縮プロモーター、およびハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。例示的な酵母細胞プロモーターは、Saccharomyces cerevisiaeエノラーゼ(ENO-1)、Saccharomyces cerevisiaeガラクトキナーゼ(GAL1)、Saccharomyces cerevisiaeアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)、およびSaccharomyces cerevisiae3-ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子に由来し得る。酵母宿主細胞のための他の有用なプロモーターは当該分野で公知である(例えば、Romanos et al.,Yeast 8:423-488[1992]を参照のこと)。
【0128】
いくつかの実施形態では、調節配列はまた、適切な転写ターミネーター配列(すなわち、転写を終結させるために宿主細胞によって認識される配列)である。いくつかの実施形態では、ターミネーター配列は、酵素ポリペプチドをコードする核酸配列の3’末端に作動可能に連結される。選択した宿主細胞で機能する任意のターミネーターを、本発明で使用する。糸状菌宿主細胞のための例示的な転写ターミネーターを、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、Aspergillus nigerグルコアミラーゼ、Aspergillus nidulansアントラニル酸シンターゼ、Aspergillus nigerのα-グルコシダーゼ、およびFusarium oxysporumトリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得ることができる。酵母宿主細胞のための例示的なターミネーターを、Saccharomyces cerevisiaeエノラーゼ、Saccharomyces cerevisiaeシトクロムC(CYC1)、およびSaccharomyces cerevisiaeグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得ることができる。酵母宿主細胞のための他の有用なターミネーターが当該分野で公知である(例えば、Romanos et al.,前出を参照のこと)。
【0129】
いくつかの実施形態では、また、調節配列は適切なリーダー配列(すなわち、宿主細胞による翻訳に重要なmRNAの非翻訳領域)である。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、酵素ポリペプチドをコードする核酸配列の5’末端に作動可能に連結される。選択された宿主細胞で機能する任意の適切なリーダー配列を、本発明で使用する。糸状菌宿主細胞のための例示的なリーダーを、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、およびAspergillus nidulansトリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得る。酵母宿主細胞に適切なリーダーを、Saccharomyces cerevisiaeエノラーゼ(ENO-1)、Saccharomyces cerevisiae 3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、Saccharomyces cerevisiae α因子、およびSaccharomyces cerevisiaeアルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)の遺伝子から得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、調節配列はまた、ポリアデニル化配列(すなわち、核酸配列の3’末端に作動可能に連結され、転写時に転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためのシグナルとして宿主細胞によって認識される配列)である。選択された宿主細胞で機能する任意の適切なポリアデニル化配列を、本発明で使用する。糸状菌宿主細胞のための例示的なポリアデニル化配列には、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、Aspergillus nigerグルコアミラーゼ、Aspergillus nidulansアントラニル酸シンターゼ、Fusarium oxysporumトリプシン様プロテアーゼ、およびAspergillus niger α-グルコシダーゼの遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。酵母宿主細胞に有用なポリアデニル化配列が公知である(例えば、Guo and Sherman,Mol.Cell.Biol.,15:5983-5990[1995]を参照のこと)。
【0131】
いくつかの実施形態では、調節配列はまた、シグナルペプチド(すなわち、ポリペプチドのアミノ末端に連結したアミノ酸配列をコードし、コードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に方向づけるコード領域)である。いくつかの実施形態では、核酸配列のコード配列の5’末端は、分泌されるポリペプチドをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み枠中で天然に連結したシグナルペプチドコード領域を固有に含む。あるいは、いくつかの実施形態では、コード配列の5’末端は、コード配列にとって外来のシグナルペプチドコード領域を含む。発現されたポリペプチドを選択された宿主細胞の分泌経路に方向づける任意の適切なシグナルペプチドコード領域を、操作されたポリペプチド(単数または複数)の発現のために使用する。細菌宿主細胞のための有効なシグナルペプチドコード領域は、Bacillus NClB 11837マルトース生成アミラーゼ、Bacillus stearothermophilus α-アミラーゼ、Bacillus licheniformisサブチリシン、Bacillus licheniformis β-ラクタマーゼ、Bacillus stearothermophilus中性プロテアーゼ(nprT、nprS、nprM)、およびBacillus subtilis prsAの遺伝子から得たシグナルペプチドコード領域が含まれるが、これらに限定されないシグナルペプチドコード領域である。さらなるシグナルペプチドは、当該分野で公知である(例えば、Simonen and Palva,Microbiol.Rev.,57:109-137[1993]を参照のこと)。いくつかの実施形態では、糸状菌宿主細胞のための有効なシグナルペプチドコード領域には、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、Aspergillus niger中性アミラーゼ、Aspergillus nigerグルコアミラーゼ、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、Humicola insolensセルラーゼ、およびHumicola lanuginosaリパーゼの遺伝子から得たシグナルペプチドコード領域が含まれるが、これらに限定されない。酵母宿主細胞のための有用なシグナルペプチドには、Saccharomyces cerevisiae α因子およびSaccharomyces cerevisiaeインベルターゼの遺伝子由来のシグナルペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの実施形態では、調節配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に配置されたアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域である。得られたポリペプチドは、「プロ酵素」、「プロポリペプチド」、または、「酵素原」と呼ばれる。プロポリペプチドは、プロポリペプチドからのプロペプチドの触媒的切断または自己触媒的切断によって活性な成熟ポリペプチドに変換され得る。プロペプチドコード領域を、任意の適切な供給源(Bacillus subtilisアルカリプロテアーゼ(aprE)、Bacillus subtilis中性プロテアーゼ(nprT)、Saccharomyces cerevisiae α因子、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、およびMyceliophthora thermophilaラクターゼの遺伝子が含まれるが、これらに限定されない)から得ることができる(例えば、WO95/33836号を参照のこと)。シグナルペプチド領域およびプロペプチド領域の両方がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、プロペプチド領域はポリペプチドのアミノ末端に隣接し、シグナルペプチド領域はプロペプチド領域のアミノ末端に隣接する。
