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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】可動オーバフロー部
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/00 20060101AFI20221107BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C23C2/00
C23C2/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515705
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 IB2020058209
(87)【国際公開番号】W WO2021048712
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/057602
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サン-レーモン,ユベール
(72)【発明者】
【氏名】セッテフラーティ,アミコ
(72)【発明者】
【氏名】バン・ニューウェンハイゼ,ベール
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デイク,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】クレプス,フレディ
(72)【発明者】
【氏名】メムニ,ウォーデュー
(72)【発明者】
【氏名】ブ,ジョゼ
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AB43
4K027AB48
4K027AD01
4K027AD04
4K027AD08
4K027AD10
(57)【要約】
本発明は、金属ストリップの連続溶融浸漬コーティングのための装置であって、焼鈍炉と、液体金属浴を収容するタンクと、焼鈍炉と前記浴とを接続するスナウトであって、前記浴を通って金属ストリップが保護雰囲気中を通過し、前記スナウトの下部、すなわちスナウト先端部は、浴の表面およびこのスナウトの内側に液体シールを画定するために、液体金属浴内に少なくとも部分的に浸漬される、スナウトと、接続手段を備える、少なくとも1つのタンク側の可動支持システムと、前記接続手段を介して前記可動支持システムに接続されたオーバフロー部であって、少なくとも1つのバットと少なくとも1つのポンプとを備える、オーバフロー部とを備える、装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップの連続溶融浸漬コーティングのための装置であって、
焼鈍炉(2)と、
液体金属浴(3)を収容するタンク(8)と、
焼鈍炉(2)と前記浴(3)とを接続するスナウト(1)であって、前記スナウト(1)はスナウト先端部(1B)を備え、スナウト先端部(1B)は、浴の表面と、このスナウトの内側に液体シールを画定するために液体金属浴(3)に少なくとも部分的に浸漬される、スナウト(1)と、
少なくとも一方のタンク側の可動支持システム(10)であって、
コア部(18)と、
そのような可動支持システム(10)を少なくとも水平方向に移動させることができる第1の移動手段(19)であって、地面上にあり、前記コア部(18)に接続された、第1の移動手段(19)と、
第2の移動手段(20)であって、前記支持システム接続手段(11)が前記第2の移動手段(20)によって少なくとも垂直に移動されることができるように、前記コア部(18)および可動支持システム接続手段(11)に接続された、第2の移動手段(20)と、
を備える、可動支持システム(10)と、
オーバフロー部(12)であって、前記スナウト(1)に接続されておらず、少なくとも1つのバット(13)と少なくとも1つのポンプ(14)とを備え、オーバフロー部(12)の前記少なくとも1つのバット(13)が、前記スナウト先端部(1B)の近傍に配置される作業位置に移動可能である、オーバフロー部(12)と、
を備え、
前記オーバフロー部は、前記接続手段(11)によって前記可動支持システムに固定される、装置。
【請求項2】
前記オーバフロー部はコア部(12C)を備え、前記支持システム接続手段(11)は前記コア部(12C)によって前記オーバフロー部に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コア部(12C)は、前記バット(13)および前記ポンプ(14)を支持する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の移動手段(19)は、少なくとも1つのレールと、少なくとも1つのボギーとを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記バットは、