【0133】
いくつかの実施形態では、制御配列も利用される。これらの配列は、宿主細胞の成長に関連するポリペプチドの発現の制御を容易にする。制御系の例は、化学的刺激または物理的刺激(制御化合物の存在が含まれる)に応答して遺伝子発現をオンまたはオフにする制御系である。原核生物宿主細胞では、適切な制御配列には、lac、tac、およびtrpの各オペレーター系が含まれるが、これらに限定されない。酵母宿主細胞では、適切な制御系には、ADH2系またはGAL1系が含まれるが、これらに限定されない。糸状菌では、適切な制御配列には、TAKAα-アミラーゼプロモーター、Aspergillus nigerグルコアミラーゼプロモーター、およびAspergillus oryzaeグルコアミラーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
別の態様では、本発明は、操作された酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および導入される宿主のタイプに応じて1またはそれを超える発現制御領域(プロモーターおよびターミネーターなど)、複製起点などを含む組換え発現ベクターに関する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の種々の核酸配列および調節配列を共に連結して組換え発現ベクターを産生し、この組換え発現ベクターは、1またはそれを超える都合の良い制限部位を含むことができ、この制限部位は、かかる部位での酵素ポリペプチドをコードする核酸配列の挿入または置換が可能である。あるいは、いくつかの実施形態では、本発明の核酸配列を、核酸配列または核酸配列を含む核酸構築物を発現に適切なベクター内に挿入することによって発現させる。発現ベクターの作出に関与するいくつかの実施形態では、コード配列が発現に適切な調節配列と作動可能に連結されるように、コード配列をベクター中に配置する。
【0135】
組換え発現ベクターは、組換えDNA手技に都合よく供することができ、且つ酵素ポリヌクレオチド配列を発現させることができる任意の適切なベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)であり得る。ベクターの選択は、典型的には、ベクターとベクターを導入すべき宿主細胞との適合性に依存する。ベクターは、線状プラスミドまたは閉じた環状プラスミドであり得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、自己複製ベクター(すなわち、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体などのその複製が染色体複製と独立している染色体外実体として存在するベクター)である。ベクターは、自己複製を保証する任意の手段を含み得る。いくつかの別の実施形態では、ベクターは、宿主細胞に導入された場合にゲノムに組み込まれ、既に組み込まれている染色体(単数または複数)と共に複製されるベクターである。さらに、いくつかの実施形態では、単一のベクターもしくはプラスミドまたは宿主細胞のゲノムに導入されるべきDNAの全てを共に含む2またはそれを超えるベクターもしくはプラスミド、および/またはトランスポゾンを利用する。
【0137】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、形質転換した細胞を容易に選択することができる1またはそれを超える選択マーカーを含む。「選択マーカー」は、遺伝子であって、その産物が殺生物剤耐性またはウイルス耐性、重金属耐性、および栄養素要求体に対する原栄養性などを提供する遺伝子である。細菌選択マーカーの例には、Bacillus subtilisもしくはBacillus licheniformis由来のdal遺伝子、または抗生物質耐性(アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンへの耐性など)を付与するマーカーが含まれるが、これらに限定されない。酵母宿主細胞に適切なマーカーには、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、およびURA3が含まれるが、これらに限定されない。糸状菌宿主細胞で用いる選択マーカーには、amdS(アセタミダーゼ;例えば、A.nidulansまたはA.orzyae由来)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ;例えば、S.hygroscopicus由来)、hph(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、pyrG(オロチジン5’-リン酸デカルボキシラーゼ;例えば、A.nidulansまたはA.orzyae由来)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、およびtrpC(アントラニル酸シンターゼ)、ならびにその等価物が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
別の態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つの操作された酵素ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む宿主細胞であって、前述のポリヌクレオチド(単数または複数)が宿主細胞中で操作された酵素(単数または複数)の発現のための1またはそれを超える調節配列に作動可能に連結されている、宿主細胞を提供する。本発明の発現ベクターによってコードされたポリペプチドの発現で用いるのに適切な宿主細胞は、当該分野で周知であり、細菌細胞(大腸菌細胞、Vibrio fluvialis細胞、Streptomyces細胞、およびSalmonella typhimurium細胞など);真菌細胞(酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiaeまたはPichia pastoris(ATCCアクセッション番号201178))など);昆虫細胞(Drosophila S2細胞およびSpodoptera Sf9細胞など);動物細胞(CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、293細胞、およびBowes melanoma細胞など);および植物細胞が含まれるが、これらに限定されない。また、例示的な宿主細胞には、種々の大腸菌株(例えば、W3110(ΔfhuA)およびBL21)が含まれる。細菌選択マーカーの例には、Bacillus subtilisもしくはBacillus licheniformis由来のdal遺伝子、または抗生物質耐性(アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、および/またはテトラサイクリンへの耐性など)を付与するマーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の発現ベクターは、宿主細胞のゲノム内へのベクターの取り込みまたはゲノムから独立した細胞中でのベクターの自律複製が可能なエレメント(単数または複数)を含む。宿主細胞ゲノム内への取り込みに関与するいくつかの実施形態では、ベクターは、ポリペプチドをコードする核酸配列または相同組換えまたは非相同組換えによるゲノム内へのベクターの取り込みのためのベクターの任意の他のエレメントに依存する。
【0140】
いくつかの別の実施形態では、発現ベクターは、相同組換えによる宿主細胞のゲノム内への取り込みを指示するためのさらなる核酸配列を含む。さらなる核酸配列は、宿主細胞ゲノム内の染色体(単数または複数)中の正確な位置(単数または複数)にベクターを取り込ませることができる。正確な位置での取り込みの見込みを向上させるために、取り込みエレメントは、好ましくは、相同組換えの可能性を向上させるために対応する標的配列と相同性が高いヌクレオチドを十分な数で含む(100~10,000塩基対、好ましくは400~10,000塩基対、最も好ましくは800~10,000塩基対など)。取り込みエレメントは、宿主細胞のゲノム内の標的配列と相同な任意の配列であってよい。さらに、取り込みエレメントは、非コード核酸配列またはコード核酸配列であってよい。他方では、ベクターは、非相同組換えによって宿主細胞のゲノム内に取り込まれ得る。
【0141】
自律複製のために、ベクターは、目的の宿主細胞中でベクターを自律的に複製させることができる複製起点をさらに含み得る。細菌複製起点の例は、P15A oriまたはプラスミドpBR322、pUC19、pACYCl77(プラスミドはP15A oriを有する)の複製起点、もしくは大腸菌内で複製可能なpACYC184、およびBacillus内で複製可能なpUB110、pE194、もしくはpTA1060の複製起点である。酵母宿主細胞で用いる複製起点の例は、2ミクロン複製起点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3の組み合わせ、およびARS4とCEN6の組み合わせである。複製起点は、宿主細胞中で温度感受性に機能させる変異を有する複製起点であり得る(例えば、Ehrlich,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1433[1978]を参照のこと)。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸配列の1つを超えるコピーを宿主細胞内に挿入して、遺伝子産物の産生を増加させる。配列の少なくとも1つのさらなるコピーを宿主細胞ゲノム内に取り込むか、増幅可能な選択性マーカー遺伝子を核酸配列と共に含めることによって核酸配列のコピー数を増加させることができ、ここで、選択性マーカー遺伝子のコピー数が増幅され、それにより、核酸配列のさらなるコピーを含む細胞を、前述の細胞を適切な選択性因子の存在下で培養することによって選択することができる。
【0143】
本発明で用いる発現ベクターの多くは市販されている。適切な市販の発現ベクターには、CMVプロモーターおよびhGHポリアデニル化部位(哺乳動物宿主細胞での発現用)ならびにpBR322複製起点およびアンピシリン耐性マーカー(大腸菌での複製用)を含むp3xFLAGTM(商標)発現ベクター(Sigma-Aldrich Chemicals)が含まれるが、これに限定されない。他の適切な発現ベクターには、pBluescriptII SK(-)およびpBK-CMV(Stratagene)、ならびにpBR322(Gibco BRL)、pUC(Gibco BRL)、pREP4、pCEP4(Invitrogen)、またはpPoly(例えば、Lathe et al.,Gene 57:193-201[1987]を参照のこと)に由来するプラスミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
したがって、いくつかの実施形態では、ベクターを増殖させてバリアントペルオキシダーゼ(単数または複数)を発現させるために、少なくとも1つのバリアントペルオキシダーゼをコードする配列を含むベクターを、宿主細胞に形質転換する。いくつかの実施形態では、バリアントペルオキシダーゼを翻訳後修飾してシグナルペプチドを除去し、いくつかの場合、分泌後に切断することができる。いくつかの実施形態では、上記の形質転換された宿主細胞を、バリアントペルオキシダーゼ(単数または複数)を発現可能な条件下にて適切な栄養培地中で培養する。宿主細胞の培養に有用な任意の適切な培地を本発明で使用し、前述の培地には、適切な補助物質を含む最少培地または複合培地が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、宿主細胞をHTP培地で成長させる。適切な培地は、種々の販売者から入手可能であるか、公開されたレシピ(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ中)にしたがって調製することができる。
【0145】
別の態様では、本発明は、本明細書中に提供した改善されたペルオキシダーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞であって、前述のポリヌクレオチドが宿主細胞中でのペルオキシダーゼ酵素の発現のための1またはそれを超える調節配列に作動可能に連結している、宿主細胞を提供する。本発明の発現ベクターによってコードされるペルオキシダーゼポリペプチドの発現で使用される宿主細胞は、当該分野で周知であり、細菌細胞(大腸菌細胞、Bacillus megaterium細胞、Lactobacillus kefir細胞、Streptomyces細胞、およびSalmonella typhimurium細胞など);真菌細胞(酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiaeまたはPichia pastoris(ATCCアクセッション番号201178))など);昆虫細胞(Drosophila S2細胞およびSpodoptera Sf9細胞など);動物細胞(CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、293細胞、およびBowes黒色腫細胞など);および植物細胞が含まれるが、これらに限定されない。上記の宿主細胞に適切な培養培地および成長条件は、当該分野で周知である。
【0146】
ペルオキシダーゼの発現のためのポリヌクレオチドを、当該分野で公知の種々の方法によって細胞に導入することができる。技術には、とりわけ、エレクトロポレーション、遺伝子銃粒子衝突、リポソーム媒介トランスフェクション、塩化カルシウムトランスフェクション、およびプロトプラスト融合が含まれる。細胞内へのポリヌクレオチドの種々の導入方法は、当業者に公知である。
【0147】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。適切な真核生物宿主細胞には、真菌細胞、藻細胞、昆虫細胞、および植物細胞が含まれるが、これらに限定されない。適切な真菌宿主細胞には、Ascomycota、Basidiomycota、Deuteromycota、Zygomycota、不完全菌類が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、真菌宿主細胞は、酵母細胞および糸状菌細胞である。本発明の糸状菌宿主細胞には、EumycotinaおよびOomycota亜門の全ての糸状体が含まれる。糸状菌は、キチン、セルロース、および他の複合多糖から構成される細胞壁を有する栄養菌糸を特徴とする。本発明の糸状菌宿主細胞は、酵母と形態学的に異なる。