液体シールの表面に向けられた、ストリップの片側に面する内壁(13a)であって、上縁部(13b)を備える、内壁(13a)と、
液体シールの表面に向けられた、スナウトに面する外壁(13c)であって、上縁部(13d)を備える、外壁(13c)と、
前記外壁下縁部と前記内壁下縁部との間の接続部と、
全ての縁部を接続する前述の壁の各共有端部における壁(13e)と、
外壁上縁部(13d)よりも下方にある前記内壁上縁部(13b)と
から構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の設備において、溶融浸漬コーティングによって金属コーティングを堆積させる方法であって、
前記焼鈍炉内での金属ストリップの再結晶焼鈍と、
焼鈍炉からスナウト内の溶融浸漬コーティング浴への金属ストリップの通過と、
前記液体金属浴内の、焼鈍された金属ストリップの溶融浸漬コーティングと、
を備える、方法。
【請求項7】
前記可動支持システム(10)は、前記タンク(8)の片側のみに配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記液体金属浴(3)を通過する前記ストリップ(S)は経路を描き、前記可動支持システム(10)は前記タンク(8)の2つの側面に配置され、前記側面は前記経路に沿っている、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記バット(13)は、前記ストリップ(S)と前記スナウトの後側との間に配置される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記オーバフロー部は、アイドル位置から作業位置まで少なくとも3つのステップで:
前記バットを前記浴の上方に配置するために、水平に、
前記バットを前記スナウト先端部の下方に水平に配置し、前記液体金属浴に浸漬し、前記バットが前記液体シールの垂直突起部によって取り囲まれるように、下方かつ斜めに、
前記バットを前記作業位置に配置するために、上方に、
移動される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アイドル位置において、前記オーバフロー部は前記液体金属浴の上方ではなく外側に配置される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの溶融浸漬コーティングのための装置、ならびに前記装置を配置するための方法および金属ストリップをコーティングするための方法の2つの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼産業では、圧延されたストリップは、一般に、それらの表面特性を高めるために金属および/またはポリマーコーティングでコーティングされる。金属コーティングは、一般に、ストリップが溶融金属の浴を通過する溶融浸漬コーティングプロセス中に堆積される。
【0003】
前記浴に入る前に、ストリップは、一般に、脱脂またはブラッシングなどのいくつかの洗浄ステップを受ける。次いで、ストリップが溶融浸漬コーティングの前に加熱されて、熱衝撃、したがって平坦性の欠陥を回避する。しかしながら、加熱されたストリップ温度は浴温度に近いため、一般に400℃~800℃であり、ストリップは酸化を受ける。
【0004】
したがって、そのような有害な現象を回避するために、ストリップSは、図1に示すように、内部に保護(非酸化性)雰囲気を有するいわゆるスナウト1によって保護される。このスナウトは、焼鈍炉出口2から溶融金属浴3まで延在する。さらに、浴の高温は、前記スナウト内へも含まれる蒸発をもたらす。スナウトでは、温度がスナウトに沿って低下し(上方に向かう場合)、浴3に落下する金属粒子の形成をもたらすため、この金属蒸気は凝固する傾向がある。溶融浸漬設備はまた、図1に示すように、シンクロール4、安定化ロール5、およびコーティング厚さの制御を可能にするワイピングシステム6を備えることができる。
【0005】
さらに、溶融金属の浴は、一般に、亜鉛、アルミニウム、ケイ素およびまたはマグネシウムなどのいくつかの元素の混合物を含み、その組成は所望のコーティングに応じて変化する。浴は、通常、インゴットおよび/または予備溶融金属を使用して供給される。組成および温度に関して浴中の不均一性のために、ドロスなどの粒子が形成され得る。
【0006】
残念なことに、両方の粒子は、金属蒸気凝固および浴の不均一性に起因して、浴表面上に浮遊し、浴を通過する金属ストリップに付着し、表面欠陥をもたらす可能性がある。
【0007】
その結果、ストリップの近く、特に浴3へのストリップS入口の近くで粒子を収集することによって、ストリップ表面上の、そのような粒子の付着を回避するためのシステムが開発されている。これらのシステムの1つは、仏国特許発明第2816639号明細書に開示され、図2に示されているように、スナウト1の伸長部に配置されたバット(または区画)7からなるオーバフロー部である。そのようなシステムは、溶融金属浴、特に浮遊する望ましくない粒子の、前記バット7内への自然な流れ(矢印および暗い領域によって示される)を作り出すことを可能にする。次いで、オーバフロー部の内容物が圧送され、他の場所で拒絶される。ポンプシステムは図2には示されておらず、矢印によって示されているように、圧送された溶融金属および望ましくない粒子が流れるパイプのみである。