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態では、糸状菌宿主細胞は、任意の適切な属および種(Achlya、Acremonium、Aspergillus、Aureobasidium、Bjerkandera、Ceriporiopsis、Cephalosporium、Chrysosporium、Cochliobolus、Corynascus、Cryphonectria、Cryptococcus、Coprinus、Coriolus、Diplodia、Endothis、Fusarium、Gibberella、Gliocladium、Humicola、Hypocrea、Myceliophthora、Mucor、Neurospora、Penicillium、Podospora、Phlebia、Piromyces、Pyricularia、Rhizomucor、Rhizopus、Schizophyllum、Scytalidium、Sporotrichum、Talaromyces、Thermoascus、Thielavia、Trametes、Tolypocladium、Trichoderma、Verticillium、および/またはVolvariellaが含まれるが、これらに限定されない)、ならびに/またはそのテレオモルフ、もしくはアナモルフ、およびシノニム、バシオニム、もしくは分類学上の等価物の糸状菌宿主細胞である。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞(Candida、Hansenula、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Pichia、Kluyveromyces、またはYarrowia種の細胞が含まれるが、これらに限定されない)である。本発明のいくつかの実施形態では、酵母細胞は、Hansenula polymorpha、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces diastaticus、Saccharomyces norbensis、Saccharomyces kluyveri、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia kodamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia quercuum、Pichia pijperi、Pichia stipitis、Pichia methanolica、Pichia angusta、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、またはYarrowia lipolyticaである。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態では、宿主細胞は、藻細胞(Chlamydomonas(例えば、C.reinhardtii)およびPhormidium(P.sp.ATCC29409)など)である。
【0151】
いくつかの他の実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。適切な原核細胞には、グラム陽性、グラム陰性、およびグラム不定の細菌細胞が含まれるが、これらに限定されない。任意の適切な細菌生物を本発明で使用し、前述の細菌生物には、Agrobacterium、Alicyclobacillus、Anabaena、Anacystis、Acinetobacter、Acidothermus、Arthrobacter、Azobacter、Bacillus、Bifidobacterium、Brevibacterium、Butyrivibrio、Buchnera、Campestris、Camplyobacter、Clostridium、Corynebacterium、Chromatium、Coprococcus、Escherichia、Enterococcus、Enterobacter、Erwinia、Fusobacterium、Faecalibacterium、Francisella、Flavobacterium、Geobacillus、Haemophilus、Helicobacter、Klebsiella、Lactobacillus、Lactococcus、Ilyobacter、Micrococcus、Microbacterium、Mesorhizobium、Methylobacterium、Methylobacterium、Mycobacterium、Neisseria、Pantoea、Pseudomonas、Prochlorococcus、Rhodobacter、Rhodopseudomonas、Rhodopseudomonas、Roseburia、Rhodospirillum、Rhodococcus、Scenedesmus、Streptomyces、Streptococcus、Synecoccus、Saccharomonospora、Staphylococcus、Serratia、Salmonella、Shigella、Thermoanaerobacterium、Tropheryma、Tularensis、Temecula、Thermosynechococcus、Thermococcus、Ureaplasma、Xanthomonas、Xylella、Yersinia、およびZymomonasが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Agrobacterium、Acinetobacter、Azobacter、Bacillus、Bifidobacterium、Buchnera、Geobacillus、Campylobacter、Clostridium、Corynebacterium、Escherichia、Enterococcus、Erwinia、Flavobacterium、Lactobacillus、Lactococcus、Pantoea、Pseudomonas、Staphylococcus、Salmonella、Streptococcus、Streptomyces、またはZymomonasの種である。いくつかの実施形態では、細菌宿主株はヒトに対する病原性はない。いくつかの実施形態では、細菌宿主株は、工業用菌株である。多くの細菌工業用菌株が公知であり、本発明において適切である。本発明のいくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Agrobacterium種(例えば、A.radiobacter、A.rhizogenes、およびA.rubi)である。本発明のいくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Arthrobacter種(例えば、A.aurescens、A.citreus、A.globiformis、A.hydrocarboglutamicus、A.mysorens、A.nicotianae、A.paraffineus、A.protophonniae、A.roseoparqffinus、A.sulfureus、およびA.ureafaciens)である。本発明のいくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Bacillus種(例えば、B.thuringensis、B.anthracis、B.megaterium、B.subtilis、B.lentus、B.circulans、B.pumilus、B.lautus、B.coagulans、B.brevis、B.firmus、B.alkaophius、B.licheniformis、B.clausii、B.stearothermophilus、B.halodurans、およびB.amyloliquefaciens)である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、工業用Bacillus株(B.subtilis、B.pumilus、B.licheniformis、B.megaterium、B.clausii、B.stearothermophilus、またはB.amyloliquefaciensが含まれるが、これらに限定されない)である。いくつかの実施形態では、Bacillus宿主細胞は、B.subtilis、B.licheniformis、B.megaterium、B.stearothermophilus、および/またはB.amyloliquefaciensである。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Clostridium種(例えば、C.acetobutylicum、C.tetani E88、C.lituseburense、C.saccharobutylicum、C.perfringens、およびC.beijerinckii)である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Corynebacterium種(例えば、C.glutamicumおよびC.acetoacidophilum)である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Escherichia種(例えば、大腸菌)である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Escherichia coli W3110である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Erwinia種(例えば、E.uredovora、E.carotovora、E.ananas、E.herbicola、E.punctata、およびE.terreus)である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Pantoea種(例えば、P.citrea、およびP.agglomerans)である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Pseudomonas種(例えば、P.putida、P.aeruginosa、P.mevalonii、およびP.sp.D-0l 10)である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Streptococcus種(例えば、S.equisimiles、S.pyogenes、およびS.uberis)である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Streptomyces種(例えば、S.ambofaciens、S.achromogenes、S.avermitilis、S.coelicolor、S.aureofaciens、S.aureus、S.fungicidicus、S.griseus、およびS.lividans)である。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞は、Zymomonas種(例えば、Z.mobilis、およびZ.lipolytica)である。
【0152】
本発明で使用される多くの真核生物および原核生物の株は、American Type Culture Collection(ATCC)、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)、Centraalbureau Voor Schimmelcultures(CBS)、およびAgricultural Research Service Patent Culture Collection、Northern Regional Research Center(NRRL)などのいくつかの寄託機関から公的に容易に入手可能である。
【0153】
いくつかの実施形態では、宿主細胞を、タンパク質分泌、タンパク質安定性、ならびに/またはタンパク質の発現および/もしくは分泌に望ましい他の性質を改善する特徴を有するように遺伝子改変する。遺伝子改変を、遺伝子工学技術および/または古典的な微生物学的技術(例えば、化学的またはUVによる変異誘発およびその後の選択)によって行うことができる。実際に、いくつかの実施形態では、組換え改変と古典的な選択技術との組み合わせを使用して宿主細胞を産生する。組換えテクノロジーを使用して、核酸分子を、宿主細胞内および/または培養培地中のペルオキシダーゼバリアント(単数または複数)の収量を増加させる様式で、導入、欠失、阻害、または改変することができる。例えば、Alp1機能をノックアウトすると、プロテアーゼが欠損している細胞が得られ、pyr5機能をノックアウトすると、ピリミジン欠損表現型を有する細胞が得られる。1つの遺伝子操作アプローチでは、相同組換えを使用して、in vivoで遺伝子を特異的に標的にすることによって標的にした遺伝子の改変を誘導し、コードされたタンパク質の発現を抑制する。別のアプローチでは、siRNA、アンチセンス、および/またはリボザイムの各テクノロジーを遺伝子発現の阻害で使用する。細胞中でのタンパク質発現を低下させる種々の方法が当該分野で公知であり、前述の方法には、タンパク質をコードする遺伝子の全てまたは一部の欠失および遺伝子産物の発現または活性を破壊するための部位特異的変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。(例えば、Chaveroche et al.,Nucl.Acids Res.,28:22 e97[2000];Cho et al.,Molec.Plant Microbe Interact.,19:7-15[2006];Maruyama and Kitamoto,Biotechnol Lett.,30:1811-1817[2008];Takahashi et al.,Mol.Gen.Genom.,272:344-352[2004];およびYou et al.,Arch.Microbiol.,191:615-622[2009](その全てが本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。ランダム変異誘発後の所望の変異のスクリーニングも使用される(例えば、Combier et al.,FEMS Microbiol.Lett.,220:141-8[2003];およびFiron et al.,Eukary.Cell 2:247-55[2003](その両方が参考として援用される)を参照のこと)。
【0154】
宿主細胞内へのベクターまたはDNA構築物の導入を、当該分野で公知の任意の適切な方法(リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、PEG媒介形質転換、エレクトロポレーション、または当該分野で公知の他の一般的な技術が含まれるが、これらに限定されない)を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、大腸菌発現ベクターpCK100900i(米国特許第9,714,437号(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)が使用される。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明の操作された宿主細胞(すなわち、「組換え宿主細胞」)を、プロモーターの活性化、形質転換体の選択、またはペルオキシダーゼポリヌクレオチドの増幅に適切なように改変された従来の栄養培地で培養する。温度およびpHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞と共に以前に使用されたものであり、当業者に周知である。記載のように、多くの標準的な参考文献およびテキストを、多くの細胞(細菌、植物、動物(特に哺乳動物)、および古細菌を起源とする細胞が含まれる)の培養および産生に利用可能である。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明のバリアントペルオキシダーゼポリペプチドを発現する細胞を、回分発酵条件下または連続発酵条件下で成長させる。古典的な「回分発酵」は閉鎖系であり、培地組成を発酵開始時に設定し、発酵中は培地組成を人為的に変更しない。回分系の異型としては「流加発酵」があり、これも本発明で使用される。この異型では、発酵が進むにつれて基質を漸増的に添加する。流加系は、異化代謝産物抑制が細胞代謝を阻害する可能性が高い場合、および培地中の基質量を制限することが望ましい場合に有用である。回分発酵および流加発酵は一般的であり、当該分野で周知である。「連続発酵」は開放系であり、規定の発酵培地をバイオリアクターに継続的に添加し、それと同時に等量の馴化培地を処理のために取り出す。連続発酵は、一般に、細胞が主に対数期の成長にある場合に培養物を高密度で一定に維持する。連続発酵系は、定常状態の成長条件を維持するように務める。連続発酵過程のために栄養素および成長因子を修正する方法ならびに生成物の形成速度を最大にするための技術は、産業微生物学分野で周知である。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態では、無細胞転写/翻訳系は、バリアントペルオキシダーゼ(単数または複数)の産生で使用される。いくつかの系が市販されており、方法は当業者に周知である。