【0008】
国際公開第2017/187225号はまた、金属ストリップの連続浸漬コーティングのための装置を記載している。この装置は、スナウトおよびオーバフロー部の位置調整がストリップを考慮することを可能にすることによって、仏国特許第2816639号から装置を改善する。そうするために、スナウトは、回転の第1の軸線の周りの金属ストリップに関して回転する、可動排出ボックスを備え、排出ボックスは、回転の第2の軸線の周りのシースの上部と比較して回転する。さらに、シースの上部と比較して排出ボックスの回転を可能にする関節は、ピボット接続である。
【0009】
しかしながら、上記で開示された装置を使用することによって、オーバフロー部の正しい設定は複雑であり、適切に処理されない場合、不適切な位置決めにつながる可能性がある。設定の複雑さは、垂直変位なしで水平変位を行うことによってオーバフロー部の両側をレベリングすることが困難であることに起因する。さらに、これは、多くの機構を必要とし、より高い故障確率をもたらす。さらに、1つの部品が破損された場合、それを修復するために、スナウト全体が取り外され、時々交換されなければならない。最後に、スナウトの最も高い部分が周囲空気と接触している間に、スナウト先端部およびオーバフロー部が溶融金属浴に浸漬されるため、スナウトに沿う熱勾配が存在する。この熱勾配は、機械的制約、したがってスナウトおよびオーバフロー部の変形をもたらす。数サイクル後、スナウト先端部が浸漬され、次いで浸漬されない場合、結果として生じる変形は、上縁部がもはや水平ではないため、浴表面に向かってバットを正確に位置決めすることを非常に困難にする。
【0010】
その結果、複雑なオーバフロー部位置決め、機構の高い故障リスク、および熱勾配の有害な影響により、新しいオーバフロー部が開発される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許発明第2816639号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/187225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、オーバフロー部の位置決めを容易にし、溶融金属浴中のそのようなオーバフロー部の耐性を改善する、金属ストリップの溶融浸漬コーティングのための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の装置を提供することによって達成される。装置はまた、請求項2~5のいずれかの特徴を含むことができる。この目的はまた、請求項10および11に記載のオーバフロー部位置決め方法および、請求項6~9に記載の金属コーティング方法を提供することによって達成される。
【0014】
他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0015】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、様々な実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コーティング設備の実施形態を示す図である。
図2】仏国特許発明第2816639号明細書に記載されているようなオーバフロー部の実施形態を示す図である。
図3】本発明の実施形態を示す図である。
図4】本発明の接続部品およびオーバフロー部の実施形態を示す図である。
図5】本発明のオーバフロー部の実施形態を示す図である。
図6】本発明のバットの2つの実施形態を示す図である。
図7】本発明の可動支持システムの第1の実施形態の第1の図である。
図8】本発明の可動支持システムの第1の実施形態の第2の図である。
図9】本発明の可動支持システムおよびオーバフロー部の実施形態を示す図である。
図10】本発明の可動支持システムおよびオーバフロー部の第2の実施形態の第1の図である。
図11】本発明の可動支持システムおよびオーバフロー部の第2の実施形態の第2の図である。
図12】本発明のオーバフロー部のアイドル位置の実施形態を示す図である。
図13】本発明の3ステッププロセスの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図3および図7に示されるように、本発明は、金属ストリップの連続溶融浸漬コーティングのための装置であって、
焼鈍炉2と、
液体金属浴3を収容するタンク8と、
焼鈍炉2と前記浴3とを接続するスナウト1であって、前記スナウト1はスナウト先端部1Bを備え、スナウト先端部1Bは、浴の表面と、このスナウトの内側に液体シールを画定するために液体金属浴3に少なくとも部分的に浸漬される、スナウト1と、
少なくとも一方のタンク側の可動支持システム(10)であって、
コア部(18)と、
そのような可動支持システム(10)を少なくとも水平方向に移動させることができる第1の移動手段(19)であって、地面上にあり、前記コア部(18)に接続された、第1の移動手段(19)と、
第2の移動手段(20)であって、前記支持システム接続手段(11)が前記第2の移動手段(20)によって少なくとも垂直に移動されることができるように、前記コア部(18)および接続手段(11)に接続された、第2の移動手段(20)と、
を備える、可動支持システム(10)と、
オーバフロー部(12)であって、前記スナウト(1)に接続されておらず、少なくとも1つのバット(13)と少なくとも1つのポンプ(14)とを備え、オーバフロー部(12)の前記少なくとも1つのバット(13)が前記スナウト先端部(1B)の近傍に配置される作業位置に移動可能である、オーバフロー部(12)と、
を備え、
前記オーバフロー部は、前記接続手段(11)によって前記可動支持システム(10)に固定される、装置に関する。
【0018】
図3に示すように、タンクは、シンクロール4および安定化ロール5を備えてもよい。さらに、コーティング厚さを制御することを可能にするワイピングシステム6は、ストリップSが液体金属浴3を出る場所の近くに設置されることができる。明確にするために、焼鈍炉の一部のみが図3に示される。
【0019】
液体金属浴3は、亜鉛、アルミニウム、ケイ素およびまたはマグネシウムなどの複数の元素の混合物であってもよい。好ましくは、液体金属浴は、少なくとも0~50%のアルミニウム、少なくとも20~30%のマグネシウム、および、少なくとも20~40%のケイ素で構成される。好ましくは、前記液体金属浴は、少なくとも0~95%のアルミニウム、少なくとも0~20%のマグネシウム、および少なくとも0~15%のケイ素で構成される。好ましくは、前記液体金属浴は、0~95%の亜鉛および0~5%のアルミニウムで構成される。好ましくは、前記液体金属浴は、45~55%の亜鉛、45~55%のアルミニウムおよび0~20%のケイ素で構成される。
【0020】
スナウト1は、矩形断面を有する金属製の中空体とすることができる。好ましくは、前記スナウトは、前記スナウト内に非酸化性雰囲気を有することを可能にする窒素などの非酸化性ガスをスナウト1内に注入するための、ノズルなどの注入手段15を備える。より好ましくは、図3に示すように、スナウトは、スナウトの一部を傾けることを可能にする1つ以上の手段16を備える。スナウトの1つ以上の部分を傾けることは、メンテナンス作業中に特に有利である。スナウトは、2つの部分、すなわち、スナウト本体1Aおよびスナウト先端部1Bを備える。
【0021】
スナウト先端部1Bは、液体金属浴により近い、スナウトの下端にある。さらに、前記スナウト先端部は、動作中には前記液体金属浴に少なくとも部分的に浸漬される。それは、スナウト先端部側からスナウト内に周囲空気が入るのを妨ぐ液体シールを、浴表面および前記スナウト内に画定することを可能にし、非酸化性雰囲気を維持する。前記スナウト先端部は、スナウト本体の1つと比較して同じ断面または異なる断面を有することができる。
【0022】
好ましくは、図3に示すように、スナウト先端部は、スナウト本体の1つと比較してより大きな断面を有する。それは、より多くの空間があるため、バットの位置決めを容易にすることを可能にする。さらにより好ましくは、図3に示すように、スナウト先端部の後側の一部は、垂直、例えば地面に対して垂直である。
【0023】
可動支持システムは、バットの位置決めを容易にする。これはまた、前記スナウトを移動させることなくオーバフロー部を作業位置に設定することを可能にする。
【0024】
可動支持システム10のコア部分(単数または複数)18は、主に、前記支持システム10の他の全ての部分を接続し、安定性を提供するために使用される。したがって、コア部18はまた、接続されたオーバフロー部12の重量に対して可動支持システム10を平衡させるように配置されたカウンタウェイト21を備えることができる。コア部はまた、移動手段(19および20)に電気を供給する手段22を備えることができる。
【0025】
第1の移動手段19は、可動支持システム10を少なくとも水平に移動させることを可能にし、それはボギーおよび/または少なくとも一輪ハブモータであってもよい。好ましくは、水平方向に移動する第1の移動手段は、タンク縁部に沿った方向にのみ移動する。第1の移動手段のこのような一方向の移動は、一方向のみが制御される必要があるため、オーバフロー部、例えばバットの位置決めを容易にする。明らかに、第1の移動手段が一方向にのみ移動できる場合、前記作業位置におけるオーバフロー部の位置決めを許可すべきである。
【0026】
第2の移動手段20は、前記支持システム接続手段11に接続されて、前記支持システム接続手段11の垂直方向の変位を可能にし、したがって前記固定されたオーバフロー部の垂直方向の変位を可能にする。第2の移動システムは、摺動ガイド、アクチュエータおよび/またはホイストであってもよい。
【0027】