【0158】
本発明は、バリアントペルオキシダーゼポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片を作製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、以下を含む:配列番号4および/6に対して少なくとも約70%(すなわち、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%)の配列同一性を含み、かつ本明細書中に提供した少なくとも1つの変異を含むアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞を準備する工程;形質転換された宿主細胞を、培養培地中にて宿主細胞がコードされたバリアントペルオキシダーゼポリペプチドを発現する条件下で培養する工程;および、必要に応じて、発現されたバリアントペルオキシダーゼポリペプチドを回収もしくは単離し、そして/または発現されたバリアントペルオキシダーゼポリペプチドを含む培養培地を回収もしくは単離する工程。いくつかの実施形態では、方法は、コードされたペルオキシダーゼポリペプチドの発現後に形質転換された宿主細胞を必要に応じて溶解する工程、ならびに発現されたバリアントペルオキシダーゼポリペプチドを細胞ライセートから必要応じて回収および/または単離する工程をさらに提供する。本発明は、バリアントペルオキシダーゼポリペプチドの産生に適切な条件下にてバリアントペルオキシダーゼポリペプチドで形質転換された宿主細胞を培養する工程およびバリアントペルオキシダーゼポリペプチドを回収する工程を含む、バリアントペルオキシダーゼポリペプチドを作製する方法をさらに提供する。典型的には、当該分野で周知のタンパク質回収技術(本明細書中に記載の技術が含まれる)を使用して、ペルオキシダーゼポリペプチドを宿主細胞の培養培地、宿主細胞、またはその両方から回収または単離する。いくつかの実施形態では、宿主細胞を、遠心分離によって採取し、物理的または化学的な手段によって破壊し、得られた粗抽出物をさらなる生成のために保持する。タンパク質発現で使用された微生物細胞を、任意の従来の方法(凍結融解サイクリング、超音波処理、機械的破壊、および/または細胞溶解剤の使用、ならびに当業者に周知の多くの他の適切な方法が含まれるが、これらに限定されない)によって破壊することができる。
【0159】
宿主細胞中で発現された操作されたペルオキシダーゼ酵素を、タンパク質精製のための当該分野で公知の任意の1またはそれを超える技術(とりわけ、リゾチーム処理、超音波処理、濾過、塩析、超遠心、およびクロマトグラフィが含まれる)を使用して細胞および/または培養培地から回収することができる。大腸菌などの細菌の溶解および細菌由来のタンパク質の効率の良い抽出に適切な溶液は、商品名CelLytic B(商標)(Sigma-Aldrich)として市販されている。したがって、いくつかの実施形態では、得られたポリペプチドを、当該分野で公知のいくつかの方法のうちのいずれかによって回収/単離し、必要に応じて精製する。例えば、いくつかの実施形態では、ポリペプチドを、従来の手技(遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、アフィニティ、疎水性相互作用、クロマトフォーカシング、およびサイズ排除)、または沈殿が含まれるが、これらに限定されない)によって栄養培地から単離する。いくつかの実施形態では、成熟タンパク質の立体配置を完成させるために、要望があればタンパク質折りたたみ工程を使用する。さらに、いくつかの実施形態では、最終精製工程で高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用する。例えば、いくつかの実施形態では、当該分野で公知の方法を、本発明で使用する(例えば、Parry et al.,Biochem.J.,353:117[2001];およびHong et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,73:1331[2007](その両方が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。実際に、当該分野で公知の任意の適切な精製方法を本発明で使用する。
【0160】
ペルオキシダーゼポリペプチドの単離のためのクロマトグラフ技術には、逆相クロマトグラフィ 高速液体クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、およびアフィニティクロマトグラフィが含まれるが、これらに限定されない。特定の酵素の精製条件は、その一部が、正味荷電、疎水性、親水性、分子量、分子の形状などの要因に依存し、その条件は当業者に公知であろう。
【0161】
いくつかの実施形態では、アフィニティ技術は、改良されたペルオキシダーゼオキシダーゼ酵素の単離で使用される。アフィニティクロマトグラフィ精製のために、ペルオキシダーゼポリペプチドに特異的に結合する任意の抗体を使用することができる。抗体産生のために、種々の宿主動物(ウサギ、マウス、ラットなどが含まれるが、これらに限定されない)を、ペルオキシダーゼを使用した注射によって免疫化することができる。ペルオキシダーゼポリペプチドを、側鎖官能基または側鎖官能基に付着したリンカーによって適切なキャリア(BSAなど)に付着させることができる。宿主の種に応じて種々のアジュバントを使用して免疫応答を増大させることができ、前述のアジュバントには、フロイント(完全および不完全)、ミネラルゲル(水酸化アルミニウムなど)、界面活性物質(リゾレシチンなど)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント(BCG(Bacillus Calmette Guerin)およびCorynebacterium parvumなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0162】
いくつかの実施形態では、ペルオキシダーゼバリアントを調製し、酵素を発現する細胞の形態、粗抽出物として、または単離もしくは精製された調製物として使用する。いくつかの実施形態では、ペルオキシダーゼバリアントを、凍結乾燥物、粉末形態(例えば、アセトン粉末)として調製するか、酵素溶液として調製する。いくつかの実施形態では、ペルオキシダーゼバリアントは、実質的に純粋な調製物の形態である。
【0163】
いくつかの実施形態では、ペルオキシダーゼポリペプチドは、任意の適切な固体基質に付着されている。固体基質には、固相、表面、および/または膜が含まれるが、これらに限定されない。固体支持体には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミド、ならびにそのコポリマーおよびグラフトなどの有機ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。固体支持体は、ガラス、シリカ、多孔性ガラス(CPG)、逆相シリカまたは金属(金または白金など)などの無機固体支持体でもあり得る。基質の構造は、ビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、膜、または表面の形態であり得る。表面は、平面、実質的平面、または非平面であり得る。固体支持体は、多孔または無孔であってよく、膨潤性または非膨潤性であり得る。固体支持体は、ウェル、窪み、または他の容器、うつわ、フィーチャ、または区域の形態で構成することができる。複数の支持体を、ロボットによる試薬の送達のため、または検出方法および/もしくは装置によって処理しやすいように、アレイ上の種々の区域に構成することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、免疫学的方法を使用して、ペルオキシダーゼバリアントを精製する。1つのアプローチでは、従来の方法を使用してバリアントペルオキシダーゼポリペプチドに対して(例えば、配列番号4および/もしくは6のうちのいずれかを含むポリペプチド、ならびに/またはその免疫原性断片に対して)惹起された抗体を、ビーズに固定し、バリアントペルオキシダーゼが結合される条件下で細胞培養培地と混合し、沈降させる。関連するアプローチでは、イムノクロマトグラフィを使用する。
【0165】
いくつかの実施形態では、バリアントペルオキシダーゼを、非酵素部分を含む融合タンパク質として発現させる。いくつかの実施形態では、バリアントペルオキシダーゼ配列を、精製促進ドメインに融合する。本明細書中で使用される場合、用語「精製促進ドメイン」は、このドメインが融合されるポリペプチドの精製を媒介するドメインを指す。適切な精製ドメインには、金属キレート化ペプチド、固定された金属上での精製が可能なヒスチジン-トリプトファンモジュール、グルタチオンに結合する配列(例えば、GST)、血球凝集素(HA)タグ(インフルエンザ血球凝集素タンパク質由来のエピトーブに対応する;例えば、Wilson et al.,Cell 37:767[1984]を参照のこと)、マルトース結合タンパク質配列、およびFLAGS伸長/アフィニティ精製システム(例えば、Immunex Corpから入手可能なシステム)で利用されるFLAGエピトープなどが含まれるが、これらに限定されない。本明細書中に記載の組成物および方法での使用が意図される1つの発現ベクターは、エンテロキナーゼ切断部位によって分離されたポリヒスチジン領域に融合した本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質を発現させる。ヒスチジン残基は、IMIAC(固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ;例えば、Porath et al.,Prot.Exp.Purif.,3:263-281[1992]を参照のこと)での精製を容易にし、一方で、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からのバリアントペルオキシダーゼポリペプチドの分離手段を提供する。pGEXベクター(Promega)を使用して、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させることもできる。一般に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、リガンド-アガロースビーズ(例えば、GST-融合物の場合、グルタチオン-アガロース)への吸着後に遊離リガンドの存在下で溶出させることによって溶解細胞から容易に精製することができる。
【0166】
したがって、別の態様では、本発明は、操作された酵素ポリペプチドを産生する方法であって、ポリペプチドの発現に適切な条件下で操作された酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現することができる宿主細胞を培養する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書中に記載のように、酵素ポリペプチドを単離および/または精製する工程をさらに含む。
【0167】
宿主細胞に適切な培養培地および成長条件は、当該分野で周知である。細胞内に酵素ポリペプチドの発現のためのポリヌクレオチドを導入するのに適切な任意の方法を本発明で使用することが意図される。適切な技術には、エレクトロポレーション、遺伝子銃粒子衝突、リポソーム媒介トランスフェクション、塩化カルシウムトランスフェクション、およびプロトプラスト融合が含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
本発明の種々の特徴および実施形態を以下の代表的な実施例に記載し、実施例は、例示を意図し、本発明の制限を意図しない。
【0169】
実験
以下の実施例(実験および得られた結果を含む)を、例示のみを目的として提供し、実施例は、本発明を制限すると解釈されないものとする。実際に、様々な供給元が下記の試薬および装置の多くに適切である。本発明がいかなる試薬や設備機器もいかなる特定の供給元に制限されることを意図しない。
【0170】
以下に開示の実験では、以下の略語を適用する:M(モル);mM(ミリモル)、uMおよびμΜ(マイクロモル);nM(ナノモル);mol(モル);gmおよびg(グラム);mg(ミリグラム);ugおよびμg(マイクログラム);Lおよび1(リットル);mlおよびmL(ミリリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);umおよびμm(マイクロメートル);sec.(秒);min(単数または複数)(分(単数または複数));h(単数または複数)およびhr(単数または複数)(時間(単数または複数));U(単位);MW(分子量);rpm(毎分回転数);psiおよびPSI(ポンド/平方インチ);℃(摂氏);RTおよびrt(室温);RH(相対湿度);CV(変動係数);CAMおよびcam(クロラムフェニコール);PMBS(硫酸ポリミキシンB);IPTG(イソプロピルβ-D-l-チオガラクトピラノシド);LB(Luriaブロス);TB(terrificブロス);SFP(フラスコ振盪培養粉末);CDS(コード配列);DNA(デオキシリボ核酸);RNA(リボ核酸);nt(ヌクレオチド;ポリヌクレオチド);aa(アミノ酸;ポリペプチド);大腸菌W3110(Coli Genetic Stock Center[CGSC],New Haven,CTから入手可能な一般的に使用される実験用大腸菌株);HTP(ハイスループット);HPLC(高圧液体クロマトグラフィ);HPLC-UV(HPLC-紫外線・可視検出器);1H NMR(プロトン核磁気共鳴分光法);FIOPC(正の対照に対する改善の倍数);Sigma and Sigma-Aldrich(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO;Difco(Difco Laboratories,BD Diagnostic Systems,Detroit,MI);Microfluidics(Microfluidics,Westwood,MA);Life Technologies(Life Technologies、Fisher Scientific,Waltham,MAの子会社);Amresco(Amresco,LLC,Solon,OH);Carbosynth(Carbosynth,Ltd.,Berkshire,UK);Varian(Varian Medical Systems,Palo Alto,CA);Agilent(Agilent Technologies,Inc.,Santa Clara,CA);Infors(Infors USA Inc.,Annapolis Junction,MD);およびThermotron(Thermotron,Inc.,Holland,MI)。
【実施例
【0171】
実施例1
組換えDyP遺伝子を含む大腸菌発現宿主
本発明のバリアントを産生するために使用した最初のDyP酵素を、藍色細菌Anabaena(Nostoc)sp.(PCC7120株)由来の野生型ペルオキシダーゼ配列Alr1585から得た。配列番号2は、野生型配列を含む。野生型DyP遺伝子は、各単量体が約469個のアミノ酸(53.3kDa)から構成される四量体である。DyPコード遺伝子を、laclリプレッサーの調節下でlacプロモーターに作動可能に連結された発現ベクターpCK110900(米国特許出願第2006/0195947号の図3を参照のこと)にクローニングした。また、発現ベクターは、P15a複製起点およびクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む。得られたプラスミドを、当該分野で公知の標準的な方法を使用して、大腸菌W3110に形質転換した。形質転換体を、当該分野で公知のように、細胞をクロラムフェニコール選択に供することによって単離した(例えば、米国特許第8,383,346号およびWO2010/144103号を参照のこと)。