さらに、接続手段11は、ナットおよびボルト、溶接および/またはリベットなどの任意の実用的な締結手段と、梁などの任意の実用的な接続部品とを備えることができる。一実施形態の接続手段11が図4に示されており、接続手段11は梁11aおよびボルト11bで作製され、前記ボルトはオーバフロー部12に取り付けられている。
【0028】
図3および図5に示すように、特許請求される装置はまた、前記接続手段11によって前記可動支持システム10に固定されたオーバフロー部12を備える。
【0029】
前記オーバフロー部12は、前記スナウト1に接続されていない。これは、オーバフロー部およびスナウトが2つの別個の要素であり、それらが互いに固定されていないことを意味する。既に簡単に説明したように、国際公開第2017/187225号および仏国特許発明第2816639号明細書では、浸漬された部分、例えば、スナウト先端部およびオーバフロー部の一部と、浸漬されていない部分との間に熱勾配が存在する。この熱勾配は、熱膨張の点で、したがって浸漬された部分と浸漬されていない部分との間の変形の点で差をもたらす。その結果、バット、特に内上縁部の変形につながり、その結果、上縁部が傾斜し、バットを正確に位置決めすることを困難にする可能性がある。しかしながら、この特許請求された装置では、スナウトとオーバフロー部が離れているため、この変形に関連する問題はない。
【0030】
さらに、図6に示すように、前記オーバフロー部12は、少なくとも1つのバット13と、少なくとも1つのポンプ14と、バットとポンプとの間の接続手段とを備える。前記少なくとも1つのポンプ14は、バット13、好ましくは前記バットの底部に接続されている。そのようなシステムは、溶融金属および望ましくない粒子を押し出すことを可能にする。このシステムは、前記バットを前記ポンプに接続し、前記バットをスナウトの外側の領域に接続するパイプで作製されることができ、前記領域は好ましくはストリップから離れている。本発明のフレームにおいて、バット13は、隆起したリムを有する平坦で浅い容器として理解されることができる。図6Aおよび図6Bに示されるように、バットは、
液体シールの表面に向けられた、ストリップの片側に面する内壁13aであって、上縁部13bを備える、内壁13aと、
液体シールの表面に向けられた、スナウトに面する外壁13cであって、上縁部13dを備える、外壁13cと、
前記外壁下縁部と前記内壁下縁部との間の接続部と、
全ての縁部を接続する前述の壁の各共有端部における壁13eと、
外壁上縁部13dよりも下方にある前記内壁上縁部13bと、
から構成されることができる。
【0031】
この場合、オーバフロー部は前記スナウト先端部1Bの近傍に配置されるため、これは、内壁および外壁の上縁部がスナウト先端部1Bによって画定される容積内にあることを意味する。
【0032】
好ましくは、前記作業位置において、前記内壁13aは前記浴3内に浸漬され、前記外壁13)は前記浴内に部分的にのみ浸漬される。これにより、望ましくない粒子の除去を促進することができる。
【0033】
好ましくは、図5に示すように、前記オーバフローはまた、オペレータがオーバフロー部の正しい位置決めをチェックすることを可能にするレベル測定手段12Mを備える。
【0034】
さらに、前記オーバフロー部は作業位置に移動可能であり、このことは、オーバフロー部位置が浴および/またはスナウトに対して固定されていないが、作業位置ではない位置から作業位置に移動されることができることを意味する。図3に示すように、作業位置において、オーバフロー部12の前記少なくとも1つのバット13は、前記スナウト先端部1Bの近傍に配置される。そのような位置は、溶融金属浴3のバット13への自然な流れを設定することを可能にする。前記バット13の作業位置はまた、内壁13aの上縁部13bが溶融金属浴3の表面3S(図3に示す)の下に配置されて、バット13内への溶融金属の前記自然な流れを可能にすることと、外壁13cの上縁部13dが前記浴の表面の上に配置されることとを特徴とすることができる。より好ましくは、液体金属の前記自然な流れの高さは、金属酸化物粒子および金属間化合物粒子が液体金属の流れに対する向流として上昇するのを防止するために、50mmを超える。
【0035】
その結果、本発明は、オーバフロー部の位置決めを容易にし、溶融金属浴内のそのようなオーバフロー部の耐性を抑制または少なくとも制限することを可能にする。
【0036】
好ましくは、図9に示されるように、前記オーバフロー部はコア部12Cを備え、前記支持システム接続手段11は前記コア部12Cによって前記オーバフロー部に接続されている。このような接続は、装置の堅牢性を高める。さらに好ましくは、前記コア部12Cは、前記バット13および前記ポンプ14を支持する。コア部12Cは、前記オーバフロー部および前記ポンプを支持することを可能にする締結手段および接続部を備えることができる。
【0037】
好ましくは、前記第1の移動手段19は、少なくとも1つのレールと、少なくとも1つのボギーとを備える。これは、レールに追従する変位が繰り返し可能であるため、オーバフロー部の位置決めを容易にするので有利である。明らかに、地面に向かう変位の平行度および水平度は緩和される。
【0038】