【0172】
実施例2
HTP DyPを含む湿性細胞ペレットの調製
単クローンコロニー由来の組換えDyPコード遺伝子を含む大腸菌細胞を、96ウェルの浅型ウェルマイクロタイタープレートのウェル中の1%グルコースおよび30μg/mLクロラムフェニコールを含む180μlのLB中に播種した。プレートをO透過性シールでシールし、培養物を30℃、200rpm、および湿度85%で一晩成長させた。次いで、10μlの各細胞培養物を、390mL TBおよび30μg/mL CAMを含む96ウェルの深型ウェルプレートのウェル中に移した。深型ウェルプレートをO透過性シールでシールし、30℃、250rpm、および湿度85%で、OD600が0.6~0.8に到達するまでインキュベートした。次いで、細胞培養物を、IPTGによって最終濃度1mMまで誘導し、最初に使用した条件と同一の条件下で一晩インキュベートした。次いで、細胞を、遠心分離を使用して4000rpmで10分間ペレット化した。上清を破棄し、ペレットを溶解前に-80℃で凍結させた。
【0173】
実施例3
HTP DyP含有細胞ライセートの調製
最初に、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、1g/Lリゾチーム、および0.5g/L PMBSを含む400μlの溶解緩衝液を、各ウェル中の実施例2に記載のように産生した細胞ペーストに添加した。細胞を、卓上振盪機上で振盪しながら室温で2時間溶解した。次いで、プレートを、4000rpmおよび4℃で15分間遠心分離した。次いで、透明な上清を、生体触媒反応で使用してその活性レベルを決定した。
【0174】
実施例4
振盪フラスコ(SF)培養物由来の凍結乾燥ライセートの調製
上記のように成長させた選択したHTP培養物を、1%グルコースおよび30μg/ml CAMを有するLB寒天プレート上にプレートし、37℃で一晩成長させた。各培養物由来の単一コロニーを、1%グルコースおよび30μg/ml CAMを有する6mlのLBに移した。培養物を30℃、250rpmで18時間成長させ、最終OD600が0.05になるまで、30μg/ml CAMを含む250mlのTBにおよそ1:50で継代培養した。培養物を、30℃、250rpmでおよそ195分間、OD600が0.6~0.8になるまで成長させ、1mM IPTGで誘導した。次いで、培養物を30℃および250rpmで20時間成長させた。培養物を4000rpmで20分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを30mlの20mM TRIS-HCl(pH7.5)に再懸濁した。細胞をペレット化し(4000rpmで20分)、-80℃で120分間凍結させた。凍結したペレットを30mlの20mM TRIS-HCl(pH7.5)に再懸濁し、Microfluidizer(登録商標)プロセッサーシステム(Microfluidics)を18,000psiで使用して溶解した。ライセートをペレット化し(10,000rpm×60分間)、上清を凍結させ、凍結乾燥させて、振盪フラスコ(SF)酵素を生成した。
【0175】
実施例5
配列番号4と比較したAmplex Red基質の変換の改善
Amplex Red基質の変換についてのスクリーニングバリアントの結果に基づいて、配列番号4を親酵素として選択した。野生型配列と比較して、配列番号4は、残基の相違D348Nの残基を含む。操作された遺伝子のライブラリーを、十分に確立された技術(例えば、飽和変異誘発、および予め同定された有益な変異の組換え)を使用して産生した。各遺伝子によってコードされるポリペプチドを、実施例2に記載のようにHTPで産生し、可溶性ライセートを、実施例3に記載のように生成した。各バリアントポリペプチドを、C末端hisタグを用いて産生した。
【0176】
各バリアントについて、細胞ペレットを、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、1g/Lリゾチーム、および0.5g/L PMBSを含む400μL溶解緩衝液を添加することによって溶解し、卓上振盪機上にて室温で2時間振盪した。プレートを4000rpmにて4℃で15分間遠心分離して細胞デブリを除去した。透明底UV透過性平底96ウェルプレート(UV-starプレート)中で、50μLの32倍希釈ペルオキシダーゼHTPライセート、66.7mM Amplex Red(Sigmaカタログ番号90101)を含む150μLのマスターミックス、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)中の1.3mM過酸化水素(Sigmaカタログ番号216763)を含む200μL HTP反応物を準備した。解析のために、HTP反応物を、Molecular Devices SpectraMax Plus 384分光光度計を使用してUV560nmにてリードあたり11秒間隔で2分間バリアントの初速度を動態学的に読み取ることによって解析した。
【0177】
配列番号4と比較した活性(活性FIOP)を、配列番号4によって得られた変換率に対する、バリアントによって形成された生成物の変換率として計算した。結果を表5.1に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【0178】
実施例6
配列番号6と比較したAmplex Red基質の変換の改善
実施例5に記載の結果に基づいて、配列番号6を次の親酵素として選択した。操作された遺伝子のライブラリーを、十分に確立された技術(例えば、飽和変異誘発および予め同定された有益な変異の組換え)を使用して産生した。各遺伝子によってコードされるポリペプチドを、実施例2に記載のようにHTPで産生し、可溶性ライセートを、実施例3に記載のように生成した。
【0179】
各バリアントについて、細胞ペレットを、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、1g/Lリゾチーム、および0.5g/L PMBSを含む400μL溶解緩衝液を添加することによって溶解し、卓上振盪機上にて室温で2時間振盪した。プレートを4000rpmにて4℃で15分間遠心分離して細胞デブリを除去した。透明底UV透過性平底96ウェルプレート(UV-starプレート)中で、50μLの32倍希釈ペルオキシダーゼHTPライセート、66.7mM Amplex Red(Sigmaカタログ番号90101)を含む150μLのマスターミックス、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)中の1.3mM過酸化水素(Sigmaカタログ番号216763)を含む200μL HTP反応物を準備した。解析のために、HTP反応物を、Molecular Devices SpectraMax Plus 384分光光度計を使用してUV560nmにてリードあたり11秒間隔で2分間バリアントの初速度を動態学的に読み取ることによって解析した。
【0180】
配列番号6と比較した変換率(変換率FIOP)を、配列番号6によって得られた変換率に対する、バリアントによって形成された生成物の変換率として計算した。結果を表6.1に示す。変換率を、HPLC分析によって観察された、生成物ピークの面積を、基質、生成物、および不純物/副生成物ピークの面積の合計で除算することによって計算した。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【0181】
本出願で引用した全ての刊行物、特許、特許出願、および他の文書は、あたかも各々の刊行物、特許、特許出願、または他の文書が全ての目的のために参考として援用されることを個別に示しているのと同じ程度に、全ての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0182】
様々な特定の実施形態を例示および説明してきたが、本発明(単数または複数)の意図および範囲を逸脱することなく、様々な変更形態が可能であると認識されるであろう。
【配列表】
2022547523000001.app
【国際調査報告】