好ましくは、前記可動支持システム10は、前記オーバフロー部13を作業位置からアイドル位置に移動させ、前記アイドル位置では、前記オーバフロー部は前記液体金属浴の上方ではなく外側に配置される。一般に、オーバフロー部がアイドル位置にあるとき、オーバフロー部に対してメンテナンス作業を行うことができる。アイドル位置の一実施形態が図12に示されている。
【0039】
本発明はまた、前述の設備において溶融浸漬コーティングによって金属コーティングを堆積させる方法であって、
前記焼鈍炉内での金属ストリップの再結晶焼鈍と、
焼鈍炉からスナウト内の溶融浸漬コーティング浴への金属ストリップの通過と、
前記液体金属浴内の焼鈍された金属ストリップの溶融浸漬コーティングと、
を備える、方法に関する。
【0040】
好ましくは、図3に示されるように、前記可動支持システム10は、前記タンク8の片側のみに配置される。好ましくは、図3に示されるように、前記可動支持システムは、前記タンク8の片側のみに配置される。
【0041】
好ましくは、図3に示されるように、前記可動支持システム10は、前記タンク8の後側に配置され、前記後側は前記スナウト1の下側にある。一般に、溶融浸漬コーティング設備は、スナウトの後ろに自由空間を有するので、このような位置決めは、溶融浸漬設備全体を前記支持システムの使用を可能にするように変更される必要がないので有利である。さらに、可動支持システムへのアクセスを容易にする。
【0042】
好ましくは、図11および図12に示されるように、前記液体金属浴3を通過する前記ストリップSは経路を描き、前記可動支持システム10は前記タンク8の2つの側面に配置され、前記側面は前記経路に沿っている。支持システムのこの配置は、ストリップに対するバットの位置合わせが第1の移動手段の水平変位によって行われることができるため、バットの位置決めを容易にする。この場合、タンクの各側面に1つの支持システムがある。図10は、設備の正面図であり、オーバフロー部12’は、接続手段11’を介して2つの可動支持システム10’によって支持されている。図11は、設備の上面図である。さらに、明らかにレバーアームがより小さくなるため、カウンタウェイトの重量を低減することができる。さらに好ましくは、前記浴3を通過する前記ストリップは経路を描き、前記可動支持システム10は前記浴の2つの側面のみに配置され、前記側面は前記経路に沿っている。
【0043】
好ましくは、図3に示されるように、前記バット13は、前記ストリップSと前記スナウトの後側との間に配置される。このような位置決めは、金属蒸気がスナウトの後側で凝固すると、バット内に落ちる可能性があり、これにより、バットによって取られる不純物の量が増加するため、有利である。反対に、金属蒸気がスナウトの前側で凝固すると、ストリップ上に落下する傾向がある。これにより、バット13がスナウトの後側に位置している場合、バットがスナウトの前方に位置している場合と比較して、落下する不純物がより捕集されやすくなる。
【0044】
本発明はまた、前述のように設備内でオーバフロー部を位置決めするための方法に関し、前記オーバフロー部は、アイドル位置から作業位置まで少なくとも3つのステップで:
前記バットを前記浴の上方に配置するために、水平に、
前記バットを前記スナウト先端部の下方に水平に配置し、前記液体金属浴に浸漬し、前記バットが前記液体シールの垂直突起部によって取り囲まれるように、下方かつ斜めに、
前記バットを前記作業位置に配置するために、上方に、
移動される。
【0045】
前記方法の異なるステップを図14(A、B、CおよびD)に示す。
【0046】
好ましくは、図13Aに示されるように、前記アイドル位置において、前記オーバフロー部は前記液体金属浴の上方ではなく外側に配置される)。必要に応じてオーバフロー部を変更するために、オーバフロー部に対して保守作業を行うことを可能にする。さらに、浴を交換することもできる。
【0047】
そのような移動は、バットをその作業位置に効率的に配置することを可能にする。次いで、バットの傾きを調整するために、バットの位置は調整されることができる。下方かつ斜めの第2の移動は、好ましくは垂直に対して45°で行われる。
【0048】
好ましくは、前記オーバフロー部は、アイドル位置から作業位置まで少なくとも4回:
前記バットを前記浴の上方に配置するために、水平に、
前記バットを前記スナウト先端部の水平に下方に配置し、前記液体金属浴に浸漬するために、下方に、
前記バットが前記液体シールの垂直突起部によって取り囲まれるように、水平に、
前記バットを前記作業位置に配置するために、上方に、
移動される。
【0049】
そのような移動は、バットをその作業位置に効率的に配置することを可能にする。次いで、バットの傾きを調整するために、バットの位置は調整されることができる。
【0050】
以上、本発明を、現時点で実用的であるとともに好ましいと考えられる実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、明細書に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】